(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-18
(54)【発明の名称】アイトラッキング
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20240611BHJP
A61B 3/113 20060101ALI20240611BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G06F3/01 510
A61B3/113
G02B27/02 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571964
(86)(22)【出願日】2022-05-13
(85)【翻訳文提出日】2024-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2022063018
(87)【国際公開番号】W WO2022243185
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521548733
【氏名又は名称】アーエムエス インターナショナル アーゲー
【氏名又は名称原語表記】AMS INTERNATIONAL AG
【住所又は居所原語表記】Eichwiesstrasse 18b, Jona, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パパドプーロス イオアニス
(72)【発明者】
【氏名】ナイエル ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ザゴラ フォルカー
(72)【発明者】
【氏名】スアレス フェラン
【テーマコード(参考)】
2H199
4C316
5E555
【Fターム(参考)】
2H199CA04
2H199CA42
2H199CA45
2H199CA68
2H199CA96
4C316AA21
4C316AB01
4C316FC04
4C316FC28
4C316FY01
4C316FZ03
5E555AA79
5E555BA38
5E555BB38
5E555BE17
5E555CB65
5E555DA08
5E555FA00
(57)【要約】
ユーザの頭部に装着するためのフレーム(2)に組み込むアイトラッキング装置(1)は、フレームに固定するためのレーザ出力ユニット(4)であって、使用時にユーザの眼(8)の角膜(7)を照明するためのレーザビーム(6)を提供するように構成されている、レーザ出力ユニット(4)と、フレーム(2)に固定するための受光器ユニット(4)であって、レーザビーム(6)の反射を受光して、角膜(7)の距離または速度を求めるために使用可能なトラッキング信号を提供するように構成されている、受光器ユニット(4)と、を備える。本装置は、トラッキング信号からユーザの眼(8)の回転を求める処理ユニット(9)をさらに備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの頭部に装着するためのフレーム(2)に組み込むアイトラッキング装置(1)であって、
前記フレーム(2)に固定するためのレーザ出力ユニット(4)であって、使用時に前記ユーザの眼(8)の角膜(7)を照明するためのレーザビーム(6)を提供するように構成されている、前記レーザ出力ユニット(4)と、
前記フレーム(2)に固定するための受光器ユニット(4)であって、前記レーザビームの反射を受光して、前記角膜(7)の距離または速度を求めるために使用可能なトラッキング信号を提供するように構成されている、前記受光器ユニット(4)と、
前記トラッキング信号からユーザの眼(8)の回転を求める処理ユニット(9)と、を備える、アイトラッキング装置(1)。
【請求項2】
前記レーザ出力ユニット(4)は、少なくとも3つの空間的に分離されたレーザビーム(6)を提供するように構成されており、前記受光器ユニット(4)は、前記少なくとも3つの空間的に分離されたレーザビーム(6)の反射を受光するように構成されている、請求項1に記載のアイトラッキング装置(1)。
【請求項3】
前記少なくとも3つの分離されたレーザビーム(6)は、使用時に、ユーザの眼(8)の角膜(7)上で3.5°~20°の範囲の角距離だけ分離される、請求項2に記載のアイトラッキング装置(1)。
【請求項4】
前記レーザ出力ユニット(4)は、前記レーザビームを放出するためのレーザ光源を備える、請求項1、2または3に記載のアイトラッキング装置(1)。
【請求項5】
前記レーザ出力ユニット(4)は、前記レーザビームを放出するためのレーザ光源に接続された光導波路を備える、請求項1、2または3に記載のアイトラッキング装置(1)。
