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特表2024-522254金属ストリップを熱処理するための装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-12
(54)【発明の名称】金属ストリップを熱処理するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   C21D 9/56 20060101AFI20240605BHJP
   F27B 9/30 20060101ALI20240605BHJP
   F27B 9/36 20060101ALI20240605BHJP
   F27B 9/04 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
C21D9/56 101A
F27B9/30
F27B9/36
F27B9/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023571185
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(85)【翻訳文提出日】2023-11-15
(86)【国際出願番号】 EP2022055269
(87)【国際公開番号】W WO2022248089
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】A50422/2021
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504420490
【氏名又は名称】アンドリッツ・テクノロジー・アンド・アセット・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【弁理士】
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】アマン・マルタン
(72)【発明者】
【氏名】ツィーメンドルフ・ユルゲン
【テーマコード(参考)】
4K043
4K050
【Fターム(参考)】
4K043AA01
4K043CA00
4K043CA03
4K043EA06
4K043FA03
4K043FA09
4K043GA03
4K043GA07
4K043HA04
4K050AA02
4K050BA02
4K050BA03
4K050CC07
4K050CD14
4K050CD16
4K050CG30
4K050EA04
4K050EA08
(57)【要約】
この発明の対象は、焼鈍炉と後続の加熱可能なオーバーエージングチャンバ(11)を有する金属ストリップ(6)を連続的に熱処理するためのストリップ処理設備を構成する。この場合、金属ストリップ(6)は、オーバーエージングチャンバ(11)内で、垂直方向に離間した複数の偏向ローラ(12,12’,13,13’)を介して案内され、これにより、金属ストリップは、オーバーエージングチャンバ(11)を蛇行するように通過する。本発明によれば、少なくとも1つの偏向ローラ(12’,13’)が、垂直方向に移動可能であり、これにより、オーバーエージングチャンバ(11)内での金属ストリップ(6)の長さもしくは滞留時間が設定可能である。本発明は、金属ストリップ(6)を熱処理するための方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼鈍炉と後続の加熱可能なオーバーエージングチャンバ(11)を有する金属ストリップ(6)を連続的に熱処理するためのストリップ処理設備であって、金属ストリップ(6)が、オーバーエージングチャンバ(11)内で、垂直方向に離間した複数の偏向ローラ(12,12’,13,13’)を介して案内され、これにより、金属ストリップ(6)が、オーバーエージングチャンバ(11)を蛇行するように通過するものにおいて、
少なくとも1つの偏向ローラ(12’,13’)が、垂直方向に移動可能であり、これにより、オーバーエージングチャンバ(11)内に収容された金属ストリップ(6)の長さが設定可能であり、これにより、オーバーエージングチャンバ(11)内での金属ストリップ(6)の滞留時間が設定可能であること、を特徴とするストリップ処理設備。
【請求項2】
複数の偏向ローラ(12’,13’)が、垂直方向に移動可能であること、を特徴とする請求項1に記載のストリップ処理設備。
【請求項3】
1つ又は複数の上の偏向ローラ(13’)が、垂直方向に移動可能であること、を特徴とする請求項1又は2に記載のストリップ処理設備。
【請求項4】
移動可能な1つの偏向ローラ(12’,13’)もしくは移動可能な複数の偏向ローラ(12’,13’)が、所定の位置でローラ支持装置(19’)によって支持可能もしくは固定可能であること、を特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のストリップ処理設備。
【請求項5】
オーバーエージングチャンバ(11)が、電気的に加熱可能であること、を特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のストリップ処理設備。
【請求項6】
オーバーエージングチャンバ(11)が、加熱されたガスの注入によって加熱可能であること、を特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のストリップ処理設備。
【請求項7】
オーバーエージングチャンバ(11)が、コーティング設備の前、好ましくは電気メッキ設備の前に配置されていること、を特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のストリップ処理設備。
【請求項8】
焼鈍炉とオーバーエージングチャンバ(11)の間に、冷却セクションが配置されていること、を特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載のストリップ処理設備。
【請求項9】
