(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(54)【発明の名称】NK細胞によって媒介される細胞傷害性を刺激する抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240604BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240604BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240604BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240604BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240604BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240604BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240604BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
C07K16/28
A61K39/395 D ZNA
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/04
C12N15/13
C12N5/10
C07K16/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575772
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 US2022032855
(87)【国際公開番号】W WO2022261337
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ウェルズ ジェームズ エイ.
(72)【発明者】
【氏名】カン エミリー
(72)【発明者】
【氏名】レイニアー ルイス エル.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA14
4C085CC03
4C085CC22
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA40
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
がん免疫療法は過去十年間にわたって大きな成功を収めてきた。抗体ベースの治療剤は特に成功を収めてきた。NK細胞の重要な役割を考えると、NK細胞の細胞傷害性を標的にしかつリダイレクトすることができる新規の免疫療法を同定することが重要である。本明細書において、本発明者らは、NK細胞を活性化することができる抗体を迅速に同定するための機能スクリーニング、ならびに前記スクリーニングにおいて同定された抗体およびその使用を開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト細胞傷害誘発受容体3(NCR3)に特異的に結合する抗体であって、少なくとも、
(1)SEQ ID NO:2を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1と、SEQ ID NO:3を含むLCDR2と、SEQ ID NO:4を含むLCDR3とを含む、軽鎖可変領域、および
SEQ ID NO:6を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1と、SEQ ID NO:7を含むHCDR2と、SEQ ID NO:8を含むHCDR3とを含む、重鎖可変領域;または
(2)SEQ ID NO:10を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1と、SEQ ID NO:11を含むLCDR2と、SEQ ID NO:12を含むLCDR3とを含む、軽鎖可変領域、および
SEQ ID NO:14を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1と、SEQ ID NO:15を含むHCDR2と、SEQ ID NO:41を含むHCDR3とを含む、重鎖可変領域;または
(3)SEQ ID NO:18を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1と、SEQ ID NO:19を含むLCDR2と、SEQ ID NO:20を含むLCDR3とを含む、軽鎖可変領域、および
SEQ ID NO:22を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1と、SEQ ID NO:23を含むHCDR2と、SEQ ID NO:24を含むHCDR3とを含む、重鎖可変領域
を含む、前記抗体。
【請求項2】
SEQ ID NO:10を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1と、SEQ ID NO:11を含むLCDR2と、SEQ ID NO:12を含むLCDR3とを含む、軽鎖可変領域、および
SEQ ID NO:14を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1と、SEQ ID NO:15を含むHCDR2と、SEQ ID NO:41を含むHCDR3とを含む、重鎖可変領域
を含む、請求項1記載の抗体。
【請求項3】
前記HCDR3が、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:42、SEQ ID NO:43、SEQ ID NO:44、SEQ ID NO:45、SEQ ID NO:46、SEQ ID NO:47、SEQ ID NO:48、SEQ ID NO:49、SEQ ID NO:50、SEQ ID NO:51、SEQ ID NO:52、SEQ ID NO:53、SEQ ID NO:54、SEQ ID NO:55、SEQ ID NO:56、またはSEQ ID NO:57のうちの1つを含む、請求項2記載の抗体。
【請求項4】
前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO:1を含み、かつ
前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO:5を含む、
請求項1記載の抗体。
【請求項5】
前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO:9を含み、かつ
前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO:13を含む、
請求項1記載の抗体。
【請求項6】
前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO:17を含み、かつ
前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO:21を含む、
請求項1記載の抗体。
【請求項7】
NCR3と第2の標的タンパク質に結合する二重特異性抗体である、請求項1~6のいずれか一項記載の抗体。
【請求項8】
前記第2の標的タンパク質ががん細胞上に発現している、請求項7記載の抗体。
【請求項9】
前記第2の標的タンパク質がCD20またはBCMAまたはHER2である、請求項7記載の抗体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項記載の抗体をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項記載の抗体を発現する、細胞。
【請求項12】
哺乳動物細胞である、請求項11記載の細胞。
【請求項13】
その必要のあるヒトにおいて、ナチュラルキラー(NK)細胞によって媒介される細胞傷害性を刺激する方法であって、請求項8~9のいずれか一項記載の抗体を、NK細胞によって媒介される細胞傷害性を刺激するのに十分な量で前記ヒトに投与する工程を含む、前記方法。
【請求項14】
前記ヒトががんを有し、前記NK細胞によって媒介される細胞傷害性ががん細胞を死滅させる、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記がんが多発性骨髄腫、白血病、ホジキンリンパ腫、または非ホジキンリンパ腫である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
ヒト細胞傷害誘発受容体1(NCR1)に特異的に結合する抗体であって、少なくとも、
SEQ ID NO:26を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1と、SEQ ID NO:27を含むLCDR2と、SEQ ID NO:28を含むLCDR3とを含む、軽鎖可変領域、および
SEQ ID NO:30を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1と、SEQ ID NO:31を含むHCDR2と、SEQ ID NO:32を含むHCDR3とを含む、重鎖可変領域
を含む、前記抗体。
【請求項17】
前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO:25を含み;かつ
前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO:29を含む、
請求項16記載の抗体。
【請求項18】
NCR1と第2の標的タンパク質に結合する二重特異性抗体である、請求項16~17のいずれか一項記載の抗体。
【請求項19】
前記第2の標的タンパク質ががん細胞上に発現している、請求項18記載の抗体。
【請求項20】
前記第2の標的タンパク質がCD20またはBCMAまたはHER2である、請求項18記載の抗体。
【請求項21】
請求項16~20のいずれか一項記載の抗体をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項22】
請求項16~20のいずれか一項記載の抗体を発現する、細胞。
【請求項23】
哺乳動物細胞である、請求項11記載の細胞。
【請求項24】
その必要のあるヒトにおいて、ナチュラルキラー(NK)細胞によって媒介される細胞傷害性を刺激する方法であって、請求項19~20のいずれか一項記載の抗体を、NK細胞によって媒介される細胞傷害性を刺激するのに十分な量で前記ヒトに投与する工程を含む、前記方法。
【請求項25】
前記ヒトががんを有し、前記NK細胞によって媒介される細胞傷害性ががん細胞を死滅させる、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記がんが多発性骨髄腫、白血病、ホジキンリンパ腫、または非ホジキンリンパ腫である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
少なくとも、
SEQ ID NO:34を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1と、SEQ ID NO:35を含むLCDR2と、SEQ ID NO:36を含むLCDR3とを含む、軽鎖可変領域、および
SEQ ID NO:38を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1と、SEQ ID NO:39を含むHCDR2と、SEQ ID NO:40を含むHCDR3とを含む、重鎖可変領域
を含む、ヒトCD-16に特異的に結合する抗体。
【請求項28】
前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO:25を含み;かつ
前記軽鎖可変領域がSEQ ID NO:29を含む、
請求項27記載の抗体。
【請求項29】
CD-16と第2の標的タンパク質に結合する二重特異性抗体である、請求項27~28のいずれか一項記載の抗体。
【請求項30】
前記第2の標的タンパク質ががん細胞上に発現している、請求項29記載の抗体。
【請求項31】
前記第2の標的タンパク質がCD20またはBCMAまたはHER2である、請求項29記載の抗体。
【請求項32】
請求項27~31のいずれか一項記載の抗体をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項33】
請求項27~31のいずれか一項記載の抗体を発現する、細胞。
【請求項34】
哺乳動物細胞である、請求項11記載の細胞。
【請求項35】
その必要のあるヒトにおいて、ナチュラルキラー(NK)細胞によって媒介される細胞傷害性を刺激する方法であって、請求項30~31のいずれか一項記載の抗体を、NK細胞によって媒介される細胞傷害性を刺激するのに十分な量で前記ヒトに投与する工程を含む、前記方法。
【請求項36】
前記ヒトががんを有し、前記NK細胞によって媒介される細胞傷害性ががん細胞を死滅させる、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記がんが多発性骨髄腫、白血病、ホジキンリンパ腫、または非ホジキンリンパ腫である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
ナチュラルキラー(NK)細胞を活性化する抗体を同定する方法であって、
NK細胞上のタンパク質に結合する抗体のライブラリーを提供する工程;
哺乳動物細胞の表面に抗体の前記ライブラリーを発現させる工程;
NK細胞が、哺乳動物細胞上に発現した抗体に基づいて少なくとも一部の哺乳動物細胞を死滅させる条件下で、哺乳動物細胞の集団をNK細胞とインキュベートする工程;および
インキュベートした後に、残存する細胞の割合を定量する工程;
残存する細胞の割合を哺乳動物細胞の対照集団と比較する工程であって、特定の抗体を発現している細胞の割合の減少によって、前記特定の抗体がNK細胞を活性化することが示される、前記工程
を含む、前記方法。
【請求項39】
前記特定の抗体をNK細胞と接触させる工程、および接触させた前記NK細胞の活性化を測定する工程をさらに含む、請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記タンパク質が、細胞傷害誘発受容体1(NCR1)、NCR3、およびCD-16からなる群より選択される、請求項38または39記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本特許出願は、2021年6月11日に出願された米国仮特許出願第63/209,671号に係る優先権の恩典を主張する。米国仮特許出願第63/209,671号は全ての目的のために参照により組み入れられる。
【0002】
連邦政府の支援による研究および開発によってなされた発明に対する権利の記載
本発明は、米国立衛生研究所により付与された助成金番号R35 GM122451による米国政府の支援を受けてなされた。米国政府は本発明において一定の権利を保持する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
