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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(54)【発明の名称】新規な併用療法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240604BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240604BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240604BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240604BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240604BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240604BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240604BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240604BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240604BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240604BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20240604BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240604BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20240604BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20240604BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 47/55 20170101ALI20240604BHJP
【FI】
A61K39/395 D
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K39/395 U
A61P35/02
A61P11/00
A61P1/00
A61P13/12
A61P13/02
A61P17/00
A61P15/00
A61P13/08
A61P35/04
A61K38/17 100
A61K51/10 100
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K39/395 T
A61K39/395 E
A61K47/55
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577758
(86)(22)【出願日】2022-06-17
(85)【翻訳文提出日】2024-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2022066566
(87)【国際公開番号】W WO2022263632
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】2108712.7
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2115119.6
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503211529
【氏名又は名称】アリゲーター・バイオサイエンス・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カリン・エネル・スミス
(72)【発明者】
【氏名】ペーテル・エルマルク
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA16
4C076BB11
4C076BB13
4C076CC09
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC18
4C076CC27
4C076CC29
4C076CC41
4C084AA02
4C084AA12
4C084AA19
4C084BA44
4C084DA39
4C084MA16
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA59
4C084ZA66
4C084ZA81
4C084ZA89
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZC02
4C084ZC41
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA21
4C085BB31
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG02
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、対象においてがんを治療するための併用療法、及びその使用のための方法に関する。併用療法は、(a)CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片と、(b)更なる免疫療法剤であって、更なる免疫療法剤がPD-1阻害剤である、更なる免疫療法剤と、を含む。本発明はまた、本発明の併用療法を含む薬学的組成物、その使用、使用方法、及び本発明の併用療法を含むキットにも関する。がんは、固形腫瘍であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるがんの治療又は予防に使用するための併用療法であって、(a)CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片と、(b)PD-1阻害剤と、を含む、併用療法。
【請求項2】
前記がんが、固形腫瘍である、請求項1に記載の併用療法。
【請求項3】
前記がん及び/又は固形腫瘍が、前立腺がん;乳がん;結腸直腸がん;腎臓がん;膵臓がん;卵巣がん;肺がん;子宮頸がん;横紋筋肉腫;神経芽腫;骨がん;多発性骨髄腫;白血病(例えば、急性リンパ芽球性白血病[ALL]及び急性骨髄性白血病[AML])、皮膚がん(例えば、黒色腫)、膀胱がん及び膠芽腫、アデノーマ、芽細胞腫、がん腫、デスモイド腫瘍、線維形成性小円形細胞腫瘍、内分泌腫瘍、胚細胞腫瘍、リンパ腫、肉腫、ウィルムス腫瘍、肺腫瘍、結腸腫瘍、リンパ腫瘍、乳房腫瘍並びに黒色腫からなる群から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項4】
前記がん及び/又は固形腫瘍が、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)若しくは小細胞肺がん(SCLC))、頭部及び/若しくは頸部がん、胃がん、食道がん、腎臓がん、尿路上皮がん、黒色腫、中皮腫、乳がん、子宮頸がん、前立腺がん、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI)がん、DNAミスマッチ修復(dMMR)に関連するがん、並びに/又は高腫瘍変異負荷(TMB)がんであり、好ましくは、前記がん及び/又は固形腫瘍が、転移性である、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項5】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、
a)ヒトCD137のドメイン2に対する結合特異性を有し、
b)CD137アゴニストであり、かつ/又は
c)ヒトCD137に対する参照抗体「1630/1631」の結合を阻害することができ、
任意選択的に、前記抗体、又は抗原結合断片が、ヒトCD137のドメイン2に対する結合特異性を有し、CD137アゴニストであり、かつヒトCD137に対する参照抗体「1630/1631」の結合を阻害することができる、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項6】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、
a)ヒトCD137のドメイン2に対する結合特異性を有し、
b)CD137アゴニストであり、かつ/又は
c)ヒトCD137に対する参照抗体「2674/2675」の結合を阻害することができ、
任意選択的に、前記抗体、又は抗原結合断片が、ヒトCD137のドメイン2に対する結合特異性を有し、CD137アゴニストであり、かつヒトCD137に対する参照抗体「2674/2675」の結合を阻害することができる、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項7】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又は抗原結合断片が、以下の特性:
a)架橋依存性機構を介してCD137を刺激し、T細胞及び他の免疫細胞を活性化する能力、並びに/又は
b)カニクイザルCD137抗体との交差反応性、のうちの1つ以上を示す、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項8】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、Fc受容体に結合することができ、任意選択的に、前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、CD137及びFc受容体に同時に結合することができる、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項9】
前記CD137に特異的に結合してT細胞を活性化する抗体の能力が、CD137及びFc受容体の両方への結合に依存する、請求項8に記載の併用療法。
【請求項10】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、CD137を発現する細胞への結合時に、
a)抗体依存性細胞傷害(ADCC)、
b)抗体依存性細胞食作用(ADCP)、及び/又は
c)補体依存性細胞傷害(CDC)を誘導することが実質的にできない、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項11】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、腫瘍免疫を誘導することができる、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項12】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、参照抗体1630/1631が結合することができるCD137上のエピトープと少なくとも部分的に重複するCD137の細胞外ドメイン上のエピトープに結合することができる、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項13】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又は抗原結合断片が、参照抗体2674/2675が結合することができるCD137上のエピトープと少なくとも部分的に重複するCD137の細胞外ドメイン上のエピトープに結合することができる、請求項12に記載の併用療法。
【請求項14】
前記エピトープが、ヒトCD137のアミノ酸66~107に、又はその中に位置する、請求項12又は13に記載の併用療法。
【請求項15】
CD137が細胞の表面上に局在化する、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項16】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又は抗原結合断片が、インタクトな抗体、例えば、IgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4抗体を含むか、又はそれらからなる、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項17】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、IgG4抗体を含むか、又はそれからなる、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項18】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、Fv断片(例えば、単鎖Fv及びジスルフィド結合Fv)、Fab様断片(例えば、Fab断片、Fab’断片及びF(ab)断片)、並びにドメイン抗体(例えば、単一のV可変ドメイン又はV可変ドメイン)からなる群から選択される抗原結合断片を含むか、又はそれらからなる、請求項1~15のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項19】
前記抗原結合断片が、scFvを含むか、又はそれからなる、請求項18に記載の併用療法。
【請求項20】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、組み替えポリペプチドである、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項21】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、モノクローナルである、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項22】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、ヒト又はヒト化されている、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項23】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、
a)コンセンサス配列G、F、T/N、F、G、Y、S、Yを有する重鎖CDR1配列と、
b)コンセンサス配列I、G、S、G/T、S、S、Y/H、Tを有する重鎖CDR2配列と、
c)配列ARVYSSPGIDYを有する重鎖CDR3配列と、を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項24】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、
a)コンセンサス配列Q、S、I、S/G、S、Y/Tを有する軽鎖CDR1配列と、
b)コンセンサス配列A/G、A、Sを有する軽鎖CDR2配列と、
c)配列QQYYTWVPFTを有する軽鎖CDR3配列と、を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項25】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、以下のCDR:
a)GFTFGYSY[配列番号3]、又は配列番号3と比較して最大3個のアミノ酸変異、例えば、1、2若しくは3個の変異を含有するアミノ酸配列のCDRと、
b)IGSGSSYT[配列番号4]、又は配列番号4と比較して最大3個のアミノ酸変異、例えば、1、2若しくは3個の変異を含有するアミノ酸配列のCDRと、
c)ARVYSSPGIDY[配列番号5]、又は配列番号5と比較して最大3個のアミノ酸変異、例えば、1、2若しくは3個の変異を含有するアミノ酸配列のCDRと、を含む重鎖可変領域を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項26】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、配列番号3、4及び5のCDRを含む重鎖可変領域を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項27】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、配列番号1のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも60%の配列同一性、例えば、少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む、請求項26に記載の併用療法。
【請求項28】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、以下のCDR:
a)QSISSY[配列番号6]、又は配列番号6と比較して最大3個のアミノ酸変異、例えば、1、2若しくは3個の変異を含有するアミノ酸配列のCDRと、
b)AAS[配列番号7]、又は配列番号7と比較して最大2個のアミノ酸変異、例えば、1若しくは2個の変異を含有するアミノ酸配列のCDRと、
c)QQYYTWVPFT[配列番号8]、又は配列番号8と比較して最大3個のアミノ酸変異、例えば1、2若しくは3個の変異を含有するアミノ酸配列のCDRと、を含む軽鎖可変領域を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項29】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、配列番号6、7及び8のCDRを含む軽鎖可変領域を含む、請求項28に記載の併用療法。
【請求項30】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、配列番号2のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも60%の配列同一性、例えば、少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、請求項29に記載の併用療法。
【請求項31】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、配列番号3、4、5、6、7及び8のCDRを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項32】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、配列番号1のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる重鎖可変領域と、配列番号2のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる軽鎖可変領域と、を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項33】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、以下のCDR:
a)GFNFGYSY[配列番号21]、又は配列番号21と比較して最大3個のアミノ酸変異、例えば、1、2若しくは3個の変異を含有するアミノ酸配列のCDRと、
b)IGSTSSHT[配列番号22]、又は配列番号22と比較して最大3個のアミノ酸変異、例えば、1、2若しくは3個の変異を含有するアミノ酸配列のCDRと、
c)ARVYSSPGIDY[配列番号23]、又は配列番号23と比較して最大3個のアミノ酸変異、例えば、1、2若しくは3個の変異を含有するアミノ酸配列のCDRと、を含む重鎖可変領域を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項34】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、配列番号21、22及び23のCDRを含む重鎖可変領域を含む、請求項33に記載の併用療法。
【請求項35】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、配列番号19のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも60%の配列同一性、例えば、少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む、請求項34に記載の併用療法。
【請求項36】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、以下のCDR:
a)QSIGST[配列番号24]、又は配列番号24と比較して最大3個のアミノ酸変異、例えば、1、2若しくは3個の変異を含有するアミノ酸配列のCDRと、
b)GAS[配列番号25]、又は配列番号25と比較して最大2個のアミノ酸変異、例えば、1若しくは2個の変異を含有するアミノ酸配列のCDRと、
c)QQYYTWVPFT[配列番号26]、又は配列番号26と比較して最大3個のアミノ酸変異、例えば1、2若しくは3個の変異を含有するアミノ酸配列のCDRと、を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1~24又は33~35のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項37】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、配列番号24、25及び26のCDRを含む軽鎖可変領域を含む、請求項36に記載の併用療法。
【請求項38】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、配列番号20のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも60%の配列同一性、例えば、少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、請求項37に記載の併用療法。
【請求項39】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、配列番号21、22、23、24、25及び26のCDRを含む、請求項33~38のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項40】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、配列番号19のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる重鎖可変領域と、配列番号20のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる軽鎖可変領域と、を含む、請求項33~39のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項41】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、重鎖定常領域、又はその一部を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項42】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片の前記重鎖定常領域が、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4からなる群から選択される免疫グロブリンサブタイプのものである、請求項41に記載の併用療法。
【請求項43】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片の前記重鎖定常領域が、免疫グロブリンサブタイプIgG4のものである、請求項42に記載の併用療法。
【請求項44】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片の前記重鎖定常領域が、配列番号12、13、14及び15からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はそれらからなる、請求項43に記載の併用療法。
【請求項45】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、軽鎖定常領域、又はその一部を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項46】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片の前記軽鎖定常領域が、カッパ又はラムダ軽鎖のものである、請求項45に記載の併用療法。
【請求項47】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片の前記軽鎖定常領域が、カッパ軽鎖のものである、請求項46に記載の併用療法。
【請求項48】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片の前記軽鎖定常領域が、配列番号16のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項47に記載の併用療法。
【請求項49】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、Fc領域を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項50】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片の前記Fc領域が、天然に存在する、請求項49に記載の併用療法。
【請求項51】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片の前記Fc領域が、天然に存在しない、請求項49に記載の併用療法。
【請求項52】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片の前記Fc領域が、前記抗体又は抗原結合断片の半減期を短くするための変異を含む、請求項51に記載の併用療法。
【請求項53】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、
(a)配列番号13の定常領域と一緒になった配列番号1の可変領域、又はそれと少なくとも60%の配列同一性、例えば、配列番号1及び/若しくは13に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、重鎖と、
(b)配列番号16の定常領域と一緒になった配列番号2の可変領域、又はそれと少なくとも60%の配列同一性、例えば、配列番号2及び/若しくは16に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、軽鎖と、を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項54】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、
(a)配列番号13の定常領域と一緒になった配列番号19の可変領域、又はそれと少なくとも60%の配列同一性、例えば、配列番号19若しくは13に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、重鎖と、
(b)配列番号16の定常領域と一緒になった配列番号20の可変領域、又はそれと少なくとも60%の配列同一性、例えば、配列番号20若しくは16に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、軽鎖と、を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項55】
前記CD137に特異的に結合する抗体が、配列番号17のアミノ酸配列を有する2つの重鎖、及び配列番号18のアミノ酸配列を有する2つの軽鎖、又はそれらと少なくとも60%の配列同一性、例えば、配列番号17及び/若しくは18に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらからなる、インタクトなIgG4分子である、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項56】
前記CD137に特異的に結合する抗体が、配列番号29のアミノ酸配列を有する2つの重鎖、及び配列番号30のアミノ酸配列を有する2つの軽鎖、又はそれらと少なくとも60%の配列同一性、例えば、配列番号29及び/若しくは30に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらからなる、インタクトなIgG4分子である、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項57】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、細胞傷害性部分を更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項58】
前記細胞傷害性部分が、放射性同位体を含むか、又はそれからなる、請求項57に記載の併用療法。
【請求項59】
前記細胞傷害性部分が、細胞傷害性薬物を含むか、又はそれからなる、請求項57に記載の併用療法。
【請求項60】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、検出可能な部分を更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項61】
前記検出可能な部分が、放射性同位体を含むか、又はそれからなる、請求項60に記載の併用療法。
【請求項62】
前記細胞傷害性部分及び/又は検出可能な部分が、連結部分を介してCD137に間接的に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片に接続される、請求項57~61のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項63】
前記連結部分が、キレート剤である、請求項62に記載の併用療法。
【請求項64】
前記キレート剤が、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10,四酢酸(DOTA)の誘導体、デフェロキサミン(DFO)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)の誘導体、S-2-(4-イソチオシアナトベンジル)-1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA)の誘導体、及び1,4,8,11-テトラアザシクロドデカン-1,4,8,11-四酢酸(TETA)の誘導体からなる群から選択される、請求項63に記載の併用療法。
【請求項65】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又は抗原結合断片が、細胞傷害性部分又は検出可能な部分を含まない、請求項1~56のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項66】
前記PD-1阻害剤が、抗PD-1抗体、若しくはPD-1機能を阻害することができるその抗原結合断片を含むか、又はそれらからなる、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項67】
前記抗PD-1抗体が、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、セミプリマブ、AMP-224、PDR-001、MEDI-0680、JTX-4014(ピミバリマブ)、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、トリパリマブ、ドスタルリマブ、及びINCMGA00012(レチファンリマブ)からなる群から選択され、好ましくは、前記抗PD-1抗体が、ペムブロリズマブ又はニボルマブである、請求項66に記載の併用療法。
【請求項68】
前記PD-1阻害剤が、抗PD-L1抗体、若しくはPD-1機能を阻害することができるその抗原結合断片を含むか、又はそれらからなる、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項69】
前記抗PD-L1抗体が、アテゾリズマブ(Tecentriq(商標)、MPDL3280A)、デュルバルマブ(MEDI-4736)、アベルマブ、MDX-1105、KN035(エンバフォリマブ)及びCK-301(コシベリマブ)からなる群から選択され、好ましくは、前記抗PD-L1抗体が、アテゾリズマブ(Tecentriq(商標)、MPDL3280A)である、請求項68に記載の併用療法。
【請求項70】
前記PD-1阻害剤が、PD-1/PD-L1相互作用を遮断し、任意選択的に、前記PD-1阻害剤が、PD-L1がPD-1に結合する能力を阻害する様式でPD-1又はPD-L1に結合する、先行請求項のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項71】
前記PD-1阻害剤が、好ましくは、T細胞受容体シグナル伝達分子の下流のシグナル伝達分子を脱リン酸化するチロシンホスファターゼSHP-2によって媒介される阻害性シグナル伝達を遮断することによって、PD-1を発現するT細胞を再活性化する、併用療法。
【請求項72】
固形腫瘍を治療する方法において使用するための、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合部分であって、
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合部分が、更なる免疫療法剤と組み合わせて使用するためのものであり、前記更なる免疫療法剤が、PD-1阻害剤である、抗体、又はその抗原結合部分。
【請求項73】
前記抗体、又はその抗原結合部分が、請求項5~65のいずれか一項に定義される通りである、請求項72に記載の抗体、又はその抗原結合部分。
【請求項74】
前記PD-1阻害剤が、請求項66~71のいずれか一項に定義される通りである、請求項72又は73に記載の抗体、又はその抗原結合部分。
【請求項75】
固形腫瘍を治療するための医薬の調製における、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合部分の使用であって、
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合部分が、更なる免疫療法剤と組み合わせて使用するためのものであり、前記更なる免疫療法剤が、PD-1阻害剤である、使用。
【請求項76】
前記抗体、又はその抗原結合部分が、請求項5~65のいずれか一項に定義される通りである、請求項75に記載の使用。
【請求項77】
PD-1阻害剤が、請求項66~71のいずれか一項に定義される通りである、請求項75又は76に記載の使用。
【請求項78】
(a)CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合部分と、(b)更なる免疫療法剤であって、前記更なる免疫療法剤がPD-1阻害剤である、更なる免疫療法剤と、を含む、薬学的組成物。
【請求項79】
前記抗体、又はその抗原結合部分が、請求項5~65のいずれか一項に定義される通りである、請求項78に記載の薬学的組成物。
【請求項80】
前記PD-1阻害剤が、請求項66~71のいずれか一項に定義される通りである、請求項78又は79に記載の薬学的組成物。
【請求項81】
医薬に使用するための、請求項78~80のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項82】
がんの治療に使用するための、請求項78~81のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項83】
(a)CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合部分と、(b)更なる免疫療法剤であって、前記更なる免疫療法剤がPD-1阻害剤である、更なる免疫療法剤と、を含む、固形腫瘍を治療するためのキット。
【請求項84】
前記抗体、又はその抗原結合部分が、請求項5~65のいずれか一項に定義される通りである、請求項83に記載のキット。
【請求項85】
前記PD-1阻害剤が、請求項66~71のいずれか一項に定義される通りである、請求項83又は84に記載のキット。
【請求項86】
対象において固形腫瘍を治療するための方法であって、前記方法が、(a)前記対象に、治療有効量のCD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合部分を投与すること、及び(b)前記対象に、治療有効量の更なる免疫療法剤を投与することであって、前記更なる免疫療法剤がPD-1阻害剤である、投与することといった、治療有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項87】
前記CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合部分が、請求項5~65のいずれか一項に定義される通りである、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記PD-1阻害剤が、請求項66~71のいずれか一項に定義される通りである、請求項86又は87に記載の方法。
【請求項89】
ステップ(a)及び(b)が、互いに同時又は24時間以内に実行される、請求項86~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
ステップ(a)が、腫瘍部位に対する前記抗体の全身投与を含む、請求項86~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
ステップ(a)で投与される抗体の量の少なくとも30%が、投与後4時間で前記腫瘍部位に保持され、好ましくは、前記量の少なくとも40%が、投与後4時間で前記腫瘍部位に保持される、請求項86~90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
ステップ(b)の前記更なる免疫療法剤が、少なくとも1つの薬学的に許容される希釈剤又は担体との全身投与に好適な組成物として製剤化される、請求項86~91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
ステップ(a)が、複数の別個の機会に実施され、ステップ(b)が、前記更なる免疫療法剤への前記対象の曝露が、前記方法の持続時間にわたって連続するように実施される、請求項86~92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記対象が、ヒトである、請求項86~93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
