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特表2024-522241血管阻害剤と組み合わせた腫瘍内アルファ放射体照射
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(54)【発明の名称】血管阻害剤と組み合わせた腫瘍内アルファ放射体照射
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240604BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240604BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 51/00 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 31/44 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 31/47 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 31/436 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 31/53 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 38/39 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 31/138 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 31/661 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 31/404 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P35/00
A61K51/00 100
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K38/16
A61K31/44
A61K31/47
A61K31/454
A61K31/7105
A61K31/506
A61K31/436
A61K31/53
A61K38/39
A61K31/138
A61K31/661
A61K31/404
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578791
(86)(22)【出願日】2022-06-19
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 IB2022055679
(87)【国際公開番号】W WO2022269445
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】63/212,670
(32)【優先日】2021-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519371231
【氏名又は名称】アルファ タウ メディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】ケイサリ ヨナ
(72)【発明者】
【氏名】ケルソン イツァーク
(72)【発明者】
【氏名】ドマンケヴィッチ ヴェレド
(72)【発明者】
【氏名】ニシュリ ヨッシ
(72)【発明者】
【氏名】クックス トマー
(72)【発明者】
【氏名】エフラティ マーガリット
(72)【発明者】
【氏名】シーガル ローネン
(72)【発明者】
【氏名】デン ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ルズ イシャイ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァタレスク マーヤン ヘドヴァ
(72)【発明者】
【氏名】デル マレ ロウマニ サラ
(72)【発明者】
【氏名】シャイ アミット
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA12
4C084AA17
4C084BA44
4C084DC50
4C084NA14
4C084ZA362
4C084ZB072
4C084ZB261
4C084ZC202
4C084ZC412
4C084ZC422
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC10
4C086BC17
4C086BC22
4C086BC28
4C086BC42
4C086CB05
4C086CB22
4C086DA34
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC20
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA19
4C206HA31
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZB26
4C206ZC75
(57)【要約】
患者の腫瘍の処置のための医薬として使用するための血管阻害剤であって、医薬の投与パターンが、1つ又は複数のセッションで治療有効量の血管阻害剤を患者に投与すること、及び血管阻害剤を投与することから2週間未満で腫瘍内アルファ放射体放射線療法のためにラジウム224を担持するシード(204)を腫瘍に移植することを含む、血管阻害剤。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の腫瘍の処置のための医薬として使用するための血管阻害剤であって、医薬の投与パターンが、1つ又は複数のセッションで治療有効量の血管阻害剤を患者に投与すること、及び血管阻害剤を投与することから2週間未満で腫瘍内アルファ放射体放射線療法のためにラジウム224を担持するシードを腫瘍に移植することを含む、血管阻害剤。
【請求項2】
医薬の投与パターンが、シードの移植から5日未満のうちに血管阻害剤の投与を開始することを含む、請求項1に記載の血管阻害剤。
【請求項3】
医薬の投与パターンが、シードの移植の少なくとも12時間後に血管阻害剤の投与を開始することを含む、請求項1に記載の血管阻害剤。
【請求項4】
医薬の投与パターンが、シードの移植の少なくとも72時間後に血管阻害剤の投与を開始することを含む、請求項1に記載の血管阻害剤。
【請求項5】
医薬の投与パターンが、シードの移植の少なくとも12時間前に血管阻害剤の投与を開始することを含む、請求項1に記載の血管阻害剤。
【請求項6】
医薬の投与パターンが、シードの移植の少なくとも72時間前に血管阻害剤の投与を開始することを含む、請求項1に記載の血管阻害剤。
【請求項7】
抗血管新生薬を含む、請求項1に記載の血管阻害剤。
【請求項8】
抗血管新生薬が血管内皮増殖因子(VEGF)遮断薬を含む、請求項7に記載の血管阻害剤。
【請求項9】
VEGF遮断薬が、血管内皮増殖因子(VEGF)に対する抗体を含む、請求項8に記載の血管阻害剤。
【請求項10】
VEGFに対する抗体がベバシズマブを含む、請求項9に記載の血管阻害剤。
【請求項11】
VEGF遮断薬が血管内皮増殖因子(VEGF)デコイ受容体を含む、請求項8に記載の血管阻害剤。
【請求項12】
VEGFデコイ受容体がZiv-アフリベルセプトを含む、請求項11に記載の血管阻害剤。
【請求項13】
VEGF遮断薬が、VEGF受容体に対する抗体を含む、請求項8に記載の血管阻害剤。
【請求項14】
抗血管新生薬がキナーゼ阻害剤を含む、請求項7に記載の血管阻害剤。
【請求項15】
キナーゼ阻害剤が、ソラフェニブ、スニチニブ、レゴラフェニブ及びレンバチニブの少なくとも1種を含む、請求項14に記載の血管阻害剤。
【請求項16】
抗血管新生薬が免疫調節イミド薬(IMiD)を含む、請求項7に記載の血管阻害剤。
【請求項17】
