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特表2024-522071エピレギュリンを標的とする化合物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(54)【発明の名称】エピレギュリンを標的とする化合物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240604BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240604BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240604BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240604BHJP
   A61P 29/02 20060101ALI20240604BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240604BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N5/10
C12N15/63 Z
C12N15/13
A61K39/395 N
A61P29/02
A61P25/04
G01N33/53 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571606
(86)(22)【出願日】2022-05-19
(85)【翻訳文提出日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 US2022030058
(87)【国際公開番号】W WO2022246078
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】63/191,496
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100139310
【弁理士】
【氏名又は名称】吉光 真紀
(72)【発明者】
【氏名】バイドラー,キャサリン ブラウティガム
(72)【発明者】
【氏名】ボイルズ,ジェフリー ストリートマン
(72)【発明者】
【氏名】ギラルド,ダニエル スコット
(72)【発明者】
【氏名】ハーラン,シャノン マリー
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,マイケル パーヴィン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC03
4C085CC05
4C085CC31
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA70
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、エピレギュリン抗体、それらを含む組成物、並びに慢性変形性関節症疼痛又は慢性糖尿病性末梢神経障害疼痛又は慢性腰痛症などの慢性疼痛障害のための抗体及び/又はその組成物を作製及び/又は使用する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトエピレギュリンに結合する抗体であって、前記抗体が、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、前記VHが、重鎖相補性決定領域(HCDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、前記VLが、軽鎖相補性決定領域(LCDR)LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、
前記HCDR1が、配列番号5を含み、
前記HCDR2が、配列番号6を含み、
前記HCDR3が、配列番号7を含み、
前記LCDR1が、配列番号8を含み、
前記LCDR2が、配列番号9を含み、
前記LCDR3が、配列番号10を含む、抗体。
【請求項2】
前記VHが、配列番号3を含み、前記VLが、配列番号4を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体が、配列番号1を含む重鎖(HC)及び配列番号2を含む軽鎖(LC)を含む、請求項1又は2に記載の抗体。
【請求項4】
配列番号11又は12の配列を含む、核酸。
【請求項5】
請求項4に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項6】
前記ベクターが、配列番号11の第1の核酸配列及び配列番号12の第2の核酸配列を含む、請求項5に記載のベクター。
【請求項7】
配列番号11の核酸配列を含む第1のベクター及び配列番号12の核酸配列を含む第2のベクターを含む、組成物。
【請求項8】
請求項5又は6に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項9】
配列番号11の核酸配列を含む第1のベクター及び配列番号12の核酸配列を含む第2のベクターを含む、細胞。
【請求項10】
前記細胞が、哺乳動物細胞である、請求項8又は9に記載の細胞。
【請求項11】
抗体を産生するプロセスであって、前記抗体が発現するような条件下で、請求項8~10のいずれか一項に記載の細胞を培養することと、発現した前記抗体を培養培地から回収することと、を含む、プロセス。
【請求項12】
請求項11に記載のプロセスによって産生される、抗体。
【請求項13】
請求項1~3又は12のいずれか一項に記載の抗体と、
薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項14】
疼痛障害の治療を必要とする患者において、疼痛障害を治療する方法であって、前記対象に、治療有効量の請求項1~3若しくは12のいずれか一項に記載の抗体又は請求項13に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項15】
前記疼痛障害が、変形性関節症疼痛、糖尿病性末梢神経障害疼痛及び慢性腰痛症からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記疼痛障害が、変形性関節症疼痛である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記疼痛障害が、糖尿病性末梢神経障害疼痛である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記疼痛障害が、慢性腰痛症である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記疼痛障害が、療法抵抗性である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
療法に使用するための、請求項1~3又は12のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項21】
疼痛障害の治療に使用するための、請求項1~3若しくは12のいずれか一項に記載の抗体又は請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記疼痛障害が、変形性関節症疼痛、糖尿病性末梢神経障害疼痛及び慢性腰痛症からなる群から選択される、請求項21に記載の抗体又は医薬組成物。
【請求項23】
前記疼痛障害が、変形性関節症疼痛である、請求項21に記載の抗体又は医薬組成物。
【請求項24】
前記疼痛障害が、糖尿病性末梢神経障害疼痛である、請求項21に記載の抗体又は医薬組成物。
【請求項25】
前記疼痛障害が、慢性腰痛症である、請求項21に記載の抗体又は医薬組成物。
【請求項26】
疼痛障害の治療のための医薬品の製造における、請求項1~3又は12のいずれか一項に記載の抗体の使用。
【請求項27】
前記疼痛障害が、変形性関節症疼痛、糖尿病性末梢神経障害疼痛及び慢性腰痛症からなる群から選択される、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
体液試料中のヒトエピレギュリンレベルを決定する方法であって、
(a)前記体液試料を、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗ヒトエピレギュリン診断用モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントと接触させることと、
(b)任意選択で、非特異的に結合したあらゆるモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを除去することと、
(c)ヒトエピレギュリンに特異的に結合するモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントの量を検出及び/又は定量化することと、を含む、方法。
【請求項29】
前記体液試料が、血液、血清若しくは血漿試料、又は脳脊髄液試料であり、前記接触させることが、エクスビボで生じる、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、侵害受容性、神経障害性及び混合性疼痛を含む疼痛の治療、並びに特に変形性関節症(osteoarthritis、OA)疼痛又は糖尿病性末梢神経障害疼痛(diabetic peripheral neuropathy pain、DPNP)又は慢性腰痛症(chronic low back pain、CLBP)の治療における、ヒトエピレギュリンに対して指向された抗体を含む化合物、医薬組成物及び方法、並びにそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性疼痛は、その機序に基づいて、侵害受容性、神経障害性及び混合性の異なるカテゴリに分類される。侵害受容性疼痛は、神経細胞以外の組織に損傷を与える可能性がある、又は実際に損傷を引き起こす刺激によって引き起こされる。これにより、末梢感覚系の侵害受容性受容器が活性化される。変形性関節症による疼痛は、体性侵害受容性疼痛の典型的な一例である。神経障害性疼痛は、中枢神経系又は末梢神経系の損傷又は疾患によって引き起こされ、感覚神経系の不適応過敏症を導く。糖尿病性末梢神経障害による疼痛は、末梢神経障害性疼痛の典型的な一例である。慢性腰痛症などの、侵害受容性疼痛及び神経障害性疼痛の両方の特徴を示す状態は、混合性疼痛に分類される。
【0003】
慢性疼痛は、非常に広まっている状態であり、社会に大きな影響を及ぼす。2016年には、米国の成人人口の推定20.4%が、国民健康調査のデータに基づいて、過去6か月間のほとんどの日又は毎日の疼痛として定義される慢性疼痛を経験していた。人口の推定8%が、過去6か月間、ほぼ毎日、又は毎日、生活又は仕事の活動を制限する慢性疼痛を有していた。その結果、慢性疼痛は医療費の主な原因となっており、2010年の米国における慢性疼痛管理の年間費用は約6,350億ドルと推定された。高い疾患負荷及び社会的影響にもかかわらず、慢性疼痛の管理は現在満足のいくものではない。非薬物療法だけでは、疼痛緩和又は機能改善に十分とは言えず、利用可能な薬物療法は多様であり、提供される利益はわずかで、重大な安全上のリスクがある。現在、最も一般的なタイプの慢性疼痛を軽減するために最も頻繁に使用されている薬物は、アセトアミノフェン、非ステロイド系抗炎症薬及びオピオイドである。ガバペンチノイド、その他の抗けいれん薬(ジバルプロ酸ナトリウム、カルバマゼピン、又はラモトリギンなど)、及び一部の抗うつ薬(三環系薬又はデュロキセチンなど)は、特定の疼痛障害に使用できる。現在の薬理学的医療設備は、典型的には、低レベルの有効性を提供し、耐容性の問題及び/又は有害な副作用を有する。オピオイドは急性疼痛には効果的であるが、乱用のリスクが高く、重篤な有害反応の可能性があるため、慢性疼痛の治療選択肢は制限されている。患者及び社会に対する慢性疼痛の身体的、感情的及び経済的影響は、効果的かつ耐容可能な治療選択肢の欠如と相まって、満たされていない重大な医療ニーズとなっている。
【0004】
エピレギュリンは、7つのリガンド:TGF-α(TGFA)、エピレギュリン(EREG)、EGF、ヘパリン結合EGF(Heparin-Binding EGF、HB-EGF)、エピゲン(EPGN)、アンフィレグリン(AREG)及びベータセルリン(BTC)を含むリガンドの上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor、EGFR)ファミリーのメンバーである(Schneider MR,Wolf E.The epidermal growth factor receptor ligands at a glance.J Cell Physiol.2009;218(3):460-466)。EGFR(ErbB1)に加えて、受容体のこのファミリー内に3つの追加の受容体(ErbB2、ErbB3及びErbB4)があり、このうちErbB3及びErbB4は、リガンドのニューレグリンファミリー並びにリガンドのEGFRファミリーの選択メンバー(エピレギュリン、ベータセルリン及びHB-EGF)に結合することができる。これらのリガンドは、パラクリン又はオートクリン様式で作用して、様々な生物学的プロセスを調節し得る可溶性リガンドを産生するようにタンパク質分解的に切断される、膜貫通タンパク質として合成される。エピレギュリンは、EGFR及びErbB4の両方に結合して、ErbB2又はErbB3とのホモ二量体化又はリガンド誘導性ヘテロ二量体化を介してシグナリングを誘導することができる。
【0005】
エピレギュリンシグナリングは、炎症、創傷治癒及び血管新生などの広範囲の生理学的状態に寄与する(Riese et al.Epiregulin:Roles in Normal Physiology and Cancer,Semin Cell Dev Biol.2014,0:49-56)。EGFR受容体ホモ又はヘテロ二量体ペアを介したエピレギュリンシグナリングにより、ERK、MAPK、AP1、PI3K、JAK/STAT及びNFKBなどの多数の下流シグナリング経路の活性化の可能性が得られる。JAK/STAT及びNFKBなどの経路の活性化は、炎症の駆動において十分に実証されているが、AP1シグナリングの活性化は、神経活性化のマーカーであるc-FOS及びc-JUN活性化を駆動する。前臨床モデルにおける最近公開されたデータは、エピレギュリンの役割を、ニューロン炎症及びニューロン活性化を特徴とする慢性疼痛の調節と関連付けており、慢性疼痛障害における可能性のある機序としての炎症及びニューロン活性化を調節するエピレギュリンシグナリング経路の役割を示唆している。報告によると、EGFR経路が神経障害性疼痛の病因に関与していることが示されている(Kersten et al.,Epidermal growth factor receptor-inhibition(EGFR-I)in the treatment of neuropathic pain.Br J Anaesth.2015;115(5):761-767)。しかしながら、受容体をEGFR抗体又はEGFRチロシンキナーゼ阻害剤で標的とすることは、胃腸(gastrointestinal、GI)及び皮膚有害反応の高い発生率に関連することが見出されており、これにより、慢性疼痛障害におけるそれらの可能性のある使用が制限されている。
【0006】
TGFα及びエピレギュリンの両方に結合する抗体は、糖尿病性腎症の治療方法とともに、国際公開第2012/138510号に開示されている。LY3016859は、エピレギュリン及び形質転換成長因子α(transforming growth factor α、TGF-α)に結合するモノクローナル抗体であり、これは、第1相臨床試験において試験され、健康な対象及び糖尿病性腎症を有する患者における安全性、薬物動態、薬力学及び有効性について評価された(Sloan-Lancaster,et al.,Evaluation of the Safety,Pharmacokinetics,Pharmacodynamics,and Efficacy After Single and Multiple Dosings of LY3016859 in Healthy Subjects and Patients With Diabetic Nephropathy,Clinical Pharmacology in Drug Development 2018,7(7)759-772を参照されたい)。Sloan-Lancasterらは、LY3016859がエピレギュリンよりもTGFαに対して高い親和性を有すること、更にLY3016859投与が腎症疾患関連バイオマーカーに対していかなる明らかな効果ももたらさなかったことを記載している(Beidler,et al.,J.Pharmacology and Experimental Therapeutics,2014,349(2):330-343もまた参照されたい)。標的介在性薬物処分を示唆する非線形動態が見られ、高レベルの可溶性標的会合には高用量が必要であった。注目すべきことに、報告された両方の研究において高頻度の抗LY3016859抗体が観察されたが、薬物耐容性アッセイにおいて測定される循環エピレギュリンの用量及び時間依存的増加によって示されるような薬物動態又は標的会合に対する明確な影響はなかった。慢性疼痛適応症の治療のために、エピレギュリンに対してより選択的であり、より高い親和性を有し、かつ抗薬物抗体応答を誘導する可能性がより低い抗体が、満たされていない重要な治療ニーズとなっている。侵害受容性、神経障害性及び混合性疼痛を含む慢性疼痛障害、並びに特に変形性関節症若しくは糖尿病性末梢神経障害若しくは慢性腰痛症の治療、並びに/又は療法抵抗性疼痛の治療のための、代替及び/又は改善された治療に対する満たされていないニーズが残っている。
【発明の概要】
【0007】
