(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(54)【発明の名称】光線力学療法による治療のためのシステム
(51)【国際特許分類】
A61N 5/06 20060101AFI20240604BHJP
A61B 18/18 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
A61B18/18 200
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576416
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 EP2022065621
(87)【国際公開番号】W WO2022258727
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523464853
【氏名又は名称】ヘメリオン セラピューティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】デュポン,クレマン
(72)【発明者】
【氏名】ラネット,サイモン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーマンデル,マクシミリアン
【テーマコード(参考)】
4C082
4C160
【Fターム(参考)】
4C082PA06
4C082PC10
4C082PG20
4C082PJ30
4C082PL05
4C160MM32
(57)【要約】
所定量の光エネルギーを提供するための、光増感剤を有する細胞によって境界が画定される体腔の光線力学療法による治療のためのものであり、外側中空ロッド(12)と、外側ロッドの内部に挿入される内側中空ロッドと、外側ロッドに固定され、内部が外側ロッドの内部と流体連通している、可膨張性バルーン(18)と、単一の部品で作製されたハンドル(20)と、を備えるものである。ハンドルは、光増感剤を活性化するべくバルーンを照射するために照射装置(16)を受け入れる。ハンドルとロッドは、1回のねじ込み動作で互いに密封状態で固定される。照射時間は、バルーンの各体積を、その外面における対応する光出力分布と、そのエネルギー量を提供するための対応する照射時間とのうちの少なくとも1つに関連付ける、伝達関数によって決定される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光増感化合物又はその前駆体を吸収した細胞を含む組織によって境界が画定される患者の体腔(100)に所定量の光エネルギーを提供するように構成された、患者の体腔(100)の光線力学療法による治療のためのシステム(10)であって、
中心軸(X)に沿って延び、遠位端(12D)を有する、外側中空ロッド(12)と、
前記外側中空ロッド(12)の内部に挿入されるように構成され、中心軸(X)に沿って延び、少なくとも部分的に透明な遠位端(14D)を有する、内側中空ロッド(14)と、
前記外側中空ロッド(12)の遠位端(12D)に固定され、内部が前記外側中空ロッド(12)の内部と流体連通しており、中心軸(X)を中心として回転対称を呈し、制御された様態で真空引きされるか又は所与の体積(V)まで流体が充填されるように設計されている、可膨張性バルーン(18)と、
2つの開口部を備え、第1の開口部(28)は前記内側中空ロッド(14)の内部に接続され、第2の開口部(30)は前記外側中空ロッド(12)の内部に接続される、ハンドル(20)と、
を含み、
前記内側中空ロッド(12)の内部は、前記外側中空ロッド(14)の内部から分離されており、
前記ハンドル(20)は単一の部品で作製されており、
前記ハンドル(20)の第1の開口部(28)は、可膨張性バルーン(18)を照射することを意図した照射装置(16)を密封状態で受け入れるように設計され、前記照射装置(16)は、光増感化合物を活性化するように適合された光を放出するように設計され、
前記ハンドル(20)の第2の開口部(30)は、ポンプ装置(22)に接続されるように設計され、
前記ハンドル(20)、前記外側中空ロッド(12)、及び前記内側中空ロッド(14)は、1回のねじ込み動作で互いに密封状態で固定されるように設計され、
所与の照射時間は、前記可膨張性バルーン(18)の各所与の体積(V)を前記可膨張性バルーン(18)の外面における対応する光出力分布と、所定量の光エネルギーを提供するための対応する照射時間とのうちの少なくとも1つに関連付ける、伝達関数によって決定される、
システム(10)。
【請求項2】
前記可膨張性バルーン(18)は、前記照射装置(16)によって放出された光を拡散させることができるように適合されている、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項3】
前記可膨張性バルーン(18)は、可変の容量を有し、弾性があり、可逆的に膨張可能であり、前記可膨張性バルーン(18)の内部に入っている流体の量に応じて複数の膨張した状態を呈する、請求項1又は2に記載のシステム(10)。
【請求項4】
前記伝達関数は、前記可膨張性バルーン(18)の各膨張した状態の体積(V)を、前記可膨張性バルーン(18)の外面における対応する光出力分布と、所定量の光エネルギーを提供するための対応する照射時間とのうちの少なくとも1つに関連付ける、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項5】
前記可膨張性バルーン(18)は細長い形状を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項6】
前記内側中空ロッド(14)の遠位端(14D)は、前記可膨張性バルーン(18)と永続的に接触するように設計される、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項7】
