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特表2024-522277車両のためのブレーキ制御装置、およびブレーキ制御装置を作動させる方法
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  • 特表-車両のためのブレーキ制御装置、およびブレーキ制御装置を作動させる方法 図1
  • 特表-車両のためのブレーキ制御装置、およびブレーキ制御装置を作動させる方法 図2
  • 特表-車両のためのブレーキ制御装置、およびブレーキ制御装置を作動させる方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-13
(54)【発明の名称】車両のためのブレーキ制御装置、およびブレーキ制御装置を作動させる方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/92 20060101AFI20240606BHJP
   B60T 17/22 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
B60T8/92
B60T17/22 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572693
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 EP2022064219
(87)【国際公開番号】W WO2022253671
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】102021205579.6
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】レーフェルマン,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ハーグ,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】マルカルト,マルティン
【テーマコード(参考)】
3D049
3D246
【Fターム(参考)】
3D049BB03
3D049CC02
3D049CC07
3D049HH39
3D049HH47
3D049QQ04
3D049RR04
3D049RR05
3D246BA02
3D246BA08
3D246DA01
3D246EA05
3D246GA01
3D246GB04
3D246GB39
3D246GC14
3D246HA02A
3D246HA08A
3D246JA12
3D246JB11
3D246LA02Z
3D246LA15Z
3D246MA03
3D246MA16
(57)【要約】
本発明は車両(F)のためのブレーキ制御装置を提供し、該ブレーキ制御装置は、車両のブレーキブースタ装置(BV)および電気機械(EM)と、および走行安定性システム(ESP)と、接続可能である制御装置(SE)と、制御装置(SE)と接続されたペダルセンサ装置(PS)とを含み、制御装置(SE)は、ブレーキペダルおよび/またはアクセルペダルの操作から運転者によるブレーキ要求を推定し、ブレーキブースタ装置(BV)の動作失陥または動作不良を認識し、ブレーキブースタ装置(BV)の認識された動作失陥または動作不良のもとでブレーキ要求がなされたときに、および/またはその後に、走行安定性システム(ESP)を通じてブレーキアクションを制御するためにセットアップされる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のブレーキアクションを制御可能である、車両(F)のためのブレーキ制御装置(10)において、
車両のブレーキブースタ装置(BV)および電気機械(EM)と、および車両の走行安定性システム(ESP)と、接続された、または接続可能である、制御装置(SE)と、
前記制御装置(SE)と接続され、車両でのブレーキペダルおよび/またはアクセルペダルの操作を判定するためにセットアップされたペダルセンサ装置(PS)とを含み、前記制御装置(SE)は、
前記ブレーキペダルおよび/またはアクセルペダルの操作から運転者によるブレーキ要求を推定し、
前記ブレーキブースタ装置(BV)の動作失陥または動作不良を認識し、
