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特表2024-522173レーザシステムの耐用年数を増加させるための方法およびデバイス
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  • 特表-レーザシステムの耐用年数を増加させるための方法およびデバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(54)【発明の名称】レーザシステムの耐用年数を増加させるための方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/10 20060101AFI20240604BHJP
   H01S 3/04 20060101ALI20240604BHJP
   H01S 3/067 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
H01S3/10 D
H01S3/04
H01S3/067
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575610
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(85)【翻訳文提出日】2024-01-30
(86)【国際出願番号】 US2022032619
(87)【国際公開番号】W WO2022265895
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】63/208,289
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501012517
【氏名又は名称】アイピージー フォトニクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アレクセイ・アヴドキン
(72)【発明者】
【氏名】ニコライ・プラトーノフ
(72)【発明者】
【氏名】パンカジ・カドワニ
(72)【発明者】
【氏名】ジミュン・キム
【テーマコード(参考)】
5F172
【Fターム(参考)】
5F172AF05
5F172AF06
5F172AM08
5F172DD03
(57)【要約】
レーザシステムが、それぞれの時間間隔に亘って、第1の動作波長および少なくとも1つの追加動作波長で、光信号を連続的に出力する少なくとも1つの光増幅デバイスを備えて構成されている。各時間間隔は該光増幅デバイスの所定の寿命よりも短い。複数の波長で動作する光増幅デバイスの総耐用年数は、所定の寿命よりも3~10倍長い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光増幅デバイスの所定の寿命よりも短い第1の時間間隔に亘って第1の動作波長で光信号を出力するように構成されている少なくとも1つの前記光増幅デバイスを含むレーザシステムであって、前記第1の動作波長は、前記光増幅デバイスが動作する複数の動作波長を含むスペクトル域から選択され、
前記光増幅デバイスは、前記第1の時間間隔に続く第2の時間間隔の間に前記スペクトル域の第2の動作波長で前記光信号を出力するように調節可能であり、前記第2の時間間隔は前記光増幅デバイスの前記所定の寿命よりも短い、
レーザシステム。
【請求項2】
1つの前記光増幅デバイスは、単一モード(SM)発振器または多重モード(MM)発振器である、請求項1に記載のレーザシステム。
【請求項3】
1つの前記光増幅デバイスはSM増幅器またはMM増幅器であり、前記レーザシステムは、前記第1の動作波長および前記第2の動作波長で前記光信号を連続的に生成するSMシードまたはMMシードをさらに含み、前記増幅器は、各時間間隔の間に特定の出力範囲内に留まっている所望の出力電力で前記光信号を受信し、出力する、請求項1に記載のレーザシステム。
【請求項4】
前記スペクトル域は、各々が前記増幅器の前記所定の寿命よりも短いそれぞれの追加の時間間隔の間前記シードが動作する追加の動作波長を含む、請求項3に記載のレーザシステム。
【請求項5】