【請求項6】
前記レーザ出力ユニット(4)は、前記受光器ユニット(4)でもあり、前記トラッキング信号は、前記レーザ光源での自己混合干渉によって提供される、請求項4または請求項5に記載のアイトラッキング装置(1)。
【請求項7】
前記トラッキング信号は、前記レーザ光源の光出力から求められる、請求項4、5または6に記載のアイトラッキング装置(1)。
【請求項8】
前記トラッキング信号は、前記レーザ光源へ入力される電流または電圧から求められる、請求項4、5または6に記載のアイトラッキング装置(1)。
【請求項9】
前記レーザ光源は、垂直共振器面発光レーザVCSELである、請求項4~8のいずれか1項に記載のアイトラッキング装置(1)。
【請求項10】
前記フレーム(2)に固定するための1つ以上の光学要素(5、10、11、22)をさらに備え、前記1つ以上の光学要素(5、10、11、22)が、前記角膜(7)を照明するための前記レーザビーム(6)を変調するように構成されている、請求項1~9のいずれか1項に記載のアイトラッキング装置(1)。
【請求項11】
前記1つ以上の光学要素(5、10、11、22)は、前記角膜(7)の平面波照明(12、15)を提供するためのコリメートレンズである、請求項10に記載のアイトラッキング装置(1)。
【請求項12】
前記1つ以上の光学要素(5、10、11、22)は、前記レーザビームを前記角膜(7)に集束させるための集束レンズである、請求項10に記載のアイトラッキング装置(1)。
【請求項13】
前記1つ以上の光学要素(5、10、11、22)は、反射レンズである、請求項10、11または12に記載のアイトラッキング装置(1)。
【請求項14】
前記レーザ出力ユニットは、使用時に、前記ユーザの頭部の側面に沿って延在する前記フレームのステムに固定されるように構成されている、請求項13に記載のアイトラッキング装置(1)。
【請求項15】
ユーザの頭部に装着するためのフレーム(2)と、前記フレーム(2)に組み込まれた請求項1~14のいずれか1項に記載のアイトラッキング装置(1)とを備える、仮想現実VRヘッドセットまたは拡張現実ARヘッドセット。
【請求項16】
アイトラッキングの方法であって、
ユーザの頭部にフレームを装着することと、
前記フレームに固定されたレーザ出力ユニットによって提供されるレーザビームを用いて、前記ユーザの眼の角膜を照明することと、
前記フレームに固定された受光器ユニットを用いて、前記レーザビームの反射を受光して、前記角膜の距離または速度を求めるために使用可能なトラッキング信号を提供することと、
処理ユニットを用いて、前記トラッキング信号から前記ユーザの眼の回転を求めることと、を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アイトラッキング装置、特に、ユーザの頭部に装着するためのフレームに組み込む装置、例えばARスマートグラスに組み込む装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アイトラッキングは、例えば拡張現実(AR)用途において多様なアプリケーションのセットを可能にし得る重要なユーザ側センシングモダリティである。
【0003】
最先端のアイトラッキングセンシングモダリティは、イメージングセンサを使用する眼及び角膜のイメージングと、取得した画像のデータ処理に基づく注視ベクトルの識別とに依存する。そのようなアプローチは、高い電力消費、低い精度、及び/または緩慢なデータ収集になる傾向がある。同様に重要なのは、イメージングセンサの配置が、取得されるデータの品質を最大化するように選択されることであり、その結果、軸受装置の視野を妨げる配置に至る。
【0004】
理想的なアイトラッキングソリューションは、低消費電力であり、正確であり、高速でなくてはならず、軸受装置に簡単に組み込める小さなフォームファクタを有するべきである。現在のシステムでは、これらの特徴の全てを揃えて提供することができない。
【発明の概要】
【0005】
上記の課題の少なくとも一部を解決するために、レーザ光を用いて角膜上の特定点の距離を測定し、この情報を用いて眼の回転位置を推定する装置を提供する。
【0006】
本開示の第1の態様によれば、ユーザの頭部に装着するためのフレーム(例えば、スマートグラス、ARヘッドセット、VRヘッドセット、ヘルメットなど)に組み込むアイトラッキング装置であって、フレームに固定するためのレーザ出力ユニットであって、使用時にユーザの眼の角膜を照明するためのレーザビームを提供するように構成されている、レーザ出力ユニットを備える、アイトラッキング装置が提供される。本装置は、さらに、フレームに固定するための受光器ユニット(SMIを使用する場合には、レーザ出力ユニットと同一であってよい)であって、レーザビームの反射を受光して、角膜の距離または速度を求めるために使用可能なトラッキング信号を提供するように構成されている、受光器ユニットと、トラッキング信号からユーザの眼の回転を求める処理ユニットと、を備える。したがって、本アイトラッキング装置は、眼のイメージングを必要としない。
