(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-18
(54)【発明の名称】代謝障害を治療又は改善するための治療薬及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240611BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240611BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240611BHJP
C07K 14/605 20060101ALI20240611BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240611BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240611BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240611BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240611BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240611BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240611BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240611BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240611BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240611BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240611BHJP
A61K 38/26 20060101ALI20240611BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240611BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240611BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240611BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
A61K39/395 D
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C07K14/605
C07K19/00
C12N15/12
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/62 Z
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K45/00
A61K38/26
A61K47/68
A61P1/16
A61P3/04
A61P3/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576099
(86)(22)【出願日】2022-06-01
(85)【翻訳文提出日】2023-12-07
(86)【国際出願番号】 IB2022055142
(87)【国際公開番号】W WO2022259097
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523463247
【氏名又は名称】スウィフトノボ セラピューティックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リー, ロンハオ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA06
4B064CA08
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
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4B065AA72X
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4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC16
4C076CC21
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA19
4C084BA23
4C084DB35
4C084NA05
4C084ZA70
4C084ZA75
4C084ZC35
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4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085BB42
4C085EE01
4C085EE03
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA30
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
代謝障害を有する対象を治療するための治療薬及び方法が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪性肝疾患を有する対象を治療する方法であって、前記方法が、治療有効量の、胃抑制ペプチド受容体(GIPR)のアミノ酸配列に少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質に特異的に結合する抗原結合タンパク質を、前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記脂肪性肝疾患が、非アルコール性脂肪性肝疾患の障害である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
