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特表2024-522068ナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)IRNA組成物およびその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(54)【発明の名称】ナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)IRNA組成物およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20240604BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240604BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240604BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240604BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240604BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240604BHJP
   A61P 19/06 20060101ALI20240604BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 31/7115 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P43/00 111
A61P19/06
A61P3/10
A61K31/713
A61K48/00
A61K45/00
A61K31/7125
A61K31/7115
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571466
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(85)【翻訳文提出日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 US2022028489
(87)【国際公開番号】W WO2022245583
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】63/189,760
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/320,278
(32)【優先日】2022-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
2.LABRASOL
3.BRIJ
(71)【出願人】
【識別番号】505369158
【氏名又は名称】アルナイラム ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALNYLAM PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】トゥ,ホー-チョウ
(72)【発明者】
【氏名】ディートン,エイミー エム
(72)【発明者】
【氏名】ズーバー,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ハズレット,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】フィッツジェラルド,ケビン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B065AA91X
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA05
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA13
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA03
4C084NA05
4C084ZA96
4C084ZC01
4C084ZC35
4C084ZC41
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA03
4C086NA05
4C086ZA96
4C086ZC01
4C086ZC35
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、ナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)遺伝子を標的とするRNAi剤、例えば、dsRNA剤に関する。本発明はまた、こうしたRNAi剤を使用してSGLT2遺伝子の発現を阻害する方法、および対象において例えば、痛風または糖尿病などのSGLT2関連疾患を治療または予防する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞内でナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤であって、前記dsRNA剤は、二本鎖領域を形成するセンス鎖およびアンチセンス鎖を含み、前記センス鎖は、配列番号1のヌクレオチド配列と3ヌクレオチド以下だけ異なる少なくとも15の連続するヌクレオチドを含み、前記アンチセンス鎖は、配列番号6のヌクレオチド配列と3ヌクレオチド以下だけ異なる少なくとも15の連続するヌクレオチドを含み、前記センス鎖または前記アンチセンス鎖は、一つまたは複数の親油性部分にコンジュゲートされる、二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤。
【請求項2】
細胞内でナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤であって、前記dsRNA剤は、二本鎖領域を形成するセンス鎖およびアンチセンス鎖を含み、前記アンチセンス鎖は、SGLT2をコードするmRNAに対して相補的な領域を含み、前記相補的な領域は、表2~3のうちのいずれか一つにおけるアンチセンスヌクレオチド配列のいずれか一つと3ヌクレオチド以下だけ異なる少なくとも15の連続するヌクレオチドを含み、前記センス鎖または前記アンチセンス鎖は、一つまたは複数の親油性部分にコンジュゲートされる、二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤。
【請求項3】
前記センス鎖および前記アンチセンス鎖の両方が、一つまたは複数の親油性部分にコンジュゲートされる、請求項1または2に記載のdsRNA剤。
【請求項4】
前記親油性部分が、前記dsRNA剤の前記二本鎖領域における一つまたは複数の位置にコンジュゲートされる、請求項1~3のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項5】
前記親油性部分が、リンカーまたは担体を介してコンジュゲートされる、請求項1~4のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項6】
logKowによって測定された前記親油性部分の親油性が、0を超える、請求項1~5のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項7】
二本鎖RNAi剤の疎水性であって、前記二本鎖RNAi剤の血漿タンパク質結合アッセイにおいて非結合画分によって測定される二本鎖RNAi剤の疎水性が、0.2を超える、請求項1~6のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項8】
前記血漿タンパク質結合アッセイが、ヒト血清アルブミンタンパク質を使用する電気泳動移動度シフトアッセイである、請求項7に記載のdsRNA剤。
【請求項9】
前記dsRNA剤が、少なくとも一つの修飾ヌクレオチドを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項10】
前記センス鎖の五以下のヌクレオチドおよび前記アンチセンス鎖の五以下のヌクレオチドが、未修飾ヌクレオチドである、請求項9に記載のdsRNA剤。
【請求項11】
前記センス鎖のすべてのヌクレオチドおよび前記アンチセンス鎖のすべてのヌクレオチドが、修飾を含む、請求項9に記載のdsRNA剤。
【請求項12】
前記修飾ヌクレオチドの少なくとも一つが、デオキシ-ヌクレオチド、3’-末端デオキシ-チミジン(dT)ヌクレオチド、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-デオキシ-修飾ヌクレオチド、2’-5’-連結リボヌクレオチド(3’-RNA)、ロックヌクレオチド、アンロックヌクレオチド、立体配座的に制限されたヌクレオチド、拘束エチルヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、2’-アミノ-修飾ヌクレオチド、2’-O-アリル-修飾ヌクレオチド、2’-C-アルキル-修飾ヌクレオチド、2’-メトキシエチル修飾ヌクレオチド、2’-O-アルキル-修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホロアミダート、非天然塩基を含むヌクレオチド、テトラヒドロピラン修飾ヌクレオチド、1,5-アンヒドロヘキシトール修飾ヌクレオチド、シクロヘキセニル修飾ヌクレオチド、5’-ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、5’-メチルホスホネート基を含むヌクレオチド、5’ホスフェートまたは5’ホスフェート模倣体を含むヌクレオチド、ビニルホスホネートを含むヌクレオチド、グリコール核酸(GNA)、グリコール核酸S異性体(S-GNA)、2-ヒドロキシメチル-テトラヒドロフラン-5-ホスフェートを含むヌクレオチド、2’-デオキシチミジン-3’ホスフェートを含むヌクレオチド、2’-デオキシグアノシン-3’-ホスフェートを含むヌクレオチド、およびコレステリル誘導体に連結する末端ヌクレオチド、およびドデカン酸ビスデシルアミド基、およびそれらの組み合わせである群から選択される、請求項9~11のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項13】
前記ヌクレオチドの修飾が、独立して、2’-デオキシ修飾、2’-O-メチル修飾、3’-RNA修飾、GNA修飾、S-GNA修飾、および2’-デオキシ-2’-フルオロ修飾からなる群から選択される、請求項12に記載のdsRNA剤。
【請求項14】
前記修飾ヌクレオチドが、3’-末端デオキシチミジンヌクレオチド(dT)の短い配列を含む、請求項12に記載のdsRNA剤。
【請求項15】
前記ヌクレオチドの修飾が、2’-O-メチル修飾、2’-デオキシ-修飾、2’フルオロ修飾、5’-ビニルホスホネート(VP)修飾、および2’-Oヘキサデシルヌクレオチド修飾である、請求項12に記載のdsRNA剤。
【請求項16】
少なくとも一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結をさらに含む、請求項12に記載のdsRNA剤。
【請求項17】
前記dsRNA剤が、6~8のホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含む、請求項16に記載のdsRNA剤。
【請求項18】
各鎖が、30ヌクレオチド以下の長さである、請求項1~17のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項19】
少なくとも一つの鎖が、少なくとも1ヌクレオチドの3’オーバーハングを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項20】
少なくとも一つの鎖が、少なくとも2ヌクレオチドの3’オーバーハングを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項21】
前記二本鎖領域が、15~30ヌクレオチド対の長さである、請求項1~20のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項22】
前記二本鎖領域が、17~23ヌクレオチド対の長さである、請求項21に記載のdsRNA剤。
【請求項23】
前記二本鎖領域が、17~25ヌクレオチド対の長さである、請求項21に記載のdsRNA剤。
【請求項24】
前記二本鎖領域が、23~27ヌクレオチド対の長さである、請求項21に記載のdsRNA剤。
【請求項25】
前記二本鎖領域が、19~21ヌクレオチド対の長さである、請求項21に記載のdsRNA剤。
【請求項26】
前記二本鎖領域が、21~23ヌクレオチド対の長さである、請求項21に記載のdsRNA剤。
【請求項27】
各鎖が、19~30ヌクレオチドの長さである、請求項1~26のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項28】
各鎖が、19~23ヌクレオチドの長さである、請求項1~26のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項29】
各鎖が、21~23ヌクレオチドの長さである、請求項1~26のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項30】
一つまたは複数の親油性部分が、少なくとも一つの鎖における一つまたは複数の内側位置にコンジュゲートされる、請求項1~29のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項31】
前記一つまたは複数の親油性部分が、リンカーまたは担体を介して、少なくとも一つの鎖における一つまたは複数の内側位置にコンジュゲートされる、請求項30に記載のdsRNA剤。
【請求項32】
前記内側位置が、前記少なくとも一つの鎖の各末端から末端の二つの位置を除く全ての位置を含む、請求項31に記載のdsRNA剤。
【請求項33】
前記内側位置が、前記少なくとも一つの鎖の各末端から末端の三つの位置を除く全ての位置を含む、請求項31に記載のdsRNA剤。
【請求項34】
前記内側位置が、前記センス鎖の切断部位領域を除く、請求項31~33のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項35】
前記内側位置が、前記センス鎖の5’末端から数えて9~12位を除く全ての位置を含む、請求項34に記載のdsRNA剤。
【請求項36】
前記内側位置が、前記センス鎖の3’末端から数えて11~13位を除く全ての位置を含む、請求項34に記載のdsRNA剤。
【請求項37】
前記内側位置が、前記アンチセンス鎖の切断部位領域を除く、請求項31~33のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項38】
前記内側位置が、前記アンチセンス鎖の5’末端から数えて12~14位を除く全ての位置を含む、請求項37に記載のdsRNA剤。
【請求項39】
前記内側位置が、3’末端から数えて前記センス鎖上の11~13位および5’末端から数えて前記アンチセンス鎖上の12~14位を除く全ての位置を含む、請求項31~33のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項40】
前記一つまたは複数の親油性部分が、各鎖の5’末端から数えて、前記センス鎖上の4~8位および13~18位ならびに前記アンチセンス鎖上の6~10位および15~18位からなる群から選択される前記内側位置のうちの一つまたは複数にコンジュゲートされる、請求項1~39のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項41】
前記一つまたは複数の親油性部分が、各鎖の5’末端から数えて、前記センス鎖上の5、6、7、15および17位ならびに前記アンチセンス鎖上の15および17位からなる群から選択される前記内側位置のうちの一つまたは複数にコンジュゲートされる、請求項40に記載のdsRNA剤。
【請求項42】
前記二本鎖領域における前記位置が、前記センス鎖の切断部位領域を除く、請求項4に記載のdsRNA剤。
【請求項43】
前記センス鎖は、21ヌクレオチドの長さであり、前記アンチセンス鎖は、23ヌクレオチドの長さであり、また前記親油性部分は、各鎖の5末端から数えて、前記センス鎖の21位、20位、15位、1位、7位、6位もしくは2位、または前記アンチセンス鎖の16位にコンジュゲートされる、請求項1~42のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項44】
前記親油性部分が、前記鎖の5末端から数えて、前記センス鎖の21位、20位、15位、1位、または7位にコンジュゲートされる、請求項43に記載のdsRNA剤。
【請求項45】
前記親油性部分が、前記鎖の5末端から数えて、前記センス鎖の21位、20位、または15位にコンジュゲートされる、請求項43に記載のdsRNA剤。
【請求項46】
前記親油性部分が、前記鎖の5末端から数えて、前記センス鎖の20位または15位にコンジュゲートされる、請求項43に記載のdsRNA剤。
【請求項47】
前記親油性部分が、前記鎖の5末端から数えて、前記アンチセンス鎖の16位にコンジュゲートされる、請求項43に記載のdsRNA剤。
【請求項48】
前記親油性部分が、脂肪族化合物、脂環式化合物、または多脂環式(polyalicyclic)化合物である、請求項1~47のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項49】
前記親油性部分が、脂質、コレステロール、レチノイン酸、コール酸、アダマンタン酢酸、1-ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3-ビス-O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキサノール、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メンソール、1,3-プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3-(オレオイル)リトコール酸、O3-(オレオイル)コレン酸、ジメトキシトリチル、またはフェノキサジンからなる群から選択される、請求項48に記載のdsRNA剤。
【請求項50】
前記親油性部分が、飽和または不飽和C4~C30炭化水素鎖と、ヒドロキシル、アミン、カルボン酸、スルホネート、ホスフェート、チオール、アジド、およびアルキンからなる群から選択される任意の官能基とを含有する、請求項49に記載のdsRNA剤。
【請求項51】
前記親油性部分が、飽和または不飽和C6~C18炭化水素鎖を含有する、請求項50に記載のdsRNA剤。
【請求項52】
前記親油性部分が、飽和または不飽和C16炭化水素鎖を含有する、請求項50に記載のdsRNA剤。
【請求項53】
前記飽和または不飽和C16炭化水素鎖が、前記鎖の5’末端から数えて6位にコンジュゲートされる、請求項52に記載のdsRNA剤。
【請求項54】
前記親油性部分が、前記内側位置または前記二本鎖領域における一つまたは複数のヌクレオチドを置換する担体を介してコンジュゲートされる、請求項1~51のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項55】
前記担体が、ピロリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、[1,3]ジオキソラニル、オキサゾリジニル、イソキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、キノキサリニル、ピリダジノニル、テトラヒドロフラニル、およびデカリニルからなる群から選択される環式基であるか、またはセリノール骨格またはジエタノールアミン骨格系の非環式部分である、請求項54に記載のdsRNA剤。
【請求項56】
前記親油性部分が、エーテル、チオエーテル、尿素、カーボネート、アミン、アミド、マレイミド-チオエーテル、ジスルフィド、ホスホジエステル、スルホンアミド連結、クリック反応の生成物、またはカルバメートを含有するリンカーを介して二本鎖iRNA剤にコンジュゲートされる、請求項1~51のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項57】
前記親油性部分が、核酸塩基、糖部分、またはヌクレオシド間連結にコンジュゲートされる、請求項1~56のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項58】
前記親油性部分または標的化リガンドが、DNA、RNA、ジスルフィド、アミド、およびガラクトサミン、グルコサミン、グルコース、ガラクトース、マンノースの官能化された単糖またはオリゴ糖、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される生物切断可能なリンカーを介してコンジュゲートされる、請求項1~57のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項59】
前記センス鎖の3’末端は、アミンを有する環状基であるエンドキャップを介して保護され、前記環状基は、ピロリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、[1,3]ジオキソラニル、オキサゾリジニル、イソキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、キノキサリニル、ピリダジノニル、テトラヒドロフラニル、およびデカリニルからなる群から選択される、請求項1~58のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項60】
肝組織を標的化する標的化リガンドをさらに含む、請求項1~59のいずれか一項に記 載のdsRNA剤。
【請求項61】
前記標的化リガンドが、GalNAcコンジュゲートである、請求項60に記載のdsRNA剤。
【請求項62】
前記アンチセンス鎖の3’末端における第一のヌクレオチド間連結において生じる末端のキラル修飾であって、連結リン原子がSp配置である、末端のキラル修飾と、
前記アンチセンス鎖の5’末端における第一のヌクレオチド間連結において生じる末端のキラル修飾であって、連結リン原子がRp配置である、末端のキラル修飾と、
前記センス鎖の5’末端における第一のヌクレオチド間連結において生じる末端のキラル修飾であって、連結リン原子がRp配置またはSp配置のいずれかである、末端のキラル修飾と、をさらに含む、請求項1~61のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項63】
前記アンチセンス鎖の3’末端における第一および第二のヌクレオチド間連結において生じる末端のキラル修飾であって、連結リン原子がSp配置である、末端のキラル修飾と、
前記アンチセンス鎖の5’末端における第一のヌクレオチド間連結において生じる末端のキラル修飾であって、連結リン原子がRp配置である、末端のキラル修飾と、
前記センス鎖の5’末端における第一のヌクレオチド間連結において生じる末端のキラル修飾であって、連結リン原子がRp配置またはSp配置のいずれかである、末端のキラル修飾と、をさらに含む、請求項1~61のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項64】
前記アンチセンス鎖の3’末端における第一、第二および第三のヌクレオチド間連結において生じる末端のキラル修飾であって、連結リン原子がSp配置である、末端のキラル修飾と、
前記アンチセンス鎖の5’末端における第一のヌクレオチド間連結において生じる末端のキラル修飾であって、連結リン原子がRp配置である、末端のキラル修飾と、
前記センス鎖の5’末端における第一のヌクレオチド間連結において生じる末端のキラル修飾であって、連結リン原子がRp配置またはSp配置のいずれかである、末端のキラル修飾と、をさらに含む、請求項1~61のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項65】
前記アンチセンス鎖の3’末端における第一および第二のヌクレオチド間連結において生じる末端のキラル修飾であって、連結リン原子がSp配置である、末端のキラル修飾と、
前記アンチセンス鎖の3’末端における第三のヌクレオチド間連結において生じる末端のキラル修飾であって、連結リン原子がRp配置である、末端のキラル修飾と、
前記アンチセンス鎖の5’末端における第一のヌクレオチド間連結において生じる末端のキラル修飾であって、連結リン原子がRp配置である、末端のキラル修飾と、
前記センス鎖の5’末端における第一のヌクレオチド間連結において生じる末端のキラル修飾であって、連結リン原子がRp配置またはSp配置のいずれかである、末端のキラル修飾と、をさらに含む、請求項1~61のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項66】
前記アンチセンス鎖の3’末端における第一および第二のヌクレオチド間連結において生じる末端のキラル修飾であって、連結リン原子がSp配置である、末端のキラル修飾と、
前記アンチセンス鎖の5’末端における第一および第二のヌクレオチド間連結において生じる末端のキラル修飾であって、連結リン原子がRp配置である、末端のキラル修飾と、
前記センス鎖の5’末端における第一のヌクレオチド間連結において生じる末端のキラル修飾であって、連結リン原子がRp配置またはSp配置のいずれかである、末端のキラル修飾と、をさらに含む、請求項1~61のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項67】
前記アンチセンス鎖の5’末端においてホスフェートまたはホスフェート模倣体をさらに含む、請求項1~66のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項68】
前記ホスフェート模倣体が、5’-ビニルホスホネート(VP)である、請求項67に記載のdsRNA剤。
【請求項69】
二本鎖の前記アンチセンス鎖の5’末端の1位における塩基対が、AU塩基対である、請求項1~66のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項70】
前記センス鎖が、合計21ヌクレオチドを有し、また前記アンチセンス鎖が、合計23ヌクレオチドを有する、請求項1~66のいずれか一項に記載のdsRNA剤。
【請求項71】
請求項1~70のいずれか一項に記載のdsRNA剤を含有する、細胞。
【請求項72】
請求項1~70のいずれか一項に記載のdsRNA剤を含む、SGLT2遺伝子の発現を阻害する医薬組成物。
【請求項73】
請求項1~70のいずれか一項に記載のdsRNA剤と脂質製剤とを含む、医薬組成物。
【請求項74】
細胞内でSGLT2遺伝子の発現を阻害する方法であって、前記方法が、
(a)前記細胞を、請求項1~70のいずれか一項に記載のdsRNA剤、または請求項72または73に記載の医薬組成物と接触させることと、
(b)工程(a)において産生された前記細胞を、前記SGLT2遺伝子の分解を得るのに十分な時間にわたって維持し、それによって前記細胞内で前記SGLT2遺伝子の発現を阻害することと、を含む、方法。
【請求項75】
前記細胞が、対象内にある、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記対象が、ヒトである、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記SGLT2遺伝子の前記発現が、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または95%阻害される、請求項74~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
ナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)の発現の減少から恩恵を受けることとなる障害を有する対象を治療する方法であって、請求項1~70のいずれか一項に記載のdsRNA剤、または請求項72または73に記載の医薬組成物の治療有効量を前記対象に投与し、それによってSGLT2発現の減少から恩恵を受けることとなる前記障害を有する前記対象を治療することを含む、方法。
【請求項79】
ナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)の発現の減少から恩恵を受けることとなる障害を有する対象において少なくとも一つの症状を予防する方法であって、請求項1~70のいずれか一項に記載のdsRNA剤、または請求項72または73に記載の医薬組成物の予防的有効量を前記対象に投与し、それによってSGLT2発現の減少から恩恵を受けることとなる前記障害を有する前記対象における少なくとも一つの症状を予防することを含む、方法。
【請求項80】
前記障害が、SGLT2関連障害である、請求項78または79に記載の方法。
【請求項81】
前記SGLT2関連障害が、痛風である、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記SGLT2関連疾患が、糖尿病である、請求項80に記載の方法。
【請求項83】
前記SGLT2関連疾患が、II型糖尿病である、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記対象が、ヒトである、請求項78または79に記載の方法。
【請求項85】
前記対象への前記dsRNA剤の投与が、前記対象におけるSGLT2タンパク質の蓄積の減少を引き起こす、請求項78~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記dsRNA剤の投与が、前記対象の血清グルコース値および/または血清尿酸値の低減をもたらす、請求項78~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記dsRNA剤が、約0.01mg/kg~約50mg/kgの用量で前記対象に投与される、請求項78~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記dsRNA剤が、前記対象に皮下投与される、請求項78~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記dsRNA剤が、前記対象に静脈内投与される、請求項78~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記対象からの試料中のSGLT2レベルを判定することをさらに含む、請求項78~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
対象試料中の前記SGLT2レベルが、血液または血清試料中のSGLT2タンパク質レベルである、請求項78~90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
SGLT2関連障害の治療または予防に好適な追加的な薬剤または療法を前記対象に投与することをさらに含む、請求項78~91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
追加の治療剤が、真性糖尿病治療剤、糖尿病性合併症治療剤、心血管疾患治療剤、抗高脂血症剤、降圧剤または抗高血圧剤、抗肥満剤、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)治療剤、化学療法剤、免疫療法剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、抗脂肪症剤、抗ウイルス剤、抗線維化剤、免疫調節剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗線維化剤、および前述のいずれかの組み合わせを含む群から選択される、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
請求項1~70のいずれか一項に記載のdsRNA剤、または請求項72または73に記載の医薬組成物を含む、キット。
【請求項95】
請求項1~70のいずれか一項に記載のdsRNA剤、または請求項72または73に記載の医薬組成物を含む、バイアル。
【請求項96】
請求項1~70のいずれか一項に記載のdsRNA剤、または請求項72または73に記載の医薬組成物を含む、シリンジ。
【請求項97】
請求項1~70のいずれか一項に記載のdsRNA剤を含む、RISC複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年5月18日に出願された米国仮特許出願第63/189,760号、および2022年3月16日に出願された米国仮特許出願第63/320,278号に対する優先権の利益を主張する。先述の出願の各々の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含んでおり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。当該ASCIIの写しは、2022年4月6日に作成され、121301_15820_SL.TXTという名称で、サイズは192,240バイトである。
【背景技術】
【0003】
糖尿病は、インスリン分泌もしくは作用の欠陥、またはその両方に起因する高血糖値によって特徴付けられる代謝疾患の一群である。糖尿病には、二つの最も一般的なタイプ、すなわち1型糖尿病および2型糖尿病があり、これらは両方とも、血中の血糖(グルコース)のレベルの増加に応答して膵臓によって放出されるホルモンであるインスリンを調節することができないことから生じる。
【0004】
I型糖尿病は、膵臓のインスリン産生が少なすぎて、血糖値を適切に調節できない場合に発生する。対照的に、II型糖尿病では、膵臓はインスリンの製造をし続ける。しかしながら、身体はインスリンに対して反応不良であり、その効果に対する抵抗性を生じ、その結果、多すぎる糖が血流中に循環することとなる。II型糖尿病は、高頻度の合併症により平均余命の有意な減少につながる、ますます広く見られる代謝疾患となっている。II型糖尿病は、現在、工業化社会における成人発症型の視力喪失、腎不全、および切断の最も頻度の高い原因である。さらに、II型糖尿病の存在は、心血管疾患リスクの二~五倍の増加と関連している。
【0005】
糖尿病における高インスリン血症またはインスリン抵抗性はまた、尿酸(本明細書では尿酸塩とも呼ばれる)の腎クリアランスの低下および血清尿酸値の上昇と関連している。典型的には、生理学的飽和閾値を超えるレベルである、6.8mg/dl(360mmol/より大きい)を超える血清尿酸値として定義される、慢性的な血清尿酸上昇(慢性高尿酸血症)(Mandell,Cleve.Clin.Med.75:S5-S8,2008)は、多くの異なる疾患を引き起こす可能性がある。痛風は、典型的に尿酸の腎クリアランス不足または過剰な尿酸産生による関節の尿酸結晶への炎症反応によって引き起こされる、急性炎症性関節炎の反復発作を特徴とする。高まった尿酸はまた、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、代謝障害、心血管疾患、ならびに酸化ストレス、慢性の軽度の炎症、およびインスリン抵抗性に関連する状態と関連している(Xu et al.,J.Hepatol.62:1412-1419,2015;Cardoso et al.,J.Pediatr.89:412-418,2013;Sertoglu et al.,Clin.Biochem.,47:383-388,2014)。
【0006】
血漿グルコースは通常、比較的狭い範囲で維持され、これはグルコース産生(肝臓および腎臓)、腸吸収、腎再吸収、および身体中の組織におけるグルコース利用の間の微妙なバランスを必要とする。腎臓の上皮細胞にわたるグルコースの再吸収は、ナトリウム勾配に沿った細管の刷子縁膜に位置するナトリウム依存性グルコース共輸送体(SGLT)のクラスに依存する。その発現パターンならびにその物理化学的特性が異なる少なくとも3つのSGLTアイソフォームがある。
【0007】
これらの共輸送体のうちの一つであるSGLT2は、溶質担体ファミリー5メンバー2(SLC5A2)としても知られており、腎臓の回旋状の尿細管で発現される。SGLT2トランスポーターは、腎臓におけるグルコース再吸収に関与する主要な共輸送体であり、濾過されたグルコース再吸収の約90%を担う(Scheen AJ、Drugs.2015 Jan;75(1):33-59)。
【0008】
SGLT2阻害剤は、2型糖尿病または高血糖症に対処する薬剤のクラスとして知られている。SGLT2阻害剤は、グルコースの腎再吸収を防止し、したがって、尿へのグルコース排出を促進し、結果として血清グルコース値を低下させる。SGLT2阻害剤はまた、血清尿酸値の低下にも有効である。しかしながら、SGLT2阻害剤はまた、糖尿病性ケトアシドーシス、ならびに血液および腎臓感染症を含む副作用を引き起こす可能性がある。
【0009】
したがって、高い生物学的活性およびインビボ安定性の両方を有し、標的SGLT2遺伝子の発現を効果的に阻害することができる細胞自身のRNAi機構を使用して、SGLT2遺伝子を選択的かつ効率的にサイレンシングすることができる薬剤などの糖尿病および関連する疾患、例えば、痛風に対する効果的な治療に対する満たされていないニーズが存在する。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、ナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)をコードする遺伝子のRNA転写物のRNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)媒介性切断を行うRNAi剤組成物を提供する。SGLT2遺伝子は、細胞内に、例えば、ヒトなどである対象内の細胞内にあり得る。本開示はまた、SGLT2遺伝子の発現を阻害するために、またはSGLT2遺伝子の発現を阻害するもしくは低減することから利益を得る対象、例えば、SGLT2関連障害を有する対象、例えば、痛風もしくはII型糖尿病などの糖尿病を有する対象、または痛風もしくは糖尿病を発症するリスクのある対象を治療するために、本開示のRNAi剤組成物を使用する方法を提供する。
【0011】
したがって、一態様では、本発明は、細胞内のナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)の発現を阻害する二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤を提供し、dsRNA剤は、二本鎖領域を形成するセンス鎖およびアンチセンス鎖を含み、センス鎖は、配列番号1のヌクレオチド配列と0、1、2、または3ヌクレオチド以下だけ異なる少なくとも15、例えば、15、16、17、18、19、または20の連続するヌクレオチドを含み、先述のアンチセンス鎖は、配列番号6のヌクレオチド配列と0、1、2、または3ヌクレオチド以下だけ異なる少なくとも15、例えば、15、16、17、18、19、または20の連続するヌクレオチドを含み、センス鎖またはアンチセンス鎖は、一つまたは複数の親油性部分にコンジュゲートされる。
【0012】
別の態様では、本発明は、細胞内のナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)の発現を阻害する二本鎖リボ核酸(dsRNA)を提供し、dsRNA剤は、二本鎖領域を形成するセンス鎖およびアンチセンス鎖を含み、アンチセンス鎖は、SGLT2をコードするmRNAに対して相補的な領域を含み、相補的な領域は、表2~3のいずれか一つのアンチセンスヌクレオチド配列のいずれか一つと0、1、2または3ヌクレオチドが異なる、例えば、15、16、17、18、19または20などの少なくとも15の連続するヌクレオチドを含み、センス鎖またはアンチセンス鎖は、一つまたは複数の親油性部分にコンジュゲートされる。
【0013】
一実施形態では、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方が、一つまたは複数の親油性部分にコンジュゲートされる。
【0014】
一実施形態では、親油性部分の親油性は、logKowで測定されて、0を超える。
【0015】
一実施形態では、二本鎖RNAi剤の疎水性は、二本鎖RNAi剤の血漿タンパク質結合アッセイにおける非結合画分で測定され、0.2を超える。
【0016】
一実施形態では、血漿タンパク質結合アッセイは、ヒト血清アルブミンタンパク質を使用する電気泳動移動度シフトアッセイである。
【0017】
一実施形態では、dsRNA剤は、少なくとも一つの修飾ヌクレオチドを含む。
【0018】
一部の実施形態では、アンチセンス鎖の実質的にすべてのヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドである。
【0019】
別の実施形態では、センス鎖のヌクレオチドの全ておよびアンチセンス鎖のヌクレオチドの全ては、修飾を含む。
【0020】
一実施形態では、修飾ヌクレオチドのうちの少なくとも一つは、デオキシ-ヌクレオチド、3’末端デオキシチミジン(dT)ヌクレオチド、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-デオキシ-修飾ヌクレオチド、ロックヌクレオチド、アンロックヌクレオチド、立体配座的に制限されたヌクレオチド、拘束エチルヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、2’-アミノ修飾ヌクレオチド、2’-O-アリル-修飾ヌクレオチド、2’-C-アルキル-修飾ヌクレオチド、2’-ヒドロキシル-修飾ヌクレオチド、2’-メトキシエチル修飾ヌクレオチド、2’-O-アルキル-修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホロアミダート、非天然塩基を含むヌクレオチド、テトラヒドロピラン修飾ヌクレオチド、1,5-アンヒドロヘキシトール修飾ヌクレオチド、シクロヘキセニル修飾ヌクレオチド、5’-ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、5’-メチルホスホネート基を含むヌクレオチド、5’リン酸または5’リン酸模倣体を含むヌクレオチド、ビニルホスホネートを含むヌクレオチド、アデノシン-グリコール核酸(GNA)を含むヌクレオチド、チミジン-グリコール核酸(GNA)S-異性体を含むヌクレオチド、2-ヒドロキシメチル-テトラヒドロフラン-5-リン酸を含むヌクレオチド、2’-デオキシチミジン-3’リン酸を含むヌクレオチド、2’-デオキシグアノシン-3’-リン酸を含むヌクレオチド、2’-Oヘキサデシルヌクレオチド、2’-リン酸を含むヌクレオチド、シチジン-2’-リン酸ヌクレオチド、グアノシン-2’-リン酸ヌクレオチド、2’-O-ヘキサデシル-シチジン-3’-リン酸ヌクレオチド、2’-O-ヘキサデシル-アデノシン-3’-リン酸ヌクレオチド、2’-O-ヘキサデシル-グアノシン-3’-リン酸ヌクレオチド、2’-O-ヘキサデシル-ウリジン-3’-リン酸ヌクレオチド、5’-ビニルホスホネート(VP)、2’-デオキシアデノシン-3’-リン酸ヌクレオチド、2’-デオキシシチジン-3’-リン酸ヌクレオチド、2’-デオキシグアノシン-3’-リン酸ヌクレオチド、2’-デオキシチミジン-3’-リン酸ヌクレオチド、2’-デオキシウリジンヌクレオチド、およびコレステリル誘導体およびドデカノ酸ビスデシルアミド基に連結された末端ヌクレオチド、およびそれらの組み合わせ、の群から選択される。
【0021】
別の実施形態では、修飾ヌクレオチドは、2’-デオキシ-2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-デオキシ-修飾ヌクレオチド、3’-末端デオキシチミジンヌクレオチド(dT)、ロックヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、2’-アミノ修飾ヌクレオチド、2’-アルキル修飾ヌクレオチド、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、グリコール核酸(GNA)を含むヌクレオシド、モルホリノヌクレオチド、ホスホロアミダート、および非天然塩基を含むヌクレオチドからなる群から選択される。
【0022】
別の実施形態では、修飾ヌクレオチドは、3’-末端デオキシチミジンヌクレオチド(dT)の短い配列を含む。
【0023】
さらに別の実施形態では、ヌクレオチド上の修飾は、2’-O-メチル修飾、2’-デオキシ-修飾、2’フルオロ修飾、5’-ビニルホスホネート(VP)修飾、および2’-Oヘキサデシルヌクレオチド修飾である。
【0024】
特定の実施形態では、二本鎖RNAi剤は、逆方向脱塩基ヌクレオチドを含まない。
【0025】
一実施形態では、dsRNA剤は、少なくとも一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結をさらに含む。
【0026】
一実施形態では、dsRNA剤は、6~8のホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含む。
【0027】
一実施形態では、各鎖は、30ヌクレオチド以下の長さである。
【0028】
一実施形態では、少なくとも一つの鎖が、少なくとも1ヌクレオチドの3’オーバーハングを含む。
【0029】
別の実施形態では、少なくとも一つの鎖が、少なくとも2ヌクレオチドの3’オーバーハングを含む。
【0030】
二本鎖領域は、15~30ヌクレオチド対の長さ、17~23ヌクレオチド対の長さ、17~25ヌクレオチド対の長さ、23~27ヌクレオチド対の長さ、19~21ヌクレオチド対の長さ、または21~23ヌクレオチド対の長さであり得る。
【0031】
dsRNA剤の各鎖は、15~30、17~20、19~30ヌクレオチドの長さ、19~23ヌクレオチドの長さ、または21~23ヌクレオチドの長さ、例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチドの長さであってもよい。
【0032】
特定の実施形態では、二本鎖RNAi剤は、一価または分岐した二価または三価のリンカーを介して、センス鎖の3’末端にコンジュゲートされた親油性リガンド、例えば、C16リガンドをさらに含む。
【0033】
一実施形態では、リガンドは、センス鎖またはアンチセンス鎖内のヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドの2’-位置でコンジュゲートされる。例えば、C16リガンドは、以下の構造に示されるようにコンジュゲートされてもよい。
【化1】

式中、は隣接するヌクレオチドへの結合を表し、Bは、核酸塩基または核酸塩基類似体であり、随意に、Bは、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、またはウラシルである。
【0034】
他の実施形態では、薬剤は、肝組織を標的とする標的化リガンド、例えば、リンカーまたは担体を介して二本鎖RNAi剤に任意でコンジュゲートされる、一つまたは複数のGalNAc誘導体をさらに含む。
【0035】
さらに他の実施形態では、薬剤は、例えば、一価または分岐の二価または三価リンカーを介して、センス鎖の3’末端にコンジュゲートされた親油性リガンド、例えば、C16リガンド、および例えば、一価または分岐の二価または三価リンカーを介して、センス鎖の3’末端にコンジュゲートされた一つまたは複数のGalNAc誘導体など、肝組織を標的とする標的化リガンドをさらに含む。
【0036】
一実施形態では、一つまたは複数の親油性部分は、少なくとも一本鎖上の一つまたは複数の内側位置にコンジュゲートされる。
【0037】
一実施形態では、一つまたは複数の親油性部分は、リンカーまたは担体を介して少なくとも一本の鎖上の一つまたは複数の内側位置にコンジュゲートされる。
【0038】
特定の実施形態では、親油性部分はコレステロール部分ではない。
【0039】
特定の実施形態では、薬剤は、肝組織を標的とする標的化リガンド、例えば、リンカーまたは担体を介して二本鎖RNAi剤に随意にコンジュゲートした、一つまたは複数のGalNAc誘導体をさらに含む。
【0040】
さらに他の実施形態では、薬剤は、随意にリンカーまたは担体を介して一つまたは複数の内部ヌクレオチド位置にコンジュゲートされた一つまたは複数の親油性部分、および肝組織を標的とする標的化リガンド、例えば、リンカーまたは担体を介して二本鎖RNAi剤に随意にコンジュゲートされた一つまたは複数のGalNAc誘導体をさらに含む。
【0041】
一実施形態では、内側位置は、少なくとも一本の鎖の各末端から末端の二つの位置を除く全ての位置を含む。
【0042】
別の実施形態では、内側位置は、少なくとも一本の鎖の各末端から末端の三つの位置を除く全ての位置を含む。
【0043】
別の実施形態では、内側位置は、センス鎖の切断部位領域を除く。
【0044】
さらに別の実施形態では、内側位置は、センス鎖の5’末端から数えて9~12位を除く全ての位置を含む。特定の実施形態では、センス鎖は、21ヌクレオチドの長さである。
【0045】
一実施形態では、内側位置は、センス鎖の3’末端から数えて11~13位を除く全ての位置を含む。随意に、内側位置は、アンチセンス鎖の切断部位領域を除く。特定の実施形態では、センス鎖は、21ヌクレオチドの長さである。
【0046】
一実施形態では、内側位置は、アンチセンス鎖の切断部位領域を除く。
【0047】
一実施形態では、内側位置は、アンチセンス鎖の5’末端から数えて12~14位を除く全ての位置を含む。特定の実施形態では、アンチセンス鎖は23ヌクレオチドの長さである。
【0048】
一実施形態では、内側位置は、3’末端から数えてセンス鎖上の11~13位と、5’末端から数えてアンチセンス鎖上の12~14位とを除く全ての位置を含む。特定の実施形態では、センス鎖は、21ヌクレオチドの長さであり、またアンチセンス鎖は、23ヌクレオチドの長さである。
【0049】
一実施形態では、一つまたは複数の親油性部分は、各鎖の5’末端から数えて、センス鎖上の4~8位および13~18位ならびにアンチセンス鎖上の6~10位および15~18位からなる群から選択される内側位置のうちの一つまたは複数にコンジュゲートされる。
【0050】
一実施形態では、一つまたは複数の親油性部分は、各鎖の5’末端から数えて、センス鎖上の5、6、7、15、および17位ならびにアンチセンス鎖上の15および17位からなる群から選択される内側位置のうちの一つまたは複数にコンジュゲートされる。特定の実施形態では、センス鎖は、21ヌクレオチドの長さであり、またアンチセンス鎖は、23ヌクレオチドの長さである。
【0051】
一実施形態では、二本鎖領域における位置は、センス鎖の切断部位領域を除く。
【0052】
一実施形態では、センス鎖は、21ヌクレオチドの長であり、アンチセンス鎖は、23ヌクレオチドの長さであり、また親油性部分は、各鎖の5末端から数えて、センス鎖の21位、20位、15位、1位、7位、6位、もしくは2位またはアンチセンス鎖の16位にコンジュゲートされる。
【0053】
一実施形態では、親油性部分は、鎖の5末端から数えて、センス鎖の21位、20位、15位、1位、または7位にコンジュゲートされる。
【0054】
一実施形態では、親油性部分は、鎖の5末端から数えて、センス鎖の21位、20位、または15位にコンジュゲートされる。
【0055】
一実施形態では、親油性部分は、鎖の5末端から数えて、センス鎖の20位または15位にコンジュゲートされる。
【0056】
一実施形態では、親油性部分は、鎖の5末端から数えて、アンチセンス鎖の16位にコンジュゲートされる。
【0057】
一実施形態では、親油性部分は、脂肪族化合物、脂環式化合物、または多脂環式化合物である。
【0058】
一実施形態では、親油性部分は、脂質、コレステロール、レチノイン酸、コール酸、アダマンタン酢酸、1-ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3-ビス-O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキサノール(geranyloxyhexyanol)、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メンソール、1,3-プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3-(オレオイル)リトコール酸、O3-(オレオイル)コレン酸(O3-(oleoyl)cholenic acid)、ジメトキシトリチル、またはフェノキサジンからなる群から選択される。特定の実施形態では、親油性部分はコレステロールではない。
【0059】
一実施形態では、親油性部分は、飽和または不飽和C4~C30炭化水素鎖と、ヒドロキシル、アミン、カルボン酸、スルホネート、ホスフェート、チオール、アジド、およびアルキンからなる群から選択される最適な官能基とを含有する。
【0060】
一実施形態では、親油性部分は、飽和または不飽和C6~C18炭化水素鎖を含有する。
【0061】
一実施形態では、親油性部分は、飽和または不飽和C16炭化水素鎖を含有する。
【0062】
一実施形態では、飽和または不飽和C16炭化水素鎖は、一方の鎖の5’末端から数えて6位にコンジュゲートされる。
【0063】
一実施形態では、親油性部分は、内側位置または二本鎖領域における一つまたは複数のヌクレオチドに置き換わる担体を介してコンジュゲートされる。
【0064】
一実施形態では、担体は、ピロリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、[1,3]ジオキソラニル、オキサゾリジニル、イソキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、キノキサリニル、ピリダジノニル、テトラヒドロフラニル、およびデカリニルからなる群から選択される環式基であるか、またはセリノール骨格またはジエタノールアミン骨格系の非環式部分である。
【0065】
一実施形態では、親油性部分は、エーテル、チオエーテル、尿素、カーボネート、アミン、アミド、マレイミド-チオエーテル、ジスルフィド、ホスホジエステル、スルホンアミド連結、クリック反応の生成物、またはカルバメートを含有するリンカーを介して二本鎖iRNA剤にコンジュゲートされる。
【0066】
一実施形態では、親油性部分は、核酸塩基、糖部分、またはヌクレオシド間連結にコンジュゲートされる。
【0067】
一実施形態では、二本鎖RNAi剤は、アンチセンス鎖の5’末端にホスフェートまたはホスフェート模倣体をさらに含む。随意に、ホスフェート模倣体は、5’-ビニルホスホネート(VP)である。ホスフェート模倣体が5’-ビニルホスホネート(VP)である場合、5’末端ヌクレオチドは以下の構造を有してもよく、
【化2】
式中、は、隣接するヌクレオチドの5’-位への結合の位置を示し、Rは、水素、ヒドロキシ、メトキシ、フルオロ、または本明細書に記載される別の2’-修飾(例えば、ヒドロキシまたはメトキシ)であり、Bは、核酸塩基または修飾核酸塩基であり、随意にBは、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、またはウラシルである。
【0068】
特定の実施形態では、RNAi剤は、逆方向脱塩基ヌクレオチドを含まない。
【0069】
特定の実施形態では、二本鎖RNAi剤は、標的化リガンドを含まない。
【0070】
特定の実施形態では、二本鎖RNAi剤は、肝組織、例えば親油性リガンドへの送達を媒介する受容体を標的とする標的化リガンドをさらに含む。特定の実施形態では、標的化リガンドは、C16リガンドである。特定の実施形態では、親油性リガンドはコレステロール部分ではない。
【0071】
一実施形態では、親油性部分または標的化リガンドは、DNA、RNA、ジスルフィド、アミド、およびガラクトサミン、グルコサミン、グルコース、ガラクトース、マンノースの官能化された単糖またはオリゴ糖、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される生物切断可能なリンカーを介してコンジュゲートされる。
【0072】
一実施形態では、センス鎖の3’末端は、アミンを有する環状基であるエンドキャップを介して保護され、該環状基は、ピロリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、[1,3]ジオキソラニル、オキサゾリジニル、イソキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、キノキサリニル、ピリダジノニル、テトラヒドロフラニル、およびデカリニルからなる群から選択される。
【0073】
一実施形態では、dsRNA剤は、肝組織を標的とする標的化リガンドをさらに含む。
【0074】
一実施形態では、標的化リガンドは、GalNAcコンジュゲートである。
【0075】
一実施形態では、dsRNA剤は、Sp立体配置での連結リン原子を有する、アンチセンス鎖の3’末端における第一のヌクレオチド間連結において生じる末端キラル修飾と、Rp立体配置での連結リン原子を有する、アンチセンス鎖の5’末端における第一のヌクレオチド間連結において生じる末端キラル修飾と、Rp立体配置またはSp立体配置のいずれかでの連結リン原子を有する、センス鎖の5’末端における第一のヌクレオチド間連結において生じる末端キラル修飾をさらに含む。
【0076】
一実施形態では、dsRNA剤は、Sp立体配置での連結リン原子を有する、アンチセンス鎖の3’末端における第一および第二のヌクレオチド間連結において生じる末端キラル修飾と、Rp立体配置での連結リン原子を有する、アンチセンス鎖の5’末端における第一のヌクレオチド間連結において生じる末端キラル修飾と、Rp立体配置またはSp立体配置のいずれかでの連結リン原子を有する、センス鎖の5’末端における第一のヌクレオチド間連結において生じる末端キラル修飾とをさらに含む。
【0077】
一実施形態では、dsRNA剤は、Sp立体配置での連結リン原子を有する、アンチセンス鎖の3’末端における第一、第二および第三のヌクレオチド間連結において生じる末端キラル修飾と、Rp立体配置での連結リン原子を有する、アンチセンス鎖の5’末端における第一のヌクレオチド間連結において生じる末端キラル修飾と、Rp立体配置またはSp立体配置のいずれかでの連結リン原子を有する、センス鎖の5’末端における第一のヌクレオチド間連結において生じる末端キラル修飾とをさらに含む。
【0078】
一実施形態では、dsRNA剤は、Sp立体配置での連結リン原子を有する、アンチセンス鎖の3’末端における第一および第二のヌクレオチド間連結において生じる末端キラル修飾と、Rp立体配置での連結リン原子を有する、アンチセンス鎖の3’末端における第三のヌクレオチド間連結において生じる末端キラル修飾と、Rp立体配置での連結リン原子を有する、アンチセンス鎖の5’末端における第一のヌクレオチド間連結において生じる末端キラル修飾と、Rp立体配置またはSp立体配置のいずれかでの連結リン原子を有する、センス鎖の5’末端における第一のヌクレオチド間連結において生じる末端キラル修飾とをさらに含む。
【0079】
一実施形態では、dsRNA剤は、Sp立体配置での連結リン原子を有する、アンチセンス鎖の3’末端における第一および第二のヌクレオチド間連結において生じる末端キラル修飾と、Rp立体配置での連結リン原子を有する、アンチセンス鎖の5’末端における第一および第二のヌクレオチド間連結において生じる末端キラル修飾と、Rp立体配置またはSp立体配置のいずれかでの連結リン原子を有する、センス鎖の5’末端における第一のヌクレオチド間連結において生じる末端キラル修飾とをさらに含む。
【0080】
一実施形態では、dsRNA剤は、アンチセンス鎖の5’末端におけるホスフェートまたはホスフェート模倣体をさらに含む。
【0081】
一実施形態では、ホスフェート模倣体は、5’-ビニルホスホネート(VP)である。
【0082】
一実施形態では、二本鎖のアンチセンス鎖の5’-末端の1つの位置における塩基対が、AU塩基対である。
【0083】
一実施形態では、センス鎖は、合計21のヌクレオチドを有し、アンチセンス鎖は、合計23のヌクレオチドを有する。
【0084】
別の実施形態では、RNAi剤はその薬学的に許容可能な塩である。本明細書のRNAi剤の各々の「薬学的に許容可能な塩」としては、これに限定されないが、ナトリウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、マグネシウム塩、それらの混合物が含まれる。当業者であれば、RNAi剤は、ポリカチオン性塩として提供される場合、修飾されていてもよいホソホジエステル骨格および/または任意の他の酸性修飾(例えば、5’末端のホスホネート基)の遊離酸基当たり一つのカチオンを有することを理解するであろう。例えば、長さが「n」ヌクレオチドであるオリゴヌクレオチドは、n-1の修飾されていてもよいホスホジエステルを含有し、その結果、長さ21ntのオリゴヌクレオチドは、最大20のカチオン(例えば、20のナトリウムカチオン)を有する塩として提供され得る。同様に、長さ21ntのセンス鎖と長さ23ntのアンチセンス鎖とを有するRNAi剤は、最大42のカチオン(例えば、42のナトリウムカチオン)を有する塩として提供され得る。前述の実施例では、RNAi剤はまた、5’末端のホスフェート基または5’末端のビニルホスホネート基も含み、RNAi剤は、最大44のカチオン(例えば、44のナトリウムカチオン)を有する塩として提供され得る。
【0085】
本発明はさらに、細胞、SGLT2遺伝子の発現を阻害するための医薬組成物、および本発明のdsRNA剤を含む脂質製剤を含む医薬組成物を提供する。
【0086】
一態様では、本発明は、細胞内でSGLT2遺伝子の発現を阻害する方法を提供する。本方法は、細胞を、本発明のdsRNA剤、または本発明の医薬組成物と接触させることと、工程(a)で産生された細胞をSGLT2遺伝子のmRNA転写物の分解を得るのに十分な時間の間維持し、それによって細胞内においてSGLT2遺伝子の発現を阻害することとを含む。
【0087】
一実施形態では、細胞は、例えば、ヒト対象、例えば、痛風または糖尿病などの、SGLT2関連障害を有するヒト対象、である対象内にある。
【0088】
一実施形態では、SGLT2遺伝子の発現は、少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%阻害される。
【0089】
一態様では、本発明は、SGLT2発現の減少から利益を得るであろう障害がある対象を治療する方法を提供する。この方法は、本発明のdsRNAのいずれかまたは本発明の医薬組成物のいずれかの治療有効量を対象に投与し、それによってSGLT2発現の減少から利益を得るであろう障害がある対象を治療することを含む。
【0090】
別の態様では、本発明は、SGLT2発現の減少から利益を得るであろう障害がある対象における少なくとも一つの症状を予防する方法を提供する。この方法は、本発明のdsRNAのいずれかまたは本発明の医薬組成物のいずれかの予防的な有効量を対象に投与し、それによってSGLT2発現の減少から利益を得るであろう障害がある対象における少なくとも一つの症状を予防することを含む。
【0091】
特定の実施形態では、障害はSGLT2関連障害である。
【0092】
一部の実施形態では、SGLT2関連障害は、痛風である。
【0093】
一部の実施形態では、SGLT2関連障害が、炭水化物の障害、例えば、糖尿病、I型糖尿病、II型糖尿病、ガラクトース血症、遺伝性フルクトース不耐症、フルクトース1,6-ジホスファターゼ欠損症、グリコーゲン蓄積障害、先天性グリコシル化障害、インスリン抵抗性、インスリン不足、高インスリン血症、耐糖能障害(IGT)、異常なグリコーゲン代謝;アミノ酸代謝の障害、例えば、メープルシロップ尿疾患(MSUD)、またはホモシスチン尿症;有機酸代謝の障害、例えば、メチルマロン酸性尿症、3-メチルグルタコン酸性尿症-バース症候群、グルタル酸性尿症または2-ヒドロキシグルタル酸性尿症-DおよびL形態;脂肪酸ベータ酸化の障害、例えば、中鎖アシル-CoA脱水素酵素欠損症(MCAD)、長鎖3-lヒドロキシアシル-CoA脱水素酵素欠損症(LCHAD)、極長鎖アシル-CoA脱水素酵素欠損症(VLCAD)、脂質代謝の障害、例えば、GM1ガングリオシドーシス、テイ・サックス病、サンドホフ病、ファブリー病、ゴーシェ病、ニーマン・ピック病、クラッベ病、ムコリピドーシス、またはムコ多糖症;ミトコンドリア障害、例えば、ミトコンドリア心筋症;リー病;ミトコンドリア脳症、乳酸アシドーシス、および脳卒中様エピソード(MELAS);ラグドレッド線維を有するミオクローヌスてんかん(MERRF);神経障害、運動失調症、および網膜色素変性症(NARP);バース症候群;またはペルオキシソーム障害、例えば、ツェルヴェーガー症候群(脳肝腎症候群)、X連鎖副腎白質ジストロフィーまたはレフサム病、からなる群から選択される代謝疾患である。
【0094】
一部の実施形態では、SGLT2関連疾患は、糖尿病である。一部の実施形態では、SGLT2関連疾患は、II型糖尿病である。
【0095】
一実施形態では、対象はヒトである。
【0096】
一実施形態では、対象へのdsRNA剤の投与は、対象におけるSGLT2タンパク質蓄積の減少を引き起こす。一部の実施形態では、dsRNA剤の投与は、対象の血中グルコース値および/または尿酸値の低減をもたらす。
【0097】
一実施形態では、dsRNA剤は、約0.01mg/kg~約50mg/kgの用量で対象に投与される。
