(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(54)【発明の名称】二次低減処理を備える硝酸の産生のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C01B 21/40 20060101AFI20240604BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20240604BHJP
B01D 53/90 20060101ALI20240604BHJP
B01J 35/57 20240101ALI20240604BHJP
【FI】
C01B21/40 E
B01D53/86 222
B01D53/90 ZAB
B01J35/57 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023573312
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(85)【翻訳文提出日】2024-01-25
(86)【国際出願番号】 EP2022064171
(87)【国際公開番号】W WO2022248538
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515106066
【氏名又は名称】カサーレ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オストゥーニ、ラファエーレ
(72)【発明者】
【氏名】ビアーシ、ピエルドメニコ
(72)【発明者】
【氏名】ガルブージオ、アルベールト
(72)【発明者】
【氏名】パンツェリ、ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】オルダニ、ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】ビャウコフスキー、ミカル タデウシュ
【テーマコード(参考)】
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
4D148AA06
4D148AA07
4D148AB02
4D148AB03
4D148AC04
4D148BA11Y
4D148BA36Y
4D148BB01
4D148BB02
4D148BB09
4D148CC32
4D148CC46
4D148CC61
4D148DA03
4D148DA05
4D148DA06
4D148DA08
4D148DA11
4G169AA03
4G169BA07A
4G169BC66A
4G169CA02
4G169CA08
4G169CA13
4G169DA06
4G169EA19
4G169EA25
4G169EB09
4G169EB12X
4G169EB15X
4G169EB16X
4G169ZA13A
(57)【要約】
アンモニア(1)を酸素(2)または空気の存在下で触媒酸化工程(3)にかけ、燃焼ガス(4)を産生する工程、燃焼ガス(4)を触媒分解工程(5)にかけ、N2O枯渇ガス流(6)を産生する工程、N2O枯渇ガス流(6)を冷却工程(9)にかけ、冷却流(11)を産生する工程、および冷却流(11)を水(50)の存在下で吸収工程(23)にかけ、硝酸(12)とNOxを保持する排ガス(13)とを産生する工程を含み、触媒分解工程(5)が、ガス透過性チャネルが設けられた触媒支持体上に堆積、コーティング、または共押出された1つまたは複数の鉄ゼオライト触媒上において450℃と700℃の間に含まれる温度で実行される、硝酸(100)を合成するためのプロセス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)アンモニア(1)を酸素(2)または空気の存在下で触媒酸化工程(3)にかけ、燃焼ガス(4)を産生する工程;
b)前記燃焼ガス(4)を触媒分解工程(5)にかけ、N
2O枯渇ガス流(6)を産生する工程;
c)前記N
2O枯渇ガス流(6)を冷却工程(9)にかけ、冷却流(11)を産生する工程;
d)前記冷却流(11)を水(50)の存在下で吸収工程(23)にかけ、硝酸(12)とNOxを保持する排ガス(13)とを産生する工程、
を含み、
前記触媒分解工程(5)が、450℃と700℃の間に含まれる温度で実行され、
前記触媒分解工程が、ガス透過性チャネルが設けられた支持体を含む触媒アセンブリであって、1つまたは複数の鉄ゼオライトを含む触媒が、前記支持体上に堆積または共押出されている触媒アセンブリ上で実行される、
硝酸を製造するためのプロセス(100)。
【請求項2】
前記触媒分解工程(5)のN2O低減効率が、98%超、好ましくは99%超であり、そしてより好ましくは、前記N2O枯渇ガス流(6)中のN2O含有量が15ppm未満である、請求項1記載のプロセス(100)。
【請求項3】
前記支持体が、
モノリスブロック;
周期的規則セル構造体;
連続気泡金属発泡体
の少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載のプロセス(100)。
【請求項4】
e)前記排ガス(13)を、加熱工程(22)、次いで触媒還元工程(17)にかけ、好ましくはアンモニアである還元剤(15)の存在下でNOxを除去して、精製ガス流(18)を産生する工程
をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス(100)。
【請求項5】
NOxを除去する前記触媒還元工程(17)が、ガス透過性チャネルが設けられたモノリス支持体を含む触媒アセンブリであって、1つまたは複数のゼオライトを含む触媒が前記モノリス支持体上に堆積、コーティング、または共押出されている触媒アセンブリ上で実行される、請求項4記載のプロセス(100)。
【請求項6】