非アルコール性脂肪性肝疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎の障害である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ヒト胃抑制ペプチド受容体(GIPR)に特異的に結合する単離された抗体又はその抗原結合断片であって、
(i)配列番号1~3、配列番号7~9、配列番号7、2、及び3、配列番号10、2、及び3、配列番号12~14、配列番号18~20、配列番号24~26、配列番号30~32、並びに配列番号36~38からなる群から選択されるLCDRセットのそれぞれの配列を含むLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、軽鎖若しくは軽鎖可変領域、並びに/又は
(ii)配列番号4~6、配列番号4、11、及び6、配列番号15~17、配列番号21~23、配列番号27~29、配列番号33~35、配列番号39~41、配列番号39、40、及び42、配列番号39、40、及び43、並びに配列番号39、40、及び44からなる群から選択されるHCDRセットのそれぞれの配列を含むHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む、重鎖若しくは重鎖可変領域を含む、単離された抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
前記軽鎖可変領域が、配列番号45、47~50、57、59、61、63、65、及び67~69からなる群から選択される配列を含み、
前記重鎖可変領域が、配列番号46、51~56、58、60、62、64、66、及び70~73からなる群から選択される配列を含む、請求項4に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
前記軽鎖可変領域が、配列番号45、47~50からなる群から選択される配列を含み、
前記重鎖可変領域が、配列番号46、51~56からなる群から選択される配列を含む、請求項4に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
前記軽鎖可変領域が、配列番号65及び67~69からなる群から選択される配列を含み、
前記重鎖可変領域が、配列番号66及び70~73からなる群から選択される配列を含む、請求項4に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
前記軽鎖可変領域及び前記重鎖可変領域が、配列番号57~58、配列番号59~60、配列番号61~62、及び配列番号63~64からなる群から選択されるセットのそれぞれの配列を含む、請求項4に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
前記軽鎖が、配列番号74及び78からなる群から選択される配列を含み、前記重鎖が、配列番号76及び80からなる群から選択される配列を含む、請求項4に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
前記軽鎖及び前記重鎖が、配列番号74及び76並びに配列番号78及び80からなる群から選択されるセットのそれぞれの配列を含む、請求項9に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
【請求項11】
バリアントFc定常領域を更に含む、請求項4~8のいずれか一項に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
【請求項12】
前記抗体が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、ネズミ抗体、多重特異性抗体、又はその抗体断片である、請求項4~11のいずれか一項に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
【請求項13】
前記抗体又は断片が、治療剤、ポリマー、検出可能な標識、又は酵素にコンジュゲートされている、請求項4~12のいずれか一項に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
【請求項14】
前記抗体又は断片が、GLP-1配列にコンジュゲートされている、請求項13に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
【請求項15】
前記GLP-1配列が、配列番号82の配列又はその機能的バリアントを含む、請求項14に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
【請求項16】
前記GLP-1配列が、前記抗体又は前記抗原結合断片に共有結合的に又は非共有結合的にコンジュゲートされている、請求項15に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
【請求項17】
前記GLP-1配列が、前記重鎖又は前記軽鎖に融合されている、請求項16に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
【請求項18】
前記GLP-1配列が、リンカー配列を介して前記重鎖又は前記軽鎖に融合されている、請求項17に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
【請求項19】
前記GLP-1配列が、前記重鎖又は前記軽鎖のN末端に融合されている、請求項18に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
【請求項20】