免疫調節イミド薬(IMiD)が、サリドマイド、ポマリドミド及びレナリドマイドの少なくとも1種を含む、請求項16に記載の血管阻害剤。
【請求項18】
抗血管新生薬が抗血管新生マイクロRNAを含む、請求項7に記載の血管阻害剤。
【請求項19】
抗血管新生薬がエンドセリン受容体遮断薬を含む、請求項7に記載の血管阻害剤。
【請求項20】
抗血管新生薬がボセンタンを含む、請求項7に記載の血管阻害剤。
【請求項21】
抗血管新生薬がmTOR阻害剤を含む、請求項7に記載の血管阻害剤。
【請求項22】
抗血管新生薬がラパマイシンを含む、請求項7に記載の血管阻害剤。
【請求項23】
抗血管新生薬が線維芽細胞増殖因子阻害剤を含む、請求項7に記載の血管阻害剤。
【請求項24】
抗血管新生薬がブリバニブを含む、請求項7に記載の血管阻害剤。
【請求項25】
抗血管新生薬がアンジオポエチン阻害剤を含む、請求項7に記載の血管阻害剤。
【請求項26】
抗血管新生薬が血小板由来増殖因子阻害剤を含む、請求項7に記載の血管阻害剤。
【請求項27】
抗血管新生薬がポナチニブを含む、請求項7に記載の血管阻害剤。
【請求項28】
抗血管新生薬が肝細胞増殖因子(HGF)/c-MET阻害剤を含む、請求項7に記載の血管阻害剤。
【請求項29】
抗血管新生薬が、天然の抗血管新生因子、又は天然の抗血管新生因子の誘導体若しくは模倣物を含む、請求項7に記載の血管阻害剤。
【請求項30】
抗血管新生薬がエンドスタチンを含む、請求項7に記載の血管阻害剤。
【請求項31】
抗血管新生薬が1種又は複数のβアドレナリン作動薬を含む、請求項8に記載の血管阻害剤。
【請求項32】
抗血管新生薬がプロプラノロールを含む、請求項8に記載の血管阻害剤。
【請求項33】
抗血管新生薬が血管新生阻害剤を含む、請求項8に記載の血管阻害剤。
【請求項34】
抗血管新生薬がメトホルミン又はクロロキンを含む、請求項33に記載の血管阻害剤。
【請求項35】
抗血管新生薬がカンナビノイドを含む、請求項8に記載の血管阻害剤。
【請求項36】
抗血管新生薬がマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤を含む、請求項8に記載の血管阻害剤。
【請求項37】
抗血管新生薬が、インテグリンの血管新生促進活性の阻害剤を含む、請求項8に記載の血管阻害剤。
【請求項38】
血管破壊剤を含む、請求項1に記載の血管阻害剤。
【請求項39】
血管破壊剤がコンブレタスタチンA-4リン酸(CA4P)を含む、請求項38に記載の血管阻害剤。
【請求項40】
シードが:
少なくとも1ミリメートルの長さを有する支持体;及び
シードが腫瘍に移植された場合に、崩壊なしでラジウム224原子の20%以下が24時間内に支持体から腫瘍に出るが、崩壊の際にラジウム224原子の少なくとも5%の娘放射性核種が崩壊の際に支持体を出るように支持体に結合している、ラジウム224原子
を含む、請求項1~39のいずれかに記載の血管阻害剤。
【請求項41】
腫瘍を有する患者を処置する方法であって、
細胞内アルファ放射体放射線療法で腫瘍を処置する工程;及び
腫瘍内アルファ放射体放射線療法での腫瘍の処置の開始の2週間以内に、血管阻害剤を患者に投与する工程
を含む、方法。
【請求項42】
血管阻害剤を投与する工程が、血管内皮増殖因子(VEGF)遮断薬を投与する工程を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
腫瘍内アルファ放射体放射線療法で腫瘍を処置する工程が、結腸直腸がん腫瘍を処置する工程を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
血管阻害剤を投与する工程が、ベバシズマブを投与する工程を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
血管阻害剤を投与する工程が、ラニビズマブを投与する工程を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
血管阻害剤を投与する工程が、抗血管新生薬を投与する工程を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
血管阻害剤を投与する工程が、血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤を投与する工程を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項48】
血管阻害剤を投与する工程が、血管破壊剤を投与する工程を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項49】
腫瘍内アルファ放射体放射線療法で腫瘍を処置する工程が、それぞれが少なくとも1ミリメートルの長さを有する複数のシードを腫瘍内で移植する工程を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項50】
血管阻害剤を投与する工程が、シードの移植から5日未満のうちに投与する工程を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
血管阻害剤を投与する工程が、シードの移植の少なくとも12時間後に投与する工程を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
患者の腫瘍の腫瘍内アルファ放射体放射線療法処置で使用するために設計されたアルファ放射装置であって、アルファ放射体放射線療法処置パターンが、腫瘍内アルファ放射体装置を腫瘍内で移植すること、及びアルファ放射体放射線療法の開始前又は後2週間以内に1つ又は複数のセッションで治療有効量の血管阻害剤を投与することを含む、装置。
【請求項53】
少なくとも1ミリメートルの長さを有する支持体;及び
装置が腫瘍に移植された場合に、崩壊なしでラジウム224原子の20%以下が24時間以内に支持体から腫瘍に出るが、崩壊の際にラジウム224原子の少なくとも5%の娘放射性核種が崩壊の際に支持体を出るように支持体に結合している、ラジウム224原子
を含む、請求項52に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、腫瘍治療、及び特に腫瘍内アルファ放射体照射と血管阻害剤との併用に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは、世界中の多くの国における主要死因である。したがって、がんの処置に莫大な量の資源が費やされており、多種多様なかかる処置が提案されている。
ある種類の腫瘍治療は、インサイチュで腫瘍細胞を殺滅する、腫瘍アブレーションである。外部(例えば、体外照射療法)又は内部(例えば、密封小線源治療)から適用し得る、熱、マイクロ波、レーザー、電気、光線力学、化学的(例えば、活性酸素種(ROS)を使用する)及び放射線アブレーション等の、複数のアブレーション方法が提案されており、アルファ線、β線及びγ線照射等の種々のタイプの照射を含み得る。これらの方法の議論は、例えば、Keisari, Yona. "Tumor abolition and antitumor immunostimulation by physico-chemical tumor ablation.”Front Biosci 22 (2017): 310-347に見られる。あらゆる特定の患者に使用されるアブレーション方法は、一般に、腫瘍のタイプ、その位置、そのステージ及び/又は腫瘍の他のパラメーターに従って選択される。
手術、化学療法、免疫療法、DNA修復阻害剤、標的療法、ホルモン処置、抗血管新生療法、及びエピジェネティック修飾等の、多くの他の癌治療モダリティが用いられている。一般に、各患者に使用される特定の方法は、腫瘍のタイプ、位置又はそのステージに従って選択される。上述の療法タイプの複数の組合せが、前臨床及び臨床試験で試験された。これらの方法のいくつかは、患者における新しい血管の成長の阻害を伴う抗血管新生療法等の、腫瘍血管系の調節を伴う。
【0003】