前記特定の出力範囲は、最大出力または最適出力の±5~10%に相当し、前記スペクトル域は前記光増幅デバイスとドーパント材料との構成に依存する、請求項3に記載のレーザシステム。
【請求項6】
前記発振器はそれぞれの規則的時間間隔または不規則時間間隔において動作波長間で切り換え可能である、請求項3に記載のレーザシステム。
【請求項7】
前記シードに連結されておりかつ前記シードの温度を制御する熱電冷却器(TEC)と、
前記シードに結合されかつ前記シードが前記動作波長の間で切り換わるように促進する、制御信号を出力するように動作可能なコントローラと
をさらに含む、請求項3に記載のレーザシステム。
【請求項8】
前記コントローラは、
温度動作波長変換テーブルであって、前記制御システムは、前記発振器の前記温度を段階的に変更するために、各時間間隔の最後に、前記TECに結合される前記制御信号を出力する、温度動作波長変換テーブルと、
各次の時間間隔の動作波長が前の時間間隔の最後に設定されるように、前記時間間隔の各々の間に前記発振器の前記温度を徐々に変更するための継続的最適化アルゴリズムと、
を含有する記憶装置を備えて構成されている、
請求項7に記載のレーザシステム。
【請求項9】
少なくとも1つまたは複数のファイバ前置増幅器をさらに含む、請求項3に記載のレーザシステム。
【請求項10】
前記シードは、狭線幅発振器、広線幅発振器、波長調整可能発振器、波長調整不可発振器、ファイバ発振器、固体発振器、または単一周波数発振器から選択され、前記増幅器は、狭線幅増幅器、単一周波数増幅器、波長調整可能増幅器、波長調整不可増幅器、ファイバ増幅器、固体増幅器またはハイブリッド増幅器から選択される、請求項3に記載のレーザシステム。
【請求項11】
前記シードおよび前記増幅器は各々、単一モードまたは多重モードで前記光信号を出力するように構成されている、請求項3に記載のレーザシステム。
【請求項12】
前記発振器および前記増幅器は、連続波レジームまたはパルスレジームもしくは準連続波レジームで動作する主発振器出力増幅器アーキテクチャと定義される、請求項3に記載のレーザシステム。
【請求項13】
前記シードは、温度ベースの波長調整可能シード、または電流ベースの波長調整可能シード、または温度および電流ベースの調整可能シードである、請求項10に記載のレーザシステム。
【請求項14】
前記増幅器の出力部に光学的に連結されている周波数変換器をさらに含む、請求項3に記載のレーザシステム。
【請求項15】
前記増幅器の耐用年数は、前記第1の波長および前記第2の波長の一方で動作する前記増幅器の前記所定の寿命よりも3~10倍長い、請求項3に記載のレーザシステム。
【請求項16】
シードおよびブースタを有するレーザシステムを動作させる方法であって、
第1の波長および第2の波長のどちらか一方でのみ動作する前記ブースタの所定の耐用期間よりも短いそれぞれの時間間隔の間に、所望のスペクトル域から選択される少なくとも2つの異なる動作波長間で前記シードを切り換え、それによりそれぞれの光信号を生成するステップと、
前記ブースタ内の前記光信号を増幅して、所定の出力範囲内でシステム出力を供給するステップであって、前記第1の波長および前記第2の波長で動作する前記ブースタの総耐用年数が、前記第1の波長または前記第2の波長でのみ動作する前記ブースタの前記所定の耐用期間よりも長い、ステップと
を含む、方法。
【請求項17】
前記シードは、第1の波長と、第2の波長と、前記スペクトル域から選択される少なくとも1つの追加波長との間で切り換え可能であり、前記ブースタの前記所定の耐用期間は、前記第1の波長、前記第2の波長、および前記追加波長での前記ブースタの前記耐用年数よりも短い、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記所定の出力範囲は、前記ブースタの最大出力または最適出力の±5~10%の範囲内で変化する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記シードは、それぞれの規則的時間間隔または不規則時間間隔において動作波長間で切り換え可能である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
