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特表2024-522303改善された溶解性を有する耐酸性組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-13
(54)【発明の名称】改善された溶解性を有する耐酸性組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240606BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240606BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240606BHJP
   A61K 33/08 20060101ALI20240606BHJP
   A61K 31/225 20060101ALI20240606BHJP
   A61K 33/243 20190101ALI20240606BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20240606BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P1/02
A61P43/00 121
A61K33/08
A61K31/225
A61K33/243
A61K33/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518953
(86)(22)【出願日】2022-06-02
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 US2022032032
(87)【国際公開番号】W WO2022256581
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】63/196,100
(32)【優先日】2021-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523457394
【氏名又は名称】コックス,ジェフリー,エス.
【氏名又は名称原語表記】COX, Jeffrey, S.
【住所又は居所原語表記】3452 W. Thompson Road, Fenton, MI 48430, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コックス,ジェフリー,エス.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA57
4C084NA14
4C084ZA671
4C084ZA672
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA02
4C086HA06
4C086HA12
4C086HA23
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA56
4C086NA14
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA36
4C206KA12
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA77
4C206NA14
4C206ZA67
4C206ZC75
(57)【要約】
歯科用減感作溶液およびその溶液の使用方法が開示される。溶液は、有効成分を包含してもよく、有効成分は、歯牙に適用された際、歯牙中のカルシウムと反応して、歯牙中の象牙質細管を少なくとも部分的に閉塞する複数の耐酸性結晶を生成するように構成されている。溶液は溶解促進剤を包含してもよく、溶解促進剤は溶液中の有効成分の溶解性を増加させる。有効成分は、シュウ酸のカリウム塩二水和物であってもよく、および溶解促進剤は、水酸化ナトリウムであってもよいが、他の有効成分および溶解促進剤が開示されている。この溶液は、一定の刺激による過敏症や痛みを低下させるために、歯牙の象牙質および/またはセメント質に適用することができる。この溶液は、所定の温度で有効成分の溶解性を少なくとも1.0g/L増加させ得る。溶液は、少なくとも0.3g/Lの溶解促進剤を包含し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用減感作溶液であって、
有効成分であって、歯牙に適用された際、歯牙中のカルシウムと反応して、歯牙中の象牙質細管を少なくとも部分的に閉塞する複数の耐酸性結晶を生成するように構成されている前記有効成分;および
水酸化ナトリウム(NaOH)を包含する溶解促進剤であって、溶液中の有効成分の溶解性を増加させる前記溶解促進剤
を含む、前記歯科用減感作溶液。
【請求項2】
有効成分が、シュウ酸のカリウム塩を包含する、請求項1に記載の溶液。
【請求項3】
シュウ酸のカリウム塩が、シュウ酸のカリウム塩二水和物を包含する、請求項2に記載の溶液。
【請求項4】
溶解促進剤が、所定の温度において有効成分の溶解性を少なくとも1.0g/L増加させる、請求項1に記載の溶液。
【請求項5】
溶液が少なくとも0.3g/LのNaOHを包含する、請求項1に記載の溶液。
【請求項6】
溶液のpHが1.0~5.0である、請求項1に記載の溶液。
【請求項7】
溶液が0.1~6.0g/Lの溶解促進剤を含む、請求項1に記載の溶液。
【請求項8】
溶液が水溶液である、請求項1に記載の溶液。
【請求項9】
有効成分が、以下:
2-ヒドロキシプロパン二酸;
2-オキソプロパン二酸;
[(2-アザニジルシクロヘキシル)アザニド;シュウ酸;白金(2+)];
三カリウム;クロム(3+);シュウ酸;水和物(3:1:3:3);
三カリウム;クロム(3+);シュウ酸(3:1:3);
三カリウム;2-ビス[(カルボキシラトホルミル)オキシ]スティバニルオキシ-2-オキソ酢酸;および
オキソチタン(2+)カリウムエタン二酸水和物(1:2:2:2)
の1以上を包含する、請求項1に記載の溶液。
【請求項10】
歯牙の感受性を減少させる方法であって、有効成分と水酸化ナトリウム(NaOH)を包含する溶解促進剤とを包含する溶液を、歯牙に適用することを含み、有効成分は、歯牙中のカルシウムと反応して、歯牙中の象牙質細管を少なくとも部分的に閉塞する複数の耐酸性結晶を生成するように構成され、および、溶解促進剤は、溶液中の有効成分の溶解性を増加させるように構成される、前記方法。
【請求項11】
溶液が、歯牙の象牙質およびセメント質の少なくとも1つに適用される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
有効成分が、シュウ酸のカリウム塩を包含する、請求項10に記載の方法
【請求項13】
シュウ酸のカリウム塩が、シュウ酸のカリウム塩二水和物を包含する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
溶解促進剤が、有効成分の溶解性を20℃で少なくとも26g/Lに増加させる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
歯科用減感作溶液であって、シュウ酸のカリウム塩二水和物;および溶解促進剤を含み、溶解促進剤は、溶液中のシュウ酸のカリウム塩二水和物の溶解性を20℃にて少なくとも26g/Lに増加させる、前記歯科用減感作溶液。
