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特表2024-522191後方照射集光器を備えた半透過両面太陽光発電モジュール
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  • 特表-後方照射集光器を備えた半透過両面太陽光発電モジュール 図1
  • 特表-後方照射集光器を備えた半透過両面太陽光発電モジュール 図2
  • 特表-後方照射集光器を備えた半透過両面太陽光発電モジュール 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(54)【発明の名称】後方照射集光器を備えた半透過両面太陽光発電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H02S 40/22 20140101AFI20240604BHJP
【FI】
H02S40/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575999
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 ES2022070353
(87)【国際公開番号】W WO2022258868
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】P202130520
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523461014
【氏名又は名称】ウニベルシダッド・デ・ハエン
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エドゥアルド・フェルナンデス・フェルナンデス
(72)【発明者】
【氏名】フロレンシア・マリナ・アルモナシド・クルス
(72)【発明者】
【氏名】ペドロ・マヌエル・ロドリゴ・クルス
(72)【発明者】
【氏名】ペドロ・ヘスス・ペレス・イゲラス
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA05
5F251AA09
5F251AA10
5F251AA11
5F251JA21
5F251JA22
5F251JA23
(57)【要約】
前方ガラスカバー(1)及び後方ガラスカバー(4)と、前方ガラスカバー(1)及び後方ガラスカバー(4)の間に分離領域を備える両面電池(2)のマトリックス及び両面電池の背面に後方光を集光する後方屈折集光器(3)のマトリックスと、を備える半透過太陽光発電モジュールである。本発明は高いレベルの日射量を必要とする農園のための太陽光発電の農業的な応用において、又は高照度の屋内光を必要とする建物への統合において、有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射光集光器を備える半透過両面太陽光発電モジュールであって、
前方ガラスカバー(1)と、
複数の両面電池(2)のマトリックスであって、各両面電池が分離領域で他の両面電池とは離れ、前記複数の両面電池が2本の電力出力線を得るために電気的に相互接続されている、複数の両面電池(2)のマトリックスと、
後方ガラスカバー(4)と、を備え、
複数の後方屈折集光器(3)のマトリックスであって、各後方屈折集光器が、各両面電池と対応する小端と、前記後方ガラスカバー(4)と対向し前記前方ガラスカバー(1)から離れる大端と、を備える、後方屈折集光器(3)のマトリックスと、
をさらに含むことを特徴とする、
半透過両面太陽光発電モジュール。
【請求項2】
前記後方屈折集光器が交差複合パラボラ型(9)である、
請求項1に記載の半透過両面太陽光発電モジュール。
【請求項3】
前記後方屈折集光器が複合パラボラ型(10)である、
請求項1に記載の半透過両面太陽光発電モジュール。
【請求項4】
前記後方屈折集光器がレンズ壁を備える複合放射状型(11)である、
請求項1に記載の半透過両面太陽光発電モジュール。
【請求項5】
前記後方屈折集光器が交差V字チャネル型(12)である、
請求項1に記載の半透過両面太陽光発電モジュール。
【請求項6】
前記後方屈折集光器が多角形複合パラボラ型(13)である、
請求項1に記載の半透過両面太陽光発電モジュール。
【請求項7】
前記後方屈折集光器が正方形楕円双曲面型(14)である、
請求項1に記載の半透過両面太陽光発電モジュール。
【請求項8】
前記後方屈折集光器が複合パラボラ旋回型(8)である、
請求項1に記載の半透過両面太陽光発電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電エネルギーの技術分野/技術領域に属し、特に、例えば農業又は屋内でのインテグレーションのための太陽光発電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
