(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-13
(54)【発明の名称】創傷被覆材用の抗菌コンポーネント
(51)【国際特許分類】
A01N 33/12 20060101AFI20240606BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240606BHJP
A01N 59/16 20060101ALI20240606BHJP
A01N 37/02 20060101ALI20240606BHJP
A61K 33/38 20060101ALI20240606BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240606BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240606BHJP
A61K 33/02 20060101ALI20240606BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20240606BHJP
A61K 31/194 20060101ALI20240606BHJP
A61K 31/14 20060101ALI20240606BHJP
A61L 15/26 20060101ALI20240606BHJP
A61L 15/44 20060101ALI20240606BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
A01N33/12 101
A01P3/00
A01N59/16 A
A01N37/02
A61K33/38
A61P17/00 101
A61P31/04
A61K33/02
A61K31/19
A61K31/194
A61K31/14
A61L15/26 100
A61L15/44 100
A61P17/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573195
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(85)【翻訳文提出日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 GB2022051373
(87)【国際公開番号】W WO2022248890
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510282952
【氏名又は名称】メッドトレイド プロダクツ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MEDTRADE PRODUCTS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110004059
【氏名又は名称】弁理士法人西浦特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘインズ,ジェニファー
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,ニール
【テーマコード(参考)】
4C081
4C086
4C206
4H011
【Fターム(参考)】
4C081AA02
4C081AA12
4C081CA211
4C081CD021
4C081CD041
4C081CD091
4C081CE02
4C081DA04
4C081DA05
4C081DA12
4C081DC04
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4C086AA02
4C086GA13
4C086HA01
4C086HA07
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4C086ZA90
4C086ZB35
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA02
4C206DA07
4C206DA36
4C206FA41
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA52
4C206MA83
4C206NA10
4C206ZA90
4C206ZB35
4H011AA01
4H011BA06
4H011BB04
4H011BB06
4H011BB18
(57)【要約】
本発明は、創傷被覆材用の抗菌コンポーネント及び抗菌コンポーネントを含む創傷被覆材に関する。抗菌コンポーネントは、銀イオン源(複数の銀イオンの供給源),第4級アンモニウム塩及び有機酸を含む。抗菌コンポーネントは、広範囲の微生物にわたって抗菌効果の改善を示し、複数の微生物にわたって抗菌効果の向上と広範囲の効果が必要な創傷被覆材に利用できる。このことは、臨床医が感染した慢性創傷を治療する際や、手術部位の感染を予防したりする際に役立つ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀イオン源,第4級アンモニウム塩及び有機酸を含む創傷被覆材用の抗菌コンポーネント。
【請求項2】
前記銀イオン源が銀塩である請求項1に記載の抗菌コンポーネント。
【請求項3】
前記銀塩が塩化銀である請求項2に記載の抗菌コンポーネント。
【請求項4】
前記第4級アンモニウム塩が、塩化ベンザルコニウム,塩化ベンゼトニウム及び塩化セチルトリメチルアンモニウムからなる群から選択されるものである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の抗菌コンポーネント。
【請求項5】
前記第4級アンモニウム塩が、塩化ベンザルコニウムである請求項4に記載の抗菌コンポーネント。
【請求項6】
前記有機酸が、乳酸,クエン酸,酢酸及びリンゴ酸からなる群から選択されるものである請求項1乃至5のいずれか1項に記載の抗菌コンポーネント。
【請求項7】
前記有機酸が乳酸である請求項6に記載の抗菌コンポーネント。
【請求項8】
前記銀イオン源が、2重量%-5重量%の量で存在する請求項1乃至7のいずれか1項に記載の抗菌コンポーネント。
【請求項9】
前記銀イオン源が、0.95-1.44mg/cm
2の銀イオンを生じさせる量で存在する請求項1乃至8のいずれか1項に記載の抗菌コンポーネント。
【請求項10】
前記第4級アンモニウム塩が、0.2-0.5重量%の量で存在する請求項1乃至9のいずれか1項に記載の抗菌コンポーネント。
【請求項11】
前記第4級アンモニウム塩が、0.16-0.24mg/cm
2の量で存在する請求項1乃至10のいずれか1項に記載の抗菌コンポーネント。
【請求項12】
前記有機酸が、0.5重量%-1.5重量%の量で存在する請求項1乃至11のいずれか1項に記載の抗菌コンポーネント。
【請求項13】
前記有機酸が、0.28-0.34mg/cm
2の量で存在する請求項1乃至12のいずれか1項に記載の抗菌成分。
【請求項14】
前記コンポーネントが、吸収性材料を含む請求項1乃至13のいずれか1項に記載の抗菌コンポーネント。
【請求項15】
前記吸収性材料が、ポリウレタンフォームである請求項14に記載の抗菌コンポーネント。
【請求項16】
前記吸収性材料が、不織布材料である請求項14に記載の抗菌コンポーネント。
【請求項17】
前記不織布材料が、フラッフパルプである請求項16に記載の抗菌コンポーネント。
【請求項18】
前記吸収性材料が、ゲル化繊維を含む請求項14に記載の抗菌コンポーネント。
【請求項19】
前記吸収性材料が、ポリウレタンフォーム及び不織布材料である請求項14に記載の抗菌コンポーネント。
【請求項20】
前記ゲル化繊維が、カルボキシメチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,アルギン酸塩及びキトサン塩からなる群から選択されるものである請求項18に記載の抗菌コンポーネント。
【請求項21】
前記コンポーネントが、積層構造を有する請求項1乃至20のいずれか1項に記載の抗菌コンポーネント。
【請求項22】
前記積層構造が、ポリウレタンフォームの第1の層とポリウレタンフォームの第2の層とを含み、前記第1の層が、前記銀イオン源及び前記有機酸を含み、前記第2の層が、前記第4級アンモニウム塩を含む請求項21に記載の抗菌コンポーネント。
