(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(54)【発明の名称】誘電体バリア放電プラズマリアクタ
(51)【国際特許分類】
B01J 19/08 20060101AFI20240604BHJP
B01J 12/02 20060101ALI20240604BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20240604BHJP
C23C 16/503 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B01J19/08 E
B01J12/02 Z
H05H1/24
C23C16/503
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572855
(86)(22)【出願日】2022-04-27
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 FR2022050802
(87)【国際公開番号】W WO2022248788
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518023164
【氏名又は名称】オフィス ナショナル デテュード エ ドゥ ルシェルシュ アエロスパシアル
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】エリアス,ポール-カンタン
(72)【発明者】
【氏名】デベク,ラドスラウ
(72)【発明者】
【氏名】ギャルヴェズ,マリア エレナ
【テーマコード(参考)】
2G084
4G075
4K030
【Fターム(参考)】
2G084AA26
2G084CC08
2G084CC19
2G084CC34
2G084DD18
2G084DD22
4G075AA03
4G075AA23
4G075BA01
4G075BA05
4G075BD12
4G075CA14
4G075CA47
4G075CA54
4G075CA57
4G075DA02
4G075DA18
4G075EA02
4G075EB21
4G075EB41
4G075EC07
4G075EC21
4G075FB02
4G075FB04
4G075FB06
4G075FC11
4G075FC15
4K030FA01
4K030JA01
4K030JA03
4K030JA06
4K030JA18
4K030KA14
4K030KA46
(57)【要約】
気相化学反応を活性化するための誘電体バリア放電プラズマリアクタ(1)は、誘電体材料で作られた少なくとも1つの管状パイプ(11)と、内部電極(13)と、外部電極(12)とを備える。内部電極はリアクタの活性領域(10a)の入口に限定され、その結果、両方の電極間に印加される電圧パルスは活性領域内で伝播放電を生成する。リアクタは反応物を含有するガス流(F)と放電によって生成されるプラズマとの間に体積接触を生成し、プラズマと反応物との間の活性化エネルギーの有効な移動を可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相化学反応を活性化するための誘電体バリア放電プラズマリアクタ(1)であって、
中心軸(A-A)を有し、1つ以上の反応物を含有するガス流(F)を管状パイプの入口端部(11e)から出口端部(11s)に案内するように配列されている、誘電体材料によって形成された少なくとも1つの管状パイプ(11)を備え、
各管状パイプ(11)に、
(i)内部電極と前記管状パイプとの間隙の分離の半径距離を伴って前記管状パイプ(11)内に配置された内部電極(13)と、
(ii)前記管状パイプ(11)の外側に配置され、前記管状パイプの外面の長手方向区間内に均一な電位を生成するように配列され、中心軸(A-A)上の直交投影において前記長手方向区間上に重ね合わされた管状パイプに対する内側体積が、前記リアクタ(1)の活性領域(10a)と呼ばれる、外部電極(12)と、が設けられ、
前記リアクタ(1)は、
各管状パイプ(11)の前記内部電極(13)と前記外部電極(12)との間に接続された電源(4)をさらに備え、
各管状パイプ(11)において、