【請求項16】
溶解促進剤が、NaOH、KOH、LiOH、CsOH、RbOH、Sr(OH)2、Mg(OH)2、Ba(OH)2、またはこれらの混合物から選択される少なくとも1つのメンバーを包含する、請求項15に記載の溶液。
【請求項17】
溶液が少なくとも0.3g/Lの溶解促進剤を包含する、請求項15に記載の溶液。
【請求項18】
溶液のpHが1.0~5.0である、請求項15に記載の溶液。
【請求項19】
溶液が、0.3~1.5g/Lの溶解促進剤を包含する、請求項15に記載の溶液。
【請求項20】
溶解促進剤が、シュウ酸のカリウム塩二水和物の溶解性を20℃にて少なくとも28g/Lに増加させる、請求項15に記載の溶液。
【請求項21】
歯科用減感作溶液であって、
有効成分であって、歯牙に適用された際、歯牙中のカルシウムと反応して、歯牙中の象牙質細管を少なくとも部分的に閉塞する複数の耐酸性結晶を生成するように構成される前記有効成分;および、
アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、およびこれらの混合物の群からの少なくとも1のメンバーを含有する溶解促進剤
を含む、前記歯科用減感作溶液。
【請求項22】
歯牙の感受性を減少させる方法であって、有効成分および溶解促進剤を包含する溶液を歯牙に適用することを含み、
溶解促進剤は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、およびこれらの混合物のうちの少なくとも1つから選択され、有効成分は、歯牙中のカルシウムと反応して、歯牙中の象牙質細管を少なくとも部分的に閉塞する複数の耐酸性結晶を生成するように構成され、ならびに、溶解促進剤は、溶液中の有効成分の溶解性を増加させるように構成される、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、出願日が2021年6月2日である米国仮出願番号第63/196,100の利益を主張するものであり、その内容は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0002】
本開示は、例えば、歯科用途での使用のために改善された溶解性を有する耐酸性組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
個人は、特定の歯牙または一群の歯のいずれかで、一定の刺激(例として、突然の極端な熱刺激)にさらされる際、過敏症または痛みの即時増加をしばしば報告する。これは、置き換えまたは修復、既存のアマルガム合金または歯牙色のコンポジットレジン(resin composite)修復物の最初の配置、または電力(光、熱、またはその他の)支援形態の歯牙のホワイトニングシステムによる歯牙の漂白後に発生する可能性がある。歯科医は、急速な空気の噴射に対する、冷たい飲み物、咬合の咀嚼力、または酸性食品などの他の要因に対する痛みの即時増加する感覚に注意するように患者に単純に警告する可能性がある。冷水、冷気、浸透圧勾配のシフト、または修復の窩縁(cavosurface margin)での甘味または酸性の溶液などの刺激はすべて、象牙質痛反応の即時増加を引き起こすことが示されている。歯科医は、この現象を単に患者の象牙質痛(術後過敏症(postoperative hypersensitivity)/DPH)または単に歯の不快感と呼ぶ場合がある。しばしば、歯科医は、患者に単に数日または数週間待つように言い、不快感の痛みは次第に少なくなること、および最終的にはそれが消えるはずであることを告げる。
【0004】
象牙質痛の急性で鋭い刺すような痛みは、最近、Dycal(登録商標)やLife(登録商標)などの水酸化カルシウムCa(OH)2材料などの従来の象牙質ライナーで治療されたバイタル象牙質(vital dentin)においてアマルガム合金またはコンポジットレジン修復を受けた多くの患者の間でしばしば、かなり一般的な愁訴である。象牙質術後過敏症は、一般に、酸性pH2.7からより中性のpH6.0に達する口腔液体に起因する、塗抹層の正常な生理学的分解、または窩縁での除去で発生する。
【0005】
歯科医が何らかのタイプの器具、たとえば、ドリルもしくはバーを使用した回転式器具、またはあらゆる種類の手器具によるスクレイピング(scraping)もしくは研磨を使用する場合、塗抹層と呼ばれる歯牙の表面に破片の層が残る。生理学的作用または歯科医による塗抹層の分解は、象牙質細管(dentinal tubule)複合体を開き、歯髄からの双方向の液体の流れに曝露する。この双方向の液体の流れの増加は、冷たいまたは急速な空気の流れに対する患者の象牙質術後過敏症の原因である。
【0006】
アマルガム合金またはコンポジットレジン修復物のいずれかを配置した後の象牙質痛の生理学的メカニズムは、その結果、そのマイクロチャネル複合体を通る歯髄液の流れを即座に増加させることに繋がる、塗抹層の分解または喪失に起因するものであると説明されている。この流れにおける増加は、正常な象牙質基質を通る液体の通常の生理学的流れよりも94%大きい可能性がある。
【発明の概要】
【0007】
少なくとも一の態様において、歯科用減感作溶液が提供される。溶液は、有効成分を包含してもよく、有効成分は、歯牙に適用された際、歯牙中のカルシウムと反応して、歯牙中の象牙質細管を少なくとも部分的に閉塞する複数の耐酸性結晶を生成するように構成されている。溶液は、水酸化ナトリウム(NaOH)を包含する溶解促進剤を包含してもよく、溶解促進剤は溶液中の有効成分の溶解性を増加させる。
有効成分は、シュウ酸のカリウム塩(oxalic acid potassium salt)を包含してもよい。一の態様において、シュウ酸カリウム塩は、シュウ酸のカリウム塩二水和物(oxalic acid, potassium salt dihydrate)を包含する。溶解促進剤は、所定の温度で有効成分の溶解性を少なくとも1.0g/L増加させ得る。一の態様において、溶液は、少なくとも0.3g/LのNaOHを包含する。溶液のpHは、1.0~5.0であり得る。溶液は、0.1~6.0g/Lの溶解促進剤を包含し得る。溶液は水溶液であってもよい。
【0008】
一の態様において、有効成分は、2-ヒドロキシプロパン二酸;2-オキソプロパン二酸;[(2-アザニジルシクロヘキシル)アザニド;シュウ酸;白金(2)]([(2-azanidylcyclohexyl) azanide; oxalic acid; platinum(2+)])-(CID24197462);三カリウム;クロム(3);シュウ酸;三水和物(3:1:3:3))]([tripotassium; chromium(3+); oxalate; trihydrate (3:1:3:3)])-(CID131874172);三カリウム;クロム(3);シュウ酸(3:1:3)([tripotassium; chromium(3+);oxalate (3:1:3)]);
三カリウム;2-ビス[(カルボキシラトホルミル)オキシ]スティバニルオキシ-2-オキソ酢酸(tripotassium; 2-bis[(carboxylatoformyl)oxy]stibanyloxy-2-oxoacetate);およびオキソチタン(2)カリウムエタン二酸水和物(1:2:2:2) Oxotitanium (2+) potassium ethanedioate hydrate (1:2:2:2))、のうちの1以上を包含し得る。
