(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(54)【発明の名称】耐プラズマ性材料のためのイットリア-ジルコニア焼結セラミック
(51)【国際特許分類】
C04B 35/505 20060101AFI20240604BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240604BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
C04B35/505
H01L21/302 101G
H01L21/68 N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573319
(86)(22)【出願日】2022-07-01
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 US2022073375
(87)【国際公開番号】W WO2023283536
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521442051
【氏名又は名称】ヘレーウス コナミック ノース アメリカ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Conamic North America LLC
【住所又は居所原語表記】301 N. Roosevelt Avenue, Chandler, AZ 85226, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー,ルーク
(72)【発明者】
【氏名】ドネロン,マシュー ジョセフ
【テーマコード(参考)】
5F004
5F131
【Fターム(参考)】
5F004AA16
5F004BA03
5F004BA04
5F004BA20
5F004BB13
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB29
5F004DA00
5F004DA01
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5F004DA11
5F004DA15
5F004DA16
5F004DA17
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5F004DA25
5F004DA26
5F131AA02
5F131CA09
5F131CA17
5F131CA33
5F131CA42
5F131EA03
5F131EB01
5F131EB11
5F131EB78
5F131EB79
(57)【要約】
【解決手段】 酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムを含む、セラミック焼結体であって、セラミック焼結体が、75モル%以上95モル%以下の酸化イットリウムと、5モル%以上25モル%以下の酸化ジルコニウムと、を含み、セラミック焼結体が、2体積%未満の量の気孔率を含み、セラミック焼結体の密度が、最大寸法にわたって理論密度に対して2%を超えて変化しない、セラミック焼結体が開示される。セラミック焼結体は、ASTM E112-2010に従って測定して0.4~2μm未満の平均粒径を有する。セラミック焼結体は、プラズマ加工チャンバ内で使用するための耐プラズマ性構成要素に機械加工されてもよい。作製方法も開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムを含む、セラミック焼結体であって、
前記セラミック焼結体が、75モル%以上95モル%以下の酸化イットリウムと、5モル%以上25モル%以下の酸化ジルコニウムと、を含み、前記セラミック焼結体が、2体積%未満の量の気孔率を含み、前記セラミック焼結体の密度が、最大寸法にわたって理論密度に対して2%を超えて変化せず、前記セラミック焼結体が、ASTM E112-2010に従って測定して0.4~2μm未満の平均粒径を有する、セラミック焼結体。
【請求項2】
酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムを含む少なくとも1つの表面を有し、前記少なくとも1つの表面が研磨され、前記少なくとも1つの表面の気孔面積で2%未満の量の気孔率を含む、請求項1に記載のセラミック焼結体。
【請求項3】
研磨表面上で測定される気孔率が、前記セラミック焼結体全体にわたって延びる、請求項2に記載のセラミック焼結体。
【請求項4】
75モル%以上85モル%以下の量の酸化イットリウムと、15モル%以上25モル%以下の量の酸化ジルコニウムと、を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のセラミック焼結体。
【請求項5】
77モル%以上83モル%以下の酸化イットリウムと、17モル%以上23モル%以下の酸化ジルコニウムと、を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のセラミック焼結体。
【請求項6】
78モル%以上82モル%以下の酸化イットリウムと、18モル%以上22モル%以下の酸化ジルコニウムと、を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のセラミック焼結体。
【請求項7】
ASTM B962-17に従って測定して5.01g/cc~5.13g/ccの密度を有する、請求項4~6のいずれか一項に記載のセラミック焼結体。
【請求項8】
ASTM規格C1327に従って測定して8.5以上~14.5GPaの硬度を有する、請求項4~7のいずれか一項に記載のセラミック焼結体。
【請求項9】
ICP-MS法を用いて測定して、100%純度に対して99.99%超(HfO2及びSiO2を除いて)の純度を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のセラミック焼結体。
【請求項10】
100ppm未満の総不純物含有量を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のセラミック焼結体。
【請求項11】
少なくとも1つの結晶相が、蛍石、c型立方晶及びこれらの組み合わせからなる群から選択される立方固溶体を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のセラミック焼結体。
【請求項12】
研磨表面にわたって測定して0.1μm以上5μm以下の気孔径を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載のセラミック焼結体。
【請求項13】
研磨表面にわたって測定して0.1μm以上3μm以下の気孔径を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載のセラミック焼結体。
【請求項14】
ASTM E112-2010に従って測定して0.75μm~6μmの平均粒径で少なくとも1つの表面を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載のセラミック焼結体。
【請求項15】
c型立方固溶体相を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のセラミック焼結体
。
【請求項16】
各々前記焼結体の最長延長部に関して、100mm~622mm、好ましくは100~575mm、好ましくは100~406mm、好ましくは150~622mm、好ましくは150~575mm、好ましくは150~406mm、好ましくは406~622mm、及びより好ましくは406~575mmの最大寸法を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載のセラミック焼結体。
【請求項17】
前記セラミック焼結体が、プラズマ加工チャンバ内の窓、RF窓、蓋、フォーカスリング、シールドリング、ノズル、ガス注入器、シャワーヘッド、ガス分配プレート、チャンバライナ、チャック、静電チャック、パック、及び/又はカバーリングからなる群から選択される、請求項1~16のいずれか一項に記載のセラミック焼結体。
【請求項18】
セラミック焼結体を作製する方法であって、
a.酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムの粉末を組み合わせて、粉末混合物を作製する工程と、
b.熱を加えて前記粉末混合物の温度を焼成温度に上昇させ、前記焼成温度を維持することによって前記粉末混合物を焼成して、焼成粉末混合物を形成する工程と、
c.焼結装置のツールセットによって画定された容積内に前記焼成粉末混合物を入れ、前記容積内に真空条件を作り出す工程と、
d.焼結温度に加熱しながら前記焼成粉末混合物に圧力を加え、焼結を行って、前記セラミック焼結体を形成する工程と、
e.前記セラミック焼結体の温度を下げる工程と、を含む、方法。
【請求項19】
f.任意選択的に、熱を加えてアニール温度に到達するように前記セラミック焼結体の温度を上昇させることによって前記セラミック焼結体をアニールして、アニールしたセラミック焼結体を形成する工程と、
g.前記アニールしたセラミック焼結体の温度を下げる工程と、を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
h.任意選択的に、前記セラミック焼結体を機械加工して、プラズマ加工チャンバ内の窓、RF窓、蓋、フォーカスリング、シールドリング、ノズル、ガス注入器、シャワーヘッド、ガス分配プレート、チャンバライナ、チャック、静電チャック、パック、及び/又はカバーリングなどのセラミック焼結体構成要素を形成する工程を更に含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記焼成粉末混合物がICP-MS法を用いて測定して、100%の純度に対して99.99%以上の純度を有する、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記焼成粉末混合物が、ASTM C1274に従って測定して、2~14m
2/g、好ましくは2~12m
2/g、好ましくは2~10m2/g、好ましくは2~8m2/g、好ましくは2~6m2/g、好ましくは2.5~10m2/g、好ましくは3~10m2/g、好ましくは4~10m2/g、及びより好ましくは2~5m2/gの比表面積(SSA)を有する、請求項18~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記焼成温度が600℃~1200℃である、請求項18~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記圧力が10~60MPaである、請求項18~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記圧力が10~50MPaである、請求項18~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記圧力が10~40MPaである、請求項18~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記圧力が10~30MPaである、請求項18~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記圧力が15~40MPaである、請求項18~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記圧力が15~30MPaである、請求項18~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記圧力が15~25MPaである、請求項18~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記焼結温度が1200℃~1700℃である、請求項18~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記アニール温度が800℃~1500℃である、請求項18~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
請求項18~32のいずれか一項に記載の方法に従って作製された、請求項1~17のいずれか一項に記載のセラミック焼結体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムを含む耐プラズマ性セラミック焼結体及びそれを作製する方法に関し、より詳細には、焼結セラミック体から製造される耐プラズマ性チャンバ構成要素に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体加工は、プラズマエッチング及び堆積プロセスに適した環境を作り出すために、高電界及び高磁界と組み合わせて、ハロゲン系ガス並びに酸素及び他のプロセスガスを使用する必要がある。これらのプラズマエッチング及び堆積環境は、半導体基板上の材料をエッチング及び堆積するための真空チャンバ内で作られる。過酷なプラズマ環境は、処理チャンバ内の構成要素に対して高耐プラズマ性(耐腐食性及び耐浸食性)材料を使用する必要がある。これらのチャンバは、処理されるウェハ上にプラズマを閉じ込めるディスク又は窓、ライナ、ガス注入器、リング、及びシリンダなどの構成要素を含む。これらの構成要素は、プラズマ環境における腐食及び浸食に対する耐性を提供する材料から形成されており、例えば、米国特許第5,798,016号、米国特許第5,911,852号、米国特許第6,123,791号、及び米国特許第6,352,611号に記載されている。しかしながら、プラズマ加工チャンバ内で使用されるこれらの部品は、プラズマによって連続的に攻撃され、その結果、プラズマに曝されるチャンバ部品の表面上で腐食し、浸食し、粗くなる。この腐食及び侵食は、構成要素表面からチャンバ内への粒子の放出を通じてウェハレベルの汚染の一因となり、半導体デバイスの歩留まり損失をもたらす。
【0003】
希土類酸化物、それらの中でも特に酸化イットリウムY2O3及び酸化ジルコニウムZrO2の焼結体は、化学的に不活性であり、高い耐プラズマ(腐食及び侵食)性を示すことが知られている。しかしながら、希土類酸化物、特に酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムの焼結体の使用にはいくつかの欠点がある。
【0004】
酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムは、従来の方法で必要とされる高密度に焼結することが困難であることが知られており、その結果、最終部品又は構成要素には低密度及び著しい気孔率が残る。残留気孔率及び低密度は、プラズマエッチング及び堆積プロセス中に腐食を加速させ、それによって構成要素の耐プラズマ性を劣化させる。更に、酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムを焼結するには、典型的には、長期間にわたって約1800℃以上の高温が必要となる。高温及び長い焼結持続時間は、過度の結晶粒成長をもたらし、酸化イットリウム及び酸化ジルコニウム体の機械的強度に悪影響を及ぼす。イットリア及びジルコニアの高純度粉末は、半導体プラズマ加工チャンバへの適用に必要とされる高密度に焼結するための課題を提起する。特に、高い焼結温度及び耐プラズマ性のイットリア及びジルコニアの材料特性は、必要な高純度を維持しながら高密度に焼結する際の課題を提示する。プラズマチャンバ構成要素として有用な酸化イットリウム及び酸化ジルコニウム体の高密度化を促進するために、焼結温度を低下させ、高密度化を促進するための焼結助剤がしばしば使用される。しかしながら、焼結助剤の添加は、酸化イットリウム及び酸化ジルコニウム材料の耐腐食性及び耐浸食性を効果的に低下させ、半導体デバイスレベルでの不純物汚染の可能性を増加させる。
【0005】
酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムなどの希土類酸化物の膜又はコーティングは、酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムよりも安価で高強度の異なる材料から形成されたベース又は基板の上に、エアロゾル又はプラズマ溶射技術によって堆積されることが知られている。しかしながら、これらの方法は、生成され得る膜厚が制限され、希土類酸化物膜と基板との間の不十分な界面接着強度、及び典型的には5%~50%程度の高レベルの気孔率、レベルの気孔率を示し、プロセスチャンバ内への粒子の脱落をもたらす。
【0006】
イットリア-ジルコニアのような希土類酸化物から作製された大きな寸法の耐腐食性構成要素のための固体セラミック体を製造する試みは、成功に限界がある。破損又は亀裂を生じることなくチャンバ壁の一部として取り扱われ、使用され得る100mm程度以上の直径を有する固体構成要素は、実験室規模を超えて生成することが困難である。これは、酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムの典型的に低い密度及び焼結強度によるものである。これまでのところ、大きなイットリア-ジルコニア構成要素を調製しようとする試みは、結果として、高い気孔率、低い密度、破損、及び耐腐食性用途におけるそれらの使用についての劣った品質をもたらした。現在、半導体エッチング及び堆積用途に使用するための直径100mm~622mm程度の大型イットリア-ジルコニア固体焼結体又は構成要素は市販されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
結果として、プラズマエッチング及び堆積条件下での腐食及び浸食に対する向上した耐性(耐プラズマ性)を提供する、高密度、低気孔率、高純度、及び高い機械的強度を有し、特に大きな寸法(直径100~622mm)の構成要素の製造に適した耐プラズマ性セラミック焼結体が当該技術分野において必要とされている。
【0008】
これら及び他の必要性は、本明細書に開示する様々な実施形態、態様、及び構成によって対処される。
実施形態1.酸化イットリウムと、酸化ジルコニウムと、を含むセラミック焼結体であって、セラミック焼結体が、75モル%以上95モル%以下の酸化イットリウムと、5モル%以上25モル%以下の酸化ジルコニウムと、を含み、セラミック焼結体が、2体積%未満の量の気孔率を含み、セラミック焼結体の密度が、最大寸法にわたって理論密度に対して2%を超えて変化せず、セラミック焼結体が、ASTM E112-2010に従って測定して0.4~2μm未満の平均粒径を有する、セラミック焼結体。
【0009】
実施形態2.酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムを含む少なくとも1つの表面を有し、少なくとも1つの表面が研磨され、少なくとも1つの表面の気孔面積で2%未満の量の気孔率を含む、実施形態1に記載のセラミック焼結体。
【0010】
実施形態3.研磨表面上で測定される気孔率が、セラミック焼結体全体にわたって延びる、実施形態2に記載のセラミック焼結体。
【0011】
実施形態4.75モル%以上85モル%以下の量の酸化イットリウムと、15モル%以上25モル%以下の量の酸化ジルコニウムと、を含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載のセラミック焼結体。
【0012】
実施形態5.77モル%以上83モル%以下の酸化イットリウムと、17モル%以上23モル%以下の酸化ジルコニウムと、を含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載のセラミック焼結体。
【0013】
実施形態6.78モル%以上82モル%以下の酸化イットリウムと、18モル%以上22モル%以下の酸化ジルコニウムと、を含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載のセラミック焼結体。
【0014】
実施形態7.ASTM B962-17に従って測定して5.01g/cc~5.13g/ccの密度を有する、実施形態4~6のいずれか1つに記載のセラミック焼結体。
【0015】
実施形態8.ASTM規格C1327に従って測定して8.5以上~14.5GPaの硬度を有する、実施形態4~7のいずれか1つに記載のセラミック焼結体。
【0016】
実施形態9.ICP-MS法を用いて測定して、100%純度に対して99.99%超(HfO2及びSiO2を除いて)の純度を有する、実施形態1~8のいずれか1つに記載のセラミック焼結体。
【0017】
実施形態10.100ppm未満の総不純物含有量を有する、実施形態1~9のいずれか1つに記載のセラミック焼結体。
【0018】
実施形態11.少なくとも1つの結晶相が、蛍石、c型立方晶及びこれらの組み合わせからなる群から選択される立方固溶体を含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載のセラミック焼結体。
【0019】
実施形態12.研磨表面にわたって測定して0.1μm以上5μm以下の気孔径を有する、実施形態1~11のいずれか1つに記載のセラミック焼結体。
【0020】
実施形態13.研磨表面にわたって測定して0.1μm以上3μm以下の気孔径を有する、実施形態1~12のいずれか1つに記載のセラミック焼結体。
【0021】
実施形態14.ASTM E112-2010に従って測定して0.75~6μmの平均粒径で少なくとも1つの表面を有する、実施形態1~13のいずれか1つに記載のセラミック焼結体。
【0022】
実施形態15.c型立方固溶体相を含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載のセラミック焼結体。
【0023】
実施形態16.各々前記焼結体の最長延長部に関して、100mm~622mm、好ましくは100~575mm、好ましくは100~406mm、好ましくは150~622mm、好ましくは150~575mm、好ましくは150~406mm、好ましくは406~622mm、及びより好ましくは406~575mmの最大寸法を有する、実施形態1~15のいずれか1つに記載のセラミック焼結体。
【0024】
実施形態17.セラミック焼結体が、プラズマ加工チャンバ内の窓、RF窓、蓋、フォーカスリング、シールドリング、ノズル、ガス注入器、シャワーヘッド、ガス分配プレート、チャンバライナ、チャック、静電チャック、パック、及び/又はカバーリングからなる群から選択される、実施形態1~16のいずれか1つに記載のセラミック焼結体。
【0025】
実施形態18.セラミック焼結体を作製する方法であって、酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムの粉末を組み合わせて、粉末混合物を作製する工程と、熱を加えて粉末混合物の温度を焼成温度に上昇させ、焼成温度を維持することによって粉末混合物を焼成して、焼成粉末混合物を形成する工程と、焼結装置のツールセットによって画定された容積内に焼成粉末混合物を入れて、容積内に真空状態を作り出す工程と、焼結温度に加熱しながら焼成粉末混合物に圧力を加え、焼結を行なって、セラミック焼結体を形成する工程と、セラミック焼結体の温度を下げる工程と、を含む、方法。
【0026】
実施形態19.任意選択的に、熱を加えてアニール温度に到達するようにセラミック焼結体の温度を上昇させることによってセラミック焼結体をアニールして、アニールしたセラミック焼結体を形成する工程と、アニールしたセラミック焼結体の温度を下げる工程と、を更に含む、実施形態18に記載の方法。
【0027】
実施形態20.任意選択的に、セラミック焼結体を機械加工して、プラズマ加工チャンバ内の窓、RF窓、蓋、フォーカスリング、シールドリング、ノズル、ガス注入器、シャワーヘッド、ガス分配プレート、チャンバライナ、チャック、静電チャック、パック、及び/又はカバーリングなどのセラミック焼結体構成要素を形成する工程を更に含む、実施形態18又は19に記載の方法。
【0028】
実施形態21.焼成粉末混合物がICP-MS法を用いて測定して、100%純度に対して99.99%以上の純度を有する、実施形態18~20のいずれか1つに記載の方法。
【0029】
実施形態22.焼成粉末混合物が、ASTM C1274に従って測定して、2~14m2/g、好ましくは2~12m2/g、好ましくは2~10m2/g、好ましくは2~8m2/g、好ましくは2~6m2/g、好ましくは2.5~10m2/g、好ましくは3~10m2/g、好ましくは4~10m2/g、及びより好ましくは2~5m2/gの比表面積(SSA)を有する、実施形態18~21のいずれか1つに記載の方法。
【0030】
実施形態23.焼成温度が600℃~1200℃である、実施形態18~22のいずれか1つに記載の方法。
【0031】
実施形態24.圧力が10~60MPaである、実施形態18~23のいずれか1つに記載の方法。
【0032】
実施形態25.圧力が10~50MPaである、実施形態18~24のいずれか1つに記載の方法。
【0033】
実施形態26.圧力が10~40MPaである、実施形態18~25のいずれか1つに記載の方法。
【0034】
実施形態27.圧力が10~30MPaである、実施形態18~26のいずれか1つに記載の方法。
【0035】
実施形態28.圧力が15~40MPaである、実施形態18~27のいずれか1つに記載の方法。
【0036】
実施形態29.圧力が15~30MPaである、実施形態18~28のいずれか1つに記載の方法。
【0037】
実施形態30.圧力が15~25MPaである、実施形態18~29のいずれか1つに記載の方法。
【0038】
実施形態31.焼結温度が1200℃~1700℃である、実施形態18~30のいずれか1つに記載の方法。
【0039】
実施形態32.アニール温度が800℃~1500℃である、実施形態18~31のいずれか一つに記載の方法。
【0040】
実施形態33.実施形態18~32のいずれか1つに記載の方法に従って作製された、実施形態1~17のいずれか1つに記載のセラミック焼結体。
【0041】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は両方とも、本開示の例示であり、限定ではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
本開示は、添付の図面に関連して読まれるとき、以下の詳細な説明から最もよく理解される。一般的な慣行に従って、図面の様々な特徴は縮尺通りではないことを強調しておく。逆に、様々な特徴の寸法は、明確にするために任意に拡大又は縮小されている。図面には、以下の図が含まれる。
【
図1】
図1は、本開示によるイットリア及びジルコニア相図である。
【
図2a】
図2aは、本明細書に開示される例示的な焼成粉末混合物についてのX線回折結果を示す。
【
図2b】
図2bは、本明細書に開示される例示的な焼成粉末混合物についてのX線回折結果を示す。
【
図3】
図3は、本明細書に開示されるイットリア-ジルコニアセラミック焼結体の例示的なX線回折結果を示す。
【
図4】
図4は、本明細書に開示されるイットリア-ジルコニアセラミック焼結体の例示的なX線回折結果を示す。
【
図5】
図5は、本明細書に開示されるイットリア-ジルコニアセラミック焼結体のアニールによるX線回折結果の変化を示す。
【
図6】
図6は、本明細書に開示される異なるアニール条件下でのイットリア-ジルコニアセラミック焼結体の5000倍での例示的な微細構造を示す。
【
図7】
図7は、半導体加工チャンバの第1の例を示す。
【
図8】
図8は、半導体加工チャンバの第2の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
ここで特定の実施形態について詳細に言及する。特定の実施形態の例を添付の図に示す。本開示をこれらの特定の実装形態と併せて説明するが、本開示はそのような特定の実施形態に限定されるものではないことが理解される。逆に、本開示は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲内に含まれ得る代替、改変、及び等価物を包含することを意図している。以下の記述では、開示する実施形態を完全に理解できるように、多くの具体的な詳細を記載する。本開示はこれらの具体的な詳細のうちの一部又は全てを使用せずに実施してもよい。
【0044】
本明細書で使用される場合、「ジルコニア」という用語は、ZrO2を含む酸化ジルコニウムであると理解される。本明細書で使用される場合、「アルミナ」という用語は、Al2O3を含む酸化アルミニウムであると理解される。本明細書で使用される場合、「イットリア」という用語は、Y2O3を含む酸化イットリウムであると理解される。
【0045】
本明細書で使用される場合、「半導体ウェハ」、「ウェハ」、「基板」、及び「ウェハ基板」という用語は互換的に使用される。半導体デバイス産業で使用されるウェハ又は基板は、典型的には、当業界で知られているように、200mm、又は300mm、450mm以上の直径を有する。
【0046】
本明細書で使用される場合、「セラミック焼結体」という用語は、「焼結物(sinter)」、「(本)体(body)」又は「焼結体(sintered body)」と同義であり、単一の高密度の焼結セラミック体を生成する圧力及び熱を加えることによって粉末を圧縮することから形成される単一の一体型焼結セラミック物品を指す。単一の焼結セラミック体は、プラズマ加工用途におけるチャンバ構成要素として有用な単一の焼結セラミック構成要素に機械加工することができる。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「ナノ粉末」は、20m2/g以上の比表面積(SSA)を有する粉末を包含することが意図される。
【0048】
本明細書で使用される場合、「純度」という用語は、a)粉末混合物が形成され得る出発材料、b)処理後の粉末混合物、及びc)本明細書に開示される焼結セラミック体中に様々な汚染物質及び/又は不純物が存在しないことを指す。100%に近い、より高い純度は、汚染物質、ドーパント又は不純物を本質的に有しておらず、Y、Zr及びOの意図された材料組成のみを含む材料を表す。ドーパントが、典型的には、焼結セラミック体において、特定の電気的、機械的、光学的又は他の特性(例えば、粒径改変など)を達成するために、出発粉末に又は粉末混合物に意図的に添加される化合物であるという点で、不純物はドーパントとは異なる。
【0049】
本明細書で使用される場合、「不純物」という用語は、a)粉末混合物が形成され得る出発材料、b)処理後の粉末混合物及び/又は焼成粉末混合物、並びにc)Y、Zr及びOを含む出発材料自体以外の不純物を含む焼結セラミック体中に存在する化合物/汚染物質を指す。不純物は、処理/組み合わせ後又は焼結中に、出発粉末材料、粉末混合物及び/又は焼成粉末混合物中に存在してもよく、ppmとして報告され、より低いppmレベルは、より低い不純物含有量に対応する。本明細書で報告される不純物は、SiO2の形態のSi又はHfO2の形態のHfを含まない。出発酸化ジルコニウム材料中に存在するイットリアは安定剤として存在し、したがって不純物とは見なされない。
【0050】
純度から不純物への変換は、当業者に知られているように、10,000pmに等しい1重量%の変換を使用して行うことができる。本明細書においてppmで報告される場合、全ての値は、本明細書に開示される粉末の実施形態及び/又は焼結セラミック体などの測定される材料の総質量に対するものである。
【0051】
本明細書で使用される場合、「焼結助剤」という用語は、焼結プロセス中に高密度化を向上させ、それによって気孔率を低減するカルシア、シリカ又はマグネシアなどの添加剤を指す。
【0052】
本明細書で使用される場合、「セラミック焼結体構成要素」という用語は、半導体製造用プラズマ加工チャンバにおいて使用するために必要な特定の形態又は形状を作り出すための機械加工工程後のセラミック焼結体を指す。
【0053】
本明細書で使用される場合、「粉末混合物」という用語は、焼結プロセスの前に、ボールミル処理、ジェットミル処理、タンブル混合、乾燥、焼成、篩い分け、精製、及びこれらの工程の繰り返し又は組み合わせの当業者に公知の方法によって混合された少なくとも1つの粉末を意味し、焼結後、粉末混合物は、開示されるセラミック焼結体及び/又はセラミック焼結体構成要素に形成される。
【0054】
本明細書で使用される場合、「ツールセット」という用語は、少なくともダイ及び2つのパンチ、並びに任意選択的に追加のスペーサ要素を含み得る。
【0055】
