(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(54)【発明の名称】近隣の発信装置の1つまたは複数の識別子に基づく端末の地理位置特定の最適化
(51)【国際特許分類】
H04W 64/00 20090101AFI20240604BHJP
H04W 4/029 20180101ALI20240604BHJP
G01S 5/02 20100101ALI20240604BHJP
H04W 4/80 20180101ALI20240604BHJP
【FI】
H04W64/00 160
H04W4/029
G01S5/02 A
H04W4/80
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571152
(86)(22)【出願日】2022-05-17
(85)【翻訳文提出日】2023-11-15
(86)【国際出願番号】 EP2022063322
(87)【国際公開番号】W WO2022243318
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523231071
【氏名又は名称】ウナビズ
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】マルティ,ルノー
(72)【発明者】
【氏名】イソン,オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ズニガ,フアン・カルロス
(72)【発明者】
【氏名】ボワット,ジュリアン
【テーマコード(参考)】
5J062
5K067
【Fターム(参考)】
5J062BB05
5J062CC11
5J062FF01
5K067AA11
5K067DD11
5K067DD57
5K067EE02
5K067EE10
5K067JJ51
(57)【要約】
本発明は、無線通信システム(10)の端末(20)の地理位置特定方法に関する。端末は、少なくとも1つの発信装置(40)について、発信装置の識別子(ID3)を検出する。端末は、発信装置の識別子の非可逆圧縮を実行して短縮識別子(CID1)を取得し、その後、メッセージでこの短縮識別子をアクセスネットワークに送信する。アクセスネットワークは、短縮識別子と、受信したメッセージを基に明確にされた識別情報(Info3)と、発信装置の識別子の複数のリストを作成できる曖昧さ解決データベースであって、各リストがそれぞれ識別情報の異なる値に関連付けられている曖昧さ解決データベース(33)とを基に、発信装置の識別子を明確にできる。次に、端末の地理位置は、発信装置の識別子を基に、かつ発信装置の識別子のリスト、およびこの発信装置のそれぞれの地理位置を記憶している地理位置特定データベース(51)を用いて推定され得る。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システム(10)の端末(20)の地理位置特定方法(100)であって、
前記端末(20)は、第1の無線通信プロトコルに従って前記無線通信システム(10)のアクセスネットワーク(30)とメッセージを交換するように適合され、
-少なくとも1つの発信装置(40)に対して、第2の無線通信プロトコルに従って、前記発信装置(40)が発信したメッセージを基に、前記発信装置(40)の識別子を前記端末(20)で検出する工程(101)、
-前記発信装置(40)の前記識別子を非可逆圧縮することによって、前記発信装置(40)の短縮識別子を前記端末(20)で取得する工程であって、前記短縮識別子は、発信装置(40)の複数の異なる識別子に相当する可能性があるため、前記非可逆圧縮が曖昧さをもたらす、工程(102)、
-前記発信装置(40)の前記短縮識別子を含むメッセージを前記アクセスネットワーク(30)に向けて前記端末(20)で発信する工程(103)、
-前記短縮識別子と、前記端末(20)が発信したメッセージを基に明確にされた識別情報と、前記発信装置の識別子の複数のリストを作成できる曖昧さ解決データベースであって、各リストがそれぞれ前記識別情報の異なる値に関連付けられている曖昧さ解決データベース(33)とを基に、前記発信装置(40)の前記識別子を明確にする工程(104)、
-前記発信装置の前記識別子を基に、かつ発信装置の識別子のリストおよび前記発信装置(40)のそれぞれの地理位置を記憶している地理位置特定データベース(51)を用いて、前記端末(20)の地理位置を推定する工程(105)
を含み、
前記地理位置特定データベース(51)は、地理位置特定サーバ(50)に記憶され、前記曖昧さ解決データベース(33)は、前記地理位置特定サーバ(50)とは異なる1つまたは複数のサーバ(32)に記憶される、
方法(100)。
【請求項2】
前記識別情報は、
-前記端末(20)が属する端末グループを表す情報、および/または
-前記端末(20)がある地理領域を表す情報、および/または
-前記端末(20)が検出した発信装置(40)の少なくとも1つの別の識別子または短縮識別子を表す情報
を含む、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記発信装置(40)の前記短縮識別子の取得(102)は、前記発信装置(40)の前記識別子の少なくとも一部を切り捨てることを含む、請求項1または2に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記発信装置(40)の前記短縮識別子の取得(102)は、
-前記発信装置(40)の前記識別子の様々な部分について、前記識別子の各部分を識別する能力を表す値を推定することと、
-推定した値に応じて切り捨てるべき少なくとも一部を選択することと
を含む、請求項3に記載の方法(100)。
【請求項5】
前記発信装置(40)の前記短縮識別子の取得(102)は、ハッシュ関数を用いてハッシュキーを計算することを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記ハッシュ関数は、発信装置の識別子に最適なハッシュキーを明確にするように事前に訓練された機械学習アルゴリズムによって実装される、請求項5に記載の方法(100)。
【請求項7】
前記第1の無線通信プロトコルは、無線広域ネットワークまたは低消費電力の無線広域ネットワークの通信プロトコルである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項8】
前記第2の無線通信プロトコルは、無線ローカルネットワークの通信プロトコル、無線パーソナルネットワークの通信プロトコル、または短距離通信システムの通信プロトコルである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項9】
曖昧さ解決データベース(33)を更新する方法(200)であって、
-前記発信装置(40)が発信したメッセージを基に、発信装置(40)の識別子を無線通信システム(10)の端末(20)で検出する工程(201)、
-前記発信装置(40)の識別子か前記発信装置(40)の短縮識別子のどちらを前記端末(20)によってメッセージ内で前記アクセスネットワーク(30)に向けて発信すべきかを明確にする基準を前記端末(20)で評価する工程(202)、
-前記端末(20)が発信した前記メッセージが、前記発信装置(40)の前記識別子を完全形式で含んでいる場合に、前記曖昧さ解決データベース(33)を更新する工程(203)
を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法(200)。
【請求項10】
前記基準は、
-所定期間にわたって前記端末(20)が検出した発信装置の識別子の数に応じて、かつ/または
-前記端末(20)のセンサが出した指示に応じて、かつ/または
-前記発信装置(40)の識別子がすでに送信されていれば前記端末(20)による判断に応じて、かつ/または
-前記アクセスネットワーク(30)が規定し、構成メッセージで前記アクセスネットワーク(30)が前記端末(20)に発信した構成に応じて
評価される、請求項9に記載の方法(200)。
【請求項11】
無線通信システム(10)のアクセスネットワーク(30)に接続しているサーバ(32)であって、前記無線通信システム(10)は、第1の無線通信プロトコルに従って前記アクセスネットワーク(30)とメッセージを交換するように適合され、かつ、少なくとも1つの発信装置(40)について、前記発信装置(40)が発信したメッセージを基に、第2の無線通信プロトコルに従って前記発信装置(40)の識別子を検出するように適合されている、少なくとも1つの端末(20)を有するサーバにおいて、前記サーバ(32)は、
-発信装置(40)の短縮識別子を含んでいるメッセージを端末(20)から受信し、前記短縮識別子は、前記発信装置(40)の識別子の非可逆圧縮の結果であり、前記短縮識別子は、前記発信装置(40)の複数の異なる識別子に相当する可能性があるため、前記非可逆圧縮が曖昧さをもたらし、
-前記短縮識別子と、前記端末(20)が発信したメッセージを基に明確にされた識別情報と、前記発信装置の識別子の複数のリストを作成できる曖昧さ解決データベースであって、各リストがそれぞれ前記識別情報の異なる値に関連付けられている曖昧さ解決データベース(33)とを基に、前記発信装置(40)の識別子を明確にし、前記曖昧さ解決データベース(33)は、前記サーバ(32)または1つもしくは複数の別のサーバに記憶され、
