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特表2024-522142高血圧の治療又は予防のためのピリダジノン
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  • 特表-高血圧の治療又は予防のためのピリダジノン 図1
  • 特表-高血圧の治療又は予防のためのピリダジノン 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(54)【発明の名称】高血圧の治療又は予防のためのピリダジノン
(51)【国際特許分類】
   C07D 237/14 20060101AFI20240604BHJP
   C07D 409/06 20060101ALI20240604BHJP
   C07D 403/12 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 31/50 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 31/501 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240604BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20240604BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
C07D237/14 CSP
C07D409/06
C07D403/12
A61K31/50
A61K31/501
A61K45/00
A61P9/12
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574484
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2023-12-01
(86)【国際出願番号】 GB2022051469
(87)【国際公開番号】W WO2022258992
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】2108303.5
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】510179537
【氏名又は名称】ウニヴァーシテテット イ オスロ
【住所又は居所原語表記】P.O. Box 1072,Blindern,0316 Oslo Norway
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】モルツァウ、リーゼ ロマン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレセン、ヘンリエッテ
(72)【発明者】
【氏名】レヴィー、フィン オーラヴ
(72)【発明者】
【氏名】クラーヴェネス、ジョー
(72)【発明者】
【氏名】イザキアン、ザキエ
(72)【発明者】
【氏名】カタリオッティ、アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェゲルト、アニータ
(72)【発明者】
【氏名】リーンダース、ルベン
(72)【発明者】
【氏名】ニェチポル、ピョートル
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA52
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA421
4C084ZA422
4C084ZA832
4C084ZC202
4C084ZC432
4C084ZC502
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC41
4C086GA04
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA42
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、式(I)の化合物、その立体異性体及び薬学的に許容される塩を、高血圧の治療又は予防に使用するために提供し、
【化1】
式中、R1及びR2は、独立して、H、ハロゲン、C16アルキル、C16ハロアルキル、及び-CNから選択され、ただし、R1及びR2の少なくとも1つは、H以外であり、R3は、以下の式の基であり、
【化2】
式中、nは、0又は1であり、R4は、H又はC13アルキルであり、L1は、結合、-(CH2)P-(式中、pは1~3の整数)、及びC36シクロアルキレンから選択された連結基であり、Xは、(i)C13アルキル、C13アルコキシ、C13ハロアルキル、ハロゲン、及び-CNから選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されているアリール基、(ii)C13アルキル、C13アルコキシ、C13ハロアルキル、ハロゲン及び任意に置換されているフェニルから選択される1つ以上の置換基で任意に置換されている5又は6員複素環、並びに(iii)C13アルキル、C13ハロアルキル及びハロゲンから選択される1つ以上の置換基で任意に置換されているシクロアルキル基によって任意に置換されているアリール基から選択される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高血圧の治療又は予防に使用するための式(I)の化合物、その立体異性体、又は薬学的に許容される塩であって、
【化38】
式中、
1及びR2が、
-H
-ハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)、
-C16アルキル(例えば、C13アルキル)、
-C16ハロアルキル(例えば、C13ハロアルキル)、及び
-CN、から独立して選択され、
ただし、R1及びR2のうちの少なくとも1つが、-H以外であり、
3が、以下の式の基であり、
【化39】
式中、nが、0又は1であり、
4が、H又はC13アルキル(例えば、-CH3)であり、
1が、
-結合、
--(CH2p-(式中、pが1~3の整数、好ましくは1又は2である)、
-C36シクロアルキレン(例えば、C34シクロアルキレン)、から選択された連結基であり、
Xが、
-C13アルキル(例えば、-CH3)、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル(例えば、-CF3)、ハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)、及び-CNから選択される1つ以上の置換基で任意に置換されているアリール基、
-C13アルキル(例えば、-CH3)、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル(例えば、-CF3)、ハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)及び任意選択で置換されているフェニル(例えば、非置換フェニル)から選択される1つ以上の置換基で任意に置換されている5又は6員複素環、並びに
-C13アルキル(例えば、-CH3)、C13ハロアルキル(例えば、-CF3)、及びハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)から選択される1つ以上の置換基で任意に置換されているシクロアルキル基(例えば、三環式シクロアルキル基)、から選択される、式(I)の化合物、その立体異性体、又は薬学的に許容される塩。
【請求項2】
前記高血圧が、抵抗性高血圧である、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項3】
肺高血圧、妊娠中の高血圧、妊娠性高血圧又は妊娠誘発性高血圧の治療又は予防における、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項4】
式(I)において、R1及びR2が独立して、H及びハロゲンから、好ましくはH、Cl及びBrから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
式(I)において、R1及びR2が、両方ともハロゲン、好ましくは両方ともClである、請求項4に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
式(I)において、R1がハロゲン(例えば、Cl)であり、R2がHである、請求項4に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
式(Ia)の化合物、その立体異性体、又は薬学的に許容される塩であり、
【化40】
式中、
1及びR2が、請求項1及び4~6のいずれか一項で定義された通りであり、
Xが、
-C13アルキル(例えば、-CH3)、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル(例えば、-CF3)、ハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)、及び-CNから選択される1つ以上の置換基で任意に置換されているアリール基、
-C13アルキル(例えば、-CH3)、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル(例えば、-CF3)、ハロゲン(例えばF、Cl又はBr)及び任意に置換されているフェニル(例えば、非置換フェニル)から選択される1つ以上の置換基で任意に置換されている5又は6員複素環、並びに
-C13アルキル(例えば、-CH3)、C13ハロアルキル(例えば、-CF3)、及びハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)から選択される1つ以上の置換基で任意に置換されているシクロアルキル基(例えば、三環式シクロアルキル基)、から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
式(Ib)の化合物、その立体異性体、又は薬学的に許容される塩であり、
【化41】
式中、
1、R2、R4及びL1が、請求項1及び4~6のいずれか1項で定義された通りであり、
Xが、
-C13アルキル(例えば、-CH3)、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル(例えば、-CF3)、ハロゲン(例えばF、Cl又はBr)、及び-CNから選択される1つ以上の置換基で任意に置換されているアリール基、並びに
-C13アルキル(例えば、-CH3)、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル(例えば、-CF3)、ハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)、及び任意に置換されているフェニル(例えば、非置換フェニル)から選択される1つ以上の置換基で任意に置換されている5又は6員複素環、から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
式(Ic)の化合物、その立体異性体、又は薬学的に許容される塩であり、
【化42】
式中、
1及びR2が、請求項1及び4~6のいずれか一項で定義された通りである、
請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
式(Id)の化合物、その立体異性体、又は薬学的に許容される塩であり、
【化43】
式中、
1及びR2が、請求項1及び4~6のいずれか一項で定義された通りであり、
各Y1が、独立して、C13アルキル(例えば、-CH3)、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル(例えば、-CF3)、ハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)及び-CNから選択され、
qが、0~3の整数、好ましくは1又は2である、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
式(Ie)の化合物、その立体異性体、又は薬学的に許容される塩であり、
【化44】
式中、
1及びR2が、請求項1及び4~6のいずれか一項で定義された通りであり、
1が、請求項10で定義した通りであり、好ましくは、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル(例えば、-CF3)、ハロゲン(例えば、F、Cl若しくはBr)又は-CNであり、
各Y2が、独立して、C13アルキル(例えば、-CH3)、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル(例えば、-CF3)、ハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)又は-CNから選択され、好ましくはハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)であり、
rが、0~2の整数、好ましくは0又は1である、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
式(If)の化合物、その立体異性体、又は薬学的に許容される塩であり、
【化45】
式中、
1、R2、R4及びpが、請求項1及び4~6のいずれか一項で定義された通りであり、
各Y1が、独立して、C13アルキル(例えば、-CH3)、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル(例えば、-CF3)、ハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)及び-CNから選択され、
qが、0~3の整数、好ましくは1又は2である、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項13】
式(Ig)の化合物、その立体異性体、又は薬学的に許容される塩であり、
【化46】
式中、
1、R2、R4及びpが、請求項1及び4~6のいずれか一項で定義された通りであり、
Zが、C13アルキル(例えば、-CH3)、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル(例えば、-CF3)、ハロゲン(例えばF、Cl又はBr)、及び任意に置換されているフェニル(例えば、非置換フェニル)から選択される1つ以上の置換基で任意に置換されている5又は6員複素環である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項14】
以下の化合物、それらの立体異性体、及びそれらの薬学的に許容される塩のうちのいずれかから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【表6-4】
【請求項15】
