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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(54)【発明の名称】被検者の汗からの化学種の検出
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20240604BHJP
   G01N 27/30 20060101ALI20240604BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20240604BHJP
   G01N 27/28 20060101ALI20240604BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20240604BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20240604BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20240604BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
A61B5/00 N
G01N27/30 A
G01N27/416 331
G01N27/28 321F
G01N27/416 311K
G01N37/00 101
G01N35/10 A
G01N33/50 X
G01N21/78 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023574367
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(85)【翻訳文提出日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 EP2022064783
(87)【国際公開番号】W WO2022253843
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】2105827
(32)【優先日】2021-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.JAVA
(71)【出願人】
【識別番号】520466744
【氏名又は名称】ノップトラック
【氏名又は名称原語表記】NOPTRACK
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】アマトール クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ファーヴル ジル
(72)【発明者】
【氏名】ベドウィ フェティ
(72)【発明者】
【氏名】チェン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】グリヴォー ソフィー
(72)【発明者】
【氏名】セラ カトリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】トワン ローラン
【テーマコード(参考)】
2G045
2G058
4C117
【Fターム(参考)】
2G045CB12
2G045DB05
2G045FB01
2G045FB05
2G045JA08
2G058DA07
2G058GA12
4C117XA01
4C117XB01
4C117XC11
4C117XD05
4C117XE06
(57)【要約】
汗に溶解した少なくとも一酸化窒素を検出するために、人間又は動物の被検者の表皮の調査ゾーン上に配置される検出装置であって、汗の流れを導くためのマイクロ流体回路(8)を画定し、表皮からの汗の通過を可能にする入口オリフィス(4)を含む構造体(1)であって、前記マイクロ流体回路は、前記マイクロ流体回路(8)は前記入口オリフィスと連通している少なくとも1つのマイクロ流体チャネル(9)を備える、構造体(1)と、前記マイクロ流体チャネルの長手方向に連続して配置された少なくとも4つの電極を備え、前記少なくとも4つの電極は、参照電極、少なくとも2つの作用電極、及びカウンター電極を含み、一酸化窒素の濃度を表す信号を生成するように構成され、更に、ディプリーションを行う、及び/又は、前記汗の流れの流量を表す信号を生成する、少なくとも1つの電気化学センサ(10)と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汗に溶解した少なくとも一酸化窒素を検出するために、人間又は動物の被検者の表皮の調査ゾーン(97)上に配置される検出装置(100)であって、
マイクロ流体回路(8)を画定し、表皮からの汗の通過を可能にする入口オリフィス(4)を含む構造体であって、前記マイクロ流体回路(8)は、汗の流れ(98)を導くための少なくとも1つのマイクロ流体チャネル(9)を備え、前記マイクロ流体チャネル(9)は前記入口オリフィス(4)と連通している、構造体と、
前記マイクロ流体チャネル(9)内の前記汗の流れ(98)に溶解した一酸化窒素の濃度を表す少なくとも1つの信号を生成するように構成された少なくとも1つの電気化学センサ(10)と、
を備え、
前記電気化学センサ(10)は、前記マイクロ流体チャネル(9)の長手方向に連続して配置された少なくとも4つの電極を備え、前記少なくとも4つの電極は、参照電極(21)、少なくとも2つの作用電極(20、23)、及びカウンター電極(30)を含み、
前記電気化学センサは、更に、
前記マイクロ流体チャネル(9)内の前記汗の流れに含まれる化学種であって、一酸化窒素の酸化電位よりも低い酸化電位を有する化学種をディプリートさせること、
前記マイクロ流体チャネル(9)内の前記汗の流れの流量を表す信号を生成すること、
のうち少なくとも1つの追加オペレーションを実行するように構成されていることを特徴とする検出装置(100)。
【請求項2】
前記構造体は、下層(3)と、前記下層(3)の上の少なくとも1つの層と、を含む多層構造(1)であり、
前記マイクロ流体回路(8)は、前記下層(3)と平行に延在し、
前記下層(3)は前記入口オリフィス(4)を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の検出装置(100)。
【請求項3】
前記多層構造(1)は、上層(7)と、前記下層(3)と前記上層(7)との間に位置する少なくとも1つの中間層(6)と、を含み、
前記マイクロ流体回路(8)は、少なくとも1つの中間層(6)の厚さの中に形成される
ことを特徴とする請求項2に記載の検出装置(100)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの中間層は、第1の中間層(6)と、前記第1の中間層(6)と前記上層(7)との間に位置する第2のシール中間層(26)と、を含み、
前記第2のシール中間層(26)は、前記電極に開口部(28)を備える
ことを特徴とする請求項3に記載の検出装置(100)。
【請求項5】
前記多層構造(1)は、上層(7)と、前記上層(7)を横切る出口オリフィス(13)と、を含み、
前記少なくとも1つのマイクロ流体チャネル(9)は、前記出口オリフィス(13)と連通している
ことを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の検出装置(100)。
【請求項6】
前記少なくとも4つの電極は、上部で前記マイクロ流体チャネル(9)を閉鎖する前記上層(7)の内面に配置される、及び/又は、底部で前記マイクロ流体チャネル(9)を閉鎖する前記下層(3)の上面に配置される
ことを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載の検出装置(100)。
【請求項7】
前記流れ(98)の方向において、前記少なくとも4つの電極は、
ディプリーション電極の形態の前記第1の作用電極(20)と、
一酸化窒素の濃度を測定するための前記第2の作用電極(23)と、
前記カウンター電極と、
を順番に備え、
前記参照電極(21)は、前記第1の作用電極(20)のすぐ上流の位置、又は、前記第2の作用電極(23)のすぐ下流の位置に配置される
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の検出装置(100)。
【請求項8】
前記流れ(98)の方向において、前記少なくとも4つの電極は、
一酸化窒素の濃度を測定するための前記第1の作用電極(20)と、
一酸化窒素の濃度を測定するための前記第2の作用電極(23)と、
前記カウンター電極と、
を順番に備え、
前記参照電極(21)は、前記第1の作用電極(20)のすぐ上流の位置、又は、前記第2の作用電極(23)のすぐ下流の位置に配置される
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の検出装置(100)。
【請求項9】
前記電気化学センサ(10)は、前記第1の作用電極(20)における電流の変化と前記第2の作用電極(23)における電流の変化との間の遅延(Δt)を測定することによって前記流量を表す信号を生成するように構成されている
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の検出装置(100)。
【請求項10】
前記電気化学センサ(10)は、一酸化窒素の濃度を表す信号と、前記汗の流れ(98)の前記流量を表す信号と、に基づいて、前記調査ゾーン(97)での一酸化窒素の瞬間的な生成を表す信号を生成するように構成されている
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の検出装置(100)。
【請求項11】
前記電気化学センサ(10)は、前記作用電極(20、23)の少なくとも1つと前記カウンター電極(30)との間の電気測定、特に電流測定によって、一酸化窒素の濃度を表す信号を生成するように構成されている
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の検出装置(100)。
【請求項12】
前記電気化学センサ(10)は、前記作用電極(20、23)の少なくとも1つを一酸化窒素の酸化のための電位に分極するように構成される