-前記発信装置の前記識別子を基に、かつ前記発信装置の識別子のリストおよび前記発信装置(40)のそれぞれの地理位置を記憶している地理位置特定データベース(51)を用いて、前記端末(20)の地理位置を推定し、前記地理位置特定データベース(51)は、前記曖昧さ解決データベース(33)を記憶している前記サーバ(32)とは異なる地理位置特定サーバ(50)に記憶される
ように構成されることを特徴とする、サーバ(32)。
【請求項12】
前記サーバ(32)はさらに、
-発信装置(40)の識別子を含むメッセージを端末(20)から受信し、
-受信した前記識別子を基に前記曖昧さ解決データベース(33)を更新する
ように構成される、請求項11に記載のサーバ(32)。
【請求項13】
請求項11または12に記載のサーバ(32)を含むアクセスネットワーク(30)。
【請求項14】
前記アクセスネットワーク(30)は、無線広域ネットワークまたは低消費電力の無線広域ネットワークである、請求項13に記載のアクセスネットワーク(30)。
【請求項15】
無線通信システム(10)の端末(20)であって、前記端末(20)は、第1の無線通信プロトコルに従ってアクセスネットワーク(30)とメッセージを交換するように適合され、前記端末(20)は、
-少なくとも1つの発信装置(40)について、第2の無線通信プロトコルに従って、前記発信装置(40)が発信したメッセージを基に前記発信装置(40)の識別子を検出し、
-前記発信装置(40)の識別子か前記発信装置(40)の短縮識別子のどちらを前記端末(20)によってメッセージ内で前記アクセスネットワーク(30)に向けて発信すべきかを明確にする基準を評価し、
-前記短縮識別子を発信しなければならない場合、前記発信装置(40)の短縮識別子を取得するために、前記発信装置(40)の前記識別子を非可逆圧縮し、前記短縮識別子は、発信装置(40)の複数の異なる識別子に相当する可能性があるため、曖昧であり、
-前記基準の前記評価の結果に従って、前記発信装置(40)の前記識別子か前記発信装置(40)の前記短縮識別子のいずれかを含むメッセージを前記アクセスネットワークに向けて発信する
ように構成されることを特徴とする、端末(20)。
【請求項16】
前記基準は、
-所定期間にわたって前記端末(20)が検出した発信装置の識別子の数に応じて、かつ/または
-前記端末(20)のセンサが出した指示に応じて、かつ/または
-前記発信装置(40)の識別子がすでに送信されていれば前記端末(20)による判断に応じて、かつ/または
-前記アクセスネットワーク(30)が規定し、構成メッセージで前記アクセスネットワーク(30)が前記端末(20)に発信した構成に応じて
評価される、請求項15に記載の端末(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムの端末の地理位置特定の分野に属する。端末の地理位置特定は、端末が検出した近隣の発信装置の1つまたは複数の識別子を基に、かつ発信装置とその地理位置との関連付けを行うデータベースを含む地理位置特定サーバを用いて実装される。
【背景技術】
【0002】
現在、発信装置(例えばWiFiやBluetoothのアクセスポイント、またはRFIDタグ)の識別子を発信装置の地理位置と関連付けるデータベースに基づく地理位置特定システムがいくつか存在する。
【0003】
このような地理位置特定システムでは、端末が少なくとも1つの発信装置について、発信装置が例えばビーコン信号で発信するメッセージを基に、発信装置の識別子を検出する。次に端末は、問い合わせメッセージを地理位置特定サーバに送信する。問い合わせメッセージは、発信装置の識別子を含んでいる。地理位置特定サーバは、発信装置の識別子とそのそれぞれの地理位置とを関連付ける地理位置特定データベースを含んでいる。そのため地理位置特定サーバは、この発信装置に関連付けられた地理位置を明確にでき、その後、この情報を応答メッセージで端末に送信できる。発信装置の地理位置は、端末の推定された地理位置に相当する。
【0004】
端末の地理位置は、端末が受信するビーコン信号の電力レベルに応じて精緻化できる場合がある。端末が所定の時間にビーコン信号を受信した複数の異なる発信装置の地理位置に応じて、端末の地理位置を推定することも可能である。
【0005】
場合によっては、端末のエネルギー消費および/または端末による問い合わせメッセージの発信に必要な無線リソースを制限することが重要である。これはとりわけ、端末と地理位置特定サーバとの通信が低速かつ低消費電力の拡張アクセスネットワーク(英文では「Low Power Wide Area Network」すなわちLPWAN)によって行われる場合のことである。このような無線通信ネットワークは、IoT(英語の「Internet Of Things」の頭文字、フランス語では「internet des objets、モノのインターネット」)またはM2M(英語の「Machine To Machine」頭文字、フランス語では「communication de machine a machine、機器間通信」)の類の用途に特に適している。
【0006】
そこで、問い合わせメッセージに含まれている発信装置の識別子の数を制限するか、問い合わせメッセージに含まれている発信装置の識別子を圧縮して、問い合わせメッセージのサイズを制限することを検討できる。
【0007】
ただし、問い合わせメッセージに含まれている発信装置の識別子の数を制限すると、端末の地理位置特定の精度の低下を招く。
【0008】
問い合わせメッセージに含まれている発信装置の識別子を圧縮すると、圧縮された識別子が地理位置特定サーバのデータベースの複数の識別子と一致する可能性があるため、端末の地理位置が曖昧になるおそれがある(非可逆圧縮の場合)。端末のおおよその位置がわかっていれば、圧縮された識別子を発信装置の識別子と一致させようとしている地理的領域を制限することで、この曖昧さを解決することを検討できる。ただし、端末のおおよその位置を常に取得できるわけではない。
【0009】
したがって、端末の地理位置特定の十分な精度を維持しながら、端末による問い合わせメッセージの発信に必要なエネルギー消費および/または無線リソースを制限する納得のいく解決策を見つける必要がある。地理位置特定サーバとアクセスネットワークは通常、別々のオペレータに管理されている。また、採用した解決策は、地理位置特定サーバとのインターフェースを変更する必要がないことが好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、エネルギー消費の観点から、かつ/または無線リソースを使用する観点から、かつ/または精度の観点から、近隣の発信装置の1つまたは複数の識別子を基に端末の地理位置を特定することを最適化する解決策を提案して、先行技術の欠点のすべてまたは一部、とりわけ上記の欠点を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのために、本発明は、第1の態様に従って、無線通信システムの端末の地理位置特定方法を提案する。端末は、第1の無線通信プロトコルに従って無線通信システムのアクセスネットワークとメッセージを交換するように適合されている。本方法は、
-少なくとも1つの発信装置について、第2の無線通信プロトコルに従って、発信装置が発信したメッセージを基に、発信装置の識別子を端末で検出する工程、
-発信装置の識別子を非可逆圧縮することによって、発信装置の短縮識別子を端末で取得する工程、
-発信装置の短縮識別子を含むメッセージをアクセスネットワークに向けて端末で発信する工程、
-短縮識別子と、端末が発信したメッセージを基に明確にされた識別情報と、発信装置の識別子の複数のリストを作成できる曖昧さ解決データベースであって、各リストがそれぞれ識別情報の異なる値に関連付けられている曖昧さ解決データベースとを基に、発信装置の識別子を明確にする工程、
-発信装置の識別子を基に、かつ発信装置の識別子のリストおよびこの発信装置のそれぞれの地理位置を記憶している地理位置特定データベースを用いて、端末の地理位置を推定する工程
を含む。
【0012】
地理位置特定データベースは、地理位置特定サーバに記憶され、曖昧さ解決データベースは、地理位置特定サーバとは別の1つまたは複数のサーバに記憶される。曖昧さ解決データベースは、例えば、アクセスネットワークの1つまたは複数のサーバ、またはアクセスネットワークに接続している1つまたは複数のサードパーティーサーバに記憶される。
【0013】
以下の説明では、「識別子」という用語は、完全形式(すなわち識別子を短縮していない形式)の識別子に相当する。「短縮識別子」という用語は、情報の非可逆圧縮を介して得られた識別子を短縮した形式に相当する。
【0014】
発信装置の識別子の非可逆圧縮を行うことにより、識別子に関する情報を縮小サイズで取得することが可能になる。それにより、端末がアクセスネットワークに発信した識別子に関する情報を含むメッセージのサイズを縮小できる(または場合によっては、識別子に関する情報を1つのメッセージに含めることができない場合に、この情報を送信するのに必要なメッセージ数を少なくすることができる)。それにより、端末がメッセージを発信するのに必要なエネルギー消費および無線リソースを制限できる。
【0015】
この圧縮には、特定のメッセージのサイズについて、より多くの識別子を1つのメッセージで送信できるという利点も有する可能性がある。これにより、地理位置特定の精度が向上する効果がある。
【0016】
メッセージで送信された短縮識別子は、メッセージを傍受していた第三者によって事前に解凍されることは不可能なため、この圧縮は、データの機密性の観点からも利点を有する。
