(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(54)【発明の名称】付加製造金属ケーシング
(51)【国際特許分類】
F42B 12/80 20060101AFI20240604BHJP
B22F 10/25 20210101ALI20240604BHJP
F42B 12/08 20060101ALI20240604BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240604BHJP
B33Y 99/00 20150101ALI20240604BHJP
B22F 10/43 20210101ALN20240604BHJP
【FI】
F42B12/80
B22F10/25
F42B12/08
B33Y80/00
B33Y99/00
B22F10/43
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517186
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(85)【翻訳文提出日】2024-01-25
(86)【国際出願番号】 AU2022050533
(87)【国際公開番号】W WO2022251910
(87)【国際公開日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523451598
【氏名又は名称】コンポジット テクノロジー アールアンドディー ピーティーワイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】COMPOSITE TECHNOLOGY R&D PTY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラング,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】クーリ,アンソニー ジェイ
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA08
4K018AA20
4K018AA25
4K018AA28
4K018AB02
4K018AD06
4K018BA04
4K018BA09
4K018BA15
4K018BB04
4K018CA44
4K018EA51
4K018KA01
(57)【要約】
爆弾ケーシング(1)の一実施形態は、略円錐形のノーズ部分(2)及び円筒形の本体部分(3)を画定する。略円錐形のノーズ部分(2)及び/又は円筒形の本体部分(3)のうちの少なくとも1つ、及びより好ましくは、両方は、好ましくは、支持部材上への金属粒子の低温ガス動的噴霧である付加製造プロセスから形成される。一実施形態では、略円錐形のノーズ部分及び円筒形の本体部分は、一体的に形成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円錐形のノーズ部分と円筒形の本体部分とを画定する爆弾ケーシングであって、前記略円錐形のノーズ部分及び/又は前記円筒形の本体部分のうちの少なくとも1つが、付加製造プロセスから形成されている、爆弾ケーシング。
【請求項2】
前記付加製造プロセスが、支持部材上への金属粒子の低温ガス動的噴霧である、請求項1に記載の爆弾ケーシング。
【請求項3】
前記略円錐形のノーズ部分及び円筒形の本体部分が、一体的に形成されている、請求項1又は2に記載の爆弾ケーシング。
【請求項4】
前記爆弾ケーシングが一体構造である、請求項1~3のいずれか一項に記載の爆弾ケーシング。
【請求項5】
前記略円錐形のノーズ部分及び/又は前記円筒形の本体部分が、その長さに沿って実質的に均一な金属特性を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の爆弾ケーシング。
【請求項6】
前記略円錐形のノーズ部分及び/又は前記円筒形の本体部分が、その長さに沿って取得された各横断面にわたって実質的に均一な金属特性を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の爆弾ケーシング。
【請求項7】
前記支持部材が、前記爆弾ケーシングの内部表面の意図された構成を反映するように構成されている、請求項2に記載の爆弾ケーシング。
【請求項8】
低温ガス動的噴霧が完了した後、前記支持部材が、前記爆弾ケーシング内に保持されている、請求項2又は7に記載の爆弾ケーシング。
【請求項9】
低温ガス動的噴霧が完了した後、前記支持部材が、1つ以上の場所で前記爆弾ケーシング内に保持されており、かつ他の場所から除去されている、請求項2又は7に記載の爆弾ケーシング。
【請求項10】
