(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(54)【発明の名称】肝疾患の処置のための併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/06 20060101AFI20240604BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240604BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240604BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240604BHJP
A61K 31/712 20060101ALI20240604BHJP
A61K 31/7115 20060101ALI20240604BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20240604BHJP
A61K 38/26 20060101ALI20240604BHJP
A61K 38/22 20060101ALI20240604BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240604BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240604BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20240604BHJP
C07K 14/605 20060101ALI20240604BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20240604BHJP
【FI】
A61K45/06 ZNA
A61P1/16
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K31/7088
A61K31/712
A61K31/7115
A61K31/7125
A61K38/26
A61K38/22
A61P3/04
A61P29/00
A61P43/00 105
A61K47/54
C07K14/605
C12N15/113 130Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575549
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 IB2022055292
(87)【国際公開番号】W WO2022259145
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008951
【氏名又は名称】アストラゼネカ・アクチエボラーグ
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】リンデン,ダニエル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076DD66
4C084AA02
4C084AA20
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA19
4C084BA23
4C084DB35
4C084DB37
4C084MA55
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4C084ZA701
4C084ZA751
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4C084ZB211
4C084ZC411
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA55
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA70
4C086ZA75
4C086ZB11
4C086ZB21
4C086ZC41
4C086ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA18
4H045BA50
4H045BA55
4H045CA40
4H045DA30
4H045EA20
(57)【要約】
対象の肝疾患を処置する方法であって、この対象に、i)パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有3(PNPLA3)発現の阻害剤と、ii)グルカゴン受容体及び/又はグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体のアゴニストとを投与することを含む方法が提供される。i)PNPLA3発現の阻害剤と、ii)グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストとを含む医薬及びキットが同様に提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の肝疾患を処置する方法であって、前記対象に、
i)パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有3(PNPLA3)発現の阻害剤と、
ii)グルカゴン受容体及び/又はグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体のアゴニストと
を投与することを含む方法。
【請求項2】
前記PNPLA3発現の阻害剤は、PNPLA3をコードする核酸の領域に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、PNPLA3をコードする核酸のヌクレオチド5567~5731内の部位に相補的である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、PNPLA3をコードする核酸のヌクレオチド5644~5731内の部位に相補的である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、PNPLA3をコードする核酸のヌクレオチド5567~5642内の部位に相補的である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、PNPLA3をコードする核酸のヌクレオチド5567~5620内の部位に相補的である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記PNPLA3をコードする核酸は、mRNAである、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、12~30個のヌクレオシドの長さである、請求項2~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、16~30個のヌクレオシドの長さである、請求項2~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ又は複数の修飾糖部分を含む、請求項2~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ又は複数の修飾糖部分は、2’-デオキシ、2’-O-メチル、2’-O-メトキシメチル、2’-O-メトキシエチル、2’-フルオロ、4’-CH(CH3)-O-2’、4’-CH2-O-2’、4’-(CH2)2-O-2’、又はこれらの組み合わせである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ又は複数の修飾塩基を含む、請求項2~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ又は複数の修飾塩基は、5-メチルシトシンである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチド中の全てのシトシンは、5’メチルシトシンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ又は複数の非天然のヌクレオシド間結合を含む、請求項2~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ又は複数のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
全てのヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、及び10の内のいずれか1つの少なくとも8個の連続塩基を有する配列を含む、請求項2~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、及び10の内の1つを含む、請求項2~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、
a)10個の結合デオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;
b)3つの結合ヌクレオシドからなる5’ウイングセグメント;及び
c)3つの結合ヌクレオシドからなる3’ウイングセグメント
を含み、
前記ギャップセグメントは、前記5’ウイングセグメントと前記3’ウイングセグメントとの間に位置しており、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドは、拘束エチル糖を含み、
各ヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合であり、各シトシンは、5-メチルシトシンである、
請求項2~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記PNPLA3発現の阻害剤は、コンジュゲート基をさらに含む、請求項2~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記コンジュゲート基は、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの5’末端に存在している、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記コンジュゲート基は、
【化1】
である、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記PNPLA3発現の阻害剤は、下記式(配列番号2):
【化2】
の化合物、又はその薬学的に許容される塩である、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストは、ペプチドである、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記ペプチドは、アミノ酸配列:
HX2QGTFTSDX10SX12X13LX15X16X17X18AX20X21FX23X24WLX27X28GX30(配列番号25)
を含み、式中、
(1)X2は、Sであり、X10は、Yであり、X12は、Kであり、X13は、Kであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Eであり、X18は、Rであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Vであり、X28は、Aであり、X30は、Gであるか(配列番号14);
(2)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Eであり、X13は、Yであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Eであり、X18は、Rであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Aであり、X30は、Gであるか(配列番号15);
(3)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Kであり、X13は、Yであり、X15は、Eであり、X16は、Gであり、X17は、Qであり、X18は、Aであり、X20は、Kであり、X21は、Eであり、X23は、Iであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Kであり、X30は、Rであるか(配列番号20);
(4)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Sであり、X13は、Yであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Rであり、X18は、Sであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Aであり、X30は、Gであるか(配列番号18);
(5)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Eであり、X13は、Yであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Eであり、X18は、Rであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Aであり、X30は、Gであるか(配列番号33);又は
(6)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Sであり、X13は、Yであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Rであり、X18は、Rであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Aであり、X30は、Gである(配列番号19)、
請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ペプチドは、アミノ酸配列HSQGTFTSDKSEYLDSERARDFVAWLEAGG(配列番号33)を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記ペプチドは、前記アミノ酸配列中のアミノ酸に対する修飾をさらに含む、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記修飾は、アシル部分の付加である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記修飾は、リシン残基のN(ε)基上のパルミトイル部分である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記パルミトイル基は、リンカーを介して前記リシンに結合している、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記リンカーは、γグルタミン酸である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記PNPLA3発現の阻害剤と、前記グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストとを、同時に投与する、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記PNPLA3発現の阻害剤と、前記グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストとを、互いに1時間以内に投与する、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記PNPLA3発現の阻害剤と、前記グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストとを、互いに24時間以内に投与する、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記PNPLA3発現の阻害剤と、前記グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストとを、互いに72時間以内に投与する、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記PNPLA3発現の阻害剤と、前記グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストとを、互いに1週間以内に投与する、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記PNPLA3発現の阻害剤と、前記グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストとを、互いに2週間以内に投与する、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記PNPLA3発現の阻害剤を、非経口投与する、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記PNPLA3発現の阻害剤を、1日1回、1日2回、又は1日3回投与する、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記PNPLA3発現の阻害剤を、週1回、週2回、又は週3回投与する、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記PNPLA3発現の阻害剤を、月1回、月2回、又は月3回投与する、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストを、非経口投与する、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストを、1日1回、1日2回、又は1日3回投与する、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストを、週1回、週2回、又は週3回投与する、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストを、月1回、月2回、又は月3回投与する、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記対象は、肥満であり、及び/又は2型糖尿病である、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記肝疾患は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)である、請求項1~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記肝疾患は、非アルコール性脂肪性肝炎である、請求項1~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記肝疾患は、肝繊維症である、請求項1~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
肝疾患を有する対象の肝臓における脂肪肝を軽減する方法であって、前記対象に、
i)パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有3(PNPLA3)発現の阻害剤と、
ii)グルカゴン受容体及び/又はグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体のアゴニストと
を投与することを含む方法。
【請求項52】
前記PNPLA3発現の阻害剤は、PNPLA3をコードする核酸の領域に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、12~30個のヌクレオシドの長さである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、16~30個のヌクレオシドの長さである、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、及び10の内のいずれか1つの少なくとも8個の連続塩基を有する配列を含む、請求項52~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、及び10の内の1つを含む、請求項52~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、
a)10個の結合デオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;
b)3つの結合ヌクレオシドからなる5’ウイングセグメント;及び
c)3つの結合ヌクレオシドからなる3’ウイングセグメント
を含み、
前記ギャップセグメントは、前記5’ウイングセグメントと前記3’ウイングセグメントとの間に位置しており、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドは、拘束エチル糖を含み、各ヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合であり、各シトシンは、5-メチルシトシンである、
請求項52~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストは、ペプチドである、請求項51~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記ペプチドは、アミノ酸配列:
HX2QGTFTSDX10SX12X13LX15X16X17X18AX20X21FX23X24WLX27X28GX30(配列番号25)
を含み、式中、
(1)X2は、Sであり、X10は、Yであり、X12は、Kであり、X13は、Kであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Eであり、X18は、Rであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Vであり、X28は、Aであり、X30は、Gであるか(配列番号14);
(2)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Eであり、X13は、Yであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Eであり、X18は、Rであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Aであり、X30は、Gであるか(配列番号15);
(3)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Kであり、X13は、Yであり、X15は、Eであり、X16は、Gであり、X17は、Qであり、X18は、Aであり、X20は、Kであり、X21は、Eであり、X23は、Iであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Kであり、X30は、Rであるか(配列番号20);
(4)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Sであり、X13は、Yであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Rであり、X18は、Sであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Aであり、X30は、Gであるか(配列番号18);
