(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-18
(54)【発明の名称】出動人員用視覚保護装置
(51)【国際特許分類】
A61F 9/02 20060101AFI20240611BHJP
G02C 7/10 20060101ALI20240611BHJP
A41D 13/11 20060101ALN20240611BHJP
【FI】
A61F9/02 305
G02C7/10
A41D13/11 L
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573360
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(85)【翻訳文提出日】2024-01-25
(86)【国際出願番号】 DE2022100408
(87)【国際公開番号】W WO2022253386
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】102021113990.2
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523446583
【氏名又は名称】ルビ・グラース・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】ヤール・マルティン・マンフレート
【テーマコード(参考)】
2H006
3B211
【Fターム(参考)】
2H006BA06
3B211CA01
(57)【要約】
本発明は、出動人員用の視覚保護装置(1)に関する。出動人員に潜在的に心的外傷を与える出来事による影響を低減するために、本発明では、視覚保護装置(1)の少なくとも1つの視覚レンズ(6)が、640nm超、600nm超、560nm超又は550nm超の波長の光を、より短い波長の波長範囲の光よりも強く反射及び/又は吸収するように構成されており、より短い波長の波長範囲は、640nm、600nm、560nm又は550nmまでの波長にわたる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの視覚レンズを備えた、人、特に出動人員用の視覚保護装置(1)において、
前記視覚レンズが、640nm超、600nm超、560nm超又は550nm超の波長の光を、より短い波長の波長範囲の光よりも強く反射及び/又は吸収するように構成されており、前記より短い波長の波長範囲は、640nm、600nm、560nm又は550nmまでの波長にわたることを特徴とする、視覚保護装置(1)。
【請求項2】
前記視覚レンズは、赤色光をほぼ完全に反射及び/又は吸収するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の視覚保護装置(1)。
【請求項3】
前記視覚レンズは、780nm又は800nmまでの波長の光を、少なくとも1つの他の色の光よりも強く反射及び/又は吸収するように構成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の視覚保護装置(1)。
【請求項4】
前記視覚保護装置(1)は、フェイスマスクであり、前記フェイスマスクの視覚シールド(6)の少なくとも一部が前記視覚レンズにより構成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の視覚保護装置(1)。
【請求項5】
前記視覚保護装置は、少なくとも1つのメガネレンズ(2、3、5)を有する保護メガネであり、前記メガネレンズ(2、3、5)は、少なくとも部分的に視覚レンズにより構成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の視覚保護装置(1)。
【請求項6】
前記保護メガネは、メガネレンズ保持部(4)を有しており、少なくとも1つの前記メガネレンズ(2、3、5)と前記メガネレンズ保持部(4)とは一体的に構成されており、少なくとも1つの前記メガネレンズ(2、3、5)のみが、又は少なくとも1つの前記メガネレンズ(2、3、5)及び前記メガネレンズ保持部(4)が、視覚レンズとして構成されていることを特徴とする、請求項5に記載の視覚保護装置(1)。
【請求項7】
