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  • 特表-新型抗血栓抗体 図1A
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  • 特表-新型抗血栓抗体 図2
  • 特表-新型抗血栓抗体 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-18
(54)【発明の名称】新型抗血栓抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/36 20060101AFI20240611BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20240611BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240611BHJP
   C07K 5/08 20060101ALI20240611BHJP
   C07K 5/10 20060101ALI20240611BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20240611BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20240611BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20240611BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240611BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240611BHJP
   C12N 15/14 20060101ALI20240611BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240611BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240611BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240611BHJP
   C12Q 1/56 20060101ALI20240611BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240611BHJP
   A61K 47/62 20170101ALI20240611BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20240611BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20240611BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240611BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240611BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240611BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240611BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20240611BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
C07K16/36 ZNA
C07K14/47
C07K19/00
C07K5/08
C07K5/10
C07K7/06
C07K7/08
C07K14/00
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/14
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12P21/08
C12Q1/56
A61K39/395 N
A61K47/62
A61K47/65
A61P7/02
A61P11/00
A61P29/00
A61P25/00
A61P9/10
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575641
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 CN2022097412
(87)【国際公開番号】W WO2022257929
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】202110639032.6
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522293490
【氏名又は名称】シャンハイ シンヴィダ バイオテクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ジュンリン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,シュエメイ
(72)【発明者】
【氏名】スン,ティエンイァオ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4B064
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA40
2G045DA36
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QQ70
4B063QQ79
4B063QQ97
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA13
4C076AA95
4C076CC01
4C076CC11
4C076CC14
4C076CC15
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF31
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB31
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA12
4H045BA13
4H045BA14
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA18
4H045BA41
4H045CA40
(57)【要約】
本発明は、新型な抗血栓抗体を提供し、当該抗体はFIXaを標的とし、独特な性能を有し、それが、血液凝固因子FIXaとFVIIIaとの結合部位に特異的に標的し、FVIIIa-FIXa複合体の形成を減少し、FXからFXaへの転化を遮断し、抗血栓作用を発揮する。本発明の抗体は、適切な抗血栓性能を有し、有効治療濃度窓が大きいが、出血リスクを増加しない;臨床応用における適度な抗血栓及び過度な作用による出血問題を効果的に避けるための需要を実現することができる。本発明は、また、FIXa-FVIIIa結合部位を標的とする薬物のスクリーニング方法を開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖CDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 3に示され、CDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 4に示され、CDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 5に示される;軽鎖CDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 6に示され、CDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 7に示され、CDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 8に示されることを特徴とする抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記のモノクローナル抗体は、
(a)重鎖可変領域アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 1に示され、軽鎖可変領域アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 2に示される抗体;または
(b)重鎖可変領域アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 1に示される配列と80%以上の同一性を有し、軽鎖可変領域アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 2に示される配列と80%以上の同一性を有し、かつ(a)の抗体機能を有する抗体;
を含む;
好ましくは、前記のモノクローナル抗体は、マウス由来抗体、キメラ抗体またはヒト化抗体を含む;または、前記のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、一本鎖抗体、ドメイン抗体、Fabフラグメント、Fab′フラグメント、Fdフラグメント、F(ab’)フラグメントを含む;
ことを特徴とする請求項1に記載の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
単離されたポリヌクレオチドまたは当該ポリヌクレオチドを含有するコンストラクトであって、前記のポリヌクレオチドは、請求項1~2のいずれか一つに記載の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする;好ましくは、前記のコンストラクトは、発現ベクターであることを特徴とする単離されたポリヌクレオチドまたは当該ポリヌクレオチドを含有するコンストラクト。
【請求項4】
請求項3に記載のコンストラクトを含み、あるいはゲノムに外来の請求項3に記載のポリヌクレオチドが組み込まれた;好ましくは細胞発現システムであることを特徴とする抗体発現システム。
【請求項5】
請求項1~2のいずれか一つに記載の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを調製する方法であって、前記の抗体の発現に適した条件下で、請求項5に記載の抗体発現システムを用いて発現し、前記の抗体を発現することを含む;好ましくは、前記の抗体を精製・分離することも含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1~2のいずれか一つに記載の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント、及びそれと作動可能に連結する融合パートナーを含む融合タンパク質。好ましくは、前記の融合パートナーは、体内の半減期を延長する作用を有するタンパク質または活性ドメイン、またはエフェクターに対して効果を高める機能または結合作用を有するタンパク質または活性ドメインを含む;より好ましくは、前記の体内の半減期を延長する作用を有するタンパク質または活性ドメインは、免疫グロブリンFc領域、好ましくはヒト免疫グロブリンFc領域、血清アルブミンまたはそのフラグメントを含む。
【請求項7】
請求項1~2のいずれか一つに記載の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント、または請求項6に記載の融合タンパク質;及びそれと接続する機能性分子を含むことを特徴とする免疫コンジュゲート。好ましくは、前記の機能性分子は、血液細胞表面マーカーに標的する分子、親水性ポリマーまたは検出可能なマーカーを含む。
【請求項8】
請求項1~2のいずれか一つに記載の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント、請求項6に記載の融合タンパク質、または請求項7に記載の免疫コンジュゲートを含むことを特徴とする薬物組成物;好ましくは、前記の薬物組成物は、さらに薬学的に許容される担体を含む。
【請求項9】
血栓塞栓性疾患を緩和または治療する製剤またはキットの調製における請求項1~2のいずれか一つに記載の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント、請求項6に記載の融合タンパク質、または請求項7に記載の免疫コンジュゲートまたはそれらを含む薬物組成物の応用;
好ましくは、前記の血栓塞栓性疾患は、静脈、動脈または毛細血管血栓形成、心臓中の血栓形成、血液と人工表面との接触過程においておよび/またはその後の血栓形成、間質性肺疾患、炎症、神経炎性疾患、補体活性化、フィブリン溶解、血管新生、FVIIIa-FIXa複合体形成による凝血生成、FX活性化による凝血生成、FIIa増幅による凝血生成、網膜血管透過性関連疾患を含む;好ましくは、動脈または毛細血管血栓形成に関連する疾患は、心筋梗塞、脳卒中、深部静脈血栓形成、門脈血栓形成、腎静脈血栓形成、頸静脈血栓形成、脳静脈洞血栓形成、Budd-Chiari症候群またはPaget-Schroetter病を含む。
