(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(54)【発明の名称】ジルコニウム合金製核燃料クラッドへのカソードアークによるランダムな粒子構造コーティング
(51)【国際特許分類】
G21C 3/06 20060101AFI20240604BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20240604BHJP
C23C 14/24 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
G21C3/06 210
C23C14/06 N
C23C14/24 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572978
(86)(22)【出願日】2022-05-21
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 US2022072486
(87)【国際公開番号】W WO2023015050
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521219442
【氏名又は名称】ウェスティングハウス エレクトリック カンパニー エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】WESTINGHOUSE ELECTRIC COMPANY LLC
【住所又は居所原語表記】1000 Westinghouse Drive, Suite 141, Cranberry Township, Pennsylvania 16066 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エドワード ジェイ. ラホダ
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン アール. マイヤー
(72)【発明者】
【氏名】アラン ダブリュー. ジョウォルスキー
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン ライト
(72)【発明者】
【氏名】ジョリー エル. ウォルターズ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート エー. テリー
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA02
4K029BA02
4K029BA03
4K029BA07
4K029BA11
4K029BA16
4K029BA21
4K029BB02
4K029BC01
4K029CA01
(57)【要約】
本開示は、一般に、腐食に対する保護を提供するために原子炉で使用する構成品の基材上にランダムな粒子構造コーティングを形成するための方法、システムおよび装置に関し、より詳細には、原子炉の通常運転時および過渡時・事故時の両方において腐食に対する保護を提供するために、カソードアーク(CA)物理蒸着(PVD)処理を使用してジルコニウム合金核燃料クラッドチューブ上にランダムな粒子構造コーティングを形成するための改良された方法、システムおよび装置を対象とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉で使用する構成品の基材上にランダムな粒子構造コーティングを施す方法であって、前記方法は、
基材を提供する工程と、
カソードアーク(CA)物理蒸着(PVD)処理を使用して、前記基材の外側に、純粋な金属クロム(Cr)、クロム(Cr)合金、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される第1の粒子を有する保護コーティング層を形成する工程と、を含み、
前記保護コーティング層は、ランダムな粒子構造を有する、
方法。
【請求項2】
前記基材が、水冷原子炉で使用される核燃料ロッドクラッドチューブである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基材がジルコニウム合金である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の粒子が約10.0ミクロン以下の直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の粒子が約2.0ミクロン以下の平均直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記保護コーティング層を形成する前記第1の粒子が純クロム(Cr)粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記保護コーティング層を形成する前記粒子がクロム(Cr)合金粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記クロム(Cr)合金粒子が、CrY、CrAlY、FeCrAlまたはFeCrAlY粒子のうちの1つを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記カソードアーク(CA)PVD処理は、
コーティングされるべき前記構成品の前記基材を提供する工程と、
前記基材上に付着されるべき前記第1の粒子を含むターゲットを提供する工程と、
CA PVD装置のチャンバ内で前記構成品と前記ターゲットを支える工程と、
前記チャンバ内を真空にする工程と、
前記ターゲットと前記構成品の間に低電圧を印加する工程と、
磁場を利用してカソードアークの位置を移動させ、液滴の移動を最小限に抑え、前記ターゲットを均一に侵食し、前記構成品の前記基材に付着させる工程と、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記保護コーティング層が約5ミクロンから約100ミクロンの間の厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記基材の前記外側の前記保護コーティング層の外面を研磨する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記保護コーティング層を形成する前に、前記基材の前記外側に、Nb、Mo、Ta、Re、Os、RuおよびW、ならびにそれらの合金からなる群から選択される第2の粒子を有する中間コーティング層を先に形成する工程をさらに含み、
