(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-18
(54)【発明の名称】消防装備を洗浄するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
B08B 3/04 20060101AFI20240611BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20240611BHJP
B08B 3/12 20060101ALI20240611BHJP
B08B 3/14 20060101ALI20240611BHJP
B01D 29/11 20060101ALN20240611BHJP
A62B 17/00 20060101ALN20240611BHJP
【FI】
B08B3/04 Z
C02F1/28 B
B08B3/12 A
B08B3/14
B01D29/10 510A
A62B17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567044
(86)(22)【出願日】2022-04-27
(85)【翻訳文提出日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 SE2022050406
(87)【国際公開番号】W WO2022231504
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523410126
【氏名又は名称】レスキュー インテリテック アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】テグレ ヨハン
【テーマコード(参考)】
2E185
3B201
4D116
4D624
【Fターム(参考)】
2E185CC52
3B201AB01
3B201AB03
3B201AB33
3B201AB44
3B201AB45
3B201BA02
3B201BB01
3B201BB83
3B201BB93
3B201BB94
3B201BB95
3B201CC01
3B201CD22
4D116BB01
4D116BC17
4D116GG21
4D116QA41C
4D116QA41E
4D116QA41F
4D116QA42C
4D116QA42E
4D116QA42F
4D116TT02
4D116TT05
4D116TT07
4D116VV09
4D116VV15
4D624AA04
4D624AB11
4D624AB16
4D624BA03
4D624BA17
4D624BC01
4D624DB03
4D624DB19
(57)【要約】
排出管(120)を介してフィルタユニット(150)に接続された洗浄ユニット(110)を備える、装備(105)を洗浄するためのシステム。洗浄ユニット(110)は、洗浄液(CL)のための少なくとも1つの流入口を有する洗浄チャンバ(101)を備え、洗浄ユニット(110)が、洗浄液(CL)で装備(105)を洗浄するように構成され、それにより、多環芳香族炭化水素(PAH)を含む汚染洗浄液(CCL)が得られる。排出管(120)は、汚染洗浄液(CCL)を洗浄ユニット(110)からフィルタユニット(150)まで移送するように構成される。フィルタユニット(150)は、汚染洗浄液(CCL)を濾過するように配置された複数のフィルタを備え、それにより、除染洗浄液(DCL)が得られ、フィルタユニット(150)が、除染洗浄液(DCL)を放出するための排出口(170)をさらに備える。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排出管(120)を介してフィルタユニット(150)に接続された洗浄ユニット(110)を備える、消防装備(105)を洗浄するためのシステムであって、
前記洗浄ユニット(110)が、洗浄液(CL)のための少なくとも1つの流入口を有する洗浄チャンバ(101)を備え、前記洗浄ユニット(110)が、前記洗浄液(CL)で前記消防装備(105)を洗浄するように構成され、それにより、多環芳香族炭化水素(PAH)を含む汚染洗浄液(CCL)が得られ、
前記排出管(120)が、前記汚染洗浄液(CCL)を前記洗浄ユニット(110)から前記フィルタユニット(150)まで移送するように構成され、
前記フィルタユニット(150)が、前記汚染洗浄液(CCL)を濾過するように配置された複数のフィルタ(F
1、F
2、F
3)を備え、前記フィルタの少なくとも1つが粒子フィルタであり、前記フィルタの少なくとも1つが、前記汚染洗浄液(CCL)から多環芳香族炭化水素を濾過して除去するように配置され、それにより、除染洗浄液(DCL)が得られ、
前記フィルタユニット(150)が、前記除染洗浄液(DCL)を放出するための排出口(170)をさらに備える、システム。
