(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(54)【発明の名称】抗体-NKG2Dリガンドドメイン融合タンパク質
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20240604BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20240604BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240604BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240604BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240604BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240604BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240604BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240604BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240604BHJP
C12N 5/0786 20100101ALI20240604BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20240604BHJP
【FI】
C07K19/00
C07K16/00 ZNA
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N5/0786
C12N5/078
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575496
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2023-12-06
(86)【国際出願番号】 US2022032539
(87)【国際公開番号】W WO2022261121
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】518455871
【氏名又は名称】サイフォス、バイオサイエンシズ、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】XYPHOS BIOSCIENCES INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】キム、カマン
(72)【発明者】
【氏名】ランドグラフ、カイル
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA50
4H045DA76
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、抗体融合タンパク質であって、(i)配列番号1のアミノ酸配列を含む可変領域配列を含む重鎖と、(ii)配列番号8のアミノ酸配列を含む可変領域配列を含む軽鎖であって、軽鎖が、配列番号11のアミノ酸配列を含むA1-A2ドメインにC末端で融合されている、軽鎖と、を含む、抗体融合タンパク質を提供する。抗体融合タンパク質の全部又は一部をコードする核酸、並びに、例えば、CD20陽性がんの治療において、抗体融合タンパク質を使用する方法が提供される。本開示は、変異型A1-A2ドメインペプチドを更に提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体融合タンパク質であって、(i)配列番号1のアミノ酸配列を含む可変領域配列を含む重鎖と、(ii)配列番号8のアミノ酸配列を含む可変領域配列を含む軽鎖であって、前記軽鎖が、配列番号11のアミノ酸配列を含むA1-A2ドメインにC末端で融合されている、軽鎖と、を含む、抗体融合タンパク質。
【請求項2】
前記A1-A2ドメインが、配列番号10のアミノ酸配列を含むリンカーを介して前記軽鎖に融合されている、請求項1に記載の抗体融合タンパク質。
【請求項3】
配列番号13のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1又は請求項2に記載の抗体融合タンパク質。
【請求項4】
前記重鎖が、配列番号3のアミノ酸配列を含む定常ドメインを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体融合タンパク質。
【請求項5】
配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項4に記載の抗体融合タンパク質。
【請求項6】
前記重鎖が、配列番号2のアミノ酸配列を含む定常ドメインを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体融合タンパク質。
【請求項7】
配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項6に記載の抗体融合タンパク質。
【請求項8】
配列番号13のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖と、を含む、抗体融合タンパク質。
【請求項9】
配列番号13のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖と、を含む、抗体融合タンパク質。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体融合タンパク質の軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
【請求項11】
請求項10に記載の核酸分子と、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体融合タンパク質の重鎖をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子と、を含む、組成物。
【請求項12】
請求項10に記載の核酸分子を含む、発現ベクター。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体融合タンパク質の重鎖をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を更に含む、請求項12に記載の発現ベクター。
【請求項14】
請求項12又は請求項13に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項15】
請求項12に記載の発現ベクターと、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体融合タンパク質の重鎖をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む発現ベクターと、を含む、宿主細胞。
【請求項16】
抗体融合タンパク質を生成する方法であって、
請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体融合タンパク質の軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子と、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体融合タンパク質の重鎖をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子と、を含む、宿主細胞を培養することと、
前記抗体融合タンパク質を回収することと、を含む、方法。
【請求項17】
請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体融合タンパク質を含む1つ以上の容器と、使用説明書と、を含む、キット。
【請求項18】
配列番号15を含むキメラ抗原受容体を含む哺乳動物細胞を含む1つ以上の容器を更に含む、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
前記哺乳動物細胞が、ヒトリンパ球又はヒトマクロファージである、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
前記キメラ抗原受容体が、配列番号16~18を更に含む、請求項18又は請求項19に記載のキット。
【請求項21】
CD20陽性がんに罹患している対象を治療する方法であって、前記対象に、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体融合タンパク質と、配列番号15を含むキメラ抗原受容体を含む哺乳動物細胞と、を投与することを含む、方法。
【請求項22】
前記哺乳動物細胞が、ヒトリンパ球又はヒトマクロファージである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記キメラ抗原受容体が、配列番号16~18を更に含む、請求項21又は請求項22に記載の方法。
【請求項24】
配列番号30に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、A1-A2ドメインペプチドであって、前記ペプチドが、配列番号30の40位、54位、及び/又は84位のうちの1つ以上にアラニン又はグルタミンを含む、A1-A2ドメインペプチド。
【請求項25】
前記ペプチドが、配列番号30の40位及び54位にグルタミン残基を含む、請求項24に記載のA1-A2ドメインペプチド。
【請求項26】
前記ペプチドが、配列番号30の84位にグルタミンを含む、請求項24又は請求項25に記載のA1-A2ドメイン。
【請求項27】
前記ペプチドが、配列番号30の84位にアラニンを含む、請求項24又は請求項25に記載のA1-A2ドメイン。
【請求項28】
前記ペプチドが、配列番号11、配列番号31、又は配列番号32を含む、請求項24に記載のA1-A2ドメインペプチド。
【請求項29】
抗体軽鎖に融合された、請求項24~28のいずれか一項に記載のA1-A2ドメインペプチド。
【請求項30】
抗体重鎖に融合された、請求項24~28のいずれか一項に記載のA1-A2ドメインペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非天然NKG2D受容体に結合する非天然NKG2DリガンドのA1-A2ドメイン、及びこのドメインを含む抗体融合タンパク質に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月8日に出願された米国仮特許出願第63/208,407号の利益を主張するものであり、参照によりその内容全体が本明細書に完全に組み込まれる。
【0003】
電子的に提出された資料の参照による組み込み
本明細書と同時に提出され、以下のように識別されるコンピュータ読取可能なヌクレオチド/アミノ酸配列表が、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:2022年6月7日に作成された「56867_Seqlisting.txt」という名称の63,727バイトのASCII(テキスト)ファイル。
【背景技術】
【0004】
キメラ抗原受容体(CAR)を発現させるための患者由来T細胞の操作は、養子細胞療法の情勢を変化させ、科学者及び臨床医に、T細胞の強力な細胞溶解能力を利用して、それらをMHC非依存的な様式で特定の抗原発現標的に誘導する能力を提供する。血液系腫瘍を治療するための初期適用は、驚くべき反応をもたらし、非血液学的適応症における効果的な使用を促進するための研究努力の急増をもたらした。しかしながら、CAR-T細胞療法は、単一目的の標的化ドメインの利用、サイトカイン放出症候群に寄与し得る用量制御の欠如、疾患再発につながる腫瘍抗原喪失に対応することができないこと、及び持続性の欠如につながる非ヒト標的化ドメインの免疫原性によって制限される。当該技術分野には、現在の治療選択肢のこれらの限界に対応するために、改善されたCARベースの細胞療法の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、抗体融合タンパク質であって、(i)配列番号1のアミノ酸配列を含む可変領域配列を含む重鎖と、(ii)配列番号8のアミノ酸配列を含む可変領域配列を含む軽鎖であって、軽鎖が、配列番号11のアミノ酸配列を含むA1-A2ドメインにC末端で融合されている、軽鎖と、を含む、抗体融合タンパク質を提供する。様々な態様において、重鎖は、配列番号3のアミノ酸配列を含む定常ドメインを含む。任意選択的に、A1-A2ドメインは、配列番号10のアミノ酸配列を含むリンカーを介して軽鎖に融合されている。この点に関して、軽鎖は、様々な態様において、配列番号13のアミノ酸配列を含む。様々な態様において、重鎖は、配列番号7のアミノ酸配列を含む。
【0006】
本開示は、抗体融合タンパク質の軽鎖(例えば、配列番号8のアミノ酸配列を含む可変領域配列を含む軽鎖であって、軽鎖が、配列番号11のアミノ酸配列を含むA1-A2ドメインにC末端で融合されている、軽鎖)をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子を更に提供する。本開示は、抗体融合タンパク質の軽鎖をコードする核酸分子と、本明細書に記載の抗体融合タンパク質の重鎖(例えば、配列番号1のアミノ酸配列を含む可変領域配列を含む重鎖)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子と、を含む、組成物を更に提供する。また、本明細書に記載の抗体融合タンパク質の軽鎖をコードする核酸分子を含み、任意選択的に、本明細書に記載の抗体融合タンパク質の重鎖をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を更に含む、発現ベクターも提供される。本明細書に記載の発現ベクターを含む宿主細胞が更に提供される。本開示は、抗体融合タンパク質の軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子と、抗体融合タンパク質の重鎖をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子と、を含む、宿主細胞を提供する。抗体融合タンパク質を生成する方法であって、抗体融合タンパク質の軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子と、抗体融合タンパク質の重鎖をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子と、を含む、宿主細胞を培養することと、抗体融合タンパク質を回収することと、を含む、方法も提供される。
【0007】
また、本明細書に記載の抗体融合タンパク質を含む1つ以上の容器を含む、キットも提供される。任意選択的に、キットは、配列番号15を含むキメラ抗原受容体を含む哺乳動物細胞(例えば、ヒトリンパ球又はヒトマクロファージ)を含む1つ以上の容器を更に含む。様々な態様において、キメラ抗原受容体は、配列番号16~18を更に含む。
【0008】
本開示は、CD20陽性がんに罹患している対象を治療する方法であって、対象に、本明細書に記載の抗体融合タンパク質と、配列番号15を含むキメラ抗原受容体を含む哺乳動物細胞(例えば、ヒトリンパ球又はヒトマクロファージ)と、を投与することを含む、方法を更に提供する。任意選択的に、キメラ抗原受容体は、配列番号16~18を更に含む。CD20陽性がんを治療するための抗体融合タンパク質及び哺乳動物細胞の使用、並びにCD20陽性がんを治療するための薬物の調製における抗体融合タンパク質及び哺乳動物細胞の使用が提供される。
【0009】
本開示はまた、配列番号30に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、A1-A2ドメインペプチドであって、ペプチドが、配列番号30の40位、54位、及び/又は84位のうちの1つ以上にアラニン又はグルタミンを含む、A1-A2ドメインペプチドも提供する。様々な態様において、ペプチドは、配列番号30の40位及び54位にグルタミン残基を含む。任意選択的に、ペプチドは、配列番号30の84位にグルタミン、又は配列番号30の84位にアラニンを含む。
