(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-13
(54)【発明の名称】1型肝腎症候群を有する患者を治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/12 20060101AFI20240606BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240606BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240606BHJP
C07K 7/16 20060101ALN20240606BHJP
【FI】
A61K38/12
A61P1/16
A61P13/12
C07K7/16 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573170
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2023-11-27
(86)【国際出願番号】 US2022032511
(87)【国際公開番号】W WO2022261102
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521438571
【氏名又は名称】マリンクロット ファーマシューティカルズ アイルランド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】テューバー, ピーター
(72)【発明者】
【氏名】パッパス, スティーブン クリス
(72)【発明者】
【氏名】ジャミル, クーラム
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA18
4C084BA26
4C084DB29
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA06
4C084ZA751
4C084ZA752
4C084ZA811
4C084ZA812
4H045AA30
4H045BA16
4H045CA40
4H045DA34
4H045EA20
4H045FA10
(57)【要約】
本開示の原理及び実施形態は、肝疾患に関連する腎機能障害を有する患者を治療するためにテルリプレシンを使用するための方法に関する。1型肝腎症候群(HRS-1)を有する成人患者を治療する方法は、患者がベースラインモデル末期肝疾患(MELD)スコア<35を有するか、患者が血清クレアチニン(SCr)<5mg/dlを有するか、患者がACLFグレード<3を有するか、若しくはそれらの組み合わせの場合、患者にある用量のテルリプレシンを投与すること、並びに/又はテルリプレシンでの治療の前及び治療中、患者の酸素化レベル(SpO
2)を監視することを含み得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法であって、
前記患者が35未満のベースラインモデル末期肝疾患(MELD)スコアを有する場合、静脈内(IV)注射によって前記患者にある用量のテルリプレシンを投与することと、
血清クレアチニン(SCr)≧5mg/dl及び/又は慢性肝不全の急性増悪(acute-on-chronic liver failure)(ACLF)グレード≧3を有する患者において、テルリプレシン(terlipressin)の投与を中止するか、又はその前記用量を低減することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記患者の前記ベースラインMELDスコアを取得することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記用量のテルリプレシンを投与する前に、前記患者における前記SCrレベルを取得して、ベースラインSCrレベルを決定することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記患者の死亡のリスクが、減少する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
移植リスト上の前記患者の立場が損なわれない、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記患者のICU滞在、非ICU滞在、及び/又は入院滞在の全期間が、短縮される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
テルリプレシン投与が、完全奏効又は部分奏効があるまで継続される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
テルリプレシンの投与を中止するか、又はその前記用量を低減することが、呼吸不全を有する患者において生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記患者がまた、重度の腎疾患を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記患者が、肺水腫、呼吸困難、又はそれらの組み合わせを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記テルリプレシンが、2分間にわたるIVボーラス注射によって6時間ごとに投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記テルリプレシンでの治療中、前記患者の酸素飽和度を監視することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記酸素飽和度の前記監視が、有害事象の発生を減少させる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法であって、
前記患者が35未満のベースラインモデル末期肝疾患(MELD)スコアを有する場合、静脈内(IV)注射によって前記患者にある用量のテルリプレシンを投与することを含む、方法。
【請求項15】
前記患者の前記ベースラインMELDスコアを取得することを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
血清クレアチニン(SCr)≧5mg/dl及び/又は慢性肝不全の急性増悪(ACLF)グレード≧3を有する患者において、テルリプレシンの投与を中止するか、又はその前記用量を低減することを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法であって、
前記患者のベースラインモデル末期肝疾患(MELD)スコアを取得することと、
ある用量のテルリプレシンを投与する前に、前記患者におけるSCrレベルを取得して、ベースラインSCrレベルを決定することと、
前記ベースラインMELDスコアが<35であるか、前記ベースラインSCrレベルが<5mg/dlであるか、前記患者がACLFグレード<3を有するか、又はそれらの組み合わせの場合、前記患者にある用量のテルリプレシンを投与することと、を含む、方法。
【請求項18】
前記テルリプレシンが、静脈内(IV)注射によって前記患者に投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法であって、
静脈内(IV)注射によって患者にある用量のテルリプレシンを投与することを含み、
投与が、前記患者がベースラインモデル末期肝疾患(MELD)スコア<35を有するか、前記患者が血清クレアチニン(SCr)<5mg/dlを有するか、前記患者がACLFグレード<3を有するか、又はそれらの組み合わせの場合にのみ生じる、方法。
【請求項20】
前記テルリプレシンでの治療中、流体過負荷について前記患者を監視することと、
流体過負荷が発生した場合、前記テルリプレシン用量を低減するか、又は中止することと、を更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記患者に利尿剤を投与することを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記患者における前記SCrレベルを測定することを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者の全生存を増加させる方法であって、前記方法が、
前記患者のベースラインモデル末期肝疾患(MELD)スコアを取得することと、
前記患者におけるSCrレベルを取得して、ベースラインSCrレベルを決定することと、
前記患者のベースラインMELDスコアが<35であり、かつ前記ベースラインSCrレベルが<5mg/dlである場合、前記患者にある用量のテルリプレシンを投与することと、を含む、方法。
【請求項24】
1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者の全体的なICU又は入院滞在を減少させる方法であって、前記方法が、
前記患者のベースラインモデル末期肝疾患(MELD)スコアを取得することと、
前記患者におけるSCrレベルを取得して、ベースラインSCrレベルを決定することと、
前記患者のベースラインMELDスコアが<35であり、かつ前記ベースラインSCrレベルが<5mg/dlである場合、前記患者にある用量のテルリプレシンを投与することと、を含む、方法。
【請求項25】
1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者の完全奏効を増加させる方法であって、前記方法が、
前記患者のベースラインモデル末期肝疾患(MELD)スコアを取得することと、
前記患者におけるSCrレベルを取得して、ベースラインSCrレベルを決定することと、
前記患者のベースラインMELDスコアが<35であり、かつ前記患者のベースラインSCrレベルが<5mg/dlである場合、静脈内(IV)注射によって患者にある用量のテルリプレシンを投与することと、
テルリプレシンの投与中、前記患者における前記SCrレベルを測定することと、
前記患者のSCrレベルが≦1.5mg/dlになるまでテルリプレシンの投与を継続することと、を含む、方法。
【請求項26】
1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者の部分奏効を増加させる方法であって、前記方法が、
前記患者のベースラインモデル末期肝疾患(MELD)スコアを取得することと、
前記患者におけるSCrレベルを取得して、ベースラインSCrレベルを決定することと、
前記患者のベースラインMELDスコアが<35であり、かつ前記患者のベースラインSCrレベルが<5mg/dlである場合、静脈内(IV)注射によって患者にある用量のテルリプレシンを投与することと、
テルリプレシンの投与中、前記患者における前記SCrレベルを測定することと、
前記患者が血清クレアチニンの20%超の改善を経験するまで、テルリプレシンの投与を継続することと、を含む、方法。
【請求項27】
前記投与が、前記患者が血清クレアチニンの30%超の改善を経験するまで継続される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法であって、
静脈内(IV)注射によって前記患者にある用量のテルリプレシンを投与することを含み、前記患者がMELDスコア≧35で肝移植のためにリストされている場合、前記患者が、治療から除外される、方法。
【請求項29】
1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法であって、
静脈内(IV)注射によって前記患者にある用量のテルリプレシンを投与することを含み、前記患者が、リスト化から移植までの待機時間の中央値が5.6ヶ月以上である患者集団に属する場合にのみ、前記患者が、治療される、方法。
【請求項30】
1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法であって、
静脈内(IV)注射によって前記患者にある用量のテルリプレシンを投与することを含み、前記患者が、リスト化から移植までの待機時間の中央値が0.23ヶ月以下である患者集団に属する場合、前記患者が、治療から除外される、方法。
【請求項31】
1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法であって、
治療に適格な患者の集団を軽減された集団に絞り込み、呼吸不全、重篤な有害事象、死亡、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるリスクを低減することと、
静脈内(IV)注射によって、前記軽減された集団の前記患者にある用量のテルリプレシンを投与することと、を含む、方法。
【請求項32】
1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療するためにテルリプレシンを投与する方法であって、前記患者が、35未満のベースラインモデル最終状態肝疾患(MELD)スコアで移植のためにリスト化されており、前記方法が、
静脈内(IV)注射によって前記患者にある用量のテルリプレシンを投与することと、
血清クレアチニン(SCr)レベル≧5mg/dl及び/又は慢性肝不全の急性増悪(ACLF)グレード≧3を有する患者において、テルリプレシンの投与を中止するか、又はその前記用量を低減することと、を含む、方法。
【請求項33】
前記用量のテルリプレシンを投与する前に、前記患者における前記SCrレベルを取得して、ベースラインSCrレベルを決定することを更に含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記患者の死亡のリスクが、減少する、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
移植リスト上の前記患者の立場が損なわれない、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記患者のICU滞在、非ICU滞在、及び/又は入院滞在の全期間が、短縮される、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
テルリプレシン投与が、完全奏効又は部分奏効があるまで継続される、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
テルリプレシンの投与を中止するか、又はその前記用量を低減することが、呼吸不全を有する患者において生じる、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
前記患者がまた、重度の腎疾患を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
前記患者が、肺水腫、呼吸困難、又はそれらの組み合わせを有する、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
前記テルリプレシンが、2分間にわたるIVボーラス注射によって6時間ごとに投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項42】
前記テルリプレシンでの治療中、パルスオキシメトリを介して前記患者の酸素化レベルを監視することを更に含む、請求項32に記載の方法。
【請求項43】
前記酸素化レベルの前記監視が、有害事象の発生を減少させる、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法であって、
パルスオキシメトリを介してベースライン酸素化レベル(SpO
2)を取得することと、
前記患者が低酸素を経験していない場合、静脈内(IV)注射によって前記患者にある用量のテルリプレシンを投与することと、
前記テルリプレシンでの治療中、前記患者のSpO
2を監視することと、を含む、方法。
【請求項45】
前記酸素化レベルの前記監視が、有害事象の発生を減少させる、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記患者の酸素飽和度が、低酸素について監視される、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
低酸素が検出される場合、テルリプレシンの投与を中止すること、又はその前記用量を低減することを更に含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記患者のSpO
2が、テルリプレシンの投与中、1日に少なくとも3回監視される、請求項44に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月7日に出願された米国特許出願第17/340,765号の利益を主張するものであり、この全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の組み込み
約1キロバイトのファイルサイズを有する2022年6月6日ごろに作成された「105870_726724_SequenceListing_ST25.txt」と題されるコンピュータ可読テキストファイルには、本出願のための配列表が含まれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示の原理及び実施形態は、概して、1型肝腎症候群を有する患者を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
1型肝腎症候群(1型HRS又はHRS-1)は、他の任意の原因の非存在下での後期肝硬変を有する患者における急性腎不全の発症である。それは、3ヶ月以内に80%超の高い死亡率を伴う腎不全の急速な発病によって特徴付けられる。腎不全は肝硬変の特定された合併症であり、急性腎不全は肝硬変を有する患者の予後が悪いことが知られている。様々な場合では、腎不全は、血液量減少症、進行中の感染を伴わない肝腎症候群、又は進行中の感染を伴う肝腎症候群によって引き起こされる可能性がある。残念ながら、1型HRSを有する患者は、肝臓移植を待っている間に腎不全で死亡する可能性がある。現在、どの患者が1型HRSを逆転させるためのテルリプレシン(terlipressin)治療から最大限に利益を得ることができるかを決定する方法はない。
【0005】
肝腎症候群(HRS)は、腎血管収縮、血管抵抗の減少を生じさせる内臓及び末梢動脈の血管拡張、並びに門脈圧亢進症に起因する低い糸球体濾過速度によって示される。HRSは、腹水を伴う肝硬変、クレアチニンの血清レベル>133μmol/l(1.5mg/dL)、少なくとも2日のアルブミンによる利尿薬の離脱及び体積拡大の後のクレアチニンの血清レベルの改善(≦133μmol/lのレベルまで下炎症)、並びにショック及び実質腎疾患の非存在によって示される。1型HRSは、2週間未満で、クレアチニンの初期血清レベルを>226μmol/l(2.56mg/dL)に倍増することによって示される。
