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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-13
(54)【発明の名称】正弦波ランプドライバ
(51)【国際特許分類】
   H05B 39/04 20060101AFI20240606BHJP
   G01N 21/01 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
H05B39/04
G01N21/01 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548830
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(85)【翻訳文提出日】2023-10-12
(86)【国際出願番号】 EP2022053203
(87)【国際公開番号】W WO2022171722
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】21156593.2
(32)【優先日】2021-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517267802
【氏名又は名称】トリナミクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,フェリクス ベルノ
(72)【発明者】
【氏名】ケシュテル,ダフィト
(72)【発明者】
【氏名】ホルザック,アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】イスラム,ザミウル
(72)【発明者】
【氏名】クルカルニ,ソーラバー
(72)【発明者】
【氏名】エギュン,セラル モハン
【テーマコード(参考)】
2G059
3K273
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059AA05
2G059AA06
2G059BB01
2G059BB05
2G059BB11
2G059CC19
2G059EE12
2G059GG08
2G059JJ02
3K273AA08
3K273BA19
3K273CA04
3K273FA03
3K273FA14
3K273FA22
3K273FA24
3K273FA26
3K273GA14
(57)【要約】
装置(110)が開示されている。装置(110)は、以下のものを有する。
その温度の結果として変調された熱放射線を放出するように構成された少なくとも1つの放射線放出素子(112)。ここで、放射線放出素子(112)は、少なくとも1つの白熱ランプ(114)を有する。
放射線放出素子(112)に周期的時間依存性電圧を印加するように構成された少なくとも1つの電子回路(116)。ここで、電子回路(116)は、周期的時間依存性電圧の振幅、デューティサイクル、および周波数のうちの1つ以上を制御するように構成されており、放射線放出素子(112)の温度および変調された熱放射線の周波数は、電子回路(116)によって制御される印加された周期的時間依存性電圧に依存する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置(110)であって、
a. その温度の結果として変調された熱放射を放出するように構成された少なくとも1つの放射線放出素子(112)であって、前記放射線放出素子(112)は、少なくとも1つの白熱ランプ(114)を備える放射線放出素子と、
b. 前記放射線放出素子(112)に周期的時間依存性電圧を印加するように構成された少なくとも1つの電子回路(116)であって、前記電子回路(116)は、前記周期的時間依存性電圧の振幅、デューティサイクル、および周波数のうちの1つ以上を制御するように構成されており、前記放射線放出素子(112)の温度および変調された熱放射線の周波数は、前記電子回路(116)によって制御される印加された周期的時間依存性電圧に依存する、少なくとも1つの電子回路(116)と、
を備える、装置(110)。
【請求項2】
前記電子回路(116)は、印加される前記周期的時間依存電圧が単極性かつ正弦波状であるように、前記周期的時間依存電圧を制御するように構成されている、請求項1に記載の装置(110)。
【請求項3】
前記電子回路(116)は、前記周期的時間依存電圧の全高調波歪みが0.01から0.2、好ましくは0.015から0.15、より好ましくは0.02から0.1の範囲になるように、前記周期的時間依存電圧を制御するように構成されている、請求項1または2に記載の装置(110)。
【請求項4】
前記電子回路(116)は、前記放射線放出素子(112)を通る結果として生じる電流が0.01から0.2、好ましくは0.015から0.15、より好ましくは0.02から0.1の範囲の全高調波歪みを有する周期的時間依存性となるように、前記周期的時間依存性電圧を制御するように構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置(110)。
【請求項5】
前記電子回路(116)は、前記放射線放出素子(112)を流れる電流を測定するように構成された少なくとも1つの評価ユニットを備え、前記電流の現在の状態に関する情報は、印加電圧を構成するために使用される、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置(110)。
【請求項6】
前記電子回路(116)は、前記放射線放出素子(112)の光出力の全高調波歪みが0.05から0.4、好ましくは0.07から0.3、より好ましくは0.1から0.25の範囲となるように、前記放射線放出素子(112)に印加される前記周期的時間依存性電圧を制御するように構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置(110)。
【請求項7】
前記電子回路(116)は、少なくとも1つの可変出力降圧レギュレータ(132)を備え、該降圧レギュレータ(132)は少なくとも1つの抵抗ネットワーク(144)を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置(110)。
【請求項8】
前記電子回路(116)は、非変調電源電圧VSupplyを前記降圧レギュレータ(132)に印加するように構成された少なくとも1つの第1の入力電圧源(134)を備える、請求項7に記載の装置(110)。
【請求項9】
前記電子回路(116)が、印加電圧VAppliedとして放射線放出素子(112)に印加される可変降圧レギュレータ(132)の出力を変調するように構成された少なくとも1つの可変電子部品(146)を備える、請求項7または8に記載の装置(110)。
【請求項10】
前記可変電子部品(146)は、少なくとも1つの可変電圧源(148)を備え、該可変電圧源(148)は、周期的な時間依存性の入力電圧VInput を前記抵抗ネットワーク(144)に印加するように構成され、それにより前記可変降圧レギュレータ(132)の出力を周期的時間依存性電圧に変換し、該周期的時間依存性電圧は印加電圧VAppliedとして前記放射線放出素子(112)に印加される、請求項9に記載の装置(110)。
【請求項11】
前記可変電圧源(148)は、デジタル・アナログ・コンバータ(DAC)(154)を備える、請求項10に記載の装置(110)。
【請求項12】
前記可変電子部品(146)は、少なくとも1つの可変抵抗器(168)を備え、該可変抵抗器(168)は、その抵抗RVariableを時間の関数として周期的に変化させるように構成され、それにより前記可変降圧レギュレータ(132)の出力を周期的時間依存性電圧に変換し、該周期的時間依存性電圧は印加電圧VAppliedとして前記放射線放出素子(112)に印加される、請求項9に記載の装置(110)。
【請求項13】
前記可変抵抗器(168)は、デジタル・ポテンショメータ(170)を備える、請求項12に記載の装置(110)。
【請求項14】
分光計装置(172)であって、
i. 請求項1から13のいずれか一項に記載の少なくとも1つの装置(110)であって、該装置が、少なくとも1つの測定対象物(174)を照明するように構成されている、少なくとも1つの装置(110);
ii. 前記測定対象物(174)によって放出された少なくとも1つの入射光ビーム(180)を構成波長のスペクトルに分離するように構成された少なくとも1つのフィルタ素子(178);
iii. 光センサ(184)のマトリックスを有する少なくとも1つのセンサ素子(182)であって、前記光センサ(184)はそれぞれ感光領域を有し、各光センサ(184)は、感光領域の照明に応答して少なくとも1つのセンサ信号を生成するように構成されている、センサ素子(182);および
iv. 前記センサ信号を評価することにより、スペクトルに関連する少なくとも1つの情報項目を決定するように構成された少なくとも1つの評価装置(186)
を備える、分光計装置(172)。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の少なくとも1つの放射線放出素子(112)を含む装置(110)を動作させるための方法であって、該方法は以下のステップを含む方法:
I. 前記放射線放出素子(112)の少なくとも1つに、少なくとも1つの周期的な時間依存性電圧を印加するステップ;
II. 電子回路(116)の少なくとも1つで、周期的な時間依存性電圧の振幅、デューティサイクル、周波数の1つ以上を制御するステップ。
【請求項16】
1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、1つまたは複数のプロセッサに請求項15に記載の方法を実行させる命令を含む、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項17】
以下の群から選択される使用目的のための分光計装置(172)に言及する請求項14に記載の分光計装置(172)の使用:赤外線検出アプリケーション;熱検出アプリケーション;温度計アプリケーション;熱探索アプリケーション;炎検出アプリケーション;火災検出アプリケーション;煙検出アプリケーション;温度検出アプリケーション;分光アプリケーション;排気ガス監視アプリケーション;燃焼プロセス監視アプリケーション;汚染監視アプリケーション;工業プロセス監視アプリケーション;化学プロセス監視アプリケーション;食品加工プロセス監視アプリケーション;水質監視アプリケーション;大気質監視アプリケーション;品質管理アプリケーション;温度管理アプリケーション;運動制御アプリケーション;排気制御アプリケーション;ガス検知アプリケーション;ガス分析アプリケーション;運動検知アプリケーション;化学検知アプリケーション;モバイルアプリケーション;医療アプリケーション;モバイル分光アプリケーション;食品分析アプリケーション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの放射線放出素子を含む装置、分光計装置、少なくとも1つの放射線放出素子を含む装置を作動させる方法、および分光計装置の様々な用途に関する。このような装置および方法は、一般に、例えば、調査または監視目的、特に、赤外線検出、熱検出、炎検出、火災検出、煙検出、汚染監視、工業プロセス、化学プロセス、食品加工プロセスなどの監視などの様々な用途に採用することができる。しかし、さらに様々な用途が考えられる。
【背景技術】
【0002】
分光法のような用途には、広帯域の放射源が必要である。現代のランプ技術、例えばLEDやレーザーは狭帯域放射体であり、発光スペクトルは単色でないにしても非常に狭い。一般照明用の白色LEDなど、半導体光源に蛍光塗料を塗布して可視光域で広帯域の発光スペクトルを実現する技術は、近赤外(NIR)域では限界があり、中赤外(MID)域ではほとんど存在しない。そのため、特にこれらの領域では、発光スペクトルが温度に依存する熱放射体、例えば白熱ランプが採用される。さらに、フリッカーノイズとして知られる1/fノイズや、太陽や人工照明からの環境光などのオフセットを除去するために、光源を電気的に変調するか、光チョッパーを使用して、検出器に入射する光を変調する。
【0003】
半導体技術に基づく光源、例えばLEDやレーザの場合、電気的変調は非常に一般的であり、その帯域幅はMHzとまではいかなくてもkHzの範囲にあるため、実現も簡単である。一方、熱放射体の場合は、選択肢がかなり限られている。白熱ランプに矩形波変調の電圧パルスを印加するパルス動作モードがある。フィラメントを流れる電流を制限するため、矩形波のパルス幅は初期には小さく保たれ、ランプの温度が上昇するにつれてパルス幅が大きくなる。パルス幅変調(PWM)による制御は、電磁両立性(EMC)の問題につながる可能性がある。急峻なエッジを持つPWMは、ランプの寿命を大幅に低下させる。また、高温安定金属を含む薄い誘電体発熱板膜をベースとした赤外線エミッタが採用されている。製造には、標準的な微小電気機械システム(MEMS)プロセスで薄膜プロセスが行われ、このようなMEMSベースの赤外線エミッタは、良好な寿命で変調することが可能である。
【0004】
既知の装置と方法によって達成された利点にもかかわらず、様々な技術的課題が残っている。上述したチョッパーのような光学機械的セットアップは、分光計デバイスの寿命を縮める一方で、コストを増加させる可能性がある。より重要な点として、ハンドヘルドアプリケーションでは、機械的安定性が保証されない。これは、光学機械的セットアップがぐらついたり、回転周波数が変動したりする可能性があり、測定結果に悪影響を及ぼす可能性があるからである。したがって、特にハンドヘルドアプリケーションでは、光源の電気的変調が望ましい。
【0005】
しかし、白熱ランプは一般に電気的変調が難しい。熱放射体の時間応答は、半導体光源に比べて非常に遅く、1桁または2桁のHz範囲である。さらに、熱光源は正温度係数(PTC)を特徴としており、低温状態(ほとんどが周囲温度に等しい)における熱放射体の抵抗は非常に低い。したがって、電源投入時、放熱器を流れる電流は大きく、自然加熱につながり、制御されなければ、光源が破損する。
【0006】
上述のMEMSベースの赤外線エミッターでは、加熱膜上で達成可能な最高温度は1000℃未満である。したがって、その発光スペクトルは、赤外分光法には限られた範囲しか適していない。さらに、膜が大きいと熱容量が大きくなり、光源の時間応答が遅くなる。より高い帯域幅を実現するには、最高動作温度をさらに下げる必要がある。さらに、MEMSベースの赤外線エミッターの価格帯は、白熱灯の価格帯より2桁とは言わないまでも1桁高い。
