(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-17
(54)【発明の名称】長尺鋼製品を冷却するための強制的な空気冷却
(51)【国際特許分類】
B21B 45/02 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
B21B45/02 320P
B21B45/02 320J
B21B45/02 320Z
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023573585
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 EP2022060726
(87)【国際公開番号】W WO2022253489
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】102021205520.6
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021212523.9
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ラン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】イェンス ウーストリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】フランク シュテーデン
(72)【発明者】
【氏名】ディルク ヴィンターフェルト
(72)【発明者】
【氏名】オラフ コッホ
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-ペーター ドリュー
(57)【要約】
本願は、熱処理ユニット、特に冷却フードであって、チャンバにガス状の冷却媒体を供給することができる入口開口を有するチャンバと、ガス状の冷却媒体を増速させて導出することができる間隙状の出口開口とを備え、チャンバは、中間のチャンバセグメントと、この中間のチャンバセグメントから延在する第1および第2の外側のチャンバセグメントとを備え、両方の外側のチャンバセグメントは、その遠位端に向かって比例的に先細りする横断面を有している、熱処理ユニットと、熱間圧延された長尺鋼製品を熱処理するための装置と、に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理ユニット(1)、特に冷却フードであって、当該チャンバ(4)にガス状の冷却媒体を供給することができる入口開口(5)を有するチャンバ(4)と、前記ガス状の冷却媒体を増速させて導出することができる間隙状の出口開口(6)とを備え、前記チャンバ(4)は、中間のチャンバセグメント(7)と、該中間のチャンバセグメント(7)から延在する第1および第2の外側のチャンバセグメント(8,9)とを備え、両方の外側のチャンバセグメント(8,9)は、その遠位端に向かって比例的に先細りする横断面を有している、熱処理ユニット(1)。
【請求項2】
前記中間のチャンバセグメント(7)は、前記チャンバ(4)の長手方向軸線に沿って一定の横断面を有している、請求項1記載の熱処理ユニット(1)。
【請求項3】
前記入口開口(5)は前記中間のチャンバセグメント(7)に配置されている、請求項1または2記載の熱処理ユニット。
【請求項4】
前記外側のチャンバセグメント(8,9)の前記遠位端に配置された各々の前記横断面(13)は、前記中間のチャンバセグメント(7)の横断面(12)と比較して、少なくとも3倍、好適には4倍小さい、請求項1から3までのいずれか1項記載の熱処理ユニット(1)。
【請求項5】
各々の前記チャンバセグメント(7,8,9)は、前記間隙状の出口開口(6)の方向に円錐形に先細りする横断面区分(15)を有している、請求項1から4までのいずれか1項記載の熱処理ユニット(1)。
【請求項6】
前記入口開口(5)内に配置された流入管片(16)であって、カップ状の本体(17)から形成されていて、前記外側のチャンバセグメント(8,9)に対して整列したそれぞれ1つの開口(21)を有する流入管片(16)をさらに備える、請求項1から5までのいずれか1項記載の熱処理ユニット(1)。
