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特表2024-522177試料のオミクス情報を分析するための製品および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(54)【発明の名称】試料のオミクス情報を分析するための製品および方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6816 20180101AFI20240604BHJP
   C12Q 1/6841 20180101ALI20240604BHJP
   C12Q 1/6823 20180101ALI20240604BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20240604BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20240604BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20240604BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20240604BHJP
   G01N 33/92 20060101ALI20240604BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
C12Q1/6816 Z ZNA
C12Q1/6841 Z
C12Q1/6823 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/686 Z
G01N33/50 P
G01N33/68
G01N33/92
G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575728
(86)(22)【出願日】2022-06-06
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 CN2022097049
(87)【国際公開番号】W WO2022257867
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】202110631874.7
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】519180161
【氏名又は名称】オーシャン ユニバーシティ オブ チャイナ
【氏名又は名称原語表記】Ocean University of China
【住所又は居所原語表記】No.238, Songling Road, Laoshan District, Qingdao, Shandong, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シー、 ウェイヤン
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA40
2G045BB17
2G045BB20
2G045BB22
2G045CB01
2G045DA13
2G045DA14
2G045DA36
2G045DA60
2G045FB02
2G045FB03
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ02
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QQ53
4B063QR56
4B063QR73
4B063QS24
4B063QS32
4B063QS34
4B063QS36
4B063QS40
4B063QX02
(57)【要約】
本出願は、試料のオミクス情報を分析するための製品および方法に関する。本方法は、プローブを標的分子に結合させる条件下で、試料中の少なくとも1つの標的分子を少なくとも1つのプローブと接触させる工程であって、前記プローブは、前記標的分子に特異的に結合することが可能な標的分子結合ドメインと、少なくとも1つの反応遮断修飾とを含有する工程と;前記試料の第1の領域に対して第1の処理を実行し、および前記試料中の前記第1の領域とは異なる第2の領域に対して第2の処理を実行して、前記第1の領域中の前記プローブを第1のタグ配列に付着させ、および前記第2の領域中の前記プローブを第2のタグ配列に付着させる工程であって、前記第2のタグ配列は前記第1のタグ配列とは異なる、工程と;前記第1のタグ配列に付着した前記プローブの組成および前記第2のタグ配列に付着した前記プローブの組成を決定する工程とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブを標的分子に特異的に結合させる条件下で、試料中の少なくとも1つの標的分子を少なくとも1つのプローブと接触させる工程であって、前記プローブは、前記標的分子に特異的に結合することが可能な標的分子結合ドメインと、少なくとも1つの反応遮断修飾とを含有する、工程と;
前記試料の第1の領域に対して第1の処理を実行する工程であって、前記第1の処理は、前記第1の領域内の前記プローブ上の前記反応遮断修飾を少なくとも部分的に除去して、前記第1の領域内の前記プローブを第1のタグ配列に付着させることが可能である、工程と;
前記試料中の、前記第1の領域とは異なる第2の領域に対して第2の処理を実行する工程であって、前記第2の処理は、前記第2の領域中の前記プローブ上の前記反応遮断修飾を少なくとも部分的に除去して、前記第2の領域中の前記プローブを第2のタグ配列に付着させることが可能であり、前記第2のタグ配列は前記第1のタグ配列とは異なる、工程と;
前記第1のタグ配列に付着した前記プローブおよび前記第2のタグ配列に付着した前記プローブの組成を決定し、ならびに前記プローブの前記組成から、前記試料中の前記第1の領域の前記標的分子の存在および/または含有量および前記第2の領域の前記標的分子の存在および/または含有量を決定する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記試料が組織切片を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組織切片が、1~1000μmの範囲の厚さを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記組織切片が、凍結切片、パラフィン切片、カルボワックス切片、極薄切片およびプラスチック切片からなる群から選択される、請求項2~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記組織切片が固定された組織切片を含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記組織切片がホルマリン固定された組織切片を含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記組織切片がホルマリン固定されたパラフィン切片である、請求項2~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記組織切片が凍結切片である、請求項2~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記組織切片中の組織が多細胞生物由来である、請求項2~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記組織切片中の組織がヒト由来である、請求項2~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記組織切片が臨床的に意義のある組織試料である、請求項2~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記組織切片中の組織が、心筋組織、肝組織、脾臓組織、肺組織、腎組織および脳組織からなる群から選択される組織に由来する、請求項2~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の領域が、前記組織切片上の第1の領域であり、および前記第2の領域が、前記組織切片上の、前記第1の領域と実質的に重複していない第2の領域である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記試料が単一の細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞が、生物から単離された細胞、インビトロで培養された細胞、初代細胞および外植片からの分離した細胞からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞が固定されている、請求項14~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の領域が、前記細胞内の第1の細胞内構造である、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の領域が、前記細胞内の第2の細胞内構造である、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記標的分子が、タンパク質、核酸分子および/または脂質を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記核酸分子がDNA分子および/またはRNA分子を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記DNAがcDNAを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記RNAが、cRNA、mRNA、miRNA、lncRNAおよび/またはeRNAを含む、請求項20~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記標的分子がRNAを含む場合に、前記プローブ中の前記標的分子結合ドメインが前記RNAに相補的な核酸配列を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記プローブ中の前記標的分子結合ドメインがポリAを含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記プローブ中の前記標的分子結合ドメインがポリTを含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記プローブ中の前記標的分子結合ドメインが、前記標的分子の配列に少なくとも50%相補的である、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記試料中の2つ以上の標的分子を2つ以上のプローブと接触させる工程を含み、前記2つ以上のプローブは前記2つ以上の標的分子を特異的に結合することが可能である、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記2つ以上の標的分子が異なる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記標的分子がRNAを含む場合に、前記第1の領域中の前記プローブ上の前記反応遮断修飾が、遊離可能な、塩基を修飾された基、切断可能なリンカーおよび感光性基からなる群から選択される、請求項20~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記標的分子がRNAを含む場合に、前記第1の領域中の前記プローブ上の前記反応遮断修飾が切断可能なリンカーである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記リンカーが、前記第1の領域中の前記プローブの5’末端に位置する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記リンカーが、前記第1の処理時に切断可能である、請求項30~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記第1の処理が、電子ビーム処理、音波および照明からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記第1の処理が照明である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記光が、アークランプ、レーザ、UV光源および発光ダイオードからなる群から選択される光源によって提供される、請求項33~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記光がUV光源によって提供される、請求項33~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記第1の領域中の前記プローブ上の前記反応遮断修飾が、遊離可能な、塩基を修飾された基である、請求項29~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記第1の領域中の前記プローブ上の前記反応遮断修飾が、少なくとも1つの遊離可能な、塩基を修飾された基を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記第1の領域中の前記プローブ上の前記反応遮断修飾が、少なくとも1つの遊離可能な感光性基を含む、請求項37~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記塩基を修飾された基が、NPOM保護基を含む、請求項37~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記塩基を修飾された基が、前記第1の処理時に遊離可能である、請求項37~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記第1の処理が、電子ビーム処理、音波および照明からなる群から選択される、請求項37~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記第1の処理が照明である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記光が、アークランプ、レーザ、UV光源および発光ダイオードからなる群から選択される光源によって提供される、請求項42~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記光がUV光源によって提供される、請求項42~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記標的分子がRNAを含む場合に、前記第2の領域中の前記プローブ上の前記反応遮断修飾が、遊離可能な、塩基を修飾された基、切断可能なリンカーおよび感光性基からなる群から選択される、請求項20~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記第2の領域中の前記プローブ上の前記反応遮断修飾が切断可能なリンカーである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記リンカーが、前記第2の領域中の前記プローブの5’末端に位置する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記リンカーが、前記第2の処理時に切断可能である、請求項47~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記第2の処理が、電子ビーム処理、音波および照明からなる群から選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記第2の処理が照明である、請求項49~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記光が、アークランプ、レーザ、UV光源および発光ダイオードからなる群から選択される光源によって提供される、請求項50~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記光がUV光源によって提供される、請求項50~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記第2の領域中の前記プローブ上の前記反応遮断修飾が、遊離可能な、塩基を修飾された基である、請求項46~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記第2の領域中の前記プローブ上の前記反応遮断修飾が、少なくとも1つの遊離可能な、塩基を修飾された基を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記第2の領域中の前記プローブ上の前記反応遮断修飾が、少なくとも1つの遊離可能な感光性基を含む、請求項54~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記塩基を修飾された基が、NPOM保護基を含む、請求項54~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記塩基を修飾された基が、前記第2の処理時に遊離可能である、請求項54~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記第2の処理が、電子ビーム処理、音波および照明からなる群から選択される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記第2の処理が照明である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記光が、アークランプ、レーザ、UV光源および発光ダイオードからなる群から選択される光源によって提供される、請求項59~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記光がUV光源によって提供される、請求項59~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記第1の処理および前記第2の処理が同じであるかまたは異なる、請求項1~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記試料の前記第1の領域に対して前記第1の処理を実行する間または実行した後に、前記試料の前記第2の領域に対して前記第2の処理を実行することを含む、請求項1~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記第1の処理の後、第1のタグ配列を含有する第1のタグ分子を前記試料の前記第1の領域に投与することを含む、請求項1~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記第2の処理の後、第2のタグ配列を含有する第2のタグ分子を前記試料の前記第2の領域に投与することを含む、請求項1~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