CD137に特異的に結合する抗体、若しくはその抗原結合断片をコードする第1の単離された核酸分子、又はその構成要素のペプチド鎖と、
(i)PD-1阻害剤、及び/又は
(ii)PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合するその抗原結合断片の抗体をコードする第2の単離された核酸分子、又はその構成要素のペプチド鎖と、を含む、キット。
【請求項96】
前記第1及び/又は第2の単離された核酸分子が、cDNA分子である、請求項95に記載のキット。
【請求項97】
前記第1及び/又は第2の単離された核酸分子が、抗体重鎖若しくはその可変領域をコードし、かつ/又は抗体軽鎖若しくはその可変領域をコードする、請求項95又は96に記載のキット。
【請求項98】
前記第1の単離された核酸分子が、配列番号9及び/又は配列番号10のヌクレオチド配列を含むか、又はそれらからなる、請求項95~97のいずれか一項に記載のキット。
【請求項99】
前記第1の単離された核酸分子が、配列番号27及び/又は配列番号28のヌクレオチド配列を含むか、又はそれらからなる、請求項95~97のいずれか一項に記載のキット。
【請求項100】
CD137に特異的に結合する抗体、若しくはその抗原結合断片をコードする第1の単離された核酸分子、又はその構成要素のペプチド鎖と、
(i)PD-1阻害剤、及び/又は
(ii)PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合する抗体、若しくはその抗原結合断片をコードする第2の単離された核酸分子、又はその構成要素のペプチド鎖と、を含むベクター(例えば発現ベクター)を含み、
任意選択的に、前記第1の単離された核酸が、請求項95~99のいずれか一項に定義される通りである、キット。
【請求項101】
CD137に特異的に結合する抗体、若しくはその抗原結合断片をコードする第1の単離された核酸分子、又はその構成要素のペプチド鎖と、
(i)PD-1阻害剤、及び/又は
(ii)PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合するその抗原結合断片の抗体をコードする第2の単離された核酸分子、又はその構成要素のペプチド鎖と、を含む宿主細胞(例えば、哺乳動物細胞、例えば、ヒト細胞、又はチャイニーズハムスター卵巣細胞、例えば、CHOK1SV細胞)を含み、
任意選択的に、前記第1の単離された核酸が、請求項95~99のいずれか一項に定義される通りである、キット。
【請求項102】
明細書を参照して特許請求の範囲に定義される通りである、併用療法、方法、使用、又はキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象においてがんを治療するための併用療法、及びその使用のための方法に関する。併用療法は、(a)CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片と、(b)更なる免疫療法剤であって、更なる免疫療法剤がPD-1阻害剤である、更なる免疫療法剤と、を含む。本発明はまた、本発明の併用療法を含む薬学的組成物、その使用、使用方法、及び本発明の併用療法を含むキットにも関する。がんは、固形腫瘍であり得る。
【背景技術】
【0002】
がんは、先進国において早死の主な原因である。がんにおける免疫療法の目的は、腫瘍、特に固形腫瘍に対して、身体による効果的な免疫応答を仕掛けることである。このことは、例えば、腫瘍抗原に対する寛容性を破壊すること、抗腫瘍免疫応答を増強すること、及び腫瘍部位における局所的なサイトカイン応答を刺激することによって達成され得る。長期にわたる抗腫瘍免疫応答の主要なエフェクター細胞は、活性化された腫瘍特異的エフェクターT細胞である。活性化エフェクターT細胞の強力な拡張は、免疫応答を腫瘍に対して再指向することができる。これに関連して、制御性T細胞(Treg)は、抗腫瘍免疫を阻害する役割を果たす。したがって、Tregを枯渇させるか、阻害するか、元に戻すか、又は不活性化することにより、抗腫瘍効果を提供し、腫瘍微小環境における免疫抑制を元に戻すことができる。更に、例えば、樹状細胞によるエフェクターT細胞の不完全な活性化は、T細胞アネルギーを引き起こす可能性があり、これにより非効率的な抗腫瘍応答が生じるのに対し、樹状細胞による十分な誘導は、活性化エフェクターT細胞の強力な拡張を生じさせ、免疫応答を腫瘍に対して再指向することができる。加えて、ナチュラルキラー(NK)細胞は、下方制御されたヒト白血球抗原(HLA)を発現して腫瘍細胞を攻撃することによって、また、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導することによって、腫瘍免疫学的に重要な役割を果たす。したがって、NK細胞を刺激することにより、腫瘍の成長をも低下させ得る。
【0003】
CD137(4-1BB、TNFRSF9)はTNF受容体(TNFR)スーパーファミリーのメンバーであり、活性化されたCD4及びCD8T細胞、Treg、DC、単球、肥満細胞並びに好酸球上で発現する。CD137の活性化は、CD8T細胞の活性化及び生存において重要な役割を果たす(Lee et al.,2002;Pulle et al.,2006)。それは、エフェクター機能を開始させるのではなく、持続及び増強させ、Th1サイトカイン産生を優先的に支持する(Shuford et al.,1997)。CD4T細胞において、CD137刺激は最初に活性化、後に活性化誘導性細胞死をもたらし、なぜCD137アゴニスト抗体が腫瘍免疫だけではなく自己免疫においても治療効果を示したかを説明する(Zhang,JCI,2007,Sun,Trends Mol Med,2003)。CD137はTreg機能も抑制する(So,Cytokine Growth Factor Rev,2008)。CD137の活性化は、受容体のオリゴマー化に依存する(Rabu et al.,2005;Wyzgol et al.,2009)。
【0004】
CD137アゴニスト抗体は、腫瘍環境において内皮細胞を活性化し、ICAM-1及びVCAM-1の上方制御及びT細胞動員の改善をもたらすことが示されている(Palazon,Cancer Res,2011)。
【0005】
CD137は、マウス又はヒトにおいて、それぞれサイトカイン又はCD16によって活性化されたNK細胞で上方制御される(例えば、Melero,CCR 19(5)1044-53,2013及びそこに引用される参考文献を参照されたい)。CD137は、マウスだけではなくヒトにおいてもNK細胞を活性化し、ADCCを増強することが示されている(Kohrt et al.,2014)が、マウスにおいてNK細胞活性化をもたらし、ヒトにおいて阻害をもたらすという、マウス及びヒトにおいてNK細胞に対する反対の作用を示唆する報告が存在する(Baessler,Blood,2010)。
【0006】
いくつかの研究は、アゴニストCD137抗体を用いた処置による腫瘍免疫の誘導を実証している(Dubrot et al.,2010;Gauttier et al.,2014;Kim et al.,2001;McMillin et al.,2006;Melero et al.,1997;Miller et al.,2002;Sallin et al.,2014;Taraban et al.,2002;Uno et al.,2006;Vinay and Kwon,2012;Wilcox et al.,2002)。加えて、それは、前臨床モデルにおいていくつかの免疫調整剤と相互作用を発揮する(Curran et al.,2011、Gray et al.,2008、Guo et al.,2013、Kwong et al.,2013、Lee et al.,2004、Morales-Kastresana et al.,2013、Pan et al.,2002、St Rose et al.,2013、Uno et al.,2006、Wei et al.,2013、Westwood et al.,2010、Westwood et al.,2014a、Westwood et al.,2014b)。
【0007】
ウレルマブは、限られた臨床的有効性が実証されている強力な4-1BBアゴニストである(Chester et al.2017、Chin et al.2018)。しかしながら、ウレルマブの開発は、0.3mg/kg以上の用量での肝毒性によって妨げられた(1mg/kg以上の用量での2例の致命的事象を含む)(Segal et al.2017)。したがって、最大忍容用量は、0.1mg/kg(又は8mgの均一用量)に設定された。その後の研究では、単剤療法としてのウレルマブについて明確な客観的奏効は観察されなかった(Chester et al.2017)。肝毒性の背後にある機序は完全には理解されていない。
【0008】
一方、ウトミルマブは、ウレルマブよりも弱いアゴニストとみなされ、限られた臨床的有効性も示されている(Chin et al.2018、Segal et al.2018、Tolcher et al.2017)。ウトミルマブは、用量制限毒性(DLT)がない状態で、最大10mg/kgの許容可能な臨床安全性プロファイルを示した。
【0009】
ウトミルマブは、ウレルマブとは異なり、そのアゴニスト効果を発揮するためにFcγR架橋に依存する。血液中のFcγRは、内因性循環ヒトIgGによって飽和されるため、およそ10g/Lで、ウトミルマブなどのFcγR架橋依存性抗体は、FcγRに結合するIgGと競合する必要がある(Jolliff 1982)。10g/Lの内因性IgGは、最高臨床用量のウトミルマブ(10mg/kgで155μg/mL)で到達した最大血清濃度(Cmax)より60倍大きい(Segal et al.2018)。肝臓は、高度に血管新生された臓器であり、肝臓における内因性IgG濃度は、循環レベルと同様であることが示されている(Eigenmann et al.2017)。したがって、FcγR架橋依存性4-1BB活性化も、内因性IgGとの競合に起因して、肝臓において低下することが予想され得る。肝臓におけるウトミルマブのFcγR架橋についてのこの可能性の低下は、ウレルマブで検出された肝毒性がウトミルマブでは存在しないことを説明し得る。ALG.APV-527による4-1BB活性化は、5T4架橋依存性であり、5T4が肝臓で発現されないため、APV-527による肝毒性は予想されない。
【0010】
9種類の更なる単一特異性4-1BB抗体:0.03~10mg/kgの用量で投与され、現在I/II相にある(Liu et al.2017)ADG106、並びにCTX-471、AGEN2373、LVGN6051 ATOR-1017、EU101(IND/CTA)、PE0116、STA551及びHOT1030は、2018~2021年の間に臨床開発に入っており、現在、第I相試験において、安全性について評価されている。
【0011】
CD137抗体のアゴニスト効果は、Fc領域のアイソタイプによって影響を受ける。診療所で検査される抗体は、IgG2又はIgG4のいずれかである。ほとんどのTNFRファミリーメンバーと同様に、CD137は活性化のために架橋に依存する(Wilson 2011,Cancer Cell)。APCの膜上に発現されるCD137Lは、受容体の著しい複数の架橋を誘導し得る。抗体は、それ自体では2つのCD137受容体と架橋できるのみであり、強いシグナルを誘導するためには、他の細胞上で発現されるFcγRを介した更なる架橋(トランス)が強いCD137媒介シグナルの誘導に必要であり得る。これに対する例外は、未知の機構によって架橋非依存性シグナル伝達を誘導するIgG2抗体であり得る(White et al,2015 Cancer Cell)。T細胞はFcγRを発現せず、インビボでのFcγR媒介性架橋は、単球、マクロファージ、DC、並びに潜在的にB細胞及び他の細胞型によって媒介されると考えられている。
【0012】
考慮すべき別の要因は、FcγR受容体の関与が、抗体でコーティングした細胞で、ADCC、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、及び補体依存性細胞傷害(CDC)も引き起こす可能性があるということである(簡略化のために、以下のADCCはADCP及びCDCを含むものとする)。典型的には、ヒトIgG1は、標的の性質、細胞型及び受容体密度に応じて、NK/マクロファージ依存性ADCCの強力な誘導物質である。IgG4抗体もまたADCCを誘導し得るが、IgG1よりも低い程度である(Wang 2015,Front Imm;Vidarson 2014 Front Imm)。
【0013】
したがって、アイソタイプが異なるCD137アゴニスト抗体の効果は、1)より強い免疫活性化をもたらす架橋の誘導と、2)エフェクターT細胞(主にCD8T細胞)及びTregの両方の死滅をもたらし得るADCCの誘導とのバランスによって影響を受け得る。1)及び2)の正味の効果は、CD137発現細胞の分布、標的細胞がFcγR発現免疫細胞と結合する可能性、受容体密度及び親和性、並びにADCCに対するTeff対Tregの感受性に依存する可能性が高い。CD137の発現は、黒色腫腫瘍においてCD8及びTregの両方で高い(Quezada,presentation SITC 2015)。IgG4型は、マクロファージ及び単球によるFcγRI媒介性架橋を可能にするが、それでもなおエフェクターCD8T細胞のNK媒介性ADCCを最小限に抑える。
【0014】
しかしながら、上記で概説したように、マウスとヒトのFcR間の発現及び親和性の違いのために、マウスモデルにおいて異なるヒトFcの比較を説明することは困難である。更に、CD137に対するCD137Lの結合を遮断する抗体のインビボでの機能的帰結が現在議論されているが、CD137Lを遮断し、したがって、C137L及びCD137アゴニスト抗体を介した同時活性化を可能にしないCD137アゴニストは、誇張された活性化及び全身毒性を誘導するリスクが低いと推測され得る。
【0015】
いくつかの研究は、アゴニストCD137 mAbを用いた処置による腫瘍免疫の誘導を実証している(Dubrot et al.,2010;Gauttier et al.,2014;Kim et al.,2001;McMillin et al.,2006;Melero et al.,1997;Miller et al.,2002;Sallin et al.,2014;Taraban et al.,2002;Uno et al.,2006;Vinay and Kwon,2012;Wilcox et al.,2002)。2つの異なる抗体、Lob12.3及び3H3が、マウスのインビボ試験に一般的に使用される(Shuford 1997 J Exp Med)。
【0016】
マウスモデルに見られる毒性は、時間依存的ではあるが用量依存的ではない様式で反復投与した後に検出された(Ascierto 2010 Semin Onc,Dubrot 2010 Can Imm,Niu 2007 JI)。毒性は、皮膚毒性及び肝毒性:アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/アラニンアミノトランスフェラーゼ比(ASAT/ALAT)及びサイトカイン放出を含む。これは、毒性が、免疫細胞集団(おそらくT細胞)のCD137媒介性の事前活性化を必要とするか、又は増強された架橋をもたらし得るCD137抗体の凝集体を潜在的に形成する抗薬物抗体(ADA)応答によって引き起こされる二次効果に依存するかを示唆しているマウスに見られる毒性は可逆的であり、TNFα/CD8細胞依存性に依存すると考えられる(Ascierto 2010 Sem Onc)。サルの毒性試験では、4週間にわたって週1回、最大100mg/kgの単回投与及び反復投与の両方が、皮膚毒性又は肝毒性が検出されることなく許容されることが示された(Ascierto 2010,Semin Onc)。
【0017】
TNF受容体ファミリーメンバーを介した長期かつ継続的な活性化は、免疫枯渇につながる可能性がある。したがって、受容体を発現している細胞の休止期間を可能にする様式でそのような抗体を投与することが有利であるかもしれない。特定の投薬プロトコルにおいて休止期間を延長するための1つのアプローチは、例えば、新生児Fc受容体(FcRn)との結合を減少させることによって、抗体の半減期を短縮することである。これは、投与経路にもよるが、治療に付随する毒性も軽減することができる。
【0018】
プログラム死1(PD-1)受容体は、腫瘍内の細胞表面上に発現される、そのリガンドPD-L1によって係合されるときに抗腫瘍T細胞エフェクター機能の負の制御因子である(Ribas and Wolchok 2018)。PD-1は、免疫チェックポイントであり、その阻害機能は、T細胞受容体(TCR)シグナル伝達分子の下流のシグナル伝達分子を脱リン酸化するチロシンホスファターゼSHP-2によって媒介される。PD-1は、主に炎症促進性サイトカインへの曝露時に多くの体細胞によって広く発現されるプログラム死リガンド1(PD-L1、CD274又はB7-H1としても既知である)、及び抗原提示細胞においてより限定的な発現を有するプログラム死リガンド2(PD-L2、CD273又はB7-DCとしても既知である)といった2つのリガンドを有する。腫瘍微小環境における炎症誘導性PD-L1発現は、PD-1媒介性T細胞疲弊を引き起こし、抗腫瘍細胞傷害性T細胞応答を阻害する。PD-L1は、腫瘍細胞及び骨髄細胞の両方で発現される。PD-1抵抗性は、一次抵抗性又は二次(獲得)抵抗性に広く細分され得る。(Kluger et al.2020)。正しい種類の併用治療を選択するためには、PD-1抵抗性の性質を理解することが不可欠である(Yuan et al.2021)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Lee et al.,2002;Pulle et al.,2006
【非特許文献2】Shuford et al.,1997
【非特許文献3】Zhang,JCI,2007,Sun,Trends Mol Med,2003
【非特許文献4】So,Cytokine Growth Factor Rev,2008
【非特許文献5】Rabu et al.,2005;Wyzgol et al.,2009
【非特許文献6】Palazon,Cancer Res,2011
【非特許文献7】Melero,CCR 19(5)1044-53,2013
【非特許文献8】Kohrt et al.,2014
【非特許文献9】Baessler,Blood,2010
【非特許文献10】Dubrot et al.,2010
【非特許文献11】Gauttier et al.,2014
【非特許文献12】Kim et al.,2001
【非特許文献13】McMillin et al.,2006
【非特許文献14】Melero et al.,1997
【非特許文献15】Miller et al.,2002
【非特許文献16】Sallin et al.,2014
【非特許文献17】Taraban et al.,2002
【非特許文献18】Uno et al.,2006
【非特許文献19】Vinay and Kwon,2012
【非特許文献20】Wilcox et al.,2002
【非特許文献21】Curran et al.,2011
【非特許文献22】Gray et al.,2008
【非特許文献23】Guo et al.,2013
【非特許文献24】Kwong et al.,2013
【非特許文献25】Lee et al.,2004
【非特許文献26】Morales-Kastresana et al.,2013
【非特許文献27】Pan et al.,2002
【非特許文献28】St Rose et al.,2013
【非特許文献29】Uno et al.,2006
【非特許文献30】Wei et al.,2013
【非特許文献31】Westwood et al.,2010
【非特許文献32】Westwood et al.,2014a
【非特許文献33】Westwood et al.,2014b
【非特許文献34】Chester et al.2017
【非特許文献35】Chin et al.2018
【非特許文献36】Segal et al.2017
【非特許文献37】Chester et al.2017
【非特許文献38】Chester et al.2017
【非特許文献39】Chin et al.2018
【非特許文献40】Segal et al.2017
【非特許文献41】Chester et al.2017
【非特許文献42】Eigenmann et al.2017
【非特許文献43】Liu et al.2017
【非特許文献44】Wilson 2011,Cancer Cell
【非特許文献45】White et al,2015 Cancer Cell
【非特許文献46】Wang 2015,Front Imm
【非特許文献47】Vidarson 2014 Front Imm
【非特許文献48】Quezada,presentation SITC 2015
【非特許文献49】Dubrot et al.,2010
【非特許文献50】Gauttier et al.,2014
【非特許文献51】Kim et al.,2001
【非特許文献52】McMillin et al.,2006
【非特許文献53】Melero et al.,1997
【非特許文献54】Miller et al.,2002
【非特許文献55】Sallin et al.,2014
【非特許文献56】Taraban et al.,2002
【非特許文献57】Uno et al.,2006
【非特許文献58】Vinay and Kwon,2012
【非特許文献59】Wilcox et al.,2002
【非特許文献60】Shuford 1997 J Exp Med
【非特許文献61】Ascierto 2010
【非特許文献62】Semin Onc,Dubrot 2010
【非特許文献63】Can Imm,Niu 2007 JI
【非特許文献64】Ascierto 2010 Sem Onc
【非特許文献65】Ascierto 2010,Semin Onc
【非特許文献66】ibas and Wolchok 2018
【非特許文献67】Kluger et al.2020
【非特許文献68】Yuan et al.2021
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、改善されたがん療法、特に、固形腫瘍の治療及びその併用療法に使用するのに好適な抗CD137抗体に対する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、驚くべきことに、抗CD137抗体又はその抗原結合断片とPD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、又はそれらの抗原結合断片)を含む併用療法が、がんの治療において驚くほど有効であることを見出した。
したがって、本発明の第1の態様は、対象におけるがんの治療又は予防に使用するための併用療法であって、(a)CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合部分と、(b)更なる免疫療法剤であって、更なる免疫療法剤がPD-1阻害剤である、更なる免疫療法剤と、を含む併用療法を提供する。
【0022】
本発明の第2の態様は、がんを治療する方法で使用するための、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合部分であって、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合部分が、PD-1阻害剤と組み合わせて使用するためのものである、抗体、又はその抗原結合部分を提供する。好ましくは、がんは、固形腫瘍である。
【0023】
関連する本発明の第3の態様は、固形腫瘍を治療するための医薬の調製における、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合部分の使用であって、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合部分が、PD-1阻害剤と組み合わせて使用するためのものである、使用を提供する。
【0024】
本発明の第4の態様は、(a)CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合部分と、(b)更なる免疫療法剤であって、更なる免疫療法剤がPD-1阻害剤である、更なる免疫療法剤と、を含む、薬学的組成物を提供する。
【0025】
本発明の第5の態様は、固形腫瘍を治療するためのキットであって、(a)CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片と、(b)PD-1阻害剤と、を含む、キットを提供する。
【0026】
本発明の第6の態様は、対象において、がん、例えば、固形腫瘍を治療又は予防するための方法であって、本方法が、(a)対象に、治療有効量のCD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合部分を投与すること、及び(b)対象に、治療有効量のPD-1阻害剤を投与することといった、治療有効量を対象に投与することを含む、方法。いくつかの実施形態では、本方法は、(a)CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合部分と、(b)PD-1阻害剤とを同時に投与することを含む。他の実施形態では、本方法は、(b)PD-1阻害剤を投与する前に、(a)CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合部分を投与することを含む。他の実施形態では、本方法は、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合部分を投与する前に、PD-1阻害剤を投与することを含む。
【0027】
更なる態様では、本発明は、がんを治療する方法において使用するためのPD-1阻害剤であって、PD-1阻害剤が、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合部分と組み合わせて使用するためのものである、PD-1阻害剤を提供する。好ましくは、がんは、固形腫瘍である。
【0028】
関連する本発明の更なる態様は、固形腫瘍を治療するための医薬の調製における、PD-1阻害剤の使用であって、PD-1阻害剤が、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合部分と組み合わせて使用するためのものである、使用を提供する。
【0029】
本発明の更なる態様は、CD137に特異的に結合する抗体、若しくはその抗原結合断片をコードする第1の単離された核酸分子(又はその構成要素のペプチド鎖)と、
(i)PD-1阻害剤、及び/又は
(ii)PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合するその抗原結合断片の抗体をコードする第2の単離された核酸分子(又はその構成要素のペプチド鎖)と、を含むキットを提供する。
【0030】
本発明の更なる態様は、CD137に特異的に結合する抗体、若しくはその抗原結合断片をコードする第1の単離された核酸分子、又はその構成要素のペプチド鎖と、
(i)PD-1阻害剤、及び/又は
(ii)PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合するその抗原結合断片の抗体をコードする第2の単離された核酸分子、又はその構成要素のペプチド鎖と、を含むベクターを含む、キットを提供する。
【0031】
本発明の更なる態様は、CD137に特異的に結合する抗体、若しくはその抗原結合断片をコードする第1の単離された核酸分子、又はその構成要素のペプチド鎖と、
(i)PD-1阻害剤、及び/又は
(ii)PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合するその抗原結合断片の抗体をコードする第2の単離された核酸分子、又はその構成要素のペプチド鎖と、を含む宿主細胞を含む、キットを提供する。
【0032】
更なる態様は、
a)CD137に特異的に結合する抗体、若しくはその抗原結合断片をコードする単離された核酸分子(又はその構成要素のペプチド鎖)、
b)PD-1阻害剤、及び/又は
c)PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合する抗体、若しくはその抗原結合断片をコードする単離された核酸分子(又はその構成要素のペプチド鎖)、
d)CD137に特異的に結合する抗体、若しくはその抗原結合部分、
e)PD-1阻害剤、
f)CD137に特異的に結合する抗体、若しくはその抗原結合断片をコードする単離された核酸分子、又はその構成要素のペプチド鎖を含むベクター、
g)PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合する抗体、若しくはその抗原結合断片をコードする単離された核酸分子、又はその構成要素のペプチド鎖を含むベクター、
h)CD137に特異的に結合する抗体、若しくはその抗原結合断片をコードする単離された核酸分子、又はその構成要素のペプチド鎖を含む宿主細胞、並びに/あるいは
i)PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合するその抗原結合断片の抗体をコードする単離された核酸分子、又はその構成要素のペプチド鎖を含む宿主細胞、のうちの任意の2つ以上を含むキットを提供する。
【0033】
上に概説したように、本発明の第1の態様は、対象におけるがんの治療又は予防に使用するための併用療法であって、(a)CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合部分と、(b)更なる免疫療法剤であって、更なる免疫療法剤がPD-1阻害剤である、更なる免疫療法剤と、を含む併用療法を提供する。
【0034】
一実施形態では、がんは、固形腫瘍である。一実施形態では、がん及び/又は固形腫瘍は、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)若しくは小細胞肺がん(SCLC))、頭部及び/若しくは頸部がん、胃がん、食道がん、腎臓がん、尿路上皮がん、黒色腫、乳がん、子宮頸がん、前立腺がん、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI)がん、DNAミスマッチ修復(dMMR)に関連するがん、並びに/又は高腫瘍変異負荷(TMB)結腸直腸がん;腎臓がん;膵臓がん;卵巣がん;横紋筋肉腫;神経芽腫;骨がん;多発性骨髄腫;白血病(例えば、急性リンパ芽球性白血病[ALL]及び急性骨髄性白血病[AML])、皮膚がん(例えば、黒色腫)、膀胱がん、膠芽腫、アデノーマ、芽細胞腫、がん腫、デスモイド腫瘍、線維形成性小円形細胞腫瘍、内分泌腫瘍、胚細胞腫瘍、リンパ腫、肉腫、ウィルムス腫瘍、肺腫瘍、結腸腫瘍、リンパ腫瘍、乳房腫瘍並びに黒色腫からなる群から選択される。
【0035】
好ましい実施形態では、がん及び/又は固形腫瘍は、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)若しくは小細胞肺がん(SCLC))、頭部及び/若しくは頸部がん、胃がん、食道がん、腎臓がん、尿路上皮がん、黒色腫、乳がん、子宮頸がん、前立腺がん、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI)がん、DNAミスマッチ修復(dMMR)に関連するがん、及び/又は高腫瘍変異負荷(TMB)がんであり、好ましくは、がん及び/又は固形腫瘍は、転移性である。
【0036】
一実施形態では、がん及び/又は固形腫瘍は、転移性である。
【0037】
(a)CD137に特異的に結合する抗体
一実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片(「抗体ポリペプチド」)は、
a)ヒトCD137のドメイン2に対する結合特異性を有し、
b)CD137アゴニストであり、かつ/又は
c)ヒトCD137に対する参照抗体「1630/1631」の結合を阻害することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体、又は抗原結合断片は、ヒトCD137のドメイン2に対する結合特異性を有し、CD137アゴニストであり、かつヒトCD137に対する参照抗体「1630/1631」の結合を阻害することができる。
【0039】
一実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片(「抗体ポリペプチド」)は、
a)CD137のドメイン2に対する結合特異性を有し、
b)CD137アゴニストであり、かつ/又は
c)ヒトCD137に対する参照抗体「2674/2675」の結合を阻害することができる。いくつかの実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、CD137のドメイン2に対する結合特異性を有し、CD137アゴニストであり、かつヒトCD137に対する参照抗体「2674/2675」の結合を阻害することができる。
【0040】
一実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体、又は抗原結合断片は、ヒトCD137に対する参照抗体「1630/1631」及び/又は「2674/2675」の結合を阻害することができる。
【0041】
一実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、ヒトCD137に対する1つ以上の参照抗体の結合を阻害することができ、例えば、ヒトCD137に対する参照抗体「1630/1631」及び/又は「2674/2675」の結合を阻害することができる。例示的な抗CD137抗体は、Alligator Bioscience ABに対するWO2018/091740(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。例えば、そのような抗CD137抗体は、WO2018/091740の7~8、11~12、16~17及び19ページに明示的に開示されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
「CD137」は、例えば、GenBank登録番号AAH06196.1(その配列は以下の配列番号11に記載される)に記載されるような、ヒトCD137タンパク質を特に含む。CD137は、科学文献において4-1BB及びTNFRSF9としても既知である。
ヒトCD137、アミノ酸配列:>gi|571321|gb|AAA53133.1|4-1BB[ホモサピエンス]
【化1】
[配列番号11]
「ドメイン2」は、ヒトCD137のアミノ酸66~107に対応する上述のものを指す(上の配列番号11の太字の下線領域を参照)。
【0043】
したがって、本発明の併用療法は、CD137に特異的に結合する、すなわちCD137に対する特異性を有する、抗体又は抗原結合断片を含む。「特異性」は、抗体ポリペプチドが、インビボで、すなわち、CD137が人体内に存在する生理学的条件下で、CD137に結合することができることを意味する。好ましくは、抗体ポリペプチドは、インビボでは他のいかなるタンパク質にも結合しない。そのような結合特異性は、CD137を発現するトランスフェクト細胞を用いたELISA、免疫組織化学、免疫沈降、ウェスタンブロット、フローサイトメトリーなどの当該技術分野で周知の方法によって決定することができる。
【0044】
CD137に特異的に結合する抗体、又は抗原結合断片は、好ましくは、10x10-9M未満、又は7×10-9M未満、より好ましくは4、又は2×10-9M未満、最も好ましくは1.2×10-9M未満であるKd値で、ヒトCD137に結合する。有利には、抗体ポリペプチドは、CD137に選択的に結合することができる、すなわち、他のいかなるタンパク質と比べて少なくとも10倍強力にCD137に結合する。抗CD137抗体は、好ましくは、CD137に特異的に結合する、すなわち、CD137に結合するが、他の分子(例えば、OX40及び/若しくはCD40)に結合しないか、又はより低い親和性(例えば、10分の1低い親和性)で結合する。したがって、別の分子に結合する場合よりも高い結合親和性でCD137に結合する。したがって、典型的には、ヒトCD137に対する抗体のKdは、マウスCD137、他のTNFRスーパーファミリーメンバー、又は任意の他の無関係な物質若しくは環境中の付随する物質などの他の非標的分子に対するKdの2倍、好ましくは5倍、より好ましくは10倍未満であろう。より好ましくは、Kdは、50倍未満、更により好ましくは100倍未満、及び更により好ましくは200倍未満であろう。
【0045】
相互作用(抗体とリガンドとの間の相互作用など)の全体的な親和性(KD)並びにオン速度(ka)及びオフ速度(kd)を測定するための方法は、当該技術分野で周知である。例示的なin vitro法は、添付の実施例に記載される。フローサイトメトリーに基づく方法を使用することも考えられる(Sklar et al.,Annu Rev Biophys Biomol Struct,(31),97-119,2002)。
【0046】
本明細書で使用される用語CD137は、典型的には、ヒトCD137を指す。抗体は、非ヒト霊長類、例えばMacaca fascicularis(カニクイザル)由来のCD137などの、他の哺乳動物由来のCD137に対してある程度の結合親和性を有し得る。抗体は、好ましくは、マウスCD137に結合せず、かつ/又は他のヒトTNFRスーパーファミリーメンバー、例えばヒトOX40若しくはCD40に結合しない。
【0047】
一実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、その天然状態にあるCD137、特に細胞の表面上に局在化するCD137に対する親和性を有し得る。
【0048】
「細胞の表面上に局在化する」は、CD137の1つ以上の領域が細胞表面の外面に存在するように、CD137が細胞と会合していることを意味する。例えば、CD137は、細胞外表面に提示された1つ以上の領域とともに細胞原形質膜に挿入され得る(すなわち、膜貫通タンパク質として配向される)。これは細胞によるCD137の発現の過程で起こり得る。したがって、一実施形態では、「細胞の表面上に局在化する」とは、「細胞の表面上で発現する」ことを意味し得る。あるいは、CD137は、共有結合性及び/又はイオン性の相互作用で細胞の外側に存在して、それを細胞表面の特定の領域又は複数の領域に局在化させてもよい。
【0049】
一実施形態では、本明細書に定義されるCD137に特異的に結合する抗体、及びその抗原結合断片は、CD137アゴニストである。例えば、それらはCD8+T細胞からのインターフェロンガンマの放出を誘導することが可能であり得る。抗CD137抗体のアゴニスト活性は、初代CD8+T細胞に基づくT細胞アッセイにおいて評価され得る(実施例を参照)。
【0050】