本開示の実施形態は、新規抗ヒトエピレギュリン抗体、それらの医薬組成物、並びに疼痛及び慢性疼痛障害の治療においてこれらの抗体及び組成物を使用する方法を提供する。いくつかの実施形態によれば、本発明は、軽鎖可変領域(light chain variable region、LCVR)及び重鎖可変領域(heavy chain variable region、HCVR)を含む抗体を提供し、LCVRは、相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、HCVRは、CDR、HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、これらは、表1に提供されるCDRの組み合わせの群から選択される。本明細書で使用される配列識別子は、表1に列挙され、配列は、本明細書に提供されるアミノ酸及びヌクレオチド配列表に提供される。抗体1は、高親和性完全ヒト免疫グロブリンG4(immunoglobulin G4、IgG4)モノクローナル抗体であり、ヒトエピレギュリンのC末端領域の残基に結合し、ヒトエピレギュリンのEGFRへの結合及びEGFRの活性化を予防する。抗体1は、ヒト療法のための改善された抗エピレギュリン抗体となっており、これは、増強された親和性、選択性、オフターゲット及び望ましくない活性のリスクの低下、免疫原性のリスクの低下、高い効力及び長い作用期間、並びに他の望ましい特性を含む有利な特性の組み合わせを有し、エピレギュリンを遮断し、疼痛及び慢性疼痛障害を治療するための改善された手段を提供する。
【0008】
【表1】
【0009】
したがって、本開示の実施形態はまた、LCVRが、配列番号4のアミノ酸配列を有し、HCVRが、配列番号3のアミノ酸配列を有する、LCVR及びHCVRを含む抗体も提供する。
【0010】
他の実施形態によれば、本開示はまた、LCVRが、配列番号4のアミノ酸配列を有し、HCVRが、配列番号3のアミノ酸配列を有し、ヒンジ領域及びFc領域が、配列番号51及び配列番号52から選択される、LCVR及びHCVRを含む抗体も提供する。
【0011】
別の実施形態では、本開示はまた、配列番号2のアミノ酸配列を有するLC及び配列番号1のアミノ酸配列を有するHCを含む抗体も提供する。他の実施形態によれば、本開示はまた、配列番号2のアミノ酸配列を有するLC及び配列番号1のアミノ酸配列を有するHCのアミノ酸配列と少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列を有する、LC及びHCを含む抗体も提供する。
【0012】
本明細書で使用される場合、「抗体1」は、配列番号5のHCDR1アミノ酸配列、配列番号6のHCDR2アミノ酸配列、配列番号7のHCDR3アミノ酸配列、配列番号8のLCDR1アミノ酸配列、配列番号9のLCDR2アミノ酸配列、配列番号10のLCDR3アミノ酸配列、配列番号3のHCVRアミノ酸配列、配列番号4のLCVRアミノ酸配列、配列番号1のHCアミノ酸配列、配列番号2のLCアミノ酸配列を有するか、又は配列番号11のHC DNA配列によってコードされるか、又は配列番号12のLC DNA配列によってコードされる抗体を指す。本明細書で配列が示される抗体の各々におけるフレームワーク及びCDR配列は、特に指定がない限り、North,et al..J.Mol.Biol.2011:406:228-256の方法と一致する注釈規則を使用して注釈が付けられている。
【0013】
各HCのカルボキシ末端部分は、エフェクター機能を主に担う定常領域を定義し、本発明のいくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を低下させる各HCの定常領域に1つ以上の改変を有する。好ましくは、本発明の実施形態は、IgG4抗体であり、したがって、IgG4 Fc領域、又はヒトIgG4由来のFc領域、例えば改変IgG4 Fc領域を含有する。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、エフェクター機能を低下させる両方のHCの定常領域における改変、及びアミノ酸置換が、IgG4ヒンジ及びFc領域に導入される。したがって、いくつかの実施形態は、残基229及び230(EUインデックス234~235位)の両方にアミノ酸アラニンを含む両方のHCの定常領域における改変(抗体1のHCに例示され、配列番号52に示される)、並びに残基223(EUインデックス228位)にアミノ酸プロリンを含む安定性を促進する両方のHCの定常領域における更なる改変(抗体1のHCに例示され、配列番号51に示される)、並びに残基442(EUインデックス447位)のアミノ酸リジンの欠失(配列番号1のHCに例示される)を有する。
【0015】
本発明の抗体は、以下の特性:1)高い結合親和性並びに望ましい会合及び解離速度、2)疼痛緩和応答及びインビボ有効性を達成するためのヒトエピレギュリンの中和における効力、3)疼痛障害の治療及び/若しくは予防のための単剤療法として十分に強力であること、4)持続的な作用持続時間、5)十分に制限された注射部位反応、6)許容可能な低い免疫原性(すなわち、ヒトにおいて十分に非免疫原性)、7)不都合な皮膚発疹反応の低減、並びに/又は8)疼痛障害、例えば、侵害受容性、神経障害性及び混合性疼痛を含む慢性疼痛の治療、並びに特に慢性変形性関節症疼痛若しくは慢性糖尿病性末梢神経障害疼痛若しくは慢性腰痛症の治療における開発及び/若しくは使用に許容される、熱安定性、溶解性、低い自己会合及び薬物動態特徴を含むがこれらに限定されない、望ましいインビボ安定性、物理的及び化学的安定性のうちの1つ以上を含むがこれらに限定されない、先行技術の抗エピレギュリン抗体よりも特に有利な特性の組み合わせを有すると考えられる。
【0016】
本発明の実施形態は、ヒトエピレギュリンに対する抗体、それらの組成物、及び本明細書に記載の実施形態に提供される薬理学的に有利な抗ヒトエピレギュリン抗体を使用する、エピレギュリン中和を介した、疼痛障害の治療、下方制御又は寛解において有用な方法を提供することによって、先行技術に対して有意な進歩を提供する。本発明の抗ヒトエピレギュリン抗体は、好ましくは、特に慢性疼痛障害及び疼痛状態における疼痛応答の阻害を介して、疼痛症状を緩和し、疼痛病態生理を改善することができる。そのような抗体の臨床的な使用は、治療される疼痛関連障害の長期的な緩和につながる可能性がある。
【0017】
更に、ヒトエピレギュリンに特異的であり、改善された結合親和性を有し、かつヒトエピレギュリン決定において増強した感度を実証する、診断用抗ヒトエピレギュリン抗体、並びに最小限の干渉及び広い希釈直線性をもたらす改善された酵素結合免疫吸着アッセイ(enzyme-linked immunosorbent assay、ELISA)アッセイ条件に対する必要性が存在する。本開示のいくつかの態様によれば、配列番号21によって与えられるヒトエピレギュリンに結合する、ヒトエピレギュリン中和抗体を含む抗ヒトエピレギュリン抗体が提供される。「エピレギュリン」又は「ヒトエピレギュリン」は、ヒトエピレギュリンタンパク質を指す。本明細書で使用される場合、エピレギュリンは、成熟エピレギュリンペプチドを指す。エピレギュリン(EREG、EPRとしても知られる)は、ペプチドホルモンの上皮成長因子(EGF)ファミリーに属する46アミノ酸のタンパク質である。エピレギュリンは、162アミノ酸の膜貫通エピレギュリン前駆体として産生され、これは切断されて、以下の配列:
「VSITKCSSDMNGYCLHGQCIYLVDMSQNYCRCEVGYTGVRCEHFFL」(配列番号21)の46アミノ酸の成熟ペプチドを放出する(例えば、Toyoda,et al.,Molecular cloning of mouse epiregulin,a novel epidermal growth factor-related protein,expressed in the early stage of development.FEBS Lett.1995;377:403-7を参照されたい)。実施例2に記載され、調製されるようなヒトエピレギュリン(配列番号22)は、例えば、本明細書に記載のインビトロ実験において使用することができる。本明細書に記載の抗体が、ヒトエピレギュリンタンパク質に結合する能力及び/又はそれを中和する能力への言及は、インビトロ実験においてヒトエピレギュリンに結合し、それを中和するそれらの能力にも言及する。
【0018】
本明細書で使用される場合、「ヒト抗エピレギュリン抗体」又は「抗ヒトエピレギュリン抗体」は、ヒトエピレギュリンに結合し、インビトロ又はインビボ投与された場合に、少なくとも1つの有意に減少した活性などのエピレギュリン活性中和及び/又は遮断応答をもたらす抗体を指す。例えば、エピレギュリン応答性分子又は細胞エンドポイントの変化によって証明される、エピレギュリンシグナリングの所望の低減。本明細書で使用される場合、「シグナリング」及び「シグナル伝達」及び「エピレギュリン介在性」という用語は、エピレギュリンに関連する場合、エピレギュリンの活性に起因する細胞及び/又は細胞間反応を指す。
【0019】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、抗原に結合する免疫グロブリン分子を指す。抗体の実施形態には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、又はコンジュゲート抗体が含まれる。抗体は、任意のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA)、及び任意のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)のものであってもよい。例示的な抗体は、4つのポリペプチド鎖:鎖間ジスルフィド結合を介して架橋される2つの重鎖(heavy chain、HC)及び2つの軽鎖(light chain、LC)から構成された免疫グロブリンG(immunoglobulin G、IgG)型抗体である。LCは、カッパ又はラムダとして分類され、これらは各々、特定の定常領域を特徴とする。本発明の実施形態は、IgG1又はIgG4抗体を含み得、カッパ軽鎖又はラムダ軽鎖を更に含み得る。好ましくは、本発明の抗体は、カッパ定常領域である軽鎖定常領域を含む。
【0020】
HCは、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ又はイプシロンとして分類され、それぞれ抗体のアイソタイプをIgG、IgM、IgA、IgD又はIgEとして定義する。4つのポリペプチド鎖の各々のアミノ末端部分は、抗原認識に主に関与する約100~125個以上のアミノ酸の可変領域を含む。4つのポリペプチド鎖の各々のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能に関与する定常領域を含有する。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域から構成される。重鎖の定常領域は、CH1、CH2及びCH3ドメインを含有する。CH1は、HCVRの後にあり、CH1及びHCVRは、抗原に結合する抗体の一部である抗原結合(Fab)フラグメントの重鎖部分を形成する。CH2は、ヒンジ領域の後にあり、CH3の前にある。CH3は、CH2の後にあり、重鎖のカルボキシ末端にある。軽鎖の定常領域は、1つのドメインCLを含有する。CLは、LCVRの後にあり、CL及びLCVRは、Fabの軽鎖部分を形成する。
【0021】
本発明の抗体は、サブクラス、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4に更に分類することができるIgG HCを含み、本開示の実施形態は、例えば、エフェクター機能を増強又は低減する、各HCの定常領域に1つ以上の改変を含み得る。本明細書で使用される「Fc領域」という用語は、抗体重鎖のCH2及びCH3ドメインを含む抗体の領域を指す。任意選択で、Fc領域は、抗体重鎖のヒンジ領域の一部分又はヒンジ領域全体を含み得る。IgG1は、抗体依存性細胞傷害性(antibody-dependent cell cytotoxicity、ADCC)及び補体依存性細胞傷害性(complement-dependent cytotoxicity、CDC)を誘導することが既知であり、本明細書に記載のFc変異は、凝集を低減し、ADCC若しくはCDC活性(若しくは他の機能)を低減若しくは増強し、かつ/又は抗体の薬物動態を改変し得る。本明細書に記載の抗ヒトEREG抗体の実施形態は、FcγR及びC1q受容体への結合が低減しており、それにより、野生型IgG Fc領域を有する抗体によって誘導され得る細胞傷害性を低減又は除去する。したがって、いくつかの実施形態によれば、変異は、本明細書に記載の位置でFc領域に導入される。改変Fc領域を含むそのような抗ヒトEREG抗体のエフェクター機能を十分に低減又は除去することにより、患者の安全性を改善することができ、本明細書に記載の他の特性と組み合わせて、望ましくない活性を回避しながら有用な活性の改善されたプロファイルを有する治療薬を提供することができる。
【0022】
特定の生物学的系において発現する場合、抗体は、Fc領域においてグリコシル化される。典型的には、グリコシル化は、高度に保存されたN-グリコシル化部位の抗体のFc領域に生じる。N-グリカンは、典型的には、アスパラギンに結合する。抗体は、他の位置でもグリコシル化され得る。本開示の抗体は、モノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、単一のコピー又はクローン(例えば、任意の真核生物、原核生物、又はファージクローンを含む)に由来する抗体であり、それが産生される方法により定義されるものではない。モノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ技術、組換え技術、ファージ提示技術、合成技術、例えば、CDR移植、又はそのような技術若しくは当該技術分野で既知の他の技術の組み合わせにより産生することができる。本開示は、本発明の抗体がヒト又はヒト化抗体であることを企図する。モノクローナル抗体の文脈において、「ヒト」及び「ヒト化」という用語は、当業者に周知である(Weiner LJ,J.Immunother.2006;29:1-9、Mallbris L,et al.,J.Clin.Aesthet.Dermatol.2016;9:13-15)。本開示の抗体の例示的な実施形態はまた、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvフラグメント、scFv抗体フラグメント、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、Fdフラグメント及び線状抗体などの、抗原と特異的に相互作用する能力を保持する抗体の少なくとも一部分を含む、抗体フラグメント又は抗原結合フラグメントを含む。
【0023】
各LC及びHCのアミノ末端部分は、その中に含有されるCDRを介した抗原認識を主に担う約100~120アミノ酸の可変領域を含む。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(framework regions、FR)と呼ばれる、より保存されている領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる、超可変領域に更に細分され得る。CDRはタンパク質の表面上に露出しており、抗原結合特異性のための抗体の重要な領域である。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRから構成されており、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序でアミノ末端からカルボキシ末端へと配置される。本明細書では、重鎖の3つのCDRを「HCDR1、HCDR2及びHCDR3」と称し、軽鎖の3つのCDRを「LCDR1、LCDR2及びLCDR3」と称する。CDRは、抗原との特異的相互作用を形成する残基の大部分を含有する。抗体が特定の抗原に結合する機能的能力は、6つのCDRによって大きく影響される。アミノ酸残基のCDRへの割り当ては、Kabat(Kabat et al.,「Sequences of Proteins of Immunological Interest」,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))、Chothia(Chothia et al.,「Canonical structures for the hypervariable regions of immunoglobulins」,Journal of Molecular Biology,196,901-917(1987)、Al-Lazikani et al.,「Standard conformations for the canonical structures of immunoglobulins」,Journal of Molecular Biology,273,927-948(1997))、North(North et al.,「A New Clustering of Antibody CDR Loop Conformations」,Journal of Molecular Biology,406,228-256(2011))、又はIMGT(the international ImMunoGeneTics database、www.imgt.orgで利用可能、Lefranc et al.,Nucleic Acids Res.1999;27:209-212を参照されたい)に記載されるものを含む、周知のスキームによって実施され得る。
【0024】
本開示の目的のために、別段の指定がない限り、本明細書に記載の抗エピレギュリン抗体、並びにLCVR領域及びHCVR領域内のCDRドメインへのアミノ酸の割り当てには、NorthのCDR定義が使用される。以下の表2は、SAbPred/ANARCIライブラリー(Dunbar and Deane,「ANARCI:antigen receptor numbering and receptor classification」,Bioinformatics,32,298-300(2016))を使用して生成された、それぞれNorth、Kabat、Chothia及び/又はIMGTの規約に基づく、抗体1及び/又は本開示の抗体のCDR配列を提供する。
【0025】
【表2】
【0026】