【請求項7】
両方の前記開口(21)の各々は、少なくとも流入横断面の半分に相当する横断面を有している、請求項6記載の熱処理ユニット(1)。
【請求項8】
前記間隙状の出口開口(6)の横断面は調整可能に形成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の熱処理ユニット(1)。
【請求項9】
熱間圧延された長尺鋼製品(3)を熱処理するための装置(2)であって、熱間圧延された前記長尺鋼製品(3)を受け取るための受取り装置(22)と、冷却すべき前記長尺鋼製品(3)にガス状の冷却媒体、特に空気を供給することができる少なくとも1つの、請求項1から8までのいずれか1項記載の熱処理ユニット(1)と、を備える装置(2)。
【請求項10】
前記長尺鋼製品(3)の温度を、好ましくは熱処理中に検知することができる少なくとも1つの温度センサ(27)をさらに備える、請求項9記載の装置(2)。
【請求項11】
前記温度センサ(27)はパイロメータである、請求項10記載の装置(2)。
【請求項12】
熱間圧延された長尺鋼製品(3)を熱処理するための方法であって、前記長尺鋼製品(3)を熱間圧延工程に続いて、請求項9から11までのいずれか1項記載の装置(2)に直接供給して熱処理する、方法。
【請求項13】
前記ガス状の冷却媒体、特に空気を、熱間圧延された前記長尺鋼製品(3)に少なくとも25m/sの速度、好適には少なくとも50m/sの速度、より好適には少なくとも100m/sの速度、さらにより好適には少なくとも125m/sの速度、最も好適には少なくとも150m/sの速度で吹きかける、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記長尺鋼製品(3)は、H形支持体、U形材、山形材および/またはレールである、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
熱間圧延された長尺鋼製品(3)にパーライト系、フェライト系、ベイナイト系および/またはマルテンサイト系のミクロ組織構造を形成するための、請求項1から8までのいずれか1項記載の熱処理ユニット(1)または請求項9から11までのいずれか1項記載の装置(2)の使用。
【請求項16】
前記組織構造を最大50mmの深さまで、好適には最大45mmの深さまで、より好適には最大40mmの深さまで、さらにより好適には最大35mmの深さまで形成する、請求項15記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理ユニット、特に冷却フードと、熱間圧延された長尺鋼製品を熱処理するための装置ならびに方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
熱間圧延された長尺鋼製品の機械的な特性、特に降伏点、引張強さまたは硬さを調整するために、こういった長尺鋼製品は、熱間圧延工程中かつ/または熱間圧延工程後に冷却装置によって合目的的に冷却される。このために、先行技術では、例えば欧州特許第1412543号明細書に開示されているように、通常、水または水/空気混合物が冷却媒体として使用される。しかしながら、このような冷却媒体は、いわゆるライデンフロスト現象を発生させ、このライデンフロスト現象によって、長尺鋼製品の全長にわたって冷却速度に偏差が生じ、ひいては不均質なミクロ構造が形成されてしまう。
【0003】
米国特許第4,913,747号明細書に基づき、さらに、レール頭部を空気または窒素によって硬化させるための方法および装置が公知である。同明細書では、冷媒が管路系統を介して、多数のノズルを備えたコレクタに供給される。この公知の実施形態には、多数のノズルと孔とによって冷却装置の構成に手間がかかるという欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の課題は、熱間圧延された長尺鋼製品を熱処理するための、先行技術に比べて改善された装置ならびに先行技術に比べて改善された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、この課題は、請求項1の特徴を有する熱処理ユニット、請求項9の特徴を有する装置、ならびに請求項12の特徴を有する方法によって解決される。