電離放射線は、細胞を、それらのDNAに損傷を生じることによって破壊する。細胞殺滅における異なるタイプの照射の生物学的効果は、それらが生じるDNA損傷のタイプ及び重症度によって決定される。アルファ粒子は、DNA上で、細胞が修復することができないクラスター化された二本鎖切断を誘導するので、放射線療法の強力な手段である。従来のタイプの照射と異なり、アルファ粒子の破壊効果はまた、大部分は低い細胞酸素レベルに影響を受けず、腫瘍内の存在が光子又は電子に基づく従来の放射線療法の失敗の主因である低酸素細胞に対して、同様に有効になっている。また、組織中の近距離のアルファ粒子(100マイクロメートル未満)によって、それらを放射する原子が腫瘍体積に限られる場合に周囲の健康な組織が免れることが確実になる。一方、近距離のアルファ照射は、アルファ放射原子を腫瘍体積全体にわたって十分な濃度で配置する実際的な方法がなかったために、これまでその使用ががん治療に限られていた。
【0004】
例えばKelsonの米国特許8,834,837に記載されている、拡散型アルファ放射体放射線療法(Diffusing alpha-emitters Radiation Therapy)(DaRT)は、ラジウム224については3.6日及びラジウム223については11.4日の支配的な半減期を有する、いくつかの放射性崩壊の連鎖を生じるラジウム223又はラジウム224原子を使用することによって、アルファ線照射の治療域を拡大する。DaRTにおいて、ラジウム原子は、(血液を通して腫瘍から取り除かれることによって)それらが無駄になるよう供給源を出ていかないように十分な強度で、腫瘍に移植された供給源(「シード」とも呼ばれる)に結合しているが、相当な割合のそれらの娘放射性核種(ラジウム224の場合はラドン220、及びラジウム223の場合はラドン219)が、ラジウム崩壊に際に供給源から腫瘍に出ていく。これらの放射性核種、並びにそれら自身の放射性娘原子及び更にはそこからつながる娘放射性核種は、アルファ放射によって崩壊する前に、拡散によって、数ミリメートルのラジアル距離まで供給源の周りに拡散する。よって、腫瘍における破壊の範囲は、娘と共に供給源に残る放射性核種に比例して増加する。
【0005】
「Pharmaceutical Combinations fotr the Treatment of Cancer」と題されたWaughらの米国特許公開2020/0276164は、血管内皮増殖因子(VEGF)シグナル伝達阻害剤及びインターロイキン8シグナル伝達阻害剤と放射線療法との組合せを使用したアンドロゲン除去療法での、転移性前立腺がんの処置を記載している。
「Flexible and/or Elastic Brachytherapy Seed or Strand」と題されたKaplanの米国特許公開2020/0093968は、薬物に近接照射療法を提供する、柔軟な近接照射療法ストランドを記載している。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一部の実施形態の一態様は、血管を破壊並びに/又は新しい血管の発生及び/若しくは成長を予防する血管阻害剤と腫瘍内拡散型アルファ放射体放射線療法(DaRT)との間の組合せに基づく腫瘍処置に関する。用語、腫瘍内は、本明細書で、アルファ放射体放射性核種を1つ又は複数の最初の位置で腫瘍内のシードに埋め込み、アルファ放射体放射性核種又はその娘放射性核種は腫瘍中の他の位置に移動し、そこでアルファ放射崩壊が起こる、処置をいう。シードからの放射性核種の移動は、シード上の放射性核種が複数の放射性崩壊の連鎖を開始する場合、拡散によっても、崩壊によってもよい。
したがって、本発明の実施形態に従って、患者の腫瘍の処置のための医薬としての使用のための血管阻害剤であって、医薬の投与パターンが、1つ又は複数のセッションで治療有効量の血管阻害剤を患者に投与すること、及び前記血管阻害剤を投与することの2週間未満前又は後に腫瘍内アルファ放射体放射線療法(alpha-emitter radiotherapy)のためにラジウム224を担持するシードを腫瘍に移植することを含む、血管阻害剤が提供される。
医薬の投与パターンは、シードの移植から5日未満のうちに血管阻害剤の投与を開始することを含んでもよい。医薬の投与パターンは、シードの移植の少なくとも12時間後に血管阻害剤の投与を開始することを含んでもよい。医薬の投与パターンは、シードの移植の少なくとも72時間後に血管阻害剤の投与を開始することを含んでもよい。医薬の投与パターンは、シードの移植の少なくとも12時間前に血管阻害剤の投与を開始することを含んでもよい。医薬の投与パターンは、シードの移植の少なくとも72時間前に血管阻害剤の投与を開始することを含んでもよい。
【0007】
血管阻害剤(vascular inhibitor)は、抗血管新生薬(antiangiogenic agent)を含んでもよい。抗血管新生薬は血管内皮増殖因子(VEGF)遮断薬を含んでもよい。一部の実施形態では、VEGF遮断薬は、血管内皮増殖因子(VEGF)に対する抗体を含む。VEGFに対する抗体はベバシズマブを含んでもよい。VEGF遮断薬は血管内皮増殖因子(VEGF)デコイ受容体を含んでもよい。VEGFデコイ受容体はZiv-アフリベルセプトを含んでもよい。VEGF遮断薬は、VEGF受容体に対する抗体を含んでもよい。抗血管新生薬はキナーゼ阻害剤を含んでもよい。キナーゼ阻害剤は、ソラフェニブ、スニチニブ、レゴラフェニブ及びレンバチニブの少なくとも1種を含んでもよい。抗血管新生薬は免疫調節イミド薬(immunomodulatory imide drug)(IMiD)を含んでもよい。一部の実施形態では、免疫調節イミド薬(IMiD)は、サリドマイド、ポマリドミド及びレナリドマイドの少なくとも1種を含む。
抗血管新生薬は抗血管新生マイクロRNA、エンドセリン受容体遮断薬、及び/又はボセンタンを含んでもよい。一部の実施形態では、抗血管新生薬はmTOR阻害剤、ラパマイシン、線維芽細胞増殖因子阻害剤、及び/又はブリバニブを含む。抗血管新生薬はアンジオポエチン阻害剤を含んでもよい。抗血管新生薬は血小板由来増殖因子阻害剤を含んでもよい。抗血管新生薬はポナチニブを含んでもよい。抗血管新生薬は肝細胞増殖因子(HGF)/c-MET阻害剤を含んでもよい。抗血管新生薬は、天然の抗血管新生因子、又は天然の抗血管新生因子の誘導体若しくは模倣物を含んでもよい。抗血管新生薬はエンドスタチンを含んでもよい。抗血管新生薬は1種又は複数のβアドレナリン作動薬を含んでもよい。抗血管新生薬はプロプラノロールを含んでもよい。抗血管新生薬は血管新生阻害剤(angiogenesis inhibitor)を含んでもよい。抗血管新生薬はメトホルミン又はクロロキンを含んでもよい。抗血管新生薬はカンナビノイドを含んでもよい。抗血管新生薬はマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤を含んでもよい。抗血管新生薬は、インテグリンの血管新生促進活性の阻害剤を含んでもよい。血管阻害剤は、血管破壊剤を含んでもよい。血管破壊剤はコンブレタスタチンA-4リン酸(CA4P)を含んでもよい。
【0008】
供給源は、少なくとも1ミリメートルの長さを有する支持体;及び供給源が腫瘍に移植された場合に、崩壊なしでラジウム224原子の20%以下が24時間内に支持体から腫瘍に出るが、崩壊の際にラジウム224原子の少なくとも5%の娘放射性核種が崩壊の際に支持体を出るように支持体に結合している、ラジウム224原子を含んでもよい。
本発明の実施形態に従って、腫瘍を有する患者を処置する方法であって、腫瘍内アルファ放射体放射線療法で腫瘍を処置する工程;及び腫瘍内アルファ放射体放射線療法での腫瘍の処置の開始の2週間以内に、血管阻害剤を患者に投与する工程を含む、方法が、更に提供される。
血管阻害剤を投与する工程は、血管内皮増殖因子(VEGF)遮断薬を投与する工程を含んでもよい。
