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特表2024-522066金、銀及び豊富なファイトケミカルペイロードナノ材料、抗ウイルス/抗菌製品、並びに合成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(54)【発明の名称】金、銀及び豊富なファイトケミカルペイロードナノ材料、抗ウイルス/抗菌製品、並びに合成方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/195 20060101AFI20240604BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240604BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240604BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240604BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240604BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 33/38 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 33/242 20190101ALI20240604BHJP
   A61K 31/335 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 47/56 20170101ALI20240604BHJP
   A01N 59/16 20060101ALI20240604BHJP
   A01N 37/36 20060101ALI20240604BHJP
   A01N 65/08 20090101ALI20240604BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240604BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20240604BHJP
   B82Y 5/00 20110101ALI20240604BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20240604BHJP
【FI】
A61K36/195
A61K9/14
A61P31/12
A61P31/04
A61P43/00 121
A61K47/42
A61K31/192
A61K33/38
A61K33/242
A61K31/335
A61K31/352
A61K47/56
A01N59/16 A
A01N37/36
A01N65/08
A01P3/00
A01P1/00
B82Y5/00
B82Y40/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571285
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 US2022028472
(87)【国際公開番号】W WO2022245578
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】63/189,420
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/297,937
(32)【優先日】2022-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504238378
【氏名又は名称】ザ キュレイターズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミズーリ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(72)【発明者】
【氏名】カティ、カテシュ ブイ
(72)【発明者】
【氏名】カティ、カビタ ケイ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C088
4C206
4H011
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076BB01
4C076CC32
4C076CC35
4C076EE41Q
4C076FF70
4C086AA01
4C086AA02
4C086CA01
4C086HA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA43
4C086NA13
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZC75
4C088AB12
4C088AC05
4C088BA08
4C088BA21
4C088MA06
4C088MA43
4C088MA52
4C088NA05
4C088NA14
4C088ZB33
4C088ZB35
4C088ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA18
4C206DA22
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA05
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZB33
4C206ZB35
4C206ZC75
4H011AA01
4H011AA03
4H011AA04
4H011BB06
4H011BB18
4H011BB22
4H011DA02
(57)【要約】
ナノ粒子は、ナノ材料は、モミジバフウの葉からの抽出物である以下の、シキミ酸、モミジバフウ葉のファミリーのカテキン、モミジバフウ葉のファミリーのケルセチン、スウェロサイド、アフゼレキン、p-クマル酸、エピアフゼレキントリメチルエーテル、ミリセチン、ナリンゲニン、フロレチン、プロシアニジンB1と関連するポリフェノール、フラボノイド、及びアルカロイド、の1つ以上からなるナノ粒子表面を有する金または銀ナノ粒子である。抗ウイルス/抗菌剤は、コアサイズを有し、ウイルス力価において3log10の減少を超える抗ウイルス/抗菌剤としての有効性を有する濃度のモミジバフウ媒介銀ナノ粒子を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モミジバフウ葉に由来する以下の抽出物である、