焼鈍炉と後続のオーバーエージングチャンバ(11)によって金属ストリップ(6)を連続的に熱処理するための方法であって、金属ストリップ(6)が、垂直方向に離間した偏向ローラ(12,12’,13,13’)を介して蛇行するように案内されるものにおいて、
オーバーエージングチャンバ(11)内での金属ストリップ(6)の熱処理のために、滞留時間が決定されること、及び、オーバーエージングチャンバ(11)内での少なくとも1つの偏向ローラ(12’,13’)の移動によって、オーバーエージングチャンバ(11)内での金属ストリップ(6)のストリップ長さが、従って滞留時間が設定されること、を特徴とする方法。
【請求項10】
オーバーエージングチャンバ(11)内に存在するガス又はガス混合物が、吸引され、加熱され、再びオーバーエージングチャンバ(11)に供給されること、を特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ガスもしくはガス混合物が、電気的に加熱されること、を特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
オーバーエージングチャンバ(11)内の金属ストリップ(6)が、150℃~500℃の、好ましくは400~500℃の温度で熱処理されること、を特徴とする請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
オーバーエージングチャンバ(11)内の金属ストリップ(6)が、水素-窒素-雰囲気内で熱処理されること、を特徴とする請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、焼鈍炉と後続の加熱可能なオーバーエージングチャンバを有する金属ストリップを連続的に熱処理するためのストリップ処理設備である。この場合、金属ストリップは、オーバーエージングチャンバ内で、垂直方向に離間した複数のローラを介して案内され、これにより、金属ストリップは、オーバーエージングチャンバを蛇行するように通過する。
【背景技術】
【0002】
従来のストリップ処理設備は、複数のチャンバから成り、これらチャンバ内で、金属ストリップは、まず焼鈍温度に加熱され、所定の時間の間、この温度に保持される。所定の温度曲線に従うことも可能である。このような焼鈍炉は、十分知られている。その後、金属ストリップは、所定の冷却速度に応じて冷却され、所定のオーバーエージング温度(過時効温度)にされ、所定の期間の間、この温度に保持される。即ち、いわゆるオーバーエージングチャンバは、金属ストリップを正確に規定された時間の間所定の温度(過時効温度)に保持するために使用される。しばしば、これらチャンバは、「ホールディングチャンバ」又は「ソーキングチャンバ」又は「パーティショニングチャンバ」とも呼ばれる。温度は、オーバーエージングチャンバ内でできるだけ一定であるべきで、金属ストリップ合金に応じて150℃~500℃である。これらオーバーエージングチャンバ内を、通常は、保護ガス雰囲気もしくは還元雰囲気、例えば水素-窒素-混合物も支配する。次いで、金属ストリップは、室温に冷却すること又は例えば亜鉛メッキ設備のような電気メッキ設備内でコーティング温度にすることができる。
【0003】
これら全ての熱処理ステップは、金属ストリップの機械的特性に影響を及ぼす。この場合、金属ストリップが、特定の温度に加熱されるだけでなく、正確に規定された機関の間にオーバーエージングチャンバ内で所定の温度に保持されることが重要である。同様に、加熱速度及び冷却速度は、ストリップ特性に影響を及ぼす。加えて、異なる厚さもしくは異なる組成の金属ストリップも、異なる熱処理パラメータを必要とする。
【0004】
オーバーエージングチャンバ内での金属ストリップの滞留時間は、オーバーエージング炉内でのストリップ速度及びストリップ長さによって決定される。従来のオーバーエージングチャンバ内でのストリップの長さは、偏向ローラの配置によって設定され、これにより、滞留時間は、ストリップ速度を介してのみ調整可能である。しかしながら、ストリップ速度は、非常に限定された程度位でしか変化させることができないが、それは、速度変化毎に、当然、生産能力、加熱速度及び冷却速度にも影響を及ぼすからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、オーバーエージングチャンバ内での金属ストリップの滞留時間が、広い範囲で設定可能であり、これにより、完全に異なる金属ストリップを、同じストリップ胥吏設備で処理することができ、常に、オーバーエージングチャンバ内での最適な滞留時間を設定することができるストリップ処理ラインを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1によるストリップ処理設備によって解決される。即ち、オーバーエージングチャンバ内で、少なくとも1つの偏向ローラが、垂直方向に移動可能であり、これにより、オーバーエージングチャンバ内での金属ストリップの長さが設定可能である。これにより、オーバーエージングチャンバ内での金属ストリップの滞留時間も設定可能である。
【0007】
従って、滞留時間は、ストリップ速度に依存せずに、しかもチャンバ内でのストリップ長さの変更によって設定することができる。これにより、1つの同じストリップ処理設備が、異なる生産要求を満足することができ、新しい条件に柔軟に適合させることもできる。
【0008】
理想的に、所定のストリップフォーマット(ストリップ厚さ、ストリップ組成、ストリップ幅)及び所定の熱サイクル(焼鈍温度、冷却温度、冷却速度・・・)のために、ストリップ速度は、最大生産能力に関して決定される。このストリップ速度に基づいて、オーバーエージングチャンバ内での必要なストリップ長さが設定され、これにより、オーバーエージングチャンバ内での金属ストリップの最適なもしくは熱サイクルによって設定される滞留時間が達成される。
【0009】
