(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(54)【発明の名称】ヒトフィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインに結合する抗体および使用方法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/18 20060101AFI20240604BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240604BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240604BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240604BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240604BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240604BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240604BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240604BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240604BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240604BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240604BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240604BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240604BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240604BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
C07K16/46
C12P21/08
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P25/00
A61P25/28
A61P9/00
A61P43/00 111
A61P1/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577931
(86)(22)【出願日】2022-06-20
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 US2022034188
(87)【国際公開番号】W WO2022266539
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523472995
【氏名又は名称】セリーニ バイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】スタベンハーゲン ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】アカスソグルー カテリーナ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA87X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB33
4C085BB34
4C085BB35
4C085BB36
4C085BB37
4C085BB42
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
ヒトフィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインに結合する新規かつ改善された抗体、およびその使用方法を、本明細書に記載する。特定の局面において、ミクログリア活性化を阻害する方法を本明細書に記載する。特定の局面において、フィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインに結合する抗体を含む薬学的組成物を、本明細書に記載する。特定の局面において、本明細書に記載する抗体および方法は、炎症性脱髄を伴う変性神経障害の処置のために用いられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つの重鎖CDR配列CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3を含む可変重(VH)鎖配列を含む重鎖、ならびに
3つの軽鎖CDR配列CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を含む可変軽(VL)鎖配列を含む軽鎖
を含む、ヒトフィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインに結合する単離された抗体であって、
a. CDR-H1がSEQ ID NO: 1に記載の配列を含み、
b. CDR-H2がSEQ ID NO: 2に記載の配列を含み、
c. CDR-H3がSEQ ID NO: 3に記載の配列を含み、ここでXがグリシン(G)、バリン(V)、スレオニン(T)、セリン(S)、アラニン(A)、またはロイシン(L)であり、
d. CDR-L1がSEQ ID NO: 4に記載の配列を含み
e. CDR-L2がSEQ ID NO: 5に記載の配列を含み、かつ
f. CDR-L3がSEQ ID NO: 6に記載の配列を含む、
単離された抗体。
【請求項2】
前記抗体が、SEQ ID NO: 7~20の1つに記載の配列から選択されるVH配列を含む、請求項1記載の単離された抗体。
【請求項3】
前記抗体が、SEQ ID NO 21に記載の配列から選択されるVL配列を含む、請求項1または2記載の単離された抗体。
【請求項4】
前記抗体が、SEQ ID NO: 7~20の1つに記載の配列から選択されるVH配列、およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項5】
前記抗体が、SEQ ID NO: 7に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項6】
前記抗体が、SEQ ID NO: 8に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項7】
前記抗体が、SEQ ID NO: 9に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項8】
前記抗体が、SEQ ID NO: 10に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項9】
前記抗体が、SEQ ID NO: 11に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項10】
前記抗体が、SEQ ID NO: 12に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項11】
前記抗体が、SEQ ID NO: 13に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項12】
前記抗体が、SEQ ID NO: 14に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項13】
前記抗体が、SEQ ID NO: 15に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項14】
前記抗体が、SEQ ID NO: 16に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項15】
前記抗体が、SEQ ID NO: 17に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項16】
前記抗体が、SEQ ID NO: 18に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項17】
前記抗体が、SEQ ID NO: 19に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項18】
前記抗体が、SEQ ID NO: 20に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項19】
前記抗体が、ヒト化抗体、ヒト抗体、またはキメラ抗体である、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項20】
前記抗体が、ヒト化抗体である、請求項19記載の単離された抗体。
【請求項21】
前記抗体が、IgG、IgA、IgD、IgE、およびIgMから選択されるクラスの重鎖ヒト定常領域を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項22】
ヒトFc領域が、クラスIgG、ならびにIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4から選択されるサブクラスのヒト重鎖定常領域を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項23】
ヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、請求項22記載の単離された抗体。
【請求項24】
ヒトFcドメインがSEQ ID NO: 22に記載の配列を含む、請求項23記載の単離された抗体。
【請求項25】
重鎖が、SEQ ID NO: 22によって記載される定常重鎖配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項26】
軽鎖が、SEQ ID NO: 23によって記載される定常軽鎖配列を含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項27】
前記抗体が、SEQ ID NO: 7に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項28】
前記抗体が、SEQ ID NO: 8に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項29】
前記抗体が、SEQ ID NO: 9に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項30】
前記抗体が、SEQ ID NO: 10に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項31】
前記抗体が、SEQ ID NO: 11に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項32】
前記抗体が、SEQ ID NO: 12に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項33】
前記抗体が、SEQ ID NO: 13に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項34】
前記抗体が、SEQ ID NO: 14に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項35】
前記抗体が、SEQ ID NO: 15に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項36】
前記抗体が、SEQ ID NO: 16に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項37】
前記抗体が、SEQ ID NO: 17に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項38】
前記抗体が、SEQ ID NO: 18に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項39】
前記抗体が、SEQ ID NO: 19に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項40】
前記抗体が、SEQ ID NO: 20に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域が野生型ヒトIgG1 Fcを含む、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項41】
Fc領域が1つまたは複数のアミノ酸置換を含み、ここで1つまたは複数の置換が、1つまたは複数の置換を有しないFcと比較して、抗体半減期の増加、ADCC活性の増加、ADCP活性の増加、またはCDC活性の増加をもたらす、請求項27~40のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項42】
Fc領域が、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIc、FcγRIIIa、およびFcγRIIIbからなる群より選択されるFcγ受容体に結合する、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項43】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項44】
フィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインのγ377~395エピトープに結合する、請求項1記載の抗体。
【請求項45】
前記抗体が、表面プラズモン共鳴(SPR)シングルサイクル・カイネティクス(SCK)アッセイによって測定された場合、約1、2、3、4、5、6、7、または8×10
-5 M以下のK
Dで、SEQ ID NO: 31を含むペプチドに結合する、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項46】
前記抗体が、表面プラズモン共鳴(SPR)シングルサイクル・カイネティクス(SCK)アッセイによって測定された場合、約8×10
-5 M以下のK
DでヒトフィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインのγ377~395エピトープの配列を含むペプチドに結合する、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項47】
前記抗体が、フィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインへのMac-1結合を阻害する、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項48】
前記抗体が、フィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインへのミクログリア接着の阻害を示す、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項49】
神経系の変性障害の処置において用いるための、前記請求項のいずれか一項記載の単離された抗体。
【請求項50】
前記請求項のいずれか一項記載の抗体、そのVH、そのVL、その軽鎖、その重鎖、またはその抗原結合部分をコードする、単離されたポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのセット; 任意でcDNA。
【請求項51】
請求項50記載のポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのセットを含む、ベクターまたはベクターのセット。
【請求項52】
請求項71記載のポリヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドのセット、または請求項51記載のベクターもしくはベクターのセットを含む、宿主細胞。
【請求項53】
請求項52記載の宿主細胞によって抗体を発現させる段階、および
発現された抗体を単離する段階
を含む、抗体を産生する方法。
【請求項54】
請求項1~46のいずれか一項記載の抗体と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、薬学的組成物。
【請求項55】
請求項1~46のいずれか一項記載の抗体または請求項54記載の薬学的組成物と、使用説明書とを含む、キット。
【請求項56】
請求項1~46のいずれか一項記載の抗体または請求項54記載の薬学的組成物の治療的有効量を、哺乳動物対象に投与する段階
を含む、神経系の変性障害を処置するための方法。
【請求項57】
神経系の変性障害が、多発性硬化症、脊髄損傷、脳卒中、およびアルツハイマー病からなる群より選択される、請求項56記載の方法。
【請求項58】
請求項1~46のいずれか一項記載の抗体または請求項54記載の薬学的組成物の治療的有効量を、哺乳動物対象に投与する段階
を含む、フィブリンへのMac-1結合またはフィブリノゲンとのMac-1結合に関連する病態を処置するための方法。
【請求項59】
請求項1~46のいずれか一項記載の抗体または請求項54記載の薬学的組成物の治療的有効量を、哺乳動物対象に投与する段階
を含む、ミクログリア活性化を阻害する方法。
【請求項60】
請求項1~46のいずれか一項記載の抗体または請求項54記載の薬学的組成物の治療的有効量を、哺乳動物対象に投与する段階
を含む、該神経系の変性障害を予防する方法。
【請求項61】
請求項1~46のいずれか一項記載の抗体または請求項54記載の薬学的組成物の治療的有効量を、哺乳動物対象に投与する段階
を含む、大腸炎を予防する方法。
【請求項62】
請求項1~46のいずれか一項記載の抗体または請求項54記載の薬学的組成物の治療的有効量を、哺乳動物対象に投与する段階
を含む、大腸炎を処置する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月18日付で出願された米国仮特許出願第63/212,409号の恩典を主張するものであり、これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表
該当なし。
【背景技術】
【0003】
背景
多発性硬化症(MS)などの変性神経障害は、炎症性脱髄および自己免疫応答を伴うことがある。ミクログリア、特に血管周囲ミクログリアは、中枢神経系(CNS)自己免疫疾患における炎症性脱髄の維持だけでなく、発症にも必要であると考えられている。ミクログリアの活性化はサイトカインおよび一酸化窒素の放出を介して、ニューロンとオリゴデンドロサイトの両方の死に寄与する。MSでは、炎症過程はミエリン鞘の破壊と関連しており、麻痺および視力喪失などの永続的な機能障害につながりうる軸索損傷を伴うこともある。常在性ミクログリアは、ミエリンを貪食し、炎症促進性サイトカインを分泌するその能力を介して、脱髄に関与している。
【0004】
MS病変では、ミクログリアの血管周囲の活性化が血液脳関門(BBB)破壊領域と共局在しており、インビボ画像研究では、BBB破壊がミクログリアの即時的かつ局所的な活性化を引き起こすことが示されている。MSにおけるBBB破壊と関連する最も初期の事象の1つは、神経系における血液タンパク質フィブリノゲンの漏出であり、これにより血管周囲にフィブリンが沈着する。フィブリノゲンは健常なCNSには存在せず、BBB破壊後にのみ脳内に漏出するため、環境の「危険」シグナルとして機能する。フィブリノゲンがフィブリンに変換されると、CD11b/CD18インテグリン受容体(Mac-1、aMfl 2、補体受容体3ともいわれる)がフィブリンに結合し、ミクログリアの活性化を誘導して炎症性脱髄を引き起こす。CD11bは、炎症性脱髄中のミエリンの貪食を調節する受容体のアルファ鎖である。可溶性フィブリノゲンではなく、固定化フィブリノゲンおよび不溶性フィブリンがMac-1の生理学的な、高親和性リガンドとして同定されている。
【0005】
フィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインのγ377~395エピトープは、フィブリンのCDIIbへの結合エピトープである。フィブリンγ377~395ペプチドは、フィブリンのMac-1への結合を遮断することにより、ミクログリア活性化の阻害剤として機能する。フィブリンは血小板インテグリンαIIbβ3受容体に異なるエピトープを介して結合することにより血液凝固を媒介するので、フィブリンへのCD11b結合エピトープを遮断する治療剤(抗体を含む)は、血液凝固におけるその有益な効果に影響を与えることなく、神経系におけるフィブリンの損傷効果を低減することができる。それゆえ、血液凝固における有益な効果に影響を与えることなく、フィブリン誘発性ミクログリア活性化を阻害する安全で効果的な抗体が、炎症性脱髄を伴う変性神経障害の治療用物質として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
概要
1つの局面において、本明細書に記載するのは、3つの重鎖CDR配列CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3を含む可変重(VH)鎖配列を含む重鎖と、3つの軽鎖CDR配列CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を含む可変軽(VL)鎖配列を含む軽鎖とを含む、ヒトフィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインに結合する単離された抗体であり、(i) CDR-H1はSEQ ID NO: 1に記載の配列を含み; (ii) CDR-H2はSEQ ID NO: 2に記載の配列を含み; (iii) CDR-H3はSEQ ID NO: 3に記載の配列を含み、ここでXがグリシン(G)、バリン(V)、スレオニン(T)、セリン(S)、アラニン(A)、またはロイシン(L)であり; (iv) CDR-L1はSEQ ID NO: 4に記載の配列を含み; (v) CDR-L2はSEQ ID NO: 5に記載の配列を含み、かつ(vi) CDR-L3はSEQ ID NO: 6に記載の配列を含む。
【0007】
1つの態様において、単離された抗体は、SEQ ID NO: 7~20の1つに記載の配列から選択されるVH配列を含む。1つの態様において、単離された抗体は、SEQ ID NO 21に記載の配列から選択されるVL配列を含む。1つの態様において、単離された抗体は、SEQ ID NO: 7~20の1つに記載の配列から選択されるVH配列、およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含む。1つの態様において、単離された抗体は、SEQ ID NO: 7に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含む。1つの態様において、単離された抗体は、SEQ ID NO: 8に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含む。1つの態様において、単離された抗体は、SEQ ID NO: 9に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含む。1つの態様において、単離された抗体は、SEQ ID NO: 10に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含む。1つの態様において、単離された抗体は、SEQ ID NO: 11に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含む。1つの態様において、単離された抗体は、SEQ ID NO: 12に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含む。1つの態様において、単離された抗体は、SEQ ID NO: 13に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含む。1つの態様において、単離された抗体は、SEQ ID NO: 14に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含む。1つの態様において、単離された抗体は、SEQ ID NO: 15に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含む。1つの態様において、単離された抗体は、SEQ ID NO: 16に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含む。1つの態様において、単離された抗体は、SEQ ID NO: 17に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含む。1つの態様において、単離された抗体は、SEQ ID NO: 18に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含む。1つの態様において、単離された抗体は、SEQ ID NO: 19に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含む。1つの態様において、単離された抗体は、SEQ ID NO: 20に記載のVH配列およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含む。
【0008】
1つの態様において、単離された抗体はヒト化抗体、ヒト抗体またはキメラ抗体である。1つの態様において、単離された抗体はヒト化抗体である。1つの態様において、単離された抗体は、IgG、IgA、IgD、IgEおよびIgMから選択されるクラスの重鎖ヒト定常領域を含む。1つの態様において、単離されたヒトFc領域は、クラスIgGならびにIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4から選択されるサブクラスのヒト重鎖定常領域を含む。1つの態様において、ヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。1つの態様において、ヒトFcドメインはSEQ ID NO: 22に記載の配列を含む。1つの態様において、重鎖は、SEQ ID NO: 22によって記載される定常重鎖配列を含む。1つの態様において、軽鎖は、SEQ ID NO: 23によって記載される定常軽鎖配列を含む。1つの態様において、抗体はSEQ ID NO: 7に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。1つの態様において、抗体はSEQ ID NO: 8に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。1つの態様において、単離された抗体はSEQ ID NO: 9に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。1つの態様において、単離された抗体はSEQ ID NO: 10に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。1つの態様において、単離された抗体はSEQ ID NO: 11に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。1つの態様において、単離された抗体はSEQ ID NO: 12に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。1つの態様において、単離された抗体はSEQ ID NO: 13に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。1つの態様において、単離された抗体はSEQ ID NO: 14に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。1つの態様において、単離された抗体はSEQ ID NO: 15に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。1つの態様において、単離された抗体はSEQ ID NO: 16に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。1つの態様において、単離された抗体はSEQ ID NO: 17に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。1つの態様において、単離された抗体はSEQ ID NO: 18に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。1つの態様において、単離された抗体はSEQ ID NO: 19に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。1つの態様において、単離された抗体はSEQ ID NO: 20に記載のVH配列、およびSEQ ID NO: 21に記載のVL配列を含み; かつヒトFc領域は野生型ヒトIgG1 Fcを含む。