「相」又は「結晶相」という用語は同義であり、本明細書で使用される場合、化学量論相若しくは化合物相又は固溶体相を含む、材料の結晶格子を形成する規則構造を意味すると理解される。本明細書で使用される「固溶体」は、同じ結晶格子構造を共有する異なる元素の混合物として定義される。格子内の混合物は、一方の出発結晶の原子が他方の出発結晶の原子と置き換わる置換型であってもよいし、原子が格子内の通常空いている位置を占める侵入型であってもよい。
【0056】
「焼成」という用語は、水分及び/又は不純物を除去し、結晶化度を増加させ、場合によっては粉末及び/又は粉末混合物表面積を改変するために、焼結温度未満の温度で空気中で、粉末に対して行なうことができる加熱処理工程を意味すると理解される。
【0057】
セラミックの熱処理に適用される場合、「アニール」という用語は、本明細書では、開示されたセラミック焼結体又はセラミック焼結体構成要素を一定の温度にして、徐々に放冷して応力を緩和し、及び/又は化学量論を標準化する熱処理を意味すると理解される。典型的には、空気又は酸素含有環境を使用してもよい。
【0058】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、数と関連して使用されるとき、プラス又はマイナス10%の分散を許容する。本明細書で使用される「実質的に」という用語は、近似を示す記述用語であり、「かなりの程度」又は「指定されたものの全体ではなく大部分」を意味し、指定されたパラメータに対する厳密な数値境界を回避することを意図している。
【0059】
以下の詳細な説明は、半導体ウェハ基板の作製の一部として必要なエッチング又は堆積チャンバなどの装置内で実施される実施形態を想定している。しかしながら、本開示はそれに限定されない。ワークピースは、様々な形状、サイズ、及び材料であってもよい。半導体ウェハ加工に加えて、本明細書に開示する実施形態を利用し得る他のワークピースは、微細特徴サイズの無機回路基板、磁気記録媒体、磁気記録センサ、ミラー、光学素子、マイクロメカニカルデバイス等の種々の物品を含む。
【0060】
半導体デバイスの処理中、耐腐食性部品又はチャンバ構成要素は、プラズマ加工チャンバ内で使用され、リアクタ-チャンバ内への粒子の放出を引き起こし得る過酷な腐食環境に曝され、その結果、ウェハレベルの汚染による歩留まり損失をもたらす。本明細書に開示されるセラミック焼結体及び関連するセラミック焼結体構成要素は、以下に記載される特定の材料特性及び特徴によって、半導体加工リアクタチャンバ内で改善された耐プラズマ性を提供する。
【0061】
本明細書に開示される実施形態は、75モル%以上95モル%以下の酸化イットリウムと、5モル%以上25モル%以下の酸化ジルコニウムと、を含むセラミック焼結体であって、2体積%未満の量の気孔率を含み、ASTM E112-2010に従って測定して0.5~8μmの粒径を有する、セラミック焼結体を提供する。セラミック焼結体は、酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムを含む少なくとも1つの結晶相を含む少なくとも1つの表面を有し、表面は、気孔面積の2%未満の気孔率及び0.5~8μmの粒径を有する。研磨表面上で測定される気孔率は、セラミック焼結体のバルク全体にわたって延びてもよく、したがって、研磨表面上の気孔率は、体積気孔率又はバルク気孔率を表す。本明細書に開示されるセラミック焼結体は、本明細書で定義される理論密度に対して98%以上の密度を有してもよい。セラミック焼結体は、取り扱い性、流動性及び化学反応性を提供する粒径分布及び表面積を有するイットリア及びジルコニアの高純度粉末から作製されてもよい。
【0062】
図1は、酸化イットリウム/酸化ジルコニウム相図を示し、酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムの相、並びにそれらを達成するためのモル組み合わせを示す。図に示されるような結晶相の形成は、出発粉末混合物のモル比、混合の程度、及び出発粉末の純度などのいくつかのパラメータによって達成され得る。開示されるような電流及び圧力支援プロセスのランプ速度、温度及び時間、並びにアニール温度及び時間などの焼結条件も、結晶相形成に影響を及ぼし得る。イットリア-ジルコニアのこれらの結晶相を達成するための指針は、
図1に示されているAndrievskaya et.al(2014)(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)のイットリアジルコニア相図によって証明されるように、当業者に知られている。
【0063】
実施形態において、c型立方晶構造(
図1の相図に従ってCとして示される)、蛍石構造(
図1の相図に従ってFとして示される)、及びこれらの組み合わせの固溶体を含むイットリア-ジルコニアセラミック焼結体が、
図1に画定される正方形領域内に示されるように、本明細書に開示される。この組成範囲(横軸)及び焼結温度領域(縦軸)内で、セラミック焼結体の実施形態を形成することができる。他の実施形態では(
図1の相図による組成に依存する)、セラミック焼結体は、c型(イットリア)立方晶構造の固溶体を含む。c型イットリア/希土類酸化物結晶構造は、「Phase Equilibria in Systems Involving the Rare-Earth Oxides.Part 1.Polymorphism of the Oxides of the Trivalent Rare-Earth Ions」,by R.S.Roth et.al.,1960(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に従って詳細に開示されている。
【0064】
本明細書に開示されるセラミック焼結構成要素は、いくつかの理由により、イットリア-ジルコニアセラミック焼結体の使用から利益を得ることができる。75モル%以上95モル%以下のY2O3及び5モル%以上25モル%以下のZrO2の組成範囲内のイットリアジルコニアセラミック焼結体は、他のセラミック材料と比較して、高密度(及びそれに対応して低い気孔率)、ハロゲン系耐プラズマ性、誘電及び熱特性、並びに硬度の好ましい組み合わせを提供し得る。イットリアジルコニアセラミック焼結体及びそれから製造される構成要素は、例えば、75モル%以上95モル%以下のY2O3及び5モル%以上25モル%以下のZrO2、好ましくは75モル%以上93モル%以下のY2O3及び7モル%以上25モル%以下のZrO2、好ましくは75モル%以上90モル%以下のY2O3及び10モル%以上25モル%以下のZrO2、好ましくは75モル%以上87モル%以下のY2O3及び13モル%以上25モル%以下のZrO2、好ましくは75モル%以上85モル%以下のY2O3及び15モル%以上25モル%以下のZrO2、好ましくは75モル%以上83モル%以下のY2O3及び17モル%以上25モル%以下のZrO2、好ましくは77モル%以上83モル%以下のY2O3及び17モル%以上23モル%以下のZrO2、好ましくは78モル%以上82モル%以下のY2O3及び18モル%以上22モル%以下のZrO2、及びより好ましくは約80モル%のY2O3~約20モル%のZrO2の範囲の組成から形成されてもよい。
【0065】
いくつかの実施形態では、c型立方晶相が好ましい場合があり、
図1の相図に従って、約80モル%以上95モル%以下のイットリア及び5モル%以上20モル%以下のジルコニア、好ましくは81モル%以上95モル%以下のY
2O
3及び5モル%以上19モル%以下のZrO
2、好ましくは82モル%以上95モル%以下のY
2O
3及び5モル%以上18モル%以下のZrO
2、好ましくは83モル%以上95モル%以下のY
2O
3及び5モル%以上17モル%以下のZrO
2、好ましくは84モル%以上95モル%以下のY
2O
3及び5モル%以上16モル%以下のZrO
2、好ましくは86モル%以上95モル%以下のY
2O
3及び5モル%以上14モル%以下のZrO
2、好ましくは88モル%以上95モル%以下のY
2O
3及び5モル%以上12モル%以下のZrO
2、好ましくは90モル%以上95モル%以下のY
2O
3及び5モル%以上10モル%以下のZrO
2、好ましくは92モル%以上95モル%以下のY
2O
3及び5モル%以上8モル%以下のZrO
2を含む組成から形成されてもよい。
【0066】
本明細書に開示される方法に従って調製されたセラミック焼結体及び構成要素の半導体加工チャンバにおける使用は、ハロゲン系プロセスガスからの腐食及び浸食に対する向上した耐性を提供する。この強化された耐プラズマ性は、少なくとも部分的に、焼結体の高い密度及びそれに対応する低い気孔率に起因する。開示されるイットリア-ジルコニアセラミック焼結体(及びそれから製造される構成要素)の実施形態は、ASTM B962-17に従って実施されるアルキメデス密度測定によると、5.01~5.15g/cc、好ましくは5.01~5.13g/cc、好ましくは5.03~5.13g/cc、好ましくは5.06~5.13g/cc、好ましくは5.08~5.15g/cc、好ましくは5.08~5.13g/cc、好ましくは5.10~5.13g/cc、好ましくは5.12~5.13g/cc、好ましくは5.01~5.11g/cc、好ましくは5.01~5.10g/cc、好ましくは5.06~5.15g/cc、好ましくは5.06~5.12g/cc、及びより好ましくは5.08~5.13g/ccの密度を有してもよい。表1は、本明細書に開示されるイットリアジルコニアセラミック焼結体の調製条件(温度、時間、圧力、及びアニール)、密度、及び体積気孔率を列挙する。
【0067】
当業者に知られている体積混合則は、開示されているようなセラミック焼結体などの固溶体には適用できない場合があり、したがって、本明細書に開示されているようなセラミック焼結体の理論密度の近似に使用することができる。体積混合則と、「an exact density formula for substitutional solid solution alloys」,J.Mater.Sci.Letters 13(1994),by Chen and Bandeira(イットリア及びジルコニアの酸化物固溶体の計算に適合された)に開示される置換固溶体についての式4に基づく計算との組み合わせを使用して、本明細書で使用される理論密度を推定した。95モル%イットリア及び5モル%ジルコニア、並びに75モル%イットリア及び25モル%ジルコニアの組成範囲にわたって、それぞれ5.09g/cc及び5.15g/ccの近似理論密度値が計算された。ASTM B962-17に従ってアルキメデス法を用いた密度測定を、表1に開示される例示的な80モル%イットリア20モル%ジルコニアセラミック焼結体に対して行った。本明細書で使用される市販グレードの酸化ジルコニウムは、5重量%以下のHfO2を有することが知られており、これは密度をわずかに増加させ得る。5回の測定の平均を取り、5.13g/ccの最高値が測定された。この値は、計算値とよく一致し、したがって、80モル%イットリア20モル%ジルコニアセラミック焼結体の理論密度と見なされる。表1の試料8は、90モル%のイットリア及び10モル%のジルコニアを含み、5.08g/ccの密度を有するイットリアジルコニアセラミック焼結体に対応し、これは、その組成の理論密度と見なされる。N/Aは、試料がアニールに供されなかったことを示す。
【0068】
【0069】
所与の材料の相対密度(RD)は、以下の式に示されるように、試料(ρ試料)の測定された密度の同じ材料の報告された理論密度(ρ理論)に対する比として定義される。
【0070】
【0071】
式中、ρ試料はASTM B962-17に従って測定された(アルキメデス)密度であり、ρ理論は本明細書に開示される測定された理論密度であり、RDは相対分率密度である。高密度のイットリア-ジルコニアセラミック焼結体は、それに対応して低い気孔率を有する。気孔率(本明細書では体積気孔率と同義的に使用される)は、十分に高密度の部分の密度(すなわち、100%)を相対密度(上記で計算される)から減算することによって計算され得る。この計算を使用して、0.05%以上2%以下、好ましくは0.05%以上1.5%以下、好ましくは0.05%以上1%以下、好ましくは0.05%以上0.5%以下、好ましくは0.1%以上1.5%以下、好ましくは0.1%以上1%以下、好ましくは0.1%以上0.5%以下、より好ましくは0.05%以上0.2%以下の総体積のパーセントによる気孔率(又は場合によっては体積気孔率)が、本明細書に開示されるイットリア-ジルコニアセラミック焼結体について測定されたアルキメデス密度値から計算された。
【0072】
本明細書に開示されるセラミック焼結体及びそれから製造される関連構成要素は、ASTM B962-17に従って実施される密度測定から計算される理論密度の98~100%、好ましくは98.5~100%、好ましくは99~100%、好ましくは99.5~100%、より好ましくは99.8~100%の理論密度に対する密度(又は相対密度、RD)を有し得る。セラミック焼結体の最大寸法(ディスク状試料の場合、最大寸法は直径である)にわたる(理論密度に対する)密度の変動は、2%以下、好ましくは1.5%以下、好ましくは1%以下、及びより好ましくは0.8%以下であり得る。
【0073】
本明細書に開示される高密度は、イットリア-ジルコニア焼結セラミック体の高い硬度値に寄与する。ASTM規格C1327に従って、0.1kgfロードセルを用いて硬度測定を実施した。以下の表2は、それぞれが約80モル%のイットリア及び約20モル%のジルコニアを含む試料1、2及び11についての合計約40回の測定にわたる硬度結果を列挙する。試料11は、試料7と同様の圧力、温度及び時間の条件下で調製した。
【0074】
【0075】
イットリア-ジルコニア焼結セラミック体の実施形態は、8.5~14.5GPa以上の硬度を有してもよい。他の実施形態は、9.4GPa以上12.4GPa以下の平均硬度、好ましくは9.8GPa以上11.7GPa以下、及び好ましくは10.2GPa以上11GPa以下の平均硬度を有してもよい。
【0076】
イットリア-ジルコニア焼結セラミック体は、本明細書に開示されるプロセスに従って作製された一体型本体を含んでもよく、したがって、表面上及び本体全体にわたって均一に分布した気孔率を含んでもよい。言い換えれば、表面上で測定された気孔率は、バルク焼結セラミック体の体積内の気孔率を表し、したがって、「気孔率」及び「体積気孔率」という用語は、本明細書で使用されるのと同じ意味を有すると解釈される。
【0077】
エッチング又は堆積プロセスに関連する半導体加工リアクタ-は、半導体加工に必要な反応性プラズマによる化学的腐食に対して高い耐性を有する材料から製造されたチャンバ構成要素を必要とする。これらのプラズマ又はプロセスガスは、O2、F、Cl2、HBr、BCl3、CCl4、N2、NF3、NO、N2O、C2H4、CF4、SF6、C4F8、CHF3、CH2F2などの様々なハロゲン、酸素及び窒素ベースの化学物質で構成されていてもよい。本明細書に開示する耐食性材料から形成されたセラミック焼結体の使用は、使用中の低減された化学腐食を提供する。更に、非常に高い純度を有するセラミック焼結体などのチャンバ構成要素材料を提供することにより、腐食の開始部位として働く可能性がある不純物が少ない均一な耐腐食性体が提供される。更に、直径の小さい最小の気孔を有する非常に高密度の材料から製造された構成要素は、エッチング及び堆積プロセス中の腐食及び浸食に対するより大きな耐性を提供し得る。その結果、好ましいチャンバ構成要素は、プラズマエッチング及び堆積中に高い耐浸食性及び耐腐食性を有する材料から製造されたものであってもよい。本明細書で使用される場合、「耐プラズマ性」という用語は、ハロゲン系プロセスガスプラズマへの曝露中に腐食又は浸食されない材料を指す。この耐プラズマ性により、半導体加工中における構成要素表面からリアクタチャンバ内への粒子の放出を防止する。リアクタ-チャンバ内へのそのような粒子の放出は、半導体プロセスドリフト及び半導体デバイスレベル歩留まり損失を導入することによってウェハ汚染の一因となる。
【0078】
