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特表2024-522085特定の微細孔体積を有するUiO-66の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(54)【発明の名称】特定の微細孔体積を有するUiO-66の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/00 20060101AFI20240604BHJP
   C07C 63/26 20060101ALI20240604BHJP
   C07C 53/08 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
C07F7/00 A
C07C63/26 Z
C07C53/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572024
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(85)【翻訳文提出日】2024-01-17
(86)【国際出願番号】 US2022031518
(87)【国際公開番号】W WO2022251726
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】63/194,239
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523025539
【氏名又は名称】エクソンモービル テクノロジー アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Technology and Engineering Company
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】カペレフスキー,マシュー ティ
(72)【発明者】
【氏名】ファルコフスキー,ジョセフ エム
(72)【発明者】
【氏名】ズーロ,ドミニク エイ
(72)【発明者】
【氏名】アブドゥルカリム,メアリー エス
【テーマコード(参考)】
4H006
4H049
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB81
4H006BJ50
4H006BS10
4H049VN06
4H049VP01
4H049VS12
4H049VS32
4H049VU33
(57)【要約】
本願では、オキシ塩化ジルコニウムを、テレフタル酸またはその誘導体および酢酸と、溶媒中、反応させ、反応溶液を提供すること;前記反応溶液を水で希釈し、前記希釈反応溶液を加熱し、前記反応混合物の前記反応温度を低下させ、0.45cc/g以上の微細孔体積および約20nm~約1000nmの結晶寸法を有するMOF UiO-66を提供すること、を含む、MOF UiO-66の製造方法を提供する。水酸化酢酸ジルコニウムおよび水酸化ジルコニウムを、カルボン酸またはその誘導体および酢酸と、溶媒中、反応させ、少なくとも約0.35cc/グラムの微細孔体積を有する金属有機構造体MOF UiO-66を製造することを含む、MOF UiO-66の製造方法も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシ塩化ジルコニウムを、テレフタル酸またはその誘導体および酢酸と、溶媒中、反応させ、反応溶液を提供すること;
前記反応溶液を少なくとも約10体積%の水で希釈し、希釈反応溶液を提供すること;
前記希釈反応溶液を、少なくとも120℃の反応温度に少なくとも4時間加熱し、反応混合物を提供すること;および
前記反応混合物の前記反応温度を低下させ、MOF UiO-66を提供すること、
を含む、MOF UiO-66の製造方法。
【請求項2】
前記MOF UiO-66は、0.45cc/g以上の微細孔体積および約20nm~約1000nmの結晶寸法を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記テレフタル酸誘導体は水に不溶性である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記テレフタル酸誘導体は、1,4-ベンゼンジカルボキシレートまたはその誘導体、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸、2-ニトロ-1,4ベンゼンジカルボン酸またはそれらの混合物から選択される、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記MOF UiO-66は、窒素BET(nitrogen BET)により測定された、約900m/g~約1550m/gの表面積を有する、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
水酸化酢酸ジルコニウムおよび水酸化ジルコニウムのうちの1種以上を、カルボン酸またはその誘導体および酢酸と、溶媒中、反応させ、反応溶液を提供し、金属有機構造体MOF UiO-66を製造することを含む、MOF UiO-66の製造方法。
【請求項7】
前記MOF UiO-66は、少なくとも約0.35cc/グラムの微細孔体積を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記カルボン酸は、2-アミノ-1,4-ベンゼンジカルボン酸である、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記反応溶液を、前記溶媒の約50体積パーセント以下の量の水で希釈し、希釈反応溶液を提供することをさらに含む、請求項6~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記希釈反応溶液を、少なくとも85℃の反応温度に加熱することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記希釈反応溶液を少なくとも4時間加熱する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記MOF UiO-66は、約0.1cc/g~約1.0cc/gの微細孔体積を有する、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記MOF UiO-66は、約0.40cc/g~約0.60cc/gの微細孔体積を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記溶媒は、ジメチルホルムアミド、エタノール、メタノール、水またはジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよび“NPT”N-メチルピロリドンから選択される、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
