(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-13
(54)【発明の名称】適応的電荷中和の装置
(51)【国際特許分類】
H05F 3/04 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
H05F3/04 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574419
(86)(22)【出願日】2022-06-03
(85)【翻訳文提出日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 US2022032101
(87)【国際公開番号】W WO2022256615
(87)【国際公開日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591203428
【氏名又は名称】イリノイ トゥール ワークス インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【氏名又は名称】赤木 啓二
(74)【代理人】
【識別番号】100202740
【氏名又は名称】増山 樹
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ヘイマン
(72)【発明者】
【氏名】エドワード アンソニー オルディンスキ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーセフ カッシオ
(72)【発明者】
【氏名】フアン ゲルレロ
【テーマコード(参考)】
5G067
【Fターム(参考)】
5G067AA42
5G067DA18
5G067DA19
(57)【要約】
一例示の電荷中和の装置は、第1のエミッターノズルと、高周波交流(AC)信号を第1のエミッターノズルに供給するように構成される電源と、制御回路部とを備え、制御回路部は、極性信号を電源に提供してDCオフセット信号を生成することであって、高周波AC信号とDCオフセット信号との合成体により、電源は、陽イオン生成パルス又は陰イオン生成パルスを出力することと、電源に陽イオン生成期間及び陰イオン生成期間を提供させるように極性信号を制御することと、第1のエミッターノズルの出力におけるバランス電圧を決定することと、バランス電圧に基づいて、陽イオン生成期間と陰イオン生成期間との相対持続時間を調整するように極性信号を制御することとを行うように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷中和の装置であって、
第1のエミッターノズルと、
高周波交流(AC)信号を前記第1のエミッターノズルに供給するように構成される電源と、
制御回路部と、を備え、
前記制御回路部は、
極性信号を前記電源に提供してDCオフセット信号を生成することであって、前記高周波AC信号と前記DCオフセット信号との合成体により、前記電源は、陽イオン生成パルス又は陰イオン生成パルスを出力することと、
前記電源に陽イオン生成期間及び陰イオン生成期間を提供させるように前記極性信号を制御することと、
前記第1のエミッターノズルの出力におけるバランス電圧を決定することと、
前記バランス電圧に基づいて、前記陽イオン生成期間と前記陰イオン生成期間との相対持続時間を調整するように前記極性信号を制御することと、を行うように構成される、装置。
【請求項2】
前記高周波AC信号と前記DCオフセット信号との前記合成体は、前記第1のエミッターノズルのコロナ生成閾値電圧よりも高いピーク電圧を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記高周波AC信号と前記DCオフセット信号との前記合成体により、前記第1のエミッターノズルの電圧は、高周波ACサイクルごとに陽極コロナ生成閾値電圧又は陰極コロナ生成閾値電圧のうちの一方のみを超える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記制御回路部は、アンテナからのフィードバック信号に基づいて前記バランス電圧を決定するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記アンテナは、イオン化ターゲットに隣接して位置決めされる、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記制御回路部は、閉ループコントローラーからのフィードバック信号に基づいて前記バランス電圧を決定するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