【請求項23】
前記積層構造が、ポリウレタンフォームの第1の層とポリウレタンフォームの第2の層とを含み、前記第1の層が、前記銀イオン源,前記有機酸及び前記第4級アンモニウム塩を含む請求項21に記載の抗菌コンポーネント。
【請求項24】
前記積層構造が、ポリウレタンフォームの第1の層と不織布材料の第2の層とを含み、前記第1の層が、前記銀イオン源,前記第4級アンモニウム塩及び前記有機酸を含む請求項21に記載の抗菌コンポーネント。
【請求項25】
銀イオン源,第4級アンモニウム塩及び有機酸を一緒にするステップを含む抗菌コンポーネントを製造する方法。
【請求項26】
前記銀イオン源,前記第4級アンモニウム塩及び前記有機酸を吸収性材料に取り入れることを含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
a)銀イオン源及び有機酸を第1の吸収性材料に取り入れて第1の層を形成するステップ、b)第4級アンモニウム塩を第2の吸収性材料に取り入れて第2の層を形成するステップ、及びc)前記第1の層と前記第2の層とを一緒にするステップを含む請求項26に記載の方法。
【請求項28】
請求項1乃至22のいずれか1項に記載の抗菌コンポーネントを含む創傷被覆材。
【請求項29】
a)1つの創傷接触層及び1つの裏打ち層を提供するステップ、及びb)前記創傷接触層と前記裏打ち層との間に請求項1乃至24のいずれか1項に記載の抗菌コンポーネントを配置するステップを含む創傷被覆材の製造方法。
【請求項30】
a)1つの創傷接触層及び1つの裏打ち層を提供するステップ、及びb)前記創傷接触層と前記裏打ち層との間に請求項1乃至24のいずれか1項に記載の抗菌コンポーネントを配置するステップ及びc)前記創傷接触層の第1の境界領域を前記裏打ち層の第2の境界領域に溶接するステップを含む創傷被覆材の製造方法。
【請求項31】
治療薬として使用するための、請求項1乃至24のいずれか1項に記載の抗菌コンポーネント。
【請求項32】
微生物を殺すか、または微生物の増殖を阻害するのに使用するための、請求項1乃至24のいずれか1項に記載の抗菌コンポーネント。
【請求項33】
生理学的標的から放出される流体を吸収するのに使用するため、または生理学的標的部位から放出される流体の流れを阻止するのに使用するための、請求項28に記載の創傷被覆材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創傷被覆材(a wound dressing)用の抗菌コンポーネント(an antimicrobial component)及び抗菌コンポーネントを含む創傷被覆材に関する。
【背景技術】
【0002】
銀の複数の抗菌効果は広く知られている。銀は、ヒト細胞に対する毒性を最小限に抑えながら、感染を軽減するのに効果的である。銀の抗菌作用には、酸化酵素の阻害と膜タンパク質の変性が含まれ、膜機能の損傷につながると考えられている。
【0003】
銀を含有する種々の被覆材は、感染した慢性創傷や手術部位の感染症の治療に使用され、通常は、全身性の抗生物質と組み合わされて使用される。銀を含有する被覆材の役割は、感染した滲出液を吸収して被覆材内の微生物汚染物質を殺すことであり、一方、経口または静脈内の抗生物質は全身感染を標的とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
抗菌性能に優れた銀を含有する種々の被覆材は、すでに多く市販されているものの、新しい抗菌製品に対してFDAが設定した基準が最近変更された。抗菌剤として510(k)クリアランスを達成するためのFDAの要件では、修正された米国繊維化学協会(American Association of Textile Chemists(AATCC))-100試験管内(in-vitro)試験方法-での試験において、創傷被覆材が、3つのグラム陽性菌,3つのグラム陰性菌,酵母及びカビに対してlog 4の減少を示すことが求められている。
【0005】
修正されたAATCC-100試験方法におけるFDAが要求した以前の抗菌性能試験との主な違いは、前処理段階が含まれていることである。この段階では、病原性微生物を接種する前に、被覆材を「腐敗」させるのに十分な大量の模擬創傷液に被覆材を曝露するので、臨床的に最悪のケースになる。この前処理段階の背後にある原理は、飽和被覆材では抗菌成分(銀イオンなど)が滲出液の成分(栄養素、タンパク質、成長因子、白血球及びマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)など)と相互作用するかもしれないというリスクと、抗菌成分が枯渇しているか、または微生物に作用する「利用可能性が低い」可能性があるかもしれないというリスクである。この潜在的なリスクが、製品の抗菌効果の低下につながっている可能性がある。したがって、被覆材に微生物を接種する前に、模擬創傷液を使用して、被覆材装着時間を表す期間にわたって被覆材を飽和させる。このようにすることによって、試験方法中に被覆材がひどく損なわれ、十分な刺激を受けることになる。
【0006】
さらに、修正されたAATCC-100試験方法に酵母とカビが含まれることは、別の課題をもたらす。なぜなら、被覆材は、上述のあまり研究されていない微生物や複数の細菌種に対して広範囲の殺菌を達成する必要があるからである。
【0007】
修正されたAATCC-100試験方法の前処理段階の課題と、広範囲の性能の要件が組み合わさって、log 4の削減を達成することが困難になる。銀塩だけではあらゆる微生物に対して効果があるとは思えないため、その性能を高めるには他の活性物質を含める必要がある。
【0008】
したがって、本発明は、広範囲の微生物にわたって改善された抗菌効果を実証して、抗菌剤としてのFDAの認可に関する前述の基準を満たす、創傷被覆材用の抗菌コンポーネントを提供することによって、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、銀イオン源(a source of silver ions),第4級アンモニウム塩(a quaternary ammonium salt)及び有機酸(an organic acid)を含む創傷被覆材(a wound dressing)用の抗菌コンポーネント(an antimicrobial component)が提供される。
【0010】
驚くべきことに、銀イオン源,第4級アンモニウム塩及び有機酸の組合せにより、広範囲の微生物にわたって抗菌効果が改善された抗菌コンポーネントが提供されることが発見された。
【0011】
驚くべきことに、本発明による抗菌コンポーネントは、修正されたAATCC-100試験方法で試された場合、3つのグラム陽性菌種,3つのグラム陰性菌種,酵母及びカビに対して(陰性対照と比較して)log 4を超える減少を示した。
【0012】
銀イオン源,第4級アンモニウム塩及び有機酸の組合せは、相乗効果をもたらし、個々の物質単独よりも優れた抗菌効果を有利に生み出す。
【0013】
本発明者らは、驚くべきことに、第4級アンモニウム塩及び有機酸を銀イオン源に添加すると、銀イオン源単独の有効性と比較して、銀イオン源の抗菌有効性が増強されることを発見した。さらに、本発明者らは、驚くべきことに、銀イオン源及び有機酸を第4級アンモニウム塩に添加すると、第4級アンモニウム塩単独の有効性と比較して、第4級アンモニウム塩の抗菌有効性が増強されることを発見した。
【0014】
要するに、発明者らは驚くべきことに、銀イオン源,第4級アンモニウム塩及び有機酸の組合せが、個々の物質単独の抗菌効果の合計よりも大きな抗菌効果をもたらすことを発見した。
【0015】
理論に束縛されるものではないが、有機酸は水性液体(創傷滲出液など)の吸収時に抗菌コンポーネント内の環境のpHを調整し、それによって、銀イオンの抗菌効果を高めると仮説が立てられる。ほとんどの慢性創傷はアルカリ性pHの創傷環境を持っているが、創傷治癒には酸性pHへの移行が好ましい。さらに、多くの微生物は、遺伝子発現,酵素活性の低下及び膜のpH勾配の喪失により、より低いpHでは生存することが困難である。
【0016】