【0017】
ただし、短縮識別子は、地理位置特定サーバのデータベースに記憶されている発信装置の複数の識別子と一致する可能性があるため、この圧縮により、発信装置の識別子に関して曖昧さが生じる。
【0018】
本発明は、アクセスネットワークが、短縮識別子を基に発信装置の識別子を明確にできる曖昧さ解決データベースを用いてこの曖昧さを解決できることに立脚している。曖昧さ解決データベースにより、発信装置の識別子のリストを作成でき、各々のリストがそれぞれ識別情報の異なる値に関連付けられている。アクセスネットワークは、短縮識別子と、端末から受信したメッセージおよび曖昧さ解決データベースを基に明確にされた識別情報とを基に、発信装置の識別子を明確にする。識別情報は、端末が発信したメッセージに含まれているパラメータを基に、かつ/またはアクセスネットワークの中で利用可能で、メッセージを発信した端末に関連付けられ、このメッセージから導き出された情報を基に、直接明確にすることができる。第一段階では、曖昧さ解決データベース内で、端末から受信したメッセージを基に明確にされた識別情報の値に関連付けられているリストを明確にする。第二段階では、このリスト内で、短縮識別子に相当する発信装置の識別子を明確にする。端末から受信したメッセージを基に明確にされた識別情報の値に関連付けられているリストに曖昧さがあるリスクは、著しく低下する(同じ短縮識別子に対応する複数の識別子がリストに残っている場合は曖昧さがある)。実際、曖昧さ解決データベースを基に作成されたリストのサイズは通常、地理位置特定サーバのデータベースに記憶されている発信装置の全識別子のリストのサイズよりも遥かに小さい。曖昧さ解決データベースを基に作成されたリストのサイズは、選択した識別情報によって異なる。換言すると、識別情報を適切に選択することで、アクセスネットワークは、ほとんどの場合、発信装置の識別子に関する曖昧さを取り除くことが可能になる。
【0019】
地理位置特定データベースに記憶されている発信装置の「地理位置」は、発信装置の正確な地理位置を表す位置情報に概ね一致し得ることに留意されたい。したがって、これは直接、発信装置の地理位置の座標(経度、緯度、および場合によっては高度)であってよいが、発信装置の正確な地理位置を推定できる背景情報であってもよい(例えば郵便番号、店舗名、地区名、地域名または国名など)。
【0020】
特定の実施形態では、本発明はさらに、以下の特徴のうちの1つまたは複数を、個別に、または技術的に可能なあらゆる組み合わせに従って含むことができる。
【0021】
特定の実施形態では、識別情報は、端末が属する端末グループを表す情報、および/または端末がある地理領域を表す情報、および/または端末が検出した発信装置の少なくとも1つの別の識別子または短縮識別子を表す情報を含む。
【0022】
特定の実施形態では、発信装置の短縮識別子の取得は、発信装置の識別子の少なくとも一部を切り捨てることを含む。
【0023】
特定の実施形態では、発信装置の短縮識別子の取得は、発信装置の識別子の様々な部分について、該識別子の各部分を識別する能力を表す値を推定することと、推定した値に応じて切り捨てるべき少なくとも一部を選定することとを含む。
【0024】
特定の実施形態では、発信装置の短縮識別子の取得は、ハッシュ関数を用いてハッシュキーを計算することを含む。
【0025】
特定の実施形態では、ハッシュ関数は、発信装置の識別子に最適なハッシュキーを明確にするように事前に訓練された機械学習アルゴリズムによって実装される。
【0026】
特定の実施形態では、第1の無線通信プロトコルは、無線広域ネットワークまたは低消費電力の無線広域ネットワークの通信プロトコルである。
【0027】
特定の実施形態では、第2の無線通信プロトコルは、無線ローカルネットワークの通信プロトコル、無線パーソナルネットワークの通信プロトコル、または短距離通信システムの通信プロトコルである。
【0028】
第2の態様によれば、本発明は、前述した実施形態のいずれか1つに記載したような曖昧さ解決データベースを更新する方法に関する。この更新方法は、とりわけ、
-発信装置が発信したメッセージを基に、発信装置の識別子を無線通信システムの端末で検出する工程、
-発信装置の識別子か発信装置の短縮識別子のどちらを端末によってメッセージ内でアクセスネットワークに向けて発信すべきかを明確にする基準を端末で評価する工程、
-端末が発信したメッセージが発信装置の識別子を完全形式で含んでいる場合に、曖昧さ解決データベースを更新する工程
を含む。
【0029】
特定の実施形態では、基準は、所定期間にわたって端末が検出した発信装置の識別子の数に応じて、かつ/または端末のセンサが出した指示に応じて、かつ/または発信装置の識別子がすでに送信されていれば端末による判断に応じて、かつ/またはアクセスネットワークが規定し、構成メッセージでアクセスネットワークが端末に発信した構成に応じて評価される。
【0030】
第3の態様によれば、本発明は、無線通信システムのアクセスネットワークに接続しているサーバに関する(アクセスネットワークに直接属しているサーバまたはアクセスネットワークに接続しているサードパーティーサーバであってよい)。システムは、第1の無線通信プロトコルに従ってアクセスネットワークとメッセージを交換するように適合され、かつ、少なくとも1つの発信装置について、この発信装置が発信したメッセージを基に、第2の無線通信プロトコルに従ってこの発信装置の識別子を検出するように適合されている少なくとも1つの端末を有する。サーバは、発信装置の短縮識別子を含んでいるメッセージを端末から受信するように構成される。短縮識別子は、発信装置の識別子を非可逆圧縮した結果である。サーバは、短縮識別子と、端末が発信したメッセージを基に明確にされた識別情報と、曖昧さ解決データベースとを基に、発信装置の識別子を明確にするようにも構成される。曖昧さ解決データベースにより、発信装置の識別子の複数のリストを作成でき、各々リストは、それぞれが識別情報の別々の値に関連付けられている。曖昧さ解決データベースは、このサーバまたは1つまたは複数の別のサーバに記憶される。サーバはさらに、発信装置の識別子を基に、かつ地理位置特定データベースを用いて端末の地理位置を推定するように構成される。地理位置特定データベースは、発信装置の識別子のリストおよびこの発信装置のそれぞれの地理位置を記憶する。地理位置特定データベースは、曖昧さ解決データベースを記憶しているサーバとは異なる地理位置特定サーバによって記憶される。
【0031】
サーバは、前述した地理位置特定方法の実施形態のいずれか1つを実施するように構成されてよい。
【0032】
特定の実施形態では、サーバはさらに、発信装置の識別子を含むメッセージを端末から受信し、受信した識別子を基に曖昧さ解決データベースを更新するように構成される。
【0033】
第4の態様によれば、本発明は、前述の実施形態のいずれか1つによるサーバを含むアクセスネットワークに関する。
【0034】
特定の実施形態では、アクセスネットワークは、無線広域ネットワークまたは低消費電力の無線広域ネットワークである。
【0035】
第5の態様によれば、本発明は、無線通信システムの端末に関する。端末は、第1の無線通信プロトコルに従ってアクセスネットワークとメッセージを交換するように適合されている。端末は、第2の無線通信プロトコルに従って、発信装置が発信したメッセージを基に、発信装置の識別子を検出するように構成される。端末はさらに、発信装置の識別子か発信装置の短縮識別子のどちらを端末によってメッセージ内でアクセスネットワークに向けて発信すべきかを明確にする基準を評価するように構成される。短縮識別子を発信しなければならない場合、端末は、発信装置の短縮識別子を取得するために、発信装置の識別子を非可逆圧縮するように構成される。最後に、端末は、基準の評価結果に従って、発信装置の識別子か発信装置の短縮識別子のいずれかを含むメッセージをアクセスネットワークに向けて発信するように構成される。
【0036】
特定の実施形態では、基準は、所定期間にわたって端末が検出した発信装置の識別子の数に応じて、かつ/または端末のセンサが出した指示に応じて、かつ/または発信装置の識別子がすでに送信されていれば端末による判断に応じて、かつ/またはアクセスネットワークが規定し、構成メッセージでアクセスネットワークが端末に発信した構成に応じて評価される。
【0037】
本発明は、
図1~
図4を参照して記載した非限定的な例として挙げた以下の説明を読むことでよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】地理位置特定サーバを用いて端末の地理位置を特定するために使用する無線通信システムの実施例の概略図である。
【
図3】端末の地理位置特定方法を実施する方式の主な段階の概略図である。
【
図4】端末の地理位置特定方法を実施する一例の図である。
【
図5】曖昧さ解決データベースの可能な構造の一例の図である。
【
図6】曖昧さ解決データベースの更新方法を実施する方式の主な段階の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
これらの図では、ある図と別の図で同一の符号がある場合は、同一または同様の要素を指している。明瞭にするため、図示した要素は、別途明記しない限り、必ずしも同じ縮尺ではない。
【0040】
図1は、少なくとも1つの端末20と、複数の基地局31を有するアクセスネットワーク30とを含む無線通信システム10の概略図である。
【0041】