記第1の領域中の前記プローブがアダプターの第1の結合ドメインを含み、前記アダプターの前記第1の結合ドメインが少なくとも1つの反応遮断修飾を含む、請求項1~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記プローブにおいて、前記アダプターの前記第1の結合ドメインが、前記標的分子結合ドメインの5’末端に位置する、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記第1の処理時に、前記第1の領域中の前記プローブが前記第1のタグ配列およびオリゴヌクレオチドアダプターと複合体を形成することをさらに含み、前記オリゴヌクレオチドアダプターはプローブ結合ドメインおよびタグ結合ドメインを含む、請求項1~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記第1のタグ配列が、少なくとも1つのバーコードおよびアダプターの第2の結合ドメインを含む、請求項1~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記第1の処理時に、前記プローブ結合ドメイン中の核酸配列が、前記第1の領域中の前記プローブ中の前記アダプターの前記第1の結合ドメイン中の核酸配列に相補的であり、および前記タグ結合ドメイン中の核酸配列が、前記第1のタグ配列中の前記アダプターの前記第2の結合ドメイン中の核酸配列に相補的であり、その結果、部分的に二本鎖構造を形成することをさらに含む、請求項69~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記第1のタグ配列中の前記アダプターの前記第2の結合ドメインが、リガーゼによって、前記第1の領域中の前記プローブ中の前記アダプターの前記第1の結合ドメインに連結され、その結果、前記第1のタグ配列に付着した前記プローブを産生する、請求項70~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記リガーゼがT4リガーゼを含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記第1のタグ配列中の前記バーコードが、前記第1の領域の空間的位置情報を特徴付ける、請求項70~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記第1のタグ配列が複数のバーコードを含む、請求項70~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記第1のタグ配列中の前記複数のバーコードが異なる、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記第1のタグ配列中の前記アダプターの前記第2の結合ドメイン中の前記核酸配列が、前記第1のタグ配列中の前記バーコードの3’末端に位置する、請求項70~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記第1のタグ配列が、固有の分子識別領域を含む、請求項1~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記第1のタグ配列が配列決定プライマーを含む、請求項1~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記第2の領域中の前記プローブがアダプターの第1の結合ドメインを含み、前記アダプターの前記第1の結合ドメインが少なくとも1つの反応遮断修飾を含む、請求項1~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記プローブにおいて、前記アダプターの前記第1の結合ドメインが、前記標的分子結合ドメインの5’末端に位置する、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記第2の処理時に、前記第2の領域中の前記プローブが前記第2のタグ配列およびオリゴヌクレオチドアダプターと複合体を形成することをさらに含み、前記オリゴヌクレオチドアダプターはプローブ結合ドメインおよびタグ結合ドメインを含む、請求項1~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記第2のタグ配列が、少なくとも1つのバーコードおよびアダプターの第2の結合ドメインを含む、請求項1~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記第2の処理時に、前記プローブ結合ドメイン中の核酸配列が、前記第2の領域中の前記プローブ中の前記アダプターの前記第1の結合ドメイン中の核酸配列に相補的であり、および前記タグ結合ドメイン中の核酸配列が、前記第2のタグ配列中の前記アダプターの前記第2の結合ドメイン中の核酸配列に相補的であり、その結果、部分的に二本鎖構造を形成することをさらに含む、請求項82~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記第2のタグ配列中の前記アダプターの前記第2の結合ドメインが、リガーゼによって、前記第2の領域中の前記プローブ中の前記アダプターの前記第1の結合ドメインに連結され、その結果、前記第2のタグ配列に付着した前記プローブを産生する、請求項83~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記リガーゼがT4リガーゼを含む、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記第2のタグ配列中の前記バーコードが、前記第2の領域の空間的位置情報を特徴付ける、請求項83~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記第2のタグ配列が複数のバーコードを含む、請求項1~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記第2のタグ配列中の前記複数のバーコードが異なる、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記第2のタグ配列中の前記アダプターの前記第2の結合ドメイン中の前記核酸配列が、前記第2のタグ配列中の前記バーコードの3’末端に位置する、請求項83~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記第2のタグ配列が、固有の分子識別領域を含む、請求項1~90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記第2のタグ配列が配列決定プライマーを含む、請求項1~91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
前記試料中の少なくとも1つの標的分子と少なくとも1つのプローブとの間でインサイチュハイブリダイゼーションを行うことを含む、請求項1~92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記インサイチュハイブリダイゼーションの後、前記試料を消化して、前記第1のタグ配列に付着した前記プローブおよび前記第2のタグ配列に付着した前記プローブを得ることを含む、請求項1~93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
得られた、前記第1のタグ配列に付着した前記プローブおよび前記第2のタグ配列に付着した前記プローブを増幅することを含む、請求項1~94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
得られた、前記第1のタグ配列に付着した前記プローブおよび前記第2のタグ配列に付着した前記プローブを増幅した後、前記第1のタグ配列に付着した前記プローブおよび前記第2のタグ配列に付着した前記プローブを配列決定して、前記第1のタグ配列に付着した前記プローブおよび前記第2のタグ配列に付着した前記プローブの組成を決定することをさらに含む、請求項1~95のいずれか1項に記載の方法。
【請求項97】
前記標的分子がタンパク質を含む場合に、前記プローブ中の前記標的分子結合ドメインが、前記タンパク質に特異的に結合するタンパク質結合分子を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
前記タンパク質結合分子が、抗体、ペプチドおよびペプトイドからなる群から選択される、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記標的分子が脂質を含む場合に、前記プローブ中の前記標的分子結合ドメインが前記標的分子を認識し、および結合する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
前記標的分子が、前記試料に由来するDNAを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
前記DNAが、ゲノムDNA、オープンクロマチンDNA、タンパク質によって結合されたDNA領域、ならびに/またはタンパク質、脂質および/もしくは小分子化合物と連結された外因性核酸を含み、前記タンパク質、脂質および/または小分子化合物は前記細胞内の前記標的分子を結合することが可能である、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記試料中の少なくとも1つの標的分子を少なくとも1つのプローブと接触させる前に、前記DNAを断片化することを含む、請求項100~101のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
前記断片化が、トランスポザーゼ-核酸複合体を使用して前記プローブを含有する配列を前記DNA中に組み込むこと、および前記トランスポザーゼを遊離させることを含む、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
前記トランスポザーゼ-核酸複合体がトランスポザーゼおよびトランスポゾン末端核酸分子を含み、前記トランスポゾン末端核酸分子が前記オリゴヌクレオチドアダプター配列を含む、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記トランスポザーゼがTn5を含む、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
前記DNAが、タンパク質によって結合されたDNA領域を含み、前記トランスポザーゼ-核酸複合体が、前記タンパク質を直接的にまたは間接的に認識する部分をさらに含む、請求項100~105のいずれか一項に記載の方法。
【請求項107】
前記タンパク質を直接的にまたは間接的に認識する前記部分が、前記タンパク質を特異的に結合する抗体およびプロテインAまたはプロテインGからなる群の1つまたは複数を含む、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記第1の領域中の前記プローブ上の前記反応遮断修飾が、遊離可能な、塩基を修飾された基、切断可能なリンカーおよび感光性基からなる群から選択される、請求項97~107のいずれか一項に記載の方法。
【請求項109】
前記第1の領域中の前記プローブ上の前記反応遮断修飾が切断可能なリンカーである、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記リンカーが、前記第1の領域中の前記プローブの5’末端に位置する、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
前記リンカーが、前記第1の処理時に切断可能である、請求項109~110のいずれか一項に記載の方法。
【請求項112】
前記第1の処理が、電子ビーム処理、音波および照明からなる群から選択される、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記第1の処理が照明である、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記光が、アークランプ、レーザ、UV光源および発光ダイオードからなる群から選択される光源によって提供される、請求項112~113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項115】
前記光がUV光源によって提供される、請求項112~114のいずれか一項に記載の方法。
【請求項116】
前記第1の領域中の前記プローブ上の前記反応遮断修飾が、遊離可能な、塩基を修飾された基である、請求項108~115のいずれか一項に記載の方法。
【請求項117】
前記第1の領域中の前記プローブ上の前記反応遮断修飾が、少なくとも1つの遊離可能な、塩基を修飾された基を含む、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
前記第1の領域中の前記プローブ上の前記反応遮断修飾が、少なくとも1つの遊離可能な感光性基を含む、請求項116~117のいずれか一項に記載の方法。
【請求項119】
前記塩基を修飾された基が、NPOM保護基を含む、請求項116~118のいずれか一項に記載の方法。
【請求項120】
前記塩基を修飾された基が、前記第1の処理時に遊離可能である、請求項116~119のいずれか一項に記載の方法。
【請求項121】
前記第1の処理が、電子ビーム処理、音波および照明からなる群から選択される、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
前記第1の処理が照明である、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
前記光が、アークランプ、レーザ、UV光源および発光ダイオードからなる群から選択される光源によって提供される、請求項121~122のいずれか一項に記載の方法。
【請求項124】
前記光がUV光源によって提供される、請求項121~123のいずれか一項に記載の方法。
【請求項125】
前記第2の領域中の前記プローブ上の前記反応遮断修飾が、遊離可能な、塩基を修飾された基、切断可能なリンカーおよび感光性基からなる群から選択される、請求項97~124のいずれか一項に記載の方法。
【請求項126】
前記第2の領域中の前記プローブ上の前記反応遮断修飾が切断可能なリンカーである、請求項125に記載の方法。
【請求項127】
前記リンカーが、前記第2の領域中の前記プローブの5’末端に位置する、請求項126に記載の方法。
【請求項128】
前記リンカーが、前記第2の処理時に切断可能である、請求項126~127のいずれか一項に記載の方法。
【請求項129】
前記第2の処理が、電子ビーム処理、音波および照明からなる群から選択される、請求項128に記載の方法。
【請求項130】
前記第2の処理が照明である、請求項129に記載の方法。
【請求項131】
前記光が、アークランプ、レーザ、UV光源および発光ダイオードからなる群から選択される光源によって提供される、請求項129~130のいずれか一項に記載の方法。
【請求項132】
前記光がUV光源によって供給される、請求項129~131のいずれか一項に記載の方法。
【請求項133】
前記第2の領域中の前記プローブ上の前記反応遮断修飾が、遊離可能な、塩基を修飾された基である、請求項125に記載の方法。
【請求項134】
前記第2の領域中の前記プローブ上の前記反応遮断修飾が、少なくとも1つの遊離可能な、塩基を修飾された基を含む、請求項133に記載の方法。
【請求項135】
前記塩基を修飾された基が、NPOM保護基を含む、請求項133~134のいずれか一項に記載の方法。
【請求項136】
前記塩基を修飾された基が、前記第2の処理時に遊離可能である、請求項133~135のいずれか一項に記載の方法。
【請求項137】
前記第2の処理が、電子ビーム処理、音波および照明からなる群から選択される、請求項136に記載の方法。
【請求項138】
前記第2の処理が照明である、請求項137に記載の方法。
【請求項139】
前記光が、アークランプ、レーザ、UV光源および発光ダイオードからなる群から選択される光源によって提供される、請求項137~138のいずれか一項に記載の方法。
【請求項140】
前記光がUV光源によって供給される、請求項137~139のいずれか一項に記載の方法。
【請求項141】
前記第1の処理および前記第2の処理が同じであるかまたは異なる、請求項1~22および97~140のいずれか一項に記載の方法。
【請求項142】
前記試料の前記第1の領域に対して前記第1の処理を実行する間または実行した後に、前記試料の前記第2の領域に対して前記第2の処理を実行することを含む、請求項1~22および97~141のいずれか一項に記載の方法。
【請求項143】
前記第1の処理の後、前記第1のタグ配列を含有する前記第1のタグ分子を前記試料の前記第1の領域に投与することを含む、請求項1~22および97~142のいずれか一項に記載の方法。
【請求項144】
前記第2の処理の後、前記第2のタグ配列を含有する前記第2のタグ分子を前記試料の前記第2の領域に投与することを含む、請求項1~22および97~143のいずれか一項に記載の方法。
【請求項145】
前記プローブがアダプターの第1の結合ドメインを含み、前記アダプターの前記第1の結合ドメインが少なくとも1つの反応遮断修飾を含む、請求項1~22および97~144のいずれか一項に記載の方法。
【請求項146】
前記プローブにおいて、前記アダプターの前記第1の結合ドメインが、前記標的分子結合ドメインの5’末端に位置する、請求項145に記載の方法。
【請求項147】
前記プローブがバーコードをさらに含む、請求項145~146のいずれか一項に記載の方法。
【請求項148】
前記バーコードが抗体の同一性を特徴付ける、請求項147に記載の方法。
【請求項149】
前記第1の処理時に、前記第1の領域中の前記プローブが前記第1のタグ配列およびオリゴヌクレオチドアダプターと複合体を形成することを含み、前記オリゴヌクレオチドアダプターはプローブ結合ドメインおよびタグ結合ドメインを含む、請求項1~22および97~148のいずれか一項に記載の方法。
【請求項150】
前記第1のタグ配列が、少なくとも1つのバーコードとアダプターの第2の結合ドメインとを含む、請求項1~22および97~149のいずれか一項に記載の方法。
【請求項151】
前記第1の処理時に、前記プローブ結合ドメイン中の核酸配列が、前記第1の領域中の前記プローブ中の前記アダプターの前記第1の結合ドメイン中の核酸配列に相補的であり、および前記タグ結合ドメイン中の核酸配列が、前記第1のタグ配列中の前記アダプターの前記第2の結合ドメイン中の核酸配列に相補的であり、その結果、部分的に二本鎖構造を形成することを含む、請求項150に記載の方法。
【請求項152】
前記第1のタグ配列中の前記アダプターの前記第2の結合ドメインが、リガーゼによって、前記第1の領域中の前記プローブ中の前記アダプターの前記第1の結合ドメインに連結され、その結果、前記第1のタグ配列に付着した前記プローブを産生する、請求項150~151のいずれか一項に記載の方法。
【請求項153】