低温ガス動的噴霧が完了した後、前記支持部材が、完全に除去されている、請求項2又は7に記載の爆弾ケーシング。
【請求項11】
前記ケーシングが、破裂機構及び/又は破裂シームを画定する金属特性を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の爆弾ケーシング。
【請求項12】
前記破裂機構及び/又は破裂シームが、足場上の幾何学的特徴によって画定されており、かつ/又は前記爆弾ケーシングの最終外形上の幾何学的特徴と組み合わされている、請求項11に記載の爆弾ケーシング。
【請求項13】
前記破裂機構及び/又は破裂シームが、前記円筒形の本体部分に沿って軸方向及び/又は横方向に延在する脆弱線である、請求項11又は12に記載の爆弾ケーシング。
【請求項14】
前記略円錐形のノーズ部分を形成するように噴霧された前記金属粒子が、高密度耐火金属又は合金を含む、請求項2に記載の爆弾ケーシング。
【請求項15】
略円錐形のノーズセクションが、以下の特性:
1320MPa超の最終引張強度、
1200MPa超の降伏引張強度、
11%の最小破断時伸び率、
44ロックウェルCスケール超の貫通硬度、及び
7.86g/cc超の密度を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の爆弾ケーシング。
【請求項16】
前記支持部材上に堆積されるにつれて前記金属粒子が、インターレース状の層を形成する、請求項1~15のいずれか一項に記載の爆弾ケーシング。
【請求項17】
前記インターレース状の層が、円周方向に延在する、請求項16に記載の爆弾ケーシング。
【請求項18】
前記円筒形の本体部分を形成するインターレース状の層が、前記円筒形の本体部分の長手方向軸に対して平行に延在する細長い寸法を有する、請求項16又は17に記載の爆弾ケーシング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加的に製造された金属ケーシング(金属製筐体)のためのデバイス及び関連する方法に関する。本発明の実施形態は、排他的ではないが、弾薬、武器、具体的には、爆弾ケーシングの分野における用途を見出す。
【背景技術】
【0002】
本明細書に含まれている文書、行為、材料、デバイス、物品などの任意の考察は、単に本発明に関する文脈を提供する目的のためである。これらの事項のいずれか若しくは全てが、先行技術の基礎の一部を形成していること、又は本出願の優先日以前にオーストラリア若しくは他の場所に存在した本発明に関連する分野における一般的な知識であったことの承認であると解釈されるものではない。
【0003】
弾頭のケーシングは、空対空、地対空、空対地、地対地、及び構造解体チャージ用途など、弾頭の提案された特定の用法によって決まる異なる特徴を有する。弾頭が効果的であることを確実とするために、ケーシングが意図した標的を貫通して、断片化する能力を考慮しなければならない。ケーシングの性能に寄与する設計パラメータには、形状、質量、材料組成、機械的特性、及び断片化性能が挙げられる。
【0004】
弾頭ケーシング設計の選択は、空力効率、貫通性能又は断片化パターンを含むことができる機能的考慮に基づいている。BLU(すなわち、爆弾ライブユニット、別名バンカーバスター爆弾)の場合、ケーシングは、システムの貫通能力において重要な役割を果たす。
【0005】
BLU弾頭は、典型的には、ノーズコーン、円筒形の本体、及び尾部の3つのコアコンポーネントからなる。従来の弾頭製造方法は、典型的には、鋳造又は鍛造技術を使用して、最終的な組み立てプロセスにおいて接合される前に、これらのコアコンポーネントを別々に構築する。BLUの別個の部分構造は、適切な貫通性能を確実にするために、ケーシングのノーズセクションにおいてより高い硬度を達成する必要性によって余儀なくされる。材料の選択及び設計は、概して、鋳造又は鍛造が可能なものに限定され、許容される形状、サイズ、材料組成、能力、及び効果を制限する。(特に複合効果特徴のために)複数の部品サブアセンブリ構造が、典型的に使用される。これらは、設計オプションを低減しながら、人件費、部品数、設計、開発、及び生産コストを増加させる。
【0006】
従来の弾頭製造方法は、新しい弾頭設計コンセプトの開発を妨げる、型及び他のオーバーヘッドの設計並びに製作を伴う。このツーリング要件は、設計サイクル及び製作サイクルの両方を延長し、著しい前払い及び特殊なインフラストラクチャー費用を必要とし、高速プロトタイピング活動を効率的に支持することができない。
【0007】
爆弾ケーシングを形成するために典型的に使用される鋳造又は鍛造技術はまた、材料を溶融するために著しいエネルギー入力を必要とする。鍛造工場への投資は、法外に高価になる可能性があり、サプライヤを世界中の少数の製造業者のみに限定する傾向がある。
