(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-12
(54)【発明の名称】癌の治療のための診断方法および組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240605BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240605BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20240605BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240605BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20240605BHJP
A61K 31/473 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P35/00
A61K31/573
A61K39/395 T
G01N33/68
A61K31/473
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571615
(86)(22)【出願日】2022-05-18
(85)【翻訳文提出日】2024-01-17
(86)【国際出願番号】 US2022029771
(87)【国際公開番号】W WO2022245899
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521031279
【氏名又は名称】リネウス セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ガリアンテス ティナ
(72)【発明者】
【氏名】ムーニー パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ナターレ クリストファー
【テーマコード(参考)】
2G045
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045CA25
2G045CA26
2G045DA13
2G045DA36
2G045DA54
2G045FB02
4C084AA17
4C084ZB26
4C084ZC41
4C084ZC75
4C085AA14
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE03
4C085GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC28
4C086DA08
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、癌療法による治療に適している患者および癌の特定に有用な診断方法および組成物を提供し、これには、正常細胞および癌細胞ならびに正常組織および癌組織に存在する癌標的に対するアゴニスト療法が含まれる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌が標的経路において癌標的に結合する制癌剤による治療に対して反応し得る患者を特定するための方法であって、
試験化合物を投与する前に、前記患者から第一の非癌性生体試料を一回以上取得することと、
前記標的経路において一つ以上のバイオマーカーの測定可能な変化を生じさせるのに有効な量の試験化合物を投与することと、
前記試験化合物を投与した後に、前記患者から第二の非癌性生体試料を一回以上取得することと、
前記第一の試料と比較して、前記試験化合物の投与後の前記バイオマーカーの変化について前記第二の非癌性生体試料を分析することと、
前記標的経路における一つ以上のバイオマーカーの前記測定可能な変化が、健康な対象における前記測定可能な変化に対応する場合に、前記癌が前記制癌剤による治療に対して反応し得る患者として前記患者を特定することと、を含む、方法。
【請求項2】
癌が標的経路において癌標的に結合する制癌剤による治療に適する癌患者を特定するための方法であって、
試験化合物を投与する前に、前記患者から第一の非癌性生体試料を一回以上取得することと、
前記標的経路において一つ以上のバイオマーカーの測定可能な変化を生じさせるのに有効な量の試験化合物を投与することと、
前記試験化合物を投与した後に、前記患者から第二の非癌性生体試料を一回以上取得することと、
前記第一の試料と比較して、前記試験化合物の投与後の前記バイオマーカーの変化について前記第二の非癌性生体試料を分析することと、
前記標的経路における一つ以上のバイオマーカーの前記測定可能な変化が前記制癌剤に反応した一人以上の癌患者における前記測定可能な変化と実質的に同様である場合に、前記制癌剤を用いた治療に適する前記癌患者を特定することと、を含む、方法。
【請求項3】
前記試験化合物が、前記癌標的のアゴニストを含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記試験化合物が、前記癌標的のアンタゴニストを含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記試験化合物が、前記制癌剤を含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記有効量の試験化合物が、一回用量で投与される、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記有効量の試験化合物が、二回以上の用量で投与される、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記有効量の試験化合物が、臨床用量、亜臨床用量、またはマイクロドーズから選択される、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記亜臨床用量が、前記臨床用量の約1.1%~99.9%を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記マイクロドーズが、前記臨床用量の約0.01%~1%を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第一の生体試料が、前記試験化合物を投与する30日前以内に取得される、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第一の生体試料が、前記第二の生体試料と同時に収集される、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記試験化合物活性の前記バイオマーカーが、一つ以上の分子バイオマーカー、イメージングバイオマーカー、または非侵襲的に測定可能なバイオマーカーを含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記分子バイオマーカーが、循環バイオマーカーを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも一つのバイオマーカーが、前記制癌剤の前記癌標的である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記一つ以上のバイオマーカーが、前記制癌剤の前記癌標的ではない、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記バイオマーカーが、全身バイオマーカーおよび/または循環バイオマーカーである、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記バイオマーカーが、前記第一および/または前記第二の生体試料に局在化される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
LNS8801による治療に対してその癌が反応し得る患者を特定するための方法であって、
Gタンパク質共役エストロゲン受容体1(GPER)アゴニストを投与する前に、前記患者から第一の生体試料を一回以上取得することと、
前記患者においてGPER活性の一つ以上のバイオマーカーの測定可能な変化を生じさせるのに有効な量のGPERアゴニストを投与することと、
前記GPERアゴニストを投与した後、前記患者から第二の生体試料を一回以上取得することと、
前記第一の試料と比較して、前記GPERアゴニストの投与後の前記バイオマーカーの変化について前記第二の試料を分析することと、
GPER活性の一つ以上のバイオマーカーの測定可能な変化が測定される場合に、前記患者をLNS8801による治療に対してその癌が反応し得る患者として特定することと、を含む、方法。
【請求項20】
LNS8801による治療に対してその癌が反応し得る患者を特定するための方法であって、
Gタンパク質共役エストロゲン受容体1(GPER)アゴニストを投与する前に、前記患者から第一の生体試料を一回以上取得することと、
野生型GPERに対してヘテロ接合性またはホモ接合性である患者においてGPER活性の一つ以上のバイオマーカーの測定可能な変化を生じさせるのに有効な量のGPERアゴニストを投与することと、
前記GPERアゴニストを投与した後、前記患者から第二の生体試料を一回以上取得することと、
前記第一の試料と比較して、前記GPERアゴニストの投与後の前記バイオマーカーの変化について前記第二の試料を分析することと、
GPER活性の一つ以上のバイオマーカーの測定可能な変化が測定される場合に、前記患者をLNS8801による治療に対してその癌が反応し得る患者として特定することと、を含む、方法。
【請求項21】
LNS8801による治療に適する癌患者を選択するための方法であって、
GPERアゴニストを投与する前に、前記患者から第一の生体試料を一回以上取得することと、
患者においてGPER活性の一つ以上のバイオマーカーの測定可能な変化を生じさせるのに有効な量のGPERアゴニストを投与することと、
前記GPERアゴニストを投与した後、前記患者から第二の生体試料を一回以上取得することと、
前記第一の試料と比較して、前記GPERアゴニストの投与後の前記バイオマーカーの変化について前記第二の試料を分析することと、
GPER活性の一つ以上のバイオマーカーの測定可能な変化が測定される場合に、LNS8801による治療のために前記患者を選択することと、を含む、方法。
【請求項22】
LNS8801による治療に対してその癌が反応し得る患者を特定するための方法であって、
生体試料を取得することと、
前記試料を分析して、前記患者が野生型GPERに対してヘテロ接合性またはホモ接合性であるかどうかを決定することと、
GPERに対してヘテロ接合性またはホモ接合性である場合、前記患者をLNS8801による治療に対してその癌が反応し得る患者として特定することと、を含む、方法。
【請求項23】
LNS8801による治療に適する癌患者を選択するための方法であって、
生体試料を取得することと、
前記試料を分析して、前記患者が野生型GPERに対してヘテロ接合性またはホモ接合性であるかどうかを決定することと、
GPERに対してヘテロ接合性またはホモ接合性である場合、LNS8801による治療のために前記患者を選択することと、を含む、方法。
【請求項24】
癌がLNS8801による治療に対して屈折性である患者を特定するための方法であって、
生体試料を取得することと、
前記試料を分析して、GPERが前記核内に局在化しているかどうかを決定することと、
GPERが前記核内に局在化している場合、癌がLNS8801による治療に対して屈折性である患者として前記患者を特定することと、を含む、方法。
【請求項25】
癌がLNS8801による治療に対して屈折性であり得る患者を特定するための方法であって、
生体試料を取得することと、
前記試料を分析して、前記患者がGPER変異体に対してヘテロ接合性またはホモ接合性であるかどうかを決定することと、
GPER変異体に対してヘテロ接合性またはホモ接合性である場合、癌がLNS8801による治療に対して屈折性であり得る患者として前記患者を特定することと、を含む、方法。
【請求項26】
LNS8801による治療に適さない癌患者を選択するための方法であって、
生体試料を取得することと、
前記試料を分析して、前記患者がGPER変異体に対してヘテロ接合性またはホモ接合性であるかどうかを決定することと、
GPER変異体に対してヘテロ接合性またはホモ接合性である場合、LNS8801による治療に適さない前記患者を選択することと、を含む、方法。
【請求項27】
前記GPER変異体が、P16L変異体を含む、請求項25~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
LNS8801による治療に対してその癌が反応し得る患者を特定するための方法であって、
LNS8801を投与する前に、前記患者から第一の生体試料を一回以上取得することと、
患者において、プロラクチンの測定可能な増加を生じさせるのに有効な量のLNS8801を投与することと、
前記LNS8801を投与した後、前記患者から第二の生体試料を一回以上取得することと、
前記LNS8801の投与後、前記第一の生体試料に対する約20%超、約25%超、約30%超、約35%超、約40%超、約45%超、約50%超、約55%超、約60%超、約65%超、約70%超、約75%超、約80%超、約85%超、約90%超、約95%超、約100%超のプロラクチンの増加について、前記第二の試料を分析することと、
プロラクチンの約20%超、約25%超、約30%超、約35%超、約40%超、約45%超、約50%超、約55%超、約60%超、約65%超、約70%超、約75%超、約80%超、約85%超、約90%超、約95%超、または約100%超の増加が測定される場合に、前記患者をLNS8801による治療に対してその癌が反応し得る患者として特定することと、を含む、方法。
【請求項29】
LNS8801による治療に適する癌患者を選択するための方法であって、
LNS8801を投与する前に、前記患者から第一の生体試料を一回以上取得することと、
患者において、プロラクチンの測定可能な増加を生じさせるのに有効な量のLNS8801を投与することと、
前記LNS8801を投与した後、前記患者から第二の生体試料を一回以上取得することと、
前記LNS8801の投与後、前記第一の試料に対する約20%超、約25%超、約30%超、約35%超、約40%超、約45%超、約50%超、約55%超、約60%超、約65%超、約70%超、約75%超、約80%超、約85%超、約90%超、約95%超、約100%超のプロラクチンの増加について、前記試料を分析することと、