前記重鎖が、配列番号85又は87の配列を含み、前記軽鎖が、配列番号86又は89の配列を含む、請求項19に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
【請求項21】
前記軽鎖及び前記重鎖が、配列番号78及び87、並びに配列番号89及び80からなる群から選択されるセットのそれぞれの配列を含む、請求項20に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
【請求項22】
前記抗体が、ヒトGIPRの細胞外ドメインに結合する、請求項4~21のいずれか一項に記載の単離された抗体又はその抗原結合断片。
【請求項23】
請求項4~22のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合部分のCDR、重鎖軽鎖可変領域、若しくは軽鎖可変領域をコードする、単離された核酸。
【請求項24】
請求項23に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項25】
請求項23に記載の核酸又は請求項24に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項26】
抗体又はその抗原結合部分を調製する方法であって、
請求項4~22のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合部分のCDR、重鎖可変領域、若しくは軽鎖可変領域をコードする核酸配列を含むベクターを含む培養宿主細胞を得ることと、
前記ベクターによってコードされるポリペプチドの発現を可能にし、抗体又はその断片を組み立てる条件下で、前記細胞を培地中で培養することと、
前記培養された細胞又は前記細胞の前記培地から前記抗体又は断片を精製することと、を含む、方法。
【請求項27】
請求項4~22のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物。
【請求項28】
代謝障害を有する対象を治療する方法であって、その治療を必要とする対象に、治療有効量の請求項4~22のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片、又は治療有効量の請求項27に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項29】
代謝障害を有する対象を治療する方法であって、(a)前記対象に、有効量の、請求項23に記載の核酸、請求項24に記載の発現ベクター、又は請求項25に記載の細胞を投与する工程と、(b)前記対象において前記核酸を発現する工程と、を含む、方法。
【請求項30】
前記代謝障害が、脂肪性肝疾患の障害である、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
前記脂肪性肝疾患が、非アルコール性脂肪性肝疾患の障害である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記非アルコール性脂肪性肝疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎の障害である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記代謝障害が、グルコース代謝の障害である、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項34】
前記グルコース代謝障害が、高血糖症、高インスリン血症、グルコース不耐症、インスリン抵抗性、糖尿病及び肥満症のうちの1つ以上を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記対象に、第2の治療剤を投与することを更に含む、請求項1~3及び28~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記第2の治療剤が、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)受容体アゴニストである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記GLP-1受容体アゴニストが、リラグルチド、エキセナチド、リキシセナチド、デュラグルチド、アルビグルチド、セマグルチド、及びタスポグルチドからなる群から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記対象が、哺乳動物である、請求項1~3及び28~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記哺乳動物が、ヒトである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記哺乳動物が、家畜化された哺乳動物である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記家畜化された哺乳動物が、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヤギ、ブタ、又はウサギである、請求項40に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月9日に出願された米国仮出願第63/208,717号の優先権を主張する。この出願の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、胃抑制ペプチド受容体又はグルコース依存性インスリ分泌促進ポリペプチド受容体(GIPR)に特異的に結合する抗原結合タンパク質を使用して、脂肪性肝疾患などの代謝障害を有する対象を治療するための治療薬及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