記電源は、前記高周波AC信号と前記DCオフセット信号との前記合成体に基づいて得られた信号を前記第1のエミッターノズルに印加し、前記得られた信号により、前記第1のエミッターノズルの電圧は、陽極コロナ生成閾値電圧又は陰極コロナ生成閾値電圧を超える、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記制御回路部が、前記電源において前記DCオフセットを生成しないように前記極性信号を制御するとき、前記高周波AC信号は、前記陽極コロナ生成閾値電圧又は陰極コロナ生成閾値電圧のいずれも超えない、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
エミッター尖端は、シリコンベース又はチタンベースである、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記第1のエミッターノズルを含む複数のエミッターノズルを更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記制御回路部は、前記陽イオン生成パルス又は前記陰イオン生成パルスのデューティサイクルを制御するために、前記バランス電圧に基づいて前記極性信号を変調するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記制御回路部は、アンテナからのフィードバック信号に基づいて前記バランス電圧を決定するように構成される、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記第1のエミッターノズルは、ステンレス鋼スリーブ内に保持されるエミッター尖端を備え、前記電源は、前記スリーブに対して、前記高周波AC信号と前記DCオフセット信号との前記合成体を前記エミッター尖端に印加するように構成される、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、包括的には、イオン化に関し、より詳細には、適応的電荷中和の方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電荷中和装置のイオンエミッターは、陽イオン及び陰イオンの両方を生成して、周囲の空気又はガス媒体内に供給する。ガスイオンを生成するために、印加される電圧の振幅は、イオン化セルとして配置される少なくとも2つの電極間のコロナ放電を生み出すように十分に高くなければならない。イオン化セルにおいて、少なくとも1つの電極がイオンエミッターであり、もう1つは基準電極とすることができる。
【発明の概要】
【0003】
適応的電荷中和の方法及び装置が、特許請求の範囲においてより完全に記載されるように、実質的に、図面のうちの少なくとも1つによって示され、これに関連して説明されるように開示される。
【0004】
本開示のこれらの特徴、態様、及び利点並びに他の特徴、態様、及び利点は、以下の詳細な説明が添付図面を参照して読まれるとより良好に理解され、図面を通して同様の参照符号は同様の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】本開示の態様に係る、バランス電圧フィードバックに基づいてイオン化出力を制御するように構成される一例示のAC電荷中和システムを示す図である。
【
図2】
図1のAC電荷中和システムの一例示の実施態様のブロック図である。
【
図3】DCオフセット信号を介して陽イオン及び陰イオンの出力を制御する、
図2のエミッターへの電源に対する例示の入力信号を示す図である。
【
図4】パルス出力がオフにされた状態の、陽イオン及び陰イオンを出力してバランス電圧を制御する、
図2の電源からエミッターへの一例示の出力信号を示す図である。
【
図5】パルス出力がオンにされた状態の、陽イオン及び陰イオンを出力してバランス電圧を制御する、
図2の電源からエミッターへの一例示の出力信号を示す図である。
【
図6】バランス電圧フィードバックに基づいて
図1のAC電荷中和システムのイオン化出力を制御する一例示の方法を示すフローチャートである。
【
図7】
図2の電源等のイオナイザー電源によるイオン出力を制御する一例示の方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図面は、必ずしも正確な縮尺ではない。適切な場合は、同様の又は同一の参照番号を使用して、同様の又は同一の構成要素を指す。
【0007】
イオナイザー、又は電荷中和装置は、陽イオン及び/又は陰イオンを放出して、製造施設等の中の表面又は基板上に存在し得る静電気を放電する。開示される例示の電荷中和の方法及び装置は、クラス1クリーンルーム生産環境において使用することができ、半導体チップ製造に特に有用である。
