IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ メムススター リミテッドの特許一覧

<>
  • 特表-微細構造の製造方法 図1
  • 特表-微細構造の製造方法 図2
  • 特表-微細構造の製造方法 図3
  • 特表-微細構造の製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(54)【発明の名称】微細構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/302 20060101AFI20240604BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
H01L21/302 201A
B81C1/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571158
(86)(22)【出願日】2022-05-17
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 GB2022051233
(87)【国際公開番号】W WO2022243667
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】2107171.7
(32)【優先日】2021-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521078528
【氏名又は名称】メムススター リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MEMSSTAR LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】オハラ,アンソニー
【テーマコード(参考)】
3C081
5F004
【Fターム(参考)】
3C081AA18
3C081BA43
3C081CA03
3C081CA14
3C081CA29
3C081DA03
3C081DA45
5F004AA05
5F004BA19
5F004BB18
5F004BB26
5F004BB28
5F004CA01
5F004CA04
5F004DA19
5F004DA20
5F004DA24
5F004DA25
5F004DA26
5F004DB03
5F004EA28
5F004EA34
(57)【要約】
窒化ケイ素(Si)を含む微細構造を製造する方法が提供される。この方法は、フッ化水素(HF)蒸気を使用して二酸化ケイ素(SiO)の犠牲層をエッチングするステップと、その後、HF蒸気が窒化ケイ素(Si)もエッチングする際に形成される残留層を除去するステップとを含む。残留層はケイ素を含み、そのような層を除去するための様々な技術が開示されている。それら技術は、微細構造に対して同時にまたは連続的に適用することができる。このため、記載の方法は、当該技術分野で知られている技術と比較して、ケイ素残留物のレベルが低減された微細構造を製造する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ケイ素(Si)を含む微細構造を製造する方法であって、
-フッ化水素(HF)蒸気を使用して、二酸化ケイ素(SiO)の犠牲層を選択的にエッチングするステップと、
-HF蒸気によるエッチングが完了した後、窒化ケイ素(Si)をHF蒸気によりエッチングすることによって窒化ケイ素(Si)上に形成された固体ケイ素残留層を除去するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の窒化ケイ素(Si)を含む微細構造を製造する方法において、
二酸化ケイ素(SiO)の犠牲層の蒸気エッチングおよび固体ケイ素残留層の除去が、別個の処理チャンバ内で順次実行されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の窒化ケイ素(Si)を含む微細構造を製造する方法において、
前記固体ケイ素残留層を除去することが、前記固体ケイ素残留層を第1の追加ガスと反応させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の窒化ケイ素(Si)を含む微細構造を製造する方法において、
前記固体ケイ素残留層を除去することが、固体ケイ素を水素または水素化合物ガスと反応させてシラン(SiH)を生成することを含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の窒化ケイ素(Si)を含む微細構造を製造する方法において、