請求項1及び4~14のいずれか一項に記載の化合物、その立体異性体又は薬学的に許容される塩を、1種以上の薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤と共に含み、追加の降圧薬を更に含む、医薬組成物。
【請求項16】
経口投与のために適している、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記化合物、立体異性体、又は薬学的に許容される塩が、追加の降圧薬と組み合わせて(例えば、同時に、別々に、又は連続して)投与される、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用のための化合物、その立体異性体、又は薬学的に許容される塩。
【請求項18】
前記降圧薬が、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の阻害剤、チアジド利尿薬、カルシウムチャネル遮断薬、又はベータ遮断薬である、請求項17に記載の使用のための化合物、その立体異性体、又は薬学的に許容される塩。
【請求項19】
前記降圧薬が、ベナゼプリル、ゾフェノプリル、ペリンドプリル、トランドラプリル、カプトプリル、エナラプリル、リシノプリル、ラミプリル、ロサルタン、テルミサルタン、イルベサルタン、カンデサルタン、オルメサルタン、バルサルタン、サプリサルタン、ヒドロクロロチアジド、ベンドロフルメチアジド、クロルタリドン、アムロジピン、フェロジピン、イスラジピン、ニフェジピン、ニモジピン、レルカニジピン、ベラパミル、ジルチアゼム、メトプロロール、プロプラノロール、チモロール、アテノロール、ビソプロロール、エスモロール、カルベジロール、ネビボロール、スピロノラクトン、エプレレノン、プラゾシン、タムスロジン、サクビトリル、及びサクブリトリル-バルサルタンから選択される、請求項17に記載の使用のための化合物、その立体異性体又は薬学的に許容される塩。
【請求項20】
(i)請求項1及び4~14のいずれか一項に記載の化合物、立体異性体若しくは薬学的に許容される塩、又は前記化合物、立体異性体若しくは薬学的に許容される塩を含む医薬組成物と、(ii)請求項1~3のいずれか一項に記載の状態又は障害のうちのいずれかの治療、例えば、抵抗性高血圧の治療又は予防における(i)の使用に関する印刷された説明書及び/又はラベルと、を含む、パッケージ。
【請求項21】
一般式(II)の化合物、若しくはその立体異性体、又はその薬学的に許容される塩であって、
【化47】
式中、
1及びR2が、請求項1及び4~6のいずれか一項で定義された通りであり、
1が、請求項10で定義した通りであり、好ましくは、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル、ハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)又は-CNであり、
各Y2が、独立して、C13アルキル(例えば、-CH3)、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル、ハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)又は-CNから選択され、好ましくはハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)であり、
rが、0~2の整数、好ましくは0又は1であり、
ただし、前記化合物が、
4-クロロ-2-[2-(2,4-ジクロロフェニル)-2-オキソ-エチル]ピリダジン-3-オン;
4,5-ジクロロ-2-[2-(4-クロロフェニル)-2-オキソ-エチル]ピリダジン-3-オン;
4,5-ジクロロ-2-[2-(4-メトキシフェニル)-2-オキソ-エチル]ピリダジン-3-オン;又は
4,5-ジクロロ-2-[2-(4-メチルフェニル)-2-オキソ-エチル]ピリダジン-3-オン以外である、
一般式(II)の化合物、若しくはその立体異性体、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項22】
一般式(IIa)を有し、
【化48】
式中、
1が、ハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)、C16アルキル(例えば、C13アルキル)、C16ハロアルキル(例えば、C13ハロアルキル)又は-CN、好ましくはハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)、例えば、Clであり、
1が、請求項10で定義した通りであり、好ましくは、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル、ハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)又は-CNであり、
各Y2が、独立して、C13アルキル(例えば、-CH3)、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル、ハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)又は-CNから選択され、好ましくはハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)であり、
rが、0~2の整数、好ましくは0又は1である、請求項21に記載の化合物、若しくはその立体異性体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項23】
請求項14の番号3、4、6、11、12、13、14又は24で表される、請求項21に記載の化合物、若しくはその立体異性体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項24】
番号24で表される化合物である、請求項23に記載の化合物、若しくはその立体異性体又はその薬学的に許容される塩の立体異性体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウム利尿ペプチド受容体-A(natriuretic peptide receptor-A、NPR-A)によって媒介される状態の治療又は予防におけるピリダジノン誘導体の使用に関する。具体的には、本発明は、高血圧、特に抵抗性高血圧の治療又は予防におけるそのような化合物の使用に関する。本発明は更に、ある種の新規ピリダジノン誘導体、それらを含有する医薬組成物、及びそのような治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
2015年に、世界保健機関(World Health Organization、WHO)は、世界中で11億3000万人の患者が、「血圧上昇」としても知られている高血圧と診断されたことを報告した(Cai et al.,Hypertension.2017;70:5-9)。高血圧は、動脈内の血圧が持続的に上昇する医学的状態である。長期血圧上昇は、冠動脈疾患、脳卒中、心不全、心房細動、末梢動脈疾患、慢性腎疾患、認知症及び視力喪失などの状態の主要な危険因子である。血圧は、収縮期及び拡張期血圧の2つの測定値によって表される。第1の(収縮期)数は、心臓が収縮又は拍動するときの血管内の圧力を表す。第2の(拡張期)数は、心拍の間に心臓が弛緩するときの血管内の圧力を表す。成人において、高血圧は、安静時血圧が持続的に140/90mmHg以上である場合に存在すると考えられる。
【0003】
高血圧のための標準的な薬物療法は、患者の大きな群において有効である。現在の治療は、1つのクラスの降圧薬剤を用いた単剤療法、又は異なるクラスの降圧薬剤を用いた併用療法のいずれかによる血圧の制御を含む。高血圧の治療に使用される異なる薬物クラスは、異なる作用機序を有し、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の阻害剤、チアジド利尿薬、カルシウムチャネル遮断薬及びベータ遮断薬を含む。各クラス内で、選択性、効力、有効性及び有害作用プロファイルが異なるいくつかの薬物が市販されている。
【0004】
降圧薬剤を生活様式の変化と組み合わせると、血圧が低下するだけでなく、心血管疾患及び死亡のリスクも低下するという強力な証拠がある。しかしながら、現在利用可能な薬剤で治療することができない高血圧患者の群が増えている。これらの患者は、「抵抗性高血圧」(「resistant hypertension、RHT」)として知られるものに罹患しており、心血管罹患率及び死亡のリスクが高い。RHTは、異なる作用機序を有する3つ以上の降圧薬剤が同時に処方されているにもかかわらず、標的レベルを超えたままである血圧上昇として定義される。この群の患者は、高血圧を有する人口の10~30%に相当する(Cai et al.,Hypertension.2017;70:5-9)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Cai et al.,Hypertension.2017;70:5-9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、特に抵抗性高血圧に罹患している患者において、上昇した血圧を制御することができる新たな薬物の開発が、依然として必要とされている。具体的には、異なる作用機序を有し、したがって現在利用可能な降圧療法と組み合わせて使用することができる、そのような治療のための新しい薬物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[発明の概要]
本発明者らは、今回、アロステリックエンハンサーとして機能する薬物を使用してナトリウム利尿ペプチド受容体-A(「NPR-A」)を標的とすることによる高血圧、具体的には抵抗性高血圧の治療を提案する。
【0008】
ナトリウム利尿ペプチドは、血圧の調節において重要である。心房性ナトリウム利尿ペプチド及び脳性ナトリウム利尿ペプチド(それぞれ、atrial natriuretic peptide、ANP及びbrain natriuretic peptide、BNP)の両方は、受容体NPR-Aを活性化し、第2のメッセンジャー分子である環状グアノシン一リン酸(cyclic guanosine monophosphate、cGMP)の産生を引き起こし、これは、いくつかの機構を介して血圧を低下させる(図1を参照のこと)。動物研究において、ANP若しくはBNP又は受容体それ自体(NPR-A)のいずれかのノックアウトが高血圧を引き起こすことが示されている(John et al.,Science.1995;267:679-81;John et al.Am J Physiol.1996;271:R109-14;Holditch et al.Hypertension.2015;66:199-210;Lopez et al.,Nature.1995;378:65-8;及びOliver et al.Proc Natl Acad Sci USA.1997;94:14730-5)。また、NPR-A受容体における変異が血圧上昇に関連することも示されており(Nakayama et al.Circ Res.2000;86:841-5)、かつナトリウム利尿ペプチドの増加したレベルを与える遺伝的変異を有するヒトは、より低い血圧を有する(Newton-Cheh et al.Nat Genet.2009;41:348-53)。
【0009】
以前の研究は、高血圧を有する患者において、BNP及びANPのレベルの低下並びにNPR-A活性化の低下が存在することを示している(Belluardo et al.American Journal of Physiology.Heart and Circulatory Physiology.2006;291:H1529-35;及びMacheret et al.J Am Coll Cardiol.2012;60:1558-65)。その結果、置換療法としての組換えBNPが、研究されている。概念実証研究において、組換えBNPは、制御されていない高血圧において追加の降圧薬剤を必要とせずに持続的な血圧低下をもたらすことが示された(Cataliotti et al.,Mayo Clinic proceedings.2012;87:413-5)。
【0010】
ANP及びBNPの降圧(すなわち血圧低下)効果に加えて、NPR-Aの活性化は、心肥大の阻害、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の阻害並びにナトリウム利尿及び利尿の増加などのいくつかの有益な心血管及び腎臓の効果に関連する(図1を参照されたい)(Kuhn Physiol Rev.2016;96:751-804)。これらの有利な作用は一緒になって、高血圧及びRHTを有する患者における心血管罹患率及び死亡率のリスクを低減することができる。NPR-A活性化剤はまた、心不全の潜在的な治療であり得る。
【0011】
内因性ナトリウム利尿ペプチドANP及びBNPは、不十分な生物学的利用能及び短い半減期を有し、高血圧における有効な治療選択肢としてのそれらの使用に対する深刻な課題をもたらす。NPR-A受容体を刺激するために多くの取り組みがなされてきた。近年、改善された安全及び生物学的半減期を有するナトリウム利尿ペプチドを設計することに焦点が当てられている(Meems et al.,JACC.Basic to translational science.2016;1:557-567)。しかしながら、ペプチドは、通常、低い代謝安定性及び短い半減期を有し、注射によって投与されなければならない。これは多くの患者にとって不便であり、患者のコンプライアンスを低下させる。
【0012】
小ペプチド様分子もまた、NPR-A受容体を刺激することが提案されているが、これらの分子は、受容体のオルソステリック部位、すなわち内因性リガンドが結合する部位に結合する(Iwaki et al.Bioorg Med Chem Lett.2017;27:4904-4907;Iwaki et al.Bioorganic & Medicinal Chemistry.2017;25:1762-1769;及びIwaki et al.Bioorganic & Medicinal Chemistry.2017;25:6680-6694)。
【0013】
本発明者らは、ここで、有効なNPR-A活性化剤として小分子薬物を使用するが、以前の提案とは対照的にアロステリックエンハンサーである、すなわち内因性リガンドとは異なる部位に結合する、高血圧の治療のための新しい作用機序を提案する。したがって、これらの化合物は、この受容体に対する内因性リガンドと競合せず、むしろ内因性効果を増強する。以前に公開された要約書は、心不全の潜在的な治療のためのNPR-Aのアロステリックエンハンサーを提案したが、この要約書は、分子の結合性部位又は構造を明らかにしていない(Burnett Journal of Cardiac Failure.2017;23:S19)。
【0014】
初期のペプチド様分子とは対照的に、本明細書で提案される小分子薬物は、より長い生物学的半減期を有する。結果として、それらは、NPR-Aを活性化するために経口投与されてよく、患者の利便性及びコンプライアンスを増加させる。本開示の主題であるアロステリックエンハンサーの安全性の利点は、それらの効果が内因性BNP及びANPの作用を増強することによって達成されるので、現在の降圧薬と比較して重篤な副作用のリスクが低いことである。