本開示の抗体の実施形態は、いくつかの薬理学的に有用かつ重要な活性の組み合わせを有し、ある点では、ヒトエピレギュリンに高い親和性で、及びヒトエピレギュリンに高い特異性で結合することができ、かつ他の有用な特性を有する。本明細書で使用される「結合する」という用語は、特に示されない限り、別のタンパク質又は分子との引力相互作用を形成するタンパク質又は分子の能力を意味することを意図するが、これは、当該技術分野で既知である一般的な方法によって決定される、2つのタンパク質又は分子の近接をもたらす。本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」という語句は、ヒトエピレギュリンに対する抗エピレギュリン抗体の親和性を指し、特に示されない限り、本明細書に記載のMSD-SET(溶液平衡滴定)の使用を含む当該技術分野で既知である一般的な方法によって約pH7.4で決定される、約2×10-9M未満、好ましくは約2×10-11M未満、更により好ましくは約2×10-11M~約2×10-12MのKを意味することを意図する。「特異的に結合する」という語句はまた、他の抗原、及び特にEGFRリガンドTGFαと比較した場合の、ヒトエピレギュリンに対する抗エピレギュリン抗体の相対的親和性も示し、ヒトエピレギュリンに対する親和性は、ヒトエピレギュリンの特異的認識及び試験される他のEGFRリガンドへの結合の欠如をもたらす。
【0027】
本開示の抗体の実施形態は、本実施形態の配列を含む構築物から、当技術分野で知られている様々な技術によって発現及び産生され得る。「核酸」又は「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書で互換的に使用される場合、天然ヌクレオチド、改変ヌクレオチド及び/又はヌクレオチドの類似体を組み込んだDNA、cDNA及びRNA分子などの一本鎖及び/又は二本鎖ヌクレオチド含有分子を含む、ヌクレオチドのポリマーを指す。本開示のポリヌクレオチドはまた、例えば、DNA若しくはRNAポリメラーゼ又は合成反応によってその中に組み込まれた基質も含み得る。本開示のDNA分子は、本発明の抗体中のポリペプチド(例えば、重鎖、軽鎖、可変重鎖及び可変軽鎖)のうちの少なくとも1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする天然に存在しないポリヌクレオチド配列を含む、DNA分子である。
【0028】
HCVR又はLCVR領域をコードする単離DNAは、それぞれHCVR又はLCVRをコードするDNAを、重鎖又は軽鎖定常領域をコードする別のDNA分子に作動可能に連結して、それぞれ重鎖又は軽鎖を形成することによって、完全長重鎖遺伝子に変換され得る。ヒト及び他の哺乳動物の重鎖定常領域遺伝子の配列は、当該技術分野において既知である。これらの領域を包含するDNAフラグメントは、例えば、標準的なPCR増幅によって得ることができる。
【0029】
本開示のポリヌクレオチドは、配列が発現制御配列に作動可能に連結された後に宿主細胞において発現し得る。発現ベクターは、典型的には、エピソームとして、又は宿主染色体DNAの一体化した部分としてのいずれかで、宿主生物中で複製可能である。一般に、発現ベクターは、所望のDNA配列で形質転換されたそれらの細胞の検出を可能にするために、選択マーカー、例えば、テトラサイクリン、ネオマイシン及びジヒドロ葉酸レダクターゼを含有する。目的のポリヌクレオチド配列(例えば、抗体のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド及び発現制御配列)を含有するベクターは、細胞宿主のタイプに応じて変動する周知の方法によって宿主細胞に導入され得る。
【0030】
本開示の抗体は、哺乳動物細胞において容易に産生することができ、この非限定的な例には、CHO、NS0、HEK293又はCOS細胞が含まれる。宿主細胞は、当該技術分野において周知の技術を使用して培養される。哺乳動物の抗体発現は、典型的にグリコシル化をもたらす。抗体のグリコシル化は、典型的には、N結合又はO結合のいずれかである。N結合グリコシル化とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。O結合グリコシル化とは、ヒドロキシアミノ酸への糖、例えばN-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースの結合を指す。典型的には、グリコシル化は、高度に保存されたN-グリコシル化部位(例えば、IMGT又はEUインデックスナンバリングによると、IgG1における297位)での抗体のFc領域に生じる。グリコシル化部位は、グリコシル化を変更するために改変することができる(例えば、グリコシル化を遮断若しくは低減するか、又はアミノ酸配列を変更して追加若しくは多様なグリコシル化を生成する)。
【0031】
IgGサブクラスからの哺乳動物での抗体の発現は、一方又は両方の重鎖からのC末端アミノ酸のクリッピングをもたらす可能性があり、例えば、IgG1抗体の場合、1つ又は2つのC末端アミノ酸が除去され得る。IgG1抗体の場合、C末端リジンが存在する場合、発現中に重鎖から切り詰められるか、又は切り取られ得る。追加的に、最後から2番目のグリシンも、同様に重鎖から切り詰められるか、切り取られ得る。
【0032】
哺乳動物での抗体の発現はまた、N末端アミノ酸の改変ももたらし得る。例えば、重鎖又は軽鎖の最もN末端のアミノ酸がグルタミンである場合、ピログルタミン酸に改変され得る。
【0033】
本開示の抗体、又はそれを含む医薬組成物は、非経口経路によって投与されることができ、この非限定的な例は、皮下投与及び静脈内投与である。本開示の抗体は、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とともに単回投与又は複数回投与で患者に投与され得る。本開示の医薬組成物は、当該技術分野において周知の方法(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd ed.(2012),A.Loyd et al.,Pharmaceutical Press)によって調製することができ、本明細書に開示される抗体、及び1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む。
【0034】
本開示の抗体実施形態の使用:
いくつかの実施形態によれば、本開示の抗エピレギュリン抗体は、疼痛障害の治療に有用である。本明細書中で使用される場合、「疼痛障害」という用語は、過剰及び/又は慢性的な疼痛状態から生じる望ましくない状態を指し、ここで、エピレギュリン阻害は、より恒常性でより病理学的ではない疼痛状態をもたらす。本明細書に記載の本開示の抗体による治療が企図される例示的な疼痛障害には、侵害受容性、神経障害性及び混合性疼痛を含む慢性疼痛、並びに特に、変形性関節症疼痛又は糖尿病性末梢神経障害疼痛又は腰痛症、並びに特に慢性疼痛状態における化学療法剤誘発末梢神経障害の治療が含まれる。
【0035】
本発明の他の実施形態によれば、抗エピレギュリン抗体は、エピレギュリン介在性疼痛障害の診断用途に有用である。いくつかの実施形態では、疼痛障害は、変形性関節症(OA)疼痛又は糖尿病性末梢神経障害疼痛(DPNP)又は慢性腰痛症(CLBP)のうちの少なくとも1つである。いくつかのより具体的な実施形態では、疼痛障害は、変形性関節症(OA)である。
【0036】
本開示は、本開示の抗エピレギュリン抗体、及び1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む、医薬組成物を更に提供する。更に、本開示は、変形性関節症疼痛又は糖尿病性末梢神経障害疼痛又は慢性腰痛症などの疼痛障害を治療する方法であって、本開示の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む方法を提供する。
【0037】
加えて、本開示は、エピレギュリン介在性疾患を治療する方法を提供する。より具体的には、本発明は、変形性関節症疼痛又は糖尿病性末梢神経障害疼痛又は慢性腰痛症などの慢性疼痛障害を治療する方法であって、有効量の本開示の抗エピレギュリン抗体を、それを必要とする患者に投与することを含む方法を提供する。
【0038】
本開示はまた、療法に使用するための本開示の抗エピレギュリン抗体も提供する。より具体的には、本開示は、変形性関節症疼痛又は糖尿病性末梢神経障害疼痛又は慢性腰痛症などの慢性疼痛障害の治療に使用するための本開示の抗エピレギュリン抗体を提供する。
【0039】
特定の実施形態では、本開示は、変形性関節症疼痛又は糖尿病性末梢神経障害疼痛又は慢性腰痛症などの1つ以上の慢性疼痛障害の治療のための医薬品の製造における、本開示の抗エピレギュリン抗体又はその組成物の使用を提供する。
【0040】
本開示の抗体は、エピレギュリンが障害の病因に寄与する可能性がある慢性疼痛障害の同定に有用である。更なる実施形態では、本開示は、患者における慢性疼痛障害を治療する方法を提供する。そのような方法は、患者試料を抗エピレギュリン抗体と接触させ、患者試料中のヒトエピレギュリンと抗体との間の結合を検出するステップと、患者試料中のエピレギュリンの存在が、罹患していない個体において観察される基準値を超えて検出される場合、患者がエピレギュリン介在性障害を有する、そのリスクがある、その治療が必要である、かつ/又はそれに関連する症状のリスクがあると診断するステップとを含む。本明細書に提供される治療方法のいくつかのより具体的な実施形態によれば、そのような方法は、対照標準を、患者試料と接触させる際に使用されるものと同じエピレギュリンの第1のエピトープ領域に結合する第1の抗体と接触させる更なるステップを含む、基準値を決定するステップと、対照標準を、検出可能な標識を有し、患者試料と接触させる際に使用されるものと同じエピレギュリンの第2のエピトープ領域に結合する第2の抗体と接触させるステップと、検出可能なシグナルによって提供されるシグナルを検出するステップとを更に含む。いくつかの具体的な実施形態では、抗エピレギュリン抗体は、表1に提供されるLC及びHC CDRの組み合わせを含む。更なる実施形態では、第2の抗体は、表1に提供されるLCVR及びHCVRの組み合わせを含む。特定の実施形態では、慢性疼痛障害は、変形性関節症疼痛又は糖尿病性末梢神経障害疼痛又は慢性腰痛症のうちの1つである。いくつかの実施形態では、患者試料は、CSF、血液、血清、組織ライセート、又は血漿のうちの1つである。いくつかの実施形態によれば、本方法は、患者試料を、エピレギュリンの第2のエピトープ領域に結合し、検出可能な標識を有する第2の抗エピレギュリン抗体と接触させるステップと、検出可能なシグナルによって提供されるシグナルを検出するステップとを更に含む。更なる実施形態では、第2の抗体は、表1に提供されるLC及びHC CDRの組み合わせを含む。更なる実施形態では、第2の抗体は、表1に提供されるLCVR及びHCVRの組み合わせを含む。特定の実施形態によれば、第1及び第2の抗エピレギュリン抗体は、一緒にビンに入れられない。
【0041】
いくつかの実施形態によれば、本開示は、患者試料中のエピレギュリンを検出する方法であって、患者試料を、エピレギュリンの第1のエピトープ領域に結合する第1の抗体と接触させるステップと、患者試料を、エピレギュリンの第2のエピトープ領域に結合し、検出可能な標識を有する第2の抗体と接触させるステップと、当該検出可能な標識によって提供されるシグナルを検出するステップとを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、患者試料は、血液、血清、組織ライセート又は血漿のうちの1つである。いくつかのより具体的な実施形態によれば、エピレギュリンの第1のエピトープ領域は、エピレギュリンの第2のエピトープ領域と部分的に重複する。更に、いくつかの実施形態では、第1及び第2の抗体と接触させる当該ステップは、同時に生じる。いくつかの具体的な実施形態では、第1の抗体は、表1に提供されるLC及びHC CDRの組み合わせを含む。更なる実施形態では、第1の抗体は、表1に提供されるLCVR及びHCVRの組み合わせを含む。
【0042】
本開示のいくつかの実施形態によれば、患者試料中のエピレギュリンを定量化する方法が提供される。そのような方法は、患者試料を、エピレギュリンの第1のエピトープ領域に結合する第1の抗体と接触させるステップと、患者試料を、エピレギュリンの第2のエピトープ領域に結合し、検出可能な標識を有する第2の抗体と接触させるステップと、当該検出可能な標識によって提供されるシグナルを検出するステップと、対照標準を、(患者試料を接触させる際に使用されるものと)同じエピレギュリンの第1のエピトープ領域に結合する第1の抗体と接触させるステップと、対照標準を、(患者試料を接触させる際に使用されるものと)同じエピレギュリンの第2のエピトープ領域に結合し、検出可能な標識を有する第2の抗体と接触させるステップと、当該検出可能なシグナルによって提供されるシグナルを検出するステップとを含む。いくつかの実施形態では、患者試料は、血液、血清若しくは血漿、又は組織ライセートのうちの1つである。いくつかのより具体的な実施形態によれば、エピレギュリンの第1のエピトープ領域は、エピレギュリンの第2のエピトープ領域と部分的に重複する。更に、いくつかの実施形態では、第1及び第2の抗体と接触させる当該ステップは、同時に生じる。いくつかの具体的な実施形態では、第1の抗体は、表1に提供されるLC及びHC CDRの組み合わせを含む。更なる実施形態では、第1の抗体は、表1に提供されるLCVR及びHCVRの組み合わせを含む。いくつかの具体的な実施形態では、第2の抗体は、表1に提供されるLC及びHC CDRの組み合わせを含む。更なる実施形態では、第2の抗体は、表1に提供されるLCVR及びHCVRの組み合わせを含む。
【0043】
いくつかの実施形態によれば、エピレギュリン介在性疾患又は障害を診断する方法が提供される。そのような方法は、患者試料を抗エピレギュリン抗体と接触させるステップと、患者試料中のエピレギュリンと抗体との間の結合を検出するステップとを含む。いくつかの特定の実施形態によれば、診断する方法は、患者試料中のエピレギュリンの存在が基準値を超えて検出される場合、患者がエピレギュリン介在性障害を有する、そのリスクがある、その治療が必要である、かつ/又はそれに関連する症状のリスクがあると診断することを含む。いくつかのより具体的な実施形態によれば、そのような方法は、対照標準を、患者試料と接触させる際に使用されるものと同じエピレギュリンの第1のエピトープ領域に結合する第1の抗体と接触させるステップを含む、基準値を決定するステップと、対照標準を、検出可能な標識を有し、患者試料と接触させる際に使用されるものと同じエピレギュリンの第2のエピトープ領域に結合する第2の抗体と接触させるステップと、検出可能なシグナルによって提供されるシグナルを検出するステップとを更に含む。いくつかの実施形態では、第1の抗体は、表1に提供されるLC及びHC CDRの組み合わせを含む。更なる実施形態では、抗体は、表1に提供されるLCVR及びHCVRの組み合わせを含む。本明細書に提供される、エピレギュリン介在性疾患を診断する方法のいくつかの実施形態は、患者試料を、エピレギュリンの第2のエピトープ領域に結合し、検出可能な標識を有する第2の抗エピレギュリン抗体と接触させるステップと、検出可能な標識によって提供されるシグナルを検出するステップとを更に含む。いくつかの具体的な実施形態では、抗エピレギュリン抗体は、表1に提供されるLC及びHC CDRの組み合わせを含む。更なる実施形態では、抗体は、表1に提供されるLCVR及びHCVRの組み合わせを含む。具体的な実施形態によれば、エピレギュリンの第1のエピトープ領域は、エピレギュリンの第2のエピトープ領域と部分的に重複する。特定の実施形態によれば、第1及び第2の抗体は、一緒にビンに入れられない。更なる実施形態によれば、基準値は、健康なボランティアの血漿、体液若しくは組織ライセートから確立される、かつ/又は適切な基準群及び試料源について当業者によって決定されるとおりである。更なる実施形態では、疼痛障害は、変形性関節症疼痛又は糖尿病性末梢神経障害疼痛又は慢性腰痛症のうちの1つである。
【0044】
一実施形態では、本開示は、体液試料中のヒトエピレギュリンレベルを決定する方法であって、(a)体液試料を、配列番号21にあるようなアミノ酸配列を含むヒトエピレギュリンに特異的に結合する、抗ヒトエピレギュリン診断用モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントと接触させることであって、抗体又はその抗原結合フラグメントが、アミノ酸配列、配列番号8、配列番号9及び配列番号10をそれぞれ含む軽鎖相補性決定領域LCDR1、LCDR2及びLCDR3、並びにアミノ酸配列、配列番号5、配列番号6及び配列番号7をそれぞれ含む重鎖相補性決定領域HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む、接触させることと、(b)任意選択で、非特異的に結合したあらゆるモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを除去することと、(c)ヒトエピレギュリンに特異的に結合するモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントの量を検出及び/又は定量化することとを含む方法を提供する。好ましくは、当該体液試料は、血液、血清若しくは血漿試料、又は脳脊髄液試料であり、当該の接触させることは、エクスビボで生じる。
【0045】
本開示の実施形態では、患者は、本明細書に記載の抗体による治療を必要とする、本明細書に記載の疾患又は障害のうちの1つなどの医学的リスク、状態又は障害を有することが診断されたヒトである。本発明の方法によって治療され得る障害が、変形性関節症疼痛又は糖尿病性末梢神経障害疼痛又は慢性腰痛症などの、確立され、受け入れられた分類によって既知である場合、それらの分類は、様々な周知の医学書に見出され得る。例えば、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disordersの第5版(DSM-5)又は類似の書物は、本明細書に記載の特定の障害を同定するための診断用ツールを提供する(例えば、Scholz,et al.,The IASP classification of chronic pain for ICD-11:chronic neuropathic pain.Pain.2019 January;160(1):53-59、及びTreede et al.,Chronic pain as a symptom or a disease:the IASP Classification of Chronic Pain for the International Classification of Diseases(ICD-11),PAIN:2019 January 160:19-27)もまた参照されたい)。また、International Classification of Diseases第10版(ICD-10)は、本明細書に記載の特定の障害についての分類を提供する。当業者は、DSM-5、及びICD-10又はICD-11に記載のものを含む、本明細書に記載の疾患及び障害についての代替の命名法、疾病分類学及び分類システムがあり、用語及び分類システムが医科学の進歩とともに進化することを認識するであろう。