【請求項10】
請求項1~2のいずれか一つに記載の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント、請求項6に記載の融合タンパク質、または請求項7に記載の免疫コンジュゲートまたはそれらを含む薬物組成物を含むことを特徴とするキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫学と薬学分野に属し、より具体的に、本発明は、血液凝固因子FIXa-FVIIIa結合部位に標的する新型な抗血栓抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
血栓塞栓性疾患は、動静脈と微小血管血栓の形成または塞栓を特徴とする臨床的によく見られる疾患であり、当該疾患には、血栓形成後の血流が阻害されたり、栓が脱落して下流の血流が途絶えたりするため、組織器官の虚血と壊死を引き起こす。世界では、約1790万人が心血管疾患で死亡し、世界の死亡数の31%を占めている。血栓の形成は、各種の深刻な心脳血管疾患を引き起こす重要な要素であり、血栓性疾患は、現在の社会で人類の健康と生命を脅かす最も重要な原因となる。血栓塞栓性疾患の主な治療手段は、抗血液凝固、抗血小板及び溶栓を含む抗血栓治療である。その中で、抗血液凝固治療は、主に血液凝固カスケード反応中の異なる血液凝固因子に対して、血液凝固因子を抑制することによって血液凝固過程を遮断する。
【0003】
血液凝固因子は、血液凝固過程に関与する様々なタンパク質成分である。その生理作用は、血管出血時に活性化され、血小板と結合し、血管上の漏出口を埋めることである。この過程は血液凝固と呼ばれている。全体の血液凝固過程は大体、プロトロンビンの活性化とゲル状フィブリンの形成の2つの段階に分けられる。統一的に命名するため、世界保健機関は、発見された順に、ローマ数字で番号をつけ、血液凝固因子(F)I、II、III、IV、V、VII、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIなどがある。いくつかの血液凝固因子の番号に「a」をつけることで、その活性化形態を表す;例えば、血液凝固因子IX(FIX)の活性化形態はFIXaであり、血液凝固因子VIII(FVIII)の活性化形態はFVIIIaである。
【0004】
現在臨床で使用されている抗血液凝固薬には、ヘパリン及びその誘導体、ビタミンKアンタゴニスト(例えばワーファリン)、小分子抑制剤リバーロキサバン(Rivaroxaban)、ダビガトラン(Dabigatran)などがあり、いずれも血液凝固カスケードの共通血液凝固経路(血液凝固因子IIa、Xa)に作用でき、生理的止血機能に影響を与えることを避けることができず、そのため、深刻な出血の危険性(特に脳出血)がある。内因性血液凝固経路は、病理性血栓の形成と密接に関連しているが、止血機能にとって必須なものではなく、そのため、内因性血液凝固因子の選択的抑制剤は、すでに新型抗血液凝固薬物研究のホットスポットとなっている。
【0005】
FIXaは、内因性血液凝固経路における重要な血液凝固因子であり、唯一の可溶形式の血液凝固タンパク質である。FIXaは、組織因子担持細胞(Tissue Factor Bearing Cell)から血小板に効果的に拡散することができ、血液凝固鎖の開始と増幅段階の間の重要な一環となる。FIXはまた、凝集した血小板上でFXIaによって直接活性化されてもよい。FIXaは、FIXa-FVIIIa複合体を形成することにより、FXを活性化する。しかしながら、FVIIIaとFIXaとの結合部位及びその結合作用は、当技術分野では現在明らかにされていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、血液凝固因子FIXa-FVIIIa結合部位に標的する新型な抗血栓抗体及びその応用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の様態では、抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを提供し、前記のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖CDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 3に示され、CDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 4に示され、CDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 5に示される;軽鎖CDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 6に示され、CDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 7に示され、CDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 8に示される。
【0008】
一つの好ましい例において、前記のモノクローナル抗体は、(a)重鎖可変領域アミノ酸配列はSEQ ID NO: 1に示され、軽鎖可変領域アミノ酸配列はSEQ ID NO: 2に示される抗体;または、(b)重鎖可変領域アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 1に示される配列と80%以上(例えば85%、90%、93%、95%、97%または99%以上)の同一性を有し、軽鎖可変領域アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 2に示される配列と80%以上(例えば85%、90%、93%、95%、97%または99%以上)の同一性を有し、かつ(a)の抗体機能を有する抗体を含む。
【0009】
もう一つの好ましい例において、前記のモノクローナル抗体は、マウス由来抗体、キメラ抗体またはヒト化抗体を含む;または、前記のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、一本鎖抗体(scFV)、ドメイン抗体、Fabフラグメント、Fab′フラグメント、Fdフラグメント、F(ab’)フラグメントを含む。
【0010】
もう一つの好ましい例において、前記の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、血液凝固因子FIXaとFVIIIaとの結合部位に特異的に標的し、FVIIIa-FIXa複合体の形成を減少し、FXからFXaへの転化を遮断し、抗血栓作用を発揮する。
【0011】
もう一つの好ましい例において、前記のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントが、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)を2~4倍(例えば2.5、3、3.5倍;好ましくは自然体における正常の活性化部分トロンボプラスチン時間を対照とし、前記の正常時間は、例えば20-40秒間、好ましくは、25-36秒間である)に延長する;または、前記のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントが、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)を75秒間以上、好ましくは80秒間以上(例えば80~120秒間、より具体的に82、85、88、90、95、100、110秒間)まで延長する。
【0012】
もう一つの好ましい例において、前記のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、FIXa上のFIXaとFVIIIaとの結合部位または隣接部位に作用し、FVIIIa-FIXa複合体の形成を減少させる;好ましくは、FIXa上のFIXaとFVIIIaとの結合部位または隣接部位は、Asn93、Lys132、Arg165、Thr175を含み、より好ましくは、さらにAla95、Lys98、Asp164、Lys173、Tyr177を含み、より好ましくは、Lys126、Asn129、Asn178、Lys230、Arg233、Asn236を含む。
【0013】
もう一つの好ましい例において、各部位のアミノ酸残基の番号は、キモトリプシン(chymotrypsin)の番号に従う。
【0014】
もう一つの好ましい例において、前記のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、FIXaの触媒活性に影響を与えない。
【0015】
もう一つの好ましい例において、前記のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、FIXaの触媒活性部位と結合しなく、前記のFIXaの触媒活性部位は、例えばHis57-Asp102-Ser195部位である。
【0016】
もう一つの好ましい例において、前記のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、PT時間に影響を与えない。
【0017】
本発明のもう一つの様態では、単離されたポリヌクレオチドまたは当該ポリヌクレオチドを含有するコンストラクトを提供し、前記のポリヌクレオチドは、前記のいずれか一つの抗血栓用の的ノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする;好ましくは、前記のコンストラクトは、発現ベクターである。
【0018】
本発明のもう一つの様態では、抗体発現システムを提供し、前記の発現システムは、前記のコンストラクトを含み、あるいはゲノムに外来の前記のポリヌクレオチドが組み込まれた;好ましくは、前記の発現システムは、細胞発現システムである。
【0019】
本発明のもう一つの様態では、前記のいずれか一つの抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを調製する方法を提供し、前記の抗体の発現に適した条件下で、前記の抗体発現システムを用いて発現し、前記の抗体を発現することを含む;好ましくは、前記の抗体を精製・分離することも含む。
【0020】
本発明のもう一つの様態では、前記のいずれか一つの抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント、及びそれと作動可能に連結する融合パートナーを含む融合タンパク質を提供する;好ましくは、前記の融合パートナーは、体内の半減期を延長する作用を有するタンパク質または活性ドメイン、または(一つまたは複数の機能を発揮するため)エフェクターに対して効果を高める機能または結合作用を有するタンパク質または活性ドメインを含むが、これらに限定されない;より好ましくは、前記の体内の半減期を延長する作用を有するタンパク質または活性ドメインは、免疫グロブリンFc領域、好ましくはヒト免疫グロブリンFc領域、血清アルブミン(例えばヒト由来HSA)またはそのフラグメントを含むが、これらに限定されない。
【0021】
一つの好ましい例において、前記の免疫グロブリンは、IgG、IgA1、IgA2、IgD、IgE、IgMから選ばれる一つまたは複数の組み合わせであり、前記のIgGは、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4サブタイプから選ばれる一つまたは複数の組み合わせである。
【0022】
もう一つの好ましい例において、前記の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント及びそれと作動可能に連結する融合パートナーの間に、リンカーペプチドを有する;前記のリンカーペプチドは、好ましくは、アラニン及び/又はセリン及び/又はグリシンからなるフレキシブルポリペプチド鎖から選ばれ、リンカーペプチドの長さは、好ましくは、3~30個アミノ酸である。
【0023】
本発明のもう一つの様態では、前記のいずれか一つの抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント、または前記の融合タンパク質、及びそれと接続(共有結合、カップリング、付着、吸着を含むがこれらに限定されない)する機能性分子を含む免疫コンジュゲートを提供する;好ましくは、前記の機能性分子は、血液細胞(例えば血小板)表面マーカーに標的する分子、親水性ポリマー(例えばポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール-リポソーム複合体など)または検出可能なマーカー(例えば蛍光マーカー、発色マーカーを含むがこれらに限定されない)を含むが、これらに限定されない。
【0024】
本発明のもう一つの様態では、薬物組成物を提供し、前記の薬物組成物は、前記の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント、前記の融合タンパク質、または前記の免疫コンジュゲートを含む;好ましくは、前記の薬物組成物は、さらに薬学的に許容される担体を含む。