グルコース依存性インスリ分泌促進ポリペプチド(GIP)及びグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)は、グルコース依存性インスリン分泌を増加させる能力から、重要なインクレチンホルモンである(Campbell JE and Drucker DJ,Cell Metab 2013;17:819-837)。それらは、グルコース及び脂質代謝、食欲、並びに体重を含む、エネルギー恒常性の重要な調節因子である(Ahren B.Diabetes Obes Metab 2011;13 Suppl 1:158-166)。リラグルチド(liraglutide)、エキセナチド(exenatide)、デュラグルチド(dulaglutide)、アルビグルチド(albiglutide)、及び最近承認されたセマグルチド(semaglutide)などのGLPー1ベースの治療薬が、2型糖尿病及び肥満症の治療のために開発されている。GIPは、糖尿病患者におけるGIPによる減衰応答のためにあまり注目されていない(Nauck et al.JCI 1993,91:301-307)。GIPベースの治療法はまだ承認されていない。
【0004】
GIP及びGLPー1は、食物摂取に応答して腸によって分泌される(Falko et al.J.Clin.Endocrinol.Metab.1975,41:260)。GIPは、小腸、十二指腸及び空腸の上部に位置する腸内分泌細胞であるK細胞によって分泌される42アミノ酸ペプチドである(Damholt et al.Cell Tissue Res.1999,298:287-93)が、GLPー1は、小腸、空腸及び回腸の下部に位置するL細胞によって分泌される31アミノ酸ペプチドである(Damholt et al.Cell Tissue Res.1999,298:287-93)。GLP-1及びGIPの両方は、DPP-4媒介切断後分泌によって急速に不活性化される(Kieffer TJ,McIntosh CH,and Pederson RA.Endocrinology 1995,136:3585-3596)。GIPは、Gs結合クラスB GPCRであるGIPRに結合し、一方、GLP-1は、別の閉鎖関連Gs結合クラスB GPCRであるGLP-1Rに結合する(Couvineau et al.Curr Drug Targets.2012,1:103-15.)。GIP及びGLP-1がそれらの受容体に結合すると、それらはGαを活性化し、cAMPレベルの上昇をもたらす(Tseng et al.Endocrinology.2000,141(3):947-52)。
【0005】
GIPRは、膵島、脂肪組織、心臓、下垂体、副腎皮質、及び脳の特定の領域において発現される(Usdin et al.Endocrinology,1993,133:2861-2870)。膵臓では、GIPはグルコース依存性インスリン分泌を刺激する。より最近では、GIPは、2型糖尿病患者における食後高血糖症に寄与し得るグルカゴン分泌を刺激することが示されている(Lund et al.Am J Physiol Endocrinol Metab.2011,300(6):E1038-46)。脂肪組織において、GIPは、インスリンとともに脂肪酸の取り込み及び組み込みを促進する(Kim et al.JBC 2007,282:8557)。脳において、GIPは神経保護効果を有し得る(Faivre et al.Eur J Pharmacol.2012,674:294-306)。ヒトGIPRは、466個のアミノ酸を含み、その遺伝子は、染色体19q13.3に位置する(Gremlich et al.,Diabetes.1995,44:1202-8)。
【0006】
GIPRノックアウトマウスは、高脂肪食誘発性体重増加に耐性があり、インスリン感受性及び脂質プロファイルが改善されている。(Miyawaki et al.Nature Med.2002,8:738-742)。更に、ヒト遺伝学研究は、GIPRをボディマスインデックス(BMI)と関連付けている(Speliotes et al.Nat Genet 2010,42:937、Okada et al.Nat Genet 2012,44:302、Wen et al.Nat Genet 2012,44:307、Berndt et al.,Nat Genet 2013,45:501)。
【0007】
インクレチン効果に加えて、GLP-1はまた、食物摂取を減少させ、胃内容物排出を遅らせ、グルカゴン分泌を減少させる(Drucker,DJ,Diabetes Care 2003,29(10):2929-40)。エキセナチド、リラグルチド、デュラグルチド、アルビグルチド、及びセマグルチドなどの長期持続性GLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病を治療するために開発されている(Nauck et al,Exp Clin Endocrinol Diabetes,1997,105:187-95、Dhillon S,Drugs,2018,78(2):275-284)。加えて、GLP-1受容体アゴニストは、患者の体重減少並びに血圧及び血漿コレステロールの低下を促進することも知られており(Vilsboll et al.BMJ,2012,344:d7771)、リラグルチドは、肥満症を治療するために承認されている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、代謝障害を治療するための治療薬及び方法を提供する。
【0009】
一態様では、本発明は、代謝障害を有する対象を治療する方法を提供する。この方法は、治療有効量の、胃抑制ペプチド受容体のアミノ酸配列に少なくとも90%(例えば、95、96、97、98、又は99%)のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質に特異的に結合する抗原結合タンパク質を対象に投与することを含む。代謝障害の例としては、脂肪性肝疾患、例えば、非アルコール性脂肪性肝疾患の障害及び非アルコール性脂肪性肝炎の障害が挙げられる。いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質は、単離された抗体又は抗原結合断片である。