ことを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の検出装置(100)。
【請求項13】
前記電気化学センサ(10)は、汗に溶解した亜硝酸イオン、過酸化水素、及び過酸化亜硝酸塩の化合物のうちの少なくとも1つについての、前記汗の流れ中における濃度を表す信号を生成するように構成されている
ことを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の検出装置(100)。
【請求項14】
前記電気化学センサ(10)は、化合物を測定するために、前記第1又は第2の作用電極(20、23)と前記カウンター電極との間に第3の作用電極(25)を備える
ことを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の検出装置(100)。
【請求項15】
前記電気化学センサ(10)の下流の前記チャネル(9)に接続された比色検出装置(18)を備え、
前記比色検出装置(18)は、前記汗に溶解した、亜硝酸イオン、過酸化水素、過酸化亜硝酸塩、二酸化硫黄、硫化水素、一酸化窒素、一酸化炭素、及び次亜塩素酸の化合物の1つと反応することができ、前記汗の流れ(98)の中の化合物の量を示す色付きのインジケータを提供する化学試薬が含浸された親水性多孔質体を備える
ことを特徴とする請求項1~14のいずれか1項に記載の検出装置(100)。
【請求項16】
前記化学試薬は、前記汗の流れ(98)に溶解した亜硝酸イオンと反応できるグリース試薬を含む
ことを特徴とする請求項15に記載の検出装置(100)。
【請求項17】
前記比色検出装置(18)は、前記出口オリフィス(13)に配置される
ことを特徴とする請求項5を引用する請求項15又は16に記載の検出装置(100)。
【請求項18】
前記電気化学センサ(10)は、周期的に反復して所定の時間の間、前記作用電極(20、23、25)の少なくとも1つを分極するように構成される
ことを特徴とする請求項1~17のいずれか1項に記載の検出装置(100)。
【請求項19】
前記マイクロ流体回路(8)は、それぞれが汗の流れを案内する複数のマイクロ流体チャネル(9)を備え、
前記複数のマイクロ流体チャネル(9)は、互いから離れるように前記入口オリフィス(4)に接続される
ことを特徴とする請求項1~18のいずれか1項に記載の検出装置(100)。
【請求項20】
前記複数のマイクロ流体チャネル(9)は、電気化学センサ(10)を含む追加のマイクロ流体チャネル(9)を含み、
前記電気化学センサ(10)は、前記追加のマイクロ流体チャネル(9)の長手方向に連続的に配置された少なくとも3つの電極を備え、
前記少なくとも3つの電極は、参照電極(21)と、カウンター電極(30)と、少なくとも1つの作用電極(20、23、25)と、を含み、
前記追加の電気化学センサ(10)は、亜硝酸イオン、過酸化水素、及び過酸化亜硝酸塩から選択される化合物の酸化のための電位に電極を分極するように構成されており、
前記追加の電気化学センサ(10)は、前記追加のマイクロ流体チャネル(9)内の汗の流れに溶解した前記化合物の濃度を表す少なくとも1つの信号を生成するように構成されている
ことを特徴とする請求項1~19のいずれか1項に記載の検出装置(100)。
【請求項21】
前記複数のマイクロ流体チャネルは、比色検出装置(18)を含む追加のマイクロ流体チャネル(109)を含み、
前記比色検出装置(18)は、亜硝酸イオン、過酸化水素、過酸化亜硝酸塩、二酸化硫黄、硫化水素、一酸化窒素、一酸化炭素、及び次亜塩素酸の化合物の1つと反応することができ、前記追加のマイクロ流体チャネル(109)内の汗の流れに溶解している前記化合物の濃度又は量を示す色付きのインジケータを提供する化学試薬が含浸された親水性多孔質体を備える
ことを特徴とする請求項19又は20に記載の検出装置(100)。
【請求項22】
前記追加のチャネル(109)は、前記入口オリフィス(4)に接続されたクロノサンプリングシステムを備え、
前記クロノサンプリングシステムは、汗が順番に満たされるように構成された複数のチャンバを含み、
複数の比色検出装置(18)が前記チャンバ内に配置され、
前記複数の比色検出装置(18)のそれぞれは、化合物と反応することができる化学試薬を含み、これによって、前記チャンバ内に配置された前記比色検出装置は、前記追加のマイクロ流体チャネル(109)内の前記汗の流れにおける前記化合物の累積量を示す色付きのインジケータを提供する
ことを特徴とする請求項21に記載の検出装置(100)。
【請求項23】
可視又は紫外スペクトルにおける前記化学試薬の色の強度を表す測定信号を生成するように構成された光学センサを備える
ことを特徴とする請求項15~17及び21~22のいずれか1項に記載の検出装置(100)。
【請求項24】
前記検出装置(100)によって生成された1つ又は複数の測定信号をストレージ又は後処理装置に送信するように構成された通信デバイス(17)を備える
ことを特徴とする請求項1~23のいずれか1項に記載の検出装置(100)。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか1項に記載の検出装置(100)を備える携帯装置であって、
時計、電話、布地、ヘッドバンド、衣服、又は下着の形で実装されることを特徴とする携帯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間又は動物の被検者の汗に溶解している化学種、より具体的には一酸化窒素を検出及び測定するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一酸化窒素は細胞間メッセンジャー(intercellular messenger)を構成する気体である。これは、機械的伝達によるストレスの重要な心血管メッセンジャー(cardiovascular messenger)である。より具体的には、筋肉運動中に血管系の血管拡張を刺激するために放出される。従って、血液、ひいては血液と平衡状態にある液体、例えば汗など、の中で生成されるガスの流れの変化は、運動試験中に必要な筋力に適応する患者の心臓血管能力の特に関連する指標を構成する。
【0003】
従って、製造が容易で、信頼性が高く、使用が容易な、一酸化窒素(NO)を検出するための装置を開発する真の必要性がある。
【0004】
国際公開第2019/229380号には、被検者の表皮の汗中の一酸化窒素を瞬間的に測定できる装置とその臨床応用が記載されている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の特定の態様は、汗中の一酸化窒素濃度の変化の定量的測定が、予防検査中に心血管能力をモニタリングするため又は診断を確立するための非侵襲的技術を提供するという考えに基づいている。
【0006】
本発明の特定の態様は、酸素分子の存在下で、一酸化窒素が自発的に反応して、全体の化学量論が1:1の反応を介して亜硝酸イオン(NO )を生成するという観察に基づいている。言い換えれば、一酸化窒素の濃度の変化は特定の運動に対する心臓血管系の反応の現在の状態を表すのに対し、亜硝酸イオンの濃度の変化はこれらの反応の一時的な記録を構成する。
【0007】
本発明の特定の態様は、統合された電気化学装置によって複数の化合物を組み合わせて検出するという考えに基づいている。
【0008】
本発明の特定の態様は、一酸化窒素及び亜硝酸イオンの濃度の変化が、統合された電気化学装置によって結合された方法で検出及び定量化され得るという考えに基づいている。
【0009】
本発明の特定の態様は、一酸化窒素が酸素分子(O)及び電子源の存在下での細胞内L-アルギニンの分解から特殊な酵素(NOシンターゼ)によって生成されるという観察に基づいている。高レベルの摂取(例えば、長時間の運動後)又は慢性的な欠乏により、L-アルギニンの利用可能性が減少すると、NOシンターゼは酸素と反応し続け、酸素分子をスーパーオキシドイオン(O2 )に還元することに限定される。後者は、全体の化学量論比2:1の反応を介して、自発的に非常に急速に過酸化水素(H)に変化する。本発明の特定の態様は、血液ひいては汗などの中で検出可能な濃度の過酸化水素の存在が、心臓血管網の苦痛のレベルを表す指標を提供するという考えに基づいている。更に、金属塩の存在下では、過酸化水素は分解して毒性の高いラジカル種(HO・、HO・など)を形成し、心臓を含む心血管系の細胞に非常に大きなダメージを与える可能性がある。本発明の特定の態様は、一酸化窒素及び/又は亜硝酸イオンの生成の検出と並行して過酸化水素の生成を検出することが、患者の心血管能力の評価に関連するという考えに基づいている。
【0010】
本発明の特定の態様は、電気化学装置によって少なくとも一酸化窒素の量を測定し、比色技術によって亜硝酸イオンの量を測定するという考えに基づいている。
【0011】
本発明の特定の態様は、伝達される筋力の関数として生成される熱エネルギーの除去能力を調整するために汗の体積流量が変化する可能性があるため、被検者の生理学的システムは動的であるという観察に基づいている。血液と汗との界面における各化学種の交換の流れは、被検者の運動の関数として変化する可能性がある。本発明の特定の態様は、例えば、被検者の運動試験又は医学的モニタリング中において、例えば、一酸化窒素、亜硝酸イオン、過酸化水素、及びオプションとして過酸化亜硝酸塩から選択される1つ又は複数の化学種の生成を定量的且つ動的に検出するという考えに基づいている。
【0012】
この目的のために、本発明は、汗に溶解した少なくとも一酸化窒素を検出するために、人間又は動物の被検者の表皮の調査ゾーン上に配置される検出装置であって、
汗の流れを導くためのマイクロ流体回路を画定し、表皮からの汗の通過を可能にする入口オリフィスを含む構造体であって、前記マイクロ流体回路は、少なくとも1つのマイクロ流体チャネルを備え、前記マイクロ流体チャネルは前記入口オリフィスと連通している、構造体と、
前記マイクロ流体チャネルの長手方向に連続して配置され、参照電極、少なくとも2つの作用電極、及びカウンター電極を含む少なくとも4つの電極を備える少なくとも1つの電気化学センサと、
を備え、
前記電気化学センサは、前記汗の流れに溶解した一酸化窒素の濃度を表す少なくとも1つの信号を生成するように構成され、更に、
前記汗の流れに含まれる化学種であって、一酸化窒素の酸化電位よりも低い酸化電位を有する化学種をディプリートさせること、