【0010】
本明細書の様々な実施形態は、「含む(comprising)」という文言を使用して提示されるが、様々な状況下で、関連する実施形態は、「~からなる(consisting of)」又は「~から本質的になる(consisting essentially of)」という文言を使用して説明され得ることも理解されたい。本開示は、特徴から「~からなる」又は「~から本質的になる」実施形態を含む特徴を「含む」として説明される実施形態を企図する。「a」又は「an」という用語は、1つ以上を指す。したがって、「a」(又は「an」)、「1つ以上」、及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書において互換的に使用され得る。「又は」という用語は、文脈が明確に別段の要求をしない限り、代替的に又は一緒に項目を包含すると理解されるべきである。
【0011】
本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において別段の指示がない限り、その範囲及び各エンドポイント内に属する各個別の値を個別に指す簡略的な方法としての役割を果たすことを意図しているに過ぎず、各個別の値及びエンドポイントは、それがあたかも本明細書に個別に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。しかしながら、説明はまた、より低い及び/又はより高いエンドポイントが除外されるのと同じ範囲を企図する。「約」という用語が使用される場合、それは、その列挙される数のプラス又はマイナス5%、10%、又はそれ以上を意味する。意図される実際の変動は、文脈から決定される。
【0012】
本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で行われ得る。本明細書に提供されるあらゆる例、又は例示的な文言(例えば、「等」)の使用は、本開示をより良く説明することを意図しているに過ぎず、別段に特許請求されない限り、本開示の範囲を限定するものではない。本明細書において本発明に重要であると記載されているそのような限定のみがそのようにみなされるべきであり、本明細書において重要であると記載されていない限定を欠く本発明の変形は、本発明の態様として意図される。
【0013】
本発明の追加の特徴及び変形例は、図面及び詳細な説明を含む本出願の全体から当業者に明白であり、全てのそのような特徴は本発明の態様として意図される。同様に、本明細書に記載の本発明の特徴は、特徴の組み合わせが本発明の態様又は実施形態として指定されるかどうかにかかわらず、再び組み合わせて追加の実施形態とすることができ、それらもまた本発明の態様として意図される。文書全体が統一された開示として関連していることが意図され、たとえ特徴の組み合わせが本文書の同じ文、又は段落、又は節内に一緒に見られない場合であっても、本明細書に記載される特徴の全ての組み合わせが(たとえ別々の節に記載されていても)企図されることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本明細書に記載の様々な配列を提供するチャートである。
【
図2A】Hisタグ付き単量体野生型MICリガンドの、野生型NKG2D又はiNKG2D.YAのいずれかとの相互作用についてのOctet BLI動態的結合データを示す。Fc-wtNKG2D又はFc-iNKG2D.YAを、ベースライン確立後に、各リガンドの希釈系列に関連する抗ヒトIgG Fc捕捉(AHC)バイオセンサー先端で捕捉した(括弧内の値は、調べた最高濃度を示す)。ULBP4は、単量体として発現及び精製することができなかったため、このアッセイには含まれなかった。全ての軸は同じスケールであることに留意されたい(結合-0nm、0.4nm、0.8nm、1.2nm(y軸);時間-0秒、50秒、100秒、150秒、200秒、250秒、300秒、350秒(x軸))。データは、単一の実験からのものである。
【
図2B】iNKG2D.YAが天然リガンドと関与することができないことを裏付けるELISAの結果を示す。リガンド-Fc融合物(R&D Biosystems)をマイクロタイタープレート上にコーティングし、ビオチン化Fc-wtNKG2D(破線)又はFc-iNKG2D.YA(実線)の滴定を適用し、ストレプトアビジン-HRPによって検出した。(ELISAシグナル(OD450)(y軸);nMリガンドFc(x軸)。)
【
図3A-3D】NKG2D Y152A/199F(iNKG2D.AF)(本開示のNKG2D外部ドメイン)への直交U2S3リガンド(A1-A2ドメイン)の選択的結合。濃度を増加させたFc-wtNKG2D競合物質に対する選択ラウンド中に、ビオチン化二重変異型Fc-iNKG2D.AFを使用したことを除いて、実施したライブラリー設計及びファージパニングは、iNKG2D.YAについて記載したとおりであった。データは、Fc-wtNKG2D又はFc-iNKG2D.AFのいずれかに対する単量体リガンドの相互作用についての単一の実験(
図3A)のOctet BLI結合データを表す。データは、2つの実験からのものである。(
図3B)ファージディスプレイライブラリーから選択されたリードバリアントを、リツキシマブ軽鎖のC末端への融合物としてクローニングし、Fc-wtNKG2D、Fc-iNKG2D.YA、及びFc-iNKG2D.AFに差次的に結合させ、ELISAによって定量した。示されるのは、他の2つの受容体ではなく、Fc-iNKG2D.YAと選択的に関与する4つのバリアントである。
図3Bの折れ線グラフでは、wtNKG2Dは菱形で表され、iNKG2Dは正方形で表され、iNKG2D.AFは三角形で表される。(
図3C)選択された受容体バリアント(それぞれ、Fc-iNKG2D.YA及びFc-iNKG2D.AF)へのU2S3及びU2Rリガンド結合の排他性を示すELISA。U2S3リガンドは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2019/0300594号に更に記載されている。(
図3D)iNKG2D.YA-CAR又はiNKG2D.AF-CARのいずれかを発現するCD8+T細胞と、20:1のエフェクター:標的比(E:T)でRamos標的細胞を用いたカルセイン放出アッセイ、及びリツキシマブLC-U2S3又はリツキシマブLC-U2Rの滴定。エラーバーは、技術的反復の±SDを表す。
【
図4A】濃度を増加させたwtNKG2D競合物質の存在下での第3及び第4ラウンドのパンニング後の、選択されたファージのFc-iNKG2D.YA及びFc-wtNKG2Dへの相対的結合。三角形で囲まれたグラフの一部におけるファージクローンを、更なる特徴付けのために選択した。
【
図4B】3つのファージバリアント-S1、S2、S3-を、MicAbodyとして抗FGFR3抗体クローンR3Mab重鎖のC末端への融合物として発現させ、野生型ULBP2及びR81Wバージョンとともに、選択的バリアントがFc-iNKG2D.YA結合(実線)をFc-wtNKG2D(破線)よりも優先的に保持する能力について試験した。全ての精製されたMicAbodyは、ヒトFGFR3への結合を保持した(データは図示せず)。
【
図4C】Hisタグ付き単量体野生型ULBP2、ULBP2 R81W、並びにFc-NKG2D及びFc-iNKG2D.YAへの直交U2S3リガンド結合の結合解析。Fc-wtNKG2D又はFc-iNKG2D.YAを、抗ヒトIgG Fc捕捉(AHC)バイオセンサー先端で捕捉し、次いで、リガンドの希釈系列と関連付けた。データは、単一の実験からのものである。
【
図5】リツキシマブの重鎖又は軽鎖のいずれかのC末端に融合された場合のU2S3直交性のOctet BLIによる検証。Fc-wtNKG2D又はFc-iNKG2D.YAを、抗ヒトIgG Fc捕捉(AHC)バイオセンサー先端で捕捉し、次いで、50nMから始まるMicAbodyの2倍希釈系列と関連付けた。結合応答に対応するy軸を、全てのセンサグラムについて同じスケールに設定した。Kd値は、示される2つの正の結合相互作用についてのみ計算することができた。
【
図6】左側のポリペプチドのN末端から始まるiNKG2D.YACAR受容体の概略図であり、成熟したI型膜貫通タンパク質には存在しないシグナル配列(SS)を含む。下線付き配列は、シグナル配列に対応し、イタリック体の配列は、iNKG2Dドメイン(配列番号15)に対応し、特別な表示のない配列は、CD8aヒンジ/膜貫通ドメイン(配列番号16)に対応し、下線付きのイタリック体の配列は、4-1BBドメイン(配列番号17)に対応し、太字の配列は、CD3ζドメイン(配列番号18)に対応し、二重下線付き配列は、リンカーに対応し、点線の下線付き配列は、eGFP(緑色蛍光タンパク質)配列に対応する。
【
図7A-7C】convertibleCARの要素。(
図7A)NKG2D-MIC軸の構成要素をconvertibleCARシステムに変換するための操作の概要。iNKG2D.YA及びU2S3は、それぞれ第2世代CAR受容体及び二重特異性アダプター分子(MicAbody)の構成要素になった。「TAA」は、腫瘍関連抗原である。(
図7B)CD4又はCD8細胞のいずれかへのiNKG2D.YA-CARの高効率レンチウイルス形質導入の代表的な例。形質導入効率はドナー間で異なっていたが、>70%のGFP+収率が一貫して達成された。比較のためにRITscFv-CARを示しており、iNKG2D.YAの代わりにリツキシマブのVH/VLドメインに基づくscFvが使用されたことを除いて、iNKG2D-CARと同じアーキテクチャを有する。(
図7C)細胞をリツキシマブ.LC-U2S3 MicAbodyとともにインキュベートし、続いてPEコンジュゲートマウス-抗ヒトカッパ鎖抗体染色することによって、iNKG2D.YA-CARの表面発現をCD8+T細胞において決定した。比較のために、非形質導入T細胞を示す。
【
図8A-8C】iNKG2D-CARを発現するCD8+T細胞のリガンド依存的活性化及びMicAbody依存性の受容体内在化。(
図8A)CD8+T細胞を、受容体ドメインとして野生型NKG2D又はiNKG2D.YAのいずれかからなるCAR構築物で形質導入した。野生型Hisタグ付き単量体リガンド又はHisタグ付き単量体U2S3を、10ug/mLから始まる1:3の希釈系列でマイクロタイタープレートのウェルにコーティングした。1×10
5CAR発現細胞を、外因性IL2なしで150uLの体積でウェルに導入し、24時間後に上清を収集し、産生及び放出されたサイトカインの量をサイトカイン特異的ELISAによって定量した。Hisタグ付きバージョンは発現及び精製できなかったため、ULBP4はアッセイに含まれなかった。(
図8B)iNKG2D-CAR又はRITscFv-CARのいずれかを発現するCD8+細胞を、iNKG2D-CAR細胞の場合にはRit-S3 MicAbody(nM)の濃度を増加させながら、4:1のE:TでRamos細胞と共培養した。24時間後、培養上清を採取し、放出されたサイトカインをELISAによって定量した。細胞溶解を、2時間の共インキュベーション後のカルセイン放出によって測定した。全てのエラーバーは技術的3連測定の±SDである。全てのデータは、単一の実験からのものである。(
図8C)iNKG2D-CD8+細胞を5nMのトラスツズマブ.LC-U2S3 MicAbodyとともにプレインキュベートし、次いでHer2の滴定によりプレコーティングされたウェルに曝露した。2時間後、表面にアクセス可能なMicAbodyを検出するために、細胞を抗カッパ-PE抗体とともにインキュベートし、発現したiNKG2D-CARの総レベルを求めるためにGFPを調べた。
【
図9A-9D】convertibleCAR活性のインビトロでの特徴付け。(
図9A)Ramos(CD20+)標的細胞を5:1のE:TでconvertibleCAR-CD8細胞に曝露し、濃度を増加させたリツキシマブ抗体(ADCC欠損)、リツキシマブ.LC-U2S3 MicAbody、又はトラスツズマブ.LC-U2S3 MicAbodyと共培養した。24時間後、上清を採取し、IL-2(塗りつぶされたバー)又はIFNγ(斜線付きバー)をELISAによって定量した。Rit-U2S3は、5000pg/mL以上でサイトカイン放出を示した唯一の試料であった。(
図9B)ConvertibleCAR-CD8細胞を、濃度を増加させたAlexa Fluor 647コンジュゲート型Rituximab.LC-U2S3とともに30分間インキュベートし、過剰分を洗い流し、MFIをフローサイトメトリーによって定量した。5nMは、受容体が最大限占有される変曲点を示す。(
図9C)ConvertibleCAR-CD8細胞を、(B)に記載されるように濃度を増加させたリツキシマブ.LC-U2S3で武装し、次いで、20:1のE:Tのカルセインを添加したRamos細胞と2時間共インキュベートし、その後、放出されたカルセインの量を定量した。(
図9D)iNKG2D.YA-CAR CD8+細胞を、(B)に記載されているように、5nMのリツキシマブ.LC-U2S3、5nMのトラスツズマブ.LC-U2S3、又は各々2.5nMの等モル混合物で予め武装し、次いで、カルセインを添加したRamos細胞又はCT26-Her2細胞に、示される2つのE:T比で曝露した。放出されたカルセインの量を2時間後に定量した。
図9Bを除いて、データは、少なくとも2つの独立した実験からのものであり、技術的3連測定の平均としてプロットされる。
【
図10A-10C】重鎖対軽鎖U2S3融合物とリツキシマブ(ADCC-)抗体との比較。(
図10A)ヒトT細胞又は腫瘍の非存在下でのNSGマウスにおける100ugの静脈内投与後の血清リツキシマブ-U2S3 MicAbodyレベルの薬物動態。使用した全てのMicAbody及び抗体対照は、ADCC欠損であった。左側のグラフは、軽鎖U2S3融合物と親抗体との比較であり、右側のグラフは、重鎖U2S3融合物と親抗体との比較である。全てのエラーバーは技術的3連測定の±SDである。(
図10B)iNKG2D-CAR CD8+T細胞をRamos標的細胞と20:1のE:Tで2時間共培養し、リツキシマブ-MicAbodyを滴定した後の、インビトロカルセイン放出アッセイ。エラーバーは、実験の±SDを表し、データは、複数の実験からのものである。グラフ内の上の線はRituxumab.LC-U2S3に対応し、中央の線はRituxumab.HC-U2S3に対応し、下の線はRituximabに対応する。(
図10C)マウスNKG2DへのリツキシマブLC-U2S3の結合を示すELISA。A480の吸光度値が示されている。マウスNKG2Dに自然に結合するマウス野生型Rae1bリガンドを有するTrastuzumab.LC-Rae1bを陽性対照として含めた。
【
図11A-11E】NSGマウスにおける播種性Raji B細胞リンパ腫の制御。(
図11A)各コホートの平均発光出力±SDと、(
図11B)5×10
6又は(
図11C)15×10
6個の総T細胞を与えた群の個々の動物のトレースとを含む。(
図11D)血液中のヒトCD3+細胞及び(
図11E)抗F(ab’)2によって検出された結合MicAbodyを調べる試験の過程にわたるT細胞動態。示されるのは、コホート平均±SDであり、n=5である。
【
図12A-12C】convertibleCAR-T細胞による、NSGマウスに皮下移植されたRaji腫瘍の制御。(
図12A)各コホートの平均腫瘍体積、n=5。腫瘍は、各群内でサイズが大きく異なるため、エラーバーはグラフに示さなかった。逆三角形(7MのcCAR-T+60ugのRitux-S3)及び正方形(35mの予め武装したcCAR-T)の2つのコホートは、重複しており、26日目を超えるとグラフで区別することができない。(
図12B)移植後14日、21日、及び45日の血清Rit-S3レベルを示す棒グラフ。各時点に、35Mの予め武装したcCAR-T(左側のバー)、7MのcCAR-T+60ugのRitux-S3(中央のバー)、及び35MのcCAR-T+60ugのRitux-S3(右側のバー)の3つのバーが提供される。エラーバーは、所与のコホートにおけるマウス由来の±SD試料を示した。(