腫瘍内アルファ放射体放射線療法で腫瘍を処置する工程は、結腸直腸がん腫瘍を処置する工程を含んでもよい。血管阻害剤を投与する工程は、ベバシズマブ及び/又はラニビズマブを投与する工程を含んでもよい。血管阻害剤を投与する工程は、抗血管新生薬を投与する工程を含んでもよい。血管阻害剤を投与する工程は、血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤を投与する工程を含んでもよい。血管阻害剤を投与する工程は、血管破壊剤を投与する工程を含んでもよい。腫瘍内アルファ放射体放射線療法で腫瘍を処置する工程は、それぞれが少なくとも1ミリメートルの長さを有する複数のシードを腫瘍内で移植する工程を含んでもよい。血管阻害剤を投与する工程は、シードの移植から5日未満のうちに投与する工程を含んでもよい。血管阻害剤を投与する工程は、シードの移植の少なくとも12時間後に投与する工程を含んでもよい。
【0009】
本発明の実施形態に従って、患者の処置のためのキットであって、アルファ放射原子をマウントされた、対象の体に少なくとも部分的に導入するための、少なくとも1つの供給源、少なくとも1つの血管阻害剤;並びに少なくとも1つの供給源及び少なくとも1つの血管阻害剤を含有するパッケージを含む、キットが更に提供される。
本発明の実施形態に従って、患者の腫瘍のアルファ放射体放射線療法処置で使用するために設計されたアルファ放射装置であって、アルファ放射体放射線療法処置パターンが、アルファ放射体装置で腫瘍を処置することと、その後アルファ放射体放射線療法の開始後6週間未満で、1つ又は複数のセッションで治療有効量の血管阻害剤を投与することを含む、アルファ放射装置が、更に提供される。
アルファ放射体放射線療法処置パターンは、アルファ放射体装置で腫瘍を処置することと、その後アルファ放射体放射線療法の開始後2週間未満で、1つ又は複数のセッションで治療有効量の血管阻害剤を投与することを含んでもよい。
【0010】
本発明の実施形態に従って、アルファ放射体装置と、その後アルファ放射体放射線療法の開始後6週間未満で、1つ又は複数のセッションで治療有効量の血管阻害剤を投与することによって腫瘍を処置された集団で使用するために設計された、アルファ放射装置が、更に提供される。
以下の記載及び特許請求の範囲に挙げられている種々の選択肢及び代替物は、選択肢が特に矛盾している場合を除き、代替的に、又はあらゆる適した組合せで共に、使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に従った、治療方法のフローチャートである。
図2】本発明の一実施形態に従った、アルファ放射体照射と血管阻害剤との併用のためのキットの略図である。
図3】本発明の一実施形態に従った、アルファ放射体照射と、アルファ放射体照射シードを移植することの後に投与されたベバシズマブとの併用の効果を試験する実験の結果を示すグラフである。
図4】本発明の一実施形態に従った、アルファ放射体照射と、アルファ放射体照射シードを移植することの4日前に投与されたベバシズマブとの併用の効果を試験する実験の結果を示すグラフである。
図5A-5B】DaRTシードの有効直径及び腫瘍からの放射性原子の漏出に対する図1の方法の効果を調べるために、出願人が行った実験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一部の実施形態の一態様は、拡散型アルファ放射体照射療法(DaRT)及び血管阻害剤の治療上有効な処置を含む、併用腫瘍処置に関する。出願人は、DaRTを適用する特定の腫瘍アブレーションとの血管阻害剤の組合せが、別々に処置のそれぞれよりも実質的により大きい治療効果を有することを見出した。
放射性核種を担持するDaRT供給源の周りの破壊の有効範囲は、数ミリメートルに限定されており、腫瘍の生物学的属性に依存する。腫瘍血管系の無秩序な構造によってDaRTに関連する放射性核種の腫瘍での広がりが正常な組織と比較して増大し、そのため血管阻害剤の使用は破壊の有効範囲を減少させるであろうという通念に反して、出願人は、血管阻害剤はDaRT処置の有効範囲を増大させることを見出した。出願人は、血管阻害剤から生じるDaRTの有効範囲の増大は、血管の減少又は血管新生の予防によるものであり、この減少によって、血流を通した腫瘍からの漏出がもたらされ、そのためアルファ放射体照射処置の有効性が増大するような腫瘍でのアルファ放射原子の蓄積が可能になると考えている。
まず、出願人が、血管阻害剤が腫瘍での放射性核種の広がりの第一期に妨げとならないように、血管阻害剤はDaRT処置の開始の数日後にのみ摂取されるべきであると考えたことに留意されるべきである。しかしながら、更なる調査の後、出願人は、DaRT処置を開始する前に血管阻害剤が投与された場合でも、それらの効果は有益であると決定した。
【0013】
腫瘍内アルファ放射体放射線療法は、放射性原子で覆われたシード(「供給源」とも呼ばれる)を用いることによって、腫瘍の処置のためにアルファ放射原子を利用する。アルファ放射原子は、時間的及び空間的の両方に徐放性の様式で局所的に放出される。即ち、移動及び対流によって、原子は腫瘍において徐々に拡散する。最初の時点で、放射能の殆どは供給源の近くに集中している。時間が経つにつれて、この分布は、腫瘍中で、供給源の放射性核種の崩壊連鎖においてアルファ放射原子の一部が、より離れた位置へ到達するように変化する。経時的な移動距離の変化に加えて、各時点に、供給源からの距離の関数として、異なる分布の活性がある。即ち、各所定の時点及び移動距離について、供給源と移動最大距離との間の直線に沿って、異なる量の活性があり、供給源からの距離が短いほど、より高い活性を示す。これにより、腫瘍組織の、統一されていない、且つ非即時の破壊が可能になる。おそらく腫瘍の異常な腫瘍血管構造のために、正常組織と比較して、腫瘍組織において、アルファ放射原子はより効率的に拡散することが示された。しかしながら、放射性崩壊連鎖が進行するにつれて、放射性シードから離れる、腫瘍におけるアルファ放射原子の分散と共に、原子が血流によって排出される機会が増大する。血管系阻害剤(vasculature inhibitor)を腫瘍に投与することによって、腫瘍からの放射性核種の漏出が減少し得る。
【0014】
処置方法
図1は、本発明の実施形態に従った、治療方法100のフローチャートである。患者における腫瘍の同定(102)に続き、腫瘍のアルファ放射体照射処置(本明細書でアルファ放射体放射線療法とも呼ばれる)は、腫瘍のために選択される(103)。処置の選択は、腫瘍のタイプに応答して、腫瘍に移植される供給源でのラジウム224の活性及び供給源の間の間隔に応答して選択することを含んでもよい。その後、選択された活性を有する供給源が腫瘍の内部に移植される(104)。また、1つ又は複数のセッションで、治療上有効な用量の1つ又は複数の血管阻害剤が患者に投与される(108)。
一部の実施形態では、アルファ放射体照射処置が完了した後、処置の効果が評価される(110)。一部の実施形態では、評価の後、残りの原発腫瘍を除去するための手術が行われる(112)。手術は、例えば処置の前の手術に適格でなかった患者において、処置による腫瘍縮小の後に行われる。或いは、又は更に、手術(112)は、DaRT処置の前に行われる。
【0015】
腫瘍タイプ
治療方法100は、癌性腫瘍、良性新生物、インサイチュ新生物(前悪性)、悪性新生物(がん)、及び不確定又は未知の挙動の新生物を含む、あらゆる腫瘍タイプの処置で使用され得る。一部の実施形態では、図1の方法を使用して、乳がん、腎がん、膵がん、皮膚がん、頭頸部がん、結腸直腸がん、卵巣がん、膀胱がん、脳癌及び前立腺がん等の、比較的固形の腫瘍性病変を処置する。他の実施形態では、図1の治療方法100を使用して、非固形腫瘍を処置する。図1の方法は、原発腫瘍及び続発性腫瘍の両方に使用し得る。
【0016】