【請求項2】
前記システム(100)において洗浄される前記消防装備(105)が、消火活動のために使用された個人用防護装備である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記システムが、前記フィルタ(F
1、F
2、F
3)の少なくとも1つを通して汚染洗浄液(CCL)をポンプで汲み上げるためのポンプ(130)をさらに備える、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ポンプ(130)が、第一及び第二のフィルタ(F
1、F
2)の上流、又は前記第一のフィルタ(F
1)と前記第二のフィルタ(F
2)との間に配置される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記汚染洗浄液(CCL)が、重金属、ペルフルオロアルキル化物質(PFAS)、煤からの残留物、他の有毒又は発癌性の炭化水素、あるいはそれらの組み合わせからなる群から選択される汚染物質を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記フィルタ(F
1、F
2、F
3)が、粒子フィルタ、炭素フィルタ、イオン交換フィルタ、又はそれらの組み合わせである、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
第一のフィルタ(F
1)が、100~300μmの粒子フィルタである、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
第一のフィルタ(F
1)が、交換可能なバッグフィルタである、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
第二のフィルタ(F
2)が、1~5μmの粒子フィルタである、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記フィルタユニット(150)が、第一及び第二のフィルタの後に配置された第三のフィルタ(F
3)を備える、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記第三のフィルタが炭素フィルタである、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記フィルタユニット(150)が、重金属を濾過して除去するためのフィルタを備える、請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記フィルタユニット(150)が、PFASを濾過して除去するためのフィルタを備える、請求項1~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記除染洗浄液(DCL)が、前記洗浄ユニット(100)に再循環され得るように、前記排出口(170)が前記洗浄ユニット(110)と流体連通している、請求項1~13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記フィルタユニット(150)が、前記洗浄液(CL)中で凝集を誘導するための凝集手段をさらに備える、請求項1~14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記洗浄ユニット(110)が、ブラシ、ギア保持バスケット、回転バスケット、及び前記バスケットを回転させるためのモータ、又は超音波発生トランスデューサのうちの少なくとも1つをさらに備える、請求項1~15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
洗浄ユニット(110)を用いて消防装備(105)を洗浄するための方法であって、前記洗浄ユニット(110)が、少なくとも1つの流入口を有する洗浄チャンバ(101)を備え、前記洗浄ユニット(110)が、排出管(120)を介してフィルタユニット(150)に接続され、前記方法(300)が、
洗浄液(CL)を用いて前記洗浄ユニット(110)において前記消防装備(105)を洗浄するステップ(310)であって、それによって、汚染洗浄液(CCL)を得る、ステップと、
前記排出管(120)を通して前記洗浄ユニット(110)から前記フィルタユニット(150)まで前記汚染洗浄液(CCL)を移送するステップ(320)と、
複数のフィルタ(F
1、F
2、F
3)を備える前記フィルタユニット(150)を通して前記汚染洗浄液(CCL)を濾過するステップ(340)であって、前記フィルタの少なくとも1つが粒子フィルタであり、前記フィルタの少なくとも1つが、前記汚染洗浄液(CCL)から多環芳香族炭化水素を濾過して除去するように配置されており、それによって、除染洗浄液(DCL)が得られる、ステップと、
