(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-13
(54)【発明の名称】呼吸用保護マスク及び同マスクのための逆止弁
(51)【国際特許分類】
A62B 18/10 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
A62B18/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574414
(86)(22)【出願日】2022-05-23
(85)【翻訳文提出日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2022063865
(87)【国際公開番号】W WO2022253609
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/098304
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ルオ チョンチ
(72)【発明者】
【氏名】チョン ウェイチョン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン ハイヤン
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185CC07
(57)【要約】
本発明は、呼吸用保護マスク及び同マスクのための逆止弁を提供する。逆止弁は、実質的に平坦な基体、第1の略半円形の通路部及び第2の略半円形の通路部を備えた第1のハウジングを有する。第1及び第2の通路部は、基体内に形成されると共に、第1の略半円形の通路部及び第2の略半円形の通路部の直径部を通って延在するように配置された中央ビームにより分離される。該逆止弁は、更に、半円形状を有し、第1の通路部を覆う第1のダイヤフラム;半円形状を有し、第2の通路部を覆う第2のダイヤフラム;及び開放通路を備えた第2のハウジング;を有する。第2のハウジングは第1のハウジングに対して第1のダイヤフラム及び第2のダイヤフラムを第1のハウジングと第2のハウジングとの間に保持するように取り付けられる。第1のダイヤフラム及び第2のダイヤフラムは、各々、中央ビームとは反対の部分でヒンジ固定されて外方に偏向するようにされ、当該呼吸用保護マスクの装着者が呼息する場合に、第1の通路部及び第2の通路部を開放し、呼気気流が第1の通路部、第2の通路部及び開放通路を経て排出され得るようにする。本発明の逆止弁は、装着者の快適さを改善できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸用保護マスクのための逆止弁であって、
実質的に平坦な基体、略半円形の第1の通路部及び略半円形の第2の通路部を有し、前記略半円形の第1の通路部及び前記略半円形の第2の通路部が、前記基体内に形成されると共に前記略半円形の第1の通路部及び前記略半円形の第2の通路部の直径部を通って延在するように配置された中央ビームにより分離される第1のハウジングと、
半円形状を有すると共に前記第1の通路部を覆う第1のダイヤフラムと、
半円形状を有すると共に前記第2の通路部を覆う第2のダイヤフラムと、
開放通路を有する第2のハウジングであって、前記第1のハウジングに取り付けられて、前記第1のダイヤフラム及び前記第2のダイヤフラムを前記第1のハウジングと当該第2のハウジングとの間に前記第1のダイヤフラム及び前記第2のダイヤフラムが前記中央ビームとは反対側の部分においてヒンジ固定されて外方に偏向するように保持し、前記呼吸用保護マスクの装着者が呼息する際に前記第1の通路部及び前記第2の通路部を開放して呼気流が前記第1の通路部、前記第2の通路部及び前記開放通路を経て排出されるのを可能にする、第2のハウジングと
を有する、逆止弁。
【請求項2】
前記中央ビームよりも細い第1の支持ビームが前記第1の通路部に配置され、前記中央ビームよりも細い第2の支持ビームが前記第2の通路部に配置され、前記第1の支持ビーム及び前記第2の支持ビームが前記第1のハウジングにおける前記第1のダイヤフラム及び前記第2のダイヤフラムを支持する面に対して凹まされる、請求項1に記載の逆止弁。
