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特表2024-522256免疫寛容を誘導するための合成タンパク質
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-12
(54)【発明の名称】免疫寛容を誘導するための合成タンパク質
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20240605BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240605BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20240605BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20240605BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240605BHJP
   A61K 35/545 20150101ALI20240605BHJP
   A61K 35/36 20150101ALI20240605BHJP
   A61K 35/30 20150101ALI20240605BHJP
   A61K 35/34 20150101ALI20240605BHJP
   A61K 35/39 20150101ALI20240605BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240605BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240605BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240605BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240605BHJP
   C07K 14/52 20060101ALN20240605BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20240605BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240605BHJP
   C12N 15/53 20060101ALN20240605BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20240605BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALN20240605BHJP
   C12N 5/07 20100101ALN20240605BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/86 Z
C12N15/867 Z
C12N5/10
A61K35/545
A61K35/36
A61K35/30
A61K35/34
A61K35/39
A61P37/02
A61P3/10
A61K48/00
A61K38/16
C07K14/52
C07K14/705
C12N15/12
C12N15/53
C12N15/11 Z
C12N5/0735
C12N5/07
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571553
(86)(22)【出願日】2022-05-17
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 US2022029653
(87)【国際公開番号】W WO2022245841
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】63/189,359
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591013274
【氏名又は名称】ウィスコンシン アラムニ リサーチ ファンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】ガリポー ジャック
(72)【発明者】
【氏名】ポール プラデュット
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA41
4C084CA18
4C084CA53
4C084CA56
4C084DC23
4C084DC50
4C084MA67
4C084NA14
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZC351
4C084ZC352
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087NA14
4C087ZB07
4C087ZC35
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA01
4H045DA50
4H045DA89
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、局所免疫寛容を誘導する融合タンパク質を提供する。融合タンパク質は、免疫調節タンパク質プログラム死リガンド1(PD-L1)及びインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)由来ペプチドを含む。また提供されるのは、前記融合タンパク質をコードする核酸構築物、前記核酸構築物を含む細胞、及び前記細胞を対象に移植する方法である。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N末端からC末端へ、
a)プログラム死リガンド1(PD-L1)タンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部を含むPD-L1ペプチド、
b)膜貫通ドメイン、及び
c)インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)タンパク質の少なくとも一部を含むIDOペプチド、
を含み、
任意に、前記PD-L1ペプチドはPD-1に結合でき、前記IDOペプチドは触媒的に活性である、融合タンパク質。
【請求項2】
前記PD-L1ペプチドが、配列番号3又は配列番号7と少なくとも95%の同一性を有する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記PD-L1ペプチドが、PD-L1シグナルペプチドを更に含む、請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記PD-L1シグナルペプチドが、配列番号4又は配列番号8である、請求項3に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記膜貫通ドメインが、PD-L1タンパク質の膜貫通ドメインの少なくとも一部を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記膜貫通ドメインが、配列番号5又は配列番号9と少なくとも95%の同一性を有する、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記IDOペプチドが、配列番号10と少なくとも95%の同一性を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記膜貫通ドメインが、リンカーペプチドにより前記IDOペプチドに結合される、請求項1~7のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
前記リンカーペプチドが、グリシン-セリンリンカーである、請求項8に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記グリシン-セリンリンカーが、3X GGGSリンカー(配列番号11)である、請求項9に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
配列番号1、配列番号14、配列番号17、又は配列番号20を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
プロモーターに作動可能に連結された、請求項1~11のいずれか1項に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む核酸構築物。
【請求項13】
前記プロモーターが、伸長因子1αショート(EFS)プロモーター又はハイブリッドCMVエンハンサー/ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターである、請求項12に記載の核酸構築物。
【請求項14】
前記核酸構築物が、ウイルスベクターである、請求項12又は13に記載の核酸構築物。
【請求項15】
前記ウイルスベクターが、レンチウイルスベクターである、請求項14に記載の核酸構築物。
【請求項16】
請求項12~15のいずれか1項に記載の核酸構築物を含む細胞。
【請求項17】
前記細胞が、請求項1~11のいずれかに記載の融合タンパク質を発現する、請求項16に記載の細胞。
【請求項18】
前記融合タンパク質の少なくとも一部が、前記細胞の表面上で発現される、請求項17に記載の細胞。
【請求項19】
前記PD-L1ペプチドが、細胞外間隙中に局在化され、前記IDOペプチドが、前記細胞の細胞質中に局在化される、請求項17又は18に記載の細胞。
【請求項20】
前記細胞が、誘導多能性幹細胞、胚性幹細胞、網膜色素上皮細胞、ドーパミン作動性神経、又は心筋細胞である、請求項16~19のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項21】
請求項16~20のいずれか1項に記載の細胞を対象に移植する方法。
【請求項22】
前記細胞が、同種源由来である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞が、異種源由来である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞が、ブタ由来である、請求項21~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記対象が、ヒトである請求項21~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記移植された細胞が、その天然の機能を実行する、請求項21~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記移植された細胞が、免疫抑制の非存在下で、免疫系により寛容される、請求項21~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記移植された細胞が、前記核酸構築物を含まない移植された対照細胞に比べて、延長された生存を有する、請求項21~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記対象が糖尿病患者であり、前記細胞が膵島である、請求項21~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記対象がI型糖尿病である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記細胞が、移植後にインスリンを産生する、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
