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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-12
(54)【発明の名称】架橋性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/04 20060101AFI20240605BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20240605BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20240605BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240605BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20240605BHJP
   C08L 33/26 20060101ALI20240605BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20240605BHJP
   C08F 265/10 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
C08L33/04
C09J4/02
C09J133/04
C09J11/06
C08L33/06
C08L33/26
C08F265/06
C08F265/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571727
(86)(22)【出願日】2022-05-12
(85)【翻訳文提出日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 IB2022054435
(87)【国際公開番号】W WO2022243801
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】63/190,094
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョンギ
(72)【発明者】
【氏名】クラッパー,ジェイソン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】スワンソン,アンドリュー ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン,エリック ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ビーギー,ホリス ズィー.
(72)【発明者】
【氏名】ティン,チュン-イ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
4J040
【Fターム(参考)】
4J002BG041
4J002BG051
4J002BG131
4J002ED027
4J002EH107
4J002EU187
4J002EU197
4J002EW146
4J002FD147
4J002FD156
4J002GJ01
4J002GQ00
4J026AA45
4J026AA50
4J026AC32
4J026BA17
4J026BA28
4J026BA40
4J026DB36
4J026GA07
4J040DF021
4J040DF061
4J040FA011
4J040FA081
4J040GA01
4J040GA05
4J040HD21
4J040JB07
4J040JB09
4J040KA13
4J040LA10
4J040MA10
4J040MB03
4J040NA17
4J040PA32
4J040PB06
4J040PB19
(57)【要約】
アルキル(メタ)アクリレートモノマーを含む(メタ)アクリレートポリマーと、アシルホスフィンオキシド光開始剤と、アリル、メタリル、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも2つの末端基を含む架橋モノマーと、を含む、架橋性組成物。このような架橋性組成物を調製する方法、及びこのような架橋性組成物を含む物品が、開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル(メタ)アクリレートモノマーを含む(メタ)アクリレートポリマーと、
アシルホスフィンオキシド光開始剤と、
アリル、メタリル、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも2つの末端基を含む架橋モノマーと、
を含む、架橋性組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリレートポリマーが、15℃以下のガラス転移温度を有する、請求項1に記載の架橋性組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリレートポリマーが、
40wt%~100wt%の前記アルキル(メタ)アクリレートモノマーと、
0wt%~50wt%の極性(メタ)アクリレートモノマーと、
0wt%~15wt%の単官能性非(メタ)アクリレートビニルモノマーと、
を含む、請求項1又は2に記載の架橋性組成物。
【請求項4】
前記アルキル(メタ)アクリレートモノマーが、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項5】
前記極性(メタ)アクリレートモノマーが、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシルブチルアクリレート、テトラヒドロフリルアクリレート、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、アクリル酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項6】
前記単官能性非(メタ)アクリレートビニルモノマーが、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾール、酢酸ビニル、ビニルエーテル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項7】
前記(メタ)アクリレートポリマーが、酸性モノマーを実質的に含まない、請求項1~6のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項8】
前記アシルホスフィンオキシド光開始剤が、ビス-アシルホスフィンオキシドを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項9】
前記(メタ)アクリレートポリマー混合物に対して0.05pph~5pphの前記アシルホスフィンオキシド光開始剤を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項10】
前記(メタ)アクリレートポリマー混合物に対して0.05pph~5pphの前記架橋モノマーを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項11】
前記架橋モノマーが、構造:
【化1】
(式中、
Zは二価の連結基を表し、各Rは独立して-H又は-CHである)
によって表される、請求項1~10のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項12】
Zが、構造:
【化2】
によって表される、請求項1~11のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項13】
Zが、構造:
【化3】
によって表される、請求項1~11のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項14】
UV吸収剤を更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項15】
前記(メタ)アクリレートポリマーに対して0.3pph~15pphの前記UV吸収剤を含む、請求項14に記載の架橋性組成物。
【請求項16】
前記UV吸収剤が、0.1mm厚のコーティングについて、365nmにおいて15%未満の透過率を有する、請求項14に記載の架橋性組成物。
【請求項17】
前記UV吸収剤が、0.1mm厚のコーティングについて、420nmにおいて70%超の透過率を有する、請求項14に記載の架橋性組成物。
【請求項18】
接着促進剤、抗酸化剤、着色剤、染料、腐食防止剤、帯電防止剤、可塑剤、増粘剤、チキソトロープ剤、加工助剤、ナノ粒子、繊維、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤を更に含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の架橋性組成物を含む、接着剤組成物。
【請求項20】
感圧接着剤である、請求項19に記載の接着剤組成物。
【請求項21】
0.1mm厚のコーティングについて、5%未満、2%未満、又は1%未満のヘイズ値を有する、請求項19又は20に記載の接着剤組成物。
【請求項22】
基材、及び基材に隣接して配置されている請求項20~22のいずれか一項に記載の接着剤組成物を含む、物品。
【請求項23】
転写テープ、片面テープ、両面テープ、又はダイカット接着剤物品である、請求項22に記載の物品。
【請求項24】
前記接着剤組成物を組み込んだ電子デバイスである、請求項22に記載の物品。
【請求項25】
前記電子デバイスが、ディスプレイデバイスである、請求項24に記載の物品。
【請求項26】
硬化前のゲル分率が、0.2~0.8、0.3~0.75、又は0.4~0.7である、請求項1~18のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項27】
ゲル分率の変化が、0.03超、0.04超、0.05超、又は0.06超である、請求項1~18のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
電子デバイス、例えば電子ディスプレイデバイスでは、カバーガラス若しくはレンズを電子デバイスの下にあるディスプレイモジュールに接合するために、タッチセンサをカバーガラス及びディスプレイに接合するために、又はディスプレイの下部構成要素をハウジングに接合するために、感圧接着剤(pressure-sensitive adhesive、「PSA」)が一般的に使用されている。これらの電子デバイスに使用される感圧接着剤は、光学的に透明な接着剤(optically clear adhesive、「OCA」)であってもよい。
【0002】