それぞれの温度からの前記動作波長の依存性を構築する較正テーブルまたは連続波長最適化アルゴリズムに従って、前記シードの温度を制御可能に修正するステップをさらに含み、前記シードはレーザダイオードまたはファイバ発振器である、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、少なくとも1つの固体増幅器または固体ブースタを有するレーザシステムに関する。詳細には、本開示は、各々が複数の波長のいずれかにおけるブースタの所定の耐用期間よりも短いそれぞれの時間間隔の間に、複数の波長で連続的に動作させるようにブースタが制御可能なレーザシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの企業にとって、資本資産は多大な資源の投資を意味する。したがって、投資を最大限に活用するには、これらの資産を積極的に会計処理し、管理する必要がある。減価償却とは、「資産の推定耐用年数に亘る、資産の取得原価からその見積残存価額または残存価額を差し引いた体系的かつ合理的な配分」である。https://www.investopedia.com/terms.asp参照。簡単に言えば、それは、固定資産が使用され得る期間に亘って、固定資産の経費の一部を割り当てる方法である。「耐用年数とは、資産が、その価額が完全に償却される前に、有用であると見なされる平均年数の推定である。」同文献「固定資産とは、収益を生み出すために、会社が長期間に亘って使用する予定である、機器などの項目である。」同文献
【0003】
寿命とも呼ばれるその耐用年数を推定する時、資産の現状、資産の質、または資産がどのように使用されるかを考慮することは、製造業者の役に立つ。しかし、コンピュータの耐用年数とは何か。自動車についてはどうか。テレビについてはどうか。本主題の特許出願にとって最も重要なことには、レーザの耐用年数についてはどうか。合衆国政府によって推奨されている耐用年数推定のいくつかの例を以下に示す(http://www.irs.gov/irm/part1/irm_01-035-006.html)。
【0004】
【表1】
【0005】
とりわけファイバレーザを含む様々な固体レーザを考えれば、各個々のデバイスのコストは、当然、構造、出力電力、動作レジーム、信号波長、ならびに多くの他の要因およびパラメータによって大いに異なる。しかし、例えば数百ワットの平均出力で準連続波(QCW)レジームで動作する固定レーザは安くない。任意の顧客/ユーザが、その大きさに関わらず、購入されるデバイス/システムの長寿に興味があるのも当然である。製造業者に関しては、間違いなく、まさにその本質が可能な限り多くのデバイスを販売することであるが、製造業者の良い評判および顧客、すなわち信用は、どのビジネスでも紛れもなく非常に重要な無形資産である。要約すれば、レーザの耐用年数は製造業者と顧客との両方にとって重大である。
【0006】
固定資産の耐用年数を増加させ得る要因には、とりわけ、固定資産をアップグレードすることおよび定期的にメンテナンスすること、メンテナンス手順を改善すること、技術的進歩、ならびに動作手順の補正が含まれる。次の説明は、それぞれ図1および図2A図2Bの例示的ファイバレーザおよびファイバレーザシステムに関するが、当業者が容易に理解するように、次の説明は、連続波(CW)レジーム、QCWレジーム、またはパルスレジームのいずれかで動作する任意の固体レーザに関する。
【0007】
図2A図2Bは、それぞれ例示的光学的図式、および組立て済みのパルス状緑色ナノ秒ファイバレーザシステム10を示し、それらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第10,520,790号において詳細に開示されている。図2のシステム10はモジュール12とレーザヘッド14とを含む。
【0008】
モジュール12は、他の構成要素の中で、シードによって設定されている1064nm基本波長で、合焦光学系を通して一連のIR光パルスを出力するパルス主発振器出力ファイバ増幅器(MOPFA)レーザ源(図2A)を収容する。該MOPFA構造は、必然的に、シード16と、ファイバ増幅器などの固体ブースタ18とを含む。モジュール12内に取り付けられている追加構成要素には、電子機器、前置増幅器、光ポンプ、シードなどの温度を制御する、熱電冷却器が含まれる。レーザヘッド14は、基本波長1064nmのIR光を532nm波長の緑色光へ変換する非線形結晶に基づく、第2の調波周波数発生器を包囲する。該レーザヘッドは、導光光学系と、緑色光から未変換IR光を分離するためのスペクトルフィルタとをさらに収容する。