【0008】
設計の自由を追求して、Lockheed Martinは、材料の指向性エネルギー堆積を使用する弾頭ケーシングの付加製造方法の特許を取得した。しかしながら、この方法には、部品の部分に熱を集中的に適用することに起因する熱歪みの欠点があり、これが、歪みを引き起こし、溶融プールからの凝固時の金属の再結晶に影響を与える可能性がある。
【0009】
先行技術の他の例としては、US2410813A,Method of Forming Casings,Walter Dillon,08/05/1942が挙げられ、これは、基本的なケーシング製造工程を説明する。本発明者は、ケーシングの鍛造又は鋳造の代わりに、ケーシングのノーズコーンを形成するために、シームレス鋼管に熱を適用し、圧延する方法を説明する。
【0010】
先行技術の別の例は、US5305505A、Process of Making a Multi-Section Bomb Casing, Ellwood National Investment Corp、12/03/1990であり、これは、単一ピース構造のケーシングの強度及び破砕特性を有するマルチセクション爆弾ケーシングを作製するためのプロセスを説明する。ケーシングは、摩擦溶接技術によって2つ以上の合金鋼セクションで構成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
先行技術の欠点のうちの1つ以上を克服するか、若しくは実質的に改善するか、又は有用な代替案を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様では、略円錐形のノーズ部分と円筒形の本体部分とを画定する爆弾ケーシングが提供され、略円錐形のノーズ部分及び/又は円筒形の本体部分のうちの少なくとも1つは、付加製造プロセスから形成されている。
【0013】
好ましくは、付加製造プロセスは、支持部材上への金属粒子の低温ガス動的噴霧である。
【0014】
一実施形態では、略円錐形のノーズ部分及び円筒形の本体部分は、一体的に形成される。別の実施形態では、爆弾ケーシングは、単一構造である。
【0015】
一実施形態では、略円錐形のノーズ部分及び/又は円筒形の本体部分は、その長さに沿って実質的に均一な金属特性を有し得る。別の実施形態では、略円錐形のノーズ部分及び/又は円筒形の本体部分は、その長さに沿って取得された各横断面にわたって実質的に均一な金属特性を有し得る。
【0016】
好ましくは、支持部材は、爆弾ケーシングの内部表面の意図された構成を反映するように構成される。
【0017】
低温ガス動的噴霧が完了した後、支持部材は、爆弾ケーシング内に保持され得る。代替的に、低温ガス動的噴霧が完了した後、支持部材は、1つ以上の場所で爆弾ケーシング内に保持され、他の場所から除去され得る。他の実施形態では、低温ガス動的噴霧が完了した後、支持部材は全体で除去される。
【0018】
好ましくは、ケーシングは、破裂機構及び/又は破裂シームを画定するその軸方向位置に沿った金属特性を有する。一実施形態では、破裂機構及び/又は破裂シームは、足場上の幾何学的特徴によって画定され、及び/又は爆弾ケーシングの最終外形上の幾何学的特徴と組み合わされる。一実施形態では、破裂機構及び/又は破裂シームは、円筒形の本体部分に沿って軸方向及び/又は横方向に延在する脆弱線である。
【0019】
一実施形態では、略円錐形のノーズ部分を形成するように噴霧された金属粒子は、高密度耐火金属又は合金を含む。
【0020】
一実施形態では、略円錐形のノーズセクションは、以下の特性:
1320MPa超の最終引張強度、
1200MPa超の降伏引張強度、
11%の最小破断時伸び率、
44ロックウェルCスケール超の貫通硬度、及び
7.86g/cc超の密度を有する。
【0021】
好ましくは、支持部材上に堆積した金属粒子は、インターレース状の層を形成する。一実施形態では、インターレース状の層は、円周方向に延在する。好ましくは、円筒形の本体部分を形成するインターレース状の層は、円筒形の本体部分の長手方向軸に対して平行に延在する細長い寸法を有する。
【0022】
本発明の特徴及び利点は、添付の図面とともに、例としてのみ提供される、好ましい実施形態の以下の詳細な説明から更に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】低温ガス動的噴霧装置の主要構成要素を図示する概略図である。
【
図2】ロボットノズルハンドリングアセンブリの側面図である。
【
図3】ケーシングの実施形態を形成するための材料の低温ガス動的噴霧の部分断面側面図である。
【
図4】ケーシングの一実施形態の断面部分図である。
【