前記視覚レンズは、光を反射及び/又は吸収するための反射コーティング及び/又は吸収コーティングを有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の視覚保護装置(1)。
【請求項8】
前記視覚レンズは、少なくともセグメントごとに又は全体的に円筒状又は球状に成形されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の視覚保護装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は視覚保護装置、とりわけ人用、特に消防士、警察官、レスキュー隊員、災害救援隊、兵士といった出動人員並びに事故当事者及び事故目撃者用の視覚保護装置の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
視覚保護装置、つまり例えば保護メガネ、又は視覚シールド付きのフェイスマスク、例えばフェイスシールド、呼吸マスク若しくは酸素マスクは、例えば有害な影響から目を守るために人又は出動中の人員によって使用される。有害な影響としては埃又は破片などが挙げられるが、呼吸マスク又は酸素マスクの場合は煙又は有毒ガスも挙げられる。
【0003】
事故当事者及び事故目撃者並びに出動中の人員が、部分的に重傷を負った人又は身体が切断された人に直面することは珍しくない。そのような負傷及び身体切断の光景は、出動人員の記憶に残り、例えば心的外傷後ストレス障害といった心理的な問題を引き起こすことが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、人、特に出動人員が負傷者及び/又は身体が切断された人に直面する状況において受けるネガティブな心理的影響を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明によれば、少なくとも1つの視覚レンズを有する視覚保護装置において、視覚レンズは、640nm超、600nm超、560nm超又は550nm超の波長の光を、より短い波長の波長範囲の光よりも強く反射及び/又は吸収するように構成されており、この場合、より短い波長の波長範囲は、640nm、600nm、560nm又は550nmまでにわたる、ことによって解決される。フィルタ範囲には赤色光が含まれる。
【0006】
視覚保護装置が赤色光を反射及び/又は吸収すること、つまり可視スペクトルからフィルタ除去することによって、人は、この色をあまり知覚しない又は全く知覚しない。このとき人の視野において赤色の領域は、かなり暗く又は黒く知覚される。
【0007】
色及びその色に結びついた体験が記憶される度合いは様々である。特に赤色は、たとえ全ての色の中で最も際立っていなくとも、この影響が非常に強いため、重傷者及び死者に対処及び/又は救助する必要があった出動状況は特に長期間にわたって記憶に残り、何度も克服しなくてはならない。負傷者又は身体が切断された人は多量に出血していることが多く、負傷者又は身体が切断された人の負傷した肉及び露呈している内臓は、血液循環などにより赤く又は赤みを帯びて見える。
【0008】
本発明の視覚保護装置は赤色をフィルタ除去するので、人の視野における赤色領域、つまり、負傷者又は身体が切断された人の血、負傷した肉、内臓又は切断された手足が記憶に残る度合いが弱くなるので、そのような状況において人が受ける負担が低減され、そのような心的外傷を受ける体験を素早く克服することができる。
【0009】
例えばハザートシンボル及び交通標識では、その形及び対応するピクトグラムが明確に識別できるので、本発明の視覚保護装置が危険性を生じさせるものとはならない。また、ハザートシンボルはしばしばオレンジ色で表現されており、場合によってはこの色は本発明の視覚保護装置によってフィルタ除去されない。
【0010】
本発明の視覚保護装置は、有利には、負傷者や死者に偶然遭遇した人にとっても適している。したがって、例えば救急箱に相応の視覚保護装置が備え付けられてよい。
【0011】
本解決手段は、それぞれそれ自体で有利であるが、特に言及しない限り任意に互いに組み合わせ可能な様々な実施形態によってさらに改善することができる。以下、そのような実施形態及びこれに伴う利点について説明する。
【0012】