半透過太陽光発電モジュールは入射照射光の一部を電気に変換する一方で、吸収されない照射光が前記デバイスによって透過される。これにより、(屋外農園であっても温室であっても)農園の植物が光合成を行うために透過照射光が用いられる太陽光発電農業や、透過照射光が屋内を照射したり、美的機能を奏するのに役立つ屋内での建築的なインテグレーション等において様々な応用が可能になる。
【0003】
今日、半透過性が得られる2種類の太陽光発電技術がある。一方の技術では、それ自身にある程度の透過性を有するアモルファスシリコン、銅・インジウム・ガリウム・セレン(CIGS)、テルル化カドミウム(CdTe)、量子ドットセル、有機高分子、色素増感太陽電池又はペロブスカイト太陽電池などの薄膜半導体材料を使用することにより、入射光の9%から54%の間の透過率を可能にする(Kangmin Lee et al., “The Development of Transparent Photovoltaics”, Cell Reports Physical Science 1, 100143, 2020年,8月26日, 表1)。他方の技術では、モジュール内で分離領域が構成されている、不透明結晶性シリコン太陽電池を使用することにより、透過領域(ガラス)及び非透過領域(太陽光電池)が存在する。この構成では、電池間の分離領域が大きくなるほど、透過度が高くなる。このような最新の構想を用いる商業的な製品がある。例えば、ドイツ企業のBISOL Solar Companyは、5.3%から53.6%の間の透過率を有する単結晶又は多結晶シリコン太陽電池を用いたBISOL Lumina seriesを販売している(https://www.bisol.com/pv-modules)。2種類の半透過太陽光発電技術のうち、シリコンの豊富さ、低コスト及び信頼性により、今日では結晶性シリコンの選択がより用いられる傾向にある。
【0004】
これらの半透過シリコンモジュールの制限により、活性領域の量が減少するにつれて、透過率が高くなるほど、デバイスの効率性が低下する。例えば生産量の減少を避けるために特定の種類の植物が強い日光照射を必要とする農業において、高い透過性のレベルを要求する応用がある。これらの半透過モジュールの電力生産を増加させるための直接的な方法は、前方及び後方の両方の照射光を取り込むことによって、デバイスのコストにおける増加を最小限にし、片面太陽電池と比較して電力生産を増加させる、両面電池を用いることである。
【0005】
両面モジュールの電力生産を増加させるための両面太陽電池を組み合わせた集光器を用いるいくつかの特許がある。
【0006】
1996年7付23日付のAntony W Finkiによる米国特許第5538563号明細書は、平坦で、ピラミッド型のリフレクタ及び垂直方向又は水平方向のいずれかに取り付けられた両面太陽電池を用いている。集光器は入射照射光を受け取り両面太陽電池の両面に向けて前記入射照射光を偏光させる。
【0007】
2012年4月26日付のPlkington Group Limitedによる米国特許出願公開第2012/0097213号明細書は、活性領域によって透過された照射光が反射し活性表面の背面に戻るといった方法で、半透過の2つの活性表面に対して平行な平坦反射板を用いている。
【0008】
1979年10月2日付のAntonio Luqueによる米国特許第4169738号明細書では、放物線状の反射集光器が、集光器の容積内部に位置している両面電池上に入射照射光を集光するのに用いられる。この容積は冷却を補助する流体で満たされ、フィンヒートシンクが内部に取り込まれる。
【0009】
2010年5月27日付のLight Prescriptions Innovatorsによる米国特許出願公開第2010/0126556号明細書において、当該高集光系では、フレネルレンズが主要な電池上に直接的な照射光を集光させるのに用いられ、拡散した放射照度及びアルベドを吸収する役割を担う両面電池によって囲まれている。
【0010】
2006年12月13日付のGeneral Electric Company Schenectadyによる欧州特許出願公開第1732141号明細書における当該系では、前方のカバーは、両面電池マトリックス上に光を集光させ導くことができる平坦面及び成形面を有している。
【0011】
2015年2月5日付のSolarWorld AGによる独国実用新案第202014105516号明細書における当該系では、両面モジュールの少なくとも2つのマトリックスが互いに対して平行に水平位置で取り付けられ、リフレクタはモジュール表面で入射放射照度を増加させるための構造の基盤において水平位置に組み込まれている。