ここで説明されるオーバーエージングチャンバは、従来のストリップアキュムレータ(ルーパ)と混同すべきでない。ルーパも、移動可能なローラを有し、異なるストリップ長さを収容することができる。しかしながら、ルーパは、設備内での異なるストリップ速度を補償するために使用される。例えば新しく設備内に導入されたストリップが、前のストリップの終端と溶接されなければならず、そのためストリップが停止されなければならない場合、ストリップアキュムレータは、貯蔵されたストリップを解放することによって、後続の処理設備内でのストリップ速度が変化しないことを保証する。しかしながら、このようなルーパは、環境温度の環境空気内で運転される。ルーパは、異なるストリップ速度を保証するためにしか使用されず、熱処理は行なわない。
【0010】
本発明によるオーバーエージングチャンバ内で、複数の偏向ローラが、垂直方向に移動可能である場合が、有利である。これにより、収容されるストリップ長さは、大幅に変更することができる。
【0011】
有利には、1つ又は複数の上の偏向ローラが、垂直方向に移動可能である。
【0012】
移動可能な1つ又は複数の偏向ローラが、所定の位置(所定のストリップ長さを達成するために偏向ローラはこの位置に移動される)で支持又は固定される場合が、有利である。所定の金属ストリップの処理のため、偏向ローラは、いずれにしてもこの所定の位置に留まる。支持又は固定により、偏向ローラ用の持上げ機構は、除荷することができる。
【0013】
オーバーエージングチャンバは、好ましくは、例えば放射間によって電気的に加熱される。しかしながら、オーバーエージングチャンバ内に存在するガスは、吸引し、電気的に加熱し、再び注入することができる。
【0014】
本発明によるオーバーエージングチャンバは、例えば、コーティング設備の前に配置されている。
【0015】
焼鈍炉とオーバーエージングチャンバの間に、冷却セクションが配置されている場合が、有利であるが、それは、このような冷却ステップは、多くの熱処理に必要であるからである。
【0016】
本発明は、装置以外に、請求項9による金属ストリップを連続的に熱処理するための方法にも関する。
【0017】
この場合、オーバーエージングチャンバ内での金属ストリップの熱処理のために、滞留時間が決定され、次いで、少なくとも1つの偏向ローラの移動によって、ストリップ長さが、従って滞留時間が設定される。
【0018】
この場合、オーバーエージングチャンバ内の金属ストリップが、水素-窒素-雰囲気内で熱処理される場合が、有利である。
【0019】
以下で、本発明の複数の実施例を図面によって説明する。個々の図での同じ符号は、それぞれ同じ設備部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】従来技術によるオーバーエージングチャンバの概略図
図2】移動可能な1つの上の偏向ローラを有する本発明によるオーバーエージングチャンバの実施例
図3】移動可能な1つの下の偏向ローラを有する本発明によるオーバーエージングチャンバの別の実施例
図4】移動可能な複数の偏向ローラを有する本発明によるオーバーエージングチャンバの実施例
図5】可能なローラ移動システムの概略図
図6】オーバーエージングチャンバ11内での3つの異なるローラ位置
図7】ローラ移動システムの実施例
図8】ローラ移動システムの実施例
図9】オーバーエージングチャンバの加熱もしくは冷却の概略図
図10】オーバーエージングチャンバの加熱もしくは冷却の概略図
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に、従来技術によるオーバーエージングチャンバ1が図示されている。この場合、金属ストリップ6は、左からオーバーエージングチャンバ1に導入され、下の固定の偏向ローラ2によって垂直方向上方に偏向される。オーバーエージングチャンバ1の上の領域で、金属ストリップ6は、次に、上の固定の偏向ローラ3によって180°下方に偏向される。こうして、金属ストリップ6は、最終的に最後の下の偏向ローラ2によって水平方向に偏向されオーバーエージングチャンバ1を去るまで、蛇行するようにオーバーエージングチャンバ1を経て案内される。オーバーエージングチャンバ1の内部は、通常は150℃~500℃の所定の温度に調温されている。オーバーエージングチャンバ1の内部が、できるだけ一定の温度に保持されることが、重要である。熱損失を低減するために、オーバーエージングチャンバ1のハウジング4は、断熱材5を備えている。オーバーエージングチャンバは、電気的に加熱される放射管7によって加熱される。
【0022】
最適な材料特性を達成するため、金属ストリップ6は、所定の期間(滞留時間)をオーバーエージングチャンバ1内で過ごすべきである。
【0023】
図1によるオーバーエージングチャンバ1下及び上のローラ2,3は固定されているので、収容されるストリップ長さは常に同じである。従って、滞留時間は、ストリップ速度を変更することによってしか変えることができない。
【0024】
図2は、本発明によるオーバーエージングチャンバ11の形成を示す。ハウジング14は、ここでも断熱材15を備えており、ここでも金属ストリップ6は、下の固定の偏向ローラ12と上の固定の偏向ローラ13を介して蛇行するように案内されている。しかしながら、ここでは、上の偏向ローラ13’は、垂直方向に移動可能(運動可能)である。この例では、この上の偏向ローラは、半分の高さまで下げられている。この例のオーバーエージングチャンバは、電気的に加熱される放射管17によって加熱される。これら放射管17は、ここでは移動可能な偏向ローラ13’の領域には配置されていないが、それは、偏向ローラ13’の運動自由度を妨げるからである。当然、このオーバーエージングチャンバ11が、更に以下で説明するように、供給される高温ガスによって加熱されることも考えられる。
【0025】
偏向ローラ13’が、垂直方向に移動可能であるので、これにより、オーバーエージングチャンバ11内での金属ストリップ6のストリップ長さは、変更することができる。従って、オーバーエージングチャンバ11内での金属ストリップ6の滞留時間は、ストリップ速度を変更する必要なしに設定することができる。
【0026】
通常、所定の金属ストリップ6用の最適な滞留時間は、事前に決定される。その場合、所定のストリップ速度を設定して、オーバーエージングチャンバ11内での必要なストリップ長さが算出され、1つの上の偏向ローラ13’もしくは複数の上の偏向ローラ13’の移動によって設定される。好ましくは、移動可能な上の偏向ローラ13’は、所定の金属ストリップ6の処理中にはもはや移動(運動)されず、その位置に固定される。