プロラクチンの約20%超、約25%超、約30%超、約35%超、約40%超、約45%超、約50%超、約55%超、約60%超、約65%超、約70%超、約75%超、約80%超、約85%超、約90%超、約95%超、または約100%超の増加が測定される場合に、LNS8801による治療のために前記患者を選択することと、を含む、方法。
【請求項30】
前記第二の試料中のプロラクチンの前記増加が、前記第一の生体試料よりも約25%超である、請求項28~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記第二の試料中のプロラクチンの前記増加が、前記第一の生体試料よりも約30%超である、請求項28~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記第二の試料中のプロラクチンの前記増加が、前記第一の生体試料よりも約35%超である、請求項28~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記第二の試料中のプロラクチンの前記増加が、前記第一の生体試料よりも約40%超である、請求項28~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記第二の試料中のプロラクチンの前記増加が、前記第一の生体試料よりも約45%超である、請求項28~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記第二の試料中のプロラクチンの前記増加が、前記第一の生体試料よりも約50%超である、請求項28~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記第二の試料中のプロラクチンの前記増加が、前記第一の生体試料よりも約55%超である、請求項28~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記第二の試料中のプロラクチンの前記増加が、前記第一の生体試料よりも約60%超である、請求項28~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記第二の試料中のプロラクチンの前記増加が、前記第一の生体試料よりも約65%超である、請求項28~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記第二の試料中のプロラクチンの前記増加が、前記第一の生体試料よりも約70%超である、請求項28~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記第二の試料中のプロラクチンの前記増加が、前記第一の生体試料よりも約75%超である、請求項28~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記第二の試料中のプロラクチンの前記増加が、前記第一の生体試料よりも約80%超である、請求項28~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記第二の試料中のプロラクチンの前記増加が、前記第一の生体試料よりも約85%超である、請求項28~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記第二の試料中のプロラクチンの前記増加が、前記第一の生体試料よりも約90%超である、請求項28~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記第二の試料中のプロラクチンの前記増加が、前記第一の生体試料よりも約95%超である、請求項28~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記第二の試料中のプロラクチンの前記増加が、前記第一の生体試料よりも約100%超である、請求項28~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記患者が、野生型GPERに対してホモ接合性である、請求項19~23または28~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記患者が、GPER変異体に対してホモ接合性である、請求項25~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
プロラクチンの増加が、LNS8801の投与後、約4時間、約7時間、および約10時間の平均血清プロラクチン濃度を、投与前、および投与後約0.5時間、約1時間、および約2時間の平均プロラクチン濃度で割ることによって計算される、請求項28~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
それを必要とする患者において癌を治療する方法であって、
前記患者から生体試料を取得することと、
前記試料から前記患者が野生型GPERに対してヘテロ接合性またはホモ接合性であるかどうかを決定することと、
野生型GPERに対してヘテロ接合性またはホモ接合性である場合に、前記患者がLNS8801による治療に適すると決定することと、
有効量のLNS8801を前記患者に投与することと、を含む、方法。
【請求項50】
それを必要とする患者において癌を治療する方法であって、
GPERアゴニストを投与する前に、前記患者から第一の生体試料を一回以上取得することと、
野生型GPERに対してヘテロ接合性またはホモ接合性である患者においてGPER活性の一つ以上のバイオマーカーの測定可能な変化を生じさせるのに有効な量のGタンパク質共役エストロゲン受容体1(GPER)アゴニストを投与することと、
前記GPERアゴニストを投与した後、前記患者から第二の生体試料を一回以上取得することと、
前記GPERアゴニストの投与後の前記バイオマーカーの変化について前記試料を分析することと、
GPER活性の一つ以上のバイオマーカーの測定可能な変化が測定される場合に、前記患者がLNS8801による治療に適すると決定することと、
有効量のLNS8801を前記患者に投与することと、を含む、方法。
【請求項51】
前記患者が、野生型GPERに対してホモ接合性である、請求項49~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記GPERアゴニストの有効量が、一回用量で投与される、請求項49~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記GPERアゴニストの有効量が、二回以上の用量で投与される、請求項49~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記GPERアゴニストの有効量が、臨床用量、亜臨床用量、またはマイクロドーズから選択される、請求項49~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記亜臨床用量が、前記臨床用量の約1.1%~99.9%を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記マイクロドーズが、前記臨床用量の約0.01%~1%を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記GPERアゴニストが、2-メトキシエストラジオール、アルドステロン、エストラジオール、エチニルエストラジオール、LNS8801、G-1ゲニステイン、ヒドロキシチロゾール、ナイアシン、ニコチンアミド、ケルセチン、およびレスベラトロルを含む、請求項49~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記GPERアゴニストが、LNS8801である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記第一の生体試料が、前記GPERアゴニストを投与する30日前以内に取得される、請求項49~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記第一の生体試料が、前記第二の生体試料と同時に収集される、請求項49~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
GPER活性の前記バイオマーカーが、一つ以上の分子バイオマーカー、イメージングバイオマーカー、または非侵襲的に測定可能なバイオマーカーを含む、請求項49~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記分子バイオマーカーが、循環バイオマーカーを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記分子バイオマーカーが、プロラクチンレベル、インスリンレベル、c-Mycおよび/またはグルコースレベルの変化を含む、請求項61~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記分子バイオマーカーが、プロラクチンレベルもしくは活性の増加、インスリンレベルもしくは活性の増加、またはc-Mycレベルもしくは活性の減少を含む、請求項61~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
GPER活性の前記バイオマーカーが、循環プロラクチンレベルの増加である、請求項61~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記プロラクチンが、有効量のGPERアゴニストの投与後に約1.25倍の誘導を示す、請求項61~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記プロラクチンが、有効量のGPERアゴニストの投与後に約1.3倍の誘導を示す、請求項61~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記プロラクチンが、有効量のGPERアゴニストの投与後に約1.35倍の誘導を示す、請求項61~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記プロラクチンが、有効量のGPERアゴニストの投与後に約1.4倍の誘導を示す、請求項61~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記プロラクチンが、有効量のGPERアゴニストの投与後に約1.45倍の誘導を示す、請求項61~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記プロラクチンが、有効量のGPERアゴニストの投与後に約1.5倍の誘導を示す、請求項61~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記プロラクチンが、有効量のGPERアゴニストの投与後に約1.55倍の誘導を示す、請求項61~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記プロラクチンが、有効量のGPERアゴニストの投与後に約1.6倍の誘導を示す、請求項61~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記プロラクチンが、有効量のGPERアゴニストの投与後に約1.65倍の誘導を示す、請求項61~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記プロラクチンが、有効量のGPERアゴニストの投与後に約1.7倍の誘導を示す、請求項61~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記プロラクチンが、有効量のGPERアゴニストの投与後に約1.75倍の誘導を示す、請求項61~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記プロラクチンが、有効量のGPERアゴニストの投与後に約1.8倍の誘導を示す、請求項61~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記プロラクチンが、有効量のGPERアゴニストの投与後に約1.85倍の誘導を示す、請求項61~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記プロラクチンが、有効量のGPERアゴニストの投与後に約1.9倍の誘導を示す、請求項61~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記プロラクチンが、有効量のGPERアゴニストの投与後に約2.0倍の誘導を示す、請求項61~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記プロラクチンが、投与前および投与後30分、1時間および2時間でプロラクチンの前記平均濃度で割った平均約4時間(±20分)、約7時間(±45分)および約12時間(±2時間)での閾値を超えて増加し、
前記増加が、単独療法では25%超であり、PD-1阻害剤を用いた併用療法ではより少ない、請求項61~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記プロラクチンが、投与前および投与後30分、1時間および2時間でプロラクチンの前記平均濃度で割った平均約4時間(±20分)、約7時間(±45分)および約12時間(±2時間)での閾値を超えて増加し、
前記増加が、単独療法では40%超であり、PD-1阻害剤を用いた併用療法ではより少ない、請求項61~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記非侵襲的に測定可能なバイオマーカーが、フラッシングまたは血圧の変化を含む、請求項61に記載の方法。
【請求項84】
ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、JTX-4014、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、トリパリマブ、ドスタルリマブ、INCMGA00012(MGA012)、AMP-224、およびAMP-514のうちの一つ以上を含むPD-1阻害剤を同時的、同時発生的、または逐次的に投与することをさらに含む、請求項49~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記PD-1阻害剤が、ペムブロリズマブを含む、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記PD-1阻害剤が、ペムブロリズマブである、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記生体試料が、癌性ではない一つ以上の細胞および/または組織を含む、請求項19~86のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年5月19日に出願された米国仮出願番号第63/190,484号の利益を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔発明の背景〕
本開示は、例えば癌を含む腫瘍性疾患の治療に有用な診断方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
癌は、多くの先進国および米国の多くの都市部において、死因の一つとして心血管疾患に置き換わってきた。免疫療法および標的療法の最近の進歩は、進行癌を有する患者の多くについて転帰を改善してきたが、持続的奏効は少数の患者においてのみ達成され、治療はしばしば有意な副作用によって制限され、癌標的の能力範囲は制限される。
【0004】
新しい癌標的および癌治療薬、特に生物製剤よりも費用対効果が高い小分子に対する重大なアンメットニーズがある。また、所与の抗癌治療に反応する可能性が高い患者を特定し、選択する方法に対する重大なアンメットニーズもある。
【0005】
本開示は、癌療法による治療に適している患者および癌の特定に有用な診断方法および組成物を提供し、これには、非古典的エストロゲン受容体であるGタンパク質共役エストロゲン受容体1(GPER)などの正常細胞および癌細胞ならびに正常組織および癌組織の両方に存在する癌標的に対するアゴニスト療法が含まれる。本開示はまた、GPER受容体を介して媒介される病態および状態を治療する方法を提供する。
【発明の概要】
【0006】
本開示の一態様は、標的経路において癌標的に結合する制癌剤による治療に対して反応し得る患者を特定するための方法を提供し、方法は、試験化合物を投与する前に患者から第一の非癌性生体試料を取得することと、標的経路において一つ以上のバイオマーカーの測定可能な変化を生じさせるのに有効な量の試験化合物を投与することと、試験化合物を投与した後に、患者から第二の非癌性生体試料を取得することと、第一の試料と比較して、試験化合物の投与後のバイオマーカーの変化について第二の生体試料を分析することと、標的経路における一つ以上のバイオマーカーの測定可能な変化が健康な対象における測定可能な変化に対応する場合に、制癌剤による治療に対してその癌が反応しうる患者として患者を特定することと、を含む。
【0007】
本開示の一態様は、標的経路において癌標的に結合する制癌剤を用いた治療に適する癌患者を特定するための方法を提供し、方法は、試験化合物を投与する前に患者から第一の非癌性生体試料を取得することと、標的経路において一つ以上のバイオマーカーの測定可能な変化を生じさせるのに有効な量の試験化合物を投与することと、試験化合物を投与した後に、患者から第二の生体試料を取得することと、第一の試料と比較して、試験化合物の投与後のバイオマーカーの変化について第二の非癌性生体試料を分析することと、標的経路における一つ以上のバイオマーカーの測定可能な変化が制癌剤に反応した一人以上の癌患者における測定可能な変化と実質的に同様である場合に、制癌剤を用いた治療に適する癌患者を特定することと、を含む。
【0008】
一部の実施形態では、試験化合物は、癌標的のアゴニスト、癌標的のアンタゴニスト、または制癌剤を含み、一部の実施形態では、バイオマーカーは、制癌剤の癌標的であり、一部の実施形態では、バイオマーカーは、制癌剤の癌標的ではない。
【0009】
本開示の一態様は、LNS8801による治療に対してその癌が反応し得る患者を特定するための方法を提供し、Gタンパク質共役エストロゲン受容体1(GPER)アゴニストを投与する前に、患者から第一の生体試料を取得することと、患者においてGPER活性の一つ以上のバイオマーカーの測定可能な変化を生じさせるのに有効な量のGPERアゴニストを投与することと、GPERアゴニストを投与した後に、患者から第二の生体試料を取得することと、第一の試料と比較して、GPERアゴニストの投与後のバイオマーカーの変化について第二の試料を分析することと、GPER活性の一つ以上のバイオマーカーの測定可能な変化が測定される場合に、患者をLNS8801による治療に対してその癌が反応し得る患者として特定することと、を含む。
【0010】
本開示の一態様は、LNS8801による治療に対してその癌が反応し得る患者を特定するための方法を提供し、Gタンパク質共役エストロゲン受容体1(GPER)アゴニストを投与する前に、患者から第一の生体試料を取得することと、野生型GPERに対してヘテロ接合性またはホモ接合性である患者においてGPER活性のバイオマーカーの測定可能な変化を生じさせるのに有効な量のGPERアゴニストを投与することと、GPERアゴニストを投与した後に、患者から第二の生体試料を取得することと、第一の試料と比較して、GPERアゴニストの投与後のバイオマーカーの変化について第二の試料を分析することと、GPER活性のバイオマーカーの測定可能な変化が測定される場合に、患者をLNS8801による治療に対してその癌が反応し得る患者として特定することと、を含む。
【0011】
本開示の一態様は、LNS8801による治療に適する癌患者を選択するための方法を提供し、GPERアゴニストを投与する前に、患者から第一の生体試料を取得することと、患者においてGPER活性のバイオマーカーの測定可能な変化を生じさせるのに有効な量のGPERアゴニストを投与することと、GPERアゴニストを投与した後に、患者から第二の生体試料を取得することと、第一の試料と比較して、GPERアゴニストの投与後のバイオマーカーの変化について第二の試料を分析することと、GPER活性のバイオマーカーの測定可能な変化が測定される場合に、LNS8801による治療のために患者を選択することと、を含む。
【0012】
本開示の一態様は、LNS8801による治療に対してその癌が反応し得る患者を特定するための方法を提供し、生体試料を取得することと、試料を分析して、患者が野生型GPERに対してヘテロ接合性またはホモ接合性であるかどうかを決定することと、GPERに対してヘテロ接合性またはホモ接合性である場合、患者をLNS8801による治療に対してその癌が反応し得る患者として特定することを含む。
【0013】
本開示の一態様は、LNS8801による治療に適する癌患者を選択するための方法を提供し、生体試料を取得することと、試料を分析して、患者が野生型GPERに対してヘテロ接合性またはホモ接合性であるかどうかを決定することと、野生型GPERに対してヘテロ接合性またはホモ接合性である場合、LNS8801による治療のために患者を選択することと、を含む。
【0014】
本開示の一態様は、癌がLNS8801による治療に対して屈折性である患者を特定するための方法を提供し、生体試料を取得することと、試料を分析して、GPERが核内に局在化しているかどうかを決定することと、GPERが核内に局在化している場合、癌がLNS8801による治療に対して屈折性である患者として患者を特定することと、を含む。
【0015】
本開示の一態様は、癌がLNS8801による治療に対して屈折性であり得る患者を特定するための方法を提供し、生体試料を取得することと、試料を分析して、患者がGPER変異体に対してヘテロ接合性またはホモ接合性であるかどうかを決定することと、GPER変異体に対してヘテロ接合性またはホモ接合性である場合、癌がLNS8801による治療に対して屈折性であり得る患者として患者を特定することを含む。
【0016】
本開示の一態様は、LNS8801による治療に適さない癌患者を選択するための方法を提供し、生体試料を取得することと、試料を分析して、患者がGPER変異体に対してヘテロ接合性またはホモ接合性であるかどうかを決定することと、GPER変異体に対してヘテロ接合性またはホモ接合性である場合、LNS8801による治療に適さない患者を選択することと、を含む。
【0017】
一部の実施形態では、GPER変異体は、P16L変異体を含む。
【0018】
本開示の一態様は、LNS8801による治療に対してその癌が反応し得る患者を特定するための方法を提供し、LNS8801を投与する前に、患者から第一の生体試料を取得することと、患者において、プロラクチンの測定可能な増加を生じさせるのに有効な量のLNS8801を投与することと、LNS8801を投与した後に、患者から第二の生体試料を取得することと、LNS8801の投与後、第一の生体試料に対する約20%超、約25%超、約30%超、約35%超、約40%超、約45%超、約50%超、約55%超、約60%超、約65%超、約70%超、約75%超、約80%超、約85%超、約90%超、約95%超、約100%超のプロラクチンの増加について、第二の試料を分析することと、プロラクチンの約20%超、約25%超、約30%超、約35%超、約40%超、約45%超、約50%超、約55%超、約60%超、約65%超、約70%超、約75%超、約80%超、約85%超、約90%超、約95%超、または約100%超の増加が測定される場合に、LNS8801による治療に対してその癌が反応し得る患者を特定することと、を含む。
【0019】
本開示の一態様は、癌がLNS8801による治療に適する癌患者を選択するための方法を提供し、LNS8801を投与する前に、患者から第一の生体試料を取得することと、患者において、プロラクチンの測定可能な増加を生じさせるのに有効な量のLNS8801を投与することと、LNS8801を投与した後に、患者から第二の生体試料を取得することと、LNS8801の投与後、第一の試料に対する約20%超、約25%超、約30%超、約35%超、約40%超、約45%超、約50%超、約55%超、約60%超、約65%超、約70%超、約75%超、約80%超、約85%超、約90%超、約95%超、約100%超のプロラクチンの増加について、試料を分析することと、プロラクチンの約20%超、約25%超、約30%超、約35%超、約40%超、約45%超、約50%超、約55%超、約60%超、約65%超、約70%超、約75%超、約80%超、約85%超、約90%超、約95%超、または約100%超の増加が測定される場合に、LNS8801による治療のために患者を選択することと、を含む。
【0020】
一部の実施形態では、プロラクチンの増加は、LNS8801投与後約4時間、約7時間、および約10時間の平均血清プロラクチン濃度を、投与前、および投与後約0.5時間、約1時間、および約2時間の平均プロラクチン濃度で割ることによって計算される。
【0021】
本開示の一態様は、それを必要とする患者において癌を治療する方法を提供し、患者から生体試料を取得することと、試料から患者が野生型GPERに対してヘテロ接合性またはホモ接合性であるかどうかを決定することと、野生型GPERに対してヘテロ接合性またはホモ接合性である場合、患者がLNS8801による治療に適すると決定することと、有効量のLNS8801を患者に投与することと、を含む。
【0022】
本開示の一態様は、それを必要とする患者において癌を治療する方法を提供し、GPERアゴニストを投与する前に患者から第一の生体試料を取得することと、野生型GPERに対してヘテロ接合性またはホモ接合性である患者においてGPER活性の一つ以上のバイオマーカーの測定可能な変化を生じさせるのに有効な量のGタンパク質共役エストロゲン受容体1(GPER)アゴニストを投与することと、GPERアゴニストを投与した後、患者から第二の生体試料を一回以上取得することと、GPERアゴニストの投与後のバイオマーカーの変化について試料を分析することと、GPER活性の一つ以上のバイオマーカーの測定可能な変化が測定される場合に、患者がLNS8801による治療に適すると決定することと、有効量のLNS8801を患者に投与することと、を含む。
【0023】
一部の実施形態では、GPERアゴニストは、2-メトキシエストラジオール、アルドステロン、エストラジオール、エチニルエストラジオール、LNS8801、G-1、ゲニステイン、ヒドロキシチロゾール、ナイアシン、ニコチンアミド、ケルセチン、およびレスベラトロルを含み、一部の実施形態では、GPERアゴニストはLNS8801である。
【0024】
本開示の様々な態様の一部の実施形態では、患者は、野生型GPERに対してホモ接合性であり、一部の実施形態では、患者は、GPER変異体に対してホモ接合性である。
【0025】
本開示の様々な態様の一部の実施形態では、試験化合物、GPERアゴニスト、およびLNS8801は、一回用量または二回以上の用量で投与され、有効量の試験化合物は、臨床用量、亜臨床用量、またはマイクロドーズであり得る。一部の実施形態では、亜臨床用量は、臨床用量の約1.1%~99.9%を含み、一部の実施形態では、マイクロドーズは、臨床用量の約0.01%~1%を含む。
【0026】
本開示の様々な態様の一部の実施形態では、生体試料は、癌性ではない一つ以上の細胞および/または組織を含み、一部の実施形態では、生体試料は、すべて非癌性である細胞および/または組織を含む。一部の実施形態では、第一の生体試料は、試験化合物、GPERアゴニスト、またはLNS8801を投与する30日前以内に取得され、一部の実施形態では、第一の生体試料は、第二の生体試料と同時に収集される。一部の実施形態では、試験化合物、GPERアゴニスト、およびLNS8801活性のバイオマーカーは、一つ以上の分子バイオマーカー、イメージングバイオマーカー、または非侵襲的に測定可能なバイオマーカーを含み、バイオマーカーは、実施形態において、循環バイオマーカーおよび/または全身バイオマーカー、および/または第一および/または第二の生体試料に局在化するバイオマーカーを含む。
【0027】
有効量のGPERアゴニストまたはLNS8801を投与することを含む一部の実施形態では、バイオマーカーは、プロラクチンレベル、インスリンレベル、c-Mycおよび/またはグルコースレベルの変化を含む循環バイオマーカーを含み、その変化は、実施形態において、プロラクチンレベルもしくは活性の増加、インスリンレベルもしくは活性の増加、またはc-Mycレベルもしくは活性の減少を含む。一部の実施形態では、GPERアゴニスト活性のバイオマーカー(LNS88801を含む)は、循環プロラクチンレベルの増加である。
【0028】