第1の実施形態によると、視覚レンズは、赤色光をほぼ完全に反射及び/又は吸収するように、つまりフィルタ除去するように構成されている。本質的に、この光が少なくとも70%、少なくとも80%若しくは少なくとも90%のみならず少なくとも95%、又は場合によっては視覚保護装置の装着者が全く知覚できないほど強くフィルタ除去される、つまり反射又は吸収されることを意味してよい。
【0013】
この実施形態の利点は、心的外傷を与える可能性のある印象が記憶される度合いを弱めることであり得る。
【0014】
既に述べたように、視覚レンズは、640nm超、600nm超、560nm超又は550nm超の波長の光を、より短い波長の波長範囲の光よりも強く反射及び/又は吸収する、つまりフィルタ除去するように構成されている。光が視覚レンズによって反射及び/又は吸収されるフィルタ範囲は、上記のいずれかの波長から始まり、この場合、この波長は、下の波長値又は第1波長値と呼ぶことができる。
【0015】
視覚レンズが、少なくとも640nm、少なくとも600nm、少なくとも560nm又は少なくとも550nmの波長の光をフィルタ除去するように構成されていることによって、カラースペクトルにおいて赤色光だけがフィルタ除去されるわけではないことが有利である。確かに、カラースペクトルにおいて赤色光をフィルタ除去するだけでも、既に心的外傷を与え得る印象が記憶される度合いを大幅に弱めることができる。しかし、カラースペクトルにおいて赤色光は、人間の目には特にいわゆる赤錐体によって知覚され、その吸収極大は、典型的には約563nmの光の波長の付近にあり、これはカラースペクトルにおいて黄-緑の色に対応する。赤錐体が、スペクトルの赤色光よりも短い波長をもつ光によって興奮すると、他の色であっても心的外傷を与える印象との連想をもたらしてしまうおそれがある。というのも、スペクトルにおいて赤色光及び約563nmの波長の光によってまさに同じ錐体が興奮するからである。本開示の範囲内では、人間の目の赤錐体を興奮させるあらゆる波長の光、又は少なくとも、赤錐体の吸収極大付近の波長の光と同じ波長及び/又はそれよりも長い波長をもつ光を赤色光と呼ぶことができる。特に前述のフィルタ範囲にある波長の光を赤色光と呼ぶことができる。
【0016】
別の一実施形態によると、視覚レンズは、780nm又は800nmまでの波長の光を、少なくとも1つの他の色の光及び/又はこれより長い波長の光よりも強く反射及び/又は吸収するように構成されている。つまり、視覚レンズによって光が反射及び/又は吸収されるフィルタ範囲は、前述の波長のうちの1つの付近で終わり、この場合、その波長は、上の波長値又は第2波長値と呼ぶことができる。
【0017】
視覚レンズが最高で780nm又は最高で800nmの波長の光をフィルタ除去するように構成されていることによって、そして特に視覚レンズが前述の波長を上回る光を反射する構造又は要素、例えばコーティングを有しない場合、赤外線光は、引き続き出動人員に達し得るので、このことは、出動人員が例えば火事の場合に周囲を詳細に知覚することを可能にする。特に、熱源、例えば火からの熱放射を感知することができる。
【0018】
本発明の特に好適な一実施形態によると、視覚レンズにカットオフフィルタを設けるために視覚レンズにコーティングが施されている。このとき好ましくは640nmから780nmの範囲においてブロックが行われる。
【0019】
別の一実施形態によると、視覚保護装置は、光のフィルタリングのためにバンドストップフィルタ又はノッチフィルタを有しており、それによりフィルタ除去すべき光、つまり出動人員の目に到達すべきでない光がフィルタ除去又はブロックされ、つまり、反射及び/又は吸収される。
【0020】
別の一実施形態によると、視覚保護装置はフィルタリング用に、出動人員の目に届くべき光のみを通過させるバンドパスフィルタを有している。
【0021】
この実施形態の利点は、的確に光を波長範囲に応じてフィルタ除去又は通過させることができることであり得る。
【0022】
代替的に、別の一実施形態によると、視覚レンズは、赤外線光もフィルタ除去するよう、特に反射するように構成することができ、それにより出動人員を熱放射から守ることができる。
【0023】
本発明の別の一実施形態によると、視覚保護装置はフェイスマスクであり、フェイスマスクの視覚シールドの少なくとも一部分が視覚レンズにより構成されている。特に、この部分は、視覚保護装置装着者が視覚シールド越しに見る部分であり得る。代替的に、視覚シールドは、その全面に視覚レンズを設けてよい又は視覚レンズから形成されてよい。