【0098】
一部の実施形態では、二本鎖RNAi剤は、対象に経口投与される。
【0099】
一部の実施形態では、二本鎖RNAi剤は、対象に皮下投与される。
【0100】
一実施形態では、二本鎖RNAi剤は、静脈内投与される。
【0101】
特定の実施形態では、RNAi剤は、一つまたは複数の組織または細胞型、例えば、肝臓または腎臓によってさらに取り込まれる。
【0102】
一実施形態では、方法は、対象からの試料中のSGLT2のレベルを決定することさらに含む。一部の実施形態では、対象試料中のSGLT2レベルは、血液または血清試料中のSGLT2タンパク質レベルである。
【0103】
一実施形態では、方法は、追加の薬剤またはSGLT2関連障害の治療もしくは予防に適した療法を、対象に投与することをさらに含む。
【0104】
一実施形態では、追加の治療剤は、真性糖尿病治療剤、糖尿病性合併症治療剤、心血管疾患治療剤、抗高脂血症剤、降圧剤または抗高血圧剤、抗肥満剤、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)治療剤、化学療法剤、免疫療法剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、抗脂肪症剤、抗線維化剤、免疫調節剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗線維化剤、および前述のいずれかの組み合わせを含む群から選択される。
【0105】
本発明はまた、本発明のdsRNAのいずれか、または本発明の医薬組成物のいずれか、および随意に、使用説明書を含むキットを提供する。一実施形態では、本発明は、細胞内のSGLT2の発現を阻害するのに有効な量で、細胞を本発明の二本鎖RNAi剤と接触させることによって、細胞内のSGLT2遺伝子の発現を阻害する方法を実施するためのキットを提供する。キットは、RNAi剤と、使用説明書を含み、随意に、RNAi剤を対象に投与するための手段を含む。
【0106】
本発明は、以下の詳細な説明によってさらに示される。
【発明を実施するための形態】
【0107】
本発明は、SGLT2遺伝子のRNA転写物のRNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)媒介性の切断をもたらすiRNA組成物を提供する。SGLT2遺伝子は、細胞内に、例えば、ヒトなどである対象内の細胞内にあり得る。これらiRNAの使用は、哺乳動物における対応する遺伝子(SGLT2遺伝子)のmRNAの標的化された分解を可能にする。
【0108】
本発明のiRNAは、ヒトSGLT2遺伝子を、他の哺乳動物種のSGLT2オーソログにおいて保存される遺伝子の一部分を含め、標的化するように設計されている。理論に制限されることを意図するものではないが、前述の特徴およびこれらiRNAにおける特定の標的部位または特定の修飾の組み合わせまたは下位の組み合わせが、本発明のiRNAの有効性、安定性、効力、耐久性、および安全性を向上させると考えられる。
【0109】
したがって、SGLT2遺伝子のRNA転写物のRNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)媒介性切断をもたらすiRNA組成物を用いて、本発明は、SGLT2関連障害、例えば、痛風または糖尿病を治療および予防するための方法を提供する。
【0110】
本発明のiRNAは、長さが最大約30ヌクレオチド以下、例えば、15~30、15~29、15~28、15~27、15~26、15~25、15~24、15~23、15~22、15~21、15~20、15~19、15~18、15~17、18~30、18~29、18~28、18~27、18~26、18~25、18~24、18~23、18~22、18~21、18~20、19~30、19~29、19~28、19~27、19~26、19~25、19~24、19~23、19~22、19~21、19~20、20~30、20~29、20~28、20~27、20~26、20~25、20~24、20~23、20~22、20~21、21~30、21~29、21~28、21~27、21~26、21~25、21~24、21~23、または21~22のヌクレオチドの長さの領域を有するRNA鎖(アンチセンス鎖)を含み、その領域は、SGLT2遺伝子のmRNA転写物の少なくとも一部に対し実質的に相補的である。
【0111】
特定の実施形態では、本発明の二本鎖RNAi剤の一方の鎖または両方の鎖は、長さが最大66ヌクレオチド、例えば長さが36~66、26~36、25~36、31~60、22~43、27~53ヌクレオチドの長さであり、SGLT2遺伝子のmRNAの少なくとも一部に対して実質的に相補的である少なくとも19の連続するヌクレオチドの領域を伴う。一部の実施形態では、より長いアンチセンス鎖を有するこうしたiRNA剤は、例えば、長さが20~60ヌクレオチドの第二のRNA鎖(センス鎖)を含み得、この場合、センス鎖およびアンチセンス鎖は、18~30の連続するヌクレオチドの二本鎖を形成する。
【0112】
本発明のiRNAの使用により、哺乳動物におけるSGLT2mRNAの標的化された分解が可能になる。したがって、これらのiRNAを含む方法および組成物は、SGLT2関連障害、例えば、痛風もしくは糖尿病(例えば、II型糖尿病)を有する対象を治療するために、または痛風もしくは糖尿病を発症するリスクがある対象を治療するために有用である。
【0113】
したがって、本発明は、SGLT2遺伝子のRNA転写物のRNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)媒介性の切断を行うiRNA組成物を使用して、SGLT2遺伝子の発現を阻害または減少させることで恩恵を受けることとなる障害、例えばSGLT2関連疾患、例えば、痛風やII型糖尿病などの糖尿病など、を有する対象を治療する方法および併用療法を提供する。
【0114】
本発明はまた、SGLT2遺伝子、例えば、痛風やII型糖尿病などの糖尿病の発現を阻害または減少させることにより恩恵を受けることとなる障害、例えば血栓症に関連する障害、がある対象において、少なくとも一の症状を予防する方法も提供する。
【0115】
一態様では、本発明は、請求項1~70のいずれか一項に記載のdsRNA剤を含むRISC複合体を提供する。
【0116】
以下の発明の詳細な説明は、SGLT2遺伝子の発現を阻害するiRNAを含有する組成物を作製および使用する方法、ならびにSGLT2遺伝子の発現の阻害および/または減少から利益を得るであろう対象、例えば、SGLT2関連障害に感受性があるまたはそれと診断される対象を治療する組成物、使用、および方法を開示している。
【0117】
I.定義
本発明がより容易に理解できるように、特定の用語を、最初に定義する。加えて、パラメータの値または値の範囲が列記される場合にはいつでも、その列記された値の中間の値および範囲もまた、本発明の一部であることを意図していることを意図するものであるということに留意されたい。
【0118】
冠詞「a」および「an」は、本明細書において、冠詞の文法上の対象の一つまたは二つ以上(すなわち、少なくとも一つ)を意味するために使用する。例えば、「ある要素(an element)」は、一つの要素または二つ以上の要素、例えば、複数の要素を意味する。
【0119】
用語「~を含むこと(including)」は、語句「~を含むが、これらに限定されない(including but not limited to)」を意味するために本明細書において使用され、また当該語句と区別なく使用する。
【0120】
用語「または」は、文脈において別途明示しない限り、用語「および/または」を意味するために本明細書において使用され、また当該用語と区別なく使用する。
【0121】
用語「約」は、当技術分野において、典型的な許容誤差の範囲内であることを意味するために本明細書で使用する。例えば、「約」は、平均から約2の標準偏差として理解され得る。特定の実施形態では、約は、±10%を意味する。特定の実施形態では、約は、±5%を意味する。一連の数字または範囲の前に約がある場合、「約」は、その連続する数字または範囲のそれぞれを修飾し得ることが理解される。
【0122】
ある数字または連続する数字の前にある用語「少なくとも」、「以上」または「またはそれ以上」は、文脈から明白な場合、用語「少なくとも」に隣接する数字、および論理的に含まれ得るそれに続く全ての数字または整数を含むことが理解される。例えば、ある核酸分子内のヌクレオチドの数は、整数であるはずである。例え ば、「21ヌクレオチド核酸分子の少なくとも18ヌクレオチド」は、18、19、20 、または21ヌクレオチドが、示された特性を有することを意味する。連続する数字または範囲の前に少なくともがある場合、「少なくとも」は、その連続する数字または範囲のそれぞれを修飾し得ることが理解される。
【0123】
本明細書において使用する場合、「~以下」または「またはそれ以下」は、その語句に隣接する値と、文脈から論理的である場合はゼロまでのその値より論理的により小さい値または整数として理解される。例えば、「2ヌクレオチド以下」のオーバーハングを有する二本鎖は、2、1、または0ヌクレオチドオーバーハングを有する。連続する数字または範囲の前に「~以下」がある場合、「~以下」は、その連続する数字または範囲のそれぞれを修飾し得ることが理解される。本明細書において使用する場合、範囲は、上限および下限の両方を含む。
【0124】
本明細書において使用する場合、検出の方法は、存在する分析物の量がその方法の検出レベルを下回る判定を含み得る。
【0125】
示した標的部位と、センス鎖またはアンチセンス鎖に関するヌクレオチド配列と矛盾する場合には、示した配列を優先する。
【0126】
転写物または他の配列上の配列とその示した部位とが一致しない場合には、本明細書において列挙したヌクレオチド配列を優先する。
【0127】
本明細書で使用される場合、「ナトリウム-グルコース共輸送体2」(「SGLT2」)という用語は、当技術分野では、溶質担体ファミリー5メンバー2、SLC5A2、および低親和性ナトリウム-グルコース共輸送体としても知られる、周知の遺伝子およびポリペプチドを指す。SGLT2は、ナトリウム依存性グルコース輸送タンパク質であるナトリウムグルコース共輸送体ファミリーのメンバーである。SGLT2は、腎臓におけるグルコース再吸収に関与する主要な共輸送体である。
【0128】
「SGLT2」という用語としては、ヒトSGLT2であって、そのアミノ酸およびヌクレオチド配列は、例えばGenBank登録番号NM_003041.4(GI:1519244485、配列番号1)で見られ得るヒトSGLT2;マウスSGLT2であって、そのアミノ酸およびヌクレオチド配列は、例えばGenBank登録番号NM_133254.5(GI:1685839526、配列番号2)で見られ得るマウスSGLT2、およびラットSGLT2であって、そのアミノ酸およびヌクレオチド配列は、例えばGenBank寄託番号 NM_022590.2(GI:78486543、配列番号:3)で見られ得るラットSGLT2、が挙げられる。
【0129】
「SGLT2」という用語はまた、Macaca mulatta SGLT2を含み、そのアミノ酸配列およびヌクレオチド配列は、例えば、GenBank登録番号XM_015126028.2(GI:1622915477、配列番号4)およびMacaca fascicularis SGLT2に見出され得、そのアミノ酸配列およびヌクレオチド配列は、例えば、GenBank登録番号XM_005591767.2(GI:982318456、配列番号5)に見出され得る。
【0130】
SGLT2のmRNA配列のさらなる例としては、例えば、GenBank、UniProt、OMIM、およびMacacaゲノムプロジェクトウェブサイトを使用して容易に入手可能である。
【0131】
例示的なSGLT2ヌクレオチド配列はまた、配列番号1~10に見られ得る。配列番号6~10はそれぞれ、配列番号1~5の逆相補的配列である。
【0132】
SGLT2に関する詳細情報は、例えば、NCBI遺伝子データベースに提供されているhttps://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/1803。
【0133】
先述のGenBank登録番号および遺伝子データベース番号のそれぞれの内容全体は、本願出願日の時点で参照により本明細書に組み込まれる。
【0134】
本明細書において使用する場合、用語「ナトリウム-グルコース共輸送体2」および「SGLT2」はまた、SGLT2遺伝子の天然由来のDNA配列バリエーションを指す。SGLT2遺伝子内の多数の配列バリエーションは特定されており、例えば、NCBI dbSNPおよびUniProtにおいて見出され得(例えば、https://www.ncbi.nlm.nih.gov/snp/?term=SGLT2を参照)、その内容全体が本願出願日の時点で参照により本明細書に組み込まれる。
【0135】
本明細書において使用する場合、「標的配列」は、例えば一次転写産物のRNAプロセシングの産物であるmRNAなどである、SGLT2遺伝子の転写中に形成されるmRNA分子のヌクレオチド配列における連続する部分を意味する。一実施形態では、配列の標的部分は、少なくとも、SGLT2遺伝子の転写中に形成されるmRNA分子のヌクレオチド配列の一部分において、またはその近傍におけるRNAi依存性の切断のための基質として機能するのに十分な長さであることとなる。一実施形態では、標的配列は、SGLT2遺伝子のタンパク質コード領域内にある。別の実施形態では、標的配列は、SGLT2遺伝子の3’UTR内にある。
【0136】
標的配列は、長さが約9~36ヌクレオチド、例えば、長さが約15~30ヌクレオチドであり得る。例えば、標的配列は、長さが約15~30ヌクレオチド、15~29、15~28、15~27、15~26、15~25、15~24、15~23、15~22、15~21、15~20、15~19、15~18、15~17、18~30、18~29、18~28、18~27、18~26、18~25、18~24、18~23、18~22、18~21、18~20、19~30、19~29、19~28、19~27、19~26、19~25、19~24、19~23、19~22、19~21、19~20、20~30、20~29、20~28、20~27、20~26、20~25、20~24、20~23、20~22、20~21、21~30、21~29、21~28、21~27、21~26、21~25、21~24、21~23、または21~22ヌクレオチドの長さであり得る。一部の実施形態では、標的配列は、長さが約19~約30ヌクレオチドである。他の実施形態では、標的配列は、長さが約19~約25ヌクレオチドである。さらに他の実施形態では、標的配列は、長さが約19~約23ヌクレオチドである。一部の実施形態では、標的配列は、長さが約21~約23ヌクレオチドである。上記に列記した範囲および長さの間に存在する範囲および長さもまた、本発明の一部であることを意図している。
【0137】
本明細書において使用する場合、用語「配列を含む鎖」は、標準的なヌクレオチドの用語体系を使用して言及される配列によって説明するヌクレオチドの鎖を含むオリゴヌクレオチドを指す。
【0138】
概して、「G」、「C」、「A」、「T」および「U」のそれぞれが、塩基としてのグアニン、シトシン、アデニン、チミジン、およびウラシルをそれぞれ含むヌクレオチドを表す。しかしながら、用語「リボヌクレオチド」または「ヌクレオチド」は、以下においてより詳述されるような修飾ヌクレオチド、または代替置換部分(例えば、表1を参照)も指し得ることは理解されよう。当業者は、グアニン、シトシン、アデニン、およびウラシルは、そのような置換部分を有するヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドの塩基対合特性を実質的に変えることなく、他の部分で置換することができることを十分に認識している。cDNA配列が提供される場合、対応するmRNAまたはRNAi剤は、Tの代わりにUを含むことが理解される。例えば、その塩基としてイノシンを含むヌクレオチドは、アデニン、シトシン、またはウラシルを含有するヌクレオチドと塩基対形成することができるが、これらに限定されない。したがって、ウラシル、グアニンまたはアデニンを含むヌクレオチドは、本発明で取り上げるdsRNAのヌクレオチド配列において、例えばイノシンを含むヌクレオチドで、置換することができる。別の例では、オリゴヌクレオチド内のいずれの箇所にあるアデニンおよびシトシンも、標的mRNAとのG-Uゆらぎ塩基対を形成するために、それぞれグアニンおよびウラシルで置換することができる。そのような置換部分を含む配列は、本発明で取り上げる組成物および方法に好適である。さらに、当業者は、Tが標的遺伝子配列またはその逆相補であり、本発明のRNAi剤中においてしばしばUで置換されるであろうことを、理解するであろう。
【0139】
本明細書において互換的に使用する、用語「iRNA」、「RNAi剤」、「iRNA剤」、「RNA干渉剤」は、本明細書において用語が定義されるRNAを含有し、かつRNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)経路を介してRNA転写物の標的切断を媒介する、薬剤を指す。RNA干渉(RNAi)は、mRNAの配列特異的分解を司るプロセスである。RNAiは、細胞内の、例えば哺乳動物対象などの対象内の細胞内におけるSGLT2遺伝子の発現を調節、例えば阻害する。
【0140】
一実施形態では、本開示のRNAi剤は、標的RNAの切断を司るために、標的RNA配列、例えば、SGLT2mRNA配列と相互作用する一本鎖RNAiを含む。理論に拘束されることを望むものではないが、細胞内に導入される長い二本鎖RNAは、Dicerとして知られるIII型エンドヌクレアーゼによって、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む二本鎖低分子干渉RNA(siRNA)へと分解されると考えられる(Sharp et al.(2001)Genes Dev.15:485)。DicerであるリボヌクレアーゼIII様酵素は、これらdsRNAを、特徴的な二つの塩基の3’オーバーハングを有する19~23塩基対の低分子干渉RNAへとプロセシングする(Bernstein,et al.,(2001)Nature 409:363)。その後これらsiRNAは、RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)に組み込まれ、そこで一つまたは複数のヘリカーゼがsiRNA二本鎖を解き、それによって相補的アンチセンス鎖に対して標的認識を誘導することが可能になる(Nykanen,et al.,(2001)Cell 107:309)。適切な標的mRNAに結合すると、RISC内の一つまたは複数のエンドヌクレアーゼは、標的を切断してサイレンシングを誘導する(Elbashir,et al.,(2001)Genes Dev.15:188)。すなわち、一態様では、本開示は、細胞内において生成されて、かつRISC複合体の形成を促進して標的遺伝子のサイレンシングを行うものである、一本鎖RNA(ssRNA)(siRNA二本鎖のアンチセンス鎖)に関する。したがって、用語「siRNA」は、上記において説明したRNAiも意味するために本明細書において使用される。
【0141】
別の実施形態では、RNAi剤は、標的mRNAを阻害するために細胞または有機体に導入された一本鎖RNAであり得る。一本鎖RNAi剤は、RISCエンドヌクレアーゼであるアルゴノート2に結合し、それは次いで、標的mRNAを切断する。一本鎖siRNAは、概して、15~30ヌクレオチドであり、化学的に修飾されている。一本鎖RNAの設計および試験は、米国特許第8,101,348号およびLima et al.,(2012)Cell 150:883-894に記載されており、そのそれぞれの内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書において記載するアンチセンスヌクレオチド配列はいずれも、本明細書において記載する一本鎖siRNAとして、またはLima et al.,(2012)Cell 150:883-894に記載される方法によって化学的に修飾されるような一本鎖siRNAとして使用され得る。
【0142】
別の実施形態では、本開示の組成物および方法で使用する「RNAi剤」は、二本鎖RNAであり、また本明細書において「二本鎖RNAi剤」、「二本鎖RNA(dsRNA)分子」、「dsRNA剤」、または「dsRNA」と呼ばれる。用語「dsRNA」は、標的RNA、すなわちSGLT2のmRNA遺伝子に関して「センス」または「アンチセンス」配向を有するとして言及する、二本の逆平行の実質的に相補的な核酸鎖を含む二本鎖構造を有するリボ核酸分子の複合体を指す。本開示の一部の実施形態では、二本鎖RNA(dsRNA)が、本明細書においてRNA干渉またはRNAiと称する転写後遺伝子サイレンシング機序を経て、標的RNAの、例えば、mRNAの分解を誘発する。
【0143】
概して、dsRNA分子は、リボヌクレオチドを含むことができるが、本明細書において詳細に説明されるように、それぞれの鎖または両方の鎖は、一つまたは複数の非リボヌクレオチド、例えば、デオキシリボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、も含み得る。加えて、本明細書において使用する場合、「RNAi剤」は、化学修飾を有するリボヌクレオチドを含み得、RNAi剤は、複数のヌクレオチドにおける実質的な修飾を含み得る。
【0144】
本明細書において使用する場合、用語「修飾ヌクレオチド」は、修飾糖部分、修飾ヌクレオチド間連結、または修飾核酸塩基を独立して有するヌクレオチドを指す。したがって、修飾ヌクレオチドなる用語は、ヌクレオシド間連結、糖部分、または核酸塩基に対する、例えば、官能基または原子などの置換、付加、または除去を包含する。本開示の薬剤における使用に好適な修飾は、本明細書において開示する修飾または当技術分野で公知の修飾の全てのタイプを包む。siRNAタイプの分子において使用する、任意のそのような修飾は、本明細書および特許請求の範囲の目的のために「RNAi剤」によって包含される。
【0145】
本開示の特定の実施形態では、ヌクレオチドの天然の形態として認識されているものであるデオキシ-ヌクレオチドを包含することが、それがRNAi剤内に存在する場合には、修飾ヌクレオチドを構成していると見なすことができる。
【0146】
二本鎖領域は、RISC経路を介して所望の標的RNAの特異的分解を可能にする任意の長さであってもよく、約9~36塩基対の長さ、例えば、約15~30塩基対の長さ、例えば、約9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、または36塩基対の長さ、例えば、約15~30、15~29、15~28、15~27、15~26、15~25、15~24、15~23、15~22、15~21、15~20、15~19、15~18、15~17、18~30、18~29、18~28、18~27、18~26、18~25、18~24、18~23、18~22、18~21、18~20、19~30、19~29、19~28、19~27、19~26、19~25、19~24、19~23、19~22、19~21、19~20、20~30、20~29、20~28、20~27、20~26、20~25、20~24、20~23、20~22、20~21、21~30、21~29、21~28、21~27、21~26、21~25、21~24、21~23、または21~22塩基対の長さの範囲であってもよい。上記に列記した範囲および長さの間に存在する範囲および長さもまた、本発明の一部であることを意図している。
【0147】
二本鎖構造を形成する二本の鎖は、一つのより大きいRNA分子にのうちの異なる部分であり得るか、またはそれらは、別個のRNA分子であり得る。二本の鎖が、一つのより大きい分子のうちの部分であり、そのために二本鎖構造を形成する一方の鎖の3’末端とそれに対応するもう一方の鎖の5’末端との間にある中断されないヌクレオチドの鎖でつながっている場合、その接続しているRNA鎖は、「ヘアピンループ」と呼ばれる。ヘアピンループは、少なくとも一つの不対のヌクレオチドを含み得る。一部の実施形態では、ヘアピンループは、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも23またはそれ以上の、不対のヌクレオチドまたはdsRNAの標的部位に向けられないヌクレオチドを含み得る。一部の実施形態では、ヘアピンループは、10以下のヌクレオチドであり得る。一部の実施形態では、ヘアピンループは、8以下の不対のヌクレオチドであり得る。一部の実施形態では、ヘアピンループは、4~10の不対のヌクレオチドであり得る。一部の実施形態では、ヘアピンループは、4~8のヌクレオチドであり得る。
【0148】
特定の実施形態では、二本鎖オリゴマー化合物の二本の鎖が、互いに連結し得る。この二本の鎖は、両端において、または一端のみにおいて、互いに連結し得る。一端で連結するということは、第一の鎖の5’末端が第二の鎖の3’末端に連結されていること、または第一の鎖の3’末端が第二の鎖の5’末端に連結されていることを意味する。二本の鎖が両端で互いに連結している場合は、第一の鎖の5’末端が第二の鎖の3’末端に連結され、また第一の鎖の3’末端が第二の鎖の5’末端に連結されている。二本の鎖は、(N)nを含むがこれに限定されないオリゴヌクレオチドリンカーによって一緒に連結され得、式中、Nは独立に修飾ヌクレオチドまたは未修飾ヌクレオチドであり、またnは3~23である。一部の実施形態では、nは3~10であり、例えば、3、4、5、6、7、8、9、または10である。一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドリンカーは、GNRA、(G)4、(U)4、および(dT)4からなる群から選択されるものであり、式中Nは、修飾ヌクレオチドまたは未修飾ヌクレオチドであり、またRは、修飾プリンヌクレオチドまたは未修飾プリンヌクレオチドである。リンカー中のヌクレオチドの一部は、リンカー中の他のヌクレオチドとの塩基対相互作用に関与し得る。二本の鎖はまた、非ヌクレオシドのリンカーによって、例えば、本明細書に記載するリンカーによって、一緒に連結され得る。当業者であれば、本明細書に記載するいずれかのオリゴヌクレオチドの化学修飾またはバリエーションを、オリゴヌクレオチドリンカーで使用できることを理解するであろう。
【0149】
ヘアピンオリゴマー化合物およびダンベル型オリゴマー化合物は、14、15、15、16、17、18、19、29、21、22、23、24、もしくは25のヌクレオチド対と同等の、または少なくとも14、15、15、16、17、18、19、29、21、22、23、24、もしくは25のヌクレオチド対の二本鎖領域を有することとなる。二本鎖領域は、長さが200、100、または50以下であり得る。一部の実施形態では、二本鎖領域の範囲は、長さが15~30、17~23、19~23、および19~21ヌクレオチド対である。
【0150】
ヘアピンオリゴマー化合物は、一部の実施形態では3’に、また一部の実施形態ではヘアピンのアンチセンス側上に、一本鎖のオーバーハングまたは末端非対領域を有し得る。一部の実施形態では、オーバーハングは、長さが1~4ヌクレオチド、より広くは2~3ヌクレオチドである。RNA干渉を誘発することができるヘアピンオリゴマー化合物は、本明細書では「shRNA」とも称する。
【0151】
dsRNAの実質的に相補的な二本の鎖が、別個のRNA分子で構成される場合、それら分子は必ずしもそうではないが、共有結合で結合することができる。二本の鎖が、二本鎖構造を形成する一方の鎖の3’末端とそれに対応するもう一方の鎖の5’末端との間にある中断されないヌクレオチドの鎖とは異なる手段で共有結合によりつながっている場合、その接続している構造を「リンカー」と称する。RNA鎖は、同数または異なる数のヌクレオチドを有し得る。塩基対の最大数は、dsRNAの最も短い鎖にあるヌクレオチドの数から二本鎖内に存在するあらゆるオーバーハングを引いた数である。二本鎖構造に加えて、RNAiは、一つまたは複数のヌクレオチドオーバーハングを含み得る。
【0152】
一実施形態では、本発明のRNAi剤はdsRNAであり、その各鎖は、標的RNA配列、例えば、SGLT2のmRNA配列と相互作用して標的RNAの切断を誘導する24~30ヌクレオチドの長さである。理論に束縛されることを望むものではないが、細胞内に導入された長い二本鎖RNAは、Dicerとして知られるIII型エンドヌクレアーゼによって、siRNAへと分解される(Sharp et al.(2001)Genes Dev.15:485)。DicerであるリボヌクレアーゼIII様酵素は、このdsRNAを、特徴的な二つの塩基の3’オーバーハングを有する19~23塩基対の低分子干渉RNAへとプロセシングする(Bernstein,et al.,(2001)Nature 409:363)。その後siRNAは、RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)に組み込まれ、そこで一つまたは複数のヘリカーゼがsiRNA二本鎖を解き、それによって相補的アンチセンス鎖に対して標的認識を誘導することが可能になる(Nykanen,et al.,(2001)Cell 107:309)。適切な標的mRNAに結合すると、RISC内の一つまたは複数のエンドヌクレアーゼは、標的を切断してサイレンシングを誘導する(Elbashir,et al.,(2001)Genes Dev.15:188)。
【0153】
一実施形態では、本発明のRNAi剤はdsRNA剤であり、その各鎖は、SGLT2のmRNA配列と相互作用して標的RNAの切断を誘導する19~23ヌクレオチドを含む。理論に束縛されることを望むものではないが、細胞内に導入された長い二本鎖RNAは、Dicerとして知られるIII型エンドヌクレアーゼによって、siRNAへと分解される(Sharp et al.(2001)Genes Dev.15:485)。DicerであるリボヌクレアーゼIII様酵素は、このdsRNAを、特徴的な二つの塩基の3’オーバーハングを有する19~23塩基対の低分子干渉RNAへとプロセシングする(Bernstein,et al.,(2001)Nature 409:363)。その後siRNAは、RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)に組み込まれ、そこで一つまたは複数のヘリカーゼがsiRNA二本鎖を解き、それによって相補的アンチセンス鎖に対して標的認識を誘導することが可能になる(Nykanen,et al.,(2001)Cell 107:309)。適切な標的mRNAに結合すると、RISC内の一つまたは複数のエンドヌクレアーゼは、標的を切断してサイレンシングを誘導する(Elbashir,et al.,(2001)Genes Dev.15:188)。一実施形態では、本発明のRNAi剤は、SGLT2のmRNA配列と相互作用して標的RNAの切断を誘導する24~30ヌクレオチドのdsRNAである。
【0154】
本明細書において使用する場合、用語「ヌクレオチドオーバーハング」は、RNAi剤、例えば、dsRNAの二本鎖構造から突出する少なくとも一つの不対ヌクレオチドを指す。例えば、dsRNAの一方の鎖の3’末端が、もう一方の鎖の5’末端を越えて延びる場合、またはその逆の場合も同様に、ヌクレオチドオーバーハングが存在する。dsRNAは、少なくとも一つのヌクレオチドのオーバーハングを含み得、あるいは該オーバーハングは、少なくとも二つのヌクレオチド、少なくとも三つのヌクレオチド、少なくとも四つのヌクレオチド、少なくとも五つのヌクレオチド、またはそれ以上を含み得る。ヌクレオチドオーバーハングは、デオキシヌクレオチド/ヌクレオシドなどであるヌクレオチド/ヌクレオシド類似体を含み得るかまたは該類似体からなり得る。オーバーハングは、センス鎖上、アンチセンス鎖上、またはそれらのいずれかの組合せ上にあり得る。さらに、あるオーバーハングのヌクレオチドは、dsRNAのアンチセンス鎖またはセンス鎖のいずれかの5’末端、3’末端、または両末端上に存在し得る。
【0155】
dsRNAの一実施形態では、少なくとも一方の鎖が、少なくとも1ヌクレオチドの3’オーバーハングを含む。別の実施形態では、少なくとも一方の鎖が、少なくとも2ヌクレオチドの、例えば、2、3、4、5、6、7、9、10、11、12、13、14、または15ヌクレオチドの、3’オーバーハングを含む。他の実施形態では、RNAi剤の少なくとも一方の鎖が、少なくとも1ヌクレオチドの5’オーバーハングを含む。特定の実施形態では、少なくとも一方の鎖が、少なくとも2ヌクレオチドの、例えば、2、3、4、5、6、7、9、10、11、12、13、14、または15ヌクレオチドの、5’オーバーハングを含む。さらに他の実施形態では、RNAi剤の一方の鎖の3’末端および5’末端の両方が、少なくとも1ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【0156】
一実施形態では、dsRNAのアンチセンス鎖が、3’末端または5’末端において1~10ヌクレオチドの、例えば、0~3、1~3、2~4、2~5、4~10、5~10、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10ヌクレオチドの、オーバーハングを有する。一実施形態では、dsRNAのセンス鎖が、3’末端または5’末端において1~10ヌクレオチドの、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10ヌクレオチドの、オーバーハングを有する。別の実施形態では、オーバーハング内のヌクレオチドの一つまたは複数が、ヌクレオシドチオホスフェートで置換される。
【0157】
特定の実施形態では、センス鎖もしくはアンチセンス鎖、またはその両方の上のオーバーハングは、10ヌクレオチドより長い伸長した長さを含み得、例えば、長さが1~30ヌクレオチド、2~30ヌクレオチド、10~30ヌクレオチド、または10~15ヌクレオチドである。特定の実施形態では、伸長したオーバーハングは、二本鎖のセンス鎖上にある。特定の実施形態では、伸長したオーバーハングは、二本鎖のセンス鎖の3’末端上に存在する。特定の実施形態では、伸長したオーバーハングは、二本鎖のセンス鎖の5’末端上に存在する。特定の実施形態では、伸長したオーバーハングは、二本鎖のアンチセンス鎖上にある。特定の実施形態では、伸長したオーバーハングは、二本鎖のアンチセンス鎖の3’末端上に存在する。特定の実施形態では、伸長したオーバーハングは、二本鎖のアンチセンス鎖の5’末端上に存在する。特定の実施形態では、オーバーハングにおけるヌクレオチドの一つまたは複数は、ヌクレオシドチオホスフェートで置換される。特定の実施形態では、オーバーハングは、オーバーハングが生理学的条件下において安定なヘアピン構造を形成することができるような自己相補性部分を含む。
【0158】
用語「平滑」または「平滑末端」は、dsRNAに関して本明細書において使用する場合、dsRNAの所定の末端において不対ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体が存在しない、すなわち、ヌクレオチドオーバーハングが存在しないことを意味する。dsRNAの一方の末端または両末端が、平滑であり得る。dsRNAの両末端が平滑である場合、dsRNAは、平滑末端であると言う。明瞭化のため、「平滑末端」のdsRNAは、両末端が平滑であるdsRNA、すなわち、分子のどちらの末端にもヌクレオチドオーバーハングが存在しないdsRNAである。ほとんどの場合、こうした分子は、その全長にわたって二本鎖となることとなる。
【0159】
用語「アンチセンス鎖」または「ガイド鎖」は、標的配列、例えばSGLT2のmRNA配列に対して実質的に相補的である領域を含むiRNAの鎖、例えばdsRNAを指す。
【0160】
本明細書において使用する場合、用語「相補性の領域」は、本明細書において定義されるように、配列、例えば標的配列、例えば、SGLT2ヌクレオチド配列に対して実質的に相補的であるアンチセンス鎖上の領域を指す。相補性領域が、標的配列に対して完全に相補的でない場合、そのミスマッチは、分子の内側領域内または末端領域内にあり得る。概して、最も許容できるミスマッチは、末端領域内、例えば、RNAi剤の5’末端または3’末端の5、4、3、または2ヌクレオチドの範囲内にある。
【0161】
一部の実施形態では、本発明の二本鎖RNA剤は、アンチセンス鎖内のヌクレオチドミスマッチを含む。一部の実施形態では、本発明の二本鎖RNA剤のアンチセンス鎖は、標的mRNAとの4以下のミスマッチを含み、例えば、アンチセンス鎖が、標的mRNAとの4、3、2、1、または0のミスマッチを含む。一部の実施形態では、本発明のアンチセンス鎖の二本鎖RNA剤は、センス鎖との4以下のミスマッチを含み、例えば、アンチセンス鎖が、センス鎖との4、3、2、1、または0のミスマッチを含む。一部の実施形態では、本発明の二本鎖RNA剤は、センス鎖内にヌクレオチドミスマッチを含む。一部の実施形態では、本発明の二本鎖RNA剤のセンス鎖は、アンチセンス鎖との4以下のミスマッチを含み、例えば、センス鎖が、アンチセンス鎖との4、3、2、1または0のミスマッチを含む。一部の実施形態では、ヌクレオチドミスマッチは、例えば、iRNAの3’末端から5、4、3ヌクレオチドの範囲内にある。別の実施形態では、ヌクレオチドミスマッチは、例えば、iRNA剤の3’末端ヌクレオチド内にある。一部の実施形態では、ミスマッチは、シード領域にはない。
【0162】
したがって、本明細書において記載するRNAi剤は、標的配列に対する一つまたは複数のミスマッチを含有し得る。一実施形態では、本明細書において記載するRNAi剤は、3以下のミスマッチ(すなわち、3、2、1、または0のミスマッチ)を含有する。一実施形態では、本明細書において記載するRNAi剤は、2以下のミスマッチを含有する。一実施形態では、本明細書において記載するRNAi剤は、1以下のミスマッチを含有する。一実施形態では、本明細書において記載するRNAi剤は、0のミスマッチを含有する。特定の実施形態では、RNAi剤のアンチセンス鎖が、標的配列に対してミスマッチを含有する場合、該ミスマッチは、随意に、相補性領域の5’末端または3’末端のいずれかから最後の5ヌクレオチドの範囲内にあるように制限することができる。例えば、そのような実施形態では、23ヌクレオチドのRNAi剤の場合、SGLT2遺伝子の領域に対して相補的な鎖は、概して、中央の13ヌクレオチドの範囲内にいかなるミスマッチも含まない。本明細書において記載する方法または当技術分野で公知の方法を使用することにより、標的配列に対してミスマッチを含有するRNAi剤が、SGLT2遺伝子の発現の阻害において効果的であるか否かを判定することができる。とりわけ、SGLT2遺伝子における相補性の特定の領域が、変化することがわかっている場合には、SGLT2の発現を阻害するミスマッチを有するRNAi剤の有効性を考慮することが重要である。
【0163】
用語「センス鎖」または「パッセンジャー鎖」は、本明細書において使用する場合、本明細書において用語が定義されるようなアンチセンス鎖の領域に対して実質的に相補的である領域を含むRNAi剤の鎖を意味する。
【0164】
本明細書で使用される場合、「ヌクレオチドの実質的にすべてが修飾されている」は、広く修飾されているが全体が修飾されているものではなく、また5、4、3、2、もしくは1以下であり、または未修飾のヌクレオチドを含み得る。
【0165】
本明細書において使用する場合、用語「切断領域」は、切断部位に直接隣接して位置する領域を指す。切断部位は、切断が生じる箇所である標的上の部位である。一部の実施形態では、切断領域は、切断部位のどちらかの末端における直接隣接している三つの塩基を含む。一部の実施形態では、切断領域は、切断部位のどちらかの末端における直接隣接している二つの塩基を含む。一部の実施形態では、切断部位は、アンチセンス鎖のヌクレオチド10および11によって結合される部位において特異的に生じ、またこの切断領域は、ヌクレオチド11、12、および13を含む。
【0166】
本明細書において使用する場合、特に別段に示さない限り、用語「相補的」は、第二のヌクレオチド配列との関連において第一のヌクレオチド配列を説明するために使用される場合には、当業者によって理解されることとなるとおり、第二のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドと特定の条件下においてハイブリダイズして二本鎖構造を形成する第一のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの能力を指す。かかる条件は、例えば「ストリンジェントな条件」であり得、該ストリンジェントな条件は、400mMのNaCl、40mMのPIPES pH 6.4、1mMのEDTA、50℃または70℃で12~16時間、その後の洗浄を含み得る(例えば、“Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrook,et al.(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照)。生物体内で遭遇し得るような生理学的に関連のある条件などの他の条件を適用することができる。当業者は、ハイブリダイズされたヌクレオチドの最終的な用途に応じて、二つの配列の相補性の試験に最も適切な条件の組を決定することができる。
【0167】
RNAi剤内の、例えば、本明細書において説明されるdsRNA内の相補配列は、一方または両方のヌクレオチド配列の長さ全体にわたって、第二のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドに対する第一のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの塩基対合を含む。かかる配列は、本明細書において、互いに対して「完全に相補的」であると称し得る。しかしながら、本明細書において、第一の配列が第二の配列に対して「実質的に相補的」であるという場合、この二つの配列は、完全に相補的であり得るか、またはそれらはその最終的な用途に、例えば、インビトロまたはインビボで、遺伝子発現の阻害に最も関連した条件下でハイブリダイズする能力を維持しつつ、最大30塩基対の二本鎖についてのハイブリダイゼーションの際に、一つまたは複数であるが、概して5、4、3、または2以下である、ミスマッチ塩基対を形成し得る。しかしながら、二つのオリゴヌクレオチドが、ハイブリダイゼーションの際に一つまたは複数の一本鎖のオーバーハングを形成するように設計される場合には、かかるオーバーハングは、相補性の判定に関してミスマッチとはみなさないものとする。例えば、長さが21ヌクレオチドである一方のオリゴヌクレオチドと、長さが23ヌクレオチドであるもう一方のオリゴヌクレオチドとを含むdsRNAであって、長い方のオリゴヌクレオチドが、短い方のオリゴヌクレオチドに対して完全に相補的である21ヌクレオチドの配列を含むようなdsRNAは、依然として、本明細書において記載する目的に関しては「完全に相補的」と称し得る。
【0168】
「相補的」配列は、本明細書において使用する場合、ハイブリダイズするそれらの能力に関する上記の要件を満足する限り、非ワトソン・クリック塩基対、または非天然の修飾ヌクレオチドから形成された塩基対も含み得るか、または全体的にそれらから形成され得る。かかる非ワトソン・クリック塩基対としては、これらに限定されるものではないが、G:Uウォッブル塩基対またはフーグスティーン塩基対が挙げられる。
【0169】
本明細書における用語「相補的」、「完全に相補的」および「実質的に相補的」は、それらの使用の文脈から理解されることとなるとおり、dsRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖との間、またはRNAi剤のアンチセンス鎖と標的配列などである二つのオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド間における塩基マッチングに関連して使用され得る。
【0170】
本明細書において使用する場合、メッセンジャーRNA(mRNA)または標的配列「の少なくとも一部に対して実質的に相補的」であるポリヌクレオチドは、目的のmRNAまたは標的配列(例えば、SGLT2をコードするmRNA)の連続する部分に対して実質的に相補的であるポリヌクレオチドを指す。例えば、ポリヌクレオチドは、配列が、SGLT2をコードするmRNAの中断されない部分に対して実質的に相補的である場合、SGLT2のmRNAの少なくとも一部に対して相補的である。
【0171】
したがって、一部の実施形態では、本明細書において開示されるアンチセンス鎖ポリヌクレオチドは、標的SGLT2配列に対して完全に相補的である。
【0172】
他の実施形態では、本明細書において開示するアンチセンス鎖ポリヌクレオチドは、標的SGLT2配列に対して実質的に相補的であり、SGLT2についての配列番号1~5のヌクレオチド配列の等価領域対して、または配列番号1~5の断片に対して、その全長にわたって少なくとも約80%相補的、例えば、約85%、86%、87%、88%、89%、約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または約99%相補的である、連続するヌクレオチド配列を含む。
【0173】
他の実施形態では、本明細書において開示するアンチセンスポリヌクレオチドは、標的SGLT2配列に対して実質的に相補的であり、また表2~3のいずれか一つにおけるセンス鎖ヌクレオチド配列のいずれか一つまたは表2~3のいずれか一つにおけるセンス鎖ヌクレオチド配列のうちのいずれか一つの断片に対して、その全長にわたって少なくとも約80%相補的、例えば約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または約99%相補的である連続するヌクレオチド配列を含む。
【0174】
一実施形態では、本開示のRNAi剤は、同様に標的SGLT2配列と同じであるアンチセンスポリヌクレオチドに対して実質的に相補的であるセンス鎖を含み、また該センス鎖ポリヌクレオチドは、配列番号6~10のヌクレオチド配列または配列番号6~10のいずれか一つの断片の同等の領域に対して、その長さ全体にわたって少なくとも約80%相補的、例えば86%、87%、88%、89%、90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約または99%相補的である連続するヌクレオチド配列を含む。
【0175】
一部の実施形態では、本発明のiRNAは、同様に標的SGLT2配列に対して相補的であるアンチセンスポリヌクレオチドに実質的に相補的であるセンス鎖を含み、また該センス鎖ポリヌクレオチドは、表2~3のいずれか一つのうちのいずれか一つにおけるアンチセンス鎖ヌクレオチド配列のいずれか一つ、または表2~3のいずれか一つにおけるアンチセンス鎖ヌクレオチド配列のうちのいずれか一つの断片に対して、その全長にわたって少なくとも約80%相補的、例えば86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または約99%相補的である連続するヌクレオチド配列を含む。
【0176】
一部の実施形態では、二本鎖iRNA剤の二本鎖領域は、長さが、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、23、24、25、26、27、28、29、30またはそれ以上のヌクレオチド対と等しいか、または少なくとも等しい。
【0177】
一部の実施形態では、二本鎖iRNA剤のアンチセンス鎖は、長さが、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチドと等しいか、または少なくとも等しい。
【0178】
一部の実施形態では、二本鎖iRNA剤のセンス鎖は、長さが、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチドと等しいか、または少なくとも等しい。
【0179】
一実施形態では、二本鎖iRNA剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖は、長さが、それぞれ独立して、15~30ヌクレオチドである。
【0180】
一実施形態では、二本鎖iRNA剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖は、長さが、それぞれ独立して、19~25ヌクレオチドである。
【0181】
一実施形態では、二本鎖iRNA剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖は、長さが、それぞれ独立して、21~23ヌクレオチドである。
【0182】
一実施形態では、iRNA剤のセンス鎖は、長さが、21ヌクレオチドであり、またアンチセンス鎖は、長さが、23ヌクレオチドであり、当該鎖は、3’末端に2ヌクレオチド長の一本鎖のオーバーハングを有する21の連続する塩基対の二本鎖領域を形成する。
【0183】
本発明の一態様では、本発明の方法および組成物で使用するための薬剤が、アンチセンス阻害機構を介して標的mRNAを阻害する一本鎖アンチセンス核酸分子である。一本鎖アンチセンスRNA分子は、標的mRNA内の配列に対して相補的である。一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドは、mRNAと塩基対形成し、翻訳機構を物理的に妨害することによって、化学量論的に翻訳を阻害することができる。Dias,N.et al .,(2002)Mol Cancer Ther 1:347-355を参照。一本鎖アンチセンスRNA分子は、約15~約30ヌクレオチド長であってもよく、標的配列に相補的な配列を有してもよい。例えば、一本鎖アンチセンスRNA分子は、本明細書に記載されるアンチセンス配列のいずれか一つから少なくとも約15、16、17、18、19、20、またはそれ以上の連続するヌクレオチドである配列を含んでもよい。
【0184】
一実施形態では、SGLT2遺伝子の発現の少なくとも部分的な抑制は、SGLT2mRNAの量の減少で評価されるものであって、SGLT2遺伝子が転写されており、またSGLT2遺伝子の発現が阻害されるように処理されている第一の細胞または細胞の群から単離することができるか、またはそれらにおいて検出することができる該SGLT2mRNAの量が、第一の細胞または細胞の群と実質的に同一だが第一の細胞または細胞の群のようには処理されていない第二の細胞または細胞の群(対照細胞)と比較して、減少していることによって評価される。阻害の程度は、以下によって表すことができる:
【数1】
【0185】
一実施形態では、発現の阻害は、RNAi剤が10nMで存在する、二重ルシフェラーゼ法によって決定される。
【0186】
dsRNAなどの「細胞をRNAi剤と接触させること」なる語句は、本明細書において使用する場合、任意の可能な手段によって細胞を接触させることを含む。細胞をRNAi剤と接触させることは、細胞をインビトロでRNAi剤と接触させることまたは細胞をインビボでRNAi剤と接触させることを含む。接触させることは、直接的または間接的に行われ得る。したがって、例えば、RNAi剤は、方法を個別に実施することによって、細胞と物理的に接触させ得るか、あるいはRNAi剤は、その後に細胞と接触することを可能にし得るまたは引き起こし得るような状況に置かれ得る。
【0187】
細胞をインビトロで接触させることは、例えば、細胞をRNAi剤と共にインキュベートすることによって行われ得る。細胞をインビボで接触させることは、例えば該細胞が存在している組織内へもしくはその付近にRNAi剤を注入することによって、または別の領域内に、または血流内または皮下腔内にRNAi剤を注入して、その結果、該剤がその後、接触させようとする細胞が存在している組織に到達するようにすることによって、なされ得る。例えば、RNAi剤は、目的の部位、例えば、肝臓または腎臓にRNAi剤を向かわせるかまたはそうでなければ安定化するリガンド、例えば、下記において説明され、例えば、参照によりその全内容が本明細書に組み込まれるPCT公報第WO2019/217459号においてさらに詳述されるような親油性部分、を含み得るかまたはそれにカップリングされ得る。一部の実施形態では、RNAi剤は、対象部位、例えば、肝臓にRNAi剤を向けるか、またはそうでなければ安定化させるリガンド、例えば、以下に記載される一つまたは複数のGalNAc誘導体を含有するか、またはそれらに結合することができる。他の実施形態では、RNAi剤は、親油性部分または一つまたは複数のGalNAc誘導体を含有するか、またはそれらに結合することができる。インビトロおよびインビボでの接触方法の組合せもまた可能である。例えば、細胞をインビトロにおいてRNAi剤と接触させて、その後に対象に移してもよい。
【0188】
一実施形態では、細胞をRNAi剤と接触させることは、細胞内への取り込みまたは吸収を促進または実施することによって「導入すること」または「RNAi剤を細胞内に送達すること」を含む。RNAi剤の吸収または取り込みは、自発的拡散性のもしくは活性な細胞プロセスによって、または助剤もしくはデバイスによって生じ得る。RNAi剤を細胞内に導入することは、インビトロまたはインビボであり得る。例えば、インビボでの導入の場合、RNAi剤は、組織部位に注入され得るかまたは全身的に投与され得る。インビトロでの細胞内への導入としては、当技術分野で公知の方法、例えばエレクトロポレーション法およびリポフェクション法などが挙げられる。さらなるアプローチは、本明細書の下記において説明されるか、または当技術分野で公知である。
【0189】
用語「脂溶性」または「親油性部分」は、脂質に対して親和性を有する任意の化合物または化学部分を広く意味する。親油性部分の親油性を特徴付ける方法の一つは、オクタノール-水分配係数logKowによるものであり、この場合Kowは、平衡状態にある二相系のうちの水相の化学物質の濃度に対するオクタノール相の化学物質の濃度の比である。オクタノール-水分配係数は、物質の実験室測定される特性である。しかしながら、それは、第一原理または経験的方法を使用して算出される化学物質の構造成分に起因する係数を使用することによっても予想され得る(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Tetko et al.,J.Chem.Inf.Comput.Sci.41:1407-21(2001)を参照)。それは、水よりもむしろ非水性または油性環境を好む物質の傾向の熱力学的尺度(すなわち、その親水性/親油性バランス)をもたらす。原則として、化学物質は、そのlogKowが0を超える場合、性質が親油性である。典型的には、親油性部分は、1を超える、1.5を超える、2を超える、3を超える、4を超える、5を超える、または10を超える、logKowをもつ。例えば、6-アミノヘキサノールのlogKowは、例えばおよそ0.7であると予測される。同じ方法を使用することにより、N-(ヘキサン-6-オール)カルバミン酸コレステリルのlogKowは、10.7であると予測される。
【0190】
分子の親油性は、分子が有する官能基に応じて変化し得る。例えば、親油性部分の末端にヒドロキシル基またはアミン基を付加することにより、親油性部分の分配係数(例えば、logKow)の値が増加または減少し得る。
【0191】
あるいは、一つまたは複数の親油性部分にコンジュゲートされた二本鎖RNAi剤の疎水性は、そのタンパク質結合特性によって測定することができる。例えば、特定の実施形態では、二本鎖RNAi剤の血漿タンパク質結合アッセイの非結合画分が、二本鎖RNAi剤の相対的疎水性に対して正に相関することを判定することとなれば、それは次いで二本鎖RNAi剤のサイレンシング活性に対して正に相関することとなる。
【0192】
一実施形態では、判定される血漿タンパク質結合アッセイは、ヒト血清アルブミンタンパク質を使用する電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)である。この結合アッセイの例示的プロトコールは、例えば、PCT公報第WO2019/217459号において詳細に説明される。結合アッセイにおけるsiRNAの非結合画分によって測定される二本鎖RNAi剤の疎水性は、増強されたsiRNAのインビボでの送達の場合では、0.15を超える、0.2を超える、0.25を超える、0.3を超える、0.35を超える、0.4を超える、0.45を超える、または0.5を超える。
【0193】
したがって、親油性部分を二本鎖RNAi剤の内側位置にコンジュゲートすることにより、siRNAにおける増強されたインビボでの送達のために最適の疎水性がもたらされる。
【0194】
用語「脂質ナノ粒子」または「LNP」は、薬学的に活性な分子を、例えば核酸分子、例えば、RNAi剤またはRNAi剤の転写元のプラスミドなどを、封入する脂質層を含むベシクルである。LNPは、例えば米国特許第6,858,225号、第6,815,432号、8,158,601号、および第8,058,069号に記載され、その内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0195】
本明細書で使用される場合、「対象」は哺乳類などの動物であり、霊長類(ヒト、例えばサル、およびチンパンジーである非ヒト霊長類など)、または非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラット、またはマウスなど)、または内因性または異種性のいずれかで標的遺伝子を発現する鳥が挙げられる。一実施形態では、対象はヒトであり、例えばSGLT2発現の減少により恩恵を受けることとなる疾患、障害または症状に関して治療または評価されるヒト、SGLT2発現の減少により恩恵を受けることとなる疾患、障害または症状のリスクがあるヒト、SGLT2発現の減少により恩恵を受けることとなる疾患、障害または症状を有するヒト、または本明細書に記載されるSGLT2発現の減少により恩恵を受けることとなる疾患、障害または症状が治療されるヒトなどである。一部の実施形態では、対象は、女性であるヒトである。他の実施形態では、対象は、男性であるヒトである。一実施形態では、対象は、成人である対象である。別の実施形態では、対象は、小児である対象である。
【0196】
本明細書で使用される場合、「治療すること」または「治療」という用語は、以下に限定されないが、例えば、SGLT2関連疾患、例えば、痛風またはII型糖尿病などの糖尿病、または望ましくないSGLT2発現に関連する症状などのSGLT2発現またはSGLT2タンパク質産生に関連する一つまたは複数の兆候または症状の軽減または改善;望ましくないSGLT2の活性化または安定化の程度を減少させること;望ましくないSGLT2の活性化または安定化の改善または緩和、を含む有益で望ましい結果を指す。「治療」はまた、治療が行われない場合に予想される生存時間と比較して、生存時間を延ばすことも意味し得る。
【0197】
対象におけるSGLT2のレベルまたは疾患マーカーまたは症状の文脈での用語「低下させる」は、こうしたレベルの統計学的に有意な減少を指す。減少は、例えば、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上であり得る。特定の実施形態では、減少は、少なくとも20%である。特定の実施形態では、減少は、疾患マーカー、例えばタンパク質レベルまたは遺伝子発現レベルにおける、少なくとも50%である。対象におけるSGLT2のレベルの文脈での「低下させる」は、好ましくは、当該障害のない個体における正常な領域の範囲内として受け入れられるレベルまで減少することである。特定の実施形態では、標的の発現は、正常化され、すなわち、そのような障害を有しない個体について正常範囲内として受け入れられるレベル、例えば、血中グルコース値、血中尿酸値、血中脂質値、血中酸素値、白血球数、腎機能、脾臓機能、肝機能、に向かって、またはそのレベルに減少する。例えば、慢性高尿酸血症は、生理学的飽和閾値を超えるレベルである、6.8mg/dl(360mmol/より大きい)を超える血清尿酸値として定義される、(Mandell,Cleve.Clin.Med.75:S5-S8,2008)。本明細書において使用される場合、対象において「低下させる」は、対象の細胞における遺伝子発現またはタンパク質産生が低下することを指し得るが、これは対象のすべての細胞または組織における発現が低下することを必要とするものではない。例えば、本明細書において使用する場合、対象において低下させることは、対象における遺伝子発現またはタンパク質産生が低下することを含み得る。
【0198】
用語「低下させる」はまた、疾患の症状または病態を正常化すること、すなわちSGLT2関連疾患に罹患している対象のレベルと、SGLT2関連疾患に罹患していない正常な対象のレベルとの差を、SGLT2関連疾患に罹患していない正常な対象のレベルに向けて、またはそのレベルまで減少させること、に関連して使用され得る。本明細書において使用する場合、疾患が、ある症状について値の上昇を伴うならば、「正常」は正常の上限とする。疾患が、ある症状について値の減少を伴うならば、「正常」は正常の下限とする。
【0199】
本明細書において使用する場合、「予防」または「予防すること」は、SGLT2遺伝子の発現またはSGLT2タンパク質産生の減少から恩恵を受けるであろう疾患、障害、またはその状態に関して使用する場合、対象が、こうした疾患、障害、または状態、例えば、SGLT2関連疾患の症状、例えば、痛風またはII型糖尿病などの糖尿病に関連する症状、を発症することとなる可能性が減少することを指す。疾患、障害、または状態を発症しないこと、またはこうした疾患、障害、または状態に関連する症状の発症の減少(例えば、その疾患または障害に対して臨床的に受け入れられる規模の少なくとも約10%の減少)、または遅延された症状の提示の遅延(例えば、数日、数週間、数ヶ月、または数年の遅延)、または血清尿酸値が上昇しやすい対象において血清尿酸値を6.8mg/dl以下に減少させるまたは維持することは、有効な予防とみなされる。
【0200】
本明細書において使用する場合、用語「SGLT2関連疾患」は、SGLT2の発現または活性の減少から恩恵を受けることとなる疾患または障害である。「SGLT2関連疾患」という用語は、SGLT2発現またはSGLT2タンパク質産生によって引き起こされる、またはそれと関連する疾患または障害である。「SGLT2関連疾患」という用語は、SGLT2発現またはSGLT2タンパク質活性の減少から利益を得るであろう疾患、障害、または状態を含む。例えば、上述のように、および本出願の実施例にあるように、2型糖尿病または高血糖症の治療に使用されるSGLT2阻害剤は、血清グルコース値を減少させ、血清尿酸値を低下させ、SGLT2の予想される機能喪失および予想されるミスセンスバリアントは、尿酸塩のレベルの減少と有意に関連し、また恐らくは、痛風の診断の減少と関連付けられる(実施例3を参照)。したがって、「SGLT2関連疾患」は、血清グルコースおよび/または血清尿酸値の上昇に関連する疾患である。SGLT2関連疾患の非限定的な例としては、例えば、痛風、糖尿病(I型もしくはII型糖尿病)、または他の代謝疾患が挙げられる。
【0201】
本明細書で使用される場合、「痛風」とは、関節、最も頻繁には親指に強い疼痛、腫脹、および硬直を引き起こす関節炎の一種を指す。痛風は、尿酸または尿酸結晶が関節または周囲の組織に蓄積し、痛風発作の炎症および強い痛みを引き起こすときに発生する。血中に高レベルの尿酸がある場合、尿酸結晶が形成され得る。痛風は、何らかの尿酸結晶が存在するかどうかを検査するために、針を用いて罹患した関節から流体が抽出される関節液検査によって、または血液中の尿酸のレベルを測定するための血液検査によって診断され得る。超音波スキャンも、関節の周りの尿酸結晶を検出するために実施され得る。痛風に対する現在利用可能な治療は、多数の対象において禁忌であるか、または無効である。痛風を罹った対象において尿酸値を低下させるための一般的な第一線治療であるアロプリノールは、多くの集団、特に腎機能障害を有する集団において禁忌である。さらに、多数の対象が、アロプリノールを用いた治療に失敗する、例えば、治療にもかかわらず痛風フレアに苦しむ対象、またはアロプリノールに関連する発疹もしくは過敏症反応に苦しむ対象である。
【0202】
本明細書で使用される場合、「代謝性疾患」とは、正常な代謝、食物を細胞レベルでエネルギーに変換するプロセス、を妨害する任意の疾患または障害を指す。代謝性疾患は、タンパク質(アミノ酸)、炭水化物(糖およびデンプン)、または脂質(脂肪酸)の処理または輸送を伴う重要な生化学的反応を行う細胞の能力に影響を与える。代謝性疾患の非限定的例としては、炭水化物の障害、例えば、糖尿病、I型糖尿病、II型糖尿病、ガラクトース血症、遺伝性フルクトース不耐症、フルクトース1,6-ジホスファターゼ欠損症、グリコーゲン蓄積障害、先天性グリコシル化障害、インスリン抵抗性、インスリン不足、高インスリン血症、耐糖能障害(IGT)、異常なグリコーゲン代謝;アミノ酸代謝の障害、例えば、メープルシロップ尿疾患(MSUD)、またはホモシスチン尿症;有機酸代謝の障害、例えば、メチルマロン酸性尿症、3-メチルグルタコン酸性尿症-バース症候群、グルタル酸性尿症または2-ヒドロキシグルタル酸性尿症-DおよびL形態;脂肪酸ベータ酸化の障害、例えば、中鎖アシル-CoA脱水素酵素欠損症(MCAD)、長鎖3-lヒドロキシアシル-CoA脱水素酵素欠損症(LCHAD)、極長鎖アシル-CoA脱水素酵素欠損症(VLCAD)、脂質代謝の障害、例えば、GM1ガングリオシドーシス、テイ・サックス病、サンドホフ病、ファブリー病、ゴーシェ病、ニーマン・ピック病、クラッベ病、ムコリピドーシス、またはムコ多糖症;ミトコンドリア障害、例えば、ミトコンドリア心筋症;リー病;ミトコンドリア脳症、乳酸アシドーシス、および脳卒中様エピソード(MELAS);ラグドレッド線維を有するミオクローヌスてんかん(MERRF);神経障害、運動失調症、および網膜色素変性症(NARP);バース症候群;またはペルオキシソーム障害、例えば、ツェルヴェーガー症候群(脳肝腎症候群)、X連鎖副腎白質ジストロフィーまたはレフサム病、が挙げられる。
