(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-12
(54)【発明の名称】経腸栄養液の送達
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20240605BHJP
F04C 5/00 20060101ALI20240605BHJP
F04B 49/06 20060101ALI20240605BHJP
A61M 5/168 20060101ALI20240605BHJP
A61M 5/172 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
A61M5/142 502
F04C5/00 341N
F04B49/06 321Z
A61M5/142 504
A61M5/142 530
A61M5/168 530
A61M5/172
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572646
(86)(22)【出願日】2022-05-23
(85)【翻訳文提出日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 US2022030534
(87)【国際公開番号】W WO2022251114
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517408184
【氏名又は名称】ケイピーアール ユーエス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ビアマン、 ウェイン
(72)【発明者】
【氏名】ブラムズ、 ローラ
(72)【発明者】
【氏名】ホルステ、 ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルドホフ、 ゲイリー
(72)【発明者】
【氏名】トレルフォード、 ポール
【テーマコード(参考)】
3H145
4C066
【Fターム(参考)】
3H145AA05
3H145AA22
3H145AA42
3H145BA03
3H145BA07
3H145BA12
3H145CA06
3H145CA25
3H145CA30
3H145DA01
3H145DA47
3H145EA04
3H145EA36
4C066AA02
4C066AA05
4C066BB01
4C066CC04
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4C066FF01
4C066QQ24
4C066QQ44
4C066QQ52
4C066QQ54
4C066QQ74
4C066QQ78
4C066QQ79
4C066QQ92
(57)【要約】
流量制御装置のポンプ装置を用いて対象者に液体を送達するための装置及び方法。方法は、流量制御装置に取り付けられた、一体積の液体を有する液体容器を含むポンプセットを認識し、それによってポンプセットが、ポンプセットを通して複数アリコートの液体を送達するためにポンプ装置によって作用されるように配置されることを含む。ポンプ装置の動作が開始され、一定時間にわたり液体容器から所定体積の液体が引き出される。一体積の液体のうちの単一アリコートが液体容器から対象者に送達される。ポンプ装置の動作は、液体容器から対象者に一体積の液体のうちの別の単一アリコートを送達する前に所定時間にわたり一次停止される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量制御装置のポンプ装置を用いて対象者に液体を送達するための前記流量制御装置の動作方法であって、
前記流量制御装置に取り付けられた、一体積の液体を有する液体容器を含むポンプセットを認識し、それによって前記ポンプセットが、前記ポンプセットを通して複数アリコートの液体を送達するために前記ポンプ装置によって作用されるように配置されることと、
前記ポンプ装置の動作を開始して一定時間にわたり前記液体容器から所定体積の前記液体を引き出すことと、
前記液体容器から対象者に前記一体積の液体のうちの単一アリコートを送達し、前記液体容器から対象者に前記一体積の液体のうちの別の単一アリコートを送達する前に所定時間にわたり前記ポンプ装置の動作を一時停止させることと
を含み、動作を一時停止させるための前記所定時間は、その間に前記所定体積の液体の全体を対象者に送り込む一定時間内にある、方法。
【請求項2】
所定体積の液体全体を単一アリコートずつ対象者に送達することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定体積の液体全体を構成する複数アリコートの各アリコート送達後に前記所定時間わたり前記ポンプ装置の動作を一時停止させることをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
約0.5秒から約5秒の間前記ポンプ装置の動作を一時停止させることをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記単一アリコートの液体を対象者に送達するために前記ポンプセットに係合するように前記ポンプ装置のロータを回転させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記単一アリコートの液体を送達するために前記ロータを回転させることは、前記ロータを一全回転未満だけ回転させることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ポンプ装置の動作を一時停止させるための所定時間は、前記ポンプセット内の液体が前記ロータの後ろにある前記ポンプセットのセグメントを満たすことを可能にするのに十分な時間を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記流量制御装置のメモリに記憶された送達ルーチンを認識された前記ポンプセットと関連付けることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記液体は栄養液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記栄養液は混合食品の溶液を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記液体は、IDDSIフレームワークによる2~4の包含範囲内の評価を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