前記中間コーティング層は、前記保護コーティング層と前記基材の前記外側との間にある、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の粒子が10.0ミクロン以下の直径を有し、約2.0ミクロン以下の平均直径を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記中間コーティング層が、カソードアーク(CA)物理蒸着(PVD)処理によって形成される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記中間コーティング層がランダムな粒子構造を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記中間コーティング層が約0.5ミクロンから約100ミクロンの間の厚さを有する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記中間コーティング層が約0.5ミクロンから約15ミクロンの間の厚さを有する、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記中間コーティング層が、前記保護コーティング層と前記基材との間の共晶形成を防止する、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記中間コーティング層と前記保護コーティング層とを合わせた合計の厚さが、約5ミクロンと約50ミクロンとの間である、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の粒子がMo粒子である、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年5月27日に出願された「CATHODIC ARC APPLIED RANDOMIZED GRAIN STRUCTURED COATINGS ON ZIRCONIUM ALLOY NUCLEAR FUEL CLADDING」と題する米国特許出願第17/332,104号の米国特許法120条に基づく利益および優先権を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、腐食から保護するために、原子炉で使用する構成品の基材上にランダムな粒子構造コーティングを形成するための方法、システムおよび装置に関するものであり、より詳細には、原子炉の通常の運転状態および過渡状態および事故状態の両方において腐食から保護するために、カソードアーク(CA)物理蒸着(PVD)処理により、ジルコニウム合金核燃料クラッドチューブ上にランダムな粒子構造コーティングを形成するための改良された方法、システムおよび装置に関するものである。
【概要】
【0003】
以下の要約は、本明細書に開示された態様に特有の革新的な特徴のいくつかの理解を容易にするために提供されるものであり、完全な説明を意図するものではない。明細書全体、特許請求の範囲、および要約を全体として捉えることによって、様々な態様を完全に理解することができる。
【0004】
様々な態様において、原子炉で使用する構成品の基材をコーティングして、必要とされる基材を腐食から保護するための装置、システムおよび方法が本明細書に開示される。一実施形態において、原子炉は水冷原子炉である。
【0005】
様々な態様において、本明細書では、水冷原子炉などの原子炉で使用する構成品の基材上にランダムな粒子構造コーティングを施す方法を開示する。
【0006】
様々な態様において、本方法は、基材を提供する工程と、カソードアーク(CA)物理蒸着(PVD)処理を使用して、基材の外側に、純粋な金属クロム(Cr)、クロム(Cr)合金、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される第1の粒子を有する保護コーティング層を形成する工程と、を含む。一実施形態では、保護コーティング層は、ランダムな粒子構造を有してもよい。
【0007】
様々な態様において、構成品は原子炉、好ましくは水冷原子炉で使用される核燃料ロッドクラッドチューブであってもよい。
【0008】
様々な態様において、基材はジルコニウム合金であってもよい。
【0009】
様々な態様において、第1の粒子は約100ミクロン以下、または約50ミクロン以下の直径を有していてもよい。
【0010】
様々な態様において、第1の粒子は約20ミクロン以下、好ましくは約10ミクロン以下の平均直径を有していてもよい。
【0011】
様々な態様において、保護コーティング層を形成する第1の粒子は、純クロム(Cr)粒子であってもよい。
【0012】
様々な態様において、耐食性層を形成する第1の粒子は、クロム(Cr)合金粒子であってもよい。
【0013】
様々な態様において、クロム(Cr)合金粒子は、CrY、FeCrAl、FeCrAlY、CrAlYまたはCrMoのうちの1つを含んでいてもよい。
【0014】
様々な態様において、カソードアーク(CA)PVD処理は、コーティングされるべきZr合金チューブの基材を提供する工程と、Zr合金チューブの基材上に付着されるCrまたはCr合金を含むターゲットを提供する工程と、CA PVD装置のチャンバ内でZr合金チューブおよびCrまたはCr合金のターゲットを支える工程と、チャンバを真空にする工程と、ターゲットとZr合金チューブとの間に低電圧を印加する工程であって、ターゲットはZr合金チューブの基材上に薄膜状に付着されるCrまたはCr合金を含み、磁場を利用してカソードアークの位置を移動させ、液滴の移動を最小限に抑え、ターゲットを均一に浸食し、Zr合金チューブの基材に付着させる工程と、を含む。
【0015】
様々な態様において、保護コーティング層は、約5ミクロンと約150ミクロンとの間、約5ミクロンと約100ミクロンとの間、約5ミクロンと約50ミクロンとの間、約5ミクロンと約20ミクロンとの間、または約5ミクロンと約15ミクロンとの間の厚さを有していてもよい。一実施形態では、厚さは約5ミクロンと約15ミクロンとの間である。別の実施形態では、厚さは約20ミクロンである。
【0016】
様々な態様において、本方法は、外面をより滑らかにするために、基材の外側の保護コーティング層の外面を研磨または研削することをさらに含んでいてもよい。
【0017】
様々な態様において、本方法は、保護コーティング層を形成する前に、基材の外側に、Nb、Mo、Ta、Re、Os、RuおよびW、ならびにそれらの合金からなる群から選択される組成を有する第2の粒子を有する中間コーティング層を先に形成することをさらに含んでいてもよい。その後、カソードアーク(CA)PVD処理により、中間コーティング層の上に保護コーティング層を形成するために、第1の粒子を基材に塗布する。様々な態様において、中間コーティング層は、保護コーティング層と基材の外側との間に付着される。
