(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(54)【発明の名称】リポソームエマルジョンを使用してスラリーを作製する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/127 20060101AFI20240604BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20240604BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240604BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240604BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240604BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
A61K9/127
A61K9/107
A61K47/24
A61K47/10
A61K47/02
A61K9/19
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576327
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 US2022033095
(87)【国際公開番号】W WO2022261494
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522028788
【氏名又は名称】ブリクストン バイオサイエンシズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】サビル,サミール
(72)【発明者】
【氏名】シドッチ,チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】カガン,オリビエ
(72)【発明者】
【氏名】アミジ,マンスール,エム.
(72)【発明者】
【氏名】タハ,マイエ
【テーマコード(参考)】
4C076
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076AA19
4C076AA22
4C076BB11
4C076DD01
4C076DD26
4C076DD38
4C076DD63
4C076FF61
4C076FF68
4C076GG06
4C076GG45
4C076GG46
4C076GG50
(57)【要約】
ある量の水;非水溶性物質;および第1の賦形剤を含む組成物が本明細書に開示され、ここで組成物は、凍結温度に曝露される場合に流動可能アイススラリーを形成するように構成される。臨床的なケアの点での患者への投与のための冷スラリーを調製する方法も本明細書に開示され、該方法は:複数の脂質粒子を含む組成物を調製する工程;賦形剤を組成物に添加する工程、ここで該賦形剤は、複数の脂質粒子の外部の体積および複数の脂質粒子の内部の体積の凝固点を低減するように構成される;ならびに冷スラリーが形成されるように、組成物を所定の温度まで冷却する工程、ここで該冷スラリーは、複数の氷粒子を含む、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある量の水;
非水溶性物質;および
第1の賦形剤
を含む組成物であって、凍結温度に曝露される場合に流動可能アイススラリーを形成するように構成される、組成物。
【請求項2】
非水溶性物質が脂質である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
複数の脂質を含む、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
組成物が脂質粒子を含み、脂質粒子が複数の脂質を含む、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
第1の賦形剤が、脂質粒子の脂質二重層を通過するように構成される、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
脂質粒子内に封入される第1の溶液および脂質粒子の外側にある第2の溶液が、組成物中で実質的に同等である、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
脂質粒子がリポソームまたはミセルである、請求項4記載の組成物。
【請求項8】
脂質がホスホリピドである、請求項2記載の組成物。
【請求項9】
ホスホリピドが、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、卵スフィンゴミエリン(DPSM)、ジパルミトイルホスファチジル(DPPC)、ジセチルホスフェート(DCP)、L-α-ホスファチジルコリン(ダイズPC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルグリセロール(PG)およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
ホスホリピドがダイズPCであり、組成物中のダイズPCの濃度が約0.1g/mL~0.3g/mLである、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
組成物中のダイズPCの濃度が約0.26g/mLである、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
第1の賦形剤が、塩、イオン、乳酸加リンガー溶液、糖、生体適合性界面活性剤、ポリオールおよびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
第1の賦形剤がグリセロールである、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
組成物中のグリセロールの濃度が約10%~20%の体積当たりの重量である、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
組成物中のグリセロールの濃度が約15%の体積当たりの重量である、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
第2の賦形剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
第2の賦形剤が食塩水またはリン酸緩衝化食塩水(PBS)である、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
組成物の総体積の平均凝固点が約-25℃~約-5℃である、請求項1記載の組成物。
【請求項19】
臨床的なケアの点での患者への投与のための冷スラリーを調製する方法であって、
複数の脂質粒子を含む組成物を調製する工程;