【0203】
本明細書で使用される場合、「糖尿病」という用語は、インスリン分泌もしくは作用、またはその両方の欠陥から生じる高血糖(グルコース)値によって特徴付けられる代謝疾患の群を指す。糖尿病には、二つの最も一般的なタイプ、すなわち、1型糖尿病および2型糖尿病があり、これらは両方ともインスリンを調節する身体の不能に起因する。インスリンは、血中の血糖(グルコース)レベルの増加に応答して膵臓によって放出されるホルモンである。
【0204】
本明細書で使用される場合、「I型糖尿病」という用語は、膵臓のインスリン生成が少なすぎて、血糖値を適切に調節できないときに発生する慢性疾患を指す。I型糖尿病は、インスリン依存性真性糖尿病、IDDM、および若年発症糖尿病とも呼ばれる。I型糖尿病(インスリン依存性糖尿病)を有する人々は、インスリンをほとんどまたは全く産生しない。米国国民の約6パーセントが何らかの形態の糖尿病を有するが、すべての糖尿病患者の約10パーセントのみがI型障害を有する。I型糖尿病を有するほとんどの人々は、30歳以前に障害を発症した。1型糖尿病は、その後のインスリン欠乏を伴う膵β細胞の進行性自己免疫破壊の結果を表す。膵臓のインスリン産生細胞(ベータ細胞)の90%超が永久的に破壊される。結果として生じるインスリン欠乏は重度であり、生存するには、I型糖尿病患者は定期的にインスリンを注射しなければならない。
【0205】
II型糖尿病(非インスリン依存性真性糖尿病、NDDMとも呼ばれる)では、膵臓はインスリンの製造を継続し、時には正常レベルよりも高い。しかしながら、身体は、その効果に対する抵抗性を生じ、相対的なインスリン欠乏をもたらす。II型糖尿病は小児および青年期に発症する場合があるが、通常、30歳以降に発症し、年齢とともに徐々により一般的になり、70歳を超える人々の約15%がII型糖尿病を有する。肥満はII型糖尿病のリスク因子であり、この障害を有する人々の80~90%は肥満である。
【0206】
一部の実施形態では、糖尿病は、前糖尿病を含む。前糖尿病とは、グルコース利用障害、空腹時グルコースレベルの異常または障害、耐糖能障害、インスリン感受性障害、およびインスリン抵抗性を含む、一つまたは複数の早期糖尿病状態を指す。前糖尿病は、2型真性糖尿病、心血管疾患、および死亡の発症の主要なリスク因子である。前糖尿病を効果的に治療することによって2型糖尿病の発症を防止する治療的介入の開発に多くの焦点が当てられている。
【0207】
糖尿病は、ブドウ糖負荷試験の実施によって診断することができる。臨床的には、糖尿病はしばしばいくつかの基本的なカテゴリに分けられる。これらのカテゴリの主な例としては、自己免疫性真性糖尿病、非インスリン依存性真性糖尿病(1型NDDM)、インスリン依存性真性糖尿病(2型IDDM)、非自己免疫性真性糖尿病、非インスリン依存性真性糖尿病(2型NIDDM)、および若年発症成人型糖尿病(MODY)が挙げられる。さらなるカテゴリは、しばしば二次と称され、糖尿病症候群を引き起こす、または発症を可能にするいくつかの識別可能な状態によってもたらされる糖尿病を指す。二次カテゴリの例としては、膵臓疾患によって引き起こされる糖尿病、ホルモン異常、薬剤または化学物質に誘発される糖尿病、インスリン受容体異常によって引き起こされる糖尿病、遺伝的症候群に関連する糖尿病、および他の原因の糖尿病が挙げられる(例えば、Harrison’s(1996)14th ed.,New York,McGraw-Hillを参照)。
【0208】
本明細書で使用される場合、「脂質代謝の障害」または「脂質代謝の乱れ」は、脂質代謝の乱れに関連するか、またはそれによって引き起こされる任意の障害を指す。この用語はまた、高脂血症をもたらし得る任意の障害、疾患または状態、または血液中の脂質および/またはリポタンパク質のいずれかまたは全てのレベルの異常な上昇によって特徴付けられる状態を含む。この用語は、家族性高トリグリセリド血症、家族性部分リポジストロフィー1型(FPLD1)などの遺伝性障害、または疾患、障害もしくは状態(例えば、腎不全)、食事、または特定の薬剤(例えば、AIDSまたはHIVの治療に使用される高度に活性な抗レトロウイルス療法(HAART)の結果として)の結果として誘発または取得された障害などの誘発または後天性障害を指す。
【0209】
脂質代謝の障害の追加的な例としては、限定されるものではないが、アテローム性動脈硬化症、脂質異常症、高トリグリセリド血症(薬剤誘発性高トリグリセリド血症、利尿薬誘発性高トリグリセリド血症、アルコール性高トリグリセリド血症、βアドレナリン遮断薬誘発性高トリグリセリド血症、エストロゲン誘発性高トリグリセリド血症、グルココルチコイド誘発性高トリグリセリド血症、レチノイド誘発性高トリグリセリド血症、シメチジン誘導性高トリグリセリド血症、ならびに家族性高トリグリセリド血症、高トリグリセリド血症を伴う急性膵炎、カイロミクロン症候群、家族性カイロミクロン血症、Apo-E欠損症または抵抗性、LPL欠損症または活動低下、高脂血症(家族性複合型高脂血症を含む)、高コレステロール血症、高コレステロール血症に関連する痛風、黄色腫症(皮下コレステロール沈着物)、不均一なLPL欠損症を伴う高脂血症、および高LDL血症と不均一なLPL欠損症を伴う高脂血症、脂肪肝疾患、または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が挙げられる。
【0210】
心血管疾患も、本明細書に定義されるように、「代謝障害」とみなされる。これらの疾患には、冠動脈疾患(虚血性心疾患とも呼ばれる)、高血圧、冠動脈疾患に関連する炎症、再狭窄、末梢血管疾患、および脳卒中が含まれ得る。
【0211】
体重に関連する障害も、本明細書に定義されるように、「代謝障害」とみなされる。こうした障害には、肥満、代謝症候群の独立した構成要素を含む代謝症候群(例えば、中心性肥満、FBG/前糖尿病/糖尿病、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、および高血圧)、低代謝状態、甲状腺機能低下症、尿症、および体重増加(急速な体重増加を含む)、体重減少、体重減少の維持、または体重減少後の体重減少のリスクに関連する他の状態を含み得る。
【0212】
血糖障害は、本明細書に定義されるように、さらに「代謝障害」とみなされる。そのような障害には、糖尿病、高血圧、およびインスリン抵抗性に関連する多嚢胞性卵巣症候群が含まれ得る。代謝障害の他の例示的な障害としては、腎移植、ネフローゼ症候群、クッシング症候群、先端巨大症、全身性エリテマトーデス、ジスグロブリン血症、リポジストロフィー、グリコゲノーシスI型、およびアジソン病も挙げられ得る。
【0213】
当業者に明らかであり、本開示の範囲内である代謝障害に関連する追加の疾患または状態。
【0214】
SGLT2関連疾患、例えば、痛風または糖尿病の症状には、例えば、インスリン抵抗性、血糖を調節する能力の欠如、高血中尿酸値、無脂肪または除脂肪筋肉量の喪失、過剰な脂肪量、より低い代謝速度、体重増加、および/またはボディ・マス指数の増加が含まれる。様々な疾患または状態の兆候および症状に関するさらなる詳細は、本明細書に提供され、当該技術分野で周知である。
【0215】
「治療有効量」は、本明細書において使用する場合、SGLT2関連疾患がある対象に投与されたときに、(例えば、既存の疾患または疾患の一つまたは複数の症状を減少、改善、または維持することによって)疾患の治療を行うのに十分なRNAi剤の量を含むことが意図される。「治療有効量」は、RNAi剤、該剤の投与方法、疾患およびその重症度および病歴、年齢、体重、家族歴、遺伝子構造、ある場合には先行するまたは併用する治療の種類、および治療しようとする対象の他の個人的特徴、に応じて変動し得る。
【0216】
「予防有効量」は、本明細書において使用する場合、例えば、痛風または糖尿病などのSGLT2関連障害を有する対象に投与されたときに、疾患または疾患の一つもしくは複数の症状を予防または改善するのに十分である、RNAi剤の量を含むことが意図される。疾患の改善は、疾患の経過を鈍化させること、またはこれから発症する疾患の重症度を減少させることを含む。「予防的有効量」は、RNAi剤、当該剤の投与方法、疾患のリスクの程度、および病歴、年齢、体重、家族歴、遺伝子構造、ある場合には先行するまたは併用する治療の種類、および治療しようとする患者の他の個人的特徴、に応じて変動し得る。
【0217】
「治療有効量」または「予防有効量」は、任意の処置に適用可能な合理的なベネフィット/リスク比においていくつかの所望の局所的または全身的効果を生じるRNAi剤の量も包含する。本開示の方法において用いられるRNAi剤は、こうした処置に適用可能な合理的なベネフィット/リスク比を生じるのに十分な量で投与され得る。
【0218】
語句「薬学的に許容可能な」は、本明細書において、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症なしに、合理的なベネフィット/リスク比に見合う、健全な医学的判断の範囲内でのヒト対象および動物対象の組織との接触での使用に好適であるそれら化合物、材料(塩類を含む)、組成物または剤形を指すために用いる。
【0219】
語句「薬学的に許容可能な担体」は、本明細書において使用する場合、一つの臓器または身体の部分から、別の臓器または身体の部分への主題化合物の運搬または輸送に関与する、薬学的に許容可能な材料、組成物、またはビヒクルであって、例えば液体もしくは固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、製造助剤(例えば、潤滑剤、タルクマグネシウム、ステアリン酸カルシウムもしくはステアリン酸亜鉛、またはステアリン酸)、または溶媒封入材料など、を意味する。各担体は、製剤の他の原材料に対して適合性であり、かつ治療される対象に対して有害であってはならないという意味において「許容可能」であるものでなければならない。薬学的に許容可能な担体として役立ち得る材料のいくつかの例には、以下が含まれる:(1)糖類、例えば乳糖、グルコースおよびショ糖など、(2)デンプン、例えばトウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなど、(3)セルロース、およびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなど、(4)トラガカント末、(5)モルト、(6)ゼラチン、(7)潤滑剤、例えばマグネシウムステート(magnesium state)、ラウリル硫酸ナトリウムおよびタルクなど、(8)賦形剤、例えばココアバターおよび座薬ワックスなど、(9)オイル、例えばピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブオイル、トウモロコシ油および大豆油など、(10)グリコール、例えばプロピレングリコールなど、(11)ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなど、(12)エステル、例えばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなど、(13)寒天、(14)緩衝剤、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなど、(15)アルギニン酸、(16)発熱因子なしの水、(17)等張生理食塩水、(18)リンゲル溶液、(19)エチルアルコール、(20)pH緩衝溶液、(21)ポリエステル、ポリカーボネート、またはポリ酸無水物、(22)充填剤、例えばポリペプチド、およびアミノ酸など、(23)血清成分、例えば血清アルブミン、HDLおよびLDLなど、ならびに(22)医薬品製剤に採用される他の非毒性の適合性物質。肺送達のための薬学的に許容可能な担体は、当該技術分野で公知であり、薬剤の沈着ための所望の場所、例えば、上呼吸系または下呼吸系、および送達に使用される装置のタイプ、例えば、噴霧器、ネブライザー、乾燥粉末吸入器、に応じて変化する。
【0220】
用語「試料」は、本明細書において使用する場合、対象から単離された同様の体液、細胞、または組織、および対象内に存在する体液、細胞、または組織の採取物を包含する。生体液の例としては、血液、血清、および漿液、血漿、気管支液、痰、髄液、眼液、リンパ液、尿、唾液、痰などが挙げられる。組織試料は、組織、臓器、または局所領域からの試料を含み得る。例えば、試料は、特定の臓器、臓器の部分、またはそれら臓器内の体液もしくは細胞に由来するものであり得る。
【0221】
II.本開示のRNAi剤
本明細書においては、SGLT2遺伝子の発現を阻害するRNAi剤について記載する。一実施形態では、RNAi剤は、例えば、痛風もしくは糖尿病などのSGLT2関連障害を有する対象、またはSGLT2関連疾患のリスクがある対象であるヒトなどの、例えば、哺乳動物内などの、対象内の細胞などの細胞におけるSGLT2遺伝子の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)分子を含む。
【0222】
dsRNAiは、SGLT2遺伝子の発現の際に形成される標的RNA、例えば、mRNAの少なくとも一部に対して相補的である相補的領域を有するアンチセンス鎖を含む。相補性の領域は、約15~30ヌクレオチド以下の長さである。RNAi剤は、SGLT2遺伝子を発現する細胞と接触させると、SGLT2遺伝子(例えば、ヒト遺伝子、霊長類遺伝子、非霊長類遺伝子)の発現を少なくとも50%阻害するが、これは例えばPCRまたは分枝DNA(bDNA)による方法によって、またはタンパク質による方法、例えば免疫蛍光法などによって、例えばウエスタンブロット法またはフローサイトメトリー技術を使用して、検定した場合である。特定の実施形態では、発現の阻害は、siRNAが10nMの濃度である、実施例1のDual-Gloルシフェラーゼアッセイによってアッセイされるように、少なくとも50%である。
【0223】
dsRNAは、二本のRNA鎖を含み、それらは、相補的であり、またdsRNAが使用されることとなる条件下においてハイブリダイズして二本鎖構造を形成する。dsRNAの一方の鎖(アンチセンス鎖)は、標的配列に対して、実質的に相補的であり、また概して完全に相補的である、相補性領域を含む。例えば、標的配列は、SGLT2遺伝子の発現の際に形成されたmRNAの配列から導出できる。もう一方の鎖(センス鎖)は、アンチセンス鎖に対して相補的である領域を含むため、当該二本の鎖は、好適な条件下で組み合わされた場合に、ハイブリダイズして二本鎖構造を形成する。本明細書の他の箇所で説明し、また当技術分野で公知であるように、dsRNAの相補配列はまた、別個のオリゴヌクレオチド上において相対するように、単一の核酸分子の自己相補領域として含有させることもできる。
【0224】
概して、二本鎖構造は、15~30塩基対の長さ、例えば、15~29、15~28、15~27、15~26、15~25、15~24、15~23、15~22、15~21、15~20、15~19、15~18、15~17、18~30、18~29、18~28、18~27、18~26、18~25、18~24、18~23、18~22、18~21、18~20、19~30、19~29、19~28、19~27、19~26、19~25、19~24、19~23、19~22、19~21、19~20、20~30、20~29、20~28、20~27、20~26、20~25、20~24、20~23、20~22、20~21、21~30、21~29、21~28、21~27、21~26、21~25、21~24、21~23、または21~22塩基対の長さである。特定の実施形態では、二本鎖構造は、長さが18~25塩基対、例えば、18~25、18~24、18~23、18~22、18~21、18~20、19~25、19~24、19~23、19~22、19~21、19~20、20~25、20~24、20~23、20~22、20~21、21~25、21~24、21~23、21~22、22~25、22~24、22~23、23~25、23~24または24~25塩基対の長さであり、例えば19~21塩基対の長さである。上記に列記した範囲および長さの間に存在する範囲および長さもまた、本開示の一部であることを意図している。
【0225】
同様に、標的配列に対する相補性の領域は、15~30ヌクレオチドの長さ、例えば、15~29、15~28、15~27、15~26、15~25、15~24、15~23、15~22、15~21、15~20、15~19、15~18、15~17、18~30、18~29、18~28、18~27、18~26、18~25、18~24、18~23、18~22、18~21、18~20、19~30、19~29、19~28、19~27、19~26、19~25、19~24、19~23、19~22、19~21、19~20、20~30、20~29、20~28、20~27、20~26、20~25、20~24、20~23、20~22、20~21、21~30、21~29、21~28、21~27、21~26、21~25、21~24、21~23、または21~22ヌクレオチドの長さであり、例えば、19~23ヌクレオチドの長さ、または21~23ヌクレオチドの長さである。上記に列記した範囲および長さの間に存在する範囲および長さもまた、本開示の一部であることを意図している。
【0226】
一部の実施形態では、dsRNAは、長さが15~23ヌクレオチド、または長さが25~30ヌクレオチドである。概して、dsRNAは、Dicer酵素のための基質として機能するのに十分に長い。例えば、約21~23ヌクレオチドより長いdsRNAが、Dicerのための基質として機能し得ることは、当技術分野において周知である。当業者も認識することとなるように、切断のために標的とされるRNAの領域は、ほとんどの場合、より長いRNA分子の一部、多くの場合mRNA分子となることとなる。関連する場合、mRNA標的の「一部」は、RNAi依存性切断(すなわち、RISC経路を経る切断)のための基質となることを可能にさせるのに十分な長さのmRNA標的の連続する配列である。
【0227】
当業者であれば、二本鎖領域がdsRNAの一次機能部分、例えば、約15~36塩基対、例えば、15~36、15~35、15~34、15~33、15~32、15~31、15~30、15~29、15~28、15~27、15~26、15~25、15~24、15~23、15~22、15~21、15~20、15~19、15~18、15~17、18~30、18~29、18~28、18~27、18~26、18~25、18~24、18~23、18~22、18~21、18~20、19~30、19~29、19~28、19~27、19~26、19~25、19~24、19~23、19~22、19~21、19~20、20~30、20~29、20~28、20~27、20~26、20~25、20~24、20~23、20~22、20~21、21~30、21~29、21~28、21~27、21~26、21~25、21~24、21~23、または21~22塩基対、例えば19~21塩基対の二本鎖領域であることも認識するであろう。すなわち、一実施形態では、切断のために所望のRNAを標的とする例えば、15~30塩基対の機能性二本鎖へとプロセシングされる限り、30超の塩基対の二本鎖領域を有するRNA分子またはRNA分子の複合体は、dsRNAである。したがって、当業者は、一実施形態では、miRNAがdsRNAであることを認識するであろう。別の実施形態では、dsRNAは、天然に生じるmiRNAではない。別の実施形態では、SGLT2発現を標的とするのに有用なRNAi剤は、より大きなdsRNAの切断によって標的細胞内で生成されない。
【0228】
本明細書において説明されるdsRNAは、例えば、1、2、3、または4ヌクレオチドの、一つまたは複数の一本鎖ヌクレオチドオーバーハングをさらに含むことができる。ヌクレオチドオーバーハングは、デオキシヌクレオチド/ヌクレオシドなどであるヌクレオチド/ヌクレオシド類似体を含み得るかまたは該類似体からなり得る。オーバーハングは、センス鎖上、アンチセンス鎖上、またはそれらのいずれかの組合せ上にあり得る。さらに、あるオーバーハングのヌクレオチドは、dsRNAのアンチセンス鎖またはセンス鎖のいずれかの5’末端、3’末端、または両末端上に存在し得る。特定の実施形態では、より長い延長オーバーハングが可能である。
【0229】
dsRNAは、例えば、Biosearch、Applied Biosystems、Inc.などから市販されているような、例えば、自動DNA合成機を用いて、以下でさらに論じるように、当技術分野で公知の標準的な方法によって合成することができる。
【0230】
本発明のiRNA化合物は、二段階手法を使用して調製され得る。最初に、二本鎖RNA分子の個々の鎖が、別個に調製される。次いで、当該構成要素の鎖がアニーリングされる。siRNA化合物の個々の鎖は、溶液相または固相の有機合成またはその両方を使用して調製することができる。有機合成は、非天然のヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド鎖を容易に調製することができるという利点を提供する。本発明の一本鎖オリゴヌクレオチドは、溶液相または固相の有機合成またはその両方を使用して調製することができる。
【0231】
siRNAは、例えば、バルクで、様々な方法によって生成することができる。例示的な方法には、有機合成およびRNA切断、例えば、インビトロでの切断が含まれる。
【0232】
siRNAは、一本鎖RNA分子、または二本鎖RNA分子の各鎖を別々に合成することによって作製することができ、その後、構成要素の鎖をアニールすることができる。
【0233】
大型バイオリアクター、例えば、Pharmacia Biotec AB(ウプサラ、スウェーデン)のOligoPilot IIを使用して、所与のsiRNAに対して特定のRNA鎖を大量に生産することができる。OligoPilotIIリアクターは、わずか1.5モル過剰のホスホルアミダイトヌクレオチドを使用して、効率的にヌクレオチドを結合することができる。RNA鎖を作るために、リボヌクレオチドアミダイトが使用される。単量体付加の標準サイクルを使用して、siRNAの21~23ヌクレオチド鎖を合成することができる。典型的には、二つの相補鎖は別々に生成され、その後、例えば、固体支持体からの解放および脱保護後にアニールされる。
【0234】
有機合成を使用して、個別のsiRNA種を生産することができる。SGLT2遺伝子に対する種の相補性を正確に特定することができる。例えば、種は、多型、例えば、一塩基多型を含む領域に対して相補的であり得る。さらに、多型の位置を正確に特定することができる。一部の実施形態では、多型は、内部領域、例えば、末端の一方または両方から少なくとも4、5、7、または9ヌクレオチド内に位置する。
【0235】
一実施形態では、生成されたRNAは、注意深く精製され、末端siRNAが除去され、例えば、Dicerまたは同等のRNAse IIIベースの活性を使用して、インビトロでsiRNAに切断される。例えば、dsiRNAは、ショウジョウバエからのインビトロで抽出物中、または精製された成分、例えば、精製されたRNAseまたはRISC複合体(RNA誘導型サイレンシング複合体)を使用して、インキュベートすることができる。例えば、Ketting et al.Genes Dev 2001 Oct 15;15(20):2654-9 and Hammond Science 2001 Aug 10;293(5532):1146-50を参照のこと。
【0236】
dsiRNA切断は一般に、複数のsiRNA種を生成し、各々がソースdsiRNA分子の特定の21~23ヌクレオチド断片である。例えば、ソースdsiRNA分子の重複領域および隣接領域に対して相補的な配列を含むsiRNAが存在する可能性がある。
【0237】
合成方法に関係なく、siRNA調製物は、剤形に適切な溶液(例えば、水溶液または有機溶液)中で調製することができる。例えば、siRNA調製物は、沈殿させ、純粋な再蒸留水中に再溶解し、凍結乾燥させることができる。次いで、乾燥させたsiRNAを、意図される製剤化プロセスに適切な溶液中に再懸濁することができる。
【0238】
一態様では、本開示のdsRNAは、少なくとも二つのヌクレオチド配列、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む。SGLT2のためのセンス鎖配列は、表2~3のうちのいずれか一つに提供される配列群から選択され得、また該センス鎖のアンチセンス鎖の対応するヌクレオチド配列は、表2~3のうちのいずれか一つの配列群から選択され得る。この態様においては、二つの配列の一方は、二つの配列の他方に対して相補的であり、この場合、配列の一方は、SGLT2遺伝子の発現の際に生じたmRNAの配列に対して実質的に相補的である。このように、この態様においては、dsRNAは、二つのオリゴヌクレオチドを含むこととなるが、一つのオリゴヌクレオチドは、表2~3のいずれか一つにおいてセンス鎖(パッセンジャー鎖)として記載され、第二のオリゴヌクレオチドは、SGLT2について表2~3のいずれか一つにおいて該センス鎖の対応するアンチセンス鎖(ガイド鎖)として記載される。
【0239】
一実施形態では、dsRNAの実質的に相補的な配列は、別個のオリゴヌクレオチド上に含有される。別の実施形態では、dsRNAの実質的に相補的な配列は、単一のオリゴヌクレオチド上に含まれる。
【0240】
本明細書に提供される配列は、修飾された配列またはコンジュゲートされた配列として記述されているが、本開示のRNAi剤のRNA、例えば、本開示のdsRNAは、表2~3のいずれか一つに明記される配列のうちのいずれか一つを含み得、それらは、修飾されていない、コンジュゲートされていない、またはその中に記載されるものとは異なるように修飾もしくはコンジュゲートされたものであることが理解されるであろう。一つもしくは複数の親油性リガンドまたは一つもしくは複数のGalNAcリガンドは、本出願で提供されるRNAi剤のいずれかの位置に含まれ得る。
【0241】
当業者は、約20~23塩基対、例えば、21塩基対の二本鎖構造を有するdsRNAが、RNA干渉を導入する際に特に有効であるとして歓迎されてきたことを十分に意識している(Elbashir et al.,(2001)EMBO J.,20:6877-6888)。しかしながら、他の者らは、それよりも短いまたは長いRNA二本鎖構造も有効であり得ることを発見してきた(Chu and Rana(2007)RNA 14:1714-1719、Kim et al.(2005)Nat Biotech 23:222-226)。上記に記載した実施形態では、本明細書において提供するオリゴヌクレオチド配列の性質により、本明細書に記載するdsRNAが、最小で21ヌクレオチドの長さである少なくとも一つの鎖を含むことができる。一方の末端または両末端におけるいくつかのヌクレオチドだけを差し引いたより短い二本鎖は、上記に記載したdsRNAと比較して、同様に有効であり得ることは、合理的に予測することができる。したがって、本明細書において提供する配列のうちの一つから得られる少なくとも15、16、17、18、19、20、またはそれ以上の連続するヌクレオチドの配列を有し、かつCos7および10nM濃度のRNA剤によるインビトロアッセイならびに本明細書の実施例において提供され るPCRアッセイを使用して、完全配列を含むdsRNAから10、15、20、25、または30%以下の阻害によってSGLT2遺伝子の発現を阻害するそれらの能力が異なるものであるdsRNAは、本開示の範囲内であることを意図する。
【0242】
加えて、本明細書に記載するRNAは、RISC媒介性切断を受けやすいSGLT2転写物内の部位を特定する。そのため、本開示は、この部位の範囲内を標的とするRNAi剤をさらに取り上げる。本明細書において使用する場合、RNAi剤が特定の部位内のいずれかにおける転写物の切断を促進する場合、該RNAi剤は、RNA転写物の特定の部位の範囲内を標的としていると言う。こうしたRNAi剤は、概して、SGLT2遺伝子内の選択された配列に隣接する領域から取られた追加的なヌクレオチド配列に結合した本明細書において提供される配列のうちの一つから、少なくとも約15の連続するヌクレオチド、例えば、少なくとも19のヌクレオチドを含むこととなる。
【0243】
本明細書において記載するRNAi剤は、標的配列に対する一つまたは複数のミスマッチを含有し得る。一実施形態では、本明細書において記載するRNAi剤は、3以下のミスマッチ(すなわち、3、2、1、または0のミスマッチ)を含有する。一実施形態では、本明細書において記載するRNAi剤は、2以下のミスマッチを含有する。一実施形態では、本明細書において記載するRNAi剤は、1以下のミスマッチを含有する。一実施形態では、本明細書において記載するRNAi剤は、0のミスマッチを含有する。特定の実施形態では、RNAi剤のアンチセンス鎖が、標的配列に対してミスマッチを含有する場合、該ミスマッチは、随意に、相補性領域の5’末端または3’末端のいずれかから最後の5ヌクレオチドの範囲内にあるように制限することができる。例えば、そのような実施形態では、23ヌクレオチドのRNAi剤の場合、SGLT2遺伝子の領域に対して相補的な鎖は、概して、中央の13ヌクレオチドの範囲内にいかなるミスマッチも含まない。本明細書において記載する方法または当技術分野で公知の方法を使用することにより、標的配列に対してミスマッチを含有するRNAi剤が、SGLT2遺伝子の発現の阻害において効果的であるか否かを判定することができる。とりわけ、SGLT2遺伝子における相補性の特定の領域が、変異することがわかっている場合には、SGLT2の発現を阻害するミスマッチを有するRNAi剤の有効性を考慮することが重要である。
【0244】
III.本開示の修飾RNAi剤
一実施形態では、本開示のRNAi剤のRNA、例えば、dsRNAは、未修飾であり、また例えば、当技術分野で公知かつ本明細書に記載する化学修飾またはコンジュゲーションを含まない。特定の実施形態では、本開示のRNAi剤のRNA、例えば、dsRNAは、安定性または他の有益な特徴を増強するように化学修飾される。本開示の特定の実施形態では、本開示のRNAi剤のヌクレオチドの実質的に全てが修飾される。本開示の他の実施形態では、本開示のRNAi剤のヌクレオチドの全てが修飾される。「ヌクレオチドの実質的にすべてが修飾されている」本開示のRNAi剤は、広く修飾されているが全体が修飾されているものではなく、また5、4、3、2、もしくは1以下の未修飾のヌクレオチドを含み得る。本開示のさらに他の実施形態では、本開示のRNAi剤は、5、4、3、2または1以下の修飾ヌクレオチドを含み得る。
【0245】
本開示において特徴とされる核酸は、当技術分野で十分に確立された方法、例えば、参照により本明細書に組み込まれる“Current protocols in nucleic acid chemistry,” Beaucage,S.L.et al.(Edrs.),John Wiley&Sons,Inc.,New York,NY,USA、に記載されるものなどによって合成または修飾できる。修飾としては、例えば、末端修飾、例えば、5’末端修飾(リン酸化、コンジュゲーション、逆方向結合)または3’末端修飾(コンジュゲーション、DNAヌクレオチド、逆方向結合など)や、塩基修飾、例えば、安定化塩基、不安定化塩基、もしくは伸長したレパートリーのパートナーと塩基対合する塩基での置換、塩基除去(脱塩基ヌクレオチド)もしくはコンジュゲートされた塩基や、糖修飾(例えば、2’位または4’位における)もしくは糖の置換や、またはホスホジエステル結合の修飾もしくは置換をはじめとする主鎖修飾が挙げられる。本明細書において記載される実施形態において有用なRNAi剤の具体例として、それだけには限らないが、修飾骨格を含有する、または天然ヌクレオシド間連結を含有しないRNAが挙げられる。修飾骨格を有するRNAとしては、中でも、骨格内にリン原子を有さないものが挙げられる。本明細書の目的上、また時には当技術分野で言及されるように、それらのヌクレオシド間骨格内にリン原子を有さない修飾RNAもまた、オリゴヌクレオシドであるとみなされ得る。一部の実施形態では、修飾RNAi剤は、そのヌクレオシド間骨格中にリン原子を有することとなる。
【0246】
修飾RNA骨格としては、例えば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’-アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートを含むメチルおよび他のアルキルのホスホネート、ホスフィネート、3’-アミノホスホロアミダートおよびアミノアルキルホスホロアミダートを含むホスホロアミダート、チオノホスホロアミダート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、ならびに通常の3’-5’連結を有するボラノホスフェート、これらの2’-5’連結類似体、およびヌクレオシド単位の隣接する対が連結された3’-5’と5’-3’または2’-5’と5’-2’であるものである反転した極性を有するものが挙げられる。様々な塩、例えば、ナトリウム塩、混合塩および遊離酸の形態も挙げられる。
【0247】
上記リン含有結合の調製を教示する代表的な米国特許には、限定されるものではないが、米国特許第3,687,808号、第4,469,863号、第4,476,301号、第5,023,243号、第5,177,195号、第5,188,897号、第5,264,423号、第5,276,019号、第5,278,302号、第5,286,717号、第5,321,131号、第5,399,676号、第5,405,939号、第5,453,496号、第5,455,233号、第5,466,677号、第5,476,925号、第5,519,126号、第5,536,821号、第5,541,316号、第5,550,111号、第5,563,253号、第5,571,799号、第5,587,361号、第5,625,050号、第6,028,188号、第6,124,445号、第6,160,109号、第6,169,170号、第6,172,209号、第6,239,265号、第6,277,603号、第6,326,199号、第6,346,614号、第6,444,423号、第6,531,590号、第6,534,639号、第6,608,035号、第6,683,167号、第6,858,715号、第6,867,294号、第6,878,805号、第7,015,315号、第7,041,816号、第7,273,933号、第7,321,029号、および米国特許第RE39464号が含まれ、それら各々の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0248】
骨格内にリン原子を含まない修飾RNA骨格は、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルのヌクレオシド間連結、混合ヘテロ原子およびアルキルもしくはシクロアルキルのヌクレオシド間連結または一つもしくは複数の短鎖ヘテロ原子もしくは複素環のヌクレオシド間連結によって形成される骨格を有する。これらとしては、モルホリノ連結を有するもの(ヌクレオシドの糖部分から一部形成される)、シロキサン骨格、スルフィド、スルホキシドおよびスルホン骨格、ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格、メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格、アルケン含有骨格、スルファメート骨格、メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格、スルホネートおよびスルホンアミド骨格、アミド骨格、ならびにN、O、SおよびCHの混合した構成要素部分を有する他のものが挙げられる。
【0249】
上記のオリゴヌクレオシドの調製を教示する代表的な米国特許としては、これらに限定されないが、米国特許第5,034,506号、第5,166,315号、第5,185,444号、第5,214,134号、第5,216,141号、第5,235,033号、第5,64,562号、第5,264,564号、第5,405,938号、第5,434,257号、第5,466,677号、第5,470,967号、第5,489,677号、第5,541,307号、第5,561,225号、第5,596,086号、第5,602,240号、第5,608,046号、第5,610,289号、第5,618,704号、第5,623,070号、第5,663,312号、第5,633,360号、第5,677,437号、および第5,677,439号が挙げられ、このそれぞれの内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0250】
他の実施形態では、ヌクレオチド単位の糖およびヌクレオシド間連結の両方、すなわち、骨格が新規基と置き換えられている、RNAi剤において使用するために適したRNA模倣体が考察される。この塩基単位は、適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持される。このようなオリゴマー化合物の一つ、優れたハイブリダイゼーション特性を有するとわかっているRNA模倣体は、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれる。PNA化合物においては、RNAの糖骨格は、アミド含有骨格で、特にアミノエチルグリシン骨格で置換されている。核酸塩基が、保持されて、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接的または間接的に結合される。PNA化合物の調製を教示する代表的な米国特許としては、これに限定されないが、米国特許第5,539,082号、第5,714,331号、および第5,719,262号が挙げられ、それらの各々の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。本開示のRNAi剤において使用するのに適したさらなるPNA化合物は、例えば、Nielsen et al.,Science,1991,254,1497-1500に記載されている。
【0251】
本開示で取り上げる一部の実施形態には、ホスホロチオエート骨格をもつRNAおよびヘテロ原子骨格をもつオリゴヌクレオシドが挙げられ、特に上記で参照した米国特許第5,489,677号の、--CH--NH--CH-、--CH--N(CH)--O--CH--(メチレン(メチルイミノ)またはMMI骨格として知られる)、--CH--O--N(CH)--CH--、--CH--N(CH)--N(CH)--CH--、および--N(CH)--CH--CH--、および上記で参照した米国特許第5,602,240号のアミド骨格、が挙げられる。一部の実施形態では、本明細書において取り上げるRNAは、上記で参照した米国特許第5,034,506号のモルホリノ骨格構造を有する。天然のホスホジエステル骨格は、O-P(O)(OH)-OCH2-として表され得る。
【0252】
修飾RNAはまた、一つまたは複数の置換された糖部分を含有し得る。本明細書において取り上げるRNAi剤、例えば、dsRNAは、2’位に以下のうちの一つを含み得る:OH、F、O-、S-またはN-アルキル、O-、S-またはN-アルケニル、O-、S-またはN-アルキニル、またはO-アルキル-O-アルキルであって、式中アルキル、アルケニル、およびアルキニルは、置換または非置換のC~C10アルキルまたはC~C10アルケニルおよびアルキニルであり得る。例示的な好適な修飾としては、O[(CHO]CH、O(CH).OCH、O(CHNH、O(CHCH、O(CHONH、およびO(CHON[(CHCH)]が挙げられ、式中nおよびmは、1から約10である。他の実施形態では、dsRNAは、2’位において以下のうちの一つを含む:C~C10低級アルキル、置換された低級アルキル、アルカリル、アラルキル、O-アルカリルまたはO-アラルキル、SH、SCH、OCN、Cl、Br、CN、CF、OCF、SOCH、SOCH、ONO、NO、N、NH、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、干渉物質、RNAi剤の薬物動態特性を改善するための基またはRNAi剤の薬力学的特性を改善するための基、および同様の特性を有する他の置換基。一部の実施形態では、修飾は、2’-メトキシエトキシ(2’-O--CHCHOCH、2’-O-(2-メトキシエチル)または2’-MOEとしても知られる)(Martin et al.,Helv.Chim.Acta,1995,78:486-504)、すなわち、アルコキシ-アルコキシ基、が挙げられる。別の例示的な修飾には、2’-ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわち、本明細書において以下の実施例において記載されるような、2’-DMAOEとしても知られる、O(CHON(CH基、および2’-ジメチルアミノエトキシエトキシ(当技術分野で2’-O-ジメチルアミノエトキシエチルまたは2’-DMAEOEとしても知られる)、すなわち、2’-O--CH--O--CH--N(CH、がある。さらなる例示的な修飾としては、5’-Me-2’-Fヌクレオチド、5’-Me-2’-OMeヌクレオチド、5’-Me-2’-デオキシヌクレオチド、(これら三つのファミリー内のRおよびS異性体の両方)、2’-アルコキシアルキル、および2’-NMA(N-メチルアセトアミド)が挙げられる。
【0253】
他の修飾としては、2’-メトキシ(2’-OCH)、2’-アミノプロポキシ(2’-OCHCHCHNH)、2’-O-ヘキサデシル、および2’-フルオロ(2’-F)が挙げられる。同様の修飾はまた、RNAi剤のRNA上の他の位置、特に3’末端ヌクレオチド上または2’-5’連結dsRNA中の糖の3’位および5’末端ヌクレオチドの5’位でも行うことができる。RNAi剤はまた、糖模倣体を有し得、例えばペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分などを有し得る。こうした修飾糖構造の調製を教示する代表的な米国特許として、これに限定されないが、米国特許第4,981,957号、第5,118,800号、第5,319,080号、第5,359,044号、第5,393,878号、第5,446,137号、第5,466,786号、第5,514,785号、第5,519,134号、第5,567,811号、第5,576,427号、第5,591,722号、第5,597,909号、第5,610,300号、第5,627,053号、第5,639,873号、第5,646,265号、第5,658,873号、第5,670,633号、および第5,700,920号が挙げられ、それらのうちいくつかは、本願と共同所有される。前述のものの各々の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0254】
本開示のRNAi剤はまた、核酸塩基(当技術分野では簡単に「塩基」と呼ばれることも多い)の修飾または置換を含み得る。本明細書において使用する場合、「未修飾の(修飾されていない)」または「天然の」核酸塩基としては、プリン塩基のアデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基のチミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)が挙げられる。修飾核酸塩基としては、他の合成核酸塩基および天然核酸塩基が挙げられ、例えば5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6-メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2-プロピルおよび他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミンおよび2-チオシトシン、5-ハロウラシルおよびシトシン、5-プロピニルウラシルおよびシトシン、6-アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシルおよび他の8-置換のアデニンおよびグアニン、5-ハロ、特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチルおよび他の5-置換のウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニンおよび7-メチルアデニン、8-アザグアニンおよび8-アザアデニン、7-デアザグアニンおよび7-ダアザアデニン(7-daazaadenine)ならびに3-デアザグアニンおよび3-デアザアデニンなどである。さらなる核酸塩基としては、米国特許第3,687,808号に開示されるもの、Modified Nucleosides in Biochemistry,Biotechnology and Medicine,Herdewijn,P.ed.Wiley-VCH,2008に開示されるもの、The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering,pages 858-859,Kroschwitz,J.L,ed.John Wiley&Sons,1990に開示されるもの、Englisch et al.,(1991)Angewandte Chemie,International Edition,30:613に開示されるもの、およびSanghvi,Y S.,Chapter 15,dsRNA Research and Applications,pages 289-302,Crooke,S.T.and Lebleu,B.,Ed.,CRC Press,1993に開示されるもの、が挙げられる。これら核酸塩基のうちのいくつかは、本開示において取り上げるオリゴマー化合物の結合親和性を増大するのに特に有用である。これらには、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジンおよびN-2、N-6および0~6置換のプリンが含まれ、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシンが挙げられる。5-メチルシトシン置換は、核酸の二本鎖安定性を0.6~1.2℃高めることがわかっており(Sanghvi,Y.S.,Crooke,S.T.and Lebleu,B.,Eds.,dsRNA Research and Applications,CRC Press,Boca Raton,1993,pp.276-278)、そしてさらにより具体的には2’-O-メトキシエチル糖修飾と組み合わせた場合には、模範的な塩基置換である。
【0255】
上記の修飾核酸塩基ならびに他の修飾核酸塩基のうちの特定のものの調製を教示する代表的な米国特許としては、これに限定されるものではないが、上記に記載の米国特許第3,687,808号、第4,845,205号、第5,130,30号、第5,134,066号、第5,175,273号、第5,367,066号、第5,432,272号、第5,457,187号、第5,459,255号、第5,484,908号、第5,502,177号、第5,525,711号、第5,552,540号、第5,587,469号、第5,594,121号、第5,596,091号、第5,614,617号、第5,681,941号、第5,750,692号、第6,015,886号、第6,147,200号、第6,166,197号、第6,222,025号、第6,235,887号、第6,380,368号、第6,528,640号、第6,639,062号、第6,617,438号、第7,045,610号、第7,427,672号、および第7,495,088号が挙げられ、そのそれぞれの内容全体が、参照により本明細書において組み込まれる。
【0256】
本開示のRNAi剤をまた、一つまたは複数の二環式糖部分を含むように修飾できる。「二環式糖」は、隣接するかまたは非隣接かにかかわらず、二つの炭素の架橋によって形成される環によって修飾されるフラノシル環である。「二環式のヌクレオシド」(「BNA」)は、隣接するかまたは非隣接かにかかわらず糖環の二つの炭素原子を架橋して形成される環を含み、それによって二環式環系を形成する糖部分を有するヌクレオシドである。特定の実施形態では、架橋が、糖環の4’-炭素と2’-炭素を接続するが、これは随意に2’-非環式酸素原子を介する。したがって、一部の実施形態では、本開示の薬剤は、一つまたは複数のロックド核酸(LNA)を含み得る。ロック核酸は、リボース部分が2’および4’炭素を接続する追加の架橋を含むものである、修飾リボース部分を有するヌクレオチドである。言い換えれば、LNAは、4’-CH2-O-2’架橋を含む二環式糖部分を含むヌクレオチドである。この構造は、3’-endo構造立体配座内にリボースを効率的に「ロックする」。siRNAへのロック核酸の付加により、血清中でのsiRNA安定性が増大し、オフターゲット効果が低減するとわかっている(Elmen,J.et al.,(2005)Nucleic Acids Research 33(1):439-447、Mook,OR.et al.,(2007)Mol Canc Ther 6(3):833-843、Grunweller,A.et al.,(2003)Nucleic Acids Research 31(12):3185-3193)。本開示のポリヌクレオチドにおいて使用するための二環式ヌクレオシドの例として、制限するものではないが、4’と2’リボシル環原子の間の架橋を含むヌクレオシドが挙げられる。特定の実施形態では、本開示のアンチセンスポリヌクレオチド剤として、4’から2’への架橋を含む一つまたは複数の二環式ヌクレオシドが挙げられる。
【0257】
ロックされたヌクレオシドは、この構造(立体化学は省略する)によって表すことができ、
【化3】
式中、Bは、核酸塩基または修飾核酸塩基であり、Lは、リボース環の2’-炭素と4’-炭素とを結合する連結基である。かかる4’から2’の架橋された二環式ヌクレオシドの例としては、これに限定するものではないが、4’-(CH2)-O-2’(LNA)、4’-(CH2)-S-2’、4’-(CH2)2-O-2’(ENA)、4’-CH(CH3)-O-2’(「拘束されたエチル」または「cEt」とも称される)および4’-CH(CH2OCH3)-O-2’(およびその類似体、例えば、米国特許第7,399,845号を参照)、4’-C(CH3)(CH3)-O-2’(およびその類似体、例えば、米国特許第8,278,283号を参照)、4’-CH2-N(OCH3)-2’(およびその類似体、例えば、米国特許第8,278,425号を参照)、4’-CH2-O-N(CH3)-2’(例えば、米国特許出願公開第2004/0171570号を参照)、4’-CH2-N(R)-O-2’であって式中RはH、C1~C12アルキルまたは窒素保護基(例えば、米国特許第7,427,672号を参照)、4’-CH2-C(H)(CH3)-2’(例えば、Chattopadhyaya et al.,J.Org.Chem.,2009,74,118-134を参照)、および4’-CH2-C(=CH2)-2’(およびその類似体、例えば、米国特許第8,278,426号を参照)、が挙げられる。前述のものの各々の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0258】
ロックド核酸ヌクレオチドの調製を教示するさらなる代表的な米国特許および米国特許公開としては、それだけには限らないが、以下:米国特許第6,268,490号、第6,525,191号、第6,670,461号、第6,770,748号、第6,794,499号、第6,998,484号、第7,053,207号、第7,034,133号、第7,084,125号、第7,399,845号、第7,427,672号、第7,569,686号、第7,741,457号、第8,022,193号、第8,030,467号、第8,278,425号、第8,278,426号、第8,278,283号、US2008/0039618、およびUS2009/0012281が挙げられ、それらの各々の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0259】
例えばα-L-リボフラノースおよびβ-D-リボフラノースをはじめとする一つまたは複数の立体化学的な糖立体配座を有する前述の二環式ヌクレオシドのいずれもが、調製可能である(国際公開第99/14226号を参照)。
【0260】
本開示のRNAi剤をまた、一つまたは複数の拘束エチルヌクレオチドを含むように修飾できる。本明細書において使用される場合、「拘束されたエチルヌクレオチド」または「cEt」は、4’-CH(CH3)-O-2’架橋(先述の構造におけるL)を含む二環式糖部分を含むロック核酸である。一実施形態では、拘束されたエチルヌクレオチドは、S立体配座であり、本明細書において「S-cEt」と称する。
【0261】
本開示のRNAi剤はまた、一つまたは複数の「立体配座制限ヌクレオチド」(「CRN」)を含み得る。CRNは、リボースのC2’炭素およびC4’炭素を、またはリボースのC3’炭素および-C5’炭素を接続するリンカーを有するヌクレオチド類似体である。CRNは、リボース環を安定な立体配座にロックして、mRNAに対するハイブリダイゼーション親和性を増大する。リンカーは、酸素を安定性および親和性にとって最適な位置に配置するのに十分な長さのものであり、その結果、リボース環のパッカリングを少なくさせる。
【0262】
上記のCRNのある特定のものの調製を教示する代表的な刊行物として、それだけには限らないが、US2013/0190383および国際公開第2013/036868号が挙げられ、それらの各々の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0263】
一部の実施形態では、本開示のRNAi剤は、UNA(アンロックド核酸)ヌクレオチドである一つまたは複数のモノマーを含む。UNAは、アンロック非環式核酸であり、その糖の結合のいずれもが除去されていて、アンロック「糖」残基を形成しているものである。一実施例では、UNAはまた、C1’-C4’間の結合が除去されているモノマーも包含する(すなわち、C1’炭素とC4’炭素との間の共有結合による炭素-酸素-炭素間結合)。別の実施例においては、糖のC2’-C3’結合(すなわち、C2’炭素とC3’炭素との間の共有結合による炭素-炭素間結合)が除去されている(Nuc.Acids Symp.Series,52,133-134(2008)およびFluiter et al.,Mol.Biosyst.,2009,10,1039を参照されたく、これは参照により本明細書に組み込まれる)。
【0264】
UNAの調製を教示する代表的な米国の刊行物として、これに限定されるものではないが、US8,314,227、および米国特許出願公開第2013/0096289号、第2013/0011922号、および第2011/0313020号が挙げられ、この各々の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0265】
RNA分子の末端に対する安定化修飾として可能性があるものとしては、N-(アセチルアミノカプロイル)-4-ヒドロキシプロリノール(Hyp-C6-NHAc)、N-(カプロイル-4-ヒドロキシプロリノール(Hyp-C6)、N-(アセチル-4-ヒドロキシプロリノール(Hyp-NHAc)、チミジン-2’-O-デオキシチミジン(エーテル)、N-(アミノカプロイル)-4-ヒドロキシプロリノール(Hyp-C6-アミノ)、2-ドコサノイル-ウリジン-3’-ホスフェート、逆方向2’-デオキシ-修飾リボヌクレオチド、例えば逆方向dT(idT)および逆方向dA(idA)など、ならびに逆方向脱塩基2’-デオキシリボヌクレオチド(iAb)およびその他のものなどが挙げられ得る。この修飾の開示内容は、国際公開第2011/005861号に見ることができる。
【0266】
一実施例では、オリゴヌクレオチドの3’末端または5’末端は、例えば逆方向dT(idT)、逆方向dA(idA)、または逆方向脱塩基2’-デオキシリボヌクレオチド(iAb)などである逆方向2’-デオキシ修飾リボヌクレオチドに連結される。一つの特定の実施例では、逆方向2’-デオキシ-修飾リボヌクレオチドは、本明細書に記載するセンス鎖の3’末端など、オリゴヌクレオチドの3’末端に連結され、ここで当該連結は、3’-3’ホスホジエステル連結または3’-3’-ホスホロチオエート連結を介している。
【0267】
別の実施例では、センス鎖の3’末端は、3’-3’-ホスホロチオエート連結を介して、逆方向脱塩基リボヌクレオチド(iAb)に連結される。別の実施例では、センス鎖の3’末端は、3’-3’-ホスホロチオエート連結を介して、逆方向dA(idA)に連結される。
【0268】
一つの特定の実施例では、逆方向2’-デオキシ-修飾リボヌクレオチドは、本明細書に記載するセンス鎖の3’末端など、オリゴヌクレオチドの3’末端に連結され、ここで当該連結は、3’-3’ホスホジエステル連結または3’-3’-ホスホロチオエート連結を介している。
【0269】
別の実施例では、センス鎖の3’末端ヌクレオチドは、逆方向dA(idA)であり、また3’-3’-連結(例えば、3’-3’-ホスホロチオエート連結)を介して先行するヌクレオチドに連結されている。
【0270】
本開示のRNAi剤の他の修飾として、5’ホスフェートまたは5’ホスフェート模倣体、例えば、RNAi剤のアンチセンス鎖上の5’末端ホスフェートまたはホスフェート模倣体が挙げられる。適したホスフェート模倣体は、例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれるUS2012/0157511に開示されている。
【0271】
A.本開示のモチーフを含む修飾RNAi剤
本開示の特定の態様においては、本開示の二本鎖RNAi剤は、例えばその内容全体が 参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2013/075035号において開示されるような化学修飾を有する薬剤を含む。本明細書および国際公開第2013/075035号において示されるように、三つの連続するヌクレオチド上の三つの同一修飾のうちの一つまたは複数のモチーフが、特に切断部位においてまたはその近傍において、RNAi剤のセンス鎖またはアンチセンス鎖に導入され得る。一部の実施形態では、RNAi剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖は、そうでなければ完全に修飾され得る。これらモチーフの導入は、存在する場合にはセンス鎖またはアンチセンス鎖の修飾パターンを中断する。RNAi剤は、随意に、例えばセンス鎖上の、親油性リガンドと、例えば、C16リガンドとコンジュゲートし得る。RNAi剤は、随意に、例えばアンチセンス鎖の一つまたは複数の残基において、(S)-グリコール核酸(GNA)修飾で修飾され得る。
【0272】
したがって、本開示は、インビボで標的ゲノムまたは遺伝子(すなわち、SGLT2遺伝子)の発現を阻害可能な二本鎖RNAi剤を提供する。このRNAi剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む。RNAi剤の各鎖は、15~30ヌクレオチドの長さであり得る。各鎖は、例えば、長さが16~30ヌクレオチド、長さが17~30ヌクレオチド、長さが25~30ヌクレオチド、長さが27~30ヌクレオチド、長さが17~23ヌクレオチド、長さが17~21ヌクレオチド、長さが17~19ヌクレオチド、長さが19~25ヌクレオチド、長さが19~23ヌクレオチド、長さが19~21ヌクレオチド、長さが21~25ヌクレオチド、または長さが21~23ヌクレオチドであり得る。特定の実施形態では、各鎖は、長さが19~23ヌクレオチドである。
【0273】
センス鎖およびアンチセンス鎖は通常、本明細書において「RNAi剤」とも呼ばれる二本鎖の二本鎖RNA(「dsRNA」)を形成する。RNAi剤の二本鎖領域は、長さが15~30ヌクレオチド対であり得る。例えば、二本鎖領域は、長さが16~30ヌクレオチド対、長さが17~30ヌクレオチド対、長さが27~30ヌクレオチド対、長さが17~23ヌクレオチド対、長さが17~21ヌクレオチド対、長さが17~19ヌクレオチド対、長さが19~25ヌクレオチド対、長さが19~23ヌクレオチド対、長さが19~21ヌクレオチド対、長さが21~25ヌクレオチド対、または長さが21~23ヌクレオチド対であり得る。別の実施例では、二本鎖領域は、長さが15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、および27ヌクレオチドから選択される。特定の実施形態では、二本鎖領域は、長さが19~21ヌクレオチド対である。
【0274】
一実施形態では、RNAi剤は、一方または両方の鎖の3’末端、5’末端または両末端に一つまたは複数のオーバーハング領域またはキャッピング基を含有し得る。オーバーハングは、1~6ヌクレオチドの長さであり得、例えば2~6ヌクレオチドの長さ、1~5ヌクレオチドの長さ、2~5ヌクレオチドの長さ、1~4ヌクレオチドの長さ、2~4ヌクレオチドの長さ、1~3ヌクレオチドの長さ、2~3ヌクレオチドの長さまたは1~2ヌクレオチドの長さであり得る。特定の実施形態では、ヌクレオチドオーバーハング領域は、2ヌクレオチドの長さである。オーバーハングは、一方の鎖がもう一方よりも長い結果、または同一の長さの二本の鎖がねじれている結果であり得る。このオーバーハングは、標的mRNAとミスマッチを形成し得る、または標的とする遺伝子配列に対して相補的であり得る、または別の配列であり得る。第一および第二の鎖を、例えば、ヘアピンを形成する追加の塩基によって、または他の非塩基リンカーによって、連結することもできる。
【0275】
一実施形態では、RNAi剤のオーバーハング領域におけるヌクレオチドは、それぞれ独立して、修飾または未修飾のヌクレオチドであり得、これには、限定されるものではないが2’-糖修飾されたもの、例えば2-F、2’-O-メチル、チミジン(T)およびそれらのいずれかの組合せが含まれる。
【0276】
例えばTTは、いずれかの鎖上のいずれかの末端のためのオーバーハング配列であり得る。このオーバーハングは、標的mRNAとミスマッチを形成し得る、または標的とする遺伝子配列に対して相補的であり得る、または別の配列であり得る。
【0277】
RNAi剤のセンス鎖、アンチセンス鎖または両鎖の5’-または3’-オーバーハングは、リン酸化され得る。一部の実施形態では、オーバーハング領域は、二つのヌクレオチドの間にホスホロチオエートを有する二つのヌクレオチドを含有し、当該二つのヌクレオチドは、同一であり得るか、または異なり得る。一実施形態では、オーバーハングは、センス鎖、アンチセンス鎖または両鎖の3’末端に存在する。一実施形態では、この3’-オーバーハングは、アンチセンス鎖内に存在する。一実施形態では、この3’-オーバーハングは、センス鎖内に存在する。
【0278】
RNAi剤は、その安定性全体に影響を及ぼすことなくRNAiの干渉活性を強化できる単一のオーバーハングのみを含有し得る。例えば、一本鎖オーバーハングは、センス鎖の3’末端に、あるいはアンチセンス鎖の3’末端に位置し得る。RNAiはまた、アンチセンス鎖の5’末端(すなわち、センス鎖の3’末端)に位置する、または逆も同じである、平滑末端を有し得る。概して、RNAiのアンチセンス鎖は、3’末端にヌクレオチドオーバーハングを有し、そして5’末端は平滑である。理論に拘束されることを望むことなく、こうしたアンチセンス鎖の5’末端にある平滑末端とアンチセンス鎖の3’末端オーバーハングとが非対称であることが、RISCプロセスへのガイド鎖挿入に好都合である。
【0279】
一実施形態では、RNAi剤は、長さが19ヌクレオチドの二重平滑末端であり、このセンス鎖は、5’末端から7、8、および9位の三つの連続するヌクレオチド上に三つの2’-F修飾の少なくとも一つのモチーフを含有する。アンチセンス鎖は、5’末端から11、12、および13位において三つの連続するヌクレオチド上に三つの2’-O-メチル修飾の少なくとも一つのモチーフを含む。
【0280】
別の実施形態では、RNAi剤は、長さが20ヌクレオチドの二重平滑末端であり、このセンス鎖は、5’末端から8、9、および10位の三つの連続するヌクレオチド上に三つの2’-F修飾の少なくとも一つのモチーフを含有する。アンチセンス鎖は、5’末端から11、12、および13位において三つの連続するヌクレオチド上に三つの2’-O-メチル修飾の少なくとも一つのモチーフを含む。
【0281】
さらに別の実施形態では、RNAi剤は、長さが21ヌクレオチドの二重平滑末端であり、このセンス鎖は、5’末端から9、10、および11位の三つの連続するヌクレオチド上の三つの2’-F修飾の少なくとも一つのモチーフを含有する。アンチセンス鎖は、5’末端から11、12、および13位において三つの連続するヌクレオチド上に三つの2’-O-メチル修飾の少なくとも一つのモチーフを含む。
【0282】
一実施形態では、RNAi剤は、21ヌクレオチドのセンス鎖および23ヌクレオチドのアンチセンス鎖を含み、このセンス鎖は、5’末端から9、10、11位の三つの連続するヌクレオチド上に三つの2’-F修飾の少なくとも一つのモチーフを含有し、アンチセンス鎖は、5’末端から11、12、13位の三つの連続するヌクレオチド上に三つの2’-O-メチル修飾の少なくとも一つのモチーフを含有し、RNAi剤の一方の末端は、平滑であり、もう一方の末端は、2ヌクレオチドのオーバーハングを含む。一実施例では、二ヌクレオチドオーバーハングが、アンチセンス鎖の3’末端にある。2ヌクレオチドのオーバーハングが、アンチセンス鎖の3’末端にある場合には、末端の三つのヌクレオチドの間に二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結があり得るものであり、該三つのヌクレオチドのうち二つが、オーバーハングヌクレオチドであり、三番目のヌクレオチドが、オーバーハングヌクレオチドに隣接する対合したヌクレオチドである。一実施形態では、RNAi剤は、さらに、センス鎖の5’末端およびアンチセンス鎖の5’末端の両方において末端の三つのヌクレオチドの間に二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結を有する。一実施形態では、モチーフの一部であるヌクレオチドを含むRNAi剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖内のどのヌクレオチドも、修飾ヌクレオチドである。一実施形態では、各残基は、独立して、例えば、交互モチーフ内において、2’-O-メチルまたは2’-フルオロで修飾されている。随意に、RNAi剤は、リガンド(例えば、親油性リガンド、随意にC16リガンド)をさらに含む。