【0009】
1つの態様において、Fc領域は1つまたは複数のアミノ酸置換を含み、ここで1つまたは複数の置換は、1つまたは複数の置換を有しないFcと比較して、抗体半減期の増加、ADCC活性の増加、ADCP活性の増加、またはCDC活性の増加をもたらす。
【0010】
1つの態様において、Fc領域は、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIc、FcγRIIIa、およびFcγRIIIbからなる群より選択されるFcγ受容体に結合する。1つの態様において、単離された抗体はモノクローナル抗体である。1つの態様において、抗体はフィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインのγ377~395エピトープ(SEQ ID NO: X)に結合する。
【0011】
1つの態様において、単離された抗体は、表面プラズモン共鳴(SPR)シングルサイクル・カイネティクス(SCK)アッセイによって測定された場合、約1、2、3、4、5、6、7、または8×10-5 M以下のKDでヒトフィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインのγ377~395エピトープの配列を含むペプチドに結合する。1つの態様において、単離された抗体は、表面プラズモン共鳴(SPR)シングルサイクル・カイネティクス(SCK)アッセイによって測定された場合、約8×10-5 M以下のKDでヒトフィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインのγ377~395エピトープの配列を含むペプチドに結合する。
【0012】
1つの態様において、単離された抗体は、フィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインへのMac-1結合を阻害する。1つの態様において、単離された抗体は、フィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインへのミクログリア接着の阻害を示す。
【0013】
1つの態様において、単離された抗体は神経系の変性障害の処置において用いられる。
【0014】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、前記請求項のいずれかの抗体、そのVH、そのVL、その軽鎖、その重鎖、またはその抗原結合部分をコードする単離されたポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのセットであり、任意でcDNAである。
【0015】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、本明細書に記載するポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのセットを含むベクターまたはベクターのセットである。
【0016】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、単離された抗体をコードするポリヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドのセット、または単離された抗体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターもしくはベクターのセットを含む宿主細胞である。
【0017】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、抗体を産生する方法であり、該方法は、単離された抗体をコードするポリヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドのセット、または単離された抗体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターもしくはベクターのセットを含む宿主細胞で抗体を発現させる段階、および発現された抗体を単離する段階を含む。
【0018】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、単離された抗体および薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物である。
【0019】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、単離された抗体または単離された抗体を含む薬学的組成物および使用説明書を含むキットである。
【0020】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、神経系の変性障害を処置するための方法であり、該方法は、単離された抗体または単離された抗体を含む薬学的組成物の治療的有効量を哺乳動物対象に投与する段階を含む。特定の態様において、神経系の変性障害は、多発性硬化症、脊髄損傷、脳卒中、およびアルツハイマー病からなる群より選択される。
【0021】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、フィブリンへのMac-1結合またはフィブリノゲンとのMac-1結合に関連する病態を処置するための方法であり、該方法は、本明細書に記載する単離された抗体または単離された抗体を含む薬学的組成物の治療的有効量を哺乳動物対象に投与する段階を含む。
【0022】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、ミクログリア活性化を阻害する方法であり、該方法は、本明細書に記載する単離された抗体または単離された抗体を含む薬学的組成物の治療的有効量を哺乳動物対象に投与する段階を含む。
【0023】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、神経系の変性障害を予防する方法であり、該方法は、本明細書に記載する単離された抗体または単離された抗体を含む薬学的組成物の治療的有効量を哺乳動物対象に投与する段階を含む。
【0024】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、大腸炎を処置する方法であり、該方法は、本明細書に記載する単離された抗体または単離された抗体を含む薬学的組成物の治療的有効量を哺乳動物対象に投与する段階を含む。特定の局面において、本明細書に記載するのは、大腸炎を予防する方法であり、該方法は、本明細書に記載する単離された抗体または単離された抗体を含む薬学的組成物の治療的有効量を哺乳動物対象に投与する段階を含む。
【0025】
本発明のこれらのおよびその他の特徴、局面、および利点は、以下の説明、および添付の図面に関してよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】6つの変種重鎖および5つの変種軽鎖で設計されたヒト化変種IgG1抗体を示す略図である。VH0およびVk0は、オリジナルの抗フィブリン5B8モノクローナル抗体CDRを担持する可変重鎖および可変軽鎖オリジナルキメラ抗体に対応する。
【
図2】キメラ抗体(VH0およびVk0)とヒト化変種配列の配列アライメントを示す略図である。
【
図3】VH3とVH4のアミノ酸残基の差異を例示した略図である。VH3とVH4で異なる位置が強調されている。
【
図5】精製された抗体タンパク質に対して実施された非還元SDS-PAGE分析の結果の画像であり、アフィニティー分析用の抗体の濃度を検証している。
【
図6】6つのヒト化抗体変種の第1熱転移(T
m1)および第2熱転移(T
m2)を示す熱安定性分析の結果を示すグラフである。
【
図7】
図7Aは、ヒトフィブリノゲンおよびヒトフィブリンに結合するマウスモノクローナル5B8抗体を用いて実施されたELISAの結果を示すグラフである
図7Bは、ヒトP2ペプチドに結合するマウスモノクローナル5B8抗体を用いて実施されたELISAの結果を示すグラフである。
【
図8】
図8Aは、ヒトフィブリノゲンおよびヒトフィブリンに結合するマウスIgG2bアイソタイプ対照抗体を用いて実施されたELISAの結果を示すグラフである。
図8Bは、ヒトP2ペプチドに結合するマウスIgG2bアイソタイプ対照抗体を用いて実施されたELISAの結果を示すグラフである。
【
図9】
図9Aは、ヒトフィブリノゲンおよびヒトフィブリンに結合するマウスIgG1アイソタイプ対照抗体を用いて実施されたELISAの結果を示すグラフである。
図9Bは、ヒトP2ペプチドに結合するマウスIgG1アイソタイプ対照抗体を用いて実施されたELISAの結果を示すグラフである。
【
図10】
図10Aは、ヒトフィブリノゲンおよびヒトフィブリンに結合するマウスキメラVH0Vk0抗体(ヒトFcを有するキメラマウスモノクローナル5B8抗体)を用いて実施されたELISAの結果を示すグラフである。
図10Bは、ヒトP2ペプチドに結合するマウスキメラVH0Vk0抗体(ヒトFcを有するキメラマウスモノクローナル5B8抗体)を用いて実施されたELISAの結果を示すグラフである。
【
図11】
図11Aは、ヒトフィブリノゲンおよびヒトフィブリンに結合するヒト化VH3Vk1抗体を用いて実施されたELISAの結果を示すグラフである。
図11Bは、ヒトP2ペプチドに結合するヒト化VH3Vk1抗体を用いて実施されたELISAの結果を示すグラフである。
【
図12】
図12Aは、ヒトフィブリノゲンおよびヒトフィブリンに結合するヒト化VH3Vk2抗体を用いて実施されたELISAの結果を示すグラフである。
図12Bは、ヒトP2ペプチドに結合するヒト化VH3Vk2抗体を用いて実施されたELISAの結果を示すグラフである。
【
図13】
図13Aは、ヒトフィブリノゲンおよびヒトフィブリンに結合するヒト化VH4Vk1抗体を用いて実施されたELISAの結果を示すグラフである。
図13Bは、ヒトP2ペプチドに結合するヒト化VH4Vk1抗体を用いて実施されたELISAの結果を示すグラフである。
【
図14】
図14Aは、ヒトフィブリノゲンおよびヒトフィブリンに結合するヒト化VH4Vk2抗体を用いて実施されたELISAの結果を示すグラフである。
図14Bは、ヒトP2ペプチドに結合するヒト化VH4Vk2抗体を用いて実施されたELISAの結果を示すグラフである。
【
図15】
図15Aは、ヒトフィブリノゲンおよびヒトフィブリンに結合するヒト化VH5Vk2抗体を用いて実施されたELISAの結果を示すグラフである。
図15Bは、ヒトP2ペプチドに結合するヒト化VH5Vk2抗体を用いて実施されたELISAの結果を示すグラフである。
【
図16】
図16Aは、ヒトフィブリノゲンおよびヒトフィブリンに結合するヒト化VH6Vk2抗体を用いて実施されたELISAの結果を示すグラフである。
図16Bは、ヒトP2ペプチドに結合するヒト化VH6Vk2抗体を用いて実施されたELISAの結果を示すグラフである。
【
図17】
図17Aは、凝固アッセイ対照の結果を示すグラフである。
図17Bは、20 ugの選択のヒト化抗体を用いた凝固アッセイの結果を示すグラフである。
【
図18】シングルサイクル・カイネティクスを用いた定常状態分析による親和性決定の手順を例示した略図である。
【
図19】選択のヒト化変種のSEC-HPLC分析の結果を示すグラフである。
【
図20】選択の変種のマルチサイクル・カイネティクス分析からの生データと適合データを示すグラフである。
【
図21】ヒト化変種抗体におけるVH CDR配列内の潜在的なアミノ酸残基障害(liabilities)を例示した略図である。
【
図22】キメラ抗体、システイン102を有するオリジナルのヒト化変種抗体(VH4/Vk2)および(VH5Vk2)、ならびにシステイン置換を有する12例のヒト化変種抗体についてBiacore定常状態分析のためにHEK細胞上清を手動で負荷することにより得られた捕捉レベルを例示したグラフである。
【
図23】システイン置換を有する12例のヒト化変種抗体のシングルサイクル・カイネティクスを用いた定常状態分析の結果を示す。
【
図24】ミクログリア活性化、酸化ストレス、およびマクロファージ動員に及ぼすヒト化抗フィブリン抗体変種VH5 C102G/VK2のI.C.V.注入による効果を評価したことを示すグラフである。10 ugの抗体をFIEマウスにi.c.v.注入によって予防的に投与した(
図24)。各円は個々の動物を表す。データは平均値 ± s.e.mである。Tukeyの多重比較による一元配置ANOVA。
【
図25】10 mg/mlのVH5 C102G/VK2-ビオチンおよびCY3-ストレプトアビジン抗体で染色した脊髄病変におけるフィブリノゲン蓄積を担持する慢性EAEを有するマウスからの組織切片の画像である。
【
図26】ヒト化抗フィブリン抗体変種VH5 C102G/VK2の薬物動態プロファイルを示すグラフである。10 mg/Kgまたは30 mg/KgのVH5 C102G/VK2抗体のいずれかを投与されたEAEマウスからの血漿中でELISAにより抗体を検出した。
【
図27】ヒト化抗フィブリン抗体変種VH5 C102G/VK2の薬物動態プロファイルを示すグラフである。VH5 C102G/VK2抗体を投与した野生型Balb/cマウスからの血漿および血液中でELISAにより抗体を検出した。
【
図28】
図28Aは、10 mg/kgまたは30 mg/kgのVH5 C102G/VK2ヒト化抗体のいずれかを投与されたフィブリノゲン誘発脳脊髄炎(FIE)を有するマウスにおけるミクログリアの低減を示すグラフである。組織をIba-1 (ミクログリアマーカー、1:750の希釈)で染色した。その後、Iba-1の免疫反応性(Iba-1+ 面積)を算出した。
図28Bは、10 mg/kgまたは30 mg/kgのVH5 C102G/VK2ヒト化抗体のいずれかを投与されたフィブリノゲン誘発脳脊髄炎(FIE)を有するマウスにおけるマクロファージ浸潤の低減を示すグラフである。組織をMac-2 (マクロファージ浸潤マーカー、1:750の希釈)で染色した。その後、Mac-2の免疫反応性(Mac-2+ 面積)を算出した。
【
図29】ヒト化抗フィブリン抗体(3日ごとに5 mg/kg i.p.)を予防的に注入したマウスN = 10におけるPLP EAEの臨床スコアを示すグラフである。
【
図30】
図30Aは、ヒト化抗フィブリン抗体(3日ごとに5 mg/kg i.p.)を予防的に注入したマウスN = 10におけるPLP EAEの疾患発症までの時間を示すグラフである。
図30Bは、ヒト化抗フィブリン抗体(3日ごとに5 mg/kg i.p.)を予防的に注入したマウスN = 10におけるPLP EAEの麻痺率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
定義
他に定義されない限り、本明細書において用いられる全ての技術用語、表記法および他の科学用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有することが意図される。場合によっては、一般に理解されている意味を有する用語は、明確化のため、および/またはすぐに参照できるように本明細書において定義され、そのような定義を本明細書に含めることは、必ずしも、当技術分野において一般に理解されているものとの差異を表すと解釈されるべきではない。本明細書に記載または参照される技法および手順は、一般的によく理解されており、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 4th ed. (2012) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYに記載された広く利用されている分子クローニング方法論などの、従来の方法論を用いて当業者により一般的に採用される。必要に応じて、市販のキットおよび試薬の使用を伴う手順は、特に断りのない限り、一般に製造業者が定義したプロトコルおよび条件にしたがって実行される。
【0028】
本明細書において用いられる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、別段の指示がない限り、複数の参照を含む。
【0029】
本明細書に記載する本発明の局面および態様は、局面および態様「を含む(comprising)」、「からなる(consisting)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」を含むことが理解される。
【0030】
本明細書に記載する全ての組成物、および本明細書に記載する組成物を用いる全ての方法について、組成物は、列挙された構成要素もしくは段階を含むことができ、または列挙された構成要素もしくは段階「から本質的になる」ことができる。組成物が列挙された構成要素「から本質的になる」と記載される場合、組成物は列挙された構成要素を含み、明示的に列挙される構成要素以外の、処置される状態に実質的に影響を及ぼさないが、処置される状態に実質的に影響を及ぼす任意の他の構成要素を含まない他の構成要素を含みうるか、または組成物が処置される状態に実質的に影響を及ぼす列挙された構成要素以外の追加の構成要素を含む場合、組成物は処置される状態に実質的に影響を及ぼすのに十分な濃度または量の追加の構成要素を含まない。方法が列挙される段階「から本質的になる」と記載されている場合、その方法は、列挙される段階を含み、処置される状態に実質的に影響を及ぼさない他の段階を含んでもよいが、その方法は、明示的に列挙される段階以外の処置される状態に実質的に影響を及ぼす任意の他の段階を含まない。非限定的な具体例として、組成物が構成要素「から本質的になる」と記載されている場合、組成物は、任意の量の薬学的に許容される担体、ビヒクルまたは希釈剤、および処置される状態に実質的に影響を及ぼさない、そのような他の構成要素をさらに含んでもよい。
【0031】
本明細書において用いられる「ベクター」という用語は、それが連結されている別の核酸を増殖させることができる核酸分子をいう。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクターと、それが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターとを含む。ある種のベクターは、それが機能的に連結されている核酸の発現を指令することができる。そのようなベクターは本明細書において「発現ベクター」といわれる。
【0032】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養物」という用語は、互換的に用いられ、外因性核酸が導入された細胞、およびそのような細胞の後代をいう。宿主細胞は「形質転換体」(または「形質転換細胞」)および「トランスフェクタント」(または「トランスフェクト細胞」)を含み、これらはそれぞれ、初代の形質転換細胞またはトランスフェクト細胞およびそれらに由来する後代を含む。そのような抗体は、親細胞と核酸含量が完全に同一でなくてもよく、変異を含んでいてもよい。「組み換え宿主細胞」または「宿主細胞」は、挿入のために用いられる方法、例えば、直接取り込み、形質導入、f-交配、または組み換え宿主細胞を作り出すための当技術分野において公知の他の方法に関係なく、外因性ポリヌクレオチドを含む細胞をいう。
【0033】
本明細書において用いられる場合、「真核生物」という用語は、動物(哺乳動物、昆虫、爬虫類、鳥類などを含むが、これらに限定されない)、繊毛虫、植物(単子葉植物、双子葉植物、藻類などを含むが、これらに限定されない)、真菌、酵母、鞭毛虫、微胞子虫、原生生物などのような系統発生ドメイン真核生物(Eucarya)に属する生物をいう。
【0034】
本明細書において用いられる場合、「原核生物(prokaryote)」という用語は原核生物(prokaryotic organisms)をいう。例えば、非真核生物は、真正細菌(Eubacteria) (大腸菌(Escherichia coli)、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)などを含むが、これらに限定されない)系統発生ドメイン、または古細菌(Archaea) (メタノコッカス・ジャナスキー(Methanococcus jannaschii)、メタノバクテリウム・サーモオートトロフィカム(Methanobacterium thermoautotrophicum)、ハロバクテリウム(Halobacterium)、例えばハロフェラックス・ボルカニー(Haloferax volcanii)およびハロバクテリウム種NRC-1、アーケオグロブス・フルギダス(Archaeoglobus fulgidus)、パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)、パイロコッカス・ホリコシイ(Pyrococcus horikoshii)、アエロパイラム・ペルニクス(Aeuropyrum pernix)などを含むが、これらに限定されない)系統発生ドメインに属しうる。
【0035】
本明細書において用いられる「有効量」または「治療的有効量」は、単回用量または一連の用量の一部のいずれかとして、個体に投与される、抗フィブリン(FIBRIN)抗体などの、治療用化合物の量をいい、これは単独でまたは別の治療法との組み合わせで、所望の治療効果を生ずるか、または所望の治療効果に寄与するのに有効である。所望の治療効果の例は、免疫応答の増強、腫瘍発生の緩徐化または遅延; 疾患の安定; 1つまたは複数の症状の改善である。有効量は、1回または複数回の投与量で与えられうる。
【0036】
用語「処置する」(および「治療する」または「処置」などのその変形)は、それを必要とする対象における疾患または状態の自然経過を変化させようとする臨床的介入をいう。処置は臨床病理の経過中に実施することができる。処置の望ましい効果は、疾患の再発の抑止、症状の緩和、疾患の直接的または間接的な病理学的帰結の軽減、転移の抑止、疾患の進行速度の低下、疾患状態の改善または緩和、および寛解または予後の改善を含む。
【0037】
「十分な量」という用語は、所望の効果を生ずるのに十分な量、例えば、対象における免疫応答を調節するのに十分な量を意味する。
【0038】
本明細書において用いられる場合、「対象」または「個体」という用語は、哺乳動物対象を意味する。例示的な対象としては、ヒト、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ラクダ、ヤギ、ウサギ、およびヒツジが挙げられる。特定の態様において、対象はヒトである。いくつかの態様において、対象は、本明細書において提供される抗体で処置できる疾患または状態を有している。いくつかの局面において、疾患または状態はがんである。いくつかの局面において、疾患または状態はウイルス感染症である。
【0039】
「インビトロ」という用語は、生物とは別に増殖している、例えば、組織培養において増殖している生細胞内で行われるプロセスをいう。
【0040】
「インビボ」という用語は、生物内で行われるプロセスをいう。
【0041】
「添付文書」という用語は、治療薬または診断薬の市販パッケージ(例えば、キット)に慣例的に含まれている説明書で、そのような治療薬または診断薬の使用に関する適応症、用法、投与量、投与、併用療法、禁忌および/または警告に関する情報を含むものをいうように用いられる。
【0042】
「薬学的組成物」という用語は、その中に含まれる活性成分の生物学的活性が対象の処置において有効であるようにさせるような形態であり、薬学的組成物において提供される量では対象に許容できないほど有毒な追加成分を含まない調製物をいう。
【0043】
「同時投与」、「同時投与する」および「と組み合わせて」という用語は、特定の時間制限がないなかで同時に、併行してまたは連続的に2つまたはそれ以上の治療剤を投与することを含む。1つの態様において、薬剤は細胞内もしくは対象の体内に同時に存在するか、またはそれらの生物効果もしくは治療効果を同時に発揮する。1つの態様において、治療剤は同じ組成物または単位剤形中にある。他の態様において、治療剤は別々の組成物または単位剤形中にある。特定の態様において、第1の薬剤は、第2の治療剤の投与前に投与することができる。
【0044】
「調節する」および「調節」という用語は、列挙された変量を低減または阻害すること、あるいは、活性化または増加させることをいう。
【0045】
「増加する」および「活性化する」という用語は、列挙された変量の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、またはそれ以上の増加をいう。
【0046】
「低減する」および「阻害する」という用語は、列挙された変量の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、またはそれ以上の減少をいう。
【0047】
「約」という用語は、示された値およびその値の上下の範囲を示唆および包含する。特定の態様において、「約」という用語は、指定された値± 10%、± 5%、または± 1%を示す。特定の態様において、該当する場合、「約」という用語は、指定された値 ± その値の1標準偏差を示す。
【0048】
「作動させる」という用語は、受容体の活性化に関連する生物学的応答を誘導するための受容体シグナル伝達の活性化をいう。「アゴニスト」は、受容体に結合して受容体を作動させる実体である。
【0049】
「拮抗する」という用語は、受容体の活性化に関連する生物学的応答を阻害するための受容体シグナル伝達の阻害をいう。「アンタゴニスト」は、受容体に結合して拮抗する実体である。
【0050】
本明細書に記載する構造的特徴および機能的特徴のいずれについても、これらの特徴を決定する方法は当技術分野において公知である。
【0051】
「任意で」という用語は、連続して用いられる場合、列挙された組み合わせの1つから全てを含むことを意味し、全ての下位組み合わせを企図する。
【0052】
「アミノ酸」という用語は、天然に存在する20種類の一般的なアミノ酸をいう。天然に存在するアミノ酸は、アラニン(Ala; A)、アルギニン(Arg; R)、アスパラギン(Asn; N)、アスパラギン酸(Asp; D)、システイン(Cys; C); グルタミン酸(Glu; E)、グルタミン(Gln; Q)、グリシン(Gly; G); ヒスチジン(His; H)、イソロイシン(Ile; I)、ロイシン(Leu; L)、リジン(Lys; K)、メチオニン(Met; M)、フェニルアラニン(Phe; F)、プロリン(Pro; P)、セリン(Ser; S)、スレオニン(Thr; T)、トリプトファン(Trp; W)、チロシン(Tyr; Y)、およびバリン(Val; V)を含む。
【0053】
「親和性」という用語は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原またはエピトープ)との間の非共有結合性相互作用の合計の強さをいう。別段の指示がない限り、本明細書において用いられる場合、「親和性」は、結合対(例えば、抗体および抗原またはエピトープ)の成員間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性をいう。
【0054】
本明細書において用いられる「kd」(sec-1)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数をいう。この値はkoff値ともいわれる。
【0055】
本明細書において用いられる「ka」(M-1×sec-1)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の結合速度定数をいう。この値はkon値ともいわれる。
【0056】
本明細書において用いられる「KD」(M)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数をいう。KD = kd/ka。いくつかの態様において、抗体の親和性は、そのような抗体とその抗原との間の相互作用に対するKDの観点から記載される。明確にするために、当技術分野において公知のように、KD値が小さいほど親和性の高い相互作用を示し、KD値が大きいほど親和性の低い相互作用を示す。
【0057】
本明細書において用いられる「KA」(M-1)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の結合平衡定数をいう。KA = ka/kd。