図12C)血液中のCD3+T細胞動態、及び表面関連MicAbodyF(ab’)2染色によるT細胞のパーセンテージの定量を、±SDエラーバーとともに示す。
【
図13A-13F】iNKG2D.AF-CAR細胞に対する補体因子C1qの標的化された動員により、それらの補体媒介性消耗が誘導される。(
図13A)N末端又はC末端融合物のいずれかとして発現するヒトIgGのFc部分に対する直交リガンド融合物の構造。野生型Fcに加えて、C1q結合を増強するCH2ドメインにおける2セットの変異、S267E/H268F/S324T/G236A/I332E(「EFTAE」)及びK326A/E333A(「AA」)を独立して探索した。(
図13B)各精製融合タンパク質へのヒトC1qの結合を調べるELISA。Kdのランク順序は、融合の方向に関係なく、EFTAE<AA<wt(それぞれ0.12、0.35、及び0.67nM)であった。(
図13C及び13D)C1q結合に関する補体依存性細胞傷害性(CDC)アッセイはFc融合を増強する。iNKG2D.AF-CAR又は非形質導入CD8+T細胞を、各融合分子及び10%正常ヒト血清補体を滴定しながら3時間インキュベートした後、死滅したT細胞をSYTOX Redを用いて列挙した。(
図13E及び13F)上記(
図13C)に記載されるように、iNKG2D.YA-CAR細胞に補体を誘導するためのU2S3直交リガンド融合を用いたCDCアッセイ。全てのエラーバーは、別々の実験として実施されたiNKG2D-AF及びiNKG2D-YAを用いた3連の技術的測定の±SDである。
【
図14A-14E】iNKG2D-CAR CD8+T細胞への変異型IL2サイトカインの標的化送達。(
図14A)30IUe/mLのサイトカイン又はサイトカイン-U2S2融合物によるwtNKG2D-CAR(左バー)又はiNKG2D.YA-CAR(右バー)の処理の3日間後のインビトロ増殖。濃い影は、選択性を強調するためのものである。(
図14B)低効率(45%GFP+)のiNKG2D.YA-CAR形質導入物を、30IUe/mLの非選択的(U2R81W)又はiNKG2D.YA選択的(U2S2)mutIL2融合物とともに培養し、7日間維持した。フローサイトメトリーによって細胞を定期的に調べて、各集団におけるGFP+細胞のパーセントを定量した。上の線は、U2S2-hFc-mutlL2(正方形)及びU2S2-mutlL2(円)に対応し、下の線は、U2R80W-mutlL2(円)及びU2R80W-hFc-mutlL2(正方形)に対応する。(
図14C)iNKG2D-CAR CD8+T細胞を、30IUe/mLの野生型IL-2又はU2S3-hFc-mutIL2のいずれかとともに培養し、次いで、リツキシマブLC-U2S3の濃度を増加させながら、20:1のE:TでRamos細胞と共培養した。遊離カルセインを定量し、非形質導入CD8+細胞を、陰性対照として機能したrhIL-2に維持した。(
図14D)非形質導入(右側のバー)又はiNKG2D-CAR CAR CD8+T細胞(左側のバー)を様々なサイトカイン分子とともに3日間インキュベートし、増殖を定量した。対照分子は、単量体U2S3-hFc、及びRit-S3 MicAbodyを含んでいた。括弧内の値は、試験したIUe/mL濃度である。示されるデータは、技術的3連測定の平均である。(
図14E)NSGマウスにおける60ugのIP注射後のU2S3-hFc-mutIL2の血清PK(N=3)。全てのエラーバーは、生物学的3連測定の±SDである。データは、少なくとも2つの実験からのものである。
【
図15A-15B】U2S3-hFc-mutIL2に対するconvertibleCAR-T細胞のインビボ応答。(
図15A)NSGマウスに、合計7×10
6個のiNKG2D形質導入細胞(CD4:CD8 1:1)を注射した。14日目のT細胞の収縮後、マウスに30ugのU2S3-hFc-mutIL2又はPBSを週に1回注射し(三角形で示される)、T細胞動態をフローサイトメトリーによってモニターした。末梢血中のヒトCD3+T細胞の%を示し、各トレースは個々のマウスに対応し、n=5である。(
図15B)CD8+細胞の増殖、及びU2S3-mutIL2処理時のGFP+(CAR発現)細胞の割合の増加のプロット。上の線のクラスターは、CD8+細胞の%GFP+に対応し、下の線のクラスターは、血液中の%CD8+に対応する。
【
図16】U2S3-hFc-mutIL2に対するヒトPBMCの応答性。3人のドナーからのヒトPBMCを、対照とともに、4日間、濃度を増加させたU2S3-hFc-mutIL2又はU2S3-hFc-wtIL2とともにインキュベートした。各条件下で増殖応答を定量するために、標識した細胞型の各々をマーカーKi-67について調べた。ドナー1、2、及び3の各々について11のバーが示されており、バーは、各パネルの左から右へ、未処理の抗CD3[2ug/ml]、IL-2[300IUe/ml]、mutIL2[30IUe/ml]、mutIL2[300IUe/ml]、mutIL2[3000IUe/ml]、mutIL2[30000IUe/ml]、wtIL2[30IUe/ml]、wtIL2[300IUe/ml]、wtIL2[3000IUe/ml]、及びwtIL2[30000IUe/ml]を表す。エラーバーは3連測定の±SDであり、データは単一の実験を表す。
【
図17A-17B】異なる位置に結合され、異なるリンカーを使用するA1-A2ドメインを有するMicAbodyを評価する試験を示す。
図17Aは、試験した構築物を示す。Rit.HCd.S3は、GGGS(配列番号14)リンカーを介して重鎖に融合された実施例に記載されている、U2S3 A1-A2ドメインを含むリツキシマブ抗体に対応する。Rit.HCd.apts.S3は、APTSSSGGGGS(配列番号10)リンカーを介して重鎖に融合されたU2S3 A1-A2ドメインを含むリツキシマブ抗体に対応する。Rit.HCd.LC.S3は、APTSSSGGGGS(配列番号10)リンカーを介して軽鎖に融合されたU2S3 A1-A2ドメインを含むリツキシマブ抗体に対応する。Rit.HCd.LC.gggs.S3は、GGGS(配列番号14)リンカーを介して軽鎖に融合されたU2S3 A1-A2ドメインを含むリツキシマブ抗体に対応する。
図17Bは、20:1のE:TでiNKG2D-CAR CD8+T細胞をRamos標的細胞と2時間共培養し、リツキシマブ-MicAbodyを滴定した後のインビトロカルセイン放出アッセイにおいて、様々な濃度のMicAbodyを使用して達成された細胞溶解(最大%;y軸)を示す棒グラフである。各構築物について、0nM(1番目の棒)、0.008nM(2番目の棒)、0.04nM(3番目の棒)、0.2nM(4番目の棒)、1nM(5番目の棒)、及び5nM(6番目の棒)のMicAbodyについて、細胞溶解の最大%を示す。Rit.HCd.LC.S3(APTSSSGGGGS(配列番号10)リンカーによって連結された軽鎖上のA1-A2ドメインを含む)は、GGGS(配列番号14)リンカーを有するバージョンよりも優れており、リンカーにかかわらず、重鎖に融合されたA1-A2ドメインを有する構築物よりも優れていた。
【
図18】抗体の軽鎖に融合された配列番号30(U2S3)又は配列番号11(U2S3(NQ))のA1-A2ドメインを含むリツキシマブ融合タンパク質を使用したiNKG2D.YA捕捉を示す折れ線グラフである。配列番号30に関して40位及び54位に置換を有するA1-A2ドメインは、配列番号30のA1-A2ドメインと同様の性能を示した。
【
図19】抗体の軽鎖に融合された配列番号30(U2S3)又は配列番号11(U2S3(NQ))のA1-A2ドメインを含むリツキシマブ(「Rit」)融合タンパク質が野生型NKG2Dに結合する能力の低下を示す折れ線グラフ。「Rit.P」は、A1-A2ドメインに融合されなかったリツキシマブ親抗体に言及する。「Rit.U2wt」は、野生型NKG2Dに結合することが予想される、野生型ULBP2ドメインに融合されたリツキシマブに言及する。「Rit.S3」及び「Trast.S3」は、それぞれ、U2S3ドメイン(配列番号30)に融合されたリツキシマブ又はトラスツズマブに言及する。「Rit.NQ」は、U2S3(NQ)に融合されたリツキシマブ(配列番号11)を参照する。U2S3ドメインへのNQ変異の導入は、構築物の直交性に影響を及ぼさず、野生型NKG2Dへの結合に関して復帰はなかった(すなわち、構築物は、野生型NKG2Dに結合しなかった)。
【
図20】20:1のE:TでiNKG2D-CAR CD8+T細胞をRamos標的細胞と2時間共培養し、リツキシマブ-MicAbodyを滴定した後のインビトロカルセイン放出アッセイにおいて、様々な濃度のMicAbodyを使用して達成された細胞溶解(最大%;y軸)を示す棒グラフである。各構築物について、0nM(1番目の棒)、0.008nM(2番目の棒)、0.04nM(3番目の棒)、0.2nM(4番目の棒)、1nM(5番目の棒)、及び5nM(6番目の棒)のMicAbodyについて、細胞溶解の最大%を示す。Rit.S3(配列番号30のA1-A2ドメインを含む)、Rit.S3.NQ(40位及び54位にグルタミンを含む配列番号30のA1-A2ドメインを含む)、Rit.S3.NQ.AYT(40位及び54位にグルタミンを含み、82位にアラニンを含む、配列番号30のA1-A2ドメインを含む)、及びRit.S3.NQ.QYT(40位及び54位にグルタミンを含み、82位にグルタミン酸を含む配列番号30のA1-A2ドメインを含む)を試験した。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、抗体(又は他の抗原結合タンパク質)及び非天然NKG2DリガンドのA1-A2ドメインを含む融合タンパク質を提供する。非天然NKG2Dリガンドは、非天然NKG2D受容体に選択的に結合する。本開示の様々な態様において、融合タンパク質は、A1-A2ドメインが結合する非天然NKG2D受容体を示すCAR-T細胞に関連して使用され、それによって、現在のCAR-T細胞ベースの治療薬の多くの欠点を克服する、目的に合ったCAR-T細胞治療を送達するための強力なシステムを提供する。現在利用可能なCAR-T細胞ベースの治療法とは異なり、本開示の融合タンパク質及びシステムは、選択した抗原にT細胞活性を誘導する柔軟な標的化、抗原喪失に関連する再発の可能性を低減するマルチプレックス機能、CAR-T細胞の差次的関与のための用量制御、及びCAR発現細胞への調節剤の選択的送達を可能にする。
【0016】
本開示は、特に有利な特性を有する非天然NKG2DリガンドのA1-A2ドメインを提供する。NKG2Dは、ナチュラルキラー(NK)細胞、いくつかの骨髄細胞、及び特定のT細胞上でII型ホモ二量体の統合膜タンパク質として発現する活性化受容体である。ヒトNKG2Dは、様々なストレスに応答して細胞の表面上で上方制御される8つの異なる天然MICリガンド(MICA、MICB、ULBP1~ULBP6)を有し、それらの差次的制御は、免疫系に、付随的損傷を最小限に抑えながら広範囲の緊急のキューに応答する手段を提供する。Groh et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.93,12445-12450(1996)、Zwirner et al.,Hum.Immunol.60,323-330(1999)、及びSpies et al.,Nat.Immunol.9,1013-1015(2008)。NKG2D外部ドメイン、いくつかの可溶性リガンド、及び外部ドメインへのリガンドの結合複合体の構造が解明され、さもなければ異なったアミノ酸同一性を有するリガンドの構造的に保存されたA1-A2ドメインに関与するホモ二量体界面における鞍状の溝が明らかになった。Li et al.,Nat.Immunol.2,443-451(2001)、Radaev et al.,Immunity 15,1039-1049(2001)、Zuo et al.,Sci Signal 10,(2017)、及びMcFarland et al.,Immunity 19,803-812(2003)。本開示の「A1-A2ドメイン」は、天然に存在するA1-A2ドメインではなく、NKG2D外部ドメインの変異バージョンに結合し、野生型NKG2D(wtNKG2D)には結合しない(又は少なくとも、インビボで生物学的に適切な様式ではwtNKG2Dに結合しない)アミノ酸配列を含む。実施例に記載されるU2S3ドメイン(配列番号30)に基づくこの直交A1-A2ドメインは、有利な特性を有する独自のグリコシル化パターンを可能にする。様々な態様において、本開示は、配列番号30に対して少なくとも95%の同一性(例えば、配列番号30に対する少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、少なくとも99%の同一性、又は100%の同一性)を有するアミノ酸配列を含むA1-A2ドメインペプチドを提供し、ペプチドは、配列番号30の位置40、54、及び/又は84のうちの1つ以上にアラニン又はグルタミンを含む。この点に関して、A1-A2ドメインは、40位のグルタミン、40位のアラニン、54位のグルタミン、54位のアラニン、40位のアラニン及び54位のグルタミン(任意選択的に、84位のグルタミン又はアラニン)、40位のアラニン及び54位のアラニン(任意選択的に、84位のグルタミン又はアラニン)、40位のグルタミン及び54位のアラニン(任意選択的に、84位のグルタミン又はアラニン)、40位のグルタミン及び54位のグルタミン(任意選択的に、84位のグルタミン又はアラニン)、40位のアラニン及び84位のグルタミン、40位のアラニン及び84位のアラニン、40位のグルタミン及び84位のアラニン、40位のグルタミン及び84位のグルタミン、54位のアラニン及び84位のグルタミン、54位のアラニン及び84位のアラニン、54位のグルタミン及び84位のアラニン、又は54位のグルタミン及び84位のグルタミンを含み得、位置は、配列番号30内のアミノ酸位置を参照している。例えば、本開示は、配列番号30の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するA1-A2ドメインペプチドであって、ペプチドが、配列番号30の配列に関して40位及び54位にグルタミン残基を含む、A1-A2ドメインペプチドを提供する。任意選択的に、A1-A2ドメインは、配列番号30の84位にグルタミンを含む。代替的に、A1-A2ドメインは、様々な態様において、配列番号30の84位にアラニンを含んでもよい。様々な態様において、A1-A2ドメインペプチドは、配列番号11、配列番号31、又は配列番号32を含む(又はそれらからなる)。本明細書で更に説明されるように、本開示の任意のA1-A2ドメインを、抗体(又は他の抗原結合タンパク質)の重鎖又は軽鎖に融合させて、例えば、標的抗原及び変異型NKG2D外部ドメインの両方に結合する二重特異性融合タンパク質を作製することができる。この形態(A1-A2ドメインに融合された抗体)は、「MicAbody」とも称される。
【0017】
本開示は、(i)配列番号1の可変領域配列を含む重鎖と、(ii)配列番号8の可変領域配列を含む軽鎖と、を含む、抗体融合タンパク質を提供する。軽鎖は、配列番号11のアミノ酸配列を含むA1-A2ドメインにC末端で融合されている。本発明の抗体融合タンパク質の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、B細胞に表示される表面抗原CD20に結合するキメラモノクローナル抗体(IgG1カッパ免疫グロブリン)であるリツキシマブのものである。リツキシマブは、例えば、米国特許第5,736,137号、同第5,776,456号、及び同第5,843,439号に更に記載されている。B細胞は、特定の自己免疫疾患及びがんの病因において役割を果たし、リツキシマブは、様々な障害において有益な効果を達成するように、B細胞を標的として殺傷するのに有効である。例えば、リツキシマブは、白血病(例えば、有毛細胞白血病(HCL)及び慢性リンパ球性白血病(CLL))及びリンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫(NHL、例えば、びまん性大型B細胞リンパ腫(DLBCL)、バーキットリンパ腫(BL)、マンテル細胞リンパ腫(MCL)、及び濾胞性リンパ腫)等のがんの治療において有効性を示している。リツキシマブはまた、関節リウマチ、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス(SLE)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、及び自己免疫関連性貧血等の自己免疫疾患の治療における有効性を実証した。また、リツキシマブは、多発血管炎性肉芽腫症(GPA)(ウェゲナー肉芽腫症)及び顕微鏡的多発性血管炎(MPA)を伴う肉芽腫症の治療のためにも承認されている。
