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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(54)【発明の名称】高炉設備の運転方法
(51)【国際特許分類】
   C21B 5/00 20060101AFI20240604BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20240604BHJP
   F27D 7/02 20060101ALI20240604BHJP
   C21B 5/06 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
C21B5/00 321
F27D17/00 104G
F27D7/02 Z
C21B5/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023572537
(86)(22)【出願日】2022-06-02
(85)【翻訳文提出日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 EP2022065003
(87)【国際公開番号】W WO2022253938
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】LU500245
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500173376
【氏名又は名称】ポール ヴルス エス.エイ.
【氏名又は名称原語表記】PAUL WURTH S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(74)【代理人】
【識別番号】100099472
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100150773
【弁理士】
【氏名又は名称】加治 信貴
(72)【発明者】
【氏名】キンゼル、クラウス ペーター
(72)【発明者】
【氏名】カス、ジル
(72)【発明者】
【氏名】ウァレリウス、ミリアム
【テーマコード(参考)】
4K012
4K056
4K063
【Fターム(参考)】
4K012BF05
4K012BF06
4K056AA01
4K056CA02
4K056DB04
4K056FA08
4K063AA02
4K063BA02
4K063CA01
4K063DA07
4K063DA13
4K063DA15
4K063DA34
(57)【要約】
高炉を運転するための方法を提示する、前記方法は、高炉から高炉ガス流を回収し;前記高炉ガス流及び炭化水素含有ガス流を少なくとも1つの改質器を含む改質プラントに供給し;シンガス流を生成するため改質プラントにおける前記高炉ガス流及び炭化水素含有ガス流を改質し;前記シンガス流の少なくとも一部を高炉に供給する、各工程を含み、H流は、工程(c)の前に炭化水素含有ガスに、及び/又は工程(c)の前に高炉ガス流に、及び/又は工程(d)の前にシンガス流に、及び/又は高炉の羽口に添加され、前記シンガス流の少なくとも一部の供給は高炉のシャフトを通して及び/又は高炉の羽口を通して行い、かつ高炉、改質プラント及びカウパープラントを含む高炉プラントにおける水素の利用効率は60%を超える。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a シャフトと少なくとも1つの羽口を有する高炉(12,112,212)から高炉ガス流(16,116,216)を回収し;
b 前記高炉ガス流(16,116,216)及び炭化水素含有ガス流(24,124,224)を少なくとも1つの改質器(18,118,218)を含む改質プラントに供給し;
c シンガス流(26,126 226)を生成するため、改質プラント(18,118,218)において前記高炉ガス流(16,116,216)及び前記炭化水素含有ガス流(24,124,224)を改質し;及び
d 前記シンガス流(26,126,226)の少なくとも一部を高炉(12,112,212)に供給する、
各工程を含む高炉(12,112,212)の運転方法であって、
流(36,136,236)は、工程(c)の前に炭化水素含有ガス(24)に、及び/又は工程(c)の前に高炉ガス流(16)に、及び/又は工程(c)の前に高炉ガスと炭化水素含有ガスを含む混合物に、及び/又は工程(d)の前にシンガス流(26)に添加され、かつ、
高炉への前記シンガス流(26)の少なくとも一部の供給は、高炉のシャフト(38)を通して行われる、高炉の運転方法。
【請求項2】
高炉(212)での水素利用の効率を向上させることによって、高炉(212)を運転する方法であって、高炉へのH添加と改質反応との組み合わせを含み、
高炉(212)、改質プラント(218)及びカウパープラント(221)を含む高炉プラントにおける水素利用の部分が、高炉に供給される水素の60%を超え、かつ好ましくは、高炉に供給される水素の65%を超え、
水素の利用は、(高炉プラントへの水素投入-高炉プラントからの水素搬出)/(高炉プラントへの水素投入)として定義され、
高炉へ投入される水素は高炉の高炉融着帯のガス及びシャフトレベル(240)の処で高炉に注入されるシャフトガスの水素の合計含有量として定義され、かつ
高炉に供給される水素は、生産された溶融金属の合計で最低200Nm/tの流れであり、かつそのうち溶融金属の最低50Nm/tが水素分子H(236)の形体で高炉プラントに供給され、
高炉に投入される水素は、特に、シンガス(226)、注入された水素分子H(236)、その他の水素含有ガス(224)、注入された石炭及び/又はタール、注入されたガス(224)及び固体燃料(229)の湿気、及び熱風(230)の湿気、に含まれる水素を含む、
高炉(212)の運転方法。
【請求項3】
前記シンガス流(26)の少なくとも一部の高炉への供給は、高炉のシャフト(38)を通して及び高炉の少なくとも1つの羽口(30)を通して行われる、請求項1に記載された方法。
【請求項4】
高炉プラントに供給される水素の少なくとも一部は高炉の羽口を通して注入される請求項1又は2又は3に記載された方法。
【請求項5】
高炉への前記シンガス流(26)の少なくとも一部の供給は、高炉のシャフト(38)を通して、かつ高炉の羽口(30)を通して行われる、請求項1から4のいずれか1つに記載された方法。
【請求項6】
流(36,236)は600℃未満の温度を備えたシンガス流(26,226)に添加される、請求項1から5のいずれか1つに記載された方法。
【請求項7】
高炉ガス流及び/又は炭化水素含有ガス流は、改質プラント(218)の上流で水素化及び脱硫プラント(250)で、水素化され及び/又は脱硫される、請求項1から6のいずれか1つに記載された方法。
【請求項8】
水素の少なくとも一部は水素化及び脱硫ユニット(250)の上流で炭化水素含有ガス流に添加される、請求項7に記載された方法。
【請求項9】
流(36)は電解槽(32)で電気分解により生成される、請求項1から8のいずれか1つに記載された方法。
【請求項10】
電解槽(32)を動作するための電力(34)は風力、太陽光及び/又は水力のような再生可能な供給源によって生成される、請求項9に記載された方法。
【請求項11】
炭化水素含有ガス(24)は天然ガス、コークス炉ガス及び/又はバイオガスを含む、請求項1から10のいずれか1つに記載された方法。
【請求項12】
改質プラント(18)の少なくとも1つの改質器は再生改質器である、請求項1から11のいずれか1つに記載された方法。
【請求項13】
改質プラント(18)の少なくとも1つの改質器は、任意のタイプの触媒乾式及び/又は湿式改質器、特に、底部加熱、側部加熱、テラス型又は上部加熱である、請求項1から12のいずれか1つに記載された方法。
【請求項14】
改質プラント(18)が2つの改質器、とくに前改質器及び主改質器を含む、請求項1から13のいずれか1つに記載された方法。
【請求項15】
工程(c)での改質が非触媒的に行われる、請求項1から14のいずれか1つに記載された方法。
【請求項16】
工程(c)での改質が炭化水素の部分酸化と組み合わされる、請求項1から15のいずれか1つに記載された方法。
【請求項17】
工程(c)で生成されるシンガス(26,28)の還元ポテンシャルは6より大きく、好ましくは7より大きく、より好ましくは7.5より大きく、還元ポテンシャルは(cCO+cH)/(cHO+cCO)によって定義される、請求項1から16のいずれか1つに記載された方法。
【請求項18】
工程(c)での改質が、約900℃超、好ましくは約950℃超、より好ましくは約1000℃超で行われる、請求項1から17のいずれかに記載された方法。
【請求項19】
高炉ガス流(10)は更に、改質器(18)に供給される前に、ガス冷却及び/又は洗浄及び/又は加圧工程、好ましくは蒸気除去工程、粉塵除去工程、金属除去工程、HCl除去工程及び/又は硫黄成分除去工程の対象となる、請求項1から18のいずれか1つに記載された方法。
【請求項20】