【0058】
「抗体」という用語は、本明細書においてその最も広い意味で用いられ、抗原またはエピトープに特異的に結合する1つまたは複数の抗原結合ドメインを含むある種の免疫グロブリン分子を含む。抗体は、具体的には、インタクト抗体(例えば、インタクト免疫グロブリン)、抗体断片、および多重特異性抗体を含む。
【0059】
「フィブリン抗体」、「抗フィブリン抗体」または「フィブリン特異的抗体」は、本明細書において提供されるように、抗原フィブリンに特異的に結合する抗体である。いくつかの態様において、抗体はフィブリンの細胞外ドメインに結合する。特定の態様において、本明細書において提供されるフィブリン抗体は、異なる種由来のフィブリンタンパク質の間でまたは中で保存されているフィブリンのエピトープに結合する。
【0060】
「エピトープ」という用語は、抗体に特異的に結合する抗原の一部分を意味する。
【0061】
本明細書において用いられる「超可変領域」または「HVR」という用語は、配列が超可変である、および/または構造的に規定されたループ(「超可変ループ」)を形成する、抗体可変ドメインの各領域をいう。
【0062】
「抗原結合ドメイン」という用語は、抗原またはエピトープに特異的に結合できる抗体の部分を意味する。
【0063】
「キメラ抗体」という用語は、重鎖および/または軽鎖の一部分が特定の供給源または種に由来し、重鎖および/または軽鎖の残部分が異なる供給源または種に由来する抗体をいう。
【0064】
「ヒト抗体」という用語は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生される抗体、またはヒト抗体レパートリーもしくはヒト抗体コード配列を利用する非ヒト供給源に由来する(例えば、ヒト供給源から得られた、もしくは新たに(de novo)設計された)抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を保有する抗体をいう。ヒト抗体は特にヒト化抗体を除外する。
【0065】
「ヒト化抗体」という用語は、ヒト対象に投与された場合、非ヒト種抗体と比較して、ヒト化抗体が免疫応答を誘導する可能性が低い、および/またはあまり重篤でない免疫応答を誘導するような、1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、および/または付加によって非ヒト種に由来する抗体の配列とは異なる配列を有するタンパク質をいう。
【0066】
「多重特異性抗体」という用語は、2つまたはそれ以上の異なるエピトープに集合的に特異的に結合する2つまたはそれ以上の異なる抗原結合ドメインを含む抗体をいう。
【0067】
「単一特異性抗体」は、単一のエピトープに特異的に結合する1つまたは複数の結合部位を含む抗体である。単一特異性抗体の例は、二価(すなわち、2つの抗原結合ドメインを有する)でありながら、2つの抗原結合ドメインのそれぞれで同じエピトープを認識する天然IgG分子である。結合特異性は、任意の適当な価数で存在してもよい。
【0068】
「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団からの抗体をいう。実質的に均一な抗体の集団は、モノクローナル抗体の産生中に通常生じる可能性のある変種を除いて、実質的に類似する、かつ同じエピトープに結合する抗体を含む。そのような変種は一般に、少量しか存在しない。モノクローナル抗体は、典型的には、複数の抗体からの単一の抗体の選択を含むプロセスによって得られる。例えば、選択プロセスは、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、酵母クローン、細菌クローン、または他の組み換えDNAクローンのプールなどの、複数のクローンからの固有のクローンの選択とすることができる。選択された抗体は、例えば、標的に対する親和性(「親和性成熟」)を改善するために、抗体をヒト化するために、細胞培養におけるその産生を改善するために、および/または対象におけるその免疫原性を低減するために、さらに改変することができる。
【0069】
「単鎖」という用語は、ペプチド結合によって直線的に連結されたアミノ酸単量体を含む分子をいう。特定のそのような態様において、Fab軽鎖のC末端は、単鎖Fab分子中のFab重鎖のN末端に接続される。本明細書においてさらに詳細に記載するように、scFvは、そのC末端からポリペプチド鎖によって重鎖の可変ドメイン(VH)のN末端に接続された軽鎖の可変ドメイン(VL)を有する。あるいは、scFvは、VHのC末端がポリペプチド鎖によってVLのN末端に接続されたポリペプチド鎖を含む。
【0070】
「Fab断片」(抗原結合断片(fragment antigen-binding)ともいわれる)は、軽鎖および重鎖それぞれの可変ドメインVLおよびVHとともに軽鎖の定常ドメイン(CL)および重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含む。可変ドメインは、抗原結合に関与する相補性決定ループ(CDR、超可変領域ともいわれる)を含む。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの1つまたは複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数残基が付加されることによりFab断片とは異なる。
【0071】
「F(ab')2」断片はヒンジ領域近くで、ジスルフィド結合によりつながれた2つの Fab'断片を含む。F(ab')2断片は、例えば、組み換え法によりまたはインタクト抗体のペプシン消化により作り出されうる。F(ab')断片は、例えば、β-メルカプトエタノールでの処理により解離させることができる。
【0072】
「Fv」断片は、1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインの非共有結合二量体を含む。
【0073】
「単鎖Fv」または「sFv」または「scFv」は抗体のVHおよびVLドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。1つの態様において、Fvポリペプチドは、scFvが抗原結合のために所望の構造を形成することを可能にする、VHドメインとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。scFvの概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照されたい。HER2抗体scFv断片は、WO93/16185; 米国特許第5,571,894号; および米国特許第5,587,458号に記載されている。
【0074】
「scFv-Fc」断片は、Fcドメインに結合したscFvを含む。例えば、FcドメインはscFvのC末端に結合されうる。Fcドメインは、scFvにおける可変ドメインの方向(すなわち、VH-VLまたはVL-VH)に応じて、VHまたはVLに続きうる。当技術分野において公知の、または本明細書に記載の任意の適当なFcドメインが用いられうる。場合によっては、FcドメインはIgG4 Fcドメインを含む。
【0075】
「単一ドメイン抗体」または「sdAb」という用語は、抗体の1つの可変ドメインが、他の可変ドメインの存在なしに抗原に特異的に結合する分子をいう。単一ドメイン抗体およびその断片は、Arabi Ghahroudi et al., FEBS Letters, 1998, 414:521-526およびMuyldermans et al., Trends in Biochem. Sci., 2001, 26:230-245に記載されており、これらはそれぞれ参照によりその全体が組み入れられる。単一ドメイン抗体はsdAb またはナノボディとしても知られている。sdabはかなり安定であり、抗体のFc鎖との融合パートナーとして発現するのが容易である(Harmsen MM, De Haard HJ (2007). "Properties, production, and applications of camelid single-domain antibody fragments". Appl. Microbiol Biotechnol. 77(1): 13-22)。
【0076】
「全長抗体」、「インタクト抗体」および「全抗体」という用語は、本明細書において互換的に用いられて、天然に存在する抗体構造と実質的に類似した構造を有し、Fc領域を含む重鎖を有する抗体をいう。例えば、IgG分子をいうために用いられる場合、「全長抗体」は、2本の重鎖および2本の軽鎖を含む抗体である。
【0077】
「抗体断片」という用語は、インタクト抗体の抗原結合領域または可変領域などの、インタクト抗体の一部分を含む抗体をいう。抗体断片は、例えば、Fv断片、Fab断片、F(ab')2断片、Fab'断片、scFv (sFv)断片、およびscFv-Fc断片を含む。
【0078】
本明細書において「Fcドメイン」または「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部分を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を規定するために用いられる。この用語は、ネイティブ配列Fc領域および変種Fc領域を含む。
【0079】
「実質的に精製された」という用語は、天然に存在する環境、すなわち天然細胞、または組み換えにより産生されるヘテロ多量体の場合には宿主細胞において見出されるタンパク質と通常付随または相互作用している構成要素を実質的または本質的に含まない可能性がある、特定の態様において、細胞物質を実質的に含まない、本明細書に記載する構築物、またはその変種をいい、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満(乾燥重量で)の夾雑タンパク質を有するタンパク質の調製物を含む。
【0080】
パーセント「同一性」という用語は、2つまたはそれ以上の核酸配列またはポリペプチド配列の文脈において、以下に記載する配列比較アルゴリズムの1つを用いて(例えば、BLAST、BLASTP、BLASTN、BLAST-2、ALIGN、MEGALIGN (DNASTAR)、CLUSTALW、CLUSTAL OMEGAもしくはMUSCLEソフトウェアなどの公的に利用可能なコンピュータソフトウェアまたは当業者に利用可能な他のアルゴリズムを用いて)または目視検査によって測定された場合、最大の一致が得られるように比較され整列されると、同じものであるヌクレオチドまたはアミノ酸残基の特定の割合を有する2つまたはそれ以上の配列または部分配列をいう。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは全米バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information) (ncbi.nlm.nih.gov)を通じて公的に利用可能である。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含めて、配列をアライメントするための適切なパラメータを決定することができる。用途に依って、パーセント「同一性」は、比較される配列の領域にわたって、例えば、機能ドメインにわたって存在することができ、あるいは、比較される2つの配列の全長にわたって存在することもできる。
【0081】
配列比較の場合、通常、1つの配列が参照配列として機能し、これと試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験配列および参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じて部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。次に、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を計算する。
【0082】
比較のための配列の最適なアライメントは、例えば、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所相同性アルゴリズムにより、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)の相同性アライメントアルゴリズムにより、Pearson & Lipman, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似性探索法により、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装(Wisconsin Genetics Software PackageにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.)により、または目視検査(一般にAusubel et al., 以下を参照のこと)により行うことができる。
【0083】
本明細書において列挙される範囲は、列挙される端点を含めて、範囲内の全ての値の略記であると理解される。例えば、1から50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、および50からなる群からの任意の数、数の組み合わせ、または部分範囲を含むと理解される。
【0084】
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の参照を含むことに留意されたい。
【0085】
抗フィブリン抗体
抗体構造
本出願は、フィブリンタンパク質に結合する抗体および抗体を含む組成物を提供する。
【0086】
認識されている免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロンおよびミュー定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖はカッパまたはラムダのいずれかに分類される。抗体または免疫グロブリンの「クラス」は、その重鎖が保有する定常ドメインまたは定常領域のタイプをいう。抗体には5つの主要なクラス: IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMがあり、これらのいくつかはサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2にさらに分けられうる。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γおよびμと呼ばれる。
【0087】
例示的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、各対が1本の「軽鎖」(約25 kD)および1本の「重鎖」(約50~70 kD)を有する2対のポリペプチド鎖で構成される。各鎖のN末端ドメインは、抗原認識に主に関与する約100から110個またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を規定する。可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)という用語は、それぞれこれらの軽鎖および重鎖ドメインをいう。IgG1重鎖は、N末端からC末端の方向にそれぞれVH、CH1、CH2およびCH3ドメインで構成される。軽鎖は、N末端からC末端の方向にVLおよびCLドメインで構成される。IgG1重鎖は、CH1ドメインとCH2ドメインとの間のヒンジを含む。特定の態様において、免疫グロブリン構築物は、治療用ポリペプチドに接続されたIgG、IgM、IgA、IgD、またはIgEからの少なくとも1つの免疫グロブリンドメインを含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体中に見出される免疫グロブリンドメインは、ダイアボディ、またはナノボディなどの免疫グロブリンに基づく構築物からであり、またはそれに由来する。特定の態様において、本明細書に記載する免疫グロブリン構築物は、ラクダ抗体などの重鎖抗体由来の少なくとも1つの免疫グロブリンドメインを含む。特定の態様において、本明細書において提供される免疫グロブリン構築物は、ウシ抗体、ヒト抗体、ラクダ科抗体、マウス抗体または任意のキメラ抗体などの哺乳動物抗体由来の少なくとも1つの免疫グロブリンドメインを含む。
【0088】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は重鎖を含む。1つの態様において、重鎖はIgAである。1つの態様において、重鎖はIgDである。1つの態様において、重鎖はIgEである。1つの態様において、重鎖はIgGである。1つの態様において、重鎖はIgMである。1つの態様において、重鎖はIgG1である。1つの態様において、重鎖はIgG2である。1つの態様において、重鎖はIgG3である。1つの態様において、重鎖はIgG4である。1つの態様において、重鎖はIgA1である。1つの態様において、重鎖はIgA2である。
【0089】
いくつかの態様において、抗体はIgG1抗体である。いくつかの態様において、抗体はIgG3抗体である。いくつかの態様において、抗体はIgG2抗体である。いくつかの態様において、抗体はIgG4抗体である。
【0090】
一般に、ネイティブな4本鎖抗体は6つのHVR; VHに3つ(H1、H2、H3)、およびVLに3つ(L1、L2、L3)を含む。HVRは一般に、超可変ループおよび/または相補性決定領域(CDR)からのアミノ酸残基を含み、後者は配列可変性が最も高く、および/または抗原認識に関与する。VHにおけるCDR1を除いて、CDRは一般に、超可変ループを形成するアミノ酸残基を含む。超可変領域(HVR)は「相補性決定領域」(CDR)ともいわれ、これらの用語は、抗原結合領域を形成する可変領域の部分に関して本明細書において互換的に用いられる。この特定の領域は、Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, Sequences of Proteins of Immunological Interest (1983)により、およびChothia et al., J Mol Biol 196:901-917 (1987)により記載されており、ここでこの定義には、相互に比較した場合のアミノ酸残基の重複またはサブセットが含まれる。それにもかかわらず、抗体またはその変種のCDRをいうためにいずれかの定義を適用することは、本明細書において定義され使用される用語の範囲内であることが意図される。特定のCDRを包含する正確な残基番号は、CDRの配列およびサイズに依って変化するであろう。当業者は、抗体の可変領域アミノ酸配列を考えると、どの残基が特定のCDRを構成するかを日常的に決定することができる。
【0091】
CDRのアミノ酸配列境界は、Kabat et al., 前記(「Kabat」付番スキーム); Al-Lazikani et al., 1997, J. Mol. Biol., 273:927-948 (「Chothia」付番スキーム); MacCallum et al., 1996, J. Mol. Biol. 262:732-745 (「Contact」付番スキーム); Lefranc et al., Dev. Comp. Immunol., 2003, 27:55-77 (「IMGT」付番スキーム); およびHonegge and Pluckthun, J. Mol. Biol., 2001, 309:657-70 (「AHo」付番スキーム)により記載されているものを含めて、いくつかの公知の付番スキームのいずれかを用いて当業者により決定されうる; これらはそれぞれ参照によりその全体が組み入れられる。
【0092】
表Aは、KabatおよびChothiaスキームによって同定されたCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3の位置を示す。CDR-H1の場合、KabatおよびChothia付番スキームの両方を用いて残基付番を提供している。
【0093】
CDRは、例えば、www.bioinf.org.uk/abs/abnum/で利用可能な、および参照により全体が組み入れられるAbhinandan and Martin, Immunology, 2008, 45:3832-3839に記載されている、Abnumなどの、抗体付番ソフトウェアを用いて割り当てられうる。
【0094】
(表A)KabatおよびChothia付番スキームによるCDR中の残基。
* CDR-H1のC末端は、Kabat付番の慣例を用いて付番すると、CDRの長さに依り、H32からH34の間で変化する。
【0095】
「EU付番スキーム」は一般に、抗体重鎖定常領域内の残基をいう場合に用いられる(例えば、Kabat et al., 前記に報告されている通り)。特に明記しない限り、EU付番スキームは、本明細書に記載する抗体重鎖定常領域中の残基をいうように用いられる。
【0096】
抗原結合ドメインの一例は、抗体のVH-VL二量体によって形成される抗原結合ドメインである。抗原結合ドメインの別の例は、アドネクチンの10番目のフィブロネクチンIII型ドメインからの特定のループの多様化によって形成される抗原結合ドメインである。抗原結合ドメインは重鎖からのCDR 1、2および3をその順序で; ならびに軽鎖からのCDR 1、2および3をその順序で含むことができる。
【0097】
エピトープは、表面にアクセス可能なアミノ酸残基および/または糖側鎖からなることが多く、特定の三次元構造特性および特定の電荷特性を有しうる。立体構造エピトープおよび非立体構造エピトープは、変性溶媒の存在下では前者への結合は失われうるが後者への結合は失われないという点で区別される。エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基、および結合に直接関与しない他のアミノ酸残基を含みうる。抗体が結合するエピトープは、例えば、異なる点突然変異を有するフィブリン変種、またはキメラフィブリン変種に対する抗体の結合を試験するような、エピトープ決定のための公知の技法を用いて決定することができる。
【0098】
関心対象の抗体が結合する標的抗原(例えば、フィブリン)上のエピトープに結合する抗体をスクリーニングするために、Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Ed Harlow and David Lane (1988)に記載されているものなどの、日常的な交差ブロッキングアッセイを実施することができる。あるいは、またはさらに、エピトープマッピングは、当技術分野において公知の方法により実施することができる。
【0099】
キメラ抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部分が特定の供給源または種に由来し、重鎖および/または軽鎖の残部分が異なる供給源または種に由来する。
【0100】
ヒト抗体は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生される抗体、またはヒト抗体レパートリーもしくはヒト抗体コード配列を利用する非ヒト供給源に由来する(例えば、ヒト供給源から得られた、もしくは新たに設計された)抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を保有する抗体である。ヒト抗体は特にヒト化抗体を除外する。
【0101】
ヒト化抗体は、ヒト対象に投与された場合、非ヒト種抗体と比較して、ヒト化抗体が免疫応答を誘導する可能性が低い、および/またはあまり重篤でない免疫応答を誘導するような、1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、および/または付加によって非ヒト種に由来する抗体の配列とは異なる配列を有する。1つの態様において、ヒト化抗体を産生するために、非ヒト種抗体の重鎖および/または軽鎖のフレームワークおよび定常ドメインにおけるある種のアミノ酸が変異される。別の態様において、ヒト抗体からの定常ドメインが非ヒト種の可変ドメインに融合される。別の態様において、非ヒト抗体の1つまたは複数のCDR配列中の1つまたは複数のアミノ酸残基は、ヒト対象に投与される場合に、非ヒト抗体の免疫原性の可能性を低減させるために変えられ、変えられたアミノ酸残基は、抗体のその抗原への免疫特異的結合にとって重要ではないか、または行われるアミノ酸配列に対する変化は保存的変化であり、その結果、抗原へのヒト化抗体の結合は抗原への非ヒト抗体の結合よりも有意に悪くならないかのいずれかである。ヒト化抗体を作製する方法の例は、米国特許第6,054,297号、同第5,886,152号および同第5,877,293号において見出すことができる。さらなる詳細については、Jones et al., Nature, 1986, 321:522-525; Riechmann et al., Nature, 1988, 332:323-329; およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol., 1992, 2:593-596を参照されたく、これらはそれぞれ参照によりその全体が組み入れられる。
【0102】
2つまたはそれ以上の異なるエピトープは、同じ抗原(例えば、細胞によって発現される単一のフィブリン分子)上のエピトープであってもよく、または異なる抗原(例えば、同じ細胞によって発現される異なるフィブリン分子、もしくはフィブリン分子および非フィブリン分子)上のエピトープであってもよい。いくつかの局面において、多重特異性抗体は2つの異なるエピトープに結合する(すなわち「二重特異性抗体」)。いくつかの局面において、多重特異性抗体は3つの異なるエピトープに結合する(すなわち「三重特異性抗体」)。
【0103】
抗フィブリン抗体は図面および/または表に記載されたクローンなどの本明細書に記載するものを含むことができる。いくつかの態様において、抗体は代替の足場を含む。いくつかの態様において、抗体は代替の足場からなる。いくつかの態様において、抗体は代替の足場から本質的になる。いくつかの態様において、抗体は抗体断片を含む。いくつかの態様において、抗体は抗体断片からなる。いくつかの態様において、抗体は抗体断片から本質的になる。
【0104】
いくつかの態様において、抗体はモノクローナル抗体である。
【0105】
いくつかの態様において、抗体はポリクローナル抗体である。
【0106】
いくつかの態様において、抗体はハイブリドーマによって産生される。他の態様において、抗体は、所望の可変ドメインおよび定常ドメインを発現するように操作された組み換え細胞によって産生される。
【0107】
いくつかの態様において、抗体は、単鎖抗体もしくは抗原特異性および下部ヒンジ領域を保持している他の抗体誘導体またはその変種でありうる。
【0108】
いくつかの態様において、抗体は多機能抗体、組み換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、それらの断片または変種でありうる。特定の態様において、抗体断片またはその誘導体はFab断片、Fab'2断片、CDRおよびScFvから選択される。
【0109】
いくつかの態様において、抗体は免疫複合体を形成することができる。例えば、免疫複合体は、抗体で覆われた腫瘍細胞であることができる。
【0110】
配列比較の場合、通常、1つの配列が参照配列として機能し、これと試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験配列および参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じて部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。次に、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を計算する。
【0111】
比較のための配列の最適なアライメントは、例えば、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所相同性アルゴリズムにより、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)の相同性アライメントアルゴリズムにより、Pearson & Lipman, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似性探索法により、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装(Wisconsin Genetics Software PackageにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.)により、または目視検査(一般にAusubel et al., 以下を参照のこと)により行うことができる。
【0112】