【0283】
一実施形態では、RNAi剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含むものであり、このセンス鎖が、長さが25~30ヌクレオチド残基であり、5’末端ヌクレオチド(1位)から開始して、第一の鎖の1位~23位が、少なくとも8リボヌクレオチドを含み、アンチセンス鎖が、長さが36~66ヌクレオチド残基であり、また3’末端ヌクレオチドから開始して、センス鎖の1~23位と対合した位置において少なくとも8リボヌクレオチドを含んで二本鎖を形成するものであり、アンチセンス鎖の少なくとも3’末端ヌクレオチドがセンス鎖と対合せず、また最大6の連続する3’末端ヌクレオチドはセンス鎖と対合せず、それによって1~6ヌクレオチドの3’の単一鎖オーバーハングを形成し、アンチセンス鎖の5’末端が、センス鎖と対合しない10~30の連続するヌクレオチドを含み、それによって10~30ヌクレオチドの単一鎖の5’オーバーハングを形成し、少なくともセンス鎖5’末端および3’末端ヌクレオチドが、センス鎖およびアンチセンス鎖が最大の相補性で整列する場合にアンチセンス鎖のヌクレオチドと塩基対合し、それによってセンス鎖およびアンチセンス鎖間の実質的に二本鎖の領域を形成し、またアンチセンス鎖が、アンチセンス鎖長の少なくとも19リボヌクレオチドに沿って標的RNAに対して十分に相補的であり、二本鎖核酸が哺乳類細胞に導入されたときに標的遺伝子発現を低減させ、またセンス鎖が、三つの連続するヌクレオチド上に三つの2’-F修飾の少なくとも一つのモチーフを含有するものであり、モチーフのうちの少なくとも一つが、切断部位においてまたは切断部位の近傍で生じる。アンチセンス鎖は、切断部位においてまたはその近傍で三つの連続するヌクレオチド上の三つの2’-O-メチル修飾の少なくとも一つのモチーフを含有する。
【0284】
一実施形態では、RNAi剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、このRNAi剤は、少なくとも25ヌクレオチドであり最大でも29ヌクレオチドである長さを有する第一の鎖と、5’末端から11、12、および13位において三つの連続するヌクレオチド上の三つの2’-O-メチル修飾の少なくとも一つのモチーフをもつ最大でも30ヌクレオチドである長さを有する第二の鎖を含むものであり、この第一の鎖の3’末端および第二の鎖の5’末端が平滑末端を形成し、また第二の鎖が、その3’末端において第一の鎖よりも長い1~4ヌクレオチドであるものであり、二本鎖領域が長さが少なくとも25ヌクレオチドであり、また第二の鎖が、第二の鎖の長さのうちの少なくとも19ヌクレオチドに沿って標的mRNAに対して十分に相補的であり、RNAi剤が哺乳類細胞に導入されたときに標的遺伝子発現を低減するものであり、またRNAi剤のDicer切断が、第二の鎖の3’末端を含むsiRNAを結果として生じ、それによって哺乳類細胞において標的遺伝子の発現が低減する。随意に、RNAi剤は、リガンドをさらに含む。
【0285】
一実施形態では、RNAi剤のセンス鎖は、三つの連続するヌクレオチド上の三つの同一の修飾の少なくとも一つのモチーフを含有し、そのモチーフのうちの一つは、センス鎖内の切断部位に生じる。
【0286】
一実施形態では、RNAi剤のアンチセンス鎖もまた、三つの連続するヌクレオチド上の三つの同一の修飾の少なくとも一つのモチーフを含有することができ、このモチーフのうちの一つは、アンチセンス鎖内の切断部位にまたはその近傍に生じる。
【0287】
17~23ヌクレオチドの長さの二本鎖領域を有するRNAi剤について、アンチセンス鎖の切断部位は、典型的には、5’末端からおよそ10、11および12位である。したがって、三つの同一の修飾のモチーフは、アンチセンス鎖の9、10、および11位、10、11、および12位、11、12、および13位、12、13、および14位、または13、14、および15位において生じ得、この数字はアンチセンス鎖の5’末端から最初のヌクレオチドから開始し、またはこの数字はアンチセンス鎖の5’末端から二本鎖領域の範囲内の最初の対合ヌクレオチドから開始する。アンチセンス鎖内の切断部位はまた、5’末端からのRNAiの二本鎖領域の長さに応じて変化し得る。
【0288】
RNAi剤のセンス鎖は、その鎖の切断部位において三つの連続するヌクレオチド上の三つの同一の修飾の少なくとも一つのモチーフを含有し得、またアンチセンス鎖は、鎖の切断部位においてまたはその近傍において三つの連続するヌクレオチド上の三つの同一の修飾の少なくとも一つのモチーフを有し得る。センス鎖およびアンチセンス鎖がdsRNA二本鎖を形成する場合には、センス鎖およびアンチセンス鎖は、センス鎖上の三つのヌクレオチドの一つのモチーフおよびアンチセンス鎖上の三つのヌクレオチドの一つのモチーフが、少なくとも一つのヌクレオチドオーバーラップを有するように、すなわち、センス鎖内のモチーフの三つのヌクレオチドの少なくとも一つが、アンチセンス鎖内のモチーフの三つのヌクレオチドの少なくとも一つと塩基対合を形成するように、整列され得る。あるいは、少なくとも二つのヌクレオチドが重複してもよく、または三つのヌクレオチドの全てが重複してもよい。
【0289】
一実施形態では、RNAi剤のセンス鎖は、三つの連続するヌクレオチド上の三つの同一の修飾の複数のモチーフを含有し得る。第一のモチーフは、鎖の切断部位においてまたはその近傍に生じ得、またその他のモチーフが、ウイング修飾であり得る。本明細書において「ウイング修飾」という用語は、同一の鎖の切断部位においてまたはその近傍においてのモチーフから分離されている鎖の別の部分において生じるモチーフを指す。ウイング修飾は、第一のモチーフに隣接しているか、または少なくとも一つまたは複数のヌクレオチドで分離されている。モチーフが互いに直ぐ隣に隣接する場合には、モチーフの化学的性質は、互いに別個であり、またモチーフが一つまたは複数のヌクレオチドで分離されている場合には、化学的性質は、同一であることもあり、または異なっていることもある。二つ以上のウイング修飾が存在する場合もある。例えば、二つのウイング修飾が存在する場合には、各ウイング修飾は、切断部位においてもしくはその近傍における第一のモチーフに対して一つの末端において生じ得、またはリードモチーフのいずれかの側で生じ得る。
【0290】
センス鎖と同様に、RNAi剤のアンチセンス鎖は、三つの連続するヌクレオチド上の三つの同一の修飾の複数のモチーフを含有する場合があり、そのモチーフの少なくとも一つはその鎖の切断部位においてまたはその近傍において生じる。このアンチセンス鎖はまた、センス鎖上に存在し得るウイング修飾と同様のアラインメント内に一つまたは複数のウイング修飾を含有し得る。
【0291】
一実施形態では、RNAi剤のセンス鎖またはアンチセンス鎖上のウイング修飾は、典型的には、鎖の3’末端、5’末端または両末端における最初の一つまたは二つの末端ヌクレオチドを含まない。
【0292】
別の実施形態では、RNAi剤のセンス鎖またはアンチセンス鎖上のウイング修飾は、典型的には、鎖の3’末端、5’末端または両末端における二本鎖領域内の最初の一つまたは二つの対合ヌクレオチドを含まない。
【0293】
RNAi剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖が各々、少なくとも一つのウイング修飾を含有する場合には、そのウイング修飾は、二本鎖領域の同一末端に入り得、そして一、二または三ヌクレオチドのオーバーラップを有する。
【0294】
RNAi剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖が各々、少なくとも二つのウイング修飾を含有する場合には、センス鎖およびアンチセンス鎖は、それぞれの一本鎖に由来する二つの修飾が、一、二または三ヌクレオチドのオーバーラップを有する二本鎖領域の一方の末端に入り、一本鎖からの二つの修飾がそれぞれ、一、二または三ヌクレオチドのオーバーラップを有する二本鎖領域のうちのもう一方の末端に入り、一本鎖からの二つの修飾が、二本鎖領域内の一、二または三ヌクレオチドのオーバーラップを有するリードモチーフの両側に入るように、整列され得る。
【0295】
一実施形態では、RNAi剤は、標的との、二本鎖内のミスマッチまたはそれらの組合せを含む。ミスマッチ(mistmatch)は、オーバーハング領域または二本鎖領域内に生じ得る。塩基対は、解離または融解を促進するそれらがもつ傾向に基づいて格付けされ得る(例えば、特定の対合の会合または解離の自由エネルギーに基づくものであり、最も単純なアプローチとしては、個々の対ごとに対を調べることであるが、次に、隣接するまたは同様の分析も使用可能である)。解離の促進の点では、A:UはG:Cより好ましく、G:UはG:Cより好ましく、またI:CはG:Cより好ましい(I=イノシン)。ミスマッチ、例えば、非標準の対合または標準以外の対合(本明細書において別の箇所に記載される)が、標準(A:T、A:U、G:C)の対合より好ましく、またユニバーサル塩基を含む対合が、標準の対合より好ましい。
【0296】
一実施形態では、RNAi剤は、A:U、G:U、I:Cの群から独立して選択されるアンチセンス鎖の5’末端から二本鎖領域内の最初の1、2、3、4または5塩基対、および例えば、非標準の対合または標準以外の対合またはユニバーサル塩基を含む対合であるミスマッチ対のうちの少なくとも一つを含み、二本鎖の5’末端においてアンチセンス鎖の解離を促進する。
【0297】
一実施形態では、アンチセンス鎖内の5’末端から二本鎖領域内の1位にあるヌクレオチドは、A、dA、dU、UおよびdTからなる群から選択される。あるいは、アンチセンス鎖の5’末端から二本鎖領域内の最初の1、2または3の塩基対のうち少なくとも一つは、AU塩基対である。例えば、アンチセンス鎖の5’末端から二本鎖領域内の最初の塩基対は、AU塩基対である。
【0298】
別の実施形態では、センス鎖の3’末端にあるヌクレオチドは、デオキシチミジン(dT)である。別の実施形態では、アンチセンス鎖の3’末端にあるヌクレオチドは、デオキシチミジン(dT)である。一実施形態では、デオキシチミジンヌクレオチドの短い配列が存在し、例えばセンス鎖またはアンチセンス鎖の3’末端上の二つのdTヌクレオチドが存在する。
【0299】
一実施形態では、センス鎖配列は、式(I):
5’n-N-(X X X)-N-Y Y Y -N-(Z Z Z)-N-n3’(I)、で表され得、
式中、
iおよびjは各々独立に、0または1であり、
pおよびqは各々独立に、0~6であり、
各Nは独立に、0~25の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表すものであって、各配列は少なくとも二つの異なるように修飾されたヌクレオチドを含み、
各Nは独立に、0~10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、
各nおよびnは独立に、オーバーハングヌクレオチドを表すものであり、
式中、NbおよびYは、同一の修飾を有さず、ならびに
XXX、YYYおよびZZZは各々独立に、三つの連続するヌクレオチド上の三つの同一の修飾の一つのモチーフを表す。一実施形態では、YYYは、すべて2’-F修飾ヌクレオチドである。
【0300】
一実施形態では、NまたはNは、交互パターンの修飾を含む。
【0301】
一実施形態では、YYYモチーフは、センス鎖の切断部位においてまたはその近傍に生じる。例えば、RNAi剤が、17~23ヌクレオチドの長さの二本鎖領域を有する場合、YYYモチーフは、センス鎖の切断部位においてまたはその近傍において生じ得(例えば、6、7、8位、7、8、9位、8、9、10位、9、10、11位、10、11、12位、または11、12、13位において生じ得る)、この数字は、5’末端から、最初のヌクレオチドから開始し、または随意に、この数字は、5’末端から、二本鎖領域内の最初の対合ヌクレオチドにおいて開始する。
【0302】
一実施形態では、iは1であり、かつjは0であり、またはiは0であり、かつjは1であり、またはiおよびjの両方が1である。したがって、センス鎖は、以下の式:
5’n-N-YYY-N-ZZZ-N-n3’(Ib)、
5’n-N-XXX-N-YYY-N-n3’(Ic)、または
5’n-N-XXX-N-YYY-N-ZZZ-N-n3’(Id)、で表され得る。
【0303】
センス鎖が式(Ib)で表される場合、Nは、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2、または0の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【0304】
各Nは独立に、2~20、2~15または2~10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し得る。
【0305】
センス鎖が式(Ic)で表される場合、Nは、0~10、0~7、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2または0の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各Nは独立に、2~20、2~15または2~10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し得る。
【0306】
センス鎖が式(Id)で表される場合、各Nは独立に、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2、または0の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。一実施形態では、Nは、0、1、2、3、4、5、または6である。各Nは独立に、2~20、2~15または2~10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し得る。
【0307】
X、YおよびZの各々は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0308】
他の実施形態では、iは0であり、かつjは0であり、またセンス鎖は、式:
5’n-N-YYY-N-n3’(Ia)
で表され得る。
【0309】
センス鎖が、式(Ia)で表される場合、各Nは独立に、2~20、2~15、または2~10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し得る。
【0310】
一実施形態では、RNAiのアンチセンス鎖配列は、式(II):
5’nq’-N’-(Z’Z’Z’)-N’-Y’Y’Y’-N’-(X’X’X’)-N’-n’3’(II)、
で表され得、
式中、
kおよびlは各々独立に、0または1であり、
p’およびq’は各々独立に、0~6であり、
各N’は独立に、0~25の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表すものであり、各配列は、少なくとも二つの異なるように修飾されたヌクレオチドを含み、
各N’は独立に、0~10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、
各n’およびn’は独立に、オーバーハングヌクレオチドを表し、
式中、N’およびY’は、同一の修飾を有さず、ならびに
X’X’X’、Y’Y’Y’およびZ’Z’Z’は各々独立に、三つの連続するヌクレオチド上の三つの同一の修飾のうちの一つのモチーフを表す。
【0311】
一実施形態では、N’またはN’は、交互パターンの修飾を含む。
【0312】
Y’Y’Y’モチーフは、アンチセンス鎖の切断部位またはその近傍において生じる。例えば、RNAi剤が、17~23ヌクレオチドの長さの二本鎖領域を有する場合、Y’Y’Y’モチーフは、アンチセンス鎖の9、10、11位、10、11、12位、11、12、13位、12、13、14位、または13、14、15位において生じ得、この数字は、5’末端から、最初のヌクレオチドから開始し、または随意に、この数字は、5’末端から、二本鎖領域内の最初の対合ヌクレオチドにおいて開始する。一実施形態では、Y’Y’Y’モチーフは、11位、12位、13位において生じる。
【0313】
一実施形態では、Y’Y’Y’モチーフは、全て2’-OMe修飾ヌクレオチドである。
【0314】
一実施形態では、kは1であり、lは0であるか、またはkは0であり、lは1であるか、またはkおよびlは両方とも1である。
【0315】
したがって、アンチセンス鎖は、以下の式:
5’nq’-N’-Z’Z’Z’-N’-Y’Y’Y’-N’-np’3’(IIb)、
5’nq’-N’-Y’Y’Y’-N’-X’X’X’-np’3’(IIc)、または
5’nq’-N’-Z’Z’Z’-N’-Y’Y’Y’-N’-X’X’X’-N’-np’3’(IId)、
で表され得る。
【0316】
アンチセンス鎖が、式(IIb)で表される場合、N は、0~10、0~7、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2、または0の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各N’は独立に、2~20、2~15、または2~10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【0317】
アンチセンス鎖が、式(IIc)で表される場合、N’は、0~10、0~7、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2、または0の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各N’は独立に、2~20、2~15、または2~10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【0318】
アンチセンス鎖が、式(IId)で表される場合、各N’は独立に、0~10、0~7、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2、または0の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各N’は独立に、2~20、2~15、または2~10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。一実施形態では、Nは、0、1、2、3、4、5、または6である。
【0319】
他の実施形態では、kは0であり、かつlは0であり、またアンチセンス鎖は、式:
5’np’-Na’-Y’Y’Y’-Na’-nq’3’(Ia)、
で表され得る。
【0320】
アンチセンス鎖が、式(IIa)で表される場合、各N’は独立に、2~20、2~15、または2~10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【0321】
X’、Y’およびZ’の各々は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0322】
センス鎖およびアンチセンス鎖の各ヌクレオチドは、LNA、グリコール核酸(GNA)、ヘキシトル核酸(HNA)、2’-メトキシエチル、2’-O-メチル、2’-O-アリル、2’-C-アリル、2’-ヒドロキシルまたは2’-フルオロで独立に修飾され得る。例えば、センス鎖およびアンチセンス鎖の各ヌクレオチドは、2’-O-メチルまたは2’-フルオロで独立に修飾される。各X、Y、Z、X’、Y’およびZ’は、特に2’-O-メチル修飾または2’-フルオロ修飾を表し得る。
【0323】
一実施形態では、RNAi剤のセンス鎖は、二本鎖領域が21ntである場合に、鎖の9、10および11位で生じるYYYモチーフを含有し得、この数字は5’末端から最初のヌクレオチドから開始するか、または随意に、この数字は5’末端から二本鎖領域内の最初の対合ヌクレオチドで開始し、またYは、2’-F修飾を表す。センス鎖は、二本鎖領域の対向する側の末端においてウイング修飾としてXXXモチーフまたはZZZモチーフをさらに含有し得、またXXXおよびZZZは各々独立に、2’-OMe修飾または2’-F修飾を表す。
【0324】
一実施形態では、アンチセンス鎖は、鎖の11、12、13位で生じるY’Y’Y’モチーフを含有し得、この数字は5’末端から最初のヌクレオチドから開始し、または随意に、この数字は5’末端から二本鎖領域内の最初の対合ヌクレオチドで開始し、またY’は、2’-O-メチル修飾を表す。アンチセンス鎖は、二本鎖領域の対向する側の末端においてウイング修飾としてX’X’X’モチーフまたはZ’Z’Z’モチーフをさらに含有し得、またX’X’X’およびZ’Z’Z’は各々独立に、2’-OMe修飾または2’-F修飾を表す。
【0325】
上記の式(Ia)、(Ib)、(Ic)および(Id)のいずれか一つで表されるセンス鎖は、それぞれ式(IIa)、(IIb)、(IIc)および(IId)のいずれか一つで表されるアンチセンス鎖と二本鎖を形成する。
【0326】
したがって、本開示の方法において使用するRNAi剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み得、その各鎖は、14~30ヌクレオチドを有し、RNAi二本鎖は、式(III):
センス:5’n-N-(X X X)-N-Y Y Y-N-(Z Z Z)-N-n3’
アンチセンス:3’n -N -(X’X’X’)-N -Y’Y’Y’-N -(Z’Z’Z’)-N -n 5’
(III)で表され、
式中、
i、j、kおよびlは各々独立に、0または1であり、
p、p’、qおよびq’は各々独立に、0~6であり、
各NおよびN は独立に、0~25の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも二つの異なるように修飾されたヌクレオチドを含み、
各NおよびN は独立に、0~10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、
式中、
各n’、n、n’およびnは、それらの各々が、存在していても存在していなくてもよく、独立して、オーバーハングヌクレオチドを表し、
XXX、YYY、ZZZ、X’X’X’、Y’Y’Y’およびZ’Z’Z’は各々独立に、三つの連続するヌクレオチド上の三つの同一の修飾の一つのモチーフを表す。
【0327】
一実施形態では、iは0であり、かつjは0であり、またはiは1であり、かつjは0であり、またはiは0であり、かつjは1であり、またはiおよびjは両方とも0であり、またはiおよびjは両方とも1である。別の実施形態では、kは0であり、かつlは0であり、またはkは1であり、かつlは0であり、kは0であり、かつlは1であり、またはkおよびlは両方とも0であり、またはkおよびlは両方とも1である。
【0328】
RNAi二本鎖を形成するセンス鎖およびアンチセンス鎖の例示的な組合せは、以下の式:
5’n-N-YYY-N-n3’
3’n -N -Y’Y’Y’-N 5’
(IIIa)
5’n-N-YYY-N-ZZZ-N-n3’
3’n -N -Y’Y’Y’-N -Z’Z’Z’-N 5’
(IIIb)
5’n-N-XXX-N-YYY-N-n3’
3’n -N -X’X’X’-N -Y’Y’Y’-N -n 5’
(IIIc)
5’n-N-XXX-N-YYY-N-ZZZ-N-n3’
3’n -N -X’X’X’-N -Y’Y’Y’-N -Z’Z’Z’-N-n 5’
(IIId)を含む。
【0329】
RNAi剤が式(IIIa)で表される場合、各Nは独立に、2~20、2~15、または2~10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【0330】
RNAi剤が式(IIIb)で表される場合、各Nは独立に、1~10、1~7、1~5、または1~4の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各N’は独立に、2~20、2~15、または2~10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【0331】
RNAi剤が式(IIIc)で表される場合、各N、N’は独立に、0~10、0~7、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2、または0の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各N’は独立に、2~20、2~15、または2~10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【0332】
RNAi剤が式(IIId)で表される場合、各N、N’は独立に、0~10、0~7、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2、または0の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各N、N は独立に、2~20、2~15、または2~10の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。N、N’、N、およびN の各々は独立に、交互パターンの修飾を含む。
【0333】
一実施形態では、RNAi剤が式(IIId)で表される場合には、N修飾は、2’-O-メチル修飾または2’-フルオロ修飾である。別の実施形態では、RNAi剤が式(IIId)で表される場合、N修飾は、2’-O-メチルまたは2’-フルオロ修飾であり、またn’>0および少なくとも一つのn’は、ホスホロチオエート連結を介して隣接するヌクレオチドに連結する。さらに別の実施形態では、RNAi剤が式(IIId)で表される場合、N修飾は2’-O-メチルまたは2’-フルオロ修飾であり、n’>0であり、また少なくとも一つのn’は、ホスホロチオエート連結を介して隣接するヌクレオチドに連結され、またセンス鎖は、二価または三価の分枝リンカー(以下に記載する)を介して結合した一つまたは複数のC16(またはそれと関連する)部分にコンジュゲートする。別の実施形態では、RNAi剤が式(IIId)で表される場合、N修飾は2-O-メチルまたは2-フルオロ修飾であり、n’>0であり、また少なくとも一つのn’は、ホスホロチオエート連結を介して隣接するヌクレオチドに連結され、センス鎖は、少なくとも一つのホスホロチオエート連結を含み、またセンス鎖は、一つまたは複数の親油性部分に、例えば、C16(またはそれと関連する)部分にコンジュゲートし、これは二価または三価の分枝リンカーを介して随意に結合してもよい。
【0334】
一実施形態では、RNAi剤が式(IIIa)で表される場合、N修飾は2-O-メチルまたは2-フルオロ修飾であり、n’>0であり、また少なくとも一つのn’は、ホスホロチオエート連結を介して隣接するヌクレオチドに連結され、センス鎖は、少なくとも一つのホスホロチオエート連結を含み、またセンス鎖は、一つまたは複数の親油性部分に、例えば、C16(またはそれと関連する)部分にコンジュゲートし、これは二価または三価の分枝リンカーを介して結合してもよい。
【0335】
一実施形態では、RNAi剤は、式(III)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)および(IIId)で表される少なくとも二つの二本鎖を含有する多量体であり、これら二本鎖は、リンカーで接続されている。該リンカーは、切断可能である場合も、切断可能でない場合もある。随意に、多量体は、リガンドをさらに含む。二本鎖の各々は、同一の遺伝子または二つの異なる遺伝子を標的にし得、または二本鎖の各々は、二つの異なる標的部位における同一の遺伝子を標的とし得る。
【0336】
一実施形態では、RNAi剤は、式(III)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)および(IIId)で表される三、四、五、六、またはそれ以上の二本鎖を含有する多量体であり、該二本鎖は、リンカーで接続される。該リンカーは、切断可能である場合も、切断可能でない場合もある。随意に、多量体は、リガンドをさらに含む。二本鎖の各々は、同一の遺伝子または二つの異なる遺伝子を標的にし得、または二本鎖の各々は、二つの異なる標的部位における同一の遺伝子を標的とし得る。
【0337】
一実施形態では、式(III)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)および(IIId)で表される二つのRNAi剤は、5’末端で互いに連結され、また3’末端の一方または両方が、随意にリガンドにコンジュゲートされる。当該剤は各々、同一の遺伝子または二つの異なる遺伝子を標的とし得、または当該剤の各々は、二つの異なる標的部位において同一の遺伝子を標的にし得る。
【0338】
種々の公開公報には、本開示の方法において使用され得る多量体RNAi剤が記載されている。当該公開公報としては、国際公開第2007/091269号、国際公開第2010/141511号、国際公開第2007/117686号、国際公開第2009/014887号、および国際公開第2011/031520号、および米国特許第7858769号が挙げられ、それらの各々の内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0339】
特定の実施形態では、本開示の組成物および方法は、本明細書において記載するようなRNAi剤のビニルホスホネート(VP)修飾を含む。例示的実施形態では、本開示の5’-ビニルホスホネート修飾ヌクレオチドが、以下の構造を有し、
【化4】
式中、XはOまたはSであり、
Rは、水素、ヒドロキシ、フルオロ、またはC1-20アルコキシ(例えば、メトキシまたはn-ヘキサデシルオキシ)であり、
5’は、=C(H)-P(O)(OH)であり、およびC5’炭素とR5’との間の二重結合は、E配座またはZ配座(例えば、E配座)にあり、ならびに
Bは、核酸塩基または修飾核酸塩基であり、随意に、Bは、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、またはウラシルである。
【0340】
一実施形態では、R5’は、=C(H)-P(O)(OH)2であり、C5’炭素とR5’との間の二重結合はE配座である。別の実施形態では、Rは、メトキシであり、またR5’は、=C(H)-P(O)(OH)2であり、またC5’炭素とR5’との間の二重結合はE配座である。別の実施形態では、Xは、Sであり、Rは、メトキシであり、またR5’は、=C(H)-P(O)(OH)2であり、またC5’炭素とR5’との間の二重結合はE配座である。
【0341】
本開示のビニルホスホネートは、本開示のdsRNAのアンチセンスまたはセンス鎖のいずれかに結合し得る。特定の実施形態では、本開示のビニルホスホネートは、dsRNAのアンチセンス鎖に、随意にdsRNAのアンチセンス鎖の5’末端において、結合する。
【0342】
本開示の組成物および方法のためにビニルホスフェート修飾も企図される。例示的なビニルホスフェート構造は、前述した構造を含み、式中、R5’は=C(H)-OP(O)(OH)2であり、またC5’炭素およびR5’間の二重結合は、E配座またはZ配座(例えば、E配座)である。
【0343】
熱不安定化修飾
特定の実施形態では、アンチセンス鎖のシード領域中に熱不安定化修飾を組み込むことによって、dsRNA分子をRNA干渉のために最適化できる。本明細書で使用される場合、「シード領域」は、参照される鎖の5’末端の2~9位を意味する。例えば、熱的不安定化修飾をアンチセンス鎖のシード領域に組み込み、オフターゲット遺伝子サイレンシングを低減または阻害することができる。
【0344】
「熱不安定化修飾」という用語は、そうした修飾を有していないdsRNAの融解温度(Tm)よりも低い全体的な融解温度(Tm)を有するdsRNAをもたらすであろう修飾を含む。例えば、熱不安定化修飾は、dsRNAのTmを、例えば摂氏一度、二度、三度、または四度など、1~4℃減少させることができる。また、用語「熱的不安定化ヌクレオチド」は、一つまたは複数の熱的不安定化修飾を含有するヌクレオチドを指す。
【0345】
アンチセンス鎖の5’末端から数えて最初の9ヌクレオチドの位置内にある二本鎖の少なくとも一つの熱的不安定化修飾を含むアンチセンス鎖を有するdsRNAが、オフターゲット遺伝子サイレンシング活性を低減したことを発見した。したがって、一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、アンチセンス鎖の5’領域の最初の9ヌクレオチドの位置内に、二本鎖の少なくとも一つ(例えば、一つ、二つ、三つ、四つ、五つまたはそれより多い)の熱的不安定化修飾を含む。一部の実施形態では、一つまたは複数の、二本鎖の熱的不安定化修飾は、アンチセンス鎖の5’末端から2~9位に、例えば4~8位に、位置する。一部のさらなる実施形態では、二本鎖の熱的不安定化修飾は、アンチセンス鎖の5’末端から6、7または8位に位置する。さらに一部のさらなる実施形態では、二本鎖の熱的不安定化修飾は、アンチセンス鎖の5’末端から7位に位置する。一部の実施形態では、二本鎖の熱的不安定化修飾は、アンチセンス鎖の5’末端から2、3、4、5または9位に位置する。
【0346】
熱不安定化修飾としては、これに限定されないが、脱塩基修飾、対向する鎖における対向するヌクレオチドとのミスマッチ、および例えば2’-デオキシ修飾などの糖修飾、例えばアンロック核酸(UNA)またはグリコール核酸(GNA)である非環式ヌクレオチド、および2’-5’-連結リボヌクレオチド(「3’-RNA」)を挙げることができる。
【0347】
例示の脱塩基修飾としては、これに限定されないが、以下が挙げられ、
【化5】
式中、R=H、Me、EtまたはOMe、R’=H、Me、EtまたはOMe、R”=H、Me、EtまたはOMe
【化6】
式中、Bは、修飾または未修飾の核酸塩基である。
【0348】
例示の糖修飾としては、これに限定されないが、以下が挙げられ、
【化7】
式中、Bは、修飾または未修飾の核酸塩基である。
【0349】
一部の実施形態では、二本鎖の熱的不安定化修飾は、以下からなる群から選択され:
【化8】
式中、Bは、修飾または未修飾の核酸塩基であり、また各構造上のアスタリスクは、R、Sまたはラセミのいずれかを表す。
【0350】
一部の実施形態では、二本鎖の熱的不安定化修飾は、以下からなる群から選択され:
【化9】
式中、Bは、修飾または未修飾の核酸塩基であり、またアスタリスクは、R、Sまたはラセミ(例えば、S)のいずれかを表す。
【0351】
用語「非環式ヌクレオチド」は、非環式のリボース糖を有する任意のヌクレオチドを指し、例えばリボース炭素環の結合(例えば、C1’-C2’、C2’-C3’、C3’-C4’、C4’-O4’、またはC1’-O4’)のいずれかが、存在しないか、またはリボース炭素もしくは酸素のうち少なくとも一方(例えば、C1’、C2’、C3’、C4’、またはO4’)が独立に、もしくは組み合わせて、ヌクレオチドに存在しないものである。
【0352】
一部の実施形態では、非環式ヌクレオチドは、
【化10】
であり、Bは、修飾または未修飾の核酸塩基であり、RおよびRは、独立して、H、ハロゲン、ORまたはアルキルであり、またRは、H、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、または糖である)。「UNA」という用語は、糖の結合のいずれかが除去されて、アンロック「糖」残基を形成するものである、非環式のアンロック核酸を指す。一実施例では、UNAはまた、C1’-C4’間の結合が除去されているモノマーを包含する(すなわち、C1’炭素とC4’炭素との間の炭素-酸素-炭素の共有結合)。別の実施例では、糖のC2’-C3’結合(すなわち、C2’炭素とC3’炭素との間の炭素-炭素の共有結合)が除去される(Mikhailov et.al.,Tetrahedron Letters,26(17):2059(1985)、およびFluiter et al.,Mol.Biosyst.,10:1039(2009)を参照されたく、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。非環式誘導体は、ワトソン-クリック対合に影響を及ぼすことなく、より大きな骨格柔軟性を与える。非環式ヌクレオチドは、2’-5’または3’-5’連結を介して連結され得る。
【0353】
「GNA」という用語は、グリコール核酸を指し、これはDNAまたはRNAと類似のポリマーであるが、ホスホジエステル結合によって連結された反復するグリセロール単位から構成される点でその「骨格」の組成が異なる。
【化11】
【0354】
二本鎖の熱的不安定化修飾は、熱的不安定化ヌクレオチドと、dsRNA二本鎖内の対向する鎖内の対向するヌクレオチドとの間のミスマッチ(すなわち、非相補的な塩基対)であり得る。例示的なミスマッチ塩基対としては、G:G、G:A、G:U、G:T、A:A、A:C、C:C、C:U、C:T、U:U、T:T、U:T、またはそれらの組み合わせが挙げられる。当技術分野で公知の他のミスマッチ塩基対合も本発明に従う。ミスマッチは、天然に存在するヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドのいずれかであるヌクレオチドの間に生じ得、すなわち、ミスマッチ塩基対合は、ヌクレオチドのリボース糖上の修飾とは独立してそれぞれのヌクレオチドに由来する核酸塩基間で生じ得る。特定の実施形態では、dsRNA分子は、2’-デオキシ核酸塩基であるミスマッチ対合内の少なくとも一つの核酸塩基を含有し、例えば、2’-デオキシ核酸塩基は、センス鎖内にある。
【0355】
一部の実施形態では、アンチセンス鎖のシード領域内の二本鎖の熱的不安定化修飾は、修飾された核酸塩基など、標的mRNA上の相補的塩基とのワトソン-クリック水素結合W-C H-結合が損なわれたヌクレオチドを含む。
【化12】
【0356】
脱塩基ヌクレオチド、非環式ヌクレオチド修飾(UNAおよびGNAを含む)およびミスマッチ修飾のより多くの例は、国際公開第2011/133876号に詳細に記載されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0357】
熱的不安定化修飾はまた、対向し合う塩基と水素結合を形成する能力が低減または消失したユニバーサル塩基およびリン酸修飾を含み得る。
【0358】
一部の実施形態では、二本鎖の熱的不安定化修飾には、非標準塩基を有するヌクレオチド、例えばこれに限定されないが、対向する鎖内の塩基と水素結合を形成する能力が損なわれた、または完全に消失した核酸塩基修飾が含まれる。これら核酸塩基修飾は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2010/0011895号に記載されるように、dsRNA二本鎖の中心領域の不安定化について評価されている。例示的な核酸塩基の修飾としては、以下がある。
【化13】
【0359】
一部の実施形態では、アンチセンス鎖のシード領域内の二本鎖の熱的不安定化修飾としては、標的mRNA上の塩基と相補的である一つまたは複数のα-ヌクレオチドを含み、例えば以下があり、
【化14】
式中、Rは、H、OH、OCH、F、NH、NHMe、NMeまたはO-アルキルである。
【0360】
天然のホスホジエステル連結と比較して、dsRNA二本鎖の熱的安定性を低下させることがわかっている例示的なリン酸修飾としては以下のものがある。
【化15】
【0361】
R基のアルキルは、C~Cアルキルであり得る。R基の具体的なアルキルとしては、これに限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシルが挙げられる。
【0362】
当業者が認識することとなるように、核酸塩基の機能的役割が本開示のRNAi剤の特異性を規定しているということを考慮して、核酸塩基修飾は本明細書に記載するような種々の手法で、例えば、オフターゲット効果に対してオンターゲット効果を増強する目的のために、例えば、本開示のRNAi剤に不安定化修飾を導入することを実施することが可能であるが、利用可能であって、概して本開示のRNAi剤上に存在する修飾の範囲は、例えば、ポリリボヌクレオチドの糖基またはホスフェート骨格に対する修飾である非核酸塩基修飾に対してずっと大きい傾向がある。こうした修飾は、本開示の他の項でより詳細に記載するものであり、また本明細書において上記または他の場所で記載されるような天然の核酸塩基または修飾核酸塩基のいずれかを有する本開示のRNAi剤のために明確に企図される。
【0363】
dsRNAはまた、熱的不安定化修飾を含むアンチセンス鎖に加えて、一つまたは複数の安定化修飾を含み得る。例えばdsRNAは、少なくとも二つ(例えば、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、八つ、九つ、十またはそれ以上)の安定化修飾を含み得る。限定するものではないが、安定化修飾は全て、一方の鎖内に存在し得る。一部の実施形態では、センスおよびアンチセンス鎖の両方が、少なくとも二つの安定化修飾を含む。安定化修飾は、センス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかのヌクレオチドで生じ得る。例えば、安定化修飾は、センス鎖もしくはアンチセンス鎖上のどのヌクレオチド上でも生じ得、各安定化修飾は、センス鎖もしくはアンチセンス鎖上で交互パターン内で生じ得、またはセンス鎖もしくはアンチセンス鎖は、交互パターン内で両方の安定化修飾を含む。センス鎖上の安定化修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖と同一である場合も異なっている場合もあり、またセンス鎖上の安定化修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖上の安定化修飾の交互パターンに対して相対的な移動がある場合がある。
【0364】
一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、少なくとも二つ(例えば、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、八つ、九つ、十またはそれ以上)の安定化修飾を含む。限定されるものではないが、アンチセンス鎖内の安定化修飾は、任意の位置に存在し得る。一部の実施形態では、アンチセンスは、5’末端から2、6、8、9、14および16位に安定化修飾を含む。一部の他の実施形態では、アンチセンスは、5’末端から2、6、14および16位に安定化修飾を含む。さらに一部の他の実施形態では、アンチセンスは、5’末端から2、14、および16位に安定化修飾を含む。
【0365】
一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、不安定化修飾に隣接する少なくとも一つの安定化修飾を含む。例えば、安定化修飾は、不安定化修飾の5’末端または3’末端にある、すなわち、不安定化修飾の位置から-1位または+1位にある、ヌクレオチドであり得る。一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、不安定化修飾の5’末端および3’末端の各々にある、すなわち、不安定化修飾の位置から-1位および+1位にある、安定化修飾を含む。
【0366】
一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、不安定化修飾の3’末端にある、すなわち、不安定化修飾の位置から+1位および+2位にある、少なくとも二つの安定化修飾を含む。
【0367】
一部の実施形態では、センス鎖は、少なくとも二つ(例えば、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、八つ、九つ、十またはそれ以上)の安定化修飾を含む。限定されるものではないが、センス鎖内の安定化修飾は、任意の位置に存在し得る。一部の実施形態では、センス鎖は、5’末端から7、10および11位に安定化修飾を含む。一部の他の実施形態では、センス鎖は、5’末端から7、9、10および11位に安定化修飾を含む。一部の実施形態では、センス鎖は、アンチセンス鎖の5’末端から数えて、アンチセンス鎖の11、12および15位に対して対向する位置または相補的な位置に安定化修飾を含む。一部の他の実施形態では、センス鎖は、アンチセンス鎖の5’末端から数えて、アンチセンス鎖の11、12、13および15位に対して対向する位置または相補的な位置に安定化修飾を含む。一部の実施形態では、センス鎖は、二、三または四つの安定化修飾のブロックを含む。
【0368】
一部の実施形態では、センス鎖は、アンチセンス鎖内の二本鎖の熱的不安定化修飾に対向する位置または相補的な位置に安定化修飾を含まない。
【0369】
例示的な熱的安定化修飾としては、これに限定されないが、2’-フルオロ修飾が挙げられる。他の熱的安定化修飾としては、これに限定されないが、LNAが挙げられる。
【0370】
一部の実施形態では、本開示のdsRNAは、少なくとも四つ(例えば、四つ、五つ、六つ、七つ、八つ、九つ、十またはそれ以上)の2’-フルオロヌクレオチドを含む。これに限定されないが、2’-フルオロヌクレオチドはすべて、一方の鎖内に存在し得る。一部の実施形態では、センスおよびアンチセンス鎖の両方が、少なくとも二つの2’-フルオロヌクレオチドを含む。2’-フルオロ修飾は、センス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかのヌクレオチド上で生じ得る。例えば、2’-フルオロ修飾は、センス鎖もしくはアンチセンス鎖上のどのヌクレオチド上でも生じる得、各2’-フルオロ修飾は、センス鎖もしくはアンチセンス鎖上の交互パターンにおいて生じ得、またはセンス鎖もしくはアンチセンス鎖は、両方とも交互パターンにおいて2’-フルオロ修飾を含む。センス鎖上の2’-フルオロ修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖と同一である場合も異なっている場合もあり、またセンス鎖上の2’-フルオロ修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖上の2’-フルオロ修飾の交互パターンに対して相対的な移動があり得る。
【0371】
一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、少なくとも二つ(例えば、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、八つ、九つ、十またはそれ以上)の2’-フルオロヌクレオチドを含む。これに限定されるものではないが、アンチセンス鎖内の2’-フルオロ修飾は、任意の位置に存在し得る。一部の実施形態では、アンチセンスは、5’末端から2、6、8、9、14、および16位に2’-フルオロヌクレオチドを含む。一部の他の実施形態では、アンチセンスは、5’末端から2、6、14、および16位に2’-フルオロヌクレオチドを含む。さらに一部の他の実施形態では、アンチセンスは、5’末端から2、14および16位に2’-フルオロヌクレオチドを含む。
【0372】
一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、不安定化修飾に隣接する少なくとも一つの2’-フルオロヌクレオチドを含む。例えば、2’-フルオロヌクレオチドは、不安定化修飾の5’末端または3’末端にある、すなわち、不安定化修飾の位置から-1位または+1位の位置にある、ヌクレオチドであり得る。一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、不安定化修飾の5’末端および3’末端の各々に、すなわち、不安定化修飾の位置から-1および+1位の位置に、2’-フルオロヌクレオチドを含む。
【0373】
一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、不安定化修飾の3’末端に、すなわち、不安定化修飾の位置から+1および+2位に、少なくとも二つの2’-フルオロヌクレオチドを含む。
【0374】
一部の実施形態では、センス鎖は、少なくとも二つ(例えば、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、八つ、九つ、十またはそれ以上)の2’-フルオロヌクレオチドを含む。これに限定されるものではないが、センス鎖内の2’-フルオロ修飾は、任意の位置に存在し得る。一部の実施形態では、アンチセンスは、5’末端から7、10および11位に2’-フルオロヌクレオチドを含む。一部の他の実施形態では、センス鎖は、5’末端から7、9、10および11位に2’-フルオロヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、センス鎖は、アンチセンス鎖の5’末端から数えて、アンチセンス鎖の11、12および15位に対して対向する位置または相補的な位置に2’-フルオロヌクレオチドを含む。一部の他の実施形態では、センス鎖は、アンチセンス鎖の5’末端から数えて、アンチセンス鎖の11、12、13および15位に対して対向する位置または相補的な位置に2’-フルオロヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、センス鎖は、二、三または四つの2’-フルオロヌクレオチドのブロックを含む。
【0375】
一部の実施形態では、センス鎖は、アンチセンス鎖内の二本鎖の熱的不安定化修飾に対向する位置または相補的な位置に2’-フルオロヌクレオチドを含まない。
【0376】
一部の実施形態では、本開示のdsRNA分子は、21ヌクレオチド(nt)のセンス鎖と23ヌクレオチド(nt)のアンチセンスとを含み、該アンチセンス鎖は少なくとも一つの熱的不安定化ヌクレオチドを含有し、該少なくとも一つの熱的不安定化ヌクレオチドはアンチセンス鎖のシード領域(すなわち、アンチセンス鎖の5’末端の2~9位にある)内で生じるものであり、dsRNAの一方の末端が平滑である一方で他方の末端は2ntのオーバーハングを含み、またdsRNAは随意に、少なくとも一つ(例えば、一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、または七つすべて)の以下の特徴をさらに含むものである:(i)アンチセンスは、2、3、4、5または6つの2’-フルオロ修飾を含む、(ii)アンチセンスは、1、2、3、4または5つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含む、(iii)センス鎖は、リガンドとコンジュゲートされる、(iv)センス鎖は、2、3、4または5つの2’-フルオロ修飾を含む、(v)センス鎖は、1、2、3、4または5つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含む、(vi)dsRNAは、少なくとも四つの2’-フルオロ修飾を含む、および(vii)dsRNAは、アンチセンス鎖の5’末端に平滑末端を含む。一実施形態では、二つのヌクレオチドオーバーハングは、アンチセンス鎖の3末端に位置する。
【0377】
一部の実施形態では、本開示のdsRNA分子は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、該センス鎖は25~30ヌクレオチド残基の長さであり、5’末端ヌクレオチド(1位)から開始して、当該センス鎖の1から23位が少なくとも8のリボヌクレオチドを含み、アンチセンス鎖は36~66ヌクレオチド残基の長さであり、また3’末端ヌクレオチドから開始して、当該位置における少なくとも8のリボヌクレオチドがセンス鎖の1~23位と対合して二本鎖を形成し、アンチセンス鎖の少なくとも3’末端のヌクレオチドはセンス鎖と対合せず、また最大6つの連続する3’末端ヌクレオチドは、センス鎖と対合せず、それによって1~6ヌクレオチドの3’の一本鎖オーバーハングを形成し、アンチセンス鎖の5’末端は、センス鎖と対合しない10~30の連続するヌクレオチドから構成され、それによって10~30ヌクレオチドの一本鎖5’オーバーハングを形成し、少なくともセンス鎖5’末端および3’末端ヌクレオチドは、センスおよびアンチセンス鎖が、相補性が最大となるようにアラインされる場合にアンチセンス鎖のヌクレオチドと塩基対合し、それによってセンスおよびアンチセンス鎖の間に実質的に二本鎖の領域を形成し、またアンチセンス鎖は、アンチセンス鎖の長さの少なくとも19リボヌクレオチドに沿って標的RNAと十分に相補的であり、当該二本鎖の核酸が哺乳類細胞に導入されたときに標的遺伝子発現を低減させ、またアンチセンス鎖は、少なくとも一つの熱的不安定化ヌクレオチドを含有し、少なくとも一つの熱的不安定化ヌクレオチドは、アンチセンス鎖のシード領域内(すなわち、アンチセンス鎖の5’末端の2~9位に)にある。例えば、熱的不安定化ヌクレオチドは、センス鎖の5’末端の14~17位に対向する位置または相補的な位置の間で生じ、またdsRNAは、随意に、以下の特徴のうちの少なくとも一つ(例えば、一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つまたは七つ全て)をさらに有する:(i)アンチセンスは、2、3、4、5または6つの2’-フルオロ修飾を含む、(ii)アンチセンスは、1、2、3、4、または5つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含む、(iii)センス鎖は、リガンドとコンジュゲートされる、(iv)センス鎖は、2、3、4、または5つの2’-フルオロ修飾を含む、(v)センス鎖は、1、2、3、4または5つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含む、および(vi)dsRNAは、少なくとも四つの2’-フルオロ修飾を含む、および(vii)dsRNAは、12~30ヌクレオチド対の長さの二本鎖領域を含む。
【0378】
一部の実施形態では、本開示のdsRNA分子は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、該dsRNA分子は、少なくとも25ヌクレオチドであり最大で29ヌクレオチドである長さを有するセンス鎖と、最大30ヌクレオチドの長さであるアンチセンス鎖とを含み、このセンス鎖は、5’末端から11位にある酵素分解に感受性がある修飾ヌクレオチドを含むものであり、当該センス鎖の3’末端と当該アンチセンス鎖の5’末端とが平滑末端を形成し、そして当該アンチセンス鎖は、その3’末端においてセンス鎖よりも1~4ヌクレオチド長いものであり、二本鎖領域は少なくとも25ヌクレオチドの長さであり、また該アンチセンス鎖は、該アンチセンス鎖の少なくとも19ntに沿って標的mRNAに対して十分に相補的であり、当該dsRNA分子が哺乳類細胞に導入されたときに標的遺伝子発現を低減させ、また該dsRNAのDicer切断が、当該アンチセンス鎖の当該3’末端を含むsiRNAを結果としてもたらし、それによって哺乳類細胞において標的遺伝子の発現が低減されるものであり、該アンチセンスは、少なくとも一つの熱的不安定化ヌクレオチドを含有し、この少なくとも一つの熱的不安定化ヌクレオチドは、アンチセンス鎖のシード領域内(すなわち、アンチセンス鎖の5’末端の2~9位に)にあり、またdsRNAは随意に、以下の特徴のうちの少なくとも一つ(例えば、一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つまたは七つ全て)をさらに有する:(i)アンチセンスは、2、3、4、5または6つの2’-フルオロ修飾を含む、(ii)アンチセンスは、1、2、3、4、または5つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含む、(iii)センス鎖は、リガンドとコンジュゲートされる、(iv)センス鎖は、2、3、4、または5つの2’-フルオロ修飾を含む、(v)センス鎖は、1、2、3、4または5つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含む、また(vi)dsRNAは、少なくとも四つの2’-フルオロ修飾を含む、また(vii)dsRNAは、12~29ヌクレオチド対の長さの二本鎖領域を有する。
【0379】
一部の実施形態では、dsRNA分子のセンス鎖およびアンチセンス鎖内のどのヌクレオチドも修飾され得る。各ヌクレオチドは、同一または異なる修飾で修飾され得、当該修飾としては、非連結ホスフェート酸素の一方もしくは両方の、または連結ホスフェート酸素の一つもしくは複数のうちの一つまたは複数の変更、リボース糖の構成成分の変更、例えば、リボース糖上の2’ヒドロキシルの変更、ホスフェート部分の「脱リン酸化」リンカーでの大規模な置換、天然に存在する塩基の修飾または置換、およびリボースホスフェート骨格の置換または修飾が挙げられ得る。
【0380】
核酸はサブユニットのポリマーであるので、修飾の多くは、核酸内で反復される位置で生じ、例えば、塩基またはホスフェート部分、またはホスフェート部分の非連結のOの修飾である。一部の場合においては、修飾は、核酸中の対象位置の全てにおいて生じることとなるが、多くの場合、生じることとならない。例として、修飾は、3’末端または5’末端の位置においてのみ生じ得、末端領域においてのみ生じ得、例えば、鎖の末端ヌクレオチド上の位置、または鎖の最後の2、3、4、5もしくは10ヌクレオチドにおいて生じ得る。修飾は、二本鎖領域、一本鎖領域または両方において生じ得る。修飾は、RNAの二本鎖領域においてのみ起こり得るか、またはRNAの一本鎖領域においてのみ起こり得、例えば、非連結のO位置でのホスホロチオエート修飾は、一方または両方の末端でのみ生じ得、末端領域においてのみ生じ得、例えば、鎖の末端ヌクレオチド上の位置または最後の2、3、4、5もしくは10ヌクレオチド内において生じ得る、または二本鎖および一本鎖領域において、特に末端において、生じ得る。5’末端はリン酸化することが可能である。
【0381】
それにより、例えば、安定性を増強すること、オーバーハング内に特定の塩基を含めること、または一本鎖のオーバーハング内、例えば、5’オーバーハングもしくは3’オーバーハング内、または両オーバーハング内に、修飾ヌクレオチドもしくはヌクレオチド代替物を含めることが可能であり得る。例えば、オーバーハング内にプリンヌクレオチドを含めることが望ましいものであり得る。一部の実施形態では、3’オーバーハングまたは5’オーバーハング内の塩基の全てまたは一部が、例えば、本明細書において記載する修飾で修飾され得る。修飾は、例えば、当技術分野で公知である修飾でのリボース糖の2’位における修飾の使用、例えば、核酸塩基のリボ糖の代わりに修飾された、デオキシリボヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-フルオロ(2’-F)または2’-O-メチルの使用、およびホスフェート基における修飾、例えば、ホスホロチオエート修飾、を含み得る。オーバーハングは、標的配列と相同である必要はない。
【0382】
一部の実施形態では、センス鎖およびアンチセンス鎖の各残基は、LNA、グリコール核酸(GNA)、ヘキシトル核酸(HNA)、2’-メトキシエチル、2’-O-メチル、2’-O-アリル、2’-C-アリル、2’-デオキシまたは2’-フルオロで独立に修飾される。これら鎖は、二つ以上の修飾を含有し得る。一部の実施形態では、センス鎖およびアンチセンス鎖の各残基は、2’-O-メチルまたは2’-フルオロで独立に修飾される。これら修飾は、アンチセンス鎖内に存在する二本鎖の少なくとも一つの熱的不安定化修飾に付加されるということを理解されたい。
【0383】
少なくとも二つの異なる修飾が、典型的には、センス鎖およびアンチセンス鎖上に存在する。それらの二つの修飾は、2’-デオキシ、2’-O-メチルまたは2’-フルオロ修飾、非環式ヌクレオチドなどであり得る。一部の実施形態では、センス鎖およびアンチセンス鎖は各々、2’-O-メチルまたは2’-デオキシから選択される、二つの異なるように修飾されたヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、センス鎖およびアンチセンス鎖の各残基は、独立して、2’-O-メチルヌクレオチド、2’-デオキシヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-フルオロヌクレオチド、2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA,2’O-CH2C(O)N(Me)H)ヌクレオチド、2’-O-ジメチルアミノエトキシエチル(2’-O-DMAEOE)ヌクレオチド、2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)ヌクレオチド、または2’-アラ-Fヌクレオチドで修飾される。ここでも、これら修飾は、アンチセンス鎖内に存在する二本鎖の少なくとも一つの熱的不安定化修飾に付加されるということを理解されたい。
【0384】
一部の実施形態では、本開示のdsRNA分子は、交互パターンの修飾を含む。「交互モチーフ」または「交互パターン」という用語は、本明細書で使用する場合、一つまたは複数の修飾を有するモチーフを指し、各修飾は、一本の鎖の交互ヌクレオチド上で生じる。交互ヌクレオチドとは、一つ置きのヌクレオチド毎に一つまたは三つのヌクレオチド毎に一つまたは類似のパターンを指し得る。例えばA、BおよびCが各々、ヌクレオチドに対する一タイプの修飾を表す場合、当該交互モチーフは、「ABABABABABAB…」、「AABBAABBAABB…」、「AABAABAABAAB…」、「AAABAAABAAAB…」、「AAABBBAAABBB…」または「ABCABCABCABC…」などであり得る。
【0385】
交互モチーフ内に含有されるこのタイプの修飾は、同一である場合も、異なっている場合もある。例えば、A、B、C、Dが各々、ヌクレオチド上の一タイプの修飾を表す場合、交互パターンが、すなわち、一つ置きのヌクレオチド上の修飾が、同一であり得るが、センス鎖またはアンチセンス鎖の各々が、例えば「ABABAB…」、「ACACAC…」、「BDBDBD…」、または「CDCDCD…」などである交互モチーフの範囲内のいくつかの可能性のある修飾から選択され得る。
【0386】
一部の実施形態では、本開示のdsRNA分子は、アンチセンス鎖上の交互モチーフの修飾パターンに対して相対的に移動されているセンス鎖上の交互モチーフの修飾パターンを含む。当該移動は、センス鎖のヌクレオチドの修飾基が、アンチセンス鎖のヌクレオチドの異なるように修飾された基に対応するようになされたものであり得、逆もまた同様である。例えば、センス鎖は、dsRNA二本鎖内のアンチセンス鎖と対合される場合には、センス鎖内の交互モチーフは、鎖の5’-3’から「ABABAB」で開始し得、またアンチセンス鎖内の交互モチーフは、二本鎖領域内の鎖の3’-5’から「BABABA」で開始し得る。別の例としては、センス鎖内の交互モチーフは、鎖の5’-3’から「AABBAABB」で開始し得、またアンチセンス鎖内の交互モチーフは、二本鎖領域内の鎖の3’-5’から「BBAABBAA」で開始し得、その結果、センス鎖およびアンチセンス鎖間の修飾パターンの完全な移動または部分的な移動が存在する。
【0387】
一つの特定の例では、センス鎖内の交互モチーフは、該鎖の5’‐3’から「ABABAB」であり、各Aは、未修飾リボヌクレオチドであり、また各Bは、2’-Oメチル修飾ヌクレオチドである。
【0388】
一つの特定の例では、センス鎖内の交互モチーフは、該鎖の5’‐3’から「ABABAB」であり、各Aは、2’-デオキシ-2’-フルオロ修飾ヌクレオチドであり、また各Bは、2’-Oメチル修飾ヌクレオチドである。
【0389】
別の特定の例では、アンチセンス鎖内の交互モチーフは、該鎖の3’-5’から「BABABA」であり、各Aは、2’-デオキシ-2’-フルオロ修飾ヌクレオチドであり、また各Bは、2’-Oメチル修飾ヌクレオチドである。
【0390】
一つの特定の例では、センス鎖内の交互モチーフは、該鎖の5’‐3’から「ABABAB」であり、またアンチセンス鎖内の交互モチーフは、該鎖の3’-5から「BABABA」であり、各Aは、未修飾リボヌクレオチドであり、また各Bは、2’-Oメチル修飾ヌクレオチドである。
【0391】
一つの特定の例では、センス鎖内の交互モチーフは、該鎖の5’‐3’から「ABABAB」であり、またアンチセンス鎖内の交互モチーフは、該鎖の3’-5から「BABABA」であり、各Aは、2’-デオキシ-2’-フルオロ修飾ヌクレオチドであり、また各Bは、2’-Oメチル修飾ヌクレオチドである。
【0392】
本開示のdsRNA分子は、少なくとも一つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結をさらに含み得る。ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結修飾は、鎖の任意の位置にあるセンス鎖またはアンチセンス鎖または両鎖のいずれかのヌクレオチド上で生じ得る。例えば、ヌクレオチド間連結修飾は、センス鎖もしくはアンチセンス鎖上のどのヌクレオチドでも生じ得る、各ヌクレオチド間連結修飾は、センス鎖もしくはアンチセンス鎖上で交互パターンで生じ得る、またはセンス鎖もしくはアンチセンス鎖は、交互パターンで両方のヌクレオチド間連結修飾を含む。センス鎖上のヌクレオチド間連結修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖と同一または異なり得、またセンス鎖上のヌクレオチド間連結修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖上のヌクレオチド間連結修飾の交互パターンに対して相対的な移動があり得る。