【0006】
第1の態様では、本発明は、好ましくは熱間圧延された長尺鋼製品を熱処理するための装置に使用するための熱処理ユニット、特に冷却フードであって、チャンバにガス状の冷却媒体を供給することができる入口開口を有するチャンバと、ガス状の冷却媒体を増速させて導出することができる間隙状の出口開口とを備え、チャンバは、中間のチャンバセグメントと、この中間のチャンバセグメントから延在する第1および第2の外側のチャンバセグメントとを備え、両方の外側のチャンバセグメントは、その遠位端に向かって比例的に先細りする横断面を有している、熱処理ユニットに関する。
【0007】
熱処理ユニットの本発明による構成、特に各々の外側のチャンバセグメントの長さにわたって流れ横断面を比例的に減少させることによって、チャンバの全長にわたって、間隙状の出口開口でのガス状の冷却媒体、例えば空気または窒素の均一な流れが可能となる。このような熱処理ユニットを使用することによって、熱間圧延された長尺鋼製品を均質かつ均一に冷却することができるため、その機械的な特性が改善される。さらに、出口開口が間隙状に形成されていることによって、従来の円錐形ジェットノズルまたはフラットジェットノズルと異なり、保守の手間がより少なくなる。
【0008】
本発明の更なる有利な構成は、複数の従属請求項に記載してある。これらの従属請求項に個々に記載した特徴は、互いに技術的に有意に組み合わせることができ、本発明の更なる構成を規定することができる。さらに、請求項に記載した特徴は、明細書に詳しく記載かつ説明してある。この場合、本発明の更なる好適な構成が示してある。
【0009】
「横断面」という用語は、本発明の範囲内では、横断面積を意味している。
【0010】
「長尺鋼製品」という用語は、本発明の範囲内では、最長200mまでの長さを有してよい金属製の製品、例えばレール、特に鉄道レール、H字形の支持体、U字形の形材、山形材等を意味している。
【0011】
有利には、中間のチャンバセグメントが、チャンバの長手方向軸線に沿って一定の横断面を有している。これに関連して、好適には、入口開口が中間のチャンバセグメントに配置されていることが特定されている。入口開口は、中間のチャンバセグメントの横断面に比べて小さな入口横断面を有していてよい。中間のチャンバセグメントにおけるより大きな横断面によって、入口開口を通ってチャンバに流入した冷却媒体をまず安定させ、その後、間隙状の出口開口の方向に引き続き流すことができる。さらに、間隙状の出口開口と比較して大きな入口横断面によって、冷却媒体の流速が、チャンバの流入口では極めて低く保たれ、流出口では高く保たれる。横断面変化と、これに伴う流速変化とによって、渦流が大幅に減じられるため、冷却媒体が間隙状の出口開口の全長にわたって極めて均一に流出することを確保することができる。チャンバの流入口と流出口との間での速度変化の係数は、好ましくは3~20であってよい。流入口における流速は、例えば10~50m/sであってよい。これに対応して、その後、流出口における冷却媒体の流速は、選択された横断面比率に応じて、流入口の3~20倍であってよい。したがって、有利には、両方の外側のチャンバセグメントの遠位端に配置された横断面が、中間のチャンバセグメントの横断面と比較して、少なくとも3倍、好適には少なくとも4倍、さらにより好適には少なくとも10倍小さいことが特定されている。
【0012】
流出口における流れの均一性をさらに高めるために、有利には、各々のチャンバセグメントが、間隙状の出口開口の方向に円錐形に先細りする横断面区分を有している。この横断面区分は対称に形成されていてもよいし、代替的には非対称に形成されていてもよい。
【0013】
入口開口は、基本的には、中間のチャンバセグメントに開口の形態で直接形成されていてよい。しかしながら、好適な実施形態では、熱処理ユニットが、入口開口内に配置された流入管片であって、カップ状の本体から形成され、外側のチャンバセグメントに対して整列したそれぞれ1つの開口を有する流入管片を備えることが特定されている。これに関連して、好適には、両方の開口の各々が、少なくとも流入横断面の半分に相当する横断面を有することが特定されている。このことも同じくチャンバの内部での渦流の形成を阻止し、したがって、流れ特性に有利な影響を与える。この場合、1つには、カップ状の流入管片の底部によって、中間のチャンバセグメント内に流入した冷却媒体が両方の外側のチャンバセグメント内に変向され、ひいては、中間のチャンバセグメントの間隙状の出口開口を介して直接再度流出することができないようになっている。もう1つには、間隙状の出口開口の上側の圧力をチャンバの全長にわたって一定に保つことができる。