NOxを除去する前記触媒還元工程が、ゼオライト触媒、好ましくはフェリエライト触媒、より好ましくは非鉄フェリエライト触媒上で実行される、請求項4または5に記載のプロセス(100)。
【請求項7】
NOxを除去するための前記触媒還元工程(17)がN2Oも除去する、請求項5または6に記載のプロセス(100)。
【請求項8】
NOxを除去するための前記触媒アセンブリの前記モノリス支持体に、前記還元剤(15)を注入するように構成されたガス透過性サブチャネルが設けられている、請求項5~7のいずれか1項に記載のプロセス(100)。
【請求項9】
工程(c)および工程(e)が、2つの工程間の熱統合を達成するように同時に実行され、N2Oの触媒分解工程(5)によって生じた熱が、NOxの触媒還元工程(17)に伝達される、請求項4~8のいずれか1項に記載のプロセス(100)。
【請求項10】
前記加熱工程(22)が、前記排ガス(13)を300℃と650℃の間に含まれる温度に加熱するために実行される、請求項4~8のいずれか1項に記載のプロセス(100)。
【請求項11】
N2O触媒分解工程における空間速度が、5000h-1より高く、好ましくは15000h-1と40000h-1の間に含まれる、請求項1~10のいずれか1項に記載のプロセス(100)。
【請求項12】
N2O枯渇ガス(6)が、前記冷却工程(9)に供給される前に前記排ガス(13)を予熱するために使用される、請求項1~11のいずれか1項に記載のプロセス(100)。
【請求項13】
a)燃焼ガス(4)を産生するための酸素(2)によるNH3の触媒酸化のためのアンモニアバーナー(3);
b)N2O枯渇ガス流(6)を産生するように構成された前記アンモニアバーナー(3)の下流に配置されたN2O分解のための触媒反応床(5)であって、N2O触媒分解工程が、ガス透過性チャネルが設けられた支持体を含む触媒アセンブリであって、1つまたは複数の鉄ゼオライトを含む触媒が前記支持体上に堆積、コーティング、または共押出されている触媒アセンブリ上で実行される、触媒反応床(5);
c)前記触媒反応床(5)の下流に配置された冷却セクション(9);
d)NOxを吸収媒体(50)と反応させて硝酸(12)および排ガス(23)を産生するための、冷却セクション(9)の下流に配置された吸収塔(23);
e)前記アンモニアバーナー(3)を前記触媒反応床(5)に接続するガス流路;
f)前記触媒反応床(5)を前記冷却セクション(9)に接続するガス流路
を備える、硝酸の合成のためのプラント。
【請求項14】
前記吸収塔(23)の下流に配置されたNOxの触媒還元のための触媒反応床(17);
NOxの還元のための前記触媒反応床(17)に還元剤(15)を供給するためのライン
をさらに備える、請求項13記載のプラント。
【請求項15】
N2O分解のための前記触媒反応床(5)と前記冷却セクション(9)との間に介在された熱交換器セクション(22)であって、前記N2O枯渇ガス流(6)から前記排ガス(13)に間接的に熱を伝達するように構成されている、熱交換器セクション(22)をさらに備える、請求項14記載のプラント。
【請求項16】
N2O分解のための前記触媒反応床(5)およびNOxの還元のための触媒反応床(17)が、単一のセクション(50)に含まれる、請求項14または15に記載のプラント。
【請求項17】
N2Oの分解に適した触媒;
前記触媒用の支持体(105)
を含み、
前記支持体(105)が、モノリスユニット、または周期的規則セル構造体、または連続気泡金属発泡体であり;
前記支持体が、複数のガス透過性チャネル(109)を含み、前記触媒が、随意に結合剤の存在下で前記ガス透過性チャネル(109)の表面に堆積されている
触媒アセンブリ(105)。
【請求項18】
前記ガス透過性チャネル(109)が、断面積が徐々に減少することを特徴とする収束チャネルである、請求項17記載の触媒アセンブリ(105)。
【請求項19】
支持体(109)が、前記ガス透過性チャネルに流れ(15)を注入するように構成された複数のサブチャネル(107)をさらに含む、請求項17または18に記載の触媒アセンブリ(105)。
【請求項20】
モノリスブロックが、100と400の間に含まれる1平方インチ当たりのセル、1mm未満のリムの厚さ、および0.5と0.8の間に含まれる空隙率を有する、請求項17~19のいずれか1項に記載の触媒アセンブリ(105)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硝酸の産生の分野に関する。より詳細には、本発明は、改善されたN2O二次低減処理を含む硝酸合成プロセスを開示する。本発明はまた、当該プロセスによる硝酸合成プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
工業規模での硝酸の産生は、後に当該プロセスに沿って二酸化窒素NO2に酸化される一次一酸化窒素NOを保持する燃焼ガスを生じさせるための白金ロジウム(Pt-Rh)触媒によるアンモニアの触媒酸化を伴う。硝酸は、続いて、吸収塔内でNO2を水と接触させることによって合成される。硝酸産生のための手順の概要およびそのさまざまなプロセスの変形は、非特許文献1に見ることができる。
【0003】
アンモニアの触媒酸化はNOの形成に対して100%選択的ではないが、N2OとN2の一定の割合が燃焼ガス中に常に存在する。残念ながら、形成されるN2Oは、プロセスガスが吸収塔に供給されるときに水に吸収されず、その結果、吸収塔内で硝酸と一緒に産生される排ガスに入る。排ガスはまた、カバーされていないNOx(たとえば、NOおよびNO2)を保持する。
【0004】
NOxおよびN2Oは既知の汚染物質であり、関連する排出は厳しい環境規制の対象となる。典型的に、排ガス中に保持されたN2OおよびNOxの濃度は、大気中に放出されることが可能になる前に100ppmより大幅に低くなければならない。
【0005】
上記の化合物をそのような低濃度まで除去することは経済的に困難である。したがって、硝酸産生プロセスの排ガスからNOxおよびN2Oを除去するための費用効果の高いプロセスの開発には強い動機がある。