液体容器からポンプセットを通して対象者に液体を送達するために前記ポンプセットと共に使用する流量制御装置であって、
供給サイクル中に前記ポンプセット内に液体流を生成するために前記ポンプセットに作用することができるポンプ装置と、
前記ポンプセット内に液体流を生成するために前記供給サイクル中に前記ポンプ装置の動作を制御するための、前記ポンプ装置と通信するコントローラであって、前記コントローラはプロセッサとメモリとを含み、前記液体容器から対象者に単一アリコートの液体を送達するための供給ルーチンを前記プロセッサ内で実行しかつ前記液体容器から対象者に別の単一アリコートの液体を送達する前に所定時間にわたり前記ポンプ装置の動作を一時停止させるように構成されるコントローラと
を備える流量制御装置。
【請求項13】
前記ポンプ装置は、前記単一アリコートの液体を生成するために前記ポンプセットに接触するように構成された複数のローラを含むロータを備え、前記単一アリコートは、前記ロータの一全回転によって送達される液体の体積よりも小さい、請求項12に記載の流量制御装置。
【請求項14】
前記単一アリコートは、前記ロータの隣接するローラ間に配置される液体の体積を含む、請求項13に記載の流量制御装置。
【請求項15】
前記コントローラは、前記供給サイクル中に前記液体容器から前記液体の所定体積全体を送達するために前記供給ルーチンを実行するようにプログラムされる、請求項12に記載の流量制御装置。
【請求項16】
前記コントローラは、前記ポンプセットが前記流量制御装置に搭載されていることを認識すると前記供給ルーチンを実行するようにプログラムされる、請求項12に記載の流量制御装置。
【請求項17】
前記プロセッサに動作可能に接続され、前記液体容器内の液体を送達するための前記供給ルーチンを識別するために前記ポンプセットを読み取るように構成されたリーダをさらに備える、請求項16に記載の流量制御装置。
【請求項18】
前記コントローラは、対象者に送達される液体の体積の入力に基づいて、連続するアリコートの送達間の一時停止を計算するように構成される、請求項12に記載の流量制御装置。
【請求項19】
前記コントローラは、前記ポンプ装置の連続動作中に前記ポンプ装置が複数アリコートの液体を対象者に送達する別の供給ルーチンを前記プロセッサ内で実行するように構成される、請求項12に記載の流量制御装置。
【請求項20】
流量制御装置のポンプ装置を使用して対象者に液体を送達するための前記流量制御装置の動作方法であって、
前記流量制御装置に取り付けられた、一体積の液体を有する液体容器を含むポンプセットを認識し、それによって前記ポンプセットが、前記ポンプセットを通して複数アリコートの液体を送達するために前記ポンプ装置によって作用されるように配置されることと、
前記ポンプ装置の動作を開始して一定時間にわたり前記液体容器から所定体積の前記液体を引き出すことと、
前記液体容器から対象者に前記一体積の液体の一連のアリコートを送達することと
を含み、前記一連のアリコートは、前記一連のアリコートの各アリコートが前記ポンプ装置の単一の動作中の一時停止によって分離されるように、所定時間にわたる前記ポンプ装置の一連の動作中の一時停止と交互に行われる、方法。
【請求項21】
前記一連のアリコート及び一連の動作中の一時停止は、その間に前記所定体積の前記液体を対象者に送り込む一定時間内において等間隔である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記一連のアリコートは、前記所定体積の液体を対象者に送り込む一定時間内に前記一体積の液体のアリコート間の追加の一時停止なしに、所定時間にわたる前記ポンプ装置の一連の動作中の一時停止と交互に行われる、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全体として、経腸栄養ポンプによる液体の送達に関するものであり、より詳細には経腸栄養ポンプによる比較的濃厚な液体の送達に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年5月24日に出願された「経腸栄養液の送達」と題する米国仮特許出願第63/192,462号及び2022年5月20日に出願された「経腸栄養液の送達」と題する米国特許出願第17/750,041号に対する優先権を主張し、両米国出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【背景技術】
【0003】
薬や栄養を経口で摂取できない患者への薬や栄養の投与は、蠕動流制御システムを利用することによって影響を受ける可能性がある。一般に、このようなシステムでは、液体は、制御された送達速度で患者に液体を送達する蠕動ポンプなどの流量制御装置に搭載された、弾性的につぶれることができるエラストマーチューブを含むポンプセットによって患者に送達される。蠕動ポンプは通常、ギアボックスを介してモータと動作可能に係合するロータを含むハウジングを有する。ロータは、ロータ上の1つ以上のローラによる衝突、例えば、挟み込みによって生じるチューブの可逆圧縮によってもたらされる蠕動作用によってポンプセットの可撓性チューブを通して液体を送り出す。ロータの回転は、制御された速度で液体を送り出すエラストマーチューブを徐々に圧縮する。ポンプセットは、ポンプセットを介した液体流の連通を可能にするか又は防止するための弁機構を有することができる。流量制御システムはまた、液体流を効果的に制御する1つ以上のモータを動作可能に調節するコントローラを有することができる。
【0004】