図1の方法によって処置され得る例示的な腫瘍としては、排他的ではないが、消化管の腫瘍(結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、結腸直腸がん、大腸腺癌、遺伝性非ポリポーシス1型、遺伝性非ポリポーシス2型、遺伝性非ポリポーシス3型、遺伝性非ポリポーシス6型;結腸直腸がん、遺伝性非ポリポーシス7型、小腸及び/又は大腸癌、食道癌、食道がんを伴う胼胝、胃癌、膵癌、膵内分泌腫瘍)、子宮内膜癌、隆起性皮膚線維肉腫、胆嚢癌、胆道腫瘍、前立腺がん、前立腺腺癌、腎がん(例えば、ウィルムス腫瘍2型又は1型)、肝がん(例えば、肝芽腫、肝細胞癌、肝細胞がん)、膀胱がん、胎児性横紋筋肉腫、胚細胞腫瘍、絨毛性腫瘍、精巣胚細胞腫瘍、卵巣の未熟型奇形腫、子宮、上皮性卵巣、仙尾部腫瘍、絨毛癌、胎盤部トロホブラスト腫瘍、成人上皮性腫瘍(epithelial adult tumor)、卵巣癌、漿液性卵巣がん、卵巣性索腫瘍、子宮頸癌、子宮頸部癌、小細胞及び非小細胞肺癌、上咽頭、乳癌(例えば、乳管がん、浸潤性乳管がん;乳がん、乳癌に対する感受性、4型乳がん、乳がん1、乳がん3;乳がん-卵巣がん)、扁平上皮癌(例えば、頭頚部において)、外陰がん、神経原性腫瘍、星状細胞腫、神経節芽細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、腺癌、副腎腫瘍、遺伝性副腎皮質癌、悪性脳腫瘍(腫瘍)、種々の他の癌(例えば、気管支原性大細胞、腺管、類表皮、大細胞、髄様、粘膜表皮性、燕麦細胞、小細胞、紡錘細胞、有棘細胞、移行細胞、未分化、癌肉腫、絨毛癌、嚢胞腺癌)、上衣芽腫(ependimoblastoma)、上皮腫、赤白血病(例えば、フレンド、リンパ芽球)、線維芽細胞腫、巨細胞腫、グリア系腫瘍、神経膠芽腫(例えば、多形性、星状細胞腫)、グリオーマヘパトーマ(glioma hepatoma)、ヘテロハイブリドーマ、ヘテロミエローマ、組織球腫、ハイブリドーマ(例えば、B細胞)、副腎腫、インスリノーマ、膵島腫瘍、角化腫、平滑筋芽腫、平滑筋肉腫、リンパ肉腫、メラノーマ、乳房腫瘍、肥満細胞腫、髄芽腫、中皮腫、転移性腫瘍、単球腫瘍、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、骨髄腫、腎芽腫、神経組織グリア系腫瘍、神経組織神経腫瘍、神経鞘腫、神経芽細胞腫、乏突起膠腫、骨軟骨腫、骨骨髄腫(osteomyeloma)、骨肉腫(例えば、ユーイング)、乳頭腫、移行細胞、褐色細胞腫、下垂体腫瘍(侵襲性)、形質細胞腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫(例えば、ユーイング、組織球細胞、イエンセン、骨原性、細網細胞)、シュワン腫、皮下腫瘍、奇形癌腫(例えば、多能性)、奇形腫、精巣腫瘍、胸腺腫及び毛包上皮腫、胃がん、線維肉腫、多形性神経膠芽腫;多発性グロムス腫瘍、リー・フラウメニ症候群、固形リンパ腫、脂肪肉腫、II型リンチ家族性がん症候群(lynch cancer family syndrome II)、雄性生殖細胞腫瘍、甲状腺髄様、多発性髄膜腫、内分泌腺新生物粘液肉腫、傍神経節腫、家族性非クロム親和性(familial nonchromaffin)、毛母腫、乳頭、家族性及び散発性、ラブドイド素因症候群(rhabdoid predisposition syndrome)、家族性ラブドイド腫瘍、軟部肉腫、並びに神経膠芽腫を伴うターコット症候群が挙げられる。
【0017】
一部の実施形態では、図1の方法は、アルファ放射体照射単独によって実質的に影響を受けることが知られる腫瘍に適用される。他の実施形態では、図1の方法は、アルファ放射体照射単独によって実質的に影響を受けない、例えばサイズが全く減少しないか、又はサイズが5%若しくは10%を超えて減少しないタイプの腫瘍に適用される。出願人によって行われた実験から、アルファ放射体照射又は血管阻害剤単独によって実質的に影響を受けない腫瘍であっても、図1の方法に従って、血管阻害剤とアルファ放射体照射との組合せの標的とされた場合に、サイズが減少することが示される。
【0018】
治療方法100は上述の腫瘍のいずれかと共に使用され得るが、出願人は、方法100は、参照によって開示全体が本明細書に組み込まれる「Activity Levels for Diffusing Alpha-emitter Radiation Therapy」と題されたPCT特許出願PCT/IB2022/055322に記載されているような、供給源の間の必要な間隔が比較的短い、例えば4mm未満、膵臓、メラノーマ、前立腺及び神経膠芽腫等の腫瘍に特に有用であると決定した。図1の方法の利益を特に受ける腫瘍の別の基準は、供給源の間の必要な間隔が、接近が限られるために達成可能な間隔よりも小さいような、接近が困難な腫瘍である。例えば、図1の方法は、患者の頭蓋骨内の腫瘍への接近が限定されており、必要な間隔が小さいので、頭部における神経膠芽腫に特に有用である。図1の方法の利益を特に受けると考えられる他の腫瘍は、大量の血管内皮増殖因子(VEGF)を生成及び/又は大量の血管を有する腫瘍である。
【0019】
一部の実施形態では、血管阻害剤を投与する(108)か否かは、放射線療法処置の1つ又は複数のパラメーターに応答して決定される。例えば、血管阻害剤は、移植されたアルファ放射体供給源の間の選択された間隔が予め決定された閾値、例えば3.6mm、3.8mm又は4mmよりも大きい場合にのみ投与され得る(108)。或いは、アルファ放射体供給源の移植の後に、供給源の間の実際の最大距離及び/又は供給源の間の平均距離が決定され、血管阻害剤は、実際の距離が選択された間隔よりも実質的に大きい場合(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%又は少なくとも40%)に投与される。一部の実施形態では、腫瘍のあらゆる点に到達すると期待される最小放射線量は、例えば参照によって開示全体が本明細書に組み込まれる、「Treatment Planning for Alpha-Particle Radiotherapy」と題されたPCT出願PCT/IB2021/061607に記載されている方法のいずれかを使用して、選択された放射線療法処置のために計算される。計算された放射線量は、これらの実施形態では、推定される、腫瘍タイプのために必要な線量と比較され、計算された放射線量が、十分な安全率によって、推定された必要な線量以下である場合にのみ、血管阻害剤が投与される。
上述の決定を使用して血管阻害剤を投与する(108)か否かを決定する代わりに、上述の決定の1つ又は複数を使用して、血管阻害剤の用量及び/又は投与の持続期間を決定してもよい。一部の実施形態では、この代替案に従って、血管阻害剤は、アルファ放射体供給源が移植される前に投与される。アルファ放射体供給源を移植した後、供給源の間の距離を評価し、それに応じて、血管阻害剤の投与を継続させるか、又は終了させるかを決定する。
【0020】
他の実施形態では、放射線療法処置のパラメーターの選択(103)は、患者が放射線療法と共に血管阻害剤処置を受けるか否かに応答して行われる。供給源の活性は、患者が血管阻害剤処置を受けるか否かに応答して選択してもよい。例えば、血管阻害剤に抵抗性のある患者については、血管阻害剤が投与される患者に使用されるよりも高い、例えば少なくとも5%高いか、少なくとも10%高いか、又は更には少なくとも20%高い供給源活性が選択される。或いは、又は更に、供給源の間の距離は、患者が血管阻害剤処置を受けるか否かに応答して選択される。この代替案に従って、血管阻害剤に抵抗性のある患者については、血管阻害剤が投与される患者に使用されるよりも短い、例えば少なくとも0.1ミリメートル短いか、少なくとも0.2ミリメートル短いか、又は更には少なくとも0.3ミリメートル短い間隔が選択されてもよい。
【0021】
血管阻害剤
一部の実施形態では、投与された血管阻害剤には、抗血管新生薬が含まれる。抗血管新生薬は、血管内皮増殖因子(VEGF)遮断薬を含んでもよい。
VEGF遮断薬は、VEGFに対する抗体を含んでもよい。VEGF遮断薬としては、一部の実施形態では、VEGF因子を標的とする、ベバシズマブ(商標名Avastinでも公知)、2C3及び/又はラニビズマブ等のモノクローナル抗体が挙げられる。他の実施形態では、投与されたVEGF遮断薬は、VEGF受容体(VEGFR-2、キナーゼ挿入ドメイン受容体としても公知)を標的とする、ラムシルマブ(商標名Cyramzaでも公知)等のVEGF受容体に対する抗体を含む。
或いは、又は更に、投与されたVEGF遮断薬は、Zivアフリベルセプト(VEGFトラップとしても公知)及び/又はコンバーセプト(商品名ルミチンで販売されている)等のVEGFデコイ受容体を含む。