がん免疫療法は過去十年間にわたって大きな成功を収めてきた。この成功の大半は、免疫チェックポイント遮断またはCD3/T細胞受容体(TCR)複合体刺激を介してCD8+T細胞の細胞傷害能をリダイレクトおよび増強する抗体ベース治療剤の開発によって推進されてきた。CD8+T細胞と同様にナチュラルキラー(NK)細胞は抗腫瘍応答を媒介する細胞傷害性エフェクター細胞である[Waldhauer, I. & Steinle, A., Oncogene 27(45), 5932-5943 (2008) (非特許文献1); Raulet, D. H. & Guerra, N., Nat. Rev. Immunol 9(8), 568-580 (2009) (非特許文献2); Marcus, A. et al., Adv. Immunol. 122, 91-128 (2014) (非特許文献3)]。ナチュラルキラー(NK)細胞は腫瘍免疫監視において重要な役割を果たしており、がん細胞上に頻繁に過剰発現しているストレス誘発性リガンドを認識することによって標的細胞を同定および除去することができる。NK細胞は、腫瘍細胞を根絶するために複数の最新の治療用モノクローナル抗体が用いる機構である抗体依存性細胞傷害(ADCC)を行うことも知られている[Weng, W. K. & Levy, R., J Clin Oncol. 21(21), 3940-3947 (2003) (非特許文献4); Musolino, A. et al., J Clin Oncol. 26(11), 1789-1796 (2008) (非特許文献5); Rodriguez, J. et al., Eur. J. Cancer. 48(12), 1774-1780 (2012) (非特許文献6)]。NK細胞が腫瘍免疫監視において果たす重大な役割を考えると、NK細胞の細胞傷害性を標的にしかつリダイレクトすることができる新規の免疫療法を同定することは、さらなる研究に値する。
【0004】
T細胞は全て、T細胞活性をリダイレクトするために免疫調節性分子が利用できるCD3/TCR複合体を発現するが、NK細胞は、NK細胞活性を支配するために複数の活性化受容体、共刺激受容体、および抑制性受容体を発現する[Lanier, L. L., Nat. Immunol. 9(5), 495-502 (2008) (非特許文献7); Chester, C., Fritsch, K., Kohrt, H. E., Front Immunol. 6, 601 (2015) (非特許文献8)]。さらに、NK細胞レパートリーは非常に多岐にわたり、異なる細胞サブセット間での、これらの活性化受容体および抑制性受容体の発現は個体内および個体間で大きく異なる[Horowitz, A. et al., Sci. Transl. Med. 5(208), 208ra145 (2013) (非特許文献9); Strauss-Albee, D. M. et al., Sci. Transl. Med. 7(297), 297ra115 (2015) (非特許文献10)]。これらの要因のために、NK細胞を動員および刺激することができる抗体を開発することは難しい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Waldhauer, I. & Steinle, A., Oncogene 27(45), 5932-5943 (2008)
【非特許文献2】Raulet, D. H. & Guerra, N., Nat. Rev. Immunol 9(8), 568-580 (2009)
【非特許文献3】Marcus, A. et al., Adv. Immunol. 122, 91-128 (2014)
【非特許文献4】Weng, W. K. & Levy, R., J Clin Oncol. 21(21), 3940-3947 (2003)
【非特許文献5】Musolino, A. et al., J Clin Oncol. 26(11), 1789-1796 (2008)
【非特許文献6】Rodriguez, J. et al., Eur. J. Cancer. 48(12), 1774-1780 (2012)
【非特許文献7】Lanier, L. L., Nat. Immunol. 9(5), 495-502 (2008)
【非特許文献8】Chester, C., Fritsch, K., Kohrt, H. E., Front Immunol. 6, 601 (2015)
【非特許文献9】Horowitz, A. et al., Sci. Transl. Med. 5(208), 208ra145 (2013)
【非特許文献10】Strauss-Albee, D. M. et al., Sci. Transl. Med. 7(297), 297ra115 (2015)
【発明の概要】
【0006】
発明の簡単な概要
一部の態様において、本開示は、ヒト細胞傷害誘発受容体3(NCR3)に特異的に結合する抗体であって、少なくとも、
(1)SEQ ID NO:2を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1と、SEQ ID NO:3を含むLCDR2と、SEQ ID NO:4を含むLCDR3とを含む、軽鎖可変領域、および
SEQ ID NO:6を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1と、SEQ ID NO:7を含むHCDR2と、SEQ ID NO:8を含むHCDR3とを含む、重鎖可変領域;または
(2)SEQ ID NO:10を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1と、SEQ ID NO:11を含むLCDR2と、SEQ ID NO:12を含むLCDR3とを含む、軽鎖可変領域、および
SEQ ID NO:14を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1と、SEQ ID NO:15を含むHCDR2と、SEQ ID NO:41を含むHCDR3とを含む、重鎖可変領域;または
(3)SEQ ID NO:18を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1と、SEQ ID NO:19を含むLCDR2と、SEQ ID NO:20を含むLCDR3とを含む、軽鎖可変領域、および
SEQ ID NO:22を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1と、SEQ ID NO:23を含むHCDR2と、SEQ ID NO:24を含むHCDR3とを含む、重鎖可変領域
を含む、抗体を提供する。
【0007】
一部の態様において、軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:10を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、SEQ ID NO:11を含むLCDR2、およびSEQ ID NO:12を含むLCDR3を含み、重鎖可変領域は、SEQ ID NO:14を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1、SEQ ID NO:15を含むHCDR2、およびSEQ ID NO:41を含むHCDR3を含む。
【0008】
一部の態様において、HCDR3は、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:42、SEQ ID NO:43、SEQ ID NO:44、SEQ ID NO:45、SEQ ID NO:46、SEQ ID NO:47、SEQ ID NO:48、SEQ ID NO:49、SEQ ID NO:50、SEQ ID NO:51、SEQ ID NO:52、SEQ ID NO:53、SEQ ID NO:54、SEQ ID NO:55、SEQ ID NO:56、またはSEQ ID NO:57のうちの1つを含む。
【0009】
一部の態様において、軽鎖可変領域はSEQ ID NO:1を含み;かつ軽鎖可変領域はSEQ ID NO:5を含む。
【0010】
一部の態様において、軽鎖可変領域はSEQ ID NO:9を含み;かつ軽鎖可変領域はSEQ ID NO:13を含む。
【0011】
一部の態様において、軽鎖可変領域はSEQ ID NO:17を含み;かつ軽鎖可変領域はSEQ ID NO:21を含む。
【0012】
一部の態様において、前記抗体は、NCR3と第2の標的タンパク質に結合する二重特異性抗体である。一部の態様において、第2の標的タンパク質はがん細胞上に発現している。一部の態様において、第2の標的タンパク質はCD20またはBCMAまたはHER2である。
【0013】
上記の抗体をコードするポリヌクレオチドも提供される。
【0014】
上記の抗体を発現する細胞も提供される。一部の態様において、前記細胞は哺乳動物細胞である。
【0015】
その必要のあるヒトにおいて、ナチュラルキラー(NK)細胞によって媒介される細胞傷害性を刺激する方法も提供される。一部の態様において、前記方法は、上記の抗体を、NK細胞によって媒介される細胞傷害性を刺激するのに十分な量でヒトに投与する工程を含む。一部の態様において、ヒトはがんを有し、NK細胞によって媒介される細胞傷害性はがん細胞を死滅させる。一部の態様において、がんは多発性骨髄腫、白血病、ホジキンリンパ腫、または非ホジキンリンパ腫である。
【0016】
ヒト細胞傷害誘発受容体1(NCR1)に特異的に結合する抗体であって、少なくとも、SEQ ID NO:26を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1とSEQ ID NO:27を含むLCDR2とSEQ ID NO:28を含むLCDR3とを含む軽鎖可変領域、および、SEQ ID NO:30を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1とSEQ ID NO:31を含むHCDR2とSEQ ID NO:32を含むHCDR3とを含む重鎖可変領域、を含む、抗体も提供される。一部の態様において、軽鎖可変領域はSEQ ID NO:25を含み;かつ軽鎖可変領域はSEQ ID NO:29を含む。
【0017】
一部の態様において、前記抗体は、NCR1と第2の標的タンパク質に結合する二重特異性抗体である。一部の態様において、第2の標的タンパク質はがん細胞上に発現している。一部の態様において、第2の標的タンパク質はCD20またはBCMAまたはHER2である。
【0018】
上記の抗体をコードするポリヌクレオチドも提供される。
【0019】
上記の抗体を発現する細胞も提供される。一部の態様において、前記細胞は哺乳動物細胞である。
【0020】
その必要のあるヒトにおいて、ナチュラルキラー(NK)細胞によって媒介される細胞傷害性を刺激する方法であって、上記の抗体を、NK細胞によって媒介される細胞傷害性を刺激するのに十分な量でヒトに投与する工程を含む、方法も提供される。
【0021】
一部の態様において、ヒトはがんを有し、NK細胞によって媒介される細胞傷害性はがん細胞を死滅させる。一部の態様において、がんは多発性骨髄腫、白血病、ホジキンリンパ腫、または非ホジキンリンパ腫である。
【0022】
ヒトCD-16に特異的に結合する抗体であって、少なくとも、SEQ ID NO:34を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1とSEQ ID NO:35を含むLCDR2とSEQ ID NO:36を含むLCDR3とを含む軽鎖可変領域、および、SEQ ID NO:38を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1とSEQ ID NO:39を含むHCDR2とSEQ ID NO:40を含むHCDR3とを含む重鎖可変領域を含む、抗体も提供される。
【0023】
一部の態様において、軽鎖可変領域はSEQ ID NO:25を含み;かつ軽鎖可変領域はSEQ ID NO:29を含む。
【0024】
一部の態様において、前記抗体は、CD-16と第2の標的タンパク質に結合する二重特異性抗体である。一部の態様において、第2の標的タンパク質はがん細胞上に発現している。一部の態様において、第2の標的タンパク質はCD20またはBCMAまたはHER2である。
【0025】
上記の抗体をコードするポリヌクレオチドも提供される。
【0026】
上記の抗体を発現する細胞も提供される。一部の態様において、前記細胞は哺乳動物細胞である。
【0027】
その必要のあるヒトにおいて、ナチュラルキラー(NK)細胞によって媒介される細胞傷害性を刺激する方法であって、上記の抗体を、NK細胞によって媒介される細胞傷害性を刺激するのに十分な量でヒトに投与する工程を含む、方法も提供される。一部の態様において、ヒトはがんを有し、NK細胞によって媒介される細胞傷害性はがん細胞を死滅させる。一部の態様において、がんは多発性骨髄腫、白血病、ホジキンリンパ腫、または非ホジキンリンパ腫である。
【0028】
ナチュラルキラー(NK)細胞を活性化する抗体を同定する方法も提供される。一部の態様において、前記方法は、NK細胞上のタンパク質に結合する抗体のライブラリーを提供する工程;哺乳動物細胞の表面に抗体のライブラリーを発現させる工程;NK細胞が、哺乳動物細胞上に発現した抗体に基づいて少なくとも一部の哺乳動物細胞を死滅させる条件下で、哺乳動物細胞の集団をNK細胞とインキュベートする工程;およびインキュベートした後に、残存する細胞の割合を定量する工程;残存する細胞の割合を哺乳動物細胞の対照集団と比較する工程であって、特定の抗体を発現している細胞の割合の減少によって、特定の抗体がNK細胞を活性化することが示される、工程を含む。
【0029】
一部の態様において、前記方法は、特定の抗体をNK細胞と接触させる工程、および接触させたNK細胞の活性化を測定する工程をさらに含む。一部の態様において、前記タンパク質は、細胞傷害誘発受容体1(NCR1)、NCR3、およびCD-16からなる群より選択される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1a~b:機能スクリーニングの模式図。(a)NK細胞抗原選択からのファージをELISAによってスクリーニングし、ユニークなCDRをもつFabをscFabに変換した。Jurkat細胞に膜結合(MB)scFabを形質導入して、哺乳動物ディスプレイライブラリーを作製した。ライブラリーを末梢血NK細胞の存在下または非存在下でインキュベートし、生存している細胞を次世代DNAシークエンシングに供して、NK細胞によって枯渇されたscFabを同定した。(b)scFab遺伝子をJurkatゲノムの中に組み込んだ。CDR H3のシークエンシングを用いて、異なるscFabを区別した。
【
図2】機能の哺乳動物ディスプレイスクリーニングは、NK細胞傷害性を刺激する抗体を同定する。6種類のNK細胞抗原を標的とする69種類のscFabをJurkat細胞上にディスプレイして哺乳動物ディスプレイライブラリーを作製した。ライブラリーを、2つの異なるドナーに由来する休止中の末梢血NK細胞またはIL2によって刺激された末梢血NK細胞と4時間または24時間インキュベートした。NGSカウントを、NK細胞の非存在下で4時間または24時間培養した哺乳動物ディスプレイライブラリーに対して基準化した。NK細胞によって4種類のscFab、CD16.03、NCR1.11、NCR3.18、およびNCR3.19しか枯渇されなかった。陽性NGSシグナル(濃縮)を赤色で示し、陰性NGSシグナル(枯渇)を青色で示した。
【
図3】