OCAの存在は、例えば、アセンブリに対する構造的な支持も提供しながら輝度及びコントラストを増大させることにより、ディスプレイデバイスの性能を改善させることができる。これらの用途(一般にエレクトロニクスボンディング又はe-ボンディングと称される)では、PSAとOCAとの両方が、電子デバイスが通常の条件下で動作しているときだけでなく、それらが外傷力又は極限環境条件に曝されているときにも、構成要素への良好な接着を適切に維持するために十分に高い接着力強度を有するべきである。
【発明の概要】
【0003】
本明細書で開示されるのは、例えば、電子ディスプレイデバイスにおいて一般的に使用されるものなどの、UV吸収性アクリル系の光学的に透明な接着剤(「OCA」)において使用され得る多官能性アリル架橋剤である。開示されている架橋剤は、アクリルポリマー系において使用される場合、すなわち架橋性組成物は、望ましくは、OCAを生成するための光重合プロセスと、OCAが電子ディスプレイデバイスに組み込まれた後に利用される潜在性硬化機構との両方を可能にする効率的な経路を提供し得る。このタイプの2ステップ硬化プロセスは、有利なことに、電子デバイスの統合及び寿命の異なる段階中のOCA材料特性の二分を可能にする。
【0004】
一態様において、アルキル(メタ)アクリレートモノマーを含む(メタ)アクリレートポリマーと、アシルホスフィンオキシド光開始剤と、アリル、メタリル、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも2つの末端基を含む架橋モノマーと、を含む架橋性組成物が提供される。
【0005】
別の態様では、開示される架橋性組成物を含む接着剤、並びにこのような接着剤を組み込む物品が提供される。
【0006】
本明細書で使用される場合、
表現「A及び/又はB」におけるなどの用語「及び/又は」は、Aのみ、Bのみ、又はAとBとの両方を意味する。
【0007】
用語「架橋性組成物」は、架橋され得る反応混合物を指す。架橋性組成物は、重合性構成要素に加えて、例えば、反応混合物中に含まれ得るフリーラジカル開始剤、連鎖移動剤、抗酸化剤、溶媒などの任意の他の材料を含んでもよい。
【0008】
用語「硬化性」は、固体材料が、刺激誘導架橋の手段によって、より架橋した固体に変換され得ることを意味する。
【0009】
本明細書で使用される場合の用語「ゲル分率」は、ネットワーク形成重合及び/又は架橋プロセスから得られるネットワーク材料の質量分率を指す。
【0010】
用語「(メタ)アクリロイル」は、式CH=CR-(CO)-(式中、Rは、水素(アクリロイル基について)、又はメチル(メタクリロイル基について)である)の基を指す。
【0011】
用語「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート及び/又はアクリレートを指す。同様に、用語「(メタ)アクリル酸」は、メタクリル酸及び/又はアクリル酸を指し、用語「(メタ)アクリルアミド」は、メタクリルアミド及び/又はアクリルアミドを指す。同様に、用語「(メタ)アリル基」は、メタリル基及び/又はアリル基を指す。
【0012】
用語「ポリマー」は、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどを意味する。
【0013】
用語「重合性構成要素」は、重合を受けることができる化合物(すなわち、化合物が重合性基を有する)を指す。重合性構成要素は、典型的には、重合性基である(メタ)アクリロイル含有基又はビニル基などのエチレン性不飽和基を有する。重合性基を有する化合物は、「モノマー」と呼ぶことができる。
【0014】
用語「感圧接着剤」又は「PSA」は、感圧接着剤が、(1)強力かつ永久的な粘着と、(2)指圧以下の圧力による接着と、(3)被着体に対する十分な保持能力と、(4)被着体からきれいに取り外すための十分な凝集力と、を含む特性を有すると述べていることが知られる、Pressure-Sensitive Tape Councilによるその従来の方法において使用される。PSAとして良好に機能することが見出された材料としては、所望のバランスの粘着性、剥離接着性、及び剪断保持力をもたらす、必要な粘弾性特性を呈するように設計及び配合されたポリマーが挙げられる。PSAは、通常、室温(例えば、20℃)にて粘着性であることを特徴とする。全てのPSAへの中核は、接着力と凝集力との望ましいバランスであり、これは、多くの場合、ガラス転移温度及び弾性率などのエラストマーの物理的特性を最適化することによって達成される。例えば、エラストマーのガラス転移温度(T)又は弾性率が高すぎる場合、かつ粘着力に関するダールキスト評価基準(室温にて3×10ダイン/cmの貯蔵弾性率、及び1Hzの振動周波数)を超える場合、この材料は粘着性ではなくなり、それだけではPSA材料として有用ではない。
【0015】
モノマーの、「T」と互換的に書くことができる用語「ガラス転移温度」は、モノマーから形成されるホモポリマーのガラス転移温度を指す。ポリマー材料のガラス転移温度は、典型的には、動的機械分析(Dynamic Mechanical Analysis、「DMA」)によって、tan delta(δ)の最大値において測定される。
【0016】
用語「ビニル」は、基CH=CH-を有するが(メタ)アクリロイル基の一部ではない重合性構成要素を指す。
【0017】
本明細書では、用語「含む」及びそのバリエーションは、これらの用語が明細書及び特許請求の範囲に記載されている場合、限定的な意味を有するものではない。このような用語は、記述される1つの工程若しくは要素、又は複数の工程若しくは要素の群が含まれることを示唆するが、いかなる他の1つの工程若しくは要素、又は複数の工程若しくは要素の群も排除されないことを示唆すると理解される。「からなる(consisting of)」は、この語句「からなる」に続くあらゆるものを含み、これらに限定することを意味する。したがって、語句「からなる」は、列挙された要素が必要又は必須であり、他の要素が存在し得ないことを示す。「から本質的になる(consisting essentially of)」は、この語句の後に列挙されるあらゆる要素を含み、これらの列挙された要素について本開示で特定した作用若しくは機能に干渉又は寄与しない他の要素に限定されることを意味する。したがって、語句「から本質的になる」は、列挙された要素が必要又は必須であるが、他の要素は任意選択で含まれ、列挙された要素の作用若しくは機能に実質的に影響を及ぼすかどうかに応じて存在してもよい、又は存在しなくてもよいことを示す。本明細書においてオープンエンドの言語(例えば、「含む」及びその派生語)で列挙されている要素又は要素の組み合わせのいずれもが、クローズドエンドの言語(例えば、「からなる」及びその派生語)、並びに部分的にクローズドエンドの言語(例えば、「から本質的になる」及びその派生語)で、更に列挙されるものとみなされる。
【0018】
言葉「好ましい(preferred)」及び「好ましくは(preferably)」は、特定の状況下で特定の利益を提供できる、本開示の実施形態を指す。但し、同一又は他の状況下において、他の請求項もまた好ましい場合がある。更に、1つ以上の好ましい請求項についての説明は、他の請求項が有用でないことを示唆するものではなく、かつ他の請求項を本開示の範囲から排除することを意図するものではない。
【0019】
本出願において、「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」などの用語は、1つの実体のみを指すことを意図したものではなく、その特定の例が例証のために使用され得る一般的な部類を含む。用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、用語「少なくとも1つ」と互換的に用いられる。列挙に後続する語句「~のうちの少なくとも1つ」及び「~のうちの少なくとも1つを含む」は、列挙内の項目のうちのいずれか1つ、及び列挙内の2つ以上の項目の任意の組み合わせを指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「又は」は、内容がそうでない旨を明らかに述べていない限り、概して「及び/又は」を含む通常の意味で利用される。
【0021】
用語「及び/又は」は、1つ若しくは全ての列挙された要素、又は列挙された要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0022】
更に、本明細書では、全ての数は用語「約」によって修飾されるものとみなされ、特定の実施形態では、好ましくは、用語「精密に」によって修飾されるものとみなされる。本明細書で使用される場合、測定された量との関連において、用語「約」は、測定を行い、測定の目的及び使用される測定機器の精度に見合う水準の注意を払う当業者によって予測されるような測定量の変動を指す。本明細書では、「最大」数字(例えば、最大50)は、その数(例えば、50)を含む。
【0023】
また、本明細書では、端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数及びその端点を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0024】
用語「室温」は、20℃~25℃、又は22℃~25℃の温度を指す。
【0025】
用語「の範囲(in the range)」又は「の範囲内(within a range)」(及び類似の記載)は、その記載された範囲の端点を含む。
【0026】
本明細書に開示される代替の要素又は実施形態の群分けは、限定として解釈されるべきではない。各群のメンバーは、個々に、又は、その群の他のメンバー若しくはその群の中に見出される他の要素との任意の組み合わせで、言及及び特許請求することができる。便宜上及び/又は特許性の理由から、群の1つ以上のメンバーが群に含まれ得るか、又は、群から削除され得ることが見込まれる。任意のこのような包含又は削除が生じた場合、本明細書は、ここにおいて、改変された群を含むものとみなされ、したがって、添付の特許請求の範囲で用いられた全てのマーカッシュ群の記載内容を実現する。
【0027】
ある基が本明細書に記載の式中に複数存在する場合、具体的に記載されているか否かにかかわらず、各基は「独立して」選択される。例えば、式中に2つ以上のR基が存在するとき、各R基は独立して選択される。
【0028】
本明細書を通しての「一実施形態(one embodiment)」、「ある実施形態(an embodiment)」、「特定の実施形態(certain embodiments)」、又は「いくつかの実施形態(some embodiments)」などへの言及は、実施形態に関して記載された特定の特徴、構成、組成、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。したがって、本明細書を通して様々な箇所にこのような語句が記載されている場合、必ずしも、本発明の同一の実施形態を指しているわけではない。更に、特定の特徴、構成、組成、又は特性は、1つ以上の実施形態において、任意の好適な方法で組み合わされてもよい。
【0029】