前記内側中空ロッド(14)は、前記可膨張性バルーン(18)と前記内側中空ロッド(14)の遠位端(14D)との間の永続的な接触を可能にするために、中心軸(X)に沿って摺動可能な摺動可能要素(27)を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項8】
前記内側中空ロッド(14)は、前記内側中空ロッド(14)の内部に挿入された照射装置(16)の遠位端(16D)を前記内側中空ロッド(14)の遠位端(14D)の先端(T)から所望の距離に係止するように適合された位置決め装置(15)を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項9】
前記内側中空ロッド(14)は可撓性である、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項10】
前記内側中空ロッド(14)は、前記内側中空ロッド(14)を中心軸(X)に関してセンタリングすることを目的としたセンタリング手段(25)を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項11】
患者の体腔(100)に所定量の光エネルギーを提供するように構成された、患者の体腔(100)の光線力学療法による治療のためのキットであって、請求項1~10のいずれか一項に記載のシステム(10)と、前記システム(10)に挿入されるように構成された照射装置(16)と、前記照射装置を制御するように構成された制御ユニット(26)とを含む、キット。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の光線力学療法による治療のためのシステム(10)を準備する方法であって、
- 内側中空ロッド(14)を外側中空ロッド(12)の内部に挿入するステップと、
- ハンドル(20)を外側中空ロッド(12)に接続するステップと、
- ハンドル(20)の第1の開口部(28)を通して、内側中空ロッド(14)の内部に照射装置(16)を挿入するステップと、
- 照射装置(16)を内側中空ロッド(14)の遠位端(14D)の先端(T)から所定の距離に位置決め及び/又は係止するステップと、
- ハンドル(20)、内側中空ロッド(14)、及び外側中空ロッド(12)を密封状態で固定するステップと、
- ハンドル(20)の第2の開口部(30)をポンプ装置(22)に接続するステップと、
- 可膨張性バルーン(18)を完全に空にし、空になったバルーン(18)のサイズを正確に決定して、参照値を設定することを可能にするべく、ポンプ装置(22)によって可膨張性バルーン(18)を真空引きするステップと、
- ポンプ装置(22)によって可膨張性バルーン(18)に所与の体積(V)の流体を充填するステップと、
- 伝達関数によって照射時間を決定するステップと、
を繰り返し実行することを含む、方法。
【請求項13】
光線力学療法によって、それを必要とする患者の癌を治療するための方法であって、
- 光増感化合物又はその前駆体を患者に投与するステップと、
- 請求項1又は請求項11のいずれか一項に記載のシステム(10)を提供する又は請求項12に記載の方法に係るシステム(10)を準備するステップと、
- システム(10)の可膨張性バルーン(18)を患者の体腔(100)内に位置決めするステップと、
- 照射装置(16)を作動させるステップと、
- 照射装置(16)を非作動にするステップと、
- 随意的に、前の2つのステップを1回又は数回繰り返すステップと、
を含む方法。
【請求項14】
前記可膨張性バルーン(18)は、前記照射装置(16)の2回の作動間に収縮する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、光線力学療法の前に、同時に、及び/又は後に、免疫療法による治療で患者を治療するステップをさらに含む、請求項13又は請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の体腔の光線力学療法による治療のためのシステム、及び、そのようなシステムを準備する方法に関する。
【0002】
これに限定されないが、本発明は、神経外科、特に膠芽腫の外科切除に特定の用途を見出すものである。
【背景技術】
【0003】
膠芽腫は、成人の最も頻度の高い悪性原始性脳腫瘍であり、フランスでの発生率は10万人に4人である。しかしながら、これは稀な病気と考えられる。特に手術と放射線・化学療法を含む従来の治療では、生存期間中央値は14.5か月である。膠芽腫の浸潤性の性質により、再発が避けられないことが或る程度説明される。放射線学的には完全な切除であっても、隣接する健康な組織に浸潤した腫瘍細胞は補助的な放射線・化学療法で十分に治療されず、切除腔に隣接した症例の80%以上で再発が起こる。外科切除の質が重要な予後因子であることが多くの研究で示されている。
【0004】
したがって、腫瘍の進行なしに生存率を向上させ、それにより、全体的な生存率を向上させるために、外科切除の質の局所制御の最適化が大きな課題である。
【0005】
そのような最適化に関して、切除腔の縁に送達される光線力学療法(PDT)との関連付けが検討されている。光線力学療法は、3つの要素、すなわち、光増感化合物、組織内の酸素、及び光増感化合物の活性化に適した特性をもつ光、の相互作用に依存する。患者の体内に注入された光増感化合物は、すべての細胞に吸収されるが、腫瘍細胞内により長時間とどまる。光増感化合物が光によって活性化されると、光化学反応が起こり、腫瘍細胞が破壊される。
【0006】
膠芽腫の光線力学療法による治療の例は、Lyons et al.,“The effects of PDT in primary malignant brain tumours could be improved by intraoperative radiotherapy”,Photodiagnosis and Photodynamic Therapy,2012,9(1):40-45で開示されている。光線力学療法による治療のための公知のシステムは、治療する体腔に照射することを意図した照射装置を備えるタイプのものである。この照射装置は、対向する近位端と遠位端との間の中心軸に沿って延びる照射部材を備える。この照射部材は、