前記リガーゼがT4リガーゼを含む、請求項152に記載の方法。
【請求項154】
前記第1のタグ配列の前記バーコードが、前記第1の領域の空間的位置情報を特徴付ける、請求項150~153のいずれか一項に記載の方法。
【請求項155】
前記第1のタグ配列が複数のバーコードを含む、請求項150~154のいずれか一項に記載の方法。
【請求項156】
前記第1のタグ配列中の前記複数のバーコードが異なる、請求項155に記載の方法。
【請求項157】
前記第1のタグ配列中の前記アダプターの前記第2の結合ドメイン中の前記核酸配列が、前記第1のタグ配列中の前記バーコードの3’末端に位置する、請求項150~156のいずれか一項に記載の方法。
【請求項158】
前記第1のタグ配列が、固有の分子識別領域を含む、請求項1~22および97~157のいずれか一項に記載の方法。
【請求項159】
前記第1のタグ配列が配列決定プライマーを含む、請求項1~22および97~158のいずれか一項に記載の方法。
【請求項160】
前記第2の領域中の前記プローブがアダプターの第1の結合ドメインを含み、前記アダプターの前記第1の結合ドメインが少なくとも1つの反応遮断修飾を含む、請求項1~22および97~159のいずれか一項に記載の方法。
【請求項161】
前記プローブにおいて、前記アダプターの前記第1の結合ドメインが、前記標的分子結合ドメインの5’末端に位置する、請求項160に記載の方法。
【請求項162】
前記第2の処理時に、前記第2の領域中の前記プローブが前記第2のタグ配列およびオリゴヌクレオチドアダプターと複合体を形成することを含む、請求項1~22および97~161のいずれか一項に記載の方法。
【請求項163】
前記第2のタグ配列が、少なくとも1つのバーコードおよびアダプターの第2の結合ドメインを含む、請求項1~22および97~162のいずれか一項に記載の方法。
【請求項164】
前記第2の処理時に、前記プローブ結合ドメイン中の核酸配列が、前記第2の領域中の前記プローブ中の前記アダプターの前記第1の結合ドメイン中の核酸配列に相補的であり、および前記タグ結合ドメイン中の核酸配列が、前記第2のタグ配列中の前記アダプターの前記第2の結合ドメイン中の核酸配列に相補的であり、その結果、部分的に二本鎖構造を形成することを含む、請求項163に記載の方法。
【請求項165】
前記第2のタグ配列中の前記アダプターの前記第2の結合ドメインが、リガーゼによって、前記第2の領域中の前記プローブ中の前記アダプターの前記第1の結合ドメインに連結され、その結果、前記第2のタグ配列に付着した前記プローブを産生する、請求項163~164のいずれか一項に記載の方法。
【請求項166】
前記リガーゼがT4リガーゼを含む、請求項165に記載の方法。
【請求項167】
前記第2のタグ配列中の前記バーコードが、前記第2の領域の空間的位置情報を特徴付ける、請求項163~166のいずれか一項に記載の方法。
【請求項168】
前記第2のタグ配列が複数のバーコードを含む、請求項163~167のいずれか一項に記載の方法。
【請求項169】
前記第2のタグ配列中の前記複数のバーコードが異なる、請求項168に記載の方法。
【請求項170】
前記第2のタグ配列中の前記アダプターの前記第2の結合ドメイン中の前記核酸配列が、前記第2のタグ配列中の前記バーコードの3’末端に位置する、請求項163~169のいずれか一項に記載の方法。
【請求項171】
前記第2のタグ配列が、固有の分子識別領域を含む、請求項1~22および97~170のいずれか一項に記載の方法。
【請求項172】
前記第2のタグ配列が配列決定プライマーを含む、請求項1~22および97~171のいずれか一項に記載の方法。
【請求項173】
前記少なくとも1つのプローブが、前記試料中の少なくとも1つの標的分子を特異的に認識する、請求項1~22および97~172のいずれか一項に記載の方法。
【請求項174】
前記試料を消化して、前記第1のタグ配列に付着した前記プローブおよび前記第2のタグ配列に付着した前記プローブを得ることを含む、請求項1~22および97~173のいずれか一項に記載の方法。
【請求項175】
得られた、前記第1のタグ配列に付着した前記プローブおよび前記第2のタグ配列に付着した前記プローブを増幅することを含む、請求項1~22および97~174のいずれか一項に記載の方法。
【請求項176】
得られた、前記第1のタグ配列に付着した前記プローブおよび前記第2のタグ配列に付着した前記プローブを増幅した後、前記第1のタグ配列に付着した前記プローブおよび前記第2のタグ配列に付着した前記プローブを配列決定して、前記第1のタグ配列に付着した前記プローブおよび前記第2のタグ配列に付着した前記プローブの組成を決定することをさらに含む、請求項1~22および97~175のいずれか1項に記載の方法。
【請求項177】
組み合わせであって、(1)複数のプローブであって、前記プローブの各々が、標的分子結合ドメインと、アダプターの第1の結合ドメインと、少なくとも1つの反応遮断修飾とを含む、複数のプローブと;(2)プローブ結合ドメインとタグ結合ドメインとを含むオリゴヌクレオチドアダプターと;(3)複数のタグ配列であって、前記タグ配列の各々が、少なくとも1つのバーコードとアダプターの第2の結合ドメインとを含む、複数のタグ配列とを含み、前記プローブ結合ドメイン中の核酸配列が、前記アダプターの前記第1の結合ドメイン中の核酸配列に相補的であり、および前記タグ結合ドメイン中の核酸配列が、前記アダプターの前記第2の結合ドメイン中の核酸配列に相補的である、組み合わせ。
【請求項178】
前記複数のタグ配列の2つ以上における前記バーコードが異なる、請求項177に記載の組み合わせ。
【請求項179】
前記反応遮断修飾が、遊離可能な、塩基を修飾された基、切断可能なリンカーおよび感光性基からなる群から選択される、請求項177~178のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項180】
前記反応遮断修飾が切断可能なリンカーである、請求項177~179のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項181】
前記反応遮断修飾が、遊離可能な、塩基を修飾された基である、請求項177~180のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項182】
前記1)、2)および3)が互いに独立して存在する、請求項177~181のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項183】
前記1)、2)および3)が混合物として存在する、請求項177~182のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項184】
請求項177~183のいずれか一項に記載の組み合わせを含むキット。
【請求項185】
トランスポザーゼを含む、請求項184に記載のキット。
【請求項186】
核酸増幅剤、逆転写酵素、固定剤、透過剤、連結剤および溶解剤の少なくとも1つをさらに含む、請求項184~185のいずれか一項に記載のキット。
【請求項187】
使用説明書を含む、請求項184~186のいずれか一項に記載のキット。
【請求項188】
前記使用説明書が、以下の方法:(a)プローブを標的分子に特異的に結合させる条件下で、試料中の少なくとも1つの標的分子を少なくとも1つのプローブと接触させる工程であって、前記プローブは、前記標的分子に特異的に結合することが可能な標的分子結合ドメインと、少なくとも1つの反応遮断修飾とを含有する、工程と;(b)前記試料の第1の領域に対して第1の処理を実行する工程であって、前記第1の処理は、前記第1の領域内の前記プローブ上の前記反応遮断修飾を少なくとも部分的に除去して、前記第1の領域内の前記プローブを前記タグ配列中の第1のタグ配列に付着させることが可能である、工程と;(c)前記試料中の、前記第1の領域とは異なる第2の領域に対して第2の処理を実行する工程であって、前記第2の処理は、前記第2の領域中の前記プローブ上の前記反応遮断修飾を少なくとも部分的に除去して、前記第2の領域中の前記プローブを前記タグ配列中の第2のタグ配列に付着させることが可能であり、前記第2のタグ配列は前記第1のタグ配列とは異なる、工程と;(d)前記第1のタグ配列に付着した前記プローブおよび前記第2のタグ配列に付着した前記プローブの組成を決定し、ならびに前記プローブの前記組成から、前記試料中の前記第1の領域の前記標的分子の存在および/または含有量および前記第2の領域の前記標的分子の存在および/または含有量を決定する工程とを記載する、請求項187に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、生物医学の分野に関し、特に、試料のオミクス情報を分析するための製品および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトおよび他の種のゲノムの配列決定が徐々に完了するにつれて、現代の生物学における研究は、ポストゲノム時代に入った。近年、ゲノム技術、トランスクリプトーム技術、プロテオミクス技術などを含む、様々な生物学的高分子の研究のためのハイスループット技術が絶えず開発されている。さらに、少量または単一細胞試料に対する様々なオミクスアプローチが盛んになっており、適用されている。大量のデータ処理および分析に対する需要が増大するにつれて、バイオインフォマティクスも急速に発展している。
【0003】
インサイチュハイブリダイゼーションおよび異なる転写物の他の多重検出などの伝統的な方法は、遺伝子発現の空間的分布を明らかにし、発達および疾患の分子的基礎を解明するのに役立ってきた。しかしながら、これらの方法は、試料中の様々な空間的位置における複数の遺伝子の発現または複数のタンパク質の存在およびもしくは活性を同時に測定することができない。
【0004】
したがって、試料中の複数の領域のオミクス情報を解析するために、試料中の複数の領域を高い効率で同時に検出することが可能な方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本出願は、以下の特性のうちの1つまたは複数を有する、試料のオミクス情報を分析するための方法を提供する:1)高い効率でトランスクリプトーム検出およびプロテオミクス検出を行うことが可能である;2)オミクス情報に対して複数の検出を同時に行うことが可能である。
【0006】
本出願は、プローブを標的分子に特異的に結合させる条件下で、試料中の少なくとも1つの標的分子を少なくとも1つのプローブと接触させる工程であって、前記プローブは、前記標的分子に特異的に結合することが可能な標的分子結合ドメインと、少なくとも1つの反応遮断修飾とを含有する、工程と;
前記試料の第1の領域に対して第1の処理を実行する工程であって、前記第1の処理は、前記第1の領域内の前記プローブ上の前記反応遮断修飾を少なくとも部分的に除去して、前記第1の領域内の前記プローブを第1のタグ配列に付着させることが可能である、工程と;
前記試料中の、前記第1の領域とは異なる第2の領域に対して第2の処理を実行する工程であって、前記第2の処理は、前記第2の領域中の前記プローブ上の前記反応遮断修飾を少なくとも部分的に除去して、前記第2の領域中の前記プローブを第2のタグ配列に付着させることが可能であり、前記第2のタグ配列は前記第1のタグ配列とは異なる、工程と;
前記第1のタグ配列に付着した前記プローブおよび前記第2のタグ配列に付着した前記プローブの組成を決定し、ならびに前記プローブの前記組成から、前記試料中の前記第1の領域の前記標的分子の存在および/または含有量および前記第2の領域の前記標的分子の存在および/または含有量を決定する工程と
を含む、方法を提供する。
【0007】
いくつかの態様において、試料は組織切片を含む。
【0008】
いくつかの態様において、組織切片は、1~1000μmの範囲の厚さを有する。
【0009】
いくつかの態様において、本方法における組織切片は、凍結切片、パラフィン切片、カルボワックス切片、極薄切片およびプラスチック切片からなる群から選択される。
【0010】
いくつかの態様において、組織切片は、固定された組織切片を含む。
【0011】
いくつかの態様において、組織切片は、ホルマリン固定された組織切片を含む。
【0012】
いくつかの態様において、組織切片は、ホルマリン固定されたパラフィン切片である。
【0013】
いくつかの態様において、組織切片は凍結切片である。
【0014】
いくつかの態様において、組織切片中の組織は、多細胞生物に由来する。
【0015】
いくつかの態様において、組織切片中の組織はヒト由来である。
【0016】
いくつかの態様において、組織切片は臨床的に意義のある組織試料である。
【0017】
いくつかの態様において、組織切片中の組織は、心筋組織、肝組織、脾臓組織、肺組織、腎組織および脳組織からなる群に由来する。
【0018】
いくつかの態様において、第1の領域は、組織切片上の第1の領域であり、および第2の領域は、組織切片上の、第1の領域と実質的に重複していない第2の領域である。
【0019】
いくつかの態様において、試料は単一の細胞である。
【0020】
いくつかの態様において、細胞は、生物から単離された細胞、インビトロで培養された細胞、初代細胞および外植片からの分離した細胞からなる群から選択される。
【0021】
いくつかの態様において、本方法における細胞は固定されている。
【0022】
いくつかの態様において、第1の領域は、細胞内の第1の細胞内構造である。
【0023】
いくつかの態様において、第2の領域は、細胞内の第2の細胞内構造である。
【0024】
いくつかの態様において、標的分子は、タンパク質、核酸分子および/または脂質を含む。
【0025】
いくつかの態様において、核酸分子は、DNA分子および/またはRNA分子を含む。
【0026】
いくつかの態様において、DNAはcDNAを含む。
【0027】
いくつかの態様において、RNAは、cRNA、mRNA、miRNA、lncRNAおよび/またはeRNAを含む。
【0028】
いくつかの態様において、標的分子がRNAを含む場合に、プローブ中の標的分子結合ドメインは、当該RNAに相補的な核酸配列を含む。
【0029】
いくつかの態様において、プローブ中の標的分子結合ドメインはポリAを含む。
【0030】
いくつかの態様において、プローブ中の標的分子結合ドメインはポリTを含む。
【0031】
いくつかの態様において、プローブ中の標的分子結合ドメインは、標的分子の配列に少なくとも50%相補的である。
【0032】
いくつかの態様において、本方法は、試料中の2つ以上の標的分子を2つ以上のプローブと接触させる工程を含み、2つ以上のプローブは2つ以上の標的分子を特異的に結合することが可能である。
【0033】
いくつかの態様において、2つ以上の標的分子は異なる。
【0034】
いくつかの態様において、本方法では、第1の領域中のプローブ上の反応遮断修飾は、遊離可能な、塩基を修飾された基、切断可能なリンカーおよび感光性基からなる群から選択される。
【0035】
いくつかの態様において、標的分子がRNAを含む場合に、前記方法における第1の領域中のプローブ上の反応遮断修飾は切断可能なリンカーである。
【0036】
いくつかの態様において、本方法におけるリンカーは第1の領域中のプローブの5’末端に位置する。
【0037】
いくつかの態様において、第1の領域中のプローブ中のリンカーは、第1の処理時に切断可能である。
【0038】
いくつかの態様において、本方法における第1の処理は、電子ビーム処理、音波および照明からなる群から選択される。
【0039】
いくつかの態様において、本方法における第1の処理は照明である。
【0040】
いくつかの態様において、本方法における光は、アークランプ、レーザ、UV光源および発光ダイオードからなる群から選択される光源によって提供される。
【0041】
いくつかの態様において、本方法における光は、UV光源によって提供される。
【0042】
いくつかの態様において、本方法では、第1の領域中のプローブ上の反応遮断修飾は、遊離可能な、塩基を修飾された基である。
【0043】
いくつかの態様において、本方法では、第1の領域中のプローブ上の反応遮断修飾は、少なくとも1つの遊離可能な、塩基を修飾された基を含む。
【0044】
いくつかの態様において、第1の領域中のプローブ上の反応遮断修飾は、少なくとも1つの遊離可能な感光性基を含む。
【0045】
いくつかの態様において、第1の領域中のプローブ中の塩基を修飾された基は、NPOM保護基を含む。
【0046】
いくつかの態様において、第1の領域中のプローブ中の塩基を修飾された基は、第1の処理時に遊離可能である。
【0047】
いくつかの態様において、本方法における第1の処理は、電子ビーム処理、音波および照明からなる群から選択される。
【0048】
いくつかの態様において、本方法における第1の処理は照明である。
【0049】
いくつかの態様において、本方法における光は、アークランプ、レーザ、UV光源および発光ダイオードからなる群から選択される光源によって提供される。
【0050】
いくつかの態様において、本方法における光は、UV光源によって提供される。
【0051】
いくつかの態様において、標的分子がRNAを含む場合に、第2の領域中のプローブ上の反応遮断修飾は、遊離可能な、塩基を修飾された基、切断可能なリンカーおよび感光性基からなる群から選択される。
【0052】
いくつかの態様において、本方法では、第2の領域中のプローブ上の反応遮断修飾は、切断可能なリンカーである。
【0053】
いくつかの態様において、本方法におけるリンカーは第2の領域中のプローブの5’末端に位置する。
【0054】
いくつかの態様において、第2の領域中のプローブ中のリンカーは、第2の処理時に切断可能である。
【0055】
いくつかの態様において、本方法における第2の処理は、電子ビーム処理、音波および照明からなる群から選択される。
【0056】
いくつかの態様において、本方法における第2の処理は照明である。
【0057】
いくつかの態様において、本方法における光は、アークランプ、レーザ、UV光源および発光ダイオードからなる群から選択される光源によって提供される。
【0058】
いくつかの態様において、本方法における光は、UV光源によって提供される。
【0059】
いくつかの態様において、本方法では、第2の領域中のプローブ上の反応遮断修飾は、遊離可能な、塩基を修飾された基である。
【0060】
いくつかの態様において、本方法では、第2の領域中のプローブ上の反応遮断修飾は、少なくとも1つの遊離可能な、塩基を修飾された基を含む。
【0061】
いくつかの態様において、本方法では、第2の領域中のプローブ上の反応遮断修飾は、少なくとも1つの遊離可能な感光性基を含む。
【0062】
いくつかの態様において、本方法における塩基を修飾された基は、NPOM保護基を含む。
【0063】
いくつかの態様において、第2の領域中のプローブ中の塩基を修飾された基は、第2の処理時に遊離可能である。
【0064】
いくつかの態様において、本方法における第2の処理は、電子ビーム処理、音波および照明からなる群から選択される。
【0065】
いくつかの態様において、本方法における第2の処理は照明である。
【0066】
いくつかの態様において、本方法における光は、アークランプ、レーザ、UV光源および発光ダイオードからなる群から選択される光源によって提供される。