【0006】
正常なクレアチニンレベルは、男性では0.7~1.3mg/dL、女性では0.6~1.1mg/dLの範囲である。1mg/dlのクレアチニンは、88.4μmol/lに等しい。
【0007】
しかしながら、肝硬変を有する患者において有効な動脈血量及び比較的正常な動脈圧を維持するために働くある特定の機序は、ナトリウム及び溶質を含まない水の保持などの腎機能に影響を及ぼし、腹水及び浮腫、並びに腎内血管収縮及び低灌流を引き起こすことによる腎不全をもたらす可能性がある。腹水は、腸管毛細血管圧及び透過性を変化させる、門脈圧亢進症及び内臓動脈の血管拡張の組み合わせから生じ得、これは、腹腔内の保持された流体の蓄積を促進する。
【0008】
腹水形成に寄与する要因は、有効な動脈血量の減少をもたらす内臓血管拡張である。門脈圧亢進症はまた、肝硬変の肝臓における門脈血流に対する肝臓抵抗性の増加からも生じ、内臓血管拡張を誘導する可能性がある。溶質を含まない腎水の排出及び腎血管収縮に顕著な障害がある場合があり、これがHRSをもたらす。
【0009】
様々な場合では、INR>1.5、腹水、及び脳症を含む肝臓代償不全の徴候が存在し得る。低ナトリウム血症は、肝硬変及び腹水を有する患者の頻繁な合併症でもあり、それは、罹患率の増加に関連している。
【0010】
全身性炎症応答症候群(SIRS)は、必ずしも感染症に関連しないが、最初に局所サイトカインを産生する非特異的損傷に起因し得る炎症応答である。SIRSは、典型的には、(1)36℃(96.8°F)未満又は38℃(100.4°F)超の中心部体温、(2)1分当たり90拍超の心拍数、(3)1分当たり20呼吸超の頻呼吸(高呼吸速度)、又は4.3kPa(32mmHg)未満の二酸化炭素(CO2)の動脈分圧、及び(4)4000細胞/mm3(4×109細胞/L)未満若しくは12,000細胞/mm3(12×109細胞/L)超の白血球数、又は3%超のバンド形態がバンデミア(bandemia)又は「左シフト」と呼ばれる、10%超の未成熟好中球(バンド形態)の存在を含む4つの基準によって特徴付けられる。SIRSは、これらの基準農地の2つ以上が存在する場合、診断され得る。
【0011】
敗血症は、感染に対する全身性炎症応答として定義されており、敗血症性ショックは、輸液蘇生に対して難治である低血圧又は高乳酸血症のいずれかによって合併する敗血症である。
【0012】
HRS及びSIRSに罹患している患者の死亡率は、非常に高く、70%に近づく場合がる。
【0013】
末期肝疾患及び全身性炎症応答を有する患者に対していくつかの研究が行われている。“Model for End-Stage Liver Disease Score and Systemic Inflammatory Response Are Major Prognostic Factors in Patients with Cirrhosis and Acute Functional Renal Failure”と題してHEPATOLOGY,Vol.46,No.6,2007(これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示された、Thabutらによって記載された1つのそのような研究は、感染の有無にかかわらず、SIRS基準の存在が、肝硬変及び急性機能性腎不全を有する患者における主要な独立した予後因子であると結論付けられた。
【0014】
HRS及びSIRSの存在は、典型的には、短い期間内に適切な薬剤で効果的に治療されない場合、短い寿命を示す。したがって、特定の症状を呈する患者に対して最も効果的な治療法を特定し、患者が可能な限り速やかに適切なレジメンを開始することが最も重要である。
【0015】
テルリプレシンは、ペプチドバソプレシンVIa受容体アゴニストとして作用する、長期効果を有するバソプレシンの合成類似体である。テルリプレシンは、3つのアミノ酸残基によってN末端を伸長することによって調製されたバソトシンの誘導体であり、低血圧の管理における血管活性薬として使用される。テルリプレシンは、ペプチド合成機を用いて液相又は固相においてアミノ酸を互いに段階的にカップリングすることによって合成され得る。テルリプレシンは、リジン-バソプレシンにゆっくりと代謝するプロドラッグであり、このようにして長期の生物学的効果を提供する。わずか6分(作用期間は30~60分)であるバソプレシンの短い半減期とは対照的に、テルリプレシンの半減期は、6時間(作用期間は2~10時間)である。
【0016】
注射用製剤中のテルリプレシン(Gly-Lys-Pro-Cys-Asn-Gln-Phe-Tyr-Cys-Gly-Gly-Gly、配列番号1)の化学構造を以下に示す。
【化1】
【0017】
分子式:C52H74N16O15S2
分子量:1227.4ダルトン
外観:均質な凍結乾燥された白色から灰色がかった白色の固体
溶解性:生理食塩水中、透明で無色の溶液
バイアル:11mgの白色から灰色がかった白色の固体、1mgの有効成分及び10mgのマンニトールを含有する無色のガラスバイアル。
【0018】
活性成分であるN-[N-(N-グリシルグリシル)グリシル]-8-L-リシンバソプレシンは、12個のアミノ酸から構成され、第4のアミノ酸と第9のアミノ酸との間にジスルフィド架橋を有する環状ノナペプチドの特徴的な環構造を有する、8-リジンバソプレシンの合成製造されたホルモン前駆体(hormonogen)である。3つのグリシルアミノ酸は、8-リジン-バソプレシンの1位(システイン)で置換されている。8-リジン-バソプレシンのこのN末端伸長により、グリシル分子が急速なN末端酵素分解を阻害するため、活性成分の代謝分解速度が顕著に低減する。テルリプレシンは、テルリプレシンアセテート若しくはテルリプレシンジアセテート五水和物などの塩、ジアセテート、水和物、及び/又は遊離塩基として医薬組成物中に存在し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
本開示の原理及び実施形態は、概して、患者にテルリプレシンを投与して、HRS-1の逆転を得ることによってHRS-1を有する患者を治療する方法に関する。1つ以上の実施形態では、応答基準は、テルリプレシンの投与に対する患者による応答の改善の可能性を示す新しい有用な機能を提供する。
【0020】
本開示のいくつかの態様は、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法であって、患者がベースラインで移植のためにリスト化され、35未満のベースラインモデル末期肝疾患(MELD)スコアを有する場合、静脈内(IV)注射によって患者にある用量のテルリプレシンを投与することと、血清クレアチニン(SCr)≧5mg/dl及び/又は慢性肝不全の急性増悪(acute-on-chronic liver failure)(ACLF)グレード≧3を有する患者において、テルリプレシンの投与を中止するか、又はその用量を低減することと、を含む、方法に関する。テルリプレシンは、2分間にわたるIVボーラス注射によって6時間ごとに投与され得る。
【0021】
いくつかの態様では、本方法は、患者のベースラインMELDスコアを取得することを更に含み得る。追加の態様では、本方法は、ある用量のテルリプレシンを投与する前に、患者におけるSCrレベルを取得して、ベースラインSCrレベルを決定することを更に含み得る。いくつかの例では、ベースラインSCr≧5mg/dl及び/又はベースラインACLFグレード≧3の場合、テルリプレシンは投与されない場合がある。他の態様では、患者の死亡のリスクが減少する。移植リスト上の患者の立場は、テルリプレシンの投与によって損なわれないか、又は影響を受けない場合がある。いくつかの態様では、患者は、テルリプレシンの投与により、移植リスト上の立場が損なわれるか、又は影響を受けるリスクが高い場合がある。加えて、患者のICU滞在、非ICU滞在、及び/又は入院滞在の全期間は、短縮され得る。いくつかの態様では、テルリプレシン投与は、完全奏効又は部分奏効があるまで継続される。他の態様では、テルリプレシンの投与を中止するか、又はその用量を低減することが、呼吸不全を有する患者において生じる。患者はまた、重度の腎疾患、肺水腫、呼吸困難、又はそれらの組み合わせを有し得る。様々な態様では、本方法は、テルリプレシンでの治療中、患者の酸素飽和度を監視することを更に含み得る。酸素飽和度の監視は、有害事象の発生を減少させる。
【0022】
本開示の更なる態様は、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法であって、患者が35未満のベースラインモデル末期肝疾患(MELD)スコアを有し、移植のためにリスト化されている場合、静脈内(IV)注射によって患者にある用量のテルリプレシンを投与することを含む、方法に関する。本方法は、患者のベースラインMELDスコアを取得することを更に含み得る。いくつかの態様では、本方法は、血清クレアチニン(SCr)≧5mg/dl及び/又は慢性肝不全の急性増悪(ACLF)グレード≧3を有する患者において、テルリプレシンを投与しないか、その投与を中止するか、又はその用量を低減することを更に含み得る。
【0023】
本開示の更なる態様は、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法であって、患者のベースラインモデル末期肝疾患(MELD)スコアを取得することと、ある用量のテルリプレシンを投与する前に、患者におけるSCrレベルを取得して、ベースラインSCrレベルを決定することと、ベースラインMELDスコアが<35であるか、ベースラインSCrレベルが<5mg/dlであるか、患者がACLFグレード<3を有するか、又はそれらの組み合わせの場合、患者にある用量のテルリプレシンを投与することと、を含む方法に関する。いくつかの態様では、患者は、移植のためにリスト化され得る。追加の態様では、患者がベースラインで移植のためにリスト化されていない場合、患者は、MELDスコア≧35を有する場合がある。テルリプレシンは、静脈内(IV)注射によって患者に投与され得る。
【0024】
本開示のなお更なる態様は、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法であって、静脈内(IV)注射によって患者にある用量のテルリプレシンを投与することを含み、患者がベースラインで移植のためにリスト化され、かつベースラインモデル末期肝疾患(MELD)スコア<35を有するか、患者が血清クレアチニン(SCr)<5mg/dlを有するか、患者がACLFグレード<3を有するか、又はそれらの組み合わせの場合のみ投与が生じる、方法に関する。いくつかの態様では、本方法は、テルリプレシンでの治療中、流体過負荷について患者を監視することと、流体過負荷が発生した場合に、テルリプレシン用量を低減するか、又は中止することと、を更に含み得る。加えて、本方法は、利尿剤を患者に投与すること、及び/又は患者におけるSCrレベルを測定することを更に含み得る。
【0025】
本開示の他の態様は、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者の全生存を増加させる方法であって、本方法が、患者のベースラインモデル末期肝疾患(MELD)スコアを取得することと、患者におけるSCrレベルを取得して、ベースラインSCrレベルを決定することと、患者のベースラインMELDスコアが<35であり、かつベースラインSCrレベルが<5mg/dlである場合、患者にある用量のテルリプレシンを投与することと、を含む、方法に関する。いくつかの態様では、患者は、ベースラインで移植のためにリスト化され得る。追加の態様では、患者がベースラインで移植のためにリスト化されていない場合、患者は、MELDスコア≧35を有する場合がある。
【0026】
本開示の追加の態様は、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者の全体的なICU又は入院滞在を減少させる方法であって、本方法が、患者のベースラインモデル末期肝疾患(MELD)スコアを取得することと、患者におけるSCrレベルを取得して、ベースラインSCrレベルを決定することと、患者のベースラインMELDスコアが<35であり、かつベースラインSCrレベルが<5mg/dlである場合、患者にある用量のテルリプレシンを投与することと、を含む、方法に関する。いくつかの態様では、患者は、ベースラインで移植のためにリスト化され得る。追加の態様では、患者がベースラインで移植のためにリスト化されていない場合、患者は、MELDスコア≧35を有する場合がある。
【0027】
本開示の追加の態様は、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者の完全奏効を増加させる方法であって、本方法が、患者のベースラインモデル末期肝疾患(MELD)スコアを取得することと、患者におけるSCrレベルを取得して、ベースラインSCrレベルを決定することと、患者のベースラインMELDスコアが<35であり、かつ患者のベースラインSCrレベルが<5mg/dlである場合、静脈内(IV)注射によって患者にある用量のテルリプレシンを投与することと、テルリプレシンの投与中に患者におけるSCrレベルを測定することと、患者のSCrレベルが≦1.5mg/dlになるまでテルリプレシンの投与を継続することと、を含む、方法に関する。いくつかの態様では、患者は、ベースラインで移植のためにリスト化され得る。追加の態様では、患者がベースラインで移植のためにリスト化されていない場合、患者は、MELDスコア≧35を有する場合がある。
【0028】
本開示の更なる態様は、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者の部分奏効を増加させる方法であって、本方法が、患者のベースラインモデル末期肝疾患(MELD)スコアを取得することと、患者におけるSCrレベルを取得して、ベースラインSCrレベルを決定することと、患者のベースラインMELDスコアが<35であり、かつ患者のベースラインSCrレベルが<5mg/dlである場合、静脈内(IV)注射によって患者にある用量のテルリプレシンを投与することと、テルリプレシンの投与中に患者におけるSCrレベルを測定することと、患者が血清クレアチニンの20%超の改善を経験するまでテルリプレシンの投与を継続することと、を含む、方法に関する。投与は、患者が血清クレアチニンの30%超の改善を経験するまで継続され得る。いくつかの態様では、患者は、ベースラインで移植のためにリスト化され得る。追加の態様では、患者がベースラインで移植のためにリスト化されていない場合、患者は、MELDスコア≧35を有する場合がある。
【0029】
本開示の他の態様は、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法であって、静脈内(IV)注射によって患者にある用量のテルリプレシンを投与することを含み、患者がMELDスコア≧35で肝移植のためにリスト化されている場合、患者が、治療から除外される、方法に関する。
【0030】
本開示の更なる態様は、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法であって、静脈内(IV)注射によって患者にある用量のテルリプレシンを投与することを含み、患者が、リスト化から移植までの待機時間の中央値が5.6ヶ月以上である患者集団に属する場合にのみ、患者が、治療される、方法に関する。
【0031】
本開示のなお更なる態様は、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法であって、静脈内(IV)注射によって患者にある用量のテルリプレシンを投与することを含み、患者が、リスト化から移植までの待機時間の中央値が0.23ヶ月以下である患者集団に属する場合、患者が、治療から除外される、方法に関する。
【0032】
本開示のいくつかの態様は、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法であって、治療に適格な患者の集団を軽減された集団に絞り込み、呼吸不全、重篤な有害事象、死亡、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるリスクを低減することと、静脈内(IV)注射によって、軽減された集団の患者にある用量のテルリプレシンを投与することと、を含む、方法に関する。
【0033】
本開示の追加の態様は、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療するためにテルリプレシンを投与する方法であって、患者が35未満のベースラインモデル最終状態肝疾患(MELD)スコアで移植のためにリスト化されており、本方法が、患者に静脈内(IV)注射によってある用量のテルリプレシンを投与することと、血清クレアチニン(SCr)レベル≧5mg/dl及び/又は慢性肝不全の急性増悪(ACLF)グレード≧3を有する患者において、テルリプレシンの投与を中止するか、又はその用量を低減することと、を含む、方法に関する。いくつかの態様では、本方法は、ある用量のテルリプレシンを投与する前に、患者におけるSCrレベルを取得して、ベースラインSCrレベルを決定することを更に含み得る。患者の死亡リスクは、減少し得る。移植リスト上の患者の立場は、損なわれないか、又は影響を受けない場合がある。患者のICU滞在、非ICU滞在、及び/又は入院滞在の全期間は、短縮され得る。いくつかの態様では、テルリプレシン投与は、完全奏効又は部分奏効があるまで継続される。他の態様では、テルリプレシンの投与を中止するか、又はその用量を低減することが、呼吸不全を有する患者において生じる。患者はまた、重度の腎疾患、肺水腫、呼吸困難、又はそれらの組み合わせを有し得る。テルリプレシンは、2分間にわたるIVボーラス注射によって6時間ごとに投与され得る。いくつかの態様では、本方法は、テルリプレシンでの治療中、パルスオキシメトリを介して患者の酸素化レベルを監視することを更に含み得る。酸素化レベルの監視は、有害事象の発生を減少させる。
【0034】