洗浄工程の後で、水蒸気流が炭化水素含有ガス(24)に添加され及び/又は水蒸気流が高炉ガスに添加される、請求項1から19のいずれか1つに記載された方法。
【請求項21】
高炉ガス流が改質プラントのバーナーで使用される、請求項1から20のいずれか1つに記載された方法。
【請求項22】
シャフト、水素含有ガスの第1流を高炉に供給するよう配置された羽口、及び高炉にシンガス流を供給するよう配置された高炉のシャフト内のガス入口を備えた高炉(12,112,212)を含む高炉プラントであって、
高炉(12,112,212)の上部及び炭化水素含有ガス(24,124,224)の供給源と流体接続した少なくとも1つの改質器であって、高炉ガス及び炭化水素含有ガス流をシンガス流に変換するよう配置され、かつ高炉のシャフト内の前記ガス入口と下流で流体接続した改質器;及び
少なくとも1つの改質器及び/又はシャフト内のガス入口及び/又は高炉の羽口と流体接続したH流供給源(36,136,236)、
を更に含む高炉プラント。
【請求項23】
高炉設備は請求項1から21のいずれか1つに記載された高炉を運転するための方法を実施するよう構成された、請求項22に記載された高炉設備。
【請求項24】
改質器は高炉の羽口及び高炉のシャフト内のガス入口と下流で流体接続する、請求項22又は23に記載された高炉設備。
【請求項25】
改質プラント(18)は再生改質器を含む、請求項22から24のいずれか1つに記載された高炉設備。
【請求項26】
改質プラント(18)は触媒乾式及び/又は湿式改質器を含み、及び/又は改質プラント(18)が2つの改質器、とくに前改質器及び主改質器を含む、請求項22から25のいずれか1つに記載された高炉設備。
【請求項27】
改質プラント(18)は更に部分酸化改質器を含む、請求項22から26のいずれか1つに記載された高炉設備。
【請求項28】
高炉ガス流を改質プラントに移送するために配置された高炉の上部との流体接続には、ガス冷却及び/又は洗浄及び/又は加圧プラント、好ましくは、蒸気除去ユニット、粉塵除去ユニット、金属除去ユニット、HCl除去ユニット及び/又は硫黄成分除去ユニットが更に含まれる、請求項22から27のいずれか1つに記載された高炉設備。
【請求項29】
高炉ガス流を改質プラントに移送するために配置された高炉の上部との流体接続には、更に加圧ユニット(215)及び/又は酸素化及び脱硫ユニット(250)が含まれる、請求項22から28のいずれか1つに記載された高炉設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、高炉設備の運転方法、並びにこのような高炉設備に関する。
【背景技術】
【0002】
スクラップ溶解や電気炉内での直接還元などの代替方法はあるものの、高炉は今日でも鉄鋼生産に最も広く使用されている設備を代表している。高炉の懸念事項の1つは、高炉の上部から出る一般に「トップガス」とも呼ばれる高炉ガス(BFG)である。初期の頃は、このトップガスは単に大気中に放出されることが許されていたかもしれないが、このことは、その後ガスに含まれるエネルギーを浪費して環境に過度の負荷をかけることがないように、それをBFG供給発電設備で使用することで回避してきた。高炉ガスに含まれる成分の1つにCOがあり、これは環境に有害であり、主に産業的用途(industrial applications)には役に立たない。実際、高炉ガスが供給される発電設備から出る廃ガスは、典型的には20体積%から40体積%と高いCO濃度を含んでいる。燃焼される高炉ガスは、通常、前述のCOの他に、かなりの量のN,CO,HO,及びHを含んでいる。しかしながら、N含有量は、高炉に熱風(hot blast)又は(純粋な)酸素のいずれを使用するかで大きく変わる。
【0003】
主に、使用するコークス又は他の炭素供給源使用量を削減するために、高炉から高炉ガスを回収し、処理して還元ポテンシャル(reduction potential)を高め、高炉に注入して還元プロセスを支援することが提案された。これを行うための1つの方法は、特許出願EP2 886 666 A1に開示されているような、圧力スイング吸着(PSA)又は真空圧力スイング吸着(VPSA)によって高炉ガス中のCO含有量を削減することである。PSA/VPSA設備は、高炉ガス中のCO含有量を約40%から約5%に大幅に削減することができるが、取得、維持及び運転に非常に費用がかかり、さらに大きなスペースを要する。
【0004】
また、いくつかの産業的目的に使用できる合成ガス(シンガス(syngas)とも言う)を得るために、高炉ガスを炭化水素の改質剤(reforming agent)として使用することも提案されて来た。提案された改質プロセスによれば、高炉ガスは、少なくとも1つの炭化水素(例えば、低級アルカン)を含む炭素質ガス(carbonaceous gas)と混合される。いわゆる乾式改質反応においては、ガスの炭化水素が高炉ガス中のCOと反応してHとCOを生成する。同時に、炭化水素は高炉ガス中のHOと反応し、いわゆる水蒸気(steam)改質反応によってHとCOも生成する。
【0005】
CO排出量の削減の趣旨で、高炉自体の運転用の炭素質燃料の使用量削減にも多大な努力が払われている。代わりのものとして、炭化水素、気体水素H又はそれらの混合物の形で、水素含有量を増大させた燃料が使用されている。水素や炭化水素は発熱量が大きいため、補助燃料として高炉羽口に注入できる可能性を秘めている。朝顔及びシャフトガス(bosh and shaft gas)に対する水素の関与が高いほど、一般に高炉運転でのCO還元ポテンシャルは高くなる。「朝顔ガス」は、一般に高炉の高炉融着帯(cohesive zone)のガスに相当し、一方本稿における「シャフトガス」は、高炉のシャフト、すなわち高炉融着帯より上に注入されるガスに相当する。
【0006】
しかしながら、大量の微粉炭(PCI)とともに、羽口レベルの処/羽口を通した低温のH及び/又は炭化水素の注入は、RAFT(レースウェイ断熱火炎温度)の大幅な低下につながる。RAFTを上げるためにはより高い酸素富化が必要であるが、トップガスの温度によって制限される。したがって、羽口を通して高炉に注入できる低温のH及び/又は炭化水素量は比較的少ししかなく、この技術のCO節約の可能性は限られている。
【0007】
高温の水素又はたとえ天然ガスの様な高温の炭化水素であっても、羽口レベルの処で/羽口を通して注入すれば、水素の使用量を増やし、並びに高炉からのCOをより多く節約し得る。しかしながら、炭化水素は高温で亀裂が入り易くなる傾向があり、かつ鋼は高温水素と接触すると脱炭して亀裂が発生し易くなる傾向があるため、高温水素、及び特に高温炭化水素の生成は技術的に単純ではない。
【0008】
また、炭化水素及び/又は水素を高炉に注入する場合、高炉では水素の一部のみが鉄鉱石の還元に使用され、残りはトップガスと共に高炉から排出され、水素及び/又は炭化水素の注入の利点はさらに制限される。炭化水素及び/又は水素の注入により高炉内の水素量を増やすと、高炉での水素消費の割合が悪化する。このことは、高炉で使用する水素の量が増えると、一定量の水素に対するCO排出削減の可能性が低下することを意味する。
【0009】
最後の点は、高炉に注入される水素が電解プロセスで電気から生成された再生可能な水素である場合に特に問題である。実際に、高炉プラントから出る高炉ガスの一部を火力発電設備で使用すると、通常、約25から35%の低熱効率をもたらす。このことは、高炉ガスのこの部分のエネルギーの65から75%が電力生産使用時に失われることを意味する。したがって、特に高炉プラントで水素などの炭素を排出しない高価なエネルギー供給源を利用する場合に、電気エネルギーの生産に高炉ガスを使用することは可能な限り避けるべきであることが明らかである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、高炉プラントにおける水素の効率的な利用を可能にし、従来の高炉製鋼から生じるCO排出量を削減しかつ上記の問題を少なくとも部分的に克服する、高炉プラントの運転のための新しい方法並びにそれに対応する高炉プラントを提供することである。
【0011】
この目的は、請求項1及び2に記載された方法及び請求項19に記載された高炉設備により達成される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、第1の態様において、
(a)シャフトと少なくとも1つの羽口を有する高炉から高炉ガス流を回収し;
(b)高炉ガス流及び炭化水素含有ガス流を少なくとも1つの改質器(reformer)を含む改質プラントに供給し;
(c)改質プラントにおいて高炉ガス流及び炭化水素含有ガス流を改質し、シンガス流を生成し;及び
(d)シンガス流の少なくとも一部を高炉に供給する、
各工程(steps)を含む高炉の運転方法を提案する。
【0013】