【請求項3】
前記第1の支持ビーム及び前記第2の支持ビームが前記中央ビームに対して実質的に平行に配置される、請求項2に記載の逆止弁。
【請求項4】
前記基体における前記第1の通路部を囲むと共に前記第1のダイヤフラムと接触する部分は第1のダイヤフラム相手側領域を構成し、前記基体における前記第2の通路を囲むと共に前記第2のダイヤフラムと接触する部分は第2のダイヤフラム相手側領域を構成し、これら第1のダイヤフラム相手側領域及び第2のダイヤフラム相手側領域が滑らかな表面仕上げを有するように表面処理される、請求項1に記載の逆止弁。
【請求項5】
前記基体から突出する第1の環状接触リムが前記第1の通路部の周囲に形成される一方、前記基体から突出する第2の環状接触リムが前記第2の通路部の周囲に形成され、前記第1の環状接触リムは前記第1のダイヤフラムと接触する第1のダイヤフラム相手側領域を少なくとも部分的に構成し、前記第2の環状接触リムが前記第2のダイヤフラムと接触する第2のダイヤフラム相手側領域を少なくとも部分的に構成する、請求項1に記載の逆止弁。
【請求項6】
前記第1の環状接触リム及び前記第2の環状接触リムが、滑らかな表面仕上げを有するように表面処理される、請求項5に記載の逆止弁。
【請求項7】
前記第1の環状接触リムは前記第1の通路部の近傍に形成され、前記第2の環状接触リムが前記第2の通路部の近傍に形成される、請求項5に記載の逆止弁。
【請求項8】
前記第1の接触リムの2つの第1の側部は前記中央ビームから遠い一端から該中央ビームに近い一端に向かって弧状に徐々に隆起され、前記第2の環状接触リムの2つの第2の側部が前記中央ビームから遠い一端から該中央ビームに近い一端に向かって弧状に徐々に隆起される、請求項7に記載の逆止弁。
【請求項9】
前記第1のダイヤフラムと接触する第1のダイヤフラム相手側領域が前記第1の通路部の周囲における前記第1のハウジング上に定められる一方、前記第2のダイヤフラムと接触する第2のダイヤフラム相手側領域が前記第2の通路部の周囲における前記第1のハウジング上に定められ、前記第1のダイヤフラムにおける前記第1のダイヤフラム相手側領域と接触する部分及び前記第2のダイヤフラムにおける前記第2のダイヤフラム相手側領域と接触する部分が滑らかな表面仕上げを有するように表面処理される、請求項1に記載の逆止弁。
【請求項10】
第1のダイヤフラム及び前記第2のダイヤフラムの残りの部分が、表面を粗くするように表面処理される、請求項9に記載の逆止弁。
【請求項11】
第1のダイヤフラム保持部が前記第1の通路部における前記中央ビームとは反対の側において前記基体上に配置される一方、第2ダイヤフラム保持部が第2の通路部における前記中央ビームとは反対の側において前記基体上に配置され、前記第1のダイヤフラム及び前記第2のダイヤフラムを前記第1のハウジング上に配置するために、前記第1のダイヤフラム保持部が前記第1のダイヤフラムにおける第1の取付孔を貫通する一方、第2のダイヤフラム保持部が前記第2のダイヤフラムにおける第2の取付孔を貫通する、請求項1記載の逆止弁。
【請求項12】
環状フランジが前記第1の通路部、前記第2の通路部、前記第1のダイヤフラム保持部及び前記第2のダイヤフラム保持部の周囲において前記基体上に形成され、該環状フランジ及び前記第2のハウジングの中空体が弾発嵌合により一緒に固定される、請求項11に記載の逆止弁。
【請求項13】
前記第2のハウジングの中空体内に該中空体と一体的に形成された対向する第1のダイヤフラム制限部及び第2のダイヤフラム制限部が存在し、前記開放通路は前記第1のダイヤフラム制限部と前記第2のダイヤフラム制限部との間にあり、前記第1のダイヤフラムにおける前記ダイヤフラム制限部により制限される部分は該第1のダイヤフラムが偏向する第1のヒンジを形成し、第2のダイヤフラムにおける前記第2のダイヤフラム制限部により制限される部分が、該第2のダイヤフラムが偏向する第2のヒンジを形成する、請求項11に記載の逆止弁。
【請求項14】
少なくとも1つの遮断ビームが前記第1のダイヤフラム制限部と前記第2のダイヤフラム制限部分との間において前記開放通路内に配置される、請求項13に記載の逆止弁。
【請求項15】