シキミ酸、モミジバフウ葉のファミリーのカテキン、モミジバフウ葉のファミリーのケルセチン、スウェロサイド、アフゼレキン、p-クマル酸、エピアフゼレキントリメチルエーテル、ミリセチン、ナリンゲニン、フロレチン、プロシアニジンB1と関連するポリフェノール、フラボノイド、及びアルカロイド、
の1つ以上からなるナノ粒子表面を有する金ナノ粒子又は銀ナノ粒子を含む、ナノ材料。
【請求項2】
前記粒子は金ナノ粒子を含み、前記表面は、
【化1】

の構造を有するシキミ酸-3,4,5-トリヒドロキシ-1-シクロヘキセン-1-カルボン酸からなる、
請求項1に記載のナノ材料。
【請求項3】
前記粒子は銀ナノ粒子を含み、前記表面は、
【化2】

の構造を有するシキミ酸-3,4,5-トリヒドロキシ-1-シクロヘキセン-1-カルボン酸からなる、
請求項1に記載のナノ材料。
【請求項4】
前記粒子は、30~40nmのコアサイズを有する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のナノ材料。
【請求項5】
前記粒子は、89±50nmのサイズを有する表面を有する、
請求項4に記載のナノ材料。
【請求項6】
前記粒子は金ナノ粒子であり、122.5+5nmの流体力学的サイズを有する、
請求項4に記載のナノ材料。
【請求項7】
前記粒子は銀ナノ粒子であり、185~205nmの流体力学的サイズを有する、
請求項4に記載のナノ材料。
【請求項8】
前記粒子は銀ナノ粒子であり、185~205nmの流体力学的サイズを有する、
請求項4に記載のナノ材料。
【請求項9】
前記粒子は銀ナノ粒子であり、200~220nmの流体力学的サイズを有する、
請求項4に記載のナノ材料。
【請求項10】
シキミ酸、モミジバフウ葉のファミリーのカテキン、モミジバフウ葉のファミリーのケルセチン、スウェロサイド、アフゼレキン、p-クマル酸、エピアフゼレキントリメチルエーテル、ミリセチン、ナリンゲニン、フロレチン、プロシアニジンB1と関連するポリフェノール、フラボノイド、及びアルカロイドの豊富なファイトケミカルペイロードからなるナノ粒子表面を有する金ナノ粒子又は銀ナノ粒子を含む、ナノ材料。
【請求項11】
モミジバフウ植物の葉、モミジバフウの茎、又はモミジバフウ植物の粉末から植物抽出物の溶液を得るステップ、前記溶液をろ過するステップ、及び前記溶液を金塩又は銀塩と反応させてナノ材料を製造するステップを含む、ナノ材料を合成する方法。
【請求項12】
前記植物抽出物は、単離されたシキミ酸を含み、前記方法は、モミジバフウ植物の茎、モミジバフウ植物の葉の粉末、及びモミジバフウ植物の葉のうちの1つをDI水中で所定時間煮沸することによりシキミ酸を抽出し、煮沸後の溶液を濾過してシキミ酸抽出物を得る予備ステップを含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記モミジバフウ植物の葉を洗浄して塵埃の粒子を除去すること、モミジバフウ植物の葉を細片に切断すること、蒸留水にアラビアガムを添加すること、及び前記細片を蒸留水に添加することを含み、前記反応させるステップは、細片を備える蒸留水を少なくとも100℃の温度まで加熱し攪拌すること、次に前記金塩又は銀塩を添加し、ナノ粒子形成が起こるまで所定時間攪拌することを含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記反応を、60℃~100℃の温度範囲で実施する、
請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記反応させるステップを、アラビアガムと共に実施する、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ウイルス力価において3log10の減少を超える抗ウイルス/抗菌性としての有効性を有する濃度とコアサイズとを有するモミジバフウ媒介銀ナノ粒子を含む、
抗ウイルス/抗菌剤。
【請求項17】
ウイルスを治療する医薬品として使用するための経口消費担体中の、
請求項16に記載の抗ウイルス/抗菌剤。
【請求項18】
10μg/mLを超える濃度を有するモミジバフウ媒介銀ナノ粒子又はシキミ酸媒介銀ナノ粒子溶液を含む、
抗がん剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権主張及び関連出願の参照)
本出願は、35USC§119と、適用される全ての法令及び条約とに基づき、2022年1月10日に出願された米国仮出願番号第63/297,937号と、2021年5月17日に出願された米国仮出願番号第63/189,420号と、の優先権を主張する。
【0002】
(技術分野)
本発明の分野は、複合ナノ材料である。本発明の適用例は、疾患の治療及び疾患の検出のような生物医学的な適用を含む。本発明の別の分野は、抗ウイルス/抗菌製品及び治療である。本発明の別の分野はナノテクノロジーである。
【背景技術】
【0003】
抗ウイルス剤はパンデミックから人類の文明を守るために重要である。効果的な抗ウイルス剤は、SARS-CoV-2(COVID-19を引き起こす)のファミリー及びインフルエンザウイルス(季節性インフルエンザを引き起こす)を含むウイルスによるパンデミックの蔓延に対する重要な防御を提供することができる。
【0004】
バルク銀自体は、抗真菌、抗菌、抗ウイルス用途と認められており、長期間使用されてきた。バルク銀自体は、抗ウイルス/抗菌剤としては適していない。
【0005】
キトサン安定化金ナノ粒子は、病原菌フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)に対する抗真菌性について研究されている。非特許文献1。抗真菌特性は、キトサンの有効性に起因し、金-キトサンナノ粒子の組み合わせによりどのように今日かされたかに起因する。対象となる用途は、農地における真菌の制御である。前述のように、粒子の特性はコーティング及び還元剤に特有のものである。
【0006】
金ナノ粒子及び銀ナノ粒子は、P.ロドジマ(P. rhodozyma)の無細胞抽出物を介して製造された。非特許文献2。記載された試験では、粒子がC.トロピカリス(C. tropicalis)を除く特定のマイコイス原因真菌種に対して有効であることが報告された。
【0007】
コーヒー及び緑茶の抽出物を用いた化学還元によって得られたAgNPは、抗菌効果があることが報告されている。非特許文献3。示されているように、特定の合成ルートは予測不可能な生物活性を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Lipsa et al., "Evaluation of the Antifungal Activity of Gold-Chitosan and Carbon Nanoparticles on Fusarium oxysporum", Agronomy 2020, 10, 1143