【0024】
この実施形態の利点は、視覚保護装置に追加的にフェイスマスクを装着しなくても、負担となる印象から出動人員を保護するだけでなく、煙又はガスといったその他の有害な影響からも保護できることであり得る。
【0025】
本発明の別の一実施形態によると、視覚レンズは、少なくともセグメントごとに又は全体的に、円筒状又は球状に成形又は湾曲されている。
【0026】
この実施形態の利点は、使用される視覚レンズの種類に応じて、特に光が視覚レンズに垂直に当たる場合に、光が特に効果的にフィルタリングされることであり得る。ここで垂直とは光が視覚レンズの表面に対して90°の角度でレンズに当たることを意味する。本明細書の範囲内では、90°の角度から±5°まで、±10°まで又は±15°まで逸脱する角度を、依然として垂直に入射する光とみなしてよい。
【0027】
例えば視覚保護装置には、所定の視線方向を有してよく、この視線方向に沿って、視覚保護装置装着者が視覚保護装置越しに見る。見る方向が、装着者が視覚レンズ越しに見る視覚レンズ部分の外面に対して垂直になるように、視覚レンズは、セグメントごとに又は全体的に円筒状又は球状に成形又は湾曲されてよい。見る方向と外面との間の角度は、本開示の範囲内で依然として垂直であると見なすために、90°から±5°まで、±10°まで又は±15°まで逸脱しよい、又は25°まで逸脱してもよい。
【0028】
本発明の別の一実施形態によると、視覚保護装置は、少なくとも1つのメガネレンズ及び例えば2つのメガネレンズを有するメガネ、特に保護メガネであり、この少なくとも1つのメガネレンズは少なくとも部分的に又は全体的に視覚レンズにより構成されている、又は2つのメガネレンズは少なくとも部分的に又は全体的にそれぞれ1つの視覚レンズにより構成されている。
【0029】
本実施形態の利点は、視覚保護装置が容易にかつ柔軟に取り扱えることである。
【0030】
本発明の別の一実施形態によると、保護メガネは、メガネレンズ保持部を有しており、このとき、少なくとも1つのメガネレンズ又は複数のメガネレンズと、メガネレンズ保持部とは、一体的に、例えば完全に同じ材料から形成することができる。この少なくとも1つのメガネレンズは、視覚レンズから形成することができる。複数のメガネレンズは、それぞれ視覚レンズから形成することができる。少なくとも1つのメガネレンズ及びメガネレンズ保持部は、視覚レンズの材料から形成することができる。複数のメガネレンズ及びメガネレンズ保持部は、視覚レンズの材料から形成することができる。
【0031】
この実施形態の利点は、視覚保護装置をより容易に製造できることであり得る。
【0032】
別の一実施形態によると、視覚レンズには、光を反射及び/又は吸収するための反射コーティング及び/又は吸収コーティングが設けられている。
【0033】
本実施形態の利点は、所望の特性を有するコーティングが容易にかつ経済的に製造可能であることであり得る。特に、コーティングは市販の視覚保護装置に、その視覚保護装置の製造中に又は製造後であっても施すことができ、それにより視覚保護装置の開発及び製造のコストを大幅に削減することができる。
【0034】
代替的に又は追加的に、視覚レンズの材料そのものが前述の波長の光を反射及び/又は吸収するように構成することができる。
【0035】
本実施形態の利点は、所望の特性を有する視覚レンズが、例えば射出成形によって容易にかつ経済的に製造可能であることであり得る。
【0036】
別の一実施形態によると、視覚レンズは、本質的に、光学ガラス、例えばミネラルガラス、又は透明なプラスチック、例えばポリカーボネートから製造されていて、任意選択的に、所定の波長範囲における光を反射及び/又は吸収するための反射コーティング及び/又は吸収コーティングが施されている。
【0037】
赤色光は、動脈血及び静脈血を反射する波長の光を有し得る。その赤色光は、血紅色に相当してよい又は血紅色を有してよい。血紅色は、RALカラーの3020又は3003であってよい。
【0038】
反射及び/又は吸収される波長範囲は、動脈血及び静脈血の典型的な色又は血紅色を有してよく、任意選択的にはカラースペクトルにおいて赤色に属する若しくは赤錐体によって相当程度吸収される別の波長を有してよい。
【0039】