【0009】
システム10の動作は、システム10がいかに良好に動作するかを指摘する様々な指標を含む。実際には、システムの構成要素の各々は、通常は監視され制御されるあるパラメータと関係がある。顧客の視点から、システム10の最も重要なパラメータは、必要に応じて、システムの出力電力およびスペクトル、時間的かつ/または空間的な光の質である。
【0010】
図3は、時間で測定される動作期間に亘るシステム10の出力を示す。図示のように、総IR出力は約350時間に約35%低下する。同じ時間期間に亘って、緑色出力の低下は約46%である。そのような大幅の低下の原因を確認しようとしているレーザ技術分野の当業者が、無数の理由を受け入れることができると考えられる。しかし、通例、最も可能性の高い容疑者はファイバブースタである。システム10のブースタのコストは、数万ドルおよびさらには数十万ドルに達する可能性がある。それが故障した場合、システム10全体を修理する唯一の方法は、そのコストは数十万ドルを超え得るが、ブースタ全体を交換することである。
【0011】
ブースタの故障を説明し得る様々な理由の中で、最も妥当性の高い理由の1つは熱書込み縦インデックス格子(thermally written longitudinal index grating)に基づき、かつそれと共に光黒化効果と関係がある。該光黒化とは、任意の物体が、光源を用いた照明に因り、不透明に(暗く)なる過程を言う。最近の論文が、光ファイバ内で色中心を吸収する可逆的生成(reversible creation)を意味するこの用語を使用する。これらの中心は損失を増大させ、光質を低下させる。ブースタの劣化に関与する他の要因には、量子欠損とバックグラウンド吸収とが含まれ得る。明らかに、使用されたファイバが高品質を特徴とし、かつしたがってより高い光黒化閾値を有した場合、ファイバブースタの耐用年数は図3のものよりもいくらか長い可能性があり、約2000時間に達する可能性がある。しかし、通常、システム10内に組み込まれたブースタは50000時間よりも長く存続しない。
【0012】
図4は、Ybブースタの発光スペクトルを示す。破線18は、谷のない逆放物曲線を有する所望のスペクトルを示す。しばらくの間、被試験システムが所望の方法で動作していることを示す曲線の滑らかさを享受し得る。しかし、それは長く持続しない。ある時点Tにおいて、光は、測定スペクトル20の谷によって示されている相当な損失を経る。
【0013】
図5には前段の検討が要約されている。具体的には、時間閾値とさらに呼ばれる時間Tにおいて、出力は不可逆的に減少し始める。それが起こった直後に、ブースタは交換されるべきである。したがって、ブースタの耐用年数はどれほどだろうか。それは、上記の表に開示されている製品の耐用年数よりも確実に短い。ブースタの劣化に対処する既知の実践は、耐用年数の終わりまでブースタを動作させること、および次いでそれを交換することを含む。
【0014】
上記の説明は、全般的に、少なくとも1つの増幅器を含むレーザシステムに集中しているが、独立型発振器などの他の光増幅デバイスが同じ問題を経験することを、レーザ技術分野の当業者は容易に理解する。例えば、図1の独立型ファイバ発振器が数百ワットを、かつ時にはさらにキロワットを出力することは珍しいことではない。単一モード(SM)のもしくは多重モード(MM)の狭線幅出力、または高電力出力などのSM単一周波数(SMSF)出力のどちらかを必要とする多くのレーザベースの用途において、追加の増幅器を使用することなく、手近にタスクを実施するのに全く適切であると考えられる。