(5)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Eであり、X13は、Yであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Eであり、X18は、Rであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Aであり、X30は、Gであるか(配列番号33);又は
(6)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Sであり、X13は、Yであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Rであり、X18は、Rであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Aであり、X30は、Gである(配列番号19)、
請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記対象の総脂肪肝は、前記PNPLA3発現の阻害剤、又は前記グルカゴン受容体GLP-1受容体のアゴニストを単独で投与した場合の総脂肪肝と比較して軽減される、請求項51~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記対象の総脂肪肝は、前記PNPLA3発現の阻害剤、又は前記グルカゴン受容体GLP-1受容体のアゴニストを単独で投与した場合の総脂肪肝と比較して少なくとも30%軽減される、請求項51~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記対象の総脂肪肝は、前記PNPLA3発現の阻害剤、又は前記グルカゴン受容体GLP-1受容体のアゴニストを単独で投与した場合の総脂肪肝と比較して少なくとも30%軽減される、請求項51~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記肝疾患は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)である、請求項51~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記肝疾患は、非アルコール性脂肪性肝炎である、請求項51~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記肝疾患は、肝繊維症である、請求項51~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
非アルコール性脂肪性肝疾患を有する対象の肝臓における炎症を軽減する方法であって、前記対象に、
i)パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有3(PNPLA3)発現の阻害剤と、
ii)グルカゴン受容体及び/又はグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体のアゴニストと
を投与することを含む方法。
【請求項67】
前記PNPLA3発現の阻害剤は、PNPLA3をコードする核酸の領域に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、12~30個のヌクレオシドの長さである、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、16~30個のヌクレオシドの長さである、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、及び10の内のいずれか1つの少なくとも8個の連続塩基を有する配列を含む、請求項67~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、及び10の内の1つを含む、請求項67~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、
a)10個の結合デオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;
b)3つの結合ヌクレオシドからなる5’ウイングセグメント;及び
c)3つの結合ヌクレオシドからなる3’ウイングセグメント
を含み、
前記ギャップセグメントは、前記5’ウイングセグメントと前記3’ウイングセグメントとの間に位置しており、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドは、拘束エチル糖を含み、各ヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合であり、各シトシンは、5-メチルシトシンである、
請求項67~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストは、ペプチドである、請求項66~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記ペプチドは、アミノ酸配列:
HX2QGTFTSDX10SX12X13LX15X16X17X18AX20X21FX23X24WLX27X28GX30(配列番号25)
を含み、式中、
(1)X2は、Sであり、X10は、Yであり、X12は、Kであり、X13は、Kであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Eであり、X18は、Rであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Vであり、X28は、Aであり、X30は、Gであるか(配列番号14);
(2)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Eであり、X13は、Yであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Eであり、X18は、Rであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Aであり、X30は、Gであるか(配列番号15);
(3)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Kであり、X13は、Yであり、X15は、Eであり、X16は、Gであり、X17は、Qであり、X18は、Aであり、X20は、Kであり、X21は、Eであり、X23は、Iであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Kであり、X30は、Rであるか(配列番号20);
(4)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Sであり、X13は、Yであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Rであり、X18は、Sであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Aであり、X30は、Gであるか(配列番号18);
(5)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Eであり、X13は、Yであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Eであり、X18は、Rであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Aであり、X30は、Gであるか(配列番号33);又は
(6)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Sであり、X13は、Yであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Rであり、X18は、Rであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Aであり、X30は、Gである(配列番号19)、
請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記対象の前記肝臓における炎症は、前記PNPLA3発現の阻害剤、又は前記グルカゴン受容体GLP-1受容体のアゴニストを単独で投与した場合の肝臓における炎症と比較して少なくとも50%軽減される、請求項50~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
肝疾患を有する対象の肝コラーゲンを減少させる方法であって、前記対象に、
i)パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有3(PNPLA3)発現の阻害剤と、
ii)グルカゴン受容体及び/又はグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体のアゴニストと
を投与することを含む方法。
【請求項77】
前記PNPLA3発現の阻害剤は、PNPLA3をコードする核酸の領域に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、12~30個のヌクレオシドの長さである、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、16~30個のヌクレオシドの長さである、請求項77に記載の方法。
【請求項80】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、及び10の内のいずれか1つの少なくとも8個の連続塩基を有する配列を含む、請求項77~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、及び10の内の1つを含む、請求項77~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、
a)10個の結合デオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;
b)3つの結合ヌクレオシドからなる5’ウイングセグメント;及び
c)3つの結合ヌクレオシドからなる3’ウイングセグメント
を含み、
前記ギャップセグメントは、前記5’ウイングセグメントと前記3’ウイングセグメントとの間に位置しており、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドは、拘束エチル糖を含み、各ヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合であり、各シトシンは、5-メチルシトシンである、
請求項77~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストは、ペプチドである、請求項76~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記ペプチドは、アミノ酸配列:
HX2QGTFTSDX10SX12X13LX15X16X17X18AX20X21FX23X24WLX27X28GX30(配列番号25)
を含み、式中、
(1)X2は、Sであり、X10は、Yであり、X12は、Kであり、X13は、Kであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Eであり、X18は、Rであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Vであり、X28は、Aであり、X30は、Gであるか(配列番号14);
(2)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Eであり、X13は、Yであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Eであり、X18は、Rであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Aであり、X30は、Gであるか(配列番号15);
(3)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Kであり、X13は、Yであり、X15は、Eであり、X16は、Gであり、X17は、Qであり、X18は、Aであり、X20は、Kであり、X21は、Eであり、X23は、Iであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Kであり、X30は、Rであるか(配列番号20);
(4)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Sであり、X13は、Yであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Rであり、X18は、Sであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Aであり、X30は、Gであるか(配列番号18);
(5)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Eであり、X13は、Yであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Eであり、X18は、Rであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Aであり、X30は、Gであるか(配列番号33);又は
(6)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Sであり、X13は、Yであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Rであり、X18は、Rであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Aであり、X30は、Gである(配列番号19)、
請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記対象の肝コラーゲンは、前記PNPLA3発現の阻害剤、又は前記グルカゴン受容体GLP-1受容体のアゴニストを単独で投与した場合の肝コラーゲンと比較して少なくとも25%減少する、請求項50~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記対象は、肥満であり、及び/又は2型糖尿病である、請求項50~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記肝疾患は、非アルコール性脂肪性肝炎である、請求項50~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記肝疾患は、肝繊維症である、請求項50~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
i)パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有3(PNPLA3)発現の阻害剤と、
ii)グルカゴン受容体及び/又はグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体のアゴニストと、
iii)少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と
を含む薬学的に許容される組成物。
【請求項90】
前記PNPLA3発現の阻害剤は、PNPLA3をコードする核酸の領域に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項89に記載の組成物。
【請求項91】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、及び10の内のいずれか1つの少なくとも8個の連続塩基を有する配列を含む、請求項90に記載の組成物。
【請求項92】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、及び10の内の1つを含む、請求項90に記載の組成物。
【請求項93】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、
a)10個の結合デオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;
b)3つの結合ヌクレオシドからなる5’ウイングセグメント;及び
c)3つの結合ヌクレオシドからなる3’ウイングセグメント
を含み、
前記ギャップセグメントは、前記5’ウイングセグメントと前記3’ウイングセグメントとの間に位置しており、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドは、拘束エチル糖を含み、各ヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合であり、各シトシンは、5-メチルシトシンである、
請求項90~92のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項94】
前記グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストは、ペプチドである、請求項89~93のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項95】
前記ペプチドは、アミノ酸配列:
HX2QGTFTSDX10SX12X13LX15X16X17X18AX20X21FX23X24WLX27X28GX30(配列番号25)
を含み、式中、
(1)X2は、Sであり、X10は、Yであり、X12は、Kであり、X13は、Kであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Eであり、X18は、Rであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Vであり、X28は、Aであり、X30は、Gであるか(配列番号14);
(2)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Eであり、X13は、Yであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Eであり、X18は、Rであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Aであり、X30は、Gであるか(配列番号15);
(3)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Kであり、X13は、Yであり、X15は、Eであり、X16は、Gであり、X17は、Qであり、X18は、Aであり、X20は、Kであり、X21は、Eであり、X23は、Iであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Kであり、X30は、Rであるか(配列番号20);
(4)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Sであり、X13は、Yであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Rであり、X18は、Sであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Aであり、X30は、Gであるか(配列番号18);
(5)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Eであり、X13は、Yであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Eであり、X18は、Rであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Aであり、X30は、Gであるか(配列番号33);又は
(6)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Sであり、X13は、Yであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Rであり、X18は、Rであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Aであり、X30は、Gである(配列番号19)、
請求項94に記載の組成物。
【請求項96】
前記組成物は、非経口投与用に製剤化されている、請求項89~95のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項97】
i)パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有3(PNPLA3)発現の阻害剤と、
ii)グルカゴン受容体及び/又はグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体のアゴニストと
を含むキット。
【請求項98】
前記PNPLA3発現の阻害剤は、PNPLA3をコードする核酸の領域に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項97に記載のキット。
【請求項99】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、及び10の内のいずれか1つの少なくとも8個の連続塩基を有する配列を含む、請求項98に記載のキット。
【請求項100】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、及び10の内の1つを含む、請求項98に記載のキット。
【請求項101】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、
a)10個の結合デオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;
b)3つの結合ヌクレオシドからなる5’ウイングセグメント;及び
c)3つの結合ヌクレオシドからなる3’ウイングセグメント
を含み、
前記ギャップセグメントは、前記5’ウイングセグメントと前記3’ウイングセグメントとの間に位置しており、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドは、拘束エチル糖を含み、各ヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合であり、各シトシンは、5-メチルシトシンである、
請求項98~100のいずれか一項に記載のキット。
【請求項102】
前記グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストは、ペプチドである、請求項97~101のいずれか一項に記載のキット。
【請求項103】
前記ペプチドは、アミノ酸配列:
HX2QGTFTSDX10SX12X13LX15X16X17X18AX20X21FX23X24WLX27X28GX30(配列番号25)
を含み、式中、
(1)X2は、Sであり、X10は、Yであり、X12は、Kであり、X13は、Kであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Eであり、X18は、Rであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Vであり、X28は、Aであり、X30は、Gであるか(配列番号14);
(2)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Eであり、X13は、Yであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Eであり、X18は、Rであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Aであり、X30は、Gであるか(配列番号15);