図5】ケーシングの別の実施形態の断面部分図である。
【
図6】ケーシングの別の実施形態の隠れた部分の詳細を示す等角図である。
【
図8】ケーシングの別の実施形態の隠れた部分の詳細を示す側面図である。
【
図9】連続したビーズの堆積によって作成されたインターレース状の粒子形成を描写するケーシング側壁の一部分の概略断面拡大図である。
【
図10】より滑らかな外側仕上げに寄与する重複するビーズ形成を示す概略断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
例えば、
図3~
図8に示されるように、爆弾ケーシング1の例解された実施形態は、各々略円錐形のノーズ部分2及び円筒形の本体部分3を画定する。略円錐形のノーズ部分2、又は円筒形の本体部分3のうちの少なくとも一方、又は他方は、付加製造機器を使用して、付加的に製造される。
図5に例解される実施形態では、付加的に製造され、その後、従来の方法で製造された円筒形の本体部分3に接続されるのは、略円錐形のノーズ部分2のみである。しかしながら、より好ましくは、略円錐形のノーズ部分2及び円筒形の本体部分3の両方が、付加的に製造される。後者は、主に以下で考察される製造プロセスのタイプである。
【0025】
付加製造機器のいくつかの例は、金属粉末又はワイヤを加熱するために、例えば、レーザ、電子ビームなどの熱源を使用する。次いで、加熱された金属が固着して、所望の三次元物体を生成する。プロセスの好ましい実施形態において使用される付加製造機器4は、少なくとも1つのノズル6から放出されるガス流内に含まれる金属粒子5の低温ガス動的噴霧のために構成される。製造プロセスのいくつかの実施形態では、製造生産速度を増加させるために、2つ以上のノズル6が利用され得る。一実施形態では、低温ガス動的噴霧された金属粒子5は、高強度鋼である。別の実施形態では、円錐形のノーズ部分2を形成するために噴霧される金属粒子5は、ニッケル-クロム-モリブデン合金鋼(SAE4340)などの鋼合金である。
【0026】
図1及び
図2に最もよく示されるように、付加製造機器4は、支持部材8(基板又は足場とも呼ばれ得る)と嵌合するように成形された回転可能なマンドレルを含む。電動モータなどのドライブは、マンドレルを回転させるように構成され、これにより、順に支持部材8が回転する。この配置は、軸方向対称性を有するケーシングの製造に好適であり、ほとんどの爆弾ケーシング設計に適用可能であると考えられる。これにより、支持部材8が、材料がその上に堆積される際に回転することを可能にし、ノズルは静止状態を保持するか、又は相対的にゆっくりと移動するだけである。これは、支持部材8を静止させ、支持部材8上に材料を堆積させながら、支持部材8の周りでノズルを繰り返し変位させる必要があることと比較して、より効率的である。
【0027】
図3及び
図4に最もよく示されるように、支持部材8は、軸方向に対称であり、製造される爆弾ケーシングの所望の形状に対応する事前に機械加工された外側表面を有する。一実施形態では、支持部材8は、アルミニウム、好ましくは、グレード6061のアルミニウムから作製される。別の実施形態では、支持部材8は、銅から作製される。
【0028】
図1に最もよく示されるように、低温ガス動的噴霧機器は、ガス源12からの高圧プロセスガスが一対の回路13及び14を介して供給される筐体11を含む。プロセスガスが金属と反応することが望ましくないため、プロセスガスが相対的に不活性であることが望ましい。窒素は、相対的に不活性であり、相対的に低価格で広く利用可能であるため、好ましい実施形態では、プロセスガスとして使用される。しかしながら、他の実施形態は、例えば、ヘリウム及び/又はアルゴンなどの他の不活性ガスを使用する。第1の回路13は、高圧プロセスガスを、金属粒子5を含有する粉末供給ホッパ15に供給する。第2の回路14は、高圧プロセスガスをヒータ16に供給する。2つの回路は、オンボード電気ヒータ17を有するノズル6に集中する。
【0029】
2つのヒータ16及び17は、プロセスガス流が、ノズル6から排出されるときに、600℃~800℃、最も好ましくは、700℃の温度を有することを確実にするために使用される。約600℃より低いプロセスガス流の温度は、低温ガス動的噴霧機器によって形成されている部品との衝突時の金属粒子の変形を抑制する可能性がある。約800℃超のプロセスガス流の温度は、金属粒子5の融解又は過度の軟化につながり得、これは、部品との衝突で粒子が崩壊し、噴霧効率及び部品の機械的完全性に悪影響を及ぼすことにつながり得る。
【0030】