前記対象が、移植前に比べて、移植後に改善された耐糖能を示す、請求項29~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記対象が、移植後に正常血糖になる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記対象が、移植後に少なくとも50週間にわたり正常血糖のままである、請求項33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年5月17日に出願の米国特許仮出願第63/189,359号に対する優先権を主張する。この仮出願特許の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
配列表が本出願に添付され、114,175バイトのサイズで2022年4月29日に作成された、「960296_04290_ST25.txt」の名称の配列表のASCIIテキストファイルとして提出される。配列表は、EFS-Web経由で出願と共に電子申請され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
移植拒絶反応は、レシピエントの免疫系が提供された移植片を攻撃する場合に起こり、移植組織又は臓器を破壊し始める。現在では、長期の全身免疫抑制は、同種移植の拒絶を防止するために利用できる唯一の臨床戦略である(1)。移植後免疫抑制療法における顕著な改善にもかかわらず、宿主免疫応答の長期抑制は依然として、日和見感染、心臓及び腎臓毒性、及び悪性腫瘍リスクの増大などの重篤な有害作用の原因となっている(2)。これらの有害作用及び死体由来細胞及び組織の極度の不足の両方は、いくつかの末期ヒト疾患のための治療としての同種移植療法の広範な適応を妨げる主要な障害である(1、3~5)。例えば、膵島移植は、1型糖尿病(T1D)の治療のための有望な療法である(6~8)。しかし、都合の悪いことに、大部分の膵島同種移植片レシピエントは、移植後3~5年以内に移植片機能及びインスリン非依存性を失う(9)。更に、異種移植の拒絶を防ぐ免疫抑制レジメンは、確立されていない。従って、同種又は異種移植片に対する免疫寛容を誘導する、より安全でより効果的な手段に関する重要で未充足のニーズが残されている。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、本明細書ではPIDOと呼ばれる本発明者らの融合タンパク質をベースにした遺伝子改変融合ポリペプチドを提供する。融合タンパク質は、N末端からC末端へ:(a)PD-L1タンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部を含むPD-L1ペプチド、(b)膜貫通ドメイン、及び(c)IDOタンパク質の少なくとも一部を含むIDOペプチド、を含む。
いくつかの実施形態では、PD-L1ペプチドは、PD-1に結合でき、IDOペプチドは、触媒活性がある。
第2の態様では、本発明は、プロモーターに作動可能に連結された、本明細書で記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む核酸構築物を提供する。
第3の態様では、本発明は、本明細書で記載の核酸構築物を含む細胞を提供する。好適な条件下で、細胞は、本明細書で記載の融合タンパク質を発現する。
第4の態様では、本発明は、本明細書で記載の細胞を対象に移植する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1A】PIDO融合タンパク質が形質導入細胞中で発現されることを示す。(A)実験の概略図。レンチウイルスを用いてPIDO発現用の膵島を形質導入した。
図1B】(B)PIDO発現構築物(上段)の概略図及びPIDOタンパク質配列(配列番号1;下段)。
図1C】(C)PIDOの3D構造の予測。
図1D】(D)示した蛍光レポーターの発現として検出された、A375ヒトメラノーマ細胞中のレンチウイルス形質導入効率。DNAは、DAPIで対比染色された(青)。C57BL/6マウス膵島は、PD-L1、IDO、又はPIDOを発現するレンチウイルスにより形質導入され、続けて、酵素分散された。
図1E-F】形質導入細胞は、抗IDO抗体を用いて、PIDO発現マウス又はブタ膵島からの抽出物の(E)フローサイトメトリー(即ち、細胞外PD-L1発現を測定するために)及び(F)ウェスタンブロット(代表3種)(即ち、細胞内IDO発現を測定するために)により分析された。
図1G】(G)PIDO構成タンパク質の予測細胞内局在性の概略図。PD-L1は、細胞膜上に提示されるが、IDOは、細胞質中でPD-L1の細胞質側末端に係留される。
図1H】(H)IDO触媒活性を検出するためのキヌレニンELISA(n=4)。
図1I】(I)インビトロ培養の48時間後に、グルコース刺激インスリン分泌アッセイで、PD-L1、IDO、又はPIDOの発現のために構築物を形質導入したマウス膵島が非改変膵島と比較された。これらの結果は、低(2.8G)及び高(16.7G)グルコース濃度でのインスレーション分泌を示す。データは、平均±SEMとして示される。(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001)。
図2A】PIDO発現同種膵島は、既存の化学的に誘導された糖尿病からマウスを逆転させることを示す。(A)実験の概略図。糖尿病は、ストレプトゾトシン(STZ)で導入され、PIDO発現同種C57BL/6マウス膵島はBALB/cマウスに移植された。
図2B】(B)腎被膜下移植膵島同種移植片の代表的断面(明視野、左、4倍)を、インスリン(緑)及びアクチン(赤)染色した。DNAは、DAPIで対比染色された(青)。元の倍率は20倍であった。
図2C】(C)STZ処理の前後、及び遺伝子改変同種膵島を移植後に血糖測定。次記5つの群を調査した:(1)移植なしの非糖尿病マウス(「No STZ/Txp」;STZなし、移植なし;n=3;点線)、(2)対照膵島移植糖尿病マウス(「膵島Ctrl」;+STZ、EGFP発現移植片;400個の膵島;n=4;赤)、(3)PD-L1発現膵島移植糖尿病マウス(「膵島PD-L1」;+STZ、PD-L1発現移植片;400個の膵島;n=5;ダイアモンド記号、破線」)、(4)IDO発現膵島移植糖尿病マウス(「膵島IDO」;+STZ、IDO発現移植片;400個の膵島;n=5;六角形記号、破線)、及び(5)PD-L1及びIDOを個別に同時発現した膵島移植糖尿病マウス(「膵島PL-D1+IDO」;+STZ、PIDO発現移植片;400個の膵島;n=5;青)。
図2D】(D)STZ処理の前後、及び遺伝子改変同種膵島を移植後に、絶食時(右)及びランダム摂食時(左)状態の両方で、血糖測定。次記3つの群を調査した:(1)移植なしのマウス(「No Txp」;STZなし、移植なし;n=3;点線)、(2)対照膵島移植糖尿病マウス(「膵島Ctrl」;+STZ、EGFP発現移植片;400個の膵島;n=4;赤)、及び(3)PIDO発現膵島移植糖尿病マウス(「膵島PIDO」;+STZ、PIDO発現移植片;400個の膵島;n=5;青)。
図2E】(E)移植の2週間後及び10週間後に実施されるブドウ糖負荷試験(GTT)。次記3つの群を調査した:(1)移植なしのマウス(「No Txp」;STZなし、移植なし;n=3;2Wk及び10Wk、黒)、(2)対照膵島移植糖尿病マウス(「膵島Ctrl」;+STZ、EGFP発現移植片;n=5;2Wk及び10Wk、赤)、及び(3)PIDO発現膵島移植糖尿病マウス(「膵島PIDO+」;+STZ、PIDO発現移植片;n=5;2Wk及び10Wk、青)。下段パネル:GTTデータの曲線下面積(AUC)定量化。移植の2及び10週間後に実施された。
図2F】(F)インビボグルコース刺激インスリン分泌(GSIS)アッセイ。次記3つの群を調査した:(1)移植なしのマウス(「No Txp」;STZなし、移植なし;n=3;2Wk及び10Wk、黒)、(2)対照膵島移植糖尿病マウス(「膵島Ctrl」;+STZ、EGFP発現移植片;n=4;2Wk及び10Wk、赤)、及び(3)PIDO発現膵島移植糖尿病マウス(「膵島PIDO+」;+STZ、PIDO発現移植片;n=5;2Wk及び10Wk、青)。データは、平均±SEMとして示される。(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001)。
図3A】PIDO発現膵島同種移植片は糖尿病NODマウスの高血糖症を改善することを示す。(A)実験の概略図。PIDO発現同種C57BL/6マウス膵島は糖尿病NODマウスに移植された。
図3B】(B)ナイーブ又はPIDO発現同種膵島を移植後のNODマウスの摂食時血糖測定。次記3つの群を調査した:(1)移植なしの正常血糖マウス(「非糖尿病/No Txp」;n=4;黒)、(2)対照膵島移植糖尿病マウス(「膵島Ctrl」;EGFP発現移植片;400個の膵島;n=4;赤)、及び(3)PIDO発現膵島移植糖尿病マウス(「膵島PIDO+」;PIDO発現移植片;400個の膵島;n=5;青)。糖尿病合併症(低インスリン血症)で死亡した、又は糖尿病が再発した動物を、死亡/再発が観察された時間に分析から取り出し、プロット上に、それぞれ、*及び§でマークした。
図3C】(C)PIDO+同種膵島移植及びナイーブ同種膵島移植NODマウスの糖尿病再発率を示す階段状グラフである。糖尿病再発(血糖>250mg/dL)は、終末イベントとして使用された。
図4A】PIDOは、ナイーブ同種膵島に対して獲得免疫寛容を付与しないことを示す。(A)実験の概略図。糖尿病はストレプトゾトシン(STZ)で誘導され、PIDO発現同種C57BL/6マウス膵島はBALB/cマウスレシピエントに移植された。その後、レシピエントは、STZ又は腎摘出で再誘発され、反対側の腎臓での2回目の腎臓下移植が実施された。
図4B】(B)STZ処理の前後、同種膵島の移植後、STZで再誘発後、及びナイーブ同種膵島による2回目の移植後に血糖測定。次記3つの群を調査した:(1)移植なしのマウス(「No Txp」;STZなし、移植なし;n=3;点線)、(2)対照膵島移植糖尿病マウス(「膵島Ctrl」;+STZ、EGFP発現移植片;400個の膵島;n=4;赤)、及び(3)PIDO発現膵島移植糖尿病マウス(「膵島PIDO+」;+STZ、PIDO発現移植片;400個の膵島;n=5;青)。
図4C】(C)STZ処理の前後、遺伝子改変同種膵島の移植後、腎摘出を介した再誘発後、及びナイーブ同種膵島による2回目の移植後に血糖測定。次記3つの群を調査した:(1)移植なしのマウス(「No Txp」;STZなし、移植なし;n=3;点線)、(2)対照膵島移植糖尿病マウス(「膵島Ctrl」;+STZ、EGFP発現移植片;400個の膵島;n=5;赤)、及び(3)PIDO発現膵島移植糖尿病マウス(「膵島PIDO+」;+STZ、PIDO発現移植片;400個の膵島;n=5;青)。データは、平均±SDとして示される。(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001)。
図5A】遺伝子改変膵島同種移植片のPIDO誘導免疫回避は、CD4発現を必要とする。(A)実験の概略図。PIDO発現BALB/cマウス同種膵島が糖尿病CD4欠損マウスに移植された。
図5B】(B)STZ処理の前後、及び同種膵島の移植後に血糖測定。次記3つの群を調査した:(1)移植なしのマウス(「No Txp」;STZなし、移植なし;黒)、(2)対照膵島移植糖尿病マウス(「膵島Ctrl」;+STZ、EGFP発現移植片;赤)、及び(3)PIDO発現膵島移植糖尿病マウス(「膵島PIDO+」;+STZ、PIDO発現移植片;青)。データは平均±SEMとして示される。
図6A】PIDO発現異種膵島は、免疫正常マウス及びイヌレシピエント中で生存することを示す。(A)実験の概略図。PIDO発現ブタ膵島は、正常血糖C57BL/6マウス及びイヌに移植された。
図6B】(B)遺伝子改変ブタ膵島の腎臓嚢下移植後に、正常血糖で免疫正常なC57BL/6マウスでのブタインスリン測定。次記3つの群を調査した:(1)移植なしのマウス(「No Txp」;n=3;黒)、(2)対照膵島移植マウス(「膵島Ctrl」;EGFP Txp;400個の膵島;n=4;赤)、及び(3)PIDO発現膵島移植マウス(「膵島PIDO」;PIDO Txp;400個の膵島;n=5;青)。
