IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イエフペ エネルジ ヌヴェルの特許一覧

特表2024-522347連続的触媒再生を伴う炭化水素原料の処理方法
<>
  • 特表-連続的触媒再生を伴う炭化水素原料の処理方法 図1
  • 特表-連続的触媒再生を伴う炭化水素原料の処理方法 図2
  • 特表-連続的触媒再生を伴う炭化水素原料の処理方法 図3
  • 特表-連続的触媒再生を伴う炭化水素原料の処理方法 図4
  • 特表-連続的触媒再生を伴う炭化水素原料の処理方法 図5
  • 特表-連続的触媒再生を伴う炭化水素原料の処理方法 図6
  • 特表-連続的触媒再生を伴う炭化水素原料の処理方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-18
(54)【発明の名称】連続的触媒再生を伴う炭化水素原料の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 35/04 20060101AFI20240611BHJP
   B01J 8/12 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
C10G35/04
B01J8/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573051
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2022063766
(87)【国際公開番号】W WO2022248362
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】2105595
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】ノエル ルドヴィク
(72)【発明者】
【氏名】ピエール クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ガゼエフ ヴィクトリアン
(72)【発明者】
【氏名】ルカルパンティエ セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ル ゴフ ピエール-イヴ
(72)【発明者】
【氏名】ラフォンテーヌ マチュー
【テーマコード(参考)】
4G070
4H129
【Fターム(参考)】
4G070AA01
4G070AB10
4G070BB21
4G070CA25
4G070CB02
4G070CB17
4G070CC01
4G070CC11
4H129AA01
4H129CA04
4H129DA12
4H129GA02
4H129GA16
4H129KA03
4H129KB03
4H129KC03Y
4H129KD26Y
4H129KD31Y
4H129KD32Y
4H129KD37Y
4H129NA22
(57)【要約】
本発明は、連続的触媒再生を伴う炭化水素供給原料の接触改質のための方法であって、前記供給原料を、直列の複数の反応ゾーン(R1、R2、R3、R4)中に連続的に流通させ、触媒を、複数の反応ゾーンにおける移動床として連続的に流通させ、触媒は反応ゾーンのそれぞれの上流端から下流端に流れ、キャリアガス相g1によって1つの反応ゾーンの下流端から次の反応ゾーンの上流端に輸送する方法であって、前記搬送ガス相g1の密度は、200~550℃の温度T、および0.1~0.7MPaの絶対圧力Pの操作条件下に測定されて、1kg/m超であることを特徴とする方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的触媒再生を伴う炭化水素供給原料の接触改質または脱水素のための方法であって、前記供給原料を、直列の複数の反応ゾーン(R1、R2、R3、R4)中に連続的に流通させ、触媒を、複数の反応ゾーンにおける移動床中を連続的に流通させ、触媒は反応ゾーンのそれぞれの上流端から下流端に流れ、キャリアガス相g1によって1つの反応ゾーンの下流端から次の反応ゾーンの上流端に輸送する方法であって、前記搬送ガス相g1の密度は、200~550℃の温度T、および0.1~0.7MPaの絶対圧力Pの操作条件下に測定されて、1kg/m超、とりわけ1.2kg/m以上または1.4kg/m以上または1.6kg/m以上または1.8kg/m以上または2kg/m以上または3kg/m以上、かつ、好ましくは5kg/m以下または4kg/m以下であることを特徴とする方法。
【請求項2】
接触処理は、芳香族炭化水素および/またはガソリンを生じさせるという目的のためにナフサタイプの供給原料を処理する接触改質、または、オレフィンを生じさせるという目的のためにパラフィンタイプの供給原料を処理する接触脱水素であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記キャリアガス相g1の密度は、200~550℃の同一温度Tおよび0.1~0.7MPaの同一絶対圧力Pで測定される水素の密度より最低30%、とりわけ最低50%、好ましくは少なくとも2または3倍大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記キャリアガス相g1は、水素のモル質量より高いモル質量を有している少なくとも1種のガス、とりわけ窒素および/または少なくとも1種のC1-C6軽質炭化水素を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記キャリアガス相g1は、水素のモル質量より大きいモル質量を有しているガスを最低25容積%、とりわけ最低45容積%または最低50容積%または最低80容積%で含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記キャリアガス相g1は、水素のモル質量より大きいモル質量を有している1種のみまたは複数種のガスを含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
水素のモル質量より大きいモル質量を有している1種または複数種のガスは、改質のリサイクルの反応物または生成物または副生物としての、改質方法自体を起源とすることを特徴とする請求項4~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記キャリアガス相g1の温度を200℃未満、とりわけ50℃~150℃の温度T3に調節して、その密度を増大させることを特徴とする請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記キャリアガス相g1の圧力を最低1MPa、とりわけ1.5MPa~4MPaの圧力P3に調節して、その密度を増大させることを特徴とする請求項1~8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