図1の配置は、典型的には、1000m/秒を超える超音速でノズル6から金属粒子5を排出することができる。これは、粒子に、衝突時に支持部材と融合するのに十分な運動エネルギーを提供する。重要なことに、低温ガス動的噴霧プロセスは、金属粒子5をそれらの融点を超えて加熱しない。したがって、金属粒子5の元の構造及び特性は、例えば、鍛造及び鋳造などの金属を溶融する技術に固有の相変化によって別様に引き起こされ得る変化なしに保存され得る。低温ガス動的噴霧機器に関する更なる詳細は、米国特許第5,302,414号で入手可能であり、その内容は参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0031】
図2に最もよく示されるように、付加製造機器4はまた、支持部材が回転している際、金属粒子6の噴霧を支持部材上に方向付けるように、ノズル6を位置決め及び配向するように構成されたロボットアーム9の形態のロボットアセンブリを含む。好適にプログラムされた汎用コンピューティングシステムであり得るか、又は専用制御システムであり得るプログラマブルコントローラは、ロボットアーム9を駆動するように構成される。すなわち、プログラマブルコントローラは、ロボットアーム9によって受信されたコマンド信号を送信する。これらのコマンド信号は、最終的にノズル6の位置及び配向を画定するロボットアーム9が想定する構成を画定する。これは、同様にして、支持部材8に衝突し、それによって結合するように、ノズル6から非常に高速で排出される金属粒子5の軌道を画定する。経時的に、この堆積プロセスは、例えば、
図3及び
図4に示されるように、支持部材8を取り囲み、支持部材8に結合される材料の外層を構築する。
【0032】
金属粒子5が排出されているノズル6が支持部材8に対して通過すると、材料のビーズ18が堆積される。プログラマブルコントローラは、ロボットアーム9を駆動して、金属粒子5のビーズ18をインターレース状の層の形態で回転支持部材8上に堆積させるように、ノズル6を位置決め及び配向させるように構成され得る。
図9に例解されるように、インターレース効果は、下層を形成するビーズ18の中心を、直上の層を形成するビーズ18の縁部と位置合わせさせることによって達成される。これは、レンガが層状及びインターレース状にされて壁を形成し得る、よく知られた様式に類似している。ビーズ18の層をインターレース状にすることは、効果的に粒状構造を形成し、完成したケーシングに改善された方向強度特性を寄与する。強力な貫通性能を提供することが意図されるケーシングの場合、ビーズ18のインターレース状の層は、これが軸方向及び円周方向における引張強度の増加に寄与するため、円周方向に延在する。換言すると、円筒形の本体部分3を形成するビーズ18のインターレース状の層は、円筒形の本体部分3の長手方向軸に対して平行に延在する細長い寸法を有する。
【0033】
ノズル6から噴霧された金属粒子5の組成は、ノズル6の位置決めが支持部材8に対して変化するにつれて変更され得る。これは、支持部材8に対してノズル6の位置が変化する際、プロセスガス流に含まれる材料の組成を変化させることによって達成され得る。この技術は、爆弾ケーシングの異なる部品間で堆積した材料の密度を変化させるために使用され得る。この技術はまた、爆弾ケーシングの異なる部品間で堆積した材料の化学特性を変化させるために使用され得る。例えば、一実施形態は、複数の粉末供給ホッパ15を利用し、含有される金属粒子5の組成は、異なるホッパ15間で変化する。この実施形態では、プログラマブルコントローラは、低温ガス動的噴霧プロセスにおいて使用するために金属粒子5が供給される特定のホッパ15を定義及び変更するためのコマンド信号を発行するように構成される。この実施形態の例示的な実装では、第1のホッパ15は、高密度耐火金属若しくは合金をほとんど又はまったく有しない金属粒子5を含有する。第2のホッパ15は、以下のうちのいずれか1つなどの、高密度耐火金属又は合金の実質的な割合を有する金属粒子5を含有する:
・20重量%~30重量%のタングステン金属又はWC若しくはWC_Ni14などの合金、
・2重量%~10重量%のニッケル金属又は合金、
・3重量%~4重量%のバナジウム金属又は合金、又は
・3重量%~4重量%のマンガン金属又は合金。
【0034】
これらの添加剤は、延性、伸び、密度、強度及び硬度などの堆積材料の特性を改善することができる。オペレータは、プログラマブルコントローラをプログラミングするとき、特定の所望の特性に合わせて調整するために様々な添加剤の比率を選択し得る。これは、硬度対延性などの、ものの間のバランスをとるか、又はトレードオフを必要とし得る。
【0035】