【0067】
いくつかの態様において、本方法における光は、UV光源によって提供される。
【0068】
いくつかの態様において、本方法における第1の処理および第2の処理は同じであるかまたは異なる。
【0069】
いくつかの態様において、試料の第1の領域に対して第1の処理を実行する間または後に、試料の第2の領域に対して第2の処理が実行される。
【0070】
いくつかの態様において、本方法は、第1の処理の後、第1のタグ配列を含有する第1のタグ分子を前記試料の前記第1の領域に投与することを含む。
【0071】
いくつかの態様において、本方法は、第2の処理の後、第2のタグ配列を含有する第2のタグ分子を前記試料の前記第2の領域に投与することを含む。
【0072】
いくつかの態様において、プローブはアダプターの第1の結合ドメインをさらに含み、アダプターの第1の結合ドメインは少なくとも1つの反応遮断修飾を含む。
【0073】
いくつかの態様では、プローブにおいて、アダプターの第1の結合ドメインは、標的分子結合ドメインの5’末端に位置する。
【0074】
いくつかの態様において、本方法は、第1の処理時に、第1の領域中のプローブが第1のタグ配列およびオリゴヌクレオチドアダプターと複合体を形成することを含み、オリゴヌクレオチドアダプターはプローブ結合ドメインおよびタグ結合ドメインを含む。
【0075】
いくつかの態様において、本方法における第1のタグ配列は、少なくとも1つのバーコードとアダプターの第2の結合ドメインとを含む。
【0076】
いくつかの態様において、本方法は、第1の処理時に、プローブ結合ドメイン中の核酸配列が、第1の領域中のプローブ中のアダプターの第1の結合ドメイン中の核酸配列に相補的であり、およびタグ結合ドメイン中の核酸配列が、第1のタグ配列中のアダプターの第2の結合ドメイン中の核酸配列に相補的であり、その結果、部分的に二本鎖構造を形成することを含む。
【0077】
いくつかの態様において、第1のタグ配列中のアダプターの第2の結合ドメインが、リガーゼによって、第1の領域中のプローブ中のアダプターの第1の結合ドメインに連結され、その結果、第1のタグ配列に付着したプローブを産生する。
【0078】
いくつかの態様において、リガーゼはT4リガーゼを含む。
【0079】
いくつかの態様において、第1のタグ配列のバーコードは、第1の領域の空間的位置情報を特徴付ける。
【0080】
いくつかの態様において、第1のタグ配列は複数のバーコードを含む。
【0081】
いくつかの態様において、第1のタグ内の複数のバーコードは異なる。
【0082】
いくつかの態様において、第1のタグ配列中のアダプターの第2の結合ドメイン中の核酸配列は、第1のタグ配列中のバーコードの3’末端に位置する。
【0083】
いくつかの態様において、第1のタグ配列は、固有の分子識別領域を含む。
【0084】
いくつかの態様において、第1のタグ配列は配列決定プライマーを含む。
【0085】
いくつかの態様において、第2の領域中のプローブはアダプターの第1の結合ドメインを含み、アダプターの第1の結合ドメインは少なくとも1つの反応遮断修飾を含む。
【0086】
いくつかの態様では、プローブにおいて、アダプターの第1の結合ドメインは、標的分子結合ドメインの5’末端に位置する。
【0087】
いくつかの態様において、本方法は、第2の処理時に、第2の領域中のプローブが第2のタグ配列およびオリゴヌクレオチドアダプターと複合体を形成することを含み、オリゴヌクレオチドアダプターはプローブ結合ドメインおよびタグ結合ドメインを含む。
【0088】
いくつかの態様において、第2のタグ配列は、少なくとも1つのバーコードとアダプターの第2の結合ドメインとを含む。
【0089】
いくつかの態様において、本方法は、第2の処理時に、プローブ結合ドメイン中の核酸配列が、第2の領域中のプローブ中のアダプターの第1の結合ドメイン中の核酸配列に相補的であり、およびタグ結合ドメイン中の核酸配列が、第2のタグ配列中のアダプターの第2の結合ドメイン中の核酸配列に相補的であり、その結果、部分的に二本鎖構造を形成することを含む。
【0090】
いくつかの態様において、第2のタグ配列中のアダプターの第2の結合ドメインが、リガーゼによって、第2の領域中のプローブ中のアダプターの第1の結合ドメインに連結され、その結果、第2のタグ配列に付着したプローブを産生する。
【0091】
いくつかの態様において、リガーゼはT4リガーゼを含む。
【0092】
いくつかの態様において、第2のタグ配列中のバーコードは、第2の領域の空間的位置情報を特徴付ける。
【0093】
いくつかの態様において、第2のタグ配列は、複数のバーコードを含む。
【0094】
いくつかの態様において、第2のタグ配列中の複数のバーコードは異なる。
【0095】
いくつかの態様において、第2のタグ配列中のアダプターの第2の結合ドメイン中の核酸配列は、第2のタグ配列中のバーコードの3’末端に位置する。
【0096】
いくつかの態様において、第2のタグ配列は、固有の分子識別領域を含む。
【0097】
いくつかの態様において、第2のタグ配列は配列決定プライマーを含む。
【0098】
いくつかの態様において、試料中の少なくとも1つの標的分子は、少なくとも1つのプローブとのインサイチュハイブリダイゼーションに供される。
【0099】
いくつかの態様において、本方法は、インサイチュハイブリダイゼーションの後、試料を消化して、第1のタグ配列に付着したプローブおよび第2のタグ配列に付着したプローブを得ることを含む。
【0100】
いくつかの態様において、本方法は、得られた、第1のタグ配列に付着したプローブおよび第2のタグ配列に付着したプローブを増幅することを含む。
【0101】
いくつかの態様において、本方法は、得られた、第1のタグ配列に付着したプローブおよび第2のタグ配列に付着したプローブを増幅した後、第1のタグ配列に付着したプローブおよび第2のタグ配列に付着したプローブを配列決定して、第1のタグ配列に付着したプローブおよび第2のタグ配列に付着したプローブの組成を決定することをさらに含む。
【0102】
いくつかの態様において、標的分子がタンパク質を含む場合に、プローブ中の標的分子結合ドメインは、タンパク質に特異的に結合するタンパク質結合分子を含む。
【0103】
いくつかの態様において、タンパク質結合分子は、抗体、ペプチドおよびペプトイドからなる群から選択される。
【0104】
いくつかの態様において、標的分子が脂質を含む場合に、プローブ中の標的分子結合ドメインは標的分子を認識し、および結合する。
【0105】
いくつかの態様において、標的分子は、試料に由来するDNAを含む。
【0106】
いくつかの態様において、DNAは、ゲノムDNA、オープンクロマチンDNA、タンパク質によって結合されたDNA領域、ならびに/またはタンパク質、脂質および/もしくは小分子化合物と連結された外因性核酸を含み、タンパク質、脂質および/または小分子化合物は細胞内の標的分子を結合することが可能である。
【0107】
いくつかの態様において、本方法は、試料中の少なくとも1つの標的分子を少なくとも1つのプローブと接触させる前にDNAを断片化することを含む。
【0108】
いくつかの態様において、本方法における断片化は、トランスポザーゼ-核酸複合体を使用してプローブを含有する配列をDNA中に組み込むこと、およびトランスポザーゼを遊離させることを含む。
【0109】
いくつかの態様において、本方法におけるトランスポザーゼ-核酸複合体はトランスポザーゼおよびトランスポゾン末端核酸分子を含み、トランスポゾン末端核酸分子はオリゴヌクレオチドアダプター配列を含む。
【0110】
いくつかの態様において、トランスポザーゼはTn5を含む。
【0111】
いくつかの態様において、DNAは、タンパク質によって結合されたDNA領域を含み、トランスポザーゼ-核酸複合体は、タンパク質を直接的にまたは間接的に認識する部分をさらに含む。
【0112】
いくつかの態様において、本方法では、タンパク質を直接的にまたは間接的に認識する部分は、タンパク質を特異的に結合する抗体およびプロテインAまたはプロテインGからなる群の1つまたは複数を含む。
【0113】
いくつかの態様において、本方法では、第1の領域中のプローブ上の反応遮断修飾は、遊離可能な、塩基を修飾された基、切断可能なリンカーおよび感光性基からなる群から選択される。
【0114】
いくつかの態様において、第1の領域中のプローブ上の反応遮断修飾は、切断可能なリンカーである。
【0115】
いくつかの態様において、リンカーは、第1の領域中のプローブの5’末端に位置する。
【0116】
いくつかの態様において、リンカーは、第1の処理時に切断可能である。
【0117】
いくつかの態様において、第1の処理は、電子ビーム処理、音波および照明からなる群から選択される。
【0118】
いくつかの態様において、第1の処理は照明である。
【0119】
いくつかの態様において、光は、アークランプ、レーザ、UV光源および発光ダイオードからなる群から選択される光源によって提供される。
【0120】
いくつかの態様において、光はUV光源によって提供される。
【0121】
いくつかの態様において、第1の領域中のプローブ上の反応遮断修飾は、遊離可能な、塩基を修飾された基である。
【0122】
いくつかの態様において、第1の領域中のプローブ上の反応遮断修飾は、少なくとも1つの遊離可能な、塩基を修飾された基を含む。
【0123】
いくつかの態様において、第1の領域中のプローブ上の反応遮断修飾は、少なくとも1つの遊離可能な感光性基を含む。
【0124】
いくつかの態様において、塩基を修飾された基は、NPOM保護基を含む。
【0125】
いくつかの態様において、塩基を修飾された基は、第1の処理時に遊離可能である。
【0126】
いくつかの態様において、第1の処理は、電子ビーム処理、音波および照明からなる群から選択される。
【0127】
いくつかの態様において、第1の処理は照明である。
【0128】
いくつかの態様において、光は、アークランプ、レーザ、UV光源および発光ダイオードからなる群から選択される光源によって提供される。
【0129】
いくつかの態様において、光はUV光源によって提供される。
【0130】
いくつかの態様において、第2の領域中のプローブ上の反応遮断修飾は、遊離可能な、塩基を修飾された基、切断可能なリンカーおよび感光性基からなる群から選択される。
【0131】
いくつかの態様において、第2の領域中のプローブ上の反応遮断修飾は、切断可能なリンカーである。
【0132】
いくつかの態様において、リンカーは、第2の領域中のプローブの5’末端に位置する。
【0133】
いくつかの態様において、リンカーは、第2の処理時に切断可能である。
【0134】
いくつかの態様において、第2の処理は、電子ビーム処理、音波および照明からなる群から選択される。
【0135】
いくつかの態様において、第2の処理は照明である。
【0136】
いくつかの態様において、光は、アークランプ、レーザ、UV光源および発光ダイオードからなる群から選択される光源によって提供される。
【0137】
いくつかの態様において、光はUV光源によって提供される。
【0138】
いくつかの態様において、第2の領域中のプローブ上の反応遮断修飾は、遊離可能な、塩基を修飾された基である。
【0139】
いくつかの態様において、第2の領域中のプローブ上の反応遮断修飾は、少なくとも1つの遊離可能な、塩基を修飾された基を含む。
【0140】
いくつかの態様において、塩基を修飾された基は、NPOM保護基を含む。
【0141】
いくつかの態様において、塩基を修飾された基は、第2の処理時に遊離可能である。
【0142】
いくつかの態様において、第2の処理は、電子ビーム処理、音波および照明からなる群から選択される。
【0143】
いくつかの態様において、第2の処理は照明である。
【0144】
いくつかの態様において、光は、アークランプ、レーザ、UV光源および発光ダイオードからなる群から選択される光源によって提供される。
【0145】
いくつかの態様において、光はUV光源によって提供される。
【0146】
いくつかの態様において、第1の処理および第2の処理は同じであるかまたは異なる。
【0147】
いくつかの態様において、試料の第1の領域に対して第1の処理を実行する間または後に、試料の第2の領域に対して第2の処理が実行される。
【0148】
いくつかの態様において、本方法は、第1の処理の後、第1のタグ配列を含有する第1のタグ分子を前記試料の第1の領域に投与することを含む。
【0149】
いくつかの態様において、本方法は、第2の処理の後に、第2のタグ配列を含有する第2のタグ分子を試料の第2の領域に投与することを含む。
【0150】
いくつかの態様において、プローブはアダプターの第1の結合ドメインを含有し、アダプターの第1の結合ドメインは少なくとも1つの反応遮断修飾を含む。
【0151】
いくつかの態様では、プローブにおいて、アダプターの第1の結合ドメインは、標的分子結合ドメインの5’末端に位置する。
【0152】
いくつかの態様において、プローブはバーコードをさらに含む。
【0153】
いくつかの態様において、プローブ中のバーコードは抗体の同一性を特徴付ける。
【0154】
いくつかの態様において、本方法は、第1の処理時に、第1の領域中のプローブが第1のタグ配列およびオリゴヌクレオチドアダプターと複合体を形成することを含み、オリゴヌクレオチドアダプターはプローブ結合ドメインおよびタグ結合ドメインを含む。
【0155】
いくつかの態様において、第1のタグ配列は、少なくとも1つのバーコードとアダプターの第2の結合ドメインとを含む。
【0156】
いくつかの態様において、本方法は、第1の処理時に、プローブ結合ドメイン中の核酸配列が、第1の領域中のプローブ中のアダプターの第1の結合ドメイン中の核酸配列に相補的であり、およびタグ結合ドメイン中の核酸配列が、第1のタグ配列中のアダプターの第2の結合ドメイン中の核酸配列に相補的であり、その結果、部分的に二本鎖構造を形成することを含む。
【0157】
いくつかの態様において、第1のタグ配列中のアダプターの第2の結合ドメインが、リガーゼによって、第1の領域中のプローブ中のアダプターの第1の結合ドメインに連結され、その結果、第1のタグ配列に付着したプローブを産生する。
【0158】
いくつかの態様において、リガーゼはT4リガーゼを含む。
【0159】
いくつかの態様において、第1のタグ配列のバーコードは、第1の領域の空間的位置情報を特徴付ける。
【0160】
いくつかの態様において、第1のタグ配列は複数のバーコードを含む。
【0161】
いくつかの態様において、第1のタグ配列中の複数のバーコードは異なる。
【0162】
いくつかの態様において、第1のタグ配列中のアダプターの第2の結合ドメイン中の核酸配列は、第1のタグ配列中のバーコードの3’末端に位置する。
【0163】
いくつかの態様において、第1のタグ配列は、固有の分子識別領域を含む。
【0164】
いくつかの態様において、第1のタグ配列は配列決定プライマーを含む。
【0165】
いくつかの態様において、第2の領域中のプローブはアダプターの第1の結合ドメインを含み、アダプターの第1の結合ドメインは少なくとも1つの反応遮断修飾を含む。
【0166】
いくつかの態様では、プローブにおいて、アダプターの第1の結合ドメインは、標的分子結合ドメインの5’末端に位置する。
【0167】
いくつかの態様において、本方法は、第2の処理時に第2の領域中のプローブが第2のタグ配列およびオリゴヌクレオチドアダプターと複合体を形成することを含む。
【0168】
いくつかの態様において、第2のタグ配列は、少なくとも1つのバーコードとアダプターの第2の結合ドメインとを含む。
【0169】
いくつかの態様において、本方法は、第2の処理時に、プローブ結合ドメイン中の核酸配列が、第2の領域中のプローブ中のアダプターの第1の結合ドメイン中の核酸配列に相補的であり、およびタグ結合ドメイン中の核酸配列が、第2のタグ配列中のアダプターの第2の結合ドメイン中の核酸配列に相補的であり、その結果、部分的に二本鎖構造を形成することを含む。
【0170】
いくつかの態様において、第2のタグ配列中のアダプターの第2の結合ドメインが、リガーゼによって、第2の領域中のプローブ中のアダプターの第1の結合ドメインに連結され、その結果、第2のタグ配列に付着したプローブを産生する。
【0171】
いくつかの態様において、リガーゼはT4リガーゼを含む。
【0172】
いくつかの態様において、第2のタグ配列中のバーコードは、第2の領域の空間的位置情報を特徴付ける。
【0173】
いくつかの態様において、第2のタグ配列は、複数のバーコードを含む。
【0174】
いくつかの態様において、第2のタグ配列中の複数のバーコードは異なる。
【0175】
いくつかの態様において、第2のタグ配列中のアダプターの第2の結合ドメイン中の核酸配列は、第2のタグ配列中のバーコードの3’末端に位置する。
【0176】
いくつかの態様において、第2のタグ配列は、固有の分子識別領域を含む。
【0177】
いくつかの態様において、第2のタグ配列は配列決定プライマーを含む。
【0178】
いくつかの態様において、少なくとも1つのプローブは、試料中の少なくとも1つの標的分子を特異的に認識する。
【0179】
いくつかの態様において、本方法は、試料を消化して、第1のタグ配列に付着したプローブおよび第2のタグ配列に付着したプローブを得ることを含む。
【0180】
いくつかの態様において、本方法は、得られた、第1のタグ配列に付着したプローブおよび第2のタグ配列に付着したプローブを増幅することを含む。
【0181】
いくつかの態様において、得られた、第1のタグ配列に付着したプローブおよび第2のタグ配列に付着したプローブを増幅した後、本方法は、第1のタグ配列に付着したプローブおよび第2のタグ配列に付着したプローブを配列決定して、第1のタグ配列に付着したプローブおよび第2のタグ配列に付着したプローブの組成を決定することをさらに含む。
【0182】
別の局面において、本出願は、組み合わせであって、
1)複数のプローブであって、プローブの各々が、標的分子結合ドメインと、アダプターの第1の結合ドメインと、少なくとも1つの反応遮断修飾とを含む、複数のプローブと;
2)プローブ結合ドメインとタグ結合ドメインとを含むオリゴヌクレオチドアダプターと;
3)複数のタグ配列であって、タグ配列の各々が、少なくとも1つのバーコードとアダプターの第2の結合ドメインとを含む、複数のタグ配列とを含み、プローブ結合ドメイン中の核酸配列が、アダプターの第1の結合ドメイン中の核酸配列に相補的であり、およびタグ結合ドメイン中の核酸配列が、アダプターの第2の結合ドメイン中の核酸配列に相補的である、組み合わせを提供する。
【0183】
いくつかの態様において、組み合わせにおけるバーコードは、複数のタグ配列の2つ以上において異なる。
【0184】
いくつかの態様において、組み合わせにおける反応遮断修飾は、遊離可能な、塩基を修飾された基、切断可能なリンカーおよびビオチンからなる群から選択される。
【0185】
いくつかの態様において、組み合わせにおける反応遮断修飾は、切断可能なリンカーである。
【0186】
いくつかの態様において、組み合わせにおける反応遮断修飾は、遊離可能な、塩基を修飾された基である。
【0187】
いくつかの態様では、組み合わせにおいて、1)、2)および3)は互いに独立して存在する。
【0188】