前記汗の流れの流量を表す信号を生成すること、
のうち少なくとも1つの追加オペレーションを実行するように構成されていることを特徴とする検出装置を提供する。
【0013】
これらの特性により、汗に溶解した一酸化窒素(NO)濃度を確実に測定することが可能である。
【0014】
表皮とは、人間や動物の皮膚の表層を指す。
【0015】
検出装置は非侵襲的であり、傷に適用する必要がない。
【0016】
実施形態によれば、この種の装置は、以下の特徴のうちの1つ以上を備えることができる。
【0017】
一実施形態によれば、前記構造体は、下層と、前記下層の上の少なくとも1つの層と、を含む多層構造であり、前記マイクロ流体回路は、前記下層と平行に延在し、前記下層は前記入口オリフィスを含む。
【0018】
一実施形態によれば、前記電気化学センサ、又はそれぞれの電気化学センサ、又は少なくとも1つの電気化学センサは、マイクロ流体チャネル内の汗の流れの流量、つまりマイクロ流体チャネル内の汗の体積流量を表す信号を生成するように構成されている。
【0019】
一実施形態によれば、前記多層構造は、上層と、前記下層と前記上層との間に位置する少なくとも1つの中間層と、を含み、前記マイクロ流体回路は、少なくとも1つの中間層の厚さの中に形成される。これらの層は、任意の適切な技術、例えば、接着剤、溶接、機械的クランプなどによって互いに固定することができる。
【0020】
これらの特性により、検出装置の製造、組み立て、ひいては工業化が容易になる。
【0021】
一実施形態によれば、前記少なくとも1つの中間層は、第1の中間層と、前記第1の中間層と前記上層との間に位置する第2のシール中間層と、を含み、前記第2のシール中間層は、前記電極に開口部を備える。
【0022】
これらの特性により、検出装置は、表皮に適用される場合、あらゆる曲率に適応する。更に、1つ以上の中間層は、少なくとも4つの電極の厚さを補償できる厚さを作り出すことも可能にする。従って、検出装置の密閉性が確保される。
【0023】
一実施形態によれば、前記少なくとも1つの中間層は、1つ以上の電気化学的測定をされた汗の流れの排出を可能にする出口オリフィスを備える。
【0024】
一実施形態によれば、前記多層構造は、上層と、前記上層を横切る出口オリフィスと、を含み、前記少なくとも1つのマイクロ流体チャネルは、前記出口オリフィスと連通している。
【0025】
一実施形態によれば、下層は、柔軟な生体適合性材料で作られた接着剤でコーティングされている。一実施形態によれば、下層は、皮膚上に配置することを目的とした第1の面と、重ねられた層を受け入れることを目的とした第2の面に粘着性がある。
【0026】
これらの特性により、検出装置は、被検者の表皮の調査ゾーンにおける汗の循環を妨げることなく、少なくとも一酸化窒素の濃度を測定する。これは、検出装置が被検者の表皮の調査ゾーンの表皮を通る汗の通過に影響を与えることなく動作することを意味する。
【0027】
一実施形態によれば、多層構造は、次の材料の1つ以上から作られている。
-シリカ、ガラス、感光性ガラスなどの無機材料。
-ポリジメチルシロキサン(PDMS)、(ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレンオキシド)、TiO、アルミニウムフィルム、ポリカチオン、ポリアニオン、mPEG、ゾルゲル、アミン-チオール-カルボキシルアルコキシシラン、界面活性剤)で変性された変性ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、及びポリカーボネート(PC)などのエラストマー材料。
-感光性樹脂SU-8などの熱硬化性材料。
-ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、パーフルオロアルコキシ(テフロン-PFA(登録商標))、フルオロエチレンプロピレン(テフロン-FEP(登録商標))などの熱可塑性材料。
-マトリゲル(登録商標)、コラーゲン、キトサン、アルギン酸塩、アガロース、PEG、ポリアクリルアミドなどのヒドロゲル材料。
-セルロースなどの紙素材。
【0028】
一実施形態によれば、多層構造は、ポリマー材料で作られた少なくとも1つの層を含む。例えば、ポリマー材料内のマイクロ流体回路を追跡するには、膜切断又は成形技術を使用することができる。
【0029】
一実施形態によれば、多層構造はポリマー材料で作られている。
【0030】
一実施形態によれば、多層構造は、繊維材料、例えば紙又は不織布で作られた少なくとも1つの層を含む。例えば、繊維状材料内のマイクロ流体回路を追跡するには、マイクロ流体回路の輪郭を画定する疎水性インク又は疎水性樹脂のコーティングを使用することができる。
【0031】
これらの特性により、多層構造は軽量で柔軟性があり、しなやかである。特に、これにより、検出装置を、装置の損傷や検出の信頼性の低下のリスクなしに、背中、腕、肩、脚、首筋などの体の多くの部分に使用できるようになる。
【0032】
一実施形態によれば、多層構造は、ガラス製の少なくとも1つの層を含む。
【0033】
好ましくは、多層構造は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、アクリル接着剤、ポリブチレートアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリウレタン層及びポリアクリレート層(MPU)から作られる。
【0034】
一実施形態によれば、前記少なくとも4つの電極は、上部で前記マイクロ流体チャネルを閉鎖する前記上層の内面に配置される、及び/又は、底部で前記マイクロ流体チャネルを閉鎖する前記下層の上面に配置される。
【0035】
これらの特性により、検出装置の電極が確実に配置されている。更に、マイクロ流体回路が中間層に形成される場合、平面層上に電極を製造することが可能であるという点で、これらの電極を含む多層構造の製造が容易になる。
【0036】
一実施形態によれば、電極は適用される金属で構成される。
【0037】
一実施形態によれば、適用される金属は、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、白金黒からなるグループから選択される。グラファイト又はカーボンも使用できる。一実施形態によれば、電気化学センサは、銀/塩化銀(Ag/AgCl)又はその他の参照電極で構成される。
【0038】
一実施形態によれば、電気化学センサは、一酸化窒素の酸化電位よりも低い酸化電位を有する化学種をディプリートさせるように構成されている。この目的のために、一実施形態では、前記流れの前記方向において、前記少なくとも4つの電極は、ディプリーション電極の形態の前記第1の作用電極と、一酸化窒素の濃度を測定するための前記第2の作用電極と、前記カウンター電極と、を順番に備え、前記参照電極は、前記第1の作用電極のすぐ上流の位置、又は、前記第2の作用電極のすぐ下流の位置に配置される。
【0039】
これらの特性により、一酸化窒素の酸化電位よりも低い電位で酸化する化合物に起因する可能性のあるスプリアス信号を大幅に低減することにより、電気化学センサの精度を高めることが可能である。従って、電極のセットは相乗的に作用して、正確な結果が得られる。
【0040】
一実施形態によれば、ディプリーション電極は、一酸化窒素の濃度を測定するのに必要な第2の作用電極よりも幅が広く、例えば少なくとも4倍の幅である。
【0041】
ディプリーション電極の表面積が大きいため、ディプリーション電極上を通過する汗の流れの電気分解は実質的に完了する可能性がある。更に、電極の不動態化現象が軽減される。
【0042】
一実施形態によれば、1つ以上の電極、例えばディプリーション電極は白金(Pt)黒で覆われている。
【0043】
これらの特性により、この電極は、Ptブラック樹枝状結晶の不完全な反応性を利用して電気化学反応の触媒作用を可能にし、地金表面の不活性化を防ぐ。
【0044】
一実施形態によれば、電気化学センサは、過酸化水素(H2O2)、過酸化亜硝酸塩(ONOO)、及びこれらの電位で酸化する他の化学種から選択される少なくとも1つの化学種の酸化を可能にする電位にディプリーション電極を分極するように構成されている。
【0045】
一実施形態によれば、電気化学センサのカウンター電極は、カウンター電極の上流に配置された一組の電極の幅の合計に少なくとも等しい幅を有する。
【0046】
一実施形態によれば、電気化学センサは、マイクロ流体チャネル内の汗の流れの流量を測定するように構成されている。この目的のために、一実施形態によれば、前記流れの前記方向において、前記少なくとも4つの電極は、一酸化窒素の濃度を測定するための前記第1の作用電極と、一酸化窒素の濃度を測定するための前記第2の作用電極と、前記カウンター電極と、を順番に備え、前記参照電極は、前記第1の作用電極のすぐ上流の位置、又は、前記第2の作用電極のすぐ下流の位置に配置される。
【0047】
これらの特性により、第1の作用電極と第2の作用電極との間の汗の流れの流量を測定することができる。
【0048】
一実施形態によれば、前記電気化学センサは、前記第1の作用電極における電流の変化と前記第2の作用電極における電流の変化との間の遅延を測定することによって前記流量を表す信号を生成するように構成されている。
【0049】
一実施形態によれば、上流の作用電極と下流の作用電極との間の距離は、1分間に流れがカバーする距離よりも短いことが好ましい。これらの特性により、被検者の生理学的変化による妨害を受けることなく、正確な流量測定を行うことが可能である。
【0050】
一実施形態によれば、前記電気化学センサは、一酸化窒素の濃度を表す信号と、前記汗の流れの前記流量を表す信号と、に基づいて、前記調査ゾーンでの一酸化窒素の瞬間的な生成を表す信号を生成するように構成されている。
【0051】
「瞬間的な生成」とは、被検者の生理学的反応の変化の特徴的な時間と比較して、非常に短い時間にわたって取得された測定値を意味する。この特性時間は、人間の被検者の場合、通常1分から数分程度である。
【0052】
一実施形態によれば、電気化学センサは、前記作用電極の少なくとも1つと前記カウンター電極との間の電気測定、特に電流測定によって、一酸化窒素の濃度を表す信号を生成するように構成されている。
【0053】
一実施形態によれば、前記電気化学センサは、前記作用電極の少なくとも1つを一酸化窒素の酸化のための電位に分極するように構成される。