賦形剤を組成物に添加する工程、ここで該賦形剤は、複数の脂質粒子の外部の体積および複数の脂質粒子の内部の体積の凝固点を低減するように構成される;ならびに
冷スラリーが形成されるように組成物を所定の温度に冷却する工程、ここで該冷スラリーは複数の氷粒子を含む、
を含む、方法。
【請求項20】
脂質粒子の内部の体積が、組成物の総体積の約20%~50%である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
複数の脂質粒子の内部の体積を含む第1の溶液および複数の脂質粒子の外部の体積を含む第2の溶液が、組成物中で実質的に同等である、請求項19記載の方法。
【請求項22】
組成物がリポソームまたはミセルを含み、リポソームまたはミセルが複数の脂質粒子を含む、請求項19記載の方法。
【請求項23】
複数の脂質粒子が複数の脂質を含み、複数の脂質がホスホリピドを含む、請求項19記載の方法。
【請求項24】
ホスホリピドが、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、卵スフィンゴミエリン(DPSM)、ジパルミトイルホスファチジル(DPPC)、ジセチルホスフェート(DCP)、L-α-ホスファチジルコリン(ダイズPC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルグリセロール(PG)およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
ホスホリピドがL-α-ホスファチジルコリン(ダイズPC)であり、組成物中のダイズPCの濃度が約0.1g/mL~0.3g/mLである、請求項23記載の方法。
【請求項26】
賦形剤が、塩、イオン、乳酸加リンガー溶液、糖、生体適合性界面活性剤、ポリオールおよびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項19記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願についての他所参照
本願は、2021年6月11日に出願された米国通し番号63/209,646に対する35 U.S.C. § 119(e)下の優先権を主張し、該出願のそれぞれの内容は、それらの全体において参照により本明細書に援用される。
【0002】
本特許開示は、著作権保護に供される材料を含む。著作権所有者は、米国特許商標庁特許のファイルまたは記録に見られるため、特許文書または特許開示のいずれかの現物どおりの複製に対して異論を有さないが、そうでなければ任意および全ての著作権を留保する。
【0003】
参照による援用
以下:米国公開番号US2017/0274011(「'011公開」;米国出願通し番号15/505,042);米国公開番号US2017/0274078(「'078公開」;米国出願通し番号15/505,039);米国公開番号US2019/0053939(「'939公開」;米国出願通し番号15/505,039);および国際公開番号WO2021/016457のそれぞれの内容は、それらの全体において、参照により本明細書に援用される。
【0004】
技術分野
本開示は一般的に、流動可能および/または注射可能冷スラリーを形成する生体材料を製造するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0005】
背景
冷スラリー(例えばアイススラリー)は、当該技術分野において、水の滅菌氷粒子、種々の量の凝固点抑制剤などの賦形剤または添加剤、屈水性分子、および任意にその全体において参照により本明細書に援用される'011公開に記載される1つ以上の医薬有効成分で作製される組成物として知られる。先行技術の冷スラリーは、予防、治療または美容目的で、選択的または非選択的寒冷療法および/または寒冷脂質分解(cryolipolysis)を引き起こすように、好ましくは注射により、被験体、好ましくはヒト患者の組織に送達され得る。注射可能冷スラリーは、神経伝達の阻害を必要とする種々の障害の治療に使用され得る。例えば、その全体において参照により本明細書に援用される'078公開には、神経のミエリン鞘内で脂質の結晶化を引き起こすことにより、(例えばウォーラー変性による)神経の可逆的な変性を誘導するためのスラリーの使用が開示される。'078公開には、運動痙攣、高血圧、多汗症および尿失禁など、体性または自律神経の阻害を必要とする種々の他の障害を治療するために、注射可能な冷スラリーを使用することも開示される。
【0006】
アクチュエータ、冷却デバイスおよびポンプ(他の構成要素中)を含む冷スラリー作製系を使用して冷スラリーを調製する方法が、その全体において参照により本明細書に援用される'939公開に開示される。しかしながら、'939公開に開示される該方法は、大きく、複雑で、高価な医学用アイススラリー作製系を設置することにより、冷スラリーを製造するためのケアの点(point of care)を必要とする。この技術はまた、製造の間および投与の前に冷スラリーの滅菌性を維持するための工程を採用するためのケアの点を必要とする。
【0007】
ケアの点で利用可能である特殊な製造設備を必要とせずかつケアの点で生体材料の滅菌性を損なうことなく、調製の間に生体材料(例えば冷スラリーに変換される溶液)の滅菌性を損なうことのない臨床的なケアの点で、流動可能および/または注射可能冷スラリーの簡単な輸送、保存および調製を可能にする組成物および方法のための必要性が存在する。本開示は、ケアの点が、生体適合性溶液を治療用物質、例えば流動可能および/または注射可能冷スラリーに変換するための例えば標準的な冷凍庫に配置し得る、容易に輸送および保存される容器において、ケアの点で生体適合性溶液を受け取ることを可能にする、向上された冷スラリー組成物および調製方法を提供することによりこの必要性に取り組む。
【発明の概要】
【0008】
概要
一局面において、本開示は、ある量の水;非水溶性物質;および第1の賦形剤を含む組成物を提供し、該組成物は、凍結温度に曝露される場合に流動可能アイススラリーを形成するように構成される。
【0009】
いくつかの態様において、非水溶性物質は脂質である。
【0010】
いくつかの態様において、組成物は複数の脂質を含む。
【0011】
いくつかの態様において、組成物は脂質粒子を含み、脂質粒子は複数の脂質を含む。
【0012】
いくつかの態様において、第1の賦形剤は、脂質粒子の脂質二重層を通過するように構成される。
【0013】
いくつかの態様において、脂質粒子内に封入される第1の溶液および脂質粒子の外側にある第2の溶液は、組成物中で実質的に同等である。
【0014】
いくつかの態様において、脂質粒子はリポソームまたはミセルである。
【0015】
いくつかの態様において、脂質はホスホリピドである。
【0016】