- 光増感化合物を活性化するように適合された光を放出するための発光面を有し、発光面は照射部材の遠位端に配置されている、コアと、
- 照射部材の遠位端に配置されたバルーンを有し、バルーン内に配置された発光面を有するコアを受け入れるように適合されている、中空のシースと、
を備え、バルーンは内部空間を画定する内面と外面とを有する壁を備えており、壁は可撓性であり、発光面によって放出された光を拡散させることができるように適合されており、バルーンは、壁が中心軸を中心として回転対称を呈し、発光面によって放出された光を拡散させるべく内部空間に光拡散溶液が充填される膨張した状態と、内部空間が空である収縮した状態とを呈する。
【0007】
しかしながら、公知のシステムでは生存率を顕著に向上させることができていない。特に、そのようなシステムでは、フルエンス(J/cm2)又は効率的なパターン露光の観点で標準化及び制御された治療を送達することが世界的にできていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、最新技術のシステムよりもセットアップ及び組み立てが容易な、したがって、より安全なシステムを提供するに際して、上述の問題を解決することを目的としている。
【0009】
本発明はさらに、そうするための、便利な、正確な、組み立てが容易な、取り扱いが容易なシステムを提供することを目的としている。このようなシステムにより、手術に必要な時間が短縮され、したがって、麻酔に関連したリスクが大幅に低下する。取り扱いが容易なシステムにより、操作のリスク及び滅菌の破綻がさらに低減される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は、光増感化合物又はその前駆体を吸収した細胞を含む組織によって境界が画定される患者の体腔に所定量の光エネルギーを提供するように構成された、患者の体腔の光線力学療法による治療のためのシステムであって、
○中心軸に沿って延び、遠位端を有する、外側中空ロッドと、
○外側中空ロッドの内部に挿入されるように構成され、中心軸に沿って延び、少なくとも部分的に透明な遠位端を有する、内側中空ロッドと、
○外側中空ロッドの遠位端に固定され、内部が外側中空ロッドの内部と流体連通しており、中心軸を中心として回転対称を呈し、制御された様態で真空引きされるか又は所与の体積まで流体が充填されるように設計されている、可膨張性バルーンと、
○2つの開口部を備え、第1の開口部は内側中空ロッドの内部に接続され、第2の開口部は外側中空ロッドの内部に接続される、ハンドルと、
を含むシステムに関する。
【0011】
このシステムでは、内側中空ロッドの内部は、外側中空ロッドの内部から分離されており、ハンドルは単一の部品で作製され、ハンドルの第1の開口部は、可膨張性バルーンを照射することを意図した照射装置を密封状態で受け入れるように設計され、照射装置は、光増感化合物を活性化するように適合された光を放出するように設計され、ハンドルの第2の開口部は、ポンプ装置に接続されるように設計され、ハンドル、外側ロッド、及び内側ロッドは、1回のねじ込み動作で互いに密封状態で固定されるように設計され、所与の照射時間は、可膨張性バルーンの各所与の体積を、可膨張性バルーンの外面における対応する光出力分布と、所定量の光エネルギーを提供するための対応する照射時間とのうちの少なくとも1つに関連付ける、伝達関数によって決定される。
【0012】
このようにして、このソリューションにより任意の種類の体腔を治療することができる。可膨張性バルーンの体積は任意の体腔のサイズに適合させることができ、可膨張性バルーンの体積に対応する光出力分布がわかっているため、適切な量の光エネルギーを完全且つ均一な様態で送達することが可能である。
【0013】
本発明に係るシステムは、以下の特徴のうちの1つ又はいくつかを、互いに別々に又は互いに組み合わせて備え得る:
- 可膨張性バルーンは、照射装置によって放出された光を拡散させることができるように適合させることができる、
- 可膨張性バルーンは、可変の容量を有することができ、弾性があり、可逆的に膨張可能であり、可膨張性バルーンの内部に入っている流体の量に応じて複数の膨張した状態を呈する、
- 伝達関数は、可膨張性バルーンの各膨張した状態の体積を、可膨張性バルーンの外面における対応する光出力分布と、所定量の光エネルギーを提供するための対応する照射時間とのうちの少なくとも1つに関連付けることができる、
- 可膨張性バルーンは細長い形状を有することができる、
- 内側中空ロッドの遠位端は、可膨張性バルーンと永続的に接触するように設計することができる、
- 内側中空ロッドは、可膨張性バルーンと内側中空ロッドの遠位端との間の永続的な接触を可能にするために、中心軸に沿って摺動可能な摺動可能要素を備えることができる、
- ハンドル、外側ロッド、及び内側ロッドは、1回のねじ込み動作で互いに密封状態で固定されるように設計される、
- 内側中空ロッドは、内側中空ロッドの内部に挿入された照射装置の遠位端を内側中空ロッドの遠位端の先端から所望の距離に係止するように適合された位置決め装置を備えることができる、
- 内側中空ロッドは可撓性とすることができる
- 内側中空ロッドは、前記内側中空ロッドを中心軸に関してセンタリングするように構成されたセンタリング手段を有することができる。
【0014】
本発明はさらに、患者の体腔に所定量の光エネルギーを提供するように構成された、患者の体腔の光線力学療法による治療のためのキットであって、上述の技術的特徴のいずれか1つに係るシステムと、前記システムに挿入されるように構成された照射装置と、照射装置を制御するように構成された制御ユニットとを含む、キットに関する。
【0015】
本発明はさらに、上に挙げた特徴の1つ又はいくつかに係る光線力学療法による治療のためのシステムを準備する方法であって、