【0008】
従来の電荷中和装置は、所定のバランスの陽イオン及び陰イオンを放出し、所定のバランスは、ソフトウェア及び/又は入力デバイスを介してオペレーターによって調整することができる。しかしながら、従来の電荷中和装置は、所定のバランスが、動作中にターゲットに存在する電荷に対して適切であるかどうかを正確に判定するためのフィードバック機構を欠いている。
【0009】
開示される例示の電荷中和の方法及び装置は、バランス電圧フィードバックに基づいて出力イオンバランスを適応させる。本明細書に開示される例示の電荷中和の方法及び装置は、陽イオン及び陰イオンの生成を制御するように、DCオフセット信号を使用して高電圧高周波AC信号を変調する。出力イオンバランスを適応させることにより、ターゲットにおいて得られるバランス電圧の精度を高めるために、開示される例示の電荷中和の方法及び装置は、高電圧高周波AC信号の変調を適応させるようにDCオフセット信号のデューティサイクルを増減させる。開示される例示の電荷中和の方法及び装置は、従来の電荷中和装置と比べて、バランス電圧をより正確にし、スイング電圧を実質的に低減することが可能である。いくつかの開示される電荷中和の方法及び装置は、+/-5Vのスイング電圧を達成し、半導体製造等、電圧の影響及び電荷の影響を受けやすい用途に対して大幅な利点を有する。
【0010】
本明細書において使用される場合、閾値電圧を「超える」ことは、正の方向(例えば、閾値よりも正)又は負の方向(例えば、閾値よりも負)において生じ得る。
【0011】
本明細書において使用される場合、「バランス電圧」は、エミッターによるイオン化が生む正味電圧を指す。
【0012】
「イオン化」及び「電荷中和」という用語は、本明細書において区別なく使用される。
【0013】
開示される例示の電荷中和の装置は、第1のエミッターノズルと、高周波交流(AC)信号を第1のエミッターノズルに供給するように構成される電源と、制御回路部とを備え、制御回路部は、極性信号を電源に提供してDCオフセット信号を生成することであって、高周波AC信号とDCオフセット信号との合成体により、電源は、陽イオン生成パルス又は陰イオン生成パルスを出力することと、電源に陽イオン生成期間及び陰イオン生成期間を提供させるように極性信号を制御することと、第1のエミッターノズルの出力におけるバランス電圧を決定することと、バランス電圧に基づいて、陽イオン生成期間と陰イオン生成期間との相対持続時間を調整するように極性信号を制御することとを行うように構成される。
【0014】
いくつかの例示の装置において、高周波AC信号とDCオフセット信号との合成体は、第1のエミッターノズルのコロナ生成閾値電圧よりも高いピーク電圧を有する。いくつかの例示の装置において、高周波AC信号とDCオフセット信号との合成体により、第1のエミッターノズルの電圧は、高周波ACサイクルごとに陽極コロナ生成閾値電圧又は陰極コロナ生成閾値電圧のうちの一方のみを超える。
【0015】
いくつかの例示の装置において、制御回路部は、アンテナからのフィードバック信号に基づいてバランス電圧を決定するように構成される。いくつかの例示の装置において、アンテナは、イオン化ターゲットに隣接して位置決めされる。いくつかの例示の装置において、制御回路部は、閉ループコントローラーからのフィードバック信号に基づいてバランス電圧を決定するように構成される。
【0016】
いくつかの例示の装置において、電源は、高周波AC信号とDCオフセット信号との合成体に基づいて得られた信号を第1のエミッターノズルに印加し、得られた信号により、第1のエミッターノズルの電圧は、陽極コロナ生成閾値電圧又は陰極コロナ生成閾値電圧を超える。いくつかの例示の装置において、制御回路部が、電源においてDCオフセットを生成しないように極性信号を制御するとき、高周波AC信号は、陽極コロナ生成閾値電圧又は陰極コロナ生成閾値電圧のいずれも超えない。
【0017】
いくつかの例示の装置において、エミッター尖端は、シリコンベース又はチタンベースである。いくつかの例示の装置は、第1のエミッターノズルを含む複数のエミッターノズルを備える。いくつかの例示の装置において、制御回路部は、陽イオン生成パルス又は陰イオン生成パルスのデューティサイクルを制御するために、バランス電圧に基づいて極性信号を変調するように構成される。いくつかの例示の装置において、制御回路部は、アンテナからのフィードバック信号に基づいてバランス電圧を決定するように構成される。いくつかの例示の装置において、第1のエミッターノズルは、ステンレス鋼スリーブ内に保持されるエミッター尖端を備え、電源は、スリーブに対して、高周波AC信号とDCオフセット信号との合成体をエミッター尖端に印加するように構成される。