反応ゾーンを、それぞれに、並んで配置された反応器(R1、R2、R3、R4)に置くか、または、互いに重ね合わせ、触媒は、各反応器中にその上流頂部端からその下流底部端に連続的に流れ、前記キャリアガス相によって流体接続を介して一連の反応器の1つの反応器の下流底部端から次の反応器の上流頂部端に輸送することを特徴とする請求項1~9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
流体接続は、1本または複数本のパイプを含み、1つの反応器の少なくとも1つの出口を次の反応器の少なくとも1つの入口、および場合によっては容器またはポットに接続することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
再生ガス相g2を介して一連の反応セクションの最後の反応セクション(R4)の下流端から再生ゾーン(RG)におよび再生ゾーンから一連の反応セクション(R1、R2、R3、R4)の第1の反応ゾーン(R1)の上流端に触媒を輸送し、前記再生ガス相g2は、好ましくは不活性であり、とりわけ、窒素をベースとし、場合によっては、任意の非不活性ガスからの触媒のパージを行った後に、再生ゾーンにそれを輸送することを特徴とする請求項1~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
再生ガス相g2およびキャリアガス相g1は、同一の組成を有し、かつ/または、同一の温度および/または圧力の条件下にあることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
連続的触媒再生を伴う炭化水素供給原料の接触処理のための設備であって、該接触処理は、芳香族炭化水素および/またはガソリンを生じさせるという目的のためのナフサタイプの炭化水素供給原料の接触改質、または、オレフィンを生じさせるという目的のためのパラフィンの脱水素であり、該設備は、直列に接続されている複数の反応ゾーン(R1、R2、R3、R4)と、流体接続とを含んでおり、当該反応ゾーンにおいて、供給原料は、連続的に流通し、流体接続は、1つの反応ゾーンの下流端から次の反応ゾーンの上流端へのキャリアガス相g1による触媒の輸送を確保する、設備であって、前記設備は、前記キャリアガス相g1の温度および/または圧力および/または組成を調節して、密度を調節するためのデバイスを含み、該密度は、200~550℃の温度Tおよび0.1~0.7MPaの絶対圧力Pでの操作条件下に測定されて、1kg/m超、とりわけ1.2kg/m以上または1.4kg/m以上または1.6kg/m以上または1.8kg/m以上または2kg/mまたは3kg/m以上、かつ、好ましくは5kg/m以下または4kg/m以下であること特徴とする、設備。
【請求項15】
前記キャリアガス相g1の圧力を調節するためのデバイスは、1個または複数個のコンプレッサを含み、および/または、前記キャリアガス相g1の温度を調節するためのデバイスは、1基または複数基の熱交換器および/または1基または複数基の冷却器を含み、および/または前記キャリアガス相g1の組成を調節するためのデバイスは、水素源および窒素源および/またはC1-C6炭化水素源を給送するガスミキサを含み、前記水素源およびC1-C6炭化水素源は、当該設備において実行される接触処理、とりわけ、改質から得られることを特徴とする請求項14に記載の設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続的触媒再生を伴う炭化水素供給原料の接触処理のための方法に関する。連続的触媒再生は、略語CCR(continuous catalytic regeneration)によっても知られている。これらの方法は、炭化水素供給原料、とりわけ、ナフサタイプのものの接触改質をとりわけ含み、それらを芳香族化合物および/またはガソリンに転化するようにし、および、パラフィンを脱水素して、それらをオレフィンに転化するようにする。
【背景技術】
【0002】
一般に、接触改質ユニットの目的は、ナフテン系およびパラフィン系(n-パラフィンおよびイソパラフィン)の化合物を芳香族化合物に転化することにある。関与する主要な反応は、ナフテンの脱水素および芳香族化合物を与えるパラフィンの脱水素環化、パラフィンおよびナフテンの異性化である。他の「副」反応が起こる可能性もあり、例えば、パラフィンおよびナフテンの水素化クラッキングおよび水素化分解、アルキル芳香族化合物の水素化脱アルキルによる軽質化合物およびより軽質の芳香族化合物の生成、およびまた、触媒の表面のところにおけるコークの形成がある。
【0003】
まず、連続的触媒再生を伴う接触改質方法の場合を考えてみよう:接触改質ユニットに典型的に送られる供給原料は、パラフィン系およびナフテン系
の化合物に豊富であり、相対的に芳香族化合物に乏しい。それらは、一般的には、原油または天然ガス凝縮物の蒸留から生じたナフサである。他の供給原料が入手可能であってよく、可変含有率の芳香族化合物、すなわち、重質接触クラッキングナフサ、重質コーカーナフサまたは重質水素化クラッキングナフサ、あるいはまたスチームクラッキングガソリンを含有している。本発明は、より詳細には、ナフサタイプの供給原料の転化に焦点を当てることになる。
【0004】
さらに、供給原料、とりわけ、ナフサタイプのものを接触改質によって処理する前に、それらを前処理することが必要であるかもしれない:この前処理は、一般に、水素化処理である。用語「水素化処理」は、炭化水素供給原料中に含有される種々の不純物を水素の作用を通じて取り除くことを可能にする精製方法の全てを指す。それ故に、水素化処理法により、水素の作用を通じて、供給原料中に存在する不純物、例えば、窒素(水素化脱窒を指す)、硫黄(水素化脱硫を指す)、酸素(水素化脱酸素を指す)、および下流の処理、例えば、改質の間に触媒を毒しかつ操作上の問題を引き起こし得る金属含有化合物(水素化脱金属を指す)を取り除くことが可能となる。水素化処理法の例は、特許文献1に記載されている。
【0005】
再生タイプであり最適化された触媒分布を有する接触改質法の例は、特許文献2および3に記載され、改質ユニットは、直列に取り付けられた一連の反応器を用い、それぞれ、移動式触媒床を備え、各反応器からの流出物は、最後のもの(最も遠い下流のもの)を除き、次の反応器への導入の前に加熱され、改質反応の吸熱性を平衡させ、反応器のそれぞれにおいて望みの転化反応が起こるように十分な温度を維持する。
【0006】