端末20は、アクセスネットワーク30へのアップリンクでメッセージを発信するように適合されている。各基地局31は、該端末がその基地局の範囲内にあるときに、端末20のメッセージを受信するように適合されている。従来の方法では、端末20の発信したメッセージが端末20の識別子を含んでいる。基地局が受信した各メッセージは、例えばアクセスネットワーク30のサーバ32に送信され、それを受信した基地局31の識別子、受信したそのメッセージの受信電力レベル、そのメッセージが届いた時間、メッセージを受信した頻度など、他の情報が付随している場合がある。サーバ32は、例えば異なる基地局31から受信したメッセージすべてを処理する。
【0042】
無線通信システム10は、単方向であってよい。すなわち、端末20からアクセスネットワーク30へのアップリンクでのみメッセージの交換が可能である。ただし、他の例に従って、双方向の交換ができることを排除するものではない。必要に応じて、アクセスネットワーク30は、基地局31を介してメッセージをダウンリンクで、受信に対応している端末20に向けて発信するようにも適している。
【0043】
アクセスネットワーク30へ向けたアップリンクでのメッセージ交換には、第1の無線通信プロトコルを使用する。
【0044】
特定の実施形態では、第1の無線通信プロトコルは、無線広域ネットワーク(英文では「Wireless Wide Area Network」すなわちWWAN)の通信プロトコルである。例えば、第1の無線通信プロトコルは、UMTS(「Universal Mobile Telecommunications System、ユニバーサル移動体通信システム」)、LTE(「Long Term Evolution、ロングターム・エボリューション)、LTE-Advanced Pro、5Gなどの類の規格化された通信プロトコルである。
【0045】
あるいは、第1の無線通信プロトコルは、低消費電力の無線広域ネットワーク通信プロトコル(英文では「Low Power Wide Area Network」すなわちLPWAN)である。このような無線通信システムは、長距離アクセスネットワーク(1キロメートルを超える、さらには数十キロメートルを超える)であり、エネルギー消費がわずかで(例えばメッセージの送信時または受信時のエネルギー消費が100mW未満、または50mW未満、さらには25mW未満)、速度が一般に1Mbits/s未満である。LPWANネットワークの例として、とりわけSigfox、LoRaWAN、Ingenu、Amazon Sidewalk、Heliumなどを挙げることができる。このような無線通信システムは、IoTまたはM2Mタイプの用途に特に適している。
【0046】
IoTまたはM2Mタイプの通信システムでは、データ交換は本質的に単方向であり、この場合、無線通信システム10の端末20からアクセスネットワーク30へのアップリンク上である。端末20が発信したメッセージが失われるリスクを最小限に抑えるために、アクセスネットワークの計画は、特定の地理領域が複数の基地局31で同時にカバーされるようにして、発信装置20が発信したメッセージを複数の基地局31が受信できるように実行されることが多い。
【0047】
以下の説明では、非限定的な例として、第1の無線通信プロトコルが低消費電力で超狭帯の無線広域ネットワーク通信プロトコルであると考える。「超狭帯」(英文では「Ultra Narrow Band」すなわちUNB)とは、端末が発信する電波信号の瞬間周波数スペクトルの周波数幅が、2キロヘルツ未満、さらに1キロヘルツ未満であることを指す。
【0048】
図1に示したように、端末20は、この端末20の近隣にある少なくとも1つの発信装置40が発信したメッセージを受信するようにも適応している。発信装置40から発信されるメッセージは、第1の無線通信プロトコルとは異なる第2の無線通信プロトコルを使用する。発信装置40は、無線通信システム10から完全に独立していてよく、第1の無線通信プロトコルをサポートする必要がないことに留意されたい。
【0049】
特定の実施形態では、第2の無線通信プロトコルの範囲は、第1の無線通信プロトコルの範囲よりも狭い。このような場合、端末20がある範囲内での発信装置40の地理位置は、端末20の地理位置に関して、例えば端末20が発信したメッセージを受信する基地局31の地理位置よりも正確な情報を提供する。
【0050】
ただし、他の例によれば、第1の無線通信プロトコルの範囲以上の範囲である第2の無線通信プロトコルがあることも可能であることに留意されたい。
【0051】
第2の無線通信プロトコルは、例えば無線ローカルネットワーク通信プロトコル(英文では「Wireless Local Area Network」すなわちWLAN)、例えばWiFiタイプ(IEEE802.11規格)など、または無線パーソナルネットワーク通信プロトコル(英文では「Wireless Personal Area Network」すなわちWPAN)、例えばBluetoothまたはBLE(英語の「Bluetooth Low Energy」の頭文字で、フランス語では「Bluetooth a basse consommation、低消費電力ブルートゥース」)タイプのものなどである。別の例によれば、第2の無線通信プロトコルは、例えばNFC(英語の「Near Field Communication」の頭文字、フランス語では「communication en champ proche、近距離無線通信」)技術またはRFID(英語の「Radio Frequency Identification」の頭文字、フランス語では「identification par radiofrequences、無線周波数識別」)技術に基づく短距離通信プロトコルであってよい。
【0052】
地理位置特定サーバ50は、発信装置40の識別子を記憶するテーブルを含んでいる「地理位置特定データベース」というデータベースを含む。発信装置40の識別子が地理位置特定データベースにあれば、その識別子はテーブル内で、発信装置40の地理位置を表す少なくとも1つの位置情報と関連付けられる。
【0053】
発信装置40の識別子は、例えば発信装置40のMACアドレス(MACは英語の「Media Access Control」の頭文字で、フランス語では「controle d’acces au support、媒体アクセス制御」)に対応する。ただし、他のパラメータが発信装置40に対する識別子の役割を果たすことができ、例えばWiFiアクセスポイントのSSID(英語の「Service Set IDentifier」の頭文字で、フランス語では「identificateur d’ensemble de services、サービスセット識別子」)またはBSSID(英語の「Base Service Set IDentifier」の頭文字で、フランス語では「identificateur d’ensemble de services debase、基本サービスセット識別子」)、BluetoothまたはBLEアクセスポイントの識別子、RFIDタグの識別子などである。
【0054】
位置情報は、直接、発信装置40の地理位置の座標(経度、緯度、および場合によっては高度)であってよい。ただし、位置情報は、発信装置40の地理位置を推定できる背景情報であってもよく、例えば郵便番号、店舗名、地区名、地域名または国名などである。
【0055】
地理位置特定サーバ50は、例えばインターネット接続によってアクセスネットワーク30のサーバ32に接続される。
【0056】
【0057】
図2で示したように、端末20は、第1の無線通信プロトコルに従って基地局31とメッセージを交換するように適合されている第1の通信モジュール21を有する。第1の通信モジュール21は、例えば機器(アンテナ、増幅器、局部発振器、ミキサ、アナログフィルタなど)を備えている無線回路の形態である。
【0058】
端末20は、第2の無線通信プロトコルに従って対象の発信装置40から発信されたメッセージを受信するように適合されている第2の通信モジュール22も有する。第2の通信モジュール22は、例えば機器(アンテナ、増幅器、局部発振器、ミキサ、アナログフィルタなど)を備えている無線回路の形態である。
【0059】
さらに、端末20は、第1の通信モジュール21および第2の通信モジュール22に接続している処理回路23も有する。処理回路23は、例えば1つまたは複数のプロセッサおよび記憶手段(磁気ハードディスク、電子メモリ、光ディスクなど)を含み、記憶手段には、端末の地理位置特定方法および曖昧さ解決データベースの更新方法の少なくとも特定の数工程を実施するように実行するコンピュータプログラム製品が、プログラムコード命令一式の形態で記憶されている(以下を参照)。
【0060】
アクセスネットワーク30のサーバ32も、1つまたは複数のプロセッサおよび記憶手段を含み、記憶手段には、コンピュータプログラム製品が、端末の地理位置特定方法および曖昧さ解決データベースの更新方法の少なくとも特定の数工程を実施するために実行するプログラムコード命令一式の形態で記憶されている(以下を参照)。
【0061】
図3は、端末20の地理位置を特定するための本発明による方法100の実施例の主な工程の概略図である。
【0062】
地理位置特定方法100は、少なくとも1つの発信装置40について、第2の無線通信プロトコルに従って、発信装置40が発信したメッセージを基に、発信装置40の識別子を端末20で検出する工程101を含む。
【0063】