他の実施形態では、投与された抗血管新生薬は、VEGF遮断薬ではないが、VEGF遮断薬の経路以外の生物学的経路を通して抗血管新生効果を有すると同定されている、薬物を含む。他の生物学的経路に作用するこれらの抗血管新生薬は、例えばVEGF遮断薬に感受性のある患者において、VEGF遮断薬に応答しない患者において、及び/又はその抗血管新生特性以外の異なる目的で別の経路を通して作用する抗血管新生薬をすでに受けている患者において、DaRTと共に使用される。かかる場合に、抗血管新生薬は、その効果及びDaRT処置の範囲を増大させるために、関連のないより離れた時間ではなく、DaRT処置により近い時間に、患者に投与してもよい。
【0022】
これらの他の実施形態に従って、抗血管新生薬は、ソラフェニブ(ネクサバールとしても公知)、スニチニブ(商標名Sutentでも公知)、レゴラフェニブ(商標名Stivargaでも公知)及び/又はレンバチニブ(商標名Lenvimaでも公知)等のキナーゼ阻害剤を含んでもよい。或いは、又は更に、投与されたキナーゼ阻害剤は、アキシチニブ、バンデタニブ、パゾパニブ、カボサンチニブ、シレンジタイド、セディラニブ、エンザスタウリン及び/又はバタラニブを含む。
更に他の実施形態では、投与された抗血管新生薬は、サリドマイド、ポマリドミド、アミオダロン、レナリドマイド、イベルドミド、リノミド及び/又はアプレミラスト等の免疫調節イミド薬(IMiD)を含む。投与された抗血管新生薬となる別の選択肢は、一部の実施形態では、抗血管新生マイクロRNAを含む。
これらの抗血管新生薬の少なくとも一部は、免疫チェックポイント発現を更に阻害し、そのため血管の再成長の予防及び免疫系の応答の増大の両方によって処置の効果を増大させることに、留意されるべきである。
【0023】
或いは、又は更に、投与された抗血管新生薬は、エベロリムス、ラパマイシン及び/又はイトラコナゾール等のmTOR阻害剤を含む。更に或いは、又は更に、投与された抗血管新生薬は、ブリバニブ、ドビチニブ及び/又はS49076等の線維芽細胞増殖因子阻害剤を含む。
他の実施形態では、投与された抗血管新生薬は、バヌシズマブ等のアンジオポエチン阻害剤、ポナチニブ等の血小板由来増殖因子阻害剤及び/又はオナルツズマブ等の肝細胞増殖因子(HGF)/c-MET阻害剤を含む。投与された抗血管新生薬としては、他の実施形態では、トロンボスポンジン(TSP-1及び2)、ATB-510、3TSR、色素上皮由来因子(PEDF)、アンジオスタチン及び/又はエンドスタチン等の天然の抗血管新生因子又はその誘導体若しくは模倣物が挙げられる。
【0024】
一部の実施形態では、投与された抗血管新生薬は、カルベジロール、ネビボロール、プロプラノロール、メトロプロロール、ビソプロロール、及び/又はαvβ3インテグリン阻害剤等の1種又は複数のβアドレナリン作動薬を含む。他の実施形態では、投与された抗血管新生薬は、メトホルミン、クロロキン、カルボキシアミドトリアゾール、TNP-470、スラミン、SU5416、アネコルタブアセテート(Anecortave acetate)、ベロラニブ、フルオロメドロキシプロゲステロンアセテート(Fluoromedroxyprogesterone acetate)、及び/又はタスキニモド等の、血管新生を阻害する薬物(血管新生阻害剤とも呼ばれる)を含む。他の実施形態では、投与された抗血管新生薬は、HU-336、HU-345等のカンナビノイド、マリマスタット、プリノマスタット、レビマスタット、ネオバスタット、バチマスタット及び/若しくはタノマスタット等のマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、Medi-522、EMD12194(シレンジタイド)等のインテグリンの血管新生促進活性の阻害剤、並びに/又はVB-111等の抗血管新生遺伝子療法を含む。
投与された抗血管新生薬は、一部の実施形態では、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)阻害剤を含む。一部の実施形態では、投与された血管阻害剤としては、ボセンタン及び/又はアトラセンタン等のエンドセリン受容体遮断薬が挙げられる。
【0025】
一部の実施形態では、抗血管新生薬の代わりに、投与された血管阻害剤は、血管破壊剤(VDA、血管標的薬剤としても公知)を含む。血管破壊剤が血管の成長を予防することは知られていないが、これらは、血管を破壊することが公知であり、出願人は、少なくとも一部の腫瘍タイプについてはDaRT供給源の有効範囲の拡張に役立ち得ると考えている。血管破壊剤は、例えば抗血管新生薬に感受性のある患者において、及び/又は他の理由ですでに血管破壊剤を受けている患者において、DaRTと共に使用される。かかる場合に、血管破壊剤は、その効果及びDaRT処置の範囲を増大させるために、DaRT処置の頃に患者に投与され得る。
血管破壊剤(VDA)は、フラボノイド又はチューブリン結合剤等の、小分子及びリガンドに対するVDAを含んでもよい。フラボノイドとしては、例えば、バジメザン(ジメチルキサンチン酢酸(dimethylxanthine acetic acid)(DMXAA)、5,6-ジメチルキサンテノン-4-酢酸又はASA404としても公知)等の内皮透過促進剤(endothelial permeability enhancer)を挙げることができる。チューブリン結合剤としては、ジブレスタットとしても公知のコンブレタスタチンA-4リン酸(CA4P)、オンブラブリン(AVE8062としても公知)、ZD6126、ABT-571、MediciNovaによって提供されるMN-029、OXi4503、プリナブリン(NPI-2358)コンブレタスタチン、AS1404及び/又はTZT-1027を挙げることができる。
投与された血管阻害剤は、単一の薬物を含んでもよく、若しくは上記の複数の異なる薬物の組合せを含んでもよく、一緒に投与してもよく、又は別々のセッションで投与してもよい。
【0026】
投与の経路
一部の実施形態では、腫瘍及び/又は転移への血管阻害剤の送達は、例えば経口で、又は静脈内(IV)注射若しくは輸注によって、全身投与によって行われる。一部の実施形態では、血管阻害剤の送達は、標的化された送達の適切な方法を使用する。
或いは、又は更に、血管阻害剤は、1つ又は複数の同定された腫瘍に、直接インサイチュで投与される(108)。この代替案において、血管阻害剤は、腫瘍内注射によって投与してもよい。一部の実施形態では、血管阻害剤はアルファ放射体放射性核種を担持するシードから投与されるが、好ましくは、血管阻害剤を与えられて影響を受ける腫瘍のより広いカバー範囲を達成するために、血管阻害剤は、シードから別々に投与される。
血管阻害剤を患者に投与する前に、1つの腫瘍、複数の腫瘍、及び/又は転移のサイズを推定してもよく、それに従って、血管阻害剤の量を選択してもよい。
タイミング
一部の実施形態では、血管阻害剤は、単一のセッションで投与される(108)。或いは、血管阻害剤は、複数のセッション、おそらくは少なくとも3つ、少なくとも5つ又は更には少なくとも7つのセッションで投与される(108)。別々のセッションは、少なくとも4時間、8時間、24時間、48時間又は更には少なくとも72時間、互いに離れていてもよい。ある特定の実施形態では、血管阻害剤ベバシズマブ(BEV)が、3週間の期間にわたって、週に3回投与される。血管阻害剤が複数のセッションで投与される(108)実施形態については、以下のパラグラフは、他に述べられない限りは、投与の第1のセッションに関する。
【0027】
第1の種類の実施形態では、血管阻害剤は、血管阻害剤が実質的に放射線療法の持続期間全体を通して効果を生じるように、アルファ放射シードの移植の前に投与される。この種類の実施形態は、血管阻害剤がアルファ放射体照射処置、例えばシードの移植の開始前に投与される場合でも、DaRTと血管阻害剤との組合せが腫瘍細胞の破壊に対する有益な効果を有することを示す実験結果に基づく。血管阻害剤は、アルファ放射体照射処置の開始の少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間若しくは更には少なくとも48時間、少なくとも72時間、少なくとも96時間又は更には少なくとも1週間前にこの種類の実施形態で投与してもよい。或いは、又は更に、血管阻害剤は、腫瘍での娘放射性核種の分散が開始した後にのみ血管阻害剤が効果を生じるように、アルファ放射シードの移植の短時間前に投与される。例えば、血管阻害剤は、この代替案に従って、シードの移植の72時間未満、48時間未満、24時間未満、12時間未満又は更には6時間未満前に投与される。