今ここで、連続的触媒再生を伴う接触脱水素法の場合を考えてみよう:パラフィンの脱水素、例えば、プロピレンを生じさせるプロパンの脱水素の場合、パラフィン系供給原料は、前処理された(吸着、乾燥、C4+フラクションの除去等)後に、反応セクションおよび連続的触媒再生(CCR)セクションを含む実際の脱水素ユニットに入る。脱水素反応は、供給原料が移動床中に流通する触媒と接触する反応器において起こる。この反応は、高度に吸熱性であり、第1の反応器を離れる流出物は、それ故に、第2の反応器に入る際に望みの温度を得るようにオーブン中で加熱されなければならない。このシーケンスは、次いで、続く反応器において繰り返される。プロパン脱水素ユニットは、一般に、直列の4基の反応器から構成されるのに対して、ブタンの場合、3基の反応器で十分である場合がある。反応セクションを離れる際に、流出物は、ジオレフィンのモノオレフィンへの選択的水素化を経、軽質化合物(C2-)を取り除くように処理される;最後に、プロパン-プロピレンスプリッタは、生じたプロピレンを残留プロパンから分離し、この残留プロパンは、リサイクルされる。連続的接触循環(continuous catalytic circulation:CCR)を用いるパラフィン脱水素法の例は、重畳反応ゾーンの構成について特許文献4に、直列に並んだ反応器の構成について特許文献5に与えられる。
【0007】
本発明は、より詳細には、改質または脱水素のユニットにおける触媒の移動床中の搬送に焦点が当てられる:触媒は、直列の反応器中に連続的に流通し、並べて配置された垂直配向の反応器の例を挙げると、上述の特許に記載されているように、反応器のそれぞれにおいて、その頂部部分から底部部分に重力によって流れる。1つの反応器から次の反応器に流通するように、触媒は、1つの反応器の底部部分から連続的に抜き出され、反応器に対して外部の1本または複数本のパイプを介して次の反応器の頂部部分に輸送される。反応器の最後の底部部分から抜き出されたところで、使用済みの触媒は、再生反応器に送られ、再生されると、それは、再度、直列の反応器の第1の頂部部分に送られ、製造-再生のサイクルを再開する。
【0008】
特許文献6には、1つの反応器から次の反応器に、次に、直列の最後の反応器から再生反応器に触媒を流通させるために用いられる手段がより詳細に記載されている。前記特許において問題であるのは、触媒を一連の反応器の第1の反応器、それ故に、最も上流にあるものの頂部部分に、複数本のパイプを介して導入することにあり、これらのパイプ中に、それは、移動床の形態で搬送される。それは、次いで、複数本のパイプを介して抜き出され、これらのパイプは、共通のパイプに収束し、このパイプを介して、「リフトポット」として知られている容器にそれは達する。この抜き出しは、連続的に実行され、触媒の流量の規則性は、キャリアガスによる適切なレギュレーションによって保証され、このキャリアガスは、水素であり、改質ユニット自体によって生じさせられてよいか、または、高純度な水素またはリサイクルされた水素であってよく、これは、パイプを介してこの「リフトポット」に注入される。触媒は、次いで、「リフトポット」から次の反応器に、「リフト」と呼ばれるリフトデバイスを介して、キャリアガスによって同伴される;それは、次いで、コンテナに達し、コンテナから、複数本のパイプを介して、それは、第2の反応器の頂部部分に達し、そこで、同一の経路が第3の反応器に再開し、以降、同様のことが行われる。それは、最終的に、一連の最後の反応器の底部部分から、複数本のパイプを介して抜き出され、「使用済み」触媒と称され、上記の複数本のパイプは、それを「アキュムレータ-デカンタ」容器に、「リフト」タイプの別のリフト手段を介して搬送する。それは、その後、別のキャリアガス、一般に窒素を介して、再生反応器に搬送される。触媒が事前に一切の痕跡量の水素からパージされなければならないのは、触媒の再生は、酸化条件下に行われるからである:水素下と窒素下の回路間に移行デバイスがそれ故に設けられなければならない。
【0009】
1つの反応器から別の反応器に触媒を流通させるために空気輸送によって実施されるこれらの手段は効率的である。しかしながら、所定の動作構成において、所定の欠点がある可能性がある。具体的には、それらは、所定数のパイプを含み、これらは、特定の幾何学形状を有し、とりわけ、エルボ部を有し、これらは、パイプ中の堆積のリスク、あるいはほかにパイプの壁の浸食のリスク、さらには、触媒粒子上の望みでない摩耗に至る可能性がある。
【0010】
本発明の目的は、それ故に、炭化水素供給原料の改質(例えば、ナフサタイプの供給原料の処理)のためまたは炭化水素供給原料の脱水素(例えば、パラフィンタイプの供給原料の処理)のためのユニットにおいて、1つの反応器から次の反応器に触媒を搬送するための手段の設計を改善することにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2966835号明細書
【特許文献2】仏国特許出願公開第2657087号明細書
【特許文献3】仏国特許出願公開第3024460号明細書
【特許文献4】米国特許第3978150号明細書
【特許文献5】米国特許第5336829号明細書
【特許文献6】仏国特許出願公開第2657087号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の概要)
本発明の1つの主題は、最初に、連続的触媒再生を伴う炭化水素供給原料の接触処理のための方法であり、当該方法において、前記供給原料は、直列の複数の反応ゾーン中に連続的に流通させられ、触媒は、移動床として連続的に複数の反応ゾーン中に流通し、反応ゾーンのそれぞれの上流端から下流端に流れ、キャリアガス相によって1つの反応ゾーンの下流端から次の反応ゾーンの上流端に輸送される。本発明によると、前記キャリアガス相の密度は、1kg/m以上、とりわけ、1.2kg/m以上または1.4kg/m以上または1.6kg/m以上または1.8kg/m以上または2kg/m3以上または3kg/m以上、かつ好ましくは、5kg/m以下または4kg/m以下である。
【0013】
この密度は、考慮下の方法の(温度および圧力の)操作条件下に、とりわけ、200~550℃の温度T、および0.1~0.7MPaの絶対圧力Pで測定される。
【0014】
それは、とりわけ、温度300℃および圧力0.55MPaで測定される。
【0015】
接触改質の場合に、この密度は、とりわけ、200℃~450℃の温度T1、とりわけ300℃で、0.4MPa~0.7MPa、とりわけ、0.5MPaの絶対圧力P1で測定され、これらは、改質におけるリフトパイプにおいて通常遭遇する温度および圧力である。
【0016】
脱水素の場合に、この密度は、とりわけ、300~550℃、とりわけ、400℃の温度T2で、および0.1~0.4MPa、とりわけ0.25MPaの絶対圧力P2で測定され、これらは、脱水素におけるリフトパイプにおいて通常遭遇する温度および圧力である。
【0017】
有利には、本発明による接触処理は、接触改質であり、とりわけ、芳香族炭化水素および/またはガソリンを生じさせるという目的のためにナフサタイプの供給原料を処理すること、または、接触脱水素、とりわけ、オレフィンを生じさせるという目的のためにパラフィンタイプの供給原料を処理することである。
【0018】
有利には、前記キャリアガス相(g1)は、これらの密度を達成するために、200~550℃の温度T、および0.1~0.7MPaの絶対圧力Pで、とりわけ、
- 改質の場合には、200℃~450℃、とりわけ、300℃の温度T1、および0.4MPa~0.7MPa、とりわけ、0.5MPaの絶対圧力P1で、および