【0393】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、オーバーハング領域内にホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結修飾を含む。例えば、オーバーハング領域は、二つのヌクレオチドを含むものであって、該二つのヌクレオチドの間にホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結を有する二つのヌクレオチドを含む。ヌクレオチド間連結修飾はまた、オーバーハングヌクレオチドを二本鎖領域内の末端の対合されるヌクレオチドと連結させるようになされ得る。例えば、少なくとも2、3、4または全てのオーバーハングヌクレオチドは、ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結によって連結され得、随意に、オーバーハングヌクレオチドを、オーバーハングヌクレオチドと隣接する対合したヌクレオチドと連結するさらなるホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結が存在し得る。例えば、三つのヌクレオチドのうち二つがオーバーハングヌクレオチドであり、三番目が、オーバーハングヌクレオチドに隣接する対合ヌクレオチドである、末端の三つのヌクレオチド間に、少なくとも二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結が存在し得る。一実施形態では、これら末端の三つのヌクレオチドは、アンチセンス鎖の3’末端にあり得る。
【0394】
一部の実施形態では、dsRNA分子のセンス鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16のホスフェートヌクレオチド間連結によって分離される二~十のホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結の1~10ブロックを含むものであり、このホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結の一つは、オリゴヌクレオチド配列内の任意の位置に配置され、また当該センス鎖は、ホスホロチオエート、メチルホスホネートおよびホスフェートのヌクレオチド間連結のいずれかの組み合わせを含むアンチセンス鎖とまたはホスホロチオエートもしくはメチルホスホネートもしくはホスフェート連結のいずれかを含むアンチセンス鎖と対合する。
【0395】
一部の実施形態では、dsRNA分子のアンチセンス鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18のホスフェートヌクレオチド間連結によって分離される二つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結の二つのブロックを含むものであり、このホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結の一つは、オリゴヌクレオチド配列内の任意の位置に配置され、また当該アンチセンス鎖は、ホスホロチオエート、メチルホスホネートおよびホスフェートのヌクレオチド間連結のいずれかの組み合わせを含むセンス鎖とまたはホスホロチオエートもしくはメチルホスホネートもしくはホスフェート連結のいずれかを含むアンチセンス鎖と対合する。
【0396】
一部の実施形態では、dsRNA分子のアンチセンス鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16のホスフェートヌクレオチド間連結によって分離される三つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結の二つのブロックを含むものであり、このホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結の一つは、オリゴヌクレオチド配列内の任意の位置に配置され、また当該アンチセンス鎖は、ホスホロチオエート、メチルホスホネートおよびホスフェートのヌクレオチド間連結のいずれかの組み合わせを含むセンス鎖とまたはホスホロチオエートもしくはメチルホスホネートもしくはホスフェート連結のいずれかを含むアンチセンス鎖と対合する。
【0397】
一部の実施形態では、dsRNA分子のアンチセンス鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14のホスフェートヌクレオチド間連結によって分離される四つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結の二つのブロックを含むものであり、このホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結の一つは、オリゴヌクレオチド配列内の任意の位置に配置され、また当該アンチセンス鎖は、ホスホロチオエート、メチルホスホネートおよびホスフェートのヌクレオチド間連結のいずれかの組み合わせを含むセンス鎖とまたはホスホロチオエートもしくはメチルホスホネートもしくはホスフェート連結のいずれかを含むアンチセンス鎖と対合する。
【0398】
一部の実施形態では、dsRNA分子のアンチセンス鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12のホスフェートヌクレオチド間連結によって分離される五つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結の二つのブロックを含むものであり、このホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結の一つは、オリゴヌクレオチド配列内の任意の位置に配置され、また当該アンチセンス鎖は、ホスホロチオエート、メチルホスホネートおよびホスフェートのヌクレオチド間連結のいずれかの組み合わせを含むセンス鎖とまたはホスホロチオエートもしくはメチルホスホネートもしくはホスフェート連結のいずれかを含むアンチセンス鎖と対合する。
【0399】
一部の実施形態では、dsRNA分子のアンチセンス鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10のホスフェートヌクレオチド間連結によって分離される六つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結の二つのブロックを含むものであり、このホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結の一つは、オリゴヌクレオチド配列内の任意の位置に配置され、また当該アンチセンス鎖は、ホスホロチオエート、メチルホスホネートおよびホスフェートのヌクレオチド間連結のいずれかの組み合わせを含むセンス鎖とまたはホスホロチオエートもしくはメチルホスホネートもしくはホスフェート連結のいずれかを含むアンチセンス鎖と対合する。
【0400】
一部の実施形態では、dsRNA分子のアンチセンス鎖は、1、2、3、4、5、6、7、または8のホスフェートヌクレオチド間連結によって分離される七つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結の二つのブロックを含むものであり、このホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結の一つは、オリゴヌクレオチド配列内の任意の位置に配置され、また当該アンチセンス鎖は、ホスホロチオエート、メチルホスホネートおよびホスフェートのヌクレオチド間連結のいずれかの組み合わせを含むセンス鎖とまたはホスホロチオエートもしくはメチルホスホネートもしくはホスフェート連結のいずれかを含むアンチセンス鎖と対合する。
【0401】
一部の実施形態では、dsRNA分子のアンチセンス鎖は、1、2、3、4、5、または6のホスフェートヌクレオチド間連結によって分離される八つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結の二つのブロックを含むものであり、このホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結の一つは、オリゴヌクレオチド配列内の任意の位置に配置され、また当該アンチセンス鎖は、ホスホロチオエート、メチルホスホネートおよびホスフェートのヌクレオチド間連結のいずれかの組み合わせを含むセンス鎖とまたはホスホロチオエートもしくはメチルホスホネートもしくはホスフェート連結のいずれかを含むアンチセンス鎖と対合する。
【0402】
一部の実施形態では、dsRNA分子のアンチセンス鎖は、1、2、3、または4のホスフェートヌクレオチド間連結によって分離される九つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結の二つのブロックを含むものであり、このホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結の一つは、オリゴヌクレオチド配列内の任意の位置に配置され、また当該アンチセンス鎖は、ホスホロチオエート、メチルホスホネートおよびホスフェートのヌクレオチド間連結のいずれかの組み合わせを含むセンス鎖とまたはホスホロチオエートもしくはメチルホスホネートもしくはホスフェート連結のいずれかを含むアンチセンス鎖と対合する。
【0403】
一部の実施形態では、本開示のdsRNA分子は、センスまたはアンチセンス鎖の末端の1~10ヌクレオチドの範囲内に一つまたは複数のホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結修飾をさらに含む。例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10ヌクレオチドが、センスまたはアンチセンス鎖の一方の末端または両末端においてホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結を介して連結され得る。
【0404】
一部の実施形態では、本開示のdsRNA分子は、センスまたはアンチセンス鎖の各々の二本鎖の内側領域の1~10ヌクレオチドの範囲内に一つまたは複数のホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結修飾をさらに含む。例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10のヌクレオチドが、センス鎖の5’末端から数えて二本鎖領域の8~16位にあるホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結修飾を介して連結され得、当該dsRNA分子は、随意に、その末端の1~10位の範囲内に一つまたは複数のホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結修飾をさらに含み得る。
【0405】
一部の実施形態では、本開示のdsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1~5位の範囲内に一~五つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結修飾と18~23位の範囲内に一~五つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1および2位における一~二つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結修飾と18~23位の範囲内の一~五つをさらに含む。
【0406】
一部の実施形態では、本開示のdsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1~5位の範囲内に一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と18~23位の範囲内に一つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1または2位における一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と18~23位の範囲内の二つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートのヌクレオチド間連結修飾をさらに含む。
【0407】
一部の実施形態では、本開示のdsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1~5位の範囲内に二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と18~23位の範囲内に一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1および2位における一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と18~23位の範囲内の二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾をさらに含む。
【0408】
一部の実施形態では、本開示のdsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1~5位の範囲内に二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と18~23位の範囲内に二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1および2位における一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と18~23位の範囲内の二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾をさらに含む。
【0409】
一部の実施形態では、本開示のdsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1~5位の範囲内に二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と18~23位の範囲内に二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1および2位における一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と18~23位の範囲内の一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾をさらに含む。
【0410】
一部の実施形態では、本開示のdsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1~5位の範囲内に一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と18~23位の範囲内に一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1および2位における二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と18~23位の範囲内の二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾をさらに含む。
【0411】
一部の実施形態では、本開示のdsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1~5位の範囲内に一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と18~23位の範囲内に一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1および2位における二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と18~23位の範囲内の一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾をさらに含む。
【0412】
一部の実施形態では、本開示のdsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1~5位の範囲内に一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1および2位における二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と18~23位の範囲内の一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾をさらに含む。
【0413】
一部の実施形態では、本開示のdsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1~5位の範囲内に二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1および2位における一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と18~23位の範囲内の二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾をさらに含む。
【0414】
一部の実施形態では、本開示のdsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1~5位の範囲内に二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と18~23位の範囲内に一つ、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1および2位における二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と18~23位の範囲内の一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾をさらに含む。
【0415】
一部の実施形態では、本開示のdsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1~5位の範囲内に二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と18~23位の範囲内に一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1および2位における二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と18~23位の範囲内の二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾をさらに含む。
【0416】
一部の実施形態では、本開示のdsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1~5位の範囲内に二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と18~23位の範囲内に一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1および2位における一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と18~23位の範囲内の二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾をさらに含む。
【0417】
一部の実施形態では、本開示のdsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1および2位における二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と20および21位における二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1位における一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と21位における一つをさらに含む。
【0418】
一部の実施形態では、本開示のdsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1位における一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と21位における一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1および2位における二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と20および21位における二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾をさらに含む。
【0419】
一部の実施形態では、本開示のdsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1および2位における二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と21および22位における二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1位における一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と21位における一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾をさらに含む。
【0420】
一部の実施形態では、本開示のdsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1位における一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と21位における一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1および2位における二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と21および22位における二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾をさらに含む。
【0421】
一部の実施形態では、本開示のdsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1および2位における二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と22および23位における二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1位における一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と21位における一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾をさらに含む。
【0422】
一部の実施形態では、本開示のdsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1位における一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と21位における一つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾、ならびにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1および2位における二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾と23および23位における二つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結修飾をさらに含む。
【0423】
一部の実施形態では、本開示の化合物は、骨格キラル中心のパターンを含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、Sp立体配置での少なくとも5つのヌクレオチド間連結を含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、Sp立体配置での少なくとも6つのヌクレオチド間連結を含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、Sp立体配置での少なくとも7つのヌクレオチド間連結を含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、Sp立体配置での少なくとも8つのヌクレオチド間連結を含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、Sp立体配置での少なくとも9つのヌクレオチド間連結を含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、Sp立体配置での少なくとも10のヌクレオチド間連結を含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、Sp立体配置での少なくとも11のヌクレオチド間連結を含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、Sp立体配置での少なくとも12のヌクレオチド間連結を含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、Sp立体配置での少なくとも13のヌクレオチド間連結を含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、Sp立体配置での少なくとも14のヌクレオチド間連結を含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、Sp立体配置での少なくとも15のヌクレオチド間連結を含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、Sp立体配置での少なくとも16のヌクレオチド間連結を含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、Sp立体配置で少なくとも17のヌクレオチド間連結を含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、Sp立体配置で少なくとも18のヌクレオチド間連結を含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、Sp立体配置で少なくとも19のヌクレオチド間連結を含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、Rp立体配置で8以下のヌクレオチド間連結を含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、Rp立体配置で7以下のヌクレオチド間連結を含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、Rp立体配置で6以下のヌクレオチド間連結を含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、Rp立体配置で5以下のヌクレオチド間連結を含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、Rp立体配置で4以下のヌクレオチド間連結を含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、Rp立体配置で3以下のヌクレオチド間連結を含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、Rp立体配置で2以下のヌクレオチド間連結を含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、Rp立体配置で1以下のヌクレオチド間連結を含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、キラルでない8以下のヌクレオチド間連結を含む(限定されない例として、ホスホジエステル)。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、キラルでない7以下のヌクレオチド間連結を含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、キラルでない6以下のヌクレオチド間連結を含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、キラルでない5以下のヌクレオチド間連結を含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、キラルでない4以下のヌクレオチド間連結を含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、キラルでない3以下のヌクレオチド間連結を含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、キラルでない2以下のヌクレオチド間連結を含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、キラルでない1以下のヌクレオチド間連結を含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、Sp立体配置での少なくとも10のヌクレオチド間連結と、キラルでない8以下のヌクレオチド間連結とを含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、Sp立体配置での少なくとも11のヌクレオチド間連結と、キラルでない7以下のヌクレオチド間連結とを含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、Sp立体配置での少なくとも12のヌクレオチド間連結と、キラルでない6以下のヌクレオチド間連結とを含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、Sp立体配置での少なくとも13のヌクレオチド間連結と、キラルでない6以下のヌクレオチド間連結とを含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、Sp立体配置での少なくとも14のヌクレオチド間連結と、キラルでない5以下のヌクレオチド間連結とを含む。一部の実施形態では、骨格キラル中心の通常のパターンは、Sp立体配置での少なくとも15のヌクレオチド間連結と、キラルでない4以下のヌクレオチド間連結とを含む。一部の実施形態では、Sp立体配置でのヌクレオチド間連結は、連続であってもよく、または連続でなくてもよい。一部の実施形態では、Rp立体配置でのヌクレオチド間連結は、連続であってもよく、または連続でなくてもよい。一部の実施形態では、キラルでないヌクレオチド間連結は、連続であってもよく、または連続でなくてもよい。
【0424】
一部の実施形態では、本開示の化合物は、立体化学ブロックであるブロックを含む。一部の実施形態では、ブロックは、ブロックの各ヌクレオチド間連結がRpである点でRpブロックである。一部の実施形態では、5’-ブロックは、Rpブロックである。一部の実施形態では、3’-ブロックは、Rpブロックである。一部の実施形態では、ブロックは、ブロックの各ヌクレオチド間連結がSpである点でSpブロックである。一部の実施形態では、5’-ブロックは、Spブロックである。一部の実施形態では、3’-ブロックは、Spブロックである。一部の実施形態では、提供されるオリゴヌクレオチドは、RpブロックおよびSpブロックの両方を含む。一部の実施形態では、提供されたオリゴヌクレオチドは、一つまたは複数のRpブロックを含むが、Spブロックを含まない。一部の実施形態では、提供されるオリゴヌクレオチドは、一つまたは複数のSpブロックを含むが、Rpブロックを含まない。一部の実施形態では、提供されるオリゴヌクレオチドは、一つまたは複数のPOブロックであって、各ヌクレオチド間連結が天然のホスフェート連結であるPOブロックを含む。
【0425】
一部の実施形態では、本開示の化合物は、各糖部分が2’-F修飾を含むSpブロックである5’-ブロックを含む。一部の実施形態においては、5’-ブロックは、ヌクレオチド間連結の各々が修飾ヌクレオチド間連結であり、また各糖部分が2’-F修飾を含む、Spブロックである。一部の実施形態では、5’-ブロックは、ヌクレオチド間連結の各々がホスホロチオエート連結であり、また各糖部分が2’-F修飾を含む、Spブロックである。一部の実施形態では、5’-ブロックは、4以上のヌクレオシド単位を含む。一部の実施形態では、5’-ブロックは、5以上のヌクレオシド単位を含む。一部の実施形態では、5’-ブロックは、6以上のヌクレオシド単位を含む。一部の実施形態では、5’-ブロックは、7以上のヌクレオシド単位を含む。一部の実施形態では、3’-ブロックは、各糖部分が2’-F修飾を含む、Spブロックである。一部の実施形態では、3’-ブロックは、ヌクレオチド間連結の各々が修飾ヌクレオチド間連結であり、また各糖部分が2’-F修飾を含む、Spブロックである。一部の実施形態では、3’-ブロックは、ヌクレオチド間連結の各々がホスホロチオエート連結であり、また各糖部分が2’-F修飾を含む、Spブロックである。一部の実施形態では、3’-ブロックは、4以上のヌクレオシド単位を含む。一部の実施形態では、3’-ブロックは、5以上のヌクレオシド単位を含む。一部の実施形態では、3’-ブロックは、6以上のヌクレオシド単位を含む。一部の実施形態では、3’-ブロックは、7以上のヌクレオシド単位を含む。
【0426】
一部の実施形態では、本開示の化合物は、ある領域内にあるタイプのヌクレオシドを含むか、またはオリゴヌクレオチドに、特定のタイプのヌクレオチド間連結が続くものであり、それは例えば、天然のホスフェート連結、修飾ヌクレオチド間連結、Rpキラルヌクレオチド間連結、Spキラルヌクレオチド間連結などである。一部の実施形態では、Aに、Spが続く。一部の実施形態では、Aに、Rpが続く。一部の実施形態では、Aに、天然のホスフェート連結(PO)が続く。一部の実施形態では、Uに、Spが続く。一部の実施形態では、Uに、Rpが続く。一部の実施形態では、Uに、天然のホスフェート連結(PO)が続く。一部の実施形態では、Cに、Spが続く。一部の実施形態では、Cに、Rpが続く。一部の実施形態では、Cに、天然のホスフェート連結(PO)が続く。一部の実施形態では、Gに、Spが続く。一部の実施形態では、Gに、Rpが続く。一部の実施形態では、Gに、天然のホスフェート連結(PO)が続く。一部の実施形態では、CおよびUに、Spが続く。一部の実施形態では、CおよびUに、Rpが続く。一部の実施形態では、CおよびUに、天然のホスフェート連結(PO)が続く。一部の実施形態では、AおよびGに、Spが続く。一部の実施形態では、AおよびGに、Rpが続く。
【0427】
一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、ヌクレオチドの21位と22位の間、およびヌクレオチドの22位と23位の間にホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含むものであり、このアンチセンス鎖は、アンチセンス鎖のシード領域内(すなわち、アンチセンス鎖の5’末端の2~9位に)に位置する二本鎖の少なくとも一つの熱的不安定化修飾を含有し、またdsRNAは、随意に、以下の特徴のうちの少なくとも一つ(例えば、一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、または八つ全て)をさらに有する:(i)アンチセンスは、2、3、4、5または6つの2’-フルオロ修飾を含む、(ii)アンチセンスは、3、4、または5つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含む、(iii)センス鎖は、リガンドとコンジュゲートされる、(iv)センス鎖は、2、3、4、または5つの2’-フルオロ修飾を含む、(v)センス鎖は、1、2、3、4または5つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含む、(vi)dsRNAは、少なくとも四つの2’-フルオロ修飾を含む、(vii)dsRNAは、12~40ヌクレオチド対の長さの二本鎖領域を含む、ならびに(viii)dsRNAは、アンチセンス鎖の5’末端において平滑末端を有する。
【0428】
一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、ヌクレオチドの1位と2位の間、ヌクレオチドの2位と3位の間、ヌクレオチドの21位と22位の間、およびヌクレオチドの22位と23位の間にホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含むものであり、このアンチセンス鎖は、アンチセンス鎖のシード領域内(すなわち、アンチセンス鎖の5’末端の2~9位に)に位置する二本鎖の少なくとも一つの熱的不安定化修飾を含有し、またdsRNAは、随意に、以下の特徴のうちの少なくとも一つ(例えば、一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、または八つ全て)をさらに有する:(i)アンチセンスは、2、3、4、5または6つの2’-フルオロ修飾を含む、(ii)センス鎖は、リガンドとコンジュゲートされる、(iii)センス鎖は、2、3、4、または5つの2’-フルオロ修飾を含む、(iv)センス鎖は、1、2、3、4または5つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含む、(v)dsRNAは、少なくとも四つの2’-フルオロ修飾を含む、(vi)dsRNAは、12~40ヌクレオチド対の長さの二本鎖領域を含む、(vii)dsRNAは、12~40ヌクレオチド対の長さの二本鎖領域を含む、ならびに(viii)dsRNAは、アンチセンス鎖の5’末端において平滑末端を有する。
【0429】
一部の実施形態では、センス鎖は、ヌクレオチドの1位と2位の間、ヌクレオチドの2位と3位の間にホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含むものであり、このアンチセンス鎖は、アンチセンス鎖のシード領域内(すなわち、アンチセンス鎖の5’末端の2~9位に)に位置する二本鎖の少なくとも一つの熱的不安定化修飾を含有し、またdsRNAは、随意に、以下の特徴のうちの少なくとも一つ(例えば、一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、または八つ全て)をさらに有する:(i)アンチセンスは、2、3、4、5または6つの2’-フルオロ修飾を含む、(ii)アンチセンス鎖は、1、2、3、4または5つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含む、(iii)センス鎖は、リガンドとコンジュゲートされる、(iv)センス鎖は、2、3、4、または5つの2’-フルオロ修飾を含む、(v)センス鎖は、3、4または5つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含む、(vi)dsRNAは、少なくとも四つの2’-フルオロ修飾を含む、(vii)dsRNAは、12~40ヌクレオチド対の長さの二本鎖領域を含む、ならびに(viii)dsRNAは、アンチセンス鎖の5’末端において平滑末端を有する。
【0430】
一部の実施形態では、センス鎖は、ヌクレオチドの1位と2位の間、およびヌクレオチドの2位と3位の間にホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含み、アンチセンス鎖は、ヌクレオチドの1位と2位の間、ヌクレオチドの2位と3位の間、ヌクレオチドの21位と22位の間、およびヌクレオチドの22位と23位の間にホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含むものであり、このアンチセンス鎖は、アンチセンス鎖のシード領域内(すなわち、アンチセンス鎖の5’末端の2~9位に)に位置する二本鎖の少なくとも一つの熱的不安定化修飾を含有し、またdsRNAは、随意に、以下の特徴のうちの少なくとも一つ(例えば、一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、または七つ全て)をさらに有する:(i)アンチセンスは、2、3、4、5または6つの2’-フルオロ修飾を含む、(ii)センス鎖は、リガンドとコンジュゲートされる、(iii)センス鎖は、2、3、4、または5つの2’-フルオロ修飾を含む、(iv)センス鎖は、3、4または5つのホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含む、(v)dsRNAは、少なくとも二つの2’-フルオロ修飾を含む、(vi)dsRNAは、12~40ヌクレオチド対の長さの二本鎖領域を含む、ならびに(vii)dsRNAは、アンチセンス鎖の5’末端において平滑末端を有する。
【0431】
一部の実施形態では、本開示のdsRNA分子は、標的との、二本鎖内のミスマッチ、またはそれらの組合せを含む。ミスマッチは、オーバーハング領域または二本鎖領域内に生じ得る。塩基対は、解離または融解を促進するその傾向に基づいて格付けされ得る(例えば、特定の対合の会合または解離の自由エネルギーに基づくものであり、最も単純なアプローチとしては、個々の対ごとに対を調べることであるが、次に、隣接するまたは同様の分析も使用可能である)。解離の促進の点では、A:UはG:Cより好ましく、G:UはG:Cより好ましく、またI:CはG:Cより好ましい(I=イノシン)。ミスマッチ、例えば、非標準の対合または標準以外の対合(本明細書において別の箇所に記載される)が、標準(A:T、A:U、G:C)の対合より好ましく、またユニバーサル塩基を含む対合が、標準の対合より好ましい。
【0432】
一部の実施形態では、本開示のdsRNA分子は、A:U、G:U、I:Cの群から独立に選択され得るアンチセンス鎖の5’末端から二本鎖領域内の最初の1、2、3、4または5塩基対、および例えば、非標準の対合または標準以外の対合またはユニバーサル塩基を含む対合であるミスマッチ対のうちの少なくとも一つを含み、二本鎖の5’末端においてアンチセンス鎖の解離を促進する。
【0433】
一部の実施形態では、アンチセンス鎖内の5’末端から二本鎖領域内の1位におけるヌクレオチドは、A、dA、dU、UおよびdTからなる群から選択される。あるいは、アンチセンス鎖の5’末端から二本鎖領域内の最初の1、2または3の塩基対のうち少なくとも一つは、AU塩基対である。例えば、アンチセンス鎖の5’末端から二本鎖領域内の最初の塩基対は、AU塩基対である。
【0434】
一本鎖または二本鎖のオリゴヌクレオチドの任意の位置において、ジヌクレオチドのホスホジエステル(PO)、ホスホロチオエート(PS)またはホスホロジチオエート(PS2)連結の3’末端に、4’-修飾または5’-修飾のヌクレオチドを導入することで、ヌクレオチド間連結に対する立体効果を発揮さることができ、そのためヌクレアーゼに対してそれを保護または安定化させるということが見出された。
【0435】
一部の実施形態では、5’-修飾ヌクレオチドが、一本鎖または二本鎖のsiRNAの任意の位置において、ジヌクレオチドの3’末端に導入される。例えば、5’-アルキル化ヌクレオチドを、一本鎖または二本鎖のsiRNAの任意の位置において、ジヌクレオチドの3’末端に導入できる。リボース糖の5’位にあるアルキル基は、ラセミ体またはキラル的に純粋なR異性体もしくはS異性体であり得る。例示的な5’-アルキル化ヌクレオチドは、5’-メチルヌクレオシドである。5’-メチルは、ラセミ体またはキラル的に純粋なR異性体もしくはS異性体のいずれかであり得る。
【0436】
一部の実施形態では、4’-修飾ヌクレオチドが、一本鎖または二本鎖のsiRNAの任意の位置において、ジヌクレオチドの3’末端に導入される。例えば、4’-アルキル化ヌクレオチドを、一本鎖または二本鎖のsiRNAの任意の位置において、ジヌクレオチドの3’末端に導入できる。リボース糖の4’位にあるアルキル基は、ラセミ体またはキラル的に純粋なR異性体もしくはS異性体であり得る。例示的な4’-アルキル化ヌクレオチドとしては、4’-メチルヌクレオチドである。4’-メチルは、ラセミ体またはキラル的に純粋なR異性体もしくはS異性体のいずれかであり得る。あるいは、4’-O-アルキル化ヌクレオチドを、一本鎖または二本鎖のsiRNAの任意の位置において、ジヌクレオチドの3’末端に導入できる。リボース糖の4’-O-アルキルは、ラセミ体またはキラル的に純粋なR異性体もしくはS異性体であり得る。例示的な4’-O-アルキル化ヌクレオチドとしては、4’-O-メチルヌクレオチドが挙げられる。4’-O-メチルは、ラセミ体またはキラル的に純粋なR異性体もしくはS異性体のいずれかであり得る。
【0437】
一部の実施形態では、5’-アルキル化ヌクレオチドが、dsRNAのセンス鎖またはアンチセンス鎖の任意の位置において導入され、このような修飾は、dsRNAの効力を維持または向上させる。5’-アルキルは、ラセミ体またはキラル的に純粋なR異性体もしくはS異性体のいずれかであり得る。例示的な5’-アルキル化ヌクレオチドとしては、5’-メチルヌクレオチドがある。5’-メチルは、ラセミ体またはキラル的に純粋なR異性体もしくはS異性体のいずれかであり得る。
【0438】
一部の実施形態では、4’-アルキル化ヌクレオチドが、dsRNAのセンス鎖またはアンチセンス鎖の任意の位置において導入され、このような修飾は、dsRNAの効力を維持または向上させる。4’-アルキルは、ラセミ体またはキラル的に純粋なR異性体もしくはS異性体のいずれかであり得る。例示的な4’-アルキル化ヌクレオチドとしては、4’-メチルヌクレオチドである。4’-メチルは、ラセミ体またはキラル的に純粋なR異性体もしくはS異性体のいずれかであり得る。
【0439】
一部の実施形態では、4’-O-アルキル化ヌクレオチドは、dsRNAのセンス鎖またはアンチセンス鎖の任意の位置において導入され、このような修飾は、dsRNAの効力を維持または向上させる。5’-アルキルは、ラセミ体またはキラル的に純粋なR異性体もしくはS異性体のいずれかであり得る。例示的な4’-O-アルキル化ヌクレオチドとしては、4’-O-メチルヌクレオチドが挙げられる。4’-O-メチルは、ラセミ体またはキラル的に純粋なR異性体もしくはS異性体のいずれかであり得る。
【0440】
一部の実施形態では、本開示のdsRNA分子は、2’-5’連結(2’-H、2’-OHおよび2’-OMeを有し、またP=OまたはP=Sを有する)を含み得る。例えば、2’-5’連結修飾は、ヌクレアーゼ耐性を促進するために、もしくはセンスのアンチセンス鎖への結合を阻害するために使用可能であり、またはRISCによるセンス鎖の活性化を回避するためにセンス鎖の5’末端において使用可能である。
【0441】
別の実施形態では、本開示のdsRNA分子は、L糖(例えば、2’-H、2’-OHおよび2’-OMeを有するLリボース、L-アラビノース)を含み得る。例えば、これらL糖修飾は、ヌクレアーゼ耐性を促進するために、もしくはセンス鎖のアンチセンス鎖への結合を阻害するために使用可能であり、またはRISCによるセンス鎖の活性化を回避するためにセンス鎖の5’末端において使用可能である。
【0442】
種々の刊行物に多量体siRNAが記載されており、これらはすべて、本開示のdsRNAとともに使用できる。当該公開公報としては、国際公開第2007/091269号、米国特許第7858769号、国際公開第2010/141511号、国際公開第2007/117686号、国際公開第2009/014887号、および国際公開第2011/031520号が挙げられ、それら各々の内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0443】
以下により詳細に記載するように、RNAi剤への一つまたは複数の炭水化物部分のコンジュゲーションを含有するRNAi剤は、RNAi剤の一つまたは複数の特性を最適化できる。多くの場合、炭水化物部分は、RNAi剤の修飾サブユニットに結合させることとなる。例えば、dsRNA剤の一つまたは複数のリボヌクレオチドサブユニットのリボース糖は、別の部分、例えば、炭水化物リガンドが結合される非炭水化物(好ましくは、環式)の担体で置換され得る。リボヌクレオチドのサブユニットであって、該サブユニットリボース糖がそのように置換されているリボヌクレオチドサブユニットを、本明細書においては、リボース置換修飾サブユニット(PRMS)と称する。環式担体は、環状炭素系であり得、すなわち、すべての環原子が炭素原子であるか、または複素環系であり得、すなわち、一つまたは複数の環原子が例えば、窒素、酸素、硫黄であるヘテロ原子であり得る。環式担体は、単環式環系であり得、または二以上の環、例えば、縮合環、を含有し得る。環式担体は、完全に飽和の環系であり得、または一つもしくは複数の二重結合を含有し得る。
【0444】
リガンドは、担体を介してポリヌクレオチドに結合し得る。該担体は、(i)少なくとも一つの「骨格結合点」、例えば二つの「骨格結合点」と、(ii)少なくとも一つの「係留結合点」とを含む。「骨格結合点」とは、本明細書で使用する場合、例えば、ヒドロキシル基である官能基を指し、または概して結合であって、リボ核酸の骨格、例えば、ホスフェート、もしくは例えば、硫黄含有である修飾ホスフェートの骨格である骨格内に担体を組み込むために利用可能であり好適である結合を指す。一部の実施形態における「係留結合点」(TAP)とは、選択された部分を接続する環式担体の構成環原子、例えば、炭素原子またはヘテロ原子(骨格結合点を提供する原子とは別の)を指す。この部分は、例えば、炭水化物、例えば、単糖、二糖、三糖、四糖、オリゴ糖および多糖であり得る。随意に、選択部分は、介在する係留によって環式担体に接続される。したがって環式担体は、しばしば、例えば、アミノ基である官能基を含む、または概して結合であって、構成する環への、例えば、リガンドである別の化学的実体の組み込みもしくは係留に適している結合を提供することとなる。
【0445】
RNAi剤は、担体を介してリガンドにコンジュゲートし得るものであり、該担体は、環式基または非環式基であり得る。一実施形態では、環式基は、ピロリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、[1,3]ジオキソラン、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、キノキサリニル、ピリダジノニル、テトラヒドロフリル、およびデカリンから選択される。別の実施形態では、非環式基は、セリノール骨格またはジエタノールアミン骨格から選択される。
【0446】
特定の実施形態では、本開示の方法で使用するRNAi剤は、表2~3のいずれか一つに列挙された剤の群から選択される剤である。これらの薬剤は、一つもしくは複数の親油性部分、一つもしくは複数のGalNAc誘導体、または一つもしくは複数の親油性部分と一つもしくは複数のGalNAc誘導体の両方などのリガンドをさらに含み得る。
【0447】
IV.リガンドにコンジュゲートするiRNA
本発明のiRNAのRNAの別の修飾は、iRNAの活性、細胞分布または細胞内への細胞取り込みを増強する一つまたは複数のリガンド、部分またはコンジュゲートと、iRNAを化学的に連結することを含む。こうした部分としては、これに限定されるものではないが、例えばコレステロール部分などである脂質部分(Letsinger et al.,Proc.Natl.Acid.Sci.USA,1989,86:6553-6556)、コール酸(Manoharan et al.,Biorg.Med.Chem.Let.,1994,4:1053-1060)、チオエーテル、例えば、ベリル-S-トリチルチオール(beryl-S-tritylthiol)(Manoharan et al.,Ann.N.Y.Acad.Sci.,1992,660:306-309、Manoharan et al.,Biorg.Med.Chem.Let.,1993,3:2765-2770)、チオコレステロール(Oberhauser et al.,Nucl.Acids Res.,1992,20:533-538)、脂肪鎖、例えば、ドデカンジオール残基またはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al.,EMBO J,1991,10:1111-1118、Kabanov et al.,FEBS Lett.,1990,259:327-330、Svinarchuk et al.,Biochimie,1993,75:49-54)、リン脂質、例えば、ジヘキサデシル-rac-グリセロールまたはトリエチルアンモニウム 1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-ホスホネート(Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,1995,36:3651-3654、Shea et al.,Nucl.Acids Res.,1990,18:3777-3783)、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al.,Nucleosides&Nucleotides,1995,14:969-973)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,1995,36:3651-3654)、パルミチル部分(Mishra et al.,Biochim.Biophys.Acta,1995,1264:229-237)、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニルオキシコレステロール部分(Crooke et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.,1996,277:923-937)が挙げられる。
【0448】
特定の実施形態では、リガンドは、それが組み込まれるiRNA剤の分布、ターゲティング、または寿命を変化させる。一部の実施形態では、リガンドは、例えば、このようなリガンドが存在しない種と比較した場合に、選択された標的に対する、例えば、分子、細胞または細胞型、例えば、細胞または臓器のコンパートメントなどのコンパートメント、組織、身体の器官または領域に対する、親和性の増強をもたらす。通常のリガンドは、二本鎖核酸において二本鎖対合に関与しない。
【0449】
リガンドとしては、天然に存在する物質、例えばタンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、低密度リポタンパク質(LDL)またはグロブリン)、炭水化物(例えば、デキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリンまたはヒアルロン酸)または脂質を挙げることができる。リガンドはまた、組換えまたは合成分子、例えば合成ポリマー、例えば、合成ポリアミノ酸であり得る。ポリアミノ酸の例としては、ポリリジン(PLL)、ポリL-アスパラギン酸、ポリL-グルタミン酸、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ポリ(L-ラクチド-コ-グリコリド(L-lactide-co-glycolied))共重合体、ジビニルエーテル-無水マレイン酸共重合体、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド共重合体(HMPA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリ(2-エチルアクリル酸(poly(2-ethylacryllic acid))、N-イソプロピルアクリルアミドポリマーまたはポリホスファジンであるポリアミノ酸が挙げられる。ポリアミンの例としては、ポリエチレンイミン、ポリリジン(PLL)、スペルミン、スペルミジン、ポリアミン、シュードペプチド-ポリアミン、ペプチドミメティックポリアミン、デンドリマーポリアミン、アルギニン、アミジン、プロタミン、カチオン性脂質、カチオン性ポルフィリン、ポリアミンの第四級塩またはαヘリックスペプチドが挙げられる。
【0450】
リガンドはまた、ターゲティング基が含まれ得、例えば、細胞または組織ターゲティング剤であり、例えば、レクチンであり、例えば腎細胞など特定の細胞型に結合する糖タンパク質、脂質またはタンパク質、例えば、抗体である。ターゲティング基は、甲状腺刺激ホルモン、メラニン細胞刺激ホルモン、レクチン、糖タンパク質、界面活性剤プロテインA、ムチン炭水化物、多価ラクトース、多価ガラクトース、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン多価マンノース、多価フコース、グリコシル化ポリアミノ酸、多価ガラクトース、トランスフェリン、ビスホスホネート、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、脂質、コレステロール、ステロイド、胆汁酸、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、またはRGDペプチドもしくはRGDペプチド模倣体であり得る。特定の実施形態では、リガンドは、多価ガラクトース、例えば、N-アセチル-ガラクトサミンである。
【0451】
リガンドの他の例としては、色素、挿入剤(例えば、アクリジン)、架橋剤(例えば、ソラーレン、マイトマイシンC)、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン(texaphyrin)、サフィリン(Sapphyrin))、多環式芳香族炭化水素(例えば、フェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンドヌクレアーゼ(例えば、EDTA)、親油性分子、例えば、コレステロール、コール酸、アダマンタン酢酸、1-ピレンブタン酸、ジヒドロテストステロン、1,3-ビス-O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3-プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3-(オレオイル)リトコール酸、O3-(オレオイル)コレン酸、ジメトキシトリチル、またはフェノキサジン)およびペプチドコンジュゲート(例えば、アンテナペディアペプチド、Tatペプチド)、アルキル化剤、ホスフェート、アミノ、メルカプト、PEG(例えば、PEG-40K)、MPEG、[MPEG]、ポリアミノ、アルキル、置換アルキル、放射性標識マーカー、酵素、ハプテン(例えば、ビオチン)、輸送/吸収促進物質(例えば、アスピリン、ビタミンE、葉酸)、合成リボヌクレアーゼ(例えば、イミダゾール、ビスイミダゾール、ヒスタミン、イミダゾールクラスター、アクリジン-イミダゾールコンジュゲート、テトラアザマクロサイクルのEu3+錯体)、ジニトロフェニル、HRPまたはAPが挙げられる。
【0452】
リガンドは、タンパク質、例えば、糖タンパク質またはペプチド、例えば、共リガンドに対して特異的親和性を有する分子、または抗体、例えば、がん細胞、内皮細胞または骨細胞などの特定の細胞種に結合する抗体であり得る。リガンドにはまた、ホルモンおよびホルモン受容体が含まれ得る。それらにはまた、非ペプチド種、例えば脂質、レクチン、炭水化物、ビタミン、コファクタ、多価ラクトース、多価ガラクトース、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン多価マンノースまたは多価フコース、が含まれ得る。リガンドは、例えば、リポ多糖、p38MAPキナーゼのアクチベーターまたはNF-κBのアクチベーターであり得る。
【0453】
リガンドは、例えば、細胞の細胞骨格系を破壊することによって、例えば、細胞の微小管、微小線維または中間径線維を破壊することによって、細胞内へのiRNA剤の取り込みを増大し得る物質、例えば薬物であり得る。該薬物は、例えば、タキソン(taxon)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、サイトカラシン、ノコダゾール、ジャスプラキノリド、ラトルンクリンA、ファロイジン、スウィンホリドA(swinholide A)、インダノシン(indanocine)またはミオセルビン(myoservin)であり得る。
【0454】
一部の実施形態では、本明細書において記載するiRNAに結合するリガンドは、薬物動態モジュレーター(PKモジュレーター)として作用する。PKモジュレーターとしては、親油性物質、胆汁酸、ステロイド、リン脂質類似体、ペプチド、タンパク質結合剤、PEG、ビタミンなどが挙げられる。例示的なPKモジュレーターとしては、これに限定されないが、コレステロール、脂肪酸、コール酸、リトコール酸、ジアルキルグリセリド、ジアシルグリセリド、リン脂質、スフィンゴ脂質、ナプロキセン、イブプロフェン、ビタミンE、ビオチンなどが挙げられる。いくつかのホスホロチオエート連結を含むオリゴヌクレオチドはまた、血清タンパク質に結合することがわかっており、したがって骨格中に複数のホスホロチオエート連結を含む短いオリゴヌクレオチド、例えば、約5塩基、10塩基、15塩基または20塩基のオリゴヌクレオチドもまた、リガンドとして(例えば、PK調節リガンドとして)本発明に適している。さらに、血清成分(例えば、血清タンパク質)を結合するアプタマーもまた、本明細書において記載する実施形態においてPK調節リガンドとして使用するのに適している。
【0455】
本発明のリガンドがコンジュゲートしたiRNAは、反応性官能性ペンダント側鎖を有するオリゴヌクレオチドの使用によって合成でき、例えば該ペンダント側鎖は該オリゴヌクレオチド(以下に記載される)上への連結分子の結合に由来するものなどである。この反応性オリゴヌクレオチドを、市販のリガンド、種々の保護基のいずれかを有する合成されたリガンド、またはそれに結合する連結部分を有するリガンドと、直接反応させてもよい。
【0456】
本発明のコンジュゲートにおいて使用するオリゴヌクレオチドは、固相合成の周知の技術によって好都合に、ごく普通に作製できる。こうした合成のための機器は、例えばApplied Biosystems(登録商標)社(カリフォルニア州、フォスターシティ)をはじめとするいくつかのベンダーによって販売されている。当技術分野で公知の当該合成のための任意の他の手段を、追加的にまたは代替的に採用してもよい。例えばホスホロチオエートおよびアルキル化誘導体などである、他のオリゴヌクレオチドを調製する同様の技術を使用することも知られている。
【0457】
本発明のリガンドがコンジュゲートしたオリゴヌクレオチドおよびリガンド分子を保有する配列特異的な連結ヌクレオシドにおいて、オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオシドは、標準ヌクレオチドまたはヌクレオシドの前駆体を利用する好適なDNAシンセサイザー、または連結部分を既に保有するヌクレオチドもしくはヌクレオシドのコンジュゲート前駆体、リガンド分子を既に保有するリガンドヌクレオチドもしくはリガンドヌクレオシドのコンジュゲート前駆体、または非ヌクレオシドリガンド保有構成単位上において組み立てられ得る。
【0458】
連結部分を既に保有するヌクレオチド-コンジュゲート前駆体を使用する場合には、典型的に、配列特異的に連結されるヌクレオシドの合成が完了してから、次いで、リガンド分子が連結部分と反応して、リガンドがコンジュゲートしたオリゴヌクレオチドを形成する。一部の実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドまたは連結ヌクレオシドは、市販の、オリゴヌクレオチド合成でごく普通に使用する標準ホスホラミダイトおよび非標準ホスホラミダイトに加えて、リガンド-ヌクレオシドコンジュゲートから誘導したホスホラミダイトを使用して、自動化シンセサイザーによって合成される。
【0459】
A.脂質コンジュゲート
特定の実施形態では、リガンドまたはコンジュゲートは、脂質または脂質系分子である。このような脂質または脂質系分子は、通常、血清タンパク質を、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)を結合できる。HSA結合性リガンドは、身体の標的組織への、例えば、腎臓でない標的組織への、コンジュゲートの分布を可能にする。例えば標的組織は、肝臓の実質細胞を含めた肝臓であり得る。HSAを結合可能である他の分子もまた、リガンドとして使用できる。例えば、ナプロキセンまたはアスピリンを使用できる。脂質または脂質系リガンドは、(a)コンジュゲートの分解に対する耐性を増大できる、(b)標的細胞もしくは細胞膜内へのターゲティングもしくは輸送を増大できる、または(c)血清タンパク質、例えば、HSAへの結合を調整するために使用できる。