この実施例では、プログラマブルコントローラは、金属粒子5が第1のホッパ15から供給されることを確実にするためにコマンド信号を送信するようにプログラムされ、一方でノズル6は、円筒形の本体3を形成する材料を堆積させるように、支持部材8に対して位置決め及び配向される。しかしながら、ノズル6が、円錐形のノーズ部分2を形成する材料を堆積させる支持部材8に対する位置及び配向に移動するとき、プログラマブルコントローラは、複数の粉末供給ホッパ15にコマンド信号を発行して、第2のホッパ15から金属粒子5を供給する。これにより、円錐形のノーズ部分2を形成する堆積材料が高密度耐火金属又は合金を含み、したがって、貫通特性が強化することが確実になる。しかしながら、円筒形の本体3は、典型的には、かかる強化された貫通特性を必要とせず、したがって、円筒形の本体3を形成するために堆積された材料は、高密度耐火金属又は合金を含む必要はない。わずかな変形例では、プログラマブルコントローラは、略円錐形のノーズ部分2に隣接する円筒形の本体3の一部分を形成する堆積材料が、高密度耐火金属又は合金も含むことを確実にするようにプログラムされ得る。これにより、略円錐形のノーズ部分2に隣接する円筒形の本体3の部分が円錐形のノーズ部分2を支持することが可能になる。
【0036】
爆弾ケーシング1の一実施形態では、略円錐形のノーズセクション2は、貫通性能のために望ましい以下の特性:
・1320MPa超の最終引張強度、
・1200MPa超の降伏引張強度、
・11%の最小破断時伸び率、
・44ロックウェルCスケール超の貫通硬度、及び
・7.86g/cc超の密度を有する。
【0037】
プログラマブルコントローラはまた、支持部材8に対する少なくとも1つのノズル3の位置決めに応じて、様々な噴霧パラメータを変更するようにプログラムされ得る。かかるパラメータは、噴霧スタンドオフ距離、噴霧経路線形速度、及び/又は噴霧オフセット距離を含み得る。例えば、プログラマブルコントローラは、ノズル6が材料を堆積させて、円筒形の本体部分3を形成しているときに、これらのパラメータのうちの1つ以上を、両端を含む1%~50%分増加させるようにプログラムされ得る。この増加量は、ノズル6が円錐形のノーズ部分2を形成するために材料を堆積させるときの関連パラメータの正常量に対するものである。噴霧パラメータに対するかかる変動は、円筒形の本体部分3を形成する堆積材料の破断時伸び率を減少させるなどの特性を調整するために使用され得る。これにより、円筒形の本体部分3は、断片化を10%~15%から7%~8%に減少させるなど、改善された断片化性能を提供することを可能にし得、これにより、より小さく、より均一な断片が得られる。
【0038】
爆弾ケーシング構造の文脈において、金属粒子5の中央値サイズが、両端を含む15μm~55μmであることが好ましく、53μmがプロセスのいくつかの実施形態にとって最適であると考えられることが、本出願の発明者らにより理解されている。15μμmを下回る粒子は、典型的には、支持部材8との衝突で変形し、付着するのに十分なエネルギーを有しない。これは、プロセスガス流内の加速後に低い運動エネルギーにつながる低い質量に起因する。55μμmを上回る粒子は、典型的には、それらのより高い質量に起因して十分な速度に加速されず、したがって、部品との衝突時に変形し、付着するのに十分なエネルギーを有しない場合がある。粒子が非常に大きいか又は非常に小さいかに関わらず、部品への付着不良の望ましくない影響は次の通りである:
-下部の完全性、不適切に融合した粒子に起因する多孔性、
-粉末が部品に付着しないことに起因する噴霧効率の低下、及び
-汚染制御システムによって処理される廃棄物粉末の量の増加。
【0039】
爆弾ケーシング構造の文脈では、金属粒子5の中央硬度が30ロックウェルC未満であることが好ましいことが、本出願の発明者らにより理解されている。粉末硬度は、経験的試験中の高強度鉄合金の低温ガス動的噴霧における重要なプロセス変数として特定された。低温ガスの動的噴霧プロセスは、衝突時に粒子が平らになり、支持部材8に付着することに依存し、粒子の硬度は、これがどの程度効率的に達成されるかに直接影響を与える。金属粒子の過度の硬度は、粒子が形成中の部分に付着することを抑制し得る。代わりに、過度に硬い粒子が表面から跳ね返り、プロセス効率が低下し、粉末廃棄物が増加する可能性がある。代替的に、過度の硬度は、粒子の付着を引き起こすが、適切に平らにならない可能性がある。これは、非常に高い多孔性及び許容できないほど低い部品強度をもたらす。高硬度に起因して、粒子が付着しない問題は、噴霧ジェットが垂直から離れた角度で部品に衝突する場合と同様に劇的に悪化することが経験的に見出された。より柔らかい粒子を有する金属粉末は、より硬い粉末よりもはるかに浅い衝突角で成功裏に噴霧することができる。硬質粉末は、粒子の付着が完全に停止するように見える限界衝突角をもたらし、この限界角度は、構築可能な部品の幾何学的形状に制約を課す。
【0040】