本開示の範囲内で、色とは、可視光スペクトルの色であってよい。
【0040】
以下、本発明の理解を深めるために、図面を参照する。図面は、本発明の対象となる複数の実施例を示しているに過ぎない。実施例の特徴は、互いに独立して組み合わせ可能である。
【0041】
図面及び図面の説明においては、同じ部分又は同じ機能を持つ部分には同じ符号が用いられている。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明の視覚保護装置の視覚レンズの一実施例の透過曲線である。
【
図3】本発明の視覚保護装置の別の一実施例である。
【
図4】本発明の視覚保護装置の別の一実施例である。
【
図5】本発明の視覚保護装置の別の一実施例である。
【
図6】640~780nmの範囲をブロックするカットオフフィルタを備える視覚レンズの好適な実施形態の透過曲線である。
【
図7】角度との関係を示すための
図6の視覚レンズの様々な透過曲線を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、本発明の視覚保護装置の視覚レンズの一実施例の透過曲線を概略的に示し、光の波長λに対する視覚レンズの透過率Tが記入されている。例えば縦軸には0%から100%の透過率Tが記入されている。横軸には、少なくとも部分的に可視スペクトルを含み、任意選択的には赤外域まで及んでよい波長λの波長範囲が記入されている。
【0044】
所定の第1波長値λ1を下回る波長の光は視覚レンズによりほぼ遮られずに透過するので、その光の例えば70%超、80%超又は90%超が透過する。
【0045】
第1波長値λ1以上においては光の透過率は大きく低下するので、透過されるのはその光の例えば30%未満、20%未満、10%未満又は5%未満である。視覚レンズが光を反射及び/又は吸収することができるので、これにより、視覚レンズを通る光の透過が低減される又はそれどこか阻止される。したがって、第1波長値λ1以上の波長を持つ光は、部分的に、つまり70%まで、80%まで、90%まで、又はそれ以上に95%まで、又は、それどころか完全に、つまりほぼ100%まで、視覚レンズによりフィルタ除去可能である。
【0046】
第1波長値λ1は、カラースペクトル又は本開示において赤色光とみなされる光の波長の最も短い波長であってよい。
【0047】
例えば第1波長値λ1は、550nm、560nm、600nm又は640nmの波長であってよい。これらのうちの所定の波長を上回る波長の光は、本開示の範囲内では赤色光と呼ぶことができる。代替的に、そのような光は本開示の範囲内では、他の波長の光と比較して強く記憶に残る及び/又は人間の目の赤錐体をより強く興奮させる長波長光と呼ぶことができる。
【0048】
フィルタ除去される光は、動脈血及び静脈血を反射する光の赤成分を有してよい、又は光の赤成分から構成されていてよい。フィルタ除去される光は、血紅色の光であってよい。血紅色はRALカラー3020又は3003であってよい。
【0049】
反射及び/又は吸収される波長範囲は、動脈血及び静脈血の色又は血紅色、及び任意選択的にはカラースペクトルにおいて又は本開示において赤色に属する別の波長を有することができる。
【0050】
任意選択的に、視覚レンズは、所定の第2波長値λ2までの光のみをフィルタ除去するように構成することができる。第2波長値λ2は、好ましくは第1波長値λ1より大きい。例えば、第2波長値λ2は、カラースペクトルにおいて赤色に属する光又は赤外線への移行部を形成する光の波長範囲の上端に相当し得る。例えば、第2波長値λ2の波長は例えば780nm又は800nmである。
【0051】
第2波長値λ2を上回る波長の光はほぼ遮られずに視覚レンズを透過するので、その光の例えば70%超、80%超、又はそれどころか90%超が視覚レンズにより透過され得る。代替的に、視覚レンズが、第2波長値λ2を上回る光を反射することができるので、その光の70%超、80%超、又はそれどころか90%超が反射させられる。
【0052】
図2には、本発明の第1の視覚保護装置1の実施例が正面図で概略的に示されている。視覚保護装置1は例示的に2つのメガネレンズ2、3を備えるメガネとして表されており、メガネはさらに、メガネレンズ2、3が紛失し得ないように固定されたメガネレンズ保持部4を有している。例えば、メガネレンズ2、3は、メガネレンズ保持部4に形状結合式、力結合式、又は材料結合式に固定されている。代替的に、メガネレンズ2、3とメガネレンズ保持部4とは一体的に製造すること、つまり、一貫して同一の材料、例えば視覚レンズの材料の材料から製造することができる。