少なくとも一の態様において、歯牙の感受性を減少させる方法が提供される。方法は、有効成分および水酸化ナトリウム(NaOH)を包含する溶解促進剤を包含する溶液を歯牙に適用することを包含し得、有効成分は、歯牙中のカルシウムと反応して、歯牙中の象牙質細管を少なくとも部分的に閉塞する複数の耐酸性結晶を生成するように構成される。溶解促進剤は、溶液中の有効成分の溶解性を増加させるように構成されてもよい。
【0009】
この溶液は、歯牙の象牙質およびセメント質の少なくとも一つに適用されてもよい。有効成分は、シュウ酸のカリウム塩を包含してもよい。一の態様において、シュウ酸のカリウム塩は、シュウ酸のカリウム塩二水和物を包含する。溶解促進剤は、有効成分の溶解性を20℃にて少なくとも26g/Lに増加させ得る。
少なくとも一の態様において、シュウ酸のカリウム塩二水和物;および溶解促進剤を包含する歯科用減感作溶液が提供される。溶解促進剤は、溶液中のシュウ酸のカリウム塩二水和物の溶解性を20℃にて少なくとも26g/Lに増加させ得る。
【0010】
溶解促進剤は、NaOH、KOH、LiOH、CsOH、RbOH、Sr(OH)2、Mg(OH)2、Ba(OH)2、またはこれらの混合物を包含し得る。別の言い方をすれば、溶解促進剤は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、および/またはそれらの混合物を包含し得る。溶液には、少なくとも0.3g/Lの溶解促進剤が包含されてよい。溶液のpHは、1.0~5.0であり得る。一の態様において、溶液は、0.3~1.5g/Lの溶解促進剤を包含する。溶解促進剤は、シュウ酸のカリウム塩二水和物の溶解性を20℃にて少なくとも28g/Lにまで、25g/L超に増加させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、態様による、溶解性を増加させた耐酸性組成物を形成する方法のフローチャートであり;
図2図2は、シュウ酸のカリウム塩二水和物が混合された溶液であり;
図3図3は、混合を停止した図2の溶液であり;
図4図4は、1.0グラムのNaOHを添加して4分間撹拌した図2の溶液であり;
図5図5は、14分間撹拌した後の図4の溶液であり;
図6図6は、14分間撹拌した後、撹拌を停止した図4の溶液であり;
【0012】
図7図7は、シュウ酸のカリウム塩二水和物24.0g/LとNaOH1.0g/Lとを有する可変試料、およびシュウ酸のカリウム塩二水和物24.0g/Lを有する対照試料を包含する、アルファとラベル付けされた、9℃での7日後の一組の試料であり;
図8図8は、シュウ酸のカリウム塩二水和物24.0g/LとNaOH1.0g/Lとを有する可変試料、およびシュウ酸のカリウム塩二水和物24.0g/Lを有する対照試料を包含する、ベータとラベル付けされた、9℃での7日後の一組の試料であり;
図9図9は、シュウ酸のカリウム塩二水和物24.0g/LとNaOH1.0g/Lとを有する可変試料、およびシュウ酸のカリウム塩二水和物24.0g/Lを有する対照試料を包含する、ガンマとラベル付けされた、9℃での7日後の一組の試料であり;
図10図10は、シュウ酸のカリウム塩二水和物24.0g/LとNaOH1.0g/Lとを有する可変試料、およびシュウ酸のカリウム塩二水和物24.0g/Lを有する対照試料を包含する、イプシロンとラベル付けされた、9℃での7日後の一組の試料であり;
図11図11は、シュウ酸のカリウム塩二水和物24.0g/LとNaOH1.0g/Lとを有する可変試料、およびシュウ酸のカリウム塩二水和物24.0g/Lを有する対照試料を包含する、ミューとラベル付けされた、9℃での7日後の一組の試料であり;
【0013】
図12図12は、室温にて23時間後のアルファ試料であり;
図13図13は、室温にて23時間後のベータ試料であり;
図14図14は、室温にて23時間後のミュー試料であり;
図15図15は、室温にて5日後のガンマ試料であり;
図16図16は、室温にて5日後のイプシロン試料であり;
図17図17は、室温にて5日後のアルファ試料であり;
図18図18は、室温にて5日後のベータ試料であり;
図19図19は、室温にて5日後のミュー試料であり;
【0014】
図20図20は、室温にて8日後のガンマ試料であり;
図21図21は、室温にて8日後のイプシロン試料であり;
図22図22は、室温にて11日後のアルファ試料であり;
図23図23は、室温にて11日後のベータ試料であり;
図24図24は、室温にて11日間後のミュー試料であり;
図25図25は、図2~24の結果の表であり;
図26図26は、NaOHを添加した、カルシウムとシュウ酸のカリウム塩二水和物との反応からの、結晶の形成を試験する一式の試料であり;
図27図27は、NaOHを添加した、カルシウムとシュウ酸のカリウム塩二水和物との反応からの、結晶の形成を試験する別の一式の試料であり;
【0015】
図28図28は、ブロックされていない象牙質細管を示すエッチングされた(etched)象牙質であり;
図29図29は、40.0g/Lのシュウ酸の、カリウム塩二水和物、および4.0g/LのNaOHを包含する溶液に曝露した後のエッチングされた象牙質であり;
図30図30は、図29の高倍率図であり;
図31図31は、40.0g/Lのシュウ酸のカリウム塩二水和物、および4.0g/LのNaOHを包含する溶液に曝露した後のエッチングされた象牙質の別の領域であり;
図32図32は、図31の高倍率図である。
【0016】
図33図33は、溶解促進剤を除く全てを含有する本発明のものと同様の組成物の経時(aged)試料であり、ここで、組成物は、四シュウ酸カリウム二水和物結晶を沈殿させている。
図34図34は、図33の同じ組成物の、より新しい試料であり、このより新しい組成物も、四シュウ酸カリウム二水和物結晶を沈殿させている。
図35図35は、本発明に従って形成された組成物の経時試料であり、図34の組成物の構成要素を含有するが、さらに溶解促進剤も含有する-沈殿物は形成されていない。
図36図36は、組成物内に溶解促進剤が含有されていないことを除いて、図35と同一である組成物の、同一に経時した試料である-組成物は四シュウ酸カリウム二水和物結晶を沈殿させている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な記述
必要に応じて、本発明の詳細な態様を本明細書に開示する;しかしながら、開示された態様は、種々のおよび代替の形態で具体化され得る本発明の例示に過ぎないことを理解されたい。数値は必ずしも縮尺に合わせる必要はなく;一部の特徴は、特定のコンポーネントの詳細を示すために誇張または最小化されてよい。したがって、本明細書に開示される特定の構造的および機能的詳細は、限定的なものとして解釈されるべきではなく、当業者に本発明を種々採用するように教示するための単なる代表的な基礎として解釈されるべきである。
【0018】