パーセント配列同一性および配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムの一例はBLASTアルゴリズムであり、これはAltschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990)に記載されている。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは全米バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information) (www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公的に利用可能である。
【0113】
フィブリン抗体の配列
V
H
ドメイン
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20から選択されるVH配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 7のVH配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 8のVH配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 9のVH配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 10のVH配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 11のVH配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 12のVH配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 13のVH配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 14のVH配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 15のVH配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 16のVH配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 17のVH配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 18のVH配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 19のVH配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 20のVH配列を含む。
【0114】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20において提供される例示的なVH配列と少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の同一性を有するVH配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20において提供されるVH配列を含む。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0115】
V
L
ドメイン
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 21から選択されるVL配列を含む。
【0116】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 21において提供される例示的なVL配列と少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の同一性を有するVL配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個のアミノ酸置換を有するSEQ ID NO: 21において提供されるVL配列を含む。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0117】
VH-VLの組み合わせ
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20から選択されるVH配列; ならびにSEQ ID NO: 21から選択されるVL配列を含む。
【0118】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 7のVH配列およびSEQ ID NO: 21のVL配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 8のVH配列およびSEQ ID NO: 21のVL配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 9のVH配列およびSEQ ID NO: 21のVL配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 10のVH配列およびSEQ ID NO: 21のVL配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 11のVH配列およびSEQ ID NO: 21のVL配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 12のVH配列およびSEQ ID NO: 21のVL配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 13のVH配列およびSEQ ID NO: 21のVL配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 14のVH配列およびSEQ ID NO: 21のVL配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 15のVH配列およびSEQ ID NO: 21のVL配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 16のVH配列およびSEQ ID NO: 21のVL配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 17のVH配列およびSEQ ID NO: 21のVL配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 18のVH配列およびSEQ ID NO: 21のVL配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 19のVH配列およびSEQ ID NO: 21のVL配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 20のVH配列およびSEQ ID NO: 21のVL配列を含む。
【0119】
特定の局面において、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20のいずれかをSEQ ID NO: 21のいずれかと組み合わせることができる。
【0120】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20において提供される例示的なVH配列と少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の同一性を有するVH配列; ならびにSEQ ID NO: 21において提供される例示的なVL配列と少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の同一性を有するVL配列を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20において提供されるVH配列、ならびに最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 21において提供されるVL配列を含む。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0121】
CDR
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20から選択されるVHドメインの1~3個のCDRを含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20から選択されるVHドメインの2~3個のCDRを含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 37、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20から選択されるVHドメインの3個のCDRを含む。いくつかの局面において、CDRはExemplary CDRである。いくつかの局面において、CDRはKabat CDRである。いくつかの局面において、CDRはChothia CDRである。いくつかの局面において、CDRはAbM CDRである。いくつかの局面において、CDRはContact CDRである。いくつかの局面において、CDRはIMGT CDRである。
【0122】
いくつかの態様において、CDRは、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20のCDR-H1、CDR-H2、またはCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有するCDRである。いくつかの態様において、CDR-H1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20から選択されるVHドメインのCDR-H1である。いくつかの態様において、CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20から選択されるVHドメインのCDR-H2である。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20から選択されるVHドメインのCDR-H3である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0123】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 21のVLドメインの1~3個のCDRを含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 21のVLドメインの2~3個のCDRを含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 21のVLドメインの3個のCDRを含む。いくつかの局面において、CDRはExemplary CDRである。いくつかの局面において、CDRはKabat CDRである。いくつかの局面において、CDRはChothia CDRである。いくつかの局面において、CDRはAbM CDRである。いくつかの局面において、CDRはContact CDRである。いくつかの局面において、CDRはIMGT CDRである。
【0124】
いくつかの態様において、CDRは、SEQ ID NO: 21のCDR-L1、CDR-L2、またはCDR-L3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有するCDRである。いくつかの態様において、CDR-L1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 21のVLドメインのCDR-L1である。いくつかの態様において、CDR-L2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 21のVLドメインのCDR-L2である。いくつかの態様において、CDR-L3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 21のVLドメインのCDR-L3である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0125】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20から選択されるVHドメインの1~3個のCDRならびにSEQ ID NO: 21のVLドメインの1~3個のCDRを含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20から選択されるVHドメインの2~3個のCDRならびにSEQ ID NO: 21のVLドメインの2~3個のCDRを含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20から選択されるVHドメインの3個のCDRならびにSEQ ID NO: 21のVLドメインの3個のCDRを含む。いくつかの局面において、CDRはExemplary CDRである。いくつかの局面において、CDRはKabat CDRである。いくつかの局面において、CDRはChothia CDRである。いくつかの局面において、CDRはAbM CDRである。いくつかの局面において、CDRはContact CDRである。いくつかの局面において、CDRはIMGT CDRである。
【0126】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 24、25、26、27、28、29および30の選択されるCDR-H3を含む。いくつかの局面において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 24、25、26、27、28、29および30のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 24、25、26、27、28、29および30の選択されるCDR-H3である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0127】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 24の選択されるCDR-H3を含む。いくつかの局面において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 24のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 24の選択されるCDR-H3である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0128】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 25の選択されるCDR-H3を含む。いくつかの局面において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 25のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 25の選択されるCDR-H3である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0129】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 26の選択されるCDR-H3を含む。いくつかの局面において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 26のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 26の選択されるCDR-H3である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0130】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 27の選択されるCDR-H3を含む。いくつかの局面において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 27のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 27の選択されるCDR-H3である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0131】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 28の選択されるCDR-H3を含む。いくつかの局面において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 28のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 28の選択されるCDR-H3である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0132】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 29の選択されるCDR-H3を含む。いくつかの局面において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 29のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 29の選択されるCDR-H3である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0133】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 30の選択されるCDR-H3を含む。いくつかの局面において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 30のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 30の選択されるCDR-H3である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0134】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 3の選択されるCDR-H3を含む。いくつかの局面において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 3のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 3の選択されるCDR-H3である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0135】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1を含む。いくつかの局面において、CDR-H1は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H1は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 1のCDR-H1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0136】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 2の選択されるCDR-H2を含む。いくつかの局面において、CDR-H2は、SEQ ID NO: 2のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 2の選択されるCDR-H2である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0137】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 24のCDR-H3およびSEQ ID NO: 2のCDR-H2を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 25のCDR-H3、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、およびSEQ ID NO: 1のCDR-H1を含む。いくつかの態様において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 24のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H2は、SEQ ID NO: 2のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、およびCDR-H1は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 24のCDR-H3であり; CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 2のCDR-H2であり; およびCDR-H1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 1のCDR-H1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0138】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 25のCDR-H3およびSEQ ID NO: 2のCDR-H2を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 25のCDR-H3、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、およびSEQ ID NO: 1のCDR-H1を含む。いくつかの態様において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 25のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H2は、SEQ ID NO: 2のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、およびCDR-H1は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 25のCDR-H3であり; CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 2のCDR-H2であり; およびCDR-H1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 1のCDR-H1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0139】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 26のCDR-H3およびSEQ ID NO: 2のCDR-H2を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 26のCDR-H3、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、およびSEQ ID NO: 1のCDR-H1を含む。いくつかの態様において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 26のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H2は、SEQ ID NO: 2のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、およびCDR-H1は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 26のCDR-H3であり; CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 2のCDR-H2であり; およびCDR-H1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 1のCDR-H1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0140】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 27のCDR-H3およびSEQ ID NO: 2のCDR-H2を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 27のCDR-H3、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、およびSEQ ID NO: 1のCDR-H1を含む。いくつかの態様において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 27のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H2は、SEQ ID NO: 2のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、およびCDR-H1は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 27のCDR-H3であり; CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 2のCDR-H2であり; およびCDR-H1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 1のCDR-H1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0141】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 28のCDR-H3およびSEQ ID NO: 2のCDR-H2を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 28のCDR-H3、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、およびSEQ ID NO: 1のCDR-H1を含む。いくつかの態様において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 28のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H2は、SEQ ID NO: 2のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、およびCDR-H1は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 28のCDR-H3であり; CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 2のCDR-H2であり; およびCDR-H1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 1のCDR-H1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0142】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 29のCDR-H3およびSEQ ID NO: 2のCDR-H2を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 29のCDR-H3、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、およびSEQ ID NO: 1のCDR-H1を含む。