【0046】
したがって、「治療すること」(又は「治療する」又は「治療」)という用語は、本明細書に記載の既存の症状、障害、状態又は疾患の進行又は重症度が遅延、中断、抑止、制御、軽減、停止、低減又は逆転し得る、全てのプロセスを指すことが意図されるが、必ずしも全ての障害又は疾患症状の完全な除去を示すとは限らないことを意図している。治療は、患者、特にヒトにおける疾患、障害又は状態の治療のためのタンパク質又は核酸又はベクター又は組成物の投与を含む。治療は、エピレギュリン活性の低減から利益を得るヒトにおける疾患又は障害の治療のための本開示の抗体の投与を含み、当該治療は、(a)疾患の更なる進行を阻害すること、すなわち、その発症を抑止すること、(b)疾患を緩和すること、すなわち、疾患若しくは障害の退行を引き起こすこと、又はその症状若しくは合併症を軽減すること、及び/あるいは(c)症状の疾患の発症を予防することを提供することを含む。本明細書で定義され使用される治療は、疼痛の発生率の低減、疼痛又は疼痛の1つ以上の症状の寛解、疼痛又は疼痛の1つ以上の症状の緩和、疼痛の発症の遅延を明確に含む。いくつかの状況では、治療にはまた、疼痛の治療も含まれるが、必ずしも疼痛を引き起こす基礎疾患又は状態を改変しない。本明細書で使用される場合、「療法抵抗性疼痛」は、2つ以上の従来の単剤療法及び/又は二重療法治療レジメンに不応性である疼痛として定義される。
【0047】
本明細書で使用される疼痛の「発生率を低減すること」は、疼痛の持続時間及び/又は頻度を低減することのいずれかを意味する(例えば、個体における疼痛症状までの時間を遅延させるか、又は増加させることを含む)。当業者によって理解されるように、個体は、治療に対するそれらの応答に関して変動し得る。疼痛の治療にはまた、疼痛の重症度を低減すること、並びにこの状態に一般的に使用される他の薬物及び/又は療法(例えば、アヘン剤を含む)の必要性及び/又は量(例えば、それへの曝露)を低減することも含まれる。(変形性関節症疼痛などの)疼痛又は疼痛の1つ以上の症状を「寛解させること」とは、本開示の抗体又は組成物を投与しない場合と比較した場合の、疼痛の1つ以上の症状の減少又は改善を意味する。「寛解させること」には、症状の持続時間の短縮又は低減も含まれる。(変形性関節症疼痛などの)疼痛又は疼痛の1つ以上の症状を「緩和すること」とは、本開示による抗体又は組成物で治療された個体又は個体の集団における疼痛の1つ以上の望ましくない臨床徴候の程度を減少させることを意味する。本明細書で使用される場合、疼痛の発症を「遅延させること」とは、変形性関節症疼痛などの疼痛の進行を先送り、妨害、遅延、減速、安定化及び/又は延期することを意味する。この遅延は、病歴及び/又は治療される個体に応じて、様々な長さの時間であり得る。当業者に明らかであるように、十分又は有意な遅延は、個体が疼痛を発症しないという点で、事実上、予防を包含し得る。症状の発症を「遅延させる」方法は、方法を使用しない場合と比較して、所与の時間枠において症状が発症する可能性を低減し、かつ/又は所与の時間枠において症状の程度を低減する方法であり得る。そのような比較は、典型的には、統計的に有意な数の対象を使用した臨床研究に基づく。
【0048】
「有効量」とは、治療する医療関係者によって求められている、組織、系又はヒトの生物学的若しくは医学的応答、又はそれに対する所望の治療効果を誘発するであろう本開示の抗ヒトエピレギュリン抗体、又はそのような抗体を含む医薬組成物の量を意味する。本明細書で使用される場合、患者の「有効応答」、又は治療に対する患者の応答性という用語は、本開示の抗体投与時に患者に付与される臨床上又は治療上の利益を指す。抗体の有効量は、個体の病状、年齢、性別及び体重、並びに個体において所望の応答を誘発する抗体の能力などの因子に応じて変動し得る。そのような所望の応答には、慢性疼痛のレベルの低下又は疼痛障害の徴候若しくは症状の改善のうちのいずれか1つ以上が含まれる。有効量は、既知技術の使用によって、及び同様の状況下で得られた結果を観察することによって、当業者により容易に決定されることができる。本開示の抗ヒトエピレギュリン抗体の有効量は、単回用量又は複数回用量で投与され得る。更に、本発明の抗体の有効量は、一度だけ投与される場合、有効量未満である量の複数回用量で投与され得る。患者に対する有効量を決定する際に、患者の大きさ(例えば、体重又は質量)、体表面積、年齢及び一般的な健康状態、関与する特定の疾患又は障害、疾患又は障害の程度又は関与又は重症度、個々の患者の応答、投与される特定の化合物、投与様式、投与される製剤のバイオアベイラビリティ特徴、選択される投与レジメン、併用薬の使用、並びに担当医師に既知である他の関連する状況を含むがこれらに限定されない、いくつかの因子が、担当医師によって考慮される。(皮下、筋肉内及び/又は静脈内を含むがこれらに限定されない)用量は、約0.5mg/kg~約50mg/kgであり得る。しかしながら、特に当業者に既知である、かつ/又は本明細書に記載される投薬量の考慮事項を考慮して、本明細書に言及されている用量よりも少ない又は多い用量もまた想定される。治療中の患者の進行は定期的な評価によって監視され得、必要に応じて用量がそれに応じて調整される。
【0049】
本明細書に開示される方法の可能性のある利点は、慢性疼痛障害に罹患している患者において、又は耐容性、毒性、及び/若しくは抗薬物抗体応答を含む有害事象を含む許容される安全性プロファイルで、著しい及び/又は長期の緩和をもたらし、したがって患者が全体的な治療方法から利益を得る可能性である。より具体的には、本開示の抗体は、皮膚発疹(Li T,Perez-Soler R.Skin toxicities associated with epidermal growth factor receptor inhibitors.Target Oncol.2009 Apr;4(2):107-19)、及び/又は抗薬物抗体応答などの臨床的に望ましくない有害事象を回避しながら有効な治療を提供する。本開示の治療の有効性は、様々な疼痛障害の治療を評価する際に一般的に使用される様々なエンドポイントによって測定することができる。例えば、当業者に既知の評価を含む、本開示の任意の特定の療法の有効性を決定するための他のアプローチを任意選択で採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】抗体1(パネルA)及びLY3016859(パネルB)のリガンド選択性ELISA結果を示し、実施例2に記載のリガンド特異性ELISAにおいて決定されるように、ヒトエピレギュリンに対する抗体1の選択性を示すが、他のEGFファミリーリガンド(エピゲン、アンフィレグリン、ベータセルリン、EGF、HB-EGF及びTGFα(TGFA))に対しては明らかな結合がないことを実証する。比較すると、LY3016859は、エピレギュリン及びTGFαの両方に結合する。
図2】対照hIgG抗体(黒四角)と比較した場合の、抗体1(黒丸)の投与の3日後のインビボでの膜エピレギュリンの結合。
図3】対照hIgG抗体(白四角)と比較した場合の、抗体1(黒四角)の10mg/kgの皮下用量後のインビボでの膜エピレギュリンの前処理時間に依存した結合。
図4】エピレギュリン結合の効力が50分の1未満である比較抗体(白丸)と比較した場合の、抗体1(黒四角)の投与の3日後のインビボでの膜エピレギュリンの結合。
図5】エピレギュリンの示される変異に対する抗体1のFab結合のELISA評価。
図6】抗体1についてのヒトEGFRリガンドエピトープ(EGF様ドメイン)のアラインメント。リガンド配列は、アミノ酸及びヌクレオチド配列の配列表に提供される。
【実施例
【0051】
以下の実施例は、特許請求された本発明を説明するために提供され、これを限定するものではない。以下のアッセイの結果は、本開示の例示されるモノクローナル抗体及び/又はそれらの抗原結合フラグメントが、ヒトエピレギュリンに結合する、かつ/又はそれを中和し、したがって、本明細書に記載のエピレギュリン介在性障害の治療に使用され得ることを実証する。
【0052】
実施例1:抗体の生成、発現及び精製
ヒト抗エピレギュリン抗体のパネルを、組換えEREG(ヒト及びカニクイザル)でヒト化マウスを免疫化して、エピレギュリンシグナリングの中和に有効であり得る抗体を同定することによって得る。変異を各抗体の個々の相補性決定領域(CDR)に体系的に導入し、抗原濃度を低下させ、抗原会合までの時間を低下させ、かつ/又は解離期間を増加させながら、得られたライブラリーを複数ラウンドの選択に供して、親和性が改善されたクローンを単離する。個々のバリアントの配列を決定し、使用して、コンビナトリアルライブラリーを構築し、それを、ストリンジェンシーを高めながら追加ラウンドの選択に供して、個々のCDR領域間の相加的又は相乗的な変異のペアリングを特定する。個々のコンビナトリアルクローンを、配列決定し、結合特徴を決定する。このスクリーニングを、ヒト又はマウスエピレギュリンに対して行って、1つ以上の選択された種に対する親和性を増加させることができる(例えば、ヒトエピレギュリンに対する抗体1)。操作後の選択性を維持するために、他のEGFRリガンドに対してカウンタースクリーニングを行ってもよい。選択した抗体を変異誘発して、エピレギュリンに対する結合親和性を維持しながら、メチオニン酸化などの翻訳後改変を修復することもできる。追加的に、免疫原性リスクの可能性を低減するために、フレームワーク(framework、FW)及びCDR置換を抗体に対して行って、これらの配列をそれらの生殖系列状態に戻すことができる。
【0053】
本明細書で抗体1と称される、操作及び/又は最適化された抗エピレギュリン抗体が得られ、これは、重鎖及び軽鎖の可変領域のアミノ酸配列、完全な重鎖及び軽鎖アミノ酸配列、並びに以下の「アミノ酸及びヌクレオチド配列の配列表」と題するセクションに列挙されているものと同じものをコードするヌクレオチド配列を有する。これらの配列に対応する配列番号、並びに軽鎖及び重鎖のCDRアミノ酸配列を表1に示す。
【0054】
発現及び精製:
本開示の例示される抗エピレギュリン抗体は、本質的に以下のとおりに発現及び精製することができる。抗体1を、HEK293又はCHOなどの適切な宿主細胞において発現させ、当該細胞は、最適な所定のHC:LCベクター比を使用して抗体1を分泌するための発現系、又はHC及びLCの両方をコードする単一のベクター系で、一過性に又は安定的にのいずれかでトランスフェクトする。発現プラスミドは、抗体1のLC及びHC遺伝子のcDNAバージョン(例えば、表1に提示される例示される抗体1のHCをコードする配列番号11のDNA配列、及び表1によるLCアミノ酸配列をコードするDNA配列、例えば、表1に提示される例示される抗体1のLCをコードする配列番号12のDNA配列)を含有し、ヒトサイトメガロウイルスの主な前初期プロモータに基づくものなどの一般的に使用され、かつこの目的に好適な構築物から発現される。
【0055】
本発明の抗体が分泌された培地は、イオン交換及び疎水性相互作用クロマトグラフィーの混合様式方法などの従来の技術によって精製することができる。例えば、培地は、従来の方法を使用して、プロテインA又はプロテインGカラムに適用され、そこから溶離することができ、イオン交換及び疎水性相互作用クロマトグラフィーの混合様式方法もまた、使用することができる。可溶性凝集体及び多量体を、サイズ排除、疎水性相互作用、イオン交換、又はヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを含む一般的な技術によって効果的に除去し得る。生成物は、例えば、-70℃で直ちに凍結させても、冷蔵しても、又は凍結乾燥させてもよい。タンパク質精製の様々な方法が採用され得、そのような方法は、当該技術分野において既知であり、例えば、Deutscher,Methods in Enzymology 182:83-89(1990)、及びScopes,Protein Purification:Principles and Practice,3rd Edition,Springer,NY(1994)に記載される。抗体1は、-70℃で直ちに凍結させても、又は2~8℃で数か月間貯蔵しても、又は凍結乾燥させても、又は直ちに使用するために4℃で保存してもよい。本発明の例示されるヒト抗体のアミノ酸配列番号を、表1に示す。
【0056】
実施例2:抗エピレギュリン抗体の特徴付け
エピレギュリン試薬を、融合タンパク質として作製し、切断及び精製する。切断されたエピレギュリンは、天然型と比較して余分なアミノ酸を含む成熟可溶型であり、これをインビトロ結合及び中和アッセイに使用する(配列番号22~25)。ヒトエピレギュリン(EREG)融合物(配列番号27)もまた、結合アッセイ(捕捉試薬)に使用し、脱落を減少させる単一の変異を有する完全長エピレギュリン配列(配列番号26)を細胞ベースの結合及びエフェクター機能アッセイに使用する。
【0057】
成熟可溶性エピレギュリンを、一過性にトランスフェクトされたCHO細胞培養において、単量体ヒトIgG4 Fc(F405Q/Y407E)(配列番号27)上のHRV3Cプロテアーゼ切断可能C末端融合物として発現させる。融合タンパク質をプロテインA親和性カラムで捕捉し、サイズ排除クロマトグラフィーによって更に精製する。融合物をHRV3Cプロテアーゼで切断し、プロテインA親和性カラムに流して、単量体Fcを除去し、サイズ排除クロマトグラフィーによって更に精製して、成熟可溶性エピレギュリンを得る。
【0058】
抗原の配列:
切断されたヒトエピレギュリン(配列番号22)
GPGVSITKCSSDMNGYCLHGQCIYLVDMSQNYCRCEVGYTGVRCEHFFLG
【0059】
切断されたカニクイザルエピレギュリン(配列番号23)
GPGVSITKCNSDMNGYCLHGQCIYLVDMSQNYCRCEVGYTGVRCEHFYLG
【0060】
切断されたラットエピレギュリン(配列番号24)
GPGVLITKCSSDMDGYCLHGHCIYLVDMSEKYCRCEVGYTGLRCEHFFLG
【0061】
切断されたウサギエピレギュリン(配列番号25)
GPGVSITKCGSDMNGYCLHGQCIYLVDMSENYCRCEVGYTGVRCEHFFLG
【0062】
完全長ヒトエピレギュリン(T111P変異と結合した膜)(配列番号26)
MTAGRRMEMLCAGRVPALLLCLGFHLLQAVLSTTVIPSCIPGESSDNCTALVQTEDNPRVAQVSITKCSSDMNGYCLHGQCIYLVDMSQNYCRCEVGYTGVRCEHFFLTVPQPLSKEYVALTVILIILFLITVVGSTYYFCRWYRNRKSKEPKKEYERVTSGDPELPQV
【0063】
単量体Fcヒトエピレギュリン(配列番号27)
APEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFQLESRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGGGGGSGGGGSLEVLFQGPGVSITKCSSDMNGYCLHGQCIYLVDMSQNYCRCEVGYTGVRCEHFFLG
【0064】
様々な種からの成熟エピレギュリンの配列は、当該技術分野において一般的に既知であり、参照配列は、例えば以下のとおりである:成熟可溶性ヒトエピレギュリン参照配列(NP_001423.1 63-108)、成熟可溶性カニクイザル(本明細書においてcynoとも称される)エピレギュリン参照配列(XP_005555120.1 63-108)、成熟可溶性ラットエピレギュリン参照配列(NP_067721.1 56-101)及び成熟可溶性ウサギエピレギュリン参照配列(XP_008265968.1 57-102)。他のヒトEGFRリガンド参照配列番号は、以下のとおりである:ヒトTGFα(NP_003227.1)、EREG(NP_001423.1)、EPGN(NP_001257918.1)、AREG(NP_001648.1)、BTC(NP_001720.1)、EGF(NP_001954.2)、HB-EGF(NP_001936.1)。
【0065】
ヒトエピレギュリンに対する結合親和性
ヒト(配列番号22)、カニクイザル(配列番号23)、ラット(配列番号24)及びウサギ(配列番号25)エピレギュリンに対する抗体1の溶液相平衡結合親和性を、MSD溶液平衡滴定(MSD solution equilibrium titration、MSD-SET)アッセイによって37℃で測定する。(例えば、Darling RJ,Brault P-A(2005)Kinetic Exclusion Assay Technology:Characterization of Molecular Interactions.Assay and Drug Development Technologies 2:647-657を参照されたい。)
【0066】
MSD SI6000機器(Meso Scale Discovery、Rockville,MD)を使用してMSDプレートを読み取る。MSDアッセイプレートを、以下のように調製する。マルチアレイ96ウェルプレート(Meso Scale Discovery、P/N L15XA-3)を、PBS中の単量体Fc-ヒトエピレギュリン融合物の1μg/ml溶液30μlで、2~8℃で一晩コーティングする。コーティング後、プレートをPBSTで3回洗浄し、次いで3%ブロッカーA(5%ブロッカーA(Meso Scale Discovery、P/N R93AA-1)からPBS中で希釈)中で振盪しながら室温で1時間ブロッキングする。
【0067】
SET試料を、pH6.0及びpH7.4の1%ブロッカーA中で調製する。抗体を、20及び200pM(pH7.4)又は200pM及び2nM(pH6.0)のいずれかに希釈する。エピレギュリンを、抗体濃度の2倍付近を中心とした合計12回の希釈で連続希釈する。これは、10及び100nM(pH7.4)又は100nM及び1000nM(pH6.0)の開始濃度を使用することによって達成し、次いでこれを、1回10倍希釈し、9回2倍連続希釈し、次いで最終希釈のために10倍希釈する。エピレギュリン滴定及び固定濃度抗体溶液を、1:1で合わせて、SET溶液を調製する。SET溶液を、37℃で約96時間インキュベートして、結合を平衡に到達させる。
【0068】