本開示のいくつかの態様は、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法であって、パルスオキシメトリを介してベースライン酸素化レベル(SpO2)を取得することと、患者が低酸素を経験していない場合、静脈内(IV)注射によって患者にある用量のテルリプレシンを投与することと、テルリプレシンでの治療中、患者のSpO2を監視することと、を含む方法に関する。酸素化レベルの監視は、有害事象の発生を減少させ得る。いくつかの態様では、患者の酸素飽和度は、低酸素について監視される。本方法は、低酸素が検出される場合、テルリプレシンの投与を中止するか、又はその用量を低減することを更に含み得る。例えば、ベースライン時又は治療中の患者のSpO2が90%未満である場合、及び/又は患者のFiO2が0.36超である場合、テルリプレシンは投与されないか、又は中止され得る。患者のSpO2は、テルリプレシンの投与中、少なくとも1日3回監視され得る。
【0035】
本開示のなお更なる態様は、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法であって、静脈内(IV)注射によって患者にある用量のテルリプレシンを投与することと、血清クレアチニン(SCr)≧5mg/dlを有する患者において、テルリプレシンの投与を中止するか、又はその用量を低減することと、を含む、方法に関する。本開示の追加の態様は、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法であって、患者における血清クレアチニン(SCr)レベルを測定することと、患者が血清クレアチニン(SCr)<5mg/dlを有するか、患者がACLFグレード<3を有するか、又はそれらの組み合わせの場合、患者にある用量のテルリプレシンを投与することと、を含む方法に関する。テルリプレシンは、静脈内(IV)注射によって患者に投与され得る。本開示の更なる態様は、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法であって、静脈内(IV)注射によって患者にある用量のテルリプレシンを投与することを含み、患者が血清クレアチニン(SCr)≧5mg/dlを有するか、患者がACLFグレード≧3を有するか、又はそれらの組み合わせの場合、投与は生じない、方法を含む。更に別の態様では、本発明は、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法であって、静脈内(IV)注射によって患者にある用量のテルリプレシンを投与することを含み、患者が血清クレアチニン(SCr)<5mg/dlを有するか、患者がACLFグレード<3を有するか、又はそれらの組み合わせの場合にのみ、投与が生じる、方法を含む。本方法は、テルリプレシンでの治療中、流体過負荷について患者を監視することと、流体過負荷が発生した場合にテルリプレシンの治療を低減することと、を更に含み得る。本明細書で使用される場合、「テルリプレシン治療を低減すること」及び「テルリプレシン用量を低減すること」という用語は、患者が事前に処方されているか、又は用量の増量についてスケジュールされている場合、テルリプレシン用量を下げること、テルリプレシン用量を中断すること、及び/又は用量を増量しないことを含み得る。テルリプレシン用量を中断することは、有害事象が収まるまで、更なる通知まで、又は患者が血清クレアチニン(SCr)≧5mg/dlを有するまで、用量を一時的に中断することを含み得る。追加の態様では、本方法は、患者におけるSCrレベルを測定することを更に含み得る。いくつかの態様では、患者のICU滞在、非ICU滞在、及び/又は入院滞在の全期間は、短縮され得る。テルリプレシン投与は、完全奏効又は部分奏効があるまで継続され得る。
【0036】
追加の態様では、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法は、静脈内(IV)注射によって患者にある用量のテルリプレシンを投与することと、アルブミン、他の流体、及び/又は利尿剤の賢明な使用の投与を低減又は中止することによって流体過負荷を管理することと、を含む。本明細書で使用される場合、利尿剤の賢明な使用は、有効量の利尿剤の使用を意味する。明確にするために、アルブミンの投与を低減することは、用量を下げること、又はある用量のアルブミンを中断することを含み得る。流体過負荷が持続する場合、治療する方法は、テルリプレシン治療を低減又は中止することを更に含み得る。更なる態様では、流体過負荷を管理することは、本明細書に記載の本発明による治療を受ける患者又は患者集団における死亡率又は有害事象の発生を低減し得る。別の態様では、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法は、静脈内(IV)注射によって患者にある用量のテルリプレシンを投与することと、アルブミン、他の流体、及び/又は利尿剤の賢明な使用の投与を低減又は中止することによって流体過負荷を管理することと、を含み、患者が更に、呼吸不全、重度の腎疾患、肺水腫、呼吸困難、頻呼吸、虚血、又はそれらの組み合わせを有する。
【0037】
追加の態様では、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法は、静脈内(IV)注射によって患者にある用量のテルリプレシンを投与することを含み、テルリプレシンの用量が、流体過負荷、肺炎、気管支けいれん、肺水腫、進行中の重大な有害反応、既存の重度の冠動脈疾患、又はそれらの組み合わせの存在下で増加されない。追加の態様では、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法は、静脈内(IV)注射によって患者にある用量のテルリプレシンを投与することを含み、テルリプレシンの用量が、流体過負荷、肺炎、気管支けいれん、肺水腫、進行中の重大な有害反応、既存の重度の冠動脈疾患、又はそれらの組み合わせの存在下で低減又は中止される。本開示の他の態様は、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法であって、2分間にわたる静脈内(IV)ボーラス注射によって6時間ごとに患者にある用量のテルリプレシンを投与することと、テルリプレシンでの治療中、流体過負荷について患者を監視することと、流体過負荷が持続する場合、テルリプレシン治療を低減するか、又は中止することと、を含む、方法を含む。
【0038】
虚血性事象(例えば、皮膚、心臓、血管、又は胃腸組織への不十分な血液供給)は、テルリプレシンの投与後に生じる場合がある。最も一般的な虚血関連有害事象は、皮膚変色、チアノーゼ、腸虚血、及びそれらの組み合わせを含み得る。テルリプレシンで治療された患者における重篤な虚血性事象は、腸虚血、血管性皮膚障害、チアノーゼ、網状皮斑、心筋梗塞、末梢循環不良、心筋虚血、又はそれらの組み合わせを含み得る。テルリプレシンは、虚血性事象及びある特定の心臓病の既往歴を有する患者には注意して使用する必要がある。虚血性有害反応を示唆する徴候又は症状を経験する患者では、テルリプレシン用量が低減されるか、永久に中止される必要がある。本開示の追加の態様は、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法であって、2分間にわたる静脈内(IV)ボーラス注射によって6時間ごとに患者にある用量のテルリプレシンを投与することを含み、テルリプレシンでの患者の治療が、虚血の存在下で低減又は中止される、方法に関する。別の態様は、本発明は、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法であって、2分間にわたる静脈内(IV)ボーラス注射によって6時間ごとに患者にある用量のテルリプレシンを投与することを含み、テルリプレシンでの患者の治療が、患者における皮膚、心臓、血管、若しくは胃腸虚血、又はそれらの組み合わせの存在下で低減されるか、又は中止される、方法を含む。「虚血」及び「虚血性事象」という用語は、互換的に使用され得る。
【0039】
本開示の更なる他の態様は、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法であって、2分間にわたる静脈内(IV)ボーラス注射によって6時間ごとに患者にある用量のテルリプレシンを投与することを含み、テルリプレシンの用量が、流体過負荷、肺炎、気管支けいれん、又は肺水腫の存在下で増加されない、方法に関する。本開示の更なる態様は、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法であって、2分間にわたる静脈内(IV)ボーラス注射によって6時間ごとに患者にある用量のテルリプレシンを投与することと、テルリプレシンでの治療中、流体過負荷について患者を監視することと、流体過負荷が発生した場合、テルリプレシンの用量を低減するか、又は中止することと、を含む、方法に関する。本開示の更に別の態様では、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を治療する方法は、2分間にわたる静脈内(IV)ボーラス注射によって6時間ごとに患者にある用量のテルリプレシンを投与することを含み、テルリプレシンでの治療が、治療中に発生した肺水腫、新規発病若しくは悪化している肺炎、又は誤嚥のリスクを伴う未解消の肝性脳症≧グレード3の存在下で直ちに中断される。
【0040】
本開示の更なる態様は、全生存又は1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者を増加させる方法であって、患者における血清クレアチニン(SCr)レベルを測定することと、患者が血清クレアチニン(SCr)<5mg/dlを有する場合、患者にある用量のテルリプレシンを投与することと、を含む、方法に関する。本開示の更なる態様は、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者の全体的なICU又は入院滞在を減少させる方法であって、本方法が、患者における血清クレアチニン(SCr)レベルを測定することと、患者がSCr<5mg/dlを有する場合、患者にある用量のテルリプレシンを投与することと、を含む、方法に関する。
【0041】
本開示の追加の態様は、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者の完全奏効を増加させる方法であって、患者における血清クレアチニン(SCr)レベルを測定することと、患者のSCrレベルが<5mg/dlである場合、静脈内(IV)注射によって患者にある用量のテルリプレシンを投与することと、患者のSCrレベルが≦1.5mg/dlとなるまでテルリプレシンの投与を継続することと、を含む、方法に関する。本開示のなお更なる態様は、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する患者の部分奏効を増加させる方法であって、患者における血清クレアチニン(SCr)レベルを測定することと、患者のSCrレベルが<5mg/dlである場合、静脈内(IV)注射によって患者にある用量のテルリプレシンを投与することと、患者が血清クレアチニンの20%超の改善を経験するまでテルリプレシンの投与を継続することと、を含む、方法に関する。
【0042】
追加の態様及び特徴は、以下の説明に部分的に記載されており、明細書を検討することにより当業者に明らかになるか、又は開示された主題の実施により学習され得る。
【0043】
本開示の実施形態の更なる特徴、それらの性質、及び様々な利点は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を考慮するとより明らかとなり、これらはまた、出願人によって企図される最良のモードを例示するものであり、同様の参照文字は、全体を通して同様の部分を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】テルリプレシン処置プロトコルの例示的な実施形態を示す。
【
図2】テルリプレシン処置プロトコルの例示的な実施形態を示す。
【
図3】テルリプレシン処置プロトコルの例示的な実施形態からの一連の予期しない結果を示す。
【
図4】テルリプレシン処置プロトコルの例示的な実施形態を示す。
【
図5】ACLFグレードに従ってテルリプレシンで処置された、及びテルリプレシンなしで処置された患者の90日生存を示すグラフである。
【
図6A-B】(
図6A)テルリプレシン及びプラセボで処置された患者のベースライン及び治療の終了時の腎不全を有する患者のパーセンテージを示す。(
図6B)テルリプレシン及びプラセボで処置された患者のベースライン及び治療の終了時の呼吸不全を有する患者のパーセンテージを示す。
【
図6C】テルリプレシン及びプラセボで処置された患者について、ACLFグレード≦2及びACLFグレード≧3での呼吸不全を有する患者のパーセンテージを示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本開示の原理及び実施形態は、テルリプレシンを含む治療プロトコルを含む患者の腎臓状態を改善する方法に関する。したがって、本開示の様々な実施形態は、患者をテルリプレシン又はテルリプレシン及びアルブミンで治療する方法を提供する。
【0046】
本明細書で使用される場合、「テルリプレシン」の使用は、テルリプレシン、又はその塩、ジアセテート、水和物、及び/若しくは遊離塩基を指し得る。例えば、テルリプレシンの使用は、テルリプレシンアセテート又はテルリプレシンジアセテート五水和物を含み得る。追加の例では、テルリプレシンは、その任意の他の好適な塩若しくは水和物、又はその任意の他の生物学的に許容される塩若しくは水和物を指し得る。
【0047】
本明細書で使用される場合、「テルリプレシン治療を低減すること」及び「テルリプレシン用量を低減すること」という用語は、患者が事前に処方されているか、又は用量の増量についてスケジュールされている場合、テルリプレシン用量を下げること、テルリプレシン用量を中断すること、及び/又は用量を増量しないことを含み得る。テルリプレシン用量を中断することは、有害事象が収まるまで、更なる通知まで、又は患者が血清クレアチニン(SCr)≧5mg/dlを有するまで、用量を一時的に中断することを含み得る。
【0048】
本明細書で使用される場合、「軽減された集団」又は「患者のサブセット」は、ベースラインACLFグレード0~2、ベースライン血清クレアチニン<5mg/dL、及び/又はベースラインMELD<35を有するHRS-1患者を含む。例えば、軽減された集団は、ベースラインACLFグレード3、ベースライン血清クレアチニン≧5mg/dL、及び/又はベースラインMELD≧35を有するベースラインでの移植のためにリスト化された患者を除外する。
【0049】
本開示の実施形態では、患者を評価して、患者が罹患し得る特定の疾患及び/又は症候群を決定し、テルリプレシンの投与から利益を得るであろう患者のための治療レジメンを開始する。
【0050】
様々な実施形態では、患者は、HRSなどの急性腎不全を合併した末期肝疾患を有し、テルリプレシンで治療される。
【0051】
様々な実施形態では、末期肝疾患は、肝硬変又は劇症肝不全であり得る。様々な実施形態では、末期肝疾患は、腎機能障害によって合併する。
【0052】
非代償性肝硬変におけるHRS-1は、血行動態の異常に関連する。テルリプレシンは、内臓血管収縮を介して血管内体積を向上させることによって、HRS-1における腎灌流を改善する。いくつかの態様では、テルリプレシンは、非代償性肝硬変及びHRS-1を有するアルブミンで処置された患者においてプラセボよりも有効であり得る。本開示の態様は、HRSの逆転の確率の増加よって示されるように、テルリプレシン治療に対する応答の改善を示す患者の診断の方法に関する。
【0053】
1つ以上の実施形態では、テルリプレシン治療レジメンに対して応答する可能性が増加したHRS-1患者を特定する方法は、末期生存疾患及び腎機能障害を有する患者を特定することと、患者がまた、SIRSの3つの基準のうちの少なくとも2つを呈するかどうかを決定することとを含み、3つの応答基準は、(1)4,000細胞/mm3未満又は12,000細胞/mm3超の白血球数(WBC)、(2)1分当たり90拍(BPM、beats per minute)超の心拍数、及び(3)HCO3<21mmol/Lを含み、HCO3は、二酸化炭素の動脈分圧(PaCO2)<32mmHgの応答基準に近似する代行測定とみなされる。様々な実施形態では、>85BPMの心拍数及び/又はHCO3<23mmol/Lは、応答基準として適用され得る。
【0054】
本開示の態様は、以下の3つの応答基準のうちの少なくとも2つもまた呈している対象におけるHRS-1の治療における使用のためのテルリプレシンに関する:
(a)白血球数(WBC)が4,000細胞/mm3未満、又は12,000細胞/mm3超であり、
(b)1分当たり90拍(BPM)超の心拍数、及び
(c)HCO3<21mmol/Lであり、HCO3は、二酸化炭素の動脈分圧(PaCO2)<32mmHgの応答基準に近似する代理測定とみなされる。様々な実施形態では、1つ以上の単回投薬量のテルリプレシンが、対象に投与され、それによって、HRS-1を治療する。
【0055】
様々な実施形態では、患者が、約0.5mg~約2.0mgのテルリプレシンの範囲で単回用量を受け、続いて別の単回用量を4~6時間受けるように、テルリプレシン投薬量は、4~6時間ごとに約0.5mg~約2.0mgの範囲で、一連の単回用量として患者に投与される。様々な実施形態では、患者は、24時間にわたって4~6回用量を受けてもよく、各用量は、約0.5mg~約2.0mgの範囲である。様々な実施形態では、総投薬量は、24時間の期間にわたって4.0mgを超えない。
【0056】
図1に示されるように、テルリプレシン治療プロトコルの実施形態を介して患者を治療する方法の例示的な実施形態。
【0057】
様々な実施形態では、血管拡張剤での治療が腎機能の改善をもたらし得る末期肝疾患を有すると最初に特定された患者を試験して、患者の肝硬変及び腎不全の程度を決定する。
【0058】
110で、患者は、最初に、末期肝疾患及び腎機能障害を有すると特定される。様々な実施形態では、患者は、肝硬変又は劇症肝不全に罹患し得、肝硬変と特定された患者は、A、B、又はCのチャイルド・ピュースコアを有し得る。様々な実施形態では、B又はCのチャイルド・ピュースコアを有する肝硬変と同定された患者は、テルリプレシン治療の実行可能な候補とみなされ得る。様々な実施形態では、Cのチャイルド・ピュースコアを有する肝硬変と同定された患者は、テルリプレシン治療の実行可能な候補とみなされ得る。末期肝疾患及び特に肝硬変の様々な合併症が認識され、予後が著しく悪い。
【0059】
1つ以上の実施形態では、テルリプレシンの投薬量を含む治療プロトコルは、驚くべきことに、血管拡張などの1つ以上の合併症因子の逆転を提供し、治療から開始して90日以内に関連する合併による死亡を低減する。
【0060】