テレフタル酸の濃度は、溶媒1リットルあたり、約0.01モル~約5.0モルである、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記反応混合物は、乾燥基準(dry basis)での前記MOFの質量計算によると、モルの制限試薬に基づいて、約65~約95モルパーセントのUiO-66金属有機構造体を産出する、請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記反応溶液を、約60体積パーセント以下の水で希釈する、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記金属有機構造体を前記反応溶液から分離する工程をさらに含む、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
酢酸のテレフタル酸に対する比率は少なくとも約20モル~約1モルである、請求項1~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
酢酸のテレフタル酸に対する比率は約24モル~約1モルである、請求項1~19のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2021年5月28日に出願の米国仮出願第63/194239号の優先権および利益を主張するものであり、本明細書中、当該出願の全部を参考文献として組み込むものとする。
【0002】
分野
本開示は、金属有機構造体UiO-66を、表面積、微細孔体積(micropore volume)および合成収率の増大を図りつつ、不純物または意図しない欠点なしに製造する、水系の合成方法に関する。
【背景技術】
【0003】
金属有機構造体UiO-66は、高い安定性、調節可能な構造および相対的な合成のし易さを提供する。しかしながら、このような金属有機構造体を製造する規模拡大可能な合成方法は、毒性のある可燃性溶媒を必要とする。水を主溶媒またはその構成成分として用いた様々な合成技術が試されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の水系での合成手法(synthesis protocol)によると、UiO-66は低収率で製造され、しかも、不純物および/またはUiO-66の化学的特性、微細孔構造、表面積、微細孔体積および吸着容量に関する欠点を有している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願では、(1)オキシ塩化ジルコニウムを、テレフタル酸またはその誘導体および酢酸と、溶媒中、反応させ、反応溶液を提供すること;(2)前記反応溶液を少なくとも約10体積%の水で希釈し、希釈反応溶液を提供すること;(3)前記希釈反応溶液を、少なくとも120℃の反応温度に少なくとも4時間加熱し、反応混合物を提供すること;および(4)前記反応混合物の前記反応温度を低下させ、0.45cc/g以上の微細孔体積および約20nm~約1000nmの結晶寸法を有するMOF UiO-66を提供すること、を含む、MOF UiO-66の製造方法が提供される。1つの態様においては、前記テレフタル酸誘導体は水に不溶性である。1つの態様においては、前記カルボン酸は、1,4-ベンゼンジカルボキシレートまたはその誘導体、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸、2-ニトロ-1,4ベンゼンジカルボン酸またはそれらの混合物から選択される。1つの態様においては、製造された前記MOF UiO-66は、窒素BET法により測定された、約900m/g~約1550m/gの表面積を有する。
【0006】
本願ではまた、水酸化酢酸ジルコニウムおよび水酸化ジルコニウムのうちの1種以上を、カルボン酸またはその誘導体および酢酸と、溶媒中、反応させ、反応溶液を提供し、少なくとも約0.35cc/グラムの微細孔体積を有する金属有機構造体MOF UiO-66を製造することを含む、MOF UiO-66の製造方法も提供する。1つの態様においては、前記カルボン酸は、2-アミノ-1,4-ベンゼンジカルボン酸である。1つの態様においては、このような方法は、前記反応溶液を、前記溶媒の50体積パーセント以下の量の水で希釈し、希釈反応溶液を提供することをさらに含む。1つの態様においては、前記希釈反応溶液を、少なくとも85℃の反応温度にする。1つの態様においては、前記希釈反応溶液を少なくとも4時間加熱する。1つの態様においては、前記MOF UiO-66は、1グラムあたり、約0.1~約1.0立方センチメートルの微細孔体積を有する。
本開示の方法および構成に関する、このようなおよび他の特徴および属性ならびに有利な用途および/または使用方法は、以下に示す詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示の対象物を製造し、使用するに際して、当該分野の当業者を支援するために、以下の図面を参考資料として添付する。
【0008】
図1A図1Aは、実施例1において、600mL、2Lおよび5ガロン反応器で合成されたMOF UiO-66の粉末x線回折パターンの比較を提供する
図1B図1Bは、実施例1において、600mL、2Lおよび5ガロン反応器で合成されたMOF UiO-66の粉末x線回折パターンの比較を提供する