【0006】
記号NOxは、いわゆる窒素酸化物、つまり一酸化窒素NO、二酸化窒素NO2、および場合によっては四酸化二窒素N2O4を総称して示す。ガス中のN2O含有量の分解のための段階またはプロセス工程は、deN2Oと呼ばれ、NOx含有量の減少のための段階またはプロセス工程は、deNOxと呼ばれる。
【0007】
硝酸産生プロセスの分野では、N2Oおよび/またはNOxの低減は、硝酸プロセスの段階に応じて一次から四次までの低減と呼ばれる。吸収段階の排ガスおよび排ガス膨張機の上流からのN2OおよびNOxの低減は、三次低減と呼ばれる。
【0008】
N2Oは、硝酸の形成には関与しないため、前のプロセスの工程で除去することもできる。アンモニアの酸化後および吸収段階前の燃焼ガスからのN2Oの除去が二次低減と呼ばれる一方で、アンモニアの酸化中のN2Oの形成を回避することを目的とした措置は一次低減と呼ばれる。膨張後に(すなわち膨張機の下流で)実施されるN2Oおよび/またはNOxの低減は、四次低減として知られている。
【0009】
硝酸プラントにおけるN2OおよびNOxの排出を回避するさまざまな考えられ得る方法が当業者に知られている。それを目的とした競合的な技術としては、N2OおよびNOxの除去のための二次低減処理および三次低減処理の組み合わせは、それを目的とした競争力のある技術とみなされている。
【0010】
典型的には、二次低減処理は、90%と95%の間のN2O除去率を達成するように設計されているが、三次低減処理は、NOxを変換し、場合によっては環境規制に準拠するようにN2Oの除去をさらに推進するために必要であると考えられている。
【0011】
残念ながら、このような低減処理の組み合わせは、二次低減処理においてN2Oの除去を実施するため、そして三次低減処理においてN2OおよびNOxを除去するために多量の触媒が必要とされることから、高価である。さらに、このような多量の触媒を保持するためには、一定の寸法を有する触媒容器が必要とされる。
【0012】
したがって、より費用対効果の高い方法でN2OおよびNOxの除去を実行することができる硝酸合成プロセスおよびプラントを提供することが非常に望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Ullman's Encyclopedia of Industrial Chemistry, Vol. A 17
【発明の概要】
【0014】
本発明は、先行技術の上記の欠点を克服することを目的とする。
【0015】
本発明の第1の態様は、請求項1に記載の硝酸の製造のためのプロセスである。
【0016】
硝酸の製造のためのプロセスは、酸素または空気の存在下でアンモニアを触媒酸化工程にかけて燃焼ガスを産生する工程、燃焼ガスを触媒分解工程にかけてN2O枯渇ガス流を産生する工程、N2O枯渇ガス流を冷却工程にかけて冷却流を産生する工程、上記冷却流を水の存在下で吸収工程にかけて硝酸とNOxを保持する排ガスとを産生する工程、を含む。
【0017】
当該プロセスは、触媒分解工程が450℃と700℃の間に含まれる温度で実行され、触媒分解工程が、触媒のための支持体を含む触媒アセンブリであって、当該支持体にはガス透過性チャネルが設けられ、1つまたは複数の鉄ゼオライトを含有する触媒が、当該支持体上に堆積、コーティング、または共押出されている触媒アセンブリ上で実行されるという事実によって特徴付けられる。
【0018】
鉄ゼオライトという用語は、イオン交換などの適切な既知のプロセスにより鉄が充填されたゼオライトを示す。ゼオライトの鉄充填のためのプロセスは当業者に知られている。本発明によれば、1つまたは複数の鉄ゼオライトは、堆積、コーティング、または共押出によって上記支持体上に提供される。異なる鉄ゼオライトは混合されて支持体上に提供されてもよく、または異なる工程で支持体上に提供されてもよい。
【0019】
本発明のさらなる態様は、請求項1に記載のプロセスを実施するように適合された硝酸の合成のためのプラントである。
【0020】
硝酸の合成のためのプラントは、燃焼ガスを産生するための酸素によるNH3の触媒酸化のためのアンモニアバーナーと、N2O枯渇ガス流を産生するように構成されたアンモニアバーナーの下流に配置されたN2O分解のための触媒反応床と、を備え、ここで、N2O触媒分解工程は、ガス透過性チャネルが設けられた支持体を含む触媒アセンブリであって、1つまたは複数の鉄ゼオライトを含有する触媒が、上記支持体上に堆積、コーティング、または共押出されている触媒アセンブリ上で実施される。
【0021】
プラントはさらに、上記触媒反応床の下流に配置された冷却セクションと、NOxを吸収媒体と反応させて硝酸および排ガスを産生するための、冷却セクションの下流に配置された吸収塔と、アンモニアバーナーを上記触媒反応床に接続するガス流路と、上記触媒反応床を冷却セクションに接続するガス流路と、を備える。
【0022】
本発明のさらなる態様は特許請求の範囲に記載の触媒アセンブリである。
【0023】
触媒アセンブリは、N2Oの分解に適した触媒および触媒に適した支持体を含む。上記支持体は、モノリスユニット、または周期的規則セル構造体、または連続気泡金属発泡体である。
【0024】
上記支持体は、複数のガス透過性チャネルを含み、ここで、触媒は、随意に結合剤の存在下で上記ガス透過性チャネルの表面に堆積される。
【0025】
利点として、N2O触媒分解工程は、従来のN2O触媒分解プロセスよりも高温で操作することができるため、結果として分解速度がより速くなり、必要とされる触媒の量が減少する。
【0026】
さらに利点として、並外れたN2O低減効率(98%を超える)を達成することができる。さらに、プラントの第3の位置にある反応器は、N2Oの変換をさらに推し進める必要はほとんどない。
【0027】