100μlのSET溶液を、調製したMSDプレートの二連の列に移し、室温で10分間インキュベートして、遊離抗体を捕捉する。インキュベーション後、プレートをPBSTで3回洗浄し、次いで100μlの1%ブロッカーA中の1μg/mlビオチン化ヤギ抗ヒトカッパ一次抗体(Southern Biotech、カタログ2060-08)を全てのウェルに添加する。これを室温で60分間、プレートシェーカー上でインキュベートする。次いで、プレートをPBSTで3回洗浄し、次いで1%ブロッカーA中の1μg/ml SULFOストレプトアビジン(Meso Scale Discovery、P/N R32AD-1)100μlを全てのウェルに添加する。これを室温で30分間、プレートシェーカー上でインキュベートする。次いで、プレートをPBSTで3回洗浄し、次いで100μlの1X Read Buffer T(4X Read Buffer T(Meso Scale Discovery、P/N R93AA-1)から水に希釈)を添加した後、プレートを読み取る。未知の活性抗原画分を説明するための解離定数(K)及び最小公倍数(least common multiplier、LCM)リガンド補正係数を、非線形回帰を使用して、MSD-SETデータから平衡結合方程式に全体的に当てはめる。これを、所与のpHで固定抗体濃度の各ペアについて行う。
【0069】
pH7.4で、抗体1は、ヒトエピレギュリンに14.9pMの親和性(K)で結合し、カニクイザルエピレギュリンに26.8pMのKで結合し、ラットエピレギュリンに30.2pMのKで結合し、ウサギエピレギュリンに24.0pMのKで結合する。pH6.0で、抗体1は、ヒトエピレギュリンに195pMのKで結合し、カニクイザルエピレギュリンに328pMのKで結合し、ラットエピレギュリンに286pMのKで結合し、ウサギエピレギュリンに330pMのKで結合する。抗体1のpH選択性(pH6.0のK/pH7.4のK)は、ヒトエピレギュリンが13.0、カニクイザルエピレギュリンが12.2、ラットエピレギュリンが9.5、ウサギエピレギュリンが13.7である。pH依存性抗原結合は、薬物動態及び標的中和の持続時間の両方の改善を提供することができ(Vincent,K.J.and M.Zurini(2012).「Current strategies in antibody engineering:Fc engineering and pH-dependent antigen binding,bispecific antibodies and antibody drug conjugates.」Biotechnol J 7(12):1444-1450を参照されたい)、抗体1及び/又は本開示の抗体は、有用な薬物動態及びエピレギュリン中和特性を提供すると考えられる、エピレギュリン結合に対する有利なpH選択性を示す。
【0070】
【表3】
【0071】
結果を、3つの独立した複製からのKの平均として報告する。誤差推定値は、独立した複製の標準偏差として計算する。pH7.4でのヒトEREGに対する抗体1の親和性は、LY3016859と比較して、親和性において約70倍の改善となっており、これは、インビボで同等のEREG中和の達成に必要とされる抗体1の有意により低い用量をもたらし得る。より低い用量の抗体1を使用する能力は、必要な阻害がより少ない抗体で達成され得ることを意味し、結果として、この薬物製品は、静脈内投薬を必要とする抗体と比較して、到達性、耐容性、コンプライアンスのために臨床的に重要である皮下投与に受け入れられ得る。これは、本明細書に記載の慢性疼痛適応症に必要とされるような慢性投薬の文脈において特に有利である。
【0072】
抗体1のリガンド特異性:
EGFファミリーリガンドへの抗体結合の特異性は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)及び/又は当業者に周知の他の一般的な方法によって試験することができる。
【0073】
ELISA試薬の調製は、以下のように行うことができる。試験したリガンドは、ヒトエピゲン(R&D 6629-EP-025/CF)、エピレギュリン(本明細書の実施例2に記載のように、及び/又は当技術分野で既知の方法によって調製及び精製(配列番号22))、アンフィレグリン(R&D 262-AR-100/CF)、ベータセルリン(R&D 261-CE-010/CF)、EGF(R&D 236-EG-200)、HB-EGF(R&D 259-HE-050/CF)並びにTGFα(R&D 239-A-100)である。リガンドを、Thermo Pierce Sulfo-NHS-LC-ビオチン(A39257)を使用して、10倍過剰のビオチンで氷上で2時間ビオチン化し、次いで個別使用のための少量のアリコートで-80℃で凍結させる。
【0074】
ELISAアッセイは、以下のように実行することができる。Greiner96ウェル高結合プレート(650061)を、PBS中1μg/mlの50μl/ウェルのニュートラアビジン(Thermo-Pierce 31000)で、4℃で一晩コーティングする。コーティング溶液を翌日除去し、100μl/ウェルのPierce Blocker Casein(37528)を添加し、室温で30分間以上インキュベートして、プレートをブロッキングする。ブロッキング後、プレートをPBS+0.05%Tween20で3回洗浄して、残留ブロッキング緩衝液を除去する。ビオチン化リガンドを、リガンド当たり12ウェルにわたって20nMの一定濃度のPierce Casein Blocker中、別個のPCRプレート(Eppendorf 951020443)において希釈し、最後の列には抗原対照は入れない。リガンドを、ブロッキングしたアッセイプレートに移し、室温で1時間インキュベートする。アッセイプレートを、PBS+0.05%Tween20で3回洗浄する。試験される抗体を、Pierce Casein Blocker中、5μg/mL(LY3016859)又は10μg/ml(抗体1)で開始して、プレート(12ウェル)にわたって1:3希釈で連続希釈し、最終体積は50μl/ウェルとし、室温で1時間インキュベートする。アッセイプレートを、PBS+0.05%Tween20で3回洗浄する。抗ヒトカッパ-AP二次抗体(Southern Biotech 2060-04)を、PBS+0.05%Tween20中、1:2000希釈で50μl/ウェルで添加し、室温で1時間インキュベートする。アッセイプレートを、PBS+0.05%Tween20で3回洗浄する。最後に、50μlのpNPP基質(Sigma-Aldrich N2765)を添加し、十分な色が存在するまで発色させ、Molecular DevicesによるSpectramax Plus 384プレートリーダーで405nmで読み取る。
【0075】
図1は、抗体1のリガンド選択性のELISA結果を示す。抗体1は、上記のリガンド特異性ELISAにおいて決定されるように、ヒトエピレギュリンへの結合に対する選択性を実証するが、他のEGFファミリーリガンドエピゲン、アンフィレグリン、ベータセルリン、EGF、HB-EGF及びTGFαへの明らかな結合は実証しない。他のEGFファミリーリガンドではなく、エピレギュリンへの選択的かつ特異的な結合は、抗体1が、TGFα又は他のものなどの他のEGFファミリーリガンドに結合することの臨床的に望ましくない効果を回避しながら、エピレギュリンシグナリングを遮断する所望の効果を達成し得ることを示す。TGFαへの結合の欠如は、エピレギュリンを効果的に阻害するために必要とされる用量を低減し得る。この選択性は、汎EGFR阻害剤について観察されてきた皮膚発疹などの望ましくない臨床的有害事象を回避し得る。
【0076】
物理化学的属性:
化学的安定性、溶解性及び粘度を含む、治療用抗体製品属性に関して、抗体1は、ヒト治療薬として使用するための物理化学的属性の望ましい組み合わせを示す。
【0077】
安定性:
抗体1の安定性を、5mMヒスチジン(pH6.0)+280mMマンニトール+0.05%(w/v)ポリソルベート-80中に製剤化した高濃度(約100mg/ml)で評価する。濃縮試料を、5℃及び35℃で4週間の期間にわたってインキュベートする。インキュベーション後、試料を、サイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography、SEC)により高分子量の割合(percent high molecular weight、HMW%)について、キャピラリー電気泳動(CE-SDS)によりフラグメンテーションについて、及びLC-MSペプチドマッピングにより化学修飾(例えば、脱アミド化、異性化又は酸化)について分析する。35℃で4週間後、抗体1は、0.4%のΔHMW%(高分子量のパーセンテージにおける変化)、0.6%のΔフラグメント%(フラグメントのパーセンテージにおける変化)を示し、0.5%を超えるCDR化学修飾は示さなかった。
【0078】
同じ製剤化条件下での光安定性を、25℃で40ワット時/mUV光及び240klux時可視光の合わせた合計曝露によって評価する。インキュベーション後、試料を、SECによってHMW%について、及びLC-MSペプチドマッピングによって化学修飾について分析する。抗体1は、曝露されていない対照と比較して、SECによって測定される6.1%のΔHMW%を示し、0.7%を超えるCDR化学修飾は示さなかった。
【0079】
同じ製剤化条件下での凍結/解凍安定性を、-70℃に置かれた大量のバルク原薬の凍結/解凍条件を模倣する、3回繰り返される、緩慢な制御された温度サイクルを使用して評価する。抗体1は、3回の凍結解凍サイクル後に1.0%のSECによって測定されるΔHMW%を示した。
【0080】
これらの結果は、抗体1が、溶液製剤の開発及び治療薬としての使用を容易にするのに十分な、有利な物理的及び化学的安定性を有することを示す。
【0081】
溶解性:
溶解性は、100mgの抗体1を30kDaの分子量カットオフ遠心フィルター(例えば、Amicon U.C.フィルター、Millipore、カタログ番号UFC903024)で約0.5mlの体積に濃縮することによって評価する。Solo VPE分光光度計(C Technologies,Inc)を使用して、280nmでのUV吸光度によって、試料の最終濃度を測定した。
【0082】
抗体1は、5mMヒスチジンpH6緩衝液中で175mg/ml以上、PBS pH7.4中で168mg/ml以上の溶解性を示す。5℃又は-5℃で1週間貯蔵した後も、相分離又は寒冷沈降は観察されない。これらの結果は、抗体1が、高濃度投薬を可能にするのに十分な溶解性を示すことを示す。
【0083】
粘度
抗体1及びLY3016859の粘度を、VROC Initium(RheoSense)を使用して、約125mg/mlの濃度で、15℃で分析する。抗体1は、pH6の5mMヒスチジン+280mMマンニトール中133mg/mlで6.4cPの粘度を示し、LY3016859は、pH6の5mMヒスチジン+280mMマンニトール中132mg/mLで12.2cPの粘度を示した。これらの結果は、抗体1が、LY3016859と比較して低減した粘度、及び高濃度投薬を可能にするのに十分に低い粘度を示すことを示す。より高い濃度の抗体1を使用する能力は、より低い用量の必要性と組み合わせて、必要な有効用量が送達のためのより小さい体積で達成され得ることを意味し、それは、薬物製品が、皮下投与に受け入れられ得ることを意味し、これは、静脈内投薬を必要とする抗体でなければならない薬剤と比較して、到達性、耐容性、コンプライアンスのために臨床的に重要である。
【0084】
実施例3:抗エピレギュリン抗体のインビトロでの機能的特徴付け
インビトロでのエピレギュリンの中和:
抗体1などの本開示の抗体によるエピレギュリン活性の中和は、以下に記載されるようなエピレギュリン誘導性細胞ベースの応答アッセイのうちの1つ以上によって評価することができる。
【0085】
本開示の抗体を、2つの独立した機能アッセイにおいてエピレギュリン活性を中和する能力について試験する。本開示の抗体1によるエピレギュリン活性の中和は、以下に記載されるような受容体のEGFRファミリーの下流シグナリング経路を利用する1つ以上の細胞ベースの活性アッセイによって評価することができる。中和アッセイ(C166-AP1-Luc及びTGW-pERK)の平均半最大阻害濃度(IC50)の決定は、SigmaPlot又はGraphPad Prismで計算する。GraphPad Prismにおいて、IC50は、Log10形質転換抗体濃度の非線形回帰分析を実行することによって計算する。1つのプレートにわたって二連又は三連でのみ実行されるアッセイについて、IC50及び標準偏差(standard deviation、SD)は、各複製のIC50及び複製の平均IC50からのSDを計算することによって決定する。二連又は三連での様々なプレートにわたる化合物の分析のために、各プレートについてIC50を計算し、プレートにわたってSDを決定する。
【0086】
C166-AP1-ルシフェラーゼ機能アッセイにおけるエピレギュリン誘導性応答の阻害:
ヒトエピレギュリン誘導性ルシフェラーゼレポーター活性を中和する本開示の抗体の能力は、AP1活性化によって駆動されるルシフェラーゼレポーターを過剰発現するC166細胞(C166-AP1-Luc)において評価することができる。C166細胞は、最高レベルでEGFR発現を有する受容体の4つのEGFRファミリー全てを発現する内皮由来細胞株である。抗体1活性を試験するために、C166-AP1-Luc細胞を成長培地[DMEM(Gibco 12430-047)、10%FBS(Gibco 10082147)、Anti/Anti(Gibco 15240062)及び2μg/ml Puro(1000X 2mg/mlピューロマイシン塩酸塩(Calbiochem、カタログ番号540411)]中で成長させ、0.05%トリプシン-PBS中で解離させ、無血清培地(FBSを有しない成長培地)中、ウェル当たり50μlで組織培養処理96ウェルプレートに1ml当たり50,000細胞で播種する。細胞を、50μlの100ng/ml(16~18.5nM)最終濃度のエピレギュリン(本明細書に上記されるような、ヒト(配列番号22)、カニクイザル(配列番号23)、ラット(配列番号24)及びウサギ(配列番号25))並びに抗体1の濃度の連続希釈物で6時間処理する。インキュベーション後、細胞を、100μl Promega(商標)One-Glo(商標)Luciferase溶液(Promega(商標)、カタログ番号E6120)で3分間溶解する。発光を、Perkin Elmer Wallace 1420 Victor2(商標)マイクロプレートリーダーで読み取る。以下の表4に示す相対蛍光単位(relative fluorescence unit、RFU)の低減は、ヒト(配列番号22)、カニクイザル(配列番号23)、ラット(配列番号24)及びウサギ(配列番号25)を含む、試験した様々な関連する種のエピレギュリン活性を中和する抗体1の能力を反映している。ヒトエピレギュリンの中和における抗体1のIC50値は、8.7nM、SD2.3、n=5プレート、2~3複製/プレートである(表4)。関連する種にわたる中和は、カニクイザル(IC50 2.1nM、SD0.08、n=3複製)、ラット(IC50 2.5nM、SD0.27、n=3複製)、ウサギ(IC50 3.6nM、SD0.14、n=3複製)に対する試験によって実証される。LY3016859(国際公開第2012/138510号の抗体1)と比較した場合の抗体1のアッセイ検証及び低減したIC50を、LY3016859を用いたこのアッセイにおけるヒトエピレギュリンの中和と比較し、確認した(表4)。これらの研究で使用したヒト、ウサギ、カニクイザル及びウサギエピレギュリンは、本明細書に上記されるように生成した。LY3016895は、ヒトエピレギュリンを25.9nMのIC50、SD11.7、n=8プレート、2~3複製/プレートで、カニクイザル(IC50 8.6nM、SD0.27、n=2プレート、2~3複製/プレート)、ラット(IC50 720nM、SD10、n=2プレート、2~3複製/プレート)及びウサギ(IC50 11.0nM、SD1.15、n=2プレート、2~3複製/プレート)を中和することが実証された。エピレギュリン誘導性C166-AP1-Lucアッセイの統計的検証により、MSRは1.24、95%CIのMSR(MSR=最小有意比)は1.15、1.43、抗体1の効力分析は8.4+/-1.3と決定した。このアッセイは、抗体1によるエピレギュリン誘導性機能的細胞応答のインビトロ中和、及び様々な種由来のエピレギュリンの活性を阻害する能力、及びインビボでのエピレギュリンに対する抗体1の中和効果の可能性を実証する。
【0087】
【表4】
【0088】
ヒトエピレギュリンに対する中和については、抗体1については5枚のプレート、及びLY3016859については8枚のプレートにわたる複製からのIC50を平均することによって、平均及びSDを決定した。ラット、カニクイザル及びウサギエピレギュリンに対する中和については、各種について1つのプレートから三連のIC50を平均し、抗体1のSDを決定した。ラット、カニクイザル及びウサギエピレギュリンに対する中和については、LY3016859の2つの異なるプレートにわたる二連のIC50を平均することから、IC50を生成した。
【0089】
表4のデータは、抗体1が、上記のC166-AP1-Luc細胞ベースのアッセイにおいて、ヒトエピレギュリン誘導性ルシフェラーゼレポーター活性を効果的に中和することができ(IC50=8.7nM)、LY3016895(IC50=25.9nM)よりもIC50が約3倍低いことを実証する。エピレギュリンの関連する種に対する交差反応性を、ラット(IC50=2.5nM)、カニクイザル(IC50=2.1nM)及びウサギ(IC50=3.6nM)エピレギュリンに対する中和を試験することによって確認した。これらのデータは、ヒトエピレギュリン介在性シグナリングを中和し、エピレギュリン介在性シグナリングが疼痛障害、並びに特にOA、DPNP及びCLBPなどの病因に寄与するヒト疾患を治療する、抗体1の能力を支持する。
【0090】
C166-AP1-Lucアッセイにおけるエピレギュリン中和に対する抗体1の選択性:
エピレギュリンの中和に対する抗体1の選択性は、C166-AP1-Lucアッセイにおいて7つのEGFRリガンド(エピゲン、TGFα、BTC、EGF、HB-EGF、エピレギュリン及びアンフィレグリン)全ての活性を試験することによって、更に実証することができる(リガンドは、例えば、R&D systemsから、エピレギュリン番号1195-EP-CF、ベータセルリン番号261-CE-CF、EGF番号236-EG-CF、TGFα番号239-A-CF、HB-EGF番号259-HE-CF、エピゲン番号6629-EP-CF及びアンフィレグリン番号262-AR-CFで購入することができる)。これらの7つのEGFRリガンドは、リガンドに応じてルシフェラーゼ活性の2~5倍の増加を伴うAP1活性化を実証する。EGFRリガンドのEC50は、本明細書に上記されるように、C166-AP1-Luc細胞株において各リガンドの用量応答を実行することによって決定する。刺激のためのリガンド濃度を、各リガンドのEC50-EC80を使用することによって決定する(ベータセルリン0.8nM、EGF 1.3nM、TGFα 2.5nM、HB-EGF 0.52nM、エピレギュリン16nM、エピゲン333nM及びアンフィレグリン181nM、エピゲン及びアンフィレグリンは、曲線上のプラトーの欠如のために推定上のEC50であった)。抗体1は、8.7nMのIC50でC166-AP1-Luc細胞においてエピレギュリン誘導性ルシフェラーゼ活性を中和する能力を実証し、対照的に、C166-AP1-Lucアッセイにおいてベータセルイン、EGF、TGFα、HB-EGF、エピゲン又はアンフィレグリン誘導性ルシフェラーゼ活性の阻害は実証しない(以下の表5を参照されたい)。表5のデータはまた、エピレギュリンの活性は特異的に中和するが、他のファミリーメンバーであるベータセルリン、EGF、TGFα、HB-EGF、エピゲン及びアンフィレグリンの活性は中和しないという、抗体1の薬理学的選択性も支持する。この選択性は、抗体1が、エピレギュリン応答に選択的に介入し、したがって、他のEGFRリガンドを遮断し得るLY3016859などの特異性がより低い薬剤によって生じ得る有害作用の可能性を回避すると予想されるという点で重要である。
【0091】
【表5】
【0092】
TGW神経芽細胞腫細胞株においてエピレギュリン誘導性応答を中和する抗体1の能力:
エピレギュリン中和を、TGW神経芽細胞腫細胞株におけるエピレギュリン誘導性ERKリン酸化を測定することによって更に評価する。TGW細胞は、受容体のEGFRファミリーの4つ全てを発現し、EGFR発現は、最高レベルである。このアッセイにおいて、TGW細胞を、成長培地[NAPYR(Gibco番号11995-065)、1X NEAA(Gibco番号11140-050)、Glutamax(Gibco番号35050-061)及び1X Anti-Anti(Gibco番号15240-062)を有するDMEM高グルコース]中、コラーゲン1コーティングプレート上で成長させる。細胞を、0.05%トリプシン-PBS中で解離させ、96ウェルのコラーゲン1コーティング96ウェルプレート(Corning番号354407)中、100,000細胞/100μlで無血清培地(FBSを0.1%BSAで置換した成長培地)に播種する。TGW細胞において、エピレギュリン処理(80ng/mlで5分間)は、非刺激細胞と比較して、ERK(Meso Scale Diagnostics,LLC、Phospho-ERK1/2 Whole Cell Lysate Kit#K151DWD)の5倍を超えるリン酸化の増加を誘導する。ホスホ-ERK活性化を、化学発光誘導によって決定し、相対蛍光単位(RFU)として示す。抗体1の中和は、細胞の刺激前に20分間連続希釈した抗体1とともにヒトエピレギュリンをインキュベートすることによって決定する。Meso Scale Diagnostics SECTOR Imager上でプレートを読み取ることによって、データを得る。抗体1処理によるエピレギュリン誘導性ホスホル-ERK1/2シグナルの低減を、表6に示し、これは、抗体1がヒトエピレギュリンを中和する能力を反映している。TGW細胞におけるヒトエピレギュリン誘導性pERK誘導の中和における抗体1のIC50値は、3.4nM、SD0.7(n=2複製)であることが観察され、これは、IC50が14.6nM、SD0.7(n=2複製)であるLY3016859よりも低い。表6のデータは、抗体1が、TGW細胞におけるヒトエピレギュリン誘導性ホスホル-ERK1/2活性化を遮断する能力の証拠を提供する。このデータは、独立した読み出しを有する2つの異なる細胞株を利用して、本開示の抗体、及び特に抗体1がヒトエピレギュリンを中和する能力を実証し、慢性疼痛障害などのエピレギュリン介在性障害の治療におけるこれらの抗体の治療用途を支持する。
【0093】
【表6】
【0094】
実施例4:CD-1マウスにおいて誘発された接触性アロディニアにおけるエピレギュリンのインビボ機能的特徴付け
生物学的に活性な分子であるエピレギュリン及びTGFαが接触性アロディニアを誘導する能力は、足底内注射後の雄CD-1マウスにおいて評価することができる。マウスを、温度及び光が制御された動物施設において、実験前の少なくとも7日間、水及び食物を自由に与えて順応させる。試験日に、動物を試験室に運び、ホームケージで20分間順応させた後、高架金属メッシュ床上の透明プラスチックチャンバーに入れ、1時間順応させる。機械的刺激に対する足引っ込め応答は、金属メッシュ床の開口部を介してケージの下から、後足の足底表面に適用した較正済みvon Freyフィラメントを使用することによって決定する。測定は、上げ下げ試験パラダイムにおいてvon Freyフィラメントを使用して達成する。8つの段階的なフィラメントの力の範囲は、0.04g~6gである。足引っ込め閾値を測定し、計算する。足引っ込め閾値のベースライン値に基づいて、動物を投薬群に無作為化し、これらは、PBS、エピレギュリン30ng、エピレギュリン300ng、TGFα 30ng又はTGFα 300ngであり、(マウスエピレギュリン(配列番号28)及びマウスTGFα(配列番号29)試薬は、本明細書に記載のように調製したもの、又はTGFαについてはHisタグ付き及び標準的なクロマトグラフィー技術(固定化金属イオン親和性クロマトグラフィー若しくはIMAC、続いてサイズ排除クロマトグラフィー又はSEC)によって精製したものとして調製したものである。次いで、動物は、PBSの20μl溶液、又は新鮮な希釈エピレギュリン若しくはTGFαの後足の足底内注射を受ける。足引っ込め閾値を、注射後2時間及び4時間の時点で評価する。データを以下の表7に示す。
【0095】
【表7】
【0096】
TGFαと比較した場合のエピレギュリンの効果を上記の表7に示し、この疼痛モデルにおいて、エピレギュリンは引っ込め閾値の低減によって示されるような疼痛応答を誘導するが、TGFαは誘導しないことを示す。抗体1は、エピレギュリン及びTGFαの両方を認識するLY3016859と比較して、より選択的かつ特異的な疼痛治療薬を具体化すると考えられ、本開示の抗体1によるTGFαへの結合の欠如は、オフターゲット効果の回避、免疫原性の低減、及び治療用途に必要とされ得る用量の改善又は低下に関して有利であると考えられる。
【0097】
実施例5:抗体1の免疫原性の可能性の特徴付け
抗体1は、以下の知見によって支持されるように、ヒトエピレギュリンに対する増強された親和性、他のEGFRリガンドと比較した場合のエピレギュリンに対する改善された特異性、及びLY3016859と比較して改善された生物物理学的特性、及び完全ヒト配列(これらのうちの後者は、低減した免疫原性の可能性を提供すると考えられる)を含む、いくつかの組み合わされた点において改善された治療用抗体となっている。
【0098】
樹状細胞(Dendritic Cell、DC)内在化アッセイ
単球由来DC培養(Monocyte-derived DC Culturing、MDDC)
標準プロトコルに従って、CD14+単球を末梢血単核細胞(periphery blood mononuclear cell、PBMC)から単離させ、培養し、DCに分化させる。手短に言うと、LRS-WBCからFicoll(#17-1440-02、GE Healthcare)及びSepmate 50(#15450、STEMCELL Technologies)による密度勾配遠心分離を使用してPBMCを単離する。製造元のマニュアルに従って、CD14+マイクロビーズキット(#130-050-201、Miltenyi Biotec)による陽性選択を使用してCD14+単球を単離する。次いで、1000単位/mlのGM-CSF及び600単位/mlのIL-4とともに、細胞を100万/mlで6日間培養して、L-グルタミン及び25mMのHEPESを添加し、10%FBS、1mMのピルビン酸ナトリウム、1×ペニシリン-ストレプトマイシン、1×非必須アミノ酸、及び55μMの2-メルカプトエタノールを補充したRPMI培地(以下、Life Technologiesから購入した完全RPMI培地又は培地と呼ぶ)中で未成熟樹状細胞(MDDC)に誘導する。培地を2日目及び5日目の2回変える。6日目に、セルスクレーパーで細胞を静かに収集し、実験に使用する。MDDCを、顕微鏡による樹状形態、及びフローサイトメトリーによるCD14、CD11c、及びHLA-DRの発現について視覚的に特徴付ける。LPS処理に応答する能力は、フローサイトメトリーを使用してCD80、CD83、及びCD86の増加を測定することによって確認される。
【0099】
Fab-TAMRA-QSY7の結合
F(ab’)2フラグメントヤギ抗ヒトIgG(Jackson ImmunoResearch)をQSY7-NHS及びTAMRA-SE(Molecular Probes)で二重標識して、試験物質の内在化を追跡するためのユニバーサルプローブとして使用するFab-TAMRA-QSY7を得る。F(ab’)2(1.3mg/mlで約1ml)の各バイアルを、Amico Ultra-0.5遠心フィルター装置(#UFC501096、Millipore)を使用して14,000rcfで2分間遠心分離することにより、約2mg/mlに濃縮する。pHを10%(v/v)1M重炭酸ナトリウムで塩基性(>pH8)に調整し、DMSO中10mMのQSY-NHS保存液6.8μlを添加し、混合する。反応バイアルを室温で30分間暗所に保つ。中間生成物であるFab-QSY7を、Zeba Spin脱塩カラム(#89890、Thermo Scientific)を用いて、相対遠心力(relative centrifugal force、RCF)1000で2分間遠心分離することにより精製する。NanoDrop(ThermoFisher)で280nm及び560nmの吸光度を測定することにより、濃度及び標識度(degree of labeling、DOL)を計算する。次いで、再びAmico Ultra-0.5遠心フィルター装置を用いて14,000rcfで2分間遠心分離することにより、Fab-QSY7を約2mg/mlに濃縮する。10%(v/v)1M重炭酸ナトリウムでpHを調整した後、DMSO中の15mMのTAMRA-SE保存液4.3μlを添加して混合する。室温の暗所で30分の後、最終生成物Fab-TAMRA-QSY7を精製し、1000rcfで2分間遠心分離することによりZeba Spin脱塩カラムを使用して収集する。NanoDrop分光光度計で280nm、555nm、及び560nmの吸光度を読み取ることにより、濃度及びDOLを再度定量化する。このプロトコルを使用すると、F(ab’)2当たり約2つのQSY7と2つのTAMRAと、を含む約1.5mg/mlのFab-TAMRA-QSY7を約300μlが得られる。
【0100】
FACSによる標準化内在化試験
個々の試験分子をPBSで1mg/mlに正規化し、次いで完全RPMI培地で更に8μg/mlに希釈する。Fab-TAMRA-QSY7を完全RPMI培地で5.33μg/mlに希釈する。抗体とFab-TAMRA-QSY7とを等量で混合し、複合体形成のために暗所で、4℃で30分間インキュベートする。MDDCを完全RPMI培地に400万/mlで再懸濁し、抗体/プローブ複合体50μlを添加した96ウェル丸底プレートにウェル当たり50μlで播種する。細胞をCOインキュベーターで、37℃で24時間インキュベートする。細胞を2%FBS PBSで洗浄し、Cytox Greenの生/死色素を含む100μlの2%FBS PBSに再懸濁する。BD LSR Fortessa X-20でデータを収集し、FlowJoで分析する。生単一細胞をゲーティングし、TAMRA蛍光陽性細胞の割合を読み出しとして記録する。
【0101】
データ表示及び統計分析
分子は、二連又は三連で、3人以上のドナーに対して試験する。各ドナーについて、TAMRA陽性集団の割合を考慮する。異なるドナーから生成されたデータを有する分子の比較を可能にするために、正規化された内在化指数(NII)が使用される。内在化シグナルは、次の式を使用してIgG1アイソタイプ(NII=0)及び内部陽性対照PC(NII=100)に対して正規化する。
【0102】
【数1】

ここで、XTAMRA、IgG1アイソタイプTAMRA、及びPCTAMRAは、それぞれ試験分子X、IgG1アイソタイプ、及びPCのTAMRA陽性集団の割合である。データは、JMP(登録商標)14.1.0又はGraphpad Prism 8.1.2で分析する。TAMRA陽性集団の割合の平均及びNIIを計算し、報告する。DCなどの抗原提示細胞における内在化の増加は、免疫原性のリスクの増加と関連している。表9の結果は、LY3016859と比較した場合の抗体1のDC内在化の低下、したがって、免疫原性リスクの低下を実証する。
【0103】
【表8】
【0104】
(例えば、Wen,Y.,Cahya,S.,Zeng,W.et al.Development of a FRET-Based Assay for Analysis of mAbs Internalization and Processing by Dendritic Cells in Preclinical Immunogenicity Risk Assessment.AAPS J 22,68(2020)を参照されたい)
【0105】
MAPPアッセイ(MHC関連ペプチドプロテオミクス)方法:
10人の正常なヒトドナーからの初代ヒト樹状細胞を、記載のように、CD-14陽性細胞の単離によってバフィーコートから調製し、5%血清置換物(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号A2596101)を含有する完全RPMI培地中で20ng/ml IL-4及び40ng/ml GM-CSFとともに、37℃、5%COで3日間インキュベートすることによって、未成熟樹状細胞に分化させた(Knierman et al.,「The Human Leukocyte Antigen Class II Immunopeptidome of the SARS-CoV-2 Spike Glycoprotein」,Cell Reports,33,108454(2020))。4日目に3マイクロモルの試験抗体を約5×10細胞に添加し、細胞を成熟樹状細胞に形質転換するために、5mg/mlのLPSを含有する新鮮な培地を5時間のインキュベーション後に交換する。翌日、成熟細胞をプロテアーゼ阻害剤及びDNAseを含む1mlのRIPA緩衝液中で溶解する。ライセートを、試料分析まで-80℃で貯蔵する。
【0106】
自動液体処理システムを使用して、ビオチン化抗汎HLAクラスII抗体(クローンTu39)を使用し、解凍したライセートからHLA-II分子を単離する。結合した受容体-ペプチド複合体を、5%酢酸、0.1%TFAで溶出する。溶出したMHC-IIペプチドを、高分子量タンパク質を除去するために、事前に洗浄した10k MWCOフィルターに通す。単離MHC-IIペプチドは、Thermo LUMOS質量分析計を備えたThermo easy 1200 nLC-HPLCシステムを使用して、ナノLC/MSによって分析する。この分離では、75μm×7cmのYMC-ODS C18カラムを使用し、流速250nL/分、並びにA溶媒として0.1%ギ酸水溶液、及びB溶媒として0.1%ギ酸を有する80%アセトニトリルで、65分間の勾配を行った。質量分析は、解像度240,000のフルスキャン様式で実行し、続いてHCD及びEThcDフラグメンテーションによるイオントラップ型ラピッドスキャンで構成される3秒のデータ依存型MS/MSサイクルを実行する。
【0107】
ペプチドの同定は、試験抗体配列を含有するウシ/ヒトデータベースに対する酵素検索パラメータのない複数の検索アルゴリズムを使用して、内部プロテオミクスパイプライン(Higgs et al.,「Label-free LC-MS method for the identification of biomarkers」,Methods in Molecular Biology,428,209-230(2008))によって生成する。KNIMEワークフローを使用して、試料の同定ファイルを処理する。試験物質から同定されたペプチドを、親配列に対して整列させる。非生殖系列残基を提示するドナーの割合、非生殖系列残基を有するペプチドを提示する異なる領域の数、及び非生殖系列残基を有する各領域でのペプチド提示の深さを注釈する全てのドナーの要約を作成する。非生殖系列ペプチドの提示の程度の増加は、免疫原性のリスクの増加と関連している。表8の結果は、LY3016859と比較した場合の、抗体1に対する非生殖系列ペプチドの提示の低下、したがって抗体1に対する免疫原性のリスクの低下を示す。
【0108】
【表9】
【0109】
実施例6.ラットにおける投薬後のインビボでの膜エピレギュリンへの結合の実証。
エピレギュリンは、膜結合型、及びADAM(A disintegrin and metalloprotease、Aディスインテグリン及びメタロプロテアーゼ)プロテアーゼによる膜型の切断で生じる可溶型の両方で存在する。本開示の抗体が、例えば、皮下注射による末梢投薬後にインビボで膜型のエピレギュリンに結合する能力は、エクスビボで組織を単離し、続いて本明細書に記載に記載の及び/又は当業者に既知の標準的な免疫蛍光染色法を適用することによって評価することができる。ラット舌の上皮層の陽性及び特異的免疫蛍光標識は、抗体1を用いて実証することができる。
【0110】