前記フィルタユニット(150)の排出口(170)を通して前記除染洗浄液(DCL)を放出するステップ(350)と
を含む、方法。
【請求項18】
前記除染洗浄液(DCL)を放出するステップ(350)の後に、前記排出口(170)を前記洗浄ユニット(110)に接続することによって前記除染洗浄液(DCL)を前記洗浄ユニット(110)に戻すステップ(360)が続く、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ポンプ(130)を使用して前記フィルタユニット(150)内の前記フィルタ(F
1、F
2)の少なくとも1つを通して前記汚染洗浄液(CCL)をポンプで汲み上げるステップ(330)をさらに含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記洗浄するステップ(310)が、前記洗浄するステップ(310)を開始する前に防護装備を浸漬すること、前記防護装備(105)を回転させること、及び/又は洗浄液(CL)で前記防護装備(105)を噴霧すること、前記保護装備(105)をブラッシングすること、又はそれらの組み合わせを含む、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記洗浄するステップ(310)が、超音波洗浄を使用して実行される、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記消防装備が、消火活動のために使用された個人用防護装備である、請求項17~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
重金属、ペルフルオロアルキル化物質(PFAS)、煤からの残留物、他の有毒又は発癌性の炭化水素、あるいはそれらの組み合わせからなる群から選択される汚染物質を前記汚染洗浄液(CCL)から濾過して除去するステップを含む、請求項17~22のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火活動のために使用される個人用防護装備(PPE)などの消防装備を洗浄するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消防士は勤務中に多くの異なる防護服及び装備を使用する。消火活動中に使用すると、自給式呼吸器(SCBA)、ヘルメット、フェイスマスク、ブーツ及びグローブを含む防護装備は、煤粒子及び燃焼ガスで汚染される。これらの粒子の中には、有害な毒素及び/又は発癌性物質、例えば多環芳香族炭化水素(PAH)粒子があり、人の健康に現実の脅威をもたらす。
【0003】
研究により、消防士は一般集団よりも様々な種類の癌と診断され、癌により死亡する大幅に高いリスクに直面していることが示されている。これは、消防士が職務中に曝露される有害な化学物質及び発癌性粒子に起因する。この曝露及びその結果として生じる癌のリスクを軽減するために、毎回の使用後に全ての個人用防護装備を徹底的に、安全にかつ効率的に洗浄し、除染することが望ましい。
【0004】
消防署に戻ったらすぐに個人用防護装備を除染することが望ましい。しかしながら、装備を手作業で洗浄するのは、時間がかかり、重労働でもあり、また、毒性及び/又は発癌性物質に対して防護されていない曝露による健康上のリスクをもたらし得る。さらに、防護装備を洗浄することは、有害な化学物質粒子を含む汚染された廃水を生じる可能性がある。
【0005】
消火活動用に使用されている汚染水を浄化するための装置が特許文献1に開示されている。この装置は、水中に蓄積した煤を除去するためにいくつかのフィルタを備える。しかしながら、特許文献1は汚染水の浄化を開示しているにもかかわらず、消防士によって使用される防護装備を除染するための改良された、健康的な方法に対するニーズが存在する。本発明の目的は、これらの問題を克服することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】カナダ国特許出願公開第2208604号明細書
【発明の概要】
【0007】
本発明の第一の態様によれば、本発明の上記及び他の目的は、請求項1によって定義されるシステムによって全部又は少なくとも部分的に達成される。この請求項によれば、上記の目的は、排出管を介してフィルタユニットに接続された洗浄ユニットを備える、消火活動のための個人用防護装備などの消防装備を洗浄するためのシステムによって達成される。洗浄ユニットは、洗浄液のための少なくとも1つの流入口を有する洗浄チャンバを備え、洗浄ユニットは、洗浄液で消防装備を洗浄するように構成される。このようにして、多環芳香族炭化水素(PAH)を含む汚染洗浄液が得られる。排出管は、汚染洗浄液を洗浄ユニットからフィルタユニットに移送するように構成され、除染洗浄液が得られるように、フィルタユニットは、少なくとも第一のフィルタ及び第二のフィルタ、並びに任意選択で、汚染洗浄液を濾過するように配置された第三及び/又はさらなるフィルタなどの複数のフィルタを備える。前記フィルタの少なくとも1つは粒子フィルタであり、前記フィルタの少なくとも1つは、汚染洗浄液から多環芳香族炭化水素を濾過して除去するように配置される。さらに、フィルタユニットは、除染洗浄液を放出するための排出口を備える。