前記ブレーキブースタ装置(BV)の認識された動作失陥または動作不良のもとでブレーキ要求がなされたときに、および/またはその後に、前記走行安定性システム(ESP)を通じてブレーキアクションを制御するためにセットアップされる、ブレーキ制御装置。
【請求項2】
前記制御装置(SE)は、前記ブレーキブースタ装置(BV)の認識された動作失陥または動作不良のもとで前記電気機械(EM)で発電機ブレーキトルクを生成するためにセットアップされる、請求項1に記載のブレーキ制御装置(10)。
【請求項3】
前記制御装置(SE)は、前記走行安定性システム(ESP)によるブレーキアクションについての命令を前記電気機械(EM)に転送し、それによって発電機ブレーキトルクを生成するように該電気機械に要求するためにセットアップされる、請求項2に記載のブレーキ制御装置(10)。
【請求項4】
前記制御装置(SE)は、前記ブレーキブースタ装置(BV)によるブレーキアクションについての命令を前記電気機械(EM)に転送し、それによって発電機ブレーキトルクを生成するように該電気機械に要求するためにセットアップされる、請求項2または3に記載のブレーキ制御装置(10)。
【請求項5】
液圧式のブレーキアクションについてのコントロール装置と接続され、および/またはこれを含み、前記走行安定性システムおよび/または前記ブレーキブースタ装置(BV)によるブレーキアクションについての命令を、液圧式のブレーキアクションについての前記コントロール装置を通じて制御可能である、請求項1から4のいずれか1項に記載のブレーキ制御装置(10)。
【請求項6】
前記ペダルセンサ装置(PS)は前記走行安定性システムおよび/または前記ブレーキブースタ装置(BV)と接続され、運転者のブレーキ要求を前記制御装置(SE)により前記ペダルセンサ装置(PS)を介して前記走行安定性システムおよび/または前記ブレーキブースタ装置(BV)で認識可能であり、発電機ブレーキトルクの生成をそれによって制御可能である、請求項1から5のいずれか1項に記載のブレーキ制御装置(10)。
【請求項7】
前記ペダルセンサ装置(PS)は前記ブレーキペダルおよび/またはアクセルペダルの圧力および/または位置を認識するためにセットアップされ、前記制御装置(SE)は、前記ブレーキペダルおよび/またはアクセルペダルの圧力および/または位置からブレーキ要求の程度を推測して、これを少なくとも部分的に電気機械で生成するためにセットアップされる、請求項1から6のいずれか1項に記載のブレーキ制御装置(10)。
【請求項8】
車両のブレーキアクションを制御するために、車両(F)のためのブレーキ制御装置(10)を作動させる方法において、次の各ステップを含み、
請求項1から7のいずれか1項に記載のブレーキ制御装置(10)によってブレーキアクションを実行するための必要性が認識(S1)され、このとき車両でのブレーキペダルおよび/またはアクセルペダルの操作がペダルセンサ装置(PS)によって認識されて、運転者によるブレーキ要求の存在が推定され、
ブレーキブースタ装置(BV)の動作失陥または動作不良が認識(S2)され、
前記ブレーキブースタ装置(BV)の動作失陥または動作不良が認識されたときに、および/または認識された後に、車両の走行安定性システム(ESP)で、および/または前記走行安定性システムにより、ブレーキトルクが生成(S3)され、および/またはブレーキアクションが遂行される、方法。
【請求項9】
全体ブレーキトルクの必要な量が判定され、設定値を満たす十分な全体ブレーキトルクが生成されるような電気機械の発電機ブレーキトルクと前記走行安定性システム(ESP)のブレーキトルクとがブレーキ装置で要求されて生成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記走行安定性システム(ESP)によるブレーキアクションについての命令が前記電気機械(EM)に転送され、それにより、これが発電機ブレーキトルクを生成するように要求をうける、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記ブレーキブースタ装置(BV)によるブレーキアクションについての命令が前記電気機械(EM)に転送され、それにより、これが発電機ブレーキトルクを生成するように要求をうける、請求項8から10のいずれか1項に記載のブレーキ制御装置(10)。
【請求項12】