【0054】
一実施形態によれば、電気化学センサは、一酸化窒素の濃度を測定することに加えて、汗の流れ中の1つ以上の他の化学種の濃度を測定するように構成されている。この目的のために、電気化学センサは、電流測定によって対象となる1つ以上の化学種の濃度を表す信号を生成するように構成される。
【0055】
一実施形態によれば、電気化学センサは、更に、汗に溶解した亜硝酸イオン、過酸化水素、及び過酸化亜硝酸塩という化合物のうちの少なくとも1つの汗の流れ中の濃度を表す信号を生成するように構成されている。
【0056】
この目的のために、一実施形態によれば、前記電気化学センサは、化合物を測定するために、前記第1又は第2の作用電極と前記カウンター電極との間に第3の作用電極を備える。
【0057】
一実施形態によれば、電気化学センサは、汗の流れ中の複数の化合物の濃度を、化合物の酸化の電位が昇順に連続して測定するように構成されている。
【0058】
一実施形態によれば、前記検出装置は更に、前記マイクロ流体回路に接続された比色検出装置を備える。
【0059】
一実施形態によれば、比色検出装置は、前記電気化学センサの下流の前記チャネルに接続され、前記比色検出装置は、前記汗に溶解した、亜硝酸イオン、過酸化水素、過酸化亜硝酸塩、二酸化硫黄、硫化水素、一酸化窒素、一酸化炭素、及び次亜塩素酸の化合物の1つと反応することができ、前記汗の流れの中の前記化合物の量を示す色付きのインジケータを提供する化学試薬が含浸された親水性多孔質体を備える。
【0060】
一実施形態によれば、前記親水性多孔質体は、微多孔膜、紙、布、セルロース綿、不織布などから選択される。
【0061】
一実施形態によれば、前記化学試薬は、前記汗の流れに溶解した亜硝酸イオンと反応できるグリース試薬を含む。
【0062】
一実施形態によれば、前記比色検出装置は、前記出口オリフィスに配置される。
【0063】
一実施形態によれば、マイクロ流体回路は、互いから離れるように入口オリフィスに接続された複数のマイクロ流体チャネルを備える。
【0064】
以下に説明する実施形態によれば、検出装置は、1つ以上の電気化学センサを用いて、一酸化窒素を含む複数の化学種、例えば2、3、4、又は5種を同時に又は連続して検出できるように実装される。一実施形態によれば、検出装置は、一酸化窒素NO、亜硝酸イオンNO及び過酸化水素Hから選択される化学種の濃度を検出できるように実装される。
【0065】
この実施形態によれば、検出装置は、同じ入口オリフィスによって並行して供給される3つの平行なマイクロ流体チャネルを備える。
【0066】
一実施形態によれば、下層は複数の入口オリフィスを備え、マイクロ流体回路は各入口オリフィスにそれぞれ接続された複数の独立したマイクロ流体チャネルを備える。
【0067】
一実施形態によれば、検出装置は、毛細管現象によって調査ゾーンから入口オリフィスへ、又は入口オリフィスへ汗を導くための繊維体を備える。この種の繊維体は、織布材料であっても、不織布材料であってもよい。
【0068】
一実施形態によれば、前記複数のマイクロ流体チャネルは、電気化学センサを含む追加のマイクロ流体チャネルを含み、前記電気化学センサは、前記追加のマイクロ流体チャネルの長手方向に連続的に配置された少なくとも3つの電極を備え、前記少なくとも3つの電極は、参照電極と、カウンター電極と、少なくとも1つの作用電極と、を含み、前記追加の電気化学センサは、亜硝酸イオン、過酸化水素、及び過酸化亜硝酸塩から選択される化合物の酸化のための電位に電極を分極するように構成されており、前記追加の電気化学センサは、汗の流れに溶解した前記化合物の濃度を表す少なくとも1つの信号を生成するように構成されている。
【0069】
一実施形態によれば、前記電気化学センサは、周期的に反復して所定の時間の間、前記作用電極の少なくとも1つを分極するように構成される。
【0070】
これらの特性により、電極の不動態化現象を軽減しながら、汗の流れに溶解した一酸化窒素の濃度を測定することが可能である。
【0071】
一実施形態によれば、電極は、1秒から500秒の時間の間分極され、これが1分から60分の周期で反復される。
【0072】
これらの特性により、複数の化合物の濃度を測定することが可能である。
【0073】
一実施形態によれば、ポオイゲノール(4-アリル-2-メトキシフェノール)、別のポリフェノール、又は同様のポリマーの層が、電気化学センサの少なくとも1つの作用電極に適用される。この層は電気化学的に塗布されることが好ましい。
【0074】
電気化学センサの他の実施形態を以下に説明する。
【0075】
逐次検出を可能にする一実施形態によれば、前記電気化学センサ、又はそれぞれの電気化学センサ、又は少なくとも1つの電気化学センサは、複数の測定ステップ中に複数の化学種を連続的に検出するように構成され、電気化学センサは、最初のステップ中に過酸化水素Hの酸化のための電位に電極を分極し、第2ステップ中に一酸化窒素NOを酸化するための電位に電極を分極するように構成されており、電気化学センサは、第1のステップで得られた第1の電流測定信号及び第2のステップで得られた第2の電流測定信号に基づいて、一酸化窒素NOの濃度を表す信号を生成するように構成されている。
【0076】
この場合、有利には、前記電気化学センサ、又はそれぞれの電気化学センサ、又は少なくとも1つの電気化学センサは、第3のステップ中に亜硝酸イオンNO の酸化のための電位に電極を分極するように構成され、電気化学センサは、前記第1及び第2電流測定信号と、第3ステップで得られた第3電流測定信号に基づいて、亜硝酸イオンNO の濃度を表す信号を生成するように構成されている。
【0077】
一実施形態によれば、検出装置は、時間的測定シーケンスの複数のステップ中に単一の電気化学センサで前述の化学種のうちの3つを連続的に検出できるように実装される。この実施形態によれば、電気化学センサは、所定のシーケンスで、数秒(例えば5秒)の最初の時間ステップ中に、白金メッキ(白金黒)の白金電極を、過酸化水素Hの酸化のため、次に、同じ時間の2番目の時間的ステップでの一酸化窒素NOの酸化のため、そしてオプションとして、同じ時間の第3の時間的ステップで亜硝酸イオンNO の参加のための電気化学電位に順次分極するように構成される。電気化学センサは、第1のステップで得られた第1の電流測定信号及び第2のステップで得られた第2の電流測定信号に基づいて、一酸化窒素NOの濃度を表す信号を生成するように構成される。
このシーケンスは、運動試験の期間中、必要な回数だけ繰り返される。2つ又は3つの未知数(H、NO、NO の濃度)を持つ3つの方程式系(各電位に分極された電極上で連続して測定された電流)を解決すると、3つの測定に基づいて各シーケンスが実行された瞬間の3つの濃度のそれぞれの値が得られる。
【0078】
同時検出を可能にする別の実施形態によれば、検出装置は、
調査ゾーンからの汗の第1の流れを案内するために入口オリフィスに結合された第1のマイクロ流体チャネルと、第1のマイクロ流体チャネル内に配置された電極を備える第1の電気化学センサであって、過酸化水素Hの酸化のための電位に電極を分極するように構成される第1の電気化学センサと、
調査ゾーンからの汗の第2の流れを案内するために入口オリフィスに結合された第2のマイクロ流体チャネルと、第2の流体回路内に配置された電極を備える第2の電気化学センサであって、一酸化窒素NOの酸化のための電位に電極を分極するように構成される第2の電気化学センサと、
を備え、
電気化学センサは、第1の電気化学センサによって生成される第1の電流測定信号と、第2の電気化学センサによって生成される第2の電流測定信号とに基づいて、一酸化窒素NOの濃度を表す信号を生成するように構成されている。
【0079】
この場合、有利には、検出装置は更に、
調査ゾーンからの汗の第3の流れを案内するために入口オリフィスに結合された第3のマイクロ流体チャネルと、第3の流体回路内に配置された電極を含む第3の電気化学センサであって、亜硝酸イオンNO の酸化のための電位に電極を分極するように構成される第3の電気化学センサ
を備え、
電気化学センサは、前記第1及び第2の電流測定信号と、第3の電気化学センサによって生成される第3の電流測定信号とに基づいて、亜硝酸イオンNO の濃度を表す信号を生成するように構成されている。
【0080】
一実施形態によれば、検出装置は更に、
調査ゾーンからの別の汗の流れ、例えば第4の汗の流れを案内するために入口オリフィスに結合された別のマイクロ流体チャネル、例えば第4のマイクロ流体チャネル、及び、別の電気化学センサ、例えば、第4のマイクロ流体チャネル内に配置された電極を備える第4の電気化学センサを備える。
【0081】
この実施形態によれば、前記他の又は第4の電気化学センサは、電極を一酸化窒素の酸化のための電位に分極するように構成され、第4のマイクロ流体チャネルは、特に過酸化水素を除去するために、第4の電気化学センサの作用電極上にポリオイゲノールの塗布層を含む。
【0082】
一実施形態によれば、装置は更に、被検者の表皮と接触することによって調査ゾーンの周囲に不浸透性の障壁を形成するために、入口オリフィスを覆わずに多層構造の下層の下面を覆う接着材料の層を備える。
【0083】
これらの特性により、調査ゾーンの外にある気体、液体、及び細菌やウイルスなどの微生物は、調査ゾーンに入ることができない。ケーシングと表皮の間の接触が不浸透性であるため、検出される化学種は外部からの流れからではなく、調査ゾーンによって生成された生物学的液体からのものであることが保証される。
【0084】
一実施形態によれば、前記複数のマイクロ流体チャネルは、比色検出装置を含む追加のマイクロ流体チャネルを含み、前記比色検出装置は、亜硝酸イオン、過酸化水素、過酸化亜硝酸塩、二酸化硫黄、硫化水素、一酸化窒素、一酸化炭素、及び次亜塩素酸の化合物の1つと反応することができ、汗の流れに溶解している前記化合物の濃度又は量を示す色付きのインジケータを提供する化学試薬が含浸された親水性多孔質体を備える。
【0085】
これらの特性により、濃度は時間の経過とともに監視されるため、使用状況が読みやすくなる。更に、これにより、電気化学センサを介して得られた結果を統合することができる。
【0086】