ラット舌は、安楽死させた雄Sprague Dawleyラット(体重140~215グラム)から、抗体1を含む試験される抗体、又は対照若しくは比較抗体の様々な用量(0.1~100mg/kg、皮下)の後、投薬後の様々な時間(投薬後3~28日)に得、ドライアイス上で急速冷凍することができる。舌組織の凍結冠状20ミクロン切片を解凍し、PBS中で3分間洗浄し、4%パラホルムアルデヒド中で10分間固定する。スライドをSuper Sensitive Wash Buffer(HK583-5K、Biogenex)中で洗浄し、次いでPower block(HK065-5K、Biogenex)+0.1%Triton x-100で10分間ブロッキングする。次いで、スライドを洗浄し、Alexa Fluor 488ヤギ抗ヒトIgG(A11013、Life Technologies、13.3μg/ml)、並びに抗体1の可変領域(配列番号3及び4)及びマウス定常領域(DyLight 650標識)を有する、本明細書で「抗体1 VRキメラ」(配列番号64及び65)と称される標識ヒト/マウスIgG1キメラとともに、室温で15分間インキュベートする。スライドを3回洗浄し、Prolong金退色防止試薬をカバーガラスの前に適用する。各動物からの488及び650nm波長での蛍光画像を、Keyence BZ800を利用して、全ての画像について同じ露光設定を使用して撮影する。陽性に染色された上皮層内の緑色又は赤色シグナルを、ImageJ-Win64ソフトウェアを利用して、4つの無作為な対象領域を取ることによって平均強度について定量化する。緑色シグナルは、結合した抗体1、又は対照抗体、又は参照比較抗体(インビボで投薬)から生じ、赤色シグナルは、未結合のエピレギュリンであり、検出抗体は、結合した薬物と競合し、未結合の遊離エピレギュリンのみを染色する。得られたデータを、Alexa Fluor 488ヤギ抗ヒトIgGシグナル(緑色)の、残りの抗体1 VRキメラシグナル(赤色)に対する比を利用することによって正規化する。
【0111】
図2は、抗体1を1mg/kg以上の用量で投薬した3日後に、膜エピレギュリンの結合の有意な用量依存的増加がインビボで観察されることを示す。図3は、10mg/kgの抗体1の単回投与後、少なくとも14日間、インビボで膜エピレギュリンの持続的な結合があることを示す。
【0112】
図4は、抗体1について、エピレギュリン結合の効力が50分の1未満である比較抗体と比較して、インビボでの結合した膜エピレギュリンの程度がより高いことを実証する。図4は、抗体1の親和性の改善はまた、インビボでの膜結合エピレギュリンリガンド結合の改善にもつながることを示す。
【0113】
実施例7:抗体1のエピトープマッピング
抗体1は、他のEGFRリガンドファミリーメンバーに関して高い親和性及び選択性、並びに有利なエピレギュリン中和活性及び薬物動態特性で、EGFRリガンドファミリーメンバーエピレギュリン(EREG)に選択的に結合し、それを中和するヒトIgG4抗体である。これらの特性は、本明細書に記載の追加の安定性及び粘度及び溶解性特性とともに、改善された属性と、EREG活性を中和する有利な治療薬との組み合わせを有する抗体をもたらす。エピトープマッピング研究を実施して、抗体1の結合及び特異性に必要なヒトEREG中の特定のアミノ酸を決定した。重要なアミノ酸を、抗体1 Fab/EREG複合体の結晶構造から同定し、これらのアミノ酸の寄与を、変異誘発及び結合研究を介して更に特徴付けた。これらのアミノ酸の寄与は、他のEGFRリガンドファミリーメンバーと比較して、EREGに対する抗体1の特異性の構造基盤を提供する。これらの結果により、関連する前臨床種における交差反応性及び選択性についての情報が得られる。
【0114】
試験物質の配列を、アミノ酸及びヌクレオチド配列の配列表に提供し、以下のように相互参照する:ヒトEREG(配列番号21)、抗体1 Fab HC(配列番号62)、抗体1 Fab LC(配列番号63)、モノFcヒトEREG(配列番号27)、モノFcヒトEREG E95H(配列番号57)、モノFcヒトEREG E95A(配列番号56)、モノFcヒトEREG H78N(配列番号55)、モノFcヒトEREG H78A(配列番号54)、モノFcヒトEREG F106K(配列番号61)、モノFcヒトEREG F106A(配列番号60)、モノFcヒトEREG Y98A(配列番号58)、モノFcヒトEREG L77F(配列番号53)、モノFcヒトEREG R102A(配列番号59)。
【0115】
抗体1 Fabフラグメント及びヒトEREGの両方を、一過性CHO発現において産生し、標準的な技術によって精製した。30%モル過剰のEREGを抗体1 Fabに添加することによって複合体を調製し、次いでサイズ排除クロマトグラフィーによって精製して、過剰な遊離EREGを除去した。EREGに対する抗体1 Fab結合を、まずウェスタンブロット分析によってプローブし、抗体1 Fabが、このアッセイにおいて、変性、非還元EREGは認識できるが、変性、還元EREGは認識できないことを示した。これは、EREGジスルフィド結合に依存する立体構造エピトープを強く示唆する。
【0116】
ヒトエピレギュリンに結合した抗体1のFabフラグメントの結晶構造
ヒトエピレギュリンに結合した抗体1のFabフラグメントの結晶構造を解析した。複合体を結晶化させ、1.8Å構造を、Phaser 2.8.3を使用して分子置換によって解析し、その後、Refmac 5.8.0258で精密化した。結晶において、抗体1 Fab’は、エピレギュリン二量体の反対面に結合する。エピレギュリンLeu77及びHis78側鎖は、エピトープの中心にあり、Leu77は、疎水性ポケットに埋もれており、His78側鎖は、水素結合のネットワークの中心にある。抗体1重鎖Arg50側鎖は、重鎖Tyr52側鎖ヒドロキシルに対する水素結合供与体であり、重鎖Tyr52側鎖ヒドロキシルは、脱プロトン化His78側鎖Nδ1水素結合受容体に対する水素結合供与体であり、プロトン化His78側鎖Nε2は、水分子に対する水素結合供与体であり、この水分子は、重鎖Leu109及び軽鎖Tyr107骨格カルボニルに対する水素供与体である。抗体1残基は、IMGT規約によって番号付けする。追加の同定されたエピトープ接触には、Glu95、Tyr98、Arg102及びPhe106側鎖、並びにLeu77、Val96及びGlu104骨格が含まれる。構造は、抗体1エピトープが立体構造的であり、線状ではないことを明確に実証し、上記のウェスタンの結果を確認する。
【0117】
抗体1 Fabを用いた変異体エピレギュリンELISA
結合及び選択性の両方に対するそれらの相対的寄与を理解するために、重要なエピトープ残基を点変異誘発によって更に特徴付けた。モノFc EREG融合物(上記を参照されたい)をPBS中で1μg/mLに希釈し、100μLを各ウェルに添加して、ELISAプレート(Greinerカタログ番号655061)を5℃で一晩コーティングした。バリアントをプレート上のカラムによってグループ分けし、野生型を3つの複製カラムにコーティングし、点変異体を単一の複製カラムにコーティングした。コーティング後、プレートを、200μLのPBSTでウェル当たり3回洗浄し、次いでカゼインブロッキング緩衝液(Thermoカタログ番号37528)を使用してプレートシェーカー上、室温で1時間ブロッキングした。ブロッキング後、プレートを前回と同様に洗浄した。抗体1 Fabフラグメントを、カゼインブロッキング緩衝液中で1μg/mLに希釈し、次いでブロッキング緩衝液中で3倍連続希釈して、合計7つの濃度とし、ブロッキング緩衝液をブランクとした。Fab希釈系列を、調製したELISAプレートにウェル当たり100μLで添加し、プレートシェーカー上で室温で1時間インキュベートした。プレートを前回と同様に洗浄し、次いでブロッキング緩衝液中で1:8,000に希釈した100μLのヤギ抗ヒトカッパHRP二次抗体(Southern Biotechカタログ番号2060-05)を各ウェルに添加した。プレートを、二次抗体とともに室温で1時間プレートシェーカー上でインキュベートし、次いで前回と同様に洗浄した。TMB基質を調製し(カタログ番号34021)、100μLを全てのウェルに添加した。プレートを室温で3~5分間静的にインキュベートし、次いで100μLの1N HClを全てのウェルに添加して、反応を停止させた。プレートを、プレートリーダーで450nmで読み取った。ブランクについて減算したELISAデータを、抗体濃度をX軸及びOD450をY軸として、GraphPad Prism 9にプロットした。非線形回帰を使用して、データを「S字形、4PL、Xは濃度である」モデルに当てはめることによって、曲線を生成した。
【0118】
点変異体を、プレート上にコーティングされたエピレギュリン変異体を用いたELISAによって評価し、抗体1 Fab希釈系列を添加し、シグナルを、抗カッパ二次体によって測定した(図5を参照されたい)。Y98Aを除いて、全ての変異体は、減少した結合を示した。H78Aは、結合をほぼノックアウトし、Y98Aは、試験した濃度で検出可能な結合を示さなかった。
【0119】
モノFcヒトEREG変異体に対する抗体1 Fabフラグメント結合のSPR分析
Biacore 8K機器及び試薬(Cytiva)を使用して、両方のモノFcヒトEREG変異体に結合する抗体1 FabフラグメントのSPR分析を行った。低レベルのモノFcヒトEREG変異体を、アミンカップリングキット(Cytiva P/N BR100050)及びBiacore 8K制御ソフトウェアにおける「低レベルCM5カップリング」法を使用して、CM5 Sシリーズセンサーチップ(Cytiva P/N BR100530)の試料フローセル(Fc2)中に固定化した。泳動緩衝液は、1X HBS-EP+pH7.4(20X HBS-EP+、Teknova P/N H8022から調製)又は1X MBS-EP+pH6.0(10mM MES+150mM NaCl+3mM EDTA+0.05%Tween20)であり、泳動温度は37℃であった。Biacore実験を、3つの独立した実験において、各独立した実験内の各希釈物の単一の複製を用いて実施した。Biacore Insight Evaluation Version 3.0(Cytiva)を用いて、「1:1結合」動態モデル(EREGバリアント)又は「定常状態親和性」モデルのいずれかを使用して、参照について減算し、ブランクについて減算したSPRデータを分析して、KD値を決定した。
【0120】
抗体1 Fabを泳動緩衝液中で300nM(pH7.4)又は900nM(pH6.0)に希釈し、次いで3倍連続希釈して、合計7つの希釈とした。Fabを全てのフローセルに240秒間注入し、続いて50μL/分の流速で1800秒間の解離を行った。チップ表面を、7Mグアニジンを100μL/分で2×30秒注入して再生した。参照について減算したデータを、8つのチャネルの各々において、試料フローセルマイナス参照フローセル(Fc2-Fc1)として収集し、次いで参照について減算したデータを緩衝液ブランクについて減算した。
【0121】
変異体のサブセットの結合親和性を、37℃でBiacoreによって測定した。結果を、3つの独立した複製測定の平均±標準偏差として表9に報告する。「rel」は、野生型(wild type、wt)に対する相対値を示す。
【0122】
【表10】
【0123】
表9の結果は、pH7.4で、R102Aに対する3倍から、F106Kに対する1000倍超までの、変異体に対する様々なより弱い親和性を示す。
【0124】
ヒトEGFRリガンドエピトープアラインメント
EGFRリガンド配列アラインメント(図6)の文脈において、このデータは、E95及びF106が、EREG選択性にとって重要なエピトープ位置であることを示す。100%保存されたY98及びR102位は、結合には重要であるが、選択性には寄与していない。L77及びH78もまた、結合にとって重要であり、選択性に影響を与えるが、それらは、EGFRリガンドにわたって高度に保存されており、したがってEREG特異的ではない。これらの結果により、EREGに対する抗体1の結合及び優れた選択性についての構造基盤が実証されるだけでなく、エピトープマッピング研究からのリガンド及び種選択性についての情報も得られる。
【0125】
アミノ酸及びヌクレオチド配列の配列表
抗体1の重鎖(配列番号1)
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSYYWSWIRQPAGKGLEWIGRIYPSGNTNYNPSLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARGGLVMDVWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG
【0126】
抗体1の軽鎖(配列番号2)
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVEFSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCHQYGTNPFTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0127】
抗体1のHCVR(配列番号3)
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSYYWSWIRQPAGKGLEWIGRIYPSGNTNYNPSLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARGGLVMDVWGQGTLVTVSS
【0128】
抗体1のLCVR(配列番号4)
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVEFSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCHQYGTNPFTFGQGTKVEIK
【0129】
抗体1のHCDR1(配列番号5)
TVSGGSISSYYWS
【0130】
抗体1のHCDR2(配列番号6)
RIYPSGNTN
【0131】
抗体1のHCDR3(配列番号7)
ARGGLVMDV
【0132】
抗体1のLCDR1(配列番号8)
RASQSVEFSYLA
【0133】
抗体1のLCDR2(配列番号9)
YGASSRAT
【0134】
抗体1のLCDR3(配列番号10)
HQYGTNPFT
【0135】
抗体1の重鎖をコードするDNA(配列番号11)
CAGGTGCAGCTGCAGGAGTCGGGTCCAGGACTGGTGAAGCCTTCGGAGACCCTGTCCCTCACCTGCACTGTCTCTGGTGGCTCCATCAGTTCGTACTACTGGAGCTGGATTCGGCAGCCCGCAGGGAAGGGACTGGAGTGGATTGGGAGGATCTATCCGAGTGGGAACACCAACTACAACCCCTCCCTCAAGAGTCGAGTCACCATATCAGTAGACACGTCCAAGAACCAGTTCTCCCTGAAGCTGAGCTCTGTGACCGCTGCGGACACGGCCGTGTATTACTGTGCGAGAGGAGGACTGGTGATGGACGTGTGGGGACAGGGAACACTAGTGACCGTGAGTAGCGCCTCCACCAAGGGCCCATCGGTCTTCCCGCTAGCGCCCTGCTCCAGGAGCACCTCCGAGAGCACAGCCGCCCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTCCCCGAACCGGTGACGGTGTCGTGGAACTCAGGCGCCCTGACCAGCGGCGTGCACACCTTCCCGGCTGTCCTACAGTCCTCAGGACTCTACTCCCTCAGCAGCGTGGTGACCGTGCCCTCCAGCAGCTTGGGCACGAAGACCTACACCTGCAACGTAGATCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGAGAGTTGAGTCCAAATATGGTCCCCCATGCCCACCCTGCCCAGCACCTGAGGCCGCCGGGGGACCATCAGTCTTCCTGTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACTCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACGTGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCAGGAAGACCCCGAGGTCCAGTTCAACTGGTACGTGGATGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTTCAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAACGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGGCCTCCCGTCCTCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAGCCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCAGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTACCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAAAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAGGCTAACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGGAGGGGAATGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACACAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCTGGGT
【0136】
抗体1の軽鎖をコードするDNA(配列番号12)
GAAATTGTGTTGACGCAGTCTCCAGGCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGTCTGTGGAATTCAGCTACTTAGCCTATGGTGCATCCAGCAGGGCCACTTGGTACCAGCAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGGTGCATCCAGCAGGGCCACTGGCATCCCAGACAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCACTCTCACCATCAGCAGACTGGAGCCTGAAGATTTTGCAGTGTATTACTGTCACCAGTACGGAACAAACCCGTTCACATTCGGGCAGGGAACCAAGGTTGAAATAAAGCGAACTGTGGCTGCACCATCTGTCTTCATCTTCCCGCCATCTGATGAGCAGTTGAAATCTGGAACTGCCTCTGTTGTGTGCCTGCTGAATAACTTCTATCCCAGAGAGGCCAAAGTACAGTGGAAGGTGGATAACGCCCTCCAATCGGGTAACTCCCAGGAGAGTGTCACAGAGCAGGACAGCAAGGACAGCACCTACAGCCTCAGCAGCACCCTGACGCTGAGCAAAGCAGACTACGAGAAACACAAAGTCTACGCCTGCGAAGTCACCCATCAGGGCCTGAGCTCGCCCGTCACAAAGAGCTTCAACAGGGGAGAGTGC