【0009】
図2図2は、実施例1において、MOF UiO-66の製造に使用される、複数の2Lスケールでの反応および5ガロンスケールでの反応に関する、77KでのN吸収量を示す。
【0010】
図3A図3Aは、実施例1において、2L反応器で製造されたMOF UiO-66の結晶寸法の比較を提供するためのSEM画像である。
図3B図3Bは、実施例1において、5ガロン反応器で製造されたMOF UiO-66の結晶寸法の比較を提供するためのSEM画像である。
【0011】
図4A図4Aは、実施例2において、Zr(OAc)(OH)4-xを用いて合成されたMOF UiO-66の粉末x線回折パターンを示す。
図4B図4Bは、実施例2において、Zr(OAc)(OH)4-xを用いて合成されたMOF UiO-66の粉末x線回折パターンを示す。
【0012】
図5図5は、出発材料としてZr(OAc)(OH)4-xを用いて合成されたMOF UiO-66のBET表面積の計算に使用された77KでのN吸着等温線である。
【0013】
図6図6は、ZrOClおよび高い酢酸含有量で合成された実施例2のMOF UiO-66の微細孔体積およびBET表面積の計算に使用された77KでのN吸着等温線である。
【0014】
図7図7は、実施例3における、水を含有するMOF UiO-66合成方法に関する粉末x線回折パターンである。
【0015】
図8図8は、実施例3において、酸濃度を変化させたMOF UiO-66合成方法に関する粉末x線回折パターンである。
【0016】
図9図9は、様々な方法で洗浄されたMOF UiO-66の粉末x線回折パターンである。
【0017】
図10図10は、40%水溶媒を用いたMOF UiO-66に関する77KでのN吸着量等温線である。
【0018】
図11A図11Aは、UiO-66の構造を示す。
図11B図11Bは、UiO-66の構造の二次構成単位(secondary building unit)Zr32を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
本開示の化合物、成分、組成物、および/または方法を開示および説明する前に、本開示は、特に指示されない限り、特定の化合物、成分、組成物、反応物、反応条件、リガンド、触媒構造、メタロセン構造(metallocene structures)等に限定されるものではなく、特記しない限り、変化させてもよいことを理解するべきである。本願で使用される専門用語(terminology)は特定の態様だけを説明する目的のためのものであり、限定されることを意図するものではないことも理解するべきである。
【0020】
本願における詳細な説明および特許請求の範囲にある全ての数字の値について、示された値は、実験誤差および変形を考慮して、「約」または「およそ」により修飾されている。
【0021】
本願では、簡潔さを目的として、ある範囲だけを明瞭に示している。しかしながら、あらゆる下限値からの範囲は、あらゆる上限値と組み合わされ、明瞭に示されていない範囲を示してもよい、とともに、あらゆる下限値からの範囲は、あらゆる他の下限値と組み合わされ、明瞭に示されていない範囲を示してもよく、同様に、あらゆる上限値からの範囲は、あらゆる他の上限値と組み合わされ、明瞭に示されていない範囲を示してもよい。さらには、範囲の内側では、明瞭に示されていなかったとしても、その端点間における全ての点または個々の値が含まれる。従って、全ての点または個々の値は、あらゆる他の点または個々の値、もしくはあらゆる他の下限値または上限値と組み合わされて、それ自体、下限値または上限値としての役割を担って、明瞭に示されていない範囲を示してもよい。
【0022】
金属有機構造体は、配位結合により金属ノード(metal nodes)を橋渡しする有機リンカー(「リガンド」ともいう)(「二次構成単位(secondary building units)」または「SBUs」という)を含み、自己組織化して配位ネットワーク(coordination network)を形成することができる。有機リンカー/金属ノードの同質網状拡張化(isoreticular expansion)または官能基化(functionalization)のいずれかにより調節可能なトポロジー(tunable topologies)は、金属有機構造体を、吸着および分離に対する触媒的変換(catalytic transformations)から、生物医学的用途まで広がる様々な用途に向けてカスタマイズ可能にすることができる。金属有機構造体は工業的用途に有用な特性を有するものであり、当該工業的用途には、限定されないが、例えば、ガス吸着、ガス分離、触媒、加熱/冷却、バッテリー、ガス貯蔵、感知および環境復旧(environmental remediation)が含まれる。
【0023】
金属有機構造体(「MOF」)の安定性は、カルボキシレートおよび3価金属などの低分極率のイオン間の強い相互作用に起因するものと考えることができる。安定な金属有機構造体は、当初、3価カチオン、すなわちAl3+,Fe3+およびCr3+から誘導されるフタレート系MOFに分類された。その後、Zr4+,Hf4+またはTi4+等の他の多価カチオンが、さらに強固な構造体の提供に利用された。金属有機構造体UiO-66は、ジルコニウム塩を線状ジカルボン酸と反応させることにより初めて発見された。Cavka, J. H. et al., (2008) 「格別な安定性を有する金属有機構造体を形成する新規なジルコニウム無機構成材料(A New Zirconium Inorganic Building Brick Forming Metal Organic Frameworks with Exceptional Stability)」、米国化学会誌(J. Am. Chem. Soc.)、第130巻、第13850-13851頁。その発見のとき、UiO-66は、あらゆる既知の金属有機構造体のなかで最も高い結合性(connectivity)を示した。
【0024】