一実施形態によれば、前記追加のチャネルは、前記入口オリフィスに接続されたクロノサンプリングシステムを備え、前記クロノサンプリングシステムは、汗が順番に満たされるように構成された複数のチャンバを含み、複数の比色検出装置が前記チャンバ内に配置され、前記複数の比色検出装置のそれぞれは、化合物と反応することができる化学試薬を含み、これによって、前記チャンバ内に配置された前記比色検出装置は、前記汗の流れにおける前記化合物の累積量を示す色付きのインジケータを提供する。
【0087】
1つの適切なクロノサンプリングシステムは、特にChoiらの文献、「汗のクロノサンプリング用の毛細管破裂バルブを備えた、薄くて柔らかい、皮膚に取り付けられたマイクロ流体ネットワーク、Adv.Healthcare Mater.2017」に記載されている。
【0088】
上述した検出装置の構造は、様々な方法、例えば多層構造の形で実現することができる。これらは、積層造形、3Dプリンティング、ラミネート加工、又は連続層への材料の追加によって取得することもできる。
【0089】
一実施形態によれば、検出装置はさらに、可視スペクトル又は紫外スペクトルにおける化学試薬の色の強度を表す測定信号を生成するように構成された光センサを備える。
【0090】
一実施形態によれば、検出装置は、例えばパラメータ化可能な周波数、又は装置によって検出される活動状態に依存する周波数で、測定値を周期的に実行及び送信するように構成される。この装置は、例えば、対象者の活動状態を検出するためのジャイロモジュール及び/又は加速度計を備えることができる。これにより、汗の分析中に被検者の活動状態を検出することができ、被検者の活動状態と分析対象の化学種の生成との相関関係の解析が容易となる。
【0091】
一実施形態によれば、この装置は地理位置情報モジュールを備える。
【0092】
一実施形態によれば、前記検出装置によって生成された1つ又は複数の測定信号をストレージ又は後処理装置に送信するように構成された通信デバイスを備える。
【0093】
第2の主題によれば、本発明は、上述の検出装置を備える携帯装置であって、時計、電話、布地、ヘッドバンド、衣服、又は下着の形で実装される携帯装置に関する。
【0094】
一実施形態によれば、検出装置によって生成された測定値は、接続された時計やスマートフォンを介して受信、読み取り、分析される。測定値は、有線、赤外線、Bluetooth、Wi-Fi、又は3G、4G、又は5G波接続によって受信されてもよい。
【0095】
第2の主題によれば、本発明は、人間又は動物の被検者による汗に溶解した少なくとも一酸化窒素の生成を判定する方法であって、
前記被検者の表皮の調査ゾーンを選択し、
汗の流れに溶解した一酸化窒素NOの濃度を表す信号及び汗の流れの流量を表す信号を生成するのに必要な期間、前述の検出装置を適用し、
汗の流れに溶解した一酸化窒素NOの濃度を表す信号から、被検者による一酸化窒素NOの生成の測定値を決定する
ことを含む方法に関する。
【0096】
一実施形態によれば、前記方法は、事前に調査ゾーンを消毒することを含む。
【0097】
これらの特性により、被検者の皮膚に存在する細菌やウイルスによる一酸化窒素の生成が含まれていないため、汗の中の一酸化窒素の測定がより正確になる。言い換えれば、これにより、検出された化合物が外部からの流れに由来するものではなく、調査ゾーンで生成された汗に由来することが保証される。
【0098】
被検者による前述の化学種の1つ又は複数の生成の測定は、例えば、これらの測定値に基づいて被検者の血管組織への苦痛を評価するため、又はこれらの測定値に基づいて被検者の心血管能力を評価するためなど、様々な用途に利用できる。
【0099】
他に考えられる用途は、心血管疾患、神経変性疾患、肺動脈性肺高血圧症、癌、高コレステロール血症、糖尿病、全身性内皮機能不全、動脈硬化、血栓性若しくは虚血性疾患、血小板蓄積阻害機能障害若しくは白血球接着不全若しくは平滑筋線維細胞の細胞増殖機能障害、気管支炎症、喘息、及びアルツハイマー病などの疾患の診断、医療、及びモニタリングである。
【0100】
他の可能な用途としては、例えば身体トレーニングを受けている個人の成長及び/又は筋肉痛のモニタリング、オーバートレーニングによる怪我の予防、及び/又は対象の筋肉パフォーマンスの向上が挙げられる。
【0101】
本発明の主題をよりよく理解するために、添付の図面に示されるようなその実施形態を、純粋に例示的且つ非限定的な例として以下に説明する。これらの図は、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0102】
図1図1は、一実施形態による検出装置が配置された被検者を背面から見た概略図を表す。
図2図2は、一実施形態による検出装置の多層構造を部分的に表す斜視図である。
図3図3は、図の線II-IIに沿った多層構造の断面図を表す。
図4図4は、一実施形態による多層構造の拡大図である。
図5図5は、別の実施形態による多層構造の拡大図である。
図6図6は、一実施形態による多層構造の電気化学センサの拡大斜視図である。
図7図7は、別の実施形態による多層構造の拡大図である。
図8図8は、検出装置で使用できるマイクロ流体回路の機能概略図である。
図9図9は、検出装置で使用できる別のマイクロ流体回路の別の機能概略図である。
図10図10は、検出装置で使用できる別のマイクロ流体回路の別の機能概略図である。
図11図11は、図2~10のマイクロ流体回路で使用できる電気化学センサの概略斜視図である。
図12図12は、図11の電気化学センサで実行できる検出方法を示すクロノグラムである。
図13図13(A)は、一実施形態による検出装置の図2~10のマイクロ流体回路で使用できる電気化学センサのスキームを表し、図13(B)は、図13(A)の電気化学センサを用いて実行できる汗の流量を検出する方法を表す。
図14図14は、ディプリーション機能を備えた一実施形態による検出装置の電気化学センサのスキームを示す図である。
図15図15は、一実施形態によるディプリーション機能の説明図である。
図16図16は、図14の電気化学センサで実行できる検出方法を示すクロノグラムである。
図17図17は、5つの電極を備えた一実施形態による電気化学センサを概略的に示す図である。
図18図18は、6つの電極を備えた一実施形態による電気化学センサを概略的に示す図である。
図19図19は、比色検出装置を更に含む多層構造の実施形態を概略的に示す図である。
図20図20は、複数のチャネルを有する別の実施形態による多層構造の展開図である。
図21図21は、図1の装置で使用できる検出装置の機能概略図である。
図22図22は、図1の装置で実施できる方法を示すステップの図である。
図23図23は、図1の装置で得られる測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0103】
図1は、被検者の皮膚2上、例えば被検者の背中に配置された検出装置100を示し、検出装置100は、汗に溶けている一酸化窒素及びオプションとして亜硝酸イオン又は過酸化水素を含め、汗に溶けている化学種の定量的測定を行うことを目的とする。検出装置100は、体の他の部分、例えば首筋、肩、腕、脚などに配置されてもよい。
【0104】
検出装置100は、マイクロ流体部分、及び以下で更に説明する他の機能部分、特に制御装置40(図21)、を備える。
【0105】
図2を参照すると、多層構造1は、例えば薄型ケーシングの形態をとり、柔軟で生体適合性を持ち、好ましくは自己粘着性を持つ材料で作られた下層3を備え、下層3は、被検者の皮膚に直接配置することもでき、多層構造1は、更に、下層3の上に第2層6が位置する。多層構造1は、防水材料、例えばポリマーから作られる。
【0106】
第2層6は、その厚さにくり抜かれて、マイクロ流体チャネル9と、下層3に形成された開口部4の上に位置するサンプリングドーム99とを形成する。
【0107】
図3を参照すると、下層3は、接着層96によって皮膚2に貼り付けられている。下層3及び接着層96の中央部分は、被検者の皮膚2上の調査ゾーン97の境界を定める、例えば直径が数mmから数cmの、円形開口部4を備える。円形開口部4は、他の形状、例えば、楕円形、三角形、長方形、正方形、多角形等であってもよい。円形開口部4は、特に汗をマイクロ流体チャネル9に導入するために、汗の流れ98が導かれることを可能にする入口オリフィスである。汗の流れ98は、被検者の皮膚2からマイクロ流体チャネル9に進み、円形開口部4を通過する。
【0108】
図3の実施形態では、上層7が第2層6を覆って、上部にマイクロ流体回路を形成する。従って、マイクロ流体回路は、第2層6の厚さ全体を通して形成することができ、それによって、例えば切断(cutting)又は彫り込み(engraving)による製造が容易になる。
【0109】
親水性コレクタ要素(図示せず)、例えば綿又は不織布材料などの繊維体が、円形開口部4及びドーム99内に配置されてもよい。コレクタ要素の機能は、調査ゾーンで生成された汗をマイクロ流体回路に運ぶことである。
【0110】
図4に示されるように、多層構造は、
汗の通過を可能にする入口オリフィス4を備える下層3と、
出口オリフィス13を備える上層7と、
下層3と上層7との間に位置する中間層6であって、マイクロ流体回路が少なくとも1つの中間層6の厚さに形成されて下層3と平行に延びる、中間層6と、
を備える。
マイクロ流体回路は、第1の端部で入口オリフィス4と連通しており、第2の端部で出口オリフィス13と連通している、マイクロ流体チャネル9で構成される。これにより、被検者の皮膚2からの汗の流れがマイクロ流体チャネル9内を伝わり、マイクロ流体チャネル9は、毛細管現象によって汗を入口オリフィス4から出口オリフィス13に導く。電気化学センサ10は、上部でマイクロ流体チャネルを閉鎖する上層7の内面に配置された4つの電極を備える。従って、電極はマイクロ流体チャネルの内部空間に配置される。
【0111】
寸法の例としては、入口オリフィスの直径は1mm~15mmであり、マイクロ流体チャネルは、長さが0.5cmから5cmの間で、幅が25μmから500μmの間であり、中間層は厚さが10μmから200μmの間であり、多層構造の各層は、幅が1cmから5cmの間で、長さが2cmから15cmの間である。
【0112】
例えば、入口オリフィス4の直径は5mmであり、マイクロ流体チャネル9は、長さが1.8cmであり、幅が100μmであり、中間層の厚さは70μm未満、例えば20μmであり、多層構造の層は幅が3cmであり、長さが9cmである。
【0113】