【0007】
好ましくは、アイトラッキング装置は、ユーザの目の角膜上の異なる点を照明するための少なくとも2つの空間的に分離されたレーザビームを提供し、受光器ユニットは、両方のレーザビームからの反射を受光し、受光した反射のそれぞれに対して、角膜のそれぞれの点の距離または速度を求めるために使用可能なトラッキング信号を提供するように構成されている。2つ以上のレーザ光を用いることにより、アイトラッキングの精度を向上させることができる。より好ましくは、少なくとも3つの空間的に分離されたレーザビームが、レーザ出力ユニットによって提供される。この場合もやはり、本装置は、各レーザビームがユーザの眼の角膜上の異なる点を照明するように構成されている。受光ユニットは、少なくとも3つのレーザビームからの反射を受光して、対応するトラッキング信号を提供するように構成されている。そして、トラッキング信号は、ユーザの眼の回転を(例えば角膜の異なる点の距離の変化または速度から)求めるために使用され得る。(3つのレーザ光源からの)少なくとも3つのレーザビームを使用することによって、精度をさらに向上させることができる。
【0008】
複数のレーザビームを有する場合には、ビームをユーザの眼の角膜上に対称的に分布させることができる。例えば、3つのレーザビームは、正三角形を形成する角膜上の3つの点を照明することができる。眼の回転を、ある方向にトラッキングすることが他の方向よりも重要である(例えば正確な水平方向のトラッキングが鉛直方向のトラッキングよりも重要である)用途では、角膜へのレーザビーム照明の他の分布が適切であり得る。例えば、非対称の分布がいくつかの用途に用いられてもよい。
【0009】
レーザ光源は、眼、特に角膜にわたって照明野を生成するために、それ自体で、または光学要素と共に使用される。実際の幾何学的形状に応じて、角膜表面上の特定の位置が、この照明野の検出可能な反射を発生させることになる。角膜は眼の回転点からずれた球面であるため、眼が回転すると、角膜が変位することになる。これにより、レーザ信号で測定された角膜のターゲット点変位が、眼の回転に関連付けられる。提案の方法では、角膜上の特定の点の相対的な距離変化から眼の回転を推測するので、開始位置を中心とした所与の円錐内で眼が回転すると、同じ距離変化が起こり、その結果、測定と回転との間に不確実性が生じる。これを克服するために、さらに、好ましくは、位置の異なる少なくとも3つのレーザビームを使用することができる。
【0010】
レーザ出力ユニットは、一般的には、レーザダイオード、例えば端面発光レーザ、分布帰還型(DFB)レーザ、分布ブラッグ反射器(DBR)レーザ、または垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)など、レーザ光源(各レーザビームに対して1つずつ)を含む。代替的に、レーザ出力ユニットは、レーザ光源に接続された光導波路を備えてもよい。導波路は、典型的には、単一波モードファイバ光導波路である。レーザ出力ユニットは、複数(典型的には3つ)のレーザビームを提供するために、それぞれのレーザ光源に接続された複数の導波路を含んでもよい。したがって、実際のレーザ光源は、組み込み装置の外(すなわち、フレームの外)に位置しているが、導波路を介して装置に接続されていてもよい。レーザ光源は、正確な距離/変位測定のために、極単色(狭帯域)であり、高コヒーレンスを有さなければならない。VCSELには、比較的安価で消費電力が低いという利点がある。レーザ光源は、赤外線スペクトルまたは近赤外線スペクトルの波長で動作するように構成することができる。例えば、レーザ光源は、850nm~1500nmの範囲の波長、例えば940nmの波長の光を放出するように構成されてもよい。より長い波長は、一般に、眼の安全性の点でより望ましく、したがって、比較的高い出力パワーで使用することができ、その結果、より良好な信号を提供することができる。
【0011】
有利には、レーザ出力ユニットは受光器ユニットでもあり、トラッキング信号(複数可)は、放射されたレーザビームと受光されたレーザビームとの間の位相差を測定することによって提供される。具体的には、レーザ光源で自己混合干渉が発生する自己混合干渉法SMIを、トラッキング信号としてSMI信号を提供するために使用することができる。SMIは、反射光を受光するための追加のフォトダイオードを必要とすることなく、正確な距離/変位測定を可能にする。SMIを用いると、照明光の一部が角膜表面で反射され、それぞれのレーザ光源に戻される。レーザ共振器内に戻って結合された反射光が、元のレーザ光と干渉して、レーザ発光特性が変調される。レーザ発光特性における変化(例えば、レーザパワー出力、接合電圧等)を測定することにより、遠隔ターゲット(角膜表面上の特定の点)の相対的な位置変化に関する情報を提供することができる。