図11Aおよび図11Bに示すように、金属有機構造体UiO-66は、1,4-ベンゼンジカルボキシレート(「BDC」)リンケージ(linkage)により橋渡しされるZr32ノード(二次構成単位)から構成される。SBUの各々は、12-結合されており、十分に結合されたとき、面心立方格子(「FCU」)を形成する。この格子は2つの異なるかご構造を含み、直径~1Åの8面体のかごの側面に、直径~8Åのより小さな4面体のかごが位置付けられている。UiO-66の構造分析により、初期の金属有機構造体との微妙な差異が明らかとなった。Valenzano, L. et al. (2011) 「UiO-66金属有機構造体の複合体構造の開示:実験と理論の相乗的な組み合わせ(Disclosing the Complex Structure of UiO-66 Metal Organic Framework: A Synergic Combination of Experiment and Theory)」、材料化学(Chem. Mater.)、第23巻、第1700-1718頁。欠損リンカー値(Missing linker values)が8%~50%に及ぶことが報告された。欠損リンカーの度合いが増加すると、熱安定性が低下する。
【0025】
UiO-66を製造するための初期の合成手法は、ZrClのBDCとの反応をジメチルホルムアミド(「DMF」)中、加熱することを含み、多結晶粉末を産出した。その後、この合成手法は、モノカルボン酸を含むように変形され、当該合成を抑制し、200nm寸法の単結晶を形成した。Schaate, A. et al. (2011) ケミストリー・ヨーロピアン・ジャーナル(Chem. Eur. J.)、第17巻、第6643-6651頁。モジュレーター(modulator)(酢酸対安息香酸)の種類に応じて、表面積が製造された初期のUiO-66とは異なった。カルボン酸モジュレーターは、ジルコニウム系金属有機構造体の合成時、広く存在するようになった。モジュレーターの濃度を用いてリンカーの空位(vacancies)を制御することが可能でありながら、カルボン酸モジュレーターのpKaは等しく活性を変えられるものである(an equally puissant variable)。
【0026】
UiO-66は格別な熱的および化学的安定性を有することが示されているため、UiO-66は様々な合成経路、主としてソルボサーマル(solvothermal)により合成されている。従来技術の合成条件は、ジルコニウム塩(塩化物またはオキシ塩化物)の線状ジカルボン酸との反応を含んでいる。UiO-66の初期版はテレフタル酸を用いて製造された。官能基化誘導体および同質網状類似体(isoreticular analogs)が得られた(すなわち、4,4’-ビフェニルジカルボン酸のような、より長い線状二酸から構成されてなるもの)。N,N-ジメチルホルムアミド(「DMF」)がよく使用されるような高沸点の非プロトン性溶媒が最も普及していた。
【0027】
他方、UiO-66の水系合成は、不純物、ならびに/またはUiO-66における化学的特性、微細孔構造、表面積および微細孔体積、および/または吸着容量についての欠点をもたらした。例えば、水および酢酸により、UiO-66の不純な変異体が製造された。Hu, Z. et al. (2015) 「UiO-66型MOFの簡易な合成のための調節された熱水的アプローチ(A Modulated Hydrothermal (MHT) Approach for the Facile Synthesis of UiO-66-Type MOFs)」、 米国化学会誌(J. Am. Chem. Soc.)、第54巻、第4862-4868頁。このアプローチは魅力的でありながら、テレフタル酸の水への溶解性は低いため、より低いpHに起因して腐食性の混合物を必要とすることがわかった。モジュレーター対テレフタル酸比率が増大すると、不純な変異体がさらに製造された。結晶化生成物を得るために、ジルコニウム(IV)ニトレートがジルコニウム源として使用された。ここでは、官能基化有機出発材料(すなわちアミノテレフタル酸)からだけ、UiO-66型材料が製造された。Hu, Z. et al. (2016) 「Zr/Hf金属有機構造体の水系合成に関するモジュレーター効果:モジュレーター、合成条件および性能間の定量的関係の研究(Modulator Effects on the Water-Based Synthesis of Zr/Hf Metal-Organic Frameworks: Quantitative Relationship Studies between Modulator, Synthetic Condition, and Performance)」、米国化学会誌(J. Am. Chem. Soc.)、第16巻、第2295-2301頁。非官能基化テレフタル酸の場合、MOF UiO-66のX線回折パターンとSEM画像の両方で不純物が観察された。
【0028】
別の方法においては、ジルコニウムスルフェートの形態の水溶性ジルコニウム源は、MOFのジルコニウム二次構成単位と強く相互作用することが示され、構造変化が起こった。Reinsch, H. et al. (2015) 「ジルコニウムMOFのグリーン合成(Green Synthesis of Zirconium MOFs)」、Crys. Eng. Comm.、第17巻、第4070-7074頁。研究者等は、UiO-66を含む慣習的な12-結合ノードの代わりに、8-結合ノードを観察する。この8-結合ネットワークは、慣習的なソルボサーマル合成と比較して減少した表面積を示す。Id。
【0029】
ある従来技術の方法では、N,N-ジメチルホルムアミド系合成方法で水が添加されるが、水の含有は通常、低量であり、しばしば金属源の濃度と同程度のものか、またはHClモジュレーターの希釈剤としてのものである。Vo, K. et al. (2019)「マイクロ波補助型連続式管状反応器を用いたUiO-66(Zr)の簡易合成およびそのトルエン吸着の適用(Facile Synthesis of UiO-66(Zr) Using a Microwave-Assisted Continuous Tubular Reactor and Its Application for Toluene Adsorption)」、米国化学会誌(J. Am. Chem. Soc.)、第19巻、第4949-4956頁。水の量はバルク溶媒の有意なフラクションまでは発生しない。