いくつかの態様において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 29のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H2は、SEQ ID NO: 2のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、およびCDR-H1は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 29のCDR-H3であり; CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 2のCDR-H2であり; およびCDR-H1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 1のCDR-H1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0143】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 30のCDR-H3およびSEQ ID NO: 2のCDR-H2を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 30のCDR-H3、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、およびSEQ ID NO: 1のCDR-H1を含む。いくつかの態様において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 30のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H2は、SEQ ID NO: 2のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、およびCDR-H1は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 30のCDR-H3であり; CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 2のCDR-H2であり; およびCDR-H1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 1のCDR-H1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0144】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 6のCDR-L3を含む。いくつかの局面において、CDR-L3は、SEQ ID NO: 6のCDR-L3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-L3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 6のCDR-L3である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0145】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 5のCDR-L2を含む。いくつかの局面において、CDR-L2は、SEQ ID NO: 5のCDR-L2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-L2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 5のCDR-L2である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0146】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 4のCDR-L1を含む。いくつかの局面において、CDR-L1は、SEQ ID NO: 4のCDR-L1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-L1は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 4のCDR-L1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0147】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 6のCDR-L3およびSEQ ID NO: 5のCDR-L2を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 6のCDR-L3、SEQ ID NO: 5のCDR-L2、およびSEQ ID NO: 4のCDR-L1を含む。いくつかの態様において、CDR-L3は、SEQ ID NO: 6のCDR-L3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L2は、SEQ ID NO: 5のCDR-L2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、およびCDR-L1は、SEQ ID NO: 4のCDR-L1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-L3は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 6のCDR-L3であり; CDR-L2は、最大1、2、3、または4個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 5のCDR-L2であり; およびCDR-L1は、最大1、2、3、4、5、または6個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 4のCDR-L1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0148】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 24のCDR-H3、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、SEQ ID NO: 1のCDR-H1、SEQ ID NO: 6のCDR-L3、SEQ ID NO: 5のCDR-L2、およびSEQ ID NO: 4のCDR-L1を含む。いくつかの態様において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 24のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H2は、SEQ ID NO: 2のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H1は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L3は、SEQ ID NO: 6のCDR-L3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L2は、SEQ ID NO: 5のCDR-L2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、およびCDR-L1は、SEQ ID NO: 4のCDR-L1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 24のCDR-H3であり; CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 2のCDR-H2であり; CDR-H1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 1のCDR-H1であり; CDR-L3は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 6のCDR-L3であり; CDR-L2は、最大1、2、3、または4個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 5のCDR-L2であり; およびCDR-L1は、最大1、2、3、4、5、または6個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 4のCDR-L1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0149】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 25のCDR-H3、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、SEQ ID NO: 1のCDR-H1、SEQ ID NO: 6のCDR-L3、SEQ ID NO: 5のCDR-L2、およびSEQ ID NO: 4のCDR-L1を含む。いくつかの態様において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 25のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H2は、SEQ ID NO: 2のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H1は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L3は、SEQ ID NO: 6のCDR-L3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L2は、SEQ ID NO: 5のCDR-L2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、およびCDR-L1は、SEQ ID NO: 4のCDR-L1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 25のCDR-H3であり; CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 2のCDR-H2であり; CDR-H1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 1のCDR-H1であり; CDR-L3は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 6のCDR-L3であり; CDR-L2は、最大1、2、3、または4個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 5のCDR-L2であり; およびCDR-L1は、最大1、2、3、4、5、または6個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 4のCDR-L1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0150】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 26のCDR-H3、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、SEQ ID NO: 1のCDR-H1、SEQ ID NO: 6のCDR-L3、SEQ ID NO: 5のCDR-L2、およびSEQ ID NO: 4のCDR-L1を含む。いくつかの態様において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 26のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H2は、SEQ ID NO: 2のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H1は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L3は、SEQ ID NO: 6のCDR-L3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L2は、SEQ ID NO: 5のCDR-L2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、およびCDR-L1は、SEQ ID NO: 4のCDR-L1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 26のCDR-H3であり; CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 2のCDR-H2であり; CDR-H1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 1のCDR-H1であり; CDR-L3は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 6のCDR-L3であり; CDR-L2は、最大1、2、3、または4個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 5のCDR-L2であり; およびCDR-L1は、最大1、2、3、4、5、または6個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 4のCDR-L1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0151】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 27のCDR-H3、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、SEQ ID NO: 1のCDR-H1、SEQ ID NO: 6のCDR-L3、SEQ ID NO: 5のCDR-L2、およびSEQ ID NO: 4のCDR-L1を含む。いくつかの態様において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 27のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H2は、SEQ ID NO: 2のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H1は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L3は、SEQ ID NO: 6のCDR-L3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L2は、SEQ ID NO: 5のCDR-L2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、およびCDR-L1は、SEQ ID NO: 4のCDR-L1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 27のCDR-H3であり; CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 2のCDR-H2であり; CDR-H1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 1のCDR-H1であり; CDR-L3は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 6のCDR-L3であり; CDR-L2は、最大1、2、3、または4個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 5のCDR-L2であり; およびCDR-L1は、最大1、2、3、4、5、または6個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 4のCDR-L1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0152】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 28のCDR-H3、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、SEQ ID NO: 1のCDR-H1、SEQ ID NO: 6のCDR-L3、SEQ ID NO: 5のCDR-L2、およびSEQ ID NO: 4のCDR-L1を含む。いくつかの態様において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 28のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H2は、SEQ ID NO: 2のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H1は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L3は、SEQ ID NO: 6のCDR-L3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L2は、SEQ ID NO: 5のCDR-L2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、およびCDR-L1は、SEQ ID NO: 4のCDR-L1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 28のCDR-H3であり; CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 2のCDR-H2であり; CDR-H1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 1のCDR-H1であり; CDR-L3は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 6のCDR-L3であり; CDR-L2は、最大1、2、3、または4個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 5のCDR-L2であり; およびCDR-L1は、最大1、2、3、4、5、または6個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 4のCDR-L1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0153】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 29のCDR-H3、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、SEQ ID NO: 1のCDR-H1、SEQ ID NO: 6のCDR-L3、SEQ ID NO: 5のCDR-L2、およびSEQ ID NO: 4のCDR-L1を含む。いくつかの態様において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 29のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H2は、SEQ ID NO: 2のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H1は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L3は、SEQ ID NO: 6のCDR-L3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L2は、SEQ ID NO: 5のCDR-L2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、およびCDR-L1は、SEQ ID NO: 4のCDR-L1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 29のCDR-H3であり; CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 2のCDR-H2であり; CDR-H1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 1のCDR-H1であり; CDR-L3は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 6のCDR-L3であり; CDR-L2は、最大1、2、3、または4個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 5のCDR-L2であり; およびCDR-L1は、最大1、2、3、4、5、または6個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 4のCDR-L1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0154】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 30のCDR-H3、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、SEQ ID NO: 1のCDR-H1、SEQ ID NO: 6のCDR-L3、SEQ ID NO: 5のCDR-L2、およびSEQ ID NO: 4のCDR-L1を含む。いくつかの態様において、CDR-H3は、SEQ ID NO: 30のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H2は、SEQ ID NO: 2のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H1は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L3は、SEQ ID NO: 6のCDR-L3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L2は、SEQ ID NO: 5のCDR-L2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、およびCDR-L1は、SEQ ID NO: 4のCDR-L1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの態様において、CDR-H3は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 30のCDR-H3であり; CDR-H2は、最大1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 2のCDR-H2であり; CDR-H1は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 1のCDR-H1であり; CDR-L3は、最大1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 6のCDR-L3であり; CDR-L2は、最大1、2、3、または4個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 5のCDR-L2であり; およびCDR-L1は、最大1、2、3、4、5、または6個のアミノ酸置換を有する、SEQ ID NO: 4のCDR-L1である。いくつかの局面において、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、本段落に記載する抗体は、本明細書において「変種」といわれる。いくつかの態様において、そのような変種は、例えば、親和性成熟、部位特異的変異導入、ランダム変異導入、または当技術分野において公知のもしくは本明細書に記載の他の任意の方法により、本明細書において提供する配列に由来する。いくつかの態様において、そのような変種は、本明細書において提供する配列に由来せず、例えば、抗体を得るための本明細書において提供される方法によって、新たに単離されうる。
【0155】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、SEQ ID NO: 24のCDR-H3、SEQ ID NO: 4のCDR-L1、SEQ ID NO: 5のCDR-L2、およびSEQ ID NO: 6のCDR-L3を含む。
【0156】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、SEQ ID NO: 25のCDR-H3、SEQ ID NO: 4のCDR-L1、SEQ ID NO: 5のCDR-L2、およびSEQ ID NO: 6のCDR-L3を含む。
【0157】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、SEQ ID NO: 26のCDR-H3、SEQ ID NO: 4のCDR-L1、SEQ ID NO: 5のCDR-L2、およびSEQ ID NO: 6のCDR-L3を含む。
【0158】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、SEQ ID NO: 27のCDR-H3、SEQ ID NO: 4のCDR-L1、SEQ ID NO: 5のCDR-L2、およびSEQ ID NO: 6のCDR-L3を含む。
【0159】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、SEQ ID NO: 28のCDR-H3、SEQ ID NO: 4のCDR-L1、SEQ ID NO: 5のCDR-L2、およびSEQ ID NO: 6のCDR-L3を含む。
【0160】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、SEQ ID NO: 29のCDR-H3、SEQ ID NO: 4のCDR-L1、SEQ ID NO: 5のCDR-L2、およびSEQ ID NO: 6のCDR-L3を含む。
【0161】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、SEQ ID NO: 1のCDR-H1、SEQ ID NO: 2のCDR-H2、SEQ ID NO: 30のCDR-H3、SEQ ID NO: 4のCDR-L1、SEQ ID NO: 5のCDR-L2、およびSEQ ID NO: 6のCDR-L3を含む。
【0162】
Fc領域
さまざまな免疫グロブリンのFc領域の構造、およびそこに含まれるグリコシル化部位は当技術分野において公知である。Schroeder and Cavacini, J. Allergy Clin. Immunol., 2010, 125:S41-52を参照されたく、これは参照によりその全体が組み入れられる。Fc領域は、天然に存在するFc領域、または当技術分野においてもしくは本開示の他の箇所に記載するように改変されたFc領域でありうる。
【0163】
本明細書において特別の定めのない限り、Fc領域または定常領域におけるアミノ酸残基の付番は、Kabat et al, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD, 1991に記載されているように、EUインデックスとも呼ばれる、EU付番システムによるものである。本明細書において用いられる二量体Fcの「Fcポリペプチド」は、二量体Fcドメインを形成する2つのポリペプチドのうちの1つ、すなわち、安定な自己会合が可能な免疫グロブリン重鎖のC末端定常領域を含むポリペプチドをいう。例えば、二量体IgG FcのFcポリペプチドは、IgG CH2およびIgG CH3定常ドメイン配列を含む。FcはIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMクラスのものであってもよく、これらのうちのいくつかはサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分けられてもよい。
【0164】