【0012】
SMIでは、光学的検出を使用することができ、ここでは、各トラッキング信号が、各レーザ光源の光出力から求められる。例えば、レーザ光源の近くにフォトダイオードを設置して、レーザ光源の出力強度を測定することができる。フォトダイオードは、レーザエピタキシに集積されてもよく、またはレーザ光源の後方に配置されて、アイエミッションとは反対側でレーザミラー上のパワー出力を監視するように配列されてもよい。代替的に、各トラッキング信号は、それぞれのレーザ光源に入力される電流または電圧から求められてもよい。SMIはレーザ出力に影響を及ぼすので、これはレーザ光源への電力供給にも影響を及ぼし、この電力供給が、距離/変位を求めるために測定されてもよい。
【0013】
空間的に分離されたレーザビームは、使用時に、ユーザの眼の角膜上で3.5°~20°の範囲の角距離だけ分離され得る。例えば、3つのレーザ光源を使用する構成では、レーザビームは、約17°の最小角距離だけ分離されてもよい。レーザ光源の角距離の他の値も可能であり、これは使用されるレーザビームの数に依存し得る。空間的に分離されたレーザビームは、3~12の範囲の数のレーザビームを含む場合がある。(3つのレーザ光源からの)3つのレーザビームは正確なアイトラッキングを提供することができるが、アイトラッキングを改善するために、または(例えば、万一1つのレーザ光源が故障した場合に)システムに冗長性を提供するために、より多くのビームを使用してもよい。しかしながら、光源の数が増えると、装置の複雑さ及び電力消費が増大する可能性がある。
【0014】
本装置はさらに、フレームに固定され、角膜に照明されるレーザビームを変調するように構成された1つ以上の光学要素を含むことができる。例えば、1つ以上の光学要素は、角膜の平面波照明を提供するためのコリメートレンズであってもよい。代替形態として、1つ以上の光学要素は、レーザビームを角膜に集束させるための集束レンズであってもよい。光学要素は、反射レンズであってもよい。この場合、レーザ出力ユニットは、ユーザの頭部の側面に沿って延在するフレームのステムに固定することができる。代替的に、1つ以上の光学要素は、透過レンズであってもよい。レーザ出力ユニットは、例えばユーザの眼の前に配置することができる。
【0015】
レーザは、平面波照明から角膜表面上の単一焦点スポットまで、角膜表面上に任意の範囲の照明野を作るために、光学要素(複数可)と共に使用され得る。例えば、これは、レンズとレーザ光源との間の距離を変化させることによって達成することができる。角膜の球面は、光の一部を逆向きに反射し、この光は、同じまたは異なる光学要素と相互作用して、受光ユニットに向かって方向転換されることになる(SMIを使用する場合にはレーザに戻る)。トラッキング信号に基づいて、遠隔ターゲットの深度変化を推測し、これを眼の回転と関連付けることができる。光学要素(複数可)は、体積位相型ホログラフィック(VPH)、液晶偏光回折格子(LCPG)、及びホットミラー等のいずれかを含み得る。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様によるアイトラッキング装置を用いて実施可能なアイトラッキングの方法が提供される。本方法は、ユーザの頭部にフレームを装着すること(例えば、眼鏡をかけること)と、フレームに固定されたレーザ出力ユニットによって提供されるレーザビームを用いて、ユーザの眼の角膜を照明することと、フレームに固定された受光器ユニットを用いて、レーザビームの反射を受光して、角膜までの距離または角膜の速度を求めるために使用可能なトラッキング信号(例えば、SMI信号)を提供することと、を含む。本方法は、処理ユニットを用いて、トラッキング信号からユーザの眼の回転を求めることをさらに含む。したがって、アイトラッキングの本方法は、眼のイメージングを必要としない。
【0017】
好ましくは、少なくとも3つの空間的に分離されたレーザビームが、少なくとも3つのトラッキング信号を提供するために使用され、これらのトラッキング信号が、ユーザの眼の回転を求めるために合わせて使用され得る。
【0018】
本開示は、少数の照明要素及び検出要素を使用して複雑性の低いソリューションをもたらすアイトラッキングソリューションを提供する。フレーム上の光学要素を使用することにより、センシングモジュールを、装置の異なる位置(例えばステム上)へ柔軟に配置して、目立たないアイトラッキングを可能にし得る。データ収集が(限られた数のフォトダイオードから信号が読み出されるため)減ることで、データレートが向上し得る。