触媒の支持体は、ガス透過性チャネルが設けられたモノリスユニット、または周期的規則セル構造体、または連続気泡金属発泡体であり、ここで、触媒は、チャネルを区切る壁に固定化される。したがって、触媒は、動作条件での失活に対する高い耐性を特徴とし、低い圧力損失を受け、結果としてエネルギーの節約につながる。
【0028】
当該プロセスは、吸収塔の下流で実行されるNOxの触媒還元工程(deNOx)をさらに含み得る。このような触媒還元工程は当該プロセスに追加の利点をもたらす。特に、deNOx工程は、排ガス中に保持されたN2Oを除去するためには必要とされないため、NOx還元は、従来の三次低減プロセスよりも低い温度で実行することができる。
【0029】
さらに、触媒還元を維持するのに必要とされる温度がより低く、触媒アセンブリの熱伝達係数がより高いことで、プラントの運転開始時のNOx排出量の減少を期待することができる。
【0030】
本発明は、改修手順、たとえば硝酸プラントの改修にも適用可能である。硝酸プラントの改修は、大気中に排出される排ガス中のNOxとN2Oの目標濃度を満たすために必要とされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態による硝酸の合成のためのプロセスの簡略化されたブロック図を示す。
【
図2】本発明の別の実施形態による硝酸の合成のためのプロセスの簡略化されたブロック図を示す。
【
図4】本発明の一実施形態によるモノリス支持体の断面図を示す。
【
図5】本発明の一代替実施形態によるモノリス支持体の断面図を示す。
【
図6】本発明の一実施形態による硝酸合成プロセスの熱回収セクションの簡略化されたブロック図を示す。
【
図7】本発明の一代替実施形態による硝酸合成プロセスの熱回収セクションの簡略化されたブロック図を示す。
【
図8】本発明の一代替実施形態による硝酸合成プロセスの熱回収セクションの簡略化されたブロック図を示す。
【
図9】本発明の一代替実施形態による硝酸合成プロセスの熱回収セクションの簡略化されたブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
触媒分解工程のN2O低減効率は、好ましくは98%超、より好ましくは99%超であり、そしてさらに好ましくは、枯渇ガス流中のN2O含有量は15ppm未満である。
【0033】
触媒の支持体は、好ましくは、モノリスブロック、または周期的規則セル構造体、または連続気泡金属発泡体である。
【0034】
好ましい実施形態によれば、硝酸合成プロセスは、排ガスを加熱工程、次いで触媒還元工程にかけて還元剤の存在下でNOxを除去して、精製ガス流を産生する工程をさらに含む。
【0035】
好ましくは、NOxを除去する上記触媒還元工程(deNOx工程とも呼ばれる)は、ガス透過性チャネルが設けられたモノリス支持体を含む触媒アセンブリであって、1つまたは複数のゼオライトを含む触媒が、上記支持体上に堆積または共押出されている触媒アセンブリ上で実行される。好ましくは、NOxを除去する触媒還元工程ではN2Oも除去され、上記触媒還元工程のN2O低減効率は2%以下である。
【0036】
NOxを除去する上記工程で使用されるゼオライトには、鉄充填ゼオライトおよび/または非鉄ゼオライトが含まれ得る。非鉄ゼオライトという用語は、鉄が装填されていないゼオライトを示す。また、非鉄ゼオライトは、充填プロセスの結果としてではないが、いくらかの鉄を含有していてもよい。
【0037】
いくつかの代替実施形態では、NOxを除去する触媒還元工程はペレット触媒上で実施され得る。
【0038】
好ましくは、deNOx工程で使用されるモノリス支持体には、還元剤、たとえばアンモニアをチャネルに注入するように構成されたガス透過性のサブチャネルが設けられる。好ましくは、サブチャネルは、チャネルと比較して小さい断面積を有する。
【0039】
好ましくは、加熱工程後の排ガスの温度は、300℃と650℃の間に含まれる。
【0040】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、NOx触媒還元工程に活用される触媒は、フェリエライト触媒、好ましくは非鉄フェリエライト触媒である。
【0041】
好ましくは、N2O枯渇ガスは、上記冷却工程に供給される前に排ガスを予熱するために使用される。
【0042】
N2O触媒分解工程およびNOx触媒還元工程は、本質的に発熱性である化学反応によって維持される。このような反応は、さまざまな熱レベルで動作し、具体的には、N2O分解は、NOx還元よりも高い温度で動作し、その結果、本発明の代替実施形態によれば、N2O触媒分解工程とNOx触媒変換工程を同時に実行して、2つの工程間の熱統合を達成することができる。
【0043】
したがって、N2O分解およびNOx還元は、N2O触媒分解工程によって生じた熱がNOx触媒還元工程に伝達される単一の装置内で実行される。利点として、NOx還元とN2O分解の両方を実行するために単一のユニットだけが必要とされ、その結果、プラントの固定費の削減が期待される。
【0044】
好ましくは、deNOx工程を出る精製ガス流は、機械エネルギーを回収するために膨張段階にさらされる。膨張後、精製ガス流は、大気中に排出される前にさらなる熱回収工程に付されてもよい。
【0045】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、deNOx工程に活用される還元剤はアンモニアである。還元剤は、混合ユニット内で排ガスと混合され、その後、NOx除去工程にかけることができる。代替的には、還元剤は、混合デバイスが必要とされないように、サブチャネルを介してモノリス支持体のチャネルの内部に直接注入することもできる。
【0046】
好ましくは、硝酸の製造のためのプロセスは、二重圧力硝酸合成プロセスである。
【0047】
本発明によれば、硝酸の合成のためのプラントは、吸収塔の下流に配置されたNOxの触媒還元のための触媒反応床と、NOxの還元のための上記触媒反応床に還元剤を供給するラインと、を備え得る。