【0030】
同様に、UiO-66と同質構造のハフニウム含有構造体においてモジュレーターとしての水の役割が提案されている。Firth, F. et al. (2019)、「UiO族金属有機構造体の新規不良相の水を用いたエンジニアリング(Engineering New Defective Phases of UiO Family Metal-Organic Frameworks with Water,”、材料化学誌(J. Mater. Chem.)」、第7巻、第7459-7469頁。DMFおよびギ酸の溶液を用いて、Hf-UiO-67(UiO-66のビフェニル同族体(biphenyl congener))の合成における水の濃度および効果を調べた。DMFの20%ギ酸溶液を用いたとき、水を少量でも導入することが、2次元ナノシート構造のhns相の形成をもたらした。
【0031】
総合的には、官能基化UiO-66(および他の水溶性リンカーから構成されてなる他のジルコニウム系構造体のもの)の合成で水性溶媒系を実施する一方、従来のUiO-66の合成への水の使用は少なかった。従来技術において少量で存在しても、大抵は品質の低い材料が生じた。このような課題にもかかわらず、毒性溶媒についての負荷に対応しなければならず、慣習的なホルムアミド系調製法に代わるものが必要とされている。有機溶媒は、高コスト、ならびに安全上、健康上および環境上の管理的懸念のため、MOF材料のスケールアップへの障害である。その結果として、UiO-66を合成する水系法または無溶媒法が望まれている。
【0032】
UiO-66を合成するための様々な手法が知られているが、特定の微細孔体積を有する材料を大規模で製造することは、検査および実施に必要な量を合成するのに重要である。本方法は調節可能な合成(tunable synthesis)を提供するものであり、当該合成においては、金属、リガンドおよび合成条件を選択して、特定の構造体材料MOF UiO-66を、当該合成される材料の多孔性、細孔径、結晶寸法および多くの他の特性を制御して製造する。
【0033】
本願は、ナフタレンおよびパラフィンの等級基準の分離(class-based separation)用途に必要とされる、0.45cc/グラム以上の微細孔体積を有するMOF UiO-66の製造方法を提供する。当該MOF UiO-66を製造する本方法はまた、5ガロン反応器中、1バッチあたり、活性化および脱溶媒和されたMOF UiO-66を最大750gまでのスケールで提供する。本願で使用される用語「MOF UiO-66」は、本方法に従って製造されるUiO-66金属有機構造体について言及している。
【0034】
実験室規模の合成手順を採用する前記した合成手法に加えて、我々は、特有の反応物、溶媒、および/またはそれらの組み合わせを利用して、MOF UiO-66の製造をスケールアップするときの課題に対応する新規な方法を開発した。第1に、ジルコニウムの塩化物塩の利用は、大規模での開発問題をもたらす腐食問題を引き起こし得る。第2に、酢酸の大量使用は、コストを増加させる一方、冶金学上の問題も引き超す。最後に、極性非プロトン性溶媒の大量使用は、これらの材料を有意義な方法でスケールアップすることに対するコスト上および安全上の課題を提示する。本方法はこれらの問題の各々に対処するものである。
【0035】
我々は、水酸化ジルコニウムおよび水酸化酢酸ジルコニウムがMOF UiO-66の合成に十分な出発材料であり、腐食性塩化物溶液の必要性を未然に防ぐことを見出した。さらに、我々は、反応混合物の水による希釈が多数の利益を提供することを示した。最高50重量%までの希釈が、有機溶媒に起因して、コストを下げることができる一方、最適な酢酸濃度も低下させ、反応混合物の腐食性を低下させる。さらに、規模を拡大して、あらゆる量の有機溶媒をかなり安価な水で置き換えることはスケールアップに有益である。要するに、本方法は多くの進歩をもたらし、当該進歩は個別に、またはまとめて利用されて、ガス分離に適した微細孔体積を有するMOF UiO-66の合成方法を改善でき、また、当該材料のより大きなスケールでの結晶化のための製造方法の代替オプションを提供することができる。
【0036】
MOF UiO-66は、リンカーに組み込まれたさらなる官能性を有することができ、例えば、金属有機構造体の細孔に突き出る官能基を有することができる。本方法は、金属有機構造体MOF UiO-66、特に、二重脱プロトン化テレフタル酸(ベンゼン-1,4-ジカルボキシレート)により連結されたZr(OH)ノードを含んでなるジルコニウム系MOFの合成方法に関するものである。MOF UiO-66は、分離用途での使用および大量での使用にふさわしい微細孔体積で製造される。最後に、以下の実施例で記載されるように、MOF UiO-66を製造する本方法は、特定の金属塩、水含有量および他の制御されたパラメータを利用するものであり、結果として、分離用途に十分な品質の材料をもたらす。
【0037】
本方法により製造されたMOF UiO-66はナフタレン/パラフィン等級基準分離に有用である。しかしながら、分離性能は金属有機構造体の微細孔体積に依存する。微細孔体積は、金属有機構造体において(欠陥としても知られている)欠損しているリンカーおよび/または欠損しているノードの数に基づいて変化させることができる。ナフタレン/パラフィン分離作用のためには、最小で~0.45cc/gまたは0.50cc/gという特定の微細孔体積が必要である。
【0038】