流は、工程(c)の前に炭化水素含有ガスに、及び/又は工程(c)の前に高炉ガス流に、及び/又は工程(c)の前に高炉ガスと炭化水素含有ガスを含む混合物に、及び/又は工程(d)の前にシンガス流に添加される。Hの添加は、高炉に注入(すなわち供給)されるHの量を増やすために行われる。本発明による方法は、いかなるH除去工程も含まない。高炉へのシンガス流の少なくとも一部の供給は、高炉のシャフトレベルの処で/シャフトを通して行われる。シンガス流の少なくとも一部の高炉への供給は、高炉の羽口レベルの処で/羽口を通して、又は高炉のシャフトを通して及び高炉の羽口を通して行うことも可能である。換言すれば、ある実施形態では、シンガス流の一部がシャフトレベルの処で供給され、シンガス流の別の部分は同時に高炉の羽口を通して供給されるのに対し、別の実施形態では、シンガス流の一部の供給は、高炉のシャフトを通してのみ行う。
【0014】
実施形態(複数)では、水素及び/又は炭化水素のさらなる流れが高炉の羽口に添加され得る。
【0015】
この方法は鉛や銅などの他の金属の生成に適用できるが、高炉は、通常、銑鉄の生成のみに使用される。
【0016】
本発明の文脈において、シンガスは、改質器における改質プロセスによって生成された合成ガスをいう。
【0017】
本発明の文脈において、改質プラントは少なくとも1つの改質器を含む。実施形態では、改質プラントは、直列又は互いに並列に配置された複数の改質器を含み得る、又は改質プラントは、少なくとも2つの直列が互いに並列に配置された、少なくとも2系列の改質器を形成するための複数の改質器を含み得る。改質プラントの改質器は、例えば、再生改質器(regenerative reformer)又は任意のタイプの触媒乾式(catalytic dry)及び/又は湿式改質器(wet reformer)、特に底部加熱、側部加熱、テラス型又は上部加熱など、任意のタイプのものであり得る。改質プラントが複数の改質器を含む実施形態では、改質器は互いに同一かあるいは異なることが有り得る。改質プラントは、例えば、前改質器(pre-reformer)と主改質器とを備え得る。改質プラント内の改質器の正確な数、種類及び配置は、生成されたシンガスの要件(例えば、温度、還元度など)を満たすために行う高炉への生成されたシンガスのその後の供給のレベルに応じて、又は水素の添加位置に応じて、有利に適合させ得る。
【0018】
改質プラントで改質プロセスを行うために、二酸化炭素と水蒸気供給源として、例えば、回収された高炉ガスと炭化水素含有ガスとを結合(すなわち混合)して、改質プラントの第1の改質器の反応室(reaction chamber)に入る前又は入る際に混合ガスを形成する必要がある。改質プラントが1つの改質器のみを含む実施形態では、第1の改質器はこの改質器に相当する。
【0019】
反応器内で改質されるガスは、多かれ少なかれよく混合し得る、高炉ガスと炭化水素含有ガス及び可能性として水蒸気をも含めた混合ガスである。高炉ガスを炭化水素含有ガス及び可能性として水蒸気と結合させることは、一般的に「高炉ガスを炭化水素ガス及び可能性として水蒸気との混合を可能にすること」を意味する。これは、高炉ガスを炭化水素含有ガス及び可能性として水蒸気と(積極的に)混合すること、即ち、ガスを混合するために機械力を加えることを含み得る。しかしながら、場合によっては、例えばガスをパイプに注入するだけで、混合が対流及び/又は拡散によって多少消極的に発生することで十分な場合が有り得る。しかし、化学反応は混合度合が高いほど増強されることが分かっている。ガスは混合容器又は混合室(チャンバ)と呼び得る専用の容器で結合及び混合される。実施形態では、高炉ガス及び炭化水素含有ガス及び可能性として水蒸気を改質器に別々に注入し、ガスを改質器の内部、例えば改質器の前室(pre-chamber)内で混合することでも十分であり得る。
【0020】
1態様において、本発明は、水素利用の効率を向上させることによって高炉プラントを運転する方法をも提案する。この方法は、高炉へのH添加と改質反応との組み合わせを含む、ここで、高炉、改質プラント及びカウパー(cowper)プラントを含む高炉プラントにおける水素利用部分は、高炉に供給される水素の60%を超え、かつ好ましくは、高炉に供給される水素の65%を超える、ここで、高炉に供給される水素は、生産された溶融金属(hot metal)の合計で最低200Nm/tの流れであり、かつそのうち溶融金属の最低50Nm/tが水素分子Hの形体で高炉プラントに供給される。
【0021】
水素の利用は、(高炉プラントへの水素投入-高炉プラントからの水素搬出(export))/(高炉プラントへの水素投入)として定義される。
【0022】
高炉に投入される水素、又は高炉に供給される水素、又は高炉プラントに投入される水素は、朝顔ガス(高炉の高炉融着帯(cohesive zone)のガス)と高炉に注入されたシャフトガスの水素の合計含有量として定義される。この高炉に投入される水素は、特に、シンガス、注入された水素分子H、その他の水素含有ガス、注入された石炭及び/又はタール、注入されたガス及び固体燃料の湿気、及び熱風の湿気、に含まれる水素を含む。
【0023】
水素搬出は、高炉の上部から出てカウパープラント及び該当する場合は改質プラントでの利用を差し引いた高炉ガスに含まれる水素として定義される。
【0024】
別の態様では、本発明は、シャフト、高炉に水素含有ガス流を供給するために配置された羽口、及び高炉にシンガス流、好ましくは高温のシンガス流を供給するために配置された高炉のシャフトのガス入口を備えた高炉を含む高炉プラントを提案する。高炉プラントはさらに、高炉の上部及び炭化水素含有ガスの供給源と流体接続した少なくとも1つの改質器を含む改質プラントであって、高炉ガス及び炭化水素含有ガス流をシンガス流に変換するために配置されており、かつ、高炉のシャフト内の前記ガス入口と下流流体接続している前記改質プラント;及び少なくとも1つの改質器及び/又は高炉のシャフト及び/又は高炉の羽口のガス入口と流体接続しているH流の供給源、を含む。
実施形態では、改質プラントは、高炉の羽口と下流流体接続もし得る。
【0025】
有利にも、高炉設備は、以下でより詳細に説明するように、第1の態様に従った方法を実施することによって運転するよう構成されている。
【0026】
したがって、本開示は、削減されたコークスと他の炭素供給源比、少ないCO排出量で、かつ高効率な水素(H)利用を伴って高炉を運転できるようにする、統合された方法及び対応する設備を提案する。
【0027】
実際、本発明者らは、水素(H)の利用、高炉ガスのリサイクルと炭化水素の改質を組み合わせることにより、生産された金属、例えば銑鉄の品質に悪影響を及ぼすことなく、高炉設備のCO排出量を削減できることを見出した。したがって、本方法及び設備の主要な利点の1つは、高炉ガスの一部を再利用のために再調整することで、高炉運転に伴う全てのCO生成を大幅に削減できることである。
【0028】
別の主要な利点は、再利用のために高炉ガスの一部を再調整することで、高炉、改質プラント及びカウパープラントを含む高炉プラント全体のエネルギー効率を高めることができ、それによって水素利用効率を向上させることができることである。添加されたHは、概して高炉プラント内で完全に消費されるわけではなく、その結果添加されたHの少なくとも一部は、搬出高炉ガスに含まれて高炉プラントから出ていく。搬出高炉ガスとは、現在の文脈では、高炉から出た高炉ガスが高炉プラント内で消費された後の、より具体的には、高炉、カウパープラント、及び改質プラントで消費された後の残りの高炉ガスを意味する。高炉ガスを改質プラント内で少なくとも1つの改質器のバーナーの燃料ガスとして利用することも、高炉プラント内での高炉ガスの利用を増大させる。シンガスを生成するために高炉プラント内で回収及びリサイクルされる高炉ガスは、非常に高い全体のエネルギー効率で利用されるであろう。改質により、例えば、火力発電設備などに送る代わりに高炉で直接的及び間接的に冶金目的に使用できる。その結果、出ていくHの少なくとも一部は、低いエネルギー効率でエネルギー、例えば電気を生成するために燃焼されることはないであろう。換言すれば、H燃焼によるエネルギーの浪費が少なくなり、H利用の全体のエネルギー効率が向上する。
【0029】
実際、水素の生成には多くの場合大量のエネルギーを必要し、かつそれは約60%の生成効率で行われている。高炉に水素を注入する場合、水素の一部のみが高炉内の鉄鉱石の還元に使用される。概して、添加された水素は30と55%の間でこの鉄鉱石の還元に使用され、残りはトップガスに含まれて高炉から出ていく。高炉トップガスに含まれる水素を燃焼することで、約30%の生産効率で電気エネルギーを生産する。これにより、水素のこの部分を生成するのに使用する電気エネルギーの59~69%の「絶滅(destruction)」を生む。
【0030】
高炉の上部で水素を回収し、かつ通常80%を超える高効率で高炉プラントで再利用する改質技術により、発電設備で使用される水素の割合が減少し、したがってエネルギー絶滅の割合が減少する。
【0031】
さらに、得られたシンガスを高炉のシャフトレベルの処で注入することにより、コークス率(coke rate)、つまり生産される銑鉄1トン当たりのコークス量及び/又はその他の炭素供給源量を大幅に削減できる。
【0032】
加えて、高炉のシャフトにシンガスを注入することで、微粉炭、天然ガス、及び特に水素又はその他の材料のより多くの羽口注入が可能になる。したがって、余分な量のコークスを水素富化補助燃料に置き換えることができ、それにより高炉還元材の炭素含有量をさらに削減し、その結果、CO排出量を削減することができる。