- 内側中空ロッドを外側中空ロッドの内部に挿入するステップと、
- ハンドルを外側中空ロッドに接続するステップと、
- ハンドルの第1の開口部を通して、照射装置を内側中空ロッドの内部に挿入するステップと、
- 照射装置を内側中空ロッドの遠位端の先端から所定の距離に位置決め及び/又は係止するステップと、
- ハンドル、内側中空ロッド、及び外側中空ロッドを密封状態で固定するステップと、
- ハンドルの第2の開口部をポンプ装置に接続するステップと、
- 可膨張性バルーンを完全に空にし、空になったバルーンのサイズを正確に決定して、参照値を設定することを可能にするべく、ポンプ装置によって可膨張性バルーンを真空引きするステップと、
- ポンプ装置によって可膨張性バルーンに所与の体積の流体を充填するステップと、
- 伝達関数によって照射時間を決定するステップと、
を繰り返し実行することを含む、方法に関する。
【0016】
本発明はまた、光線力学療法によって、それを必要とする患者の癌を治療するための方法であって、
- 光増感化合物又はその前駆体を患者に投与するステップと、
- 上に挙げた特徴のいずれか1つに係るシステムを提供する又は上で説明した方法に係るシステムを準備するステップと、
- システムの可膨張性バルーンを患者の体腔内に位置決めするステップと、
- 照射装置を作動させるステップと、
- 照射装置を非作動にするステップと、
- 随意的に、前の2つのステップを1回又は数回繰り返すステップと、
を含む方法に関する。
【0017】
この方法によれば、可膨張性バルーンは、照射装置の2回の作動間に収縮させることができ、この方法は、光線力学療法の前に、同時に、及び/又は後に、免疫療法による治療で患者を治療するステップをさらに含むことができる。
【0018】
以下に例示として与えられる本発明の実施形態の1つ又はいくつかの詳細な説明を読むことで、本発明はよりよく理解され、その他の目的、詳細、特徴、及び利点がより明確に明らかとなるであろう。これらは、添付の概略図を参照する、単なる例示的な限定ではない例である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】患者の体腔内に挿入された本発明に係るシステムの一実施形態の概略図である。
【
図2】患者の体腔内で使用中の本発明に係るシステムの一実施形態の概略図である。
【
図3a】本発明に係る外側中空ロッドの概略図である。
【
図3b】本発明に係る内側中空ロッドの概略図である。
【
図4】本発明に係るシステムの一実施形態の斜視詳細図である。
【
図5】本発明に係るシステムの一実施形態の縦断面図である。
【
図6】本発明に係るシステムの伝達関数のグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1からわかるように、本発明に係る患者の体腔100の光線力学療法による治療のためのシステム10は、
- 外側中空ロッド12(
図3a参照)と、
- 内側中空ロッド14(
図3b参照)と、
- 照射装置16と、
- 可膨張性バルーン18と、
- ハンドル20と、
を含む。
【0021】
本発明に係るシステム10は、ポンプ装置22及び流体リザーバ23に接続することを目的としている。
【0022】
一実施形態では、患者の体腔100は、自然体腔、すなわち、器官及び他の構造を収容するスペース又は区画である。自然体腔はまた、いわゆる「潜在的スペース」又は「漿膜腔」、すなわち、通常多かれ少なかれ押し合い(言い換えれば、直接並置され)、生理学的又は病態生理学的イベントの際に開く2つの隣接する構造間のスペースを含む。自然体腔の例としては、背側体腔(頭蓋腔及び脊髄腔を含む)及び腹側体腔(胸腔、腹腔、及び骨盤腔を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。潜在的スペースの例としては、2つの胸膜腔(右及び左)、上縦隔、心膜腔、及び腹膜腔が挙げられるが、これらに限定されない。各体腔及び潜在的スペースは、当業者によく知られているサブ腔又はサブスペースに細分され得る。
【0023】
一実施形態では、患者の体腔100は、外科的に形成された切除腔、すなわち、例えば、組織、器官、又はその一部などの体の一部、或いは腫瘍、特に固形腫瘍の外科的除去後に残るスペースである。
【0024】
「固形腫瘍」とは、リンパ癌以外の腫瘍及び/又は転移(どこにあっても)を意味し、例えば、脳及び他の中枢神経系腫瘍(髄膜、脳、脊髄、脳神経、又は中枢神経系の他の部分の腫瘍、例えば、膠芽腫又は髄芽腫など);頭部及び/又は頸部癌;乳房腫瘍;循環器系腫瘍(心臓、縦隔、胸膜、又は他の胸腔内器官の腫瘍、並びに血管腫瘍など);排泄系腫瘍(腎臓、腎盂、尿管、膀胱、又は他の泌尿器官の腫瘍など);消化管腫瘍(食道、胃、小腸、結腸、結腸直腸、直腸S状結腸移行部、直腸、肛門、又は肛門管の腫瘍など)、肝腫瘍(肝細胞癌など)、肝内胆管腫瘍、胆嚢腫瘍、胆道腫瘍、膵臓腫瘍、及び他の消化器官の腫瘍;頭頸部腫瘍;口腔腫瘍(唇、舌、歯肉、口底、口蓋、又は口の他の部分の腫瘍、並びに耳下腺腫瘍、唾液腺腫瘍、並びに扁桃、中咽頭、鼻咽頭、梨状陥凹、下咽頭、或いは唇、口腔、又は咽頭の他の部位の腫瘍など);生殖器系腫瘍(外陰部、膣、子宮頸部、子宮体部、子宮、卵巣、又は女性の生殖器官に関連する他の部位の腫瘍、並びに陰茎、前立腺、精巣、又は男性の生殖器官に関連する他の部位の腫瘍など);呼吸器腫瘍(鼻腔、中耳、副鼻腔、喉頭、気管、気管支、胸膜、又は肺の腫瘍、例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、又は悪性胸膜中皮腫など);骨格系腫瘍(骨、四肢の関節軟骨、又は骨関節軟骨の腫瘍など);皮膚腫瘍(皮膚の悪性黒色腫、非黒色腫皮膚癌、皮膚の基底細胞癌、皮膚の扁平上皮癌、中皮腫、カポジ肉腫など)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