【0015】
ナトリウム利尿ペプチド系も標的とするEntresto(登録商標)(バルサルタン/サクビトリル)は、最近、うっ血性心不全の治療のために承認された(Ponikowski et al.,Eur J Heart Fail.2016;18:891-975)。これは、アンジオテンシン受容体を遮断し、ネプリライシンと呼ばれるナトリウム利尿ペプチド分解酵素を阻害する併用療法である。しかしながら、ナトリウム利尿ペプチドに加えて、ネプリライシンは、血圧に対して反対の効果を有する他のペプチドを分解することが知られている。ネプリライシン阻害剤とは対照的に、本発明者らによって現在提案されている小分子化合物は、ナトリウム利尿ペプチド系の直接的な効果に影響を及ぼすだけであり、ネプリライシンを阻害するときに見られるオフターゲット効果を有さない。
【0016】
NPR-Aのアロステリックエンハンサーとして、本明細書で提案される化合物は、ナトリウム利尿ペプチドBNP及びANPの有効性及び効力を、NPR-Aを活性化し、したがってcGMPを生成するそれらの能力において増加させる。したがって、これらの知見は、高血圧の治療に使用される。NPR-Aを活性化するそれらの能力に起因して、本明細書中に記載される化合物はまた、特定の心血管状態及び腎臓状態、例えば、肺高血圧、子癇前症、糖尿病、心不全、心血管疾患、心線維症及び心肥大、並びに腎臓及び肺のような他の器官及び組織における線維症に関連する疾患を含むが、これらに限定されないNPR-Aが関与する他の状態の治療又は予防に好適であると考えられる。
【0017】
一態様において、本発明は、ナトリウム利尿ペプチド受容体-Aによって媒介される状態又は障害の治療又は予防に使用するための、具体的には高血圧、より好ましくは抵抗性高血圧の治療又は予防に使用するための、式(I)の化合物、その立体異性体、及び薬学的に許容される塩を提供し、
【0018】
【化1】
【0019】
式中、
1及びR2は、
-H
-ハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)、
-C16アルキル(例えば、C13アルキル)、
-C16ハロアルキル(例えば、C13ハロアルキル)、及び
-CN、から独立して選択され、
ただし、R1及びR2のうちの少なくとも1つは、-H以外であり、
3は、以下の式の基であり、
【0020】
【化2】
【0021】
式中、nは、0又は1であり、
4は、H又はC13アルキル(例えば、-CH3)であり、
1は、
-結合、
--(CH2p-(式中、pは1~3の整数、好ましくは1又は2である)、
-C36シクロアルキレン(例えば、C34シクロアルキレン)、から選択された連結基であり、
Xは、
-C13アルキル(例えば、-CH3)、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル(例えば、-CF3)、ハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)、及び-CNから選択される1つ以上の置換基で任意選択で置換されているアリール基、
-C13アルキル(例えば、-CH3)、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル(例えば、-CF3)、ハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)及び任意選択で置換されているフェニル(例えば、非置換フェニル)から選択される1つ以上の置換基で任意選択で置換されている5又は6員複素環、並びに
-C13アルキル(例えば、-CH3)、C13ハロアルキル(例えば、-CF3)、及びハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)から選択される1つ以上の置換基で任意選択で置換されているシクロアルキル基(例えば、三環式シクロアルキル基)、から選択される。
【0022】
好ましい態様において、本発明は、高血圧の治療又は予防に使用するための、具体的には、抵抗性高血圧の治療又は予防に使用するための、式(I)の化合物、その立体異性体、及び薬学的に許容される塩を提供する。
【0023】
別の態様において、本発明は、医薬として使用するための式(I)の化合物、その立体異性体、及び薬学的に許容される塩を提供する。
【0024】
更なる態様において、本発明は、式(I)の化合物、その立体異性体、又は薬学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤と一緒に含む、医薬組成物に関する。
【0025】
更なる態様において、本発明は、式(I)の化合物、又はその立体異性体、又は薬学的に許容される塩を、追加の降圧薬などの1つ以上の追加の原薬と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0026】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の式(II)、(IIa)、(III)及び(IV)の新規化合物、それらの立体異性体、及びそれらの薬学的に許容される塩に関する。
【0027】
更なる態様において、本発明は、医薬として使用するための、本明細書に記載の式(II)、(IIa)、(III)又は(IV)の化合物、又はその立体異性体、又は薬学的に許容される塩に関する。
【0028】
更なる態様において、本発明は、ナトリウム利尿ペプチド受容体-Aによって媒介される状態又は障害、具体的には高血圧、より好ましくは抵抗性高血圧の治療又は予防における使用のための、本明細書に記載される式(II)、(IIa)、(III)又は(IV)の化合物、又はその立体異性体、又は薬学的に許容される塩に関する。
【0029】
更なる態様において、本発明は、本明細書に記載の式(II)、(IIa)、(III)又は(IV)の化合物、又はその立体異性体、又は薬学的に許容される塩の調製方法に関する。
【0030】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の式(II)、(IIa)、(III)又は(IV)の化合物、その立体異性体、又は薬学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤と一緒に含む、医薬組成物に関する。
【0031】
更なる態様において、本発明は、本明細書に記載の式(II)、(IIa)、(III)若しくは(IV)の化合物、又はその立体異性体、若しくは薬学的に許容される塩を、1つ以上の追加の原薬と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0032】
ナトリウム利尿ペプチド受容体-Aによって媒介される状態又は障害、具体的には高血圧、又はより好ましくは抵抗性高血圧の治療又は予防において使用するための医薬の製造における、本明細書に記載の化合物のいずれか、又はその立体異性体、若しくは薬学的に許容される塩の使用は、本発明の更なる態様を形成する。
【0033】
ナトリウム利尿ペプチド受容体-Aによって媒介される状態又は障害、具体的には高血圧、又はより好ましくは抵抗性高血圧を治療又は予防する方法であって、それを必要とする患者(例えば、ヒト対象)に、薬学的有効量の本明細書に記載の任意の化合物又はその立体異性体若しくは薬学的に許容される塩を投与するステップを含む当該方法は、本発明のその上更なる態様を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】いくつかの機序を介して血圧を低下させるcGMPの産生を引き起こすANP及びBNPの作用によるNPR-Aの活性化を概略的に示す。
図2】HeLa細胞で行ったMTTアッセイからの結果を示す。細胞を、漸増濃度の示された化合物とともに24時間及び48時間インキュベートした。データは、陰性対照(1%DMSO)のパーセンテージとしてホルマザン形成(吸光度)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
定義
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、一価の飽和、直鎖状又は分枝状の炭素鎖を指す。アルキル基の例として、限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソ-ペンチル、ネオ-ペンチル、n-ヘキシル等が挙げられる。アルキル基は、好ましくは、1~6個の炭素原子、例えば、1~4個の炭素原子を含む。
【0036】
「アルコキシ」という用語は、-O-アルキル基を指し、アルキルは、本明細書に定義される通りである。アルコキシ基の例として、限定されないが、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ等が挙げられる。
【0037】
「シクロアルキル」という用語は、一価の飽和環状炭素系を指す。それは単環式、二環式及び三環式環を含む。これらが二環式又は三環式環を含有する場合、環は結合によって連結されていてもよく、又はこれらは縮合されていてもよい。典型的には、それらは融合される。単環式環は3~8個の炭素原子を含有してもよく、二環式及び三環式環は7~14個の炭素原子を含有してもよい。単環式シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
「シクロアルキレン」という用語は、二価の飽和環状炭素系を指す。これは、3~6個の炭素原子、好ましくは3~5個の炭素原子、例えば3又は4個の炭素原子を含有する単環式環を含む。単環式シクロアルキレン基の例としては、シクロプロピレン及びシクロブチレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
「ハロゲン」及び「ハロゲン原子」という用語は、本明細書において互換的に使用され、好ましくはF、Cl又はBrを指す。
【0040】
「ハロアルキル」という用語は、アルキル基の水素原子のうちの少なくとも1つがハロゲン原子、好ましくはF、Cl、又はBrによって置き換えられる、本明細書に定義されるアルキル基を指す。そのような基の例としては、-CH2F、-CHF2、-CF3、-CCl3、-CHCl2、-CH2CF3などが挙げられる。
【0041】
本明細書で使用される「複素環」という用語は、飽和又は部分的に不飽和の炭素環系を指し、少なくとも1つの環原子は、窒素、酸素、及び硫黄から選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子は炭素である。複素環構造は、炭素原子又は窒素原子を介して分子の残りの部分に連結され得る。
【0042】
「アリール」及び「芳香族環」という用語は、本明細書において互換的に使用され、芳香族環系を指す。そのような環系は、単環式又は二環式であり得、少なくとも1つの芳香族環を含有し得る。このような系が2つ以上の環を含む場合、少なくとも1つの環は非芳香族であってもよい。これらが二環式環を含む場合、これらは結合によって連結されていてもよく、又はこれらは縮合していてもよい。任意の縮合二環式環系は、非芳香族環(例えば、5又は6員不飽和炭素環式環)に縮合した芳香族環を含有し得る。好ましくは、任意のアリール基は、6~20個の炭素原子、例えば、6又は10個の炭素原子のいずれかを含有するだろう。「アリール」基の例としては、フェニル、1-ナフチル及び2-ナフチルが挙げられるが、これらに限定されない。好ましいアリール基は、フェニルである。
【0043】
「ヘテロアリール」及び「ヘテロ芳香族環」という用語は、本明細書において互換的に使用され、複素環式芳香族基を指す。そのような基は、単環式又は二環式であり得、少なくとも1つの不飽和複素芳香族環系を含有し得る。これらが単環式である場合、これらは、窒素、酸素、及び硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含んでよく、かつ、芳香族系を形成するのに十分な共役結合を含む、5又は6員環を含んでよい。これらが二環式である場合、これらは、9~11個の環原子を含有し得る。「ヘテロアリール基」の例としては、チオフェニル、チエニル、ピリジル、チアゾリル、フリル、ピロリル、トリアゾリル、イミダゾリル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリル、イミダゾロニル、オキサゾロニル、チアゾロニル、テトラゾリル、チアジアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾフリル、インドリル、イソインドリル、ピリドニル、ピリダジニル、ピリミジニル、イミダゾピリジル、オキサゾピリジル、チアゾロピリジル、イミダゾピリダジニル、オキサゾロピリダジニル、チアゾロピリダジニル、及びプリニルが挙げられる。
【0044】
特に明記しない限り、全ての置換基は互いに独立している。
【0045】
下付き文字が整数0(すなわちゼロ)である場合、その下付き文字が言及する基が存在しないこと、すなわち、その特定の基の両側の基の間に直接結合が存在することが意図される。
【0046】
本明細書に記載の特定の化合物は、1つ以上の立体中心を含んでもよく、したがって、異なる立体異性体型で存在し得る。「立体異性体」という用語は、同一の化学構成を有するが、原子又は基の空間配置に関して異なる化合物を指す。立体異性体の例は、鏡像異性体及びジアステレオマー(「ジアステレオ異性体」とも呼ばれる)である。「鏡像異性体」という用語は、互いに重ね合わせ不可能な鏡像である化合物の2つの立体異性体を指す。「ジアステレオマー」又は「ジアステレオ異性体」という用語は、互いに鏡像ではない2つ以上の立体中心を有する立体異性体を指す。本発明は、ジアステレオマー及び鏡像異性体、並びに鏡像異性体の比が1:1以外であるラセミ混合物及び鏡像異性体が豊富な混合物にまで及ぶと考えられる。
【0047】
本明細書に記載の化合物は、それらの鏡像異性体及び/又はジアステレオマーに分離され得る。例えば、これらが1つの立体中心のみを含有する場合、これらは、ラセミ化合物若しくはラセミ混合物(鏡像異性体の50:50混合物)の形態で提供され得るか、又は純粋な鏡像異性体として、すなわち、R又はS形態で提供され得る。ラセミ化合物として生じる化合物のいずれかは、キラル相上でのカラム分離などの当該技術分野で既知の方法によって、又は光学的に活性な溶媒からの再結晶化によって、それらの鏡像異性体に分離され得る。少なくとも2個の不斉炭素原子を有するこれらの化合物は、それ自体既知の方法を使用して、例えば、クロマトグラフィー及び/又は分画結晶化によって、それらの物理化学的差異に基づいてそれらのジアステレオマーに分離され得、これらの化合物がラセミ形態で得られる場合、それらはその後、それらの鏡像異性体に分離され得る。
【0048】
本明細書で使用される「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書に記載の化合物のいずれかの任意の薬学的に許容される有機塩又は無機塩を指す。薬学的に許容される塩は、対イオン等の1つ以上の追加の分子を含み得る。対イオンは、親化合物の電荷を安定させる任意の有機基又は無機基であり得る。本発明の化合物が塩基である場合、好適な薬学的に許容される塩は、遊離塩基と有機又は無機酸との反応によって調製され得る。本発明の化合物が酸である場合、好適な薬学的に許容される塩は、遊離酸と有機又は無機塩基との反応によって調製され得る。