創傷感染に一般的に関連する多くの細菌及び酵母種は、中性からアルカリ性の条件で増殖する傾向がある。微生物がその最適な増殖pHから外れた環境にある場合、微生物は「pHストレス」を受け、最終的に細胞内酸性化を引き起こす。したがって、浸出液のpHを低下させるために有機酸を含めると、微生物にとって住みにくい環境が作り出され、結果、銀イオン源と第4級アンモニウム塩を単独または組み合わせて使用する場合に比べて優れた性能が得られる。
【0017】
修正されたAATCC-100試験方法に含まれるカビであるアスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus Brasiliensis)は、酸性pHの影響を実質的に受けない。アスペルギルス属のカビ種は、AATCC-100試験方法で研究された他の微生物よりもはるかに広い範囲のpH2-11で安定した増殖を維持することが知られている。したがって、銀イオン源及び有機酸を含めても、アスペルギルス・ブラジリエンシスに対してlog4を超える減少を達成するには十分ではない。しかし、研究を通じて、第4級アンモニウム塩を添加すると、この特定の種に対する性能がさらに向上し、同時に、他の微生物に対する成分の抗菌効果も、驚くほど強化されることが判明した。
【0018】
本発明の抗菌コンポーネントは、創傷被覆材に取り入れることができる。
【0019】
したがって、本発明のさらなる態様においては、銀イオン源,第4級アンモニウム塩及び有機酸を含む創傷被覆材が提供される。
【0020】
本発明の創傷被覆材は、複数の微生物にわたって、抗菌効果の向上及び広範囲の効果が必要とされる状況で利用することができる。これは、臨床医が感染した慢性創傷を治療したり、手術部位の感染を予防したりする際に役立ち、創傷から生成される浸出液の量によって抗菌性能が損なわれることはない。被覆材の全着用時間にわたって抗菌効果を維持できるこの能力により、臨床医は、感染が適切に管理されていないことを心配することなく、自信を持って被覆材を長期間装着したままにすることができる。さらに、被覆材交換の回数が減ることにより、臨床医の時間の負担も軽減される。最終的に、これは医療提供者に経済的な節約をもたらし、使い捨ての臨床廃棄物の削減を通じて、環境負荷の低減をももたらす。
【0021】
「創傷」という用語は、本明細書では、人間または動物の生理学的標的部位における皮膚または皮下組織の任意の裂け目または開口部を指すために使用される。典型的には、本発明の創傷被覆材は、人間の生理学的標的部位に適用可能である。生理学的標的部位という用語は、本明細書では創傷部位とも呼ばれる。「感染創傷」という用語は、治癒の停滞に寄与するバイオバーデン(bioburden)が増加した創傷を指す。感染した傷の兆候や症状には、痛み,発赤,熱,腫れ,悪臭などがある。この被覆材は、感染した創傷及び非感染の創傷への適用に適している。これらには、急性創傷,褥瘡や糖尿病性足潰瘍などの慢性創傷及び手術後の創傷が含まれる場合がある。
【0022】
「抗菌」という用語は一般に、微生物を殺すか、微生物の増殖を阻害することができる物質またはコンポーネントを指す。
【0023】
ただし、修正されたAATCC-100試験方法では、創傷被覆材が抗菌性とみなされる基準が高くなる。代わりに、AATCC-100試験方法では、創傷被覆材が抗菌効果に優れていることは、24時間以内にlog4の細菌死滅率を実証する必要がある。
【0024】
したがって、「抗菌」という用語は、本明細書では24時間以内にlog4を超える細菌死滅率を示す物質またはコンポーネントを指すために使用される。
【0025】
銀イオン源は複数ある場合がある。例えば、銀イオン源が2つ,3つ,4つまたは5つであってもよい。一実施形態では、銀イオン源が複数あってもよい。
【0026】
銀イオンは、1価(Ag+),2価(Ag2+)及び/または3価(Ag3+)であってもよい。
【0027】
銀イオン源は、イオン性銀源(a source of ionic silver)であってもよい。
【0028】
「イオン性銀源」という用語は、1つまたは複数の銀イオンを提供できる任意の物質を意味する。
【0029】
銀イオン源は、銀塩(a silver salt)であってもよい。
【0030】
銀塩は、硫酸銀,クエン酸銀,酢酸銀,炭酸銀,乳酸銀,リン酸銀,塩化銀及び/またはそれらの任意の2つまたはそれ以上の組合せからなる群から選択されるものであってもよい。
【0031】
好ましくは、銀塩は塩化銀(silver chloride)である。
【0032】
銀イオン源は、2-5重量%の量で抗菌コンポーネントの中に存在してよい。より好ましくは、銀イオン源は、3-5重量%の量で抗菌コンポーネントの中に存在してよく、最も好ましくは、銀イオン源は、4重量%の量で抗菌コンポーネントの中に存在するとよい。
【0033】
銀イオン源は、銀イオン源,第4級アンモニウム塩及び有機酸の合計重量が50-89%の量で存在するとよい。より好ましくは、銀イオン源は、銀イオン源,第4級アンモニウム塩及び有機酸の合計重量が71-77%の量で存在するとよく、最も好ましくは、銀イオン源は、銀イオン源,第4級アンモニウム塩及び有機酸の合計重量が73%の量で抗菌コンポーネント中に存在するとよい。
【0034】
銀イオン源は、少なくとも0.95,1.00,1.05,1.10,1.15または少なくとも1.20mg/cm2の銀イオンを生じさせる量で存在するとよい。銀イオン源は、1.45,1.40,1.35,1.30,1.25,1.20,1.15を超えることなく、または1.10mg/cm2を超えることがない銀イオンを生じさせる量で存在するとよい。
【0035】
銀イオン源は、0.95-1.45,0.95-1.40,0.95-1.35,0.95-1.30,0.95-1.25,0.95-1.20,1.00-1.45,1.05-1.45,1.10-1.45,1.15-1.45,1.20-1.45,0.95-1.44mg/cm2の銀イオンを生じさせる量が存在するとよい。より好ましくは、銀イオン源は、1.05-1.34mg/cm2の銀イオンを生じさせる量が存在するとよく、最も好ましくは、銀イオン源は、1.15-1.25,1.16-1.24,1.17-1.23,1.18-1.22,1.19-1.21mg/cm2の銀イオンを生じさせる量が抗菌コンポーネント中に存在するとよい。さらに最も好ましくは、銀イオンの供給源は、1.20mg/cm2の銀イオンを生じさせる量が存在するとよい。
【0036】
第4級アンモニウム塩は、非動物由来の第4級アンモニウム塩であってもよい。
【0037】
「非動物由来」とは、第4級アンモニウム塩が動物の体に由来しないことを意味する。有益なことに、これにより、動物の病原体による被覆材の汚染のリスクが最小限に抑えられる。
【0038】
第4級アンモニウム塩は、塩化ベンザルコニウム,塩化ベンゼトニウム及び塩化セチルトリメチルアンモニウムからなる群から選択されるものであってよい。好ましくは、第4級アンモニウム塩は、塩化ベンザルコニウム(benzalkonium chloride)である。
【0039】
第4級アンモニウム塩は、抗菌コンポーネントの0.1~0.5重量%の量が存在してよい。好ましくは、第4級アンモニウム塩は、抗菌コンポーネントの0.2~0.5重量%の量、より好ましくは抗菌コンポーネントの0.5重量%の量が存在するとよい。
【0040】
第4級アンモニウム塩は、銀イオン源,第4級アンモニウム塩及び有機酸の合計重量が1~16%の量で存在するとよい。好ましくは、第4級アンモニウム塩は、銀イオン源,第4級アンモニウム塩及び有機酸の合計重量が3~12%の量、より好ましくは、銀イオン源,第4級アンモニウム塩及び有機酸の合計重量が9%の量で存在するとよい。
【0041】
第4級アンモニウム塩は、少なくとも0.16,0.17,0.18,0.19または少なくとも0.20mg/cm2の量で存在してよい。第4級アンモニウム塩は、0.24,0.23,0.22,0.21または0.20mg/cm2を超えない量で存在してよい。
【0042】
第4級アンモニウム塩は、0.15~0.24,0.15~0.23,0.15~0.22,0.15~0.21,0.15~0.20,0.15~0.19,0.15~0.24,0.16~0.24,0.17~0.24,0.18~0.24,0.16~0.24,0.16~0.23,0.16~0.22,0.16~0.21,0.16~0.20,0.16~0.19,0.17~0.23または0.18~0.23mg/cm2の量で存在してもよい。好ましくは、第4級アンモニウム塩は、0.16~0.24mg/cm2の量で存在するとよい。より好ましくは、第4級アンモニウム塩は、0.18~0.22mg/cm2の量、さらにより好ましくは、0.19~0.21mg/cm2の量、最も好ましくは、0.20mg/cm2の量で存在するとよい。