【0033】
それにも拘らず、補助注入率が高くなればなる程、むしろ水素の使用量を低下させ、高炉ガスの再循環がさらに必要になる。この問題は、好ましい実施形態でも示されているように本方法で解決することができる。
【0034】
シャフトを通るシンガスの注入温度は約950℃にすべきであるが、炉内の材料を溶かさないために1050℃を超えてはならない。
【0035】
シャフトを通して供給されるシンガス流が、高温レベル(すなわち、典型的にはシャフト注入のための温度レベルより高い)の少なくとも1つの改質器を含む改質プラントによって生成される実施形態において、Hは、有利にも少なくとも1つの改質器の下流で高温シンガス流に添加できる。H流は、このようにしてシンガス流の冷却剤として機能する。水素を、このように、即ち冷却剤として使用することで、水素を高炉のシャフトから注入する前に高価な加熱装置で加熱する必要性が完全になくなる。実際、シンガスの過剰な熱は、水素の加熱に有利に使用されるであろう。これにより、シンガスの冷却と水素の加熱の両方の必要性を無くすことで、プロセスの効率を高めることができる。
【0036】
加えて、水素は改質器内で加熱され、かつシャフトレベルの処でシンガスの一部として注入されることから、この構成において水素を使用することで、高炉での実行可能な水素注入割合(injection rates)を高くすることができる。換言すれば、シンガスと水素の両方の注入を行うために、単一の高温ガス注入システムが必要であり、水素をシャフトレベルの処の注入温度まで加熱するための別のシステムは不要である。
【0037】
また、他の産業では、改質器の圧力レベルは比較的高く、殆どが20バーグ(barg)を超え、或いはさらに40バーグさえ超えているが、高炉での用途では、必要な圧力レベルは1.5~6バーグのみである。このことは、炭素形成や平衡変換(equilibrium conversion)などの改質設備の動作条件と限界(limit)に重要な影響を与える。圧力レベルが低いと、同じ温度レベルでのメタン変換率を高くするのに有利であるが、残念ながらそれはまた炭素煤の形成にも有利に働く。このことは、高炉ガス流及び/又は改質器の上流の炭化水素含有ガスにH流を添加することが、水素を添加しない場合と比較して、特定の温度でのメタンの変換率を同時に低下させるとしても、煤の生成を部分的に抑制できるため特に有利であることの理由である。
【0038】
水素は、改質器の上流で、炭化水素含有ガス及び/又は高炉ガス流と、シャフトレベルの処で注入されるシンガス流の両方へも添加し得る。水素の添加は、シャフトを通して供給されるシンガス流の冷却剤としての利用と、シンガス生成のための改質器の上流での高炉ガス流及び/又は炭化水素含有ガス流への添加とを平衡させる必要がある。既に述べたように、炭化水素含有ガス及び/又は高炉ガス流に水素を添加すると、改質反応中の煤の生成を削減するのに役立つであろう。
【0039】
高炉を運転するための本発明方法の別の利点は、水素が低温(cold)水素(即ち、経済的利害が関わる温度レベルにのみ加熱された非加熱流)又は純粋な高温H(即ち、CO及び/又はHO含有量なし)として注入され、したがって鋼の亀裂が防止されることである。
【0040】
本開示による運転方法及び高炉設備の主な利点及び利益は、以下のように要約できる。
・ 改質プロセス中の煤形成の削減
・ コークス比の削減
・ 羽口での補助燃料注入レベルの増大、及び特に炭化水素及び/又は純水素などの水素含有燃料の注入レベルの増大
・ 化石燃料の水素への置き換えによる高いCO節約量
・ シャフト内の滑りなどのトラブルを防止し、コークス層(coke bed)内の向流液相(counter flow liquid phase)(溶銑やスラグの落下)/気相(ガスの流出)を備えた高炉融着帯の流体力学的状況を改善する、Hの低粘度による改善された高炉の運転
・ 高炉プラントでの水素利用率の向上をもたらす高炉トップガスの再循環による、高炉プラントでの改善された水素利用。
【0041】
高炉を運転するための本方法のこれら及びさらなる利点、並びに本開示の高炉設備について、以下でさらに詳述する。
【0042】
実施形態において、高炉を運転するための開示された方法は、以下のサブ工程をさらに含む:
a1) 任意選択での炭化水素含有ガス及び/又は高炉ガスの水素化及び/又は脱硫
c1) 高炉ガスの別の部分の、単独での、又は他のガスと混合しての改質器のバーナーへの供給。
【0043】
このような実施形態において、ガス洗浄、改質条件及びシンガス温度要件は、水素の添加位置に応じて有利に適合させ得る。有利にも、シンガス温度が高炉への直接注入には高すぎる場合、Hは、高炉ガス流及び/又は水素化ユニットの上流(工程a1の前)、改質器の上流(工程bの前)、及び/又は改質プラントの下流(工程cの後)で、炭化水素含有ガスに添加し得る。
【0044】
任意選択で、水蒸気流は、工程a1)、工程c)の前で炭化水素含有ガスに、及び/又は工程c)の前で高炉ガス流に、又は工程c)の前で高炉ガスと炭化水素含有ガスの混合物に添加することも可能でもある。
【0045】
流及び/又は炭化水素含有ガス流及び/又は高炉ガス流は加熱し得、特にこれらの流れのいずれか1つ又は全部は、改質プロセスの前に、好ましくは、改質器から来る煙道ガス(flue gas)のエネルギーの一部を回収する熱交換器で加熱し得る。好ましくは、炭化水素含有ガス流及び/又は高炉ガス流は、改質器の上流で予熱される(即ち、適度な温度に加熱される)。H流が炭化水素含有ガス流及び/又は高炉ガス流に添加される実施形態においては、H流は、炭化水素含有ガス流及び/又は高炉ガス流に添加する前に、専用の加熱装置で予熱し得る。代替的には、H流は、添加後の炭化水素含有ガス流及び/又は高炉ガス流と同時に予熱し得る。しかしながら、H流が改質器の下流でシンガス流に添加される実施形態では、H流は、好ましくは、加熱されないか、又は経済的利害に関わる温度レベル、即ち、例えば、高温の水素による攻撃に対抗する高価な予防措置を必要としない温度レベル、典型的には600℃未満又は400℃未満にすら加熱されるだけである。本開示の文脈においては、非加熱の水素流、又は単に経済的利害に関わる温度レベルに加熱された水素流は、低温(cold)と言う。
【0046】
実施形態において、炭化水素含有ガスの脱硫は、その組成に応じて必要であり得る。例えば硫黄の除去は、酸化亜鉛層(zinc oxide bed)において、硫黄が無機形態、より具体的にはHSの形態で存在することを要する。しかしながら、炭化水素含有ガスは、水素と特定の触媒の存在下において、無機硫黄、HSに変換する必要がある有機硫黄も含むことが非常に多い。したがって、実施形態においては、脱硫が必要となる場合に備えて、水素化工程(工程a1)の前においても炭化水素ガスに水素を添加することが有利であり得る。後者は、高炉ガス自体が水素化プロセスに十分な水素を含み得るため、必ずしも高炉ガスには適用されない。
【0047】
有利にも、改質プラントの少なくとも1つの改質器のバーナーでそれぞれ利用するための高炉ガスの一部及び空気を含む燃料ガスも、改質プロセスの煙道ガスのエネルギーの一部を使用して熱交換器中で加熱される。
【0048】
好ましい実施形態では、H流は、電解槽内での電気分解によって生成される。好ましくは、水素は再生可能又は「グリーン」である。本開示の文脈において、再生可能又は「グリーン」水素とは、好ましくは水及び/又は水蒸気電気分解によって生成されること、及び/又は電解槽を動作させるための電力が、風力、太陽光及び/又は水力などの再生可能供給源によって生成されることを意味する。
【0049】
本開示の文脈における炭化水素又は「炭化水素含有ガス」という表現は、常温で気体状態にある任意の炭化水素を意味する。したがって、このような炭化水素ガスは、天然ガス、即ち、主にメタンからなり、かつ、一般に、他のさまざまな量の高次アルカンを含む化石起源の天然に存在する炭化水素混合ガスだけではなく、バイオガス、コークス炉ガスの様な同様の炭化水素成分を有するガスも含む。
コークス炉ガスは、幾つかのガス、主に水素(すなわち、少なくとも50%の水素含有量を有する)、メタン(従来、コークス炉ガスの25%)、及び残りは窒素、CO,CO又はHOなどのさまざまなガスの混合物である、幾つかのガスの混合物である。したがって、コークス炉ガス自体にすでに大量の水素が含まれている。
【0050】
好ましくは、炭化水素含有ガスは、天然ガス、コークス炉ガス及び/又はバイオガスを含む。
【0051】
改質器は、触媒改質器(catalytic reformer)、再生改質器とも呼ばれる再生器型反応器(regenerator type reactor)、プラズマトーチ付き改質器、部分酸化改質器、酸素/炭素及び/又は炭化水素バーナーを備えた改質器の様な、いかなる種類のものでもよい。
【0052】
有利なことに、シンガス流は乾式又は湿式改質プロセスに由来する。いわゆる乾式改質プロセスにおいて、メタンなどの炭化水素含有ガスの炭化水素が高炉ガス中のCOと反応してHとCOが生成される。したがって、乾式改質反応はCH+CO=2CO+2Hである。いわゆる湿式改質プロセスでは、炭化水素が高炉ガス中のHOと反応してHとCOも生成される。したがって湿式改質反応は、CH+HO=CO+3Hである。いずれにせよ、H及びCOの濃度が有意に増加したシンガスが得られる。