図6C】(C)軸上筋肉への移植の3、6、10、15、及び20週間後の正常血糖ビーグル犬における静脈内ブドウ糖負荷試験(GTT)後のブタCペプチド測定。
図7】示したタンパク質を発現するように形質導入されたA375細胞由来のIDO発現及び存在量を比較する代表的ウェスタンブロットを示す。
図8A】PIDO融合タンパク質をコードするレンチウイルスベクターのプラスミドマップを示す。(A)実施例で使用される高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)を含むレンチウイルスベクターのプラスミドマップ。
図8B】(B)移植療法で使用するために設計されたレンチウイルスのプラスミドマップ。
【発明を実施するための形態】
【0006】
免疫寛容を誘導する、より効果的な手段は、移植療法の安全性を改善するための重要な未充足のニーズに対処するであろう。この未充足のニーズに対処するために、発明者らは、本明細書では、PIDO(D-L1及びIDO)と呼ばれる新規融合タンパク質を作成した。PIDOは、2つの免疫調節タンパク質:プログラム死リガンド1(PD-L1)及びインドールアミン 2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、から誘導されるペプチドを含む。PD-L1及びIDOは、以下で考察する別個の免疫寛容機序を誘導することが知られている。
【0007】
実施例では、発明者らは、PIDOを発現する細胞を生成し、この融合タンパク質の成分がそれぞれ、適切な細胞内区画に局在化することを確証する(図1)。PD-L1は細胞膜をまたがるが、IDOはフレキシブルリンカーを介して細胞内に係留される。更に、発明者らは、通常は、細胞質全体を自由に移動するIDOが、この融合タンパク質の一部として膜に係留される場合、触媒活性のまま残ることを確証する(図1)。PIDOの発現が局所免疫寛容を誘導するかどうかを試験するために、発明者らは、マウス膵島をこの融合タンパク質を発現するように遺伝子改変し、それらを糖尿病マウス中に移植した。移植後に、改変膵島移植片は生存し、インスリンを産生し、これらのマウスを糖尿病から逆転させた(図2図3)。更に、発明者らは、PIDO発現ブタ膵島異種移植片は、20週超にわたり、マウス及びイヌのレシピエント中で機能的なまま残ることを示した(図6)。従って、発明者らは、PIDO融合タンパク質の発現は、同種及び異種移植の両方の結果を改善するために使用し得ることを実証した。
本明細書で記載の細胞移植の方法は、免疫抑制に依存している現在の移植方法に比べて複数の利点を提供する。第1に、PIDOは細胞膜に係留されて残るので、この融合タンパク質は、局所的に限定された免疫抑制を提供する。従って、PIDOの使用は、薬理学的免疫抑制レジメンに付随する望ましくない、オフターゲット免疫抑制及び毒性の原因となり得る、副作用を回避するはずである。第2に、PIDOのペプチド成分は、より大きな適合性及び抗原性のリスクの低減のために対象の種に適合させ得る。第3に、ほぼ全ての細胞型は、PIDOを発現するように改変できるので、この融合タンパク質は、多種多様の移植療法で使用できる。
【0008】
融合タンパク質:
第1の態様では、本発明は、PIDO融合タンパク質をベースにした融合タンパク質を提供する。融合タンパク質は、N末端からC末端へ:(a)PD-L1タンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部を含むPD-L1ペプチド、(b)膜貫通ドメイン、及び(c)IDOタンパク質の少なくとも一部を含むIDOペプチド、を含む。理想的には、融合タンパク質内で、PD-L1ペプチドは、PD-1に結合でき、IDOペプチドは、触媒活性がある。
本明細書で使用される場合、「融合タンパク質」という用語は、少なくとも2つのペプチド成分、例えば、PD-L1成分及びIDO成分、を含む単一ポリペプチドを意味する。各ペプチド成分は、合成ペプチド又は天然起源ペプチドを含み得る。ペプチド成分は、完全長タンパク質又はそのフラグメントを含み、それらは、それらが誘導される野性型のタンパク質に対して、変異又は他の改変を含み得る。
【0009】
プログラム死リガンド1(PD-L1:表面抗原分類274(CD274)としても知られる)は、適応免疫系の抑制に大きな役割を果たす膜貫通タンパク質である。このタンパク質は、多種多様の免疫細胞により構成的に発現されており、膵島などの非免疫細胞によっても発現され得る(13、14)。このタンパク質に対する同族受容体、即ち、プログラム細胞死1(PD-1)受容体は、T細胞及び他の免疫細胞の表面上に発現される(12)。PD-1/PD-L1結合は、エフェクターT細胞機能を抑制し、制御性T細胞機能を刺激する(15、16)。従って、PD-1/PD-L1相互作用は、正常組織を炎症から保護し、免疫寛容の維持で重要な役割を果たす免疫チェックポイントを形成する。
本発明で使用されるPD-L1ペプチドは、PD-1に結合できるPD-L1タンパク質の細胞外ドメインの一部を含む必要がある。「細胞外ドメイン」は、タンパク質が細胞により発現されると、細胞外間隙に局在化するタンパク質ドメインである。PD-1結合に必要なPD-L1内のアミノ酸残基は、Zakら(Structure 25(8):1163-1174,2017)により最近マップされた。この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。PD-1結合に重要な残基には、A121、D122、Y123、K124、及びR125(即ち、ADYKR配列)が挙げられる。従って、本発明で使用されるPD-L1ペプチドは、これらの重要なアミノ酸残基を含む必要がある。PD-L1ペプチドのPD-1に結合する能力は、PD-1/PD-L1結合アッセイ又は、表面プラズモン共鳴法、共免疫沈降、又は蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を利用するアッセイを含む、いずれかのタンパク質-タンパク質結合アッセイを用いて評価し得る。あるいは、PD-L1ペプチドのPD-1に結合する能力は、インシリコモデル化を用いて評価し得る。
PD-L1ペプチドは、任意の脊椎動物由来のPD-L1タンパク質の一部であってよい。PD-L1ペプチドの好適な由来源には、限定されないが、ヒト、非ヒト霊長類、雌ウシ、ネコ、イヌ、ブタ、及びげっ歯類が挙げられる。いくつかの実施形態では、PD-L1ペプチドは、マウスPD-L1タンパク質の細胞外ドメイン(配列番号3;配列番号2のアミノ酸19~239)と少なくとも95%の同一性を有する。他の実施形態では、PD-L1ペプチドは、ヒトPD-L1タンパク質の細胞外ドメイン(配列番号7)と少なくとも95%の同一性を有する。
いくつかの実施形態では、PD-L1ペプチドは、PD-L1シグナルペプチドを更に含む。PD-L1シグナルペプチドは、成熟PD-L1タンパク質では切断される膜局在化シグナルである。シグナルペプチドの包含は適切な膜局在化のために必要であるが、同等の局在化は、別の膜結合型タンパク質のシグナルペプチド又は合成シグナルペプチドを天然のPD-L1シグナルペプチドで置換することにより達成し得る。いくつかの実施形態では、PD-L1シグナルペプチドは、マウスPD-L1タンパク質のシグナルペプチド(配列番号4;配列番号2のアミノ酸1~18)である。他の実施形態では、PD-L1シグナルペプチドは、ヒトPD-L1タンパク質のシグナルペプチド(配列番号8)である。
【0010】
「膜貫通ドメイン」は、タンパク質が細胞により発現されると、細胞膜をまたぐタンパク質ドメインである。膜貫通ドメインは、主に、疎水性アミノ酸からなる。融合タンパク質の膜貫通ドメインは、PD-L1ペプチドのPD-1に結合する能力又はIDOタンパク質の触媒活性を破壊しない、いずれかの膜貫通ドメインであってよい。実施例では、発明者らは、それらのPIDO融合タンパク質中に完全長PD-L1タンパク質を利用し、それにより、融合タンパク質の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインの両方がPD-L1により提供された。従って、いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、PD-L1タンパク質の膜貫通ドメインの少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、マウスPD-L1タンパク質の膜貫通ドメイン(配列番号5)と少なくとも95%の同一性を有する。他の実施形態では、膜貫通ドメインは、ヒトPD-L1タンパク質の膜貫通ドメイン(配列番号9)と少なくとも95%の同一性を有する。
【0011】
インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)は、細胞内ヘム含有酵素であり、トリプトファンの酸化を触媒する。この酵素は、キヌレニン経路を介してトリプトファンを分解するのに必要な初期の律速段階を実行する。トリプトファン分解及びこの過程の産物(即ち、キヌレニン誘導体及びO2フリーラジカル)は、アポトーシス、活性化T細胞の阻害、及び休止制御性T細胞の活性化、を含むいくつかの機序により自然及び適応免疫を抑制する(19)。IDOは、その発現が炎症性サイトカインにより誘導される種々のヒト組織中で発現でき、癌、感染症、自己免疫性及びアレルギー性疾患、及び移植拒絶反応などの慢性炎症状態で発現されることが知られている(20)。更に、最近の報告は、ヒト骨髄樹状細胞及び癌細胞のサブセットは、IDOを構成的に発現し、同種T細胞免疫応答を抑制することを示唆している(21、22)。
本発明で使用されるIDOペプチドは、IDOタンパク質の触媒活性部分、即ち、l-トリプトファン酸化を触媒できる部分を含む必要がある。Sugimotoら(Proc Natl Acad Sci USA(2006),103(8):2611-2616)は、IDOのアミノ酸残基F226、F227、及びR231は、その触媒活性に不可欠であることを特定した。従って、本発明で使用されるIDOペプチドは、これらの重要な残基を含む必要がある。IDOペプチドの触媒活性は、例えば、キヌレニンELISAにより、トリプトファンのキヌレニンへの変換を測定することにより評価し得る。
IDOペプチドは、任意の脊椎動物由来のIDOタンパク質の一部であってよい。好適な動物には、限定されないが、ヒト、非ヒト霊長類、雌ウシ、ネコ、イヌ、ブタ、及びげっ歯類が挙げられる。いくつかの実施形態では、IDOペプチドは、完全長ヒトIDOタンパク質(配列番号10)と少なくとも95%の同一性を有する。
【0012】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、リンカーペプチドによりIDOペプチドに結合される。本発明で使用する場合、用語「リンカーペプチド」という用語は、融合タンパク質内の2つのペプチド成分を連結するポリペプチドを意味する。リンカーは、それが溶液中で固定構造を持たず、隣接するペプチド成分が相互に対し自由に動けるように、フレキシブルであり得る。フレキシブルリンカーは、1個又は複数のアミノ酸残基、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20個、又はそれを超える個数の残基を含む。リンカーは、融合タンパク質中に含まれるタンパク質により提供される既存の配列であってもよく、又は融合タンパク質のペプチド成分間の1個又は複数のアミノ酸残基の挿入により提供されてもよい。リンカーは、ペプチド成分の機能(即ち、PD-L1のPD-1に結合する能力及びIDOの触媒活性)を実質的に妨害しないいずれかのアミノ酸配列を含み得る。フレキシブルリンカー配列のための好ましいアミノ酸残基には、グリシン、アラニン、セリン、トレオニン、リジン、アルギニン、グルタミン、及びグルタミン酸が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、リンカーペプチドは、グリシン-セリンリンカー(即ち、セリンとグリシンからなるリンカー)である。特定の実施形態では、グリシン-セリンリンカーは、3X GGGSリンカー(配列番号11)である。