本願では、(1)オキシ塩化ジルコニウムを、テレフタル酸またはその誘導体および酢酸と、溶媒中、反応させ、反応溶液を提供すること;(2)前記反応溶液を少なくとも約10体積%の水で希釈し、希釈反応溶液を提供すること;(3)前記希釈反応溶液を、少なくとも120℃の反応温度に少なくとも4時間加熱し、反応混合物を提供すること;および(4)前記反応混合物の前記反応温度を低下させ、0.45cc/g以上の微細孔体積および約20nm~約1000nmの結晶寸法を有するMOF UiO-66を提供すること、を含む、MOF UiO-66の製造方法が提供される。1つの態様においては、前記テレフタル酸誘導体は水に不溶性である。1つの態様においては、前記カルボン酸は、1,4-ベンゼンジカルボキシレートまたはその誘導体、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸、2-ニトロ-1,4,ベンゼンジカルボン酸またはそれらの混合物から選択される。1つの態様においては、前記MOF UiO-66は、窒素BET法により測定された、約900m/g~約1550m/gの表面積を有する。
【0039】
本願ではまた、水酸化酢酸ジルコニウムおよび水酸化ジルコニウムのうちの1種以上を、カルボン酸またはその誘導体および酢酸と、溶媒中、反応させ、反応溶液を提供し、少なくとも約0.35cc/グラムの微細孔体積を有する金属有機構造体MOF UiO-66を製造することを含む、MOF UiO-66の製造方法も提供する。1つの態様においては、前記カルボン酸は、2-アミノ-1,4-ベンゼンジカルボン酸である。1つの態様においては、このような方法は、前記反応溶液を、前記溶媒の50体積パーセント以下の量の水で希釈し、希釈反応溶液を提供することをさらに含む。1つの態様においては、前記希釈反応溶液を、少なくとも85℃の反応温度にする。1つの態様においては、前記希釈反応溶液を少なくとも4時間加熱する。
【0040】
1つの態様においては、本方法により製造された前記MOF UiO-66は、1グラムあたり、約0.1~約1.0立方センチメートル(「cc/g」)の微細孔体積を有する。1つの態様においては、テレフタル酸の前記濃度は、溶媒1リットルあたり、約0.01モル(例えば0.1モル)から5.0モルである。1つの態様においては、酢酸のテレフタル酸に対するに対する比率は少なくとも20:1(モル:モル)である。1つの態様においては、酢酸のテレフタル酸に対する比率は24:1(モル:モル)である。
【0041】
本願で説明されるように、前記溶媒は、ジメチルホルムアミド、エタノール、メタノール、水またはジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよび/または“NPT”N-メチルピロリドンであり得る。
【0042】
1つの態様においては、前記反応溶液は60体積パーセント以下の水で希釈される。
【0043】
1つの態様においては、前記反応混合物は、乾燥基準(dry basis)での前記MOFの質量計算によると、モルの制限試薬(molar limiting reagent)に基づいて、約65~約95モルパーセントのUiO-66金属有機構造体を産出する。
【0044】
本方法は、欠陥のあるUiO-66(defective UiO-66)、すなわち、構造中、リンカー(リガンド)、ノード、および/またはそれらの両方に欠損のあるMOF UiO-66を製造することに関するものである。当該構造物はこのような欠陥にもかかわらず、ある程度まで常に合成される;しかし、当該欠陥は当該材料に新規な特性を付与し、当該特性は当該材料の性能に影響を与える。欠陥の量(levels)を直接的に測定することは困難であるので、当該材料のBET表面積および微細孔体積を用いて、当該材料の多孔性およびおおよその欠陥の量を測定する。微細孔体積はナフタレン/パラフィン分離の分離性能に直接的な影響を有する。必要とされる欠陥の量を有するMOF UiO-66を着実に製造するための製造方法(当該材料のBET表面積および微細孔体積に現れる製造方法)は今までのところ知られておらず、特に活用するために必要とされるスケールでの製造方法は知られていない。
【実施例
【0045】
本開示を説明するために以下の実施例を提供するが、これらに限定されるものではない。
実施例
実施例1:より大きなスケールで細孔体積が高いMOF UiO-66を製造する方法
【0046】
ここで記載の方法により、MOF UiO-66は少なくとも0.45cc/gまたは0.50cc/gの微細孔体積を有することを測定し、パラフィン類からのナフタレン類の等級基準の分離(class-based separation)に有用であることが明示された。本方法は、酢酸濃度が高い反応溶液、例えば酢酸のテレフタル酸に対するモル対モル比率が少なくとも15:1の反応溶液において、MOF UiO-66を製造する。
【0047】
表1は、ここで記載のように、MOF UiO-66を製造するために、2リットル(“2L“)反応器スケールで使用された反応物質を示す。
【表1】
【0048】
ジメチルホルムアミド、氷酢酸、テレフタル酸およびZrOCl 8HOをその順序で、パドル撹拌翼付きステンレススチール製2Lオートクレーブに充填した。オートクレーブを封止し、150rpmにて撹拌し、150℃に24時間~120時間加熱した。反応器を、撹拌しながら冷却し、開封し、反応混合物をろ過して白色固形物質を得た。固形白色材料(MOF UiO-66を含む反応混合物)をジメチルホルムアミド中、4時間粉砕し、その後、アセトン中、24時間粉砕した。白色固形材料をろ過し、捕集し、オーブン中、115℃で12時間乾燥させた。
【0049】
表2は、MOF UiO-66を製造するために、5ガロン反応器スケールで使用された反応物質を示す。
【表2】
【0050】
ジメチルホルムアミド、氷酢酸、テレフタル酸およびZrOCl2 8HOを、パドル撹拌翼付きステンレススチール製5ガロン反応器(オートクレーブ)に充填した。オートクレーブ反応器を封止し、150rpmにて撹拌し、150℃に48時間加熱し、反応混合物を得た。反応混合物を撹拌しながら反応器を冷却し、開封し、反応混合物をろ過して白色固形物質を製造した。白色固形物質をジメチルホルムアミド中、4時間粉砕し、その後、アセトン中、24時間粉砕した。白色固形物質をろ過し、捕集し、オーブン中、115℃で12時間乾燥させた。
【0051】
同様の条件下、様々なスケールで製造されたMOF UiO-66のいくつかの測定値を表3にまとめる。反応時間は複数の実験例の間で変化させた。しかしながら、反応時間は、製造されたMOF UiO-66またはその微細孔体積に影響を与えないようであった。
【表3】
【0052】