【0049】
「薬学的に許容される」という用語は、化合物又は組成物が、製剤の他の成分又は治療される患者(例えば、ヒト)と化学的及び/又は毒物学的に適合性があることを意味する。
【0050】
「医薬組成物」とは、医療目的で使用するのに好適な任意の形態の組成物を意味する。
【0051】
本明細書で使用される場合、「治療」は、ヒト又は非ヒト動物(例えば、非ヒト哺乳動物)に利益をもたらし得る任意の治療用途を含む。ヒト及び動物の両方の治療が本発明の範囲内であるが、主に、本発明はヒトの治療を目的としている。治療は、既存の疾患若しくは状態に関するものであってもよいか、又は予防的であってもよい。
【0052】
本明細書で使用される場合、「薬学的に有効な量」は、所望の薬理学的及び/又は治療効果につながる量、すなわち、その意図される目的を達成するのに有効な薬剤の量に関する。個々の患者のニーズは様々であり得るが、有効量の活性剤のための最適範囲の決定は、当業者の能力の範囲内である。一般に、本明細書に記載の化合物のいずれかで疾患又は状態を治療するための投与レジメンは、医療状態の性質及びその重症度を含む様々な要因に従って選択される。
【0053】
本明細書で使用される場合、「ナトリウム利尿ペプチド受容体-A」又は「NPR-A」は、心房及び脳ナトリウム利尿ペプチド(それぞれ、ANP及びBNP)の両方の受容体として機能する膜結合型グアニリルシクラーゼを指す。それはまた、「グアニリルシクラーゼA」又は「GC-A」としても知られ得る。ナトリウム利尿ペプチド受容体-Aは、ANP及びBNPによって活性化されると、3’,5’-環状グアノシン一リン酸(cGMP)の産生を引き起こし、これは、多くの異なる機序を介して血圧を低下させる(図1参照)。
【0054】
本明細書における「ナトリウム利尿ペプチド受容体-Aの活性化」への言及はいずれも、cGMPを産生するその酵素活性の増強に関する。ナトリウム利尿ペプチド受容体-Aの活性化剤(又はエンハンサー)への言及は、それに応じて解釈されるべきである。したがって、ナトリウム利尿ペプチド受容体-Aの活性化剤は、その活性を増加させ、したがってcGMPの産生を増加させる化合物である。
【0055】
本明細書で言及され、「血圧上昇」とも呼ばれ得る「高血圧」は、動脈における持続的な血圧上昇を特徴とする長期の医学的状態である。血圧上昇からの長期合併症には、冠動脈疾患、脳卒中、心不全、心房細動、末梢動脈疾患、慢性腎疾患、認知症、網膜症及び視力喪失が含まれる。WHOによれば、高血圧は、成人(すなわち、18歳以上のヒト対象)において2つの異なる日に測定された場合に、両方の日の収縮期血圧読み取り値が≧140mmHgであり、かつ/又は両方の日の拡張期血圧読み取り値が≧90mmHgである場合に診断される。高血圧は、例えば、「2018 ESC/ESH Guidelines for the management of arterial hypertension」(European Heart Journal,39(33):3021-3104,1 September 2018)において更に定義されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0056】
本発明は、少なくとも部分的に、特定のピリダジノン誘導体がナトリウム利尿ペプチド受容体-Aを標的とし、cGMPの産生を引き起こすことができるという発見に基づく。この発見は、NPR-Aの活性によって媒介される、対象(例えば、ヒト)における状態又は疾患を治療又は予防するためのこのような化合物の使用を導く。NPR-Aの活性化剤として、本明細書に記載の化合物は、高血圧、具体的には抵抗性高血圧などのNPR-A活性化の低下に関連する状態又は疾患を治療又は予防するのに好適である。
【0057】
一態様において、本発明は、ナトリウム利尿ペプチド受容体-Aによって媒介される状態又は障害の治療又は予防に使用するための、具体的には高血圧、より好ましくは抵抗性高血圧の治療に使用するための、式(I)の化合物、その立体異性体、又は薬学的に許容される塩を提供し、
【0058】
【化3】
【0059】
式中、
1及びR2は、
-H、
-ハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)、
-C16アルキル(例えば、C13アルキル)、
-C16ハロアルキル(例えば、C13ハロアルキル)、及び
-CN、から独立して選択され、
ただし、R1及びR2のうちの少なくとも1つは、-H以外であり、
3は、以下の式の基であり、
【0060】
【化4】
【0061】
式中、nは、0又は1であり、
4は、H又はC13アルキル(例えば、-CH3)であり、
1は、
-結合、
--(CH2p-(式中、pは1~3の整数、好ましくは1又は2である)、
-C36シクロアルキレン(例えば、C34シクロアルキレン)、から選択された連結基であり、
Xは、
-C13アルキル(例えば、-CH3)、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル(例えば、-CF3)、ハロゲン(例えばF、Cl又はBr)、及び-CNから選択される1つ以上の置換基で任意選択で置換されているアリール基、
-C13アルキル(例えば、-CH3)、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル(例えば、-CF3)、ハロゲン(例えばF、Cl又はBr)及び任意選択で置換されているフェニル(例えば、非置換フェニル)から選択される1つ以上の置換基で任意選択で置換されている5又は6員複素環、並びに
-C13アルキル(例えば、-CH3)、C13ハロアルキル(例えば、-CF3)、及びハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)から選択される1つ以上の置換基で任意選択で置換されているシクロアルキル基(例えば、三環式シクロアルキル基)、から選択される。
【0062】
式(I)において、式(I)中のR1及びR2の少なくとも1つは水素以外であり、すなわち、R1及びR2の両方が水素であることはできない。
【0063】
一実施形態において、R1及びR2は、独立して、H及びハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)から、好ましくはH、Cl及びBrから選択される。例えば、R1及びR2の少なくとも1つは、ハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)、好ましくはCl又はBrであってもよい。
【0064】
一実施形態において、R1及びR2は両方ともハロゲンであり、例えば、それらは両方ともCl又はBrであってもよい。一実施形態では、R1及びR2の両方がClである。
【0065】
別の実施形態において、R1及びR2の一方はハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)であり、他方は水素である。一実施形態において、R1はハロゲンであってよく、R2は水素であってよい。例えば、R1はClであってよく、R2は水素であってよい。
【0066】
式(I)において、nは0又は1のいずれかである。nが0である場合、基Xはカルボニル基に直接結合してケトンを形成する。nが1である場合、基R3は、式(I)中のカルボニル基に直接結合してアミドを形成する窒素原子を含む。
【0067】
一実施形態において、本発明で使用するための化合物は、式(Ia)の化合物、それらの立体異性体、及びその薬学的に許容される塩であり、
【0068】
【化5】
【0069】
式中、
1及びR2は、本明細書で定義される通りであり、
Xは、
-C13アルキル(例えば、-CH3)、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル(例えば、-CF3)、ハロゲン(例えばF、Cl又はBr)、及び-CNから選択される1つ以上の置換基で任意選択で置換されているアリール基、
-C13アルキル(例えば、-CH3)、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル(例えば、-CF3)、ハロゲン(例えばF、Cl又はBr)及び任意選択で置換されているフェニル(例えば、非置換フェニル)から選択される1つ以上の置換基で任意選択で置換されている5又は6員複素環、並びに
-C13アルキル(例えば、-CH3)、C13ハロアルキル(例えば、-CF3)、及びハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)から選択される1つ以上の置換基で任意選択で置換されているシクロアルキル基(例えば、三環式シクロアルキル基)、から選択される。
【0070】
別の実施形態において、本発明で使用するための化合物は、式(Ib)の化合物、それらの立体異性体、及びその薬学的に許容される塩であり、
【0071】
【化6】
【0072】
式中、
1、R2、R4及びL1は、本明細書で定義される通りであり、
Xは、
-C13アルキル(例えば、-CH3)、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル(例えば、-CF3)、ハロゲン(例えばF、Cl又はBr)、及び-CNから選択される1つ以上の置換基で任意選択で置換されているアリール基、並びに
-C13アルキル(例えば、-CH3)、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル(例えば、-CF3)、ハロゲン(例えばF、Cl又はBr)、及び任意選択で置換されているフェニル(例えば、非置換フェニル)から選択される1つ以上の置換基で任意選択で置換されている5又は6員複素環、から選択される。
【0073】
実施形態において、本発明で使用するための化合物は、式(Ic)の化合物、それらの立体異性体、及びその薬学的に許容される塩であり、
【0074】
【化7】
【0075】
式中、
1及びR2は、本明細書で定義される通りである。
【0076】
別の実施形態において、本発明で使用するための化合物は、式(Id)の化合物、それらの立体異性体、及びその薬学的に許容される塩であり、
【0077】
【化8】
【0078】
式中、
1及びR2は、本明細書で定義される通りであり、
各Y1は、独立して、C13アルキル(例えば、-CH3)、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル(例えば、-CF3)、ハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)及び-CNから選択され、
qは、0~3の整数、好ましくは1又は2である。
【0079】
別の実施形態において、本発明で使用するための化合物は、式(Ie)の化合物、それらの立体異性体、及びその薬学的に許容される塩であり、
【0080】
【化9】
【0081】
式中、
1及びR2は、本明細書で定義される通りであり、
1は本明細書で定義の通りであり、好ましくはC13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル(例えば、-CF3)、ハロゲン(例えばF、Cl又はBr)、又は-CNであり、
各Y2は、独立して、C13アルキル(例えば、-CH3)、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル(例えば、-CF3)、ハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)又は-CNから選択され、好ましくはハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)であり、
rは、0~2の整数、好ましくは0又は1である。
【0082】
別の実施形態において、本発明で使用するための化合物は、式(If)の化合物、それらの立体異性体、及びその薬学的に許容される塩であり、
【0083】
【化10】
【0084】
式中、
1、R2、R4及びpは、本明細書に定義される通りであり、
各Y1は、独立して、C13アルキル(例えば、-CH3)、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル(例えば、-CF3)、ハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)及び-CNから選択され、
qは、0~3の整数、好ましくは1又は2である。
【0085】
別の実施形態において、本発明で使用するための化合物は、式(Ig)の化合物、それらの立体異性体、及びその薬学的に許容される塩であり、
【0086】
【化11】
【0087】
式中、
1、R2、R4及びpは、本明細書に定義される通りであり、
Zは、C13アルキル(例えば、-CH3)、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル(例えば、-CF3)、ハロゲン(例えばF、Cl又はBr)、及び任意選択で置換されているフェニル(例えば、非置換フェニル)から選択される1つ以上の置換基で任意選択で置換されている5又は6員複素環である。
【0088】
本発明に従って使用するための化合物の例には、以下の、それらの立体異性体、及びそれらの薬学的に許容される塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0089】
【表1-1】
【0090】
【表1-2】
【0091】
【表1-3】
【0092】
【表1-4】
【0093】
本発明で使用するのに好ましい化合物は、化合物番号1、2、11及び24である。
【0094】
本明細書に記載される特定の化合物は新規であり、これらは本発明の更なる態様を形成する。したがって、更なる態様において、本発明は、一般式(II)、(III)及び(IV)の以下の化合物、それらの立体異性体、並びにそれらの薬学的に許容される塩を提供し、
【0095】
【化12】
【0096】
式中、
1及びR2は、本明細書で定義される通りであり、
1は、本明細書で定義の通りであり、好ましくは、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル、ハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)又は-CNであり、
各Y2は、独立して、C13アルキル(例えば、-CH3)、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル、ハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)又は-CNから選択され、好ましくはハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)であり、
rは、0~2の整数、好ましくは0又は1であり、
ただし、本化合物は、