蠕動ポンプは、「アリコート」と呼ばれる小さな分量で液体を送達することによって動作する。ロータはポンプセットのエラストマーチューブに係合し、エラストマーチューブの一部を挟み、患者に向かって、例えば、液体の供給源よりも患者に近いピンチポイントの前方に液体を押し出す。一般に、患者に投与される液体の体積は、それぞれが実質的に同じ体積であるアリコートの数を数え、その数が送達される液体の所望の総体積に相当する量に達したときに停止することによって、ポンプ内で制御される。蠕動ポンプは衛生的であり、概ね正確であるため、患者への薬物及び治療液の投与に非常に有用である。
【0005】
現在の経腸栄養ポンピング方法は、粘度の高い栄養液及び/又は経腸栄養目的の咀嚼された食物に近い固形物を含む栄養液(例えば、混合食品)などの濃厚な液体を送達する場合には役に立たない可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、流量制御装置のポンプ装置を用いて対象者に栄養液を送達するための流量制御装置の動作方法は一般に、流量制御装置に取り付けられた、一体積の液体を有する液体容器を含むポンプセットを認識し、それによってポンプセットが、ポンプセットを通して複数アリコートの液体を送達するためにポンプ装置によって作用されるように配置されることと、ポンプ装置の動作を開始して一定時間にわたり液体容器から所定体積の液体を引き出すことと、液体容器から対象者に一体積の液体のうちの単一アリコートを送達し、液体容器から対象者に一体積の液体のうちの別の単一アリコートを送達する前に所定時間にわたりポンプ装置の動作を一時停止させることとを含む。動作を一時停止させるための所定時間は、その間に所定体積の液体を対象者に送り込む一定時間内にある。
【0007】
一態様では、方法はさらに、所定体積の液体全体を単一アリコートずつ対象者に送達することを含む。
【0008】
一態様では、方法はさらに、所定体積の液体全体を構成する複数アリコートの各アリコート送達後に所定時間にわたりポンプ装置の動作を一時停止させることを含む。
【0009】
一態様では、方法はさらに、約0.5秒から約5秒の間ポンプ装置の動作を一時停止させることを含む。
【0010】
一態様では、方法はさらに、単一アリコートの液体を対象者に送達するためにポンプセットに係合するようにポンプ装置のロータを回転させることを含む。
【0011】
一態様では、単一アリコートの液体を送達するためにロータを回転させることは、ロータを一全回転未満だけ回転させることを含む。
【0012】
一態様では、方法はさらに、流量制御装置のメモリに記憶された送達ルーチンを認識されたポンプセットと関連付けることを含む。
【0013】
一態様では、液体は栄養液を含む。
【0014】
一態様では、栄養液は混合食品の溶液を含む。
【0015】
一態様では、液体は少なくとも50cPの粘度を有する。
【0016】
別の態様では、液体容器からポンプセットを通して対象者に液体を送達するためにポンプセットと共に使用する流量制御装置は一般に、供給サイクル中にポンプセット内に液体流を生成するためにポンプセットに作用することができるポンプ装置を備える。コントローラは、ポンプセット内に液体の流れを生成するために、供給サイクル中にポンプ装置の動作を制御するためにポンプ装置と通信している。コントローラは、プロセッサとメモリとを含む。コントローラは、液体容器から対象者に単一アリコートの液体を送達するための供給ルーチンをプロセッサ内で実行しかつ液体容器から対象者に別の単一アリコートの液体を送達する前に所定時間にわたりポンプ装置の動作を一時停止させるように構成される。
【0017】
一態様では、ポンプ装置は、単一アリコートの液体を生成するためにポンプセットに接触するように構成された複数のローラを含むロータを備える。
【0018】
一態様では、単一アリコートは、ロータの一全回転によって送達される液体の体積よりも小さい。
【0019】
一態様では、単一アリコートは、ロータの隣接するローラ間に配置される液体の体積を含む。
【0020】
一態様では、コントローラは、供給サイクル中に液体容器から所定体積の液体全体を送達するために供給ルーチンを実行するようにプログラムされる。
【0021】
一態様では、コントローラは、ポンプセットが流量制御装置に搭載されていることを認識すると供給ルーチンを実行するようにプログラムされる。
【0022】
一態様では、装置はさらに、プロセッサに動作可能に接続され、液体容器内の液体を送達するための供給ルーチンを識別するためにポンプセットを読み取るように構成されたリーダを備える。
【0023】
一態様では、コントローラは、対象者に送達される液体の体積の入力に基づいて、連続するアリコートの送達間の一時停止を計算するように構成される。
【0024】
一態様では、コントローラは、ポンプ装置の連続動作中にポンプ装置が複数アリコートの液体を対象者に送達する別の供給ルーチンをプロセッサ内で実行するように構成される。
【0025】
さらに別の態様では、流量制御装置のポンプ装置を使用して対象者に液体を送達するための流量制御装置の動作方法は一般に、流量制御装置に取り付けられた、一体積の液体を有する液体容器を含むポンプセットを認識し、それによってポンプセットが、ポンプセットを通して複数アリコートの液体を送達するためにポンプ装置によって作用されるように配置されることと、ポンプ装置の動作を開始して一定時間にわたり液体容器から所定体積の液体を引き出すことと、液体容器から対象者に一体積の液体の一連のアリコートを送達することとを含む。一連のアリコートは、一連の所定時間にわたるポンプ装置の動作中の一時停止と交互に行われる。
【0026】
さらに別の態様では、流量制御装置のポンプ装置を用いて対象者に液体を送達するための流量制御装置の動作方法は一般に、流量制御装置に取り付けられた、一体積の液体を有する液体容器を含むポンプセットを認識し、それによってポンプセットが、ポンプセットを通して複数アリコートの液体を送達するためにポンプ装置によって作用されるように配置されることと、ポンプ装置の動作を開始して一定時間にわたり液体容器から所定体積の液体を引き出すことと、液体容器から対象者に一体積の液体の一連のアリコートを送達することとを含む。一連のアリコートは、所定体積の液体を対象者に送り込む一定時間内に一体積の液体のアリコート間に追加の一時停止なしに、所定時間にわたるポンプ装置の一連の動作中の一時停止と交互に行われる。一連のアリコート及び一連の動作中の一時停止は、その間に所定体積の液体を対象者に送り込む一定時間内において等間隔である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】経腸栄養ポンプ及び供給セットアセンブリの一部を含む供給システムの断片的な斜視図である。