【0013】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、実施例で記載のマウスPIDO融合タンパク質(配列番号1;配列番号12によりコードされる)を含み、これは、3X GGGSリンカー(配列番号11)を介して完全長ヒトIDOタンパク質(配列番号10)に結合された完全長マウスPD-L1タンパク質(配列番号2)を含む。他の実施形態では、融合タンパク質は、ヒトPIDO融合タンパク質(配列番号14;配列番号15によりコードされる)を含み、これは、3X GGGSリンカー(配列番号11)を介して完全長ヒトIDOタンパク質(配列番号10)に結合された完全長ヒトPD-L1タンパク質(配列番号6)を含む。他の実施形態では、融合タンパク質は、イヌPIDO融合タンパク質(配列番号17;配列番号18によりコードされる)を含み、これは、3X GGGSリンカー(配列番号11)を介して完全長ヒトIDOタンパク質(配列番号10)に結合された完全長イヌPD-L1タンパク質(配列番号23)を含む。他の実施形態では、融合タンパク質は、ネコPIDO融合タンパク質(配列番号20;配列番号21によりコードされる)を含み、これは、3X GGGSリンカー(配列番号11)を介して完全長ネコIDOタンパク質(配列番号10)に結合された完全長ネコPD-L1タンパク質(配列番号24)を含む。
【0014】
核酸構築物:
本発明は、プロモーターに作動可能に連結された、本明細書で記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む核酸構築物を提供する。
用語「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、及び「核酸」は同じ意味で用いられ、DNA又はRNAのポリマーを意味する。ポリヌクレオチドは、一本鎖又は二本鎖であってよく、センス又はアンチセンス鎖であり得る。ポリヌクレオチドは、合成されるか、又は天然源由来であり得る。ポリヌクレオチドは、天然、非天然、又は改変ヌクレオチド、ならびに、天然、非天然、又は改変ヌクレオチド間結合を含み得る。用語のポリヌクレオチドは、構築物、プラスミド、ベクター、などを包含する。
本明細書で使用される場合、「構築物」又は「核酸構築物」という用語は、組換えポリヌクレオチド、即ち、異なる供給源、天然又は合成由来の少なくとも2つのポリヌクレオチド成分を組み合わせることにより形成されたポリヌクレオチドを意味する。例えば、構築物は、(1)同じゲノム内の別の遺伝子に結合されている、(2)異なる種のゲノム由来である、又は(3)合成である、プロモーターに作動可能に連結された1つの遺伝子のコード領域を含み得る。構築物は、従来の組換えDNA法を用いて生成できる。
いくつかの実施形態では、核酸構築物はウイルスベクターである。本明細書で使用される場合、「ウイルスベクター」は、異種ポリペプチド(例えば、本発明の融合タンパク質)を発現するように遺伝子改変された組換えウイルス核酸である。ウイルスベクターは、コード化異種ポリペプチドの発現を促進するシス作用エレメントを含む。好適なウイルスベクターは当技術分野において既知であり、限定されないが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ポックスウイルスベクター(例えば、鶏痘ウイルスベクター)、アルファウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター)、改変ワクシニアウイルスアンカラベクター、ロスリバーウイルスベクター、シンドビスウイルスベクター、セムリキ森林ウイルスベクター、及びベネズエラウマ脳炎ウイルスベクターが挙げられる。好ましい実施形態では、ウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。
【0015】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」という用語は、遺伝子の発現を調節するDNA配列を意味する。典型的には、プロモーターは、RNAポリメラーゼを結合でき、及び下流(3’方向)配列の転写を開始できる調節領域である。しかし、プロモーターは、コード領域内の5’又は3’末端、コード領域内、又はそれが調節する遺伝子のイントロン内に配置され得る。プロモーターは、その全体が在来遺伝子に由来してもよく、天然で認められる複数調節配列由来のエレメントから構成されてもよく、又は合成DNAを含んでもよい。プロモーターは、プロモーターがポリヌクレオチドに結合されている場合には、ポリヌクレオチドの転写に影響を与え得るように、ポリヌクレオチドに「作動可能に連結されている」。異なるプロモーターは、異なる組織又は細胞型において、異なる発生段階で、又は異なる環境条件に応答して、遺伝子の発現を指示し得ることは当業者により理解されよう。本発明で用いるのに好適なプロモーターには、限定されないが、構成的、誘導性、一時的に調節された、発生的に調節された、化学的に調節された、組織好適、及び組織特異的プロモーターが挙げられる。いくつかの実施形態では、プロモーターは、伸長因子1αショート(EFS)プロモーター又はハイブリッドCMVエンハンサー/ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターである。EF-1αプロモーターは、種々の哺乳動物細胞株中で発現を促進するための最強のプロモーターの1つであることが知られている。CBAプロモーターは、遺伝子導入によく使われる。理由は、それが、全ての細胞型で安定した長期発現を提供するためである。当業者は、特定用途のための本明細書で開示の融合タンパク質の発現を促進するために適切なプロモーターを選択する方法を理解するであろう。
【0016】
いくつかの実施形態では、核酸構築物は、配列番号13、即ち、マウスPD-L1を含むPIDO融合タンパク質(配列番号1)をコードするレンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、核酸構築物は、配列番号16、即ち、ヒトPD-L1を含むPIDO融合タンパク質(配列番号14)をコードするレンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、核酸構築物は、配列番号19、即ち、イヌPD-L1を含むPIDO融合タンパク質(配列番号17)をコードするレンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、核酸構築物は、配列番号22、即ち、ネコPD-L1を含むPIDO融合タンパク質(配列番号20)をコードするレンチウイルスベクターである。
【0017】
細胞:
本発明は、本明細書で記載の核酸構築物を含む細胞を提供する。好適な条件下で、細胞は、本明細書で記載の融合タンパク質を発現する。
「細胞」は、全ての生物が構成される基本単位である。全ての細胞は、膜内に囲い込まれた細胞質(即ち、細胞の内側を満たすゼラチン状液体)からなる。細胞膜の外側の空隙は、「細胞外間隙」と呼ばれる。
どの細胞型も本発明で使用され得る。いくつかの実施形態では、細胞は、移植に有用である。例えば、いくつかの実施形態では、細胞は、誘導多能性幹細胞、胚性幹細胞、網膜色素上皮細胞、ドーパミン作動性神経、間質細胞、又は心筋細胞である。特定の実施形態では、細胞は、造血幹細胞又は間葉系幹細胞である。実施例では、発明者らは、PIDO融合タンパク質を発現する膵島を生成した。従って、好ましい実施形態では、細胞は膵島、即ち、血流中に分泌されるホルモン(例えば、インスリン及びグルカゴン)を産生する膵臓細胞である。
いくつかの実施形態では、核酸構築物はウイルスベクターであり、核酸構築物は、ウイルス感染により細胞に導入される。他の実施形態では、核酸構築物は、プラスミドDNA、トランスポゾン、CRISPRベース遺伝子編集、又は染色体導入を用いて細胞に導入される。
【0018】
発明者らは、(1)PD-L1細胞外ドメインが、活性化T細胞の表面上でPD-1受容体と相互作用できる細胞外間隙に局在化する、及び(2)IDOタンパク質が、キヌレニン経路で機能できる細胞質に局在化するように、PIDO融合タンパク質を設計した。従って、いくつかの実施形態では、融合タンパク質の少なくとも一部は、細胞の表面上で発現される。好ましい実施形態では、PD-L1ペプチドは、細胞外間隙中に局在化され、IDOペプチドは、細胞の細胞質中に局在化される。
タンパク質検出のいずれかの方法を用いて、細胞が本明細書で開示の融合タンパク質を発現するかどうかを試験し得る。タンパク質の検出に好適な方法には、限定されないが、酵素結合免疫測定法(ELISA)、ドットブロッティング、ウェスタンブロッティング、フローサイトメトリー、質量分析、及びクロマトグラフ法が挙げられる。実施例では、PD-L1は、抗CD274抗体を用いてフローサイトメトリーにより細胞表面で検出され、一方、IDOは、ウェスタンブロットにより細胞内で検出された(図1)。従って、特定の実施形態では、融合タンパク質は、フローサイトメトリー又はウェスタンブロットを用いて検出される。
【0019】
方法:
本発明は、本明細書で記載の細胞を対象に移植する方法を提供する。本明細書で使用される場合、「移植」という用語は、ドナーからの細胞がレシピエントの身体中に配置される手順を意味する。移植は、同種、即ち、同じ種の異なる個体由来であっても、又は異種、即ち、異なる種の個体由来であってもよい。方法は、当該技術分野において既知のいずれの移植技術を包含してもよい。移植細胞は、個別細胞であってもよい。あるいは、移植細胞は、臓器、組織、オルガノイド、又は細胞集合体の一部であってもよい。重要なのは、これらの方法は、再生可能な供給源(例えば、胚性幹細胞)由来の細胞を利用する治療で置き換えられるべき限られた供給量の細胞(例えば、ヒト死体からの膵島)に依存する治療を可能にすることである。
移植細胞は、任意の好適なドナー由来であってよい。好適なドナー動物には、限定されないが、ヒト、非ヒト霊長類、雌ウシ、ネコ、イヌ、ブタ、及びげっ歯類が挙げられる。ドナー細胞は、同種又は異種源由来であってよい。例えば、ヒトレシピエントに対し、ドナー細胞は、別のヒト(即ち、同種源)又はブタ(即ち、異種源)であってよい。ヒトへの移植のために好適な異種源には、ブタ、ヒツジ、雌ウシ、ウマ、及び非ヒト霊長類などの哺乳動物源が含まれる。ヒトは、ブタインスリンに応答することが知られているので、ブタは、I型糖尿病に移植するための膵島の有望な供給源である。従って、いくつかの実施形態では、移植細胞は、ブタ由来である。
【0020】
「対象(即ち、レシピエント)」は、合理的にドナーから移植細胞を受け得るいずれの動物であってもよい。好適な対象には、限定されないが、ヒト、非ヒト霊長類、雌ウシ、ネコ、イヌ、ブタ、及びげっ歯類が挙げられる。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、機能細胞又は組織を必要としている。例えば、いくつかの実施形態では、対象は糖尿病に罹患しており、機能的膵島を必要としている。
好都合にも、融合タンパク質、特に、細胞外PD-L1ペプチド部分は、より大きな適合性及び抗原性のリスクの低減のために対象の種に適合させられる。しかし、当業者は、種の適合は、保存の程度が低いタンパク質(例えば、PD-L1)に比べて、高度に保存されているタンパク質(例えば、IDO)にとっては、それほど重要ではないことを理解するであろう。
【0021】