【0460】
脂質系リガンドを使用して、コンジュゲートの標的組織への結合を調節、例えば、制御(例えば、阻害)することができる。例えば、より強力にHSAに結合する脂質または脂質系リガンドは、腎臓を標的とする可能性が低く、したがって身体から排除される可能性が低くなる。コンジュゲートが腎臓を標的とするように、あまり強力にHSAに結合しない脂質または脂質系リガンドを使用することができる。
【0461】
特定の実施形態では、脂質系リガンドは、HSAを結合する。例えばリガンドは、十分な親和性でHSAに結合でき、その結果、非腎臓組織へのコンジュゲートの分布が増強される。しかしながら、この親和性は、通常、HSA-リガンド間結合を元に戻すことができないほど強力ではない。
【0462】
特定の実施形態では、脂質系リガンドは、HSAに弱く結合するか、または全く結合せず、その結果腎臓へのコンジュゲートの分布が増強される。脂質系リガンドの代わりに、または脂質系リガンドに加えて、腎臓細胞を標的とする他の部分も使用できる。
【0463】
別の態様においては、リガンドは、標的細胞、例えば、増殖性細胞によって取り込まれる、例えば、ビタミンである部分である。これらは、例えば、悪性または非悪性種の、例えば、がん細胞の望まれない細胞増殖を特徴とする障害の治療に特に有用である。例示的なビタミンとしては、ビタミンA、EおよびKが挙げられる。他の例示的なビタミンとしては、ビタミンB、例えば、葉酸、B12、リボフラビン、ビオチン、ピリドキサール、またはがん細胞に取り込まれる他のビタミンもしくは栄養素が挙げられる。HSAおよび低比重リポタンパク(LDL)もまた挙げられる。
【0464】
B.細胞透過剤
別の態様においては、リガンドは、細胞透過剤、例えばヘリックス細胞透過剤などである。特定の実施形態では、細胞透過剤は、両親媒性である。例示的な細胞透過剤としては、tatまたはアンテナペディアなどのペプチドがある。該細胞透過剤がペプチドである場合、それは修飾可能であり、これにはぺプチジル模倣体、逆転異性体、非ペプチドまたはシュードペプチドの連結およびD-アミノ酸の使用が挙げられる。ヘリックス剤は、通常、α-ヘリックス剤であり、親油性および疎油性相を有し得る。
【0465】
リガンドは、ペプチドまたはペプチド模倣体であり得る。ペプチド模倣体(本明細書においてオリゴペプチド模倣体とも称する)は、天然ペプチドと類似する規定された三次元構造にフォールディング可能な分子である。ペプチドおよびペプチド模倣体のiRNA剤への結合は、細胞認識および吸収を増強することなどによって、iRNAの薬物動態分布に影響を及ぼし得る。ペプチドまたはペプチド模倣体部分は、約5~50アミノ酸長であり得、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45または50アミノ酸長である。
【0466】
ペプチドまたはペプチド模倣体は、例えば、細胞透過ペプチド、カチオン性ペプチド、両親媒性ペプチドまたは疎水性ペプチド(例えば、主にTyr、TrpまたはPheからなる)であり得る。ペプチド部分は、デンドリマーペプチド、拘束されたペプチドまたは架橋されたペプチドであり得る。別の選択肢としては、ペプチド部分は、疎水性の膜輸送配列(MTS)を含み得る。例示的な疎水性MTS含有ペプチドとしては、アミノ酸配列AAVALLPAVLLALLAP(配列番号11)を有するRFGFがある。疎水性MTSを含有するRFGF類似体(例えば、アミノ酸配列AALLPVLLAAP(配列番号12))も、ターゲティング部分であり得る。ペプチド部分は、細胞膜を横断してペプチド、オリゴヌクレオチドおよびタンパク質を含む大きな極性分子を運搬することができる、「送達」ペプチドであり得る。例えば、送達ペプチドとして機能することができることがわかっているのは、HIV Tatタンパク質(GRKKRRQRRRPPQ(配列番号13))およびDrosophila Antennapediaタンパク質(RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号14))からの配列である。ペプチドまたはペプチド模倣体は、ファージディスプレイライブラリーまたはワンビードワンコンパウンド(one-bead-one-compound)(OBOC)コンビナトリアルライブラリー(Lam et al.,Nature,354:82-84,1991)から同定されるペプチドなど、DNAのランダム配列によってコードされ得る。通常、組み込まれたモノマー単位を介してdsRNA剤に係留されるペプチドまたはペプチド模倣体には、細胞ターゲティングペプチド、例えばアルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)-ペプチドまたはRGD模倣体などがある。ペプチド部分は、長さが、約5アミノ酸~約40アミノ酸の範囲であり得る。ペプチド部分は、例えば安定性を増大させるまたは立体配座特性を司るなどの構造的な修飾を有し得る。以下に記載する構造的な修飾のいずれもが利用可能である。
【0467】
本発明の組成物および方法において使用するためのRGDペプチドは、直鎖状であっても環状であってもよく、また特定の組織へのターゲティングを促進するように修飾、例えば、グリコシル化またはメチル化、されてもよい。RGD含有ペプチドおよびペプチジオ模倣体(peptidiomimemtic)は、D-アミノ酸ならびに合成RGD模倣体を含み得る。RGDに加えて、例えばPECAM-1またはVEGFなどであるインテグリンリガンドを標的とする他の部分を使用できる。
【0468】
RGDペプチド部分を、特定の細胞種、例えば腫瘍細胞、例えば、内皮腫瘍細胞または乳がん腫瘍細胞、を標的とするために使用可能である(Zitzmann et al.,Cancer Res.,62:5139-43,2002)。RGDペプチドは、dsRNA剤の肺、腎臓、脾臓または肝臓を含むさまざまな他の組織の腫瘍へのターゲティングを促進できる(Aoki et al.,Cancer Gene Therapy 8:783-787,2001)。通常、RGDペプチドは、iRNA剤の腎臓へのターゲティングを促進することとなる。RGDペプチドは、直鎖状または環状であり得、また特定の組織へのターゲティングを促進するように修飾され得、例えば、グリコシル化またはメチル化され得る。例えばグリコシル化RGDペプチドは、αβを発現する腫瘍細胞にiRNA剤を送達可能である(Haubner et al.,Jour.Nucl.Med.,42:326-336,2001)。
【0469】
「細胞透過ペプチド」は、細胞に、例えば、バクテリア細胞もしくは真菌細胞などである微生物細胞、または例えばヒト細胞などである哺乳類細胞に、透過可能である。微生物細胞透過性ペプチドは、例えばα-ヘリックス直鎖ペプチド(例えば、LL-37またはセロピン(Ceropin)P1)、ジスルフィド結合含有ペプチド(例えば、α-デフェンシン、β-デフェンシンまたはバクテネシン(bactenecin))または一つもしくは二つの支配的なアミノ酸のみを含有するペプチド(例えば、PR-39またはインドリシジン)であり得る。細胞透過性ペプチドはまた、核移行シグナル(NLS)を含み得る。例えば、細胞透過性ペプチドは、HIV-1 gp41とSV40ラージT抗原のNLSとの融合ペプチドドメインに由来する、例えばMPGなどである二部分の両親媒性ペプチドであり得る(Simeoni et al.,Nucl.Acids Res.31:2717-2724,2003)。
【0470】
C.炭水化物コンジュゲート
本発明の組成物および方法の一部の実施形態では、iRNAは、炭水化物をさらに含む。炭水化物をコンジュゲートしたiRNAは、本明細書に記載するように、核酸のインビボでの送達に有利であると同時にインビボでの治療的使用に適した組成物である。本明細書において使用する場合、「炭水化物」とは、各炭素原子に結合した酸素、窒素もしくは硫黄原子とともに少なくとも6個の炭素原子を有する一つもしくは複数の単糖単位で構成されている炭水化物自体(直鎖状、分枝または環状であり得る)、またはその一部として、各炭素原子に結合した酸素、窒素もしくは硫黄原子とともに各々が少なくとも六個の炭素原子を有する一つまたは複数の単糖単位で構成されている炭水化物部分(直鎖状、分枝または環状であり得る)を有する化合物、のいずれかである化合物を指す。代表的な炭水化物としては、糖(単糖、二糖、三糖、および約4、5、6、7、8または9の単糖単位を含有するオリゴ糖)ならびに多糖、例えばデンプン、グリコーゲン、セルロースおよび多糖類樹脂、が挙げられる。特定の単糖としては、C5、および上記の(例えば、C5、C6、C7またはC8)糖が挙げられ、二糖および三糖としては、二または三の単糖単位(例えば、C5、C6、C7またはC8)を有する糖が挙げられる。
【0471】
特定の実施形態では、炭水化物コンジュゲートは、単糖を含む。
【0472】
特定の実施形態では、単糖は、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)である。一つまたは複数のN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)誘導体を含むGalNAcコンジュゲートは、例えば米国特許第8,106,022号に記載されており、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、GalNAcコンジュゲートは、iRNAが特定の細胞を標的にするリガンドとして機能する。一部の実施形態では、GalNAcコンジュゲートは、例えば、肝臓の細胞(例えば、肝細胞)のアシアロ糖タンパク質受容体のリガンドとして機能することによって、iRNAが肝臓の細胞を標的にする。
【0473】
一部の実施形態では、炭水化物コンジュゲートは、一つまたは複数のGalNAc誘導体を含む。GalNAc誘導体は、リンカーを介して、例えば、二価または三価の分枝リンカーを介して、結合させることができる。一部の実施形態では、GalNAcコンジュゲートは、センス鎖の3’末端にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、GalNAcコンジュゲートは、リンカーを介して、例えば、本明細書において記載するようなリンカーを介して、iRNA剤に(例えば、センス鎖の3’末端に)コンジュゲートされる。一部の実施形態では、GalNAcコンジュゲートは、センス鎖の5’末端にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、GalNAcコンジュゲートは、リンカーを介して、例えば、本明細書において記載するようなリンカーを介して、iRNA剤に(例えば、センス鎖の5’末端に)コンジュゲートされる。
【0474】
本発明の特定の実施形態では、GalNAcまたはGalNAc誘導体は、一価リンカーを介して本発明のiRNA剤に結合する。一部の実施形態では、GalNAcまたはGalNAc誘導体は、二価リンカーを介して本発明のiRNA剤に結合する。本発明のさらに他の実施形態では、GalNAcまたはGalNAc誘導体は、三価リンカーを介して本発明のiRNA剤に結合する。本発明の他の実施形態では、GalNAcまたはGalNAc誘導体は、四価リンカーを介して本発明のiRNA剤に結合する。
【0475】
特定の実施形態では、本発明の二本鎖RNAi剤は、iRNA剤に結合した一つのGalNAcまたはGalNAc誘導体を含む。特定の実施形態では、本発明の二本鎖RNAi剤は、複数の(例えば、2、3、4、5または6の)GalNAcまたはGalNAc誘導体を含み、この各々は、独立して、複数の一価リンカーを介して二本鎖RNAi剤の複数のヌクレオチドに結合する。
【0476】
一部の実施形態では、例えば、本発明のiRNA剤の二本の鎖が、複数の対合しないヌクレオチドを含むヘアピンループを形成する、一方の鎖の3’末端と、対応するもう一方の鎖の5’末端との間のヌクレオチドの中断されない鎖によって接続した一つのより大きな分子の一部である場合には、該ヘアピンループ内の対合しないヌクレオチドは各々、一価リンカーを介して結合したGalNAcまたはGalNAc誘導体を独立に含み得る。このヘアピンループはまた、二本鎖のうち一方の鎖内の伸長したオーバーハングによって形成される場合もある。
【0477】
一部の実施形態では、例えば、本発明のiRNA剤の二本の鎖が、複数の対合しないヌクレオチドを含むヘアピンループを形成する、一方の鎖の3’末端と、対応するもう一方の鎖の5’末端との間のヌクレオチドの中断されない鎖によって接続した一つのより大きな分子の一部である場合には、該ヘアピンループ内の対合しないヌクレオチドは各々、一価リンカーを介して結合したGalNAcまたはGalNAc誘導体を独立に含み得る。このヘアピンループはまた、二本鎖のうち一方の鎖内の伸長したオーバーハングによって形成される場合もある。
【0478】
一部の実施形態では、GalNAcコンジュゲートは、
【化16】
式II
である。
【0479】
一部の実施形態では、RNAi剤は、以下の概略図で示すようなリンカーを介して炭水化物コンジュゲートに結合し、式中Xは、OまたはSである。
【化17】
【0480】
一部の実施形態では、RNAi剤は、表1において規定され、以下に示す、L96にコンジュゲートされる。
【化18】
【0481】
特定の実施形態では、本発明の組成物および方法において使用するための炭水化物コンジュゲートは、以下からなる群から選択される。
【化19】
式II、
【化20】
式III、
【化21】
式IV、
【化22】
式V、
【化23】
式VI、
【化24】
式VII、
【化25】
式VIII、
【化26】
式IX、
【化27】
式X、
【化28】
式XI、
【化29】
式XII、
【化30】
式XIII、
【化31】
式XIV、
【化32】
式XV、
【化33】
式XVI、
【化34】
式XVII、
【化35】
式XVIII、
【化36】
式XIX、
【化37】
式XX、
【化38】
式XXI、
【化39】
式XXII、
【化40】
式XXIII、
【化41】

式中、YはOまたはSであり、nは3~6であり(式XXIV)、
【化42】

式中、YはOまたはSであり、nは3~6であり(式XXV)、
【化43】
式XXVI、
【化44】

式中、XはOまたはSであり(式XXVII)、
【化45】
式XXVII、式XXIX、
【化46】
式XXX、
式XXXI、
【化47】
式XXXII、
式XXXIII、
【化48】
式XXXIV。
【0482】
特定の実施形態では、本発明の組成物および方法において使用する炭水化物コンジュゲートは、単糖である。特定の実施形態では、単糖は、N-アセチルガラクトサミンであり、例えば、
【化49】
式II
である。
【0483】
本明細書において記載する実施形態において使用するための別の代表的な炭水化物コンジュゲートとしては、これに限定されないが、
【化50】
(式XXXVI)、
【0484】
XまたはYのうち一方がオリゴヌクレオチドである場合、もう一方は、水素である。
【0485】
一部の実施形態では、適したリガンドは、国際公開第2019/055633号において開示されるリガンドであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。一実施形態では、リガンドは、以下の構造を含む。
【化51】
【0486】
特定の実施形態では、本開示のRNAi剤は、GalNAcリガンドを含み得る。
【0487】
本発明の特定の実施形態では、GalNAcまたはGalNAc誘導体は、一価リンカーを介して本発明のiRNA剤に結合する。一部の実施形態では、GalNAcまたはGalNAc誘導体は、二価リンカーを介して本発明のiRNA剤に結合する。本発明のさらに他の実施形態では、GalNAcまたはGalNAc誘導体は、三価リンカーを介して本発明のiRNA剤に結合する。本発明の他の実施形態では、GalNAcまたはGalNAc誘導体は、四価リンカーを介して本発明のiRNA剤に結合する。
【0488】
特定の実施形態では、本発明の二本鎖RNAi剤は、例えば、dsRNA剤のセンス鎖の5’末端、または本明細書に記載される二重標的化RNAi剤の一方もしくは両方のセンス鎖の5’末端など、iRNA剤に結合された一つのGalNAcまたはGalNAc誘導体を含む。特定の実施形態では、本発明の二本鎖RNAi剤は、複数の(例えば、2、3、4、5または6の)GalNAcまたはGalNAc誘導体を含み、この各々は、独立して、複数の一価リンカーを介して二本鎖RNAi剤の複数のヌクレオチドに結合する。
【0489】
一部の実施形態では、例えば、本発明のiRNA剤の二本の鎖が、複数の対合しないヌクレオチドを含むヘアピンループを形成する、一方の鎖の3’末端と、対応するもう一方の鎖の5’末端との間のヌクレオチドの中断されない鎖によって接続した一つのより大きな分子の一部である場合には、該ヘアピンループ内の対合しないヌクレオチドは各々、一価リンカーを介して結合したGalNAcまたはGalNAc誘導体を独立に含み得る。
【0490】
一部の実施形態では、炭水化物コンジュゲートは、これに限定されないがPKモジュレーターまたは細胞透過ペプチドなどである、上記のような一つまたは複数のさらなるリガンドをさらに含む。
【0491】
本発明において使用するのに適したさらなる炭水化物コンジュゲートおよびリンカーとしては、国際公開第2014/179620号および国際公開第2014/179627号に記載されるものが挙げられ、各々の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0492】
D.リンカー
一部の実施形態では、本明細書において記載するコンジュゲートまたはリガンドを、切断可能である場合も切断可能でない場合もある種々のリンカーを用いてiRNAオリゴヌクレオチドに結合させることができる。
【0493】
「リンカー」または「連結基」という用語は、化合物の二つの部分を接続する、例えば、化合物の二つの部分を共有結合で結合させる、有機部分を意味する。典型的には、リンカーは、直接結合、または酸素もしくは硫黄などの原子、NR8、C(O)、C(O)NH、SO、SO、SONHなどのユニット、または原子の鎖であって、例えばこれに限定されるものではないが、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アルケニル、置換もしくは非置換アルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルアルケニル、ヘテロシクリルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルアリールアルキル、アルキルアリールアルケニル、アルキルアリールアルキニル、アルケニルアリールアルキル、アルケニルアリールアルケニル、アルケニルアリールアルキニル、アルキニルアリールアルキル、アルキニルアリールアルケニル、アルキニルアリールアルキニル、アルキルヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリールアルケニル、アルキルヘテロアリールアルキニル、アルケニルヘテロアリールアルキル、アルケニルヘテロアリールアルケニル、アルケニルヘテロアリールアルキニル、アルキニルヘテロアリールアルキル、アルキニルヘテロアリールアルケニル、アルキニルヘテロアリールアルキニル、アルキルヘテロシクリルアルキル、アルキルヘテロシクリルアルケニル、アルキルヘレロシクリルアルキニル(alkylhererocyclylalkynyl)、アルケニルヘテロシクリルアルキル、アルケニルヘテロシクリルアルケニル、アルケニルヘテロシクリルアルキニル、アルキニルヘテロシクリルアルキル、アルキニルヘテロシクリルアルケニル、アルキニルヘテロシクリルアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール、アルキニルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルヘテロアリール、アルキニルヘレロアリール(alkynylhereroaryl)など、を含み、一つまたは複数のメチレンが、O、S、S(O)、SO、N(R8)、C(O)、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換複素環によって中断または終結され得、式中、R8は、水素、アシル、脂肪族、または置換された脂肪族である。特定の実施形態では、リンカーは、約1~24原子、2~24、3~24、4~24、5~24、6~24、6~18、7~18、8~18原子、7~17、8~17、6~16、7~16、または8~16原子である。
【0494】
切断可能な連結基とは、細胞の外部で十分に安定であるが、標的細胞内に入ると、切断されて、リンカーが一緒に保持している二つの部分を放出する基である。一実施形態では、切断可能な連結基は、対象の血液中または第二の参照条件下(例えば、血液または血清中で見られる条件を模倣または表すように選択され得る)よりも、標的細胞中または第一の参照条件下(例えば、細胞内条件を模倣または表すように選択され得る)において、少なくとも約10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、またはそれ以上、または少なくとも約100倍速い速度で切断される。
【0495】
切断可能な連結基は、切断剤、例えば、pH、酸化還元電位または分解性分子の存在、の影響を受け易い。概して切断剤は、血清または血液中においてよりも、細胞の内部で、より広範に広がっているかまたはより高いレベルもしくは活性で見られる。このような分解剤の例としては、特定の基質のために選択される、または基質特異性を有さない酸化還元剤、例えば還元によって酸化還元切断可能な連結基を分解できる、細胞中に存在する、例えば、メルカプタンなどの酸化酵素もしくは還元酵素または還元剤や、エステラーゼや、エンドソームまたは酸性環境を作出できる試薬、例えば、五以下のpHをもたらす試薬や、一般酸、ペプチダーゼ(基質特異的であり得る)およびホスファターゼとして作用することによって酸切断可能な連結基を加水分解もしくは分解できる酵素が挙げられる。
【0496】
切断可能な連結基、例えばジスルフィド結合などは、pHの影響を受け易い場合がある。ヒト血清のpHは7.4であるが、平均細胞内pHはわずかに低く、約7.1~7.3の範囲である。エンドソームは、5.5~6.0の範囲のより酸性のpHであり、またリソソームは、およそ5.0のさらにより酸性のpHである。一部のリンカーは、選択されたpHで切断され、それによって細胞の内部でリガンドから、または細胞の所望のコンパートメント中に、カチオン性脂質を放出するものである、切断可能な連結基を有することとなる。
【0497】
リンカーは、特定の酵素によって切断可能である切断可能な連結基を含み得る。リンカー中に組み込まれる切断可能な連結基の種類は、標的にする細胞に左右され得る。例えば、肝臓標的化リガンドは、エステル基を含むリンカーを介してカチオン性脂質に連結できる。肝細胞は、エステラーゼが豊富であるため、リンカーは、肝細胞中では、エステラーゼが豊富でない細胞型においてよりも効率的に切断されることとなる。エステラーゼが豊富な他の細胞型としては、肺、腎皮質および精巣の細胞が挙げられる。
【0498】
肝細胞および滑膜細胞などのペプチダーゼが豊富な細胞型を標的とする場合には、ペプチド結合を含有するリンカーを使用することができる。
【0499】
概して、候補の切断可能な連結基の適合性は、分解剤が候補連結基を切断する能力(または条件)を試験することによって評価可能である。また、血液中で、または他の非標的組織と接触したときに、切断に抵抗する能力について候補の切断可能な連結基を試験することもまた望ましいであろう。したがって、第一および第二の条件の間での切断に対する相対的な感受性を決定することができるものであり、ここで第一の条件は、標的細胞において切断を示すように選択され、第二の条件は、他の組織または生物学的流体中で、例えば、血液もしくは血清中で、切断を示すように選択される。評価は、無細胞系において、細胞において、細胞培養液において、臓器または組織の培養液において、または動物全身において、実施され得る。無細胞条件または培養条件において最初の評価を行うことおよび動物全身におけるさらなる評価によって確認することが、有用であり得る。特定の実施形態では、有用な候補化合物は、血液または血清(または細胞外条件を模倣するように選択されたインビトロ条件下で)と比較して、細胞において(または細胞内条件を模倣するように選択されたインビトロ条件下で)少なくとも約2、4、10、20、30、40、50、60、70、80、90または約100倍速い速度で切断される。
【0500】
i.酸化還元切断可能な連結基
特定の実施形態では、切断可能な連結基は、還元または酸化の際に切断される酸化還元切断可能な連結基である。還元的に切断可能な連結基の例としては、ジスルフィド連結基(-S-S-)が挙げられる。候補の切断可能な連結基が、適した「還元的に切断可能な連結基」であるか、または例えば、特定のiRNA部分および特定のターゲティング剤とともに使用するのに適しているか否かを決定するために、本明細書において記載する方法に目を向けることができる。例えば、細胞中であって、例えば、標的細胞中で観察されるであろう切断の速度を模倣する、当技術分野で公知の試薬を使用してジチオスレイトール(DTT)または他の還元剤とともにインキュベートすることによって、候補を評価することができる。候補はまた、血液または血清条件を模倣するように選択された条件下で評価することもできる。ある条件においては、候補化合物は、血液中で最大約10%切断される。他の実施形態では、有用な候補化合物は、血液中(または細胞外条件を模倣するように選択されたインビトロ条件下)と比較して、細胞中で(または細胞内条件を模倣するように選択されたインビトロ条件下で)少なくとも約2、4、10、20、30、40、50、60、70、80、90または約100倍速い速度で分解される。候補化合物の切断の速度は、細胞内媒体を模倣するように選択された条件下での標準酵素動態アッセイを用いて決定され、細胞外媒体を模倣するように選択された条件と比較され得る。
【0501】
ii.ホスフェート系の切断可能な連結基
特定の実施形態では、切断可能なリンカーは、ホスフェート系の切断可能な連結基を含む。ホスフェート系の切断可能な連結基は、ホスフェート基を分解または加水分解する試薬により切断される。細胞内においてホスフェート基を切断する試薬の例としては、細胞中のホスファターゼなどの酵素がある。ホスフェート系連結基の例としては、-O-P(O)(ORk)-O-、-O-P(S)(ORk)-O-、-O-P(S)(SRk)-O-、-S-P(O)(ORk)-O-、-O-P(O)(ORk)-S-、-S-P(O)(ORk)-S-、-O-P(S)(ORk)-S-、-S-P(S)(ORk)-O-、-O-P(O)(Rk)-O-、-O-P(S)(Rk)-O-、-S-P(O)(Rk)-O-、-S-P(S)(Rk)-O-、-S-P(O)(Rk)-S-、-O-P(S)(Rk)-Sがあり、式中、Rkはそれぞれの出現において、独立して、C1~C20アルキル、C1~C20ハロアルキル、C6~C10アリール、またはC7~C12アラルキルであり得る。例示的な実施形態としては、-O-P(O)(OH)-O-、-O-P(S)(OH)-O-、-O-P(S)(SH)-O-、-S-P(O)(OH)-O-、-O-P(O)(OH)-S-、-S-P(O)(OH)-S-、-O-P(S)(OH)-S-、-S-P(S)(OH)-O-、-O-P(O)(H)-O-、-O-P(S)(H)-O-、-S-P(O)(H)-O、-S-P(S)(H)-O-、-S-P(O)(H)-S-、および-O-P(S)(H)-S-が挙げられる。特定の実施形態では、ホスフェート系連結基は、-O-P(O)(OH)-Oである。これら候補は、上述のものと類似した方法を使用して評価することができる。
【0502】
iii.酸切断可能な連結基
特定の実施形態では、切断可能なリンカーは、酸切断可能な連結基を含む。酸切断可能な連結基は、酸性条件下で切断される連結基である。他の実施形態では、酸切断可能な連結基は、pHが約6.5以下である酸性環境(例えば、約6.0、5.75、5.5、5.25、5.0以下)において、または一般酸として作用できる酵素などの薬剤によって、切断される。細胞内においては、特定の低pHオルガネラ、例えばエンドソームおよびリソソームが、酸切断可能な連結基のための切断環境をもたらすことができる。酸切断可能な連結基の例としては、これに限定されないが、ヒドラゾン、エステルおよびアミノ酸のエステルが挙げられる。酸切断可能な基は、一般式-C=NN-、C(O)O、または-OC(O)を有し得る。例示的な実施形態は、炭素がエステルの酸素に結合している場合(アルコキシ基)、アリール基、置換アルキル基、または第三級アルキル基、例えばジメチルペンチルもしくはt-ブチルである。これら候補は、上述のものと類似した方法を使用して評価することができる。
【0503】
iv.エステル系切断可能な連結基
特定の実施形態では、切断可能なリンカーは、エステル系の切断可能な連結基を含む。エステル系の切断可能な連結基は、細胞内においてエステラーゼおよびアミダーゼなどの酵素によって切断される。エステル系の切断可能な連結基の例としては、これに限定されないが、アルキレン、アルケニレンおよびアルキニレン基のエステルが挙げられる。エステルの切断可能な連結基は、一般式-C(O)O-または-OC(O)-を有する。これら候補は、上述のものと類似した方法を使用して評価することができる。
【0504】
v.ペプチド系切断可能な連結基
さらに別の実施形態では、切断可能なリンカーは、ペプチド系の切断可能な連結基を含む。ペプチド系の切断可能な連結基は、細胞内においてペプチダーゼおよびプロテアーゼなどの酵素によって切断される。ペプチド系の切断可能な連結基は、アミノ酸の間で形成されて、オリゴペプチド(例えば、ジペプチド、トリペプチドなど)およびポリペプチドが得られるペプチド結合である。ペプチド系の切断可能な基は、アミド基(-C(O)NH-)を含まない。アミド基は、任意のアルキレン、アルケニレンまたはアルキネレンの間で形成され得る。ペプチド結合は、アミノ酸の間で形成されて、ペプチドおよびタンパク質が得られるアミド結合の特殊な型である。ペプチド系の切断基は、概して、アミノ酸の間で形成されてペプチドおよびタンパク質が得られるペプチド結合(すなわち、アミド結合)に限定されて、すべてのアミド官能基を含むものではない。ペプチド系の切断可能な連結基は、一般式-NHCHRAC(O)NHCHRBC(O)-を有するものであり、式中、RAおよびRBは、二つの隣接するアミノ酸のR基である。これら候補は、上述のものと類似した方法を使用して評価することができる。
【0505】
一部の実施形態では、本発明のiRNAは、リンカーを介して炭水化物にコンジュゲートされる。本発明の組成物および方法のリンカーを有するiRNA炭水化物コンジュゲートの限定されない例としては、これに限定されないが、
【化52】
(式XXXVII)、
【化53】
(式XXXVIII)、
【化54】
(式XXXIX)、
【化55】
(式XL)、
【化56】
(式XLI)、
【化57】
(式XLII)、
【化58】
(式XLIII)、および
【化59】
(式XLIV)が挙げられ、XまたはYの一方がオリゴヌクレオチドである場合、もう一方は、水素である。
【0506】
本発明の組成物および方法の特定の実施形態では、リガンドは、二価または三価の分枝リンカーを介して結合した一つまたは複数の「GalNAc」(N-アセチルガラクトサミン)誘導体である。
【0507】
特定の実施形態では、本発明のdsRNAは、式(XLV)~(XLVI)のいずれかで示される構造の群から選択される二価または三価の分枝リンカーにコンジュゲートされる。
【化60】
式中、
q2A、q2B、q3A、q3B、q4A、q4B、q5A、q5Bおよびq5Cは、出現ごとに独立に、0~20を表し、また繰り返し単位は、同一である場合も、異なる場合もあり、
2A、P2B、P3A、P3B、P4A、P4B、P5A、P5B、P5C、T2A、T2B、T3A、T3B、T4A、T4B、T4A、T5B、T5Cは、出現ごとに独立に、存在しない、CO、NH、O、S、OC(O)、NHC(O)、CH、CHNH、またはCHOであり、
2A、Q2B、Q3A、Q3B、Q4A、Q4B、Q5A、Q5B、Q5Cは、出現ごとに独立に、存在しない、アルキレン、置換アルキレンであり、式中一つまたは複数のメチレンが、O、S、S(O)、SO、N(R)、C(R’)=C(R’’)、C≡CまたはC(O)のうち一つまたは複数によって中断または終結され得、
2A、R2B、R3A、R3B、R4A、R4B、R5A、R5B、R5Cは、出現ごとにそれぞれ独立に、存在しない、NH、O、S、CH、C(O)O、C(O)NH、NHCH(R)C(O)、-C(O)-CH(R)-NH-、CO、CH=N-O、
【化61】
またはヘテロシクリルであり、
2A、L2B、L3A、L3B、L4A、L4B、L5A、L5B、およびL5Cは、リガンドを表し、すなわち、出現ごとにそれぞれ独立に、単糖(GalNAcなど)、二糖、三糖、四糖、オリゴ糖または多糖を表し、またRは、Hまたはアミノ酸側鎖である。三価のコンジュゲートGalNAc誘導体は、標的遺伝子の発現を阻害するためにRNAi剤と共に使用するのに一部有用であり、例えば以下の式(XLIX)のものなどであり、
【化62】
式中、L5A、L5B、およびL5Cは、単糖、例えばGalNAc誘導体を表す。
【0508】
GalNAc誘導体をコンジュゲートする二価および三価の分枝のリンカー基の例としては、これに限定されないが、式II、VII、XI、XおよびXIIIのような上記で列挙した構造が挙げられる。
【0509】
RNAコンジュゲートの調製を教示する代表的な米国特許としては、これに限定されるものではないが、米国特許第4,828,979号、第4,948,882号、第5,218,105号、第5,525,465号、第5,541,313号、第5,545,730号、第5,552,538号、第5,578,717号、第5,580,731号、第5,591,584号、第5,109,124号、第5,118,802号、第5,138,045号、第5,414,077号、第5,486,603号、第5,512,439号、第5,578,718号、第5,608,046号、第4,587,044号、第4,605,735号、第4,667,025号、第4,762,779号、第4,789,737号、第4,824,941号、第4,835,263号、第4,876,335号、第4,904,582号、第4,958,013号、第5,082,830号、第5,112,963号、第5,214,136号、第5,082,830号、第5,112,963号、第5,214,136号、第5,245,022号、第5,254,469号、第5,258,506号、第5,262,536号、第5,272,250号、第5,292,873号、第5,317,098号、第5,371,241号、第5,391,723号、第5,416,203号、第5,451,463号、第5,510,475号、第5,512,667号、第5,514,785号、第5,565,552号、第5,567,810号、第5,574,142号、第5,585,481号、第5,587,371号、第5,595,726号、第5,597,696号、第5,599,923号、第5,599,928号、第5,688,941号、第6,294,664号、第6,320,017号、第6,576,752号、第6,783,931号、第6,900,297号、第7,037,646号、および第8,106,022号が挙げられ、この各々の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0510】
所与の化合物においてすべての位置について均一に修飾される必要はなく、実際には、先述の修飾のうち二つ以上を単一の化合物内に、またはさらにiRNA内の単一のヌクレオシドにおいて組み込むことができる。本発明はまた、キメラ化合物であるiRNA化合物も含む。
【0511】
本発明の文脈における「キメラ」iRNA化合物または「キメラ」は、二つ以上の化学的に区別される領域を含有する、例えばdsRNA剤などであるiRNA化合物であり、そのそれぞれが少なくとも一つのモノマー単位、すなわち、dsRNA化合物の場合にはヌクレオチド、により構成される。これらiRNAは、典型的には、少なくとも一つの領域であって、そこでRNAが、iRNAに対してヌクレアーゼ分解に対する耐性の増大、細胞取り込みの増大または標的核酸に対する結合親和性の増大を付与するように修飾されるものである、少なくとも一つの領域を含有する。iRNAの追加的な領域は、RNA:DNAまたはRNA:RNAの複合型を切断可能である酵素のための基質として機能し得る。例として、リボヌクレアーゼHは、RNA:DNA二本鎖のRNA鎖を切断する細胞性エンドヌクレアーゼである。したがって、リボヌクレアーゼHの活性化が、RNA標的の切断をもたらし、それによって遺伝子発現のiRNA阻害の効率を大きく増強する。結果的に、これに匹敵する結果は、しばしば、同一の標的領域にハイブリダイズするホスホロチオエートデオキシdsRNAと比較して、キメラdsRNAを使用する場合により短いiRNAで得ることができる。RNA標的の切断は、ゲル電気泳動によって、また必要に応じて、当技術分野で公知の関連する核酸ハイブリダイゼーション技術によって、日常的に検出可能である。
【0512】
特定の例では、iRNAのRNAは、非リガンドの基によって修飾できる。iRNAの活性、細胞分布または細胞取り込みを増強するために、いくつかの非リガンドの分子がiRNAにコンジュゲートされてきたので、当該コンジュゲーションを実施するための手順は、科学文献において利用可能である。こうした非リガンドの部分には、脂質部分、例えばコレステロール(Kubo,T.et al.,Biochem.Biophys.Res.Comm.,2007,365(1):54-61、Letsinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1989,86:6553)、コール酸(Manoharan et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.,1994,4:1053)、チオエーテル、例えば、ヘキシル-S-トリチルチオール(hexyl-S-tritylthiol)(Manoharan et al.,Ann.N.Y.Acad.Sci.,1992,660:306;Manoharan et al.,Bioorg.Med.Chem.Let.,1993,3:2765)、チオコレステロール(Oberhauser et al.,Nucl.Acids Res.,1992,20:533)、脂肪鎖、例えば、ドデカンジオール残基またはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al.,EMBO J.,1991,10:111、Kabanov et al.,FEBS Lett.,1990,259:327、Svinarchuk et al.,Biochimie,1993,75:49)、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールまたはトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホネート(Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,1995,36:3651、Shea et al.,Nucl.Acids Res.,1990,18:3777)、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al.,Nucleosides&Nucleotides,1995,14:969)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,1995,36:3651)、パルミチル部分(Mishra et al.,Biochim.Biophys.Acta,1995,1264:229)、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分(Crooke et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.,1996,277:923)、が含まれてきた。このようなRNAコンジュゲートの調製を教示する代表的な米国特許は、上記で列挙している。典型的なコンジュゲーションプロトコールは、配列の一つまたは複数の位置にアミノリンカーを有するRNAの合成を伴う。次いで、アミノ基が、適切なカップリングまたは活性化試薬を使用することによってコンジュゲートされている分子と反応する。コンジュゲーション反応は、RNAがまだ固体支持部に結合している状態で、または溶液相でRNAが切断された後で実施可能である。典型的には、HPLCによるRNAコンジュゲートの精製によって、純粋なコンジュゲートが得られる。
【0513】
V.本開示のRNAi剤の送達
本開示のRNAi剤の送達は、ヒト対象(例えば、それを必要とする対象、例えば、痛風または糖尿病などのSGLT2関連障害を有する対象、例えば、痛風または糖尿病を有するか、または発症するリスクがある対象、または痛風または糖尿病を有するリスクがある対象などの対象内の細胞への送達は、多くの異なる方法で達成され得る。例えば、送達は、細胞をインビトロまたはインビボのどちらかで本開示のRNAi剤と接触させることによって実施され得る。インビボでの送達は、RNAi剤、例えば、dsRNAを含む組成物を対象に投与することによって直接的に実施され得る。あるいは、インビボでの送達は、RNAi剤をコードしてその発現を誘導する一つまたは複数のベクターを投与することによって間接的に実施され得る。これら選択肢は、以下においてさらに説明される。
【0514】
概して、核酸分子を送達する任意の方法(インビトロまたはインビボで)は、本開示のRNAi剤の使用に適合させることができる(例えば、Akhtar S.and Julian RL.,(1992)Trends Cell.Biol.2(5):139-144および国際公開第94/02595号を参照されたく、これは参照により全体として本明細書に組み込まれる)。インビボでの送達の場合、RNAi剤を送達するために考慮する因子としては、例えば、送達された薬剤の生物学的安定性、非特異的効果の防止、および標的組織内での送達された薬剤の蓄積が挙げられる。RNAi剤の非特異的効果は、局所投与によって、例えば組織への直接注入もしくは移植または調製物の局所投与によって最小限に抑えることができる。処置部位への局所投与は、薬剤の局所濃度を最大化して、それとは別に薬剤によって害され得るかまたは薬剤を分解することができる全身組織への薬剤の曝露を制限し、また投与しようとするRNAi剤のより少ない投与総量を可能にする。いくつかの研究では、RNAi剤が局所的に投与された場合に、遺伝子産物のノックダウンの成功が示されている。例えば、肺送達、例えば、SOD1などのdsRNAの吸入は、肺組織における遺伝子およびタンパク質発現を効果的にノックダウンし、肺の細気管支および肺胞によるdsRNAの優れた取り込みがあることが示されている。カニクイザルにおける硝子体内への注入によるVEGF dsRNAの眼内送達(Tolentino,MJ.et al.,(2004)Retina 24:132-138)およびマウスにおける網膜下への注入(Reich,SJ.et al.(2003)Mol.Vis.9:210-216)はいずれもまた、加齢黄斑変性症の実験モデルにおいて、新生血管形成を予防することを示した。加えて、マウスにおけるdsRNAの直接の腫瘍内注入は、腫瘍体積を減少させ(Pille,J.et al.(2005)Mol.Ther.11:267-274)、また腫瘍を有するマウスの生存を長引かせることができる(Kim,WJ.et al.,(2006)Mol.Ther.14:343-350、Li,S.et al.,(2007)Mol.Ther.15:515-523)。RNA干渉は、直接注入によるCNSへの局所送達によって成功することがわかっており(Dorn,G.et al.,(2004)Nucleic Acids 32:e49;Tan,PH.et al.(2005)Gene Ther.12:59-66、Makimura,H.et a.l(2002)BMC Neurosci.3:18、Shishkina,GT.,et al.(2004)Neuroscience 129:521-528、Thakker,ER.,et al.(2004)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.101:17270-17275、Akaneya,Y.,et al.(2005)J.Neurophysiol.93:594-602)、また肺に対しては鼻腔内投与によって成功することがわかっている(Howard,KA.et al.,(2006)Mol.Ther.14:476-484、Zhang,X.et al.,(2004)J.Biol.Chem.279:10677-10684、Bitko,V.et al.,(2005)Nat.Med.11:50-55)。疾患の処置のためにRNAi剤を全身投与する場合、RNAを修飾するか、または代替として、薬物送達システムを使用して送達することができ、いずれの方法も、インビボでのエンドヌクレアーゼおよびエクソヌクレアーゼによってdsRNAの急速な分解を防ぐように機能する。RNAまたは医薬担体を修飾することによっても、標的組織へのRNAi剤のターゲティングを可能にすることができ、また望ましくないオフターゲット効果を回避することができる(例えば、理論に拘束されることを望むわけではないが、本明細書に記載のGNAの使用は、dsRNAのシード領域を不安定化させることが特定されているが、これにより当該dsRNAのオフターゲット効果と比較してオンターゲット効果への優先性が向上することとなり、それによりオフターゲット効果が、こうしたシード領域の不安定化によって有意に低下することとなる)。RNAi剤は、細胞取り込みを増強し、分解を防ぐように、コレステロールなどの親油性基への化学的コンジュゲーションによって修飾することができる。例えば、親油性コレステロール部分にコンジュゲートさせたApoBへと誘導されるRNAi剤を、マウスに全身注入したところ、結果として、肝臓および空腸の両方においてapoB mRNAのノックダウンを生じた(Soutschek,J.et al.,(2004)Nature 432:173-178)。アプタマーへのRNAi剤のコンジュゲーションは、前立腺がんのマウスモデルにおいて腫瘍の成長を阻害し、腫瘍縮小を媒介することが分かっている(McNamara,JO.et al.,(2006)Nat.Biotechnol.24:1005-1015)。代替的な実施形態では、RNAi剤は、ナノ粒子、デンドリマー、ポリマー、リポソーム、またはカチオン性送達システムなどの薬物送達システムを使用して送達させることができる。正に帯電したカチオン性送達システムにより、分子RNAi剤(負に帯電した)の結合が促進され、また負に帯電した細胞膜での相互作用も向上し、それによって細胞によるRNAi剤の効率的な取り込みが可能になる。カチオン性脂質、デンドリマー、またはポリマーを、RNAi剤に結合することができるか、またはRNAi剤を封入するベシクルまたはミセルを形成するように誘導することができる(例えば、Kim SH.et al.,(2008)Journal of Controlled Release129(2):107-116を参照)。ベシクルまたはミセルの形成は、全身投与したときのRNAiの分解をさらに防止する。カチオン性のRNAi剤複合体を作製および投与する方法は、十分に当業者の能力の範囲内である(例えば、Sorensen,DR.,et al.(2003)J.Mol.Biol 327:761-766;Verma,UN.et al.,(2003)Clin.Cancer Res.9:1291-1300;Arnold,AS et al.(2007)J.Hypertens.25:197-205を参照されたく、これらは参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる)。RNAi剤の全身送達に有用な薬剤送達システムのいくつかの非限定的な例としては、DOTAP(Sorensen,DR.,et al(2003)、同上、Verma,UN,et al.,(2003)、同上)、オリゴフェクタミン、「固体核酸脂質粒子(solid nucleic acid lipid particle)」(Zimmermann,TS,et al.,(2006)Nature 441:111-114)、カルジオリピン(Chien,PY,et al.,(2005)Cancer Gene Ther.12:321-328;Pal,A,et al.,(2005)Int J.Oncol.26:1087-1091)、ポリエチレンイミン(Bonnet ME,et al.,(2008)Pharm.Res.Aug 16 Epub ahead of print、Aigner,A.(2006)J.Biomed.Biotechnol.71659)、Arg-Gly-Asp(RGD)ペプチド(Liu,S.(2006)Mol.Pharm.3:472-487)、およびポリアミドアミン(Tomalia,DA,et al.,(2007)Biochem.Soc.Trans.35:61-67、Yoo,H.,et al.,(1999)Pharm.Res.16:1799-1804)が挙げられる。一部の実施形態では、RNAi剤は、全身投与のためにシクロデキストリンと複合体を形成する。RNAi剤とシクロデキストリンの投与方法およびRNAi剤とシクロデキストリンとの医薬組成物は、米国特許第7,427,605号に見ることができ、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0515】
本開示の特定の態様は、細胞内においてSGLT2遺伝子の発現を減少させる方法に関し、これは該細胞を本開示の二本鎖RNAi剤と接触させることを含む。一実施形態では、細胞は肝細胞、随意に肝細胞である。一実施形態では、細胞は腎細胞である。
【0516】
特定の実施形態では、RNAi剤は、例えば、肝臓または腎臓などの器官内に存在する一つまたは複数の組織または細胞型において取り込まれる。
【0517】
本開示の別の態様は、対象においてSGLT2標的遺伝子の発現および/または活性化を低減させる方法であって、本開示の二本鎖RNAi剤を対象に投与することを含む。
【0518】
本開示の別の態様は、SGLT2関連障害を有する対象またはSGLT2関連障害を有するもしくは発症するリスクを有する対象を治療する方法に関連し、対象に本開示の二本鎖RNAi剤の治療有効量を投与し、それによって対象を治療することを含む。一部の実施形態では、SGLT2関連障害は、代謝疾患、例えば、糖尿病、例えば、I型またはII型糖尿病を含む。一部の実施形態では、SGLT2関連障害は、痛風を含む。
【0519】
一実施形態では、二本鎖RNAi剤は、皮下投与される。
【0520】
一実施形態では、二本鎖RNAi剤は、経口投与される。
【0521】
一実施形態では、二本鎖RNAi剤は、静脈内投与される。
【0522】
一実施形態では、二本鎖RNAi剤は、肺系投与、例えば、鼻腔内投与、または経口吸入投与によって投与される。
【0523】
説明を簡単にするため、この項における製剤、組成物、および方法は、主として修飾siRNA化合物に関して述べる。しかしながら、これら製剤、組成物、および方法は、他のsiRNA化合物、例えば、未修飾siRNA化合物で実施することができ、そして当該実施は、本開示の範囲内であることは理解され得る。RNAi剤を含む組成物は、様々な経路によって対象に送達することができる。例示的な経路としては、肺系、静脈内、皮下、脳室内、経口、局所、経直腸、経肛門、経膣、経鼻、および眼内が挙げられる。
【0524】
本開示のRNAi剤は、投与に好適な医薬組成物に組み込むことができる。こうした組成物は、通常、一つまたは複数の種のRNAi剤と薬学的に許容可能な担体とを含む。本明細書において使用する場合、語句「薬学的に許容可能な担体」は、医薬投与に適合性の、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、ならびに同様のものを含むことが意図される。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野において周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性成分と不適合性である場合を除き、組成物におけるそれらの使用は意図される。補足的な有効成分もまた組成物に組み込まれ得る。
【0525】
本開示の医薬組成物は、局所処置または全身処置のどちらが所望されるか、ならびに処置される面積に応じて、いくつかの方法で投与され得る。投与は、気管内、鼻腔内、局所(眼科、膣、直腸、鼻腔内、経皮を含む)、経口、非経口、または例えば、例えばネブライザーによる粉末またはエアロゾル剤の吸入または吹送による肺内であり得る。非経口投与は、点滴、皮下、腹腔内、もしくは筋肉注射、または髄腔内または脳室内の投与を含む。
【0526】
投与の経路および部位は、ターゲティングを増強するように選択され得る。例えば、筋肉細胞を標的とするため、目的の筋肉内への筋肉注射が、論理的な選択となるであろう。肺細胞は、粉末またはエアロゾル形態でのRNAi剤の投与によって標的とすることができる。血管内皮細胞は、バルーンカテーテルをRNAi剤でコーティングすること、およびRNAを機械的に導入することによって標的とすることができる。
【0527】
肺系送達のための組成物は、例えば、鼻腔内または経口吸入投与のための水溶液、例えば、脂質(リポソーム、ニオソーム、マイクロエマルション、脂質ミセル、固体脂質ナノ粒子)またはポリマー(高分子ミセル、デンドリマー、高分子ナノ粒子、ノノゲル、ナノカプセル)から構成される好適な担体、例えば、経口吸入投与のためのアジュバントを含み得る。水性組成物は滅菌されてもよく、緩衝剤、希釈剤、吸収促進剤、および他の適切な添加剤を随意に含有してもよい。かかる投与は、本発明の二本鎖RNAi剤の全身送達および局所送達の両方を可能にする。
【0528】
鼻腔内投与は、一度に数滴を塗布することによって、または霧化を介して、二本鎖RNAi剤をシリンジまたはドロッパで鼻腔内に注入または送気することを含み得る。鼻腔内投与に好適な剤形としては、液滴、粉末、噴霧ミスト、および噴霧剤が挙げられる。鼻送達装置には、蒸気吸入器、点鼻薬、噴霧ボトル、定量噴霧ポンプ、ガス駆動噴霧アトマイザー、ネブライザー、機械粉末噴霧器、呼吸作動式吸入器、および送気装置が含まれるが、これらに限定されない。呼吸系の中により深く、例えば肺の中へと送達するための装置には、ネブライザー、加圧定量吸入器、乾燥粉末吸入器、および熱気化エアロゾル装置が含まれる。吸入による送達のための装置は、商業的サプライヤーから入手可能である。装置は、例えば、予防または治療される疾患または障害、送達される薬剤の体積、薬剤の送達頻度、および当技術分野における他の考慮事項に応じて、固定用量または可変用量、単回用量または複数回用量、使い捨てまたは再使用可能であり得る。
【0529】
経口吸入投与は、装置、例えば、受動的呼吸駆動または能動的動力駆動の単回/複数回用量乾燥粉末吸入器(DPI)などを使用して、二本鎖RNAi剤を肺系に送達することを含み得る。経口吸入投与に適した剤形には、粉末および溶液が含まれる。経口吸入投与に適した装置には、ネブライザー、定量吸入器、および乾燥粉末吸入器が含まれる。乾燥粉末吸入器は、薬剤、特にタンパク質を肺に送達するために使用される最も人気のある装置である。例示的な市販の入手可能な乾燥粉末吸入器としては、Spinhaler(Fisons Pharmaceuticals,Rochester,NY)およびRotahaler(GSK,RTP,NC)が挙げられる。いくつかのタイプのネブライザー、すなわちジェットネブライザー、超音波ネブライザー、振動メッシュネブライザーが利用可能である。ジェットネブライザーは、圧縮空気によって駆動される。超音波ネブライザーは、開放液体貯蔵部から液滴を作り出すために圧電変換器を使用する。振動メッシュネブライザーは、環状ピエゾ素子によって作動して共振曲げモードで振動する穿孔された膜を使用する。膜の穴は、液体供給側に大きな断面サイズ、および液滴が現れる側には狭い断面サイズを有する。治療用途に応じて、穴のサイズおよび穴の数を調整することができる。適切な装置の選択は、薬剤およびその製剤の性質、作用部位、および肺の病態生理などのパラメータに依存する。水性懸濁液および溶液は、効果的に噴霧される。機械的に生成された振動メッシュ技術に基づくエアロゾルも、タンパク質を肺に送達するために首尾よく使用されている。
【0530】
肺系投与のためのRNAi剤の量は、一つの標的遺伝子から別の標的遺伝子で変動し得、ならびに適用されるべき適切な量は、標的遺伝子ごとに個別に決定しなければならない場合がある。典型的には、この量は、10μg~2mg、または50μg~1500μg、または100μg~1000μgの範囲である。
【0531】
局所投与用製剤は、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、点滴剤、座薬、噴霧剤、液体、および粉末を含み得る。従来の医薬担体、水性、粉末、または油状の基剤、増粘剤なども必要であり得、または望ましくあり得る。コーティングしたコンドーム、手袋なども有用であり得る。
【0532】
経口投与用組成物としては、散剤または顆粒剤、水中の懸濁剤または溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤または非水性媒体、タブレット剤、カプセル剤、ドロップ剤、またはトローチ剤を含む。錠剤の場合、使用できる担体としては、ラクトース、クエン酸ナトリウム、およびリン酸の塩が挙げられる。錠剤中には、例えばデンプンなどの種々の崩壊剤、および例えばステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびタルクなどである潤滑剤が、通常使用される。カプセル形態での経口投与の場合、有用な希釈剤は、ラクトースおよび高分子量ポリエチレングリコールである。経口投与のために水性懸濁剤が必要な場合は、核酸組成物を、乳化剤および懸濁剤と組み合わせることができる。所望の場合、特定の甘味剤または風味剤を加えることができる。本発明の薬剤の経口投与に適した組成物は、PCT出願第PCT/US20/33156号にさらに記載されており、その内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0533】
髄腔内または脳室内に投与されるための組成物は、緩衝剤、希釈剤、および他の好適な添加剤も含有し得る無菌の水溶液を含み得る。
【0534】
非経口投与用の製剤は、緩衝剤、希釈剤、および他の好適な添加剤も含有し得る無菌の水溶液を含み得る。脳室内注射は、例えばリザーバに取り付けられた、脳室内カテーテルによって促進され得る。静脈内での使用の場合、溶質の総濃度は、調製物を等張にするように制御され得る。
【0535】
一実施形態では、siRNA化合物、例えば、二本鎖siRNA化合物の投与は、非経口であり、例えば、静脈内(例えば、ボーラスとして、または拡散性注入として)、皮内、腹腔内、筋肉内、髄腔内、脳室内、頭蓋内、皮下、経粘膜、頬側、舌下、内視鏡下、経直腸、経口、経膣、局所、肺系、鼻腔内、経尿道、または眼内である。投与は、対象自身によって、または他の者、例えば、医療提供者などによって提供され得る。医薬品は、測定された用量で、または計量された用量を送達するディスペンサーで、提供することができる。選択される送達様式は、以下においてより詳細に説明する。
【0536】
ベクターにコードされた本開示のRNAi剤
SGLT2遺伝子を標的とするRNAi剤は、DNAまたはRNAベクターに挿入された転写物ユニットから発現され得る(例えば、Couture,A,et al.,TIG.(1996),12:5-10、国際公開第00/22113号、国際公開第00/22114号、および米国特許第6,054,299号を参照)。発現は、使用される特定の構築物ならびに標的組織または細胞種に応じて持続することができる(数ヶ月またはそれ以上)。これら導入遺伝子は、直鎖状の構築物、環状プラスミド、または統合ベクターもしくは非統合ベクターであり得るウイルスベクターとして導入することができる。導入遺伝子はまた、染色体外プラスミドとして継代されることが可能になるように構築することもできる(Gassmann,et al.,(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:1292)。
【0537】
RNAi剤の個々の鎖は、発現ベクター上のプロモーターから転写させることができる。二つの別々の鎖が、例えば、dsRNAを生成するように発現される場合、二つの別々の発現ベクターを、標的細胞内に同時導入することができる(例えば、トランスフェクションまたは感染によって)。あるいは、dsRNAのそれぞれ個別の鎖を、プロモーターによって転写させることができ、プロモーターのいずれもが同じ発現プラスミド上に位置される。一実施形態では、dsRNAは、dsRNAがステム-アンド-ループ構造を有するようにリンカーポリヌクレオチド配列によって連結された逆方向リピートポリヌクレオチドとして発現される。
【0538】
RNAi剤発現ベクターは、概して、DNAプラスミドまたはウイルスベクターである。真核細胞に適合性がある発現ベクター、例えば脊椎動物細胞に対して適合性がある発現ベクターを使用することにより、本明細書において記載するRNAi剤の発現のための組換え構築物を産生することができる。RNAi剤発現ベクターの送達は、例えば静脈内または筋肉内投与によって、患者から取り出された標的細胞への投与とその後の患者への再導入によって、または所望の標的細胞への導入を可能にする任意の他の手段によって、全身的になされ得る。
【0539】
本明細書において記載する方法および組成物と共に用いることができるウイルスベクターシステムとしては、これらに限定されるものではないが、(a)アデノウイルスベクター、(b)レトロウイルスベクター、例えばこれに限定されるものではないが、レンチウイルスベクター、モロニーマウス白血病ウイルスなど、(c)アデノ随伴ウイルスベクター、(d)単純ヘルペスウイルスベクター、(e)SV40ベクター、(f)ポリオーマウイルスベクター、(g)パピローマウイルスベクター、(h)ピコルナウイルスベクター、(i)ポックスウイルスベクター、例えばオルソポックスなどであり、例えば、ワクシニアウイルスベクターなど、またはトリポックスであり、例えば、カナリアポックスもしくは鶏痘など、ならびに(j)ヘルパー依存性アデノウイルスまたはガットレス(gutless)アデノウイルスが挙げられる。複製欠損ウイルスもまた有利であり得る。異なるベクターは、細胞のゲノムの中に組み込まれるようになるかまたは組み込まれるようにならないであろう。当該構築物は、所望の場合、トランスフェクションのためのウイルス配列を含めることができる。あるいは、構築物は、エピソーム複製が可能なベクター内に、例えば、EPVベクターおよびEBVベクター内に、組み込むことができる。RNAi剤の組換え発現のための構築物は、概して、標的細胞におけるRNAi剤の発現を確実にするために、調節要素、例えば、プロモーター、エンハンサーなどを必要とすることとなる。ベクターおよび構築物を検討するための他の態様は、当技術分野で公知である。
【0540】
VI.本発明の医薬組成物
本開示は、本開示のRNAi剤を含む医薬組成物および製剤も含む。一実施形態では、本明細書において説明されるRNAi剤と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物が本明細書において提供される。RNAi剤を含有する医薬組成物は、SGLT2遺伝子の発現の阻害または低減から利益を得る対象、例えば、SGLT2関連障害を有する対象、例えば、痛風またはI型もしくはII型糖尿病などの糖尿病を有するか、または有するリスクがある、または発症するリスクのある対象、を治療するのに有用である。こうした医薬組成物は、送達の態様に基づいて製剤化される。一実施例では、非経口送達を介して、例えば、静脈内(IV)送達、筋肉内(IM)送達、または皮下(subQ)送達によって、全身投与用に製剤化される組成物がある。
【0541】
一部の実施形態では、本発明の医薬組成物は、発熱物質を含まないか、または非発熱性である。
【0542】
本開示の医薬組成物は、SGLT2遺伝子の発現を阻害するのに十分な投薬量で投与され得る。概して、本開示のRNAi剤の適切な用量は、約0.001~約200.0mgの範囲の固定用量を、一ヶ月に約一回から一年に約一回、典型的には、1/4年に約一回(すなわち、三ヶ月毎に約一回)から一部分年に約一回、概して、約1~50gの範囲の固定容量を、一ヶ月に約一回から一年に約一回、典型的には、1/4年に約一回~一年に約一回である。特定の実施形態では、用量は、固定用量、例えば、約25μg~約5mgの固定用量である。
【0543】
反復投薬レジメンとしては、例えば月に一回から六ヶ月毎に一回など、治療量のRNAi剤の定期的な投与を含み得る。特定の実施形態では、特に慢性疾患の治療のために、RNAi剤は、四半期に約一回(すなわち、三ヶ月毎に約一回)から年に約二回で投与される。
【0544】
一日一回、週二回、週一回の当初の治療レジメン(例えば、負荷用量)の後、治療は、より少ない頻度で投与され得る。
【0545】
他の実施形態では、医薬組成物の単回用量が、長期間持続することができ、その後の用量は、1、2、3、または4ヶ月またはそれ以上の間隔を超えないように投与される。本開示の一部の実施形態では、本開示の医薬組成物の単回用量が、月1回投与される。本開示の他の実施形態においては、本開示の医薬組成物の単回用量は、四半期に一回から年に二回で投与される。
【0546】
当業者は、例えばこれらに限定されるものではないが、疾患または障害の重症度、過去の治療、対象の健康全般または年齢、および存在する他の疾患などである特定のファクターが、対象を効果的に治療するために必要な投薬量および投薬のタイミングに影響を及ぼし得ることを理解するであろう。その上、治療有効量の組成物での対象の治療には、単回治療または一連の治療が含まれ得る。