チャンバ構成要素は、構成要素の設置、除去、洗浄、及びプロセスチャンバ内での使用中に必要とされる取り扱い性のために、十分な曲げ強度又は機械的強度を有していなければならない。高い加熱及び冷却速度並びに短い焼結時間を伴う電流及び圧力支援焼結技術の使用は、セラミック焼結体及び関連構成要素における高密度及び微細な粒径を提供し、増加した機械的強度を提供する。高い機械的強度は、破損、亀裂又は欠けを生じることなく、セラミック焼結体に微細な形状の複雑な特徴を機械加工することを可能にする。曲げ強度又は剛性は、最新のプロセスツールで使用される大きな構成要素サイズで特に重要になる。200~622mm程度の直径のチャンバ窓などのいくつかの構成要素用途では、真空条件下での使用中に窓に著しい応力がかかる。この要件は、高い強度及び剛性(ヤング率とも呼ばれる)を有する耐腐食性材料の使用を必要とする。本明細書に開示される実施形態によるセラミック焼結体は、これらの強度及び取り扱い性要件を満たす。
【0079】
半導体デバイス形状が小さくなり縮小し続けるにつれて、プロセス歩留まり損失を最小限に抑えるために温度制御がますます重要になってくる。加工チャンバ内のこの温度変動は、ナノメートルスケールのフィーチャの限界寸法の制御に影響を及ぼし、デバイスの歩留まりに悪影響を及ぼす。例えば1×10-4以下の誘電損失(誘電損失は、本明細書では「損失係数」及び「損失正接」という用語と同義に使用される)などの低い誘電損失を有するチャンバ構成要素のための材料選択は、熱の生成を防止するために望ましい場合があり、チャンバ内の温度不均一性をもたらす。誘電損失は、他の要因の中でも、結晶粒径、純度、並びに材料中のドーパント及び/又は焼結助剤の使用によって影響を受ける可能性がある。拡張された焼結条件と組み合わせた焼結助剤及び/又はドーパントの使用は、より大きな結晶粒径、より低い純度の材料をもたらすことがあり、これにより、産業において一般的な高周波チャンバプロセスへの適用に必要な低損失正接が得られないことがあり、粒子生成及び機械的強度の低下をもたらし、大きな構成要素サイズの製造を妨げることがある。したがって、ドーパント及び/又は焼結助剤を含まないか、又は実質的に含まないセラミック焼結体が本明細書に開示される。特に、プラズマ加工チャンバで使用されるような1MHz~20GHz(及びそれ以上のRF範囲)の高周波数で、プラズマ発生効率を改善し、過熱を防止するために、好ましくは、半導体チャンバ構成要素は、可能な限り低い誘電損失を有する材料である。より高い誘電損失を有するこれらの構成要素材料におけるマイクロ波エネルギーの吸収によって発生する熱は、不均一な加熱を引き起こし、構成要素に対する熱応力を増加させる。以下の表3は、本明細書に開示される方法に従って作製された約80モル%のイットリア及び約20モル%のジルコニアを含む試料9及び10からの、ASTM D-150に従って1MHzにおいて周囲温度で測定された誘電損失及び誘電率を列挙する。実施された測定の範囲内で、アニールされたイットリアジルコニアセラミック焼結体及びアニールされなかったイットリアジルコニアセラミック焼結体について、同じ誘電性能が測定された。
【0080】
【0081】
イットリア及びジルコニアの組成物を含むセラミック焼結体の実施形態は、気孔(porosity)を含む総面積の2%未満、好ましくは1%未満、好ましくは0.05%~2%、好ましくは0.05%~1%、より好ましくは0.05%~0.5%の低レベルの気孔率を有してもよく、これは半導体プラズマエッチング及び堆積用途において改善された性能を提供し得る。この結果、構成要素の寿命が延び、プロセス安定性が向上し、クリーニング及びメンテナンスのためのチャンバのダウンタイムが減少し得る。気孔率は、以下の方法に従って研磨された研磨表面の画像分析によって測定される(Strasbaugh研磨装置、Struers,Inc.からの研磨供給品):(i)40μmのアルミナ:必要に応じて表面を平坦化するため;(ii)12umのアルミナ、固定研磨パッド:2分;(iii)9pmのダイヤモンド、ポリウレタンパッド:8分;(iv)6μmのダイヤモンド、起毛布:3分;及び(v)1μmのダイヤモンド、起毛布:3分。画像は、Nanoscience Instruments Phenom XL走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて5000倍の倍率で撮影した。SEM画像をImageJ画像処理ソフトウェアにインポートし、気孔径及び気孔面積を測定及び定量するために使用した。最小(2体積%未満)の気孔率を有する、ほぼ高密度又は十分に高密度のイットリア-ジルコニアセラミック焼結体が、本明細書に開示される。この最小の気孔率は、非常に高密度のプラズマ対向面を提供し、それによりエッチング及び堆積プロセス中にセラミック焼結体の表面における汚染物質の捕捉を防止することによって、粒子生成の低減を可能にし得る。本明細書に開示される耐腐食性セラミック焼結体は、理論密度に対して98%超、好ましくは99%超、好ましくは99.5%超、より好ましくは約99.8%の非常に高い密度と、それに対応して、セラミック焼結体の表面上及び体積全体にわたって2%未満、好ましくは1%未満、好ましくは0.5%未満、好ましくは0.2%未満の低い気孔率と、を有してもよく、気孔率を含む制御された表面積によって改善された耐エッチング性を提供する。本明細書に開示されるセラミック焼結体は、表面上及び全体の両方に結晶相、純度、及び気孔率/気孔を含む一体的型の均質体である。したがって、表面上で測定される結晶相、気孔径、気孔率%、及び気孔面積などの特徴は、焼結セラミック体のバルク内、したがって体積内の特徴を表す。「均質」という用語は、材料又はシステムが全体として実質的に同じ特性を有し、不規則性がなく均一であることを意味する。したがって、「均質体」とは、気孔率%、気孔径、気孔面積及び結晶相などの特徴の分布が空間的に均一であり、著しい勾配を有しないこと、すなわち、バルク内又は表面上の位置にかかわらず、実質的に均一な焼結セラミック体が存在することを意味する。
【0082】
イットリア及びジルコニアを含むセラミック焼結体は、知られている最も耐エッチング性の高い材料のうちの1つであり得、出発材料として非常に高純度及び高密度のセラミック焼結体を製造するための高純度出発材料の使用は、セラミック焼結構成要素に固有の耐プラズマ性を提供する。存在する不純物又は汚染物質は、プラズマ加工中に腐食及び/又は浸食の開始部位として作用する場合がある。この高純度は、ハロゲン系ガス種によるセラミック焼結体の表面の粗面化を防止する場合があり、これは、そうでなければ、純度のより低い粉末から作製された構成要素を化学的に攻撃し、表面を粗面化し、エッチングする場合がある。
【0083】
前述の理由から、酸化イットリウム及び酸化ジルコニウム出発材料中の100%の材料純度に対して、99.99%超、好ましくは99.995%超、好ましくは99.999%超の総純度が好ましい。
【0084】
酸化ジルコニウム出発材料の純度は、エッチング及び堆積チャンバ条件での使用中に耐腐食性及び耐侵食性を提供するために、99.9%より高く、好ましくは99.95%より高く、好ましくは99.99%より高くてもよい。市販グレードの酸化ジルコニウムは、5重量%以下のHfO2を有することが知られている。ジルコニア及びハフニア(HfO2)は、本明細書に開示されるイットリアジルコニアセラミック焼結体の形成中に同様に反応する可能性があり、したがって、セラミック焼結体中のHfO2の存在は、プラズマ加工用途におけるチャンバ構成要素としての焼結体の使用に有害であるとは見なされない。したがって、HfO2は、本明細書に開示されるような不純物とは見なされない。更に、ジルコニアからハフニアを5重量%未満の量まで除去することは、結果としてジルコニア粉末のコストが高くなるために非実用的である可能性がある。したがって、出発ジルコニア粉末中に存在するHfO2は、汚染物質又は不純物であるとは見なされず、したがって、本明細書に開示される純度、汚染物質及び不純物を報告するときには考慮されない。酸化ジルコニウム出発粉末は、非安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニアからなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0085】
本明細書に開示される焼成粉末混合物の総純度は、それぞれが焼成粉末混合物の100%純度に対して、99.99%超、好ましくは99.995%超、より好ましくは約99.999%以上であってもよい。
【0086】
本明細書に開示されるセラミック焼結体の総純度は、セラミック焼結体の100%純度に対して、99.99%超、好ましくは99.995%超であってもよい。ジルコニア媒体が混合のために使用される実施形態では、イットリアとジルコニアとのモル比は、最終的な所望の組成を達成するために媒体の摩耗を考慮して調整されてもよく、セラミック焼結構成要素の純度は、セラミック焼結体及び関連出発材料の純度から保持されてもよい。
【0087】
調製方法
セラミック焼結体の調製は、直流焼結及び関連技術と組み合わせた加圧支援焼結を用いて行なうことができ、これは直流を使用して導電性のダイ構成又はツールセットを加熱し、それによって材料を焼結するものである。この加熱様式によって、非常に高い加熱及び冷却速度を適用することができ、結晶粒成長を促進する拡散メカニズムを超える高密度化メカニズムを増強して、非常に微細な結晶粒径のセラミック焼結体の調製を容易にし、元の粉末の固有の特性をそれらのほぼ又は十分に高密度の生成物に移すことができる。
【0088】
セラミック焼結体は、以下の工程を含む方法によって調製される:a.酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムの粉末を組み合わせて、粉末混合物を作製する工程と、b.熱を加えて粉末混合物の温度を焼成温度に上昇させ、焼成温度を維持することによって粉末混合物を焼成して、焼成粉末混合物を形成する工程と、c.焼結装置のツールセットによって画定された容積内に焼成粉末混合物を入れて、容積内に真空状態を作り出す工程と、d.焼結温度に加熱しながら焼成粉末混合物に圧力を加え、焼結を行なって、セラミック焼結体を形成する工程と、e.セラミック焼結体の温度を下げる工程。以下の追加の方法工程は任意選択である:f.任意選択的に、熱を加えてアニール温度に到達するようにセラミック焼結体の温度を上昇させることによってセラミック焼結体をアニールして、アニールしたセラミック焼結体を形成する工程と、g.アニールしたセラミック焼結体の温度を下げる工程と、h.任意選択的に、セラミック焼結体を機械加工して、プラズマ加工チャンバ内の窓、RF窓、蓋、フォーカスリング、シールドリング、ノズル、ガス注入器、シャワーヘッド、ガス分配プレート、チャンバライナ、チャック、静電チャック、パック、及び/又はカバーリングなどのセラミック焼結体構成要素を形成する(実施形態ではアニールしてもよい)工程。窓、RF窓、又は蓋を含むセラミック焼結体構成要素の実施形態は、本明細書に開示されるものと同等であると解釈されてもよい。
【0089】
セラミック焼結体から形成される耐腐食性セラミック焼結体構成要素の特徴は、特に、酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムの出発粉末の純度並びに粉末混合物の純度、(酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムの)焼成粉末混合物への圧力、焼結温度、焼結持続時間、任意選択的なアニール工程中のセラミック焼結体/セラミック焼結体構成要素の温度、並びに任意選択的なアニール工程の持続時間を適合させることによって達成される。
【0090】
本明細書に開示される方法は、75モル%以上95モル%以下の酸化イットリウム(Y2O3)及び5モル%以上25モル%以下の酸化ジルコニウム(ZrO2)の組成範囲にわたるセラミック焼結体及び/又はセラミック焼結体構成要素の調製を提供する。
【0091】
一実施形態によるセラミック焼結体及びセラミック焼結体構成要素の特徴は、特に、出発粉末粒度分布(PSD)、比表面積(SSA)、純度(誘導結合質量分析(ICP-MS)によって測定される)、並びに粉末混合/組み合わせ及び粉末混合物の焼成の方法、焼成粉末混合物の粒径及び表面積、焼成粉末混合物への圧力、粉末混合物の焼結温度、粉末混合物の焼結持続時間、任意選択的なアニール工程中のセラミック焼結体又は構成要素の温度、並びに任意選択的なアニール工程の持続時間によって達成される。開示されたプロセスは、高純度、低体積気孔率及び高密度を有する酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムを含む単相立方晶、c型イットリア(C)、又は混合相立方晶(c型イットリア及び蛍石(F)結晶構造の相)セラミック焼結体の調製を提供する。セラミック焼結体は、特に半導体製造装置などのプラズマ加工装置におけるセラミック焼結体又は耐腐食性部材として好適に用いることができる。そのような部品又は部材は、窓、蓋、ノズル、注入器、シャワーヘッド、チャンバライナ、ウェハ支持体、電子ウェハチャック、及び当業者に知られている様々なリング、例えばフォーカスリング及び保護リングなどを含むことができる。
【0092】
本明細書に開示する方法の工程a)は、酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムを含む粉末を組み合わせて粉末混合物を作製することを含む。セラミック焼結体及び/又は構成要素を形成するための酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムの出発材料は、好ましくは高純度の市販の粉末である。しかしながら、他の酸化物粉末、例えば化学合成プロセス及び関連する方法から生成されたものを使用してもよい。酸化ジルコニウム出発粉末は、非安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニアからなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。イットリアは、ジルコニアの安定剤として添加されることが知られており、したがって、いくつかの実施形態において、イットリアは、本明細書に開示されるようなY、Zr及びOを含む高純度のセラミック焼結体を提供するためのジルコニア安定剤として好ましい場合があるが、ジルコニアの他の既知の安定剤が使用されてもよい。
【0093】
工程a)において、酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムのセラミック粉末は、セラミック焼結体中のイットリア及びジルコニアの所望のモル比に従ってバッチにされる。セラミック焼結体は、75モル%以上95モル%以下の酸化イットリウム(Y2O3)と、5モル%以上25モル%以下の酸化ジルコニウム(ZrO2)とのモル範囲を有する粉末混合物から形成されてもよい。Agilent 7900 ICP-MSモデルG8403を使用する誘導結合質量分析(ICP-MS)によって測定して、イットリア粉末の純度は、99.9%超、好ましくは99.99%超、好ましくは99.999%超、好ましくは約99.9999%であってもよく、ジルコニア粉末の純度は、99.95%超、好ましくは99.99%超、好ましくは99.995%超であってもよい。本明細書に開示されるICPMSを使用して、Sc及びより軽い元素などのより軽い元素の存在を検出するための報告限界は、概して、約0.14ppm以下であり得るより重い元素の報告限界よりも高く、約1.4ppm以下である。特に、Siを検出するための本明細書に開示されるICPMS法の使用は、約14ppm以上の信頼度内で行なわれ得る。したがって、出発粉末、粉末混合物、焼成粉末混合物及び焼結セラミック体は、約14ppm以下の量でシリカを含み得る。シリカの形態のSiは、本明細書に開示される出発粉末、焼成粉末混合物及び焼結セラミック体の%純度又は不純物含有量に含まれず、約14ppm以下であると見なされ得るが、Siは多くの場合未検出であった。
【0094】
表4は、開示されたイットリア及びジルコニア出発材料の混合物から作製された例示的な80モル%イットリア/20モル%ジルコニアの焼成粉末混合物1~7についてICP-MSを使用して測定された不純物/汚染物質(ppm)及び純度%(100%純度に対する)を列挙する(Hfは、本明細書に開示された理由のために不純物として結果に含まれず、シリカは、通常は検出されなかったが、14ppm以下の量で検出可能であり得る)。
【0095】