【0053】
改質プロセスは、触媒的又は非触媒的に行うことができる。特に、天然ガスプロセスの改質は、触媒的又は非触媒的のいずれでも行い得るが、コークス炉ガスの改質は、非触媒的に行うことが好ましい。触媒的に行われるプロセスは触媒の存在下で行われ、非触媒的に行われるプロセスは触媒なしで、即ち触媒非存在下で行われる。改質プロセスは、さらに、単一の改質器で、又は複数の改質器、例えば、前改質器及び二次改質器又は主改質器で行い得る。
【0054】
生成されたシンガスは、高炉で効果的に利用するために高品質である必要がある。この品質は、通常、モル比(cCO+cH)/(cHO+cCO)として定義されるその還元ポテンシャルで説明される。シンガスの十分な品質を確保するために、還元ポテンシャルは可能な限り高く、好ましくは6より高く、より好ましくは7より高く、かつ最も好ましくは7.5より高くすべきである。
【0055】
熱力学的には、シンガスのある程度の還元ポテンシャルは、改質プロセスに最低温度レベルを適用することによってのみ達成できる。改質プロセスは、好ましくは、シンガス流が、所望の還元ポテンシャル及び高炉のシャフトを通してそれを供給し得る温度の両方を有するのに十分な温度で実施される。H流が炭化水素含有ガス及び/又は高炉ガス流に改質器の上流で添加される実施形態では、改質器内及び改質器から高炉に至る配管内での煤の形成を削減し、高炉のシャフトを通してシンガスを供給するのに、水素の添加が役立つであろう。
【0056】
加えて、高炉ガス流は、有利にも、改質器に供給される前に、ガス冷却及び/又は洗浄及び/又は加圧工程、好ましくは蒸気(vapor)除去工程、粉塵除去工程、金属除去工程、HCl除去工程及び/又は硫黄成分除去工程の対象となり得る。
【0057】
実施形態では、高炉ガスの第2流は、それ自体で又は他のガスと混合して改質プラントのバーナー内で使用し得る。好ましい実施形態では、高炉から出る高炉ガスはカウパー及び改質プラントでの利用のために可能な限り回収される。換言すれば、製鉄プラント内の他のユニットに供給される搬出高炉ガスは可能な限り少なくなっている。好ましくは、火力発電設備での利用が回避される程少ない。
【0058】
「流体接続」という表現は、2つの装置(devices)が導管又はパイプによって接続され、流体、例えばガスが1つの装置から他の装置に流動し得ることを意味する。この表現には、この流れを変えるための手段、例えば、質量流量を調節するためのバルブ又はファン、圧力を調節するためのコンプレッサーなど、並びに、高炉全体の運転又は高炉設備内の各要素の運転の適切な制御に必要又は望ましいセンサ、アクチュエータの様な制御要素が含まれる。
【0059】
本稿において「改質器」とは、改質反応器や改質容器のような、改質プロセスを行うことができる任意の容器を意味する。
【0060】
「シャフト供給」、「シャフト注入」、「高炉のシャフトへの…供給」、「シャフトレベルの処での…供給」、「シャフトを通しての…供給」、「シャフトレベルの処で供給される」、「シャフトレベルの処で注入される」、又は「シャフト内のガス入口」は、熱風(hot blast)レベルより上、即ち朝顔(bosh)の上、好ましくは高炉内の高炉融着帯(cohesive zone)の上の酸化第一鉄のガス固体還元帯(gas solid reduction zone)内での材料(例えばガスなど)の注入を意味する。
【0061】
「羽口レベルの処で…供給」、「羽口を通して…供給」、「羽口レベルの処で供給される」、又は「羽口レベルの処で注入される」は、高炉の羽口を通して材料(例えばガスなど)を注入することを意味する。
【0062】
本稿で、「高炉への供給」及び「高炉への注入」、並びに「高炉へ供給された」及び「高炉へ注入された」又は「高炉内へ注入された」は、それぞれ同義語として用いる同一の意味を有し、高炉への材料の注入を意味する。
【0063】
本稿での「又は」は排他的ではなく、「又は」又は「及び」のいずれかを意味する。
【0064】
本稿における「約」とは、所与の数値が、前記数値の-10%から+10%の値の範囲、好ましくは、前記数値の-5%から+5%の値の範囲をカバーすることを意味する。
【0065】
本稿において、工程(c)は改質全般を意味する。これは、シャフト又は羽口のいずれかを通して注入するためのシンガスの生成と、シャフトと羽口を通して同時に注入するためのシンガスの生成をもカバーする。
【0066】
本開示のさらなる細部及び利点は、添付図面を参照する幾つかの非限定的な実施形態についての以下の詳細な説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0067】
ここで、本開示の好ましい実施形態を、添付の図面を参照して例として説明する。
図1】本高炉運転方法を実施するように構成された高炉プラントの第1の変形例の実施形態の概略図である。
図2】本高炉運転方法を実施するように構成された高炉プラントの第2の変形例の実施形態の概略図である。
図3】本高炉運転方法を実施するように構成された高炉プラントの第3の変形例の実施形態の概略図である。
図4】改質器内のC濃度のバラツキを、様々な水素含有量の温度の関数として示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0068】
CO排出量:
【0069】
コークスは、高炉製鉄における主要なエネルギー入力(energy input)である。COの観点からまた多くの場合経済的観点からも、これはあまり好ましくないエネルギー供給源である。主に羽口レベルの処で注入される、コークスの代替となる他のエネルギー供給源が広く採用されている。しかしながら天然ガス価格の低い国では、コスト上の理由から主に微粉炭が注入され、このエネルギーが使用される。多くの場合、廃プラスチックの様な残留物も高炉に注入される。温室効果ガス排出削減の大望を抱いて、補助燃料に水素も組み入れる産業活動が始まり、かつ期待される水素の高度な利用可能性により、補助燃料としての水素の貢献度が大幅に高まるであろうと予想される。
【0070】
これらの補助燃料は、高炉製鋼によるCO排出にプラスの影響を与える可能性がある、一方その利用はプロセス上の理由で限界があり、今日では既にこれらの限界に達していることが非常に多い。高炉は、高炉に入力されるエネルギーの最大約40%を含む高炉ガス(BFG)を生成する。高炉から出る高炉ガスの約25%は、通常カウパープラント内で高炉の羽口の処で注入され、ブラストを加熱するのに使用される。高炉に入力されるエネルギーの約30%を含むその高炉ガスの残りの75%は、通常、製鉄プラントの内部の熱要件のために使用されるが、電気エネルギー生産にも使用される。
【0071】
したがって、高炉ベースの鉄鋼生産のCO排出量を削減するための重要な戦略の1つは、このBFGを可能な限り冶金目的に使用し、製鉄プラントの残りのエネルギー要請に対してグリーン電力エネルギーのような他のCO低減エネルギー(lean energies)を適用することである。
【0072】
それ故に、合成ガスの生成は、CO低減炭化水素の利用と共に、高炉製鉄からのCO排出削減ポテンシャルを向上させるために、高炉ガスを可能な限り使用し、並びに高炉プラントで利用可能な場合は、転炉ガス及び/又は低温塩基性精錬炉(cold basic oxygen furnace)(BOF)ガスを使用する必要がある。
【0073】
製鉄のための水素利用:
【0074】
製鉄のための水素利用は、高炉での水素の直接利用、補助プラント、特にカウパープラント、及び設置されていれば、高炉のシャフト内に注入されるシンガスを生成するための改質プラント、での利用に分けることができる。
【0075】
高炉での水素の利用は、概してエタ(eta)Hと呼ばれる。エタHは、エタH=(BF中のH)-(トップガス中のBF外のH))/(BF中のH)として定義される。本稿において、BFとは高炉を意味し、(BF中のH)は高炉に入るH流を指し、かつ(トップガス中のBF外のH)は高炉の上部から出た高炉トップガス中のH流を意味する。
【0076】
「BF中のH」は、朝顔ガス(高炉の高炉融着帯のガス)と、シャフトレベルの処で高炉に注入されるシャフトガスの総水素含有量として定義される。高炉に投入されるこの水素は、特に、シンガス中、注入される水素分子H中、その他の水素含有ガス中、注入される石炭及び/又はタール中、注入されるガス及び固体燃料の湿気、及び熱風の湿気中、に含まれる水素を含む。
【0077】
「トップガス中のBF外のH」は、高炉から出たトップガスの乾燥流量(dry flow rate)に、そのトップガス中の水素の乾燥濃度(dry concentration)を掛けた値で定義される。
【0078】
エタHは通常50%を下回り、しばしば45%を下回る。さらに、エタH、したがって高炉内での水素利用百分率は、高炉への水素投入が増大するとともに減少するという特性がある。このことは、高炉でより多くの水素を使用したい場合に、その利用効率が大幅に低下し、かつ高炉に導入された水素の大部分がトップガスと共に出ていくことを意味する。その結果、注入された水素のkg当たりで達成可能なコークス還元率も減少し、注入された水素のCO還元ポテンシャルが間接的に低下する。