【非特許文献2】Ronavari et al, "Biosynthesized silver and gold nanoparticles are potent antimycotics against opportunistic pathogenic yeasts and dermatophytes," International Journal of Nanomedicine 2018:13, 695-703
【非特許文献3】Ronavari A, Kovacs D, Igaz N, et al. Biological activity of green-synthesized silver nanoparticles depends on the applied natural extracts: a comprehensive study. Int J Nanomedicine. 2017;12:871-883
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
好適な実施形態は、モミジバフウの葉に由来する以下の抽出物:シキミ酸、モミジバフウ葉のファミリーのカテキン、モミジバフウの葉ファミリーのケルセチン、スウェロサイド、アフゼレキン、p-クマル酸、エピアフゼレキントリメチルエーテル、ミリセチン、ナリンゲニン、フロレチン、プロシアニジンB1と関連するポリフェノール、フラボノイド、及びアルカロイドの1つ以上からなるナノ粒子表面を有する金ナノ粒子又は銀ナノ粒子のナノ材料を提供する。抗ウイルス/抗菌剤は、コアサイズを有し、ウイルス力価における3log10の減少を上回る抗ウイルス性としての有効性を有するモミジバフウ媒介銀ナノ粒子を含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
好適な実施形態は、銀ナノ粒子抗ウイルス/抗菌製品及び医薬品を提供する。製品は、抗ウイルス/抗菌スプレー、抗ウイルス/抗菌ワイプ、及び抗ウイルス/抗菌綿織物を含む。医薬品は、SARS-CoV-2(COVID-19を引き起こす)及びインフルエンザウイルス(季節性インフルエンザを引き起こす)のファミリーを含むウイルスを治療するための医薬品として使用するための経口消費担体中のモミジバフウ植物ファイトケミカル媒介銀ナノ粒子が含まれる。本発明の好適な銀ナノ粒子抗ウイルス/抗菌剤は、対応するプレートリカバリーコントロール(Plate Recovery Control)の力価と比較して、接触時間1分でウイルス力価の3.50Log10の減少(99.97%)を示し、接触時間5分で対応するウイルス力価の3.75Log10の減少(99.98%)を示した。また、好適な実施形態は、モミジバフウ植物を媒介した形成を用いる銀ナノ粒子抗ウイルス/抗菌剤のグリーンな且つゼロカーボンの製造方法を含む。
【0011】
好適な銀ナノ粒子は、抗ウイルス/抗菌性ファイトケミカルでカプセル化されている。この構造は、COVID-19では、ヌクレオカプシドを取り囲み、糖タンパク質スパイクが固定された脂質二重層膜で構成されるウイルスエンベロープに侵入することにより、致死性のCOVID-19及び関連ウイルスを中和することを提供する。ウイルスの中和は、抗ウイルス/抗菌性銀ナノ粒子と、ナノ粒子の表面領域をカプセル化する抗ウイルス/抗菌性ファイトケミカルのカーゴとの二重作用によって起こり得る。
【0012】
好適な多成分ナノ材料は、単一のナノ構造内に複数の材料の物理的及び生物学的特性を組み合わせている。多成分ナノ材料は、別々に提供される特性を組み合わせて単一のナノ構造にするユニークな機会を提供する。このような機会は、様々なヒトの疾患の同時検出及び治療を提供するような、ナノ材料の応用を拡大する可能性がある。単一のナノ材料内に複数の成分を組み合わせることは、合成に著しい課題をもたらす。異なる材料を組み合わせて単一のナノ材料にする多くの努力は、個々の材料の1つ以上の所望の特性を失う結果となるが、好適な実施形態は、調整された所望の特性を提供する。
【0013】
モミジバフウの木は、アメリカ南東部に多く自生する植物であり、その葉、樹皮、モミジバフウの果実には、シキミ酸(SA)と呼ばれる非常に貴重なファイトケミカルが集まっている。以下にシキミ酸の化学構造、3,4,5-トリヒドロキシ-1-シクロヘキセン-1-カルボン酸を示す。
【化1】
【0014】
この化合物は、抗生物質、抗ウイルス/抗菌剤、抗ガン剤、及び免疫増強剤の開発のための前駆体として、多くの医学的用途を見出してきた。しかし、モミジバフウの木の葉から直接抽出されるシキミ酸の本来の状態での有用性は、抗生物質、抗ウイルス/抗菌剤、抗がん剤、免疫増強剤、並びに関連するバイオ医薬品及び栄養補助食品の製剤化において、ほとんど未解明のままである。シキミ酸を含むファイトケミカルの植物からの直接抽出物は、ヒト及び動物において生体内に投与した場合、最適な生物学的利用能を示さない。ファイトケミカルがヒトの体内で酵素的に分解されることにより、シキミ酸の生物学的利用能が限られることになる。
【0015】
好適な方法は、金ナノ粒子又は銀ナノ粒子の骨格にシキミ酸を埋め込むことで、生物活性のあるファイトケミカル(モミジバフウ抽出物に存在するシキミ酸及び他のファイトケミカル)の多数のシグネチャーを作り出し、ヒトの体内プロファイル下に広がる複雑な条件下で生物学的に利用可能とすることができる。好適な方法では、金ナノ粒子は、外部の毒性の化学還元剤を用いることなく、シキミ酸とモミジバフウ抽出物に存在するファイトケミカルのカクテルとに存在する電子を用いた直接還元によって合成される。シキミ酸をカプセル化した金ナノ粒子は、抗生物質、抗ウイルス/抗菌剤、抗がん剤、免疫増強剤、並びに関連バイオ医薬品及び栄養補助食品の効能を提供することができる。
【0016】
好適な実施形態は、水素結合を介して相互に結合した以下のファイトケミカルを、金ナノ粒子表面上に全て結合させてカプセル化する方法を提供する。好適なナノ材料は、ヒト/動物の健康及び衛生に有益な以下のファイトケミカルである、シキミ酸、カテキンのファミリー、ケルセチンのファミリー、スウェロサイド、アフゼレキン、p-クマル酸、エピアフゼレキントリメチルエーテル、ミリセチン、ナリンゲニン、フロレチン、プロシアニジンB1と関連するポリフェノールのホスト、フラボノイド、及びアルカロイド、のカクテルの様々な量からなる金ナノ粒子又は銀ナノ粒子表面を提供する。
【0017】
好適な実施形態について実験を通じて説明する。当業者は、実験の考察から本発明のより広い態様を理解するであろう。