GPERアゴニスト活性のバイオマーカー(LNS88801を含む)が循環プロラクチンレベルの増加である一部の実施形態では、プロラクチンは、LNS8801を含む、有効量のGPERアゴニストの投与後に、約1.25倍の誘導、約1.30倍の誘導、約1.35倍の誘導、約1.40倍の誘導、約1.45倍の誘導、約1.50倍の誘導、約1.55倍の誘導、約1.60倍の誘導、約1.65倍の誘導、約1.70倍の誘導、約1.75倍の誘導、約1.80倍の誘導、約1.85倍の誘導、約1.90倍の誘導、約1.95倍の誘導、約2.0倍の誘導を示す。
【0029】
GPERアゴニスト活性のバイオマーカー(LNS88801を含む)が循環プロラクチンレベルの増加である一部の実施形態では、プロラクチンは、投与前および投与後30分、1時間および2時間でのプロラクチンの平均濃度で割った、約4時間(±20分)、約7時間(±45分)および約12時間(±2時間)の平均での閾値を超えて増加し、増加は、単独療法では25%超、または単独療法では40%超であり、PD-1阻害剤との併用療法ではより少ない。
【0030】
癌を治療する方法を提供する本開示の態様の一部の実施形態は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、JTX-4014、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、トリパリマブ、ドスタルリマブ、INCMGA00012(MGA012)、AMP-224、およびAMP-514のうちの一つ以上を含むPD-1阻害剤を同時に、同時発生的に、または逐次的に投与することをさらに含む。一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、ペムブロリズマブを含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、10、40、および125mgのカプセルコホートからの1日目(
図1A)および3日目(
図1B)のLNS8801の薬物動態を示す。
【
図2】
図2(A)は、ブドウ膜黒色腫患者の生検におけるc-Myc免疫組織化学の代表的な治療前および治療上の画像を示す。
図2(B)は、治療前の生検および治療中の生検におけるc-Myc免疫組織化学スコアの変化率を示す。
【
図3】
図3は、LNS8801単独療法後のプロラクチン誘導とRECISTに基づく最良効果の比較を示す。
【
図4】
図4は、プロラクチンレスポンダーと非プロラクチンレスポンダーを比較した場合のRECISTに基づく最良効果を示す。統計的有意性は、マン・ホイットニー検定を使用して決定された。
【
図5】
図5は、特定の癌における活性を有するGPER関連生化学的経路を表す概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明者らは、予想外にも、非古典的エストロゲン受容体であるGPERが、黒色腫を含む性ステロイド反応性であることが古典的に知られていない癌の治療標的であることを決定した。さらに、GPERアゴニストは、癌細胞を殺傷する目的で活性化癌遺伝子の受容体を阻害することによって作用する標準的なアンタゴニスト抗癌療法とは対照的に、GPERを活性化して、(1)細胞傷害性T細胞によって認識される分化抗原の発現の増加、および(2)HLAクラスIタンパク質の発現の増加に関連する特定の細胞型における分化を誘導することが決定された。まとめると、これらの効果により、腫瘍細胞はより抗原性となり、免疫細胞による殺傷に対して脆弱になる。予想外にも、GPERアゴニストに対する全身性反応(例えば、癌内ではない)を測定することは、アゴニストに対する患者の癌の反応の信頼できる予測因子である。c-myc発現などの腫瘍内の反応を測定することも、患者の反応を予測する。
【0033】
定義
本明細書で使用される場合、以下の用語は、示される意味を有する。
【0034】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、「a」、「an」、および「the」の意味は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数形の言及を含む。
【0035】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、使用されている数の数値の±20%を意味する。したがって、約50%は、40%~60%の範囲を意味する。
【0036】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」および「含む(including)」という用語は、同義的に使用され、一つ以上の列挙された要素が、具体的に列挙されていない他の要素を含み得ることを示す。例えば、ポリペプチド配列を「含む(comprises)」または「含む(includes)」組成物は、配列を単独で、または他の配列もしくは成分と組み合わせて含有してもよい。
【0037】
本明細書で使用される場合、「構成される(consists of)」または「構成される(consisting of)」という用語は、化合物、組成物、製剤、または方法が、特定の特許請求の範囲の実施形態または請求項に具体的に列挙される要素、工程、または成分のみを含むことを意味する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「本質的に構成される(consisting essentially of)」または「本質的に構成する(consists essentially of)」という用語は、化合物、組成物、製剤、または方法が、特定の特許請求の範囲の実施形態または請求項に具体的に列挙される要素、工程、または成分のみを含み、任意選択的に、特定の実施形態または請求項の基本的および新規の特徴に実質的に影響を与えない追加の要素、工程、または成分を含み得ることを意味する。例えば、特定の状態(例えば、癌および/または肥満)を治療する製剤または方法における唯一の活性成分は、特定の実施形態または請求項において具体的に列挙される治療剤である。
【0039】
本明細書を解釈する目的で、以下の定義が適用され、適切な場合、単数形で使用される用語は複数形も含み、その逆も同様である。以下に定める定義が、参照により本明細書に組み込まれる文書と矛盾する場合、以下に定める定義が優先されるものとする。
【0040】
本明細書で使用される場合、「患者」、「対象」、および「個人」という用語は互換性があり、本発明の化合物で治療され得る任意の生物を意味するために用いられ得る。したがって、「患者」および「対象」という用語は、任意の非ヒト哺乳動物、霊長類、またはヒトを含み得るが、これらに限定されない。一部の実施形態では、「患者」または「対象」は、成人、小児、乳児、または胎児である。一部の実施形態では、「患者」または「対象」はヒトである。一部の実施形態では、「患者」または「対象」は、マウス、ラット、他の齧歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、霊長類、またはヒトなどの哺乳類である。
【0041】
本明細書で使用される場合、「生体試料」、「試料」、および「試験試料」という用語は、例えば、物理的、生化学的、化学的、および/または生理学的特徴に基づいて、特徴付けおよび/または特定される細胞および/または他の分子実体を含有する対象または患者から取得または由来する組成物を指す。一実施形態では、定義は、生物学的起源の血液および他の液体試料、ならびに生検検体または組織培養物またはそれらに由来する細胞などの組織試料を包含する。組織試料の供給源は、新鮮、凍結および/または保存された器官もしくは組織試料または生検もしくは吸引物からの固体組織、血液または任意の血液成分、体液、および妊娠または対象もしくは血漿の発生における任意の時点からの細胞であってもよい。
【0042】
「生体試料」、「試料」、および「試験試料」という用語は、例えば、タンパク質またはポリヌクレオチドなどの特定の成分に対する試薬、可溶化、または濃縮を用いた処理、または切片化目的での半固体もしくは固体マトリックスへの埋め込みなど、それらの調達後に任意の方法で操作された試料を含む。本明細書の目的のために、組織試料の「切片」は、組織試料の単一の部分または断片、例えば、組織試料から切断された組織または細胞の薄い切片を意味する。試料には、初代または培養細胞または細胞株、または体液を含むがこれらに限定されず、「体液」は、任意の有用な流体とすることができ、そのようなものとしては、以下に限定されないが、末梢血、血清、血漿、腹水、尿、脳脊髄液(CSF)、痰、唾液、骨髄、滑液、眼房水、羊水、耳垢、母乳、気管支肺胞洗浄液、精液、前立腺液、汗、糞便、毛髪、涙液、嚢胞液、胸膜液および腹膜液、心膜液、リンパ液、糜粥、乳糜、胆汁、間質液、月経物、膿汁、皮脂、嘔吐物、膣分泌物、粘膜分泌物、便水、膵液、鼻腔からの洗浄液、気管支肺吸引物、および臍帯血、組織培養培地、組織抽出物(均質化組織、腫瘍組織、細胞抽出物)、およびその組み合わせを含む。一部の実施形態では、体液は、血液または血清を含む。
【0043】
「生検」とは、診断または予後の評価のために組織試料を除去するプロセス、および組織試料自体を指す。当技術分野で公知の任意の生検手法を、本発明の診断方法および予後判定方法に適用することができる。適用される生検手法は、他の因子の中でも特に、評価される組織タイプ(例えば、肺など)、腫瘍のサイズおよびタイプに依存する。代表的な生検手法としては、切除生検、切開生検、針生検、外科手術生検、および骨髄生検が挙げられるが、これらに限定されない。「切除生検」とは、腫瘍塊全体を周囲の正常組織のわずかなマージンと共に除去することを指す。「切開生検」とは、腫瘍内から組織を楔状に除去することを指す。内視鏡またはX線撮影ガイダンスによってなされる診断または予後判定は、一般的に標的組織内から細胞の懸濁液を得る、「コアニードル生検」、または「微細ニードル吸引生検」を必要とし得る。生検技術は、例えば、Harrison’s Principles of Internal Medicine, Kasper, et al., eds., 16th ed., 2005, Chapter 70およびPart V全体に論じられている。
【0044】
一部の実施形態では、試料は、診断アッセイで使用される。一部の実施形態では、試料は、正常な野生型細胞および/または組織を含む。つまり、試料は、癌性であるか、または癌様の特徴を示す細胞を含まず(「非癌性生体試料」)、「癌様の特徴」には、非癌細胞または組織、明らかな癌よりも癌により一般にみられる活性または存在量を呈する一つ以上のバイオマーカーを含み、細胞または組織が、制御不能な増殖、不死、転移の可能性、急速な成長と増殖速度、および特定の特徴的な形態学的特徴などの特徴のうちの一つ以上を示す、細胞または組織を含む。一部の実施形態では、非癌性生体試料は、生殖細胞、体細胞、またはそれらの組み合わせを含む。
【0045】
一部の実施形態では、試料は、原発性腫瘍または転移性腫瘍から取得される。組織生検は、腫瘍組織の代表的断片を取得するためにしばしば使用される。あるいは、腫瘍細胞は、目的の腫瘍細胞を含有することが知られているか、または含有すると考えられる組織または流体の形態で間接的に取得することができる。例えば、肺癌病変の試料は、切除、気管支鏡検査、細針吸引、気管支ブラッシング、または痰、胸膜液もしくは血液から取得することができる。
【0046】
一部の実施形態では、「癌標的」に「特異的にまたは選択的に結合」し、癌標的または「標的経路」における癌標的の下流のバイオマーカーに「機能的効果」または「測定可能な変化」を引き起こし得る「試験化合物」が投与され、これらの用語はすべて本明細書の他の場所で定義される。試験化合物は、例えば、制癌剤(抗癌剤)、GPERアゴニスト、またはLNS8801であり得る。
【0047】
一部の実施形態では、試料は、試験化合物の投与、または例えば、制癌剤(抗癌剤)、GPERアゴニスト、またはLNS8801を用いた療法過程の前に取得される。試験化合物の投与または療法過程の前に採取された試料は、「参照試料」としての役割を果たすことができる。より一般的には、「参照試料」とは、比較目的で使用される任意の試料、標準、またはレベルを指す。一実施形態では、参照試料は、同じ対象または患者の身体(例えば、組織または細胞)の健康なおよび/または非疾患部分から取得される。別の実施形態では、参照試料は、同じ対象または患者の身体の未治療の組織および/または細胞から取得される。なおも別の実施形態では、参照試料は、対象または患者ではない個人の身体(例えば、組織または細胞)の健康なおよび/または非疾患部分から取得される。さらに別の実施形態では、参照試料は、対象または患者ではない個人の身体の未治療の組織および/または細胞部分から取得される。
【0048】
特定の実施形態では、参照試料は、試験試料が取得されるときとは異なる一つ以上の時点で取得される、同じ対象または患者からの単一の試料または複数の試料の組み合わせである。例えば、参照試料は、試験試料が取得されるときよりも早い時点で、同じ対象または患者から取得される。そのような参照試料は、参照試料が癌の初期診断中に取得され、試験試料が療法過程の一回以上の投与後に取得される場合に有用であり得る。
【0049】
特定の実施形態では、参照試料は、対象または患者ではない一人以上の個人から得られた「生体試料」という用語で上記に定義したすべてのタイプの試料を含む。特定の実施形態では、参照試料は、対象または患者ではない腫瘍性疾患(例えば、癌)を有するかまたは有さない一人以上の個人から取得される。
【0050】
特定の実施形態では、参照試料は、対象または患者ではない一人以上の健康な個人からの複数の試料の組み合わせである。特定の実施形態では、参照試料は、対象または患者ではない疾患または障害(例えば、癌などの血管形成障害)を有する一人以上の個人からの複数の試料の組み合わせである。特定の実施形態では、参照試料は、対象もしくは患者ではない一人以上の個人からの、正常組織からのプールRNA試料、またはプール血漿試料もしくは血清試料である。特定の実施形態では、参照試料は、対象または患者ではない疾患または障害(例えば、癌などの血管形成障害)を有する一人以上の個人からの、腫瘍組織からのプールRNA試料、またはプール血漿試料または血清試料である。
【0051】
実施形態では、試料は、試験化合物の少なくとも一つの投与後、またはGPERアゴニスト、LNS8801、もしくは癌療法による少なくとも一つの治療後に、対象または患者から取得される。一部の実施形態では、試料は、癌が転移する前に患者から取得される。特定の実施形態では、試料は、癌が転移した後に患者から取得される。
【0052】