酸化ジルコニウム出発材料は、典型的には、ジルコニウム、HfO2及び不純物を含む。一実施形態において、出発材料は、94重量%超の酸化ジルコニウム、5重量%未満のHfO2、及び0.1重量%未満の不純物、又は96重量%超の酸化ジルコニウム、3重量%未満のHfO2、及び0.05重量%未満の不純物を含んでもよい。不純物。更なる実施形態において、不純物を除いて、酸化ジルコニウム出発材料は、94重量%超の酸化ジルコニウム、5重量%未満のHfO2、又は96重量%超の酸化ジルコニウム、3重量%未満のHfO2からなり、不純物の総量は、0.1重量%未満、好ましくは0.05重量%未満、及びより好ましくは0.02重量%未満である。
【0096】
不純物は、典型的には、金属元素、例えばAl、B、Ca、Cr、Co、Cu、Fe、Pb、Li、Mg、Mn、Ni、K、Na、Sn、及びZn、並びにそれらのそれぞれの金属酸化物を含み得る。
【0097】
【0098】
ほとんどの試料について、出発粉末、粉末混合物、及び焼成粉末混合物の比表面積を、0.01~2000m2/gの比表面積にわたって10%以下の精度で測定することができるHoribaのBET Surface Area AnalyzerモデルSA-9601を用いて測定した。10nm~5mmの粒径を測定することができるHoribaのモデルLA-960 Laser Scattering Particle Size Distribution Analyzerを用いて、出発粉末、粉末混合物、及び焼成粉末混合物の粒径を測定した。本明細書で使用される場合、d50は、中央値として定義され、粒径分布の半分がこの点を超え、半分がこの点の下にある値を表す。同様に、分布の90%がd90を下回り、分布の10%がd10を下回る。
【0099】
酸化イットリウム粉末の典型的な表面積は、1~15m2/g、好ましくは2~10m2/g、好ましくは2~8m2/g、好ましくは2~6m2/g、好ましくは3~10m2/g、好ましくは4~10m2/g、好ましくは6~10m2/g、好ましくは2~4m2/gであってもよい。
【0100】
本発明の一実施形態による出発材料として使用される酸化イットリウム粉末のd10粒径は、好ましくは1~6μm、好ましくは1~5μm、好ましくは1~4μm、好ましくは2~6μm、好ましくは3~6μm、好ましくは4~6μm、好ましくは2~4μmである。
【0101】
本発明の一実施形態による出発材料として使用される酸化イットリウム粉末のd50粒径は、好ましくは3~9μm、好ましくは3~8.5μm、好ましくは3~8μm、好ましくは3~7μm、好ましくは4~9μm、好ましくは5~9μm、好ましくは6~9μm、好ましくは4~8μmである。本明細書に開示されるイットリア粉末は、約5~9μmの平均粒径を有し得る。
【0102】
本発明の一実施形態による出発材料として使用される酸化イットリウム粉末のd90粒径は、好ましくは6~16μm、好ましくは6~15μm、好ましくは6~14μm、好ましくは6.5~16μm、好ましくは7~16μm、好ましくは7.5~16μm、好ましくは7.5~14μmである。
【0103】
酸化イットリウム出発材料の純度は、好ましくは99.99%超、好ましくは99.995%超、より好ましくは99.999%超、より好ましくは99.9995%超、より好ましくは約99.9999%超である。これは、100ppm以下、好ましくは50ppm以下、好ましくは25ppm以下、好ましくは10ppm以下、より好ましくは約1ppm、好ましくは1~100ppm、好ましくは1~50ppm、好ましくは1~25ppm、好ましくは1~10ppm、好ましくは1~5ppmの不純物レベルに相当する。
【0104】
本明細書で使用されるジルコニアは、典型的には、HfO2の形態のHfを、多くの市販のジルコニア粉末において一般的であるように、約2~5モル%、最大5重量%の量で含む。Hfは、ジルコニアと化学的に類似した挙動のために、本明細書に開示されるような不純物とは見なされず、したがって純度/不純物量には含まれない。ジルコニア粉末は、典型的には、1~16m2/g、好ましくは2~12m2/g、及びより好ましくは4~9m2/gの比表面積を有する。ジルコニア出発粉末の純度は、典型的には、100%純度に対して、99.5%超、好ましくは99.8%超、好ましくは99.9%超、好ましくは99.99%超、より好ましくは99.995%超である。これは、5000ppm以下、好ましくは2000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、好ましくは100ppm以下、及びより好ましくは50ppm以下の総不純物含有量に相当する。
【0105】
酸化ジルコニウム粉末は、0.08~0.50μmのd10、0.5~0.9μmのd50、及び0.9~5μmのd90を有する粒径分布を有し得る。
【0106】
ジルコニア及びイットリアの本明細書に開示される出発粉末は、好ましくは結晶性であり、それによって長距離の結晶学的秩序を有する。20m2/gを超えるような高い表面積を有する出発粉末は、取り扱い性の問題を提起する。したがって、本明細書に開示される粉末混合物及び/又は焼成粉末混合物は、ナノ粉末を含まないか、又は実質的に含まず、約18m2/g以下の比表面積(SSA)を有することが好ましい。
【0107】
約1m2/g未満の比表面積を有する出発粉末は、凝集を被る可能性があり、混合のためにより高いエネルギー及びより長い混合時間を必要とし、焼結活性化エネルギーを減少させる可能性があり、したがって、より低い密度及びより高い気孔率を有するセラミック焼結体を生成する。開示される方法における使用にとって好ましいのは、典型的には1~18m2/g、好ましくは2~15m2/gのSSAを有する、本明細書に開示される出発粉末である。
【0108】
工程a)によれば、イットリア及びジルコニアの選択されたセラミック粉末は、当業者に知られている湿式又は乾式ボール(軸回転)ミリング、湿式又は乾式タンブリング(エンドオーバーエンド又は垂直)混合、ジェットミル処理、及びこれらの組み合わせの粉末調製技術を用いて組み合わせてもよい。これらの粉末組み合わせ方法の使用は、微粒子及び凝集体を分解する高エネルギープロセスを提供する。
【0109】
乾燥条件を使用して、出発粉末は、高純度(99.9%超)アルミナ媒体を使用してボールミリング又はエンドオーバーエンド/タンブリング混合され得る。他の実施形態では、ジルコニア媒体を使用して、硬質の凝集体を粉砕してもよい。ボールミリングは、一例としてジルコニア媒体を使用して達成することができ、当業者に公知の方法に従って行なうことができる。ジルコニア媒体が混合のために使用される実施形態では、イットリアとジルコニアとのモル比は、最終的な所望の組成を達成するために媒体の摩耗を考慮して調整されてもよく、セラミック焼結構成要素の純度は、セラミック焼結体及び関連出発材料の純度に非常に近いか、又はそれから保持されてもよい。他の例では、酸化アルミニウム媒体を使用してもよい。アルミナ媒体が混合のために使用される実施形態において、アルミナは、セラミック焼結体中に微量で存在し得る。乾式ボールミリングを行うために使用される媒体は、例えば直径5~15mmの範囲の寸法を有し得、粉末重量で約50~約100%の装入量で添加される。乾式タンブリング混合を行うために使用される媒体は、限定されないが、大きな寸法(直径約20~40mm)の少なくとも1つの媒体要素を含み得る。乾式ボールミリング及び/又は乾式タンブリング混合は、12~48時間、好ましくは16~48時間、好ましくは16~24時間、好ましくは18~22時間の期間にわたって行うことができる。乾式ボールミリング又はタンブリングミルプロセス(軸方向回転)は、各々約200mmの直径を有する容器で、50~250RPM、好ましくは75~200RPM、好ましくは75~150RPM、好ましくは100~125RPMのRPM(毎分回転数)を使用してよい。RPMは、使用に選択される容器の寸法に依存して変化し得、例えば、直径200mmより大きいものは、当業者に知られているように、対応して低いRPMを有し得る。乾式エンドオーバーエンド/タンブリング混合は、10~30rpm、好ましくは約20のRPMで行うことができる。乾式ボールミリング及び/又は乾式エンドオーバーエンド/混合の後、当業者に知られているように反復又は順序に関して限定することなく、粉末混合物は、例えば例えば45~400μmの開口部を有し得る任意の番号のメッシュを用いて必要に応じて篩い分けしてブレンドしてもよい。
【0110】
湿式ボールミリング又は湿式エンドオーバーエンド/タンブリング混合は、出発粉末をエタノール、メタノール、及び他のアルコールなどの様々な溶媒中に懸濁させてスラリーを形成することによって行うことができる。いずれかのプロセスにおけるスラリーは、ミリング又は混合の間に、粉末重量で25~75%、好ましくは粉末重量で40~75%、好ましくは粉末重量で50~75%の粉末充填量を有して形成され得る。湿式ボールミリング又は湿式エンドオーバーエンド/タンブリング混合は、移動度の増加による粉末の分散の改善をもたらし、熱処理又は焼成の前に微細なスケールの均一な混合をもたらすことができる。他の実施形態では、湿式混合は、粉末重量で25~50%の水、エタノール、イソプロパノールなどの液体を使用して行ってもよく、粉末重量で25~150%の媒体を粉末混合物に添加してスラリーを形成してもよい。湿式ミリングプロセスは、乾式プロセスについて開示されたものと同じ持続時間及びRPMで行われてもよい。
【0111】
湿式混合又はミリングプロセスが使用される場合、スラリーは、当業者に知られているように、乾燥されるスラリーの体積に応じて、回転蒸発法によって、例えば約40℃~90℃の温度で1~4時間乾燥させることができる。他の実施形態では、スラリーは、当業者に公知の噴霧乾燥技術を使用して乾燥させることができる。乾燥後、粉末混合物を、反復又は順序に関して限定することなく、例えば45~400μmの開口部を有するメッシュを用いて必要に応じて篩い分けしてブレンドしてもよい。前述の粉末調製技術は、単独で、又はそれらの任意の組み合わせで使用され得る。
【0112】
乾燥後、工程a)の粉末混合物は、2~18m2/g、好ましくは2~17m2/g、2~14m2/g、好ましくは2~12m2/g、2~10m2/g、好ましくは4~17m2/g、6~17m2/g、好ましくは8~17m2/g、好ましくは10~17m2/g、4~12m2/g、好ましくは4~10m2/g、好ましくは5~8m2/gの比表面積(SSA)を有し得る。
【0113】
粉末混合物の純度は、高純度の粉砕媒体、例えば純度99.99%以上の酸化アルミニウム媒体を使用することによって、混合/ミリング後に出発材料の純度から維持することができる。
【0114】
摩砕、高せん断混合、プラネタリーミリング、及び他の既知の手順の追加の粉末調製手順も適用することができる。上述の粉末調製技術は、単独で、又はそれらの任意の組み合わせで、又はその後に合わされて最終的なセラミック焼結体にされる2つ以上の粉末混合物に、使用することができる。
【0115】
本明細書に開示される方法の工程b)は、加熱して粉末混合物の温度を焼成温度に上昇させることによって粉末混合物を焼成し、焼成温度を維持して焼成粉末混合物を形成することを含む。この工程は、水分を除去することができ、粉末混合物の表面状態が焼結前に均一かつ均質になるように行うことができる。熱処理工程による焼成は、600℃~1200℃、好ましくは600℃~1100℃、好ましくは600℃~1000℃、好ましくは600℃~900℃、好ましくは700℃~1100℃、好ましくは800℃~1100℃、好ましくは800℃~1000℃、好ましくは850℃~950℃の温度で行うことができる。焼成は、酸素を含有する環境において、4~12時間、好ましくは4~10時間、好ましくは4~8時間、好ましくは6~12時間、好ましくは4~6時間の持続時間で行なうことができる。焼成後、粉末混合物は、少なくとも第1及び第2の焼成粉末混合物を形成するために、既知の方法に従って篩い分け及び/又はタンブリング及び/又はブレンドされてもよい。焼成は、比表面積の減少をもたらしても、もたらさなくてもよい。
【0116】
焼成粉末混合物は、典型的には、0.1~4μmのd10粒径、4~8μmのd50粒径、及び8~12μmのd90粒径を有する。
【0117】
焼成粉末混合物は、典型的には、ASTM C1274に従って測定して、2~14m2/g、好ましくは2~12m2/g、好ましくは2~10m2/g、好ましくは2~8m2/g、好ましくは2~6m2/g、好ましくは2.5~10m2/g、好ましくは3~10m2/g、好ましくは4~10m2/g、及びより好ましくは2~6m2/gの比表面積(SSA)を有する。
【0118】
焼成粉末混合物は、典型的には、それぞれ100%純度に対して99.99%~99.9995%、好ましくは99.9925%~99.9995%、好ましくは99.995%~99.9995%、好ましくは99.995%~99.999%の純度、及びICPMS法を使用して測定して5ppm~100ppm、好ましくは75ppm~5ppm、好ましくは50ppm~5ppm、好ましくは10ppm~50ppmの不純物含有量(ppm)を有する。本明細書に開示される不純物含有量は、HfO2の形態のHf及び二酸化ケイ素SiO2の形態のSiを含まない。開示されたICPMS法を用いると、シリカは約14ppm以下の量で検出され得る。焼成粉末混合物中にシリカは検出されなかったので、シリカは約14ppm以下の量で存在し得る。
【0119】
前述の粉末組み合わせプロセスに加えて、当業者に知られているようなジェットミル処理プロセスを使用して、出発粉末及び/又は焼成粉末混合物を十分に混合して、狭い粒径分布を有する粉末又は粉末混合物を提供することもできる。ジェットミル処理は、不活性ガス又は空気のいずれかの高速ジェットを使用して、ミリング又は混合媒体を使用せずに出発粉末及び/又は粉末混合物及び/又は焼成粉末混合物の粒子を衝突させ、したがってミリングされる粉末の初期純度を維持する。チャンバは、より大きな粒子のサイズを優先的に小さくすることができるように設計することができ、最終粉末、粉末混合物又は焼成粉末混合物に狭い粒径分布を提供することができる。処理前の機械の設定で決定された所望の粒径に達すると、粉末はジェットミル処理チャンバを出る。本明細書に開示する出発粉末、粉末混合物及び/又は焼成粉末混合物は本明細書に開示するように、開示された粉末粉砕/混合プロセスとして別々に、又はそれらの任意の組み合わせで、又はそれらの全てで、約100psiの圧力でジェットミル処理にかけてもよい。ジェットミル処理の後、粉末及び/又は粉末混合物を、任意選択的に、繰り返し回数や順序の制限なく、例えば45~400μmの開口を有し得る任意の番号のメッシュを用いて篩い分けし、ブレンドしてもよい。出発粉末、粉末混合物、及び/又は焼成粉末混合物のいずれかを、任意選択的に、繰り返し回数や順序の制限なく、公知の方法に従って様々なプロセス工程で、例えば45μm~400μmの開口部を有し得る任意の番号のメッシュを使用して用いて、ブレンド及び/又は乾式ミリングしてもよい。
【0120】
本明細書に開示される方法の工程c)は、焼結装置のツールセットによって画定された容積内に焼成粉末混合物を入れて、容積内に真空条件を作り出すことを含む。ある実施形態によるプロセスで使用される焼結装置は、通常、ある容積、内壁、第1及び第2の開口部を有する円筒状グラファイトダイであるグラファイトダイと、第1及び第2のパンチとを少なくとも含むツールセットを含む。第1及び第2のパンチは、ダイと動作可能に連結され、第1及び第2のパンチの各々が、ダイの内壁の直径よりも小さい直径を画定する外壁を有し、それによって、第1及び第2のパンチの少なくとも1つがダイの容積内で移動するとき、第1及び第2のパンチの各々とダイの内壁との間にギャップを形成する。米国仮特許出願第63/124,547号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されているように、本明細書に開示されるツールセットは、10μm以上~100μm以下のギャップを有し、ギャップは、ダイの内壁と第1及び第2のパンチの各々の外壁との間に構成される。SPS装置及び手順は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2010/0156008(A1)号に開示されている。第1のパンチがダイの第1の開口部内に移され、焼成粉末混合物はダイの第2の開口部内に入れられて、第2のパンチがダイの第2の開口部内に移され、それによって焼結装置のツールセットによって画定された容積内に焼成された粉末混合物が入れられる。当業者に知られている真空条件がツールセットによって画定された容積内に確立される。典型的な真空条件としては、10-2~10-3トル及びそれ未満の圧力が挙げられる。主に空気を除去してグラファイトを燃焼から保護するために、及び焼成粉末混合物から空気の大部分を除去するために、真空が適用される。本明細書に開示される方法は、規模拡張可能であり、商業的製造方法に適合する、セラミック焼結体及び/又は焼結セラミック構成要素の製造プロセスを提供する。この方法は、焼結助剤、コールドプレス、焼結前の未焼結体(green body)の成形又は機械加工を必要とすることなく、市販の粉末である及び/又は化学合成技術から調製された、ミクロンサイズの平均粒径分布を有する粉末を利用する。