爆弾ケーシング構造の文脈では、単一のノズルから放出される金属粒子5の流量が16kg/時~35kg/時であることが好ましく、プロセスのいくつかの実施形態のための最適な流量が約25~30kg/時であることが、本出願の発明者らにより理解されている。約16kg/時未満では、生産率が非常に低いため、空中爆弾ケーシングの製造に低温ガスダイナミック噴霧プロセスを使用することは経済的ではなくなる。財務分析によると、このプロセスは、噴霧ヘッド当たりおよそ16kg/時を上回る従来の製造方法とコスト競争力があることが示されている。粉末流量が噴霧ヘッド当たり35kg/時を上回ると、低温ガス動的噴霧プロセスによって製造されている部品の形成熱の管理に問題が生じる可能性がある。形成プロセスは、局所的な熱をもたらし、ここで噴霧ジェットが、部品に衝突し、この熱が熱伝導によって部品を通って分配する。熱は、主に自然対流と強制対流によって部品から除去される。冷却方法を通じて部品内に熱が蓄積することを管理することで、粉末の噴霧ヘッド当たり35kg/時よりも高い流量が達成される可能性があると現在のところ理論化されている。
【0041】
爆弾ケーシング構造文脈において、ノズル出口と基板との間の噴霧スタンドオフ距離が、両端を含む15mm~50mmであり、最適な距離は約15mm~25mmであることが好ましいことが、本出願の発明者らにより理解されている。ノズル6からの距離が増加するにつれて、ジェットの発散に起因して、噴霧ジェットの直径が増加する。この効果に起因して、堆積された材料のビーズ18の幅は増加し、ビーズ18の最大厚さは、オフセット距離が増加するにつれて減少する。噴霧ジェットの速度はまた、オフセット距離が長くなると減少する。およそ15mm未満のオフセット距離は、堆積されているビーズ18が非常に厚くかつ狭くなり得、局所放熱が不十分となり得る。ビーズ18の形成における過度の局所化された熱は、低温ガス動的噴霧プロセスによって形成されている部品の冶金に悪影響を及ぼし得る。およそ50mm超のオフセット距離は、特にビームの外層上の粒子に対して非常に低い衝突速度をもたらす可能性がある。これは、噴霧効率に悪影響を及ぼす可能性があり、部品の多孔性の増加及び機械的完全性の低下につながり得る。
【0042】
爆弾ケーシング構造の文脈では、噴霧経路の線形速度が0.5m/秒~1.5m/秒であることが好ましく、いくつかの実施形態のための最適な速度は約1.0m/秒であることが、本出願の発明者らにより理解されている。噴霧が発生している間に支持部材が回転する上で説明されたような文脈では、噴霧経路線形速度は、ビーズ18が堆積されている位置で形成されている部品の回転速度及び直径から計算され得る。噴霧経路線形速度が0.5m/秒未満であると、堆積ビーズ18が非常に厚くなる可能性がある。追加的に、衝突の位置で局所的な熱が過剰になる可能性がある。1.5m/秒を超える噴霧経路線形速度では、ビーズ18は、非常に薄くなり得、ビーズ18の外縁部における多孔性は、許容できないほど増加し得る。
図3に示されるように、ケーシングの先端に向かう位置で円錐形のノーズ部分2を噴霧するとき、0.5m/秒超の線形経路速度を達成するために必要とされる回転速度は、先端の小さい直径により過剰である可能性がある。これを補正するために、ロボットアーム9をプログラムして、支持部材9が回転している方向とは反対の回転方向に、円錐形のノーズ部分2の先端の周りにノズル6を変位させる必要があり得る。
【0043】
爆弾ケーシング構造の文脈では、隣接するビーズ18間の噴霧経路の重複が、2つの隣接するビーズ18の最小限の重複をもたらし得る、噴霧経路の重複の30%~60%であることが好ましいことが、本出願の発明者らにより理解されている。これは、例えば、
図10に例解されるように、外側表面により滑らかな仕上げを作成するのに役立つ。目的は、隣接するビーズ18が重複して、それらの浅いセクションを合わせた厚さが、単一のビーズ18の最大厚さに近い厚さまで追加されるようにすることである。
【0044】
図3に例解されるように、低温ガス動的噴霧プロセスは、堆積が所望の側壁厚さ、形状、及び全体的なケーシング特性を作成するまで継続する。結果的なケーシングのいくつかの例を、
図4~
図8に示す。
【0045】
製造プロセスの実施形態は、低温ガス動的噴霧が完了すると、爆弾ケーシングを熱処理する工程を含む。この熱処理は、概して、従来の爆弾ケーシング製造プロセスにおいて使用される熱処理工程と非常に類似しているが、本発明の一実施形態を熱処理するときに、実質的に必要とされる総エネルギーが少ない可能性があることが予想される。これは、主に、低温ガス動的噴霧プロセス中の金属粒子5の溶融の欠如によってもたらされる前述の望ましい特性によるものである。
【0046】