【0025】
本発明のもう一つの様態では、血栓塞栓性疾患を緩和または治療する製剤またはキットの調製における前記のいずれか一つの抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント、前記の融合タンパク質、または前記の免疫コンジュゲートまたはそれらを含む薬物組成物の応用を提供する。
【0026】
一つの好ましい例において、前記の血栓塞栓性疾患は、静脈、動脈または毛細血管血栓形成、心臓中の血栓形成、血液と人工表面との接触過程においておよび/またはその後の血栓形成、間質性肺疾患(例えば繊維増殖性及び/又は特発性肺線維化)、炎症、神経炎性疾患、補体活性化、フィブリン溶解、血管新生、FVIIIa-FIXa複合体形成による凝血生成、FX活性化による凝血生成、FIIa増幅による凝血生成、網膜血管透過性関連疾患(塞栓など)を含むが、これらに限定されない;好ましくは、動脈または毛細血管血栓形成に関連する疾患は、心筋梗塞、脳卒中、深部静脈血栓形成、門脈血栓形成、腎静脈血栓形成、頸静脈血栓形成、脳静脈洞血栓形成、Budd-Chiari症候群またはPaget-Schroetter病を含むが、これらに限定されない。
【0027】
本発明のもう一つの様態では、前記の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント、前記の融合タンパク質、または前記の免疫コンジュゲートまたはこれらを含有する薬物組成物を含むキットを提供する。
【0028】
本発明のもう一つの様態では、抗血栓機能を有する物質(潜在物質を含む)をスクリーニングする方法を提供し、当該方法は、以下を含む:
(1)候補物質を、FIXaとFVIIIaを含み、且つ両者が相互作用する(例えばFVIIIa-FIXa複合体を形成する)系に添加する;
(2)系におけるFIXaとFVIIIaの相互作用を検測する;前記の候補物質がFVIIIaと競合してFIXaに結合し、FVIIIa-FIXa複合体の形成を減少させる場合、当該候補物質は、抗血栓機能を有する物質(潜在物質を含む)であることを示す;好ましくは、FIXaとFVIIIaタンパク質のドッキングを測定する方法により、候補物質とFIXa複合体の結合部位を予測し、より好ましくは、候補物質がFIXa上のFIXaとFVIIIaとの結合部位または隣接部位に作用する状況を観測することにより、候補物質の機能(競合結合能力)を決定し、前記の結合部位または隣接部位は、部位:Asn93、Lys132、Arg165、Thr175を含み、好ましくは、部位:Ala95、Lys98、Asp164、Lys173、Tyr177を含み、より好ましくは、部位:Lys126、Asn129、Asn178、Lys230、Arg233、Asn236を含む;好ましくは、前記の部位のアミノ酸残基は、クラスターを形成し、FIXaタンパク質c170-ヘリックスとc131-ヘリックスの間に位置する共通表面を占める。
【0029】
一つの好ましい例において、候補物質がFIXa上のFIXaとFVIIIaとの結合部位または隣接部位に作用する状況を観測することにより候補物質の機能を決定する場合、候補物質が前記の部位に強い(顕著性を有する)結合を示す場合、それは、抗血栓機能を有する物質(潜在物質を含む)である。
【0030】
もう一つの好ましい例において、前記の「減少」(弱め、弱化などとも呼ばれる)は、統計学的に有意な減少または顕著な減少であり、例えばFVIIIa-FIXa複合体は、5%、10%、15%、20%、30%、50%、60%、80%、90%、95%以上減少する。
【0031】
もう一つの好ましい例において、対照群を設置することで、対照群と比べて、試験群中のFIXaとFVIIIaとの相互作用の差異を、明確に認識する。
【0032】
もう一つの好ましい例において、前記の候補物質は、FIXaまたはその上流または下流タンパク質または遺伝子に対してデザインされる制御分子、例えば抗体、干渉分子(例えば干渉性RNA)、小分子化合物、遺伝子改造または遺伝子編集コンストラクトなどを含むが、これらに限定されない。
【0033】
本文に開示された内容に基づき、当業者にとって、本発明の他の面は自明なものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1A図1Aは、FIXa-4抗体のFIXaに対する親和性を示す。
図1B図1Bは、FIXa-4抗体の活性化部分トロンボプラスチン時間を示す。
図1C図1Cは、FIXa-4抗体のプロトロンビン時間を示す。
図2図2は、FIXa酵素活性に対するFIXa-4抗体の影響を示す。
図3図3は、FIXa-4抗体とFIXaの結合面を示す。(A)FIXa(青色、左側部構造)の触媒三重合体His 57-Asp 102-Ser 195(緑色、矢印で示す)は、FIXa-4抗体(赤色、右側部構造)の結合に阻害されない。(B)FIXa-4抗体(赤色、右側部構造)とFIXa(青色、左側部構造)との接触面は、一部のFIXaとFVIIIaとの間の予測結合部位(黄色で表示、矢印で示す)を覆っている。(C)図Bに対する裏側視角であり、図中左側部は、FIXa-4抗体構造、右側部は、FIXa構造である;矢印で示す箇所は、一部のFIXaとFVIIIaとの間の予測結合部位である。
図4A図4Aは、FXa生成に対するFIXa-4抗体の抑制作用を示す。
図4B図4Bは、FVIIIaが、FIXa-4抗体の抑制効果を是正することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明者は深い研究を経て、FIXaを標的とする、独特の特性を有する高親和性抗FIXa抗体(FIXa-4)を開示し、それが、FIXaの基質触媒部位に直接結合するのではなく、血液凝固因子FIXaとFVIIIaとの結合部位に特異的に標的することで、FVIIIa-FIXa複合体の形成を減少し、FXからFXaへの転化を遮断し、抗血栓作用を発揮する。本発明の抗体は、適切な抗血栓性能を有し、有効治療濃度窓が大きいが、出血リスクを増加しない;また、本発明の抗体は、FIXaに直接結合しない酵素活性部位に標的し、一旦過剰な抗血液凝固作用が出現すると、外来のFVIIIを補充して救済することができ、臨床応用における適度な抗血栓及び過度な作用による出血問題を効果的に避けるための需要を実現することができる。
【0036】
用語
本明細書で使用されるように、血液凝固因子IX(配列:GenBnak登録番号:2158)は、血液凝固第九因子、血液凝固九因子、因子IX、FIX、F9などにも呼ばれる;FIXaは、FIXの活性化形式である。例えば、FXIaは、Ca2+の関与下で、FIXを分解し、それを活性化のFIX(FIXa)にする。いくつかの態様においては、1つまたは複数(1~20個、より具体的には2個、3個、4個、5個または10個)のアミノ酸置換、欠失、または挿入によって得られるバリアントタンパク質などのバリアント形態も含み、同時に、FIXまたはFIXaの活性を保持する。
【0037】
本明細書で使用されるように、「抗体」または「免疫グロブリン」は、全長抗体、一本鎖抗体、およびそのすべての部分、ドメイン、またはフラグメント(抗原結合ドメインまたはフラグメントを含むがこれらに限定されない)を含む、本明細書で一般的な用語として使用される。また、本明細書で使用される用語「配列」(例えば「免疫グロブリン配列」、「抗体配列」、「単一可変ドメイン配列」、「VHH配列」または「タンパク質配列」などの用語)では、一般的には、本明細書でより限定的な解釈が必要でない限り、関連するアミノ酸配列と、前記配列をコードする核酸配列またはヌクレオチド配列とを含むことが理解されるべきである。
【0038】
本明細書で使用されるように、「モノクローナル抗体」とは、単一分子からなる抗体分子調製物を指す。モノクローナル抗体は、特定のエピトープに対する単一結合特異性と親和性を示す。
【0039】
本明細書で用いられるように、「融合パートナー」、すなわちFP、Fusion Partnerは、標的ポリペプチドと融合する別のポリペプチドを指し、前記の融合パートナーは、複数の異なるメカニズムによって、融合タンパク質の機能特性に影響を与えることができ、例えば標的ポリペプチドの体内半減期を延長することができる。前記の融合パートナーは、一つまたは複数の機能を発揮し、例えば、体内の半減期を延長する作用を有するタンパク質または活性ドメイン、又はエフェクターに対して効果を高める機能または結合作用を有するタンパク質または活性ドメインを含むが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書で使用されるように、「コンジュゲート」とは、機能性分子(ポリペプチド、小分子化合物、親水性ポリマー、マーカーを含む)が本明細書に記載のモノクローナル抗体と共有結合または非共有結合して形成される生成物を指し、ここで、親水性ポリマーとポリペプチドは、任意の位置で、例えば、ポリペプチドのN末端、C末端、または中央部の適切な位置で結合することができる。前記の親水性ポリマーは、例えば多糖類、ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシエチレン(PEO)、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体、ポリビニルアルコールなどである。
【0041】
本明細書で使用されるように、「抗血栓」は、「血管透過性を高める」または「抗血液凝固」とも解釈することができる。
【0042】
2つのポリペプチド配列間の「配列同一性」は、配列間の同一アミノ酸の割合を示す。「配列類似性」は、同一または保存アミノ酸置換のアミノ酸の割合を示す。アミノ酸またはヌクレオチド間の配列同一性のレベルを評価する方法は、当業者に知られている。例えば、アミノ酸配列同一性は、通常、配列解析ソフトウェアを用いて測定される。例えば、NCBIデータベースのBLASTプログラムを使用して同一性を決定することができる。
【0043】
薬剤の「有効量」とは、投与を受ける細胞または組織中の生理学的変化を引き起こすために必要な量を意味する。
【0044】
薬剤例えば薬物組成物の「治療有効量」とは、所望の治療または予防結果を必要な用量および期間にわたって効果的に達成する量を意味する。治療有効量の薬剤は、例えば、疾患の悪影響を解消、低減、遅延、最小化、または予防する。
【0045】
「個体」または「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物には、飼いならされた動物(例えば、雌牛、羊、猫、犬、馬)、霊長類(例えば、ヒト及び非ヒト霊長類、例えばサル)、ウサギ及びげっ歯動物(例えば、マウス及びラット)を含むが、これらに限定されない。好ましくは、個体または対象は、ヒトである。
【0046】
「薬物組成物」という用語は、その形態が、その中に含まれる活性成分の生物学的活性を有効にし、かつその組成物の投与を受ける対象に許容できない毒性を有する他の成分を含まない製剤を指す。
【0047】
「薬学的に許容される担体」とは、薬物組成物中の活性成分以外の対象に有毒でない成分を意味する。薬学的に許容される担体は、緩衝剤、賦形剤、安定剤、または防腐剤を含むが、これらに限定されない。
【0048】
用語「治療/予防」とは、個体中の疾患を治療するための自然なプロセスを変わることを意味し、予防のためまたは臨床病理学的プロセス中に実施するための臨床介入であっても良い。治療の所望の効果は、疾患の発生または再発の予防、症状の緩和、疾患の直接的または間接的な病理学的結果の低減、転移の予防、疾患の進行速度の緩和、疾患状態の改善または軽減、および予後の免除または改善を含むが、これらに限定されない。
【0049】
「ヒト化抗体」という用語は、実質的に非ヒト免疫グロブリン由来の抗原結合部位を有する分子を指し、ここで、前記の分子の残りの免疫グロブリン構造は、ヒト免疫グロブリンの構造及び/又は配列に基づく。前記の抗原結合部位は、定常ドメインに融合された完全な可変ドメインを含むか、または、可変ドメイン内の適切なフレームワーク領域に移植された相補性決定領域(CDR)のみを含む。抗原結合部位は、野生型であってもよく、または、ヒト免疫グロブリンにより近いように1つまたは複数のアミノ酸置換により修飾されてもよい。ヒト化抗体のいくつかの形態には、すべてのCDR配列を保持している。他の形態は、元の抗体に対して変化した1つ以上のCDRを有する。
【0050】
「検出可能なマーカー」という用語は、測定しようとする対象物中の特定の標的の存在の有無及び存在量を決定するための、抗体に結合され得るマーカーを指す。前記の「検出可能なマーカー」は、酵素、蛍光マーカー、核種、量子ドット、コロイド金などであっても良いが、これらに限定されない。より具体的には、例えば、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(Horseradish Peroxidase、HRP)、アルカリホスファターゼ(alkaline phosphatase、AP)、グルコースオキシダーゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、またはグルコースアミラーゼから選ばれる。
【0051】
抗体
