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特表2024-522168脂肪性肝炎及び/又はその合併症を罹患又は発症するリスクを判定するためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(54)【発明の名称】脂肪性肝炎及び/又はその合併症を罹患又は発症するリスクを判定するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240604BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20240604BHJP
   A61B 8/14 20060101ALI20240604BHJP
   A61B 6/50 20240101ALI20240604BHJP
【FI】
A61B5/055 380
A61B6/03 560T
A61B6/03 560Z
A61B8/14
A61B6/50 500Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575551
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2024-02-01
(86)【国際出願番号】 EP2022065769
(87)【国際公開番号】W WO2022258788
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】21178620.7
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】511294534
【氏名又は名称】ウニベルシテ カソリーク デ ルーベン
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ナチット,マキシム
(72)【発明者】
【氏名】ルクレルク,イザベル
【テーマコード(参考)】
4C093
4C096
4C601
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA26
4C093FF18
4C093FF19
4C093FF28
4C096AC07
4C096AD14
4C096DC21
4C096DC28
4C601JB34
4C601JB48
4C601JC06
(57)【要約】
本発明は、対象の脂肪性肝炎及び/又はその合併症を罹患又は発症するリスクを判定するためのコンピュータで実施される方法であって、対象の少なくとも1つの画像(20)と、いずれも対象から事前に取得された少なくとも1つの臨床データ及び/又は生物学的データ(21)を受信するステップ(11)と、少なくとも1つの骨格筋を含む関心領域(ROI)について得られた少なくとも1つのレディオミクス特徴量に基づいて少なくとも1つの画像上の脂肪浸潤不均一性スコアを計算するステップ(12)と、計算された脂肪浸潤不均一性スコアと対象から事前に取得された少なくとも1つの臨床データ及び/又は生物学的データとを組み合わせるステップ(13)と、計算された脂肪浸潤不均一性スコアと少なくとも1つの臨床データ及び/又は生物学的データ(21)との組み合わせに基づいて対象の脂肪性肝炎及び/又はその合併症を罹患又は発症するリスク(30)を判定するステップ(14)とを含む方法に関する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の脂肪性肝炎及び/又はその合併症を罹患又は発症するリスクを判定するためのコンピュータで実施される方法であって、
- 医用イメージング技術で事前に取得された前記対象の少なくとも1つの画像(20)と、前記対象から事前に取得された少なくとも1つの臨床データ及び/又は生物学的データ(21)を受信するステップ(11)と、
- 少なくとも1つの画像上の脂肪浸潤不均一性スコアを計算するステップ(12)であって、前記脂肪浸潤スコアは、少なくとも1つの骨格筋を含むように少なくとも1つの画像上に画定された関心領域(ROI)について得られた少なくとも1つのレディオミクス特徴量に基づいて計算され、前記少なくとも1つのレディオミクス特徴量はエネルギーである、ステップと、
- 前記計算された脂肪浸潤不均一性のスコアと前記対象から事前に取得された少なくとも1つの臨床データ及び/又は生物学的データ(21)とを組み合わせるステップ(13)と、
- 前記計算された脂肪浸潤不均一性のスコアと前記少なくとも1つの臨床データ及び/又は生物学的データ(21)との組み合わせに基づいて、前記対象の脂肪性肝炎及び/又はその合併症を罹患又は発症するリスク(30)を判定するステップ(14)と、
を含む方法。
【請求項2】
前記計算された脂肪浸潤不均一性スコアと前記対象の少なくとも1つの臨床データ及び/又は生物学的データとを組み合わせるステップ(13)は、機械学習モデルを使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脂肪浸潤スコアは、エネルギー及び少なくとも1つの他のレディオミクス特徴量に基づいて計算される、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの他のレディオミクス特徴量は、画像ピクセル又は画像の少なくとも1つの領域から得られる一次グレーレベル統計量である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの他のレディオミクス特徴量は、平均絶対偏差、二乗平均平方根、一様性、最小強度、最大強度、平均強度、メジアン、強度範囲、強度分散、強度標準偏差、歪度、尖度、分散、及びエントロピーから選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの他のレディオミクス特徴量は、画像の共起行列から得られる二次グレーレベル統計量であり、前記二次グレーレベル統計量は、コントラスト、隣接する画像領域又はピクセル間の相関、エネルギー、第1のタイプの均一性、第2のタイプの均一性、逆差分モーメント、Sum average、Sum variance、Sum entropy、自己相関、Cluster prominence、Cluster shade、Cluster tendency、非類似性、正規化逆差分モーメント、正規化逆差分、逆分散;Run-length gray level statistics、Short run emphasis、Long run emphasis、Run percentage、Gray-level non-uniformity、Run length non-uniformity、Low gray level run emphasis、High gray level run emphasis、外周長、断面積、主軸長、最大直径、及び体積などの形状及びサイズベースの特徴;Small area emphasis、Large area emphasis、Intensity variability、Size-zone variability、Zone percentage、Low intensity emphasis、High intensity emphasis、Low intensity small area emphasis、High intensity small area emphasis、Low intensity large area emphasis、及びHigh intensity large area emphasisなどのグレーレベルのサイズ-ゾーンマトリクスベースの特徴量から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記脂肪浸潤不均一性スコアは、それぞれ重み係数によって重み付けされる、エネルギー及び少なくとも1つの他のレディオミクス特徴量の関数である、請求項3~請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの臨床データは、年齢、性別、及び代謝関連の有害事象の個人歴又は家族歴から選択される、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記機械学習モデルはランダムフォレストである、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記脂肪性肝炎の合併症は、肝細胞癌(HCC)、線維化(例えば、肝線維化)、肝硬変、及び心血管疾患から選択される、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記対象は、代謝異常状態、肥満症、メタボリックシンドローム、過体重、及び/又は脂肪肝疾患、特に非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)を患っている、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記対象は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を患っている、請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記医用イメージング技術は、コンピュータ断層撮影法、磁気共鳴画像法、又は超音波である、請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
対象の脂肪性肝炎及び/又はその合併症を罹患又は発症するリスクを判定するためのデバイス(1)であって、
- 医用イメージング技術で事前に取得された前記対象の少なくとも1つの画像(20)と、前記対象から事前に取得された少なくとも1つの臨床データ及び/又は生物学的データ(21)とを受信するように構成された少なくとも1つの入力部と、
- 少なくとも1つのプロセッサであり、
・少なくとも1つの画像上の脂肪浸潤不均一性スコアを計算し(42)、前記脂肪浸潤スコアは、少なくとも1つの骨格筋を含むように少なくとも1つの画像上に画定された関心領域について得られた少なくとも1つのレディオミクス特徴量に基づいて計算され、前記少なくとも1つのレディオミクス特徴量はエネルギーであり、
・前記計算された脂肪浸潤不均一性スコアと前記対象から事前に取得された少なくとも1つの臨床データ及び/又は生物学的データ(21)を組み合わせ(43)、
・前記計算された脂肪浸潤不均一性スコアと前記少なくとも1つの臨床データ及び/又は生物学的データの組み合わせに基づいて対象の脂肪性肝炎及び/又はその合併症を罹患又は発症するリスク(30)を判定する(44)、
ように構成された少なくとも1つのプロセッサと、
- 前記リスク(30)を提供するように適合された少なくとも1つの出力部と、
を備えるデバイス。
【請求項15】