しかし、レーザシステム内へ組み込まれた増幅器と同様に、高出力の独立型発振器は、もっぱら、耐用年数の増加から恩恵を受けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第10,520,790号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述に基づいて、単独で使用されるかまたはレーザシステム内に組み込まれる、光増幅デバイスの寿命を延ばす方法および構造組立て品に対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本開示の本発明のコンセプトによれば、少なくとも1つのレーザが、それぞれの時間間隔に関して複数の動作波長で光信号を連続して出力するように動作可能である。各間隔は、レーザが所定の時間閾値に達する前に終了する。多数の実験が、開示されたコンセプトに従って動作するレーザは、既知の実践に従ってすなわち単一波長で使用される同一ブースタよりも3~10倍長く使用されていることを示している。該本発明のコンセプトは、独立型光増幅発振器において、または発振器に加えて少なくとも1つの増幅器を含むレーザシステムにおいて、実施され得る。
【0018】
独立型レーザは、所望のスペクトル域内で異なる波長で光を連続的に出力するように動作可能な発振器として構成されている。一般に、任意の調整可能なレーザがこのように動作する。しかし、該調整可能な発振器と対照的に、本発明のコンセプトは、各別々の波長で発振器が動作する時間間隔が、この波長において実験的に決定された耐用年数よりも短いことを必要とする。
【0019】
通常、MOP(F)Aアーキテクチャを設けられている高出力レーザシステムでは、主な長寿懸念事項がブースタに関連する。ブースタは、光に最大利得をもたらす、増幅器群内の最新の最も強力な増幅カスケードである。例示的レーザシステムは、このように、シードがレーザを当てることができる所望のスペクトル域の複数の動作波長から選択される第1の動作波長で光信号を出力するシード、すなわち主発振器を含む。該光信号は、直ぐにまたは連続的な段階的な増幅の後のどちらかで、ブースタに結合される。システムは、第1の時間間隔に亘って、第1の波長で動作する。本発明のコンセプトによれば、該第1の時間間隔は、第1の波長で、ブースタの所定の寿命よりも短い。
【0020】
シードは、次いで、第2の時間間隔のスペクトル域から選択される第2の動作波長で光信号を出力するようになる。それぞれの動作波長に対応する該第2の時間間隔および後続の時間間隔は各々、ブースタの所定の寿命よりも短い。通常、選択された動作波長のいずれかでの、ブースタの所定の寿命は実質的に同じである。しかし、選択された波長間で変化する耐用年数を有するブースタの可能性は、本発明の範囲から除外されない。この場合、それぞれの選択された波長に関する時間間隔が均一でない可能性があるが、コンセプトは損なわれないままであり、各時間間隔は、任意の所与の波長での、ブースタの所定の寿命よりも短い。本発明のコンセプトは、所定の狭い出力領域内に留まる出力電力で信号を出力しながら、ブースタが相当により長い耐用年数の間に動作することを可能にする。通常は、後者は最大出力電力の±5~10%である。
【0021】
本発明のレーザおよびレーザシステムは、発振器の温度、およびより正確には、選択された領域内の動作波長の移行を引き起こすブラッグ格子(BG: Bragg Grating)の温度を制御するように構成されている熱電冷却器(TEC)をさらに含む。MOPA構造を有するレーザシステムでは、発振器は、通常はレーザダイオードであるシードとして機能する。しかし、ファイバ発振器などのシードの他の構造が本発明の一部である。
【0022】
一構造によれば、TECは、温度とそれぞれの動作波長との間に関係を構築する較正テーブルに基づいて動作する。該テーブルはコントローラの記憶装置内に格納される。
【0023】
あるいは、コントローラは、TECの温度を不断で制御することに責任を負う継続的最適化アルゴリズムを備えて構成されている。これに対して、テーブルベースの構造では、温度は個別に段階的に変化する。したがって、本発明のコンセプトは、較正テーブルに依存する個別モードと、所定のスペクトル帯内の正確な波長を追跡することなく、波長が継続的に変化する継続モードとの両方に適用され得る。
【0024】
温度制御可能な構造に加えてまたは代替的に、シードが半導体構造を有する場合、波長間での切り換えは、シードに流される入力電流を制御することによって実現され得る。