【0007】
DE 10 2019 208748 A1は、放射線源を含む電子配置を記載している。制御された電圧コンバータは、放射線源をパルス持続時間オン状態で動作させるために放射線源にランプ電圧を供給し、電圧コンバータのフィードバック端子における基準電圧が実質的に一定に維持されるようにランプ電圧を調整するように構成される。電圧源はフィードバック端子に接続され、フィードバック端子を介して電圧コンバータの制御に作用するように、予め定義された時間プロファイルを有する時間依存制御電圧を供給するように構成される。電圧コンバータは、時間依存制御電圧の予め定義された時間プロファイルの関数としてランプ電圧の時間プロファイルを選択するように構成され、パルス継続時間の少なくとも90%の間、放射線源の電力が一定の電力値から25%以上逸脱しないように構成される。
【0008】
US 2007/278384 A1には、変調された放射源を駆動する方法と装置が記載されている。この方法は、光源のウォームアップ時間を最小化するように、光源を駆動する電力に影響を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】DE 10 2019 208748 A1
【特許文献2】US 2007/278384 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、公知の装置および方法の上述の技術的課題に直面する装置および方法を提供することである。具体的には、本発明の目的は、電気的に変調された熱放射線を良好な寿命で放射するための、特にモバイル用途向けの低コストの装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
合わせて実現できる本発明の有利な発展形態は、従属請求項および/または以下の明細書および詳細な実施形態に示されている。
【0012】
本発明の第1の態様では、装置が開示される。本装置は以下を備える。
【0013】
a. その温度の結果として変調された熱放射線を放出するように構成された少なくとも1つの放射線放出素子であって、該放射線放出素子が少なくとも1つの白熱ランプを有する、少なくとも1つの放射線放出素子;
b. 前記放射線放出素子に周期的時間依存性電圧を印加するように構成された少なくとも1つの電子回路であって、該電子回路は、前記周期的時間依存性電圧の振幅、デューティサイクル、および周波数のうちの1つまたは複数を制御するように構成され、前記放射線放出素子の温度および変調された熱放射線の周波数は、前記電子回路によって制御される印加された周期的時間依存性電圧に依存する、少なくとも1つの電子回路。
【0014】
本明細書で使用される場合、用語「放射線」は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味またはカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は、特に限定されないが、可視スペクトル範囲、紫外スペクトル範囲および赤外スペクトル範囲のうちの1つまたは複数の電磁放射線を指すことができる。ここで、「紫外線スペクトル範囲」という用語は、一般に、1nm~380nm、好ましくは100nm~380nmの波長を有する電磁放射線を指す。さらに、本書の日付時点で有効なバージョンの規格ISO-21348の一部に従って、「可視スペクトル範囲」という用語は、一般に、380 nmから760 nmのスペクトル範囲を指す。赤外スペクトル範囲」という用語は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられ、特別な意味やカスタマイズされた意味に限定されるものではない。この用語は、具体的には、限定することなく、760nm~1000μmの範囲の電磁放射線を指すことができ、760nm~1.5μmの範囲は通常「近赤外スペクトル範囲」(NIR)と表記され、1.5μm~15μmの範囲は「中赤外スペクトル範囲」(MidIR)と表記され、15μm~1000μmの範囲は「遠赤外スペクトル範囲」(FIR)と表記される。好ましくは、本発明の典型的な目的に使用される放射線は、赤外(IR)スペクトル範囲の放射線、より好ましくは、近赤外(NIR)および中赤外スペクトル範囲(MidIR)の放射線、特に1μm~5μm、好ましくは1μm~3μmの波長を有する放射線である。
【0015】
本明細書でさらに使用されるように、「放出する」という用語は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられるべきであり、特別な意味やカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、放射線を発生させ、送り出す任意のプロセスを指すことができる。本明細書で使用される場合、「放射線放出要素」という用語は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられるべきであり、特別な意味やカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、放射線を放出するように構成された原理的に任意の装置を指すことができる。
【0016】
放射線放出素子は、少なくとも1つの白熱ランプを有してもよい。本明細書で使用される場合、「白熱ランプ」という用語は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられ、特別な意味やカスタマイズされた意味に限定されるものではない。この用語は、特に限定されないが、加熱された発光フィラメントに基づく光源を指す場合がある。白熱ランプは、内部に配置された少なくとも1つのフィラメントを有する少なくとも1つの電球を有してもよい。フィラメントは、少なくとも1本のワイヤー、具体的にはコイル状ワイヤーを有してもよい。フィラメントは、タングステンを有してもよい。電球は、不活性ガスで満たされたガラス電球であってもよい。不活性ガスは、例えば、アルゴンと窒素の組み合わせを有してもよい。放射線放出素子に周期的時間依存性電圧を印加すると、電流がフィラメントを通って流れ、フィラメントの温度が上昇し、フィラメントが熱放射線を放出する。一例として、白熱ランプは、赤外スペクトル領域の光を放射するように構成されている場合がある。白熱ランプは、赤外ランプであってもよいし、赤外ランプを有してもよい。例えば、ハロゲンで充填されたタングステンフィラメントを使用してもよい。しかし、キセノン、アルゴンガスによる充填など、他の実施形態も可能である。
【0017】
「変調」という用語も広い用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられるべきであり、特別な意味やカスタマイズされた意味に限定されるものではない。この用語は、具体的には、光の少なくとも1つの特性、具体的には光の強度または位相の一方または両方を変化させるプロセス、具体的には周期的に変化させるプロセスを限定することなく指すことができる。変調は、最大値からゼロまでの完全変調であってもよいし、最大値からゼロより大きい中間値までの部分変調であってもよい。本明細書で使用する場合、「変調された放射線」という用語は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられ、特別な意味やカスタマイズされた意味に限定されるものではない。この用語は、具体的には、振幅や周波数などの少なくとも1つの変更された特性を有する放射線を限定することなく指すことができる。
【0018】
本明細書でさらに使用されるように、用語「熱放射線」は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味またはカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は、具体的には、限定されないが、物質中の粒子の熱運動によって発生する電磁放射線を指すことができる。
【0019】
「電子回路」という用語は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられ、特別な意味やカスタマイズされた意味に限定されるものではない。具体的には、抵抗器、インダクタ、キャパシタ、ダイオード、トランジスタなどの少なくとも2つの電子部品が、ワイヤやトレースなどの導電性要素を介して少なくとも部分的に相互接続されたアセンブリを指すことができる。
【0020】
本明細書で使用する場合、「電圧」という用語は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられ、特別な意味やカスタマイズされた意味に限定されるものではない。この用語は、特に限定されないが、2つの異なる点における電位の差を指すことがある。ただし、1点のみが示されている場合、電圧という用語は、地面に対して測定されたこの点の電位を指すことがある。デバイスを横切る電圧を指す場合、電圧という用語は、デバイスの遠位端における電位差を指すことがある。本明細書で使用される場合、放射線放出素子に「電圧を印加する」という用語は、放射線放出素子を横切って電圧を印加するとも表記されるが、広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられるべきであり、特別な意味やカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は、特に限定されないが、放射線放出素子の2点間に電位差を発生させることを指す場合がある。本装置は、放射線放出素子を横切って電圧を発生および印加するための少なくとも1つの電圧源を含んでいてもよい。本明細書で使用される場合、「電圧源」という用語は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられるべきであり、特別な意味やカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は、具体的には、電圧を発生および/または供給するように構成された少なくとも1つの任意のデバイスを限定することなく指すことができる。電圧源は、所定のまたは予め定義された電圧を維持するように構成された2端子デバイスであってもよい。
【0021】
本明細書で使用される場合、「周期的」という用語は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられるべきであり、特別な意味またはカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は、具体的には、限定されないが、規則的および/または等間隔で繰り返されるプロセスを指す場合がある。本明細書で使用される場合、用語「時間依存性電圧」は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられるべきであり、特別な意味またはカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は、具体的には、電圧Uが時間tの関数、すなわちU(t)である、またはそれに従うという事実を、限定することなく指すことができる。例えば、周期的な時間依存性電圧は、正弦波であってもよいし、矩形波電圧であってもよい。
【0022】
電子回路は、周期的な時間依存性電圧の振幅、デューティサイクル、および周波数のうちの1つ以上を制御するように構成される。本明細書で使用する場合、「振幅」という用語は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられ、特別な意味やカスタマイズされた意味に限定されるものではない。この用語は、限定されることなく、特に、周期的な時間依存性電圧の局所的および/または大域的な極値、特に最大値または最小値を指すことができる。本明細書で使用される「デューティサイクル」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられ、特別な意味またはカスタマイズされた意味に限定されるものではない。この用語は、特に限定されないが、信号またはシステムがアクティブである1周期の端数を指す場合がある。特に、デューティ・サイクルは、パルスの周期的なシーケンスの場合、パルスの持続時間を周期の持続時間で割った比率として計算されることがある。本明細書でさらに使用されるように、用語「周波数」は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられ、特別な意味またはカスタマイズされた意味に限定されるものではない。この用語は、特に限定されないが、経時的な繰り返し事象の発生回数を指す場合があり、および/または、期間持続時間の逆数として定義される場合がある。
【0023】
本明細書で使用される場合、周期的時間依存性電圧の振幅、デューティサイクルおよび周波数のうちの1つまたは複数を「制御する」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられるべきであり、特別な意味またはカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は、具体的には、周期的な時間依存性電圧の振幅、デューティサイクルおよび周波数のうちの1つまたは複数を監視および/または設定および/または調節することのうちの少なくとも1つの動作を限定することなく指すことができる。周期的時間依存性電圧の振幅、デューティサイクルおよび周波数のうちの1つまたは複数の制御は、目標振幅、目標デューティサイクルおよび/または目標周波数の設定を有する場合がある。制御することは、1つ以上の目標振幅、目標デューティサイクルおよび/または目標周波数を維持することを有してもよい。
【0024】
放射線放出素子の温度と変調された熱放射線の周波数は、電子回路によって制御される周期的な時間依存性の印加電圧に依存する。上記のように、フィラメントに電流が流れると、フィラメントが熱放射を放射する温度まで加熱されることがある。印加される周期的な時間依存性電圧は、例えば目標温度まで放射線放出素子を加熱させることがあり、これにより放射線放出素子は熱放射線を放出する。理論に束縛されることなく、放射線放出素子はジュール加熱を経験する可能性がある。加熱のパワーは、放射線放出素子に印加される周期的な時間依存性電圧と放射線放出素子を流れる電流との積に比例することがある。放射線放出素子を流れる電流は、オームの法則を用いて放射線放出素子の抵抗を介して表すことができる。この点で、放射線放出素子は、力率が1に近い、ほぼ純粋な抵抗負荷であってもよいし、またはそのような負荷を有してもよい。放射線放出素子の温度は、プランクの法則に従った周波数分布を有する放射を引き起こす可能性がある。したがって、放射線の分光放射輝度Bは、一般に、周波数νと温度Tの関数として以下のように定義することができる:
【数1】
【0025】
ここで、hはプランク定数、cは媒体依存の光速、kはボルツマン定数を示す。放射線放出素子の最大分光放射輝度は、赤外スペクトル範囲に位置することがある。
【0026】
電子回路は、印加される周期的時間依存電圧が単極性かつ正弦波になるように、周期的時間依存電圧を制御するように構成されてもよい。本明細書で使用される場合、「単極性」という用語は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられ、特別な意味やカスタマイズされた意味に限定されるものではない。この用語は、特に限定されないが、もっぱら一方向の電流を指すことがある。一例として、単極性電圧は、電流の流れ方向が決して向きを変えないように、常にゼロ以上であってもよいが、決して負ではない。さらに、単極性電圧は、符号が切り替わらない限り、経時的に一定であってもよいし、経時的に一定でなくてもよい。本明細書で使用する場合、「正弦波」という用語は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられ、特別な意味やカスタマイズされた意味に限定されるものではない。この用語は、特に限定されないが、縦軸に沿った対応する振幅、周波数、位相およびオフセットを有する正弦波によって表すことができる曲線進行を指すことがある。
【0027】
理論に縛られることなく、正弦波を非線形負荷に印加すると高調波が発生し、波形が歪むことがある。高調波は、電圧信号の周波数の倍数、特に整数倍である倍音である可能性がある。歪んだ周期電圧波形V(t)は、次のように書くことができる。
【0028】
【数2】
【0029】
ここで、Vは直流成分電圧、電圧Vは高調波hにおけるそれぞれの電圧、tは時間、ωは周波数、θは位相角である。波形の歪みは、“全高調波歪み”(Total Harmonic Distortion:THD)と表記される単一の量/指数として書くことができる。THDは、電圧または電流の歪みのうち、どの程度が信号の高調波に起因するかを特定するための既知のツールである。純粋な正弦波である電圧または電流は、単一の周波数からなる信号であるため、高調波歪みはない。周期的ではあるが純粋な正弦波ではない電圧や電流には、信号の高調波ひずみに寄与する高い周波数成分が含まれる。一般に、周期的な信号が正弦波のように見えないほど、高調波成分が強くなり、高調波歪みが大きくなる。
【0030】
電子回路は、周期的時間依存性電圧の全高調波歪みが0.01から0.2、好ましくは0.015から0.15、より好ましくは0.02から0.1の範囲になるように周期的時間依存性電圧を制御するように構成される。正弦波電圧の全高調波歪みTHDは、すべての高調波がフィルタリングされた印加電圧の二乗平均平方根(RMS)値の商として計算することができる。ここで、正弦波電圧の全高調波歪みは、
【数3】
と記載される基本周波数だけを残し、すべての高調波がフィルタリングされた印加電圧のRMS値と、
【数4】
と記載されるすべての高調波を残し、基本周波数がフィルタリングされた印加電圧のRMS値との商として、
【数5】
で計算される。
【0031】
電力システムでは、THDが低いほどピーク電流が少なく、加熱が少なく、電磁放射線が少ないことを意味する。変調された熱放射の全高調波ひずみは、その温度Tに起因する放射線放出素子の光出力Φと表記され
【数6】
として記載される基本周波数のみを残し、すべての高調波がフィルタリングされた光出力の二乗平均平方根(RMS)値と、
【数7】
として記載されるすべての高調波を残し、基本周波数がフィルタリングされた光出力のRMS値との商として、
【数8】
で計算される。
【0032】
電子回路は、放射線放出素子の光出力の全高調波歪みが0.05~0.4、好ましくは0.07~0.3、より好ましくは0.1~0.25の範囲となるように、放射線放出素子に印加される周期的な時間依存性電圧を制御するように構成されていてもよい。
【0033】
電子回路は、放射線放出素子を通る結果として生じる電流が、0.01から0.2、好ましくは0.015から0.15、より好ましくは0.02から0.1の範囲の全高調波歪みを有する周期的時間依存性にもなるように、周期的時間依存性電圧を制御するように構成することができる。
【0034】
電子回路は、放射線放出素子を流れる電流を測定するように構成された少なくとも1つの評価ユニットを含んでもよい。電流の状態に関する情報は、印加電圧を構成するために使用されてもよい。
【0035】
電子回路は、少なくとも1つの可変出力降圧レギュレータを有してもよい。
【0036】
本明細書でさらに使用されるように、用語「降圧レギュレータ」は、広い用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味またはカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は、具体的には、限定するものではないが、少なくとも1つの入力電圧を入力電圧より小さいか等しい少なくとも1つの出力電圧に変更するように構成されたDC-DCコンバータを指すことがある。上記および以下において、DCは直流を意味する。本明細書で使用する場合、「可変」という用語は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられ、特別な意味やカスタマイズされた意味に限定されるものではない。この用語は、特に限定されないが、変更可能および/または修正可能および/または編集可能な実体を指す場合がある。本明細書で使用される場合、「可変出力」という用語は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられ、特別な意味やカスタマイズされた意味に限定されない。この用語は具体的には、電圧や電流のような可変の物理量を伝達することを意味するが、これに限定されるものではない。物理量は、入力であった可能性があり、その後、変更された物理量が出力として渡される前に変更された可能性がある。一例として、入力電圧は、出力電圧として渡される前に、例えば低減されるなど、修正される可能性がある。本明細書で使用する場合、「可変出力降圧レギュレータ」という用語は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられ、特別な意味やカスタマイズされた意味に限定されるものではない。この用語は、特に限定されるものではないが、少なくとも1つの可変出力を提供する降圧レギュレータを指すことがある。一例として、降圧レギュレータは入力電圧を受け取り、入力電圧を可変目標電圧まで低下させ、目標電圧を出力として提供することができる。あるいは、降圧レギュレータは、入力、例えば電圧および/または電流を変更せずに、単に出力として渡すこともできる。
【0037】
電子回路は、非変調電源電圧VSupplyを降圧レギュレータに印加するように構成された少なくとも1つの第1の入力電圧源を含むことができる。本明細書で使用される場合、「入力電圧源」という用語は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられ、特別な意味やカスタマイズされた意味に限定されるものではない。この用語は、特に限定されることなく、電圧源を指す場合があり、電圧源によって生成または提供される電圧は、さらなるデバイスまたは電子素子の入力として使用される。本明細書でさらに使用される場合、「供給電圧」という用語は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられるべきであり、特別またはカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は具体的には、限定されることなくデバイスまたは電子素子の入力として使用される電圧を指し、この電圧はデバイスまたは電子素子の電源として機能する場合がある。供給電圧は、デバイスまたは電子素子によって変更される場合があり、このさらなる変更のための電力は、供給電圧によって供給される場合がある。供給電圧は直流電圧であってもよい。第1の入力電圧源は、降圧レギュレータの入力に接続される。非変調電源電圧VSupplyは、可変出力降圧レギュレータの入力として使用することができる。
【0038】
降圧レギュレータは、少なくとも1つの降圧コンバータを有してもよい。降圧コンバータは、コントローラ、スイッチ、例えばトランジスタ、およびダイオードのうちの少なくとも1つを有してもよい。降圧コンバータは、少なくとも1つの電圧入力を含む。降圧レギュレータは、少なくとも1つの入力電圧、特に非変調電源電圧Vsupplyを受けるように構成される。具体的には、一定の直流電源電圧を降圧コンバータの電圧入力に印加することができる。降圧コンバータは、インダクタ接続と出力フィードバック接続の少なくとも一方を有する。インダクタ接続は、降圧コンバータを降圧レギュレータの少なくとも1つのインダクタに接続するように構成される。インダクタは、降圧レギュレータの少なくとも1つのキャパシタに接続される場合がある。キャパシタは接地されていてもよい。降圧コンバータでは、少なくとも1つのコントローラが、少なくとも1つの入力電圧を変更するために、少なくとも1つのスイッチのオンとオフを、典型的には毎秒数千回から数百万回、定期的に切り替えるように構成され得る。さらに、降圧コンバータの少なくとも1つのダイオードは、入力電流を遮断するように構成され、それにより、スイッチがオンに切り替えられると、入力電流は降圧レギュレータの少なくとも1つのインダクタを通って降圧レギュレータの少なくとも1つのキャパシタに流れるように強制される。インダクタは、スイッチがオンされている間、電気エネルギーを蓄積するように構成されていてもよい。キャパシタは、スイッチがオンされている間、電荷を蓄積するように構成されていてもよい。ダイオードはさらに、スイッチがオフのときに、インダクタによって誘導される電流を通すように構成されてもよく、インダクタによって誘導される電流は、キャパシタからの電荷によって供給される。
【0039】
降圧レギュレータは、少なくとも1つの抵抗ネットワークを有してもよい。本明細書で使用される場合、「ネットワーク」という用語は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられ、特別な意味やカスタマイズされた意味に限定されるものではない。この用語は、特に限定されないが、少なくとも部分的に相互接続された構成要素のグループを指す場合がある。本明細書でさらに使用される場合、「抵抗器」という用語は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられ、特別な意味やカスタマイズされた意味に限定されるものではない。この用語は、具体的には、限定するものではないが、電気抵抗を実装するように構成された電気装置を指す場合がある。抵抗は、デバイスを横切る電圧をデバイスを通過する電流で割った比率として定義することができる。本明細書で使用する場合、「抵抗ネットワーク」という用語は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられるべきであり、特別な意味やカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は、特に限定されないが、少なくとも1つの抵抗器からなるネットワークを指すことがある。抵抗器ネットワークは、例えば、抵抗器および/または抵抗器ネットワークのさらなる構成要素を少なくとも部分的に互いに接続するためのワイヤおよび/またはトレースをさらに含んでもよい。
【0040】
例えば、抵抗ネットワークは、キャパシタと並列に接続された少なくとも1つの第1抵抗Rを有してもよい。抵抗ネットワークはさらなる抵抗器を有してもよい。
【0041】
電子回路は、印加電圧VAppliedとして放射線放出素子に印加され得る可変降圧レギュレータの出力を変調するように構成された少なくとも1つの可変電子部品を含んでいてもよい。本明細書で使用される場合、「可変電子部品」という用語は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられ、特別な意味やカスタマイズされた意味に限定されるものではない。この用語は、特に限定されないが、可変の物理的特性を有する電子部品を指す場合がある。可変電子部品は、可変抵抗および/または可変電圧源であってもよいし、可変抵抗および/または可変電圧源を有してもよい。
【0042】
可変電子部品は、少なくとも1つの可変電圧源、特に変調電圧源を有し得る。可変電圧源は、周期的な時間依存性の入力電圧VInputを抵抗ネットワークに印加するように構成され、それによって可変降圧レギュレータの出力を周期的な時間依存性の電圧に変換する。周期的な時間依存性電圧は、印加電圧VAppliedとして放射線放出素子に印加することができる。上記のように、可変出力の降圧レギュレータを抵抗ネットワークに接続してもよい。降圧レギュレータには一定のDC電源電圧が印加される。可変電圧源は、放射線放出素子に印加される降圧レギュレータの出力も変調電圧となるように、抵抗ネットワークにも接続された変調電圧を生成するように構成された第2の入力電圧源として使用することができる。例えば、マイクロコントローラのDAC(Digital-Analog-Converter)出力を可変電圧源として使用することができる。この実施形態では、抵抗ネットワークは、R、R、Rと示される3つの抵抗器を有すことができる。第1の抵抗器Rはキャパシタと並列に接続される場合がある。抵抗Rは、抵抗Rと直列に接続されてもよい。抵抗Rは接地されてもよい。抵抗R、Rは分圧器を形成してもよい。抵抗Rは抵抗Rに接続されてもよく、特に分圧器の出力は抵抗Rに接続されてもよい。抵抗Rは可変電圧源に接続されてもよい。可変電圧源の出力は、出力フィードバック接続に加算されてもよい。
【0043】