プロセッサによって実行されるときに、請求項1~請求項13のいずれか一項に記載の対象の脂肪性肝炎及び/又はその合併症を罹患又は発症するリスクを予測するための方法を実行するように適合されたソフトウェアコードを含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝臓病学における診断の分野に関係し、より正確には対象の脂肪性肝炎及び/又はその合併症の診断に関係する。特に、本発明は、画像処理を通じて脂肪性肝炎を罹患又は発症するリスクを判定するためのデバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪性肝炎は、急速に進行する脂肪肝疾患であり、特に非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)スペクトルに含まれる。脂肪性肝炎、特に非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、肝線維化に向けて進行する固有の特性を有し、肝線維化は進行性肝瘢痕化を引き起こし、肝硬変につながる又は肝細胞癌(肝臓癌)に向かう可能性がある。
【0003】
NAFLDは、肝脂肪化の存在、すなわち、肝細胞内の脂質の蓄積を特徴とし、前記脂肪化は、脂肪生成薬の使用、遺伝性疾患、又は先天性代謝異常がない状態で発症する。NAFLDは、脂肪肝(NAFL)とNASHとの2つの病理サブタイプからなる。NAFLでは、脂肪肝疾患は、肝臓に脂肪が存在するが、炎症又は肝臓損傷がほとんど又はまったくないことを特徴とする。NASHでは、肝線維化の有無にかかわらず、肝脂肪化に加えて肝細胞損傷(風船様変性)を伴う炎症が存在する(Chalasani N et al., Gastroenterology 2012;142:1592-609)。
【0004】
肝臓癌は、成人における最も一般的なタイプの原発性肝臓癌であり、世界中で癌関連死亡の第2位の主な原因である。肝細胞癌(HCC)は肝臓癌全体の70~85%を占める。NAFLDは、世界で最も蔓延している慢性肝疾患であり、HCC発症の危険因子として立証されている。NAFLD関連のHCCの有病率は驚くほど増加している。Newcastle(英国)で行われた研究では、2000年から2010年までの間にNAFLD関連のHCCが10倍以上増加したことが報告されている。2030年までに、米国ではHCCの発生率が137%上昇すると予測されており、これらの新規症例のおよそ20%はNAFLDに関連している。したがって、この膨大な有リスク集団のモニタリングを最適化するために、NAFLD患者におけるHCC発症リスクを評価するツールがすぐにでも必要とされている。
【0005】
NAFLD、NASH、及びHCCは、一般に、生検によって採取された肝サンプルの肝臓病理学専門家による組織学検査を通じて診断される。肝生検は、対象の肝疾患の存在及び/又は重症度を評価するためのゴールドスタンダードと依然として考えられているが、特に、観察者間又は観察者内での再現性が低いことと、サンプルサイズが小さいことに起因するサンプリングバイアスの可能性があるため、限界がある。さらに、肝生検は侵襲的な医療手技であり、したがって、合併症のリスクと多額の費用を依然として伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、対象の脂肪性肝炎、特にNASH、及び/又はその合併症の存在を特異的に正確に評価するための非侵襲的な方法が依然として必要とされている。特に、このような非侵襲的な方法は、対象の脂肪性肝炎、特にNASH、及び/又はその合併症の存在を評価する、NAFLD又はNASHを患っている患者のNASH合併症の発症をモニタリングする、及びNASHの治療を受けている対象の治療反応をモニタリングするための便利で実用的な方法となるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、対象の脂肪性肝炎及び/又はその合併症を罹患又は発症するリスクを判定するためのコンピュータで実施される方法であって、
- 医用イメージング技術で事前に取得された対象の少なくとも1つの画像と、対象から事前に取得された少なくとも1つの臨床データ及び/又は生物学的データを受信するステップと、
- 少なくとも1つの画像上の脂肪浸潤不均一性スコアを計算するステップであり、前記脂肪浸潤スコアは、少なくとも1つの骨格筋を含むように少なくとも1つの画像上に画定された関心領域(ROI)について得られた少なくとも1つのレディオミクス特徴量に基づいて計算され、少なくとも1つのレディオミクス特徴量はエネルギーであるステップと、
- 計算された脂肪浸潤不均一性スコアと対象から事前に取得された少なくとも1つの臨床データ及び/又は生物学的データとを組み合わせるステップと、
- 計算された脂肪浸潤不均一性スコアと少なくとも1つの臨床データ及び/又は生物学的データとの組み合わせに基づいて対象の脂肪性肝炎及び/又はその合併症を罹患又は発症するリスクを判定するステップと、
を含む方法に関する。
【0008】
一実施形態によれば、脂肪性肝炎は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である。
【0009】
一実施形態によれば、計算された脂肪浸潤不均一性スコアと対象の少なくとも1つの臨床データ及び/又は生物学的データとを組み合わせるステップは、機械学習モデルを使用することを含む。
【0010】
一実施形態によれば、脂肪浸潤スコアは、エネルギー及び少なくとも1つの他のレディオミクス特徴量に基づいて計算される。
【0011】
一実施形態によれば、少なくとも1つの他のレディオミクス特徴量は、画像ピクセル又は画像の少なくとも1つの領域から得られる一次グレーレベル統計量である。
【0012】
一実施形態によれば、少なくとも1つの他のレディオミクス特徴量は、平均絶対偏差、二乗平均平方根、一様性、最小強度、最大強度、平均強度、メジアン、強度範囲、強度分散、強度標準偏差、歪度、尖度、分散、及びエントロピーから選択される。
【0013】
一実施形態によれば、少なくとも1つの他のレディオミクス特徴量は、画像の共起行列から得られる二次グレーレベル統計量であり、前記二次グレーレベル統計量は、コントラスト、隣接する画像領域又はピクセル間の相関、エネルギー、第1のタイプの均一性、第2のタイプの均一性、逆差分モーメント、Sum average、Sum variance、Sum entropy、自己相関、Cluster prominence、Cluster shade、Cluster tendency、非類似性、正規化逆差分モーメント、正規化逆差分、逆分散;Run-length gray level statistics、Short run emphasis、Long run emphasis、Run percentage、Gray-level non-uniformity、Run length non-uniformity、Low gray level run emphasis、High gray level run emphasis、外周長、断面積、主軸長、最大直径、及び体積などの形状及びサイズベースの特徴;Small area emphasis、Large area emphasis、Intensity variability、Size-zone variability、Zone percentage、Low intensity emphasis、High intensity emphasis、Low intensity small area emphasis、High intensity small area emphasis、Low intensity large area emphasis、及びHigh intensity large area emphasisなどのグレーレベルのサイズ-ゾーンマトリクスベースの特徴量から選択される。一実施形態では、二次グレーレベル統計量には、Gray-Level Cooccurrence Matrix(GLCM)、Gray-Level Run-length Matrix(GLRLM)、Gray-Level Size Zone Matrix(GLSZM)、及びGray-Level Distance Zone Matrix(GLDZM)、Neighborhood Gray-Tone Difference Matrix(NGTDM)、又はNeighborhood Gray-Level Dependence Matrix(NGLDM)などの様々な特徴量サブグループが含まれる。
【0014】
一実施形態によれば、脂肪浸潤不均一性スコアは、それぞれ重み係数によって重み付けされる、エネルギー及び少なくとも1つの他のレディオミクス特徴量の関数である。
【0015】
一実施形態によれば、少なくとも1つの臨床データ及び/又は生物学的データは、年齢、性別、及び代謝関連の有害事象の個人歴又は家族歴から選択される。
【0016】
一実施形態によれば、機械学習モデルはランダムフォレストである。
【0017】
一実施形態によれば、脂肪性肝炎の合併症は、肝細胞癌(HCC)、線維化(例えば、肝線維化)、肝硬変、及び心血管疾患から選択される。
【0018】
一実施形態によれば、対象は、代謝異常状態、肥満症、メタボリックシンドローム、過体重、及び/又は脂肪肝疾患、特に非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)を患っている。
【0019】
一実施形態によれば、対象は、NASHを患っている。
【0020】
一実施形態によれば、医用イメージング技術は、コンピュータ断層撮影法、磁気共鳴画像法、又は超音波である。
【0021】
本発明はさらに、対象の脂肪性肝炎(NASH)及び/又はその合併症を罹患又は発症するリスクを判定するためのデバイスであって、
- 医用イメージング技術で事前に取得された対象の少なくとも1つの画像と、対象から事前に取得された少なくとも1つの臨床データ及び/又は生物学的データを受信するように構成された少なくとも1つの入力部と、
- 少なくとも1つのプロセッサであり、
・少なくとも1つの画像上の脂肪浸潤不均一性スコアを計算する、前記脂肪浸潤スコアは、少なくとも1つの骨格筋を含むように少なくとも1つの画像上に画定された関心領域について得られた少なくとも1つのレディオミクス特徴量に基づいて計算され、少なくとも1つのレディオミクス特徴量はエネルギーである、
・計算された脂肪浸潤不均一性スコアと対象から事前に取得された少なくとも1つの臨床データ及び/又は生物学的データを組み合わせる、
・計算された脂肪浸潤不均一性スコアと少なくとも1つの臨床データ及び/又は生物学的データとの組み合わせに基づいて対象のNASH及び/又はその合併症を罹患又は発症するリスクを判定する、
ように構成された少なくとも1つのプロセッサと、