【0028】
第2の種類の実施形態では、血管阻害剤療法のタイミングは、最初に、腫瘍における最適化された拡散のために放射性原子が腫瘍の異常な血管構造を利用することができるように血管阻害剤なしでアルファ放射体照射が適用されるように、選択される。その後、血管阻害剤を加えて、腫瘍からの原子の漏出及び残りの腫瘍細胞の再建が予防される。
この第2の種類の実施形態では、血管阻害剤の投与は、アルファ放射源を移植した後(104)、限定されたバッファー期間(106)を開始する。バッファー期間は、シードから離れた腫瘍における放射活性が最大レベルに到達した場合に血管阻害剤に効果を生じさせるよう、選択してもよい。例えば、拡散型アルファ放射体照射療法がアルファ照射体シードの挿入によって誘導される場合に、バッファー期間(106)は、腫瘍におけるアルファ放射原子の、シードから離れて分散したアルファ放射放射性核種の数が最大になる点への分散を可能にするよう選択される。
アルファ放射体供給源の移植(104)と血管阻害剤の投与の第1のセッション(108)との間のバッファー期間(106)は、少なくとも6時間、少なくとも9時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間、少なくとも96時間、少なくとも120時間又は更には少なくとも144時間であってもよい。バッファー期間(106)は、血管阻害剤が適用された時にアルファ放射原子漏出が最小化されるように、2週間より短いか、10日間より短いか、1週間より短いか、120時間より短いか、96時間より短いか、72時間より短いか、又は更には48時間より短くてもよい。一部の実施形態では、バッファー期間(106)は、例えば多数の血管を有するか、又はそうでなければアルファ放射体放射線療法に対してより迅速に反応する腫瘍において、30時間より短いか、20時間より短いか、又は更には10時間より短い。
【0029】
第3の種類の実施形態では、血管阻害剤は、約2週間以内に起こる、移植されたシードの放射性核種の殆どが放射性崩壊を経た後に投与される。この種類の実施形態では、血管阻害剤は、強い腫瘍細胞殺滅の後の組織損傷が引き起こし得る創傷治癒反応において、組織の血管新生及び/又はアルファベースの療法を免れた腫瘍細胞由来の残りの腫瘍細胞の再建を予防する。
一部の実施形態では、アルファ放射体シードの移植及び/又は活性化の後に、血管阻害剤療法を適用するのに最も適した時点を決定するために、腫瘍の1つ又は複数のパラメーターをモニタリングする。モニタリングは、腫瘍がアルファ放射体放射線療法の活性化のためにいつ変化し始めたかを同定する、及び/又は腫瘍の血管形成状態をモニタリングするために適切なモダリティ(例えば、X線、超音波、PET-CT、MRI、CT)を使用して、腫瘍の画像化を含んでもよい。
或いは、モニタリングは、血液検査を行って特性のレベルを同定することを含む。しかしながら、一部の実施形態では、血管阻害剤療法はアルファ放射体放射線療法の効果が検出可能になる前に適用されることに留意されるべきである。
【0030】
アルファ放射体照射
アルファ照射は、ラジウム224又はラジウム223等のアルファ放射原子を担持するシードの、腫瘍への挿入を含んでもよい。アルファ放射原子は、原子がシードを出ないが、娘放射性核種を生じる放射性核種崩壊の際にシードを出るように、シードに結合してもよい。密封小線源治療シードは、24時間あたりに、元々用いられた時にシードに結合していた放射性核種原子の数の少なくとも0.1%、0.5%、又は更には少なくとも1%の速度で、娘放射性核種原子を放射してもよい。一部の実施形態では、娘放射性核種原子は、24時間あたりに、シードに結合した放射性核種原子の25%未満、10%未満、5%未満又は更には3%未満の速度で、シードからゆっくり放出される。
原子が放射性核種崩壊なしにシードを出ないようにアルファ放射原子をシードに結合させる代わりに、例えば参照によって本明細書に組み込まれる「controlled release of radionuclides」と題されたPCT公開WO2019/193464に記載されているように、アルファ放射原子は、放射性核種崩壊以外の方法で原子が24時間あたり少なくとも0.1%の速度で制御可能にシードを出るように、シードに結合している。
【0031】
拡散型アルファ放射体放射線療法(DaRT)は、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許8,834,837、米国特許出願2009/0136422、2019年10月10日に提出された米国仮特許出願第62/913,184、及び/又はPCT公開WO2018/207105に記載されている方法及び/又は装置のいずれかを使用して行ってもよい。
アルファ放射体照射処置は、シードの外表面にアルファ放射原子を担持する1つ又は複数の密封小線源治療シードを腫瘍に挿入すること(104)によって、開始してもよい。或いは、アルファ放射体放射線療法は、アルファ放射原子を担持する、予め挿入されたシードを活性化することによって開始される。この代替案に従って、シードは、アルファ照射及び/又は娘放射性核種がシードから出るのを予防する生体吸収性のコーティングとともに、患者に挿入してもよい。生体吸収性コーティングは、コーティングの所望の再吸収速度を達成するよう適合させた、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコリド(PGA)又はPLA及びPGAのコポリマーを含んでもよい。或いは、又は更に、コーティングは、コポリ乳酸/グリコール酸(PLGA)を含む。コーティングのポリマーは、5,000~100,000の範囲の分子量を有してもよい。コーティングの材料は、超音波エネルギー、体温との反応及び/又は体液との反応の1つ又は複数等の当該分野で公知の方法のいずれかを通して、患者において溶解する。所望の再吸収速度への調節の後の、本発明の実施形態に従って使用され得る生体吸収性ポリマーの更なる議論は、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許8,821,364及び米国特許出願2002/0055667に記載されている。一部の実施形態では、開始(108)は、コーティングを溶解させてアルファ照射及び/又は娘放射性核種がシードを出ることを可能にする刺激を適用することを含む。他の実施形態では、開始(108)は、更なる必要な開始なしに、腫瘍の組織との接触によってコーティングを溶解させることによって達成される。
アルファ放射体放射線療法は、少なくとも24時間、少なくとも5日間又は更には少なくとも10日間、患者に適用してもよい。一部の実施形態では、放射線療法シードは、指定された処置期間の後、患者から除去される。例えば、シードは、腫瘍の除去のための手術の間に除去してもよい。或いは、シードは除去されない。一部の実施形態では、シードは、生分解性材料を含む。
【0032】
処置キット
図2は、図1の方法に従った、患者の処置のためのキット200の略図である。キット200は、腫瘍への挿入のための1つ又は複数のアルファ放射体放射線療法シード204及び血管阻害剤の1回又は複数の用量216を含む無菌パッケージ202を含む。