したがって、CD137に特異的に結合する抗体、又は抗原結合断片は、CD137を発現する細胞の活性を調節することができ、この調節は、当該細胞の活性の増加又は低下である。細胞は、典型的にはT細胞である。抗体は、CD4+若しくはCD8+エフェクター細胞の活性を増加させることができるか、又は制御性T細胞(T reg)の活性を低下させることができるか、若しくは当該細胞を枯渇させることができる。いずれの場合も、抗体の正味の効果は、エフェクターT細胞、特にCD4+、CD8+、又はNKエフェクターT細胞の活性の増加である。エフェクターT細胞の活性の変化を決定するための方法は、周知であり、先に記載された通りである。
【0051】
CD137に特異的に結合する抗体、又は抗原結合断片は、好ましくはインビボでCD8+T細胞における活性の増加を引き起こし、任意選択的に、当該活性の増加は、T細胞による増殖、IFN-γ産生及び/又はIL-2産生の増加である。増加は、同じアッセイで測定されたアイソタイプ対照抗体によって引き起こされる活性の変化より、好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも10倍、更により好ましくは少なくとも25倍高い。
【0052】
上で概説したように、ヒトCD137に対する1つ以上の参照抗体の結合を阻害することができる抗体、又はその抗原結合断片が提供される。本明細書に記載される参照抗体は、参照抗体1630/1631及び参照抗体2674/2675である。
【0053】
例示的な抗CD137抗体は、Alligator Bioscience ABに対するWO2018/091740(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0054】
参照抗体「1630/1631」は、それぞれ配列番号17及び18のアミノ酸配列を有する重鎖及び軽鎖を含むインタクトなIgG抗体を意味する。
1630/1631-全配列重鎖
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFGYSYMSWVRQAPGKGLEWVSSIGSGSSYTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARVYSSPGIDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
[配列番号17]
1630/1631-全配列軽鎖
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYYTWVPFTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
[配列番号18]
【0055】
参照抗体「2674/2675」は、それぞれ配列番号29及び30のアミノ酸配列を有する重鎖及び軽鎖を含むインタクトなIgG抗体を意味する。抗体2674/2675は、ATOR-1017としても既知であり、これらの用語は、完全に互換性がある。
2674/2675-全配列重鎖
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNFGYSYMSWVRQAPGKGLEWVSSIGSTSSHTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARVYSSPGIDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
[配列番号29]
2674/2675-全配列軽鎖
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSIGSTLNWYQQKPGKAPKLLIYGASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYYTWVPFTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
[配列番号30]
【0056】
以下に論じるように、参照抗体「1630/1631」は、CD137のドメイン2に結合する。参照抗体2674/2675もまた、CD137のドメイン2に結合する。したがって、本発明の併用療法におけるCD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片も、CD137のドメイン2に結合することを理解されたい。いくつかの実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、CD137のドメイン2に結合する。
【0057】
「ヒトCD137に対する参照抗体「1630/1631」の結合を阻害することができる」とは、本発明の併用療法の抗体ポリペプチドの存在が、ヒトCD137に対する「1630/1631」の結合を全体的又は部分的に阻害することを意味する。同様に、「ヒトCD137に対する参照抗体「2674/2675」の結合を阻害することができる」とは、本発明の併用療法の抗体ポリペプチドの存在が、ヒトCD137に対する「2674/2675」の結合を全体的又は部分的に阻害することを意味する。したがって、本発明の併用療法で使用される抗CD137抗体又はその断片は、ヒトCD137に対する結合について、「参照抗体」1630/1631及び/又は「参照抗体」2674/2675と競合し得る。そのような競合的結合阻害は、当該技術分野で周知のアッセイ及び方法を用いて、例えば、固定化されたCD137を有するBIAcoreチップを使用して、試験される抗体ポリペプチドを用いて、また、用いずに、参照抗体「1630/1631」又は「2674/2675」存在下でインキュベートすることにより決定することができる。あるいは、参照抗体「1630/1631」又は「2674/2675」をBIAcoreチップの表面に固定化し、CD137抗原を固定化した抗体に結合させ、次いで二次抗体を同時CD137結合能について試験する、ペアワイズマッピング手法を用いることができる(例えば、「BIAcore Assay Handbook’,GE Healthcare Life Sciences,29-0194-00 AA 05/2012(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
【0058】
更なる代替案として、競合的結合阻害は、フローサイトメトリーを用いて決定することができる。例えば、試験抗体が、細胞表面抗原に対する1630/1631又は2674/2675参照抗体の結合を阻害することができるかどうかを調べるために、抗原を発現する細胞を、細胞を洗浄する前に試験抗体とともに20分間プレインキュベートし、フローサイトメトリーによって検出することができるフルオロフォアにコンジュゲートした参照1630/1631又は2674/2675抗体とともにインキュベートすることができる。試験抗体とのプレインキュベーションがフローサイトメトリーにおける参照1630/1631又は2674/2675抗体の検出率を低下させる場合、試験抗体は、細胞表面抗原に対する参照抗体の結合を阻害する。試験された抗体がCD137に対して高い親和性を示す場合、期間を短くしたプレインキュベーションが使用され得る(又は、プレインキュベーションを全くしない)。
【0059】
更なる代替例では、競合的結合阻害は、ELISAを用いて決定することができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、本発明の併用療法のCD137に特異的に結合する抗体、及び抗原結合断片は、参照抗体1630/1631及び2674/2675の可変領域を参照することによって定義される。
【0061】
「1630/1631」と命名された参照抗体は以下を含む:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFGYSYMSWVRQAPGKGLEWVSSIGSGSSYTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARVYSSPGIDYWGQGTLVTVSS
[配列番号1]
及び
(b)配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYYTWVPFTFGQGTKLEIK
[配列番号2]
【0062】
「2674/2675」と命名された参照抗体は以下を含む:
(a)配列番号19のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNFGYSYMSWVRQAPGKGLEWVSSIGSTSSHTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARVYSSPGIDYWGQGTLVTVSS
[配列番号19]
及び
(b)配列番号20のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSIGSTLNWYQQKPGKAPKLLIYGASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYYTWVPFTFGQGTKLEIK
[配列番号20]
【0063】
本明細書で使用される「アミノ酸」という用語は、標準的な20個の遺伝的にコードされたアミノ酸及びそれらの対応する(天然の「l」型と比較して)「D」型の立体異性体、オメガ-アミノ酸及び他の天然に存在するアミノ酸、非従来型アミノ酸(例えば、α,α-二置換アミノ酸、N-アルキルアミノ酸など)、並びに化学的に誘導されたアミノ酸を含む(以下参照)。
【0064】
「アラニン」、「Ala」、「A」のようにアミノ酸を具体的に列挙する場合、明示的に別段の記載がない限り、この用語は、l-アラニン及びd-アラニンの両方を指す。所望の機能的特性がポリペプチドによって保持される限り、他の非従来型アミノ酸もまた、本発明のポリペプチドに好適な成分であり得る。示されるペプチドについて、適切な場合、各コードされたアミノ酸残基は、従来型アミノ酸の慣用名に対応する単一の文字指定によって表される。
【0065】
一実施形態では、本明細書に定義される抗体ポリペプチドは、l-アミノ酸を含むか、又はそれからなる。
【0066】
「ポリペプチド」は、2つ以上のサブユニットアミノ酸、アミノ酸類似体、又は他のペプチド模倣体の化合物を指すために、その最も広い意味で本明細書で使用される。したがって、「ポリペプチド」という用語は、短いペプチド配列、及びより長いポリペプチド及びタンパク質を含む。本明細書で使用される場合、「アミノ酸」という用語は、グリシン、及びD及びL光学異性体の両方、並びにアミノ酸類似体及びペプチド模倣体を含む、天然及び/又は非天然若しくは合成のアミノ酸のいずれかを指す。
【0067】
当業者は、抗体又はその抗原結合断片の結合特異性が、構成要素の重鎖及び軽鎖の可変領域内の相補性決定領域(CDR)、例えば、本明細書に記載されるCDRなどの存在によって付与されることを理解するであろう。
【0068】
当業者は更に、上の可変領域を含む任意のインタクトなIgG抗体が、CD137に対する1630/1631又は2674/2675の結合を競合的に阻害する本発明の併用療法の抗体ポリペプチドを同定するための参照抗体として使用され得ることを理解するであろう。しかしながら、好ましくは、参照抗体1630/1631は、それぞれ配列番号17及び18に定義される重鎖及び軽鎖からなり、参照抗体2674/2675は、それぞれ配列番号29及び30に定義される重鎖及び軽鎖からなる。
【0069】
競合的結合は、典型的には、試験抗体が参照抗体(この場合は1630/1631若しくは2674/2675)に結合する抗原のエピトープで結合するか、又は少なくともそれに非常に近接して結合するために生じる。しかしながら、当業者は、競合的結合が立体障害によっても生じ得ることを理解するであろう。したがって、試験抗体は、参照抗体が結合するエピトープとは異なるエピトープで結合し得るが、それでもなお参照抗体と抗原との結合を妨げるのに十分なサイズ又は構成であり得る。
【0070】
CD137に結合し、本発明の併用療法の一部である抗体、及び抗原結合断片を、がんの診断薬及び治療薬として特に好適なものにする特性を示すことに基づいて、抗CD137抗体のスクリーニング後に同定した。
【0071】
したがって、一実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体、又は抗原結合断片は、以下の特性のうちの1つ以上を示す。
a)架橋依存性機構を介してCD137を刺激し、T細胞及び他の免疫細胞を活性化する能力(例えば、CD8+T細胞からのインターフェロンガンマの放出を誘導するため、実施例を参照)、並びに/又は
b)カニクイザルCD137との交差反応性(実施例を参照)。
【0072】
例えば、CD137に特異的に結合する抗体、又は抗原結合断片は、上の特性の両方を示し得る。抗体は、本明細書に開示される特定の抗CD137抗体のうちの1つのバリアント若しくは断片であってもよく、又はそれらを含んでいてもよく、但し、上述のバリアント若しくは断片は、CD137に対する特異性を保持し、いくつかの実施形態では、上の機能的特徴(a)~(b)のうちの少なくとも1つを保持する。
【0073】
上述のように、CD137に特異的に結合し、本発明の併用療法の一部を含む抗体は、架橋依存性機構を有し得る。「架橋依存性機構」は、CD137を刺激するために抗体がCD137及びFc受容体の両方に結合しなければならない、Fc架橋依存性機構を含む。そのため、いくつかの実施形態では、抗体は、CD137及びFc受容体の両方に結合することができなければならない。
【0074】
一実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体、又は抗原結合ドメインは、Fc受容体に結合することができる。一実施形態では、抗体又は抗原結合ドメインは、CD137及びFc受容体に同時に結合することができる。好ましい実施形態では、CD137に特異的に結合してT細胞を活性化する抗体及び/又はその抗原結合ドメインの能力は、CD137及びFc受容体の両方への結合に依存する。
【0075】
好ましい実施形態では、標的とされるFc受容体は、FcγRである。FcγRの例として、FcγRI、FcγRIIA及びFcγRIIBが挙げられる。したがって、一実施形態では、FcγRは、FcγRIIAであり得る。FcγRIIAは、FcγRIIAのR131及びH131アロタイプの両方を含む。したがって、一実施形態では、標的とされるFcγRは、FcγRIIAのR131アロタイプである。
【0076】
代替的な実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体は、Fc架橋非依存性であってもよく、その結果、Fc受容体に対する結合の非存在下でCD137を刺激することができる。
【0077】
したがって、例示的な抗体2674/2675及び1630/1631は、共刺激性CD137受容体を標的とするFcγR架橋依存性アゴニスト抗体である。したがって、それらはCD137及びFcγRを発現する細胞を含有する組織又は腫瘍においてのみ活性である。「CD137及びFcγRを発現する細胞を含有する腫瘍」は、CD137及びFcγRを発現する腫瘍細胞及び/又は腫瘍浸潤免疫細胞(単球、マクロファージ、樹状細胞、NK細胞、T細胞、B細胞及び顆粒球など)を含む腫瘍又は腫瘍流入領域リンパ節を含む。CD137及びFcγRは、腫瘍内の別々の細胞上で発現され得ること、かつ/又は同じ細胞で同時発現され得ることを理解されたい。したがって、参照抗体2674/2675及び1630/1631は、腫瘍の微小環境においてCD137及びFcγRの両方を発現する細胞に関連した適応症において腫瘍指向性の免疫活性化を提供するであろう。これは、全身性免疫活性化を誘導することができるFcγR非依存性CD137アゴニスト(例えば、ウレルマブ)とは対照的である。抗体2674/2675及び1630/1631の腫瘍局在化作用は、主として異なるFcγRを発現する腫瘍浸潤マクロファージ/骨髄細胞の数に依存する。
【0078】
IgG4は、FcγRIに対して高親和性で結合し、またFcγRIIa及びFcγRIIbに対して中程度/低い親和性で結合することが既知である。FcγRI及びFcγRIIaは単球に発現し、FcγRIIbはB細胞に高密度で発現する。抗体2674/2675及び1630/1631の架橋は、腫瘍内で及び隣接する流入領域リンパ節において優先的に起こる。血清IgGレベルが高い全身血中では、遊離型の非ブロックFcγRの利用可能性は、効果的な架橋が起こるには低すぎると考えられる。したがって、全身性免疫活性化のリスクは低いと考えられており、これは他のCD137 mAbと比較してリスク便益プロファイルを改善する。
【0079】
2674/2675及び1630/1631などのCD137に特異的に結合し、本発明の併用療法の一部を形成する抗体による治療のための患者選択及びバイオマーカーの理論的根拠は、CD137及びFcγRを発現する浸潤細胞を有する腫瘍型によって導かれ得る。したがって、本発明の併用療法は、CD137及びFcγRを発現する細胞を含有する腫瘍を有することに基づいて(すなわち、コンパニオン診断試験として)選択された患者に使用するためのものであり得る。
【0080】
「浸潤細胞」は、単球、マクロファージ、樹状細胞、NK細胞、T細胞、B細胞、顆粒球などの腫瘍浸潤免疫細胞を含む
【0081】
有利には、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、腫瘍免疫を誘導することができる。腫瘍免疫は、当該技術分野で周知の方法を用いて、例えば、同じ腫瘍を用いたCD317抗体治療によって所与の腫瘍から治癒したマウスを再チャレンジすることによって、及び/又は同じ腫瘍を用いた本発明の併用療法によって所与の腫瘍から治癒したマウスを再チャレンジすることによって、実証することができる。腫瘍免疫が抗体療法及び/又は併用療法によって誘導されている場合、その腫瘍は再チャレンジの際に拒絶される。
【0082】
一実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、CD137を発現する細胞への結合時に、
a)抗体依存性細胞傷害(ADCC)
b)抗体依存性細胞食作用(ADCP)及び/又は
c)補体依存性細胞傷害(CDC)を誘導することが実質的にできない。
【0083】
抗体は、本明細書に開示される特定の抗CD137抗体のうちの1つのバリアント若しくは断片であってもよく、又はそれらを含んでいてもよく、但し、上述のバリアント若しくは断片は、CD137に対する特異性を保持し、CD137を発現する細胞への結合時に、(a)~(c)のうちの1つ以上を誘導することができない。
【0084】
細胞試料中のADCC媒介性溶解又はアポトーシスのレベルを決定するための方法は、当該技術分野で周知である。例えば、クロム-51放出アッセイ、ユーロピウム放出アッセイ、又は硫黄-35放出アッセイを使用してもよい。そのようなアッセイにおいて、抗原を発現する以前に標識された標的細胞株を、試験される抗体とともにインキュベートする。洗浄後、エフェクター細胞(典型的には、Fc受容体CD16を発現する)を、抗体標識された標的細胞とともにインキュベートする。続いて、標的細胞溶解を、シンチレーションカウンター又は分光光度法による細胞内標識の放出によって測定する。そのようなアッセイで必要とされる放射性同位体による標識の代替例として、標的細胞に天然に存在する酵素の放出を測定することによって溶解が検出される方法が使用され得る。これは、酵素触媒反応の生成物の検出(例えば、生物発光検出)によって達成され得る。そのようなアッセイでは、細胞の以前の標識は必要とされない。そのようなアッセイで検出される典型的な細胞酵素は、GAPDHである。
【0085】
細胞試料中のADCPのレベルを決定するための方法は、当該技術分野で周知である。例えば、腫瘍抗原を発現するがん細胞は、mAb及びヒト白血病単球細胞株THP-1の滴定の存在下でインキュベートされ得る。エフェクター及び標的細胞の両方が蛍光標識されてもよく、細胞貪食はフローサイトメトリーによって測定されてもよい。また、顕微鏡又はイメージングサイトメトリーを使用して食作用を確認してもよい。
【0086】
細胞試料中のCDCのレベルを決定するための方法は、当該技術分野で周知である。例えば、補体系の成分を含む血清(典型的にはヒト血清)は、検出される抗体によって結合される標的細胞と混合されてもよく、次いで、細胞死は、好適な方法によって決定され得る。細胞死は、標的細胞に放射性化合物を予め保持させることによって決定することができる。細胞が死滅すると、放射性化合物が細胞から放出される。したがって、細胞死を媒介する抗体の有効性は、放射能レベルによって決定され得る。非放射性CDCアッセイも使用されてもよく、これは、蛍光又は発光の測定を用いて、GAPDHなどの豊富な細胞成分の放出を決定してもよい。
【0087】
一実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、参照抗体1630/1631及び/又は2674/2675が結合することができるCD137上のエピトープと少なくとも部分的に重複する、CD137の細胞外ドメイン上のエピトープに結合することができる。したがって、抗体又は抗原結合断片は、CD137のドメイン2(すなわち、ヒトCD137のアミノ酸66~107)に/その中に位置するエピトープに結合することが可能であり得る。
【0088】
一実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、インタクトな抗体(例えば、IgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4抗体)を含むか、又はそれらからなる。好ましい実施形態では、抗体は、IgG4抗体である。
【0089】
代替的な実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、Fv断片(例えば、単鎖Fv及びジスルフィド結合Fv)、Fab様断片(例えば、Fab断片、Fab’断片及びF(ab)断片)、並びにドメイン抗体(例えば、単一のV可変ドメイン又はV可変ドメイン)からなる群から選択される抗原結合断片を含むか、又はそれらからなる。特に、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、scFvであり得る。
【0090】
更なる実施形態では、上で論じたように、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、アフィボディ、テトラネクチン(CTLD)、アドネクチン(モノボディ)、アンチカリン、DARPin(アンキリン)、アビマー、iMab、マイクロボディ、ペプチドアプタマー、クニッツドメイン及びアフィリンを含むか、又はそれらからなる群から選択される抗体模倣物を含むか、又はそれらからなる。
【0091】
一実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、
a)コンセンサス配列G、F、T/N、F、G、Y、S、Yを有する重鎖CDR1配列、
b)コンセンサス配列I、G、S、G/T、S、S、Y/H、Tを有する重鎖CDR2配列、及び
c)配列ARVYSSPGIDYを有する重鎖CDR3配列、を含む。
【0092】
一実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、
a)コンセンサス配列Q、S、I、S/G、S、Y/Tを有する軽鎖CDR1配列、
b)コンセンサス配列A/G、A、Sを有する軽鎖CDR2配列、及び
c)配列QQYYTWVPFTを有する軽鎖CDR3配列、を含む。
【0093】
好ましい実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、以下のCDRを含む重鎖可変領域を含む。
a)GFTFGYSY[配列番号3]、又は配列番号3と比較して最大3個のアミノ酸変異、例えば、1、2若しくは3個の変異を含有するアミノ酸配列のCDR、
b)IGSGSSYT[配列番号4]、又は配列番号4と比較して最大3個のアミノ酸変異、例えば、1、2若しくは3個の変異を含有するアミノ酸配列のCDR、及び
c)ARVYSSPGIDY[配列番号5]、又は配列番号5と比較して最大3個のアミノ酸変異、例えば、1、2若しくは3個の変異を含有するアミノ酸配列のCDR。
【0094】
したがって、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号3、4及び5のCDRのうちの1個、2個、又は3個全てを含む重鎖可変領域を含み得る。
【0095】
例えば、抗体又はその抗原結合断片は、1630/1631参照抗体の対応する領域のアミノ酸配列、すなわち配列番号1を有する重鎖可変領域を含み得る。
【0096】
代替の好ましい実施形態では、本発明の第1又は第2の態様による抗体又はその抗原結合断片は、以下のCDRを含む重鎖可変領域を含む。
a)GFNFGYSY[配列番号21]、又は配列番号21と比較して最大3個のアミノ酸変異、例えば、1、2若しくは3個の変異を含有するアミノ酸配列のCDR、
b)IGSTSSHT[配列番号22]、又は配列番号22と比較して最大3個のアミノ酸変異、例えば、1、2若しくは3個の変異を含有するアミノ酸配列のCDR、及び
c)ARVYSSPGIDY[配列番号23]、又は配列番号23と比較して最大3個のアミノ酸変異、例えば、1、2若しくは3個の変異を含有するアミノ酸配列のCDR。
【0097】
したがって、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号21、22及び23のCDRのうちの1個、2個、又は3個全てを含む重鎖可変領域を含み得る。
【0098】
例えば、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、2674/2675参照抗体の対応する領域のアミノ酸配列、すなわち配列番号19を有する重鎖可変領域を含み得る。
【0099】
しかしながら、CDR配列内の低レベルの変異(典型的には、わずか1、2,又は3個のアミノ酸)は、CD137に対する抗体又は抗原結合断片の特異性を喪失することなく許容され得ることを理解されたい(いずれかの実施形態に関して、1630/1631又は2674/2675)。
【0100】
例えば、代替的な実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、上で定義されたCDRを含む重鎖可変領域を含んでもよく、H1及びH2のCDRは、それぞれ、配列番号3及び4の変異態様であり、H3 CDRは配列番号5である。
【0101】
更なる代替的な実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、上で定義されたCDRを含む重鎖可変領域を含んでもよく、H1及びH2のCDRは、それぞれ、配列番号21及び22の変異態様であり、H3 CDRは配列番号23である。
【0102】
いくつかの実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号1のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも60%の配列同一性、例えば、少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。
【0103】
パーセント配列同一性は、例えば、Expasy機関のサイト(http://www.ch.embnet.org/software/LALIGN_form.html)において、パラメータとして、グローバルアライメントオプション、スコアリングマトリックスBLOSUM62、開始ギャップペナルティ-14、伸長ギャップペナルティ-4を使用して、LALIGNプログラム(Huang and Miller,Adv.Appl.Math.(1991)12:337-357(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))によって決定することができる。あるいは、2つのポリペプチド間のパーセント配列同一性は、好適なコンピュータプログラム、例えば、University of Wisconsin Genetic Computing GroupのGAPプログラムを使用して決定されてもよく、パーセント配列同一性は、配列が最適にアラインメントされたポリペプチドに関連して算出されることを理解されたい。
【0104】
あるいは、アラインメントは、Clustal Wプログラムを使用して実行され得る(参照により本明細書に組み込まれる、Thompson et al.,1994,Nucl.Acid Res.22:4673-4680に記載の通り)。使用されるパラメータは、以下のようであってもよい:
-高速ペアワイズアラインメントパラメータ:K-tuple(ワード)サイズ;1、ウィンドウサイズ;5、ギャップペナルティ;3、上の対角線の数;5。スコアリング方法:x%。
-複数のアラインメントパラメータ:ギャップオープンペナルティ;10、ギャップエクステンションペナルティ;0.05。
-スコアリングマトリックス:BLOSUM。
【0105】
あるいは、BESTFITプログラムは、局所配列のアラインメントを決定するために使用されてもよい。
【0106】
更に好ましい実施形態では、本発明の第1の態様によるCD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、以下のCDRを含む軽鎖可変領域を含む。
a)QSISSY[配列番号6]、又は配列番号6と比較して最大3個のアミノ酸変異、例えば、1、2若しくは3個の変異を含有するアミノ酸配列のCDR、
b)AAS[配列番号7]、又は配列番号7と比較して最大2個のアミノ酸変異、例えば、1若しくは2個の変異を含有するアミノ酸配列のCDR、及び
c)QQYYTWVPFT[配列番号8]、又は配列番号8と比較して最大3個のアミノ酸変異、例えば1、2若しくは3個の変異を含有するアミノ酸配列のCDR。
【0107】
したがって、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号6、7及び8のCDRを含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0108】
例えば、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、1630/1631参照抗体の対応する領域、すなわち、配列番号2のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも60%の配列同一性、例えば、少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含み得る。
【0109】
代替的な実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、上で定義されたCDRを含む軽鎖可変領域を含んでもよく、L1及びL2のCDRは、それぞれ、配列番号6及び7の変異態様であり、L3のCDRは配列番号8である。
【0110】
更に好ましい実施形態では、CD137に特異的に結合し、本発明の第1の態様の併用療法の一部を含み得る抗体、又はその抗原結合断片は、以下のCDRを含む軽鎖可変領域を含む。
a)QSIGST[配列番号24]、又は配列番号24と比較して最大3個のアミノ酸変異、例えば、1、2若しくは3個の変異を含有するアミノ酸配列のCDR、
b)GAS[配列番号25]、又は配列番号25と比較して最大2個のアミノ酸変異、例えば、1若しくは2個の変異を含有するアミノ酸配列のCDR、及び
c)QQYYTWVPFT[配列番号26]、又は配列番号26と比較して最大3個のアミノ酸変異、例えば1、2若しくは3個の変異を含有するアミノ酸配列のCDR。
【0111】
したがって、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号24、25及び26のCDRを含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0112】
例えば、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、2674/2675参照抗体の対応する領域のアミノ酸配列、すなわち配列番号20を有する軽鎖可変領域を含み得る。
【0113】
代替的な実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、上で定義されたCDRを含む軽鎖可変領域を含んでもよく、L1及びL2のCDRは、それぞれ、配列番号24及び25の変異態様であり、L3のCDRは配列番号26である。
【0114】
本発明の併用療法及び方法で使用される抗CD137抗体は、配列番号3~5のCDR配列のうちの1個、2個、若しくは3個全て、及び/又は配列番号6~8のCDR配列のうちの1個、2個、若しくは3個全てを含む抗体であり得る。抗体は、配列番号3~8の6個全てのCDR配列を含み得る。
【0115】
抗体は、配列番号2の軽鎖可変領域配列及び/又は配列番号1の重鎖可変領域配列、又はそれと少なくとも60%の配列同一性、例えば、配列番号1及び/若しくは配列番号2に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよく、又はそれらからなってもよい。
【0116】
抗体は、配列番号2の軽鎖可変領域配列及び配列番号1の重鎖可変領域配列を含む抗体であってもよく、又はそれと同じエピトープに結合してもよい。加えて、抗体は、配列番号16の軽鎖定常領域配列及び/又は配列番号13の重鎖定常領域配列、又はそれと少なくとも60%の配列同一性、例えば、配列番号16及び/若しくは配列番号13に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。
【0117】
本発明の併用療法及び方法で使用される抗CD137抗体は、配列番号21~23のCDR配列のうちの1個、2個、若しくは3個全て、及び/又は配列番号24~26のCDR配列のうちの1個、2個、若しくは3個全てを含む抗体であり得る。抗体は、配列番号21~26の6個全てのCDR配列を含み得る。
【0118】
抗体は、配列番号20の軽鎖可変領域配列及び/又は配列番号19の重鎖可変領域配列、又はそれと少なくとも60%の配列同一性、例えば、配列番号20及び/若しくは19に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。
【0119】
抗体は、配列番号20の軽鎖可変領域配列及び配列番号19の重鎖可変領域配列を含む抗体であってもよく、又はそれと同じエピトープに結合してもよい。加えて、抗体は、配列番号16の軽鎖定常領域配列及び/又は配列番号13の重鎖定常領域配列、又はそれと少なくとも60%の配列同一性、例えば、配列番号16及び/若しくは13に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。
【0120】
ヒト治療の場合、ヒト抗体又はヒト化抗体が好ましく使用されることは、当業者には理解されることだろう。非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化形態は、好ましくは非ヒト抗体に由来する最小部分を有する、遺伝子操作されたキメラ抗体又は抗体断片である。ヒト化抗体は、ヒト抗体(レシピエント抗体)の相補的決定領域が、所望の機能を有するマウス、ラット、又はウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)の相補的決定領域に由来する残基によって置き換えられた抗体を含む。いくつかの場合では、ヒト抗体のFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基で置換される。ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも導入された相補性決定領域やフレームワーク配列にも存在しない残基も含んでもよい。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、及び典型的には2つの可変ドメインの実質的な全てを含み、相補性決定領域の全て又は実質的に全てが非ヒト抗体のものに対応し、フレームワーク領域の全て、又は実質的に全てが関連するヒトコンセンサス配列のものに対応する。ヒト化抗体は、最適には、典型的にヒト抗体由来のFc領域などの抗体定常領域の少なくとも一部を含む(例えば、Jones et al.,1986.Nature 321:522-525;Riechmann et al.,1988,Nature 332:323-329;Presta,1992,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
【0121】
非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当該技術分野で周知である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトであるソースからその中に導入される1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば導入残基と呼ばれ、通常、輸入された可変ドメインから取り出される。ヒト化は、本質的に、ヒト相補性決定領域を対応するげっ歯類の相補性決定領域で置換することにより、記載されるように行うことができる(例えば、Jones et al.,1986,Nature 321:522-525、Reichmann et al.,1988.Nature 332:323-327、Verhoeyen et al.,1988,Science 239:1534-1536l、US4,816,567(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。したがって、そのようなヒト化抗体はキメラ抗体であり、インタクトなヒト可変ドメインより実質的に少ない部分が、非ヒト種からの対応する配列で置換されているものである。実際には、ヒト化抗体は、相補性決定領域残基の一部と、場合によってはフレームワーク残基が齧歯類抗体の類似部位の残基で置換された、典型的なヒト抗体であると考えられる。キメラ抗体は、Neuberger et alによって論じられている(1998,8th International Biotechnology Symposium Part 2,792-799)。
【0122】
ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリーを含む当該技術分野で既知の様々な技術を用いて同定することもできる(例えば、Hoogenboom & Winter,1991,J.Mol.Biol.227:381、Marks et al.,1991,J.Mol.Biol.222:581、Cole et al.,1985,In:Monoclonal antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,pp.77、Boerner et al.,1991.J.Immunol.147:86-95(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
【0123】
当業者は、CD137に特異的に結合するヒト化抗体、又は抗原結合断片が、重鎖定常領域又はその一部を更に含み得ることを理解するであろう(以下を参照)。
【0124】