本開示は、患者の口腔内の材料と反応して象牙質細管を(例として、物理的に)閉塞させ、象牙質感受性、酸の浸み込み、および不快感を減少させる耐酸性組成物の使用に関する。上述したように、双方向の液体の流れは、患者の象牙質の術後、冷気または急激な空気の流れに対する過敏症の原因であると考えられている。これは、象牙質の過敏症は、機械的、浸透圧的、および蒸発的な刺激に反応して象牙質細管内の液体が移動することに起因することを示唆する、広く受け入れられているブレンストローム(Braennstroem)の水力学(hydrodynamic)理論によって説明される。従来のアプローチとは対照的に、開示された組成物は、歯牙の表面に適用された際、象牙質層の細管および線維に浸み込み、その中の材料と反応して物理的障壁を形成する有効成分を利用し得る。一の態様において、有効成分は、特定のシュウ酸の塩(oxalic acid salt)である、シュウ酸のカリウム塩二水和物である。シュウ酸のカリウム塩二水和物は、またはこれはシュウ酸カリウム二水和物もしくは四シュウ酸カリウム二水和物と呼ばれ得るが、細管内の液体の運動を除去し、したがって象牙質を液体の運動の形で歯髄に痛みを伴う刺激を伝達することができなくする。そのため、長時間にわたって痛みまたは不快感を感じることがない。シュウ酸のカリウム塩二水和物は、米国特許第6,423,301号に記述されており、その開示は、参照により本明細書にその全体が組み込まれる。
【0019】
少なくとも一の態様において、開示された組成物の有効成分は、分子量254.19を有するシュウ酸のカリウム塩二水和物99%であり、式はC4H3KO8・2H2OまたはKH3(C2O4)2・2H2Oである。有効成分は、本明細書においてシュウ酸のカリウム塩二水和物として記述されるが、非水和組成物(例として、C4H3KO8・2H2OまたはKH3(C2O4)2)も使用することができる。従って、特に断らない限り、二水和物組成物を非水和組成物で代用してもよい。シュウ酸カリウム塩の二水和物(oxalate potassium salt, dihydrate)99%は、本明細書ではシュウ酸カリウム二水和物とも呼ばれ、20℃にて25.419g/Lの水への溶解性を有する白色結晶性粉末である。シュウ酸カリウム二水和物は、水溶液中で利用してもよく、水溶液はゼラチン状またはゲル状の溶液を包含してもよい。シュウ酸カリウム二水和物を水に溶解することは、従来の方法では困難であり得る。シュウ酸カリウム二水和物の溶液を超音波周波数にさらすと、シュウ酸カリウムの大きな結晶が水中に分散し、したがって水への溶解性を増加することを助ける可能性があることが見出されている。
【0020】
開示された組成物は、有効成分の一例としてシュウ酸のカリウム塩二水和物(およびその同義語)で記述されているが、他の有効成分も使用され得る。さらに、有効成分は、以下の開示された化合物または組成物のうちの一以上を包含してもよい。以下の表:
【表1】
は、有効成分に包含され得る化合物または組成物を包含する。
既知の化学化合物のCAS登録番号および/またはChemSpider IDが提供されている。ある組成物は、複数の名前(同義語)で知られている場合がある。いくつかの化学的同義語が表に示されているが、明示的に列挙されていない、列挙された組成物の任意の同義語も、有効成分に使用され得る。さらに、いくつかの組成物は、水和または非水和として列挙されている。但し、水和組成物又は非水和組成物のいずれを有効成分に包含していてもよい。
【0021】
有効成分(例として、四シュウ酸カリウム二水和物)を包含する溶液は、米国規格協会の標準化された試験に従って、水純度が1,000,000~5,000,000オーム抵抗の二回蒸留脱イオン水(double distilled deionized water)を使用して調製し得る。高抵抗は高純度に相当する。他の形態の精製水を利用することができる;但し、二回蒸留脱イオン水は、少なくとも一の態様において好ましい。有効成分(例として、シュウ酸のカリウム塩の二水和物(oxalic acid potassium salt, dihydrate)は、最終溶液中の量が0.25%~25.0%の重量対体積(例として、g/L)の範囲になるように、またはその中の任意のサブ範囲となるように、水に添加することができる。例えば、有効成分は、0.25%~20.0%、0.25%~15.0%、0.25%~10.0%、0.25%~7.5%、0.5%~7.5%、0.5%~5.0%、0.75~7.5%、0.75%~5.0%、1.0%~7.5%、1.0%~5.0%、1.0%~4.0%、1.5%~3.5%、または2.0%~3.0%の量で存在し得る。次に、水と結晶とを超音波振動、例えば可変超高周波作用にさらすと、結晶を非常に小さな粒子に崩壊させて溶液を形成することができる。これは、超音波細胞破壊装置を用いて達成され得る;しかしながら、有効成分を可溶化するためには任意の手段が用いられてよい。1つの適切な超音波細胞破壊装置は、ブランソンソニファイアー(Branson Sonifier(登録商標))として同定され得る。ソニファイアーは、電源からの電気エネルギーを機械的振動に変換する。
【0022】
一の態様では、水および有効成分(例として、シュウ酸カリウム二水和物結晶)を混合容器に配置し、ポンプシステムに付着させる。ポンプは、一定の流速(例として、毎分約1/2リットル)にて連続的な流れで水を循環させてもよい。水と結晶とは、チャンバー内で約30分などの一定時間循環させてもよい。超音波ホーンのソニファイアーからの機械的振動は、結晶を破壊して非常に小さな粒子に崩壊させ、溶液となるようにするため、超音波ホーンの先端で約16,000Hz~約40,000Hzの周波数の範囲であり得る。例えば、振動の周波数は、20,000Hz~30,000Hzであってもよい。循環中、水と結晶との混合物は、超音波ホーンを複数回通過することがあり、超音波ホーンは、通過するたびに結晶を小さな粒子に崩壊させ続ける。最終生成物中の平均粒子サイズは、100倍の顕微鏡で見た際、約5ミクロンから約15ミクロンであり得る。可溶化後、24時間後にヒトの肉眼で沈殿物が見えないこともあり得る。約5ミクロン~15ミクロンの範囲外の粒子サイズは、溶質の量および/または可溶化条件に応じて、適してもよい。しかしながら、一の態様では、粒子サイズは約10ミクロンである。さらに別の態様では、特に、水酸化ナトリウムなどの例示的な可溶化剤が使用される場合、サイズが1ミクロン未満の粒子が生成され、それによって粒子が象牙質細管を閉塞する深さが増大され得る。新規の溶解促進剤とソニファイアーの使用の組み合わせは、超音波化して粒子サイズを平均1ミクロン未満に低下させることにより、象牙質細管閉塞を劇的に改善させる。究極的には、これは、有効成分が象牙質細管内に沈着され得る深さを有意に増大させる。
【0023】
有効成分を包含する溶液(例として、「有効成分溶液」)、例えばシュウ酸の、カリウム塩二水和物溶液は、酸性であってもよい。一の態様において、酸性溶液は、約1.0~6.0の範囲のpH、またはその中の任意のサブ範囲を有する。例えば、溶液のpHは、1.0~5.0、1.0~4.5、1.25~4.5、1.5~4.5、1.25~4.0、1.25~3.5、1.25~3.0、1.5~2.5、または1.5~2.0、またはその他であってもよい。酸性溶液のpHは、製剤中に使用される有効成分(例として、シュウ酸カリウム二水和物)の量によって少なくとも部分的に制御され得る。シュウ酸カリウム二水和物の添加は、溶液のpHをより低くする傾向があるであろう。
【0024】