いくつかの態様では、組み合わせにおいて、1)、2)および3)は混合物として存在する。
【0189】
別の局面において、本出願は、組み合わせを含むキットを提供する。
【0190】
いくつかの態様において、キットはトランスポザーゼを含む。
【0191】
いくつかの態様において、キットは、核酸増幅剤、逆転写酵素、固定剤、透過剤、連結剤および溶解剤の少なくとも1つをさらに含む。
【0192】
いくつかの態様において、キットは使用説明書を含む。
【0193】
いくつかの態様において、使用説明書は、以下の方法:
プローブを標的分子に特異的に結合させる条件下で、試料中の少なくとも1つの標的分子を少なくとも1つのプローブと接触させる工程であって、プローブは、標的分子に特異的に結合することが可能な標的分子結合ドメインと、少なくとも1つの反応遮断修飾とを含有する、工程と;
試料の第1の領域に対して第1の処理を実行する工程であって、第1の処理は、第1の領域内のプローブ上の反応遮断修飾を少なくとも部分的に除去して、第1の領域内のプローブをタグ配列中の第1のタグ配列に付着させることが可能である、工程と;
試料中の、第1の領域とは異なる第2の領域に対して第2の処理を実行する工程であって、第2の処理は、第2の領域中のプローブ上の反応遮断修飾を少なくとも部分的に除去して、第2の領域中のプローブをタグ配列中の第2のタグ配列に付着させることが可能であり、第2のタグ配列は第1のタグ配列とは異なる、工程と;
第1のタグ配列に付着したプローブおよび第2のタグ配列に付着したプローブの組成を決定し、ならびにプローブの組成から、試料中の第1の領域の標的分子の存在および/または含有量および第2の領域の標的分子の存在および/または含有量を決定する工程と
を記載する。
【0194】
本出願の他の局面および利点は、以下の詳細な説明から当業者によって容易に認知され得る。以下の詳細な説明では、本出願の例示的な態様のみが示され、記載されている。当業者によって認識されるように、本出願の内容は、当業者が、本出願に含まれる本発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示された特定の態様に変更を加えることを可能にする。これに対応して、本出願の明細書中の図面および説明は、限定的ではなく単なる例示である。
【0195】
本出願に含まれる本発明の特定の特徴は、添付の特許請求の範囲に示されている通りである。本出願に含まれる本発明の特徴および利点は、以下に詳述する例示的な態様および添付の図面を参照することによってよりよく理解することができる。図面の簡単な説明は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0196】
図1図1は、本出願による、試料のオミクス情報を分析するための例示的な方法の概略図を示す。
図2図2は、マウス組織の異なる領域、例えば眼および上皮の概略図を示す。
図3図3は、図2におけるマウス組織の領域1(眼)の遺伝子発現結果を示す。
図4図4は、図2におけるマウス組織の領域1(眼)および領域2(上皮)のATACオミクス解析結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0197】
本発明の実施は、特定の態様を参照しながら以下に記載されており、本発明の他の利点および効果は、本明細書に開示されている内容から当業者に容易に知られるであろう。
【0198】
用語の定義
本出願において、「特徴付ける」という用語は、配列決定またはゲノミクスおよび/もしくはプロテオミクスなどの他の生物学的分析方法によって得られた、核酸および他の関連分子に関する情報の記述を一般的に指す。例えば、情報は、全ゲノム配列決定からの配列情報、入手可能なクロマチン配列および分布に関する情報、核酸配列と核酸配列の結合因子との結合に関する情報、疾患を引き起こす遺伝子中の変異に関する情報、一塩基多型(SNP)、ヌクレオチドメチル化、トランスクリプトーム情報(例えば、遺伝子発現レベルの時間的または空間的変動)などを含み得る。
【0199】
本出願において、「配列決定」という用語は、核酸分子配列の情報を得るための技術を一般的に指す。例えば、特定のDNA断片の塩基配列を解析する場合(例えば、アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)およびグアニン(G)などの配置);配列決定方法には、サンガージデオキシ鎖終結法、パイロシーケンシングおよび新世代配列決定のためにIllumina、Life TechnologiesおよびRocheによって使用される「合成による並列配列決定」または「ライゲーションによる配列決定」プラットフォーム、MGI Tech/Complete Genomicsからの配列決装置が含まれ得る;一般に、配列決定法には、ナノポア配列決定法、例えばOxford Nanopore Technologiesによって開発された方法、PacBioの第3世代配列決装置、または電子検出に基づく方法、例えばLife Technologiesによって発売されたIon Torrent技術なども含まれ得る。
【0200】
本出願において、「プロテインA」という用語は、異なる種からの抗体の重鎖の保存領域に結合することができる細胞由来のタンパク質、すなわち抗体の認識タンパク質を一般的に指す。例えば、プロテインAは、ヒトおよび様々な哺乳動物の血清からのIgG分子のFc断片に結合することができ、哺乳動物には、ブタ、イヌ、ウサギ、ヒト、サル、ラット、マウスおよびウシなどが含まれ得、プロテインAが結合するIgGのサブクラスには、主にIgG1、IgG2およびIgG4が含まれ得;IgGへの結合に加えて、プロテインAは血清中のIgMおよびIgAにも結合することができる。例えば、プロテインAは、ブドウ球菌のプロテインA(SPA)を含み得る。SPAは細胞壁抗原の主成分であり、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)株のほぼ90%以上に存在する。しかしながら、異なる株間でこの成分の含有量には著しい変動が存在する。抗体に結合するプロテインAの機能性は、標的タンパク質-抗体-プロテインA複合体の形成を通じて標的タンパク質の局在化および/または分析を可能にする。
【0201】
本出願において、「固有の分子識別領域」という用語は、「分子バーコード」、「分子マーカー」、「固有の識別子(UID)」、「固有の分子識別領域子(UMI)」などとも称され得、同じ試料中のそれぞれの元のヌクレオチド断片上に固有の配列をコードすることを一般的に指す。固有分子識別領域は、典型的には、完全にランダムなヌクレオチド鎖(例えば、NNNNNNN)、部分的に指定されたヌクレオチド鎖(例えば、NNNRNYN)、または指定されたヌクレオチド鎖(例えば、鋳型分子が限定されている場合)として設計することができる。UMIの設計、組み込みおよび適用は、例えばIslamらの国際公開第2012/142213号 Kivioja,T.らの(Nat.Methods)(2014)11:163-166および(Nat.Methods)(2012)9:72-74に開示されているように、当技術分野で公知の様式で実行され得、これらは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0202】
本出願において、「バーコード」という用語は、プローブの供給源を同定することができるヌクレオチド配列またはその誘導されたもしくは修飾された形態を一般的に指す。例えば、バーコードは、異なる領域に由来するプローブを識別することができる。
【0203】
本出願において、「オリゴヌクレオチドアダプター」という用語は、プローブ中のアダプターの第1の結合ドメインに相補的であり得、およびタグ配列中のアダプターの第2の結合ドメインに相補的であり得るヌクレオチド配列を一般的に指す。ヌクレオチド配列は、部分的に二本鎖構造であり得、例えば、タグ配列とハイブリダイズする顕著な配列を有し得る。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドアダプターは、増幅プライマー認識配列も含み得る。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドアダプターは逆転写プライマー配列も含み得る。
【0204】
本出願において、「トランスポザーゼ-核酸複合体」という用語は、トランスポザーゼと、プローブ中のアダプターの第1の結合ドメインを含有する配列とから形成される複合体を一般的に指す。トランスポザーゼは、トランスポゾン末端に結合し、カットアンドペーストまたは複製的転位などの機構を介してゲノムの他の部分へのトランスポゾンの移動を触媒することが可能な酵素を一般的に指す。トランスポゾンは、ゲノム内で自由に移動することができるヌクレオチドのセグメントを一般的に指し、トウモロコシの遺伝機構に関する研究中に、1940年代後半にBarbara McClintockによって最初に提案された概念である。他のグループによるその後の研究により、転位の分子的基礎が解明された。例えば、McClintockは、染色体セグメントが位置を変化させ、ある染色体から別の染色体に飛び移り得ることを発見した。これらのトランスポゾンの再配置は、他の遺伝子の発現を変化させることができる。例えば、トウモロコシでは、トランスポゾンは色の変化を引き起こすことができる。細菌などの他の生物では、トランスポゾンは、ヒトの進化の過程で抗生物質耐性を誘発することができる。トランスポザーゼ-核酸複合体は、2つのトランスポザーゼによって形成される二量体を含むことができ、各々はプローブ内のアダプターの第1の結合ドメインに結合し、2つのトランスポザーゼは同じであってもよく、または異なっていてもよい。
【0205】
本出願において、「Tn5」という用語は、リボヌクレアーゼ(RNase)スーパーファミリーのメンバーであるTn5トランスポザーゼを一般的に指す。Tn5は、シェワネラ・オネイデンシス(Shewanella oneidensis)および大腸菌(Escherichia coli)において見出すことができる。Tn5は、天然に存在するTn5トランスポザーゼおよびその様々な活性変異型を含み得る。他のトランスポザーゼの多くと同様に、Tn5は、トランスポゾンの転位を媒介するための触媒活性部位として働くDDEモチーフを含有する。DDEモチーフは、反応を触媒する上で重要な役割を果たすマグネシウムおよびマンガンなどの二価金属イオンと配位することができることが報告されている。トランスポザーゼTn5は、上昇した転位活性を有し、DDE領域中の変異を介してトランスポゾンの移動を触媒し得る。例えば、326位のグルタミン酸はアスパラギン酸に変換され、97および188位の2つのアスパラギン酸はグルタミン酸に変換される(GenBankアクセッション番号YP_001446289のアミノ酸配列のアミノ酸ナンバリングに基づく)。
【0206】
本出願では、用語「ハイブリダイズされた」、「ハイブリダイズ可能」または「相補的」は、核酸(例えば、RNA、DNA)が、適切な温度および溶液イオン強度のインビトロおよび/またはインビボ条件下で別の核酸配列に非共有結合的に特異的に結合する(すなわち、ワトソン・クリック塩基対および/またはG/U塩基対を形成する)ことが可能なヌクレオチド配列を含むことを一般に意味する。ワトソン・クリック塩基対合には、チミジン/チミン(T)と対になったアデニン/アデノシン(A)、ウラシル/ウリジン(U)と対になったA、シトシン/シチジン(C)と対になったグアニン/グアノシン(G)が含まれる。いくつかの態様において、Gはまた、2つのRNA分子間のハイブリダイゼーション(例えば、dsRNA)のために、またはDNA分子とRNA分子間のハイブリダイゼーション(例えば、DNA標的核酸の塩基がガイドRNAと対になっている場合など)のためにU塩基と対になり得る。ハイブリダイゼーションは、2つの核酸が相補的配列を含むことを必要とするが、塩基間の起こり得るミスマッチを排除することはできない。2つの核酸間のハイブリダイゼーションに適した条件は核酸の長さおよび相補性の程度に依存し、これらは当技術分野において周知である。2つのヌクレオチド配列間の相補性の程度が大きいほど、これらの相補的配列を有する核酸のハイブリッドの融解温度(Tm)の値は大きくなる。
【0207】
本出願において、「遊離可能な、塩基を修飾された基」とは、処理後にプローブから遊離され得る、塩基を修飾された基を一般的に指す。例えば、「遊離可能な、塩基を修飾された基」は、感光性基を含み得る。いくつかの例では、感光性基を導入することによって、反応(例えば、相補的ハイブリダイゼーション)を制御することができる。例えば、感光性基は、光切断性(photocleavable)基および光異化性基を含み得る。光に曝露されると、感光性基はエネルギーを吸収し、電子移動およびエネルギー準位遷移を受けることができ、結合の切断および修飾されたプローブの遊離をもたらす。例えば、感光性基は、o-ニトロベンジル(NPP)およびその誘導体を含み得る。例えば、感光性基は、4,5-ジメトキシ-2-ニトロベンジル(DMNB)および/または6-ニトロ-3,4-メチレンジオキシベンゾキシメチル(NPOM)を含み得る。
【0208】
本出願において、「切断可能なリンカー」は、処理(例えば、光学的処理)の際に切断可能なヌクレオチド配列のセグメントを一般的に指す。いくつかの態様において、ヌクレオチドは、固定されたヌクレオチド配列のセグメントであり得る。例えば、切断可能なリンカーは、光切断性リンカー(PCリンカー)を含み得る。例えば、光切断性リンカーは、DNA塩基の間に位置し得る。例えば、プローブの5’-リン酸基は、光切断性リンカーが切断された後に露出され得る。
【0209】
本出願において、「実質的に重複していない」とは、第1の領域と第2の領域との重複部分が0に近づくことを一般的に意味する。例えば、第1の領域は、第2の領域と重複していない。
【0210】
発明の詳細な説明
一局面において、本出願は、プローブを標的分子に特異的に結合させる条件下で、試料中の少なくとも1つの標的分子を少なくとも1つのプローブと接触させる工程であって、前記プローブは、前記標的分子に特異的に結合することが可能な標的分子結合ドメインと、少なくとも1つの反応遮断修飾とを含有する、工程と;
前記試料の第1の領域に対して第1の処理を実行する工程であって、前記第1の処理は、前記第1の領域内の前記プローブ上の前記反応遮断修飾を少なくとも部分的に除去して、前記第1の領域内の前記プローブを第1のタグ配列に付着させることが可能である、工程と;
前記試料中の、前記第1の領域とは異なる第2の領域に対して第2の処理を実行する工程であって、前記第2の処理は、前記第2の領域中の前記プローブ上の前記反応遮断修飾を少なくとも部分的に除去して、前記第2の領域中の前記プローブを第2のタグ配列に付着させることが可能であり、前記第2のタグ配列は前記第1のタグ配列とは異なる、工程と;
前記第1のタグ配列に付着した前記プローブおよび前記第2のタグ配列に付着した前記プローブの組成を決定し、ならびに前記プローブの前記組成から、前記試料中の前記第1の領域の前記標的分子の存在および/または含有量および前記第2の領域の前記標的分子の存在および/または含有量を決定する工程と
を含む、方法を提供する。
【0211】
別の局面において、本出願は、試料のオミクス情報を分析するための方法であって、
プローブを標的分子に特異的に結合させる条件下で、試料中の少なくとも1つの標的分子を少なくとも1つのプローブと接触させる工程であって、前記プローブは、前記標的分子に特異的に結合することが可能な標的分子結合ドメインと、少なくとも1つの反応遮断修飾とを含有する、工程と;
前記試料の第1の領域に対して第1の処理を実行する工程であって、前記第1の処理は、前記第1の領域内の前記プローブ上の前記反応遮断修飾を少なくとも部分的に除去して、前記第1の領域内の前記プローブを第1のタグ配列に付着させることが可能である、工程と;
前記試料中の、前記第1の領域とは異なる第2の領域に対して第2の処理を実行する工程であって、前記第2の処理は、前記第2の領域中の前記プローブ上の前記反応遮断修飾を少なくとも部分的に除去して、前記第2の領域中の前記プローブを第2のタグ配列に付着させることが可能であり、前記第2のタグ配列は前記第1のタグ配列とは異なる、工程と;
前記第1のタグ配列に付着した前記プローブおよび前記第2のタグ配列に付着した前記プローブの組成を決定し、ならびに前記プローブの前記組成から、前記試料中の前記第1の領域の前記標的分子の存在および/または含有量および前記第2の領域の前記標的分子の存在および/または含有量を決定する工程と
を含む、方法をさらに提供する。
【0212】
試料のオミクス情報を分析するための例示的な方法の概略図が図1に示されている。
【0213】
別の局面において、本出願は、配列決定方法であって、
プローブを標的分子に特異的に結合させる条件下で、試料中の少なくとも1つの標的分子を少なくとも1つのプローブと接触させる工程であって、前記プローブは、前記標的分子に特異的に結合することが可能な標的分子結合ドメインと、少なくとも1つの反応遮断修飾とを含有する、工程と;
前記試料の第1の領域に対して第1の処理を実行する工程であって、前記第1の処理は、前記第1の領域内の前記プローブ上の前記反応遮断修飾を少なくとも部分的に除去して、前記第1の領域内の前記プローブを第1のタグ配列に付着させることが可能である、工程と;
前記試料中の、前記第1の領域とは異なる第2の領域に対して第2の処理を実行する工程であって、前記第2の処理は、前記第2の領域中の前記プローブ上の前記反応遮断修飾を少なくとも部分的に除去して、前記第2の領域中の前記プローブを第2のタグ配列に付着させることが可能であり、前記第2のタグ配列は前記第1のタグ配列とは異なる、工程と;
前記第1のタグ配列に付着した前記プローブおよび前記第2のタグ配列に付着した前記プローブの組成を決定し、ならびに前記プローブの前記組成から、前記試料中の前記第1の領域の前記標的分子の存在および/または含有量および前記第2の領域の前記標的分子の存在および/または含有量を決定する工程と
を含む、配列決定方法を提供する。
【0214】
試料
本出願において、試料は、ほとんど全ての生物に由来し得、植物、真菌および動物などの多細胞生物を含み得る。例えば、試料は、動物(例えば、哺乳動物)に由来し得る。例えば、試料は、ヒト起源に由来し得る。例えば、試料は、生検腫瘍またはその一部であり得る。例えば、試料は、臨床的に意義のある組織試料であり得る。例えば、腫瘍は固形腫瘍を含み得る。例えば、腫瘍は血液腫瘍を含み得る。
【0215】
本出願では、試料は、ほとんど全ての生物の細胞(初代細胞および培養された細胞株の両方を含む)、細胞溶解物または抽出物(限定されないが、RNA抽出物、精製mRNAを含む)、組織および組織抽出物(限定されないが、RNA抽出物、精製mRNAを含む)、体液(限定されないが、血液、尿、血清、リンパ、胆汁、脳脊髄液、間質液、水性またはガラス性液、初乳、痰、羊水、唾液、肛門および膣分泌物、汗および精液、滲出液(exudate)、滲出液(exudates)(例えば、膿瘍または感染もしくは炎症の任意の他の部位からの体液)または関節(例えば、正常な関節または関節リウマチ、変形性関節症、痛風もしくは化膿性関節炎などの疾患に罹患した関節)からの体液を含む)を含むがこれらに限定されない任意の数の物質を含有し得る。試験試料は、細胞外液、細胞培養物からの細胞外上清、細菌中の封入体、細胞区画、ペリプラズムおよびミトコンドリア区画を含む。