一実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、IgG重鎖(IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4重鎖など)のCH1、CH2、及び/又はCH3領域を含む。したがって、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、IgG4重鎖由来の定常領域の一部又は全部を含んでもよい。例えば、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、CH1及びCL定常領域を、それぞれ上で定義された重及び軽可変領域のいずれかと組み合わせて構成されるFab断片であってもよい。
【0125】
同様に、上で定義されたCD137に特異的に結合する抗体、又は抗原結合断片は、軽鎖定常領域又はその一部を更に含み得る(以下を参照)。例えば、抗体ポリペプチドは、カッパ又はラムダ軽鎖由来のCL領域を含み得る。
【0126】
一実施形態では、CD137に特異的に結合し、本発明の併用療法に含まれる抗体、又は抗原結合断片は、抗体Fc領域を含む。当業者は、Fc部分がIgG抗体、又は異なるクラスの抗体(IgM、IgA、IgD又はIgEなど)に由来し得ることを理解するであろう。一実施形態では、Fc領域は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4抗体に由来する。しかしながら、有利には、Fc領域はIgG4抗体に由来する。
【0127】
Fc領域は、天然に存在し得る(例えば、内因性に産生された抗体の一部)か、又は人工的であり得る(例えば、天然に存在するFc領域に対して1つ以上の点変異を含む)。Fc領域のバリアントは、典型的には、FcγR及び/又は新生児Fc受容体(FcRn)などのFc受容体に改変された親和性で結合し、ポリペプチドの機能及び/又は半減期を改善する。生物学的機能及び/又は半減期は、天然Fc領域を含むポリペプチドの半減期と比較して、延長するか又は減少するかのいずれかであり得る。バリアントFc領域の存在によって調節され得るそのような生物学的機能の例としては、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、補体依存性細胞傷害(CDC)、及び/又はアポトーシスが挙げられる。
【0128】
したがって、Fc領域は、天然に存在し得る(例えば、内因性に産生されたヒト抗体の一部)か、又は人工的であり得る(例えば、天然に存在するヒトFc領域に対して1つ以上の点変異を含む)。
【0129】
当該技術分野で周知であるように、抗体のFc領域は、その血清中半減期と、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、及び抗体依存性細胞食作用(ADCP)などのエフェクター機能を媒介する。
【0130】
治療用モノクローナル抗体やFc融合タンパク質のFc領域を操作することで、求められる薬理活性に適した分子を生成できる(Strohl,2009,Curr Opin Biotechnol20(6):685-91,その開示は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0131】
(a)半減期を延長するための操作されたFc領域
抗体医薬の有効性を向上させる1つのアプローチは、抗体の血清持続性を高めることで、より高い循環レベル、より少ない投与回数、より少ない投与量を可能にする。
【0132】
IgGの半減期は、新生児受容体FcRnとのpH依存的な結合に依存する。内皮細胞表面上に発現しているFcRnは、pH依存的にIgGと結合し、分解からそれを保護する。
【0133】
pH7.4ではなく、pH6.0でFcRnに選択的に結合する抗体の中には、様々な動物モデルで高い半減期を示す。
【0134】
CH2ドメインとCH3ドメインとの間の界面に位置するいくつかの変異、例えば、T250Q/M428L(Hinton et al.,2004,J Biol Chem.279(8):6213-6(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)及びM252Y/S254T/T256E+H433K/N434F(Vaccaro et al.,2005,Nat.Biotechnol.23(10):1283-8(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)は、FcRnに対する結合親和性及びIgG1のインビボでの半減期を増加させることが示されている。
【0135】
(b)エフェクター機能を変化させるための操作されたFc領域
抗体医薬やFc融合タンパク質の用途によっては、エフェクター機能(ADCCなど)を低下させるか増加させることが望まれる場合がある。
【0136】
細胞表面分子、特に免疫細胞上の分子を標的とする抗体の場合、エフェクター機能を奪うことが特定の臨床適応に必要となる場合がある。
【0137】
4つのヒトIgGアイソタイプは、活性化Fcγ受容体(FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIIa)、阻害性FcγRIIb受容体、及び補体の第1成分(C1q)と異なる親和性で結合し、非常に異なるエフェクター機能をもたらす(Bruhns et al.,2009,Blood.113(16):3716-25(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0138】
IgG4対IgG2のFcγRI結合親和性
Bruhnsらは、既知のヒトFcγR及びそれらの多型バリアントの、異なるヒトIgGサブクラスに対する特異性及び親和性を評価する一連の実験を行った(Bruhns et al.,2009,Blood.113(16):3716-25(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)。この研究において、IgG2はFcγRIに対して検出可能な親和性を有しなかったが、IgG1、IgG3及びIgG4は全て、FcγRIに対するナノモル範囲の結合親和性を示したことが明確に実証された(Bruhns et al.,2009,Blood.113(16):3716-25,Lu et al.,2015,Proc Natl Acad Sci U S A.112(3):833-8(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。主要なヒトFcγR及びそれらのバリアントとIgGアイソタイプとの間の相対的結合親和性の概要を表1にまとめる。(Stewart et al.2014,J Immunother.2(29)(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。
【表1】
【0139】
しかしながら、細胞活性化は、IgG免疫複合体に対するFcγRIの親和性に影響を及ぼし、Bruhnsの論文における表面プラズモン共鳴によって生成されたデータは、炎症部位で起こることを正確に再現しない可能性がある。Hogarth et alによる総説(Hogarth et al.2012,Nat Rev Drug Discov 11(4):311-31(その開示は、参照により本明細書に組み込まれる))は、この研究及びIgGに対するFcγRの結合に焦点を当てた他の研究の概要をまとめたものである。
【0140】
骨髄細胞サブセットにおけるFcγRI発現
ヒトFcγRは主に骨髄系統の細胞によって発現され、このことは循環骨髄細胞サブセットに関する多数の研究において実証されている。一般的にCD14CD16として同定される古典的な単球は、高レベルのFcγRII(CD32)、中間レベルのFcγRI、及び低レベルのFcγRIII(CD16)を提示する(Almeida et al.2001,100(3):325-38、Cheeseman et al.2016,PLoS One 11(5):e0154656(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。しかしながら、CD14CD16の非古典的な単球は、高レベルのFcγRIII、中間レベルのFcγRII、及び低レベルのFcγRIを提示する(Almeida et al.2001)。異なる骨髄細胞サブセットにおけるヒトFcγR遺伝子の発現を示すいくつかの公表されているマイクロアレイデータセットの概要及び編纂が、これらの観察を裏付けている(Guilliams et al.2014,Nat Rev Immunol.14(2):94-108(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。
【0141】
一旦、組織内に入ると、単球はマクロファージに分化し、環境要因に応じて、これらのマクロファージは特定の表現型を得る。Roussel et alによる研究(Roussel et al.2017,J Leukoc Biol.102(2):437-447(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))では、様々な炎症性刺激を用いることにより末梢血単球を異なるマクロファージ系統に分極させ、これらの細胞の発現プロファイルを評価した。この場合、IFN-γで刺激した単球は、特異的にCD64の高度に上昇した発現をもたらした。循環CD14単球上でCD64発現の増加が検出されたSLE患者において同様の観察結果が認められ、それはインターフェロン刺激遺伝子の発現と相関していた(Li et al.2010,Arthritis Res Ther 12(3):R90(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。
【0142】
様々なヒト腫瘍内の骨髄細胞浸潤
炎症性単球、単球性骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)及びマクロファージなどの様々な骨髄細胞サブセットが、多数の研究において、がん患者に蓄積することが示されている(Solito et al.2014,Ann N Y Acad Sci 1319:47-65.,Hu et al.2016,Clin Transl Oncol.18(3):251-8(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。最近の試みは、これらの細胞の特徴付けを標準化するための戦略を提案することを目的としているが(Bronte et al.2016,Nat Commun.7:12150(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))、これらの細胞集団の多くの表現型の定義は依然として文献中に見出すことができる(Elliott et al.2017,Front Immunol.8:86(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。最も一般的には、これらの細胞は、マーカーCD11b、CD14、CD33の発現及びHLA-DR(単球MDSC)の低発現によって定義される(Bronte et al.2016)。加えて、腫瘍関連マクロファージ(TAM)は、CD64及びCD68(M1分極化、抗腫瘍形成性)、又はCD163及びCD206(M2分極化、抗腫瘍形成性)の発現によって一般に同定される(Elliott et al.2017)。
【0143】
Elliott et alによる最近の総説は、がん患者において骨髄細胞サブセットを同定するために使用される多数の表現型をまとめている。これらの研究のほとんどは、循環細胞にそれらの分析の重点を置いており、骨髄CD11b細胞の頻度の増加が、例えば、膀胱がん、乳がん、結腸直腸がん、肝細胞がん、膵臓がん、前立腺がん及び腎細胞がんの患者の血中に観察されている(Solito et al.2014,Elliott et al.2017)。他の研究もまた、これらの細胞の腫瘍組織への浸潤のレベルを特徴付けることを試みた。結腸直腸腫瘍では、高頻度のCD14CD169細胞が観察された。これらの細胞は、CD163及びCD206も発現したことから、M2分極化TAMであることが示唆された(Li et al.2015,PLoS One 10(10):e0141817(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。結腸直腸がん患者における別の研究はまた、健康な個体と比較して増加した数のCD11bCD33HLA-DR細胞を検出した(Zhang et al.2013,PLoS One 8(2):e57114(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。
【0144】
同様に、CD11b骨髄細胞も膀胱腫瘍において同定されており、それらは全有核細胞の10~20%を占めていた(Eruslanov et al.2012,Int J Cancer 130(5):1109-19(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。更に高い頻度のCD11b細胞が膵臓がんにおいて観察され、CD45細胞の60%より多くがCD11bCD15CD33であった(Porembka et al.2012,Cancer Immunol Immunother 61(9):1373-85(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。また、ある研究では、非小細胞肺がん内の主要な骨髄細胞集団はCD11bCD15CD66b好中球様集団であると結論付けた。興味深いことに、一旦これらの細胞が血液から腫瘍組織に移動すると、これらの細胞は上方制御されたFcγRIを含む発現プロファイルの改変を示す(Eruslanov et al.2014,J Clin Invest.124(12):5466-80(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。
【0145】
腫瘍浸潤細胞におけるFcγRIの発現
多数の研究がヒト腫瘍内の骨髄細胞の高い浸潤を確認したが、これらの細胞上のFcγRの発現を詳細に探求した研究はない。しかしながら、いくつかの刊行物が腫瘍組織内のFcγRI発現細胞の存在を示している。
【0146】
Morimura et alによる研究(Morimura et al.1990,Acta Neuropathol.80(3):287-94(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)は、免疫細胞化学により12のヒト試料からの神経膠腫を評価し、これらを腫瘍周囲対照組織と比較した。この研究は、腫瘍周囲組織と比較して、神経膠腫における高いマクロファージの存在(マーカーCD163、RM3/1を使用)、並びにFcγRI及びFcγRII(CD32)の増加を実証した。Griesinger et alによる、より最近の研究(Griesinger et al.2013,J Immunol.191(9):4880-8(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)は、様々な小児脳腫瘍型のフローサイトメトリー分析を実施することによりこれらの観察を確認した。ここで、高頻度のCD45CD11b骨髄細胞が、毛様細胞性星細胞腫及び上衣腫患者由来の組織に観察された。これらの細胞はまた、高レベルのFcγRIも発現した。
【0147】
脳腫瘍に加えて、FcγRI発現は他の種類の腫瘍についても示されている。Gruganら(Grugan et al.2012,J Immunol.189(11):5457-66(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)は、ヒト乳房腫瘍組織内のCD11bCD14細胞の存在を実証した。これらの細胞は、高レベルのFcγRI及びFcγRIIa、並びにFcγRIIb及びFcγRIIIを発現することが示された。また、FcγRIの発現を提示する消化管間質腫瘍において、CD45CD11bCD14CD68TAMが同定された(Cavnar et al.2013,J Exp Med.210(13):2873-86(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。CD45CD11bFcγRI細胞も、結腸直腸がん患者において同定されており、これらの細胞は健康な対照組織と比較して、腫瘍組織において、より高いFcγRIの発現を示した(Norton et al.2016,Clin Transl Immunology.5(4):e76(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。FcγRI発現はまた、黒色腫転移についても実証されている(Hansen et al.2006,Acta Oncol 45(4):400-5(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。
【0148】
IgGとFcγRs又はC1qとの結合は、ヒンジ領域とCH2ドメインに位置する残基によって決まる。CH2ドメインの2つの領域は、FcγR及びC1qの結合に重要であり、IgG2及びIgG4では固有の配列を有する。233~236位のIgG2残基、並びに327、330及び331位のIgG4残基のヒトIgG1への置換は、ADCC及びCDCを大きく減少させることが示された(Armour et al.,1999,Eur J Immunol.29(8):2613-24、Shields et al.,2001,J Biol Chem.276(9):6591-604(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。更に、Idusogieらは、K322を含む異なる位置でのアラニン置換が、補体活性化を有意に減少させることを実証した(Idusogie et al.,2000,J Immunol.164(8):4178-84(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)。同様に、マウスIgG2AのCH2ドメインにおける変異は、FcγRI及びC1qとの結合を減少させることが示された(Steurer.et al.,1995.J Immunol.155(3):1165-74(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。
【0149】
ヒトIgG1のCH2ドメインに数多くの変異が加えられ、ADCC及びCDCへの影響がインビトロで試されてきた(上記引用文献を参照)。とりわけ、333位のアラニン置換は、ADCC及びCDCの両方を増加させることが報告された(Shields et al.,2001,supra;Steurer et al.,1995,supra)。Lazar et al.は、FcγRIIIaに対してより高い親和性を有し、FcγRIIbに対してより低い親和性を有し、結果としてADCCの増強をもたらす三重変異体(S239D/I332E/A330L)について記載した(Lazar et al.,2006,PNAS 103(11):4005-4010(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)。同じ変異を用いて、ADCCが増大した抗体を生成した(Ryan et al.,2007,Mol.Cancer Ther.6:3009-3018(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。Richardsらは、マクロファージによる標的細胞の食作用の増強を媒介する、改善されたFcγRIIIa親和性及びFcγRIIa/FcγRIIb比を有する、わずかに異なる三重変異体(S239D/I332E/G236A)を研究した(Richards et al.,2008.Mol Cancer Ther.7(8):2517-27(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0150】
IgG4抗体は、そのエフェクター機能の欠如のために、細胞枯渇を伴わない受容体調節のための好ましいIgGサブクラスを意味する。IgG4分子は、Fab-arm交換と呼ばれる動的なプロセスで半分子を交換することができる。この現象は、治療用抗体と内因性IgG4との間のインビボでも起こりうる。
【0151】
S228P変異は、この組換えプロセスを妨げ、それほど予測不能ではない治療用IgG4抗体の設計を可能にすることが示されている(Labrijn et al.,2009,Nat Biotechnol.27(8):767-71(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0152】
更なる実施形態では、Fc領域のエフェクター機能は、その中のCH2ドメイン内の炭水化物部分の修飾によって、例えば、産生中のフコース、ガラクトース、バイセクティングN-アセチルグルコサミン及び/又はシアル酸の相対レベルを変更することによって改変され得る(Jefferis,2009,Nat Rev Drug Discov.8(3):226-34 and Raju,2008,Curr Opin Immunol.,20(4):471-8(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
【0153】
したがって、Fc領域中のフコース残基が欠如しているか又は少ない治療用抗体は、ヒトにおいて増強されたADCC活性を示し得ることが既知である(例えば、Peipp et al.,2008,Blood 112(6):2390-9、Yamane-Ohnuki&Satoh,2009,MAbs 1(3):230-26、Iida et al.,2009,BMC Cancer 9;58(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。低フコース抗体ポリペプチドは、キンフネンシンなどのマンノシダーゼの阻害剤を含有する培地中で培養した細胞における発現によって産生することができる(以下の実施例Iを参照)。
【0154】
抗体のグリコシル化を低フコース型に変更するための他の方法は、ラムノースを代謝することができない細胞における細菌酵素GDP-6-デオキシ-D-リキソ-4-ヘキスロースレダクターゼの使用を含む(例えばProBioGen AG(Berlin,Germany)のGlymaxX(登録商標)技術を用いる)。
【0155】
低フコース抗体を作製するための別の方法は、抗体産生細胞におけるアルファ-(1,6)-フコシルトランスフェラーゼの阻害又は枯渇による(例えば、Lonza Ltd(Basel、Switzerland)のPotelligent(登録商標)CHOK1SV技術を用いる)。
【0156】
(完全な重鎖を形成するために)本明細書に開示の任意のVH領域配列と組み合わせられ得る例示的な重鎖定常領域アミノ酸配列は、以下に再現されるIgG1重鎖定常領域配列である。
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
[配列番号12]
【0157】
他の重鎖定常領域配列は、当該技術分野で既知であり、本明細書に開示の任意のVH領域と組み合わせることもできる。例えば、前述のように、好ましい定常領域は、本明細書で再現されるものなどの修飾されたIgG4定常領域である。
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
[配列番号13]
【0158】
この修飾されたIgG4配列は、IgG4のコアヒンジの安定化をもたらし、IgG4をより安定にし、Fabアーム交換を阻止する。
【0159】
別の好ましい定常領域は、以下に再現されるものなどの修飾IgG4定常領域である。
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNRYTQKSLSLSLGK
[配列番号14]
【0160】
この修飾IgG4配列は、FcRn結合の低下を呈し、したがって野生型IgG4と比較して血清半減期の低下をもたらす。加えて、IgG4のコアヒンジの安定化を呈し、IgG4をより安定にし、Fabアーム交換を妨げる。
【0161】
また、本明細書で再現されるものなどの野生型IgG4定常領域も、本発明のポリペプチドにおける使用に好適である。
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
[配列番号15]
【0162】
(完全な軽鎖を形成するために)本明細書に開示の任意のVL領域配列と組み合わせられ得る例示的な軽鎖定常領域アミノ酸配列は、以下に再現されるカッパ鎖定常領域配列である。
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
[配列番号16]
【0163】
他の軽鎖定常領域配列は、当該技術分野で既知であり、本明細書に開示の任意のVL領域と組み合わせることもできる。
【0164】
本発明の例示的な実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体、又は抗原結合断片は、それぞれ配列番号13及び16のIgG4定常領域を含み得る。
【0165】
したがって、CD137に特異的に結合する例示的な抗体、又はその抗原結合断片は、
(a)配列番号13の定常領域と一緒に配列番号1の可変領域を含む重鎖と、
(b)配列番号16の定常領域と一緒に配列番号2の可変領域を含む軽鎖と、を含み得る。
【0166】
例えば、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号17のアミノ酸配列を有する2つの重鎖と、配列番号18のアミノ酸配列を有する2つの軽鎖と、を含むか、又はそれらからなる、インタクトなIgG4分子であり得る。
【0167】
CD137に特異的に結合する代替の例示的な抗体、又は抗原結合断片は、
(a)配列番号13の定常領域と一緒に配列番号19の可変領域を含む重鎖と、
(b)配列番号16の定常領域と一緒に配列番号20の可変領域を含む軽鎖と、を含み得る。
【0168】
例えば、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、配列番号29のアミノ酸配列を有する2つの重鎖と、配列番号30のアミノ酸配列を有する2つの軽鎖と、を含むか、又はそれらからなる、インタクトなIgG4分子であり得る。
【0169】
一実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、「融合」ポリペプチドであるか、又はそれを含む。
【0170】
薬物動態特性を改善するために、ある部分に融合されていることに加えて、本発明の併用療法の一部を形成するCD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片はまた、当該ポリペプチドの精製を容易にするためにグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)又はプロテインAなどのポリペプチドに融合され得ることを理解されたい。そのような融合体の例は、当業者に周知である。同様に、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、His6などのオリゴ-ヒスチジンタグ、又は周知のMycタグエピトープなどの抗体によって認識されるエピトープに融合され得る。上述の抗体、又はその抗原結合断片の任意のバリアント又は誘導体への融合体もまた、本発明の範囲に含まれる。IL-1R結合特性又はインビボ半減期などの望ましい特性を保持又は改善する融合体(又はそのバリアント、誘導体若しくは融合体)が好ましいことを理解されたい。
【0171】
したがって、融合体は、本発明の併用療法に含まれる上述のポリペプチドに望ましい特徴を付与する更なる部分と一緒に、上に詳述したようなアミノ酸配列を含み得る。例えば、その部分は、ポリペプチドを検出若しくは単離すること、又はポリペプチドの細胞取り込みを促進することにおいて有用であり得る。当該部分は、当業者に周知であるように、例えば、ビオチン部分、放射活性部分、蛍光部分、例えば小さなフルオロフォア又は緑色蛍光タンパク質(GFP)フルオロフォアであり得る。この部分は、当業者に既知のように、免疫原性タグ、例えば、Mycタグであり得るか、又は当業者に既知のように、ポリペプチドの細胞取り込みを促進することができる親油性分子又はポリペプチドドメインであり得る。
【0172】
当業者は、本発明の併用療法に含まれるCD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、修飾又は誘導体化されている1つ以上のアミノ酸を含み得るか、又はそれらからなり得ることを理解するであろう。
【0173】
1つ以上のアミノ酸の化学誘導体は、官能側鎖との反応によって達成され得る。そのような誘導体化分子としては、例えば、遊離アミノ基が誘導体化されて、塩酸アミン、p-トルエンスルホニル基、カルボキシベンゾキシ基、t-ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基又はホルミル基を形成している分子が挙げられる。遊離カルボキシル基は、塩、メチルエステル及びエチルエステル、又は他のタイプのエステル及びヒドラジドを形成するように誘導体化され得る。遊離ヒドロキシル基は、O-アシル又はO-アルキル誘導体を形成するために誘導体化され得る。また化学誘導体として、20個の標準アミノ酸の天然に存在するアミノ酸誘導体を含有するペプチドも含まれる。例えば、4-ヒドロキシプロリンは、プロリンに置き換えられてもよく、5-ヒドロキシリジンは、リジンに置き換えられてもよく、3-メチルヒスチジンは、ヒスチジンに置き換えられてもよく、ホモセリンは、セリンに置き換えられてもよく、オルニチンは、リジンに置き換えられてもよい。誘導体はまた、必要な活性が維持される限り、1つ以上の付加又は欠失を含有するペプチドを含む。他の含まれる修飾は、アミド化、アミノ末端アシル化(例えば、アセチル化又はチオグリコール酸アミド化)、末端カルボキシルアミド化(例えば、アンモニア又はメチルアミンによる)などの末端修飾である。
【0174】
ペプチド模倣化合物も有用であり得ることは、当業者によって更に理解されるであろう。「ペプチド模倣物」という用語は、治療剤として特定のペプチドの立体構造及び望ましい特徴を模倣する化合物を指す。
【0175】
例えば、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、アミノ酸残基がペプチド(-CO-NH-)連結によって接合している分子だけでなく、ペプチド結合が逆転している分子も含み得る。そのようなretro-inversoペプチド模倣物は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるMeziere et al.(1997)J.Immunol.159,3230-3237に記載されるものなどの、当該技術分野で既知の方法を用いて作製されてもよい。このアプローチは、側鎖の配向ではなく、主鎖に関与する変化を含有する疑似ペプチドを作製することを含む。CO-NHペプチド結合の代わりにNH-CO結合を含有する、retro-inverseペプチドは、タンパク質分解に対してはるかに耐性がある。あるいは、上記ポリペプチドは、1つ以上のアミノ酸残基が、従来のアミド結合の代わりに-y(CHNH)-結合によって連結されたペプチド模倣化合物であり得る。
【0176】
更なる代替において、ペプチド結合は、アミノ酸残基の炭素原子間の間隔を保持する適切なリンカー部分が使用されることを条件として、完全に分配されてもよく、リンカー部分が、ペプチド結合と実質的に同じ電荷分布及び実質的に同じ平坦性を有することが有利であり得る。
【0177】
また、エキソタンパク質分解消化に対する感受性を低下させるのに役立つように、上述の抗体、又はその抗原結合断片は、そのN末端又はC末端で都合よく遮断され得ることも理解されたい。
【0178】
D-アミノ酸及びN-メチルアミノ酸などの様々な非コードアミノ酸又は修飾アミノ酸も、哺乳動物ペプチドを修飾するために使用されている。加えて、推定される生体活性コンフォメーションは、環化などの共有結合的修飾によって、又はラクタム若しくは他のタイプの架橋の組み込みによって安定化されてもよく、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Veber et al.,1978,Proc.Natl.Acad.Sci.USA75:2636及びThursell et al.,1983,Biochem.Biophys.Res.Comm.111:166を参照されたい。
【0179】
典型的には、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、「裸の」抗体ポリペプチドであり、すなわち、細胞傷害性部分又は検出可能な部分などの任意の追加の機能的部分を含まない。例えば、治療効果が、例えば、炎症を低減するために、免疫細胞に対する本発明の併用療法に含まれる直接的作用によって媒介される場合、抗体は任意の細胞傷害活性を欠くことが有利であり得る。
【0180】
しかしながら、代替的な実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、例えば、診断(例えば、インビボイメージング)薬剤又は療法剤としてのそれらの意図された使用を容易にするために機能的部分を用いて増強されてもよい。したがって、一実施形態では、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、治療用部分と直接的又は間接的に連結している。好適な治療用部分は、がん細胞(又は関連する幹細胞若しくは前駆細胞)の成長を減少させるか、若しくは阻害すること、又は特に死滅させることができる部分である。例えば、療法剤は、放射性同位元素(例えば、90Y、177Lu、99Tcなど)又は細胞傷害性薬物(例えば、代謝拮抗薬、毒素、細胞分裂阻害薬)などの細胞傷害性部分であってもよい。
【0181】
あるいは、細胞傷害性部分は、光子活性化療法、中性子活性化療法、中性子誘導性オージェ電子療法、シンクロトロン照射療法、又は低エネルギーX線光子活性化療法などの活性化療法における使用に好適な1つ以上の部分を含み得るか、又はそれらからなり得る。
【0182】
任意選択的に、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、検出可能な部分を更に含んでもよい。例えば、検出可能な部分は、99mTc、111In、67Ga、68Ga、72As、89Zr、123I及び201Tlからなる群から選択される放射性同位元素などの放射性同位元素を含み得るか、又はそれらからなり得る。任意選択的に、薬剤は、86Y/90Y又は124I/211Atなどの一対の検出可能な細胞傷害性の放射性核種を含み得る。あるいは、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、いわゆる「マルチモーリティ・セラノスティクス(Multimodality theragnostics)」を提供するために、検出可能な部分として、また細胞傷害性部分としてマルチモーダル様式で同時に作用することが可能な放射性同位元素を含んでもよい。したがって、結合部分は、放射性核種又は化学療法薬などの細胞傷害性薬物を用いた治療能力と一緒に、マルチイメージング(例えば、SPECT、PET、MRI、光学的、又は超音波)の能力を有するナノ粒子に結合されてもよい。
【0183】
治療的部分及び/又は検出可能な部分(放射性同位元素、細胞傷害性部分など)は、抗体又はその断片に直接的又は間接的に連結していてもよい。好適なリンカーは当該技術分野で既知であり、例えば、補欠分子族、非フェノール系リンカー(N-スクシミジルベンゾエートの誘導体;ドデカボレート)、大環状化合物及び非環式キレート剤の両方のキレート化部分、例えば、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10,四酢酸(DOTA)の誘導体、デフェロキサミン(DFO)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)の誘導体、S-2-(4-イソチオシアナトベンジル)-1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA)の誘導体、及び1,4,8,11-テトラアザシクロドデカン-1,4,8,11-四酢酸(TETA)の誘導体、3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]-ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-4-(S)-(4-イソチオシアナト-ベンジル)-3,6,9-三酢酸(PCTA)の誘導体、5-S-(4-アミノベンジル)-1-オキサ-4,7,10-トリアザシクロドデカン-4,7,10-トリス(酢酸)(DO3A)の誘導体、並びに他のキレート化部分を含む。
【0184】
好ましいリンカーの1つは、例えば、177Lu-DTPA-[抗体ポリペプチド]において使用されるDTPAである。更に好ましいリンカーは、例えば、89Zr-DFO-[抗体ポリペプチド]において使用されるデフェロキサミン、DFOである。
【0185】
しかしながら、当業者は、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片を含む本発明の併用療法の多くの医学的用途が、細胞傷害性部分又は診断用部分の存在を必要としないことを理解するであろう。
【0186】
上で論じたように、本発明の併用療法に含まれる抗体ポリペプチドの産生のための方法は当該技術分野で周知である。
【0187】
好都合なことに、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片は、組換えポリペプチドであるか、又はそれを含む。そのような組換えポリペプチドの産生に好適な方法は、当該技術分野で周知であり、例えば、原核生物又は真核生物の宿主細胞における発現などである(例えば、文献内の関連性のある開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、Green&Sambrook,2012,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Fourth Edition,Cold Spring Harbor,New Yorkを参照されたい)。
【0188】
CD137に特異的に結合する抗体は、ポリクローナル抗体であってもよいが、抗体がモノクローナル抗体であること、又はその抗原結合断片、バリアント、融合体若しくは誘導体がモノクローナル抗体に由来することが好ましい。
【0189】
好適なモノクローナル抗体は、既知の技術、例えば、“Monoclonal Antibodies;A manual of techniques”,H Zola(CRC Press,1988)及び“Monoclonal Hybridoma Antibodies:Techniques and Application”,SGR Hurrell(CRC Press,1982)」、に開示される技術によって調製され得る。多重特異性又は単一特異性のポリクローナル抗体が産生され得る。それらは単一特異性であることが好ましい。
【0190】