4-クロロ-2-[2-(2,4-ジクロロフェニル)-2-オキソ-エチル]ピリダジン-3-オン;
4,5-ジクロロ-2-[2-(4-クロロフェニル)-2-オキソ-エチル]ピリダジン-3-オン;
4,5-ジクロロ-2-[2-(4-メトキシフェニル)-2-オキソ-エチル]ピリダジン-3-オン;又は
4,5-ジクロロ-2-[2-(4-メチルフェニル)-2-オキソ-エチル]ピリダジン-3-オン以外である。
【0097】
【化13】
【0098】
式中、
1、R2、R4及びpは、本明細書に定義される通りであり、
各Y1は、独立して、C13アルキル(例えば、-CH3)、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル、ハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)及び-CNから選択され、
qは、0~3の整数、好ましくは1又は2であり、
ただし、本化合物は、
4,5-ジクロロ-N-[(2,4-ジクロロフェニル)メチル]-6-オキソ-1(6H)-ピリダジンアセトアミド又は4,5-ジクロロ-N-[2-(2,4-ジクロロフェニル)エチル]-6-オキソ-1(6H)-ピリダジンアセトアミド以外である。
【0099】
【化14】
【0100】
式中、
1、R2、R4及びpは、本明細書に定義される通りであり、
Zは、C13アルキル(例えば、-CH3)、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル(例えば、-CF3)、ハロゲン(例えばF、Cl又はBr)、及び任意選択で置換されているフェニル(例えば、非置換フェニル)から選択される1つ以上の置換基で任意選択で置換されている5又は6員複素環であり、
ただし、本化合物は、
4,5-ジクロロ-N-[[4-(2-メチルプロピル)-2-モルホリニル]メチル]-6-オキソ-1(6H)-ピリダジンアセトアミド;
4,5-ジクロロ-N-[2-(1H-インドール-3-イル)エチル]-6-オキソ1(6H)-ピリダジンアセトアミド;
4,5-ジブロモ-6-オキソN-(4-ピリジニルメチル)-1(6H)-ピリダジンアセトアミド;
4,5-ジクロロ-N-[(3-メチル-4-ピリジニル)メチル]-6-オキソ1(6H)-ピリダジンアセトアミド;
4,5-ジクロロ-6-オキソ-N-(4-ピリジニルメチル)-1(6H)-ピリダジンアセトアミド;
4,5-ジブロモ-N-[(3-メチル-4-ピリジニル)メチル]-6-オキソ-1(6H)-ピリダジンアセトアミド;
4,5-ジクロロ-N-[[5-(4-クロロフェニル)-2-フラニル]メチル]-6-オキソ1(6H)-ピリダジンアセトアミド;
4,5-ジクロロ-6-オキソ-N-(2-チエニルメチル)-1(6H)-ピリダジンアセトアミド;
4,5-ジブロモ-N-[[4-(2-メチルプロピル)-2-モルホリニル]メチル]-6-オキソ-1(6H)-ピリダジンアセトアミド;
4,5-ジクロロ-N-(2-フラニルメチル)-6-オキソ-1(6H)-ピリダジンアセトアミド;
4,5-ジクロロ-6-オキソ-N-[(テトラヒドロ-2-フラニル)メチル]-1(6H)-ピリダジンアセトアミド;及び4,5-ジクロロ-N-[(2,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジオキシン-2-イル)メチル]-6-オキソ-1(6H)-ピリダジンアセトアミド以外である。
【0101】
一実施形態において、本発明による化合物は、R2が水素である式(II)、(III)又は(IV)の化合物である。一実施形態において、本発明による化合物は、R2が水素であり、R1がハロゲン(例えば、Cl)である式(II)、(III)又は(IV)の化合物である。
【0102】
一実施形態において、本発明は、一般式(IIa)の化合物、それらの立体異性体、及びそれらの薬学的に許容される塩を提供し、
【0103】
【化15】
【0104】
式中、
1は、ハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)、C16アルキル(例えば、C13アルキル)、C16ハロアルキル(例えば、C13ハロアルキル)又は-CN、好ましくはハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)、例えば、Clであり、
1は、本明細書で定義の通りであり、好ましくは、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル、ハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)又は-CNであり、
各Y2は、独立して、C13アルキル(例えば、-CH3)、C13アルコキシ(例えば、-OCH3)、C13ハロアルキル、ハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)又は-CNから選択され、好ましくはハロゲン(例えば、F、Cl又はBr)であり、
rは、0~2の整数、好ましくは0又は1である。
【0105】
本発明による新規化合物には、本明細書に列挙した化合物番号3、4、6、8、11、12、13、14、16、17、18、19、20及び24、それらの立体異性体及び薬学的に許容される塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0106】
更なる態様において、本発明は、医薬として使用するための、式(II)、(IIa)、(III)若しくは(IV)の化合物、又はその立体異性体、又は薬学的に許容される塩を提供する。
【0107】
更なる態様において、本発明は、ナトリウム利尿ペプチド受容体-Aによって媒介される状態又は障害、具体的には高血圧、又はより好ましくは抵抗性高血圧の治療又は予防に使用するための、式(II)、(IIa)、(III)若しくは(IV)の化合物、又はその立体異性体、又は薬学的に許容される塩を提供する。
【0108】
別の態様において、本発明は、式(II)、(IIa)、(III)又は(IV)の化合物、その立体異性体、又は薬学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤と一緒に含む、医薬組成物に関する。
【0109】
更なる態様において、本発明は、式(II)、(IIa)、(III)若しくは(IV)の化合物、又はその立体異性体、又は薬学的に許容される塩を、更なる原薬と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0110】
ナトリウム利尿ペプチド受容体-Aによって媒介される状態又は障害、具体的には高血圧、又はより好ましくは抵抗性高血圧の治療又は予防において使用するための医薬の製造における、式(II)、(IIa)、(III)若しくは(IV)の化合物、又はその立体異性体、若しくは薬学的に許容される塩の使用は、本発明の更なる態様を形成する。
【0111】
ナトリウム利尿ペプチド受容体-Aによって媒介される状態又は障害、具体的には高血圧、より好ましくは抵抗性高血圧を治療又は予防する方法であって、薬学的有効量の式(II)、(IIa)、(III)若しくは(IV)の化合物、又はその立体異性体、若しくは薬学的に許容される塩を投与するステップを含む当該方法は、本発明のその上更なる態様を形成する。
【0112】
本明細書に記載の化合物のいずれも、その塩、特に無機若しくは有機の酸又は塩基を有するその薬学的に許容される塩に変換され得る。塩形成のための手順は、当該技術分野の従来のものである。
【0113】
当然のことながら、本明細書に記載の化合物は、鏡像異性体、ジアステレオマー、及びそれらの混合物を含む、様々な立体異性体形態で存在し得る。本発明は、本明細書に記載の化合物の全ての光学異性体及び光学異性体の混合物を包含する。したがって、ジアステレオマー、ラセミ化合物、及び/又は鏡像異性体として存在する化合物は、本発明の範囲内である。
【0114】
式(I)の化合物は、当技術分野で公知であるか、又は当業者に公知の方法によって調製することができる。いくつかの化合物は、Enamine、Sigma-Aldrich及びFluorochemを含む供給源から市販されている。
【0115】
当技術分野で知られていない本明細書に記載の化合物のいずれも、式(II)、(IIa)、(III)及び(IV)の化合物を含めて、容易に入手可能な出発物質から、当技術分野で知られている合成方法、例えば、公知の教科書、例えば、Advanced Organic Chemistry(March,Wiley Interscience,5th 2001)又はAdvanced Organic Chemistry(Carey and Sundberg,KA/PP,4th Ed.2001)に記載されている方法を使用して調製することができる。
【0116】
以下のスキーム1及び2は、本明細書に記載の化合物を調製するのに好適である一般的な方法を例示する。式(II)、(IIa)、(III)及び(IV)の化合物を調製するためのそのような方法は、本発明の更なる態様を形成する。出発物質として使用される化合物は、文献から知られているか、又は市販されている可能性がある。代替的に、これらは、文献から既知の方法によって容易に得ることができる。理解されるように、他の合成経路を使用して、異なる出発物質、異なる試薬、及び/又は異なる反応条件を使用して化合物を調製することができる。本発明に従って化合物を調製する方法のより詳細な説明は、実施例に見出される。
【0117】
【化16】
【0118】
本明細書に記載の化合物は、有益な薬理学的特性、具体的にはナトリウム利尿ペプチド受容体-A(NPR-A)を活性化する能力を有する。したがって、本化合物は、NPR-Aによって媒介される任意の状態又は疾患、具体的にはNPR-A活性化の低下の結果として生じる状態又は疾患の治療又は予防に好適である。
【0119】
NPR-Aは、正常血圧の維持において中心的な役割を果たす。したがって、本明細書に記載の化合物は、降圧薬としての使用に特に好適である。具体的には、それらは、原発性(本態性)高血圧又は二次性高血圧を治療又は予防するために使用され得る。原発性高血圧は、生活様式及び遺伝的要因に起因して生じ、最も一般的なタイプである血圧上昇として定義される。原発性高血圧のリスクを増加させる生活様式因子には、食事中の過剰な塩分、過剰な体重、喫煙及びアルコール摂取が含まれる。二次性高血圧は、慢性腎疾患、腎動脈の狭窄、又はクッシング症候群、甲状腺機能亢進、若しくは甲状腺機能低下などの内分泌障害などの特定可能な原因によって生じる。二次性高血圧の他の原因には、肥満、妊娠、過剰なアルコール消費、ある種の処方薬及び刺激薬、例えばコカイン及びメタアンフェタミンが含まれる。子癇前症は、高血圧にも関連する。
【0120】
特定の実施形態において、本明細書に記載の化合物は、現在の降圧治療に応答しない高血圧患者における血圧の低下、すなわち、いわゆる「抵抗性高血圧」の治療に使用される。本明細書で使用される場合、「抵抗性高血圧」という用語は、対象(例えば、ヒト患者)が、異なる作用機序を有する3つ以上の降圧薬剤を同時に服用しているにもかかわらず、対象において標的レベルを超えたままである(例えば、140/90mmHgを超える)血圧上昇を指す。したがって、本発明による治療から利益を得ることができる対象(例えば、患者)には、高血圧と診断され、少なくとも3つの異なる降圧薬剤の同時投与を含む治療を以前に処方された(すなわち、受けた)が、応答しなかった対象が含まれる。
【0121】
高血圧は、心臓に深刻な損傷を引き起こし得る。過剰な圧力は、動脈を硬化させ、心臓への血液及び酸素の流れを減少させ得る。この上昇した圧力及び減少した血流は、他の合併症(例えば、アンギナ、冠動脈疾患、心臓発作、心筋梗塞、心不全、及び突然死に至り得る不規則な心拍)を引き起こし得る。高血圧はまた、脳に血液及び酸素を供給する動脈を破裂又は遮断して、脳卒中を引き起こし得る。それはまた、腎臓損傷を引き起こす可能性があり、それは最終的に腎不全につながる可能性がある。血圧上昇の他の長期的影響には、認知症、網膜症及び視力喪失が含まれ得る。したがって、本明細書に記載される化合物はまた、対象(例えば、患者)がこれらの列挙された合併症のいずれかを発症するリスクを治療、予防、又は低減するために使用され得る。一実施形態において、本明細書に記載の化合物は、以下の状態:狭心症、冠動脈疾患、心臓発作、心筋梗塞、心不全、不整脈、脳卒中、腎障害、腎不全、認知症、網膜症、及び視力喪失のいずれかの治療又は予防に使用することができる。
【0122】
一実施形態において、本明細書に記載される化合物は、肺高血圧、子癇前症、糖尿病、心不全又は心血管疾患を治療又は予防するために使用され得る。別の実施形態において、化合物は、心線維症若しくは心肥大、又は腎臓若しくは肺を含むがこれらに限定されない他の器官若しくは組織における線維症を伴う任意の疾患若しくは状態を治療又は予防するために使用され得る。高血圧の治療、具体的には抵抗性高血圧の治療は、本発明の好ましい実施形態である。
【0123】
更なる態様から見ると、本発明は、治療における使用のための、本明細書に記載の化合物、立体異性体又は薬学的に許容される塩を提供する。別途指定されない限り、本明細書で使用される「療法」という用語は、治療及び予防の両方を含むことが意図される。
【0124】
更なる態様において、本発明は、本明細書に記載の状態のいずれかの治療又は予防、例えば、高血圧、より好ましくは抵抗性高血圧の治療又は予防に使用するための、本明細書に記載の化合物、立体異性体又は薬学的に許容される塩を提供する。
【0125】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の状態のいずれかの治療又は予防、例えば、高血圧、より好ましくは抵抗性高血圧の治療又は予防の方法における使用のための医薬の製造における、本明細書に記載の化合物、立体異性体又は薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0126】
また、本明細書に記載の状態のいずれかと闘うか又は予防するための、例えば、高血圧、より具体的には抵抗性高血圧と闘うか又は予防するための、ヒト又は非ヒト動物の身体の治療方法であって、当該身体に有効量の本明細書に記載の化合物、立体異性体又は薬学的に許容される塩を投与するステップを含む方法も、提供される。
【0127】
治療的又は予防的治療で使用するために、本明細書に記載の化合物は、典型的には、薬学的製剤として製剤化されることになる。したがって、更なる態様において、本発明は、本明細書に記載の化合物、立体異性体又は薬学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤と一緒に含む、医薬組成物を提供する。
【0128】
治療的使用のための許容される担体、賦形剤及び希釈剤は、当技術分野で周知であり、意図される投与経路及び標準的な薬務に関して選択することができる。例としては、結合剤、潤滑剤、懸濁剤、コーティング剤、可溶化剤、保存剤、湿潤剤、乳化剤、界面活性剤、甘味料、着色剤、香味剤、抗酸化剤、臭気剤、緩衝剤、安定剤及び/又は塩が挙げられる。
【0129】