【0216】
本出願では、試料は少なくとも1つの細胞を含み得る。例えば、試料は、1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上または6つ以上の細胞を含み得る。本出願において、細胞は、生物から単離された細胞、インビトロで培養された細胞、初代細胞および外植片からの分離した細胞からなる群から選択され得る。例えば、「生物から単離された細胞」は、多細胞生物に由来する細胞を一般的に指す。例えば、細胞はヒトから単離され得る。例えば、「インビトロで培養された細胞」は、エクスビボ環境において適切な培養条件下で培養された細胞を一般的に指す。例えば、インビトロで培養された細胞は、培地中で培養され得る。例えば、「初代細胞」は、生物から採取された直後に培養された細胞を一般的に指す。例えば、「外植片からの分離した細胞」は、植物組織を加水分解することによって得られる分離した細胞を一般的に指す。
【0217】
本出願において、試料は、組織切片を含み得る。本出願において、組織切片は、1~1000μmの範囲の厚さを有する。例えば、組織切片の厚さは、少なくとも1μm、少なくとも5μm、少なくとも20μm、少なくとも50μm、少なくとも100μm、少なくとも150μm、少なくとも200μm、少なくとも250μm、少なくとも300μm、少なくとも350μm、少なくとも400μm、少なくとも450μm、少なくとも500μm、少なくとも550μm、少なくとも600μm、少なくとも650μm、少なくとも700μm、少なくとも750μm、少なくとも800μm、少なくとも850μm、少なくとも900μm、少なくとも950μmである。
【0218】
本出願において、試料は、凍結切片、パラフィン切片、カルボワックス切片、極薄切片およびプラスチック切片からなる群から選択され得る。例えば、組織切片は、固定された組織切片であり得る。例えば、組織切片は、ホルマリン固定された組織切片であり得る。例えば、組織切片は、ホルマリン固定されたパラフィン切片であり得る。例えば、組織切片は凍結切片であり得る。例えば、組織切片中の組織は、心筋組織、肝組織、脾臓組織、肺組織、腎組織および脳組織からなる群に由来し得る。
【0219】
本出願において、「凍結切片」とは、低温で、組織をある硬度に急速に冷却した後に切片化する方法を一般的に指す。本出願において、「パラフィン切片」とは、切片化のために、組織を固定し、パラフィン中に包埋することを一般的に指す。本出願において、「カルボワックス切片」は、組織を固定し、洗浄し、次いで、切片化のために組織をカルボワックス中に直接包埋させることを一般的に指す。本出願において、「極薄切片」とは、典型的には樹脂で包埋されている、透過型電子顕微鏡用の極薄標本切片を一般的に指す。本出願において、「プラスチック切片」は、組織を固定し、次いで切片化のためにプラスチックで包埋することを一般的に指す。
【0220】
プローブおよび標的分子
本出願において、プローブは標的分子結合ドメインを含み得る。本出願において、標的分子は、タンパク質、核酸分子、代謝産物および/または脂質からなる群から選択される1つまたは複数を含み得る。例えば、核酸分子は、DNA分子および/またはRNA分子を含み得る。例えば、DNA分子はcDNAであり得る。例えば、RNA分子は、cRNA、mRNA、miRNA、lncRNAおよび/またはeRNAを含み得る。例えば、RNAはmRNAであり得る。例えば、脂質は、脂肪、コレステロール(cporesterol)、コレステロール(cporesterol)エステル、リン脂質および/または糖脂質を含み得る。
【0221】
本出願において、標的分子がRNAを含む場合に、プローブ中の標的分子結合ドメインは、RNAに相補的な核酸配列を含む。本出願において、プローブ中の標的分子結合ドメインはポリAを含み得る。例えば、ポリAの長さは、少なくとも、1ヌクレオチド、2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、5ヌクレオチド、6ヌクレオチド、7ヌクレオチド、8ヌクレオチド、9ヌクレオチド、10ヌクレオチド、11ヌクレオチド、12ヌクレオチド、13ヌクレオチド、14ヌクレオチド、15ヌクレオチド、16ヌクレオチド、17ヌクレオチド、18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、20ヌクレオチドまたはそれより多くであり得る。本出願において、プローブ中の標的分子結合ドメインは、ポリTを含む。例えば、ポリTの長さは、少なくとも、1ヌクレオチド、2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、5ヌクレオチド、6ヌクレオチド、7ヌクレオチド、8ヌクレオチド、9ヌクレオチド、10ヌクレオチド、11ヌクレオチド、12ヌクレオチド、13ヌクレオチド、14ヌクレオチド、15ヌクレオチド、16ヌクレオチド、17ヌクレオチド、18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、20ヌクレオチドまたはそれより多くであり得る。
【0222】
本出願において、標的分子はmRNAを含み得、プローブの標的分子結合ドメインは一本鎖核酸を含み得る。例えば、標的分子は、標的分子結合ドメインとハイブリダイズする。ハイブリダイゼーションに関して、2つの核酸間のハイブリダイゼーションに適した条件は、核酸の長さおよび相補性の程度に依存し、これらは当技術分野で周知である。2つのヌクレオチド配列間の相補性の程度が大きいほど、これらの相補的配列を有する核酸のハイブリッドの融解温度(Tm)の値は大きくなる。例えば、一本鎖核酸は、少なくとも10個のヌクレオチドを含み得る。例えば、一本鎖核酸は、10ヌクレオチド以上、12ヌクレオチド以上、14ヌクレオチド以上、16ヌクレオチド以上、18ヌクレオチド以上、20ヌクレオチド以上、22ヌクレオチド以上、24ヌクレオチド以上、26ヌクレオチド以上、28ヌクレオチド以上、30ヌクレオチド以上、32ヌクレオチド以上、34ヌクレオチド以上、36ヌクレオチド以上、38ヌクレオチド以上、40ヌクレオチド以上、42ヌクレオチド以上、44ヌクレオチド以上、46ヌクレオチド以上、48ヌクレオチド以上、50ヌクレオチド以上、52ヌクレオチド以上、54ヌクレオチド以上、56ヌクレオチド以上、58ヌクレオチド以上または60ヌクレオチド以上を含み得る。例えば、ハイブリダイゼーションは、塩基間のミスマッチの可能性を排除しない。例えば、プローブ中の標的分子結合ドメインは、mRNA配列に少なくとも50%相補的である。例えば、相補性は、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上、99.9%以上であり得る。残りの非相補的ヌクレオチドは、相補的ヌクレオチドと共にクラスター化されるかまたは散在していてもよく、互いにまたは相補的ヌクレオチドに隣接している必要はない。例えば、ポリヌクレオチドは、中間のまたは隣接するセグメントがハイブリダイゼーション事象に関与しないように(例えば、ヘアピン構造の形成、「バンプ(bumps)」など)、1つまたは複数のセグメント上でハイブリダイズし得る。
【0223】
本出願において、標的分子はタンパク質を含み得、プローブの標的分子結合ドメインは、標的分子を特異的に結合することが可能な抗体または抗原結合断片を含み得る。例えば、抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab)2、Fv断片、F(ab’)2、scFv、ジscFv、VHHおよび/またはdAbを含み得る。
【0224】
本出願では、試料中の2つ以上の標的分子を2つ以上のプローブと接触させることができる。例えば、2つ以上の標的分子は、同じであってもよく、または異なっていてもよい。
【0225】
本出願では、標的分子は、試料に由来するDNAを含み得る。例えば、DNAは、ゲノムDNA、オープンクロマチンDNA、タンパク質によって結合されたDNA領域、ならびに/またはタンパク質、脂質および/もしくは小分子化合物と連結された外因性核酸を含み得、タンパク質、脂質および/または小分子化合物は細胞内の標的分子を結合することが可能である。
【0226】
本出願において、本方法は、試料中の少なくとも1つの標的分子を少なくとも1つのプローブと接触させる前にDNAを断片化することを含み得る。断片化は、トランスポザーゼ-核酸複合体を使用してプローブを含有する配列をDNA中に組み込むこと、およびトランスポザーゼを遊離させることを含み得る。例えば、プローブ配列は、トランスポゾン末端配列を含む。例えば、トランスポゾン末端配列は、Tn5または修飾されたTn5トランスポゾン末端配列である。例えば、トランスポゾン末端配列は、Muトランスポゾン末端配列である。例えば、Tn5もしくは修飾されたTn5トランスポゾン末端配列またはMuトランスポゾン末端配列は、15~25ヌクレオチド、例えば16ヌクレオチド、17ヌクレオチド、18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、20ヌクレオチド、21ヌクレオチド、22ヌクレオチド、23ヌクレオチド、24ヌクレオチドを含み得る。
【0227】
例えば、トランスポゾン末端配列として、例えば、Tn5MおよびTn5Bを使用することができる。
Tn5B:5'-GTCTCGTGGGCTCGGAGATGTGTATAAGAGACAG-3';(配列番号11)
Tn5M:5'-CTGTCTCTTATACACATCT-3'。(配列番号12)
【0228】
本出願では、様々な方法を使用してDNAを断片化することができる。例えば、制限エンドヌクレアーゼを利用する制限消化は、両鎖上の平滑末端切断または不均一な切断のいずれかによってDNA配列に切断部位を作り出し、粘着末端を生成する。例えば、剪断応力によって媒介されるDNA鎖破壊は、超音波処理、音響剪断、針剪断、ピペッティングまたは微粒化などのプロセスを含み得る。超音波処理は流体力学的剪断の一種であり、DNA配列を短期間の剪断力に曝露し、約700bpの断片サイズをもたらす。音響剪断は、カップ型トランスデューサ内のDNA試料に高周波音響エネルギーを加える。針剪断は、DNAを小径針に通すことによって剪断力を発生させ、DNAをより小さなセグメントに物理的に引き裂く。微粒化力は、ネブライザーユニットの小さな開口部にDNAを通すことによって発生させることができ、ネブライザーユニットの中で、生じたDNA断片はユニットを出る微細なミスト液滴から収集される。典型的には、これらの断片は、約200~約100000塩基の任意の長さであり得る。例えば、断片は、約200bp~約500bp、約500bp~約1kb、約1kb~約10kb、または約5kb~約50kb、または約10kb~約30kb、例えば約15kb~約25kbである。例えば、より大きな遺伝子成分の断片化は、例えば、市販の剪断に基づく断片化システム(例えば、Covaris断片化システム)、サイズを標的とした断片化システム(例えば、Blue Pippin(Sage Sciences))、酵素的断片化法(例えば、DNAエンドヌクレアーゼ、DNAエキソヌクレアーゼ)などを含む任意の容易に入手可能な方法によって行うことができる。例えば、断片化は、超音波処理の使用による破壊を伴う。
【0229】
例えば、トランスポザーゼには、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)Tn5(Colegio et,al.,J.BacterioL,183:2384-8,2001;Kirby C et,al.,Mol.Microbiol.,43:173-86,2002)、タイロシン(Tyl)(Devine and Boeke,Nucleic Acids Res.,22:3765-72,1994および国際公開第95/23875号)、トランスポゾンTn7(Craig,N L,Science.271:1512,1996;the overview of Craig,N L in Curr Top Microbiol Immunol.,204:27-48,1996)、Tn/OおよびIS 10(KlecknerN et,al.,Curr Top Microbiol Immunol.,204:49-82,1996)、マリナートランスポザーゼ(Lampe D J et,al.,EMBO J.,15:5470-9,1996)、Tel(Plasterk R H,Curr.Topics Microbiol.Immunol.,204:125-43,1996)、P因子(Gloor,G B,Methods Mol.Biol.,260:97-114,2004)、Tn3(Ichikawa and Ohtsubo,J Biol.Chem.,265:18829-32,1990)、細菌挿入配列(Ohtsubo and Sekine,Curr.Top.Microbiol.Immunol.,204:1-26,1996)、レトロウイルス(Brown et,al.,Proc Natl Acad Sci USA,86:2525-9,1989)および酵母レトロトランスポゾン(Boeke and Corces,Annu Rev Microbiol.,43:403-34,1989)、およびIS5、Tn10、Tn903、IS911およびトランスポザーゼファミリー酵素の操作された形態(Zhang et,al.,(2009),PLoS Genet.,5:el000689.Published electronically on October 16,2009;Wilson C.et,al.(2007),J.Microbiol.Methods,71:332-5)が含まれる。
【0230】
例えば、トランスポザーゼはMuトランスポザーゼである。例えば、トランスポザーゼは、Tn5トランスポザーゼまたはTn10トランスポザーゼである。Tn5トランスポザーゼは、完全長Tn5トランスポザーゼ、Tn5トランスポザーゼのいくつかの機能ドメイン、Tn5トランスポザーゼの変異体から選択される。Tn10トランスポザーゼは、完全長Tn10トランスポザーゼ、Tn10トランスポザーゼのいくつかの機能ドメイン、Tn10トランスポザーゼの変異体から選択される。例えば、Tn5トランスポザーゼの変異体は、R30Q、K40Q、Y41H、T47P、E54K/V、M56A、R62Q、D97A、E110K、D188A、Y319A、R322A/K/Q、E326A、K330A/R、K333A、R342A、E344A、E345K、N348A、L372P、S438A、K439A、S445A、G462D、A466Dから選択され得る。
【0231】
例えば、2つのトランスポザーゼ分子は、挿入部位が1つまたは2つのDNAで印を付けられるように、同一のまたは異なる二本鎖DNAトランスポゾンを結合することができる。例えば、2つのトランスポザーゼ分子(例えば、Tn5および高活性Tnまたは点変異を含有する別のタイプのトランスポザーゼ)をプローブ配列および別の標準的なトランスポゾンDNA配列と集合させて、ハイブリッド転位複合体を形成することができる。あるいは、上記の二本鎖構造2のみを使用して、単一のTn5転位複合体を形成する。標準的なトランスポゾンDNA配列は、増幅プライマー配列および/または配列決定プライマー配列を含み得る。
【0232】
例えば、DNAは、タンパク質によって結合されたDNA領域を含み得、トランスポザーゼ-核酸複合体は、タンパク質を直接的にまたは間接的に認識する部分をさらに含む。例えば、タンパク質を直接的または間接的に認識する部分には、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)プロテインA(プロテインA)、連鎖球菌(Streptococcus)プロテインG(プロテインG)、連鎖球菌(Streptococcus)プロテインL(プロテインL)または抗体を結合する機能を有する他のタンパク質類似体が含まれ得る。例えば、タンパク質を直接的または間接的に認識する部分には、タンパク質を特異的に結合する抗体も含まれ得る。例えば、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)プロテインA(プロテインA)、連鎖球菌(Streptococcus)プロテインG(プロテインG)、連鎖球菌(Streptococcus)プロテインL(プロテインL)または抗体を結合する機能を有する他のタンパク質類似体は、それぞれ、タンパク質を特異的に結合する抗体を結合することが可能である。
【0233】
例えば、トランスポザーゼは、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)プロテインA(プロテインA)、連鎖球菌(Streptococcus)プロテインG(プロテインG)、連鎖球菌(Streptococcus)プロテインL(プロテインL)または抗体を結合する機能を有する他のタンパク質類似体と融合タンパク質を形成する。
【0234】
例えば、融合タンパク質は、タンパク質を特異的に結合する抗体と複合体を形成し、次いでタンパク質を標的とする。
【0235】
例えば、タンパク質を特異的に結合する抗体がタンパク質に結合した後、融合タンパク質は抗体に結合してタンパク質を標的とする。例えば、本明細書に記載の転位反応およびプロセスは、バッチで行うことができる。
【0236】
本出願において、プローブは、100nM、70nM、60nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.1nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nM、0.02nM、0.01nMまたはそれ未満の濃度、およびこれらの間の任意の濃度で提供され得る。
【0237】
反応遮断修飾
本出願において、反応遮断修飾は、遊離可能な、塩基を修飾された基、切断可能なリンカーおよびビオチンからなる群の1つまたは複数から選択され得る。例えば、反応遮断修飾は、プローブの5’末端を修飾することができる。例えば、反応遮断修飾は、プローブの3’末端を修飾することができる。
【0238】
例えば、反応遮断修飾は、遊離可能な、塩基を修飾された基であり得る。例えば、塩基を修飾された基は、感光性基を含み得る。例えば、感光性基は、光切断性基および光異化性基を含み得る。光に曝露されると、感光性基はエネルギーを吸収し、電子移動およびエネルギー準位遷移を受けることができ、結合の切断および修飾されたプローブの遊離をもたらす。例えば、感光性基は、o-ニトロベンジル(NPP)およびその誘導体を含み得る。例えば、感光性基は、4,5-ジメトキシ-2-ニトロベンジル(DMNB)および/または6-ニトロ-3,4-メチレンジオキシベンゾキシメチル(NPOM)を含み得る。感光性基を導入することにより、反応(例えば、相補的ハイブリダイゼーション)を制御することができる。本出願においては、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20またはそれより多くの反応遮断修飾がプローブ上に含まれ得る。
【0239】
例えば、切断可能なリンカーは、固定されたヌクレオチド配列のセグメントであり得る。例えば、切断可能なリンカーは、光切断性リンカー(PCリンカー)を含み得る。例えば、光切断性リンカーは、DNA塩基の間に位置し得る。例えば、プローブの5’-リン酸基は、光切断性リンカーが切断された後に露出され得る。本出願において、試料は、リンカーを切断して試料を光励起することが可能な波長の励起光下に置かれ、それによってリンカーを切断し、5’-リン酸基を露出させる。