【0028】
【
図2】
図1の斜視図であるが、カセットの一部が取り外されている。
【0029】
【0030】
【0031】
【
図5】供給セットの取付部材及び識別部材の一実施形態の図であり、関連するリーダ装置をさらに示す図である。
【0032】
【
図6】本明細書に開示される1つ以上の態様を実施するために利用され得る経腸栄養ポンプのコンポーネントを示すブロック図である。
【0033】
【
図7】供給システムの供給ルーチンのフローチャートである。
【0034】
【
図8A】供給システムの供給ルーチンのグラフである。
【0035】
【
図8B】供給システムの供給ルーチンの別のグラフである。
【0036】
図面全体にわたって対応する符号は対応する部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本開示の1つ以上の態様は、線形蠕動ポンプ及び回転蠕動ポンプなどの蠕動ポンプに関し、特に、患者に送達される液体の量を正確に検出及び制御し、送達される液体のタイプに基づいて患者への液体送達を動的に適応させる液体送達装置を提供するための回転蠕動ポンプに関する。あらゆる1つ以上のこのような特徴を提供又は促進するあらゆる1つ以上の有利な特徴又は構造を、様々な商業的用途及び工業的用途に使用される蠕動ポンプに実装することができる。したがって、詳細な説明は、カセットを含む供給セットアセンブリを有する経腸栄養ポンプに向けられているが、本開示の1つ以上の特徴は、他の蠕動ポンプにおいて具現化又は実施することができる。例えば、例示的に説明したポンプは、回転蠕動経腸栄養ポンプであるが、本開示は、他のタイプの蠕動ポンプ(図示せず)に適用される。加えて、本開示の様々な特徴及び態様の1つ以上は、線形蠕動ポンプなどの本開示の範囲から逸脱することなくローラ以外の機構を使用する蠕動ポンプにおいて実施することができる。さらに、カセットを含まない供給セットアセンブリ(図示せず)も本開示の範囲内で使用することができる。
【0038】
図面、特に
図1~3を参照すると、本開示の原理のいずれか1つ以上に従って構成された例示的な経腸栄養ポンプ(広義には「流量制御装置」)が全体として1で示される。供給ポンプは、全体として7で示される供給セットアセンブリ(広義には「ポンプセット」)の全体として5で示されるカセットを取り付けるように構成された、全体として3で示されるハウジングを備えることができる。供給セットアセンブリ7は、チューブ77を介してカセット5に接続された1つ以上の液体容器(図示せず)を含むことができる。供給セットアセンブリ7のカセット5は、ハウジング3に解放可能に取り付け可能である。図示の実施形態では、カセットのカセットシェル9は、ハウジング3のカセット凹部6(
図3)に取り外し可能に収容される。本明細書で使用される「ハウジング」は、多部品構造及びポンプ1の作動コンポーネントを包囲又は収容しない構造を含むがこれらに限定されない、多くの形態の支持構造(図示せず)を含み得ることが理解されるであろう。ポンプ1はまた、ハウジング3上に、ポンプの状態及び動作に関する情報を表示することができる表示画面10を有することができる。また、本開示の様々な態様及び特徴は、凹部6なしで実施することができる。表示画面10に近接していることができる1つ以上のボタン11は、ポンプ1を制御かつポンプ1から情報を得るのに使用するために設けることができ、発光ダイオード14などの1つ以上の好適なインジケータは、ポンプの状態情報を提供することができる。
【0039】
表示画面10は、ハウジング3の前面パネル(全体として19で示される)の一部であることができ、ハウジングに取り外し可能に取り付けることができる。経腸栄養ポンプはさらに、ロータシャフト(図示せず)に接続されたポンプモータ27(
図6)を備える、全体として23で示されるポンプユニット(
図2及び
図3)を含むことができる。ポンプモータに電力を供給するために、ハウジング3内にバッテリ(図示せず)を受け入れることができる。バッテリ以外に又はバッテリに加えて電源を使用して、ロータシャフトを通してポンプユニットを駆動する1つ以上の原動機を含むポンプに通電することができる。
【0040】
ポンプユニット23は、ロータシャフトに連結することができるロータ(全体として37で示される)を有する。ロータ37は、内側ディスク39と、外側ディスク41と、それらの長手方向軸を中心にディスクに対して回転するために内側ディスクと外側ディスクとの間に取り付けられた6つのローラ43(それらのうちの3つのみが図面に示される)を含むことができる。ローラ43は、カセット5がハウジング3に取り付けられたときに、カセット5の一部を形成する供給セットアセンブリ7のチューブ45(
図2)に係合して、供給セットアセンブリ7を通して対象者に液体を送達する。例えば、栄養液(例えば、混合された果物、野菜など)を、ポンプ1、カセット5及び供給セットアセンブリ7を用いて患者に送達することができる。他の液体も、本開示の範囲から逸脱することなく、ポンプ1を用いて送達することができる。図示の実施形態では、液体容器内の液体は、ポンプユニット23によって容器から引き出される。
【0041】
図4を参照すると、カセットシェル9は、前部53と、後部55と、上部57と、下部59とを有するカセット本体51を備える。側壁61及び上壁63は、カセット本体51の後部55から延び、取付具65を受け入れるように構成された後部キャビティを形成することができる(