作業中、有効成分溶液の使用は、冷たさおよび空気に対する感受性を直ちに停止するためのワンステッププロセスであり得る。これはまた、歯科医が、象牙質および非歯髄の炎症における可逆的な液体の流れと、歯髄の炎症を引き起こす不可逆的な液体の流れとを、区別するのを支援する診断補助としても役立つ場合がある。一の態様では、数滴(例として、3~6滴)の有効成分溶液を容器(例として、ダッペン皿)に配置してもよい。小さな滅菌綿パレットを溶液で飽和させ、これを次いで患部の歯牙の領域上に優しくこすりつけたり軽くたたいたりすることができる。一の態様において、溶液は、少なくとも30秒間適用され得る。溶液は、縁の周りに、あるいは、クラウンセメント質または露出した歯根の表面にわたって、および/または冷たさもしくは空気刺激に敏感な露出した歯根上に、優しくこすりつけてよい。歯牙の表面上の生成物を磨く必要はなく、すすぎも必要ない。適用後、残存する溶液は、例えば、穏やかな空気分散を用いて、適用領域から蒸発させてもよい。霜のような白い表面が適用によって形成される場合があり、それは、液体の動きまたは、冷たさもしくは空気刺激に対する象牙質過敏症を、停止または制限する耐酸性ミネラル層である。
【0025】
開示された組成物は、洗浄およびスケーリングのための予防のための口腔衛生処置の前および後の両方で、バイタル象牙質などの調製された歯牙の構造に適用することができる。組成物は、ベニヤ調製によるすべてのクラウンおよびインレイの下でワンステップの置き換え品として使用できる。これはまた、アマルガム合金のための象牙質のすべてのキャビティ調製、およびコンポジットレジン修復にも使用できる。耐酸性皮膜形成ライナー材料は、修復材料を結合するために、その表面に直接接着材料を適用することができる。これはまた、歯科医院で行われるか、あるいは患者が家庭用漂白キットを使用しているかにかかわらず、漂白手順の後に歯の表面に適用することもできる。さらに、溶液(例として、シュウ酸カリウム二水和物溶液)は、急性象牙質痛および慢性歯髄痛を区別するための診断ツールとして用いることができる。急性象牙質痛は、一般的に可逆的な歯の痛みと呼ばれる。歯科医および患者にとって、これは歯髄内の神経内ではなく、象牙質の物質内に位置する欠陥があることを意味する。この問題は、侵襲的な歯内療法なしに可逆的である。あるいは、慢性的な歯科疼痛は不可逆的な刺激であり、歯髄の神経が炎症を起こしており、いくつかの種の生体力学的歯内療法器具によって除去する必要があることを示している。本開示のシュウ酸カリウム二水和物溶液は、歯科医が可逆的なおよび不可逆的な歯科疼痛を識別することを可能にする簡単なワンステップ診断処置を提供する。患者が冷たさと空気に対する痛みを訴え、根尖周囲のX線透過像、歯根の骨折、または他の明らかな臨床的問題のX線撮影での顕出での診断的特徴がない場合には、歯科医は、単に本開示のシュウ酸二水和カリウムを歯牙修復界面の縁または窩縁上におよびその周囲にこすりつけることができる。患者が象牙質の痛みの即時の休止を報告した場合、歯科医は問題が象牙質中の液体の流れまたは微小漏れであるという診断を完結させてもよい。これは可逆的な歯髄の炎症の確認であり、歯髄の除去ではなく、回復または修復によって治療され得る。
【0026】
開示された組成物の作用機序を説明するために、以下は、例えば、修復手順において使用される開示された溶液の作用機構の記述である。ただし、作用機構はすべての適用において類似している可能性がある。有効成分溶液(例として、シュウ酸カリウム二水和物溶液)は、最初に塗抹層を破壊し、エナメル質およびセメント質と同様に象牙質の基質を開く働きをし得る。緩衝は溶液のpHに対して発生し、反応が進行するにつれて、溶液のpHは中性に向かって移動する。同時に、カルシウム粒状粒子は、通常、小さな生理学的亀裂に加えて、キャビティ表面全体に沈殿するが、それらは成人のエナメル質および/または歯根の表面のセメント質に存在する。粒子は、歯牙中の象牙質細管を少なくとも部分的に閉塞し得る。例えば、粒子は、細管の断面積の少なくとも50%以上、例えば、少なくとも75%、85%、90%、または95%を閉塞または遮断し得る。いくつかの態様において、粒子は、象牙質細管を完全にまたは実質的に完全に(例として、少なくとも99%)閉塞/遮断し得る。有効成分がシュウ酸カリウム二水和物である態様では、例えば、有効成分は、歯牙中のハイドロキシアパタイト(例として、Ca10(PO4)6(OH)2またはCa5(PO4)3(OH))と反応して、シュウ酸カルシウム(Ca(C2O4))の沈殿物を形成し得る。この粒状の沈殿物は、乾燥した際、表面およびキャビティの象牙質細管に化学的に結合する耐酸性ライニング層を形成する。一旦粒状結晶が形成されると、バリア効果が即時に患者に感じられる。肉眼では、キャビティおよび歯牙の表面に見られ得る、わずかに白っぽい膜がある。
【0027】
上述したように、有効成分溶液は、象牙質細管を閉塞し、その中の液体の流れを防ぐのに非常に効果的である。ただし、シュウ酸カリウム二水和物などの一部の有効成分は、水への比較的低い溶解性(20℃にて25.419g/L)を有する場合がある。有効成分溶液は、沈殿するよりも、有効成分(例として、シュウ酸カリウム二水和物)のすべてまたは実質的にすべてが、溶液中にある際に、最も効果的である。20℃でまたはほぼ室温では、約25.4グラムのシュウ酸カリウム二水和物が1リットルの水に溶解するであろう。ただし、製品容器などに長期間放置すると、シュウ酸カリウム二水和物が最終的に沈殿し始める可能性がある。これは、溶液が製品として調製されおよび瓶詰めされ、店舗もしくは顧客に送られるのを待っている間、または購入されてから使用前に数日、数週間、または数か月、未使用状態になっている場合に発生する可能性がある。溶液が、低温(例として、室温未満)で保存され、または低温に遭遇したりすると、溶解性がより問題になる可能性がある。低温では、シュウ酸カリウム二水和物などの有効成分が溶液から、より速い速度で沈殿する可能性がある。
【0028】
したがって、有効成分の溶解性および/または溶解速度を増加させることができれば、溶液の有効性および保存に有益であろう。水酸化ナトリウム(NaOH)の添加は、有効成分(例として、シュウ酸カリウム二水和物)の溶解性を有意に増加させ、溶液の溶解速度もまた改善させ得ることが発見されている。特定の理論にとらわれることなく、溶解性の改善は、ル・シャトリエの原理および一般的なイオン効果を介した溶解度平衡の操作の結果であると考えられる。
【0029】
上記と同様に、以下に記述する機序は、シュウ酸カリウム二水和物を有効成分として参照して記述する。しかしながら、同じまたは類似の機序が他の有効成分にも適用され得る。シュウ酸カリウム二水和物、またはKH3(C2O4)2・2H2Oは、KH(C2O4)+H2(C2O4)+2H2Oとしてその成分に分解され得る。シュウ酸(oxalate)、または(C2O4)はOxと略され、水酸化ナトリウムはNaOHと略される場合がある。シュウ酸カリウム二水和物が水に溶解する場合、イオン式は以下:
KH3(C2O4)2・2H2O+H2O→K+ aq+3H+ aq+2Ox- aq+H2O(l)
である。
NaOHを添加した場合、それはプロトン酸と反応して塩(シュウ酸ナトリウム)および水を形成する。この反応の簡単な反応式は:
2NaOH+H2(C2O4)2→Na2(C2O4)+2H2O
である。
この反応の完全な反応式およびイオン分解は:
2NaOH+H2(Ox)+KH(Ox)+H2O(sol)→Na2(Ox)+KH(Ox)+2H2O(l)+H2O(sol)