【0018】
モミジバフウ(Liquidambar styraciflua)コンジュゲート金ナノ粒子の合成。
【0019】
植物抽出物の調製:モミジバフウ植物の葉を二重脱イオン(DI)水で洗浄し、細かく刻んだ。コニカルフラスコに、4.2gmの刻んだ葉を100mlのDI水に加えた。反応混合物をマグネチックスターラー上で100℃で15~20分間加熱した。植物抽出液を室温(25℃)まで冷却し、ワットマンろ紙でろ過した。この植物抽出液を金ナノ粒子の製造のために使用した。
【0020】
モミジバフウ植物の葉の水性抽出物中のシキミ酸の推定。ガスクロマトグラフ質量分析法(GC-MS)と液体クロマトグラフ質量分析法(LC-MS)の両方を用いて、モミジバフウの葉の水性抽出物中のシキミ酸の量を推定した。これらの技術により、モミジバフウ植物の葉の水性抽出物には、十分な量のシキミ酸が(後述する他の有用なファイトケミカルのカクテルとともに)含まれていることが推測された。
【0021】
金ナノ粒子表面上のファイトケミカルカクテルの製造におけるモミジバフウの葉抽出物:モミジバフウの葉からの水性抽出物の詳細なLCMS及びGCMS分析により、本発明の金ナノ粒子のコーティングに含まれる多数の非常に有益なファイトケミカルが特定された。モミジバフウ抽出物から還元して製造された金ナノ粒子(銀ナノ粒子と同様)は、豊富なファイトケミカルペイロードを担持する。このペイロードは、シキミ酸、モミジバフウの葉のファミリーのカテキン、モミジバフウの葉のファミリーのケルセチン、スウェロサイド、アフゼレキン、p-クマル酸、エピアフゼレキントリメチルエーテル、ミリセチン、ナリンゲニン、フロレチン、プロシアニジンB1と関連するポリフェノール、フラボノイド、及びアルカロイドからなる。
【0022】
スウェロサイド:
【化2】
【0023】
スウェロサイドは、強い肝保護作用を有する。また、スウェロサイドは、ヒトMG-63細胞及びラット骨芽細胞において、有望な抗骨粗鬆症効果を示した。
【0024】
アフゼレキンはフラボノイドの一種であるフラバン-3-オールである。
【化3】
【0025】
アフゼレキンは、抗酸化活性及び抗チロシナーゼ作用を示す。また、このポリフェノールは、催淫作用、降圧作用、抗癌作用、抗酸化作用、肝保護作用、胃腸保護作用、抗糖尿病作用、駆虫作用、抗マラリア作用、抗炎症作用、鎮痛作用、及び抗菌作用を示した。
【0026】
p-クマル酸:
【化4】
【0027】
p-クマル酸の酸化ストレス及び炎症反応を低減する抗酸化活性は、関節リウマチ(RA)の治療に適用することが発見されている。本発明の方法により製造された金粒子はp-クマル酸(p-CA)を含む。これは、関節リウマチ(RA)の治療に有用なTNF-α及びIL-6の効果的な抑制のための血漿中へのより良い吸収の可能性を提供する。
【0028】
エピアフゼレキントリメチルエーテル
【化5】
【0029】
ミリセチン
【化6】
【0030】
ミリセチンは、シキミ酸と共に本発明の方法によって製造された金粒子に埋め込まれている。この組み合わせは、栄養補助食品の価値を高めるナノフラボノイドとして重要である。ミリセチンは、強い抗酸化作用、抗ガン作用、抗糖尿病作用、及び抗炎症作用を含む幅広い活性を示す。それは、パーキンソン病及びアルツハイマー病のような疾患から保護するために、中枢神経系において重要な役割を果たす。
【0031】
ナリンゲニン
【化7】
【0032】
ナリンゲニンはフラバノン類に属するフラボノイドである。これは、強力な天然の抗酸化物質で、抗腫瘍作用、抗ウイルス作用、抗菌作用、抗炎症作用、抗脂肪生成作用、及び心臓保護作用を示す。
【0033】
フロレチン
【化8】
【0034】
天然フェノール化合物であるフロレチンは、抗酸化、抗炎症、抗菌、抗アレルギー、抗発がん、抗血栓、及び肝保護効果を含む多くの活性を示す。また、分子経路におけるアポトーシス関連遺伝子の発現及びシグナル伝達の活性化にも関与する。フロレチンを金ナノ粒子に組み込むことにより、生物学的利用能が高められ、その結果、治療の可能性が高められるであろう。
【0035】
プロシアニジンB
【化9】
【0036】
プロシアニジンB1は、ec-(4b,8)-C又はエンドテロンとしても知られ、有機化合物の一種に属する。プロシアニジンは、酸化ダメージに対する保護、抗糖尿病、抗コレステロール、抗血小板機能を含む用途で、多くの健康上の利点を有する。プロシアニジンB1は、本発明の方法によって製造された金ナノ粒子上のコーティングに埋め込まれており、ナノサイズ化されたファイトケミカルが細胞膜をより効果的に貫通するため、プロアントシアニジンの健康上の利点を拡大することができる。
【0037】
金ナノ粒子表面上のファイトケミカルのペイロード:好適な実施形態は、水素結合を介して相互接続され、全てが金ナノ粒子表面に結合している以下のファイトケミカルをナノカプセル化することを提供する。好適な実施形態のナノ材料は、ヒト/動物の健康及び衛生のために有益な以下のファイトケミカルである、シキミ酸、カテキンのファミリー、ケルセチンのファミリー、スウェロサイド、アフゼレキン、p-クマル酸、エピアフゼレキントリメチルエーテル、ミリセチン、ナリンゲニン、フロレチン、プロシアニジンB1と関連するポリフェノール、フラボノイド、及びアルカロイド、のカクテルからなる表面を有する金ナノ粒子を含む。
【0038】
合成:上記で調製したモミジバフウ植物の葉からの1mlの水性植物抽出物(SGP)を、5mlのDI水、及び12mgのアラビアガムタンパク質と混合した。アラビアガムは、アカシア木(マメ科)の乾燥滲出液である天然植物由来の多糖タンパク質である。アラビアガムタンパク質の平均分子量は365,00である。米国FDAはアラビアガムを安全な食品添加物とみなしている。
【0039】
この反応混合物をマグネチックスターラー上で50~60℃に加熱した。一旦、温度が60℃に達したら、テトラクロロ金酸ナトリウムから調製した金塩(0.1Mを100μL)を反応混合物に加え、金ナノ粒子(SGP-金NP)を生成した。一般的に、温度は60℃~100℃とすべきであり、温度レベルはナノ粒子のサイズ、形態及び全体的な品質を制御する役割を果たす。モミジバフウ植物の葉に由来する水性植物抽出物に金塩を添加すると、瞬時にバーガンディレッドの色調を呈し、特徴的な表面プラズモン共鳴(SPR)を示し、後述するように完全に特徴付けられた金ナノ粒子(SGP-金NP)形成を示した。
【0040】