いくつかの態様において、ホスホリピドは、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、卵スフィンゴミエリン(DPSM)、ジパルミトイルホスファチジル(DPPC)、ジセチルホスフェート(DCP)、L-α-ホスファチジルコリン(ダイズPC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルグリセロール(PG)およびそれらの組合せからなる群より選択される。
【0017】
いくつかの態様において、ホスホリピドはダイズPCであり、組成物中のダイズPCの濃度は約0.1g/mL~0.3g/mLである。
【0018】
いくつかの態様において、組成物中のダイズPCの濃度は約0.26g/mLである。
【0019】
いくつかの態様において、第1の賦形剤は、塩、イオン、乳酸加リンガー溶液、糖、生体適合性界面活性剤、ポリオールおよびそれらの組合せからなる群より選択される。
【0020】
いくつかの態様において、第1の賦形剤はグリセロールである。
【0021】
いくつかの態様において、組成物中のグリセロールの濃度は約10%~20%の体積当たりの重量である。
【0022】
いくつかの態様において、組成物中のグリセロールの濃度は約15%の体積当たりの重量である。
【0023】
いくつかの態様において、組成物はさらに第2の賦形剤を含む。
【0024】
いくつかの態様において、第2の賦形剤は、食塩水またはリン酸緩衝化食塩水(PBS)である。
【0025】
いくつかの態様において、組成物の総体積の平均凝固点は約-25℃~約-5℃である。
【0026】
別の局面において、本開示は、臨床的なケアの点での患者への投与のための冷スラリーを調製する方法を提供し、該方法は:複数の脂質粒子を含む組成物を調製する工程;賦形剤を組成物に添加する工程、ここで賦形剤は、複数の脂質粒子の外部の体積および複数の脂質粒子の内部の体積の凝固点を低減するように構成される;ならびに冷スラリーが形成されるように、組成物を所定の温度に冷却する工程、ここで該冷スラリーは、複数の氷粒子を含む、を含む。
【0027】
いくつかの態様において、脂質粒子の内部の体積は、組成物の総体積の約20%~50%である。
【0028】
いくつかの態様において、複数の脂質粒子の内部の体積を含む第1の溶液および複数の脂質粒子の外部の体積を含む第2の溶液は、組成物中で実質的に同等である。
【0029】
いくつかの態様において、組成物は、リポソームまたはミセルを含み、リポソームまたはミセルは複数の脂質粒子を含む。
【0030】
いくつかの態様において、複数の脂質粒子は複数の脂質を含み、複数の脂質はホスホリピドを含む。
【0031】
いくつかの態様において、ホスホリピドは、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、卵スフィンゴミエリン(DPSM)、ジパルミトイルホスファチジル(DPPC)、ジセチルホスフェート(DCP)、L-α-ホスファチジルコリン(ダイズPC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルグリセロール(PG)およびそれらの組合せからなる群より選択される。
【0032】
いくつかの態様において、ホスホリピドはL-α-ホスファチジルコリン(ダイズPC)であり、組成物中のダイズPCの濃度は約0.1g/mL~0.3g/mLである。
【0033】
いくつかの態様において、賦形剤は、塩、イオン、乳酸加リンガー溶液、糖、生体適合性界面活性剤、ポリオールおよびそれらの組合せからなる群より選択される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図面の簡単な説明
以下の図面は、本開示の例示的態様を示す。
【
図1】
図1は、リポソームエマルジョン組成物の態様を示す。
【
図2】
図2は、リポソームエマルジョン組成物を作製するためのプロセスフロー図を示す。
【
図3】
図3は、異なるレベルの賦形剤(グリセロール)および脂質にわたる冷スラリー特徴付けを示すグラフである。
【
図4】
図4は、冷スラリー対照およびエマルジョン組成物の氷含有量の特徴付けを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
定義
以下は、本明細書で使用される用語の定義である。本明細書における群もしくは用語のために提供される最初の定義は、本明細書を通じて個々に群もしくは用語に適用されるか、またはそうではないと示されない限りは別の群の一部として適用される。そうではないと定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「賦形剤」は、治療剤(この場合、治療剤は氷である)の被験体もしくは患者への送達のための希釈剤、アジュバントおよび/またはビヒクル、および/または組成物の取り扱い、安定性もしくは保存特性を向上するために組成物に添加される物質として使用される、それ自体は治療剤ではない任意の物質を意味する。用語「賦形剤」および「添加剤」は、本明細書において交換可能に使用される。
【0037】
詳細な説明
本開示は一般的に、組成物ならびに流動可能および/または注射可能冷スラリーを形成する生体材料を製造するための方法に関する。いくつかの態様において、組成物は、脂質、脂質粒子(例えばリポソーム)または他の脂質構造(例えば層状または非層状構造、二層および非二層構造、例えば脂質ナノ粒子、ミセル等)または非水溶性物質(すなわち水に溶解しない物質を含む。いくつかの態様において、組成物はエマルジョンを形成する。
【0038】
本開示は、凍結される場合に流動可能および/または注射可能冷スラリーを生じる組成物を記載する。いくつかの態様において、本開示の組成物は、流動可能および/または注射可能である混合または操作を必要としないが、流動可能性および/または注射可能性をさらに向上するためまたは粘稠性を増進するための操作が他の態様において使用され得る。いくつかの態様において、組成物は、高い水含有量(例えば約70% v/v~80% v/v、約80% v/v~90% v/vまたは約90% v/vより高い)を有する流体の懸濁物、凝固点を下げるために使用される溶質(例えばグリセロール)および/または脂質(または異なる非水溶性化合物)を含む。
【0039】
いくつかの態様において、組成物は、流動可能および/または注射可能冷スラリーを作製するための有効量の脂質(または異なる非水溶性化合物)を含むエマルジョンである。いくつかの態様において、本明細書に記載される組成物は、任意の機械的撹拌またはさらなる処理の適用を必要とすることなく標準的な冷凍庫(または任意の他の冷たい環境)に配置される場合に、氷粒子を有する流動可能および/または注射可能冷スラリーに変換される。
【0040】