【0027】
図3には、下の偏向ローラ12’が垂直方向に移動可能であるオーバーエージングチャンバ11が図示されている。
【0028】
図4は、複数の上の偏向ローラ13’が垂直方向に移動可能である実施形態を示す。この場合、上の偏向ローラ13’は、互いに依存せずに移動可能である。
【0029】
図5には、偏向ローラ12’もしくは13’を垂直方向に移動させることができるメカニズム用の可能な実施形態が図示されている。
【0030】
移動可能な上の偏向ローラ13’の軸受ハウジング23は、それぞれ、オーバーエージングチャンバ11の上の領域内で歯車21によって偏向されるチェーン25に吊り下げられている。チェーン25の多端には、カウンタウエイト20が固定されている。両歯車21は、軸22を介して互いに連結され、駆動装置18と結合されている。従って、軸22の回転により、上の偏向ローラ13’は、垂直方向に移動させることができる。下の偏向ローラ12’が移動される場合、配置は、同様に見える。
【0031】
壁の横に、ここでは、異なる高さでローラ支持装置19,19’が設けられている。これらローラ支持装置に、偏向ローラ13’もしくは12’を配置もしくは固定することができる。従って、所定の金属ストリップ6の熱処理中に、チェーン35及び駆動装置18は除荷することができる。固定の下の偏向ローラ12及び軸22は、ここではオーバーエージングチャンバ11外で支承されている。従って、これら軸受46は、高い温度に耐える必要はない。下の偏向ローラ12は、駆動装置45を有する。
【0032】
図6には、オーバーエージングチャンバ11内での異なる3つのストリップ長さが図示されている。
【0033】
中央の図では、両方の上の偏向ローラ13’が、その最上の位置にあり、従って、オーバーエージングチャンバ11内でのストリップ長さは、最大であり、所定のストリップ速度での滞留時間は、最長である。
【0034】
左の図では、移動可能な両方の上の偏向ローラ13’が幾らか下げられており、従って、ストリップ長さが、これによりまた所定のストリップ速度での滞留時間が、短縮されている。
【0035】
右の図で、両方の上の偏向ローラ13’は、その最低の位置ある。ここでは、オーバーエージングチャンバ11内でのストリップ長さが最短であり、従って、所定のストリップ速度での滞留時間も最小化されている。
【0036】
図7及び8には、移動可能な偏向ローラ12’もしくは13’用の調整機構が、より詳細に図示されている。偏向ローラ12’もしくは13’は、500℃までの温度が支配し得る加熱されたオーバーエージングチャンバ11内に存在するので、これら偏向ローラは、高温軸受31によって支承されている。軸22の支承のため、軸受ハウジング16内に収容された通常のころ軸受27で十分である。軸受ハウジング26は、軸受サポート29を介して支持構造30と結合されている。この支持構造30に、モータサポート28と駆動装置18も裁置されている。
【0037】
生じ得る熱膨張を良好に補償し得るため、防塵装置として、オーバーエージングチャンバ11のハウジング14と軸受ハウジング26との間に、伸縮ベローズ24が配置されている。
【0038】
図8には、ローラ支持装置19,19’の機能が図示されている。ローラ支持装置19,19’は、ハウジング32内に収容され、オーバーエージングチャンバ11内に進入することができる。ハウジング32は、ここでは、下部構造33を介して鋼構造44上に位置する。通常、チャンバ高さにわたって異なる高さで、複数のローラ支持装置19,19’は配置されているので、偏向ローラ12’もしくは13’は、異なる高さで支持することができる。
【0039】
図9には、オーバーエージングチャンバ11を加熱するための可能性が図示されている。オーバーエージングチャンバ11は、所定の金属ストリップ6の処理のため、内部にできるだけ一定の温度を備えるべきであり、この温度は、材料及び処理に応じて150℃~500℃である。常に熱損失が生じるので、チャンバは、できるだけ一定の温度レベルを保持し得るために加熱しなければならない。当然、オーバーエージングチャンバ11内に、より小さい温度差が存在し得るが、これら温度差は、通常は、摂氏数度でしかない。加熱するため、高温ガス、例えば不活性ガス又は窒素-水素混合物のような還元ガスが、横に配置された供給ボックス34を介してオーバーエージングチャンバ11内に吹き込まれ、反対側の吸引ボックス35を介してブロワ36によって再び吸引される。次に、ガスは、電気ヒータ40又は熱交換器39のいずれかに供給され、再循環ライン37を介して再びオーバーエージングチャンバ11に導入される。弁38及び41を介して、高温ガスは、熱交換器39又は電気ヒータ40のいずれかに供給することができる。電気ヒータ40により、ガス温度は、再び高められる。ガスが、熱交換器39を介して案内される場合、ガスは、冷却することもできる。これは、例えば、ある鋼種から他の鋼種に切り替えられる場合に必要である。例えば後続の鋼種がより低いオーバーエージング温度を必要とする場合、ガスは、オーバーエージングチャンバ11内に最適な温度ができるだけ迅速に達成されるように冷却される。同時に、偏向ローラ12’及び13’の移動によって、オーバーエージングチャンバ11内でのストリップ長さは、後続の鋼種を最適に熱処理し得るように適合させることができる。
【0040】
図10には、図9の加熱もしくは冷却装置が再び図示されている。ここでは、熱交換器39が冷却水43を供給されることが認められる。ブロワ36用のモータ42も、図示されている。この図では、水素-窒素混合物(HNX)が、加熱媒体として使用される。
【符号の説明】
【0041】
1 従来技術によるオーバーエージングチャンバ
2 下の固定の偏向ローラ
3 上の固定の偏向ローラ
4 ハウジング
5 断熱材
6 金属ストリップ
7 放射管
11 オーバーエージングチャンバ
12 下の偏向ローラ(固定)
12’ 下の偏向ローラ(移動可能)
13 上の偏向ローラ(固定)
13’ 上の偏向ローラ(移動可能)
14 ハウジング
15 断熱材
17 放射管