(iii)前記内部電極(13)は、前記活性領域の上流境界(10am)と呼ばれる前記活性領域(10a)の境界付近の前記管状パイプ(11)内に配置され、前記入口端部(11e)および前記出口端部(11s)のうちのひとつに対して配向されており、前記内部電極は、前記入口端部および前記出口端部のうちの他のひとつに対して方向づけられたスパイク形状を有し、前記入口端および前記出口端のうち前記他のひとつに対して前記中心軸(A-A)に平行に延在しており、前記活性領域の前記上流境界から前記内部電極の先端にかけて前記中心軸に平行に形成された測定に従うように、前記活性領域の長さ(La)の10%を越えることがなく、
(iv)前記活性領域(10a)における前記管状パイプ(11)の内径(Dint)は、0.05mm~10mmであり、
前記電源(4)が、前記リアクタ(1)の動作中に、前記外部電極(12)の電位を差し引かれた前記内部電極(13)の電位に対応する電圧符号の慣例に従って、正および負の交互の電圧パルスを、前記ガス流(F)内に電気放電を生成するために適合される各パルスの前記電圧(U)のための最大絶対値と共に、前記活性領域(10a)の内側に送るように適合されていることを特徴とする、リアクタ(1)。
【請求項2】
前記管状パイプ(11)の内部に配置された触媒(14)をさらに含む、請求項1に記載のリアクタ(1)。
【請求項3】
前記電源(4)は、前記リアクタの動作中に、1Hz~100kHzの周波数で前記電圧パルス(U)を生成するように適合されている、請求項1または2に記載のリアクタ(1)。
【請求項4】
前記活性領域(10a)の内部の前記内部電極(13)の長さは、前記活性領域の上流境界(10am)と前記内部電極の先端との間の中心軸(A-A)に対して平行に測定して、2mm未満である、請求項1から3の何れか1項に記載のリアクタ(1)。
【請求項5】
前記内部電極(13)は、50μm~400μmのワイヤ直径を有する金属ワイヤ、例えばタングステンまたはスチールワイヤの区間からなる、請求項1から4の何れか1項に記載のリアクタ(1)。
【請求項6】
前記活性領域(10a)の前記長さ(L
a)は、前記中心軸(A-A)に対して平行に測定して、1mm~500mm、好ましくは50mm~200mmである、請求項1から5の何れか1項に記載のリアクタ(1)。
【請求項7】
前記活性領域(10a)における前記管状パイプ(11)の厚さは、前記中心軸(A-A)に対して垂直に測定して、50μm~500μmである、請求項1から6の何れか1項に記載のリアクタ(1)。
【請求項8】
前記外部電極(12)は、前記活性領域(10a)において、前記管状パイプ(11)の周りに巻き付けられた導電性材料のワイヤ、前記管状パイプの外面に接触している部分で前記管状パイプを取り囲む導電性材料のシース、前記管状パイプの外面と接触している部分で1つ以上の平面金属表面、のうちの1つの形状を有する、請求項1から7の何れか1項に記載のリアクタ(1)。
【請求項9】
各ガス流(F)を同時に案内するために並列に配列された複数の管状パイプ(11)を備え、
各々は、前記反応物を含み、
各管状パイプは、各内部電極(13)および各外部電極(12)と共に提供され、または、複数の前記管状パイプにより共有される、外部電極の各部分と共に提供され、
前記対応した内部電極および外部電極または外部電極部分を有する各管状パイプは、(i)~(iv)の特徴を満たし、
前記電源(4)は、一方の全ての前記内部電極と、他方の全ての前記外部電極または前記共有外部電極との間に接続され、
前記リアクタ(1)内の前記管状パイプ(11)の数は、3~400である、請求項1から8の何れか1項に記載のリアクタ(1)。
【請求項10】
前記化学反応を活性化するために、請求項1から9の何れか1項に記載のリアクタ(1)を使用して実施される、気相化学反応を実施するための方法。
【請求項11】
前記化学反応は、
二酸化炭素を一酸化炭素および酸素分子にする分解、
二酸化炭素および水素からメタンと水を生成する反応、
水素分子および固体炭素を生成する反応であって、前記ガス流は少なくともメタンを含む反応、
水素分子を生成する反応であって、前記ガス流は少なくともアンモニアを含む反応、
の中から選択される、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、誘電体バリア放電プラズマリアクタに関する。
【0002】
〔背景技術〕
気相化学反応を活性化するためにプラズマリアクタを使用することが知られている。プラズマの役割は反応がより迅速に起こるように、反応物に十分な活性化エネルギーを提供することである。リアクタが反応物の連続供給を伴う反応を生成するように設計されるとき、リアクタ中に反応物が存在している同じ持続時間の間、プラズマは、これらの反応物についてより高い転化率を得ることを可能にする。
【0003】