いくつかの態様において、エマルジョンは、脂質(または異なる非水溶性化合物)を含む本明細書に記載される任意の組成物である。いくつかの態様において、組成物中の複数の脂質は、1つ以上の形態(例えばリポソーム、脂質ナノ粒子、ミセル等の層状または非層状構造、二層および非二層構造)を有する脂質粒子に集合される。本開示の脂質粒子形態は、CryoTEMによるなどの当該技術分野で公知の任意の方法により決定され得る。いくつかの態様において、組成物中の脂質粒子は約5μm~約300μmの直径である。いくつかの態様において、脂質粒子は約250μmの直径である。いくつかの態様において、組成物中の脂質粒子は約5μm~20μmの直径または約8μm~14μmの直径である。何ら特定の理論に拘束されることを意図せず、脂質(1つまたは複数)または非水溶性化合物(1つまたは複数)は、組成物を凍結温度に曝露し、組成物がもはや流動可能および/または注射可能でないようになった場合に氷粒子が大きく成長しすぎることを防ぐと考えられる。
【0041】
いくつかの態様において、1つ以上の賦形剤が冷スラリーに含まれ得る。本明細書で使用する場合、用語「賦形剤」は、治療剤(この場合治療剤は氷である)の被験体もしくは患者への送達のための希釈剤、アジュバントおよび/またはビヒクル、および/または取り扱い、安定性または保存特性を向上するために組成物に添加される物質(例えば添加剤)として使用される、それ自体は治療剤ではない任意の物質を意味する。賦形剤は、冷スラリーの約10%未満の体積当たりの体積(v/v)、約10% v/v~約20% v/v、約20% v/v~約30% v/v、約30% v/v~40% v/vおよび約40% v/vより高くを構成し得る。種々の添加される賦形剤は、冷スラリーの相変化温度を変える(例えば凝固点を低減する)、冷スラリーの氷のパーセンテージを変える、冷スラリーの粘性を変える、氷粒子の凝集を防ぐ、樹状の氷の形成(すなわち雪片中に見られるものなどの多くの分岐する「樹様」の構成を有する結晶)を防ぐ、分離された氷粒子を維持する、流体相の熱伝導性を増加する、あるいは流動可能および/または注射可能冷スラリーの全体的な予防的、治療的もしくは美的な効力を向上するために使用され得る。本明細書に記載される組成物において、かかる賦形剤は、氷粒子の凝集を防ぎ得、樹状の氷の形成(すなわち雪片中に見られるものなどの多くの分岐する「樹様」の構成を有する結晶)を防ぎ得、または分離された氷粒子を維持し得る非水溶性物質または脂質(脂質粒子など)を含み得るので、冷スラリーは、冷たい環境(例えば冷凍庫)から取り出される場合に流動可能および/または注射可能である。
【0042】
いくつかの態様において、第1の賦形剤は、塩、イオン、乳酸加リンガー溶液、糖、生体適合性界面活性剤、ポリオールおよびそれらの組合せからなる群より選択される。いくつかの態様において、賦形剤はポリオールである。いくつかの態様において、ポリオールはグリセロールである。
【0043】
いくつかの態様において、組成物はさらに、第2の賦形剤を含む。いくつかの態様において、第2の賦形剤は、食塩水またはリン酸緩衝化食塩水(PBS)である。
【0044】
いくつかの態様において、本明細書に記載される組成物に適切な第1、第2または任意のさらなる賦形剤としては、スクロース、ラクトース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、グルコース、ラフィノース、グリシン、ヒスチジン、PVP (K40)、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、トリス塩基-65、酢酸トリス、トリスHCl-65、デキストロース、デキストラン、フィコール、ゼラチン、ヒドロキシエチルデンプン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、m-クレゾール、ミリスチルγ-ピコリニウムクロライド、パラベンメチル、パラベンプロピル、フェノール、2-フェノキシエタノール(penoxyethanol)、フェニル硝酸水銀、チメロサール、カルシウム二ナトリウムEDTA(エチレンジアミン四酢酸)、二ナトリウムEDTA、カルシウムベルセタミド(versetamide)ナトリウム、カルテリドール(calteridol)、DTPA、アセトン重硫酸ナトリウム、アルゴン、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸塩(ナトリウム/酸)、重亜硫酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシルアニソール、ブチル化ヒドロキシルトルエン(BHT)、システイン/システイナート(cysteinate)HCl、亜ジチオン酸ナトリウム、ゲンチジン酸(gentistic acid)、ゲンチジン酸エタノールアミン、グルタミン酸一ナトリウム、グルタチオン、ホルムアルデヒドスルホキシレートナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メチオニン、モノチオグリセロール(チオグリセロール)、窒素、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム、トコフェロールα、αトコフェロール水素コハク酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオウレア、無水塩化スズ、安息香酸ベンジル、ヒマシ油、綿実油、N,Nジメチルアセトアミド、エタノール、脱水化エタノール、グリセリン/グリセロール、N-メチル-2-ピロリドン、ラッカセイ油、PEG、PEG 300、PEG 400、PEG 600、PEG 3350、PEG 1000、PEG 4000、ケシ種子油、プロピレングリコール、ベニバナ油、ゴマ油、ダイズ油、植物油、オレイン酸、ポリオキシエチレンヒマシ油、無水酢酸ナトリウム、無水炭酸ナトリウム、トリエタノールアミン、デオキシコール酸酢酸(deoxycholate acetate)、硫酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、アルギニン、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸ナトリウム/酸、重炭酸ナトリウム、ホウ酸/ナトリウム、炭酸/ナトリウム、二酸化炭素、クエン酸塩、ジエタノールアミン、グルコノ-δ-ラクトン、グリシン/グリシンHCl、ヒスチジン/ヒスチジンHCl、塩化水素酸、臭化水素酸、L-リジン、マレイン酸、メグルミン、メタンスルホン酸、モノエタノールアミン、リン酸塩(酸、一塩基カリウム、二塩基カリウム、一塩基ナトリウム、二塩基ナトリウムおよび三塩基ナトリウム)、水酸化ナトリウム、コハク酸ナトリウム/二ナトリウム、硫酸、酒石酸ナトリウム/酸、トロメタミン(Tris)、アミノエチルスルホン酸、無菌重炭酸ナトリウム、L-システイン、ジエタノールアミン(dietholamine)、ジエチレントリアミン五酢酸、塩化第二鉄(fenic chloride)、アルブミン、加水分解ゼラチン、イノシトール(insitol)、D,L-メチオニン、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸(TWEEN(登録商標)80)、ソルビタンモノオレイン酸、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(TWEEN(登録商標)20)、レシチン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー(PLURONICS(登録商標))、ポリオキシエチレンモノラウレート、ホスファチジルコリン、グリセリル脂肪酸エステル、尿素、シクロデキストリン(例えばヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロースおよびポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0045】