【0018】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、完全長重鎖及び軽鎖を有する免疫グロブリンを指す。本開示の抗体は、4つの高度に保存されたサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4)を含み、定常領域(例えば、ヒンジドメイン及び/又はCH2ドメイン)が概して異なる、IgG抗体である。任意選択的に、本開示の抗体融合タンパク質は、IgG1抗体を含み、その定常領域は、抗体依存性細胞溶解(ADCC)を誘発する抗体の能力を低減又は不活性化するように修飾され得る(例えば、D265A/D297A置換をFcドメインに導入することによって)。様々な態様において、抗体融合タンパク質の重鎖は、配列番号3のアミノ酸配列を含む定常ドメインを含む。本開示はまた、重鎖が配列番号2のアミノ酸配列を含む定常領域を含む、抗体融合タンパク質を企図する。本開示はまた、重鎖が配列番号3と少なくとも90%同一又は少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含むが、配列番号3内の234位、235位、及び329位のアミノ酸がアラニンである、抗体融合タンパク質を企図する。いくつかの態様において、抗体融合タンパク質は、配列番号7の重鎖を含む。この点に関して、本開示は、配列番号21の軽鎖及び配列番号7の重鎖を含む抗体融合タンパク質を提供する。他の態様において、抗体融合タンパク質は、配列番号6の重鎖を含む。この点に関して、本開示は、配列番号21の軽鎖及び配列番号6の重鎖を含む抗体融合タンパク質を企図する。
【0019】
本開示の様々な態様において、抗体の軽鎖は、配列番号8の可変領域配列を含む。任意選択的に、軽鎖は、配列番号9のアミノ酸配列(又は配列番号9と少なくとも約90%同一又は95%同一の配列)を含む定常領域を含む。したがって、様々な態様において、本開示の抗体融合タンパク質の軽鎖は、配列番号8及び配列番号9(配列番号21)を含む。
【0020】
軽鎖は、配列番号11のアミノ酸配列を含むNKG2DリガンドA1-A2ドメインにC末端で任意選択的に融合されている。以下でより詳細に説明されるように、軽鎖アミノ酸配列のC末端へのA1-A2ドメインの融合は、本開示の抗体の重鎖に対うるA1-A2ドメインの融合と比較して優れた活性をもたらした。本明細書に記載の抗体融合タンパク質上のドメインの配置の優れた特性は、実施例に記載の試験より前に予測することができなかった。
【0021】
様々な態様において、A1-A2ドメインは、リンカー、任意選択的に、配列番号10を含む(又はそれからなる)リンカーを介して、軽鎖のC末端に融合されている。以下により詳細に説明されるように、配列番号10のリンカーは、B細胞の細胞傷害性の観点から他の抗体融合構築物よりも予想外に優れたMicAbodyを生成した。本開示の例示的な態様において、本開示の抗体融合タンパク質は、配列番号8の可変領域配列と、配列番号10のリンカー配列を介して軽鎖のC末端に融合された配列番号11のA1-A2ドメインと、を含み、任意選択的に、配列番号9の軽鎖定常領域を含む。この点に関して、本開示の様々な態様において、抗体融合タンパク質の軽鎖は、配列番号13のアミノ酸配列を含む。
【0022】
本開示は、配列番号13の軽鎖、及び配列番号7の重鎖を含む抗体融合タンパク質を提供する。本開示はまた、配列番号13の軽鎖、及び配列番号6の重鎖を含む抗体融合タンパク質も提供する。抗体及び抗体融合タンパク質を作製する方法は、当該技術分野で既知であり、例えば、以下の実施例に記載されている。
【0023】
本開示はまた、本明細書に記載の抗体融合タンパク質を含む1つ以上の容器を含む、キットを提供する。キットは、抗体融合タンパク質の適応及び使用に関する説明書及び書面による情報を更に含んでもよい。シリンジ、例えば、単回使用シリンジ又はプレフィルドシリンジ、滅菌した密封容器、例えば、バイアル、ボトル、器、及び/又は抗体融合タンパク質を含むキット若しくはパッケージもまた、任意選択的に好適な使用説明書とともに、企図される。更なる態様において、本開示は、(a)本明細書に記載の抗体融合タンパク質を含む組成物、(b)上記組成物を含む容器、及び(c)上記容器に貼付されたラベル、又は疾患若しくは障害(例えば、がん)の治療における上記抗体融合タンパク質の使用に言及する上記容器に含まれる添付文書を含む、製造物品又は単位用量形態を提供する。また、本明細書において、抗体融合タンパク質(及び、様々な態様において、本明細書に記載のCARを発現する哺乳動物細胞)と、薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤と、を含む、組成物が提供される。例示的な態様において、組成物は無菌組成物である。
【0024】
本開示は、CD20表示細胞を標的とする細胞療法レジメンの構成要素を含む、システム又はキットを更に提供する。様々な態様において、第1の構成要素は、本明細書に記載の抗体融合タンパク質、すなわち、CD20及びNKG2D外部ドメインを含むCARの両方に結合する二重特異性の抗体ベースの融合タンパク質である。第2の構成要素は、それ自体が不活性(すなわち、非武装CAR-T)であるキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子改変された哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞)である。様々な態様において、哺乳動物細胞は、リンパ球又はマクロファージ、例えば、ヒトリンパ球(ヒトT細胞等)又はヒトマクロファージである。様々な態様において、第2の構成要素は、ヒトNK(ナチュラルキラー)細胞(例えば、自己ヒトNK細胞)であり、T細胞に関する本明細書における開示は、NK細胞にも適用される。キットは、CARを発現する哺乳動物細胞を含む1つ以上の容器と、抗体融合タンパク質を含む1つ以上の容器と、を含む。キットは、本明細書に記載の構成要素の適応及び使用に関する説明書及び書面による情報を更に含んでもよい。
【0025】
「キメラ抗原受容体」又は「CAR」は、腫瘍細胞などの標的細胞によって発現される抗原を認識し、それに結合するように操作された人工免疫細胞受容体を指す。一般に、CARはT細胞用に設計されており、T細胞受容体(TCR)複合体のシグナル伝達ドメイン及び抗原認識ドメイン(例えば、抗体又は他の抗体断片の一本鎖断片(scFv))のキメラである。例えば、Enblad et al.,Human Gene Therapy.2015;26(8):498-505を参照されたい。T細胞及びNK細胞は、遺伝子移入技術を用いて修飾して、新規の抗原特異性を付与する膜貫通シグナル伝達受容体を表面上に直接かつ安定的に発現させることができる。例えば、Gill&June,Immunological Reviews 2015.Vol.263:68-89、Glienke et al.,Front.Pharmacol.doi:10.3389/fphar.2015.00021を参照されたい。CARには様々な形態があり、各々が異なる構成要素を含有する。「第1世代」CARは、ヒンジ及び膜貫通ドメインを介して、T細胞受容体のCD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインに抗原結合ドメインを結合する。「第2世代」CARは、共刺激シグナルを供給するために、追加のドメイン、例えば、CD28、4-1BB(41BB)、又はICOSを組み込む。「第3世代」CARは、TCR CD3ζ鎖に融合された2つの共刺激ドメインを含有する。第3世代共刺激ドメインは、例えば、CD3ζ、CD27、CD28、4-1BB、ICOS、又はOX40の組み合わせを含み得る。そのように構築されたCARは、例えば、内因性T細胞受容体と同様ではあるが、主要組織適合抗原(MHC)とは独立して、標的抗原に結合したときにT細胞活性化を誘発することができる。
【0026】
本開示のキメラ抗原受容体は、CARの「抗原結合ドメイン」として、天然リガンドに関与することができない変異型NKG2D外部ドメインを含む。NKG2D外部ドメインの変異は、例えば、Culpepper et al.,Mol.Immunol.48,516-523(2011)及び実施例に更に記載される。変異型NKG2Dは、本明細書において「iNKG2D」と称される。様々な態様において、iNKG2Dドメインは、配列番号15のアミノ酸配列を含む。外部ドメインは、好ましくは、膜貫通ドメイン、共刺激分子(例えば、4-1BB又はCD28)の細胞内ドメイン、及び/又はT細胞受容体細胞内シグナル伝達ドメインと関連付けられる。例えば、本開示の例示的な態様において、iNKG2D外部ドメインは、CD8aヒンジ/膜貫通ドメイン(例えば、配列番号16の配列を含む、又はそれからなる)、4-1BBドメイン(例えば、配列番号17の配列を含む、又はそれからなる)、及び/又はCD3ζドメイン(例えば、配列番号18の配列を含む、又はそれからなる)に融合されている。様々な態様において、CARは、これらの構成要素(例えば、配列番号15~18又は配列番号19)の全てを含む。
【0027】
CARは不活性であるため、CARは、その受容体に非共有結合したその同族の抗体融合タンパク質で「武装」したときに、抗原を示す標的細胞との生産的な免疫学的シナプスを形成し、細胞溶解を活性化することができるだけである。CAR発現細胞は、本明細書において「convertibleCAR」と称される。システムの例を
図7Aに示す。本明細書に記載の抗体融合タンパク質は、CD20を発現する細胞の存在下でのみ、iNKG2D-CAR発現細胞(例えば、T細胞)を活性化することができる。他の抗原を標的とする追加のMicAbody(すなわち、異なる細胞表面抗原に結合する異なる可変領域を有する抗体融合タンパク質)とともに使用される場合、convertibleCAR-T細胞は、細胞溶解を媒介するために、同時に又は連続して異なる抗原を標的とすることができる。このアプローチは、例えば、複数の異なる自己CAR細胞を作製、拡張、及び注入する必要なく、標的抗原消失の結果としての腫瘍耐性及び腫瘍エスケープに対応するのに役立ち得る。この高度にモジュール化されたconvertibleCARシステムは、養子細胞療法の可能性を拡大し、重度の全身毒性、抗原エスケープ、及び現在のCAR-T及びCAR-NK細胞療法の制限された制御不能な持続性を含む、既存の細胞療法の多くの欠点を克服する。更に、単一のCARを様々な状況で使用することができるため(標的特異性は、CARではなく、投与される抗体融合タンパク質によって決定されるため)、細胞の製造が簡素化され、より安価である。
【0028】
CAR細胞療法は、表面上で特定のCARを産生することができるように操作された対象又は患者自身の免疫細胞を利用する免疫療法であり得る。いくつかの状況において、細胞(例えば、T細胞)は、アフェレーシスによって対象又は患者の体から採取される。次いで、体から採取された細胞(例えば、T細胞)を遺伝子操作して、それらの表面上で特定のキメラ抗原受容体を産生させる。CAR発現細胞は、実験室で成長させることによって増殖され、次いで、対象若しくは患者、又は別の対象若しくは患者に投与される。CAR発現細胞は、それらの表面上に標的抗原を発現する細胞(例えば、がん細胞)を認識して殺傷する。細胞は、治療のレシピエントとなる対象から単離されてもよいか、又は治療の最終的なレシピエントではないドナー対象から単離されてもよい。様々な態様において、細胞は、自己CD4+及びCD8+T細胞である。
【0029】
本開示は、がん(CD20陽性がん)等のCD20を発現する細胞に関連する疾患又は障害のために対象を治療する方法を更に提供する。方法は、対象に、本明細書に記載のCAR発現細胞(例えば、本明細書に記載のiNKG2DベースのCARを発現するT細胞又はNK細胞)を投与することと、対象に、本明細書に記載の抗体融合タンパク質を投与することと、を含む。がんの例としては、限定されないが、白血病及びリンパ腫、例えば、有毛細胞白血病、慢性リンパ性白血病、及び非ホジキンリンパ腫(例えば、びまん性大型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、マンテル細胞リンパ腫、及び濾胞性リンパ腫)が挙げられる。
【0030】
本明細書で使用される場合、「治療する」という用語、及びそれに関連する単語は、必ずしも100%の又は完全な治療又は寛解を意味するわけではない。むしろ、当業者が潜在的な利益又は治療効果を有すると認識する治療の程度には様々なものがある。この点において、疾患又は障害を治療する方法は、任意の量又は任意のレベルの治療を提供することができる。更に、本方法によって提供される治療は、治療される疾患の1つ以上の状態又は症状又は徴候の治療を含み得る。例えば、本開示の治療方法は、疾患の1つ以上の症状を抑制し得る。また、本開示の方法によって提供される治療は、疾患の進行を遅らせることを包含し得る。
【0031】
がんの治療は、多数の方法のいずれかによって決定され得る。対象の福祉における任意の改善が企図される(例えば、本明細書に記載の任意のパラメータの少なくとも又は約10%の減少、少なくとも又は約20%の減少、少なくとも又は約30%の減少、少なくとも又は約40%の減少、少なくとも又は約50%の減少、少なくとも又は約60%の減少、少なくとも又は約70%の減少、少なくとも又は約80%の減少、少なくとも又は約90%の減少、又は少なくとも又は約95%の減少)。例えば、治療応答は、疾患における以下の改善のうちの1つ以上を指す:(1)腫瘍性細胞の数の減少;(2)腫瘍性細胞死の増加;(3)腫瘍性細胞生存の阻害;(5)腫瘍成長若しくは新たな病変の出現の阻害(すなわち、ある程度遅らせる、好ましくは停止する);(6)腫瘍サイズ若しくは負荷の減少;(7)臨床的に検出可能な疾患の不在;(8)がんマーカーのレベルの低下;(9)患者生存率の増加;及び/又は(10)疾患若しくは状態(例えば、疼痛)に関連する1つ以上の症状からのいくらかの緩和。更に、治療有効性は、他の免疫療法処置又は化学療法に対する応答性の点でも特徴付けることができる。様々な態様において、本開示の方法は、対象における治療をモニタリングすることを更に含む。
【0032】
対象は、限定されないが、マウス及びハムスター等のげっ歯目の哺乳動物、並びにウサギ等のウサギ目の哺乳動物、ネコ(ネコ)及びイヌ(イヌ)を含む食肉目の哺乳動物、ウシ(ウシ)及びブタ(ブタ)を含む偶蹄目の哺乳動物、又はウマ(ウマ)を含む奇蹄目の哺乳動物である。いくつかの態様において、哺乳動物は、霊長目、セボイド(Ceboid)、又はシモイド(Simoid)(サル)、又は真猿亜目(ヒト及び類人猿)の順序である。いくつかの態様において、哺乳動物はヒトである。治療用組成物は、非経口、局所、経口、髄腔内又は局所投与を含む様々な経路のいずれかを使用して、対象に送達することができる。実際、組成物は、皮下投与、皮内投与、真皮内投与、静脈内投与、動脈内投与、腫瘍内投与、非経口投与、腹腔内投与、筋肉内投与、眼内投与、骨内投与、硬膜外投与、硬膜内投与、腫瘍内投与等を行ってもよい。
【0033】