(3)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Kであり、X13は、Yであり、X15は、Eであり、X16は、Gであり、X17は、Qであり、X18は、Aであり、X20は、Kであり、X21は、Eであり、X23は、Iであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Kであり、X30は、Rであるか(配列番号20);
(4)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Sであり、X13は、Yであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Rであり、X18は、Sであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Aであり、X30は、Gであるか(配列番号18);
(5)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Eであり、X13は、Yであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Eであり、X18は、Rであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Aであり、X30は、Gであるか(配列番号33);又は
(6)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Sであり、X13は、Yであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Rであり、X18は、Rであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Aであり、X30は、Gである(配列番号19)、
請求項102に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的手段により提出されており且つその全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表を含む。前記ASCIIコピーは、2021年6月4日に作成されており、名称が0098-0076PR1_SL.txtであり、サイズが60,642バイトである。
【0002】
本開示は、対象の肝疾患を処置する方法であって、この対象に、i)パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有3(PNPLA3)発現の阻害剤と、ii)グルカゴン受容体及び/又はグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体のアゴニストとを投与することを含む方法を提供する。同様に提供されるのは、i)PNPLA3発現の阻害剤と、ii)グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストとを含む医薬及びキットである。
【背景技術】
【0003】
肝疾患の発生率は、世界的に増加しており、特に西欧諸国で増加している。特に多いのは、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)である。NAFLDは、脂肪症から非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)及び肝硬変に至る多様な肝疾患を包含する。NAFLDは、著しいアルコール摂取、脂肪合成薬物療法(steatogenic medication)、又は遺伝性障害がない状態で、肝臓に5重量%超の脂肪が蓄積されるものとして定義されている(非特許文献1)。
【0004】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、炎症及び肝障害の徴候があるNAFLDである。NASHは、大滴性脂肪症、肝細胞の風船様腫大、及び小葉の炎症性浸潤によって組織学的に定義されている(非特許文献2)。NASHは、一般的な集団の2~3%に影響を及ぼすものと推定されている。肥満症又は糖尿病等の他の病態がある場合には、推定罹患率は、それぞれ7%及び62%まで増大する(非特許文献3)。
【0005】
PNPLA3は、ER中及び脂質滴で発現されるパタチン様ホスホリパーゼドメイン含有ファミリの481アミノ酸メンバーである。PNPLA3は、ヒトでは肝臓内に高発現されるが、脂肪組織での発現は、5分の1である(非特許文献4)。
【0006】
グルカゴン及びグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)は、158アミノ酸前駆体ポリペプチドであるプレプログルカゴンに由来しており、これは、様々な組織でタンパク質分解性プロセシングされて、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)、及びオキシントモジュリン(OXM)等の幾つかの異なるプログルカゴン由来ペプチドを形成し、これらは、グルコースホメオスタシス、インスリン分泌、胃内容排出、及び腸成長、並びに食物摂取の制御等の多様な生理学的機能に関与する。グルカゴンは、プログルカゴンのアミノ酸33~61(プレプログルカゴンの53~81)に対応する29アミノ酸ペプチドであるのに対し、GLP-1は、プログルカゴンのアミノ酸72~108(プレプログルカゴンの92~128)に対応する37アミノ酸ペプチドとして生成される。GLP-1(7~36)アミド又はGLP-1(7~37)酸は、GLP-1受容体で本質的に同等の活性を示すGLP-1の生物活性形態である。
【0007】
グルカゴンは、膵島により産生され、グルカゴン受容体(「GCGR」)を活性化する。グルカゴンは、肝臓内で作用して、糖新生及びグリコーゲン分解によって血糖を上昇させる。血糖が下がり始めると、グルカゴンは、グリコーゲンを分解してグルコースを放出するように肝臓にシグナルを送り、且つグルコースの産生を刺激し、血糖値を通常のレベルへと上昇させる。グルカゴンはまた、エネルギー消費を増加させること、ケトン体の産生を増加させること、脂肪生成を阻害すること、脂肪酸の酸化を促進すること、胃内容排出を遅延させること、及び食欲を抑制することも知られている(非特許文献5)(非特許文献6)。
【0008】
GLP-1は、グルカゴンと比較して異なる生物活性を有する。GLP-1は、消化管内L細胞(gut L cells)から分泌され、GLP-1受容体に結合する。GLP-1の活性として、インクレチン効果によるインスリン分泌の増強、グルカゴン分泌の阻害、及び食物摂取の阻害が挙げられる。グルカゴン及びGLP-1は両者とも、そのそれぞれの受容体でアゴニストとして作用し、体重減少に有効であることが示されている。ある特定のGLP-1類似体は、肥満症の処置用に販売されているか、又は開発中であり、例えば、リラグルチド(VICTOZA(登録商標)、Novo Nordisk製)及びエキセナチド(Byetta(登録商標)、AstraZeneca AB製)が挙げられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Kotronen et al,Arterioscler Thromb.Vasc.Biol.2008,28:27-38
【非特許文献2】Sanyal,Hepatol.Res.2011.41:670-4
【非特許文献3】Hashimoto et al,J.Gastroenterol.2011.46(1):63-69
【非特許文献4】Huang et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2010.107:7892-7
【非特許文献5】Mueller et al,Proc.Intl.Journal of Molecular Sciences 2020.21(2):383
【非特許文献6】Boland et al.,Nat Metab.,2020.2(5):413-431
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、対象の肝疾患を処置する方法であって、この対象に、i)パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有3(PNPLA3)発現の阻害剤と、ii)グルカゴン受容体及び/又はグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体のアゴニストとを投与することを含む方法を対象とする。
【0011】
いくつかの実施形態では、PNPLA3発現の阻害剤は、PNPLA3をコードする核酸の領域に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、PNPLA3をコードする核酸のヌクレオチド5567~5731内の部位に相補的である。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、PNPLA3をコードする核酸のヌクレオチド5644~5731内の部位に相補的である。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、PNPLA3をコードする核酸のヌクレオチド5567~5642内の部位に相補的である。くつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、PNPLA3をコードする核酸のヌクレオチド5567~5620内の部位に相補的である。いくつかの実施形態では、PNPLA3をコードする核酸は、mRNAである。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、12~30個のヌクレオシドの長さである。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、16~30個のヌクレオシドの長さである。
【0012】
いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ又は複数の修飾糖部分を含む。いくつかの実施形態では、この1つ又は複数の修飾糖部分は、2’-デオキシ、2’-O-メチル、2’-O-メトキシメチル、2’-O-メトキシエチル、2’-フルオロ、4’-CH(CH3)-O-2’、4’-CH2-O-2’、4’-(CH2)2-O-2’、又はこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ又は複数の修飾塩基を含む。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の修飾塩基は、5-メチルシトシンである。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチド中の全てのシトシンは、5’メチルシトシンである。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ又は複数の非天然のヌクレオシド間結合を含む。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合である。いくつかの実施形態において、全てのヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合である。
【0013】
いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、及び10の内のいずれか1つの少なくとも8個の連続塩基を有する配列を含む。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、及び10の内の1つを含む。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、a)10個の結合デオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;b)3つの結合ヌクレオシドからなる5’ウイングセグメント;及びc)3つの結合ヌクレオシドからなる3’ウイングセグメントを含み、ギャップセグメントは、5’ウイングセグメントと3’ウイングセグメントとの間に位置しており、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドは、拘束エチル糖を含み、各ヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合であり、各シトシンは、5-メチルシトシンである。
【0014】
いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤は、コンジュゲート基をさらに含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストは、ペプチドである。いくつかの実施形態において、このペプチドは、アミノ酸配列:
HX2QGTFTSDX10SX12X13LX15X16X17X18AX20X21FX23X24WLX27X28GX30(配列番号25)
を含み、式中、
(1)X2は、Sであり、X10は、Yであり、X12は、Kであり、X13は、Kであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Eであり、X18は、Rであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Vであり、X28は、Aであり、X30は、Gであるか(配列番号14);
(2)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Eであり、X13は、Yであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Eであり、X18は、Rであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Aであり、X30は、Gであるか(配列番号15);
(3)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Kであり、X13は、Yであり、X15は、Eであり、X16は、Gであり、X17は、Qであり、X18は、Aであり、X20は、Kであり、X21は、Eであり、X23は、Iであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Kであり、X30は、Rであるか(配列番号20);
(4)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Sであり、X13は、Yであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Rであり、X18は、Sであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Aであり、X30は、Gであるか(配列番号18);
(5)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Eであり、X13は、Yであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Eであり、X18は、Rであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Aであり、X30は、Gであるか(配列番号33);又は
(6)X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Sであり、X13は、Yであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、Rであり、X18は、Rであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Aであり、X30は、Gである(配列番号19)。
【0016】
いくつかの実施形態において、ペプチドは、アミノ酸配列HSQGTFTSDKSEYLDSERARDFVAWLEAGG(配列番号33)を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、ペプチドは、アミノ酸配列中のアミノ酸に対する修飾をさらに含む。いくつかの実施形態において、この修飾は、アシル部分の付加である。いくつかの実施形態において、この修飾は、リシン残基のN(ε)基上のパルミトイル部分である。いくつかの実施形態において、このパルミトイル基は、リンカーを介してリシンに結合している。いくつかの実施形態において、このリンカーは、γグルタミン酸である。少なくとも1つの実施形態において、ペプチドは、HSQGTFTSDKSEYLDSERARDFVAWLEAGG(配列番号33)であり、式中、リシンは、グルタミン酸リンカーを介してパルミトイル部分で修飾されている。
【0018】
いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤と、グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストとを、同時に投与する。いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤と、グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストとを、互いに1時間以内に投与する。いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤と、グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストとを、互いに24時間以内に投与する。いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤と、グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストとを、互いに72時間以内に投与する。いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤と、グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストとを、互いに1週間以内に投与する。いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤と、グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストとを、互いに2週間以内に投与する。いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤を、非経口投与する。いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤を、1日1回、1日2回、又は1日3回投与する。いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤を、週1回、週2回、又は週3回投与する。いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤を、月1回、月2回、又は月3回投与する。
【0019】
いくつかの実施形態において、グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストを、非経口投与する。いくつかの実施形態において、グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストを、1日1回、1日2回、又は1日3回投与する。いくつかの実施形態において、グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストを、週1回、週2回、又は週3回投与する。いくつかの実施形態において、グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストを、月1回、月2回、又は月3回投与する。
【0020】
いくつかの実施形態において、対象は、肥満であり、及び/又は2型糖尿病である。いくつかの実施形態において、肝疾患は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)である。いくつかの実施形態において、肝疾患は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である。いくつかの実施形態において、肝疾患は、肝繊維症及び/又は肝硬変である。
【0021】
いくつかの実施形態において、本開示は、肝疾患を有する対象の肝臓における脂肪肝を軽減する方法であって、この対象に、i)パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有3(PNPLA3)発現の阻害剤と、ii)グルカゴン受容体及び/又はグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体のアゴニストとを投与することを含む方法を対象とする。
【0022】
いくつかの実施形態において、対象の総脂肪肝は、PNPLA3発現の阻害剤、又はグルカゴン受容体GLP-1受容体のアゴニストを単独で投与した場合の総脂肪肝と比較して軽減される。いくつかの実施形態において、対象の総脂肪肝は、PNPLA3発現の阻害剤、又はグルカゴン受容体GLP-1受容体のアゴニストを単独で投与した場合の総脂肪肝と比較して少なくとも30%軽減される。いくつかの実施形態において、対象の総脂肪肝は、PNPLA3発現の阻害剤、又はグルカゴン受容体GLP-1受容体のアゴニストを単独で投与した場合の総脂肪肝と比較して少なくとも30%軽減される。いくつかの実施形態において、肝疾患は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)である。いくつかの実施形態において、肝疾患は、非アルコール性脂肪性肝炎である。いくつかの実施形態において、肝疾患は、肝繊維症である。
【0023】
いくつかの実施形態において、本開示は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を有する対象の肝臓における炎症を軽減する方法であって、この対象に、i)パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有3(PNPLA3)発現の阻害剤と、ii)グルカゴン受容体及び/又はグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体のアゴニストとを投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、肝臓における炎症は、PNPLA3発現の阻害剤、又はグルカゴン受容体GLP-1受容体のアゴニストを単独で投与した場合の肝臓における炎症と比較して少なくとも50%軽減される。
【0024】
いくつかの実施形態において、本開示は、肝疾患を有する対象の肝コラーゲンを減少させる方法であって、この対象に、i)パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有3(PNPLA3)発現の阻害剤と、ii)グルカゴン受容体及び/又はグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体のアゴニストとを投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、対象の肝コラーゲンは、PNPLA3発現の阻害剤、又はグルカゴン受容体GLP-1受容体のアゴニストを単独で投与した場合の肝コラーゲンと比較して少なくとも25%減少する。
【0025】