「Fc受容体」および「FcR」という用語は、抗体のFc領域に結合する受容体を記載するために用いられる。例えば、FcRは天然配列のヒトFcRであることができる。一般的に、FcRは、IgG抗体と結合するもの(ガンマ受容体)であり、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIサブクラスの受容体を、これらの受容体の対立遺伝子変種およびオルタナティブスプライシング型を含めて、含む。FcγRII受容体はFcγRIIA (「活性化受容体」)およびFcγRIIB (「阻害受容体」)を含み、これらは、主にその細胞質ドメインが異なる類似のアミノ酸配列を有する。他のアイソタイプの免疫グロブリンも、ある種のFcRによって結合されうる(例えば、Janeway et al., Immuno Biology: the immune system in health and disease, (Elsevier Science Ltd., NY) (4th ed., 1999)を参照されたい)。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメイン中に免疫受容体チロシン活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motif; ITAM)を含む。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメイン中に免疫受容体チロシン阻害モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based inhibition motif; ITIM)を含む(Daeron, Annu. Rev. Immunol. 15:203-234 (1997)に概説されている)。FcRは、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991); Capel et al., Immunomethods 4:25-34 (1994); およびde Haas et al., J. Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995)に概説されている。他のFcRは、将来に同定されるものを含め、本明細書において「FcR」という用語に包含される。この用語は、母親由来IgGの胎児への移行に関与する新生児受容体FcRnも含む(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976); およびKim et al., J. Immunol. 24:249 (1994))。
【0165】
CH2ドメインの修飾はFcRのFcへの結合に影響を与えうる。異なるFcガンマ受容体に対するFcの親和性を選択的に改変するための、Fc領域におけるいくつかのアミノ酸修飾が当技術分野において公知である。いくつかの局面において、Fcは、Fc-ガンマ受容体の選択的結合を促進するために1つまたは複数の修飾を含む。
【0166】
FcRのFcへの結合を変化させる例示的な変異を以下に列挙する:
S298A/E333A/K334A、S298A/E333A/K334A/K326A (Lu Y, Vernes JM, Chiang N, et al. J Immunol Methods. 2011 Feb 28;365(1-2):132-41);
F243L/R292P/Y300L/V305I/P396L、F243L/R292P/Y300L/L235V/P396L
(Stavenhagen JB, Gorlatov S, Tuaillon N, et al. Cancer Res. 2007 Sep 15;67(18):8882-90; Nordstrom JL, Gorlatov S, Zhang W, et al. Breast Cancer Res. 2011 Nov 30;13(6):R123);
F243L (Stewart R, Thom G, Levens M, et al. Protein Eng Des Sel. 2011 Sep;24(9):671-8.)、S298A/E333A/K334A (Shields RL, Namenuk AK, Hong K, et al. J Biol Chem. 2001 Mar 2;276(9):6591-604);
S239D/I332E/A330L、S239D/I332E (Lazar GA, Dang W, Karki S, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2006 Mar 14;103(11):4005-10);
S239D/S267E、S267E/L328F (Chu SY, Vostiar I, Karki S, et al. Mol Immunol. 2008 Sep;45(15):3926-33);
S239D/D265S/S298A/I332E、S239E/S298A/K326A/A327H、G237F/S298A/A330L/I332E、S239D/I332E/S298A、S239D/K326E/A330L/I332E/S298A、G236A/S239D/D270L/I332E、S239E/S267E/H268D、L234F/S267E/N325L、G237F/V266L/S267D、ならびに参照により本明細書に組み入れられるWO2011/120134およびWO2011/120135に列挙されている他の変異。Therapeutic Antibody Engineering (William R. Strohl and Lila M. Strohl, Woodhead Publishing series in Biomedicine No 11, ISBN 1 907568 37 9, Oct 2012による)には、283頁に変異が列挙されている。
【0167】
いくつかの態様において、本明細書に記載する抗体は、エフェクタ機能を媒介するその能力を改善するための修飾を含む。そのような修飾は当技術分野において公知であり、脱フコシル化、または活性化受容体に対する、主に、ADCCの場合FCGR3a、およびCDCの場合C1qに対するFcの親和性の操作を含む。以下の表Bは、エフェクタ機能操作に関する文献に報告されているさまざまな設計を要約したものである。
【0168】
アミノ酸配列を改変することなく、Fcグリコシル化部位(Asn 297 EU付番)にフコースをほとんどまたは全く有しない抗体を産生する方法は、当技術分野において周知である。GlymaX (登録商標)技術(ProBioGen AG)は、抗体産生のために用いられる細胞へのフコース生合成の細胞経路を偏向させる酵素の遺伝子の導入に基づく。これは、抗体産生細胞によるN-結合型抗体糖鎖部分への糖「フコース」の付加を抑止する。(von Horsten et al. (2010) Glycobiology. 2010 Dec; 20 (12):1607-18。フコシル化のレベルが低下した抗体を得るための別の手法は、米国特許第8,409,572号において見出すことができ、これには抗体産生用の細胞株を、より低レベルの抗体フコシル化をもたらすその能力について選択することが教示されており、抗体は完全に脱フコシル化することができ(検出可能なフコースが含まれていないことを意味する)、またはそれらは部分的に脱フコシル化することができ、これは単離された抗体が哺乳動物発現系により産生された類似の抗体について通常検出されるフコースの量の95%未満、85%未満、75%未満、65%未満、55%未満、45%未満、35%未満、25%未満、15%未満または5%未満を含有することを意味する。
【0169】
したがって、1つの態様において、本明細書に記載する抗体は、改善されたエフェクタ機能を付与する表Bに記載されるような1つまたは複数のアミノ酸修飾を含む二量体Fcを含むことができる。別の態様において、抗体は、エフェクタ機能を改善するために脱フコシル化することができる。
【0170】
【0171】
FcgRおよび/または補体結合および/またはエフェクタ機能を低減するFc修飾は、当技術分野において公知である。最近の刊行物には、エフェクタ活性が低減またはサイレンシングされた抗体を操作するために使用された戦略が記載されている(Strohl, WR (2009), Curr Opin Biotech 20:685-691、およびStrohl, WR and Strohl LM, “Antibody Fc engineering for optimal antibody performance” In Therapeutic Antibody Engineering, Cambridge: Woodhead Publishing (2012), pp 225-249を参照のこと)。これらの戦略には、グリコシル化の修飾によるエフェクタ機能の低減、IgG2/IgG4足場の使用、またはFcのヒンジ領域もしくはCH2領域における変異の導入が含まれる。例えば、米国特許出願公開第2011/0212087号(Strohl)、国際特許出願公開第WO 2006/105338号(Xencor)、米国特許出願公開第2012/0225058号(Xencor)、米国特許出願公開第2012/0251531号(Genentech)、およびStrop et al ((2012) J. Mol. Biol. 420: 204-219)には、FcへのFcgRまたは補体の結合を低減する特異的修飾が記載されている。
【0172】
FcへのFcgRまたは補体の結合を低減する公知のアミノ酸修飾の具体的な非限定的例としては、以下の表Cにおいて同定されるものが挙げられる。
【0173】
(表C)FcへのFcgRまたは補体の結合を低減する修飾
【0174】
アミノ酸配列を改変することなく、Fcグリコシル化部位(Asn 297 EU付番)にフコースをほとんどまたは全く有しない抗体を産生する方法は、当技術分野において周知である。GlymaxX (登録商標)技術(ProBioGen AG)は、抗体産生のために用いられる細胞へのフコース生合成の細胞経路を偏向させる酵素の遺伝子の導入に基づく。これは、抗体産生細胞によるN-結合型抗体糖鎖部分への糖「フコース」の付加を抑止する。(von Horsten et al. (2010) Glycobiology. 2010 Dec; 20 (12):1607-18.) 脱フコシル化抗体を産生できる細胞株の例としては、細菌オキシドレダクターゼGDP-6-デオキシ-D-リキソ-4-ヘキシロースレダクターゼ(RMD)の安定的な過剰発現を有するCHO-DG44 (Henning von Horsten et al., Glycobiol 2010, 20:1607-1618を参照のこと)またはタンパク質フコシル化が欠損しているLec13 CHO細胞(Ripka et al., Arch. Biochem. Biophys., 1986, 249:533-545; 米国特許出願公開第2003/0157108号; WO 2004/056312を参照のこと; これらの各々は参照によりその全体が組み入れられる)、およびアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子またはFUT8ノックアウトCHO細胞などの、ノックアウト細胞株(Yamane-Ohnuki et al., Biotech. Bioeng., 2004, 87: 614-622; Kanda et al., Biotechnol. Bioeng., 2006, 94:680-688; およびWO 2003/085107を参照のこと; これらの各々は参照によりその全体が組み入れられる)が挙げられる。フコシル化のレベルが低下した抗体を得るための別の手法は、米国特許第8,409,572号において見出すことができ、これには抗体産生用の細胞株を、より低レベルの抗体フコシル化をもたらすその能力について選択することが教示されている。
【0175】
脱フコシル化抗体を産生できる細胞株の例としては、細菌オキシドレダクターゼGDP-6-デオキシ-D-リキソ-4-ヘキシロースレダクターゼ(RMD)の安定的な過剰発現を有するCHO-DG44 (Henning von Horsten et al., Glycobiol 2010, 20:1607-1618を参照のこと)またはタンパク質フコシル化が欠損しているLec13 CHO細胞(Ripka et al., Arch. Biochem. Biophys., 1986, 249:533-545; 米国特許出願公開第2003/0157108号; WO 2004/056312を参照のこと; これらの各々は参照によりその全体が組み入れられる)、およびアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子またはFUT8ノックアウトCHO細胞などの、ノックアウト細胞株(Yamane-Ohnuki et al., Biotech. Bioeng., 2004, 87: 614-622; Kanda et al., Biotechnol. Bioeng., 2006, 94:680-688; およびWO 2003/085107を参照のこと; これらの各々は参照によりその全体が組み入れられる)が挙げられる。
【0176】
抗体は完全に脱フコシル化することができ(検出可能なフコースが含まれていないことを意味する)、またはそれらは部分的に脱フコシル化することができ、これは単離された抗体が哺乳動物発現系により産生された類似の抗体について通常検出されるフコースの量の95%未満、85%未満、75%未満、65%未満、55%未満、45%未満、35%未満、25%未満、15%未満または5%未満を含有することを意味する。
【0177】
いくつかの局面において、本明細書において提供される抗体は、天然に存在するIgG1ドメインと比較してAsn 297位のフコース含量が低減したIgG1ドメインを含む。そのようなFcドメインは改善されたADCCを有することが知られている。Shields et al., J. Biol. Chem., 2002, 277:26733-26740を参照されたく、これは参照によりその全体が組み入れられる。いくつかの局面において、そのような抗体は、Asn 297位にフコースを含まない。フコースの量は、例えば、参照により全体が組み入れられるWO 2008/077546に記載されているような、任意の適当な方法を用いて決定されうる。
【0178】
特定の態様において、本明細書において提供される抗体は、Fc領域の位置番号298、333、および334のうちの1つまたは複数での置換のような、ADCCを改善する1つまたは複数のアミノ酸置換を有するFc領域を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、参照により全体が組み入れられるLazar et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2006,103:4005-4010に記載されているような、位置番号239、332、および330での1つまたは複数のアミノ酸置換を有するFc領域を含む。
【0179】
本明細書において提供される抗体に組み入れられうる他の例示的なグリコシル化変種は、例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号、同第2004/0093621号、同第2003/0157108号、同第2003/0115614号、同第2002/0164328号、同第2004/0093621号、同第2004/0132140号、同第2004/0110704号、同第2004/0110282号、同第2004/0109865号; 国際特許出願公開第2000/61739号、同第2001/29246号、同第2003/085119号、同第2003/084570号、同第2005/035586号、同第2005/035778号; 同第2005/053742号、同第2002/031140号; Okazaki et al., J. Mol. Biol., 2004, 336:1239-1249; およびYamane-Ohnuki et al., Biotech. Bioeng., 2004, 87: 614-622に記載されており; これらの各々は参照によりその全体が組み入れられる。
【0180】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、Fc領域に結合したオリゴ糖中の少なくとも1つのガラクトース残基を有するFc領域を含む。そのような抗体変種は、改善されたCDC機能を有しうる。そのような抗体変種の例は、例えば、WO 1997/30087; WO 1998/58964; およびWO 1999/22764に記載されており; これらの各々は参照によりその全体が組み入れられる。
【0181】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、C1q結合および/またはCDCを改善または減弱する1つまたは複数の改変を含む。米国特許第6,194,551号; WO 99/51642; およびIdusogie et al., J. Immunol., 2000, 164:4178-4184を参照されたく; これらの各々は参照によりその全体が組み入れられる。
【0182】
結合
分子XのそのパートナーYに対する親和性は、解離平衡定数(KD)によって表すことができる。解離平衡定数に寄与する動力学的構成要素は、以下でさらに詳細に記載する。親和性は、表面プラズモン共鳴(SPR)技術(例えば、BIACORE(登録商標))または生体層干渉法(例えば、FORTEBIO(登録商標))などの、本明細書に記載されているものを含めて、当技術分野において公知の一般的な方法によって測定することができる。
【0183】
標的分子への抗体の結合に関して、特定の抗原(例えば、ポリペプチド標的)または特定の抗原上のエピトープに「結合する」、「特異的に結合すること」、「特異的に結合する」、「対して特異的」、「選択的に結合する」、および「対して選択的」という用語は、非特異的または非選択的な相互作用(例えば、非標的分子との)とは測定可能に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、標的分子への結合を測定し、それを非標的分子への結合と比較することにより測定することができる。特異的結合は、標的分子上で認識されるエピトープを模倣した対照分子との競合により決定することもできる。その場合、標的分子への抗体の結合が対照分子によって競合的に阻害されれば、特異的結合が示唆される。いくつかの態様において、非標的分子に対するフィブリン抗体の親和性は、フィブリンに対する親和性の約50%未満である。いくつかの態様において、非標的分子に対するフィブリン抗体の親和性は、フィブリンに対する親和性の約40%未満である。いくつかの態様において、非標的分子に対するフィブリン抗体の親和性は、フィブリンに対する親和性の約30%未満である。いくつかの態様において、非標的分子に対するフィブリン抗体の親和性は、フィブリンに対する親和性の約20%未満である。いくつかの態様において、非標的分子に対するフィブリン抗体の親和性は、フィブリンに対する親和性の約10%未満である。いくつかの態様において、非標的分子に対するフィブリン抗体の親和性は、フィブリンに対する親和性の約1%未満である。いくつかの態様において、非標的分子に対するフィブリン抗体の親和性は、フィブリンに対する親和性の約0.1%未満である。
【0184】
2つまたはそれ以上の抗体という文脈の中で本明細書において用いられる場合、「と競合する」または「と交差競合する」という用語は、2つまたはそれ以上の抗体が抗原(例えば、フィブリン)への結合について競合することを示す。1つの例示的なアッセイでは、フィブリンは表面にコーティングされ、第1のフィブリン抗体と接触され、その後に第2のフィブリン抗体が添加される。別の例示的なアッセイでは、第1のフィブリン抗体が表面にコーティングされ、フィブリンと接触され、その後に第2のフィブリン抗体が添加される。いずれのアッセイにおいても、第1のフィブリン抗体の存在が第2のフィブリン抗体の結合を低減する場合、抗体は互いに競合する。「と競合する」という用語は、1つの抗体が別の抗体の結合を低減するが、抗体を逆の順序で添加される場合には競合が観察されない抗体の組み合わせも含む。しかしながら、いくつかの態様において、第1および第2の抗体は、添加される順序に関係なく、互いの結合を阻害する。いくつかの態様において、1つの抗体は競合結合アッセイにおいて測定された場合、その抗原への別の抗体の結合を少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%だけ低減する。当業者は、フィブリンに対する抗体の親和性および抗体の価数に基づき競合アッセイにおいて用いられる抗体の濃度を選択することができる。この定義のなかで記載したアッセイは例示であり、当業者は、抗体が互いに競合するかどうかを決定するために任意の適当なアッセイを利用することができる。適当なアッセイは、例えば、Cox et al., “Immunoassay Methods,” in Assay Guidance Manual [Internet], Updated December 24, 2014 (ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK92434/; accessed September 29, 2015); Silman et al., Cytometry, 2001, 44:30-37; およびFinco et al., J. Pharm. Biomed. Anal., 2011, 54:351-358に記載されており; これらの各々は参照によりその全体が組み入れられる。
【0185】
過剰の試験抗体(例えば、少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、または100倍)が競合結合アッセイにおいて測定された場合、例えば、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%だけ参照抗体の結合を阻害または遮断するなら、試験抗体は参照抗体と競合する。競合アッセイにより同定される抗体(競合抗体)は、参照抗体と同じエピトープに結合する抗体、および立体障害が起こるために参照抗体によって結合されるエピトープに十分に近い隣接エピトープに結合する抗体を含む。例えば、本明細書に記載する第1の抗体とフィブリンへの結合について競合する第2の競合抗体を同定することができる。ある場合には、第2の抗体は競合結合アッセイにおいて測定された場合、例えば、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%だけ第1の抗体の結合を遮断または阻害することができる。ある場合には、第2の抗体は50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%超だけ第1の抗体に取って代わることができる。
【0186】
いくつかの態様において、抗フィブリン抗体は、がん組織外に存在する骨髄系細胞に実質的に結合しない。いくつかの態様において、抗フィブリン抗体は、がん組織内に存在する刺激性骨髄系細胞に実質的に結合しない。
【0187】
いくつかの態様において、抗フィブリン抗体は、ヒトフィブリンのフィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインの残基γ377~395 (SEQ ID NO: 31)に結合する。結合エピトープは、数値範囲内の残基(例えば、フィブリンの残基377~395)、各範囲の開始残基(例えば、ヒトフィブリンの残基377~394)および各範囲の終了残基(例えば、ヒトフィブリンの残基378~395)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0188】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、Biacoreアッセイによって測定された場合、約0.001、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、1.95、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、または10×10-6 M以下のKDで、ヒトフィブリンに結合する。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体のKDは、Biacoreアッセイによって測定された場合、約0.001~0.01、0.01~0.1、0.01~0.05、0.05~0.1、0.1~0.5、0.5~1、0.25~0.75、0.25~0.5、0.5~0.75、0.75~1、0.75~2、1.1~1.2、1.2~1.3、1.3~1.4、1.4~1.5、1.5~1.6、1.6~1.7、1.7~1.8、1.8~1.9、1.9~2、1~2、1~5、2~7、3~8、3~5、4~6、5~7、6~8、7~9、7~10、または5~10×10-6 Mである。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、約1×10-5 M、1×10-6 M、1×10-7 M、1×10-8 M、または1×10-9 M以下のKDで、ヒトフィブリンに結合する。
【0189】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、Biacoreアッセイによって測定された場合、約10、9、8、7、6、5、4.5、4、3.5、3、2.5、2、1.98、1.95、1.9、1.85、1.8、1.75、1.7、1.65、1.6、1.55、1.50、1.45、1.4、1.3、1.2、1.1、1、0.9、0.85、0.8、0.75、0.7、0.65、0.6、0.55、0.5、0.45、0.4、0.35、0.3、0.25、0.2、0.15、0.1、0.05、0.01、0.005、0.001、0.0005、もしくは0.0001×10-5 M以下、またはそれよりも小さいKDで、ヒトフィブリンに結合する。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、Biacoreアッセイによって測定された場合、5~3、4~2、3~1、1.9~1.8、1.8~1.7、1.7~1.6、1.6~1.5、1.9~1.5、1.5~1、1~0.8、1~0.5、0.9~0.6、0.7~0.4、0.6~0.2、0.5~0.3、0.3~0.2、0.2~0.1、0.1~0.01、0.01~0.001、または0.001~0.0001×10-5 MのKDで、ヒトフィブリンに結合する。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、Biacoreアッセイによって測定された場合、約10、9.56、9.5、9.0、8.88、8.84、8.5、8、7.5、7.32、7、6.5、6、5.5、5、4.5、4、3.5、3、2.5、2、1.5、もしくは1×10-4 (1/s)以下、またはそれよりも小さいKdで、ヒトフィブリンに結合する。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、Biacoreアッセイによって測定された場合、7~10、7~8、8~9、9~10、7~7.5、7.5~8、8.~8.5、8.5~9、9~9,5、または9.5~10×10-4 (1/s)のKdでヒトフィブリンに結合する。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、Biacoreアッセイによって測定された場合、約4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、45、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、7、8、9、もしくは10×105 (1/Ms)以上、またはそれよりも大きいKaで、ヒトフィブリンに結合する。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、Biacoreアッセイによって測定された場合、4~7、4~4.5、4.5~5、5~5.5、5.5~6、6~6.5、または6.5~7、7~8、8~9、または9~10×105 (1/Ms)のKaでヒトフィブリン(FIBRIN)に結合する。
【0190】
機能
「エフェクタ機能」は抗体のFc領域によって媒介される生物学的活性をいい、この活性は抗体アイソタイプに依って変わりうる。抗体のエフェクタ機能の例としては、受容体リガンドの遮断、受容体活性化作用、または拮抗作用、補体依存性細胞傷害(CDC)を活性化するためのC1q結合、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を活性化するためのFc受容体結合、および抗体依存性細胞食作用(ADCP)が挙げられる。いくつかの態様において、本明細書に記載するフィブリン抗体のエフェクタ機能は拮抗作用であり、フィブリンへのMac-1受容体結合を遮断する。
【0191】
薬学的組成物
本出願は、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤とともに本明細書に記載する抗体のいずれか1つまたは複数を含む薬学的組成物を含めて、抗体を含む組成物を提供する。いくつかの態様において、組成物は無菌である。薬学的組成物は通常、有効量の抗体を含む。
【0192】