【0079】
また、補助燃料(水素含有ガス)の注入を増やすと、火炎温度を維持するために酸素の濃縮度を高める必要がある。高炉内の酸素富化を高めることは、高炉で使用される自然のブラスト(blast;空気)の量が減ることを意味する。その結果、高炉に入る熱風(hot blast)の総量が減少する。これは、少量の高炉ガスの使用で熱風を加熱できることを意味する。
【0080】
このことは、鉄鉱石の還元のために高炉内の水素の百分率を増やすと、この水素はそのより少量部分が高炉内で使用され、かつより少量の部分がカウパープラントで使用され、最終的には、結果として高炉プラントから出ていく搬出ガス中の水素の量が増加することを意味する。
【0081】
このことを、高炉の基準運転と本発明方法の3つの実施形態による水素注入による高炉の運転とを比較して以下の表(表1)に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
基準運転では、高炉は羽口の処のコークスと微粉炭注入のみを使用するが、ケース1では、高炉の羽口レベルの処で低温水素が追加で注入される。
【0084】
ケース1では、高炉プラントからの搬出水素の比率が10.045Nm/h(基準に対する)から14.532Nm/h(ケース1に対する)に4.487Nm増加し、高炉に投入される水素が30.322(基準に対して)から41.520Nm/h(ケース1に対して)に11.198Nm増加していることが分かる。これにより、高炉プラントでの水素利用は67%から65%に減少する結果となる。換言すれば、高炉プラントから出るトップガス中の4.487Nmは、11.198Nmの追加注入水素の40%に相当する、したがって高炉での追加水素の利用率ははるかに低く、60%に過ぎない。
【0085】
ケース2(表1)では、高炉のシャフトの処で950℃の高温シンガスを注入する。高炉に注入される水素の総量は、基準ケースと比較して3倍以上に増加したにもかかわらず、高炉プラントでの水素利用率は67%から69%に増加していることが分かる。これは、羽口レベルの処で高炉に水素を少し添加するだけで、高炉プラントでの水素の利用率の低下にすでに影響が出ていることを示しているためで、非常に印象的である。基準ケースと比較すると、72.703Nmの水素の追加注入では、21.627Nm、即ち30%が搬出ガスとともに高炉プラントから出ていくだけである。
【0086】
表1に示す最後のケース(ケース3)では、高炉に入る水素の量が大幅に増加し、基準ケースと比較して4倍を超えている。今でも、高炉プラント内の水素の利用率は、参考ケースのように高いことが分かる。94.984Nmの水素の追加注入のうち、30.304Nm(即ち、32%)のみが搬出ガスと共に高炉プラントから出ていく。
【0087】
エネルギー効率
【0088】
プロセス全体の高効率を達成するために、カウパープラント及び改質プラントには、燃焼用空気及び/又は燃焼ガスを予熱するための熱回収システムを装備することが望ましい。両プラントの効率は70%を超え、より具体的には80%を超える必要がある。
【0089】
改質及びシンガスの要件:
【0090】
高炉で使用するためのシンガスの要件は、他の産業での用途の要件とは異なる。
【0091】
高炉でのシンガス使用の主な要件は次のとおりである:
【0092】
シンガスの還元ポテンシャル及び温度レベル
【0093】
他の産業では、通常、シンガスが生成され、冷却されて過剰な水蒸気がシンガスから分離される。これにより、下流プロセスでは冷却されたガスのみが使用される。鉄鋼業以外の既存の産業的用途では、改質プロセスによって直接達成される高い還元ポテンシャルは重要ではない。しかしながら、鉄鋼業では、高い還元ポテンシャル、できれば可能な限り高く、少なくとも6を超えることが好ましく、高いプロセス効率、還元ポテンシャル、又は還元度は次のように定義され、非常に有利である:
(cCO+cH)/(cHO+cCO)、
ここで、cはモル濃度を意味し、例えば、cCOはシンガス中のCOのモル濃度を意味し、cHはシンガス中のHのモル濃度を意味し、cHOはシンガス中のHOのモル濃度を意味し、cCOはシンガス中のCOのモル濃度を意味する。
【0094】
さらに、最大の熱効率を可能にするために、シンガスの高温は好ましく、羽口及び/又はシャフトを通すシャフト注入に必要な温度レベルと両立し得る。したがって、高炉の高炉融着帯の上のシャフトに、つまりシャフトレベルの処でそれを注入できるようにする必要があるため、温度は850と1100℃の間、好ましくは約950℃である必要がある。
【0095】
比率 H/CO:
【0096】
鉄鋼業のほか、他の産業では、シンガスは純粋な水素生成、アンモニア又はその他の化学成分の生成のような特定の用途に使用される。これにより、概してシンガス内の水素とCOの特定の比率が要求される。
【0097】
それに比べて、高炉でシンガスを使用する目的は鉱石の還元であり、これは還元成分、COと水素の両方によって達成される。CO又は水素による鉱石の還元には違いがあるが、シンガスが高炉内で使用される還元ガスの一部に過ぎないことを考えれば、この違いは比較的僅かである。
【0098】
圧力レベル:
【0099】
他の産業では、改質器の圧力レベルは比較的高く、殆どが20バーグ以上、さらには40バーグを超えているが、高炉の用途では、必要な圧力レベルは1.5~6バーグだけである。これは、煤の形成や平衡変換などの改質設備(reforming equipment)の動作条件と限界に重要な影響を与える。同じ温度レベルでは圧力レベルが低いほどメタン変換を高めるのに有利であるが、残念ながら煤の形成にも有利である、その理由のため、H流を高炉ガス流及び/又は改質器の上流で炭化水素含有ガスに添加することは、それが同時に、水素を添加しない場合と比較して所定の温度でのメタン変換の低下を招くとしても、煤形成を部分的に抑制するのに特に有利である。
【0100】
水素添加:
【0101】
既に以上で示したように、水素は高炉の羽口の処でHの形体で、また炭化水素の形体でも簡単に添加することができる。しかしながら、シンガスの生産と高炉のシャフトの処で行うその注入に積極的に影響を与えるために、水素添加を用いることもできる。
【0102】
水素好ましくは再生可能な水素流は、特に改質器の前でこの方法に添加されて煤形成を削減し、又はシャフトを通して注入されるシンガス流を冷却しかつ同時にその還元ポテンシャルを増大させるために、改質器の後でシンガス流に対して添加される。本稿では、シンガスに言及する場合、還元ポテンシャルと還元度を同義語とし、いずれもモル比(cCO+cH)/(cHO+cCO)を意味する。改質器の上流で水素を添加する前に、水素流を加熱することは有益であり得る。
【0103】
シンガス生成のための改質反応:
【0104】
天然ガスの改質のような炭化水素ガスの改質は、主に以下の反応によって行い得る:
【0105】
水蒸気の存在下での水蒸気改質:
CH+HO=CO+3H
【0106】
COの存在下での乾式改質:
CH+CO=2CO+2H
【0107】
これら2つの反応は吸熱性が強く、多くの熱を必要とする。
【0108】
この熱は、燃料ガスを燃焼させて煙道ガス(flue gas)の熱を反応器に伝達することによって間接的に供給するか、又は以下の式に従って改質反応と部分酸化反応(partial oxidation reaction)を組み合わせることによっても供給できる。
【0109】
CH+1/2O→CO+2H
【0110】
改質反応と共に、改質器で副反応(side reactions)が起こり得る。これらの反応の相対的な重要性は、ガス組成、温度と圧力、触媒の使用と性質などの動作条件による。改質温度に近い温度での主な副反応は次のとおりである:
【0111】
逆水性ガスシフト反応(RWGS):
CO+H→CO+H
【0112】
CH分解:
CH→C+2H
【0113】
メタネーション反応:
4H+CO→CH+2HO又は3H+CO→CH+H
【0114】
煤/炭素堆積物の生成用反応スキームの一部である多数の反応と同様である。これらの反応の例として、以下に示すように、アセチレンの形成(formation)がある:
【0115】
アセチレンの形成:
2CH→C+3H
【0116】
このアセチレンは、煤の一部である芳香族炭化水素の生成における分子(前駆体;precursor)であり得るか、又は以下の反応に従って熱分解し得る:
【0117】
アセチレンの分解:
→2C+H
【0118】
水素はこれらの殆どの反応の一部であり、そのため改質反応自体だけでなく、副反応にも重要な影響を与える。したがって、高炉ガス流及び/又は改質器の上流の炭化水素含有ガス流にHを添加することにより、CO削減目的で高炉での水素の望ましい利用を活用して、煤の形成と堆積を削減するなど、炭化水素改質プロセスをさらに改善することができる。
【0119】
本発明の3つの異なる実施形態の詳細な説明
以下では、高炉及び高炉プラントの運転方法の3つの異なる変形例を添付図面に関連して示す。
【0120】