【0010】
更に、本発明は、GIPRのアミノ酸配列に少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質に特異的に結合する抗原結合タンパク質、単離された抗体又は抗原結合断片を特徴とする。抗原結合タンパク質、抗体、又は抗原結合断片は、(i)配列番号1~3、配列番号7~9、配列番号7、2、及び3、配列番号10、2、及び3、配列番号12~14、配列番号18~20、配列番号24~26、配列番号30~32、並びに配列番号36~38からなる群から選択されるLCDRセットのそれぞれの配列を含むLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、軽鎖若しくは軽鎖可変領域、並びに/又は(ii)配列番号4~6、配列番号4、11、及び6、配列番号15~17、配列番号21~23、配列番号27~29、配列番号33~35、配列番号39~41、配列番号39、40、及び42、配列番号39、40、及び43、並びに配列番号39、40、及び44からなる群から選択されるHCDRセットのそれぞれの配列を含むHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む、重鎖若しくは重鎖可変領域を含む。
【0011】
一実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号45、47~50、57、59、61、63、65、及び67~69からなる群から選択される配列を含み、重鎖可変領域は、配列番号46、51~56、58、60、62、64、66、及び70~73からなる群から選択される配列を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号45、47~50からなる群から選択される配列を含み、重鎖可変領域は、配列番号46、51~56からなる群から選択される配列を含む。例としては、本明細書に開示されるDB009抗体及びその変異体が挙げられる。いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号65、67~69からなる群から選択される配列を含み、重鎖可変領域は、配列番号66、70~73からなる群から選択される配列を含む。例としては、本明細書に開示されるDB004抗体及びその変異体が挙げられる。
【0013】
更なる実施形態では、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域は、配列番号57~58、配列番号59~60、配列番号61~62、及び配列番号63~64からなる群から選択される。セットのそれぞれの配列を含む。例としては、本明細書に開示されるDB010、DB011、DB012、及びDB013抗体並びにそれらの変異体が挙げられる。いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号74及び78からなる群から選択される配列を含み、重鎖可変領域は、配列番号76及び80からなる群から選択される配列を含む。一実施形態では、軽鎖及び重鎖は、配列番号74及び76、並びに配列番号78及び80からなる群から選択されるセットのそれぞれの配列を含む。
【0014】
上述の抗原結合タンパク質、抗体、又は抗原結合断片は、バリアントFc定常領域を更に含み得る。抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、ネズミ抗体、多重特異性抗体、又はそれらの抗体断片であり得る。抗原結合タンパク質、抗体又は断片は、治療剤、ポリマー、検出可能な標識、又は酵素のうちの1つ以上にコンジュゲートされ得る。
【0015】
いくつかの実施形態において、上述の抗体又は断片は、GLP-1配列にコンジュゲートされる。一例では、GLP-1配列は、配列番号82の配列又はその機能的バリアントを含む。GLP-1配列は、抗体又は抗原結合断片に共有結合的に又は非共有結合的にコンジュゲートされ得る。GLP-1配列は、フレーム内で重鎖若しくは軽鎖、又はその両方に融合することができる。GLP-1配列は、リンカー配列を介して重鎖又は軽鎖に融合することができる。リンカー配列の例としては、任意の好適な配列、例えば、配列番号83及び84が挙げられる。好ましくは、GLP-1配列は、重鎖又は軽鎖のN末端に融合される。GLP-1コンジュゲート重鎖は、配列番号85又は87の配列を含むことができ、GLP-1コンジュゲート軽鎖は、配列番号86又は89の配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、軽鎖及び重鎖は、配列番号78及び87、並びに配列番号89及び80からなる群から選択されるセットのそれぞれの配列を含む。
【0016】
好ましくは、抗原結合タンパク質、抗体又は断片は、ヒトGIPRの細胞外ドメインに結合することができる。
【0017】
別の態様では、本発明は、抗原結合タンパク質、又は上述の抗体又は抗原結合断片のうちいずれか1つのCDR、重鎖若しくは軽鎖可変領域、又は抗原結合部分のうちの1つ以上をコードする単離された核酸又は核酸のセットを提供する。核酸(単数又は複数)は、HCDR又はLCDRSのうちの1つ以上のセット、抗体若しくは抗原結合断片の鎖、又は上述の抗体若しくは断片を有するポリペプチドを発現するために使用され得る。この目的のために、核酸(単数又は複数)を好適な制御配列に作動可能に連結させて、発現ベクターを生成することができる。
【0018】
したがって、本発明の範囲内には、ベクターを含む宿主細胞、及び抗原結合タンパク質、抗体、又はその抗原結合部分を産生するための方法がある。本方法は、上述した抗原結合タンパク質、又は上述の抗体若しくはその抗原結合部分のCDR、ポリペプチド、重鎖可変領域若しくは軽鎖可変領域のうちの1つ以上をコードする核酸(単数又は複数)を含むベクターを含む培養宿主細胞を得ることと、ベクターによりコードされるポリペプチドの発現を可能にし、抗原結合タンパク質、抗体又はその断片を組み立てる条件下で、培地中で細胞を培養することと、培養された細胞又は細胞の培地から抗原結合タンパク質、抗体又は断片を精製することと、を含む。