「マーカー」または「バイオマーカー」という用語は、細胞中で発現するか、癌細胞の表面で発現するか、または非癌細胞と比較して癌細胞によって分泌され、かつ癌の診断、予後の提供、および癌細胞への薬理作用剤の優先的な標的化に有用である、細胞中に存在する(例えば、一つ以上の変異体を取得する遺伝子配列)分子(典型的には、タンパク質、核酸、炭水化物、または脂質)を指す。そのようなマーカーは、多くの場合、非癌性細胞と比較して癌細胞に過剰発現される分子、例えば、正常細胞と比較して2倍過剰発現、3倍過剰発現、10倍過剰発現、またはそれ以上過剰発現される分子である。さらに、マーカーは、癌細胞において不適切に合成される分子、例えば、正常細胞上に発現される分子と比較して欠失、付加(増幅/複数のコピーを含む)、または変異を含有する分子であり得る。あるいは、かかるバイオマーカーは、非癌細胞と比較して癌細胞に低発現される分子、例えば、2倍低発現、3倍低発現、10倍低発現、またはそれ以上低発現される分子である。正常細胞と癌細胞または前癌細胞との間の発現および/または調節におけるこのような差異は、「差次的発現」または「差次的調節」とも称され得る。さらに、マーカーは、癌において不適切に合成される分子、例えば、正常細胞上に発現される分子と比較して、欠失、付加、または変異を含有する分子であり得る。
【0053】
「分子バイオマーカー」という用語は、生物物理学的特性を有する非イメージングバイオマーカーを指し、生体試料(例えば、血漿、血清、脳脊髄液、気管支肺胞洗浄液、生検、尿)におけるそれらの測定を可能にし、遺伝子変異または多型などの核酸ベースのバイオマーカー、および定量的遺伝子発現分析、ならびにペプチド、タンパク質、脂質代謝物、および他の小分子の存在、存在量、および/または活性を含む。
【0054】
「イメージングバイオマーカー」という用語は、画像、例えば、X線、コンピュータ断層撮影(CT)、または磁気共鳴画像法(MRI)で検出可能なバイオマーカーを指す。
【0055】
「非侵襲的に測定可能なバイオマーカー」という用語は、血液試料の採取のための静脈穿刺などの侵襲的な採取技術を必要としない非イメージングバイオマーカーを指す。例としては、例えば、血圧、潮流、息などが挙げられる。
【0056】
バイオマーカーは、本明細書に開示される使用、例えば、癌の予測、診断、または予後、特定の治療に対する癌の適応性などのいずれかの使用のための他のバイオマーカーまたは検査と組み合わせて使用され得ることが、当業者に理解されよう。
【0057】
バイオマーカーの発現レベル/量、および、例えば、バイオマーカーにおける変異は、mRNA、cDNA、タンパク質、およびタンパク質断片を含むがこれらに限定されない、当技術分野で公知の任意の適切な基準に基づいて定性的および/または定量的に決定することができる。バイオマーカーの「測定可能な変化」は、試料間で定性的および/または定量的に測定可能なバイオマーカーの差異を指す。バイオマーカーの測定可能な変化は、試験化合物、GPERアゴニスト、LNS8801、制癌剤/癌療法の投与から生じ得る。測定可能な変化はまた、試料中の一つ以上の前癌細胞または癌細胞の存在から生じ得る。
【0058】
「標的経路」という用語は、正常細胞の癌細胞への細胞形質転換または癌細胞の増殖のプロセスに関与する(または関与すると想定される)ことが知られている生化学的経路を指す。例えば、血管新生は、VEGF/VEGR受容体経路を介して多くの癌において刺激される。VEGFはVEGF受容体に結合し、これは次にPI3KおよびAkt/PKBを介して作用して、内皮細胞の生存および血管透過性を強化する。VEGFおよびVEGF受容体はまた、PKC、SPK、Ras、Raf、MEKおよびERKを介して作用して、内皮細胞増殖を促進する。協調して、血管新生が増加し、癌細胞が供給される。別の例を
図5に示す。GPERの上方制御はPKAを刺激し、これがc-Mycを下方制御する。c-Mycの下方制御は、HLAの上方制御(阻害の低減)、ならびにPD-L1刺激および細胞周期刺激の下方制御(上方制御の低減)をもたらす。これらの活性の結果は、特定の癌細胞の免疫認識の増加である。
【0059】
例示的な経路では、記載されるタンパク質(またはそれに関連する遺伝子、mRNAなど)のいずれかが、好適な「癌標的」であり得る。癌標的は、その機能および/または存在量が、例えば、癌標的がタンパク質である癌標的アゴニストまたはアンタゴニストなどの「試験化合物」の添加によって変化される分子であり得る。癌標的はまた、試験化合物を使用することなく、本開示の実施形態に従って選択および使用することができる。癌標的は、バイオマーカー、ならびに癌標的の下流効果として機能することができる。
図5に関して、GPERのアゴニズムは、例えば、プロラクチンの上方制御およびc-Mycの下方制御(分解の強化による)をもたらす。この場合、GPER経路は「標的経路」であり、GPERは、「癌標的」として機能し得、プロラクチンまたはc-Mycは、バイオマーカーとして機能し得る。
【0060】
本明細書で使用される場合、「RECIST」は、固形腫瘍における効果評価基準(Response Evaluation Criteria In Solid Tumors)を指し、癌患者の腫瘍が治療中にいつ改善(「応答」)、不変(「安定化」)、または悪化(「進行」)するかを定義する、(欧州癌研究治療機構(EORTC)、米国国立癌研究所、およびカナダ国立癌研究所臨床試験グループを含む国際共同による)公開された一連の規則である。RECISTは、(1)「標的」および「非標的」病変のベースラインの文書化、(2)標的領域(例えば、完全奏功(CR)、部分奏功(PR)、安定疾患(SD)、および進行性疾患(PD))による奏功の評価、非標的領域、ならびに治療の開始から疾患進行/再発まで記録された最良総合効果の評価を含む、(患者中心とは対照的に)腫瘍中心の評価基準を提供する。
【0061】
タンパク質、核酸、抗体、または小分子化合物を指す場合の「特異的に(または選択的に)結合する」という語句は、LNS8801のGPERへの結合など、タンパク質または核酸の存在を決定する結合反応を指す。
【0062】
癌標的を調節する化合物を試験するためのアッセイの文脈における「機能的効果」という語句は、間接的または直接的に癌標的の影響下にあるパラメータの決定を含む。機能的効果としては、特に、リガンド結合活性、転写の活性化または抑制、細胞の増殖能力、遊走能力が挙げられる。「機能的効果」には、インビトロ、インビボ、およびエクスビボ活性が含まれる。
【0063】
「機能的効果を決定すること」とは、本開示の癌標的の影響下において間接的または直接的にパラメータを増加または減少させる化合物についてアッセイすること、例えば、物理的効果および化学的効果または表現型効果を測定することを意味する。こうした機能的効果は、当業者に公知の任意の手段、例えば、分光学的特性(例えば、蛍光、吸光度、屈折率)の変化、流体力学的(例えば、形状)、クロマトグラフ、またはタンパク質の溶解特性、リガンド結合アッセイ、例えば、抗体への結合、誘導性マーカーまたはマーカーの転写活性化の測定、酵素活性の変化の測定、細胞増殖、アポトーシス、細胞周期停止を増加または減少させる能力、細胞表面マーカーの変化の測定によって測定することができる。機能的効果は、当業者に公知の数多くの手段によって評価することができ、そのような手段としては、例えば、形態学的特徴の変化の定量的または定性的な測定のための顕微鏡検査、RNAまたはタンパク質のレベルの変化の測定、RNA安定性の測定、下流またはレポーター遺伝子発現の識別(CAT、ルシフェラーゼ、β-gal、GFPなど)があり、これらは例えば、化学発光、蛍光、比色反応、抗体結合、誘導マーカーなどを介する。
【0064】
「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために、本明細書で互換的に使用される。この用語は、一つまたは複数のアミノ酸残基が対応の天然アミノ酸の人工的な化学模倣体であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然アミノ酸ポリマーおよび非天然アミノ酸ポリマーに適用される。
【0065】
特定の実施形態では、「相関する(correlate)」または「相関している(correlating)」とは、第一の試験、分析またはプロトコルの性能および/または結果を、第二の試験、分析、またはプロトコルの性能および/または結果と比較することを意味する。例えば、第二の試験もしくはプロトコルを実施する際に、第一の試験、分析もしくはプロトコルの結果を使用してもよく、および/または第一の試験、分析、もしくはプロトコルの結果を使用して、第二の試験もしくは分析もしくはプロトコルを実施するべきかどうかを決定してもよい。遺伝子発現またはタンパク質機能試験、分析、またはプロトコルの実施形態に関して、遺伝子発現またはタンパク質機能試験、分析、またはプロトコルの結果を使用して、特定の治療レジメンを実施する必要があるかどうかを決定してもよい。
【0066】
「障害」とは、病状のために哺乳類が問題の障害にかかりやすい、慢性および急性の障害または疾患を含むがこれらに限定されない、治療から利益を得るであろう任意の状態である。障害には、腫瘍性疾患が含まれる。本明細書で使用される場合、「腫瘍性疾患」は、異常な細胞増殖を伴う任意の状態を指す。本明細書で治療される血管形成障害の非限定的な例としては、悪性および良性腫瘍、白血病およびリンパ性悪性腫瘍、および腫瘍(癌)転移が含まれる。
【0067】
動物における「癌」という用語は、制御不能な増殖、不死、転移の可能性、急速な成長および増殖速度、ならびに特定の特徴的な形態学的特徴など、癌を引き起こす細胞の典型的な特徴を有する細胞の存在を指す。多くの場合、癌細胞は腫瘍の形態であるが、そのような細胞は動物内に単独で存在してもよく、または白血病細胞などの独立した細胞として血流中に循環してもよい。本開示において関心があるのは、その進展、進行、治療に対する反応が、GPERシグナル伝達の内因性および/または薬理学的活性化の影響を受ける(癌の予防、癌再発の予防、および癌進行の阻害を含む)可能性がある「癌」であり、黒色腫、膵臓癌、リンパ腫、ブドウ膜黒色腫、非小細胞肺癌、乳癌、生殖器系の癌および他のホルモン依存性癌、白血病、結腸癌、前立腺癌、および膀胱癌を含む。
【0068】
本明細書で使用される場合、「異常な細胞増殖」とは、別段の示唆がない限り、正常な調節機構とは独立した細胞増殖(例えば、接触阻害の喪失)を指す。
【0069】
本明細書で使用される場合、「疾患」という用語は、概して、そのすべてがヒトもしくは動物の体、または正常な機能を損なうその部分のうちの一つの異常な状態を反映し、典型的には、特徴的な徴候および症状によって現れ、ヒトもしくは動物に、低減された持続時間または生活の質を持たせるという点で、「障害」、「症候群」、および(医学的状態での)「状態」という用語と同義であることを意図しており、互換的に使用される。
【0070】
マーカーの「阻害剤」、「活性化因子」、および「調節因子」は、癌標的およびバイオマーカーのインビトロおよびインビボのアッセイを用いて識別された分子の活性化、阻害(阻害性)、または調節を指すために使用される。阻害剤とは、例えば、結合するか、活性を部分的にもしくは完全に遮断するか、活性化を減少させるか、防止するか、遅延させるか、不活化するか、減感するか、または癌標的およびバイオマーカーの活性もしくは発現を下方制御する化合物である。「活性化剤」とは、癌標的およびバイオマーカー、例えば、アゴニストの活性を増加させるか、開放するか、活性化するか、促進するか、活性化促進するか、増感するか、作動させるか、または上方制御する化合物である。阻害剤、活性化剤、または調節剤としては、癌標的およびバイオマーカーの遺伝子改変型、例えば、活性の変化した型、ならびに天然および合成のリガンド、アンタゴニスト、アゴニスト、抗体、ペプチド、環状ペプチド、核酸、アンチセンス分子、リボザイム、RNAiおよびsiRNA分子、小有機分子などが挙げられる。阻害剤および活性化剤に対するそのようなアッセイは、例えば、インビトロ、細胞、または細胞抽出物において癌標的および/またはバイオマーカーを発現すること、推定される調節因子化合物を適用すること、次いで上述した活性に対する機能的効果を決定することを含む。
【0071】
本明細書に使用される場合「遺伝子型」という用語は、遺伝子(または特定の染色体領域)の一方の対立遺伝子または両方の対立遺伝子のどちらかにおける特定のヌクレオチドバリアントマーカー(または遺伝子座)におけるヌクレオチドの性質を意味する。対象の遺伝子の特定のヌクレオチド位置に関して、一方または両方の対立遺伝子内のその座位またはその同等位にあるヌクレオチドは、その座位で遺伝子の遺伝子型を形成する。遺伝子型は、ホモ接合性またはヘテロ接合性であってもよく、例えば、GPER遺伝子の二つの野生型コピー(ホモ接合性野生型)、一つの野生型GPER対立遺伝子および一つの変異対立遺伝子(ヘテロ接合性)、または二つのGPER変異対立遺伝子(ホモ接合性変異体)であってもよい。したがって、「遺伝子型判定」とは、遺伝子型、すなわち、特定の遺伝子座におけるヌクレオチドを判定することを意味する。遺伝子型判定はまた、対応するヌクレオチドバリアントを推定するために使用され得るタンパク質の特定の位置でアミノ酸バリアントを判定することによって行うことができる。
【0072】
「突然変異」とは、ゲノム位置、すなわち、染色体、開始、停止、参照塩基、代替塩基、バリアントタイプ(SNP、INS、DEL)などにおける特定の変化として本明細書で定義される。変異の改変された遺伝子位置(遺伝子)またはmRNAまたはタンパク質産物は、「変異体」と呼ばれ得る。
【0073】
「検出」、「検出可能」およびその文法的な等価物は、標的核酸配列(例えば、遺伝子、mRNA)またはその結果生じるタンパク質配列の存在および/または量および/または同一性を決定する方法を指す。一部の実施形態では、標的核酸配列の増幅により検出が生じる。他の実施形態では、標的核酸の配列決定は、標的核酸の「検出」として特徴付けられ得る。プローブに付加された標識は、例えば、化学的または物理的な手段によって検出され得る、当技術分野で公知の様々な異なるラベルのいずれかを含み得る。プローブに付加することのできる標識としては、例えば、蛍光材および発光材が挙げられ得る。一部の実施形態では、検出は、タンパク質活性評価(直接的または間接的のいずれかのタンパク質活性の測定)またはタンパク質分離技術(例えば、等電点電気泳動、クロマトグラフ技術、電気泳動技術)、ウェスタンブロッティングまたはタンパク質同定(例えば、新規のペプチドシーケンシング、ペプチドマスフィンガープリンティング)によって生じる。