2Na+ aq+2OH- aq+3H+ aq+2Ox- aq+K+ aq→2Na+ aq+2Ox- aq+K+ aq+H+ aq
である。
【0030】
結果として、正味のイオン変化量、つまり反応物への生成物は、
2OH- aq+2H+ aq→2H2O(l)
である。したがって、シュウ酸カリウム二水和物溶液に2モルのNaOHを添加すると、2モルの水と1モルのシュウ酸ナトリウムとを生成する結果となる。したがって、1モルのシュウ酸カリウム二水和物は、1モルのシュウ酸ナトリウムと1モルのシュウ酸カリウムとに分解される。これは、2モルのNaOHを添加するごとに、1モルのシュウ酸カリウム二水和物が除去/消費され、それによって濃度が1モル低下することを意味する。NaOHを添加することによる反応は、一般的なイオンを2モルのプロトン性水素で還元することにより、生成物へと平衡をシフトさせる。これにより、シュウ酸カリウム二水和物の溶解度平衡がさらに溶液中にシフトし、よって溶解性が増加する。したがって、記述された水溶液中に確立された化学平衡は、シュウ酸カリウム二水和物のさらなる溶解に有利になるようにシフトされる。
【0031】
一部の適用では、平衡反応によりシュウ酸カリウム二水和物の濃度が1モル低下し、水の濃度が2モル増加する。これにより、溶質の濃度が下がり、溶媒の濃度が増加するため、溶解性が効果的に増加する。しかし、究極的に所望されるよりも高い濃度のシュウ酸カリウム二水和物で反応を開始し、それをNaOHと反応させることにより、最終生成物は所望の濃度を有し得る(例として、NaOHを添加した際、NaOH添加のない溶液と比較して、より多くの塩を溶解することが可能である)。
水酸化ナトリウムは強塩基(例として、アルカリ性)であり、そのシュウ酸ナトリウム生成物はシュウ酸カリウム二水和物よりも高いpHを提供する。したがって、酸塩基平衡はアルカリ度の添加によって変化し、平衡を酸側に動かす。酸塩基平衡の変化は、平衡をイオン化状態にシフトさせることにより、シュウ酸カリウム二水和物の溶解性に影響を与え、それによってシュウ酸カリウム二水和物を溶液中へと入れ込む。
NaOHの添加の結果として、所定の温度での塩の溶解性および溶液中の塩の濃度が増加する。したがって、NaOHを添加すると、同じ濃度の塩を保持しながら、溶液中において単独のシュウ酸カリウム二水和物と比較して、より多くのシュウ酸カリウム二水和物を溶液に溶解することが可能になる。さらに、NaOHを添加すると、シュウ酸カリウム二水和物を所定の温度および濃度で溶液に溶解するのにかかる時間が減少され得る。
【0032】
図1を参照して、一の態様による、有効成分および溶解促進剤を包含する溶液を調製する方法について、フローチャート10が示される。ステップ12において、水は、蒸留、逆浸透、または他などの任意の適切な方法を用いて精製されてもよい。一の態様では、水は、1,000,000~5,000,000オーム抵抗の水純度を有してもよい。ステップ12で水を精製する代わりに、既に適切な純度レベルを有する水を取得して利用してもよい。
【0033】
ステップ14では、有効成分を水に添加して溶液を形成してもよい。一の態様において、有効成分は、シュウ酸カリウム二水和物(または非水和組成物)であってもよい。しかしながら、たとえば表1に列挙されたもののような他の組成物も、有効成分(またはそれらの組み合わせ)として使用されてよい。有効成分は、上に記述したように、所望の濃度の有効成分を提供するのに十分な量で添加されてもよい。例えば、シュウ酸カリウム二水和物を添加して、0.25~25%の重量対体積(例として、g/L)の濃度を提供することができる。
【0034】
ステップ16では、溶解促進剤を溶液に添加してもよい。一の態様において、溶解促進剤は、水酸化ナトリウム、NaOHである。別の態様では、溶解促進剤は、水酸化カリウム、KOH、またはLi、Cs、Rb、Ca、Sr、またはBaなどの他の水酸化物塩であってもよい。溶解促進剤は、上述したように、有効成分の所望のレベルの溶解性を溶液に提供するのに十分な量で添加されてもよい。一の態様において、少なくとも0.1g/Lの、例えば、少なくとも0.3、0.5、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0g/L、またはそれ以上の溶解促進剤を溶液に添加してもよい。範囲として述べるならば、溶液は、0.1~6.0g/Lの、または、そのサブ範囲の、たとえば、0.1~5.0g/L、0.1~4.0g/L、0.1~3.0g/L、0.1~2.0g/L、0.2~1.5g/L、0.3~1.5g/L、0.5~1.5g/L、または約1.0g/Lなどの溶解促進剤を包含し得る。例えば、NaOHは、シュウ酸カリウム二水和物溶液の約1g/Lの濃度で添加されてもよい。ステップ14および16は、任意の順序で実行することができ、必ずしも図1に示す順序で実行する必要はない。
【0035】
ステップ18では、溶液中の有効成分の溶解性および/または溶解速度を増加させるために、溶液を任意で(例として、室温または雰囲気温度より高温に)加熱してもよい。溶液は、30°C~75°Cまたは30°C~60°Cなど、最大100°Cまでの温度に加熱してよい。溶解促進剤の添加は、加熱ステップの温度を低下させるか、または加熱ステップを除去し得る。しかしながら、加熱ステップ18は、依然として溶液の生成時間を低下させ得る。
【0036】
ステップ20では、溶液を混合して、有効成分の溶解を加速させてもよい。上述したように、混合は、例えば、約16,000Hz~約20,000Hzの周波数での超音波処理を包含し得る。混合に加えて、溶液は、例えばポンプシステムを用いて循環させてもよい。超音波処理が超音波ホーンを用いて実行されるならば、ポンプシステムを包含してもよい。ステップ18の間に溶液が加熱されるならば、混合ステップ20の間、溶液の温度が維持され得る。超音波処理に加えて、またはその代わりに、他の適切な混合方法もまた使用され得る。一の態様では、マグネチックスターラーを使用して溶液を、攪拌しおよびかき混ぜてもよい。上記と同様に、ステップ18および/または20の順序は、図1に示されているものとは異なる場合がある。例えば、加熱および処理は、有効成分が添加された後で、溶解促進剤の添加前に実行されてもよい。
【0037】
ステップ22において、有効成分および溶解促進剤を包含する溶液がパッケージされてもよい。一の態様では、溶液は瓶にパッケージ化されてもよい。その後に、溶液の瓶を歯科医または他の口腔ケア専門家に配布することができる。この溶液は、単回使用のためにパッケージ化されてもよい。例えば、溶液は、小さなバイアル(例として、数mL)にパッケージ化されてもよく、または、溶液は、例えば綿棒(例として、「Qチップ」または綿球)などの使い捨てアプリケーターに適用されてもよい。あるいは、溶液は、生成後に実質的なパッケージ化なしに、直接適用されてもよい。
【0038】
少なくとも一の態様において、溶解促進剤は、有効成分(例として、シュウ酸のカリウム塩二水和物)の水への溶解性を増加させ得る。上記のように、シュウ酸のカリウム塩二水和物は、20℃にて25.419g/Lの水への溶解性を有している。一の態様において、溶解促進剤の添加は、有効成分の溶解性を20℃にて少なくとも26.0g/Lに改善させ得る。例えば、溶解性は20℃にて少なくとも26.5、27.0、27.5、28.0、28.5、29.0、29.5、または30.0g/Lに改善され得る。別の言い方をすれば、有効成分の溶解性は、一定の温度において、一定量の溶解促進剤に対して少なくとも一定の値改善させてもよい。例えば、1リットルの水では、20℃にて溶解促進剤1.0gあたり少なくとも2.0g/L溶解性が改善する可能性がある。一の態様において、溶解性は、20°Cにおける溶解促進剤1.0グラム当たり少なくとも2.5、3.0、3.5、4.0、または4.5g/L改善され得る。