図3a~b:FcγR+細胞株に対する機能スクリーニングから同定された抗体のインビトロ活性。(a)様々な濃度の抗体の存在下でFcγR+THP-1細胞に対する末梢血NK細胞を用いたリダイレクトされた溶解アッセイ。データは3回の独立した実験を表す。(b)様々な濃度の抗体の存在下または非存在下でのFcγR+P815細胞に対する末梢血NK細胞を用いたIFN-γ分泌アッセイ。機能スクリーニングにおいて活性化すると同定された4種類全ての抗体がNK細胞傷害性とIFN-γ分泌を誘発することができた。機能スクリーニングにおいて非刺激であると同定された抗体は1種類しかNK細胞傷害性とIFN-γ分泌を誘発できなかった。値は8つの異なるドナーの平均±SEMを表す。
***p<0.001。
****p<0.0001。
【
図4】
図4a~f。作製された二重特異性構築物、および二重特異性構築物によって誘導された、CD20+Daudiに対する細胞傷害性。(a)それぞれのNKターゲティング抗体をscFv(青色)に変換し、腫瘍ターゲティングFabの軽鎖または重鎖(灰色)に取り付けた。腫瘍抗原はCD20またはHER2であった。二重特異性構築物によって誘導された、CD20+Daudiに対する細胞傷害性。(b)10:1のE:Tで、抗CD20-scFv CD16.03二重特異性抗体の存在下でPBMCによって誘導された細胞傷害性。(c)3:1のE:Tで、抗CD20-scFv NCR1.11二重特異性抗体の存在下でNCR1+NKL細胞によって誘導された細胞傷害性。(d)1:9のE:Tで、抗CD20-scFv NCR3.12二重特異性抗体の存在下でNCR3+NK92MI細胞によって誘導された細胞傷害性。(e)1:9のE:Tで、抗CD20-scFv NCR3.19二重特異性抗体の存在下でNCR3+NK92MI細胞によって誘導された細胞傷害性。(f)PBMCによって誘導された細胞傷害性と抗CD20ヒトIgG1 mAbとの比較。
【
図5】
図5a~e。二重特異性抗体によるSC1リンパ腫細胞の細胞傷害性。(a)抗CD20Fab。(b)抗CD20ヒトIgG1 mAb。(c)抗CD20-scFv CD16.03二重特異性抗体。(d)抗CD20-scFv NCR1.11二重特異性抗体。(e)抗CD20-scFv NCR3.12二重特異性抗体。
【
図6】
図6(S1)。NK細胞抗原に選択的に結合するFabファージを濃縮するのに使用したファージディスプレイ選択とFc-融合構築物の模式図。
【
図7】
図7(S2)。高親和性結合物質を同定するするための、NK細胞抗原に対する選択からのFab-ファージELISA。y軸にFab-ファージと関心対象の抗原との直接結合をプロットした。x軸に競合と直接との比を示した。競合的結合のためにFab-ファージを20nMの可溶性抗原とプレインキュベートし、次いで、抗原コーティングプレートに結合させる。
【
図8】
図8a-b(S3)。哺乳動物標的細胞上での膜結合(MB)scFabライブラリーの発現。(a)哺乳動物標的細上でscFabをディスプレイするのに使用した構築物のフォーマット。(b)Jurkat標的細胞上でのMB scFabライブラリーの発現。WT Jurkatを赤色で示した。MB-scFABを発現しているJurkatを青色で示した。細胞表面でのscFab発現は抗ヒトFab抗体で検出された。
【
図9】
図9(S4)。2つの異なる血液ドナーに由来するバイオロジカルレプリケートの比較は良い相関を示す。
【
図10】
図10(S5)。代表的なフローサイトメトリーヒストグラムから、Fabが選択された抗原に対する、結果として生じたFabの選択性が明示された。テトラサイクリン添加によって、それぞれのNK細胞抗原を過剰発現するように6つのトラサイクリン誘導性FlpIn細胞株を作製した。
【
図11】
図11(S6)。末梢血NK細胞に対する機能スクリーニングから同定された抗体の力価測定。NK細胞の蛍光強度の中央値を、ある範囲の抗体濃度にわたってプロットした。機能スクリーニングから活性化であると同定された抗体は、非機能であると同定されたほぼ全ての抗体よりも低い濃度で結合した。
【
図12】
図12a-d(S7)。関心対象のNK抗原を過剰発現するHEK293 FlpIn細胞株に対する二重特異性抗体の力価測定。(a)CD16過剰発現細胞株に対する抗CD20-scFv CD16.03二重特異性抗体の結合。(b)NCR1過剰発現細胞株に対する抗CD20-scFv NCR1.11二重特異性抗体の結合。(c)NCR3過剰発現細胞株に対する抗CD20-scFv NCR3.12二重特異性抗体の結合。(d)NCR3過剰発現細胞株に対する抗CD20-scFv NCR3.19二重特異性抗体の結合。
【
図13】
図13(S8)。HER2を標的とする二重特異性構築物によって誘導された細胞傷害性。
【
図14】
図14a-b(S9)。SC1リンパ腫細胞上でのCD20発現レベルおよびCD20+Daudi細胞上でのCD20発現レベル。CD20発現レベルを決定するために、(a)SC1リンパ腫細胞または(b)CD20+Daudi細胞を10μg/mL、1μg/mL、0.1μg/mL、または0μg/mLのビオチン化抗CD20 IgG1 mAbとインキュベートし、その後にストレプトアビジン-AlexaFluor-647二次抗体で染色した。
【発明を実施するための形態】
【0031】
定義
本明細書において使用する単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、特に文脈によってはっきりと規定されていない限り複数の指示物を含む。従って、例えば、「1個の抗体」についての言及は、任意で、2つまたはそれ以上のこのような分子の組み合わせなどを含む。
【0032】
本明細書で使用する「抗体」という用語は、抗原エピトープに特異的に結合するための必要な可変領域配列を含む、単離された、または組換え結合因子を意味する。従って、本明細書で使用する「抗体」は、任意のクラスもしくはサブクラスの任意の形態の抗体、または望ましい生物学的活性、例えば、特定の標的抗原との結合を示す、その断片である。従って、「抗体」は最も広い意味で用いられ、望ましい生物学的活性を示す限り、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ヒト抗体、キメラ抗体、シングルドメイン抗体、例えば、ナノボディ、ダイアボディ、ラクダ科の動物に由来する抗体、一価抗体、二価抗体、多価抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、およびscFv、Fabなどを含むが、これに限定されない抗体断片を含むが、これに限定されない。
【0033】
「抗体断片」はインタクトな抗体の一部、例えば、インタクトな抗体の抗原結合領域または可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFv断片;ダイアボディ;直鎖抗体(linear antibody);単鎖抗体分子(例えば、scFv);ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体または多価抗体が含まれる。「Fab」断片は、軽鎖の可変ドメインおよび定常ドメインと、重鎖の可変ドメインおよび1番目の定常ドメイン(CH1)とを含有する。F(ab')2断片は、一般的に、カルボキシ末端近くでヒンジシステインによって共有結合されている一対のFab断片を有する。抗体断片の他の化学結合も公知である。「Fv」は、完全な抗原認識および結合部位を含有する最小抗体断片であり、1つの重鎖可変領域ドメインと1つの軽鎖可変領域ドメインの二量体である。
【0034】
抗体の「クラス」は、その重鎖がもつ定常ドメインまたは定常領域のタイプを指す。5つの主要な抗体クラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4にさらに分けられる場合がある。本明細書に記載の抗体は、これらのクラスまたはサブクラスのいずれでもよい。
【0035】
本明細書で使用する「V領域」は、フレームワーク1、CDR1、フレームワーク2、CDR2、およびCDR3を含むフレームワーク3、ならびにフレームワーク4のセグメントを含む抗体可変領域ドメインを指す。
【0036】
本明細書で使用する「相補性決定領域(CDR)」は、可変ドメインの4つの「フレームワーク」領域を中断する3つの超可変領域を指す。CDRは、抗原エピトープに対する結合の主因である。それぞれの重鎖または軽鎖のCDRはN末端から連続番号が振られており、CDR1、CDR2、およびCDR3と呼ばれる。
【0037】
CDR領域およびフレームワーク領域のアミノ酸配列は、当技術分野における様々な周の定義、例えば、Kabat、Chothia、international ImMunoGeneTicsデータベース(IMGT)、およびAbMを用いて決定することができる(例えば、Johnson et al., 上記; Chothia & Lesk, 1987, Canonical structures for the hypervariable regions of immunoglobulins. J. Mol. Biol. 196, 901-917; Chothia C. et al., 1989, Conformations of immunoglobulin hypervariable regions. Nature 342, 877-883; Chothia C. et al., 1992, structural repertoire of the human VH segments J. Mol. Biol. 227, 799-817; Al-Lazikani et al., J .Mol. Biol 1997, 273(4)を参照されたい)。CDRの定義はまた、以下:Ruiz et al., IMGT, the international ImMunoGeneTics database. Nucleic Acids Res., 28, 219-221 (2000);およびLefranc, M.-P. IMGT, the international ImMunoGeneTics database. Nucleic Acids Res. Jan 1;29(1):207-9 (2001); MacCallum et al, Antibody-antigen interactions: Contact analysis and binding site topography, J. Mol. Biol., 262 (5), 732-745 (1996);およびMartin et al, Proc. Natl Acad. Sci. USA, 86, 9268-9272 (1989); Martin, et al, Methods Enzymol., 203, 121-153, (1991); Pedersen et al, Immunomethods, 1, 126, (1992);およびRees et al, In Sternberg M.J.E. (ed.), Protein Structure Prediction. Oxford University Press, Oxford, 141-172 1996)にも記載されている。Kabatナンバリングによって決定されるCDRへの言及は、例えば、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institute of Health, Bethesda, MD (1991))に基づいている。Chothia CDRは、Chothiaによって定義されたように決定される(例えば、Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987)を参照されたい)。
【0038】
抗体結合の文脈において本開示で使用する「エピトープ」または「抗原決定基」は、抗体が結合する、抗原上の部分を指す。エピトープは、連続アミノ酸および/または、タンパク質の三次フォールディングによって近接される非連続アミノ酸から形成されてもよい。連続アミノ酸から形成されたエピトープは、典型的には、変性溶媒に曝露されても保持されるのに対して、三次フォールディングによって形成されたエピトープは典型的には変性溶媒で処理されると失われる。エピトープは、独特の空間コンホメーションに、典型的には少なくとも3アミノ酸、さらに通常は少なくとも5または8~10アミノ酸を含む。エピトープの空間コンホメーションを決定する方法には、例えば、X線結晶学および2次元核磁気共鳴が含まれる。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66, Glenn E. Morris, Ed (1996)を参照されたい。抗体とエピトープとの結合はカルシウムイオンの存在などの他の環境要因の影響を受ける場合がある。
【0039】
本明細書で使用する「結合価」という用語は、抗原に対する抗体の異なる結合部位の数を指す。一価抗体は、抗原に対して1つの結合部位を含む。多価抗体は複数の結合部位を含む。
【0040】
本明細書で使用する「一価抗体」という用語は、標的分子上の1つのエピトープに結合する抗体を指す。
【0041】
本明細書で使用する「二価抗体」という用語は、2つの抗原結合部位を有する抗体を指す。
【0042】
「多価抗体」という用語は、複数の結合価を有する1つの結合分子を指し、「結合価」は、抗体構築物の1分子あたりに存在する抗原結合部分の数で表される。従って、1つの結合分子は、標的分子上の複数の結合部位に結合することができる。多価抗体の例には、二価抗体、三価抗体、四価抗体、五価抗体など、ならびに二重特異性抗体が含まれるが、これに限定されない。
【0043】
本明細書で使用する「二重特異性抗体」という用語は、2つまたはそれ以上の異なるエピトープに結合する抗体を指す。一部の態様において、二重特異性抗体は、2つの異なる標的抗原のエピトープに結合する。一部の態様において、二重特異性抗体は、同じ標的抗原の2つの異なるエピトープに結合する。二重特異性抗体はいくつかのやり方で作ることができる。一部の態様において、本明細書に記載の二重特異性抗体はノブ・イン・ホール(knob-in-a-hole)IgG抗体であるか、または別の方法でノブ・イン・ホール技術を使用する。例えば、Xu, et al., MAbs 7(1):231-42 (2015)を参照されたい。
【0044】
本明細書で使用する「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という句は、実質的に同一のアミノ酸配列を有するか、または同じ遺伝子供給源に由来する、抗体、二重特異性抗体などを含むポリペプチドを指す。この用語はまた、1種類の分子組成の抗体分子の調製物を含む。モノクローナル抗体組成物は特定のエピトープに対して1つの結合特異性と親和性を示す。
【0045】
本明細書で使用する、標的、例えば、NCR1、NCR3、またはCD-16に「特異的に結合する」という用語は、抗体が異なる標的に結合するよりも大きな親和性で、大きなアビディティで、および/または長い期間で標的に結合する結合反応を指す。一部の態様において、標的結合タンパク質は、同じ結合親和性アッセイ条件下でアッセイされた時に無関係の標的と比較して、標的に対して少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、25倍、50倍、100倍、1,000倍、10,000倍、またはそれ以上の親和性を有する。本明細書で使用する、特定の標的への「特異的結合」、特定の標的に「特異的に結合する」、または特定の標的「に特異的な」という用語は、例えば、標的に対する平衡解離定数KDを有する分子(例えば、抗体)によって、例えば、10-2Mまたはそれ以下、例えば、10-3M、10-4M、10-5M、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、または10-12Mの、標的に対する平衡解離定数KDを有する分子(例えば、抗体)によって、示すことができる。一部の態様において、抗体のKDは100nM未満または10nM未満である。