【0025】
開示された方法は、本発明のレーザシステムの動作を確立する。詳細には、該方法は、シードを連続的に複数の動作波長で動作させることを含む。各動作波長でのシードの動作の継続時間は、ブースタの所定の耐用年数よりも短くなるように制御される。
【0026】
本発明のシステムおよび方法の様々な特徴が、縮尺通りに描写されることを目的としていない添付の図を考慮して、より明らかになるであろう。該図は本主題の出願の一部を構成するが、任意の特定の実施形態の制限の定義として意図されていない。図では、様々な図に示されている各同一のまたは略同一の構成要素が同様の数字で表されている。明確にするために、あらゆる構成要素が全ての図において標識を付けられていない可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】例示的な独立型発振器の図である。
図2A】周波数変換器を設けられている例示的ファイバレーザシステムの光学的図式である。
図2B図2Aの例示的ファイバレーザシステムの図である。
図3図1および図2のレーザシステムにおいて、経時的なIR出力および緑色出力の図である。
図4図1および図2のレーザシステムのブースタのスペクトル電力出力の図である。
図5図4のブースタの動作の線図である。
図6】開示されているレーザシステムの本発明のコンセプトの線図である。
図7】本発明のレーザシステムの例示的光学的図式である。
図8】本発明のレーザシステムの耐用年数に亘る、IR出力および緑色出力の分布の図である。
図9図7の本発明のシステムのスペクトル電力出力の図である。
図10図7のレーザシステムのIR出力の分布の図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明のコンセプトは、独立型レーザまたはレーザシステムの増幅器が、標準構成を有する同システムの寿命よりも3~10倍より長く動作をすることを可能にする。任意の定められた仕様によるレーザシステムの動作は、特定の出力電力の±10%に限定される規定の範囲内で出力電力を供給することを含み得る。この出力範囲は、特定の出力電力の±5~10%に限定されることが好ましい。
【0029】
その一生の間に単一波長で動作する光増幅デバイスを示す、図5に示されている既知の技術と対照的に、本発明のコンセプトは、図6に示されているように、独立型レーザまたはシステムの増幅器のいずれかの寿命の終了前に、動作波長λからλまで(λまで)の移行を実現する。各々が所定の寿命に等しい時間間隔0~TおよびT~Tそれぞれと仮定して、光増幅デバイスは、以下に説明されるように、その各々が所定の寿命よりも短い時間間隔(0~Ti3)および(Ti3~Ti4)それぞれの最後に、新しい波長へ切り換えられる。
【0030】
図6に加えて図7を考慮すると、本発明のコンセプトは、レーザシステム15に基づいて、詳細に説明される。詳細には、例示的図式は、シード20がそれに従って連続的にブースタ25に結合されるそれぞれ異なる動作波長で光信号を生成するMOP(F)Aアーキテクチャを有する。MOPA構成を備えたシステムは、シード20の寿命よりも実質的に短い耐用年数を有するブースタの寿命に関して主に懸念される。シード20は、図示のブースタ25を含む随意の増幅カスケード接続において連続的に増幅される弱信号を出力するレーザダイオードであることが好ましい。シード20の構造はレーザダイオードに限定されず、狭線幅レーザ、波長調整可能な/波長調整不可のレーザ、ファイバレーザ、固体レーザ、および単一周波数レーザのうちの1つを含み得る。
【0031】
ブースタ25は、結合された動作波長の各々で、ある時間間隔の間、動作する。ブースタ25が満たさなければならない条件には、ブースタの寿命である既知の時間閾値が達成される前に、選択された動作波長のいずれかにおいて、その動作を終了させることが含まれる。シード20と同様に、ブースタ25は、とりわけ、狭線幅増幅器、単一周波数増幅器、波長調整可能増幅器、波長調整不可増幅器、ファイバ増幅器、固体増幅器、およびハイブリッド増幅器から選択される様々な構造を有し得る。
【0032】