いくつかの実施形態において、本開示は、i)パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有3(PNPLA3)発現の阻害剤と、ii)グルカゴン受容体及び/又はグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体のアゴニストと、iii)少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的に許容される組成物を提供する。いくつかの実施形態において、この組成物は、非経口投与用に製剤化されている。
【0026】
いくつかの実施形態において、本開示は、i)パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有3(PNPLA3)発現の阻害剤と、ii)グルカゴン受容体及び/又はグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体のアゴニストとを含むキットを提供する。
【0027】
下記の図面は、本明細書の一部を形成し、且つ本開示のある特定の態様の例示的な実施形態をさらに実証するために含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1A-B】
図1Aは、実施例1で説明する、36週間にわたりNASH誘発食餌を給餌し、14週間にわたり1)対照ASO+生理食塩水、2)Pnpla3 ASO+生理食塩水、3)対照ASO+コタデュチド(Cotadutide)、又は4)Pnpla3 ASO+コタデュチドのいずれかを投与して処置したホモ接合性Pnpla3
148M/Mノックインマウスの体重変化の百分率のプロットを示す。
図1Bは、実施例1で説明するように測定した、同一マウスに関する肝臓mPnpla3 mRNA濃度のプロットを示す。
【
図2A-D】
図2は、
図1A及び実施例1に関して上記で説明したマウスから採取した、染色された肝臓切片から測定した総脂肪肝(
図2A)、大滴性脂肪症(
図2B)、及び小滴性脂肪症(
図2C)のプロットを示す。
図2Dは、各切片の面積当たりの総脂肪滴の割合と共に、染色された切片の画像を示す。
【
図3A-B】
図3Aは、
図1A及び実施例1に関して上記で説明したマウスから採取した肝臓切片に関して測定した肝臓マクロファージの割合のプロットを示す。
図3Bは、
図1A及び実施例1に関して上記で説明したマウスから得られた肝臓の炎症スコアのプロットを示す。
【
図4】
図1A及び実施例1に関して上記で説明したマウスに関して、実施例1で説明するように算出するNAFLD活動性スコア(NAS)のプロットを示す。
【
図5】
図1A及び実施例1に関して上記で説明したマウスから採取された肝臓切片における肝臓コラーゲンA1Aの割合のプロットを示す。肝臓コラーゲンを、実施例1で説明するように測定する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示は、肝疾患(例えば、NASH及び又はNAFLD)を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、対象の肝疾患を処置する方法であって、この対象に、i)パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有3(PNPLA3)発現の阻害剤と、ii)グルカゴン受容体及び/又はグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体のアゴニストとを投与することを含む方法を提供する。
【0030】
定義
別途示されない限り、下記の用語は、下記の意味を有する。
【0031】
本明細書全体を通して、「約」という用語は、ある値が、この値を決定するために利用される方法/装置に固有の誤差の変動を含むか又は試験対象間に存在する変動を含むことを示すために使用される。典型的には、「約」という用語は、状況に応じて、およそ若しくは1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、若しくは20%未満の変動性、又はより高い変動性を包含することを意味する。実施形態において、当業者は、本明細書で使用される文脈に起因して、「約」という用語によって示される変動のレベルを理解するであろう。「約」という用語の使用には、具体的に列挙された値も含まれることも理解されるべきである。
【0032】
特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、代替物のみを指すものと明示されない限り、又はこの代替物が相互に排他的でない限り、「及び/又は」を意味するために使用されるが、本開示は、代替物のみ、及び「及び/又は」を指す定義を支持する。
【0033】
本明細書で使用される場合、「~」とは、範囲の両端を含む範囲のことである。例えば、x~yの数は、x及びyの数、並びにxとyとの範囲に入るあらゆる数が明示的に含まれる。
【0034】
「2’-デオキシヌクレオシド」は、天然に存在するデオキシリボ核酸(DNA)に見られるような、2’-H(H)フラノシル糖部分を含むヌクレオシドを意味する。ある特定の実施形態において、2’-デオキシヌクレオシドは、修飾核酸塩基を含んでもよいし、又はRNA核酸塩基(ウラシル)を含んでもよい。
【0035】
「2’-O-メトキシエチル」(2’-MOEとも称される)は、リボシル環の2’--OH基の代わりに2’-O(CH2)2--OCH3)を指す。2’-O-メトキシエチル修飾糖は、修飾糖である。
【0036】
「2’-MOEヌクレオシド」(2’-O-メトキシエチルヌクレオシドとも称される)は、2’-MOE修飾糖部分を含むヌクレオシドを意味する。
【0037】
「2’-置換ヌクレオシド」又は「2-修飾ヌクレオシド」は、2’-置換糖部分又は2’-修飾糖部分を含むヌクレオシドを意味する。本明細書で使用される場合、糖部分に関する「2’-置換」又は「2-修飾」は、H又はOH以外の少なくとも1つの2’-置換基を含む糖部分を意味する。
【0038】
「3’標的部位」は、特定の化合物の最も3’側のヌクレオチドに相補的な標的核酸のヌクレオチドを指す。
【0039】
「5’標的部位」は、特定の化合物の最も5’側のヌクレオチドに相補的な標的核酸のヌクレオチドを指す。
【0040】
「5-メチルシトシン」は、メチル基が5位に結合したシトシンを意味する。
【0041】
「投与」又は「投与すること」は、本明細書で提供される化合物又は組成物を個体に導入してその目的の機能を実施する経路を指す。使用され得る投与経路の一例として、非経口投与(例えば、皮下、静脈内、又は筋肉内への注射又は注入)が挙げられるが、これに限定されない。
【0042】
「同時に投与する」又は「共投与」は、2種以上の化合物を、患者に両方の薬理学的効果が現れる任意の様式で投与することを意味する。同時投与は、両化合物を、単一の医薬組成物中で、同一の剤形で、同一の投与経路によって、又は同時に投与することを必要とするわけではない。両化合物の効果は、同時に現れる必要はない。効果は、ある期間にわたり重複している必要があるだけで、同一時間にわたる必要はない。同時投与又は共投与は、並行投与又は順次投与を包含する。
【0043】
「寛解」は、関連する疾患、障害、又は状態の少なくとも1つの指標、徴候、又は病症の改善又は軽減を指す。ある特定の実施形態では、寛解は、状態又は疾患の1つ又は複数の指標の進行又は重症度における遅延又は緩徐化を含む。この指標の進行又は重症度は、当業者に既知の客観的な又は主観的な尺度により決定され得る。
【0044】
「動物」は、ヒト又は非ヒト動物(例えば、限定されないが、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ)、並びに非ヒト霊長類(例えば、限定されないが、サル及びチンパンジー)を指す。
【0045】
「アンチセンス化合物」は、オリゴヌクレオチドと、任意選択的な1種又は複数種の追加の機構(例えば、コンジュゲート基又は末端基)とを含む化合物を意味する。アンチセンス化合物の例として、一本鎖化合物及び二本鎖化合物が挙げられ、例えば、オリゴヌクレオチド、リボザイム、siRNA、shRNA、ssRNA、及び占有をベースとする(occupancy-based)化合物が挙げられる。
【0046】
「アンチセンスオリゴヌクレオチド」は、標的核酸又はその領域若しくはセグメントに相補的な核酸塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを意味する。ある特定の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的核酸又はその領域若しくはセグメントに特異的にハイブリダイズ可能である。
【0047】
「cEt」又は「拘束エチル」は、リボシル二環式糖部分であって、二環式糖の第2の環は、4’-炭素及び2’-炭素を連結する架橋を介して形成されており、この架橋は、式:4’-CH(CH3)-O-2’を有しており、この架橋のメチル基は、S立体配置である、リボシル二環式糖部分を意味する。
【0048】
「cEtヌクレオシド」は、cEt修飾糖部分を含むヌクレオシドを意味する。
【0049】
化合物における「化学修飾」は、化合物中の単位の元の状態と比較した、任意のそのような単位の化学反応による置換又は変化について説明するものである。「修飾ヌクレオシド」は、修飾糖部分及び/又は修飾核酸塩基を独立して有するヌクレオシドを意味する。「修飾オリゴヌクレオチド」は、少なくとも1つの修飾ヌクレオシド間結合、修飾糖、及び/又は修飾核酸塩基を含むオリゴヌクレオチドを意味する。
【0050】
「化学的に異なる領域」は、同一の化合物の別の領域と何らかの形で化学的に異なる化合物の領域を指す。例えば、2’-O-メトキシエチルヌクレオチドを有する領域は、2’-O-メトキシエチル修飾のないヌクレオチドを有する領域とは化学的に異なる。
【0051】
「キメラアンチセンス化合物」は、少なくとも2つの化学的に異なる領域を有しているアンチセンス化合物であって、各位置が複数のサブユニットを有する、アンチセンス化合物を意味する。
【0052】
「コンジュゲート基」は、オリゴヌクレオチドに結合する原子団を意味する。コンジュゲート基は、コンジュゲート部分と、このコンジュゲート部分をオリゴヌクレオチドに結合させるコンジュゲートリンカーとを含む。
【0053】
「コンジュゲートリンカー」は、コンジュゲート部分をオリゴヌクレオチドに連結する少なくとも1つの結合を含む原子団を意味する。
【0054】
「コンジュゲート部分」は、コンジュゲートリンカーを介してオリゴヌクレオチドに結合する原子団を意味する。
【0055】
オリゴヌクレオチドに関する「連続」は、互いに直接隣接しているヌクレオシド、核酸塩基、糖部分、又はヌクレオシド間結合を指す。例えば、「連続核酸塩基」は、配列中で互いに直接隣接する核酸塩基を意味する。
【0056】
「用量」は、単回投与で提供されるか又は特定の期間に提供される化合物又は医薬品の特定の量を意味する。ある特定の実施形態において、用量は、2回以上のボーラス、錠剤、又は注射で投与されてもよい。例えば、皮下投与が所望されるある特定の実施形態において、所望の用量は、単回注射では容易に収容されない容量が必要となる場合がある。そのような実施形態では、所望の用量を達成するために、2回以上の注射を使用し得る。ある特定の実施形態において、個体における注射部位反応を最小限に抑えるために、用量を2回以上の注射で投与してもよい。他の実施形態では、化合物又は医薬品を、長期間にわたって、又は持続的に、注入により投与する。用量は、1時間、1日、1週間、又は1か月当たりの医薬品の量として示され得る。
【0057】
「投与計画」は、1つ又は複数の所望の効果を達成するために設計された用量の組み合わせである。
【0058】
「有効量」は、化合物を必要とする個体における所望の生理学的結果を実現するのに十分な化合物の量を意味する。有効量は、処置を受ける個体の健康状態及び身体的状態、処置を受ける個体の分類群、組成物の配合、個体の医学的症状の評価、並びに他の関連因子に応じて、個体間で変動し得る。
【0059】
「ギャップマー」は、1つ又は複数のヌクレオシドを有する外部領域の間に位置する、RNアーゼH開裂を支持する複数のヌクレオシドを有する内部領域を含むオリゴヌクレオチドを意味しており、内部領域を含むヌクレオシドは、外部領域を含むヌクレオシドとは化学的に異なる。内部領域は、「ギャップ」と称され得、外部領域は、「ウイング」と称され得る。
【0060】
「直接隣接している」は、直接隣接している同一種類の要素間に介在要素が存在しないことを意味する(例えば、直接隣接している核酸塩基間に介在核酸塩基が存在しない)。
【0061】
「ヌクレオシド間結合」は、オリゴヌクレオチド内の隣接するヌクレオシド間の共有結合を形成する基又は結合を意味する。「修飾ヌクレオシド間結合」は、天然に存在するホスフェートヌクレオシド間結合以外のあらゆるヌクレオシド間結合を意味する。非リン酸結合は、本明細書中では、修飾ヌクレオシド間結合を指す。
【0062】
「リンカーヌクレオシド」は、オリゴヌクレオチドをコンジュゲート部分に結合するヌクレオシドを意味する。リンカーヌクレオシドは、化合物のコンジュゲートリンカー内に位置する。リンカーヌクレオシドは、オリゴヌクレオチドに連続している場合であっても、化合物のオリゴヌクレオチド部分の一部とみなされない。
【0063】
「ミスマッチ」又は「非相補的」は、第1及び第2のオリゴヌクレオチドをアラインした場合に、第2のオリゴヌクレオチド又は標的核酸の対応する核酸塩基に相補的でない、第1のオリゴヌクレオチドの核酸塩基を意味する。例えば、核酸塩基(例えば、限定されないが、ユニバーサル核酸塩基、イノシン、及びヒポキサンチン)は、少なくとも1つの核酸塩基とハイブリダイズし得るが、それがハイブリダイズした核酸塩基に対して依然としてミスマッチしているか、又は非相補的である。別の例として、第1及び第2のオリゴヌクレオチドをアラインした場合に、第2のオリゴヌクレオチド又は標的核酸の対応する核酸塩基にハイブリダイズし得ない、第1のオリゴヌクレオチドの核酸塩基は、ミスマッチ核酸塩基又は非相補的核酸塩基である。
【0064】
「モジュレートすること」は、細胞、組織、臓器、又は生物における機構を変化させるか又は調整することを指す。例えば、PNPLA3 RNAをモジュレートすることは、細胞、組織、臓器、又は生物中のPNPLA3 RNA及び/又はPNPLA3タンパク質のレベルを上昇させるか又は低下させることを意味し得る。「モジュレーター」は、細胞、組織、臓器、又は生物に変化をもたらすものである。例えば、PNPLA3化合物は、細胞、組織、臓器、又は生物中のPNPLA3 RNA及び/又はPNPLA3タンパク質の量を減少させるモジュレーターであり得る。
【0065】
「MOE」は、メトキシエチルを意味する。
【0066】
「非二環式修飾糖」又は「非二環式修飾糖部分」は、糖の2つの原子間に架橋を形成して第2の環を形成しない、置換基等の修飾を含む修飾糖部分を意味する。
【0067】
「オリゴマー化合物」は、単一オリゴヌクレオチドと、任意選択的な1種又は複数種の追加の機構(例えば、コンジュゲート基又は末端基)とを含む化合物を意味する。
【0068】
「オリゴヌクレオチド」は、結合ヌクレオシドのポリマーであって、結合ヌクレオシドのそれぞれは、互いに独立して修飾され得るか、又は非修飾であり得る、ポリマーを意味する。別途指示されない限り、オリゴヌクレオチドは、8~80個の結合ヌクレオシドからなる。「修飾オリゴヌクレオチド」は、オリゴヌクレオチドであって、少なくとも1つの糖、核酸塩基、又はヌクレオシド間結合が修飾されている、オリゴヌクレオチドを意味する。「非修飾オリゴヌクレオチド」は、オリゴヌクレオチドであって、いかなる糖修飾も、核酸塩基修飾も、又はヌクレオシド間修飾も含まないオリゴヌクレオチドを意味する。
【0069】
「ホスホロチオエート結合」は、非架橋酸素原子の1つが硫黄原子に置き換えられている修飾ホスフェート結合を意味する。ホスホロチオエートヌクレオシド間連結は、修飾ヌクレオシド間連結である。
【0070】
「部分」は、核酸の規定数の連続(即ち、結合)した核酸塩基を意味する。ある特定の実施形態において、部分は、標的核酸の規定数の連続核酸塩基である。ある特定の実施形態において、部分は、オリゴマー化合物の規定数の連続核酸塩基である。
【0071】
「RefSeq番号」は、配列が特定の標的転写産物(例えば、標的遺伝子)に関するものであることを示すために配列に割り当てられる、文字と数字との一意の組み合わせである。標的遺伝子に関するそのような配列及び情報(まとめて遺伝子記録)を、遺伝子配列データベース内に見出し得る。遺伝子配列データベースとして、NCBI Reference Sequenceデータベース、ジェンバンク、European Nucleotide Archive、及び日本DNAデータバンクが挙げられる(後者の3つは、国際塩基配列データベース協力体制(International Nucleotide Sequence Database Collaboration)、即ちINSDCを組織している)。
【0072】
「RNAi化合物」は、標的核酸及び/又は標的核酸によってコードされるタンパク質をモジュレートするために、少なくとも部分的にRISC又はAgo2を介して作用するがRNアーゼHを介さずに作用するアンチセンス化合物を意味する。RNAi化合物として、二本鎖siRNA、一本鎖RNA(ssRNA)、及びマイクロRNA模倣体を含むマイクロRNAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
「糖部分」は、非修飾糖部分又は修飾糖部分を意味する。「非修飾糖部分」又は「非修飾糖」は、RNAに見られるような2’-OH(H)リボシル部分(「非修飾RNA糖部分」)、又はDNAに見られるような2’-H(H)部分(「非修飾DNA糖部分」)を意味する。「修飾糖部分」又は「修飾糖」は、修飾フラノシル糖部分又は糖代替物を意味する。「修飾フラノシル糖部分」は、非修飾糖部分の少なくとも1つの水素又は水酸基の代わりに非水素置換基を含むフラノシル糖を意味する。ある特定の実施形態において、修飾フラノシル糖部分は、2’-置換糖部分である。そのような修飾フラノシル糖部分として、二環式糖及び非二環式糖が挙げられる。
【0074】
「糖代替物」は、核酸塩基をオリゴヌクレオチド内の別の基(例えば、ヌクレオシド間結合、コンジュゲート基、又は末端基)に結合させ得るフラノシル部分以外のものを有する修飾糖部分を意味する。糖代替物を含む修飾ヌクレオシドは、オリゴヌクレオチド内の1箇所又は複数箇所の位置に組み込まれ得、そのようなオリゴヌクレオチドは、相補的な化合物又は核酸にハイブリダイズし得る。
【0075】
「治療的有効量」は、治療的利益を個体にもたらす化合物、医薬品、又は組成物の量を意味する。
【0076】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」という用語は、単数の「ポリペプチド」及び複数の「ポリペプチド」を包含し、且つ2つ以上のアミノ酸の任意の一本鎖又は複数鎖を含むことが意図されている。したがって、本明細書で使用される場合、1つの「ペプチド」、1つの「ペプチドサブユニット」、1つの「タンパク質」、1本の「アミノ酸鎖」、1つの「アミノ酸配列」、又は2つ以上のアミノ酸の1つ若しくは複数の鎖を指すのに用いられる他の任意の用語は、たとえこれらの用語の各々が、より具体的な意味を有し得るとしても、「ポリペプチド」の定義に含まれる。「ポリペプチド」という用語は、これらの用語のいずれかの代わりに使用され得るか、又はこれら用語のいずれかと互換的に使用され得る。この用語は、翻訳後修飾又は合成後修飾(例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク分解開裂、又は非自然発生のアミノ酸による修飾)を受けたポリペプチドをさらに含む。
【0077】
「配列同一性」という用語は、本明細書で使用される場合、2つ以上のポリヌクレオチド配列間の関係、又は2つ以上のポリペプチド配列間の関係を指す。1つの配列におけるある位置に、比較配列の対応する位置の同じ核酸塩基又はアミノ酸が存在する場合は、これらの配列は、その位置で「同一」であると言える。「配列同一性」の割合は、両方の配列で同一の核酸塩基又はアミノ酸が存在する位置の数を決定して「同一」の位置の数を得ることによって、算出される。次いで、「同一」の位置の数を、比較ウィンドウにおける位置の合計数で除し、この値に100を乗じて「配列同一性」のパーセンテージを得る。「配列同一性」の割合は、比較ウィンドウにわたって最適にアラインされた2つの配列を比較することによって決定される。比較用に配列を最適にアラインさせるために、比較ウィンドウにおけるポリヌクレオチド配列又はポリペプチド配列の一部は、基準配列が一定に維持されたまま、ギャップと呼ばれる付加又は欠失を含み得る。最適なアラインメントとは、たとえギャップがあっても、基準配列と比較配列との間の「同一」の位置の数を可能な限り最大限にするアラインメントのことである。2つの配列間の「配列同一性」の割合を、国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)(2004年9月1日現在)から入手可能なプログラム「BLAST 2 Sequences」のバージョンを使用して決定し得、このプログラムは、プログラムBLASTN(ヌクレオチド配列の比較用)と、BLASTP(ポリペプチド配列の比較用)とを含み、これらのプログラムは、Karlin and Altschul(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90(12):5873-5877,1993)のアルゴリズムに基づいている。「BLAST 2 Sequences」を利用すると、語長(3)、オープンギャップペナルティー(11)、延長ギャップペナルティー(1)、ギャップドロップオフ(50)、予想値(10)、及び任意の他の必要なパラメータ(例えば、限定されないが、マトリクックスオプション)に対して、2004年9月1日時点でデフォルトパラメータであったパラメータを使用し得る。
【0078】
PNPLA3
いくつかの実施形態において、本開示は、PNPLA3阻害剤を投与することにより肝疾患を処置する方法を提供する。PNPLA3は、ER中及び脂質滴で発現されるパタチン様ホスホリパーゼドメイン含有ファミリの481アミノ酸メンバーである。PNPLA3は、ヒトでは肝臓内に高発現されるが、脂肪組織での発現は、5分の1である(Huang et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2010.107:7892-7)。いくつかの実施形態において、PNPLA3は、配列番号1を指す。「PNPLA3」は、PNPLA3の任意の核酸又はタンパク質を意味する。「PNPLA3核酸」は、PNPLA3をコードする任意の核酸を意味する。例えば、ある特定の実施形態では、PNPLA3核酸として、PNPLA3をコードするDNA配列、PNPLA3をコードするDNA(例えば、イントロン及びエクソンを含むゲノムDNA)から転写されたRNA配列、並びにPNPLA3をコードするmRNA配列が挙げられる。「PNPLA3 mRNA」は、PNPLA3タンパク質をコードするmRNAを意味する。標的は、大文字又は小文字のいずれかで示され得る。
【0079】
いくつかの実施形態において、本開示は、グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストと組み合わせた、肝疾患の処置のためにPNPLA3(PNPLA3)発現を阻害するための方法、化合物、及び組成物を提供する。本明細書で提供されるある特定の実施形態は、PNPLA3の阻害剤を投与することにより肝疾患を処置する方法に関する。「PNPLA3特異的阻害剤」は、PNPLA3 RNA及び/又はPNPLA3タンパク質の発現又は活性を分子レベルで特異的に阻害可能な任意の薬剤を指し得る。例えば、PNPLA3特異的阻害剤として、PNPLA3 RNA及び/又はPNPLA3タンパク質の発現を阻害可能な核酸(アンチセンス化合物を含む)、ペプチド、抗体、小分子、及び他の薬剤が挙げられる。