【0043】
有機酸は、乳酸,クエン酸,酢酸,リンゴ酸,グリコール酸及び/またはそれらの任意の2つ以上の組合せからなる群から選択されるものであってよい。好ましくは、有機酸は乳酸(lactic acid)である。
【0044】
有機酸は、抗菌コンポーネントの0.5~1.5重量%の量が存在するとよい。好ましくは、有機酸は、抗菌コンポーネントの0.75~1.25重量%の量が存在するとよい。より好ましくは、有機酸は、抗菌剤の1重量%の量が存在するとよい。
【0045】
有機酸は、銀イオン源,第4級アンモニウム塩及び有機酸の合計重量が8~40%の量で存在するとよい。好ましくは、有機酸は、銀イオン源,第4級アンモニウム塩及び有機酸の合計重量が18~22%の量で存在するとよい。より好ましくは、有機酸は、銀イオン源,第4級アンモニウム塩及び有機酸の合計重量が18%の量で存在するとよい。
【0046】
有機酸は、少なくとも0.26,0.27,0.28,0.29または少なくとも0.30mg/cm2の量が存在するとよい。有機酸は、0.38,0.37,0.36,0.35,0.34,0.33,0.32,0.31を超えない量が存在するとよくまたは0.30mg/cm2を超えない量が存在するとよい。
【0047】
有機酸は、0.26~0.38,0.26~0.37,0.26~0.35,0.27~0.35,0.28~0.34,0.29~0.34,0.30~0.34,0.30~0.33,0.30~0.32,0.31~0.34または0.32~0.34mg/cm2の量が存在するとよい。好ましくは、有機酸は、0.30~0.34mg/cm2の量が存在する。より好ましくは、有機酸は、0.31~0.33mg/cm2の量が存在し、より好ましくは、0.32mg/cm2の量が存在する。
【0048】
抗菌コンポーネントのpHは、少なくとも1,少なくとも2または少なくとも3であるとよい。抗菌コンポーネントのpHは、5以下,4以下または3.5以下であるとよい。
【0049】
抗菌コンポーネントのpHは、1~6,2~6,2~5,2~4,3~4または3~3.5であるとよい。
【0050】
好ましくは、抗菌コンポーネントのpHは3と5の間である。より好ましくは、pHは3~3.5である。有益なことに、これは、本明細書に記載されるように、微生物にとって「pHストレス」を誘発することによって抗菌コンポーネントの抗菌効果を改善することになる。
【0051】
銀イオン源,第4級アンモニウム塩及び有機酸は、少なくとも2:0.1:0.5,2.5:0.2:0.75または少なくとも3.0:0.3:1の重量比で存在するとよい。
【0052】
銀イオン源,第4級アンモニウム塩及び有機酸は、5:0.5:1.5,4:0.4:1.25を超えない重量比で存在するとよく、または3.5:0.3:1を超えない重量比で存在してもよい。
【0053】
銀イオン源,第4級アンモニウム塩及び有機酸は、2:0.1:0.5から5:0.5:1.5まで、または3:0.2:0.75から5:0.5:1.25までの重量比で存在してもよい。
【0054】
好ましくは、抗菌コンポーネントは、抗菌コンポーネント内に2~5重量%の量の銀イオンを生じさせる銀イオン源,抗菌コンポーネント内に0.1から0.5重量%までの量の第4級アンモニウム塩及び抗菌コンポーネント内に0.5から1.5重量%までの量の有機酸を含む。
【0055】
好ましくは、抗菌コンポーネントは、1.05から1.34mg/cm2までの銀イオンを生じさせる量の銀イオン源,0.18から0.22mg/cm2までの量の第4級アンモニウム塩及び0.30から0.34mg/cm2までの量の有機酸を含む。
【0056】
本発明の抗菌コンポーネントは、吸収性材料(an absorbent material)をさらに含んでもよい。
【0057】
本発明のさらなる態様では、銀イオン源,第4級アンモニウム塩及び有機酸を含む創傷被覆材用の吸収性材料が提供される。
【0058】
「吸収性材料」という用語は、本明細書では、創傷滲出液などの液体を吸収することができ、約40%を超える液体を保持しつつ、吸収性材料の約500重量%を超えて液体を吸収することができる、生理学的に許容される材料を指すために使用される。
【0059】
吸収性材料は、繊維材料(a fibrous material),発泡体材料(foam material),不織布または織布材料(non-woven or woven material)を含んでもよい。
【0060】
好ましくは、吸収性材料は、ポリウレタンフォーム(a polyurethane foam)である。ポリウレタンフォームはオープンセルフォーム(an open cell foam)であってもよい。ポリウレタンフォームは親水性であってもよい。ポリウレタンフォームの厚さは2~5mmであってもよい。好ましくは、ポリウレタンフォームは3.0mmの厚さで存在する。
【0061】
一実施形態では、吸収性材料は、1より多くの吸収性材料を含んでもよい。
【0062】
このような実施形態では、吸収性材料は、ポリウレタンフォーム及び不織布材料(a non-woven material)を含んでいてもよい。
【0063】
不織布材料は繊維の形態であってもよい。典型的には、不織布材料は不織繊維の形態である。繊維の長さは最大約100mmであり、典型的には、約20~75mm、より典型的には、約32~51mmである。
【0064】
不織布材料は、ポリエステル,ビスコースまたはポリオレフィン繊維、またはそれらの組合せからなる群から選択されるものであってよい。不織布材料は、エアレイド不織繊維(an air laid nonwoven fibre)を含むか、またはエアレイド不織繊維から構成されてよい。エアレイド不織繊維とは、短繊維及び/または100%パルプ繊維の混合物によって形成された連続ウェブを意味する。
【0065】
吸収性材料は、長繊維針葉樹から作られた化学パルプを含んでもよい。好ましくは、吸収性材料は、フラッフパルプ(a fluff pulp)であってもよい。フラッフパルプという用語は、長い針葉樹から得られるセルロース繊維からなる化学パルプを意味する。
【0066】
吸収性材料は、ゲル化材料または半ゲル化材料(a gelling or semi-gelling material)を含んでもよく、またはゲル化材料または半ゲル化材料から構成されてもよい。
【0067】
「ゲル化材料」という用語は、本明細書では、ゲル化材料の中の実質的にすべての成分が、水または体液(body fluid(s))と接触するとゲル化し得る材料を指すために使用される。例えば、それは、実質的にすべての繊維が水または体液と接触するとゲル化することができる繊維状材料を含んでもよい。
【0068】
「半ゲル化」という用語は、本明細書では、コンポーネントの混合物を含む材料を指すために使用され、混合物の一部は水または体液と接触するとゲル化し、一部はゲル化しない。例えば、半ゲル化吸収性材料は、水または体液と接触するとゲル化する繊維とゲル化しない繊維の組合せを含んでもよい。
【0069】
ゲル化または半ゲル化材料は、例えば、繊維,顆粒,粉末,フレーク,シート,発泡体,凍結乾燥発泡体,圧縮発泡体,フィルム,有孔フィルム,ビーズ及び前述した例の2つ以上の組合せなどの任意の利用可能な形態であってよい。
【0070】
ゲル化または半ゲル化材料は、カルボキシメチルセルロース(carboxymethylcellulose),アルギン酸塩(alginate),キトサン塩(chitosan salt)またはキトサン塩誘導体(a chitosan salt derivative)から選択されてよい。
【0071】
典型的には、ゲル化または半ゲル化材料は繊維の形態である。繊維は、任意の所望の直径または長さを有することができ、織物またはパッドに形成して使用することができる。繊維は、織布であっても不織布であってもよい。好ましくは、繊維は不織布である。
【0072】
吸収性材料は不連続であってもよい。このような実施形態では、吸収性材料は、1つまたは複数の開口部(fenestration)を備えていてもよい。複数の開口部は、スリット,開孔(opening)または穿孔を含んでもよい。複数の開口部は、吸収性材料の厚さ全体を貫通してもよい。あるいは、複数の開口部は、吸収性材料の厚さを部分的に貫通してもよい。好ましくは、複数の開口部は、吸収性材料の厚さ全体を完全に貫通している。