【0053】
両方のメガネレンズ2、3は、それぞれ、少なくとも部分的に又は完全に視覚レンズから形成されてよい。
【0054】
視覚レンズは、全体として円筒状又は球状に形成することができる。代替的に、視覚レンズは、複数のセグメントを有することもでき、これらセグメントは互いに隣接して又は互いに間隔を置いて配置することができ、選択したセグメント又は全てのセグメントを円筒状又は球状に成形することができる。
【0055】
図3には、本発明の視覚保護装置1の別の一実施例が概略的に斜視図で示されている。形又は機能において前述の実施例の要素に対応している要素には同じ符号が用いられている。簡潔にするために以下では前述の実施例とは異なる点についてのみ述べる。
【0056】
図3の実施例における視覚保護装置1も例示的にメガネとして、特に保護メガネとして構成されている。保護メガネは、単一のメガネレンズ5を有しており、このメガネレンズ5は、この視覚保護装置1の装着者が両方の目で同時にこのメガネレンズ5を通して見ることができるように寸法付けられている。例えば、メガネレンズ5は、形状結合式、力結合式又は材料結合式にメガネレンズ保持部4に固定されている。代替的に、
図3に例示されているように、メガネレンズ5とメガネレンズ保持部4とは一体的に、つまり一貫して同一の材料から、例えば視覚レンズの材料から製造することができ、例えば射出成形されてよい。
【0057】
メガネレンズ5は、少なくとも部分的に又は完全に視覚レンズから構成することができる。
【0058】
視覚レンズは全体的に円筒状又は球状に形成することができる。代替的に視覚レンズは複数のセグメントを有することもでき、これらセグメントは互いに隣接して又は互いに間隔を置いて配置することができ、選択したセグメント又は全てのセグメントを円筒状又は球状に成形することができる。
【0059】
図4には本発明の視覚保護装置1の別の一実施例が正面図で概略的に示されている。形又は機能において前述の実施例の要素に対応している要素には同じ符号が用いられている。簡潔にするために以下では前述の実施例とは異なる点についてのみ述べる。
【0060】
図4に図示された実施例の視覚保護装置1はフェイスマスクであり、フェイスマスクは、呼吸マスク又は酸素マスクとして構成することができる。フェイスマスクは視覚シールド6を有しており、視覚シールド6は少なくとも部分的に又は完全に視覚レンズから構成することができる。例えば、視覚保護装置1の装着時、フェイスマスク装着者が視覚シールド6を通して見る視覚シールド6の部分のみに、本発明の視覚レンズのフィルタ特性を持たせることができる。代替的に、視覚シールド6の全面的に本発明の視覚レンズのフィルタ特性を持たせることもできる。
【0061】
図4の実施例における視覚保護装置1にはさらに、視覚シールド6用の保持部7が設けられており、この視覚シールド保持部7は、ガスが人の顔の間近にかかるように構成することができる。
【0062】
視覚レンズ又は視覚シールド6は、全体として円筒状に構成することができる。視覚レンズ又は視覚シールド6は、長手軸線を有してよく、この長手軸線を中心に、視覚レンズ又は視覚シールド6が円筒状に湾曲されている。例えば、円筒状に湾曲された視覚レンズ又は円筒状に湾曲された視覚シールド6の長手軸線は、これが本質的に視覚保護装置1装着者の視覚平面を通って延びるよう配置することができる。視覚平面内に装着者の両目が位置してよい。視覚保護装置1を人が装着すると、長手軸線は、鉛直に整列することができる。例えば、長手軸線は、視覚保護装置1の装着者の鼻梁に対して平行に延ばすことができる。長手軸線は視覚保護装置1の対称面に対して平行に又は対称面内に延ばすことができる。長手軸線は、視覚保護装置1装着者が視覚保護装置1を通して見る視線方向に対してほぼ垂直に延ばすことができる。
【0063】
代替的に視覚レンズ又は視覚シールド6は複数のセグメントを有することもでき、これらセグメントは、互いに隣接して又は互いに間隔を置いて配置することができ、選択したセグメント又は全てのセグメントを円筒状又は球状に成形することができる。
【0064】