【0012】
2016年9月29日付のBAKERSUNによる米国特許出願公開第2016/0284914号明細書における当該系では、少なくとも一つの両面モジュールが地上に対して高い水平位置に取り付けられ、リフレクタはモジュールの背面によって受け取られる照射光を増加させるために三角形又は半円柱形状のプリズムの内側に組み込まれている。
【0013】
上記した全てのデバイスはそれらの電力生産を増加させるために両面電池に対して前方で受け取られる照射光を向け直す集光器の使用によって特徴づけられる。しかしながら、これらの集光器の使用は系の透過性を低下させる又はなくすことを意味する。従って、それらは半透過両面太陽光発電モジュールには適さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、地上又はその近くの物での反射に主に由来する、後方の光線を集光させることによって、半透過両面モジュールの電力生産能力を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的を達成するために、本発明の半透過両面太陽光発電モジュールは、その後方部分に、つまり、太陽光線の主要な入射面から最も遠い部分に、もしくは地表面のより近くに設置されるよう意図されるように、屈折集光器を組み込んでいる。これらの集光器は、前方の照射光の通過を可能にし、必要な程度の透過率を確保する一方で、後方照射光を向けなおし、前記後方放射照度を両面電池の背面に向けさせる。この戦略をもって、理想的には、全ての後方の照射光を透過度に影響を及ぼすことなく用いることができる。
【0016】
両面モジュールの電力生産能力を向上させるために集光器を使用することは新しくはないものの、既存の発明は前方照射光を集光又は向け直し、半透過性のモジュールを減らす又は削除する。当該発明において提案された解決策は上記応用によって求められる透過性のレベルを確保し、両面モジュールの電力生産能力を向上させることに寄与し、太陽光発電農業又は建物への統合に前記両面モジュールを適したものにする。
【0017】
本発明の特徴のより良好な理解を助け、本説明を補足するために、以下の図面が本発明の必須の部分として添付され、前記図面の本質は例示であり限定的ではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は後方屈折集光器を備える半透過両面太陽光発電モジュールの構造の概要を示す。交差V字チャネル屈折集光器が一例として図示されている。
図2図2は半透過両面モジュールに統合可能な一連の7つの屈折集光器を示している。これらに加えて、屈折集光器の他の変形例を統合してもよい。
図3図3は、Bifaciality=0.85、前方放射照度=1000W/m及び後方照射照度300W/mの場合の低光学効率(0.40)及び高光学効率(0.70)を考慮した、同一の透過率を有する半透過片面太陽光発電モジュールと比較した半透過両面太陽光発電モジュールの透過率及び電力利得間の関係を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は両面セルの背面に向かって後方に入射する光線を向けなおすことによって電気エネルギー生成を増加させることを可能にする後方屈折集光器を備える半透過両面太陽光発電モジュールに関し、上記応用によって要求される半透過度を維持し、太陽光発電農業又は屋内インテグレーションにおいて有用である。本発明は透過度に影響を及ぼすことなくモジュールに入射する全ての後方の放射光を利用することを可能にする。図1を参照すると、モジュールは反射防止処理が施された強化ガラスの2枚のシート(前方シート1及び後方シート4)から構成され、所望の透過度を得るために両面電池2の間の分離領域を維持する前方ガラスシートの下に両面電池2のマトリックスがあり、両面電池の背面の下に後方屈折集光器3のマトリックスがあり、各々の電池は関連した集光器を有している。すなわち、屈折集光器の正面が電池と直接対応するように設置されている。両面電池は電力を出力する2本の電線を許容するために電気的に相互接続されている。屈折集光器はできるだけ多くの後方照射光を獲得するために両面電池の領域に等しい上方又は前方の領域及び両面電池の領域よりも大きくより低い又は後方の領域を有し、その結果全ての後方入射照射光を受け入れるために全ての異なるユニットによって形成されている光学系はモジュールの後方領域全体を覆う。
【0020】