【0014】
すでに説明したように、横断面の調整によって達成可能となる、入口速度と出口速度との間の比率の調整における更なるフレキシビリティを得るために、有利には、間隙状の出口開口の横断面が調整可能に形成されていることが特定されている。したがって、間隙状の出口開口の横断面の調整によって、熱間圧延された長尺鋼製品に対する冷却速度を無段階に調整することができる。好ましくは、間隙状の出口開口を、要求された冷却幅に応じて、0.5~50mmの範囲内で調整することができる。
【0015】
更なる態様では、本発明は、熱間圧延された長尺鋼製品を熱処理するための装置であって、熱間圧延された長尺鋼製造品を受け取るための受取り装置と、冷却すべき長尺鋼製品にガス状の冷却媒体、特に空気または窒素を供給することができる少なくとも1つの本発明に係る熱処理ユニットとを備える、装置に関する。
【0016】
このことを達成するために、例えば周辺空気が冷却媒体として、適切なブロワ装置によって熱処理ユニットに供給されてよい。間隙状の出口開口の横断面を狭めることによって、冷却媒体が間隙状の出口開口を通して増速され、例えば200m/sであってよい高い速度で、熱間圧延された長尺鋼製品の冷却すべき表面に作用するようになっている。したがって、有利には、装置が、ガス状の冷却媒体、例えば空気または窒素を熱処理ユニットに供給することができる少なくとも1つのブロワ装置をさらに備えることが特定されている。
【0017】
熱間圧延された長尺鋼製品の表面における冷却速度は流速によって規定することができるため、さらに、回転数調整式のブロワ装置によって、例えば1~20K/sであってよい冷却速度の無段階の調整が可能となる。
【0018】
有利には、少なくとも1つの熱処理ユニットは、間隙状の出口開口が受取り装置に対して長手方向平行に位置決めされるように装置に配置されている。これに加えて、さらに好適には、間隙状の出口開口と受取り装置との間の間隔が調整可能であり、特に好適には、出口開口と、長尺鋼製品の冷却すべき表面との間の間隔が5~300mmであるように調整可能であることが特定されている。
【0019】
特に有利な実施形態では、熱処理するための装置がモジュール式に形成されているため、1つ以上の熱処理ユニットを長尺鋼製品の長手方向セグメントの周りに配置することができ、かつ/または、1つ以上の熱処理ユニットを長尺鋼製品の複数の長手方向セグメントもしくは全長に沿って配置することができる。
【0020】
各々の冷却モジュールにおける冷却強度は、長尺鋼製品の検知された温度に基づき個別に適合させることができる。こうして、長尺鋼製品の全長にわたるそれぞれ異なる温度分布を合目的的な冷却によって補償することができる。したがって、相応の温度調整を行うために、有利には、装置が、長尺鋼製品の温度を、好ましくは熱処理中に検知することができる少なくとも1つの温度センサを備えている。好ましくは、この温度センサはパイロメータまたは熱画像カメラである。また、有利には、出願の時点で当業者に知られている別の温度センサが使用されてもよい。
【0021】
モジュール式の構造形態の更なる利点は、その使用可能性である。複数の熱処理ユニットを使用することによって、種々異なる幾何学形状の工作物を冷却することができる。与えられた形状および必要な冷却出力に対する個別の適合は、熱処理ユニットまたは冷却フードの個数の変更および改良によって可能となる。
【0022】
補足的には、電磁式のセンサによって、長尺鋼製品内の組織変換を冷却プロセス中に直接検知して監視することができる。求められた組織構造に基づき、冷却速度を相応に適合させることができる。
【0023】
さらに、熱処理ユニット、特に冷却フード、または装置の実施形態に応じて、