本発明の併用療法に含まれる抗体ポリペプチドはまた、ウサギ網状赤血球溶解物又はコムギ胚芽溶解物(Promegaから入手可能)などの市販のインビトロ翻訳系を用いて産生することもできる。好ましくは、翻訳系は、ウサギ網状赤血球溶解物である。好都合には、翻訳系は、TNT転写翻訳系(Promega)などの転写系にカップリングされ得る。この系は、翻訳と同じ反応でコードDNAポリヌクレオチドから好適なmRNA転写物を生成する利点を有する。
【0191】
当業者は、CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片が、あるいは、例えば周知の液相又は固相合成技術(例えば、t-Boc又はFmoc固相ペプチド合成)を用いて、人工的に合成され得ることを理解するであろう。
【0192】
(b)更なる免疫療法剤(PD-1阻害剤)
本発明の併用療法は、更なる免疫療法剤を含み、更なる免疫療法剤は、PD-1阻害剤である。PD-1阻害剤は、がんの治療に有効であってもよく、かつ/又はPD-1又はPD-L1に特異的に結合し得る。更なる免疫療法剤の治療上の利益は、阻害性免疫チェックポイント分子PD-1の機能を弱めることによって媒介され得ることが理解されるであろう。
【0193】
したがって、本発明の一実施形態では、PD-1阻害剤は、がんの治療に有効な免疫療法剤である。
【0194】
「免疫療法剤」という用語は、対象における腫瘍又はがんに対する免疫応答をもたらすように宿主免疫系を刺激することができる任意の分子、ペプチド、抗体、又は他の薬剤を含むことを意図している。様々な免疫療法剤が本明細書に記載の組成物及び方法で有用である。一実施形態では、免疫療法剤は、PD-1に特異的に結合することができる抗PD-1抗体又はPD-L1に特異的に結合することができる抗PD-L1抗体などの抗体、又はその抗原結合断片である。
【0195】
「免疫応答」という用語は、T細胞媒介性及び/又はB細胞媒介性免疫応答を含む。例示的な免疫応答には、T細胞応答、例えば、サイトカイン産生及び細胞傷害が含まれる。加えて、免疫応答という用語には、T細胞活性化、例えば、抗体産生(体液性応答)及びサイトカイン応答性細胞、例えば、マクロファージの活性化によって間接的にもたらされる免疫応答が含まれる。
【0196】
免疫チェックポイント分子は、CD4+及び/又はCD8+T細胞、樹状細胞、NK細胞、及びマクロファージなどの免疫細胞の細胞表面上のタンパク質群だけではなく、免疫応答を調節する特定の腫瘍細胞上のタンパク質群も含む。PD-1が阻害性免疫チェックポイント分子であることは、当業者には理解されよう。
【0197】
PD-1などの1つ以上の免疫チェックポイント分子の遮断又は中和により、阻害性シグナル伝達が遮断されるか、又はさもなければ中和され、それにより、がんをより有効に治療するために、免疫応答が上方制御され得る。阻害性免疫チェックポイントを遮断するのに有用な例示的な薬剤としては、阻害性免疫チェックポイントタンパク質に結合し、かつ/又は不活性化若しくは阻害のいずれかをし得る抗体、小分子、ペプチド、ペプチド模倣薬、天然リガンド、及び天然リガンドの誘導体、又はそれらの断片;並びに阻害性免疫チェックポイント核酸の発現及び/若しくは活性を下方制御することができるRNA干渉、アンチセンス、核酸アプタマーなど、又はこれらの断片が挙げられる。免疫応答を上方制御するための例示的な薬剤としては、タンパク質とその天然受容体(複数可)との間の相互作用を遮断する1つ以上の阻害性免疫チェックポイントタンパク質に対する抗体、1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤タンパク質の非活性化形態(例えば、ドミナントネガティブポリペプチド)、1つ以上の阻害性免疫チェックポイントタンパク質とその天然受容体(複数可)との間の相互作用を遮断する小分子又はペプチド、その天然受容体(複数可)に結合する融合タンパク質(例えば、抗体又は免疫グロブリンのFc部分に融合した免疫チェックポイント阻害タンパク質の細胞外部分)、阻害性免疫チェックポイント核酸転写又は翻訳を遮断する核酸分子などが挙げられる。そのような薬剤は、1つ以上の阻害性免疫チェックポイントとその天然受容体(複数可)(例えば、抗体)との間の相互作用を直接的に遮断し、阻害性シグナル伝達を阻止し、免疫応答を上方制御することができる。あるいは、薬剤は、1つ以上の阻害性免疫チェックポイントタンパク質とその天然受容体(複数可)との間の相互作用を間接的に遮断し、阻害性シグナル伝達を阻止し、免疫応答を上方制御することができる。例えば、安定化した細胞外ドメインなどの免疫チェックポイントタンパク質リガンドの可溶性態様は、その受容体に結合して、適切なリガンドに結合するための受容体の有効濃度を間接的に低減することができる。一実施形態では、抗PD-1抗体及び/又は抗PD-L1抗体を単独で、又は組み合わせて使用して、免疫チェックポイントを阻害する。
【0198】
したがって、一実施形態では、更なる免疫療法剤は、阻害性免疫チェックポイント分子に結合し、その機能を阻害するPD-1阻害剤である。
【0199】
「PD-1阻害剤」(又は「PD-1経路阻害剤」)は、PD-1経路を阻害することができる要素を含む。
【0200】
PD-1は、そのリガンドPD-L1又はPD-L2と係合するとき、T細胞活性化の負の調節因子として機能する。PD-L1は、特に、黒色腫を含む多くの固形腫瘍によって発現する。したがって、これらの腫瘍は、T細胞上の阻害性PD-1受容体の活性化を通じて、免疫媒介性抗腫瘍効果を下方制御し得る。PD-1とPD-L1との間の相互作用を遮断することによって、免疫応答のチェックポイントを取り除くことができ、抗腫瘍T細胞応答の増強につながる。この相互作用は、PD-1若しくはPD-L1又は任意の他の好適な薬剤に特異的な抗体によって遮断され得る。そのような抗体及び薬剤は、一般に、PD-1阻害剤と称され得る。本発明の方法のステップ(b)における更なる免疫療法剤は、PD-1阻害剤である。
【0201】
したがって、PD-1阻害剤は、PD-1(プログラム細胞死タンパク質1)とそのリガンドPD-L1(プログラム死-リガンド1)との相互作用を遮断する。したがって、そのようなPD-1阻害剤は、PD-L1及びPD-1のいずれか又は両方に作用することができる。したがって、PD-1阻害剤という用語は、PD-1及びPD-L1阻害剤の両方を含む。PD-1阻害剤は、PD-1及びPD-L1免疫チェックポイントタンパク質の活性を遮断する。
【0202】
「PD-1」は、具体的には、例えば、GenBankアクセッション番号NP005009.2(その配列は以下の配列番号35に記載される)に記載されるような、ヒトPD-1タンパク質を含む。PD-1は、科学文献ではPD1、CD279、PDCD1及びSLEB2としても既知である。
【化2】
[配列番号35]
【0203】
「PD-L1」は、具体的には、例えば、GenBankアクセッション番号AAI13735.1(その配列は以下の配列番号36に記載される)に記載されるような、ヒトPD-L1タンパク質を含む。PD-L1は、科学文献ではCD274、B7-H1、B7-H、PDCD1L1及びPDCD1LG1としても既知である。
【化3】
[配列番号36]
【0204】
したがって、本発明の併用療法は、PD-1又はPD-L1に特異的に結合する、すなわち、PD-1又はPD-L1に対する特異性を有するPD-1阻害剤を含む。「特異性」は、阻害剤が、インビボで、すなわち、PD-1又はPD-L1がヒト体内に存在する生理学的条件下で、PD-1又はPD-L1に結合することができることを意味する。好ましくは、PD-1阻害剤は、インビボで任意の他のタンパク質(PD-1又はPD-L1以外)に結合しない。そのような結合特異性は、PD-1又はPD-L1を発現するトランスフェクト細胞を用いたELISA、免疫組織化学、免疫沈降、ウェスタンブロット、フローサイトメトリーなどの当該技術分野で周知の方法によって決定され得る。
【0205】
PD-1又はPD-L1に特異的に結合するPD-1阻害剤は、好ましくは、10×10-9M未満又は7×10-9M未満、より好ましくは4、又は2×10-9M未満、最も好ましくは1.2×10-9M未満であるKd値でヒトPD-1又はPD-L1に結合する。有利なことに、PD-1阻害剤は、PD-1又はPD-L1に選択的に結合することができる、すなわち、任意の他のタンパク質よりもPD-1又はPD-L1に対して少なくとも10倍強力に結合する。PD-1阻害剤は、好ましくは、PD-1又はPD-L1に特異的に結合する、すなわち、PD-1又はPD-L1に結合するが、他の分子(例えば、OX40及び/若しくはCD40)に結合しないか、又はより低い親和性(例えば、10分の1低い親和性)で結合する。したがって、別の分子に結合する場合よりも高い結合親和性でPD-1又はPD-L1に結合する。したがって、典型的には、ヒトPD-1又はPD-L1に対する抗体のKdは、マウスPD-1又はPD-L1、他の免疫チェックポイント分子、又は任意の他の無関係な物質若しくは環境中の付随する物質などの他の非標的分子に対するKdの2倍、好ましくは5倍、より好ましくは10倍未満であろう。より好ましくは、Kdは、50倍未満、更により好ましくは100倍未満、及び更により好ましくは200倍未満であろう。
【0206】
相互作用(抗体とリガンドとの間の相互作用など)の全体的な親和性(KD)並びにオン速度(ka)及びオフ速度(kd)を測定するための方法は、当該技術分野で周知である。例示的なインビトロ法は、添付の実施例に記載される。フローサイトメトリーに基づく方法を使用することも考えられる(Sklar et al.,Annu Rev Biophys Biomol Struct,(31),97-119,2002)。
【0207】
本明細書で使用されるPD-1及びPD-L1という用語は、典型的には、ヒトPD-1及びPD-L1を指す。阻害剤は、非ヒト霊長類、例えばMacaca fascicularis(カニクイザル)由来のPD-1及びPD-L1などの、他の哺乳動物由来のPD-1及びPD-L1に対してある程度の結合親和性を有し得る。抗体は、好ましくは、マウスPD-1若しくはPD-L1に結合せず、かつ/又は他の免疫チェックポイント分子に結合しない。
【0208】
一実施形態では、PD-1又はPD-L1に特異的に結合するそのPD-1阻害剤は、その天然状態でのPD-1又はPD-L1、例えば、細胞の表面上に局在化するPD-1又はPD-L1に対して親和性を有し得る。一実施形態では、PD-1阻害剤は、PD-1 PD-L1相互作用を遮断する。例えば、PD-1阻害剤は、PD-L1がPD-1に結合する能力を阻害する様式で、PD-1又はPD-L1に結合してもよく、それによって、PD-1/PD-L1相互作用を遮断する。
【0209】
「細胞の表面上に局在化する」は、PD-1の1つ以上の領域が細胞表面の外面に存在するように、PD-1又はPD-L1が細胞と会合していることを意味する。例えば、PD-1は、細胞外表面に提示された1つ以上の領域とともに細胞原形質膜に挿入され得る(すなわち、膜貫通タンパク質として配向される)。これは細胞によるPD-1の発現の過程で起こり得る。したがって、一実施形態では、「細胞の表面上に局在化する」とは、「細胞の表面上で発現する」ことを意味し得る。あるいは、PD-1は、共有結合性及び/又はイオン性の相互作用で細胞の外側に存在して、それを細胞表面の特定の領域又は複数の領域に局在化させてもよい。
【0210】
一実施形態では、本明細書に記載のPD-1阻害剤は、免疫チェックポイント遮断を介して、抗腫瘍免疫を誘導することができる。PD-1阻害剤は、PD-L1がPD-1に結合するのを阻害する様式で、PD-1又はPD-L1に結合し、すなわち、PD-1/PD-L1相互作用を遮断する。PD-1阻害剤は、T細胞応答を増強することができ、例えば、T細胞エフェクター機能を増強又は回復することができる。一実施形態では、PD-1阻害剤は、腫瘍反応性CD8+T細胞の確立された腫瘍への浸潤を促進し得る。
【0211】
したがって、PD-1阻害剤は、PD-1又はPD-L1を発現する細胞の活性を調節することができ、当該調節は、当該細胞の活性の増加又は低下である。細胞は、典型的にはT細胞である。阻害剤は、CD4+若しくはCD8+エフェクター細胞の活性を増加させることができるか、又は制御性T細胞(T reg)の活性を低下させることができるか、若しくは当該細胞を枯渇させることができる。いずれの場合も、抗体の正味の効果は、エフェクターT細胞、特にCD4+、CD8+、又はNKエフェクターT細胞の活性の増加である。エフェクターT細胞の活性の変化を決定するための方法は、周知であり、先に記載された通りである。
【0212】
PD-1阻害剤は、好ましくはインビトロでT細胞(好ましくはCD8+T細胞)における活性の増加を引き起こし、任意選択的に、当該活性の増加は、T細胞による増殖、IFN-γ産生及び/又はIL-2産生の増加である。増加は、同じアッセイで測定されたアイソタイプ対照抗体によって引き起こされる活性の変化より、好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも10倍、更により好ましくは少なくとも25倍高い。
【0213】
一実施形態では、PD-1阻害剤は、別の免疫療法の有効性を改善することができる。
【0214】
一実施形態では、PD-1阻害剤は、腫瘍内の細胞の表面上で発現される、そのリガンドPD-L1に対するプログラム死1(PD-1)受容体を遮断する(Ribas and Wolchok 2018)。PD-1は、免疫チェックポイントであり、その阻害機能は、T細胞受容体(TCR)シグナル伝達分子の下流のシグナル伝達分子を脱リン酸化するチロシンホスファターゼSHP-2によって媒介される。好ましい実施形態では、PD-1阻害剤は、好ましくは、チロシンホスファターゼSHP-2(T細胞受容体(TCR)シグナル伝達分子の下流のシグナル伝達分子を脱リン酸化する)によって媒介される阻害性シグナル伝達を遮断することによって、PD-1発現T細胞を再活性化する。
【0215】
PD-1阻害剤は、PD-1機能を阻害することができる抗PD-1抗体又はその抗原結合断片(例えば、ペンブロリズマブ(ランブロリズマブとしても既知である)、ニボルマブ、ピジリズマブ、セミプリマブ、AMP-224、PDR-001、MEDI-0680(AMP-514としても既知である)、JTX-4014(ピミバリマブ)、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、トリパリマブ、ドスタリマブ及びINCMGA00012(レチファンリマブ)であってもよい。
【0216】
あるいは、PD-1阻害剤は、PD-1機能を阻害することができる抗PD-L1抗体、又はその抗原結合断片を含み得るか、又はそれらからなり得る(例えば、アテゾリズマブ(Tecentriq(商標)、MPDL3280A)、デュルバルマブ(MEDI-4736)、アベルマブ、MDX-1105、KN035(エンバフォリマブ)及びCK-301(コシベリマブ))を含み得るか、又はそれらからなり得る。
【0217】
あるいは、PD-1阻害剤は、PD-1若しくはPD-L1の小分子又はペプチド系阻害剤であってもよい。例えば、PD-1阻害剤は、CA-170などのPD-L1の小分子阻害剤であってもよい。あるいは、PD-1阻害剤は、AUNP12又はBMS-986189などのPD-L1のペプチド阻害剤であってもよい。
【0218】
一実施形態では、PD-1阻害剤は、PD-1 PD-L1相互作用を遮断するエピトープに結合する。
【0219】
一実施形態では、PD-1阻害剤は、ヒトPD-1に対する参照抗体ペムブロリズマブ又はニボルマブの結合を阻害することができる。
【0220】
別の実施形態では、PD-1阻害剤は、ヒトPD-L1に対する参照抗体アテゾリズマブの結合を阻害することができる。
【0221】
「ヒトPD-1に対する参照抗体ペムブロリズマブの結合を阻害することができる」とは、本発明の併用療法のPD-1阻害剤の存在が、ヒトPD-1に対するペムブロリズマブの結合を全体的又は部分的に阻害することを意味する。同様に、「ヒトPD-1に対する参照抗体ニボルマブの結合を阻害することができる」とは、本発明の併用療法の抗体ポリペプチドの存在が、ヒトPD-1に対するニボルマブの結合を全体的又は部分的に阻害することを意味する。したがって、本発明の併用療法で使用されるPD-1阻害剤は、PD-1に対する結合について、「参照抗体」ペムブロリズマブ及び/又は「参照抗体」ニボルマブと競合し得る。そのような競合的結合阻害は、当該技術分野で周知のアッセイ及び方法を用いて、例えば、固定化されたPD-1を有するBIAcoreチップを使用して、試験される抗体ポリペプチドを用いて、また、用いずに、参照抗体ペムブロリズマブ及びニボルマブの存在下でインキュベートすることにより決定することができる。あるいは、参照抗体ペムブロリズマブ又はニボルマブをBIAcoreチップの表面に固定化し、PD-1抗原を、固定化した抗体に結合させ、次いで二次抗体を同時PD-1結合能について試験する、ペアワイズマッピング手法を用いることができる(例えば、‘BIAcore Assay Handbook’,GE Healthcare Life Sciences,29-0194-00 AA 05/2012(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
【0222】
「ヒトPD-L1に対する参照抗体アテゾリズマブの結合を阻害することができる」とは、本発明の併用療法の抗体ポリペプチドの存在が、ヒトPD-L1に対するアテゾリズマブの結合を全体的又は部分的に阻害することを意味する。したがって、本発明の併用療法で使用されるPD-1阻害剤は、PD-L1に対する結合について、「参照抗体」アテゾリズマブと競合し得る。そのような競合的結合阻害は、当該技術分野で周知のアッセイ及び方法を用いて、例えば、固定化されたPD-L1を有するBIAcoreチップを使用して、試験される抗体ポリペプチドを用いて、また、用いずに、参照抗体アテゾリズマブの存在下でインキュベートすることにより決定することができる。あるいは、参照抗体アテゾリズマブをBIAcoreチップの表面に固定化し、PD-L1抗原を、固定化した抗体に結合させ、次いで二次抗体を同時PD-L1結合能について試験する、ペアワイズマッピング手法を用いることができる(例えば、‘BIAcore Assay Handbook’,GE Healthcare Life Sciences,29-0194-00 AA 05/2012(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
【0223】
更なる代替例では、競合的結合阻害は、フローサイトメトリーを用いて決定することができる。例えば、試験抗体が、細胞表面抗原に対するペムブロリズマブ又はニボルマブ(又はアテゾリズマブ)参照抗体の結合を阻害することができるかどうかを調べるために、抗原を発現する細胞を、細胞を洗浄する前に試験抗体とともに20分間プレインキュベートし、フローサイトメトリーによって検出することができるフルオロフォアにコンジュゲートした参照ペムブロリズマブ又はニボルマブ(又はアテゾリズマブ)抗体とともにインキュベートすることができる。試験抗体とのプレインキュベーションがフローサイトメトリーにおける参照ペムブロリズマブ又はニボルマブ(又はアテゾリズマブ)抗体の検出率を低下させる場合、試験抗体は、細胞表面抗原に対する参照抗体の結合を阻害する。試験された抗体がPD-1(又はPD-L1)に対して高い親和性を示す場合、期間を短くしたプレインキュベーションが使用され得る(又は、プレインキュベーションを全くしない)。
【0224】
「ペムブロリズマブ」とは、それぞれ配列番号33及び34のアミノ酸配列を有する重鎖及び軽鎖を含むインタクトなIgG抗体を意味する。
ペムブロリズマブの重鎖配列(配列番号33):
【化4】
ペムブロリズマブの軽鎖配列(配列番号34):
【化5】
【0225】
「ニボルマブ」とは、それぞれ配列番号31及び32のアミノ酸配列を有する重鎖及び軽鎖を含むインタクトなIgG抗体を意味する。
ニボルマブの重鎖配列(配列番号31):
【化6】
ニボルマブの軽鎖配列(配列番号32)
【化7】
ピジリズマブの重鎖配列(配列番号37)
【化8】
ピジリズマブの軽鎖配列(配列番号38)
【化9】
セミプリマブの重鎖配列(配列番号39)
【化10】
セミプリマブの軽鎖配列(配列番号40)
【化11】
スパルタリズマブの重鎖配列(配列番号41)
【化12】
スパルタリズマブの軽鎖配列(配列番号42)
【化13】
カムレリズマブの重鎖配列(配列番号43)
【化14】

カムレリズマブの軽鎖配列(配列番号44)
【化15】
チスレリズマブの重鎖配列(配列番号45)
【化16】
チスレリズマブの軽鎖配列(配列番号46)
【化17】
トリパリマブの重鎖配列(配列番号47)
【化18】
トリパリマブの軽鎖配列(配列番号48)
【化19】
ドスタルリマブの重鎖配列(配列番号49)
【化20】

ドスタルリマブの軽鎖配列(配列番号50)
【化21】
INCMGA00012の重鎖配列(配列番号51)
【化22】
INCMGA00012の軽鎖配列(配列番号52)
【化23】
【0226】
「アテゾリズマブ」とは、それぞれ配列番号53及び54のアミノ酸配列を有する重鎖及び軽鎖を含むインタクトなIgG抗体を意味する。
アテゾリズマブの重鎖配列(配列番号53)
【化24】
アテゾリズマブの軽鎖配列(配列番号54)
【化25】

デュルバルマブの重鎖配列(配列番号55)
【化26】
デュルバルマブの軽鎖配列(配列番号56)
【化27】
アベルマブの重鎖配列(配列番号57)
【化28】
アベルマブの軽鎖配列(配列番号58)
【化29】

CK-301(コシベリマブ)の重鎖配列(配列番号59)
【化30】
CK-301(コシベリマブ)の軽鎖配列(配列番号60)
【化31】
JTX-4014の重鎖配列(配列番号61)
【化32】
JTX-4014の軽鎖配列(配列番号62)
【化33】
【0227】
そのようなPD-1阻害剤はまた、US8354509B2及びUS8779105B2に記載されており、US8354509B2及びUS8779105B2のPD-1阻害剤(特に抗PD-1抗体)は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0228】
一実施形態では、PD-1阻害剤は、抗体又はその抗原結合断片であり、PD-1又はPD-L1に特異的に結合し、本発明の併用療法に含まれる抗体、又は抗原結合断片は、抗体Fc領域を含む。当業者は、Fc部分がIgG抗体、又は異なるクラスの抗体(IgM、IgA、IgD又はIgEなど)に由来し得ることを理解するであろう。一実施形態では、Fc領域は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4抗体に由来する。しかしながら、有利には、Fc領域はIgG4抗体に由来する。
【0229】
Fc領域は、天然に存在し得る(例えば、内因性に産生された抗体の一部)か、又は人工的であり得る(例えば、天然に存在するFc領域に対して1つ以上の点変異を含む)。Fc領域のバリアントは、典型的には、FcγR及び/又は新生児Fc受容体(FcRn)などのFc受容体に改変された親和性で結合し、ポリペプチドの機能及び/又は半減期を改善する。生物学的機能及び/又は半減期は、天然Fc領域を含むポリペプチドの半減期と比較して、延長するか又は減少するかのいずれかであり得る。バリアントFc領域の存在によって調節され得るそのような生物学的機能の例としては、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、補体依存性細胞傷害(CDC)、及び/又はアポトーシスが挙げられる。
【0230】
したがって、Fc領域は、天然に存在し得る(例えば、内因性に産生されたヒト抗体の一部)か、又は人工的であり得る(例えば、天然に存在するヒトFc領域に対して1つ以上の点変異を含む)。
【0231】
当該技術分野で周知であるように、抗体のFc領域は、その血清中半減期と、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、及び抗体依存性細胞食作用(ADCP)などのエフェクター機能を媒介する。
【0232】
Fc領域は、本発明の併用療法のCD137抗体に関して上述のように操作され得る。
【0233】
抗体及び阻害剤
以下の定義は、本発明のCD137及びPD-1阻害剤のいずれか又は両方に適用され、PD-1阻害剤は、抗体(PD-1に特異的な抗体又はPD-L1に特異的な抗体のいずれか)である。
【0234】
本明細書で言及される「抗体」という用語は、全抗体及び任意の抗原結合断片(すなわち、「抗原結合部分」)又はその一本鎖を含む。抗体は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖、又はそれらの抗原結合部分を含む糖タンパク質を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書でVHと略される)及び重鎖定常領域から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書でVLと略される)及び軽鎖定常領域から構成される。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が点在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域に更に細分することができる。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1の成分(Clq)を含む、宿主組織又は因子に対する免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0235】
「抗体又はその抗原結合断片」は、実質的にインタクトな抗体分子だけではなく、キメラ抗体、ヒト化抗体、単離されたヒト抗体、単鎖抗体、二重特異性抗体、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗体重鎖及び/又は軽鎖のホモ二量体及びヘテロ二量体、並びにそれらの抗原結合断片及び誘導体を含む。好適な抗原結合断片及び誘導体として、必ずしも限定されないが、Fv断片(例えば、単鎖Fv及びジスルフィド結合Fv)、Fab様断片(例えば、Fab断片、Fab’断片及びF(ab)断片)、単一可変ドメイン(例えばV及びVドメイン)及びドメイン抗体(dAb、単一及び二重形式[すなわちdAb-リンカー-dAb]を含む)が挙げられる。抗体全体ではなく、抗体断片を使用することの利点は、数倍になる。断片のサイズが小さくなることで、固形組織への浸透性が向上するなど、薬理学的特性が改善される可能性がある。更に、Fab、Fv、ScFv、及びdAb抗体断片などの抗原結合断片は、大腸菌で発現させ、及びそこから分泌させることができるので、大量に生産することが容易にできる。
【0236】
例えば、抗原結合断片は、scFv分子、すなわち、V及びVパートナードメインが柔軟なオリゴペプチドを介して連結している分子を含んでもよい。
【0237】
重鎖は、IgG(IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4サブタイプ)、IgA(IgA1及びIgA2サブタイプ)、IgM及びIgEを含む任意のアイソタイプのものであり得る。
【0238】
軽鎖には、カッパ鎖及びラムダ鎖が含まれる。
【0239】
抗体としては、合成抗体、モノクローナル抗体、単一ドメイン抗体、一本鎖抗体、組換え生成された抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、細胞内抗体、scFv(例えば、単一特異的及び二重特異性などを含む)、Fab断片、F(ab’)断片、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、並びに上記のもののうちのいずれかのエピトープ結合断片が挙げられるが、これらに限定されない。
【0240】
特に関連しているのは、それが自然に生じ得るものとは異なる物理的環境に存在するように「単離された」、又はアミノ酸配列において天然に存在する抗体とは異なるように修飾された抗体及びその抗原結合断片である。
【0241】
また、「抗体又はその抗原結合断片」という表現は、抗体模倣物(例えば、高い安定性を持ちながら特定の位置で可変性を導入できる非抗体足場構造)を包含することを意図する。生化学の当業者は、Gebauer&Skerra,2009,Curr Opin Chem Biol 13(3):245-255(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)に論じられるように、多くのそのような分子に精通しているであろう。例示的な抗体模倣物として、アフィボディ(トリネクチンとも称される、Nygren,2008,FEBS J,275,2668-2676)、CTLD(テトラネクチンとも称される、Innovations Pharmac.Technol.(2006),27-30)、アドネクチン(モノボディとも呼ばれる;Meth.Mol.Biol.,352(2007),95-109)、アンチカリン(Drug Discovery Today(2005),10,23-33)、DARPins(アンキリン;Nat.Biotechnol.(2004),22,575-582)、アビマー(Nat.Biotechnol.(2005),23,1556-1561)、マイクロボディ(FEBS J,(2007),274,86-95)、ペプチドアプタマー(Expert.Opin.Biol.Ther.(2005),5,783-797)、クニッツドメイン(J.Pharmacol.Exp.Ther.(2006)318,803-809)、アフィリン(Trends.Biotechnol.(2005),23,514-522)、アフィマー(Avacta Life Sciences,Wetherby,UK)が挙げられる。
【0242】
当業者は更に、本発明が、現在存在するか、又は将来的に存在するかにかかわらず、抗体及びその抗原結合断片の修飾態様、例えば、ポリエチレングリコール又は別の好適なポリマーの共有結合により修飾された態様を含む併用療法も包含することを理解するであろう(以下を参照)。
【0243】
抗体は、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体であり得る。抗体は、任意の好適な方法によって産生され得る。
【0244】
抗体及び抗体断片を生成する方法は、当該技術分野で周知である。例えば、抗体分子のインビボ産生の誘導、免疫グロブリンライブラリーのスクリーニング(Orlandi.et al,1989.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.86:3833-3837、Winter et al.,1991,Nature 349:293-299(それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる))、又は培養中の細胞株によるモノクローナル抗体分子の生成を用いるいくつかの方法のうちのいずれか1つを介して抗体を生成することができる。ハイブリドーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)ハイブリドーマ法などがあるが、これらに限定されない(Kohler et al .,1975.Nature 256:4950497、Kozbor et al.,1985.J.Immunol.Methods 81:31-42;Cote et al.,1983.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:2026-2030;Cole et al.,1984.Mol.Cell.Biol.62:109-120(その開示は参照により本明細書に組み込まれる))。
【0245】
モノクローナル抗体の産生のための好適な方法はまた、“Monoclonal Antibodies:A manual of techniques”,H Zola(CRC Press,1988、その開示は参照により本明細書に組み込まれる)及び“Monoclonal Hybridoma Antibodies:Techniques and Applications”,J G R Hurrell(CRC Press,1982、その開示は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0246】
同様に、抗体断片は、当該技術分野で周知の方法を使用して得ることができる(例えば、Harlow&Lane,1988,“Antibodies:A Laboratory Manual”,Cold Spring Harbor Laboratory,New York、その開示は参照により本明細書に組み込まれる)。例えば、本発明による抗体断片は、抗体のタンパク質分解性加水分解によって、又は断片をコードするDNAのE.coli若しくは哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞培養物又は他のタンパク質発現系)における発現によって調製することができる。あるいは、抗体断片は、従来の方法による全抗体のペプシン又はパパイン消化によって得ることができる。
【0247】
抗体の「抗原結合部分」又は「抗原結合断片」という用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上の断片を指す(例えば、CD137、PD-1又はPD-L1)。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片によって発揮され得ることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例としては、Fab断片、F(ab’)断片、Fab’断片、Fd断片、Fv断片、dAb断片、及び単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。ScFvなどの一本鎖抗体、及びVHH及びラクダ抗体などの重鎖抗体も、抗体の「抗原結合部分」という用語の範囲内に包含されることが意図される。これらの抗体断片は、当業者に既知の従来の技術を使用して得られてもよく、断片は、インタクトな抗体と同じ方法で、有用性についてスクリーニングされてもよい。
【0248】
「結合活性」及び「結合親和性」という用語は、分子(例えば、抗体分子)が標的に結合する傾向又は結合しない傾向を指すことが意図されている。結合親和性は、抗体及びその標的の解離定数(Kd)を決定することによって定量化され得る。同様に、抗体のその標的に対する結合の特異性は、抗体及び別の非標的分子に対する解離定数と比較して、その標的に対する抗体の比較解離定数(Kd)の観点から定義され得る。
【0249】
典型的には、標的に対する抗体のKdは、無関係な物質若しくは環境中の付随する物質などの他の非標的分子に対するKdの2倍、好ましくは5倍、より好ましくは10倍未満であろう。より好ましくは、Kdは、50倍未満、更により好ましくは100倍未満、及び更により好ましくは200倍未満であろう。
【0250】
この解離定数の値は、周知の方法によって直接決定することができ、複雑な混合物についてでさえ、例えば、Caceci et al.(Byte 9:340-362,1984)に記載されるものなどの方法によって算出することができる。例えば、Wong&Lohman(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90,5428-5432,1993)に開示されるものなどの二重フィルターニトロセルロースフィルター結合アッセイを使用して、Kdを確立することができる。例えば、ELISA、ウェスタンブロット、RIA、及びフローサイトメトリー分析を含む、標的に対する抗体などのリガンドの結合能力を評価するための他の標準アッセイが、当該技術分野で既知である。抗体の結合速度(例えば結合親和性)もまた、当該技術分野で既知の標準アッセイによって、例えばBiacore(商標)システム分析などによって評価することができる。
【0251】
標的に対する抗体の結合が、その標的の別の既知のリガンド、例えば別の抗体などによる標的の結合と比較される、競合結合アッセイを実施してもよい。50%の阻害が生じる濃度は、Kiとして既知である。理想的な条件下では、KiはKdと等価である。Ki値は、Kd未満になることは決してないため、好都合なことに、Kiの測定値を代入してKdの上限を求めることができる。
【0252】
本発明の併用療法及び方法で使用される抗CD137抗体は、好ましくは、別の非標的分子に結合するその親和性の少なくとも2倍、10倍、50倍、100倍以上の親和性で、その標的に結合することができる。
【0253】
本発明の併用療法及び方法で使用されるPD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体)は、好ましくは、別の非標的分子に結合するその親和性の少なくとも2倍、10倍、50倍、100倍以上の親和性で、その標的に結合することができる。
【0254】
本発明の方法で使用するための抗体は、ヒト抗体であり得る。「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、フレームワーク領域とCDR領域の両方がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことを意図する。更に、抗体が定常領域を含有する場合、定常領域はまた、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム若しくは部位特異的変異誘発によって、又はインビボでの体細胞変異によって導入される変異)を含み得る。しかしながら、「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖配列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフト接合された抗体を含むことを意図していない。そのような抗体は、典型的には、キメラ又はヒト化と称される。
【0255】
本発明の方法を使用するためのヒト抗体は、典型的には、ヒトモノクローナル抗体である。そのようなヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合したヒト重鎖導入遺伝子及び軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物、例えば、トランスジェニックマウスから得られたB細胞を含むハイブリドーマによって産生され得る。ヒト抗体はまた、ヒトリンパ球のインビトロ免疫付与、続いてエプスタイン・バー・ウイルスによるリンパ球の形質転換によって調製され得る。「ヒト抗体誘導体」という用語は、ヒト抗体の任意の修飾形態、例えば、抗体と別の薬剤又は抗体とのコンジュゲートを指す。
【0256】
あるいは、本発明の方法における使用のための抗体は、ヒト化抗体であり得る。
【0257】