【0547】
マウス遺伝学における進歩は、SGLT2の発現の減少から恩恵を受けることとなる、様々なSGLT2関連疾患の研究のために多くのマウスモデルを生み出した。こうしたモデルは、RNAi剤のインビボ試験のため、ならびに治療有効用量を決定するために使用することができる。好適なマウスモデルは当該技術分野で公知であり、例えば、本明細書の他の箇所に記載されるマウスモデルを含む。
【0548】
本開示の医薬組成物は、局所処置または全身処置のどちらが所望されるか、および処置される面積に応じて、いくつかの方法で投与され得る。投与は、局所的(例えば、経皮パッチによる)、例えば、ネブライザーを含む、粉末またはアエロゾルの吸引または吹送などによる、鼻腔内投与または経口吸引投与による肺系投与、気管内、表皮および経皮、経口または非経口であり得る。非経口投与は、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内の注射または注入、例えば、埋め込みデバイスによる皮下への投与、または例えば、実質内、髄腔内、または脳室内の投与によって頭蓋内への投与を含む。
【0549】
RNAi剤は、肝臓または腎臓などの特定の組織を標的とする様式で送達され得る。
【0550】
局所投与用の医薬組成物および製剤は、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、点滴、座薬、噴霧剤、液体、および粉末を含み得る。従来の医薬担体、水性基剤、粉末基剤、または油性基剤、増粘剤などは、必要であり得るか、または望ましいものであり得る。コーティングしたコンドーム、手袋なども有用であり得る。好適な局所製剤としては、本開示で取り上げるRNAi剤が、局所送達剤、例えば脂質、リポソーム、脂質酸、脂質酸エステル、ステロイド、キレート剤および界面活性剤との混合物となっているものを含める。適切な脂質およびリポソームとしては、中性(例えば、ジオレオイルホスファチジルDOPEエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルコリンDMPC、ジステアロリホスファチジルコリン)、陰性(例えば、ジミリストイルホスファチジルグリセロールDMPG)およびカチオン性(例えば、ジオレオイルテトラメチルアミノプロピルDOTAPおよびジオレオイルホスファチジルエタノールアミンDOTMA)が挙げられる。本開示において取り上げるRNAi剤は、リポソーム内においてカプセル化することができ、またはリポソームと、特にカチオン性リポソームと複合体を形成することができる。あるいは、RNAi剤は、脂質、特にカチオン性脂質と複合体化することができる。好適な脂肪酸およびエステルとしては、これに限定されるものではないが、アラキドン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプリン酸、トリカプリン酸、モノオレイン、ジラウリン、1-モノカプリン酸グリセリル、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン、アシルカルニチン、アシルコリン、またはC1~20アルキルエステル(例えば、イソプロピルミリステートIPM)、モノグリセリド、ジグリセリド、またはそれらの薬学的に許容可能な塩が挙げられる。局所製剤は、米国特許第6,747,014号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0551】
A.膜性分子アセンブリを含むRNAi剤製剤
本開示の組成物および方法で使用するためのRNAi剤は、膜性分子アセンブリでの、例えば、リポソームまたはミセルでの送達用に製剤化することができる。本明細書において使用する場合、用語「リポソーム」は、少なくとも一つの二分子層、例えば、一つの二分子層または複数の二分子層内に整列した両親媒性脂質で構成されたベシクルを指す。リポソームは、親油性材料から形成された膜と水性の内部とを有する単層膜および多重膜のベシクルを含む。水性部分が、RNAi剤組成物を含有する。親油性材料は、典型的にはRNAi剤組成物を含まないが一部の実施例では含む場合もある水性の外側部分から、水性の内側部分を隔離する。リポソームは、作用部位への活性成分の移送および送達に有用である。リポソーム膜は、生体膜と構造的に似ているため、リポソームが組織に適用されるとリポソーム二重層は細胞膜の二重層と融合する。リポソームと細胞の融合が進むにつれて、RNAi剤を含む内側水性部分の内容物は、細胞内へと送達されて、そこでRNAi剤が、標的RNAに特異的に結合することができ、そしてRNAiを媒介することができる。場合によっては、リポソームはまた、例えば、RNAi剤を特定の細胞種に誘導するために、特異的に標的とされる。
【0552】
RNAi剤を含有するリポソームは、様々な方法によって調製することができる。一実施例では、リポソームの脂質成分が界面活性剤に溶解され、それによって脂質成分でミセルが形成される。例えば、脂質成分は、両親媒性カチオン性脂質または脂質コンジュゲートであり得る。界面活性剤は、高い臨界ミセル濃度を有し得、また非イオン性であり得る。例示的な界面活性剤としては、コール酸、CHAPS、オクチルグルコシド、デオキシコール酸およびラウロイルサルコシンが挙げられる。次いで、RNAi剤調製物は、脂質成分を含むミセルに加えられる。脂質上のカチオン性基が、RNAi剤と相互作用して、RNAi剤の周りに凝縮してリポソームを形成する。凝縮後、界面活性剤は、RNAi剤のリポソーム調製物を得るために、例えば、透析などによって、除去される。
【0553】
必要であれば、凝集反応の際に、例えば、制御された添加によって、凝集を補助する担体化合物を加えることもできる。例えば、担体化合物は、核酸以外のポリマーであり得る(例えば、スペルミンまたはスペルミジン)。pHはまた、縮重に都合よく調節可能である。
【0554】
送達ビヒクルの構造的な成分としてポリヌクレオチド/カチオン性脂質複合体を組み込んだ安定なポリヌクレオチド送達ビヒクルを産生する方法が、例えば、国際公開第96/37194号にさらに記載されて、その内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。リポソーム形成はまた、Felgner,P.L.et al.,(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 8:7413-7417、米国特許第4,897,355号、米国特許第5,171,678号、Bangham et al.,(1965)M.Mol.Biol.23:238;Olson et al.,(1979)Biochim.Biophys.Acta 557:9;Szoka et al.,(1978)Proc.Natl.Acad.Sci.75:4194;Mayhew et al.,(1984)Biochim.Biophys.Acta 775:169;Kim et al.,(1983)Biochim.Biophys.Acta 728:339;および Fukunaga et al.,(1984)Endocrinol.115:757、に記載される例示的な方法の一つまたは複数の態様も含み得る。送達ビヒクルとして使用するための適切なサイズの脂質凝集体を調製するために通常使用される技術としては、超音波処理および凍結融解に加えて押出成形が挙げられる(例えば、Mayer et al.,(1986)Biochim.Biophys.Acta 858:161を参照されたい。一貫して小さく(50~200nm)、比較的均一な凝集体が望ましいときには、顕微溶液化を使用することができる(Mayhew et al.,(1984)Biochim.Biophys.Acta 775:169。これら方法は、RNAi剤の調製物をリポソームに包含させるために容易に適合される。
【0555】
リポソームは、二つの広いクラスに分類される。カチオン性リポソームは、正に帯電したリポソームであって、負に帯電した核酸分子と相互作用して安定な複合体を形成するリポソームである。正に帯電した核酸/リポソーム複合体は、負に帯電した細胞表面に結合して、エンドソームに内在化される。エンドソーム内の酸性pHに起因して、リポソームは破裂して、その内容物を細胞質中へと放出する(Wang et al.(1987)Biochem.Biophys.Res.Commun.,147:980-985)。
【0556】
リポソームは、pH感受性であるかまたは負に帯電しており、それらとの複合体ではなく核酸を捕捉する。核酸および脂質の両方が、同様の電荷であるため、複合体形成ではなく反発が生じる。それにもかかわらず、一部の核酸は、これらリポソームの水性内側部分内に捕捉される。チミジンキナーゼ遺伝子をコードする核酸を、培養液中の細胞単一層に送達するために、pH感応性リポソームが使用されてきた。外因性遺伝子の発現が、標的細胞内において検出された(Zhou et al.(1992)Journal of Controlled Release,19:269-274)。
【0557】
リポソーム組成物の主要なタイプの一つは、天然由来のホスファチジルコリン以外のリン脂質を含む。中性リポソーム組成物は、例えば、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)またはジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)から形成され得る。アニオン性リポソーム組成物は、概して、ジミリストイルホスファチジルグリセロールから形成され、その一方で、アニオン性融合性リポソームは、主に、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)から形成される。別のタイプのリポソーム組成物は、ホスファチジルコリン(PC)から形成され、例えば大豆製PCおよび卵製PCなどである。別のタイプは、リン脂質またはホスファチジルコリンまたはコレステロールの混合物から形成される。
【0558】
インビトロおよびインビボでリポソームを細胞に導入する他の方法の例としては、米国特許第5,283,185号、米国特許第5,171,678号、国際公開第94/00569号、国際公開第93/24640号、国際公開第91/16024号、Felgner,(1994)J.Biol.Chem.269:2550;Nabel,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.90:11307;Nabel,(1992)Human Gene Ther.3:649、Gershon,(1993)Biochem.32:7143、およびStrauss,(1992)EMBO J.11:417が挙げられる。
【0559】
非イオン性リポソーム系は、特に非イオン性界面活性剤とコレステロールを含む系は、皮膚への薬物の送達におけるそれらの有用性を判定するためにも試験されてきた。Novasome(商標)I(ジラウリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)およびNovasome(商標)II(ジステアリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)を含む非イオン性リポソーム製剤が、マウスの皮膚の真皮中にシクロスポリンAを送達するために使用された。結果として、こうした非イオン性リポソーム系が、皮膚の異なる層中へのシクロスポリンAの蓄積を促進する際に有効であることが示された(Hu et al.,(1994)S.T.P.Pharma.Sci.,4(6):466)。
【0560】
リポソームはまた、「立体的に安定化した」リポソームも含み、当該用語は、本明細書において使用する場合、一つまたは複数の特化された脂質を含むリポソームであって、リポソームに組み込まれた場合に、結果として当該特化された脂質を欠くリポソームと比較して循環寿命の向上が生じるような一つまたは複数の特化された脂質を含むリポソームを指す。立体的に安定化したリポソームの例としては、リポソームのベシクル形成脂質部分が(A)例えばモノシアロガングリオシドGM1などである一つまたは複数の糖脂質を含むか、または(B)例えばポリエチレングリコール(PEG)部分などである一つまたは複数の親水性ポリマーで誘導体化されている、リポソームである。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、少なくとも、ガングリオシド、スフィンゴミエリン、またはPEG誘導体化脂質を含有する立体的に安定化されたリポソームの場合、これら立体的に安定化されたリポソームの循環半減期の向上は、細網内皮系(RES)の細胞内への取り込みの減少に由来するということが、当技術分野では考えられている(Allen et al.,(1987)FEBS Letters,223:42;Wu et al.,(1993)Cancer Research,53:3765)。
【0561】
一つまたは複数の糖脂質を含む様々なリポソームが、当技術分野で公知である。Papahadjopoulos et al.(Ann.N.Y.Acad.Sci.,(1987),507:64)は、モノシアロガングリオシドGM1、硫酸ガラクトセレブロシド、およびホスファチジルイノシトールがリポソームの血液半減期を向上させる能力について報告した。これら知見は、Gabizonら(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,(1988),85,:6949)によって解説された。いずれもAllenらによる米国特許第4,837,028号および国際公開第88/04924号では、(1)スフィンゴミエリンと(2)ガングリオシドGM1またはガラクトセレブロシド硫酸エステルとを含むリポソームが開示されている。米国特許第5,543,152号(Webbら)では、スフィンゴミエリンを含むリポソームについて開示している。1,2-SN-ジミリストイルホスファチジルコリンを含むリポソームが、国際公開第97/13499号(Limら)において開示されている。
【0562】
一実施形態では、カチオン性リポソームが使用される。カチオン性リポソームは、細胞膜に融合することができるという利点を有する。非カチオン性リポソームは、原形質膜と効率的には融合することができないが、インビボでマクロファージによって取り込まれるため、RNAi剤をマクロファージに送達するために使用することができる。
【0563】
リポソームのさらなる利点としては、天然のリン脂質から得られるリポソームが生体適合性および生分解性であること、リポソームは広範囲の水および脂質溶解性薬物を組み込むことができること、リポソームはそれらの内部コンパートメント内のカプセル化されたRNAi剤を代謝および分解から保護することができること、が挙げられる(Rosoff,in “Pharmaceutical Dosage Forms,” Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,volume 1,p.245)。リポソーム製剤の調製における重要な検討事項は、脂質表面の電荷、ベシクルのサイズ、およびリポソームの水の量である。
【0564】
正に帯電した合成カチオン性脂質であるN-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)は、小リポソームを形成するために使用することができ、該小リポソームは、組織培養細胞の細胞膜の負に帯電した脂質と融合することができる脂質-核酸複合体を形成する核酸と自発的に相互作用して、結果としてRNAi剤の送達がなされる(例えば、Felgner,P.L.et al.,(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 8:7413-7417、ならびにDOTMAの説明およびDNAとのその使用については米国特許第4,897,355号を参照)。
【0565】
DOTMA類似体である1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニア)プロパン(DOTAP)は、リン脂質と組み合わせて使用することにより、DNA複合体化ベシクルを形成することができる。リポフェクチン(商標)Bethesda Research Laboratories社、ゲイザースバーグ、メリーランド州)は、負に帯電したポリヌクレオチドと自発的に相互作用して複合体を形成する正に帯電し たDOTMAリポソームを含む、生組織培養細胞内へのアニオン性の核酸の高度な送達に有効な薬剤である。十分に正に帯電したリポソームを使用すると、結果として得られる複合体上の正味電荷も正である。この方法において調製された正に帯電した複合体は、負に帯電した細胞表面に自発的に結合し、原形質膜と融合して、機能的核酸を、例えば組織培養細胞内へと効率的に送達する。別の市販のカチオン性脂質である1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3,3-(トリメチルアンモニア)プロパン(「DOTAP」)(Boehringer Mannheim社、インディアナポリス、インディアナ州)は、オレオイル部分が、エーテル連結ではなくエステルで連結している点がDOTMAと異なる。
【0566】
他の報告されたカチオン性脂質化合物としては、様々な部分にコンジュゲートしているものが挙げられ、例えば二つのタイプの脂質の一方にコンジュゲートしているカルボキシスペルミンなどが挙げられ、また例えば5-カルボキシスペルミルグリシンジオクタオレオイルアミド(「DOGS」)(トランスフェクタム(Transfectam)(商標)、Promega社、マディソン、ウィスコンシン州)およびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン 5-カルボキシスペルミル-アミド(「DPPES」)などの化合物が挙げられる(例えば、米国特許第5,171,678号)。
【0567】
別のカチオン性脂質コンジュゲートは、DOPEと組み合わせてリポソーム中へと製剤化されているコレステロールでの脂質の誘導体化(「DC-Chol」)を含む(Gao,X.and Huang,L.,(1991)Biochim.Biophys.Res.Commun.179:280を参照)。ポリリジンをDOPEにコンジュゲートすることによって作製されたリポポリリジンは、血清の存在下でのトランスフェクションに効果的であることが報告されている(Zhou,X.et al.,(1991)Biochim.Biophys.Acta 1065:8)。特定の細胞系の場合、コンジュゲートしたカチオン性脂質を含むこれらリポソームは、低い毒性を示すと言われており、またDOTMA含有組成物よりもより効率的なトランスフェクションをもたらす。他の市販のカチオン性脂質製品としては、DMRIEおよびDMRIE-HP(Vical社、ラホヤ、カリフォルニア州)およびリポフェクタミン(DOSPA)(Life Technology,Inc.社、ゲイザースバーグ、メリーランド州)が挙げられる。オリゴヌクレオチドの送達に好適な他のカチオン性脂質は、国際公開第98/39359号および国際公開第96/37194号に記載されている。
【0568】
リポソーム製剤は、局所投与に特に適しており、リポソームは、他の製剤に勝るいくつかの利点をもたらす。こうした利点としては、投与された薬物の高い体内吸収に関連する副作用の減少、所望の標的での投与された薬物の蓄積の増加、およびRNAi剤を皮膚に投与する能力が挙げられる。一部の実践形態では、リポソームは、RNAi剤を上皮細胞に送達するため、および真皮組織内、例えば、皮膚内へのRNAi剤の浸透を増強するために、使用される。例えば、リポソームは、局所的に塗布することができる。リポソームとして製剤化された薬物の皮膚への局所的な送達は、文献 に報告されている(例えば、Weiner et al.,(1992)Journal of Drug Targeting,vol.2,405-410およびdu Plessis et al.,(1992)Antiviral Research,18:259-265、Mannino,R.J.and Fould-Fogerite,S.,(1998)Biotechniques 6:682-690、Itani,T.et al.,(1987)Gene 56:267-276、Nicolau,C.et al.(1987)Meth.Enzymol.149:157-176、Straubinger,R.M.and Papahadjopoulos,D.(1983)Meth.Enzymol.101:512-527、Wang,C.Y.and Huang,L.,(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7851-7855を参照)。
【0569】
非イオン性リポソーム系は、特に非イオン性界面活性剤とコレステロールを含む系は、皮膚への薬物の送達におけるそれらの有用性を判定するためにも試験されてきた。マウスの皮膚の真皮内に薬物を送達するために、Novasome I(ジラウリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)およびNovasome II(ジステアリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン-10 -ステアリルエーテル)を含む非イオン性リポソーム製剤が使用された。RNAi剤を含むこうした製剤は、皮膚障害を治療するのに有用である。
【0570】
RNAi剤を含むリポソームは、非常に変形可能に作製することができる。こうした変形能は、リポソームがリポソームの平均半径より小さい孔を通って浸透することを可能にする。例えば、トランスファーソーム(transfersome)は、変形可能なタイプのリポソームである。トランスファーソームは、表面エッジ活性化剤(surface edge activator)、通常は界面活性剤、を標準のリポソーム組成物に加えることによって作製することができる。RNAi剤を含むトランスファーソームは、RNAi剤を皮膚のケラチン生成細胞に送達するために、感染によって、例えば皮下に送達することができる。脂質ベシクルは、インタクトな哺乳動物の皮膚を通過するために、好適な経皮勾配の影響下において、それぞれが50nm未満の直径を有する一連の微細孔を通過しなければならない。加えて、脂質特性に起因して、これらトランスファーソームは、自己最適性(例えば皮膚などにおいて、孔の形状に順応性のある)で、自己修復性であり得、ならびに断片化することなくそれらの標的に頻繁に到達することができ、また多くの場合、自己負荷性(self-loading)であり得る。
【0571】
本開示に従う他の製剤は、2008年1月2日に出願された米国仮出願第61/018,616号、2008年1月2日に出願された第61/018,611号、2008年3月26日に出願された第61/039,748号、2008年4月22日に出願された第61/047,087号、および2008年5月8日に出願された第61/051,528号に記載されている。2007年10月3日に出願されたPCT出願第PCT/US2007/080331号にも、本開示に従う製剤が記載されている。
【0572】
トランスファーソームは、さらに別のタイプのリポソームであり、薬物送達ビヒクルの関心ある候補である高度に変形可能な脂質集合体である。トランスファーソームは、脂質滴であって、該脂質滴より小さい孔を通って容易に浸透することができるほど高度に変形可能である脂質滴として説明することができる。トランスファーソームは、それらが使用される環境に適応可能であり、例えば、それらは、自己最適性(皮膚において孔の形状に順応性のある)で、自己修復性であり、断片化することなくそれらの標的に頻繁に到達し、また多くの場合自己負荷性である。トランスファーソームを作製するために、表面エッジ活性化剤、通常は界面活性剤、を標準リポソーム組成物に加えることができる。トランスファーソームは、皮膚に血清アルブミンを送達するために使用されてきた。血清アルブミンのトランスファーソーム媒介送達は、血清アルブミンを含有する溶液の皮下注入と同じくらい有効であることが分かっている。
【0573】
界面活性剤は、本明細書において説明されるような製剤において、特にエマルション(マイクロエマルションを含む)およびリポソームにおいて、広い応用が見出される。天然および合成の、多くの異なるタイプの界面活性剤の特性を分類および格付けする最もよくある手法としては、親水性/親油性バランス(HLB)を使用するものがある。親水性基(「頭」としても知られる)の性質が、製剤中で使用される様々な界面活性剤を分類するのに最も有用な手段となる(Rieger,in Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,1988,p.285)。
【0574】
界面活性剤分子がイオン化されない場合、それらは、非イオン性界面活性剤として分類される。非イオン性界面活性剤は、医薬品および化粧製品において広い応用が見出され、広範囲のpH値にわたって使用可能である。概して、それらのHLB値は、それらの構造に応じて2から約18の範囲である。非イオン性界面活性剤としては、非イオン性エステル、例えばエチレングリコールエステル、プロピレングリコールエステル、グリセリルエステル、ポリグリセリルエステル、ソルビタンエステル、スクロースエステル、およびエトキシ化エステルが挙げられる。例えば脂肪アルコールエトキシレート、プロポキシ化アルコールおよびエトキシ化/プロポキシ化ブロックポリマーなどである非イオン性のアルカノールアミドおよびエーテルもまた、このクラスに含まれる。ポリオキシエチレン界面活性剤は、非イオン性界面活性剤のクラスの最も普及した要素である。
【0575】
水に溶解または分散されたときに、界面活性剤分子が負電荷を保持する場合、界面活性剤は、アニオン性として分類される。アニオン性界面活性剤としては、例えばセッケンなどであるカルボン酸エステル、アシル乳酸エステル、アミノ酸のアシルアミド、例えばアルキル硫酸エステルおよびエトキシ化アルキル硫酸エステルなどである硫酸のエステル、アルキルベンゼンスルホン酸エステルなどであるスルホン酸エステル、アシルイセチオン酸エステル、アシルタウリン酸塩、およびスルホコハク酸塩、およびリン酸塩が挙げられる。アニオン性剤のクラスの最も重要な要素は、アルキル硫酸エステルおよびセッケンである。
【0576】
水に溶解または分散されたときに、界面活性剤分子が正電荷を保持する場合、界面活性剤は、カチオン性として分類される。カチオン性界面活性剤としては、第四級アンモニウム塩およびエトキシ化アミンが挙げられる。第四級アンモニウム塩は、このクラスの最も使用される要素である。
【0577】
界面活性剤分子が、正電荷または負電荷のどちらかを保持する能力を有する場合、界面活性剤は、両性として分類される。両性界面活性剤としては、アクリル酸誘導体、置換アルキルアミド、N-アルキルベタインおよびホスファチドが挙げられる。
【0578】
薬品、製剤、およびエマルション中での界面活性剤の使用は、概説されている(Rieger,in Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,1988,p.285)。
【0579】
本開示の方法での使用のためのRNAi剤は、ミセル製剤としても提供することができる。「ミセル」は、本明細書においては、分子の全ての疎水性部分が内側に向くように両親媒性分子が球状構造で整列され、それによって親水性部分が周囲の水相に接触したままになる、特定のタイプの分子アセンブリとして定義される。環境が疎水性である場合、逆の配置で存在する。
【0580】
経皮的な膜を通る送達に好適な混合ミセル製剤は、siRNA組成物の水溶液と、アルカリ金属のC~C22アルキル硫酸塩と、ミセル形成化合物とを混合することによって調製され得る。例示的なミセル形成化合物としては、レシチン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の薬学的に許容可能な塩、グリコール酸、乳酸、カモミール抽出物、キュウリ抽出物、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モノオレイン、モノオレエート、モノラウレート、ルリジサ油、月見草油、メントール、トリヒドロキシオキソコラニルグリシン(trihydroxy oxo cholanyl glycine)およびその薬学的に許容可能な塩、グリセリン、ポリグリセリン、リシン、ポリリジン、トリオレイン、ポリオキシエチレンエーテルおよびその類似体、ポリドカノールアルキルエーテルおよびその類似体、ケノデオキシコール酸塩(chenodeoxycholate)、デオキシコール酸塩、ならびにそれらの混合物が挙げられる。ミセル形成化合物は、アルカリ金属のアルキル硫酸塩と同時に加えてもよく、またはそれらを加えた後に加えてもよい。混合ミセルは、原材料の、実質的に任意の種類の混合によって形成されることとなるが、より小さいサイズのミセルを提供するために激しい混合によって形成されることとなる。
【0581】
一方法では、siRNA組成物と少なくともアルカリ金属のアルキル硫酸塩とを含む第一のミセル組成物が調製される。次いで、第一のミセル組成物を、少なくとも三種のミセル形成化合物と混合し、混合ミセル組成物を形成する。別の方法では、ミセル組成物は、siRNA組成物とアルカリ金属のアルキル硫酸塩と、ミセル形成化合物のうちの少なくとも一つとを混合して、その後に激しく混合しながら、残りのミセル形成化合物を加えることによって調製される。
【0582】
製剤を安定化させるため、および細菌増殖から保護するために、フェノールまたはm-クレゾールを混合ミセル組成物に加えてもよい。あるいは、フェノールまたはm-クレゾールを、ミセル形成原材料と共に加えてもよい。グリセリンなどの等張剤を、混合ミセル組成物の形成後に加えてもよい。
【0583】
ミセル製剤を噴霧剤として送達する場合には、当該製剤を、エアゾールディスペンサーに入れることができ、そしてディスペンサーには、噴射剤が装填される。噴射剤は、加圧されており、ディスペンサー中では液体状態である。原材料の比率は、水相および噴射剤の相が一つになるように、すなわち、一相で存在するように、調節される。二相で存在する場合には、例えば、計量弁などによって、内容物の一部を噴出する前に、ディスペンサーを振る必要がある。医薬品の分配用量が、微細な噴霧で計量弁から射出される。
【0584】
噴射剤は、含水素クロロフルオロカーボン、含水素フルオロカーボン、ジメチルエーテル、およびジエチルエーテルを含み得る。特定の実施形態では、HFA 134a(1,1,1,2テトラフルオロエタン)が使用され得る。
【0585】
必須の原材料の特定の濃度は、比較的簡単な実験によって決定することができる。口腔による吸収の場合には、注射でのまたは胃腸管経由の投与のための投与量を、例えば、少なくとも二倍または三倍に、増加させることが望ましいことが多い。
【0586】
脂質粒子
RNAi剤は、例えば、本開示のdsRNAは、例えば、LNPなどである脂質製剤において、または他の核酸-脂質粒子において、完全にカプセル化され得る。
【0587】
本明細書において使用される場合、用語「LNP」は、安定な核酸-脂質粒子を指す。LNPは、典型的には、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、および粒子の凝集を防ぐ脂質(例えば、PEG-脂質コンジュゲート)を含有する。LNPは、静脈(i.v.)注射後に循環寿命の延長を呈し、遠位部位(例えば、投与部位から物理的に離れた部位)において蓄積するため、全身投与に極めて有用である。LNPは、「pSPLP」を含むものであり、それは国際公開第00/03683号に記載されるようなカプセル化された縮合剤-核酸複合体を含む。本開示の粒子は、典型的には、平均粒径が約50nmから約150nmであり、より典型的には約60nmから約130nm、より典型的には約70nmから約110nmであり、最も典型的には約70nmから約90nmであり、また実質的には無毒性である。加えて、核酸は、本開示の核酸-脂質粒子中に存在する場合、水溶液中において、ヌクレアーゼによる分解に対して抵抗性を有する。核酸-脂質粒子およびその調製方法は、例えば、米国特許第5,976,567号、第5,981,501号、第6,534,484号、第6,586,410号、第6,815,432号、米国特許出願公開第2010/0324120号、および国際公開第96/40964号において開示されている。
【0588】
一実施形態では、薬物に対する脂質の比(質量/質量比)(例えば、dsRNAに対する脂質の比)は、約1:1から約50:1、約1:1から約25:1、約3:1から約15:1、約4:1から約10:1、約5:1から約9:1、または約6:1から約9:1の範囲とすることとなる。上記に列記した範囲の中間にある範囲も、本開示の一部であることが企図される。
【0589】
RNAi剤の送達用のある特定のLNP製剤は、当技術分野において記述されてきたものであり、例えば、国際公開第2008/042973号において説明されるような例えば、「LNP01」製剤が挙げられ、当該公開公報は参照により本明細書に組み込まれる。
【0590】
さらなる例示的な脂質-dsRNA製剤を、下記の表で特定している。
【表1】

【表2】

DSPC:ジステアロイルホスファチジルコリン
DPPC:ジパルミトイルホスファチジルコリン
PEG-DMG:PEG-ジジミリストイルグリセロール(C14-PEG、またはPEG-C14)(平均分子量2000のPEG)
PEG-DSG:PEG-ジスチリルグリセロール(C18-PEG、またはPEG-C18)(平均分子量2000のPEG)
PEG-cDMA:PEG-カルバモイル-1,2-ジミリスチルオキシプロピルアミン(平均分子量2000のPEG)
【0591】
製剤を含むSNALP(1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA))は、国際公開第2009/127060号に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0592】
製剤を含むXTCは、国際公開第2010/088537号に記載されており、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0593】
製剤を含むMC3は、例えば、米国特許出願公開第2010/0324120号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0594】
製剤を含むALNY-100は、国際公開第2010/054406号に記載されており、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0595】
製剤を含むC12-200は、国際公開第2010/129709号に記載されており、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0596】
経口投与のための組成物および製剤には、粉末または顆粒、微粒子、ナノ粒子、水または非水性媒体中の懸濁剤または溶液、カプセル剤、ゲルカプセル剤、サシェ剤、錠剤またはミニ錠剤が含まれる。増粘剤、香味剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤、または結合剤は、望ましい場合がある。一部の実施形態では、経口製剤は、本開示において取り上げるdsRNAが一つまたは複数の浸透促進剤、界面活性剤、およびキレート化剤と共に投与される製剤である。好適な界面活性剤としては、脂肪酸またはそのエステルもしくは塩、胆汁酸またはその塩が挙げられる。好適な胆汁酸/塩としては、ケノデオキシコール酸(CDCA)およびウルソデオキシケノデオキシコール酸(UDCA)、コール酸、デヒドロコール酸、デオキシコール酸、グルコール酸(glucholic acid)、グリコール酸(glycholic acid)、グリコデオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、タウロ-24,25-ジヒドロ-フシジン酸ナトリウムおよびグリコジヒドロフシジン酸ナトリウムが挙げられる。好適な脂肪酸としては、アラキドン酸、ウンデカン酸、オレイン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプリン酸、トリカプリン酸、モノオレイン、ジラウリン、1-モノカプリン酸グリセリル、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン、アシルカルニチン、アシルコリン、またはモノグリセリド、ジグリセリド、またはその薬学的に許容可能な塩(例えば、ナトリウム)が挙げられる。一部の実施形態では、浸透促進剤の組合せが用いられ、例えば、胆汁酸/塩と組み合わせた脂肪酸/塩である。例示的な組み合わせの一つには、ラウリン酸、カプリン酸、およびUDCAのナトリウム塩がある。さらに、浸透促進剤としては、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン-20-セチルエーテルが挙げられる。本開示において取り上げるdsRNAは、噴霧された乾燥粒子などの粒状形態で、経口で送達することができ、またはマイクロ粒子またはナノ粒子を形成するために複合体化することができる。dsRNA複合体化薬剤としては、ポリ-アミノ酸、ポリイミン、ポリアクリレート、ポリアルキルアクリレート、ポリオキシエタン、ポリアルキルシアノアクリレート、カチオン化ゼラチン、アルブミン、デンプン、アクリレート、ポリエチレングリコール(PEG)およびデンプン、ポリアルキルシアノアクリレート、DEAE誘導ポリイミン、プルラン(pollulan)、セルロースおよびデンプンが挙げられる。好適な複合体化薬剤としては、キトサン、N-トリメチルキトサン、ポリ-L-リシン、ポリヒスチジン、ポリオルニチン、ポリスペルミン、プロタミン、ポリビニルピリジン、ポリチオジエチルアミノメチルエチレンP(TDAE)、ポリアミノスチレン(例えば、p-アミノ)、ポリ(メチルシアノアクリレート)、ポリ(エチルシアノアクリレート)、ポリ(ブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソヘキシルシアノアクリレート)、DEAE-メタクリレート、DEAE-ヘキシルアクリレート、DEAE-アクリルアミド、DEAE-アルブミン、およびDEAEデキストラン、ポリメチルアクリレート、ポリヘキシルアクリレート、ポリ(D,L-乳酸)、ポリ(DL-乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)、アルギン酸塩、およびポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。dsRNAのための経口製剤およびその調製は、米国特許第6,887,906号、米国特許出願公開第2003/0027780号、および米国特許第6,747,014号において詳細に記載されており、それぞれは参照により本明細書に組み込まれる。
【0597】
肺系送達のための組成物は、例えば、鼻腔内または経口吸入投与のための水溶液、例えば、脂質(リポソーム、ニオソーム、マイクロエマルション、脂質ミセル、固体脂質ナノ粒子)またはポリマー(高分子ミセル、デンドリマー、高分子ナノ粒子、ノノゲル、ナノカプセル)から構成される好適な担体、例えば、経口吸入投与のためのアジュバントを含み得る。水性組成物は滅菌されてもよく、緩衝剤、希釈剤、吸収促進剤、および他の適切な添加剤を随意に含有してもよい。
【0598】
非経口、実質内(脳内へ)、髄腔内、脳室内、または肝内への投与のための組成物および製剤は、緩衝剤、希釈剤、および他の好適な添加剤、例えばこれらに限定されるものではないが、浸透促進剤、担体化合物、および他の薬学的に許容可能な担体または賦形剤などを含むことができる滅菌水溶液を含むことができる。
【0599】
本開示の医薬組成物は、これに限定されるものではないが、溶液、エマルション、およびリポソームを含有する製剤を含む。これら組成物は、予め形成された液体、自己乳化型固体、および自己乳化型半固体を含むがこれらに限定されない様々な構成要素から生成することができる。特に有用な製剤は、SGLT2関連疾患または障害を治療する場合において脳を標的とするものを含む。
【0600】
単位剤形において便利にもたらされ得る本開示の医薬製剤は、製薬産業において周知の従来技術に従って調製することができる。こうした技術としては、活性成分を医薬担体または賦形剤と会合させる工程を含む。概して、製剤は、活性成分を液体担体または微粉化された固体担体またはその両方と均一にかつ密接に混合し、次いで、必要であれば、生成物を成形することによって調製される。
【0601】
本開示の組成物は、例えば、これらに限定されるものではないが、錠剤、カプセル剤、ゲルカプセル剤、液体シロップ剤、軟質ゲル剤、坐剤、および浣腸剤などの多くの可能な剤形のいずれかへと製剤化することができる。本開示の組成物は、水性媒体、非水性媒体、または混合媒体中の懸濁剤として製剤化することもできる。水性懸濁剤は、懸濁剤の粘度を増加させる物質を、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどをさらに含有することができる。懸濁剤はまた、安定剤を含有し得る。
【0602】
さらなる製剤
i.エマルション
本開示の組成物は、エマルションとして調製および製剤化することができる。エマルションは、典型的には、一方の液体が、通常直径0.1μμmを超える液滴の形態でのもう一方の液体中に分散した不均一系である(例えば、Ansel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams&Wilkins(8th ed.),New York,NY、Idson,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.199、Rosoff,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Volume 1,p.245、Block in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 2,p.335、Higuchi et al.,in Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1985,p.301を参照)。エマルションは、多くの場合、互いに密に混合し分散した二種の不混和性液相を含む二相系である。概して、エマルションは、油中水型(w/o)または水中油型(o/w)のいずれかのものであり得る。水相が、細かく分かれて微細な液滴として大量の油相中に分散している場合、その結果として得られる組成物を、油中水型(w/o)エマルションと呼ぶ。あるいは、油相が、細かく分かれて微細な液滴として大量の水相中に分散している場合、その結果として得られる組成物を、水中油型(o/w)エマルションと呼ぶ。エマルションは、分散相と、水相、油相、または別個の相としてのそれ自体のいずれかの中に溶液として存在し得る活性薬物とに加えて、追加的な成分を含有し得る。乳化剤、安定剤、色素、および抗酸化剤などの医薬賦形剤も、必要に応じてエマルション中に存在していてもよい。医薬エマルションは、例えば、油中水中油型(o/w/o)および水中油中水型(w/o/w)エマルションの場合などで、二相以上で構成される多相エマルションでもあってもよい。こうした複合剤形によれば、多くの場合、単純な二相エマルションでは与えられない一定の利点がもたらされる。w/o/wエマルションは、o/wエマルションの個々の油滴が小水滴を封入する多相エマルションにより構成される。同様に、o/w/oエマルションは、連続油相中で安定化した水の小滴中に封入された油滴の系によりもたらされる。
【0603】
エマルションは、熱力学的安定性がほとんどないかまたは全くないことが特徴である。多くの場合、エマルションの分散相または不連続相は、外部相または連続相中に良好に分散しており、乳化剤によって、または製剤の粘度によってこの形態で維持される。エマルション形態の軟膏基剤およびクリーム剤の場合と同様に、エマルションの相のいずれかは、半固体または固体であり得る。エマルションを安定化させる他の手段としては、該エマルションのいずれかの相に組み込まれ得る乳化剤の使用を必要とする。乳化剤は、以下の四つのカテゴリ、合成界面活性剤、天然乳化剤、吸収基剤、および微細分散固体、に大きく分類することができる(例えば、Ansel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams&Wilkins(8th ed.),New York,NY、Idson,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.199を参照)。
【0604】
表面活性剤としても知られる合成界面活性剤は、エマルションの剤形において広い適用可能性が見出されており、文献において検討されてきている(例えば、Ansel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams&Wilkins(8th ed.),New York,NY、Rieger,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.285、Idson,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,1988,volume 1,p.199を参照)。界面活性剤は、典型的には両親媒性であるので、親水性部分および疎水性部分を含む。界面活性剤の疎水性に対する親水性の比は、親水性/親油性バランス(HLB)と命名されており、製剤の調製において界面活性剤を分類および選択する際の有益なツールである。界面活性剤は、親水性基の性質に基づいて以下の異なるクラス、非イオン性、アニオン性、カチオン性、および両性に分類することができる(例えば、Ansel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams&Wilkins(8th ed.),New York,NY Rieger,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.285を参照)。
【0605】
エマルション製剤において使用される天然の乳化剤としては、ラノリン、蜜蝋、ホスファチド、レシチン、およびアカシアが挙げられる。吸収基剤は、親水特性を有するため、それらは水を吸収してw/oエマルションを形成し、それでもなおそれらの半固体の稠度を維持することができるものであり、例えば無水ラノリンおよび親水ワセリンなどである。微粒子となった固体も、とりわけ界面活性剤との併用で、および粘性調製物として、良好な乳化剤として使用されている。これらとしては、例えば重金属水酸化物などである極性無機固体、非膨潤性粘土、例えばベントナイト、アタパルジャイト、ヘクトライト、カオリン、モンモリロナイト、コロイド状ケイ酸アルミニウムおよびコロイド状ケイ酸アルミニウムマグネシウムなど、顔料、および非極性固体、例えば炭素またはトリステアリン酸グリセリルなどが挙げられる。
【0606】
非常に多様な非乳化材料もまた、エマルション製剤に含まれて、エマルションの特性に寄与する。これらとしては、脂肪、油、ワックス、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、湿潤剤、親水性コロイド、防腐剤、および抗酸化剤が挙げられる(Block,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.335;Idson,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.199)。
【0607】
親水性コロイドまたはハイドロコロイドとしては、天然ゴムおよび合成ポリマー、例えば多糖(例えば、アカシア、寒天、アルギン酸、カラゲナン、グアーガム、カラヤガム、およびトラガント)、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースおよびカルボキシプロピルセルロース)、および合成ポリマー(例えば、カルボマー、セルロースエステル、およびカルボキシビニルポリマー)が挙げられる。これらは水中で分散または膨潤して、コロイド状溶液を形成し、それが、分散相液滴の周囲に強力な界面膜を形成することと、外側相の粘度を増加させることとによって、エマルションを安定化する。
【0608】
エマルションは、多くの場合、微生物の増殖を容易に支援することができる多くの成分、例えば炭水化物、タンパク質、ステロールおよびホスファチドなどを含有し、これら製剤はしばしば、防腐剤を組み込んでいる。エマルション製剤に含まれる通常使用される防腐剤としては、メチルパラベン、プロピルパラベン、四級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、p-ヒドロキシ安息香酸のエステル、およびホウ酸が挙げられる。製剤の劣化を防止するために、通常、抗酸化剤もエマルション製剤に加えられる。使用される抗酸化剤は、トコフェロール、没食子酸アルキル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンなどであるフリーラジカル捕捉剤、またはアスコルビン酸およびメタ重亜硫酸ナトリウムなどである還元剤、ならびにクエン酸、酒石酸およびレシチンなどである酸化防止共力薬であり得る。
【0609】
経皮、経口、および非経口経路によるエマルション製剤の適用ならびにそれらの製造方法は、文献において検討されてきている(例えば、Ansel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams&Wilkins(8th ed.),New York,NY、Idson,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.199を参照)。経口送達用のエマルション製剤は、製剤化の容易さ、ならびに吸収およびバイオアベイラビリティの見地からの有効性を理由に、非常に広く使用されてきた(例えば、Ansel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams&Wilkins(8th ed.),New York,NY、Rosoff,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.245、Idson,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.199を参照)。o/wエマルションとして通常は経口投与されている材料の中には、鉱油系の緩下剤、脂溶性ビタミン、および高脂肪栄養製剤がある。
【0610】
ii.マイクロエマルション
本開示の一実施形態では、RNAi剤および核酸の組成物は、マイクロエマルションとして製剤化される。マイクロエマルションは、単一の、光学的等方性で熱力学的に安定した液体溶液である、水、油、および両親媒性物質の系として規定され得る(例えば、Ansel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams&Wilkins(8th ed.),New York,NY、Rosoff,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.245を参照)。典型的には、マイクロエマルションは、はじめに油を界面活性剤水溶液に分散させ、次いで十分な量の第四の成分、概して中鎖のアルコール、を加えて透明な系を形成することによって調製される系である。したがって、マイクロエマルションはまた、表面活性分子の界面膜によって安定化される、二つの不混和性液体の熱力学的に安定で等方的に透明な分散液として説明されてもいる(Leung and Shah,in:Controlled Release of Drugs:Polymers and Aggregate Systems,Rosoff,M.,Ed.,1989,VCH Publishers,New York,pages 185-215)。マイクロエマルションは、通常、油、水、界面活性剤、コサーファクタント、および電解質を含めた三~五の成分を組み合わせることによって調製される。マイクロエマルションが油中水(w/o)型または水中油(o/w)型のいずれであるかは、使用する油および界面活性剤の特性ならびに界面活性剤分子の極性の頭と炭化水素の尾との構造および幾何学的パッキングに依存する(Schott,in Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1985,p.271)。
【0611】
状態図を利用する現象学的アプローチが、広く研究されており、それはマイクロエマルションをどのようにして製剤化するかの包括的な知識を当業者に与えた(例えば、Ansel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Allen,LV.,Popovich NG.,and Ansel HC.,2004,Lippincott Williams&Wilkins(8th ed.),New York,NY、Rosoff,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.245、Block,in Pharmaceutical Dosage Forms,Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,volume 1,p.335を参照)。従来のエマルションと比較して、マイクロエマルションは、水不溶性薬物を、自発的に形成された熱力学的に安定な液滴の製剤中で可溶化するという利点を提供する。
【0612】
マイクロエマルションの調製において使用される界面活性剤としては、これらに限定されるものではないが、単独での、またはコサーファクタントと組み合わせた、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、Brij 96、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、テトラグリセロールモノラウレート(ML310)、テ トラグリセロールモノオレエート(MO310)、ヘキサグリセロールモノオレエート(PO310)、ヘキサグリセロールペンタオレエート(PO500)、デカグリセロールモノカプレート(decaglycerol monocaprate)(MCA750)、デカグリセロールモノオレエート(MO750)、デカグリセロールセキオリエート(decaglycerol sequioleate)(SO750)、デカグリセロールデカオレエート(DAO750)が挙げられる。コサーファクタントは、通常、エタノール、1-プロパノールおよび1-ブタノールなどである単鎖アルコールであり、界面活性剤フィルムに浸透して、その結果界面活性剤分子の間で生じる空間を理由に乱れた膜が生じることによって、界面の流動性を増大させる働きをする。しかしながらマイクロエマルションは、コサーファクタントを用いずに調製することもでき、アルコールを含まない自己乳化性マイクロエマルション系は、当技術分野で公知である。水相は、典型的には、これらに限定されるものではないが、水、薬物の水溶液、グリセリン、PEG300、PEG400、ポリグリセロール、プロピレングリコール、およびエチレングリコールの誘導体であり得る。油相は、これらに限定されるものではないが、Captex 300、Captex 355、Capmul MCM、脂肪酸エステル、中鎖(C8~C12)モノ、ジ、およびトリグリセリド、ポリオキシエチル化グリセリル脂肪酸エステル、脂肪アルコール、ポリグリコール化グリセリド、飽和ポリグリコール化C8~C10グリセリド、植物油およびシリコーン油が挙げられ得る。
【0613】
マイクロエマルションは、薬物可溶化および薬物吸収の向上の見地から、特に興味深い。脂質系マイクロエマルション(o/wおよびw/oいずれも)は、薬物の経口バイオアベイラビリティを向上するために提案されてきたものであり、ペプチドが挙げられる(例えば、米国特許第6,191,105号、第7,063,860号、第7,070,802号、第7,157,099号、Constantinides et al.,Pharmaceutical Research,1994,11,1385-1390、Ritschel,Meth.Find.Exp.Clin.Pharmacol.,1993,13,205を参照)。マイクロエマルションは、薬物の可溶化の向上、酵素加水分解からの薬物の保護、界面活性剤によって誘導される膜流動性および浸透性の変化に起因する薬物吸収の可能な増強、調製の容易さ、固体剤形よりも経口投与が容易であること、臨床効力の向上、および毒性の減少という利点をもたらす(例えば、米国特許第6,191,105号、第7,063,860号、第7,070,802号、第7,157,099号、Constantinides et al.,Pharmaceutical Research,1994,11,1385、Ho et al.,J.Pharm.Sci.,1996,85,138-143)。多くの場合、マイクロエマルションは、それらの成分が周囲温度において一緒にされたときに自然発生的に形成され得る。これは、熱的不安定性の薬物であるペプチドまたはRNAi剤を製剤化する場合に、特に有利であり得る。さらにマイクロエマルションは、美容および医薬的な用途の両方で、活性成分の経皮送達にとっても有効であるとされている。本開示のマイクロエマルション組成物および製剤は、胃腸管からのRNAi剤および核酸の全身吸収の増加を促進し、ならびにRNAi剤および核酸の局所的な細胞取り込みの向上することとなることが予想される。
【0614】
本開示のマイクロエマルションは、製剤の性質を向上させるため、および本開示のRNAi剤および核酸の吸収を高めるために、追加の成分および添加剤、例えばモノステアリン酸ソルビタン(Grill 3)、ラブラソール(Labrasol)、および浸透 促進剤なども含有することができる。本開示のマイクロエマルションにおいて使用される浸透促進剤は、五つの広いカテゴリ、界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート化剤、および非キレート化非界面活性剤のうちの一つに属するとして分類することができる(Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,p.92)。これらクラスのそれぞれは、上記で説明している。
【0615】
iii.マイクロ粒子
本開示のRNAi剤は、粒子に、例えば、マイクロ粒子などに組み込まれ得る。マイクロ粒子は、噴霧乾燥によって製造することができるが、凍結乾燥、蒸発、流動床乾燥、真空乾燥、またはこれらの技術の組合せなどの他の方法によっても製造され得る。
【0616】
iv.浸透促進剤
一実施形態では、本開示は、動物の皮膚への、核酸、特にRNAi剤の効率的な送達を実施するために、様々な浸透促進剤を採用する。大部分の薬物は、イオン化形態および非イオン化形態の両方で溶液中に存在する。しかしながら、通常、脂溶性または親油性の薬剤のみが、細胞膜を容易に横断する。横断しようとする膜が、浸透促進剤で処理されていれば、非親油性薬剤であっても細胞膜を横断することができることが分かっている。浸透促進剤はまた、非親油性薬剤が細胞膜を横断して拡散するのを補助することに加えて、親油性薬剤の透過性も高める。
【0617】
浸透促進剤は、五つの広いカテゴリ、すなわち、界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート化剤、および非キレート化非界面活性剤、のうちの一つに属するものとして分類することができる(例えば、Malmsten,M.Surfactants and polymers in drug delivery,Informa Health Care,New York,NY,2002、Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,p.92を参照)。浸透促進剤の上述のクラスのそれぞれについては、以下においてより詳細に説明される。
【0618】
界面活性剤(または「表面活性剤」」は、水溶液中に溶解されたとき、溶液の表面張力または水溶液と別の液体との間の界面張力を減少させ、結果として、粘膜を通過するRNAi剤の吸収を高める化学物質である。胆汁酸塩および脂肪酸に加えて、これら浸透促進剤としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、およびポリオキシエチレン-20-セチルエーテル(例えば、Malmsten,M.Surfactants and polymers in drug delivery,Informa Health Care,New York,NY,2002、Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,p.92を参照)、および過フルオロ化合物エマルション、例えばFC-43などTakahashi et al.,J.Pharm.Pharmacol.,1988,40,252)、が挙げられる。
【0619】
浸透促進剤として作用する種々の脂肪酸およびそれらの誘導体としては、例えばオレイン酸、ラウリン酸、カプリン酸(N-デカン酸)、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプリン酸、トリカプリン酸、モノオレイン(1-モノオレオイル-rac-グリセリン)、ジラウリン、カプリル酸、アラキドン酸、1-モノカプリン酸グリセリン、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン、アシルカルニチン、アシルコリン、そのC1~20アルキルエステル(例えば、メチル、イソプロピル、およびt-ブチル)、およびそのモノ-グリセリドおよびジ-グリセリド(すなわち、オレイン酸塩、ラウホスフェート、カプホスフェート、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアホスフェート、リノール酸塩など)が挙げられる(例えば、Touitou,E.,et al.Enhancement in Drug Delivery,CRC Press,Danvers,MA,2006、Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,p.92、Muranishi,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1990,7,1-33、El Hariri et al.,J.Pharm.Pharmacol.,1992,44,651-654を参照)。
【0620】
胆汁の生理的役割としては、脂質および脂溶性ビタミンの分散および吸収の促進が挙げ られる(例えば、Malmsten,M.Surfactants and polymers in drug delivery,Informa Health Care,New York,NY,2002;Brunton,Chapter 38 in:Goodman&Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,9th Ed.,Hardman et al.Eds.,McGraw-Hill,New York,1996,pp.934-935を参照)。様々な天然の胆汁酸塩、およびそれら の合成誘導体が、浸透促進剤としての役割を果たす。したがって用語「胆汁酸塩」は、胆汁の天然に存在する成分のいずれか、ならびにそれらの合成誘導体のいずれかを包含する。適切な胆汁酸塩としては、例えばコール酸(またはその薬学的に許容可能なナトリウム塩、コール酸ナトリウム)、デヒドロコール酸(デヒドロコール酸ナトリウム)、デオキシコール酸(デオキシコール酸ナトリウム)、グルコール酸(glucholic acid)(グルコール酸ナトリウム)、グリコール酸(glycholic acid)(グリココール酸ナトリウム)、グリコデオキシコール酸(グリコデオキシコール酸ナトリウム)、タウロコール酸(タウロコール酸ナトリウム)、タウロデオキシコール酸(タウロデオキシコール酸ナトリウム)、ケノデオキシコール酸(ケノデオキシコール酸ナトリウム)、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、タウロ-24,25-ジヒドロ-フシジン酸ナトリウム(STDHF)、グリコジヒドロフシジン酸ナトリウムおよびポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル(POE)(例えば、Malmsten,M.Surfactants and polymers in drug delivery,Informa Health Care,New York,NY,2002、Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,page 92、Swinyard,Chapter 39 In:Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,Gennaro,ed.,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1990,pages 782-783、Muranishi,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1990,7,1-33、Yamamoto et al.,J.Pharm.Exp.Ther.,1992,263,25、Yamashita et al.,J.Pharm.Sci.,1990,79,579-583を参照)が挙げられる。
【0621】