本発明では、血液凝固因子FIXaを標的として、モノクローナル抗体をスクリーニングし、その抗血栓機能及び作用機序を研究する。広範囲で研究とスクリーニングした後、抗FIXa抗体を提供し、それが、血液凝固因子FIXaとFVIIIaとの結合部位に特異的に標的し、FVIIIa-FIXa複合体の形成を減少し、FXからFXaへの転化を遮断し、抗血栓作用を発揮する。本発明は、前記の抗FIXa抗体の抗原結合フラグメントも含む。
【0052】
本発明者らは、ハイブリドーマ技術とモノクローナル抗体細胞発現精製技術により、高純度のモノクローナル抗体を調製し、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)とプロトロンビン時間(PT)を用いてモノクローナル抗体の抗血栓効果を評価し、発色基質法を用いてそれがFIXa酵素活性に対する影響を測定し、タンパク質-タンパク質ドッキングを用いてFIXaと抗体相互作用結合部位を予測し、そして競争実験(間接的に発色基質法によるもの)を通じてこの結合部位を検証した。その結果、高親和性抗FIXaのモノクローナル抗体FIXa-4が得られ、FIXa-4は、APTTを明らかに延長し、濃度依存性があることが明らかになった。機構に対する研究により、FIXa-4は、FIXaの基質触媒部位に直接結合するのではなく、FIXaとFVIIIaの結合領域を占めることが分かった。したがって、本発明は、FVIIIaと競合してFIXaに結合し、FVIIIa-FIXa複合体の形成を阻害し、FXからFXaへの転化を遮断して抗血栓作用を発揮する独特なモノクローナル抗体FIXa-4を得た。
【0053】
本発明の好ましい形態では、前記の抗FIXa抗体前記のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖CDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 3に示され、CDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 4に示され、CDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 5に示される;軽鎖CDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 6に示され、CDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 7に示され、CDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 8に示される。
【0054】
本発明に提供される抗FIXa抗体は、フレームワーク領域FR、例えば、後の表1に列挙されるものを含むことができる。しかしながら、前記のフレームワーク領域は、表1に挙げられる配列に限定されなく、フレームワーク領域の部分配列または全配列が改造された抗体、例えば、改造により形成されたキメラ抗体またはヒト化抗体も本発明に含まれる。
【0055】
抗体の抗原結合特性は、通常、相補性決定領域CDRによって決定され、前記のCDR領域は、FR領域と規則的に配列され、FR領域は、結合反応に直接関与しない。それらのCDRが、リング状の構造に形成し、それらの間のFRに形成されたβシートを通じて、空間構造で互に近づき、抗体の抗原結合部位を構成する。CDR領域は、免疫学的に興味のあるタンパク質の配列であり、本発明の抗体のCDR領域は、全く新しいものである。
【0056】
本発明の抗体は、完整な免疫グロブリン分子であっても良く、抗原結合フラグメントであっても良い、Fabフラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント、F(ab)フラグメント、相補性決定領域(CDR)フラグメント、一本鎖抗体(scFv)、ドメイン抗体、二価一本鎖抗体、一本鎖ファージ抗体、二重特異性二本鎖抗体、三重鎖抗体、四重鎖抗体等を含むが、それらに限定されない。
【0057】
本発明の好ましい形態では、前記の抗FIXa抗体は、SEQ ID NO: 1に示されるアミノ酸配列の重鎖可変領域と、SEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域を有する。本発明は、重鎖可変領域アミノ酸配列がSEQ ID NO: 1に示される配列と85%以上同一性を有し、軽鎖可変領域アミノ酸配列がSEQ ID NO: 2に示される配列と85%以上同一性を有する抗体、かつそれが本発明の実施例に記載の抗体と同じ機能を有する抗体も含む;好ましくは、当該抗体の重鎖可変領域/軽鎖可変領域において、CDR領域のアミノ酸は、保存的である。
【0058】
本発明は、前記の抗体の機能的なバリアントを含む。前記のバリアントは、親抗体と競合して特異的にFIXaに結合することができ、かつそれがFIXaを認識する能力および作用位置は、本発明の実施形態で提供される具体的な抗体(血液凝固因子FIXa-FVIIIa結合部位に標的するもの)に近い。上記の機能的なバリアントは、ヌクレオチドとアミノ酸の置換、付加と欠失を含む保存的な配列修飾を有しても良い。これらの修飾は、本分野の既知の標準技術(例えば標的変異とランダムPCR仲介の変異)で導入でき、かつ天然及び非天然ヌクレオチドとアミノ酸を含んでも良い。好ましくは、配列の修飾は、前記の抗体のCDR領域以外の領域で起こる。
【0059】
本発明の実施例によれば、本発明に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントは活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)を約3.5倍延長し、適切な抗血栓性能を有し、有効な治療濃度窓は大きいが、出血リスクは増加しない。
【0060】
コンストラクト及び抗体発現システム
本発明は、本発明に記載の単離されたポリヌクレオチドを含むコンストラクトも提供する。前記のコンストラクトの構築方法は当業者には既知であるべきであり、例えば、前記のコンストラクトは、in vitro組換えDNA技術、DNA合成技術、in vitro組換え技術などの方法によって構築することができ、より具体的には、前記の単離されたポリヌクレオチドが発現ベクターのポリクローニング部位に挿入されて構築することができる。本発明における発現ベクターは、通常、当技術分野において周知の各種市販の発現ベクター等を指し、例えば、細菌プラスミド、ファージ、酵母プラスミド、植物細胞ウイルス、例えばアデノウイルスのような哺乳動物細胞ウイルス、レトロウイルス、または他のベクターであっても良い。前記のベクターは、前記のポリヌクレオチド配列と作動可能に連結する一つまたは複数の調節配列を含んでも良く、前記の調節配列は、適当なプロモーター配列を含んでも良い。プロモーター配列は、通常に、発現しようとするアミノ酸配列をコードする配列と作動可能に連結される。プロモーターは、選択される宿主細胞に転写活性を示す任意的なヌクレオチド配列であっても良く、突然変異のもの、短縮されるもの、およびヘテロ接合プロモーターを含み、且つ、宿主細胞と相同または異種の細胞外または細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から得られる。調節配列は、適切な転写ターミネーター配列であっても良く、宿主細胞に認識され、転写を停止する配列である。ターミネーター配列は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の3’末端に連結し、選択された宿主細胞に機能する任意のターミネーターを本発明に用いることができる。
【0061】
通常に、好適なベクターが、少なくとも一つの生命体で機能する複製開始点、プロモーター配列、便利な制限エンドヌクレアーゼサイトと一つ又は複数の選択可能なマーカーを含む。これらのプロモーターは、大腸菌のlacまたはtrpプロモーター、λファージPLプロモーター、真核プロモーターには、CMV即時早期プロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、早期および後期SV 40プロモーター、ピキア酵母のアルコールオキシダーゼプロモーター、および原核または真核細胞またはそのウイルス中で発現する他の既知の制御可能な遺伝子を含むプロモーターを含むが、これらに限定されない。マーカー遺伝子は、形質転換された宿主細胞を選択するための表現型形質を提供するために使用することができ、例えば、真核細胞培養用のジヒドロ葉酸還元酵素、ネオマイシン耐性、および緑色蛍光タンパク質(GFP)、または大腸菌用のテトラサイクリンまたはアンピシリン耐性などを含むが、これらに限定されない。前記のポリヌクレオチドが発現される場合、発現ベクターには、エンハンサー配列も含まれていてもよく、エンハンサー配列をベクターに挿入すると、転写が増強され、エンハンサーはDNAのシス作用因子であり、通常に、約10~300塩基対があり、遺伝子の転写を増強するためプロモーターに作用する。
【0062】
本発明のもう一つの様態では、抗体発現システムを提供し、前記の発現システムは、前記のコンストラクトを含み、あるいはゲノムに外来の前記のポリヌクレオチドが組み込まれた。発現ベクターの発現に適したいずれの細胞も、宿主細胞とすることができ、例えば、前記の宿主細胞は、原核細胞、例えば細菌細胞であってもよい;あるいは、低等真核細胞、例えば酵母細胞であってもよい;あるいは、高等真核細胞、例えば哺乳動物細胞であっても良く、具体的には、大腸菌、ストレプトカビ属;マウスチフスサルモネラ菌の細菌細胞;真菌細胞、例えば酵母、糸状菌、植物細胞;ショウジョウバエS2またはSf9の昆虫細胞;CHO、COS、HEK293細胞、またはBowes黒色腫細胞の動物細胞などの1種または複数の組み合わせを含むが、これらに限定されない。前記の発現システムを構築する方法は、当業者に知られているはずであり、例えば、マイクロインジェクション法、パーティクルデリバリー法、電気穿孔法、ウイルス媒介による形質転換法、電子衝撃法、リン酸カルシウム沈殿法などの1種以上の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0063】
融合タンパク質/免疫コンジュゲート
本発明は、本発明に記載の抗体の第1ドメインと、体内半減期を延長する及び/又はエフェクターまたはエフェクター細胞に対して結合作用を有するための第2ドメインとを含む融合タンパク質を含む。
【0064】
前記の第2ドメインでは、体内半減期を延長するためのフラグメントは、血清アルブミンまたはそのフラグメント、血清アルブミンと結合するドメイン(例えば抗血清アルブミンの抗体)などを含んでも良い。
【0065】
前記の第2ドメインでは、エフェクターまたはエフェクター細胞に対して結合作用を有するフラグメントは、免疫グロブリンFc領域などを含んでも良く、好ましくは、ヒト免疫グロブリンFc領域から選ばれる。前記のヒト免疫グロブリンFc領域は、Fc媒介のエフェクター機能を変化させるための突然変異を含み、前記のエフェクター機能は、CDC活性、ADCC活性、ADCP活性の一つまたは複数の組み合わせを含む。前記の免疫グロブリンは、IgG、IgA1、IgA2、IgD、IgE、IgMなどから選ばれる一つまたは複数の組み合わせであっても良く、前記のIgGは、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4サブタイプなどから選ばれる一つまたは複数の組み合わせであっても良い。抗体融合タンパク質に含まれる免疫グロブリンFc領域は、前記の融合タンパク質に二量体を形成させ、同時に、前記の融合タンパク質の体内半減期を延長し、Fc媒介の関連する活性を増強する。本発明の一つの具体的な実施形態では、前記の免疫グロブリンFc領域は、ヒトIgG1のFc領域、より具体的に野生型IgG1 Fc配列であっても良く、前記の配列には、Fc媒介のエフェクター機能を変化させるための突然変異、例えば、a)Fc媒介のCDC活性を変化させる突然変異;b)Fc媒介のADCC活性を変化させる突然変異;またはc)Fc媒介のADCP活性を変化させる突然変異を導入することができる。このような突然変異は、以下の文献に記載される:Leonard G Presta,Current Opinion in Immunology 2008,20:460-470;Esohe E.Idusogieら,J Immunol 2000,164:4178-4184; RAPHAEL A. CLYNESら,Nature Medicine,2000,Volume 6,Number 4:443-446; Paul R. Hintonら,J Immunol,2006,176:346-356。
【0066】
本発明に提供される抗FIXa抗体の融合タンパク質では、前記の第1ドメインと第2ドメインの間は、リンカーペプチドを設置しても良い。前記のリンカーペプチドは、アラニン(A)及び/又はセリン(S)及び/又はグリシン(G)からなるフレキシブルポリペプチド鎖であっても良く、リンカーペプチドの長さは、3~30個アミノ酸であっても良く、好ましくは3-9個、9-12個、12-16個、16~20個であり、本発明のもう一つの具体的な実施形態では、リンカーペプチドの長さは、8個または15個であっても良い。
【0067】