【0008】
このシステムは、排水管及び環境への化学物質の放出が減少し、消防装備が効率的に除染されるという利点がある。消防設備が除染されると、スタッフの化学物質への曝露が低下する。さらに、自動洗浄システムにより、洗浄及び除染を手作業で行う必要がないため、スタッフへの化学物質の曝露も低下する。したがって、個人用防護装備及び任意選択で他の消防装備を使用するスタッフの健康上の危険が軽減され、そのようなスタッフの健康上の問題が防止される。例えば、個人用防護装備を使用しているスタッフの癌疾患を減らすことができる。
【0009】
一実施形態によれば、システム内で洗浄される装備は、消火活動中に使用された個人用防護装備である。消防士は多くの危険な化学物質に曝露されており、PAH及び他の有毒な化学物質への曝露により癌と診断されるリスクが増加する。
【0010】
別の実施形態によれば、システムはポンプをさらに備える。ポンプは、フィルタの上流に配置されてもよいか、又は第一のフィルタと第二のフィルタとの間に配置されてもよい。ポンプは、フィルタユニット内のフィルタを介して液体の移送を容易にする。ポンプはまた、洗浄ユニットから汚染洗浄液を排出するように配置されてもよい。
【0011】
さらに別の実施形態によれば、汚染洗浄液は、重金属、ペルフルオロアルキル化物質(PFAS)、煤からの残留物、他の有毒又は発癌性の炭化水素、あるいはそれらの組み合わせからなる群から選択される汚染物質をさらに含む。例えば、重金属は、アンチモン、ヒ素、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、クロム、コバルト、銅、鉛、マンガン、水銀、モリブデン、ニッケル、銀、スズ、亜鉛、それらの組成物及び/又はイオン、あるいはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0012】
一実施形態によれば、フィルタは、粒子フィルタ、炭素フィルタ、イオン交換フィルタ、又はそれらの組み合わせである。好ましくは、第一及び第二のフィルタは粒子フィルタであり、第三のフィルタは炭素フィルタである。この組み合わせにより、洗浄液の除染が成功し、洗浄液から大きな粒子及びPAHの両方、非溶解PAH及び溶解PAHの両方が除去される。
【0013】
一実施形態によれば、除染洗浄液が洗浄ユニットに再循環され得るように、排出口は洗浄ユニットと流体連通する。これは、除染洗浄液中の水が再利用されるため有益である。水の再循環により、水の消費量が減り、持続可能な解決策となり、環境に優しくなる。
【0014】
第二の態様によれば、少なくとも1つの流入口を有する洗浄チャンバを備える洗浄ユニットを備える個人用保護装備を洗浄するための方法が提供される。洗浄ユニットは、排出管を介してフィルタユニットに接続される。この方法は、洗浄ユニット内の装備を洗浄液で洗浄するステップであって、それによって、汚染洗浄液を得る、ステップと、排出管を通して洗浄ユニットからフィルタユニットまで汚染洗浄液を移送するステップと、第一、第二、及び任意選択で第三のフィルタなどの複数のフィルタを備えるフィルタユニットを通して汚染洗浄液を濾過するステップであって、前記フィルタの少なくとも1つが粒子フィルタであり、前記フィルタの少なくとも1つが、汚染洗浄液から多環芳香族炭化水素を濾過して除去するように配置されており、それによって、除染洗浄液が得られる、ステップとを含む。任意選択で、この方法は、1つ以上の追加のフィルタを通して汚染洗浄液を濾過するステップを含む。最後に、この方法は、フィルタユニットの排出口を通して除染洗浄液を放出するステップを含む。
【0015】
この方法は、排水管及び環境への化学物質の放出が減少し、個人用防護装備及び他の消防装備が効率的に除染されるため有益である。除染された個人用防護装備により、スタッフへの化学物質の曝露が低下する。さらに、この方法は自動であり、洗浄及び除染を手作業で行う必要がありません。したがって、個人用防護装備を使用しているスタッフの健康上の危険が軽減され、そのようなスタッフの健康上の問題が防止される。例えば、個人用防護装備を使用しているスタッフの癌疾患を減らすことができる。さらに、この方法は、面倒な処理ステップを必要とせず、効率的かつ単純である。
【0016】