可変電子部品は、少なくとも1つの可変抵抗器から構成されてもよい。可変抵抗器は、その抵抗RVariableを時間の関数として周期的に変化させるように構成され、それによって可変降圧レギュレータの出力を周期的な時間に依存する電圧に変換し、この電圧を印加電圧VAppliedとして放射線放出素子に印加することができる。本明細書で使用される場合、「可変抵抗器」という用語は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられ、特別な意味やカスタマイズされた意味に限定されるものではない。この用語は、特に限定されることなく、可変抵抗を有する抵抗器、具体的には、時間にわたって連続的に可変である抵抗器を指す場合がある。可変抵抗器は、連続的な抵抗範囲にわたってその抵抗値を変化させるように構成されていてもよい。可変抵抗器は、複数の離散的な抵抗値の間でその抵抗値を変化させるように構成されてもよい。可変抵抗器は、電子回路に可変電圧降下を引き起こす可能性がある。一例として、可変出力降圧レギュレータの一定の出力電圧は、時間の経過とともに可変抵抗器での可変電圧降下が発生し、その結果、周期的な時間依存電圧が発生する可能性がある。可変抵抗器は接地されていてもよい。可変抵抗器は、抵抗器ネットワークの少なくとも1つのさらなる抵抗器、具体的には抵抗器R、および降圧コンバータの出力フィードバック接続に直列に接続され得る。
【0044】
可変抵抗器は、デジタルポテンショメータで構成することができる。本明細書で使用される場合、「ポテンショメータ」という用語は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられ、特別な意味やカスタマイズされた意味に限定されるものではない。この用語は、特に限定されないが、調整可能な分圧器を形成する摺動接点または回転接点を備えた三端子抵抗器を指す場合がある。したがって、本明細書で使用される場合、「デジタル・ポテンショメータ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられ、特別な意味やカスタマイズされた意味に限定されるものではない。この用語は、特に限定されないが、ポテンショメータのアナログ機能を模倣するデジタル制御電子部品を指すことがある。
【0045】
本発明のさらなる態様において、分光計装置が開示される。この分光計装置は、以下を備える。
【0046】
i. 上記で開示された実施形態のいずれか1つまたは以下でさらに詳細に開示される本発明による少なくとも1つの装置であって、該装置は、少なくとも1つの測定対象を照明するように構成される、少なくとも1つの装置;
ii. 測定対象物によって放射された少なくとも1つの入射光ビームを構成波長のスペクトルに分離するように構成された少なくとも1つのフィルタ要素;
iii. 光学センサのマトリックスを有する少なくとも1つのセンサ素子であって、光学センサはそれぞれ感光領域を有し、各光学センサは、感光領域の照明に応答して少なくとも1つのセンサ信号を生成するように構成されている、少なくとも1つのセンサ素子;および
iv. センサ信号を評価することにより、スペクトルに関連する少なくとも1つの情報項目を決定するように構成された少なくとも1つの評価装置。
【0047】
示されるように、分光計装置は、本発明による少なくとも1つの装置を有する。したがって、装置の定義および実施形態に関しては、装置の説明を参照されたい。装置は、少なくとも1つの測定対象物を照明するように構成されている。
【0048】
本明細書で使用される場合、「分光計装置」という用語は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられ、特別な意味やカスタマイズされた意味に限定されるものではない。この用語は、具体的には、波長間隔などのスペクトルの対応する波長またはその分割に関する信号強度を記録することができる装置を限定することなく指すことができ、信号強度は、好ましくは、さらなる評価に使用され得る電気信号として提供され得る。本明細書でさらに使用されるように、用語「対象物」は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味またはカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は、具体的には、限定されることなく、生物体および非生物体から選択される試料または任意体を指すことができる。したがって、一例として、少なくとも1つの対象物は、1つ以上の物品および/または物品の1つ以上の部分から構成されてもよく、少なくとも1つの物品またはその少なくとも一部分は、調査に適したスペクトルを提供し得る少なくとも1つの成分を含んでいてもよい。加えてまたは代替的に、対象物は、1つ以上の生物および/またはその1つ以上の部分、例えば、人間、例えば、使用者、および/または動物の1つ以上の身体部分であってもよいし、それらを含んでいてもよい。したがって、本明細書で使用される場合、「測定対象」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられるべきであり、特別な意味またはカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は、特に限定されることなく、測定される対象物、例えばスペクトルが記録される対象物を指し、この対象物は、原理的に任意の特性、例えば任意の光学特性または任意の形状を有する。
【0049】
分光計装置は、少なくとも1つのフィルタ素子を備える。フィルタ素子は、測定対象物によって放出された少なくとも1つの入射光ビームを構成波長のスペクトルに分離するように構成される。本明細書で使用される場合、用語「フィルタ素子」は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられるべきであり、特別な意味やカスタマイズされた意味に限定されるものではない。この用語は、具体的には、限定されないが、入射光を構成波長信号のスペクトルに分離するように適合された光学素子を指すことがある。例えば、フィルタ素子は、少なくとも1つのプリズムであってもよいし、少なくとも1つのプリズムを有していてもよい。例えば、フィルタ素子は、長さ可変フィルタのような少なくとも1つの光学フィルタ、すなわち、複数のフィルタ、好ましくは複数の干渉フィルタを有する光学フィルタであってよく、および/または有していてもよく、これらのフィルタは、特に、フィルタの連続的な配置で提供されてよい。ここで、フィルタの各々は、フィルタ上の各空間位置に対して、好ましくは連続的に、長さ可変フィルタの受光面上の、通常、用語「長さ」によって示される単一の次元に沿って、可変中心波長を有するバンドパスを形成することができる。好ましい例では、可変中心波長は、フィルタ上の空間位置の線形関数であってもよく、この場合、長さ可変フィルタは、通常、「線形可変フィルタ」またはその略語「LVF」と呼ばれる。しかしながら、可変中心波長とフィルタ上の空間位置との間の関係には、他の種類の関数が適用され得る。ここで、フィルタは、特に、視覚および/または赤外(IR)スペクトル範囲内、特に、より詳細に後述するように近赤外(NIR)スペクトル範囲内において高い光学的透明性を示し得る少なくとも1つの材料を有する透明基板上に配置されてもよく、それによって、フィルタの長さに沿ってフィルタのスペクトル特性、特に連続的に変化するスペクトル特性を変化させることが達成され得る。特に、フィルタエレメントは、透明基板上に少なくとも1つの応答コーティングを担持するように適合されるウェッジフィルタであってもよく、応答コーティングは、空間的に可変な特性、特に、空間的に可変な厚さを示すことができる。しかしながら、他の材料を有する、またはさらなる空間的に可変な特性を示す他の種類の長さ可変フィルターも実現可能である。入射光ビームの法線入射角において、長さ可変フィルタによって構成されるようなフィルタの各々は、特定のフィルタの中心波長の数分の一、典型的には数パーセントに相当するバンドパス幅を有することができる。一例として、1400nmから1700nmの波長範囲と1%のバンドパス幅を有する長さ可変フィルタの場合、法線入射角におけるバンドパス幅は14nmから17nmまで変化する可能性がある。しかし、他の例も可能である。長さ可変フィルタのこの特定の設定の結果、バンドパス幅によって示される許容範囲内で、フィルタ上の特定の空間位置に割り当てられている中心波長に等しい波長を有する入射光のみが、特定の空間位置で長さ可変フィルタを通過することができる。したがって、中心波長±バンドパス幅の1/2に等しい「透過波長」が、長さ可変フィルタ上の各空間位置に対して定義され得る。言い換えれば、透過波長で長さ可変フィルタを透過しない可能性のある全ての光は、長さ可変フィルタの受光面によって吸収されるか、または大部分が反射される可能性がある。その結果、長さ可変フィルタの透過率は変化し、入射光をスペクトルに分離することができる。
【0050】
本明細書で使用される場合、「光ビーム」という用語は広い用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられ、特別な意味やカスタマイズされた意味に限定されるものではない。この用語は、特に限定されないが、放射線の指向性投射を指すことがある。本明細書でさらに使用される場合、用語「スペクトル」は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味を与えられるべきであり、特別な意味やカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は、特に限定されないが、電磁スペクトルまたは波長スペクトルを指す場合がある。具体的には、スペクトルは、視覚スペクトル範囲および/または赤外(IR)スペクトル範囲、特に近赤外(NIR)スペクトル範囲の一部であってよい。ここで、スペクトルの各部分は、信号波長および対応する信号強度によって定義される光信号によって構成され得る。
【0051】
分光計装置は、光学センサのマトリクスを有する少なくとも1つのセンサ素子を有する。光学センサはそれぞれ感光領域を有する。各光センサは、感光領域の照明に応答して少なくとも1つのセンサ信号を生成するように構成される。本明細書で使用される場合、「光センサ」という用語は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられ、特別な意味やカスタマイズされた意味に限定されるものではない。この用語は、特に限定されないが、少なくとも1つの光ビームによって生成される照明および/または光スポットを検出するためなどの、光ビームを検出するための感光デバイスを指す場合がある。
【0052】
本明細書でさらに使用される場合、「感光領域」という用語は、広い用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられ、特別な意味またはカスタマイズされた意味に限定されない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つの光ビームによって外部から照明される可能性があり、その照明に応答して少なくとも1つのセンサ信号が生成される光センサの領域を指す。感光領域は、具体的には、それぞれの光学センサの表面上に配置されてもよい。しかし、他の実施形態も可能である。したがって、本明細書で使用される場合、用語「各々が少なくとも1つの感光領域を有する光センサ」は、広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられるべきであり、特別な意味またはカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は、具体的には、限定するものではないが、各々が1つの感光領域を有する複数の単一光学センサを備える構成、および複数の感光領域を有する1つの複合光学センサを備える構成を指すことがある。
【0053】
光センサは、1つの出力信号を生成するように構成された感光素子を有してもよい。分光計装置が複数の光学センサを有する場合、各光学センサは、照明され得る正確に1つの感光領域を提供することによって、その照明に応答して正確に1つの均一なセンサ信号が光学センサ全体に対して生成されるように、正確に1つの感光領域がそれぞれの光学センサに存在するように具現化され得る。このように、各光学センサは単一エリア光学センサであってもよい。しかし、単一エリア光学センサの使用は、検出器のセットアップを特に簡単かつ効率的にする。したがって、一例として、それぞれが正確に1つの感応領域を有する市販のシリコンフォトダイオードなどの市販の光センサをセットアップに使用することができる。しかしながら、他の実施形態も実現可能である。光学センサは、画素化光学デバイスの一部であってもよいし、画素化光学デバイスを構成してもよい。例えば、光学センサは、少なくとも1つのCCDおよび/またはCMOSまたはデバイスであってもよく、および/または有してもよい。一例として、光学センサは、ピクセルのマトリクスを有する少なくとも1つのCCDおよび/またはCMOSデバイスの一部であるかそれを構成してもよく、各ピクセルは感光領域を形成する。
【0054】
光学センサは、具体的には、少なくとも1つの光検出器、好ましくは無機光検出器、より好ましくは無機半導体光検出器、最も好ましくはシリコン光検出器であってもよいし、それらを有してもよい。具体的には、光センサは、赤外スペクトル範囲において感度を有することができる。マトリクスのすべての画素、またはマトリクスの光学センサの少なくとも一群は、特に同一であってもよい。マトリクスの同一の画素のグループは、異なるスペクトル範囲に対して設けられてもよく、または全ての画素がスペクトル感度の点で同一であってもよい。特に、マトリクスの同一のピクセルのグループは、異なるスペクトル範囲に対して提供されてもよく、またはスペクトル感度の点ですべてのピクセルが同一であってもよい。さらに、画素は、サイズにおいて、および/または、その電子もしくは光電子特性に関して同一であってもよい。具体的には、光学センサは、赤外スペクトル範囲、好ましくは700nm~3.0μmの範囲において感度を有する少なくとも1つの無機フォトダイオードであってもよく、またはこれらを有してもよい。具体的には、光学センサは、シリコンフォトダイオードが適用可能な近赤外領域の一部、特に700nmから1100nmの範囲で感度を有することができる。光学センサに使用され得る赤外線光学センサは、市販の赤外線光学センサであってもよく、例えば、ドイツ、D-67056 Ludwigshafen am RheinのtrinamiX GmbHからHertzstueckTM という商品名で市販されている赤外線光学センサであってもよい。したがって、一例として、光学センサは、固有光起電力タイプの少なくとも1つの光学センサ、より好ましくは、Geフォトダイオード、InGaAsフォトダイオード、拡張InGaAsフォトダイオード、InAsフォトダイオード、InSbフォトダイオード、HgCdTeフォトダイオードからなる群から選択される少なくとも1つの半導体フォトダイオードを有してもよい。
【0055】