前記ペダルセンサ装置(PS)によってブレーキペダルおよび/またはアクセルペダルの圧力および/または位置が認識され、ブレーキペダルおよび/またはアクセルペダルの圧力および/または位置からブレーキ要求の程度が推定され、相応のブレーキトルクが少なくとも部分的に発電機式に前記電気機械で生成される、請求項8から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記電気機械で現在生成可能な発電機ブレーキトルクが判定され、これがブレーキ要求と比較され、全体ブレーキトルクが前記電気機械でのみ印加されるか、または車両の液圧式のブレーキ装置による補助のもとで生成される、請求項9に加えて請求項8から12のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のためのブレーキ制御装置に関し、および、ブレーキ制御装置を作動させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気式に作動する車両における通常の駆動コンセプトは、電気機械のブレーキ作用を援用することができる。そのために、ブレーキ動作が要求されたときに電子制御することができるブレーキ力発生器またはブレーキブースタが知られている。このとき、ブレーキブースタが失陥する場合があることや、その動作が制約される場合があることが考えられる。
【0003】
電気機械式のブレーキブースタとESPシステムとが共同でブレーキシステムを形成することができる。回生ブレーキおよび/または液圧ブレーキのアクションは、電子式のブレーキブースタによって測定されるブレーキペダル操作を通じて行うことができる。電子式のブレーキブースタが失陥したとき、いわゆるhydraulic boost failure compensationとしてのコントロール機能HBCを通じてESPによりブレーキ力増幅を生成することができるが、この場合、車両の減速のためのブレーキペダルからの調節命令が欠如しているために、発電機が不作動化されたままになることが起こり得る。
【0004】
特許文献1には、自動車のための複合型のブレーキ設備を作動させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第102012216590号明細書
【発明の概要】
【0006】
本発明は、請求項1に記載の車両のためのブレーキ制御装置、および、請求項8に記載のブレーキ制御装置を作動させる方法を提供する。
【0007】
好ましい発展例は従属請求項の対象である。
【0008】
本発明の根底にある思想は、ブレーキブースタ装置の動作不良中または動作失陥中の車両でのブレーキアクションを改善することができる、車両のためのブレーキ制御装置、およびブレーキ制御装置を作動させる方法を提供することにある。
【0009】
このとき、発電機としての電気機械の現在の能力の考慮をその動作能力について行うことが可能であるという利点がある。このことは、電気機械と液圧式のブレーキ設備とによる全体ブレーキトルクの生成時に利用することができる。
【0010】
上記のブレーキ制御装置および方法により、たとえばブレーキブースタ装置での動作不良と走行安定性システムでの動作不良などの二重故障に対するロバスト性を改善することができる。不具合の発生時にオンボードパワーサプライを行うことができる。
【0011】
発電機の一貫した利用によって、ブレーキブースタとESPの二重故障に対するロバスト性がフォールバックレベルのときにも与えられ得る。
【0012】
ブレーキトルクの割合の改善された分割により、NVH(ノイズ、バイブレーション、ハーシュネス)に関して、電気車両の作動時の改善を実現することができる。性能要求が低くなることでESPポンプに課される負担を減らすことができれば、改善されたNVHが生じ得る。発電機の使用が増えることで、いっそう少ない負荷をESPに割り当てることができる。
【0013】
さらに、ブレーキ力と電気駆動力の生成のいっそう高い効率を実現することができる。エネルギー回収にあたって、いっそう高い効率が生じ得る。というのもブレーキブースタの失陥後にも、回生を引き続き利用することができるからである。割合に応じたブレーキトルクの生成によって、たとえば摩擦ブレーキなどでのブレーキダストの生成を減らすことができるという利点がある。
【0014】