18 駆動装置
19 ローラ支持装置(退出)
19’ オーバーエージングチャンバ11に進入したローラ支持装置
20 カウンタウエイト
21 歯車
22 軸
23 軸受ハウジング
24 伸縮ベローズ
25 チェーン
26 軸受ハウジング
27 ころ軸受
28 モータサポート
29 軸受サポート
30 支持構造
31 高温軸受
32 ローラ支持装置19用のハウジング
33 下部構造
34 供給ボックス
35 吸引ボックス
36 ブロワ
37 再循環ライン
38 弁
39 熱交換器
40 電気ヒータ
41 弁
42 モータ
43 冷却水
44 鋼構造
45 偏向ローラ12用の駆動装置
46 固定の偏向ローラ用の軸受
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-06-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼鈍炉と後続の加熱可能なオーバーエージングチャンバ(11)を有する金属ストリップ(6)を連続的に熱処理するためのストリップ処理設備であって、金属ストリップ(6)が、オーバーエージングチャンバ(11)内で、垂直方向に離間した複数の偏向ローラ(12,12’,13,13’)を介して案内され、これにより、金属ストリップ(6)が、オーバーエージングチャンバ(11)を蛇行するように通過し、少なくとも1つの偏向ローラ(12’,13’)が、垂直方向に移動可能であり、これにより、オーバーエージングチャンバ(11)内に収容された金属ストリップ(6)の長さが設定可能であり、これにより、オーバーエージングチャンバ(11)内での金属ストリップ(6)の滞留時間が設定可能であるものにおいて、
移動可能な1つの偏向ローラ(12’,13’)もしくは移動可能な複数の偏向ローラ(12’,13’)が、所定の位置でローラ支持装置(19,19’)によって支持可能もしくは固定可能であり、ローラ支持装置(19,19’)は、ハウジング(32)内に収容され、ローラ支持装置(19,19’)は、オーバーエージングチャンバ(11)内に進入可能であること、を特徴とするストリップ処理設備。
【請求項2】
複数の偏向ローラ(12’,13’)が、垂直方向に移動可能であること、を特徴とする請求項1に記載のストリップ処理設備。
【請求項3】
1つ又は複数の上の偏向ローラ(13’)が、垂直方向に移動可能であること、を特徴とする請求項1又は2に記載のストリップ処理設備。
【請求項4】
オーバーエージングチャンバ(11)が、電気的に加熱可能であること、を特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のストリップ処理設備。
【請求項5】
オーバーエージングチャンバ(11)が、加熱されたガスの注入によって加熱可能であること、を特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のストリップ処理設備。
【請求項6】
オーバーエージングチャンバ(11)が、コーティング設備の前、好ましくは電気メッキ設備の前に配置されていること、を特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のストリップ処理設備。
【請求項7】
焼鈍炉とオーバーエージングチャンバ(11)の間に、冷却セクションが配置されていること、を特徴とする請求項1~の何れか1項に記載のストリップ処理設備。
【請求項8】
焼鈍炉と後続のオーバーエージングチャンバ(11)によって金属ストリップ(6)を連続的に熱処理するための方法であって、金属ストリップ(6)が、垂直方向に離間した偏向ローラ(12,12’,13,13’)を介して蛇行するように案内されオーバーエージングチャンバ(11)内での金属ストリップ(6)の熱処理のために、滞留時間が決定されオーバーエージングチャンバ(11)内での少なくとも1つの偏向ローラ(12’,13’)の垂直方向の移動によって、オーバーエージングチャンバ(11)内での金属ストリップ(6)のストリップ長さが、従って滞留時間が設定されるものにおいて、
移動可能な1つの偏向ローラ(12’,13’)もしくは移動可能な複数の偏向ローラ(12’,13’)が、所定の位置でローラ支持装置(19’)によって支持可能もしくは固定可能であり、ローラ支持装置(19,19’)は、ハウジング(32)内に収容され、ローラ支持装置(19,19’)は、オーバーエージングチャンバ(11)内に進入することができること、を特徴とする方法。
【請求項9】
オーバーエージングチャンバ(11)内に存在するガス又はガス混合物が、吸引され、加熱され、再びオーバーエージングチャンバ(11)に供給されること、を特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項10】
ガスもしくはガス混合物が、電気的に加熱されること、を特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項11】
オーバーエージングチャンバ(11)内の金属ストリップ(6)が、150℃~500℃の、好ましくは400~500℃の温度で熱処理されること、を特徴とする請求項9~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
オーバーエージングチャンバ(11)内の金属ストリップ(6)が、水素-窒素-雰囲気内で熱処理されること、を特徴とする請求項9~10のいずれか1項に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、焼鈍炉と後続の加熱可能なオーバーエージングチャンバを有する金属ストリップを連続的に熱処理するためのストリップ処理設備である。この場合、金属ストリップは、オーバーエージングチャンバ内で、垂直方向に離間した複数のローラを介して案内され、これにより、金属ストリップは、オーバーエージングチャンバを蛇行するように通過する。
【背景技術】
【0002】