【0074】
「有効量」、「有効な量」などの用語は、本明細書で互換的に使用され、バイオマーカー、細胞、組織、システム、または患者における測定可能な臨床的、生物学的、または医学的な変化または反応を誘発する活性薬剤または医薬化合物または組成物または試験化合物の量を指し得る。
【0075】
「医薬的有効量」は、測定可能な臨床的、生物学的または医学的反応を説明するために使用され、例えば、(1)疾患、状態または障害にかかりやすいが、疾患、状態または障害の病態もしくは症状はまだ経験または示していない個人において疾患、状態または障害を予防すること、(2)疾患、状態または障害の病態もしくは症状を経験または示している個人において、疾患、状態または障害を阻害すること、または、疾患、状態または障害の病態または症状のさらなる進展を停止すること、(3)疾患、状態または障害の病態もしくは症状を経験または示している個人において、疾患、状態または障害を緩和すること、または、個人が経験または示している病態および/または症状を逆転させること、のうちの一つ以上を含む。
【0076】
「予防有効量」とは、望ましい予防結果を達成するために必要な投与量および期間での有効量を指す。典型的には、予防用量は疾患の前または早期段階で対象に使用されるため、予防有効量は治療有効量よりも少ないことになるが、必ずしもその必要はない。予防有効量は、利益、例えば、臨床的利益を与えるのに十分な量を含む。
【0077】
前癌性、良性、早期または後期腫瘍の場合、制癌剤、GPERアゴニスト、またはLNS8801の治療有効量は、癌細胞の数を減少させる、原発性腫瘍のサイズを減少させる、末梢器官への癌細胞浸潤を阻害する(すなわち、ある程度遅延させる、好ましくは停止する)、腫瘍転移を阻害する(すなわち、ある程度遅延させる、好ましくは停止する)、腫瘍増殖または腫瘍進行をある程度阻害または遅延させる、および/または障害に関連する症状のうちの一つ以上をある程度軽減することができる。薬剤が既存の癌細胞の増殖を防止および/または殺傷し得る限り、細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性であり得る。癌療法については、インビボでの有効性は、例えば、生存期間、疾患進行までの時間(TTP)、奏効率(RR)、奏効期間、および/または生活の質を評価することによって測定することができる。
【0078】
「併用療法」という用語は、本開示に記載される医学的状態または障害を治療するための二つ以上の治療剤の投与を意味する。こうした投与は、固定比率の活性成分を有するカプセル単剤、または各活性成分について複数の別個のカプセルでの用量提示など、実質的に同時の様式でのこれらの治療剤の同時投与を含む。例えば、LNS8801およびPD-1阻害剤の投与は、本開示および特許請求の範囲による併用療法である。加えて、かかる投与はまた、同じ患者における連続的な様式での各タイプの治療剤の使用を含み、個々の治療剤の送達は、1~24時間、1~7日、または1週間以上分離される。いずれの場合でも、治療レジメンは、本明細書に記載される状態または障害の治療において、薬物の組み合わせの有益な効果を提供する。
【0079】
本明細書で使用される場合、「投与する(administer)」、「投与(administering)」、または「投与(administration)」という用語は、化合物、または化合物の薬学的に許容可能な塩、または組成物を対象に直接投与することを指す。
【0080】
「治療」という用語は、特定の障害、疾患もしくは状態の予防、特定の障害、疾患もしくは状態に関連する症状の軽減、および/または特定の障害、疾患もしくは状態に関連する症状の防止を意味するために用いられてもよい。一部の実施形態では、この用語は、障害、疾患もしくは状態の進行を遅らせること、または特定の障害、疾患もしくは状態に関連する症状を軽減することを指す。一部の実施形態では、この用語は、特定の障害、疾患もしくは状態に関連する症状を軽減することを指す。一部の実施形態では、この用語は、特定の障害、疾患もしくは状態に関連する症状を軽減することを指す。一部の実施形態では、この用語は、特定の障害、障害、または状態に起因して障害または喪失された機能の回復を指す。
【0081】
「予防」という用語は、特定の障害、疾患、もしくは状態を予防し、および/または特定の障害、疾患、もしくは状態の再発を防止することを意味し得る。
【0082】
本発明は、記載される特定のプロセス、製剤、化合物、組成物、または方法論に限定されないことが理解されるべきである。これらは変化し得るからである。本明細書で使用される用語は、特定のバージョンまたは実施形態のみを説明する目的のためのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本明細書の実施形態の範囲を限定することを意図するものではないことも理解されるべきである。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の方法および材料を、本明細書の実施形態の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法、装置、および材料をこれから説明する。本明細書に記載されるすべての刊行物は、参照によりその全体が組み込まれる。本明細書のいかなる内容も、本明細書の実施形態が先行発明によってかかる開示に先行する資格を有しないことを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0083】
本明細書に記述または参照される技術および手順は、一般的に十分に理解され、例えば、以下に記載される幅広く使用されている方法など、当業者により従来の方法を使用して一般に採用されている:Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3rd. edition (2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY (F. M. Ausubel, et al. eds., (2003))、the series METHODS IN ENZYMOLOGY (Academic Press, Inc.): PCR 2: A PRACTICAL APPROACH (M. J. MacPherson, B. D. Hames and G. R. Taylor eds. (1995))、Harlow and Lane, eds. (1988) ANTIBODIES, A LABORATORY MANUAL, and ANIMAL CELL CULTURE (R. I. Freshney, ed. (1987))、Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait, ed., 1984)、Methods in Molecular Biology,Humana Press、Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1998)Academic Press、Animal Cell Culture (R. I. Freshney), ed., 1987)、Introduction to Cell and Tissue Culture (J. P. Mather and P. E. Roberts, 1998) Plenum Press、Cell and Tissue Culture Laboratory Procedures (A. Doyle, J. B. Griffiths, and D. G. Newell, eds., 1993-8) J. Wiley and Sons、Handbook of Experimental Immunology (D. M. Weir and C. C. Blackwell, eds.)、Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J. M. Miller and M. P. Calos, eds., 1987)、PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis et al., eds., 1994)、Current Protocols in Immunology (J. E. Coligan et al., eds., 1991)、Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons, 1999)、Immunobiology (C. A. Janeway and P. Travers, 1997)、Antibodies (P. Finch, 1997)、Antibodies: A Practical Approach (D. Catty., ed., IRL Press, 1988-1989)、Monoclonal Antibodies: A Practical Approach (P. Shepherd and C. Dean, eds., Oxford University Press, 2000)、Using Antibodies: A Laboratory Manual (E. Harlow and D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999)、The Antibodies (M. Zanetti and J. D. Capra, eds., Harwood Academic Publishers, 1995)、およびCancer: Principles and Practice of Oncology (V. T. DeVita et al., eds., J.B. Lippincott Company, 1993)。
【0084】
方法
概して、本明細書では、概して制癌剤/療法に、概してGPERアゴニスト、ただしLNS8801(「1-((3aS,4R,9bR)-4-(6-ブロモベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロ-3H-シクロペンタ[c]キノリン-8-イル)エタン-1-オン」および「SRR G-1」)にも具体的に反応しうる患者および癌を選択、特定、および治療する方法が提供される。
【0085】
一態様では、本開示は、標的経路において癌標的に結合する制癌剤による治療に癌が反応しうる患者を特定するための方法を提供し、方法は、試験化合物を投与する前に患者から第一の非癌性生体試料を取得することと、標的経路において一つ以上のバイオマーカーの測定可能な変化を生じさせるのに有効な量の試験化合物を投与することと、試験化合物を投与した後に、患者から第二の非癌性生体試料を取得することと、第一の試料と比較して、試験化合物の投与後のバイオマーカーの変化について第二の生体試料を分析することと、標的経路における一つ以上のバイオマーカーの測定可能な変化が健康な対象における測定可能な変化に対応する場合に、制癌剤による治療に対してその癌が反応しうる患者として患者を特定することと、を含む。
【0086】
本開示の一態様は、標的経路において癌標的に結合する制癌剤を用いた治療に適する癌患者を特定するための方法を提供し、方法は、試験化合物を投与する前に患者から第一の非癌性生体試料を取得することと、標的経路において一つ以上のバイオマーカーの測定可能な変化を生じさせるのに有効な量の試験化合物を投与することと、試験化合物を投与した後に、患者から第二の生体試料を取得することと、第一の試料と比較して、試験化合物の投与後のバイオマーカーの変化について第二の非癌性生体試料を分析することと、標的経路における一つ以上のバイオマーカーの測定可能な変化が制癌剤に反応した一人以上の癌患者における測定可能な変化と実質的に同様である場合に、制癌剤を用いた治療に適する癌患者を特定することと、を含む。
【0087】
実施形態では、生体試料は、非癌性であってもよく、すなわち、わずかな数(例えば、<5%、<2%、<1%)の癌細胞(または細胞産物など)を含有するか、またはいかなる癌細胞もしくは細胞産物も含有しない。かかる生体試料は、「正常」試料の反応を反映することが意図されており、これは、実施形態では、癌が試験化合物にどのように反応しうるかに関する洞察を提供する。GPERは、例示的な実施例を提供する。正常な宿主組織におけるGPERシグナル伝達は、腫瘍における抗癌効果と相関している。すなわち、正常組織および癌組織の両方が、反応するか否かにかかわらず、協調して応答する。したがって、生殖細胞系列の変動がこの関連の基礎となる可能性が高い。試験化合物が標的経路中の癌標的に結合して、一つ以上のバイオマーカーの測定可能な変化を生成する場合、癌標的および標的経路は、正常細胞にも存在するが、より侵襲性が低く、容易にアクセス可能な試料(例えば、唾液、頬細胞など)を使用して、好適な癌患者、または癌が標的経路中の癌標的に結合する制癌剤による治療に対して反応し得る患者を特定してもよい。
【0088】
一部の実施形態では、試験化合物は、癌標的のアゴニスト、または癌標的のアンタゴニスト、または制癌剤を含む。一部の実施形態では、バイオマーカーは、制癌剤の癌標的であり、実施形態では、バイオマーカーは、制癌剤の癌標的ではない。
【0089】
本開示の一態様は、LNS8801による治療に対してその癌が反応し得る患者を特定するための方法を提供し、GPERアゴニストを投与する前に、患者から第一の生体試料を取得することと、患者においてGPER活性の一つ以上のバイオマーカーの測定可能な変化を生じさせるのに有効な量のGPERアゴニストを投与することと、GPERアゴニストを投与した後に、患者から第二の生体試料を取得することと、第一の試料と比較して、GPERアゴニストの投与後のバイオマーカーの変化について第二の試料を分析することと、GPER活性の一つ以上のバイオマーカーの測定可能な変化が測定される場合に、患者をLNS8801による治療に対してその癌が反応し得る患者として特定することと、を含む。
【0090】
一部の実施形態では、患者におけるGPER活性の一つ以上のバイオマーカーの測定可能な変化を生じさせるのに有効なGPERアゴニストの量は、野生型GPER、すなわち参照試料に対してヘテロ接合性またはホモ接合性の患者の測定可能な変化を生じさせるのに有効であることが知られている量である。上述のように、参照試料は、患者(例えば、以前の治療からのGPER対立遺伝子状態についての事前知識を有する)由来、または(1)患者由来ではなく、(2)既知の対立遺伝子構成(野生型GPERに対してヘテロ接合性またはホモ接合性)を有し、(3)所望の効果をもたらすことが観察された既知の以前の投与情報を有する一人以上の人々に由来するものであってもよい。