本明細書に記載の化合物は、当該技術分野で周知の技法に従って、1つ以上の従来の担体及び/又は賦形剤とともに製剤化され得る。典型的には、組成物は、経口又は非経口投与のために、例えば、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、又は静脈内注射によって適合される。非経口投与のためには、皮下、筋肉内又は静脈内投与に適した組成物が一般に好ましい。
【0130】
一実施形態において、本明細書に記載される組成物は、皮下注射に適合される。皮下注射のための典型的な組成物は、式(I)の化合物、又はその立体異性体若しくは薬学的に許容される塩の滅菌水性懸濁液又は溶液である。
【0131】
一実施形態において、本明細書に記載される組成物は、筋肉内注射に適合される。筋肉内注射のための典型的な組成物は、式(I)の化合物、又はその立体異性体若しくは薬学的に許容される塩が油性懸濁液中に製剤化されている無菌持続放出製剤である。
【0132】
一実施形態において、本明細書に記載される組成物は、静脈内注射に適合される。静脈内注射のための典型的な組成物は、式(I)の化合物、又はその立体異性体若しくは薬学的に許容される塩の滅菌水溶液である。
【0133】
注射用組成物は、好ましくは等張溶液(オスモル濃度約300mOsm/kg)である。わずかに高張性の溶液(600mOsm/kg未満のオスモル濃度)も許容される。任意の注射溶液は、1つ以上の生理学的に許容される塩又は他の薬学的に許容される添加剤、例えば、許容されるオスモル濃度を提供するための糖化合物などを更に含み得る。
【0134】
本明細書において式(I)によって定義されるいくつかの化合物は、限定された水溶性を有する。式(I)のいずれかの化合物が、それ自体が水性注射溶液を提供するために、十分に水溶性でない場合、可能であれば、薬学的に許容される塩として製剤化されることが好ましい。本発明による注射に好適である他の組成物は、可溶化剤を含む組成物である。典型的な可溶化剤は、例えばエタノール、グリセロール及びポリエチレングリコールのような水溶性共溶媒である。他の可溶化剤としては、例えばポリソルベート80(Tween 80)のような界面活性剤が挙げられる。可溶化剤の好ましい群は、シクロデキストリン及びそれらの薬学的に許容される塩、好ましくは、2-ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン、4-スルホブチル-ベータ-シクロデキストリン又はスルホブチルエーテル-ベータ-シクロデキストリン、及びそれらの薬学的に許容される塩(例えば、それらのナトリウム塩)である。式(I)によって定義される化合物のシクロデキストリン複合体は、本発明の更なる態様を形成する。これらは、インサイツで、又は少量の水とともに乳鉢及び乳棒を使用し、続いて組成物の調製前に複合体を乾燥させる別個のプロセスにおいて調製され得る。可溶化剤などの医薬添加剤及び限られた水溶解度を有する化合物の医薬組成物の調製方法は、薬科学における標準的な教本に十分に記載されている。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,23rd edition,2020,Academic Pressを参照されたい。
【0135】
別の態様において、本発明は、注射に適した水性医薬製剤であって、式(I)の化合物、その立体異性体又は薬学的に許容される塩を、少なくとも1種の薬学的に許容される可溶化剤、例えばシクロデキストリン又は薬学的に許容されるその塩と一緒に含む当該製剤を提供する。一実施形態において、製剤中に存在する式(I)の化合物は、本明細書に記載の式(IIa)を有する化合物である。
【0136】
本明細書に記載の化合物のいずれかの滅菌組成物は、典型的には、オートクレーブ処理又は滅菌ろ過によって調製することができる。最終的な注射組成物は、予め充填されたシリンジの形態で、又は注射バイアルとして提供され得る。
【0137】
好ましい実施形態において、化合物は、経口投与に適合され得る。例えば、これらは、従来の賦形剤、例えば、溶媒、希釈剤、結合剤、甘味料、香料、pH調整剤、粘度調整剤、抗酸化剤などを使用して、従来の経口投与形態、例えば、錠剤、コーティング錠、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤、分散剤、懸濁剤、シロップ剤、乳剤などに製剤化され得る。好適な賦形剤には、例えば、コーンスターチ、ラクトース、グルコース、微結晶性セルロース、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、クエン酸、酒石酸、水、エタノール、グリセロール、ソルビトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、セチルステアリルアルコール、カルボキシメチルセルロース、又は飽和脂肪などの脂肪物質、又はそれらの好適な混合物などが含まれ得る。
【0138】
化合物の経口投与に好ましい剤形は、錠剤及びカプセル剤である。式(I)によって定義される化合物のいくつかは、経口生物学的利用能を改善するために添加剤とともに製剤化され得る。このような添加剤は、薬科学における標準的な教本に十分に記載されており、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,23rd edition,2020,Academic Pressを参照されたい。典型的なこのような添加剤としては、種々のシクロデキストリン(例えば、ベータ-シクロデキストリン)、界面活性剤及び種々の疎水性賦形剤が挙げられる。好ましい賦形剤の1つの群は、胃腸系においてエマルジョンを形成することができるもの(すなわち、「自己乳化」製剤)である。
【0139】
本明細書に記載の化合物の所望の活性を達成するために必要な投与量は、選択される化合物、その投与方法及び頻度、治療が治療的又は予防的であるかどうか、並びに疾患又は状態の性質及び重症度などの様々な要因に依存する。通常、医師は個々の対象に最も好適である実際の投与量を決定する。特定の患者の特定の用量レベル及び投与頻度は、変化することがあり、使用される特定の化合物の活性、その化合物の代謝安定性及び作用の長さ、患者の年齢、投与方法及び投与時間、並びに特定の状態の重症度などの要因に依存する。化合物及び/又は医薬組成物は、1日1回又は2回など、1日1回~6回のレジメンに従って投与することができる。
【0140】
本明細書に記載の化合物の好適な1日投与量は、0.1mg~1gの範囲の化合物;1mg~500mgの化合物;1mg~300mgの化合物;5mg~100mgの化合物、又は10mg~100mgの化合物であると予想される。「1日投与量」とは、24時間当たりの投与量を意味する。
【0141】
本明細書に記載の化合物は、本明細書に記載の状態のいずれかの治療において単独で使用することができる。代替的に、本明細書中に記載される治療の方法のいずれかは、治療されるべき障害又は疾患を治療する際に有効である1つ以上の更なる活性薬剤の投与と有利に組み合わせられ得る(すなわち、現在のレジメンに対するアドオン治療として)。
【0142】
一実施形態において、本明細書に記載される化合物は、1つ以上の従来の降圧薬剤と組み合わせて使用され得る。このような治療方法は、本明細書中に記載されるような化合物、又はこの化合物を含む医薬組成物、及び更なる降圧薬(単数又は複数)の同時投与、別個投与又は連続投与を包含し得る。活性物質が同時に投与される場合、これらは組み合わせ調製物の形態で提供され得る。したがって、本明細書に記載の医薬組成物のいずれかは、1つ以上のそのような活性薬剤、例えば1つ以上の降圧薬を更に含有してもよい。
【0143】
本発明による使用のための好ましい組み合わせは、本明細書に記載の式(I)、(II)、(IIa)、(III)若しくは(IV)の化合物、又はその立体異性体若しくは薬学的に許容される塩と、心血管疾患の治療のための規制認可(例えば、米国又はEUにおいて)を有する、例えば、高血圧又はより好ましくは抵抗性高血圧の治療のために認可されている少なくとも1種の原薬との組み合わせである。本発明における使用に好ましいのは、異なる作用機序を有する薬物の組み合わせである。異なる作用機序を有する薬物は、異なる生物学的標的に結合若しくは干渉するもの、又は同じ生物学的標的上の異なる部位に結合若しくは干渉するものである。異なる作用機序を有する薬物の組み合わせの使用は、より低用量の薬物の使用を可能にするか、又はより少ない副作用及び/若しくは改善された有効性で治療の安全性を改善するという点で、有利であり得る。
【0144】
本発明による使用のための組み合わせ調製物は、経口投与に適合されたものを含む。したがって、一実施形態において、本発明は、本明細書に記載の式(I)、(II)、(IIa)、(III)若しくは(IV)の化合物、又はその立体異性体若しくは薬学的に許容される塩を、本明細書に記載の1つ以上の追加の原薬と一緒に含む、経口投与に適した組み合わせ製剤を提供する。一実施形態において、組み合わせ製剤は、単位用量形態で、例えば錠剤又はカプセル剤の形態で提供される。好適な単位用量は、1,000mgまで、例えば800mgまで、又は600mgまでの重量を有し得る。
【0145】
本明細書に記載の化合物と同時投与することができる降圧薬剤の例としては、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の阻害剤、例えば、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACE阻害剤)、例えば、ベナゼプリル、ゾフェノプリル、ペリンドプリル、トランドラプリル、カプトプリル、エナラプリル、リシノプリル、及びラミプリル;アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト、例えば、ロサルタン、テルミサルタン、イルベサルタン、カンデサルタン、オルメサルタン、バルサルタン及びサプリサルタン;チアジド利尿薬、例えば、ヒドロクロロチアジド及びベンドロフルメチアジド;チアジド様利尿薬、例えば、クロロサリドン;ジヒドロピリンなどのカルシウムチャネル遮断薬、例えば、アムロジピン、フェロジピン、イスラジピンニフェジピン、ニモジピン、レルカニジピン、ベラパミル又はジルチアゼム;ベータ遮断薬、例えば、メトプロロール、プロプラノロール、チモロール、アテノロールビソプロロール、エスモロール、ネビボロール及びカルベジロール;スピロノラクトン及びエプレレノンなどのアルドステロンアンタゴニスト;並びにプラゾシン及びタムスロシンなどのアルファ遮断薬が挙げられる。一実施形態において、降圧薬剤は、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、セリプロロール、メトプロロール、ネビボロール又はエスモロールなどのβ1選択的ベータ遮断薬であってもよい。別の実施形態において、降圧薬剤は、ラベタロール又はカルベジロールなどのアルファ及びベータ遮断薬の組み合わせであってもよい。同時投与され得る他の降圧薬剤としては、サクビトリル及びサクビトリル-バルサルタン(LCZ596)が挙げられる。
【0146】
別の実施形態において、本発明はまた、(i)本明細書に記載の化合物、立体異性体若しくは薬学的に許容される塩、又は当該化合物、立体異性体若しくは薬学的に許容される塩を含む医薬組成物、及び(ii)本明細書に記載の状態又は障害のうちのいずれかの治療、例えば、対象(例えば、患者)における高血圧、より具体的には抵抗性高血圧の治療又は予防における(i)の使用に関する印刷された説明書及び/又はラベルを含むパッケージを提供する。
【0147】
本発明は更に、そのような治療を必要とする対象における高血圧、例えば抵抗性高血圧の治療のための併用療法の方法を提供し、当該方法は、治療有効量の本明細書に記載の化合物、立体異性体又は薬学的に許容される塩、及び同時に又は別々に(例えば、逐次的に)1つ以上の降圧薬剤を当該対象に投与するステップを含む。
【0148】
本発明はまた、本明細書に記載の化合物、立体異性体又は薬学的に許容される塩、及び1つ以上の降圧薬剤、例えば、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の阻害剤、チアジド利尿薬、カルシウムチャネル遮断薬、又はベータ遮断薬を、任意選択で少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は賦形剤と組み合わせて含む医薬組成物を提供する。
【0149】
本発明の化合物の薬理学的特性は、機能活性のための標準アッセイを使用して分析することができる。本発明の化合物の試験のための詳細なプロトコルを実施例に提供する。
【0150】
[実施例]
ここで、本発明を、以下の非限定的な実施例において、及び添付の図を参照して、より詳細に説明する。
図1] いくつかの機序を介して血圧を低下させるcGMPの産生を引き起こすANP及びBNPの作用によるNPR-Aの活性化を概略的に示す。
図2] HeLa細胞で行ったMTTアッセイからの結果を示す。細胞を、漸増濃度の示された化合物とともに24時間及び48時間インキュベートした。データは、陰性対照(1%DMSO)のパーセンテージとしてホルマザン形成(吸光度)を表す。
【0151】
中間体の調製:
メチル2-(4,5-ジクロロ-6-オキソピリダジン-1(6H)-イル)アセテートの調製:
【0152】
【化17】
【0153】
この化合物を、一般的な手順Aに従って白色固体(1.60g、収率85%)として調製した。
76Cl223については、LC/MS(ESI)m/z 236/238(計算値)237/239([M+H]+実測値)。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.81(s,1H),4.91(s,2H),3.80(s,3H)。
【0154】
tert-ブチル2-(4,5-ジクロロ-6-オキソピリダジン-1(6H)-イル)アセテートの調製:
【0155】
【化18】
【0156】
この化合物を、一般的な手順Aに従って白色固体(1.54g、収率92%)として調製した。
1012Cl223については、LC/MS(ESI)m/z 278/280(計算値)223/225([M-t-Bu+H]+実測値)。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.80(s,1H),4.80(s,2H),1.49(s,9H)。
【0157】
2-(4,5-ジクロロ-6-オキソピリダジン-1(6H)-イル)酢酸の調製:
【0158】
【化19】
【0159】
100mlフラスコ中で、tert-ブチル2-(4,5-ジクロロ-6-オキソピリダジン-1(6H)-イル)アセテート(1.54g、5.50mmol、実施例7参照)を、ジオキサン中の過剰の塩化水素で70℃にて処理した。変換が完了したら、混合物を蒸発乾固して、残留物をヘプタンから粉砕し、固体をガラスフィルター上でろ別し、1.19グラムのオフホワイトの固体(収率96%)を得た。
64Cl223については、LC/MS(ESI)m/z 222/224(計算値)223/225([M+H]+実測値)。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 9.38(very br s,1H),7.83(s,1H),4.96(s,2H).