図1Aおよび図1Bは、600mL、2Lおよび5ガロン反応器で合成されたMOF UiO-66のx線粉末回折(”XRD”)の比較を提供する。各反応混合物は不純物を含まないMOF UiO-66を製造した。全てのスケールでの合成物において、MOF UiO-66相が、さらなる相の存在なしに示された。BET表面積および微細孔体積はともに77KでのN吸収量(N2 uptake)により測定した。図2は、MOF UiO-66を製造する、複数の2Lスケール実験および5ガロンスケール実験に関する、77KでのN吸収量を示す。図3Aおよび図3Bは、2L反応器および5ガロン反応器で製造されたMOF UiO-66のSEM画像による結晶寸法の比較を提供する。
【0053】
本方法は、ステンレススチール製反応器中、大きなスケールにて、0.45cc/g以上(随意には0.50cc/g以上)の微細孔体積を有するMOF UiO-66を製造することが示された。酢酸のテレフタル酸に対するモル比率は、細孔体積が大きいUiO-66の、規模を拡大した合成を可能にするものである一方で、MOF構造の欠陥をもたらすようである。
実施例2:MOF UiO-66結晶化のための、代替の金属源または他の条件変更
【0054】
典型的な合成方法では、ジルコニウム源として、Zr(OCl) 8HO塩を用いる。しかしながら、この塩に含まれる塩化物(chlorides)は、反応器およびその後の下流の処理装置において、特定の金属学上の問題があることを示す。通常、使用される316および316Lのようなステンレススチールは、塩化物の存在下で、穴あき(pitting)の影響を受け易い。代替のジルコニウム塩がこの問題を軽減することは有益であることを見出した。本方法では、アセテート-ヒドロキシド塩混合物Zr(OAc)(OH)4-x(Zr(OAc)(OH)(式中、
【数1】
である)としても記載され得る)は、塩化物類の使用なしで製造されたものと同品質のMOF UiO-66を提供することが示された。さらには、このようなアセテート-ヒドロキシド塩は、オキシ塩化物よりも潜在的に安価であり、また別の利点を提供する。
【0055】
表4および表5は、条件がわずかに異なる各方法のZr(OAc)(OH)4-xを含む反応溶液についてのデータを提示する。反応溶液の各々は、複数の実験例の間で、BET表面積および細孔体積がある程度異なるMOF UiO-66相を製造した。反応混合物を製造するために、反応溶液の各々を250rpmで撹拌し、150℃で24時間継続した。反応は600mL撹拌型オートクレーブ中で行った。
【表4】
【表5】
【0056】
図4Aおよび図4Bは、Zr(OAc)(OH)4-xを用いて合成されたMOF UiO-66の粉末X線回折パターンを提供する。両方のグラフは同じデータを示し、右のグラフは明確になるように拡大されて置かれている。粉末x線回折パターンは、Zr(OAc)(OH)4-xを含む反応溶液はMOF UiO-66相のみを有する材料を製造したことを示している。製造された反応混合物、特に過剰な酸を有する反応溶液についてのものは、BET表面積および微細孔体積が十分であった。各サンプル、特に過剰な酢酸を含むRxn3についてのものは、細孔体積が相対的に高い適切な相を製造した。図5に示されるように、77KでのN吸着等温線(N2 adsorption isotherms)を、出発材料としてZr(OAc)(OH)4-xを用いて合成されたMOF UiO-66サンプルのBET表面積の計算に用いた。
【0057】
合成手法(MOF UiO-66の製造方法)の変更は様々な微細孔体積をもたらした。図5に示されるように、条件の比較により、Zr(OAc)(OH)4-xを用いたとき、微細孔体積の増加をもたらすことが示されている。反応溶液中、過剰な酢酸を用いて、0.42cc/gという細孔体積が合成された。表4のRxn4および5参照。
【0058】
さらに、ZrOClを用いたとき(表4Rxn6)、酸含有量の増加は微細孔体積を0.61cc/gに増加させた。図6は、酢酸含有量が高い反応溶液でZrOClを用いて合成されたMOF UiO-66サンプルの微細孔体積およびBET表面積の計算に用いた77KでのN吸着等温線を示す。反応溶液中での酸の増加は、合成されたMOF UiO-66の微細孔体積を改善させた。微細孔体積の増加はMOF UiO-66の分離特性(separation properties)を高めることができる。
実施例3:合成への水の添加および酸含有量の調節
【0059】
金属対リガンド比率および全体濃度を一定に維持しつつ、表6に示されるように、試薬を慣習的に使用して、小さなスケールでの試行を行った。
【表6】
【0060】
図7は、表6の合成物の粉末X線回折パターンを示す。反応溶液の水による希釈で、酢酸のリンカーに対する比率は減少する。表6で示される条件下で、8.5°2θまでのレフレクション(reflections)の有意な広がりを引き起こすことなく、40wt%以下の水を加えることができた。より大きな水濃度で、リフレクションおよび大きな非晶質または部分的結晶特性が同様の角度で生じた。
【0061】
また一方、他の実験により、出発点として、反応溶液由来の結晶性材料を、50体積%以上の水を含む反応溶液のために得た。反応溶液の水含有量を、反応物質、リンカーに対する酸、濃度の調節により、最高で60体積%まで増加させ、結晶性MOF UiO-66を提供した。
【0062】
図8は、以下の表7に示す様々な酸濃度によるMOF UiO-66合成物の粉末X線回折パターンを示す。
【表7】
【0063】
反応溶液への水の添加は、MOF UiO-66を含む反応混合物中、未反応テレフタル酸を残留させる。慣習的には、あらゆる未反応有機成分の溶解には、極性非プロトン性溶媒が使用される。しかしながら、MOF UiO-66材料の洗浄にDMFを使用すると、水で希釈された反応混合物の有用性が取り除かれる。
【0064】
我々は、反応溶液に40体積%の水を用いたとき、17°(結晶性テレフタル酸に相当する)にてリフレクションを観察した。図8に示されるように、最下位パターンは合成された材料を示す。最下位トレースから2番目は、テレフタル酸ピークの完全な除去を示しており、慣習的なDMF洗浄の結果であった。有機リンカーの酸-塩基特性を利用して、我々はアンモニア水を使用して不純物を選択的に溶出した。MOF UiO-66は高pHに対する感応性を有する。このため、制御された滴定を行わなければならない。