【0039】

図2~24を参照して、シュウ酸カリウム二水和物の溶液を調製し、混合して、NaOHの添加により溶解性が改善することを実証した。シュウ酸カリウム二水和物と水の開始溶液は、28.0グラムのシュウ酸カリウム二水和物を1リットル(1L)のメスフラスコに加え、フラスコに1リットルの20°C精製水(例として、逆浸透および/またはミクロンろ過(micron filtration)による)を充填することによって調製した。溶液は、渦を形成するのに十分な速度でマグネチックスターラーを使用して混合した。20℃にて約75分間撹拌した後、溶液はまだ白濁しており、シュウ酸カリウム二水和物の少なくとも一部がまだ溶解していないことが示された。図2はスターラーを動かした状態での75分後の溶液を示し、図3はスターラーを停止した状態での75分後の溶液を示している。
【0040】
75分間の撹拌後にスターラーを停止した後、溶液(水1L、シュウ酸カリウム二水和物28.0g)に水酸化ナトリウム(NaOH)1.0gを加え、マグネチックスターラーを使用した撹拌を再開した。4分間の撹拌後、図4に示すように、溶液の濁りは有意により少なくなった。14分間の撹拌後、図5(撹拌)および図6(撹拌停止)に示すように、溶液は透明で、肉眼で観察した際、固体結晶はなかった。これらの結果から、20℃にては、28.0グラムのシュウ酸カリウム二水和物は、1リットルの水に完全に溶解しないことが確認され、それはその温度での溶解性が25.419g/Lであることに起因すると予想された。しかし、1.0グラムのNaOHを添加すると、溶解性が急速に増加した。わずか数分後に有意な改善が観察され、14分後には完全に溶解したことが観察された。
【0041】
図7~25を参照して、シュウ酸カリウム二水和物の溶液、およびシュウ酸カリウム二水和物の水酸化ナトリウムとの溶液を調製し、NaOHの添加による溶解速度の改善を実証した。5組の対照試料および可変試料(NaOHを含む)を調製し、アルファ(α)、ベータ(β)、ガンマ(γ)、イプシロン(ε)、およびミュー(μ)とラベル付けした。対照試料溶液には、精製水にそれぞれ24.0g/Lのシュウ酸カリウム二水和物が包含されていた。可変試料には、それぞれ24.0g/Lのシュウ酸カリウム二水和物と1.0g/LのNaOHとが精製水に包含されていた。対照試料と可変試料とは、それぞれ200mlだった。試料は、室温にて最初に混合し目に見える沈殿物がないようにした。
【0042】
次に、溶液の組を9℃に冷却し、その温度で冷蔵庫において約7日間(168.5時間)保ち、認定温度計でモニタした。図7~11は、7日間終了時の5組の試料を示しており、左側が可変試料、右側が対照試料である。図に見られるように、可変試料は、低下した温度でその間、有意に少ない結晶形成を有した。結晶形成を記録した後、試料の組を室温(実験中は約20℃~24℃)で保存し、定期的に観察して結晶溶解をモニターした。実験のエンドポイントは、完全な溶解が生じた後の時点だった。
【0043】
1日弱(23時間)で、図12~14に示すように、アルファ、ベータ、およびミューの可変試料が完全な溶解に達した。試料は4日後に再び観察され、その時点で可変試料のガンマとイプシロンも完全な溶解に達していた(図15~16)。これらの試料がいつ完全な溶解に達したかは不明であり、観察のギャップに起因して、レコードされたほぼ5日よりもかなり早かった可能性がある。図15~19に示すように、ガンマおよびイプシロン可変試料が完全に溶解した時点では、すべての対照試料はまだ溶解していないままだった。図20~21に示すように、ガンマとイプシロンの対照試料は8日強で完全な溶解に達し、アルファ、ベータ、ミューの対照試料は、図22~24に示すように、11日弱で完全な溶解に達したことが観察された。
【0044】
図25に、各試料のエンドポイントの日時、およびエンドポイントまでの日数、時間数、合計時間数を包含する表を示す。実験の結果、NaOHの添加により、シュウ酸カリウム二水和物の溶液中での溶解性と溶解速度との両方が改善することが明確に示された。シュウ酸カリウム二水和物結晶の沈殿は、室温より低い温度に保たれた際、可変試料より少ないことが観察され、溶解性が増加したことが示された。次いで、可変試料で形成された結晶は、対照試料と比較して有意に短い時間で溶液中に完全に溶解し直し、より速い溶解速度が示された。可変試料のうち2つは1日以内に完全に溶解し、他の3つは、観察された約5日よりもはるかに早く完全に溶解した可能性がある。観察にギャップがあっても、対照試料は、完全に溶解するのに必要な時間において、可変試料に大きく遅れをとっていた。1番目の対照試料は8日間完全に溶解せず、残りは約11日かかった。観察のギャップを考慮しても、対照試料は、NaOHを添加した可変試料と比較して、完全に溶解するまでに平均173.6時間長くかかった。したがって、実験データは、シュウ酸カリウム二水和物溶液にNaOHを添加すると、シュウ酸カリウム二水和物の溶解性および溶解速度が増加することを確認している。
【0045】
図26~27を参照して、カルシウムとシュウ酸のカリウム塩二水和物との反応に水酸化ナトリウムを添加して結晶の形成を確認するための実験を実行した。8つの試験試料が作成され、組成は以下の表:
【表2】

に列挙されている。
【0046】
したがって、試料には、さまざまな量のシュウ酸のカリウム塩二水和物、およびそれを含まない1つの対照試料(#8)が包含される。試料1は、より大量のシュウ酸のカリウム塩二水和物、およびより大量のNaOH(#2-7の1グラムと比較して4グラム)を有している。試料は、10%塩化カルシウム溶液でトレイに導入された。図26は、その結果得られたシュウ酸カルシウム結晶の沈殿を示しており、上段に試料番号2、1、および8、下段に試料番号5、4、および3が左から右に並んでいる。図27に試料7(左)と6(右)を示す。図26図27に見られるように、#4を除くすべての試料は、少なくとも対照試料と同等の沈殿量を示した。図4は、シュウ酸のカリウム塩二水和物がわずかに多い試料とわずかに少ない試料との両方が沈殿していることを前提にすると、偽陰性のようである。全体として、試料は、NaOHと組み合わせたシュウ酸のカリウム塩二水和物が、まだカルシウムと反応してシュウ酸カルシウム(Ca(C2O4))結晶を作成することを確認している。
【0047】
図28~32を参照すると、NaOHと組み合わせたシュウ酸のカリウム塩二水和物の溶液が、シュウ酸カルシウム結晶を形成することにより、歯細管を閉塞することを確認する実験結果が示されている。図28は、任意の溶液を適用する前のエッチングされた象牙質の試料を示す。見てとれるように、細管は開いており、ブロックされていない。40.0gのシュウ酸のカリウム塩二水和物と、4.0gのNaOHとを1リットルの精製水中に組み合わせた試料を、エッチングされた象牙質に適用した。図29~32は、その結果得られた象牙質表面をさまざまな倍率で示している。図29は、象牙質を2,000倍の倍率で示し、溶液が表面を覆い、細管がシュウ酸カルシウム結晶で閉塞していることを示している。図30は、同じ位置の象牙質を5,000倍の倍率で示し、いくつかの閉塞した細管をより詳細に示している。図31と32は、図29図30と同様だが、試料上の位置が異なる。