地理位置特定方法100は次に、発信装置40の短縮識別子を端末20で取得する工程102を含む。短縮識別子は、発信装置40の識別子を非可逆圧縮した結果である。よって短縮識別子は、発信装置40の識別子よりも小さいサイズの発信装置40の識別子を表す情報に相当する。例えば、発信装置40の識別子は64ビットで符号化されるが、短縮識別子はわずか12ビットで符号化される。ただし、この情報は、発信装置の複数の異なる識別子が同じ短縮識別子を共有することがあるほど曖昧になる可能性がある。
【0064】
地理位置特定方法100は次に、アクセスネットワーク30に向けて、発信装置40の短縮識別子を含むメッセージを端末20で発信する工程103を含む。このメッセージは、第1の無線通信プロトコルに従って発信される。
【0065】
地理位置特定方法100は次に、短縮識別子を基に、かつ「曖昧さ解決データベース」というデータベースを用いて、アクセスネットワーク30によって発信装置40の識別子を明確にする工程104を含む。曖昧さ解決データベースにより、発信装置の識別子の様々なリストを作成することが可能になり、リストはそれぞれ識別情報の異なる値に関連付けられている。端末20が発信したメッセージを基に、識別情報の特定の値を明確にできる。端末20から受信したメッセージを基に明確にされた識別情報の値に関連付けられたリストを、曖昧さ解決データベースを用いて作成できる。次にすべきことは、このリストの中から短縮識別子に対応する発信装置の識別子を明確にすることである。端末から受信したメッセージを基に明確にされた識別情報の値に関連付けられたリストに曖昧さがあるリスクは、大幅に軽減される。実際、曖昧さ解決データベースを基に作成されたリストのサイズは、地理位置特定サーバのデータベースに記憶されている発信装置の全識別子のリストのサイズよりも小さい。
【0066】
地理位置特定方法100は次に、発信装置の識別子を基に、かつ地理位置特定サーバ50の地理位置特定データベースを用いて、端末20の地理位置を推定する工程105を含む。
【0067】
端末20の推定地理位置は、例えば地理位置特定データベースに記憶されている発信装置40の位置に対応している。端末20の地理位置は、端末20がビーコン信号を受信する電力レベルに応じて、またはアクセスネットワーク30の既知のメタデータを用いて、精緻化できる場合がある。特定の時間に端末20が検出した複数の異なる発信装置40の地理位置に応じて、端末20の地理位置を推定することも可能である。
【0068】
検討した例では、短縮識別子および曖昧さ解決データベースを基に発信装置40の識別子を明確にする工程104は、アクセスネットワーク30のサーバ32によって実施される。
【0069】
発信装置40の識別子および地理位置特定データベースを基に端末20の地理位置を推定する工程105は、アクセスネットワーク30のサーバ32および/または地理位置特定サーバ50によって実施される。第1の例によれば、アクセスネットワーク30のサーバ32は、地理位置特定サーバ50に発信装置40の識別子を送信するか、あるいは複数の発信装置が端末によって検出されたときに利用可能な識別子をすべて送信し、地理位置特定サーバ50は、地理位置特定データベース内の様々な識別子に関連付けられた地理位置を基に端末20の位置を推定する。第2の例によれば、地理位置特定サーバ50は、単に地理位置特定データベース内の各識別子に関連付けられた地理位置を返すだけであり、様々な識別子に関連付けられた地理位置を基に端末20の位置を推定するのは、サーバ32である。
【0070】
曖昧さ解決データベースは、例えばサーバ32、および/またはアクセスネットワーク30複数の他のサーバ、あるいはアクセスネットワーク30に属していないサーバに記憶される。しかしながら、これは、曖昧さ解決データベースを記憶するサーバが地理位置特定サーバ50とは異なる事例である。これらのサーバは、地理位置特定サーバ50が認識していない情報を含み、この情報は、短縮識別子を基に発信装置40の識別子を明確にする際に生じ得る曖昧さを解決できるものである。それにより、曖昧さ解決データベースのオペレータは、地理位置特定データベースのオペレータに頼ることなくデータベースを維持できる。さらに、識別情報は、アクセスネットワークのみが認識している、地理位置特定サーバ50に通信してはならない私的情報に関連付けることができる。
【0071】
図4は、本発明による地理位置特定方法100の実施例を示している。この例では、9個の発信装置40を検討し、それぞれが識別子ID1、ID2、…、ID9に関連付けられている。対応テーブル21は、各々の識別子ID1、ID2、…、ID9に関連付けられた短縮識別子を示している。この例では、短縮識別子の値は6つある:CID1、CID2、…、CID6。短縮識別子CID1は識別子ID1と識別子ID3に同時に関連付けられ、短縮識別子CID2は識別子ID2と識別子ID6に同時に関連付けられ、短縮識別子CID3は識別子ID4に関連付けられ、短縮識別子CID4は識別子ID5と識別子ID7に同時に関連付けられ、短縮識別子CID5は識別子ID7に関連付けられ、短縮識別子CID6は識別子ID9に関連付けられていることがわかる。よって、同じ短縮識別子が複数の異なる識別子に関連付けられているため、曖昧さがあり、その結果、短縮識別子を基に発信装置の識別子を確実に明確にすることは不可能である。
【0072】
図4に示した例では、端末20は、識別子がID3である発信装置40を検出している。
【0073】
したがって、端末20は、識別子ID3の圧縮を実行して、識別子ID1に関連付けられた短縮識別子CID1を取得する(そのためには、例えば端末20が、発信装置の識別子を基に短縮識別子を取得することができる圧縮機能を認識しているか、あるいは端末20が対応テーブル21を認識していることが前提である)。
【0074】
端末20は次に、短縮識別子CID1を含むメッセージをアクセスネットワーク30に向けて発信する。するとアクセスネットワーク30は、より詳細にはサーバ32は、短縮識別子CID1を基に、かつ曖昧さ解決データベース33を用いて、発信装置40の識別子を明確にしようとする。
【0075】
この例では、曖昧さ解決データベース33により、発信装置の識別子の様々なリストを作成でき、リストはそれぞれ、識別情報の異なる値:info1、info2、…、info5に関連付けられている。非限定的な例として、識別情報は、端末20が属するアクセスネットワーク30の顧客企業名に相当する。換言すると、この例では、曖昧さ解決データベース33は、アクセスネットワーク30の複数の顧客企業の各々(info1、info2、…、info5)に対して、この顧客企業に属する端末によってすでに検出されている発信装置40の識別子のリストを作成することができる。名前がinfo1である顧客企業に属する端末によってすでに検出されている発信装置40の識別子は、ID1、ID4およびID5であり、名前がinfo2である顧客企業に属する端末から送信された発信装置40の識別子は、ID2およびID9であり、以下同様である。
【0076】
この例では、サーバ32は、端末20から受信したメッセージに関して、識別情報の値はinfo3であることを明確できる。換言すると、サーバ32は、短縮識別子CID1を含むメッセージを発信したばかりの端末20が属する顧客企業は、顧客企業info3であることを明確できる。この情報は、例えば端末20から受信したメッセージに明示的に含まれているか、あるいはこの情報は、端末20から受信したメッセージから引き出せるものである(例えばメッセージは、端末20の識別子も含み、サーバ32は、端末20の識別子を基に、端末20がどの顧客企業に属するかを明確できる)。
【0077】
したがって、残るのは、値info3を有する識別情報に関連付けられたリストの中で、リストの識別子ID3、ID7およびID8のうちどの発信装置40の識別子が短縮識別子CID1に対応しているかを明確にすることである。このリストでは、識別子ID3のみが短縮識別子CID1を有する。したがってサーバ32は、端末20が検出した発信装置40の識別子がID3である可能性が高いことを明確にする。
【0078】
当然ながら、サーバ32が短縮識別子を基に発信装置の識別子を取得できる圧縮機能を認識しているか、あるいはアクセスネットワーク32が対応テーブル21を認識していることが前提である)。
【0079】
次にアクセスネットワークは、識別子ID3を含むメッセージを地理位置特定サーバ50に送信できる。地理位置特定サーバ50は、発信装置40の識別子を記憶している地理位置特定データベース51を含み、この識別子の各々がそれぞれ、発信装置40の地理位置を表す少なくとも1つの位置情報に関連付けられている。この例では、識別子ID1は位置情報pos1に関連付けられ、識別子ID2は位置情報pos2に関連付けられ、以下同様に続き、識別子ID9は位置情報pos9に関連付けられている。よって端末20の地理位置は、識別子がID3である発信装置40の地理位置、つまりpos3に関連付けられた地理位置であると推定できる。
【0080】
図4に示した例では、発信装置40の識別子のみを端末20で検出することが検討されている。しかしながら、本発明は、様々な発信装置40に対応している複数の識別子が一定期間にわたって端末20で検出された後、単一のメッセージまたは複数のメッセージでアクセスネットワーク30に送信される場合にも適用できる。よって端末20の地理位置は、地理位置特定データベース51内で検出された様々な発信装置に関連付けられた様々な位置情報に応じて明確にできる。
【0081】