追加的または代替的に、光センサは、外因性光起電力タイプの少なくとも1つの光センサ、より好ましくは、Ge:Auフォトダイオード、Ge:Hgフォトダイオード、Ge:Cuフォトダイオード、Ge:Znフォトダイオード、Si:Gaフォトダイオード、Si:Asフォトダイオードからなる群から選択される少なくとも1つの半導体フォトダイオードを含むことができる。追加的または代替的に、光センサは、PbSまたはPbSeセンサーなどの少なくとも1つの光伝導性センサ、ボロメータ、好ましくはVOボロメータおよびアモルファスSiボロメータからなる群から選択されるボロメータを含むことができる。
マトリックスは、独立した光学センサのような独立した画素で構成されてもよい。したがって、無機フォトダオードのマトリックスを構成してもよい。しかしながら、代替的に、CCD検出器チップのような複数のCCD検出器、および/またはCMOS検出器チップのようなCMOS検出器など、市販のマトリックスを使用してもよい。したがって、一般に、光学センサは、少なくとも1つのCCDおよび/またはCMOSデバイスであってよく、または有してもよく、および/または検出器の光学センサは、センサアレイを形成してよく、または、上述のマトリックスのようなセンサアレイの一部であってよい。したがって、一例として、光学センサは、m行n列を有する矩形アレイのような画素のアレイを有してもよく、および/または構成してもよい。ここで、m、nは、それぞれ独立に、正の整数である。例えば、センサ素子は、バイセルのように行および/または列に配置された少なくとも2つの光センサを有してもよい。例えば、センサ素子は、光センサの2x2マトリックスを有する象限ダイオードシステムであってもよい。例えば、1つ以上の列と1つ以上の行が与えられ、すなわち、n>1、m>1である。したがって、一例として、nは2から16またはそれ以上であってもよく、mは2から16またはそれ以上であってもよい。好ましくは、行数と列数の比は1に近い。一例として、nおよびmは、m/n=1:1、4:3、16:9または同様のものを選択することによって0.3≦m/n≦3となるように選択されてもよい。一例として、配列は、m=2、n=2またはm=3、n=3などを選択することにより、等しい数の行と列を有する正方配列であってもよい。
【0056】
行列は、具体的には、少なくとも1つの行、好ましくは複数の行、および複数の列を有する矩形行列であってよい。一例として、行および列は本質的に垂直に配向されてもよい。本明細書で使用する場合、「本質的に垂直」という用語は、例えば±20°以下の公差、好ましくは±10°以下の公差、より好ましくは±5°以下の公差を有する垂直配向の状態を指す。同様に、「本質的に平行」という用語は、例えば±20°以下の公差、好ましくは±10°以下の公差、より好ましくは±5°以下の公差を有する平行配向の状態を指す。したがって、一例として、20°以下、具体的には10°以下、さらには5°以下の公差が許容され得る。広い視野範囲を提供するために、マトリックスは、具体的には、少なくとも10行、好ましくは少なくとも500行、より好ましくは少なくとも1000行を有することができる。同様に、マトリックスは、少なくとも10列、好ましくは少なくとも500列、より好ましくは少なくとも1000列を有することができる。マトリックスは、少なくとも50個の光センサ、好ましくは少なくとも100000個の光センサ、より好ましくは少なくとも5000000個の光センサを有してもよい。マトリックスは、数メガピクセルの範囲のピクセル数を有してもよい。しかしながら、他の実施形態も実現可能である。したがって、軸回転対称性が期待されるセットアップでは、ピクセルとも呼ばれ得るマトリクスの光センサの円形配置または同心円配置が好ましい場合がある。
【0057】
好ましくは、感光領域は、分光計装置の光軸に対して本質的に垂直に配向され得る。光軸は、まっすぐな光軸であってもよいし、1つまたは複数の偏向素子を使用することによって、および/または1つまたは複数のビームスプリッタを使用することによって、曲げられてもよいし、分割されてもよく、後者の場合、本質的に垂直な配向は、光学セットアップのそれぞれの分岐またはビーム経路における局所的な光軸を指すことがある。
本明細書でさらに使用されるように、「センサ信号」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられるべきであり、特別な意味またはカスタマイズされた意味に限定されるものではない。この用語は、具体的には、限定されないが、照明に応答して光センサおよび/または光センサの少なくとも1つの画素によって生成される信号を指すことがある。具体的には、センサ信号は、少なくとも1つのアナログ電気信号および/または少なくとも1つのデジタル電気信号のような、少なくとも1つの電気信号であってもよいし、少なくとも1つの電気信号を有してもよい。より具体的には、センサ信号は、少なくとも1つの電圧信号および/または少なくとも1つの電流信号であってもよく、またはこれらを有してもよい。より具体的には、センサ信号は、少なくとも1つの光電流を有してもよい。さらに、生のセンサ信号が使用されてもよいし、検出器、光センサ、または任意の他の要素が、センサ信号を処理または前処理するように適合されてもよく、それによって、フィルタリングなどによる前処理など、センサ信号としても使用され得る二次センサ信号が生成されてもよい。
【0058】
分光計装置は、センサ信号を評価することによってスペクトルに関連する少なくとも1つの情報項目を決定するように構成された少なくとも1つの評価装置を備える。本明細書でさらに使用されるように、用語「評価装置」は広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味が与えられるべきであり、特別な意味またはカスタマイズされた意味に限定されるべきものではない。この用語は、具体的には、好ましくは、少なくとも1つのデータ処理デバイスを使用することによって、より好ましくは、少なくとも1つのプロセッサおよび/または少なくとも1つの特定用途向け集積回路を使用することによって、命名された動作を実行するように適合された任意のデバイスを、限定することなく指すことができる。したがって、一例として、少なくとも1つの評価デバイスは、多数のコンピュータコマンドを有するソフトウェアコードが格納された少なくとも1つのデータ処理装置を有してもよい。評価デバイスは、命名された操作の1つまたは複数を実行するための1つまたは複数のハードウェア要素を提供することができ、および/または、命名された操作の1つまたは複数を実行するための、その上で実行されるソフトウェアを有する1つまたは複数のプロセッサを提供することができる。一例として、評価デバイスは、評価を実行するように構成された1つまたは複数のコンピュータ、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などの1つまたは複数のプログラマブルデバイスを有してもよい。しかし、追加的または代替的に、評価装置は、ハードウェアによって全体的または部分的に具現化されることもある。少なくとも1つの情報項目は、例えば、電子的、視覚的、音響的、またはそれらの任意の組み合わせで提供することができる。さらに、少なくとも1つの情報項目は、分光計装置のデータ記憶デバイスまたは別個の記憶デバイスに記憶されてもよく、および/または、無線インターフェースおよび/または有線インターフェースなどの少なくとも1つのインターフェースを介して提供されてもよい。
【0059】
本発明のさらなる態様では、上記に開示された実施形態のいずれか1つまたは以下にさらに詳細に開示される実施形態による少なくとも1つの放射線放出素子を含む装置を動作させる方法が提案される。この方法は、以下のステップを備える:
i. 前記放射線放出素子の少なくとも1つに、少なくとも1つの周期的な時間依存性電圧を印加するステップと
ii. 電子回路の少なくとも1つで、周期的な時間依存性電圧の振幅、デューティサイクル、周波数の1つ以上を制御するステップ。
【0060】
方法ステップは、所定の順序で実行することができる。しかしながら、異なる順序も可能であることに留意されたい。本方法は、列挙されていないさらなる方法ステップを含んでいてもよい。さらに、1つ以上の方法ステップを1回または繰り返し実施してもよい。さらに、2つ以上の方法ステップを同時にまたは適時に重複して実施してもよい。方法のさらなる定義および実施形態については、少なくとも1つの放射線放出素子を含む装置の定義および実施形態を参照することができる。
【0061】
本明細書においてさらに開示され、提案されるのは、プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行される場合に、本明細書に包含される実施形態の1つまたは複数において本発明による方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラムである。具体的には、コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能なデータキャリア上および/またはコンピュータ読み取り可能な記憶媒体上に記憶され得る。
【0062】
本明細書で使用する場合、「コンピュータ読み取り可能なデータ担体」および「コンピュータ読み取り可能な記憶媒体」という用語は、具体的には、その上にコンピュータ実行可能な命令が記憶されたハードウェア記憶媒体などの非一過性のデータ記憶手段を指す場合がある。コンピュータ読取可能データ担体または記憶媒体は、具体的には、ランダムアクセスメモリ(RAM)および/または読取専用メモリ(ROM)などの記憶媒体であるか、または記憶媒体を有し得る。
【0063】
したがって、具体的には、上記に示したような方法ステップの1つ、1つ以上、あるいはすべてを、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用して、好ましくはコンピュータプログラムを使用して実行することができる。
【0064】
本明細書においてさらに開示され提案されるのは、プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されるときに、本明細書に包含される実施形態の1つまたは複数において本発明による方法を実行するための、プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品である。具体的には、プログラムコード手段は、コンピュータ読み取り可能なデータ担体上および/またはコンピュータ読み取り可能な記憶媒体上に記憶され得る。
【0065】
本明細書でさらに開示および提案されるのは、その上に格納されたデータ構造を有するデータ担体であり、このデータ担体は、コンピュータまたはコンピュータネットワーク、例えばコンピュータまたはコンピュータネットワークのワーキングメモリまたはメインメモリにロードされた後、本明細書で開示される1つまたは複数の実施形態による方法を実行することができる。
【0066】
本明細書でさらに開示され提案されるのは、本明細書で開示される1つまたは複数の実施形態による方法を、プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されるときに実行するために、機械可読担体上に格納されたプログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品である。本明細書において、コンピュータプログラム製品とは、取引可能な製品としてのプログラムを指す。製品は、一般に、紙媒体などの任意の形式、またはコンピュータ読み取り可能なデータ担体上および/またはコンピュータ読み取り可能な記憶媒体上に存在することができる。具体的には、コンピュータ・プログラム製品は、データ・ネットワークを介して配布されることがある。
【0067】
最後に、本明細書で開示および提案されるのは、本明細書で開示される1つまたは複数の実施形態による方法を実行するための、コンピュータシステムまたはコンピュータネットワークによって読み取り可能な命令を含む変調データ信号である。
【0068】
本発明のコンピュータ実装の態様を参照すると、本明細書に開示された実施形態の1つまたは複数による方法の方法ステップの1つまたは複数、あるいは方法ステップのすべてさえも、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用して実行することができる。したがって、一般に、データの提供および/または操作を含む方法ステップのいずれもが、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用して実行されてよい。一般に、これらの方法ステップは、典型的には、サンプルの提供および/または実際の測定の実行の特定の態様など、手作業を必要とする方法ステップを除く、方法ステップのいずれかを含むことができる。
【0069】
具体的には、本明細書にさらに開示されているのは:
- 少なくとも1つのプロセッサを含むコンピュータまたはコンピュータネットワークであって、プロセッサが、本明細書に記載の実施形態の1つによる方法を実行するように適合されている、コンピュータまたはコンピュータネットワーク、
- データ構造がコンピュータ上で実行されている間に、本明細書で説明する実施形態の1つによる方法を実行するように適合された、コンピュータにロード可能なデータ構造、
- コンピュータプログラムであって、該コンピュータプログラムは、該プログラムがコンピュータ上で実行されている間、本明細書に記載の実施形態の1つによる方法を実行するように適合されている、コンピュータプログラム、
- コンピュータプログラムがコンピュータ上またはコンピュータネットワーク上で実行されている間に、本明細書に記載の実施形態の1つによる方法を実行するためのプログラム手段を含むコンピュータプログラム、
- 前記実施形態に係るプログラム手段を備えるコンピュータプログラムであって、前記プログラム手段は、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されている、コンピュータプログラム、
- 記憶媒体であって、データ構造が記憶媒体に記憶されており、データ構造が、コンピュータまたはコンピュータネットワークの主および/または作業記憶装置にロードされた後に、本明細書に記載の実施形態の1つによる方法を実行するように適合されている、記憶媒体と、
- プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品であって、プログラムコード手段がコンピュータ上またはコンピュータネットワーク上で実行される場合、本明細書に記載の実施形態の1つによる方法を実行するために、プログラムコード手段が記憶媒体に記憶され得るか、または記憶媒体に記憶されている、コンピュータプログラム製品、である。