- 脱水素の場合には、300~550℃、とりわけ、400℃の温度T2、および0.1~0.4MPa、とりわけ、0.25MPaの絶対圧力P2で、
測定される水素の密度より最低30%高い、とりわけ最低50%、好ましくは最低2倍または3倍高い密度を有している。
【0019】
本明細書の全体を通じて、用語「上流」および「下流」は、改質または脱水素の施設の反応器を通過する供給原料の流れの一般的な方向を参照して理解される。
【0020】
本明細書の全体を通じて、用語「ガス相」は、ガスまたは異なるガスの混合物を意味し、不純物を含んでいる場合がある。
【0021】
「反応ゾーン」は、反応器、または複数基の反応器、または反応器の別個の部分であって、当業者に知られている全てのアドホックな設備(例えば、パイプに接続された導入および抜き出しの開口部、バルブ、熱コントロール手段等)を備えているものであるとして理解されるべきである。
【0022】
本発明による(改質の場合における)ナフサタイプまたは(脱水素の場合における)パラフィンタイプの供給原料は、改質または脱水素の前に1回または複数回の処理、とりわけ、水素化処理を経る場合がある。
【0023】
本発明は、それ故に、触媒を輸送するために用いられる機械的手段、例えば、パイプ、バルブ、容器等のチョイスにおける混乱、またはそれらの配置にではなくむしろ、キャリアガスの特徴の特定のチョイス、すなわち、高まる密度のチョイスに焦点が当てられる。驚くべきことに、通常のもの(すなわち、水素または「富化」水素、すなわち、通常用いられる圧力Pおよび温度Tの操作条件下に最大10容積%の軽質炭化水素タイプの別のガスを含んでいる水素)より高密度のキャリアガスを選ぶことは、1つの反応器から別の反応器に触媒粒子を搬送する種々のパイプ中の触媒粒子の流通に非常に好都合な影響を有することが判明した:具体的には、パイプの壁上、より特定的には、(垂直ではない)水平または斜めのパイプ部分中または「エルボー」接続パイプ部分(その非直線部分)中の粒子の堆積のリスクが大きく減少するか、さらには、完全に消失する。これは、壁の浸食のリスクについても当てはまり、これにより、これらのパイプの点検/メンテナンスのための操作(交換、クリーニング)を軽減させることが可能となる。粒子の摩耗のリスクの軽減さらには排除も観察され、これは、それらの粒子サイズの特徴を制御不能に変化させる可能性があり、それらの触媒効率をコントロールすることが望まれるならば、これは、回避/制限されるべきである。
【0024】
好ましくは、前記キャリアガス相の密度は、200~550℃の温度T、および0.1~0.7MPaの絶対圧力Pで測定される水素の密度より最低30%高く、とりわけ最低50%高く、好ましくは少なくとも2または3倍高い。本発明は、それ故に、優先的には、通常の密度より(水素に相対しておよびまた「富化」水素に相対して)顕著に高い密度を標的にし、得られる効果を最大にする。
【0025】
高密度キャリアガスを得るために、いくつかの実施形態が本発明により存在し、これらは、選択物であるかまたは一緒に積み重ねられてよい。
【0026】
第1の実施形態によると、本発明は、キャリアガス相の化学組成を改変することを選ぶ:有利には、前記キャリアガス相は、水素のモル質量より高いモル質量を有している少なくとも1種のガス、とりわけ、窒素および/または少なくとも1種のC1-C6軽質炭化水素を含む。
【0027】
窒素は、富化水素より6倍以上で密度がはるかに高いという利点を有する。それは、最後の反応器から再生器への、および再生器から第1の反応器への使用済み触媒のためのキャリアガスとして役立つように一般に用いられるガスであるという利点も有している。
【0028】
軽質炭化水素は、改質ユニットにおいて、改質反応工程の間に形成されることによって既に利用可能である場合があるという利点を有する。それらは、C1-C6炭化水素の混合物の形態にあり、一般に、大部分は、C1-C3炭化水素である。
【0029】
キャリアガス相は、これらの種々のタイプのガスの混合物を含んでよく、水素をこれらの種々のガスの少なくとも1種と組み合わせてもよく、その密度は、考慮下のガスの混合物の平均密度として理解される。
【0030】
前記キャリアガス相は、それ故に、水素のモル質量より大きいモル質量を有しているガスを最低25容積%、とりわけ最低45容積%または最低50容積%または最低80容積%で、かつ、最大100容積%で含んでよい。
【0031】
100%の場合に、前記キャリアガス相g1は、水素のモル質量より大きいモル質量を有している1種のみまたは複数種のガスを含む(不純物を考慮しない)。
【0032】
水素のモル質量より大きいモル質量を有している1種または複数種のガスは、改質のリサイクル反応物または生成物または副生物のように、改質方法(または脱水素方法)自体を起源としてよい。このことは、C1-C6炭化水素または水素(またはむしろ、上記のように、一般に、最大10%の別のガスを含有している「富化」水素)の場合に当てはまる。
【0033】
第2の実施形態によると、キャリアガス相の密度は増大する一方で、その温度は、従来の温度T(200~550℃)に相対して低下する:前記キャリアガス相g1の温度は、200℃未満、とりわけ50℃~150℃の温度T3に調節されて。その密度を増大させるようにする。キャリアガス相の温度は、任意のタイプの既知手段、例えば、熱交換器または冷却器によって低下してよい。次に、粒子が次の反応器に入る前に粒子を加熱することが必要とされる場合がある。
【0034】
第3の実施形態によると、キャリアガス相の密度が増大する一方で、その圧力が従来の圧力P(0.1~0.7MPa)に相対して増大する:前記キャリアガス相g1の圧力は、最低1MPa、とりわけ1.5MPa~4MPaの圧力P3に調節されて、その密度を増大させる。ガス圧力は、任意の既知の手段によって、とりわけ、既に存在するコンプレッサの寸法を変更することによって改変/増大させられ、一般に、圧力下にガスを置き、ガスを流通させ、所望の方法で粒子を輸送するようにガスを加圧する。
【0035】
本発明は、非常に多様な反応ゾーンの設計に適用されてよい:反応ゾーンは、それぞれに、反応器内に並べて配置されて位置してよい。反応ゾーンは、互いに重ね合わされてもよく、最も上流のゾーンは、頂部に置かれ、最も下流のゾーンは、最低部にあるものである。これは、それ故に、反応ゾーンの「スタック」を頂部から底部にわたって与える:これは、例えば、特許US 3 647 680に記載されている構成である。
【0036】
いずれの構成においても、触媒は、各反応器/反応ゾーンにおいてその上流頂部端からその下流底部端まで連続的に流れ、次いで、前記キャリアガス相によって流体接続を介して一連の反応器/反応ゾーンの1つの反応器/反応ゾーンの下流底部端から次の反応器/反応ゾーンの上流頂部端に輸送される。最後に、それは、最も下流の反応ゾーンから再生器に、最後に、再生器から最も上流の反応ゾーンに輸送される。
【0037】