ナノ粒子は、紫外可視分光光度計、ゼータサイザーナノ(Zetasizer Nano)S90、TEM及びICP-MSを含む様々な機器技術によって特徴付けられた。表1にまとめられたデータは、金ナノ粒子の特徴である紫外線吸収スペクトルの詳細、流体力学的サイズ及びコア金属サイズの詳細について、完全な詳細を提供する。この表は、ナノ粒子のin vitro安定性を推測するために使用されるゼータ電位についての詳細も提供する。SGP-金ナノ粒子中の金含有量を誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)で測定したところ、295nmであることが分かり、予想値と一致した。
【0041】
SGP-金ナノ粒子の透過電子顕微鏡像により、優れた分解能で金ナノ粒子の形成が確認された。
【0042】
表1:SGP-金NP及びSA-金NPの紫外線(UV)分光光度、電子顕微鏡、動的光散乱、ゼータ電位のデータ
【表1】
【0043】
サイズは動的光散乱測定によって得られた。
【0044】
モミジバフウ植物の葉の水性抽出物中に、十分な量のシキミ酸が存在することが立証された。加えて、シキミ酸が金塩と直接相互作用することで、良好に定義された金ナノ粒子が合成されることが実証された。以下のプロセスは、金ナノ粒子を製造するために金塩を還元するプロセスにおいて、電子供与体としてシキミ酸(SA)を使用する金ナノ粒子の製造について説明する。
【0045】
シキミ酸(SA)を用いた金ナノ粒子の製造:このプロセスでは、モミジバフウ植物の葉から抽出した水性植物抽出物の主成分であるシキミ酸が、金塩と相互作用する際に、良好に定義されたシキミ酸官能基化金ナノ粒子を生成することを実証した。金ナノ粒子(AuNP)の合成に使用した出発化合物は、純度99%のシキミ酸を含む。
【0046】
シキミ酸金ナノ粒子(SA-金NP)は、100mgのシキミ酸(SA)と12mgのアラビアガムとを6mLの二重脱イオン水(DI)中で混合することによって製造された。この溶液をマグネチックスターラー上で100℃で攪拌した。一般に、80~100℃の温度範囲を使用することができる。テトラクロロ金酸ナトリウム(0.1Mを100μL)を反応混合物に加え、金ナノ粒子(金NP)を生成させた。黄色からバーガンディワインレッド色に変化し、特徴的な表面プラズモン共鳴(SPR)を示し、均一な反応混合物中にとSA-金NPが形成されたことを示す。アラビアガムをキャッピング剤として使用し、得られた金ナノ粒子にin vitroでの更なる安定性を付与した。
【0047】
ナノ粒子は、紫外可視分光光度計、ゼータサイザーナノS90、TEM及びICP-MSを含む様々な機器技術によって特徴付けられた。データは表1にまとめられている。表面プラズモン共鳴(SPR)が530nmで観測され、SA-金NP金ナノ粒子の形成が確認された。SK-金NPナノ粒子の形成もSEM画像で観察された。
【0048】
本発明の別の態様は、シキミ酸の抽出プロセスである。関連する態様は、抽出されたシキミ酸を金塩の還元に使用して、金及び銀ナノ粒子を提供することである。好適なシキミ酸抽出プロセスは、モミジバフウ植物の茎を使用し、別のプロセスはモミジバフウ植物の葉の粉末を使用し、別のプロセスはモミジバフウ植物の葉を使用する。
【0049】
モミジバフウの茎からのシキミ酸の抽出:長さ1cmの茎4gmを使用し、100mlのDI水中で20分間煮沸した。この混合物をワットマンろ紙(孔径8~10ミクロン)を用いてろ過し、抽出物を得た。ろ過した抽出物(SG-S抽出物)を金ナノ粒子の製造に使用した。
【0050】
モミジバフウ植物の葉の粉末からのシキミ酸の抽出:SGの葉の粉末4gmを100mlのDI水中で20分間煮沸した。この混合物を8,000rpmで8分間遠心分離して抽出液を得て、ワットマンろ紙を用いてろ過した。このろ過した抽出物(SG-LP抽出物)をナノ粒子の調製に使用した。
【0051】
モミジバフウ植物の葉からのシキミ酸の抽出:細かく切断したSGの葉の粉末4gmを100mlのDI水中で20分間煮沸し、ワットマンろ紙でろ過して抽出物を得た。このろ過した抽出物(SG-L抽出物)をナノ粒子の調製に使用した。
【0052】
定量LC-MS分析を用いた上記3つのプロトコルからのシキミ酸の定量を表2に示す。
【表2】
【0053】
(モミジバフウ銀ナノ粒子)
(モミジバフウ植物の葉)
また、銀ナノ粒子(GASG-銀NP)を調製するための好適な合成手順も、安定化タンパク質としてのアラビアガムと共にモミジバフウ植物からのファイトケミカルを使用した。モミジバフウの葉をDI水で十分に洗浄し(2回)、塵埃を取り除き、細かく切断した。2mgのアラビアガムを20mlのバイアルに入れた6mlのDI水に加え、250mgの切断したモミジバフウの葉を加え、予熱したホットプレート上で攪拌した。溶液の温度が100℃に達した後、100マイクロリットルの0.1M硝酸銀溶液を加えた。銀塩の添加直後、反応混合物の色は無色から暗褐色に変わり、ナノ粒子の形成を示した。反応混合物を10分間降温攪拌した後、加熱を止めた。反応混合物を室温(25℃)でさらに60分間撹拌した。その後、ナノ粒子をAgilent Cary 60分光光度計を用いて吸収係数を測定し、Malven Z 90ゼータサイザーで流体力学的サイズとゼータ電位を測定して分析した。
【0054】
(モミジバフウ抽出ファイトケミカル)
銀ナノ粒子(GASG銀NP)の製造は、あらかじめ蒸留水で抽出したモミジバフウ植物のファイトケミカル抽出物を用い、安定剤としてアラビアガムタンパク質を用いた。予め洗浄し細かく切断したモミジバフウの葉の4グラムを、100mlの蒸留水中で約30分間煮沸し、混合物の色がペールイエローからライトイエローに変化したことを確認した。この溶液を25℃まで冷却し、ろ過して葉の懸濁物を取り除き、透明なライトイエローの抽出液を得た。このファイトケミカル抽出物2mlをDI水4mlで希釈し、そこに12mgのGAを加え、その後100℃に加熱した。温度が100℃に達したら、加熱を止めた。この溶液に100マイクロリットルの0.1M硝酸銀溶液を加えた。銀塩の添加直後に反応混合物の色がライトイエローから暗褐色に変化し、形成が示された。
【0055】
GASG銀ナノ粒子は、Agilent Cary 60分光光度計を用いて吸収係数を測定し、Malven Z 90ゼータサイズを用いて流体力学的サイズ及びゼータ電位を測定することにより分析した。
【0056】
表3:GASG銀ナノ粒子(GASG-銀NP)の特性
【表3】
【0057】
GASG-銀NPは、410nmの紫外可視スペクトル、210nmの流体力学的サイズ、及び-20mVのゼータ電位を示した。
【0058】
ミズーリ大学独自の銀ナノ粒子(GASG銀NP)(GASG銀NPは、モミジバフウ植物からのファイトケミカルのカクテルから得られ、アラビアガムタンパク質によって安定化された銀ナノ粒子である)のヒトコロナウイルス、229E株、ATCC VR-740における殺ウイルス作用の評価。
【0059】