濾過材料から形成された本体と前記本体内に配置された逆止弁とを有し、前記逆止弁が請求項1から14の何れか一項に記載の逆止弁である、呼吸用保護マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸用保護マスクに関し、特に呼吸用保護マスクのための逆止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
装着者の鼻及び口を覆う呼吸用保護マスク(保護呼吸マスク)は、しばしば、周囲空気から汚染物質、病原体及びアレルゲン等の浮遊粒子を濾過除去するために着用される。典型的な呼吸用保護マスクは、濾過材から形成された本体を含む。呼吸用保護マスクが着用された場合、該本体は、その周縁部において装着者の顔とで密閉部を形成し、本体と装着者の顔との間に密封されたマスク空洞を画定する。逆止弁(しばしば、「呼気弁」とも称される)を、本体内に配置することができる。逆止弁(チェックバルブ)は、装着者が呼息する場合に開いて、呼気ガスが該逆止弁を通って密封されたマスク空洞から排出するのを促進する一方、装着者が吸息する場合に閉じて、濾過されていない周囲空気が該逆止弁を通って密封されたマスク空洞に直接侵入するのを阻止する。逆止弁は、呼気ガスがマスク空洞から本体の濾過材よりも小さい抵抗で排出することを可能にする。更に、快適さ及び有効性を更に向上させるために、逆止弁の出口に呼気ファンを配置することもできる。一般的に、より効果的な呼気換気又はより低い抵抗の濾過材は、呼吸の間に装着者を一層快適にする。しかしながら、一層強力なファンは一層多くの電力が電池から取り込まれること又は一層大きなファン寸法を必要とすることが多く、濾過材の透過度を増加させることは、浮遊粒子に対する濾過効率を低下させることが多い。更に、既存の逆止弁は呼気が通過する開口の有効面積が小さく、結果として、装着者が呼息する場合にマスク空洞からの呼気ガスの排出効率が低下し、装着者にとり不快になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、呼吸用保護マスクのための改善された逆止弁が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様によれば、呼吸用保護マスクのための逆止弁が提供され、該逆止弁は:
実質的に平坦な基体、略半円形の第1の通路部及び略半円形の第2の通路部を有し、略半円形の第1の通路部及び略半円形の第2の通路部が、基体内に形成されると共に該略半円形の第1の通路部及び略半円形の第2の通路部の直径部を通って延在するように配置された中央ビームにより分離される第1のハウジングと、
半円形状を有すると共に第1の通路部を覆う第1のダイヤフラムと、
半円形状を有すると共に第2の通路部を覆う第2のダイヤフラムと、
開放通路を有する第2のハウジングであって、第1のハウジングに取り付けられて、第1のダイヤフラム及び第2のダイヤフラムを第1のハウジングと第2のハウジングとの間に第1のダイヤフラム及び第2のダイヤフラムが中央ビームとは反対側の部分においてヒンジ固定されて外方に偏向するように保持し、当該呼吸用保護マスクの装着者が呼息する際に第1の通路部及び第2の通路部を開放して呼気流が第1の通路部、第2の通路部及び開放通路を経て排出されるのを可能にする、第2のハウジングと
を有する。
【0005】
本発明の他の態様によれば、濾過材料から形成された本体及び該本体内に配置された逆止弁を有する呼吸用保護マスクが提供され、該逆止弁は上述された逆止弁である。
【0006】
特定の全体的寸法によれば、本発明による呼吸用保護マスクのための逆止弁は、呼気流が通過する開口の有効面積を最大化することができると共に、呼気流が排出される際の抵抗を最小化することができ、これにより装着者の快適さを大幅に改善することができる。
【0007】
本発明の上記及び/又は他の態様、フィーチャ及び利点は、添付図面と関連してなされる例示的な実施形態の後述する説明から明らかとなり、一層容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態による呼吸用保護マスクのための逆止弁の第1のハウジングを概略的に示す。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態による呼吸用保護マスクのための逆止弁の第2のハウジングを概略的に示す。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態による呼吸用保護マスクのための逆止弁の2つのダイヤフラムを概略的に示す。