本発明によると、車両のブレーキアクションを制御可能である、車両のためのブレーキ制御装置は、車両のブレーキブースタ装置および電気機械と、および車両の走行安定性システムと、接続された、または接続可能である、制御装置と、該制御装置と接続され、車両でのブレーキペダルおよび/またはアクセルペダルの操作を判定するためにセットアップされたペダルセンサ装置とを含み、制御装置は、ブレーキペダルおよび/またはアクセルペダルの操作から運転者によるブレーキ要求を推定し、ブレーキブースタ装置の動作失陥または動作不良を認識し、ブレーキブースタ装置の認識された動作失陥または動作不良のもとでブレーキ要求がなされたときに、および/またはその後に、走行安定性システムを通じてブレーキアクションを制御するためにセットアップされる。
【0015】
電子式のブレーキブースタの失陥または性能低下が生じたとき、ESP(走行安定性システム)のHBC調節命令を利用することができ、ペダルの測定されたブレーキ圧を通じて、発電機としての電気機械のブレーキモードでの作動を制御することができるという利点がある。そのためにHBC信号をブレーキブースタ装置自体から電気機械に伝送することもでき、たとえばESPからのHBC信号との組み合わせで、またはその代替として、発電機によるブレーキトルクの生成をリリースすることができ、その場合には、ブレーキブースタ装置またはその制御部がまだ独自のHBC信号を出すことができる。
【0016】
一般に、電気式のブレーキブースタの失陥をESPおよび/または制御装置によって認識することができ、その際には、運転者ブレーキ要求がESPの圧力センサを通じて測定される。さらにHBC信号(hydraulic boost failure compensation)により運転者ブレーキ要求をブレーキブースタからESPに伝送することができる。測定されたペダルでの圧力に依存して、発電機に対する調節命令をESPから伝送することができる。発電機が車両を減速させることができ、そのようにして、その機械式のブレーキ力で運転者を補助する。
【0017】
発電機減速が(たとえば速度への依存性があるために)制限される場合、ESPポンプによる液圧式のブレーキ圧を追加的に生成することができる。
【0018】
ESPからの、またはブレーキブースタ装置からの、HBC信号に基づく直接的な発電機利用を行うことができる。ブレーキブースタは、任意選択として、(まだ可能である場合には)その利用不能性をたとえばESPおよび/または電気機械に信号で送信することもできる。このことを発電機によってブレーキトルク生成のために直接的に利用することもでき、それは、発電機が発電機内部機能により全体ブレーキトルクへの寄与に関してESPと協調している限りにおいてである。
【0019】
ブレーキ制御装置の好ましい実施形態では、制御装置は、ブレーキブースタ装置の認識された動作失陥または動作不良のもとで発電機ブレーキトルクを電気機械で生成するためにセットアップされる。
【0020】
発電機ブレーキトルクは電気機械での回生から生成することができる。
【0021】
ブレーキ制御装置の好ましい実施形態では、制御装置は、走行安定性システムによるブレーキアクションについての命令を電気機械に転送し、それによって電気機械に発電機ブレーキトルクを生成するように要求するためにセットアップされる。
【0022】
走行安定性システムは、従来式のブレーキングを発電機ブレーキトルクによって補助するために、電気機械に対する信号を生成することができる。
【0023】
ブレーキ制御装置の好ましい実施形態では、制御装置は、ブレーキブースタ装置によるブレーキアクションについての命令を電気機械に転送し、それによってこれに発電機ブレーキトルクを生成するように要求するためにセットアップされる。
【0024】
ブレーキ制御装置の好ましい実施形態では、ブレーキ制御装置は液圧式のブレーキアクションについてのコントロール装置と接続され、および/またはこれを含み、走行安定性システムおよび/またはブレーキブースタ装置によるブレーキアクションについての命令を、液圧式のブレーキアクションについてのコントロール装置を介して制御可能である。
【0025】
ブレーキ制御装置の好ましい実施形態では、ペダルセンサ装置は走行安定性システムおよび/またはブレーキブースタ装置と接続され、運転者のブレーキ要求を制御装置によりペダルセンサ装置を介して走行安定性システムおよび/またはブレーキブースタ装置で認識可能であり、発電機ブレーキトルクの生成をそれによって制御可能である。