プラズマリアクタの構成の多くは、既に提案されている。これらの構成について考慮すべきいくつかの論点は、以下の通りである:
反応物転化率の高い値を得ること、
連続運転中にリアクタを安定して運転すること、および、
リアクタに供給される同量の反応物を処理する、より小型のリアクタを設計すること。
【0004】
提案された構成は特に、プラズマの生成に使用される電極の幾何学的形状、およびそのように生成されたプラズマの性質によって変化する。特に、化学リアクタにおいてプラズマを生成するために、誘電体バリア放電、グロー放電、コロナ放電、高周波放電、マイクロ波放電、グラインディングアーク放電または回転アーク放電などの構成が提案されている。例えば、欧州特許出願公開第1 541 821 A1号明細書は、誘電体バリア放電およびワイヤ-円筒電極構成を有するリアクタを記載している。欧州特許出願公開第1 541 821 A1のこのリアクタにおいて、この電極は、このワイヤの形状において、反応物を含むガス流の流れ方向と平行であり、このガス流と接触する。正の電圧パルスは、プラズマを生成するために、外部円筒電極に対してワイヤ電極に印加される。しかし、ガスと接触している誘電体材料の表面上に現れる電荷の蓄積によって、プラズマは、ワイヤ電極と誘電体バリアとの間の限られた長さにわたってのみ形成され、ワイヤ電極と平行に測定される。このため、反応物とプラズマとの接触時間が短く、それに応じて反応物の変換速度が制限される。
【0005】
プラズマを層形状となるよう実施し、反応物を含むガス流がプラズマ層に対して実質的に垂直にプラズマ層を横切るリアクタ構成についても、同じ制限が生じる。
【0006】
〔技術的課題〕
この状況に基づいて、本発明の1つの目的は、従来技術のリアクタの上記の欠点が低減または排除される新しいタイプのプラズマ化学リアクタを提案することである。
【0007】
特に、本発明は、安定した運転を有し、かつ、その中で実施される化学反応にとってより高い転化率を得ることを可能にするプラズマ化学リアクタを提供することを狙いとする。
【0008】
〔発明の概要〕
この目的または他の目的を達成するために、本発明の第1の態様は、気相化学反応を活性化するためのプラズマリアクタを提案する:
中心軸を有し、1つ以上の反応物を含有するガス流を管状パイプの入口端部から出口端部に案内するように配列されている、誘電体材料によって形成された少なくとも1つの管状パイプを備え、
各管状パイプに、
(i)内部電極と前記管状パイプとの間隙の分離の半径距離を伴って前記管状パイプ内に配置された内部電極と、
(ii)前記管状パイプの外側に配置され、前記管状パイプの外面の長手方向区間内に実質的に均一な電位を生成するように配列され、中心軸上の直交投影において前記長手方向区間上に重ね合わされた管状パイプに対する内側体積が、前記リアクタの活性領域と呼ばれる、外部電極と、が設けられ。
【0009】
前記リアクタはさらに、各管状パイプの前記内部電極と前記外部電極との間に接続された電源を備える。
【0010】
したがって、本発明のプラズマリアクタは、誘電体バリア放電タイプのものである。
【0011】
本発明のリアクタの第1の特徴によれば、(iii)によって設計され、前記内部電極は、前記活性領域の上流境界と呼ばれる活性領域の境界付近の前記管状パイプ内に配置され、前記入口端部および前記出口端部のうちのひとつに対して配向されている。さらに、前記内部電極は、前記入口端部および前記出口端部のうちの他のひとつに対して方向づけられたスパイク形状を有し、前記活性領域の前記上流境界から前記内部電極の先端にかけて前記中心軸に平行に形成された測定に従って、前記活性領域の長さの10%を越えることなく、後者の端に対して前記中心軸に平行に延在している。スパイクシリンダ型の電極のこのような構成の手段によって、ガス流中で生成される放電は、内部電極の先端から始まり、活性領域の内部で長手方向に延在する伝播放電構成を有する。このような伝播放電は、ストリーマと呼ばれるいくつかのフィラメントから構成されるイオン化ヘッドと、一般にリーダと呼ばれるイオン化チャネルとから構成される。したがって、プラズマゾーンの長さを大きくすることができ、ガス流を3次元体積全体の内部でプラズマと接触させることができる。したがって、活性化エネルギーは、ガス流がこの3次元体積のプラズマを通過する全持続時間にわたって反応物に伝達される。本発明がそのような大量のプラズマを提供するという事実のために、この持続時間は、ガス流の等しい流量でより長く、より高い変換率を得ることを可能にする。活性領域への内部電極の突出に対する10%の上限値は、内部電極と外部電極との間に印加される電圧パルスによって生成される各放電が、内部電極の半径方向成分への有意さを有さずに、管状パイプの内部で長手方向に伝播する構造を有することを確実にする。好ましくは、活性領域の上流境界から前記領域への内部電極の突出が、活性領域の長さの5%未満であり得る。