1つ以上の実施形態では、テルリプレシン治療プロトコルは、末期肝疾患及び腎機能障害を有する患者を特定することであって、特定された患者は、テルリプレシンの投与を含む処置から利益を得ることができる、特定することと、患者が、3つの応答基準のうちの少なくとも2つを呈するかどうかを決定することと、患者がテルリプレシン治療から除外される抑制されていない感染症、敗血症、又は敗血症性ショックを呈する場合、テルリプレシンの投与から患者を除外することと、テルリプレシン治療を、腎機能の改善を産生するのに有効な量で患者に毎日の投薬量のテルリプレシンを投与することによって開始することと、を含み、腎機能の改善が、ベースラインからの少なくとも25%のSCrの低減、HRSの逆転(SCrレベルの≦1.5mg/dlへの減少として定義される)、及び/又は確認されたHRSの逆転(少なくとも48時間間隔で、2つの≦1.5mg/dLの血清クレアチニン値として定義される))によって示される。
【0061】
1つ以上の実施形態では、患者は、テルリプレシン治療の開始後90日目で生存している。例えば、テルリプレシンを受けた後に、HRSの逆転、検証されたHRSの逆転、及び/又は30%超のSCrの改善を経験する患者は、90日目に生存している可能性が少なくとも60%、65%、又は70%であり得る。他の実施形態では、患者は、テルリプレシン治療を開始した後90日目で生存し、移植を受けていない。例えば、テルリプレシンを受けた後に、HRSの逆転、検証されたHRSの逆転、及び/又は30%超のSCrの改善を経験する患者は、90日目に生存し、移植されていない可能性が少なくとも35%、40%、又は45%であり得る。
【0062】
1つ以上の実施形態では、テルリプレシン投薬量は、単回投与当たり約mg~約10mg、又は0.5mg~約5.0mg、又は0.5mg~約2.0mg、又は0.5mg~約mg、又は約1.0mg~約2.0mgの範囲であり得る。様々な実施形態では、注射は、2分間にわたってゆっくりとしたボーラス注射として静脈内投与され得、用量は、4~6時間ごとに繰り返され得る。治療の4日目(最低10回の用量後)に、SCrが減少したが、ベースライン値から30%未満であった場合、用量は、6時間(±30分)ごとに2mg(8mg/日)に増加され得る。対象が冠動脈疾患を有したか、又は循環過負荷、肺水腫、若しくは治療難治性気管支けいれんの臨床状況にある場合、用量は増加されなくてもよい。「循環過負荷」及び「流体過負荷」という用語は、互換的に使用され得る。様々な実施形態では、投薬が非虚血性有害事象により中断された場合、テルリプレシンは、同じ又はより低い用量(すなわち、0.5~1mg q6h)で再開され得る。
【0063】
180では、末期肝疾患及び腎機能障害と診断されていない患者は、テルリプレシン治療から除外される。
【0064】
1つ以上の実施形態では、患者は、3つの特定の応答基準について試験され、基準は、(1)白血球数(WBC)が、4,000細胞/mm3未満、又は12,000細胞/mm3超であるかどうか、(2)患者が、1分当たり90拍(BPM)超の心拍数を有するかどうか、及び/又は(3)患者が、1分当たり20呼吸超の頻呼吸、又はHCO3<21mmol/Lを有するかどうかの決定を含み、HCO3は、二酸化炭素の動脈分圧(PaCO2)<32mmHgの応答基準に近似する代理測定とみなされる。様々な実施形態では、患者のコア体温が36℃(96.8°F)未満又は38℃(100.4°F)超であるという応答基準は、患者が2つ以上の応答基準を有するかどうかを決定する際に測定又は考慮されない。いくつかの例では、応答基準は、SIRS基準であり得る。様々な実施形態では、基準は、任意の順序で試験され得る。
【0065】
120で、患者を試験して、患者のWBCが、<4,000又は>12,000細胞/mm3であるかどうかを決定する。様々な実施形態では、試験は、特に、患者の白血球が4000細胞/mm3(4×109細胞/L)未満、又は12,000細胞/mm3(12×109細胞/L)超であるかどうかを決定することに指向されている。様々な実施形態では、患者のWBCが<5,000又は>12,000細胞/mm3である場合、患者は応答基準を満たすとみなされるであろう。様々な実施形態では、患者は、10%超の未成熟好中球(バンド型)の存在について試験されない。様々な実施形態では、WBCを決定するための試験方法は、当技術分野で既知の方法のうちのいずれかであり得る。
【0066】
患者が4,000~12,000細胞/mm3の範囲外のWBCを有しないことが見出された場合、患者が他の2つの応答基準を満たす場合、患者は依然としてSIRSと診断され得る。
【0067】
様々な実施形態では、WBC<4,000又は>12,000細胞/mm3を有する患者は、その応答基準を満たすとみなされる。
【0068】
130で、4,000~12,000細胞/mm3の範囲外のWBCを有しない患者を試験して、患者の心拍数が>90BPMであるかどうかを決定する。患者の心拍数が>90BPMである場合、患者はその応答基準を満たすとみなされるであろう。様々な実施形態では、>85BPMの心拍数を有する患者は、その応答基準を満たすとみなされるであろう。患者の心拍数を決定するための試験方法は、当技術分野で既知の方法のうちのいずれかであり得る。
【0069】
様々な実施形態では、5,000~12,000細胞/mm3の範囲外のWBCを有する患者を試験して、患者の心拍数が>90BPMであるかどうかを決定する。患者の心拍数が>90BPMである場合、患者はその応答基準を満たすとみなされるであろう。様々な実施形態では、>85BPMの心拍数を有する患者は、その応答基準を満たすとみなされるであろう。
【0070】
185で、WBC<4,000又は>12,000細胞/mm3、及び心拍数が>90BPMの両方を呈していない患者は、3つの応答基準のうちの2つについて適格ではないとみなされ、したがって、テルリプレシンで治療される要件を満たさない。3つの応答基準のうちの少なくとも2つを満たさない患者は、テルリプレシン治療から除外される。そのような患者は、代わりに、ノルエピネフリン、バソプレシン、又はミドドリン及びオクトレオチドの組み合わせなどの1つ以上の他の薬理学的薬剤で治療される場合がある。代替的又は追加的に、以下の任意のうちのいずれかが使用され得る:N-アセチルシステイン、ミソプロストール、及び/又はBQ123。別の選択肢は、経頸静脈性肝内門脈体循環短絡術(TIPS)である。透析の形態での腎支持は、特に薬理療法が失敗した場合に、HRS-1患者における急性流体過負荷を管理するために一般的に導入されている。末期肝硬変及びHRSに対する唯一効果的かつ恒久的な治療法は、肝移植である。
【0071】
140で、4,000~12,000細胞/mm3の範囲外のWBC、又は>90BPMである心拍数を有する患者を試験して、患者が1分当たり>20呼吸、又はHCO3<21mmol/Lを有するかどうかを決定する。患者が1分当たり>20呼吸、又はHCO3<21mmol/Lを有する場合、患者はその応答基準を満たすとみなされるであろう。様々な実施形態では、HCO3<23mmol/Lを有する患者は、その応答基準を満たすとみなされるであろう。患者の呼吸速度又はHCO3を決定するための試験方法は、当該技術分野で既知の方法のうちのいずれかであり得る。
【0072】
様々な実施形態では、5,000~12,000細胞/mm3の範囲外のWBCを有する患者を試験して、患者が、1分当たり>20呼吸である呼吸速度、又はHCO3<21mmol/Lを有するかどうかを決定する。患者が、1分当たり>20呼吸である呼吸速度、又はHCO3<21mmol/Lを有する場合、患者はその応答基準を満たすとみなされるであろう。様々な実施形態では、HCO3<23mmol/Lを有する患者は、その応答基準を満たすとみなされるであろう。
【0073】
1つ以上の実施形態では、患者が4,000~12,000細胞/mm3の範囲外のWBCを有し、かつ患者が1分当たり>20呼吸、又はHCO3<21mmol/Lを有する場合、患者は、3つの応答基準のうちの2つについて適格であるとみなされ、したがって、別段除外されない限り、テルリプレシンで治療される要件を満たす。
【0074】
1つ以上の実施形態では、患者が>90BPMである心拍数を有し、かつ患者が1分当たり>20呼吸である呼吸速度、又はHCO3<21mmol/Lを有する場合、患者は、3つの応答基準のうちの2つについて適格であるとみなされ、したがって、別段除外されない限り、テルリプレシンで治療される要件を満たす。
【0075】
135で、4,000~12,000細胞/mm3の範囲外のWBCを有するが、1分当たり>20呼吸、又はHCO3<21mmol/Lを有しない患者を試験して、患者の心拍数が>90BPMであるかどうかを決定する。患者の心拍数が>90BPMである場合、患者はその応答基準を満たすとみなされるであろう。様々な実施形態では、>85BPMの心拍数を有する患者は、その応答基準を満たすとみなされるであろう。
【0076】
患者が5,000~12,000細胞/mm3の範囲外のWBCを有するが、患者が1分当たり>20呼吸、又はHCO3<21mmol/Lを有しない1つ以上の実施形態では、患者を試験して、患者の心拍数が>90BPMであるかどうかを決定する。患者の心拍数が>90BPMである場合、患者はその応答基準を満たすとみなされるであろう。様々な実施形態では、>85BPMの心拍数を有する患者は、その応答基準を満たすとみなされるであろう。
【0077】
1つ以上の実施形態では、患者が、1分当たり>20呼吸の呼吸速度、又は心拍数>90BPMであるHCO3<21mmol/L心拍数を有し、かつ患者が、1分当たり>20呼吸である呼吸速度、又はHCO3<21mmol/Lを有する場合、患者は、3つの応答基準のうちの2つについて適格であるとみなされ、したがって、別段除外されない限り、テルリプレシンで治療される要件を満たす。
【0078】
186で、(1)1分当たり>20呼吸である呼吸速度、又はHCO3<21mmol/Lを呈しておらず、かつ(2)>90BPMである心拍数を呈していない患者は、3つの応答基準のうちの少なくとも2つについて適格でないとみなされ、したがって、テルリプレシンで治療される要件を満たさない。3つの応答基準のうちの少なくとも2つを満たさない患者は、テルリプレシン治療から除外される。そのような患者のための任意の代替治療は、上に記載されている。
【0079】
応答基準の試験は、例示的な実施形態について特定の順序で説明されているが、試験は任意の特定の順序で行われ得る。
【0080】
1つ以上の実施形態では、患者の体温は、テルリプレシンに対する患者の応答の正確な表示を提供しない場合があるため、体温は応答基準ではない。様々な実施形態では、患者の体温は、応答基準のセットから除外される。
【0081】
150で、腎機能障害を伴う末期肝疾患を有し、3つの応答基準のうちの少なくとも2つについて適格である患者は、テルリプレシンで開始される。1つ以上の実施形態では、抑制されていない感染症、敗血症、又は敗血症性ショックを有する患者は、テルリプレシン治療から除外される。様々な実施形態では、テルリプレシンは、1~4日間、患者に投与される。様々な実施形態では、患者が有害事象を経験しない限り、患者は、テルリプレシンを4日間投与される。様々な実施形態では、テルリプレシンは、IV点滴として患者に投与される。
【0082】
1つ以上の実施形態では、テルリプレシン治療プロトコルは、約0.1mg~約10mg、又は0.5mg~約5.0mg、又は0.5mg~約2.0mg、又は約0.5mg~約1.0mg、又は約1.0mg~約2.0mgの投薬量を、IV点滴として、患者に約4時間~約6時間にわたって投与することを含む。
【0083】
1つ以上の実施形態では、患者は、1~4日間、約4~6時間ごとにIVとしてテルリプレシンを投与される。様々な実施形態では、テルリプレシンは、少なくとも4日間投与され得る。
【0084】
1つ以上の実施形態では、患者は、1~4日間、約4~6時間ごとに2分間にわたるゆっくりとしたボーラスとしてテルリプレシンを投与される。様々な実施形態では、テルリプレシンは、少なくとも4日間投与され得る。
【0085】
160で、テルリプレシンを投与されている患者は、1~4日間の投与期間中に少なくとも1回試験されて、患者がテルリプレシンに応答しているかどうかを決定する。様々な実施形態では、患者は、ベースラインを確立するためにテルリプレシンの投与を開始する前に1回、及び1~4日間のテルリプレシンの投与中に1回、又はベースラインを確立するためにテルリプレシンの投与を開始する前に1回、及び4日間のテルリプレシンの投与の終了時に1回試験され得る。様々な実施形態では、患者のクレアチニンレベルを測定して、患者の血清クレアチニンの低減があったかどうかを決定し、約1.0mg/dL以上若しくは約1.0mg/dL~約2.0mg/dLの範囲の血清クレアチニンレベルの低減、又は患者の初期ベースライン値から約1.7mg/dLの低減が、腎機能の改善、及び患者がテルリプレシンに応答していることを示す。
【0086】
様々な実施形態では、腎機能の改善は、テルリプレシンを受けている患者における約25%又は約30%の血清クレアチニンレベルの減少によって示される。
【0087】
1つ以上の実施形態では、患者は、テルリプレシンの投与が開始された後の4日間の各々について、1日1回又は隔日に1回測定される血清クレアチニンレベルを有し得、テルリプレシン投与の最初の日に行われる測定は、記録され、ベースラインクレアチニンレベルとして使用され得る。
【0088】
様々な実施形態では、方法は、テルリプレシン投与の1~4日の間、患者のSCrレベルを試験することと、患者がテルリプレシン投与の1~4日間の終了までにSCrレベルの低減を有するかどうかを決定することと、を含み得る。
【0089】
血清クレアチニンレベルは、当該技術分野で既知の方法のうちのいずれか、例えば、アルカリ性ピクレートを使用したJaffe反応によって測定され得る。
【0090】
GFRは、イヌリン、イオヘキソール、イオタラメート、及びCr51-EDTAなどの外因性マーカーのクリアランス研究によって、又は同位体希釈質量分析(IDMS)に基づく参照方法に追跡可能なクレアチニン試験方法を使用して推定された糸球体濾過速度(eGFR)によって直接測定され得る。
【0091】
170で、患者の血清クレアチニンレベルの低減によって証明されるテルリプレシンの投与に対する陽性応答を示す患者を、約0.1mg~約10mg、又は0.5mg~約5.0mg、又は0.5mg~約2.0mg、又は約0.5mg~約1.0mg、又は約1.0mg~約2.0mgの範囲の投薬量でテルリプレシンを継続する。様々な実施形態では、患者に投与される投薬量は、測定された血清クレアチニンレベルに基づいて調整され得る。様々な実施形態では、テルリプレシンを投与されている患者は、患者がテルリプレシンを受けている全期間、血清クレアチニンレベルを監視され得る。1つ以上の実施形態では、患者の血清クレアチニンレベルは、患者が依然としてテルリプレシン治療に陽性に応答していることを確認するために、毎日、又は隔日ごと、又は3日ごと、又は4日ごとに試験され得る。
【0092】
様々な実施形態では、患者のテルリプレシン投薬量は、治療の最初の2~3日間、SCrの<1.5mg/dLの減少がある場合、患者への2~3日のテルリプレシン投与後、約0.5mg~約1.0mg~約1.0mg~約2.0mg増加され得る。
【0093】
様々な実施形態では、投薬量は、患者が回復を示すまで、又は患者がもはや改善を示さないまで、1日以上の期間、4~6時間ごとに繰り返され得る。テルリプレシンは、約2日~約16日の範囲の期間、又は約4日~約8日の範囲の期間、患者に投与され得る。様々な実施形態では、期間は、約7日間の範囲である。様々な実施形態では、テルリプレシン治療は、完全奏効があるまで継続され得る。様々な実施形態では、テルリプレシンでの患者の治療期間は、1~28日であり得る。
【0094】
190で、4日の終了までに任意の改善を示さない患者は、テルリプレシンを中止し得、改善は、テルリプレシンが投与される1~4日にわたる血清クレアチニンレベルの減少によって示される。様々な実施形態では、患者は、治療に対する応答を示す血清クレアチニンレベルの減少が存在するかどうかを決定するために、テルリプレシンでの治療を開始した後の3日目又は4日目に試験され得る。
【0095】
1つ以上の実施形態では、患者は、感染が疑われる場合、テルリプレシンの投与を開始する前に、文書化された又は疑われる感染のための2日間の抗感染療法が提供される。様々な実施形態では、患者は、抗感染療法を施された後、テルリプレシン治療プロトコルで開始され得る。
【0096】
図2は、テルリプレシン処置プロトコルの例示的な実施形態を示す。
【0097】
本開示の原理及び実施形態はまた、HRS-1及び3つの特異的応答基準のうちの2つ以上で特定された患者に、4~6時間ごとにIVとしてテルリプレシンを提供することに関する。
【0098】
1つ以上の実施形態では、患者は、(1)白血球数(WBC)<4又は>12細胞/μL、(2)心拍数(HR)1分当たり>90拍(bpm)、及び(3)HCO3<21mmol/Lについて試験される。
【0099】
非SIRS患者は、上述の応答基準のうちの2つ未満を有する対象として定義される。
【0100】
様々な実施形態では、体温は、応答基準として使用されない。
【0101】
本開示の1つ以上の実施形態では、テルリプレシンは、腎臓における血管収縮を緩和し、初期ベースラインから約1.7mg/dLの血清クレアチニンレベルの低減によって示される、腎機能を改善するために、特定のセットの症状を示す患者に投与される。
【0102】
210で、末期肝疾患を示し得る1人以上の患者を試験して、腹水を伴う肝硬変に罹患しているかどうか、及び>133μmol/lのクレアチニンの血清レベルを有するかどうかを決定する。HRSを有すると特定された患者を更に試験し、かつ/又はその病歴をチェックして、クレアチニンの初期血清レベルが、1型HRSを示す2週間未満で226μmol/l超に倍増したかどうかを決定する。
【0103】
HRS-1及び3つの応答基準のうちの少なくとも2つを有する患者は、驚くべきことに、HRS症状の逆転によって示される、非SIRS HRS-1患者と比較して、テルリプレシン治療に対する応答の改善を示した。加えて、HRS-1、3つの応答基準のうちの少なくとも2つを有し、かつ抑制されていない感染症、敗血症、又は敗血症性ショックを有しない患者は、驚くべきことに、非SIRS HRS-1患者と比較して、テルリプレシン治療に対する応答の改善を示した。HRS症状には、血清クレアチニンレベルが含まれ得る。
【0104】
HRS-1及びSIRSを有する患者は、テルリプレシンを受けた後、HRSの逆転、検証されたHRSの逆転、又はSCrの30%超の改善を経験し得る。1つ以上の実施形態では、特許は、テルリプレシン治療の開始後90日目に生きている。例えば、テルリプレシンを受けた後に、HRSの逆転、検証されたHRSの逆転、及び/又は30%超のSCrの改善を経験する患者は、90日目に生存している可能性が少なくとも60%、65%、又は70%であり得る。他の実施形態では、患者は、テルリプレシン治療を開始した後90日目で生存し、移植を受けていない。例えば、テルリプレシンを受けた後に、HRSの逆転、検証されたHRSの逆転、及び/又は30%超のSCrの改善を経験する患者は、90日目に生存し、移植されていない可能性が少なくとも35%、40%、又は45%であり得る。