さらなる実施形態によれば、除染洗浄液を放出するステップの後に、排出口を洗浄ユニットに接続することによって除染洗浄液を洗浄ユニットに戻すステップが続く。これは、水を再利用できるため、水の消費量が減り、したがって、より環境に優しいプロセスになるため有益である。
【0017】
第二の実施形態によれば、この方法は、ポンプを使用してフィルタユニット内のフィルタの少なくとも1つを通して汚染洗浄液をポンプで汲み上げるステップをさらに含む。ポンプを使用すると、システム内での洗浄液の移送が容易になる。
【0018】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な開示、添付の特許請求の範囲、及び図面から明らかになるであろう。本発明は、特徴のあらゆる可能な組み合わせに関するものであることに留意されたい。
【0019】
一般に、特許請求の範囲で使用される全ての用語は、本明細書で明示的に定義されていない限り、技術分野における通常の意味に従って解釈されるべきである。「1つの(a)/1つの(an)/その[要素、デバイス、コンポーネント、手段、ステップなど]」に対する全ての言及は、明示的に別段の記載がない限り、前記要素、デバイス、コンポーネント、手段、ステップなどの少なくとも1つのインスタンスを指すものとして公然と解釈される。本明細書に開示される任意の方法のステップは、明示的に記載されない限り、開示された順序どおりに実行される必要はない。
【0020】
本明細書で使用される場合、「含む」という用語及びこの用語の変形は、他の添加剤、コンポーネント、整数又はステップを排除することを意図するものではない。
【0021】
例として、本発明の実施形態をここで添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1a】一実施形態による、消防装備を洗浄するためのシステムの概略図である。
【
図1b】別の実施形態による、消防装備を洗浄するためのシステムの概略図である。
【
図1c】さらに別の実施形態による、消防装備を洗浄するためのシステムの概略図である。
【
図2】本開示の一実施形態による洗浄ユニットを示す。
【
図3】消防装備を洗浄するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、消防士によって使用される工具、ハードウェア、ホース及び個人用防護装備(PPE)などの消防装備の浄化及び除染のためのシステム及び方法に関する。例えば、個人用防護装備には、防護服、ブーツ、ヘルメット、フェイスマスク、SCBA及びグローブが含まれる。例えば、個人用防護装備又はその一部は、火災、煙及びガスからの防護を提供するように配置される。例えば、個人用防護装備には、少なくとも断熱層を含むオーバーオール又はズボン及びジャケットの形態の防護服が含まれる。例えば、防護服は、外殻、防湿層、断熱層及び空気ポケットを含む。
【0024】
消防装備を洗浄する場合、多環芳香族炭化水素(PAH)、重金属、ペルフルオロアルキル化物質(PFAS)及び他の有毒炭化水素などの有毒粒子が、装備から洗い流され、使用した洗浄液に分散及び/又は結合する。洗浄の結果、消防装備は除染されるが、洗浄プロセスにより、汚染洗浄液も生じ、環境汚染を回避し、人体への曝露のリスクを減らすために、適切かつ安全に取り扱われる必要がある。
【0025】
要するに、本明細書に開示される消防装備を洗浄するためのシステム及び方法は、洗浄ユニットにおいて装備を洗浄することと、装備を洗浄したときに得られた汚染洗浄液をフィルタユニットに移送することとを含む。次いでフィルタユニットは、洗浄液を浄化し、洗浄液から汚染粒子を除去する複数のフィルタを備える。除染洗浄液が得られ、これは、例えば、下水道に放出されてもよい。
【0026】
本発明者らは、驚くべきことに、本明細書に開示されるような、消防装備を洗浄するための洗浄ユニットとフィルタユニットとの組み合わせにより、消防士及び他の人をPAH、重金属、PFAS及び/又は他の有毒炭化水素から保護するために、個人用防護装備及び洗浄液が除染されることを発見した。汚染洗浄液を浄化することは重要である。なぜなら、汚染洗浄液は、有毒で、場合によっては発癌性のある危険な化学物質及び粒子で汚染されており、それらは環境中に放出されるべきではなく、消防士及び他の人をそれらから保護しなければならないからである。
【0027】
ここで、本発明の一実施形態を
図1a~
図2に関連して説明する。
図1aを参照すると、本明細書に開示される個人用防護装備などの消防装備を洗浄するためのシステム100の実施形態が示される。システム100は、洗浄ユニット110及びフィルタユニット150を備える。洗浄ユニット110は、排出管120を介してフィルタユニット150に接続され、フィルタユニット150は排出口170を備える。個人用防護装備105又は他の消防装備は洗浄ユニット110内に配置される。装備105を洗浄するために、洗浄液CLが洗浄ユニット110に提供される。