【0018】
図1は、バランス電圧フィードバックに基づいてイオン化出力を制御するように構成される一例示のAC電荷中和システム100を示している。例示のAC電荷中和システム100は、陽イオン及び陰イオン102を出力して、ターゲットデバイス又は基板104上の電荷を中和する。
【0019】
イオン102を生成するために、例示のシステム100は、1つ以上のイオンエミッターノズル106を備え、イオンエミッターノズル106は、イオン102の生成のために高電圧高周波AC信号を提供する1つ以上の電源に結合される。システム100は、イオン102をターゲットデバイス又は基板104の所望の領域又はサイズに分散させるために任意の数のエミッターノズル106を備えることができる。陽イオンと陰イオンとを交互に生じることによって、例示のシステム100は、イオン102によるターゲットデバイス又は基板104の帯電を低減又は回避しながら、ターゲットデバイス又は基板104上に存在する静電荷を有効に中和する。
【0020】
図1のシステム100は、陽イオン期間及び陰イオン期間を出力するようにノズル106の出力電圧を制御することによって、陽イオン及び陰イオンを交互に生じる。陽イオン期間と陰イオン期間との相対持続時間は、所望のバランスに基づいて制御することができる。従来の電荷中和システムとは対照的に、例示のシステム100は、アンテナ108を介してバランス電圧を測定し、測定値に基づいてイオンバランスを調整することによって、+/-5V以内のバランス電圧を達成する。例えば、システム100は、出力バランスを調整するように陽イオン期間と陰イオン期間との相対持続時間を調整することができる。アンテナ108は、アンテナ108がシステム100の出力を示すバランス電圧を測定するように、ターゲット104付近に位置決めすることができる。アンテナ108からのフィードバックを使用して、システム100は、陽イオン生成期間と陰イオン生成期間との相対バランスを繰り返し(例えば、絶え間なく)調整する。
【0021】
図2は、
図1のAC電荷中和システム100の一例示の実施態様のブロック図である。
図2の例は、高電圧高周波(HVHF)電源202を有するインラインイオナイザー200を備え、電源202は、複数のエミッター206を有するエミッターアセンブリ204にHVHF信号を出力する。いくつかの例において、エミッター206は、シリコンベース又はチタンベースである。電源202からのHVHF信号に基づいて、エミッター206は、陽イオン及び陰イオンを発生させて出力する。
【0022】
HVHF電源202は、DC-DCコンバーター208と、AC HVインバーター210と、DCオフセット生成器212と、AC HV増幅器214とを備える。DC-DCコンバーター208は、DC信号をインバーター210に出力し、インバーター210は、AC信号を生成する。DCオフセット生成器212は、極性制御信号216、218に基づいてDCオフセット信号を選択的に生成する。正極性制御信号216がアクティブである場合、DCオフセット生成器212は、正のDCオフセットを生成する。逆に、負極性制御信号218がアクティブである場合、DCオフセット生成器212は、負のDCオフセットを生成する。極性制御信号216、218がいずれもアクティブでない場合、DCオフセット生成器212は、DCオフセットを生成しない。DCオフセット電圧は、正負を問わず、AC HVインバーター210によって出力されたAC信号と合成され、合成信号を生成する。
【0023】
AC HV増幅器214は、DCオフセット生成器212によって出力された合成信号の電圧を増幅する。
【0024】
例示のイオナイザー200は、HVHF電源202を制御する制御回路部220を備える。例示の制御回路部220は、汎用マイクロプロセッサ、マイクロコントローラー、システムオンチップ(SoC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、及び/又は他の任意のタイプのデジタル及び/又はアナログ回路部を含むことができる。
【0025】
制御回路部220は、イオナイザー200の動作を制御する少なくとも1つのコントローラー又はプロセッサを備える。制御回路部220は、システムの性能及び需要に関連する複数の入力を受信して処理する。制御回路部220は、1つ以上のマイクロプロセッサ、例えば、1つ以上の「汎用」マイクロプロセッサ、1つ以上の専用マイクロプロセッサ及び/又はASIC、及び/又は他の任意のタイプの処理デバイスを備えることができる。例えば、制御回路部220は、1つ以上のデジタル信号プロセッサ(DSP)を備えることができる。
【0026】