いくつかの態様において、組成物は脂質粒子を含む。いくつかの態様において、脂質粒子はリポソームである。いくつかの態様において、脂質粒子はミセルである。いくつかの態様において、脂質粒子はホスホリピドである。いくつかの態様において、ホスホリピドは、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、卵スフィンゴミエリン(DPSM)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジセチルホスフェート(DCP)、L-α-ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルグリセロール(PG)およびそれらの組合せからなる群より選択される。いくつかの態様において、脂質はダイズPCである。
【0046】
0℃未満(例えば約-10℃)の凝固点を有する冷スラリーを形成するために、1つ以上の凝固点降下剤が賦形剤として滅菌水に添加され得る。冷スラリーの凝固点を低下することにより、該冷スラリーが依然として有効なパーセンテージの氷粒子を含みながら、流動可能性を保持することおよび/または注射可能なままであることが可能になる。適切な凝固点降下剤としては、塩(例えば塩化ナトリウム、ベタデックススルホブチルエーテルナトリウム)、イオン、乳酸加リンガー溶液、糖(例えばグルコース、ソルビトール、マンニトール、ヘタスターチ(hetastarch)、スクロース、(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリンまたはそれらの組合せ)、生体適合性界面活性剤、例えばグリセロール(グリセリン(glycerin)またはグリセリン(glycerine)としても公知)、他のポリオール(例えばポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコール)、他の糖アルコール、または尿素等が挙げられる。他の例示的な凝固点降下剤が、その全体において本明細書に援用される'01l公開に開示される。
【0047】
いくつかの態様において、組成物はさらにエタノールを含む。いくつかの態様において、組成物中のエタノールの濃度は約0.01% v/v~0.1% v/vである。いくつかの態様において、組成物中のエタノールの濃度は約0.07% v/vまたはそれ以下である。
【0048】
いくつかの態様において、組成物は、10mL未満の体積を有し、最大表面積を生じる形状を有する容器に充填される。何ら特定の理論に拘束されることを意図せず、大きな表面積-対-体積比は、凍結速度の増加を容易にして、大きな氷結晶の形成をさらに防ぎ、そのために冷スラリーの流動可能性および/または注射可能性を向上すると考えられる。いくつかの態様において、患者への冷スラリーの総注射体積は、約40mL~50mL、約50mL~60mL、約60mL~70mLであるかまたは約70mLより高い。いくつかの態様において、総注射体積は約60mLである。
【0049】
リポソーム性膜を越えて内部および外部の体積を分離して、大きな氷の結晶の形成を防ぐ溶液を製剤化することにより、冷スラリーを作製する方法が、その全体において参照により本明細書に援用される国際公開番号WO2021/016457に記載される。いくつかの態様において、リポソーム性膜を越えて内部および外部の媒体を分離することなく、脂質、水および少なくとも1つの賦形剤を有する組成物を作製することにより冷スラリーを形成する予期されない方法が本明細書に記載される。すなわち、リポソーム性膜の周囲の材料は、リポソーム性膜内に封入される材料と同じである。いくつかの態様において、形成されるリポソームはなく、脂質は組成物中に分散される。現在の組成物の別の利点は、組成物の任意の機械的操作または撹拌を必要としない冷スラリーを作製するための能力である。
【0050】
いくつかの態様において、本明細書に記載される組成物は均質な混合物であるので、容器全体の組成物媒体は均一であり、構成成分は一様に分配される。いくつかの態様において、非水溶性物質の添加により、大きな氷の結晶の形成が防がれるので、流動可能冷スラリーは、冷凍庫または別の冷たい環境から冷スラリーを取り出した直後に、被験体に注射され得るかまたは局所的に適用され得る。
【0051】
図1を参照すると、リポソームエマルジョン組成物の態様が示される。この態様において、リポソームの内部および外部の媒体は実質的に同じである。いくつかの態様において、リポソームエマルジョン組成物は、賦形剤および/または凝固点降下剤(例えばグリセロール)を含む。グリセロールは、比較的小さく、リポソーム膜を透過するので、グリセロールは、形成されたリポソームの内部および外部を自由に流動している。いくつかの態様において、選択される賦形剤は、リポソーム障壁を通過し得るので、リポソームの内部の媒体は、リポソームの外部の媒体と同質である。いくつかの態様において、組成物内のリポソームは約5μm~約300μmの直径である。いくつかの態様において、リポソームは約250μmの直径である。いくつかの態様において、リポソームは約5μm~20μmの直径または約8μm~14μmの直径である。いくつかの態様において、リポソームは約10μmの直径である。いくつかの態様において、リポソームは、組成物全体で大きさが変化し、サイズのランダムな分布(例えば正規分布)を有し得るので、組成物は、単位体積当たりより多くのリポソームを含み得る。いくつかの態様において、リポソームは、媒体およびその代わりに脂質を封入する閉鎖した構造ではないか、または他の非水溶性物質が組成物全体に分散される。
【0052】
いくつかの態様において、エマルジョン組成物中のリポソームの封入される体積は、組成物の総体積の約20%~約50%である。いくつかの態様において、封入される体積は、組成物の総体積の約30%~約40%である。いくつかの態様において、封入される体積は、組成物の総体積の約40%~約50%である。いくつかの態様において、封入される体積は、組成物の総体積の約35%~約40%である。いくつかの態様において、封入される体積は、組成物の総体積の約40%~約45%である。いくつかの態様において、封入される第1の体積は、組成物の総体積の約38%である。いくつかの態様において、封入される第1の体積は、組成物の総体積の約43%である。いくつかの態様において、封入される体積は、冷スラリーの流動可能性および注射可能性に影響を及ぼす。