図4に示した例では、曖昧さ解決データベース33がなければ、アクセスネットワーク30および地理位置特定サーバ50が、識別子ID1およびID3のうち(すなわち短縮識別子CID1を有する識別子のうち)端末20が検出した発信装置40の識別子がどれなのかを確実に明確にすることは不可能であっただろう。よって端末20の地理位置を推定することは不可能であっただろう(端末の地理位置は、pos1にもpos3にも該当する可能性があるため)。
【0082】
したがって、本発明により、(曖昧さ解決データベース33があることにより)発信装置40の識別子を明確にする際の曖昧さのリスクを制限しながら、(識別子を圧縮して)端末20が送信する情報量を削減することが可能になる。
【0083】
曖昧さの解決は、常に保証されるわけではなく、とりわけ同じ短縮識別子を有する複数の識別子が同じ識別情報の値に応答する場合は保証されるわけではないことに留意されたい。ただし、曖昧さが残るリスクは一般に、識別情報を適切に選択することで大幅に軽減できる。
【0084】
識別情報は、端末20が属する端末グループを表す情報(例えば端末20が属する顧客企業名、端末20に対応する機種など)に相当するとしてよい。
【0085】
識別情報は、端末20がある地理領域にも相当するとしてもよい。この場合、アクセスネットワーク30は、地理位置特定サーバ50を使用せずに端末20の地理位置を表す位置情報を明確にできなければならない。
【0086】
端末20の位置情報は、推定された端末20の地理位置の座標(経度、緯度、場合によっては高度)に相当するとしてよく、場合によってはこの推定位置の精度を示す。ただし、端末20の位置情報は、端末20のおおよその地理位置を推定できる背景情報としてもよく、例えば郵便番号、店舗名、地区名、地域名または国名などである。この背景情報は、とりわけ端末20から受信したメッセージに関連付けられたパラメータから得ることができる。例として、アクセスネットワークが、この端末が特定の地域または国でしか活動していない顧客企業に属していることを認識している場合は、端末の識別子を基に、端末20がそのの地域にあるのか、またはどの国にあるのかを明確にすることが可能である。
【0087】
アクセスネットワーク30は、例えば、端末20の地理位置をこの端末20から受信したメッセージに応じて推定するように構成される。特定の実施形態では、地理位置は、発信装置40の識別子を含んで受信したメッセージから推定される。ただし、他の例によれば、以前に端末20から発信された他のメッセージを基に端末20の地理位置を推定することを排除するものではない。
【0088】
端末20の地理位置の様々な推定方法を実施できる。例えば、アクセスネットワーク30は、端末20の地理位置を、端末20が発信したメッセージを受信した基地局31の地理位置であると推定できる。複数の基地局31が端末20の発信したメッセージを受信できれば、端末20が発信したメッセージを受信した全基地局31の地理位置に応じて、(例えばこれらの地理位置の重心を規定して)端末20の地理位置を推定することが可能である。
【0089】
別の例によれば、アクセスネットワーク30は、様々な基地局31でのTOA測定値またはこのメッセージの到着時間差(英文では「Time Difference of Arrival」すなわちTDOA)の測定値から、端末20が発信したメッセージが基地局31に向かって伝播する時間を計算して、端末20と1つまたは複数の基地局31とを隔てている距離を推定できる。よって次に、基地局31の地理位置がわかっていれば、マルチラテレーションによって端末20の位置を推定することが可能である。
【0090】
別の例によれば、端末20がアクセスネットワーク30に向けて発信したメッセージについて、端末20と複数の基地局31とを隔てている距離を計算して、各基地局31のRSSI測定値を基にマルチラテレーションによって端末20の位置を推定することが可能である。
【0091】
さらに別の例によれば、アクセスネットワーク30による端末20の地理位置の推定方法は、無線フィンガープリントを対象となる地理領域の地理位置に関連付ける機械学習技術(英文の「Machine Learning」)を利用できるものである。
【0092】
特定の実施形態では、端末20の地理位置の推定は、アクセスネットワーク30によって実行され、この推定に関わる明示的な情報がアクセスネットワークに向けたメッセージで端末から送信されることはない(換言すると、端末は、端末の地理位置を推定できる情報がバイナリデータに含まれているアクセスネットワークにはメッセージを発信しない)。このような規定により、端末20の地理位置を特定するために端末とアクセスネットワークとの間で交換されるデータの量を制限することが可能になる。
【0093】
識別情報は、端末20が検出した発信装置40の少なくとも1つの別の識別子(または少なくとも1つの別の短縮識別子)を表す情報に相当するとしてよい。実際、互いに地理的に近い発信装置40は一般に、同時に端末20に検出される。この情報により、発信装置の識別子に関する曖昧さを解決することが可能である。例えば、2つの発信装置が同じ短縮識別子に応答していても、この2つの発信装置の1つだけが、端末20が発信したメッセージに示されている別の発信装置と同時にすでに検出されている場合、この発信装置は、端末20が検出したものである可能性が極めて高い。
【0094】
端末20から受信したメッセージに明示的に含まれている情報を基に、あるいはアクセスネットワーク30に認識されているメッセージのメタデータを基に、他の多くの識別情報の例を検討でき、明確にできる。この特定の識別情報の選定は、本発明の一変形例にすぎない。
【0095】
識別情報は、性質の異なる複数の情報の組み合わせに相当するとしてもよい。
【0096】
曖昧さ解決データベース33にデータを記憶するために、様々な構造を検討できる。曖昧さ解決データベース33のこの特定の構造の選定は、本発明の一変形例にすぎない。
【0097】
図4は、曖昧さ解決データベース33が識別子の様々なリストを記憶していて、各リストが識別情報の異なる値にそれぞれ関連付けられている第1の例を示している。
【0098】
図5は、曖昧さ解決データベース33に対して可能な別の構造を非限定的な例として示している。
【0099】
図5に示したこの例では、各行が通信システム10の端末20から受信したメッセージに相当する。受信した各メッセージに対して、そのメッセージに関する複数の情報が記憶されている。例えば、情報C1、C2、…、CKは、メッセージを基にアクセスネットワーク30が明確にした端末20に関する特徴に相当する。とりわけメッセージに含まれている明示的なデータ、またはメッセージもしくはメッセージを発信した端末に関連付けられたメタデータであってよい(例えば端末識別子、端末が属する顧客企業名、端末の特定の種類、端末に関連する特定のサービス、アクセスネットワークが明確にした端末の地理位置に関する情報など)。受信した各メッセージに対して、曖昧さ解決データベース33は、メッセージ内に示されている発信装置の短縮識別子CIDも記憶し、明確にできた場合は、発信装置の識別子IDも記憶する。複数の発信装置が端末20によって検出され、アクセスネットワーク30に発信されたメッセージに記録された場合、そのメッセージに対して短縮識別子を記憶でき、明確にできた場合は、これらの様々な発信装置の識別子も記憶できる。
【0100】
したがって、1つの識別情報が、受信したメッセージに対して明確にされた特定の特徴、あるいは受信したメッセージに対して明確にされた特定の特徴の組み合わせに相当するとしてよい。
【0101】
例えば、端末が顧客企業Aに属し(C1=A)、端末がB国にある(C2=B)ことをアクセスネットワーク30が明確にできる場合、条件(C1=A)および(C2=B)も満たしている、ベース内で以前に受信したメッセージに関連付けられている識別子IDのリストを作成するように曖昧さ解決データベース33に要求を出すことが可能である。次は、このリスト内でどの識別子が処理中のメッセージに示されている短縮識別子に相当するのかを明確にする必要がある。
【0102】
別の例によれば、ある特徴(例えばC3)は、アクセスネットワーク30によって明確にされた端末20のおおよその地理位置の座標に相当するとしてよい(C3=C)。この場合、特徴C3に関して示された位置がCを中心とする特定の直径を有する地理領域に属している、ベース内で以前に受信したメッセージに関連付けられている識別子IDのリストを作成するように曖昧さ解決データベース33に要求を出すことを検討できる。
【0103】
処理中のメッセージに示されている短縮識別子がDであれば、曖昧さ解決データベース33に対して出した要求の中に条件(CID=D)を直接入れることも可能であることに留意されたい。この場合、曖昧さが残っていなければ、得られたリストには1つしか要素が含まれていない。
【0104】
曖昧さ解決データベース33に要求を出した後に得られたリストに曖昧さが残っている場合(すなわち、このリストに同じ短縮識別子に応答する複数の識別子が残っている場合)、より選択性の高い別の要求を出すことを検討できる。
【0105】