図2)。チューブ45は、取付具65に解放可能に取り付けることができる。取付具65は、取付具65をカセットに固定又はスナップ嵌めすることを可能にするタブ(図示せず)を有することができる。場合によっては、取付具をカセットに取り外し可能に固定することができる。一実施形態では、カセットシェル9は、チューブ45及び取付具65を取り付け、ポリカーボネートなどのポリマー材料から作ることができる。
【0042】
図1及び
図2を参照すると、入口チューブ77、チューブ45、取付具65、及び出口チューブ83は、供給セットアセンブリ7の一部とみなされる。カセット5は、この説明の目的では、供給セットアセンブリ7の一部とみなされる。液体容器も、供給セットアセンブリ7の一部とみなされ得る。しかしながら、本明細書に記載されているよりもおおくの又は少ない構成要素を含む供給セットアセンブリも本発明の範囲内である。
【0043】
図2及び
図3を参照すると、インサート105が、カセットシェル9及びチューブ45をカセット凹部内に固定するのに役立つようにハウジング3のカセット凹部6内に受け入れられ得る。インサート105は、カセットがハウジング3に取り付けられたときにインサート105がカセットシェル9の後部キャビティ内に受け入れられるように、凹部6内に配置され得る。インサート105は、チューブ45の入口部分を受け入れるためにインサートの入口側に配置された1対の対向する第1の突出部107と、チューブの出口部分を受け入れるためにインサートの出口側に配置された1対の対向する第2の突出部109とを備えることができる。標識112が、第2の突出部109の少なくとも一方に配置され、チューブ45内の液体流の方向を示すことができる。図示の実施形態では、標識112は矢印の形態である。
【0044】
カセット5をポンプハウジング3に取り付けるために、カセットシェル9のカセット本体51の下部59にある1つ以上のピン又は隆起した突起119(
図4)を、ハウジング3の凹部6の下部にあるスロット124(
図2及び
図3)に挿入することができる。隆起した突起119とスロット124との係合により、概ねカセットシェル9がハウジング3に配置される。カセット本体51はその後、カセット5をポンプ1に一時的に固定するために、カセット本体の上部57にある弾性的に撓み可能なタブ125上の出っ張り123が凹部6の上部にあるキャッチ127によって捕捉されるまで(
図2及び
図3)上向きに回転させることができる。カセット5をポンプハウジング3から取り外すために、タブ125を押し下げて出っ張り123をキャッチ127から外すことができる。カセット5がポンプハウジング3に取り付けられると、チューブ45はロータ37の下側部分の周りに延び、ロータのローラ43が順次係合するように配置される。
【0045】
図5及び
図6を参照すると、供給セット7は、チューブ45と直接連通する取付部材13と、取付部材上の1つ以上の識別部材15とを備えることができる。少なくとも1つの識別部材15は、取付部材13のポンプ1への係合の際に、栄養液のための供給ルーチン又は供給セットと関連付けられた栄養液の種類の識別を可能にすることができる。取付部材13はまた、供給セット7のポンプ1への搭載を補助することができる。しかしながら、取付部材13を省略することができ、供給セット7をポンプ1に搭載するために識別部材15を使用することができる。ポンプ1はさらに、取付部材13と識別部材15の少なくとも一方とポンプとの係合を検出するリーダ17を備えることができる。一実施形態では、供給セット7は、比較的濃厚な栄養液を送達するように構成され得る。この場合、識別部材15は、供給セット7内の比較的濃厚な栄養液の供給ルーチンを示すように構成及び/又は配置され得る。さらに、供給セット7のチューブ77、45、83は、濃厚な栄養液を送達するように構成され得る。例えば、チューブ77、45、83の直径は、より濃厚な栄養液を送達するのに十分な断面積を提供するように増大させることができる。チューブのさらに他の構成も、本開示の範囲から逸脱することなく想定される。一実施形態では、濃厚な栄養液は、少なくとも50cPの粘度を有する栄養液として特徴付けられる。別の実施形態では、濃厚な栄養液は、高い粘度を有しかつ/又は経腸栄養目的のための咀嚼された食物に近い固形物を含む栄養液として特徴付けられる。例えば、これは、固形物部分、懸濁物部分及び液体部分を含む多状態液体を生成するために水又は他の液体を加えてミキサーで細かく切り刻まれた固形食品を含む混合食品であり得る。混合食品はまた、供給セットを通して送り込まれたときに混合物内の密度及び粘度の不連続性を生じ得る、固形食品と液体の一貫性のない混合物を含み得る。さらに、国際嚥下食標準化イニシアチブ(IDDSI)は、食感を変更した食品及びとろみのある液体の命名及び記載の標準化された方法を開発した。一実施形態では、濃厚な栄養液は、IDDSIフレームワークの2から4の間に登録される液体を含む。ウェブサイトwww.IDDSI.orgを参照し、その全内容を参照により本明細書に組み込む。
【0046】
ポンプ1の有効流量は、供給セット7のチューブと供給セットを通して送達される液体との抵抗によって決まり得る。所望の供給ルーチンに応じて、ポンプ1に異なる構造の供給セットを使用することができる。ポンプ1は、設置された供給セットの種類及び供給セットと関連付けられた栄養液を自動的に認識し、供給セット及び栄養液に適合するようにポンプの動作を変更又は動的に適応させるように構成することができる。特に、搭載された供給セット7と関連付けられた液体を送達するための供給ルーチンは、供給セットの種類、関連付けられた栄養液及び/又は供給セットを通して液体を送達することに関連する栄養液の特性のうちの少なくとも1つを示す識別情報又は識別部材15によって表されるデータを検索することによって自動的にカスタマイズすることができる。このような技術的特徴は、不適切な又は誤った送達プロトコルの可能性を低減することによって、患者への栄養液の送達に有利な影響を与えることができる。例えば、識別部材を有する供給セットは、ポンプに接続された容器内の栄養液の表示を提供することができ、ポンプは次に、所定のプロトコル又はスケジュールに従って栄養液を自動的に送達することができ、これにより、異なる送達プロトコル又はスケジュールで栄養液を誤って送達する可能性が低減される。
【0047】