【0046】
「処置する」および「処置」という用語は、治療的処置ならびに予防的または抑制的な措置を両方とも指し、予防的または抑制的な措置における目的は、望ましくない生理学的変化または障害を予防するか、または遅くすることである。本発明の目的で、有益な、または望ましい臨床結果には、検出可能であっても、検出不可能であっても、症状の軽減、疾患の程度の減少、疾患の安定化された(すなわち、悪化しない)状態、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の改善または緩和、および(部分的でも完全でも)寛解が含まれるが、これに限定されない。「処置」はまた、処置を受けない場合に予想される生存期間と比較して生存時間を延ばすことを意味することもある。他の態様において、「処置する(treat)」、「処置」および「処置する(treating)」という用語は、増殖性障害の進行を、身体的に、例えば、識別可能な症状の安定化によって阻害すること、生理学的に、例えば、身体パラメータの安定化によって阻害すること、またはその両方を指す。他の態様において、「処置する」、「処置」、および「処置する」という用語は腫瘍サイズまたはがん細胞数の低減または安定化を指す。
【0047】
本明細書で使用する「対象」という用語は、哺乳動物、例えば、好ましくは、ヒトを指す。哺乳動物には、ヒトならびに家畜(domestic animal)および家畜(farm animal)、例えば、サル(例えば、カニクイザル)、マウス、イヌ、ネコ、ウマ、およびウシなどが含まれるが、これに限定されない。
【0048】
本明細書で使用する「薬学的に許容される担体」という用語は、薬学的組成物中の賦形剤または希釈剤を指す。薬学的に許容される担体は製剤の他の成分と適合しなければならず、レシピエントに対して有害であってはならない。本発明において、薬学的に許容される担体は十分な薬学的安定性を活性成分に提供しなければならない。担体がどういったものかは投与方法によって異なる。例えば、静脈内投与の場合、一般的に水溶液担体が用いられ、経口投与の場合、固体担体が好ましい。
【0049】
発明の詳細な説明
本発明者らは、NK細胞に結合しかつそれを活性化する新規の抗体、ならびにNK細胞を活性化する新規の試薬を同定するための方法を発見した。NK細胞を活性化することができる抗体を迅速に同定するための機能スクリーニングが開発された。抗体を哺乳動物標的細胞株上でディスプレイし、NK細胞によって媒介される細胞傷害性を刺激する能力を探索した。このスクリーニングから、NK細胞に高親和性で結合する、NCR1、NCR3、およびCD-16に特異的な抗体が同定され、その後に開発された二重特異性抗体構築物は、NK細胞によって媒介される細胞傷害性をCD20+B細胞リンパ腫にリダイレクトすることが示された。従って、本明細書に記載の抗体を、関心対象の細胞にターゲティングすることによって(例えば、二重特異性抗体によるターゲティングがあるが、これに限定されない)、NK細胞を前記細胞にターゲティングして、死滅させることができる。
【0050】
本明細書に記載の例示的な抗体は、NCR1、NCR3、およびCD-16に特異的に結合する抗体を含む。これらの標的に結合した、全ての抗体がNK細胞を活性化するというわけではなく、本明細書に記載の抗体は実施例において明示されるように活性化する。
【0051】
本明細書に記載の例示的な抗NCR1抗体は、RASQSVSSAV(SEQ ID NO:26)を含むLCDR1と、SASSLYS(SEQ ID NO:27)を含むLCDR2と、LCDR3 SSSSLI(SEQ ID NO:28)とを含む、軽鎖可変領域、およびVYYSYI(SEQ ID NO:30)を含むHCDR1と、SISSYYGSTY(SEQ ID NO:31)を含むHCDR2と、SRYLQDYWSSWWVSWYGL(SEQ ID NO:32)を含むHCDR3とを含む、重鎖可変領域、を有する抗NCR1抗体を含む。一部の態様において、軽鎖可変領域はSEQ ID NO:25を含むか(任意で、1個、2個、もしくは3個のアミノ酸変化を有する。アミノ酸変化は保存的アミノ酸変化でもよい)、重鎖可変領域はSEQ ID NO:29を含むか(任意で、1個、2個、もしくは3個のアミノ酸変化を有する。アミノ酸変化は保存的アミノ酸変化でもよい)、またはその両方である。
【0052】
本明細書に記載の例示的な抗NCR3抗体は以下を含む。
(1)RASQSVSSAV(SEQ ID NO:2)を含むLCDR1と、SASSLYS(SEQ ID NO:3)を含むLCDR2と、LCDR3 SSYWPF(SEQ ID NO:4)とを含む、軽鎖可変領域、およびISSSSI(SEQ ID NO:6)を含むHCDR1と、YISSSSGYTS(SEQ ID NO:7)を含むHCDR2と、HCDR3 YSYFYGGYFYWTSWGAF(SEQ ID NO:8)とを含む、重鎖可変領域、を有する抗NCR3抗体。一部の態様において、軽鎖可変領域はSEQ ID NO:1を含むか(任意で、1個、2個、もしくは3個のアミノ酸変化を有する。アミノ酸変化は保存的アミノ酸変化でもよい)、重鎖可変領域はSEQ ID NO:5を含むか(任意で、1個、2個、もしくは3個のアミノ酸変化を有する。アミノ酸変化は保存的アミノ酸変化でもよい)、またはその両方である。
(2)RASQSVSSAV(SEQ ID NO:10)を含むLCDR1と、SASSLYS(SEQ ID NO:11)を含むLCDR2と、LCDR3 SSSSLI(SEQ ID NO:12)とを含む、軽鎖可変領域、およびVSSSSI(SEQ ID NO:14)を含むHCDR1と、SISSSSGSTS(SEQ ID NO:15)を含むHCDR2と、RX(G/A/S)SX(Y/F)X(S/T)YYDSFYYAG(M/L)を含むHCDR3とを含む、重鎖可変領域、を有する抗NCR3抗体。式中、Xは任意のアミノ酸である。一部の態様において、HCDR3は、
のうちの1つを含む。一部の態様において、軽鎖可変領域はSEQ ID NO:9を含むか(任意で、1個、2個、もしくは3個のアミノ酸変化を有する。アミノ酸変化は保存的アミノ酸変化でもよい)、重鎖可変領域はSEQ ID NO:13を含むか(任意で、1個、2個、もしくは3個のアミノ酸変化を有する。アミノ酸変化は保存的アミノ酸変化でもよい)、またはその両方である。
(3)RASQSVSSAV(SEQ ID NO:18)を含むLCDR1と、SASSLYS(SEQ ID NO:19)を含むLCDR2と、LCDR3 QWYPLI(SEQ ID NO:20)とを含む、軽鎖可変領域、およびVYSYSI(SEQ ID NO:22)を含むHCDR1と、SIYSYYGSTS(SEQ ID NO:23)を含むHCDR2と、WYQYYYIGTAAM(SEQ ID NO:24)を含むHCDR3とを含む、重鎖可変領域、を有する抗NCR3抗体。一部の態様において、軽鎖可変領域はSEQ ID NO:17を含むか(任意で、1個、2個、もしくは3個のアミノ酸変化を有する。アミノ酸変化は保存的アミノ酸変化でもよい)、重鎖可変領域はSEQ ID NO:21を含むか(任意で、1個、2個、もしくは3個のアミノ酸変化を有する。アミノ酸変化は保存的アミノ酸変化でもよい)、またはその両方である。
【0053】
本明細書に記載の例示的な抗NCR1抗体は、RASQSVSSAV(SEQ ID NO:34)を含むLCDR1と、SASSLYS(SEQ ID NO:35)を含むLCDR2と、LCDR3 SSAELI(SEQ ID NO:36)とを含む、軽鎖可変領域、およびFSSYSI(SEQ ID NO:38)を含むHCDR1と、SIYSSSGSTS(SEQ ID NO:39)を含むHCDR2と、WSYDQYYDQHGYYFYYWGF(SEQ ID NO:40)を含むHCDR3とを含む、重鎖可変領域、を有する抗NCR1抗体を含む。一部の態様において、軽鎖可変領域はSEQ ID NO:33を含むか(任意で、1個、2個、もしくは3個のアミノ酸変化を有する。アミノ酸変化は保存的アミノ酸変化でもよい)、重鎖可変領域はSEQ ID NO:37を含むか(任意で、1個、2個、もしくは3個のアミノ酸変化を有する。アミノ酸変化は保存的アミノ酸変化でもよい)、またはその両方である。
【0054】
本明細書に記載の抗体のNK活性化活性を考慮すると、本明細書に記載の抗体を標的細胞に連結またはタグ化すると、NK細胞は、その標的細胞を攻撃し、死滅させる。本明細書に記載の抗体は望ましい任意のやり方で標的細胞に連結またはタグ化することができる。一部の態様において、NKタンパク質(NCR1、NCR3、またはCD-16)を標的とする重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域が、結果として生じる融合タンパク質を標的細胞にターゲティングする別のアミノ酸配列と融合される。これらの態様において、融合タンパク質は標的細胞表面と接触される。一例として、下記でさらに完全に説明されるように、NK細胞結合ドメイン(例えば、NCR1、NCR3、またはCD-16結合ドメイン)ならびに標的細胞を標的とする結合ドメインを含む二重特異性抗体を使用することができる。例示的な結合ドメインは、例えば、少なくとも、本明細書に記載のCDRを含む重鎖可変配列および軽鎖可変配列でもよい。例示的な抗体および抗体断片フォーマットは、Brinkmann et al. (MABS, 2017, Vol. 9, No. 2, 182-212)に詳述されている。従って、一部の態様では、NCR1、NCR3、またはCD-16結合ドメイン、例えば、本明細書に記載の抗体のVH領域および/またはVL領域が、異なる抗原(例えば、上記の標的細胞上の特定のタンパク質または他の抗原)にも結合する二価抗体または多価抗体に組み込まれてもよい。例えば、一部の態様では、NCR1、NCR3、またはCD-16に結合し、標的細胞上のエピトープにも結合し、そのため標的細胞を抗体に近接させ、NK細胞にも結合しかつそれを刺激する多価(例えば、二価)抗体が提供される。二重特異性抗体は、NK細胞結合ドメインを異なる標的細胞にターゲティングすることができる手法の1つであるが、標的細胞に対する任意のタイプの親和性作用物質を、本明細書に記載のNK細胞結合ドメインに連結または融合することができる。
【0055】
一部の態様において、実施例において明示されるように、本明細書に記載のNK細胞結合ドメインを標的細胞において発現させ、その結果として、NK結合ドメインを発現する細胞を死滅させることができる。一部の態様において、NK細胞結合ドメインを発現する細胞は、NK細胞結合ドメインを、特定の条件下でのみ、例えば、誘導性プロモーターの制御下で発現することができる。従って、NK細胞結合ドメインが誘導された時だけ死滅するように、このような細胞を条件付きで標的とすることができる。動物に導入され得る、どんな細胞も、このように設計することができる。例えば、一部の態様において、NK細胞結合ドメイン発現の誘導による細胞療法の望ましい効果の後に細胞ベース療法を終わらせることができる。
【0056】
本明細書に記載の任意の態様において、NK細胞が標的細胞を死滅させるように、NK細胞結合ドメインは標的細胞にターゲティングされる。どんな望ましくない細胞も標的細胞になり得る。例示的な標的細胞はがん細胞を含んでもよいが、これに限定されない。例示的ながん細胞は骨髄腫、リンパ腫、および白血病を含んでもよいが、これに限定されない。一部の態様において、NK細胞結合ドメインは、標的細胞の表面に発現している特定のタンパク質または他の抗原にターゲティングされる。一部の態様において、標的細胞上に発現している特定のタンパク質または他の抗原は、動物(例えば、処置されているヒト)にある他の細胞と比較して標的細胞上に特異的に発現しているか、または主として標的細胞上に発現している。これにより、潜在的な望ましくないオフターゲット細胞死滅が低減する。がん細胞上において標的とされることができる例示的なタンパク質は、CD19、CD20、CD22、CD33、CD30、CDCP1、EpCAM、GD2、HER2、BCMA、EGFR、PDGFRa、SLAMF7を含んでもよいが、これに限定されない。2017年の時点で治療的使用のためにEMAおよびFDAによって承認されているモノクローナル抗体およびその標的について説明している、actip.org/products/monoclonal-antibodies-approved-by-the-ema-and-fda-for-therapeutic-use/にあるワールドワイドウェブも参照されたい。これらの標的のうち、前記細胞の表面にある標的を本明細書に記載の方法および組成物において使用することができる。他のがん抗原が公知であり、これらも使用することができる。例示的なさらなるがん抗原は、例えば、PCT/US2017/045632に記載されている。CD20に結合し、本明細書に記載の二重特異性抗体を作製するのに、その可変領域を使用することができる例示的な抗体は、例えば、特許EP0605442;EP0669836;US7381560;US8529902;およびUS8206711において公知である。HER2に結合し、本明細書に記載の二重特異性抗体を作製するのに、その可変領域を使用することができる例示的な抗体は、例えば、特許EP0590058、US8937159;US9862769;US5677171において公知である。BCMAに結合し、本明細書に記載の二重特異性抗体を作製するのに、その可変領域を使用することができる例示的な抗体、例えば、GSK2857916(ベランタマブマフォドチン)は公知である; Tai Y.T., et al. Blood 2014;123:3128-3138。
【0057】
一部の態様において、本明細書に記載のNCR1、NCR3、またはCD-16結合ドメインを含む抗体はFc領域をさらに含む。本明細書で使用する「Fc領域」という用語は、抗体の定常ドメインのCH3、CH2、およびヒンジ領域の少なくとも一部を含むポリペプチドを指す。一部の態様において、Fc領域は、一部の抗体クラスに存在するCH4ドメインを含んでもよい。一部の態様において、Fc領域は、抗体の定常ドメインのヒンジ領域全体を含んでもよい。一態様において、抗体はFc領域およびCH1領域を含む。一態様において、前記抗体は、Fc領域、CH1領域、およびCκ/λ領域を含む。一態様において、抗体は、定常領域、例えば、重鎖定常領域を含む。一部の態様において、このような定常領域は野生型定常領域と比較して改変されている。すなわち、定常領域は、CH1、CH2、もしくはCH3ドメインのうちの1つもしくは複数に対する、および/またはCLドメインに対する変化または改変を含んでもよい。改変の例には、1つまたは複数のドメインにおける1つまたは複数のアミノ酸の付加、欠失、または置換が含まれる。例示的な変異、例えば、エフェクター機能および/または血清半減期を調整する変異が公知である。
【0058】