触媒粒子のガス相による輸送を可能にする流体接続は、とりわけ、1本または複数本のパイプを含み、1つの反応器/反応ゾーンの少なくとも1つの出口を次の反応器/反応ゾーンの少なくとも1つの入口、および場合によっては容器またはポットに接続する。考えられる構成は、上述の特許FR 2 657 087に記載されている。
【0038】
有利には、触媒は、再生ガス相g2を介して、一連の反応セクションの最後の反応セクションの下流端から再生ゾーンにおよび再生ゾーンから一連の反応セクションの第1の反応ゾーンの上流端に輸送される。
【0039】
好ましくは、再生ガス相g2は、不活性であり、とりわけ、窒素をベースとし、再生ゾーンに触媒が輸送される前にまず触媒を任意の非不活性ガスからパージすることが必要であってよい。
【0040】
本発明の1つの変形によると、再生ガス相g2およびキャリアガス相g1は、同一の組成を有しており、かつ/または、同一の温度および/または圧力の条件下にある。前記ガス相は、例えば、窒素であってよい。
【0041】
本発明の主題は、上記の方法を用いる、連続的触媒再生を伴う炭化水素供給原料の接触処理、特に、接触改質または脱水素のための任意の設備にもある。
【0042】
本発明の主題は、連続的触媒再生を伴う炭化水素供給原料の接触処理、とりわけ、芳香族炭化水素およびガソリンを生じさせるという目的のためのナフサタイプの炭化水素供給原料の接触改質、または、オレフィンを生じさせるという目的のためのパラフィンの脱水素のための設備にもある。この設備は、本発明によると、供給原料が連続的に流通する直列に接続された複数個の反応ゾーンと、キャリアガス相g1を介した1つの反応ゾーンの下流端から次の反応ゾーンの上流端への触媒の輸送を保証する流体接続部とを含む。前記設備は、前記キャリアガス相g1の温度および/または圧力および/または組成を調節するためのデバイスを含み、その密度を、1kg/m以上、とりわけ1.2kg/m以上または1.4kg/m以上または1.6kg/m以上または1.8kg/m以上またはとりわけ2kg/m以上または3kg/m以上、かつ好ましくは5kg/m以下または4kg/m以下の密度に(設備の操作条件下に)調節する。
【0043】
前記キャリアガス相g1の圧力を調節するためのデバイスは、有利には、1個または複数個のコンプレッサを含んでよい。
【0044】
前記キャリアガス相g1の温度を調節するためのデバイスは、有利には、1基または複数基の熱交換器および/または1基または複数基の冷却基を含んでよい。
【0045】
前記キャリアガス相g1の組成を調節するためのデバイスは、有利には、ガスミキサを含んでよく、このガスミキサは、水素の供給源および窒素の供給源および/またはC1-C6炭化水素の供給源を給送され、水素およびC1-C6炭化水素の前記供給源は、好ましくは、設備において実行される接触処理(とりわけ改質)から得られる。富化水素の導入のためのパイプおよび設備によって生じた軽質炭化水素の導入のためのパイプがこのように提供されてよく、これらのパイプは、単一のパイプに収束し、2タイプのガスの間で望みの割合を有し、触媒粒子を輸送する「リフト」パイプ中に搬送されるように望まれるキャリアガス相を、そのようにするために知られている任意の手段(バルブ、パイプの割合、コンプレッサ等)を用いて構成する。
【0046】
上述のように、本発明の種々の実施形態は、対でまたは全て一緒に、例えば、ガス相の化学組成およびその温度(またはその圧力)の両方、またはその圧力およびその温度の両方を改変することによって、組み合わされてよい。
【0047】
本発明は、連続的触媒再生(CCR)を伴う改質方法に関して、非限定的な実施の例を用いて以下に詳述されることになる。これらの例は、非常によく似た方法で、連続的触媒再生を伴う脱水素方法に置き換えられてよい。
【発明を実施するための形態】
【0048】
(図面のリスト)
図1は、本発明を適用してよい接触改質設備の部分、とりわけ、本方法の反応セクションおよび再生セクションを示す。それは、きわめて概略的であり、示されている種々の要素の縮尺は、必ずしも一致しているわけではない:それは、フロー図である。
【0049】
図2は、図1の設備において用いられた垂直直線パイプ部分中のキャリアガスの速度に応じた触媒の種々の流れの流況を概略的に示す。
【0050】
図3は、水平直線パイプ部分中のキャリアガスの速度に応じた触媒の種々の流れの流況を概略的に示す。
【0051】
図4は、キャリアガスの密度に応じた垂直パイプについてのチョーキング速度および水平パイプについてのサルテーション速度を示すグラフである。
【0052】
図5は、垂直パイプ部分についての密度に応じたキャリアガスの速度とチョーキング速度との間の差を示すグラフである。
【0053】
図6は、斜めのパイプ部分についてのその密度に応じたキャリアガスの速度とサルテーション速度との間の差を示すグラフである。
【0054】
図7は、1つの反応器から次の反応器に触媒を輸送する「リフト」パイプのシミュレーションの画像である。
【0055】
(実施形態の説明)
以下の例において、「ナフサ」は、任意の化学組成の石油留分を指し、好ましくは、50℃~250℃の蒸留範囲を有する。PONA(P(paraffin)、O(olefins)、N(naphthenes)およびA(aromatics))によって特定される化学ファミリーの分布は、任意の分布であってよい。
【0056】
用語「石油」は、ナフサの蒸留範囲に類似する蒸留範囲を有し、かつ、95超、優先的には98超のオクタン価を有する石油フラクションを指す。
【0057】
用語「芳香族ベース」は、広い意味において、キシレン(パラキシレン、メタキシレン、オルトキシレン)、エチルベンゼン、トルエンおよびベンゼン、および場合による、より重質の芳香族化合物、例えば、スチレンモノマー、クメンまたは直鎖アルキルベンゼンを指す。
【0058】
用語「改質油」は、接触改質によって生じた高オクタン価を有する石油留分を指す。
【0059】
図の説明の残りにおいて、用語「反応器」は、反応ゾーンとして理解されるべきである。
【0060】
本発明の方法の以下に記載される例に関連して処理される供給原料は、接触改質によって処理することが望まれるナフサタイプの炭化水素供給原料である。この供給原料は、パラフィン系およびナフテン系の化合物に豊富であるが芳香族化合物に比較的乏しい炭化水素留分である。ナフサ供給原料は、例えば、原油または天然ガス凝縮物の常圧蒸留に由来する。本発明による方法は、接触クラッキング(FCC)、重質ナフサのコーキングまたは水素化クラッキングあるいは代わりにガソリンのスチームクラッキングにも適用される。これらの供給原料は、芳香族化合物に多かれ少なかれ豊富であり、ガソリンベースまたは芳香族ベースの製造のための接触改質ユニットに給送するために用いられてよい。
【0061】
一般に、このナフサは、水素化処理ユニットにおいて前処理されて、改質触媒を毒する可能性がある不純物(以下の不純物:硫黄、窒素、水、ハロゲン、オレフィンおよびジオレフィン(該当する場合)、水銀、ヒ素および他の金属の少なくとも1種を含む)を取り除くかまたはその含有率を十分に低減させる。この水素化処理工程は、それ自体で知られてので、ここに記載されることはないだろう。