図5を参照すると、多層構造は図4と同様である。しかしながら、この実施形態では、出口オリフィス13は、中間層6内の中間層の一端に位置している。検出装置100は、それぞれ4つの電極を備える電気化学センサ10を備え、各電極は、それぞれ互いに対向して配置された2つの部分を備え、第1の部分は上層7の内面に配置され、上部でマイクロ流体チャネル9を閉鎖し、第2の部分は下層3の上面に配置され、底部でマイクロ流体チャネルを閉鎖する。各電極部分は黒い長方形で示されるコネクタを備えており、それを介して電極が電気的に接続されてもよい。
【0114】
一実施形態によれば、図示されていないが、検出装置は、底部でマイクロ流体チャネル9を閉じる下層3の上面に配置された4つの電極を備える単一の電気化学センサ10を備えてもよい。
【0115】
図6は、マイクロ流体チャネル内に配置された4つの電極を示し、例えば、図4及び図5に示されるマイクロ流体チャネル9であってもよい。4つの電極は、上部でマイクロ流体チャネル9を閉鎖する上層7の内面に配置された金属を適用したものである。4つの電極はマイクロ流体チャネルの長手方向に連続して配置されており、ここでは以下に更に詳細に説明する方法で動作するディプリーション(depletion)電極の形態で実装される作用電極20と、第2の作用電極23と、参照電極21と、カウンター電極30と、を含む。電極の高さは、1~50ナノメートル(nm)であり、電極間の間隔は、10~10,000マイクロメートル(μm)であり、電極の幅は、1~1000μmである。電極は、例えば白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、又は塩化銀(AgCl)で製造されてもよい。
【0116】
電極の少なくとも1つは、ポリオイゲノール、白金黒、又はポリフェノールで完全に又は部分的に覆われていてもよい。電極は、一酸化窒素濃度のディプリート(depleting)、測定を行うこと、少なくとも1つの他の化学成分の濃度を測定すること、及びマイクロ流体チャネル9内を流れる汗の流れの流量を測定すること、のアクションのうち1つ以上を実行するように構成される。
【0117】
図7は、図4と同様の多層構造1を示し、第2のシール中間層26は、第1の中間層6と上層7との間に位置し、第2のシール中間層26は、電極に開口部27を備え、電極がマイクロ流体チャネル9内を循環する汗の流れと接触できるようにする。第2のシール中間層26は、汗の排出を可能にするために上層7の出口オリフィス13と連通する中間開口部28を更に備える。例えば、開口部27は、長さ5mm、幅200μmの長方形である。
【0118】
図8を参照すると、中間層6は、汗の流れが供給されるマイクロ流体回路8を備える。汗は、下層の入口オリフィスからマイクロ流体回路8に向かって受け取られる。マイクロ流体回路8は、1つ又は複数のマイクロ流体チャネル9、具体的には、示された例では4つの平行なマイクロ流体チャネル9を備えてもよい。しかしながら、マイクロ流体回路8は異なる形態を採用してもよい。例えば、図9は、平行なマイクロ流体チャネル9を備えるマイクロ流体回路8を表し、図10は、放射状に分布した4つのマイクロ流体チャネル9を表す。マイクロ流体チャネル9は、例えば中間層6の厚さに形成され、隔壁11によって分離されている。各マイクロ流体チャネル9はそれぞれ他のマイクロ流体チャネルから分離されており、汗はその中で独立して循環することができる。マイクロ流体チャネル9の数は、これらの図よりも多くても少なくてもよい。
【0119】
各流体回路9には、センサ10A、10B、10C、又は10Dが装備されている。矢印12は、マイクロ流体チャネル9内の汗の流れの方向を示す。電気分解の反応生成物が被検者の皮膚に再び接触するのを防ぐため、出口オリフィス13を介して、マイクロ流体チャネル9は、分析された流体を保持する排水リザーバで終わることが好ましい。
【0120】
汗を分析するためにマイクロ流体回路9内に配置されたセンサ10A、10B、10C及び10Dは、電気化学センサであることが好ましい。電気化学センサの動作原理は、作用電極とカウンター電極の間の流体チャネル9内に存在する溶液を全体的又は部分的に電気分解することである。この種の電気化学センサは、様々な方法で、特にミリメートルオーダーの寸法を有する小型化された形で実装されてもよい。
【0121】
次に、図8を参照して、電気化学センサの幾つかの実施形態の例について説明する。
【0122】
例1
センサ10Aは、過酸化水素を検出することを目的としている。従って、過酸化水素の酸化電位EH2O2に等しい電位差で動作する。センサ10Bは、一酸化窒素を検出することを目的としている。従って、一酸化窒素ENOの酸化電位に等しい電位差で動作する。センサ10Cは、亜硝酸イオンを検出するためのものである。従って、亜硝酸イオンENO2-の酸化電位に等しい電位差で動作する。
【0123】
センサ10A、10B、10Cは、前述の化学種の電気化学的酸化に関連するファラデー電流の瞬間強度(ioxdnで示される)の同期測定を実行する。従って、センサ10A、10B、10Cは、前述の化学種の瞬間濃度の検出及び定量化を可能にする。
【0124】
前述の3つの化学種はそれぞれ、微小電極を使用した電流測定によって検出できる。後者は、例えば、白金塩、Pt(Cl) 4-のアニオンを水性媒体中で電気化学的に還元することによって適用される、例えばマイクロメートル寸法の白金黒の薄層で覆われた白金のストリップからなる。
【0125】
3つの化学種(NO、NO 、及びH)は、これらの電極上の酸化電位が、EH2O2<ENO<ENO2-の順序で明確に分離されているという事実によって区別できる。ここで、ファラデー電流は加算的である。従って、各化学種の酸化電位で測定された電流は、この化学種の酸化と、より低い酸化電位を有するすべての化学種の酸化に関連する基本電流に追加される。
【0126】
従って、酸化電位EH2O2で酸化できるのはH種だけである。H及びNO種は、酸化電位ENOで酸化できる。3つの種は、酸化電位ENO2-で酸化できる。従って、それぞれioxdn(EH2O2)、ioxdn(ENO)、及びioxdn(ENO2-)で示されるセンサ10A~10Cによって測定される電流は、次の式を満たす。
【0127】
oxdn(EH2O2) = a1 iH2O2
【0128】
oxdn(ENO) = a2 iH2O2 + a3 iNO
【0129】
oxdn(ENO2-) = a4 iH2O2 +a5 iNO + a6 iNO2-
ここで、係数a1からa6はセンサの校正定数を表し、実験的に測定できる。
【0130】
従って、電子回路上で簡単に実装できる減算により、次のことが得られる。
【0131】
H2O2 = (1/a1) ioxdn (EH2O2
【0132】
NO = (1/a3) ioxdn (ENO) - (a2/a1).(1/a3) ioxdn (EH2O2
【0133】
NO2- = (1/a6) ioxdn (ENO2-) - (a4/a6) iH2O2 - (a5/a6) iNO
【0134】
任意の時間tにおいて、各化学種Sのファラデー酸化電流の瞬間強度i(t)は、それを検出する電極の上にある流体の体積における、その濃度C(t)に比例する。比例係数は、γで示されるフォームファクタに依存し、これは下記のように、センサの形状と、化学種1モルあたりに消費されるnで示されるファラデー定数との関数である。
【0135】
H2O2 = nNO2- = 2 及び nNO = 1
【0136】
Fはファラデー、つまり電子1モルの電荷の値である96500クーロンを表すことに留意されたい。
【0137】
フォームファクタγは、電気化学センサの形状によって決まる定数係数であり、理論的に評価したり、校正によって実験的に測定したりできる。簡単にするために、以下では、3つのセンサ10A~10Cは、フォームファクタが全てのセンサで同じであるように、同一の幾何学的形状を有するものとみなされる。
【0138】
その結果、時間変数tを指定した以下の式を利用して、センサ10A~10Cによって測定された電流から化学種の濃度を得ることができる。
【0139】
H2O2(t) = ioxdn(EH2O2,t)/(2Fγ)
【0140】
NO(t) = [ioxdn(ENO,t) - ioxdn (EH2O2,t)]/(Fγ)
【0141】
CNO2-(t) = [ioxdn(ENO2-,t) - ioxdn(ENO,t)]/(2Fγ)
【0142】
従って、実施形態1では、3つのセンサ10A~10Cは、それぞれ一定の酸化電位、すなわちそれぞれEH2O2、ENO、及びENO2-で並行して動作することができる。
【0143】
変形実施形態では、NO及びNO のみが検出される。この実施形態は、Hの測定が重要ではなく、意図した目的の結果に影響を与えない場合に特に有利である。上記の濃度CH2O2(t)は一律にゼロ、つまりCH2O2(t)=0とみなされる。従って、方程式系は単純化される。
【0144】
例2
例2では、単一のマイクロ流体チャネル9及び単一のセンサ10Aが使用され、その他は省略可能である。
【0145】
この場合、センサ10Aは、連続する3つのステップ中に前述の化学種を検出するために順次動作する。従って、酸化電位は、それぞれ上記の3つの酸化電位に等しい3つの電位ステージの間で、例えば、EH2O2→ENO→ENO2-→EH2O2→ENO→ENO2-→etc.のシーケンスに従って定期的に切り替わる。
【0146】
この場合、各酸化電位は、作用電極の時定数と比較して非常に長い期間維持される。この時定数は、例えば、マイクロ流体チャネルで使用される微小電極の場合は数ミリ秒であり、電流は各定電位ステージの終わりに実行される。
【0147】
残りの測定信号は、例1と同じ式を使用して処理できる。
【0148】
例3
一酸化窒素は、親水性と親油性の両方を併せ持つ小分子であるため、他の2つの種H及びNO とは対照的に、有機ポリマーの薄層を容易に通過できる。従って、これは、このタイプの層で保護された電気化学センサを使用して、例えば電解重合によって適用されたポリオイゲノール(4-アリル-2-メトキシフェノール)の薄層でコーティングされた白金メッキプラチナ製の作用電極を使用して、単独で検出できる。
【0149】
従って、例3では、センサ10Dの作用電極は、数字19で概略的に表される層によってコーティングされる。従って、一酸化窒素の瞬間濃度は、化学種H及びNO の濃度とは独立して、次の式に従って測定できる。
【0150】
NO(t) = [ioxdn(ENO,t)]eugenol/(Fγ).