【0053】
図2は、本開示のいくつかの態様により脂質粒子(例えばリポソーム)エマルジョン組成物を作製するためのプロセスフロー図を示す。
図2に示される態様に示されるように、プロセスは、クロロホルム溶液中のホスホリピド(例えばダイズPC)を、水と合わせて、二相系を作製することにより開始する。次いでこの二相系を(振盪により)撹拌して、粗製のエマルジョン組成物を作製する。粗製のエマルジョン組成物を押出しおよび/または蒸発工程に供して、粗製のリポソーム組成物および次いで最終リポソーム混合物を作製する。いくつかの態様において、粗製の混合物を均質化して、より均一で粗製混合物よりも処理が容易である最終混合物を作製し得る。次いで、最終リポソーム混合物を凍結乾燥して、凍結乾燥リポソーム組成物を作製する。次いで凍結乾燥リポソーム組成物を水和して、最終水和リポソーム組成物生成物を作製し得る。
図2に示されるプロセスを、本明細書において実施例1により詳細に記載する。
図2の態様は、リポソーム性組成物に言及するが、該方法は、異なる形態(例えば脂質ナノ粒子、ミセル等の層状または非層状構造、二層および非二層構造)を有する当該技術分野で公知の他の脂質粒子を作製するためにも使用され得る。
【0054】
驚くべきことに、組成物のそれぞれの構成成分のパーセンテージが組成物のいくつかの態様の機能に影響し得ることが見出された。
図3は、異なるレベルの賦形剤(グリセロール)および脂質にわたる冷スラリー特徴付けを示す。
図3は、より高い脂質含有量が流動可能性および注射可能性の増加を生じること、ならびにより高い含有量のグリセロール/賦形剤が、所定の温度でより低い氷パーセンテージを生じることを示す。これは、賦形剤が凝固点に影響を及ぼすことを示す。
図3は、平衡温度が低いほど、所定の冷スラリー中の氷のパーセンテージが高くなることを示す。
【0055】
ある態様において、組成物は、水、グリセロールおよび食塩水(またはPBS)および脂質からなる組成物の懸濁された形態またはエマルジョン中で安定である混合物であり、他の賦形剤を添加することなく流動可能および/または注射可能であるのに十分な氷粒子を含む。材料の凍結速度を増加することにより、組成物の流動可能性および/または注射可能性がさらに向上されることも発見された。凍結速度の最適化は、容器のための材料を選択すること、容器の幾何学構造および冷たい環境または冷凍庫の選択(例えば冷凍庫の湿度は、得られる冷スラリーの流動可能性および/または注射可能性を向上するように調節され得る)を含む。
【0056】
いくつかの態様において、組成物は脂質を含む。いくつかの態様において、組成物は、ホスホリピド(例えばダイズPC)で形成されるリポソームの形態である複数の脂質を含む。脂質は任意の種類(例えばホスホリピド、コレステロール、コンジュゲート脂質またはそれらの組合せ)であり得るか、または組成物は脂質の代わりの任意の他の非水溶性物質を含み得る。脂質(または脂質粒子)または非水溶性物質は、好ましくは組成物の約6% w/v~28% w/vの濃度で存在する。何ら特定の理論に拘束されることを意図せず、脂質(または脂質粒子、例えばリポソーム)または非水溶性物質は、これらの物質が大きな氷の結晶の形成を防ぐので、組成物を凍結温度(例えば約-25℃~-15℃、約-15℃~-10℃、約-15℃~-5℃、約-10℃~-5℃またはいくつかの態様において約-10℃)に曝露する場合に、エマルジョンを作製すると考えられる。これは、流動可能および/または注射可能でありながらも、組成物が氷粒子を有することを可能にする。
【0057】
いくつかの態様において、組成物は、その懸濁形態で安定であるか、または脂質を添加する場合にエマルジョンになる。いくつかの態様において、組成物は、水、凝固点降下剤(例えばグリセロール)、賦形剤および非水溶性物質からなる。いくつかの態様において、非水溶性物質は、大きな氷の結晶の成長を防ぐ。
【0058】
図4を参照すると、異なる冷スラリー組成物(バッチ)は、それらの温度プロフィールおよび氷含有量に関して特徴付けられる。異なる冷スラリーバッチを、40℃に加熱されて、冷スラリーの温度の変化を経時的に測定する熱電対ワイヤを有する銅プレートに配置した。プロットされたデータは、3つの異なる冷スラリーバッチについての経時的な温度変化を示す。温度は、それぞれの冷スラリーについて2つの異なる位置:銅プレートの内部に埋め込まれる(トレースA
c、B
c、C
cおよびD
c)およびプレートの外部に曝露される銅プレートの中間(トレースA
m、B
m、C
mおよびD
m)で測定される。温度トレースは、3つの別々に作製された冷スラリーバッチを示し:グリセリンおよび低下された-3.4℃の凍結設定点を有する冷スラリー組成物は、トレースA
cおよびA
mにより表される(すなわち脂質を有さない対照組成物)。15%重量/体積のグリセリン、0.26グラム/mLのダイズPCおよびPBSを有する3つの異なる冷スラリーバッチは、トレースB
cおよびB
m、C
cおよびC
m、D
cおよびD
mで表される。いくつかの態様において、
図4に示される冷スラリーバッチは、本明細書の実施例1に記載される方法を使用して製造され得る。冷スラリーバッチを最初に銅プレートに導入する場合、プレートの内部に埋め込まれる熱電対ワイヤ(トレースA
c、B
c、C
cおよびD
c)は最初に、加熱されたプレートの温かい温度(例えば時点0でトレースA
cについて31℃)を測定し、次いで導入された冷スラリーの冷却効果のためにより低い温度(例えば約2分でトレースA
cについて22℃)で平衡に達する。一方で、プレートの中間に配置された熱電対ワイヤについて、冷スラリーを銅プレートに最初に導入する場合、ワイヤは曝露されているので冷スラリーはすぐに熱電対ワイヤに接触する。これは、ワイヤに接触する結晶化冷スラリーのために、最初に中間の位置でマイナスの温度読出し(例えば時点0でトレースA
mについて-4℃)、次いで冷スラリーが加熱されたプレート上で融解を始めるのでより温かい温度(例えば約4分でトレースA
mについて18℃)で平衡を生じる。プレートの外側に曝露される熱電対ワイヤ(トレースA
m、B
m、C
mおよびD
m)は、結晶化スラリーが融解を開始する間の相転移を検出するために使用され得る。グラフは、15% v/vのグリセリンおよびダイズPCを有する3つの冷スラリー組成物が、進行する相転移を有することを示す。グラフはまた、同じ組成物を有する3つの冷スラリーバッチ(15% v/vのグリセリンおよびダイズPC:トレースB
cおよびB
m、C
cおよびC
mならびにD
cおよびD
m)が、熱電対の位置(中間/底)に応じて、(2つの熱電対ワイヤ位置により測定する場合に)同様の時間枠、および約15℃~19℃の同様の温度で、平衡に達することを示す。一方で、異なる組成物を有する冷スラリー(トレースA
cおよびA
m)は、他の3つとは異なる温度プロフィールを有し、熱電対の位置(中間/底)に応じて、約15℃~19℃の温度でより速く平衡に達する。そのため、