【0070】
本発明のさらなる態様では、分光計デバイスを参照して上記または以下にさらに詳細に開示される実施形態のいずれか1つによる分光計デバイスの、以下からなる群から選択される使用目的のための使用が提案される:赤外線検出アプリケーション;熱検出アプリケーション;温度計アプリケーション;熱探索アプリケーション;炎検出アプリケーション;火災検出アプリケーション;煙検出アプリケーション;温度検出アプリケーション;分光アプリケーション;排気ガス監視アプリケーション;燃焼プロセス監視アプリケーション;公害監視アプリケーション;工業プロセス監視アプリケーション;化学プロセス監視アプリケーション;からなる群から選択される使用目的のために、分光計デバイスに言及する;食品加工プロセス監視アプリケーション;水質監視アプリケーション;大気質監視アプリケーション;品質管理アプリケーション;温度管理アプリケーション;運動制御アプリケーション;排気制御アプリケーション;ガス検知アプリケーション;ガス分析アプリケーション;運動検知アプリケーション;化学検知アプリケーション;モバイルアプリケーション;医療アプリケーション;モバイル分光アプリケーション;食品分析アプリケーション。
【0071】
本発明による装置および方法は、既知の方法、ステーションおよびシステムに対して多くの利点を提供することができる。特に、本発明は、近赤外分光法のための最大達成可能動作温度を有する放射線放出素子を提供することを可能にする。放射線放出素子を駆動する電気回路は、MEMSベースのIRエミッタと比較して、高い動作温度(具体的には2000K以上)、および良好な寿命(具体的には1Mパルス以上)とともに、高い周波数(具体的には10Hz以上)で、高い変調深度(具体的には50%以上)を可能にすることができる。
【0072】
本明細書で使用される場合、用語「持つ(have)」、「有する(comprise)」、「含む(include)」、またはそれらの任意の文法的変形は、非排他的な意味で使用される。したがって、これらの用語は、これらの用語によって導入される特徴以外に、この文脈で説明される実体においてさらなる特徴が存在しない状況も、1つ以上のさらなる特徴が存在する状況も指すことがある。一例として、“A has B”、“A comprises B ”および “A includes B ”という表現は、Bの他にA中に他の要素が存在しない状況(すなわち、AがBのみから構成される状況)と、Bの他に、要素C、要素CおよびD、またはさらに他の要素など、1つまたは複数のさらなる要素が実体A中に存在する状況の両方を指すことがある。
【0073】
さらに、用語「少なくとも1つ」、「1つ以上」または特徴もしくは要素が1回または2回以上存在する可能性があることを示す類似の表現は、それぞれの特徴または要素を紹介する際に、通常1回のみ使用されることに留意されたい。本明細書でさらに使用されるように、ほとんどの場合、それぞれの特徴または要素に言及する場合、それぞれの特徴または要素が1回または複数回存在する可能性があるという事実にかかわらず、「少なくとも1つ」または「1つ以上」という表現は繰り返されない。
【0074】
さらに、本明細書で使用される場合、用語「好ましくは」、「より好ましくは」、「特に」、「より特に」、「具体的に」、「より具体的に」または同様の用語は、代替可能性を制限することなく、任意の特徴と組み合わせて使用される。したがって、これらの用語によって導入される特徴は、任意選択的な特徴であり、特許請求の範囲を何ら制限することを意図するものではない。本発明は、当業者が認識するように、代替的な特徴を用いて実施することができる。同様に、「本発明の実施形態において」または類似の表現によって導入される特徴は、本発明の代替的な実施形態に関するいかなる制限もなく、本発明の範囲に関するいかなる制限もなく、そのように導入される特徴を本発明の他の任意または非任意の特徴と組み合わせる可能性に関するいかなる制限もなく、任意の特徴であることが意図される。
【0075】
全体として、本発明の文脈において、以下の実施形態が好ましいと考えられる:
実施形態1 以下のものを有する装置。
【0076】
a. その温度の結果として変調された熱放射線を放出するように構成された少なくとも1つの放射線放出素子であって、該放射線放出素子が少なくとも1つの白熱ランプからなる、少なくとも1つの放射線放出素子;
b. 前記放射線放出素子に周期的時間依存性電圧を印加するように構成された少なくとも1つの電子回路であって、前記電子回路は、前記周期的時間依存性電圧の振幅、デューティサイクル、および周波数のうちの1つまたは複数を制御するように構成され、前記放射線放出素子の温度および変調された熱放射線の周波数は、前記電子回路によって制御される印加された周期的時間依存性電圧に依存する、少なくとも1つの電子回路。
【0077】
実施形態2 前記電子回路は、印加される周期的時間依存電圧が単極性かつ正弦波状となるように、周期的時間依存電圧を制御するように構成されている、先の実施形態による装置。
【0078】
実施形態3 前記電子回路は、周期的時間依存電圧の全高調波歪みが0.01から0.2、好ましくは0.015から0.15、より好ましくは0.02から0.1の範囲となるように、周期的時間依存電圧を制御するように構成されている、前記実施形態のいずれか1つに記載の装置。
【0079】
実施形態4 前記電子回路は、放射線放出素子を通る結果として生じる電流が、0.01から0.2、好ましくは0.015から0.15、より好ましくは0.02から0.1の範囲の全高調波歪みを有する周期的時間依存性電圧となるように、周期的時間依存性電圧を制御するように構成されている、前記実施形態のいずれか1つに記載の装置。
【0080】
実施形態5 前記電子回路は、前記放射線放出素子を流れる電流を測定するように構成された少なくとも1つの評価ユニットを備え、前記電流の現在の状態に関する情報は、前記印加電圧を構成するために使用される、前記実施形態のいずれか1つに記載の装置。
【0081】
実施形態6 前記電子回路は、前記放射線放出素子の光出力の全高調波歪みが0.05~0.4、好ましくは0.07~0.3、より好ましくは0.1~0.25の範囲となるように、前記放射線放出素子に印加される周期的時間依存性電圧を制御するように構成されている、前記実施形態のいずれか1つに記載の装置。
【0082】
実施形態7 前記電子回路が少なくとも1つの可変出力降圧レギュレータを備え、該降圧レギュレータが少なくとも1つの抵抗ネットワークを備える、前記実施形態のいずれか1つに記載の装置。
【0083】
実施形態8 前記電子回路は、非変調電源電圧VSupplyを降圧レギュレータに印加するように構成された少なくとも1つの第1の入力電圧源を備える、先の実施形態による装置。
【0084】
実施形態9 前記電子回路は、前記印加電圧VAppliedとして前記放射線放出素子に印加される前記可変降圧レギュレータの出力を変調するように構成された少なくとも1つの可変電子部品を備える、前記2つ前の実施形態のいずれか1つに記載の装置。
【0085】
実施形態10 前記可変電子部品は、少なくとも1つの可変電圧源を備え、該可変電圧源は、周期的な時間依存性の入力電圧VInput を抵抗ネットワークに印加するように構成され、それにより、可変降圧レギュレータの出力を周期的な時間依存性の電圧に変換し、該電圧は、印加電圧VAppliedとして放射線放出素子に印加される、先の実施形態による装置。
【0086】
実施形態11 前記可変電圧源は、デジタル・アナログ・コンバータ(DAC)を備える、先の実施形態による装置。
【0087】
実施形態12 前記可変電子部品は、少なくとも1つの可変抵抗器を備え、可変抵抗器は、その抵抗RVariableを時間の関数として周期的に変化させるように構成され、それにより、可変降圧レギュレータの出力を周期的な時間依存電圧に変換し、この電圧は、印加電圧VAppliedとして放射線放出素子に印加される、実施形態9による装置。
【0088】
実施形態13 可変抵抗器がデジタル・ポテンショメータからなる、先の実施形態による装置。
【0089】
実施形態14 以下のものを有する分光計装置。
【0090】
i. 前記実施形態のいずれか1つに記載の少なくとも1つの装置であって、前記装置は、少なくとも1つの測定対象物を照明するように構成されている、装置;
ii. 測定対象物によって放射された少なくとも1つの入射光ビームを構成波長のスペクトルに分離するように構成された少なくとも1つのフィルタ要素;
iii. 光学センサのマトリックスを有する少なくとも1つのセンサ素子であって、光学センサはそれぞれ感光領域を有し、各光学センサは、感光領域の照明に応答して少なくとも1つのセンサ信号を生成するように構成されている、少なくとも1つのセンサ素子;および
iv. センサ信号を評価することにより、スペクトルに関連する少なくとも1つの情報項目を決定するように構成された少なくとも1つの評価装置。
【0091】
実施形態15 実施形態1から14のいずれか一に記載の少なくとも1つの放射線放出素子を含む装置を動作させる方法であって、以下のステップを含む方法:
I. 前記放射線放出素子の少なくとも1つに、少なくとも1つの周期的な時間依存性電圧を印加するステップ;と
II. 電子回路の少なくとも1つで、周期的な時間依存性電圧の振幅、デューティサイクル、周波数の1つ以上を制御するステップ。
【0092】
実施形態16 1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、1つまたは複数のプロセッサに先の実施形態による方法を実行させる命令を含む、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【0093】
実施形態17 以下の群から選択される、使用目的のための分光計装置を参照する、前記実施形態のいずれか1つに記載の分光計装置の使用:赤外線検出アプリケーション;熱検出アプリケーション;温度計アプリケーション;熱探索アプリケーション;炎検出アプリケーション;火災検出アプリケーション;煙検出アプリケーション;温度検出アプリケーション;分光アプリケーション;排気ガス監視アプリケーション;燃焼プロセス監視アプリケーション;公害監視アプリケーション;工業プロセス監視アプリケーション;化学プロセス監視アプリケーション;からなる群から選択される、使用目的のための分光計デバイスに言及する使用;食品加工プロセス監視アプリケーション;水質監視アプリケーション;大気質監視アプリケーション;品質管理アプリケーション;温度管理アプリケーション;運動制御アプリケーション;排気制御アプリケーション;ガス検知アプリケーション;ガス分析アプリケーション;運動検知アプリケーション;化学検知アプリケーション;モバイルアプリケーション;医療アプリケーション;モバイル分光アプリケーション;食品分析アプリケーション。
【図面の簡単な説明】
【0094】
本発明の更なる任意の詳細および特徴は、従属請求項と併せて続く好ましい例示的実施形態の説明から明らかである。この文脈において、特定の特徴は、単独で実施されてもよいし、他の特徴と組み合わせて実施されてもよい。本発明は、例示的な実施形態に限定されない。例示的な実施形態は、図に概略的に示されている。個々の図における同一の参照数字は、同一の要素または同一の機能を有する要素、または機能に関して互いに対応する要素を指す。
図1】少なくとも1つの放射線放出素子を含む本発明により装置の例示的な実施形態を示す。
図2A-2C】実験結果を示す。
図3】本発明による装置のさらなる例示的な実施形態を示す。
図4】本発明による分光計装置の例示的な実施形態を示す。
図5】本発明による装置の操作方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0095】
図1は、その温度の結果として変調された熱放射線を放出するための少なくとも1つの放射線放出素子112を備える本発明による装置110の等価回路の例示的な実施形態を示す。変調された熱放射線は、振幅または周波数などの少なくとも1つの変更された特性を有する放射線であってもよい。変調された熱放射線は、可視スペクトル範囲、紫外線スペクトル範囲、および赤外線スペクトル範囲のうちの1つまたは複数の電磁放射線であってもよい。好ましくは、本発明の典型的な目的に使用される放射線は、赤外線(IR)スペクトル範囲の放射線、より好ましくは、近赤外線(NIR)および中赤外線スペクトル範囲(MidIR)の放射線、特に1μm~5μm、好ましくは1μm~3μmの波長を有する放射線である。
【0096】
放射線放出素子112は、少なくとも1つの白熱ランプ114から構成される。白熱ランプ114は、加熱された発光フィラメントに基づく光源であってもよい。白熱ランプ114は、内部に配置された少なくとも1つのフィラメントを有する少なくとも1つの電球から構成されてもよい。フィラメントは、少なくとも1本のワイヤ、具体的にはコイル状のワイヤから構成されてもよい。フィラメントは、タングステンから構成されてもよい。バルブは、不活性ガスで満たされたガラスバルブであってもよい。不活性ガスは、例えば、アルゴンと窒素の組み合わせから構成されてもよい。放射線放出素子112に周期的な時間依存性電圧を印加すると、電流がフィラメントを通って流れ、フィラメントの温度が上昇してフィラメントが熱放射を放出する。一例として、白熱ランプ114は、赤外スペクトル範囲の光を放射するように構成されていてもよい。白熱ランプ114は、赤外ランプであってもよいし、赤外ランプで構成されていてもよい。例えば、ハロゲン充填されたタングステンフィラメントを使用してもよい。しかし、キセノン、アルゴンガスによる充填など、他の実施形態も可能である。
【0097】
図1に示すように、装置110は、周期的な時間依存性電圧を放射線放出素子112に印加するように構成された少なくとも1つの電子回路116を備える。例えば、周期的な時間依存性電圧は正弦波であってもよいし、矩形波電圧であってもよい。
【0098】
電子回路116は、周期的時間依存性電圧の振幅、デューティサイクルおよび周波数のうちの1つ以上を制御するように構成される。振幅は、周期的時間依存性電圧の局所的および/または大域的極値、特に最大値または最小値とすることができる。デューティサイクルは、信号またはシステムがアクティブである1周期の分数であってもよい。特に、デューティサイクルは、パルスの周期的シーケンスの場合、パルス継続時間を周期継続時間で割った比率として計算することができる。周波数は、時間の経過に伴う繰り返し事象の発生回数であってもよいし、周期期間の逆数として定義されてもよい。周期的時間依存性電圧の振幅、デューティサイクルおよび周波数のうちの1つ以上の制御は、周期的時間依存性電圧の振幅、デューティサイクルおよび周波数のうちの1つ以上の監視および/または設定および/または調節のうちの少なくとも1つの動作であってよい。周期的時間依存性電圧の振幅、デューティサイクルおよび周波数のうちの1つ以上の制御は、目標振幅、目標デューティサイクルおよび/または目標周波数の設定を含む場合がある。制御は、目標振幅、目標デューティサイクルおよび/または目標周波数の1つ以上を維持することを含んでもよい。放射線放出素子112の温度および変調された熱放射線の周波数は、電子回路116によって制御される印加された周期的時間依存性電圧に依存する。