従来のストリップ処理設備は、複数のチャンバから成り、これらチャンバ内で、金属ストリップは、まず焼鈍温度に加熱され、所定の時間の間、この温度に保持される。所定の温度曲線に従うことも可能である。このような焼鈍炉は、十分知られている。その後、金属ストリップは、所定の冷却速度に応じて冷却され、所定のオーバーエージング温度(過時効温度)にされ、所定の期間の間、この温度に保持される。即ち、いわゆるオーバーエージングチャンバは、金属ストリップを正確に規定された時間の間所定の温度(過時効温度)に保持するために使用される。しばしば、これらチャンバは、「ホールディングチャンバ」又は「ソーキングチャンバ」又は「パーティショニングチャンバ」とも呼ばれる。温度は、オーバーエージングチャンバ内でできるだけ一定であるべきで、金属ストリップ合金に応じて150℃~500℃である。これらオーバーエージングチャンバ内を、通常は、保護ガス雰囲気もしくは還元雰囲気、例えば水素-窒素-混合物も支配する。次いで、金属ストリップは、室温に冷却すること又は例えば亜鉛メッキ設備のような電気メッキ設備内でコーティング温度にすることができる。
【0003】
これら全ての熱処理ステップは、金属ストリップの機械的特性に影響を及ぼす。この場合、金属ストリップが、特定の温度に加熱されるだけでなく、正確に規定された機関の間にオーバーエージングチャンバ内で所定の温度に保持されることが重要である。同様に、加熱速度及び冷却速度は、ストリップ特性に影響を及ぼす。加えて、異なる厚さもしくは異なる組成の金属ストリップも、異なる熱処理パラメータを必要とする。
【0004】
オーバーエージングチャンバ内での金属ストリップの滞留時間は、オーバーエージング炉内でのストリップ速度及びストリップ長さによって決定される。従来のオーバーエージングチャンバ内でのストリップの長さは、偏向ローラの配置によって設定され、これにより、滞留時間は、ストリップ速度を介してのみ調整可能である。しかしながら、ストリップ速度は、非常に限定された程度位でしか変化させることができないが、それは、速度変化毎に、当然、生産能力、加熱速度及び冷却速度にも影響を及ぼすからである。
【0005】
独国特許出願公開第102015001438号明細書には、ストリップがループの形態で通過するように案内される熱処理をするための設備が記載されている。この場合、上のローラブリッジは、異なるストリップ通過時間を設定するために垂直方向に移動可能である。
【0006】
米国特許出願公開第20200131598号明細書には、オプションで加熱可能でもありかつ2つの焼鈍炉の間に配置された竪型のストリップアキュムレータが記載されている。
【0007】
韓国特許第101951945号公報には、炉の前又は後に配置することができかつストリップがストリップアキュムレータ内で接触することを防止する装置を備える竪型のストリップアキュムレータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第102015001438号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第20200131598号明細書
【特許文献3】韓国特許第101951945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、オーバーエージングチャンバ内での金属ストリップの滞留時間が、広い範囲で設定可能であり、これにより、完全に異なる金属ストリップを、同じストリップ胥吏設備で処理することができ、常に、オーバーエージングチャンバ内での最適な滞留時間を設定することができるストリップ処理ラインを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1によるストリップ処理設備によって解決される。即ち、オーバーエージングチャンバ内で、少なくとも1つの偏向ローラが、垂直方向に移動可能であり、これにより、オーバーエージングチャンバ内での金属ストリップの長さが設定可能である。これにより、オーバーエージングチャンバ内での金属ストリップの滞留時間も設定可能である。
【0011】
従って、滞留時間は、ストリップ速度に依存せずに、しかもチャンバ内でのストリップ長さの変更によって設定することができる。これにより、1つの同じストリップ処理設備が、異なる生産要求を満足することができ、新しい条件に柔軟に適合させることもできる。
【0012】
本発明によれば、移動可能な1つ又は複数の偏向ローラが、所定の位置(所定のストリップ長さを達成するために偏向ローラはこの位置に移動される)で支持又は固定される。ローラ支持装置は、ハウジング内に収容され、オーバーエージングチャンバ内に進入することができる。
【0013】
所定の金属ストリップの処理のため、偏向ローラは、いずれにしてもこの所定の位置に留まる。支持又は固定により、偏向ローラ用の持上げ機構は、除荷することができる。
【0014】
理想的に、所定のストリップフォーマット(ストリップ厚さ、ストリップ組成、ストリップ幅)及び所定の熱サイクル(焼鈍温度、冷却温度、冷却速度・・・)のために、ストリップ速度は、最大生産能力に関して決定される。このストリップ速度に基づいて、オーバーエージングチャンバ内での必要なストリップ長さが設定され、これにより、オーバーエージングチャンバ内での金属ストリップの最適なもしくは熱サイクルによって設定される滞留時間が達成される。
【0015】
ここで説明されるオーバーエージングチャンバは、従来のストリップアキュムレータ(ルーパ)と混同すべきでない。ルーパも、移動可能なローラを有し、異なるストリップ長さを収容することができる。しかしながら、ルーパは、設備内での異なるストリップ速度を補償するために使用される。例えば新しく設備内に導入されたストリップが、前のストリップの終端と溶接されなければならず、そのためストリップが停止されなければならない場合、ストリップアキュムレータは、貯蔵されたストリップを解放することによって、後続の処理設備内でのストリップ速度が変化しないことを保証する。しかしながら、このようなルーパは、環境温度の環境空気内で運転される。ルーパは、異なるストリップ速度を保証するためにしか使用されず、熱処理は行なわない。
【0016】
本発明によるオーバーエージングチャンバ内で、複数の偏向ローラが、垂直方向に移動可能である場合が、有利である。これにより、収容されるストリップ長さは、大幅に変更することができる。