【0121】
開示される方法は、結合剤又は解膠剤などのポリマー添加剤、焼結助剤、コールドプレス、焼結前の未焼結体の成形又は機械加工を必要とすることなく、市販の粉末又は化学合成技術から調製された粉末を利用する。
【0122】
本明細書に開示される方法の工程d)は、焼結温度に加熱しながら、焼成粉末混合物に圧力を加え、焼結を行なって、セラミック焼結体を形成することを含み、工程e)は、焼結装置への熱源を取り除き、セラミック焼結体を冷却することによって、セラミック焼結体の温度を低下させることを含む。ツールセットによって画定された容積内に焼成粉末混合物を入れた後、粉末混合物に圧力を加える。それにより、圧力は、5MPa~60MPa、好ましくは5MPa~40MPa、好ましくは5MPa~30MPa、好ましくは5MPa~20MPa、好ましくは5MPa~10MPa、好ましくは10MPa~60MPa、好ましくは10MPa~40MPa、好ましくは10MPa~30MPa、好ましくは10MPa~20MPa、好ましくは15MPa~60MPa、好ましくは15MPa~40MPa、好ましくは15MPa~30MPa、好ましくは15MPa~25MPa、好ましくは15~20MPaの圧力まで増加される。圧力は、焼結装置のツールセットによって画定された容積内に入れられた焼成粉末混合物に軸方向に加えられる。
【0123】
好ましい実施形態では、粉末混合物は焼結装置のパンチとダイによって直接加熱される。ダイは、抵抗性/ジュール加熱を促進するグラファイトなどの導電性材料から構成されてもよい。焼結装置及び手順は米国特許出願公開第2010/0156008(A1)号に開示されており、それは参照により本明細書に組み込まれる。
【0124】
(イットリア及びアルミナを含む)焼成粉末混合物を圧力下で焼結することにより、共圧縮された単一の焼結セラミック体が生成される。開示される方法によれば、焼成粉末混合物は、インサイチュで焼結されて、本明細書に開示されるイットリア及びジルコニアの組成物を含む焼結セラミック体を形成する。
【0125】
本開示による焼結装置の温度は、通常、装置のグラファイトダイ内で測定される。したがって、示された温度が焼成粉末混合物中で実際に実現され焼結されるように、温度は加工されている焼成粉末の可能な限り近くで測定されることが好ましい。
【0126】
ダイに供給された粉末混合物への熱の適用は、約1200~約1700℃、好ましくは約1200~約1650℃、好ましくは約1200~約1625℃、好ましくは約1300~約1700℃、好ましくは約1400~約1700℃、好ましくは約1500~約1700℃、好ましくは約1400~約1650℃、好ましくは約1500~1650℃、好ましくは約1550~1650℃、及びより好ましくは約1600~1650℃の焼結温度を容易にする。
【0127】
焼結は、典型的には、0.5~180分、好ましくは0.5~120分、好ましくは0.5~100分、好ましくは0.5~80分、好ましくは0.5~60分、好ましくは0.5~40分、好ましくは0.5~20分、好ましくは5~120分、好ましくは10~120分、好ましくは20~120分、好ましくは40~120分、好ましくは60~120分、好ましくは30~120分、好ましくは30~90分の焼結時間で実現することができる。特定の実施形態では、焼結は焼結時間なしで行なわれ得、焼結温度に達したら、本明細書に開示される速度で冷却が開始される。プロセスの工程e)において、焼結セラミック体は、熱源の除去によって受動的に冷却される。焼結セラミック体の取り扱い及び任意選択的なアニールプロセスの開始を容易に行なうことができる温度に達するまで自然対流が生じ得る。
【0128】
焼結中、典型的には体積の減少が生じ、その結果、セラミック焼結体は、焼結装置のツールセットに入れたときの出発粉末混合物の体積の約3分の1の体積を有し得る。
【0129】
一実施形態で、圧力と温度の適用の順序は、本開示に従って変更し得、このことは、最初に示された圧力を加え、その後に所望の温度に達するように熱を加えることが可能であることを意味する。更に、他の実施形態ではまた、最初に所望の温度に達するように示された加熱を行ない、その後に、示された圧力を加えることが可能である。本開示による第3の実施形態では、焼結する粉末混合物に温度と圧力を同時又は断続的に加えて、示された値に達するまで上昇させてもよい。
【0130】
誘導加熱又は輻射加熱の方法もまた、焼結装置を加熱してツールセット内の粉末混合物を間接的に加熱するために使用することができる。
【0131】
他の焼結技術とは対照的に、焼結前の試料の調製、すなわち、焼結前の未焼結体(予備成形体)のコールドプレス又は成形による試料の調製は必須ではなく、焼成粉末混合物を、金型内に直接充填する。この調製方法は、他の方法に一般的に関連するような、焼結前の未焼結体、積層体又はテープの形成及び取り扱いに関連する汚染を回避することによって、最終セラミック焼結体に高純度を提供する。
【0132】
他の焼結技術とは更に対照的なことに、焼結助剤は必須ではない。最適な耐プラズマ性能のためには、高純度の出発粉末が望ましい。焼結助剤がなく、純度99.99%~約99.9999%の高純度の出発材料を使用することにより、半導体エッチング及び堆積チャンバ内のセラミック焼結構成要素として使用するための改善された耐プラズマ性を提供する高純度のセラミック焼結体の製造が可能になる。セラミック焼結体の純度は、100%純度に対して、それぞれ99.99%以上、好ましくは99.995%以上、より好ましくは99.999%であってもよい。報告されているこれらの純度は、SiO2の形態のシリカ、又はHfO2の形態のHfを含まない。二酸化ケイ素(SiO2)は、開示されるICPMS法を使用して14ppmまで測定することができ、酸化ハフニウム(HfO2)は、プラズマ加工チャンバ内での使用に有害ではなく、したがって、不純物又は汚染物質とは見なされない。
【0133】
本発明の一実施形態において、プロセス工程d)は、特定の予備焼結時間に達するまで、0.1℃/分~100℃/分、0.1℃/分~50℃/分、0.1℃/分~25℃/分、好ましくは0.5℃/分~50℃/分、好ましくは0.5~25℃/分、好ましくは0.5~10℃/分、好ましくは0.5℃/分~5℃/分、好ましくは1~10℃/分、好ましくは1~5℃/分、好ましくは2~5℃/分の少なくとも1つの加熱勾配を有する予備焼結工程を更に含んでもよい。
【0134】
本発明の更なる実施形態において、プロセス工程d)は、特定の予備焼結時間に達するまで、0.15~30MPa/分、0.15~20MPa/分、0.15~10MPa/分、0.15~5MPa/分、0.25~20MPa/分、0.35MPa/分~20MPa/分、0.5MPa/分~20MPa/分、0.75MPa/分~20MPa/分、1MPa/分~20MPa/分、5MPa/分~20MPa/分、好ましくは0.15~5MPa/分、好ましくは0.15~1MPa/分、好ましくは0.15~0.5MPa/分の少なくとも1つの圧力勾配を有する予備焼結工程を更に含んでもよい。
【0135】
別の実施形態では、プロセス工程d)は、上述の特定の加熱勾配と上述の特定の加圧勾配とを用いる予備焼結工程を更に含んでもよい。
【0136】
ある実施形態では、プロセス工程d)の終わりに、本方法は、セラミック焼結体の熱源冷却を除去することによってセラミック焼結体の温度を低下させる工程e)を更に含んでもよく、これは、当業者に知られているように、真空条件下でのプロセスチャンバの自然冷却(非強制冷却)に従って実施することができる。プロセス工程e)による更なる実施形態では、セラミック焼結体を、不活性ガス、例えば、1バールのアルゴン若しくは窒素又は任意の不活性ガスの対流下で冷却してもよい。1バール超又は1バール未満の他のガス圧力も使用することができる。更なる実施形態では、セラミック焼結体は、酸素含有環境中、強制対流条件下で冷却される。冷却工程を開始するために、焼結工程d)の終わりに、焼結装置に加えられた電力を除き、セラミック焼結体に加えられた圧力を除き、その後に、工程e)に従って冷却を行なう。
【0137】
本明細書に開示される方法の工程f)は、任意選択的に、熱を加えてアニール温度に到達するようにセラミック焼結体の温度を上昇させることによってセラミック焼結体をアニールし(又は実施形態では、任意選択的に、焼結セラミック構成要素をアニールし)、アニールを行うことを含み、工程g)は、アニールしたセラミック焼結体の温度を下げることを含む。任意の工程f)において、それぞれ工程d)又はh)の得られたセラミック焼結体又はセラミック焼結構成要素は、アニール手順に供され得る(アニールはまた、本明細書において「熱酸化」と称する場合もあり、これらの用語は同じ意味を有すると解釈される)。典型的には、空気又は強制対流などの酸素含有環境においてアニールを行う。他の例では、セラミック焼結体又は構成要素にアニールを行なわなくてもよい。他の実施形態によれば、焼結装置からの取り出し時に外部炉内で、又は焼結装置自体の内部で、取り出すことなくアニールを行ってもよい。
【0138】
本開示の好ましい実施形態によるアニールの目的ために、プロセス工程eによる冷却後にセラミック焼結体を焼結装置から取り出して、アニールのプロセス工程を、炉などの別個の装置内で行なってもよい。
【0139】
いくつかの実施形態では、本開示によるアニールの目的のために、工程d)におけるセラミック焼結体を、焼結工程d)と任意選択的なアニール工程f)との間に焼結装置から取り出す必要なしに、焼結装置内で続けてアニールしてもよい。
【0140】
このアニールによって、焼結体の化学的及び物理的特性を改良することができる。アニールの工程は、ガラス、セラミック、及び金属のアニールに使用される従来の方法によって行なうことができ、改良の程度は、アニーリング温度及びアニールを継続させる持続時間の選択によって選択することができる。
【0141】
ある実施形態では、焼結セラミック体をアニールする任意選択的な工程f)は、0.5℃/分~20℃/分、好ましくは0.5℃/分~25℃/分、より好ましくは0.5℃/分~10℃/分、より好ましくは0.5℃/分~5℃/分、より好ましくは1℃/分~50℃/分、より好ましくは3℃/分~50℃/分、より好ましくは5℃/分~50℃/分、より好ましくは25℃/分~50℃/分、好ましくは1℃/分~10℃/分、好ましくは2℃/分~10℃/分、好ましくは2℃/分~5℃/分の加熱速度で実施される。
【0142】
実施形態において、焼結セラミック体をアニールする任意選択的な工程f)は、約900~約1600℃、好ましくは約1100~約1600℃、好ましくは約1300~約1600℃、好ましくは約900~約1500℃、好ましくは約900~約1400℃、好ましくは約1400~約1600℃の温度で実施される。
【0143】
実施形態では、焼結セラミック体をアニールする任意選択的な工程f)は、0.5℃/分~20℃/分、好ましくは0.5℃/分~25℃/分、より好ましくは0.5℃/分~10℃/分、より好ましくは0.5℃/分~5℃/分、より好ましくは1℃/分~50℃/分、より好ましくは3℃/分~50℃/分、より好ましくは5℃/分~50℃/分、より好ましくは25℃/分~50℃/分、好ましくは1℃/分~10℃/分、好ましくは2℃/分~10℃/分、好ましくは2℃/分~5℃/分の冷却速度で実施される。
【0144】
任意選択的なアニール工程f)は、結晶構造中の酸素空孔を修正し、セラミック焼結体を化学量論比に戻すことを意図している(開示されているような電流及び圧力支援方法は、典型的には還元され、酸素が欠乏したセラミック焼結体を製造することができる)。任意選択的なアニール工程は、アニール温度で、1~24時間、好ましくは1~18時間、好ましくは1~16時間、好ましくは1~8時間、好ましくは4~24時間、好ましくは8~24時間、好ましくは12~24時間、好ましくは4~12時間、及び好ましくは6~10時間の持続時間にわたって実施することができる。
【0145】
通常、セラミック焼結体をアニーリングする任意でのプロセス工程f)は酸化雰囲気中で行なわれ、それによってアニーリングプロセスは、アルベドを上昇させ、応力を低下させて、機械的な取り扱いを改善し、多孔率を低下させる。任意選択的なアニール工程は、実施形態において、空気又は強制対流などの酸化環境中で実行されてもよい。
【0146】
セラミック焼結体をアニールする任意選択的なプロセス工程fを行なった後、焼結された、またいくつかの場合ではアニールしたセラミック焼結体の温度を、プロセス工程g)に従って環境温度まで低下させ(本明細書で使用される場合、周囲は、約22℃~約25℃の温度を意味する)、焼結し、また任意選択的にアニールしたセラミック体を、(アニール工程が焼結装置の外部で行なわれる場合は)炉から取り出すか、又は(アニール工程fが焼結装置内で行なわれる場合は)ツールセットから取り出す。
【0147】
上述した一実施形態による圧力及び電流支援プロセスは、大型イットリア-ジルコニアセラミック焼結体の調製における使用に適している。開示されるプロセスは、迅速な粉末圧密化及び高密度化を提供し、焼結セラミック体において8μm未満の最大粒径を保持し、理論値の98%を超える高密度及び2%未満の体積気孔率を達成する。微細な粒径(8μm未満)と組み合わされた高密度(98%超)は、取り扱い性を改善し、焼結セラミック体における全体的な応力を低減する。微細な粒径及び高密度のこの組み合わせは、機械加工、取り扱い及び半導体処理チャンバ内の構成要素としての使用に適した大寸法の高強度イットリア-ジルコニアセラミック焼結体を提供する。
【0148】
本明細書に開示される方法の工程h)は、任意選択的に、セラミック焼結体を機械加工して、又はいくつかの実施形態では、任意選択的なアニールプロセス後にセラミック焼結体を機械加工して、プラズマ加工チャンバ内の窓、RF窓、蓋、フォーカスリング、シールドリング、ノズル、ガス注入器、シャワーヘッド、ガス分配プレート、チャンバライナ、静電チャック、パック、及び/又はカバーリングなどのセラミック焼結構成要素を形成することを含み、本明細書に開示されるセラミック焼結体から耐腐食性セラミック部品を機械加工するための既知の方法に従って実行され得る。半導体エッチング及び堆積チャンバに必要とされる耐腐食性セラミック焼結構成要素は、当業者に知られている他の構成要素の中でも、RF又は誘電体窓、ノズル及び/又は注入器、シャワーヘッド、ガス分配アセンブリ、チャンバライナ、ウェハ支持体、電子ウェハチャック、並びにフォーカスリング、プロセスリング、シールド又は保護リングなどの様々なリングを含むことができる。当業者に知られている機械加工、穿孔、研削、ラッピング、研磨などを、既知の方法に従って必要に応じて実施して、多層焼結セラミック体をプラズマ加工チャンバにおいて使用するためのイットリアジルコニアセラミック焼結構成要素の所定の形状に形成することができる。セラミック焼結体の少なくとも1つの表面を、以下の方法(Struers,Inc.によって提供される研磨用品)によって研磨してもよい(Strasbaugh研磨装置):(i)40umのアルミナ:必要に応じて表面を平坦化するため;(ii)12umのアルミナ、固定研磨パッド:2分;(iii)9pmのダイヤモンド、ポリウレタンパッド:8分;(iv)6μmのダイヤモンド、起毛布:3分、及び(v)1μmのダイヤモンド、起毛布:3分。より具体的には、リアクタ-チャンバの内部に面するように構成された少なくとも1つの表面を、開示された方法に従って非常に低い表面粗さまで研磨してもよい。
【0149】
したがって、焼結セラミック体の表面粗さは、加工チャンバ内の微粒子生成に相関し得る。したがって、一般に、低減された表面粗さを有することが有益である。表面粗さ測定は、Keyence 3Dレーザー走査共焦点デジタル顕微鏡モデルVK-X250Xを使用して実施した。ISO 25178 Surface Texture(Areal Roughness measurement)は、この顕微鏡が準拠する表面粗さの分析に関する国際規格の集合である。
【0150】