上に挙げた腫瘍の中には、自然体腔内で発生するものもあり、それらは当該技術分野では「漿膜癌」と呼ばれる。そのような漿膜癌の例としては、鼻癌、口腔癌、中皮腫、悪性胸膜中皮腫、胸膜転移、膀胱癌、子宮癌、膵臓癌、食道癌、胃癌、及び腹膜播種が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
一実施形態では、光線力学療法による治療は、術中に、つまり、体の一部又は腫瘍の切除と同じ医療処置中に行われるか、又は術後に、つまり、体の一部又は腫瘍の切除後に別の医療処置中に行われ得る。
【0027】
特定の実施形態では、固形腫瘍は膠芽腫であり、患者の体腔100は、膠芽腫の切除によって生じたものである。
【0028】
特定の実施形態では、固形腫瘍は悪性胸膜中皮腫であり、患者の体腔100は胸膜腔である。
【0029】
特定の実施形態では、固形腫瘍は肝細胞癌であり、患者の体腔100は、肝細胞癌の切除によって生じたものである、又は代替的に、患者の体腔100は、腹腔、例えば、結腸間膜上のスペースである。
【0030】
特定の実施形態では、固形腫瘍は膵臓腫瘍であり、患者の体腔100は、膵臓腫瘍の切除によって生じたものである。
【0031】
図3a及び
図5からわかるように、外側中空ロッド12は、中心軸Xに沿って延び、近位端12P及び遠位端12Dを有する。外側中空ロッド12は、好ましくは、発光装置16によって放出された光の拡散を可能にする生体適合性材料、特に透明又は半透明の材料で作製される。外側中空ロッド12は、好ましくは剛性である。外側中空ロッド12は、トロカールに似た装置であってもよい。これは、可膨張性バルーン18を患者の体を通して体腔100の方に及び体腔100内に挿入及び誘導するためにオペレータによって用いられることを目的としている。外側中空ロッド12は、流体リザーバ23に接続され、ポンプ装置22によって前記流体リザーバ23と流体連通するように構成される。ポンプ装置22は、受動又は能動ポンプ装置22であり得る。これは、手動で又は電子的に作動可能であり得る。これは、例えば、シリンジタイプ(例えば50mL)のポンプ装置であり得る。
【0032】
図3b、
図4、及び
図5からわかるように、内側中空ロッド14も中心軸Xに沿って延び、同じく近位端14P及び遠位端14Dを有する。内側中空ロッド14はポリプロピレンで作製され得る。内側ロッド14の遠位端14Dは、少なくとも部分的に透明であり、したがって、透明な部分24を備える。前記透明な部分は、例えば、スチレンメチルメタクリレートで作製することができる。内側ロッド14の遠位端14Dの少なくとも部分的に透明な部分24の長さは50~100mmである。内側ロッド14は、外側中空ロッド12の内部に挿入されるように構成される。外側ロッド12と内側ロッド14は両方とも50~150cmの長さを有する。外側中空ロッドは7~12cmの幅を有し、一方、内側中空ロッド14は、2~4cmの幅を有する。外側中空ロッド12は或る長さを有する。
【0033】
内側中空ロッド14は、ポリプロピレンで作製され得る、したがって、可撓性である。外側中空ロッド12の内部の中心軸Xに沿った内側中空ロッド14のセンタリングを保証するために、内側中空ロッド14は、前記内側中空ロッド14を中心軸Xに関してセンタリングするように構成されたセンタリング手段25を有する。
【0034】
内側中空ロッド14の内部は、照射装置16の少なくとも一部を受け入れるように構成され、したがって、外側中空ロッド12の内部を循環する任意の可能性のある流体から照射装置16を密封するべく、外側中空ロッド12の内部から分離されている。本発明に係るシステム10は位置決め装置15を含む。この位置決め装置15は、システム10の効率を最大にするべく、照射装置16を内側中空ロッド14の内部に適正に位置決めすることを目的としている。一部の実施形態では、位置決め装置は、ハンドル20の内部に存在する。別の実施形態では、位置決め装置は、内側中空ロッド14の内部に存在する。この実施形態では、位置決め装置15は、内側中空ロッド14の内部に挿入された照射装置16の遠位端16Dを内側中空ロッド14の遠位端14Dの先端Tから所望の距離に係止するように適合されている。この実施形態では、この位置決め装置15は、例えば、前記内側中空ロッド14の内部で内側中空ロッド14の先端から特定の距離にある当接ピース、又は照射装置16の遠位端16Dの位置を調整し、次いで、例えばハンドル20にあるピンチ要素によって係止することを可能にする目盛り付きスケールとすることができる。位置決め装置15は、(確認すべき)内側ロッド14の遠位端14Dの部分的に透明な部分24に関して照射装置16の位置を最適化するべく、照射装置16を係止することを目的としている。
【0035】
照射装置16は、光を放出するように設計される。一実施形態では、
図2からわかるように、光は、患者の体腔100の境界を画定する組織によって吸収された又はそうでなければこれらの組織内で光増感化合物前駆体から代謝された、光増感化合物を活性化するように適合される。上で既に述べたように、光線力学療法(PDT)による治療は、光増感化合物の活性化に依存し、前記光増感化合物(又はその前駆体)は、患者に事前に投与され、患者の体腔100の境界を画定する組織の細胞によって吸収されている。この活性化には特定の光が必要であり、前記光は、光増感化合物が優先的に蓄積される腫瘍細胞の破壊を可能にする物理的特徴を有する。したがって、本発明に係るシステム10は、患者の体腔100に所定量の光エネルギーを提供するように構成され、体腔100は、光増感化合物を吸収した細胞を含む組織によって境界が画定される。
【0036】
光増感化合物及びその前駆体の例は当該技術分野でよく知られている。これらには、ポルフィリン、クロリン、及び染料が含まれるが、それに限定されない。具体例としては、5-アミノレブリン酸(ALA)、ベルテポルフィン、エチオプルプリン、テトラ(m-ヒドロキシフェニル)クロリン(mTHPC)、モテキサフィンルテチウム、9-アセトキシ-2,7,12,17-テトラキス-(β-メトキシエチル)-ポルフィセン(ATMPn)、亜鉛フタロシアニン、ナフタロシアニン、ポルフィマーナトリウム、メソ-テトラヒドロキシフェニルクロリン、アミノレブリン酸メチル、アミノレブリン酸ヘキシル、モノ-L-アスパルチルクロリンe6(NPe6)、2-(1-へキシルオキシエチル)-2-デビニルピロフェオホルビド-a(HPPH)、スルホン化アルミニウムフタロシアニン、アザジピロメテン、シリコンフタロシアニン(Pc4)、及びそれらの塩、プロドラッグ、及び誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