【0137】
ヒトエピレギュリン(配列番号21)
VSITKCSSDMNGYCLHGQCIYLVDMSQNYCRCEVGYTGVRCEHFFL
【0138】
ヒトエピレギュリン構築物(配列番号22)
GPGVSITKCSSDMNGYCLHGQCIYLVDMSQNYCRCEVGYTGVRCEHFFLG
【0139】
カニクイザルエピレギュリン(配列番号23)
VSITKCNSDMNGYCLHGQCIYLVDMSQNYCRCEVGYTGVRCEHFYL
【0140】
ラットエピレギュリン(配列番号24)
VLITKCSSDMDGYCLHGHCIYLVDMSEKYCRCEVGYTGLRCEHFFL
【0141】
ウサギエピレギュリン(配列番号25)
VSITKCGSDMNGYCLHGQCIYLVDMSENYCRCEVGYTGVRCEHFFL
【0142】
完全長ヒトエピレギュリン(膜結合、T111P変異あり)(配列番号26)
MTAGRRMEMLCAGRVPALLLCLGFHLLQAVLSTTVIPSCIPGESSDNCTALVQTEDNPRVAQVSITKCSSDMNGYCLHGQCIYLVDMSQNYCRCEVGYTGVRCEHFFLTVPQPLSKEYVALTVILIILFLITVVGSTYYFCRWYRNRKSKEPKKEYERVTSGDPELPQV
【0143】
単量体Fcヒトエピレギュリン(配列番号27)
APEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFQLESRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGGGGGSGGGGSLEVLFQGPGVSITKCSSDMNGYCLHGQCIYLVDMSQNYCRCEVGYTGVRCEHFFLG
【0144】
切断されたマウスEREG(配列番号28)
GPGVQITKCSSDMDGYCLHGQCIYLVDMREKFCRCEVGYTGLRCEHFFLG
【0145】
マウスTGFα His(配列番号29)
VVSHFNKCPDSHTQYCFHGTCRFLVQEEKPACVCHSGYVGVRCEHADLLAGHHHHHH
【0146】
抗体1のHCDR1(Kabat)(配列番号31)
SYYWS
【0147】
抗体1のHCDR2(Kabat)(配列番号32)
RIYPSGNTNYNPSLKS
【0148】
抗体1のHCDR3(Kabat)(配列番号33)
GGLVMDV
【0149】
抗体1のLCDR1(Kabat)(配列番号34)
RASQSVEFSYLA
【0150】
抗体1のLCDR2(Kabat)(配列番号35)
GASSRAT
【0151】
抗体1のLCDR3(Kabat)(配列番号36)
HQYGTNPFT
【0152】
抗体1のHCDR1(Chothia)(配列番号37)
GGSISSY
【0153】
抗体1のHCDR2(Chothia)(配列番号38)
YPSGN
【0154】
抗体1のHCDR3(Chothia)(配列番号39)
GGLVMDV
【0155】
抗体1のLCDR1(Chothia)(配列番号40)
RASQSVEFSYLA
【0156】
抗体1のLCDR2(Chothia)(配列番号41)
GASSRAT
【0157】
抗体1のLCDR3(Chothia)(配列番号42)
HQYGTNPFT
【0158】
抗体1のHCDR1(IMGT)(配列番号43)
GGSISSYY
【0159】
抗体1のHCDR2(IMGT)(配列番号44)
IYPSGNT
【0160】
抗体1のHCDR3(IMGT)(配列番号45)
ARGGLVMDV
【0161】
抗体1のLCDR1(IMGT)(配列番号46)
QSVEFSY
【0162】
抗体1のLCDR2(IMGT)(配列番号47)
GAS
【0163】
抗体1のLCDR3(IMGT)(配列番号48)
HQYGTNPFT
【0164】
IgG4PAAヒンジ領域(配列番号51)
ESKYGPPCPPCP
【0165】
IgG4PAA Fc領域(配列番号52)
APEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG
【0166】
モノFc huEREG L77F(配列番号53)
APEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFQLESRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGGGGGSGGGGSLEVLFQGPGVSITKCSSDMNGYCFHGQCIYLVDMSQNYCRCEVGYTGVRCEHFFLG
【0167】
モノFc huEREG H78A(配列番号54)
APEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFQLESRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGGGGGSGGGGSLEVLFQGPGVSITKCSSDMNGYCLAGQCIYLVDMSQNYCRCEVGYTGVRCEHFFLG
【0168】
モノFc huEREG H78N(配列番号55)
APEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFQLESRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGGGGGSGGGGSLEVLFQGPGVSITKCSSDMNGYCLNGQCIYLVDMSQNYCRCEVGYTGVRCEHFFLG
【0169】
モノFc huEREG E95A(配列番号56)
APEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFQLESRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGGGGGSGGGGSLEVLFQGPGVSITKCSSDMNGYCLHGQCIYLVDMSQNYCRCAVGYTGVRCEHFFLG
【0170】
モノFc huEREG E95H(配列番号57)
APEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFQLESRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGGGGGSGGGGSLEVLFQGPGVSITKCSSDMNGYCLHGQCIYLVDMSQNYCRCHVGYTGVRCEHFFLG
【0171】
モノFc huEREG Y98A(配列番号58)
APEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFQLESRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGGGGGSGGGGSLEVLFQGPGVSITKCSSDMNGYCLHGQCIYLVDMSQNYCRCEVGATGVRCEHFFLG
【0172】
モノFc huEREG R102A(配列番号59)
APEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFQLESRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGGGGGSGGGGSLEVLFQGPGVSITKCSSDMNGYCLHGQCIYLVDMSQNYCRCEVGYTGVACEHFFLG
【0173】
モノFc huEREG F106A(配列番号60)
APEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFQLESRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGGGGGSGGGGSLEVLFQGPGVSITKCSSDMNGYCLHGQCIYLVDMSQNYCRCEVGYTGVRCEHAFLG
【0174】
モノFc huEREG F106K(配列番号61)
APEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFQLESRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGGGGGSGGGGSLEVLFQGPGVSITKCSSDMNGYCLHGQCIYLVDMSQNYCRCEVGYTGVRCEHAKLG
【0175】
抗体1 Fab HC(配列番号62)
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSYYWSWIRQPAGKGLEWIGRIYPSGNTNYNPSLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARGGLVMDVWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESK
【0176】
抗体1 Fab LC(配列番号63)
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVEFSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCHQYGTNPFTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTQGTTSVTKSFNRGEC
【0177】
抗体1 VRキメラh/mIgG1 HC(配列番号64)
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSYYWSWIRQPAGKGLEWIGRIYPSGNTNYNPSLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARGGLVMDVWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPGSAAQTNSMVTLGCLVKGYFPEPVTVTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVPSSTWPSETVTCNVAHPASSTKVDKKIVPRDCGCKPCICTVPEVSSVFIFPPKPKDVLTITLTPKVTCVVVDISKDDPEVQFSWFVDDVEVHTAQTQPREEQFNSTFRSVSELPIMHQDWLNGKEFKCRVNSAAFPAPIEKTISKTKGRPKAPQVYTIPPPKEQMAKDKVSLTCMITDFFPEDITVEWQWNGQPAENYKNTQPIMDTDGSYFVYSKLNVQKSNWEAGNTFTCSVLHEGLHNHHTEKSLSHSPGK
【0178】
抗体1 VRキメラh/mカッパLC(配列番号65)
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVEFSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCHQYGTNPFTFGQGTKVEIKRTVAAPTVSIFPPSSEQLTSGGASVVCFLNNFYPKDINVKWKIDGSERQNGVLNSWTDQDSKDSTYSMSSTLTLTKDEYERHNSYTCEATHKTSTSPIVKSFNRNEC
【0179】
ヒトエピゲン/EPGN(配列番号66)
KFSHLCLEDHNSYCINGACAFHHELEKAICRCFTGYTGERCEHLTLT
【0180】
ヒトアンフィレギュリン/AREG(配列番号67)
KKKNPCNAEFQNFCIHGECKYIEHLEAVTCKCQQEYFGERCGEKSMK
【0181】
ヒトヘパリン結合上皮成長因子/HBEGF(配列番号68)
KKRDPCLRKYKDFCIHGECKYVKELRAPSCICHPGYHGERCHGLSL
【0182】
ヒトベータセルリン/BTC(配列番号69)
GHFSRCPKQYKHYCIKGRCRFVVAEQTPSCVCDEGYIGARCERVDLFY
【0183】
ヒト形質転換成長因子アルファ/TGFα(配列番号70)
VVSHFNDCPDSHTQFCFHGTCRFLVQEDKPACVCHSGYVGARCEHADLLA
【0184】
ヒト上皮成長因子/EGF(配列番号71)
NSDSECPLSHDGYCLHDGVCMYIEALDKYACNCVVGYIGERCQYRDLKW
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
2024522071000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-11-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトエピレギュリンに結合する抗体であって、前記抗体が、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、前記VHが、重鎖相補性決定領域(HCDR)HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、前記VLが、軽鎖相補性決定領域(LCDR)LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、
前記HCDR1が、配列番号5を含み、
前記HCDR2が、配列番号6を含み、
前記HCDR3が、配列番号7を含み、
前記LCDR1が、配列番号8を含み、
前記LCDR2が、配列番号9を含み、
前記LCDR3が、配列番号10を含む、抗体。
【請求項2】
前記VHが、配列番号3を含み、前記VLが、配列番号4を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体が、配列番号1を含む重鎖(HC)及び配列番号2を含む軽鎖(LC)を含む、請求項1又は2に記載の抗体。
【請求項4】
配列番号11又は12の配列を含む、核酸。
【請求項5】
請求項4に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項6】
前記ベクターが、配列番号11の第1の核酸配列及び配列番号12の第2の核酸配列を含む、請求項5に記載のベクター。
【請求項7】
配列番号11の核酸配列を含む第1のベクター及び配列番号12の核酸配列を含む第2のベクターを含む、組成物。
【請求項8】
請求項5又は6に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項9】
配列番号11の核酸配列を含む第1のベクター及び配列番号12の核酸配列を含む第2のベクターを含む、細胞。
【請求項10】
前記細胞が、哺乳動物細胞である、請求項8又は9に記載の細胞。
【請求項11】
抗体を産生するプロセスであって、前記抗体が発現するような条件下で、請求項8~10のいずれか一項に記載の細胞を培養することと、発現した前記抗体を培養培地から回収することと、を含む、プロセス。
【請求項12】
請求項11に記載のプロセスによって産生される、抗体。
【請求項13】
請求項1~3又は12のいずれか一項に記載の抗体と、
薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項14】
療有効量の請求項1~3若しくは12のいずれか一項に記載の抗体又は請求項13に記載の医薬組成物を含む、疼痛障害の治療用医薬組成物
【請求項15】
前記疼痛障害が、変形性関節症疼痛、糖尿病性末梢神経障害疼痛及び慢性腰痛症からなる群から選択される、請求項14に記載の医薬組成物
【請求項16】
前記疼痛障害が、変形性関節症疼痛である、請求項15に記載の医薬組成物
【請求項17】
前記疼痛障害が、糖尿病性末梢神経障害疼痛である、請求項15に記載の医薬組成物
【請求項18】
前記疼痛障害が、慢性腰痛症である、請求項15に記載の医薬組成物
【請求項19】
前記疼痛障害が、療法抵抗性である、請求項15に記載の医薬組成物
【請求項20】
療法に使用するための、請求項1~3又は12のいずれか一項に記載の抗体を含む医薬
【請求項21】
請求項1~3若しくは12のいずれか一項に記載の抗体を含む疼痛障害の治療に使用するための医薬
【請求項22】
前記疼痛障害が、変形性関節症疼痛、糖尿病性末梢神経障害疼痛及び慢性腰痛症からなる群から選択される、請求項21に記載の医薬
【請求項23】
前記疼痛障害が、変形性関節症疼痛である、請求項21に記載の医薬
【請求項24】
前記疼痛障害が、糖尿病性末梢神経障害疼痛である、請求項21に記載の医薬
【請求項25】
前記疼痛障害が、慢性腰痛症である、請求項21に記載の医薬
【請求項26】
疼痛障害の治療のための医薬品の製造における、請求項1~3又は12のいずれか一項に記載の抗体の使用。
【請求項27】
前記疼痛障害が、変形性関節症疼痛、糖尿病性末梢神経障害疼痛及び慢性腰痛症からなる群から選択される、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
体液試料中のヒトエピレギュリンレベルを決定する方法であって、
(a)前記体液試料を、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗ヒトエピレギュリン診断用モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントと接触させることと、
(b)任意選択で、非特異的に結合したあらゆるモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを除去することと、
(c)ヒトエピレギュリンに特異的に結合するモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントの量を検出及び/又は定量化することと、を含む、方法。
【請求項29】
前記体液試料が、血液、血清若しくは血漿試料、又は脳脊髄液試料であり、前記接触させることが、エクスビボで生じる、請求項28に記載の方法。

【国際調査報告】