これらの組成物は、本明細書において開示される抗体の1つまたは複数に加えて、薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝液、安定剤、または当業者に周知の他の材料を含むことができる。そのような材料は非毒性であるべきであり、活性成分の有効性を妨げるべきではない。担体または他の材料の的確な性質は、投与経路、例えば経口、静脈内、皮膚または皮下、鼻腔、筋肉内、腹腔内経路に依存しうる。
【0193】
経口投与用の薬学的組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤または液剤の形態とすることができる。錠剤は、ゼラチンまたはアジュバントなどの固体担体を含むことができる。液体薬学的組成物は通常、水、石油、動物油または植物油、鉱油または合成油などの液体担体を含む。生理的食塩水、デキストロースもしくは他の糖類溶液、またはグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールを含めることができる。
【0194】
静脈内、皮膚もしくは皮下注射、または罹患部位での注射のために、活性成分は、発熱性物質不含であり、適当なpH、等張性および安定性を有する非経口的に許容される水溶液の形態であろう。当業者は、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、乳酸加リンゲル注射液などの等張性ビヒクルを用いて適当な溶液を十分に調製することができる。必要に応じて、保存剤、安定剤、緩衝剤、抗酸化剤、および/または他の添加剤を含めることができる。
【0195】
個体の投与のために与えられる抗フィブリン抗体は、好ましくは「治療的有効量」または「予防的有効量」(場合により、予防は治療と考えることもできるが)であり、これは個体に利益を示すのに十分である。投与される実際の量、ならびに投与の速度および経過は、処置されるタンパク質凝集疾患の性質および重症度に依存するであろう。処置の処方、例えば投与量などの決定は、一般開業医および他の医師の責任の範囲内であり、通常、処置される障害、個々の患者の状態、送達部位、投与方法、および開業医に知られている他の要因が考慮される。上記の技法およびプロトコルの例は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A. (ed), 1980において見出すことができる。
【0196】
組成物は、処置される状態に応じて、単独でまたは他の処置との組み合わせで、同時にまたは連続的に投与することができる。
【0197】
方法
調製方法
本明細書に記載する抗体は、例えば米国特許第4,816,567号に記載されているような、組み換え法および組成物を用いて産生することができる。1つの態様において、本明細書に記載する抗体をコードする単離された核酸が提供される。そのような核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列および/もしくはVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖および/もしくは重鎖)、または単一ドメイン抗体のVHHを含むアミノ酸配列をコードしうる。さらなる態様において、そのような核酸を含む1つまたは複数のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。1つの態様において、核酸はマルチシストロン性ベクターにおいて提供される。さらなる態様において、そのような核酸を含む宿主細胞が提供される。そのような1つの態様において、宿主細胞は、(1) 抗体のVLを含むアミノ酸配列および抗原結合ポリペプチド構築物のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、または(2) 抗原結合ポリペプチド構築物のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクターおよび抗原結合ポリペプチド構築物のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクターを含む(例えば、それらのベクターで形質転換されている)。1つの態様において、宿主細胞は、真核細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはヒト胚性腎臓(HEK)細胞、またはリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。1つの態様において、抗体を作製する方法が提供され、該方法は、抗体の発現に適した条件下で、上記のように抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養する段階、および任意で宿主細胞(または宿主細胞培地)から抗体を回収する段階を含む。
【0198】
抗体の組み換え産生の場合、例えば、上記のような抗体をコードする核酸を単離し、宿主細胞におけるさらなるクローニングおよび/または発現のための1つまたは複数のベクターに挿入する。そのような核酸は、従来の手順を用いて(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)容易に単離および配列決定されうる。
【0199】
ヘテロ多量体またはその変種が宿主細胞によって組み換え産生される場合、タンパク質は、特定の態様において、細胞の乾燥重量の約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、約5%、約4%、約3%、約2%もしくは約1%、またはそれ未満で存在する。ヘテロ多量体またはその変種が宿主細胞によって組み換え産生される場合、タンパク質は、特定の態様において、細胞の乾燥重量の約5 g/L、約4 g/L、約3 g/L、約2 g/L、約1 g/L、約750 mg/L、約500 mg/L、約250 mg/L、約100 mg/L、約50 mg/L、約10 mg/L、もしくは約1 mg/L、またはそれ未満で培地中に存在する。特定の態様において、本明細書に記載する方法によって産生される「実質的に精製された」ヘテロ多量体は、SDS/PAGE分析、RP-HPLC、SEC、およびキャピラリー電気泳動などの適切な方法によって決定された場合、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%の純度レベル、具体的には、少なくとも約75%、80%、85%の純度レベル、およびさらに具体的には、少なくとも約90%の純度レベル、少なくとも約95%の純度レベル、少なくとも約99%またはそれ以上の純度レベルを有する。
【0200】
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現に適した宿主細胞は、本明細書に記載する原核細胞または真核細胞を含む。
【0201】
組み換え宿主細胞、または宿主細胞は、挿入のために用いられる方法、例えば、直接取り込み、形質導入、f-交配、または組み換え宿主細胞を作り出すための当技術分野において公知の他の方法に関係なく、外因性ポリヌクレオチドを含む細胞である。外来性ポリヌクレオチドは、例えば、プラスミドなどの非組み込みベクターとして維持されてもよく、あるいは宿主ゲノムに組み込まれてもよい。宿主細胞はCHO、CHOの派生株、NS0、Sp2O、CV-1、VERO-76、HeLa、HepG2、Per.C6、またはBHKを含むことができる。
【0202】
例えば、抗体は、特にグリコシル化およびFcエフェクタ機能が必要とされない場合、細菌中で産生されてもよい。細菌中での抗体断片およびポリペプチドの発現の場合、例えば、米国特許第5,648,237号、同第5,789,199号、および同第5,840,523号を参照されたい。(大腸菌(E. coli)における抗体断片の発現について記載している、Charlton, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, N.J., 2003), pp. 245-254も参照されたい。)発現後、抗体は細菌細胞ペーストから可溶性画分中に単離されてもよく、さらに精製することができる。
【0203】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母菌などの真核微生物は、抗体をコードするベクターに適したクローニングまたは発現宿主であり、グリコシル化経路が「ヒト化」されていて、一部または完全にヒトグリコシル化パターンを持つ抗体の産生をもたらす真菌および酵母株を含む。Gerngross, Nat. Biotech. 22:1409-1414 (2004)、およびLi et al., Nat. Biotech. 24:210-215 (2006)を参照されたい。
【0204】
グリコシル化抗体の発現に適した宿主細胞はまた、多細胞生物(無脊椎動物および脊椎動物)に由来する。無脊椎動物細胞の例としては、植物および昆虫細胞が挙げられる。昆虫細胞とともに、特にスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションのために用いられうる多数のバキュロウイルス株が同定されている。
【0205】
植物細胞培養物を宿主として利用することもできる。例えば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、および同第6,417,429号(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術について記載している)を参照されたい。
【0206】
脊椎動物細胞が宿主として用いられてもよい。例えば、浮遊状態で増殖するように適合される哺乳動物細胞株が有用でありうる。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7); ヒト胚性腎臓株(例えば、Graham et al., J. Gen Virol. 36:59 (1977)に記載されているような293または293細胞); ベビーハムスター腎臓細胞(BHK); マウスセルトリ細胞(例えば、Mather, Biol. Reprod. 23:243-251 (1980)に記載されているようなTM4細胞); サル腎臓細胞(CV1); アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76); ヒト子宮頸がん細胞(HELA); イヌ腎臓細胞(MDCK; バッファローラット肝細胞(BRL 3A); ヒト肺細胞(W138); ヒト肝細胞(Hep G2); マウス乳腺腫瘍(MMT 060562); 例えば、Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982)に記載されているようなTRI細胞; MRC 5細胞; およびFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株は、DHFR-CHO細胞を含む、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980)); ならびにY0、NS0およびSp2/0などの骨髄腫細胞株を含む。抗体産生に適したある特定の哺乳動物宿主細胞株の概説については、例えば、Yazaki and Wu, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, N.J.), pp. 255-268 (2003)を参照されたい。
【0207】
1つの態様において、本明細書に記載する抗体は、所定の比率で、抗体をコードする核酸により少なくとも1つの安定な哺乳動物細胞をトランスフェクトする段階; および少なくとも1つの哺乳動物細胞において核酸を発現させる段階を含む方法により、安定な哺乳動物細胞において産生される。いくつかの態様において、核酸の所定の比率は、一過性トランスフェクション実験において、発現産物中の抗体の割合が最も高くなる入力核酸の相対比率を決定するために決定される。
【0208】
いくつかの態様において、本明細書に記載するような安定な哺乳動物細胞において抗体を産生する方法があり、ここで少なくとも1つの安定な哺乳動物細胞の発現産物は、単量体の重鎖もしくは軽鎖ポリペプチド、または他の抗体と比較して、より大きな割合の所望のグリコシル化抗体を含む。
【0209】
いくつかの態様において、本明細書に記載する安定な哺乳動物細胞においてグリコシル化抗体を産生する方法があり、該方法は、所望のグリコシル化抗体を同定および精製する段階を含む。いくつかの態様において、該同定は、液体クロマトグラフィーおよび質量分析の一方または両方によるものである。
【0210】
必要に応じて、発現後に抗体を精製または単離することができる。タンパク質は、当業者に公知の種々の方法で単離または精製されうる。標準的な精製方法は、FPLCおよびHPLCなどのシステムを用いて大気圧または高圧で行われる、イオン交換、疎水性相互作用、アフィニティー、サイジングまたはゲルろ過、および逆相を含め、クロマトグラフィー技法を含む。精製方法は、電気泳動技法、免疫学的技法、沈殿技法、透析技法、およびクロマトフォーカシング技法も含む。タンパク質濃縮と組み合わせた限外ろ過および透析ろ過技法も有用である。当技術分野において周知のように、種々の天然タンパク質がFcおよび抗体に結合し、これらのタンパク質は抗体の精製のために本発明において用途を見つけることができる。例えば、細菌プロテインAおよびGはFc領域に結合する。同様に、細菌プロテインLはいくつかの抗体のFab領域に結合する。精製は、特定の融合パートナーによって可能になることが多い。例えば、GST融合体が利用される場合にはグルタチオン樹脂を用いて、Hisタグが利用される場合にはNi+2アフィニティークロマトグラフィーを用いて、またはflagタグが使用される場合には固定化抗flag抗体を用いて、抗体が精製されうる。適当な精製技法における一般的なガイダンスについては、例えば、参照により全体が組み入れられるProtein Purification: Principles and Practice, 3rd Ed., Scopes, Springer-Verlag, NY, 1994を参照されたい。必要な精製の程度は抗体の用途に依って変わる。ある場合には、精製が不要である。
【0211】
特定の態様において、抗体はQ-セファロース、DEAEセファロース、poros HQ、poros DEAF、Toyopearl Q、Toyopearl QAE、Toyopearl DEAE、Resource/Source QおよびDEAE、Fractogel QおよびDEAEカラムでのクロマトグラフィーを含むが、これらに限定されない、陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて精製される。
【0212】
特定の態様において、本明細書に記載するタンパク質は、SPセファロース、CMセファロース、poros HS、poros CM、Toyopearl SP、Toyopearl CM、Resource/Source SおよびCM、Fractogel SおよびCMカラム、ならびにそれらの等価物および同等物を含むが、これらに限定されない、陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて精製される。
【0213】
さらに、本明細書に記載する抗体は、当技術分野において公知の技法を用いて化学的に合成することができる(例えば、Creighton, 1983, Proteins: Structures and Molecular Principles, W. H. Freeman & Co., N.Y and Hunkapiller et al., Nature, 310:105-111 (1984)を参照のこと)。例えば、ポリペプチドの断片に対応するポリペプチドは、ペプチド合成機の使用により合成することができる。さらに、所望により、非古典的アミノ酸または化学的アミノ酸類似体をポリペプチド配列に置換または付加として導入することができる。非古典的アミノ酸は、一般的なアミノ酸のD-異性体、2,4ジアミノ酪酸、アルファ-アミノイソ酪酸、4アミノ酪酸、Abu、2-アミノ酪酸、g-Abu、e-Ahx、6アミノヘキサン酸、Aib、2-アミノイソ酪酸、3-アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、アラニン、フルオロ-アミノ酸、デザイナーアミノ酸、例えばメチルアミノ酸、C-メチルアミノ酸、N-メチルアミノ酸、およびアミノ酸類似体を一般に含むが、これらに限定されることはない。さらに、アミノ酸は、D (右旋性)またはL (左旋性)であることができる。
【0214】
使用方法
1つの局面において、本出願は、フィブリンまたはフィブリノゲンγCドメインへのミクログリア接着の阻害をもたらす、ヒト抗体またはヒト化抗体などの、抗フィブリン抗体とフィブリンを接触させる方法を提供する。
【0215】
1つの局面において、本出願は、神経系の変性障害の処置のために、本明細書に記載する単離された抗フィブリン抗体を使用する方法を提供する。特定の局面において、本明細書に記載するのは、神経系の変性障害を処置するための方法であり、該方法は、本明細書に記載する抗フィブリン抗体または抗フィブリン抗体を含む薬学的組成物の治療的有効量を、哺乳動物対象に投与する段階を含む。特定の態様において、本出願は、多発性硬化症、脊髄損傷、脳卒中、およびアルツハイマー病からなる群より選択される神経系の変性障害を処置する方法を提供する。
【0216】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、フィブリンへのMac-1結合またはフィブリノゲンとのMac-1結合に関連する病態を処置するための方法であり、該方法は、本明細書に記載する単離された抗フィブリン抗体または単離された抗フィブリン抗体を含む薬学的組成物の治療的有効量を、哺乳動物対象に投与する段階を含む。
【0217】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、ミクログリア活性化を阻害する方法であり、該方法は、本明細書に記載する単離された抗フィブリン抗体または単離された抗体を含む薬学的組成物の治療的有効量を、哺乳動物対象に投与する段階を含む。
【0218】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、神経系の変性障害を予防する方法であり、該方法は、本明細書に記載する単離された抗フィブリン抗体または単離された抗フィブリン抗体を含む薬学的組成物の治療的有効量を、哺乳動物対象に投与する段階を含む。特定の態様において、本出願は、多発性硬化症、脊髄損傷、脳卒中、およびアルツハイマー病からなる群より選択される神経系の変性障害を予防する方法を提供する。
【0219】
特定の局面において、本明細書に記載するのは、大腸炎を処置または予防する方法である。
【0220】
投与方法
いくつかの態様において、本明細書において提供される方法は、個体における変性神経系障害の処置に有用である。1つの態様において、個体はヒトであり、抗体は本明細書に記載するフィブリン抗体である。
【0221】
いくつかの態様において、抗体は静脈内に、筋肉内に、皮下に、局所に、経口に、経皮に、腹腔内に、眼窩内に、移植により、吸入により、髄腔内に、脳室内に、または鼻腔内に投与される。抗フィブリン抗体の有効量は、がんの処置のために投与されうる。抗フィブリン抗体の適切な投与量は、処置されるがんの種類、抗フィブリン抗体の種類、がんの重症度および経過、個体の臨床状態、個体の臨床歴および処置に対する応答、ならびに主治医の裁量に基づいて決定されうる。
【0222】
いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体は、少なくとも1つの追加の治療剤とともに投与される。任意の適当な追加の治療剤または免疫療法剤は、本明細書において提供される抗体とともに投与されうる。追加の治療剤は、多発性硬化症、脊髄損傷、脳卒中、およびアルツハイマー病からなる群より選択される神経系の変性障害を処置または予防するために用いられる薬剤を含む。
【0223】
追加の治療剤は、任意の適当な手段によって投与することができる。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体および追加の治療剤は、同じ薬学的組成物に含まれる。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体および追加の治療剤は、異なる薬学的組成物に含まれる。
【0224】
本明細書において提供される抗体および追加の治療剤が異なる薬学的組成物に含まれる態様において、抗体の投与は、追加の治療剤の投与の前に、追加の治療剤の投与と同時に、および/または追加の治療剤の投与の後に行うことができる。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体および追加の治療剤の投与は、互いに約1ヶ月以内に行われる。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体および追加の治療剤の投与は、互いに約1週間以内に行われる。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体および追加の治療剤の投与は、互いに約1日以内に行われる。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体および追加の治療剤の投与は、互いに約12時間以内に行われる。いくつかの態様において、本明細書において提供される抗体および追加の治療剤の投与は、互いに約1時間以内に行われる。
【0225】
キットおよび製造物品
本出願は、本明細書に記載する抗体組成物のいずれか1つまたは複数を含むキットを提供する。いくつかの態様において、キットは、二次抗体、免疫組織化学分析用試薬、薬学的に許容される賦形剤および取扱説明書、ならびにそれらの任意の組み合わせのいずれかから選択される構成要素をさらに含む。1つの特定の態様において、キットは、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤とともに、本明細書に記載する抗体組成物のいずれか1つまたは複数を含む薬学的組成物を含む。
【0226】
本出願は同様に、本明細書に記載する抗体組成物またはキットのいずれか1つを含む製造物品を提供する。製造品の例としては、バイアル(密封バイアルを含む)が挙げられる。
【実施例】
【0227】
以下は、本発明を実行するための具体的な態様の例である。実施例は、例示のみを目的として供与されるものであり、本発明の範囲をいかなる形でも限定することを意図するものではない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するための努力がなされているが、ある程度の実験誤差および偏差はもちろん許容されるべきである。
【0228】
本発明の実践には、別段の指示がない限り、当技術分野の技術の範囲内であるタンパク質化学、生化学、組み換えDNA技法および薬理学の従来の方法が利用される。そのような技法は文献のなかで十分に説明されている。例えば、T.E. Creighton, Proteins: Structures and Molecular Properties (W.H. Freeman and Company, 1993); A.L. Lehninger, Biochemistry (Worth Publishers, Inc., current addition); Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Edition, 1989); Methods In Enzymology (S. Colowick and N. Kaplan eds., Academic Press, Inc.); Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition (Easton, Pennsylvania: Mack Publishing Company, 1990); Carey and Sundberg Advanced Organic Chemistry 3rd Ed. (Plenum Press) Vols A and B(1992)を参照されたい。
【0229】
実施例1: 抗フィブリン抗体のヒト化
ネズミ科モノクローナル抗フィブリン抗体(5B8)配列に基づいて、Composite Human Antibody(商標) VHおよびVL配列を設計した(
図1~2)。ネズミ科5B8抗体V領域の構造モデルを、Swiss PDBを用いて作製し、抗体の結合特性に必須である可能性が高いV領域中の重要な「拘束」アミノ酸を同定するために分析した。いくつかのフレームワーク残基とともにCDR内に含まれる大部分の残基(KabatおよびChothiaの両方の定義を使用)は、重要であると考えられた。ネズミ科5B8のVHおよびVκ配列は典型的なフレームワーク残基を含み、CDR 1、2、および3モチーフは多くのマウス抗体と同等である。
【0230】
上記の分析から、5B8の複合ヒト(Composite Human)配列は、CDRの外側では代替残基について広い範囲で作製できるが、CDR配列の内側では狭いメニューの可能な残基のみで作製できるものと考えられた。予備的な分析により、いくつかのヒト抗体からの対応する配列セグメントを組み合わせて、ネズミ科配列におけるCDRと類似または同一のCDRを作製できることが示された。CDRの外側およびCDRに隣接する領域については、新規ヒト化V領域の構成要素として可能性のあるヒトの配列セグメントの幅広い選択が同定された。分析中に、VH CDR3 (Kabat残基102)内に位置する潜在的な不対システイン残基が存在することが注目された。この残基を除去することはヒト化中に不可能であるが、不対システインは凝集リスクの増加などの潜在的不安定性につながる可能性があるため、システインの除去は考慮されるべきである。
【0231】
構造分析に基づいて、5B8ヒト化変種を作り出すために使用できる配列セグメントの大規模な予備セットが同定された。これらのセグメントを選択し、ヒトMHCクラスII対立遺伝子に結合するペプチドのインシリコ分析のためのiTope(商標)技法を用いて、および既知の抗体配列関連T細胞エピトープのTCED(商標)を用いて分析した。ヒトMHCクラスIIに対する有意な非ヒト生殖細胞結合因子として同定された配列セグメント、またはTCED(商標)に対して有意なヒットを記録した配列セグメントは廃棄された。これによってセグメントのセットが低減し、セグメント間の接合部に潜在的なT細胞エピトープが含まれていないことを確認するために、上記と同様に、これらの組み合わせを再度分析した。選択された配列セグメントを、重要なT細胞エピトープが低減した完全なV領域配列に組み立てた。最初に、哺乳動物細胞における遺伝子合成および発現のために、5つの重鎖(VH1~VH6; VH2なし)および4つの軽鎖(Vκ1~Vκ4)配列を選択した。合計23変種の組み合わせがIgG1抗体として発現された。
図2は、キメラ抗体(VH0およびVk0)およびヒト化変種の重鎖および軽鎖の可変領域配列のアライメントを示す。
図3は、VH3とVH4のアミノ酸残基の差異を例示した略図である。
【0232】
実施例2: 抗フィブリン抗体の産生および特徴付け
変種の組み合わせの数を、精製された6つのヒト化変種抗体のパネルに絞り込んだ。抗体構築物の一過性トランスフェクションをHEK293 EBNA細胞において実施し、発現レベルをOctetによって評価した。6つのリードヒト化変種(VH3/Vκ1、VH3/Vκ2、VH4/Vκ1、VH4/Vκ2、VH5/Vκ2およびVH6/Vκ2)を、PEIトランスフェクション法を用いてHEK EBNA接着細胞(LGC Standards, Teddington, UK)に三重フラスコ中で一過性トランスフェクトし、トランスフェクション後10日間インキュベートした。5B8キメラ(VH0/Vκ0)の発現が低いため、2つのバッチを発現させた。10日目にIgG上清の力価をIgG力価ELISAにより評価した。
【0233】
抗体を精製し、精製タンパク質のSDS-PAGE分析を実施し、親和性分析用の抗体濃度を確認した(
図4)。5B8キメラ抗体およびリードヒト化変種抗体を、それぞれ1 mLおよび5 mLのMab Select Sureカラム(GE Healthcare, Little Chalfont, UK)を用いて細胞培養上清から精製した。1×TBSを用いてカラムを洗浄し、Gentle elution Ag/Ab Elution buffer pH 6.6 (ThermoFisher, Loughborough, UK)を用いてタンパク質を溶出した。回収した画分をその後、移動相としてPBS pH 7.4を用い、HiLoad(商標) 26/60 Superdex(商標) 200 pg分取SECカラム(GE Healthcare, Little Chalfont, UK)を用いてさらに精製した。単量体タンパク質を含有するピーク画分をプールし、濃縮し、フィルタ滅菌した後、予測アミノ酸配列に基づく吸光係数(Ec (0.1%))を用いてA280 nmにより定量した。精製した各タンパク質2 μgを還元および非還元SDS-PAGEにレーンごとに負荷した。全てのサンプルを均等に負荷し、定量された抗体の濃度がアフィニティー分析にとって的確であることが示された。SEC-HPLC分析を、選択の抗体変種に対して実施した(