本発明は、単離されたポリヌクレオチドも提供し、それが、本発明の抗体をコードするか、または前記の融合タンパク質をコードする;前記のポリヌクレオチドは、RNA、DNAまたはcDNAなどであっても良い。前記の単離されたポリヌクレオチドを提供する方法は、当業者に知られているはずであり、例えば、自動DNA合成および/または組換えDNA技術などの調製により得ることができ、または適切な天然源から分離することもできる。
【0068】
本発明は、本発明に記載の抗体、または本発明に記載の融合タンパク質を含む免疫コンジュゲートも提供する。前記の免疫コンジュゲートは、通常に、前記の抗体または融合タンパク質と接続(共有結合、カップリング、付着、吸着を含むがこれらに限定されない)する機能性分子を含み、前記の機能性分子は、親水性ポリマー、検出可能なマーカー、放射性同位体、生物活性タンパク質、血細胞(例えば血小板)表面マーカーに標的する分子など、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0069】
前記の親水性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール-リポソーム複合体、多糖類、ポリアルキレングリコール、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシエチレン(PEO)、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体、ポリビニルアルコールなどまたはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0070】
前記の免疫コンジュゲートの製造方法は、当業者には公知であるはずであり、例えば、前記の抗体及び/又は融合タンパク質を、機能性分子に直接又は適切な長さのスペーサーを介して連結することができ、連結方法は、化学的架橋または遺伝子工学的融合発現であってもよく、これにより、前記の免疫コンジュゲートを得る。
【0071】
上記の免疫コンジュゲートは、本発明の抗体または融合タンパク質及び検出可能なマーカーを含んでも良い。上記の検出可能なマーカーは、蛍光マーカー、発色マーカー、タンパク質ラベル;例えば、酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、放射性材料、陽電子放出金属及び非放射性常磁性金属イオンを含むが、それらに限定されない。一つ以上のマーカーを含んでも良い。検出及び/又は分析及び/又は診断するための、抗体を標識するマーカーは、使用される特定な検出/分析/診断技術及び/又は方法(例えば、免疫組織化学的染色(組織)サンプル、フローサイトメトリーなど)に依存する。本分野に既知された検出/分析/診断技術及び/又は方法に好適なマーカーは、当業者によく知られるものである。
【0072】
本発明の抗体または融合タンパク質は、マーカー基(マックされたポリペプチド)とカップリングすることができ、次いで、例えば診断目的のために使用することができる。適切なマーカー基は、放射性同位体(例えば上述したもの)または放射性同位体、放射性核種を含む基、蛍光基(例えば、GFP、RFPなどの蛍光タンパク質、染料、ローダミン、フルオレセインおよびその誘導体、例えばFITC、シアニン染料)、酵素基(例えば、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ)、化学発光基、ビオチン基、金属粒子(例えば、金粒子)、磁性粒子(例えば、マグネタイト(Fe)及び/又はマグヘマイト(Fe)を含むコアを有するもの)、所定のポリペプチド基等から選ばれるか、これらを含む。
【0073】
前記の免疫コンジュゲートは、本発明の抗体または融合タンパク質及び血細胞例えば血小板の表面マーカーに標的する分子を含んでも良い。前記の血細胞の表面マーカーに標的する分子が、血細胞を認識することができ、本発明の抗体が血球に到達することを促進する。
【0074】
薬物組成物及びキット
本発明は、本発明の抗FIXa抗体、または本発明の抗FIXa抗体の融合タンパク質、または本発明の免疫コンジュゲートを含む薬物組成物も提供する。
【0075】
前記の薬物組成物は、本分野における様々な薬学的に許容される担体も含んでも良い。薬学的に許容される担体は、使用される用量および濃度でレシピエントに対して無毒であり、以下を含むが、これらに限定されない:酢酸塩、トリス、リン酸塩、クエン酸塩、その他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸とメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;クロルヘキシジンジアンモニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブタノールまたはベンジルアルコール;p-ヒドロキシ安息香酸メチルまたはp-ヒドロキシ安息香酸プロピルなどのp-ヒドロキシ安息香酸ヒドロカルビル;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール; 3-ペンタノール;およびm-クレゾール);血清タンパク質、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リジンなどのアミノ酸;単糖、二糖、およびグルコース、マンノース、デキストリンなどの他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;トレハロースや塩化ナトリウムなどの張性調整剤;ショ糖、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖;ポリソルベートなどの界面活性剤;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えばZn-タンパク質複合体);および/またはTWEE(登録商標)、PLURONICS(登録商標)またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤。体内投与のための薬物製剤は、通常に無菌であり、薬物製剤の無菌を実現する方法は当業者にとって周知であるはずであり、例えば、無菌濾過膜濾過などの方法によって実現することができる。当業者はまた、薬物組成物に必要な剤形に応じて、適切な薬学的に許容される担体を選択して、それを異なる剤形に調製することができ、例えば、本発明の薬物組成物は、錠剤、注射剤、凍結乾燥剤などの様々な剤形を含むが、これらに限定されない。
【0076】
前記の薬物組成物には、前記のモノクローナル抗体、融合タンパク質または免疫コンジュゲートの含有量は、通常に、有効量であり、前記の有効量に対応する活性成分の含有量は、治療対象および特定の投与方法に基づいて決定することができる。例えば、薬物組成物の総質量で、前記のモノクローナル抗体、融合タンパク質と免疫コンジュゲートの含有量範囲は、約0.01~99%、0.1~70%、1~30%、0.01~0.05%、0.05~0.1%、0.1~0.3%、0.3~0.5%、0.5~1%、1~3%、3~5%、5~10%、10~20%、20~30%、30~50%、50~70%、または70~99%である。
【0077】
本発明のモノクローナル抗体、融合タンパク質、免疫コンジュゲートは、単一有効成分として投与されてもよく、併用治療、すなわち他の薬剤と併用されてもよい。例えば、前記の併用治療は、前記のモノクローナル抗体、融合タンパク質、免疫コンジュゲートと、他の少なくとも一つの抗血栓薬物との併用であっても良い。さらに例えば、前記の併用治療は、前記のモノクローナル抗体、融合タンパク質、免疫コンジュゲートと、別の血細胞特異的抗原に標的する抗体との併用であっても良い。
【0078】
本発明は、本発明に記載の抗体、融合タンパク質または免疫コンジュゲートを含む検測キットも提供する。前記のキットには、必要に応じて、容器、対照物(陰性または陽性対照)、緩衝剤、助剤などが含まれてもよく、当業者は具体的な状況に応じてそれを選択することができる。キットには、当業者の操作を容易にするための取扱説明書も含まれていてもよい。
【0079】
用途
本発明は、血栓塞栓性疾患を緩和または治療する製剤、キットの調製における本発明の抗体、融合タンパク質、免疫コンジュゲートまたは薬物組成物の応用も提供する。
【0080】
本発明では、前記の「血栓塞栓性疾患」は、静脈、動脈または毛細血管血栓形成、心臓中の血栓形成、血液と人工表面との接触過程においておよび/またはその後の血栓形成、間質性肺疾患(例えば繊維増殖性及び/又は特発性肺線維化)、炎症、神経炎性疾患、補体活性化、フィブリン溶解、血管新生、FVIIIa-FIXa複合体形成による凝血生成、FX活性化による凝血生成、FIIa増幅による凝血生成、網膜血管透過性関連疾患(塞栓など)を含む。
【0081】
ただし、動脈または毛細血管血栓形成に関連する疾患は、心筋梗塞、脳卒中、深部静脈血栓形成、門脈血栓形成、腎静脈血栓形成、頸静脈血栓形成、脳静脈洞血栓形成、Budd-Chiari症候群またはPaget-Schroetter病を含む。
【0082】
本発明に提供される融合タンパク質、免疫コンジュゲート、薬物組成物の「治療有効量」は、好ましくは、疾患症状の重症度の低下、疾患無症状期の頻度および持続時間の増加、または疾患苦痛による損傷または失能の防止をもたらす。例えば、血栓性疾患の治療において、「治療有効量」は、治療を受けていない対象又は同じ対象の非罹患期間に対して、血栓の形成を少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%減少させる(又は血管透過性を増加させる)ことが好ましい。血栓形成を抑制する能力は、in vitro反応系、細胞モデル、または動物モデル系で評価することができる。当業者は、実際の状況、例えば、対象の大きさ、対象症状の重症度、および選択された特定の組成物または投与経路に応じて適切な治療有効量を選択することができ。治療の処方(例えば、用量の決定など)は、医師によって決定することができ、一般に、考慮される要素としては、治療される疾患、患者個人の状況、送達部位、投与方法、およびその他の要素などを含むが、これらに限定されない。予防有効量とは、必要な用量および時間で、所望の予防効果を達成するのに有効な量を指す。必ずしもではないが、通常、予防用量は、疾患の発症前または疾患の初期段階で受験者に適用されるため、「予防有効量」は、通常に、「治療有効量」よりも低くなる。
【0083】
本発明はさらに、前記の抗体を用いたFIXa抗原の検出方法を提供し、定性検出、定量検出、定位検出を含むが、これらに限定されない。具体的には、前記の検出方法は、免疫蛍光測定、免疫組織化学、放射免疫測定などを含むが、これらに限定されない。
【0084】
サンプル中に、FIXa抗原が存在するかどうかを検出する方法は、以下のことを含んでもよい:サンプルを本発明の抗体と接触させ、抗体複合体を形成するかどうかを観察し、抗体複合体を形成すると、サンプル中にFIXa抗原が存在することを示す。前記のサンプルは、細胞および/または組織サンプルであってもよい;サンプルを媒体に固定または溶解することができる;固定または溶解された前記のサンプル中のFIXa抗原のレベルを検出する。いくつかの実施形態では、検出対象は、細胞保存液中に存在する細胞含有サンプルであってもよい。別の実施形態では、前記の抗体は、検出用または他の試薬によって検出され得る蛍光染料、化学物質、ポリペプチド、酵素、同位体、ラベルなどとコンジュゲートされる。
【0085】
本発明において、前記のFIXa-4抗体は、以前報告されたFIXa阻害剤と異なり、FIXaの酵素触媒活性部位に直接作用するのではなく、FIXaとFVIIIaとの間の結合領域の大部分を占め、FIXa-FVIIIa複合体の形成を遮断し、さらに、FXからFXaへの転化を触媒することに影響を与え、抗血液凝固作用を引き起こす。本発明者らは、また、FIXa-4抗体は、in vitroでのFXaの産生を実質的に遮断することができ、一方、FVIIIaを補充することは、この抑制作用を是正することができることを観察した。つまり、FIX-4抗体の抗血栓作用は、FVIIIa濃度の増加とともに、部分的に逆転される。既存の抗血栓薬と比較して、現在、抗血栓作用の可逆性は、新型の安全で有効な抗血栓薬を開発するために考慮する必要があり、臨床投与過程で、この特性を利用して、過度の抗血液凝固による制御不能な出血副反応を予防または治療することができる。したがって、本発明者のこの発見は、特に意義があり、FIXa-4抗体とFIXa作用方式を参考にすると、同様にこのような競争的結合を可能にする一連の薬物をスクリーニングまたは設計することができ、それが、潜在的に、血液凝固調節作用と安全性を兼ね備えた薬物になる可能性がある。
【0086】
そして、本発明者の新しい発見に基づき、抗血栓機能を有する物質をスクリーニングする方法を提供し、当該方法は、以下を含む: (1)候補物質を、FIXaとFVIIIaを含み、且つ両者が相互作用する(例えばFVIIIa-FIXa複合体を形成する)系に添加する;(2)(1)の系におけるFIXaとFVIIIaの相互作用を検測する;前記の候補物質がFVIIIaと競合してFIXaに結合し、FVIIIa-FIXa複合体の形成を減少させる場合、当該候補物質は、抗血栓機能を有する物質であることを示す;好ましくは、候補物質がFIXa上のFIXaとFVIIIaとの結合部位または隣接部位に作用する状況を観測することにより、候補物質の機能を決定し、前記の結合部位または隣接部位は、部位:Asn93、Lys132、Arg165、Thr175を含み、好ましくは、部位:Ala95、Lys98、Asp164、Lys173、Tyr177を含み、より好ましくは、部位:Lys126、Asn129、Asn178、Lys230、Arg233、Asn236を含む。前記の部位のアミノ酸残基またはその部分は、クラスターを形成し、FIXaタンパク質c170-ヘリックスとc131-ヘリックスの間に位置する共通表面を占める。