一実施形態では、光増感化合物の前駆体は、Gliolan(登録商標)(Medac GmbH)、Gleolan(登録商標)(NX Development Corp)、Levulan(登録商標)(DUSA Pharmaceuticals, Inc.)、又はAmeluz(登録商標)(Biofrontera Bioscience GmbH)の商標名で市販されている、5-アミノレブリン酸である。
【0038】
光線力学療法による治療が術中に、つまり、体の一部又は腫瘍の切除と同じ医療処置中に行われる一実施形態では、光増感化合物は、まず医療処置の前に患者に投与することができ、外科医が体腔100内の腫瘍の視覚的予後予測を行い、次いで、代謝されると、光線力学療法のための光増感剤として用いられることを可能にする。
【0039】
より正確には、照射装置16は、可膨張性バルーン18を照射することを意図している。照射装置16は、レーザ光源に接続された光ファイバであり得る。前記光源は、正面光源、円筒光源、又は球面光源であり得る。これは、単一の又は複数のリング光拡散チップを備え得る。
【0040】
照射装置16は、長時間にわたって(例えば、連続2時間まで)作動させてもよく、又はより短期間にわたって連続的に作動及び非作動にしてもよく、したがって、可変の照射時間を提供する。これにより、以下の2つの異なるタイプの治療が可能となる:
- 照射装置16を数分又は数時間連続的に作動させることができる、連続治療タイプ(「常時オン」照射)、
- 照射装置16がそれぞれ作動及び非作動(オン/オフ照射)にされる一連の「オン時間」及び「オフ時間」を含み、各「オン時間」及び「オフ時間」は互いに独立して数秒又は数分間持続する、分割治療タイプ。
【0041】
より具体的には、各所与の照射時間は、バルーン18の任意の所与の体積Vを、可膨張性バルーン18の外面における対応する光出力分布と、必要な所定量の光エネルギーを提供するための対応する照射時間とのうちの少なくとも1つに関連付ける、伝達関数によって決定される。
【0042】
照射時間は、可膨張性バルーン18の体積Vの各値の範囲を、
○可膨張性バルーン18の外面における光出力値のセットと、
○所定量の光エネルギーを提供するための照射時間と、
のうちの少なくとも1つに関連付ける伝達関数に基づいて、オペレータによって手動で制御され得る。
【0043】
変形例では、照射時間は、制御ユニット26によって自動的に制御され得る。例えば、53mLの体積の場合、制御ユニット26は、所定量の光エネルギー、例えば25J/cm2に対応する照射時間を計算する。光増感化合物を活性化するのに必要な通常のエネルギー量は、当該技術分野でよく知られており、約1J/cm2~約40J/cm2の範囲であり得る。
【0044】
伝達関数の例が
図6に示されており、照射時間(分)(軸A2)は、注入された光拡散溶液の体積V(mL)(軸A1)の関数で表される。注入された流体の体積Vは、可膨張性バルーン18の体積Vに対応する。
図6からわかるように、光拡散溶液の各体積は、所定量の光エネルギーを提供するための対応する照射時間に関係する。
【0045】
可膨張性バルーン18は、外側中空ロッド12の遠位端12Dに固定される。可膨張性バルーン18の内部は、前記外側中空ロッド12の内部と流体連通しており、したがって、外側中空ロッド12の内部を通って流れる任意の流体が可膨張性バルーン18に入ることを可能にする。
【0046】
可膨張性バルーン18は、照射装置16によって、より具体的には内側ロッド14の遠位端14Dの少なくとも部分的に透明な部分24によって放出された光を拡散させることができるように適合されている。
【0047】
可膨張性バルーン18は、弾性特性を呈し、可変の容量、したがって、可変の体積Vを有する。したがって、流体リザーバ23からの任意の種類の流体をこれに充填して、その最大容量1.5L以下の任意の所与の体積まで膨張させることができる。本発明との関連では、可膨張性バルーン18に、好ましくは光拡散溶液が充填される。特に、濃度0.1%の光拡散溶液は、Fresenius Kabi France社が開発した濃度20%のイントラリピッド液などのintralipide(登録商標)液5mLを生理学的血清1Lに注入して混合物を形成し、均一な溶液が得られるまで攪拌することによって調製され得る。
【0048】
可膨張性バルーン18は可逆的に膨張可能であるため、可膨張性バルーン18の内部に注入される流体の量に応じて複数の膨張した状態を呈する。したがって、可膨張性バルーン18は、その体積Vを制御する、したがって、前記体積Vを患者の体腔100に適合させるために、制御された様態で真空引きするか又は流体を充填することができる。したがって、伝達関数は、各膨張した状態の体積Vを、可膨張性バルーン18の外面における対応する光出力分布と、所定量の光エネルギーを提供するための対応する照射とのうちの少なくとも1つに関連付ける。各所与の体積V又は膨張した状態は、患者の体腔100のサイズによって決まる。より正確には、動作中に、可膨張性バルーン18は、その内部空間全体の充填によって患者の体腔100に適合する。したがって、可膨張性バルーン18に流体が充填され、したがって、可膨張性バルーン18の壁が体腔100の境界を画定する組織に接触するまで膨張する(膨らむ)。
【0049】
可膨張性バルーン18は、手動で又はポンプ装置22によって膨張される。可膨張性バルーン18の所与の体積Vは、オペレータによって記録されるか又は制御ユニット26によって記憶される。ポンプ装置22はまた、制御ユニット26によって制御され得る。