【0019】
したがって、本発明はまた、(i)抗原結合タンパク質、抗体、又はその抗原結合断片と、(ii)薬学的に許容される担体と、を含む薬学的組成物を更に提供する。
【0020】
代謝障害を有する対象を治療する方法も提供される。1つの方法は、代謝障害の治療を必要とする対象に、治療有効量の抗原結合タンパク質、抗体、若しくは抗原結合断片、又は治療有効量の組成物を投与することを含む。別の方法は、(a)対象に有効量の核酸、発現ベクター、又は上述の細胞を投与する工程と、(b)対象において核酸を発現する工程と、を含む。代謝障害の例としては、脂肪性肝疾患の障害、非アルコール性脂肪性肝疾患の障害、非アルコール性脂肪性肝炎の障害、及びグルコース代謝の障害が挙げられる。グルコース代謝障害の例としては、高血糖症、高インスリン血症、グルコース不耐症、インスリン抵抗性、糖尿病及び肥満症が挙げられる。
【0021】
上述の方法は、対象に、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)アゴニスト又はGLP-1アゴニストなどの第2の治療剤を投与することを更に含むことができる。GLP-1アゴニストの例としては、リラグルチド、エキセナチド、リキシセナチド、デュラグルチド、アルビグルチド、セマグルチド、及びタスポグルチド(taspoglutideからなる群から選択される1つ以上が挙げられる。対象は、ヒト及び非ヒト哺乳動物を含む哺乳動物であり得る。非ヒト哺乳動物の例としては、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヤギ、ブタ、又はウサギなどの家畜化された哺乳動物が挙げられる。
【0022】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明に記載される。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】ヒトGIPRを発現するCHO細胞への陽性抗体の結合曲線を示すプロットである。
【
図2A-2B】GeneBLAzer(登録商標)GIPR-CRE-bla HEK 293T細胞系アッセイを使用した、選択された抗GIPR抗体のインビトロ活性を示す図である。
【
図3】AMLN食餌誘導性マウスNASHモデルにおける慢性研究デザインを示す図である。
【
図4】抗GIPR抗体DB007単独、デュラグルチド単独、又はDB007とデュラグルチドの組み合わせで処置したAMLNマウスの経時的な(日数)体重(g)を示す図である。
【
図5A-5B】研究終了時(64日目)に、ビヒクル対照、抗GIPR抗体DB007単独、デュラグルチド単独、又はDB007とデュラグルチドの組み合わせで処置した、通常食餌対照マウス及びAMLNマウスの肝臓重量(A)及び副睾丸脂肪重量(B)を示す2つの棒グラフである。
【
図6】ビヒクル対照、抗GIPR抗体DB007単独、デュラグルチド単独、又はDB007とデュラグルチドの組み合わせで処置した、通常食餌対照マウス及びAMLNマウスのベースライン及び終了時の空腹時グルコースレベルを示す棒グラフの図である。
【
図7A-7B】ビヒクル対照、抗GIPR抗体DB007単独、デュラグルチド単独、又はDB007とデュラグルチドの組み合わせで処置した、通常食餌対照マウス及びAMLNマウスのベースライン及び終了時の血漿総コレステロールレベル(A)、並びにベースライン及び終了時の血漿トリグリセリドレベル(B)を示す棒グラフの図である。
【
図8A-8B】ビヒクル対照、抗GIPR抗体DB007単独、デュラグルチド単独、又はDB007とデュラグルチドの組み合わせで処置した、通常食餌対照マウス及びAMLNマウスのベースライン及び終了時の血漿ALTレベル(A)、並びにAST(B)を示す棒グラフの図である。
【
図9A-9B】ビヒクル対照、抗GIPR抗体DB007単独、デュラグルチド単独、又はDB007とデュラグルチドの組み合わせで処置した、通常食餌対照マウス及びAMLNマウスの終了時の肝臓組織総コレステロールレベル(A)及び肝臓組織トリグリセリドレベル(B)を示す棒グラフの図である。
【
図10A-10B】ビヒクル対照、抗GIPR抗体DB007単独、デュラグルチド単独、又はDB007とデュラグルチドの組み合わせで処置した、通常食餌対照マウス及びAMLNマウスの終了時の肝臓組織総HYPレベル(A)及び肝臓組織HCYレベル(B)を示す棒グラフの図である。
【
図11A-11D】ビヒクル対照、抗GIPR抗体DB007単独、デュラグルチド単独、又はDB007とデュラグルチドの組み合わせで処置した、通常食餌対照マウス及びAMLNマウスのa-sma(A)、ccl2(B)、col1a1(C)及びtgfb(D)の終了時の肝臓組織mRNA発現レベルを示す棒グラフの図である。
【
図12A-12B】ビヒクル対照、抗GIPR抗体DB007単独、デュラグルチド単独、又はDB007とデュラグルチドの組み合わせで処置した、通常食餌対照マウス及びAMLNマウスの2つの典型的な肝臓組織切片のH&E染色(A)及びシリウス赤色染色(B)の組織学を示す顕微鏡写真であり、終了時の肝臓Hの組織学的データは、抗GIPR抗体DB007単独、デュラグルチド単独、又はDB007とデュラグルチドの組み合わせで処置されたAMLNマウスのa-sma(A)、ccl2(B)及びcol1a1(C)の終了時の肝臓組織mRNA発現レベルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、代謝障害、例えば、脂肪性肝疾患、グルコース代謝障害(例えば、2型糖尿病、グルコースレベルの上昇、インスリンレベルの上昇、脂質異常、代謝症候群(症候群X又はインスリン抵抗性症候群)、糖尿、代謝性アシドーシス、1型糖尿病、肥満症、及び肥満症によって悪化する状態)を、GIPの生物活性を遮断又は妨害することによって治療することに関する。本発明は、少なくとも一部には、GIPRに特異的に結合する特定の抗原結合タンパク質の予期しない抗GIPR活性に基づいている。これらの抗原結合タンパク質(モノクローナル抗体又はその抗原結合断片など)は、代謝障害を治療するための新規の治療戦略を構成する。一実施形態では、代謝障害の治療を必要とする対象に、治療有効量の単離されたヒトGIPR結合タンパク質が投与される。