したがって、地理位置特定方法100の工程104で発信装置40の識別子を明確にする様々な対策を練ることが可能である。第1の対策は、曖昧さ解決データベース33に選択性が十分低い第1の要求を出し、その後、必要な場合のみ、それまでの要求に対する応答で得たリストに曖昧さが残っている場合のみ、より選択性の高い他の要求を出すことからなるものであってよい。第2の対策は、第1の要求の直後に極めて選択性の高い要求を出して、第1の要求に対する応答を得てから曖昧さがないようにすることからなるものであってよい。この対策は、要求に対する応答で得たリストに曖昧さが残っていない限り、要求の複雑さを徐々に軽減するために、場合によっては受信したメッセージに沿って精緻化できる。場合によっては、要求の複雑さと、要求に対する応答で得たリストに曖昧さが残るリスクとの妥協点という観点で、機械学習アルゴリズムを実装して最良の要求を明確にすることができる。これは、例えば決定木フォレスト(英文では「random forest」)アルゴリズムを用いて行うことができる。このアルゴリズムは、基準の数が大きな値に達した場合でも、パーティション全体の中のデータを分散するのに効果的であることが知られている。この場合、決定木の各葉は、識別子のリストを構成し、葉に到達する経路は識別情報に相当する。識別情報は、非常に複雑なことがある規則にしたがって、受信したメッセージに応じて変化する可能性がある。
【0106】
実際、要求の複雑さ(および選択性)と、要求に対する応答で得たリストに曖昧さが残っているリスクと、要求に対する応答で得たリストに、短縮識別子に応答する識別子が見つからないリスクとの間に見出すべき妥協点がある。実際、要求の選択性が高くなるほど、要求に対する応答で得たリスト内の要素数は少なくなり、これらの識別子に曖昧さが残るリスクが低くなる。一方、要求の選択性が高いほど、短縮識別子に応答する識別子が見つからないリスクが高くなる。
【0107】
短縮識別子を取得する工程102に関して、発信装置40の識別子の非可逆圧縮を介して様々な対策を検討することも可能である。
【0108】
特定の実施形態では発信装置40の識別子の少なくとも一部を切り捨てることで短縮識別子を作成できる。切り捨てる部分は、例えば識別子の高位ビットまたは低位ビットの特定部分に相当するとしてよい。
【0109】
別の例によれば、切り捨て部分は、識別子の各部分の識別力を推定し、かつ識別力が最も小さい切り捨て部分を選択することで選定できる。例えば、識別子は、発信装置40を製作した企業の識別に割り当てられた数バイトのビットを有する部分を含んでいてよい。この部分により、数百万の可能性が生じるが、実際にこの部分によって識別される企業数は数千に及ぶ。したがって、部分的な識別子を作成するために、他ではなくこの部分を切り捨てることが有利である。一般に、識別子の理論的空間と有効空間との違い、およびそのビットごとの表現を利用することが可能である。上記の場合、企業を識別するビットは、他のビットよりも識別力が低い。識別力の観点から短縮識別子の最適な符号化を明確にするために、切り捨てた部分に応じてシミュレーションを行い、衝突率を実験で測定することを検討できる(衝突とは、1つの同じ短縮識別子が存在する1つまたは複数の識別子に対応することを意味する)。
【0110】
特定の実施形態では、発信装置40の短縮識別子は、ハッシュ関数を用いてハッシュキーの計算を基に明確にされる。使用されるハッシュ関数、およびハッシュキーのサイズは、端末の様々なグループで異なる場合があることに留意されたい。ただし、端末は、圧縮を実行した端末に応じて短縮識別子を解凍するために、使用するハッシュ関数を認識している必要がある。
【0111】
特定の実施形態では、ハッシュ関数は、発信装置の識別子に最適なハッシュキーを明確にするよう事前に訓練された機械学習アルゴリズムによって実装される。例えば、ディープニューラルネットワークを使用して、元の識別子を潜在ベクトル空間に組み込むことで最適なハッシュキーを作成できる。このような手法により、衝突率を最小限に抑えることができる。よってこのように明確にされたハッシュ関数は、データに適応しているため、一層有効である。
【0112】
ここで、曖昧さ解決データベース33を作成して最新に保つことができる方法に焦点を当てる必要がある。
【0113】
図6は、曖昧さ解決データベース33を更新する(または曖昧さ解決データベース33がなければそれを作成する)方法200を実施する一例の主な工程の概略図である。
【0114】
更新方法200は、無線通信システム10の端末20によって、少なくとも1つの発信装置40について、発信装置40が発信したメッセージを基に発信装置40の識別子を検出する工程201を含む。地理位置特定方法100の説明で前述したものと同じ端末20であっても別の端末20であってもよいことに留意されたい。また、地理位置特定方法100の説明で前述したものと同じ発信装置40であっても別の発信装置40であってもよいことに留意されたい。
【0115】
更新方法200は次に、発信装置40の識別子か発信装置40の短縮識別子のどちらを端末20によってメッセージ内でアクセスネットワーク30に向けて発信すべきかを明確にする基準を端末20によって評価する工程202を含む。当然ながら、端末20が複数の識別子を検出した場合は、識別子に対する基準を評価するこの工程202は、複数の識別子に対して繰り返すことができる。よって端末は、メッセージ内でアクセスネットワーク30に向けて、完全形式の識別子および/または短縮形式の識別子を含む組み合わせを発信できる。
【0116】
最後に、方法200は、端末20が発信したメッセージが発信装置40の識別子を含んでいる場合に、アクセスネットワーク30によって(より詳細にはサーバ32によって)、曖昧さ解決データベース33を更新する工程203を含む。この工程はとりわけ、完全形式の識別子と、短縮形式の識別子と、1つまたは複数の識別情報との関連性を曖昧さ解決データベース33に記憶することからなるとしてよい。
【0117】
このような措置により、発信装置の識別子を(短縮していない)完全形式で曖昧さ解決データベース33に記憶し、これらの識別子をアクセスネットワーク30が明確にした識別情報と関連付けることが可能になる。
【0118】
端末20が完全な識別子を送信すべきなのか、短縮した識別子を送信すべきなのかを判断するのを可能にする基準を評価するために、複数の方法を検討できる。
【0119】
特定の実施形態では、基準は、特定の所定期間にわたって端末20が検出した発信装置の識別子の数に応じて評価される。非限定的な例として、端末が識別子を1つのみ検出した場合は、完全な識別子が送信される。識別子が2つ検出された場合は、2つの識別子のうちの1つが完全形式で送信され、もう1つの識別子は短縮形式で送信される。3つ以上の識別子が検出された場合は、どの識別子も短縮形式で送信される。
【0120】
特定の実施形態では、端末20は、特定の割合の識別子を完全形式で発信するように構成される。非限定的な例として、端末20は、2つに1つの識別子を完全形式で、2つに1つの識別子を短縮形式で送信するように構成される。
【0121】
特定の実施形態では、端末20は、完全形式で送信した識別子の割合を徐々に減らすように構成される。非限定的な例として、端末20は、全識別子を第1の期間にわたって完全形式で送信し、その後、2つに1つの識別子を第2の期間にわたって送信し、その後、4つに1つの識別子を第3の期間わたって送信するように構成され、以下同様に続く。
【0122】
特定の実施形態では、端末20は、端末20のセンサが出す指示に応じて基準を評価するように構成される。これは例えば、端末20の移動段階の始めまたは終わりに関する指示であったり(地理位置特定がうまくいくように端末20が移動しているときは、識別子を完全形式で送信することが有利である)、端末20が受ける特定の温度または特定の圧力に関する指示であったりするとしてよい(このような警告指示が検出された場合は、識別子を完全形式で送信しなければならばいことが不都合であっても、端末20の地理位置特定がうまくいくように識別子完全形式で送信することが有利である)。よってセンサは、モーションセンサ(加速度計、ジャイロスコープ、磁力計など)、温度センサ、圧力センサ、煙センサ、ノイズセンサなどであってよい。
【0123】
特定の実施形態では、端末20は、発信装置40の識別子が端末20によって以前にすでに送信されたかどうかの基準を評価するように構成される(識別子が完全形式で送信されていれば、その後は短縮形式で送信するだけとしてよい)。時間の概念を導入できることにも留意されたい。基準には、とりわけ発信装置40の識別子が以前に送信された日付を考慮できる。日付が遠い場合は、識別子の発信を完全形式で成功させることが有利である。日付が近い場合は、識別子を短縮形式で送信することが有利である。
【0124】
特定の実施形態では、端末20は、アクセスネットワーク30が規定した構成に応じて、かつアクセスネットワーク30が端末20に向けて発信した構成のメッセージを用いて、基準を評価するように構成される。この場合、通信システムは、双方向でなければならない。時間に応じて、かつ/または端末20の地理位置に応じて、様々な構成を検討できる。
【0125】
当然ながら、基準は、上記に挙げた例の組み合わせに関して評価することもできる。また、端末20で完全識別子を送信しなければならないのか、または短縮識別子を送信しなければならないのかを明確にするのを可能にする基準を評価する他の方法も検討できる。特定の方法の選定は、本発明の一変形例にすぎない。
【0126】
アクセスネットワーク30のサーバ32と地理位置特定サーバ50との間、およびサーバ32と曖昧さ解決データベースを管理しているサーバとの間(曖昧さ解決データベースがサーバ32とは異なるサーバに管理されている場合)には、あらゆる種類のインターフェースを検討できる。特に、ファイル、プログラミングインターフェース、コールバック関数などを利用することを検討することが可能である。
【0127】