【0019】
本開示の具体的な実施形態を、添付の図面を参照しながら以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本開示の実施形態による、アイトラッキング装置を含むスマートグラスを示す。
【
図2】ある実施形態によるアイトラッキング装置の一部を示す。
【
図3】ある実施形態による使用中のアイトラッキング装置の一部を示す。
【
図4】眼の角膜から反射されたレーザビームを示す。
【
図5a】コリメート透過レンズを備えたアイトラッキング装置の一部を示す。
【
図5b】弱く集束する透過レンズを備えたアイトラッキング装置の一部を示す。
【
図5c】強く集束する透過レンズを備えたアイトラッキング装置の一部を示す。
【
図6a】コリメート反射レンズを備えたアイトラッキング装置の一部を示す。
【
図6b】弱く集束する反射レンズを備えたアイトラッキング装置の一部を示す。
【
図6c】強く集束する反射レンズを備えたアイトラッキング装置の一部を示す。
【
図7】反射レンズ上の位置に対してVCSELレーザ光源上の反射レーザビームの位置をプロットしたグラフを示す。
【
図8】ホログラフィック光学要素(HOE)ミラーを備えたアイトラッキング装置の一部を示す。
【
図9】眼の20°の回転による光路差(OPD)を示す。
【
図10】1つのレーザ光源に対するOPDの等高線を示す。
【
図11】1つのレーザ光源についての回転方向に対する回転測定の精度をプロットしたグラフを示す。
【
図12】2つのレーザ光源に対するOPDの等高線を示す。
【
図13】2つのレーザ光源についての回転方向に対する回転測定の精度をプロットしたグラフを示す。
【
図14】3つのレーザ光源に対するOPDの等高線を示す。
【
図15】3つのレーザ光源についての回転方向に対する回転測定の精度をプロットしたグラフを示す。
【
図16】レーザビーム間の角距離が17°の3レーザ光源構成を使用する任意の方向の回転と、x軸及びy軸を中心とした-30°~30°の眼の任意の回転位置とに対する最小精度のグラフを示す。
【
図17】3.5°の角距離だけ分離された3つのレーザ光源に対するOPDの等高線を示す。
【
図18】レーザビーム間の角距離が3.5°の3レーザ光源構成を使用する任意の方向の回転と、x軸及びy軸を中心とした-30°~30°の眼の任意の回転位置とに対する最小精度のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、ステム3を有するフレーム2を含む眼鏡(例えば、ARスマートグラス)に組み込まれたアイトラッキング装置1を示す。装置1は、VCSELレーザである3つのレーザ光源を含むレーザ出力ユニット4と、レーザ出力ユニット4からのレーザビーム6を変調する光学要素5とを備える。光学要素5は、反射及びコリメートレンズ(例えばブラッグ反射器)であり、これは眼鏡のユーザ/装用者の眼8の角膜7に平面波照明野を提供する。レーザビーム6の一部は、角膜7から逆向きに反射して、レーザ出力ユニット4に跳ね返る。したがって、レーザ出力ユニット4は、反射光を受光するための受光器ユニットでもある。反射光は、いわゆる自己混合干渉を介してレーザ光源のレーザ場に干渉し、これはレーザの出力を変化させる。レーザの出力強度またはレーザ光源への入力電圧もしくは入力電流を監視することによって、角膜7までの距離及び/または角膜7の速度を求めることができる。装置1は、自己混合干渉法(SMI)に基づいて角膜7までの距離を求めるための処理ユニット9を含む。ユーザの眼8が動くと、角膜7上の反射点までの距離が変わり、レーザ光源と角膜7との間の距離が変化する。それゆえに、眼の動きを検出することができる。眼の全方向への回転を正確に求めるために、少なくとも3つの角度分離されたレーザビーム6が使用される。より多くのビームを、より正確なアイトラッキングのために、及び/またはシステムに冗長性を持たせるために、用いることができる。しかしながら、3つのレーザビーム6のみを使用することの利点は、電力消費を低くし、フォームファクタを小さくすることが可能なことである。装置1はまた、レーザ出力ユニット4からのレーザビーム6を方向転換させるためのミラーである第2の光学要素10を含む。さらなる光学要素により、レーザ出力ユニット4の配置の自由度を高めることができる。
【0022】
別の実施形態では、レーザ出力ユニット4は、眼8の前のフレームに配置され、反射要素を必要とすることなく、レーザビーム6を角膜7上に直接伝送することができる。また、レーザ出力ユニット4にレーザ光源を設ける必要もない。その代わりに、レーザ光源を装置の外に配置し、レーザビーム6を伝送するための導波路に接続してもよい。