本開示の上記の概要は、開示されるそれぞれの実施形態、又は本開示の全ての実装形態を説明することを意図していない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示する。本開示全体にわたるいくつかの箇所で、ガイダンスが、実施例の一覧を通して提供される。これらの実施例は、様々な組み合わせにおいて使用され得る。それぞれの事例において、記載された列挙項目は、代表的な群としてのみ役割を果たすものであり、排他的な列挙であると解釈されるべきではない。したがって、本開示の範囲は、本明細書に記載の特定の例示的な構造に限定されるべきではなく、少なくとも特許請求の範囲の文言によって説明される構造、及びこれらの構造の同等物にまで拡大する。本明細書において代替物として明確に列挙されている要素のいずれもが、所望に応じた任意の組み合わせで、特許請求の範囲に明示的に含めることも、又は特許請求の範囲から排除することもできる。様々な理論及び可能な機構が本明細書で検討され得るが、いかなる場合であっても、このような検討は、特許請求可能な主題を限定するものではない。
【0030】
本開示の特徴及び利点は、詳細な説明及び付属する特許請求の範囲を考慮することで、更に理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0031】
光電子デバイスにおいて光学的に透明な接着剤(「OCA」)を使用するいくつかの利点としては、とりわけ、ディスプレイの様々な光学構成要素間の光抽出効率の向上、及び界面における屈折率不整合を緩和することによる光散乱の低減が挙げられ得る。光電子デバイス構造のトポグラフィ的特徴がより複雑な幾何形状に発展するにつれて、これらの複雑な幾何形状に適応するとともに光学的欠陥を軽減することができる高度に適合性のOCAの開発についての需要が増大している。しかしながら、OCAフィルムがディスプレイに統合されると、OCA材料はまた、高い機械的安定性及び性能を提供するために、デバイスの寿命の間、機械的に堅牢であるべきでもある。これらの潜在的に相反する製造要件のバランスをとる1つの方法は、2工程UV硬化プロセスの使用によるものである。このような2工程プロセスは、積層ステップ中のコンプライアンスのための有意な粘性特性を有するOCAのUVプロセス生成と、それに続く、デバイスとの統合後のOCAの架橋密度のUV駆動増大とを可能にし得る。
【0032】
いくつかの用途では、OCA層の下の任意のUV感受性構成要素を保護するために、OCA材料がUV吸収添加剤を利用することも望ましい場合がある。例えば、380nm未満の波長の光に高い吸収を示すヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系UV吸収剤(例えば、BASF(Florham Park、New Jersey)から市販されているTINUVIN 928)をOCAに組み込んで、UV光が接着剤に隣接する感光層に到達するのを遮断することができる。しかしながら、このUV吸収機能は、1)OCAを生成するために、及び2)積層後にOCAを後硬化するために、使用されるUVベースのプロセスの一方又は両方に介入し得る。OCA中のUV吸収剤は、エンドユーザの環境からのUV曝露を遮断し得るだけでなく、接着剤とディスプレイデバイスとの両方の製造中に使用されるUVスペクトルのかなりの部分も遮断し得る。積層後硬化プロセスへのアクセスが減少すると、コンプライアンスと堅牢な寿命信頼性とのバランスをとる接着剤の能力が制限されるだけでなく、一般にOCAの接着特性及び機械的性能特性も制限され得る。したがって、光重合及び光硬化機構へのアクセスを保持しながら、UV遮断機能を組み込むための、OCA材料における技術開発が必要とされている。
【0033】
本開示は、迅速に重合するアクリルモノマーと、よりゆっくりと反応する架橋剤化合物との組み合わせを利用するスキームを使用して製造される、UV吸収性であり積層後硬化性であるOCAフィルムを提供する。このスキームは、多波長発光装置を必要とせずに、接着剤の重合機能と架橋機能との間のより大きな分離を可能にし、同時に、UV吸収剤添加剤の存在下で両方の機能の達成を可能にする。有利なことに、架橋反応は、アクリル重合反応のために使用されたものと同様の光の波長帯域を用いて、変換の後の段階において行われ得る。
【0034】
架橋性組成物
一態様において、アルキル(メタ)アクリレートモノマーを含む(メタ)アクリレートポリマーと、ホスフィンオキシド型光開始剤と、アリル、メタリル、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも2つの末端基を含む架橋モノマーと、を含む架橋性組成物が提供される。
【0035】
本開示の架橋性組成物は、例えば、化学線への曝露によって硬化され得る。架橋性組成物のゲル分率は、下記の実施例の章に記載されるような硬化の前と後との両方で計算され得る。いくつかの好ましい実施形態では、硬化前の架橋性組成物のゲル分率は、0.2~0.8、0.3~0.75、又は0.4~0.7である。いくつかの好ましい実施形態では、硬化後の架橋性組成物のゲル分率の変化は、0.03超、0.04超、0.05超、又は0.06超である。
【0036】
(メタ)アクリレートポリマー
(メタ)アクリレートポリマーは、公知の重合方法を用いて、アルキル(メタ)アクリレートモノマーを含む重合性構成要素から調製することができる。
【0037】
アルキル(メタ)アクリレートモノマー
任意の好適なアルキル(メタ)アクリレート、又はアルキル(メタ)アクリレートの混合物を使用することができるが、但し、最終(メタ)アクリレートポリマーのガラス転移温度が十分に低い(例えば、20℃以下)ことを条件とする。いくつかのアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、対応するホモポリマーのガラス転移温度に基づいて、低Tモノマーとして分類することができる。対応するホモポリマーから測定した低Tモノマーは、多くの場合、20℃以下、10℃以下、0℃以下、又は-10℃以下のTを有する。
【0038】
好適な低Tアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、非第三級アルキルアクリレートが挙げられるが、これらに限定されず、少なくとも4個の炭素原子を有する直鎖状アルキル基を有するアルキルメタクリレートとすることができる。アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、sec-ブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、2-メチルブチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、4-メチル-2-ペンチルアクリレート、2-メチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、イソアミルアクリレート、n-デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、n-デシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、イソトリデシルアクリレート、n-オクタデシルアクリレート、イソステアリルアクリレート、n-ドデシルメタクリレート、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、低Tアルキル(メタ)アクリレートは、2-エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-メチルブチルアクリレート、2-オクチルアクリレート、及びこれらの組み合わせから選択される。その他の好適なモノマーとしては、米国特許第8,137,807号(Clapperら)に記載されているものなどの分岐長鎖アクリレートが挙げられる。追加の好適なアルキルモノマーとしては、米国特許第9,102,774号(Clapperら)に記載されているものなどの第二級アルキルアクリレートが挙げられる。
【0039】
重合性構成要素中に含まれ得る他のアルキル(メタ)アクリレートは、対応するホモポリマーのガラス転移温度に基づいて高Tモノマーとして分類される。高Tモノマーは、多くの場合、単重合されたとき、30℃超、40℃超、又は50℃超のTを有する(すなわち、モノマーから形成されたホモポリマーは、30℃超、40℃超、又は50℃超のTを有する)。いくつかの好適な高Tアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec-ブチルメタクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、及び3,3,5トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0040】
(メタ)アクリレートポリマーに組み込まれるアルキル(メタ)アクリレートの量は、(メタ)アクリル重合性構成要素の総重量に基づいて最大100重量パーセントの任意の好適な量とすることができる。この量は、例えば、最大99重量パーセント、最大95重量パーセント、最大90重量パーセント、最大85重量パーセント、最大80重量パーセント、最大75重量パーセント、最大70重量パーセント、最大65重量パーセント、最大60重量パーセント、最大55重量パーセント、最大50重量パーセント、又は最大45重量パーセントとすることができる。アルキル(メタ)アクリレートの量は、多くの場合、少なくとも35重量パーセント、少なくとも40重量パーセント、少なくとも45重量パーセント、又は少なくとも50重量パーセントである。
【0041】
アルキル(メタ)アクリレートが高Tモノマーを含むように選択される場合、このモノマーの量は、多くの場合、重合性構成要素の総重量に基づいて40重量%以下である。すなわち、その量は、重合性構成要素の総重量に基づいて0重量パーセント~40重量パーセントの範囲であり得る。より多い量が使用される場合、(メタ)アクリレートポリマーの全体的なTは高すぎる場合がある。高Tアルキル(メタ)アクリレートモノマーの量は、多くの場合、35重量パーセント以下、25重量パーセント以下、又は15重量パーセント以下である。存在する場合、高Tアルキル(メタ)アクリレートモノマーの量は、多くの場合、少なくとも0.5重量%、少なくとも1重量パーセント、少なくとも3重量パーセント、少なくとも5重量パーセント、又は少なくとも10重量パーセントである。重合性構成要素が高Tアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含む場合、20℃以下のTを有する(メタ)アクリレートポリマーを形成するために、十分低いTアルキル(メタ)アクリレートモノマーが典型的に添加される。
【0042】
アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、典型的には、ホモポリマーとして測定した場合に-10℃以下のTを有するものなどの低Tモノマーを含むように選択される。例えば、重合性構成要素は、多くの場合、ホモポリマーとして測定した場合に、少なくとも40重量パーセント、少なくとも45重量パーセント、少なくとも50重量パーセント、少なくとも55重量パーセント、少なくとも60重量パーセント、少なくとも65重量パーセント、又は少なくとも70重量パーセントの、かつ最大95重量パーセント、最大90重量パーセント、最大85重量パーセント、最大80重量パーセント、最大75重量パーセント、又は最大70重量パーセントの、-10℃以下のTを有する低Tモノマーを含有する。この量は、重合性構成要素の総重量に基づく。