【0160】
一般的手順:
以下の一般的手順において、基R1、R2及びXは、本明細書で定義した通りであり、Qは脱離基である。
【0161】
一般手順A:ピリダジノンアルキル化
【0162】
【化20】
【0163】
適切なピリダジン-3(2H)-オン(1.0当量)、ハロアセトフェノン又はハロアセテート(1.2当量)及び炭酸カリウム(1.5当量)をアセトニトリル(0.05~0.20M)に懸濁させる。混合物を70℃で1~3時間加熱する。混合物をisoluteに吸収させ、乾燥させた後、残渣をフラッシュクロマトグラフィーに供し、通常、ヘプタン中の酢酸エチル(5%~50%)の勾配で溶出する。生成物の画分を集め、蒸発乾固して、所望の化合物を得る。
【0164】
一般手順B:アミドの調製
【0165】
【化21】
【0166】
2-(4,5-ジクロロ-6-オキソピリダジン-1(6H)-イル)酢酸(1.0当量)及びトリエチルアミン(1.2当量)の乾燥DMF(0.10M)溶液に、不活性雰囲気下でHATU(1.1当量)を添加する。溶液を、適切なアミン(1.1当量)を添加する前に、1時間撹拌した。撹拌を1~4時間続け、次いで分取クロマトグラフィーによって直接精製して、標的アミドを白色又はオフホワイト色の固体として得る。
【0167】
実施例1-4-クロロ-2-(2-(4-クロロフェニル)-2-オキソエチル)ピリダジン-3(2H)-オンの調製
【0168】
【化22】
【0169】
表題化合物を、一般的な手順Aに従って白色固体(27mg、収率95%)として調製した。
128Cl222については、LC/MS(ESI)m/z 282/284(計算値)283/285([M+H]+実測値)。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.98-7.90(m,2H),7.75(d,J=4.3Hz,1H),7.54-7.46(m,2H),7.43(d,J=4.4Hz,1H),5.59(s,2H)。
【0170】
実施例2-5-クロロ-2-(2-(4-クロロフェニル)-2-オキソエチル)ピリダジン-3(2H)-オンの調製。
【0171】
【化23】
【0172】
表題化合物を、一般的な手順Aに従って白色固体(27mg、収率95%)として調製した。
128Cl222については、LC/MS(ESI)m/z 282/284(計算値)283/285([M+H]+実測値)。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.96-7.89(m,2H),7.79(d,J=2.3Hz,1H),7.54-7.46(m,2H),7.03(d,J=2.4Hz,1H),5.52(s,2H)。
【0173】
実施例3-4,5-ジクロロ-2-(2-(4-メトキシフェニル)-2-オキソエチル)ピリダジン-3(2H)-オンの調製
【0174】
【化24】
【0175】
表題化合物を、一般的な手順Aに従って白色固体(30mg、収率93%)として調製した。
1310Cl223については、LC/MS(ESI)m/z 312/314(計算値)313/315([M+H]+実測値)。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 8.01-7.92(m,2H),7.84(s,1H),7.02-6.94(m,2H),5.57(s,2H),3.90(s,3H)。
【0176】
実施例4-4-(2-(4,5-ジクロロ-6-オキソピリダジン-1(6H)-イル)アセチル)ベンゾニトリルの調製。
【0177】
【化25】
【0178】
表題化合物を、一般的な手順Aに従って白色固体(28mg、収率89%)として調製した。
137Cl232については、LC/MS(ESI)m/z 307/309(計算値)308/310([M+H]+実測値)。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 8.12-8.05(m,2H),7.86(s,1H),7.85-7.80(m,2H),5.58(s,2H)。
【0179】
実施例5-5-クロロ-2-(2-(5-クロロチオフェン-2-イル)-2-オキソエチル)ピリダジン-3(2H)-オンの調製
【0180】
【化26】
【0181】
表題化合物を、一般的な手順Aに従って白色固体(19mg、収率93%)として調製した。
106Cl222Sについては、LC/MS(ESI)m/z 288/290(計算値)289/291([M+H]+実測値)。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.78(d,J=2.4Hz,1H),7.62(d,J=4.1Hz,1H),7.05-7.00(m,2H),5.40(s,2H)。
【0182】
実施例6-4,5-ジクロロ-2-[2-(2,4-ジクロロフェニル)-2-オキソ-エチル]ピリダジン-3-オンの調製
【0183】
【化27】
【0184】
N,N-ジメチルホルムアミド(5mL)中の4,5-ジクロロ-2H-ピリダジン-3-オン(165mg、1mmol)及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(0.17mL、1mmol)の溶液を、0℃に冷却した。N,N-ジメチルホルムアミド(3mL)中の2,2’,4’-トリクロロアセトフェノン(223mg、1mmol)の溶液を、反応混合物に0℃で滴下した。反応混合物を室温に到達させ、一晩撹拌した。反応が完了した後(TLCにより制御)、溶媒を減圧下で蒸発させた。水(15mL)を加え、混合物を酢酸エチル(20mL)で抽出した。溶液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、生成物をカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン:1/3)を用いて精製し、表題化合物を白色固体として得た(精製後50mg、14%)。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ 5.70(s,2H),7.71-7.73(d,1H,J=9.6Hz),7.9(s,1H),8.03-8.06(d,1H,J=7.6),8.40(s,1H).
13C NMR(400MHz,DMSO-d6)δ 61.66,127.83,130.70,131.64,132.84,134.22,134.44,136.39,137.25,139.17,156.88,192.07
【0185】
実施例7-4,5-ジクロロ-2-[2-(4-クロロ-3-フルオロ-フェニル)-2-オキソ-エチル]ピリダジン-3-オンの調製
【0186】
【化28】
【0187】
N,N-ジメチルホルムアミド(5mL)中の4,5-ジクロロ-2H-ピリダジン-3-オン(165mg、1mmol)及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(0.17mL、1mmol)の溶液を、0℃に冷却した。N,N-ジメチルホルムアミド(3mL)中の2-クロロ-1-(4-クロロ-3-フルオロフェニル)エタノン(207mg、1mmol)の溶液を、反応混合物に0℃で滴下した。反応混合物を室温に到達させ、一晩撹拌した。反応が完了した後(TLCにより制御)、溶媒を減圧下で蒸発させた。水(15mL)を加え、混合物を酢酸エチル(20mL)で抽出した。溶液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、生成物をカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン:1/3)を用いて精製し、表題化合物を白色固体として得た(精製後45mg、13%)。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ 5.80(s,2H),7.84-7.87(t,1H,J=7.6Hz),7.91-9.94(dd,1H,J=2.2Hz),8.08-8.11(dd,1H,J=1.3Hz),8.32(s,1H)
【0188】
実施例8-4,5-ジクロロ-2-[2-(4-クロロ-2-メチル-フェニル)-2-オキソ-エチル]ピリダジン-3-オンの調製
【0189】
【化29】
【0190】
N,N-ジメチルホルムアミド(5mL)中の4,5-ジクロロ-2H-ピリダジン-3-オン(165mg、1mmol)及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(0.17mL、1mmol)の溶液を、0℃に冷却した。N,N-ジメチルホルムアミド(3mL)中の2-クロロ-1-(4-クロロ-2-メチルフェニル)エタノン(203mg、1mmol)の溶液を、反応混合物に0℃で滴下した。反応混合物を室温に到達させ、一晩撹拌した。反応が完了した後(TLCにより制御)、溶媒を減圧下で蒸発させた。水(15mL)を加え、混合物を酢酸エチル(20mL)で抽出した。溶液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、生成物をカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン:1/3)を用いて精製し、表題化合物を白色固体として得た(精製後16mg、5%)。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ 2.43(s,3H),5.63(s,2H),7.48-7.49(d,1H,J=7.8Hz),8.00-8.03(d,1H,J=8.4Hz),8.32(s,1H)
【0191】
実施例9-4,5-ジクロロ-2-[2-(4-クロロ-3-メチル-フェニル)-2-オキソ-エチル]ピリダジン-3-オンの調製
【0192】
【化30】
【0193】
N,N-ジメチルホルムアミド(5mL)中の4,5-ジクロロ-2H-ピリダジン-3-オン(165mg、1mmol)及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(0.17mL、1mmol)の溶液を、0℃に冷却した。N,N-ジメチルホルムアミド(3mL)中の2-クロロ-1-(4-クロロ-3-メチルフェニル)エタノン(203mg、1mmol)の溶液を、反応混合物に0℃で滴下した。反応混合物を室温に到達させ、一晩撹拌した。反応が完了した後(TLCにより制御)、溶媒を減圧下で蒸発させた。水(15mL)を加え、混合物を酢酸エチル(20mL)で抽出した。溶液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、生成物をカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン:1/3)を用いて精製し、表題化合物を白色固体として得た(精製後47mg、14%)。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ 2.43(s,3H),5.76(s,2H),7.64-7.66(d,1H,J=7.7Hz),7.88-7.91(dd,1H,J=8.8,2.2Hz),8.07-8.07(d,1H,J=1.7),8.32(s,1H)
【0194】
実施例10-2-(4,5-ジクロロ-6-オキソピリダジン-1(6H)-イル)-N-(4-イソプロピルフェネチル)アセトアミドの調製
【0195】
【化31】
【0196】
10mlチューブ中で、2-(4-イソプロピルフェニル)エタン-1-アミン(0.017g、0.105mmol)を、窒素雰囲気下で乾燥トルエン(1.0ml)に溶解した。溶液をトリメチルアルミニウム(0.053ml、0.105mmol)のトルエン中2M溶液で処理したところ、いくらかの発煙が観察された。15分間撹拌した後、メチル2-(4,5-ジクロロ-6-オキソピリダジン-1(6H)-イル)アセテート(0.024g、0.10mmol)を添加し、淡橙色混合物を70℃で一晩加熱した。冷却後、1N HCl水溶液を滴下してクエンチした後、得られた懸濁液を水で希釈し、DCMで3回抽出した。抽出物を合わせ、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、蒸発させると、粗生成物の淡橙色固体が残った。isoluteに吸収させた後、ヘプタン中の酢酸エチル(10%~100%)の勾配で溶離するフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。生成物画分は、14mg(収率37%)の白色固体を与えた。
1719Cl232については、LC/MS(ESI)m/z 367/369(計算値)368/370([M+H]+実測値)。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.81(s,1H),7.18-7.03(symmetrical m,4H),5.92(br s,1H),4.77(s,2H),3.53(q,J=6.6Hz,2H),2.88(hept,J=7.1Hz,1H),2.78(t,J=6.8Hz,2H),1.24(d,J=6.9Hz,6H)。