【
図4】
図4は、
図3に示す2つのダイヤフラムの代替実施形態を概略的に示す。
【
図5】
図5は、
図3に示すダイヤフラムが備えられた
図1に示す第1のハウジングの上面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第1の実施形態による呼吸用保護マスクのための逆止弁を概略的に示す。
【
図7】
図7は、本発明の第2の実施形態による呼吸用保護マスクのための逆止弁の第1のハウジングを概略的に示す。
【
図8】
図8は、本発明の第3の実施形態による呼吸用保護マスクのための逆止弁の第1のハウジングを概略的に示す。
【
図9】
図9は、本発明の第3の実施形態による呼吸用保護マスクのための逆止弁の第2のハウジングを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の例示的な実施形態を以下で詳細に参照するが、これら実施形態の例は添付図面に示され、図面全体を通じて同様の参照番号は同様の要素を示している。以下、本発明を解説するために、図面を参照することにより例示的な実施形態を説明する。
【0010】
図1は、本発明の第1の実施形態による呼吸用保護マスクのための逆止弁の第1のハウジングを概略的に示している。
図1に示されるように、本発明による呼吸用保護マスクのための逆止弁1は実質的に平坦な基体5を備えた第1のハウジング3を有する。環状のフランジ7が基体5の一方の側から突出して、基体5上に環状の領域9を画定している。気流通路11は該環状領域9内に形成される。気流通路11は、該環状領域の直径部を通って延在する中央ビーム(桁材)13により、第1の略半円形の通路部11a及び第2の略半円形の通路部11bに分離される。中央ビーム13は、第1の略半円形通路部11a及び第2の略半円形通路部11bの各々の直線長辺を形成している。第1の通路部11a及び第2の通路部11bは、環状領域9における中央ビーム13の正反対側の部分が逆止弁の第1のダイヤフラム取付領域9a及び第2のダイヤフラム取付領域9bを形成するために確保される故に、略半円形となるように形成されている。第1のダイヤフラム保持部15aが第1のダイヤフラム取付領域9aから突出する一方、第2のダイヤフラム保持部15bが第2のダイヤフラム取付領域9bから突出する。好ましい実施形態において、第1のダイヤフラム保持部15a及び第2のダイヤフラム保持部15bは細長い突起であるが、第1のダイヤフラム保持部15a及び第2のダイヤフラム保持部15bは1つ以上の突柱であってもよいと理解されたい。第1のダイヤフラム保持部15a及び第2のダイヤフラム保持部15bが突柱である場合、ダイヤフラムが組み立て中にずれることを防止するために、少なくとも2本の突柱が設けられることが好ましい。中央ビーム13における第1の通路部11aに隣接する部分、環状領域9における中央ビーム13と第1のダイヤフラム取付領域9aとの間の部分12a、及び第1のダイヤフラム取付領域9aにおける第1のダイヤフラム保持部分15aと第1の通路部11aとの間の部分16aは一緒になって第1のダイヤフラム相手側領域を形成する一方、中央ビーム13における第2の通路部11bに隣接する部分、環状領域9における中央ビーム13と第2のダイヤフラム取付領域9bとの間の部分12b、及び第2のダイヤフラム取付領域9bのうちの第2のダイヤフラム保持部15bと第2の通路部11bとの間の部分16bは一緒になって第2のダイヤフラム相手側領域を形成する。すなわち、第1のダイヤフラム相手側領域は第1の通路部11aを取り囲み、第2のダイヤフラム相手側領域は第2の通路部11bを取り囲む。2つの第1の切欠き17a及び2つの第2の切欠き17bが、第1のダイヤフラム保持部15a及び第2のダイヤフラム保持部15bの各々の近傍において環状フランジ7に形成されている。更に、環状フランジ7の外側部には基体5の近傍に環状凹部19が形成されている。