免疫抑制の非存在下では、同種及び異種移植は、異種物質として移植片を攻撃する移植レシピエントの免疫系により破壊される。しかし、実施例では、発明者らは、移植細胞によるPIDO融合タンパク質の発現は、免疫系を局所的に抑制することを実証する。具体的には、それらは、マウス中に移植されたPIDO発現マウス膵島(即ち、同種移植片;図2参照)及びマウス及びイヌ中に移植されたPIDO発現ブタ膵島(即ち、異種移植片;図6参照)は生存し、レシピエント動物中で機能的であることを実証する。従って、いくつかの実施形態では、移植細胞は、免疫抑制の非存在下で、免疫系により寛容される。レシピエントの免疫系が移植細胞に対し無応答性又は最小限に応答性である場合、移植細胞は「寛容される」。免疫寛容は、移植細胞の生存又は機能を監視することにより評価できる。例えば、発明者らは、移植PIDO発現ブタ膵島は、ナイーブブタ膵島(即ち、PIDOを発現するように遺伝子改変されていない膵島)より長く生存し、レシピエント中で20週を超えて機能的な(即ち、インスリンを産生する)ままであったことを示した。従って、いくつかの実施形態では、移植細胞は、融合タンパク質をコードする核酸構築物を含まない移植対照細胞に比べて、延長された生存を示し得る。あるいは、免疫寛容は、免疫拒絶の欠如により(即ち、PIDO発現移植片と共に共局在化する反応性免疫細胞を定量することにより)又は免疫寛容を媒介する制御性T細胞の存在により、推定され得る。
本明細書で使用される場合、「免疫抑制」という用語は、対象の免疫応答の部分的な又は完全な抑制を意味する。免疫抑制は、移植ドナー細胞の生存を支援する薬物を使用して対象中で意図的に誘導され得る。移植拒絶反応のリスクを減らすために使用される免疫抑制薬の例には、限定されないが、タクロリムス、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、エベロリムス、シロリムス、及びグルココルチコイド(ステロイド)が挙げられる。
本発明の方法で移植される細胞は、エクスビボ移植に適用できるいずれの細胞型でもよい。いくつかの実施形態では、移植細胞は、その天然の機能(例えば、膵島はインスリンを産生する)を実行する。
【0022】
実施例では、発明者らは、PIDO融合タンパク質を発現するように同種膵島を遺伝子改変し、それらを、免疫コンピテント糖尿病マウスに移植した。従って、いくつかの実施形態では、対象は糖尿病であり、細胞は膵島である。一般に糖尿病として知られている真性糖尿病は、長期間にわたる高血糖値(高血糖症)を特徴とする代謝障害群である。3つの主要タイプの糖尿病:1型糖尿病、2型糖尿病、及び妊娠糖尿病、が存在する。1型糖尿病は、細胞特異的自己免疫過程によるインスリン産生膵臓ベータ細胞の破壊により膵臓が十分なインスリンを産生できないことから生じる。2型糖尿病は、細胞がインスリンに適切に応答できない状態である、インスリン抵抗性により引き起こされる。2型糖尿病は、主に肥満症及び運動の欠如の結果として発生する。妊娠糖尿病は、糖尿病の以前の病歴なしに、妊婦が高い血糖値を発生する場合に起こる。
【0023】
理想的には、本方法により治療される糖尿病対象は、PIDO発現膵島の移植後にインスリンを産生する。インスリン分泌は、例えば、グルコース刺激性インスリン分泌(GSIS)試験を用いて測定できる。GSIS試験では、基底(絶食)状態の血漿中インスリンレベルの測定のために特定の時点、及びグルコース巨丸剤の投与による高血糖症の誘導後、血液がサンプリングされる。あるいは、インスリン分泌は、産生され、インスリンと共に分泌されるタンパク質であるC-ペプチドの検出を介して間接的に測定できる。C-ペプチド試験は、I型糖尿病を診断するために医師によりよく使用される。
更に、本方法により治療される糖尿病対象は、移植前に比べて、移植後に改善された耐糖能を示し得る。耐糖能は、当該技術分野において既知のいずれかのブドウ糖負荷試験を用いて測定できる。あるいは、グリコシル化ヘモグロビン(HbA1c)を、長期血糖コントロールの指標として測定し得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、対象は、移植後に正常血糖になる。本明細書で使用される場合、「正常血糖」という用語は、血液中に正常濃度のグルコースの存在を意味する。血液中のグルコースの濃度は、いずれかの血糖試験を用いて測定できる。140mg/dL未満の血糖値は、ヒトでは正常と見なされ、一方、マウスでは、100mg/dL未満の血糖値は、正常と見なされる。しかし、200mg/dL未満の血糖値の摂食マウスも、非糖尿病又は正常血糖と見なされる。いくつかの実施形態では、対象は、移植後、少なくとも50週にわたり、正常血糖のままである。
他の実施形態では、本発明の方法で使用された細胞は、幹細胞由来である。本発明で用いるのに好適な幹細胞には、限定されないが、胚性幹細胞(ESC)、誘導多能性幹細胞(iPSC)、造血幹細胞(HSC)、及び間葉系幹細胞(MSC)が挙げられる。特定の実施形態では、細胞は、造血幹細胞の分化子孫であり、これは、骨髄、リンパ系、単核球細胞型を生ずる。幹細胞は、未分化状態で動物中に移植され得るか、又は移植前にインビトロで分化され得る。幹細胞は、樹立幹細胞株から得られるか、又は一次組織から直接に得られる。
【0025】
発明者らはまた、本発明の融合タンパク質は、遺伝子改変移植ドナー動物を生成するために使用されるであろうことを構想する。例えば、ブタは、ヒトのための異種移植片として使用し得る全臓器及び組織を産生するように、それら全身にわたり、PIDO融合タンパク質を発現するように遺伝子改変され得る。移植のために好適な臓器には、限定されないが、腎臓、心臓、肝臓、肺、膵臓、腸、胸腺、及び子宮が挙げられる。移植のために好適な組織には、例えば、骨、腱、角膜、皮膚、心臓弁、神経、及び静脈が挙げられる。
【0026】
本開示は、本明細書で記載される、構築物、成分の配置、又は方法ステップの特定の詳細に限定されるものではない。本明細書で開示の組成物及び方法は、以下の開示を考慮すると、当業者には明らかである種々の方法で作製、実施、使用、実行及び/又は形成できる。本明細書で使用される表現及び用語は、説明のみを目的とするものであり、特許請求の範囲に対する限定と見なされるべきではない。種々の構造又は方法ステップに言及するために、記述及び特許請求の範囲で使用される、第1、第2及び第3などの順序標識は、いずれか特定の構造又はステップを示す、又はこのような構造又はステップに対するいずれか特定の順序又は構成を示すと解釈されることを意図するものではない。本明細書で記載の全ての方法は、本明細書で別段の指示がない限り、又は文脈上明らかに矛盾することがない限り、任意の好適な順序で実施することができる。本明細書に記載されるあらゆる具体例又は例示語(例えば、「などの」)の使用は、単に開示を容易にすることを意図したものであり、別段の主張がない限り、本開示の範囲に対する何らの限定も意図するものではない。本明細書に記載されているいずれの用語も、及び図面中に示されるいずれの構造も、いずれかの非請求要素が開示主題の実施に不可欠であることを示すものと解釈されるべきではない。「含む(including)」、「含む(comprising)」、又は「有する(having)」、及びこれらの変形は、これらの後に列記される要素及びこれらの等価物、並びに追加の要素を包含することを意味する。特定の要素を「含む(including)」、「含む(comprising)」、又は「有する(having)」として記述される実施形態はまた、これらの特定の要素「から基本的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」としても意図されている。
【0027】
本明細書において値の範囲の列挙は、本明細書で別段の指示がない限り、単に、その範囲内に入る個別の各値を個々に表すことの簡略法として用いることを意図したものであり、個別の各値は、それが本明細書に個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。例えば、濃度範囲が1%~50%のように記載される場合、これは2%~40%、10%~30%、又は1%~3%などの値が本明細書中に明確に列挙されることが意図されている。これらは何が具体的に意図されているのかの例に過ぎず、列挙された最も低位の値と最も高位の値との間、並びにこれらを含む数値の全ての可能性な組み合わせが、本開示において明確に記載されていると見なされる。特定の記述量又は量の範囲を記載するための語句「約(about)」の使用は、製作公差、装置及び測定時の人的ミス、などに起因する原因であり得る又は自然に原因になり得る値などの記述量に極めて近い値がその量に含まれることを示すことが意図される。特に指示のない限り、量に関する全てのパーセンテージは、質量による。
【0028】
パーセント同一性(%配列同一性又は%同一性)。標準化アルゴリズムを用いて整列させた少なくとも2つのアミノ酸配列の間の残基一致のパーセンテージを意味する。アミノ酸配列アラインメントの方法は、当該技術分野において周知である。いくつかのアライメント法は、保存的アミノ酸置換を考慮している。このような保存的置換は下記で更に詳細に説明されるが、一般に、置換の部位で電荷及び疎水性を保存し、従って、ポリペプチドの構造(従って、機能)を保存する。アミノ酸配列に対するパーセント同一性は、当該技術分野で理解されているように決定され得る。(例えば、米国特許第7,396,664号明細書を参照、この特許は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。一連のよく使われ、自由に入手可能な配列比較アルゴリズムは、米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)基本的局所配列検索ツール(BLAST)により提供され、これは、NCBI、Bethesda,Md.のウエブサイトを含む、いくつかの入手源から入手できる。BLASTソフトウェアスイートは、既知のアミノ酸配列を種々のデータベースからの他のアミノ酸配列と整列させるために使われる「blastp」を含む種々の配列解析プログラムを含む。ポリペプチド配列同一性は、完全に確定された、例えば、特定の配列番号により定められた、ポリペプチド配列の長さにわたり測定され得るか、又はより短い長さ、例えば、より大きな確定されたポリペプチド配列より短い長さから取り出されたフラグメント、例えば、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20個、又はより多くの個数のフラグメントの近接残基の長さにわたり測定され得る。このような長さは、例示的なものに過ぎず、本明細書の表中、図中又は配列表中で示される配列により確認される任意のフラグメント長さを使用して、パーセント同一性を測定し得る長さを記述し得ることは理解されよう。
【0029】
本明細書中で引用されるいずれの非特許又は特許文献を含むいずれの文献も先行技術を構成することを認めるものではない。特に、別に定める場合を除き、本明細書のいずれの文献に対する言及も、これらの文献のいずれかが、米国又は全ての他の国における当該技術分野での共通の一般常識の一部を形成することを認めるものではないないことは理解されよう。参考文献に関するいずれの考察も、これらの著者が主張していることを述べているものであり、出願者は本明細書で引用されたいずれかの文献の正確性及び適切性について異議を唱える権利を留保する。本明細書で引用される全ての参考文献は、別に明示的に示されないかぎり、全体が参照により組み込まれる。引用参考文献中で認められるいずれかの定義及び/又は記述の間に、何らかの差異が存在する場合には、本開示が優先されるものとする。
以下の実施例は、単に例示を意図するものであり、本発明又は添付した請求項の範囲を限定することを意図するものではない。
【0030】
実施例
同種膵島移植は、制御不十分な糖尿病に対する有望な実験的療法であるが、長期の免疫抑制の有害作用により制限されている。同種抗原に対する免疫寛容の導入は、同種移植片拒絶を防ぎ、免疫抑制剤の必要性をなくするために必要である。しかし、免疫寛容を誘導する効果的な手段に対するニーズは、未充足のままである。
次の実施例では、発明者らは、2つの生化学的に別個のタンパク質:プログラム死リガンド1(PD-L1)及びインドールアミン 2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)を組み合わせることにより生成した新規融合タンパク質を記述する。PD-L1は、適応免疫系の抑制に大きな役割を果たすことが知られている膜貫通タンパク質である。IDOは、キヌレニン経路でトリプトファンの分解を調節する細胞内のモノマーヘム含有酵素である。IDOは、トリプトファン枯渇を介して、ナチュラルキラー(NK)、T細胞、T調節細胞(Treg)及び骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)の機能を調節することにより免疫寛容に影響を与える。従って、本明細書ではPIDO(PD-L1+IDO)と呼ばれる、発明者らの融合部分は、移植拒絶反応の防止のための2つの別個の免疫寛容原性機序を提供する。