モジュールの作動原理は以下の通りに要約することができる。つまり、正面方向5に到達する光線の一部は両面電池の正面に直接入射し、正面6から到達する残りの光線は要求される透過度を許容するモジュールを通過し、後方7に到達する光線は後方屈折集光器による内部全反射により両面電池の背面に向けられる。このようにして、後方集光器を有さない両面モジュールと比較してより多くの照射光をより多くの電気に変換することができる。
【0021】
屈折材料でできている、後方集光器は、様々な形状を有していてもよい。図2を参照すると、様々な種の集光器が示されている(存在する集光器のみではない)。
8 旋回複合パラボラ集光器
9 交差複合パラボラ集光器
10 複合パラボラ集光器
11 レンズ壁を備える複合パラボラ集光器
12 交差V字チャネル集光器
13多角形複合パラボラ集光器
14 正方形楕円双曲面
【0022】
これらの種の集光器は、幾何的な集光レベルが10倍にまで達する低集光太陽光発電系の正面照射光集光器として、又は正面照射光を2000倍にまで集光することができる高集光系(Shanks et al., “Optics for concentrating photovoltaics: Trends, limits and opportunities for materials and design”, Renewable and Sustainable Energy Reviews 60 (2016年) 394-407)で第2の光学素子としてよく用いられる。本発明において、前記集光器は後方照射光集光器としては初めて用いられる。10倍のレベルにまで達する低幾何集光が両面モジュールを固定された構造に取り付けることを可能にし、応用においてはソーラートラッカーの使用を避けることに注目すべきである。
【0023】
半透過片面モジュールと比較した後方集光器を備える半透過両面モジュールによって得られる電力利得は以下のように計算することができる。
【0024】
利得(%)=(後方放射照度×Bifaciality×光学効率)/(前方放射照度×(1-透過率))×100
【0025】
そして、本発明の利得余裕はパラメータの以下の差を考慮して得られる。透過率は0.50~0.90、Bifacialityは0.80~1.00、光学効率は0.40~0.70、前方放射照度は1000W/m、後方放射照度は100~300W/mである。これにより、構成によっては利得余裕が6.4%~210%となる。
【0026】
屈折集光器の最大幾何集光は透過率の関数であり、以下の式に従う。
【0027】
最大集光=1/(1-透過率)
【0028】
この式によれば、透過率範囲が0.50から0.90の間、2倍から10倍の間の最大集光が得られる。これらの集光レベルは屈折集光器型8、9、10、11、12、13、14又は他の集光器の変形例によって得られる。
【0029】
本発明の実施形態の例として、後方集光器を備える半透過両面太陽光発電モジュールは、前記太陽電池がBifaciality=0.85を有し、後方集光器が光学効率=0.50を有するとして以下に説明する。この場合、商業的な両面電池及び交差V字チャネル型12の光学集光器が用いられる。
【0030】
半透過片面モジュールと比較される半透過両面モジュールによって得られる後方集光器のデザイン及び利得の両方が、応用により求められる透過率に主として依存する。後方集光器のデザインは、獲得領域が可能な限り大きくなるために適用されるべきである一方で、後方集光器が後方光を集光する領域は両面電池の領域に合致するべきである。交差V字チャネル型集光器12の場合、獲得領域は正方形の開口部を有することによりモジュールの全獲得領域に適用することができ、後方照射光の獲得を最大化することができる。後方集光器を備える半透過両面モジュールによって得られる電力利得は、図3に表されるように高光学効率(0.70)及び低光学効率(0.40)の時の透過率の関数である。透過率に依存して、前方放射照度=1000W/m、後方放射照度=300W/mを適用し、本実施形態において0.50の光学効率を考慮すると、25.5%から127.5%の間の利得が得られる。
【0031】
従って本発明は高透過度を必要とする応用において特に有用である。実施形態の一例として、本発明は、電力生産量を確保するために高日射量を必要とする農園のための、農業的な応用において用いることができる。この場合、0.80の透過率が選択される。モジュールは63.8%の電力利得を得るために5倍の幾何的集光の後方屈折集光器を備えて構成される。これは、同程度の半透過性を有する片面モジュールが生産する40W/mと比較して、1ユニットモジュール領域あたり65.5W/mの電力生産量と等しい。
【0032】
本説明及び図を考慮すると、本発明はいくつかの好ましい上記実施形態に従って説明されてきたが、クレームされたように本発明の目的を超えることなしで、複数の変形例が前記好ましい実施形態に導入されてもよいことを当業者は理解するものである。
図1
図2
図3
【国際調査報告】