【0017】
有利には、1つ又は複数の上の偏向ローラが、垂直方向に移動可能である。
【0018】
オーバーエージングチャンバは、好ましくは、例えば放射間によって電気的に加熱される。しかしながら、オーバーエージングチャンバ内に存在するガスは、吸引し、電気的に加熱し、再び注入することができる。
【0019】
本発明によるオーバーエージングチャンバは、例えば、コーティング設備の前に配置されている。
【0020】
焼鈍炉とオーバーエージングチャンバの間に、冷却セクションが配置されている場合が、有利であるが、それは、このような冷却ステップは、多くの熱処理に必要であるからである。
【0021】
本発明は、装置以外に、請求項による金属ストリップを連続的に熱処理するための方法にも関する。
【0022】
この場合、オーバーエージングチャンバ内での金属ストリップの熱処理のために、滞留時間が決定され、次いで、少なくとも1つの偏向ローラの移動によって、ストリップ長さが、従って滞留時間が設定される。その場合、移動可能な1つの偏向ローラもしくは移動可能な複数の偏向ローラが、所定の位置でローラ支持装置によって支持もしくは固定される。この場合、ローラ支持装置は、ハウジング内に収容され、オーバーエージングチャンバ内に進入することができる。
【0023】
この場合、オーバーエージングチャンバ内の金属ストリップが、水素-窒素-雰囲気内で熱処理される場合が、有利である。
【0024】
以下で、本発明の複数の実施例を図面によって説明する。個々の図での同じ符号は、それぞれ同じ設備部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】従来技術によるオーバーエージングチャンバの概略図
図2】移動可能な1つの上の偏向ローラを有する本発明によるオーバーエージングチャンバの実施例
図3】移動可能な1つの下の偏向ローラを有する本発明によるオーバーエージングチャンバの別の実施例
図4】移動可能な複数の偏向ローラを有する本発明によるオーバーエージングチャンバの実施例
図5】可能なローラ移動システムの概略図
図6】オーバーエージングチャンバ11内での3つの異なるローラ位置
図7】ローラ移動システムの実施例
図8】ローラ移動システムの実施例
図9】オーバーエージングチャンバの加熱もしくは冷却の概略図
図10】オーバーエージングチャンバの加熱もしくは冷却の概略図
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に、従来技術によるオーバーエージングチャンバ1が図示されている。この場合、金属ストリップ6は、左からオーバーエージングチャンバ1に導入され、下の固定の偏向ローラ2によって垂直方向上方に偏向される。オーバーエージングチャンバ1の上の領域で、金属ストリップ6は、次に、上の固定の偏向ローラ3によって180°下方に偏向される。こうして、金属ストリップ6は、最終的に最後の下の偏向ローラ2によって水平方向に偏向されオーバーエージングチャンバ1を去るまで、蛇行するようにオーバーエージングチャンバ1を経て案内される。オーバーエージングチャンバ1の内部は、通常は150℃~500℃の所定の温度に調温されている。オーバーエージングチャンバ1の内部が、できるだけ一定の温度に保持されることが、重要である。熱損失を低減するために、オーバーエージングチャンバ1のハウジング4は、断熱材5を備えている。オーバーエージングチャンバは、電気的に加熱される放射管7によって加熱される。
【0027】
最適な材料特性を達成するため、金属ストリップ6は、所定の期間(滞留時間)をオーバーエージングチャンバ1内で過ごすべきである。
【0028】
図1によるオーバーエージングチャンバ1下及び上のローラ2,3は固定されているので、収容されるストリップ長さは常に同じである。従って、滞留時間は、ストリップ速度を変更することによってしか変えることができない。
【0029】
図2は、本発明によるオーバーエージングチャンバ11の形成を示す。ハウジング14は、ここでも断熱材15を備えており、ここでも金属ストリップ6は、下の固定の偏向ローラ12と上の固定の偏向ローラ13を介して蛇行するように案内されている。しかしながら、ここでは、上の偏向ローラ13’は、垂直方向に移動可能(運動可能)である。この例では、この上の偏向ローラは、半分の高さまで下げられている。この例のオーバーエージングチャンバは、電気的に加熱される放射管17によって加熱される。これら放射管17は、ここでは移動可能な偏向ローラ13’の領域には配置されていないが、それは、偏向ローラ13’の運動自由度を妨げるからである。当然、このオーバーエージングチャンバ11が、更に以下で説明するように、供給される高温ガスによって加熱されることも考えられる。
【0030】
偏向ローラ13’が、垂直方向に移動可能であるので、これにより、オーバーエージングチャンバ11内での金属ストリップ6のストリップ長さは、変更することができる。従って、オーバーエージングチャンバ11内での金属ストリップ6の滞留時間は、ストリップ速度を変更する必要なしに設定することができる。
【0031】
通常、所定の金属ストリップ6用の最適な滞留時間は、事前に決定される。その場合、所定のストリップ速度を設定して、オーバーエージングチャンバ11内での必要なストリップ長さが算出され、1つの上の偏向ローラ13’もしくは複数の上の偏向ローラ13’の移動によって設定される。好ましくは、移動可能な上の偏向ローラ13’は、所定の金属ストリップ6の処理中にはもはや移動(運動)されず、その位置に固定される。
【0032】
図3には、下の偏向ローラ12’が垂直方向に移動可能であるオーバーエージングチャンバ11が図示されている。
【0033】
図4は、複数の上の偏向ローラ13’が垂直方向に移動可能である実施形態を示す。この場合、上の偏向ローラ13’は、互いに依存せずに移動可能である。
【0034】
図5には、偏向ローラ12’もしくは13’を垂直方向に移動させることができるメカニズム用の可能な実施形態が図示されている。
【0035】