【0151】
ここで、ioxdn(ENO,t)]eugenolは、センサ10Dによって測定された電流を示す。
【0152】
他のセンサ10A~10C及び他のマイクロ流体チャネル9は省略することができる。従って、この方法は、NOの濃度のみが必要な場合に単一のセンサで有利に使用できる。
【0153】
例4
この場合、例3のセンサ10Dは、例1のセンサ10A~10C、又は例2のセンサ10Aと融合される。この構成は、溶解した一酸化窒素の濃度に依存しない2つの測定値を取得し、特にセンサがドリフトを示さないことを確認することでその測定の一貫性をチェックするのに使用できる。センサがドリフトを示さないことは、例えば電極の1つの表面の部分的な不活性化に関連する。
【0154】
この場合、電気化学電子制御装置40(図21)は、一酸化窒素濃度の2つの測定値を比較し、比較の結果が事前定義された基準を満たした場合、例えば事前定義された閾値を超えた場合に、アラームを発するように構成されることが好ましい。
【0155】
上記の例1~4では、測定された瞬時ファラデー電流を使用して、分析溶液中の化学種の濃度を測定できる。結果として、静的なシステムでは、電流の強度は検出された種の生成を記録するのに十分である。
【0156】
しかしながら、検出装置100が本質的に動的な生理学的システムに適用される場合、例えば運動試験中や医療モニタリング中などにおいて、心血管系による各化学種の生成の動態に定量的にアクセスできることも望ましい。ダイナミックな状況下では、Δt(t)で示される短期間に生成されるΔQ(t)で示される化学種の瞬間量にアクセスするには、下記に示されるように、化学種の平均濃度C(t)と分析流体の体積流量を同時に知ることが望ましい。
【0157】
d(t) = (ΔV/Δt)
【0158】
ここで、ΔVは、時間間隔Δt中にスキャンされるボリュームを示す。従って、P(t)で示される、時間tにおける化学種Sの生成フローの強度は、次の式で与えられる。
【0159】
(t) = [ΔQ/Δt](t) = C(t).d(t)
【0160】
ここで、平均濃度C(t)は、時間tとt+Δtとの間に測定された電気化学的酸化電流の平均強度から得られる。
【0161】
従って、想定される動的なアプリケーションのコンテキストでは、検出装置100は、同時に及び患者の生理学的状態を経時的に監視するための望ましい精度に必要な各時間tにおいて、例えば1分に1回、監視対象の1つ以上の化学種の電気化学的酸化に関連するファラデー電流の平均強度iav(t)及び対応する流体回路における時間tにおける汗の体積流量d(t)の値を測定することが望ましい。
【0162】
図11は、この二重の要件を統合された方法で満たすことができる電気化学センサ10の実施形態を示している。この電気化学センサ10は、少なくとも一対の作用電極20、23を備える。このタイプのストリップ微小電極は、白金メッキ(白金黒)プラチナから製造できる。これは、マイクロメートル寸法の電解重合オイゲノールの層で覆われていても覆われていない場合もある。このタイプのストリップ微小電極は、例えばCVD及び/又はリソグラフィーなどの微細加工によって埋め込むことができる。上記のような1つの又は複数のストリップ微小電極を使用して、選択された化学種を電気化学的に酸化することができる。
【0163】
図11のマイクロ流体回路9は、例えばAg/AgClマイクロストリップの形態で製造され、一対の作用電極20、23の上流に配置される参照電極21を更に備える。最後に、流体回路9は、白金メッキされた白金で作られ、一対の作用電極20、23の下流に配置されたカウンター電極30を備えている。図11の機能概略図が示されているものの、カウンター電極30の表面積は実際には他の電極の表面積より2~3倍大きい。
【0164】
電極20、21、23、30を備えたマイクロ流体チャネル9のアセンブリは、図示されていない汗の層に浸され、従って、4つの電極を有するマイクロ流体電気化学セルを構成する。電極20、21、23、30のそれぞれは、汗から絶縁された電気接点によって電気化学電子制御装置40(図21)に接続されている。
【0165】
電気化学センサ10のこの実施形態は、前述のマイクロ流体回路9のうちの1つ又は複数で使用されてもよい。
【0166】
体積流量d(t)を測定するために、電気化学センサ10は、一対の作用電極20、23を備える必要がある。ここで説明する解決策はシンプルで容易に工業化可能である、なぜならば、可動部品がなく、流体力学を主張していないからである。流体の流量を調整するための介入は必要なく、同時に、合理的な生理学的流量にも適している。
【0167】
2つの作用電極20、23、例えば白金メッキされた白金の2つのストリップは、作用微小電極として機能することができ、電気的に独立しており、マイクロ流体回路9内で分析される流体の経路に沿って距離Lだけ離間されている。2つの作用電極20、23は、例えば、断面が一定の面積Aを有する直線状のチャネルの底部に設置される。
【0168】
下流に配置された作用電極23は、2つのステップを含む、図12に示される方法に従って使用される。グラフ81は、作用電極20に印加される電位を時間の関数として表す。グラフ82は、作用電極23に印加される電位を時間の関数として表す。グラフ81及び82上で「0」として示される電位は、実際には、対応する電極の切断(開回路)を意味する。グラフ83は、作用電極20で測定されたファラデー電流を時間の関数として表す。グラフ84は、作用電極23で測定されたファラデー電流を時間の関数として表す。
【0169】
時刻tより前の一定の時間範囲にわたって実行される最初のステップ中に、作用電極20に印加される電位Eoxdnは、1つ以上の標的化学種の酸化を可能にするのに十分であり、一方、下流の作用電極23は接続されていない。上流に配置された作用電極20は、瞬間的な電気化学電流ioxdn(t)を連続的に記録するために使用でき、これは、上記で更に示した計算に従って、分析された流体中の1つ以上のターゲット化学種の濃度C(t)を示します。
【0170】
時刻tからの一定の時間にわたって実行される第2ステップ中に、作用電極20が切断され、電位Eoxdnが下流作用電極23に印加される。
【0171】
時刻tにおいて、作用電極23の上を通過する汗の流れは、上流に位置する作用電極20の上を通過する間に、ターゲット化学種の濃度がゼロになる又は少なくとも電気化学センサに入る前よりはかなり低くなる様態で、既に(完全又は部分的に)電気分解されている。従って、作用電極23によって検出される電流の強度ioxdn(グラフ84)はゼロである(又は少なくとも時間tより前に作用電極20で検出された電流ioxdnよりもはるかに低い)。
【0172】
時刻t+Δtにおいて、作用電極23は非電解液の分析を開始し、検出する電流強度ioxdnは時刻t以前に作用電極20が検出した電流強度ioxdnと同程度となる。図12のステップで図式化した電流の増加は、アドホック電子回路によって検出される。この成長と作用電極20の切断の瞬間tとの間の遅延である、期間Δtは、汗の流れが2つの作用電極20と23の間を移動するのに必要な時間を表す。期間Δtは、図12の下部にある両方向矢印で表される。表現を簡略化するために、図12では、作用電極20が接続されたときに標的化学種の電気分解が完了すると仮定されている。この電気分解が部分的にのみ行われる場合にも、同じ測定原理が適用される。
【0173】
従って、流量v(t)と流量d(t)は、次のように推定できる。
【0174】
v(t) = L/ Δt
【0175】
d(t) = A.v(t)
【0176】
作用電極23に印加される電位Eoxdnは、作用電極20が切断されている間に、1つ又は複数の標的化学種の酸化を可能にするのに十分である。従って、作用電極23による濃度測定は、任意に一定期間継続することができる。第2ステップは、時刻tにおける作用電極23の接続解除により終了する。次いで、作用電極20を再接続することができ、この方法を必要な回数だけ繰り返して、連続して流量d(t)を評価することができる。
【0177】
2つの作用電極20及び23の間の距離Lは、期間Δtにわたる患者の生理学的反応の変化が無視できるほど十分に小さいことが好ましく、例えば1mm程度である。
【0178】
汗流の体積流量を測定する2番目の方法を図13に示す。上の説明とは対照的に、ここでの測定原理は、一酸化窒素などの化合物の測定電流の低下を検出するものである。図13Aは、一実施形態による、マイクロ流体チャネル9内に配置された4つの電極のアセンブリを概略的に示す。電極は、マイクロ流体チャネル9の長手方向に連続して配置されている。
電極は、上流に配置され、最初に汗の流れ98を受ける参照電極21、両方向矢印で表される距離gだけ離間されている第1及び第2の作用電極20、23、そして、カウンター電極30、というように配置される。測定原理は、図13(B)に示され、2つの作用電極20、23の接続と分極が同時に行われ、次に、マイクロ流体チャネル9の下流に位置する第2の作用電極23の電流の変化を経時的に監視することを含む。分極の開始(t=0)から、2つの作用電極20、23は同じ種を酸化する。第1の上流の作用電極20はこれらの種のディプリーションを引き起こし、期間dt後、下流に位置する第2の作用電極23の電流の減少を引き起こす。dtは、第1の作用電極20によって酸化された種を含むディプリーションゾーンが対流によって第2の電極23に到達するのに必要な時間である。従って、t=0での第1の作用電極20と第2の作用電極23の同時分極後、下流に位置する第2の作用電極23の電流は、継続時間dtで減少することが観察される。一例として、図13(B)の継続時間dtは5秒と推定される。従って、流れの線形速度vは、単純な関係v=g/dtによって得られる。
【0179】
この原理は、以下の図14から図16を参照して説明されるディプリーション機能と組み合わせて利用することができる。
【0180】
図14は、マイクロ流体チャネル9の長手方向に連続的に配置された4つの電極を備える電気化学センサを備えるマイクロ流体回路を示す。下流での検出が望ましくない干渉種をディプリートさせるために、ディプリーション電極20が作用電極23の上流に配置される。ディプリーション電極20の分極により、干渉化学種が選択的に酸化される。ディプリーション電極20は、ディプリーションを最適化し、1つ又は複数の干渉種の実質的に全てを除去するために、例えば過酸化水素Hを除去するために幅広である。対象の化学種は、下流に位置する作用電極20によって酸化される。この種の構成は、一酸化窒素の酸化電位よりも低い酸化電位を有する1つ又は複数の干渉化学種をディプリートするため、及び、化合物例えば一酸化窒素の濃度の測定を改善するために、使用することができる。カウンター電極30及び参照電極20は、電位を制御し、電気化学センサの測定ゾーン内で電流を循環させるために必要である。