【0091】
本開示の一態様は、癌がLNS8801による治療に適する癌患者を選択するための方法を提供し、GPERアゴニストを投与する前に、患者から第一の生体試料を取得することと、患者においてGPER活性のバイオマーカーの測定可能な変化を生じさせるのに有効な量のGPERアゴニストを投与することと、GPERアゴニストを投与した後に、患者から第二の生体試料を取得することと、第一の試料と比較して、GPERアゴニストの投与後のバイオマーカーの変化について第二の試料を分析することと、GPER活性のバイオマーカーの測定可能な変化が測定される場合に、LNS8801による治療のために患者を選択することと、を含む。
【0092】
一部の実施形態では、患者がGPERアゴニズムに対する正常な反応を示すかどうかを決定することは、LNS8801以外のGPERアゴニストを用いて実施され得る。一部の実施形態では、GPERアゴニストは、例えば、2-メトキシエストラジオール、アルドステロン、エストラジオール、エチニルエストラジオール、G-1、ゲニステイン、ヒドロキシチロゾール、ナイアシン、ニコチンアミド、ケルセチン、またはレスベラトロルであり得る。一つ以上のバイオマーカーの反応が、機能性GPER経路を示す場合、患者は、LNS8801による治療のために選択され得る。
【0093】
本開示の一態様は、LNS8801による治療に対してその癌が反応し得る患者を特定するための方法を提供し、生体試料を取得することと、試料を分析して、患者が野生型GPERに対してヘテロ接合性またはホモ接合性であるかどうかを決定することと、GPERに対してヘテロ接合性またはホモ接合性である場合、患者をLNS8801による治療に対してその癌が反応し得る患者として特定することを含む。
【0094】
本開示の一態様は、癌がLNS8801による治療に適する癌患者を選択するための方法を提供し、生体試料を取得することと、試料を分析して、患者が野生型GPERに対してヘテロ接合性またはホモ接合性であるかどうかを決定することと、野生型GPERに対してヘテロ接合性またはホモ接合性である場合、LNS8801による治療のために患者を選択することと、を含む。
【0095】
本開示の一態様は、癌がLNS8801による治療に対して屈折性である患者を特定するための方法を提供し、生体試料を取得することと、試料を分析して、GPERが核内に局在化しているかどうかを決定することと、GPERが核内に局在化している場合、癌がLNS8801による治療に対して屈折性である患者として患者を特定することを含む。
【0096】
本開示の一態様は、癌がLNS8801による治療に対して屈折性であり得る患者を特定するための方法を提供し、生体試料を取得することと、試料を分析して、患者がGPER変異体に対してヘテロ接合性またはホモ接合性であるかどうかを決定することと、GPER変異体に対してヘテロ接合性またはホモ接合性である場合、癌がLNS8801による治療に対して屈折性であり得る患者として患者を特定することを含む。
【0097】
本開示の一態様は、LNS8801による治療に適さない癌患者を選択するための方法を提供し、生体試料を取得することと、試料を分析して、患者がGPER変異体に対してヘテロ接合性またはホモ接合性であるかどうかを決定することと、GPER変異体に対してヘテロ接合性またはホモ接合性である場合、LNS8801による治療に適さない患者を選択することと、を含む。
【0098】
一部の実施形態では、屈折は、完全または部分的であってもよい。変異型GPERに対してホモ接合性の患者または癌は、LNS8801治療に対して完全に屈折する可能性が高く、一方で、野生型GPERに対してヘテロ接合性である患者または癌は、部分的な屈折を示すか、またはホモ接合性野生型GPER患者または癌の反応とより類似した反応を示し得る。ヘテロ接合性である患者または癌は、他の因子、例えば、GPERアゴニストに対するプロラクチン反応の堅牢性に応じて、LNS8801による治療に好適または不適であるかが決定され得る。一部の実施形態では、GPER変異体は、P16L変異体を含む。
【0099】
本開示の一態様は、LNS8801による治療に対してその癌が反応し得る患者を特定するための方法を提供し、LNS8801を投与する前に、患者から第一の生体試料を取得することと、患者において、プロラクチンの測定可能な増加を生じさせるのに有効な量のLNS8801を投与することと、LNS8801を投与した後に、患者から第二の生体試料を取得することと、LNS8801の投与後、第一の生体試料に対する約20%超、約25%超、約30%超、約35%超、約40%超、約45%超、約50%超、約55%超、約60%超、約65%超、約70%超、約75%超、約80%超、約85%超、約90%超、約95%超、約100%超のプロラクチンの増加について、第二の試料を分析することと、プロラクチンの約20%超、約25%超、約30%超、約35%超、約40%超、約45%超、約50%超、約55%超、約60%超、約65%超、約70%超、約75%超、約80%超、約85%超、約90%超、約95%超、または約100%超の増加が測定される場合に、患者をLNS8801による治療に対してその癌が反応し得る患者として特定することと、を含む。
【0100】
本開示の一態様は、癌がLNS8801による治療に適する癌患者を選択するための方法を提供し、LNS8801を投与する前に、患者から第一の生体試料を取得することと、患者において、プロラクチンの測定可能な増加を生じさせるのに有効な量のLNS8801を投与することと、LNS8801を投与した後に、患者から第二の生体試料を取得することと、LNS8801の投与後、第一の試料に対する約20%超、約25%超、約30%超、約35%超、約40%超、約45%超、約50%超、約55%超、約60%超、約65%超、約70%超、約75%超、約80%超、約85%超、約90%超、約95%超、約100%超のプロラクチンの増加について、試料を分析することと、プロラクチンの約20%超、約25%超、約30%超、約35%超、約40%超、約45%超、約50%超、約55%超、約60%超、約65%超、約70%超、約75%超、約80%超、約85%超、約90%超、約95%超、または約100%超の増加が測定される場合に、LNS8801による治療のために患者を選択することと、を含む。
【0101】
一部の実施形態では、プロラクチンの増加は、LNS8801投与後約4時間、約7時間、および約10時間の平均血清プロラクチン濃度を、投与前、および投与後約0.5時間、約1時間、および約2時間の平均プロラクチン濃度で割ることによって計算される。
【0102】
本開示の一態様は、それを必要とする患者において癌を治療する方法を提供し、患者から生体試料を取得することと、試料から患者が野生型GPERに対してヘテロ接合性またはホモ接合性であるかどうかを決定することと、野生型GPERに対してヘテロ接合性またはホモ接合性である場合に、患者がLNS8801による治療に適すると決定することと、有効量のLNS8801を患者に投与することと、を含む。
【0103】
本開示の一態様は、それを必要とする患者において癌を治療する方法を提供し、GPERアゴニストを投与する前に患者から第一の生体試料を取得することと、野生型GPERに対してヘテロ接合性またはホモ接合性である患者においてGPER活性の一つ以上のバイオマーカーの測定可能な変化を生じさせるのに有効な量のGタンパク質共役エストロゲン受容体1(GPER)アゴニストを投与することと、GPERアゴニストを投与した後、患者から第二の生体試料を一回以上取得することと、GPERアゴニストの投与後のバイオマーカーの変化について試料を分析することと、GPER活性の一つ以上のバイオマーカーの測定可能な変化が測定される場合に、患者がLNS8801による治療に適すると決定することと、有効量のLNS8801を患者に投与することと、を含む。
【0104】
それを必要とする対象における疾患または障害を治療または予防する方法は、LNS8801による治療が、外科的療法、化学療法、抗PD-1療法、標的分子療法もしくは抗増殖療法、または高周波アブレーション療法から選択される一つ以上の追加療法の前、それと共に、またはその後のアジュバントとして作用する、治療有効量のLNS8801を対象に投与することを含む。
【0105】
本開示の別の態様は、それを必要とする対象における癌を治療または予防する、癌の再発を防止する、癌の進行を阻害する方法、追加療法の前に癌を縮小する、または追加療法の前に循環腫瘍細胞もしくは転移を減少させる方法を提供し、本明細書に開示される任意の実施形態による、治療有効量の制癌剤、GPERアゴニスト、またはLNS8801を対象に投与することを含む。
【0106】
本開示の様々な態様の一部の実施形態では、癌は、生殖器系の癌、ホルモン依存性癌、白血病、結腸直腸癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮癌肉腫、胃癌、直腸癌、肝癌、膵癌、肺癌、子宮癌、子宮頸部癌、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌、精巣癌、膀胱癌、腎癌、脳/CNS癌、頭頸部癌、咽頭癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、黒色腫、急性白血病、リンパ球性白血病、有毛細胞白血病、急性骨髄性白血病、ユーイング肉腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、絨毛癌、横紋筋肉腫、ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、口腔/咽頭癌、食道癌、喉頭癌、腎臓癌、リンパ腫、バーキットリンパ腫、肉腫、血管肉腫、膠芽腫、髄芽腫、星状細胞腫、およびメルケル細胞癌からなる群から選択される。
【0107】
特定の実施形態では、癌は、黒色腫、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、および膵癌からなる群から選択される。
【0108】
一部の実施形態では、方法は、一つ以上の追加の治療剤の同時投与(同時的、同時発生的、または逐次的な投与)を含み得る。実施形態では、同時投与は、本明細書に記載される、鏡像異性的に精製されたLNS8801(SRR G-1)、もしくはその誘導体を含む同じ医薬組成物の一部、または鏡像異性的に精製されたLNS8801、もしくはその誘導体を含む別個の医薬組成物の一部であり得る。実施形態では、同時投与は、本明細書に記載される組成物の投与と同時に、実質的に同時に、投与の前または後に行われてもよい。
【0109】
追加の治療剤は、免疫療法剤(例えば、免疫チェックポイント療法剤)、化学療法剤、標的キナーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、抗感染剤、ブロモドメイン阻害剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0110】
免疫療法剤は、PD-1阻害剤(ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、JTX-4014、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、トリパリマブ、ドスタルリマブ、INCMGA00012(MGA012)、AMP-224、坑PD-1およびAMP-514)、PD-L1阻害剤(アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、坑PD-L1 CTLA-4阻害剤(すなわち、イピリムマブ、坑B7-1/B7-2、坑CTLA-4 IL-2、IL-7、IL-12、腫瘍溶解性ウイルス(タリモジーン・ラハーパレプベック)、シトシンリン酸-グアノシン、オリゴデオキシヌクレオチド、イミキモド、レジキモド、およびIgおよびITIMドメイン(TIGIT)を有するT細胞免疫受容体を標的とする抗体、誘導性共刺激分子(ICOS)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有分子3(TIM3)、T細胞活性化のVドメインのIg抑制因子(VISTA)、OX40、グルココルチコイド誘導TNF受容体(GITR)、CD40、CD47、CD94/NKG2A、キラー免疫グロブリン受容体(KIR)、およびその組み合わせを含む。
【0111】
化学療法剤は、シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、ドセタキセル、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン、ムスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、エトポシド、シスプラチン、エピルビシン、カペシタビン、フォリン酸、オキサリプラチン、テモゾロミド、タキサン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択されてもよい。
【0112】
標的キナーゼ阻害剤は、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ、バンデタニブ、SU6656、スニチニブ、ソラフェニブ、セルメチニブ、ルキソリチニブ、ペガプタニブ、パゾパニブ、ニロチニブ、ムブリチニブ、レンバチニブ、ラパチニブ、イマチニブ、イブルチニブ、ゲフィチニブ、ホスタマチニブ、エルロチニブ、エルダフィチニブ、ダサチニブ、カボザンチニブ、クリゾチニブ、コビメチニブ、セツキシマブ、ボスチニブ、ビニメチニブ、アキシチニブ、アファチニブ、アダボセルチニブ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0113】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、ボリノスタット、ロミデプシン、チダミド、パノビノスタット、ベリノスタット、バルプロ酸、ジビノスタット、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0114】
抗感染剤は、オリタバンシン(Orbactiv)、ダルババンシン(Dalvance)、テジゾリドリン酸エステル、(Sivextro)、クリンダマイシン、リネゾリド(Zyvox)、ムピロシン(Bactroban)、トリメトプリム、スルファメトキサゾール、トリメトプリム-スルファメトキサゾール(SeptraまたはBactrim)、テトラサイクリン、バンコマイシン、ダプトマイシン、フルオロキノリン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0115】