【0105】
220で、患者がHRS-1に罹患していると特定されると、患者を検査して、同じ患者がSIRSを示す3つの基準のうちの少なくとも2つを呈しているか否かを決定し、3つの基準は、(1)WBC<4又は>12細胞/μL、(2)HR>90bpm、及び(3)HCO3<21mmol/Lを含む。
【0106】
様々な実施形態では、HRS-1に加えて、3つの応答基準のうちの少なくとも2つを呈すると特定されていない患者は、テルリプレシン治療プロトコルから除外される。HRS-1を有し、3つの応答基準のうちの少なくとも2つを呈する患者は、驚くべきことに、
図3に示すように、HRS症状の逆転によって示されるように、非SIRS HRS-1患者と比較して、テルリプレシン治療に対する応答の改善を示した。
【0107】
230で、HRS-1を有すると特定され、少なくとも2つの応答基準を呈する患者を試験して、抑制されていない感染、敗血症、又は敗血症性ショックも有し得るかどうかを決定し、抑制されていない感染、敗血症、又は敗血症性ショックを呈すると特定された患者を、テルリプレシン処置プロトコルから除外する。
【0108】
240で、HRS-1を有し、3つの応答基準のうちの少なくとも2つを有し、かつ抑制されていない感染症、敗血症、又は敗血症性ショックを有しない患者は、テルリプレシン治療を開始する。1つ以上の実施形態では、テルリプレシン治療は、患者がHRS-1及び3つの応答基準のうちの少なくとも2つの両方を有するという初期診断の48時間以内に開始される。患者が抑制されていない感染、敗血症、又は敗血症性ショックを有するか、又は有しないかの決定が、HRS-1及び応答基準の両方の初期診断の48時間後に生じる場合の様々な実施形態では、治療プロトコルは、初期診断の48時間以内に開始され、抑制されていない感染、敗血症、又は敗血症性ショックが現れるか、又は決定されると、処置は終了され得る。
【0109】
様々な実施形態では、ベースライン血清クレアチニンレベルは、患者へのテルリプレシンの投与を開始する前に患者について決定され得、テルリプレシンの投与は、ベースライン血清クレアチニンレベルを決定してから2日以内、又は3日以内、又は4日以内に開始され得る。様々な実施形態では、患者は、以前に決定されたベースライン血清クレアチニンレベルと比較して、血清クレアチニンレベルの減少を呈するかどうかを決定するために、テルリプレシンの投与を開始後4日以内に少なくとも1日1回試験され得る。
【0110】
250で、患者のテルリプレシン治療が開始され、患者は、投薬量のテルリプレシンを受ける。1つ以上の実施形態では、テルリプレシンは、24時間にわたるゆっくりとした注入として患者に投与され得、24時間にわたる投薬量は、約2.0mg~約12mgの範囲にあり得る。様々な実施形態では、24時間にわたる投薬量は、約2.0mg~約4.0mgの範囲にあり得る。様々な実施形態では、テルリプレシンは、約4時間~約6時間持続する連続静脈内(IV)点滴として投与され、約0.5mg~約2.0mgの投薬量を含む。
【0111】
1つ以上の実施形態では、テルリプレシン投薬量は、2分間にわたるゆっくりとしたボーラス注射として4~6時間ごとに静脈内投与された約0.5mg~約2.0mgの投薬量であり得る。投薬量は、ゆっくりとしたIVボーラス注射によって約4時間ごと、約5時間ごと、約6時間ごと、約7時間ごと、約8時間ごと、約9時間ごと、約10時間ごと、約11時間ごと、又は約12時間ごとに投与され得る。少なくとも1つの例では、投薬量は、ゆっくりとしたIVボーラス注射によって約6時間ごとに投与され得る。ボーラス注射は、約1分間、約2分間、約3分間、約4分間、又は約5分間にわたって与えられ得る。少なくとも1つの例では、ボーラス注射は、約2分間にわたって与えられ得る。
【0112】
1つ以上の実施形態では、テルリプレシンを使用して、HRS-1及び3つの応答基準のうちの少なくとも2つを呈する患者を治療する。様々な実施形態では、患者はまた、テルリプレシンを使用してHRS-1患者を治療する前に、患者が抑制されていない感染症、敗血症、又は敗血症性ショックを有しないことを決定するために試験される。
【0113】
様々な実施形態では、テルリプレシン投薬量は、連続IV供給として与えられる。
【0114】
1つ以上の実施形態では、テルリプレシン投薬量は、2分間にわたるゆっくりとしたボーラス注射として、6時間ごとに静脈内投与された1mgである。
【0115】
様々な実施形態では、テルリプレシン投薬量は、ボーラスとして与えられない。
【0116】
テルリプレシンは、患者に最大4日間投与され得、患者は、患者がテルリプレシン治療に応答しているかどうかを決定するために、4日間の各日に試験され得る。様々な実施形態では、テルリプレシン治療に対する応答は、患者の血清クレアチニンレベルの変化によって示されで、症状は、ベースラインから少なくとも25%のSCrの低減であり得る。様々な実施形態では、テルリプレシンは、少なくとも4日間投与され得る。
【0117】
260で、4日間のテルリプレシンでの治療後に血清クレアチニン変化の量を決定し、血清クレアチニンレベルが改善した場合、テルリプレシンでの治療を継続した。様々な実施形態では、治療の4日後の血清クレアチニンレベルの十分な改善は、血清クレアチニンレベルの少なくとも1.0mg/dLの減少、又は血清クレアチニンレベルの約1.7mg/dLの減少によって示される。
【0118】
様々な実施形態では、患者は、先の1~4日間にわたって改善が呈された場合、更に3~8日間テルリプレシンを受ける。様々な実施形態では、患者は、先の1~4日間にわたって改善が呈された場合、更に3~4日間テルリプレシンを受ける。
【0119】
様々な実施形態では、患者が血清クレアチニンレベルの減少を呈する場合、患者へのテルリプレシンの投与は、最初の4日間を超えて更に3日間~12日間継続される。様々な実施形態では、患者へのテルリプレシンの投与は、少なくとも1つのSCr値<1.5mg/dLが得られるまで継続され得る。様々な実施形態では、治療期間は、それぞれ、13又は14日目にHRSの逆転が最初に達成された場合、最大15日又は16日まで延長され得る。様々な実施形態では、テルリプレシンでの患者の治療期間は、1~28日であり得る。様々な実施形態では、血清クレアチニンレベルの減少は、ベースラインから少なくとも1%、又は少なくとも5%、又は少なくとも10%、又は少なくとも15%、又は少なくとも20%、又は少なくとも25%のSCrの低減によって示され得る。
【0120】
1つ以上の実施形態では、患者は、テルリプレシン治療プロトコルを開始する前に、及び/又は3つの応答基準のうちの少なくとも2つ、患者がHRS-1を有するという決定の前に、アルブミンを投与され得る。様々な実施形態では、アルブミンは、テルリプレシンの患者への投与を開始する7日前~2日前に、患者に投与され得る。様々な実施形態では、アルブミン治療は、1kgの患者体重当たり1グラムのアルブミンを、1日当たり最大100gまで患者に投与することを含む。様々な実施形態では、アルブミンは、約20g/日~約50g/日の範囲で投与され得、アルブミンは、患者がテルリプレシンを投与される期間投与され得る。
【0121】
テルリプレシンでの3つの応答基準のうちの少なくとも2つを呈するHRS-1患者を治療する方法の非限定的な実施形態は、そのような治療を必要とする患者に、1~28日間、1日当たり2.0mg~12.0mgの範囲、又は1~7日間、1日当たり2.0mg~4.0mgの範囲の投薬量のテルリプレシンを投与することを含み、その投薬量は、連続IV供給として、又はゆっくりとしたボーラス注射として投与され得る。
【0122】
本開示の実施形態はまた、6時間ごとに1回のある用量のテルリプレシンで、HRS-1を有し、2つ以上の応答基準を満たす患者を治療ことであって、用量が、HRS-1の逆転を達成するために、3~8日間、約0.5mg~2.0mgの範囲にある、治療することに関する。
【0123】
本開示の実施形態はまた、患者が、HRS-1及び3つの応答基準のうちの少なくとも2つを呈しているが、敗血症、敗血症性ショック、又は抑制されていない感染症を伴わないことを決定してから48時間以内に、テルリプレシン治療を開始することに関する。
【0124】
本開示の別の態様は、医薬品を流通させる方法に関する。
【0125】
1つ以上の実施形態では、流通させる方法は、医療提供者にテルリプレシンを供給することを含み、医療提供者は、1型肝腎症候群に罹患している患者を治療する責任を負い得る。様々な実施形態では、患者は、明白な敗血症、敗血症性ショック、又は抑制されていない感染症を有しない。様々な実施形態では、本方法は、明白な敗血症、敗血症性ショック、又は抑制されていない感染症を有せず、かつ(1)白血球数(WBC)が4,000細胞/mm3未満、若しくは12,000細胞/mm3超であるか、(2)1分当たり90拍(BPM)超の心拍数、又は(3)HCO3<21mmol/Lのうちの少なくとも2つを有する、1型肝腎症候群に罹患している患者を、SCrを低減するのに有効な量のテルリプレシンで治療するために、医療提供者へ推奨を提供することを含む。1つ以上の実施形態では、医療提供者は、推奨に従い、HRS-1に罹患しているが、明らかな敗血症、敗血症性ショック、又は抑制されていない感染症に罹患しておらず、かつ(1)白血球数(WBC)が4,000細胞/mm3未満、若しくは12,000細胞/mm3超であるか、(2)1分当たり90拍(BPM)超の心拍数、又は(3)HCO3<21mmol/Lのうちの少なくとも2つを有する患者に、SCrを低減するのに有効な量のテルリプレシンで、治療を施す。
【0126】
検証されたHRS-1の逆転の達成におけるプラセボ対テルリプレシンの有効性は、全身性炎症応答症候群(SIRS)を有する患者の亜群の間でより顕著であり得る。炎症性サイトカインは、HRS-1の病因に関与している。任意の一理論に限定されないが、テルリプレシンは、門脈圧を低減するその能力を介して、非代償性肝硬変を有する患者の腸管壁にわたる細菌の転座の程度を低減し得、結果として、内毒素血症の低減及び炎症促進性サイトカインの産生の減少が生じ、したがって、患者がテルリプレシンの血行動態効果に応答することを容易にする。
【0127】
図3は、例示的な治療プロトコルによって産生される予期せぬ結果を示す。
【0128】
本開示の態様は、HRS-1を治療及び/又は逆転させる方法に関する。
図4に示されるように、テルリプレシン治療プロトコルの実施形態を介してHRS-1を有する成人患者を治療する方法の例示的な実施形態。
【0129】
様々な実施形態では、血管拡張剤による治療が腎機能の改善をもたらし得る末期肝疾患を有すると最初に特定された患者を試験して、患者の肝硬変及び腎不全の程度を決定し得る。実施形態では、治療される患者は、HRS-1と診断された成人患者である。
【0130】
1つ以上の実施形態では、1型肝腎症候群(HRS-1)を有する成人患者を治療する方法は、患者へのテルリプレシンの投与前に、ベースライン血清クレアチニン(SCr)レベルを評価することと、1~3日間、IVによる6時間ごとの患者への約0.5mg~約1mgのテルリプレシンの投薬を開始することと、投薬開始から4日目±1日での患者における血清クレアチニンレベルを評価することと、4日目±1日で評価された血清クレアチニンレベルとベースライン血清クレアチニンレベルとの比較に基づいて、修正された投薬量のテルリプレシンを投与することと、を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、最大14日間、少なくとも2時間間隔の≦1.5mg/dLの2つの連続した血清クレアチニンレベル後の24時間まで投与を継続することを更に含み得る。
【0131】
1つ以上の実施形態では、テルリプレシン投薬量は、単回投与当たり約0.1mg~約10mg、約0.5mg~約10mg、又は0.5mg~約5.0mg、又は0.5mg~約2.0mg、又は0.5mg~約1.0mg、約0.85mg~約1.7mg、又は約1.0mg~約2.0mgの範囲にあり得る。
【0132】
実施形態では、投与されるテルリプレシンは、テルリプレシンアセテートであり得る。テルリプレシンアセテート投薬量は、約0.5mg~約2.0mgの範囲で患者に投与され得る。様々な例では、テルリプレシンアセテートの投薬量は、約0.5mg、約1mg、約1.5mg、約2mg、約2.5mg、約3mg、約3.5mg、又は約4mgであり得る。
【0133】
テルリプレシンは、0.85mgのテルリプレシン(1mgのテルリプレシンアセテートに相当する)投薬量で再構成するために、単回用量バイアル中に白色から灰色がかった白色の凍結乾燥粉末として注射用に調製され得る。いくつかの実施形態では、テルリプレシンアセテート投薬量は、約0.5mg又は約1mgの初回用量で与えられ得る。少なくとも1つの例では、投薬は、1mgのテルリプレシンアセテートで開始され得る。他の実施形態では、テルリプレシン投薬量は、初回用量を投与する期間後に修正され得る。少なくとも1つの例では、修正された投薬量は、約2mgのテルリプレシンアセテートであり得る。
【0134】
様々な実施形態では、注射は、2分間にわたってゆっくりとしたボーラス注射として静脈内投与され得、用量は、4~6時間ごとに繰り返され得る。1つ以上の実施形態では、注射は、IV点滴として約4時間~約6時間にわたって患者に投与され得る。
【0135】
例では、患者が、約0.5mg~約1.0mgのテルリプレシンの範囲で単回用量を受け、続いて別の単回用量を4~6時間受けるように、初期テルリプレシン投薬量は、4~6時間ごとに約0.5mg~約1.0mgの範囲で、一連の単回用量として患者に投与される。様々な実施形態では、患者は、24時間にわたって4~6回用量を受けてもよく、各用量は、約0.5mg~約1.0mgの範囲である。様々な実施形態では、総投薬量は、24時間の期間にわたって4.0mgを超えない。いくつかの例では、テルリプレシン投薬量は、約0.85mg又は約1.0mgのテルリプレシンアセテートであり得る。
【0136】
ステップ410で、いくつかの実施形態では、ベースライン血清クレアチニンレベルは、1日目にテルリプレシンを投与する前に測定され得る。次いで、初回ある用量のテルリプレシンは、HRS-1を有する患者に投与され得る。例では、テルリプレシンの初回用量は、約0.5mg~約1.0mgであり得、約1~3日間、6時間ごとに投与され得る。少なくとも1つの例では、初期投薬量は、約1.0mgのテルリプレシンアセテート(すなわち、0.85mgのテルリプレシン)であり得る。
【0137】
ステップ420で、投与の4日目±1日(例えば、最低10回の用量後)に、血清クレアチニンレベルを評価し、ベースラインレベルと比較し得る。様々な実施形態では、テルリプレシンを投与されている患者を、投与の1~4日目±1日の間に少なくとも1回評価して、患者がテルリプレシンに応答しているかどうかを決定する。様々な実施形態では、患者は、テルリプレシンの3又は4日間の投与の終了時に1回試験され得る。いくつかの例では、血清クレアチニンレベルは、投与が中止されるまで継続的に(例えば、毎日)評価され得る。様々な実施形態では、患者に投与された投薬量は、測定された血清クレアチニンレベルに基づいて調整され得る。様々な実施形態では、テルリプレシンを投与されている患者は、患者がテルリプレシンを受けている全期間、血清クレアチニンレベルを監視され得る。1つ以上の実施形態では、患者の血清クレアチニンレベルは、患者が依然としてテルリプレシン治療に陽性に応答していることを確認するために、毎日、又は隔日ごと、又は3日ごと、又は4日ごとに試験され得る。
【0138】
血清クレアチニンレベルは、当該技術分野で既知の方法のうちのいずれか、例えば、アルカリ性ピクレートを使用したJaffe反応によって測定され得る。GFRは、イヌリン、イオヘキソール、イオタラメート、及びCr51-EDTAなどの外因性マーカーのクリアランス研究によって、又は同位体希釈質量分析(IDMS)に基づく参照方法に追跡可能なクレアチニン試験方法を使用して推定された糸球体濾過速度(eGFR)によって直接測定され得る。
【0139】
様々な実施形態では、患者のクレアチニンレベルを評価して、患者の血清クレアチニンの低減があったかどうかを決定し、約1.0mg/dL以上若しくは約1.0mg/dL~約2.0mg/dLの範囲の血清クレアチニンレベルの低減、又は患者の初期ベースライン値から約1.7mg/dLの低減が、腎機能の改善、及び患者がテルリプレシンに応答していることを示す。いくつかの例では、評価された血清クレアチニンレベルは、ベースライン血清クレアチニンレベルより30%以上低くてもよく、ベースライン血清クレアチニンレベルより1%~29%低くてもよく、又はベースライン血清クレアチニンレベルより0%以上であってもよい。ステップ430、440、及び450で、次いで、4日目±1日で評価された血清クレアチニンレベルとベースライン血清クレアチニンレベルとの比較に基づいて、修正された投薬量のテルリプレシンが投与され得る。
【0140】
ステップ430で、評価されたSCrレベルが、4日目±1日でベースラインSCrレベルから30%以上減少した場合、約0.5mg~約1.0mgの投薬量のテルリプレシンが、6時間ごとに患者へ投与され続けられ得る。例えば、評価されたSCrレベルがベースラインSCrレベルから30%以上減少した場合、修正された投薬量は、初期投薬量(例えば、0.5mg~1.0mg)と同じであってもよい。
【0141】
ステップ440で、評価されたSCrレベルが、4日目±1日でベースラインレベルから30%未満減少した場合、テルリプレシンの投薬量は、6時間ごとに約1.0mg~約2.0mgに増加され得る。例えば、評価されたSCrレベルが減少しているが、ベースラインレベルから30%未満である場合、修正された投薬量は、6時間(±30分)ごとに約0.1mg~約2.0mgのテルリプレシン(8mg/日)であり得る。少なくとも1つの例では、修正された投薬量は、対象が冠動脈疾患を有していたか、又は循環過負荷、肺水腫、若しくは治療難治性気管支けいれんの臨床状況にある場合、初期用量から増加されない場合がある評価された用量であり得る。様々な実施形態では、投薬が非虚血性有害事象により中断された場合、テルリプレシンは、同じ又はより低い用量(すなわち、0.5~1mg q6h)で再開され得る。
【0142】
ステップ450で、評価されたSCrレベルが、4日目±1日でベースラインSCrレベルであるか、又はそれを上回る場合、テルリプレシンの投与は、中止され得る。例えば、修正された投薬量は、評価されたSCrレベルがベースラインSCrレベルであるか、又はそれを上回る場合、テルリプレシンの投与の中止であり得る。