【0050】
体腔内での規則的な均一な光の拡散を保証するために、可膨張性バルーン18は、中心軸Xを中心として回転対称を呈する。可膨張性バルーン18は、好ましくは、透明又は半透明のシリコーンで作製される。
【0051】
患者の体を通って体腔100内に向かってより容易に移動させるために、可膨張性バルーン18は、好ましくは細長い形状を有する。
【0052】
可膨張性バルーン18の安定性を向上させ、膨張時にセンタリング及び十分に広がった状態を維持するために、内側中空ロッド14の遠位端14Dは、例えば内側中空ロッド14の近位端14P又は遠位端14Dのいずれかに接続された摺動可能要素27(
図5参照)によって、バルーン18と永続的に接触するように設計される。この摺動可能要素27は、中心軸Xに沿って摺動可能であり、可膨張性バルーン18、好ましくは可膨張性バルーン18の先端と内側中空ロッド14の遠位端14Dとの間の永続的な接触を可能にする。
【0053】
ハンドル20は、動作中にオペレータがシステム10を安全に操作することを可能にする。ハンドル20はさらに、手術室に通常存在する従来の運搬装置にシステム10を安全に固定することを可能にする。これらの運搬装置は、「器具保持アーム」として普通に知られている。前記操作に関して、ハンドル20は、オペレータが掴みやすくするために人間工学的形状を有する。一部の実施形態では、ハンドル20はさらに、関節アームがそれを安全に把持するように特別に設計された円形把持ゾーン29(
図3b参照)を備え、したがって、照射装置16の作動中にシステム10を所与の位置に安全に維持することが可能となる。一部の実施形態(
図4参照)では、ハンドル20は、単一の部品で作製され、外側中空ロッド12の近位端12P及び内側中空ロッド14の近位端14Pに接続される。したがって、単一の部品で作製されたハンドル20を使用し、液密性を達成するためにシール要素又はジョイントを追加する必要なしに外側中空ロッド12及び内側中空ロッド14に固定することができ、したがって、ハンドル20、したがってシステム10の実用性及び効率が向上する。ハンドル20は単一の部品から作製されるので、簡単な手動の「1回のジェスチャー」でハンドル20を外側ロッド12及び内側ロッド14に固定することがさらに可能となる。ハンドル20が単一の部品で作製されていることで、ハンドル20、外側ロッド12、及び内側ロッド14を1回のねじ込み動作で互いに密封状態で固定することが直接可能となる。一部の実施形態では、ハンドル20は、互いに対して移動可能であり得るいくつかの部品20A、20B、20Cを備え得る。しかしながら、これらの実施形態では、これらの異なる部品20A、20B、20Cは互いに取り外すことができないため、ハンドル20は依然として単一の部品であると考えられ、液密性を達成するためにシール要素又はジョイントを追加する必要なしに、ハンドル20は依然として単一の独立した技術的要素として操作される。
【0054】
代替的に、
図3bに示されている実施形態では、ハンドル20は、3つの互いに対して可動の部品20A、20B、及び20Cを備える。3つの部品20A、20B、及び20Cはすべて、中心軸Xに沿って位置合わせされる。中央部品20Bは、内側中空ロッド14にしっかりと固定され、遠位部品20Aと近位部品20Cは、両方とも中央部品20Bの周りで反対方向に回転可能である。遠位部品20A及び近位部品20Cが中央部品20Bの周りで第1の方向に回転する際に、遠位部品21A及び近位部品20Cは中央部品20Bの周りでそれぞれねじ込まれる/ねじ式に取り外される。遠位部品20A及び近位部品20Cが中央部品20Bの周りで第2の方向に回転する際に、遠位部品21A及び近位部品20Cは中央部品20Bの周りでそれぞれねじ式に取り外される/ねじ込まれる。遠位部品21Aと近位部品20Cの両方をねじ込む/ねじ式に取り外すためには、それらを反対方向に回転させる必要がある。遠位部品20Aをねじ込むことにより、照射装置16を固定することができる。近位部品20Cをねじ込むことにより、外側ロッド12を固定することができる。
【0055】
ハンドル20は、2つの開口部28、30(
図3b、
図4、及び
図5参照)をさらに備え、第1の開口部28は内側中空ロッド14の内部に接続され、第2の開口部30は外側中空ロッド12の内部に接続される。
【0056】
ハンドル20の第1の開口部28は、照射装置16を内側中空ロッド14の内部に少なくとも部分的に導入するべく、照射装置16を密封状態で受け入れるように設計される。これはセプタムによって回復し得る。ハンドル20の第2の開口部30は、流体リザーバ23から外側中空ロッド12を通って可膨張性バルーン18に向かう方向と可膨張性バルーン18から離れる方向との両方に流体を循環させるべく、ポンプ装置22に接続されるように設計される。
【0057】
第2の開口部30は、流体リザーバ23から可膨張性バルーン18への方向及び可膨張性バルーン18から流体リザーバ23への方向のいずれかの方向の流体の流れを手動で又は制御ユニット26によって制御するべく、バルブ32(
図3b、
図4、及び
図5参照)を備える。バルブ32が手動で作動される場合、オペレータが簡単な動きで開/閉できるようにするために、バルブ32はウィング又はハンドルのような要素を備える。一部の特定の実施形態では、バルブ32は自発的な非自動バルブであり、これは、純粋に機械的手段によって作動され、制御ユニット26の介入もオペレータの介入も必要としないことを意味する。これらの実施形態のうちの1つでは、バルブは、第2の開口部30内に完全に挿入された一片の柔軟な変形可能な材料を備え、これはいわゆる緊密なプラグを形成し、したがって、第2の開口部30を閉鎖する。流体が第2の開口部30を通過することを可能にするために、前記柔軟な変形可能なプラグは、オペレータがバルブ32を手動で開く又は閉じる必要なしにプラグを通してシリンジの針を押すことを可能にする中央スリットを備え、したがって、システム10を操作するのに必要な動きが少なくなる。シリンジが取り出されるときに、スリットの表面が互いに合わさり、プラグが再び緊密になる。この説明に対応する公知のバルブは、Nordson Medicalによる「needle-free swabable valve(無針スワバブルバルブ)」である。