本開示はまた、(i)本明細書に記載の抗体融合タンパク質の軽鎖をコードする核酸分子(すなわち、単離核酸)、及び(ii)本明細書に記載の抗体融合タンパク質の重鎖をコードする核酸分子(すなわち、単離核酸)、並びに(i)及び/又は(ii)を含む組成物を提供する。本開示は、本明細書に開示されるA1-A2ドメインペプチドのいずれかをコードする核酸分子を更に提供する。本開示の核酸は、本明細書に開示されるアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸、並びに本開示の核酸(すなわち、配列表に記載される核酸配列)に対して少なくとも80%、より好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、及び最も好ましくは少なくとも約98%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸を含む。本開示の核酸は、本明細書に開示されるアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸、並びに本開示のアミノ酸配列(すなわち、配列表に記載されるアミノ酸配列)に対して少なくとも80%、より好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、及び最も好ましくは少なくとも約98%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸を含む。本開示の核酸は、相補的核酸も含む。ある場合には、配列は、整列させたときに完全に相補的である(ミスマッチがない)。他の場合には、最大約20%のミスマッチが配列に存在し得る。本開示は、本開示の抗体融合タンパク質の重鎖及び軽鎖の両方をコードする核酸配列を含む核酸分子を提供する。
【0034】
本開示の核酸は、プラスミド、コスミド、バクミド、ファージ、人工染色体(BAC、YAC)又はウイルス等の発現ベクターにクローニングすることができ、そこに別の遺伝子配列又はエレメント(DNA又はRNAのいずれか)を挿入して、結合した配列又はエレメントの複製をもたらすことができる。いくつかの実施形態において、発現ベクターは、構成的に活性なプロモーターセグメント(限定されないが、CMV、SV40、伸長因子又はLTR配列等)又はステロイド誘導性pINDベクター(Invitrogen)等の誘導性プロモーター配列を含有し、核酸の発現を制御することができる。本開示の発現ベクターは、制御配列、例えば、内部リボソーム進入部位を更に含み得る。分泌型シグナルペプチド配列はまた、任意選択的に、細胞から目的のポリペプチドをより容易に単離するために、発現したポリペプチドが組換え宿主細胞によって分泌され得るように、目的のコード配列に作動可能に連結された発現ベクターによってコードされ得る。発現ベクターは、例えば、トランスフェクションによって細胞に導入することができる。
【0035】
(任意選択的に発現ベクターに含まれる)核酸分子を含む組換え宿主細胞もまた提供される。組換え宿主細胞は、原核細胞、例えば、E.coli細胞、又は真核細胞、例えば、哺乳動物細胞又は酵母細胞であり得る。酵母細胞は、例えば、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、及びPichia pastoris細胞を含む。哺乳動物細胞として、例えば、Vero、HeLa、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、W138、ベビーハムスター腎臓(BHK)、COS-7、MDCK、ヒト胚性腎臓細胞株293、アフリカミドリザル腎臓細胞、及びCOS細胞が挙げられる。本開示の組換えタンパク質産生細胞はまた、例えば、Spodoptera frugiperda細胞等の既知の任意の昆虫発現細胞株を含む。一実施形態において、細胞は、CHO細胞等の哺乳動物細胞である。
【0036】
抗体融合タンパク質を更に生成する方法が本開示によって提供される。方法は、抗体融合タンパク質の軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子と、抗体融合タンパク質の重鎖をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子と、を含む、宿主細胞(単離宿主細胞)を培養することを含む。方法は、抗体融合タンパク質を回収することを更に含む。本開示はまた、本明細書に記載のA1-A2ドメインペプチドを生成する方法を提供する。方法は、A1-A2ドメインペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む宿主細胞(単離宿主細胞)を培養することを含む。方法は、ドメインペプチド(任意選択的に別のペプチドに融合されている)を回収することを更に含む。抗体タンパク質等の組換えタンパク質を作製するための培養条件及び方法は、当該技術分野で既知である。同様に、タンパク質精製方法は当該技術分野で既知であり、細胞培養培地からの組換えタンパク質の回収のために本明細書で利用される。いくつかの態様において、タンパク質及び抗体の精製方法は、濾過、親和性カラムクロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー、及び濃縮を含む。任意選択的に、方法は、抗体融合タンパク質又はA1-A2ドメインペプチドを製剤化することを含む。
【0037】
前述の開示は、様々な態様において、A1-A2ドメインペプチドの融合パートナーとしての抗CD20抗体に焦点を当てているが、本開示のA1-A2ドメインペプチドは、他の抗体などの他の抗原結合ペプチドを含む、他のペプチドに融合され得ることを理解されたい。抗CD20抗体の構造に関する前述の開示は、他の抗原結合タンパク質及び抗体(すなわち、他の標的に結合する抗体)にも適用される。抗体は、モノクローナル抗体又は多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)であり得る。A1-A2ドメインペプチドは、抗体の抗原結合断片に融合されてもよい。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片が挙げられる。他の抗原結合タンパク質は、ダイアボディ、線形抗体、一本鎖抗体分子等を含む。抗原結合タンパク質は、がん細胞の表面上に発現する抗原等の任意の好適な抗原を標的とし得る。抗原の例としては、CD19、BMCA、HER2、EGFR、EpCAM、CEA、BCMA、PSMA、CD19、CD20、CD22、CD33、CD37、CD38、CD123、CD276(B7-H3)、GPC2、GPC3、GPRC5D、WT-1、NY-ESO-1、CLDN4、CLDN6、CLDN18.2、PSCA、及びTSPAN8が挙げられるが、これらに限定されない。本開示は、疾患又は障害(例えば、がん)のために対象を治療する方法を更に提供する。方法は、本明細書に記載のCAR発現細胞(例えば、本明細書に記載のiNKG2DベースのCARを発現するT細胞又はNK細胞)を対象に投与することと、本明細書に記載のA1-A2ドメインペプチドを含む抗原結合融合タンパク質を対象に投与することとを含む。がん等の例は、上で考察され、本開示のこの態様に適用される。
【0038】
以下の実施例は、単に本発明を例示するために与えられたものであり、その範囲を限定するためのものではない。
【実施例】
【0039】
本実施例は、本開示の抗体融合タンパク質及びNKG2D外部ドメインを含むCAR-T細胞を生成する例示的な方法を説明する。実施例は更に、リツキシマブ由来の可変領域配列を含み、軽鎖のC末端に融合されたA1-A2ドメインを含む抗体融合タンパク質が、配列番号15~18のアミノ酸配列を含むCAR-T細胞に選択的に結合する能力、及び抗体融合タンパク質とCAR-T細胞との組み合わせが、インビボでCD20を保有するがん細胞を殺傷する能力を実証する。
【0040】
材料及び方法
クローニング、発現、及び精製:NKG2Dの野生型外部ドメイン(UniProtKB P26718,残基78-216;https://www.uniprot.org)は、短い第Xa因子を認識できるIle-Glu-Gly-Argリンカー(Fc-wtNKG2D)を介したヒトIgG1 FcのC末端への融合物として発現させた。単一のY152A(iNKG2D.YA)又は二重Y152A/Y199A置換(iNKG2D.AF)のいずれかを含む不活性NKG2Dバリアントを、PCR媒介性変異誘発又は合成によって作製した(gBlocks(登録商標)、IDT)。Fc-NKG2D分子のDNA構築物をExpi293(商標)細胞(Thermo Fisher Scientific)で発現させ、二量体分泌タンパク質をプロテインAアフィニティークロマトグラフィー(Pierce(商標)番号20334、Thermo Fisher)によって精製した。溶出した材料を、Superdex 200カラム(GE Life Sciences)を使用したAKTA Pureシステム上のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって特徴付け、更に精製した。正しく組み立てられた、適切なサイズの単量体材料を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に分画した。
【0041】
ヒトMICA*001(UniProtKB Q29983、残基24~205)、MICB(UniProtKB Q29980.1、24~205)、ULBP1(UniProtKB Q9BZM6、29~212)、ULBP2(UniProtKB Q9BZM5、29~212)、ULBP3(UniProtKB Q9BZM4、30~212)、ULBP5(NCBI受託番号NP_001001788.2、29~212)、及びULBP6(UniProtKB、29~212)のA1-A2ドメインを、C末端6x-Hisタグでクローニングした。単量体タンパク質をExpi293(商標)上清Ni-NTA樹脂(HisPur(商標)、Thermo Fisher)から精製し、溶出した材料をPD-10脱塩カラム(GE Life Sciences)中のSephadexG-25を用いてPBSに交換した。
【0042】
MICリガンド及び直交バリアントを、それぞれAPTSSSGGGGS又はGGGSリンカーのいずれかを介して、ヒトIgG1抗体のカッパ軽鎖又は重鎖のいずれかのC末端への融合物として、ライゲーション非依存的アセンブリ(HiFi DNA Assembly Master Mix、NEB番号E2621)によってクローニングした。更に、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)機能を排除するために、全ての抗体及びMicAbodyクローンの重鎖のCH2ドメインにD265A/N297A(Kabat番号付け)変異を導入した。所与の抗体クローンの重鎖及び軽鎖プラスミドDNA(哺乳動物発現ベクターpD2610-V12(ATUM)中)をExpi293(商標)細胞に同時トランスフェクトし、プロテインAによって精製した。作製された任意のモノクローナル抗体融合物について、適切なVL又はVHドメインをカッパ軽鎖又はADCC欠損IgG1重鎖のいずれかと入れ替えた。
【0043】
不活性NKG2D及び直交リガンドの操作:ForteBio Octetシステム(Pall ForteBio LLC)を用いたバイオレイヤー干渉法(BLI)を実施して、iNKG2Dによる野生型MICリガンド結合の損失を確認した。Fc-wtNKG2D、Fc-iNKG2D.YA、又はFc-iNKG2D.AFを、抗ヒトIgG Fc捕捉(AHC)バイオセンサー先端上に捕捉し、単量体MIC-Hisリガンドの滴定シリーズにおいて会合/解離動態をモニターした。更に、マイクロタイタープレートにコーティングされたMICA-Fc、MICB-Fc、ULBP1-Fc、ULBP2-Fc、ULBP3-Fc、又はULBP4-Fc(R&Dシステム)を用いてELISA(酵素結合免疫吸着測定法)結合アッセイを行い、ビオチン化Fc-wtNKG2D又はFc-iNKG2D.YAの滴定を行い、ストレプトアビジン-HRP(R&Dシステム番号DY998)で検出し、1-Step Ultra TMB ELISA(Thermo Fisher番号34208)で展開した。
【0044】
ファージディスプレイを用いて、iNKG2D.YA又はiNKG2D.AFのいずれかへの排他的結合を示した直交ULBP2 A1-A2バリアントを同定した。合成NNK(N=A/C/G/T及びK=G/Tであり、終止コドンなしで20個全てのアミノ酸を提示する)DNAライブラリーを、天然NKG2D受容体45上のY152位に近接して位置する結合状態にあるヘリックス2(残基74~78、成熟タンパク質に基づく番号付け)又はヘリックス4(残基156~160)のコドンを標的とするように作製した。Muller et al.,PLoS Pathog.6,e1000723(2010)。ヘリックス2単独、ヘリックス4単独、又はその組み合わせを探索するライブラリーを、M13ファージのマイナーコートタンパク質pIIIへの融合物としてクローニングし、変異誘発されたA1-A2ドメインバリアントを示すファージ粒子を、標準的な方法に従ってSS320 E.coli細胞で産生させた。これらのA1-A2ファージライブラリーを、ビオチン化Fc-iNKG2D.YA又はFc-iNKG2D.AFタンパク質(EZ-Link(商標)NHS-Biotin Kit、Thermo Fisher番号20217)のいずれかで捕捉し、非ビオチン化Fc-wtNKG2D競合物質の濃度を増加させながら4ラウンドの選択を繰り返すことによって濃縮した。スポットELISAによって、プレート結合Fc-iNKG2D.YA又はFc-iNKG2D.AFへの選択的結合についてFc-wtNKG2Dと比較して陽性ファージクローンを検証し、結合したファージをビオチン化M13ファージコートタンパク質モノクローナル抗体E1(Thermo Fisher番号MA1-34468)で検出し、続いてストレプトアビジン-HRPでインキュベーションした。
【0045】
ファージバリアントを配列決定し、次いで、更なる検証のためにヒトIgG1モノクローナル抗体融合物としてクローニングした。直交バリアントの選択性が二価のMicAbodyフォーマットで維持されたことを確認するために、ELISAウェルを1μg/mLのFc-wtNKG2D、Fc-iNKG2D.YA、又はFc-iNKG2D.AFでコーティングし、結合したMicAbodyをHRPコンジュゲートマウス抗ヒトカッパ鎖抗体(Abcam番号ab79115)で検出した。単量体及び抗体融合ULBP2バリアントの両方の親和性も、前述のようにOctet分析により決定した。
【0046】
convertibleCAR-T細胞の作製:CD8α鎖シグナル配列、NKG2Dバリアント、CD8αヒンジ及び膜貫通ドメイン、4-1BB、CD3ζ、並びにeGFPを含むヒトコドン最適化DNA(GeneArt、Thermo Fisher)を、パッケージングプラスミドpCMVdR8.91及びpMD2.G48とともに、第2世代のPantropic VSV-G偽型レンチウイルス産生のためのpHR-PGKトランスファープラスミドにクローニングした。(GGGGS)3リンカーによって分離されたリツキシマブのVH及びVLドメインをNKG2Dモジュールに置換して、リツキシマブscFvベースのCAR(RITscFv-CAR)を作製した。生成されたレンチウイルスの各バッチについて、6×106個のLenti-X 293T(Takara Bio番号632180)細胞を、トランスフェクションの前日に10cmの皿に播種した。次いで、12.9μgのpCMVdR8.91、2.5μgのpMD2.G及び7.2μgのpHR-PGK-CAR構築物を、720μlのOpti-MEM(商標)(Thermo Fisher番号31985062)中で組み合わせ、次いで67.5μlのFugene HD(Promega Corp.E2311)と混合し、短時間ボルテックスし、室温で10分間インキュベートした後、細胞の皿に添加した。2日後、遠心分離によって上清を収集し、0.22μmフィルターを通過させた。5倍濃縮PEG-6000及びNaClを添加して、最終濃度8.5%のPEG-6000(Hampton Research番号HR2-533)及び0.3MのNaClを得、氷上で2時間インキュベートした後、4℃で20分間遠心分離した。濃縮したウイルス粒子を0.01体積のPBS中に再懸濁し、-80℃で凍結保存した。
【0047】