発明者らは、PIDOは、マウス及びブタ膵島を含む哺乳動物細胞中で堅牢に発現され、それらの細胞上で提示されることを実証した。同種PIDO発現膵島が高血糖性マウスに移植される場合、膵島移植片は生存し、ストレプトゾトシン誘導及び自己免疫性糖尿病の両方から、それぞれ、50週及び10週を超える期間にわたり、逆転させる。更に、PIDO発現ブタ膵島異種移植片は、正常血糖イヌにおいて、最大30週にわたり、グルコース応答性インスリン分泌を示す。これらのPIDO発現同種移植片及び異種移植片の生存は、この融合タンパク質が局所免疫調節を達成する手段になり、長期の免疫抑制の非存在下で、改善された移植結果を可能にし得ることを示唆する。
【0031】
材料及び方法:
試験デザイン。この試験の目的は、同種PIDO発現膵島を生成し、それらを既存の糖尿病のマウスに移植し、PIDO融合タンパク質の同種膵島に対する免疫寛容を誘導する能力を試験することであった。我々は、同種又は異種ドナー由来の膵島を遺伝子改変するために、レンチウイルス送達を使用した。我々は、PIDO発現膵島及びナイーブ膵島(即ち、PIDOを発現するように遺伝子改変しなかった膵島)を、それぞれ15匹及び9匹のストレプトゾトシン(STZ)処理糖尿病マウスに移植した。移植しないSTZ処理糖尿病及び非糖尿病性マウスは、移植対照としての役割を果たした。マウス群は、ランダムに割り付けられ、試験は盲検としなかった。移植マウスは、血糖測定及び血漿収集を通して監視され、その後、エクスビボ分析のために安楽死させられた。腎摘出手術は、PIDO+膵島移植マウスに対して実施し、移植膵島が、これらのマウスで観察される耐糖能及び非糖尿病性血液中のグルコース濃度の原因であることを確認した。データ収集は、予め決められているいずれかの時間で停止した。STZ投与後糖尿病を発症しなかったマウス及び移植前又は移植直前直後の手術で死亡したマウスは、試験から除外した。
【0032】
IDO1の酵素活性。間葉系間質細胞(陽性対照)又は膵島から収集した条件培地中で、キヌレニンELISAキット(#F56401、LSBio、USA))を用いて、細胞へのPIDOコードレンチウイルスベクターによる形質導入の48時間後に、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によりキヌレニンレベルを分析した。
【0033】
グルコース刺激性インスリン分泌(GSIS)。静的GSISを評価するために、48ウェルプレートで、PIDO又はEGFP(対照)をコードするレンチウイルスベクターで約50個のサイズ適合膵島を形質導入した。膵島をKRB緩衝液で洗浄し、その後、グルコース不含KRB緩衝液中で30分間プレインキュベートした。静的インスリン分泌を、基礎(2.8mM又は2.8G)又は刺激(16.7mM又は16.7G)グルコースを含む培地中で膵島を2時間インキュベートすることにより測定した。インスリンアッセイでの使用のために上清を収集した。細胞内インスリン検出を実施するために、膵島を回収し、PBSで濯ぎ、300μLの酸エタノールに再懸濁させ、細胞膜の超音波破壊によりホモジナイズした。ELISAキット(#10-1247-01、Mercodia,Uppsala,Sweden)を用いて、製造業者のプロトコルに従ってインスリンを測定した。
【0034】
免疫細胞化学染色及びイメージング。未処理のマウス膵島に、種々の導入遺伝子(EGFP、PD-L1:EGFP、IDO:mCherry、及びPIDO:EGFP)を導入したレンチウイルスベクターで形質導入し、核対比染色ヘキスト33342(カタログ番号H1399、ThermoFisher,USA)で染色した。レシピエントマウスからのホルマリン固定パラフィン包埋腎臓切片を、膵島顕微鏡的解剖学の可視化のためにヘマトキシリンエオシン(H&E)で、又は免疫蛍光法(IF)顕微鏡及びイメージングにより移植インスリン陽性膵島を検出するために抗インスリン抗体(1:1000;Immunostar,USA)及びアクチン(Acti-Stain 555 Phalloidin、カタログ番号PHDH1)で染色した。核をProLong(商標)Diamond Antifade Mountant(#P36970,ThermoFisher,USA)で対比染色した。H&E画像を、Zeiss Axiocam 305カラーカメラを備えたZeiss AX10倒立顕微鏡を用いて取得した。IF画像をレーザー走査顕微鏡(A1R;Nikon,USA)で取得した。
【0035】
膵島細胞フローサイトメトリー。PIDO融合タンパク質、PD-L1のみ、又はEGFP(対照)を発現している膵島を2mmol/l EDTA/PBSで洗浄し、0.025%のトリプシンを補充したCa2+不含PBS中で5分間、周囲温度でインキュベートし、緩やかなピペット操作により単細胞懸濁液中に剥がした。剥がした膵島を死細胞標識試薬(Ghost Dye Red 780,カタログ番号13-0865,Tonbo Biosciences,USA)で30分間染色した後、CD274(PD-L1)染色し、細胞膜上のPD-L1発現を検出した。PD-L1及びEGFP染色細胞をゲート設定に使用した。全ての試料をFSC-H及びSSC-Hゲート制御し、その後、FSC-A/FSC-Hゲート制御し、単細胞を選択した。生細胞をGhost Red 780に基づいてゲート制御した。PD-L1発現のためのフローサイトメトリープロットをヒストグラムとして示す。
【0036】
膵島単離及び培養。若年期ブタ膵島を8~15日齢の離乳前のヨークシャー子ブタの膵臓から単離し、以前に記載(52)のように培養した。マウス膵島を以前に記載(53)のように、オス12~16週齢のC57BL/6Jマウス(Jackson Laboratory,USA)から単離した。膵島を10%FBS(Gibco,USA)及び1%抗生物質-抗真菌剤(ThermoFisher,#15240096)含有RPMI-1640培地(Corning,USA)中で示した期間又は一晩培養(37℃、5%CO2)した後、それらを、完全RPMI及びDMEM F-12(RDmix)培地の1:1混合物中で多能性幹細胞(PSC)と共培養した。
【0037】
マウス及びブタ膵島のレンチウイルス形質導入。膵島生存率をジチゾン(dithiazone)を用いて評価した後、膵島をRPMI培地中で一晩培養した。翌日、膵島は、緩やかな酵素分解により部分的に破壊された。手短に説明すると、膵島を予熱アクターゼ(2.5ul/膵島、StemCell technologies)中で2分間インキュベートし、Ca/Mg不含HBSSで洗浄した。超低接着プレート又は皿(Costar,Corning)中で精製ウイルスを膵島に加え、ウイルス上清と共に6時間又は一晩インキュベートした。デフォルト形質導入条件のために、水疱性口内炎ウイルス糖タンパクウイルスV-G)偽型サイトメガロウィルス緑色蛍光タンパク質(CMV-GFP)ベクターを10の感染多重度(MOI)で使用し、0.1%のウシアルブミン、1xインスリン-トランスフェリン-セレン(ITS)(Sigma Aldrich)、及び8ug/mlのポリブレンを補充した無血清培地中で形質導入を実施した。形質導入体積を全ての実験を通して均一に保持した。ウェル/皿の増殖領域の体積は、135.5μl/cm2であり、少なくとも50%の形質導入体積が新鮮な培地から構成された。膵島を、10%FBSを補充したRPMI培地中で48時間培養し、形質導入効率を移植の前に評価した。
【0038】
マウス移植。マウスをSTZ処理及び移植群にランダムに指定した。群当りのマウスの数(即ち、9及び15匹)を統計的有意性を可能にするように選択した。外科手術及び追跡調査試験を非盲検個人により実施した。オス約8週齢BALB/c、C57BL6/j、及びCD4-/-(B6.129S2-Cd4tm1Mak/J、系統#002663)マウスをJackson Laboratoryから購入し、STZ(45mg/kg;R&D Systems)の5日間の注射により糖尿病にした。糖尿病は、7日後に確証された。350mg/dlより高い血糖値を有する自然発生的糖尿病メスNODマウス(約12~16週齢)に正常血糖8週齢C57BL/6Jドナーマウスから採取した膵島を移植した。麻酔マウスに約400個の手で採取した混合サイズ膵島(PIDO発現又は対照の形質導入)、又は腎被膜下に生理食塩水を移植した。動物を最大50週にわたり監視した。Contour Blood Glucose Monitoring System(Bayer)で血糖を測定した。マウスに4時間絶食させ,その後、それらにグルコース(2g/kg)を注射することにより、耐糖能及びインビボGSISアッセイを実施した。インスリン用のELISAキット(マウス#10-1247-01、ブタ#10-1200-01)及びブタC-ペプチド(#10-1256-01)を用いて、製造業者(Mercodia,Uppsala,Sweden)の説明書に従い、血清ホルモンを定量した。移植の20週後に、移植レシピエントマウスは、2回目のSTZ注射又は、各群5匹の麻酔マウスに対し実施された生体腎摘出により再誘発された。
【0039】
イヌ移植。未処理のオスビーグル(10kg)をこの試験で使用した。イヌは、鎮静状態であり、承認薬剤を用いて麻酔された。麻酔は、酸素中のイソフルラン(0.75~1.75%)の吸入により維持された。鎮痛を与えるために、カルプロフェン(4.4mg/kg;Rimadyl(登録商標),Zoetis,Parsippany,NJ)を、細胞の移植の翌日の麻酔時に皮下に投与した。13番目の肋骨から回腸稜の頭蓋限界まで、毛を除去し、クロルヘキシジンで洗浄して、背中の軸上筋肉組織の上を被う皮膚を無菌手術のために準備した。13番目の肋骨に対し2cm尾側皮膚中に小さい(5mm)の刺切を作った。ブタ膵島をプリロードした18ゲージ15.24cm(6インチ)のくも膜下穿刺針(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ)(30,000IEQ/kg;2.0mlの総体積)を皮膚切開を通して軸上筋肉組織の10cm深さまで挿入した。0.5mlの膵島懸濁液を滴下注入し、4回全ての注入が、前の注射注入部位からそれぞれ2.5cmになるように、針を1.5cmずつ増やして引き抜いた。針を挿入部位から抜き出し、皮膚を組織接着剤(Vetbond Tissue Adhesive(商標)、3M,Minneapolis,MN)でシールした。ブドウ糖負荷試験を、細胞移植の3週後に開始して、3~5週間隔で繰り返して、移植後28週にわたり実施した18ゲージ静脈内カテーテルを橈側皮静脈中に留置した。時間0に、無菌の水中の50%グルコース(500mg/ml;総投与量500mg/kg)を1~2分かけて静脈内に投与した。グルコースの静脈内投与の前、及びグルコースの点滴後、5、10、20、60、90、及び120分に1mlの血液試料を採取した。血糖計(AlphaTrak,Abbott,Chicago,IL)を用いて、一滴の血液でグルコース濃度を試験し、残りの血液をEDTA含有チューブ中に入れた。チューブを氷上に置き、1100xgで10分間の冷遠心分離(Sorvall,ThermoScientific,Waltham,MA)により血漿を分離した。血漿を、C-ペプチドの濃度の試験まで-80℃で貯蔵した。
【0040】
ウェスタンブロット。ウェスタンブロッティングのためのタンパク質試料をリシスバッファー(#9803,CST,USA)によるホモジナイゼーションを介してマウス又はブタ膵島から分離した。試料をレムリバッファー(#161-0737,BioRad,USA)中で5分間煮沸し、4~12%勾配SDS-PAGEゲル上で分離させ、PVDF膜にブロットした。IDOに対する一次抗体(1:1000;#86630,CST,USA)及びβアクチン(1:1000;#NB600-503,Novus Biologicals,USA)と共に一晩のインキュベーション後、HRP標識IgGを用いて検出を行った。Azure300化学発光イメージングシステム(Azure Biosystems,USA)を用いてバンドを可視化した