【0080】
「PNPLA3の阻害剤」、「PNPLA3阻害剤」、及び「発現のPNPLA3阻害剤」という用語は、本明細書では互換的に使用される。PNPLA3発現を阻害することは、PNPLA3を標的とする化合物の投与により、個体におけるPNPLA3に関連した疾患を処置するか、予防するか、又は寛解させるのに有用であり得る。ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、PNPLA3特異的阻害剤であり得る。ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、PNPLA3を標的とするアンチセンス化合物、オリゴマー化合物、又はオリゴヌクレオチドであり得る。いくつかの実施形態において、PNPLA3は、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、このオリゴヌクレオチドは、siRNA、マイクロRNA標的化オリゴヌクレオチド、又は一本鎖RNAi化合物、例えば小ヘアピンRNA(shRNA)、一本鎖siRNA(ssRNA)、及びマイクロRNA模倣体である。
【0081】
いくつかの実施形態において、PNPLA3阻害剤は、PNPLA3核酸を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドである。ある特定の実施形態において、PNPLA3核酸は、米国特許第10,774,333号明細書(参照により組み込まれる)に記載されている配列、例えば、RefSeq又はGENBANK Accession No.NM_025225.2;ヌクレオチド43921001~43,954,500が切断されているNC_000022.11(配列番号2);AK123806.1;BQ686328.1;BF762711.1;DA290491.1;並びに米国特許第10,774,333号明細書中の「配列番号7、8、9、及び10」として列挙されている配列を有する。ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチド又はオリゴマー化合物である。ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、一本鎖である。ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、二本鎖である。
【0082】
ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、16個の結合ヌクレオシドの長さの修飾オリゴヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、アンチセンス化合物又はオリゴマー化合物である。
【0083】
いくつかの実施形態において、PNPLA3阻害剤は、12~30個の結合ヌクレオシドの長さであり且つ米国特許 第10,774,333号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)で説明されている核酸塩基配列の内のいずれか(例えば、米国特許第10,774,333号明細書の「配列番号17~2169」の内のいずれか1つ)を含む核酸塩基配列を有する修飾オリゴヌクレオチドである。ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、アンチセンス化合物又はオリゴマー化合物である。ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、一本鎖である。ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、二本鎖である。ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、16~30個の結合ヌクレオシドの長さの修飾オリゴヌクレオチドである。
【0084】
いくつかの実施形態において、PNPLA3阻害剤は、米国特許 第10,774,333号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)で見出される核酸塩基配列の内のいずれか(例えば、米国特許第10,774,333号明細書の「配列番号17~2169」の内のいずれか1つ)からなる修飾オリゴヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、アンチセンス化合物又はオリゴマー化合物である。ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、一本鎖である。ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、二本鎖である。
【0085】
いくつかの実施形態において、PNPLA3阻害剤は、12~30個の結合ヌクレオシドの長さであり且つ米国特許 第10,774,333号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)で見出される核酸塩基(例えば、配列番号1の核酸塩基5567~5642、5644~5731、5567~5731、5567~5620、13697~13733、20553~20676、20664~20824、20553~20824、及び25844~25912)内で相補的な修飾オリゴヌクレオチドを含み、前記修飾オリゴヌクレオチドは、配列番号1に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%相補的である。ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、アンチセンス化合物又はオリゴマー化合物である。ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、一本鎖である。ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、二本鎖である。ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、16~30個の結合ヌクレオシドの長さである。
【0086】
いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤は、PNPLAをコードする核酸の領域に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドである。ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、PNPLA3核酸のヌクレオチド5567~5620を標的とする。ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、配列番号1の核酸塩基配列を有するPNPLA3核酸のヌクレオチド5567~5642、5644~5731、5567~5731、5567~5620内で見出されるヌクレオチド内を標的とする。ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、PNPLA3をコードする核酸配列(例えば配列番号1)の5567~5731内の部位に相補的である。ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、PNPLA3をコードする核酸配列(例えば配列番号1)の5644~5731内の部位に相補的である。ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、PNPLA3をコードする核酸配列(例えば配列番号1)の5567~5642内の部位に相補的である。ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、PNPLA3をコードする核酸配列(例えば配列番号1)の5567~5620内の部位に相補的である。ある特定の実施形態において、これらの化合物は、アンチセンス化合物、オリゴマー化合物、又はオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、PNPLA3をコードする核酸は、mRNAである。
【0087】
ある特定の実施形態では、PNPLA3阻害剤は、12~30個の結合ヌクレオシドの長さの修飾オリゴヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、16~30個の結合ヌクレオシドの長さの修飾オリゴヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、12~30個の結合ヌクレオシドの長さであり且つ配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、又は10の内のいずれか1つの少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、又は16個の連続核酸塩基部分を含む核酸塩基配列を有する修飾オリゴヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、又は10の内のいずれか1つの少なくとも8個の連続核酸塩基を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、16~30個の結合ヌクレオシドの長さである。
【0088】
ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、12~30個の結合ヌクレオシドの長さであり且つ配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、又は10の内のいずれか1つを含む核酸塩基配列を有する修飾オリゴヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、16~30個の結合ヌクレオシドの長さである。ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、又は10の内のいずれか1つの少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、又は少なくとも16個の連続塩基を有する配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のいずれか1つの少なくとも8個の連続塩基を有する配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。
【0089】
ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のいずれか1つを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。
【0090】
ある特定の実施形態において、PNPLA3を標的とするPNPLA3阻害剤は、米国特許 第10,774,333号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)で説明されているION 916333、975616、994284、975605、994282、975613、975617、975735、975736、又は975612である。
【0091】
ある特定の実施形態において、前述の修飾オリゴヌクレオチドの内のいずれかは、少なくとも1つの修飾ヌクレオシド間結合、少なくとも1つの修飾糖、及び/又は少なくとも1つの修飾核酸塩基を含む。ある特定の実施形態において、前述の修飾オリゴヌクレオチドの内のいずれかは、少なくとも1つの修飾糖部分を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの修飾糖部分は、2’-デオキシ、2’-O-メチル、2’-O-メトキシメチル、2’-O-メトキシエチル、2’-フルオロ、4’-CH(CH3)-O-2’、4’-CH2-O-2’、4’-(CH2)2-O-2’、又はこれらの組み合わせである。ある特定の実施形態において、少なくとも1つの修飾糖は、2’-デオキシ、2’-O-メトキシエチル基を含む。ある特定の実施形態において、少なくとも1つの修飾糖は、4’-CH(CH3)-O-2’基、4’-CH2-O-2’基、又は4’-(CH2)2-O-2’基等の二環式糖である。
【0092】
ある特定の実施形態において、前述の修飾オリゴヌクレオチドの内のいずれかは、1つ又は複数の修飾塩基を含む。いくつかの実施形態において、この修飾塩基は、5-メチルシトシンである。いくつかの実施形態において、1、2、3、4、5、6個、又はより多くのシトシンは、5-メチルシトシンである。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチド中の全てのシトシンは、5-メチルシトシンである。
【0093】
ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾ヌクレオシド間結合を含み、例えば、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む。いくつかの実施形態において、全てのヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエートヌクレオシド結合である。
【0094】
ある特定の実施形態において、前述の修飾オリゴヌクレオチドの内のいずれかは、結合デオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;結合ヌクレオシドからなる5’ウイングセグメント;及び結合ヌクレオシドからなる3’ウイングセグメントとを含み、ギャップセグメントは、5’ウイングセグメントと3’ウイングセグメントとの間に位置しており、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドは、修飾糖を含む。ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、又は10の内のいずれか1つに列挙された配列を含む核酸塩基配列を有する、12~30個の結合ヌクレオシドの長さである。ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、又は10の内のいずれか1つに列挙された配列を含む核酸塩基配列を有する、16~30個の結合ヌクレオシドの長さである。ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、又は10の内のいずれか1つに列挙された配列からなる核酸塩基配列を有する、16個の結合ヌクレオシドの長さである。
【0095】
ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、
10個の結合デオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;
3個の結合ヌクレオシドからなる5’ウイングセグメント;及び
3個の結合ヌクレオシドからなる3’ウイングセグメント
を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、
ギャップセグメントは、5’ウイングセグメントと3’ウイングセグメントとの間に位置しており、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドは、cEt糖を含み、各ヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合であり、各シトシンは、5-メチルシトシンである。
【0096】
ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、又は10の内のいずれか1つに列挙される配列を含む核酸塩基配列を有する、12~30個の結合核酸塩基の長さの修飾オリゴヌクレオチドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、この修飾オリゴヌクレオチドは、
10個の結合デオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;
3個の結合ヌクレオシドからなる5’ウイングセグメント;及び
3個の結合ヌクレオシドからなる3’ウイングセグメント
を含み、
ギャップセグメントは、5’ウイングセグメントと3’ウイングセグメントとの間に位置しており、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドは、cEt糖を含み、各ヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合であり、各シトシンは、5-メチルシトシンである。ある特定の実施形態において、この修飾オリゴヌクレオチドは、16~30個の結合ヌクレオシドからなる。ある特定の実施形態において、この修飾オリゴヌクレオチドは、16個の結合ヌクレオシドからなる。
【0097】
ある特定の実施形態において、化合物は、修飾オリゴヌクレオチドを含むか、又はそれからなり、この修飾オリゴヌクレオチドは、16個の結合ヌクレオシドの長さであり、且つ配列番号2の配列からなり、この修飾オリゴヌクレオチドは、
10個の結合デオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;
3個の結合ヌクレオシドからなる5’ウイングセグメント;及び
3個の結合ヌクレオシドからなる3’ウイングセグメント
を含み、
ギャップセグメントは、5’ウイングセグメントと3’ウイングセグメントとの間に位置しており、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドは、cEt糖を含み、各ヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合であり、各シトシンは、5-メチルシトシンである。
【0098】
いくつかの実施形態において、PNPLA3阻害剤は、コンジュゲート基をさらに含むアンチセンスオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、このコンジュゲート基は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの5’末端に存在している。そのため、ある特定の実施形態において、化合物は、修飾オリゴヌクレオチドと、コンジュゲート基とからなり、この修飾オリゴヌクレオチドは、16個の結合ヌクレオシドの長さであり、且つ配列番号2の配列からなり、この修飾オリゴヌクレオチドは、
10個の結合デオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;
3個の結合ヌクレオシドからなる5’ウイングセグメント;及び
3個の結合ヌクレオシドからなる3’ウイングセグメント
を含み、
ギャップセグメントは、5’ウイングセグメントと3’ウイングセグメントとの間に位置しており、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドは、cEt糖を含み、各ヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合であり、各シトシンは、5-メチルシトシンであり、コンジュゲート基は、修飾オリゴヌクレオチドの5’末端に位置しており、
【化1】
である。
【0099】
いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤は、下記式(配列番号2):
【化2】
の化合物である。
【0100】
いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤は、下記式(配列番号2):
【化3】
の化合物である。
【0101】
前述の実施形態の内のいずれかにおいて、PNPLA3阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチドであり、このアンチセンスオリゴヌクレオチドは、PNPLA3をコードする核酸に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%相補的であり得る。
【0102】
前述の実施形態の内のいずれかにおいて、PNPLA3阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチドであり、このアンチセンスオリゴヌクレオチドは、一本鎖であり得る。ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、デオキシリボヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、二本鎖である。ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、二本鎖であり、且つリボヌクレオチドを含む。
【0103】
前述の実施形態の内のいずれかにおいて、PNPLA3阻害剤は、アンチセンス化合物又はオリゴマー化合物であり得る。
【0104】
前述の実施形態の内のいずれかにおいて、PNPLA3阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチドであり、このアンチセンスオリゴヌクレオチドは、8~80、10~30、12~50、13~30、13~50、14~30、14~50、15~30、15~50、16~30、16~50、17~30、17~50、18~22、18~24、18~30、18~50、19~22、19~30、19~50、又は20~30個の結合ヌクレオシドの長さであり得る。いくつかの実施形態において、PNPLA3阻害剤は、オリゴヌクレオチドである。
【0105】
ある特定の実施形態において、PNPLA3阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチドであり、このアンチセンスオリゴヌクレオチドは、本明細書で説明されている修飾オリゴヌクレオチドと、コンジュゲート基とを含む。ある特定の実施形態において、コンジュゲート基は、修飾オリゴヌクレオチドの5’末端で修飾オリゴヌクレオチドに結合している。ある特定の実施形態において、コンジュゲート基は、修飾オリゴヌクレオチドの3’末端で修飾オリゴヌクレオチドに結合している。ある特定の実施形態において、コンジュゲート基は、少なくとも1つのN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、少なくとも2つのN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、又は少なくとも3つのN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を含む。
【0106】
ある特定の実施形態において、本明細書で提供されるPNPLA3阻害剤は、修飾オリゴヌクレオチドの薬学的に許容される塩を含む。ある特定の実施形態において、この塩は、ナトリウム塩である。ある特定の実施形態において、この塩は、カリウム塩である。
【0107】
ある特定の実施形態において、本明細書で説明されているPNPLA3阻害剤は、2μM未満、1.5μM未満、1μM未満、0.9μM未満、0.8μM未満、0.7μM未満、0.6μM未満、0.5μM未満、0.4μM未満、0.3μM未満、0.2μM未満、0.1μM未満、0.05μM未満、0.04μM未満、0.03μM未満、0.02μM未満、又は0.01μM未満のインビトロIC50の内の少なくとも1つを有することにより活性である。
【0108】