【0143】
ステップ460で、テルリプレシンの投与は、患者が少なくとも2時間間隔で≦1.5mg/dLの第2の連続した血清クレアチニン値を達成した後24時間まで、又は最大14日間継続され得る。様々な実施形態では、投薬量は、患者が回復を示すまで、又は患者がもはや改善を示さないまで、1日以上の期間、4~6時間ごとに繰り返され得る。様々な実施形態では、テルリプレシンでの患者の治療期間は、1~14日であり得る。様々な実施形態では、テルリプレシンは、少なくとも4日間投与され得る。様々な実施形態では、患者が有害事象を経験しない限り、患者は、最大14日間テルリプレシンを投与される。様々な実施形態では、テルリプレシンは、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも8日間、少なくとも9日間、少なくとも10日間、少なくとも11日間、少なくとも12日間、少なくとも13日間、又は少なくとも14日間、投与され得る。いくつかの例では、テルリプレシンは、約2日~約14日の範囲の期間、又は約4日~約8日の範囲の期間、患者に投与され得る。様々な実施形態では、期間は、約7日の範囲である。様々な実施形態では、テルリプレシン治療は、完全奏効があるまで継続され得る。
【0144】
1つ以上の実施形態では、テルリプレシンの投薬量を含む治療プロトコルは、驚くべきことに、血管拡張などの1つ以上の合併症因子の逆転を提供し、治療から開始して90日以内に関連する合併による死亡を低減する。
【0145】
患者の治療は、腎機能の改善を含み得る。腎機能の改善は、ベースラインから少なくとも25%又は30%のSCrの低減、HRSの逆転(≦1.5mg/dlへのSCrレベルの低減として定義される)、及び/又は確認されたHRSの逆転(少なくとも48時間間隔で≦1.5mg/dLの2つの血清クレアチニン値として定義される))によって示される。
【0146】
1つ以上の実施形態では、特許は、テルリプレシン治療の開始後90日目に生きている。例えば、テルリプレシンを受けた後に、HRSの逆転、検証されたHRSの逆転、及び/又は30%超のSCrの改善を経験する患者は、90日目に生存している可能性が少なくとも60%、65%、又は70%であり得る。他の実施形態では、患者は、テルリプレシン治療の開始後、肝臓移植後90日目に生存している。例えば、テルリプレシンを受けた後に、HRSの逆転、検証されたHRSの逆転、及び/又は30%超のSCrの改善を経験する患者は、90日目に生存している可能性が少なくとも35%、40%、又は45%であり得る。
【0147】
様々な実施形態では、HRS-1を有する成人患者もまた、SIRS陽性である。1つ以上の実施形態では、抑制されていない感染症、敗血症、又は敗血症性ショックを有する患者は、テルリプレシン治療から除外される。
【0148】
1つ以上の実施形態では、患者はまた、患者がテルリプレシンで治療される各日、1日当たり最大100gのアルブミンである。いくつかの例では、患者は、テルリプレシンが中止された後もアルブミンを投与され続け得る。
【0149】
検証されたHRSの逆転を達成し得る患者のパーセンテージは、プラセボよりもテルリプレシンで顕著に高くなり得る。いくつかの例では、テルリプレシンを投与された患者は、14日目又は退院までに治療を受けながら、少なくとも2時間間隔で1.5mg/dL以下の2つの連続したSCr値を達成し得る。これは、腎機能の堅牢で臨床的に顕著な改善を示している。追加の例では、テルリプレシンを投与された患者は、少なくとも10日間の腎代替療法(RRT)の非存在を達成し得、これは、腎機能のこの改善の耐久性を強調する。テルリプレシンによるHRSの逆転の耐久性はまた、RRTを必要とすることなく、少なくとも30日目まで持続し得る。他の例では、テルリプレシンを投与された患者は、少なくとも10日間の生存を達成し得、これは、初期生存の主要な臨床転帰に対する治療の効果を確立する。テルリプレシンは、全てのレベルのベースラインSCrにわたって応答を誘導することにおいてプラセボよりも優れ得、テルリプレシンに対する応答率は、ベースラインSCrと逆に関連する。
【0150】
腎代替療法は、HRS-1及び進行した慢性肝不全の急性増悪を有する患者に特に課題を提起し、テルリプレシン群におけるRRTの低い割合及びRRTを伴わないより長い生存は、臨床的に関連している。移植後RRTは、移植片生着死亡率の悪化及び資源利用を伴う移植後罹患率の顕著な予測因子であるため、テルリプレシン群における移植後期間まで延長するRRTの必要性の顕著な低減は、重要な臨床的意味を有する。
【0151】
本開示の更なる態様では、HRS-1及び低MAPを有する患者の生存を増加させる方法は、有効用量のテルリプレシンを、それを必要とする患者に、約6時間ごとに、約2分間にわたる静脈内(IV)ボーラス注射によって投与することを含み、用量は、患者におけるMAPの増加及び心拍数の減少をもたらすのに十分である。
【0152】
本開示の別の態様では、HRS-1を有する患者の生存を増加させる方法は、有効用量のテルリプレシンを、それを必要とする患者に、約6時間ごとに、約2分間にわたる静脈内(IV)ボーラス注射によって投与することを含み、用量は、患者における拡張期、収縮期、及びMAPの増加、並びに心拍数の減少をもたらすのに十分である。本開示の更なる態様では、HRS-1を有する患者の生存を増加させる方法は、約0.5mg~約2mgの有効用量のテルリプレシンアセテートを、それを必要とする患者に、約4~10時間ごとに、約1~5分間にわたる静脈内(IV)ボーラス注射によって投与することを含み、用量は、患者におけるMAPの増加及び心拍数の減少をもたらすのに十分である。
【0153】
テルリプレシンは、その作用機序(MOA)及びある特定の重篤な有害事象のリスクが増加する可能性があるクラス効果と概して一致する有害作用を引き起こす場合がある。テルリプレシンを用いる場合、患者の選択は非常に重要である。テルリプレシン開始時の血清クレアチニン≧5mg/dL及び/又はモデル末期肝疾患(MELD)スコア≧35を有する患者における有効性及び安全性転帰は、臨床転帰の転換点であり得る。例えば、SCr≧5mg/dL、MELDスコア≧35、及び/又は慢性肝不全の急性増悪(ACLF)グレード≧3は、進行した疾患症状、腎機能応答の減少、及び有害事象の増加の閾値であり得る。臨床医は、利益の可能性が低い場合、遅発性HRS-1又は進行した慢性肝不全の急性増悪においてテルリプレシンを避けることを検討する場合がある。SCr≧5mg/dLを有する患者におけるテルリプレシンの使用は、患者への予想される利益が潜在的なリスクを上回る場合にのみ考慮され得る。他の実施形態では、少なくとも約SCr≧5mg/dLを有する患者におけるテルリプレシンの使用は、患者への予想される利益が潜在的なリスクを上回る場合にのみ考慮され得る。有害事象には、重篤又は致命的な転帰につながり得る虚血又は呼吸器症状が含まれ得る。例えば、可能性のある呼吸器症状のうちの1つは、重篤な呼吸不全であり、これは、主要な安全上の懸念であり得る。一実施形態では、呼吸不全のリスクは、確実に予測及び管理されない場合がある。呼吸不全の潜在的な原因が複数ある可能性がある。他の有害事象は、明確な機序がない虚血、肺炎、又は敗血症であり得る。流体過負荷及び関連するアルブミン使用のリスクは、事象の臨床的提示及び管理を複雑にする可能性がある。
【0154】
本発明の有害事象、副作用、及び望ましくない症状の管理には、様々な軽減戦略が含まれ得る。一実施形態では、本発明の方法は、療法中に流体過負荷を積極的に管理する軽減戦略を含む。流体過負荷を積極的に管理することは、アルブミン、他の流体、及び/又は利尿剤の賢明な使用の投与を低減又は中止することを含み得る。明確にするために、アルブミンの投与を低減することは、用量を下げること、又はある用量のアルブミンを中断することを含み得る。流体過負荷が持続する場合、治療する方法は、テルリプレシン治療を低減又は中止することを更に含み得る。アルブミン、他の流体、及び/又は利尿剤の賢明な使用の投与を低減又は中止することによる流体過負荷の管理はまた、患者が更に呼吸不全、重度の腎疾患、肺水腫、呼吸困難、頻呼吸、虚血、又はそれらの組み合わせを有する場合にも生じ得る。
【0155】
流体過負荷を積極的に管理することは、例えば、症状が持続する場合、テルリプレシン用量の変更を含み得る。流体過負荷を積極的に管理することはまた、症状、副作用、又は有害事象が持続する場合、テルリプレシン用量の低減、投薬の中断、又は投薬の中止(すなわち、治療中止)を含み得る。別の実施形態では、本発明の方法は、療法中に酸素飽和度を監視する軽減戦略を含む。パルスオキシメトリを介して酸素飽和度を監視することにより、重篤な呼吸有害事象を発症するリスクのある患者が特定され得る。
【0156】
現在特許請求されている発明に従って治療された、慢性肝不全の急性増悪(ACLF)グレード≧3及び/又は血清クレアチニン≧5mg/dlを有する患者は、重篤又は致命的な呼吸不全の重大なリスクがあり得る。一実施形態では、軽減戦略は、血清クレアチニン≧5mg/dlを有する患者、又はACLFグレード≧3を有する患者において治療を停止又は中止することであり得る。本発明における別の軽減戦略は、肝性脳症スコア≧3を有する患者における治療を停止又は中止することである。本発明で使用する別の軽減戦略は、血清クレアチニン≧5mg/dl又は肝性脳症スコア≧3、及び/又はACLFグレード≧3を有する患者を治療から除外すること(すなわち、除外基準)である。言い換えれば、本発明はまた、血清クレアチニン<5mg/dl、又は肝性脳症スコア<3、及び/又はACLFグレード<3を有する場合、その患者のみが治療される(すなわち、選択基準)実施形態を含む。いくつかの実施形態では、テルリプレシンは、臨界レベル又は閾値レベル未満の血清クレアチニンを有する患者に投与され得る。いくつかの例では、臨界レベル又は閾値レベルは、約5mg/dlであり得る。少なくとも1つの例では、患者が<5mg/dlの血清クレアチニンレベルを有する場合、テルリプレシンは、患者に投与され得る。
【0157】
いくつかの実施形態では、テルリプレシン治療の期間は、SCr≧5mg/dLを呈し、テルリプレシンで治療された患者における約6日間~約11日間と比較して、SCr<5mg/dLを呈する患者においては、約6日間~約7日間であり得る。抗生物質又はアルブミンを受けた患者の割合では、群間に有意な差がない可能性がある。
【0158】
追加の実施形態では、<5mg/dlの血清クレアチニンレベルを有し、ある用量のテルリプレシンを投与された患者は、テルリプレシンを投与された、≧5mg/dlの血清クレアチニンレベルを有する患者と比較して、有害事象の可能性の減少、全生存の増加、全ICU、非ICU、又は入院滞在の減少、完全奏効の可能性の増加、及び/又は部分奏効の可能性の増加を有し得る。完全奏効は、患者のSCrレベルが≦1.5mg/dlに減少した場合であり得る。いくつかの例では、テルリプレシンは、患者の血清クレアチニンレベルが≦1.5mg/dlになるまで患者に投与され続けられ得る。他の例では、テルリプレシンは、少なくとも2時間間隔で、≦1.5mg/dlの2つの連続した測定されたSCrレベルの後24時間まで患者に投与され続けられ得る。部分奏効は、患者のSCrレベルが≧20%、又は好ましくは≧30%減少したが、>1.5mg/dLである場合であり得る。例では、テルリプレシンは、患者の血清クレアチニンレベルが20%超改善するまで患者に投与され続けてられ得る。
【0159】
より高いSCrを呈することは、HRS-1を有する患者においてより低い有効性に関連し得る。例えば、SCr≧5mg/dLを有する患者は、テルリプレシンを投与された場合、SCr<5mg/dLを呈する患者と比較して、有害事象を発症する可能性が顕著により高くなり得る。いくつかの実施例では、完全奏効は、テルリプレシンが投与された場合、SCr≧5mg/dLを呈する患者における約10%~約20%と比較して、SCr<5mg/dLを呈する患者の約50%~約60%で達成され得る。他の実施例では、部分奏効は、テルリプレシンが投与された場合、SCr≧5mg/dLを呈する患者における約15%~約25%と比較して、SCr<5mg/dLを呈する患者の約50%~約60%で達成され得る。追加の例では、SCr≧5mg/dLを呈する患者は、テルリプレシンを投与された場合、SCr<5mg/dL(それぞれ、約10%~約20%及び約5%~約10%)を有する患者と比較して、流体過負荷又は肺水腫(約20%~約30%)及び多臓器不全(約25%~約35%)を発症する可能性がより高い場合がある。全生存は、テルリプレシンを投与された場合、SCr≧5mg/dLを呈する患者よりも、SCr<5mg/dLを呈する患者において顕著に良好であり得る。更なる例では、SCr<5を有する患者は、テルリプレシンが投与された場合、SCr≧5mg/dLを呈する患者の約5日~約10日と比較して、約0.5~約1.5日の顕著に短いICU滞在を有し得る。なお更なる例では、SCr<5を有する患者は、テルリプレシンが投与された場合、SCr≧5mg/dLを呈する患者の約30日~約40日と比較して、約20日~約25日の顕著に短い非ICU滞在を有し得る。なお更なる例では、SCr<5を有する患者は、テルリプレシンが投与された場合、SCr≧5mg/dLを呈する患者の約40日~約45日と比較して、約20日~約25日の顕著に短い入院滞在の全期間を有し得る。
【0160】
本発明における更なる軽減戦略は、呼吸事象を有する患者を安定させることである。他の要因の中でも、本発明は、治療前に流体過負荷及び肺炎を管理することを更に含み得る。本発明の一部として使用され得る軽減戦略は、有害事象の低減、死亡のリスクの低減、死亡発生率の低減、及びそれらの組み合わせをもたらし得る。死亡のリスクの低減又は死亡発生率の低減は、全生存(例えば、治療開始後90日目に生存として測定される)を含み得る。
【0161】
より高いベースラインMELDスコアは、HRS-1を有する患者においてより低い有効性(例えば、低い生存)と関連し得る。例えば、35超のベースラインMELDスコアを有する患者は、テルリプレシンを投与された場合、35未満のベースラインMELDスコアを有する患者と比較して、有害事象を発症する可能性が顕著に高くなり得る。患者がMELDスコア≧35を有する肝臓移植のためにリスト化されている場合、患者は治療から除外され得る。
【0162】
いくつかの実施形態では、患者が35未満のベースラインモデル末期肝疾患(MELD)スコアを有する場合、IV注射によって患者にある用量のテルリプレシンを投与することによって、HRS-1を有する患者を治療する方法が本明細書で提供される。いくつかの例では、患者は、ベースラインで移植のためにリスト化され、ベースラインMELD<35を有する。他の例では、患者は、ベースラインで移植のためにリスト化されておらず、MELDスコア<35又は≧35である。患者のこのサブセットへのテルリプレシンの投与は、患者の全生存の増加、患者の全ICU又は入院滞在の減少、患者の完全奏効の増加、及び/又は患者の部分奏効の増加をもたらし得る。いくつかの実施形態では、テルリプレシンで治療されたベースラインMELDスコア<35を有する患者の90日目の全生存は、プラセボと比較して、及び/又はテルリプレシンで治療されたベースラインMELDスコア≧35を有する患者と比較して、約5%~50%、約5%~15%、約10%~20%、約25%~35%、約30%~40%、約35%~45%、又は約40%~50%増加し得る。いくつかの実施形態では、テルリプレシンで治療されたベースラインMELDスコア<35を有する患者の90日目の移植なしの生存は、プラセボと比較して、及び/又はテルリプレシンで治療されたベースラインMELDスコア≧35を有する患者と比較して、約5%~50%、約5%~15%、約10%~20%、約25%~35%、約30%~40%、約35%~45%、又は約40%~50%増加し得る。
【0163】
いくつかの実施形態では、MELDスコア<35を有する患者はまた、重度の腎疾患、肺水腫、呼吸困難、又はそれらの組み合わせを有し得る。
【0164】
本方法は、患者のベースラインMELDスコアを取得すること、ある用量のテルリプレシンを投与する前に患者の血清クレアチニン(SCr)レベルを取得して、ベースラインSCrレベルを決定すること、及び/又は患者の慢性肝不全の急性増悪(ACLF)グレードを決定することを更に含み得る。いくつかの実施形態では、ベースラインSCrが≧5mg/dlであり、及び/又はACLFグレードが≧3である場合、テルリプレシンは投与されない場合がある。他の実施形態では、本方法は、SCr≧5mg/dl及び/又はACLFグレード≧3を有する患者において、テルリプレシンの投与を中止するか、又はその用量を低減させることを含み得る。更なる実施形態では、患者のベースラインMELDスコアが<35であり、ベースラインSCrレベルが<5mg/dlである場合、ある用量のテルリプレシンは、患者に投与され得る。35未満のベースラインMELDスコアを有する患者は、テルリプレシン投与の中止について、5mg/dl超のSCrレベル、及び/又は3以上のACLFグレードについて更に監視され得る。いくつかの例では、患者は、ベースラインで移植のためにリスト化され、ベースラインMELD<35を有する。他の例では、患者は、ベースラインで移植のためにリスト化されておらず、MELDスコア<35又は≧35である。
【0165】
いくつかの実施形態では、<35のベースラインMELDスコアを有する患者にテルリプレシンを投与することは、患者の死亡リスクを減少させ得る(すなわち、生存を増加させる)。患者は、移植のためにリスト化され得、<35のMELDスコアを有しうる。実施形態では、<35のベースラインMELDスコアを有するベースラインでの移植リスト上の患者の治療は、移植リスト上の患者の地位を損なわないことを更に支援し得る。いくつかの実施形態では、患者は、テルリプレシンの投与により、移植リスト上の立場が損なわれるか、又は影響を受けるリスクが低減する場合がある。
【0166】
移植のために積極的にリスト化されている患者のみが、利用可能な臓器を受け取ることができる。リスト化されてから肝臓移植を受けるまでのそれらの待機時間は、他の要因(すなわち、MELDスコア、地理的地域、血液型)に依存し、それらのMELDスコアに基づいて数日から数ヶ月まで変化し得る。テルリプレシン治療の間又は直後に移植を受ける可能性が高い患者を除外することで、そのような患者が、テルリプレシン療法の任意の有害効果、例えば、呼吸不全により移植を受けないリスクを低減し得る。これはまた、肝臓を待っている間に死亡するリスクが最も高い患者を優先し、したがって肝臓を最も必要としている人に向ける。
【0167】