「ヒト化」という用語は、非ヒト種由来の免疫グロブリンに由来する抗原結合部位と、ヒト免疫グロブリンの構造及び/又は配列に基づく残りの免疫グロブリン構造とを有する、一般的に組換え技術を使用して調製された抗体分子を指す。抗原結合部位は、ヒト定常ドメインに融合された完全な非ヒト抗体可変ドメイン、又はヒト可変ドメインの適切なヒトフレームワーク領域にグラフト接合されたそのような可変ドメインの相補性決定領域(CDR)のみを含み得る。そのようなヒト化分子のフレームワーク残基は、野生型(例えば、完全ヒト)であってもよく、又はそれらは、配列がヒト化の基礎として機能しているヒト抗体に見出されない1つ以上のアミノ酸置換を含有するように修飾されてもよい。ヒト化は、分子の定常領域がヒト個体における免疫原として機能する可能性を低減又は排除するが、外来可変領域に対する免疫応答の可能性は残る(LoBuglio,A.F.et al.(1989)“Mouse/Human Chimeric Monoclonal Antibody In Man:Kinetics And Immune Response,”Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)86:4220-4224)。別のアプローチは、ヒト由来の定常領域を提供することだけでなく、可変領域を修正して、それらを可能な限りヒト形態に近づけることに焦点を当てる。重鎖及び軽鎖の両方の可変領域は、問題の抗原に応答して変化し、結合能力を決定する3つの相補性決定領域(CDR)を含有し、所与の種において比較的保存され、CDRに足場を提供すると推定される4つのフレームワーク領域(FR)に隣接することが既知である。非ヒト抗体が、特定の抗原に関して調製される場合、可変領域は、修飾されるヒト抗体中に存在するFR上に、非ヒト抗体に由来するCDRをグラフト接合することによって「再形成」又は「ヒト化」され得る。様々な抗体に対するこのアプローチの適用は、Sato,K.et al.(1993)Cancer Res 53:851-856.Riechmann,L.et al.(1988)“Reshaping Human Antibodies for Therapy,” Nature 332:323-327、Verhoeyen,M.et al.(1988)“Reshaping Human Antibodies:Grafting An Antilysozyme Activity,” Science 239:1534-1536、Kettleborough,C.A.et al.(1991)“Humanization Of A Mouse Monoclonal Antibody By CDR-Grafting:The Importance Of Framework Residues On Loop Conformation,” Protein Engineering 4:773-3783、Maeda,H.et al.(1991)“Construction Of Reshaped Human Antibodies With HIV-Neutralizing Activity,” Human Antibodies Hybridoma 2:124-134、Gorman,S.D.et al.(1991)“Reshaping A Therapeutic CD4 Antibody,” Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)88:4181-4185、Tempest,P.R.et al.(1991)“Reshaping A Human Monoclonal Antibody To Inhibit Human Respiratory Syncytial Virus Infection in vivo,” Bio/Technology 9:266-271、Co,M.S.et al.(1991)“Humanized Antibodies For Antiviral Therapy,” Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)88:2869-2873、Carter,P.et al.(1992)“Humanization Of An Anti-p185her2 Antibody For Human Cancer Therapy,” Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)89:4285-4289、及びCo,M.S.et al.(1992)“Chimeric And Humanized Antibodies With Specificity For The CD33 Antigen,”J.Immunol.148:1149-1154によって報告されている。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、全てのCDR配列を保存する(例えば、マウス抗体からの6つ全てのCDRを含有するヒト化マウス抗体)。他の実施形態では、ヒト化抗体は、元の抗体に対して改変された1以上のCDR(1、2、3、4、5、6)を有し、これらは元の抗体に由来する1つ以上のCDRに「由来する」1つ以上のCDRとも呼ばれる。抗原をヒト化する能力は周知である(例えば、米国特許第5,225,539号、同第5,530,101号、同第5,585,089号、同第5,859,205号、同第6,407,213号、同第6,881,557号を参照されたい)。
【0258】
抗体は、本明細書に開示される特定の抗体のうちの1つのバリアント若しくは断片であってもよく、又はそれらを含んでいてもよく、但し、上述のバリアント若しくは断片は、その標的に対する特異性を保持する。例えば、抗体は、本明細書に開示される特定の抗CD137抗体のうちの1つのバリアント若しくは断片であってもよく、又はそれらを含んでいてもよく、但し、上述のバリアント若しくは断片は、CD137に対する特異性を保持する。あるいは、又は加えて、抗体は、本明細書に開示される特定の抗PD-1又はPD-L1抗体のうちの1つのバリアント若しくは断片であってもよく、又はそれらを含んでいてもよく、但し、上述のバリアント若しくは断片は、PD-1又はPD-L1に対する特異性を保持する。
【0259】
断片は、好ましくは、上述の抗体の抗原結合部分である。断片は、先端切断、例えば、ポリペプチドのN末端及び/又はC末端からの1つ以上のアミノ酸の除去によって作製され得る。このようにして、最大10個、最大20個、最大30個、最大40個、又はそれ以上のアミノ酸をN末端及び/又はC末端から除去してもよい。断片は、1つ以上の内部欠失によっても生成され得る。
【0260】
バリアントは、本明細書に開示される特定の抗CD137抗体又は他の抗体(例えば、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体)の配列に関して、1つ以上の置換、欠失、又は付加を含み得る。バリアントは、本明細書に開示される特定の配列からの1個、2個、3個、4個、5個、最大10個、最大20個、最大30個、又はそれ以上のアミノ酸置換及び/又は欠失を含み得る。「欠失」バリアントは、個々のアミノ酸の欠失、アミノ酸の小群、例えば2個、3個、4個、若しくは5個のアミノ酸の欠失、又はより大きなアミノ酸領域の欠失、例えば特定のアミノ酸ドメイン若しくは他の特徴の欠失を含んでもよい。「置換」バリアントは、好ましくは、1個以上のアミノ酸を同数のアミノ酸に置き換え、保存的なアミノ酸置換を行うことを伴う。例えば、アミノ酸は、類似の特性を有する代替的なアミノ酸、例えば、別の塩基性アミノ酸、別の酸性アミノ酸、別の中性アミノ酸、別の荷電アミノ酸、別の親水性アミノ酸、別の疎水性アミノ酸、別の極性アミノ酸、別の芳香族アミノ酸、又は別の脂肪族アミノ酸で置換されてもよい。
【0261】
好適な置換基を選択するために使用することのできる20種の主なアミノ酸のいくつかの特性は、以下の通りである。
【表2】
【0262】
好ましい「バリアント」としては、天然に存在するアミノ酸の代わりに、配列内に現れるアミノ酸がその構造的類似体であるものが挙げられる。配列内で使用されるアミノ酸はまた、抗体の機能が著しく悪影響を受けない限り、誘導体化又は修飾、例えば標識されてもよい。
【0263】
バリアントは、抗体の合成中に、若しくは産生後の修飾によって調製されてもよく、又は抗体が組換え形態である場合は、部位特異的変異誘発、ランダム変異誘発、又は核酸の酵素的切断及び/若しくは連結反応の既知の技術を使用して調製されてもよい。
【0264】
好ましくは、バリアント抗体は、本明細書に開示される抗体のVL又はVHドメインに対して、60%より大きく、又は70%より大きく(例えば、75%若しくは80%)、好ましくは、85%より大きく、例えば、90%若しくは95%より大きいアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を有する。アミノ酸同一性のこのレベルは、関連した配列番号の配列の全長にわたって、又は全長ポリペプチドのサイズに応じて、20、30、50、75、100、150、200、若しくはそれ以上のアミノ酸にわたるなど、配列の一部にわたって見られ得る。
【0265】
アミノ酸配列との関連で、「配列同一性」は、ClustalW(Thompson et al.,1994、上記)を使用し、以下のパラメータを用いて評価した場合に、記載される値を有する配列を指す。
【0266】
ペアワイズアラインメントパラメータ-方法:正確、マトリックス:PAM、ギャップオープンペナルティ:10.00、ギャップエクステンションペナルティ;0.10;
【0267】
複数のアラインメントパラメータ-マトリックス:PAM、ギャップオープンペナルティ:10.00、遅延のための同一性%:30、エンドギャップのペナルティ:オン、ギャップ分離距離:0、ネガティブマトリックス:なし、ギャップエクステンションペナルティ:0.20、残基特異的ギャップペナルティ:オン、親水性ギャップペナルティ:オン、親水性残基:GPSNDQEKR。特定の残基における配列同一性は、単に誘導体化されている同一の残基を含むよう意図される。
【0268】
本発明の併用療法及び方法で使用するための抗CD137抗体又はPD-1阻害剤は、本明細書に開示される特定の抗体と同じエピトープに結合し得る(例えば、抗CD137抗体は、CD137のドメイン2に結合し得る)。これは、そのような抗体が、開示される抗体の作用を模倣する可能性が高いためである。ある抗体が別の抗体と同じエピトープに結合するかどうかは、日常的な方法によって決定し得る。例えば、標的に対する各抗体の結合は、競合結合アッセイを使用してもよい。競合結合アッセイを実施するための方法は、当該技術分野で周知である。例えば、それらは、抗体が標的分子に結合することができる条件下で、抗体と標的分子とを一緒に接触させることを伴い得る。次いで、抗体/標的複合体を第2の(試験)抗体と接触させてもよく、試験抗体が抗体/標的複合体から第1の抗体を置き換えることができる程度を評価してもよい。そのような評価は、例えば、表面プラズモン共鳴、ELISA、又はフローサイトメトリーを含む任意の適切な技術を使用してもよい。試験抗体が標的に対する第1の抗体の結合を阻害する能力は、試験抗体が標的に対する結合について前記第1の抗体と競合することができ、したがって、試験抗体が第1の抗体と同じ標的上のエピトープ又は領域に結合し、したがって、第1の抗体の作用を模倣し得ることを示す。
【0269】
本明細書で言及される任意の抗体は、単離された形態で提供されてもよく、又は任意選択的に、別の部分に(直接的又は間接的に)連結されて提供されてもよい。他の部分は、細胞傷害性部分又は薬物などの治療用分子であり得る。
【0270】
治療用分子は、例えば、化学的コンジュゲーションによって、本発明の抗体に直接接続され得る。分子を抗体にコンジュゲートするための方法は、当該技術分野で既知である。例えば、カルボジイミドコンジュゲーション(Bauminger&Wilchek(1980)Methods Enzymol.70,151-159)を使用して、ドキソルビシンを含む様々な薬剤を抗体又はペプチドにコンジュゲートすることができる。水溶性カルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)は、官能部分を結合部分にコンジュゲートするのに特に有用である。
【0271】
ある部分を抗体にコンジュゲートするための他の方法もまた使用することができる。例えば、過ヨウ素酸ナトリウム酸化、続いて適切な反応剤の還元アルキル化を使用することができ、グルタルアルデヒド架橋も同様に可能である。しかしながら、本発明のコンジュゲートを産生する方法がどのように選択されるかにかかわらず、抗体がその標的化能力を維持し、機能的部分がその関連する機能を維持するという決定がなされなければならないと認識されている。
【0272】
細胞傷害性部分は、直接及び/又は間接的に細胞傷害性であり得る。「直接的に細胞傷害性」とは、その部分がそれ自体が細胞傷害性である部分であることを意味する。「間接的に細胞傷害性」とは、その部分が、それ自体は細胞傷害性ではないが、例えば、更なる分子に対するその作用又はそれに対する更なる作用によって、細胞傷害性を誘導することができる部分であることを意味する。細胞傷害性部分は、細胞内でのみ細胞傷害性であってもよく、細胞外では細胞傷害性ではないことが好ましい。
【0273】
抗体又は抗原結合断片は、直接的に細胞傷害性の化学療法剤である細胞傷害性部分に連結している。任意選択的に、細胞傷害性部分は、直接的に細胞傷害性のポリペプチドである。細胞傷害性の化学療法剤は、当該技術分野で周知である。
【0274】
抗がん剤などの細胞傷害性化学療法剤としては、メクロレタミン(HN2)、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン(L-サルコリシン)及びクロラムブシルなどのナイトロジェンマスタードを含むアルキル化剤;ヘキサメチルメラミン、チオテパなどのエチレンイミン及びメチルメラミン;ブスルファンなどのアルキルスルホネート;カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(メチル-CCNU)及びストレプトゾチン(ストレプトゾトシン)などのニトロソウレア;及びデカルバジン(DTIC、ジメチルトリアゼノイミダゾール-カルボキサミド)などのトリアゼン;メトレキサート(アメトプテリン)などの葉酸類似体を含む抗代謝物質;フルオロウラシル(5-フルオロウラシル、5-FU)、フロキソウリジン(フルオデオキシウリジン、FUdR)及びシタラビン(シトシンアラビノシド)などのピリミジン類似体;並びにメルカプトプリン(6-メルカプトプリン、6-MP)、チオグアニン(6-チオグアニン、TG)、及びペントスタチン(2’-デオキシコホルマイシン)が挙げられる。ビンブラスチン(VLB)及びビンクリスチンなどのビンカアルカロイド;エトポシド及びテニポシドなどのエピポドフィロトキシン;ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン(ダウノマイシン;ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)及びマイトマイシン(マイトマイシンC)などの抗生物質;L-アスパラギナーゼなどの酵素;並びにインターフェロンアルフェノームなどの生物学的応答調整剤を含む、天然産物。シスプラチン(cis-DDP)及びカルボプラチンなどの白金配位錯体;ミトキサントロン及びアントラサイクリンなどのアントラセンジオン;ヒドロキシウレアなどの置換ウレア;プロカルバジン(N-メチルヒドラジン、MIH)などのメチルヒドラジン誘導体;及びミトタン(o,p’-DDD)及びアミノグルテチミドなどの副腎皮質抑制剤;タキソール及び類似体/誘導体;並びにフルタミド及びタモキシフェンなどのホルモンアゴニスト/アンタゴニストを含む、その他の薬剤。
【0275】
細胞傷害性部分は、細胞傷害性ペプチド、又は細胞死につながるポリペプチド部分であり得る。細胞傷害性ペプチド及びポリペプチド部分は、当該技術分野で周知であり、例えば、リシン、アブリン、Pseudomonas外毒素、組織因子などが挙げられる。それらを抗体などの標的化部分に連結するための方法もまた、当該技術分野で既知である。他のリボソーム不活性化タンパク質は、WO96/06641に細胞傷害性薬剤として記載されている。Pseudomonas外毒素も、細胞傷害性ポリペプチドとして使用され得る。TNFα及びIL-2などの特定のサイトカインも、細胞傷害性薬剤として有用であり得る。
【0276】
特定の放射性原子はまた、十分な用量で送達される場合、細胞傷害性であり得る。したがって、細胞傷害性部分は、使用中に、細胞傷害性であるように十分な量の放射性を標的部位に送達する放射性原子を含み得る。好適な放射性原子としては、リン-32、ヨウ素-125、ヨウ素-131、インジウム-111、レニウム-186、レニウム-188若しくはイットリウム-90、又は隣接する細胞、小器官若しくは核酸を破壊するのに十分なエネルギーを放出する任意の他の同位体が挙げられる。好ましくは、本発明の薬剤における放射性原子の同位体及び密度は、4000cGyを超える線量(好ましくは、少なくとも6000、8000又は10000cGy)が標的部位、好ましくは、標的部位の細胞及びそれらの細胞小器官、特に核に送達されるようなものである。
【0277】
放射性原子は、抗体、抗原結合断片、バリアント、融合体又はその誘導体に既知の方法で接続され得る。例えば、EDTA又は別のキレート剤を結合部分に接続させてもよく、111In又は90Yを接続させるために使用してもよい。チロシン残基を、125I又は131Iで直接標識してもよい。
【0278】
細胞傷害性部分は、好適な間接的に細胞傷害性のポリペプチドであり得る。間接的に細胞傷害性のポリペプチドは、酵素活性を有し、非毒性及び/又は比較的非毒性のプロドラッグを細胞傷害性薬物に変換することができるポリペプチドであり得る。抗体では、この種の系は、多くの場合、ADEPT(抗体指向酵素プロドラッグ療法)と称される。その系は、抗体が酵素部分を患者の体内の所望の部位に配置し、酵素が部位で局在化する時間を与えた後、酵素の基質であるプロドラッグを投与することを必要とし、触媒作用の最終生成物は、細胞傷害性化合物である。このアプローチの目的は、所望の部位における薬物の濃度を最大化し、正常組織中の薬物の濃度を最小化することである。細胞傷害性部分は、非細胞傷害性プロドラッグを細胞傷害性薬物に変換することが可能であり得る。
【0279】
本明細書に記載の標的化酵素を使用する系の酵素及びプロドラッグは、以前に提案されたもののいずれかであり得る。細胞傷害性物質は、アルキル化剤などの任意の既存の抗がん薬物;DNAにインターカレートする薬剤;ジヒドロ葉酸レダクターゼ、チミジン合成酵素、リボヌクレオチドレダクターゼ、ヌクレオシドキナーゼ又はトポイソメラーゼなどの任意の重要な酵素を阻害する薬剤;又は任意の他の細胞成分と相互作用することによって細胞死を引き起こす薬剤であり得る。エトポシドは、トポイソメラーゼ阻害剤の一例である。
【0280】
報告されたプロドラッグ系には、表2に列記されているものが含まれる。
【表3】
【0281】
酵素部分の一部を形成するための好適な酵素としては、エキソペプチダーゼ、例えば、カルボキシペプチダーゼG、G1及びG2(グルタミル化マスタードプロドラッグ用)、カルボキシペプチダーゼA及びB(MTXベースのプロドラッグ用)、及びアミノペプチダーゼ(2-α-アミノシルMTCプロドラッグ用);エンドペプチダーゼ、例えば、トロンボリシン(トロンビンプロドラッグ用);加水分解酵素、例えば、ホスファターゼ(例えば、アルカリホスファターゼ)又はスルファターゼ(例えば、アリールスルファターゼ)(リン酸化又は硫酸化プロドラッグ用);アミダーゼ、例えば、ペニシリンアミダーゼ及びアリールアシルアミダーゼ;ラクタマーゼ、例えば、β-ラクタマーゼ;グリコシダーゼ、例えば、β-グルクロノシダーゼ(β-グルクロノミドアントラシクシン用)、α-ガラクトシダーゼ(アミグダリン用)及びβ-ガラクトシダーゼ(β-ガラクトースアントラサイクリン用);デアミナーゼ、例えば、シトシンデアミナーゼ(5FC用);キナーゼ、例えば、ウロキナーゼ及びチミジンキナーゼ(ガンシクロビル用);レダクターゼ、例えば、ニトロレダクターゼ(CB1954及び類似体用);アゾレダクターゼ(アゾベンゼンマスタード用)及びDT-ジアホラーゼ(CB1954用);オキシダーゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ(グルコース用)、キサンチンオキシダーゼ(キサンチン用)及びラクトペルオキシダーゼ;DL-ラセマーゼ、触媒抗体及びシクロデキストリンが挙げられる。
【0282】
好ましくは、プロドラッグは、細胞傷害性薬物と比較して、比較的非毒性である。典型的には、好適なインビトロ細胞傷害性試験で測定した場合、それは、毒性の10%未満、好ましくは、毒性の1%未満を有する。
【0283】
プロドラッグを細胞傷害性薬物に変換することができる部分は、本発明の薬剤の残りの部分から単離して活性である可能性が高いが、(a)本発明の薬剤の残りの部分と組み合わせている場合、及び(b)本発明の薬剤が標的細胞に接続し、隣接し、又は標的細胞内に内在化している場合にのみ、活性であることが必要である。
【0284】
各部分がポリペプチドである場合、2つの部分は、ポリペプチドを架橋する従来の方法のいずれかによって一緒に連結され得る。例えば、抗体又は抗原結合断片は、チオール基が濃縮されていてもよく、更なる部分は、それらのチオール基と反応することができる二官能性剤、例えば、ヨード酢酸のN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHIA)又はN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)と反応する。例えば、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルで達成されるアミド結合及びチオエーテル結合は、一般に、ジスルフィド結合よりもインビボでより安定である。
【0285】
細胞傷害性部分は、放射線増感剤であり得る。放射線増感剤としては、フルオロピリミジン、チミジン類似体、ヒドロキシウレア、ゲムシタビン、フルダラビン、ニコチンアミド、ハロゲン化ピリミジン、3-アミノベンズアミド、3-アミノベンゾジアミド、エタニキサドール、ピモニダゾール及びミゾニダゾールが挙げられる。また、細胞への遺伝子の送達により、それらを放射線増感化することができ、例えば、p53遺伝子又はサイクリンDの送達である。更なる部分は、照射時に細胞傷害性になるか、又は細胞傷害性部分を放出する部分であり得る。例えば、ホウ素-10同位体は、適切に照射されると、細胞傷害性であるα粒子を放出する。同様に、細胞傷害性部分は、フォトフリンなどの光線力学療法において有用なものであり得る。
【0286】
方法及び併用療法
本発明は、対象におけるがん(例えば、固形腫瘍)の治療に使用するための併用療法であって、(a)CD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合部分と、(b)更なる免疫療法剤であって、更なる免疫療法剤がPD-1阻害剤である、更なる免疫療法剤と、を含む併用療法を提供する。
【0287】
CD137に特異的に結合する抗体又はその抗原結合部分及びPD-1阻害剤は、上述の通りである。
【0288】
2つの活性薬剤(上で詳述されるような)の存在が、対象における固形腫瘍の治療において相乗的利点をもたらし得ることが、当業者には理解されよう。「相乗的」とは、2つの薬剤の組み合わせの治療効果が(例えば、腫瘍の成長速度又はサイズを参照して決定される)、それら自身に投与される2つの薬剤の付加的な治療効果よりも大きいことを含む。そのような相乗作用は、固形腫瘍の関連細胞株モデルにおいて、活性剤を単独で、また組み合わせて試験することによって特定され得る。
【0289】
本明細書で使用される「併用療法」又は「併用治療」又は「組み合わせた」という用語は、少なくとも2つの異なる療法剤による同時又は連続治療の任意の形態を示す。
【0290】
特定の実施形態によれば、抗CD137抗体、又はその抗原結合断片、及びPD-1阻害剤は、同じ組成物又は別個の組成物のいずれかで同時に投与される。他の実施形態によれば、抗CD137抗体、又はその抗原結合断片、及びPD-1阻害剤は、順次投与され、すなわち、抗CD137抗体、又はその抗原結合断片は、PD-1阻害剤の投与の前又は後のいずれかに投与される。いくつかの実施形態では、抗CD137抗体、又はその抗原結合断片、及びPD-1阻害剤の投与は、同時であり、すなわち、抗CD137抗体、又はその抗原結合断片の投与期間と、PD-1阻害剤の投与期間とが互いに重複する。いくつかの実施形態では、抗CD137抗体、又はその抗原結合断片、及びPD-1阻害剤の投与は、非同時、又は連続的である。例えば、いくつかの実施形態では、抗CD137抗体、又はその抗原結合断片の投与は、PD-1阻害剤が投与される前に終了する。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤の投与は、抗CD137抗体、又はその抗原結合断片が投与される前に終了する。
【0291】
特定の典型的な実施形態によれば、抗CD137抗体、又はその抗原結合断片、及びPD-1阻害剤は、単一の治療用組成物として投与される。いくつかの実施形態によれば、治療用組成物は、治療的に許容される希釈剤又は担体を更に含む。
【0292】
全身性のPD-1阻害剤と抗CD137抗体との組み合わせは、腫瘍によるPD-L1の発現のために、単に魅力的なものではない。CD137刺激は、腫瘍浸潤T細胞の活性化を引き起こし、それらが腫瘍細胞を死滅させることを可能にする。しかしながら、CD137が媒介するT細胞の活性化はまた、T細胞上のPD-1の上方制御を引き起こす(及び腫瘍細胞上のPD-L1の上方制御を間接的に引き起こす)。逆に、PD-1阻害は、腫瘍特異性T細胞の再活性化(又は阻害の除去)を引き起こす。PD-1阻害剤によって再活性化されたT細胞は、CD137を発現する。CD137を発現するT細胞のCD137刺激は、腫瘍細胞を死滅させ、それらが疲弊するのを防ぐ(又は疲弊からそれらを救出する)能力を増加させる。
【0293】
したがって、更なる免疫療法剤は、PD-1阻害剤であり、好ましくは、PD-1又はPD-L1のうちの少なくとも1つに特異的に結合する抗体又は他の薬剤であり得る(既に上述したように)。
【0294】
更なる免疫療法剤が抗体、又は抗体を含む二重特異性分子である場合、抗体の定義、抗体の抗原結合断片、追加の治療部分への任意選択的なコンジュゲーションなどに関して上述した一般的な考慮事項の全てが、更なる免疫療法剤である抗体にも適用されることが理解されるであろう。同様に、抗CD137抗体について上述した標的特異性/親和性の定義及び特異性/親和性を決定するための方法は、CD137の代わりに薬剤の特異的標的を読み取ることを除いて、更なる免疫療法剤である抗体に等しく適用されることが理解されるであろう。更なる免疫療法剤である抗体のバリアント及び断片はまた、抗CD137抗体のバリアント及び断片と同じ方法で定義されてもよい。
【0295】
本発明は、対象におけるがん、好ましくは固形腫瘍を治療するための方法を提供する。腫瘍は、典型的には悪性であり、転移性であり得る。
【0296】
一実施形態では、本発明の併用療法を使用して、がんに罹患しているか、又はがんに罹患するリスクがある患者又は対象を治療し得る。
【0297】
「治療」は、患者の治療的治療及び予防的治療の両方を含む。「予防的」という用語は、患者若しくは対象におけるがんの可能性、又はがん細胞の蔓延、播種、若しくは転移を予防又は低減する、本明細書に記載される薬剤又はその製剤の使用を包含するように使用される。「予防的」という用語はまた、新生物性障害のために以前に治療されたことのある患者におけるがんの再発を予防するための、本明細書に記載される薬剤又はその製剤の使用も包含する。
【0298】
がんは、固形腫瘍の形成と関連していてもよく、又は血液がんであってもよい。治療され得るがんの種類には、がん腫、肉腫、リンパ腫、白血病、芽細胞腫及び胚細胞腫瘍が含まれる。
【0299】
がんは、前立腺がん;乳がん;結腸直腸がん;腎臓がん;膵臓がん;卵巣がん;肺がん;子宮頸がん;横紋筋肉腫;神経芽腫;骨がん;多発性骨髄腫;白血病(例えば、急性リンパ芽球性白血病[ALL]及び急性骨髄性白血病[AML])、皮膚がん(例えば、黒色腫)、膀胱がん及び膠芽腫からなる群から選択され得る。
【0300】
一実施形態では、がんは、以下の表4又は表5(WO2018/091740から得た)のがんのリストから選択され得る。
【表4-1】
【表4-2】
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【0301】
典型的には、本発明の併用療法における療法剤は、例えば血流中への注射又は腫瘍の部位若しくはその近傍への注射によって、非経口形態で投与され得る。典型的には、本発明の併用療法における療法剤は、静脈内に投与される。
【0302】
一実施形態では、本発明の併用療法及び又は方法は、事前にスクリーニングされ、CD137及びFcγR、例えば、FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB又はそれらの組み合わせを発現する細胞を含む腫瘍を有すると同定された患者を治療するために使用され得る。
【0303】
本発明の併用療法は、患者におけるがんの唯一の治療として、又は追加の併用治療(追加の治療は、薬学的薬剤、放射線療法及び/又は手術であり得る)の一部として用いられ得ることを更に理解されたい。
【0304】
がんは、固形腫瘍であり得る。固形腫瘍は、乳房、結腸など、それらが由来する組織によって古典的に定義される。しかしながら、免疫療法は、腫瘍自体ではなく免疫系に作用するため、腫瘍の免疫状態は、腫瘍の起源よりも応答をより予測することができる。本明細書で提示される支援研究において、MC38結腸がんモデルは、より詳細に評価され、これは、概して免疫原性であり、PD-1療法単独に応答する。
【0305】
本発明の一実施形態では、腫瘍は、免疫原性である。そのような腫瘍は、T細胞及び骨髄起源の細胞などの免疫細胞の浸潤を特徴とする。CD8 T細胞の浸潤、すなわち、より免疫原性の高い腫瘍プロファイルが、例えば、結腸がんにおいて、療法後の良好な予後と相関することが実証されている(Galon et al.,2014,J.Pathol.232(2):199-209)。
【0306】
本発明の代替的な実施形態では、腫瘍は、非免疫原性又は低免疫原性である。低免疫原性腫瘍は、多くの場合、MHCI発現が低いか、又は全く起こらず、T細胞及び骨髄起源の細胞などの浸潤免疫細胞の数が少ないことを特徴とする(Lechner et al.,2013,J Immunotherapy 36(9):477-89)。腫瘍は、アデノーマ、腺がん、芽細胞腫、がん腫、デスモイド腫瘍、線維形成性小円形細胞腫瘍、内分泌腫瘍、胚細胞腫瘍、リンパ腫、肉腫、ウィルムス腫瘍、肺腫瘍、結腸腫瘍、リンパ腫瘍、乳房腫瘍又は黒色腫であり得る。
【0307】
芽細胞腫の種類には、肝芽細胞腫、神経膠芽細胞腫、神経芽細胞腫、又は網膜芽細胞腫が含まれる。がん腫の種類には、乳がん、子宮内膜がん、結腸直腸がん又は肝細胞がん、膵臓がん、前立腺がん、胃がん、尿路上皮がん、腎臓がん、メルケル細胞がん、食道がん、子宮頸がん、及び頭頸部がん、及び腺がんが含まれる。肉腫の種類としては、ユーイング肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、又は任意の他の軟部組織肉腫が挙げられる。黒色腫の種類には、悪性黒子、悪性黒子黒色腫、表在拡大型黒色腫、末端黒子型黒色腫、粘膜部黒色腫、結節型黒色腫、ポリポイド型黒色腫、神経向性黒色腫、無色素性黒色腫、軟部組織黒色腫、小さな母斑様細胞を伴う黒色腫、スピッツ母斑の特徴を有する黒色腫、及びぶどう膜黒色腫が含まれる。リンパ腫の種類としては、前駆T細胞白血病/リンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、B細胞慢性リンパ性白血病/リンパ腫、MALTリンパ腫、バーキットリンパ腫、菌状息肉症、末梢T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫の結節性硬化症型、ホジキンリンパ腫の混合細胞性サブタイプが挙げられる。肺腫瘍の種類としては、非小細胞肺がん(腺がん、扁平上皮がん及び大細胞がん)及び小細胞肺がんの腫瘍が挙げられる。
【0308】
本発明の一実施形態では、がんは、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)がん、及び/又は欠損ミスマッチ修復(dMMR)がん、及び/又は高腫瘍変異負荷(すなわち、TMB-高)に関連するがんであり得る。
【0309】
本発明の一実施形態では、がんは、中皮腫であってもよい。
【0310】
本発明の方法は、(a)対象に、治療有効量のCD137に特異的に結合する抗体を投与することと、(b)対象に、治療有効量の更なる免疫療法剤を全身投与することと、を含み、更なる免疫療法剤がPD-1阻害剤であり、任意選択的に、PD-1阻害剤は、全身投与される。ステップ(a)及び(b)は、同時に実行されてもよい。あるいは、ステップ(a)及び(b)は、ステップ(b)の前に順次提供されるステップ(a)を実行してもよい。ステップ(a)では、抗CD137抗体は、好ましくは、腫瘍に全身投与され、最も好ましくは、抗CD137抗体は、静脈内投与される。
【0311】
ある物質の「治療有効量」とは、所与の物質が、ある状態を患う対象に、その状態又はその症状のうちの1つ以上を治癒、軽減、又は部分的に抑えるのに十分な量で投与されることを意味する。そのような療法的治療は、疾患症状の重症度の減少、又は無症状期間の頻度若しくは持続期間の増加をもたらし得る。所与の目的及び所与の薬剤の有効量は、疾患又は傷害の重症度、並びに対象の体重及び一般的な状態に依存する。本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、任意の哺乳動物、好ましくはヒトを含む。
【0312】
本発明はまた、以下を提供する。
-対象における固形腫瘍を治療するための方法で使用するためのCD137に特異的に結合する抗体であって、当該方法が、(a)対象に、治療有効量のCD137に特異的に結合する上述の抗体を投与することと、(b)対象に、治療有効量のPD-1阻害剤を全身投与することと、を含む、抗体。ステップ(a)及び(b)は、同時に実行されてもよい。あるいは、ステップ(a)及び(b)は、ステップ(b)の前に順次提供されるステップ(a)を実行してもよい。ステップ(a)において、上述の抗CD137抗体は、好ましくは、腫瘍に局所的に投与される。
-対象における固形腫瘍を治療するための医薬の製造における、CD137に特異的に結合する抗体の使用であって、当該治療することが、(a)腫瘍に、治療有効量のCD137に特異的に結合する上述の抗体を投与することと、(b)対象に、治療有効量のPD-1阻害剤を全身投与することと、を含む、使用。ステップ(a)及び(b)は、同時に実行されてもよい。あるいは、ステップ(a)及び(b)は、ステップ(b)の前に順次提供されるステップ(a)を実行してもよい。ステップ(a)では、上述の抗CD137抗体は、好ましくは、全身投与され、最も好ましくは、上述の抗CD137抗体は、静脈内投与される。
-対象における固形腫瘍を治療する方法における同時、別個、又は連続した使用のための(1)CD137に特異的に結合する抗体と、(2)PD-1阻害剤と、を含有する、製品であって、当該方法が、(a)腫瘍に、治療有効量のCD137に特異的に結合する上述の抗体を全身投与することと、任意選択的に(b)対象に、治療有効量のPD-1阻害剤を全身投与することと、を含む、製品。ステップ(a)及び(b)は、同時に実行されてもよい。あるいは、ステップ(a)及び(b)は、ステップ(b)の前に順次提供されるステップ(a)を実行してもよい。ステップ(a)において、上述の抗CD137抗体は、好ましくは、腫瘍に局所的に投与される。
【0313】
ステップ(a)及び(b)のタイミング及び順序
一実施形態では、ステップ(a)及び(b)は、順次(すなわち、異なる時間に)実行されてもよく、ステップ(a)は、ステップ(b)の前に実行される。
【0314】
ステップ(a)及び(b)は、組み合わされた抗腫瘍効果が最適化されるような間隔で分離され得る。ステップ(b)は、ステップ(a)の少なくとも1つの生理学的効果がそのピークレベルにあるか、又はそれに近い、ステップ(a)の後の十分に長い間隔で行われてもよい。例えば、抗CD137抗体は、典型的には、CD137を刺激し、T細胞及び/又は他の免疫細胞を活性化する(例えば、CD8+細胞からのインターフェロンガンマの放出を誘導するため)。活性化されたT細胞は、抗CD137による治療の約24時間以内に、より高いレベルの免疫系チェックポイント分子(PD-1など)の発現を開始し得る。これらの免疫系チェックポイント分子は、抗腫瘍応答を負に調節し得る。ステップ(b)で投与される更なる免疫療法剤は、PD-1阻害剤であり、したがって、好ましくは、PD-1のそのような活性を遮断又は阻害する抗PD-1又は抗PDL1抗体であり得る。ステップ(b)で投与される更なる免疫療法剤が、そのような薬剤である場合、ステップ(b)は、対象の細胞における免疫系チェックポイント分子(PD-1など)の発現レベル、又は上述の免疫系チェックポイント分子を発現する対象の細胞の数が、ステップ(a)の前の対象の上述のレベル若しくは数に対して、又は健康な対象の上述のレベル若しくは数に対して上昇するように、ステップ(a)の後に十分に長い間隔で実行され得る。この文脈では、ステップ(b)は、ステップ(a)の後の24時間以内、ステップ(a)の後の24時間から2週間の間、ステップ(a)の後の24時間から1週間の間、ステップ(a)の後の24時間から72時間の間、又はステップ(a)の後の24時間から48時間の間に行われる。好ましくは、ステップ(b)は、ステップ(a)の後の24時間以内に行われる。
【0315】
あるいは、対象の細胞における免疫系チェックポイント分子(PD-1など)の発現レベル、又は上述の免疫系チェックポイント分子を発現する対象の細胞の数が、ステップ(a)の前の対象の上述のレベル若しくは数に対して、又は健康な対象の上述のレベル若しくは数に対して上昇することが決定される場合、ステップ(b)は、ステップ(a)のある時点で行われてもよい。
【0316】
対象の細胞における免疫系チェックポイント分子(PD-1など)の発現レベル、又はそのような分子を発現する対象における細胞の数は、任意の好適な手段、例えば、対象から採取された試料のフローサイトメトリー分析によって決定され得る。
【0317】
あるいは、最も好ましい実施形態では、ステップ(a)及び(b)は、同じ日に実行される。両方のステップが同じ日に、又は治療センターへの同じ訪問中に行われ得るように、ステップ(a)及び(b)を同時に(すなわち、同じ時に)、又は互いに24時間以内に実行することが好ましい場合がある。これは、治療センターへのアクセスが制限されている場合に特に有利であり得る。この文脈では、ステップ(a)及び(b)は、同時に実行されてもよく、又は24時間未満間隔で、12時間未満間隔で、10時間未満間隔で、6時間未満間隔で、4時間未満間隔で、3時間未満間隔で、又は2時間未満間隔で実行されてもよい。
【0318】
更なる実施形態では、ステップ(a)及び(b)は、同時に実行されるか、又はステップ(b)は、ステップ(a)の後の24時間から2週間の間、ステップ(a)の後の24時間から1週間の間、ステップ(a)の後の24時間から72時間の間、又はステップ(a)の後の24時間から48時間の間に実行される。
【0319】