例示の制御回路部220は、1つ以上のストレージデバイス及び1つ以上のメモリデバイスを備えることができる。ストレージデバイス(複数の場合もある)(例えば、不揮発性ストレージ)は、ROM、フラッシュメモリ、ハードドライブ、及び/又は他の任意の好適な光媒体、磁気媒体、及び/又はソリッドステートストレージ媒体、及び/又はそれらの組合せを含むことができる。ストレージデバイスは、データ(例えば、イオン化構成データ)、命令、及び/又は他の任意の適切なデータを記憶する。メモリデバイス(複数の場合もある)は、ランダムアクセスメモリ(RAM)等の揮発性メモリ、及び/又はリードオンリーメモリ(ROM)等の不揮発性メモリを含むことができる。メモリデバイス(複数の場合もある)及び/又はストレージデバイス(複数の場合もある)は、多様な情報を記憶することができ、様々な目的に使用することができる。例えば、メモリデバイス(複数の場合もある)及び/又はストレージデバイス(複数の場合もある)は、制御回路部220が実行するプロセッサ実行可能命令(例えば、ファームウェア又はソフトウェア)を記憶することができる。
【0027】
例示の制御回路部220は、ターゲット電圧レベル信号をDC-DCコンバーター208に出力して、AC HVインバーター210へのDC出力電圧を制御し、DCオフセット生成器212への極性信号216、218を制御して出力を制御する。極性信号216、218を制御することによって、例示の制御回路部220は、エミッター204によって出力される陽イオン及び陰イオンのバランスを制御することができる。
【0028】
例示の制御回路部220は、さらに、
図1のアンテナ108等の遠隔イオンバランスセンサーからバランス電圧入力222を受信する。例示の制御回路部220は、イオン化ターゲット付近に位置するアンテナに接続されるバランス検出器を更に備えることができ、又はバランス検出器からの入力を受信することができる。バランス検出器は、Simco-Ion(商標)Novxベースの制御システム、例えば、Novx 3352 Closed-loop Ionizer Controller又はNovx 3362 Closed-loop Ionizer Controllerを使用して実装することができる。他の例において、制御回路部220又はイオナイザー200は、アンテナ108から直接フィードバック信号を受信するバランス検出器を備えることができる。
【0029】
例示の制御回路部220は、PIDコントローラー、及び/又は他のタイプのフィルターを実行して、アンテナ108を介して受信されたバランス電圧測定値をフィルタリングすることができる。いくつかの例において、バランス電圧入力222は、アンテナ108からの入力信号を受信するように構成されるアナログ-デジタルコンバーター(ADC)回路を使用して決定され、制御回路部220は、1つ以上のフィルター及び/又は制御ループをバランス電圧入力222に適用して、極性信号216、218を制御するバランス値を調整する。制御回路部220は、定期的に、ADC又は他の回路がバランス電圧入力222をサンプリングして送達し得るのと同じ頻度で、1つ以上のイベントタイプに応答して、及び/又は他の任意の時に、バランス電圧入力222を受信する。
【0030】
空気流又はガス流を発生させるために、入口を介して加圧空気源、加圧窒素源、又は加圧アルゴン源をインラインイオナイザー200に接続することができる。他の例において、エミッターアセンブリ204により、周辺空気流は、イオンをエミッターアセンブリ204の出力に向かって搬送することができる。空気流又はガス流は、存在する場合、陽イオン及び陰イオンを同伴し、イオナイザー出口を通じてイオンをターゲット(例えば、
図1のターゲット104)に向かって搬送する。
【0031】
図3は、DCオフセット信号を介して陽イオン及び陰イオンの出力を制御する、
図2の電源202に対する例示の入力信号を示している。例示の制御回路部220は、カウント信号302を、バランス設定点及びバランス電圧入力222に基づいて制御回路部220によって設定されるバランス値304と比較する。例示の制御回路部220は、一貫したタイミングを維持するために、制御回路部220のクロック信号に基づいて増量及び減量するようにカウント信号を制御することができる。カウント信号302がバランス値304よりも小さいとき、制御回路部220は、負極性信号218をアクティブにし、正極性信号216を非アクティブにするように制御する。逆に、カウント信号がバランス値304よりも大きいとき、制御回路部220は、負極性信号218を非アクティブにし、正極性信号216をアクティブにするように制御する。