ブロモドメイン阻害剤は、OTX015/MK-8628、CPI-0610、BMS-986158、ZEN003694、GSK2820151、GSK525762、INCB054329、INCB057643、ODM-207、RO6870810、BAY1238097、CC-90010、AZD5153、FT-1101、ABBV-744、RVX-000222、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0116】
本明細書の様々な態様の一部の実施形態では、GPERアゴニストは、2-メトキシエストラジオール、アルドステロン、エストラジオール、エチニルエストラジオール、LNS8801、G-1、ゲニステイン、ヒドロキシチロゾール、ナイアシン、ニコチンアミド、ケルセチン、およびレスベラトロルを含み、一部の実施形態では、GPERアゴニストはLNS8801である。
【0117】
本開示の様々な態様の一部の実施形態では、患者は、野生型GPERに対してホモ接合性であり、一部の実施形態では、患者は、GPER変異体に対してホモ接合性である。野生型GPERに対してホモ接合性の患者は、その天然活性の上方制御によってGPERアゴニストに反応する。遺伝子突然変異体は、転写および翻訳されると、典型的には天然機能を低減または除去する。しかしながら、一部の実施形態では、GPER変異体は、GPERアゴニストに結合すると、「天然の」GPER活性の上方制御をもたらし得る。本開示の様々な態様の一部の実施形態では、患者は、野生型GPERに対してヘテロ接合性であり、すなわち、一つの野生型GPER対立遺伝子および一つの変異型GPER対立遺伝子を有する。
【0118】
野生型または変異型GPERに対するホモ接合性、およびGPERに対するヘテロ接合性(対立遺伝子状態)は、当該技術分野で公知の任意の方法、例えば、ゲノムDNAの制限断片長多型識別(RFLPI)、ゲノムDNAのランダム増幅多型検出(RAPD)、増幅断片長多型検出(AFLPD)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、DNAシーケンシング、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)プローブ、DNAマイクロアレイまたはビーズへのハイブリダイゼーションによって、に従って遺伝子型決定によって決定することができる。
【0119】
本開示の様々な態様の一部の実施形態では、試験化合物、制癌剤、GPERアゴニスト、およびLNS8801は、一回用量または二回以上の用量で投与される。当業者であれば、一回用量よりも多い用量が単回投与よりも好ましいかどうかを決定する、特定の試験化合物、制癌剤、GPERアゴニスト、またはLNS8801の薬物動態特性および薬力学特性を決定することができる。
【0120】
本開示の様々な態様の実施形態では、有効量の試験化合物、GPERアゴニスト、LNS8801または制癌剤は、臨床用量(治療有効量)、亜臨床用量、またはマイクロドーズであり得、臨床用量は、約0.01mg~約1000mg、約0.01mg~約900mg、約0.01mg~約800mg、約0.01mg~約700mg、約0.01mg~約600mg、約0.01mg~約500mg、約0.01mg~約400mg、約0.01mg~約300mg、約0.01mg~約200mg、約0.01mg~約100mg、0.1mg~約1000mg、約0.1mg~約900mg、約0.1mg~約800mg、約0.1mg~約700mg、約0.1mg~約600mg、約0.1mg~約500mg、約0.1mg~約400mg、約0.1mg~約300mg、約0.1mg~約200mg、約0.1mg~約100mg、約1mg~約1000mg、約1mg~約900mg、約1mg~約800mg、約1mg~約700mg、約1mg~約600mg、約1mg~約500mg、約1mg~約400mg、約1mg~約300mg、約1mg~約200mg、約1mg~約100mg、約10mg~約1000mg、約50mg~約1000mg、約100mg~約1000mg、約200mg~約1000mg、約300mg~約1000mg、約400mg~約1000mg、約500mg~約1000mg、約10mg~約500mg、約50mg~約500mg、約100mg~約500mg、約10mg~約300mg、約50mg~約300mg、約100mg~約300mg、約10mg~約150mg、約50mg~約150mg、約60mg~約120mg、約50mg~約120mg、またはこれらの値のうちのいずれか2つの間の範囲である。具体的な例としては、例えば、約1000mg、約900mg、約800mg、約700mg、約750mg、約600mg、約500mg、約400mg、約450mg、約300mg、約250mg、約200mg、約175mg、約150mg、約125mg、約120mg、約110mg、約100mg、約90mg、約80mg、約70mg、約60mg、約50mg、約30mg、約20mg、約10mg、約5mg、約1mg、約0.1mg、約0.01mg、または上記で開示された範囲の間の任意の数値を含む。一部の実施形態では、亜臨床用量は、臨床用量の約1.1%~99.9%を含み、一部の実施形態では、マイクロドーズは、臨床用量の約0.01%~1%を含む。
【0121】
一部の実施形態では、臨床用量は、例えば、治療が行われる特定の使用、化合物または組成物の投与方法、患者の健康状態および状態、ならびに処方医師の判断に従って変化し得る。例えば、LNS8801などのGPERアゴニストを含む医薬組成物中の化合物または組成物の割合または濃度は、化学的特徴(例えば、疎水性)を含む多数の因子、および投与経路に応じて変化し得る。例えば、化合物または組成物は、非経口投与用の化合物または組成物の約0.1~約10%w/vを含有する生理緩衝水溶液中に提供され得る。化合物または組成物のいくつかの典型的な用量範囲は、1日当たり体重の約1μg/kg~約1g/kgである。一部の実施形態では、用量範囲は、1日当たり体重の約0.01mg/kg~約100mg/kgである。投与量は、疾患または障害の進行のタイプおよび程度、特定の患者の全体的な健康状態、選択された化合物または組成物の相対的生物学的有効性、賦形剤の製剤、およびその投与経路などの変数に依存する可能性が高い。有効用量は、インビトロまたは動物モデル試験システムに由来する用量反応曲線から外挿することができる。
【0122】
本開示の様々な態様の一部の実施形態では、生体試料は、癌性ではない、わずかな数(例えば、<5%、<2%、<1%)の癌細胞(または細胞産物など)の一つ以上の細胞および/または組織を含み、一部の実施形態では、生体試料は、すべて非癌性である細胞および/または組織を含む。一部の実施形態では、第一の生体試料は、試験化合物、制癌剤、GPERアゴニスト、またはLNS8801を投与する30日前以内に取得され、一部の実施形態では、第一の生体試料は、第二の生体試料と同時に収集される。一部の実施形態では、第一の生体試料は、試験化合物、制癌剤、GPERアゴニスト、またはLNS8801の投与の直前に取得される。一部の実施形態では、試験化合物、制癌剤、GPERアゴニスト、およびLNS8801活性のバイオマーカーは、一つ以上の分子バイオマーカー、イメージングバイオマーカー、または非侵襲的に測定可能なバイオマーカーを含み、バイオマーカーは、実施形態において、本明細書の他の箇所に記載される循環バイオマーカーおよび/または全身バイオマーカー、および/または第一および/または第二の生体試料に局在化するバイオマーカーを含む。
【0123】
有効量のGPERアゴニストまたはLNS8801を投与することを含む一部の実施形態では、バイオマーカーは、プロラクチンレベル、インスリンレベル、c-Mycおよび/またはグルコースレベルの変化を含む循環バイオマーカーを含み、その変化は、実施形態において、プロラクチンレベルもしくは活性の増加、インスリンレベルもしくは活性の増加、またはc-Mycレベルもしくは活性の減少を含む。一部の実施形態では、GPERアゴニスト活性のバイオマーカー(LNS88801を含む)は、循環プロラクチンレベルの増加である。
【0124】
GPERアゴニスト活性のバイオマーカー(LNS88801を含む)が循環プロラクチンレベルの増加である一部の実施形態では、プロラクチンは、LNS8801を含む、有効量のGPERアゴニストの投与後に、約1.25倍の誘導、約1.30倍の誘導、約1.35倍の誘導、約1.40倍の誘導、約1.45倍の誘導、約1.50倍の誘導、約1.55倍の誘導、約1.60倍の誘導、約1.65倍の誘導、約1.70倍の誘導、約1.75倍の誘導、約1.80倍の誘導、約1.85倍の誘導、約1.90倍の誘導、約1.95倍の誘導、約2.0倍の誘導を示す。
【0125】
GPERアゴニスト活性のバイオマーカー(LNS88801を含む)が循環プロラクチンレベルの増加である一部の実施形態では、プロラクチンは、投与前および投与後30分、1時間および2時間でのプロラクチンの平均濃度で割った、約4時間(±20分)、約7時間(±45分)および約12時間(±2時間)、または一部の実施形態では約10時間の平均での閾値を超えて増加し、増加は、単独療法では25%超、または単独療法では40%超であり、PD-1阻害剤との併用療法ではより少ない。
【0126】
以下は、例示のみを目的として提供されており、上記に広義に説明される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本開示に引用されるすべての参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0127】
実施例1:LNS8801の薬物動態
進行癌を有する患者に、10、40、および125mgのLNS8801を、3日間連続で週1回、カプセルで投与した。投与前、および投与後0.5、1、2、4、7、10、および24時間で患者から血液を採取した。試料を、LNS8801の濃度について質量分析によって分析した。
図1(A)は、投与の1日目のLNS8801の薬物動態を示し、
図1(B)は、投与の3日目のLNS8801の薬物動態を示す。LNS8801は、十分に吸収され、評価された最低用量であっても、有効であると予測される血漿曝露を生成する。ヒトにおける半減期は約10時間である。
【0128】
実施例2:LNS8801誘導性のc-Myc枯渇
治療前生検は、治療開始から28日以内に収集され、治療中生検は、LNS8801治療開始後8~19日以内に収集された。腫瘍試料をホルマリン固定し、パラフィン包埋し、切片化し、盲検での病理学者による免疫組織化学によりc-Myc陽性腫瘍細胞について評価した。
図2(A)は、c-Mycについて染色された治療前および治療中の生検の代表的な画像を示し(治療中のc-Mycの有意な減少を示す。この実施例ではブドウ膜黒色腫を示す)、
図2(B)は、治療後のc-Myc陽性腫瘍細胞の顕著な変化の定量化を示す。
【0129】
これまでに試験された生検では、ほとんどの試料でLNS8801を投与した後のc-Myc陽性腫瘍細胞の劇的な枯渇が観察された。c-Myc枯渇を伴わない試料は、GPERタンパク質発現を有さなかったか、またはその誘導にGPERシグナル伝達を必要とするGPER活性の全身マーカーであるプロラクチンが陰性であった。LNS8801治療は、安定疾患または安定した標的病変を示した患者においてプロラクチンを誘導し、予後バイオマーカーとしてのプロラクチンの使用を支持する。
【0130】
実施例3:LNS8801単独療法後のプロラクチン誘導とRECISTに基づく最良効果の比較
投与前、および投与後0.5、1、2、4、7、10、および24時間で患者から血液を採取し、プロラクチンの濃度を分析した。プロラクチン誘導は、4時間~10時間の時点の平均を、2時間時点までの投与前の平均で割ることによって計算された。標的病変のRECISTに基づく最良効果を用いてプロラクチン誘導をプロットし、線形回帰を行った。
【0131】
RECISTに基づく進行性疾患を有する患者は、典型的には、治療時にプロラクチンレベルの減少または変化を示さなかった(
図3、左上六分円)。対照的に、安定疾患または安定した標的病変を示す患者は、典型的には、治療時にプロラクチンの実質的な誘導(少なくとも1.25倍)を示した(
図3、右中央六分円および右下六分円)。さらに、安定疾患(すなわち、最も好ましい予後)を示する患者は、典型的には、安定した標的病変(すなわち、より好ましくない予後)を示す患者よりも強いプロラクチン誘導を示した。
【0132】
実施例4:プロラクチンレスポンダーと非レスポンダーを比較した場合のRECISTに基づく効果
投与前、および投与後0.5、1、2、4、7、10、および24時間で患者から血液を採取し、プロラクチン(PRLX)の濃度を分析した。プロラクチン誘導は、4時間~10時間の時点の平均を、2時間時点までの投与前の平均で割ることによって計算された。標的病変のRECISTに基づく最良効果を、プロラクチン反応なし(<1.25倍PRLX誘導)およびプロラクチン反応あり(>1.25倍PRLX誘導)の患者においてプロットし、マン・ホイットニー検定を使用して統計を行った。
【0133】
通常、プロラクチンレベルは、概日リズムのために一日を通して低下するか、または安定している。結果として、疾患安定化を示したすべての患者が≧1.25倍の誘導を示したことが注目される。誘導のない患者は疾患の安定化を示さなかった。プロラクチンのレスポンダーと非プロラクチンレスポンダーの比較に基づきデータを階層化することにより、LNS8801治療後のRECISTに基づく最良効果に非常に有意な差が明らかになる(
図4)。評価可能な患者において、患者の35%においてプロラクチン反応の欠如が観察され、プロラクチン反応を欠くすべての患者は、LNS8801によっても進行性疾患を有し、機能的GPER経路の欠如を示した。
【0134】
本発明を詳細に説明し、その特定の態様および/またはその実施形態を参照することによって、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱することなく、修正および変形が可能であることは明らかであろう。本開示の追加の態様および実施形態は、技術的にも論理的にも一貫性のない任意の数および任意の組合せで組み合わせることのできる、以下の特許請求の範囲によって提供される。本発明の一部の態様は、本明細書で特に有利であると特定され得るが、本発明は、本発明のこれらの特定の態様に限定されないことが企図される。
【国際調査報告】