キレート化剤は、本開示に関連して使用する場合、金属イオンとの複合体を形成することによって溶液から金属イオンを除去し、結果として粘膜を通るRNAi剤の吸収を高めるものである化合物として定義され得る。本開示における浸透促進剤としての使用に関 して、ほとんどの特徴的なDNAヌクレアーゼは、触媒作用のために二価金属イオンを必 要とし、結果としてキレート化剤によって阻害されるため、キレート化剤は、DNASe阻害剤としても機能するさらなる利点を有する(Jarrett,J.Chromatogr.,1993,618,315-339)。好適なキレート化剤としては、これらに限定されるものではないが、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)、クエン酸、サリチル酸塩(例えば、サリチル酸ナトリウム、5-メトキシサリチレートおよびホモバニホスフェート(homovanilate))、コラーゲンのN-アシル誘導体、ベータ-ジケトンのラウレス-9およびN-アミノアシル誘導体(エナミン)が挙げられる(例えば、Katdare,A.et al.,Excipient development for pharmaceutical,biotechnology,and drug delivery,CRC Press,Danvers,MA,2006、Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,page 92、Muranishi,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1990,7,1-33、Buur et al.,J.Control Rel.,1990,14,43-51を参照)。
【0622】
本明細書で使用する場合、非キレート化の非界面活性剤である浸透促進剤は、キレート剤としてまたは界面活性剤として有意でない活性を示すが、それでもなお消化器粘膜を介したRNAi剤の吸収を増強する化合物として定義され得る(例えば、Muranishi,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1990,7,1-33を参照)。この浸透促進剤の分類は、例えば不飽和環状尿素、1-アルキル-および1-アルケニルアザシクロ-アルカノン誘導体(Lee et al.,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,1991,page 92)、ならびに非ステロイド性抗炎症剤、例えばジクロフェナクナトリウム、インドメタシン、およびフェニルブタゾンなど(Yamashita et al.,J.Pharm.Pharmacol.,1987,39,621-626)が挙げられる。
【0623】
細胞レベルでのRNAi剤の取り込みを増強する薬剤も、本開示の医薬組成物および他の組成物に加えることができる。例えば、カチオン性脂質、例えばリポフェクチンなど(Junichiら、米国特許第5,705,188号)、カチオン性グリセロール誘導体、およびポリカチオン性分子、例えばポリリジンなど(国際公開第97/30731号)も、dsRNAの細胞取り込みを増強することが知られている。
【0624】
投与された核酸の浸透を高めるために、他の薬剤が利用され得、例えばグリコール、例えばエチレングリコールおよびプロピレングリコールなど、ピロール、例えば2-ピロールなど、アゾン、およびテルペン、例えばリモネンおよびメントンなどが挙げられる。
【0625】
vi. 賦形剤
担体化合物とは対照的に、「医薬担体」または「賦形剤」は、一つまたは複数の核酸を動物に送達するための、薬学的に許容可能な溶媒、懸濁剤またはその他の薬理学的に不活性なビヒクルである。賦形剤は、液体または固体であり得、また核酸および所定の医薬組成物を他の成分と併用される場合に、所望の体積、稠度などをもたらするように計画された投与の様式を念頭において選択される。典型的な医薬担体としては、これらに限定されるものではないが、結合剤(例えば、予めゼラチン化されたトウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、またはヒドロキシプロピルメチルセルロースなど);充填剤(例えば、ラクトースおよび他の糖、微結晶性セルロース、ペクチン、ゼラチン、硫酸カルシウム、エチルセルロース、ポリアクリレート、またはリン酸水素カルシウムなど);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸、金属ステアリン酸塩、硬化植物油、コーンスターチ、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど);崩壊剤(例えば、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウムなど)、および湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなど)が挙げられる。
【0626】
核酸と有害に反応しない、経口投与にとって好適な薬学的に許容可能な有機または無機の賦形剤も、本開示の組成物を製剤化するために使用することができる。好適な薬学的に許容可能な担体としては、これらに限定されるものではないが、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0627】
核酸の局所投与用の製剤は、滅菌および非滅菌水溶液、アルコールなどの通常の溶媒中の非水溶液、または液体もしくは固体油基剤に中の核酸の溶液を含むことができる。溶液は、緩衝剤、希釈剤、および他の好適な添加剤も含有することができる。核酸と有害に反応しない、経口投与にとって好適な薬学的に許容可能な有機または無機の賦形剤を、使用することができる。
【0628】
好適な薬学的に許容可能な賦形剤としては、これらに限定されるものではないが、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0629】
vii.他の成分
本開示の組成物は、医薬組成物中に従来見られる他の補助成分を、当技術分野において確立されたそれらの使用レベルでさらに含有することができる。したがって、例えば、組成物は、追加の適合性の、薬学的に活性な材料、例えば止痒剤、収斂剤、局部麻酔薬、もしくは抗炎症剤などを含有することができ、または本開示の組成物の様々な剤形を物理的に製剤化する際に有用な追加の材料、例えば色素、香味剤、防腐剤、酸化防止剤、乳白剤、増粘剤、および安定剤などを含有することができる。ただし、そのような材料は、添加したときに本開示の組成物の成分の生物活性を過度に妨害すべきではない。製剤は、滅菌され、また所望により、例えば潤滑剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与えるための塩、緩衝剤、着色剤、香味剤、または芳香物質などである、製剤の核酸と有害に相互作用しない補助剤と混合され得る。
【0630】
水性懸濁剤は、懸濁剤の粘度を増加する物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランなどを含有することができる。懸濁剤はまた、安定剤を含有し得る。
【0631】
一部の実施形態では、本開示において取り上げられる医薬組成物は、(a)一つまたは複数のRNAi剤、および(b)非RNAi機序で機能し、SGLT2関連障害を治療する際に有用である一つまたは複数の薬剤を含む。こうした薬剤の例としては、真性糖尿病治療剤、糖尿病性合併症治療剤、心血管疾患治療剤、抗高脂血症剤、降圧剤または降圧剤、抗肥満剤、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)治療剤、化学療法剤、免疫療法剤、免疫抑制剤、および前述のいずれかの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0632】
こうした化合物の毒性および治療有効性は、例えば、LD50(集団の50%に致死的である用量)およびED50(集団の50%に治療的有効である用量)を決定するために、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性と治療効果との間の用量比は、治療指数となり、LD50/ED50の比として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。
【0633】
細胞培養アッセイおよび動物試験から得たデータは、ヒトにおける使用のためにある範囲の投薬量を製剤化する際に使用することができる。本開示における本明細書において取り上げる組成物の投与量は、概して、わずかな毒性かまたは毒性が全くないED50である循環濃度の範囲内である。投与量は、用いる剤形および利用する投与経路に応じて、この範囲内で変動し得る。本開示において取り上げる方法で使用する任意の化合物に対して、最初に、細胞培養アッセイから治療有効用量を見積もることができる。細胞培養において決定されたIC50(すなわち、症状の最大半量の阻害を達成する被験化合物の濃度)を含む、化合物、または適切な場合には、標的配列のポリペプチド産物の循環血漿濃度範囲を達成する(例えば、ポリペプチドの濃度減少を達成する)ように、ある用量を動物モデルにおいて製剤化することができる。こうした情報は、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。血漿中のレベルは、例えば高速液体クロマトグラフィーによって、測定することができる。
【0634】
本開示において取り上げるRNAi剤は、上記において説明したようなそれらの投与に加えて、ヌクレオチドリピートの発現によって媒介される病理学的プロセスの治療において有効な他の公知の薬物と併用して投与することもできる。いずれにしても、投与する医師は、当技術分野で公知であるかまたは本明細書において記載した、有効性の標準尺度を使用して観察された結果に基づいて、RNAi剤投与の量およびタイミングを調節することができる。
【0635】
VII.SGLT2発現を阻害する方法
本開示はまた、細胞内においてSGLT2遺伝子の発現を阻害する方法を提供する。この方法は、細胞を、細胞内でSGLT2細胞の発現を阻害するのに有効である量のRNAi剤と、例えば、二本鎖RNAi剤と接触させ、それによって細胞においてSGLT2の発現を阻害することを含む。本開示の特定の実施形態では、SGLT2細胞の発現は肝臓細胞(例えば、肝細胞)で阻害される。本開示の特定の実施形態では、SGLT2細胞の発現は腎臓または腎細胞で阻害される。
【0636】
RNAi剤と、例えば、二本鎖RNAi剤と、細胞を接触させることは、インビトロまたはインビボで行うことができる。細胞をインビボでRNAi剤と接触させることは、対象内の、例えば、ヒト対象内の細胞または細胞の群を、RNAi剤と接触させることを含む。インビトロおよびインビボで細胞を接触させる方法を組み合せることも可能である。
【0637】
細胞を接触させることは、上記に記載したように直接的であっても間接的であってもよい。さらに、細胞を接触させることは、本明細書に記載する、または当技術分野で公知の任意のリガンドを含む標的化リガンドを介して達成できる。一部の実施形態では、標的化リガンドは、親油性部分、例えばC16、および/もしくは炭水化物部分、例えばGalNAcリガンドであるか、またはRNAi剤を目的の部位に向ける任意の他のリガンドである。特定の実施形態では、リガンドはコレステロール部分ではない。特定の実施形態では、RNAi剤は、標的化リガンドを含まない。
【0638】
「阻害すること」という用語は、本明細書において使用する場合、「低減すること」、「サイレンシングすること」、「下方制御すること」、「抑制すること」および他の同様の用語と同義的に使用され、阻害の任意のレベルを含む。特定の実施形態では、例えば、本開示のRNAi剤の阻害のレベルは、細胞培養条件で評価され得、例えば、細胞培養物中の細胞が、10nm以下、1nm以下などの近傍の濃度でのリポフェクタミン(商標)媒介性トランスフェクションによってトランスフェクトされる細胞培養条件である。所与のRNAi剤のノックダウンは、細胞培養物中で前処置されたレベルと細胞培養物中で後処置されたレベルとの比較によって決定でき、随意に、スクランブルされたまたは他の形態の対照RNAi剤を用いて並行して処理した細胞と比較してもよい。例えば、細胞培養物中での50%以上のノックダウンは、それによって「阻害すること」または「低減すること」、「下方制御すること」または「抑制すること」などが生じたことを示すものとして特定され得る。標的mRNAまたはコードされるタンパク質レベル(および従って、本開示のRNAi剤によって引き起こされる「阻害すること」の程度など)の評価はまた、当技術分野で述べられているような適切に制御された条件下で、本開示のRNAi剤のためのインビボの系で評価され得るということが明示的に意図される。
【0639】
本明細書において使用する場合、「SGLT2遺伝子の発現を阻害すること」または「SGLT2の発現を阻害すること」という語句は、任意のPRNP遺伝子(例えば、マウスSGLT2遺伝子、ラットSGLT2遺伝子、サルSGLT2遺伝子またはヒトSGLT2遺伝子など)ならびにSGLT2タンパク質をコードするSGLT2遺伝子のバリアントまたは変異体の発現を阻害することを含む。したがって、SGLT2遺伝子は、遺伝子操作された細胞、細胞の群または生物の文脈で、野生型SGLT2遺伝子、変異SGLT2遺伝子、または遺伝子導入SGLT2遺伝子であり得る。
【0640】
「SGLT2遺伝子の発現を阻害すること」は、任意のレベルでのSGLT2遺伝子の阻害、例えば、SGLT2遺伝子の発現の少なくとも部分的抑制、例えば少なくとも20%の阻害を含む。特定の実施形態では、阻害は、少なくとも30%、少なくとも40%、なくとも50%、少なくとも約60%、少なくとも70%、少なくとも約80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%なされるか、またはアッセイ方法の検出のレベルを下回るまでなされる。特定の方法では、阻害は、実施例1に提供されるルシフェラーゼアッセイを使用して、10nMの濃度のsiRNAで測定される。
【0641】
SGLT2遺伝子の発現は、SGLT2遺伝子発現と関連する任意の変数のレベル、例えばSGLT2 mRNAレベルもしくはSGLT2タンパク質レベルなどに基づいて評価され得る。
【0642】
阻害は、対照レベルと比較した、これら変数のうち一つまたは複数の絶対レベルまたは相対レベルの低下によって評価され得る。対照レベルは、当技術分野で利用される任意の種類の対照レベルであり得、例えば、投与前ベースラインレベル、または未処理であるかもしくは対照(例えば、緩衝剤のみの対照または不活性薬剤対照など)で処理された同様の対象、細胞もしくは試料から決定されるレベルであり得る。
【0643】
本開示の方法の一部の実施形態では、SGLT2遺伝子の発現は、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、または95%だけ阻害されるか、またはアッセイの検出レベルを下回るまで阻害される。特定の実施形態では、方法は、例えば、SGLT2遺伝子の発現を低減する薬剤で対象を治療した後で臨床的に関連する転帰によって実証されるような、SGLT2の発現の臨床的に関連する阻害を含む。
【0644】
SGLT2遺伝子の発現の阻害は、第一の細胞または細胞の群と実質的に同一であるが、そのように処理されていない第二の細胞または細胞の群(RNAi剤で処理されていない、または目的のゲノムを標的とするRNAi剤で処理されていない対照細胞)と比較して、SGLT2遺伝子が転写され、SGLT2遺伝子の発現が阻害されるように処理された(例えば、細胞を本開示のRNAi剤と接触させることによって、または本開示のRNAi剤を、細胞が存在しているもしくは存在していた対象に投与することによって)第一の細胞または細胞の群(このような細胞は、例えば、対象に由来する試料中に存在し得る)によって発現されるmRNAの量の低減によって現れ得る。阻害の程度は、以下によって表すことができる。
【数2】
【0645】
他の実施形態では、SGLT2遺伝子の発現の阻害は、SGLT2遺伝子発現、例えば、SGLT2タンパク質発現に機能的に関連付けられるパラメータの減少の観点で評価され得る。SGLT2遺伝子サイレンシングは、発現構築物からの内因性または異種のいずれかのSGLT2遺伝子を発現する任意の細胞において、当技術分野で公知の任意のアッセイによって決定され得る。
【0646】
SGLT2タンパク質の発現の阻害は、細胞または細胞の群によって発現されるSGLT2タンパク質のレベル(例えば、対象に由来する試料中で発現されるタンパク質のレベル)の減少によって現れ得る。上記において説明するように、ゲノムの抑制を評価する場合、処置された細胞または細胞の群におけるタンパク質発現レベルの阻害は、対照細胞または細胞の群におけるタンパク質のレベルの百分率として同様に表現され得る。
【0647】
SGLT2遺伝子の発現の阻害を評価するために使用できる対照細胞または細胞の群には、本開示のRNAi剤とまだ接触していない細胞または細胞の群が含まれる。例えば、対照細胞または細胞の群は、RNAi剤で対象を処理する前の個々の対象(例えば、ヒトまたは動物対象)から得られ得る。
【0648】
細胞または細胞の群によって発現されるSGLT2mRNAのレベルは、RNA発現を評価するための当技術分野で公知の任意の方法を使用して決定できる。一実施形態では、試料中のSGLT2の発現のレベルは、転写されたポリヌクレオチド、またはその一部、例えばSGLT2遺伝子のmRNAを検出することによって決定される。RNAは、例えば酸性フェノール/グアニジンイソチオシアネート抽出物(RNAzol B;Biogenesis)、RNeasy(商標)RNA調製キット(Qiagen(登録商標))またはPAXgene(PreAnalytix,Switzerland)を使用することを含む、RNA抽出技術を使用して細胞から抽出することができる。リボ核酸ハイブリダイゼーションを利用する典型的なアッセイ形式としては、核ラン-オンアッセイ、RT-PCR、リボヌクレアーゼプロテクションアッセイ、ノーザンブロッティング、インサイチュハイブリダイゼーションおよびマイクロアレイ分析が挙げられる。循環SGLT2mRNAは、国際公開第2012/177906号において記載される方法を使用して検出することができ、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0649】
一部の実施形態では、SGLT2の発現のレベルは、核酸プローブを使用して決定される。「プローブ」という用語は、本明細書において使用する場合、特定のSGLT2核酸またはタンパク質もしくはその断片に選択的に結合可能である任意の分子を指す。プローブは、当業者によって合成できる、または適切な生物学的調製物から誘導できる。プローブは、標識されるように特異的に設計してもよい。プローブとして利用できる分子の例としては、これに限定されないが、RNA、DNA、タンパク質、抗体および有機分子が挙げられる。
【0650】
単離されたmRNAは、これに限定されるものではないが、サザン分析またはノーザン分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析およびプローブアレイを含むハイブリダイゼーションアッセイまたは増幅アッセイにおいて使用することができる。RNAレベルを決定する一つの方法は、単離されたRNAを、SGLT2RNAとハイブリダイズできる核酸分子(プローブ)と接触させることを含む。一実施形態では、例えば、単離されたRNAをアガロースゲルにかけてRNAをゲルから膜へ、例えばニトロセルロースに移行させることによって、RNAを固体表面上に固定化し、プローブと接触させる。代替的な実施形態では、例えば、Affymetrix(登録商標)遺伝子チップアレイにおいて、プローブを固体表面に固定化して、RNAをプローブと接触させる。当業者ならば、公知のRNA検出方法を、SGLT2のmRNAレベルを決定する際に使用するために容易に適応させることができる。
【0651】
試料中のSGLT2の発現レベルを決定する代替的な方法は、例えばRT-PCR(Mullisによる1987年の米国特許第4,683,202号に記載の実験実施形態)、リガーゼ連鎖反応(Barany(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:189-193)、自己持続的配列複製(Guatelli et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874-1878)、転写増幅システム(Kwoh et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173-1177)、Q-ベータレプリカーゼ(Lizardi et al.(1988)Bio/Technology6:1197)、ローリングサークル複製(Lizardi et al.,米国特許第5,854,033号)、または任意の他の核酸増幅法などの、試料中の例えばmRNAなどの核酸増幅または逆転写酵素(cDNAを調製するため)のプロセスを伴い、その後に当業者に周知の技術を使用した増幅分子の検出を行う。これら検出スキームは、特に、かかる核酸分子が非常に少ない数で存在する場合に核酸分子の検出のために有用である。本開示の特定の態様では、SGLT2の発現のレベルは、定量蛍光発生的RT-PCR(すなわち、TaqMan(商標)システム)によって、Dual-Glo(登録商標)ルシフェラーゼアッセイによって、またはSGLT2発現もしくはmRNAレベルの測定のための他の技術分野によって認識された方法によって決定される。
【0652】
SGLT2 mRNAの発現レベルは、メンブレンブロット(例えば、ノーザン、サザン、ドットなどといったハイブリダイゼーション分析において使用されるような)またはマイクロウェル、試料チューブ、ゲル、ビーズまたは繊維(または結合している核酸を含む任意の固相支持体)を使用して観察され得る。米国特許第5,770,722号、第5,874,219号、第5,744,305号、第5,677,195号、および第5,445,934号を参照されたく、これらは参照によって本明細書に組み込まれる。SGLT2発現レベルの決定はまた、溶液中で核酸プローブを使用することを含み得る。
【0653】
一部の実施形態では、RNA発現のレベルは、分枝DNA(bDNA)アッセイまたはリアルタイムPCR(qPCR)を使用して評価される。このPCR方法の使用は、本明細書において示される実施例において記載され、例示されている。このような方法はまた、SGLT2核酸の検出のために使用できる。
【0654】
SGLT2タンパク質の発現のレベルは、タンパク質レベルの測定のための当技術分野で公知の任意の方法を使用して決定され得る。こうした方法としては、例えば、電気泳動、キャピラリー電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、超拡散(hyperdiffusion)クロマトグラフィー、流体またはゲル沈降反応、吸収分光法、比色分析、分光学的定量法、フローサイトメトリー、免疫拡散法(一重または二重)、免疫電気泳動、ウエスタンブロッティング、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、免疫蛍光アッセイ、電気化学発光アッセイなどが挙げられる。このようなアッセイはまた、SGLT2タンパク質の存在または複製を示すタンパク質の検出のために使用できる。
【0655】
一部の実施形態では、SGLT2関連疾患の治療における本開示の方法の有効性は、SGLT2 mRNAレベルの低下によって(例えば、血中SGLT2レベルの評価によって、または別の方法によって)評価される。
【0656】
一部の実施形態では、SGLT2関連疾患の治療における本開示の方法の有効性は、SGLT2 mRNAレベルの低下によって(例えば、SGLT2レベルについての肝臓または腎臓試料の評価によって、生検または別の方法によって)評価される。
【0657】
本開示の方法の一部の実施形態では、RNAi剤は、RNAi剤が、対象内の特定の部位に送達されるように対象に投与される。SGLT2の発現の阻害は、対象内の特定の部位に、例えば、肝臓または腎臓細胞に由来する試料中のSGLT2 mRNAまたはSGLT2タンパク質のレベルまたはレベルの変化の測定を使用して評価され得る。特定の実施形態では、方法は、例えば、SGLT2の発現を低減する薬剤で対象を治療した後で臨床的に関連する転帰によって実証されるような、SGLT2の発現の臨床的に関連する阻害を含む。
【0658】
本明細書において使用する場合、分析物のレベルを検出することまたは決定することという用語は、物質が、例えば、タンパク質、RNAが存在するか否かを決定する工程を実施することを意味すると理解される。本明細書において使用する場合、検出するまたは決定する方法は、使用する方法の検出のレベルを下回る分析物のレベルの検出または決定を含む。
【0659】
VIII.SGLT2関連疾患を治療または予防する方法
本開示はまた、細胞においてSGLT2発現を低減または阻害するために本開示のRNAi剤または本開示のRNAi剤を含有する組成物を使用する方法を提供する。本方法は、細胞を本開示のdsRNAと接触させることおよび細胞をSGLT2遺伝子のmRNA転写物の分解を得るのに十分な時間の間維持し、それによって、細胞においてSGLT2遺伝子の発現を阻害することを含む。遺伝子発現の低減は、当技術分野で公知の任意の方法によって評価され得る。例えばSGLT2の発現の低減は、当業者にとってごく普通の方法、例えば、ノーザンブロッティング、qRT-PCRを使用してSGLT2遺伝子のmRNA発現レベルを決定することによって決定されてもよく、当業者にとってごく普通の方法、例えばウエスタンブロッティング、免疫学的技術を使用してSGLT2タンパク質のタンパク質レベルを決定することによって決定されてもよい。
【0660】
本開示の方法では、細胞をインビトロまたはインビボで接触させることができ、すなわち、細胞は、対象内にあり得る。
【0661】
本開示の方法を使用する治療に適した細胞は、SGLT2遺伝子を発現する任意の細胞であり得る。本開示の方法における使用に適した細胞は、哺乳類細胞、例えば、霊長類細胞(ヒト細胞または非ヒト霊長類細胞、例えば、サル細胞またはチンパンジー細胞など)、非霊長類細胞(ラット細胞またはマウス細胞などであり得る。一実施形態では、細胞は、ヒト細胞、例えば、ヒト肝臓細胞またはヒト腎臓細胞である。
【0662】
SGLT2発現は、細胞において、少なくとも約30、40、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99または約100%、すなわち、検出レベル未満に、阻害される。特定の実施形態では、SGLT2の発現は、少なくとも50%阻害される。
【0663】
本開示のインビボ法は、対象に、RNAi剤を含有する組成物を投与することを含むことができ、RNAi剤は、治療されるべき対象のSGLT2遺伝子のRNA転写物の少なくとも一部と相補的であるヌクレオチド配列を含む。治療しようとする生物が哺乳動物、例えばヒトである場合には、組成物は、これに限定されるものではないが、経口、腹腔内、または頭蓋内(例えば、脳室内、実質内および髄腔内)、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、気道(エアロゾル)、経鼻、直腸および局所(頬および舌下を含む)の投与を含む非経口経路を含む、当技術分野で公知の任意の手段によって投与され得る。特定の実施形態では、組成物は、静脈内への注入または注射によって投与される。特定の実施形態では、組成物は、皮下注射によって投与される。特定の実施形態では、組成物は、経口投与される。特定の実施形態では、組成物は、肺送達、例えば、経口吸入または鼻腔内送達によって投与される。
【0664】
一部の実施形態では、投与は、蓄積注射による。蓄積注射は、長期的な時間にわたって一貫した態様でRNAi剤を放出し得る。したがって、蓄積注射は、所望の効果、例えば所望のSGLT2阻害または治療的もしくは予防的な効果を得るために必要とされる投薬の回数を減らし得る。蓄積注射はまた、より一貫した血清濃度を提供することもできる。蓄積注射は、皮下注射または筋肉内注射を含み得る。特定の実施形態では、蓄積注射は、皮下注射である。
【0665】
一実施形態では、二本鎖RNAi剤は、肺系投与、例えば、鼻腔内投与、または経口吸入投与によって投与される。肺系投与は、シリンジ、ドロッパ、霧化、または装置、例えば受動的呼吸駆動または能動的動力駆動の単回/複数回用量乾燥粉末吸入器(DPI)装置の使用を介してもよい。
【0666】
投与様式は、局所的な治療または全身的な治療のいずれが望まれるかに応じて、また処理しようとする面積に基づいて選択され得る。投与の経路および部位は、ターゲティングを増強するように選択され得る。
【0667】
一態様では、本開示はまた、哺乳動物においてSGLT2遺伝子の発現を阻害する方法を提供する。方法は、哺乳動物に、哺乳動物の細胞内においてSGLT2遺伝子を標的とするdsRNAを含む組成物を投与すること、および哺乳動物をSGLT2遺伝子のRNA転写物の分解を得るのに十分な時間の間維持し、それによって、細胞内においてSGLT2遺伝子の発現を阻害することを含む。ゲノム発現の低減は、当技術分野で公知の任意の方法によって、また本明細書において記載される方法、例えば、qRT-PCRによって評価できる。タンパク質産生の低減は、当技術分野で公知の任意の方法によって、また本明細書において記載される方法、例えば、ELISAによって評価できる。
【0668】
本開示は、それを必要とする対象の治療方法をさらに提供する。本開示の治療方法は、対象に、例えば、SGLT2発現の阻害から恩恵を受けることとなる対象に、本開示のRNAi剤を、SGLT2遺伝子を標的とするRNAi剤またはSGLT2遺伝子を標的とするRNAi剤を含む医薬組成物の治療有効量で投与することを含む。
【0669】
さらに、本開示は、SGLT2関連疾患または障害、例えば、痛風またはI型またはII型糖尿病などの糖尿病の進行を予防、治療、または阻害する方法を提供する。
【0670】
方法は、対象に、本明細書において提供されるRNAi剤の、例えば、dsRNA剤または本明細書において提供する医薬組成物のいずれかの治療有効量を投与し、それによって対象においてSGLT2関連疾患または障害の進行を予防、治療または阻害することを含む。
【0671】
本開示のRNAi剤は、「遊離RNAi剤」として投与され得る。フリーのRNAi剤は、医薬組成物の不在下で投与される。そのままのRNAi剤は、適した緩衝溶液中にある場合がある。該緩衝溶液は、酢酸塩、クエン酸塩、プロラミン、炭酸塩、またはリン酸塩、またはそれらのいずれかの組合せを含み得る。一実施形態では、緩衝溶液は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。RNAi剤を含有する緩衝溶液のpHおよび浸透圧は、対象への投与に好適であるように調整できる。特定の実施形態では、遊離RNAi剤は、水または生理食塩水中で製剤化されてもよい。
【0672】
あるいは、本開示のRNAi剤は、医薬組成物として、例えばdsRNAリポソーム製剤として投与され得る。
【0673】
SGLT2遺伝子発現の低減または阻害から利益を得るであろう対象は、SGLT2-関連疾患を有する対象であり、SGLT2関連疾患を発症するリスクがある対象である。
【0674】
一部の実施形態では、SGLT2関連疾患は、痛風である。他の実施形態では、SGLT2関連疾患は、代謝疾患である。一部の実施形態では、SGLT2関連疾患は、II型糖尿病などの糖尿病である。
【0675】
代謝性疾患の非限定的例としては、炭水化物の障害、例えば、糖尿病(I型およびII型糖尿病)、ガラクトース血症、遺伝性フルクトース不耐症、フルクトース1,6-ジホスファターゼ欠損症、グリコーゲン蓄積障害、先天性グリコシル化障害、インスリン抵抗性、インスリン不足、高インスリン血症、耐糖能障害(IGT)、異常なグリコーゲン代謝;アミノ酸代謝の障害、例えば、メープルシロップ尿疾患(MSUD)、またはホモシスチン尿症;有機酸代謝の障害、例えば、メチルマロン酸性尿症、3-メチルグルタコン酸性尿症-バース症候群、グルタル酸性尿症または2-ヒドロキシグルタル酸性尿症-DおよびL形態;脂肪酸ベータ酸化の障害、例えば、中鎖アシル-CoA脱水素酵素欠損症(MCAD)、長鎖3-lヒドロキシアシル-CoA脱水素酵素欠損症(LCHAD)、極長鎖アシル-CoA脱水素酵素欠損症(VLCAD)、脂質代謝の障害、例えば、GM1ガングリオシドーシス、テイ・サックス病、サンドホフ病、ファブリー病、ゴーシェ病、ニーマン・ピック病、クラッベ病、ムコリピドーシス、またはムコ多糖症;ミトコンドリア障害、例えば、ミトコンドリア心筋症;リー病;ミトコンドリア脳症、乳酸アシドーシス、および脳卒中様エピソード(MELAS);ラグドレッド線維を有するミオクローヌスてんかん(MERRF);神経障害、運動失調症、および網膜色素変性症(NARP);バース症候群;またはペルオキシソーム障害、例えば、ツェルヴェーガー症候群(脳肝腎症候群)、X連鎖副腎白質ジストロフィーまたはレフサム病、が挙げられる。
【0676】
本開示は、例えばSGLT2発現の低減もしくは阻害から恩恵を受けることとなる対象を、例えば、SGLT2関連障害を有する対象を治療するために、他の医薬または他の治療方法と、例えば、公知の医薬または公知の治療方法、例えば、これらの障害を治療するために現在使用されているものなどと組み合わせた、RNAi剤またはその医薬組成物の使用のための方法をさらに提供する。例えば、特定の実施形態では、SGLT2を標的とするRNAi剤は、例えば本明細書において別の場所に記載されるような、またはそうでければ当技術分野で公知であるような、SGLT2関連障害の治療に有用な薬剤と組み合わせて投与される。例えば、SGLT2発現の低減から恩恵を受けることとなる対象を、例えば、SGLT2関連障害を有する対象を治療するのに適した追加の薬剤および治療は、SGLT2関連障害の症状を治療するために現在使用されている薬剤を含み得る。
【0677】
本発明に記載されるRNAi剤と併用して使用される追加の治療薬の例としては、以下に限定されないが、真性糖尿病治療剤、糖尿病性合併症治療剤、心血管疾患治療剤、抗高脂血症剤、降圧剤または降圧剤、抗肥満剤、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)治療剤、化学療法剤、免疫療法剤、免疫抑制剤、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、コルヒチン、またはコルチコステロイドなどが挙げられる。こうした併用療法は、有利なことに、投与された治療薬のより低い用量を利用し、それ故に様々な単剤療法に関連する起こり得る毒性または合併症を回避し得る。
【0678】
真性糖尿病を治療するための薬剤の例としては、インスリン製剤(例えば、ウシまたはブタの膵臓から抽出された動物インスリン製剤;微生物または方法を使用して遺伝子工学技術によって合成されたヒトインスリン製剤)、インスリン感受性促進剤、薬学的に許容可能な塩、水和物、またはその溶媒和物(例えば、ピオグリタゾン、トログリタゾン、ロシグリタゾン、ネトグリタゾン、バラグリタゾン、リボグリタゾン、テサグリタザル、ファルグリタザル、CLX-0921、R-483、NIP-221、NIP-223、DRF-2189、GW-7282TAK-559、T-131、RG-12525、LY-510929、LY-519818、BMS-298585、DRF-2725、GW-1536、GI-262570、KRP-297、TZD18(Merck)、DRF-2655など)、アルファ-グリコシダーゼ阻害剤(例えば、ボグリボース、アカルボース、ミグリトール、エミグレートなど)、ビグアニド(例えば、フェンホルミン、メトホルミン、ブホルミンなど)またはスルホニル尿素(例えば、トルブタミド、グリベンクラミド、グリクラジド、クロルプロパミド、トラザミド、アセトヘキサミド、グリクロピラミド、グリメピリドなど)ならびに他のインスリン分泌促進剤(例えば、レパグリニド、セナグリニド、ナテグリニド、ミチグリニド、GLP-1など)、アミリン作動薬(例えば、プラムリンチドなど)、ホスホチロシンホスファターゼ阻害剤(例えば、バナジン酸など)などが挙げられる。
【0679】
糖尿病性合併症を治療するための薬剤の例としては、以下に限定されないが、アルドーズ還元酵素阻害剤(例えば、トレスタット、エパレスタット、ゼナレスタット、ゾポルレスタット、ミナルレスタット、フィダレアタット(fidareatat)、SK-860、CT-112など)、神経栄養因子(例えば、NGF、NT-3、BDNFなど)、PKC阻害剤(例えば、LY-333531など)、糖化最終産物(AGE)阻害剤(例えば、ALT946、ピマジェジン、ピラドキサミン(pyradoxamine)、臭化フェナシルチアゾリウム(ALT766)など)、活性酸素クエンチ剤(例えば、チオクト酸またはその誘導体、フラボンを含むバイオフラボノイド、イソフラボン、フラボノン、プロシアニジン、アントシアニジン、ピクノジェノール、ルテイン、リコピン、ビタミンE、コエンザイムQなど)、脳血管拡張剤(例えば、チアプリド、メキシレテン(mexiletene)など)が挙げられる。
【0680】
抗高脂血症剤としては、例えば、コレステロール合成阻害剤であるスタチン系化合物(例えば、プラバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロスバスタチンなど)、トリグリセリド低下効果を有するスクアレン合成酵素阻害剤またはフィブラート化合物(例えば、フェノフィブラート、ゲムフィブロジル、ベザフィブラート、クロフィブラート、シンフィブラート(sinfibrate)、クリノフィブラートなど)、ナイアシン、PCSK9阻害剤、トリグリセリド低化剤またはコレステロール抑制剤が挙げられる。
【0681】
降圧剤には、例えば、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(例えば、カプトプリル、エナラプリル、デラプリル、ベナゼプリル、シラザプリル、エナラプリル、エナラプリラト、フォシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、トランドラプリルなど)またはアンジオテンシンII拮抗薬(例えば、ロサルタン、カンデサルタンシレキセチル、オルメサルタンメドキソミル、エプロサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、イルベサルタン、タソサルタン、ポミサルタン、リピサルタンフォラサルタンなど)またはカルシウムチャネル遮断薬(例えば、アムロジピン)またはアスピリンが含まれる。
【0682】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)治療剤としては、例えば、ウルソジオール、ピオグリタゾン、オルリスタット、ベタイン、ロシグリタゾンが挙げられる。
【0683】
抗肥満剤としては、例えば中心性抗肥満剤(例えば、デクスフェンフルラミン、フェンフルラミン、フェンテルミン、シブトラミン、アンフェプラモン、デキサンフェタミン、マジンドール、フェニルプロパノールアミン、クロベンゾレックスなど)、胃腸リパーゼ阻害剤(例えば、オルリスタットなど)、ベータ3-アドレナリン受容体アゴニスト(例えば、CL-316243、SR-58611-A、UL-TG-307、SB-226552、AJ-9677、BMS-196085など)、ペプチド系食欲抑制剤(例えば、レプチン、CNTFなど)、コレシストキニン作動薬(例えば、リンチトリプト、FPL-15849など)などが挙げられる。
【0684】
化学療法剤としては、例えば、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミドなど)、代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサート、5-フルオロウラシルなど)、抗癌抗生物質(例えば、マイトマイシン、アドリアマイシンなど)、植物由来抗癌剤(例えば、ビンクリスチン、ビンデシン、タキソールなど)、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシドなどが挙げられる。これらの物質の中でも、フルツロンおよびネオフルツロンなどの5-フルオロウラシル誘導体が好ましい。
【0685】
免疫療法剤としては、例えば、微生物または細菌成分(例えば、ムラミルジペプチド誘導体、ピシバニールなど)、免疫増強活性を有する多糖類(例えば、レンチナン、シゾフィラン、クレチンなど)、遺伝子操作技術によって得られるサイトカイン(例えば、インターフェロン、インターロイキン(IL)など)、コロニー刺激因子(例えば、顆粒球コロニー刺激因子、エリスロポエチンなど)などが挙げられる。一部の実施形態では、薬剤は、IL-1,IL-2,IL-12などである。
【0686】
免疫抑制剤には、例えば、カルシニューリン阻害剤/例えば、シクロスポリン(Sandimmune,Gengraf,Neoral)などのイムノフィリンモジュレーター、タクロリムス(Prograf,FK506)、ASM 981、シロリムス(RAPA、ラパマイシン、ラパミューン)、またはその誘導体SDZ-RAD、糖質コルチコイド(プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾンなど)、プリン合成阻害剤(ミコフェノール酸モフェチル、MMF、CellCept(R)、アザチオプリン、シクロホスファミド)、インターロイキン拮抗薬(バシリキシマブ、ダクシズマブ、デオキシスパーガリン)、リンパ球枯渇剤、例えば抗胸腺細胞グロブリン(サイモグロブリン、リンフォグロブリン)、抗-CD3抗体(OKT3)などが含まれる。
【0687】
さらに、その悪液質改善効果が動物モデルまたは臨床段階で確立されている薬剤、例えば、シクロオキシゲナーゼ阻害剤(例えば、インドメタシンなど)、プロゲステロン誘導体(例えば、酢酸メゲストロール)、グルコステロイド(例えば、デキサメタゾンなど)、メトクロプラミド系薬剤、テトラヒドロカンナビノール系薬剤、脂質代謝改善剤(例えば、エイコサペンタン酸(eicosapentanoic acid)など)、成長ホルモン、IGF-1、TNF-α、LIF、IL-6およびオンコスタチンMに対する抗体、はまた、本発明によるRNAi剤と併用して用いられてもよい。代謝障害および/または神経系シグナル伝達の障害に関連する疾患または状態の治療において使用するための追加の治療剤は、当業者に明らかであり、本開示の範囲に含まれる。
【0688】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるRNAi剤と併せて併用療法としての投与に適した第二の剤が、真性糖尿病治療剤、糖尿病性合併症治療剤、心血管疾患治療剤、抗高脂血症剤、降圧剤もしくは降圧剤、抗肥満剤、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)治療剤、化学療法剤、免疫療法剤、免疫抑制剤、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、コルヒチン、またはコルチコステロイド、および前述の任意の組み合わせである。
【0689】
RNAi剤および追加の治療薬は、同時にもしくは同じ組合せで投与され得、または追加の治療薬は、別個の組成物の一部として、もしくは別個の時間で、または当技術分野で公知のもしくは本明細書に記載する別の方法によって投与され得る。
【0690】
一実施形態では、方法は、標的SGLT2遺伝子の発現が少なくとも一ヶ月間低下するように本明細書において取り上げる組成物を投与することを含む。一部の実施形態では、発現は、少なくとも2ヶ月、3ヶ月または6ヶ月間低下する。
【0691】
特定の実施形態では、投与は、例えば、2~4用量などの初回投与期間の間、より高い頻度、例えば、一回/日、二回/週、一回/週で投与される負荷用量を含む。
【0692】
一部の実施形態では、本明細書において特徴付けられる方法および組成物にとって有用なRNA剤は、標的SGLT2遺伝子のRNA(一次または処理された)を特異的に標的とする。RNAi剤を使用してこれら遺伝子の発現を阻害する組成物および方法は、本明細書において記載するように調製および実施できる。
【0693】
本開示の方法によるdsRNAの投与は、SGLT2関連障害を有する患者においてこのような疾患または障害の重症度、徴候、症状またはマーカーの低減をもたらし得る。一部の実施形態では、dsRNAの投与は、SGLT2関連障害を有する対象の血中グルコース値または尿酸値の低減をもたらす。他の実施形態では、dsRNAの投与は、SGLT2関連障害を有する対象の血中脂質レベルの低減をもたらす。この文脈での「低減」とは、かかるレベルの統計学的に有意なまたは臨床的に有意な減少を意味する。低減は、例えば少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または約100%とすることができる。
【0694】
疾患の治療または予防の有効性は、例えば疾患進行、疾患緩解、症状の重症度、疼痛の低減、生活の質、処置効果を持続するために必要とされる投薬の用量、疾患マーカーまたは治療されているまたは予防のために標的とされる所与の疾患に適切な任意の他の測定可能なパラメータのレベルを測定することによって評価できる。このようなパラメータのうちいずれか一つまたはパラメータのいずれかの組合せを測定することによって、治療または予防の有効性を観察することは、十分に当業者の能力の範囲内である。このようなパラメータのうちいずれか一つまたはパラメータのいずれかの組合せを測定することによって、治療または予防の有効性を観察することは、十分に当業者の能力の範囲内である。SGLT2を標的とするRNAi剤またはその医薬組成物の投与に関連して、SGLT2関連障害「に対して有効な」は、臨床的に適切な様式での投与が、少なくとも統計学的に有意な割合の患者にとって有益な効果が、例えば症状の改善、治癒、疾患の低減、寿命の延長、生活の質の改善またはSGLT2関連障害および関連原因の治療に精通している医師によって肯定的であると通常認識される他の効果が結果的に生じることを示す。
【0695】
治療または予防的効果は、疾患状態の一つまたは複数のパラメータにおいて統計学的に有意な改善がある場合に、または悪化しなかったこともしくはそうでなければ予測される症状を発症しなかったときに明白である。例として、疾患の測定可能なパラメータが少なくとも10%好ましく変化すること、少なくとも20%、30%、40%、50%またはそれ以上好ましく変化することは、有効な治療の指標であり得る。所与のRNAi剤またはその製剤の有効性はまた、当技術分野で公知のように所与の疾患の実験動物モデルを使用して判断できる。実験動物モデルを使用する場合には、治療の有効性は、マーカーまたは症状の統計学的に有意な減少が観察されたときに明白である。
【0696】
あるいは、有効性は、臨床的に許容された疾患重症度類別スケールに基づいて、診断の当業者によって決定されるような疾患の重症度の低減によって測定できる。例えば、適切なスケールを使用して測定される疾患の重症度の減少をもたらす任意の肯定的な変化は、本明細書において記載するようなRNAi剤またはRNAi剤製剤を使用する妥当な治療を表している。
【0697】
対象には、例えば約0.01mg/kg~約200mg/kgのdsRNAの治療量が投与され得る。
【0698】
RNAi剤は、定期的に一定期間にわたって投与することができる。特定の実施形態では、最初の治療レジメン後に、より少ない頻度で治療を施与することができる。RNAi剤の投与は、例えば、患者の細胞、組織、血液試料、または他の部分におけるSGLT2レベルを、少なくとも20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%またはそれ以上低減させ得る。一実施形態では、RNAi剤の投与は、例えば、患者の細胞、組織、血液試料、または他の部分においてSGLT2レベルを少なくとも50%低減し得る。
【0699】
RNAi剤の全用量の投与の前に、患者に、より少ない用量、例えば、5%の注入反応を投与し、そして有害作用を、例えばアレルギー反応を観察できる。別の実施例では、患者を、望まれない免疫活性化作用を、例えばサイトカインレベル(例えば、TNF-アルファまたはINF-アルファ)の増大を観察できる。
【0700】
あるいは、RNAi剤は、経口投与、肺投与、静脈内、すなわち、静脈内注射、または皮下、すなわち、皮下注射によって投与することができる。RNAi剤の所望の、例えば、毎月の用量を対象に送達するために、一回または複数回の注射を使用できる。一定期間にわたって、注射を反復してもよい。投与を定期的に反復してもよい。特定の実施形態では、最初の治療レジメン後に、より少ない頻度で治療を施与することができる。反復用量レジメンは、定期的な、例えば毎月の、または四半期に一回、年に二回、年に一回にわたる、RNAi剤の治療量の投与を含み得る。特定の実施形態では、RNAi剤は、月に約一回~四半期に約一回(すなわち、約三ヶ月毎に一回)投与される。
【0701】
IX.キット
特定の態様においては、本開示は、例えば、二本鎖siRNA化合物またはsiRNA化合物であるsiRNA化合物(例えば、前駆体、例えば、siRNA化合物にプロセシングすることができるより大きなsiRNA化合物、または例えば、二本鎖siRNA化合物もしくはsiRNA化合物またはその前駆体であるsiRNA化合物をコードするDNA)の医薬製剤を含有する適切な容器を含むキットを提供する。特定の実施形態では、医薬製剤の個々の成分は、一容器で提供され得る。あるいは、医薬製剤の成分を別々に二以上の容器で、例えば、siRNA化合物調製物用の一つの容器と担体化合物のための少なくとももう一つの容器とで、提供することが望ましいものであり得る。キットは、単一の箱内に一つまたは複数の容器などであるいくつかの様々な構成で包装され得る。この様々な構成要素は、例えば、キットと共に提供される使用説明書に従って、組み合わせることができる。当該構成要素は、例えば、医薬組成物を調製および投与するために、本明細書において説明した方法に従って組み合わせることができる。キットはまた、送達デバイスも含むことができる。
【0702】
別段の定義がない限り、本明細書において使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載するものと類似または同等の方法および材料を、本発明において取り上げるRNAi剤および方法の実施または試験において使用できるが、適した方法および材料を以下に記載する。本明細書において言及する全ての公開公報、特許出願、特許および他の参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含めて、本明細書が統制することとなる。さらに、材料、方法および実施例は、単に例示的なものであり、限定となることを意図するものではない。
【0703】
非公式の配列表は、本明細書にファイルされ、出願された明細書の一部を形成する。
【0704】
本発明を、以下の実施例によってさらに説明するが、これらは限定するものとして解釈されるべきではない。本願全体を通して引用されるすべての参考文献、特許公報、および公開された特許出願、ならびに図および配列表が、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0705】
実施例1.iRNAの合成
試薬の供給元
本明細書において試薬の供給元が具体的に与えられていない場合には、かかる試薬は、分子生物学で応用するための品質/純度基準にある分子生物学用の試薬の任意の供給元から得ることができる。
【0706】
siRNAの設計
ヒトナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)遺伝子(ヒトNCBI refseqID:NM_003041.4;NCBI GeneID:6524)を標的とするsiRNA設計の選択を、custo RおよびPythonスクリプトを使用して設計した。ヒトNM_003041.4 REFSEQ mRNAは、長さが2267塩基である。
【0707】
SGLT2を標的とする、この未修飾siRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖のヌクレオチド配列のセットの詳細な一覧を、表2に示す。
【0708】
SGLT2を標的とする、この修飾siRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖のヌクレオチド配列のセットの詳細な一覧を、表3に示す。
【0709】
本願全体にわたって、小数のない二本鎖名は、小数付きの二本鎖名と同等であり、単に二本鎖のバッチ番号を指しているということを理解されたい。例えば、AD-1230521は、AD-1230521と同等である。
【0710】
siRNAの合成
siRNAは、当技術分野で公知の通例の方法を使用して合成およびアニーリングした。簡潔に述べると、siRNA配列を、固体支持体上でホスホラミダイトの化学的性質を用いてMermade 192シンセサイザー(BioAutomation社)を使用して1μmolスケールで合成した。固体支持体は、カスタムGalNAcリガンド(3’-GalNAcコンジュゲート)、ユニバーサル固体支持体(AM Chemicals社)、または目的の第一ヌクレオチドを装填した制御された細孔ガラス(500~1000Å)とした。補助合成試薬および標準的な2-シアノエチルホスホラミダイトモノマー(2’-デオキシ-2’-フルオロ、2’-O-メチル、RNA、DNA)を、Thermo-Fisher社(ウィスコンシン州ミルウォーキー)、Hongene社(中華人民共和国)、またはChemgenes社(米国マサチューセッツ州ウィルミントン)から取得した。追加のホスホラミダイトモノマーを、市販の供給元から調達するか、組織内で調製するか、または様々なCMOからのカスタム合成を使用して調達した。ホスホラミダイトを、アセトニトリルまたは9:1のアセトニトリル:DMFのいずれかの中で100mMの濃度で調製し、反応時間400秒で、5-エチルチオ-1H-テトラゾール(ETT、アセトニトリル中0.25M)を使用して結合した。無水アセトニトリル/ピリジン(9:1v/v)中の3-((ジメチルアミノ-メチリデン)アミノ)-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-チオン(DDTT、Chemgenes社(ウィルミントン、マサチューセッツ州、米国)より取得)の100mM溶液を使用して、ホスホロチオエート連結を生成した。酸化時間は5分であった。全ての配列を、DMT基の最終的な除去(「DMT-Off」)で合成した。
【0711】
固相合成が完了したら、固体支持したオリゴリボヌクレオチドを、96ウェルプレート中、室温で、300μLのメチルアミン(40%水溶液)で約2時間にわたって処理し、固体支持体から切断させ、その後追加的な塩基不安定性保護基をすべて除去した。tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)基で保護された任意の天然リボヌクレオチド連結(2’-OH)を含有する配列に関しては、TEA.3HF(トリエチルアミントリヒドロフルオリド)を使用して第二の脱保護工程を実施した。メチルアミン水溶液中の各オリゴヌクレオチド溶液に、200μLのジメチルスルホキシド(DMSO)および300μLのTEA.3HFを加えて、この溶液を60℃で約30分間インキュベートした。インキュベート後、プレートを室温まで自然に戻し、1mLの9:1アセトニトリル:エタノールまたは1:1エタノール:イソプロパノールの添加によって、粗オリゴヌクレオチドを沈殿させた。次いでプレートを4℃で45分間遠心分離し、上清を、マルチチャネルピペットの補助により慎重にデカントした。オリゴヌクレオチドペレットを、20mMのNaOAc中に再懸濁し、その後、オートサンプラー、UV検出器、電気伝導度計、およびフラクションコレクターを備えたAgilent LCシステム上で、HiTrap分子ふるいカラム(5mL、GE Healthcare社)を使用して脱塩した。脱塩した試料を96ウェルプレートに回収し、次いでLC-MSおよびUV分光分析法により分析して、それぞれで同一性を確認し、物質の量を定量した。
【0712】
一本鎖の二重化を、Tecan社のリキッドハンドリングロボットで行った。センス鎖とアンチセンス鎖のそれぞれの単鎖を、96ウェルプレートにおいて1×PBS中10μMの最終濃度まで等モル比で合わせて、このプレートを密封し、100℃で10分間インキュベートし、その後2~3時間かけてゆっくりと室温まで自然に戻した。各二本鎖の濃度および同一性を確認し、その後インビトロスクリーニングアッセイに利用した。
【0713】
実施例2.siRNA二本鎖のインビトロスクリーニング
細胞培養およびトランスフェクション
Hep3b細胞(ATCC,Manassas,VA)を、10%のFBS(ATCC)を補ったイーグル最小必須培地(Gibco)中において、5%のCO2雰囲気下、37℃で、ほぼコンフルエントまで増殖させてから、トリプシン処理によりプレートから放出させた。トランスフェクションを、ウェル当たり7.5μLのOpti-MEMと0.1μLのRNAiMax(Invitrogen,Carlsbad CA.カタログ番号13778-150)を、384ウェルプレートの個々のウェルに、2.5μLの各siRNA二本鎖に、添加することによって実施した。次いで混合物を、室温で15分間インキュベートした。次いでsiRNA混合物に、約1.5×10個の細胞を含有する完全増殖培地を四十μL添加した。細胞を24時間インキュベートし、その後RNAの精製を行った。単回投与実験を10nMで行った。アッセイを四回繰り返して行った。
【0714】
インビトロ二重ルシフェラーゼおよび内因性スクリーニングアッセイ
Hepa1-6細胞を、1ウェル当たり50μLのsiRNA二本鎖およびヒトSGLT2標的配列の全長を含む75ngのプラスミドを、1ウェル当たり100μLのOpti-MEMと0.5μLのリポフェクタミン2000(Invitrogen、Carlsbad CA.カタログ番号13778-150)と共に、添加することによってトランスフェクトし、次いで室温で15分間インキュベートした。次いで、混合物を細胞に添加し、これを35μlの新鮮な完全培地に再懸濁する。トランスフェクトされた細胞を、5%CO2の雰囲気中で37℃でインキュベートした。単回投与実験を10nMまたは50nMで行った。
【0715】
siRNAおよびpsiCHECK2プラスミドをトランスフェクトしてから二十四時間後、ホタル(トランスフェクション対照)およびウミシイタケ(全長fSGLT2標的配列に融合)ルシフェラーゼを測定した。まず、培地を細胞から除去した。次いで、各ウェルに培養培地体積と等しい75μLのDual-Glo(登録商標)ルシフェラーゼ試薬を加えることによって、ホタルルシフェラーゼ活性を測定し、混合した。混合物を室温で30分間インキュベートし、その後、Spectramax(Molecular Devices)上で発光(500nm)を測定し、ホタルルシフェラーゼシグナルを検出した。ウミシイタケルシフェラーゼ活性は、各ウェルに室温のDual-Glo(登録商標)Stop&Glo(登録商標)Reagentを75μL添加することによって測定され、プレートは10~15分間インキュベートされ、その後、発光を再び測定して、ウミシイタケルシフェラーゼシグナルを決定した。Dual-Glo(登録商標)Stop&Glo(登録商標)Reagentは、ホタルルシフェラーゼシグナルをクエンチし、ウミシイタケルシフェラーゼ反応の発光を維持した。siRNA活性は、各ウェル内のホタル(対照)シグナルに対してウミシイタケ(MUC5B)シグナルを正規化することによって決定された。次いで、同じベクターでトランスフェクトされたが、siRNAで処理されなかったか、または非ターゲティングsiRNAで処理された細胞と比較して、siRNA活性の影響を評価した。全てのトランスフェクションをn=4で行った。
【0716】
DYNABEADS mRNA単離キットを使用した全RNAの単離
DYNABEADSを使用して全RNAの単離を行った。簡潔には、細胞を、ウェル当たり3μLのビーズを含有する10μlの溶解/結合緩衝剤で溶解し、静電式振とう機上で10分間混合した。洗浄工程を、磁気プレート支持体を使用して、Biotek EL406上で自動化した。ビーズを、緩衝剤A中で一回、緩衝剤B中で一回、および緩衝剤E中で二回、それぞれの間に吸引工程を入れて洗浄した(3μL中で)。最後の吸引後、以下に説明するように、完全な12μLのRT混合物を各ウェルに加えた。
【0717】
cDNA合成
cDNA合成のため、1反応当たり、1.5μlの10×緩衝剤、0.6μlの10×dNTP、1.5μlのランダムプライマー、0.75μlの逆転写酵素、0.75μlのリボヌクレアーゼ阻害剤および9.9μlのHOのマスターミックスを、各ウェルに加えた。プレートを密封し、静電式振とう機で10分間振とうし、次いで37℃で2時間インキュベートした。その後、プレートを80℃で8分間振とうした。
【0718】
リアルタイムPCR
二マイクロリットル(μl)のcDNAを、384ウェルプレート(Roche社カタログ番号#04887301001)において、ウェル当たり、0.5μlのヒトGAPDH TaqManプローブ(4326317E)、0.5μlのヒトSGLT2、2μlのヌクレアーゼを含まない水、および5μlのLightcycler 480プローブマスターミックス(Roche社カタログ番号#04887301001)を含有するマスターミックスに添加した。リアルタイムPCRを、LightCycler480リアルタイムPCRシステム(Roche)において実施した。
【0719】
相対的な倍率変化を算出するために、データを、ΔΔCt法を使用して分析し、10nMのAD-1955でトランスフェクトされた細胞またはモックトランスフェクトされた細胞で実施されるアッセイに対して正規化した。IC50は、XLFitを使用して4パラメータのフィットモデルを使用して計算し、AD-1955でトランスフェクトした細胞またはモックのトランスフェクトした細胞に対して正規化した。AD-1955のセンス配列およびアンチセンス配列は、センスがcuuAcGcuGAGuAcuucGAdTsdT(配列番号15)であり、またアンチセンスがUCGAAGuACUcAGCGuAAGdTsdT(配列番号16)である。
【0720】
表2および3に列挙される薬剤のデュアルルシフェラーゼアッセイの結果を表4に提供する。
【0721】
表1.核酸配列の表現で使用されるヌクレオチドモノマーの略語。これらモノマーは、オリゴヌクレオチド中に存在するとき、5’-3’-ホスホジエステル結合によって相互に連結されることが理解され、またヌクレオチドが2’-フルオロ修飾を含有するとき、フルオロが親ヌクレオチド内のその位置にあるヒドロキシを置換する(すなわち、2’-デオキシ-2’-フルオロヌクレオチドである)ことが理解されるであろう。
【0722】
【表3】
【表4】
【表5】

【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【0723】
実施例3.SGLT2バリアントと血清尿酸値および/または痛風診断との関連
SGLT2の阻害が、尿酸値および/または痛風診断に影響を与えるかどうかを調べるために、英国バイオバンクからのデータを分析した。
【0724】
英国(UK)における大規模な長期バイオバンク研究であるUK Biobankは、疾患の発生に対する遺伝的素因および環境曝露(栄養、生活習慣、薬剤などを含む)のそれぞれの寄与を調査している(例えば、Allen,N.et al.UK Biobank:current status and what it means for epidemiology.Health Policy Technol 1,123-126(2012);www.ukbiobank.ac.uk参照)。この治験は、英国において40~69歳の登録した約500,000人のボランティアを追跡している。最初の登録は2006年から四年間にわたって行われ、ボランティアはその後少なくとも30年間追跡される。バイオマーカー測定および疾患診断を含む、多数の表現型データが収集されている。最近、研究の約450,000人の参加者からのエキソームシーケンシングデータ(またはエクソンから構成されるゲノムの一部)が取得された。
【0725】
これらの全エキソーム配列を使用して、機能的影響を有する可能性が高い希少バリアントを識別した;LOFTEEによって高い信頼性と称される予測される機能喪失(pLOF)バリアント(すなわち、フレームシフト、ストップゲイン、スプライスドナー、またはスプライスアクセプターバリアント)、および損傷すると予測されるミスセンスバリアント(組み合わされたアノテーション依存枯渇スコア≧25)(Karczewski,K.J.et al.Nature 581,434-443,(2020))。遺伝子ベースの折り畳み試験(すなわち、負荷試験)を使用して、二つのバリアント凝集戦略、1)マイナーアレル頻度≦1%のpLOFバリアント、ならびに2)マイナーアレル頻度≦1%のpLOFバリアントおよび予測される損傷ミスセンスバリアント、を使用して尿酸値との関連を探した。年齢、性別、および遺伝子祖先の12の主要構成要素を介して調整した無関係な白色集団(n=363,973)において、負荷試験を実施した。SLC5A2(SGLT2をコードする)pLOFおよび予測される損傷ミスセンスバリアントの組合せは、尿酸値の減少と有意に関連した(表5)。SLC5A2 pLOFおよび予測される損傷ミスセンスバリアントはまた、糖尿の診断の増加と有意に関連し、尿酸に対するそれらの効果と一致して痛風の診断の減少と示唆的に関連する(表6)。
【0726】
表5.SGLT2 pLOFおよびミスセンスバリアントと尿酸値との関連
【表25】



表6.SGLT2 pLOFおよびミスセンスバリアントと痛風および糖尿との関連
【表26】


【0727】
均等物
当業者は、本明細書に記載される特定の実施形態および方法に対する多くの均等物を認識するか、または通例の実験のみを使用して確認することができるであろう。こうした均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることを意図する。
【配列表】
2024522068000001.app
【国際調査報告】