【0028】
洗浄ユニット110で使用される洗浄液CLは、例えば、水(逆浸透(RO)水又は超純水であり得る)、洗剤、又は液体溶媒、あるいはそれらの組み合わせを含み得る。
【0029】
排出管120は、汚染洗浄液CCLをフィルタユニット150に移送する。
図1a~1cに示されるように、除染洗浄液DCLは排出口170を通ってフィルタユニット150を出て、下水道Sに放出される。あるいは、除染洗浄液は、排水溝、例えば、下水道又は同様のものにアクセスできない場合、環境に排出される。
【0030】
洗浄ユニット110は、消防士のための個人用防護装備などの消防装備105を除染及び洗浄するように適合される。洗浄ユニット110は、その中に配置された個人用防護装備をすすぎ、洗浄するために、洗浄ユニット110内のノズルなどの固定又は可動式流入口(
図2に示す)を使用することができる。さらに、洗浄ユニット110は、防護装備105から汚染物質を除去するために、灌水(irrigation)と組み合わせてブラシなどの1つ以上の機械的洗浄装置を備えてもよい。
【0031】
超音波洗浄も洗浄ユニット110に使用されてもよい。このような場合、洗浄ユニット110は、防護装備105を洗浄するために洗浄液CLに振動を引き起こす超音波を発生する超音波発生トランスデューサを備える。
【0032】
さらに、洗浄ユニット110は、防護装備105を保持するように構成された回転バスケットと、前記バスケットを回転させるように構成されたモータとを備えてもよい。洗浄ユニット110はさらに、例えば、SCBA単/二重シリンダ用のホルダ、SCBAジャンボシリンダ用のホルダ、フェイスマスク、ヘルメット、グローブ及び/又はブーツ用のギアホルダを備えてもよい。
【0033】
装備の満足のいく洗浄を達成するためのさらに別の代替案は、浸漬ステップ(soaking step)、その後のブラッシング及び/又は灌水を使用すること、及び/又は洗浄ユニット110内で超音波洗浄を使用することである。さらに、装備105は、洗浄ユニット110内に固定して配置されていてもよいか、又は効率的な洗浄を達成するために洗浄ユニット110内で動いていてもよい。洗浄ユニット110の実施形態の例は、
図2を参照してより詳細に説明する。
【0034】
図1a~
図1cのフィルタユニット150は、互いに順番に配置された第一、第二、及び第三のフィルタF
1、F
2、F
3を有する。本発明によれば、フィルタユニット150は、少なくとも第一のフィルタ及び第二のフィルタを備え、第三のフィルタ及び追加のフィルタは任意選択である。フィルタF
1、F
2、F
3は、粒子フィルタ、化学フィルタ(炭素フィルタなど)、イオン交換フィルタ、又はそれらの組み合わせであってもよい。フィルタF
1、F
2、F
3のうちの2つ以上を、異なるフィルタリング機能を有する1つのフィルタデバイスとして組み合わせることができる。任意選択で、フィルタユニット150は、フィルタリング技術として凝集(flocculation)を使用することができる。
【0035】
好ましくは、第一のフィルタFiは粒子フィルタである。例えば、第一及び第二のフィルタF1、F2は、粒子フィルタF1、F2である。第三のフィルタF3は、例えば、炭素フィルタである。第一のフィルタF1は第二のフィルタF2の上流に配置され、第二のフィルタF2は第三のフィルタF3の上流に配置される。したがって、汚染洗浄液CCLは、第一のフィルタF1に遭遇して通過し、続いて第二のフィルタF2及び第三のフィルタF3に遭遇して通過する。好ましくは、第一の粒子フィルタF1は、第二の粒子フィルタF2よりも粗いフィルタである。一実施形態によれば、第一の粒子フィルタF1は、破片(debris)を濾過して除去し、後続のフィルタF2、F3及び/又は他の装備を保護するための100~300μmの粒子フィルタである。例えば、第一のフィルタF1は交換可能なバッグフィルタである。一実施形態によれば、第二のフィルタF2は1~5μmの粒子フィルタである。あるいは、第二のフィルタは炭素フィルタである。第二のフィルタF2は、例えば、未溶解粒子、未溶解炭化水素、煤及び同様のもの含む、消火活動からの粒子を濾過して除去するために配置される。第三のフィルタF3は、洗浄液CL中に溶解しているPAHなどの炭化水素を濾過して除去するために配置される。さらに、フィルタユニット150は、第四のフィルタ(図示せず)、並びに任意選択で第五及びさらなるフィルタ(図示せず)も備えることができる。第四のフィルタは、例えば、重金属を濾過して除去するために配置され、第五のフィルタはPFASフィルタである。あるいは、第四のフィルタはPFASフィルタである。