共焦点顕微鏡を使用して50倍の倍率で試料の表面をレーザースキャンして、試料の詳細な画像を撮影した。焼結セラミック体について、Sa(算術平均高さ)及びSz(最大高さ/山-谷)のパラメータを測定した。Saは、焼結セラミック体の表面のユーザ定義領域にわたって計算された平均粗さ値を表す。Szは、焼結セラミック体の表面のユーザ定義領域にわたる最大山-谷距離を表す。Raは、測定長さ内で記録された平均線からのプロファイル高さ偏差の絶対値の算術平均として定義される。ASME B46.1に従ってRaを測定したところ、直径572mmのセラミック焼結体の研磨表面にわたって、20~45nmの値が得られた。
【0151】
Sa、Ra及びSzの表面粗さの特徴は基礎となる技術分野において公知のパラメータであり、例えば、ISO標準25178-2-2012に記載されている。
【0152】
本開示は、ISO規格25178-2-2012に従って測定して、90nm未満、より好ましくは70nm未満、より好ましくは50nm未満、より好ましくは25nm未満、及び好ましくは15nm未満の算術平均高さSaを提供する耐腐食性研磨表面を有する、焼結セラミック体及び/又はそれから作製される構成要素に関する。
【0153】
本開示は、ISO規格25178-2-2012に従って測定して、3.5μm未満、好ましくは2.5μm未満、好ましくは2μm未満、好ましくは1.5μm未満、及びより好ましくは1μm未満の山-谷高さSzを提供する耐腐食性研磨表面を有する焼結セラミック体及び/又はそれから作製された構成要素に関する。
【0154】
本明細書に開示される方法に従って作製されたセラミック焼結体/構成要素は、プラズマ加工チャンバにおいて使用するための大きな本体サイズの製造を可能にするのに十分な機械的特性を有し得る。本明細書に開示される構成要素は、それぞれ焼結体の最長延長部に関して、100mm~622mm、好ましくは100~575mm、好ましくは100~406mm、好ましくは150~622mm、好ましくは200mm~622mm、好ましくは300~622mm、好ましくは150~575mm、好ましくは150~406mm、好ましくは406~622mm、好ましくは500~622mm、及びより好ましくは406~575mm、好ましくは450~622mmのサイズを有し得る。典型的には、本明細書に開示されるイットリアジルコニアセラミック焼結体は、ディスク形状を有し、最長の延長部は直径である。
【0155】
本明細書に開示する方法により、高純度、気孔率の量にわたる制御改善、より高い密度、改善された機械的強度が得られ、それによって、特に、例えば最長延長部にわたって200mmを超える寸法のセラミック体のための耐腐食性セラミック焼結構成要素の取り扱い性、及び耐腐食性セラミック焼結構成要素の格子中の酸素空孔の低減がもたらされる。焼結助剤を必要とせずに焼成粉末混合物から直接焼結体を形成することにより、本明細書に開示されるような焼結助剤を含まないか、又は実質的に含まないイットリアジルコニアセラミック焼結体が提供される。
【0156】
性能
図2は、80モル%のイットリア及び20モル%のジルコニアの粉末バッチ組成物についての例示的なイットリア-ジルコニア焼成粉末混合物の粉末焼成研究からのX線回折結果を示す。
図2a)の例示的な粉末混合物を800℃~850℃で4~6時間焼成し、一方、
図2b)の例示的な粉末混合物を850℃~900℃で6~8時間焼成した。
図2a)のXRDパターンでは、ジルコニアに対応する正方晶相、及びイットリアに対応するc型立方晶相が観察され、これは、焼成粉末混合物が結晶性イットリア及びジルコニア粉末を含むことを示した。
図2b)はまた、
図2a)の結晶相を示し、これは、イットリアとジルコニアとの間の反応を示す、より高い焼成温度及び延長された焼成時間で観察された、ごく少量の酸化イットリウムジルコニウムの固溶体立方晶相を更に含む。いくつかの実施形態では、イットリア及びジルコニアの出発粉末を含む焼成粉末混合物が好ましい。更なる実施形態は、多数相としてイットリア及びジルコニアの出発粉末と、少数相として酸化イットリウムジルコニウムの立方晶相と、を含み得る。全てのX線回折(XRD)は、約+/-2体積%までの結晶相同定が可能なPANanlytical AerisモデルXRDを用いて実施した。
【0157】
焼成により、粒径分布(PSD)及び比表面積(出発粉末及び/又は焼成粉末混合物に関して、表面積及び比表面積(SSA)は、本明細書において互換的に使用される)が改変及び最適化される。表5は、本明細書に開示される80モル%イットリア及び20モル%ジルコニア焼成粉末混合物についての焼成条件並びに得られた粉末表面積及び粒径分布を開示する。
【0158】
【0159】
1400℃以上の温度での焼成は、得られる低い比表面積(SSA)及び非常に大きい粒径のために好ましくない場合がある。好ましくは、1.75m2/g以上、より好ましくは2m2/g以上のSSAを有する焼成粉末混合物である。1400℃で測定された大きな粒径は、粉末流動性及び混合を阻害し得る粒子凝集を示す。したがって、1300℃以下の温度での焼成が好ましく、より好ましいのは、酸化環境において600℃以上1200℃以下、好ましくは600℃以上1100℃以下の焼成温度である。出発粉末、粉末混合物、及び焼成粉末混合物のいずれかを、任意選択的に、繰り返し回数や順序の制限なく、公知の方法に従って様々なプロセス工程で、例えば45μm~400μmの開口部を有し得る任意の番号のメッシュを使用して用いて、ブレンド及び/又は乾式ミリングしてもよい。
【0160】
図3は、本明細書に開示される方法に従って、約1500℃の温度で30分間、約30MPaの圧力で焼結された、約80モル%のイットリア及び約20モル%のジルコニアの組成を有する例示的なイットリア-ジルコニアセラミック焼結体のX線回折結果を示す。X線回折により、蛍石及びc型イットリア結晶構造のうちの少なくとも1つを含む立方晶相の存在が確認された。
【0161】
図4は、酸化環境において1550℃で8時間アニールした後の
図3の例示的なイットリア-ジルコニアセラミック焼結体のX線回折結果を示す。X線回折により、アニール時に存在する結晶相において
図3のものから変化がないことが確認された。
【0162】
図5は、アニールなし(A)から1100℃(B)~1550℃(C)のアニール温度までのアニール条件の範囲にわたる例示的なイットリア-ジルコニアセラミック焼結体についてのX線回折結果を示す。ピーク高さの増加及びピーク幅の減少は、より高いアニール温度でのイットリア-ジルコニア焼結体の結晶化度の増加を示す。
【0163】
図6a)~d)は、本明細書に開示されるイットリア-ジルコニア焼結体の例示的な焼結微細構造の5000倍でのSEM顕微鏡写真を示す。
図6a)は、1500℃の温度及び30MPaの圧力で30分間焼結した後の例示的な微細構造を示す図である。
図6b)は、a)による焼結及び1000℃で8時間のアニール後の例示的な微細構造を示す図である。
図6c)は、a)による焼結及び1200℃で8時間のアニール後の例示的な微細構造を示し、
図6d)は、a)による焼結及び1400℃で8時間のアニール後の例示的な微細構造を示す。微細構造中に気孔は見られず、非常に高い(理論値の98.5%超)密度を示している。
【0164】
図6a)~d)のSEM画像では、非常に小さい粒径を観察することができる。粒径は、ASTM規格E112-2010「Standard Test Method for Determining Average Grain Size」に記載されているHeyn Linear Intercept Procedureに従って測定した。最大粒径は、8μm未満、好ましくは5μm未満、及び好ましくは3~8μmであってもよい。本明細書において「μm」で測定される粒径は、10
-6メートルの値を意味する。平均粒径は、0.5~3μm未満、好ましくは0.5~2μm未満、好ましくは0.5~1μm、及びより好ましくは0.4~2μm未満と測定された。
図6a)(アニールなし)のSEM顕微鏡写真は、約0.7μmの平均粒径を有すると測定されたが、
図6d)(1400℃で8時間アニールされた)の顕微鏡写真は、約0.8μmの平均粒径を有する
図6a)のものと非常に類似した粒径を有すると測定された。これらの微細な粒径は、機械加工中及びプラズマ加工チャンバ内の構成要素としての使用中に、改善された機械的強度並びに微小亀裂及び/又は剥離に対する耐性を有するイットリア-ジルコニアセラミック焼結体を提供する。
【0165】
イットリアジルコニアセラミック焼結体(及びそれから製造される構成要素)の高密度/低気孔率、小粒径、及び高純度の組み合わせは、半導体加工用途で使用されるとき、他のセラミック材料を上回る利点を提供する。これらは、プラズマエッチング及び堆積加工から生じる浸食及び腐食の影響に対する向上した耐性(耐プラズマ性)並びに改善された機械的強度を含む。
【0166】
本明細書に開示される実施形態は、
図7及び
図8に示される例示的な半導体加工チャンバでの使用に適合されたセラミック焼結体及びそれから製造される構成要素を含む。
【0167】
図7の断面図に示すように、本明細書に開示される技術の実施形態は、加工システムとも呼ばれる半導体加工システム9500を含むことができる。加工システム9500は、遠隔プラズマ領域を含み得る。遠隔プラズマ領域は、遠隔プラズマ源(「RPS」)とも呼ばれるプラズマ源9502を含むことができる。
【0168】
容量結合プラズマ加工装置を表すことができる加工システム9500は、耐食性チャンバライナ(図示せず)を有する真空チャンバ9550と、真空源と、半導体基板とも呼ばれるウェハ50を支持するチャック9508と、を含む。カバーリング9514及び上部シールドリング9512は、ウェハ50及びパック9509を取り囲む。窓又は蓋9507は、真空チャンバ9550の上壁を形成する。窓/蓋9507、ガス分配システム9506、カバーリング9514、上部シールドリング9512、フォーカスリング(図示せず)、チャンバライナ(図示せず)、及びパック9509は、75モル%以上95モル%以下のイットリア、及び5モル%以上25モル%以下のジルコニア、並びに本明細書に開示されるこれらの範囲内の組成を含む、本明細書に開示されるセラミック焼結体の実施形態から完全に又は部分的に作製され得る。「窓」及び「蓋」という用語は、同じ意味を有すると解釈され、したがって、本明細書では同義的に使用される。カバーリング、シールドリング、プロセスリングなどのリング構成要素の実施形態は、当業者に知られている任意の数のリング構成要素を含んでもよい。
【0169】
遠隔プラズマ源9502は、加工されるウェハ50を収容するチャンバ9550の窓9507の外側に設けられる。遠隔プラズマ領域は、ガス供給システム9506を介して真空チャンバ9550と流体連通し得る。チャンバ9550内では、加工ガスをチャンバ9550に供給し、高周波数出力をプラズマ源9502に供給することによって、容量結合プラズマを生成することができる。こうして生成された容量結合プラズマを用いることによって、ウェハ50に対して所定のプラズマ加工が行なわれる。容量結合加工システム9500の高周波数アンテナには、所定のパターンを有する平面アンテナが広く用いられている。
【0170】
図8の断面図に示すように、本明細書で開示される技術の別の実施形態は、加工システムとも呼ばれる半導体加工システム9600を含むことができる。誘導結合プラズマ加工装置を表すことができる加工システム9600は、真空チャンバ9650と、真空源と、半導体基板とも呼ばれるウェハ50を支持するチャック9608と、を含む。シャワーヘッド9700は、真空チャンバ9650の上壁を形成するか、又は上壁の下に取り付けられる。セラミックシャワーヘッド9700は、プロセスガスを真空チャンバ9650の内部に供給するための複数のシャワーヘッドガス出口と流体連通する、ガスプレナムを含む。シャワーヘッド9700は、ガス供給システム9606と流体連通している。更に、シャワーヘッド9700は、ノズルとも同等に呼ばれる中央ガス注入器9714を受け入れるように構成された中央開口部を含むことができる。RFエネルギー源は、プロセスガスにエネルギーを与えプラズマ状態にし、半導体基板を加工する。中央ガス注入器9714によって供給されるプロセスガスの流量と、セラミックシャワーヘッドによって供給されるプロセスガスの流量とは、独立して制御され得る。シャワーヘッド又はガス分配プレート9700、ガス供給システム9606、及び中央ガス注入器9714は、75モル%以上95モル%以下のイットリア、及び5モル%以上25モル%以下のジルコニア、並びに本明細書に開示されるこれらの範囲内の組成を含む、本明細書に開示されるセラミック焼結体の実施形態から作製され得る。
【0171】
システム9600は、ウェハ50を保持するように設計された静電チャック9608を更に含むことができる。チャック9608は、ウェハ50を支持するため、パック9609を含むことができる。パック9609は、誘電材料から形成することができ、パック9609上に配置されたときにウェハ50を静電的に保持するために、パック9609の支持面に近接してパック内に入れたチャッキング電極を有することができる。チャック9608は、パック9609を支持するために延びるリング状を有するベース9611と、ベースとパックとの間に配置され、パック9609とベース9610との間に間隙が形成されるようにベースの上方でパックを支持するシャフト9610と、を含むことができ、シャフト9610は、パック9609の周縁部に近接してパックを支持する。チャック9608及びパック9609は、75モル%以上95モル%以下のイットリア、及び5モル%以上25モル%以下のジルコニア、並びに本明細書に開示されるこれらの範囲内の組成を含む、本明細書に開示されるセラミック焼結体の実施形態から作製され得る。チャック9608は、静電チャック(ESC)及び当業者に知られているような開示されたもの以外の他の実施形態を含むことができる。
【0172】
シャワーヘッド9700の表面の一部は、シールドリング9712で覆われてもよい。シャワーヘッド9700の表面の一部、特にシャワーヘッド9700の表面の半径方向側面は、上部シールドリング9710で覆われてもよい。シールドリング9712及び上部シールドリング9710は、75モル%以上95モル%以下のイットリア、及び5モル%以上25モル%以下のジルコニア、並びに本明細書に開示されるこれらの範囲内の組成を含む、本明細書に開示されるセラミック焼結体の実施形態から作製され得る。
【0173】
パック9609の支持面の一部は、カバーリング9614で覆われてもよい。パック9609の表面の更なる一部は、上部シールドリング9612及び/又はシールドリング9613で覆われてもよい。シールドリング9613、カバーリング9614及び上部シールドリング9612は、75モル%以上95モル%以下のイットリア、及び5モル%以上25モル%以下のジルコニア、並びに本明細書に開示されるこれらの範囲内の組成を含む、本明細書に開示されるセラミック焼結体の実施形態から作製され得る。
【0174】
本明細書に開示されるセラミック焼結体の実施形態は、任意の特定のセラミック焼結体で組み合わせることができる。したがって、本明細書に開示される特徴のうちの2つ以上を組み合わせて、例えば実施形態に概説されるように、セラミック焼結体をより詳細に記載することができる。
【0175】
本発明者らは、上述のセラミック焼結体及び関連する耐腐食性焼結構成要素が、エッチング及び堆積プロセスにおける改善された挙動並びに改善された取扱い能力を有し、プラズマ加工チャンバにおいて使用するための構成要素の調製のための材料として容易に使用することができることを決定した。
【0176】
今日までプラズマ加工チャンバ部品のために使用されてきたイットリア及びジルコニア材料は、既に上述したように、過酷なエッチング及び堆積条件下で、処理される製品を汚染する粒子が生成されるという主な問題を抱えている。酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムの機械的強度が本質的に低いために、欠陥、亀裂、又は微小亀裂(肉眼では視覚的に明らかでない亀裂)のない酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムを含む高純度焼結体から形成された大きな寸法(最大寸法又は直径が200mm~622mm)の固体の相純粋な高強度部品を製造することは困難である。
【0177】