【0048】
溶解促進剤(例として、NaOH)の添加による溶解性の変化を決定するために実験を実行した。1リットルの精製水に30グラムのシュウ酸のカリウム塩二水和物および1グラムのNaOHの溶液を調製した。溶液を20℃に維持し、混合した。30グラムのシュウ酸のカリウム塩二水和物は完全には溶解せず、約0.08グラムが残った。したがって、これは20℃での溶解性29.92g/Lに相当し、シュウ酸のカリウム塩二水和物のみ(例として、NaOHを含まない)と比較して4.501g/Lの増加に相当する。この増加は、平衡方程式に基づいて予測された値よりも多く、溶解性の増加はルシャトリエの原理と一般的なイオン効果に起因していると考えられる。
【0049】
NaOHからの溶解性の増加が線形であるか、NaOHの量の増加とともに小さくなるかを決定するために、さらなる実験が実行された。1グラムのNaOHは20℃にて~29.9g/Lの溶解性(~4.5g/Lの増加)をもたらすため、34.40グラム、38.90グラム、43.40グラム、および47.90グラムのシュウ酸のカリウム塩二水和物を含む溶液を、それぞれ2、3、4、および5グラムのNaOHで1リットルの水に調製した。溶液を20℃に維持し、すべての成分が溶解するまで、または2時間のいずれか早い方で混合した。34.40グラムおよび38.90グラムのシュウ酸のカリウム塩二水和物(それぞれ2グラムおよび3グラムのNaOH)を含む試料は完全に溶解した。したがって、1グラム、2グラム、および3グラムのNaOHを添加した場合、溶解性の増加とNaOHの添加量との間に線形関係が見出された。43.40グラムのシュウ酸のカリウム塩二水和物、および4グラムのNaOHを含む試料は完全に溶解せず、約0.72グラムが2時間後に溶解せずに残ったままだった。47.90グラムのシュウ酸のカリウム塩二水和物、および5グラムのNaOHを含む試料も完全には溶解せず、約3.8グラムが残った。したがって、NaOHの量と溶解性の増加との関係は、NaOHの3~4グラムの間のどこかで線形であることを休止し、その範囲内では収穫逓減(diminishing returns)が始まる。データに適合する傾向線に基づいて、5~6グラムの間でのさらなるNaOHの添加も効果がなくなる可能性がある。
【0050】
予防ペーストの例:上述のようにおよび本発明に従って形成され、ならびに図2図24に示されるように形成された溶解促進剤を含有する、シーリング組成物または歯科用減感作溶液は、象牙質感受性の低下および/または除去のために予防ペーストに組み込まれてもよい。本発明によれば、減感作溶液は、有利には、製品に減感作効果を付与するために、歯科用または口腔用製品内に組み込まれ得る。予防ペーストまたはプロフィペーストは、当該技術分野において理解されるように、典型的には、歯牙のエナメル質表面を回復するために採用される。しばしば、患者は歯牙の表面を新しくするために必要な回復と歯科治療に関連する過敏症を持っている可能性がある。感受性を緩和するために、一般的なプロフィペーストを以下:
1.次の成分(例えば、Fisher Chemical製)を重量パーセントで提供する-70~90重量パーセントのグリセリン;本明細書に記述のとおりに製造した10~29重量パーセントの減感作溶液;および軽石1~5%。
2.ステンレス製の混合容器で、減感作溶液とグリセリンとを組み合わせて、混合を開始する。
3.混合の間、溶液が均質になるまで、摂氏45度から摂氏88度の範囲内の温度に溶液を加熱する。
4.軽石を加え、少なくとも1時間、加熱および混合を続ける。
5.加熱および混合を止めて、溶液を回収容器に注ぐ。
のように、減感作溶液と混合することができる。
【0051】
提供される混合方法は、溶液の実質的に均質な混合が達成される限り、変更され得ると理解されるべきである。
【0052】
溶解促進剤は、製造、安定性、出荷、および処理上の利益を有し得る。製造、処理、または調合中に結晶形成が発生すると、適用機序が結晶の蓄積で詰まる可能性がある。増加した溶解性によって、溶液がより溶解しやすくなり、より広い範囲の製造温度と保存温度を扱えるため、この発生の可能性が除去される。補助の有無にかかわらず、改善された再溶解の容易さが、溶液の再処理にかかる時間とエネルギーを少なくする。
【0053】
これらの点に、および図33図36を参照すると、それぞれ本明細書にその全体が参照により組み込まれる、米国特許第6,582,680号、6,500,407号、および6,458,339号内に記述されているように、公知の減感剤溶液に溶解促進剤を添加すると、本発明の減感剤溶液内の固有の耐性が促進され、四シュウ酸カリウム二水和物結晶が形成されることが見られる。別の言い方をすれば、本減感剤溶液中の溶解促進剤は、溶液を安定化させて、比較的低い温度での結晶形成を防止し、および/または、比較的長い貯蔵寿命の期間における結晶形成を防止する。
【0054】
図33は、溶解促進剤(例えば、米国特許第6,582,680号参照)を除く全てを含有する本発明のものと同様の組成物の経時試料であり、ここで、棚上で約5年経過した後、組成物は、その間に四シュウ酸カリウム二水和物結晶を沈殿させている。
【0055】
図34は、図33の同じ組成物の、より新しい試料であり、このより新しい組成物もまた、約8~9ヶ月間経時しており、その間に四シュウ酸カリウム二水和物結晶を沈殿させている。
【0056】
図35は、本発明に従って形成された組成物の経時試料であり、図34の組成物の成分を含有するが、加えて水酸化ナトリウムなどの溶解促進剤も含有する-経時期間中に沈殿物が形成されていない。
【0057】
図36は、組成物内に溶解促進剤が含有されていないことを除いて、図35と同一の組成物の、同一に経時した試料である(再び、米国特許第6,582,680号参照)-組成物は、四シュウ酸カリウム二水和物結晶を沈殿させている。
【0058】
現在の研究は、象牙質細管内の歯牙からのカルシウムと本発明の減感作溶液との反応の直接の結果として、象牙質細管をカルシウムヒドロキシアパタイトで効果的に閉塞することができることを示している。別の言い方をすれば、回復が必要な領域に直接適用された際の象牙質細管内のカルシウムヒドロキシアパタイトの沈着の深さ(D)は、以前の既知の減感作溶液から結果として生じる閉塞の深さよりも実質的に深いと考えられる。
【0059】
輸送温度が溶液の溶解限界を下回り、結晶形成を引き起こす可能性がある。溶解促進剤により、本発明の改善された製品は、より大きな温度多様性を処理することができ、例えば、万が一、出荷中に結晶形成が生じた場合に、一旦常温に戻されると、完全に溶解した状態に戻ることができるであろう。
【0060】
例示的な態様を上述したが、これらの態様が本発明の全ての可能な形態を記述することを意図するものではない。むしろ、明細書で用いる言葉は、限定ではなく記述の言葉であり、発明の趣旨や範囲を逸脱しない範囲で種々の変更が加えられ得ることが理解される。さらに、種々の実践的態様の特徴が組み合わされて、本発明のさらなる態様を形成してもよい。
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【国際調査報告】