- 前記リスクを提供するように適合された少なくとも1つの出力部と、
を備えるデバイスに関する。
【0022】
リスクを判定するためのデバイスは、特に、コンピュータにインストールされるスタンドアロンソフトウェア、クラウドベースのサービス、又はアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)として、一緒に又は別々に、適切な関連するユーザインターフェースと共に様々な様態で実装することができる。
【0023】
プロセッサによって実行されるときに上記の実施形態のいずれか1つに係る対象の脂肪性肝炎(NASH)及び/又はその合併症を罹患又は発症するリスクを予測するための方法を実行するように適合されたソフトウェアコードを含むコンピュータプログラム。
【0024】
さらに、本開示は、プログラムがプロセッサによって実行されるときに上記の実行モードのいずれかに準拠したリスクを判定するための方法を実行するように適合されたソフトウェアコードを含むコンピュータプログラムに関する。
【0025】
本開示はさらに、本開示に準拠したリスクを判定するための方法を実行するべくコンピュータによって実行可能な命令のプログラムを明白に具現化する、コンピュータによって読み出し可能な一時的でないプログラム記憶装置に関係する。
【0026】
このような一時的でないプログラム記憶装置は、限定されないが、電子デバイス、磁気デバイス、光学デバイス、電磁気デバイス、赤外線デバイス、又は半導体デバイス、或いは上記の任意の適切な組み合わせとすることができる。以下により具体的な例:ポータブルコンピュータディスケット、ハードディスク、ROM、EPROM(Erasable Programmable ROM)又はフラッシュメモリ、ポータブルCD-ROM(Compact-Disc ROM)を提供するが、当業者であれば容易に理解できるように、これらは単なる例示であって、網羅的なリストではないことを理解されたい、。
【0027】
定義
本発明において、以下の用語は以下の意味を有する:
【0028】
「適合された」及び「構成された」という用語は、本開示では、材料又はソフトウェア手段(ファームウェアを含む)を通じてもたらされるかどうかにかかわらず、本デバイスの最初の構成、その後の適応又は補完、或いはそれらの任意の組み合わせを同様に広く包含するものとして用いられる。
【0029】
「プロセッサ」という用語は、ソフトウェアを実行できるハードウェアに限定されると解釈されるべきではなく、一般的に、例えば、コンピュータ、マイクロプロセッサ、集積回路、又はプログラマブルロジックデバイス(PLD)を含み得る処理デバイスを指す。プロセッサはまた、コンピュータグラフィックス及び画像処理又は他の機能のために利用されるかどうかにかかわらず、1つ又は複数のグラフィックス処理ユニット(GPU)を包含し得る。さらに、関連する機能及び/又は結果として得られる機能の実行を可能にする命令及び/又はデータは、例えば、集積回路、ハードディスク、CD(コンパクトディスク)、DVD(デジタルバーサタイルディスク)などの光ディスク、RAM(ランダムアクセスメモリ)、又はROM(リードオンリーメモリ)などの任意のプロセッサ可読媒体に格納され得る。命令は、特に、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの任意の組み合わせに格納され得る。
【0030】
「画像」は、所与の時点で少なくとも1つの骨格筋を含む対象の少なくとも一部を現在含んでいるシーンの視覚表現に関係する。したがって、画像は、フレーム又はフレームのセットであり得る。
【0031】
「画像セグメンテーション」は、後続の処理を容易にすることを目的として、画像ピクセルにラベルを割り当てることによってデジタル画像を複数のセグメントにパーティショニングすることからなる。
【0032】
「機械学習(ML)」は、トレーニングデータから抽出される期待される出力とコンピュータモデルによって計算される評価される出力との間のギャップの削減を通じてコンピュータモデルのパラメータの調整を可能にするトレーニングデータに基づいて、従来の様態で経験を通じて自動的に改善するコンピュータアルゴリズムを表す。
【0033】
「データセット」は、データ駆動型の予測又は決定を行うべくML数学モデルを構築するために使用されるデータのコレクションである。「教師あり学習」(すなわち、ラベル付きトレーニングデータの形態の既知の入出力例から関数を推論する)では、3つのタイプのMLデータセット(MLセットとも称される)が、通常、それぞれ、3つの種類のタスク専用になり、この3つの種類のタスクとは、「トレーニング」、すなわち、パラメータのフィッティングと、「検証」、すなわち、MLハイパーパラメータ(学習プロセスを制御するために用いられるパラメータ)の調整と、「テスト」、すなわち、数学モデルを構築するために利用されるトレーニングデータセットとは独立して、後者のモデルが満足のいく結果を提供するかどうかをチェックすることである。
【0034】
「レディオミクス特徴量」は、データキャラクタライゼーションアルゴリズムを使用して放射線医用画像から抽出された特徴量を指す。レディオミクスの概念は、生物医学画像には、人間の目では知覚できず、したがって、生成された画像の従来の目視検査を通じて入手できない、疾患に特有のプロセスの情報が含まれているという前提に基づいている。信号強度の空間分布と、ピクセルの相互関係の数学的抽出を通じて、レディオミクスはテクスチャ情報を定量化する。さらに、画像の強度、形状、又はテクスチャの視覚的に感知できる差異をレディオミクスによって定量化することができ、したがって、画像解釈の主観的性質を克服することができる。したがって、レディオミクスは、診断プロセスの自動化を意味するものではなく、既存の診断プロセスにさらなるデータを提供するものである。
レディオミクス又は強度ベースの統計的特徴量は、関心領域(ROI)内で強度がどのように分布しているかを表す。ROI強度マスクに含まれるN個のボクセルの強度のセットは、Xgl={Xgl,1,Xgl,2,...,Xgl,Nv}で表される。強度ヒストグラムは、元の強度分布Xglを強度ビンに離散化することによって生成することができる。X={Xd,1,Xd,2,...,Xd,Nv}を、ROI強度マスクにおけるN個のボクセルのN個の離散化された強度のセットとする。H={n,n,...,nNg}を、Xにおける各離散化された強度iの頻度カウントnを有するヒストグラムとする。次いで、各離散化された強度iについての出現確率pは、p=n/Nとして近似される。ROIに割り当てられたボクセルのグレーレベルの平均μ及び標準偏差σが計算される。例えば、「エネルギー」は、
【数1】
のように計算されるレディオミクス特徴量を指す。「エントロピー」は、
【数2】
のように計算されるレディオミクス特徴量を指す。「歪度」は、
【数3】
のように計算されるレディオミクス特徴量を指す。「尖度」は、
【数4】
のように計算されるレディオミクス特徴量を指す。「分散」は、
【数5】
のように計算されるレディオミクス特徴量を指す。レディオミクス計算のための画像入力は、生の医用画像、又はグレー値離散化又は強度外れ値フィルタリングなどの当業者が習得した技術で前処理された医用画像とすることができる。
【0035】
「生物学的データ」は、対象から採取されたサンプルで測定され得るパラメータを指す。例えば、前記パラメータは、一般に用いられる臨床検査によって対象から採取された血液サンプル、血漿サンプル、又は血清サンプルで測定され得る。血糖(blood sugar)(血中グルコース(blood glucose)又はglycemiaとも呼ばれる)、コレステロール、高密度リポタンパク(HDL)、低密度リポタンパク(LDL)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)が、生物学的データの限定ではない例である。
【0036】
「臨床データ」は、臨床検査を使用することなく、対象の外部観察から回収されたデータを指す。年齢(Age)、人種(Race)、性別(Sex)、拡張期血圧(DBP)及び収縮期血圧(SBP)、家族歴(FamHX)、身長(HT)、体重(WT)、胴囲(Waist)及び腰囲(Hip)、ボディマス指数(BMI)が、臨床データの限定ではない例である。
【0037】
「AUROC」は、ROC曲線下面積の略であり、診断検査の精度の指標である。統計学では、受信者操作特性(ROC)、又はROC曲線は、その弁別閾値が変化する際のバイナリ分類器システムのパフォーマンスを示すグラフィカルプロットである。この曲線は、0から1までの連続する値での特異度(普通は特異度1)に対する感度をプロットすることで作成される。ROC曲線及びAUROCは統計の分野でよく知られている(すなわち、モデルがクラスをどの程度区別できるかを示す)。
【0038】
「NAFLD」(非アルコール性脂肪肝疾患)は、肝脂肪化の存在を特徴とし、前記脂肪化は、多量飲酒、脂肪生成薬の使用、遺伝性疾患又は先天性代謝異常がない状態で発症する。NAFLDは、その疾患の様々な重症度ステージ、それほど重症度ステージが高くないNAFL(非アルコール性脂肪肝)、及びより重症度ステージが高いNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)を含む。
【0039】
「NASH」(非アルコール性脂肪性肝炎)は、線維化の有無にかかわらず、NASの3つの要素、すなわち、脂肪化、小葉内炎症、及び風船様変性のそれぞれについてのスコア≧1の存在を指す。
【0040】
本発明との関連での「リスク」は、特定の期間(例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12か月、又は2~7年)にわたってイベントが発生する確率に関するものであり、対象の「絶対」リスク又は「相対」リスクを意味し得る。絶対リスクは、関連する時間コホートの測定後の実際の観察を参照するか、又は関連する期間にわたって追跡されている統計的に有効なヒストリカルコホートから生じる指標値を参照して測定することができる。相対リスクは、低リスクコホートの絶対リスク又は平均集団リスクと比較した対象の絶対リスクの比を指し、臨床リスク因子がどのようにして評価されるかによって異なることがある。
【0041】
「スコア」は、マーカの数学的組み合わせによって得られる任意の数値を指す。一実施形態では、スコアは、数学関数によって得られる、境界のある数値である。一実施形態では、スコアは0から1までの範囲であり得る。
【0042】
診断検査の「感度」は、診断標的をもつ患者のうち、そのように適正に識別される患者の割合(すなわち、診断標的をもつ患者のうち、診断検査で陽性であると適正に識別される患者のパーセンテージ)を表す。
【0043】
診断検査の「特異度」は、診断標的をもたない患者のうち、そのように適正に識別される患者の割合(すなわち、診断標的をもたない患者のうち、診断検査で陰性であると適正に識別される患者のパーセンテージ)を表す。