【0240】
処理
本出願では、試料の2つ以上の領域を処理することができる。例えば、2つ以上の領域は異なることができる。例えば、試料の少なくとも第1の領域を処理することができる。例えば、試料の少なくとも第2の領域を処理することができる。例えば、試料の少なくとも、第3の領域、第4の領域、第5の領域、第6の領域、第7の領域、第8の領域、第9の領域、第10の領域、第11の領域、第12の領域、第13の領域、第14の領域、第15の領域、第16の領域、第17の領域、第18の領域、第19の領域、第20の領域を処理することができる。例えば、試料の2つ以上(例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、20以上)の領域を同時に処理することができる。
【0241】
本出願では、プローブが標的分子に特異的に結合した後、試料の第1の領域に対して第1の処理を行うことができる。例えば、第1の処理は、電子ビーム処理、音波および照明からなる群から選択され得る。例えば、第1の処理は、照明であり得る。例えば、光は、アークランプ、レーザ、UV光源および発光ダイオードからなる群から選択される光源によって提供され得る。例えば、光は、UV光源によって提供され得る。
【0242】
本出願では、プローブが標的分子に特異的に結合した後、試料の第2の領域に対して第2の処理を行うことができる。例えば、第2の処理は、電子ビーム処理、音波および照明からなる群から選択され得る。例えば、第2の処理は、照明であり得る。例えば、光は、アークランプ、レーザ、UV光源および発光ダイオードからなる群から選択される光源によって提供され得る。例えば、光は、UV光源によって提供され得る。
【0243】
オリゴヌクレオチドアダプター
本出願において、オリゴヌクレオチドアダプターは、プローブ結合ドメインおよびタグ結合ドメインを含み得る。例えば、オリゴヌクレオチドアダプター中のプローブ結合ドメインは、一本鎖核酸を含み得る。例えば、オリゴヌクレオチドアダプター中のプローブ結合ドメインの長さは、1ヌクレオチド以上、2ヌクレオチド以上、3ヌクレオチド以上、5ヌクレオチド以上、8ヌクレオチド以上、10ヌクレオチド以上、12ヌクレオチド以上、15ヌクレオチド以上、20ヌクレオチド以上、22ヌクレオチド以上、25ヌクレオチド以上または30ヌクレオチド以上であり得る。
【0244】
本出願において、オリゴヌクレオチドアダプターのプローブ結合ドメインは、プローブ中のアダプターの第1の結合ドメインと相補的であり得る。プローブ結合ドメインに関して、2つの核酸間のハイブリダイゼーションに適した条件は核酸の長さおよび相補性の程度に依存し、これらは当技術分野で周知である。2つのヌクレオチド配列間の相補性の程度が大きいほど、これらの相補的配列を有する核酸のハイブリッドの融解温度(Tm)の値は大きくなる。例えば、プローブ結合ドメインの長さは、プローブ結合ドメインが相補的であるアダプターの第1の結合ドメインと二本鎖構造を形成するのに十分である。
【0245】
例えば、オリゴヌクレオチドアダプター中のタグ結合ドメインの長さは、1ヌクレオチド以上、2ヌクレオチド以上、3ヌクレオチド以上、5ヌクレオチド以上、8ヌクレオチド以上、10ヌクレオチド以上、12ヌクレオチド以上、15ヌクレオチド以上、20ヌクレオチド以上、22ヌクレオチド以上、25ヌクレオチド以上または30ヌクレオチド以上であり得る。
【0246】
本出願において、オリゴヌクレオチドアダプターのタグ結合ドメインは、タグ配列中のアダプターの第2の結合ドメインと相補的であり得る。タグ結合ドメインに関して、2つの核酸間のハイブリダイゼーションに適した条件は核酸の長さおよび相補性の程度に依存し、これらは当技術分野で周知である。2つのヌクレオチド配列間の相補性の程度が大きいほど、これらの相補的配列を有する核酸のハイブリッドの融解温度(Tm)の値は大きくなる。例えば、タグ結合ドメインの長さは、タグ結合ドメインが相補的であるアダプターの第2の結合ドメインと二本鎖構造を形成するのに十分である。
【0247】
例えば、オリゴヌクレオチド配列中のタグ結合ドメインの長さは、プローブ結合ドメインの核酸配列の長さと同じであってもよく、または異なっていてもよい。
【0248】
例えば、二本鎖構造は、塩基間のミスマッチの可能性を排除しない。例えば、タグ結合ドメインまたはプローブ結合ドメインは、その相補的配列に対して100%相補的である必要はない。例えば、相補性は、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上であり得る。残りの非相補的ヌクレオチドは、相補的ヌクレオチドと共にクラスター化されるかまたは散在していてもよく、互いにまたは相補的ヌクレオチドに隣接している必要はない。例えば、ポリヌクレオチドは、中間のまたは隣接するセグメントがハイブリダイゼーション事象に関与しないように(例えば、ヘアピン構造の形成、「バンプ(bumps)」など)、1つまたは複数のセグメント上でハイブリダイズし得る。
【0249】
タグ配列
本出願において、タグ配列は、少なくとも1つのバーコードとアダプターの第2の結合ドメインとを含み得る。例えば、バーコードは、異なる領域の空間的位置情報を特徴付け得る。例えば、タグ配列中のアダプターの第2の結合ドメインは、一本鎖核酸を含み得る。アダプターの第2の結合ドメインの長さは、1ヌクレオチド以上、2ヌクレオチド以上、3ヌクレオチド以上、5ヌクレオチド以上、8ヌクレオチド以上、10ヌクレオチド以上、12ヌクレオチド以上、15ヌクレオチド以上、20ヌクレオチド以上、22ヌクレオチド以上、25ヌクレオチド以上または30ヌクレオチド以上であり得る。
【0250】
本出願では、第1の処理時に、第1の領域中のプローブは、第1のタグ配列およびオリゴヌクレオチドアダプターと複合体を形成し得、オリゴヌクレオチドアダプターはプローブ結合ドメインおよびタグ結合ドメインを含む。例えば、第1の処理時に、プローブ結合ドメイン中の核酸配列は、第1の領域中のプローブ中のアダプターの第1の結合ドメイン中の核酸配列に相補的であり、およびタグ結合ドメイン中の核酸配列は、第1のタグ配列中のアダプターの第2の結合ドメイン中の核酸配列に相補的であり、その結果、部分的に二本鎖構造を形成する。
【0251】
例えば、二本鎖構造は、塩基間のミスマッチの可能性を排除しない。例えば、タグ結合ドメインまたはプローブ結合ドメインは、その相補的配列に対して100%相補的である必要はない。例えば、相補性は、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上であり得る。残りの非相補的ヌクレオチドは、相補的ヌクレオチドと共にクラスター化されるかまたは散在していてもよく、互いにまたは相補的ヌクレオチドに隣接している必要はない。例えば、ポリヌクレオチドは、中間のまたは隣接するセグメントがハイブリダイゼーション事象に関与しないように(例えば、ヘアピン構造の形成、「バンプ(bumps)」など)、1つまたは複数のセグメント上でハイブリダイズし得る。
【0252】
本出願において、第1のタグ配列中のアダプターの第2の結合ドメインは、リガーゼによって、第1の領域中のプローブ中のアダプターの第1の結合ドメインに連結され得、その結果、第1のタグ配列に付着したプローブを産生する。
【0253】
例えば、リガーゼは、大腸菌(Escherichia coli))DNAリガーゼ、T4 DNAリガーゼ、T7 DNAリガーゼ、哺乳動物リガーゼ(例えば、DNAリガーゼI、DNAリガーゼIII、DNAリガーゼIV)、熱安定性リガーゼなどのDNAリガーゼを含み得る。T4 DNAリガーゼは、DNA、オリゴヌクレオチド、RNAおよびRNA-DNAハイブリッドを含有するセグメントと連結され得る。ライゲーションは、DNAリガーゼを伴わなくてもよいが、トポイソメラーゼなどの代替物を使用する。迅速なライゲーションは、PEGの包含と共に高濃度のDNAリガーゼを使用することによって達成することができる。ライゲーションに最適な温度を選択するために、DNAリガーゼの好ましい温度(例えば、37℃であり得る)および連結されるべきDNAの融解温度を考慮することができる。ライゲーションに影響を及ぼし得るイオン化を最小限に抑えるために、標的核酸およびバーコードを付された固体支持体を適切な緩衝液中に懸濁することができる。例えば、リガーゼはT4リガーゼを含み得る。
【0254】
例えば、第1のタグ配列のバーコードは、第1の領域の空間的位置情報を特徴付け得る。例えば、第1のタグ配列は、複数のバーコードを含み得る。例えば、第1のタグ内の複数のバーコードは異なり得る。
【0255】
本出願において、第1のタグ配列中のアダプターの第2の結合ドメイン中の核酸配列は、第1のタグ配列中のバーコードの3’末端に位置し得る。
【0256】
本出願において、第1のタグ配列は、固有の分子識別領域を含み得る。例えば、固有の分子識別領域は、一本鎖核酸を含み得る。例えば、固有の分子識別領域中の一本鎖核酸は、1ヌクレオチド以上、2ヌクレオチド以上、3ヌクレオチド以上、または4ヌクレオチド以上、5ヌクレオチド以上、6ヌクレオチド以上、7ヌクレオチド以上、または8ヌクレオチド以上、9ヌクレオチド以上、12ヌクレオチド以上、15ヌクレオチド以上または20ヌクレオチド以上を含み得る。例えば、固有の分子識別領域中の一本鎖核酸は、8つのヌクレオチドを含み得る。本出願において、第1のタグ配列は配列決定プライマーを含み得る。
【0257】
本出願において、第2の処理時に、第2の領域中のプローブは、第2のタグ配列およびオリゴヌクレオチドアダプターと複合体を形成し得る。
【0258】
本出願において、第2のタグ配列は、少なくとも1つのバーコードとアダプターの第1の結合ドメインとを含み得る。例えば、第2の処理時に、プローブ結合ドメイン中の核酸配列は、第2の領域中のプローブ中のアダプターの第1の結合ドメイン中の核酸配列に相補的であり、およびタグ結合ドメイン中の核酸配列は、第2のタグ配列中のアダプターの第2の結合ドメイン中の核酸配列に相補的であり、その結果、部分的に二本鎖構造を形成する。
【0259】
例えば、二本鎖構造は、塩基間のミスマッチの可能性を排除しない。例えば、タグ結合ドメインまたはプローブ結合ドメインは、その相補的配列に対して100%相補的である必要はない。例えば、相補性は、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上であり得る。残りの非相補的ヌクレオチドは、相補的ヌクレオチドと共にクラスター化されるかまたは散在していてもよく、互いにまたは相補的ヌクレオチドに隣接している必要はない。例えば、ポリヌクレオチドは、中間のまたは隣接するセグメントがハイブリダイゼーション事象に関与しないように(例えば、ヘアピン構造の形成、「バンプ(bumps)」など)、1つまたは複数のセグメント上でハイブリダイズし得る。
【0260】
例えば、第2のタグ配列中のアダプターの第2の結合ドメインは、リガーゼによって、第2の領域中のプローブ中のアダプターの第1の結合ドメインに連結され得、その結果、第2のタグ配列に付着したプローブを産生する。
【0261】
例えば、リガーゼは、大腸菌(Escherichia coli))DNAリガーゼ、T4 DNAリガーゼ、T7 DNAリガーゼ、哺乳動物リガーゼ(例えば、DNAリガーゼI、DNAリガーゼIII、DNAリガーゼIV)、熱安定性リガーゼなどのDNAリガーゼを含み得る。T4 DNAリガーゼは、DNA、オリゴヌクレオチド、RNAおよびRNA-DNAハイブリッドを含有するセグメントと連結され得る。ライゲーションは、DNAリガーゼを伴わなくてもよいが、トポイソメラーゼなどの代替物を使用する。迅速なライゲーションは、PEGの包含と共に高濃度のDNAリガーゼを使用することによって達成することができる。ライゲーションに最適な温度を選択するために、DNAリガーゼの好ましい温度(例えば、37℃であり得る)および連結されるべきDNAの融解温度を考慮することができる。ライゲーションに影響を及ぼし得るイオン化を最小限に抑えるために、標的核酸およびバーコードを付された固体支持体を適切な緩衝液中に懸濁することができる。例えば、リガーゼはT4リガーゼを含み得る。
【0262】
本出願において、第2のタグ配列中のバーコードは、第2の領域の空間的位置情報を特徴付け得る。例えば、第2のタグ配列は、複数のバーコードを含み得る。例えば、第2のタグ配列中の複数のバーコードは異なり得る。
【0263】
本出願において、第2のタグ配列は、固有の分子識別領域を含み得る。例えば、固有の分子識別領域は、一本鎖核酸を含み得る。例えば、固有の分子識別領域中の一本鎖核酸は、1ヌクレオチド以上、2ヌクレオチド以上、3ヌクレオチド以上、または4ヌクレオチド以上、5ヌクレオチド以上、6ヌクレオチド以上、7ヌクレオチド以上、または8ヌクレオチド以上、9ヌクレオチド以上、12ヌクレオチド以上、15ヌクレオチド以上または20ヌクレオチド以上を含み得る。例えば、固有の分子識別領域中の一本鎖核酸は、8つのヌクレオチドを含み得る。本出願において、第2のタグ配列は、配列決定プライマーを含み得る。
【0264】
本出願では、試料の2つ以上の領域を処理することができる。例えば、処理時に、試料中の第3の領域、第4の領域、第5の領域、第6の領域、第7の領域、第8の領域、第9の領域、第10の領域、第11の領域、第12の領域、第13の領域、第14の領域、第15の領域、第16の領域、第17の領域、第18の領域、第19の領域、第20の領域中のプローブは、第3のタグ配列、第4のタグ配列、第5のタグ配列、第6のタグ配列、第7のタグ配列、第8のタグ配列、第9のタグ配列、第10のタグ配列、第11のタグ配列、第12のタグ配列、第13のタグ配列、第14のタグ配列、第15のタグ配列、第16のタグ配列、第17のタグ配列、第18のタグ配列、第19のタグ配列、第20のタグ配列およびオリゴヌクレオチドアダプターと複合体を形成し得る。
【0265】
処理時に、オリゴヌクレオチドアダプター中のプローブ結合ドメイン中の核酸配列は、第2の領域、第3の領域、第4の領域、第5の領域、第6の領域、第7の領域、第8の領域、第9の領域、第10の領域、第11の領域、第12の領域、第13の領域、第14の領域、第15の領域、第16の領域、第17の領域、第18の領域、第19の領域、第20の領域中のプローブ中のアダプターの第1の結合ドメイン中の核酸配列と相補的であり、タグ結合ドメイン中の核酸配列は、第2のタグ配列、第3のタグ配列、第4のタグ配列、第5のタグ配列、第6のタグ配列、第7のタグ配列、第8のタグ配列、第9のタグ配列、第10のタグ配列、第11のタグ配列、第12のタグ配列、第13のタグ配列、第14のタグ配列、第15のタグ配列、第16のタグ配列、第17のタグ配列、第18のタグ配列、第19のタグ配列、第20のタグ配列中のアダプターの第2の結合ドメイン中の核酸配列と相補的であり、その結果、部分的に二本鎖構造を形成する。
【0266】
例えば、二本鎖構造は、塩基間のミスマッチの可能性を排除しない。例えば、タグ結合ドメインまたはプローブ結合ドメインは、その相補的配列に対して100%相補的である必要はない。例えば、相補性は、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上であり得る。残りの非相補的ヌクレオチドは、相補的ヌクレオチドと共にクラスター化されるかまたは散在していてもよく、互いにまたは相補的ヌクレオチドに隣接している必要はない。例えば、ポリヌクレオチドは、中間のまたは隣接するセグメントがハイブリダイゼーション事象に関与しないように(例えば、ヘアピン構造の形成、「バンプ(bumps)」など)、1つまたは複数のセグメント上でハイブリダイズし得る。
【0267】
組成物およびキット
本出願は、組み合わせであって、複数のプローブであって、プローブの各々が、標的分子結合ドメインと、アダプターの第1の結合ドメインと、少なくとも1つの反応遮断修飾とを含む、複数のプローブと;プローブ結合ドメインとタグ結合ドメインとを含むオリゴヌクレオチドアダプターと;複数のタグ配列であって、タグ配列の各々が、少なくとも1つのバーコードとアダプターの第2の結合ドメインとを含む、複数のタグ配列とを含み、プローブ結合ドメイン中の核酸配列が、アダプターの第1の結合ドメイン中の核酸配列に相補的であり、およびタグ結合ドメイン中の核酸配列が、アダプターの第2の結合ドメイン中の核酸配列に相補的である、組み合わせも提供する。例えば、複数のタグ配列の2つ以上におけるバーコードは異なり得る。例えば、反応遮断修飾は、遊離可能な、塩基を修飾された基、切断可能なリンカーおよび感光性基からなる群から選択され得る。例えば、反応遮断修飾は、切断可能なリンカーであり得る。例えば、反応遮断修飾は、遊離可能な、塩基を修飾された基であり得る。例えば、組み合わせは、組成物であり得る。
【0268】
本出願は、本出願の組み合わせを含み得るキットも提供する。例えば、キットは、トランスポザーゼをさらに含み得る。例えば、キットは、核酸増幅剤、逆転写酵素、固定剤、透過剤、連結剤および溶解剤の少なくとも1つをさらに含み得る。例えば、キットは、使用説明書も含み得る。例えば、使用説明書は、以下の方法:
プローブを標的分子に特異的に結合させる条件下で、試料中の少なくとも1つの標的分子を少なくとも1つのプローブと接触させる工程であって、プローブは、標的分子に特異的に結合することが可能な標的分子結合ドメインと、少なくとも1つの反応遮断修飾とを含有する、工程と;
試料の第1の領域に対して第1の処理を実行する工程であって、第1の処理は、第1の領域内のプローブ上の反応遮断修飾を少なくとも部分的に除去して、第1の領域内のプローブをタグ配列中の第1のタグ配列に付着させることが可能である、工程と;
試料中の、第1の領域とは異なる第2の領域に対して第2の処理を実行する工程であって、第2の処理は、第2の領域中のプローブ上の反応遮断修飾を少なくとも部分的に除去して、第2の領域中のプローブをタグ配列中の第2のタグ配列に付着させることが可能であり、第2のタグ配列は第1のタグ配列とは異なる、工程と;
第1のタグ配列に付着したプローブおよび第2のタグ配列に付着したプローブの組成を決定し、ならびにプローブの組成から、試料中の第1の領域の標的分子の存在および/または含有量および第2の領域の標的分子の存在および/または含有量を決定する工程と
を記載する。
【0269】
いずれの理論によっても限定されるものではないが、以下の例は、本出願の組成物、キット、分析方法および用途を例示することが意図されており、本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【0270】

例1.トランスクリプトームの検出
1.1.反応遮断修飾を含有するプローブの設計
(1)切断可能なリンカー(PCリンカー)を含有するプローブ
プローブ構造:5’PC-リンカー-アダプターの第1の結合ドメイン-UMI-ポリT
プローブ配列:
5'PC-リンカー-AGGCCAGAGCATTCG(配列番号1)NNNNNNNNTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT
ここで、アダプターの第1の結合ドメインの配列はAGGCCAGAGCATTCG(配列番号1)であり、UMIはNNNNNNNNである。