殺ウイルス作用(ヒトコロナウイルス、229E株、ATCC VR-740)の測定では、以下の試験パラメータを採用した。
【0060】
試験微生物:ヒトコロナウイルス、229E株、ATCC VR-740
宿主細胞:MRC-5(ATCC CCL-171)
試験物質の希釈:すぐに使用できる液体試験物質
試験物質の適用:ピペットで2.0mlの体積を適用する
有機汚濁負荷物(organic soil load):5%ウシ胎児血清(FBS)
ロットあたりの反復数:ロットあたり1回及び接触時間
接触時間:1分及び5分
暴露温度:室温(25.3~25.5℃)、相対湿度(RH)38~39%
中和方法:セファデックスLH-20 ゲルろ過
【0061】
(試験手順)
・ストックウイルスを解凍し、有機汚濁負荷物を添加した。
・滅菌ガラスシャーレ(100×15mm)を試験担体として用いた。各ロットの物質と接触時間を測定するために、1つの担体に0.200mlの体積のウイルス懸濁液を接種した。適切な数のプレートリカバリーコントロール担体も調製した。
・接種した担体を、乾燥によるウイルスの不活化レベルを低減するために、適切な温度及び相対湿度で乾燥させた。
・試験物質は、依頼された研究スポンサーの指示に従って調製し、担体あたり2.0mlの体積をピペットで適用した。
・処理された担体は、研究スポンサーが指定した曝露温度で、試験スポンサーが指定した接触時間保持した後、試験物質に適した方法(例えば、希釈及び/又はゲル濾過)で中和した。
・プレートリカバリーコントロール担体は、接触時間中は蓋をしたまま保持し、その後、試験と同じ方法で回収し、中和した。
・試験担体及びコントロール担体の中和後、ウイルス懸濁液を定量し、標準的な細胞培養技術(例えばTCID50)を用いて感染性ウイルスのレベルを決定した。
・接種した細胞培養プレートを、ウイルス-宿主細胞系に最も適した期間(例えば、約7日間)インキュベートした。
・インキュベーション期間後、アッセイは試験ウイルスの存在/不存在と細胞毒性作用について顕微鏡的にスコア化された。該当する場合は、ウイルス力価及び試験物質の細胞毒性のレベルを決定するために、適切な計算を行った(例えば、Spearman-Karber)。
・ウイルス力価のlog10及び減少パーセントは、研究コントロール担体について得られた力価に対する、試験製品に曝露されたウイルスフィルムについて計算された。
【0062】
(成功基準)
殺ウイルス有効性データの許容性を保証するために、以下の措置を採る。
・各プレートリカバリーコントロールフィルムから、最小4.80log10の感染単位/コントロール担体をリカバーする。
・ウイルス力価コントロールは、細胞病理効果以外の検出方法が使用されない限り、単層膜上で明らかな、又は典型的な細胞病理効果を示す。
・中和された試験物質及び中和コントロール物質から、同等レベルの感染単位が回収されなければならない。
・試験パラメータ及びコントロールパラメータの定量は、希釈1回につき最低4回行う。
【0063】
(計算及び統計分析)
TCID50(細胞培養感染量)は、試験ウイルスによる感染で細胞培養の50%が細胞病理効果を示す終点希釈度を表す。宿主細胞単層の50%が細胞毒性を示す終点希釈は、組織培養量(TCD50)と呼ばれる。TCID50、TCD50は、Spearman-Karber法を用いて決定し、以下のように計算した。
終点力価の負の対数=[-最初に接種した希釈率の対数]-[((各希釈率における死亡率の合計/100)-0.5)×希釈率の対数]
【0064】
この計算結果は、試験コントロール、ウイルスコントロール及び中和コントロールについてはTCID50/0.1ml(又は接種した希釈液量)、細胞毒性コントロールについてはTCD50/0.1ml(又は接種した希釈液量)として表される。
【0065】
(対数減少の算出)
ウイルス力価の対数減少は以下のように計算した:
プレートリカバリーコントロールLog10 TCID50-ウイルス試験物質Log10 TCID50
【0066】
(減少パーセントの計算)
ウイルス力価の減少パーセントは以下のように計算した:
減少パーセント=1-(C/B)×100
ここで、B=コントロール懸濁液中のウイルスの平均TCID50、C=ウイルス試験懸濁液中のウイルスの平均TCID50。
【0067】
複数のウイルスコントロール及び試験複製を実施した場合は、各パラメータの平均TCID50を計算し、その平均結果をウイルス力価の対数減少を計算するために使用した。
【0068】
表4:ウイルス力価及びウイルスプレートリカバリーコントロールの結果
【表4】
【0069】
表5:GASG AgNP(42.5ppm)の試験結果
【表5】
【0070】
表6:GASG AgNP(10.1ppm)の試験結果
【表6】
【0071】
表7:細胞毒性コントロールの結果
【表7】
【0072】
表8:中和コントロールの結果
【表8】
【0073】
試験物質とコントロール物質は、中和コントロールで回収された感染単位のレベルが同程度であることを示した。
【0074】
VSV-偽型SASR-CoV-2ウイルスを中和するGASG-銀NPの有効性を評価する調査。
【0075】
(研究設計)
クライアントから提供された6つの試験品(TA)が、IBTのSARS-CoV-2用VSV偽型中和アッセイ、Vero細胞においてSARS-CoV-2を発現するVSVベースの偽ウイルスに対する中和活性(ID50)について評価された。細胞毒性を最初に評価し、中和アッセイのための開始希釈を更新した。
【0076】
(中和アッセイの説明)
糖タンパク質遺伝子(G)を欠失させた水疱性口内炎ウイルス(rVSV)は、IBTの偽型ベースの中和アッセイのベースプラットフォームとして使用されている。VSV-G糖タンパク質はトランスフェクションによって一過性に発現され、ウイルス粒子を産生する。偽型ウイルスを作製するために、VSV-GはSARS-CoV-2スパイクタンパク質(細胞質ドメインの末端18アミノ酸を欠失した全長スパイクタンパク質)で置換される。このシステムは開発され、得られたウイルス(rVSV-ΔG SARS-CoV-2 S)はバイオセーフティーレベル2(BSL-2)で取り扱うことができる。rVSV-ΔG SARS-CoV-2 Sは細胞病理効果を示し、ホタルルシフェラーゼを発現する。感染効率は、ルミノメーターで相対光単位(RLU)を読み取り、ルシフェラーゼ活性を定量することで測定できる。
【0077】