【0048】
プラントは、N2O分解のための触媒反応床と冷却セクションとの間に介在された熱交換器セクションをさらに備え得、ここで、熱交換器セクションは、N2O枯渇ガス流から排ガスに間接的に熱を伝達するように構成されている。
【0049】
代替の好ましい実施形態によれば、N2O分解のための触媒反応床およびNOxの還元のための触媒反応床は、単一のセクションに含まれる。
【0050】
本発明によれば、N2Oの触媒分解工程は、鉄ゼオライト触媒上で実行される。触媒は、たとえばウォッシュコーティングプロセスを介して、触媒支持体として機能する支持構造上に堆積されてもよく、または直接触媒構造中に共押出されてもよい。好ましくは、上記構造は、ガス透過性チャネルが設けられたモノリスブロックである。該チャネルは、N2Oの触媒分解がチャネル全体で生じるように、触媒が含浸されている壁によって区切られている。
【0051】
鉄フェリエライト触媒は、NOからNO2への酸化を促進するように設計されており、起こる反応の発熱性により、チャネルを通過する反応ガスの温度が上昇し、利点として、鉄フェリエライト触媒の性能が増大され、deN2O反応器の下流に配置された冷却トレイン内で、増強された熱回収を実行することができる。さらに、NOからNO2への変換率が高いため、続く水におけるNO2の吸収が、硝酸の合成に向けて推し進められる。
【0052】
利点として、N2O触媒分解が従来のN2O分解プロセスよりも高い温度で実行されるため、またガス流にさらされる触媒表面積が充填床式反応器で利用可能な触媒活性面積よりも大きいという事実により、N2Oの分解に到達するために必要とされる触媒床を通過する空間速度値はより高い。
【0053】
N2O触媒分解工程における空間速度は、好ましくは5000h-1より高く、好ましくは10000h-1より高く、より好ましくは15000h-1と40000h-1の間に含まれ、たとえば25000h-1である。
【0054】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、吸収工程を出た排ガス中に保持されたNOxの触媒還元工程は、ゼオライトdeNOx触媒上で実行される。好ましくは、ゼオライト触媒は、フェリエライト触媒であり、より好ましくは支持構造体上に堆積された非鉄充填フェリエライト触媒である。上記支持構造体および触媒は、いわゆる触媒アセンブリを形成する。好ましくは、支持構造体は、ガス透過性チャネルが設けられたモノリスである。
【0055】
好ましい実施形態では、アンモニア酸化工程後および吸収前に実行される触媒分解工程において、目標の一酸化二窒素の除去が達成され得る。
【0056】
N2Oは吸収前に除去されるため、N2Oを排除するためにNOx触媒還元工程は必要とされず、したがって、N2Oの還元に対する活性がより低い場合でも、非鉄充填フェリエライト触媒を使用することができる。非鉄充填フェリエライトは、鉄充填フェリエライト触媒と比較して合成コストが削減されるという点で、deNOx工程にとって好ましいオプションである。さらに、出願人は、非鉄フェリエライト触媒および鉄フェリエライト触媒が同等のdeNOx活性を有することを発見した。
【0057】
さらなる利点は、触媒変換が、NOおよびNO2の除去に最適である温度で実行することができることであり、このような温度は、N2Oを分解するのに必要とされる温度よりも低い。したがって、プラントのエネルギー消費を最適化することができる。さらに、プラントの運転開始時に、動作温度により速く到達することができ、その結果、NOx排出量が大幅に削減される。
【0058】
好ましくは、触媒アセンブリは、従来の触媒充填床式反応器で期待される粒子内空隙率よりも高い、支持体の多孔性を含まない空隙率によって特徴付けられる。より高い空隙率によって、反応性ガスの通過に利用可能な断面積がより大きくなり、ガスと触媒している触媒活性領域がより大きくなり、最終的には触媒構造のチャネル全体にわたる圧力降下がより小さくなる。
【0059】
さらなる利点は、気相から触媒活性部位への物質移動の制限が軽減され、より高い触媒効率が期待されることである。従来の触媒充填床式反応器と比較したまたさらなる利点として、必要とされる触媒量がより少なくなり、よりコンパクトな反応器を利用することができる。
【0060】
好ましくは、ゼオライト触媒は、結合剤、好ましくは無機結合剤と混合され、その後担支持体上に固定化される。利点として、触媒構造体上でのこの固定化により、触媒床は、流動ガスと接触したときに収縮および/または沈降を受けないため、触媒アセンブリ全体にわたる予測可能で均一なガス流分布が可能になる。
【0061】
好ましい無機結合剤には、Al2O3、SiO2、ZrO2、CeO2が含まれ、結合剤の好ましい濃度は、10重量%と30重量%の間に含まれる。
【0062】
さらなる利点は、触媒質量全体にわたって流れるガスの優先流路が回避され、反応ゾーンの外側の反応性ガスの潜在的なバイパスが防止されて、N2Oの完全な分解が、1つの触媒段階のみで達成されることである。
【0063】
さらに、上述の触媒アセンブリは、触媒と一体的な支持体を含み、高い熱伝達係数によって特徴付けられる。高い熱伝達係数によって、プラントの運転開始時に、変換または分解を実行するために必要とされる動作温度により速く到達することが可能になる。したがって、望ましくない副産物の形成が防止される。
【0064】
好ましくは、支持体は、ガス透過性チャネルが設けられたセラミックモノリスブロックである。好ましくは、モノリスブロックは、100と400の間に含まれる1平方インチ当たりのセル(CPSI)、1mm未満のリムの厚さ、および0.5と0.8の間に含まれる空隙率を有する。
【0065】
モノリスブロックは、反応器の寸法にしたがって形作られ得る。たとえば、管状反応器において、モノリスブロックは円筒形であり得る。代替的に、モノリスブロックは、立方体または直方体として製造されてもよい。