【0018】
様々な態様において、第2の粒子は約100ミクロン以下の直径を有してもよく、約20ミクロン以下または約10ミクロン以下の平均直径を有してもよい。
【0019】
様々な態様において、中間コーティング層は、カソードアーク(CA)物理蒸着(PVD)処理によって形成されてもよい。
【0020】
様々な態様において、中間コーティング層は、ランダムな粒子構造を有してもよい。
【0021】
様々な態様において、中間コーティング層は、約0.5ミクロンと約150ミクロンとの間、約0.5ミクロンと約100ミクロンとの間、約0.5ミクロンと約50ミクロンとの間、または好ましくは約0.5ミクロンと約15ミクロンとの間の厚さを有していてもよい。
【0022】
様々な態様において、中間コーティング層は、保護コーティング層と基材との間の共晶形成を防止してもよい。中間コーティングの厚さは、共晶形成を防止しつつ中性子ペナルティ(neutronic penalty)を低減するために最小化される。
【0023】
様々な態様において、中間コーティング層と保護コーティング層の両方は、それぞれ、約0.5ミクロンと約150ミクロンとの間、約0.5ミクロンと約100ミクロンとの間、約0.5ミクロンと約50ミクロンとの間、または約0.5ミクロンと約15ミクロンとの間の厚さを有してもよく、中間コーティング層と保護コーティング層とを合わせた合計の厚さは、約0.5ミクロンと約150ミクロンとの間、約1ミクロンと約150ミクロンとの間、約1ミクロンと約100ミクロンとの間、約1ミクロンと約50ミクロンとの間、または約1ミクロンと約15ミクロンとの間である。一実施形態では、2つのコーティング層の合計の厚さは約20ミクロンである。
【0024】
本発明のこれらの、および他の目的、特徴および特性、ならびに構造の関連要素の動作方法および機能、ならびに部品の組合せおよび製造の経済性は、添付の図面を参照して以下の説明および添付の特許請求の範囲を検討することにより、より明らかになるであろう。添付の図面の全ては本明細書の一部をなすものであり、同様の参照番号は、様々な図面を通して、対応する部分を指定する。しかしながら、図面は例示および説明のみを目的としたものであり、本発明の限界を定義することを意図したものではないことを明示的に理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本明細書に記載された態様の様々な特徴は、添付の特許請求の範囲に具体的に記載されている。しかしながら、様々な態様は、その利点と共に、組織および動作方法の両方に関して、以下の添付図面と共に把握される以下の説明に従って理解され得る。
【0026】
【
図1】本開示の少なくとも1つの非限定的態様による、マグネトロンスパッタリングによる粒子構造の概略図である。
【0027】
【
図2】本開示の少なくとも1つの非限定的態様による、コールドスプレーによるランダムな粒子構造および界面のばらつきの概略図である。
【0028】
【
図3】本開示の少なくとも1つの非限定的態様による、カソードアーク(CA)PVD処理による界面ばらつきのないランダムな粒子構造の概略図である。
【0029】
【
図4】本開示の少なくとも1つの非限定的態様による、CrまたはCr合金コーティングとZr合金チューブ材料との間の中間コーティング層としてのNb、Mo、Ta、Re、Os、Ru、またはWまたはこれらの金属の合金を概略的に示す。
【0030】
対応する参照文字は、複数の図を通して対応する部分を示す。本明細書に記載された例示は、本発明の様々な態様を一態様において例示するものであり、かかる例示は、いかなる態様においても、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるものではない。
【発明の詳細な説明】
【0031】
本開示に記載され、添付の図面に図示されるような態様の全体的な構造、機能、製造、および使用の徹底的な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載される。周知の動作、構成品、および要素は、本明細書に記載される態様を不明瞭にしないために、詳細には記載されていない。読者は、本明細書に記載され、図示された態様は、非限定的な例であることを理解し、したがって、本明細書に開示された特定の構造的および機能的な詳細は、代表的および例示的であり得ることが理解されるであろう。特許請求の範囲から逸脱することなく、その変形および変更が行われてもよい。
【0032】
本開示の様々な態様を詳細に説明する前に、例示的な実施例は、適用または使用において、添付の図面および説明に開示された詳細に限定されないことに留意すべきである。例示的な実施例は、他の態様、変形例、および修正例において実施または組み込まれてもよく、様々な方法で実施または実行され得ることが理解されよう。さらに、別段の表示がない限り、本明細書で使用される用語および表現は、読者の便宜のために例示的な実施例を説明する目的で選択されたものであり、その限定を目的とするものではない。
【0033】
加圧水型原子炉(PWR)、(CANDU等の)重水型原子炉、沸騰水型原子炉(BWR)のような典型的な水型原子炉では、炉心に多数の燃料アセンブリを含み、その各々は複数の細長い燃料要素または燃料ロッドで構成されている。燃料アセンブリは、炉心の所望の大きさや原子炉の大きさによって大きさや設計が異なる。燃料ロッドはそれぞれ、二酸化ウラン(U02)、二酸化プルトニウム(Pu02)、二酸化トリウム(Th02)、窒化ウラン(UN)、ウランシリサイド(U3、Si2)およびそれらの混合物の少なくとも1つなどの核燃料核分裂性物質を含む。燃料ロッドの少なくとも一部は、ホウ素またはホウ素化合物、ガドリニウムまたはガドリニウム化合物、エルビウムまたはエルビウム化合物などの中性子吸収材料も含むことができる。中性子吸収材料は、核燃料ペレットの積層物の形態のペレット上またはペレット中に存在してもよい。環状または粒子状の燃料も使用できる。
【0034】
各燃料ロッドは、核分裂性物質を保持するための格納容器として機能するクラッドを有する。燃料ロッドは、高い核分裂率を維持するのに十分な中性子束を炉心に供給し、熱の形態で大量のエネルギーを放出するように組織された配列でまとめられている。炉心で発生した熱を取り出し、電気などの有用な仕事を生み出すために、水などの冷却材が炉心に送り込まれる。
【0035】
燃料ロッドのクラッドは、ジルコニウム(Zr)で構成され、ニオブ(Nb)、スズ(Sn)、鉄(Fe)、クロム(Cr)などの他の金属を約2重量%まで含むことができる。
【0036】