-冷却速度が確実にかつ安定して調整可能となり、熱処理プロセスのために必要となる冷却速度をあらゆる慣用のかつ特別な材料組成に対して柔軟に適合させるためのフレキシビリティを提供し、
-冷却媒体として周辺空気を使用することが、現在使用されている液状の冷却媒体、例えば水、油および/または水/空気混合物と比較して特に省資源となり、
-ブロワ装置、例えばベンチレータを使用することによって、多くの空気体積を、好適には1320mbarまでの低い圧力で搬送することができ、これによって、コンプレッサが不要となる
といった更なる利点が得られる。
【0024】
更なる態様では、本発明は、さらに、熱間圧延された長尺鋼製品を熱処理するための方法であって、長尺鋼製品を熱間圧延工程に続いて本発明に係る装置に直接供給して熱処理する、方法に関する。ガス状の冷却媒体、特に空気または窒素が、所望の冷却強度に応じて、熱間圧延された長尺鋼製品に少なくとも25m/sの速度、好適には少なくとも50m/sの速度、より好適には少なくとも100m/sの速度、さらにより好適には少なくとも125m/sの速度、最も好適には少なくとも150m/sの速度で吹きかけられてよい。
【0025】
さらに、本発明は、熱間圧延された長尺鋼製品にパーライト系、フェライト系、ベイナイト系および/またはマルテンサイト系のミクロ組織構造を形成するための本発明に係る熱処理ユニットまたは本発明に係る装置の使用に関する。
【0026】
以下に、本発明ならびに周辺の技術を図面に基づき詳しく説明する。付言しておくと、本発明は図示の実施例に限定されるものではない。特に明記しない限り、図面において説明する実態の部分態様を抜き出して、本明細書および/または図面に基づく別の要素および知見と組み合わせることも可能である。特に付言しておくと、図面、特に図示のサイズ比率は概略的でしかない。同一の対象に同一の符号が付してあるため、場合により、別の図面に基づく説明を補足的に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に係る熱処理ユニットの実施形態の斜視図である。
【
図2】
図1に示した熱処理ユニットの実施形態の側面図である。
【
図3】
図1および
図2に示した熱処理ユニットの断面図である。
【
図5】長尺鋼製品を熱処理するための本発明に係る装置の実施形態を示す図である。
【
図7】求められた硬さ値を含めた熱処理なしのレール頭部の写真である。
【
図8】求められた硬さ値を含めた本発明による熱処理ありのレール頭部の写真である。
【
図9】水/空気混合物による冷却の結果を示す図である。
【
図10】本発明によるプロセスによる冷却の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1~
図4には、本発明に係る熱処理ユニット1の実施形態が示してある。この熱処理ユニット1は、熱間圧延された長尺鋼製品(
図5参照)、例えばレール3を熱処理するための装置2に適しており、この装置2用に設けられている。
【0029】
熱処理ユニット1、特に冷却フードは、長手方向に延在するチャンバ4であって、このチャンバ4にガス状の冷却媒体、例えば特に周辺空気を供給することができる入口開口5を有するチャンバ4と、このチャンバ4の全長にわたって長手方向に延在する、ガス状の冷却媒体を増速させて導出することができる間隙状の出口開口6とを備えている。周辺空気は、好ましくは、ブロワ装置(図示せず)、例えばベンチレータを介して吸い込まれ、相応の管路系統(図示せず)を介して冷却フード1に供給されてよい。その際、この冷却フード1とブロワ装置との間の距離が可能な限り短く選択されることが望ましい。
【0030】
図1および
図2に認めることができるように、冷却フード1は、入口開口5を有する中間のチャンバセグメント7と、第1および第2の外側のチャンバセグメント8,9とによって形成される。これら第1および第2の外側のチャンバセグメント8,9は、それぞれ中間のチャンバセグメント7から延在し、フランジ接続部10,11を介して中間のチャンバセグメント7に接続されている。
【0031】
中間のチャンバセグメント7は、チャンバ4の長手方向軸線に沿って一様なサイズの横断面を有するように構成されている。この横断面は、本実施形態では、