【0181】
このディプリーション電極20を備えたマイクロ流体チャネル9では、上で更に提示した一次方程式系を解く必要がなく、一酸化窒素の濃度を直接得ることができる。
【0182】
マイクロ流体チャネル9内のNO の濃度の測定値を取得することが望ましい変形実施形態では、ディプリーション電極20は、一酸化窒素を除去するように構成されてもよい。
【0183】
図15は、図14のセンサによる過酸化水素のディプリーションの例を示している。参照電極とカウンター電極は示されていない。ディプリーション電極20及び作用電極23は、一定の汗流量条件下で互いに独立して分極される。汗の流れの方向は、マイクロ流体チャネル9内の矢印によって表される。ディプリーション電極20は、上流の全ての干渉種、ここでは過酸化水素(H)を酸化によって除去するために、作用電極23に比べて非常に大きく、例えば8倍大きい。濃度の測定が望まれる化学種、ここでは一酸化窒素は、ディプリーション電極20によって酸化されない。一酸化窒素は、下流で作用電極23によって酸化される。従って、ディプリーション電極20及び作用電極23は、一酸化窒素の検出における選択性を得るために、EDE<EWEとなるような電位に分極される。
【0184】
上で述べたように、汗の流れの流量は、例えば、ディプリーションを実行する作用電極20及び一酸化窒素を酸化する作用電極23を介して測定されてもよい。図16は、図13A及びBで説明したものと同様の方法による汗の流れ98の流量の測定を示す。従って、検出が望ましくない化学種、例えば過酸化水素を酸化するディプリーション電極20と、一酸化窒素を酸化する作用電極23とが接続され、同時に分極される。従って、第1の期間では、ディプリーション電極20と作用電極23との間に位置する汗の量はディプリーション電極20によってディプリートされないため、作用電極23は一酸化窒素NO及び過酸化水素を検出することになる。第2の期間では、ディプリーション電極20は過酸化水素のディプリーションを引き起こし、それによって、図13で説明したのと同様の方法で、継続時間dtの後に、作用電極23の電流の減少を誘発する。この実施形態では、作用電極23の電流は減少するが、ディプリーションに続いて作用電極23が一酸化窒素を選択的に検出するため、ゼロ又は実質的にゼロにはならない。
【0185】
上述の流量測定方法は、平行なマイクロ流体チャネルのすべてで同時に使用することができる。ただし、これらのチャネルが同様の方法で構成され、供給される場合は、単一の流量測定で十分な場合がある。その場合、上述の流量測定方法は、単一のマイクロ流体チャネル9において採用されてもよい。更に、これらの流量測定方法は、様々な例のセンサと組み合わせることができる。
【0186】
図18及び19を参照して、より多数の電極を使用する電気化学センサが説明される。
【0187】
図17~19に示される電極は、上部でマイクロ流体チャネルを閉じる上層の内面に配置され、及び/又は底部でマイクロ流体チャネルを閉じる下層の上面に配置されてもよい。概略図では、さまざまな層を区別していない。
【0188】
図17は、実施形態による電極構成を表し、電気化学センサは、図17の左から右に、参照電極21、ディプリーション電極20、第1の作用電極23、第2の作用電極24、及びカウンター電極30を備える。この構成では、過酸化水素の酸化電位へのディプリーション電極20の分極を介した、過酸化水素などの望ましくない化学種のディプリーション、過酸化水素の酸化電位よりも高い酸化電位を有する、第1の作用電極23を介した一酸化窒素の酸化、過酸化水素の酸化電位及び一酸化窒素の酸化電位よりも高い酸化電位を有する、第2の作用電極24を介した亜硝酸塩の酸化、第1の作用電極23と第2の作用電極24との間の遅延による汗の流れの流量の測定を、この順序で実行できる。流量測定は、ディプリーション電極20と第1の作用電極23との間の遅延によって測定されてもよい。
【0189】
図18は、前の図と同様の実施形態を示す。この実施形態は、電気化学センサが、第2の作用電極24とカウンター電極30との間に位置する第3の作用電極25を備える点で異なる。汗の流れ98の流量は、第2の作用電極24と第3の作用電極25との間で測定される。電極24及び25を離間させることによって、換言すれば、電極25及び30をチャネル9の端部に向かって更に移動させることによって、汗の流れ98の流量測定の分解能を改善することが可能である。
【0190】
図19は、検出装置が2つの平行なマイクロ流体チャネル9及び109を含むマイクロ流体回路8を備える変形実施形態を表す。第1のマイクロ流体チャネル9は、電気化学センサを備える。ここに開示される電気化学センサのアセンブリは、この第1のマイクロ流体チャネル9に統合されてもよい。第2のマイクロ流体チャネル109は比色検出装置18を備える。比色検出装置18は、親水性微多孔膜を備える。親水性微多孔膜は、例えば、亜硝酸イオン、過酸化水素、過酸化亜硝酸塩、二酸化硫黄、硫化水素、一酸化窒素、一酸化炭素、及び次亜塩素酸などの検出用の化学種と反応することができる少なくとも1つの化学試薬を含む。試薬を含浸させた多孔質体内に検出用化学種が蓄積するのに比例して、試薬は変色し、その固有色の強度が増加する。色の強度を検出して、汗の流れに溶解した化学種の量を定量的に測定することができる。例えば、使用される試薬は、グリース(Griess)試薬で、赤色の指示薬を提供することで亜硝酸イオンの検出が可能である。
【0191】
図20に示される変形実施形態によれば、比色検出装置18は、電気化学センサ10と直列にマイクロ流体チャネル9の出口に配置される。このため、図20は、図4と同一の多層構造1を示す。比色検出装置18は電気化学センサの下流に配置されているため、電気化学センサ10によって電気分解された溶液を受け取る。しかしながら、検出対象の種が電気化学センサ10の動作によって実質的に悪影響を受けていないという条件で、比色測定が可能である。
【0192】
上述の濃度及び流量を検出するための方法は、電子制御装置40の助けを借りて自動化された方法で実行することができ、電子制御装置40は、好ましくは検出装置100に統合される。
【0193】
図21を参照して、例えば電子回路基板の形態で検出装置100に組み込むことができる電子制御装置40の一実施形態について説明する。
【0194】
上述した電気化学センサ10又は各電気化学センサ10は、アナログデジタル変換器14に接続され、アナログデジタル変換器14はプロセッサ15に電力を供給する。プロセッサ15は、例えば、上述の濃度及び流量を検出するための方法を実行するようにプログラムされている。
【0195】
エネルギー源16、例えばバッテリが電子制御装置40に電力を供給する。1つ又は各ターゲット化学種に関して、濃度、流量、及び/又は定量的な物質流量の測定結果をストレージ又は後処理装置に通信するために、有線又は無線であってよい通信モジュール17を設けることもできる。
【0196】
図22は、一実施形態においてプロセッサ15によって実行されうる方法を表す。
【0197】
ステップ31では、化学種Sの瞬間濃度Cs(t)が電気化学測定から決定される。
【0198】
ステップ32では、対応する流体回路内の体積流量d(t)が決定される。
【0199】
ステップ33では、検討中の化学種の定量的なマテリアルフローがCs(t)とd(t)に基づいて、例えば次のように、決定される。
【0200】
(t) = C(t).d(t)
【0201】
図23は、例えば種NOについての被検者の運動試験中に、検出装置100を用いて取得され得る定量的な物質流量の測定信号を時間の関数として示すグラフである。
【0202】
電子制御装置40は、オプションとして、例えば、被検者の向きや動き及び被検者の活動レベルを検出するためのジャイロモジュール及び/又は加速度計モジュール、及び被検者の表皮の温度を測定するための温度センサなどの他の機能モジュールを備える。皮膚の温度と血管の拡張との相関関係を調べるために、皮膚の温度を知ることは役に立つ。
【0203】
検出装置100の特定の要素、特に電子制御装置40は、物理コンポーネント及び/又はソフトウェアコンポーネントを使用して、単一又は分散方式で、さまざまな形式で実現することができる。使用できる物理コンポーネントは、特定用途向け集積回路(application-specific integrated circuits(ASIC))、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate arrays(FPGA))、又はマイクロプロセッサである。ソフトウェアコンポーネントは、C、C++、Java、VHDLなどの様々なプログラミング言語で作成できる。このリストは全てを網羅したものではない。
【0204】
本発明を多くの特定の実施形態に関連して説明してきたが、本発明が特定の実施形態に決して限定されるものではなく、本発明の範囲内にある場合には、記載された手段のすべての同等の技術、及びそれらの組み合わせも包含することは明らかである。例えば、記載された検出装置は、追加のマイクロ流体チャネルを備えてもよく、又は異なる電気化学センサ及び/又は異なる数の電極を含むセンサを備えてもよい。
【0205】
動詞「含む」(comprise)、「包含する」(encompass)、又は「含む」(include)及びその活用形の使用は、特許請求の範囲に記載されているもの以外の要素又はステップの存在を排除するものではない。
【0206】
特許請求の範囲において、括弧内の参照符号はいずれも特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
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図5
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図12
図13(A)】
図13(B)】
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【国際調査報告】