簡単に説明すると、rVSV-ΔG SARS-CoV-2 Sは、IBTの内部アッセイコントロールと同様に、試験物(TA)と共に、及び試験物(TA)なしで1時間プレインキュベートされる。次に、Vero細胞の単層を、ウイルス単独で、及びウイルス/TA混合物で3複製で感染させ、37℃で24時間インキュベートする。最低6個のウイルスだけのウェルと細胞だけのウェルが必ず含まれる。その後、すべてのウェルでホタルルシフェラーゼ活性を測定し、抗体処理済のものと、ウイルスのみのコントロール及び細胞のみのコントロールとのRLU値を比較することにより、各TAの中和力価を算出する。中和力価[50%阻害容量(ID50)]は、ウイルスコントロールのウェルと比較してRLUが50%減少した血清試薬希釈度(又は、精製試薬については濃度)の逆数として定義される。
【0078】
表9:試験物
【表9】
【0079】
表10:課題として使用したウイルス
【表10】
【0080】
表11:細胞株
【表11】
【0081】
【表12】
【0082】
表12:試薬及び消耗品
【0083】
表13:装置及びソフトウェア
【表13】
【0084】
表14:使用試薬
【表14】
【0085】
(細胞毒性)
(細胞播種)
60,000個のVero細胞を、10%血清培地(表12)を含む96ウェル平底黒色細胞培養プレートに播種し(表11)、一晩インキュベートした。
【0086】
(試験物の希釈及び細胞のインキュベーション)
各TA(表9)の8つの2倍連続希釈液を、1%血清培地中で、意図した最終濃度の2倍(2X)で調製した。全ての培地を96ウェル黒色プレートから除去し、100μlの各TA希釈液をVero細胞(感染培地のみからの細胞)に3複製で添加した。プレートを1時間インキュベートした後、100μlの感染培地を加え、細胞を37℃、5%COで24時間インキュベートした。
【0087】
(ホタルルシフェラーゼの読み取り)
200μlの培地を黒色プレートから除去し、100μlのCellTiter-Glo(登録商標)試薬を調製し、製造元の指示に従って各ウェルに添加した。プレートは直ちにCytation(商標)5でホタルルシフェラーゼ活性を読み取り、相対光単位(RLU)を収集した。
【0088】
(中和アッセイ)
(細胞の播種)
60,000個のVero細胞を、10%血清培地(表12)中の96ウェル平底黒色細胞培養プレートに播種し(表11)、一晩インキュベートした。
【0089】
(試験物の希釈)
7つの2倍希釈TA(表9)を、1%血清培地中で、意図した最終濃度の2倍(2X)で調製した。開始濃度は、CC50データを検討した後、クライアントが変更した。
【0090】
(ウイルスの希釈およびTA/ウイルス混合物のプレインキュベーション)
rVSV-SARS-CoV-2 S(表10)1%血清培地で1:10に希釈し、2.5mLで1:20に最終的に希釈した。その後、175μlのウイルス接種液を175μlの各濃度TAと混合し、最終的に350μlとした。350μlのウイルスのみ(VO)も調製した。全ての混合物を37℃、5%、COで1時間インキュベートした。
【0091】
(Vero細胞感染)
すべての培地を96ウェル黒色プレートから除去し、100μlの各ウイルス/TA混合物をVero細胞に3回添加した。100μlのウイルスのみ及び100μmの1%血清培地もそれぞれ最低6ウェルに添加し、37℃、5%COで24時間インキュベートした。
【0092】
(ホタルルシフェラーゼの読み取り)
100μlのBright-Glo(商標)試薬を、製造者の指示に従って各ウェルに添加した。プレートを直ちにルミノメーターで読み取り、相対光単位(RLU)を測定した。
【0093】
(データの評価)
ID50値を計算するために、データをエクセルにインポートした。XLfit 5プラグインを、fit♯205と共に使用した。
【0094】
(データの概要)
【0095】
表15:試験品の抗ウイルス効果の概要
【表15】
【0096】
(結果)
本研究では、本銀ナノ粒子サンプル(SG銀NP(42.5ppm)及びSG銀NP(10.1ppm)(いずれもモミジバフウ植物のカクテルを用いて製造された))は、室温(25.3~25.5℃、38~39%RH)で、5%FBS有機汚染負荷(soil load)を添加したヒトコロナウイルス229E株に対して、接触時間1分及び5分で殺ウイルス効果を示した。プレートリカバリーコントロールは、0.1mlあたり5.75Log10 TCID50、担体あたり6.05Log10 TCID50のウイルス力価を示した。
【0097】
評価された試験物質であるGASG銀NP(42.5ppm)は、対応するプレートリカバリーコントロールの力価と比較して、接触時間1分で3.50Log10のウイルス力価の低下(99.97%)を示し、接触時間5分でウイルス力価の3.75Log10のウイルス力価の低下(99.98%)を示した。
【0098】
評価された試験物質であるGASG銀NP(10.1ppm)は、対応するプレートリカバリーコントロールの力価と比較して、接触時間1分で2.00Log10のウイルス力価の低下(99.0%)、接触時間5分で2.50Log10のウイルス力価の低下(99.68%)を示した。
【0099】
試験物質の細胞毒性は、アッセイされた試験物質のロットでは検出されなかった(≦0.50Log10)ことを認識することが重要である。中和コントロールにおいて、試験物質とコントロール物質とが同等なレベルの感染単位をリカバー(recover)したことは注目に値する。
【0100】
米国EPAは、対応するプレートリカバリーコントロールと比較して、ウイルス力価が3log10以上低下することを要求している。従って、この文脈では、評価された独自の抗ウイルス/抗菌剤である:GASG-銀NP(42.5ppm)は、対応するプレートリカバリーコントロールの力価と比較して、接触時間1分でウイルス力価の3.50Log10の減少(99.97%)を示し、接触時間5分で対応するウイルス力価の3.75Log10の減少(99.98%)を示した。これらのデータは、家庭用、商業施設用、航空産業用、医療産業用、及び同類の人間居住用途の抗ウイルス/抗菌消毒スプレー及び大面積の消毒製品を含む、抗ウイルス/抗菌消毒製品に使用できる有効性を実証している。96ウェルプレートに播種したVero細胞を、TAのみの連続希釈液とインキュベートし、細胞毒性(CC50;青)とrVSV-SARS-CoV-2 S(ID50;緑)を測定した。値は、各実験の3つの平均値を用いてXLfitモデル205を用いて計算した。この薬剤がrVSV-SARS-CoV-2 Sウイルスの中和に高い効果を示すGASG-銀NPの濃度は、Vero細胞を用いて測定されたこの薬剤の毒性限界よりも有意に低い。
【0101】
様々な癌細胞株に対するSA-金NP及びSGP-金NPの試験。
【0102】
細胞株およびプロトコル。ヒト前立腺癌(PC-3)、乳癌(MDA-MB-231)、及び膵臓癌(PANC-1)細胞は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC、バージニア州マナサス)から入手し、ATCCから推奨された手順を使用して、ミズーリ大学細胞及び免疫生物学コア施設によって培養した。