前記固体ケイ素残留層を除去することが、固体ケイ素を酸素または酸素化合物ガスと反応させて二酸化ケイ素(SiO)を生成することを含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の窒化ケイ素(Si)を含む微細構造を製造する方法において、
前記固体ケイ素残留層を除去することが、フッ化水素(HF)蒸気を使用して二酸化ケイ素(SiO)をエッチングすることをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載の窒化ケイ素(Si)を含む微細構造を製造する方法において、
前記固体ケイ素残留層を除去することが、固体ケイ素をフッ素またはフッ素化合物ガスと反応させて四フッ化ケイ素(SiF)を生成することを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1または2に記載の窒化ケイ素(Si)を含む微細構造を製造する方法において、
前記固体ケイ素残留層を除去することが、固体ケイ素を二フッ化キセノン(XeF)蒸気でエッチングすることを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項に記載の窒化ケイ素(Si)を含む微細構造を製造する方法において、
真空ポンプシステムを使用して、前記固体ケイ素残留層を除去する際に形成される副生成物を除去するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載の窒化ケイ素(Si)を含む微細構造を製造する方法において、
前記微細構造が、微小電気機械システム(MEMS)を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載の窒化ケイ素(Si)を含む微細構造を製造する方法において、
前記微細構造が、半導体デバイスを含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細構造の製造に使用する方法に関する。典型的には、微細構造は、基板または他の堆積材料に対する材料の除去を必要とする微小電気機械システム(MEMS)の形態である。特に、本発明は、二酸化ケイ素犠牲層をフッ化水素(HF)蒸気でエッチングするステップを用いる、微細構造を製造するための改良された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細構造の製造中には、多くの材料が用いられることが知られている。ほんの数例を挙げると、ケイ素、二酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素(Si)、アルミニウム、フォトレジストなどがある。それら材料の中には、犠牲材料として使用されるものもあれば、微細構造を規定して形成するために使用されるものもある。微細構造の製造中に、複数の犠牲エッチングステップが採用されることも珍しくない。例えば、フィルムは最初の犠牲エッチングプロセス中にマスクとして使用され、その後、次の犠牲層としてエッチングされる。このため、どのような除去エッチングにおいても、犠牲層と周囲の材料との間に高いエッチング選択性があることが非常に望ましい。
【0003】
図1に示すタイプの微小電気機械構造(MEMS)1の製造中、犠牲層2および構造規定層3が最初に基板4上に堆積される。次に、エッチングプロセスを使用して、犠牲(すなわち不要な)領域または層2が除去される。
【0004】
犠牲層2として使用される最も一般的な材料の1つは二酸化ケイ素であり、これは、フッ化水素(HF)蒸気を使用してエッチングされる(例えば、英国特許第2,487,716号を参照されたい)。HF蒸気エッチングはプラズマを使用しない化学エッチングであり、以下の反応式で表される。
【0005】
式(1)で表されるように、水(HO)がHF蒸気をイオン化し、イオン化したHF蒸気(HF )が水(HO)を触媒として二酸化ケイ素(SiO)をエッチングすることが分かる。式(2)から、エッチング反応自体から水(HO)も生成されることが明らかである。
【0006】
二酸化ケイ素2のフッ化水素(HF)蒸気エッチングは、多くの一般的な構造規定層3に対して高い選択性を示すことが知られている。例えば、ケイ素およびアルミニウムに対する理論上の選択性は高く、エッチングや腐食は予想されない。窒化ケイ素(Si)も、二酸化ケイ素2に対する選択性はケイ素やアルミニウムほど高くはないものの、MEMS1の製造プロセスでマスクや構造規定層3として採用されることが多い別の材料である。
【0007】