図5には本発明の視覚保護装置1の別の一実施例が斜視図で概略的に示されている。形又は機能において前述の実施例の要素に対応している要素には同じ符号が用いられている。簡潔にするために以下では、前述の実施例とは異なる点についてのみ述べる。
【0065】
図5も、視覚シールド6を備えるフェイスマスクとしての視覚保護装置1を示す。ただし、本実施例のフェイスマスク5は視覚シールド保持部7を用いずに構成されている。むしろ、
図5の実施例の視覚保護装置1は、視覚シールド6と視覚シールドホルダ8とを有し、視覚シールドホルダ8に視覚シールド6が取り付けられている。視覚シールドホルダ8は、容易にかつ可能であれば繰り返し着脱可能にヘルメットに、又は可能であれば伸縮性ヘッドバンド9に取り付けられるように構成することもできる。
図5の実施例の視覚保護装置1はフェイスシールドと呼ぶことができる。
【0066】
視覚レンズ又は視覚シールド6は、全体として円筒状に構成することができる。視覚レンズ又は視覚シールド6は、長手軸線を有することができ、長手軸線を中心に視覚レンズ又は視覚シールド6を円筒状に湾曲させることができる。例えば、円筒状に湾曲された視覚レンズ又は円筒状に湾曲された視覚シールド6の長手軸線は、本質的に視覚保護装置1装着者の視覚平面を通って延びるように配置することができる。視覚平面内に、装着者の両目が位置し得る。視覚保護装置1を人が装着すると、長手軸線は、垂直に向けることができる。例えば、長手軸線は、視覚保護装置1装着者の鼻梁に対して平行に延びてよい。長手軸線は、視覚保護装置1の対称平面に対して平行に又は視覚保護装置1の対称面内に延びてよい。長手軸線は、視覚保護装置1装着者が視覚保護装置1を通して見る視線方向に対してほぼ垂直に延びてよい。
【0067】
図6及び
図7は、カットオフフィルタを有する視覚保護メガネの好適な実施形態の透過曲線を示しており、
図7には、光の入射の0°(直角の光の入射)から25°(直角からの逸脱)の範囲におけるカットオフフィルタの角度依存性が記入されている。光の波長λに対する視覚レンズの0.0から1.0の透過率Tが示されている。
図7には、640nmから780nmという所望の範囲において視覚レンズのほぼ完全な、入射角の変化によっても影響を受けないブロックが行われることが示されている。符号AからFは、0°から25°まで5°ずつ直角から逸脱する曲線を表す。
【符号の説明】
【0068】
1 視覚保護装置
2、3、5 メガネレンズ
4 メガネレンズ保持部
6 視覚シールド
7 視覚シールド保持部
8 視覚シールドホルダ
9 ヘッドバンド
S 視線方向
T 透過率
λ1 第1波長値
λ2 第2波長値
A 0°に対する曲線
B 5°に対する曲線
C 10°に対する曲線
D 15°に対する曲線
E 20°に対する曲線
F 25°に対する曲線
【手続補正書】
【提出日】2024-02-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの視覚レンズを備えた、人、特に出動人員用の視覚保護装置(1)において、
前記視覚レンズが、640nm超、600nm超、560nm超又は550nm超の波長の光を、より短い波長の波長範囲の光よりも強く反射及び/又は吸収するように構成されており、前記より短い波長の波長範囲は、640nm、600nm、560nm又は550nmまでの波長にわたることを特徴とする、視覚保護装置(1)。
【請求項2】
前記視覚レンズは、赤色光をほぼ完全に反射及び/又は吸収するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の視覚保護装置(1)。
【請求項3】
前記視覚レンズは、780nm又は800nmまでの波長の光を、少なくとも1つの他の色の光よりも強く反射及び/又は吸収するように構成されていることを特徴とする、請求項
1に記載の視覚保護装置(1)。
【請求項4】
前記視覚保護装置(1)は、フェイスマスクであり、前記フェイスマスクの視覚シールド(6)の少なくとも一部が前記視覚レンズにより構成されていることを特徴とする、請求項
1に記載の視覚保護装置(1)。
【請求項5】
前記視覚保護装置は、少なくとも1つのメガネレンズ(2、3、5)を有する保護メガネであり、前記メガネレンズ(2、3、5)は、少なくとも部分的に視覚レンズにより構成されていることを特徴とする、請求項
1に記載の視覚保護装置(1)。