【0044】
「脂肪化」は、肝細胞内の脂肪滴としての、肝臓への脂肪の蓄積を指す。
【0045】
「脂肪性肝炎」は、肝臓の炎症、肝細胞の損傷、及び肝臓への脂肪の蓄積を特徴とする、代謝機能障害に関連する脂肪肝疾患を指す。
【0046】
「対象」は、哺乳類、好ましくはヒトを指す。
【0047】
「骨格筋」は、体性神経系の制御下にある随意筋を指す。
【0048】
「合併症」又は「その合併症」は、対象の脂肪性肝炎、特にNASHと関連付けられる有害事象、又は脂肪性肝炎、特にNASHの進行を指す。脂肪性肝炎の合併症は、例えば、線維化(例えば、肝線維化)、肝硬変、肝細胞癌(HCC)、及び心血管疾患である。
【0049】
「エネルギー」は、画像内のボクセル値の大きさの尺度である。これは、画像アレイの均一性の尺度である。より大きな値は、これらの値の二乗和がより大きくなることを意味し、したがって、より高い均一性、又は離散強度値のより狭い範囲に反映される。この特徴量はボリュームが交絡変数になる。
【0050】
「エントロピー」は、画像値の不確実性/ランダム性を表す。これは画像値をエンコードするのに必要な情報の平均量を表す。
【0051】
「歪度」は、平均値を中心とした値の分布の非対称性を表す。テールがどこまで延びているか及び分布の大半がどこに集中しているかに応じて、この値は正又は負となることがある。
【0052】
「尖度」は、画像のROIにおける値の分布の「ピーク度」の尺度である。より高い尖度は、分布の大半が平均よりもテールに向けて集中していることを意味する。その逆に、より低い尖度は、分布の大半が平均値に近いスパイクに向けて集中していることを意味する。
【0053】
「分散」は、各強度値の平均値からの距離の二乗の平均である。これは、平均の周りの分布の広がりの尺度である。
【0054】
「線維化」は、本発明では特に、線維状蛋白又は糖蛋白(コラーゲン、プロテオグリカン…)を含む、瘢痕組織からなる肝臓の病理学的病変である肝線維化を指す。
【0055】
「NAFLD活動性スコア(NAS)」は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の組織学的特徴量をスコアリングするシステムを指す。NASは、0から8までの範囲であり、脂肪化、小葉内炎症、及び風船様変性のスコアの合計に対応する。NASスコアリングシステムは、NASHの組織学的診断に一般的に用いられ、NASの3つの要素のそれぞれについてのスコア≧1の存在として定義される。一実施形態では、NASスコア≧4は、活動的なNASHを定義する。一実施形態では、NASスコア<3は、非活動的なNASHを定義する。
【0056】
「NAFLD線維化スコア」は、肝臓の瘢痕化量を推定するアルゴリズムである。このアルゴリズムは、6つの臨床及び検査室検査、すなわち、年齢、ボディマス指数、空腹時低血糖又は糖尿病の存在、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)とアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の比、血小板数、及び血清アルブミン濃度に基づいている。
【0057】
「組織学的炎症スコア」は、肝臓標本の組織学検査(すなわち、肝生検)で見られる炎症のグレードに基づくスコアである。これは、顕微鏡高倍率視野での炎症細胞の病巣数を指す重症度(なし、軽度、中等度、重度)と肝小葉内の位置に従って特徴付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】本開示に準拠した、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)及び/又はその合併症を発症するリスクを予測するためのデバイスの特定のモードを概略的に表すブロック図である。
図2図1の予測するためのデバイスで実行される連続するステップを示すフローチャートである。
図3】NAFLD集団の人口統計的及び組織学的特徴量を示す表である。
図4】HCCがあるNAFLD患者では、HCCがない患者よりも筋脂肪化度が高いことを示す表である。
図5】HCCはNAFLD患者における筋脂肪化度の有意な予測因子であることを示す表である。
図6】筋脂肪化が、性別、年齢、ジェンダー、内臓脂肪、NASH活動性、及び線維化重症度とは独立して、NASHに関連したHCCと強く関連付けられることを示す表である。
図7】第3腰椎レベルでの筋脂肪濃度を評価するための磁気共鳴画像法-プロトン密度脂肪率(MRI-PDFF)仮想筋生検を表す図である。
図8】脂肪浸潤不均一性を示す3つの筋における脂肪量を測定したNASH患者において、HCCが重度の筋脂肪化と関連付けられることを示す図である。
図9】NASH患者におけるHCCを予測するための平均PDFFを上回る一次レディオミクス特徴量を表す図である。
図10】HCC有病率は、このNAFLDコホートにおける線維化重症度によって説明されないことを示す表である。
図11】筋脂肪化がNAFLD患者におけるHCCと特異的に関連付けられることを示す表である。
図12】脊柱起立筋のPDFFの増加が、NASH患者におけるHCCのより高いリスクと関連付けられることを示す表である。
図13】患者の選択のフローチャートである。
図14】HCCは、NAFL患者における脂肪浸潤の増加と関連していないことを示すグラフである。
図15図15a及び図15bは、絶対脂質含量が、非HCC患者よりもNASHに関連したHCC患者の方が高いことを表すグラフである。
図16図16a、図16b、図16c、及び図16dは、HCC重症度とは独立して、非HCC患者と比較したときに、NASHとHCCがある患者において筋脂肪浸潤がより重度であることを示すグラフである。
図17図17a、図17b、図17c、図17d、及び図17eは、NASHが、NAFL患者と比較した脂肪浸潤の増加と関連付けられることを示す図である。
図18図18a、図18b、及び図18cは、NAFLD線維化スコアが脊柱起立筋のエネルギー、尖度、及びエントロピーと相関することを示すグラフである。
図19図19a、図19b、図19c、及び図19dは、NAFLD活動性スコア(NAS)が脚の歪度と相関することと、組織学的炎症スコアが脚の歪度及びエネルギー並びに腰筋の歪度と相関することを示すグラフである。
図20】脊柱起立筋の分散と心血管疾患のリスクを示すSCORE2との相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本説明は、本開示の原理を例示するものである。したがって、本明細書では明示的に説明又は図示していないが、本開示の原理を具現化し、その範囲内に含まれる様々な構成を考案できることが当業者にはわかるであろう。
【0060】
本明細書に列挙されるすべての例及び条件付きの文言は、本開示の原理及び当該技術分野の発展に発明者が貢献する概念を読者が理解するのを助ける教示の目的を意図しており、そのような具体的に列挙された例及び条件に限定されないと解釈されるべきである。
【0061】
さらに、本開示の原理、態様、及び実施形態、並びにその具体例を列挙する本明細書のすべての記述は、その構造的均等物と機能的均等物の両方を包含することを意図している。さらに、そのような均等物は、現在公知の均等物と、将来開発される均等物、すなわち、構造に関係なく同じ機能を果たす、開発される任意の要素との両方を含むことを意図している。
【0062】
したがって、例えば、本明細書に示されるブロック図は、本開示の原理を具現化する例示的な回路の概念図を表し得ることが当業者にはわかるであろう。同様に、任意のフローチャート、流れ図などは、コンピュータ可読媒体で実質的に表され、コンピュータ又はプロセッサが明示的に示されているかどうかにかかわらず、そのようなコンピュータ又はプロセッサによって実行され得る様々なプロセスを表すことが理解されるであろう。
【0063】
図面に示されている様々な要素の機能は、専用ハードウェア、並びに、適切なソフトウェアと関連してソフトウェアを実行できるハードウェアの使用を通じて提供され得る。プロセッサによって提供されるとき、機能は、単一の専用プロセッサ、単一の共有プロセッサ、又はそのうちのいくつかは共有され得る複数の個々のプロセッサによって提供され得る。
【0064】
図面に示されている要素は、様々な形態のハードウェア、ソフトウェア、又はそれらの組み合わせで実装され得ることを理解されたい。好ましくは、これらの要素は、プロセッサ、メモリ、及び入力/出力インターフェースを含み得る、1つ又は複数の適切にプログラムされた汎用デバイス上のハードウェアとソフトウェアの組み合わせで実装される。
【0065】
本開示は、図1で例示されるように、対象の脂肪性肝炎、特に非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)及び/又はその合併症を罹患又は発症するリスクを判定するためのデバイス1の特定の機能的実施形態に関連して説明される。
【0066】
デバイス1は、骨格筋における脂肪浸潤不均一性を表す画像データ20及び対象に関連する臨床データ及び/又は生物学的データ21に基づいて、対象の脂肪性肝炎、特にNASH及び/又はその合併症を罹患又は発症するリスク予測30を生成するように適合される。
【0067】
対象の少なくとも1つの画像20は、コンピュータ断層撮影法、磁気共鳴画像法、又は超音波などの医用イメージング技術を使用して生成され得る。
【0068】
画像は、グレースケール画像又はカラー画像であり得る。画像データ21は、デジタルデータなどの数値データを含み得る。これらのデータは、画像圧縮の当業者にはよく知られているように、例えば、JPEG(Joint Photographic Experts Group)、JPEG2000、DICOM、又はHEIF(High Efficiency Image File Format)規格に準拠した圧縮形式の個々の画像データを含み得る。画像は、DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)によって認識される圧縮形式の個々の画像データを含む。
【0069】
したがって、本発明はさらに、対象の脂肪性肝炎、特にNASH、及び/又はその合併症を罹患又は発症するリスクを判定するための方法であって、本明細書に記載のデバイス1の使用を含む方法に関係する。
【0070】
一実施形態では、この方法は、脂肪性肝炎、特にNASH、及び/又はその合併症を罹患又は発症するリスクが対象にあるかどうかを評価するための方法である。
【0071】
一実施形態では、この方法は、対象の脂肪性肝炎、特にNASH、及び/又はその合併症を診断する、すなわち、前記対象が脂肪性肝炎、特にNASH、及び/又はその合併症を罹患しているかどうかを判定するための方法である。
【0072】