MEMS1の製造に使用されるだけでなく、二酸化ケイ素2および窒化ケイ素3の層は、半導体デバイス内にも存在する。そのため、フッ化水素(HF)蒸気エッチング技術を使用して、標準的な半導体デバイスで使用されるマルチレベル金属構造にエアギャップ構造を形成することも知られている(米国特許第7,211,496号を参照されたい)。
【0008】
HF気相エッチングを、例えば30nm/分よりも速い使用可能なエッチング速度で進めるには、エッチングされる表面上に凝縮流体層5が存在する必要があることは広く受け入れられている(例えば、Journal of Vacuum Science and Technology A,10(4)July/Aug 1992 entitled「Mechanisms of the HF/HO vapor phase etching of SiO」in the name of Helms et alを参照されたい)。上述したHF気相エッチングプロセスに関連するすべての化合物の中で、水(HO)は蒸気圧が最も低く、そのため凝縮流体層5の基礎を形成する。欧州特許第2046677号は、凝縮流体層5の形成および組成の制御が、二酸化ケイ素のHF蒸気エッチングを管理する上でいかに重要であるかを開示している。正確なエッチング制御は、真空チャンバ内でHFエッチングを実行し、チャンバの圧力、温度、およびチャンバ内へのガス流を制御することによって達成される。HF蒸気エッチングに影響を与える他のパラメータは、エッチングされる二酸化ケイ素層の組成とその堆積方法である。
【0009】
通常、二酸化ケイ素(SiO)層2よび窒化ケイ素(Si)層3を基板4上に堆積させるのに、化学気相成長(CVD)プロセスが採用される。それらプロセスでは、化学前駆体(一方はケイ素源、他方は酸素源または窒素源)が反応して、二酸化ケイ素層2または窒化ケイ素層3が基板4上に堆積する。それらプロセスのうち最も一般的なものは、プラズマ強化CVD(PECVD)である。このプロセスは、450℃未満の低温で堆積を行うことができるためである。
【0010】
窒化ケイ素層3を堆積する際、犠牲二酸化ケイ素層2との選択性を高めるために、そのような層をケイ素リッチにすることが当該技術分野で知られている。このように選択性を高めても、HF蒸気エッチングプロセスは、二酸化ケイ素層2よりも遥かに遅い速度ではあるが、窒化ケイ素層3をエッチングすることが判明している。窒化ケイ素層3のHFエッチングにより、アンモニウム塩を含む固体残留層がMEMS1上に残る可能性があることが知られている。このように形成された固体残留物は、MEMSまたは半導体微細構造の製造において明らかに非常に望ましくない。
【発明の概要】
【0011】
そこで、本発明の一実施形態の目的は、犠牲層の二酸化ケイ素をHFエッチングするステップを採用し、かつ当該技術分野で知られている上記技術と比較して固体残留層または粒子のレベルを低減する、窒化ケイ素を含む微細構造を製造する方法を提供することである。
【0012】
本発明の第1の態様によれば、窒化ケイ素(Si)を含む微細構造を製造する方法が提供され、この方法が、
-フッ化水素(HF)蒸気を使用して、二酸化ケイ素(SiO)の犠牲層を選択的にエッチングするステップと、
-HF蒸気によるエッチングが完了した後、窒化ケイ素(Si)をHF蒸気によりエッチングすることによって窒化ケイ素(Si)上に形成された固体ケイ素残留層を除去するステップとを備える。
【0013】
二酸化ケイ素(SiO)の犠牲層の蒸気エッチングおよび固体ケイ素残留層の除去は、別個の処理チャンバ内で順次実行することができる。
【0014】
任意選択的には、残留層を除去することが、固体ケイ素残留層を第1の追加ガスと反応させることを含む。
【0015】
任意選択的には、残留層を除去することが、固体ケイ素を水素ガスまたは水素化合物と反応させてシラン(SiH)を生成することを含む。
【0016】
代替的には、残留層を除去することが、固体ケイ素を酸素ガスまたは酸素化合物と反応させて二酸化ケイ素(SiO)を生成することを含むことができる。さらに、残留層を除去することは、フッ化水素(HF)蒸気を使用して二酸化ケイ素(SiO)をエッチングすることを含むことができる。
【0017】
さらに代替的には、残留層を除去することが、固体ケイ素をフッ素ガスまたはフッ素化合物と反応させて四フッ化ケイ素(SiF)を生成することを含む。
【0018】
さらに代替的には、残留層を除去することが、固体ケイ素を二フッ化キセノン(XeF)蒸気でエッチングすることを含むことができる。
【0019】