【0087】
さらに、候補物質がFIXa上のFIXaとFVIIIaとの結合部位または隣接部位に作用する状況を観測することにより候補物質の機能を決定する場合、候補物質が前記の部位に増強された結合を示す場合、それは、抗血栓機能を有する物質である。
【0088】
標的として蛋白質または遺伝子またはその上の特定の領域を用いて、当該標的に作用する物質をスクリーニングする方法は当業者に周知であり、これらの方法はいずれも本発明に用いることができる。前記の候補物質は、ペプチド、重合ペプチド、擬似ペプチド、非ペプチド化合物、炭水化物、脂質、抗体または抗体フラグメント、リガンド、有機小分子、無機小分子、および核酸配列などから選ばれてもよい。スクリーニングされる物質の種類に応じて、当業者は適切なスクリーニング方法を選択する方法を明らかにしている。いくつかの比較的に具体的な形態では、前記の候補物質は、FIXaまたはその上流または下流タンパク質または遺伝子に対してデザインされる制御分子、例えば抗体、干渉分子(例えば干渉性RNA)、小分子化合物、遺伝子改造または遺伝子編集コンストラクトなどを含むが、これらに限定されない。
【0089】
大規模なスクリーニングを経て、上述の興味ある部位に特異的に作用し、制御作用を持つ一連の潜在物質を得ることができる。
【0090】
以下、具体的な実施例を参照して、本発明をさらに説明する。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の単なる例示であることが理解されるべく。以下の実施例における特定の条件を特定しない実験方法は、通常に、J.Sambrookら、Guide to Molecular Cloning、Third Edition、Science Press、2002に記載された通常条件に従って実施され、或いはメーカーが推奨する条件に従って実施される。
【0091】
実施形態が数値範囲を示す場合、本発明が特に示されない限り、各数値範囲の2つの端点と2つの端点の間のいずれかの数値が選択可能であることを理解されたい。特に定義されない限り、本発明で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者が一般的に理解するものと同じ意味である。実施例で使用される具体的な方法、設備、材料に加えて、当業者の先行技術の把握及び本発明の記載に基づいて、本発明の実施例で述べた方法、設備、材料と類似又は同等の先行技術のいずれかの方法、設備及び材料を用いて本発明を実現することができる。
【0092】
1 材料と方法
1.1 FIXaを標的とするモノクローナル抗体の製造
1.1.1免疫マウス及び細胞融合
6-8週齢のSPF級BALB/c雄マウス(上海交通大学医学部動物科学部より購入)を4匹免疫した。初回免疫は、購入した全長46 KD FIXa抗原(Enzyme Research Laboratories社)と完全型フロイントアジュバント(Sigma社)をFIXa最終濃度100μg/100μlに混合し、両肉趾に50μg/50μlずつ注射した。第2次免疫では、完全型フロイントアジュバントを不完全型フロイントアジュバント(Sigma社)に置き換えた。第3次免疫では、FIXa抗原をPBSで100μg/100μlに希釈し、腹腔内注射を行った。第4次の免疫は免疫の強化であり、尾静脈注射を行う。合計4回の免疫を行い、1回の免疫間隔は2週間であった。
【0093】
免疫強化後3日目に、免疫マウスの脾臓細胞と骨髄腫細胞(実験室細胞系SP2/0)を、PEG作用下で細胞融合させ、ハイブリドーマ細胞を得た。
【0094】
1.1.2抗体陽性細胞株のスクリーニングとクローン化
ハイブリドーマ細胞培養7日後、ELISA法を用いて抗体陽性検査を行った。ELISAプレート(CORNING社)を抗原FIXa 0.1μg/100μlで被覆し、37℃で1.5hインキュベートした;さらに、2%BSA、37℃で1hブロッキングした;次いで、一次抗体すなわち培養細胞の上清を加え、37℃で1.5hインキュベートした;次いで、マウス由来の二次抗体を加え、37℃で30minインキュベートした;最後に、発色基質TMB(Thermo社)を加えて、室温5min遮光した後、終止液2M HSOを加えて、反応を停止した。分光光度計(Thermo Fisher scientific社)450nmで測定した吸光度値に基づいて、抗体陽性細胞株をスクリーニングした。その後、半固体培地(STEMCELL社)でクローン化培養を行い、7日後に、単一クローンを96ウェルプレートに選別し、上記ELISA法に従って再度スクリーニングを行い、最終的に抗体陽性の単一クローンを得た。
【0095】
1.1.3抗体のシーケンシング
十分な量の細胞沈殿を集め、RNAを抽出し、その後、cDNAに逆転写し、次に、適切なプライマーを選択してPCRを行い、最後に、PCR生成物を会社に送ってシーケンシングした。
【0096】
1.1.4腹水の用意及び抗体の精製
6~8週齢の雄のヌードマウス(上海交通大学医学院動物科学部より購入)を4匹選択した。pristane(Sigma社)0.5ml/匹を7日前に注射し、その後マウス腹腔に0.5-1×10/0.5mlのハイブリドーマ細胞を注射した。7-10日後に、ヌードマウスの腹部の膨張が見られ、左下腹腔が針に突き刺さり、腹水をEP管に集め、5000rpmで10分間遠心し、上清を集め、最終濃度は0.02%になるまでアジ化ナトリウムを加えた。
【0097】
蛋白質Gアガロース精製樹脂(YEASEN社)の説明書の流れに従って、上記のように収集した腹水を順にバランス、ロード、洗浄、溶出を行った。最後に、30KDの限外ろ過管を用いて、溶出液を限外ろ過濃縮し、高純度のモノクローナル抗体を得た。
【0098】
1.2抗体サブタイプ及び親和性検出
Sigma社のサブタイプ検出キットの説明書に基づいて、抗原被覆、ブロッキング、一次抗体のインキュベーション(0.1μg/100μl)、アイソタイプ特異性試薬の室温インキュベーション30min、二次抗体(R-antiGoat-HRP)のインキュベーション、発色と終止液の反応を、順次に行い、最後に450nmでの吸光度を測定した。抗体の親和性検出は、上記ELISA法と同様である。
【0099】
1.3血液凝固測定
抗体の血液凝固作用は、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)とプロトロンビン時間(PT)で評価を行った。
【0100】
1.3.1活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)
まず、装置と関連試薬を37℃に予熱した。その後、抗体をOVB buffer(SIEMENS社)で希釈し、APTTプログラムを選定し、反応カップを置いた。順に、50μlのAPTT試薬、50μlの正常プール血漿と磁気ビーズを加え、スタートキーを押して磁気ビーズを発振させた。次に、25μl抗体を加え、タイミングキーを押してタイミングを開始し、180s後に25μl 50mM CaCl(SIEMENS社)を加え、同時にハンドル上の測定キーを押した。血漿が凝固するまで磁気ビーズの振動を観察し、計器上の秒数を記録した。最後に血漿中の抗体最終濃度のlog値と血液凝固時間の秒数に基づいて曲線をプロットした。
【0101】
1.3.2プロトロンビン時間(PT)
まず、装置と試薬を37℃に予熱した。その後、抗体を正常プール血漿で希釈し、PTプログラムを選定し、反応カップを置いた。磁気ビーズを加え、スタートキーを押して磁気ビーズを発振させ、抗体を含む正常プール血漿50μlを加え、タイミングキーを押してタイミングを開始した。60s後、100μlのPT試薬を加え、同時にハンドルの測定キーを押した。血漿が凝固するまで磁気ビーズの振動を観察し、計器上の秒数を記録した。血漿中の抗体最終濃度のlog値と秒数に基づいて曲線をプロットした。
【0102】
1.4FIXaの発色基質法による酵素活性に対する抗体の影響の検出
まず分光光度計を37℃に設定し、動力学サイクル設定の総時間を10min、5s間隔、サイクル回数を121回に設置した。その後、FIXa発色基質SPECTROZYME(IMMBIOMED社)の説明書を参考にして、96ウェルプレートに100μl Tris Buffer(50mM TRIS、100mM NaCl、5mM CaCl、pH7.4 33%エチレングリコール)、10μl 2μMのFIXaタンパク質、2.5μl抗体(最終濃度1000、10、1、0.1、0.01μg/ml)及び対照TBSを順に添加した;最後に12.5μl 10mMのFIXa発色基質を添加し、反応を開始した。405nmにおける吸光値の変化量△OD/minを測定した。
【0103】
1.5FIXaとFIXa-4モノクローナル抗体の相互作用結合部位の予測
1.5.1FIXaモデルの構築
FIXaの3次元モデルは、FIXa触媒ドメインの阻害剤複合体(PDBentry:3 LC 3)の結晶構造に基づいて構築された。
【0104】
1.5.2FIXa-4モノクローナル抗体モデルの構築
抗体可変領域の3次元構造は、SabPred(Venkateswarlu D. Structural insights into the interaction of blood coagulation co-factor VIIIa with factor IXa:a computational protein-protein docking and molecular dynamics refinement study. Biochem Biophys Res Commun. 2014 Sep 26;452(3):408-14.)のAbody Builderによって予測された。
【0105】
1.5.3抗体-FIXaのドッキング
ClusProによって抗体とFIXaのドッキングを行い、ドッキングの過程で抗体パターンを用いて、抗体の非CDR領域を遮蔽した(Dunbar Jら、SAbPred:a structure-based antibody prediction server. Nucleic Acids Res. 2016 Jul 8;44(W1):W474-8)。
【0106】
1.5.4抗体-FIXa相互作用の記述
FIXaと抗体の相互作用を記述したグラフを、open-source PyMOL(バージョン2.5.0)を用いて作成した。
【0107】
1.6FIXa-4抗体が、FVIIIaと競合してFIXaに結合する
1.6.1FVIIIの活性化
125μl Buffer(20mM Hepes、300mM NaCl、2.5mM CaCl)に100μl 10U/mlトロンビンと25μl 4mg/mlのFVIIIを加え、37℃で10分間インキュベートし、FVIIIa(最終濃度約0.4mg/ml)を得た。最後に1U Hirudinを加え、FVIIIaの崩壊を防ぐ。
【0108】
1.6.2抗体は、FIXa-FVIIIa複合体がFXを活性化することを抑制する
まず50ng/2μlのホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)混合物、5μl 20nMのFIXa、10μl 3μMのFXを混合し、次に、予め混合した8μl 80μg/mlのFVIIIaと5μl抗体を加え、37℃で15分間インキュベートした。さらに20mMのEDTAを20μl加えて反応を終了させ、最後に0.1%PEG 8000を含むTBS-Ca2+bufferを、150μl加え、反応生成物を希釈した。
【0109】
次にマイクロプレートリーダーを37℃に設定し、動力学サイクル設定の総時間を5min、10s間隔、サイクル回数を31回に設置した。96ウェルプレートに40μlの反応生成物を添加し、さらに40μlの発色基質S2765(1mM)を添加し、反応を開始した。405nmにおける吸光値の変化量△OD/minを測定した。
【0110】
1.6.3FVIIIaはFIXa-FVIIIa複合体がFXを活性化することに対する抗体の抑制作用を是正する
反応1.6.2中の適切な抗体作用濃度を選択し、同様の方法で、上記反応系中の5μl抗体を2.5μl FVIIIaと2.5μl抗体に交換し(最終濃度は不変)、405nmにおける吸光値の変化量△OD/minを測定した。
【0111】
1.6.4FXa生成量と基質分解速度の標準曲線を確立する
まず25μl FX(200nM)、25μlラッセルクサリヘビ毒(Russell Viper Venom、RVV)(42nM)、50μl TBS-Ca2+ buffer(20mM Tris-HCl、100mM NaCl、5mM CaCl、BSA0.1%)を混合し、37℃で30minインキュベートした後、FXはFXa(最終濃度10nM)に活性化された。
【0112】