一実施形態では、この方法は、脂肪性肝炎、特にNASH、及び/又はその合併症を発症するリスクが対象にあるかどうかを予測するための方法である。一実施形態では、この方法は、将来的に、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は11か月間にわたって、又は来年、或いは今後2~7年以内に、対象が脂肪性肝炎、特にNASH、及び/又はその合併症を発症するリスクを判定するためのものである。
【0073】
一実施形態では、この方法は、NAFLDの存在及び/又は重症度を評価するためのものである。一実施形態では、NAFLDの重症度は、線維化スコア、NAFLD活動性スコア(NAS)、及び/又は組織学的炎症スコアによって評価される。線維化スコアは、NAFLD患者の肝線維化を推定する。線維化スコアは、6つの変数、すなわち、年齢、高血糖、ボディマス指数、血小板数、アルブミン、及びAST/ALT比を含む。NASは、小葉内炎症、肝細胞風船様変性、及び線維化の、3つのパラメータのスコアの測定を含む。NASスコアリングシステムは、NAFLDの重症度の評価及びNASHの組織学的診断に一般的に用いられ、NASの3つの要素のそれぞれについてのスコア≧1の存在として定義される。一実施形態では、NASスコア≧4は、活動的なNASHを定義する。一実施形態では、NASスコア<3は、非活動的なNASHを定義する。一実施形態では、脂肪性肝炎の臨床関連の定義は常に進化/改善されており、将来的には機械学習アルゴリズムによって検出されるパターンに基づいて定義される可能性がある。
【0074】
一実施形態では、この方法は、脂肪性肝炎、特にNASHを罹患していない対象の脂肪性肝炎、特にNASHを発症するリスクを判定するためのものである。
【0075】
一実施形態では、この方法は、合併症のないNASHを罹患している対象における、NASHの合併症を発症するリスクを判定するためのものである。一実施形態では、この方法は、NASHを罹患している対象における、NASHの合併症を発症するリスクを判定するためのものである。
【0076】
一実施形態では、この方法は、対象におけるNASHを診断する、及びNASHの合併症を発症するリスクを判定するためのものである。
【0077】
本発明はさらに、脂肪性肝炎、特にNASH、及び/又はその合併症を罹患又は発症するリスクがある対象に適合したケアを提供するための方法であって、
- 本明細書に記載の方法を用いて対象の脂肪性肝炎、特にNASH、及び/又はその合併症を罹患又は発症するリスクを判定するステップと、
- 前記対象に適合したケアを提供するステップと、
を含む方法に関する。
【0078】
一実施形態では、対象は、脂肪性肝炎、特にNASH、及び/又はその合併症を罹患又は発症するリスクがあり、適合したケアは、例えば、0、1、2、3、4、5、6、又は7か月後にNASH及び/又はその合併症を罹患又は発症するリスクを判定するための方法を繰り返すことによって、例えば、脂肪性肝炎、特にNASH又はその合併症の発症について対象をモニタリングすることを含み得る。
【0079】
一実施形態では、対象は、NASH及び/又はその合併症を罹患又は発症するリスクがあり、適合したケアは、例えば、NASHを治療する又はNASHの合併症を治療するための処置を対象に施すことを含み得る。
【0080】
一実施形態によれば、本発明の方法は、臨床データ及び/又は生物学的データ21を受信して、それらを、計算された脂肪浸潤不均一性スコアと組み合わせることを含む。
【0081】
対象から同様に事前に取得される臨床データ及び/又は生物学的データ21は、年齢、性別、生物学的データ、及び代謝関連の有害事象の個人歴又は家族歴に関する情報などの、画像データ20とは独立して収集された情報を含み得る。これらのデータは、医療データベースから取得することもできる。臨床データの他の限定ではない例としては、人種、拡張期血圧及び収縮期血圧、身長、体重、胴囲及び腰囲、及びボディマス指数が挙げられるがこれらに限定されない。
【0082】
一実施形態では、本発明の方法は、計算された脂肪浸潤不均一性スコアと少なくとも1つの臨床データ及び/又は生物学的データ21との組み合わせを参照値と比較するステップをさらに含む。
【0083】
一実施形態では、参照値は、参照集団において測定された少なくとも1つの臨床データ及び/又は生物学的データ21とともに、計算された脂肪浸潤不均一性スコアに対応する。一実施形態では、参照値は、例えば、同様の年齢範囲を有する対象、或いは同じ又は類似の人種グループの対象を含む、集団研究から導出される。
【0084】
一実施形態によれば、参照値は、実質的に健康な1人以上の対象からの少なくとも1つの臨床データ及び/又は生物学的データとともに、計算された脂肪浸潤不均一性スコアの尺度から導出される。一実施形態では、「実質的に健康な対象」は、脂肪性肝炎、特にNASH、又はその合併症と診断されていない対象である。一実施形態では、「実質的に健康な対象」は、脂肪性肝炎、特にNASH、又はその合併症を罹患又は発症するリスクがあると診断又は識別されていない対象である。
【0085】
一実施形態によれば、参照値は、脂肪性肝炎、特にNASHである、及び/又は脂肪性肝炎、特にNASHの合併症を伴っていると診断された1人以上の対象からの少なくとも1つの臨床データ及び/又は生物学的データとともに、計算された脂肪浸潤不均一性スコアの尺度から導出される。一実施形態では、参照値は、脂肪性肝炎、特にNASHを発症するリスクがある、及び/又は脂肪性肝炎、特にNASHの合併症を伴っていると以前に判定された1人以上の対象からの少なくとも1つの臨床データ及び/又は生物学的データとともに、計算された脂肪浸潤不均一性スコアの尺度から導出される。
【0086】
予測するためのデバイス1は、デバイス1の機械学習モデルパラメータを後述する適正な様態で設定するのに適したトレーニング用のデバイスと関連付けられる。
【0087】
ここで説明するデバイス1及びトレーニング用のデバイスは、多用途であり、代替的に又は任意の累積的様態で実行できるいくつかの機能を備えているが、本開示の範囲内の他の実装には、本機能の一部のみを有するデバイスが含まれる。
【0088】
デバイス1及びトレーニング用のデバイスのそれぞれは、有利には、上述の機能を果たし、上述の効果又は結果をもたらすように設計、構成、及び/又は適合された装置又は装置の物理的部分である。代替的な実装では、デバイス1及びトレーニング用のデバイスのいずれかは、同一のマシンにグループ化されているか、又は異なる、場合によってはリモートのマシンにグループ化されているかどうかにかかわらず、装置又は装置の物理的部分のセットとして具現化される。デバイス1及び/又はトレーニング用のデバイスは、例えば、クラウドインフラストラクチャ上に分散され、ユーザがクラウドベースのサービスとして利用可能な機能を有していてもよく、又はAPIを通じてアクセス可能なリモート機能を有していてもよい。
【0089】
予測するためのデバイス1及びトレーニング用のデバイスは、同一の装置又は装置のセットに一体化され、同じユーザを対象としてもよい。他の実装では、トレーニング用のデバイスの構造は、デバイス1の構造から完全に独立していてもよく、他のユーザに提供されてもよい。例えば、デバイス1は、リスク予測のためにオペレータが利用できるパラメータ化されたモデルを有していてもよく、このモデルは、トレーニング用のデバイスを使用して他のプレーヤによって上流で行われた以前のトレーニングから全て設定される。
【0090】
以下では、モジュールは、物質的な物理的に別個のコンポーネントではなく、機能エンティティとして理解されるべきである。したがって、それらは、同一の有形の具体的コンポーネントに一緒にグループ化して、又はいくつかのそのようなコンポーネントに分散して具現化することができる。また、これらのモジュールのそれぞれは、それ自体が少なくとも2つの物理コンポーネント間で共有される可能性がある。さらに、モジュールは、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの混合形式でも実装される。それらは、好ましくは、デバイス1及びトレーニング用のデバイスの少なくとも1つのプロセッサ内で具現化される。
【0091】
デバイス1は、対象の少なくとも1つの画像(すなわち、画像データ)20及び少なくとも1つの臨床データ及び/又は生物学的データ21、並びにML(機械学習)モデルのMLパラメータを受信するための受信モジュール41を備える。対象の少なくとも1つの画像20、少なくとも1つの臨床データ及び/又は生物学的データ21、及び/又はMLパラメータは、1つ又は複数のローカル又はリモートデータベース10に格納され得る。後者は、任意の種類の適切なストレージ手段から入手可能なストレージリソースの形態をとることができ、これは、特に、おそらくSSD(Solid-State Disk)内のフラッシュメモリなどの、RAM又はEEPROM(Electrically-Erasable Programmable Read-Only Memory)とすることができる。有利な実施形態では、MLパラメータは、トレーニング用のデバイスを含むシステムによって事前に生成されている。代替的に、MLパラメータは、通信ネットワークから受信される。
【0092】
デバイス1は、随意的に、受信した画像データ20、場合によっては臨床データ及び/又は生物学的データ21を前処理するための前処理モジュール(図示せず)をさらに含む。前処理モジュールは、効率的な信頼できる処理のために、特に、受信した画像データ20を標準化するように適合され得る。これは、例えば画像解凍によって画像データ20を変換することができる。様々な構成に従って、前処理モジュールは、後続の処理ステージに適した任意の様態で、任意の可能な組み合わせで、上記の機能の一部のみ又はすべてを実行するように適合される。
【0093】
有利なモードでは、前処理モジュールは、画像を標準化するべく画像データ20を前処理するように構成される。これにより、デバイス1による下流の処理の効率が高まる可能性がある。このような標準化は、利用される画像が、場合によっては異なるイメージングシステムを含む異なるソースから生じるときに、特に有用である可能性がある。
【0094】
標準化は、画像データ20及びトレーニングデータセットの画像に(例えばトレーニング用のデバイスによって)同様の様態で有利に適用される。特に、デバイス1は、所与の種類のソースから来る画像データを取り扱うことができ、そのパラメータは、異なるタイプのソースで得られる画像データに基づくトレーニングから得られる。標準化のおかげで、ソース間の差異が解消される又は最小にされる。これにより、デバイス1がより効率的で信頼性のあるものになり得る。
【0095】