一実施形態によれば、フィルタユニット150、又は例えばその第三のフィルタF3は、ベンゾ(a)アントラセン、ベンゾ(b)フルオランテン、ベンゾ(k)フルオランテン、クリセン、ベンゾ(a)ピレン及びジベンゾ(ah)アントラセンのうちの1つ以上を濾過して除去するために配置される。例えば、第四又は第五のフィルタなどのフィルタの1つは、アンチモン、ヒ素、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、クロム、コバルト、銅、鉛、マンガン、水銀、モリブデン、ニッケル、銀、スズ、亜鉛、それらの組成物及び/又はイオン、あるいはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、1つ以上の重金属を濾過して除去するために配置される。
【0036】
図1b及び
図1cに示されるように、フィルタユニット150はポンプ130を備える。
図1bのポンプ130は第一の粒子フィルタF
1の上流に配置され、
図1cのポンプ130は第一の粒子フィルタF
1と第二の粒子フィルタF
2との間に配置される。ポンプ130は、フィルタユニット150内のフィルタF
1、F
2、F
3を通る液体の移送を容易にする。任意選択で、ポンプ130は、フィルタユニット150の外側、又は第二のフィルタF
2と第三のフィルタF
3との間に配置されてもよい(図示せず)。一実施形態によれば、ポンプ130はダイヤフラムポンプである。
【0037】
図2は、一実施形態による洗浄ユニット110の一実施形態を示す。洗浄ユニット110は、消防士用の個人用防護装備を洗浄するために特に設計される。あるいは、洗浄ユニット110は、消防装備を洗浄するために設計される。
図2の洗浄ユニット110は、洗浄液CLのためのノズル102などの流入口を備えた洗浄チャンバ101と、制御パネル103とを備える。さらに、洗浄ユニット110は、洗浄チャンバ101を閉鎖するためのドア104を備える。例えば、ドア104は上部ドアであり、洗浄ユニットは、ハンドル107を有する下部ドア106をさらに備える。排出管120は、洗浄ユニット110の背面に接続される。さらに、
図2の洗浄ユニット110は、洗浄液CLを噴出する流入口又はノズル102が、防護装備の狭くて時には届きにくい空間にも届いて除染することを可能にする回転バスケット(図示せず)を特徴とする。
【0038】
本明細書に開示されるシステム100及び方法300は、消防用防護装備105と、消防用防護装備105とを洗浄するときに得られた汚染洗浄液CCLを除染するのに特に効率的である。PAHは、消火中に存在する有毒化合物の群の1つである。
【0039】
PAHは炭化水素であり、炭素及び水素のみを含む化合物であり、その分子は複数の芳香環から構成される。芳香族多環式炭化水素は、様々な数の環、及び様々なサイズの環を有することができ、芳香族ではないものも含む。したがって、PAHファミリー内の化合物のサイズは異なる。より大きなPAHは一般に水に不溶であるが、一部のより小さなPAHは水溶性であり、飲料水の汚染物質として知られている。PAH群のより大きなメンバーはまた、有機溶媒及び脂質に溶解しにくい。PAHの多くは石炭及び石油鉱床に見出され、有機物の熱分解によっても生成される。癌は、PAHへの曝露による人の主な健康リスクである。PAHへの曝露はまた、心血管疾患及び胎児の発育不良とも関連している。
【0040】
システム100を操作するために、汚染された個人用防護装備105は、洗浄ユニット110内の好ましくはバスケットに入れられて、閉められ(ドア104、106を使用して)、開始する。保護装備105が洗浄されるとき、洗浄ユニット110は、保護装備105から汚染粒子及び/又は分子を放出し、洗浄液CL中の汚染物質を結合する。したがって、保護装備105は除染され、有毒汚染物質を含む汚染洗浄液CCLが得られ、これは排出管120を通って洗浄ユニット110から排出される。
【0041】
したがって、汚染洗浄液CCLは、排出管120を通って洗浄ユニット110から排出され、フィルタユニット150内に移送される。フィルタユニット150内で、汚染洗浄液CCLは、フィルタF1、F2、F3の各々を通過する。
【0042】
第一の粒子フィルタF1及び第二の粒子フィルタF2は、汚染洗浄液CCLに含まれる粒子を機械的に捕捉し、一方、炭素フィルタF3は、不要な汚染粒子及び分子の化学結合により汚染洗浄液CCLを化学的に浄化する。最も粗い粒子フィルタF1は、閾値サイズよりも大きい粒子を除去し、次にあまり粗くない粒子フィルタF2がさらに小さい粒子を除去する。したがって、第一の粒子フィルタF1は、砂利、砂などの粗い汚染物質を除去し、一方、第二の粒子フィルタF2は、煤又は非溶解PAHなどの非溶解粒子を洗浄液CLから除去する。最後に、化学炭素フィルタF3は、洗浄液CL中に溶解して残留する有害粒子の量を低減する。例えば、PAHは洗浄液中に溶解しているので、第二の粒子フィルタF2を通過する際に洗浄液CLから分離されない。機械的濾過と化学的濾過の両方を組み合わせることで、汚染洗浄液CCLの効率的で満足のいく浄化が達成される。