【0043】
ホモポリマーとして測定した場合に-10℃以下のTを有する好適なアルキルモノマーとしては、2-エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、N-ブチルアクリレート、2-メチルブチルアクリレート、2-オクチルアクリレート、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
いくつかの実施形態では、(メタ)アクリレートポリマーは、酸性モノマーを実質的に含まない。酸性モノマーを説明するために本明細書で使用される場合、用語「実質的に含まない」は、(メタ)アクリレートポリマーが、1重量パーセント未満、0.5重量パーセント未満、0.2重量パーセント未満、又は0.1重量パーセント未満のこれらのモノマーを含有することを意味する。いくつかの実施形態では、架橋性組成物は、これらが存在するとタッチセンサ及びそれらの積分回路又はコネクタに損傷を与える可能性があるインジウムスズ酸化物(indium tin oxide、「ITO」)及び金属の微量腐食を除去するために、酸を実質的に含み得ない。
【0045】
(メタ)アクリレートポリマーは、典型的には、動的機械分析により測定して、15℃以下のガラス転移温度を有する。例えば、そのガラス転移温度は、15℃以下、10℃以下、5℃以下、0℃以下、又は-5℃以下とすることができる。そのガラス転移温度は、多くの場合、-50℃超、-40℃超、又は-30℃超である。
【0046】
いくつかの好ましい実施形態では、アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0047】
追加のモノマー
いくつかの実施形態では、(メタ)アクリレートポリマーは、ヒドロキシル(メタ)アクリレートコモノマーを含んでもよい。好適なモノマーの例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及び2-ヒドロキシ-プロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、(メタ)アクリレートポリマーは、約0重量部~約40重量部のヒドロキシ官能性共重合性モノマー、特に約5部~約35部、より特定すると約10部~約30部を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、(メタ)アクリレートポリマーは、非ヒドロキシ官能性極性共重合性モノマーを含んでもよい。好適な非ヒドロキシ官能性極性共重合性モノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、エーテル官能性モノマー、例えば2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、窒素含有モノマー、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N-アルキル置換及びN,N-ジアルキル置換アクリルアミド又はメタクリルアミドであって、アルキル基が最大3個の炭素を有するもの、及びN-ビニルラクタムが挙げられるが、これらに限定されない。好適な置換アミドモノマーの例としては、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-モルホリノ(メタ)アクリレート、N-ビニルピロリドン、及びN-ビニルカプロラクタムが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、(メタ)アクリレートポリマーは、約0重量部~約20重量部の極性共重合性モノマー、特定すると約1部~約15部、より特定すると約1部~約10部を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、(メタ)アクリレートポリマーは、ビニルエステル、特定するとC1~C10ビニルエステルを含んでもよい。市販の好適なビニルエステルの例としては、酢酸ビニル及びVEOVA 9又はVEOVA 10(Momentive Specialty Chemicals(New Smyrna Beach,Florida)から入手可能)が挙げられるが、これらに限定されない。ビニルエステルは、典型的には、約1重量部~約20重量部、特定すると約1部~約15部、より特定すると約1部~約10部の量でモノマー混合物に添加される。その他のモノマー、例えばスチレンモノマーが使用されてもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、(メタ)アクリレートポリマーは、極性(メタ)アクリレートモノマーを含んでもよい。好適な極性(メタ)アクリレートモノマーの例としては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシルブチルアクリレート、テトラヒドロフリルアクリレート、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、及びアクリル酸が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、(メタ)アクリレートポリマーは、約0重量部~約50重量部の極性(メタ)アクリレートモノマー、特定すると約5部~約45部、より特定すると約10部~約40部を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、(メタ)アクリレートポリマーは、単官能性非(メタ)アクリレートビニルモノマーを含んでもよい。好適な単官能性非(メタ)アクリレートビニルモノマーの例としては、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾール、酢酸ビニル、及びビニルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、(メタ)アクリレートポリマーは、約0重量部~約15重量部の単官能性非(メタ)アクリレートビニルモノマー、特定すると約1部~約10部、より特定すると約1部~約8部を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、(メタ)アクリレートポリマーは、多官能性(メタ)アクリレートモノマーを含んでもよい。有用な多官能性(メタ)アクリレートモノマーの例としては、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、及びテトラ(メタ)アクリレート、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、及びプロポキシル化グリセリントリ(メタ)アクリレート、並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。使用される場合、多官能性(メタ)アクリレートモノマーは、典型的には、全モノマー含有量100重量部に対して、少なくとも0.01、0.02、0.03、0.04、又は0.05重量部から、最大1、2、3、4、又は5重量部の量で使用される。
【0053】
いくつかの好ましい実施形態では、(メタ)アクリレートポリマーは、0wt%~50wt%の(例えば、10wt%~40wt%の)、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシルブチルアクリレート、テトラヒドロフリルアクリレート、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、アクリル酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される極性(メタ)アクリレートモノマーと、0wt%~10wt%の(例えば、0wt%~5wt%の)、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾール、酢酸ビニル、ビニルエーテル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される単官能性非(メタ)アクリレートビニルモノマーと、を含んでもよい。
【0054】
重合方法
重合方法としては、熱的に又は化学線(例えば、電磁スペクトルの可視及び/又は紫外領域の化学線)によって活性化されるものが挙げられる。フリーラジカル開始剤は、典型的には、重合性構成要素と組み合わされる。その他の任意選択の構成要素、例えば連鎖移動剤、抗酸化剤、溶剤などが、重合性組成物中に含まれてもよい。
【0055】
光開始剤又は熱開始剤のいずれかであり得るフリーラジカル開始剤が、典型的には、(メタ)アクリレートポリマーを形成するために使用される。複数の光開始剤又は複数の熱開始剤を使用することができる。フリーラジカル開始剤の量は、典型的にはより低い分子量のポリマー材料を生成する、より多い量で、重量平均分子量に影響を及ぼし得る。フリーラジカル開始剤の量は、通常、重合性構成要素の総重量に基づいて、少なくとも0.001重量パーセント、少なくとも0.005重量パーセント、少なくとも0.01重量パーセント、少なくとも0.05重量パーセント、少なくとも0.1、少なくとも0.5重量パーセント、又は少なくとも1.0重量パーセントである。この量は、重合性構成要素の総重量に基づいて、最大5重量パーセント、最大4重量パーセント、最大3重量パーセント、最大2重量パーセント、最大1.5重量パーセント、最大1重量パーセント、最大0.5重量パーセント、最大0.3重量パーセント、最大0.2重量パーセント、又は最大0.1重量パーセントとすることができる。
【0056】
好適な熱開始剤としては、Chemours Co.(Wilmington,DE,USA)から商標名VAZOで市販されているものなどの様々なアゾ化合物、例えば、2,2’-アゾビス(2-メチルブタンニトリル)であるVAZO 67、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)であるVAZO 64、(2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルペンタンニトリル)であるVAZO52、及び1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)であるVAZO88;ベンゾイルペルオキシド、シクロヘキサンペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ジ-tert-アミルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジ-クミルペルオキシド、及びAtofina Chemical,Inc.(Philadelphia,PA,USA)から商標名LUPERSOL(例えば、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサンであるLUPERSOL 101、及び2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシンであるLUPERSOL 130)で市販されているペルオキシドなどの様々なペルオキシド;tert-アミルヒドロペルオキシド及びtert-ブチルヒドロペルオキシドなどの様々なヒドロペルオキシド;並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0057】