【0099】
電子回路116は、少なくとも1つの可変出力降圧レギュレータ132を有してもよい。降圧レギュレータ132は、少なくとも1つの入力電圧を入力電圧より小さいか等しい少なくとも1つの出力電圧に変更するように構成されたDC-DCコンバータであってもよい。可変出力は、電圧または電流などの可変物理量であってもよい。物理量は、変更された物理量が出力として渡される前に、入力であったかもしれず、その後変更されたかもしれない。一例として、入力電圧は、出力電圧として渡される前に、例えば低減されるなど、修正されることがある。したがって、降圧レギュレータ132は、入力電圧を受け取り、入力電圧を可変目標電圧まで低下させ、目標電圧を出力として供給することができる。あるいは、降圧レギュレータ132は、入力、例えば電圧および/または電流を変更せずに、単に出力として渡すこともできる。
【0100】
降圧レギュレータ132は、少なくとも1つの降圧コンバータ136を有してもよい。降圧コンバータ136は、コントローラ、スイッチ、例えばトランジスタ、およびダイオードのうちの少なくとも1つを有してもよい。降圧コンバータ136は、少なくとも1つの電圧入力138を有してもよい。降圧コンバータ136は、インダクタ接続部140および出力フィードバック接続部142のうちの少なくとも1つを有してもよい。インダクタ接続部140は、降圧コンバータ136を降圧レギュレータ132の少なくとも1つのインダクタ120に接続するように構成される場合がある。インダクタ120は、降圧レギュレータ132の少なくとも1つのコンデンサ122に接続されてもよい。コンデンサ122は接地されていてもよい。降圧コンバータ136において、少なくとも1つのコントローラは、少なくとも1つの入力電圧を変更するために、少なくとも1つのスイッチを、典型的には毎秒数千回から数百万回、定期的にオン/オフするように構成される。さらに、降圧コンバータ136の少なくとも1つのダイオードは、入力電流を遮断するように構成され、それにより、スイッチがオンに切り替えられると、入力電流は、降圧レギュレータ132の少なくとも1つのインダクタ120を通って、降圧レギュレータ132の少なくとも1つのコンデンサ122に流れるように強制される。インダクタ120は、スイッチがオンされる間、電気エネルギーを蓄積するように構成され得る。コンデンサ122は、スイッチがオンに切り替えられる間、電荷を蓄積するように構成され得る。ダイオードはさらに、スイッチがオフのときに、インダクタ120によって誘導される電流を通すように構成されてもよく、インダクタ120によって誘導される電流は、キャパシタ122からの電荷によって供給される。
【0101】
降圧レギュレータ132、特に降圧コンバータ136は、少なくとも1つの入力電圧、特に非変調電源電圧VSupplyを受けるように構成され得る。図1に示されるように、電子回路116は、非変調電源電圧VSupplyを降圧レギュレータ132に印加するように構成された少なくとも1つの第1の入力電圧源134を有することができる。第1の入力電圧源134は、少なくとも1つの電源電圧、特に非変調電源電圧VSupplyを受けるように構成された降圧レギュレータ132の入力と接続される場合がある。特に、一定のDC電源電圧を降圧コンバータ136の電圧入力138に印加することができる。
【0102】
降圧レギュレータ132は、少なくとも1つの抵抗ネットワーク144を有してもよい。抵抗器ネットワーク144は、少なくとも1つの抵抗器118を有するネットワークであってもよい。抵抗器ネットワーク144は、例えば、抵抗器118および/または抵抗器ネットワーク144のさらなる構成要素を少なくとも部分的に互いに接続するためのワイヤ124および/またはトレース126をさらに含んでいてもよい。たとえば、図1の実施形態では、抵抗ネットワーク144は、R、RおよびRと示される3つの抵抗器を有してもよい。第1の抵抗器Rは、コンデンサ122と並列に接続されてもよい。抵抗器Rは、抵抗器Rと直列に接続されてもよい。抵抗器Rは接地されてもよい。抵抗R、Rは分圧器を形成してもよい。抵抗Rは抵抗Rに接続されてもよく、特に分圧器の出力は抵抗Rに接続されてもよい。
【0103】
電子回路116は、印加電圧VAppliedとして放射線放出素子112に印加され得る可変降圧レギュレータ132の出力を変調するように構成された少なくとも1つの可変電子部品146を含み得る。可変電子部品146は、可変の物理的特性を有する電子部品まであってもよい。可変電子部品146は、可変抵抗および/または可変電圧源であってもよいし、可変抵抗および/または可変電圧源を有してもよい。
【0104】
図1の実施形態では、可変電子部品146は、可変電圧源148、特に変調電圧源150であるか、または可変電圧源148、特に変調電圧源150を有してもよい。可変電圧源148は、周期的な時間に依存する入力電圧VInputを抵抗ネットワーク144に印加し、それによって可変降圧レギュレータ132の出力を周期的な時間に依存する電圧に変換するように構成され得る。抵抗R 、可変電圧源148に接続されることがある。可変電圧源148は、放射線放出素子112に印加される降圧レギュレータ132の出力も変調電圧となるように、抵抗ネットワーク144にも接続された変調電圧を生成するように構成された第2の入力電圧源152として使用することができる。例えば、マイクロコントローラのデジタル・アナログ・コンバータ(DAC)出力154を可変電圧源148として使用することができる。可変電圧源148の出力は、出力フィードバック接続142に合計されてもよい。
【0105】
図2A~2Cは、例えば図1に関して説明したような装置110の例示的な実施形態に関する実験結果を示す。図2Aは、白熱ランプ114の入力電圧として使用される周期的時間依存電圧VApplied(V)を、秒単位の時間の関数として示す。周期的な時間依存性電圧Vの周波数は16Hzである。図2Aの比較として、矩形波電圧が、そのイネーブル端子を介して降圧コンバータ136をオン・オフするだけで、同じ周波数で白熱ランプ114に印加される。印加された周期的な時間依存性電圧V は参照符号156で示されている。矩形波電圧を参照符号158で示す。特別な対策を講じなければ、冷えた状態の白熱ランプ114を流れる電流は非常に大きいため、白熱ランプ114の寿命は数千パルスに減少する。そこで、図2Aに示すように、矩形波の電圧上昇側面の傾きを減少させるソフトスタート対策がとられる。
【0106】
図2Bは、図2Aに示した電圧に対応する電流I(A)を、秒単位の時間の関数として示している。周期的な時間依存性電圧VAppliedに対応する電流を参照符号160で示す。矩形波電圧に対応する電流は参照符号162で示される。電流は、0.5Ωのシャントを横切って測定される。
【0107】
0秒から1秒までの時間スケール内で、測定された電流は繰り返し約0から約0.4Aまで変化し、そして再び戻る。矩形波電圧に対応する電流の0.4A以上のピークは、白熱ランプ114を流れる電流のオーバーシュートがあることを示している。このように、矩形波電圧のソフトスタート対策に関わらず、白熱ランプ114を流れる電流のオーバーシュートは、矩形波電圧の図2Bで確認できる。矩形波電圧とは対照的に、正弦波電圧VAppliedは、電流のオーバーシュートのない正弦波電流をもたらす。冷えた状態でも白熱ランプ114を通る正弦波電流のオーバーシュートがないため、白熱ランプ114の長寿命化が達成される可能性がある。
【0108】
正弦波と矩形波を特徴付け比較するには、全高調波歪み(THD)を使用することができる。理論に縛られることなく、正弦波を非線形負荷に印加すると高調波が発生し、波形が歪むことがある。高調波は、電圧信号の周波数の倍数、特に整数倍である倍音である可能性がある。歪んだ周期電圧波形V(t)は、次のように書くことができる。
【0109】
【数9】
【0110】
ここで、Vは直流成分電圧、電圧Vは高調波hにおけるそれぞれの電圧、tは時間、ωは周波数、θは位相角である。波形の歪みは、“全高調波歪み”(Total Harmonic Distortion:THD)と表記される単一の量/指数として書くことができる。THDは、電圧または電流の歪みのうち、どの程度が信号の高調波に起因するかを特定するための既知のツールである。純粋な正弦波である電圧や電流には高調波歪みはない。なぜなら、それは単一の周波数からなる信号だからである。周期的ではあるが純粋な正弦波ではない電圧や電流には、信号の高調波ひずみに寄与する高い周波数成分がある。一般に、周期的な信号が正弦波に見えないほど、高調波成分が強くなり、高調波歪みが大きくなる。
【0111】
電子回路116は、周期的時間依存性電圧の全高調波歪みが0.01から0.2、好ましくは0.015から0.15、より好ましくは0.02から0.1の範囲になるように周期的時間依存性電圧を制御するように構成される。正弦波電圧の全高調波歪みTHDは、すべての高調波がフィルタリングされた印加電圧の二乗平均平方根(RMS)値の商として計算することができる。
【0112】
【数10】
と記載され、基本周波数を残して全ての高調波がフィルタリングされた印加電圧のRMS値と、
【数11】
と記載され、全ての高調波を残して基本周波数がフィルタリングされた印加電圧のRMS値との商として、
【数12】
で計算される。
【0113】
この実験では、純粋な矩形波のTHDは48.3%である。ソフトスタート対策が取られているため、提案された降圧コンバータ136で約40%のTHDを達成することができる。矩形波とは対照的に、正弦波のTHDは約5%(完全な正弦波のTHDは0%)であり、これは所望の動作周波数においてエネルギーのはるかに高い割合が基本高調波上に伝達されることを意味する。電力システムでは、THDが低いほどピーク電流が少なく、加熱が少なく、電磁放射が少なくなる。
【0114】
図2Cは、白熱ランプ114の対応する光出力Vout(V)を、時間t(秒)の関数として示している。正弦波電圧VAppliedに対応する光出力は参照符号164で示される。矩形波電圧に対応する光出力は参照符号166で示される。白熱ランプ114の光出力は、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)検出器を用いて測定される。
【0115】
図2Cは、矩形波電圧に対応する電流のオーバーシュートが、より高い温度、ひいてはより大きなダイナミックレンジをもたらすことを示している。しかしながら、光出力が光検出器によって記録され、高速フーリエ変換(FFT)のようなデータ処理ツールが使用される場合、基本周波数における周波数成分の振幅が信号強度として採用され、時間領域における光出力のダイナミックレンジは採用されない。したがって、矩形波によるダイナミックレンジが高くても、実験結果のように、正弦波の基本周波数成分の振幅は同等である可能性がある。
【0116】
図3では、本発明による装置110のさらなる例示的な実施形態が概略的に描かれている。図3の説明については、図1の説明を参照することができ、図3において、可変電子部品146は、可変抵抗器168であってもよいし、可変抵抗器168を有してもよい。
【0117】
可変抵抗器168は、その抵抗RVariableを時間の関数として周期的に変化させ、それによって可変降圧レギュレータ132の出力を周期的な時間に依存する電圧に変換するように構成されてもよく、この電圧は印加電圧VAppliedとして放射線放出素子112に印加されてもよい。可変抵抗器168は、可変抵抗、具体的には、時間にわたって連続的に可変である抵抗を有する抵抗器118であってもよい。可変抵抗器168は、連続的な抵抗範囲にわたってその抵抗値を変化させるように構成されてもよい。可変抵抗器は、複数の離散的な抵抗値の間でその抵抗値を変化させるように構成されてもよい。可変抵抗器は、電子回路116において可変電圧降下を引き起こす可能性がある。一例として、可変出力降圧レギュレータ132の一定の出力電圧は、周期的な時間依存性電圧の結果として、時間の経過とともに可変抵抗器168にわたって可変電圧降下を経験する可能性がある。可変抵抗器168は接地されていてもよい。可変抵抗器168は、抵抗ネットワークの少なくとも1つのさらなる抵抗器118、具体的には抵抗器R 、および降圧コンバータ136の出力フィードバック接続142に直列に接続されることがある。
【0118】
図4には、本発明による分光計装置172の例示的な実施形態が概略的に描かれている。分光計装置172は、本発明による少なくとも1つの装置110を備え、装置110は、少なくとも1つの測定対象物174を照明するように構成される。装置110は、測定対象物174を照明するための照明光ビーム176を放射してもよい。分光計装置172は、波長間隔などのスペクトルの対応する波長またはその一部分に関する信号強度を記録することができる装置であってもよく、信号強度は、好ましくは、さらなる評価に使用され得る電気信号として提供されてもよい。測定対象物174は、測定される対象物、例えばスペクトルが記録される対象物であってよく、対象物は原則として任意の特性、例えば任意の光学特性または任意の形状を有する。測定対象物は、試料であってもよいし、生体および非生体から選択された任意の物体であってもよい。したがって、一例として、少なくとも一つの対象物は、一つ以上の物品および/または物品の一つ以上の部 分から構成されてもよく、少なくとも一つの物品またはその少なくとも一つの部分は、調査に適したスペクトルを提供し得る少なくとも一つの構成要素から構成されてもよい。加えてまたは代替的に、対象物は、1つまたは複数の生物および/またはその1つまたは複数の部分、例えば、人間、例えば、使用者、および/または動物の1つまたは複数の身体部分であってもよく、またはそれらから構成されてもよい。
【0119】