【0065】
このことをテストするために、800mgのMOF UiO-66を10mLの水に懸濁させ、0.2mL、0.4mL、0.4mL(反応時間を延長させた)、0.6mL、0.6mL(反応時間を延長させた)、および0.8mLで処理した。図9の最下位から3番目のトレース参照。図9は、様々な方法で洗浄されたMOF UiO-66の粉末X線回折パターンを示す。0.4mLのNHOHは、反応時間を延長させても、未反応テレフタル酸を完全には溶解させないことを我々は観察した。他方、0.6mLでは、反応時間を延長させると、未反応テレフタル酸を完全に除去できる。
【0066】
40%水系溶媒を用いて合成され、かつ必要最低限量の水酸化アンモニウムで洗浄されてテレフタル酸が完全に除去されたUiO-66のサンプルで、ガス吸着分析を行った。図10は、40%の水を含む反応溶液を用いて製造されたMOF UiO-66に関する77KでのN吸着量等温線(N2 adsorption isotherm)を提供する。
【0067】
本明細書中、数字の下限値および上限値が記載されているとき、あらゆる下限値から、あらゆる上限値までの範囲が意図されている。本開示は特定の側面に関して説明されているが、それに限定されるものではない。特定の条件下で実施するための適切な代替/変形は、当該分野の当業者であれば、明らかである。このため、あとに記載の特許請求の範囲は、本開示の目的/範囲に含まれるあらゆる代替/変形を含むものとして解釈されることを意図している。
【0068】
本発明は、追加的または代替的に、以下に関する:
【0069】
実施態様1
オキシ塩化ジルコニウムを、テレフタル酸またはその誘導体および酢酸と、溶媒中、反応させ、反応溶液を提供すること;
前記反応溶液を少なくとも約10体積%の水で希釈し、希釈反応溶液を提供すること;
前記希釈反応溶液を、少なくとも120℃の反応温度に少なくとも4時間加熱し、反応混合物を提供すること;および
前記反応混合物の前記反応温度を低下させ、MOF UiO-66を提供すること、
を含む、MOF UiO-66の製造方法。
【0070】
実施態様2
前記MOF UiO-66は、0.45cc/g以上の微細孔体積および約20nm~約1000nmの結晶寸法を有する、実施態様1に記載の方法。
【0071】
実施態様3
前記テレフタル酸誘導体は水に不溶性である、実施態様1または2に記載の方法。
【0072】
実施態様4
前記テレフタル酸誘導体は、1,4-ベンゼンジカルボキシレートまたはその誘導体、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸、2-ニトロ-1,4ベンゼンジカルボン酸またはそれらの混合物から選択される、実施態様1~3のいずれかに記載の方法。
【0073】
実施態様5
前記MOF UiO-66は、窒素BET(nitrogen BET)により測定された、約900m/g~約1550m/gの表面積を有する、実施態様1に記載の方法。
【0074】
実施態様6
水酸化酢酸ジルコニウム(zirconium hydroxide acetate)および水酸化ジルコニウム(zirconium hydroxide)のうちの1種以上を、カルボン酸またはその誘導体および酢酸と、溶媒中、反応させ、反応溶液を提供し、金属有機構造体MOF UiO-66を製造することを含む、MOF UiO-66の製造方法。
【0075】
実施態様7
前記MOF UiO-66は、少なくとも約0.35cc/グラムの微細孔体積を有する、実施態様6に記載の方法。
【0076】
実施態様8
前記カルボン酸は、2-アミノ-1,4-ベンゼンジカルボン酸である、実施態様6または7に記載の方法。
【0077】
実施態様9
前記反応溶液を、前記溶媒の約50体積パーセント以下の量の水で希釈し、希釈反応溶液を提供することをさらに含む、実施態様6~8のいずれかに記載の方法。
【0078】
実施態様10
前記希釈反応溶液を、少なくとも85℃の反応温度に加熱することをさらに含む、実施態様9に記載の方法。
【0079】
実施態様11
前記希釈反応溶液を少なくとも4時間加熱する、実施態様10に記載の方法。
【0080】
実施態様12
前記MOF UiO-66は、約0.1cc/g~約1.0cc/gの微細孔体積を有する、実施態様1~11のいずれかに記載の方法。
【0081】
実施態様13
前記MOF UiO-66は、約0.40cc/g~約0.60cc/gの微細孔体積を有する、実施態様12に記載の方法。
【0082】
実施態様14
前記溶媒は、ジメチルホルムアミド、エタノール、メタノール、水またはジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよび“NPT”N-メチルピロリドンから選択される、実施態様1~13のいずれかに記載の方法。
【0083】
実施態様15
テレフタル酸の濃度は、溶媒1リットルあたり、約0.01モル~約5.0モルである、実施態様1~14のいずれかに記載の方法。
【0084】
実施態様16
前記反応混合物は、乾燥基準(dry basis)での前記MOFの質量計算によると、モルの制限試薬(molar limiting reagent)に基づいて、約65~約95モルパーセントのUiO-66金属有機構造体を産出する、実施態様1~15のいずれかに記載の方法。
【0085】
実施態様17
前記反応溶液を、約60体積パーセント以下の水で希釈する、実施態様1~16のいずれかに記載の方法。
【0086】
実施態様18
前記金属有機構造体を前記反応溶液から分離する工程をさらに含む、実施態様1~17のいずれかに記載の方法。
【0087】
実施態様19
酢酸のテレフタル酸に対する比率は少なくとも約20モル~約1モルである、実施態様1~18のいずれかに記載の方法。
【0088】
実施態様20
酢酸のテレフタル酸に対する比率は約24モル~約1モルである、実施態様1~19のいずれかに記載の方法。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
【国際調査報告】