微細構造を製造する方法は、真空ポンプシステムを使用して、固体ケイ素残留層を除去する際に形成される副生成物を除去するステップをさらに含むことができる。
【0020】
最も好ましくは、微細構造が微小電気機械システム(MEMS)を含む。代替的には、微細構造が半導体デバイスを含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
以下、単なる例として、本発明の様々な実施形態を図面を参照して説明する。
図1図1は、基板と構造規定層との間に位置する二酸化ケイ素層を含むMEMSのHF蒸気エッチングの概略図を示している。
図2図2は、図1のMEMSのHF蒸気エッチングを実行するのに適したプロセスチャンバシステムの概略図を示している。
図3図3は、HF蒸気エッチイングプロセス後の図1のMEMSの概略図を示している。
図4図4は、本発明に係るMEMSの製造方法のフローチャートを示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図2は、図1のMEMS1をエッチングするのに適したエッチング装置6の概略図を示している。このエッチング装置6は、6つの入力ライン8、9、10、11、12、13と出力真空ライン14が接続されたエッチングチャンバ7を含むことが分かる。
【0023】
エッチングチャンバ7内には、エッチングされるMEMS構造1をエッチングチャンバ7内に配置するのに適した温度制御されたペデスタル15がある。6つの入力ライン8、9、10、11、12、13から供給される流体は、エッチングチャンバ7の蓋17内にある流体注入システム16を介してエッチングチャンバ7の内部ボリュームに入る。
【0024】
MEMS1が配置されるペデスタル15は、温度コントローラによってペデスタル温度Tに設定および維持することができる。この温度は室温を上回りまたは下回り、エッチングプロセスを最適化するために具体的な温度が選択される(典型的には5~25℃)。さらに、エッチングプロセス中、エッチングチャンバ7の壁が加熱され、典型的には約20~70℃に加熱される。
【0025】
エッチングチャンバ内のエッチングガスの圧力Pは、チャンバ圧力コントローラ18によって監視される。また、圧力コントローラ18は、出力真空ライン14上に配置された真空ポンプシステム19の動作を制御することにより、エッチングチャンバ7内の圧力を制御する手段を提供するために採用されたガス流量コントローラも内蔵している。
【0026】
HF蒸気20は、レギュレータ21および第1のマスフローコントローラ(MFC)22を介して、第1の入力ライン8によってエッチングチャンバ7に制御可能に供給される。
【0027】
エッチングチャンバ7には、制御された量の水が、第2の入力ライン9によって供給される。特に、第2の入力ライン9内に配置された液体流体コントローラ(LFC)23および気化器24が、水リザーバ25から制御レベルの水蒸気を生成するために採用される。窒素ガス源26から気化器24への窒素の流れは、第2のMFC22によって制御される。窒素キャリアガスは、水蒸気を流体注入システム16を介してエッチングチャンバ7の内部ボリュームに移送するために使用される。
【0028】
第3の入力ライン10、第4の入力ライン11および第5の入力ライン12は、追加のガス源27、28、29、例えば水素(H)または水素化合物、酸素(O)または酸素化合物、またはフッ素(F)またはフッ素化合物をエッチングチャンバ7の内部ボリュームに接続するための手段を提供する。それらのガス流の制御は、同様に、マスフローコントローラ(MFC)22によって行われる。
【0029】
二フッ化キセノン(XeF)蒸気30は、第2のレギュレータ21およびマスフローコントローラ(MFC)22を介して、第6の入力ライン13によってエッチングチャンバ7に制御可能に供給される。XeF蒸気30の流れは、XeFが収容されたバブラまたは容器を流れるキャリアガスによって制御することもできる。
【0030】
コンピュータコントローラ31は、エッチングチャンバ7の様々なコンポーネントおよびパラメータ、例えば、窒素キャリアガス、HF蒸気の供給、チャンバの温度および圧力などの調整を自動化するために用いられる。
【0031】
記載のエッチング方法を進めるためには、凝縮流体層5の正確な監視を可能にする診断を得ることが必要である。上述したように、凝縮流体層5の物理的特性は、MEMS1のエッチング速度に直接影響するため、エッチング速度を監視することにより、凝縮流体層5の物理的特性の直接的な診断が得られる。
【0032】
実際には、例えば、生成される副生成物のレベルの監視、ウェーハエッチングの直接監視、またはチャンバ条件の変化の監視によって、様々な方法でエッチング速度を監視することができる。