図1は、高炉のシャフトを通すシンガスの第1流と、高炉の羽口を通すシンガスの第2流の同時注入を含む高炉を運転するための本方法の第1の変形例の実施形態を示す。
【0121】
高炉12から出た高炉ガス10は、高炉12のトップ(上部)で回収される。
【0122】
回収された高炉ガス10は、概して高炉から出る際に前処理される。高炉ガス流の前処理は、まず蒸気含有量を削減するための冷却、洗浄、特に粉塵及び/又はHCl及び/又は金属化合物の除去、次に最終的な脱硫、加熱、改質プロセス、及び高炉での注入に十分な圧力を得るための加圧を含む。図1の実施形態では、高炉ガスの冷却、洗浄及び加圧は、冷却、洗浄及び加圧ユニット14において行われる。代替的には、各ユニットが高炉ガスの冷却、洗浄、又は加圧のいずれか1つを行う別々のユニットを使用することができる。他の実施形態では、1つのユニットが高炉ガスの冷却、洗浄及び加圧の2つを担当し、3番目の前処理工程は別のユニットで行われる。本稿において、冷却、洗浄及び加圧ユニットは、各種工程(冷却、洗浄及び加圧)をこの順で行わなければならないという前提無しで、ガス流を冷却、洗浄及び加圧するように構成されたユニットである。例えば、ガス流の洗浄が脱硫である実施形態のような実施形態においては、加圧は洗浄の上流で行われる。
【0123】
冷却、洗浄及び加圧ユニット14の下流では、高炉ガス流が3つの流に分割されている。高炉ガスの第1流16は第1改質プラント18に供給され、かつ高炉ガスの第2流20は第2改質プラント22に供給される。本実施形態では、両改質プラントは再生型改質プラントである。高炉ガスの第3流27は高炉搬出ガス(export gas)と呼ばれ、改質プラント18、22を備えた高炉プラントを含む製鋼プラントの別のユニットに供給される高炉ガスに相当する。
【0124】
加えて、コークス炉ガス及び/又は天然ガス流24が改質プラント18、22に供給される。
【0125】
塩基性精錬炉ガス(Basic oxygen furnace gas)及び/又は水蒸気は、任意選択で、高炉ガス流に(冷却、洗浄及び加圧ユニット14の上流及び/又は下流で)及び/又は炭化水素含有ガス流24及び/又は直接改質プラント18、22に、添加し得る(図示せず)。
【0126】
シンガスの第1流26を生成するために、コークス炉ガス及び/又は天然ガス流24と共に高炉ガスの第1流16の改質が第1の改質プラント18で行われる。シンガスの第2流28を生成するために、改質プラント22でコークス炉ガス及び/又は炭化水素含有ガス流24と共に高炉ガスの第2流20の改質が行われる。
【0127】
両改質プロセスは、乾式及び/又は湿式改質プロセスであり、可能性として部分酸化との組み合わせで、CO及びH含有量の高いシンガスの2つの流れ26、28の形成をもたらす。改質プロセスは、1.5と10バーグの間の圧力で、かつ改質プラントに応じて900℃を超え、好ましくは950℃を超え、より好ましくは1000℃を超える温度で行われる。
【0128】
高炉ガス及び/又は炭化水素含有ガスは、改質プロセスに先立って任意選択で加熱し得る(図示せず)。加熱は、例えば多管式熱交換器(tube bundle heat exchangers)を使用して行い得る。第2の改質プラント22から出たシンガスの第2流28は、温度約1200℃、圧力2~6バーグを備えて、羽口30を通して高炉に供給される。
【0129】
加えて、高炉設備は、電気分解によって、好ましくは水/水蒸気電気分解によってH流36を生成するために、電力34によってエネルギー供給される電解槽32を含む。電解槽32にエネルギー供給する電力34は、好ましくは、再生可能又は「グリーン」、即ち、風力、太陽光及び/又は水力などの再生可能供給源から得られる。
【0130】
代替的又は追加的に、前記水素は、固体炭素形成を伴う熱分解プロセス、又は炭素捕集・貯留(CCS)技術及び/又は炭素捕集(capture)・利用(CCU)技術の組み合わせによって、天然ガスから生成することができる。水素は、CCS及び/又はCCU技術を組み合わせた水蒸気メタン改質又はメタン熱分解(methane thermal cracking)によっても生成し得る。
【0131】
電解槽で生成されたH流36は、第1改質プラント18の下流及び高炉12内部のシャフトを通して配置されたガス入口38の上流でシンガスの第1流26に添加される。水素36を添加したシンガスの第1流26は、H富化ガス流40を形成し、温度は約900℃でかつ典型的な圧力1.5~4バーグを備えて、シャフトレベルの処のガス入口38を通って高炉に供給される。
【0132】
流36は、シンガスの第1流26の冷却剤として作用する。前記水素をこのように、即ち冷却剤として用いることで、前記水素を、高炉12のシャフトを通して注入する前に高価な加熱装置で加熱する必要性を完全に排除することができる。実際、シンガス26の余剰熱は前記水素を加熱する。これにより、シンガス冷却と水素加熱の両方の必要性を排除し、プロセスの効率を高めることができる。
【0133】
図2は、高炉のシャフトを通すシンガスの第1流と、高炉の羽口を通すシンガスの第2流の同時注入を含む、高炉を運転するための本方法の第2の変形例の実施形態を示す。
【0134】
高炉112から出た高炉ガス110は、高炉112の上部(トップ)で回収される。
【0135】
回収された高炉ガス110は、概して高炉を出る際に前処理される。高炉ガス流の前処理は、まずその蒸気含有量を削減するための冷却、洗浄、特に粉塵及び/又はHCl及び/又は金属化合物及び/又は硫黄成分(sulfurous components)の除去、及びその後の改質プロセス及び高炉への注入用に十分な圧力を有するための加圧を含む。図2の実施形態では、高炉ガスの冷却、洗浄及び加圧は、冷却、洗浄及び加圧ユニット114において行われる。代替的には、各ユニットが高炉ガスの冷却、洗浄、又は加圧のいずれかを行う別々のユニットを使用し得る。別の実施形態では、1つのユニットが高炉ガスの冷却、洗浄及び加圧のうちの2つを担当し、3番目の前処理工程は別のユニットで行われる。
【0136】
冷却、洗浄及び加圧ユニット114の下流で、高炉ガス流が3つの流に分割される。高炉ガスの第1流116は第1の改質プラント118に供給され、高炉ガスの第2流120は第2の改質プラント122に供給される。本実施形態では、両改質プラントとも再生型改質プラントである。高炉ガスの第3流127は、高炉搬出ガスと呼ばれ、改質プラント118、122を備えた高炉プラントを含む製鋼プラントの別のユニットに供給される高炉ガスに相当する。
【0137】
加えて、高炉設備は、高炉及び冷却、洗浄及び加圧ユニット114に加えて、改質プラント118、122の各々と流体連通(fluidic communication)するコークス炉ガス及び/又は天然ガス流124の供給源、及び電気分解、好ましくは水電気分解によってH流136を生成するために、電力134によってエネルギー供給される電解槽132、を含む。電解槽132にエネルギーを供給する電力134は、好ましくは、再生可能又は「グリーン」、すなわち、風力、太陽光及び/又は水力などの再生可能な供給源から得られる。
【0138】
電解槽によって生成されたH流136は、改質プラント118、122の上流でコークス炉ガス及び/又は天然ガス流124に添加されて改質プラント118、122の各々に供給され、H富化炭化水素含有ガス流142を形成する。
【0139】
塩基性精錬炉ガス及び/又は水蒸気は、任意選択で、高炉ガス流(冷却、洗浄及び加圧ユニット114の上流及び/又は下流で)及び/又は炭化水素含有ガス流124及び/又はH流136に、及び/又は直接改質プラント118、122に、添加され得る(図示せず)。
【0140】
第1の改質プラント118では、シンガスの第1流126を生成するために、H富化炭化水素含有ガス流142と共に高炉ガスの第1流116の改質が行われる。第2の改質プラント122では、シンガスの第2流128を生成するために、H富化炭化水素含有ガス流142とともに高炉ガスの第2流120の改質が行われる。
【0141】
両改質プロセスは乾式改質であり、CO及びH含有量の高いシンガス126、128の2つの流れの形成をもたらす。改質プロセスは、1.5~10バーグの圧力で、改質プラントに応じて、900℃を超え、好ましくは1000℃を超え、より好ましくは1200℃を超える温度で行われる。
【0142】
高炉ガス及び/又は水素含有ガスは、任意選択で、改質プロセスに先立って加熱し得る(図示せず)。加熱は、例えば多管式熱交換器を使用して行い得る。
【0143】
改質プラント118、122の上流、したがって改質プロセスに先立って、炭化水素含有ガスに水素を添加することで、改質反応中の煤の形成を削減するのに役立つであろう。乾式改質による炭素堆積物の形成は既知の問題である。改質プラント内では異なる反応が行われかつ炭素堆積物の形成をもたらす。このような反応の多くは、エテンC及びアセチレンC前駆体の形成を含む。メタンからこれらの前駆体が形成されると、水素の分離、ガス体積の増加がもたらされる。したがって、反応器入口ガス中の水素の分圧を上昇させる、つまり、炭化水素含有ガスに及び/又はシンガス流にHを添加する等、改質される混合ガスにHを添加することによって、炭素堆積物前駆体の形成、ひいては炭素堆積物自体の形成を削減させることができる。例えば、図4に示すように、改質する混合ガス中のHの量を10%から40%に増やすことで、改質プラント内のC濃度は、1225℃で約0.35%から約0%へ大幅に低下する。