【0026】
アクセルペダルおよび/またはブレーキペダルでの認識されたアクションによって、運転者要求の制御をすることができるという利点がある。
【0027】
ブレーキ制御装置の好ましい実施形態では、ペダルセンサ装置は、ブレーキペダルおよび/またはアクセルペダルの圧力および/または位置を認識するためにセットアップされ、制御装置は、ブレーキペダルおよび/またはアクセルペダルの圧力および/または位置からブレーキ要求の程度を推測して、これを少なくとも部分的に電気機械で生成するためにセットアップされる。
【0028】
程度に応じて所要または所望のブレーキ作用を推定することができ、これを発電機ブレーキトルクおよび/または全体ブレーキトルクの生成のために考慮することができる。
【0029】
本発明によると、車両のブレーキアクションを制御するために、車両のためのブレーキ制御装置を作動させる方法では、本発明によるブレーキ制御装置によってブレーキアクションを実行するための必要性の認識が行われ、このとき車両でのブレーキペダルおよび/またはアクセルペダルの操作がペダルセンサ装置によって認識されて、運転者によるブレーキ要求の存在が推定され、ブレーキブースタ装置の動作失陥または動作不良の認識が行われ、ブレーキブースタ装置の動作失陥または動作不良が認識されたときに、および/または認識された後に、車両の走行安定性システムで、および/または走行安定性システムにより、ブレーキトルクの生成および/またはブレーキアクションの遂行が行われる。
【0030】
ブレーキアクションとは、たとえば摩擦ブレーキトルクおよび/または発電機ブレーキトルクおよび/または車両に対するその他の方式の何らかのブレーキ力によって、ホイールの回転を低速にするための車両でのブレーキプロセスであってよい。
【0031】
このとき車両での設定に従って減速を持続することができ、利用者によって設定を任意に低く、または高く(強く)選択可能であってもよい。作動制御されるべきブレーキアクチュエータ装置は各種の摩擦ブレーキであり、または、その他の何らかの方式の従来式もしくはその他の非発電機式のブレーキであってよい。
【0032】
このとき発電機としての電気機械の動作状態を判定することができ、このことは、特定の走行出力のもとで、特定の温度のもとで、利用できる見積可能なバッテリ充電/バッテリ出力のもとで、ならびに電気車両のその他の動作固有のパラメータのもとで、電気機械がその瞬間に、または全般的に、たとえば意図される速度範囲について発電機ブレーキトルクをどの程度まで印加することができるかの度合いに相当し得る。そして発電機としての、すなわち発電機ブレーキトルクを生成する装置としての、電気機械の能力に関する知見に応じて、(第1の)発電機ブレーキトルクを、たとえばアダプティブに適合化可能に、かつ時間を通じてダイナミックに、増大および/または低減させ、それにより、たとえば車両にとって常時呼び出すことが可能であり得る、第1のブレーキトルクと、たとえば液圧式の別の(第2の)ブレーキトルクとの合計であってよい、もしくはこれらのうち一方の単独であってよい、最低ブレーキトルクに設定が達するようにすることができる。
【0033】
発電機割合がこのように考慮されることで、ブレーキアクチュエータの最低動作形態に関わる要求を低減することができる。このとき、ブレーキアクチュエータが発電機の現在の能力を知ることが必要になり得る。
【0034】
車両は、電気機械を含むことができる駆動部を有する乗用車であってよい。
【0035】
本方法の好ましい実施形態では、全体ブレーキトルクの必要な量が判定され、設定値を満たす十分な全体ブレーキトルクが生成されるような電気機械の発電機ブレーキトルクと走行安定性システムのブレーキトルクとがブレーキ装置で要求されて生成される。
【0036】
本方法の好ましい実施形態では、走行安定性システムによるブレーキアクションについての命令が電気機械に転送され、それにより、これが発電機ブレーキトルクを生成するように要求をうける。
【0037】
本方法の好ましい実施形態では、ブレーキブースタ装置によるブレーキアクションについての命令が電気機械に転送され、それにより、これが発電機ブレーキトルクを生成するように要求をうける。
【0038】