【0033】
図3は、図2のエッチング装置6内で実行されたHF蒸気エッチプロセス後の図1のMEMS1の概略図を示している。図示のように、HFプロセスが完了すると、二酸化ケイ素層2が除去されて、それにより窒化ケイ素(Si)層3が基板4から解放され、必要に応じて操作することができる。残念ながら、MEMS1の露出した表面には、全体として符号32で示される固形残留層が存在する。固体残留層32は、粒子残留物がランダムに分布する外観を有する。
【0034】
窒化ケイ素層3を堆積させるために前述したPECVDプロセスで採用される化学前駆体のうち、最も一般的に使用されるケイ素源はシラン(SiH)である。
【0035】
本出願人は、MEMS1のHF蒸気エッチング中に生成される残留層32が、驚くべきことに、予想されるアンモニウム塩を含む代わりに、ケイ素不純物を含むことが多いことを見出した。このケイ素不純物は、窒化ケイ素(Si)層3の堆積プロセスで採用されたケイ素源に関係なく存在することが分かっている。しかしながら、ケイ素不純物の存在は、PECVD条件を使用してケイ素リッチ窒化ケイ素(Si)層3を製造した場合に、残留層32内で増加することが判明しており、これは、固体残留層32の源が窒化ケイ素(Si)層3のHF蒸気エッチングであることを強調している。そのような状況では、HF蒸気が窒化ケイ素(Si)層3をエッチングしても、そこに含まれるケイ素汚染物質はエッチングされないため、ケイ素汚染物質は固体残留物として残る。これまで、MEMS1のエッチング後の分析におけるケイ素の存在は、デバイスの他の領域(例えば、基板4)に存在するケイ素に起因すると当業者により常に考えられてきたため、ケイ素ベースの固体残留層32は、当該技術分野では完全に無視されてきた。
【0036】
次に、本発明に係る、固体ケイ素残留層32の除去を含む、半導体デバイスまたはMEMS1などの微細構造を製造するための様々な方法を、図4を参照して説明する。
【0037】
このプロセスは、図1図3に関して詳述したように、犠牲二酸化ケイ素層2のHF蒸気エッチングを行うステップを含む。次いで、このプロセスは、以下の技術のうちの1または複数を採用することによって、微細構造から固体ケイ素残留層32を除去するステップを含む。上述したように、固体ケイ素残留層32は、二酸化ケイ素(SiO)犠牲層2との選択性が決して絶対的ではないため、HF蒸気が窒化ケイ素(Si)層3もエッチングすることによって形成される。
【0038】
残留層32はケイ素を含むため、水素または水素化合物ガス源27をエッチングチャンバ7に接続するために第3の入力ライン10を使用することができる。水素または水素化合物ガスは、エッチングチャンバ7に供給される前に、例えば遠隔プラズマシステムによってイオン化されるようにしてもよい。代替的には、水素または水素化合物ガスを、エッチングチャンバ7自体の内部でイオン化することができる。その後、残留層32内のケイ素は、水素と反応してシラン(SiH)を生成する。シラン(SiH)は揮発性物質であるため、真空ポンプシステム19によってエッチングチャンバ7から簡単に排気することができる。
【0039】
代替的には、酸素または酸素化合物ガス源28をエッチングチャンバ7に接続するために、第4の入力ライン11を使用することができる。酸素または酸素化合物ガスは、エッチングチャンバ7に供給される前に、例えば遠隔プラズマシステムによって、イオン化されるようにしてもよい。代替的には、酸素または酸素化合物ガスが、エッチングチャンバ7自体の内部でイオン化されるようにしてもよい。その後、残留層32内のケイ素が酸素と反応して二酸化ケイ素(SiO)を生成する。その後、犠牲二酸化ケイ素層2に関して説明したのと同様の方法で残留層32を除去するために、上述したHF蒸気エッチングプロセスを繰り返すことができる。この第2のHF蒸気エッチングプロセスの副生成物は、同様に、真空ポンプシステム19によって、エッチングチャンバ7から簡単に排出することができる。
【0040】
さらに代替的な実施形態では、フッ素またはフッ素化合物ガス源29をエッチングチャンバ7に接続するために、第5の入力ライン12を使用することができる。フッ素またはフッ素化合物ガスは、エッチングチャンバ7に供給される前に、例えば遠隔プラズマシステムによってイオン化されるようにしてもよい。代替的には、フッ素またはフッ素化合物ガスが、エッチングチャンバ7自体の内部でイオン化されるようにしてもよい。その後、残留層32内のケイ素は、フッ素と反応して四フッ化ケイ素(SiF)を生成する。四フッ化ケイ素(SiF)は揮発性物質であるため、真空ポンプシステム19によってエッチングチャンバ7から簡単に排出することができる。