ある特定の実施形態において、本明細書で説明されているPNPLA3阻害剤は、対照動物に対して4倍、3倍、若しくは2倍以下のアラニントランスアミナーゼ(ALT)若しくはアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)値の上昇、又は対照動物と比較して30%、20%、15%、12%、10%、5%、若しくは2%以下の肝臓、脾臓、若しくは腎臓の重量の増加の内の少なくとも一方を有することにより示されるように、忍容性が高い。ある特定の実施形態において、本明細書で説明されているPNPLA3阻害剤は、対照動物と比較してALT又はASTの上昇がないことにより示されるように、忍容性が高い。ある特定の実施形態において、本明細書で説明されているPNPLA3阻害剤は、対照動物と比較して肝臓、脾臓、又は腎臓の重量の増加がないことにより示されるように、忍容性が高い。
【0109】
ある特定の実施形態は、前述した実施形態の内のいずれかのPNPLA3阻害剤、又はその薬学的に許容される任意の塩と、薬学的に許容される担体又は希釈剤の内の少なくとも1つとを含む組成物を提供する。ある特定の実施形態において、この組成物は、約40センチポアズ(cP)未満、約30センチポアズ(cP)未満、約20センチポアズ(cP)未満、約15センチポアズ(cP)未満、又は約10センチポアズ(cP)未満の粘度を有する。ある特定の実施形態において、前述した粘度の内のいずれかを有する組成物は、約100mg/mL、約125mg/mL、約150mg/mL、約175mg/mL、約200mg/mL、約225mg/mL、約250mg/mL、約275mg/mL、又は約300mg/mLの濃度で、本明細書で提供されるPNPLA3阻害剤を含む。ある特定の実施形態において、前述した粘度及び/又はPNPLA3阻害剤濃度の内のいずれかを有する組成物は、室温、又は約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、若しくは約30℃の温度を有する。
【0110】
GLP-1ペプチド
グルコン及びグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)は、158アミノ酸前駆体ポリペプチドであるプレプログルカゴンに由来しており、これは、様々な組織でプロセシングされて、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)、及びオキシントモジュリン(OXM)等のいくつかの異なるプログルカゴン由来のペプチドを形成するが、これらは、グルコースホメオスタシス、インスリン分泌、胃内容排出、及び腸成長、並びに食物摂取の調節等の多様な生理学的機能に関与する。グルカゴンは、プログルカゴンのアミノ酸33~61(プレプログルカゴンの53~81)に対応する29アミノ酸ペプチドであるのに対し、GLP-1は、プログルカゴンのアミノ酸72~108(プレプログルカゴンの92~128)に対応する37アミノ酸ペプチドとして生成される。GLP-1(7~36)アミド又はGLP-1(7~37)酸は、GLP-1受容体で本質的に同等の活性を示すGLP-1の生物活性の形態である。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,765,130号明細書を参照されたい。
【0111】
本明細書で使用される場合、「GLP-1/グルカゴンアゴニストペプチド」は、アッセイ1の条件下で、グルカゴン受容体において、天然グルカゴンと比較して、少なくとも約1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又はより高い活性を呈し、且つGLP-1受容体において、天然GLP-1と比較して、少なくとも約1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又はより高い活性を呈するキメラペプチドである。
【0112】
本明細書で使用される場合、「ネイティブグルカゴン」という用語は、配列番号11の配列を含む、天然に存在するグルカゴン(例えば、ヒトグルカゴン)を指す。「天然GLP-1」という用語は、天然起源のGLP-1(例えば、ヒトGLP-1)を指しており、例えば、GLP-1(7~36)アミド(配列番号12)、GLP-1(7~37)酸(配列番号13)、又はこれら2つの化合物の混合物を包含する総称である。本明細書で使用される場合、「グルカゴン」又は「GLP-1」への一般的な言及は、それ以上の呼称がない場合、天然ヒトグルカゴン又は天然ヒトGLP-1をそれぞれ意味することが意図されている。他に指示がない限り、「グルカゴン」は、ヒトグルカゴンを指しており、「GLP-1」は、ヒトGLP-1を指す。
【0113】
グルカゴンは、膵臓により生成され得、グルカゴン受容体(「GCGR」)と相互作用し得る。グルカゴンは、肝臓内で作用して、糖新生及びグリコーゲン分解によって血糖を上昇させ得る。血糖が下がり始めると、グルカゴンは、グリコーゲンを分解してグルコースを放出するように肝臓にシグナルを送り得、血糖値が通常のレベルへと上昇する。GLP-1は、グルカゴンと比較して異なる生物活性を有し得る。GLP-1は、消化管内L細胞から分泌され得、GLP-1受容体に結合し得る。GLP-1活性として、インスリンの合成及び分泌の刺激、グルカゴン分泌の阻害、及び食物摂取の阻害が挙げられ得る。
【0114】
本明細書で提供されるのは、グルカゴン受容体又はグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)のアゴニストである。いくつかの実施形態において、グルカゴン受容体又はグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)のアゴニストは、ポリペプチドを含む。グルカゴン受容体とGLP-1受容体との両方に結合するペプチド。ある特定の実施形態において、本明細書で提供されるペプチドは、グルカゴン及びGLP-1活性のコアゴニストである。そのようなペプチドは、本明細書では、GLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドと称される。本明細書で提供されるGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドは、体重減少を促進し、体重増加を防止するか、又は望ましい体重を維持するのに有利な比でGLP-1活性及びグルカゴン活性を有し、最適な溶解性、製剤化性、及び安定性を有する。ある特定の実施形態において、本明細書で提供されるGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドは、ヒトGLP-1及びヒトグルカゴン受容体において活性であり、ある特定の実施形態において、GLP-1受容体において天然リガンドと比較した相対活性は、グルカゴン受容体でのものより、少なくとも約1倍、2倍、5倍、8倍、10倍、15倍、20倍、又は25倍高い。
【0115】
本明細書で使用される場合、「ペプチド」という用語は、完全長ペプチド、及びその断片、変異体、又は誘導体を包含しており、例えば、GLP-1/グルカゴンアゴニストペプチド(例えば、29、30、又は31個のアミノ酸の長さ)を包含する。本明細書で開示されている「ペプチド」(例えば、GLP-1/グルカゴンアゴニストペプチド)は、例えば、半減期を延長するためのFcドメイン又はアルブミンドメイン等の別の成分を含む融合ポリペプチドの一部であり得る。本明細書で説明されているペプチドをまた、多数の異なる方法で誘導体化し得る。
【0116】
「断片」、「類似体」、「誘導体」、又は「変異体」という用語は、GLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドを指す場合には、少なくとも一部の要望される活性(例えば、グルカゴン及び/又はGLP-1受容体への結合)を保持する任意のペプチドを含む。本明細書で提供されるGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドの断片として、発現、精製、及び又は対象への投与の際に望ましい特性を呈する、タンパク質分解断片、欠失断片が挙げられる。
【0117】
ある特定の実施形態において、開示されているGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドは、グルカゴン及びGLP-1受容体において望ましい力価を有しており、体重減少を促進する上で望ましい相対力価を有する。ある特定の実施形態において、開示されているGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドは、cAMPアッセイ1(実施例2を参照されたい)でのEC50により示されるように、GLP-1受容体において、10,000pM未満、5000pM未満、2500pM未満、1000pM未満、900pM未満、800pM未満、700pM未満、600pM未満、500pM未満、400pM未満、300pM未満、200pM未満、100pM未満、50pM未満、25pM未満、20pM未満、15pM未満、10pM未満、5pM未満、4pM未満、3pM未満、又は2pM未満のインビトロ力価を呈示する。ある特定の実施形態において、開示されているGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドは、4.4%ヒト血清アルブミン中のcAMPアッセイ(アッセイ2、実施例2を参照されたい)でのEC50により示されるように、GLP-1受容体において、10,000pM未満、5000pM未満、2500pM未満、1000pM未満、900pM未満、800pM未満、700pM未満、600pM未満、500pM未満、400pM未満、300pM未満、200pM未満、100pM未満、50pM未満、25pM未満、20pM未満、15pM未満、10pM未満、5pM未満、4pM未満、3pM未満、又は2pM未満のインビトロ力価を呈示する。ある特定の実施形態において、開示されているGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドは、cAMPアッセイ1(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,765,130号明細書の実施例2を参照されたい)でのEC50により示されるように、グルカゴン受容体において、10,000pM未満、5000pM未満、2500pM未満、1000pM未満、900pM未満、800pM未満、700pM未満、600pM未満、500pM未満、400pM未満、300pM未満、200pM未満、100pM未満、50pM未満、25pM未満、20pM未満、15pM未満、10pM未満、5pM未満、4pM未満、3pM未満、又は2pM未満のインビトロ力価を呈示する。ある特定の実施形態において、開示されているGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドは、4.4%ヒト血清アルブミンにおけるcAMPアッセイ(アッセイ2、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,765,130号明細書の実施例2を参照されたい)でのEC50により示されるように、グルカゴン受容体において、10,000pM未満、5000pM未満、2500pM未満、1000pM未満、900pM未満、800pM未満、700pM未満、600pM未満、500pM未満、400pM未満、300pM未満、200pM未満、100pM未満、50pM未満、25pM未満、20pM未満、15pM未満、10pM未満、5pM未満、4pM未満、3pM未満、又は2pM未満のインビトロ力価を呈示する。ある特定の実施形態において、開示されているGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドは、ネイティブリガンドと比較した場合に、アッセイ2を使用する場合に約0.01~0.50の範囲、例えば、約0.02~0.30の範囲、例えば、約0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、又は0.30の相対GLP1-R/GCGR力価比を有する。
【0118】
ある特定の実施形態において、開示されているGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドは、cAMPアッセイ1(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,765,130号明細書の実施例2を参照されたい)でのEC50により示されるように、グルコース依存性インスリン分泌性ペプチド(胃抑制ペプチド)(GIPR)において、10,000pM未満、5000pM未満、2500pM未満、1000pM未満、900pM未満、800pM未満、700pM未満、600pM未満、500pM未満、400pM未満、300pM未満、200pM未満、100pM未満、50pM未満、25pM未満、20pM未満、15pM未満、10pM未満、5pM未満、4pM未満、3pM未満、又は2pM未満のインビトロ力価を呈示する。ある特定の実施形態において、開示されているGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドは、4.4%ヒト血清アルブミンにおけるcAMPアッセイ(アッセイ2、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,765,130号明細書の実施例2を参照されたい)でのEC50により示されるように、GIPRにおいて、10,000pM未満、5000pM未満、2500pM未満、1000pM未満、900pM未満、800pM未満、700pM未満、600pM未満、500pM未満、400pM未満、300pM未満、200pM未満、100pM未満、50pM未満、25pM未満、20pM未満、15pM未満、10pM未満、5pM未満、4pM未満、3pM未満、又は2pM未満のインビトロ力価を呈示する。
【0119】
ある特定の実施形態において、本明細書で提供されるGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドは、許容可能な可溶性、製剤化のしやすさ、血漿安定性、及び改善された薬物動力学特性の内の1つ又は複数の基準を有する。ある特定の実施形態において、開示されているGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドは、広範なpH範囲にわたって標準バッファーに可溶性である。
【0120】
ある特定の実施形態において、GLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドは、一般的バッファー溶液に、最大0.5mg/ml、0.6mg/ml、0.7mg/ml、0.8mg/ml、0.9mg/ml、1mg/ml、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、7mg/ml、8mg/ml、9mg/ml、10mg/ml、又はそれを超える濃度で、バッファー系に、例えば、0.25~150mMのイオン強度の範囲で可溶性であり、限定されないが、リン酸バッファー、Trisバッファー、グルタミン酸バッファー、酢酸バッファー、コハク酸バッファー、又はヒスチジンバッファーが挙げられる。例示的バッファーとして、100mMグルタミン酸pH4.5バッファー、100mM酢酸pH5バッファー、100mMコハク酸pH5バッファー、100mMリン酸pH6バッファー、100mMヒスチジンpH6バッファー、100mMリン酸pH6.5バッファー、100mMリン酸pH7.0バッファー、100mMヒスチジンpH7.0バッファー、100mMリン酸pH7.5バッファー、100mM Tris pH7.5バッファー、及び100mM Tris pH8.0バッファーが挙げられる。ある特定の実施形態において、開示されているGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドは、例えば、pH4.0~pH8.0のpH範囲にわたって、例えば、pH4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、又は8.5で、0.8mg/mlの標準的バッファーに可溶性である。ある特定の実施形態において、開示されているGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドは、pH4.5~8.0、5.0~8.0、5.5~8.0、6.0~8.0、6.5~8.0、7.0~8.0、4.5~8.5、5.5~8.5、5.5~8.5、6.0~8.5、6.5~8.5、又は7.0~8.5の標準的バッファーに可溶性である。
【0121】
ある特定の実施形態において、開示されているGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドは、標準的医薬製剤に製剤化可能である。代表的な製剤として下記が挙げられるが、これらに限定されない:0.1M Tris pH7.5、150mMマンニトール、最終製剤pH=7.2;0.05M Tris、50mMアルギニン/プロリン、最終製剤pH=8.0;又はリン酸ナトリウムバッファー(pH8)/1.85%W/Vプロピレングリコール、最終製剤pH=7.0。ある特定の実施形態において、開示されているGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドは、最大0.5mg/ml、0.6mg/ml、0.7mg/ml、0.8mg/ml、0.9mg/ml、1mg/ml、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、7mg/ml、8mg/ml、9mg/ml、10mg/ml、又はそれを超える濃度で、これらの製剤又は他の製剤に可溶性である。
【0122】
ある特定の実施形態において、開示されているGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドは、血清又は血漿中のプロテアーゼに対して許容可能に安定している。グルカゴン又はGLP-1の一般的分解産物として、+1産物(酸)及びDPP IV-分解産物が挙げられる。+1質量の産物は、グルタミンのアミド基又はC末端での分解から生じ得、分解産物は、血漿中でのプロテアーゼDPP IVの作用により生じる。ある特定の実施形態において、開示されているGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドは、37℃の血漿中24時間後、最大30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%のレベルで血漿中に安定したままである。
【0123】
本明細書で提供されるのは、下記のアミノ酸配列を含むGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドである:
HX2QGTFTSDX10SX12X13LX15X16X17X18AX20X21FX23X24WLX27X28GX30
(式中、X2は、G又はSであり、X10は、Y又はKであり、X12は、K、E、R、又はSであり、X13は、K又はYであり、X15は、D又はEであり、X16は、S又はGであり、X17は、E、R、Q、又はKであり、X18は、R、S、又はAであり、X20は、R、K、又はQであり、X21は、D又はEであり、X23は、V又はIであり、X24は、A又はQであり、X27は、E又はVであり、X28は、A又はKであり、X30は、G又はRである)(配列番号25)。ある特定の実施形態において、上記に示された単離ペプチドが提供され、式中、X2は、Sであり、X10は、Y又はKであり、X12は、K、E、R、又はSであり、X13は、K又はYであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X17は、E、R、Q、又はKであり、X18は、R、S、又はAであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、E又はVであり、X28は、Aであり、X30は、Gである(配列番号26)。ある特定の実施形態において、上記に示された単離ペプチドが提供され、式中、X17がEであり、且つX18がRである場合には、X2は、Sであり、X10は、Y又はKであり、X12は、K、E、R、又はSであり、X13は、K又はYであり、X15は、Dであり、X16は、Sであるか、又はX17がRであり、且つX18がSである場合には、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、E又はVであり、X28は、Aであり、X30は、Gである(それぞれ、配列番号27及び配列番号28)。
【0124】
ある特定の実施形態において、上記に示された単離ペプチドが提供され、式中、X17がEであり、且つX18がRである場合には、X2は、Sであり、X10は、Yであり、X12は、Kであり、X13は、Kであり、X15は、Dであり、X16は、Sであるか、又はX17がRであり、且つX18がSである場合には、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Vであり、X28は、Aであり、X30は、Gである(それぞれ、配列番号29及び配列番号30)。ある特定の実施形態において、上記に示された単離ペプチドが提供され、式中、X12が、K、E、又はRである場合には、及びX12がK、E、R、又はSである場合には、X2は、Sであり、X10がKであり、X17がEであり、且つX18がRである場合には、及びX17がRであり、且つX18がSである場合には、X13は、Yであり、X15は、Dであり、X16は、Sであり、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Aであり、X30は、Gである(それぞれ、配列番号31及び配列番号32)。ある特定の実施形態において、上記に示された単離ペプチドが提供され、式中、X17がEであり、且つX18がRである場合には、X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Eであり、X13は、Yであり、X15は、Dであり、X16は、Sであるか、又はX17がRであり、且つX18がSである場合には、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Aであり、X30は、Gである(それぞれ、配列番号33及び配列番号34)。ある特定の実施形態において、上記に示された単離ペプチドが提供され、式中、X17がEであり、且つX18がRである場合には、X2は、Sであり、X10は、Kであり、X12は、Rであり、X13は、Yであり、X15は、Dであり、X16は、Sであるか、又はX17がRであり、且つX18がSである場合には、X20は、Rであり、X21は、Dであり、X23は、Vであり、X24は、Aであり、X27は、Eであり、X28は、Aであり、X30は、Gである(それぞれ、配列番号35及び配列番号36)。
【0125】
本明細書で提供されるGLP-1/グルカンアゴニストペプチドとして下記が挙げられ得るが、これらに限定されない:G730(配列番号14)、G797(配列番号15)、G849(配列番号16)、G933(配列番号17)、G865(配列番号18)、G796(配列番号19)、G812(配列番号20)、及びG380(配列番号21)。これらのGLP-1/グルカンアゴニストペプチドを、表1に列挙する。
【0126】
【0127】
i.グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体に対するアゴニストを製造する方法
GLP-1/グルカゴンアゴニストペプチド。本明細書で提供されるGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドを、任意の好適な方法により製造し得、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,765,130号明細書で説明されている方法により製造し得る。例えば、ある特定の実施形態において、本明細書で提供されるGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドを、当業者に公知の方法により化学的に合成し、例えば、Merrifield(1963,J.Am.Chem.Soc.85:2149-2154)により説明されている固相合法により化学的に合成する。例えば、標準的試薬を使用する自動合成装置を使用して、固相ペプチド合成を達成し得る。