【0011】
図2は、本発明の第1の実施形態による呼吸用保護マスクのための逆止弁の第2のハウジングを概略的に示す。
図2に示されるように、本発明による呼吸用保護マスクのための逆止弁1は、第1のハウジング3に取り付けて該逆止弁のダイヤフラムを所定位置に保持するための第2のハウジング21を更に備える。第2のハウジング21は、環状の又は切頭円錐状の中空体23を備える。中空体23内には、対向する第1のダイヤフラム制限部25a及び第2のダイヤフラム制限部25bが該中空体23と一体的に形成されている。第1のダイヤフラム制限部25a及び第2のダイヤフラム制限部25bの中間部分は略真っ直ぐであるが、それらの端部は中空体23の内壁に向かって湾曲されて延長されている。このようにして、第2のハウジング21が第1のハウジング3に取り付けられると、第1のダイヤフラム制限部25a及び第2のダイヤフラム制限部25bはダイヤフラムの位置を制限する一方、第1のダイヤフラム制限部25a及び第2のダイヤフラム制限部25bの端部は第1のハウジング3における環状フランジ7の2つの第1の切欠き17a及び2つの第2の切欠き17bに各々受け入れられる。第1のラグ27a及び第2のラグ27bを第1のダイヤフラム制限部25a及び第2のダイヤフラム制限部25bに各々形成することができる。第1のラグ27aは第1のハウジング3上の第1のダイヤフラム保持部15aを受け入れるための凹部を有し、第2のラグ27bは第1のハウジング3上の第2のダイヤフラム保持部15bを受け入れるための凹部を有する。第2のハウジング21には、第1のダイヤフラム制限部25aと第2のダイヤフラム制限部25bとの間に開放通路29が形成されている。開放通路29には、少なくとも1つの阻止ビーム31が第1のダイヤフラム制限部25aと第2のダイヤフラム制限部25bとの間に配置され得る。好ましい実施形態では、第1のダイヤフラム制限部25a及び第2のダイヤフラム制限部25bを接続する2つの阻止ビーム31が示されている。これら阻止ビーム31は、ダイヤフラムが過度に偏向するのを防止し得る。ダイヤフラムの過度の偏向は、ダイヤフラムが閉位置に戻らないこと、又は呼気ファンが当該逆止弁の下流に設置される場合に該呼気ファンの羽根に接触することを生じさせ得る。リブ33が中空体23に設けられ、第2のハウジング21が第1のハウジング3に取り付けられる際に、リブ33が第1のハウジング3の環状フランジ7の外側面の環状凹部19に受け入れられて、第2のハウジング21を第1のハウジング3に固定するようにする。
【0012】
図3は、本発明の第1の実施形態による呼吸用保護マスクのための逆止弁の2つのダイヤフラムを概略的に示す。
図3に示されるように、本発明による呼吸用保護マスクのための逆止弁1は、互いに分離された第1のダイヤフラム35a及び第2のダイヤフラム35bを更に備える。第1のダイヤフラム35a及び第2のダイヤフラム35bは、各々、半円形状である。第1のダイヤフラム35a及び第2のダイヤフラム35bには、各々、直径部とは反対側の弓状縁部の近傍に第1の取付孔37a及び第2の取付孔37bが設けられている。第1の取付孔37a及び第2の取付孔37bの形状及び寸法は、第1のダイヤフラム保持部15a及び第2のダイヤフラム保持部15bの形状及び寸法に対応し、第1のダイヤフラム保持部15a及び第2のダイヤフラム保持部15bが第1の取付孔37a及び第2の取付孔37bを貫通するようにする。例えば、第1のダイヤフラム保持部15a及び第2のダイヤフラム保持部15bが
図1に示されるように細長い突起である場合、第1の取付孔37a及び第2の取付孔37bは、該細長い突起と合致するように細長い孔として設計される。第1のダイヤフラム保持部15a及び第2のダイヤフラム保持部15bが2本の円柱である場合、第1の取付孔37a及び第2の取付孔37bは該2本の円柱と合致させるために、