(2)NPOM保護基を含有するプローブの設計
プローブ配列:
p-AGGCCAGAGCA(NPOM-T)(NPOM-T)CG(配列番号1)NNNNNNNNTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT
【0271】
1.2タグ配列およびオリゴヌクレオチドアダプターの設計
(1)タグ配列
タグ配列は、増幅プライマー認識領域-6塩基対バーコード-アダプターの第2の結合ドメインの構造を有する
タグ配列の特定の組成:
CCCTACACGACGCTCTTCCGATCT(配列番号3)-6塩基対バーコード-ATCCACGTGCTTGAG(配列番号2)
6塩基対バーコードは、任意の塩基の組み合わせであり得る、切片上の異なる領域を区別するために使用され、任意の塩基は、A、T、CおよびGであり得る。アダプターの第2の結合ドメインは、ATCCACGTGCTTGAG(配列番号2)であり、増幅プライマー認識領域は、CCCTACACGACGCTCTTCCGATCT(配列番号3)である。
(2)オリゴヌクレオチドアダプター
CGAATGCTCTGGCCTCTCAAGCACGTGGAT(配列番号4)
(3)アニーリング後、例示的なタグ配列およびオリゴヌクレオチドアダプターは、以下に示されるように部分的二本鎖構造Iを形成することができる。
【化1】
【0272】
(1.3)試料の調製
(1)試料の種類:ホルマリン固定されたパラフィン切片またはホルムアルデヒド固定された凍結切片。
(2)固定された切片を抗原露出処理に供した:最初に、試料をAbcam抗原露出溶液または他の緩衝液で、100℃で5分間処理し、次いで、プロテアーゼKまたはペプシン(1mg/mlの濃度を有する)のPBS希釈溶液によって37℃で10~30分間消化し、最後にPBSで洗浄した。
【0273】
1.4.1×逆転写緩衝液、1μM dNTP、2μM逆転写プライマー、2μM逆転写プライマー、1%Triton、1%BSAおよび2u/μl逆転写酵素を含む反応系を用いて逆転写反応を行った。上記の試薬の量は、試料サイズに関連する。組織切片が1cm×1cmのサイズであった場合、反応系は約50μlの溶液であった。
【0274】
それらを72℃で5分間および4℃で10分間反応させ、次いで42℃で1時間放置した。
【0275】
1.5 抗体の染色
(1)1%BSAを含有する1×PBS緩衝液で、1つまたは複数の抗体を1μg/100μlの濃度に希釈した。
(2)一次抗体結合:抗体溶液を25℃で1時間または4℃で一晩切片と反応させた。
(3)1%BSAを含有する1×PBS緩衝液で切片を洗浄した。
(4)二次抗体結合:1%BSAを含有する1×PBS緩衝液で二次抗体を希釈し、室温で1時間、切片と反応させた。
(5)1%BSAを含有する1×PBS緩衝液で切片を洗浄した。
【0276】
1.6 顕微鏡観察:切片内の関心対象の領域に280nmのUV励起光を10秒~5分間照射した。
【0277】
1.7 1%BSAを含有する1×PBS緩衝液で切片を洗浄した。
【0278】
1.8 1×T4リガーゼ緩衝液、1μMタグ配列および1μl/μlのT4 DNAリガーゼを切片に添加し、室温で15分間反応させた。次いで、1%BSAを含有する1×PBS緩衝液で切片を洗浄して、タグ配列を除去した。
【0279】
1.9 次の関心対象の領域が照射され、切片上の異なる関心対象の領域が異なるタグ配列で標識されるように、上記工程1.6~1.8を繰り返した。
【0280】
1.10 全ての反応の終了後、1%SDSを含有する1×PBS中のプロテアーゼKの希釈液(20μg/mlの濃度を有する)で、切片を65℃で1時間消化した。
【0281】
1.11 次いで、cDNAを磁気ビーズで精製し、消化されたcDNA、1×逆転写緩衝液、1μM鎖変換プライマー、1μM dNTPおよび1u/μl逆転写酵素を含む反応系において二本鎖合成を行った。上記の試薬の量は、試料サイズに関連する。組織切片が1cm×1cmのサイズであった場合、反応系は約50μlの溶液であった。
【0282】
ここで、鎖変換プライマーは、AAGCAGTGGTATCAACGCAGAGTACATGGG(配列番号14)である。
【0283】
42℃で1時間反応させた後、cDNAを磁気ビーズで精製し、次いで、1μMプライマー1、1μMプライマー2、1×Taq緩衝液、1μM dNTPおよび1u/μl Taq酵素を含むPCR増幅系においてPCR増幅を行った。プライマー1の配列は、AAGCAGTGGTATCAACGCAGAGT(配列番号5)であり、プライマー2の配列は、CCCTACACGACGCTCTTCCGATCT(配列番号3)である。上記の試薬の量は、試料サイズに関連する。組織切片が1cm×1cmのサイズであった場合、増幅系は約50μlの溶液であった。
【0284】
よく混合した後、PCR反応を行った。
95℃ 3分
95℃ 30秒
55℃ 30秒
72℃ 3分 上記工程を20~30サイクル繰り返す
72℃ 5分
【0285】
1.12 cDNAを精製し、Illumina Nexteraキットによりライブラリーを構築した。
(1)Illumina Nextera反応系は、1ngのcDNA、1×Nextera緩衝液および1μlのNextera酵素を含む。反応体積は20μlである。
反応は55℃で7分間行った。
(2)反応産物を、上記(1)における反応産物、1μMプライマー3、1μM Illumina N70 xプライマー、1×Taq緩衝液、1μM dNTPおよび1u/μl Taq酵素を含む反応系でのPCR増幅に供した。ここで、プライマー3は、CCCTACACGACGCTCTTCCGATCT(配列番号3)である。反応体積は20μlである。
よく混合した後、PCR反応を行った。
95℃ 3分
95℃ 30秒
55℃ 30秒
72℃ 3分 上記工程を20~30サイクル繰り返す
72℃ 5分
(3)精製されたライブラリーの配列決定
(4)タグ配列中のバーコードに従って、最終的な配列決定産物がどの光処理された関心対象の領域に由来するかが決定される。
【0286】
例2.逆転写に基づかないトランスクリプトームの検出
2.1 プライマーの設計
当技術分野で周知のプライマー設計プログラムによって、プライマーを設計した(例えば、プライマー3)。標的種のトランスクリプトーム遺伝子モデルでは、標的遺伝子を選択し、各遺伝子に対して10対のプライマーを設計した。遺伝子内の隣接位置について、25塩基対の長さを有する上流および下流プライマーをそれぞれ設計して、それらの特異性を確保した。
【0287】
具体例:
プライマーの各対の上流プライマー:ATCCACGTGCTTGAG(配列番号2)-UMI-プローブ配列
プライマーの各対の下流プライマー:プローブ-AGATCGGAAGAGCACACGTCTG(配列番号9)
ここで、UMIの配列は、nnnnnnnn(ランダムな配列)である。
【0288】
(1)上流プライマーの合成
まず、Twist Bioscienceにより、プローブプライマーセットを並行して合成した。
プローブプライマーセットの配列は、
ATCCACGTGCTTGAG(配列番号2)-nnnnnnnn-プローブ-GATCACTCTGCGTTGATACCAC(配列番号15)である。
以下に示されるように、プライマーを用いて、PCRによって上流プライマーのライブラリーを増幅した。
プライマー4:ビオチン-ATCCACGTGCTTGAG(配列番号2)
プライマー5:GTGGTATCAACGCAGAGTGATC(配列番号6)
その後、PCR産物を精製し、DpnII酵素によって消化してプローブの下流配列を除去した。
次いで、これをストレプトアビジン(簡略に、SA)磁気ビーズに結合させ、配列は以下に示されている通りである:
磁気ビーズ-SA-ビオチン-ATCCACGTGCTTGAG(配列番号2)nnnnnnnn-プローブ-
次いで、これを0.1M NaOHによって変性させてPCR相補鎖を除去した。
その後、これを100℃に加熱して、ストレプトアビジン磁気ビーズに結合したフォワードプローブプライマーを遊離させた。
ビオチン-ATCCACGTGCTTGAG(配列番号2)nnnnnnnn-プローブ-
(2)下流プライマーの合成
Twist Bioscienceにより、プローブプライマーセットを並行して合成した。
プローブプライマーセットの配列は、
CTTCCGATCTGGTCTCG(配列番号7)-プローブ-AGATCGGAAGAGCACACGTCTG(配列番号9)である。
以下に示されるように、プライマーを用いて、PCRによって下流プライマーのライブラリーを増幅した。
プライマー6:ビオチン-CTTCCGATCTGGTCTCG(配列番号7)
プライマー7:ビオチン-CAGACGTGTGCTCTTCCGATCT(配列番号8)
PCR産物をストレプトアビジン磁気ビーズに結合させ、BsaI-HF酵素による消化によって過剰なプライマー配列を除去した。
その後、95℃で加熱することによって変性させて、以下に示されるような最終プライマーを得た。
プローブ-AGATCGGAAGAGCACACGTCTG(配列番号9)
(3)切断可能なリンカー(PCリンカー)を含有するプローブの調製
例1と同様に、切断可能なリンカーをプローブの5’末端に連結した。
(4)NPOM保護基を含有するプローブの調製
例1と同様に、プローブの5’末端にNPOM保護基を連結した。
【0289】
2.2 試料の調製および試料とのプローブのハイブリダイゼーション
(1)まず、組織切片をPBS中の4%ホルムアルデヒドにより室温で10分間固定し、その後、細胞を脱水し、-20℃で100%エタノール中に保存した。
(2)続いて、10%ホルムアミド+2×クエン酸ナトリウム緩衝液(SSC)+10%デキストラン硫酸の成分を用いて、ハイブリダイゼーション溶液を配合した。
(3)42℃で、ハイブリダイゼーション溶液中で、組織切片を1時間プレハイブリダイズさせた。
(4)上流プライマープールおよび下流プライマープールを10μMの合計濃度で組織切片中に添加した。
(5)次いで、それらを42℃で12~24時間ハイブリダイズさせた。
(6)組織切片をハイブリダイゼーション溶液で2回洗浄した。
(7)1%BSAを含有するPBSで組織切片を2回さらに洗浄した。
(8)これをT4リガーゼで、室温で1時間連結した。
(9)1%BSAを含有するPBSで組織切片を2回さらに洗浄した。
【0290】
2.3 抗体の染色
(1)1%BSAを含有する1×PBS緩衝液で、1つまたは複数の抗体を1μg/100μlの濃度に希釈した。
(2)一次抗体結合:抗体溶液を25℃で1時間または4℃で一晩切片と反応させた。
(3)1%BSAを含有する1×PBS緩衝液で切片を洗浄した。
(4)二次抗体結合:1%BSAを含有する1×PBS緩衝液で二次抗体を希釈し、室温で1時間、切片と反応させた。
(5)1%BSAを含有する1×PBS緩衝液で切片を洗浄した。
【0291】
2.4 顕微鏡観察:切片内の関心対象の領域に280nmのUV励起光を10秒~5分間照射した。
【0292】
2.5 1%BSAを含有する1×PBS緩衝液で切片を洗浄した。
【0293】
2.6 1×T4リガーゼ緩衝液、1μMタグ配列および1μl/μlのT4 DNAリガーゼを切片に添加し、室温で15分間反応させた。次いで、1%BSAを含有する1×PBS緩衝液で切片を洗浄して、タグ配列を除去した。
【0294】
2.7 次の関心対象の領域が照射され、切片上の異なる関心対象の領域が異なるタグ配列で標識されるように、上記工程2.4~2.6を繰り返した。
【0295】
2.8 全ての反応の終了後、1%SDSを含有する1×PBS中のプロテアーゼKの希釈液(20μg/mlの濃度を有する)で、切片を65℃で1時間消化した。
【0296】
2.9.ライブラリーの構築および配列決定。
【0297】
例3 エピゲノム解析
3.1.反応遮断修飾を含有するプローブの設計
(1)切断可能なリンカー(PCリンカー)を含有するプローブ
エピゲノム解析のためのプローブ:
5'PC-リンカー-AGGCCAGAGCATTCGAGATGTGTATAAGAGACAG(配列番号10)
(2)NPOM保護基を含有するプローブの設計
p-AGGCCAGAGCA(NPOM-T)(NPOM-T)CGAGATGTGTATAAGAGACAG(配列番号10)
【0298】
3.2 上記プライマーとTn5Mプライマー5’-P-CTGTCTCTTATACACATCT(配列番号12)をアニールして二本鎖を形成した。
【0299】
3.3 Tn5Bプライマー
Tn5Bプライマーは、GTCTCGTGGGCTCGGAGATGTGTATAAGAGACAG(配列番号11)であり、Tn5BプライマーとTn5Mプライマー5’-P-CTGTCTCTTATACACATCT(配列番号12)をアニールして二本鎖を形成した。
【0300】
3.4 等量の保護されたTn5トランスポゾンおよびTn5Bトランスポゾンを混合し、さらに、等モル量のTn5タンパク質と混合してTn5酵素を組み立てた。
【0301】
3.5 ホルムアルデヒド固定された凍結切片を調製し、0.1%Trion 10 mMTris緩衝液で組織を透過させた。
【0302】
3.6 1×TD緩衝液(Illumina Nexteraキットから入手)と上記工程で組み立てた5μMのTn5酵素を切片に添加し、37℃で1時間ATAC反応させた。
【0303】
3.7 1%BSAを含有する1×PBS緩衝液で切片を洗浄して、未反応のTn5酵素を除去した。
【0304】
3.8 切片の顕微鏡観察:切片内の関心対象の領域に280nmのUV励起光を10秒~5分間照射した。
【0305】
3.9 1%BSAを含有する1×PBS緩衝液で切片を洗浄した。
【0306】
3.10 1×T4リガーゼ緩衝液、1μMタグ配列および1μl/μlのT4 DNAリガーゼを切片に添加し、室温で15分間反応させた。次いで、1%BSAを含有する1×PBS緩衝液で切片を洗浄して、タグ配列を除去した。
【0307】
3.11 次の関心対象の領域が照射され、切片上の異なる関心対象の領域が異なるタグ配列で標識されるように、上記工程3.8~3.10を繰り返した。
【0308】
3.12 全ての反応の終了後、1%SDSを含有する1×PBS中のプロテアーゼKの希釈液(20μg/mlの濃度を有する)で、切片を65℃で1時間消化した。
【0309】
3.13 DNAを磁気ビーズで精製した後、上記反応産物、1μMプライマー5、1μM Illumina N70xプライマー、1×Taq緩衝液、1μM dNTPおよび1u/μl Taq酵素を含む増幅系において増幅した。プライマー8の配列は、CCCTACACGACGCTCTTCCGATCT(配列番号3)である。上記の試薬の量は、試料サイズに関連する。組織切片が1cm×1cmのサイズであった場合、増幅系は約50μlの溶液であった。
【0310】
よく混合した後、増幅を行った。
72c 5分
95c 3分
95c 30秒
55c 30秒
72c 3分 上記工程を20~30サイクル繰り返す
72c 5分
【0311】
3.14 精製されたライブラリーの配列決定
【0312】
3.15 タグ配列中のバーコードに従って、最終的な配列決定産物がどの光処理された関心対象の領域に由来するかが決定される。
【0313】
例4.タンパク質のマルチオミクス検出
4.1 以下の構造を抗体に結合させた:
抗体プローブ:AGGCCAGAGCATTCG(配列番号1)NNNNNNNN-バーコード-CTGTCTCTTATACACATCTCCGAGCCCACGAGAC(配列番号13)
ここで、抗体プローブの5’末端配列は、アダプターの第1の結合ドメインの配列AGGCCAGAGCATTCG(配列番号1)であり、抗体プローブの3’末端配列は、CTGTCTCTTATACACATCTCCGAGCCCACGAGAC(配列番号13)である。
【0314】
4.2 例1と同様に、切断可能なリンカーまたはNPOM保護基を抗体プローブの5’末端に連結した。バーコードは異なる抗体を区別するために使用された。
【0315】
4.3 抗体プローブの3’末端はアミノ修飾を有しており、これを一般的な抗体オリゴカップリングキットによって標的抗体に結合させることができる。
【0316】
4.4 抗体結合:例2の工程2.3と同じである。
【0317】
4.5 ライブラリーを構築する際に、追加の精製工程を加えた、すなわち、組織切片全体をプロテアーゼで消化した後、抗体のオリゴ部分(100bp未満)を磁気ビーズでの精製によって得、増幅し、一方、100bpを超える長さを有する部分を従来のcDNAまたはTn5増幅に供した。
【0318】
例5 結果の分析
マウス組織の異なる領域が検出された。図2は、眼および上皮などのマウス組織の異なる領域を示す。
【0319】
図2におけるマウス組織の領域1(眼)および領域2(上皮)についてのトランスクリプトームの同定結果を以下の表に示す。
【表1】
【0320】
図3は、図2におけるマウス組織の領域1(眼)についての遺伝子発現結果を示す。結果は、本出願の方法が領域1(眼)において眼に特異的な遺伝子発現を同定することができることを示している。
【0321】
以下の表は、図2におけるマウス組織の領域2(上皮)についての遺伝子発現結果を示す。結果は、本出願の方法が領域2(上皮)において上皮に特異的な遺伝子発現を同定することができることを示している。
【表2】
【0322】
図4は、図2におけるマウス組織の領域1(眼)および領域2(上皮)についてのATACオミクス解析の結果を示す。結果は、配列決定された断片のゲノム分布が典型的なATACシグナルパターンを示すこと、すなわち、配列決定された断片は主に転写開始部位の周囲に分布し、ピーク値を示したことを示す。
【0323】
図2における組織を固定した後、アクチンに対するオリゴ結合抗体Actin1で組織を染色し、次いで、本出願のタンパク質定量標識実験に供した。得られた結果を以下の表に示す。
【表3】
【0324】
アクチンは上皮組織では高い発現を示すが眼では低い発現を示すことが知られており、配列決定結果により得られた分子の数はそれと一致している。
【0325】
上記の結果は、本出願の方法が様々なオミクス情報を同時に検出できることを示している。
【0326】
前述の詳細な説明は、説明および例によって提供され、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に列挙された態様の様々な変更は、当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲およびその均等な態様の範囲内に保持される。
【配列表フリーテキスト】
【0327】
配列表1 <223>アダプターの第1の結合ドメイン
配列表2 <223>アダプターの第2の結合ドメイン;プライマー4
配列表3 <223>増幅プライマー認識配列;プライマー2;プライマー3、プライマー8
配列表4 <223>オリゴヌクレオチドアダプター
配列表5 <223>プライマー1
配列表6 <223>プライマー5
配列表7 <223>プライマー6
配列表8 <223>プライマー7
配列表9 <223>プローブ
配列表10 <223>エピゲノム解析のためのプローブ
配列表11 <223>Tn5Bプライマー
配列表12 <223>Tn5Mプライマー
配列表13 <223>抗体プローブの3末端配列
配列表14 <223>鎖変換プライマー
配列表15 <223>下流配列
図1
図2
図3
図4
【配列表】
2024522177000001.app
【国際調査報告】