【0073】
複数の開口部は、1つまたは複数の方向に配置されてもよい。複数の開口部は、直線状の繰り返しパターンで配置されてもよい。あるいは複数の開口部は、ランダムな構成で配置されてもよい。
【0074】
複数の開口部は、抗菌コンポーネントを通して創傷滲出液の流れを促進し、創傷被覆材に取り入れられたときの抗菌コンポーネントの適合性を改善する。
【0075】
あるいは、吸収性材料は連続的であってもよい。このような実施形態では、吸収性材料は、開口部を備えていなくてもよい。有益なことに、創傷被覆材に取り入れられた場合、抗菌コンポーネント中の非有開口部吸収性材料は、創傷被覆材中に存在するゲル化吸収性材料が抗菌コンポーネントを通過して創傷に入るのを防止することができる。
【0076】
銀イオン源,有機酸及び第4級アンモニウム塩は、吸収性材料全体に分散されてもよい。
【0077】
好ましくは、銀イオン源,有機酸及び第4級アンモニウム塩は、吸収性材料全体に均一に分布している。
【0078】
本発明の抗菌コンポーネントは、1つの積層構造を有していてもよい。積層構造は2層以上を含んでもよい。積層構造は、2,3,4,5,6,7,8,9,10またはそれ以上の層を含んでもよい。
【0079】
積層構造を有する抗菌コンポーネントを提供することにより、被覆材の柔軟性及び伸長性が改善されることが明らかになっている。有益なことに、この結果により、その後の創傷被覆材の適合性が向上している。
【0080】
積層構造の複数の層は、接着剤によって一緒に固定されてもよい。
【0081】
接着剤は、粉末接着剤であってもよい。
【0082】
粉末接着剤は、熱活性化接着剤であってもよい。
【0083】
粉末接着剤は、ポリカプロラクトンを含んでもよい。
【0084】
好ましくは、粉末接着剤は、熱活性化ポリカプロラクトン粉末接着剤である。
【0085】
好ましくは、積層構造の複数の層は、アクリル系接着剤によって互いに固定されない。
【0086】
驚くべきことに、本発明者らは、被覆材中にアクリル系接着剤が存在すると、コンポーネントの抗菌効果が低下することを発見した。
【0087】
積層構造は、1つ以上の吸収性材料を含んでもよい。
【0088】
抗菌コンポーネントが2層の積層構造を含む場合の実施形態では、銀イオン,有機酸及び第4級アンモニウム塩は、第1の層全体に分布していてもよく、第1の層は、第2の層に固定されていてもよい。
【0089】
好ましくは、抗菌コンポーネントが2層の積層構造を含む場合の実施形態では、銀イオン,有機酸及び第4級アンモニウム塩は、第1の層全体に均一に分布していてもよく、第1の層は、第2の層に固定されていてもよい。
【0090】
好ましくは、積層構造は、ポリウレタンフォームの第1の層及び不織布材料の第2の層を含んでいてもよい。
【0091】
有益なことに、ポリウレタンフォームの第1の層及び不織布材料の第2の層を含む積層構造は、被覆材の構造的な完全性を改善する。例えば、不織布材料の第2の層は、ポリウレタンフォームの第1の層が飽和したときに、膨張したり変形したりすることを防ぐ。
【0092】
このような実施形態では、第1の層は、銀イオン源,有機酸及び第4級アンモニウム塩を含んでいてもよい。
【0093】
吸収性材料のpHは、少なくとも2または少なくとも3であってもよい。吸収性材料のpHは、5,4または3を超えなくてもよい。
【0094】
好ましくは、吸収性材料のpHは、2~4であってもよい。
【0095】
積層構造は、第1の層及び第2の層を含んでもよく、第1の層は、複数の銀イオン源の1つ及び有機酸を含み、第2の層は、第4級アンモニウム塩を含む。
【0096】
銀イオン及び有機酸は、第1の層全体に均一に分布されてもよく、第4級アンモニウム塩は、第2の層全体に均一に分布されてもよい。
【0097】
好ましくは、積層構造は、ポリウレタンフォームの第1の層及びポリウレタンフォームの第2の層を含んでもよく、第1の層は、銀イオン源及び有機酸を含み、第2の層は、第4級アンモニウム塩を含む。
【0098】
驚くべきことに、ポリウレタンフォームの第1の層及びポリウレタンフォームの第2の層を含む積層構造を有し、第1の層が銀イオン源及び有機酸を含み、第2の層が第4級アンモニウムを含む抗菌コンポーネントは、抗菌効果が改善された。理論に束縛されるものではないが、銀イオン源は、第4級アンモニウム塩よりも、抗菌活性化を改善させるために、酸性pH環境に依存していると考えられる。この実施形態において、銀イオン源,有機酸及び第4級アンモニウム塩が単一の層に一緒に存在する抗菌コンポーネントと比較した場合に、銀イオン源は、最初により多くの有機酸にさらされる。この点について、銀イオン源の抗菌効果は、有機酸の存在下での第4級アンモニウム塩の抗菌効果の改善と比較して、有機酸の存在によってより大幅に改善すると考えられる。
【0099】
抗菌コンポーネントは、創傷被覆材の一部であってもよい。
【0100】
したがって、本発明のさらなる態様では、銀イオン源,第4級アンモニウム塩及び有機酸を含む創傷被覆材用の抗菌コンポーネントを含む創傷被覆材が提供される。
【0101】
創傷被覆材は、抗菌性能を有する創傷被覆材からの効果があると思われるあらゆる創傷、特に、感染した慢性創傷または手術後の創傷に適用されることを意図している。したがって、特定のサイズや形状には限定されない。典型的には、創傷被覆材は、ほぼ長方形の形状を有し、好ましくは正方形の形状を有する。
【0102】
創傷被覆材は、創傷と直接的または間接的に接触して配置されてもよい。
【0103】
創傷被覆材は、創傷接触層(a wound contact layer)を有していてもよい。創傷接触層は、創傷に直接接触してもよい。
【0104】
創傷接触層は、積層構造を有していてもよい。積層構造は、2層以上を含んでいてもよい。積層構造は、2,3,4,5,6,7,8,9,10の層またはそれ以上の層を含んでいてもよい。
【0105】
好ましくは、創傷接触層は、2層の積層構造(a bilaminate structure)を含む。2層の積層構造は、遠位キャリア層と近位層とを有していてもよい。近位層は、創傷接触層を創傷及び/または創傷周囲の皮膚に接触させて固定するための接着剤を含んでいてもよい。遠位層は、接着剤層がコーティングされているフィルムを含んでもよい。
【0106】
「近位」(proximal)及び「遠位」(distal)という用語は、創傷部位に対して使用される。例えば、「近位面」という用語は、本明細書では、使用時に創傷部位に面する被覆材のコンポーネントの表面を指すために使用され、「遠位面」という用語は、本明細書では、使用時に創傷部位から離れた側の被覆材のコンポーネントの表面を指すために使用される。同様に、「近位層」は、創傷に近い層を指すために使用でき、「遠位層」は、創傷から離れた層を指すために使用できる。
【0107】
創傷接触層は、被覆材の内部への創傷滲出液の通過を容易にするために、1つまたは複数の開口部を含んでいてもよい。創傷接触層は、複数の開口部を含んでいてもよい。
【0108】
複数の開口部は、創傷接触層上の1つまたは複数の方向に配置されていてもよい。複数の開口部は、直線状の繰り返しパターンで配置されていてもよい。あるいは、複数の開口部は、ランダムな構成で配置されていてもよい。
【0109】
複数の開口部は、創傷接触層を完全に貫通して延びていてもよい。あるいは、複数の開口部は、創傷接触層を部分的に貫通して延びている。
【0110】
複数の開口部は、実質的に円形であってもよい。複数の開口部は、0.5~10mmの直径を有していてもよい。
【0111】
創傷接触層に設けられた複数の開口部は、創傷接触層からの創傷滲出液の取り込み速度を増加させ、それによって、創傷被覆材の有効性を改善する。創傷接触層に設けられた複数の開口部はまた、創傷及び/または創傷周囲の皮膚に対する創傷接触層の接着を減少させる。有利なことに、これにより、被覆材を除去する際の創傷領域への損傷が軽減される。
【0112】
創傷接触二層積層体の近位層は、生体適合性感圧接着剤を含むことが好ましい。接着剤は、本発明の技術分野で知られている任意の適切な皮膚接触接着剤であってもよい。接着剤は、シリコン接着剤またはポリウレタン接着剤を含んでいてもよい。通常、接着剤は、ポリジメチルシロキサンなどのシリコン接着剤である。あるいは、接着剤は、溶媒または水ベースのアクリル接着剤,ポリウレタン接着剤,例えば非外傷性ヒドロゲル接着剤などのヒドロゲル接着剤、またはそれらの任意の組合せであってもよい。接着剤は、創傷被覆材と創傷周囲の患者の皮膚の間にしっかりと密閉することを目的としている。