多くの実施形態では、光開始剤が、(メタ)アクリレートポリマーを形成するために使用される。いくつかの例示的な光開始剤は、ベンゾインエーテル(例えばベンゾインメチルエーテル若しくはベンゾインイソプロピルエーテル)、又は置換ベンゾインエーテル(例えば、アニソインメチルエーテル)である。その他の例示的な光開始剤は、2,2-ジエトキシアセトフェノン、又は2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(BASF Corp.(Florham Park,NJ,USA)から商標名IRGACURE 651で市販されているもの、又はSartomer(Exton,PA,USA)から商標名ESACURE KB-1で市販されているもの)などの置換アセトフェノンである。なおも他の例示的な光開始剤は、置換α-ケトール、例えば2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、芳香族スルホニルクロリド、例えば2-ナフタレンスルホニルクロリド、及び光活性オキシム、例えば1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシムである。その他の好適な光開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商標名IRGACURE 184で市販されている)、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(商標名IRGACURE 819で市販されている)、1-[4-(2-1-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(商標名IRGACURE 2959で市販されている)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン(商標名IRGACURE 369で市販されている)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(商品名IRGACURE 907で市販されている)、IGM Resins USA Inc.(Charlotte,North Carolina)から得られるジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(商標名DAROCUR 1173でCiba Specialty Chemicals Corp.(Tarrytown,NY,USA)から市販されている)が挙げられる。
【0058】
増感剤もまた、特定の実施形態では、光開始剤の効力を増強するために使用され得る。有用な増感剤としては、例えば、イソプロピルチオキサントン(商品名OMNIRAD ITXで入手可能)、及び4-ジエチル-9H-チオキサンテン-9-オン(商品名OMNIRAD DETXで入手可能)、並びに他のチオキサントン系増感剤を挙げることができる。
【0059】
連鎖移動剤は、多くの場合、(メタ)アクリレートポリマーの分子量を制御するために重合性組成物中に含まれる。好適な連鎖移動剤としては、四臭化炭素、ヘキサブロモエタン、ブロモトリクロロメタン、2-メルカプトエタノール、tert-ドデシルメルカプタン、イソオクチルチオグリコエート、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、クメン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(昭和電工株式会社から商品名KARENZ MT PE1で入手可能)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン(昭和電工株式会社から商品名KARENZ MT BD1で入手可能)、エチレングリコールビスチオグリコレート、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。選択される連鎖移動剤の反応性に応じて、連鎖移動剤の量は、多くの場合、重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて0重量パーセント~5重量パーセントの範囲である。いくつかの実施形態では、連鎖移動剤の量は、少なくとも0.05重量パーセント、少なくとも0.1重量パーセント、少なくとも0.2重量パーセント、少なくとも0.3重量パーセント、又は少なくとも0.5重量パーセントであり、かつ最大5重量パーセント、最大4.5重量パーセント、最大4重量パーセント、最大3.5重量パーセント、最大3重量パーセント、最大2.5重量パーセント、最大2重量パーセント、最大1.5重量パーセント、又は最大1重量パーセントとすることができる。重量パーセント値は、(メタ)アクリレートポリマーを形成するために使用される重合性構成要素の総重量に基づく。
【0060】
(メタ)アクリレートポリマーを形成するための重合性組成物の反応は、有機溶媒の存在下で、又は非存在下で、生じ得る。有機溶媒が重合性組成物中に含まれる場合、この量は、多くの場合、所望の粘度をもたらすように選択される。好適な有機溶媒の例としては、メタノール、テトラヒドロフラン、エタノール、イソプロパノール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、及びエチレングリコールアルキルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。これらの有機溶媒は、単独で、又はこれらの混合物として使用することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、重合は、重合性組成物の総重量に基づいて少なくとも10重量パーセントの有機溶媒の存在下で生じる。その量は、例えば、少なくとも20重量パーセント、少なくとも30重量パーセント、少なくとも40重量パーセント、かつ最大70重量パーセント、最大60重量パーセント、最大50重量パーセントとすることができる。他の実施形態では、重合は、少量の有機溶媒で、又は有機溶媒なしで生じる。すなわち、重合性組成物は、有機溶媒を含まない、又は最小限の量の有機溶媒を含む。使用される場合、有機溶媒は、多くの場合、重合性組成物の総重量に基づいて、10重量パーセント未満、5重量パーセント未満、4重量パーセント未満、3重量パーセント未満、2重量パーセント未満、又は1重量パーセント未満の量で存在する。
【0062】
(メタ)アクリレートポリマーは、任意の好適な方法を用いて重合性組成物から形成することができる。重合は、一段階又は多段階で生じ得る。つまり、モノマー及び/又はフリーラジカル開始剤の全て又は一部分を好適な反応容器内に投入させ、重合させることができる。例えば、有機溶媒及び熱開始剤を含有する重合性組成物を混合し、50℃~100℃の(例えば、55℃~70℃の)範囲などの昇温にて、数時間加熱することができる。
【0063】
(メタ)アクリレートポリマーを作製する1つの可能な方法において、重合組成物中に、有機溶媒はほとんど又は全く含まれない。このようなフリーラジカル重合法は、例えば、米国特許第4,619,979号(Kotnourら)及び同第4,843,134号(Kotnourら)に記載されているような連続方式で行うことができる。(メタ)アクリレートポリマーを作製する代替方法において、例えば、米国特許第5,986,011号(Ellisら)及び同第5,637,646号(Ellis)に記載されているように、断熱プロセスを使用することができる。(メタ)アクリレートポリマーを作製するなおも他の方法において、重合反応は、米国特許第5,804,610号(Hamerら)に記載されているようなポリマーパッケージ内で生じ得る。
【0064】
得られた(メタ)アクリレートポリマーは、重合性組成物の組成に応じて、非架橋であっても架橋されていてもよい。いくつかの実施形態では、(メタ)アクリレートポリマーは、架橋されている。いくつかの実施形態では、モノマー混合物は多官能性架橋剤を含んでもよい。例えば、混合物は、溶媒をコーティングした接着剤を調製する乾燥工程中に活性化される熱架橋剤、及び重合工程中に共重合する架橋剤を含んでもよい。このような熱架橋剤としては、多官能性イソシアネート、多官能性アジリジン、及びエポキシ化合物が挙げられるが、これらに限定されない。重合され得る例示的な架橋剤としては、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートなどの多官能性アクリレート、又は当業者に公知のような多官能性アクリレートが挙げられる。いくつかの実施形態では、有用なイソシアネート架橋剤としては、例えば、DESMODUR N3300(Bayer,Cologne,Germany)として入手可能な芳香族トリイソシアネートが挙げられる。紫外線又は「UV」活性化架橋剤も使用することができる。このようなUV架橋剤としては、ベンゾフェノンなどの非共重合性光架橋剤、及び4-アクリルオキシベンゾフェノンのようなアクリル化又はメタクリル化ベンゾフェノンなどの共重合性光架橋剤を挙げることができる。典型的には、架橋剤は、存在する場合、重量ベースで約0.01部~約5部、特に約0.01部~約4部、より特定すると約0.01部~約3部の量で、モノマー混合物に添加される。その他の架橋方法、例えば、ポリメチルメタクリレートマクロマー又はポリスチレンマクロマーなどの高Tマクロマーを共重合することなどによって、イオン架橋、酸-塩基架橋、又は物理的架橋法の使用などを、使用してもよい。含まれる場合、マクロマーは、全モノマー構成要素のうちの約1重量部~約20重量部の量で使用されてもよい。
【0065】
アシルホスフィンオキシド光開始剤
架橋性組成物は、アシルホスフィンオキシド光開始剤を更に含む。本開示の実施形態において有用なアシルホスフィンオキシド光開始剤としては、例えば、IGM Resins USA Inc.(Charlotte,North Carolina)から市販されているジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(trimethylbenzoyl phosphine oxide、「TPO」)、及びフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(trimethylbenzoyl phosphineoxide、「BAPO」)(両方ともIGM Resins USA Inc.(Charlotte,North Carolina)から市販されている)を挙げることができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、アシルホスフィンオキシド光開始剤は、構造:
【化1】
(式中、Rは、光吸収部分(例えば、芳香族、置換芳香族)であり、R及びRは、独立して、光吸収部分及び/又は可溶化部分(例えば、アルキル)である)
によって表されるモノ-アシルホスフィンオキシド(例えば、TPO)を含んでもよい。
【0067】
いくつかの好ましい実施形態では、アシルホスフィンオキシド光開始剤としては、構造:
【化2】
(式中、Rは、光吸収部分(例えば、芳香族、置換芳香族)であり、R及びRは、独立して、光吸収部分及び/又は可溶化部分(例えば、アルキル)である)
によって表されるビス-アシルホスフィンオキシド(例えば、BAPO)が挙げられる。
【0068】
好ましい実施形態では、架橋性組成物は、(メタ)アクリレートポリマー混合物に対して0.05pph~5pphの(例えば、1pphの)アシルホスフィンオキシド光開始剤を含む。
【0069】
(メタ)アリル架橋モノマー
架橋性組成物は、アリル、(メタ)アリル、又はこれらの組み合わせから選択される少なくとも2つの末端基を含む架橋モノマーを更に含む。アリル基は、構造式HC=CH-CH-を有する。これは、ビニル基(-CH=CH)に結合したメチレン架橋(-CH-)からなる。同様に、(メタ)アリル基は、構造式HC=C(CH)-CH-を有する置換基である。
【0070】
いくつかの実施形態では、架橋モノマーは、ビニルエーテルなどのビニル基を含まない。エテニルとしても公知のビニルは、官能基-CH=CH、すなわちエチレン分子(HC=CH)から1個の水素原子を引いたものである。
【0071】
一実施形態では、架橋モノマーは、2つの(メタ)アリル基及び(メタ)アクリレート基を含む。このタイプの架橋モノマーは、Sartomerから商標名「SR 523」で市販されている。いくつかの実施形態では、架橋モノマーは、(メタ)アクリレート基を含まない。(メタ)アクリレート基と比較したときの(メタ)アリル基のより低い反応性は、特に接着剤が(例えば、UV)放射線によって硬化されるとき、最適な量の架橋を達成するために修正可能であり得る。
【0072】
架橋モノマーは、典型的には、式:
【化3】
(式中、Rは水素又はメチルであり、Zはヘテロ原子又は多価連結基であり、
xは2~6の範囲である)
を有する。いくつかの実施形態では、yは5~20である。いくつかの実施形態では、xは2又は3である。
【0073】
架橋モノマーが多価連結基を含む実施形態では、連結基Zは、典型的には、1000g/モル以下の分子量を有し、いくつかの実施形態では、500g/モル以下、400g/モル以下、300g/モル以下、200g/モル以下、100g/モル以下、又は50g/モル以下の分子量を有する。
【0074】
少なくとも2つのアリル基及び/又は(メタ)アリル基を含む様々な架橋モノマーが市販されている。市販の架橋モノマーの代表的な種を、以下の表Aに記載する。これらの種はアリル基を含むが、多くの実施形態では、(メタ)アリル基を有する同じ種が利用可能であるか、又は合成することができる。例えば、(メタ)アリルアジペートは、米国特許公開公報第2017/0037282号(Lipscombら)に記載されている方法で調製することができる。
【表1-1】
【表1-2】
(上記表の続き)
【0075】
少なくとも2つのアリル基及び/又は(メタ)アリル基を含む架橋モノマーはまた、当技術分野で公知の様々な反応スキームに従って合成することもできる。
【0076】
1つの反応スキームにおいて、アリール又はヘテロアリールマグネシウム化合物は、Krasovskiy,Straub,and Knochel;Angewandte Chemie-International Edition,2006,vol.45,p.159-162に記載されているように、ハロゲン化アリル(例えば、臭素)と反応され得る。好適なハロゲン化アリルとしては、例えば、塩化アリル、臭化アリル、ヨウ化アリル、4-ブロモ-1-ブテン、3-クロロ-2-メチルプロペン、3-ブロモ-2-メチルプロペン、5-ブロモ-1-ペンテン、6-ブロモ-1-ヘキセン、8-ブロモ-1-オクテン、10-クロロ-1-デセン、及び11-クロロ-1-ウンデセンが挙げられる。このような反応スキームは、例えば
【化4】
のように表されるジアリルベンゼンを生成することができる。
【0077】
この実施形態では、多価連結基Zはアリーレンである。
【0078】
本明細書に記載されている架橋モノマーを調製するための様々な反応スキームは、出発物質として(メタ)アリルアルコールを利用する。したがって、(メタ)アリル基は、アリル又は(メタ)アリルアルコールの反応生成物である。
【0079】
種々の(メタ)アリルアルコールは、例えばアリルアルコール2-メチル-2-プロペン-1-オール、2-エチル-2-プロペン-1-オール、2-ペンチル-2-プロペン-1-オール、10-ウンデセン-1-オール、3-ブテン-1-オール、3-メチル-3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール、9-デセン-1-オール、及び2-アリルオキシエタノールを含むこのような反応スキームにおいて使用することができる。いくつかの実施形態では、架橋モノマーは、少なくとも8、9、又は10個の炭素原子を含む(メタ)アリルアルコールの反応生成物である。このようなアルコールは、典型的には、(メタ)アリル基と、少なくとも5、6、7、又は8個の炭素原子、典型的には20個以下、18個以下、又は16個以下の炭素原子を含むアルキレン基とを含む。いくつかの実施形態では、(メタ)アリルアルコールは、12個以下の炭素原子を含み、したがって、9個以下の炭素原子を有するアルキレン基を含む。したがって、Zがアルキレン基を含む様々な実施形態では、アルキレン基は、少なくとも5、6、7、又は8個の炭素原子、典型的には20個以下、18個以下、又は16個以下の炭素原子を含んでもよい。
【0080】
種々のアルコキシル化アリルアルコールもまた、このような反応スキームにおいて使用され得る。好適なアルコキシル化アリルアルコールは、一般式:
【化5】
(式中、Rは水素又はメチルであり、Aは、C~Cオキシアルキレン基、特に任意選択でCO-と組み合わされたCO-であり、nは、典型的には平均1~5である)
を有する。この実施形態では、Zは、オキシアルキレン基又はポリオキシアルキレン基を含むか、又はそれらからなる。1つの代表的な化合物は、表Aに示されるエチレングリコールジアリルエーテルである。
【0081】
他の実施形態では、Zは、(例えば、単一の)エーテル基及びアルキレン基を含む。架橋モノマーは、式:
【化6】
(式中、yは2~20の範囲であり、Rは水素又はメチルである)
を有し得る。いくつかの実施形態では、yは、少なくとも5、6、7、又は8である。このような架橋モノマーは、前に記載されたようなアリルアルコールの反応、又はMarvel and Cripps;Journal of Polymer Science,1952,vol.8,p.313-320に記載されているようなチオールの反応によって調製され得る。10-ウンデセン-1-オールを利用してウンデセニルエーテルを生成する1つの例示的な反応スキームが、以下に示される。
【化7】
【0082】
他の実施形態では、Zは、2個~6個のヒドロキシル基を有する多官能性アルコールの反応生成物である。この実施形態では、架橋モノマーは、典型的には、式:
【化8】
(式中、Lは、ヒドロキシル基又はアルコキシ基などの1つ以上の置換基を任意選択で含む直鎖又は分岐(C~C12)アルキレンであり、xは2~6の範囲であり、Rは水素又はメチルである)
を有する。いくつかの実施形態では、xは、ブタンジオール(メタ)アリルエーテルの場合など、少なくとも2である。他の実施形態では、xは少なくとも3であり、Lは、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンエトキシレート、トリメチロールプロパンプロポキシレート、ペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)エタン、フルクトース、グルコース、1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトール、及びジ(トリメチロールプロパン)などの多官能性アルコールの残基である。このような架橋モノマーの代表的な例としては、例えば、上記表Aに示されるトリメチロールプロパンジアリルエーテル及びペンタエリスリトールアリルエーテルが挙げられる。
【0083】
なおも他の実施形態では、Zは、エステル基を含むか、又はエステル基からなる。いくつかの実施形態では、架橋モノマーは、典型的にはC~C20アルキレン基に結合した、いくつかの実施形態では(C~C12)アルキレン基に結合した、単一のエステル基を含む。このような架橋モノマーは、例えば、Frostickら、Journal of the American Chemical Society 1959,vol.81,p.3350-3352に記載されているように、前述のような(メタ)アリルアルコールの、(メタ)アリル酸との反応によって調製することができる。(メタ)アリル酸が、架橋モノマーの(メタ)アリル基を生成するための出発物質として利用される場合、この酸は、二重結合が(C~C20)アルキレン基によって酸基から間隔を置かれるように選択される。代表的な酸としては、例えば、3-ブテン酸、4-ペンテン酸、2,2-ジメチル-4-ペンテン酸、5-ヘキセン酸、6-ヘプテン酸、9-デセン酸、及び10-ウンデセン酸が挙げられる。1つの例示的な反応スキームは、以下の通りである:
【化9】
【0084】
他の実施形態では、Zは、2つ以上のエステル基(例えば、ジエステル)を含む。この実施形態では、架橋モノマーは典型的には、式:
【化10】
(式中、Rは水素又はメチルであり、Lは、(例えば、C~C20)アルキレン、アリーレン、又はこれらの組み合わせであり、
yは1~20の範囲である)
を有する。いくつかの実施形態では、yは、少なくとも5、6、7、又は8である。
【0085】
このような架橋モノマーは、典型的には、脂肪族若しくは芳香族ジカルボン酸、又はジオールの残基である。このような架橋モノマーの代表例としては、ジ(メタ)アリルセバケート、アジピン酸ジ(メタ)アリル、ジ(メタ)アリルテレフタレート、ジ(メタ)アリルイソフタレート;表Aに示されるジアリル構造が挙げられる。その他の例としては、ジ(メタ)アリルイタコネート、ジ(メタ)アリルマレエート、ジ(メタ)アリルフマレート、ジ(メタ)アリルジグリコレート、ジ(メタ)アリルオキサレート、ジ(メタ)アリルスクシネート、及び以下:
【化11】
のように示される1,4-ブタンジオールジ(ウンデセニレート)が挙げられる。
【0086】
なおも他の実施形態では、Zは、アミド基を含むか、又はアミド基からなる。いくつかの実施形態では、架橋モノマーは、典型的には(C~C20)アルキレン基に結合した、いくつかの実施形態ではC~C12アルキレン基に結合した、単一のアミド基を含む。この実施形態では、架橋モノマーは、典型的には、式:
【化12】
(式中、Rは水素又はメチルであり、Rは、水素、(C~C)アルキル、又はアリールであり、
yは1~20の範囲である)
を有する。いくつかの実施形態では、yは、少なくとも5、6、7、又は8である。
【0087】
このような架橋モノマーは、先に記載したような(メタ)アリル酸とアリルアミンとの反応によって調製することができ、これは、例えばGoldring,Hodder,Weiler;Tetrahedron Letters,1998,vol.39,#28 p.4955-4958に記載されている。代表的なアミンとしては、例えば、アリルアミン、N-メチルアリルアミン、ジアリルアミン、トリアリルアミン、トリス(2-メタリルアミン)、及びN-アリルシクロヘキシルアミンが挙げられる。1つの例示的な反応スキームは、以下の通りである:
【化13】
なおも別の実施形態では、前述した(メタ)アリル酸を、ジアミンと反応させることができる。逆に、前述のアリルアミンを、ジカルボン酸又はトリカルボン酸と反応させることができる。この実施形態では、Zは、2つ以上の(例えば、2つ又は3つの)アミド基を含む。この実施形態では、架橋モノマーは、典型的には、式:
【化14】
(式中、Rは水素又はメチルであり、Rは、水素、(C~C)アルキル、又はアリールであり、Lは、(例えば、C~C20)アルキレン、アリーレン、又はこれらの組み合わせであり、yは1~20の範囲である)
を有する。いくつかの実施形態では、yは、少なくとも5、6、7、又は8である。
【0088】
1つの代表的な構造は、以下:
【化15】
のように示されるN,N’-ブタンジイル-ビス-ウンデセニルアミドである。
【0089】
本明細書で記載される様々な架橋モノマーを考慮して、Zは、窒素又は酸素などのヘテロ原子、並びに多種多様な多価(例えば、ジ-、トリ-)連結基とすることができる。Zは、例えば(C~C20又はC~C20)アルキレン、アリーレン、オキシアルキレン(例えば、ポリオキシアルキレン)、エステル(例えば、モノエステル、ジエステル、脂肪族及び芳香族カルボン酸の残基)、エーテル(例えば、多官能性アルコールの残基)、シアヌレート、イソシアヌレート、アミド、アミン尿素、ウレタン、カーボネート、並びに(C~Cアルキル)シランを含むことができる。いくつかの実施形態では、Zは、このような多価連結基のうちの1つのみを含む。他の実施形態では、Zは、同じクラスの多価連結基(例えば、ジエステル、トリエーテル)のうちの2つ以上を含む。なおも他の実施形態では、Zは、エステル、エーテル、カーボネート、アミド、尿素、又はウレタンなどの異なるクラスの多価連結基と、(C~C20又はC~C)アルキレン又はアリーレン基との組み合わせを含む。
【0090】
少なくとも2つの(メタ)アリル基を含む架橋モノマーの濃度は、典型的には、(メタ)アクリレートポリマー混合物に対して0.05pph~5pph(例えば0.1pph)である。
【0091】
いくつかの好ましい実施形態では、架橋モノマーは、構造(I):
【化16】
(式中、Zは二価の連結基を表し、各Rは独立して-H又は-CHである)
によって表され得る。いくつかの好ましい実施形態では、Zは、エステル結合、アセテート結合、及びアミド結合のうちの少なくとも1つによって、多官能性アリル末端モノマーのアリル基に結合される。いくつかの好ましい実施形態では、Zは、構造:
【化17】
によって表される。
【0092】
いくつかの好ましい実施形態では、Zは、構造:
【化18】
によって表される。
【0093】
架橋性組成物は、少なくとも2つの(メタ)アリル基を含む架橋剤に加えて、別の架橋剤を任意選択で含んでもよい。いくつかの実施形態では、架橋性組成物は、多官能性(メタ)アクリレートを含む。有用な多官能性(メタ)アクリレートの例としては、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、及びテトラ(メタ)アクリレート、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、及びプロポキシル化グリセリントリ(メタ)アクリレート、並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
概ね、多官能性(メタ)アクリレートは、元のモノマー混合物の一部ではなく、(メタ)アクリルポリマーの形成後に続いて添加される。使用される場合、多官能性(メタ)アクリレートは、典型的には、全モノマー含有量100重量部に対して、少なくとも0.01、0.02、0.03、0.04、又は0.05重量部から、最大1、2、3、4、又は5重量部までの量で使用される。
【0095】
UV吸収剤及び抗酸化剤
いくつかの実施形態では、添加剤、例えば、紫外線(「UV」)吸収剤(例えば、ベンゾトリアゾール、置換トリアジン、オキサゾリン酸アミド、ベンゾフェノン、若しくはそれらの誘導体)、紫外線安定剤(例えば、ヒンダードアミン若しくはそれらの誘導体、イミダゾール若しくはそれらの誘導体、リン系安定剤、及び硫黄エステル系安定剤)、並びに/又は抗酸化剤(例えば、ヒンダードフェノール化合物、リン系エステル、若しくはそれらの誘導体)を、架橋性組成物中に含めることができる。例示的な抗酸化剤としては、Ciba Specialty Chemicals Incorporated(Tarrytown,New York)から入手可能なものが挙げられる。
【0096】
いくつかの実施形態では、架橋性組成物は、紫外線吸収剤、例えば、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(BASF(Florham Park、New Jersey)からTINUVIN 928として市販されている)を、架橋性組成物の少なくとも0.25、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、又は5wt%の濃度で含む。紫外線吸収剤の濃度は、典型的には、15wt%以下、14wt%以下、13wt%以下、12wt%以下、又は10wt%以下である。いくつかの好ましい実施形態では、UV吸収剤の濃度は、(メタ)アクリレートポリマーに対して0.3pph~15pphの範囲である。
【0097】
いくつかの実施形態では、紫外線吸収剤を含めることにより、380nm及び385nmにおける透過率(例えば、100ミクロン厚の接着剤層の透過率)を、20%未満、15%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、又は2%未満に低減することができる。いくつかの好ましい実施形態では、UV吸収剤は、0.1mm厚のコーティングについて、365nmにおいて15%未満の透過率を有する。いくつかの好ましい実施形態では、UV吸収剤は、0.1mm厚のコーティングについて、420nmにおいて70%超の透過率を有する。
【0098】
任意選択の添加剤
以下に記載されるように、様々な他の任意選択の構成要素を架橋性組成物に、及び/又は接着剤に添加することができ、例えば、接着促進剤(例えば、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン又は(3-グリシジルオキシプロピル)トリエトキシシラン)、着色剤(例えば、チタニア又はカーボンブラック)、染料、腐食防止剤(例えば、ベンゾトリアゾール)、帯電防止剤、可塑剤、増粘剤、チキソトロープ剤、加工助剤、ナノ粒子、繊維、及びこれらの組み合わせである。該して、各添加剤の量は、得られる組成物の意図される使用に依存する。
【0099】
接着剤
上記の架橋性組成物を含む接着剤組成物が提供される。いくつかの実施形態では、接着剤組成物は感圧接着剤である。(メタ)アクリレートポリマー自体は、感圧接着剤として機能するのに好適な接着特性を有し得る。あるいは、粘着付与剤などの任意選択の添加剤を架橋性組成物と組み合わせて、好適な接着特性を有する組成物を提供してもよい。有用な粘着付与剤としては、例えば、ロジンエステル樹脂及びテルペンフェノール樹脂が挙げられる。粘着付与剤は、多くの場合、コアに含まれる(メタ)アクリレート系ポリマー材料の量以下の量で混合される。任意選択の粘着付与剤の量は、多くの場合、重合性組成物の総重量に基づいて、0重量パーセント~25重量パーセント、0重量パーセント~20重量パーセント、0重量パーセント~15重量パーセント、0重量パーセント~10重量パーセント、又は0重量パーセント~5重量パーセントの範囲である。
【0100】
任意選択の抗酸化剤及び/又は安定剤、例えばヒドロキノンモノエチルエーテル(p-メトキシフェノール、MeHQ)、及び商標名IRGANOX 1010(ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート))でBASF Corp.(Florham Park,NJ,USA)から入手可能なものを添加して、ポリマー材料の温度安定性を高めることができる。使用される場合、抗酸化剤及び/又は安定剤は、典型的には、(メタ)アクリレートポリマーを形成するために使用される重合性構成要素の総重量に基づいて0.01重量パーセント~1.0重量パーセントの範囲で添加される。
【0101】
いくつかの好ましい実施形態では、接着剤組成物は感圧接着剤である。いくつかの好ましい実施形態では、接着剤組成物は、0.1mm厚のコーティングについて、5%未満、2%未満、又は1%未満のヘイズ値を有する。
【0102】
物品
接着剤組成物及び基材を含む物品が提供される。任意の好適な基材を使用することができる。多くの実施形態では、接着剤組成物の層は基材に隣接して配置される。接着剤組成物を基材と直接接触させてもよく、又はより多くの層のうちの1つ、例えばプライマー層によって基材から分離させてもよい。
【0103】
任意の好適な基材を使用することができる。いくつかの物品において、基材は可撓性である。可撓性の基材材料の例としては、ポリマーフィルム、織布又は不織布;金属箔、発泡体(例えば、ポリアクリル系、ポリエチレン、ポリウレタン)、及びこれらの組み合わせ(例えば、金属化ポリマーフィルム)が挙げられるが、これらに限定されない。ポリマーフィルムとしては、例えば、ポリプロピレン(例えば、二軸延伸)、ポリエチレン(例えば、高密度又は低密度)、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン(例えば、熱可塑性ポリウレタン)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、「PET」)、ポリエチレンナフタレート(polyethylene naphthalate、「PEN」)、及びポリ乳酸コポリマー)、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチル(メタ)アクリレート(polymethyl(meth)acrylate、「PMMA」)、ポリビニルブチラール、ポリイミド、ポリアミド、フルオロポリマー、酢酸セルロース、トリアセチルセルロース(triacetyl cellulose、TAC)、エチルセルロース、及び多環式オレフィンポリマー(polycyclic olefin polymers、「COP」)が挙げられる。織布又は不織布としては、合成材料又は天然材料の繊維又はフィラメント、例えばセルロース、綿、ナイロン、レーヨン、ガラス、及びセラミックなどが挙げられる。