【0144】
第2の改質プラント118から出るシンガスの第1流126は、約950℃の温度、1.5~4バーグの圧力を備えて、高炉112の内部のシャフトを通して配置されたガス入口138を通って高炉に供給される(すなわち、シンガスの第2流126は高炉のシャフトを通して供給される)。シンガスの第2流は、改質プロセスに応じて、高炉のシャフトを通して供給される前に約950℃の温度に冷却し得る。
【0145】
第2の改質プラント122から出たシンガスの第2流128は、約1200℃の温度及び2~6バーグの圧力を備えて、羽口130を通して高炉に供給される。
【0146】
図3は、低温水素及び/又は炭化水素含有ガス、及び可能性としては高炉の羽口を通る微粉炭の注入と共に高炉のシャフトを通るシンガスの第1流の同時注入をも含む、高炉を運転するための本方法の第3実施形態を示す。
【0147】
高炉212から出た高炉ガス210は、高炉212の上部で回収される。
【0148】
回収された高炉ガス210は、概して、高炉から出る際にガス洗浄及び冷却ユニット214で前処理される。高炉ガス流の前処理には、まず、その蒸気含有量を削減するための冷却、洗浄、特に粉塵及び/又はHCl及び/又は金属化合物の除去が含まれる。
【0149】
洗浄された高炉ガス219の一部は、燃料の一部として、湿った空気223と共に、かつ多くの場合、カウパープラント221のバーナー内の他の高発熱ガス(図示せず)と共に、高炉にその羽口レベルの処で注入される熱風の加熱用に使用される。気体と空気は両者とも予熱されてもされなくともよい。
【0150】
高炉ガス217の別の部分は、燃料の一部として、湿った空気223と共に、そして多くの場合、改質プラント218のバーナー内の他の高発熱ガス(図示せず)と共に使用される。気体と空気はいずれも予熱されてもされなくともよい。
【0151】
別の高炉ガス流216は改質反応で使用される。この流れは、さらに、高炉ガスを改質及び高炉内への注入に必要な圧力レベルまで圧縮するためのコンプレッサー(加圧ユニット)215に供給される。
【0152】
高炉212から出て、改質プラント又はカウパープラントのいずれにおいても使用されない残りの高炉ガスは、高炉搬出ガス227と呼ばれ、高炉212を含む製鉄プラント内の他のユニットに供給される。
【0153】
図3の実施形態では、任意選択で、コンプレッサー(加圧ユニット)215の後に水素化及び脱硫ユニット250も存在している。
【0154】
加えて、コークス炉ガス及び/又は天然ガス流224が改質プラント218に供給される。ガス224は、脱硫ユニット250で脱硫し得る。ガス224の脱硫は、高炉ガスの脱硫と並行して行うことができる(図3)。代替的に、ガス224は、別個の脱硫ユニットで脱硫することができる(図示せず)。このような実施形態において、水素は、天然ガスに含まれる有機硫黄の水素化のために天然ガスに添加し得る(図示せず)。
【0155】
塩基性精錬炉ガス及び/又は水蒸気225は、任意選択で、高炉ガス流に(加圧ユニット215の上流及び/又は下流で)、水素化及び脱硫ユニット250に、炭化水素含有ガス流224に(図示せず)及び/又は直接、改質プラント218に、又は改質プラント224の後に、添加し得る。
【0156】
コークス炉ガス及び/又は天然ガス流224と共に、高炉ガス流216の改質は、シンガス流226を生成するために改質プラント218で行われる。高炉ガス216及び炭化水素含有ガスの2つのガス流は、改質プラント218に入る前に、改質プラント218内で、及び/又は水素化及び脱硫プラント250に入る前に、混合する必要がある。
【0157】
改質プロセスは、乾式及び/又は湿式改質プロセスであり、可能性としては部分酸化と組み合わせることで、CO及びH含有量の高いシンガス流226の形成をもたらす。改質プロセスは、1.5と10バーグの間の圧力で、改質プラントに応じて900℃を超え、好ましくは950℃を超え、より好ましくは1000℃を超える温度で行われる。
【0158】
高炉ガス及び/又は水素含有ガスは、任意選択で、改質プロセスに先立って加熱し得る(図示せず)。加熱は、例えば、改質プラントから煙道ガスの熱の一部を伝達する多管式熱交換器を使用して行い得る。同じことが、これも好ましくは少なくとも350℃に、より好ましくは400℃超に、かつ好ましくは450℃超に加熱される、改質プラントに入る高炉ガスと炭化水素含有ガスとを含む混合ガスに適用される。任意選択で、カウパープラント及び/又は改質プラントのバーナーで使用される高炉ガス及び空気は、熱交換器、例えば多管式熱交換器内の、改質プラントからの煙道ガスの熱の加熱された伝達部分でもあり得る。
【0159】
加えて、高炉設備は、電気分解によって、好ましくは水/水蒸気電気分解によってH流236を生成するために、電力234によってエネルギー供給される電解槽232を含む。電解槽232にエネルギーを供給する電力234は、好ましくは、再生可能又は「グリーン」、即ち、風力、太陽光及び/又は水力の様な再生可能な供給源から得られる。
【0160】
代替的又は追加的に、前記水素は、固体炭素形成を伴う熱分解プロセスによって、又は炭素捕集及び貯留(CCS)技術及び/又は炭素捕集・利用(CCU)技術の組み合わせにより、天然ガスから生成することができる。水素は、CCS及び/又はCCU技術を組み合わせたメタン熱分解又は水蒸気メタン改質によっても生成し得る。
【0161】
電解槽によって生成されたH流236、又はその一部は、改質プラント218の上流でコークス炉ガス及び/又は天然ガス流224に添加されてH富化炭化水素含有ガス流を形成し、それは、改質プラント218に供給され、及び/又はその一部は水素化工程に先立って炭化水素含有ガス流に供給され、及び/又は、高炉の羽口の処で低温で、単独で、又は石炭、天然ガス、プラスチック、バイオマスなどの他の補助燃料と一緒に供給される。
【0162】
塩基性精錬炉ガス及び/又は水蒸気は、任意選択で、高炉ガス流に(加圧ユニット215又は水素化ユニット250の上流及び/又は下流で)(図示せず)及び/又は炭化水素含有ガス流224に(図示せず)及び/又はH流236に(図示せず)、及び/又は直接改質プラント218に、又は改質プラント218の後に添加し得る。
【0163】
流236の一部は、改質プラント218の下流のシンガス流226及び高炉212内部のシャフトを通して配置されたガス入口238の上流に添加され得る。水素236を添加したシンガス流226はH富化ガス流240を形成し、約900℃の温度、1.5~4バーグの典型的な圧力を備えて、シャフトレベルの処のガス入口238を通して高炉に供給される。
【0164】
水素236及び/又は炭化水素含有ガス224の一部は、高炉の羽口230を通して直接注入し得る。実施形態では、水素236及び/又は炭化水素含有ガス224の注入は、例えば微粉炭注入229などの固体燃料の注入と共に行い得る。
【0165】
流236の一部は、シンガスの第1流226の冷却剤として使用し得る。このようにして、即ち冷却剤として前記水素を用いることで、前記水素を高炉212のシャフトを通して注入する前に高価な加熱装置で加熱する必要性を完全に排除し得る。実際、シンガス226の余剰熱は前記水素を加熱する。これにより、シンガス冷却と水素加熱の両方の必要性を排除し、プロセスの効率を高めることができる。
【0166】
本発明は、図面及び前述の説明において例示して詳細に説明したが、そのような例示及び説明は、例証的又は例示的なものであり限定的なものではないと考慮すべきである;本発明は、開示された実施形態に限定されるものではない。開示された実施形態となる他の変形例は、特許請求の範囲の発明を実施する場合、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の考察から、当業者によって理解しかつ実施することができる。
【符号の説明】
【0167】
10,110,210 高炉ガス流
12,112,212 高炉
14,114,214 冷却、洗浄及び加圧ユニット
16,116,216 高炉ガスの第1流
18,118,218 第1の改質プラント
20,120 高炉ガスの第2流
22,122 第2の改質プラント
24,124,224 コークス炉ガス及び/又は天然ガス流
26,126,226 シンガスの第1流
27,127,227 高炉搬出ガス
28,128 シンガスの第2流
30,130,230 高炉の羽口レベル
32,132,232 電解槽
34,134,234 電力
36,136,236 H
38,138,238 高炉のシャフトを通るガス入口
40,240 シンガスのH富化流
142 炭化水素含有ガスのH富化流
215 加圧ユニット(コンプレッサー)
217 改質プラントのバーナーに供給される高炉ガス
219 カウパープラントのバーナーに供給される高炉ガス
221 カウパープラント
223 湿った空気
225 水蒸気
229 微粉炭
250 水素化及び脱硫ユニット

図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】