【0012】
本発明の文脈において、内部電極にとってのスパイク形状という用語は、この内部電極の凸面の曲率半径を有する突出形状を意味し、100μm(マイクロメートル)未満、好ましくは0.1μmより大きく50μm未満である。
【0013】
本明細書において、管状パイプの入口端部および出口端部もまた、この管状パイプ内のガス流の流れの方向に関連して設計される。さらに、活性領域の上流境界もまた、内部電極の位置に関連して、およびその結果、管状パイプの内部の伝播放電の長手方向の延伸に関連して、設計される。しかしながら、本発明の別の実施形態において、活性領域の上流境界は、管状パイプの入口端部に向かって、または出口端部に向かって交互に配向されてもよく、これは活性領域が一方または他方の近くにおいて、交互であること意味する。言い換えると、スパイク状の内部電極から伝播する放電の伸長方向は、管状パイプ内の中心軸に平行であり、管状パイプ内のガス流の流れの方向と同じ方向または反対方向であることができる。
【0014】
本発明のリアクタの第2の特徴によれば、(iv)により設計され、リアクタの活性領域における管状パイプの内径は、0.05mm(ミリメートル)~10mmである。この距離は、ガス流を十分な流量でかつ限られたヘッド損失で案内し、実質的に管状パイプの全内部断面積を占めるプラズマを得るための、各管状パイプの容量の間の妥協を構成する。
【0015】
最後に、本発明のリアクタの第3の特徴によれば、電源は、リアクタの動作中に、外部電極の電位を差し引かれた内部電極の電位に対応する電圧符号の慣例に従って、正および負の交互の電圧パルスを、ガス流内に放電を生成するために適合される各パルスの電圧の最大絶対値と共に、リアクタの活性領域内に送るように適合される。正パルスと負パルスとの間の交替により、誘電材料で作られた各管状パイプの内面上に蓄積し得る電荷を中和することができる。したがって、プラズマリアクタは、中心軸に平行な、リアクタの活性領域内の各伝播放電の著しい延伸を伴う、安定した連続運転を有することができる。次いで、各管状パイプ内のプラズマは、重大な活性領域の長さ区間を占めることができ、同時に、それがこの長さ区間内の管状パイプの断面積の全てまたはほぼ全てを占める。言い換えれば、本発明のリアクタは、プラズマと反応物を含むガス流との間の安定な体積接触または三次元接触を可能にする。したがって、改善された変換率値を得ることができる。
【0016】
外部電極によって生成される、管状パイプの外側表面の長手方向区間において均一である電位は、管状パイプの外側表面の長手方向区間の内部で、各パルスの瞬間電圧の絶対最大値の10%未満である空間変動を示す電位を意味すると理解される。このような電位の空間変動の上限値は、特に各パルスの開始前に満たされる。この上限は、外部電極の様々な幾何学的構成、ならびにこの外部電極の可能な構成要素である様々な導電性材料と適合する。特に、それは、炭素で作られた外部電極と適合性がある。
【0017】
好ましくは、電源は、プラズマリアクタの使用中に、前の電気パルスの後に誘電体材料上に残る電荷を中和するために、または誘電体材料上に残る電荷の符号を1つのパルスから次のパルスに逆転させるために、電源によって送達される正または負の電気パルスが調整され得るように適合される。したがって、管状パイプの内面上に存在し、プラズマ体積を長手方向に制限する可能性がある電気シールドを回避することができる。
【0018】
場合によっては、リアクタは管状パイプの内部に配置された触媒をさらに含んでよい。したがって、伝播放電が触媒に到達するのに正パルスの電圧が十分である場合、リアクタは、「プラズマ内触媒」のために、IPCタイプとすることができる。
【0019】
本発明の好ましい実施形態において、以下の追加の特徴のうちの少なくとも1つは、単独で、またはそれらのうちのいくつかを組み合わせて、任意に再現されてもよい:
リアクタの動作中に電源によって送達される各電気パルスは、絶対値で1kV(キロボルト)から100kVの間、好ましくは10kVから40kVの間であるピーク電圧値を有してよい:
電源は、リアクタの動作中に、1Hz(ヘルツ)から100kHzの間の周波数で電圧パルスを生成するように適合されてよい:
活性領域の内部の内部電極の長さは、この活性領域の上流境界と内部電極の先端との間の中心軸に対して平行に測定して、2mm(ミリメートル)未満でよい:
内部電極は、50μm(マイクロメートル)から400μmの間のワイヤ直径を有する金属ワイヤ、例えばタングステンまたはスチールワイヤの区間からなってもよい:
活性領域の長さは、中心軸に対して平行に測定して、1mm~500mm、好ましくは50mm~200mmでよい:
活性領域における管状パイプの厚さは、中心軸に対して垂直に測定して、50μm~500μmでよい。管状パイプの誘電材料のためのこのような厚さ距離は、ガス流中で放電が生じるように、各電圧パルスが、非常に高いピーク電圧値を有する電源によって送出されるのを防止することができる。
【0020】
外部電極は、活性領域において以下の形態のうちの1つを有してよい:管状パイプの周りに巻き付けられた導電性材料のワイヤ、管状パイプの外面と接触している間、管状パイプを取り囲む導電性材料のシース、管状パイプの外面と接触している1つ以上の平面金属表面:および、
活性領域内の管状パイプの誘電材料は、石英、ガラス、またはセラミックでよい。
【0021】
より大きい総ガス流量を受け入れる本発明のいくつかの実施形態において、リアクタは、各ガス流を同時に案内するために並列に配列された複数の管状パイプを備えてよく、各管状パイプは反応物を含む。次いで、各管状パイプは、各内部電極および各外部電極を提供され、または複数の管状パイプにより共有される、外部電極の各部分と共に提供され、各管状パイプは、対応した内部電極および外部電極または上記(i)~(iv)の特徴を満たす。さらに、電源は、一方の全ての内部電極と、他方の全ての外部電極または共有外部電極との間に接続される。このようにして、リアクタ内の管状パイプの数は、3~400であり得る。
【0022】
本発明の第2の態様は、化学反応を活性化するために、本発明の第1の態様によるリアクタを使用して実施される、気相化学反応を実施するための方法を提案する。この反応は特に、以下の内の1つでよい:
二酸化炭素を一酸化炭素および酸素分子にする分解:
二酸化炭素および水素からメタンと水を生成する反応:
水素分子および固体炭素を生成するための反応であって、この目的のために、ガス流は、純粋なまたは1つ以上の添加ガスであるメタンを少なくとも含む:および、
水素分子を生成する反応であって、この目的のために、ガス流は、純粋なまたは1つ以上の添加ガスであるアンモニアを少なくとも含む。
【0023】
有利には、プラズマリアクタの使用中に、各パルスのピーク電圧値は、このパルスが前のパルスの後に各管状パイプの内面に残り得る電荷を中和するように、または、前のパルスに対して、パルスの後に管状パイプのこの内面に残る電荷の符号を逆にするように調整されてよい。
【0024】
〔図面の簡単な説明〕
本発明の特徴および利点は、添付の図面を参照して、いくつかの非限定的かつ例示的な実施形態の以下の詳細な説明からより明らかになるのであろう。
【0025】
図1は、本発明に係る基本的なプラズマリアクタモジュールの長手方向断面図である。
【0026】
図2は、本発明に係るプラズマリアクタ内に組み立てられた、
図1に係る複数の基本的なモジュールを示す斜視図である。
【0027】
〔発明の詳細な説明〕
明確にするために、これらの図に表される要素の寸法は、実際の寸法にも、実際の寸法比にも対応しない。さらに、これらの要素のいくつかは、象徴的にのみ表され、異なる図に示される同一の参照符号は、同一の要素または同一の機能を有する要素を示す。
【0028】
図1において、本発明に係る基本的なプラズマリアクタモジュールは、全体として参照符号10で示されている。それは、例えば、ガラスまたはアルミナ(Al
2 O
3)の管である管状パイプ11を備え、入口端部11eと出口端部11sとの間に延在する。入口端部11eはガス流吸入チャンバ2に通じ、出口端部11sはガス流収集排出チャンバ3に通じている。入口端部11eと出口端部11sとの間の各チャンバ2および3への接続は封止されている。したがって、化学反応物を含むガス流Fは、パイプ11内に連続的に導入することができる。パイプ11は、円形断面を有する円筒形でよく、それぞれ0.6mmおよび1.0mmに等しい内径Dintおよび外径Dextを有し、例えば150mmに等しくてよい管長さを有する。しかしながら、例えば正方形の断面(
図2に示す)のような他の断面形状をパイプ11に使用してもよい。
【0029】