爆弾ケーシングの熱処理の後、金属、セラミック、エネルギー材料、又はこれらの任意の組み合わせの少なくとも1つの更なる層が、低温ガス動的噴霧によって爆弾ケーシングの外側表面の少なくとも一部分に適用され得る。この最終層の組成は、爆弾ケーシングの潜在的な致死性を増加させ、その貯蔵寿命を改善し、及び/又は放射線遮蔽を作成するように選択され得る。
【0047】
爆弾ケーシングを製造するプロセスの最終工程は、爆弾ケーシングの外側表面及び/又は内側表面の機械加工である。かかる機械加工工程は、従来のケーシング製造方法において実施された機械加工工程と非常に類似している。いくつかの実施形態では、この機械加工は、元々支持部材8を備える材料の一部又は全てを除去し得る。方法の他の実施形態では、支持部材8は、例えば、
図3に例解されるように、爆弾ケーシング内に完全に保持される。
【0048】
いくつかの実施形態では、例えば、
図3、
図4、
図6、
図7、及び
図8に示されるように、略円錐形のノーズ部分2及び円筒形の本体部分3は、一体的に形成される。したがって、いくつかの実施形態では、結果として生じる爆弾ケーシングは、単一の構造であると考えられ得る。
【0049】
同じ金属粒子5が全体にわたって使用される場合、及び他の全ての噴霧パラメータが一定に保たれる場合、略円錐形のノーズ部分2及び円筒形の本体部分3は、各々それらの長さに沿って実質的に均一な金属特性を有し得ることが理解されるであろう。代替的に、利用される金属粒子、及び/又は他の噴霧パラメータは、略円錐形のノーズ部分2及び/又は円筒形の本体部分3が、その長さに沿って取得された各横断面にわたって実質的に均一な金属特性を有する爆弾ケーシングを作成するように調整され得る。
【0050】
ケーシングの実施形態は、破裂機構及び/又は破裂シームを画定する金属特性を有するように設計され得る。一実施形態では、破裂機構及び/又は破裂シームは、例えば、足場上に設けられ、及び/又は爆弾ケーシングの最終外形上の幾何学的特徴と組み合わせられたチャネルなどの幾何学的特徴によって画定される。別の実施形態では、破裂機構及び/又は破裂シームは、円筒形の本体部分に沿って軸方向及び/又は横方向に延在する脆弱線である。これらの脆弱線は、提案された脆弱領域内に材料を堆積させるときに、1つ以上の噴霧パラメータを変更するようにプログラマブルコントローラをプログラミングすることによって、低温ガス動的噴霧プロセス中に確立される。これは、金属粒子組成、堆積密度、ビーズ堆積幾何学形状などにおける変化など、堆積の強度に影響を与える任意の噴霧パラメータにおいて変化を確立することを伴い得る。
【0051】
鋳造又は鍛造に依存する従来の爆弾ケーシング製造方法と比較して、本発明が多数の重要な実用的な利点を提供することが、当業者によって理解されるであろう。前述のように、従来の鋳造又は鍛造製造方法では、設計の自由度が制限される。比較すると、本発明の追加的な方法は、生産ラインの広範かつ高価な設備の入れ替え又は鋳造所へのアクセスを必要とせずに、製造パラメータをカスタマイズする自由を可能にする。本発明の追加の方法は、容易かつ経済的な実験及びプロタイプ(protype)の開発を可能にする。追加的に、本発明の実施形態は、従来の方法と比較してコスト優位性を提供する大量生産方法を提供する。
【0052】
低温噴霧堆積プロセスは、次のような様々な設計の柔軟性を可能にする:
1.ケーシングの様々な部分における金属特性の変動を有する設計の柔軟性を提供するための堆積パラメータの変動。これは、例えば、破裂機構及び/又は破裂シームなどの特徴の提供を支援することができる。
2.ケーシングの様々な部分を形成するために使用される金属粉末の変動を有する設計の柔軟性。これは、例えば、硬度などの必要とされる特性を達成するために、複数の事前に選択された金属タイプを所定の比率で混合することを可能にし得る。一実施形態では、弾頭は、円筒形の本体部分3の大部分の硬度と比較して、円錐形のノーズ部分2に追加の硬度を備える。これは、円錐状のノーズ部分2を形成するために、高密度耐火金属又はその合金、例えば、タングステン、WC、WC Ni14などを含む材料を噴霧ことによって達成され得る。高密度耐火材料は、重量が増加し、爆弾が動いているときに運動エネルギーの増加をもたらすことが理解されるであろう。
3.粒状の指向性強度特性を付与する層を形成する複数のビーズ18を堆積させることによって、爆弾ケーシング1を製作することができる設計の柔軟性。
【0053】
いくつかの好ましい実施形態が説明されてきたが、おおまかに説明されたように本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、多数の変動及び/又は修正が本発明に行われ得ることが当業者によって理解されよう。本実施形態は、したがって、全ての観点において、例解的であり、限定的ではないことが考慮される。
【国際調査報告】