本方法の好ましい実施形態では、ペダルセンサ装置によってブレーキペダルおよび/またはアクセルペダルの圧力および/または位置が認識され、ブレーキペダルおよび/またはアクセルペダルの圧力および/または位置からブレーキ要求の程度が推定され、相応のブレーキトルクが少なくとも部分的に発電機式に電気機械で生成される。
【0039】
本方法の好ましい実施形態では、電気機械で現在生成可能な発電機ブレーキトルクが判定され、これがブレーキ要求と比較され、全体ブレーキトルクが電気機械でのみ印加されるか、または車両のブレーキ装置による補助のもとで生成される。
【0040】
ブレーキ装置は液圧ブレーキ装置であってよく、または、車両のためのその他の各方式のブレーキ装置であってよい。
【0041】
本方法の好ましい実施形態では、電気機械の動作状態およびそこから生成可能な電気機械での発電機ブレーキトルクが常時、または所定の時間インターバルをおいて、判定される。
【0042】
ブレーキ制御装置は、本方法との関連で挙げた構成要件およびその利点によって特徴づけることもでき、その逆も成り立つ。
【0043】
本発明の各実施形態のその他の構成要件と利点は、添付の図面を参照して行う以下の説明から明らかとなる。
【0044】
次に、図面の模式的な図に示されている実施例をもとに、本発明について詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明の1つの実施例に基づくブレーキ制御装置を示す模式図である。
図2】本発明の1つの実施例に基づくブレーキ制御装置でのブレーキ要求の制御進行を示す模式図である。
図3】本発明の1つの実施例に基づくブレーキ制御装置を作動させる方法の各方法ステップを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図中、同じ符号は同じ部材ないし機能が同じ部材を表している。
【0047】
図1は、本発明の1つの実施例に基づくブレーキ制御装置の模式図を示している。
【0048】
車両のブレーキアクションを制御可能である、車両Fのためのブレーキ制御装置10は、ブレーキブースタ装置BVおよび車両の電気機械EMおよび車両の走行安定性システムESPと接続された、または接続可能である、制御装置SEと、制御装置SEと接続され、車両でのブレーキペダルおよび/またはアクセルペダルの操作を判定するためにセットアップされるペダルセンサ装置PSとを含み、制御装置SEは、ブレーキペダルおよび/またはアクセルペダルの操作から運転者によるブレーキ要求を推定し、ブレーキブースタ装置の動作失陥または動作不良を認識し、認識されたブレーキブースタ装置BVの動作失陥または動作不良のもとでブレーキ要求がなされたときに、および/またはその後に、走行安定性システムESPを通じてブレーキアクションを制御するためにセットアップされている。
【0049】
制御装置SEは、走行安定性システムESPによるブレーキアクションのための命令を電気機械EMに転送し、それによってこれに発電機ブレーキトルクを生成するように要求し、および/またはブレーキブースタ装置BVによるブレーキアクションのための命令を電気機械EMに転送し、それによってこれに発電機ブレーキトルクを生成するように要求するためにセットアップされていてよい。
【0050】
ペダルセンサ装置PSは走行安定性システムおよび/またはブレーキブースタ装置BVと接続されていてよく、運転者のブレーキ要求を制御装置SEによりペダルセンサ装置PSを通じて走行安定性システムおよび/またはブレーキブースタ装置BVでも認識可能であってよく、それにより発電機ブレーキトルクの生成を制御可能であってよい。
【0051】
図2は、本発明の実施例に基づくブレーキ制御装置でのブレーキ要求の制御進行の模式図を示している。
【0052】
図2の図面は図1のものに類似しており、図1から既知である追加の制御アクションが模式的に示されている。
【0053】