【0062】
改質または脱水素の設備は、従来の触媒を用いる。改質または脱水素の触媒として、言及がなされてよいのは、シリカおよび/またはアルミナのタイプの担体と、白金族からの金属、スズ、リン、場合によるハロゲン、例えば、塩素、および場合による、特許FR 2 947 465に記載されたような第3の金属および場合による、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えば、カリウムとを含んでいる触媒である。
【0063】
触媒は、成形体の形態、例えば、実質的に球形のビーズ状の形態にあり、径は、一般に1~3mm、とりわけ1.5~2mmであり、それらのかさ密度は、一般に0.4~1、好ましくは0.5~0.9または0.55~0.8である。
【0064】
図1は、連続的再生(CCR)により機能し、本発明に適用され得る接触改質設備の部分を示している:(脱水素設備は、同類/類似の設計のものである)。
【0065】
上記のナフサ供給原料(1)は、接触改質設備に送られ、この接触改質設備は、4基の反応器R1、R2、R3、R4を含み、これらの反応器は、接触改質触媒の移動床を備えている。改質設備は、ナフテン系化合物(シクロアルカン)および/またはパラフィン系化合物の芳香族炭化水素化合物への変換の最適化を可能にする操作条件下および触媒の存在中で機能する。改質触媒上のコークの形成を制限するために、改質工程は、水素の存在中で実行される。
【0066】
設備は、使用済み触媒再生器RG、およびオーブンF1、F2、F3、F4も含む:供給原料(1)は、オーブンF1において加熱され、次いで、第1の反応器R1の頂部部分における入口に送られ、それは、反応器R1において頂部から底部に流通し、次いで、反応器R1からの流出物は、底部部分のところで抜き出され、オーブンF2において加熱され、次いで、次の反応器R2の頂部のところにある入口に送られ、オーブンF3および反応器R3で同様のことがなされ、次いで、オーブンF4および最後のR4で同様のことがなされる。最後の反応器R4からの流出物は、その後、他の処理に続く。
【0067】
非常に概略的な観点において、図1は、キャリアガスg1および再生キャリアガスg2を伴う、1つの反応器から別の反応器への触媒の経路を示している:上述の特許FR 2 657 087に記載されているように、パイプおよび「リフトポット」を用いて、要求される流体接続を確保し、キャリアガスg1は、空気圧輸送によって、反応器の底部部分から次の反応器の頂部部分に、最も上流の反応器R1から最も下流の反応器R4にパイプおよび「リフトポット」のシステムを介して触媒を搬送する:これらは、図1中の経路a、b、cである。反応器R4の出口のところで、使用済み触媒は、ガスg2を介して経路dに沿って再生器RGに、また、パイプを含んでいる流体接続を介して搬送される。最後に、再生済み触媒は、ガスg2を介して経路eに沿って再生器RGの出口から反応器R1の頂部部分のところにある入口に搬送され、設備を通じた製造サイクルを再開する。
【0068】
この接触改質設備は、一般に、以下の操作範囲内で機能する:
- 平均の反応器入口温度は、420℃~600℃である;
- 圧力は、0.3~1MPaである;
- H/供給原料のモル比は、0.2~8mol/molである;
- 質量空間速度は、供給原料の質量流量対触媒の質量の比であるとして表されて、0.5~8h-1である。
【0069】
改質のこの場合において、1つの反応器から次の反応器に触媒を輸送するリフトパイプは、200~450℃程度の温度にあり、それらの圧力は、0.4MPa~0.7MPaの絶対圧力値内にある。
【0070】
接触脱水素設備は、一般に、以下の操作範囲内で機能することが留意されるべきである:
- 平均反応器入口温度は、500℃~700℃である;
- 圧力は、0.1~0.4MPaである;
- H/供給原料のモル比は、0.2~8mol/mol、とりわけ、1~4mol/molの範囲または0.5mol/molの範囲にある;
- 液体空間速度は、供給原料の容積流量対触媒の容積の比であるとして表されて、とりわけ2~6h-1である。
【0071】
脱水素の場合において、1つの反応器から次の反応器に触媒を輸送するリフトパイプは、300~550℃の程度の温度にあり、それらの圧力は、0.1MPa~0.4MPaの絶対圧力値内にある。
【0072】
キャリアガス(ベクトルガスとしても知られている)g1は、従来通り、富化水素であり、再生キャリア(ベクトル)ガスg2は、窒素である。
【0073】
改質(または脱水素)ユニットの場合において、ガスg1は、従来通り、水素から主としてなるガス(最低90容積%程度)であり、不純物を少量で含有する場合もある。それは、操作条件(絶対圧力0.4~0.7MPa、温度200~450℃)下に、比較的低い密度によって特徴付けられる:それの密度は、一般に1kg/m未満、とりわけ0.4~0.8kg/mである。
【0074】
固体触媒粒子(ビーズまたは他の物体)の空気輸送は、種々の流れの流況を区別するためおよび任意の乱れを識別するための特徴的な速度によって支配される。垂直パイプ部分について、チョーキング速度Uchは、パイプ中の希釈相に粒子を輸送することを可能にするキャリアガスの最低速度に対応する。
【0075】
図2は、図1の設備において用いられた触媒粒子の流通を、垂直直線パイプ部分中のキャリアガスg1の速度により概略的に示している。それは、出版物Yang W.-C. (2003) Handbook of Fluidization and Fluid-Particle Systems, CRC Pressから引用される。矢印は、1つのケースから次のケースに高くなっていくキャリアガス速度を示している:
- ケース2aにおいて、ガス速度は不十分であり、粒子は、固定床中におけるパイプ部分の底部部分に残留する、
- ケース2bにおいて、ガス速度は、ケース2aにおけるのより高く、「粒子」流況がある、
- ケース2cにおいて、ガス速度は、ケース2bにおける速度より高く、沸騰流況がある、
- ケース2dにおいて、ガス速度は、ケース2cにおける速度より高く、パルス状の流況がある、
- ケース2eにおいて、混乱した流況がある、
- ケース2fにおいて、急速流動化の流況がある、
- ケース2gにおいて、空気輸送があり、これは、垂直パイプの部分に関して本発明における粒子の輸送の望みの様式である。
【0076】
水平または斜めの直線部分について、サルテーション速度Usaltは、均一な輸送を維持することを可能にしかつ輸送パイプの底部のところにおける粒子の堆積を防ぐキャリアガスの最低速度に対応する。
【0077】
図3は、図1の設備において用いられた触媒粒子の流通を、水平または斜め直線パイプ部分におけるキャリアガスの速度により、概略的に示している。この図は、出版物Ph. Eeynier et al., Review of Modelling of Slush Hydrogen Flows, Journal of Computational Multiphase Flows 3(3): 123-146から引用される。ガス速度が図3aのケースから図3dのケースに向けて高くなっていくにつれて(矢印fは、パイプ部分中の粒子の流れの方向を指し示す)、パイプ部分の右側の小さなグラフは、パイプ部分中の粒子濃度を指し示す:
- ケース3aにおいて、固定/制止床がある、
- ケース3bにおいて、サルテーションの流況がある。
- ケース3cにおいて、不均一な流れがある、
- ケース3dにおいて、均一な流れがあり、これは、水平または斜めのパイプ部分中の触媒粒子のために本発明によって標的とされる流れの様式である。
【0078】
図2および3に示されるように、不十分なキャリアガス速度(すなわち、チョーキングおよび/またはサルテーションの限界速度より低い速度)について、流れは、不均一になり、輸送パイプ内で粒子濃度や速度勾配が生じる可能性がある。このタイプの機能化が、とりわけ、CCRタイプの改質ユニットの特定の場合に回避されるべきであるのは、「リフト」ライン(用語「ライン」は、パイプまたはパイプのアセンブリとして理解されるべきである)の構成材料の(浸食による)劣化、または触媒粒子の(摩擦による)劣化に至るかもしれないからであるが、しかし、実質的な圧力損失が生じるかもしれない目詰まりに至るかもしれない。
【0079】
これらの限界速度は、実験観察に基づく種々の相関によって推定されてよい:それらは、操作条件および考慮下のガスおよび固体の特性(限界落下速度、流量、サイズ等)に依存し、それらは、とりわけ、粒子を輸送するために用いられるキャリアガスの密度に依存することも示された。
【0080】
それ故に、図4は、工業用CCR改質ユニットの特徴的な例についてのキャリアガスの密度に応じたチョーキング速度およびサルテーション速度を示しているグラフである:y軸は、速度(m/s)を示し、x軸は、キャリアガスの密度(kg/m)を示す。ひし形点による曲線は、サルテーション速度(水平パイプ)に対応し、正方形点による曲線は、チョーキング速度(垂直パイプ)に対応する。図4は、リフトライン/パイプにおける希釈および均一な流れを確保するために要求されるガス速度は、ガス密度が高くなるほど比例して遅くなることを示す。しかしながら、図4は、密度上のこの依存は、線形ではないこと、およびそれは低密度ゾーンにおいて比例して大きくなることを示し、これらは、富化水素タイプのキャリアガスg1を用いるリフトラインの特徴である。
【0081】
CCR改質法において、リフトライン中の触媒粒子の速度をコントロールして、パイプおよび触媒の劣化をもたらすことがないようにし、かつ、パイプにおける圧力損失を制限することが必要である:標的触媒速度(Ucata)が考慮され、これは、種々の相関によって計算されてよく、そこから、この標的速度を達成するのに要求されるベクトルガスg1の速度(Ugas)が決定されてよい。以下の関係式が一次近似に用いられてよい:
Ugas=Ucata+Ut
Utは、触媒粒子の限界落下速度である。
【0082】
図5は、望みの触媒速度Ucataを達成するように計算されるガス速度Ugasと、キャリアガスの密度(kg/m)に応じた垂直パイプ中のチョーキング速度Uch(m/s)との間の差を示す:この図は、最低密度について、ガス速度Ugasは、チョーキング速度Uchの大きさの程度のもの、さらにはより低く、これは、流れにおける混乱(非希釈の流況)を引き起こす可能性があることを示す。ベクトルガスの密度が増大する場合、望みの触媒粒子速度を達成するのに要求されるガス速度は、チョーキング速度より高くなり、これにより、垂直リフトパイプにおいて希釈流れの流況を確保することが可能となる。
【0083】
図6は、望みの粒子速度Ucataを達成するように計算されるガス速度Ugasと、水平または斜めのパイプ部分についてのキャリアガス密度に応じたキャリアサルテーション速度Usalt(m/s)との間の差を示しているグラフである:先行する図と同様に、図6は、所与の触媒速度Ucataについて、ガス速度Ugasは、ガス密度が低すぎるならば、サルテーション速度Usaltより低い可能性があり、それ故に、ラインの水平または斜めの部分における粒子の堆積を引き起こし、流れに混乱が生じる可能性があることを示す。
【0084】
これらの結果を利用して、本発明は、ベクトルガスg1の密度を改変してリフトライン中、より詳細には、その垂直および斜めの部分中だけではなく、水平部分が存在する場合にはその水平部分中の触媒粒子の輸送を改善し、それ故に、流れ中に混乱が生じる可能性がある任意のチョーキングまたはサルテーションを回避することを考慮した。
【0085】
キャリアガスの密度は、以下のマルチのパラメータ:触媒の密度およびサイズ、触媒流量、標的速度Ucata、ラインの径および長さ、ベクトルガス速度:にも依存し、本発明は、上記パラメータにも応じて適応させられるが、いずれにせよ、それは、一般に、従来通り、1kg/mよりはるかに低いままである。
【0086】
ガスg1の密度は、本発明によれば、同一操作条件下での富化水素の値より大きい値で選ばれる。
【0087】
この密度向上は、種々の方法で得られてよく、以下の実施例の主題を形成することになる。
【0088】
以下の全ての実施例は、接触改質法について言及する。本発明は、接触脱水素法に非常に類似的に適用され、本発明を適用することによって同一の技術的効果および同一の改善が観察される:しかしながら、所定の操作条件、とりわけ、圧力および温度は、上記にすでに記載されているように異なってよい。
【0089】
(実施例)
実施例1~5は、本発明の第1の実施形態に対応し、キャリアガスの化学組成を変更してその密度を高めるようにすることからなり、それは、富化水素を除去してそれを別のより高密度な化学種と置換するか、または、富化水素に1種または複数種のより高密度のガスを加えてガス相の平均密度を高めるようにするか、または富化水素を除去して、それをいくつかのより高密度のガスと置換するかのいずれかによって行う。
【0090】
(実施例1)
ベクトルガスの密度の増大を、ガスg1の組成を改変することによって得る。ガスg1は、ここでは、本発明により、窒素から100%構成されるガスである(しかしながら、不純物を少量で含有する場合がある)。平均リフトライン温度300℃および平均絶対圧力0.55MPaについて、窒素密度は、3.23kg/mに等しい。
【0091】
(実施例2)
ベクトルガスの密度の増大を、ガスg1の組成を改変することによって得る。ガスg1は、ここでは、本発明に合致するものであり、C1-C6軽質炭化水素から100%構成されるガスである(しかしながら、不純物を少量で含有する場合がある):組成例を、下記表1に与える。
【0092】
【表1】
【0093】
このガス混合物のモル質量は、34.3g/molに等しい。平均リフトライン温度300℃および平均絶対圧力0.55MPaについて、このガス混合物の密度は、3.96kg/mに等しい。
【0094】
(実施例3)
ベクトルガスの密度の増大を、ガスg1の組成を改変することによって得る。ガスg1は、本発明に合致するものであり、窒素から部分的に構成されかつ下記の表2に与えられる組成によるC1-C6軽質炭化水素から部分的に構成されるガスである。