外部電極12は、パイプ11の周囲に配列され、それに対して外部的であり、活性領域の長さLaにわたって均一または実質的に均一な電位を生成するように適合された形状を有している。例えば、外部電極12は、長さLaの円筒状電極を形成するように、パイプ11の外面に金属堆積物によって実現することができる。電気接点は、任意の公知の技術によって外部電極12上に実装することができる。外部電極12内に位置するパイプ11の区間は、本明細書の一般的な部分においてリアクタの活性領域と呼ばれており、参照符号10aで示されている。例えば、活性領域10aの長さLaは、活性領域10aの上流境界10amと下流境界10avとの間で測定される130mmに等しくすることができ、上流および下流は、パイプ11内の気体流Fの流れの方向に対して配向される。言い換えれば、活性領域10aの上流境界10amおよび下流境界10avは、外部電極12の上流縁部および下流縁部と一致する。
【0030】
内部電極13は、パイプ11の端部11eにおいて、固定された方法で、例えば軸方向に配列される。内部電極13は、パイプ11の中心軸A-Aに重ね合され、パイプ11を入口端部11eから実質的に活性領域10aの上流境界10amのレベルまで貫通する。例えば、内部電極13は、下流方向において、活性領域10aの上流境界10amを1mm上回る。内部電極13はスパイク形状を有し、その方向はまた、中心軸A-A上に重ねられ、下流に向けられる。しかしながら、中心軸A-Aを有する内部電極13の正確な重ね合わせは必須ではなく、2つの間の限定されたオフセットは、プラズマリアクタの動作を著しく損なわない。例えば、内部電極13は剛性金属ワイヤ、例えば、150μmの直径を有するタングステン(W)から構成することができる。したがって、ガス流Fは、内部電極13とパイプ11の内面との間を流れることができる。
【0031】
内部電極13を構成する剛性金属ワイヤは、そのスパイク形状を形成するために切断される位置でそれを局所的に加熱することによって延伸されていてもよく、その結果、このスパイク形状は100μm未満、例えば約20μmに等しい曲率半径を有する。
【0032】
電源4は、電極12と13との間に接続される。好ましくは、外部電極13は、源4によって供給される電圧Uが内部電極13の電位と等しくなるように、源4の接地端子に接続される。源4は、例えば50Hzの周波数で、交互に正および負の電圧パルスを供給するように選択される。各パルスの電圧Uのピーク値は、活性領域10a内の内部電極13とパイプ11の内面との間にプラズマを生成するように調整される。上述の電極構成に起因して、各パルスは、その長さがパルスのピーク電圧値に依存して、パイプ11内に伝播する放電を生成する。したがって、伝播する放電の長さは、活性領域10aの数ミリメートルからほぼ全長Laの間であり得る。各パルスのピーク電圧値は、絶対値で1kV~100kV、例えば25kVに等しい流Fのガス組成に従って調整することもできる。このようにして、パイプ11内の伝播する放電によって生成されるプラズマとガス流Fとの間に体積接触が生成される。このような体積接触は、プラズマからガス流Fに含まれる反応物への活性化エネルギーの効率的な移動を可能にする。
【0033】
各電気パルスのピーク電圧値は、有利には放電の定常状態を安定化するように、言い換えれば、プラズマリアクタの連続的で安定した動作を得るように調整される。このような安定化は、活性領域10a内のパイプ11の内面上の前のパルスによって生成された電荷の各パルスによる中和に対応する。好ましくは、各パルスのピーク電圧値は、前のパルスによって残された電荷の符号と反対の符号を有する電荷をこの内面に堆積させるように調整することができる。パイプ11の内面に存在する電荷の、各パルスによるこのような反転は、伝播放電の生成を促進する。
【0034】
図2は、それぞれが
図1に従う複数の基本モジュール10の並列結合から構成されるプラズマリアクタ1の一部を示す。完全なリアクタ1には任意の数の基本モジュール10、好ましくは3~400(両端を含む)が存在することができるが、
図2は明確にするために8個のみを示す。モジュール10は例えば、全てのモジュール10に対して共通の断面平面内の20×20のマトリクス配列に配置されてもよい。ガス流吸入チャンバ2およびガス流収集排出チャンバ3は、すべてのモジュール10によって共有されてもよく、その結果、すべてのモジュール10の各管状パイプ11は、チャンバ2をチャンバ3に並列に接続し、別々のガス流Fを一方のチャンバから他方のチャンバに案内する。さらに、電源4はすべてのモジュール10によって共有することもでき、電気接続は、すべてのモジュール10の各電極12および13を、同一の接続方向で電源4に接続するように並列に配置される。リアクタ1の1つの可能な構成によれば、各モジュール10は支持構造5の専用ハウジング内に配置されることができ、支持構造5は、電気伝導性を有し、これにより全てのモジュール10の外部電極12との電気的接触を確実にする。支持構造5は、有利には電源4の接地端子に接続される。リアクタ1の代替の実施形態において、支持構造5は全てのモジュール10の外部電極12を直接構成することができる。