図3に示した断面図に符号12で明示してある。これと異なり、両方の外側のチャンバセグメント8,9は、その遠位端に向かって比例的に先細りする横断面を有している。その結果、外側のチャンバセグメント8,9の各々の遠位端に、2~6倍の範囲内のより小さな値を有する横断面13が生じる。この場合、各々のチャンバセグメント7,8,9が、四角形の横断面区分14に加えて、間隙状の出口開口6の方向に円錐形に先細りする横断面区分15を付加的に有することが明らかとなる。
【0032】
さらに、冷却フード1は、図示の本実施形態では、入口開口5内に配置された流入管片16を備えている。この流入管片16は、本実施形態では、底部18と円筒形の壁19とを備えたカップ状の本体17から形成されている。この本体17の流入管片開口20がガス状の冷却媒体用の入口を成している。ガス状の冷却媒体がチャンバ4全体を通流することができるようにするために、円筒形の壁19には、それぞれ外側のチャンバセグメント8,9に対して整列した少なくとも2つの開口21が設けられている。これら両方の開口21の各々は、主として、流入管片開口20の横断面の半分に相当する横断面を有している。
【0033】
本発明による構成によって、冷却媒体が、冷却フード1内への中央での供給にもかかわらず、チャンバ全長または冷却フード全長にわたって常に不変の空気圧を流出口6において有しており、これによって、冷却長さにわたって不変の流出速度を確保できることが保証される。
【0034】
図5には、長尺鋼製品3を熱処理するための本発明に係る装置2の実施形態が示してある。この装置2は、熱間圧延された長尺鋼製品3を受け取るための受取り装置22と、本実施形態では3つの熱処理ユニット1とを備えており、これら3つの熱処理ユニット1を介して、冷却すべき長尺鋼製品3にガス状の冷却媒体を供給することができ、ひいては、冷却すべき長尺鋼製品3を合目的的に冷却することができる。
【0035】
装置2は、さらに、搬送装置23と昇降台24とを備えており、この昇降台24を介して、レール3の形態で示した長尺鋼製品を上昇させて、受取り装置22に供給することができる。この受取り装置22は、レール3をクランプすることができるクランプ装置25を備えている。このクランプ装置25は、レール3がローラテーブルローラ26によって装置2内で長手方向に移動可能となるように構成されていてよい。
【0036】
代替的な実施形態では、レール3が台に位置不変に固定され、冷却中に冷却システムをレール3にわたって長手方向に往復移動させてよい。
【0037】
図6には、長尺鋼製品またはレール3を熱処理するための調整プロセスの実施形態が示してある。3つの冷却フード1の各々に、パイロメータの形態で形成されたそれぞれ1つの温度センサ27が割り当てられており、冷却プロセス中のレール頭部面TOP,SIDE-LEFT,SIDE-RIGHTの温度を測定することができるように位置決めされる。検出された温度T_TOP
ist,T_SIDE-LEFT
ist,T_SIDE-RIGHT
istが、信号技術的に計算ユニット28に伝送され、技術的なモデルの目標温度(T
soll)と比較される。検知された温度のうちの1つが目標温度よりも高いと、対応するベンチレータ29の回転数を高めることによって冷却出力を個別に適合させることができ、これによって、温度差が最小限に抑えられる。
【実施例】
【0038】
実施例1:
図7には、熱処理に供されなかったレール頭部の横断面における硬さ測定が示してある。
図8には、本発明に係る方法により熱処理されたレールが示してある。値に基づき認めることができるように、レール頭部における硬さは、本発明による冷却プロセスによって平均して最大22%高められている。
【0039】
実施例2:
所望のミクロ組織構造を生じさせるために、それぞれ900℃の温度を有する熱間圧延された複数のレールが冷却された。レールは、一方では、先行技術に基づき公知の方法によって水/空気混合物(比較例;
図9)を使用して冷却され、他方では、本発明に係る方法によって純粋な周辺空気(
図10)を使用して冷却された。冷却パラメータは、各々の冷却プロセスにおいて不変であった。熱処理後、DIN13674に従って、レールのうち、レール頭部の横断面内の規定の箇所におけるブリネル硬さが求められた。
【0040】