一部の態様において、NCR1、NCR3、またはCD-16結合ドメインは、抗体断片、例えば、Fab、F(ab’)2、Fv、scFv抗体、VH、またはVHHを含む。一部の態様において、NCR1、NCR3、またはCD-16結合ドメインは二重特異性抗体の一部としてscFV抗体の形で提供される。従って、例えば、一部の局面では、NCR1、NCR3、またはCD-16結合ドメインは、がん細胞などの非NK細胞上の異なる抗原を標的とする第2の結合ドメインを有する二重特異性抗体に組み込むことができる。
【0059】
一部の態様において、本明細書に記載の抗体(例えば、NCR1、NCR3、またはCD-16結合ドメインを含む)はキメラ抗体、親和性成熟抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体でもよい。
【0060】
関心対象の抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子を細胞からクローニングすることができる。例えば、モノクローナル抗体をコードする遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、これを用いて組換えモノクローナル抗体を産生することができる。モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子ライブラリーはまたハイブリドーマまたはプラズマ細胞から作ることもできる。任意で、ファージまたは酵母ディスプレイ技術を用いて、標的(例えば、NK細胞標的タンパク質)および/または二重特異性抗体の他の選択された抗原に特異的に結合する抗体およびFab断片を同定することができる。単鎖抗体または組換え抗体を産生するための技法はまた抗体産生にも合わせることができる。
【0061】
例えば、本開示は、本明細書に記載の重鎖可変領域、軽鎖可変領域、またはその両方をコードするポリヌクレオチドを提供する。例えば、前記ポリヌクレオチドは、ヒト細胞傷害誘発受容体3(NCR3)に特異的に結合する抗体をコードしてもよく、前記抗体は、SEQ ID NO:2を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1と、SEQ ID NO:3を含むLCDR2と、SEQ ID NO:4を含むLCDR3とを含む、軽鎖可変領域;および/またはSEQ ID NO:6を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1と、SEQ ID NO:7を含むHCDR2と、SEQ ID NO:8を含むHCDR3とを含む、重鎖可変領域を含む。一部の態様において、前記ポリヌクレオチドによってコードされる軽鎖可変領域はSEQ ID NO:1を含み、かつ/または前記ポリヌクレオチドによってコードされる軽鎖可変領域はSEQ ID NO:5を含む。
【0062】
一部の態様において、前記ポリヌクレオチドは、ヒト細胞傷害誘発受容体3(NCR3)に特異的に結合する抗体をコードしてもよく、前記抗体は、SEQ ID NO:10を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1と、SEQ ID NO:11を含むLCDR2と、SEQ ID NO:12を含むLCDR3とを含む、軽鎖可変領域;および/またはSEQ ID NO:14を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1と、SEQ ID NO:15を含むHCDR2と、SEQ ID NO:41を含むHCDR3とを含む、重鎖可変領域を含む。一部の態様において、HCDR3は、{#78および新たな変種}SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:42、SEQ ID NO:43、SEQ ID NO:44、SEQ ID NO:45、SEQ ID NO:46、SEQ ID NO:47、SEQ ID NO:48、SEQ ID NO:49、SEQ ID NO:50、SEQ ID NO:51、SEQ ID NO:52、SEQ ID NO:53、SEQ ID NO:54、SEQ ID NO:55、SEQ ID NO:56、またはSEQ ID NO:57のうちの1つを含む。一部の態様において、前記ポリヌクレオチドによってコードされる軽鎖可変領域はSEQ ID NO:9を含み;かつ/または前記ポリヌクレオチドによってコードされる軽鎖可変領域はSEQ ID NO:13を含む。
【0063】
一部の態様において、前記ポリヌクレオチドは、ヒト細胞傷害誘発受容体3(NCR3)に特異的に結合する抗体をコードしてもよく、前記抗体は、SEQ ID NO:18を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1と、SEQ ID NO:19を含むLCDR2と、SEQ ID NO:20を含むLCDR3と含む軽鎖可変領域;および/またはSEQ ID NO:22を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1と、SEQ ID NO:23を含むHCDR2と、SEQ ID NO:24を含むHCDR3とを含む重鎖可変領域を含む。一部の態様において、前記ポリヌクレオチドによってコードされる軽鎖可変領域はSEQ ID NO:17を含み;かつ/または前記ポリヌクレオチドによってコードされる軽鎖可変領域はSEQ ID NO:21を含む。
【0064】
一部の態様において、前記ポリヌクレオチドは、ヒト細胞傷害誘発受容体1(NCR1)に特異的に結合する抗体をコードしてもよく、前記抗体は、少なくとも、SEQ ID NO:26を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1と、SEQ ID NO:27を含むLCDR2と、SEQ ID NO:28を含むLCDR3とを含む、軽鎖可変領域、およびSEQ ID NO:30を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1と、SEQ ID NO:31を含むHCDR2と、SEQ ID NO:32を含むHCDR3とを含む、重鎖可変領域を含む。一部の態様において、軽鎖可変領域はSEQ ID NO:25を含み;かつ軽鎖可変領域はSEQ ID NO:29を含む。
【0065】
一部の態様において、前記ポリヌクレオチドは、ヒトCD-16に特異的に結合する抗体をコードしてもよく、前記抗体は、少なくとも、SEQ ID NO:34を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1と、SEQ ID NO:35を含むLCDR2と、SEQ ID NO:36を含むLCDR3とを含む、軽鎖可変領域、およびSEQ ID NO:38を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1と、SEQ ID NO:39を含むHCDR2と、SEQ ID NO:40を含むHCDR3とを含む、重鎖可変領域を含む。一部の態様において、軽鎖可変領域はSEQ ID NO:25を含み;かつ軽鎖可変領域はSEQ ID NO:29を含む。
【0066】
上記の抗体配列をコードする例示的な配列をSEQ ID NO:58-67に示したが、遺伝暗号の縮重を考えて、他のポリヌクレオチド配列も同じアミノ酸配列をコードすることがあり、「ポリヌクレオチド」の使用に含まれると認識されている。
【0067】
抗体は、原核細胞発現系および真核細胞発現系を含む任意の数の発現系を用いて産生することができる。一部の態様において、発現系は、ハイブリドーマなどの哺乳動物細胞発現、またはCHO細胞発現系である。多くのこのような系が商業的供給業者から広く入手することができる。抗体がVH領域およびVL領域を両方とも含む態様では、VH領域およびVL領域は1つのベクターを用いて、例えば、ジシストロニック発現ユニットにおいて発現されてもよく、異なるプロモーターの制御下で発現されてもよい。他の態様において、VH領域およびVL領域は別々のベクターを用いて発現されてもよい。本明細書に記載のVH領域およびVL領域は任意でN末端にメチオニンを含んでもよい。適切な動物を選択および免疫化すること、適切な細胞を単離および融合してハイブリドーマを作製すること、望ましい抗体の分泌についてハイブリドーマをスクリーニングすること、ならびに抗体を特徴決定することを含む、ハイブリドーマ細胞株を作製およびスクリーニングする方法は当業者に公知である。
【0068】
一部の態様において、前記抗体はキメラ抗体である。キメラ抗体を作る方法は、当技術分野において公知である。例えば、マウスなどのある種に由来する抗原結合領域(重鎖可変領域および軽鎖可変領域)が、ヒトなどの別の種のエフェクター領域(定常ドメイン)と融合されているキメラ抗体を作ることができる。別の例として、抗体のエフェクター領域が、異なる免疫グロブリンクラスまたはサブクラスのエフェクター領域によって置換されている「クラススイッチされた」キメラ抗体を作ることができる。
【0069】
一部の態様において、前記抗体はヒト化抗体である。一般的に、非ヒト抗体は、その免疫原性を低減するためにヒト化される。ヒト化抗体は、典型的には、非ヒトの(例えば、マウス可変領域配列に由来する)1つまたは複数の可変領域(例えば、CDR)またはその一部と、場合によっては、非ヒトのいくつかのフレームワーク領域またはその一部を含み、ヒト抗体配列に由来する1つまたは複数の定常領域をさらに含む。非ヒト抗体をヒト化するための方法は当技術分野において公知である。トランスジェニックマウスまたは他の生物、例えば、他の哺乳動物を用いてヒト化抗体またはヒト抗体を発現することができる。抗体をヒト化する他の方法には、例えば、可変領域のリサーフェシング(resurfacing)、CDRグラフティング、特異性決定残基(SDR)のグラフティング、ガイド付き選択(guided selection)、およびフレームワークシャッフリングが含まれる。
【0070】
本明細書に記載の抗体を含む薬学的組成物は1種類または複数種の薬学的に許容される担体を含んでもよい。薬学的組成物中の許容される担体および賦形剤は、使用される投与量および濃度ではレシピエントに対して無毒である。許容される担体および賦形剤は、緩衝液、抗酸化物質、防腐剤、ポリマー、アミノ酸、および炭水化物を含んでもよい。薬学的組成物は注射製剤の形で非経口投与されてもよい。注射(すなわち、静脈内注射)用の薬学的組成物は、ビヒクルとして滅菌溶液または任意の薬学的に許容される液体を用いて処方することができる。薬学的に許容されるビヒクルには、滅菌水、生理食塩水、および細胞培養培地(例えば、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、α-変法イーグル培地(α-MEM)、F-12培地)が含まれるが、これに限定されない。処方方法は当技術分野において公知である。例えば、Banga (ed.) Therapeutic Peptides and Proteins: Formulation, Processing and Delivery Systems (2nd ed.) Taylor & Francis Group, CRC Press (2006)を参照されたい。
【0071】
前記薬学的組成物は必要に応じて単位剤形で形成されてもよい。薬学的調製物中に含まれる活性成分、例えば、本明細書に記載の抗体の量は、指定された範囲内にある適切な用量(例えば、体重1kgにつき0.01~500mgの範囲内にある用量)が提供されるような量である。
【0072】
本明細書に記載の薬学的組成物は、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、非経口投与、動脈内投与、くも膜下腔内投与、または腹腔内投与のために処方されてもよい。薬学的組成物はまた、経口投与、鼻腔投与、噴霧投与、エアロゾル投与、直腸投与、もしくは腟投与のために処方されてもよく、経口投与、鼻腔投与、噴霧投与、エアロゾル投与、直腸投与、もしくは腟投与によって投与されてもよい。注射製剤の場合、様々な有効な薬学的担体が当技術分野において公知である。一部の態様において、薬学的組成物は局所投与されてもよく、全身(例えば、局所)投与されてもよい。特定の態様において、薬学的組成物は皮膚またはがん組織などの患部に局所投与されてもよい。
【0073】
前記薬学的組成物の投与量は、投与経路、処置しようとする疾患、および身体的特徴、例えば、対象の年齢、体重、全身の健康状態に左右される。一部の態様において、単一用量に含まれる活性成分(例えば、本明細書に記載の抗体)の量は、重大な毒性を誘導することなく疾患を有効に予防する、遅延する、または処置する量で投与される。投与量は、疾患の程度および対象の様々なパラメータなどの従来の要因に従って医師によって合わせられてもよい。
【0074】
前記薬学的組成物は、投薬製剤と適合するやり方で、および症状を改善または矯正するのに治療的に有効になるような量で投与されてもよい。薬学的組成物は、様々な剤形、例えば、皮下剤形、静脈内剤形、および経口剤形(例えば、摂取可能な溶液、薬物放出カプセル)で投与されてもよい。活性成分(例えば、抗NK細胞タンパク質標的、例えば、抗NCR1、NCR3、またはCD-16抗体)を含有する薬学的組成物は、その必要のある対象に、例えば、毎日、毎週、毎月、半年ごとに、毎年、または医学的な必要があれば、1回または複数回(例えば、1~10回またはそれ以上)投与されてもよい。投与量は1つまたは複数の投与計画で提供されてもよい。投与間のタイミングは、医学的状態が改善するにつれて減少してもよく、患者の健康状態が低下するにつれて増加してもよい。
【0075】
本明細書に記載の抗体(その結合断片、標識された抗体、免疫結合体、薬学的組成物などを含む)は、抗体を標的細胞にターゲティングし、それによって、NK細胞を誘引および活性化することによってNK細胞による標的細胞の死滅を誘導するのに使用することができる。一部の態様において、前記抗体は、本明細書に記載のようにがんを処置する、改善する、または予防するのに使用することができる。従って、本明細書に記載の抗体および薬学的組成物は、がんの1つまたはその少なくとも1つの症状を改善または処置するのに適切な投与量で、がんを有するヒトまたはがんを有すると疑われるヒトに投与することができる。
【0076】
NK細胞を活性化する作用物質を同定するための方法も提供される。例えば、(i)細胞上に、公知の、または潜在的なNK活性化受容体に結合する結合因子(例えば、抗体)を発現させ、(ii)前記細胞をNK細胞に曝露し、および(iii)死滅された細胞上の個々の結合因子(例えば、抗体)の配列を決定し、それによって、NK受容体活性化抗体を同定することによって、NK細胞を活性化する抗体または他の結合因子(例えば、アプタマー、ペプチドなど)を同定することができる。一部の態様において、使用される結合因子は、NK細胞上の表面タンパク質、例えば、NCR1、NCR3、またはCD-16に結合する能力について既に選択されているが、このリストは限定するものだとみなしてはならない。次いで、結合因子を細胞表面に発現させることができる。複数種類の結合因子は「ライブラリー」、すなわち、複数の異なる結合因子だとみなすことができる。一部の態様において、5種類超、10種類超、20種類超、またはそれ以上の試験結合因子がある。一部の態様において、1種類の結合因子を活性についてアッセイすることができる。NK細胞活性化物質が、使用された細胞の表面に発現されなければ、使用された細胞はNK細胞によって攻撃されない。例えば、前記細胞は、哺乳動物細胞、例えば、ヒト細胞、例えば、Jurkat細胞でもよい。次いで、NK細胞によって、NK細胞活性化結合因子を発現する細胞が死滅されるが、他の細胞が死滅されないような条件下で、かつ十分な時間にわたって、前記細胞をNK細胞に曝露することができる。結果として生じた細胞集団を対照集団、例えば、NK細胞と接触されていない細胞と比較することによって、どの細胞が死滅したか、従って、どの結合因子がNK細胞を活性化して前記細胞を死滅することができたかを同定することができる。一部の態様において、活性化結合因子の同一性は、NK細胞で処理した細胞と比較して、対照細胞における前記細胞における結合因子のヌクレオチドシークエンシングを行い、結合因子の配列読み取りデータを定量することによって決定することができる。任意の数の「次世代シークエンシング(NGS)」プラットフォームを用いて、例えば、異なる細胞において発現している特定の結合因子を表す配列読み取りデータの量の測定を可能にするディープシークエンシングを行うことができる。NK細胞で処理した細胞において残存する細胞の割合を哺乳動物細胞の対照集団と比較することによって、NK細胞死滅に関連する結合因子を同定することができる。処理された細胞において発生率が低下した結合因子によって、その結合因子がNK細胞を活性化することができたことが示される。