初代ヒトT細胞の単離のために、匿名ドナーからのヒト末梢血Leuko Pak(Stemcell Technologies番号70500.1)を、等量のPBS+2%FBSで希釈し、次いで500×gで10分間、室温で遠心分離した。細胞をPBS+2% FBSに5×107細胞/mlで再懸濁し、細胞1ml当たり50μlの単離カクテルを添加し、室温で5分間インキュベートすることによるネガティブセレクション(Stemcell EasySep(商標)Human CD4 T Cell Isolation Kit番号17952又はEasySep Human CD8 T Cell Isolation Kit番号17953)によってCD4+又はCD8+細胞を濃縮した。続いて、細胞1ml当たり50μlのRapidSpheres(商標)を添加して試料を満たした(各21mLの細胞、14mLのPBS)。EasySEP(商標)磁石で細胞を10分間単離し、続いて、磁場を維持しながら緩衝液を除去した。濃縮された細胞を、新鮮な緩衝液を含む新しい試験管に移し、磁石を再度適用して第2ラウンドの濃縮を行い、その後、細胞を再懸濁し、計数し、10~15×106細胞/クライオバイアルで凍結保存した(RPMI-1640、Corning番号15-040-CV;20%ヒトAB血清、Valley Biomedical番号HP1022;10%DMSO、Alfa Aesar番号42780)。
【0048】
CAR-T細胞を作製するために、凍結保存細胞の1本のバイアルを解凍し、10mLのT細胞培地「TCM」(TexMACS培地、Miltenyi130-097-196;5%ヒトAB血清、Valley Biomedical番号HP1022;10mM中和N-アセチル-L-システイン;1X2-メルカプトエタノール、Thermo Fisher番号21985023、1000X;45IUe/mlヒトIL-2IS「rhIL-2」、Miltenyi番号130-097-746)に添加した(細胞への添加時に添加した)。細胞を400×gで5分間遠心分離し、次いで10mlのTCM中に再懸濁し、1×106/mlに調整し、24ウェルプレートに1ml/ウェルで播種した。一晩静置した後、20μLのDynabeads(商標)Human T-Activator CD3/CD28(Thermo Fisher番号1131D)をウェル毎に添加し、24時間インキュベートした。濃縮したレンチウイルス粒子(50μL)をウェル毎に添加し、細胞を一晩インキュベートし、次いで、6mlのTCMを添加したT25フラスコに移した。増殖の3日後、Dynabeadsを除去し(MagCellect磁石、R&D Systems MAG997)、GFPのフローサイトメトリーによって形質導入効率を評価し、5×105細胞/mLに逆希釈し、4×106細胞/mLを超えないことを確実にするために細胞密度を毎日モニターした。必要に応じて、MicAbodyを使用し、PE-抗ヒトカッパ鎖(Abcam#ab79113)で検出することによって、又はリツキシマブ-MicAbodyをAlexa Fluor 647(Alexa Fluor Protein Labeling Kit番号A20173、Thermo Fisher)に直接コンジュゲートすることによって、iNKG2Dの表面発現をGFP発現と相関させた。convertibleCAR-CD8細胞の表面上でのiNKG2D発現量を、Alexa Fluor 647とコンジュゲートしたリツキシマブ-MicAbodyを使用して定量し、蛍光強度の中央値を、Quantum(商標)MESF 647ビーズ(Bangs Laboratories番号647)と相関させた。全てのフローサイトメトリーは、Bio-Rad S3e Cell Sorter又はMiltenyi MACSQuant Analyzer 10機器のいずれかで行った。
【0049】
細胞株及びインビトロアッセイ:RamosヒトB細胞性リンパ腫細胞(ATCC番号CRL-1596)を、20mM HEPES及び10%FBSを補充したRPMI中で培養した。ヒトHer2を発現するようにトランスフェクトされたマウス大腸がん株CT26も使用した。標的抗原が発現したことをフローサイトメトリーによって検証することを除いて、追加のマイコプラズマ試験又は認証は行われなかった。
【0050】
カルセイン放出アッセイでは、腫瘍細胞を遠心分離し、T細胞培地中の4mMプロベネシド(MP Biomedicals番号156370)+25μMカルセイン-AM(Thermo Fisher番号C1430)に1~2×106細胞/mlで1時間、37℃で再懸濁し、1回洗浄し、8×105細胞/mlに調整した。CD8+CAR-T細胞をペレット化し、TCM中の60IUe/mlのIL-2及び4mMのプロベネシド中に4×106細胞/mLで再懸濁した後、所望のエフェクター:標的比率に従って調整した(形質導入効率については調整されていない)。25μLの標的細胞を播種し、続いて25μLの培地又は希釈したMicAbodyを播種した。次いで、100μL培地(最小溶解)、培地+3%Triton-X100(最大溶解)、又はCAR-T細胞を添加し、プレートを37℃で2時間インキュベートした。細胞をペレット化し、75μLの上清を黒い透明底プレートに移し、SpectraMax M2eプレートリーダー(Molecular Devices)で蛍光(励起485nm、放出カットオフ495nm、放出530nm、リード当たり6回の点滅)を取得した。武装convertibleCAR-CD8+を用いた実験では、T細胞を37℃で飽和(5nM)又は滴定のいずれかのMicAbodyで30分間プレインキュベートしてから洗浄し、非結合MicAbodyを除去し、カルセインを添加した標的細胞と共培養した。
【0051】
T細胞の標的依存性の活性化を定量するために、カルセインのプレローディングが省略され、IL-2を補充していないT細胞培地にアッセイが設定されたことを除いて、前述のように実験を設定した。24時間の共培養後、上清を採取し、遊離サイトカインの量をELISA MAXTM Human IL-2又はHuman IFN-g検出キット(BioLegend番号431801及び番号430101)を用いて定量できるまで-80℃で保存した。
【0052】
MicAbody結合曲線データは、ProMab Biotechnologies,Inc.(Richmond,CA)によって作製された。3×105個のconvertibleCAR-CD8+細胞を96ウェルV底プレートに播種し、200nMから始まる滴定曲線を用いて最終体積100μLのRPMI+1%FBS中で、標識されたAlexa Fluor 647で標識されたRituximab.LC-U2S3 MicAbodyとともに、室温で30分間インキュベートした。次いで、細胞をすすぎ、フローサイトメトリーによって各滴定点で蛍光強度の中央値を決定した。
【0053】
動物試験:MicAbodyの血清レベルのPK分析のために、6週齢の雌NSGマウス(NOD.Cg-Prkdcscid IL2rgtm1Wjl/SzJ、The Jackson Laboratory番号005557)に、100μgの親リツキシマブ抗体(ADCC欠損)、リツキシマブの重鎖U2S3融合物(Rituximab.HC-U2S3)、又は軽鎖融合物(Rituximab.LC-U2S3)のいずれかを静脈内(IV)に注射した。収集した血清を、ヒト抗リツキシマブイディオタイプ抗体(HCA186、Bio-Rad Laboratories)で捕捉することによってELISAに供し、ラット抗リツキシマブ-HRP抗体(MCA2260P、Bio-Rad)で検出し、リツキシマブ又はリツキシマブ-U2S3のいずれかの標準曲線を使用して血清レベルを補間した。U2S3-hFc-mutIL2のPK分析は、60μgのIP注射とそれに続く定期的な血清収集によってNSGマウスにおいて行った。Fc-iNKG2Dを用いたELISA捕捉及びビオチン化ウサギ-抗ヒトIL-2ポリクローナル抗体(Peprotech番号500-P22BT)による検出、続いてストレプトアビジン-HRPによるインキュベーションによって試料を調べた。半減期は、非線形回帰分析、プラトーをゼロに制限した指数関数的な単相減衰分析を用いて、曲線のβ相に基づいてGraphPad Prismで計算した。
【0054】
播種性Raji B細胞リンパ腫の試験では、Luciola italica由来のルシフェラーゼ(Perkin Elmer RediFect Red-FLuc-GFP番号CLS960003)を構成的に発現するように安定にトランスフェクトされたRaji細胞(ATCC番号CCL-86)を、6週齢の雌NSGマウスの静脈内に移植した。治療投与の開始は、各インビボ試験図に詳述されている。全ての実験において、CD4及びCD8初代ヒトT細胞は、独立して形質導入され、細胞型間又はCAR構築物間のトランスフェクション効率について正規化することなく、CD4:CD8細胞の1:1混合物で増殖後に組み合わされ、混合物を静脈内注射前にフローサイトメトリーによって検証された。MicAbody又は対照抗体の投与は、特に明記しない限り腹腔内(IP)経路によるものであり、生物発光のインビボイメージングは、Xenogen IVISシステム(Perkin Elmer)を用いて行った。動物を定期的に出血させて、フローサイトメトリーによってヒトT細胞動態をモニターし、APC抗ヒトCD3(クローンOKT3、番号20-0037-T100、Tonbo Biosciences)で染色し、GFPをモニターし、細胞関連MicAbodyレベルをビオチン化抗ヒトF(ab’)2(番号109-066-097、Jackson ImmunoResearch Laboratories Inc.)で検査し、続いてストレプトアビジン-PE検出(BD番号554061)を行った。MicAbodyレベルをモニターするための血清ELISAを前述のように行った。
【0055】
皮下腫瘍試験のために、マトリゲル中の1×106個のRaji細胞を6週齢の雌NSGマウスの右側腹部に移植し、腫瘍が70~100mm3に達したときに治療を開始した。武装convertibleCAR-T細胞を投与したコホートでは、細胞を5nMのRituximab.LC-U2S3 MicAbodyとともにエクスビボで30分間室温でインキュベートした後、洗浄し、最終的に混合して所望の1:1のCD4:CD8比及び細胞濃度を達成した。ビオチン化抗ヒトF(ab’)2抗体を用いたフローサイトメトリーによって武装を確認し、GFPとF(ab’)2MFIとの間の強い相関が明らかになった。これらのマウスには、別個のMicAbody投与を行わなかった。腫瘍体積を推定するためにキャリパー測定を定期的に行い(L×W×W×0.5=mm3)、最終的な腫瘍量を測定した。
【0056】
iNKG2D.AF-CAR細胞の補体媒介アブレーション:増強された補体結合及びiNKG2D.AFを発現するT細胞への標的化送達を伴うFc試薬を作製するために、直交リガンドを、GGGSリンカーを介してヒトIgG1 FcのN末端(U2R-Fc)又はC末端(Fc-U2R)のいずれかへの融合物としてクローニングし、Fcは、ヒンジ、CH2、及びCH3ドメインを含んでいた。野生型Fcに加えて、K326A/E333A21(Kabat番号付け、「AA」)及びS267E/H268F/S324T/G236A/I332E20(「EFTAE」)といったC1qの結合を増強した変異体セットを探索した。全てをExpi293T細胞に発現させ、前述のように精製し、分画した。確認的ELISAは、Fc-NKG2D.AFで捕捉し、続いて1μg/mLの濃度でU2R/Fcバリアント融合物を結合させ、ヒトC1qタンパク質(Abcam番号ab96363)で滴定し、次いでポリクローナルヒツジ抗C1q-HRP抗体(Abcam番号ab46191)で検出することによって行った。補体依存性細胞傷害性(CDC)アッセイは、iQ Biosciences(Berkeley,CA)によって行われた。端的に述べると、NKG2D.AF-CAR形質導入からの5×104個のCD8+細胞を96ウェルプレートに播種し、最終濃度(v/v)10%の正常なヒト血清補体(Quidel Corporation)の存在下で、各U2R/Fcバリアント融合物の連続希釈物と3時間、3回インキュベートした。次いで、細胞を採取し、5μg/mLの最終濃度でSYTOX(商標)Red死細胞染色試薬(Thermo Fisher)とともに再懸濁し、フローサイトメトリーによって分析した。細胞障害性のEC50値を、非線形回帰曲線に適合したGraphPad Prismで計算した。
【0057】
iNKG2D-CARを発現するT細胞への変異型IL2の送達:U2S3リガンドの単量体であり、変異型IL-2の単量体であり、IL-2Rα(mutIL2、R38A/F42K)に結合する能力を持たないが(Heaton et al.,Cancer Res.53,2597-2602(1993)、Sauve et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.88,4636-4640(1991))、血清安定性を保持する試薬を作製するために、ヘテロ二量体Fc戦略を採用した。Gunasekaran et al.,J.Biol.Chem.285,19637-19646(2010)。U2S3を、K392D/K409D(Kabat番号付け)変異を有する一方の鎖のFcヒンジのN末端に融合させ、mutIL2を、E356K/D399K変異を有する第2のFc鎖のC末端に融合させた。更に、D265A/N297A変異を両方のFc鎖に導入して、FcをADCC欠損にした。Expi293T細胞における発現及び精製は、前述のとおりであった。適切に組み立てられたU2S3-hFc-mutIL2材料をSECによって分画し、SDS-PAGEを変性させることによって個々の適切なサイズのポリペプチドの存在を確認した。グリシン-セリン結合、フラグタグ、及び6xHisタグを含むリンカーを用いた、直交リガンドと、単一ポリペプチドとして発現するmutIL2との間の直接融合も形成し、Ni-NTA交換クロマトグラフィーによって精製した。Ghasemi et al.,Nat Commun7,12878(2016)。IUe活性当量の決定は、野生型IL-2の4.4μM溶液が1000IU/μLの当量を有するという計算に基づいていた。IL-15Rαへの結合を減少させたが生体活性を保持したV49D変異を有するIL-15を、U2S3で同様にフォーマットした。Bernard et al.,J.Biol.Chem.279,24313-24322(2004)。
【0058】
様々なサイトカイン又はU2S3-サイトカイン融合物に応答したCAR-T細胞増殖を、WST-1細胞増殖試薬(Millipore Sigma番号5015944001)で定量した。端的に述べると、CAR-T細胞をペレット化し、IL-2を含まないT細胞培地中に再懸濁し、96ウェルプレートに4×104細胞/ウェルで分注し、適切な量の希釈U2S3-サイトカイン融合物を添加して、ウェル当たり100μLの最終アッセイ体積で30IUe/mL又は必要に応じてそれ以上の濃度を達成した。組換えヒトIL2及びIL15(Peprotech番号200-02及び番号200-15)を対照として含めた。37℃で3日間インキュベートした後、10μLのWST-1を各ウェルに添加し、30~60分間インキュベートさせた後、プレートリーダー上で発色の強度を定量した。U2S3-サイトカイン融合物に応答したGFP+CAR発現細胞の割合の変化をフローサイトメトリーによってモニターした。サイトカイン融合物が関与したときのSTAT3又はSTAT5の活性化をモニターするために、IL-2を補充していないTCM培地中に細胞を一晩静置し、次いで、150IUe/mLのIL-2、IL-15、U2S3-hFc-mutIL2、又はU2S3-hFc-mutIL15で2時間処理した後、細胞内のphospo-STAT3(Biolegend PE抗STAT3Tyr705クローン13A3-1)及び-STAT5(BD Alexa Fluor 647抗STAT5 pY694クローン47)を固定して染色した。時間的応答をモニターするために、サイトカイン又はU2S3-hFc-サイトカイン融合物への曝露の0、30、60、及び120分後に、処理されたconvertibleCAR-CD8T細胞を固定し、次いで染色した。
【0059】
ヒトPBMC刺激及び免疫表現型試験を行った。端的に述べると、3人のドナーからの正常なPBMCを、1×105細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種し、U2S3-hFc-mutIL2又はU2S3-hFc-wtIL2(野生型IL2)のいずれかの10倍希釈系列に、5%CO2を用いて37℃で4日間曝露した。陽性対照は、2μg/mLの抗ヒトCD3(OKT2)及び300IUe/mLのrhIL-2でコーティングしたウェルを含んでいた。インキュベーション後、細胞をTruStain FcX Block(BioLegend番号422301)で処理し、続いて、増殖T細胞(CD8クローンRPA-T8番号301050、CD4クローンOKT4番号317410、CD3クローンOKT3番号300430、Ki-67番号350514)、及びTreg細胞(Fox3クローン206D番号320106、CD4クローンOKT4、CD3クローンOKT3、Ki-67)用のBioLegend抗体パネルで染色した。