【0023】
この実施形態によれば、角膜7上の特定の点の相対的な深度変化を測定し、この情報を用いて眼8の注視方向を推定するために、少数の照明装置及び検出装置を備えたアイトラッキング装置1が提供される。各点の深度変化を検出するために使用されるSMI信号は、レーザ光源に集積されたフォトダイオードを用いて、またはゲート電圧の直接的な測定を介して、測定することができる。レーザ照明及びレーザ検出を使用することにより、センシングモジュールと、接眼部内に配置された高度に透明で効率的な反射光学構成要素との組み合わせが可能になる。まさにこれにより、ヘッドウェアラブルデバイスのステム3内にセンシングモジュールを柔軟に配置することが可能になる。SMI検出(関心点の非常に小さい深度変化を測定可能)と、特定の幾何学的形状における様々な照明源及び検出源の配置との組み合わせにより、眼の全回転空間にわたって非常に高い精度が可能になる。最後に、最低3つの光源(各光源が潜在的により低消費電力のVCSELである)を含む本ソリューションは、全体的に低い電力消費をもたらす。
【0024】
図2は、ホログラフィック楕円鏡11から反射して、ターゲット13(例えばユーザの眼の角膜)上に平面波照明野12を提供する発散レーザビーム6の概略図を示す。ホログラフィック楕円鏡11は、平面波照明を提供するために、
図1のアイトラッキング装置1における光学要素として使用することができる。異なる図において同等または類似の特徴を参照するために、明瞭化のため、同じ参照数字を使用しているが、これは図示した実施形態を限定することを意図したものではない。
【0025】
図3は、光学要素5が眼8の角膜7を照明するための反射レンズである場合のレーザビーム6を示す。この光学要素は、平面波を提供するために、
図2に例示されたようなホログラフィック楕円鏡(HOE)であってもよい。
【0026】
図4は、反射したレーザビーム14を示す。レーザビーム14は、角膜7から反射される。角膜が湾曲しているため、反射したレーザビーム14は発散している。反射したレーザビーム14は、
図3に例示されるレーザビーム6の反射であり得る。
【0027】
図5a~
図5cは、レーザ出力ユニット4と、(反射レンズではなく)透過レンズである光学要素5とを有する実施形態によるアイトラッキング装置の一部を示す。光学要素は、眼8の角膜7上に照明野を提供する。
図5aは、コリメートレンズを用いた実施形態を示しており、当コリメートレンズにより平面波照明15が提供されている。
図5bは、角膜7の表面の後方に焦点がある、弱く集束するレンズが、弱く集束された照明16を提供する実施形態を示す。
図5cは、強く集束された照明17を提供するために、実質的に角膜7の表面に焦点がある、強く集束するレンズを備えた実施形態を示す。
【0028】
図6a~
図6cは、レーザ出力ユニット4と、反射レンズである光学要素5とを有する実施形態によるアイトラッキング装置の一部を示す。レーザ出力ユニット4は、光学要素によって変調されたレーザビーム6を提供して、眼8の角膜7上に照明野を提供する。
図6aは、コリメートレンズを用いた実施形態を示しており、当コリメートレンズにより平面波照明15が提供されている。
図6bは、角膜7の表面の後方に焦点がある、弱く集束するレンズが、弱く集束された照明16を提供する実施形態を示す。
図6cは、強く集束された照明17を提供するために、実質的に角膜7の表面に焦点がある、強く集束するレンズを備えた実施形態を示す。
【0029】
図7は、VCSELレーザ光源上の反射レーザ光の位置を、ホログラフィック光学ミラー(HOE)である光学要素上の反射レーザ光の位置に対してプロットしたグラフを示す。2つの線18及び19が、それぞれx軸18及びy軸19に沿った位置に対してプロットされている。
【0030】
図8は、眼8の角膜7から反射されて、HOE22を介してVCSELレーザ光源21に入射する、発散レーザビーム20を示す。角膜7の湾曲のために、反射光は発散し、最終的にはVCSEL平面上で比較的大きな面積を照明することになる(
図7を参照)。パワー比を評価するには、VCSEL開口に取り込まれるHOE開口のサイズを特定しなければならない。パワー比は、回折開口を全照明開口で除算したものによって与えられ、全照明開口は、眼の回転範囲と、カバーされる瞳孔間距離(IPD)範囲とによって定義される。パワー比は以下の式によって与えられる。
パワー比=フレネル係数*回折開口/全照明開口
【0031】
この方程式を用いて、SMI信号がノイズフロアより上になる周波数を求めるために、シミュレーションを使用することができる。信号の周波数は、距離/速度を求めるための、測定時間(信号を「見ている」時間)の逆数である。ノイズは、帯域幅または帯域幅の平方根に比例する。したがって、測定が高速であるほど、帯域幅が広くなり、そしてまたノイズも大きくなる。