【0043】
汚染洗浄液CCLが3つのフィルタF1、F2、F3を通過すると、それは除染され、除染洗浄液DCLが得られる。除染洗浄液DCLは、排出口170を通ってフィルタユニット150を出て、除染洗浄液DCLを下水道S(あるいは自然中又は雨水中)に導き、放出することができる。
【0044】
任意選択で、
図1a~
図1cの破線で示されるように、排出口170は、除染洗浄液DCLを再利用できるように、除染洗浄液DCLを連続的又は断続的に洗浄ユニット110に戻してもよい。このようにして、除染洗浄液DCLは再循環され、例えば、後の洗浄サイクルにおいて水を使用する必要性を少なくする。
【0045】
図3を参照すると、個人用防護装備105などの消防装備を洗浄するための方法300のフローチャートが示される。方法300は、洗浄液CLを使用して洗浄ユニット110において装備105を洗浄する第一のステップ310を含む。さらに、装備105を洗浄するステップ310は、装備105を浸漬することを含んでもよい。任意選択で、洗浄するステップ310は、装備105をブラッシングすること、及び/又は好ましくは洗浄ユニット110内に配置されたノズル/ジェット102を使用することによって装備105に洗浄液CLを噴霧すること、及び/又は装備105を洗浄ユニット110内で回転/移動させることをさらに含んでもよい。さらに、洗浄するステップ310は、超音波洗浄を使用して実行されてもよい。
【0046】
第二のステップでは、方法300は、装備105を洗浄したとき(310)に得られた汚染洗浄液CCLを洗浄ユニット110からフィルタユニット150に移送するステップ320を含む。任意選択で、方法300は、ポンプ130を使用してフィルタユニット150内のフィルタF
1、F
2、F
3のうちの少なくとも1つを通して汚染洗浄液CCLをポンプで汲み上げるステップ330をさらに含む。任意選択のポンプで汲み上げるステップ330は、
図3に破線で示されている。
【0047】
次に、方法300は、少なくとも第一の粒子フィルタF1、第二の粒子フィルタF2、及び炭素フィルタF3を含むフィルタユニット150内で汚染洗浄液CCLを濾過するステップ340を含む。濾過するステップ340は、汚染洗浄液CCLが濾過ユニット150内のフィルタを次々と通過するときに行われる。あるいは、この方法は、少なくとも第一のフィルタ及び第二のフィルタ、並びに任意選択で第三及び追加のフィルタを通して濾過するステップを含み、第一のフィルタは粒子フィルタであってもよく、第二のフィルタはより小さい粒子のための粒子フィルタ、炭素フィルタ又はPFASフィルタであってもよい。例えば、この方法は、第四のフィルタ、任意選択で第五及び追加のフィルタも通して濾過することを含み、第四のフィルタ及び第五のフィルタの一方は重金属フィルタであり、他方はPFASフィルタである。例えば、この方法は、アンチモン、ヒ素、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、クロム、コバルト、銅、鉛、マンガン、水銀、モリブデン、ニッケル、銀、スズ、亜鉛、それらの組成物及び/又はイオン、あるいはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、1つ以上の重金属を濾過して除去するステップを含む。
【0048】
続いて、方法300は、除染洗浄液DCLをフィルタユニット150から排出口170を通して放出するステップ350を含む。
【0049】
方法300は、排出口170を洗浄ユニット110に接続することによって、除染洗浄液DCLを洗浄ユニット110に戻す任意選択のステップ360をさらに含む。
【0050】
特許請求の範囲において、「含む/含んでいる」という用語は、他の要素又はステップの存在を排除するものではない。さらに、個別に列挙されているが、複数の手段、要素、又は方法ステップは、例えば、単一のユニット又はプロセッサによって実装されてもよい。さらに、個々の特徴が異なる請求項に含まれる場合があるが、これらは場合により有利に組み合わされてもよく、異なる請求項に含まれることは、特徴の組み合わせが実現不可能及び/又は有利ではないことを意味するものではない。さらに、単数の参照は複数を排除するものではない。「1つの(a)」、「1つの(an)」、「第一の」、「第二の」などの用語は、複数を排除するものではない。特許請求の範囲における参照符号は、単に明確な例として提供されており、いかなる形でも特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【国際調査報告】