移動可能な上の偏向ローラ13’の軸受ハウジング23は、それぞれ、オーバーエージングチャンバ11の上の領域内で歯車21によって偏向されるチェーン25に吊り下げられている。チェーン25の多端には、カウンタウエイト20が固定されている。両歯車21は、軸22を介して互いに連結され、駆動装置18と結合されている。従って、軸22の回転により、上の偏向ローラ13’は、垂直方向に移動させることができる。下の偏向ローラ12’が移動される場合、配置は、同様に見える。
【0036】
壁の横に、ここでは、異なる高さでローラ支持装置19,19’が設けられている。これらローラ支持装置に、偏向ローラ13’もしくは12’を配置もしくは固定することができる。従って、所定の金属ストリップ6の熱処理中に、チェーン35及び駆動装置18は除荷することができる。固定の下の偏向ローラ12及び軸22は、ここではオーバーエージングチャンバ11外で支承されている。従って、これら軸受46は、高い温度に耐える必要はない。下の偏向ローラ12は、駆動装置45を有する。
【0037】
図6には、オーバーエージングチャンバ11内での異なる3つのストリップ長さが図示されている。
【0038】
中央の図では、両方の上の偏向ローラ13’が、その最上の位置にあり、従って、オーバーエージングチャンバ11内でのストリップ長さは、最大であり、所定のストリップ速度での滞留時間は、最長である。
【0039】
左の図では、移動可能な両方の上の偏向ローラ13’が幾らか下げられており、従って、ストリップ長さが、これによりまた所定のストリップ速度での滞留時間が、短縮されている。
【0040】
右の図で、両方の上の偏向ローラ13’は、その最低の位置ある。ここでは、オーバーエージングチャンバ11内でのストリップ長さが最短であり、従って、所定のストリップ速度での滞留時間も最小化されている。
【0041】
図7及び8には、移動可能な偏向ローラ12’もしくは13’用の調整機構が、より詳細に図示されている。偏向ローラ12’もしくは13’は、500℃までの温度が支配し得る加熱されたオーバーエージングチャンバ11内に存在するので、これら偏向ローラは、高温軸受31によって支承されている。軸22の支承のため、軸受ハウジング16内に収容された通常のころ軸受27で十分である。軸受ハウジング26は、軸受サポート29を介して支持構造30と結合されている。この支持構造30に、モータサポート28と駆動装置18も裁置されている。
【0042】
生じ得る熱膨張を良好に補償し得るため、防塵装置として、オーバーエージングチャンバ11のハウジング14と軸受ハウジング26との間に、伸縮ベローズ24が配置されている。
【0043】
図8には、ローラ支持装置19,19’の機能が図示されている。ローラ支持装置19,19’は、ハウジング32内に収容され、オーバーエージングチャンバ11内に進入することができる。ハウジング32は、ここでは、下部構造33を介して鋼構造44上に位置する。通常、チャンバ高さにわたって異なる高さで、複数のローラ支持装置19,19’は配置されているので、偏向ローラ12’もしくは13’は、異なる高さで支持することができる。
【0044】
図9には、オーバーエージングチャンバ11を加熱するための可能性が図示されている。オーバーエージングチャンバ11は、所定の金属ストリップ6の処理のため、内部にできるだけ一定の温度を備えるべきであり、この温度は、材料及び処理に応じて150℃~500℃である。常に熱損失が生じるので、チャンバは、できるだけ一定の温度レベルを保持し得るために加熱しなければならない。当然、オーバーエージングチャンバ11内に、より小さい温度差が存在し得るが、これら温度差は、通常は、摂氏数度でしかない。加熱するため、高温ガス、例えば不活性ガス又は窒素-水素混合物のような還元ガスが、横に配置された供給ボックス34を介してオーバーエージングチャンバ11内に吹き込まれ、反対側の吸引ボックス35を介してブロワ36によって再び吸引される。次に、ガスは、電気ヒータ40又は熱交換器39のいずれかに供給され、再循環ライン37を介して再びオーバーエージングチャンバ11に導入される。弁38及び41を介して、高温ガスは、熱交換器39又は電気ヒータ40のいずれかに供給することができる。電気ヒータ40により、ガス温度は、再び高められる。ガスが、熱交換器39を介して案内される場合、ガスは、冷却することもできる。これは、例えば、ある鋼種から他の鋼種に切り替えられる場合に必要である。例えば後続の鋼種がより低いオーバーエージング温度を必要とする場合、ガスは、オーバーエージングチャンバ11内に最適な温度ができるだけ迅速に達成されるように冷却される。同時に、偏向ローラ12’及び13’の移動によって、オーバーエージングチャンバ11内でのストリップ長さは、後続の鋼種を最適に熱処理し得るように適合させることができる。
【0045】
図10には、図9の加熱もしくは冷却装置が再び図示されている。ここでは、熱交換器39が冷却水43を供給されることが認められる。ブロワ36用のモータ42も、図示されている。この図では、水素-窒素混合物(HNX)が、加熱媒体として使用される。
【符号の説明】
【0046】
1 従来技術によるオーバーエージングチャンバ
2 下の固定の偏向ローラ
3 上の固定の偏向ローラ
4 ハウジング
5 断熱材
6 金属ストリップ
7 放射管
11 オーバーエージングチャンバ
12 下の偏向ローラ(固定)
12’ 下の偏向ローラ(移動可能)
13 上の偏向ローラ(固定)
13’ 上の偏向ローラ(移動可能)
14 ハウジング
15 断熱材
17 放射管
18 駆動装置
19 ローラ支持装置(退出)
19’ オーバーエージングチャンバ11に進入したローラ支持装置
20 カウンタウエイト
21 歯車
22 軸
23 軸受ハウジング
24 伸縮ベローズ
25 チェーン
26 軸受ハウジング
27 ころ軸受
28 モータサポート
29 軸受サポート
30 支持構造
31 高温軸受
32 ローラ支持装置19用のハウジング
33 下部構造
34 供給ボックス
35 吸引ボックス
36 ブロワ
37 再循環ライン
38 弁
39 熱交換器
40 電気ヒータ
41 弁
42 モータ
43 冷却水
44 鋼構造
45 偏向ローラ12用の駆動装置
46 固定の偏向ローラ用の軸受
【国際調査報告】