【0032】
光学的形状を角膜の後方の焦点スポットに変更することによって、パワー比を増加させることができる。例えば、パワー比を4~8倍で増加させることができる。しかしながら、集束光学系を使用すると、複雑さが増し、フィッティングの要件(例えば、瞳孔間距離、瞳距離、鼻の高さ、耳の位置など)に潜在的に影響を与える可能性がある。
【0033】
図9は、平面波照明を用いる場合に、どのようにして、眼8の回転が光路を変化させ、それによって測定可能な信号を生じさせるのかを例示する。照明角βを有するレーザビーム6aは、眼8が第1の位置(眼の回転α=0°)にあるときに、眼8の角膜7上の点に入射して、そこから反射される。入射角βに基づき、角膜7上には、局所的な湾曲のために、入射角と同じ角度で光を反射し、受光ユニット(図示せず)に跳ね返す1つの点が存在する。この点は、眼8が回転するときに、角膜7の中心に対して同じままである。眼8が第2の位置(α=20°)に回転され、この第2の位置で、レーザビーム6bが角膜7上の点に入射し、そこから反射されて受光ユニットへ戻る。角膜7と受光器ユニットとの間の反射されたレーザビーム6a及び6bの光路の距離の変化(光路差OPD)は、回転角αに依存するので、これを測定して眼の回転を求めることができる。
【0034】
図10は、OPDが回転角につれてどのように変化するかを示す。具体的には、OPDが一定である等高線23のOPDが示されている。星印は眼の回転空間における任意の位置24を示し、矢印は眼が回転する可能性のある方向を示す。中心点25は、角膜上のレーザ照明の位置を示す。等高線23に垂直な方向での回転については、最も正確な測定(最大OPDに対応する)が可能である。逆に、等高線23の接線に従う回転は、OPDを変化させず、したがって精度が最も悪くなる。
【0035】
任意の位置からの回転角の関数としての精度が、
図11に例示されている。精度は、求めることができる最小の角度変化として定義することができ、大きな数値が精度の低さを示し(低解像度)、小さな数値が精度の良さを示す(高解像度)ようにする。
図11を見ても分かるように、OPD線23に沿った接線方向の回転(すなわち、θ=0°またはθ=180°)は最も悪い精度を有し、一方、垂直方向の回転(すなわち、θ=90°またはθ=270°)は最も良い精度を有している。回転角の関数としての精度を、次の式によって表すことができる。
【数1】
【0036】
この問題を解決するために、さらなるレーザビームを提供することができる。
図12及び
図13は、角膜を照明するための2つの空間的に分離されたレーザビームを提供する2つのレーザ光源のOPD等高線23及び対応する精度プロットを示す。
図13のグラフから分かるように、図示するように2つの光源を使用することにより、少なくとも1つの光源の精度が、常に0.25度未満になる(破線で示されている)。
【0037】
図14及び
図15は、3つのレーザ光源を備える構成についてのOPD等高線23及び対応する精度を示す。各レーザビームは17°の角度だけ分離されており、これにより、角膜の任意の位置からの全ての方向において約0.05度よりも小さい精度が得られている。
【0038】
図16は、x軸及びy軸を中心とした-30°~30°の眼の任意の回転位置に対して、レーザビーム間の角度が17°の3つのレーザ光源構成を使用する任意の方向の回転についての最小精度をプロットする。プロットから分かるように、比較的小さな領域のみが、どの方向への移動/回転についても0.05度より悪い最小精度を有する。
【0039】
図17は、3.5°の角距離で分離された3つのレーザビームを提供する装置のOPD等高線23を示す。
図18は、眼の任意の回転位置から、x軸及びy軸を中心とした-30°~30°以内の任意の方向への回転についての最小精度の対応するプロットを示す。このプロットから分かるように、精度は、3つの光源の17°の構成ほど良好ではない。最小精度は、およそ0.25度である(17°の構成の0.05度と比較)。したがって、レーザ光源間の角度を小さくすると精度が悪くなる。
【0040】
以上、具体的な実施形態について説明したが、特許請求の範囲はこれらの実施形態に限定されない。開示された各特徴は、単独で、または本明細書に開示されている他の特徴と適切に組み合わせて、記載された実施形態のいずれかに組み込むことができる。
【符号の説明】
【0041】
1 アイトラッキング装置
2 フレーム
3 ステム
4 レーザ出力ユニット
5 光学要素
6 レーザビーム
7 角膜
8 眼
9 処理ユニット
10 第2の光学要素
11 ホログラフィック楕円要素
12 平面波照明野