【0077】
以下の実施例は、クレームされた発明のある特定の局面を例示する。本明細書に記載の実施例および態様は例示目的にすぎず、本明細書に記載の実施例および態様を考慮して様々な修正または変更が当業者に示唆され、本願の精神および範囲ならびに添付の特許請求の範囲の中に含まれることが理解される。
【実施例】
【0078】
本発明者らは、NK細胞によって媒介される細胞傷害性を誘導することができる抗体のスクリーニング方法を開発した。NK細胞には、標的細胞を同定し、これを死滅させる生まれつきの能力がある。NK細胞表面タンパク質に結合する抗体を標的細胞株の細胞表面に固定し、NK細胞傷害性を刺激する能力について探索した。NK細胞によって媒介される細胞傷害性を誘導する抗体をディスプレイする標的細胞は抗体プールから枯渇される。これらの抗体は同じスキャフォールドに基づいているので、生存している標的細胞上の抗体は相補性決定領域(CDR)H3の次世代シークエンシング(NGS)によって同定することができる。この方法を用いると、免疫細胞活性化を刺激することができ、かつ新たな免疫療法を設計するのに使用され得る抗体を同定することが容易になる。
【0079】
本発明者らは、NK細胞に結合しかつそれを活性化する抗体を特徴決定するために哺乳動物ディスプレイスクリーニングをNGS読み取りと結び付ける。トラスツズマブスキャフォールドに基づくFab-ファージライブラリーから6種類のNK細胞受容体に対して抗体を選択し、標的細胞株上にディスプレイして、哺乳動物ディスプレイライブラリーを作製した。NK細胞には、不健康な細胞を認識し、死滅させる生まれつきの能力がある。本発明者らは、潜在的な標的細胞上にディスプレイした、NK細胞表面タンパク質に対する抗体が、NK細胞と標的細胞との間の相互作用を推進できると判断した。抗体がNK細胞を活性化することもできたら、この抗体をディスプレイする細胞は死滅および非選択されると考えられる。本発明者らの抗体は全て同じスキャフォールドで構築され、そのため、同じプライマーセットを用いて、それぞれのクローンのCDR H3を増幅および配列決定することができる。従って、本発明者らは、本発明者らが、プールされるやり方で、これらの抗体をスクリーニングし、CDR H3のNGSによって特定の抗体クローンの枯渇を定量できるはずだと合理的に解釈した。実際に、本発明者らの機能スクリーニングにおいて枯渇された抗体結合物質はNK細胞の細胞傷害性とIFN-γ分泌を刺激することができた。本発明者らは、NK細胞によって媒介される細胞傷害性の最も強力な刺激剤が、CD16、NCR1、およびNCR3のような、以前に同定された活性化NK受容体に対する高親和性結合物質であり、他の試験されたNK細胞表面タンパク質への結合がNK細胞活性を刺激できないことを発見した。これらの活性化抗体は、CD20+B細胞リンパ腫細胞およびHER2+乳がん細胞にNK細胞をリダイレクトするための二重特異性抗体の作製に適用された。これらの結果から、この方法は、免疫細胞活性化を刺激し、新たな免疫療法の設計を促進することができる新規の、かつまれな抗体の発見を容易にできることが示唆される。
【0080】
結果
NK細胞に対する抗体の開発
NK細胞ベースの免疫療法を生み出すためにNK細胞を最も良く標的とする手法を決定する目的で、本発明者らは、NK細胞活性化において十分に理解された役割をもつNK細胞抗原に対する抗体を作製しようと努力した。本発明者らは、NK細胞によって媒介される細胞傷害性を開始することが知られている、十分に特徴決定された3種類の活性化受容体であるCD16A[Mandelboim, O. et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 96(10), 5640-5644 (1999); Trinchieri, G. Valiante, N., Nat Immun. 12(4-5), 218-34 (1993)]、NCR1 [Sivori, S. et al., J Exp Med. 186(7),1129-36 (1997); Sivori, S. et al., Eur J Immunol. 29(5), 1656-66 (199]、およびNCR3[Pende, D. et al., J Exp Med. 190(10), 1505-16 (1991)]に対する抗体を開発することにした。本発明者らはまた、共刺激受容体であるCD244[Sivori, S. et al., Eur J Immunol. 30(3), 787-93 (2000)]およびTNFRSF9(4-1BB)[Srivastava, R. M. et al., Clin Cancer Res. 23(3), 707-716 (2017)]に対する抗体を作製することにした。なぜなら、共刺激受容体は、NK細胞を刺激するように他の活性化受容体および活性化シグナルと相乗作用を示すことができるからである[Bryceson, Y. T. et al., Blood. 107(1), 159-166 (2006); Bryceson, Y. T., Ljunggren, H. G. & Long, E. O., Blood. 114(13), 2657-2666 (2009)]。最後に、本発明者らは、NK刺激時にアップレギュレートすることができるが、NK細胞によって媒介される細胞傷害性を調節することが知られていないリガンドであるTNFSF4(OX40L)[Zingoni, A., J Immunol. 173(6), 3716-3724 (2004)]に対する抗体を開発することにした。
【0081】
これらの抗原に対する抗体を作製するために、本発明者らは、これらのタンパク質の細胞外ドメイン(ECD)を、TEV切断可能なFc融合として発現させ、以前に説明されたように[Hornsby, M. et al., Mol Cell Proteomics. 14(10), 2833-2847 (2015)]、高親和性抗体結合物質を濃縮するためにFabファージディスプレイ選択を行った(
図S1)。選択が完了したら毎回、Fab-ファージELISAを行って、抗原標的に対する、これらの結合物質の相対的な親和性および選択性を決定した(
図S2)。それぞれの受容体に対して複数の抗体を作製し、6種類のNK細胞受容体に対して合計69種類の抗体を単離した(表S1)。
【0082】
機能スクリーニングは活性化抗体を同定する
有効なNK細胞エンゲージャーを作製するのに必要な特性を評価するために、本発明者らは、選択された抗体クローンがNK細胞傷害性を誘導する能力を評価するための、プールされた機能スクリーニングを開発した。作製された69種類の抗体を抗GFP対照と一緒にプールし、単鎖Fab(scFab)に変換した。小さな哺乳動物ディスプレイライブラリーを作製するために、これらをJurkat細胞株上にディスプレイした(
図1A)。scFabは、ヒト特異的Fabに対する染色によって確認されたように細胞表面に活発に発現していた(
図S3)。このscFab哺乳動物ディスプレイライブラリーを、休止中の精製末梢血NK細胞またはIL-2によって刺激された精製末梢血NK細胞の存在下または非存在下で4時間または24時間インキュベートした。本発明者らは、NK細胞傷害性を刺激することができる抗体クローンをディスプレイするJurkat細胞がNK細胞の存在下ではライブラリーから枯渇されると仮説を立てた。この枯渇は、抗体の最もユニークなCDRであるCDR H3のNGSによって定量することができた(
図1B)。
【0083】
NK細胞は非常に不均一であり、個体間で大きく異なる場合があるので[Horowitz, A. et al., Sci. Transl. Med. 5(208), 208ra145 (2013); Strauss-Albee, D. M. et al., Sci. Transl. Med. 7(297), 297ra115 (2015)]、本発明者らは、2つの異なる血液ドナーから単離したNK細胞を用いて別々の実験を行った。バイオロジカルレプリケートの基準化されたNGSシグナルのペアワイズ比較は良好な再現性を特に24時間の時点で示した(
図S4)。機能スクリーニングの結果は特にドナー2による4時間の時点の間に完全に再現できなかったが、バイオロジカルレプリケートの基準化されたNGSシグナルのペアワイズ比較は、一般的に、良好な再現性を、特に、24時間の時点で示した(
図S4)。驚くべきことに、全ての抗体がNK細胞表面タンパク質を標的とするように作製されたが、NK細胞の存在下で4種類の抗体、CD16.03、NCR1.11、NCR3.18、およびNCR3.19しか枯渇されなかった(
図2)。興味深いことに、公知の活性化受容体を標的とする抗体だけがNK細胞によって媒介される細胞傷害性を誘導するように考えられた。多くの腫瘍が、NK細胞活性を刺激することができるストレス誘発性リガンドを過剰発現することが知られてきた[Raulet, D. H. & Guerra, N., Nat. Rev. Immunol 9(8), 568-580 (2009); Marcus, A. et al., Adv. Immunol. 122, 91-128 (2014)]。これらの腫瘍の多くと同様に、Jurkat細胞はNK細胞リガンドを発現することが示されている[Bae, D. S., Hwang, Y. K. & Lee, J. K., Cell. Immunol. 276(1-2), 122-127 (2012); Giuliani, E., Desimio, M. G. & Doria, M., Sci. Rep. 9(1), 4373 (2009)]。これらのリガンドは、潜在的に、NK細胞によって媒介される細胞傷害性を促進するように共刺激受容体シグナル伝達と相乗作用を示すことができる可能性がある。しかしながら、NK細胞上の共刺激受容体または他の細胞表面タンパク質を標的とする抗体は枯渇されなかった。このことは、腫瘍がNK細胞リガンドを過剰発現しても、共刺激受容体または他のNK細胞表面抗原を介したNK細胞の動員では腫瘍細胞溶解を推進するのに十分でない可能性があることを意味している。有効なNK細胞ベース治療剤を開発するには、NK細胞活性化受容体の刺激が必要とされる可能性がある。
【0084】
スクリーニングにおいて同定された抗体ヒットの検証
機能スクリーニングによってなされた観察を検証するために、本発明者らは、活性化であると同定された4種類の抗体クローンと非機能であると同定された5種類の抗体クローンである9種類の抗体クローンの活性を特徴決定することにした。本発明者らは、これらの抗体のIgGバージョンを作製し、抗体リダイレクト溶解アッセイ(antibody-redirected lysis assay)においてNK細胞の細胞傷害性を刺激する能力を試験した(
図3A)。このアッセイでは、FcγR
+THP-1細胞はIgGのFc部分に結合し、FabアームはエフェクターNK細胞に結合すると考えれる。FabアームがNK細胞によって媒介される細胞傷害性を刺激することができたら、THP-1標的細胞は溶解されると考えられる。満足のゆくことに、活性化であると同定された4種類全ての抗体、CD16.03、NCR1.11、NCR3.18、およびNCR3.19はNK細胞傷害性を誘導することができた。さらに、非機能であると同定された5種類の抗体のうち4種類、CD16.08、NCR1.01、NCR1.05、およびTNFRSF9.01はNK細胞傷害性を刺激するように考えられなかった。しかしながら、非機能であると同定された抗体のうち1種類、NCR3.12はNK細胞傷害性を刺激するように考えられた。
【0085】
本発明者らはまた、本発明者らの抗体によってサイトカイン分泌のような他のNK細胞エフェクター機能も刺激できるかどうか判定しようと努力した。本発明者らの抗体がサイトカイン分泌も誘導できるかどうか判定するために、本発明者らは、FcγR
+P815細胞およびIgGとコインキュベートしたNK細胞によって産生されたIFN-γの量を測定した。活性化抗体、CD16.03、NCR1.11、NCR3.18、およびNCR3.19、ならびに推定非機能的抗体、NCR3.12だけが、分泌されるIFN-γの量を有意に増加することができた(
図3B)。NCR3.12はNK細胞活性を刺激することができたが、他の活性化抗体ほど細胞傷害性もIFN-γ分泌も刺激しなかった。
【0086】
活性化抗体はその受容体標的に対して高い親和性を有する
前記抗体の多くが同じ細胞表面受容体を標的とするが、全ての抗体がNK細胞活性を刺激できるとは限らなかった。活性化抗体と非機能的抗体との相違をもっと良く理解するために、本発明者らは前記抗体の特異性と親和性を決定した。活性化抗体と非機能的抗体の両方の、これらの受容体標的に対する特異性を調べるために、本発明者らは、それぞれのタンパク質標的-CD16、NCR1、NCR3、CD244、TNFRSF9、およびTNFSF4についてテトラサイクリン誘導性細胞株を開発した。これらのタンパク質のECDを一般的な膜貫通ドメインと融合させ、テトラサイクリン添加によって発現させた。活性化抗体クローンと非機能的抗体クローンは両方とも、それぞれの受容体標的を過剰発現している細胞にしか結合しなかった。オフターゲット結合は観察されなかった(
図S5)。このことから、活性化抗体と非機能的抗体は両方とも、これらが選択された受容体標的に対して高度に選択的であることが明示された。
【0087】
本発明者らはまた、抗体親和性が活性化抗体と非機能的抗体との相違において役割を果たすかどうかも判定した。NK細胞に対する選択された抗体の親和性を評価するために、本発明者らは、末梢血NK細胞上において9種類のFabクローンを力価測定した。活性化受容体、CD16、NCR1、およびNCR3に結合した抗体について、活性化抗体は非機能的抗体よりもNK細胞に堅固に結合することが見出された(
図S6)。さらに、NK細胞活性を刺激することができた推定非機能的抗体であるNCR3.12は活性化抗体、NCR3.18およびNCR3.19よりもかなり低い親和性を有した。このことから、活性化受容体に対する高親和性抗体の方がNK細胞傷害性を良好に誘導することができ、機能スクリーニングにおいて枯渇された抗体は高親和性NK細胞結合物質だったことが示唆される。重要なことに、共刺激受容体、TNFRSF9に結合し、高親和性で結合した非機能的抗体は、ほとんどNK細胞活性を示さなかったか、または全くNK細胞活性を示さなかった。これにより、本発明者らの機能スクリーニング結果がさらに裏付けられた。これにより、NK細胞傷害性を誘導するためには活性化受容体をターゲティングしなければならないことが示唆された。