ブレーキブースタ装置BVは、液圧配管HLを介して走行安定性システムESPと接続されていてよい。走行安定性システムESPは、液圧配管HLを介してブレーキ装置BRと接続されていてよい。たとえばブレーキブースタ装置BVのブレーキ要求および/または動作失陥もしくは動作不良に関する信号伝送のために、ブレーキブースタ装置BVは信号回線を介して走行安定性システムESPおよび/または電気機械EMと接続されていてよく、電気機械EMに対する発電機ブレーキトルクの直接的な要求(HBC-BV)を、ブレーキブースタ装置BVがまだそれだけの機能を果たしている場合には伝送することができ、このとき動作不良の存在に関する情報も電気機械に伝送することができ、それに応じていっそう高い発電機ブレーキトルクを、または一般に何らかの発電機ブレーキトルクGMを、生成することができる。その追加または代替として、動作不良および/または動作失陥に関するこの信号HBC-BVを、まだ可能である場合にはブレーキブースタ装置BVから走行安定性システムESPに伝送し、それに伴って不具合に関して走行安定性システムESPに知らせることができる。そして走行安定性システムESPは独自の信号SGを通じて、発電機ブレーキトルクGMを生成するように電気機械に要求することができる。これに加えて走行安定性システムESPはブレーキ装置BRを作動させて、(たとえば摩擦や液圧ブレーキトルクHMによる)従来式のブレーキトルクをこれに要求することができる。そして両方のブレーキトルクGMおよびHMから、全体ブレーキトルクGESを生成することができる。このようにして、ブレーキブースタ装置BVで動作不良または動作失陥が生じたときに、電気機械の作動を機械式のフォールバックレベルのために利用することができる。走行安定性システムESPにより、最大で生成可能な発電機ブレーキトルクの計算を行い、たとえば従来式のブレーキトルクHMの程度のもとで全体ブレーキトルクが生成されるべきときに、考慮に入れることができる。
【0054】
ブレーキ装置BRはたとえばブレーキキャリパを含むことができる。
【0055】
図3は、本発明の1つの実施例に基づく、ブレーキ制御装置を作動させる方法の各方法ステップのブロック図を示している。
【0056】
車両のブレーキアクションを制御するために、車両のためのブレーキ制御装置を作動させる方法では、本発明によるブレーキ制御装置でブレーキアクションを実行するための必要性の認識S1が行われ、このとき車両でのブレーキペダルおよび/またはアクセルペダルの操作がペダルセンサ装置によって認識されて、運転者によるブレーキ要求の存在が推定され、ブレーキブースタ装置の動作失陥または動作不良の認識S2が行われ、ブレーキトルクの生成S3が行われ、および/またはブレーキブースタ装置の動作失陥または動作不良が認識されたとき、および/または認識された後に、車両の走行安定性システムで、および/または走行安定性システムにより、ブレーキアクションの遂行が行われる。
【0057】
好ましい実施例をもとに本発明を上で全面的に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、多様な仕方で改変可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 ブレーキ制御装置
BV ブレーキブースタ装置
EM 電気機械
ESP 走行安定性システム
F 車両
PS ペダルセンサ装置
SE 制御装置
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-01-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のブレーキアクションを制御可能である、車両(F)のためのブレーキ制御装置(10)において、
車両のブレーキブースタ装置(BV)および電気機械(EM)と、および車両の走行安定性システム(ESP)と、接続された、または接続可能である、制御装置(SE)と、
前記制御装置(SE)と接続され、車両でのブレーキペダルおよび/またはアクセルペダルの操作を判定するためにセットアップされたペダルセンサ装置(PS)とを含み、前記制御装置(SE)は、
前記ブレーキペダルおよび/またはアクセルペダルの操作から運転者によるブレーキ要求を推定し、
前記ブレーキブースタ装置(BV)の動作失陥または動作不良を認識し、
前記ブレーキブースタ装置(BV)の認識された動作失陥または動作不良のもとでブレーキ要求がなされたときに、および/またはその後に、前記走行安定性システム(ESP)を通じてブレーキアクションを制御するためにセットアップされる、ブレーキ制御装置。
【請求項2】
前記制御装置(SE)は、前記ブレーキブースタ装置(BV)の認識された動作失陥または動作不良のもとで前記電気機械(EM)で発電機ブレーキトルクを生成するためにセットアップされる、請求項1に記載のブレーキ制御装置(10)。
【請求項3】