取付部材13は、取付部材13に取り付けられた識別部材15の存在をリーダ17が検出できるように、供給セット5をポンプに搭載するときにポンプ1の対向する第2の突出部109(広義にはマウント)に係合するように構成される。リーダ17は、識別部材15の存在を検出するために、第2の突出部109上に、第2の突出部109内に、又は第2の突出部109の近くに配置され得る。図示の実施形態では、識別部材15は、第1の識別部品15Aと第2の識別部品15Bとを備える。あらゆる数の識別部品が想定される。リーダ17は、識別部品15A、15Bをそれぞれ検出する1対のリーダ装置17A、17Bを備えることができる。リーダ装置17の数は、識別部品15の数と同じであってもよいし、異なる数であってもよいことが理解されるであろう。識別部品15A、15Bは、磁性部品であってもよく、別の方法では、リーダとの直接の物理的接触を必要とせずにリーダ装置17A、17Bによってそれぞれ検出することができる磁気感受性金属部品であってもよい。リーダ装置17A、17Bは好ましくは、取付部材13がマウントに係合しているときにリーダ装置17A、17Bが識別部品15A、15Bの存在を検出できるように第2の突出部109の近くに配置されたホール効果センサ又は他のタイプの近接センサであり得る。他のタイプのリーダを使用してもよい。例えば、リーダは、1つ以上の識別部品のいずれかを光学的に識別することに基づくことができる。識別部材15は、カセット9に直接取り付けることができ、リーダ17は、カセットがポンプ1の凹部6に受け入れられたときにカセット上の識別部材の存在を検出するように配置することができる。
【0048】
取付部材13が第2の突出部109に係合すると、リーダ装置17A、17Bは、識別部品15A、15Bの数及び位置によって表される識別データを識別することができる。特に、1つ以上の識別部品15A、15Bを取付部材13に取り付けることにより、ソフトウェアサブシステム47(
図6)がポンプ1に搭載された供給セット7と関連付けられた栄養液に関する情報を識別することを可能にする手段が提供される。
図5を参照すると、取付部材13は、ソフトウェアサブシステム47がポンプ1に搭載された供給セット7と関連付けられた栄養液の供給ルーチンを識別することを可能にする識別スキームに従って、取付部材13に取り付けられた1つ以上の識別部品15A、15B(
図5には2つが示される)を有することができる。供給ルーチンを識別するために、マイクロプロセッサ89などのプロセッサを、供給ルーチンを識別するための1つ以上の識別スキームを含むメモリ93と動作可能に結合することができる。
【0049】
液体容器がチューブ77に取り付けられた状態で、ポンプ1は、容器内の供給溶液を対象者に送達するように構成される。ポンプ1の動作により、ローラ43がカセットシェル9内のチューブ45に係合し、容器から対象者に供給溶液を送り込む。ローラ43によるチューブ45の係合により、ローラ43は初めにチューブ45をつぶして閉塞させる。このようにして、ロータ37が回転してチューブ45をローラ34で閉塞させると、液体は最初に入口チューブ77を通って容器から引き出され、ポンプ1によって対象者へと出口チューブ83内に送り込まれる。
【0050】
ポンプ1は、所望の方法で動作するようにプログラムするか又は他の方法で制御することができる。例えば、ポンプ1は、対象者への供給を提供するために動作を開始することができる。介護者などの使用者又は対象者自身が、(例えば)送達する液体の量、液体の流量及び液体送達の頻度を選択することができる。ポンプ1は、ポンプ1がプログラミングを受け入れること及び/又は使用者によって開始され得る事前にプログラムされた動作ルーチン、例えば、アルゴリズムを含むことを可能にする、マイクロプロセッサ89などのプロセッサを含むコントローラ72(
図6)を有することができる。コントローラ72はまた、ロータ37を作動させるべくその動作を制御するためにポンプモータ27に接続することができる。
【0051】
対象者に送達される供給液の量は一般に、(
図2で見て反時計回り方向の)ロータ37の回転数によって制御される。一実施形態では、ロータ37は、回転の各1/6が対象者に1アリコートの液体を送達するように、6つのローラ43を含むことができる。アリコートとは、チューブ45内で連続した(先行及び後続の)ローラ43間に配置された液体の体積を指す。他の方法で定義される液体の体積が「アリコート」であると理解され得ることが想定される。しかしながら本明細書で使用される場合、「アリコート」は常に、ロータ37の一全回転によって送達され得る液体の体積よりも小さい液体の体積を指す。各ローラ43が最初にチューブ45に係合すると、各ローラ43はチューブを締め付け(ピンチオフし)、それによって供給源から来る液体から前方の(すなわち、対象者に向かう)液体の量を遮断する。ローラ43は、ローラの前方の液体のピンチオフされた体積、例えばアリコートを対象者に向かって押し出す、反時計回りの回転を続ける。最後に、次のアリコートの液体を送達するために後続ローラがチューブをピンチオフするためにチューブに係合するのとほぼ同時に、先行ローラ43はチューブ45との係合を解除する。このようにして、マイクロプロセッサ89が選択された液体流量を送達するコマンドを受け取ると、マイクロプロセッサ89は通常、所望の流量を生成する複数のアリコートを送達する所与の時間内の回転数を計算する。選択された流量は、医師、看護師又は他の介護者によって入力又は選択された速度であってもよく、又はポンプ1に事前にプログラムされたデフォルトの供給速度であってもよい。一実施形態では、単一アリコートが単一のロータの移動によって送達される。
【0052】