【0066】
モノリスブロックはカートリッジの内部に設置され得、続いて、カートリッジが反応器の内部に配置され得るか、または代替的には、モノリスブロックは反応器の内部に直接設置され得る。反応器は、1つのカートリッジのみを備えてもよいし、複数のカートリッジを備えてもよい。カートリッジは、反応器の大量利用を達成するように、触媒反応器の内部に隣り合って配置され得る。代替的には、カートリッジはキャビティによって分離されてもよく、それらの間に熱交換器を介在させてもよい。
【0067】
ガス透過性チャネルは、さまざまな形状の断面積を有し得る。好ましくは、チャネルの断面積は円形または正方形である。円形の断面積は、従来の堆積技術を利用した、より均質な触媒堆積、および物質移動の制限が軽減されるようなチャネル全体にわたるより均一なガス流分布を可能にするため、好ましい。
【0068】
特に好ましい実施形態では、ガス透過性チャネルは、チャネルの長さに沿って徐々に減少するチャネルの断面積を有する、収束ベンチュリ管の形態をとり得る。収束セクションは、触媒活性部位に向かう反応種の物質移動を増加させるべく、チャネルに沿ったガス流の流速の増加を確立するように設計されている。
【0069】
本発明の実施形態によれば、モノリスブロックは複数のサブチャネルを備え得る。サブチャネルは、2つの流れの間の混合を促進するべく、還元剤、たとえばアンモニアを、主ガス流、たとえば排ガスに注入するように構成され得る。サブチャネルは、アンモニア流と排ガスとの間の混合を促進するように、排ガスの流れ方向に対してある角度で配向され得る。
【0070】
サブチャネルは、アンモニアまたは別の還元剤を、後者と並流または向流の流れ方向を有する排ガス流の内部に注入するために、モノリス構造の内部に配置され得る。利点として、NOx変換効率が増加され、アンモニアスリップが最小化される。さらに、触媒反応器の外側に専用の混合ユニットを配置する必要がなく、結果として、反応器の寸法を小さくすることができる。
【0071】
特に好ましい実施形態によれば、複数のチャネルおよびサブチャネルを備えるモノリスブロックは、3D印刷技術または他の付加製造方法にしたがって実現され得る。
【0072】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、モノリスブロックは、セラミックまたは金属基板を用いて製造され得る。金属基板によって、触媒の重量を軽減することが可能になり、アセンブリの熱伝導率が向上する。さらに、金属構造体は、セラミックモノリスと比較して低コストで製造され得る。熱伝導率の向上によって、触媒アセンブリのウォームアップがより速くなり、したがって、運転開始時のN2O排出量の削減が期待される。
【0073】
本発明の代替実施形態によれば、モノリスブロックは、触媒のための支持体としての周期的規則セル構造体(POCS)と置き換えることができる。POCSは、変換効率が向上されるように、高い混合効率、高い乱流、および気相と触媒活性部位との間のより良好な物質移動を提供し得る。POCSは、アセンブリ全体の圧力降下を低減しながら、触媒質量全体にわたるより良好なガス分布を可能にし得る。
【0074】
本発明の代替実施形態によれば、触媒アセンブリは連続気泡金属発泡体で実現され得る。金属発泡体は、ステンレス鋼で作られてもよく、またはより好ましくはアルミニウム合金から作られてもよい。関連する利点は、金属発泡体が温度上昇にさらされると膨張するため、触媒アセンブリと触媒容器の内周との間の隙間を小さくすることができ、反応ゾーンの外側への試薬ガスのスリップを防止することができることである。
【0075】
本発明によれば、N2Oの触媒分解工程は、NH3燃焼工程の下流および吸収の上流に配置された触媒床において実行される。好ましくは、当該プロセスはまた、吸収塔の下流に配置されたdeNOx変換工程を含む。
【0076】
本発明の別の実施形態では、deNOx反応器およびdeN2O反応器は単一の反応器内に配置され、ここで、N2Oの発熱分解は、部分的に窒素および水へのNOxの触媒変換を促進するのに必要とされる熱を提供する。好ましくは、反応器はシェルアンドチューブ熱交換器として構成され、ここで、熱がチューブ側からシェル側に間接的に伝達されるように、N2Oの分解がチューブ内で実行される一方で、deNOx変換はシェル側で実行される。
【0077】
したがって、deN2O触媒がチューブの内側に保持される一方で、deNOx触媒はシェル側に保持される。deN2O触媒は、結合剤と混合され、触媒アセンブリを形成するモノリスブロックのガス透過性チャネルを区切る壁上に堆積され得る。
【0078】
N2O分解とNOx変換との間の熱統合は、プラントの運転開始時に特に利点があり、これは、N2Oの分解がNOxの除去の前に硝酸合成プロセスで発生し、その結果、熱が、NOxの触媒変換に伝達されるために直接利用可能となるためである。
【0079】
本発明の実施形態によれば、還元剤(たとえばアンモニア)は、スタティックミキサー内で排ガス流と均一に混合され、続いてNOx触媒変換工程に供給される。
【0080】
別の実施形態によれば、燃料(アンモニア)と排ガスとの混合は、分配システムを介して、および/またはモノリスブロックのサブチャネル内への注入を介して、反応器内で実行される。
【0081】
本発明の実施形態によれば、N2Oの触媒分解のための反応器は、触媒が支持構造(たとえば、モノリスブロック)に連結されたチューブの内部に導入される管状反応器であり得る。管状反応器は、単一のチューブまたは複数のチューブを備え得る。
【0082】
モノリスブロックはカートリッジ内に予め充填され得、その後、カートリッジは、触媒の充填および交換を容易にするように管状反応器内に配置され得る。
【0083】