シード204は、放射線がケーシングを出ないようにする、バイアル又は他のケーシング206内で提供してもよい。一部の実施形態では、ケーシングは、その開示が参照によって本明細書に組み込まれる、「Radiotherapy Seeds and Applicators」と題されたPCT出願PCT/IB2019/051834に記載されているような、ケーシング206からの放射性原子の漏出を防止するようにグリセリン等の強粘液を充填されている。一部の実施形態では、PCT出願PCT/IB2019/051834に記載されているように、キット200は、シード204を患者に導入するのに使用されるシードアプリケーター208を更に含む。アプリケーター208は、そこに1つ又は複数のシード204を予め充填して提供してもよい。この選択肢に従って、ケーシング206中の別々のシード204が、予め充填されたシードより多くの数が必要な場合に供給される。或いは、ケーシング206中のシード204は、キット200中で提供されず、アプリケーター208内のシードのみがキット200に含まれる。
【0033】
示されるように、血管阻害剤の用量216は、1つ又は複数の針210中に予め充填されて提供される。他の実施形態では、用量216は、1つ又は複数の容器又はバイアル220中で提供され、針は、無菌パッケージ202内で別々に提供されるか、又はキット200中で全く提供されない。
一部の実施形態では、キット200は、異なる温度での保存が必要な物質のために、適切な隔離によって分離された、複数の別々の区画を含む。例えば、第1の区画は、第1の区画の物質を約-20℃で保つドライアイスを含んでもよく、第2の区画は、物質を約4℃で第2の区画に維持するために氷を含む。
【0034】
放射線療法シード204は、対象の体への挿入のために構成された金属又は非金属の支持体を含んでもよい。シード204は、例えば参照によって本明細書に組み込まれる米国特許8,894,969に記載されているように、外表面に、例えばラジウム224等の放射性核種原子を更に含む。放射性核種原子は、一般に、放射性核種原子が支持体を出ないが、放射性崩壊の際に、崩壊による反動のために、それらの娘放射性核種がシード204を出得るように、シードに結合している。崩壊により支持体を出る娘放射性核種のパーセンテージは、脱離確率(desorption probability)と呼ばれる。シードへの放射線療法原子の結合は、一部の実施形態では、加熱処理によって達成される。或いは、又は更に、コーティングは、放射性崩壊の際に放射性核種原子の放出を防止するように、且つ/又は娘放射性核種の放出の速度を調節するように、シード及び原子を覆う。娘放射性核種は、反動のためにコーティングを通ってシード204の外に通過し得るか、又は反動によって娘放射性核種がコーティングに運ばれて、そこから拡散によって放出され得る。
【0035】
シード204は、一部の実施形態では、患者の腫瘍内の完全な移植のためのシードを含み、棒又は板等のあらゆる適切な形状を有し得る。完全に移植される代わりに、シード204は、患者内に部分的にのみ移植され、針、ワイヤー、内視鏡の先端、腹腔鏡の先端、又はあらゆる他の適切なプローブの一部である。
一部の実施形態では、シード204は円柱状であり、少なくとも1ミリメートル、少なくとも2ミリメートル、又は更には少なくとも5ミリメートルの長さを有する。シード204は、5~60mm(ミリメートル)の間の長さを有してもよい。シード204は、0.7~1mmの直径を有してもよいが、一部の場合では、より大きい直径又はより小さい直径の供給源が使用される。特に、小さい間隔の処置の設計のために、シード204は、0.7mm未満、0.5mm未満、0.4mm未満、又は更には0.3mm以下の直径を有してもよい。
【0036】
実験
図3は、図1の方法を試験するために出願人が行った実験の結果を示す。この実験において、多形性神経膠芽腫(GBM)ゼログラフ(xerograph)でのBEVの全身投与でのDaRTの効能を試験した。胸腺欠損ヌードマウスの横腹に、マウス1匹あたり合計5・106個の細胞で(体積100μl)、U87細胞を皮内接種した。9日間5~6mm(最長の直径)の平均サイズまで腫瘍を増殖させ、単一のDaRT又は不活性な(非放射性対照)シードのいずれかを各腫瘍の中央に挿入した。シード挿入の5日後に、各マウスはIgG(対照抗体)又はBEVのいずれかのi.p.(腹腔内)投与を受けた。この投与は、連続した3週間、週に3回分の用量(それぞれ5mg/kg)を含んでいた(合計9回分の用量)。下記のように、マウスを4つの処置群に分けた:
a.不活性+対照IgG(未処置対照);
b.不活性+BEV(単独療法としてのBev);
c.DaRT+対照IgG(単独療法としてのDaRT);
d.DaRT+BEV(集学的療法)
【0037】
ガイガーカウンターを使用した放射能測定と共に、週に3回腫瘍体積をモニタリングして、DaRTシードが腫瘍中に存在することを確認した。
図3に見られるように、不活性+IgG群の腫瘍は急速に増殖し、許容される腫瘍体積を超えたために、処置の23日後に排除されなければならなかった。単体の処置としてのBEVは、対照(不活性+IgG)群と比較して、中等度だが有意な腫瘍増殖の減弱を提供した。更に、DaRT処置腫瘍は、対照及びBEV処置群と比較して、有意により小さく、7つの腫瘍のうち2つは完全に根絶された。特に、併用療法群で、全ての他の処置群と比較して、腫瘍増殖に対する有意な効果が観察された。同じように、組合せ群における6つの腫瘍のうち2つは、完全に根絶され、4か月余りの期間再発しなかったので、完全に治癒したと宣言された。この実験は、同様の結果を伴って繰り返された。
【0038】
図4は、図1の方法を試験するために出願人が行った実験の結果を示す。実験において、DaRT挿入の4日前であったBEV処置開始のタイミングを除いて図3と同じ条件で、BEVの全身投与でのDaRTの効能を試験し、DaRT挿入での腫瘍サイズはより大きかった。
図5A及び5Bは、図1の方法を試験するために出願人が行った実験の結果を示す。実験において、オートジオグラフィー実験を行い、DaRT及びBEVで処置されたU87腫瘍の有効直径(即ち、線量が10Gyより大きくなる、DaRTシードからの距離)を計算し、DaRT及びIgG対照で処置された腫瘍の有効直径と比較した(図4で言及したのと同じ処置レジメン)。DaRT挿入の4~5日後に腫瘍を採取した。有効直径についての共分散の解析は、有効直径(図5A)及び腫瘍から外部の器官への放射性原子の漏出(図5B)への影響において、DaRT及びIgGと比較して、DaRT及びBEVとの間の有意な差を示し、傾きは同様だが異なる切片を示した。有効直径は、両方の群において、腫瘍からの漏出と有意に負の相関があった。このことは、BEVが、腫瘍からの放射性原子の漏出を防止し、それによって腫瘍における有効直径を促進することによって、DaRTの有効性を増大させたことを示唆し得る。
【0039】
結論
上述の方法及び装置が、方法を行うための装置及び装置を使用するための方法を含むと解釈されることが認識されよう。一実施形態に関して記載された特徴及び/又は工程を他の実施形態と共に使用し得る場合があること、並びに本発明の全ての実施形態が特定の図に示されているか、又は特定の実施形態の1つに関して記載されている、特徴及び/又は工程の全てを有する訳ではないことが、理解されるべきである。タスクは、必ずしも記載された正確な順序で行われる必要はない。
上述の実施形態の一部は、本発明に必須ではあり得ず例として記載されている、構造、作用又は構造及び作用の詳細を含み得ることが留意されるべきである。本明細書に記載されている構造及び作用は、当該分野で公知のように、構造又は作用が異なる場合でも、同じ機能を行う均等物で交換可能である。上述の実施形態は、例として引用され、本発明は、上記で特に示され、記載されているものに限定されない。むしろ、本発明の範囲は、上述の種々の特徴の組合せ及び部分的組合せの両方、並びに上記の記載を読んだ際に当業者が思い当たる、且つ従来技術に開示されていない、その変形及び修飾を含む。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲で使用されるような要素及び限定によってのみ限定され、用語「含む(comprise)」、「含む(include)」、「有する」及びそれらの活用形は、特許請求の範囲で使用される場合、「含むが、必ずしも限定されない」ことを意味するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
【国際調査報告】