【請求項6】
前記保護メガネは、メガネレンズ保持部(4)を有しており、少なくとも1つの前記メガネレンズ(2、3、5)と前記メガネレンズ保持部(4)とは一体的に構成されており、少なくとも1つの前記メガネレンズ(2、3、5)のみが、又は少なくとも1つの前記メガネレンズ(2、3、5)及び前記メガネレンズ保持部(4)が、視覚レンズとして構成されていることを特徴とする、請求項5に記載の視覚保護装置(1)。
【請求項7】
前記視覚レンズは、光を反射及び/又は吸収するための反射コーティング及び/又は吸収コーティングを有することを特徴とする、請求項
1に記載の視覚保護装置(1)。
【請求項8】
前記視覚レンズは、少なくともセグメントごとに又は全体的に円筒状又は球状に成形されていることを特徴とする、請求項
1に記載の視覚保護装置(1)。
【請求項9】
視覚保護装置(1)の使用法において、前記視覚保護装置(1)は、請求項1から8のいずれか一項に記載の視覚保護装置(1)であって、使用に際して、人又は出動人員は、負傷者及び/又は身体が切断された人に直面していることを特徴とする、人又は出動中の人員による視覚保護装置(1)の使用法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0067
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0067】
図6及び
図7は、カットオフフィルタを有する視覚保護メガネの好適な実施形態の透過曲線を示しており、
図7には、光の入射の0°(直角の光の入射)から25°(直角からの逸脱)の範囲におけるカットオフフィルタの角度依存性が記入されている。光の波長λに対する視覚レンズの0.0から1.0の透過率Tが示されている。
図7には、640nmから780nmという所望の範囲において視覚レンズのほぼ完全な、入射角の変化によっても影響を受けないブロックが行われることが示されている。符号AからFは、0°から25°まで5°ずつ直角から逸脱する曲線を表す。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下を含む。
1.
少なくとも1つの視覚レンズを備えた、人、特に出動人員用の視覚保護装置(1)において、
前記視覚レンズが、640nm超、600nm超、560nm超又は550nm超の波長の光を、より短い波長の波長範囲の光よりも強く反射及び/又は吸収するように構成されており、前記より短い波長の波長範囲は、640nm、600nm、560nm又は550nmまでの波長にわたることを特徴とする、視覚保護装置(1)。
2.
前記視覚レンズは、赤色光をほぼ完全に反射及び/又は吸収するように構成されていることを特徴とする、上記1の視覚保護装置(1)。
3.
前記視覚レンズは、780nm又は800nmまでの波長の光を、少なくとも1つの他の色の光よりも強く反射及び/又は吸収するように構成されていることを特徴とする、上記1又は2の視覚保護装置(1)。
4.
前記視覚保護装置(1)は、フェイスマスクであり、前記フェイスマスクの視覚シールド(6)の少なくとも一部が前記視覚レンズにより構成されていることを特徴とする、上記1から3のいずれか一つの視覚保護装置(1)。
5.
前記視覚保護装置は、少なくとも1つのメガネレンズ(2、3、5)を有する保護メガネであり、前記メガネレンズ(2、3、5)は、少なくとも部分的に視覚レンズにより構成されていることを特徴とする、上記1から3のいずれか一つの視覚保護装置(1)。
6.
前記保護メガネは、メガネレンズ保持部(4)を有しており、少なくとも1つの前記メガネレンズ(2、3、5)と前記メガネレンズ保持部(4)とは一体的に構成されており、少なくとも1つの前記メガネレンズ(2、3、5)のみが、又は少なくとも1つの前記メガネレンズ(2、3、5)及び前記メガネレンズ保持部(4)が、視覚レンズとして構成されていることを特徴とする、上記5の視覚保護装置(1)。
7.
前記視覚レンズは、光を反射及び/又は吸収するための反射コーティング及び/又は吸収コーティングを有することを特徴とする、上記1から6のいずれか一つの視覚保護装置(1)。
8.
前記視覚レンズは、少なくともセグメントごとに又は全体的に円筒状又は球状に成形されていることを特徴とする、上記1から6のいずれか一つの視覚保護装置(1)。
【国際調査報告】