【0035】
プラズマリアクタ1は、多くの化学反応に使用することができる。反応物は、リアクタ1に供給され、吸気チャンバ2に導入されるガス流に含まれる。このような化学反応は、一部の反応生成物が固体であっても、通称、気相反応と呼ばれる。リアクタ1において有利に実施することができる気相化学反応のいくつかの非限定的な例は特に:
CO2→CO+1/2O2
CO2+4H2→CH4+2H2O、一般にサバティエ反応と呼ばれる。
CH4→2H2+C
NH3→(3-x)/2H2+NHx、ここでxは0~3の化学量論係数である。
【0036】
リアクタ1に供給するガス流は、反応物単体、または考慮される化学反応に対して不活性であるキャリアガス中に希釈されたこれらの反応物からなってよい。場合により、ガス流に他の化学成分を加えて、この反応の活性化バリアを減少させるか、または平衡をシフトさせて生成物に好適にしてもよい。
【0037】
リアクタ1は、触媒14(
図1に示す)と組み合わせて使用することができ、後者は、考慮される化学反応に従って既知の方法で選択される。例えば、非限定的に、触媒14は、ニッケル(Ni)の粉末、または白金(Pt)などの少なくとも1つの貴金属元素をベースとする合金であってもよい。次いで、パイプ11が実質的に水平になるようにリアクタ1が配向されるとき、触媒14は各パイプ11の内部、好ましくは対応する活性領域10aに配置される。この場合、リアクタ1は、「プラズマ内触媒」のためのIPCタイプである。触媒は代替的に、各パイプ11の内面に配置されてもよく、またはマイクロビーズ、基板機能を有する粉末、または例えば、アルミナ(Al
2O
3)もしくはジルコニア(ZrO
2)から作製された発泡体などの分割基板に配置されてもよく、各気体流Fの流れに適合する。
【0038】
本発明は引用された利点の少なくともいくつかを保持しながら、上で詳細に説明された実施形態の二次的態様を修正しながら再現され得ることが理解される。例えば、各モジュール10の外部電極12の記載された形状および全ての引用された材料は、特にリアクタ1で実施される化学反応に従って、適合または変更することができる。加えて、本発明の詳細な説明は、各管状パイプ内のガス流の流れの方向がスパイク形状の内部電極に由来する伝播放電の延在方向と同一である実施形態の例としてのみ提供されている。実際、内部電極13は、出口端部11sよりも入口端部11eに近い。しかしながら、スパイク形状の内部電極からの伝播放電の伸長方向も、管状パイプ内のガス流の流れ方向とは反対であり得ることを想起されたい。言い換えれば、内部電極13は代替的に、管状パイプ11の出口端部11sに、またはその近くに配置することができる。最後に、引用された全ての数値は例示の目的のためにのみ提供されており、考慮される用途に応じて変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明に係る基本的なプラズマリアクタモジュールの長手方向断面図である。
【
図2】本発明に係るプラズマリアクタ内に組み立てられた、
図1に係る複数の基本的なモジュールを示す斜視図である。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相化学反応を活性化するための誘電体バリア放電プラズマリアクタ(1)であって、
中心軸(A-A)を有し、1つ以上の反応物を含有するガス流(F)を管状パイプの入口端部(11e)から出口端部(11s)に案内するように配列されている、誘電体材料によって形成された少なくとも1つの管状パイプ(11)を備え、
各管状パイプ(11)に、
(i)内部電極と前記管状パイプとの間隙の分離の半径距離を伴って前記管状パイプ(11)内に配置された内部電極(13)と、
(ii)前記管状パイプ(11)の外側に配置され、前記管状パイプの外面の長手方向区間内に均一な電位を生成するように配列され、中心軸(A-A)上の直交投影において前記長手方向区間上に重ね合わされた管状パイプに対する内側体積が、前記リアクタ(1)の活性領域(10a)と呼ばれる、外部電極(12)と、が設けられ、
前記リアクタ(1)は、