【0041】
統計解析。GraphPad Prismを使って統計解析を行った。片側及び両側、対応のない及び対応のあるt検定、及びテューキー又はダネット検定を用いた1元及び2元配置分散分析を正規分布のデータセットに対し使用した。P<0.05を統計的に有意であると見なした。他に断らない限り、データは平均±SEMとして示されている。試料数、n、は、生物学的反復試料の総数を示す。
【0042】
結果:
PIDOは、その成分ドメインの構造的及び機能的特性を保持し、膵島機能を変えない
我々は、3X GGGSリンカーにより分離された完全長マウスPD-L1タンパク質及び完全長ヒトIDO1タンパク質をコードする配列を含む合成遺伝子を作成した。この合成遺伝子を、pLV-EXP/CMV-EGFPレンチウイルスベクター中でPD-L1膜局在化シグナルとインフレームでサブクローニングした(図5)。得られたPIDO cDNAは、約80kDaの予測された非グリコシル化分子量を有する708個のアミノ酸の単一ポリペプチド鎖をコードする(図1B)。PIDOのインシリコ3D構造は、I-TASSER及びウェブサーバーPhyre2(29、30)を用いて予測及び構築された(図1C)。発現ベクターは、レンチウイルス粒子中にパッケージ化された。
次に、我々は、A375ヒトメラノーマ細胞及びC57BL6/Jマウス膵島を、レンチウイルス粒子による形質導入を介してPIDOを発現するように遺伝子改変した。PIDO融合タンパク質の発現、細胞内局在化、及び生物活性は、免疫蛍光染色、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット、及びELISAにより実証された。我々は、蛍光タンパク質標識を介して、マウス膵島中でのPD-L1、IDO、及びPIDO融合タンパク質の頑強な発現を検出した(図1D)。キメラPIDOタンパク質の細胞内局在化を調べるために、我々は、分散された膵島細胞中のPD-L1成分の表面発現をフローサイトメトリーにより評価した。我々のデータは、PD-L1単独を発現する膵島細胞に比べて、ほぼ2倍多いPIDO発現マウス膵島細胞が表面PD-L1発現を示す(24%に対する65%)ことを示し、PIDO融合タンパク質が、PD-L1のそれ自身上の異所性発現により与えられる値よりも高いPD-L1の細胞表面密度を可能にすることを示唆する(図1E)。IDO又はPIDO発現マウス又はブタ膵島上で行われる変性イムノブロッティングは、融合タンパク質が高発現され、約90kDaの分子量に移動することを示した(図1F)。また、我々のデータは、入力タンパク質に正規化される場合、PIDO融合タンパク質の存在量は、IDO単独発現又はPD-L1と共発現の存在量よりも、顕著に高かったことを示す(図7)。まとめると、これらのデータは、図1Gで概略的に示すように、PIDO発現膵島は、PD-L1を膜上に呈示し、細胞質中で、PD-L1の細胞質側末端のC末端にIDOを係留して発現することを示唆する。
IDOの活性は、培地中に存在するトリプトファンに対するその触媒作用により産生される細胞外キヌレニンの検出を介して評価される。図1Hに示されるように、キヌレニンレベルは、IDO及びPIDO両方の発現膵島の条件培地中で有意に増大し、IFNγ処理間葉系間質細胞の培地(陽性対照)中のレベルと同等である。興味深いことに、PD-L1及びIDOを別のタンパク質として同時発現させるために二重形質導入したマウス膵島は、これらの膵島の条件培地中の、より低いキヌレニンレベルにより示されるように、より低いIDO活性を示した。これは、PD-L1及びIDOの同時発現の効果は、PIDO融合タンパク質の効果とは同じでないことを示唆する。
膵島β-細胞は、おそらく、自己反応性T細胞に対する防護機構と思われるが、膵島炎の発症中にそれらのPD-L1の表面発現を高めることが知られている(31)。このPD-L1発現の増大は、β-細胞のストレス経路を開始させる可能性がある。更に、IDOは、膵島中で天然では発現されず、IDO促進トリプトファン枯渇及びキヌレニン産生のβ-細胞機能に与える影響は、明確になっていない。従って、増大したPD-L1表面発現及び異所性IDO異化活性のこれらの細胞に与える影響を理解するために、我々は、PD-L1、IDO、又はPIDO発現膵島を48時間培養した後、それらをグルコース刺激性インスリン分泌(GSIS)アッセイに供した。GSISデータは、導入遺伝子発現の機能としてのインスリン分泌の差異はないことを示した(図1I)。
まとめると、これらのデータは、PIDO融合タンパク質は、そのタンパク質成分より安定であり、それは、細胞表面上に 堅牢に発現され、融合タンパク質の場合に、そのIDO成分はその触媒活性を保持し、PIDOの構成的発現は膵島GSISを妨げない、ことを示す。
【0043】
PIDO発現膵島同種移植片は、糖尿病マウスを高血糖症から逆転させる
PIDO発現同種膵島の移植療法での使用のための潜在能力を評価するために、我々は、約450個の手で採取した、サイズ適合レンチウイルス形質導入C57BL/6マウス膵島を、以前にストレプトゾトシン(STZ)注射により糖尿病にして、内在性膵島を枯渇させている、BALB/cマウスの左腎被膜下に移植した(図2A)。対照レンチウイルスを形質導入した膵島を移植された3匹のマウスは、1匹は12週で、他の2匹は24週で、おそらくそれらの糖尿病に起因して自然発生的に死亡した。移植後20週で、PIDO+膵島同種移植片は、腎被膜下で検出され、インスリンに対し陽性染色された(図2B)。PD-L1、IDO、又はこれらタンパク質の両方が、マウスを糖尿病から逆転させるのに十分であるかどうかを理解するために、我々はまた、PD-L1単独、IDO単独、又は個別のタンパク質としてPD-L1及びIDOの両方を、C57BL/6マウス膵島に形質導入した。図2Cに示すように、PD-L1及び/又はIDO発現膵島は、マウスを既存の高血糖性糖尿病から逆転できなかった。PD-L1及びIDOを同時発現する膵島を移植された同種移植片レシピエントは、ある程度の初期回復(移植後約3週)を示すが、それらは、正常血糖を全く達成せず、移植後約5週までに、それらの初期血糖改善は失われた。この観察は、PIDO融合タンパク質の活性は、PD-L1及びIDOの組み合わせ活性より優れているという考えを更に強化する。次に、我々は、既存のSTZ誘導糖尿病を有する、対照又はPIDO発現膵島を移植されたマウスの血糖を追跡した。PIDO+膵島移植マウスでは、血糖は、3週以内に200mg/dlに低下し(図2D)、10週までに完全に正常血糖になった(健康な、非移植マウスと差異がない)。これらのPIDO+同種移植片レシピエントは、試験の全期間にわたり正常血糖のままで、87±7mg/dl(絶食、図2D、右)又は109±12mg/dl(ランダム摂食、図2D、左)の平均血液中のグルコース濃度であった。我々は、移植の2週間後及び10週間後にブドウ糖負荷試験を実施した。PIDO+膵島を移植されたマウスは、対照膵島移植マウスに比べて、早くも移植の2週間後に、改善された耐糖能を示した(図2E)。50週の観察期間に対して、PIDO+膵島移植マウスのみが正常血糖値を達成及び維持したが、対照膵島同種移植片を移植したマウスは、血糖の回復を全く示さなかった。血清移植の2及び10週間後にマウスの全ての群から収集し、インスリンをアッセイした。図2Fは、PIDO+膵島移植群は、2週で検出可能なインスリンを有し(0.64±0.38ng/ml)、10週までにそれらのインスリンレベルは、正常血糖、非移植マウスと同等であった(0.9±0.17ng/ml)。
【0044】
最後に、我々は、NODマウスでPIDO発現の同種膵島の生存に与える効果を試験しようと努めた。対照又はPIDO+同種(C57BL/6J)膵島を糖尿病メスNODマウスに移植し、マウスを8週間にわたり監視した。図3に示すように、対照膵島レシピエントは、変動及び一過性の血糖の改善を示したが、最終的にそれらの移植片を拒絶した。これらの移植片の平均生存時間は、8日であった(n=4)。対照的に、PIDO+膵島レシピエント(n=5)は、1週間以内に血糖改善を示し、試験期間(8週間)の間、正常血糖のままであり、既存の自己免疫性糖尿病からの逆転を示した(図3B、C)。再発(血糖>250mg/dl)発生率は、対照膵島レシピエント群で100%であり、PIDO+膵島レシピエント群では20%であった。全てのレシピエントは、データ可視化の容易性のために、非糖尿病と仮定された(図3C)。
累積的に、これらのデータは、構成的PIDO発現は、免疫正常マウスにおける膵島同種移植片の免疫拒絶を回避可能にし、既存の糖尿病(即ち、化学的に誘導された及び自己免疫性糖尿病の両方)からの逆転を可能にする。加えて、これらのデータはまた、PIDO融合タンパク質が、その構成タンパク質のものとは異なる生化学的及び機能的特性を有するという仮説を裏付ける。
【0045】
PIDO誘導移植片免疫回避は、同種膵島に対する獲得免疫寛容に至らない
PIDO+膵島同種移植片移植BALB/c又はNODマウスにおける既存の糖尿病からの逆転は、免疫回避と矛盾しない。BALB/cレシピエントの獲得免疫寛容がC57BL/6膵島同種移植片の持続的生存に寄与するかどうかを試験するために、我々は、PIDO+膵島同種移植片をSTZ処理又は腎摘出により、BALB/cレシピエントから破壊/除去した。その後、我々は、これらの再度糖尿病になったマウスに、ナイーブC57BL/6膵島を再移植した(図4A)。具体的には、我々は、第1セットのBALB/cマウス(n=5)に2回目の投与量のSTZを注射し、β-細胞(即ち、PIDO+C57BL/6膵島同種移植片)を移植後20週目に破壊した。全てのレシピエントは、2週以内に高血糖症を発症した(図4B、C)。一次PIDO+C57BL/6膵島同種移植片の破壊及び糖尿病の再誘導の2週間後に、これらのBALB/cマウスに第2セットのナイーブC57BL/6膵島をこれらの反対側の腎皮膜下に移植した。これらのマウスは早期に(即ち、3週間以内に)高血糖症を発症したので、ナイーブ同種移植片は、部分的及び一過性回復のみをもたらし(図4B)、ナイーブ同種移植片の消失を示した。ストレプトゾトシン(STZ)は、GLUT2グルコーストランスポーターによる選択的取り込みを介して、膵島β-細胞中に蓄積する毒性グルコース類似体(即ち、DNAアルキル化剤)であり、これらの破壊を生ずる。STZは、糖尿病マウスモデルの作製に広く使用されるが、膵臓及び腎被膜中でのその有効性は、これらの組織の脈管化における固有の差異に起因して同じではない可能性がある。従って、我々は、ナイーブ膵島によりもたらされた部分的及び一過性血糖回復は、STZの腎被膜下の膵島に対する不完全な効果が原因であろうと仮定した。従って、我々はまた、独立したメトリックを用いて、獲得寛容の存在について試験した。第2セットの同種移植片レシピエント(n=5)では、我々は、PIDO+膵島含有宿主腎臓を除去した。これらのレシピエントは、高血糖症を迅速に発症した(1週間以内)。腎摘出の2週間後、我々は、ナイーブC57BL/6膵島同種移植片をこれらのBALB/cマウスの反対側の腎被膜下に移植した。全てのレシピエントは、1週間以内に高血糖になった(図4C)。従って、第2のナイーブC57BL/6同種移植片は、糖尿病から逆転させることができなかった。これらのデータは、PIDO+膵島を最初に受け、「治癒」されたマウスは、同種膵島に対する免疫寛容を獲得しなかったことを示す。むしろ、PIDO発現を介して達成される同種移植片寛容性は、免疫回避により媒介されなければならない。
【0046】
PIDO媒介免疫回避は、宿主CD4 T細胞能力を必要とする