例示的システム15は、図2Bのシステム10の構成と類似した構成を有するが、その構造上の特殊性に因り、オリジナルのシステム構成要素は、多数の動作波長間でのシード20の周期的切り換えを含む追加の構造的特徴をもたらすことができる。該動作波長は、シード20が動作するスペクトル域から選択される。該スペクトル域はレーザ構造およびドーパント型に依存する。例えば、ツリウム(Tm)ファイバレーザのスペクトル域は約200nmに及ぶ可能性があり、その一方で、イッテルビウム(Yb)でドープ塗料を塗られた固体レーザおよびファイバレーザが実質的により狭いスペクトル域を有する。後者が使用された場合、例示的スペクトル域は約10nmである。
【0033】
システム15のシード20は、単一周波数で動作する単一モード(SM)ダイオードレーザを含む。一般に、レーザダイオードの出力の動作波長は、レーザダイオードの入力部における温度および/または電流を修正することによって移行させられる。これは、温度の僅かな変化が小バンドギャップに大きな影響を及ぼすIRレーザダイオードで極めて明白である。したがって、殆ど全てのレーザダイオードが温度調整可能であるが、この同調性が一般に小さい。また、レーザダイオードは、入力電流を修正することによっていくらかの電流ベースの出力同調性を見せるが、それは、温度ベースの同調性よりも好ましくない。本発明のコンセプトは、単一もしくは多重(MM)の横モードおよび縦モードで放射線を出力するシード20を備えて構成されているレーザシステムにおいて首尾よく効果を発揮することができる。
【0034】
レーザシステム15の制御システム(CS)30が、時間間隔の各々の継続時間を監視し、その最後に、熱電冷却器(TEC)35に結合される制御信号を生成する。該制御信号に応答して、TEC35はシード20の温度を修正し、該シードを、直前に使用されているものと異なる別の動作波長で動作させる。
【0035】
本発明の構造を組み込んでいるシステム15は次の方法で動作する。Tが時間閾値である状態で、図6に示すように、システム15のブースタ25(図7)が0~T期間に及ぶ寿命を有すると仮定する。第1の動作波長λでのブースタの動作が時間閾値Tに到達する前に、CS30が、T時間閾値よりも短い任意の時間Ti1に制御信号を出力する。制御信号はTEC35が、新しい動作波長λで光信号を生成するシード20の温度を修正することを可能にする。新しい波長λでのシード20の動作は、第1の時間間隔0~Ti1と同一継続時間を有する可能性があるかまたは有しない可能性があるが、必然的にブースタ25の寿命よりも短い時間間隔Ti1~Ti2に亘って持続する。該ブースタは、その各々が任意の単一波長で動作するブースタ25の寿命よりも短いそれぞれ均一のまたは不均一の時間間隔に亘って、それぞれ異なる動作波長λで、シード20からの1つまたは複数の光信号を受信し続ける。
【0036】
図8が示すように、本発明のシステム15のブースタ25の耐用年数は、図3に示されている同一ブースタの耐用年数の4倍より多い。明らかに、ブースタ25の耐用年数は、図8に示されているものよりもさらに長く持続することができ、既知の先行技術のブースタ25の寿命よりも10倍長い。最大値の±(5~10)%の範囲内で変化する所望の最大出力に近いままである、図7のシステム15の出力IRおよび/または緑色光出力に、ブースタ25の耐用年数の増加は影響を及ぼさない。
【0037】
通常、ブースタ25の寿命は次の方法で決定される。利用可能なアクティブファイバ、すなわち既知の発光スペクトルを有する既知のレアアース元素のいずれかのイオンでドープ塗料を塗られたファイバ、の所望の長さは、ファイバの新しいスプールが解かれ、次いで実験用ブースタの一部であるように切断される。後者は、その間に所望のスペクトル域から選択された任意の単一波長でブースタが動作する燃焼として当業者に既知の広範な試験手順を経る。寿命は、このように、実験的に決定される。既知のように、各新しいスプールに関して時間閾値を確立する必要がある、スプール毎にファイバ均一性を達成することは困難である。
【0038】