【0095】
【表2】
【0096】
このガス混合物のモル質量は、35.8g/molに等しい。平均リフトライン温度300℃および平均絶対圧力0.55MPaについて、このガス混合物の密度は、4.14kg/mに等しい。
【0097】
(実施例4)
ベクトルガスの密度の増大を、ガスg1の組成を改変することによって得る。これは、本発明に合致するものであり、水素から部分的に構成され(35容積%未満)かつC1-C6軽質炭化水素から部分的に構成されるガスである:組成例を、下記の表3に与える。
【0098】
【表3】
【0099】
このガス混合物のモル質量は、25.9g/molに等しい。平均リフトライン温度300℃および平均絶対圧力0.55MPaについて、このガス混合物の密度は、2.99kg/mに等しい。
【0100】
(実施例5)
ベクトルガスの密度の増大を、ガスg1の組成を改変することによって得る。これは、本発明に合致するものであり、水素から部分的に構成され(35容積%未満)、かつ、窒素から部分的に構成されるガスである:組成例を、下記の表4に与える。
【0101】
【表4】
【0102】
ガス混合物のモル質量は、23.6g/molに等しい。平均リフトライン温度300℃および平均絶対圧力0.55MPaについて、このガス混合物の密度は、2.72kg/mに等しい。
【0103】
(実施例6)
ベクトルガスの密度の増大を、ガスg1の組成を改変することによって得る。これは、本発明に合致するものであり、水素から部分的に構成され(35容積%未満)、窒素から部分的に構成されかつC1-C6軽質炭化水素から部分的に構成されガスである:組成例を下記の表5に与える。
【0104】
【表5】
【0105】
ガス混合物のモル質量は、32.4g/molに等しい。平均リフトライン温度300℃および平均絶対圧力0.55MPaについて、このガス混合物の密度は、3.74kg/mに等しい。
【0106】
(実施例7)
実施例7は、本発明の第2の実施形態に対応し、これは、キャリアガスの圧力を改変することからなる:このケースにおいて、ガスg1は、富化水素のままであり、その作業温度は、300℃であり、その絶対圧力は、値P2の2.2MPaに増大し、これは、一般に用いられる平均圧力P1より4倍高い。富化水素の密度は、これらの条件下に、2.62kg/mである。
【0107】
(実施例8)
実施例8は、本発明の第3の実施形態に対応し、これは、キャリアガスg1の温度を改変することからなる:このケースにおいて、ガスg1は、富化水素のままであり、その作業温度T2は、50℃より低く、これは、一般に用いられる温度T1の300℃より6倍の低い値である。その圧力は、従来の圧力P1の0.55MPaのままにある。
【0108】
富化水素の密度は、これらの条件下に、1.16kg/mである。
【0109】
本発明は、実施例9および10において例証されるように、これらの種々の実施形態を組み合わせてもよく、それは、例えば、キャリアガスの化学組成およびその圧力またはその温度の両方を改変することによって、あるいは代わりに、ガス、例えば、水素を維持するが、その圧力およびその温度の両方を改変することによって行われる。
【0110】
(実施例9)
このケースにおいて、ガスg1は、富化水素であり。その作業温度を、100℃に低下させ、これは、一般に用いられる温度T1の300℃より3倍低い温度であり、その絶対圧力を、値P2の1.65MPaに増大させ、これは、一般に用いられる平均圧力P1より3倍高い圧力値である。ガスg1の密度は、これらの条件下に、3.02kg/mである。
【0111】
(実施例10)
キャリアガスg1の密度の増大を、いくつかの改変を組み合わせることによって得る。第1に、ガスg1の組成を改変し、これは、このケースにおいて、水素から部分的に構成され(35容積%未満)、窒素から部分的に構成され、およびC1-C6軽質炭化水素から部分的に構成されたガスである。組成例を下記の表6に与える。
【0112】
【表6】
【0113】
ガス混合物のモル質量は、16.1g/molに等しい。その温度も改変し、200℃の温度にそれを低下させ、これは、一般に用いられる温度T1の300℃より1.5倍低い値である。その絶対圧力も改変し、値P2の0.825MPaにそれを増大させ、これは、一般に用いられる平均圧力P1より1.5倍高い値である。ガスg1の密度は、これらの条件下に、3.38kg/mである。
【0114】
(実施例11)
この実施例において、産業用CCR改質ユニットを代表するリフトライン中の触媒輸送を、ANSYS Fluent(登録商標)ソフトウェアを用いるCFDシミュレーションによって再現した。図7は、シミュレートされたリフトラインの第1の部分を示す:それは、とりわけ、角度が水平に相対して60°である斜め部分から構成される。基準のケースを、図7中の、第1のエルボ部および斜め部分の始部のゾーンにおいて示されたライン中に輸送された触媒粒子の分布から取り、富化水素タイプのキャリアガスを用いる。このキャリアガスの密度は、0.5kg/mに等しく、10.4m/sの速度で流通する。これらの条件下に、第1のエルボ部を通過した後に、触媒が斜めライン中の、主として、チューブの底部上に流通すること、および粒子の速度勾配が、触媒の速度が0m/sに近いパイプの下部部分と、より高いビード速度によって特徴付けられる上部部分との間で確立されたことが観察される。
【0115】
同一のシミュレーションを実行したが、今回は、本発明に従い、ベクトルガスの密度を3kg/mに増大させることおよび上述の実施例7のケースにおけるのと同様に操作圧力を増大させることによって実行した。キャリアガスの速度を、6.6m/sに低減させ、平均ビード速度を基準のケースの速度と同一に維持するようにした。次いで、これらの条件下に、第1のエルボ部を通過した後に、触媒は、はるかにより希釈した方法で斜めライン中に流通することおよびこのラインセクション中の触媒速度は、基準ケースにおけるのより均一であることを観察する。
【図面の簡単な説明】
【0116】
図1】本発明を適用してよい接触改質設備の部分、とりわけ、本方法の反応セクションおよび再生セクションを示す。
図2図1の設備において用いられた垂直直線パイプ部分中のキャリアガスの速度に応じた触媒の種々の流れの流況を概略的に示す。
図3】水平直線パイプ部分中のキャリアガスの速度に応じた触媒の種々の流れの流況を概略的に示す。
図4】キャリアガスの密度に応じた垂直パイプについてのチョーキング速度および水平パイプについてのサルテーション速度を示すグラフである。
図5】垂直パイプ部分についての密度に応じたキャリアガスの速度とチョーキング速度との間の差を示すグラフである。
図6】斜めのパイプ部分についてのその密度に応じたキャリアガスの速度とサルテーション速度との間の差を示すグラフである。
図7】1つの反応器から次の反応器に触媒を輸送する「リフト」パイプのシミュレーションの画像である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】