したがって、正極性信号216は、バランス値が減少する(例えば、測定される正のバランス値が小さくなる又は負のバランス値が大きくなる)につれて長くアクティブとなり、負極性信号218は、バランス値が上昇する(例えば、測定される正のバランス値が大きくなる又は負のバランス値が小さくなる)につれて長くアクティブとなる。いくつかの例において、制御回路部220は、電源202を制御するパルス信号306を更に実装することができる。例えば、パルス信号306を使用して、AC高周波信号をオンオフするようにAC HVインバーター210の出力を制御することができる。極性信号216、218が所与の時点にアクティブであり得る間、パルス信号306のロー値(例えば、オフ)により、パルス信号306がハイ値(例えば、オン)に変更されるまで、電源202の出力がオフになる。パルス信号306を使用することで、減衰時間要件及びスイング電圧要件の両方の達成が困難であるいくつかのタイプの用途において、減衰時間に大きく影響することなくイオン化スイング電圧を低減することができる。加えて又は代替的に、パルス信号306を使用してイオン再結合を抑制することができる。
【0032】
図3の例において、パルス信号306は、制御回路部220のクロック信号に基づいて制御することができる特定の期間及びデューティサイクルを有する。しかしながら、他の例において、パルス信号306の期間及び/又はデューティサイクルは、特定のイオン化率を達成するため等、所望に応じて調整することができる。
【0033】
いくつかの例において、制御回路部220は、バランス値304が上限値又は下限値に達する及び/又はこれを維持する場合、警告又はアラートを出力することができる。そのような場合、バランス電圧測定値に誤差があり得る、及び/又はイオナイザー200は、用途に対して十分なイオン化を提供することができない。
【0034】
図4Aは、パルス出力(例えば、
図3のパルス信号306)がオフにされた状態の、陽イオン及び陰イオンを出力してバランス電圧を制御する、
図2の電源202からエミッター206への一例示の出力信号400を示している。
図4Bは、高周波を示す出力信号400の一部のより詳細な図を示している。
図4Aの例において、出力信号400は、定義されたエミッター期間402を有し、エミッター期間402は、負の部分404と、正の部分406と、1つ以上のオフ部分408とを含む。オフ部分408は、電源202がスイッチングを行うのに十分な時間を提供するために、順番式の負の部分と正の部分との間、エミッター期間402の開始時、及び/又はエミッター期間402の終了時に生じる1つ以上の所定の期間を含むことができる。
【0035】
負の部分404の間、負極性信号218がアクティブであり、エミッター206は、陰イオンを生成してターゲット104に向かって発射する。正の部分406の間、正極性信号216がアクティブであり、エミッター206は、陽イオンを生成してターゲット104に向かって発射する。オフ部分408の間、極性信号216、218がいずれもアクティブでなく、エミッター206は、陰イオンを生成しない。なぜなら、電源202から生成される出力信号400は、正閾値電圧410も負閾値電圧412も超えるのに十分でないからである。正の部分406及び/又は負の部分404は、エミッター期間402に対するそれぞれのデューティサイクルを有することができる。
【0036】
バランス電圧入力222に応答して、例示の制御回路部220は、
図3のバランス信号304を調整することによって負の部分404及び/又は正の部分406のデューティサイクルを調整することができ、これにより、極性信号216、218を調整する。
【0037】
制御回路部220は、負の部分404及び/又は正の部分406の対応する持続時間を決定することによって、バランス値304の変化に応答することができる。
【0038】
図5Aは、パルス出力(例えば、
図3のパルス信号306)がオンにされた状態の、陽イオン及び陰イオンを出力してバランス電圧を制御する、
図2の電源202からエミッター206への一例示の出力信号500を示している。
図5Bは、高周波を示す出力信号500の一部のより詳細な図を示している。例示の出力信号500は、
図4Aの出力信号400と同様であるが、ただし、エミッター204へのHV出力信号がパルス信号306に基づいてオフにされている。
【0039】
図6は、バランス電圧フィードバックに基づいて
図1及び
図2のAC電荷中和システムのイオン化出力を制御する一例示の方法600を示すフローチャートである。
【0040】
ブロック602において、例示のHVHF電源202は、高電圧高周波AC信号を生成する。例えば、DC-DCコンバーター208及びAC高電圧インバーター210は、高電圧高周波AC信号を生成する。ブロック604において、制御回路部220は、所望のイオン出力バランスに基づいてバランス値を設定する。例えば、制御回路部220は、負の部分404及び/又は正の部分406を制御するバランス入力に基づいて初期バランス値304を設定することができる。