デバイス1はまた、対象の少なくとも1つの骨格筋における脂肪浸潤不均一性を表すスコアを計算するための計算モジュール42を備える。受信モジュール41、前処理モジュール、及び計算モジュール42による動作は必ずしも時間的に連続する必要はなく、任意の適切な様態で重複、並行、又は交互してもよいことが観察され得る。例えば、計算モジュール42が以前に取得した画像データ20を取り扱っている間に、新しい画像データを時間の経過とともに次々に受信し、前処理してもよい。代替的な例では、完全なシーケンスの取得に対応する画像データ20のバッチが、計算モジュール42に送り出される前に完全に受信され、前処理されてもよい。
【0096】
計算モジュール42は、少なくとも1つの骨格筋をセグメント化するべく画像データ20にセグメンテーションアルゴリズムを適用するように構成されてもよい。代替的に、データ画像上の少なくとも1つの骨格筋の境界に関する情報が、ユーザによって手動で描画された後にモジュール42の入力として受信されてもよい。セグメンテーション又は手動描画の結果は、少なくとも1つの骨格筋に関連した画像データ20のピクセルを含む画像データ20上の関心領域(ROI)を定義するためにモジュール42によって使用される。
【0097】
少なくとも1つの骨格筋は、背部の筋又は下肢の筋であり得る。下肢の筋は、特に超音波を使用して観察される。一実施形態では、少なくとも1つの骨格筋は、腰筋、腰方形筋、脊柱起立筋、斜筋、及び直筋からなる群から選択される。一実施形態では、下肢は脚の筋であり得る。一実施形態では、脚の筋は、腓腹筋、ヒラメ筋、及び前脛骨筋からなる群から選択された複数の筋を含む。
【0098】
計算モジュール42は、ROI上の少なくとも1つのレディオミクス特徴量を計算するように構成される。一実施形態では、少なくとも1つのレディオミクス特徴量はエネルギーである。実際、このエネルギーにより、有利なことに、ROIにおける(不)均一性を表すことができる。計算モジュール42は、画像ピクセル又は画像の少なくとも1つの領域から得られる一次グレーレベル統計量である少なくとも1つの他のレディオミクス特徴量も同様に計算することができる。一次グレーレベル統計量である前記他のレディオミクス特徴量は、平均絶対偏差、二乗平均平方根、一様性、最小強度、最大強度、平均強度、メジアン、強度範囲、強度分散、強度標準偏差、歪度、尖度、分散、及びエントロピーから選択され得る。一次グレーレベル統計量をレディオミクス特徴量として使用する利点は、空間的関係性に関係なく、それらが個々のボクセル値の分布、したがって、脂肪浸潤の分布を表すことである。
【0099】
一実施形態では、少なくとも1つの他のレディオミクス特徴量は、画像の共起行列から得られる二次グレーレベル統計量であり、前記二次グレーレベル統計量は、コントラスト、隣接する画像領域又はピクセル間の相関、エネルギー、第1のタイプの均一性、第2のタイプの均一性、逆差分モーメント、Sum average、Sum variance、Sum entropy、自己相関、Cluster prominence、Cluster shade、Cluster tendency、非類似性、正規化逆差分モーメント、正規化逆差分、逆分散; Run-length gray level statistics、Short run emphasis、Long run emphasis、Run percentage、Gray-level non-uniformity、Run length non-uniformity、Low gray level run emphasis、High gray level run emphasis、外周長、断面積、主軸長、最大直径、及び体積などの形状及びサイズベースの特徴;Small area emphasis、Large area emphasis、Intensity variability、Size-zone variability、Zone percentage、Low intensity emphasis、High intensity emphasis、Low intensity small area emphasis、High intensity small area emphasis、Low intensity large area emphasis、及びHigh intensity large area emphasisなどのグレーレベルのサイズ-ゾーンマトリクスベースの特徴量から選択される。二次グレーレベル統計量をレディオミクス特徴量として使用する利点は、それらが筋内不均一性と並行するボクセル強度の空間配置の尺度を提供し、骨格筋内の脂肪の浸潤パターンのキャラクタライゼーションをさらに洗練することである。
【0100】
計算モジュール42は、少なくとも1つのレディオミクス特徴量を使用して、調査中の少なくとも1つの少なくとも1つの骨格筋における脂肪浸潤不均一性を表すスコアを計算するようにも構成される。前記脂肪浸潤不均一性スコアは、それぞれ重み係数によって重み付けされる、エネルギー及び少なくとも1つの他のレディオミクス特徴量の関数であり得る。重み係数は、事前に導出され、データベース10に格納されていてもよい。
【0101】
調査中の少なくとも1つの骨格筋における脂肪浸潤不均一性を表すスコアは、判定するべきリスクに応じて様々な様態で計算することができる。一例では、脂肪性肝炎になるリスクを推定するために、脂肪浸潤不均一性スコアを、エネルギーと歪度の加重和として取得することができ、HCC(すなわち、1つの合併症)になるリスクを推定するために、脂肪浸潤不均一性スコアを、エネルギーとエントロピーの加重和として取得することができ、心血管疾患(すなわち、1つの合併症)になるリスクを推定するために、脂肪浸潤不均一性スコアを、エネルギーと分散の加重和として取得することができる。この例では、重み係数は、各レディオミクス特徴量及び各計算されるリスクに適合される。どのようにして所与の予測タスクについての関連するレディオミクス特徴量を選択し、そのレディオミクス特徴量に従って重み係数を適合させるかは当業者には公知である。
【0102】
デバイス1はまた、計算された脂肪浸潤不均一性スコアと対象から事前に取得された少なくとも1つの臨床データ及び/又は生物学的データ21とを組み合わせるように構成された組み合わせモジュール43を備える。前記組み合わせは加重和を使用して得ることができ、臨床データ及び/又は生物学的データ21が、それぞれ事前定義された重み係数で重み付けされ、計算された脂肪浸潤不均一性スコアに合計される。少なくとも1つの臨床データ及び/又は生物学的データ21は、対象の性別及び年齢、或いは任意の他の臨床又は人体測定パラメータであり得る。当業者は、所与の予測タスクについての関連する臨床データ及び/又は生物学的データ21を選択し、その臨床データ及び/又は生物学的データ21に従って事前定義された重み係数を適合させることができる。前記組み合わせは、脂肪浸潤不均一性スコアと臨床データ及び/又は生物学的データ21を入力として受信する機械学習モデルを使用して行われてもよい。機械学習モデルは、決定木又はサポートベクトルマシンなどの予測モデリング手法から選択することができる。有利な実施形態では、ランダムフォレスト又はサポートベクトルマシン又はニューラルネットワークが、いずれも疾病リスク予測において最高のパフォーマンスを発揮するモデルであるため、機械学習モデルとして使用される。機械学習モデルは、トレーニング用のデバイスで教師ありの様態でトレーニングすることができ、そのパフォーマンスは、k分割交差検証技術を使用して検証することができる。トレーニング用のデバイスでのトレーニング中に決定された機械学習パラメータは、データベース10に格納することができる。
【0103】
デバイス1は、計算された脂肪浸潤不均一性スコアと少なくとも1つの臨床データ及び/又は生物学的データ21とを組み合わせる、組み合わせモジュール43の出力に基づいて、対象の脂肪性肝炎、特に、NASH及び/又はその合併症を罹患又は発症するリスク30を判定するように構成された、判定モジュール44を備える。モジュール44は、リスク30を出力することもできる。
【0104】
モジュール44は、画像データ及び臨床データ及び/又は生物学的データについて十分な情報が入手可能である限り、リスク30をより正確に提供することができる。これは、対象が脂肪性肝炎、特にNASH、又はその合併症を患っている又は発症する確率の度合いを示す、書かれた文字列又はグラフ上の点の視覚的形態をとり得る。
【0105】
デバイス1は、ユーザインターフェース11と相互作用し、それを介してユーザは情報を入力又は検索することができる。ユーザインターフェース11は、データ、情報、又は命令を入力又は検索するのに適した任意の手段、特に、当業者によく知られている以下の手段、すなわち、スクリーン、キーボード、トラックボール、タッチパッド、タッチスクリーン、ラウドスピーカ、音声認識システムのいずれか又はいくつかを包含し得る、視覚、触覚、及び/又は音声機能を含む。
【0106】
一実施形態によれば、対象は男性である。別の実施形態では、対象は女性である。
【0107】
一実施形態によれば、対象は成人である。本発明によれば、成人は、18、19、20、又は21歳よりも上の年齢の対象である。別の実施形態では、対象は子供である。本発明によれば、子供は、例えば、17、16、15、14、13、12、11、10、又は9歳などの、21、20、19、又は18歳よりも下の年齢の対象である。
【0108】
一実施形態によれば、対象は、実質的に健康な対象であり、これは、対象が、NAFLD、NAFL、又はNASHを罹患している又は患っていると以前に診断又は識別されていないことを意味する。
【0109】
一実施形態によれば、対象は、医療的ケアを受けるのを待っている又は受けている、或いは医療処置の対象であった、対象である、又は対象となるであろう、或いは病気の発症又は進行をモニタリングされる患者、すなわち、温血動物、より好ましくはヒトである。一実施形態によれば、対象は、肝疾患又は症状(好ましくは、NAFLD、NAFL、又はNASH)の治療を受ける及び/又はその発症又は進行をモニタリングされるヒト患者である。
【0110】
一実施形態によれば、対象は、代謝異常状態、肥満症、メタボリックシンドローム、過体重、及び/又は脂肪肝疾患(特にNAFLD)を患っている。一実施形態では、対象は、肥満症、メタボリックシンドローム、過体重、及び/又は脂肪肝疾患(特にNAFLD)を患っている。一実施形態によれば、対象は、脂肪性肝炎を患っている。実施形態では、対象は、NASHを患っている。一実施形態では、本発明の方法は、脂肪性肝炎、特にNASHであると診断された対象の脂肪性肝炎、特にNASHの合併症を罹患又は発症するリスクを判定するためのものである。
【0111】