そして分光光度計を37℃に設定し、動力学サイクル設定の総時間を5min、10s間隔、サイクル回数を31回に設置した。96ウェルプレートに40μlの濃度勾配のFXaと40μlの発色基質S2765(1mM)を添加し、反応を開始した。405nmにおける吸光値の変化量△OD/minを測定し、基質分解速度とした。FXaの最終濃度と対応する反応速度に基づいて標準曲線をプロットした。
【実施例1】
【0113】
抗体の獲得
本発明者らは、マウス免疫、ハイブリドーマ融合、抗体シーケンシング、細胞発現と精製技術により、大量の研究とスクリーニング作業を経て、ヒトFIXaと高親和性のモノクローナル抗体を1株得た。
【0114】
当該抗体の半数最大効果濃度(EC50)を測定したところ、図1Aに示すように、EC50=94.67ng/mlのような結果が得られた。
【0115】
本発明者らは、モノクローナル抗体をFIXa-4抗体と命名した。
【0116】
FIXa-4抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、以下に示される(SEQ ID NO: 1):
QVTLKESGPGILKPSQTLSLTCSFSGFSLNTPGMGVGWIRQPSGKGLEWLAHIWWDDDKYYNPSLKSQLTISKDTSRNQVFLKITSVDTADTATYYCARSDDVSYALDYWGQGTSVTVSS
FIXa-4抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、以下に示される(SEQ ID NO: 2):
DIQMTQSPASLSASVGETVTITCRASENIDSYLAWYQQKQGKSPQLLVYNAKTLADGVPSRFSGSGSGTQFSLKIDSLQPEDFGSHYCQHHDGTTWTFGGGTKLEIK
ただし、CDR領域及びその付近のフレームワーク領域配列は、表1に示される。
【0117】
【表1】
【実施例2】
【0118】
APTT、PTでモノクローナル抗体の抗血液凝固作用を評価する
次に、本発明者らは、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)とプロトロンビン時間(PT)に対する当該モノクローナル抗体の影響を検出し、内因性血液凝固経路及び外因性血液凝固経路におけるその作用を評価した。本発明者らは、異なる濃度のモノクローナル抗体(最終濃度は200、100、50、25、12.5、6.25、3.125、1.56、0.78μg/ml)をそれぞれに、APTTまたはPT反応系に添加した。
【0119】
実験の結果として、FIXa-4抗体は、対照群と比較して、APTTを有意に延長した。さらに、FIXa-4抗体濃度の増加に伴い、APTTに対する延長効果も増強され、最大で88.8sまでAPTTを延長することができ、対照群25.5sの3.5倍に相当し、図1Bに示されるように、IC50=7.705μg/ml。この延長効果は、現在の抗血栓薬の要求の2.5倍のAPTT延長効果より明らかに高い。さらに抗体濃度を増加させた場合、APTTには、制御されない延長が発生せず、APTT延長割合は3.5倍の範囲に限定された。この結果は、FIXa-4の有効治療濃度窓が大きく、出血リスクを増加しにくいことを示し、これは臨床の実際の必要に非常に合致している。
【0120】
同時に、プロトロンビン時間(PT)に対する測定によって、図1Cに示されるように、FIXa-4抗体は、実質的にPTに影響しない。
【0121】
以上の実験データにより、FIXa-4抗体は、内因性血液凝固経路を特異的に抑制するが、FX、FIIなどの外因性血液凝固経路と共通血液凝固経路における血液凝固因子には作用しないことが明らかになった。
【実施例3】
【0122】
FIXa-4抗体はFIXaの酵素触媒活性部位に直接結合しない
内因性血液凝固経路では、FIXaは酵素としてFXからFXaへの形成を触媒することで、血液凝固カスケード反応を媒介する。そこで、本発明者らは、FIXa-4抗体の抗血液凝固機構を研究するために、まずFIXa触媒活性への影響を検出した。酵素によって触媒される基質の分解速度は、酵素の触媒活性を反映するために用いられる。本発明者らは、異なる濃度のFIXa-4抗体(最終濃度は1000、10、1、0.1、0.01μg/ml)とFIXaタンパク質をそれぞれ混合し、3分間インキュベートし、それをFIXa発色基質反応系に加えて反応させ、OD 405nmをリアルタイムでモニタリングした。ΔOD 405/minは酵素の触媒活性を反映した。
【0123】
実験結果により、図2に示されるように、FIXa-4抗体は、FIXaの酵素触媒活性に明らかな影響を与えない。
【0124】
この実験結果により、FIXa-4抗体は、FIXaの触媒活性部位に直接結合することによって抗血液凝固活性を発揮するわけではないことが明らかになった。
【実施例4】
【0125】
FIXa-4抗体とFIXaの作用部位の予測
FIXa-4抗体の抗血液凝固作用機序をさらに研究するために、本発明者らは、タンパク質ドッキングの方法を用いて、FIXa-4抗体とFIXaの結合部位を予測した。タンパク質データベース(PDB)には、実験的に測定されたFIXa全長タンパク質の完全な構造はない。本発明は、主にFIXa触媒活性に対する抗体の影響に注目することを考慮して、1つのFIXa触媒ドメインの阻害剤複合体構造(PDBentry:3 LC 3)に基づき、FIXa触媒ドメインの3 Dモデルを構築した。同時に、抗体構造予測ツールを用いて、FIXa-4抗体結合領域の3Dモデルを構築し、タンパク質-タンパク質ドッキングにより、両者の結合の最適な立体配座集合を予測した。この立体配座集合には、合計979個のドッキング立体配座が、30個のクラスターを形成した。各クラスターの代表的な立体配座を観察したところ、FIXaとFIXa-4抗体の結合立体配座の大部分は一つの結合表面を共有し、接触頻度の高い残基は表2に示される。すべての立体配座において、FIXa-4抗体とFIXaとの間の結合はいずれも、FIXa触媒部位(His57-Asp102-Ser195から形成される触媒三重合体)の基質の出入りを阻害しない(図3A)。同時に、ドッキング過程においてFIXaと抗体自体の立体配座変化は考慮されていないが、結合部位と触媒部位が遠く離れ、触媒ドメインの3次元構造が比較的安定し、結合の影響を受けて大きな変形が生じる可能性は高くないことを考慮すると、FIXa-4抗体の結合は、FIXaの触媒に直接影響しないことを初歩的に確認することができる。
【0126】
一方、これらの接触残基は、先に予測されたFIXa-FVIIIa結合面[DeLano WL(2002)The PyMOL molecular graphics system]とかなり部分的に重複している(図3B、3C)。例えば、表1中のFIXaのAsn-c93、Lys-c132、Arg-c165及びThr-c175などの残基もFVIIIaと結合し、かつ、Ala-c95、Lys-c98、Asp-c164、Lys-c173、Tyr-c177残基は、予測されたFIXa-FVIIIa結合残基に配列的にも近く、いずれも2個未満の残基部位であった。3D構造では、これらの残基は、FIXaタンパク質c170-ヘリックスとc131-ヘリックスの間の共通表面を占め、これは、FIXaとFVIIIaの558-ヘリックスが結合する重要な領域であるため、FIXa-4抗体の結合は、FVIIIaとFIXaの結合と競合する可能性がある。つまり、FIXa-4抗体とFIXa触媒ドメイン結合部位に対する予測によると、FIXa-4抗体は、FIXaの触媒活性部位に直接結合することによってその活性を低下させるのではなく、それが、FVIIIaと競合してFIXaに結合し、FVIIIa-FIXa複合体の形成を阻害し、それによって、内因性血液凝固経路中のFVIIIaによるFIXaの活性化を抑制し、ひいてはFIXaの触媒活性を低下させる。
【0127】
【表2】
表中のすべての残基はキモトリプシンの番号に従った。FIXaから抗体まで3Å以内の残基を考慮すると、頻度は
【0128】
【数1】
で、ここで、Σは加算記号であり、Sは抗体残基に近いドッキング集合を含むメンバーの数を表し、Sは、各集合のメンバーの数を表す。残基:FIXaとFVIIIaが結合する予測部位と同じもの。残基:結合残基の近傍の2個未満の残基の長さのもの。
【実施例5】
【0129】
FIXa-4が、FVIIIaと競合してFIXaに結合する
前述したように、FIXa-4は、FVIIIaと競合してFIXaに結合し、そして、FVIIIa濃度が増加するにつれて、FIXa-4抗体の作用が弱まる。まず、本発明者らは、体内FIXa-FVIIIa複合体によるFXa生成をシミュレーションするインビトロモデルを構築した。この系に、PS/PC、FIXa、FVIIIa、FXを加え、反応によりFXaを生成し、その後、この反応系にFXa発色基質法を加えてFXaの生成量を決定した。
【0130】
本発明者らは、異なる濃度のFIXa-4抗体(最終濃度は1560、780、390、156、78、39、15.6、7.8pM)を、この系に添加し、FIXa-4抗体は、FXaの生成を用量依存的に抑制することを見出した(図4A)。FIXa-4抗体の濃度が400pMに達すると、FXaの生成はほぼ完全に抑制される。この系において、FVIIIaの量を、異なる濃度(最終濃度は1.1、1.6、2.5、3.7、5.6、8.3、12.5nM)に増加させた結果、添加されたFVIIIa濃度の上昇に伴い、抗体の抑制作用が徐々に是正され、是正率は50%近くに達した(図4B)。
【0131】
この実験結果は、FIXa-4が、FVIIIaと競合してFIXaに結合し、抗血液凝固作用を発揮することを証明した。
【0132】
以上より、本発明者らが得たFIXaを標的とするモノクローナル抗体FIXa-4は、明らかな抗血液凝固作用を有する。その作用機序は、FVIIIaと競合してFIXa上の部位に結合することにより、FVIIla-FIXa複合体の形成を抑制し、さらに抗血液凝固作用を発揮する。
【0133】
この研究成果は、血栓治療に新たな標的を提供し、FVIIIaとFIXaの相互作用の結合部位に間接的な証拠を提供した。
【0134】
検討
現在使用されている抗血液凝固剤には、予測不可能な薬物動態、可逆性の欠如、場合によっては免疫原性など、さまざまな制限がある。安全で効果的な抗血栓薬の開発は、依然として現代医薬分野の研究のホットスポットである。標的しようとする血液凝固因子を選択する際には、2つの重要な考慮因子がある。まず、血液凝固カスケード反応が顕著に増幅される前に、当該経路を遮断する。第二に、速度制限ステップを目標として、最も広い治療範囲内で有効な抗血液凝固作用を提供する。FIXaは、内因性血液凝固経路における重要な血液凝固因子であり、唯一の可溶形式の血液凝固タンパク質である。FIXaは、組織因子担持細胞(Tissue Factor Bearing Cell)から血小板に拡散することができ、血液凝固鎖の開始と増幅段階の間の重要な一環となる。
【0135】
モノクローナル抗体には抗原結合特異性が強く、半減期が長いなどの特性がある。モノクローナル抗体技術の発展に伴い、抗体薬物は疾病の予防、診断、治療の面で重要な役割を果たしている。本発明では、相前後してハイブリドーマ技術、抗体シーケンシング、細胞発現と精製技術を通じて、新型の抗FIXaモノクローナル抗体を得、APTT、PT機能測定を通じて、FIXa-4の抗血栓特性を述べた。FIXa-4によるAPTT延長作用は、用量依存性であるが、抗体濃度を大量に増加すると、APTTには、制御されない延長が発生せず、APTT延長割合は、約3.5倍の範囲に限定される。この結果は、FIXa-4の有効治療濃度窓が大きく、出血リスクを増加しにくいことを示し、臨床の実際の需要に合致している。
【0136】
本発明者らは、その抗血栓活性の作用機序を探究したところ、前記のFIXa-4抗体は、以前報告されたFIXa阻害剤と異なり、FIXaの酵素触媒活性部位に直接作用するのではなく、FIXaとFVIIIaの間の結合領域の大部分を占め、FIXa-FVIIIa複合体の形成を遮断し、さらに、FXからFXaへの転化を触媒することに影響を与え、抗血液凝固作用を引き起こすことを見出した。さらに興味深いことに、FIXa-4抗体は、in vitroでのFXaの産生を実質的に遮断することができ、一方、FVIIIaを補充することは、この抑制作用を是正することができる。つまり、FIX-4抗体の抗血栓作用は、FVIIIa濃度の増加とともに、部分的に逆転される。既存の抗血栓薬と比較して、現在、抗血栓作用の可逆性は、新型の安全で有効な抗血栓薬を開発するために考慮する必要があり、臨床投与過程で、この特性を利用して、過度の抗血液凝固による制御不能な出血副反応を予防または治療することができる。
【0137】
以上より、本発明者は、FIXa-FVIIIa結合部位を標的とする新型抗血栓抗体を調製し、血栓治療に新たな構想を提供しただけでなく、現在まだ明確ではないFVIIIaとFIXa結合部位にその作用方式の新たな証拠を提供した。
【0138】
本出願に言及されている全ての参考文献は、参照として単独に引用されるように、本出願に引用されて、参照になる。理解すべきは、本発明の上記の開示に基づき、当業者は、本発明を様々な変更または修正を行っても良い、これらの同等の形態も本出願に添付された請求の範囲に規定される範囲内に含まれることである。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4A