【0128】
或いは、本明細書で提供されるGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドを、当業者には公知である好都合なベクター/宿主細胞の組み合わせを用いて、組み換えにより製造し得る。GLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドを組換えにより製造するために、様々な方法が利用可能である。一般に、GLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を、適切な発現媒体(例えば、挿入されたコード配列の転写及び翻訳に必要なエレメントを含有するベクター)に挿入する。GLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドをコードする核酸を、適切なリーディングフレーム内でベクターに挿入する。次に、GLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドを発現する好適な宿主細胞に、発現ベクターをトランスフェクトする。好適な宿主細胞として、細菌、酵母、又は哺乳動物細胞が挙げられるが、これらに限定されない。市販の様々な宿主発現ベクター系を利用して、本明細書で説明されているGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドを発現させ得る。
【0129】
ii.修飾、コンジュゲート、融合、及び誘導体化。
いくつかの実施形態において、本明細書で説明されているペプチドは、アミノ酸配列中のアミノ酸に対する修飾を含む。ある特定の実施形態において、本明細書で提供されるGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドは、アミノ酸修飾により安定化されている。ある特定の実施形態において、C末端アミノ酸のカルボキシル基は、アミド化されている。ある特定の実施形態において、C末端アミノ酸は、アミド化グリシンであり、例えば、G730、G797、G849、G865、G796、G812、及びG380である。ある特定の実施形態において、例えば、G933(即ち、C末端グリシン)は、非修飾酸である。ある特定の実施形態において、1つ又は複数のアミノ酸残基がアシル化されている(即ち、アシル部分の付加)GLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドが提供される。例えば、ある特定の実施形態において、本明細書で提供されるGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドは、1つ又は複数のリシン残基を含有し、ここで、パルミトイル部分は、N(ε)基に結合している。ある特定の実施形態において、リンカーは、リシンとパルミトイル基との間に組み込まれる。このリンカーは、γグルタミン酸基であり得るか、又は限定されないが、βアラニン及びアミノヘキサン酸等の別のリンカーであり得る。コレステロール又はミリストイル基の付加等の異なるアシル化方法を使用してもよい。ある特定の実施形態において、パルミトイル部分は、13位(例えば、G730)に付加されている。ある特定の実施形態において、パルミトイル部分は、10位(例えば、G797、G849、G933、G865、G796、及びG812)に付加されている。ある特定の実施形態において、パルミトイル部分は、17位(例えば、G380)に付加されている。
【0130】
本明細書で提供されるGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチド(例えば、G730、G797、G849、及びG933)を、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,765,130号明細書の実施例1で説明されているように、パルミトイル化して、血清アルブミンとの会合により半減期を延長させ、これによって腎クリアランスの傾向を低減させ得る。
【0131】
或いは、又はこれに加えて、例えば、半減期を延長させるために、本明細書で開示されているGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドを、異種部分と会合させ得る。この異種部分は、タンパク質、ペプチド、タンパク質ドメイン、リンカー、有機ポリマー、無機ポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)、ビオチン、アルブミン、ヒト血清アルブミン(HSA)、HSA FcRn結合部分、抗体、抗体のドメイン、抗体断片、一本鎖抗体、ドメイン抗体、アルブミン結合ドメイン、酵素、リガンド、受容体、結合ペプチド、非FnIIIスキャフォールド、エピトープタグ、組換えポリペプチドポリマー、サイトカイン、及びこのような部分の内の2つ以上の組み合わせであり得る。
【0132】
例えば、GLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドを、異種ポリペプチドと融合させ得る。組換え遺伝子融合及び発現、又は化学コンジュゲーションのいずれかによって、このペプチドをタンパク質と融合させ得る。融合するパートナーとして好適なタンパク質として、ヒト血清アルブミン、抗体、及び抗体のFc部分との融合を含む抗体断片が挙げられるが、これらに限定されない。GLP-1は、力価を保持しながら、これらのタンパク質と融合している(L.Baggio et al,Diabetes 53 2492-2500(2004);P.Barrington et al Diabetes,Obesity and Metabolism 13 426-433(2011);P.Paulik et al American Diabetes Association 2012,Poster 1946)。伸長された組換えペプチド配列はまた、ペプチドに高分子量を付与することも説明されている(V.Schellenberger et al Nature Biotechnol 27 1186-1190(2009);PASylation(欧州特許出願公開第2173890号明細書))。ある特定の実施形態において、GLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドは、C末端での融合パートナー(例えば、アルブミン又はFc部分)と一緒に、融合タンパク質のN末端部分として組み込まれる。本明細書で説明されているGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドをまた、ヒト血清アルブミンに対する親和性を有する「Albudabs」等のペプチド又はタンパク質ドメインにも融合させ得る(M.S.Dennis et al J Biol Chem 277 35035-35043(2002);A.Walker et al Protein Eng Design Selection 23 271-278(2010))。本明細書で開示されているGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドを異種ポリペプチド(例えば、アルブミン又はFc領域)と融合させる方法は、当業者に公知である。
【0133】
他の異種部分をGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドにコンジュゲートさせて、さらに安定化させ得るか、又はさらに半減期を延長させ得る。化学的融合の場合には、ある特定の実施形態は、遊離N末端の維持を特徴とするが、誘導体化のための代替点を作製し得る。さらに別の方法は、このペプチドを、高分子量ポリエチレングリコール(PEG)等の大きな化学的部分(large chemical moiety)で誘導体化させることである。「ペグ化GLP-1/グルカゴンアゴニストペプチド」は、これに共有結合したPEG鎖を有する。GLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドの誘導体化(例えば、ペグ化)を、パルミトイル化したリシンで行い得るか、或いは置換されたか又は誘導体化を可能にするような伸長により組み込まれたシステイン等の残基で行い得る。前述のGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドフォーマットを、インビトロ及び/又はインビボで、相対力価と、GLP-1及びグルカゴン受容体活性化の間の均衡とに関して特徴付け得る。
【0134】
一般的用語「ポリエチレングリコール鎖」又は「PEG鎖」は、エチレンオキシドの縮合ポリマーと水との混合物を指しており、これは、一般式H(OCH2CH2)nOH(nは、3、4、5、6、7、8、9、又はそれを超える整数である)で表される分岐鎖又は直鎖である。PEG鎖は、約500~約40,000ダルトンの範囲から選択される平均総分子量を有するエチレングリコールのポリマーを含む。PEG鎖の平均分子量は、数値により示され、例えば、PEG-5,000は、約5,000の総平均分子量を有するポリエチレングリコール鎖を指す。
【0135】
PEG化を、当該技術分野で既知のPEG化反応のいずれかにより実行し得る。例えば、Focus on Growth Factors,3:4-10,1992、並びに欧州特許出願公開第0 154 316号明細書及び同第0 401 384号明細書を参照されたい。PEG化を、反応性ポリエチレングリコール分子(又は類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応又はアルキル化反応を使用して実行し得る。
【0136】
PEG化GLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドを調製する方法は、一般に、(a)分子が、1つ又は複数のPEG基に結合する条件下で、GLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドをポリエチレングリコール(例えば、PEGの反応性エステル又はアルデヒド誘導体)と反応させるステップと、(b)反応産物を取得するステップとを含む。
【0137】
投与
本開示は、対象に、PNPLA3発現の阻害剤と、グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストとを投与することにより、この対象の肝疾患を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤と、グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストとを、同時に投与する。いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤と、グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストとを、互いに1時間以内に投与する。いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤と、グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストとを、互いに24時間以内に投与する。いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤と、グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストとを、互いに72時間以内に投与する。いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤と、グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストとを、互いに1週間以内に投与する。いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤と、グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストとを、互いに2週間以内に投与する。いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤と、グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストとを、互いに1ヶ月以内に投与するか、互いに2ヶ月以内に投与するか、又は互いに3ヶ月以上以内に投与する。
【0138】
様々な投与様式が当業者に既知であり、PNPLA3発現の阻害剤と、グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストとを投与するために使用され得る。例えば、投与様式として、経口、非経口、吸入、又は局所が挙げられ得る。「非経口投与」は、注射又は注入を介した投与を意味し得る。非経口投与として、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、動脈内投与、腹腔内投与、又は頭蓋内投与、例えば、髄腔内投与若しくは脳室内投与、膣内投与、又は直腸内投与が挙げられ得る。投与のための別の形態例は、注射液であり、特に、静脈内注射又は動脈内注射又は滴注用の溶液である。本明細書で提供されるPNPLA3発現の阻害剤及び/又はGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドを、単回用量又は複数回用量として投与し得る。ある特定の実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤、及び/又はGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドを、皮下注射により投与する。
【0139】
いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤と、グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストとを、同一の投与様式で投与する。いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤と、グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストとを、異なる投与様式で投与する。いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤を、非経口投与する。いくつかの実施形態において、グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストを、非経口投与する。
【0140】
非経口製剤は、単回ボーラス用量、注入又は負荷ボーラス用量であり得、その後に維持用量が続く。これらの組成物を、特定の固定間隔又は変動間隔で投与し得、例えば、1日1回投与し得るか、又は「必要に応じて」投与し得る。投薬量レジメンもまた、所望される最適反応(例えば、治療的反応又は予防的反応)を実現するように調整し得る。
【0141】
PNPLA3発現の阻害剤、並びに/又はグルカゴン受容体及び/若しくはGLP-1受容体のアゴニストの投与頻度を、過度な実験を行うことなく、当業者により決定し得る。いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤の投与頻度は、グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストの投与頻度と同じである。いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤の投与頻度は、グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストの投与頻度と異なっており、例えば、より多い頻度であるか、又はより少ない頻度である。いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤を、1日1回、1日2回、又は1日3回投与する。いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤を、週1回、週2回、又は週3回投与する。いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤を、月1回、月2回、又は月3回投与する。いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤を、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、5週間に1回、6週間に1回、又は7週間に1回以下投与する。いくつかの実施形態において、グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストを、1日1回、1日2回、又は1日3回投与する。いくつかの実施形態において、グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストを、週1回、週2回、又は週3回投与する。いくつかの実施形態において、グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストを、月1回、月2回、又は月3回投与する。いくつかの実施形態において、グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストを、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、5週間に1回、6週間に1回、又は7週間に1回以下投与する。
【0142】
適応症
本明細書で説明されている方法、化合物、ペプチド、及び組成物を使用して、対象の肝疾患を処置し得る。「対象」という用語は、本明細書で提供されるPNPLA3発現の阻害剤及びGLP-1/グルカゴンアゴニストペプチドの組み合わせによる処置を必要とする任意の対象(特に、哺乳動物対象)を意味する。哺乳動物対象として、ヒト、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、クマ、乳牛、類人猿、サル、オランウータン、及びチンパンジー等が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、対象はヒト対象である。いくつかの実施形態において、対象は、ヒト対象である。一実施形態において、対象は、雄対象である。
【0143】
本明細書で使用される場合、「それを必要とする対象」は、処置することが望ましい個体を指しており、例えば、肝疾患を有する対象を指す。いくつかの実施形態において、本開示は、肝疾患(例えば、NASH及び又はNAFLD)を処置する方法を提供する。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、脂肪症から非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)及び肝硬変に至る多様な肝疾患を含み得る。NAFLDは、著しいアルコール摂取、脂肪合成薬物療法、又は遺伝性障害がない状態で、肝臓に5重量%超の脂肪が蓄積されるものとして定義され得る(例えば、Kotronen et al,Arterioscler Thromb.Vasc.Biol.2008,28:27-38を参照されたい)。
【0144】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、炎症及び肝障害の徴候があるNAFLDであり得る。いくつかの実施形態において、NASHは、大滴性脂肪症、肝細胞の風船様腫大、及び小葉の炎症性浸潤によって組織学的に定義され得る(Sanyal,Hepatol.Res.2011.41:670-4)。いくつかの研究では、NASHは、一般的な集団の2~3%に影響を及ぼすものと推定されている。肥満症又は糖尿病等の他の病態がある場合には、いくつかの研究から、推定罹患率が、それぞれ7%及び62%に増大することが報告されている(例えば、Hashimoto et al,J.Gastroenterol.2011.46(1):63-69を参照されたい)。
【0145】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、肝疾患、NAFLD、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝硬変、肝細胞癌、アルコール性肝疾患、アルコール性脂肪性肝炎(ASH)、HCV肝炎、慢性肝炎、遺伝性ヘモクロマトーシス、又は原発性硬化性胆管炎の処置に好適である。本明細書で提供されるある特定の実施形態は、肝損傷、脂肪症、肝線維症、肝炎、肝瘢痕若しくは肝硬変、肝不全、肝腫大、トランスアミナーゼの上昇、又は肝脂肪の蓄積を動物において低減させる化合物及び組成物を対象とする。
【0146】
いくつかの実施形態において、対象は、二次適応症を有し得る(例えば、体重若しくは体脂肪の減少、体重若しくは体脂肪の維持を促進することが望ましいか又は特定の期間にわたり体重増加を予防するか若しくは最小限に抑えることが望ましい肥満対象又は肥満傾向のある対象)。いくつかの実施形態において、肝疾患は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)である。いくつかの実施形態において、肝疾患は、非アルコール性脂肪性肝炎である。いくつかの実施形態において、肝疾患は、肝線維症である。
【0147】
いくつかの実施形態において、本開示は、肝疾患を有する対象の肝臓における脂肪肝を軽減する方法であって、この対象に、i)パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有3(PNPLA3)発現の阻害剤と、ii)グルカゴン受容体及び/又はグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体のアゴニストとを投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、対象の総脂肪肝は、PNPLA3発現の阻害剤、又はグルカゴン受容体GLP-1受容体のアゴニストを単独で投与した場合の総脂肪肝と比較して軽減される。いくつかの実施形態において、対象の総脂肪肝は、PNPLA3発現の阻害剤、又はグルカゴン受容体GLP-1受容体のアゴニストを単独で投与した場合の総脂肪肝と比較して少なくとも30%軽減される。いくつかの実施形態において、対象の総脂肪肝は、PNPLA3発現の阻害剤、又はグルカゴン受容体GLP-1受容体のアゴニストを単独で投与した場合の総脂肪肝と比較して、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、又は少なくとも60%軽減される。
【0148】
いくつかの実施形態において、対象の総脂肪肝は、PNPLA3発現の阻害剤、又はグルカゴン受容体GLP-1受容体のアゴニストを単独で投与した場合の総脂肪肝と比較して少なくとも30%軽減される。いくつかの実施形態において、対象の総脂肪肝は、PNPLA3発現の阻害剤、又はグルカゴン受容体GLP-1受容体のアゴニストを単独で投与した場合の総脂肪肝と比較して、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、又は少なくとも60%軽減される。
【0149】