これとは対照的に、本技術は、プラズマ加工チャンバ内で使用するための耐腐食性構成要素を製造するための新しい概念を提供し、純度、密度、結晶相、粒径、及び取り扱い性に焦点を当てる。本開示によれば、本明細書に開示されるイットリア及びジルコニア材料のバルク(百分率)気孔率特徴に加えて、気孔率特徴、密度及び粒径がエッチング及び堆積安定性に重要な影響を及ぼし得ることが決定された。
【0178】
酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムの結晶相、並びにそれらの組み合わせを含む上述のセラミック焼結体は、焼結体の最長延長部に関して10mm~622mmの寸法の大きな耐腐食性構成要素の製造に適し得る。本明細書で説明される大きな構成要素寸法は、チャンバ構成要素が製造され得るセラミック焼結体の増加した密度、低い気孔率、及び微細な粒径によって可能となり得る。
【0179】
酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムの結晶相、並びにそれらの組み合わせから作製されたセラミック焼結体を半導体加工チャンバ内で使用することにより、ハロゲン系プラズマ加工条件並びに堆積条件下に置かれたときに、他の材料よりも改善されたプラズマ耐腐食性及び耐浸食性(「耐プラズマ性」)を示す焼結材料が得られる。
【実施例】
【0180】
以下の実施例に本開示の全体的な性質をより明確に示す。これらの実施例は本開示を例示するものであり、制限するものではない。
【0181】
実施例1(試料1、表1)2~4m2/gの表面積を有するイットリアの粉末及び6~8m2/gの表面積を有するジルコニアの粉末を秤量し、混合して、80モル%イットリア及び20モル%ジルコニアの比(重量で87.3%のイットリア及び12.7%のジルコニアの量)の粉末混合物を作製した。本明細書に開示されるICP-MS法を使用して測定して、イットリア粉末の純度は約99.998%超であり、ジルコニア粉末の純度は約99.79%超であった。粉末重量で50%のエタノール及び粉末重量で100%のジルコニア媒体を粉末混合物に添加して、スラリーを形成した。スラリーを10~30rpmのRPMで12時間、エンドオーバーエンド/タンブリング混合した。乾燥するまで約75℃の温度でロータリーエバポレーターを使用してスラリーからエタノールを抽出した。出発粉末、粉末混合物、及び焼成粉末混合物のいずれかを、任意選択的に、繰り返し回数や順序の制限なく、公知の方法に従って様々なプロセス工程で、例えば45μm~400μmの開口部を有し得る任意の番号のメッシュを使用して用いて、ブレンド及び/又は乾式ミリングしてもよい。
【0182】
粉末混合物を空気中850℃で6時間焼成した。次に、焼成粉末混合物を、本明細書に開示される方法に従って、真空下で、1625℃の焼結温度、25MPaの圧力、90分の焼結時間で焼結して、406mmの直径を有するディスク形状のセラミック焼結体を形成した。セラミック焼結体を1400℃で約8時間アニールした。ASTM B962-17に従って密度測定を行い、80モル%のイットリア/20モル%のジルコニアを含むセラミック焼結体の理論密度(本明細書に開示される理論密度は5.13g/ccである)の99.4%に相当する5.10g/ccの平均密度が測定された。セラミック焼結体の気孔率(本明細書では体積気孔率Vpとも呼ばれる)は、0.6%の量であった。セラミック焼結体にわたって行われた密度測定は、2%以下の直径にわたる(理論密度に対する)密度の差を測定した。
【0183】
実施例2(試料2、表1)アニール処理を行わなかった以外は、実施例1に開示された材料及び方法に従い、直径406mmのディスク形状のセラミック焼結体を形成した。ASTM B962-17に従って密度測定を行い、80モル%のイットリア/20モル%のジルコニアを含むセラミック焼結体の理論密度の100%に相当する5.13g/ccの平均密度が測定された。セラミック焼結体は、気孔(本明細書では体積気孔率Vpとも呼ばれる)を有していなかった。
【0184】
実施例3(試料3、表1)実施例1の量、材料及び方法に従って粉末混合物を形成し、乾燥させた。粉末混合物の焼成は、空気中950℃で6時間実施した。次いで、焼成粉末混合物を、本明細書に開示される方法に従って、真空下で1600℃の焼結温度、15MPaの圧力、30分の焼結時間で焼結して、150mmの直径を有するディスク形状のセラミック焼結体を形成した。ASTM B962-17に従って密度測定を行い、80モル%のイットリア/20モル%のジルコニアを含むセラミック焼結体の理論密度の99.6%に相当する5.11g/ccの平均密度が測定された。セラミック焼結体の気孔率(本明細書では体積気孔率Vpとも呼ばれる)は、0.4%の量であった。
【0185】
実施例4(試料4、表1)実施例3の材料及び方法に従ってセラミック焼結体を形成した。セラミック焼結体を、1200℃の温度で酸素含有環境中で8時間アニールした。ASTM B962-17に従って密度測定を行い、80モル%のイットリア/20モル%のジルコニアを含むアニールしたセラミック焼結体の理論密度の99.6%に相当する5.11g/ccの平均密度が測定された。セラミック焼結体の気孔率(本明細書では体積気孔率Vpとも呼ばれる)は、0.4%の量であった。
【0186】
実施例5(試料5、表1)実施例3の材料及び方法に従ってセラミック焼結体を形成した。セラミック焼結体を、1300℃の温度で酸素含有環境中で8時間更にアニールした。ASTM B962-17に従って密度測定を行い、80モル%のイットリア/20モル%のジルコニアを含むセラミック焼結体の理論密度の99.2%に相当する5.09g/ccの平均密度が測定された。セラミック焼結体の気孔率(本明細書では体積気孔率Vpとも呼ばれる)は、0.8%の量であった。
【0187】
実施例6(試料6、表1)粉末重量で35%のエタノール及び粉末重量で100%のジルコニア媒体を粉末混合物に添加してスラリーを形成したことを除いて、実施例1の材料及び方法に従って粉末混合物を形成し、乾燥させた。焼成は、空気中、850℃で6時間実施した。次に、焼成粉末混合物を、本明細書に開示される方法に従って、真空下で、1450℃の焼結温度、20MPaの圧力、30分の焼結時間で焼結して、150mmの直径を有するディスク形状のセラミック焼結体を形成した。セラミック焼結体を1300℃の酸素含有環境下で8時間アニールした。ASTM B962-17に従って密度測定を行い、80モル%のイットリア/20モル%のジルコニアを含むセラミック焼結体の理論密度の99.6%に相当する5.11g/ccの平均密度が測定された。セラミック焼結体の気孔率(本明細書では体積気孔率Vpとも呼ばれる)は、0.4%の量であった。
【0188】
実施例7(表1の試料7)焼成粉末混合物を実施例1に開示したように形成した。次いで、焼成粉末混合物を、本明細書に開示される方法に従って、真空下で1500℃の焼結温度、30MPaの圧力、30分の焼結時間で焼結して、100mmの直径を有するディスク形状のセラミック焼結体を形成した。ASTM B962-17に従って密度測定を行い、80モル%のイットリア/20モル%のジルコニアを含むセラミック焼結体の理論密度の100%に相当する5.13g/ccの平均密度が測定された。セラミック焼結体は、気孔(porosity)を有していなかった。
【0189】
実施例8(表1の試料8)6~8m2/gの表面積を有するイットリアの粉末及び6~8m2/gの表面積を有するジルコニアの粉末を秤量し、混合して、90モル%イットリア及び10モル%ジルコニアの比の粉末混合物を作製した。粉末混合物の重量に対して約35重量%のエタノールを添加することによってスラリーを形成し、ジルコニア媒体を粉末の重量に対して100%の添加量で添加した。粉末混合物を、約125のRPMで約12時間ボールミル処理した。粉末混合物を空気中1000℃で8時間焼成した。次いで、焼成粉末混合物を、本明細書に開示される方法に従って、真空下で1500℃の焼結温度、30MPaの圧力、30分の焼結時間で焼結して、100mmの直径を有するディスク形状のセラミック焼結体を形成した。ASTM B962-17に従って密度測定を行い、90モル%のイットリア/10モル%のジルコニアを含むセラミック焼結体の理論密度の100%に相当する5.08g/ccの平均密度が測定された。セラミック焼結体は、気孔(porosity)を有していなかった。
【0190】
【0191】
実施例9及び10実施例1の開示に従って、焼成粉末混合物を作製した。焼成粉末混合物を、本明細書に開示される方法に従って、真空下で、1600℃の焼結温度、15MPaの圧力、45分の焼結時間で焼結して、試料9に相当する406mmの直径を有するディスク形状のセラミック焼結体を形成した。更に、試料9のセラミック焼結体を、空気中1400℃で8時間アニールした。試料10は、本明細書に開示される方法に従って、真空下で、1625℃の焼結温度、20MPaの圧力、60分の焼結時間で焼結して406mmの直径を有するディスク形状のセラミック焼結体を形成することによって、実施例1の焼成粉末混合物から形成した。誘電率及び損失係数は、1MHzの周波数及び周囲温度でASTM D-150に従って測定し、結果は以下に列挙する通りである。実施された測定の範囲内で、アニールされたイットリアジルコニアセラミック焼結体及びアニールされなかったイットリアジルコニアセラミック焼結体について、同じ誘電性能が測定された。
【0192】
【0193】
実施例11焼成粉末混合物を、実施例1の開示に従って形成した。焼成粉末混合物を、本明細書に開示される方法に従って、真空下で、1625℃の焼結温度、15MPaの圧力、90分の焼結時間で焼結して、取扱いが容易な直径572mmを有するディスク形状の無傷の80モル%イットリア/20モル%ジルコニアセラミック焼結体を形成した。焼結セラミック体を酸素含有雰囲気中1400℃で10分間アニールした。その後、ASTM B962-17に従って焼結体に対して密度測定を実施した。5.13g/ccの密度が測定され、これは、80モル%のイットリア及び20モル%のジルコニアを含む焼結体についての理論密度(本明細書では5.13g/ccとする)の約100%に相当する。表面粗さ測定は、Keyence 3Dレーザー走査共焦点デジタル顕微鏡モデルVK-X250Xを使用して実施した。ISO 25178 Surface Texture(Areal Roughness measurement)は、この顕微鏡が準拠する表面粗さの分析に関する国際規格の集合である。焼結セラミック体について、Sa(算術平均高さ)及びSz(最大高さ/山-谷)のパラメータを測定した。Saは、焼結セラミック体の表面のユーザ定義領域にわたって計算された平均粗さ値を表す。Szは、焼結セラミック体の表面のユーザ定義領域にわたる最大山-谷距離を表す。Sa及びSzの表面粗さの特徴は基礎となる技術分野において公知のパラメータであり、例えば、ISO標準25178-2-2012に記載されている。
【0194】
90nm未満、より好ましくは70nm未満、より好ましくは50nm未満、より好ましくは25nm未満、及び好ましくは15nm未満のSa値が、ISO規格25178-2-2012に従って研磨表面上で測定された。
【0195】
3.5μm未満、好ましくは2.5μm未満、好ましくは2μm未満、好ましくは1.5μm未満、及びより好ましくは1μm未満のSz値が、ISO規格25178-2-2012に従って研磨表面上で測定された。
【0196】
特定の具体的な実施形態及び実施例を参照して上に図示して説明したが、本開示は示した詳細に限定されるものではない。むしろ、特許請求の範囲の均等物の範囲及び範囲内で、本開示の趣旨から逸脱することなく、詳細において様々な修正を行うことができる。例えば、本書において記載されている全ての広義の範囲は、広義の範囲に含まれる全ての狭義の範囲もその範囲に含まれることが明示的に意図されている。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムを含む、セラミック焼結体であって、
前記セラミック焼結体が、75モル%以上95モル%以下の酸化イットリウムと、5モル%以上25モル%以下の酸化ジルコニウムと、を含み、前記セラミック焼結体が、2体積%未満の量の気孔率を含み、前記セラミック焼結体の密度が、最大寸法にわたって理論密度に対して2%を超えて変化せず、前記セラミック焼結体が、ASTM El12-2010に従って測定して0.4~2μm未満の平均粒径を有する、セラミック焼結体。
【請求項2】
酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムを含む少なくとも1つの表面を有し、前記少なくとも1つの表面が研磨され、前記少なくとも1つの表面の気孔面積で2%未満の量の気孔率を含む、請求項1に記載のセラミック焼結体。
【請求項3】
研磨表面上で測定される気孔率が、前記セラミック焼結体全体にわたって延びる、請求項2に記載のセラミック焼結体。
【請求項4】
研磨表面にわたって測定して0.1μm以上3μm以下の気孔径を有する、請求項1又は2に記載のセラミック焼結体。
【請求項5】
ASTM El 12-2010に従って測定して0.75μm~6pmの平均粒径で少なくとも1つの表面を有する、請求項1又は2に記載のセラミック焼結体。
【請求項6】
c型立方固溶体相を含む、請求項1又は2に記載のセラミック焼結体
。
【請求項7】
各々前記焼結体の最長延長部に関して、100mm~622mm、好ましくは100~575mm、好ましくは100~406mm、好ましくは150~622mm、好ましくは150~575mm、好ましくは150~406mm、好ましくは406~622mm、及びより好ましくは406~575mmの最大寸法を有する、請求項1又は2に記載のセラミック焼結体。
【請求項8】
請求項1に記載のセラミック焼結体を作製する方法であって、
a.酸化イットリウム及び酸化ジルコニウムの粉末を組み合わせて、粉末混合物を作製する工程と、
b.熱を加えて前記粉末混合物の温度を焼成温度に上昇させ、前記焼成温度を維持することによって前記粉末混合物を焼成して、焼成粉末混合物を形成する工程と、
c.焼結装置の導電性ツールセットによって画定された容積内に前記焼成粉末混合物を入れ、前記容積内に真空条件を作り出す工程と、
d.焼結温度に設定された前記導電性ツールを直流電流を用いて加熱しながら、前記焼成粉末混合物に圧力を加え、焼結を行って、前記セラミック焼結体を形成する工程と、
e.前記セラミック焼結体の温度を下げる工程と、を含む、方法。
【請求項9】
f.任意選択的に、熱を加えてアニール温度に到達するように前記セラミック焼結体の温度を上昇させることによって前記セラミック焼結体をアニールして、アニールしたセラミック焼結体を形成する工程と、
g.前記アニールしたセラミック焼結体の温度を下げる工程と、を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
h.任意選択的に、前記セラミック焼結体を機械加工して、プラズマ加工チャンバ内の窓、RF窓、蓋、フォーカスリング、シールドリング、ノズル、ガス注入器、シャワーヘッド、ガス分配プレート、チャンバライナ、チャック、静電チャック、パック、及び/又はカバーリングなどのセラミック焼結体構成要素を形成する工程を更に含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記焼成粉末混合物がICP-MS法を用いて測定して、100%の純度に対して99.99%以上の純度を有する、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項12】
前記焼成粉末混合物が、ASTM C1274に従って測定して、2~14m
2/g、好ましくは2~12m
2/g、好ましくは2~10m2/g、好ましくは2~8m2/g、好ましくは2~6m2/g、好ましくは2.5~10m2/g、好ましくは3~10m2/g、好ましくは4~10m2/g、及びより好ましくは2~5m2/gの比表面積(SSA)を有する、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項13】
前記焼成温度が600℃~1200℃である、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項14】
前記圧力が10~60MPaである、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項15】
前記焼結温度が1200℃~1700℃である、請求項8又は9に記載の方法。
【国際調査報告】