【0041】
ブロック606において、制御回路部220は、バランス値304に基づいて陽イオンデューティサイクル(例えば、エミッター期間402の正の部分406)及び陰イオンデューティサイクル(例えば、エミッター期間402の負の部分404)を決定する。例えば、制御回路部220は、(所定の範囲内の)バランス値304及び所定のオフ時間408に基づいて陽イオンデューティサイクル及び陰イオンデューティサイクルを計算することができる。いくつかの他の例において、制御回路部220は、陽イオンデューティサイクル及び陰イオンデューティサイクルを計算せず、代わりに、カウント信号302とのバランス値304の比較に基づいて(例えば、リアルタイムに)極性信号を制御する。
【0042】
ブロック608において、制御回路部220は、陽イオンデューティサイクル及び陰イオンデューティサイクルに基づいて、電源202によるイオン出力を制御する。ブロック608を実施する一例示の方法が
図7を参照して以下に開示される。
【0043】
ブロック610において、制御回路部220は、バランス電圧を測定する。例えば、制御回路部220は、バランス電圧を示すバランス電圧入力222を受信することができる。ブロック612において、制御回路部220は、測定されたバランス電圧及びバランス設定点に基づいてバランス値304を更新する。例えば、制御回路部220は、測定されたバランス電圧及びバランス設定点をPIDコントローラーに適用してバランス値304を調整することができる。PIDコントローラー、又は他の制御ループは、測定されたバランス電圧とバランス設定点との間の差に基づいて、指令バランス値304を調整する。
【0044】
バランス値を更新した(ブロック612)後、制御はブロック606に戻り、陽イオンデューティサイクル及び陰イオンデューティサイクルの更新と、エミッター206へのHVHF信号の出力とを続ける。
【0045】
図7は、
図2の電源202等のイオナイザー電源によるイオン出力を制御する一例示の方法700を示すフローチャートである。例示の方法700を
図2の制御回路部220によって行って、
図6のブロック608を実施することができる。方法700を行う前、例示の制御回路部220は、バランス信号304に基づいて陽イオンデューティサイクル及び陰イオンデューティサイクルを決定済である。
【0046】
ブロック702において、制御回路部220は、陽イオンデューティサイクルに基づいて正極性制御信号216を生成して、(例えば、DCオフセット生成器212の)DCオフセットを制御する。例えば、制御回路部220は、陽イオンデューティサイクルの持続時間にわたって、正極性制御信号216をアクティブ(例えば、オン)に、負極性制御信号218を非アクティブ(例えば、オフ)に保持することができる。
【0047】
ブロック704において、DCオフセット生成器212は、(例えば、AC HVインバーター210からの)高電圧高周波AC信号をDCオフセットと合成して、イオン出力バランスを制御する。例えば、DCオフセット生成器212は、高電圧高周波AC信号を、正極性制御信号216に基づいて生成されたDCオフセットと合成する。例えば、AC HV増幅器214は、エミッター206に出力される合成DCオフセット及びAC HVHF信号を増幅する。
【0048】
ブロック706において、電源202は、合成信号を出力して、陽イオンデューティサイクルの持続時間にわたって陽イオンを生成する。例えば、DCオフセット生成器212が正極性信号216に基づいて正のDCオフセットを生成する間、エミッター206は陽イオンを生成する。
【0049】
陽イオンデューティサイクル(例えば、ブロック702~706)に続いて、ブロック708において、制御回路部220は、陰イオンデューティサイクルに基づいて負極性制御信号216を生成して、(例えば、DCオフセット生成器212の)DCオフセットを制御する。例えば、制御回路部220は、陰イオンデューティサイクルの持続時間にわたって、負極性制御信号218をアクティブ(例えば、オン)に、正極性制御信号216を非アクティブ(例えば、オフ)に保持することができる。
【0050】
ブロック710において、DCオフセット生成器212は、(例えば、AC HVインバーター210からの)高電圧高周波AC信号をDCオフセットと合成して、イオン出力バランスを制御する。例えば、DCオフセット生成器212は、高電圧高周波AC信号を、負極性制御信号218に基づいて生成されたDCオフセットと合成する。例えば、AC HV増幅器214は、エミッター206に出力される合成DCオフセット及びAC HVHF信号を増幅する。