図4に示されるように2つの円孔である。第1のダイヤフラム35a及び第2のダイヤフラム35bは、これら第1のダイヤフラム35a及び第2のダイヤフラム35bが第1ダイヤフラム保持部15a及び第2ダイヤフラム保持部15b上に各々取り付けられた場合に、第1の通路部11aを囲む第1のダイヤフラム相手側領域及び第2の通路部11bを囲む第2のダイヤフラム相手側領域を各々覆うように寸法決めされる。第1のダイヤフラム35aの角部39a及び第2のダイヤフラム35bの角部39bは、各々、第1の通路部11a及び第2の通路部11bの角部に対応して丸めることができる。これらダイヤフラムは、ゴム、シリコン樹脂、プラスチック又は何らかの他のタイプ等の可撓性弾性材料から形成され得る。これらダイヤフラムは、正圧下で偏向して当該逆止弁の空気流路11を開くことができる。正圧がない場合又は負圧の下では、これらダイヤフラムは、ダイヤフラム相手側領域に当接して当該逆止弁の空気流路11を閉じる位置に戻り得る。
【0013】
本発明による呼吸用保護マスクのための逆止弁1の組立工程を以下に説明する。先ず、
図5に示されるように、第1のハウジング3の第1のダイヤフラム保持部15aが第1のダイヤフラム35aの第1の取付孔37aを貫通して、第1のダイヤフラム35aが第1のハウジング3の第1の通路部11aを覆うようにする一方、第1のハウジング3の第2のダイヤフラム保持部15bが第2のダイヤフラム35bの第2の取付孔37bを貫通して、第2のダイヤフラム35bが第1のハウジング3の第2の通路部11bを覆うようにする。
図5は、
図3に示すダイヤフラムが装填された
図1に示す第1のハウジングの上面図である。次に、第2のハウジング21上の第1のラグ27aの凹部が第1のハウジング3上の第1のダイヤフラム保持部15aに位置合わせされる一方、第2のハウジング21上の第2のラグ27bの凹部が第1のハウジング3上の第2のダイヤフラム保持部15bに位置合わせされた状態で、第2のハウジング21が第1のハウジング3に取り付けられる。この時点で、第1のハウジング3の第1のダイヤフラム保持部15aは第2のハウジング21の第1のラグ27aに受け入れられ、第1のハウジング3の第2のダイヤフラム保持部15bは第2のハウジング21の第2のラグ27bに受け入れられ、第2のハウジング21の第1のダイヤフラム制限部25aは第1のダイヤフラム35aを第1の通路部11aの近傍における第1のハウジング3の第1のダイヤフラム取付領域9aに制限し、第1のダイヤフラム制限部25aの端部は第1のハウジング3の環状フランジ7の2つの第1の切欠き17aに受け入れられ、第2のハウジング21の第2のダイヤフラム制限部25bは第2のダイヤフラム35bを第2の通路部11bの近傍における第1のハウジング3の第2のダイヤフラム取り付け領域9bに制限し、第2のダイヤフラム制限部25bの端部は第1のハウジング3の環状フランジ7の2つの第2の切欠き17bに受け入れられ、第2のハウジング21のリブ33は第1のハウジング3における環状フランジ7の外側部の環状凹部19に受け入れられ、これにより、
図6に示されるように、第2のハウジング21を第1のハウジング3に固定し、第1のダイヤフラム35a及び第2のダイヤフラム35bを正確且つ高信頼度で所定位置に保持する。もちろん、第2のハウジング及び第1のハウジングは、他の弾発嵌合手段により一緒に固定することもできる。第1のダイヤフラム35aにおける第1のダイヤフラム制限部25aにより制限される部分は、該第1のダイヤフラム35aが偏向可能となる第1のヒンジを形成する一方、第2のダイヤフラム35bにおける第2のダイヤフラム制限部25bにより制限される部分は、第2のダイヤフラム35bが偏向可能となる第2のヒンジを形成する。第1のダイヤフラム制限部25a及び第2のダイヤフラム制限部25bは第1のダイヤフラム35a及び第2のダイヤフラム35bの位置を各々制限するが、第1のダイヤフラム35a及び第2のダイヤフラム35bを、各々、第1のダイヤフラム取付部9a及び第2のダイヤフラム取付部9に対して強く押圧することは必要でないことに注意されたい。第1のラグ27a及び第2のラグ27bも更に第1のダイヤフラム35a及び第2のダイヤフラム35bの位置を各々制限するように機能する。
【0014】