【0088】
CD20+B細胞リンパ腫細胞とHER2+乳がん細胞に対する二重特異性抗体の作製
これらの抗体がNK治療剤をさらに開発するのに使用され得ることを証明するために、本発明者らは、CD20を標的とする二重特異性抗体を作製した。CD16.03、NCR1.11、NCR3.12、およびNCR3.19を単鎖可変断片(scFvs)に変換し、可動性リンカーによって抗CD20リツキシマブFabと結合させた。さらに、scFvドメイン順序またはFabアーム連結が結合または細胞傷害性の刺激に影響を及ぼすかどうか試験するために、本発明者らは、VH-VL(HL)でもVL-VH(LH)でも様々なドメイン順序を有する構築物を作製し、このscFvをCD20 Fabの重鎖または軽鎖に取り付けた(
図4A)。次いで、本発明者らは、NK細胞によって媒介される細胞傷害性をCD20+DaudiB細胞リンパ腫細胞にリダイレクトする能力を評価した。作製された二重特異性構築物の全てが、それぞれの抗原に用量依存的に結合することができ(
図S7A~D)、Daudi細胞の溶解を促進することができた(
図4B~E)。さらに、CD20xNCR3.12_Bは抗CD20ヒトIgG1 mAbと同じくらいの効果があり、CD20xCD16.03_D、CD20xNCR1.11_B、およびCD20xNCR1.11_Dは抗CD20ヒトIgG1 mAbよりもさらに効果が高いことが見出された(
図4F)。このことから、NCR1またはNCR3のような他の活性化受容体を標的とする高親和性二重特異性抗体を設計することは、ADCCを誘導する抗体よりも効果が高くないにしても、それと同じくらいの効果がある可能性があることが示唆される。
【0089】
全ての構築物がNK細胞傷害性を刺激することができたが、いくつかのわずかであるが、首尾一貫した相違が観察された。NCR1.11ベースの二重特異性抗体のほぼ全てが、いくらか同じ効力の抗体であるように考えられたが、ある特定のCD16.03-、NCR3.12-、およびNCR3.19ベースの二重特異性抗体は他のものより効果が高かった。CD16.03ベースの二重特異性抗体のうちLHドメイン順序はそのHL対応物より強力であった。さらに、CD16.03 scFvと抗CD20軽鎖との連結は重鎖との連結より効果的であった。比較すると、CD20xNCR3.12_B二重特異性抗体は他のNCR3.12ベースの二重特異性抗体のどれよりも良好にNK細胞傷害性を刺激した。さらに、NCR3.19ベースの二重特異性抗体のうちLHベースドメイン順序をもつ二重特異性抗体はHLベースドメイン順序をもつ二重特異性抗体より優れているように考えられた。全体的に見て、LH順序はHL順序よりも活発にNK細胞によって媒介される細胞傷害性を誘導した。しかしながら、scFvと腫瘍ターゲティングアームの軽鎖または重鎖との連結に起因する効力の差はNK細胞ターゲティングscFvに依存する可能性がある。
【0090】
これらの構築物の汎用性を証明するために、本発明者らはまた、NCR1.11からHER2を標的とする二重特異性抗体も作製した。NCR1.11抗体をscFvに変換し、抗HER2トラスツズマブFabと結合させた。再度、異なるドメイン順序と、Fabのいずれかの鎖への取り付けを有する構築物を作製し、HER2+SK-BR3乳がん細胞を溶解する能力を評価した。もう一度、構築物の全てが、NK細胞によって媒介される細胞傷害性をSK-BR3細胞にリダイレクトすることができた(
図S8)。このことから、異なる腫瘍細胞タイプを標的とするように、これらの抗体を再フォーマットできることが証明された。
【0091】
二重特異性抗体はリツキシマブ難治性B細胞リンパ腫細胞において細胞傷害性を促進する
作製された二重特異性抗体がNK細胞によって媒介される細胞傷害性を初代B細胞リンパ腫にリダイレクトできるかどうかを判定するために、本発明者らは、SC1リンパ腫株に対する最も強力な二重特異性抗体のうちの3つであるCD20xCD16.03_D、CD20xNCR1.11_B、およびCD20xNCR3.12_Bの効力を試験した。SC1細胞株は、皮膚において発生し、脳と脳脊髄液に転移した高難治性CD79変異びまん性大細胞型B細胞リンパ腫をもつ患者に由来した。この腫瘍は、リツキシマブ+シクロホスファミド、ビンクリスチン、アドリアマイシン、およびプレドニゾンの併用に対して、ならびに高用量メトトレキセート+リツキシマブに対して難治性であった。この腫瘍はエトポシド+シタラビンの併用に対して、および放射線照射に対しても難治性であった。試験した二重特異性抗体の全てが、NK細胞によって媒介される細胞傷害性をSC1リンパ腫細胞にリダイレクトすることができた(
図5)。作製された二重特異性抗体はCD20+Daudi細胞株に対して抗CD20ヒトIgG1 mAbよりも強力であったが、SC1リンパ腫細胞に対しては、二重特異性抗体よりも抗CD20ヒトIgG1 mAbの方がわずかに効果が高かった。DaudiとSC1リンパ腫細胞との間で観察された異なる細胞傷害性は、2つの異なるリンパ腫細胞株に対する二重特異性抗体と抗CD20ヒトIgG1 mAbの異なる結合親和性に起因した可能性がある。実際に、SC1リンパ腫細胞におけるCD20発現レベルはCD20+Daudi細胞株よりも少なく、かつ変わりやすい(
図S9A~B)。CD20結合アームが1つしかない二重特異性抗体とは対照的に、抗CD20ヒトIgG1 mAbの二価の性質は、このIgGがSC1リンパ腫細胞により良く結合するのを可能にする可能性がある。
【0092】
考察
NK細胞は、不健康な細胞を認識し、死滅させるユニークな能力を有し、がんの免疫監視において重要な役割を果たすことが知られている。従って、NK細胞は、新たながん免疫療法を開発するための魅力的な標的になった。この研究において、本発明者らは、NK細胞活性を動員および刺激することができる機能的抗体を同定するためのアプローチについて説明する。本発明者らの哺乳動物ディスプレイスクリーニングから同定されたヒットから、本発明者らは、NK細胞によって媒介される細胞傷害性をCD20+リンパ腫細胞ならびにHER2+乳がん細胞にリダイレクトするように二重特異性抗体を構築することによって様々なNK細胞ターゲティング治療剤を作製する潜在能力を証明した。
【0093】
NK細胞ターゲティング治療剤の進歩を容易にするために、本発明者らは、69種類の抗体の精選されたセットがNK細胞傷害性を刺激する能力を迅速に評価するために、機能の哺乳動物ディスプレイスクリーニングを開発した。NK細胞結合物質を同定するために、他の人たちはファージディスプレイ[Reusch, U. et al., MAbs. 6(3), 728-739 (2014)]とハイブリドーマ技術[Gauthier, L. et al., Cell. 177(7), 1701-1713 (2019)]を以前に使用したことがある。哺乳動物ディスプレイを使用して、本発明者らは、これらのユニークな機能効果を評価し、さらなる調査のためにクローンを迅速に同定することができる。実際に、他のグループも哺乳動物ディスプレイを使用して、ユニークな表現型を誘導する個々の抗体もしくはペプチドクローンを同定すること[Han, K. H. et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 115(3), E372-E381 (2018); Blanchard, J. W. et al., Nat Biotechnol. 35(10), 960-968 (2017)]、または特定の機能効果を刺激することに成功した[Stepanov, A. V. et al., Sci Adv. 4(11), eaau4580 (2018)]。このような研究に触発されて、本発明者らは、NK細胞のユニークな細胞傷害効果を評価するために機能スクリーニングを作成した。さらに、本発明者らの望ましい表現型がNGSの大規模なシークエンシング能力に適用することができたので、本発明者らは、本発明者らの全てのクローンの機能効果を同時に定量することができた。
【0094】
本発明者らは、公知の活性化受容体-CD16、NCR1、およびNCR3、共刺激受容体-TNFRSF9およびCD244、ならびに公知の調節上の役割がないNK細胞受容体-TNFSF4を含む様々なNK細胞表面タンパク質を標的にするために複数種類の抗体を開発した。驚くべきことに、NK細胞の導入によって哺乳動物ディスプレイライブラリーから69種類の抗体のうち4種類しか枯渇されなかった。これにより、本発明者らのスクリーニング方法の有効性が証明された。興味深いことに、これらの抗体の全てがCD16、NCR1、およびNCR3のような公知のNK活性化受容体を標的とした。しかしながら、機能スクリーニングにおける本発明者らの抗体の大多数がNCR1およびNCR3を標的とすることに留意しなければならない。このことは、潜在的に、本発明者らの機能スクリーニングを、NCR1またはNCR3を刺激する抗体に偏らせる可能性がある。
【0095】
さらに分析すると、本発明者らは、活性化受容体を標的とする高親和性抗体がNK細胞傷害性とIFN-γ分泌を刺激できることを確認した。このことは、高親和性CD16多型がADCCをより良く媒介することができ[Koene, H. R. et al., Blood. 90(3), 1109-1114 (1997); Wu, J. et al., J. Clin. Invest. 100(5), 1059-1070 (1997)]、リツキシマブ、トラスツズマブ、およびセツキシマブ処置に対する高い応答率と関連付けられることを証明した以前の知見と一致する[Weng, W. K. & Levy, R., J Clin Oncol. 21(21), 3940-3947 (2003); Musolino, A. et al., J Clin Oncol. 26(11), 1789-1796 (2008); Rodriguez, J. et al., Eur. J. Cancer. 48(12), 1774-1780 (2012)]。さらなる試験のためにえり抜きの数の抗体だけ選択したが、抗体親和性とNK細胞活性との間で本発明者らが発見した相関関係は、CD16に対する結合物質およびNCR1に対する結合物質について述べた以前の報告と一致する。CD16のFc結合部位以外のエピトープに結合する抗体がADCCを刺激することができ、高親和性CD16結合物質がその低親和性対応物よりも強力なことが他の人たちによって以前に示されている[Gleason, M. K. et al., Mol Cancer Ther. 11(12), 2674-2684 (2012); Ellwanger, K. et al., MAbs. 11(5), 899-918 (2019)]。さらに、NCR1上のどのドメインがターゲティングされるかに関係なく、NCR1結合抗体も、NK細胞によって媒介される細胞傷害性を刺激することができる[Gauthier, L. et al., Cell. 177(7)、1701-1713 (2019)]。これにより、NK細胞活性を刺激するために高親和性抗体が必要とされることが示唆される。
【0096】
NK細胞活性を刺激するために、NK細胞受容体に対する高親和性抗体を開発することが必要なように考えられるが、本発明者らは、公知の活性化NK細胞受容体以外の、他のNK細胞受容体を標的とする高親和性抗体が、NK細胞によって媒介される細胞傷害性を刺激できなかったことを発見した。共刺激受容体を標的としてもNK細胞は活性化されなかったことは必ずしも完全に驚くべきことではない。なぜなら、NK細胞が活性化されるには、典型的に、異なる活性化NK細胞受容体と共刺激NK細胞受容体の同時結合を必要とすることが他の人たちによって以前に示されているからである[Bryceson, Y. T. et al., Blood. 107(1), 159-166 (2006); Bryceson, Y. T., Ljunggren, H. G. & Long, E. O., Blood. 114(13), 2657-2666 (2009)]。
【0097】
機能スクリーニングによって同定された抗体の有用性を証明するために、本発明者らは、活性化抗体、CD16.03、NCR1.11、NCR3.12、およびNCR3.19のうち4つをNKターゲティング二重特異性抗体に変換した。作製されたCD20ターゲティング二重特異性抗体およびHer2ターゲティング二重特異性抗体の全てが、NK細胞傷害性を、それぞれ、CD20+DaudiB細胞リンパ腫細胞およびHer2+SK-BR3乳がん細胞にリダイレクトすることができた。このことから、スクリーニングによって同定された抗体は、様々なNK細胞ターゲティング治療剤をさらに開発するのに使用され得ることが示唆される。実際に、CD16を標的とする高親和性抗体[Gleason, M. K. et al., Mol Cancer Ther. 11(12), 2674-2684 (2012); Ellwanger, K. et al., MAbs. 11(5), 899-918 (2019)]およびNCR1を標的とする高親和性抗体[Gauthier, L. et al., Cell. 177(7), 1701-1713 (2019)]が、二重特異性および三重特異性のNK細胞エンゲージャーを作製し、NK細胞の細胞傷害性をリダイレクトするために以前に開発されており、インビトロおよびインビボで良好な効力を有するように考えられた。この研究において、NCR3ターゲティング二重特異性抗体を含む二重特異性抗体のいくつかは少なくとも抗CD20ヒトIgG1 mAbと同じくらい強力であった。このことから、NCR3に対する抗体の開発も、NK活性を動員および刺激する有効な手法になり得ると示唆される。
【0098】
本発明者らの二重特異性抗体は、十分に樹立されたCD20+DaudiB細胞リンパ腫細胞株の活発な溶解を促進することに加えて、NK細胞の細胞傷害性を高難治性SC1 B細胞リンパ腫株にリダイレクトすることもできた。しかしながら、本発明者らの二重特異性抗体はSC1 B細胞リンパ腫細胞の溶解を促進するのに抗CD20ヒトIgG1 mAbよりも効果が低かった。このことは、CD20+細胞に対して抗CD20ヒトIgG1 mAbが有するアビディティ効果に起因するの可能性がある。本発明者らの二重特異性抗体は、この場合、抗CD20ヒトIgG1 mAbよりも効果が低かったが、腫瘍ターゲティング部分の親和性を改善するようにさらに操作すると、開発される二重特異性抗体の細胞傷害能をもっと促進することができる。さらに重要なことに、本発明者らの機能スクリーニングによって同定された抗体は、さらなるNK細胞ターゲティングエンゲージャーの開発に適用できるように考えられる。
【0099】
他の免疫細胞タイプを腫瘍微小環境にターゲティングするための抗体を開発することへの関心が高まっていることを考えて、本発明者らは、他の免疫細胞タイプの細胞傷害機能または食細胞機能をリダイレクトすることができる新規の標的および抗体を同定するのに、この方法が有用であると考えている。哺乳動物ディスプレイライブラリーのサイズを増やして、もっと大きな免疫細胞受容体セットを探索することができる。さらに、ある特定の抗体サブセットが異なる細胞タイプと交差反応するのに使用され得るかどうか判定するために、複数の免疫細胞タイプの機能をスクリーニングするめに同じ哺乳動物ディスプレイライブラリーが使用され得る。さらに、これらの抗体の全てが同じスキャフォールドに基づいているので、望ましい抗体を容易にクローニングし、異なる多重特異性フォーマットに変換することができる。本発明者らは、この研究がNK細胞ターゲティング抗体の設計への重要な洞察を提供し、新たな免疫療法抗体を同定するのに有用な新規の方法を例示すると考えている。