上述の実施形態のいずれかでは、ステップ(a)は、第1の場合の後に複数の更なる場合で実行され得る。すなわち、対象は、一連の用量の抗CD137抗体を受け得る。これらの用量は、対象が抗CD137抗体への断続的な曝露のみを有するように、好ましくは、対象の免疫細胞が枯渇しないように、かつ/又は対象が抗CD137抗体へのタキフィラキシーに罹患しないように、投与される。これらの症状のいずれかを検出したら、抗CD137抗体の次の投与が遅らせられるか、又はキャンセルされ得る。複数回の用量の抗CD137が投与される場合、ステップ(b)は、好ましくは、ステップ(b)の開始後、ステップ(a)の任意の第2の場合及び更なる場合を含む方法の期間中、対象の更なる免疫療法剤(PD-1阻害剤)への連続的な曝露を可能にする様式で実施される。このことは、追加の薬剤が、免疫系チェックポイント分子PD-1のそのような活性を遮断又は阻害する抗PD-1又は抗PDL1抗体である場合、特に適切であり得る。連続的な受容体の遮断は、そのような薬剤の治療効果にとって特に重要であり得る。
【0320】
したがって、一実施形態では、ステップ(a)は、複数の別個の機会に実施され、ステップ(b)は、更なる免疫療法剤への対象の曝露が、本方法の持続時間にわたって連続するように実施される。
【0321】
ステップ(a)
本方法のステップ(a)は、固形腫瘍を有する対象に対する抗CD137抗体の局所投与又は全身投与に関する。好ましくは、ステップ(a)は、例えば、静脈内投与又は皮下投与による、抗CD137抗体の全身投与に関する。最も好ましい実施形態では、ステップ(a)は、抗CD137抗体の静脈内投与を伴う。
【0322】
代替的な実施形態では、抗CD137抗体、又はその抗原結合断片は、対象の腫瘍部位に局所投与される。腫瘍部位への局所投与には、注射などの任意の好適な手段による腫瘍周囲、腫瘍近傍、腫瘍内、病変内、病変周囲、頭蓋内及び膀胱内投与が含まれる。局所投与はまた、腫瘍の部位に応じて、空洞内注入及び吸入を含み得る。
【0323】
抗CD137抗体の高い割合は、上述の抗体の投与後の長期間にわたって、インビボで、すなわち腫瘍微小環境内にある腫瘍部位に保持され得る。すなわち、抗体は、特に腫瘍部位に局所的に投与される場合、腫瘍部位から血管又はリンパ循環への低減された漏出を示す。好ましくは、本方法に従って腫瘍に投与される抗体用量の少なくとも30%が、投与後4時間で腫瘍部位に保持され、より好ましくは、用量の少なくとも40%が、投与後4時間で保持され、最も好ましくは、用量の少なくとも50%が、投与後4時間で保持される。
【0324】
「固形腫瘍の部位に保持される」とは、抗CD137抗体が、腫瘍領域からゆっくりとのみ放出されることを含む。腫瘍微小環境における抗体保持は、抗体をマウスモデルの腫瘍に注射し、投与後の経時的な抗体の血清レベルを測定することによって研究することができる。あるいは、抗体の分布は、マウスモデルで腫瘍に注射された放射性標識抗体を使用して測定することができる。好適な技術は、当業者に既知である。例えば、腫瘍部位における抗体の保持は、投与後の抗体の血清レベルを監視することによって評価され得る(Mangsbo et al.,2014,Clin.Cancer Res.21(5):1115-1126(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。例えば、一実施形態では、30μg(60μL中)の抗体の腫瘍内注射の4時間後の抗CD137の血清レベルは、1μL/ml未満である。
【0325】
ステップ(b)
本方法のステップ(b)は、対象に対するPD-1阻害剤の全身投与に関する。本明細書に記載の任意の薬剤(ステップ(a)の抗CD137抗体を含む)の全身投与は、血管系及び/又はリンパ系を含む対象の循環系への投与を意味する。そのような投与は、任意の好適な経路によるものであり得るが、典型的には非経口である。
【0326】
したがって、一実施形態では、PD-1阻害剤は、対象の腫瘍部位に局所的に投与される。一実施形態では、PD-1阻害剤は、対象に、全身的に、例えば、静脈内又は皮下に投与される。好ましい態様では、PD-1阻害剤の全身投与は、静脈内である。
【0327】
本明細書で使用される「非経口投与」という語句は、典型的には注射、注入又は移植によって達成される、経腸投与及び局所投与以外の投与態様を意味する。好適な経路としては、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄、脳内、くも膜下腔内、骨内、又は他の非経口投与経路が挙げられる。
【0328】
キット及び薬学的組成物
本発明はまた、対象におけるがん、好ましくは固形腫瘍を治療するためのキットであって、上で定義される併用療法を含む、キットを提供する。例えば、キットは、(a)CD137に特異的に結合し、任意選択的に投与後に腫瘍部位に保持される治療有効量の抗体と、(b)治療有効量のPD-1阻害剤と、を含み得る。CD137に特異的に結合する抗体は、好ましくは、腫瘍部位への局所投与に好適な形態で提供される。
【0329】
本発明のキットは、上述の実施形態のいずれかを実施することを可能にする1つ以上の他の試薬又は器具を更に含み得る。そのような試薬又は器具は、好適な緩衝液(複数可)(水溶液)、並びに抗CD137抗体及び/又はPD-1阻害剤を投与する手段(例えば、針を含む容器又は器具)のうちの1つ以上を含む。
【0330】
本発明の方法で使用されるか、又は本発明のキットに提供される抗CD137抗体及びPD-1阻害剤は各々、薬学的に許容される担体とともに製剤化される別個の薬学的組成物として提供され得る。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、生理学的に適合性であり、また、必要な投与経路と適合性である、任意及び全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張化剤、並びに吸収遅延剤などを含む。
【0331】
したがって、抗CD137抗体及びPD-1阻害剤の担体は、全身投与に好適であってもよく、上で定義されるように、これは、血管系及び/又はリンパ系を含む対象の循環系への投与を意味する。そのような投与は、任意の好適な経路によるものであり得るが、典型的には非経口である。本明細書で使用される「非経口投与」という語句は、典型的には注射、注入又は移植によって達成される、経腸投与及び局所投与以外の投与態様を意味する。好適な経路としては、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄、又は他の非経口投与経路が挙げられる。
【0332】
しかしながら、抗CD137抗体の担体は、好ましくは、注射などの任意の好適な手段による、上に定義されるように、腫瘍周囲、腫瘍近傍、腫瘍内、病変内、病変周囲、頭蓋内及び膀胱内投与を含む、局所投与に好適である。局所投与はまた、腫瘍の部位に応じて、空洞内注入及び吸入を含み得る。
【0333】
投与経路に応じて、抗体及び/又は薬剤を不活性化又は変性させ得る酸及び他の自然条件の作用から抗体を保護するための材料で、抗体及び/又は薬剤をコーティングしてもよい。好ましい薬学的に許容される担体は、水性担体又は希釈剤を含む。本発明の薬学的組成物に用いられ得る好適な水性担体の例としては、水、緩衝水、及び生理食塩水が挙げられる。他の担体の例としては、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及びこれらの好適な混合物、オリーブ油などの植物油、並びにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用、分散液の場合は必要な粒子径の維持、及び界面活性剤の使用により維持できる。多くの場合、等張化剤、例えば、糖、多価アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、又は塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましい。
【0334】
当業者は、本発明の併用療法の抗体成分が、典型的には、各々が治療有効量の抗体成分(複数可)を薬学的に許容される緩衝液、賦形剤、希釈剤又は担体とともに含有する、1つ以上の薬学的組成物の形態で提供されることを理解するであろう。
【0335】
薬学的組成物には、EDTA、クエン酸塩、EGTA、又はグルタチオンなどのキレート剤を含む、追加の化合物もまた含まれ得ることが当業者によって理解されるだろう。
【0336】
「薬学的に許容される」は、本発明の抗体ポリペプチドのCD137結合活性の有効性を低下させない非毒性物質を意味する。そのような薬学的に許容される緩衝剤、担体又は賦形剤は、当該技術分野で周知である(Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th edition,A.R Gennaro,Ed.,Mack Publishing Company(1990)、及びhandbook of Pharmaceutical Excipients,3rd edition,A.Kibbe,Ed.,Pharmaceutical Press(2000)(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
【0337】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」又は「有効量」又は「治療上有効な」は、所与の条件及び投与レジメンに対して治療効果を提供する量を指す。これは、必要な添加剤及び希釈剤、すなわち、担体又は投与ビヒクルと関連して、所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性抗体である。更に、宿主の活性、機能、及び応答における臨床的に有意な欠損を軽減又は防止するのに十分な量を意味することが意図される。あるいは、治療有効量は、宿主における臨床的に重要な状態の改善をもたらすのに十分な量である。当業者には理解されるように、化合物の量は、その特定の活性に依存して変化し得る。好適な投与量は、必要な希釈剤と関連して所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性組成物を含有することができる。
【0338】
治療有効量は、当該技術分野で周知であるように、年齢、体重、性別、状態、合併症、他の疾患などの患者特性に基づいて、通常の熟練した医学又は獣医学従事者が決定することができる。
【0339】
薬学的組成物は、薬学的に許容される抗酸化剤を含み得る。これらの組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤などのアジュバントを含有してもよい。微生物の存在の防止は、滅菌手順(上記を参照)、並びに様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、ソルビン酸フェノールなどの包含の両方によって確実にされ得る。また、糖、塩化ナトリウムなどの等張化剤を組成物に含めることが望ましい場合がある。加えて、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含めることによって、注射用剤型の長期吸収をもたらすことができる。
【0340】
薬学的組成物は、典型的には、製造条件及び保存条件で無菌であり、かつ安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルション、リポソーム、又は高い薬物濃度に好適な他の規則的な構造として製剤化され得る。無菌注射用溶液は、必要に応じて上に挙げた成分のうちの1つ又は組み合わせを含む適切な溶媒に必要量の活性薬剤(例えば抗体)を組み込み、続いて無菌精密濾過することによって調製することができる。一般に、分散液は、活性薬剤を、基本的な分散媒及び上に挙げたものから必要な他の成分を含有する無菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。無菌注射可能溶液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性薬剤及びその予め滅菌濾過された溶液から任意の追加の所望の成分の粉末を得る、高減圧乾燥及び冷凍乾燥(凍結乾燥)である。薬学的組成物は、追加の活性成分、及び上述のものを含み得る。
【0341】
好適な薬学的に許容される緩衝剤、希釈剤、担体及び賦形剤は、当該技術分野で周知である(Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th edition,A.R Gennaro,Ed.,Mack Publishing Company(1990)、及びhandbook of Pharmaceutical Excipients,3rd edition,A.Kibbe,Ed.,Pharmaceutical Press(2000)(それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
【0342】
「緩衝液」という用語は、pHを安定させる目的で酸-塩基混合物を含む水溶液を含有することが意図される。緩衝液の実施例としては、Trizma、Bicine、Tricine、MOPS、MOPSO、MOBS、Tris、Hepes、HEPBS、MES、リン酸、炭酸、酢酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、ボレート、ACES、ADA、酒石酸、AMP、AMPD、AMPSO、BES、CABS、カコディレート、CHES、DIPSO、EPPS、エタノールアミン、グリシン、HEPPSO、イミダゾール、イミダゾール乳酸、PIPES、SSC、SSPE、POPSO、TAPS、TABS、TAPSO、及びTESである。
【0343】
「希釈剤」という用語は、薬学的調製物中の薬剤を希釈する目的で、水性又は非水性溶液を含むことが意図される。希釈剤は、生理食塩水、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、油類(サフラワー油、コーン油、ピーナッツ油、綿実油、又はゴマ油など)から選択される1つ以上であってもよい。
【0344】
「アジュバント」という用語は、本発明の薬剤の生物学的効果を増加させるために製剤に添加される任意の化合物を含むことを意図している。アジュバントは、異なるアニオンを有する1つ以上の亜鉛塩、銅塩又は銀塩であってもよく、例えば、限定されないが、異なるアシル組成の、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、チオシアン酸塩、亜硫酸塩、水酸化物、リン酸塩、炭酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、酒石酸塩、及び酢酸塩であり得る。また、アジュバントは、カチオン化セルロースエーテル、カチオン化セルロースエステル、脱アセチル化ヒアルロン酸、キトサン、カチオン化デンドリマー、ポリ(ビニルイミダゾール)などのカチオン化合成高分子、及びポリヒスチン、ポリリジン、ポリアルギニン、並びにこれらのアミノ酸を含有するペプチドなどのカチオニックポリペプチドのようなカチオン化ポリペプチドであってもよい。
【0345】
賦形剤は、糖質、高分子、脂質、及びミネラルの1つ以上であってもよい。炭水化物の実施例としては、ラクトース、グルコース、スクロース、マンニトール、シクロデキストリンなどがあり、これらは、例えば、凍結乾燥を促進するために組成物に添加される。ポリマーの例は、全て異なる分子量の、デンプン、セルロースエーテル、セルロースカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、アルギネート、カラギーナン、ヒアルロン酸及びそれらの誘導体、ポリアクリル酸、ポリスルホン酸、ポリエチレングリコール/ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマー、加水分解の程度が異なるポリビニルアルコール/ポリビニルアセテート、及びポリビニルピロリドンであり、これらは、例えば、粘度制御のため、生体接着を達成するため、又は化学的分解及びタンパク質分解から脂質を保護するために組成物に添加される。脂質の実施例としては、脂肪酸、リン脂質、モノ-、ジ-、及びトリグリセリド、セラミド、スフィンゴ脂質、及び糖脂質などがあり、全てのアシル鎖長や飽和度が異なるもの、卵レシチン、大豆レシチン、水素添加卵及び大豆レシチンなどは、ポリマーのそれらと同様の理由で組成物に添加される。ミネラルの実施例としては、タルク、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、及び酸化チタンなどがあり、液溜まりの軽減や有利な顔料特性などの利点を得るために組成物に添加される。
【0346】
本発明の活性抗体ベースの薬剤は、その送達に好適であることが当該技術分野で既知である任意の種類の薬学的組成物に製剤化され得る。
【0347】
一実施形態では、本発明の薬学的組成物はリポソームの形態であってもよく、薬剤は、他の薬学的に許容される担体に加えて、ミセル、不溶性単層、及び液晶として凝集形態で存在する脂質などの両親媒性薬剤と組み合わされる。リポソーム製剤に好適な脂質としては、特に限定されないが、モノグリセリド、ジグリセリド、スルファチド、リゾレシチン、リン脂質、サポニン、胆汁酸類、及び類似物を含む。また、好適な脂質としては、血流循環時間を延長するための極性ヘッドグループにおけるポリ(エチレングリコール)によって修飾された上記脂質を含む。そのようなリポソーム製剤の調製は、例えば、US4,235,871及びEP 0 213 303に見出すことができ、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0348】
また、本発明の薬学的組成物は、生分解性微粒子の形態であってもよい。ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、PLA及びPGAのコポリマー(PLGA)又はポリ(カプロラクトン)(PCL)、並びにポリ無水物などの脂肪族ポリエステルは、微粒子の生成において生分解性ポリマーとして広く使用されている。そのような微粒子の調製物は、US5,851,451及びEP 0 213 303に見出すことができ、それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0349】
更なる実施形態では、本発明の薬学的組成物は、例えばポリ-ガンマグルタミン酸に基づくナノ粒子の形態で提供される。そのようなナノ粒子の調製及び使用の詳細は、WO2011/128642に見出すことができ、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。当業者は、本発明の併用療法の活性成分のうちの1つ以上が別々のナノ粒子に製剤化されてもよく、又は両方の活性成分が同じナノ粒子に製剤化されてもよいことを理解するであろう。
【0350】
更なる実施形態では、本発明の薬学的組成物は、ポリマーゲルの形態で提供され、ここで、ポリマー、例えば、デンプン、セルロースエーテル、セルロースカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、アルギネート、カラギーナン、ヒアルロン酸及びその誘導体、ポリアクリル酸、ポリビニルイミダゾール、ポリスルホネート、ポリエチレングリコール/ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマー、加水分解度の異なるポリビニルアルコール/ポリビニル酢酸、ポリビニルピロリドンは、薬剤を含有する溶液の増粘に使用される。また、ポリマーは、ゼラチンやコラーゲンを含んでいてもよい。
【0351】
あるいは、薬剤は、食塩水、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール若しくは油(ベニバナ油、トウモロコシ油、ピーナッツ油、綿実油又はゴマ油など)、トラガカントガム、及び/又は様々な緩衝液に単純に溶解してもよい。
【0352】
本発明の薬学的組成物は、活性薬剤の作用を増強するためのイオン及び規定のpHを含み得ることを理解されたい。加えて、組成物は、滅菌などの従来の製薬操作に供され、及び/又は、保存料、安定剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤、充填剤などの従来のアジュバントを含有することができる。
【0353】
本発明による薬学的組成物は、当業者に既知である任意の好適な経路で投与することができる。したがって、投与経路は、非経口(静脈内、皮下、筋肉内)、局所、眼、鼻、肺、頬、口腔、非経口、膣、及び直腸を含む。また、インプラントからの投与も可能である。
【0354】
有利には、薬学的組成物は、腫瘍の部位又はその近傍、例えば、腫瘍内又は腫瘍周辺への投与に好適である。
【0355】
薬学的組成物は、非経口投与に好適であることが好ましく、例えば、薬学的組成物は、好ましくは、静脈内、脳室内、関節内、動脈内、腹腔内、髄腔内、心室内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、若しくは皮下、又は注入技術による投与に好適である。非経口投与に好適な薬学的組成物などの薬学的組成物に抗体を製剤化するための方法は、医薬及び薬学の当業者に周知であろう。好ましい組成物は、添付の実施例に記載される。
【0356】
非経口投与に好適な製剤には、水性及び非水性の滅菌注射液があり、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、及び製剤を意図するレシピエントの血液と等張性にする溶質を含有することができ;及び水性及び非水性の滅菌懸濁液があり、懸濁剤及び増粘剤を含むこともできる。製剤は、例えば密封されたアンプルやバイアルなどの単位用量又は複数用量容器で提供され得、使用直前に滅菌液体担体、例えば注射用水、の添加を要するだけで凍結乾燥(凍結乾燥)状態で保存することができる。即時注射溶液及び懸濁液は、前述の種類の滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製することができる。
【0357】
したがって、本発明の薬学的組成物は、非経口投与、例えば静脈内投与に特に好適である。
【0358】
本発明の併用療法は、注射可能な徐放性薬物送達系を使用して送達され得る。これらは、特に注入頻度を低下させるように設計されている。そのような系の一例は、一度注入されると、持続期間にわたって徐々にrhGHを放出する生分解性微粒子中に組換えヒト成長ホルモン(rhGH)を封入するNutropin Depotである。好ましくは、送達は、筋肉内(i.m.)及び/又は皮下(s.c.)及び/又は静脈内(i.v.)で行われる。
【0359】
本発明の併用療法は、薬物を必要な部位に直接放出する外科的に移植されたデバイスによって投与することができる。例えば、Vitrasertは、CMV網膜炎を治療するために、ガンシクロビルを眼に直接放出する。この毒性剤を疾患部位に直接適用することで、薬物の重大な全身の副作用なく、効果的な療法を達成する。
【0360】
エレクトロポレーション療法(EPT)システムはまた、本発明の併用療法の投与のために用いることができる。パルス電界を細胞に送達するデバイスは、薬物に対する細胞膜の透過性を増加させ、細胞内薬物送達の有意な増強をもたらす。
【0361】
本発明の併用療法はまた、電子組み込み(EI)によって送達され得る。EIは、皮膚の表面上の直径が最大30ミクロンの小さな粒子が、エレクトロポレーションで使用されるものと同一又は類似の電気パルスを受けるときに生じる。EIでは、これらの粒子は、角質層を通って皮膚のより深い層に駆動される。粒子は、薬物又は遺伝子を担持又はコーティングすることができ、又は単に、薬物が入ることができる皮膚内の孔を生成する「弾丸」として作用することができる。
【0362】
本発明の代替的な併用療法は、温度感受性であるReGel注射システムである。体温未満では、ReGelは注射可能な液体であるが、体温ではすぐにゲルリザーバーを形成し、これが徐々に浸食され、既知の安全な生分解性ポリマーに溶解する。活性物質は、バイオポリマーが溶解するにつれて経時的に送達される。
【0363】
本発明の併用療法はまた、経口で送達され得る。このプロセスは、タンパク質及びペプチドを共送達するために、体内のビタミンB12及び/又はビタミンDの経口取り込みのための自然なプロセスを採用する。ビタミンB12及び/又はビタミンD取り込みシステムに乗ることによって、本発明の薬剤、医薬及び薬学的組成物は、腸壁を通って移動することができる。複合体は、ビタミンB12類似体及び/又はビタミンD類似体と、複合体のビタミンB12部分/ビタミンD部分における内因性因子(IF)に対する有意な親和性及び複合体の活性物質の有意な生物活性の両方を保持する薬物との間で合成される。
【0364】
本発明の併用療法は、「Trojanペプチド」によって細胞に導入することができる。これらは、移動特性を有し、形質膜を横切って親水性化合物を運ぶことができる、ペネトラチンと呼ばれるポリペプチドの一種である。このシステムは、細胞質及び核へのオリゴペプチドの直接標的化を可能にし、細胞型特異的ではなく、非常に効率的であり得る。Derossi et al.(1998),Trends Cell Biol.8,84-87を参照されたい。
【0365】
好ましくは、本発明の併用療法は、活性成分の1日用量又は単位、1日の部分用量、又はその適切な割分を含有する単位用量である。
【0366】
本発明の併用療法は、通常、経口投与又は任意の非経口経路によって、任意選択的に薬学的に許容される剤形の非毒性有機又は無機の酸若しくは塩基付加塩の形態で、活性成分を含む薬学的組成物の形態で投与される。治療される障害及び患者、並びに投与経路に応じて、組成物は、様々な用量で投与され得る。
【0367】
ヒト療法において、本発明の併用療法は、単独で投与することができるが、概して、意図される投与経路及び標準的な薬学的慣行に関して選択される好適な薬学的賦形剤、希釈剤又は担体と混合して投与される。
【0368】
例えば、本発明の併用療法は、即時放出、遅延放出又は制御放出用途のために、錠剤、カプセル、アヴュール(ovule)、エリキシル、溶液又は懸濁液の形態で、経口、口腔又は舌下投与されてもよく、香味剤又は着色剤を含有し得る。本発明の薬剤、薬物及び薬学的組成物はまた、海綿体内注射を介して投与されてもよい。
【0369】
そのような錠剤は、微結晶性セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸二塩基カルシウム及びグリシンなどの賦形剤、デンプン(好ましくはトウモロコシ、ジャガイモ又はタピオカデンプン)、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム及び特定の複合ケイ酸塩などの崩壊剤、並びにポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシ-プロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチン及びアカシアなどの造粒結合剤を含有し得る。加えて、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル、及びタルクなどの潤滑剤が含まれてもよい。
【0370】
類似の種類の固体組成物はまた、ゼラチンカプセルの充填剤としても使用され得る。この観点において好ましい賦形剤としては、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖又は高分子量ポリエチレングリコールが挙げられる。水性懸濁液及び/又はエリキシル剤の場合、本発明の薬剤、医薬及び薬学的組成物は、様々な甘味料又は香味料、着色料又は色素、乳化剤及び/又は懸濁剤、及び水、エタノール、プロピレングリコール及びグリセリンなどの希釈剤、並びにそれらの組み合わせと組み合わせることができる。
【0371】
本発明の併用療法は、非経口的に、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、髄内、心室内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、若しくは皮下に投与されてもよく、又は注入技術によって投与されてもよい。例えば、それらは、溶液を血液と等張性にするのに十分な塩類やグルコースなどの他の物質を含有することができる滅菌水溶液の形態で最も良く使用される。水溶液は、必要に応じて、適切に緩衝化(好ましくは、pH3~9に)されるべきである。滅菌条件下での好適な非経口製剤の調製は、当業者に周知である標準的な製薬技術によって容易に達成される。
【0372】
非経口投与に好適な医薬及び薬学的組成物には、水性及び非水性の滅菌注射液(抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、及び製剤を意図するレシピエントの血液と等張性にする溶質を含有することができる)並びに水性及び非水性の滅菌懸濁液(懸濁剤及び増粘剤を含むことができる)が含まれる。医薬及び薬学的組成物は、例えば密封されたアンプル及びバイアルなどの単位用量又は複数用量容器で提供されてもよく、使用直前に滅菌液体担体、例えば注射用水を添加するだけでよいフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することができる。即時注射溶液及び懸濁液は、前述の種類の滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製することができる。
【0373】
したがって、本発明の薬学的組成物は、非経口投与、例えば静脈内投与に特に好適である。
【0374】
本発明の併用療法はまた、鼻腔内に又は吸入によって投与することもでき、簡便には、乾燥粉末吸入剤の形態で、又は例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA 134A3又は1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA 227EA3)などのヒドロフルオロアルカン、二酸化炭素、又は他の好適な気体などの好適な噴射剤を使用して、加圧容器、ポンプ、スプレー又はネブライザーからのエアロゾルスプレー提示形態で、送達される。加圧エアロゾルの場合、投薬量単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。加圧容器、ポンプ、スプレー、又はネブライザーは、例えば、エタノールと、溶媒としての噴射剤との混合物を使用する活性薬剤の溶液又は懸濁液を含有してもよく、これは更に、滑沢剤、例えばトリオレイン酸ソルビタンを更に含有してもよい。吸入器又は送気器に使用するカプセル及びカートリッジ(例えば、ゼラチンから作られる)は、本発明の薬剤の粉末混合物とラクトース又はデンプンなどの好適な粉末基剤を含有するように製剤化することができる。
【0375】
エアゾール又は乾燥粉末製剤は、好ましくは、各定量用量又は「パフ」が、患者に送達するための本発明の化合物を少なくとも1mg含有するように用意される。エアロゾルによる1日の総投与量は、患者によって異なり、1回の投与で、又はより通常、1日を通して分割して投与することができることが理解されるだろう。
【0376】
あるいは、本発明の併用療法は、坐剤若しくはペッサリーの形態で投与することができるか、又はローション、溶液、クリーム、ゲル、軟膏若しくは散布剤の形態で局所適用されてもよい。また、本発明の薬剤、医薬、及び薬学的組成物は、例えば、皮膚パッチの使用により、経皮投与されてもよい。それらはまた、特に眼の疾患を治療するために、眼経路によって投与されてもよい。
【0377】
眼に使用するために、本発明の併用療法は、任意選択的に塩化ベンジルアルコニウムなどの防腐剤と組み合わせた、等張性のpH調整した滅菌生理食塩水中の微粒子化した懸濁液として、又は好ましくは、等張性のpH調整した滅菌生理食塩水中の溶液として製剤化することができる。あるいは、ペトロラタムのような軟膏に配合することもできる。
【0378】
皮膚への局所適用のために、本発明の併用療法は、例えば、以下のうちの1つ以上との混合物中に懸濁又は溶解された活性薬剤を含有する好適な軟膏として製剤化することができる:鉱油、液体ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン薬剤、乳化ワックス及び水。あるいは、例えば、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、及び水の1つ以上の混合物に懸濁又は溶解して、好適なローション又はクリームとして配合することができる。
【0379】
口腔への局所投与に好適な製剤としては、フレーバーベース、通常はスクロース及びアカシア若しくはトラガカント中に活性成分を含むロゼンジ;ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシアなどの不活性基剤中に活性成分を含むトローチ剤;並びに好適な液体担体中に活性成分を含む口腔洗浄剤が挙げられる。
【0380】
一般に、ヒトでは、腫瘍の部位又はその近くでの本発明の併用療法の局所投与、特に腫瘍内又は腫瘍周辺投与が好ましい経路である。
【0381】
薬学的組成物は、上に記載した通り、薬学的に有効な用量/治療有効量で患者に投与されるだろう。本発明の組成物の製造方法及び使用において、治療有効量の活性成分が提供される。治療有効量は、当該技術分野で周知であるように、年齢、体重、性別、状態、合併症、他の疾患などの患者特性に基づいて、通常の熟練した医学又は獣医学従事者が決定することができる。
【0382】
薬学的に有効な用量の投与は、個々の用量単位又はいくつかのより小さい用量単位の形態での単一投与と、特定の間隔での細分化された用量の複数回の投与の両方によって実施することができる。あるいは、投与量は、長期にわたる連続注入として提供され得る。抗体ポリペプチドは、使用されるポリペプチドの有効性/毒性に応じて様々な濃度で配合され得る。例えば、製剤は、活性抗体ポリペプチドを、0.1μM~1mM、より好ましくは1μM~500μM、500μM~1mM、300μM~700μM、1μM~100μM、100μM~200μM、200μM~300μM、300μM~400μM、400μM~500μM、500μM~600μM、600μM~700μM、800μM~900μM、又は900μM~1mMの濃度で含み得る。典型的には、製剤は、300μM~700μMの濃度で活性抗体ポリペプチドを含む。
【0383】
典型的には、ヒト患者における抗体ポリペプチドの治療用量(治療的部分を含むか又は含まない)は、投与1回当たり100μg~1gの範囲である(70kgの体重に基づいて、例えば、投与1回当たり300μg~700mgである)。例えば、最大治療用量は、投与1回当たり0.1~10mg/kgの範囲、例えば1~10mg/kg、又は0.1~5mg/kg、又は1~5mg/kg、又は0.1~2mg/kgの範囲であり得る。最も好ましくは、治療用量は、1~10mg/kg、任意選択的に2.5~7.5mg/kgである。そのような用量は、腫瘍医/医師によって決定されるように、異なる間隔で投与され得、例えば、用量は、毎日、週2回、毎週、隔週、又は毎月投与され得ることが理解されるだろう。
【0384】
当業者は、本発明のポリペプチド及び薬学的製剤が医学及び獣医学の両方の分野で有用性を有することを更に理解するであろう。したがって、本発明の方法は、ヒト及び非ヒト動物(ウマ、イヌ、及びネコなど)の両方の治療において使用され得る。しかしながら、好ましくは、患者はヒトである。
【0385】
獣医学的使用のために、本発明の併用療法は、通常の獣医学的慣行に従って好適に許容される製剤として投与され、獣医は、特定の動物に最も適切であろう投与レジメン及び投与経路を決定する。
【0386】
本発明はまた、対象において固形腫瘍を治療するためのキットであって、当該キットが、(a)治療有効量のCD137に特異的に結合する抗体と、(b)対象への全身投与に好適な治療有効量の更なる免疫療法剤と、を含む、キットを提供する。更なる免疫療法剤は、任意選択的に第1の態様で定義されるような、PD-1阻害剤である。CD137に特異的に結合する抗体は、好ましくは、腫瘍への局所投与に好適な形態で提供される。
【0387】
核酸、ベクター、及び宿主
本発明はまた、CD137に特異的に結合する抗体、若しくはその抗原結合断片をコードする第1の単離された核酸分子(又はその構成要素のペプチド鎖)と、
(i)PD-1阻害剤、及び/又は
(ii)PD-1若しくはPD-1に特異的に結合するその抗原結合断片の抗体をコードする第2の単離された核酸分子(又はその構成要素のペプチド鎖)と、を含むキットを提供する。
【0388】
「核酸分子」は、一本鎖又は二本鎖であり得るDNA(例えば、ゲノムDNA又は相補的DNA)及びmRNA分子を含む。「単離された」は、核酸分子が細胞内に位置しないか、又は別様に細胞内に提供されていないことを意味する。
【0389】
一実施形態では、第1及び/又は第2の核酸分子(複数可)は、cDNA分子(複数可)である。
【0390】
一実施形態では、第1及び/又は第2の単離された核酸分子は、抗体重鎖若しくはその可変領域をコードし、かつ/又は抗体軽鎖若しくはその可変領域をコードする。
【0391】
好ましくは、第1の核酸分子は、以下に再現される、配列番号9及び配列番号10のいずれかから選択される1つ以上のヌクレオチド配列を含む。
「1630」のVH領域をコードするヌクレオチド配列
GAGGTGCAGCTGTTGGAGAGCGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGGGGGTCCCTGCGCCTCTCCTGTGCAGCCAGCGGATTCACCTTTGGTTACTCTTACATGTCTTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGGTCTCATCTATTGGTTCTGGTTCTTCTTACACATACTATGCAGACTCCGTGAAGGGCCGGTTCACCATCTCCCGTGACAATTCCAAGAACACGCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGCGTGCCGAGGACACGGCTGTATATTATTGTGCGCGCGTTTACTCTTCTCCGGGTATTGACTATTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCA
[配列番号9]
「1631」のVL領域をコードするヌクレオチド配列
GACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCCCTGAGCGCATCTGTAGGAGACCGCGTCACCATCACTTGCCGGGCAAGTCAGAGCATTAGCAGCTATTTAAATTGGTATCAGCAGAAACCAGGGAAAGCCCCTAAGCTCCTGATCTATGCTGCATCCAGTTTGCAAAGTGGGGTCCCATCACGTTTCAGTGGCAGTGGAAGCGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGTCTGCAACCTGAAGATTTTGCAACTTATTACTGTCAACAGTACTACACTTGGGTTCCGTTCACTTTTGGCCAGGGGACCAAGCTGGAGATCAAA
[配列番号10]
【0392】
代替の好ましい実施形態では、第1の核酸分子は、以下に再現される、配列番号27及び/又は配列番号28のいずれかから選択される1つ以上のヌクレオチド配列を含む。
「2674」のVH領域をコードするヌクレオチド配列