従来のポンプは、所定体積の流体全体を送達するために供給サイクルの継続時間全体にわたって連続的又は散発的な方法で流体を送達することによって動作する。例えば、従来のポンプは一定の速度で流体を送達することができ、その場合は、所定体積の流体全体を対象者に送達するためにロータは一定の速度で回転する。この場合、ロータは、所定体積の流体の全体を送達するために、供給サイクル全体又は供給サイクルの一部にわたって連続的に回転する。従来のポンプはまた、断続的な方法で流体を送達することができ、その場合は、流体のボーラス(すなわち、流体の大部分)が、1日又は1日の一部にわたって間隔を置いた別々の供給セグメントで対象者に送達される。この場合、ポンプは、ある流体の体積を送達するためにロータを複数の全回転にわたって回転させるように動作する。ポンプはその後、停止され、続いて、対象者に流体の別の体積を送達するために所定時間後に再び動作する。連続的及び断続的/ボーラス流体送達のすべての事例において、ロータは、対象者に流体を送達するために一時停止することなく複数の全回転にわたって動作する。
【0053】
しかしながら、より濃厚な供給液(例えば、混合食品)を送達する場合、従来のポンピング方法によって生成されるロータ37の連続的回転/全回転は、これらの液体の増加した粘度によりチューブ45、83内に望ましくない圧力上昇を引き起こし、チューブをつぶれさせ、所望の量の液体が対象者に送達されるのを妨げる可能性がある。したがって、コントローラ72は、タイマー91と、チューブに取り付けられた液体容器内の栄養液に基づいてポンプ1のための液体特有の供給ルーチン(例えば、流量)を決定するための一連の命令97を記憶するメモリ領域93とを含むことができる。例えば、ポンプ1のマイクロプロセッサ89は、ポンプセットの検出された識別部材15に基づいて栄養液のための供給ルーチンを識別することができる。ポンプ1の供給ルーチンを制御するために、マイクロプロセッサ89は、識別部材15によって表される情報データを実行するための一連の命令97をメモリ領域93から検索する。マイクロプロセッサ89は次に、データをメモリ領域93内の一連の命令に適用して、ポンプ1の供給ルーチンを特定することができる。マイクロプロセッサ89は次に、モータ出力を調整して、目標供給速度を達成するための供給ルーチンを生成することができる。命令97は、メモリ領域93として広く識別されるあらゆる好適な媒体上の機械可読命令である。これらの命令は、マイクロプロセッサ89によって実行することができる。タイマー91は、対象者に供給液を送達するために供給サイクル(広義には「動作サイクル」)が開始されるか又は実行されるときに好適な方法で開始され得る。コントローラ72は、供給サイクル中に送達されている濃厚な供給液を補償するために、この情報を供給サイクルの追加パラメータとともに使用することができる。
【0054】
図7を参照すると、コントローラ72は、より濃厚な栄養液がポンプセット7を通して適切に送達されることを確実にするために、ロータ37の回転を調整するように動作することができる。例えば、メモリ93に記憶された1つの供給ルーチンは、100においてコントローラ72に、モータ27を動作させて供給サイクル(例えば、1時間)中にロータ37を回転させ、1つの単一アリコート(例えば、全回転の1/3、1/4又は1/6)を送達するように指示することができる。コントローラ72は次に、102においてモータ27にロータ37の回転を停止するように指示することができる。ロータの回転は、ローラがチューブから離れ、チューブがそのつぶれていない開口状態に向かって跳ね返るときに、入口チューブ77からの液体がローラ43の後ろのチューブ45のセグメントを満たすのを可能にするのに十分な時間、104において一時停止することができる。チューブ45の跳ね返るセグメントを満たすために、より濃厚な液体のための一時停止を頻繁に起こさないと、後続のアリコートが予想される体積よりも少なくなり、結果として供給の不正確さが生じる。極端な場合、チューブ45の下流部分は、ローラの蠕動作用によって真空状態にされ、真空下でつぶれる。つぶれたチューブ45はその後、患者への更なる液体の送達を妨げる。加えて、頻繁に一時停止することにより、送達される一アリコートの液体がチューブ45、83の少なくとも一部を通って移動し、チューブ内のあらゆる圧力上昇を消散させる時間が与えられる。ロータ37の回転が一時停止される時間の長さは、プログラムされた供給速度に基づく。所与のポンプについて、単一アリコートの液体を送達するのに必要な時間は既知であり、メモリ93に記憶される。したがって、一時停止の全継続時間ひいては一時停止の総回数は、所与の供給時間に対して計算することができる。このようにして、動作を一時停止させるための所定時間は、その間に所定体積の液体を対象者に送り込む一定時間内に生じる。一般に、供給サイクルの許容時間内に送達される液体の量が多いほど、ロータ37がアリコート間で一時停止される時間は短くなる。一実施形態では、コントローラ72は、単一の小さい体積のアリコート送達後に約0.5秒から約5秒の間ロータ37の回転を一時停止させるようにモータ27を動作させる。106において、コントローラ72は次に、モータ27を再通電して別の単一アリコートの送達のためにロータ37を回転させ、108においてロータを再び停止させ、110において所定時間にわたりロータの回転を一時停止させる。このルーチンは、液体の意図した体積全体が対象者に送達されるように、供給サイクル全体にわたって繰り返される。意図した体積全体は、所与の供給サイクル中の所定体積の液体全体を含む。この場合、所定体積の全体は、複数の個々のアリコートの液体を含む。したがって、供給サイクルは、所定体積の液体を対象者に送り込む一定時間内に一体積の液体のアリコート間に追加の一時停止なしに、所定時間にわたるポンプ装置の一連の動作中の一時停止と交互に行われる、液体容器から対象者への一体積の液体のうちの一連のアリコートの送達を含むことができる。一実施形態では、一連のアリコート及び一連の動作中の一時停止は、その間に所定体積の液体を対象者に送り込む一定時間内において等間隔である。
【0055】
一実施形態では、従来の方法を用いて同じ液体を送達する場合には総所定体積の約70%にすぎないのと比較して、濃厚な液体の総所定体積の少なくとも約90%が対象者に送達される。より具体的には、従来の方法の試験では、ポンプがロータを連続的に動作させ、所与の時間(例えば、1分間)にわたり所定体積が送達されるまで患者に複数アリコートを送達した。ポンピングは、供給速度に関係なく行われた。
図8Aは、1時間の供給サイクルにわたって50mLの濃厚な栄養液を送達するための本発明による供給ルーチンを示す。