【0113】
接着剤の近位層は、30~300gsmの塗布重量でキャリア層の近位表面上にコーティングされてもよい。
【0114】
創傷接触二層積層体のキャリア層は、ポリウレタンフィルムを含んでもよく、またはポリウレタンフィルムからなってもよい。あるいは、創傷接触二層積層体のキャリア層は、ポリエチレンフィルムを含むか、またはポリエチレンフィルムから構成されてもよい。好ましくは、キャリア層は、ポリウレタンフィルムを含む。
【0115】
創傷接触層は、本明細書で特に定義しない限り、特定のサイズまたは形状に限定されない。創傷接触層は、所望に応じて、または必要に応じて、さまざまなサイズまたは形状をとることができる。典型的には、創傷接触層は、ほぼ長方形の形状を有する。好ましくは、創傷接触層は、ほぼ正方形の形状を有する。
【0116】
創傷被覆材は、裏打ち層(a backing layer)を有していてもよい。
【0117】
裏打ち層は、バリアとして機能し、細菌などの微生物が衣類などの外部源から創傷被覆材に侵入することを防ぐように機能することができる。さらに、裏打ち層は、創傷被覆材内に創傷滲出液を保持するように及び創傷被覆材から創傷滲出液の浸出を防ぐようにも機能する。
【0118】
裏打ち層は、ガス透過性であってもよい。裏打ち層は、細菌などの微生物に対して実質的に不透過性であってもよい。裏打ち層は、液体に対して実質的に不透過性であってもよい。
【0119】
空気や水蒸気などのガスに対する裏打ち層の透過性により、裏打ち層自体を通る水蒸気の透過が可能になる。これにより、創傷滲出液が被覆材から外部環境へ蒸散しやすくなる。有益なことに、これにより、被覆材の通気性が向上し、滲出液による被覆材の飽和が防止されて、被覆材交換の回数が減少する。
【0120】
裏打ち層は、50g/100cm2/24時間から250g/100cm2/24時間までの範囲内、または50g/100cm2/24時間から250g/100cm2/24時間までの水蒸気透過率を有してもよい。裏打ち層の水蒸気透過率が、80g/100cm2/24時間から160g/100cm2/24時間までの範囲内、または100g/100cm2/24時間から250g/100cm2/24時間までである場合、良好な結果が観察される。好ましい実施形態では、裏打ち層は、100g/100cm2/24時間から150g/100cm2/24時間、または100g/100cm2/24時間から250g/100cm2/24時間までの水蒸気透過率を有する。
【0121】
裏打ち層は、ガス透過性であって液体不透過性の材料を含んでいてもよい。裏打ち層はまた、微生物不透過性の材料を含んでいてもよい。
【0122】
裏打ち層は、液体及び/または微生物不透過性であるが、気体透過性である任意の生物学的に許容されるポリマー材料を含むか、またはポリマー材料から構成されてもよい。裏打ち層に適した生物学的に許容されるポリマー材料は、ポリウレタン及びポリエチレンからなる群から選択されたものであってよい。
【0123】
裏打ち層は、フィルム,発泡体またはそれらの組合せの形態であってもよい。好ましくは、裏打ち層は、フィルムの形態である。
【0124】
好ましくは、裏打ち層は、ポリウレタンフィルムを含むか、またはポリウレタンフィルムからなる。
【0125】
ポリウレタンフィルムの重量は、通常5から40gsmである。裏打ち層は、5から50ミクロン、好ましくは10から30ミクロンの厚さを有してよい。
【0126】
裏打ち層は、抗菌コンポーネントの表面積よりも大きな表面積を有していてもよい。
【0127】
裏打ち層は、本明細書で特に定義しない限り、特定のサイズまたは形状に限定されない。裏打ち層は、所望に応じて、または必要に応じて、さまざまなサイズまたは形状をとることができる。典型的には、裏打ち層は、ほぼ長方形の形状を有する。好ましくは、裏打ち層は、ほぼ正方形の形状を有する。
【0128】
抗菌コンポーネントは、創傷接触層と裏打ち層との間に配置されてもよい。
【0129】
抗菌コンポーネントは、溶接によって創傷接触層に取り付けられてもよい。このような実施形態では、抗菌コンポーネントは、超音波溶接,熱溶接または高周波溶接によって、創傷接触層に取り付けることができる。好ましくは、抗菌コンポーネントは、熱溶着によって創傷接触層に取り付けられる。
【0130】
このような実施形態では、抗菌コンポーネントは、抗菌コンポーネントの周囲で創傷接触層に付着される。
【0131】
好ましくは、抗菌コンポーネントは、アクリル系接着剤によって創傷接触層に取り付けられていない。
【0132】
驚くべきことに、本発明者らは、アクリル系接着剤を使用して抗菌コンポーネントを創傷接触層に付着させると、成分の抗菌効果が低下することを見出した。
【0133】
抗菌コンポーネントは、溶接によって裏打ち層に取り入れられてもよい。このような実施形態では、抗菌コンポーネントは、超音波溶接,熱溶接または高周波溶接によって、裏打ち層に取り入れられてもよい。好ましくは、抗菌コンポーネントは、熱溶着によって裏打ち層に取り入れられる。
【0134】
あるいは、抗菌コンポーネントは、裏打ち層に実質的に付着していないか、または付着していなくてもよい。
【0135】
このような実施形態では、抗菌コンポーネントは、裏打ち層に軽く付着していてもよい。
【0136】
好ましくは、抗菌コンポーネントは、裏打ち層に実質的に付着していない。これは、抗菌コンポーネントを裏打ち層に固定する接着剤が存在しないため、より高い水蒸気透過率を有利に提供する。
【0137】
好ましくは、抗菌コンポーネントは、アクリル系接着剤によって裏打ち層に付着されていない。
【0138】
驚くべきことに、本発明者らは、アクリル系接着剤を使用して抗菌コンポーネントを裏打ち層に付着させると、コンポーネントの抗菌効果が低下することを発見した。
【0139】
創傷接触層は、溶接によって裏打ち層に取り付けられてもよい。このような実施形態では、創傷接触層は、超音波溶接,熱溶接または高周波溶接によって、裏打ち層に取り付けることができる。好ましくは、創傷接触層は、熱溶接によって裏打ち層に取り付けられる。
【0140】
一実施形態では、創傷接触層は、第1の境界領域を有してもよく、裏打ち層は、第2の境界領域を有していてもよい。
【0141】
このような実施形態では、創傷接触層の第1の境界領域は、溶接によって裏打ち層の第2の境界領域に取り付けられてもよい。創傷接触層の第1の境界領域は、超音波溶接,熱溶接または高周波溶接によって、裏打ち層の第2の境界領域に取り付けられてもよい。好ましくは、創傷接触層の第1の境界領域は、熱溶接によって、裏打ち層の第2の境界領域に取り付けられる。
【0142】
このような実施形態では、創傷接触層と裏打ち層とは、第1の境界領域と第2の境界領域との間の接着によって互いに取り付けられる。境界領域は、抗菌成分を取り囲むことができる。
【0143】
裏打ち層は、境界領域の全部または一部において、創傷接触層に取り付けられてもよい。
【0144】
好ましくは、裏打ち層は、アクリル系接着剤によって創傷接触層に取り付けられてはいない。
【0145】
驚くべきことに、本発明者らは、アクリル系接着剤を使用して創傷接触層を裏打ち層に取り付けると、コンポーネントの抗菌効果が低下することを発見した。
【0146】
創傷被覆材は、取り外し可能な保護層をさらに含んでもよい。取り外し可能な保護層は、剥離可能な保護層であってもよい。取り外し可能な保護層は、創傷接触層の近位表面を覆ってもよい。保護層は、創傷接触層の近位表面上の皮膚接触接着を損なうことなく、または創傷接触三層積層体(trilaminate)の近位層を形成することなく、創傷被覆材の保管を容易にする。保護層は、被覆材を創傷に適用する前に除去することを目的としている。
【0147】
取り外し可能な保護層は、1つ,2つまたはそれを超える数のタブを介して別々に取り外し可能な1つ,2つまたはそれを超える数のパーツを含んでもよい。
【0148】
創傷被覆材は、1つまたはそれを超える数の吸収層を含んでもよい。吸収層は、抗菌コンポーネントの遠位表面上に配置されてもよい。
【0149】