【0197】
実施例11-2-(4,5-ジクロロ-6-オキソピリダジン-1(6H)-イル)-N-(2-(1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)エチル)アセトアミドの調製
【0198】
【化32】
【0199】
表題化合物を、一般的な手順Bに従って白色固体として調製した。
1715Cl252については、LC/MS(ESI)m/z 391/393(計算値)392/394([M+H]+実測値)。
【0200】
実施例12-2-(4,5-ジクロロ-6-オキソピリダジン-1(6H)-イル)-N-(2,6-ジクロロフェネチル)アセトアミドの調製
【0201】
【化33】
【0202】
表題化合物を、一般的な手順Bに従って白色固体として調製した。
1411Cl432については、LC/MS(ESI)m/z /393/395/397(計算値)394/396/398([M+H]+実測値)。
【0203】
実施例13-rac-2-(4,5-ジクロロ-6-オキソピリダジン-1(6H)-イル)-N-((1R,2S)-2-(1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)シクロプロピル)アセトアミドの調製
【0204】
【化34】
【0205】
表題化合物を、一般的な手順Bに従って白色固体として調製した。
1815Cl252については、LC/MS(ESI)m/z 403/405(計算値)404/406([M+H]+実測値)。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.86(s,1H),7.78(s,1H),7.62(d,J=7.5Hz,2H),7.53(s,1H),7.42(t,J=7.9Hz,2H),7.24(pseudo d,J=7.3Hz,1H),6.33(s,1H),4.81(s,2H),2.84-2.77(symmetrical m,1H),1.97(ddd,J=9.7,6.7,3.3Hz,1H),1.21-1.09(m,2H)。
【0206】
実施例14-2-(4,5-ジクロロ-6-オキソピリダジン-1(6H)-イル)-N-(1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)アセトアミドの調製
【0207】
【化35】
【0208】
表題化合物を、一般的な手順Bに従って白色固体として調製した。
1511Cl252については、LC/MS(ESI)m/z 363/365(計算値)364/366([M+H]+実測値)。
【0209】
実施例15-2-(4,5-ジクロロ-6-オキソピリダジン-1(6H)-イル)-N-((1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)メチル)アセトアミドの調製
【0210】
【化36】
【0211】
表題化合物を、一般的な手順Bに従って白色固体として調製した。
1613Cl252については、LC/MS(ESI)m/z 377/379(計算値)378/380([M+H]+実測値)。
【0212】
実施例16-4-クロロ-2-(2-(2,4-ジクロロフェニル)-2-オキソエチル)ピリダジン-3(2H)-オンの調製
【0213】
【化37】
【0214】
表題化合物を、一般的な手順Aに従って白色固体(16mg、収率99%)として調製した。
127Cl322については、LC/MS(ESI)m/z /316/318/320(計算値)317/319/321([M+H]+実測値)。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.76(d,J=4.4Hz,1H),7.73(d,J=8.4Hz,1H),7.49(d,J=2.0Hz,1H),7.44(d,J=4.5Hz,1H),7.38(dd,J=8.4,1.9Hz,1H),5.52(s,2H).
【0215】
実施例17-化合物のインビトロ試験
材料:
化合物1、2、7、9及び10は、Enamineから購入した。試験した他の化合物は、上記実施例に従って作製した。
【0216】
細胞培養:
ヒト(h)ナトリウム利尿ペプチド受容体A(hNPR-A)及びhNPR-Bで安定にトランスフェクトされたQBIHEK293A細胞を、Bach et al.,Naunyn Schmiedebergs Arch.Pharmacol.2014;387:5-14に記載されているように作製した。細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS)、100U/mlペニシリン、0.1mg/mlストレプトマイシン、及び選択抗生物質として0.4mg/ml G418(ゲネチシン)を補充したDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地、Gibco(登録商標)、ThermoFischer Scientific)中で増殖させた。
【0217】
cGMPについてのAlphaScreenアッセイ
cGMPについてのAlphaScreenアッセイ(Perkin Elmer)を、Bach et al.(上記を参照のこと)に記載されるように行った。NPR-A及びNPR-Bを発現するHEK293細胞を実験前日に分割し、EDTA溶液(Versene、Invitrogen、ThermoFischer Scientific)を使用して回収した。最終濃度6000個の細胞/ウェルを、IBMX(最終0.7mM)を含む刺激緩衝液(HBSS中5mM HEPES、pH7.4、0.1%BSA)中に再懸濁した。化合物を刺激緩衝液に溶解し、漸増濃度でウェルに添加した。様々な濃度のアゴニスト(ヒトBNP、ヒトCNP又はヒトプロBNP)を添加する20分前に、細胞を、示された化合物とともにインキュベートした。AlphaScreenアクセプタービーズミックス(pH7.4の5mM HEPES緩衝液中のアクセプタービーズ-抗cGMP抗体及び0.5%Tween-20)を添加することにより、反応を停止させる(すなわち、細胞を溶解させる)前に、細胞をアゴニストで20分間刺激した。1時間のインキュベーション後、ドナービーズミックス(ドナービーズ、ビオチン化cGMP、pH7.4の5mM HEPES緩衝液中の0.5%Tween-20)を添加し(総容量40μl)、インキュベーションを2時間続けた。発光シグナルを、AlphaScreen発光570nmフィルターを使用してEnVision(登録商標)Multilabel Plate Reader(Perkin Elmer)でプレートを読み取ることによって定量的に分析した。実験は、0.1nM/2nMのBNP/プロBNPが存在し、化合物の漸増濃度(それぞれの濃度の化合物+0.1nM BNP/2nMプロBNP)、又は10μMの化合物の存在下でBNPの漸増濃度(それぞれの濃度のBNP/プロBNP+10μM化合物)のいずれかで行い、濃度-応答曲線を作成して-LogEC50(効力)及び最大応答値(有効性)を得た。
【0218】
全細胞結合アッセイ:
結合アッセイを、Dickey et al.,J Biol Chem.2009;284:19196-202に記載されているように、インタクトなNPR-A発現HEK293細胞において、実施した。
【0219】
血管弛緩:
オスのSprague-Dawley(6~8週齢)ラットを頸部脱臼によって屠殺した。胸部大動脈を切開し、リング(長さ約4mm)を生理食塩水(PSS;組成(mM):NaCl 119、KCl 4.7、CaCl2 2.5、MgSO4 1.2、NaHCO3 25、KH2PO4 1.2、及びグルコース 5.5)を含有する臓器浴に取り付け、37℃に維持し、O2中5%CO2を供給した。等尺性張力の変化を、1gの基礎張力下で組織において測定した。平衡後、応答が再現可能になるまで、血管をKCl(48mM)で繰り返し収縮させた。次いで、累積濃度-応答曲線を、トロンボキサン受容体アゴニストである9,11-ジデオキシ-11α,9α-エポキシメタノ-プロスタグランジンF2α(U46619;10nm-1μM)に対して、構築した。次いで、動脈を酸化窒素シンターゼ(NOS)阻害剤L-NG-ニトロアルギニンメチルエステル(300μM;内因性一酸化窒素の産生を遮断するために)で処理し、EC80濃度のU46619で事前収縮させた。安定な応答が達成されたら、化合物1又は化合物2(全て10μM、ANPの投与前に30分間インキュベート)の非存在下又は存在下で、ANP(0.001-1μM)に対する累積濃度-応答曲線を構築した。
【0220】
MTTアッセイ:
MTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)テトラゾリウム還元アッセイを使用して、化合物の細胞毒性をインビトロで測定した。活発な代謝を有する生細胞は、MTTを、570nm付近に最大吸光度を有する紫色のホルマザン生成物に変換する。HeLa細胞を、実験の前日に、培養培地(10%ウシ胎仔血清(FBS)、100U/mlペニシリン、0.1mg/mlストレプトマイシンを補充したDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地、Gibco(登録商標)、ThermoFischer Scientific))中の96ウェルプレートに播種した。細胞を、漸増濃度の各化合物(1%DMSO中)とともに、37℃で24時間又は48時間インキュベートした。培養培地中の1%DMSO及び20mM H22を、それぞれ陰性対照及び陽性対照として使用した。最終濃度0.45mg/mlのMTT溶液をウェルに添加し、細胞を37℃で1~4時間インキュベートした。可溶化溶液(40%(vol/vol)ジメチルホルムアミド(DMF)、2%(vol/vol)氷酢酸及び16%(wt/vol)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS))を、各ウェルに添加してホルマザン結晶を溶解した。吸光度を570nmで測定した。
【0221】
結果:
cGMP産生、結合親和性データ及び血管弛緩に対する効果についての結果を以下の表1~4に示す。
【0222】
MTTアッセイからの結果を図2に示す。モノクロロ類似体(化合物2及び24)は、対応するジクロロ化合物(化合物3及び11)よりも低い毒性を示した。
【0223】
化合物24は、15μM未満の濃度(標的における化合物24のEC50よりも>70~80倍高い濃度)で、細胞数、核サイズ、DNA構造、細胞膜透過性、ミトコンドリア質量、ミトコンドリア膜電位及びシトクロムcなどのパラメータに対して細胞毒性効果を示さなかった(細胞毒性スクリーニングは、Cyprotex Discovery Ltd.(Cheshire、UK)によって実施された)。化合物24を、78個の異なる標的に対するアゴニスト/アンタゴニスト/阻害/遮断効果に対する選択性について試験した(安全薬理パネル(SafetyScan E/IC50 ELECT(Discover X/Eurofins))。78個の標的のうち、化合物24は、6μMを超えるIC50値で、ドーパミンD1-受容体、β1-及びβ2-アドレナリン受容体に対して弱い活性を示した。
【0224】
【表2-1】
【0225】
【表2-2】
【0226】
【表2-3】
【0227】
【表2-4】
【0228】
【表3】
【0229】
【表4】
【0230】
【表5】
【0231】
実施例18-注射製剤
スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンナトリウム塩(30g、BioSynth CarboSynth)を滅菌水に溶解した(100mlまで)。10mlの得られた溶液に化合物24(2.54mg)を撹拌し、約100℃に加熱することにより溶解した。溶液を滅菌ろ過し、滅菌2ml注射バイアルに無菌的に充填した。
1ml溶液は、0.254mgの化合物24を含んでいた。化合物の濃度は、800μMであった。
【0232】
溶液は、静脈内、筋肉内又は皮下投与に好適である。
【0233】
実施例19-ゼラチンカプセル剤
化合物24を含有する硬ゼラチンカプセル剤は、以下に記載するように調製することができる。
化合物24 20g
ステアリン酸マグネシウム 1g
マンニトール 50g
微結晶セルロース500gまでの適量
【0234】
これらの成分をミキサー中で容量的に混合し、1000個の硬ゼラチンカプセル剤サイズ0に充填する。各カプセル剤は、15mgの活性化合物24を含む。カプセル剤を標準的なカプセル箱(箱当たり100カプセル)に包装し、ラベルを付け、添付文書とともに包装する。
図1
図2
【国際調査報告】