【0104】
いくつかの実施形態において、物品は接着剤テープである、又は接着剤テープを備える。このような接着テープの例としては、転写テープ、片面接着テープ、両面テープ(すなわち、基材の各側に接着剤層を有するコア基材)、又はダイカット接着剤物品(例えば、物品は、1つの剥離ライナーに隣接して配置された、若しくは2つの剥離ライナーの間に配置された、接着剤層を有する)が挙げられる。このような接着テープは、バッキング又は剥離ライナーとして使用するための多種多様な基材を含んでもよい。例としては、織布及び不織布材料、プラスチックフィルム、金属箔などが挙げられる。
【0105】
接着テープは、多くの場合、片面テープ又は両面テープを製造するための従来のコーティング技術を用いて、様々な可撓性又は非可撓性バッキング材料及び/又は剥離ライナー上に接着剤組成物をコーティングすることによって調製される。片面接着テープの場合、接着剤組成物を、バッキング材料の層上にコーティングすることができ、接着剤が配置されるところの反対側のバッキング材料の側を、好適な剥離材料(例えば、剥離層又は剥離ライナー)でコーティングすることができる。剥離材料は公知であり、かつ、例えば、シリコーン、ポリエチレン、ポリカーバメート、ポリアクリル系などの材料が挙げられる。両面接着テープについて、第1の接着剤組成物がバッキング材料の層上にコーティングされ、接着剤組成物の第2の層がバッキング材料の反対側の表面上に配置される。第2の層は、本明細書に記載される接着剤組成物、又は異なる接着剤組成物を含んでもよい。ダイカット接着剤物品又は転写テープについて、接着剤組成物は、典型的には、2つの剥離ライナーの間に配置される。
【0106】
接着剤物品は、別の物品の一部とすることができる。例えば、接着剤組成物は、物品の2つの部分を一緒に結合することができる。いくつかのこのような物品において、接着剤は、可撓性及び/又は折り畳み可能な基材に隣接して配置され、かつ可撓性及び/又は折り畳み可能な電子デバイス内などの、可撓性及び/又は折り畳み可能な別の物品内で使用される。
【0107】
いくつかの実施形態では、接着剤組成物を含有する物品は電子デバイスの一部である。このようなデバイスにおいて、接着剤組成物は、典型的には、2つの基材を一緒に結合するために2つの基材の間に層を形成する。好適な基材の例としては、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)、ポリエチレンナフタレート(「PEN」)、多環式オレフィンポリマー(COP)、熱可塑性ポリウレタン、トリアセチルセルロース(「TAC」)、及び金属箔などの材料が挙げられる。
【0108】
電子産業における接着剤の一般的な用途は、コンピュータモニタ、テレビ、携帯電話、タブレット、及び小型ディスプレイ(車、機器、ウェアラブル、電子機器などにおける)などの様々なディスプレイの製造におけるものである。電子ディスプレイの継続した開発により、電子ディスプレイアセンブリの外側カバーレンズ若しくはシート(ガラス、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)、ポリカーボネート(「polycarbonate、PC」)、ポリメチルメタクリレート(polymethyl methacrylate、「PMMA」)、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート(「PEN」)、環状オレフィンコポリマーなどをベースとする)と、その下のディスプレイモジュールとの間のアセンブリ層又は間隙充填層として役割を果たす接着剤、特に光学的に透明な接着剤(OCA)についての需要が増加しつつある。OCAの存在は、アセンブリに対する構造的な支持も提供しながら、輝度及びコントラストを増大させることにより、ディスプレイの性能を改善させ得る。本明細書に記載されている接着剤組成物は、OCAとなるように調製することができる。
【0109】
物品は、基材に隣接して接着剤層を配置することによって形成され得る。接着剤組成物は、従来のコーティング技術を用いて基材(例えば、バッキング又は剥離ライナー)上にコーティングすることができる。例えば、接着剤組成物は、ローラーコーティング、フローコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、ナイフコーティング、及びダイコーティングなどの方法によって適用することができる。コーティングされる接着剤組成物は、任意の望ましい重量パーセントの固体を有してもよいが、多くの場合、接着剤組成物の総重量に基づいて10重量パーセント~100重量パーセントの固体の範囲にある。所望の固体含有量は、コーティング組成物を更に希釈することによって、又は一部乾燥させることによって、達成することができる。
【0110】
層として基材上に配置されるか、又は層として2つの剥離ライナーの間に配置される接着剤組成物は、多くの場合、最大100マイクロメートル(すなわち、ミクロン又はμm)、最大50マイクロメートル、最大35マイクロメートル、又は最大25マイクロメートルの厚さを有する。いくつかの実施形態では、接着剤組成物は、最大500マイクロメートル、最大400マイクロメートル、最大300マイクロメートル、又は最大200マイクロメートルの層で(例えば、ライナーの間に置かれたコーティングの形態で)基材上に配置された接着剤組成物の全体(平均)厚さを有し得る。いくつかの実施形態では、接着剤組成物は、少なくとも5マイクロメートル、少なくとも10マイクロメートル、又は少なくとも15マイクロメートルの層で(例えば、ライナーの間に配置されたコーティングの形態で)基材上に配置された接着剤組成物の全体(平均)厚さを有し得る。望ましい厚さは、接着剤層の特定の使用に依存する。
【0111】
本開示の目的及び利点は、以下の非限定的な実施例によって更に例証されるが、これらの実施例に引用される具体的な材料及びそれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本開示を過度に制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例
【0112】
別段の記載がない限り、又は文脈から容易に明らかでない限り、実施例、及び本明細書の残りの箇所における、全ての部、百分率、比などは、重量基準である。
【表2】
【0113】
試験方法
ゲル分率試験
接着フィルムのゲル分率は、重量法によって特徴付けた。重合した接着フィルムと、重合して硬化した接着フィルムとの両方(厚さ:0.1mm、サンプル径:25mm)の円形サンプルを、公知の質量を有する多孔質ステンレス鋼コンテナ(McMaster-Carr,Elmhurst,Illinois;メッシュサイズ:0.5mm、幅×長さ×高さ:40mm×40mm×30mm)中に装填した。メッシュコンテナ及び接着フィルムを秤量し、次いで、酢酸エチルア/イソプロパノールの1:1v/v混合物(約60mL)を含むガラスジャー(直径×高さ:70mm×85mm)中に浸漬した。24時間後、金属コンテナ及び残りの接着フィルムを溶媒ジャーから取り出し、対流式オーブン(DESPATCH,Minneapolis,MN)中、120℃で3時間乾燥させて、溶媒インキュベーション及び乾燥後に接着フィルムを得た。それぞれの値から空のケージの質量を差し引いた後、溶媒インキュベーション前後の接着フィルムの質量を記録した。各試料について2回のゲル分率試験を行い、ゲル分率値を平均した。
【0114】
各接着フィルムのゲル分率は以下のようにして算出した。
【数1】
【0115】
光学的測定
ヘイズ測定及び透過率測定を、ULTRASCANPRO Spectrophotometer(HunterLab,Reston,Virginia)を透過モードで用いて実施した。測定試料については、以下の実施例に記載される剥離コーティングされたキャリアライナー間の0.1mm厚のコーティングされた接着剤層を、およそ5cm幅×10cm長さに切断した。そのキャリアライナーのうちの1つを取り外し、試料を1mm厚のLCDガラス(Swift Glass,Elmira Heights,New York)の透明な断片に積層した。次に、もう一方のライナーを取り外し、試料をULTRASCANPRO Spectrophotometer中に置き、ガラス/OCAアセンブリを通して透過率及び色を測定した。特定の波長におけるヘイズ及び透過率を記録し、以下の表3に列挙した。
【0116】
実施例
一般的手順
55.8/14.6/8.3/17.7/3.6の重量比を有するEHA/THFA/EHMA/HEA/AcMのモノマー混合物と、100部のモノマー混合物に対して0.15pphで添加したIRG 651光開始剤とを、透明ジャー内で部分的にUV重合することによって、ベースポリマー溶液を調製した。365nmの出力波長及び0.3mW/cmの強度を有する光源を用いて混合物を照射する前に、およそ2,000cPの粘性溶液が達成されるまで、窒素ガスをジャーに流すことによって混合物を不活性化した。この第1の重合後、粘性溶液を、TINUVIN 928(1.8pph)、並びに表2に示す追加の光開始剤及び架橋剤と更に混合した。この溶液を、シリコーン処理したPETフィルム(RF02N及びRF22N、SKC Hass(Seoul,South Korea)から入手)の間に0.1mmのコーティング厚さでコーティングし、405nmの光源及びおよそ200mJ/cmの出力線量を用いて更に重合させて(すなわち、第2の重合)、接着フィルムを形成した。最後に、Dバルブを備えたFusion UV Processor(Fusion UV Systems Inc.,Gaithersburg,MD)を用いて、UVI Cure Power Puck 2(EIT,Sterling,Virginia)によって測定して、UVAのおよそ3,000mJ/cmの標的線量で接着フィルムを曝露することによって試料を硬化させた。
【表3】
【表4】
【0117】
本明細書に引用した特許、特許文献、及び刊行物の全開示は、それぞれが個別に組み込まれたかのごとく、それらの全体が参照により組み込まれる。記載されている本明細書と、参照により本明細書に組み込まれるいずれかの文書の開示との間に、何らかの矛盾又は不一致が存在する程度まで、記載されている本明細書を優先するものとする。当業者には、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本開示に対する様々な改変及び変更が明らかとなるであろう。本開示が、本明細書に記載した例示的な実施形態及び実施例によって不当に制限されることを意図していないこと、並びにこのような実施例及び実施形態が、以下のような本明細書に記載の特許請求の範囲によってのみ限定されることを意図した本開示の範囲内の例としてのみ提示されること、を理解されたい。
【国際調査報告】