通常運転中、ジルコニウムクラッドは原子炉内の高温(200℃~350℃)かつ高圧水環境に曝されるため、表面の腐食(酸化)とそれに伴う(水との酸化反応によって水素が金属中へ放出されることによる)クラッドバルクの水素化が生じ、最終的に金属の脆化につながる。このように金属が弱くなることにより、核燃料炉心の性能、寿命、安全マージンに悪影響が及ぶ。過渡時や事故時には、ジルコニウム合金は1100℃以上の温度で水蒸気と急速に反応し、酸化ジルコニウムと水素を生成する。原子炉の環境では、この反応によって生成された水素が原子炉を劇的に加圧し、最終的には格納容器や原子炉建屋に漏れ出て爆発が起こりやすい雰囲気になって水素爆発を起こす可能性があり、核分裂生成物が格納容器外に拡散し得る。核分裂生成物の境界を維持することは極めて重要である。
【0037】
Lahodaらは、国際出願第2015/175035号(以下「035号公報」という)において、SiC材料をジルコニウム合金核燃料クラッドチューブに蒸着する化学気相浸透(CVI)または化学気相蒸着(CVD)処理を開示し、ジルコニウム合金クラッドが水型原子炉内で曝される通常条件および事故条件に耐える能力を向上させている。035号公報は、組み込まれた資料が本明細書と矛盾しない程度で、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
Mazzoccoliらは、米国特許第10,290,383号(以下「383号特許」という)において、ハイブリッド熱動力付着またはコールドスプレー装置を用いた高速熱印加により、原子炉用のジルコニウムクラッドに一体化した保護セラミック粒子のコーティングを形成する方法を開示している。383号特許は、組み込まれた資料が本明細書と矛盾しない程度で、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
Lahodaらは、米国特許出願公開第2020/0051702号(以下「702号出願」という)において、コールドスプレーによるコーティングの付着方法を開示している。702号出願は、組み込まれた資料が本明細書と矛盾しない程度で、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0040】
Lahodaらは、米国特許出願公開第2018/0096743号(以下「743号出願」という)において、核燃料ロッドのための二重の事故耐性コーティングを付着させるためのコールドスプレー方法を開示している。743号出願は、組み込まれた資料が本明細書と矛盾しない程度で、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0041】
クロム(Cr)コーティングは、通常運転時だけでなく、クラッドの温度が短時間で900℃を超えるような過渡時や事故時にも、ジルコニウム(Zr)合金の核燃料クラッドチューブを過度の腐食から保護することが最近実証された。Crコーティングは、寄生中性子吸収を低減するために薄く(約5~15ミクロン)する必要がある。
【0042】
物理的気相成長法(PVD)は、製品を適切に制御し、良好にコーティングすることが分かっている。マグネトロンスパッタリング(MS)が使用されており、当初は良好な密着性のあるコーティングが得られるものの、大きな柱状の粒子構造(
図1)により、冷却水がZr合金とCrコーティングの界面に比較的垂直かつ直接に到達する経路ができ、これによってCrコーティングの下でジルコニウム(Zr)の腐食を引き起こし、Crコーティングが剥離する可能性がある。さらに、この粒子構造は、粒子の境界がジルコニウムチューブ表面に垂直であるため、コーティングから、その下のジルコニウム合金チューブに亀裂を伝わりやすくする可能性もある。別のPVD法として、ランダムな粒子構造を付着させる高出力インパルスマグネトロンスパッタリング(HiPIMS)がある。残念ながら、HiPIMSもコーティング付着法としては高コストである。なぜなら、電極の極性を反転させてガスから材料を再付着させるために、処理が中断されるからである。したがって、付着率が低く、加えて、より複雑な装置のためにコストが高くなる。
図1は、Zr合金チューブ材料104上に付着したCrまたはCr合金粒子102を含むMSから形成された粒子構造を概略的に示している。CrまたはCr合金粒子102は、所望のコーティング厚さTDを有する。
【0043】
ジルコニウム(Zr)合金の核燃料クラッドチューブにコーティング剤を付着させるもう一つの方法はコールドスプレーである。この処理では、粒子がガス流中でコーティング対象のチューブ表面に向けて加速される。これらの粒子は表面に衝突して変形し、ランダムな粒子構造のコーティングを形成する。しかし、この方法では、粒子の運動量が大きいため、コーティングとチューブの界面に大きなばらつきが生じ(
図2)、必要最小限の厚さを得るのに必要な平均コーティング厚さが増大する。また、この方法では表面が非常に粗くなるが、追加の費用を要するものの、研削や研磨で簡単に改善できる。
図2は、Zr合金チューブ材104に付着した、CrまたはCr合金粒子102を含むコールドスプレーによるランダムな粒子構造と界面のばらつきを概略的に示している。CrまたはCr合金粒子102は、所望のクラッド厚さTD、界面ばらつきによる追加平均コーティング厚さTA、および研磨表面106を有する。
【0044】
必要とされるのは、ランダムな粒子構造を作ると同時に、コーティングとその下のジルコニウムチューブ表面との間に滑らかな界面を作り出す処理である。
【0045】
本開示は、カソードアーク(CA)物理蒸着(PVD)処理を用いて、原子炉で使用する構成品の基材、例えば、水冷原子炉で使用する核燃料クラッドチューブのジルコニウム(Zr)合金基材にランダムな粒子構造コーティングを施す方法を提供する。
【0046】
カソードアーク(CA)物理蒸着(PVD)処理は、コールドスプレーのような非常に高い付着速度で、ランダムな粒子構造を付着させる。同時に、非常に小さな溶融粒子(grains)/粒子(particles)または小さな原子の集合体を付着させるため、コーティングとジルコニウムチューブの界面はほとんど変化しない(
図3)。カソードアーク(CA)物理蒸着(PVD)処理では、MS PVDよりもやや粗い表面が形成されるが、コールドスプレーよりは粗くなく、この粗さは軽い研磨で改善できる。したがって、カソードアーク(CA)物理蒸着(PVD)処理は、ランダムな粒子構造と、コーティングとチューブとの滑らかな界面という要件を満たすと同時に、付着コーティングのコストを低減する。
図3は、Zr合金チューブ材料104に付着したCrまたはCr合金粒子102を含むカソードアーク(CA)PVD処理による、界面のばらつきのないランダムな粒子構造の概略図である。CrまたはCr合金粒子102は、所望のコーティング厚さTDと、研磨表面106を有する。