例えば、≧35のMELDスコアを有する移植リスト上の患者は、移植リスト上で高くてもよく、したがって、テルリプレシンで治療されるよりもむしろ肝臓移植を待つことによって治療時間がより早くなり得る。したがって、ベースラインMELDスコア≧35を有する肝移植のためにリスト化された患者を治療しないことは、患者が移植リスト上の場所を維持し、最初にテルリプレシンで治療された場合よりも早く移植を受けることを可能にし得る。少なくとも1つの実施形態では、患者がリスト化から移植までの待機時間の中央値が約5.6カ月以上である患者集団に属する場合にのみ、患者は、治療され得る。別の実施形態では、患者がリスト化から移植までの待機時間の中央値が0.23ヶ月(約7日)以下である患者集団に属する場合、患者は、治療から除外され得る。追加の実施形態では、患者のICU滞在、非ICU滞在、及び/又は入院滞在の全期間は、患者がベースラインMELDスコア<35、ベースラインSCrレベル<5mg/dl、及び/又はSCLFグレード<3を有することに起因して短縮され得る。
【0168】
いくつかの実施形態では、テルリプレシン投与は、完全奏効又は部分奏効があるまで継続される。いくつかの実施形態では、テルリプレシンの投与を中止するか、又はその用量を低減することが、呼吸不全を有する患者において生じる。例えば、<35のベースラインMELDスコアを有する患者にテルリプレシンを投与することは、≧35のベースラインMELDスコアを有する患者と比較して、患者が呼吸不全を有する可能性を低減し得る。
【0169】
投与されたある用量のテルリプレシンは、0.5mg~約2mgのテルリプレシンアセテートであってもよく、約1~5分間にわたるIVボーラス注射によって4~10時間ごとに投与され得る。少なくとも1つの例では、テルリプレシンは、2分間にわたるIVボーラス注射によって6時間ごとに投与され得る。
【0170】
いくつかの実施形態では、本方法は、テルリプレシンでの治療中、患者の酸素飽和度を監視することを更に含み得る。酸素飽和度の監視は、有害事象の発生を減少させ得る。例えば、HRS患者を治療する方法は、パルスオキシメトリを介してベースライン酸素化レベル(SpO2)を取得することと、患者が低酸素を経験していない場合、IV注射によって患者にある用量のテルリプレシンを投与することと、テルリプレシンでの治療中、患者のSpO2を監視することと、を含み得る。患者のSpO2は、第1の用量のテルリプレシンの前のベースラインで取得され得、次いで、テルリプレシンの投与中、少なくとも1日3回、少なくとも1日4回、少なくとも1日5回、少なくとも1日6回、又は連続的に監視され得る。患者の酸素飽和度(SpO2)は、低酸素について監視され得る。<90%のSpO2値は、ある程度の低酸素を示し得る。吸入酸素(FiO2)の画分はまた、肺機能の指標として監視され得る。例では、FiO2≧0.36は、肺機能障害の指標であり得る。実施形態では、本方法は、低酸素が検出される場合、テルリプレシンの投与を中止するか、又はその用量を低減することを更に含み得る。
【0171】
追加の実施形態では、本方法は、テルリプレシンによる治療中、流体過負荷について患者を監視することを更に含み得る。次いで、流体過負荷が発生した場合、テルリプレシン用量を低減するか、又は中止してもよい。流体過負荷が発生した場合、利尿剤もまた患者に投与され得る。
【0172】
実施形態では、本方法は、テルリプレシンの投与中、患者におけるSCrレベルを測定することを更に含み得る。次いで、投与は、患者のSCrレベルが≦1.5mg/dlになるまで、又は患者がSCrの20%超の改善を経験するまで継続され得る。いくつかの例では、投与は、患者が血清クレアチニンの30%超の改善を経験するまで継続される。
【0173】
また、治療に適格な患者の集団を軽減された集団に絞り込み、呼吸不全、重篤な有害事象、死亡、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるリスクを低減すること、並びに、次いでIV注射によって、軽減された集団の患者にある用量のテルリプレシンを投与することによって、HRS-1を有する患者を治療する方法が本明細書で提供される。軽減された集団は、ベースラインACLFグレード3、ベースライン血清クレアチニン≧5mg/dL、及び/又はベースラインMELD≧35を有するベースラインでの移植のためにリスト化された患者を除外する。この軽減された集団が、テルリプレシンで治療された全集団と比較して、生存の改善、呼吸不全の発生率の低下、及び移植前死亡率の低下を有したことは驚くべきことであった。ベースラインACLFグレード0~2、ベースラインSCr<5mg/dLを有し、かつ/又はベースラインMELD<35を有してベースラインで移植のためにリスト化されているHRS-1患者の治療は、肝移植の発生に有益に影響を及ぼし得、肝移植についてリスト化された患者が、テルリプレシンの潜在的な有害作用のために移植を受けることを妨げられるリスクを最小限に抑え得る。
【0174】
HRS患者のこのサブセット(例えば、軽減された集団)を治療することは、プラセボと比較して、テルリプレシンでの検証されたHRSの逆転の高い率、腎代替療法(RRT)の低い発生率、有益なRRTなしの生存をもたらす。例えば、治療された患者のこのサブセットは、呼吸不全、全死亡率、及び移植前死亡率の低い発生率を含む、全集団と比較したリスクの低減を有し得る。いくつかの実施形態では、テルリプレシンで治療された軽減された集団における患者の全生存、検証されたHRSの逆転、HRSの逆転、HRSの逆転の持続性、SIRS亜群におけるHRSの逆転、及び/又は30日目までHRSの再発のない検証されたHRSの逆転は、テルリプレシンで治療された全集団と比較して、約5%~15%、約10%~20%、約25%~35%、又は約30%~40%を含む、約5%~50%増加し得る。他の実施形態では、テルリプレシンで治療された軽減された集団における患者の全生存、検証されたHRSの逆転、HRSの逆転、HRSの逆転の持続性、SIRS亜群におけるHRSの逆転、及び/又は30日目までHRSの再発のない検証されたHRSの逆転は、プラセボを与えられた全集団又は軽減された集団と比較して、約5%~15%、約10%~20%、約25%~35%、約30%~40%、約35%~45%、約40%~50%、約50%~60%、約60%~70%、約70%~80%、約80%~90%、又は90%~100%を含む、約5%~100%増加し得る。追加の実施形態では、プラセボを与えられた全集団又は軽減された集団と比較して、テルリプレシンで治療された軽減された集団の患者について、90日目までに生存した患者のRRTの発生率が、約5%~50%、約5%~15%、約10%~20%、約25%~35%、約30%~40%、約35%~45%、又は約40%~50%減少し得る。様々な実施形態では、テルリプレシンで治療された軽減された集団の患者は、テルリプレシンで治療された全集団の患者と比較して、14日目、30日目、又は60日目までにRRTなしでの生存の可能性の増加を有し得る。例えば、テルリプレシンで治療された軽減された集団の患者は、テルリプレシンで治療された全集団の患者と比較して、14日目、30日目、又は60日目までにRRTなしでの生存の可能性の約2%~約20%、約5%~15%、又は約10%~20%の増加を有し得る。更なる実施形態では、テルリプレシンで治療された軽減された集団の患者は、プラセボを与えられた全集団又は軽減された集団と比較して、14日目、30日目、60日目、又は90日目までにRRTなしでの生存の可能性の増加を有し得る。例えば、テルリプレシンで治療された軽減された集団の患者は、プラセボを与えられた全集団又は軽減された集団と比較して、14日目、30日目、60日目、又は90日目までにRRTなしでの生存の可能性の約2%~約40%、約5%~10%、約10%~20%、約20%~30%、又は約30%~40%増加を有し得る。
【実施例】
【0175】
実施例1:
1型HRSにおけるテルリプレシンの有効性を評価するために、無作為化プラセボ対照二重盲検研究(「REVERSE」)を実施した。本研究の目的は、静脈内アルブミンを受けている1型HRSを有する成人患者の治療において、プラセボと比較した静脈内テルリプレシンの有効性及び安全性を決定することであった。2007 International Club of Ascites(ICA)診断基準(Salerno F,Gerbes A,Gines P,Wong F,Arroyo V.,Diagnosis,prevention and treatment of hepatorenal syndrome in cirrhosis,Gut.2007;56:1310-1318)に基づいて肝硬変、腹水、及び1型HRSの診断を有する18歳以上の男性及び女性が参加に適格であった。SCrレベル>2.5mg/dL、及び2週間以内のSCrの倍増、又は2週間以内の倍増と同等若しくはそれ以上の勾配を有する軌道を示す経時的なSCrレベルの変化のいずれかを有する患者を登録した。
【0176】
除外基準は、肝硬変及び腹水に続発する機能的腎障害を有し、テルリプレシンを安全に投与することができ、かつ活性研究期間を通して生存することが予想され得る個体に限定された患者試料を産生することを意図した。元の除外基準の中には、以下の所見のうち2つ以上の存在として定義された全身性炎症応答症候群(SIRS)を有する患者の除外基準があった:(1)>38℃又は<36℃の体温、(2)>90/分の心拍数、(3)>20/分の呼吸数又は<32mmHgのPaCO2、(4)>12,000細胞/μL又は<4,000/gLの白血球数。これは、抑制されていない感染症を有する患者を登録することの懸念に基づいていた。しかしながら、非代償性肝疾患を有する患者は、抑制されていない感染症又は敗血症の存在下でしばしばSIRS基準を有し、2つ以上のSIRS基準の存在が予後不良に関連することも認識された(Thabut,et al.,“Model for End-Stage Liver Disease Score and Systemic Inflammatory Response Are Major Prognostic Factors in Patients with Cirrhosis and Acute Functional Renal Failure,”HEPATOLOGY,Vol.46,No.6,December 2007,pp.1872-1882)。更に、1型HRSの定義のためのIAC基準は、(感染に関連する腎機能障害とは対照的に)進行中の細菌感染を有するが、敗血症又は抑制されていない感染を有しない患者が、1型HRSを有するとみなされることを可能にする(Salerno F,Gerbes A,Gines P,Wong F,Arroyo V.,Diagnosis,prevention and treatment of hepatorenal syndrome in cirrhosis,Gut.2007;56:1310-1318)。試験プロトコルは、文書化された又は疑われる感染症に対して2日間の抗感染療法を必要とし、任意のSIRS基準が、基礎となる肝臓代償不全又は他の非感染臨床状況によって説明される可能性が最も高いと思われる場合に登録を可能にした。明白な敗血症、敗血症性ショック、又は抑制されていない感染症を有する患者は除外された。このアプローチは、重篤な感染症のリスクが高い患者を登録する可能性を最小限に抑えながら、1型HRSを有する対象の登録を過度に制限しないように思われた。
【0177】
処置のために臨床的に選択された患者は、1型HRSの基準を満たし、1型HRSのICA基準は、感染症に関連する腎機能障害とは対照的に、進行中の細菌感染を有するが敗血症を有しない患者を1型HRSを有するとみなすことを可能にする。抗生物質治療にもかかわらず、患者が抑制されていない感染症の明らかな症状を残した場合、HRSの診断は行われなかった。
【0178】
活性研究期間中、盲検化された試験薬での処置は、少なくとも2つの1.5mg/dL未満のSCr値が少なくとも48時間間隔で、又は最大14日間得られるまで継続した。処置期間は、それぞれ、13又は14日目にHRSの逆転が最初に達成された場合、最大15日又は16日まで延長された。活性処置群の患者は、2分間にわたるゆっくりとしたボーラス注射として、6時間ごとに静脈内にテルリプレシン1mgを受けた。活性研究期間中の用量増加、試験中止、治療再開、及び治療完了の基準が提供された。プラセボ(6mLの凍結乾燥マンニトール溶液)群の患者についての投薬レジメンは、テルリプレシンレジメンと同一であった。追跡期間は、研究処置の終了後に始まり、研究処置の開始の90日後で終了した。生存、腎代替療法、及び移植を評価した。
【0179】
この研究における患者のSIRS亜群は、以下を含む研究データベースから入手可能な3つの基準のうちの2つ以上を有する任意の対象として定義された:(1)WBC<4又は>12細胞/μL、(2)HR>90bpm、及び(3)HCO3<21mmol/L。後者の基準は、<32mmHgのSIRS基準PaCO2の近似値を表した。この近似値は、PaCO2値が利用可能であったHRSを有する対象において観察されたHCO3、並びに非代償性肝疾患、及び<32mmHgのPaCO2を有する対象において計算されたHCO3から導き出された。非SIRS亜群を、上記の2つ未満の基準を有する対象として定義された。SIRS及び非SIRS亜群において、テルリプレシン応答を分析して、SIRS状態がテルリプレシン有効性になんらかの影響を及ぼしたかどうかを決定した。
【0180】
この研究には、合計196人の患者が登録された。登録された196人の患者のうち、58人は、WBC<4又は>12細胞/μL、HR>90bpm、及びHCO
3<21mmol/Lを含む、2つ以上のSIRS基準を有すると最初に特定され、この集団は、SIRS亜群として特定された。SIRS亜群を定義する基準に基づいて、ベースラインWBC及び心拍数は、非SIRS及び全研究集団と比較して、SIRS亜群においてわずかに高く、重炭酸塩はわずかに低かった。解析結果を
図3に示す。
【0181】
また、非代償性肝疾患の患者は、多くの場合、抑制されていない感染症又は敗血症の存在下で、SIRS基準を有し、2つ以上のSIRS基準の存在が予後不良に関連することが認識された。
【0182】
1つ以上の実施形態では、HRSの逆転は、SCrレベルの≦1.5mg/dlへの減少によって示され、HRSの確認された逆転は、少なくとも48時間間隔で2つの≦1.5mg/dLのSCr値として定義される。
【0183】
図3に示されるように、テルリプレシン治療プロトコルで、HRS-1及びSIRSの3つの基準のうちの少なくとも2つを有すると特定された患者は、プラセボと比較して、HRSの確認された逆転(32.1%対3.3%、p<0.005)、HRSの逆転(42.9%対6.7%、p<0.002)、及び腎機能(SCrのベースラインからの変化、mg/dL、-1.7対-0.5、p<0.0001)の統計的に有意な増加を示した。対照的に、HRS-1及びSIRS基準のうちの2つ未満を有する患者の群では、HRSの確認された逆転対プラセボが、14.5%対17.4%であり、HRSの逆転対プラセボが、15.9%対18.8%であり、腎機能の変化対プラセボが、-0.8対-0.7mg/dLであった。これらの結果は、SIRS基準のうちの2つ以上の存在が、患者がテルリプレシンでの処置に対して陽性応答を有する可能性がより高いことを示すことを示している。
【0184】
加えて、処置群では、HRS-1及び2つ以上のSIRS基準を有する患者は、HRS-1に罹患しているが、SIRSの3つの基準のうちの少なくとも2つを有していない患者と同等の全生存率を示した(57.1%対58%)。
【0185】
実施例2:
1型HRSにおけるテルリプレシンの有効性を評価するために、無作為化プラセボ対照二重盲検研究(「CONFIRM」)を実施した。研究の目的は、明確に定義されたHRS-1を有する患者におけるHRS-1の治療のためのテルリプレシン+アルブミン対アルブミン単独の有効性及び安全性を特徴付けることであった。本試験は、実施例1に記載されるのと同様の選択及び除外基準を使用した。
【0186】
具体的には、HRS-1は、International Club of Ascites(ICA)によって概説された修正された事前基準に基づいて、肝硬変及び腹水を有する成人患者における腎機能の改善(利尿離脱及びアルブミン流体チャレンジの両方の48時間後のSCrの<20%の減少)なしに、2週間以内にSCrの実際の又は予測される倍増を伴う、SCr≧2.25mg/dLに急速に悪化する腎機能として定義された。対象を、両群において、テルリプレシン(6時間ごとに1mgのIV)又はプラセボ、プラスアルブミンに2:1で無作為化した。以下が生じない限り、処置は、14日目まで継続された:検証されたHRSの逆転(VHRSR)、腎代替療法(RRT)、肝移植(LT)、又は4日目でのベースライン(BL)の、又はそれ以上のSCr。主要エンドポイントであるVHRSRは、第2のSCr≦1.5mg/dLの後、少なくとも10日間RRTなしで生存している対象を伴う、少なくとも2時間間隔で、2つの連続したSCr値≦1.5mg/dLとして定義され、HRSの逆転(HRSR)は、SCrの≦1.5mg/dLへの減少であった。副次的エンドポイントには、HRSの逆転(治療中の任意のSCr値1.5mg/dL以下)、30日目までのRRTなしのHRSの逆転、全身性炎症応答症候群を有する患者におけるHRSの逆転、及び30日目までの再発なしの検証されたHRSの逆転が含まれた。
【0187】
患者は、少なくとも18歳であり、肝硬変、腹水、及び急速に進行した腎不全を有し、14日以内に少なくとも2.25mg/dLへのSCrの倍増を有した。主な除外基準には、7.0mg/dL超のSCr、無作為化の2日以内に4L以上の1つ以上の大容量穿刺、実質腎疾患又は閉塞性尿路症の証拠、又は敗血症及び/若しくは抑制されていない細菌感染症の存在が含まれた。重度の心血管疾患又は最近(4週間以内)の腎代替療法(RRT)を有する患者を除外した。
【0188】
この研究には、300人の対象が登録された。300人の対象のうち、199人をテルリプレシン、101人をプラセボ(アルブミンのみ)に無作為化した。患者を、SCr(3.4mg/dL未満又は3.4mg/dL以上)及び登録前の大容量穿刺(4L以上の少なくとも1つの単一事象、又は無作為化前の3~14日以内の4L未満)を適格とすることによって層別化した。併用アルブミンを、テルリプレシン群の患者の82.9%(199人中165人、199.4[146.8]gの平均[SD]総用量)に対し、プラセボ群では91.1%(101人中92人、239.5[183.6]gの平均[SD]用量)に投与された(P=0.06)。テルリプレシン群の145人の患者(72.9%)及びプラセボ群の72人(71.3%)が、以前にミドドリン及びオクトレオチドを受けていた。
【0189】