【0051】
ブロック712において、電源202は、合成信号を出力して、陰イオンデューティサイクルの持続時間にわたって陰イオンを生成する。例えば、DCオフセット生成器212が負極性信号218に基づいて負のDCオフセットを生成する間、エミッター206は陰イオンを生成する。
【0052】
陽イオンデューティサイクル及び陰イオンデューティサイクルは、オフ期間(例えば、オフ期間408)によって分離することができ、及び/又は
図3のパルス信号306に基づく周期パルスによって中断することができる。
【0053】
本方法及びシステムは、ハードウェア、ソフトウェア、及び/又はハードウェア及びソフトウェアの組合せで実現することができる。本方法及び/又はシステムは、少なくとも1つのコンピューティングシステムにおいて集中的に、又はいくつかの相互接続されたコンピューティングシステムにわたって異なる要素が分散される分散的に、実現することができる。本明細書に記載した方法を実行するように適合された任意の種類のコンピューティングシステム又は他の装置が適している。ハードウェア及びソフトウェアの典型的な組合せは、汎用コンピューティングシステムを、ロードされ実行されるとコンピューティングシステムを本明細書に記載した方法を実行するように制御するプログラム又は他のコードとともに、含むことができる。別の典型的な実施態様は、特定用途向け集積回路又はチップを含むことができる。いくつかの実施態様は、非一時的機械可読(例えば、コンピューター可読)媒体(例えば、フラッシュドライブ、光ディスク、磁気記憶ディスク等)を含むことができ、そうした非一時的機械可読媒体は、機械によって実行可能なコードの1つ以上のラインを記憶し、それにより、機械に、本明細書に記載したようなプロセスを実施させる。本明細書において使用される場合、「非一時的機械可読媒体」という用語は、全てのタイプの機械可読記憶媒体を含み、伝播信号を排除するように定義される。
【0054】
本明細書において使用される場合、「回路」及び「回路部」という用語は、物理的な電子構成要素(すなわち、ハードウェア)と、ハードウェアを構成することができ、ハードウェアが実行することができ、及び/又は他の方法でハードウェアに関連付けることができる、任意のソフトウェア及び/又はファームウェア(「コード」)とを指す。本明細書において使用される場合、例えば特定のプロセッサ及びメモリは、コードの第1の1つ以上のラインを実行しているとき、第1の「回路」を含むことができ、コードの第2の1つ以上のラインを実行しているとき、第2の「回路」を含むことができる。本明細書において使用される場合、「及び/又は」は、「及び/又は」によって連結されるリストにおける項目のうちの任意の1つ以上の項目を意味する。一例として、「x及び/又はy」は、3つの要素の組{(x),(y),(x,y)}のうちの任意の要素を意味する。言い換えれば、「x及び/又はy」は、「x及びyのうちの一方又は両方」を意味する。別の例として、「x、y及び/又はz」は、7つの要素の組{(x),(y),(z),(x,y),(x,z),(y,z),(x,y,z)}のうちの任意の要素を意味する。言い換えれば、「x、y及び/又はz」は、「x、y及びzのうちの1つ以上」を意味する。本明細書において使用される場合、「例示的な」という用語は、非限定的な例、事例又は例証としての役割を果たすことを意味する。本明細書において使用される場合、「例えば」という用語は、1つ以上の非限定的な例、事例又は例証のリストを開始する。本明細書において使用される場合、回路部は、或る機能を実施するために必要なハードウェア及びコード(いずれかが必要である場合)を含む場合はいつでも、その機能の実施が(例えば、ユーザーが構成可能な設定、工場トリム等により)無効にされる又は有効にされていないか否かにかかわらず、回路部はその機能を実行するように「動作可能」である。
【0055】
本方法及び/又はシステムを、或る特定の実施態様を参照して記載してきたが、当業者であれば、本方法及び/又はシステムの範囲から逸脱することなく、種々の変更を行うことができること及び均等物に置き換えることができることを理解するであろう。例えば、開示した例のブロック及び/又は構成要素を、組み合わせ、分割し、再配置し、及び/又は他の方法で変更することができる。加えて、本開示の範囲から逸脱することなく、本開示の教示に対して特定の状況又は材料を適合させるように多くの改変を行うことができる。したがって、本方法及び/又はシステムは、開示されている特定の実施態様に限定されない。代わりに、本方法及び/又はシステムは、字義どおりにでも均等論のもとにおいても、添付の特許請求の範囲内に入る全ての実施態様を含む。
【国際調査報告】