各管状パイプ(11)の前記内部電極(13)と前記外部電極(12)との間に接続された電源(4)をさらに備え、
各管状パイプ(11)に、
(iii)前記内部電極(13)は、前記活性領域の上流境界(10am)と呼ばれる前記活性領域(10a)の境界付近の前記管状パイプ(11)内に配置され、前記入口端部(11e)および前記出口端部(11s)のうちのひとつに対して配向されており、前記内部電極は、前記入口端部および前記出口端部のうちの他のひとつに対して方向づけられたスパイク形状を有し、前記入口端および前記出口端のうち前記他のひとつに対して前記中心軸(A-A)に平行に延在しており、前記活性領域の前記上流境界から前記内部電極の先端にかけて前記中心軸に平行に形成された測定に従うように、前記活性領域の長さ(La)の10%を越えることがなく、
(iv)前記活性領域(10a)における前記管状パイプ(11)の内径(Dint)は、0.05mm~10mmであり、
前記電源(4)が、前記リアクタ(1)の動作中に、前記外部電極(12)の電位を差し引かれた前記内部電極(13)の電位に対応する電圧符号の慣例に従って、正および負の交互の電圧パルスを、前記ガス流(F)内に電気放電を生成するために適合される各パルスの前記電圧(U)のための最大絶対値と共に、前記活性領域(10a)の内側に送るように適合されていることを特徴とする、リアクタ(1)。
【請求項2】
前記管状パイプ(11)の内部に配置された触媒(14)をさらに含む、請求項1に記載のリアクタ(1)。
【請求項3】
前記電源(4)は、前記リアクタの動作中に、1Hz~100kHzの周波数で前記電圧パルス(U)を生成するように適合されている、請求項
1に記載のリアクタ(1)。
【請求項4】
前記活性領域(10a)の内部の前記内部電極(13)の長さは、前記活性領域の上流境界(10am)と前記内部電極の先端との間の中心軸(A-A)に対して平行に測定して、2mm未満である、請求項
1に記載のリアクタ(1)。
【請求項5】
前記内部電極(13)は、50μm~400μmのワイヤ直径を有する金属ワイヤ、例えばタングステンまたはスチールワイヤの区間からなる、請求項
1に記載のリアクタ(1)。
【請求項6】
前記内部電極は、タングステンまたはスチールワイヤの区間からなる、請求項5に記載のリアクタ(1)。
【請求項7】
前記活性領域(10a)の前記長さ(L
a)は、前記中心軸(A-A)に対して平行に測定して、1mm~500m
mである、請求項
1に記載のリアクタ(1)。
【請求項8】
前記活性領域(10a)の前記長さ(L
a
)は、前記中心軸(A-A)に対して平行に測定して、50mm~200mmである、請求項7に記載のリアクタ(1)。
【請求項9】
前記活性領域(10a)における前記管状パイプ(11)の厚さは、前記中心軸(A-A)に対して垂直に測定して、50μm~500μmである、請求項
1に記載のリアクタ(1)。
【請求項10】
前記外部電極(12)は、前記活性領域(10a)において、前記管状パイプ(11)の周りに巻き付けられた導電性材料のワイヤ、前記管状パイプの外面に接触している部分で前記管状パイプを取り囲む導電性材料のシース、前記管状パイプの外面と接触している部分で1つ以上の平面金属表面、のうちの1つの形状を有する、請求項
1に記載のリアクタ(1)。
【請求項11】
各ガス流(F)を同時に案内するために並列に配列された複数の管状パイプ(11)を備え、
各々は、前記反応物を含み、
各管状パイプは、各内部電極(13)および各外部電極(12)と共に提供され、または、複数の前記管状パイプにより共有される、外部電極の各部分と共に提供され、
前記対応した内部電極および外部電極または外部電極部分を有する各管状パイプは、(i)~(iv)の特徴を満たし、
前記電源(4)は、一方の全ての前記内部電極と、他方の全ての前記外部電極または前記共有外部電極との間に接続され、
前記リアクタ(1)内の前記管状パイプ(11)の数は、3~400である、請求項
1に記載のリアクタ(1)。
【請求項12】
前記化学反応を活性化するために、請求項
1に記載のリアクタ(1)を使用して実施される、気相化学反応を実施するための方法。
【請求項13】
前記化学反応は、
二酸化炭素を一酸化炭素および酸素分子にする分解、
二酸化炭素および水素からメタンと水を生成する反応、
水素分子および固体炭素を生成する反応であって、前記ガス流は少なくともメタンを含む反応、
水素分子を生成する反応であって、前記ガス流は少なくともアンモニアを含む反応、
の中から選択される、請求項1
2に記載の方法。
【国際調査報告】