人口統計学的及びBL臨床的特徴は、処置群間で類似していた。例えば、2つの処置群は、同様の平均年齢、体重、身長、性別分布、民族分布、人種分布、アルコール性肝炎の存在、ベースライン血清クレアチニン、大容量穿刺(LVP)無作為化層、ベースラインモデル末期肝疾患(MELD)スコア、ベースラインチャイルド・ピュースコア、ベースライン白血球数、ベースラインビリルビン、ベースライン平均動脈圧(MAP)、ベースライン心拍数、ベースライン血中尿素窒素(BUN)、ベースライン重炭酸塩(HCO3)又は二酸化炭素(CO2)、ベースライン体温、ベースライン呼吸数、ベースライン急性慢性肝不全(ACLF)グレード、ベースライン慢性肝不全-敗血症器官不全評価(CLIF-SOFA)スコア、並びに食道性静脈瘤出血(EVH)バンド形成、肺炎、尿路感染症(UTI)、自発性細菌性腹膜炎(SBP)、及びアルブミンの受容などの以前の状態/治療の存在を有した。LTを受けた各群の患者の割合は、テルリプレシンの場合23.1%、プラセボの場合28.7%であった。
【0190】
患者が割り当てられた処置を受ける前に、ベースラインSCr値を評価した。患者は、6時間(±30分)ごとに2分間にわたる静脈内投与された盲検化された割り当てられた処置(テルリプレシン又はプラセボ)1mgを受けた。現行のガイドラインに沿って、全ての対象にアルブミン(1日目1g/kg~最大100g、及びその後20~40g/日)を投与することが強く推奨された。SCrが4日目にベースライン値から<30%減少した場合、少なくとも10回用量の試験薬後、冠動脈疾患を有するか、又は循環過負荷、肺水腫、又は気管支けいれんの状況の対象を除き、6時間(±30分)ごとに2mg(8mg/日)に用量を増加することが義務付けられた。治療が永久に中止された心臓又は腸間膜虚血を除き、有害事象の中断後に用量再開が許可された。
【0191】
主要有効性エンドポイントは、検証されたHRSの逆転の発生率であり、これは、検証されたHRSの逆転を達成した後少なくとも10日間、RRTなしで生存し、少なくとも2時間間隔で1.5mg/dL以下の2つの連続したSCr値を有する患者の割合として定義され、RRT後のSCr値、経頸静脈性肝内門脈体循環短絡術、肝臓移植、又は非盲検血管圧迫を主要エンドポイント分析から除外する。プラセボで処置された16人(15.8%)に対して、テルリプレシンで処置された58人の患者(29.1%)が、検証されたHRSの逆転を達成した(P=0.01)。
【0192】
副次的有効性エンドポイントには、1.5mg/dL以下の治療中のSCr値を有する患者のパーセンテージとして定義されるHRSの逆転の発生率、30日目までのRRTなしのHRSの逆転を有する患者のパーセンテージとして定義されるHRSの逆転の持続性、全身性炎症応答症候群を有する患者中のHRSの逆転の発生率、及び30日目までのHRS再発を伴わない検証されたHRSの逆転の発生率が含まれた。プラセボで処置された16.8%に対して、テルリプレシンで処置された患者の36.2%が、HRSの逆転を達成した(P<0.001)。プラセボで処置された15.8%に対して、テルリプレシンで処置された患者の31.7%が30日目までのRRTなしのHRSの逆転を達成した(P=0.003)。テルリプレシンによるRRTの必要性の低減は、肝臓移植後の期間にまで延長するようであり、46人の患者のうち9人(19.6%)のみが移植後のRRTを必要とし、プラセボ群で観測された人数(29人の患者のうち13人又は44.8%)よりも有意に少なかった(P=0.04)。プラセボ(28.7%[101人中29人])と比較して、テルリプレシン群において、肝移植を受けた患者のパーセンテージは、わずかに低かった(23.1%[199人中46人])。プラセボで処置された15.8%に対して、テルリプレシンで処置された患者の24.1%が、30日目までに再発のない検証されたHRSの逆転を達成した(P=0.09)。
【0193】
実施例1で定義されるように、対象の132/300(44%)が全身性炎症応答症候群(SIRS)基準を満たした。明白な敗血症、敗血症性ショック、又は抑制されていない感染症を有する患者は除外された。SIRS亜群では、84人の患者が実施例1のプロトコルに従ってテルリプレシンで処置され、48人の患者がアルブミンのみを与えられた(プラセボ)。
【0194】
テルリプレシン又はプラセボで処置されたSIRS患者のいくつかのベースライン値を以下の表1に示す。
【表1】
【0195】
表2に見られるように、SIRSを有し、テルリプレシンで処置された患者の33.3%は、プラセボを与えられSIRS患者のわずか6.3%と比較して、HRSの逆転を経験した。加えて、SIRSを有し、テルリプレシンで処置された患者の26.2%は、プラセボを与えられSIRS患者のわずか4.2%と比較して、検証されたHRSの逆転を経験した。
【表2】
【0196】
表3は、治療意図の集団のSIRS亜群において、HRSの逆転がなく、かつSCrの30%以下の改善を有する対象と比較して、HRSの逆転、及び/又は血清クレアチニン(SCr)の30%超の改善を有する対象について最大90日の移植なしの生存を示す。プラセボの28.6%と比較して、HRSの逆転、及び/又はSCrの少なくとも30%の改善を有するテルリプレシンで処置されたSIRS亜群の45.5%は、90日目に生存し、移植はなかった。プラセボの57.1%と比較して、HRSの逆転、及び/又はSCrの少なくとも30%の改善を有するテルリプレシンで処置されたSIRS亜群の72.7%は、90日目に生存した。
【表3】
【0197】
プラセボ群(6.3%)よりも、テルリプレシン群(33.3%)におけるHRSの逆転を達成した治療意図(ITT)集団のSIRS亜群の対象の割合が有意に高かった。ベースラインでSIRSを有する対象の間で、RRTの発生率は、全ての追跡時点で、プラセボ群よりもテルリプレシン群で低かった(表4)。90日目までのRRTの平均累積頻度は、プラセボ群における15.2日と比較して、テルリプレシン群において7.3日であった。
【表4】
【0198】
最初のRRTまでの期間の中央値は、テルリプレシン群において6.0日、プラセボ群において5.5日であった。最大90日目の移植なし生存推定は、ベースラインでSIRSを有する対象について、プラセボ群よりもテルリプレシン群において高かった(表5)。
【表5】
【0199】
30日目後、最大90日目の全生存推定は、ベースラインでSIRSを有する対象について、プラセボ群よりもテルリプレシン群においてわずかに高かった。SIRS亜群について、90日までの対象の全生存を分析して、検証されたHRSの逆転又は血清クレアチニンの>30%の改善を達成した対象とそうでない対象との間の差異を比較した)。SIRS亜群について、最大90日目の両方の処置群において、生存推定は、非応答者よりも応答者において高かった。最大90日目のRRTなしの生存推定は、ベースラインでSIRSを有する対象について、プラセボ群よりもテルリプレシン群において高かった。
【0200】
テルリプレシン群のベースラインでSIRSを有する対象のより低いパーセンテージが、ICUに入院した:テルリプレシン群の14人の対象(16.7%)をとプラセボ群の12人の対象(25.0%)と比較した。テルリプレシン群のSIRS対象は、プラセボ群(12.1日)よりもICU(6.3日)での平均滞在期間が短かった。
【0201】
HRS-1を定義する厳格な基準を適用して、本研究は、SIRS基準を有する患者を含む、アルブミン単独で処置された患者と比較した場合、テルリプレシンプラスアルブミンで処置された肝硬変患者における腎機能の悪化の有意な逆転を示した。この応答は、耐久性があり、早期RRTの必要性が少ないことに関連した。したがって、テルリプレシンは、HRS-1及び進行性の進行した肝疾患を有する患者において、腎機能を改善し、HRSの逆転を達成するのに有効である。
【0202】
実施例3:
図6A~
図6Bに見られるように、テルリプレシンを受けた患者において呼吸不全の発生率が増加したが、プラセボを受けた患者では増加しなかった。
図6Bでは、呼吸不全の発生率は、呼吸不全のCLIF-SOFAスコア定義に基づいた。したがって、本研究は、HRS1を有する患者において、ベースラインでのEASL-CLIFシステムに従った重症又はグレード3のACLFの存在が、テルリプレシン使用を伴う呼吸不全の発症の危険因子であるかどうかを評価した。
【0203】
研究は、二重盲検プラセボ対照試験であった。300人のHRS-1を有する患者を、2:1で無作為化して、1~2mgのi.v.ボーラス注射で6時間ごとに、両方ともアルブミンとともにテルリプレシン対プラセボを受けた。HRS-1は、体積チャレンジへの応答又は構造的腎疾患の証拠を伴わない、14日未満に血清クレアチニン(SCr)を≧2.25mg/dLへの急速な上昇として定義した。
【0204】
全ての患者を、EASL-CLIF基準に従って臓器不全(OF)について評価し、次いで、慢性肝不全の急性増悪(ACLF)のグレードに分類した。全ての患者は、HRS-1の存在により最小でグレード1のACLFを有し、グレード2及び3のACLFは、それぞれ2又は3個のOFを表す。患者を、グレード≦2及びグレード3のACLF亜群に分けた。これらの亜群間のRFの発生に対するテルリプレシン対プラセボの効果を比較した。表6は、患者の人口統計を示し、表7は、研究の患者におけるベースラインの臨床及び検査パラメータを示す。
【表6】
【表7】
【0205】
図5は、ACLFグレードに従ってテルリプレシンで処置された、及びテルリプレシンなしで処置された患者の90日生存を示すグラフである。3のACLFグレードを有し、テルリプレシンで処置された患者は、0~2のACLFグレードを有し、テルリプレシンで処置された患者又はACLFグレードに関係なくプラセボで処置された患者よりも生存の可能性が低かった。
図6Cは、テルリプレシンで処置された患者のうちの呼吸不全を有する患者のパーセントが、0~2のACLFグレードを有する患者のプラセボと同様であったことを示す。3のACLFスコアを有し、テルリプレシンで処置された患者の呼吸不全を有する患者のパーセントは、プラセボよりもはるかに高かった。
図6Cにおける呼吸不全の割合は、治験責任医師による研究中の呼吸不全の報告に基づいた。
【0206】
表8は、テルリプレシン使用での呼吸不全の予測因子としての追加のベースラインパラメータのオッズ比を提供する。
【表8】
【0207】
表4~6の結果は、HRS-1及びACLFグレード3を有する患者において、特に酸素飽和度が損なわれている患者において、テルリプレシンを極めて慎重に使用すべきであることを示している。低いベースラインのSpO2を有する患者は、呼吸不全(RF)及び死亡率の増加のリスクがある。
【0208】
実施例4:
以下の分析を実施して、提案された軽減戦略の、2つの以前のテルリプレシン研究(REVERSE[実施例1]及びCONFIRM[実施例2])においてベースラインでリスト化された対象の肝移植の発生率及び移植前死亡率に及ぼす影響を評価した。軽減された集団は、ベースライン慢性肝不全の急性増悪グレード3及びベースライン血清クレアチニン≧5mg/dLを有する対象、並びにベースラインMELD≧35を有するベースラインで移植のためにリスト化された対象からのデータを除外する。
【0209】
テルリプレシン群における肝移植の発生率はプラセボと比較して低かった(23.1%対28.7%)治療意図(ITT)集団に対し、CONFIRMにおける軽減された集団における90日目までの肝移植の発生率は、プラセボ群と比較してテルリプレシン群においてわずかに高かった(24.2%対22.5%)(表9)。
【表9】
【0210】
同様に、ベースラインでリスト化され、移植を受けず、90日目までに死亡した対象の発生率は、全集団における21.4%(12人の対象)から、軽減された集団における11.4%(4人の対象)に実質的に低減した。移植を受けず、90日目までに死亡した全集団のベースラインでリストされた12人の対象のうち、6人の対象は、ACLF-3及びSCr≧5mg/dLを有する対象のデータを除外することによって軽減され、更に2人の対象は、MELD≧35カットオフ基準で軽減された(表10)。テルリプレシン群における軽減戦略の同様の効果が、REVERSE研究で観察された。
【表10】
【0211】
米国で利用可能なドナー臓器の数が限られているため、2018年に待機リスト化された全ての対象の約半数のみが1年以内に肝臓を受け、多くの患者は、移植を受けずに死亡するか、待機リストから削除された(Kwong 2021)。例えば、2016年に肝移植のためにリスト化された全患者の11.3%は、移植を受ける前に死亡し(Kwong 2021)、90日間の移植前死亡率は、全体において10.5%、≧35のMELDスコアを有する患者において25.7%であった(Nagai 2018)。
【0212】
CONFIRM研究、並びにCONFIRM及びREVERSE研究のプールされたデータセットにおける、軽減された集団における移植前死亡率は、米国の全ての移植リスト化された患者についての公表されたデータと一致した。まとめると、これらの分析は、テルリプレシンを受けた患者において、軽減戦略が、肝移植の発生に有益に影響を及ぼし、肝移植のためにリスト化された患者がテルリプレシンの潜在的な有害作用により移植を受けることを妨げられるリスクを最小限に抑えることを提供する。
【0213】
CONFIRM研究における軽減された集団において、それぞれ全集団と比較して、テルリプレシン群における全体的なSAE、呼吸不全SAE、全体的な致命的AE、致命的呼吸不全AE、及び全体的な死亡率の臨床的に有意な低減があった(表11)。
【表11】
【0214】
CONFIRMにおける軽減された集団において、呼吸不全による全体的なSAE及びSAEの発生率に臨床的に有意な低減が認められた(表11)。8.4%(13.5%~5.1%)の全研究集団における呼吸不全のSAEの発生率の群間差は、軽減された集団において2.8%(9.8%~7.0%)に低減した。テルリプレシン群の場合、軽減された集団における全体的なSAEの発生率は、軽減のない全研究集団よりも低い(それぞれ、61.4%対65.0%)。軽減された集団において、テルリプレシン群における全体的なSAEの発生率は、プラセボ群と同様であった(それぞれ、61.4%対59.2%)。
【0215】
死亡に至る全体的なAE、致命的な呼吸不全AE、及び全体的な死亡率の発生率は、CONFIRMにおける軽減された集団において実質的に低減した。7.5%(8.5%~1.0%)の全集団における呼吸不全致死性AEの発生率の群間差は、軽減された集団において3.9%(5.3%~1.4%)に低減した。軽減された集団におけるテルリプレシン群の処置後最大30日の死亡に至る全てのAEの発生率は、軽減のない全集団よりも低く(それぞれ、31.8%対39.0%)、また、軽減された集団におけるプラセボ群よりも低い(それぞれ、31.8%対36.6%)。
【0216】
軽減された集団における90日目までの肝移植の発生率は、移植率が低かった全集団(それぞれ、23.1%対28.7%、表8)と対照的に、プラセボ群と比較してテルリプレシン群においてわずかに高かった(それぞれ、24.2%対22.5%)。重要なことに、テルリプレシン群におけるベースラインでの移植のためにリスト化された対象の90日目までの移植前死亡率は、全集団における21.4%から、軽減された集団における11.4%に低減し(表10)、米国での肝移植のためにリスト化された全ての対象において報告されている範囲内にある。
【0217】
検証されたHRSの逆転に対するテルリプレシン療法の利益は、全体的なCONFIRM研究集団において実証され、軽減された集団においても観察された(表12)。プラセボに対するテルリプレシンの利益も、副次的エンドポイントについて同様に維持された。腎代替療法(RRT)及びRRTなしの生存の主要な臨床転帰に対する主要エンドポイントの影響もまた維持された。全集団と同様に、軽減された集団において、RRTの発生率は、プラセボ群よりもテルリプレシン群において90日目までの全ての時点で低かった。
【表12】
【0218】
軽減された集団は、最大90日目までにRRTを受けた対象の割合によって証明されるように、全集団と同様のRRTを受けるリスクを有する(表13)。これらの対象において、RRTなしの生存は、プラセボ群と比較して、テルリプレシン群において数値的に有益なままであった。
【表13】
【0219】
CONFIRMの全集団において、最大90日目までの全生存推定は、プラセボ群よりもテルリプレシン群で数値的に低かった(それぞれ、48.2%対53.5%)。対照的に、軽減された集団において、最大90日目までの全生存推定は、プラセボ群と比較して、テルリプレシン群において類似していた(それぞれ、55.3%対54.9%)。
【0220】
リスク軽減戦略は、全CONFIRM研究集団において実証されたように、テルリプレシンの有益な効果を維持した(すなわち、主要エンドポイントの統計学的有意性、RRTの低い発生率、及びプラセボと比較したテルリプレシンでの有益なRRTなしの生存)。また、軽減された集団では、呼吸不全の発生率、全体的な死亡率、及び移植前死亡率の低下を含む、全集団と比較して臨床的に有意なリスクの低減があった。したがって、軽減された集団は、テルリプレシン処置の利点が、高い医療ニーズ及び現在のFDA承認又は実証された薬理学的治療がないことに関連する肝疾患のこのまれな合併症におけるリスクを上回る集団を表す。
【0221】
本明細書の開示は、特定の実施形態を参照して説明されているが、これらの実施形態は、本開示の原理及び応用の単なる例示であることが理解されたい。当業者には、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本開示のデバイス、システム及び方法に対して様々な修正及び変更を行うことができることが明らかであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内である修正及び変更を含むことが意図される。
【0222】
本明細書全体での「一実施形態」、「ある特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」、又は「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明された特定の特徴、構造、材料、又は特性が本開示の少なくとも一実施形態に含まれ得ることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な場所における「1つ以上の実施形態では」、「ある特定の実施形態では」、「一実施形態では」又は「実施形態では」などの語句の出現は、必ずしも本開示の同じ実施形態を指すものではない。更に、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、1つ以上の実施形態において、任意の好適な方法で組み合わされ得る。
【配列表】
【国際調査報告】