分光器装置172は、少なくとも1つのフィルタ素子178を備える。フィルタ素子178は、測定対象物174によって放射された少なくとも1つの入射光ビーム180を構成波長のスペクトルに分離するように構成されている。フィルタ素子178は、入射光を構成波長信号のスペクトルに分離するように適合された光学素子であってもよい。例えば、フィルタ素子178は、少なくとも1つのプリズムであってもよいし、少なくとも1つのプリズムを有してもよい。例えば、フィルタ要素178は、長さ可変フィルタのような少なくとも1つの光学フィルタ、すなわち、複数のフィルタ、好ましくは複数の干渉フィルタを有する光学フィルタであってよく、および/または有してもよく、これらは、特に、フィルタの連続的な配置で提供されてよい。ここで、フィルタの各々は、フィルタ上の各空間位置に対して、好ましくは連続的に、長さ可変フィルタの受光面上で、通常、「長さ」という用語で示される単一の次元に沿って、可変中心波長を有するバンドパスを形成することができる。好ましい例では、可変中心波長は、フィルタ上の空間位置の線形関数であってもよく、この場合、長さ可変フィルタは、通常、「線形可変フィルタ」またはその略語「LVF」と呼ばれる。しかしながら、可変中心波長とフィルタ上の空間位置との間の関係には、他の種類の関数が適用可能である。ここで、フィルタは、特に、視覚および/または赤外(IR)スペクトル範囲内、特に、より詳細に後述するように近赤外(NIR)スペクトル範囲内において高い光学的透明性を示し得る少なくとも1つの材料を有する透明基板上に配置されてもよく、それによって、フィルタの長さに沿ってフィルタのスペクトル特性、特に連続的に変化するスペクトル特性を変化させることが達成され得る。特に、フィルタ要素178は、透明基板上に少なくとも1つの応答コーティングを担持するように適合されるウェッジフィルタであってよく、応答コーティングは、空間的に可変な特性、特に、空間的に可変な厚さを示すことができる。しかしながら、他の材料から構成され得る、またはさらなる空間的に可変な特性を示し得る、他の種類の長さ可変フィルターもまた実現可能であり得る。入射光ビーム180の法線入射角において、長さ可変フィルタによって構成されるフィルタの各々は、特定のフィルタの中心波長の数分の一、典型的には数パーセントに相当するバンドパス幅を有することができる。例として、1400~1700nmの波長範囲と1%のバンドパス幅を有する長さ可変フィルタの場合、法線入射角におけるバンドパス幅は14nm~17nmの範囲で変化する可能性がある。しかし、他の例も実行可能である、長さ可変フィルタのこの特定の設定の結果、バンドパス幅によって示される許容範囲内で、フィルタ上の特定の空間位置に割り当てられている中心波長に等しい波長を有する入射光のみが、特定の空間位置で長さ可変フィルタを通過することができる。したがって、中心波長±バンドパス幅の1/2に等しい「透過波長」が、長さ可変フィルタ上の各空間位置に対して定義され得る。言い換えれば、透過波長で長さ可変フィルタを透過しない可能性のある全ての光は、長さ可変フィルタの受光面によって吸収されるか、または大部分が反射される可能性がある。その結果、長さ可変フィルタの透過率は変化し、入射光をスペクトルに分離することができる。
【0120】
分光計デバイス172は、光センサ184のマトリックスを有する少なくとも1つのセンサ素子182を備える。光センサ184はそれぞれ感光領域を有する。各光センサ184は、感光領域の照明に応答して少なくとも1つのセンサ信号を生成するように構成される。光センサ184は、少なくとも1つの光ビームによって生成される照明および/または光スポットを検出するためなど、光ビームを検出するための感光デバイスであってもよい。感光領域は、少なくとも1つの光ビームによって外部から照明され得る光センサ184の領域であってよく、その照明に応答して少なくとも1つのセンサ信号が生成される。感光領域は、具体的には、それぞれの光センサ184の表面上に配置されてもよい。しかし、他の実施形態も可能である。単一の光センサー184は、それぞれ1つの感光エリアを有してもよい。1つの複合光センサー184は、複数の感光エリアを有してもよい。
【0121】
光センサ184は、1つの出力信号を生成するように構成された感光素子を有してもよい。分光計デバイス172が複数の光センサ184を有する場合、各光センサ184は、照明され得る正確に1つの感光エリアを提供することによって、例えば、照明に応答して正確に1つの均一なセンサ信号が光センサ184全体に対して作成されることによって、正確に1つの感光エリアがそれぞれの光センサ184に存在するように具現化され得る。このように、各光センサ184は単一エリア光センサ184であってもよい。しかしながら、単一エリア光学センサ184の使用は、検出器のセットアップを特に単純かつ効率的にする。したがって、一例として、それぞれが正確に1つの感応領域を有する市販のシリコンフォトダイオードなどの市販の光センサをセットアップに使用してもよい。しかしながら、他の実施形態も実現可能である。光学センサ184は、画素化光学デバイスの一部であってもよいし、画素化光学デバイスを構成してもよい。例えば、光学センサ184は、少なくとも1つのCCDおよび/またはCMOSデバイスであってよく、および/または有してもよい。一例として、光学センサ184は、画素のマトリクスを有する少なくとも1つのCCDおよび/またはCMOSデバイスの一部であるか、またはそれを構成してもよく、各画素は感光領域を形成する。
【0122】
光学センサ184は、具体的には、少なくとも1つの光検出器、好ましくは無機光検出器、より好ましくは無機半導体光検出器、最も好ましくはシリコン光検出器であってもよいし、それらを有してもよい。具体的には、光センサ184は、赤外スペクトル範囲において感度を有することができる。マトリクスの全ての画素またはマトリクスの光学センサ184の少なくとも一群は、具体的には同一であってもよい。具体的にはマトリクスの同一の画素のグループは、異なるスペクトル範囲に対して提供されてもよいし、すべての画素がスペクトル感度の点で同一であってもよい。さらに、画素は、サイズにおいて、および/または、その電子的もしくは光電子的特性に関して同一であってもよい。具体的には、光センサ184は、赤外スペクトル範囲、好ましくは700nm~3.0μmの範囲において感度を有する少なくとも1つの無機フォトダイオードであってもよいし、またはこれらを有してもよい。具体的には、光学センサ184は、シリコンフォトダイオードが適用可能な近赤外領域の一部、特に700nmから1100nmの範囲で感度を有することができる。光学センサ184に使用され得る赤外光学センサは、市販の赤外光学センサであってもよく、例えば、ドイツ、D-67056 Ludwigshafen am RheinのtrinamiX GmbHからHertzstueckTM という商品名で市販されている赤外光学センサであってもよい。したがって、一例として、光学センサ184は、固有光起電力タイプの少なくとも1つの光学センサ184、より好ましくは、Geフォトダイオード、InGaAsフォトダイオード、拡張InGaAsフォトダイオード、InAsフォトダイオード、InSbフォトダイオード、HgCdTeフォトダイオードからなる群から選択される少なくとも1つの半導体フォトダイオードを有し得る。追加的または代替的に、光センサ184は、外部光起電力タイプの少なくとも1つの光センサ184、より好ましくは、Ge:Auフォトダイオード、Ge:Hgフォトダイオード、Ge:Cuフォトダイオード、Ge:Znフォトダイオード、Si:Gaフォトダイオード、Si:Asフォトダイオードからなる群から選択される少なくとも1つの半導体フォトダイオードを含むことができる。追加的または代替的に、光センサ184は、PbSまたはPbSeセンサなどの少なくとも1つの光伝導性センサ、ボロメータ、好ましくはVOボロメータおよびアモルファスSiボロメータからなる群から選択されるボロメータを有し得る。
【0123】
マトリクスは、独立した光センサ184のような独立した画素で構成されてもよい。したがって、無機フォトダイオードのマトリクスが構成されてもよい。あるいは、しかしながら、CCD検出器チップのようなCCD検出器、および/またはCMOS検出器チップのようなCMOS検出器のうちの1つまたは複数など、市販のマトリックスを使用してもよい。したがって、一般に、光学センサ184は、少なくとも1つのCCDおよび/またはCMOSデバイスであってよく、および/または有してもよく、および/または、検出器の光学センサ184は、センサアレイを形成してよく、または、上述のマトリックスのようなセンサアレイの一部であってよい。したがって、一例として、光学センサ184は、m行n列を有する矩形アレイのような画素のアレイを有しし、および/または構成してもよく、m、nは、それぞれ独立に、正の整数である。例えば、センサ素子182は、バイセルのように行およびまたは列に配置された少なくとも2つの光センサ184から構成されてもよい。例えば、センサ素子182は、光センサ184の2x2マトリクスからなる象限ダイオードシステムであってもよい。例えば、1以上の列および1以上の行が与えられ、すなわち、n>1、m>1である。 したがって、一例として、nは2以上16以下であってもよく、mは2以上16以下であってもよい。好ましくは、行数と列数の比は1に近い。一例として、nおよびmは、0.3≦m/n≦3となるように選択されてもよく、例えば、m/n=1:1、4:3、16:9または同様のものを選択することによって選択されてもよい。一例として、配列は、m=2、n=2またはm=3、n=3などを選択することにより、等しい数の行と列を有する正方配列であってもよい。
【0124】
行列は、具体的には、少なくとも1つの行、好ましくは複数の行、および複数の列を有する矩形行列であってよい。一例として、行および列は、実質的に垂直に配向されてもよい。広い視野を提供するために、マトリックスは、具体的には、少なくとも10行、好ましくは少なくとも500行、より好ましくは少なくとも1000行を有してもよい。同様に、マトリックスは、少なくとも10列、好ましくは少なくとも500列、より好ましくは少なくとも1000列を有することができる。マトリックスは、少なくとも50個の光センサ184、好ましくは少なくとも100000個の光センサ184、より好ましくは少なくとも5000000個の光センサ184を有してもい。マトリックスは、数メガピクセルの範囲のピクセル数を有してもよい。しかしながら、他の実施形態も実現可能である。したがって、軸回転対称性が期待されるセットアップでは、ピクセルとも呼ばれ得るマトリックスの光センサ184の円形配置または同心円配置が好ましい場合がある。
【0125】
好ましくは、感光領域は、分光計デバイス172の光軸に対して本質的に垂直に配向され得る。光軸は、真っ直ぐな光軸であってもよいし、1つまたは複数の偏向素子を使用することによって、および/または1つまたは複数のビームスプリッタを使用することによって、曲げられてもよいし、分割されてもよく、後者の場合、本質的に垂直な配向は、光学セットアップのそれぞれの分岐またはビーム経路における局所的な光軸を指す場合がある。
【0126】
センサ信号は、照明に応答して光センサ184および/または光センサ184の少なくとも1つの画素によって生成される信号であってよい。具体的には、センサ信号は、少なくとも1つのアナログ電気信号および/または少なくとも1つのデジタル電気信号などの、少なくとも1つの電気信号であってもよいし、少なくとも1つの電気信号を有してよい。より具体的には、センサ信号は、少なくとも1つの電圧信号および/または少なくとも1つの電流信号であってもよく、またはこれらを有してもよい。より具体的には、センサ信号は、少なくとも1つの光電流を有してもよい。さらに、生のセンサ信号が使用されてもよいし、検出器、光センサ、または任意の他の要素が、センサ信号を処理または前処理するように適合されてもよく、それによって、フィルタリングなどによる前処理など、センサ信号としても使用され得る二次センサ信号が生成されてもよい。
【0127】
分光計デバイス172は、センサ信号を評価することによってスペクトルに関連する少なくとも1つの情報項目を決定するように構成された少なくとも1つの評価デバイス186を備える。評価デバイス186は、好ましくは、少なくとも1つのデータ処理デバイスを使用することによって、より好ましくは、少なくとも1つのプロセッサおよび/または少なくとも1つの特定用途向け集積回路を使用することによって、命名された動作を実行するように適合された任意のデバイスであってよい。したがって、一例として、少なくとも1つの評価デバイス186は、多数のコンピュータコマンドからなるソフトウェアコードがその上に格納された少なくとも1つのデータ処理デバイスを有してもよい。評価デバイス186は、命名された操作のうちの1つ以上を実行するための1つ以上のハードウェア要素を提供することができ、および/または、命名された操作のうちの1つ以上を実行するための、その上で実行されるソフトウェアを有する1つ以上のプロセッサを提供することができる。一例として、評価デバイス186は、評価を実行するように構成された1つまたは複数のコンピュータ、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などの1つまたは複数のプログラマブルデバイスを有しても。しかし、追加的または代替的に、評価デバイス186は、ハードウェアによって全体的または部分的に具現化されることもある。少なくとも1つの情報項目は、例えば、電子的、視覚的、音響的、またはそれらの任意の組み合わせで提供されてもよい。さらに、少なくとも1つの情報項目は、分光計装置172のデータ記憶装置または別個の記憶装置に記憶されてもよく、および/または、無線インターフェースおよび/または有線インターフェースなどの少なくとも1つのインターフェース188を介して提供されてもよい。評価装置186はさらに、本発明による装置110に無線および/または有線で接続されてもよい。
【0128】
図5は、本発明による少なくとも1つの放射線放出素子112を含む装置110を操作するための方法の実施形態のフローチャートを示す。この方法は、以下のステップからなる:
I. (参照符号190で示す)少なくとも1つの周期的な時間依存性電圧を放射線放出素子の少なくとも1つに印加するステップ;
II. (参照符号192で示す)電子回路の少なくとも1つで、周期的な時間依存性電圧の振幅、デューティサイクル、周波数の1つ以上を制御するステップ。
【0129】
方法ステップは、所定の順序で実行することができる。しかしながら、異なる順序も可能であることに留意されたい。本方法は、列挙されていないさらなる方法ステップを含んでいてもよい。さらに、1つ以上の方法ステップを1回または繰り返し実行してもよい。さらに、2つ以上の方法ステップを同時に実施してもよいし、適時重複して実施してもよい。
【符号の説明】
【0130】
【表1】
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
【国際調査報告】