【0041】
固体ケイ素残留層32を除去するために採用できる第4の技術は、エッチングチャンバ7内で二フッ化キセノン(XeF)蒸気エッチングプロセスを実行することである。ここでは、二フッ化キセノン(XeF)蒸気30をエッチングチャンバ7に接続するために、第6の入力ライン13が使用される。本出願人が所有する欧州特許第1,766,665号および第2,480,493号はともに、図2のエッチング装置6を適合させることによって実行することができる、二フッ化キセノン(XeF)蒸気によるケイ素のエッチング技術を開示している。
【0042】
通常、操作するMEMS1または半導体デバイスを形成するケイ素材料の他の露出領域が存在するため、固体ケイ素残留層32を除去するための上述した方法には問題が生じる可能性があることが認識されるであろう。すなわち、ケイ素残留層32を除去するための上述した技術はいずれも、それらの周辺領域内のケイ素も除去することが予想される。しかしながら、本出願人は、ケイ素残留層32のエッチング速度が、通常、デバイスの周辺領域内で見出されるケイ素のエッチング速度よりも遥かに高いことを発見した。そのため、周囲のケイ素領域が著しくエッチングされる前に、上述した技術を実行することが可能である。ケイ素のエッチング速度にこのような顕著な差が生じる理由は、露出した固体残留層32内のケイ素が、十分に構造化された固体ではなく、非常に非晶質の多孔質構造を含むという事実に起因すると、本出願人は考えている。
【0043】
残留層32が予想されるアンモニウム塩を含む場合には、別の技術を採用する必要がある。アンモニウム塩は160℃を超える温度で分解することが知られているため、本出願人は、エッチングチャンバ7内の加熱要素を使用してMEMS1を加熱することにより、アンモニウム塩を蒸発させることができ、その後に、真空ポンプシステム19によってエッチングチャンバ7から排出することができることに気付いた。
【0044】
窒化ケイ素(Si)を含むMEMSを形成する上述した方法は、窒化ケイ素(Si)もエッチングするHF蒸気の副生成物として形成される固体ケイ素残留層を低減または除去する手段を提供するという点で、二酸化ケイ素(SiO)犠牲層を除去するためにHF蒸気エッチングステップを採用する当該技術分野で公知のシステムよりも大きな利点を有する。最も重要なことは、上述した方法は、これまで認識されていなかったケイ素ベースの残留層を除去する手段を提供することである。
【0045】
上述した技術は、特にMEMSを参照して説明されているが、当該技術は、窒化ケイ素(Si)を含む別の微細構造(例えば、半導体デバイス)にも適用されるものであり、その製造には、二酸化ケイ素(SiO)犠牲層を除去するためにHF蒸気エッチングステップが用いられる。
【0046】
上述したHF蒸気エッチングおよびケイ素残留層の除去を、共通のプロセスチャンバ内で行われるものとして説明してきた。さらに、代替的な実施形態では、ケイ素残留層を除去する上述した技術の1または複数を実行するために、HF蒸気エッチングが事前に行われる第1のプロセスチャンバから第2のプロセスチャンバに微細構造が移されることが、当業者には理解されるであろう。
【0047】
窒化ケイ素(Si)を含む微細構造を製造する方法が提供され、この方法は、フッ化水素(HF)蒸気を使用して二酸化ケイ素(SiO)の犠牲層をエッチングするステップと、その後、HF蒸気が窒化ケイ素(Si)もエッチングする際に形成される残留層を除去するステップとを含む。残留層はケイ素を含み、そのような層を除去するための様々な技術が開示されている。それら技術は、微細構造に対して同時にまたは連続的に適用することができる。このため、記載の方法は、当該技術分野で知られている技術と比較して、ケイ素残留物のレベルが低減された微細構造を製造する。
【0048】
本発明の上記説明は、例示および説明を目的として提示したものであり、網羅的であること、または開示された正確な形態に本発明を限定することを意図したものではない。記載の実施形態は、本発明の原理およびその実際の応用を最もよく説明し、それによって他の当業者が、想定される特定の用途に適した様々な変更を加えて様々な実施形態における本発明を最大限に利用できるようにするために、選択および記載されたものである。したがって、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲から逸脱することなく、更なる変更または改良を組み入れることができる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】