【0060】
結果
直交NKG2D-リガンド相互作用を操作する:各NKG2D単量体中の2つの中央チロシン残基は、受容体-リガンド相互作用を駆動する上で重要な役割を有する。Culpepper et al.,Mol.Immunol.48,516-523(2011)。これらの残基における変異を深く探求し、Y152A変異体(「iNKG2D.YA」)及びY152A/Y199F二重変異体(「iNKG2D.AF」)を更なる試験のために選択し、バイオレイヤー干渉法(BLI)(
図2A及び3A)及びELISA(
図2B)によって、全ての天然に存在するヒトリガンドへの結合が消失したことを確認した。ULBP2 A1A2ドメインは、多型ではないため、iNKG2Dバリアントの各々への高親和性結合を示す変異体のファージディスプレイベースの選択のために選択された。ヘリックス2及びヘリックス4を照合するNNKライブラリーでは、ヘリックス4バリアントのみが見つかり、その場合であっても、ULBP2 A1A2ドメインに対する安定化の役割を有する可能性が高い自発的なR81W変異との関連性においてのみであった。wtNKG2Dの濃度を増加させたラウンドでの競合的選択(
図4A)により、抗FGFR3抗体クローンR3MabのIgG1重鎖のC末端への融合物として再フォーマットされた場合であっても、iNKG2D.YAに対して排他的に再現性よく結合する3つのバリアント、U2S1、U2S2、及びU2S3が得られた(
図4B)。R81W変異単独で、wtNKG2D及びiNKG2D.YAの両方に対する親和性が増強されたが(
図4B及び4C)、その野生型残基への復帰がiNKG2D.YAへの結合の損失をもたらしたため、iNKG2D選択的バリアントにおけるその存在が不可欠であるとみなされた。U2S3は一貫してより大きな結合差異を示したため、より徹底的な特徴付けを行って、野生型ULBP2のwtNKG2Dに対する親和性よりも10倍高い親和性をiNKG2D.YAに対して有する単量体として示された(
図4C)。配列番号11のA1-A2ドメインは、U2S3リガンド(配列番号30)に基づく。iNKG2D.YAへのピコモル結合を二価のリツキシマブ抗体融合物で測定したところ、軽鎖(LC)及び重鎖(HC)の両方の融合構成によって直交性が保持されていた(
図5)。
【0061】
候補直交バリアントをiNKG2D.AFの場合と同様に同定し、リツキシマブ-LC融合物をFc-wtNKG2D、Fc-iNKG2D.YA、及びFc-iNKG2D.AFと比較したELISAによって、iNKG2D.AFにのみ選択的に結合する4つのバリアントが同定されたが(
図3B)、U2Rバリアントが最も選択的であった。iNKG2D.YA及びiNKG2D.AFの両方に対するリツキシマブ.LC-U2S3及びリツキシマブ.LC-U2Rの結合を比較したELISAによって、独立して選択されたこれら2つの直交リガンドが、それが進化した不活性NKG2Dバリアントに排他的に関与していたことが確認された(
図3C)。
【0062】
キメラ抗原受容体としてのiNKG2D.YAの発現:4-1BB、CD3ζ、及びeGFPに融合されたiNKG2D.YAの、初代ヒトT細胞へのレンチウイルス形質導入により、同じヒンジ、膜貫通、及び細胞内アーキテクチャを有するリツキシマブ-scFvベースのCAR構築物(RITscFv-CAR)と同等のロバストな導入遺伝子発現を示すconvertibleCAR-T細胞を効率的に作製した(
図2b及び
図6)。リツキシマブLC-U2S3 MicAbodyによるiNKG2D.YAの表面染色は、GFP発現と強く相関しており、CAR発現の効率とT細胞表面上のiNKG2Dの提示との間の直接的な関係が示唆された(
図7C)。Alexa Fluor 647とコンジュゲートしたリツキシマブ.LC-U2S3 MicAbody及び標準定量ビーズのフローサイトメトリーを用いて、表面上に発現するiNKG2D.YAの量の中央値は21,000分子であると推定された。野生型又はU2S3リガンドでコーティングされたマイクロタイタープレートへのconvertibleCAR-CD8+細胞のインキュベーションによるiNKG2D.YA-CAR受容体の直接的な関与は、IL-2及びIFNγの活性化及び遊離をU2S3のみでもたらしたが、wtNKG2D-CAR担持細胞は野生型リガンドにのみ応答したことから、T細胞との関連おける直交相互作用の選択性が裏付けられる(
図8A)。更に、convertibleCAR-T細胞機能の活性化は、適切な同族ULBP2バリアントの存在に依存していた。iNKG2D.YAを発現する又はiNKG2D.AFを発現するT細胞のみが、それぞれの直交リガンド、すなわちU2S3又はU2Rを有するMicAbodyで武装した場合に、Ramos(CD20+)標的細胞を溶解した(
図3D)。Ramos細胞の共培養単独では、convertibleCAR-CD8+細胞の活性化を駆動するのに十分ではなかった。リツキシマブ抗体もトラスツズマブLC-U2S3もCAR細胞を活性化しなかったのに対し、リツキシマブLC-U2S3は32~160pMの範囲で最大サイトカイン放出を引き起こしたため、代わりに適切な抗原標的化MicAbodyが必要であった。更に、リツキシマブ.LC-U2S3 MicAbodyを有するconvertibleCAR-T細胞によるサイトカイン放出は、RITscFv-CAR細胞の放出を上回った(
図8B)。これらのデータは、T細胞機能のロバストな活性化を駆動するためには、標的とconvertibleCAR-T細胞との間にscFv-CAR19について特徴付けられるものと恐らく同様の接合部を形成するための、適切な抗原標的化MicAbodyが必要であることを実証した(
図9A)。
【0063】
蛍光標識されたリツキシマブLC-U2S3 MicAbodyを用いたconvertibleCAR-CD8+細胞の染色により、5nMで全iNKG2D.YA-CAR受容体の飽和が明らかになった(
図9B)。しかしながら、減少する量のリツキシマブLC-U2S3で武装したconvertibleCAR-CD8+細胞の共培養殺傷実験において、Ramos標的細胞の溶解活性は、受容体の完全占有に必要とされるよりも2桁少ない量である30pMで飽和応答に達した(
図9C)。この結果は、過剰な非占有iNKG2D.YA-CAR受容体を異種MicAbodyで武装して、複数の標的に対する活性を同時に誘導することができることを示唆している。これを直接試験するために、convertibleCAR-CD8+細胞をリツキシマブ.LC-U2S3、トラスツズマブ.LC-U2S3(Her2を標的とする)、又は2つのMicAbodyの等モル混合物で武装し、Ramos細胞又はCT26-Her2のいずれかに曝露した。単一のMicAbodyで武装したCAR細胞は、同種抗原を発現する腫瘍細胞のみに溶解を誘導したが、二重武装CARは、溶解能を損なうことなく両方の腫瘍細胞株を標的とした(
図9D)。
【0064】
convertibleCAR-T細胞は、播種性B細胞リンパ腫を抑制する:NSGマウスにおけるHC及びLC両方のリツキシマブ-U2S3 MicAbodyの薬物動態は(
図10A)、内因性マウス野生型NKG2DへのU2S3結合の保持に起因するMicAbodyのより急なα相を有する親抗体に匹敵するβ相を明らかにした(
図10C)。LC-U2S3融合物(すなわち、A1-A2ドメインが抗体の軽鎖に融合されている抗体融合タンパク質)は、HC融合MicAbody(すなわち、A1-A2ドメインが抗体の重鎖に融合されている抗体融合タンパク質)よりも長い末端半減期を有していた。LC-U2S3融合物はまた、Ramos標的細胞を用いたインビトロ殺傷アッセイでHC融合物よりも優れており(
図10B)、NSGマウスにおけるRaji B細胞リンパ腫の増殖を抑制する際に早期時点でより有効であると考えられた。要約すると、抗体の軽鎖のN末端に融合されたA1-A2ドメインを含む抗体融合タンパク質は、A1-A2ドメインが重鎖に融合された抗体構築物よりも驚くほど優れていた。
【0065】
リツキシマブLC-U2S3(Rit-S3;U2S3のA1-A2ドメインが抗体の軽鎖に融合されている抗体融合タンパク質)を、リンパ腫を制御するための投与パラメータを探索する更なる実験に用いた。高い濃度は、CAR細胞上の受容体及び腫瘍細胞上の抗原の過剰飽和をもたらし得、それによって生産的な関与を妨げる可能性があるため、20μgの中間的なRit-S3用量が最も有効であることが示された。更に、4日毎に対して2日毎というより高い頻度のRit-S3投与を、より高い用量(10×106)のconvertibleCAR-T細胞と組み合わせると、腫瘍増殖の最大の抑制がもたらされた。Rit-S3単独では、腫瘍制御には効果がなかったが、移植片対腫瘍効果は、非形質導入コホート及びconvertibleCARのみのコホートの両方で一貫して観察された。Rit-S3は、試験期間を通じてマウスの血清中で検出可能であり、より頻繁な投与ではより早くピークレベルが出現した。
【0066】
最適化されたconvertibleCAR-T投与を用いたRaji播種性リンパ腫モデルを実施し、2日毎に20μgのRit-S3を投与して、5×10
6(5M)と15×10
6(15M)のconvertibleCAR-T細胞を比較した。陽性対照として、convertibleCAR-T細胞に匹敵するインビトロでのRamos殺傷力を有するRITscFv-CAR細胞も含めた(
図8B)。合計5MのT細胞で、RITscFv-CAR及びconvertibleCAR+Rit-S3の両方が、腫瘍を制御するのに有効であった。腫瘍の平均生物発光シグナルはRITscFv-CARコホートの方が低く(
図11A)、そのコホートの5匹のマウスのうち4匹の腫瘍組織が消失したように見えたが、convertibleCAR+Rit-S3コホートでは5匹のマウスのうち3匹で消失したように見えた(
図11B)。CAR-T細胞の総注入用量を15M細胞に増加させた場合、RITscFv-CAR及びconvertibleCAR+Rit-S3の両方が、腫瘍増殖を完全にブロックすることができた(
図11A及び11B)。全ての試験において、末梢ヒトCD3+T細胞のピークレベルは、注入後約7日で一貫して出現し、14日までには、scFv-CAR及びconvertibleCAR-T細胞の両方で大部分のマウスに収縮が認められた(
図11D)。非形質導入コホート及びconvertibleCARのみのコホートにおけるCD3+細胞の遅延増殖があったが、それは移植片対腫瘍応答の開始と同時期であり、特異的反応性クローンの増殖の結果であった可能性が高い。convertibleCAR+Rit-S3コホートにおいて、マウスの血液中にMicAbodyと関連したconvertibleCAR-T細胞が観察された(
図11E)。
【0067】
convertibleCAR-T細胞は、皮下リンパ腫を抑制する:Raji B細胞を皮下移植して、convertibleCARシステムが固形腫瘍塊の増殖を抑制する能力を評価した。腫瘍が10日で確立されてから、60μgのRit-S3の単回静脈内投与後に、7×10
6(7M)又は35×10
6(35M)のいずれかのconvertibleCAR-Tを投与した。更に、1つのコホートには、投与前に飽和濃度のRit-S3で予め武装した35Mの細胞を与えたが、追加のMicAbodyを導入する注射は行わなかった。Rit-S3とともに7MのconvertibleCAR-T細胞を投与すると(7M+Rit-S3)、convertibleCAR-T細胞単独と比較して腫瘍サイズが縮小した(
図12A)。更に、35M+Rit-S3コホートでは、腫瘍増殖が完全に抑制された。35Mの予め武装した細胞を与えたコホートにおける腫瘍増殖も阻害された。注入後2日までに、予め武装していたconvertibleCAR-T細胞は、検出可能な表面関連Rit-S3 MicAbody(
図12C)を有しなかったが、これは恐らく活性化誘導性の細胞増殖と武装受容体のターンオーバーとの組み合わせに起因する武装解除の結果である。Rit-S3の血清レベルは、試験全体にわたって両方のCAR-T細胞用量で同等であり、21日目まで持続し(
図12B)、高レベルの武装した末梢CAR細胞に対応する約600ng/mL(3.2nM)で検出された(
図12C)。試験の45日目までに、35M+Rit-S3を与えたコホートは、比較的高いCD3+T細胞数を維持したが、MicAbodyで十分に武装されておらず、7M+Rit-S3コホートは、表面関連MicAbodyを維持した細胞を有していた。このことは、MicAbodyレベルが血漿中で検出可能限界を下回ったために、高いCAR-T細胞レベルでCARの武装を維持できなかったことを示唆するものであった。代替の可能性は、35M+Rit-S3コホートにおけるより高いCD3+細胞数が、CAR構築物を発現しない細胞の移植片対腫瘍サブセットの増殖を反映するというものである。しかしながら、35Mの予め武装したコホートではCD3+細胞数の上昇が見られなかったため、この場合には当てはまらないことが示唆される。要約すると、予め武装したconvertibleCAR-Tは、腫瘍増殖を阻害する強力な抗腫瘍応答を発揮することができた。更に、convertibleCAR-Tは、適切なインビボレベルでのconvertibleCAR-T細胞の武装が維持されたときに、固形リンパ腫を効果的に制御することができた。
【0068】
convertibleCAR-T細胞への生体分子の選択的送達:iNKG2Dバリアントとそれらの直交リガンドとの間の特権的相互作用は、単純にそれらをペイロードとして直交リガンド自体に融合させることによって、iNKG2D-CAR発現細胞への薬剤の選択的送達を可能にする。この特徴の有用性を実証するために、補体系を利用した標的化アブレーション及び活性化サイトカインの選択的送達の2つの異なる応用を探索した。第1の応用では、U2Rバリアントを、野生型ヒトIgG1 FcドメインのN末端若しくはC末端のいずれか、又はC1q結合を増強すると前述した変異型FcドメインS267E/H268F/S324T/G236A/I332E(「EFTAE」)及びK326A/E333A(「AA」)に融合させた(
図13A)。エピトープタグ化CAR細胞を標的とする完全な治療用抗体とは対照的に、Fc部分のみを使用することにより、非iNKG2D発現細胞のオプソニン化の付随的影響を回避する。増強されたC1q結合を、EFTAE<AA<wtの相対的順序のKdでELISAによって確認した(
図13B)。iNKG2D.AF-CAR細胞は、濃度及びC1q親和性の両方に依存する様式でヒト補体による殺傷に感受性であったが(
図13C及び13D)、非形質導入細胞は影響を受けなかった。興味深いことに、U2R融合の方向は機能にとって重要であり、Fcを抗体と一致する様式で配向するN末端融合が、はるかに効果的であった。U2S3とiNKG2D.YAのペアリングで同様の結果が得られた(
図13E及び13F)。
【0069】
iNKG2D-CAR発現細胞に選択的にサイトカインを送達する直交リガンドの潜在的な能力は、それらの増殖を促進するだけでなく、T細胞の表現型及び機能を制御するために差次的サイトカインシグナル伝達を潜在的に活用するという利点を有する。一般的な設計原理として、CARを発現しない免疫細胞との関与を減少させ、野生型サイトカインに関連する毒性を最小限に抑えるために、それらの天然受容体複合体への結合を減少させた変異型サイトカインを用いた。更に、サイトカイン融合物を一価に維持して、結合活性が増強された結合及びシグナル伝達を排除した。この目的のために、IL-2(mutIL2)25のR38A/F42K変異及びIL-15(mutIL15)のV49D変異は、IL-2Rβ/γ複合体の関与を維持しながら、各サイトカインのそれぞれのRαサブユニットへの結合を劇的に減少させる。mutIL2又はmutIL15のいずれかに融合されたiNKG2D.YA直交バリアントU2S2を用いた初期実験では、iNKG2D.YA-CAR発現細胞の増殖は促進されたが、wtNKG2D-CARを発現する細胞の増殖は促進されなかった(