一実施形態によれば、脂肪性肝炎、特にNASHの合併症は、肝細胞癌(HCC)、線維化(例えば、肝線維化)、肝硬変、及び心血管疾患から選択される。一実施形態では、心血管疾患は、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心疾患、脳血管障害、心筋症、心不全、心臓弁膜症、及び心臓不整脈から選択される。したがって、一実施形態では、本発明の方法は、NASHであると診断された対象における炎症(例えば、肝臓の炎症)、線維化(例えば、肝線維化)、又は肝硬変、又はHCCを患うリスクを判定するためのものである。
【0112】
その自動動作において、デバイス1は、例えば以下のプロセス(図2)を実行し得る:
・いずれも対象から事前に取得された画像データ20及び臨床データ及び/又は生物学的データ21を受信する(ステップ11)、
・少なくとも1つの画像上の脂肪浸潤不均一性スコアを計算する、前記脂肪浸潤スコアは、少なくとも1つの骨格筋を含むように少なくとも1つの画像上に画定された関心領域(ROI)について得られた少なくとも1つのレディオミクス特徴量に基づいて計算される(ステップ12)、
・計算された脂肪浸潤不均一性スコアと対象から事前に取得された少なくとも1つの臨床データ及び/又は生物学的データ21とを組み合わせる(ステップ13)、
・計算された脂肪浸潤不均一性スコアと少なくとも1つの臨床データ及び/又は生物学的データとの組み合わせに基づいて対象の脂肪性肝炎特にNASH、及び/又はその合併症を罹患又は発症するリスク30を判定及び提供する(ステップ14)。
【0113】
特定の装置が、前述のデバイス1並びにトレーニング用のデバイスを具現化することができる。これは、例えば、ワークステーション、ラップトップ、タブレット、スマートフォン、又はヘッドマウントディスプレイ(HMD)に対応する。
【0114】
実施例
本発明は以下の実施例でさらに例示される。
実施例1:
材料及び方法
【0115】
この後向き研究(プロジェクト番号2017-030)は、local IRBの承認を得たものである。後ろ向き研究の性質のため、インフォームドコンセントは放棄した。2014年1月から2017年6月までの間に、肝生検又は肝切除を受け、その4か月以内にマルチエコーグラジェントエコー取得シーケンスを含む肝MRIをとった196名の患者が研究に含まれた。最初に、肝脂肪化の交絡条件(すなわち、アルコール摂取、化学療法、ウイルス感染など)をもつ患者は除外した。脂肪細胞の線維化(すなわち、脂肪化スコアが少なくとも1点、活動性スコアが0点、及び≧F3と組織学的に定義される)又はMRIで肝生検が不十分な患者は除外した。最後に、4名の患者からの取得データをアルゴリズム調整のために使用したため除外し、合計で72名の患者が分析対象となった(図3)。
【0116】
肝組織像は、肝生検(n=60)又は肝切除(n=12)に基づくものであった。肝生検/切除の適合は以下のとおりであった:NAFLD/NASH評価の患者25名、良性病変がある患者15名(肝細胞腺腫の患者5名と、限局性結節性過形成の患者10名)及び悪性病変がある患者30名(HCCが20名、胆管癌が1名、肝転移が8名)を含む限局性肝病変がある患者47名。各患者について、経験豊富な病理学者(VP)がSAFスコアに従って肝脂肪化、活動性、及び線維化を分類した。脂肪化は、S0からS3までの細胞質内脂肪滴を含む肝細胞の%によって評価され、S0:<5%、S1:5%~33%、S2:34%~66%、S3:>66%であった。活動性(A0~A4)は、風船様変性及び小葉内炎症グレードの追加によって計算した。肝線維化は、なし(F0)、軽度(F1、類洞周囲又は門脈周囲)、中等度(F2、門脈周囲及び類洞周囲)、F3(架橋線維化)、及びF4(肝硬変)として分類した。NASHはFLIPアルゴリズムで診断した。HCCの診断、並びに、サイズ及び分化度を含む腫瘍の特徴は、病理報告書から取得した。
【0117】
すべてのMRIは、1つの施設(Radiology department, Beaujon University Hospital Paris Nord、フランス、クリシー)でとられた。患者は、勾配振幅40mT/m、32チャネルフェーズアレイボディコイル、及びマルチトランスミットパラレルRF(radiofrequency)送信技術による、Philips Ingenia 3Tシステム(Philips、オランダ、ベスト)で肝臓検査を受けた。パラレルイメージング及びSENSE(sensitivity encoding)による3D mDIXONシーケンスを以下のパラメータでイメージングに使用した:繰り返し時間(TR)10.3187ミリ秒、フリップ角(FA)5°、帯域幅2653Hz/ピクセル、エコー時間:1.1520、2.3020、3.4520、4.6020、5.7520、6.9020、8.0520、及び9.2020ミリ秒。撮像マトリクスサイズは176×176×43から400×400×61であり、横方向の面内空間分解能は1.14mmから2.05mmであり、スライス厚は4mmであった。撮像時間は20秒であった。PDFF値は、T2IDEAL手法を用いて、T2緩和及び磁化率の影響について補正した。
【0118】
関心領域(ROI)は、脊柱起立筋(ES)の第3腰椎レベル、腰方形筋、腰筋、斜筋、及び直筋で両側に手動で描画され、各筋のROI内の脂質濃度(%)を反映する平均プロトン密度脂肪率(PDFF)が報告された(図7)。これらの測定は、筋脂肪浸潤測定の経験があり、整形外科文献で報告されているガイドラインに従うMN(肝組織像又はHCC状態の盲検)によって行われた。2つのタイプのROI、すなわち、(1)縁、筋間脂肪組織、及び椎骨周囲領域を避けて筋領域の中央に円形のROIを注意深く配置することによる、以下「仮想筋生検」と呼ぶ、円形ROI(図7の左)、及び(2)筋の解剖学的境界によって輪郭が描かれた「コンプリート」ROI(図7の右)を使用した。注目すべきは、解剖学的構造により、脊柱起立筋では、「コンプリート」ROIは腸肋筋及び最長筋、並びに多裂筋を含み、一方、仮想生検は多裂筋を除外し、したがって、脊柱起立筋の主要な筋束に特異的である。それにもかかわらず、どちらの場合も、便宜上、測定では「ES」と呼ばれる。仮想生検の観察者間の信頼性を評価するために、MN(上記参照)及びMDB(経験豊富な放射線科医)は、ランダムに選択された患者のサブセットのMRIにES ROIを配置した。測定の一貫性は優れていた(ICC=0.91、95%CI 0.83~0.95、n=48、p<0.001)。絶対脂質含量は、総筋面積(mm)に同じ断面のROI内のPDFFを乗算することによって計算した。
【0119】
筋の分析に用いられるレベルと同じレベルで、内臓脂肪面積は、≧50%のPDFF閾値をもつ腹部内の筋帯を裏打ちするゾーンにROIを描画することでMNによって測定された。ヒストグラムに基づくレディオミクス特徴量(一次レディオミクス特徴量、すなわち、平均、分散、歪度、尖度、エネルギー、及びエントロピー)は、MATLABアルゴリズムにより「コンプリート」筋ROIから抽出された。
【0120】
すべてのデータは、特に明記されていない限り、平均±標準偏差として表される。両側スチューデントt検定(等分散)又はウェルチt検定(不等分散)、一元配置分散分析の後にBenjamini Hochbergのポストホック、カイ二乗検定、及びGraph Pad Prism 8ソフトウェア(米国サンディエゴ)を用いる受信者動作特性(ROC)曲線分析を使用して統計解析を行った。ROCの最適なカットオフは、Youden指数と、それぞれWilson/Brown、Baptista-Pike、及びKoopmanの漸近スコア法で計算された対応する感度及び特異度、オッズ比、及び相対リスクにより判定された。多重線形及びバイナリロジスティック回帰によりSPSS v24(IBM、米国ニューヨーク)で多変量分析を行った。p<0.05の値で差が有意であるとみなされた。
【0121】
結果
患者の総数は72名、平均年齢は57±14歳で、男性の割合が高かった(65%、47/72名)(図9)。肝生検又は切除標本へのFLIPアルゴリズムによって組織学的に判定されたNASHは、患者の53%で見つかった。45名の患者に限局性病変があった(HCC20/45;44%)。HCC及び肝硬変(F4)は主にNASH患者で見つかった(図9)。しかしながら、線維化重症度によるHCCの有病率に差はなかった(図10)。
【0122】
患者を限局性病変の存在及びそのサブタイプに従って層別化し、MRI-PDFFベースの仮想筋生検により筋脂肪浸潤を評価した。限局性病変がHCCと診断されたとき、別のタイプの腫瘍(すなわち、良性、胆管癌、又は転移)がある又は限局性病変がない患者と比較して、患者の背部の筋(すなわち、腰方形筋及びES)、特にESでのPDFFが有意により高かった(図11)。筋のPDFFは、良性腫瘍、胆管癌、又は肝転移がある患者間では同様であった。したがって、HCC患者と非HCC患者との2つのグループの患者を考慮して分析を再開した。HCC患者は非HCC患者よりも年齢が高く(53±14に対して67±9、p<0.001)、内臓脂肪面積がより高かった(202±109cmに対して266±117cm)(図4)。HCC患者では、非HCC患者と比較して、背部の筋でのMRI-PDFFが有意により高かった(腰方形筋及びESにおいて、それぞれ、3.0±2.2%に対して4.7±3.6%、及び、5.7±3.0%に対して9.6±5.5%、p<0.02)。腹部の他の筋帯(すなわち、腰筋、斜筋、及び直筋)でのPDFFは、患者でHCCの有り無しにかかわらず差がなかった。
【0123】
NAFLD状態が筋脂肪浸潤とHCCとの間の関係性に影響を及ぼすかどうかをテストするために、NASHグループであるか又は非NAFLグループであるかに従って患者を層別化した(方法セクションを参照)。NAFLグループでは、筋のPDFFは、HCCの有り無しにかかわらず患者で同様であった(図14)。対照的に、NASHとHCCがある患者では、NASHがあるがHCCはない患者と比較して、筋脂肪浸潤は2倍高かった(ESにおける5.4±3.1%に対して11±5%)(図8a~b)。ESは、HCCなしのNASH患者に対してHCCありでPDFF(ESPDFFで表される)の最大の差(Δ103%、p<0.001)を呈し、さらなる分析のための参照筋として使用した。注目すべきは、ES筋面積は、NASHとHCCがある患者とNASHがあるがHCCはない患者との間で同等であった(図15a)。この所見は、NASHがあるがHCCはない患者と比較して、NASHとHCCがある患者での総脂質含有量がより高い(したがって、除脂肪筋肉量がより低い)ことと一致する(図15b)。
【0124】
HCCに加えて、年齢、性別、内臓脂肪面積、肝臓の炎症活動、及び線維化ステージなどの複数の考えられる因子が筋脂肪浸潤を決定する可能性がある。したがって、コホート全体(n=72)でのESPDFFの予測因子を定義するために線形重回帰モデルを適用した。NAFLD患者におけるESPDFFの有意な決定因子は、年齢、性別、及びHCCであったが、活動性スコア、線維化スコア、又は内臓脂肪面積ではなかった。
【0125】