【0058】
一部の実施形態では、システム10は、部分的に又は全体的に廃棄可能である。
【0059】
便利に、迅速に、簡単に使えるように、ハンドル20、外側中空ロッド12、及び内側中空ロッド14は、1回のねじ込み動作で互いに密封状態で固定されるように設計される。したがって、より正確には、オペレータは、簡単に片方の手をハンドル20の周りにおき、もう片方の手を外側中空ロッド12の遠位端12Dの周りにおくことができ、2つの反対の回転運動を及ぼす際に、要素が一緒にシールされ得る。本発明に係るシステム10は、光線力学療法による治療のために準備する方法であって、
- 内側中空ロッド14を外側中空ロッド12の内部に挿入するステップと、
- ハンドル20を外側中空ロッド12に接続するステップと、
- ハンドル20の第1の開口部28を通して、照射装置16を内側中空ロッド14の内部に少なくとも部分的に挿入するステップと、
- 照射装置16を内側中空ロッド14の遠位端14Dの先端Tから所定の距離に位置決め及び/又は係止するステップと、
- ハンドル20、内側中空ロッド14、及び外側中空ロッド12を密封状態で固定するステップと、
- ハンドル20の第2の開口部30を、ポンプ装置22及び流体リザーバ23、好ましくは光拡散溶液リザーバに接続するステップと、
- 照射装置16をレーザ光源に接続するステップと、
- 可膨張性バルーン18を完全に空にし、空になった可膨張性バルーン18のサイズを正確に決定して、参照値を設定することを可能にするべく、ポンプ装置22によって可膨張性バルーン18を真空引きするステップと、
- 可膨張性バルーン18の外面が患者の体腔100の境界を画定する組織に到達し、押しあたるまで、ポンプ装置22及び流体リザーバ23によって、可膨張性バルーン18に所与の体積Vの流体、好ましくは光拡散溶液を充填するステップと、
- 伝達関数(
図6参照)によって、約1J/cm
2~約40J/cm
2の範囲の所定量の光エネルギーを提供するために必要な照射時間を決定するステップと、
を含む方法の実装を可能にする。
【0060】
本発明はまた、本発明に係るシステム10を使用して、光線力学療法によって、それを必要とする患者の癌を治療する方法に関する。
【0061】
一実施形態では、この方法は、
- 上で定義した光増感化合物又はその前駆体を患者に投与し、これにより、患者の体腔100の境界を画定する組織の細胞に前記光増感化合物又はその前駆体を吸収させるステップと、
- 上述のシステム10を提供する又は上で詳述した方法に係るシステム10を準備するステップと、
- システム10の可膨張性バルーン18を患者の体腔100内に位置決めするステップと、
- 好ましくは所定量の光エネルギーを提供するための所定の照射時間にわたって、照射装置16を作動させるステップと、
- 照射装置16を非作動にするステップと、
- 随意的に、必要であれば、所定量の時間にわたって前の2つのステップを1回又は数回繰り返すステップと、
を含む。
【0062】
一実施形態では、光増感化合物又はその前駆体の投与は、経口(すなわち経口ルートによる)又は例えば、動脈内、関節内、心臓内、筋内、腹腔内、又は静脈内注射による注射などの非経口であり得る。
【0063】
両方の癌治療方法の実装の例としては、「常時オン」照射が挙げられる。
【0064】
両方の癌治療方法の実装のさらなる例としては、例えば、2分間の照射時間後に、2分間照射なし、その後再び2分間の照射時間などの、一連のオン/オフ照射が挙げられる。
【0065】
膨張した状態の可膨張性バルーン18によって患者の体腔100の境界を画定する組織に加えられた圧力を解放するべく、照射装置16の2回の作動間に可膨張性バルーン18を収縮させることができる。したがって、照射装置が作動していないとき、可膨張性バルーン18は、患者の体腔100の境界を画定する組織に押し当たらない。これはポンプ装置22によって可能となる。
【0066】
本発明に係るシステム10は、可膨張性バルーン18の体積Vとは独立して、つまり患者の体腔100のサイズとは独立して、必要なエネルギー量を送達することを可能にする。したがって、すべての可能なサイズの体腔100を治療することが可能である。照射時間はまた、レーザ光源の出力に合わせて調節することができ、システム10を任意の種類の条件で用いることが可能となる。光源は、制御ユニット26によって制御され得る。この制御ユニット26はコンピュータであり得る。
【0067】
さらに、本発明に係るシステム10によって提供される、光エネルギーの送達量の簡単な信頼できる制御のおかげで、治療を容易に再現することができる。これにより、光線力学療法による治療の効率が高まる。
【0068】
また、本発明に係るシステムは、組み立てが非常に簡単であり、さらに、部品数が最小限であるため一緒にシールするのが簡便であり、したがって、手術台の周りでの及び手術時間中のシステム10の使用効率が向上する。システム10は完全に手動で使用され、それを組み立てる及び使用するために追加のシステムを必要としない。光源が(例えば制御ユニット26によって)プログラムされると、システム10は、オペレータによって完全に手動で操作されるように構成される。
【0069】
一実施形態では、癌を治療する方法は、1回だけ実施されてもよく、又は例えば各光線力学療法セッション間に数週間、数か月、又は数年の遅れをおいて、1回よりも多く実施されてもよい。
【0070】
一実施形態では、光線力学療法による癌の治療は、免疫療法による治療とさらに組み合わせてもよい。そのような組み合わせは、光免疫療法(PIT)として当該技術分野で知られている。
【0071】
本発明はまた、キット、特に、
- システム10と、
- 少なくとも1つの光増感化合物と、
- 随意的に、使用説明書と、
を含む、光線力学療法を実施するのに適したキットに関する。
【国際調査報告】