図4は、異なる組成物の冷スラリーが、異なる温度プロフィールを有し、同じ組成物を有する冷スラリーを通じてバッチごとの粘稠性が存在することを示す(例えばB
cおよびB
m、C
cおよびC
mならびにD
CおよびD
mで表される冷スラリーは、A
cおよびA
mにより表される冷スラリーのものとは異なる同様の温度プロフィールを有する)。
【0059】
ある態様において、組成物(例えば液体溶液の形態)を容器に詰める。ある態様において、容器は密封された容器を含む。ある態様において、容器は、シリンジ、カニューレ、カテーテル、管および/またはポンプ等であり得る。いくつかの態様において、シリンジに溶液を詰めて、密封する。
【0060】
シリンジは、充填されて無菌的であり得る(例えば無菌手順を使用する)か、またはシリンジは、予め充填され、密封され、次いで最終的に滅菌され得る(例えばガンマ、E-ビーム、EtO等を使用する)。組成物はまた、最終的に滅菌され得る任意の他の密封された容器内、例えば局所軟膏に使用される管、カニューレ、カテーテルおよび/またはポンプまたは次いで複数のシリンジを充填するために使用されるより大きな容器内に提供され得る。
【0061】
いくつかの態様において、予め充填された容器を標準的な冷凍庫または他の冷たい環境に配置することにより容器を凍らせる。臨床的なケアの点での標準的な冷凍庫または冷たい環境の温度は、約-25℃より低い、約-25℃~約-20℃、約-20℃~約-15℃、約-15℃~約-10℃、-10℃~約-5℃、約-5℃~約0℃および約0℃より高い温度に設定され得る。いくつかの態様において、温度は約-22℃~-18℃である。いくつかの態様において、生体材料は、所定の時間、冷凍庫に配置されるので、生体材料の温度は、所定のパーセンテージの氷粒子を有する冷スラリーを形成するために所望のレベルまで低下する。いくつかの態様において、組成物は、プロセスをスピードアップするために、液体窒素または他の液体冷却方法を使用して瞬間凍結される。
【0062】
いくつかの態様において、生体材料は、急速(snap)凍結により冷スラリーにされる。脂質を含むいくつかの態様において、氷粒子は、圧力の変化により、脂質粒子(例えばリポソーム)内に作製される。純水は、凍る場合に膨張する。しかしながら、特定の形状またはサイズの封入される水を用いて開始すると、高圧条件下で0℃未満まで低下される温度は、圧力が解放されるまで凍ることができず、水を膨張させ、そのためにリポソーム内の体積の急速凍結を引き起こす。急速凍結により、温度勾配が必要なくなる。
【0063】
いくつかの態様において、脂質粒子(例えばリポソーム)内の凍結した氷粒子は、超音波処理を使用して小さなリポソーム小胞を作製する機械的分散法により作製される。脂質は、水と混合されて超音波処理され、水を脂質粒子(例えばリポソーム)内に封入させ、次いで得られる混合物を冷却して、氷粒子を形成する。いくつかの態様において、本明細書に開示される方法により、開示されるエマルジョン組成物の種々の適用のための固定されたサイズの脂質粒子の作製が可能になる。いくつかの態様において、脂質粒子(例えばリポソーム)の調製の間の超音波処理は、特定の脂質(例えばホスホリピド)のサイズを制限して、脂質粒子が注射可能であることを確実にするために使用される。サイズは、エネルギー的に好ましく、リポソーム内体積の外部への拡散を防ぐ、最小の層状サイズを作製することによっても制御され得る。かかる最小のサイズの脂質粒子の自由エネルギー障壁は、脂質小胞の外側のより高い重量オスモル濃度の設定において水をトラップする。
【0064】
いくつかの態様において、最終組成物は、滅菌に供されて、製造および送達容器(vessel)(例えば容器、バッグまたはシリンジ)への充填の点から投与の点まで滅菌されたままである。いくつかの態様において、組成物は、調製の間に滅菌されて、製造、輸送および保存プロセスの全体を通じて滅菌されたままである。いくつかの態様において、組成物は、(例えば熱、照射、高圧等を使用して)ケアの点で滅菌される。いくつかの態様において、組成物は、容器(例えば容器、バッグまたはシリンジ)の内部にある間に滅菌される。
【0065】
いくつかの態様において、容器は、冷たい環境(例えば標準的な冷凍庫)から取り出されて、治療的利益のためにすぐに注射または適用される。いくつかの態様において、容器は、かたわらに置かれて、注射に理想的な温度まで温められる。一態様において、かかる温度が到達される場合についての指標がある。例えば、容器は、生体材料の温度または生体材料のおよその温度の視覚的モニタリングを可能にし得る、可視的温度指標を含み得る。温度指標は、経時的な温度変化を動的に追跡し得る、可逆的な温度標識などの温度検知標識、ステッカー、マーカー、クレヨン、ラッカー、ペレット等であり得る。温度指標は、容器内部(例えば内部溶液に直接入れられるペレット)、容器の内部壁上、容器の外部壁上、または容器内部の内容物の温度の視覚的追跡を可能にする任意の場所に配置され得る。
【0066】
凍結後、シリンジまたは容器は、冷凍庫、冷たい環境、または凍結するための他の方法/デバイスから取り出され得、冷スラリーは、治療利益のために、任意に局所適用部位(例えば強膜などの眼の一部に直接)により患者(例えばヒトまたは非ヒト動物)にすぐに注射または適用され得る。いくつかの態様において、スラリーは、侵襲性の外科的方法の後に組織に直接適用され得る。いくつかの態様において、治療部位は、神経の周囲の組織、眼の一部、血管、種々の臓器等であり得る。いくつかの態様において、シリンジは、かたわらに置かれ、注射または局所適用に理想的な温度に温められる。冷スラリーはまた、容器が冷凍庫から取り出される場合に、容器をしぼって冷スラリーを標的化治療部位上に散らすことなどにより、局所適用のために容器から取り出され得る。いくつかの態様において、冷スラリーは、脂質(または他の非水溶性物質)を含むために、任意のさらなる機械的操作なく、冷凍庫から取り出される直後に流動可能および/または注射可能な形態である。
【0067】
いくつかの態様において、流動可能および/または注射可能または局所適用される組成物は、種々の適用に治療的利益を提供する有意な量の氷を含む。例えば、冷スラリーの治療適用は、それぞれの内容がそれらの全体において参照により本明細書に援用される米国公開番号2019/0192424、2019/0183558および2022/0079648に開示される。
【0068】