13 ターゲット
14 反射したレーザビーム
15 平面波照明
16 弱く集束された照明
17 強く集束された照明
18 x軸に沿った位置
19 y軸に沿った位置
20 発散レーザビーム
21 VCSELレーザ光源
22 ホログラフィック光学要素(HOE)
23 等高線
24 眼の位置
25 中心点
【手続補正書】
【提出日】2024-01-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの頭部に装着するためのフレーム(2)に組み込むアイトラッキング装置(1)であって、
前記フレーム(2)に固定するためのレーザ出力ユニット(4)であって、使用時に前記ユーザの眼(8)の角膜(7)を照明するためのレーザビーム(6)を提供するように構成されている、前記レーザ出力ユニット(4)と、
前記フレーム(2)に固定するための受光器ユニット(4)であって、前記レーザビームの反射を受光して、前記角膜(7)の距離または速度を求めるために使用可能なトラッキング信号を提供するように構成されている、前記受光器ユニット(4)と、
前記トラッキング信号からユーザの眼(8)の回転を求める処理ユニット(9)と、を備える、アイトラッキング装置(1)。
【請求項2】
前記レーザ出力ユニット(4)は、少なくとも3つの空間的に分離されたレーザビーム(6)を提供するように構成されており、前記受光器ユニット(4)は、前記少なくとも3つの空間的に分離されたレーザビーム(6)の反射を受光するように構成されている、請求項1に記載のアイトラッキング装置(1)。
【請求項3】
前記少なくとも3つの分離されたレーザビーム(6)は、使用時に、ユーザの眼(8)の角膜(7)上で3.5°~20°の範囲の角距離だけ分離される、請求項2に記載のアイトラッキング装置(1)。
【請求項4】
前記レーザ出力ユニット(4)は、前記レーザビームを放出するためのレーザ光源を備える、請求項1、2または3に記載のアイトラッキング装置(1)。
【請求項5】
前記レーザ出力ユニット(4)は、前記レーザビームを放出するためのレーザ光源に接続された光導波路を備える、請求項1、2または3に記載のアイトラッキング装置(1)。
【請求項6】
前記レーザ出力ユニット(4)は、前記受光器ユニット(4)でもあり、前記トラッキング信号は、前記レーザ光源での自己混合干渉によって提供される、請求項
4に記載のアイトラッキング装置(1)。
【請求項7】
前記トラッキング信号は、前記レーザ光源の光出力から求められる、請求項
4に記載のアイトラッキング装置(1)。
【請求項8】
前記トラッキング信号は、前記レーザ光源へ入力される電流または電圧から求められる、請求項
4に記載のアイトラッキング装置(1)。
【請求項9】
前記レーザ光源は、垂直共振器面発光レーザVCSELである、請求項
4に記載のアイトラッキング装置(1)。
【請求項10】
前記フレーム(2)に固定するための1つ以上の光学要素(5、10、11、22)をさらに備え、前記1つ以上の光学要素(5、10、11、22)が、前記角膜(7)を照明するための前記レーザビーム(6)を変調するように構成されている、請求項
1に記載のアイトラッキング装置(1)。
【請求項11】
前記1つ以上の光学要素(5、10、11、22)は、前記角膜(7)の平面波照明(12、15)を提供するためのコリメートレンズである、請求項10に記載のアイトラッキング装置(1)。
【請求項12】
前記1つ以上の光学要素(5、10、11、22)は、前記レーザビームを前記角膜(7)に集束させるための集束レンズである、請求項10に記載のアイトラッキング装置(1)。
【請求項13】
前記1つ以上の光学要素(5、10、11、22)は、反射レンズである、請求項1
0に記載のアイトラッキング装置(1)。
【請求項14】
前記レーザ出力ユニットは、使用時に、前記ユーザの頭部の側面に沿って延在する前記フレームのステムに固定されるように構成されている、請求項13に記載のアイトラッキング装置(1)。
【請求項15】
ユーザの頭部に装着するためのフレーム(2)と、前記フレーム(2)に組み込まれた請求項
1に記載のアイトラッキング装置(1)とを備える、仮想現実VRヘッドセットまたは拡張現実ARヘッドセット。
【請求項16】
アイトラッキングの方法であって、
ユーザの頭部にフレームを装着することと、
前記フレームに固定されたレーザ出力ユニットによって提供されるレーザビームを用いて、前記ユーザの眼の角膜を照明することと、
前記フレームに固定された受光器ユニットを用いて、前記レーザビームの反射を受光して、前記角膜の距離または速度を求めるために使用可能なトラッキング信号を提供することと、
処理ユニットを用いて、前記トラッキング信号から前記ユーザの眼の回転を求めることと、を含む、前記方法。
【国際調査報告】