多変量分析を使用して、考えられる交絡因子とは独立して、ESPDFFがHCCを有意に予測できるかどうかをテストした。年齢、性別、内臓脂肪面積、肝疾患の活動性(炎症及び風船様変性の組織学的スコア)、及び線維化ステージに合わせて調整しても、ESPDFFは、検討したモデルとは無関係に、依然としてNAFLD患者におけるHCCの独立した有意な予測因子であった(図6)。HCCとESPDFFの関連性は、NASH患者のみを考えたときにより強かった。ROC分析により、ESPDFFは、単独であるか又は他のパラメータと組み合わされるかにかかわらず、NASH患者におけるHCCをハイパフォーマンスで予測することが示された(ROC曲線下面積(AUC):0.79~0.94、すべてp<0.05)。NASH患者では、ESPDFF≧9%(Youden指数)及び≧10%(最適な特異度)が、それぞれ2.7及び6.4の、HCCのより高い相対リスクと関連付けられた(図12)。
【0126】
患者でのHCCのサイズ及び分化状態はさまざまであった。HCC患者を、HCCのサイズ(≧又は<3cm)又は分化度(高分化又は中分化)によってさらに層別化した。ESPDFF(図16a、図16c)及びES総脂質含有量(図16b、図16d)は、HCCのサイズ及び病理学的分化度によって異ならなかった。
【0127】
仮想肝生検によって測定された平均PDFFは、ES及び腰方形筋において、NASHがあるがHCCはない患者と比較して、NASHとHCCがある患者の方がより高かった(図8)。同様に、筋全体(すなわち、コンプリートROI)でのPDFFを測定したとき、平均PDFFは、ES及び腰方形筋において、NASHがあるがHCCはない患者と比較して、NASHとHCCがある患者の方がより高かった(図9a~9c)。コンプリートROIから一次レディオミクス特徴量をさらに抽出した(方法セクションを参照)。分散、歪度、又は尖度(図示せず)ではなく、筋エネルギー及びエントロピー(図9a~9c)が、HCC患者と非HCC患者を区別する高い力を有していた。ESでは、エネルギー及びエントロピーのAUROCは、それぞれ0.92(95%CI 0.82~1.00)及び0.88(95%CI 0.76~0.99、p<0.0001)で、HCC患者と非HCC患者を区別した。注目すべきは、NASH集団では、ESエネルギー及びESエントロピーは、図6の表の多変量モデル3におけるHCCの独立した予測因子であった(p=0.047及びp=0.035、ESPDFFは除外した)。NASH集団におけるHCC患者と非HCC患者を区別するためのパラメータESエネルギー(Youden指数)の最適なカットオフは0.017であり、感度0.96(95%CI 0.79~0.99)及び特異度0.75(95%CI 0.47~0.91)であった。さらに、少なくとも1つの臨床因子(例えば、年齢及び性別)と骨格筋の1つの一次レディオミクス指数(例えば、脊柱起立筋でのエネルギー)の組み合わせは、HCCがあるNASH患者とHCCがないNASH患者を区別するエネルギーのAUROCが0.97であることを示す(データは図示せず)。
【0128】
実施例2:
材料及び方法
すべての測定は、脊柱起立筋の代わりに腰筋で、実施例1と同様に行われる。実施例1と同じグループの患者がこの実施例で採用されている。
【0129】
結果
NASH患者では、NAFL患者と比べて筋脂肪浸潤不均一性がより高かった(図17a)。
【0130】
コンプリートROIから一次レディオミクス特徴量をさらに抽出した(方法セクションを参照)。図17b及び図17cに示すように、腰筋から抽出された筋エネルギーは、NASH患者と非NASH患者を区別する高い力を有する。腰筋では、NASH患者と非NASH患者を区別するための方法で用いられる筋エネルギーは、0.76のAUROCを示す(図17d)。少なくとも1つの臨床因子(例えば、年齢及び性別)と骨格筋の1つの一次レディオミクス指数(例えば、腰筋でのエネルギー)の組み合わせに基づく、本発明で説明される機械学習アルゴリズム(例えば、バイナリロジスティック回帰)は、NASH患者と非NASH患者を区別する、0.94に増加したAUROCを示す(図17e)。
【0131】
実施例3:
材料及び方法
患者は肝臓病外来クリニックから前向きにリクルートされている。包含基準は以下のとおりである:
- 年齢:18~75歳
- フィブロスキャンのCAP(controlled attenuation parameter)値の上昇(>252CAP)及び/又はそれぞれ女性及び男性のアラニンアミノトランスフェラーゼ血清レベル>25及び>33によって示唆される脂肪化の存在。
【0132】
以下の基準に該当する患者は研究から除外されている:
- 他の病因による肝疾患:B型肝炎表面抗原又はHCV RNA陽性、ウィルソン病、ヘモクロマトーシス、a1-アンチトリプシン欠損症、アルコール性肝疾患など
- 活動性の静脈内薬物依存
- 以前の肝硬変の診断
- 妊婦
- 脂肪肝を引き起こす可能性のある薬剤(メトトレキサート、アミオダロン、タモキシフェン、経口ステロイドなど)
- 活動性の癌
- 多量飲酒
- 腎機能不全
【0133】
対象患者において、体重、身長、大/微小血管合併症の病歴を評価した。空腹時血液サンプルを採取し、代謝パラメータ(血糖、インスリン血症、トリグリセリド、及びコレステロールプロファイル)、CK-18、及び線維化4(FIB-4)及びNAFLD線維化スコア(NFS)などの肝疾患スコアを測定した。
【0134】
第3腰椎レベル(例えば、背部の筋を評価するため)及び下肢(例えば、脚の筋を評価するため)でのMRI-PDFFシーケンスで、筋レディオミクス指数を非侵襲的に評価した。オープンソースソフトウェアのMITK(medical imaging interaction toolkit)で、画像セグメンテーション及びレディオミクス抽出を行った。
【0135】
組織学的診断及びNAFLD活動性スコア(NAS)に従う疾患の病期分類及び等級付けのために肝組織を採取した。SCORE2リスク予測アルゴリズムで心血管疾患のリスクを計算した。
【0136】
結果
コンプリートROIから一次レディオミクス特徴量をさらに抽出した。図18a、図18b、及び図18cに示すように、脊柱起立筋から抽出された筋エネルギー、尖度、及びエントロピーは、NAFLD重症度を示すNAFLD線維化スコアと高い相関関係を有する。
【0137】
図19aに示すように、脚の筋における筋レディオミクス特徴量の歪度と組織学的NAFLD活動性スコア(NAS)との間には強い相関がある。さらに、腰の筋(図19b)及び脚の筋(図19c)におけるレディオミクス特徴量の歪度、並びに、レディオミクス特徴量のエネルギー(図19d)は、肝臓の炎症の兆候がない患者と比較して、肝臓の炎症の兆候がある患者(組織学的炎症スコア1又は2)の方がより高い。
【0138】
最後に、脊柱起立筋における筋レディオミクス特徴量の分散と、10年後の心血管疾患のリスクを示すSCORE2との間には強い相関がある(図20)。
【0139】
実施例4:
材料及び方法
患者は肝臓病外来クリニックから前向きにリクルートされている。包含基準は以下のとおりである:
- 年齢:18~75歳
- フィブロスキャンのCAP(controlled attenuation parameter)値の上昇(>252CAP)及び/又はそれぞれ女性及び男性のアラニンアミノトランスフェラーゼ血清レベル>25及び>33によって示唆される脂肪化の存在。
【0140】
以下の基準に該当する患者は研究から除外されている:
- 他の病因による肝疾患:B型肝炎表面抗原又はHCV RNA陽性、ウィルソン病、ヘモクロマトーシス、a1-アンチトリプシン欠損症、アルコール性肝疾患など
- 活動性の静脈内薬物依存
- 以前の肝硬変の診断
- 妊婦
- 脂肪肝を引き起こす可能性のある薬剤(メトトレキサート、アミオダロン、タモキシフェン、経口ステロイドなど)
- 活動性の癌
- 多量飲酒
- 腎機能不全
【0141】
対象患者において、体重、身長、大/微小血管合併症の病歴を評価した。空腹時血液サンプルを採取し、代謝パラメータ(血糖、インスリン血症、トリグリセリド、及びコレステロールプロファイル)、CK-18、及び線維化4(FIB-4)及びNAFLD線維化スコア(NFS)などの肝疾患スコアを測定した。
【0142】
第3腰椎レベル(例えば、背部の筋を評価するため)及び下肢(例えば、脚の筋を評価するため)でのMRI-PDFFシーケンスで、筋レディオミクス指数を非侵襲的に評価した。オープンソースソフトウェアのMITK(medical imaging interaction toolkit)で、画像セグメンテーション及びレディオミクス抽出を行った。
【0143】
組織学的診断及びNAFLD活動性スコア(NAS)に従う疾患の病期分類及び等級付けのために肝組織を採取した。SCORE2リスク予測アルゴリズムで心血管疾患のリスクを計算した。
【0144】
結果
脂肪性肝炎及び/又はその合併症(すなわち、HCC及び心血管疾患)を罹患するリスクを予測するために様々なスコアが生成される。
【0145】
脂肪性肝炎を罹患するリスクを予測するためのスコアは、少なくとも1つの臨床パラメータ(例えば、年齢、性別)と、少なくとも1つの筋(例えば、脊柱起立筋、脚の筋)における少なくとも1つのレディオミクス特徴量(例えば、エネルギー)及び少なくとも1つの他のレディオミクス特徴量(例えば、分散)に基づいている。
【0146】
脚の筋に基づく脂肪性肝炎を罹患するリスク(%)=101.717(定数)+0.051年齢-50.569性別(0/1)-32.482エネルギー(Zスコア)+51.792歪度(Zスコア)+a +a +a
【0147】
脂肪性肝炎の1つの合併症(例えば、HCC又は心血管疾患)を罹患するリスクを予測するためのスコアは、少なくとも1つの臨床パラメータ(例えば、年齢、性別)と、少なくとも1つのレディオミクス特徴量(例えば、エネルギー)及び少なくとも1つの他のレディオミクス特徴量(例えば、分散)に基づいている。
【0148】
脊柱起立筋に基づくHCCを罹患するリスク(%)=-6.661(定数)+0.08年齢+0.923性別(0/1)-0.613エネルギー(Zスコア)+0.031エントロピー(Zスコア)+a +a +a
【0149】
脊柱起立筋に基づく心血管疾患を罹患するリスク(%)=-10.282(定数)+0.26年齢+2.307性別(0/1)+0.735エネルギー(Zスコア)+0.094分散(Zスコア)+a +a +a
【0150】
上記の3つのスコアでは、aは絶えず推移する係数であり、xは(1)臨床/人体測定/生物学的パラメータ、(2)関心ある筋から導出される一次又は二次グレーレベル統計量(レディオミクス)、又は(3)(1)又は(2)のZスコアの正規化であり得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図17
図18
図19
図20
【国際調査報告】