いくつかの態様において、注射を介してヒト患者または被験体(例えば患者ではないヒト/動物または非ヒト動物)に投与される最終生成物は、水の滅菌氷粒子および変動量の賦形剤/添加剤、例えば凝固点降下剤で構成される冷スラリーである。例えば、冷スラリー中の氷粒子のパーセンテージは、スラリーの約10% w/w未満、約10% w/w~約20% w/w、約20% w/w~約30% w/w、約30% w/w~約40% w/w、約40% w/w~約60% w/w、約60% w/wより多く等を構成し得る。氷粒子のサイズは、種々のサイズの容器(例えば約7~約43のニードルゲージサイズ)を通る流動可能性を可能にするように、任意に脂質を添加することにより制御される。いくつかの態様において、氷粒子は、18~22ゲージの直径の範囲のニードルを通って流動可能および/または注射可能である。いくつかの態様において、氷粒子は、15~19ゲージの直径の範囲のニードルを通って容易に流動可能および/または注射可能である。種々のサイズの容器は、その全体において参照により本明細書に援用される'01l公開に記載される。さらに、他の方法は、(例えばフィルターを使用して)種々のサイズの容器を通る流動可能性および/または注射可能性を可能にするように氷粒子のサイズを条件づけるように使用され得る。いくつかの態様において、氷粒子の大部分は、注射に使用される管腔または容器の内径の約半分未満である直径を有する。例えば、氷粒子は、3mmのカテーテルを用いた使用のために約1.5mmまたはそれ以下の直径であり得る。
【0069】
本明細書に記載される組成物は、種々の適用に使用され得る。本開示のいくつかの態様により、組成物が流動可能および/または注射可能冷スラリーを形成するように組成物を凍結温度に曝露した後、組成物は、治療的処置のための領域に局所的に投与され得る。眼の表面に対する冷スラリーの局所投与の方法は、その全体において参照により本明細書に援用される米国公開番号2022/0079648(「'648公開」;米国出願通し番号17/439,749)に記載される。本明細書に記載される組成物はまた、治療効果のための標的の治療領域に注射され得る流動可能および/または注射可能冷スラリーを形成するために使用され得る。冷スラリーのための注射方法は、その全体において参照により本明細書に援用される'078公開に記載される。
【0070】
本明細書に開示されるデバイス、システム、組成物および方法は、本明細書に記載される特定の態様の範囲に限定されない。実際に、記載されるものに加えて、デバイス、システムおよび方法の種々の改変は、前述の記載から当業者に明らかになる。
【実施例】
【0071】
実施例
実施例1-冷スラリーリポソームエマルジョン組成物を作製する方法
以下に、本開示の特定の態様によるリポソームエマルジョン組成物を作製する例ならびに
図2に示される方法およびプロセスが記載される。
【0072】
A. 材料
ダイズPC(L-α-ホスファチジルコリン(95%)(ダイズ)、Avanti Lot 5049GUF175
クロロホルム、VWR Lot 19Kl656594
グリセロール、Spectrum Lot 2110091
Ix PBS、Intermountain Life Sciences、Lot 20903212
ゴムストッパ付き500mL丸底フラスコ、ChemGlass
50mL Falconチューブ、実験室ストック
60mLシリンジ、実験室ストック
25Gニードル、BD
DI水
ドライアイス
【0073】
B. 設備
はかり、EQ07052RD
ボルテックス、Fisher、No eq#
ロータリーエバポレーター、Buchi
凍結乾燥機
ホットプレート(ウォーターバス用)
超音波槽
Malvern ZetaSizer
【0074】
C. 手順
a. ダイズPC-クロロホルム溶液
1. 3グラムのダイズPCを100mLビーカーに測り入れた。
2. 50mLのクロロホルムをメスシリンダーに取った。
3. クロロホルムを、ダイズPCを含むビーカーに添加して、3グラムのダイズPC(L-α-ホスファチジルコリン(95%)(ダイズPC))を50mLのクロロホルム(60mg/mL)に溶解した。溶解する時間を記録した。
【0075】
b. 水を使用したエマルジョン形成
4. 500mLの丸底フラスコ中、50mLのダイズPC溶液および50mLの水を添加して、激しく振盪し、均一な乳白色の分散液を得た。開始および終了の時間を記録した。外観は白色、不透明で、視覚的に均質であった。
【0076】
c. リポソームを形成するための押出し
5. 60mLシリンジ中で吸引し、一度25Gニードルを通過させることにより試料を押し出した。収集物は500mL丸底フラスコ中にあった。
【0077】
d. ロータリー蒸発(合計30分)
6. フラスコをロータリーエバポレーターに取り付け、フラスコを約150rpmの速度で回転させた。
a. RPM設定:ダイアルを2にセットした
7. フラスコを部分的に35℃のウォーターバスにつけながら、真空下で5分間、蒸発を行った(300torrで開始し、煮沸または泡立ちを検出するように観察を維持した。約200~250torrに達するまで試料の損失を避けるように圧力を徐々に解放した)。
8. 真空を依然としてオンにしながら、回転速度を約250rpmまで上げて、圧力を徐々に低下させ、約30分かけて徐々に溶媒を蒸発させた。煮沸は激しくなかった。任意の過剰な煮沸または泡立ちが観察された場合、試料損失を防ぐために、必要な場合は真空を瞬間的に解放した。
9. 工程3~6は、合計で30分かかり、その終了時点で真空を解放し、約40mLの濃い懸濁液を含むフラスコを慎重に取り出した。
【0078】
e. 凍結乾燥工程
10. 総体積を、それぞれ50mLのガラスバイアル(予め計量)中2つの画分に分けた(すなわち1バイアル当たり約20mL)。
11. 蓋を取り外し、回収されたそれぞれのバイアルをKimwipeで覆い、ドライアイス/アセトン槽中で急速凍結し、凍結乾燥機に入れた。乾燥は一晩行った(しかしながら、いくつかの態様において、3つ以上の試料が添加される場合、48時間を要する)。
【0079】
f. 水和工程
12. 完全な乾燥後(凍結乾燥されたペレットはスポンジのように見える)、バイアルを計量し、バイアルの重量を差し引いて、生成物の重量を書き留めた。表1に工程1~12のパラメーターを示す。
【表1】
13. 2つの画分の重量は(1つのバッチにまとめて)約3gmであった(回収はほぼ100%)。
14. 6mLの水を1本のチューブに添加して激しくボルテックスにかけた。次いでそれを他のチューブに移し、激しくボルテックスにかけた。ピペットの先端を用いて、塊りを分散させた。
15. チューブを37℃のウォーターバス中で10分間インキュベートして、10分間、槽の超音波処理を続けた。
16. 合計10mLに達するまで水を添加した(合計約7mLが必要であり、脂質は混合物の約3mLを構成した)。これは0.3g/mL脂質濃度を生じた。
17. この体積に、1.4mLのグリセロールを添加して、これは:0.26g/mLの脂質、約11.4mLの合計体積および12%の全体グリセロール濃度を生じた。いくつかの態様において、この懸濁物のトラップされた体積は、41% v/v~48% v/vの範囲である。
18. 粒径およびζ電位を測定する
a. 粒径およびζ電位は、時間=0(生成物が作製された時間)で測定した
b. 時間=0でのゼータ電位分析結果
19. 必要な場合はASに提出する。
20. 1つのバイアルは室温で保存した。第2のバイアルは2℃~8℃で保存した。
21. 粒径およびζ電位分析を2週間後に繰り返した。
【国際調査報告】