図9は、ブースタの燃焼中の複数の時点でのそれぞれの温度に対応する複数のシード中心波長の関数として測定されるIR出力電力に基づいて、ブースタ25の動作を較正する過程を示す。例えば、2つの1063.6nm動作波長および1065nm動作波長が選択される。1kWのIR出力が最適であると仮定して、ブースタ25が、ブースタの決定された寿命(500時間)よりも短い第1の448時間の時間間隔の間に、赤い曲線によって示されているように、動作波長の所望のスペクトル域に亘って、最初に所望のワット数を維持することを理解することは容易である。青い曲線に対応する次の400時間の時間間隔の間、出力電力は、1063.6nm波長で僅かに低下する。しかし、1063.6nm動作波長での損失は、5%などの所望の出力領域内にあるままであり、したがって許容可能である。該出力電力は、1065nmの動作波長で、事実上、最適なままである。したがって、ブースタは、緑の曲線に対応する第3の400時間の時間間隔の間、選択された2つの動作波長で機能することができる。106.3nm動作波長での10%損失は許容できないと仮定すると、残りの1065波長は、紫の曲線に対応する次の400時間の時間間隔に亘るブースタの動作に使用され得る唯一無二の動作波長である。しかし、この時間間隔の最後に、ブースタの出力電力は許容可能な出力領域を超えており、交換される必要がある。上記を要約すると、ブースタは、例えば1065nm波長で、第1の時間間隔の間、動作することができ、次いで、第2の時間間隔の間、1063.6nm波長で放射線を出力するように切り換えられる。最後に、次の波長は元の1065nm波長に戻り、第3の時間間隔の間にブースタが動作することを可能にする。したがって、ブースタの耐用年数は、所定の寿命の500時間から1232時間の耐用年数に増加する。
【0039】
前段に例示されている試験手順は要約され、表にされている。時間、温度、および波長の間で対応を構築する較正テーブルの例は、図7のCS30内に格納され、次に示されている。
【0040】
【表2】
【0041】
時間間隔は、それがブースタの所定の寿命よりも短い長さである限り、任意の継続時間とすることができ、かつ必ずしも均一とは限らない。図10は、図7のブースタ25の長期の寿命の別の例である。図示のように、IR出力と緑色出力の両方は、図7のブースタ25の殆ど1700動作時間の間、所望の出力領域内にある。図9は、IR出力および緑色出力の各々の平均とピーク出力との両方の分布を示す。図10はレーザシステム15の緑色出力分布を示す。
【0042】
本発明による、本明細書において開示されている態様は、それらの適用において、次の説明において記載されているかまたは添付の図面に示されている構造の詳細および構成要素の配置に限定されない。これらの態様は、他の光学的図式を仮定することができ、かつ様々な方法で実践されるかまたは実施され得る。特定の実施の例が、単に例証目的で本明細書において提供されており、制限することは意図されていない。詳細には、任意の1つまたは複数の実施形態に関連して検討されている動作、構成要素、要素、および特徴が、任意の他の実施形態における同様の役割から除外されることは意図されていない。例えば、図7のブースタ25は、開示されている上記のQCWモードに加えて、CWレジームまたはパルスレジームで動作し得る。考慮される他の動作パラメータが、偏光、SMまたはMM、狭線幅/広線幅、単一/多重増幅段、ドーパント型等を含み得る。
【0043】
少なくとも1つの例のいくつかの態様を説明したが、様々な変更、修正、および改善が当業者に容易に思い付くことを、当業者は容易に理解する。例えば、本明細書において開示されている例が他の状況において適用可能である。そのような変更、修正、および改善は本開示の一部である。したがって、上述の説明および図面は単に例としてのものである。
【符号の説明】
【0044】
10 パルス状緑色ナノ秒ファイバレーザシステム
12 モジュール
14 レーザヘッド
15 レーザシステム
16 シード
18 破線(所望のスペクトル)、固体ブースタ
20 測定スペクトル、シード、
25 ブースタ
30 制御システム、CS
35 熱電冷却器、TEC
、T、Ti2、Ti3、Ti4 時間間隔
時点、時間閾値、時間間隔
i1 時間間隔、任意の時間
λ 動作波長、第1の動作波長
λ 動作波長、新しい波長
λ 動作波長
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】