【0103】
細胞生存率アッセイ。PC-3、MDA-MB-231及びPANC-1細胞の生存率に対するより高いコロナを備えるSA-金NP及びSGP-金NPの効果をMTTアッセイ(Sigma社、米国セントルイス)を用いて決定した。発現した色の強度は、波長570nmで作動するマイクロプレートリーダー(Molecular device社、米国)で測定した。細胞生存率は以下の式、
(T/C)×100
(ここでC=コントロールの吸光度、T=処理の吸光度である)
で算出した。IC-50値はOriginソフトウェアを使用して計算した。
【0104】
治療剤:SA-金NP及びSGP-金NPは、米国ミズール州コロンビア市のミズーリ大学グリーンナノテクノロジー研究所(Institute of Green Nanotechnology, University of Missouri)で製造され、変更せずに使用された。
【0105】
SA-金NP及びSGP-金NPの細胞生存率プロファイル:PC-3、MDA-MB-231及びPANC-1細胞株を処理するため、連続希釈液をRPMI/DMEM培地で調製した。がん細胞に対するSA-金NP及びSGP-金NPの細胞生存率プロファイルをMTTアッセイで評価した。細胞生存率プロファイルから、SA-金NP及びSGP-金NPは、がん細胞の死滅において用量依存的な有効性を示すことが実証された。
【0106】
試験では、48時間及び72時間にわたって、SA-金NPとSGP-金NPとの濃度が高くなるにつれて、がん細胞の生存率が低下することが実証された。10~22.4μg/mLの各濃度は、未処理のコントロールと比較して細胞生存率を低下させ、100μg/mlと200μg/mlとの濃度で有意な低下が示された。従って、SA-金NP及びSGP-金NPは、単独で、又は化学療法もしくは放射線療法とのアジュバント併用において、優れた癌治療剤である。
【0107】
本発明の特定の実施形態を示して説明したが、当業者には他の変形、置換及び代替が明らかであることが理解されるべきである。そのような変形、置換及び代替は、添付の特許請求の範囲から決定されるべき本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行うことができる。
【0108】
本発明の様々な特徴は、添付の特許請求の範囲に記載されている。
【0109】
[付記]
[付記1]
モミジバフウ葉に由来する以下の抽出物である、
シキミ酸、モミジバフウ葉のファミリーのカテキン、モミジバフウ葉のファミリーのケルセチン、スウェロサイド、アフゼレキン、p-クマル酸、エピアフゼレキントリメチルエーテル、ミリセチン、ナリンゲニン、フロレチン、プロシアニジンB1と関連するポリフェノール、フラボノイド、及びアルカロイド、
の1つ以上からなるナノ粒子表面を有する金ナノ粒子又は銀ナノ粒子を含む、ナノ材料。
【0110】
[付記2]
前記粒子は金ナノ粒子を含み、前記表面は、
【化10】

の構造を有するシキミ酸-3,4,5-トリヒドロキシ-1-シクロヘキセン-1-カルボン酸からなる、
付記1に記載のナノ材料。
【0111】
[付記3]
前記粒子は銀ナノ粒子を含み、前記表面は、
【化11】

の構造を有するシキミ酸-3,4,5-トリヒドロキシ-1-シクロヘキセン-1-カルボン酸からなる、
付記1に記載のナノ材料。
【0112】
[付記4]
前記粒子は、30~40nmのコアサイズを有する、
付記1乃至3のいずれか一項に記載のナノ材料。
【0113】
[付記5]
前記粒子は、89±50nmのサイズを有する表面を有する、
付記4に記載のナノ材料。
【0114】
[付記6]
前記粒子は金ナノ粒子であり、122.5+5nmの流体力学的サイズを有する、
付記4に記載のナノ材料。
【0115】
[付記7]
前記粒子は銀ナノ粒子であり、185~205nmの流体力学的サイズを有する、
付記4に記載のナノ材料。
【0116】
[付記8]
前記粒子は銀ナノ粒子であり、185~205nmの流体力学的サイズを有する、
付記4に記載のナノ材料。
【0117】
[付記9]
前記粒子は銀ナノ粒子であり、200~220nmの流体力学的サイズを有する、
付記4に記載のナノ材料。
【0118】
[付記10]
シキミ酸、モミジバフウ葉のファミリーのカテキン、モミジバフウ葉のファミリーのケルセチン、スウェロサイド、アフゼレキン、p-クマル酸、エピアフゼレキントリメチルエーテル、ミリセチン、ナリンゲニン、フロレチン、プロシアニジンB1と関連するポリフェノール、フラボノイド、及びアルカロイドの豊富なファイトケミカルペイロードからなるナノ粒子表面を有する金ナノ粒子又は銀ナノ粒子を含む、ナノ材料。
【0119】
[付記11]
モミジバフウ植物の葉、モミジバフウの茎、又はモミジバフウ植物の粉末から植物抽出物の溶液を得るステップ、前記溶液をろ過するステップ、及び前記溶液を金塩又は銀塩と反応させてナノ材料を製造するステップを含む、ナノ材料を合成する方法。
【0120】
[付記12]
前記植物抽出物は、単離されたシキミ酸を含み、前記方法は、モミジバフウ植物の茎、モミジバフウ植物の葉の粉末、及びモミジバフウ植物の葉のうちの1つをDI水中で所定時間煮沸することによりシキミ酸を抽出し、煮沸後の溶液を濾過してシキミ酸抽出物を得る予備ステップを含む、
付記11に記載の方法。
【0121】
[付記13]
前記モミジバフウ植物の葉を洗浄して塵埃の粒子を除去すること、モミジバフウ植物の葉を細片に切断すること、蒸留水にアラビアガムを添加すること、及び前記細片を蒸留水に添加することを含み、前記反応させるステップは、細片を備える蒸留水を少なくとも100℃の温度まで加熱し攪拌すること、次に前記金塩又は銀塩を添加し、ナノ粒子形成が起こるまで所定時間攪拌することを含む、
付記12に記載の方法。
【0122】
[付記14]
前記反応を、60℃~100℃の温度範囲で実施する、
付記11に記載の方法。
【0123】
[付記15]
前記反応させるステップを、アラビアガムと共に実施する、
付記14に記載の方法。
【0124】
[付記16]
ウイルス力価において3log10の減少を超える抗ウイルス/抗菌性としての有効性を有する濃度とコアサイズとを有するモミジバフウ媒介銀ナノ粒子を含む、
抗ウイルス/抗菌剤。
【0125】
[付記17]
ウイルスを治療する医薬品として使用するための経口消費担体中の、
付記16に記載の抗ウイルス/抗菌剤。
【0126】
[付記18]
10μg/mLを超える濃度を有するモミジバフウ媒介銀ナノ粒子又はシキミ酸媒介銀ナノ粒子溶液を含む、
抗がん剤。
【国際調査報告】