触媒ブロックは、反応器の壁近くのガスバイパスを最小化するために、管状反応器の内側またはカートリッジの内側に密閉され得る。触媒ブロックとカートリッジとの間の周囲での密閉は、好ましくは、モノリスブロックとカートリッジの壁との間に位置するキャビティ内に鉄フェリエライト顆粒もしくは粒子または密閉マットを追加することによって行われる。必要に応じて、各々の隣接するカートリッジ間に触媒顆粒または粒子が追加されてもよい。
【0084】
deN2O管状反応器に入る前にアンモニア酸化反応器を出る燃焼ガスの温度を低下させるために、deN2O管状反応器の上流に熱交換器が配置され得る。したがって、deN2O反応器は冷却トレインの一部分であり得る。
【0085】
管状反応器は、アンモニア酸化反応器からdeN2O反応器に向かって燃焼ガスを運ぶラインと比較して、同じ直径を有するか、またはわずかに拡大された直径を有し得る。管状反応器は0.5mを超える長さを有し得る。
【0086】
別の実施形態によれば、deN2O反応器は直径よりも大きい高さを有する容器が設けられた触媒コンバータ(スリムな構成)であってもよく、反応器の高さは0.5mより大きくてもよく、反応器の高さと直径との間のアスペクト比は従来の軸方向の触媒充填床式反応器のアスペクト比よりもはるかに大きい。
【0087】
このような「スリムな」構成は、粒状触媒を保持する触媒床全体の圧力降下が許容不可能になり、ガス流分布も不均一になるため、従来の充填床式反応器では実現不可能である。
【0088】
deN2O用の反応器は、モノリシックブロックのチャネル内で燃焼ガスの均一なガス流分布を提供するために1つまたは複数の分配プレートを有し得る。
【0089】
モノリシックブロックは、60%より大きい、好ましくは90%より大きい反応器の断面積をカバーするように配置され得る。
【0090】
本発明の実施形態によれば、NOxの触媒変換のための反応器は、モノリスブロックを含む内部カートリッジと触媒塊の外側のガスバイパスを回避する適切な手段とを備えた垂直容器である。
【0091】
deNOx反応器システムは、ミキサーおよび/またはガス分配システムを含み得、ガス分配システムは反応器の内側または外側に配置され得る。
【0092】
反応器は、キャビティによって分離された複数のカートリッジを備え得、ここで、カートリッジ間に熱交換器が介在させられる。排ガスの流れ方向は、触媒アセンブリ全体にわたる圧力降下を最小化するように半径方向または好ましくは軸方向の半径方向に従い得る。
【0093】
カートリッジ間に収容された熱交換器は、排ガスの加熱およびNOxの変換をサポートするために必要とされる反応熱を提供するように活用され得る。熱交換器は、反応器の運転開始時に特に利点があり得る。
【0094】
本発明の別の実施形態では、deNOx反応器は、少なくとも1つの触媒床が設けられた充填床式反応器とすることができる。
【0095】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、deN2O反応器とdeNOx反応器は連結されて、単一の複合反応器にされ得る。複合反応器は、チューブ側およびシェル側を含み得る。チューブ側がdeN2O触媒を保持し得る一方で、シェル側はdeNOx触媒を含み得る。チューブ側は、シェル側と流体連通していないが、両側間で間接的に熱を伝達するように配置されることで、N2O分解とNOx変換との間の熱統合を達成する。
【0096】
図面の詳細な説明
図1は、N2Oの除去のための二次低減処理およびNOxの除去のための三次低減処理を含む、硝酸の合成のためのプロセス100を例示する。
【0097】
図1では、deN2O工程が、アンモニア酸化工程3の後ではあるが吸収工程23の前に配置されるため、硝酸産生の分野で使用される命名法にしたがって二次位置に配置されることが理解され得る。逆に、deNOx工程は、吸収工程23の後ではあるが膨張工程の前に配置された三次の位置に配置される。
【0098】
アンモニア流1および空気(酸素)流2が、アンモニア酸化工程3に供給され、ここで、アンモニアは触媒酸化されて、白金触媒上で一酸化窒素(NO)を保持する燃焼ガス4が産生される。酸化反応の副産物として、少量の二窒素酸化物N2Oが形成される。
【0099】
アンモニア酸化工程に続いて、一酸化窒素NOの一部は、空気流中に保持された酸素によって二酸化窒素NO2または四酸化二窒素N2O4にさらに酸化される。燃焼ガス4中のN2Oの典型的な濃度は約1000ppmであり、NO2/NOx間の比率は約0.1である。
【0100】
アンモニア酸化工程3を出る燃焼ガス流4は、その後、deN2O触媒分解に供給され、ここで、燃焼ガス4中に保持されたN2Oは触媒分解されることで、N2O枯渇ガス流6が提供される。
【0101】
N2O触媒分解工程5は、典型的には、触媒分解工程の低減効率が98%または99%より高く、枯渇ガス流中のN2Oの濃度が15ppm未満であるように、セラミックモノリス上に堆積された鉄ゼオライト触媒の存在下において450℃と700℃の間に含まれる温度で実行される。deN2O触媒床における典型的な空間速度は、16000h-1の規模である。
【0102】
N2O枯渇ガス流6は、その後、熱交換器セクション22に供給され、ここで、部分的に冷却された流れ7をもたらすように、吸収工程23を出る排ガス13に熱が間接的に伝達される。部分的に冷却された流れ7は、その後、さらなる冷却工程9に供給されて、吸収工程23に供給される前に冷却流11が産生される。
【0103】
冷却工程9は、複数の熱交換器、たとえば
図1に表される熱交換器8および10を使用して実行することができる。
【0104】
冷却工程9では、一酸化窒素から二酸化窒素へのさらなる変換を行うことができる。必要とみなされる場合、吸収前に圧縮工程を実行することができる。
【0105】
吸収工程23では、冷却流11中に保持されたNO2を水50と接触させることによって硝酸が合成される。吸収工程23ではまた、N2、O2、NOx、および残留量のN2Oを含む排ガスも提供される。典型的に、吸収工程を出る排ガスは、300ppmのNOxおよび20~25ppmのN2Oを含有している。