【0047】
CA PVDコーティングのランダムな粒子は、ZrとCrコーティングとの界面へ冷却水が容易に浸入することを抑制し、界面でのアンダーカット腐食によるコーティング剥離の可能性を低減する。また、これらのランダムな結晶粒子は、コーティングを介して、その下のジルコニウムチューブに亀裂が広がるのを抑制する。
【0048】
本発明は、YまたはMoを含むようなCrおよびCr合金だけでなく、Cr-Zr共晶形成に対する耐性を与えるために適用され得る、Nb、Mo、Ta、Re、Os、Ru、またはWまたはこれらの金属の合金のような、中間層においてCrまたはCr合金コーティングの下に使用され得る他の材料のコーティングにも適用され得る(
図4)。
図4は、CrまたはCr合金コーティング102とZr合金チューブ材料104との間の中間コーティング層108としてのNb、Mo、Ta、Re、Os、Ru、またはWまたはこれらの金属の合金を概略的に示している。CrまたはCr合金粒子102は、所望のコーティング厚さTDと、研磨された表面106を有する。中間層108は、所望の中間層厚さTIを有する。
【0049】
ジルコニウムチューブのコーティングには、(他のPVDベンダーによる)MS PVDおよび(Framatome社による)HiPIMS PVDが使用されているが、通常運転条件下、およびクラッドの温度が短時間で900℃を超える可能性のある過渡時および事故時の両方において、ジルコニウム核燃料クラッドチューブの耐食性を改善するために、カソードアーク(CA)PVD処理を使用して、ジルコニウム核燃料クラッドチューブにランダムな粒子構造コーティングを施したのは本発明者らが最初である。
【0050】
本開示は、核燃料クラッドチューブの耐食性を、通常運転条件と過渡・事故条件の両方で向上させるために、カソードアーク(CA)PVD処理を用いて、核燃料クラッドチューブのジルコニウム基材上にランダムな粒子構造コーティングを施す方法を提供する。
【0051】
様々な態様において、本方法は、基板を提供する工程と、カソードアーク(CA)物理蒸着(PVD)処理を使用して、基材の外側に、純粋なクロム(Cr)、クロム(Cr)合金、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される第1の粒子を有する保護コーティング層を形成する工程と、を含む。一実施形態では、保護コーティング層はランダムな粒子構造を有する。
【0052】
本明細書で使用する「純Cr」または「純クロム」という用語は、100%金属クロムを意味し、これは、冶金的機能を果たさない、意図しない不純物を微量含んでもよい。例えば、純Crは数ppmの酸素を含むことがある。本明細書で使用する用語「Cr合金」、「クロム合金」、「Cr系合金」または「クロム系合金」は、Crを主要な元素または大多数の元素とし、特定の機能を果たす少量だが妥当な量の他の元素を含む合金を指す。Cr合金は、80原子%から99原子%のクロムを含んでいてもよい。Cr合金中の他の元素は、ケイ素、イットリウム、アルミニウム、チタン、ニオブ、モリブデン、ジルコニウム、および他の遷移金属元素から選択される少なくとも1つの化学元素を含むことができる。このような元素は、例えば0.1原子%~20原子%の含有量で存在してもよい。
【0053】
本方法の様々な態様において、保護コーティング層に使用される粒子は、純金属クロム粒子またはクロム(Cr)合金粒子であってよく、これらはいずれも約20ミクロン以下、または約10ミクロン以下の平均直径を有していてもよい。本明細書で使用される「平均直径」によって、当業者は、「直径」が規則的または不規則的な形状の粒子の最長寸法となるように、粒子が球形および非球形の両方であってよく、平均直径は、任意のある粒の最長寸法には約20ミクロンより上または下にいくらかの変動があるが、コーティングに使用されるすべての粒子の最長寸法の平均は、全体で約20ミクロン以下であることを意味することを認識するであろう。さらに、第1の粒子は約100ミクロン以下の直径を有していてもよい。
【0054】
保護コーティング層の粒子がクロム系合金である場合、約80~99.9原子%のクロムを含んでいてもよい。様々な態様において、クロム系合金は、ケイ素、イットリウム、アルミニウム、チタン、ニオブ、ジルコニウム、モリブデンおよび遷移金属元素からなる群から選択される少なくとも1つの元素を、合わせて約0.1~20原子%の含有量で含んでもよい。様々な態様において、Cr合金は、例えば、CrY、CrAlY、CrMo、FeCrAlYまたはFeCrAlのいずれかであってもよい。
【0055】
本方法の様々な態様において、基材は好ましくはジルコニウム合金であり、様々な態様において、構成品は核燃料ロッド用のクラッドチューブであってもよい。基材は、コーティング対象の構成品に関連する任意の形状であってよい。例えば、基材は、円筒状、湾曲状、または平坦であってもよい。核燃料ロッドでは、基材は好ましくは円筒形である。一実施形態では、基材はジルコニウム合金であってよく、構成品は水冷原子炉で使用される核燃料ロッドクラッドチューブであってよい。
【0056】
本方法の様々な態様において、カソードアーク(CA)PVD処理は、真空蒸着チャンバ内に置かれたソース材料とコーティング対象の基材に関連する。チャンバには比較的少量の気体しか含まれていない。直流(DC)電源のマイナスのリード線はソース材料(「カソード」)に、プラスのリード線はアノードに接続される。多くの場合、プラスのリード線は蒸着チャンバに取り付けられ、蒸着チャンバがアノードとなる。電気アークは、カソードターゲットから材料を蒸発させるために使用される。蒸発した材料は基板上で凝縮し、目的の層を形成する。CA PVD処理は、比較的安価に構築・使用でき、堅牢な装置を使用するため、必要なメンテナンスもわずかである。
【0057】
本方法の様々な態様において、カソードアーク(CA)PVD処理は、コーティング対象のZr合金チューブの基材を提供する工程と、Zr合金チューブの基材上に付着されるCrまたはCr合金を含むターゲットを提供する工程と、CA PVD装置のチャンバ内で部品とZr合金チューブとCrまたはCr合金のターゲットを支える工程と、チャンバ内を真空にする工程と、ターゲットとZr合金チューブとの間に低電圧を印加する工程であって、ターゲットはZr合金チューブの基材上に薄膜状に付着されるCrまたはCr合金を含み、磁場を利用してカソードアークの位置を移動させ、液滴の移動を最小限に抑え、ターゲットを均一に侵食し、Zr合金チューブの基材に付着させる工程と、を含む。
【0058】