図9に示した結果に基づき明らかなように、レールごとの硬さは極めて大きく変動している。これと異なり、本発明に係る方法により冷却されたレールの硬さは極めて安定している(
図10)。
【符号の説明】
【0041】
1 熱処理ユニット/冷却フード
2 装置
3 長尺鋼製品/レール
4 チャンバ
5 入口開口
6 間隙状の出口開口/間隙ノズル/流出口
7 中間のチャンバセグメント
8 第1の外側のチャンバセグメント
9 第2の外側のチャンバセグメント
10 フランジ接続部
11 フランジ接続部
12 中間のチャンバセグメントの横断面
13 外側のチャンバセグメントの遠位端における横断面
14 横断面区分
15 横断面区分
16 流入管片
17 本体
18 底部
19 円筒形の壁
20 流入管片開口
21 開口
22 受取り装置
23 搬送装置
24 昇降台
25 クランプ装置
26 ローラテーブルローラ
27 温度センサ/パイロメータ
28 計算ユニット
29 ブロワ装置/ベンチレータ
【手続補正書】
【提出日】2023-01-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理ユニット(1)、特に冷却フードであって、当該チャンバ(4)にガス状の冷却媒体を供給することができる入口開口(5)を有する
、長手方向に延在するチャンバ(4)と、前記ガス状の冷却媒体を増速させて導出することができる
、前記チャンバ(4)の全長にわたって長手方向に延在する間隙状の出口開口(6)とを備え、前記チャンバ(4)は、中間のチャンバセグメント(7)と、該中間のチャンバセグメント(7)から延在する第1および第2の外側のチャンバセグメント(8,9)とを備え、両方の外側のチャンバセグメント(8,9)は、その遠位端に向かって比例的に先細りする横断面を有している、熱処理ユニット(1)。
【請求項2】
前記中間のチャンバセグメント(7)は、前記チャンバ(4)の長手方向軸線に沿って一定の横断面を有している、請求項1記載の熱処理ユニット(1)。
【請求項3】
前記入口開口(5)は前記中間のチャンバセグメント(7)に配置されている、請求項1または2記載の熱処理ユニット。
【請求項4】
前記外側のチャンバセグメント(8,9)の前記遠位端に配置された各々の前記横断面(13)は、前記中間のチャンバセグメント(7)の横断面(12)と比較して、少なくとも3倍、好適には4倍小さい、請求項1から3までのいずれか1項記載の熱処理ユニット(1)。
【請求項5】
各々の前記チャンバセグメント(7,8,9)は、前記間隙状の出口開口(6)の方向に円錐形に先細りする横断面区分(15)を有している、請求項1から4までのいずれか1項記載の熱処理ユニット(1)。
【請求項6】
前記入口開口(5)内に配置された流入管片(16)であって、カップ状の本体(17)から形成されていて、前記外側のチャンバセグメント(8,9)に対して整列したそれぞれ1つの開口(21)を有する流入管片(16)をさらに備える、請求項1から5までのいずれか1項記載の熱処理ユニット(1)。
【請求項7】
両方の前記開口(21)の各々は、少なくとも流入横断面の半分に相当する横断面を有している、請求項6記載の熱処理ユニット(1)。
【請求項8】
前記間隙状の出口開口(6)の横断面は調整可能に形成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の熱処理ユニット(1)。
【請求項9】
熱間圧延された長尺鋼製品(3)を熱処理するための装置(2)であって、熱間圧延された前記長尺鋼製品(3)を受け取るための受取り装置(22)と、冷却すべき前記長尺鋼製品(3)にガス状の冷却媒体、特に空気を供給することができる少なくとも1つの、請求項1から8までのいずれか1項記載の熱処理ユニット(1)と、を備える装置(2)。
【請求項10】
前記長尺鋼製品(3)の温度を、好ましくは熱処理中に検知することができる少なくとも1つの温度センサ(27)をさらに備える、請求項9記載の装置(2)。
【請求項11】
前記温度センサ(27)はパイロメータである、請求項10記載の装置(2)。
【請求項12】
熱間圧延された長尺鋼製品(3)を熱処理するための方法であって、前記長尺鋼製品(3)を熱間圧延工程に続いて、請求項9から11までのいずれか1項記載の装置(2)に直接供給して熱処理する、方法。