図8Bは、1時間の供給サイクルにわたって100mLの濃厚な栄養液を送達するための本発明による供給ルーチンを示す。
【0056】
したがって、様々な目的及び特徴が、本明細書に開示された様々な実施形態によって達成されることが分かるであろう。ポンプコントローラ72は、マイクロプロセッサ89が、送達される液体を考慮して、供給セット7を通して供給液を送達するためにロータ37を動作させるためのポンピングルーチンを調整することを可能にする。したがって、対象者は、特により濃厚な供給液に関して、所与の供給サイクルに対してより正確な体積量の供給液を受け取ることができる。
【0057】
既存の市販の経腸栄養ポンプと、上記の「アリコート一時停止」供給ルーチンを実行するように構成されたソフトウェアを組み込んだ経腸栄養ポンプとを比較して行われた研究では、「アリコート一時停止」機能を備えた経腸栄養ポンプが「濃厚な」経腸栄養液を投与する際に流体送達において優れた性能を発揮することが見出された。特に、「アリコート一時停止」機能を組み込んだポンプの流体送達精度は、類似のアリコート一時停止機能を組み込んでいない既存の市販ポンプよりも40%以上正確であった。
【0058】
以下の表1に示すように、標準化された試験方法に基づいて既存の市販ポンプの経腸栄養ポンプ性能を評価するための初期研究が行われた。試験方法は、最初にIDDSIフレームワークに基づいて経腸栄養液を分類することを含んでいた。試験した経腸栄養液の1つは、オレンジチキン、ニンジン、玄米のリアルフードブレンドのフォーミュラを含んでいた。IDDSIフレームワークの下で、リアルフードブレンドはIDDSIフレームワークで3と評価され、フォーミュラは「中程度に濃厚」と分類された。
【0059】
準備した供給セットを用いて、既存の市販供給ポンプを25ml/時間の供給速度に設定した。その後、ポンプを最低30分間運転した。流体送達を停止し、供給速度をさらに30分間125ml/時間に調整した。このプロセスを3~5回繰り返した。各125ml/時サイクルの間に、送達される液体の予想体積は62.5mlであった。実際の液体送達の精度は、次のように計算された。
【数1】
以下の表1に見られるように、既存の市販ポンプは中程度に濃厚なフォーミュラを正確に送達することができなかった。既存の市販ポンプ1及び2は予想される流体体積の半分強を送達したが、既存の市販ポンプ3は中程度に濃厚なフォーミュラをまったく送達することができなかった。
【0060】
【0061】
「アリコート一時停止」ポンプの流体送達の研究中、2つのリアルフードブレンドのフォーミュラを水と比較し、予想される流体の体積を正確に送達するポンプの能力の偏差を測定した。流体送達サイクルは、既存の市販ポンプの試験運転と同じであった。両方の食品ブレンドフォーミュラは、IDDSIフレームワークで「濃厚な」流体として登録されており、ターキーのブレンドはスケールで4(極めて濃厚)と測定され、チキンのブレンド(既存の市販ポンプの研究と同じ)はIDDSIスケールで3(中程度に濃厚)と測定された。以下の表2に見られるように、水と比較して、濃厚な流体のフォーミュラを送達するポンプの能力にはほとんど偏差がなかった。したがって、ほぼ100%の予想される「濃厚な」流体が「アリコート一時停止」ポンプを用いて送達された。したがって、「アリコート一時停止」ポンプは、研究で使用されたリアルフードブレンドなどの濃厚な流体を正確に送達するという点で、既存の市販ポンプよりも有意に優れた性能を発揮した。
【0062】
【0063】
実施形態は、1つ以上のコンピュータ又は他の装置によって実行されるプログラムモジュールなどのコンピュータ実行可能命令の一般的な状況で説明され得る。コンピュータ実行可能命令は、特定のタスクを実行するか又は特定の抽象データ型を実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、及びデータ構造を含むがこれらに限定されない、1つ以上のコンピュータ実行可能コンポーネント又はモジュールに編成することができる。態様トは、このようなコンポーネント又はモジュールの任意の数及び構成で実施することができる。例えば、様々な特徴又は態様は、図に示され、本明細書に記載された特定のコンピュータ実行可能命令又は特定のコンポーネント又はモジュールに限定されない。他の実施形態は、本明細書に示され、記載されたものよりも多い又は少ない機能を有する異なるコンピュータ実行可能命令又はコンポーネントを含み得る。
【0064】
さらに、本明細書に示され、記載された実施形態のいずれかにおける動作の実行又は遂行の順序は、特に指定がない限り、本質的ではない。すなわち、動作は、特に指定がない限り、あらゆる順序で実行することができ、実施形態は、本明細書に開示された動作よりも追加の動作又は少ない動作を含むことができる。例えば、特定の動作を、別の動作の前に、別の動作と同時に、又は別の動作の後に実行又は遂行することは、1つ以上の態様の範囲内であると考えられる。
【0065】
動作中、コントローラ72のマイクロプロセッサ89は、本明細書に開示された1つ以上の態様を実施するために、図に示されたようなコンピュータ実行可能命令を実行する。様々な態様のいずれも、通信ネットワークを介してリンクされたリモート処理装置によってタスクが実行される分散コンピューティング環境においても実施することができる。分散コンピューティング環境において、プログラムモジュールは、メモリ記憶装置を含むローカルコンピュータ記憶媒体及びリモートコンピュータ記憶媒体の両方に配置することができる。
【0066】
本発明又はその好ましい実施形態の要素を導入する場合、冠詞「a」、「an」、「the」及び「said」は、要素の1つ以上が存在することを意味することを意図している。「備える」、「含む」及び「有する」という用語は、包括的であることを意図しており、列挙された要素以外の追加要素が存在し得ることを意味する。
【0067】
本発明の範囲から逸脱することなく上記の構成に様々な変更を加えることができるため、上記の説明に含まれ、添付の図面に示されたすべての事項は、限定的な意味ではなく、例示として解釈されることが意図されている。
【国際調査報告】