保護Crコーティング層は、280~320℃の通常運転時の耐食性を高めるだけでなく、冷却材喪失事故(LOCA)のような設計基準事故時に保護するために、核燃料ロッドクラッドチューブに施される。Zrは1100℃付近で発火するが、Crでコーティングされたクラッドは約1400℃まで発火しないため、Cr保護コーティング層はプラント運転員が対応するための応答時間を稼ぐのに役立つ。保護コーティングは、事故の過程で発生する水素の量を大幅に減少させるため、原子炉の加圧を低減し、格納容器に圧力が解放されたときに水素爆発が起こる可能性を低減する。
【0059】
保護コーティング層は、例えば、約5ミクロンから約100ミクロンの間の所望の厚さを有してもよいが、数百ミクロンの、例えば100ミクロンから150ミクロンのような、より大きな厚さで基材の外側に付着させてもよい。保護コーティング層は、腐食に対する保護バリアを基材に形成するのに十分な厚さであると同時に、寄生中性子の吸収を低減するのに十分な薄さであるべきである。保護コーティング層は、水蒸気ジルコニウム反応と空気ジルコニウム反応を低減し、様々な態様ではこれをなくし、約1000℃以上の温度での水素化ジルコニウムの形成を低減し、様々な態様ではこれをなくす。
【0060】
この方法の様々な態様において、保護コーティング層は、平滑な外面になるように軽く研削され、研磨されてもよい。
【0061】
様々な態様において、本方法は、保護コーティング層を形成する前に、基材の外側に、Nb、Mo、Ta、Re、Os、RuおよびW、ならびにそれらの合金からなる群から選択される第2の粒子を有する中間コーティング層を先に形成する工程をさらに含んでいてもよい。
【0062】
第2の粒子の直径は、約100ミクロン以下、平均直径は約20ミクロン以下であってもよい。
【0063】
本方法の様々な態様において、中間コーティング層は、カソードアーク(CA)物理蒸着(PVD)処理によって、基材の外側上に先に付着されてもよい。中間コーティング層は、ランダムな粒子構造を有していてもよい。中間コーティング層は、保護コーティング層と基材の外側との間にある。中間コーティング層は、保護コーティング層を付着させる前に軽く研削および研磨されてもよく、その後保護コーティング層は軽く研削および研磨されてもよい。
【0064】
本方法の様々な態様において、中間コーティング層は、約0.5ミクロンから約100ミクロンの間、約0.5ミクロンから約50ミクロンの間、または好ましくは約0.5ミクロンから約15ミクロンの間の所望の厚さを有していてもよいが、数百ミクロン、例えば、100ミクロンから150ミクロンのような、より大きな厚さで基材の外側に付着させてもよい。
【0065】
この方法の様々な態様において、中間コーティング層は、保護コーティング層と基材との間の共晶形成を防止してもよい。
【0066】
本明細書で上述したように、保護コーティング層は基材の腐食保護バリアとして機能する。基材がジルコニウム合金クラッドである場合、クロムコーティングは、通常の運転条件、例えば加圧水型原子炉では270℃から350℃の間、沸騰水型原子炉では200℃から300℃の間において、腐食に対する保護バリアを提供する。保護コーティング層は、高温、すなわち1100℃以上における蒸気ジルコニウム反応と空気ジルコニウム反応および水素発生を低減する。
【0067】
中間コーティング層は、任意選択で、保護コーティング層の付着の前に、カソードアーク(CA)物理蒸着(PVD)処理を使用して、先に基材の外側に付着させることができる。中間コーティング層は、ZrまたはZr合金基材と、CrY、CrAlY、FeCrAlまたはFeCrAlYなどのCrまたはCr合金コーティング材料とに対して、例えば900℃より高い温度において保護コーティング層の性能を制限する保護コーティング層と基材との間の共晶形成を緩和することができ、したがって、900℃より高い温度での保護コーティング層の本実施形態の事故耐性をさらに向上させることができる。
【0068】
一般に、中間コーティング材料は、ジルコニウムまたはジルコニウム合金との共晶融点が1400℃より上であり、中間コーティング材料がコーティングされるジルコニウムまたはジルコニウム合金基材およびその上に付着される保護コーティング層に適合する熱膨張係数および弾性率係数を有する材料から選択することができる。中間コーティング層を形成するために使用される粒子は、Nb、Mo、Ta、Re、Os、RuおよびW、またはそれらの合金であってよく、これらはすべて、1400℃より上、様々な態様では1500℃より上のZrまたはZr合金と共晶を形成する。特定の態様では、中間コーティング層を形成するために使用される粒子はMoであってもよい。
【0069】
本方法の様々な態様において、核燃料ロッドクラッドチューブは、純Cr又はCr合金の保護コーティング層(第1の粒子)と、Nb、Mo、Ta、Re、Os、Ru及びWの粒子又はそれらの合金の中間コーティング層(第2の粒子)との2つのコーティング層を有していてもよい。両方のコーティング層をジルコニウム合金チューブに塗布することで、通常の運転条件でも事故条件でも、ジルコニウムと蒸気または空気との反応を低減することができる。2つのコーティング層は、上述のように、カソードアーク(CA)物理蒸着(PVD)処理を順次使用して適用されてもよい。このようにして、2つのコーティング層の各々は、所望のランダムな粒子構造を有し、約0.5~約150ミクロン、約0.5~約100ミクロン、約0.5~約50ミクロン、または約0.5~約15ミクロンのコーティング厚さを有する。2つのコーティング層を合わせた総厚さは、約0.5~約150ミクロン、約0.5~約100ミクロン、約0.5~約50ミクロン、約0.5~約15ミクロン、または約1.0~約15ミクロンである。第1の層および第2の層の粒子はそれぞれ、好ましくは平均直径約2.0ミクロン未満かつ最大直径約10.0ミクロンのサイズを有する。
【0070】
先に説明したように、本方法の二重コーティング層は、共晶温度における保護コーティング層とジルコニウム合金基材との間の共晶形成を回避することにより、コーティングされたジルコニウム合金クラッドの事故耐性をさらに向上させる可能性がある。正確な温度は、基材と保護コーティング層に使用される材料によって異なる。共晶点を決定するための共晶相ダイアグラムは、文献で容易に入手できる。
【0071】
様々な態様において、中間コーティング層および保護コーティング層の形成後、本方法は、コーティングをアニーリングすることをさらに含んでいてもよい。アニーリングにより延性が与えられ、サブミクロンサイズの粒子が形成され、特性の等方性や放射線損傷に対する耐性に有利になると考えられる。アニーリングは、200℃から800℃、好ましくは350℃から550℃の温度範囲でコーティングを加熱する。これは、コーティングの応力を緩和し、コーティングに延性を与えるもので、クラッド内の内圧を維持するのに必要なものである。チューブが膨張するにつれて、コーティングも膨張する必要がある。