【請求項13】
前記ガス状の冷却媒体、特に空気を、熱間圧延された前記長尺鋼製品(3)に少なくとも25m/sの速度、好適には少なくとも50m/sの速度、より好適には少なくとも100m/sの速度、さらにより好適には少なくとも125m/sの速度、最も好適には少なくとも150m/sの速度で吹きかける、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記長尺鋼製品(3)は、H形支持体、U形材、山形材および/またはレールである、請求項12または13記載の方法。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理ユニット(1)、特に冷却フードであって、当該チャンバ(4)にガス状の冷却媒体を供給することができる入口開口(5)を有する、長手方向に延在するチャンバ(4)と、前記ガス状の冷却媒体を増速させて導出することができる、前記チャンバ(4)の全長にわたって長手方向に延在する間隙状の出口開口(6)とを備え、前記チャンバ(4)は、中間のチャンバセグメント(7)と、該中間のチャンバセグメント(7)から延在する第1および第2の外側のチャンバセグメント(8,9)とを備え、両方の外側のチャンバセグメント(8,9)は、その遠位端に向かって比例的に先細りする横断面を有している、熱処理ユニット(1)。
【請求項2】
前記中間のチャンバセグメント(7)は、前記チャンバ(4)の長手方向軸線に沿って一定の横断面を有している、請求項1記載の熱処理ユニット(1)。
【請求項3】
前記入口開口(5)は前記中間のチャンバセグメント(7)に配置されている、請求項1または2記載の熱処理ユニット。
【請求項4】
前記外側のチャンバセグメント(8,9)の前記遠位端に配置された各々の前記横断面(13)は、前記中間のチャンバセグメント(7)の横断面(12)と比較して、少なくとも3倍、好適には4倍小さい、請求項
1記載の熱処理ユニット(1)。
【請求項5】
各々の前記チャンバセグメント(7,8,9)は、前記間隙状の出口開口(6)の方向に円錐形に先細りする横断面区分(15)を有している、請求項
1記載の熱処理ユニット(1)。
【請求項6】
前記入口開口(5)内に配置された流入管片(16)であって、カップ状の本体(17)から形成されていて、前記外側のチャンバセグメント(8,9)に対して整列したそれぞれ1つの開口(21)を有する流入管片(16)をさらに備える、請求項
1記載の熱処理ユニット(1)。
【請求項7】
両方の前記開口(21)の各々は、少なくとも流入横断面の半分に相当する横断面を有している、請求項6記載の熱処理ユニット(1)。
【請求項8】
前記間隙状の出口開口(6)の横断面は調整可能に形成されている、請求項
1記載の熱処理ユニット(1)。
【請求項9】
熱間圧延された長尺鋼製品(3)を熱処理するための装置(2)であって、熱間圧延された前記長尺鋼製品(3)を受け取るための受取り装置(22)と、冷却すべき前記長尺鋼製品(3)にガス状の冷却媒体、特に空気を供給することができる少なくとも1つの、請求項
1記載の熱処理ユニット(1)と、を備える装置(2)。
【請求項10】
前記長尺鋼製品(3)の温度を、好ましくは熱処理中に検知することができる少なくとも1つの温度センサ(27)をさらに備える、請求項9記載の装置(2)。
【請求項11】
前記温度センサ(27)はパイロメータである、請求項10記載の装置(2)。
【請求項12】
熱間圧延された長尺鋼製品(3)を熱処理するための方法であって、前記長尺鋼製品(3)を熱間圧延工程に続いて、請求項
9記載の装置(2)に直接供給して熱処理する、方法。
【請求項13】
前記ガス状の冷却媒体、特に空気を、熱間圧延された前記長尺鋼製品(3)に少なくとも25m/sの速度、好適には少なくとも50m/sの速度、より好適には少なくとも100m/sの速度、さらにより好適には少なくとも125m/sの速度、最も好適には少なくとも150m/sの速度で吹きかける、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記長尺鋼製品(3)は、H形支持体、U形材、山形材および/またはレールである、請求項12または13記載の方法。
【国際調査報告】