【0100】
SI材料および方法
細胞
HEK293T細胞を、10%FBSならびに100IU/mLペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシンを加えたDMEM中で培養した。Jurkat細胞およびRaji細胞を、2mM Lグルタミンを含有し、10%FBSならびに100IU/mLペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシンを含有するRPMI-1640中で培養した。NK92MI細胞を、リボヌクレオシドおよびデオキシリボヌクレオシドを含まないが、2mM L-グルタミンを含有し、0.2mMイノシトール、0.1mM 2-メルカプトエタノール、0.02mM葉酸、12.5%ウマ血清、12.5%FBS、ならびに100IU/mLペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシンを加えたα-MEM中で培養した。NCR1が安定に形質導入されたNKL細胞を、2mM L-グルタミンを含有し、10%FBSならびに100IU/mLペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシンを含有し、200U/mL IL-2(National Cancer Institute BRB Preclinical Repository)を加えたRPMI-1640中で維持した。SK-BR3細胞を、10%FBSならびに100IU/mLペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシンを加えたMcCoy's 5a中で培養した。
【0101】
PBMCをFicoll-Paqueによって単離し、2mM L-グルタミンを含有し、10%FBSならびに100IU/mLペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシンを含有するRPMI-1640中で維持した。匿名化された健常ドナー(Blood Centers of the Pacific or Vitalant)の末梢血から、RosetteSep(StemCell)とそれに続いてFicoll-Paqueを用いて初代ヒトNK細胞を単離した。細胞を、2mM L-グルタミンを含有し、10%FBSならびに100IU/mLペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシンを含有するRPMI-1640中で維持した。pOG44ベクターを、pcDNA5/FRT哺乳動物発現ベクターの中で血小板由来増殖因子の膜貫通ドメインとHAタグと融合した、それぞれのECDをコードする構築物と共にコトランスフェクトすることによって、NK細胞表面タンパク質ECDを過剰発現するテトラサイクリン誘導性細胞株を作製した。
【0102】
ファージディスプレイ選択
TEV切断可能なFc融合タンパク質を標準的な発現プロトコールを用いてExpi293F細胞において発現させ、ビオチン化した。発現の4日後に培地を収集し、タンパク質をプロテインAアフィニティクロマトグラフィーによって精製した。FabファージライブラリーE2を用いた以前に確立したプロトコール1に従ってファージ選択を行った。ストレプトアビジンビーズ上に固定化したFcドメインとファージプールをインキュベートすることによって、ライブラリーから非特異的結合物質を枯渇させた。ストレプトアビジンコーティング磁気ビーズ上に捕獲され、TEV溶出によって放出されたビオチン化Fc融合を用いてFabファージを選択した。それぞれの選択は4ラウンドからなった。ラウンドごとに、漸減量のFc融合(1μM、100nM、10nM、および10nM)を使用した。親和性と選択性を評価するために、第3ラウンドまたは第4ラウンドの選択からの96個の個々のFab-ファージクローンに対してELISAを行った。最も良いクローンをプールし、scFabに変換し、本発明者らの機能スクリーニングによるさらなる特徴決定のためにレンチウイルス発現ベクターにサブクローニングした。
【0103】
FabファージELISA
以前に説明されたように1、ELISAを行った。手短に述べると、Maxisorpプレートを10μg/mLのニュートラアビジンで4℃で一晩コーティングした。ビオチン化標的抗原(20nM)をニュートラアビジンコーティングプレート上で30分間捕獲し、次いで、ファージ上清の1:5希釈液に30分間曝露した。結合したファージは西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗ファージモノクローナル抗体(GE Lifesciences)によって検出された。
【0104】
HEK293T細胞におけるレンチウイルスの産生
レンチウイルスは、T-25フラスコ中の2.2×106個のHEK293T細胞を、プールしたscFab NK細胞結合物質に由来する3μgのレンチウイルス発現ベクター、0.33μgのpMD2.G、および2.7μgのpCMV-dR8.91、ならびに15μLのFuGENE HDトランスフェクション試薬(Promega)を用いてトランスフェクトすることによって産生した。48時間後に、細胞上清を収集し、細胞破片を45μm孔のフィルターによって除去した。Jurkat細胞にMOI<0.3で形質導入した。
【0105】
scFab哺乳動物ディスプレイ系の機能スクリーニング
新鮮に単離したNK細胞を400U/mL IL-2の存在下または非存在下で16時間培養した。scFab哺乳動物ディスプレイライブラリーを洗浄し、休止NK細胞またはIL-2によって刺激されたNK細胞の存在下または非存在下で10μg/mL DNアーゼIと4時間または24時間インキュベートした。生存している細胞を収集し、ゲノムDNAを単離し、NGS用のPCRテンプレートとして使用した。ゲノムDNAからH3配列を、隣接するプライマーとQ5 DNAポリメラーゼ(NEB)を用いて増幅した。混合物を20サイクルにわたってサーモサイクル(thermocycle)にかけた。アンプリコンを、ゲル精製し、カスタムシークエンシングプライマー(示すとおり):
を用いたNextSeq(Illumina)による分析のためにCZBiohubに送った。
【0106】
Galaxy(https://usegalaxy.org/)を用いて.fastq.gzファイルを処理した。シークエンシングアーチファクトを取り除き、アダプター配列をカスタム配列(示すとおり):
と共に切り抜いた。クオリティスコア(quality score)が30を下回った時に、FASTQマスカー(masker)を適用した。そして、さらなる分析のためにシークエンスカウント(sequence count)をエクスポートした。それぞれの条件の未加工のNGSカウントをカウントパーミリオン(CPM)に基準化し、特定の抗体クローンの枯渇を、NK細胞上の存在下または非存在下でのライブラリー間のlog2(変化倍率)として報告した。
【0107】
IgGおよび二重特異性抗体の発現
以前に説明されたように(Martinko, A. J. et al. Targeting RAS-driven human cancer cells with antibodies to upregulated and essential cell-surface proteins. Elife. 7, e31098 (2018))、IgGを発現させた。手短に述べると、関心対象の重鎖および軽鎖を1:1比で含有する2種類のpFUSEベクターでExpi293細胞を一過的にコトランスフェクトした。IgGの場合、pFUSEベクターは、マウスIgG1 Fcと融合したFab重鎖、またはFab軽鎖を含有した。二重特異性抗体の場合、pFUSEベクターは、関心対象のscFvと融合した、Fab重鎖またはFab軽鎖を含有した。トランスフェクションのためにExpiFectamine 293トランスフェクションキットを製造業者の説明書に従って使用した。発現させて5~7日後に上清を収集し、タンパク質をプロテインAアフィニティクロマトグラフィーまたはプロテインLアフィニティクロマトグラフィーによって精製した。タンパク質の純度および品質をSDS-PAGEによって評価した。
【0108】
カルセイン放出細胞傷害性アッセイ
以前に説明されたように(Neri, S., Mariani, E., Meneghetti, A., Cattini, L. & Facchini, A. Calcein-acetyoxymethyl Cytotoxicity Assay: Standardization of a Method Allowing Additional Analyses on Recovered Effector Cells and Supernatants. Clin Diagn Lab Immunol. 8(6), 1131-1135 (2001))、カルセイン放出細胞傷害性アッセイを行った。標的細胞を洗浄し、1~5×106/mLの最終濃度まで再懸濁し、15μMカルセイン-AMで37℃で30分間標識した。細胞を2回洗浄し、様々な抗体濃度の存在下で、エフェクター細胞(精製されたNK細胞、PBMC、NK92MI、またはNCR1+NKL細胞)と、示されたエフェクター:標的比で3回繰り返してコインキュベートした。最大溶解を1%Triton X-100によって誘導した。2時間後に上清を収集し、カルセイン放出をInfinite 200 Proプレートリーダー(Ex:485±9nm;Em:530±20nm)で測定した。比溶解(specific lysis)を、100×(実験による標的細胞の放出-標的細胞の自然放出)/(最大放出-標的細胞の自然放出)として計算した。
【0109】
Fab発現
以前に説明されたように(Elledge, S. K. et al. Systematic identification of engineered methionines and oxaziridines for efficient, stable, and site-specific antibody bioconjugation. Proc Natl Acad Sci U S A. 117(11), 5733-5740 (2020))、Fabを発現させた。手短に述べると、C43(DE3)Pro+大腸菌(E.coli)を発現プラスミドで形質転換し、TB自己誘導培地(autoinduction media)中で37℃で6時間増殖させた。次いで、インキュベーション温度を30℃まで下げ、さらに16~18時間増殖させた。細胞を遠心分離によって収集し、FabをプロテインAアフィニティクロマトグラフィーによって精製した。Fab純度および完全性をSDS-PAGEによって評価した。
【0110】
フローサイトメトリーのためのオンセル(on cell)力価測定
力価測定を、示されたとおり初代ヒトNK細胞またはテトラサイクリン誘導性過剰発現細胞株に対して行った。テトラサイクリン誘導性過剰発現細胞株を使用した時には、染色前に2日間、細胞に10μg/mLテトラサイクリンを投薬した。それぞれのFabまたは二重特異性抗体の出発濃度は1μMであり、1:5系列希釈を行った。抗体を細胞と4℃で1時間インキュベートし、3%BSAを含むPBS pH7.4で2回洗浄し、1:50に希釈したAlexafluor-647結合ヤギ抗ヒトIgG F(ab')2断片(Jackson ImmunoResearch Laboratories)で30分間染色した。さらに3回洗浄した後に細胞を固定し、CytoFLEX(Beckman Coulter)を用いて蛍光を定量した。FlowJoソフトウェアを用いて全てのフローサイトメトリーデータを分析した。
【0111】
フローサイトメトリーベースの細胞傷害性アッセイ
以前に説明されたように(Kandarian, F., Sunga, G. M., Arango-Saenz, D. & Rossetti, M. A Flow Cytometry-Based Cytotoxicity Assay for the Assessment of Human NK Cell Activity. J Vis Exp. 9(126), 56191 (2017))、フローサイトメトリーベースの細胞傷害性アッセイを行った。手短に述べると、標的細胞を1μM CFSEで37℃で20分間染色した。細胞を洗浄し、様々な抗体濃度の存在下で、休止NK細胞と、示されたエフェクター:標的比で2回繰り返してコインキュベートした。最大溶解を0.1%Tween-20によって誘導した。2時間後に死細胞を5nM Sytox Redで染色し、CytoFLEX(Beckman Coulter)を用いて蛍光を定量した。FlowJoソフトウェアを用いて全てのフローサイトメトリーデータを分析した。
【0112】
IFN-γ分泌アッセイ
ELISA max deluxe sets(BioLegend)を用いて製造業者の説明書に従ってIFN-γ分泌を定量した。手短に述べると、NK細胞を、1μg/mLのそれぞれの選択された抗体と共に、または伴わずにP815標的細胞の存在下または非存在下で1:1のエフェクター:標的比で24時間インキュベートした。上清を収集し、IFN-□□含有量についてアッセイした。
【0113】
データ分析
選択された抗体によって誘導されるIFN-γ分泌の比較には一元配置ANOVAとダンネット(Dunnett)の事後検定を使用した。データはGraphPad Prism 6.0ソフトウェアを用いて分析した。IgGの用量反応曲線を3パラメータロジスティックモデルとフィットさせた。二重特異性抗体の用量反応曲線をpythonスクリプトを用いて4パラメータロジスティックモデルとフィットさせた。
【0114】
さらなる情報:
親和性成熟後に、17個のユニークなFabクローンを試験した。17個のクローンのうち16個が追加試験に十分な量で発現していた。本発明者らは、ELISAおよびオンセルによってNCR3に対する結合を試験した。ELISAによって試験した時に、本発明者らは、13個のクローンのEC50が親NCR3.18クローンよりも低いことを確認した。オンセル結合によって、本発明者らは、8個のクローンのEC50が親NCR3.18クローンよりも低いことを確認した。開発可能性を試験するために、本発明者らはSECを用いて前記抗体の溶出プロファイルを特徴決定した。17個のクローンのうち11個のクローンがそのSECプロファイルを維持した。全体的に見て、本発明者らは、二重特異性構築物または三重特異性構築物において使用できる良好な溶出プロファイルをもつ5個の高親和性クローンを本発明者らが有すると考えている。
【0115】
【0116】
配列
全ての抗体がトラスツズマブスキャフォールドに基づいている。CDR L3、H1、H2、およびH3のみを変更した。番号付けはIMGTスキームに基づいている。可変鎖配列中のCDRに下線を引いた。
抗NCR3 Fab #78 CDR H3配列の概要:
Xは任意のアミノ酸でよい。
抗NCR3 Fab #78のさらなる特定の代替CDR H3配列:
●軽鎖において、下線を引いた配列はCDR L1、L2、L3をコードする。
●重鎖において、下線を引いた配列はCDR H1、H2、H3をコードする。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-03-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】