gaggtgcagttgttggaatctggcggaggattggtgcagcctggcggatctctgagactgtcttgtgccgcctctggcttcaacttcggctactcctacatgtcctgggtccgacaggctcctggcaaaggactggaatgggtgtcctccatcggctccaccagctctcacacctactacgccgattccgtgaagggcagattcaccatcagccgggacaactccaagaacaccctgtacctgcagatgaactccctgagagccgaggacaccgccgtgtactactgtgccagagtgtactcctctcctggcatcgattattggggccagggcacactggtcaccgtgtcctctgcttctaccaagggaccctctgtgttccctctggctccttgctccagatccacctctgagtctaccgctgctctgggctgcctggtcaaggattactttcctgagcctgtgaccgtgtcttggaactccggtgctctgacatccggcgtgcacacatttccagctgtgctgcagtcctccggcctgtactctctgtcctctgtcgtgaccgtgccttctagctctctgggcaccaagacctacacctgtaacgtggaccacaagccttccaacaccaaggtggacaagcgcgtggaatctaagtacggccctccatgtccaccatgtcctgctccagaattcctcggcggaccaagcgtgttcctgtttcctccaaagcctaaggacaccctgatgatctctcggacccctgaagtgacctgcgtggtggtggatgtgtctcaagaggacccagaagtgcagttcaattggtacgtggacggcgtggaagtgcacaacgccaagaccaagcctagagaggaacagttcaactccacctacagagtggtgtccgtgctgaccgtgctgcaccaggattggctgaacggcaaagagtacaagtgcaaggtgtccaacaagggcctgccttccagcatcgaaaagaccatctccaaggctaagggccagcctcgggaacctcaggtttacaccctgcctccaagccaagaggaaatgaccaagaaccaggtgtccctgacctgcctcgtgaagggattctacccttccgatatcgccgtggaatgggagtctaacggccagccagagaacaactacaagacaacccctcctgtgctggactccgacggctctttcttcctgtattctcgcctgaccgtggacaagtctcggtggcaagagggcaacgtgttctcctgctctgtgatgcacgaggccctgcacaaccactacacacagaagtccctgtctctgtccctgggcaag
[配列番号27]
「2675」のVL領域をコードするヌクレオチド配列
gacatccagatgacccagtctccatcctctctgtctgcctctgtgggcgacagagtgaccatcacctgtcgggcttctcagtccatcggcagcaccctgaactggtatcagcagaagcctggcaaggcccctaagctgctgatctatggcgctagctctctgcagtctggcgtgccctctagattttccggctctggctctggcaccgacttcaccctgacaatcagttccctgcagcctgaggacttcgccacctactactgccagcagtactacacctgggtgccctttacctttggccagggcaccaagctggaaatcaagagaaccgtggccgctccttccgtgttcatcttcccaccatctgacgagcagctgaagtccggcacagcttctgtcgtgtgcctgctgaacaacttctaccctcgggaagccaaggtgcagtggaaggtggacaatgccctgcagtccggcaactcccaagagtctgtgaccgagcaggactccaaggactctacctacagcctgtcctccacactgaccctgtctaaggccgactacgagaagcacaaggtgtacgcctgcgaagtgacccatcagggactgtctagccccgtgaccaagtccttcaacagaggcgagtgt
[配列番号28]
【0393】
第1の核酸分子は、特定の宿主細胞における抗体ポリペプチドの発現、例えば、ヒト細胞における発現のためにコドン最適化され得ることが当業者には理解されよう(例えば、Angov,2011,Biotechnol.J.6(6):650-659(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
【0394】
本発明はまた、CD137に特異的に結合する抗体、若しくはその抗原結合断片をコードする第1の単離された核酸分子、又はその構成要素のペプチド鎖と、
(i)PD-1阻害剤、及び/又は
(ii)PD-1若しくはPD-1に特異的に結合するその抗原結合断片の抗体をコードする第2の単離された核酸分子、又はその構成要素のペプチド鎖と、を含むベクターを含む、キットを提供する。
【0395】
一実施形態では、ベクターは、発現ベクターである。第1及び/又は第2の単離された核酸は、先に記載された通りであってもよい。
【0396】
本発明はまた、CD137に特異的に結合する抗体、若しくはその抗原結合断片をコードする第1の単離された核酸分子、又はその構成要素のペプチド鎖と、
(i)PD-1阻害剤、及び/又は
(ii)PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合するその抗原結合断片の抗体をコードする第2の単離された核酸分子、又はその構成要素のペプチド鎖と、を含む宿主細胞を含む、キットを提供する。
【0397】
好ましくは、宿主細胞は、哺乳動物細胞(例えばヒト細胞、若しくはチャイニーズハムスター卵巣細胞、例えばCHOK1SV細胞)、細菌細胞、又は酵母細胞であってもよい。第1及び/又は第2の単離された核酸は、先に記載された通りであってもよい。第1及び/又は第2の単離された核酸は、発現ベクターなどのベクターに含まれ得る。
【0398】
配列表の簡単な説明
配列番号1は、「1630」のVH領域のアミノ酸配列である。
【0399】
配列番号2は、「1631」のVL領域のアミノ酸配列である。
【0400】
配列番号3は、「1630」のHCDR1のアミノ酸配列である。
【0401】
配列番号4は、「1630」のHCDR2のアミノ酸配列である。
【0402】
配列番号5は、「1630」のHCDR3のアミノ酸配列である。
【0403】
配列番号6は、「1631」のLCDR1のアミノ酸配列である。
【0404】
配列番号7は、「1631」のLCDR2のアミノ酸配列である。
【0405】
配列番号8は、「1631」のLCDR3のアミノ酸配列である。
【0406】
配列番号9は、「1630」のVH領域をコードするヌクレオチド配列である。
【0407】
配列番号10は、「1631」のVL領域をコードするヌクレオチド配列である。
【0408】
配列番号11は、ヒトCD137配列のアミノ酸配列(アミノ酸66~107は、ヒトCD137のドメイン2に対応する)である。
【0409】
配列番号12は、IgG1重鎖定常領域のアミノ酸配列である。
【0410】
配列番号13は、修飾IgG4定常領域のアミノ酸配列である。
【0411】
配列番号14は、修飾IgG4定常領域のアミノ酸配列である。
【0412】
配列番号15は、野生型IgG4定常領域のアミノ酸配列である。
【0413】
配列番号16は、カッパ鎖定常領域のアミノ酸配列である。
【0414】
配列番号17は、「1630」の重鎖の完全アミノ酸配列である。
【0415】
配列番号18は、「1631」の軽鎖の完全アミノ酸配列である。
【0416】
配列番号19は、「2674」のVH領域のアミノ酸配列である。
【0417】
配列番号20は、「2675」のVL領域のアミノ酸配列である。
【0418】
配列番号21は、「2674」のHCDR1のアミノ酸配列である。
【0419】
配列番号22は、「2674」のHCDR2のアミノ酸配列である。
【0420】
配列番号23は、「2674」のHCDR3のアミノ酸配列である。
【0421】
配列番号24は、「2675」のLCDR1のアミノ酸配列である。
【0422】
配列番号25は、「2675」のLCDR2のアミノ酸配列である。
【0423】
配列番号26は、「2675」のLCDR3のアミノ酸配列である。
【0424】
配列番号27は、「2674」のVH領域をコードするヌクレオチド配列である。
【0425】
配列番号28は、「2675」のVL領域をコードするヌクレオチド配列である。
【0426】
配列番号29は、重鎖「2674」の完全アミノ酸配列である。
【0427】
配列番号30は、「2675」の軽鎖の完全アミノ酸配列である。
【0428】
配列番号31は、ニボルマブの重鎖アミノ酸配列である。
【0429】
配列番号32は、ニボルマブの軽鎖アミノ酸配列である。
【0430】
配列番号33は、ペムブロリズマブの重鎖アミノ酸配列である。
【0431】
配列番号34は、ペムブロリズマブの軽鎖アミノ酸配列である。
【0432】
配列番号35は、ヒトPD-1配列のアミノ酸配列である。
【0433】
配列番号36は、ヒトPD-L1配列のアミノ酸配列である。
【0434】
配列番号37は、ピジリズマブの重鎖配列である。
【0435】
配列番号38は、ピジリズマブの軽鎖配列である。
【0436】
配列番号39は、セミプリマブの重鎖配列である。
【0437】
配列番号40は、セミプリマブの軽鎖配列である。
【0438】
配列番号41は、スパルタリズマブの重鎖配列である。
【0439】
配列番号42は、スパルタリズマブの軽鎖配列である。
【0440】
配列番号43は、カムレリズマブの重鎖配列である。
【0441】
配列番号44は、カムレリズマブの軽鎖配列である。
【0442】
配列番号45は、チスレリズマブの重鎖配列である。
【0443】
配列番号46は、チスレリズマブの軽鎖配列である。
【0444】
配列番号47は、トリパリマブの重鎖配列である。
【0445】
配列番号48は、トリパリマブの軽鎖配列である。
【0446】
配列番号49は、ドスタルリマブの重鎖配列である。
【0447】
配列番号50は、ドスタルリマブの軽鎖配列である。
【0448】
配列番号51は、INCMGA00012の重鎖配列である。
【0449】
配列番号52は、INCMGA00012の軽鎖配列である。
【0450】
配列番号53は、アテゾリズマブの重鎖配列である。
【0451】
配列番号54は、アテゾリズマブの軽鎖配列である。
【0452】
配列番号55は、デュルバルマブの重鎖配列である。
【0453】
配列番号56は、デュルバルマブの軽鎖配列である。
【0454】
配列番号57は、アベルマブの重鎖配列である。
【0455】
配列番号58は、アベルマブの軽鎖配列である。
【0456】
配列番号59は、CK-301の重鎖配列である。
【0457】
配列番号60は、CK-301の軽鎖配列である。
【0458】
配列番号61は、JTX-4014の重鎖配列である。
【0459】
配列番号62は、JTX-4014の軽鎖配列である。
【0460】
本発明の実施形態は、以下のものを含むが、それらに限定されない。
【0461】
A.対象において固形腫瘍を治療するための方法であって、方法が、(a)対象に、治療有効量のCD137に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合部分(好ましくは、投与後に腫瘍部位に保持される)を投与することと、(b)対象に、治療有効量の更なる免疫療法剤を全身投与することであって、更なる免疫療法剤がPD-1阻害剤である、投与することと、を含む、方法。
【0462】
B.当該PD-1阻害剤が、抗PD-1又は抗PD-L1抗体である、実施形態Aに記載の方法。
【0463】
C.固形腫瘍が、アデノーマ、芽細胞腫、がん腫、デスモイド腫瘍、線維形成性小円形細胞腫瘍、内分泌腫瘍、胚細胞腫瘍、リンパ腫、肉腫、ウィルムス腫瘍、肺腫瘍、結腸腫瘍、リンパ腫瘍、乳房腫瘍又は黒色腫である、先行実施形態のうちのいずれか1つに記載の方法。
【0464】
D.固形腫瘍が、肺腫瘍(例えば、非小細胞肺がん若しくは小細胞肺がん);頭部及び/若しくは頸部腫瘍、胃腫瘍、食道腫瘍、腎臓腫瘍、尿路上皮腫瘍、高MSI腫瘍、dMMR腫瘍、高TMB腫瘍、乳房腫瘍、子宮頸部腫瘍、前立腺腫瘍、又は黒色腫であり、好ましくは、固形腫瘍が、転移性である、先行実施形態のうちのいずれか1つに記載の方法。
【0465】
E.ステップ(a)の抗体が、配列番号3、4、5、6、7及び8から選択される少なくとも1つのCDRを含む、先行実施形態のうちのいずれか1つに記載の方法。
【0466】
F.ステップ(a)の抗体が、配列番号3、4、及び5並びに/又は配列番号6、7及び8のCDR配列を含む、先行実施形態のうちのいずれか1つに記載の方法。
【0467】
G.ステップ(a)の抗体が、配列番号2の軽鎖可変領域及び/又は配列番号1の重鎖可変領域を含む、先行実施形態のうちのいずれか1つに記載の方法。
【0468】
H.ステップ(a)の抗体が、配列番号16の軽鎖定常領域及び/又は配列番号13の重鎖定常領域を含む、先行実施形態のうちのいずれか1つに記載の方法。
【0469】
I.ステップ(a)の抗体が、ヒトCD137に対する結合について、配列番号2の軽鎖可変領域と配列番号1の重鎖可変領域とを含む抗体と競合する、先行実施形態のうちのいずれか1つに記載の方法。
【0470】
J.ステップ(a)の抗体が、21、22、23、24、25及び26から選択される少なくとも1つのCDRを含み、任意選択的に、ステップ(a)の抗体が、配列番号21、22及び23並びに/又は配列番号24、25及び26のCDR配列を含む、先行実施形態のうちのいずれか1つに記載の方法。
【0471】
K.ステップ(a)の抗体が、配列番号20の軽鎖可変領域及び/又は配列番号19の重鎖可変領域を含む、先行実施形態のうちのいずれか1つに記載の方法。
【0472】
L.ステップ(a)の抗体が、配列番号16の軽鎖定常領域及び/又は配列番号13の重鎖定常領域を含む、先行実施形態のうちのいずれか1つに記載の方法。
【0473】
M.ステップ(a)の抗体が、ヒトCD137に対する結合について、配列番号20の軽鎖可変領域と配列番号19の重鎖可変領域とを含む抗体と競合する、先行実施形態のうちのいずれか1つに記載の方法。
【0474】
N.ステップ(a)及び(b)が同時に行われるか、又はステップ(b)が、ステップ(a)の後の24時間以内、ステップ(a)の後の24時間から2週間の間、ステップ(a)の後の24時間から1週間の間、ステップ(a)の後の24時間から72時間の間、若しくはステップ(a)の後の24時間から48時間の間に行われ、好ましくは、ステップ(b)が、ステップ(a)の後の24時間以内に行われる、先行実施形態のうちのいずれか1つに記載の方法。
【0475】
O.ステップ(a)が、対象への抗体の全身投与を含み、任意選択的に、抗体が、少なくとも1つの薬学的に許容される希釈剤又は担体との全身投与に好適な組成物として製剤化される、先行実施形態のうちのいずれか1つに記載の方法。
【0476】
P.ステップ(a)で投与される抗体の量の少なくとも30%が、投与後4時間で腫瘍部位に保持され、好ましくは、当該量の少なくとも40%が、投与後4時間で腫瘍部位に保持される、先行実施形態のうちのいずれか1つに記載の方法。
【0477】
Q.ステップ(b)の更なる免疫療法剤が、少なくとも1つの薬学的に許容される希釈剤又は担体との全身投与に好適な組成物として製剤化される、先行実施形態のうちのいずれか1つに記載の方法。
【0478】
R.ステップ(a)が、複数の別個の機会に実施され、ステップ(b)が、更なる免疫療法剤への対象の曝露が、本方法の持続時間にわたって連続するように実施される、先行実施形態のうちのいずれか1つに記載の方法。
【0479】
S.対象が、ヒトである、先行実施形態のうちのいずれか1つに記載の方法。
【0480】
T.対象において固形腫瘍を治療するためのキットであって、キットが、(a)CD137に特異的に結合し、好ましくは投与後に腫瘍部位に保持される治療有効量の抗体と、任意選択的に(b)対象への全身投与に好適な治療有効量の更なる免疫療法剤と、を含み、更なる免疫療法剤がPD-1阻害剤である、キット。
【0481】
U.1つ以上の更なる免疫療法剤と組み合わせて対象において固形腫瘍などのがんを治療する際に使用するための、CD137に特異的に結合し、好ましくは投与後に腫瘍部位に保持されることが可能であり、1つ以上の更なる免疫療法剤(複数可)がPD-1阻害剤である、抗体、又はその抗原結合部分。
【0482】
V.当該PD-1阻害剤が、抗PD-1又は抗PD-L1抗体である、実施形態Uに記載の抗体、又はその抗原結合部分。
【0483】
W.固形腫瘍が、アデノーマ、芽細胞腫、がん腫、デスモイド腫瘍、線維形成性小円形細胞腫瘍、内分泌腫瘍、胚細胞腫瘍、リンパ腫、肉腫、ウィルムス腫瘍、肺腫瘍、結腸腫瘍、リンパ腫瘍、乳房腫瘍又は黒色腫である、実施形態U又はVのいずれかに記載の抗体、又はその抗原結合部分。
【0484】
X.固形腫瘍が、肺腫瘍(例えば、非小細胞肺がん若しくは小細胞肺がん);頭部及び/若しくは頸部腫瘍、胃腫瘍、食道腫瘍、腎臓腫瘍、尿路上皮腫瘍、高MSI腫瘍、dMMR腫瘍、高TMB腫瘍、乳房腫瘍、子宮頸部腫瘍、前立腺腫瘍、又は黒色腫であり、好ましくは、固形腫瘍が、転移性である、実施形態U~Wのうちのいずれか1つに記載の抗体、又はその抗原結合部分。
【0485】
Y.配列番号3、4、5、6、7及び8から選択される少なくとも1つのCDRを含む、実施形態U~Xのうちのいずれか1つに記載の抗体、又はその抗原結合部分。
【0486】
Z.配列番号21、22、23、24、25及び26から選択される少なくとも1つのCDRを含む、実施形態U~Yのうちのいずれか1つに記載の抗体、又はその抗原結合部分。
【0487】
AA.配列番号3、4、5、6、7及び8又は配列番号21、22、23、24、25及び26のCDR配列を含む、実施形態U~Zのうちのいずれか1つに記載の抗体、又はその抗原結合部分。
【0488】
BB.配列番号2の軽鎖可変領域及び/若しくは配列番号1の重鎖可変領域を含むか、又は配列番号20の軽鎖可変領域及び/若しくは配列番号19の重鎖可変領域を含む、実施形態U~AAのうちのいずれか1つに記載の抗体、又はその抗原結合部分。
【0489】
CC.配列番号16の軽鎖定常領域及び/又は配列番号13の重鎖定常領域を含む、実施形態U~BBのうちのいずれか1つに記載の抗体、又はその抗原結合部分。
【0490】
DD.抗体、又はその抗原結合部分が、ヒトCD137に対する結合について、配列番号1の軽鎖可変領域と配列番号2の重鎖可変領域とを含む抗体と競合し、かつ/又はヒトCD137に対する結合について、配列番号19の軽鎖可変領域と配列番号20の重鎖可変領域とを含む抗体と競合する、実施形態U~CCのうちのいずれか1つに記載の抗体、又はその抗原結合部分。
【0491】
EE.抗体が、少なくとも1つの薬学的に許容される希釈剤又は担体との局所投与に好適な組成物として製剤化され、組成物がPD-1阻害剤を含む、実施形態U~DDのうちのいずれか1つに記載の抗体、又はその抗原結合部分。
【0492】
FF.当該PD-1阻害剤が、任意選択的に、本明細書の任意の態様に従って定義されるように、抗PD-1又は抗PD-L1抗体である、実施形態EEに記載の併用療法。
【0493】
GG.対象における固形腫瘍を治療するための医薬の調製における、実施形態U~DDのうちのいずれか1つに記載の抗体、又はその抗原結合部分の使用。
【0494】
開示される併用療法及び方法の異なる用途は、当該技術分野における特定の必要性に合わせて調整され得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、本発明の特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することが意図されないことも理解されるべきである。ある特徴が特定の態様を参照して説明される場合、当業者は、その特徴が他の関連する態様にも適用され得ることを理解するであろう。
【0495】
加えて、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」及び「the」は、文脈から明らかにそうではない限り、複数の参照物を含む。したがって、例えば、「抗体(an antibody)」への言及は、「抗体(antibodies)」を含み、「抗原(an antigen)」への言及は、2つ以上のそのような抗原を含み、「対象(a subject)」への言及は、2以上のそのような対象を含む、などである。
【0496】
本明細書で引用される全ての刊行物、特許及び特許出願は、上記又は下記にかかわらず、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0497】
本明細書における明らかに以前に公開された文書のリスト又は議論は、必ずしも、その文書が最新技術の一部であるか又は通常の一般的な知識であることを認めているとみなされるべきではない。
【0498】
本発明を以下の実施例によって更に説明するが、これは更なる限定として解釈されるべきではない。本出願全体を通して引用される全ての図及び全ての参考文献、特許及び公開された特許出願の内容は、参照により本明細書に明確に組み込まれる。
【0499】
本発明の特定の態様を具体化する好ましい非限定的な実施例を、以下の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0500】
図1】MC38結腸腺がん細胞に感染した雌h4-1BBtgマウスにおける、抗CD137抗体(ATOR-1017)及び/又はPD-1阻害剤(RMP1-14クローン)の投与が腫瘍体積に及ぼす効果を示す。
図2A】MC38結腸腺がん細胞に感染した雌h4-1BBtgマウスにおける、抗CD137抗体(ATOR-1017)及び/又はPD-1阻害剤(RMP1-14クローン)の投与が生存率に及ぼす効果を示す。
図2B】MC38結腸腺がん細胞に感染した雌h4-1BBtgマウスにおける、抗CD137抗体(ATOR-1017)及び/又はPD-1阻害剤(RMP1-14クローン)の投与が生存率に及ぼす効果を示す。
図3】MC38結腸腺がん細胞に感染した雌h4-1BBtgマウスにおける、抗CD137抗体(ATOR-1017)及び/又はPD-1阻害剤(RMP1-14クローン)の投与が腫瘍成長阻害に及ぼす効果を示す。
図4A】混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおける、PD-1阻害剤(ニボルマブ)と組み合わせた抗CD137抗体(ATOR-1017)によるT細胞活性化を示す。
図4B】混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおける、PD-1阻害剤(ニボルマブ)と組み合わせた抗CD137抗体(ATOR-1017)によるT細胞活性化を示す。
図5A】混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおける、PD-1阻害剤(ペムブロリズマブ)と組み合わせた抗CD137抗体(ATOR-1017)によるT細胞活性化を示す。
図5B】混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおける、PD-1阻害剤(ペムブロリズマブ)と組み合わせた抗CD137抗体(ATOR-1017)によるT細胞活性化を示す。
図6A】混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおける、PD-1阻害剤(ニボルマブ)と組み合わせた抗CD137抗体(ATOR-1017)によるT細胞活性化を示す。
図6B】混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおける、PD-1阻害剤(ニボルマブ)と組み合わせた抗CD137抗体(ATOR-1017)によるT細胞活性化を示す。
図7A】混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおける、PD-1阻害剤(アテゾリズマブ)と組み合わせた抗CD137抗体(ATOR-1017)によるT細胞活性化を示す。
図7B】混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおける、PD-1阻害剤(アテゾリズマブ)と組み合わせた抗CD137抗体(ATOR-1017)によるT細胞活性化を示す。
図8A】疲弊したCD4+T細胞による混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおける、PD-1阻害剤(ニボルマブ)と組み合わせた抗CD137抗体(ATOR-1017)によるT細胞活性化を示す。
図8B】疲弊したCD4+T細胞による混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおける、PD-1阻害剤(ニボルマブ)と組み合わせた抗CD137抗体(ATOR-1017)によるT細胞活性化を示す。
図8C】疲弊したCD4+T細胞による混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおける、PD-1阻害剤(ニボルマブ)と組み合わせた抗CD137抗体(ATOR-1017)によるT細胞活性化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0501】
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【実施例
【0502】
実施例1
MC38結腸がん腫瘍を保有するh4-1BBトランスジェニックマウスにおける、PD-1阻害剤と組み合わせた抗CD137抗体の抗腫瘍有効性
ヒト抗4-1BB(抗CD137)アゴニストIgG4抗体であるATOR-1017は、ヒト4-1BBに対してトランスジェニック(h4-1BBtg)であるMC38結腸がん腫瘍を保有するマウスにおいて、強力な用量依存性抗腫瘍有効性を引き起こす。このことは、腫瘍体積の減少、腫瘍成長阻害の改善、及び完全奏効者の誘導、並びにマウスの生存の延長によって実証される。
【0503】
本発明者らは、驚くべきことに、抗CD137抗体(ATOR-1017など)とPD-1阻害剤(サロゲートの抗PD-1抗体クローンRPM1-14)との併用療法が、更なる改善された抗腫瘍有効性をもたらすことを見出した。
【0504】
材料及び方法
8週齢の雌h4-1BBtgマウスに、5×10個のMC38結腸腺がん細胞を、100μlの体積で右前脇腹に皮下(s.c.)接種した。接種後7日目に、マウスを6つの試験群に無作為に分け、5mg/kgのサロゲートの抗PD-1抗体(クローンRMP1-14、カタログ番号BE0146、BioXCell,39 Labombard Rd,Lebanon,NH 03766,USAにより供給された)による追加の治療を行うか、又は行わずに、0.5mg/kg又は5mg/kgの2回用量で与えられた抗CD137抗体ATOR-1017により腹腔内(i.p.)で治療した。対照は、5mg/kgのヒトIgG4アイソタイプ対照抗体を受けた。治療は、合計で最大6回の投与機会を合計して、3週間にわたって週2回与えられた。腫瘍成長を週に2回測定し、腫瘍体積が3000mmの倫理的限界に近づくと、マウスを安楽死させた。
【0505】
結果及び結論
図1は、0.5mg/kgで与えられる抗CD137抗体ATOR-1017による治療が、アイソタイプ対照と比較して有意に減少した腫瘍体積(18日目にp=0.0015)をもたらすことを示し、この効果は、ATOR-1017を5mg/kgで与えた場合により顕著である。抗PD-1と組み合わせた2つの用量のATOR-1017のいずれかを受けるマウスでは、対応するATOR-1017単剤療法と比較すると、腫瘍体積は更に減少する。併用療法のこの効果は、5mg/kgの用量で与えられるATOR-1017についての片側マン・ホイットニー検定において統計的に有意である(35日目にp=0.0482)。
【0506】
抗CD137抗体ATOR-1017を10μg/マウス及び/又は100μg/マウスの用量で治療するか、又はサロゲートの抗PD-1抗体クローンRPM1-14を用いた治療は、huIgG4アイソタイプ対照と比較して、雌マウスの生存率を増加させた(図2A)。ATOR-1017及び抗PD-1の組み合わせを受けるマウスでは、対応する単剤療法と比較すると、生存率が更に増加する(図2A及び2B)。
【0507】
46日目に、10μg/マウスのATOR-1017及び100μg/マウスの抗PD-1抗体を含む併用療法を受けるマウスの生存率は、個々の単剤療法と比較して著しく増加した(図2B)。
【0508】
図3は、100μg/匹の抗CD137抗体ATOR-1017、及び100μg/マウスのサロゲートの抗PD-1抗体クローンRPM1-14の組み合わせによる治療が、対応する単剤療法と比較して、腫瘍成長抑制(TGI、%)に及ぼす効果を実証する。本発明者らは、驚くべきことに、対応するATOR-1017単独療法と比較して、TGIに対する効果が併用療法を受けたマウスにおいて更に増加することを同定した。併用療法の効果は、T検定で統計的に有意であり(p=0.0366)、2つの薬剤間の相乗効果を実証する。
【0509】
更に、完全奏効者の数を監視し(表3)、ATOR-1017と抗PD-1抗体の組み合わせを受けたマウスにおいて増加した。
【表6】
【0510】
全体として、CD137及びPD-1の阻害剤を標的とする治療の組み合わせの抗がん効果の結果は、単独療法単独による治療と比較して増加する。結論として、これらのデータは、がんの治療におけるATOR-1017及び抗PD-1抗体の併用療法の予想外の有効性を示す。
【0511】
実施例2A
混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおける、PD-1阻害剤と組み合わせたATOR-1017のT細胞活性化
背景技術及び目的
ATOR-1017とPD-1阻害剤との組み合わせのT細胞活性化に対する相乗効果を実証するために、T細胞活性化は、ヒト初代CD4+T細胞及び成熟単球由来樹状細胞(mMo-DC)を使用した混合リンパ球反応(MLR)において評価され、ここで、両方の標的(4-1BB及びPD-1)が内因的に発現される。
【0512】
材料及び方法
増殖したCD4+T細胞の生成:
製造業者の指示に従って、CD4+T Cell Isolation Kit(130-096-533、Miltenyi Biotec Ltd)を使用して、白血球濃縮物からヒト初代CD4+T細胞を単離した。Dynabeads(商標)Human T-Activator CD3/CD28(11131D、Gibco)を、1:1のビーズ対細胞比で50IU/mLの組換えヒトIL-2(202-IL,R&D)の存在下で使用して、細胞を7日間増殖させた。Dynabeadsを除去し、CD4+T細胞を、低減された10IU/mLの組換えヒトIL-2とともに一晩休息させた。
【0513】
mMo-DCの分化:
単球を、Human CD14 Isolation Kit(130-050-201、Miltenyi Biotec Ltd,UK)を使用して、製造元の指示に従って、ヒトPBMCから単離した。IL-4及びGM-CSF(130-094-812、Miltenyi)を含有するMo-DC分化培地を使用して、単球由来DC(Mo-DC)へと単球を分化させた。Mo-DCを、Il-1β(130-093-563、Miltenyi)、IL-6(130-095-352、Miltenyi)、TNFα(130-094-023、Miltenyi)及びPGE2(P0409-1MG、Merck Millipore)のカクテルを使用して、更に成熟Mo-DC(mMo-DC)へと成熟させた。
【0514】
固定濃度の45nMのF(ab)2抗Ig架橋剤(109-006-008、Jackson)の存在下でのATOR-1017及びPD-1阻害剤の滴定を使用して、mMo-DC細胞と増殖したCD4+T細胞との1:10の混合物を7日間処理した。上清を、Monkey IFN gamma Elisa development Kit(3421M-1H-20、Mabtech)を使用して、インターフェロンガンマ(IFN-γ)について分析した。本発明者によって試験されるPD-1阻害剤には、抗PD-1抗体ニボルマブ(Opdivo(登録商標)、Bristol Myers Squibb)(図4に示される)及び抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標)、Merck)(図5に示される)が含まれる。
ニボルマブの重鎖配列(配列番号31):
【化34】
ニボルマブの軽鎖配列(配列番号32)
【化35】
ペムブロリズマブの重鎖配列(配列番号33):
【化36】
ペムブロリズマブの軽鎖配列(配列番号34)
【化37】
【0515】
結果及び結論
両方のPD-1阻害剤は、単独でCD4+T細胞を活性化することができたが、ATOR-1017単独では、MLRアッセイで不十分なCD4+T細胞活性化を誘導した(図4A、ニボルマブ、図5A、ペムブロリズマブ)。図4A及び5Aの点線は、MLRアッセイにおけるCD4+T細胞の同種異系刺激のベースラインレベル(バックグラウンドレベル)を示す。しかしながら、ATOR-1017及びPD-1阻害剤の併用治療は、個々の単剤療法単独と比較して、T細胞活性化の効力を相乗的に改善した(図4B及び5B)。図4B及び5Bに示される点線は、ATOR-1017及びPD-1阻害剤単剤療法の相加効果を示す。
【0516】
結論として、これらのデータは、T細胞活性化及びがんの治療のための、ATOR-1017及びPD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体)との併用療法の予想外の効果を示す。
【0517】
実施例図2B
混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおける、PD-1阻害剤と組み合わせたATOR-1017のT細胞活性化
実施例2Aは、実施例2Aに記載されているのと同じ材料及び方法で、但し、抗PD-1抗体ニボルマブ(図6)又は抗PD-L1抗体アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標)、Roche)(図7)をPD-1阻害剤として使用し、架橋に使用される抗F(ab)2を様々な濃度使用して、繰り返された。配列番号53はアテゾリズマブの重鎖配列であり、配列番号54はアテゾリズマブの軽鎖配列である。抗F(ab)2を、固定濃度の抗F(ab)2の代わりに、ATOR-1017用量(抗F(ab)2/ATOR-1017比5:1)の比で投与した。ATOR-1017及びPD-1阻害剤の併用治療は、個々の単剤療法単独と比較して、T細胞活性化の効力を相乗的に改善した(図6A、ニボルマブ;図7A、アテゾリズマブ)。図6A及び7Aの点線は、MLRアッセイにおけるCD4+T細胞の同種異系刺激のベースラインレベル(バックグラウンドレベル)を示す。
【0518】
単剤療法及び併用研究のために調査された投薬量は、0.005、0.02、0.09、0.35、1.4、5.62及び22.5nMであった。単剤療法のための5.62nMの投薬量について、その単剤療法の濃度は、5.62nMである。併用療法のための5.62nMの投薬量の場合、各要素(ATOR-1017及びPD-1阻害剤)は、5.62nMで存在する。
【0519】
MLRアッセイにおける22.5nMの用量は、ヒト患者に投与される場合、およそ0.1mg/kgの用量に対応する。
【0520】
図6B(ニボルマブ)及び図7B(アテゾリズマブ)に示されるように、高濃度(22.5nM)で併用療法の相乗的改善が観察された。図6B及び7Bに示される点線は、ATOR-1017及びPD-1阻害剤単剤療法の相加効果を示し、組み合わせの相乗効果を示している。
【0521】
実施例3
混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおける、抗PD-1抗体と組み合わせたATOR-1017の疲弊したT細胞活性化
背景技術及び目的
ATOR-1017を抗PD-1と組み合わせることが、疲弊したT細胞活性化に及ぼす相乗的な活性を実証すること。T細胞活性化は、疲弊した表現型を有するヒト初代CD4+T細胞及び成熟単球由来樹状細胞(mMo-DC)を使用した混合リンパ球反応(MLR)において評価され、ここで、両方の標的(4-1BB及びPD-1)が内因的に発現される。
【0522】
材料及び方法
疲弊したCD4+T細胞の生成:
以前に増殖したCD4+T細胞の生成について記載されているように、CD4+T細胞を8日間増殖させた。ただし、2日ごとに、8日間の増殖期間中に合計3回、新鮮なCD3/CD28 DynabeadsをCD4+T細胞に添加した。8日後、疲弊したCD4+T細胞を、フローサイトメトリーを用いて、PD-1、TIM-3及びLAG-3の発現が増加していると特徴付けた。
【0523】
mMo-DCの分化:
成熟mMo-DCは、mMo-DCの分化のために前述したように生成された。
【0524】
F(ab)2抗Ig架橋剤(109-006-008、Jackson)の存在下でのATOR-1017及びPD-1阻害剤(ニボルマブ)の滴定を使用して、mMo-DC細胞と増殖したCD4+T細胞との1:10の混合物を7日間処理した。上清を、Monkey IFN gamma Elisa development Kit(3421M-1H-20、Mabtech)を使用して、インターフェロンガンマ(IFN-γ)について分析した。
【0525】
単剤療法及び併用研究のために調査された投薬量は、0.005、0.02、0.09、0.35、1.4、5.62及び22.5nMであった。単剤療法のための5.62nMの投薬量について、その単剤療法の濃度は、5.62nMである。併用療法のための5.62nMの投薬量の場合、各要素(ATOR-1017及びPD-1阻害剤)は、5.62nMで存在する。
【0526】
MLRアッセイにおける22.5nMの用量は、ヒト患者に投与される場合、およそ0.1mg/kgの用量に対応する。
【0527】
結果及び結論
疲弊したCD4+T細胞は、PD-1、TIM-3及びLAG-3の発現の増加、並びに同種異系刺激に応答する能力の低下を有することを特徴とする。抗PD-1単独では、疲弊したCD4+T細胞を活性化することができたが、ATOR-1017単独では、MLRアッセイで不十分なCD4+T細胞活性化を誘導した(図8A)。しかしながら、ATOR-1017及びPD-1阻害剤の併用治療は、各単剤治療単独と比較して、疲弊したCD4T細胞活性化の効力を相乗的に改善した(図8B及び8C)。
【0528】
結論として、これらのデータは、いずれかの薬剤単独による単独療法と比較して、がん患者の疲弊したT細胞を活性化して抗腫瘍活性の増強をもたらすための、ATOR-1017及びPD-1阻害剤(特にPD-1/PD-L1遮断抗体)による併用療法の理論的根拠を裏付けるものである。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
【配列表】
2024522234000001.app
【国際調査報告】