図14A)。両方の細胞集団は、wtNKG2DとiNKG2D.YAとを区別しないULBP2.R81Wバリアントの存在下で増殖した。リガンドへの直接融合又はヘテロ二量体Fc結合(例えば、U2S2-hFc-mutIL2)を介した融合は、存在する非形質導入細胞を超える密度までGFP+convertibleCAR-T細胞の増殖を促進し(
図14B)、これらの増殖したconvertibleCAR-T細胞は、その細胞溶解能を維持した(
図14C)。MicAbody、一価U2S3-hFc(サイトカインのペイロードなし)、又はmutIL2単独によるiNKG2D.YAの関与は、convertibleCAR-CD8細胞の増殖を促進するには不十分であった(
図14A及び14D)。STAT3及びSTAT5のリン酸化(pSTAT3及びpSTAT5)のフローサイトメトリーによる特徴付けによって、野生型IL-2又はIL-15への曝露が、非形質導入細胞及びconvertibleCAR-CD8細胞の両方においてpSTAT3及びpSTAT5の増加をもたらすことが明らかになった。U2S3-hFc-mutIL2による非形質導入細胞の処理は、非サイトカイン対照と比較してpSTAT5の最小限のシフトをもたらしたのみであり、IL-2Rβ/γc結合のmutIL2の保持と一致していた。convertibleCAR-CD8細胞は、JAK3のγ鎖活性化を介したpSTAT5レベルの増加を伴って、U2S3-hFc-mutIL2及びU2S3-hFc-mutIL15の両方に応答した。野生型サイトカインとは異なり、pSTAT3シグナルの増加は観察されず、Rα結合の破壊の結果として、両方のシナリオにおいてIL-2Rβ28によるJAK1活性化の低下が示され、IL-2Rβに対するIL-15の親和性を増加させる際のIL-15Rαの役割によって仮説が裏付けられた。U2S3-hFc-mutIL2及びU2S3-hFc-mutIL15の応答の動態はほぼ同一であり、それらの変異形態における機能的冗長性が示唆された。
【0070】
U2S3-hFc-mutIL2は、数日間のインビボPK半減期を有することが示された(
図14E)。腫瘍の非存在下でNSGマウスに投与されたconvertibleCAR-T細胞は、恒常的増殖を経て、3日間でピークに達し、続いて収縮した。1週間間隔で段階的に行われたU2S3-hFc-mutIL2の3回の注射が、末梢血中のヒトT細胞の劇的な増殖をもたらし(
図15A)、U2S3-hFc-mutIL2の停止後にT細胞数が減少したことは、増殖の大部分を駆動するCD8+T細胞によって裏付けられた。増殖と並行して、GFP+CD8+T細胞の割合が100%に増加し、iNKG2D-CAR発現細胞の選択的増殖が実証されたが、非形質導入細胞では実証されなかった(
図15B)。
【0071】
濃度を増加させた薬剤に4日間曝露した後、増殖マーカーKi-67に陽性の細胞をフローベースで定量することによって、3人のドナーからの正常なヒトPBMCに対するU2S3-hFc-mutIL2の効果をインビトロで探索した(
図16)。-mutIL2融合物に加えて、野生型IL2融合物(U2S3-hFc-wtIL2)を含めて、mutIL2生物活性の低下が、融合フォーマット自体ではなく、用いられた変異の結果であることを直接実証した。CD4+及びCD8+T細胞は、抗CD3及び野生型IL-2陽性対照の両方、並びに最低用量のU2S3-hFc-wtIL2に対してロバストに応答した。U2S3-hFc-mutIL2に対する増殖応答は用量依存的な様式で起こり、300IUe/mLを超えるレベルでドナー全体にわたって増殖が観察されたが、30,000IUe/mLまでIL-2陽性対照のレベルと同等のレベルは達成されなかった。Treg応答は、他のドナーよりも低い濃度でU2S3-hFc-mutIL2に応答した1人のドナーからの細胞(追加的に抗CD3刺激に対して弱い応答を示した)を除いて、CD4+及びCD8+細胞のものと同等であった。総合すると、これらのデータは、毒性及びTreg活性化を最小限に抑えながら、リガンド融合mutIL2をconvertibleCAR細胞に選択的に送達するための幅広い投与期間を潜在的に提供する超生理学的レベルを除いて、正常なヒトPBMCがU2S3-hFc-mutIL2に応答しないという仮説を支持する。
【0072】
A1-A2ドメインの位置及びリンカーの比較:上記の試験に加えて、抗体重鎖又は軽鎖をA1-A2ドメインに接続する異なるリンカーを含む構築物を調べた。
図17Aを参照されたい。GGGS(配列番号14)リンカー(Ritux.HCd.S3)又はAPTSSSGGGS(配列番号10)リンカー(Ritux.HCd.apts.S3)を介して重鎖(Ritux.HCd)に結合されたU2S3ベースのA1-A2ドメインを含むリツキシマブ抗体を作製した。同じリンカー(Ritux.HCd.LC.S3(APTSSSGGGGSリンカー(配列番号10))及びRitux.HCd.LOC.gggs.S3(GGGSリンカー(配列番号14)))を介して、A1-A2ドメインをリツキシマブ抗体の軽鎖に融合させた類似の構築物を作製した。構築物を、
図10Bに関連して本明細書に記載される方法を用いて調べた。その結果を
図17Bに示す。抗体融合構築物であって、配列番号1の可変領域配列を含む重鎖と、配列番号8の可変領域配列を含む軽鎖であって、軽鎖が、A1-A2ドメインにC末端で融合された、軽鎖と、を含む、構築物は、腫瘍細胞の殺傷において、A1-A2ドメインが重鎖に結合された構築物よりも優れていた。更に、A1-A2ドメインがAPTSSSGGGGSリンカー(配列番号10)を介して軽鎖に融合された構築物は、ほぼ全ての濃度(0.04nM、0.2nM、1nM、及び5nM)で試験された全ての構築物よりも驚くほど優れていた。
【0073】
グリコシル化に影響を与える変異:タンパク質治療薬の製造中に導入されるグリコシル化は、最終生成物に望ましくない不均一性をもたらし得る。配列番号30内の40位及び54位に存在するものを変異させて、置換を介してアラニン又はグルタミンを導入した。これらの置換は、HEK293細胞でペプチドを発現させたときにN-グリコシル化を低下させた。驚くべきことに、CHO細胞でペプチドが産生されたとき、変異型A1-A2ドメインペプチドにおいてN-グリコシル化が観察された。置換を介してアラニン又はグルタミンを導入するために、84位の配列に更なる変異を導入した。
【0074】
40位、54位、及び/又は84位に置換を含む変異型A1-A2ドメインの活性は、リツキシマブに融合されたU2Rリガンドとの関連で確認された。(1)A1-A2ドメインの40位及び54位にアラニンを含む、又は(2)A1-A2ドメインの40位及び54位にグルタミンを含む、U2Rリガンドを含むリツキシマブ融合タンパク質を、CD20+ve Ramos細胞に対するiNKG2D.AF-CAR細胞を用いた殺傷アッセイで試験した。変異型A1-A2ドメインを含む融合物は、親A1-A2ドメインを有する融合物(40位及び54位に置換が存在しない)と同様の性能を示した。
【0075】
配列番号30(U2S3(NQ))の40位及び54位でも置換を行い、リツキシマブの軽鎖に融合された変異型A1-A2ドメインを含む融合タンパク質を作製した。SDS-PAGEにより、変異型A1-A2ドメイン融合物が、Expi-293細胞で発現させたときにN-グリコシル化の減少を示したことを確認した。同様の結果がCHO細胞において観察された。ELISAアッセイを、前述のものと同様の方法を用いて行い、U2S3(NQ)ドメインを含む抗体が、配列番号30の未修飾U2S3ドメインを含む抗体と同様に、iNKG2D.YAに結合したことを確認した。
図18を参照されたい。野生型NKG2Dへの結合も試験した。
図19を参照されたい。U2S3及びU2S3(NQ)を含むMicAbodyは、野生型NKG2Dへの結合が実質的に減少したことを示し、40位及び54位にグルタミンを導入すると、野生型NKG2D結合に対して驚くほどに更に不活性な融合がもたらされたことが観察された(すなわち、置換を含むA1-A2ドメインは、置換を伴わない親ドメインと同様の程度にiNKG2D.YAに結合したが、野生型NKG2Dへの結合が更に減少したことが示された)。
【0076】
U2S3(NQ)ドメインをCHO細胞で発現させたとき、HEK293細胞で発現が行われたときにはN-グリコシル化が実質的に存在しないように見えたという事実にもかかわらず、N-グリコシル化が観察された。U2S3(NQ)A1-A2ドメインの更なる置換を行って、アラニン(U2S3(AYT))又はグルタミン(U2S3(QYT))を84位に導入した。リツキシマブ-MicAbodyとの関連で、この追加の変異を用いてOctet結合実験を行った。84位でのアラニン又はグルタミンによる置換は、iNKG2D.YAへの結合を変化させなかった。細胞傷害性も確認された。
図20を参照されたい。Ramos標的細胞にカルセインを添加し、nM濃度を増加させた各被検MicAbody(U2S3、U2S3(NQ)、U2S3(AYT)、及びU2S3(QYT)に融合されたリツキシマブ)の存在下で、20:1のE:T比で2時間、iNKG2D-CAR CD8+T細胞と共培養した。放出されたカルセインの量を定量した。全てのMicAbodyは同等のレベルの細胞傷害性を媒介したことから、(a)CD20の関与が損なわれなかったこと及び(b)iNKG2Dの関与が本明細書に記載される置換によって損なわれなかったことを示す、したがって、本明細書に記載のA1-A2ドメインは、iNKG2D-CARを使用して、グリコシル化の減少を実証し、同等レベルの標的細胞結合及び細胞傷害性を媒介し、野生型NKG2Dへの更に減少した結合を実証した。
【0077】
考察
本開示は、多用途かつ広範囲に制御可能なプラットフォームをもたらす、非常に適応性の高いCARのヒト成分から構成される特権的な受容体-リガンド(iNKG2D.YA及びU2S3)ペアリングの操作を説明している。iNKG2D.YA-CAR受容体自体は、直交リガンドを適切な抗原認識抗体に結合させることによって潜在的に任意の目的の抗原に容易に誘導されるCAR機能を有するT細胞上で不変に維持される。このようにして、例えば、元の腫瘍抗原が治療過程中に下方制御された場合、同じconvertibleCAR-T細胞を必要に応じて再標的化することができる。この標的化の柔軟性は、抗原の逐次的関与に限定されるものではないが、抗原喪失による腫瘍エスケープの可能性を低減するため、腫瘍内抗原発現の不均一性の問題に対応するため、又は腫瘍及び腫瘍微小環境の抑制性細胞成分を同時に標的とするために、T細胞を同時に複数の抗原に誘導するように多重化することもできる。従来のscFv-CAR細胞は、一般に、健康な細胞上に存在する抗原レベルと異常な細胞上に存在する抗原レベルとを区別する能力を低下させる受容体の固定発現レベルに深く関与している。convertibleCAR-T細胞を有するMicAbodyのようなスイッチ/アダプター戦略の使用は、CAR-Tを差次的に関与させて、重篤な有害事象のリスクを低減する治療指標を達成する機会を提供し得る。
【0078】
追加の細胞工学を用いることなく、iNKG2D担持細胞に特異的にペイロードを送達するために特権的な受容体-リガンド相互作用を使用することは、別の利点である。インターロイキン機能を利用して、増殖及び活性化を駆動し、消耗を防ぎ、又は更には制御及び標的化された様式で抑制を促進する能力は、有効性及び安全性にとって有益な結果をもたらすことができる。CAR製造中のサイトカイン-リガンド融合物の導入は、患者T細胞の定性的及び定量的限界に対応することができ、CAR注入後のそれらの投与はCAR-T細胞の数を拡大することができ、CD19-CAR療法によるそれらの持続性は奏効率と正の相関がある。ほとんどのCAR療法は、CAR細胞の生着及び増殖を促進するために、リンパ球枯渇プレコンディショニング法を必要とするが、1つの論理的根拠は、CARが増殖するためのより未熟な免疫学的設定を提供することである。患者におけるロバストかつ制御可能なconvertibleCAR-Tの増殖は、リンパ球枯渇の必要性に取って代わることができ、初期のconvertibleCAR媒介抗腫瘍活性を支持するのに十分な能力を有する内因性免疫機能の保持を可能にし得る。別の臨床戦略は、恐らくは、T細胞の消耗を低減し、メモリーT細胞の維持を促進するためのサイクリングレジメンを用いて、convertibleCAR-T機能を増強するためのサイトカイン-リガンド融合物を送達することであり得る。そして最後に、CARが注入後何年もヒトにおいて存続することが実証されているため、新たなバッチのCAR細胞を再設計又は作製する必要なく、常在するconvertibleCAR-Tをリコールして原発性又は二次性の悪性腫瘍を攻撃する能力(元の標的化MicAbody又は異なるもののいずれかを用いて)は、非常に有利であるはずである。CARがサイトカインを構成的に発現するように操作されているシナリオとは異なり、convertibleCAR-T細胞への排他的なサイトカインの送達は、製造上の又は臨床的ニーズに応じて調節され得る。
【0079】
意図的に、convertibleCARシステムの各構成要素であるiNKG2DベースのCAR受容体及びMicAbody(ADCC欠損)は、それ自体が機能的に不活性である。これは、特に、従来のscFvベースのCARが同士討ちに起因する増殖困難に遭遇するT細胞悪性腫瘍等の適応症に関連して、製造中に利点を有する。更に、これは治療中のCAR機能の制御を増強する。本開示は、従来のscFv-CARと同等の抗腫瘍活性の初期バーストを提供するために、投与前にconvertibleCAR-T細胞をMicAbodyで武装することができることを実証する。活性化誘導性の複製に加えて、これらの細胞はまた、他の4-1BB/CD3ζ scFv-CARで観察されたものと一致する様式で、関与するCAR受容体を内在化する。これらの2つのプロセスの結果として、convertibleCAR-T細胞は、初期増殖及び標的関与の後に急速に武装解除し、次いで、MicAbody投与によって制御される様式で再武装及び再関与する機会を提供する。
【0080】
ULBP2に基づくiNKG2D-U2S3のペアリングに加えて、本開示は、ヘリックス4ドメインを通るアミノ酸組成が冗長ではないiNKG2D.YAに対する高親和性直交MicA及びULBP3バリアントを同定する。更に、完全に独立したiNKG2D.AFとU2Rのペアリングが記載されている。相互に排他的な受容体-リガンドペアを有することにより、例えば、別個の細胞集団(例えば、CD4及びCD8T細胞)にそれらを導入して、必要に応じてそれらに差次的に関与することが可能となる。更に、同じ細胞内で、2つのiNKG2Dバリアントを分割された細胞内シグナル伝達ドメインで発現させて、二重抗原依存性の活性化を提供して腫瘍選択性を高めることができる。代替的に、2つのiNKG2Dバリアントを、活性化ドメイン又は免疫抑制ドメインのいずれかに差次的に連結して、腫瘍間又は健常組織間のT細胞の識別力をそれぞれ増強することができる。
【0081】
要約すると、本明細書に記載のシステムは、異なる細胞表面抗原に容易に標的化されるだけでなく、細胞増殖を駆動するために選択的に外因的に関与することもできる能力を実証した。開発された特権的な受容体-リガンド相互作用は、細胞型に依存せず、細胞に適したシグナル伝達ドメインが提供される限り、任意の目的の細胞に設計することができる。更に、養子細胞療法分野は、製造の時間、複雑さ、及びコストを削減して、より一貫した、容易に利用できる製品を提供するために、同種異系細胞の開発を積極的に追求している。非常に適応性の高いCARシステムは、同種異系に関する取り組みと極めて相乗的であり、真に普遍的な同種異系CARシステムが実証されると、治療分野は、個別化された選択を行うことができるアダプター分子のライブラリーの開発及び実装が比較的容易であることを特徴とするようになるであろう。この戦略はまた、標的化可能な表面抗原を有する任意の病原性細胞への応用の潜在的な領域を拡張する。
【0082】
本明細書で引用される刊行物、特許出願、及び特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が個々にかつ具体的に参照により組み込まれることが示され、その全体が本明細書に記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】