以上の説明は、本発明の様々な特徴および利点により、本発明が設定した目標を達成していることを明確に示している。特に、本発明により、地理位置特定の良好な性能を維持しつつ、端末のエネルギー消費および/または必要な無線リソースを制限することが可能になる。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システム(10)の端末(20)の地理位置特定方法(100)であって、
前記端末(20)は、第1の無線通信プロトコルに従って前記無線通信システム(10)のアクセスネットワーク(30)とメッセージを交換するように適合され、
-少なくとも1つの発信装置(40)に対して、第2の無線通信プロトコルに従って、前記発信装置(40)が発信したメッセージを基に、前記発信装置(40)の識別子を前記端末(20)で検出する工程(101)、
-前記発信装置(40)の前記識別子を非可逆圧縮することによって、前記発信装置(40)の短縮識別子を前記端末(20)で取得する工程であって、前記短縮識別子は、発信装置(40)の複数の異なる識別子に相当する可能性があるため、前記非可逆圧縮が曖昧さをもたらす、工程(102)、
-前記発信装置(40)の前記短縮識別子を含むメッセージを前記アクセスネットワーク(30)に向けて前記端末(20)で発信する工程(103)、
-前記短縮識別子と、前記端末(20)が発信したメッセージを基に明確にされた識別情報と、前記発信装置の識別子の複数のリストを作成できる曖昧さ解決データベースであって、各リストがそれぞれ前記識別情報の異なる値に関連付けられている曖昧さ解決データベース(33)とを基に、前記発信装置(40)の前記識別子を明確にする工程(104)、
-前記発信装置の前記識別子を基に、かつ発信装置の識別子のリストおよび前記発信装置(40)のそれぞれの地理位置を記憶している地理位置特定データベース(51)を用いて、前記端末(20)の地理位置を推定する工程(105)
を含み、
前記地理位置特定データベース(51)は、地理位置特定サーバ(50)に記憶され、前記曖昧さ解決データベース(33)は、前記地理位置特定サーバ(50)とは異なる1つまたは複数のサーバ(32)に記憶される、
方法(100)。
【請求項2】
前記識別情報は、
-前記端末(20)が属する端末グループを表す情報、および/または
-前記端末(20)がある地理領域を表す情報、および/または
-前記端末(20)が検出した発信装置(40)の少なくとも1つの別の識別子または短縮識別子を表す情報
を含む、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記発信装置(40)の前記短縮識別子の取得(102)は、前記発信装置(40)の前記識別子の少なくとも一部を切り捨てることを含む、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記発信装置(40)の前記短縮識別子の取得(102)は、
-前記発信装置(40)の前記識別子の様々な部分について、前記識別子の各部分を識別する能力を表す値を推定することと、
-推定した値に応じて切り捨てるべき少なくとも一部を選択することと
を含む、請求項3に記載の方法(100)。
【請求項5】
前記発信装置(40)の前記短縮識別子の取得(102)は、ハッシュ関数を用いてハッシュキーを計算することを含む、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記ハッシュ関数は、発信装置の識別子に最適なハッシュキーを明確にするように事前に訓練された機械学習アルゴリズムによって実装される、請求項5に記載の方法(100)。
【請求項7】
前記第1の無線通信プロトコルは、無線広域ネットワークまたは低消費電力の無線広域ネットワークの通信プロトコルである、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項8】
前記第2の無線通信プロトコルは、無線ローカルネットワークの通信プロトコル、無線パーソナルネットワークの通信プロトコル、または短距離通信システムの通信プロトコルである、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項9】
曖昧さ解決データベース(33)を更新する方法(200)であって、
-前記発信装置(40)が発信したメッセージを基に、発信装置(40)の識別子を無線通信システム(10)の端末(20)で検出する工程(201)、
-前記発信装置(40)の識別子か前記発信装置(40)の短縮識別子のどちらを前記端末(20)によってメッセージ内で前記アクセスネットワーク(30)に向けて発信すべきかを明確にする基準を前記端末(20)で評価する工程(202)、
-前記端末(20)が発信した前記メッセージが、前記発信装置(40)の前記識別子を完全形式で含んでいる場合に、前記曖昧さ解決データベース(33)を更新する工程(203)
を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法(200)。
【請求項10】
前記基準は、
-所定期間にわたって前記端末(20)が検出した発信装置の識別子の数に応じて、かつ/または
-前記端末(20)のセンサが出した指示に応じて、かつ/または
-前記発信装置(40)の識別子がすでに送信されていれば前記端末(20)による判断に応じて、かつ/または
-前記アクセスネットワーク(30)が規定し、構成メッセージで前記アクセスネットワーク(30)が前記端末(20)に発信した構成に応じて
評価される、請求項9に記載の方法(200)。
【請求項11】
無線通信システム(10)のアクセスネットワーク(30)に接続しているサーバ(32)であって、前記無線通信システム(10)は、第1の無線通信プロトコルに従って前記アクセスネットワーク(30)とメッセージを交換するように適合され、かつ、少なくとも1つの発信装置(40)について、前記発信装置(40)が発信したメッセージを基に、第2の無線通信プロトコルに従って前記発信装置(40)の識別子を検出するように適合されている、少なくとも1つの端末(20)を有するサーバにおいて、前記サーバ(32)は、
-発信装置(40)の短縮識別子を含んでいるメッセージを端末(20)から受信し、前記短縮識別子は、前記発信装置(40)の識別子の非可逆圧縮の結果であり、前記短縮識別子は、前記発信装置(40)の複数の異なる識別子に相当する可能性があるため、前記非可逆圧縮が曖昧さをもたらし、
-前記短縮識別子と、前記端末(20)が発信したメッセージを基に明確にされた識別情報と、前記発信装置の識別子の複数のリストを作成できる曖昧さ解決データベースであって、各リストがそれぞれ前記識別情報の異なる値に関連付けられている曖昧さ解決データベース(33)とを基に、前記発信装置(40)の識別子を明確にし、前記曖昧さ解決データベース(33)は、前記サーバ(32)または1つもしくは複数の別のサーバに記憶され、
-前記発信装置の前記識別子を基に、かつ前記発信装置の識別子のリストおよび前記発信装置(40)のそれぞれの地理位置を記憶している地理位置特定データベース(51)を用いて、前記端末(20)の地理位置を推定し、前記地理位置特定データベース(51)は、前記曖昧さ解決データベース(33)を記憶している前記サーバ(32)とは異なる地理位置特定サーバ(50)に記憶される
ように構成されることを特徴とする、サーバ(32)。
【請求項12】
前記サーバ(32)はさらに、
-発信装置(40)の識別子を含むメッセージを端末(20)から受信し、
-受信した前記識別子を基に前記曖昧さ解決データベース(33)を更新する
ように構成される、請求項11に記載のサーバ(32)。
【請求項13】
請求項11または12に記載のサーバ(32)を含むアクセスネットワーク(30)。
【請求項14】
前記アクセスネットワーク(30)は、無線広域ネットワークまたは低消費電力の無線広域ネットワークである、請求項13に記載のアクセスネットワーク(30)。
【請求項15】
無線通信システム(10)の端末(20)であって、前記端末(20)は、第1の無線通信プロトコルに従ってアクセスネットワーク(30)とメッセージを交換するように適合され、前記端末(20)は、
-少なくとも1つの発信装置(40)について、第2の無線通信プロトコルに従って、前記発信装置(40)が発信したメッセージを基に前記発信装置(40)の識別子を検出し、
-前記発信装置(40)の識別子か前記発信装置(40)の短縮識別子のどちらを前記端末(20)によってメッセージ内で前記アクセスネットワーク(30)に向けて発信すべきかを明確にする基準を評価し、
-前記短縮識別子を発信しなければならない場合、前記発信装置(40)の短縮識別子を取得するために、前記発信装置(40)の前記識別子を非可逆圧縮し、前記短縮識別子は、発信装置(40)の複数の異なる識別子に相当する可能性があるため、曖昧であり、
-前記基準の前記評価の結果に従って、前記発信装置(40)の前記識別子か前記発信装置(40)の前記短縮識別子のいずれかを含むメッセージを前記アクセスネットワークに向けて発信する
ように構成されることを特徴とする、端末(20)。
【請求項16】
前記基準は、
-所定期間にわたって前記端末(20)が検出した発信装置の識別子の数に応じて、かつ/または
-前記端末(20)のセンサが出した指示に応じて、かつ/または
-前記発信装置(40)の識別子がすでに送信されていれば前記端末(20)による判断に応じて、かつ/または
-前記アクセスネットワーク(30)が規定し、構成メッセージで前記アクセスネットワーク(30)が前記端末(20)に発信した構成に応じて
評価される、請求項15に記載の端末(20)。
【国際調査報告】