【0072】
本明細書に記載の方法は、様々な態様において、ジルコニウム合金基材から形成され、クロムまたはクロム合金から形成された中間コーティング層および保護コーティング層を有するクラッドチューブを提供する。一般に、中間コーティング材料は、種々の態様において、ジルコニウムまたはジルコニウム合金と、1400℃より上、好ましくは特定の態様において1500℃より上の共晶融点を有する材料から選択されてもよく、さらに、中間コーティング材料がコーティングされるジルコニウムまたはジルコニウム合金基材およびその上に適用される保護コーティング層と適合する熱膨張係数および弾性率係数を有する材料から選択されてもよい。例えば、Nb、Mo、Ta、Re、Os、Ru、Wなどの遷移金属またはその合金で、融点が高く(1700℃より上)、共晶を形成しないもの、または共晶を形成するが、ジルコニウム合金チューブとクロムまたはクロム合金から形成される保護コーティング層との間に形成される可能性のある共晶(1333℃前後)よりも高い温度(1400℃より上)で共晶を形成する金属が挙げられる。
【0073】
また、2つのコーティング層を有する基材は、より滑らかな表面仕上げとするために、研削、バフ研磨、研磨、または他の既知の技術によって、好ましくは軽く、処理することもできる。
【0074】
本開示のカソードアーク(CA)PVDを使用して核燃料ロッドクラッドチューブをコーティングする方法は、MS PVDを使用する場合よりもコーティング粒子構造に利点があり、HiPIMSよりも低コストである。
【0075】
本明細書に記載された、および/または出願データシートに記載された、すべての特許、特許出願、刊行物、またはその他の開示資料は、個々の参照資料がそれぞれ明示的に参照により組み込まれているものとして、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。参照により本明細書に組み込まれるとされるすべての参考資料、およびその資料またはその一部は、組み込まれる資料が本開示に記載される既存の定義、記述、またはその他の開示資料と矛盾しない範囲でのみ本明細書に組み込まれる。そのため、必要な範囲において、本明細書に記載される開示は、参照により本明細書に組み込まれる矛盾する資料に優先し、本出願に明示的に記載される開示が支配する。
【0076】
本発明は、様々な例示的および例示的な態様を参照して説明されてきた。本明細書に記載された態様は、開示された本発明の様々な態様の様々な詳細の例示的な特徴を提供するものとして理解され、したがって、特に指定されない限り、可能な範囲で、開示された態様の1つ以上の特徴、要素、構成品、構成物質、成分、構造、モジュール、および/または態様は、開示された本発明の範囲から逸脱することなく、開示された態様の1つ以上の他の特徴、要素、構成品、構成物質、成分、構造、モジュール、および/または態様と組み合わされ、分離され、交換され、および/または再配置され得ることが理解される。従って、本発明の範囲から逸脱することなく、例示的態様のいずれにも、様々な置換、変更または組合せがなされ得ることが、当業者には認識されるであろう。さらに、当業者であれば、本明細書を参照することにより、本明細書に記載された本発明の様々な態様に対する多くの均等物を、日常的な実験以上のことを行わずに、認識し、または確認することができるであろう。したがって、本発明は、様々な態様の説明によって限定されるものではなく、むしろ特許請求の範囲によって限定されるものである。
【0077】
当業者であれば、一般に、本明細書、特に添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の本文)において使用される用語は、一般に「オープン」な用語として意図されることを認識するであろう(例えば、「含む」という用語は、「含むが、限定されない」と解釈されるべきであり、「有する」という用語は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「備える」という用語は、「備えるが、限定されない」などと解釈されるべきである)。当業者にはさらに、特定の数の導入された請求の範囲の記載が意図される場合、そのような意図は請求項に明示的に記載され、そのような記載がない場合、そのような意図は存在しないことが理解されよう。例えば、理解の一助として、以下の添付の特許請求の範囲には、特許請求の範囲の記載を導入するために「少なくとも1つ」及び「1つ以上」という導入表現が使用されている場合がある。しかしながら、このような表現の使用は、不定冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」による特許請求の範囲の記載の導入が、そのような導入された特許請求の範囲の記載を含む特定の特許請求の範囲を、同じ請求項が「1つ以上(one or more)」または「少なくとも1つ(at least one)」といった導入表現、ならびに「1つの(a)」または「1つの(an)」などの不定冠詞を含む場合であっても、そのような記載を1つのみ含む特許請求の範囲に限定することを意味すると解釈されるべきではなく(例えば、「1つの(a)」及び/又は「1つの(an)」は、通常、「少なくとも1つの(at least one)」又は「1以上の(one or more)」を意味する)、同じことは、特許請求の範囲の記載の導入に使用される定冠詞の使用にもあてはまる。
【0078】
さらに、特定の数の導入された特許請求の範囲の記載が明示的に記載されている場合であっても、当業者であれば、そのような記載は、通常、少なくとも記載された数を意味すると解釈されるべきであることを認識するであろう(例えば、他の修飾語を伴わない「2つの記載」という単なる記載は、通常、少なくとも2つの記載、又は2つ以上の記載を意味する)。さらに、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つなど」に類似する慣例が使用される場合、一般的に、このような構成は、当業者が慣例を理解するような意味で意図される(例えば、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみを有し、Bのみを有し、Cのみを有し、AおよびBを共に有し、AおよびCを共に有し、BおよびCを共に有し、および/またはA、B、およびCを共に有するシステムを含むが、これらに限定されない)。「A、B、あるいはCのうちの少なくとも1つ等」に類似する慣例が使用される場合、一般に、そのような構成は、当業者が慣例を理解する意味で意図される(例えば、「A、B、あるいはCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみを有し、Bのみを有し、Cのみを有し、AおよびBを共に有し、AおよびCを共に有し、BおよびCを共に有し、および/またはA、B、およびCを共に有するシステムを含むが、これらに限定されない)。明細書、特許請求の範囲、または図面のいずれにおいても、典型的には、2つ以上の代替的な用語を提示する離接的な単語および/または表現は、文脈から別段の指示がない限り、用語のうちのひとつ、用語のうちのいずれか、または両方の用語を含む可能性を想定していると理解されるべきであることが、当業者にはさらに理解されるであろう。例えば、「A又はB(A or B)」という表現は、通常、「A」又は「B」又は「A及びB(A and B)」の可能性を含むものと理解される。