1つまたはそれを超える数の吸収層は、本明細書に記載されるような吸収性材料を含んでもよい。
【0150】
抗菌コンポーネントは、創傷被覆材のコアを形成することができる。
【0151】
本発明のさらなる態様によれば、銀イオン源,第4級アンモニウム塩及び有機酸を一緒にするステップを含む、本明細書において定義される、抗菌コンポーネントの製造方法が提供される。
【0152】
この方法は、銀イオン源,第4級アンモニウム塩及び有機酸を吸収性材料に取り入れるステップを含んでもよい。
【0153】
典型的には、銀イオン源,第4級アンモニウム塩及び有機酸は、吸収性材料の形成中に吸収性材料に取り入れられる。
【0154】
この方法は、以下のステップを含むことができる。
【0155】
a)銀イオン源及び有機酸を第1の吸収性材料に取り入れて、第1の層を形成するステップ、
b)第4級アンモニウム塩を第2の吸収性材料に取り入れて、第2の層を形成するステップ、及び
c)第1の層と第2の層とを一緒にするステップ。
【0156】
第1の層と第2の層とを結合するステップは、本明細書に記載されるように、接着剤を使用して第1の層を第2の層に接着するステップを含んでもよい。
【0157】
好ましくは、このような実施形態では、銀イオン源及び有機酸は、第1の層全体に均一に分布され、第4級アンモニウム塩は、第2の層全体に均一に分布される。
【0158】
あるいは、この方法は以下のステップを含んでもよい。
【0159】
a)銀イオン源,第4級アンモニウム塩及び有機酸を第1の吸収性材料に取り入れて、第1の層を形成するステップ、
b)第1の層と第2の層とを一緒にするステップ。
【0160】
好ましくは、銀イオン源,第4級アンモニウム塩及び有機酸は、第1の層全体に均一に分布している。
【0161】
本明細書で定義される抗菌コンポーネントを含む創傷被覆材を製造する方法も提供される。
【0162】
したがって、本発明のさらなる態様によれば、以下のステップを含む創傷被覆材の製造方法が提供される。
【0163】
a)1つの創傷接触層及び1つの裏打ち層を提供するステップ、及び
b)1つの創傷接触層と1つの裏打ち層との間に本明細書で定義される抗菌コンポーネントを配置するステップ。
【0164】
この方法はさらに、創傷接触層を裏打ち層に溶接するステップを含んでいてもよい。
【0165】
創傷接触層を裏打ち層に溶接するステップは、超音波溶接,熱溶接及び/または高周波溶接を含んでいてもよい。好ましくは、溶接するステップは、熱溶接を含む。
【0166】
一実施形態では、この方法は、創傷接触層の第1の境界領域を裏打ち層の第2の境界領域に溶接するステップを含んでいてもよい。
【0167】
本発明のさらなる態様によれば、治療薬として使用するための本発明による抗菌コンポーネントが提供される。
【0168】
本発明のさらなる態様によれば、微生物を殺すか、または微生物の増殖を阻害するのに使用するための本発明による抗菌コンポーネントが提供される。
【0169】
本発明のさらなる態様によれば、1つの生理学的標的から放出される流体を吸収するのに使用するための、または1つの生理学的標的から放出される流体の流れを阻止するのに使用するための、本発明による抗菌コンポーネントを取り入れた創傷被覆材が提供される。
【0170】
本発明のさらなる複数の態様は、所望に応じて、または必要に応じて、本明細書に記載される本発明の他の複数の態様の特徴のいずれかを組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0171】
本発明をより明確に理解できるように、添付の図面を参照しながら、本発明の1つ以上の実施形態を単なる例として説明する。
【
図1】創傷被覆材に取り入れられた抗菌コンポーネントの第1の実施形態の分解図を示す。
【
図2】創傷被覆材に取り入れられた抗菌コンポーネントの第2の実施形態の分解図を示す。
【
図3】創傷被覆材に取り入れられた抗菌コンポーネントの第3の実施形態の分解図を示す。
【
図4】創傷被覆材に取り入れられた抗菌コンポーネントの第4の実施形態の分解図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0172】
図1を参照すると、本発明による抗菌コンポーネント(102)を取り入れた多層(multi-layered)創傷被覆材(101)が示されている。抗菌コンポーネント(102)は、ポリウレタンフォーム,1.20mg/cm
2のAg
+イオンを生じさせる量の塩化銀または4重量%の抗菌コンポーネント(102),0.20mg/cm
2の量の塩化ベンザルコニウムまたは0.5重量%の抗菌コンポーネント(102),0.32mg/cm
2の量の乳酸または1重量%の抗菌コンポーネント(102)を含む。創傷被覆材はまた、シリコン創傷接触層(103)及びポリウレタンフィルム裏打ち層(104)をさらに含む。
【0173】
図2を参照すると、本発明による抗菌コンポーネント(202)を取り入れた多層創傷被覆材(201)が示されている。抗菌コンポーネントは、ポリウレタンフォーム,1.20mg/cm
2のAg
+イオンを生じさせる量の塩化銀または4重量%の抗菌コンポーネント(202)及び0.32mg/cm
2の量の乳酸または1重量%の抗菌コンポーネントを含む第1の層(206)を含む。抗菌コンポーネント(202)はまた、ポリウレタンフォーム,0.20mg/cm
2の量を生じさせる塩化ベンザルコニウムまたは0.5重量%の抗菌コンポーネント(202)を含む第2の層(205)を含む。創傷被覆材はまた、シリコン創傷接触層(203)及びポリウレタンフィルム裏打ち層(204)をさらに含む。
【0174】
図3を参照すると、本発明による抗菌コンポーネント(302)を取り入れた多層創傷被覆材(301)が示されている。抗菌コンポーネント(302)は、ポリウレタンフォーム,1.20mg/cm
2のAg
+イオンを生じさせる量の塩化銀または4重量%の抗菌コンポーネント(302),0.20mg/cm
2の量の塩化ベンザルコニウムまたは0.5重量%の抗菌コンポーネント(302)及び0.32mg/cm
2の量の乳酸または1重量%の抗菌コンポーネント(302)を含む。創傷被覆材はまた、シリコン創傷接触層(303),ポリウレタンフィルム裏打ち層(304)及び不織布材料を含む吸収層(307)をさらに含む。不織布材料はポリエステル繊維である。
【0175】
図4を参照すると、本発明による抗菌コンポーネント(402)を取り入れた多層創傷被覆材(401)が示されている。抗菌コンポーネント(402)は、カルボキシメチルセルロース不織布繊維,1.20mg/cm
2のAg
+イオンを生じさせる量の塩化銀または4重量%の抗菌コンポーネント(402),0.20mg/cm
2の量の塩化ベンザルコニウムまたは0.5重量%の抗菌コンポーネント(402),0.32mg/cm
2の量の乳酸または1重量%の抗菌コンポーネント(402)を含む。創傷被覆材はまた、シリコン創傷接触層(403),ポリウレタンフィルム裏打ち層(404)及び吸収性材料を含む吸収層(407)をさらに含む。吸収性材料はポリウレタンフォームである。シリコン創傷接触層(403)は、裏打ち層(404)の近位表面に固定するための第1の境界領域(408)を有する。
【0176】
使用時、人間または動物が貫通性創傷を負った場合、創傷被覆材(101,201,301,401)が創傷に当てられ、創傷接触層(103,203,303,403)が直接創傷と接触して配置される。創傷滲出液を吸収すると、抗菌コンポーネントは、創傷被覆材内の微生物を殺すか、またはその増殖を阻害することができる。
【0177】
抗菌コンポーネントの例
以下に抗菌コンポーネントの例を示す。
【0178】
実施例1:
ポリウレタンフォーム,0.95mg/cm22のAg+イオンを生じさせる量の塩化銀または4重量%の抗菌コンポーネント及び0.32mg/cm2の量の乳酸または1重量%の抗菌コンポーネントを含む第1の層、及びポリウレタンフォーム及び0.16mg/cm2の量の塩化ベンザルコニウムまたは0.5重量%の抗菌コンポーネントを含む第2の層を含む抗菌コンポーネント。第1の層は、ポリカプロラクトン粉末接着剤によって第2の層に固定されている。
【0179】
実施例2:
ポリウレタンフォーム,0.95mg/cm2のAg+イオンを生じさせる量の炭酸銀または4重量%の抗菌コンポーネント及び0.32mg/cm2の量のクエン酸または1重量%の抗菌コンポーネントを含む第1の層、及びポリウレタンフォーム及び0.16mg/cm2の量の塩化ベンザルコニウムまたは0.5重量%の抗菌コンポーネントを含む第2の層を含む抗菌コンポーネント。第1の層は、ポリカプロラクトン粉末接着剤によって第2の層に固定されている。
【0180】
実施例3:
ポリウレタンフォーム,0.95mg/cm2のAg+イオンを生じさせる量の酢酸銀または4重量%の抗菌コンポーネント及び0.32mg/cm2の量のクエン酸または1重量%の抗菌コンポーネント及び0.16mg/cm2の量の塩化ベンザルコニウムまたは0.5重量%の抗菌コンポーネントを含む第1の層、及び不織布材料を含む第2の層を含む抗菌コンポーネント。第1の層は、ポリカプロラクトン粉末接着剤によって第2の層に固定されている。
【0181】
実施例4:
ポリウレタンフォーム,0.95mg/cm2のAg+イオンを生じさせる量の塩化銀または4重量%の抗菌コンポーネント及び0.32mg/cm2の量の乳酸または1重量%の抗菌コンポーネント及び0.16mg/cm2の量の塩化ベンゼトニウムまたは0.5重量%の抗菌コンポーネントを含む第1の層、及びポリウレタンフォームを含む第2の層を含む抗菌コンポーネント。第1の層は、ポリカプロラクトン粉末接着剤によって第2の層に固定されている。
【0182】
実施例5:
ポリウレタンフォーム,0.95mg/cm2のAg+イオンを生じさせる量のリン酸銀または4重量%の抗菌コンポーネント及び0.32mg/cm2の量の酢酸または1重量%の抗菌コンポーネント及び0.16mg/cm2の量の塩化ベンザルコニウムまたは0.5重量%の抗菌コンポーネントを含む第1の層、及び不織布材料を含む第2の層を含む抗菌コンポーネント。第1の層は、ポリカプロラクトン粉末接着剤によって第2の層に固定されている。
【0183】
実施例6:
ポリウレタンフォーム,0.95mg/cm2のAg+イオンを生じさせる量のクエン酸銀または4重量%の抗菌コンポーネント及び0.32mg/cm2の量のリンゴ酸または1重量%の抗菌コンポーネント及び0.16mg/cm2の量の塩化ベンザルコニウムまたは0.5重量%の抗菌コンポーネントを含む第1の層、及び不織布材料を含む第2の層を含む抗菌コンポーネント。第1の層は、ポリカプロラクトン粉末接着剤によって第2の層に固定されている。
【0184】
実施例7:
ポリウレタンフォーム,0.95mg/cm2のAg+イオンを生じさせる量の硫酸銀または4重量%の抗菌コンポーネント及び0.32mg/cm2の量の乳酸または1重量%の抗菌コンポーネント及び0.16mg/cm2の量の塩化セチルトリメチルアンモニウムまたは0.5重量%の抗菌コンポーネントを含む第1の層、及び不織布材料を含む第2の層を含む抗菌コンポーネント。第1の層は、ポリカプロラクトン粉末接着剤によって第2の層に固定されている。
【0185】
参考例8:
ポリウレタンフォーム及び0.95mg/cm2のAg+イオンを生じさせる量の塩化銀または4重量%の抗菌コンポーネントを含む抗菌コンポーネント。
【0186】
参考例9:
ポリウレタンフォーム及び0.16mg/cm2の量の塩化ベンザルコニウムまたは0.5重量%の抗菌コンポーネントを含む抗菌コンポーネント。
【0187】
参考例10:
ポリウレタンフォーム及び0.32mg/cm2の量の乳酸または1重量%の抗菌コンポーネントを含む抗菌コンポーネント。
【0188】
参考例11:
ポリウレタンフォーム,0.95mg/cm2のAg+イオンを生じさせる量の塩化銀または4重量%の抗菌コンポーネント及び0.064mg/cm2の量の塩化ベンザルコニウムまたは0.2重量%の抗菌コンポーネントを含む第1の層、及び不織布材料を含む第2の層を含む抗菌コンポーネント。
【0189】
参考例12:
ポリウレタンフォーム,0.95mg/cm2のAg+イオンを生じさせる量の塩化銀または4重量%の抗菌コンポーネント及び0.32mg/cm2の量の乳酸または1重量%の抗菌コンポーネントを含む第1の層、及び不織布材料を含む第2の層を含む抗菌コンポーネント。
【0190】
参考例13:
ポリウレタンフォーム,0.32mg/cm2の量の乳酸または1重量%の抗菌コンポーネントを含む第1の層、及びポリウレタンフォーム及び0.16mg/cm2の量の塩化ベンザルコニウムまたは0.5重量%の抗菌コンポーネントを含む第2の層を含む抗菌コンポーネント。第1の層はポリカプロラクトン粉末接着剤によって第2の層に固定されている。
【0191】
テストデータ
抗菌効果試験方法(AATCC-100の修正):
微生物に対する抗菌コンポーネントの有効性を測定するために、上述した例を、修正されたAATCC-100試験方法で、3つのグラム陰性菌,3つのグラム陽性菌,1つの酵母及び1つのカビに曝露した。
【0192】
テスト手順:
a)サンプルを無菌的に調製し、4.2×4.2cmのサイズに切断した。
【0193】
b)次いで、50%ウシ胎児血清(熱活性化)及び50%ペプトン希釈剤として模擬創傷液(Simulated wound fluid, SWF)を無菌的に調製した。
【0194】
c)次に、サンプルをSWFで完全に飽和させ、37℃の加湿環境に6日間置いた(前処理段階)。
【0195】
d)前処理後、サンプルをSWFから取り出し、清潔な滅菌ペトリ皿に置いた。
【0196】
e)細菌懸濁液を、適切な増殖培地中で約1×106CFUml-1に調製した。
【0197】
f)接種材料は、得られた懸濁液を適切な培地に塗布(plating)して10倍希釈することによって並べられた。
【0198】
g)1ミリリットルの細菌懸濁液を使用して、6日間前処理したサンプルを接種して、そのサンプルを24時間培養(incubate)した。
【0199】
h)24時間の培養(incubation)期間の後、サンプルを適切な中和剤中に置き、生存微生物を超音波処理によって回収した。
【0200】
i)増殖培地中で中和剤を10倍に希釈し、得られた懸濁液を適切な培地に塗布することによって微生物を計数した。
【0201】
j)そして、log10の減少が計算された。試験対象となったすべての微生物について、少なくとも4 log10の減少が必要である。
【0202】
上述のテストの結果を表1に示す。
【0203】
【表1】
表1から、本発明に係る銀イオン源,第4級アンモニウム塩及び有機酸の組合せは、試験したすべての微生物に対して有効であり、修正されたAATCC-100試験方法において、広範囲の抗菌性能を発揮する。
【0204】
対照的に、塩化銀単独では、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に対してのみ、抗菌効果が示された。理論に束縛されるものではないが、模擬創傷液内の種(species)への長期の曝露により、イオン性銀が悪影響を受けているとする仮説が立てられる。
【0205】
同様に、塩化ベンザルコニウムの抗菌効果は、アスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus Brasiliensis)種に限定されており、これも模擬創傷液内の種との相互作用によるものであるとする仮説が立てられる。塩化ベンザルコニウムは、修正されたAATCC-100試験の特定の条件にさらされた場合、細菌及び酵母に関してその有効性の範囲にギャップがあるようである。
【0206】
乳酸を単独で使用した場合、修正されたAATCC-100試験では抗菌効果は証明されなかった。乳酸は通常、単独で抗菌種としては認識されていない。
【0207】
塩化銀と塩化ベンザルコニウム(BKC)の組合せは、修正されたAATCC-100試験方法において、2つの細菌,酵母及びカビの種に渡って、抗菌性能にある程度の改善をもたらした。ただし、この成分の組合せは、必要なlog 4の減少をもたらすのに十分ではなかった。
【0208】
塩化銀と乳酸の組合せは、細菌種及びカンジダ・アルビカンス酵母に対する修正されたAATCC-100試験方法における抗菌性能の大幅な向上をもたらしたが、アスペルギルス・ブラジリエンシス・カビに対する銀種の性能は向上しなかった。
【0209】
驚くべきことに、修正されたAATCC-100試験方法では、銀イオン源,第4級アンモニウム塩及び有機酸の存在下で相乗効果が見られ、すべての微生物に対する抗菌効果が観察された。
【0210】
当然のことながら、本発明は、例としてのみ説明された前述した例に限定されるものではないことを理解されたい。
【国際調査報告】