図5)。抗体およそ10 μgをSEC-HPLC (分取後SEC)により分析したところ、精製タンパク質サンプル中の単量体純度99%超およびエンドトキシン(EU/mg) 0.6%未満であることが示された。
【0234】
6つのヒト化変種を熱安定性について評価した(
図6)。5B8キメラ抗体および6つのリードComposite Human Antibody(商標)変種の熱安定性を評価するために、蛍光に基づくサーマルシフトアッセイを用いて融解温度(タンパク質ドメインの50%が折り畳み不全とされる温度)を決定した。6つのリードヒト化抗体を、無関係なIgG1標準(陽性対照)抗体、5B8キメラ(VH0/Vκ0)抗体およびネズミ科5B8抗体とともに、1000分の1希釈でSYPRO(登録商標) Orange (ThermoFisher, Loughborough, UK)を含有する1×DPBS中0.1 mg/mlの終濃度にまで希釈し、StepOnePlus(商標)リアルタイムPCRシステム(ThermoFisher, Loughborough, UK)に56分間にわたり25℃から99℃までの温度勾配に供した。1×DPBSを陰性対照として用いた。タンパク質熱安定性ソフトウェア(バージョン1.2)を用いて、融解曲線を分析した(
図6)。陰性対照(PBSのみ)は一定の低い蛍光を示したため、微分データはゼロに近く、
図6の融解曲線には示されていない。ネズミ科5B8抗体は、5B8キメラおよび無関係なIgG1よりも低い第一熱転移(Tm1)を示した(
図6)。さらに、ネズミ科5B8は2つの熱転移ピークを示すが、2番目の折り畳み不全事象はソフトウェアが値を割り当てるのに十分なほど離散的ではなかった。対照的に、キメラは69.6℃(CH2およびFab)と81.7℃(CH3)で起こる2つの明確に区別できる熱転移を示した。全体的なTm値から、5B8キメラはネズミ科5B8および無関係なIgG1標準よりも安定であることが示唆される。
【0235】
典型的には、抗体の熱変性は3つの見かけの転移からなる: 1つはCH2ドメインの可逆的な転移であり、2つはそれぞれCH3ドメインおよびFabドメインの変性を反映する連続した不可逆的な転移である。これらの転移の順序は通常CH2<Fab<CH3である。キメラ抗体は2つの転移を示すのに対し、ヒト化変種は3つの転移を示し、キメラ抗体ではCH2ドメインおよびFabドメインの転移温度が類似しており、ゆえに重複していることが示唆される。ヒト化変種におけるTm2の上昇(Fabドメインと相関している可能性が最も高い)を考えると、
これらの結果は、最初の熱転移(Tm1)がキメラおよびリードヒト化変種について類似の温度で起こることを示している。これらの結果は6つの選択のヒト化変種について以下の順序の熱安定性を示している: (最も低い) VH0/VK0 < VH3/VK1 < VH4/VK1 < VH3/VK2 < VH4/VK2 < VH5/VK2 < VH6/VK2 (最も高い)。
【0236】
フィブリノゲン、フィブリン、およびP2ペプチドに対するヒト化抗体の親和性を、酵素結合免疫測定法(ELISA)により評価した(
図7~16)。プラスミノゲン枯渇ヒトフィブリノゲン(EMD/Calbiochem)を用いて、フィブリノゲン結合のELISAを実施した。20 mM HEPES/生理食塩水緩衝液中10 mg/mLのIgG1枯渇フィブリノゲン(FGN) 100 mLを96ウェルNunc Maxisorp(商標) ELISAプレートの半分の各ウェルに添加した。フィブリン結合についてのELISAは、14 mM CaCl
2を含有する20 mM HEPES/生理食塩水緩衝液50 mL、および2単位のトロンビンをNunc Maxisorp(商標) ELISAプレートのもう半分の各ウェルに添加することにより調製した。その後、20 mM HEPES/生理食塩水緩衝液中20 mgのフィブリノゲン50 mLを、全量100 mLまで添加した。プレートを37℃のインキュベーター中に1時間置いて、フィブリノゲンをフィブリンに凝固させた後に、37℃のプレート乾燥機の中に終夜置いた。P2ペプチドについてのELISAは、96ウェルNunc Maxisorp(商標) ELISAプレートの各ウェルへの20 mM HEPES/生理食塩水緩衝液中30 mMのP2ペプチド100 mLの添加により調製した。プレートをプレート乾燥機に移し、37℃で終夜乾燥させた。全てのELISAはNunc MaxiSorp 96ウェルELISAプレートを用いて実施した。ブロッキングはDPBS中5%のBSA 100 mLを用いRTで1時間インキュベートして実施した。0.05% Tween-20を含有するDPBS中で5回、プレートを洗浄した(EL406は洗浄緩衝液の添加のみに用いた)。一次抗体50 mLをDPBS中0.5%のBSA中で希釈し、一次抗体をプレートに添加し、37℃で2時間インキュベートした。プレートをDPBS/Tween中で5回洗浄した。二次抗体100 mLをDPBS中0.5%のBSA中で希釈した。次いで、二次抗体をプレートに添加し、RTで1時間インキュベートした。その後、プレートをDPBS/Tween中で5回洗浄した。TMB/E基質溶液100 mLを添加し、1N HClで5分後に反応を停止した。ELISAアッセイの結果(表D)は、試験した全てのヒト化クローンがフィブリノゲンに対するその親和性と比較して、同様に増加した親和性でP2ペプチドおよびフィブリンに結合することを示している。
【0237】
(表D)ヒトフィブリノゲン、フィブリンおよびP2ペプチドに結合する抗体のおおよそのEC50。
*曲線は飽和に達しなかった
【0238】
凝固アッセイ(インビトロでのフィブリン重合アッセイ)もヒト化変種を用いて実施した(
図17)。HEPES緩衝液20 mLを、金属ビーズを入れた実験室用バス(またはウォーターバス)内の50 mLファルコンチューブ中で加温した。この緩衝液をフィブリン重合アッセイの間中ずっと37℃に保った。凍結したフィブリノゲンバイアルを実験室用バスの中で解凍した。フィブリノゲンをHEPES緩衝液中で0.656 mg/mLに希釈した(1/38希釈; フィブリノゲン原液100 μLをHEPES緩衝液3.7 mLと混合した)。フィブリノゲンを次に、37℃で3時間のプレインキュベーション有りまたは無しで、ヒト化変種抗体と混合した(総量160 μl)。凍結トロンビンを実験室用バスの中で解凍し、トロンビンをHEPES緩衝液中で希釈した(トロンビン原液8 μLをHEPES緩衝液152 μLと混合した)。次に、HEPES緩衝液中のCaCl
2およびトロンビンの混合液を調製した(合計3.6 mL: CaCl
2 72 mL + トロンビン希釈液72 μLおよびHEPES緩衝液3456 μL)。CaCl
2およびトロンビン混合液40 μlを各ウェルに添加した。抗体と混合したフィブリノゲン溶液160 μLを、CaCl
2およびトロンビンを含有する96ウェルプレートの各ウェルに添加した。この結果、各ウェルの終濃度は次のようになった: 10 mM CaCl
2、0.3 U/mLトロンビン、150 μg/mLフィブリノゲン、50 μg/mLヒト化抗体。最終緩衝液濃度は、20 mM HEPES、150 mM NaCl、5 mM eACA, pH 7.4であった。血栓形成の対照(無添加フィブリノゲン)、既知の線溶阻害剤を有する対照(フィブリノゲン + GPRP)、および抗体対照(フィブリノゲン + IgG対照)を含めた。各条件について二つ組のウェルを分析した。血栓形成対照を各実験で最初と最後に負荷し、ウェルの負荷と吸光度読み取り開始の間の時間差による遅延時間の許容される「見かけ上の」差を示した。Ca/トロンビン非存在下での可溶性フィブリノゲンのバックグラウンド吸光度は非常に低かった(緩衝液対照と同様)。SpectraMax M5 Microplate Readerを用い37℃で40分間、30秒ごとにA350 nmで吸光度を測定した。CaCl
2およびトロンビンの添加により、フィブリノゲンは、350 nmでの吸光度の増加およびウェル中でのゲル様構造の形成により測定される、濁度の増加をもたらす重合フィブリンに変換される。最大フィブリン重合に達すると、A350 nmは安定したままとなる(プラトー)。
【0239】
HEK293 EBNA細胞上清を用いて抗体結合親和性分析を行い、Biacoreシングルサイクル・カイネティクス(
図18および19)およびマルチサイクル・カイネティクス分析(
図20)によって親和性を評価した。
図18は、シングルサイクル・カイネティクス分析に用いた手順を例示している。Biacore T200 (シリアル番号1909913)機器をシングルサイクル・カイネティクス分析に用い、制御ソフトウェアv2.0.1および評価ソフトウェアV3.0を用いた。25℃、流速30 μl/分で0.1% BSAを含有するHBS-P+ 緩衝液(pH 7.4)からなる泳動緩衝液を使い抗ヒト捕捉チップを用いた。そのままのHEK上清をリガンドとして用い、10 μl/分でおよそ1674 RUまで負荷した。SEQ ID NO: 31 (CPC Scientific 920712, Lot # CS-02-00350)を含むP2ペプチドを、分析のための分析物とした。注入時間20秒および解離時間25秒で、300,000 nMから3703 nMの範囲で5点3倍希釈を行った。再生をMgCl
2で実施した。抗体をOctet力価により評価した濃度に基づいて、泳動緩衝液中で終濃度20 μg/mlに希釈した。各サイクルの開始時に、抗ヒト捕捉チップ(GE Healthcare, Little Chalfont, UK)のFc2、Fc3およびFc4に抗体を負荷した。IgGを流速10 μl/分で捕捉して、固定化レベル(RL)およそ1674 RU、およそ50 RUのRMaxを得るための理論値を得た。その後、表面を安定させた。潜在的な質量移動制限を最小限に抑えるために、流量30 μL/分で分析物としてP2ペプチドを用いてシングルサイクル・カイネティクデータを得た。参照5B8キメラ抗体を用いた複数回の繰り返しを実施して、カイネティクサイクルに対しての表面および分析物の安定性を確認した。参照チャネルFc1 (抗体なし)からのシグナルをFc2、Fc3、およびFc4のシグナルから差し引いて、参照表面への非特異的結合の差異を修正した。P2ペプチドの300,000 nMから3703 nMまでの5点の、3倍希釈範囲を、各濃度間で再生することなく用いた。漸増濃度のP2ペプチドの5回注入についての結合相を毎回20秒間モニターし、最後の注入分析物の後に1回の解離相を25秒間測定した。3.8 M塩化マグネシウムの1回注入を用いて、抗ヒト捕捉表面の再生を行った。参照チャネルFc1からのシグナルをFc2、Fc3、およびFc4のシグナルから差し引いて、参照表面への非特異的結合の差異を修正した。その後、低親和性相互作用のため、定常状態適合モデルを用いてデータを分析した。
【0240】
図8は、P2ペプチドに結合するシングルサイクル・カイネティクスの未加工センサーグラム(sensogram)および適合データを示し、表Eは、シングルサイクル・カイネティクス分析から得られたヒト化変種のカイネティクパラメータ、発現レベルおよび推定KDをまとめたものである。VK1およびVK2を含む全ての変種は、キメラ(VH0/VK0)の2倍以内である。これらの結果から、6つの潜在的なリード変種がVH3/VK1、VH3/VK2、VH4/VK1、VH4/VK2、VH5/VK2、およびVH6/VK2として同定された。
【0241】
変種のマルチサイクル・カイネティクス分析も実施して、抗体の親和性を決定した。P2ペプチドに対する正確な親和性を確立するために、Biacore T200 (シリアル番号1909913)機器を用いBiacore T200 Evaluation Software V3.0.1 (Uppsala, Sweden)を作動させて精製5B8キメラ抗体および6つのリードヒト化変種抗体に対してマルチサイクル・カイネティクス分析を実施した。各サイクルの開始時に、抗ヒト捕捉チップ(GE Healthcare, Little Chalfont, UK)のFc2、Fc3、およびFc4に抗体を負荷した。IgGを流速10 μl/分で捕捉して、固定化レベル(RL)およそ1674 RU、およそ50 RUのRMaxを得るための理論値を得た。その後、表面を安定させた。潜在的な質量移動効果を最小限に抑えるために、流量30 μL/分を使い分析物としてP2ペプチドを用いてカイネティクデータを得た。カイネティクサイクルに対しての表面と分析物の両方の安定性を確認するために、ブランクの複数繰り返しおよび3濃度の分析物の繰り返しを速度論的実行にプログラムした。カイネティク分析の場合、P2ペプチドの300,000 nMから2343.75 nMまでの58の、2倍希釈範囲を選択し使用した。ペプチドの結合相を20秒間モニターし、解離相を25秒間モニターした。3.8 M塩化マグネシウムの1回注入を用いて、抗ヒト捕捉表面の再生を行った。参照チャネルFc1からのシグナルをFc2、Fc3、およびFc4のシグナルから差し引いて、参照表面への非特異的結合の差異を修正し、その後、P2ペプチドに対する低親和性相互作用のため、定常状態分析を用いてデータを分析した。
【0242】
図20は、P2ペプチドへの結合についての選択の変種のマルチサイクル・カイネティクス分析からの未加工センサーグラム(sensogram)および適合データを示し、表Fおよび表Gは、シングルサイクルとマルチサイクルの両方のカイネティクス分析からのカイネティクスデータをまとめたものである。表Hは、6つのヒト化変種抗体の発現レベル、結合親和性分析および熱安定性分析をまとめたものである。これらの結果は、ヒト化変種の全てが、キメラ(VH0/VK0)抗体のおよそ2倍以内のKDを有することを示している。
【0243】
【0244】
【0245】
【0246】
【0247】
実施例3: システイン102の置換はフィブリンγ377~395エピトープへの抗フィブリン結合親和性を改善する
親抗体配列のVH CDR内でヒト化では対処できなかった3つの潜在的な不安定性が同定された(
図21)。遊離システインはCDR-H3 (SEQ ID NO: 3)のシステイン102の位置に同定され、酸に不安定な部位はCDR-H2のAsp 52およびCDR-H3のAsp 96であった。
【0248】
CDR-H3 (SEQ ID NO: 3)のシステイン102の配列不安定性は、もともと5B8マウスモノクローナル抗フィブリン抗体のヒト化中に同定された。ヒト化された2つのリード変種VH4/Vκ2およびVH5/Vκ2 (IgG1)におけるシステイン102の不安定性に対処するために、部位特異的突然変異誘発を実施した。合計6個の置換(C102A、C102G、C102L、C102S、C102T、およびC102V)をVH4 (SEQ ID NO: 7)またはVH5 (SEQ ID NO: 14)のいずれかに行って、合計12個の新しいVH配列を作り出した。12個のVH配列およびVκ2軽鎖配列(SEQ ID NO: 21)を用いて12例の新しい抗体を作り出した。これらの12個の新しい抗体を、親ヒト化変種VH4/Vκ2およびVH5/Vκ2とともに、小規模(6ウェル)でPEI法を用いてHEK EBNA細胞に一過性にトランスフェクトした。トランスフェクション後7日目に上清を収集し、フィブリンペプチドγ377~395 (SEQ ID NO: 31)のOctet力価および結合を、定常状態の親和性を用いてBiacoreシングルサイクル・カイネティクスにより評価した。
【0249】
Biacore抗体負荷のための接触時間を計算するために、HEK上清を10 ml/分で90秒間注入した(
図22)。注入後のシグナルは抗体発現レベルの指標となる。他の変種と同時にトランスフェクトしたキメラ抗体は、シグナルが非常に低かった。結果として、十分な捕捉レベルを達成することができなかった(低発現がOctetにより確認され、これはキメラが検出レベルを下回っていることを示していた)。Biacore分析の場合、システイン置換を担持する抗体変種を、対応する(未修飾の)ヒト化変種(VH4/Vκ2またはVH5/Vκ2のいずれか)と比較した。
図23は、システイン置換を有する12例のヒト化変種抗体のシングルサイクル・カイネティクスを用いた定常状態分析の結果を示し、表Gは、システイン置換を有する12例のヒト化変種抗体の発現レベルおよび結合親和性をまとめたものである。これらの結果は、全6つのC102置換を含む抗体が、対応する親抗体のおよそ2倍以内でフィブリンペプチドγ377~395(SEQ ID NO: 31)に結合できたことを示している。KD値は、上清を以前使用して観察された値8.5×10-5 (VH4/Vκ2)および1.3×10-4 (VH5/Vκ2)と一致していた。C102Gは、VH4/Vκ2およびVH5/Vκ2の両方で最良の置換であることが同定された(C102G < C102V < C102T < C102S < C102A < C102L)。予期せぬことに、ヒト化は抗体発現を改善し、これはCDR-H3のシステイン102の遊離システインの除去によってさらに改善された。
【0250】
実施例4: フィブリノゲン誘発脳脊髄炎(FIE)においてヒト化抗体変種は5B8と同様の活性を有する
ミクログリア活性化、酸化ストレス、およびマクロファージ動員に及ぼすヒト化抗フィブリン抗体変種VH5 C102G/Vκ2のI.C.V.注入の効果を評価した。プラスミノゲンを含まないフィブリノゲンを、エンドトキシンを含まない蒸留水に溶解し、人工脳脊髄液(ACSF)で5 mg/mlに希釈した。フィブリノゲン(5 mg/mlの1 μl)をPaxinosおよびWatsonにしたがい、33ゲージの注射針に取り付けた10 μlのハミルトン注射器を用いて脳内の座標: 前後方向、-1.0 mm; 中外側、-0.7 mm; 背腹側、ブレグマから-1.325 mmの位置に、0.3 μl/分の速度で注入した。予防的脳室内(i.c.v.)注入の場合、フィブリノゲン注入30分前に、33ゲージの注射針に取り付けた10 μlの注射器を用いて抗体10 ugを脳室内(前後方向、-2.0 mm; 中外側、0 mm, 背腹側、-2.0 mm)に、0.3 μl/分の速度で送達した。予防的静脈内(i.v.)注入の場合、フィブリノゲン注入1時間前に0.3 mL 29 gインスリン注射器を用いて眼窩後方に抗体を注入した。脳の組織病理学的評価のために、フィブリノゲン注入3日後にマウスを殺処理した。
【0251】
10 ugの抗体をFIEマウスにi.c.v.注入によって予防的に投与した(
図24)。脳脊髄炎を誘発するために脳梁に定位固定フィブリノゲンを注入した。各円は個々の動物を表す。データは平均値 ± s.e.mである。Tukeyの多重比較による一元配置ANOVA。
【0252】
このデータは、本明細書に記載するヒト化抗体変種が、インビボでFIEにおけるミクログリア活性化、マクロファージ動員、および酸化ストレスを阻害することを確認するものである。
【0253】
実施例5: ヒト化抗体変種は、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)においてフィブリノゲンと共局在する
脊髄病変においてフィブリノゲン蓄積を有する慢性EAEマウスからの組織切片を、10 mg/mlのVH5 C102G/Vk2-ビオチンおよびCY3-ストレプトアビジン抗体で染色した(
図25)。
【0254】
熱不活化結核菌(Mycobacterium tuberculosis) H37Ra 400 ugを補充した完全フロイントアジュバント中15 ugのPLP139-151を用いた皮下免疫により、8~9週齢雌性SJL/Jマウスにおいてミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)のアミノ酸番号35~55のエピトープ(「MOG35-55 EAE」)によって慢性EAEを誘導した(0日目)。免疫2日後に、マウスにIP投与を介して百日咳毒素5 ngを注入した。抗体は、0日目から始めて週に2回、0.2、1、または5 mg/kgで予防的にIP投与した。陽性対照としてデキサメタゾン(0.5 mg/kg)を毎日IP投与した。EAE障害スコアを試験終了まで毎日モニターした。試験をピークEAE 3日後に試験14~16日目あたりで終結し、組織病理学的分析のために脊髄を採取した。
【0255】
このデータは、本明細書に記載するヒト化抗体変種がフィブリン(フィブリノゲン)と共局在することを確認するものである。
【0256】
実施例6: ヒト化抗体変種の薬物動態分析
ヒト化抗フィブリン抗体変種VH5 C102G/Vk2を用いて薬物動態分析を実施した。10 mg/Kgまたは30 mg/KgのいずれかのVH5 C102G/Vk2抗体を投与したEAEマウスからの血漿中でELISAにより抗体を検出した(
図26)。VH5 C102G/Vk2抗体を投与した野生型Balb/cマウスからの血漿および血液中でELISAにより抗体を検出した(
図27)。異なるベースライン、疾患モデル、および分析方法にもかかわらず、BioAgilytixとInvicroの間で同様の薬物動態傾向が観察された。
【0257】
これらの結果は、示された投与量でのヒト化抗体変種の効率的な代謝および/またはクリアランスを示すものである。
【0258】
実施例7: フィブリノゲン誘発脳脊髄炎(FIE)の治療的処置
次に、フィブリノゲン誘発脳脊髄炎(FIE)マウスモデルにおけるミクログリア活性化(
図28A)およびマクロファージ浸潤(
図28B)を治療的に阻害するヒト化抗フィブリン抗体の能力を評価した。FIEを誘発するために、マウスをアベルチンで麻酔し、定位固定装置に入れた。プラスミノゲンを含まないフィブリノゲンを、エンドトキシンを含まない蒸留水に溶解し、人工脳脊髄液(ACSF)で5 mg/mlに希釈した。フィブリノゲン(5 mg/mlの1 μl)をPaxinosおよびWatsonにしたがい、33ゲージの注射針に取り付けた10 μlのハミルトン注射器を用いて脳内の座標: 前後方向、-1.0 mm; 中外側、-0.7 mm; 背腹側、ブレグマから-1.325 mmの位置に、0.3 μl/分の速度で注入した。
【0259】
予防的脳室内(i.c.v.)注入の場合、フィブリノゲン注入30分前に、33ゲージの注射針に取り付けた10 μlの注射器を用いて抗体10 ugを脳室内(前後方向、-2.0 mm; 中外側、0 mm, 背腹側、-2.0 mm)に、0.3 μl/分の速度で送達した。予防的静脈内(i.v.)注入の場合、フィブリノゲン注入1時間前に0.3 mL 29 gインスリン注射器を用いて眼窩後方に抗体を注入した。
【0260】
脳脊髄炎を誘発するために脳梁に定位固定フィブリノゲンを注入した。合計78匹のマウスを13群に分け、次いで各群n = 6匹のマウスに、VH5 C102G/VK2ヒト化抗体を、10 mg/kgまたは30 mg/kgのいずれかでi.v.注入した。脳組織の収集および調製を、注入3日後に実施した。サンプル除外: 5匹のマウス; 術後1日目 (C 10 mg/kg, n =1)および術後2日目(B 10 mg/kg, n =1; D 10 mg/kg, n = 1)に死亡しているのが発見された。間違った部位への注入(B 10 mg/kg, n = 1; D 10 mg/kg, n =1)。盲検化および定量化: 全てのFIE実験、画像収集および定量化は盲検化された方法で実施された。免疫組織化学(IHC)および定量化は以下のように実施した: 73匹のマウスのサンプルをIHCおよび定量化のために含めた。冠状切片(30 um)をクリオスタットで調製した。組織をIba-1 (ミクログリアマーカー、1:750希釈)およびMac-2 (マクロファージ浸潤マーカー、1:750希釈)で染色した。次いで、Iba-1 (Iba-1+ 領域)およびMac-2 (Mac-2+ 領域)の免疫反応性を計算した。ヒト化抗フィブリン抗体変種で処置したマウスの組織では、ミクログリアとマクロファージの両方の減少が検出された
【0261】
これらの結果は、本明細書に記載するヒト化抗体変種が、FIEを有するマウスのミクログリアおよびマクロファージ浸潤を治療的に低減できることを示している。
【0262】
実施例8: 再発寛解型EAEの予防的処置
プロテオリピドタンパク質(PLP)のアミノ酸番号139~151のエピトープによって誘導される再発寛解型EAE (「PLP139-151 EAE」)を予防的に処置するヒト化抗フィブリン抗体の能力を評価した。熱不活化結核菌H37Ra 400 ugを補充した完全フロイントアジュバント中15 ugのPLP139-151を用いた皮下免疫により、8~9週齢雌性SJL/JマウスにおいてEAEを誘導した(0日目)。免疫2日後に、マウスにIP投与を介して百日咳毒素5 ngを注入する。抗体は、0日目から始めて週に2回、0.2、1、または5 mg/kgで予防的にIP投与した。陽性対照としてデキサメタゾン(0.5 mg/kg)を毎日IP投与した。実験デザイン: 6群: 各群n = 10匹のマウス、合計60匹のマウス。用量計画: デキサメタゾン(5 mg/kg、毎日)、ヒト化抗フィブリン抗体(A、B、C、D_5 mg/kg、3日ごと)。EAE障害スコアを試験終了まで毎日モニターした。試験をピークEAE 3日後に試験14~16日目あたりで終結し、組織病理学的分析のために脊髄を採取した。
【0263】
サンプル除外: 3匹のマウス; 12日目(抗体B, n = 1)、15日目(抗体C, n = 1)、または16日目(抗体A, n = 1)に死亡しているのが発見された。盲検化および定量化: 全てのEAE実験(抗体処置および臨床スコア)は盲検化された方法で実施された。組織処理のために57個の脊髄サンプルを調製した。
【0264】
抗体(3日ごとに5 mg/kg i.p.)を予防的に注入したマウスにおいてPLP EAEの臨床スコアを評価した(
図29)。抗フィブリンヒト化抗体を注入したマウスの臨床スコアは、PBSまたはIgG1のみを注入した対照マウスと比べて低減された。疾患の発症までの時間も評価した(
図30A)。25%~50%超のマウスに麻痺があったPBS、IgG1、またはデキサメタゾンのみを注入した対照マウスと比較して、抗フィブリンヒト化抗体を注入したマウスには麻痺がなかった(
図30B)。
【0265】
総合すると、これらの結果は、抗フィブリンヒト化抗体が脳脊髄炎の予防的処置に有効であることを示している。
【0266】
実施例9: 神経変性疾患の処置
本明細書に記載する精製されたヒト化抗体変種は、神経変性疾患(例えば、多発性硬化症またはアルツハイマー病)の処置のために患者に投与される薬学的組成物に製剤化される。本明細書に記載するヒト化抗体変種を含む薬学的組成物は、神経変性疾患の症状を効果的に軽減するのに十分な用量で投与される。薬学的組成物は耐容性良好であり、患者において重大な有害副作用を誘発しない。
【0267】
実施例10: 大腸炎の処置のためのヒト化抗体変種
デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発大腸炎処置を開始するために、8~10週齢雌性C57BL/6マウスを少なくとも4日間動物施設に馴化させ、体重を測定し、体重に基づいて処置群に無作為に割り付ける。急性(7日間)と慢性(28日間)の2種類の試験を行った。
【0268】
2.5% DSSを飲料水に7日間添加することによって急性DSS試験を実施する。抗体を10および30 mg/kgで2日ごと(Q2D)にIP投与する。マウスを7日目にイソフルラン麻酔、失血、続いて頚椎脱臼により安楽死させる。結腸を摘出し、病理組織診断のために分析した。
【0269】
慢性DSS試験は、2.0% DSSを飲料水に1週間添加し、その後1週間通常の飲料水に置き換え、さらに1週間2% DSSを添加し、その後さらに1週間通常の飲料水で終了することによって実施する。本明細書に記載するヒト化抗体変種を、0日目から開始して週2回、30および5 mg/kgで予防的にIV投与する。マウスを28日後にイソフルラン麻酔、失血、続いて頚椎脱臼により安楽死させる。結腸を摘出し、病理組織診断のために分析する。
【0270】
本研究は、本明細書に記載するヒト化抗体変種が大腸炎の処置に有効であることを確認するものである。
【0271】
本発明を、好ましい態様およびさまざまな代替の態様を参照して特に示し説明してきたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態および詳細のさまざまな変更をその中で加えることができると当業者には理解されるであろう。
【0272】
本明細書の本文内で引用される全ての参考文献、発行済み特許および特許出願はあらゆる目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0273】
【手続補正書】
【提出日】2024-03-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】