【0106】
熱交換器セクション22での予熱後の排ガス13は、300℃と650℃の間に含まれる温度まで加熱され、続いて、混合工程70でアンモニア還元剤15と混合させられる。アンモニアおよび排ガスを含むガス混合物16は、その後、触媒NOx変換工程17に供給される。
【0107】
ガス混合物16中に保持されたNOxは、その後、N2、H2O、およびO2に触媒変換され、NOxで枯渇した精製ガス流18が残る。この触媒変換段階17では、残留N2Oのマージン分解のみが起こる。典型的に、この段階のN2O低減効率は、50%以下、好ましくは1%未満である。
【0108】
触媒還元工程は、典型的に、ゼオライト触媒、好ましくは非鉄フェリエライト触媒上で実行され、触媒分解工程の典型的な動作条件は、11バールの圧力、およそ10000h-1の触媒床上の空間速度、および1よりわずかに大きいガス混合物中のNH3/NOx間の比率である。
【0109】
精製ガス流18は、その後、膨張工程19に送られて、硝酸プラントの圧縮機(たとえば、図示されていない空気圧縮機)を駆動させるための機械エネルギーが生成される。排気ガス20は、その後、さらなる熱回収工程(図示せず)にさらされ得るか、または直接大気中に排出され得る。
【0110】
図2には、本発明の別の実施形態による硝酸の合成のためのプロセスの簡略化されたブロック図が示される。
【0111】
図2では、deN2O工程およびdeNOxが単一の熱交換器ユニット50において実行され、アンモニア酸化工程3を出る燃焼ガス4が、その後、熱交換器ユニット50のチューブ側に供給され、一方で、還元剤15(すなわち、アンモニア)と混合された後の排ガス13が、熱交換器ユニットのシェル側に供給されることが理解され得る。利点として、熱がチューブ側からシェル側に間接的に伝達される。
【0112】
図3には、円形断面が設けられた複数のガス透過性チャネル109を備えるモノリス支持体105の正面図が示される。
【0113】
円形断面は、より均質な触媒堆積を可能にするため、長方形断面よりも好ましい。
【0114】
図4には、モノリス支持体105の断面図が示される。
図4では、ガス透過性チャネルに、チャネルの入口から出口に向かって徐々に減少する断面積が提供されていることが理解され得る。
【0115】
このような設計は、活性触媒部位への気相中に保持されたNOx種の物質移動を改善するために活用される。
【0116】
図5には、モノリス支持体の代替実施形態の断面図が示される。
【0117】
モノリスアセンブリ105は、ガス透過性チャネル109および複数のサブチャネル107を備える。サブチャネル107は、排ガス13を運ぶ主チャネルにアンモニア流15を注入するために使用することができる。
図5では、アンモニア流が、予熱された排ガス13の流れ方向に対して垂直に注入されることが理解され得る。
【0118】
利点としては、現行の注入システムを考慮すると、触媒還元反応器の外部に混合ユニットを必要としない。
【0119】
図6は、好ましいレイアウトを開示し、好ましいレイアウトは、
アンモニアが酸化されるアンモニアバーナー(BURNER)と、
アンモニアバーナーの流出物が冷却される廃熱ボイラー(WHB)であって、廃熱ボイラーおよびアンモニアバーナーが同じ装置内に収容されている、廃熱ボイラー(WHB)と、
WHBで生成された蒸気を受ける蒸気ドラム(STEAM DRUM)と、
蒸気ドラムから分離された蒸気が高温流出物4で過熱される蒸気過熱器(SSH)と、
さらなる熱がその高温ガスから回収され、de-NOx段階に収容される前に排ガスを予熱するために使用される、排ガス加熱器(TG HEATER)と、
さらなる熱がその高温ガスから回収され、水が蒸発温度近くに加熱される、エコノマイザー(ECONOMIZER)と、
de-NOx段階(dNOx)と、
排ガスエキスパンダー(EXP)と、を含む。
【0120】
図6は、アンモニア酸化工程後に触媒還元工程N20が実行され、N2O触媒還元工程が、蒸気過熱器SSHが設けられた反応器50において実施されることを例示する。より詳細には、N2O触媒還元工程は、蒸気過熱器のシェル側の入口に位置するモノリス触媒床5において実行される。
【0121】
アンモニア酸化工程3は、触媒床の下に位置する廃熱ボイラーWHBを含むバーナーにおいて実行される。
【0122】
蒸気過熱器SSHは、N2Oの発熱還元によって生成された熱を活用する加圧条件下で飽和蒸気を加熱するように構成されている。
【0123】
追加の熱回収は、吸収塔(図示せず)を出る排ガス13に熱が間接的に伝達される熱交換器54において実行され、水流が沸騰温度以下に加熱されるエコノマイザー51においても実行される。
【0124】
エコノマイザーから出る冷却されたガスは、凝縮および分離工程56に送られる。ガスは露点未満にさらに冷却され、結果として、低濃度の酸を含有する液体流11が吸収塔(図示せず)に送られ、残留ガス流53がNOx圧縮機(図示せず)に送られる。
【0125】
熱が、蒸気過熱器、排ガス加熱器、およびエコノマイザーを介して高温ガス4から回収されることがわかる。
図6では、deN2O段階5が蒸気過熱器SSHと一体化されている。
【0126】
図7は、アンモニアバーナー、廃熱ボイラー、および蒸気過熱器が同じ装置内に一体化されている実施形態を例示する。さらに、排ガスの予熱は、低温予熱器(LT TG HEATER)および高温予熱器(HT TG HEATER)で実施される。deN2O段階5は、高温排ガス予熱器を含みかつ廃熱ボイラーWHBから高温ガスを受ける反応器50に一体化される。
【0127】
上記反応器50を出る高温ガスは、その後、ボイラーに通され、低温排ガス予熱器52に通される。
【0128】
図8は、deN2O段階5がボイラーと一体化されている別の実施形態を例示する。
【0129】
図9は、deN2O段階5が高温排ガス予熱器と一体化されている別の実施形態を例示する。
【国際調査報告】