アロ反応性組織拒絶は、主にCD8+T細胞により媒介され(32)、一方、アロ寛容は、Treg能力を有する宿主CD4+T細胞により媒介される(33)ことが確立されている。PIDO誘導免疫回避を媒介する免疫寛容原性宿主細胞がCD4+T細胞であるかどうかを判定するために、我々は、STZ処理により糖尿病にされているCD4m1Mak(CD4-/-)レシピエント中で、PIDO+膵島同種移植片の治療効力を試験した(図5A)。PIDO+膵島同種移植片はこれらのCD4-/-マウス中で直ぐに拒絶され(図5B)、関与する免疫寛容原性宿主細胞は実際にCD4+T細胞であることを示した。
【0047】
PIDO発現ブタ膵島は異種マウス及びイヌレシピエント中で免疫回避的である
遺伝子編集方法の使用は、ブタ異種移植片に対し改善された寛容を有する(34)が、免疫抑制は、非ヒト霊長類での膵島異種移植片の免疫拒絶を防ぐために必要なまま残されている(35、36)。我々の同種移植マウスモデルでのPIDO+同種移植片による糖尿病からの逆転の成功を考慮して、我々は次に、異種間異種膵島寛容を誘導するPIDOの能力を試験する必要がある。従って、我々は、2種の膵島異種移植モデル:ブタ-to-マウスモデル及びブタ-to-イヌモデルを作製した(図6A)。両モデルでは、インビトロ成熟若年期ブタ膵島をPIDOを発現するように遺伝子改変し、腎被膜下(ブタ-to-マウス)又は軸上筋肉(ブタ-to-イヌ)に移植した。
【0048】
我々は、レシピエント高血糖性C57BL/6マウス中のブタインスリンを移植後16週まで検出した(図6B)。データは、ナイーブブタ膵島異種移植片は、急速に拒絶され、糖尿病マウス中で、PIDO+ブタ膵島のみが生存し、機能的なままであったことを示す。しかし、臨床的糖尿病に対するこれらの異種移植片の効果は、このモデルを用いて試験し得なかった。理由は、ブタインスリンは、げっ歯類インスリン受容体と適合性がなく、従って、マウス及びラット中のグルコース恒常性を調節できないためである(37)。
しかし、ブタインスリンは、イヌのインスリンとは識別不能である。従って、我々はまた、PIDO発現ブタ膵島を正常血糖で免疫正常の非糖尿病性ビーグル犬に移植した。具体的には、我々は、PIDO+ブタ膵島の筋肉移植片がグルコース恒常性及びグルコース負荷に対する正常応答を維持するかどうかを試験した。特に、以前の報告は、ナイーブブタ膵島は、糖尿病性イヌのレシピエント中で急速に機能を失うことを示した(38)。C-ペプチド(連結ペプチド)は、プロインスリン分子中のインスリンのA及びB鎖を連結する短いポリペプチドである。C-ペプチドは、成熟インスリン産生中に切断され、インスリンと共に分泌されるので、インスリン分泌のマーカーである。従って、インスリン分泌に対する筋肉移植片の効果を判定するために、我々は、イヌの血漿中のブタC-ペプチドを測定した。(注意:これは、ブタC-ペプチドがイヌC-ペプチドと無視できる程度の交差反応性しか有さないために、実施可能である)。我々は、最初に、静脈内ブドウ糖負荷試験(ivGTT)を実施し、正常血糖イヌでの応答を誘導した。これは、これを行わないと、その完全に内在性の膵島集団のために、ブタ膵島を動員しないと思われるためである。次に我々は、グルコース刺激に応答したイヌ血漿中の20週間のブタC-ペプチドを検出した(図6C)。これらのデータは、ブタ膵島異種移植片が生存したことを強く示唆する。興味深いことに、我々はまた、GTTに対するC-ペプチド応答の経時的な漸進的低下を観察した。しかし、この低下は、免疫拒絶による異種移植片の減少にのみ帰することはできない。理由は、イヌレシピエント中の検出可能な移植片機能の期間が既知の免疫拒絶期間を十分超えて延長されたためである(38)。
【0049】
考察:
同種膵島移植は、制御が不十分の糖尿病のための可能性を秘めた救命療法である。しかし、全身性の長期の薬理学的免疫抑制の有害作用は、この療法の恩恵及び、その結果として、適応を大きく制限している(4)。薬局方に無い長続きする同種膵島免疫回避を可能にするための戦略が必要とされている(39)。
免疫回避の除去に注力する癌免疫療法の分野から得られる知識は、同種組織寛容を達成する方法に関する洞察を提供する。悪性腫瘍は多くの場合、免疫応答を回避するための免疫抑制経路を開拓する。PD-1:PD-L1(40)及びIDO(41)経路は、両方とも、このような微小環境に関連付けられており、重要な免疫チェックポイントと認識されている。従って、腫瘍学研究者は、これらの経路を潜在的治療標的とみなし、それらを遮断することを試み、高変異量を有する選択悪性疾患に対する免疫学的回避の生物学的効力を示した。例えば、研究者らは、最近、マウスにおける異種拒絶を回避する手段として、ヒト膵島様オルガノイドによるPD-L1の構成的発現の有用性を試験した(27)。類似の研究では、ミクロゲル/生体用材料プラットフォーム上のPD-L1発現膵島は、PD-L1の一時的発現により、移植細胞/組織の遺伝子改変の必要性を回避した(24、42)。しかし、これは、膵島のアロ反応性応答に対する持続的保護を提供できず、同時薬理学的免疫抑制が必要であった。この研究は、特異的で、局在化及び長続きする免疫回避を提供でき、同時に、免疫抑制の必要性を回避する手法の必要性を示した。
【0050】
本発明の試験では、我々は、PD-L1及びIDOを含む新規キメラ融合タンパク質を生成した。PD-1:PD-L1及びIDO経路両方の免疫回避潜在力を利用することにより、我々は、マウスレシピエントにおける膵島同種移植片に対するアロ反応性免疫応答を調節しようと努めた。PD-L1及びIDOは、以前には、免疫遮断治療薬として一緒に使用されたことはなかった。本明細書でなされた観察は、PD-L1の細胞質側末端に係留されたIDOは、これらのタンパク質の独立した同時発現を介しては達成されない有益な機能獲得特性を生じることを示唆する。我々は、PIDOを発現する不死化細胞株及び一次膵島細胞の両方は、表面上のPD-L1及び細胞質中の酵素的に活性なIDOを示した。PIDO融合タンパク質は、両構成タンパク質の生物学的機能を保持するのみでなく、その構成タンパク質に高められた安定性も付与した。我々は、PIDO発現膵島を生成することにより、同種移植片の免疫保護におけるPIDOの有効性を試験した。このPIDO発現膵島は、移植後、STZ糖尿病マウスを既存の糖尿病から逆転させ、免疫抑制なしに、50週間を超える期間にわたり持続的正常血糖を確立した。
【0051】
いくつかの以前の試験に一致して、我々は、PD-L1又はIDO個別の安定発現が、移植片生存の意味のある改善を行わないことを観察した。興味深いことに、我々はまた、PD-L1及びIDOの同時発現のみが膵島同種移植片の免疫拒絶を一時的に遅らせることも観察した。これらの観察は、PD-L1及びIDOは、個別では不十分であるが、PIDO融合タンパク質は、長期間にわたり同種移植片を拒絶から保護する免疫回避微小環境を確立及び維持できることを明らかにした。
【0052】
非特異的な、オフターゲット効果は、常に、免疫調節タンパク質の異所性発現に対する懸念がある。しかし、我々は、頑強な動的機能又は移植時の糖尿病からの逆転などの本物の成熟膵島β-細胞の特徴に対するPIDO発現の影響を何ら観察しなかった。同様に、成熟した、最終分化膵島β-細胞における恒常的条件での意味のある細胞増殖の非存在(データは示さず)(43)は、PIDO発現の影響を受けないままであった。
【0053】
I型(即ち、自己免疫性)糖尿病は、膵島同種移植片に対する免疫回避を可能にする全ての治療に対する最初の用途であろう。これは、NODマウスT1DモデルのPIDO発現膵島の治療効果の判断をするように我々を促した。このモデルでは、我々は、PIDO+膵島レシピエントの血糖値が、移植後の3週以内に約230mg/dlまで低下し(対照糖尿病NODマウスの約450mg/dlと比較して)、更に改善を継続していることを示した。対照膵島群のマウスの死亡はまた、生存に関し有意差が存在することを示唆した。これらのデータは、PIDO媒介免疫回避は、膵島同種移植片を自己免疫性破壊から保護し、その結果、NODマウスを糖尿病から逆転させることを示す。以前の試験(44、45)は、誘導されたTregの増殖又は分化は、糖尿病NODマウスの生存を引き延ばすことを明らかにした。PD-L1及びIDOの両経路は、Treg誘導に集中するので、我々は、同種移植片生存に対するPIDOの影響は、宿主CD4 T細胞能力に関連し得ることを仮定した。同種膵島によるPIDO発現は、内在性CD4依存性免疫回避応答を誘発するという我々の観察は、寛容の宿主獲得T細胞促進要因の中心的役割と一致する。移植片拒絶を防止するための種々の従来及び新規免疫寛容原性手法の中で、Treg細胞治療を介したアロ反応性及び自己反応性T細胞抑制は、移植設定における実現性、忍容性、及び潜在的有効性を示している(46~49)。しかし、これらの手法(Treg強化薬物及び抗原特異的Treg細胞療法)は、T1Dでのわずかのみの限られた有効性及び臨床設定における移植拒絶を示した(50、51)。膵島限定の、構成的PIDO発現及びその付随する宿主CD4依存性免疫回避は、内在性調節性CD4+細胞の連続的インビボ誘導を介して、Treg養子免疫細胞療法の欠点に対処し得る。
【0054】
我々は、PIDO発現は、マウスレシピエントにおいて、免疫抑制なしでの大きく改善された同種膵島の長期生着及びその結果の、糖尿病からの逆転、及び50週間を超える正常血糖の維持につながることを観察した。これにより我々は、PIDOは、マウス宿主中で、同種抗原に対する獲得寛容の発生もたらすと仮定した。しかし、2つの異なる再誘発モデルを用いて、宿主が、再移植後ナイーブ膵島同種移植片を急速に拒絶した(約3週間)ので、我々は、長期(20週間)局在化PIDO発現は、獲得記憶寛容を確立しなかったと判断した。これらの結果は、PIDOは、免疫回避特性を付与するために、膵島により構成的に発現されなければならないことを示す。
【0055】
異種組織移植の成功は、理解しづらいまま残された。異種移植片寛容の達成に向けてなされた若干の試み(35、37、38)の中で、希な及びある程度の改善が報告されているが、免疫十分な哺乳動物レシピエントでの免疫抑制剤のない異種移植片の生存に関する発表された報告は実質上存在しない。本出願では、PIDOの有効性を試験するために、我々は、ブタ膵島異種移植片を免疫正常マウス及びイヌに移植した。我々は、マウス(約16週)及びイヌ(約20週)レシピエントの両方で異種移植片生存の実質的延長を観察した。しかし、これらの異種移植片生存実験に対して、いくつかの重要な制約が存在する。第1に、我々の結果は、正常血糖レシピエントから得られ、これは、我々が、膵島異種移植片の病理学的高血糖症から逆転させる能力を試験するのを妨げた。第2に、可能な限り少ない実験的イヌから、可能な限り多くの情報を収集するために、我々は、ブタ膵島異種移植片を単一イヌレシピエントのみで調査した。これらの実験の結果は有望であるが、異所性膵島移植片の機能的組み込みの差異は、特に、代謝ストレス条件下では、未知である。従って、異種移植片膵島生存及び機能のPIDO媒介改善についてより良好に理解するために、更により多くの動物及び異なるモデルによる徹底的な試験が必要となる。最後に、我々が、異種移植のために利用したマウス糖尿病モデルは、薬剤誘発(STZ)膵島機能不全及び二次性糖尿病の代表的なものである。このモデル系は非免疫膵機能不全又は膵切除術に起因する臨床的糖尿病を反映しているが、それは、I型糖尿病で典型的に認められる自己免疫性膵島破壊の病態を反映していない。しかし、糖尿病NODマウスで生成された我々のデータは、PIDOが自己免疫性糖尿病も同様に免疫回避を可能にすることを示唆する。
【0056】
まとめると我々のデータは、免疫正常レシピエントの膵島同種移植片拒絶を効果的に防止し、免疫抑制療法の必要性をうまく回避するPIDOの新規免疫回避遮断治療薬としてのPIDOの使用を裏付ける。PIDOが非記憶免疫回避を確立する機序は、解明されるべきまま残されるが、我々は、それが、自然及び適応免疫応答の両方の回避を含むことを想定している。結論として、PIDO融合タンパク質の発現は、既製の膵島移植が、制御不十分なインスリン依存性糖尿病の治療のための標準的治療として使用されることを可能にし得る。
【0057】
参考文献




図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
【配列表】
2024522256000001.app
【国際調査報告】