【0079】
添付の特許請求の範囲に関して、当業者であれば、そこに記載された動作は、一般に、どのような順序で実行されてもよいことを理解するであろう。また、特許請求の範囲の記載は順序だてて示されているが、様々な動作は、記載されている順序以外の順序で実行されてもよく、または同時に実行されてもよいことが理解されるべきである。そのような代替順序の例としては、文脈から別段の指示がない限り、重複順序、インターリーブ順序、中断順序、再順序、増分順序、準備順序、補足順序、同時順序、逆順序、または他の変形順序が挙げられる。さらに、「~に反応して」、「~に関連して」などの過去形の形容詞のような用語は、文脈から別段の指示がない限り、一般に、このような変形を除外することを意図していない。
【0080】
「一態様」、「1つの態様」、「一例示」、「1つの例示」などへの言及は、その態様に関連して記載される特定の特徴、構造、または特性が、少なくとも1つの態様に含まれることを意味することに留意されたい。したがって、本明細書の様々な箇所において「一態様において」、「1つの態様において」、「一例示において」、および「1つの例示において」という表現が現れるが、これらは必ずしもすべてが同じ態様を指すわけではない。さらに、特定の特徴、構造または特性は、1つまたは複数の態様において適切に組み合わせられてもよい。
【0081】
本明細書で使用される「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」の単数形は、文脈上そうでないことが明らかな場合を除き、複数形も含む。
【0082】
本明細書で使用される方向に関する表現、例えば、限定するものではないが、上、下、左、右、下方、上方、前、後、より上、より下、およびそれらの変形は、添付図面に示される要素の方向に関するものであり、別途明示的に記載されない限り、特許請求の範囲を限定するものではない。
【0083】
本開示で使用される「ミクロン(micron)」、「ミクロン(microns)」、「マイクロメートル(micrometer)」または「μm」という用語は、1×10^-6メートルに等しい、SIに由来する長さの単位を意味する。
【0084】
本開示において使用される「約(about)」または「およそ(approximately)」という用語は、特に指定がない限り、当業者によって決定される特定の値に対する許容可能な誤差を意味し、これは、その値がどのように測定または決定されるかに部分的に依存する。特定の態様において、「約(about)」または「およそ(approximately)」という用語は、1、2、3、または4標準偏差以内を意味する。特定の態様において、「約(about)」または「およそ(approximately)」という用語は、所与の値または範囲の50%、200%、105%、100%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、または0.05%以内を意味する。
【0085】
本明細書では、特に断りのない限り、すべての数値パラメータは、すべての場合において、「約」という用語によって前置きされ、修正されるものと理解される。この場合、数値パラメータは、そのパラメータの数値を決定するために使用される基礎的な測定技術に特有の固有の変動性を有する。均等論の適用を特許請求の範囲に限定しようとするものではないが、少なくとも、本明細書に記載された各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の桁数を考慮し、通常の丸め処理を適用して解釈されるべきである。
【0086】
本明細書で言及される数値範囲には、言及される範囲に包含されるすべての小範囲が含まれる。例えば、「1~100」の範囲は、記載された最小値である1と記載された最大値である100との間の(および1と100とを含む)すべての小範囲、すなわち、1以上の最小値と100以下の最大値とを有するすべての小範囲を含む。また、本明細書で言及されるすべての範囲は、言及される範囲の端点を含む。例えば、「1~100」の範囲は、端点1および100を含む。本明細書に記載される最大数値限定はいずれも、そこに包含されるすべての下位数値限定を含むことを意図しており、本明細書に記載される最小数値限定は、そこに包含されるすべての上位数値限定を含むことを意図している。従って、出願人は、特許請求の範囲を含む本明細書を修正し、明示的に記載された範囲に包含される任意の小範囲を明示的に記載する権利を留保する。そのような範囲はすべて、本明細書に本質的に記載されている。
【0087】
「備える(comprise)」(および「備える(comprises)」や「備えている(comprising)」などの備える(comprise)の任意の形)、「有する(have)」(および「有する(has)」や「有している(having)」などの有する(have)の任意の形)、「含む(include)」(および「含む(includes)」や「含んでいる(including)」などの含む(include)の任意の形)、「含有する(contain)」(および「含有する(contains)」や「含有している(containing)」などの含有する(contain)の任意の形)は、オープンエンドの連結動詞である。その結果、1つまたは複数の要素を「備える」、「有する」、「含む」、または「含有する」システムは、それらの1つまたは複数の要素を有するが、それらの1つまたは複数の要素のみを有することに限定されない。同様に、1つまたは複数の特徴を「備える(comprises)」、「有する(has)」、「含む(includes)」、または「含有する(contains)」システム、デバイス、または装置の要素は、それらの1つまたは複数の特徴を有するが、それらの1つまたは複数の特徴のみを有することに限定されない。
【国際調査報告】