本発明による逆止弁1を備えた呼吸用保護マスク(図示略)が装着された場合、第1のハウジング3は装着者の顔に面する一方、第2のハウジング21は外部環境に面する。装着者が呼息する場合、第1のダイヤフラム35a及び第2のダイヤフラム35bは、呼気流により発生する正圧により、各々、第1のヒンジ及び第2のヒンジを支点として外方に偏向し、第1の通路部11a及び第2の通路部11bを開放し、これにより、呼気流が円滑に流出するようする。装着者が吸息する場合、第1のダイヤフラム35a及び第2のダイヤフラム35bは、吸気流により発生する負圧により、各々、内方に偏向して第1のダイヤフラム相手側領域及び第2のダイヤフラム相手側領域に当接し、第1の通路部11a及び第2の通路部11bを閉鎖し、これにより、濾過されていない気体が逆止弁1を通ってマスク空洞内に侵入し、装着者に吸入されることを防止する。このように、本発明における第1のダイヤフラム相手側領域及び第2のダイヤフラム相手側領域は、第1のハウジングにおける第1のダイヤフラム及び第2のダイヤフラムと密封接触を形成する領域を指す。本発明による呼吸用保護マスクのための逆止弁1は、空気流路11の直径部を通って延在する中央ビーム13により分離された第1の略半円形の通路部11a及び第2の略半円形の通路部11b、並びに互いに分離されると共に第1の通路部11a及び第2の通路部11bと各々合致する第1のダイヤフラム35a及び第2のダイヤフラム35bを有する。特定の全体的寸法によれば、当該呼吸用保護マスクの逆止弁1は、第1のダイヤフラム35a及び第2のダイヤフラム35bに一層大きな可動部分を有させて、一層大きな外向きフォースアームをもたらすと共にその偏向モーメントを増加させ、その結果、呼気流が通過する開口の有効面積が最大化されると共に、排出されるべき呼気流に対する抵抗が最小化され、これにより、装着者の快適さを大幅に改善する。更に、逆止弁の出口に呼気ファンが配置される場合、本発明による逆止弁1は、呼気流を該呼気ファンの中心に向けて、呼気流が可能な限り迅速に排気されるようにするのに特に有用である。
【0015】
装着者が吸息する際に、濾過されていない気体が第1のダイヤフラム35aと第1のダイヤフラム相手側領域との間、及び第2のダイヤフラム35bと第2のダイヤフラム相手側領域との間の隙間を介してマスク空洞内に侵入するのを防止するために、第1のダイヤフラム相手側領域及び第2のダイヤフラム相手側領域の表面は、これら表面が滑らかな表面仕上げを有するように処理することができる。第1のダイヤフラム相手側領域及び第2のダイヤフラム相手側領域の表面処理を簡単化するため、環状領域9の全表面を滑らかな表面仕上げを有するように処理することができる。濾過されていない気体がマスク空洞内に侵入するのを防止する能力を更に改善するために、第1のダイヤフラム35aにおける第1のダイヤフラム相手側領域と接触する部分及び第2のダイヤフラム35bにおける第2のダイヤフラム相手側領域と接触する部分も、これら部分が滑らかな表面仕上げを有するように表面処理され得る。ダイヤフラムは、一緒にくっ付き合う場合がある。ダイヤフラムを分離する作業は、逆止弁の組み立て時の効率を低下させ得る。この目的のために、第1のダイヤフラム35aにおける第1のダイヤフラム相手側領域と接触しない部分及び第2のダイヤフラム35bにおける第2のダイヤフラム相手側領域と接触しない部分も、ダイヤフラムが互いに粘着するのを防止するために表面を粗くするよう表面処理される。
図3及び
図4において、参照符号41a及び41bは、各々、第1のダイヤフラム35aにおける第1のダイヤフラム相手側領域と接触する部分及び第2のダイヤフラム35bにおける第2のダイヤフラム相手側領域と接触する部分を表す一方、参照符号43a及び43bは、各々、第1のダイヤフラム35aにおける第1のダイヤフラム相手側領域と接触しない部分及び第2のダイヤフラム35bにおける第2のダイヤフラム相手側領域と接触しない部分を表している。
【0016】