図4B
【配列表】
2024522369000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-02-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖CDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 3に示され、重鎖CDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 4に示され、重鎖CDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 5に示される;軽鎖CDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 6に示され、軽鎖CDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 7に示され、軽鎖CDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 8に示されることを特徴とする抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記のモノクローナル抗体は、
(a)重鎖可変領域アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 1に示され、軽鎖可変領域アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 2に示される抗体;または
(b)重鎖可変領域アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 1に示される配列と80%以上の同一性を有し、軽鎖可変領域アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 2に示される配列と80%以上の同一性を有し、かつ(a)の抗体機能を有する抗体;
を含むことを特徴とする請求項1に記載の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
前記のモノクローナル抗体は、マウス由来抗体、キメラ抗体またはヒト化抗体を含む;または、前記のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、一本鎖抗体、ドメイン抗体、Fabフラグメント、Fab′フラグメント、Fdフラグメント、F(ab’) フラグメントを含むことを特徴とする請求項1に記載の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
前記の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、FIXaとFVIIIaとの結合部位またはその隣接部位におけるFIXaを標的とし、FVIIIa-FIXa複合体の形成を減少させ;好ましくは、FIXaにおいて、FIXaとFVIIIaとの結合部位またはその隣接部位は、Asn93、Lys132、Arg165、Thr175を含み、より好ましくは、Ala95、Lys98、Asp164、Lys173、Tyr177も含み、より好ましくは、Lys126、Asn129、Asn178、Lys230、Arg233、Asn236も含み、より好ましくは、前記の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、FIXaの触媒活性に影響を与えず、より好ましくは、前記の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、His57-Asp102-Ser195部位を含むFIXaの触媒部位に結合せず、より好ましくは、前記の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、プロトロンビン時間に影響を与えないことを特徴とする請求項1に記載の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
単離されたポリヌクレオチドであって、前記のポリヌクレオチドは、請求項1に記載の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントをコードすることを特徴とする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項6】
請求項5に記載のポリヌクレオチドを含むコンストラクトであって、前記のポリヌクレオチドは、請求項1に記載の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントをコードし;好ましくは、当該コンストラクトは、発現ベクターであることを特徴とするコンストラクト。
【請求項7】
請求項に記載のコンストラクトを含み;好ましくは細胞発現システムであることを特徴とする抗体発現システム。
【請求項8】
血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを調製する方法であって、発現に適した条件下で、請求項に記載の抗体発現システムを用いて前記の抗体を現することを含む;好ましくは、前記の抗体を精製及び単離することも含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント、及びそれと作動可能に連結する融合パートナーを含む融合タンパク質であって、好ましくは、前記の融合パートナーは、体内の半減期を延長する作用を有するタンパク質または活性ドメイン、またはエフェクターに対して効果を高める機能または結合作用を有するタンパク質または活性ドメインを含む;より好ましくは、前記の体内の半減期を延長する作用を有するタンパク質または活性ドメインは、免疫グロブリンFc領域、好ましくはヒト免疫グロブリンFc領域、血清アルブミンまたはそのフラグメントを含み、好ましくは、前記の免疫グロブリンは、IgG、IgA1、IgA2、IgD、IgE、及びIgMのうちの1つまたはその組み合わせから選ばれ、前記のIgGは、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4のうちの1つまたはその組み合わせから選ばれ、好ましくは、前記の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント及びそれと作動可能に連結する融合パートナーの間に、リンカーペプチドがあり、前記のリンカーペプチドは、好ましくは、アラニン及び/又はセリン及び/又はグリシンを含む群で構成されているフレキシブルポリペプチド鎖から選ばれ、前記のリンカーペプチドの長さは、好ましくは、3~30のアミノ酸であることを特徴とする融合タンパク質
【請求項10】
請求項1に記載の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント、または前記の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを含む融合タンパク質;及びそれと接続する機能性分子を含むことを特徴とする免疫コンジュゲート
【請求項11】
請求項1に記載の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント、前記の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを含む融合タンパク質、または前記の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを含む免疫コンジュゲートを含む薬物組成物であって;好ましくは、前記の薬物組成物は、さらに薬学的に許容される担体を含むことを特徴とする薬物組成物
【請求項12】
血栓塞栓性疾患を緩和または治療する製剤またはキットの調製における請求項1に記載の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント、前記の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを含む融合タンパク質、または前記の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを含む免疫コンジュゲートまたはそれらを含む薬物組成物の使用であって
好ましくは、前記の血栓塞栓性疾患は、静脈、動脈または毛細血管血栓形成、心臓中の血栓形成、血液と人工表面との接触過程においておよび/またはその後の血栓形成、間質性肺疾患、炎症、神経炎性疾患、補体活性化、フィブリン溶解、血管新生、FVIIIa-FIXa複合体形成による凝血生成、FX活性化による凝血生成、FIIa増幅による凝血生成、網膜血管透過性関連疾患を含む;好ましくは、動脈または毛細血管血栓形成に関連する疾患は、心筋梗塞、脳卒中、深部静脈血栓形成、門脈血栓形成、腎静脈血栓形成、頸静脈血栓形成、脳静脈洞血栓形成、Budd-Chiari症候群またはPaget-Schroetter病を含むことを特徴とする使用
【請求項13】
請求項1に記載の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント、前記の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを含む融合タンパク質、または前記の抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを含む免疫コンジュゲートまたはそれらを含む薬物組成物を含むことを特徴とするキット。
【請求項14】
抗血栓機能を有する物質をスクリーニングする方法であって:
(1)FIXa及びFVIIIaを含む系に候補物質を添加するステップであり、前記のFIXa及びFVIIIaは相互作用する、ステップ;
(2)FIXaとFVIIIaとの相互作用を検出するステップであり;前記の候補物質がFVIIIaと競合してFIXaに結合し、FVIIIa-FIXa複合体の形成を減少させる場合、当該候補物質は、抗血栓機能を有する物質であることを示し;好ましくは、FIXa及びFVIIIaのタンパク質の結合を測定するためのタンパク質ドッキング方法により、前記の候補物質及び前記のFIXa複合体の結合部位を予測することができ、より好ましくは、前記の候補物質がFIXaの結合部位またはその隣接部位におけるFIXaとFVIIIaとの結合に作用する状況を観測することにより、前記の候補物質の機能を決定することができ、より好ましくは、前記の結合部位または隣接部位は:Asn93、Lys132、Arg165、Thr175を含み、より好ましくは:Ala95、Lys98、Asp164、Lys173、Tyr177も含み、より好ましくは:Lys126、Asn129、Asn178、Lys230、Arg233、Asn236も含み;好ましくは、前記の部位のアミノ酸残基は、クラスターを形成することができ、FIXaタンパク質のc170-ヘリックスとc131-ヘリックスとの間に位置する共通表面を占める、ステップ;
を含む方法。
【請求項15】
前記の候補物質がFIXaの結合部位またはその隣接部位におけるFIXaとFVIIIaとの結合に作用する状況を観測して、前記の候補物質の機能を決定する際に、前記の候補物質が強い結合作用を示す場合、抗血栓機能を有する物質であり、好ましくは、試験群におけるFIXaとFVIIIaとの相互作用と、対照群におけるFIXaとFVIIIaとの相互作用との差異を明確に区別するように対照群も含まれている、請求項14に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
本発明のもう一つの様態では、前記のいずれか一つの抗血栓用のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント、または前記の融合タンパク質、及びそれと接続(共有結合、カップリング、付着、吸着を含むがこれらに限定されない)する機能性分子を含む免疫コンジュゲートを提供する;好ましくは、前記の機能性分子は、親水性ポリマー(例えばポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール-リポソーム複合体など)または検出可能なマーカー(例えば蛍光マーカー、発色マーカーを含むがこれらに限定されない)を含むが、これらに限定されない。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0068
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0068】
本発明は、本発明に記載の抗体、または本発明に記載の融合タンパク質を含む免疫コンジュゲートも提供する。前記の免疫コンジュゲートは、通常に、前記の抗体または融合タンパク質と接続(共有結合、カップリング、付着、吸着を含むがこれらに限定されない)する機能性分子を含み、前記の機能性分子は、親水性ポリマー、検出可能なマーカー、放射性同位体、生物活性タンパク質など、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0073
【補正方法】削除
【補正の内容】
【国際調査報告】