いくつかの実施形態において、本開示は、非アルコール性脂肪性肝疾患を有する対象の肝臓における炎症を軽減する方法であって、この対象に、i)パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有3(PNPLA3)発現の阻害剤と、ii)グルカゴン受容体及び/又はグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体のアゴニストとを投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、対象の肝臓における炎症は、PNPLA3発現の阻害剤、又はグルカゴン受容体GLP-1受容体のアゴニストを単独で投与した場合の肝臓における炎症と比較して少なくとも50%軽減される。いくつかの実施形態において、対象の肝臓における炎症は、PNPLA3発現の阻害剤、又はグルカゴン受容体GLP-1受容体のアゴニストを単独で投与した場合の肝臓における炎症と比較して、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、又は少なくとも75%軽減される。
【0150】
いくつかの実施形態において肝疾患を有する対象の肝コラーゲンを減少させる方法であって、この対象に、i)パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有3(PNPLA3)発現の阻害剤と、ii)グルカゴン受容体及び/又はグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体のアゴニストとを投与することを含む方法。いくつかの実施形態において、対象の肝コラーゲンは、PNPLA3発現の阻害剤、又はグルカゴン受容体GLP-1受容体のアゴニストを単独で投与した場合の肝コラーゲンと比較して少なくとも25%減少する。いくつかの実施形態において、対象の肝コラーゲンは、PNPLA3発現の阻害剤、又はグルカゴン受容体GLP-1受容体のアゴニストを単独で投与した場合の肝コラーゲンと比較して、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、又は少なくとも50%減少する。
【0151】
医薬製剤
いくつかの実施形態において、本開示は、パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有3(PNPLA3)発現の阻害剤、並びにグルカゴン受容体及び/又はグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体のアゴニストと、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的に許容される組成物を提供する。
【0152】
「組成物」又は「医薬組成物」という用語は、本明細書で提供されるPNPLA3発現の阻害剤、並びにグルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストを、例えば、処置を必要とする対象(例えば、肝疾患を有するヒト対象)に投与される薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤と一緒に含む組成物を指す。
【0153】
「薬学的に許容される」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、合理的なベネフィット/リスク比と釣り合った、過剰な毒性又は他の合併症がない、ヒト及び動物の組織との接触に適切である組成物を指す。「医薬組成物」又は「医薬製剤」は、個体への投与に好適な物質の混合物を含み得る。例えば、医薬組成物は、1種又は複数種の化合物又はその塩と、滅菌水溶液とを含み得る。いくつかの実施形態において、医薬製剤は、薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む。「薬学的に許容される担体又は希釈剤」は、個体への投与に使用するのに好適なあらゆる物質を意味する。例えば、薬学的に許容される担体は、滅菌水溶液であり得、例えば、PBS又は注射水であり得る。
【0154】
いくつかの実施形態において、医薬製剤は、薬学的に許容される塩を含む。「薬学的に許容される塩」は、オリゴマー化合物又はオリゴヌクレオチド等の化合物の生理学的に及び薬学的に許容される塩(即ち、親化合物の所望の生物活性を保持し、且つ望ましくない毒性学的影響を付与しない塩)を意味する。
【0155】
さらに提供されるのは、代謝性疾患(例えば、肝疾患)の処置のために製剤化されている、本明細書で提供されるPNPLA3発現の阻害剤並びにグルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストの有効量を含む組成物(例えば、医薬組成物)である。「有効量」とは、単一用量又はシリーズの一部としてのいずれかで、対象に投与した場合に、処置(例えば、肝疾患の処置)に有効な、本明細書で提供されるPNPLA3発現の阻害剤並びにグルカゾン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストの量のことである。この量は、処置を受ける全ての対象について一定用量であり得るか、又は処置しようとする対象の体重、健康状態、及び体調、要望される減量又は体重維持の程度、ペプチドの製剤化、医学的状況の専門的評価、並びに他の関連因子に応じて変動し得る。
【0156】
本開示の組成物を、既知の方法に従って製剤化し得る。好適な調製方法は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th Edition,A.R.Gennaro,ed.,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.(1995)で説明されており、この文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。組成物は、種々の形態であり得、水溶液、乳濁液、ゲル、懸濁液、凍結乾燥形態、又は当該技術分野で既知の任意の他の形態が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、組成物は、例えば、希釈剤、結合剤、安定剤、及び防腐剤を含む、薬学的に許容される添加剤を含み得る。製剤化されると、本開示の組成物を、対象に直接投与し得る。
【0157】
本開示の組成物で使用可能な担体は、当該技術分野で公知であり、例えば、サイログロブリン、アルブミン、例えば、ヒト血清アルブミン、破傷風トキソイド、及びポリアミノ酸、例えば、ポリL-リシン、ポリL-グルタミン酸、インフルエンザ、B型肝炎ウイルスコアタンパク質等が挙げられるが、これらに限定されない。種々の水性担体を使用し得、例えば、水、緩衝化水、0.8%生理食塩水、0.3%グリシン、ヒアルロン酸等を使用し得る。組成物を、従来の公知の滅菌技法により滅菌し得るか、又は滅菌濾過し得る。得られた組成物を、そのまま用いるためにパッケージングし得るか、又は凍結乾燥させ得、凍結乾燥調製物を、投与前に滅菌溶液と組み合わせる。組成物は、生理的状態に近づけるのに必要とされる薬学的に許容される助剤物質を含み得、例えば、pH調整剤及び緩衝剤、等張化剤、浸潤剤等、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンラウリン酸モノエステル、トリエタノールアミンオレアート(triethanolamineoleate)等を含み得る。いくつかの実施形態において、組成物は、非経口投与用に製剤化されている。
【0158】
いくつかの実施形態において、本開示は、i)PNPLA3発現の阻害剤と、ii)グルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストとを含むキットを提供する。いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤、並びにグルカゴン受容体及び/又はGLP受容体のアゴニストは、キット中において同一の剤形である。いくつかの実施形態において、PNPLA3発現の阻害剤、並びにグルカゴン受容体及び/又はGLP-1受容体のアゴニストは、キット中において異なる剤形である。
【0159】
本明細書に引用される全ての参考文献(例えば、特許、特許出願、論文、教科書等)、及びこれらに引用される参考文献は、それらが既に引用されていない限り、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0160】
実施例1-PNPLA3サイレンシング阻害と、インクレチンベースの療法であるGLP-1及びグルカゴン受容体二重アゴニストとの組み合わせは、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、及び肝繊維症の改善に対して優れた効力を有する
序論
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)及びそのより進行した発病型である非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、多くの増大する人口に影響を及ぼす満たされない医療ニーズである(Younossi et al Nat Rev Gastroenterol Hepatol,2018,DOI:10.1038/nrgastro.2017.109)。NAFLDは、アルコール摂取以外の原因により引き起こされる過剰な肝脂肪蓄積(脂肪肝)と定義されており、NAFL、NASH、線維症、肝硬変を含む。脂肪肝は、個人差はあるが線維症を伴うか又は伴うことなく、脂肪性肝炎、NASHへと進行し、最終的には、感受性がある個体では、肝硬変、肝不全、及び肝細胞癌へと至る(Friedman et al Nat Med,2018,DOI:10.1038/s41591-018-0104-9)。
【0161】
NAFLD及びNASHには、強力な遺伝要素がある。これらの状態と関連する最も一般的な変異は、パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有3(PNPLA3)遺伝子のrs738409変異体(148M)である(Carlsson et al Aliment Pharmacol Ther,2020,DOI:10.1111/apt.15738)。肝臓におけるPnpla3サイレンシングは、マウスPnpla3遺伝子のヒトリスク対立遺伝子変異体(148M)を持つように遺伝子操作されたマウスモデルにおいて、NAFLD、NASH、及び関連する肝線維症を改善する(Linden et al Mol Metab,2019,DOI:10.1016/j.molmet.2019.01.013)。
【0162】
肥満及び2型糖尿病(T2DM)は、NAFLD及びNASHの発症の主要な危険因子であり、体重を減少させてグルコースホメオスタシスを改善するインクレチンホルモンによる処置がNAFLD及びNASHを改善することが分かっている。そのようなインクレチンホルモンとして、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体、GLP-1受容体及びグルカゴン受容体の両方、又はGLP-1及び胃抑制ポリペプチド(GIP)受容体に結合するペプチド類似体が挙げられる(Newsome et al NEJM,2020,DOI:10.1056/NEJMoa2028395;Ambry et al Lancet,2018,DOI:10.1016/S0140-6736(18)30726-8;Boland et al Nat Metab,2020,DOI:10.1038/s42255-020-0209-6+Hartman et al Diabetes Care,2020,DOI:10.2337/dc19-1892;Kannt et al Diabetes Obes Metab,2020,DOI:10.1111/dom.14035)。
【0163】
PNPLA3サイレンシング阻害と、インクレチンホルモン受容体の活性化との併用処置により、NAFLD、NASH、及び肝線維症の処置への相加的な有益効果を得ることができるという仮説が立てられた。このことを調べるために、ヒトPNPLA3 I148M NASHリスク対立遺伝子の遺伝子操作マウスモデルを、NASH誘発食餌を摂取させつつ使用した。次いで、このマウスを、下記で処置した:1)対照アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO);2)Pnpla3 ASO;3)バランスのとれたGLP-1受容体及びグルカゴン受容体の二重アゴニストペプチドであるコタデュチド;又は4)Pnpla3 ASOとコタデュチドとの両方の組み合わせ。
【0164】
本研究から、PNPLA3 ASOサイレンシング阻害処置と、インクレチン模倣処置(コタデュチドに例示される)とを組み合わせることにより、NAFLD、NASH、及び肝線維症に対して驚くべき優れた有益な処置効果が得られることが初めて実証される。この併用処置により得られた結果は、それぞれの単独処置と比較して相乗効果を示す。
【0165】
材料及び方法
マウスPnpla3 cEt 5’-GalNAc3コンジュゲート型cEt ASO及びコタデュチド
マウスPnpla3遺伝子(5’-TATTTTTGGTGTATCC-3’)(配列番号37)を標的とする最適で強力なマウスS拘束エチル(cEt)修飾16mer ASOを使用した(Linden et al Mol Metab,2019,DOI:10.1016/j.molmet.2019.01.013)。このマウスPnpla3 ASOを、皮下投与後のインビボにおける肝細胞標的化をさらに増強させるために、3分岐型N-アセチルガラクトサミン(GalNAc3)との5’-コンジュゲートにより修飾した。化学的に一致したスクランブル対照のGalNAc3コンジュゲート型ASO(5’-GGCCAATACGCCGTCA-3’)(配列番号38)を使用して、標的ノックダウンの特異性を実証した。コタデュチド(MEDI0382)は、GLP-1受容体及びグルカゴン受容体のアゴニズムのバランスをとるように操作されている(GLP-1受容体親和性への約5:1のバイアスがある)(Henderson et al Diabetes Obes Metab,2016,DOI:10.1111/dom.12735)。
【0166】
動物
全ての動物実験は、人道的保護のもとで実施され、スウェーデンのGothenburg Ethics Committee for Experimental Animalsによって承認された。保有設備は、実験動物ケア評価認証協会(AAALAC)から完全な認可を受けている。既に説明されている相同組換えを使用して、マウスPnpla3遺伝子のアミノ酸148位のイソロイシンコドンをメチオニンコドンに置き換えることにより、ヒトPNPLA3 I148M変異を、マウスPnpla3遺伝子に導入した(Linden et al Mol Metab,2019,DOI:10.1016/j.molmet.2019.01.013)。ヘテロ接合性Pnpla3148I/Mマウスを交雑させて、薬理学研究のための実験用ホモ接合性Pnpla3148M/Mノックインマウスを作製した。全ての実験動物を、既に説明されているように、研究開始前にPCRを使用して正しい遺伝子型を有することを検証し、終了後にPCRを使用して再度検証した(Linden et al Mol Metab,2019,DOI:10.1016/j.molmet.2019.01.013)。全ての動物を、アスペン材チップの床敷材及び巣の材料を使用した透明のmakrolonケージに収容し、保有設備の温度(21±1℃)及び湿度(50±10%)を制御した。12時間の昼/夜サイクルで、マウスに水道水及び食餌を自由に与えた。
【0167】
雄Pnpla3148M/Mマウス(6~8週齢)に、22週間にわたり、脂肪(40kcal %脂肪(非トランス脂肪Primex Shortening)、果糖(20kcal %)、及びコレステロール(2%)が多い食餌(NASH食餌;D16022301、Research Diets,New Brunswick,NJ)を給餌した。次いで、このマウスを、体重に基づいて試験群に割り当て、同一のNASH食餌を給餌し、14週間にわたり、1)対照ASO+生理食塩水、2)Pnpla3 ASO+生理食塩水、3)対照ASO+コタデュチド、又は4)Pnpla3 ASO+コタデュチドのいずれかを投与した。ASOを、ビヒクルとして生理食塩水を使用して、1週間当たり2回の皮下注射により、5mg/kg/週で投与した。コタデュチドを、ビヒクルとして生理食塩水を使用して、毎日の皮下注射により、1nmol/kgで投与した。コタデュチド処置を施さなかったマウスに、毎日ビヒクル(生理食塩水)を注射して、全てに動物に、同一回数の皮下注射を行った。試験全体にわたり、体重を記録した。屠殺時に、絶食していないマウスを、イソフルラン(Forene,Abbot Scandinavia AB,Sweden)で安楽死させ、血液を採取して血漿を単離し、肝臓を採取して、断片(全てのマウスで左側葉の同一の位置)を、組織学的検査のためにPBS中4%ホルムアルデヒドで固定するか、又は液体N2で急速凍結して-80℃で保存した。
【0168】
肝臓組織学
4μm厚のホルムアルデヒド固定パラフィン包埋マウス肝臓切片(1匹のマウス当たり1つの肝臓切片)を、ヘマトキシリン・エオシン(HE)で通常通り染色した。隣接切片を、コラーゲン1A1に関して免疫組織学的に染色した(Col1A1,LS-C343921,BioSite,USA)。スライドを、Panoramic Scan II(3Dhistech,Hungary)でスキャンし、デジタル画像を、画像解析プログラムVisiopharm(バージョン2020.03.0.7300,Visiopharm,Horsholm,Denmark)を使用して、ガレクチン-3又はコラーゲン1A1の総切片面積当たりの染色面積を検出することにより解析した。
【0169】
脂肪肝を、HE染色された肝臓切片の評価により決定した。総脂肪肝を、切片の面積の割合として脂質滴の総量を測定することにより決定した。大滴性脂肪症を、切片の面積の割合として大きな脂質滴の量を測定することにより決定した。小滴性脂肪症を、切片の面積の割合として小さい脂質滴の量を測定することにより決定した。
【0170】
肝マクロファージを、様々な肝臓切片をガレクチン-3(Mac2)で染色し、染色された切片の割合を決定することにより決定した。
【0171】
NAFLD活動性スコア(NAS)を、Kleiner他(Kleiner et al Hepatology,2005,DOI:10.1002/hep.20701)により報告された方法に従って決定した。NASは、脂肪肝スコア(脂肪症5%未満=スコア0、5%~33%=スコア1、33%超~66%=スコア2、66%超=スコア3)、及び炎症スコア(病巣なし=スコア0、200×視野当たり2個未満の病巣=スコア1、200×視野当たり2~4個の病巣=スコア2、200×視野当たり4個超の病巣=スコア3)の組み合わせに基づいていた。肝細胞の膨化変性は、どのマウス肝臓にも見出されず、このことは、ヒトNASH病理とは対照的に前臨床げっ歯類NASHモデルではめったに観察されないことから予想外ではなかった。全ての組織学的評価を、処置を知らない委員会認定の獣医病理学者により実施した。
【0172】
RNA調製及びqPCR
RNeasy Mini Kit(Qiagen,Germany)を使用して、急速凍結した肝臓組織からRNAを単離した。cDNAキット(ThermoFisher Scientific,Stockholm,Sweden)による逆転写により、cDNAテンプレートを作製し、QuantStudio 7 Flex装置(Applied Biosystems,Stockholm,Sweden)によるリアルタイム定量PCRに使用した。市販の完全なアッセイを使用して、マウスPnpla3 mRNAの発現を解析した(Mm00504420_m1,TaqMan,Life Technologies Europe,Stockholm,Sweden)。結果を、フォワードプライマー5’-GAGGAATCAGATGAGGATATGGGA-3’(配列番号39)、リバースプライマー5’-AAGCAGGCTGACTTGGTTGC-3’(配列番号40)、及び参照遺伝子としてのFAM-TAM-標識プローブ5’-TCGGTCTCTTCGACTAATCCCGCCAA-3’(配列番号41)(Sigma-Aldrich)により、マウスリボソームタンパク質ラージP0(Rplp0、36B4)に対して正規化した。
【0173】
統計解析
処置群間の差違を、一元ANOVA、その後のTukeyの事後検定(GraphPad Prism v.8.0.1.、GraphPad Software,CA)を使用して調べた。肝臓組織に由来するNAFLD活動性スコア(NAS)に関する処置群間の差違を、順序回帰分析、その後のSidak法を使用するファミリーワイズエラー率の補正により解析した。0.05未満のp値を、有意とみなした。データを、個体値及び平均±平均の標準誤差(SEM)で示す。
【0174】
結果及び結論
Pnpla3 ASO及びコタデュチドの併用処置は、NASH誘発食餌を給餌したPnpla3
148M/Mマウスにおいて、NAFLD、NASH、及び肝線維症の改善に相加的効果を有する。Pnpla3 ASO及びコタデュチドの併用処置を試験するために、ホモ接合性Pnpla3
148M/Mノックインマウスに、36週間にわたり、NASH誘発食餌を給餌した。最後の14週間の間に、マウスをまた、Pnpla3 ASO又はコタデュチドの単独又は組み合わせによっても処置し、対照ASO処置動物と比較した(全てのマウスに、同一回数の皮下注射を行った)。コタデュチド処置は、対照ASO処置動物と比較して、処置期間中に体重増加を減少させたが、Pnpla3 ASO処置は減少させなかった(
図1A)。Pnpla3 ASO処置は、肝臓Pnpla3 mRNAレベルを97%以上顕著に低下させたが、コタデュチド処置は低下させなかった(
図1B)。
【0175】
総脂肪肝(
図2A)、大滴性脂肪症(
図2B)、及び小滴性脂肪症(
図2C)を、説明したように決定した。染色された切片を、
図2Dに示し、各切片に関して、面積当たりの総脂質滴の割合を示す。
図2A~Cで見られるように、Pnpla3 ASO及びコタデュチドによる併用処置は、いずれかの処置単独と比較して、全てのタイプの脂肪症を有意に軽減させた。肝臓マクロファージの割合(
図3A)及び炎症スコア(
図3B)を、説明されている各処置に関して決定した。
図3A及び3Bに示されるように、肝臓マクロファージ及び炎症スコアは、対照と比較して、全ての処置群で減少した。
【0176】
NAFLD活動性スコア(NAS)を、上記で説明したように算出した。Pnpla3 ASO処置は、対照ASO処置動物と比較して、NASを減少させた(p<0.005)(
図4)。コタデュチド処置も、対照ASO処置動物と比較してNASを減少させた(p<0.001)(
図4)。重要なことに、Pnpla3 ASO及びコタデュチドの併用処置は、対照ASO処置動物と比較して(p<0.001)、Pnpla3 ASO処置動物と比較して(p<0.001)、及びコタデュチド処置動物と比較して(p<0.001)、NASを減少させた(
図4)。これらの結果から、Pnpla3ノックダウン阻害剤と、二重GLP-1及びグルカゴン受容体アゴニストとの併用処置が、NAFLD及びNASHの改善に対する有益な処置効果を改善することが示される。
【0177】
Pnpla3 ASO処置は、肝臓コラーゲン1A1含有量として測定される肝線維症を軽減する傾向があり、同様に、コタデュチド処置も、肝臓コラーゲン1A1含有量を減少させる傾向があった(
図5)。重要なことに、Pnpla3 ASO及びコタデュチドの併用処置は、対照ASO処置動物と比較して肝臓コラーゲン1A1含有量を有意に減少させた(p<0.005)(
図5)。そのため、これらの結果から、Pnpla3ノックダウン阻害と二重GLP-1及びグルカゴン受容体アゴニストとの併用処置は、肝線維症の改善に対して優れた有益な処置効果を有することが分かる。
【配列表】
【国際調査報告】