第1の支持ビーム45a及び第2の支持ビーム45bを、第1の通路部11a及び第2の通路部11bに各々配置することができる。第1の支持ビーム45a及び第2の支持ビーム45bは、第1のダイヤフラム35a及び第2のダイヤフラム35bを装着者が吸息する際に第1のダイヤフラム35a及び第2のダイヤフラム35bが過度の吸引によりマスク空洞内に吸い込まれるのを防止するように支持するために使用される。第1の支持ビーム45a及び第2の支持ビーム45bは、障壁としてのみ機能し、したがって中央ビーム13よりも大幅に細くできる。第1の支持ビーム45a及び第2の支持ビーム45bは中央ビーム13に対して実質的に垂直に又は傾斜されて配置することもできるが、好ましくは、これら支持ビームは中央ビーム13に対して実質的に平行に配置され、吸引アーム(モーメントアーム)が2つの一層小さな力アームに分割され得るようにし、これにより第1のダイヤフラム35a及び第2のダイヤフラム35bを内側に吸引する力のモーメントを低減するようにする。好ましくは、第1の支持ビーム45a及び第2の支持ビーム45bは、第1のダイヤフラム相手側領域及び第2のダイヤフラム相手側領域に対して内側に凹まされ、装着者が吸息した場合に、張力に応答した第1のダイヤフラム35a及び第2のダイヤフラム35bの内向きの歪を許容はするが制限するようにする。
【0017】
図7は、本発明の第2の実施形態による呼吸用保護マスクのための逆止弁の第1のハウジングを概略的に示す。簡略化のために、第7の第1のハウジングのうちの
図1のものと同一の部分の説明は省略する。
図7に示される第1のハウジングは
図1に示される第1のハウジングとは、環状領域9から突出する第1の接触リム47aが第1の通路部11aの周縁に沿って形成される一方、環状領域9から突出する第2の環状接触リム47bが第2の通路部11bの周縁に沿って形成される点で相違する。このようにして、第1の環状接触リム47aは略台形形状であり、第1のダイヤフラム保持部15aは該第1の環状接触リム47aの外側に位置している。第2の環状接触リム47bも略台形形状であり、第2のダイヤフラム保持部15bは該第2の環状接触リム47bの外側に位置している。第1の環状接触リム47aは第1のダイヤフラム35aと接触する第1のダイヤフラム相手側領域を構成し、第2の環状接触リム47bは第2のダイヤフラム35bと接触する第2のダイヤフラム相手側領域を構成する。第1の環状接触リム47a及び第2の環状接触リム47bは、これらリムが滑らかな表面仕上げを有するように表面処理され得る。好ましくは、第1の環状接触リム47aの2つの第1の側部49aは、第1のダイヤフラム保持部15a寄りの端部から中央ビーム13に向けて弧状に徐々に隆起され得る一方、第2の環状接触リム47bの2つの第2の側部49bは、第2のダイヤフラム保持部15b寄りの端部から中央ビーム13に向けて弧状に徐々に隆起され得る。このようにして、第1のダイヤフラム35a及び第2のダイヤフラム35bが第1の環状接触リム47a及び第2の環状接触リム47b上に位置する(休止している)場合、第1のダイヤフラム35a及び第2のダイヤフラム35bに予備張力が印加されて、装着者がかがんだ場合に、ダイヤフラム35a及び第2のダイヤフラム35bが誤って開くのを防止する。
【0018】
図8は、本発明の第3の実施形態による呼吸用保護マスクのための逆止弁の第1のハウジングを概略的に示す。
図8に示される第1のハウジングは、第1の環状接触リム47a及び第2の環状接触リム47bが各々略半円形状に形成されて、第1のダイヤフラム保持部15a及び第2のダイヤフラム保持部15bが第1の環状接触リム47a及び第2の環状接触リム47bの内側に各々位置するようにする点を除いて、
図7に示されたハウジングと実質的に同様である。
図9は、本発明の第3の実施形態による呼吸用保護マスクのための逆止弁の第2のハウジングを概略的に示す。
図9に示される第2のハウジングは、
図8に示される第1のハウジングに取り付けられる。
図9に示される第2のハウジングは、第1の環状接触リム47aを受け入れるための2つの第1の受け入れ凹部51aが第1のダイヤフラム制限部25aに形成される一方、第2の環状接触リム47bを受け入れるための2つの第2の受け入れ凹部51bが第2のダイヤフラム制限部25bに形成されている点を除き、
図2に示された第2のハウジングと実質的に同様である。
【0019】
以上、本発明を解説目的で現在最も実際的で好ましい実施形態であると考えられるものに基づいて詳細に説明したが、そのような詳細は単に解説目的のためのものであって、本発明は開示された実施形態に限定されるものではなく、逆に、添付請求項の趣旨及び範囲内に入る変更及び同等の構成をカバーすることを意図していると理解されたい。
【国際調査報告】