前記制御装置(SE)は、前記走行安定性システム(ESP)によるブレーキアクションについての命令を前記電気機械(EM)に転送し、それによって発電機ブレーキトルクを生成するように該電気機械に要求するためにセットアップされる、請求項2に記載のブレーキ制御装置(10)。
【請求項4】
前記制御装置(SE)は、前記ブレーキブースタ装置(BV)によるブレーキアクションについての命令を前記電気機械(EM)に転送し、それによって発電機ブレーキトルクを生成するように該電気機械に要求するためにセットアップされる、請求項2または3に記載のブレーキ制御装置(10)。
【請求項5】
液圧式のブレーキアクションについてのコントロール装置と接続され、および/またはこれを含み、前記走行安定性システムおよび/または前記ブレーキブースタ装置(BV)によるブレーキアクションについての命令を、液圧式のブレーキアクションについての前記コントロール装置を通じて制御可能である、請求項1からのいずれか1項に記載のブレーキ制御装置(10)。
【請求項6】
前記ペダルセンサ装置(PS)は前記走行安定性システムおよび/または前記ブレーキブースタ装置(BV)と接続され、運転者のブレーキ要求を前記制御装置(SE)により前記ペダルセンサ装置(PS)を介して前記走行安定性システムおよび/または前記ブレーキブースタ装置(BV)で認識可能であり、発電機ブレーキトルクの生成をそれによって制御可能である、請求項1からのいずれか1項に記載のブレーキ制御装置(10)。
【請求項7】
前記ペダルセンサ装置(PS)は前記ブレーキペダルおよび/またはアクセルペダルの圧力および/または位置を認識するためにセットアップされ、前記制御装置(SE)は、前記ブレーキペダルおよび/またはアクセルペダルの圧力および/または位置からブレーキ要求の程度を推測して、これを少なくとも部分的に電気機械で生成するためにセットアップされる、請求項1からのいずれか1項に記載のブレーキ制御装置(10)。
【請求項8】
車両のブレーキアクションを制御するために、車両(F)のためのブレーキ制御装置(10)を作動させる方法において、次の各ステップを含み、
請求項1に記載のブレーキ制御装置(10)によってブレーキアクションを実行するための必要性が認識(S1)され、このとき車両でのブレーキペダルおよび/またはアクセルペダルの操作がペダルセンサ装置(PS)によって認識されて、運転者によるブレーキ要求の存在が推定され、
ブレーキブースタ装置(BV)の動作失陥または動作不良が認識(S2)され、
前記ブレーキブースタ装置(BV)の動作失陥または動作不良が認識されたときに、および/または認識された後に、車両の走行安定性システム(ESP)で、および/または前記走行安定性システムにより、ブレーキトルクが生成(S3)され、および/またはブレーキアクションが遂行される、方法。
【請求項9】
全体ブレーキトルクの必要な量が判定され、設定値を満たす十分な全体ブレーキトルクが生成されるような電気機械の発電機ブレーキトルクと前記走行安定性システム(ESP)のブレーキトルクとがブレーキ装置で要求されて生成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記走行安定性システム(ESP)によるブレーキアクションについての命令が前記電気機械(EM)に転送され、それにより、これが発電機ブレーキトルクを生成するように要求をうける、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記ブレーキブースタ装置(BV)によるブレーキアクションについての命令が前記電気機械(EM)に転送され、それにより、これが発電機ブレーキトルクを生成するように要求をうける、請求項8または9に記載の方法
【請求項12】
前記ペダルセンサ装置(PS)によってブレーキペダルおよび/またはアクセルペダルの圧力および/または位置が認識され、ブレーキペダルおよび/またはアクセルペダルの圧力および/または位置からブレーキ要求の程度が推定され、相応のブレーキトルクが少なくとも部分的に発電機式に前記電気機械で生成される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項13】
前記電気機械で現在生成可能な発電機ブレーキトルクが判定され、これがブレーキ要求と比較され、全体ブレーキトルクが前記電気機械でのみ印加されるか、または車両の液圧式のブレーキ装置による補助のもとで生成される、請求項8または9に記載の方法。
【国際調査報告】