【0025】
GIPR
GIP受容体(GIPR)は、細胞外N末端、7つの膜貫通ドメイン、及び細胞内C末端を有するGタンパク質結合受容体(GPCR)のセクチン-グルカゴンファミリーのメンバーである。この受容体ファミリーのN末端細胞外ドメインは、通常、グリコシル化され、受容体の認識及び結合ドメインを形成する。GIPRは、膵臓、腸、脂肪組織、心臓、下垂体、副腎皮質、及び脳を含むいくつかの組織において高度に発現される(Usdin et al.,Endocrinology.1993,133:2861-2870)。ヒトGIPRは、466個のアミノ酸を含み、染色体19q13.3に位置する遺伝子によってコードされる(Gremlich et al.,Diabetes.1995;44:1202-8、Volz et al.,FEBS Lett.1995,373:23-29)。研究は、選択的mRNAスプライシング(alternative mRNA splicing)が、ヒト、ラット及びマウスにおいて異なる長さのGIP受容体バリアントの産生をもたらすことを示唆している。
【0026】
GIPRポリペプチドの例としては、以下の配列が挙げられる。
NCBI参照配列NP_0001555(配列番号91)のヒトGIPRの466アミノ酸配列:
MTTSPILQLL LRLSLCGLLL QRAETGSKGQ TAGELYQRWE RYRRECQETL AAAEPPSGLA CNGSFDMYVC WDYAAPNATA RASCPWYLPW HHHVAAGFVL RQCGSDGQWG LWRDHTQCEN PEKNEAFLDQ RLILERLQVM YTVGYSLSLA TLLLALLILS LFRRLHCTRN YIHINLFTSF MLRAAAILSR DRLLPRPGPY LGDQALALWN QALAACRTAQ IVTQYCVGAN YTWLLVEGVY LHSLLVLVGG SEEGHFRYYL LLGWGAPALF VIPWVIVRYL YENTQCWERN EVKAIWWIIR TPILMTILIN FLIFIRILGI LLSKLRTRQM RCRDYRLRLA RSTLTLVPLL GVHEVVFAPV TEEQARGALR FAKLGFEIFL SSFQGFLVSV LYCFINKEVQ SEIRRGWHHC RLRRSLGEEQ RQLPERAFRA LPSGSGPGEV PTSRGLSSGT LPGPGNEASR ELESYC
ヒトGIPR(アイソフォームX1)NCBI参照配列XP_005258790(配列番号92)の430アミノ酸アイソフォーム:
MTTSPILQLL LRLSLCGLLL QRAETGSKGQ TAGELYQRWE RYRRECQETL AAAEPPSVAA GFVLRQCGSD GQWGLWRDHT QCENPEKNEA FLDQRLILER LQVMYTVGYS LSLATLLLAL LILSLFRRLH CTRNYIHINL FTSFMLRAAA ILSRDRLLPR PGPYLGDQAL ALWNQALAAC RTAQIVTQYC VGANYTWLLV EGVYLHSLLV LVGGSEEGHF RYYLLLGWGA PALFVIPWVI VRYLYENTQC WERNEVKAIW WIIRTPILMT ILINFLIFIR ILGILLSKLR TRQMRCRDYR LRLARSTLTL VPLLGVHEVV FAPVTEEQAR GALRFAKLGF EIFLSSFQGF LVSVLYCFIN KEVQSEIRRG WHHCRLRRSL GEEQRQLPER AFRALPSGSG PGEVPTSRGL SSGTLPGPGN EASRELESYC
選択的スプライシングによって産生されるヒトGIPRの493アミノ酸アイソフォームは、UniProtKB配列識別子P48546-2(配列番号93)の配列を有する。
AAAEPPSGLA CNGSFDMYVC WDYAAPNATA RASCPWYLPW HHHVAAGFVL RQCGSDGQWG LWRDHTQCEN PEKNEAFLDQ RLILERLQVM YTVGYSLSLA TLLLALLILS LFRRLHCTRN YIHINLFTSF MLRAAAILSR DRLLPRPGPY LGDQALALWN QALAACRTAQ IVTQYCVGAN YTWLLVEGVY LHSLLVLVGG SEEGHFRYYL LLGWGAPALF VIPWVIVRYL YENTQCWERN EVKAIWWIIR TPILMTILIN FLIFIRILGI LLSKLRTRQM RCRDYRLRLA RSTLTLVPLL GVHEVVFAPV TEEQARGALR FAKLGFEIFL SSFQGFLVSV LYCFINKEVG RDPAAAPALW RRRGTAPPLS AIVSQVQSEI RRGWHHCRLR RSLGEEQRQL PERAFRALPS GSGPGEVPTS RGLSSGTLPG PGNEASRELE SYC
ネズミGIPRの460アミノ酸配列(NCBI参照配列NP_001074284;uniprotKB/Swiss-Prot Q0P543-1)(配列番号94):
MPLRLLLLLL WLWGLQWAET DSEGQTTTGE LYQRWEHYGQ ECQKMLETTE PPSGLACNGS FDMYACWNYT AANTTARVSC PWYLPWFRQV SAGFVFRQCG SDGQWGSWRD HTQCENPEKN GAFQDQTLIL ERLQIMYTVG YSLSLTTLLL ALLILSLFRR LHCTRNYIHM NLFTSFMLRA AAILTRDQLL PPLGPYTGDQ APTPWNQALA ACRTAQIMTQ YCVGANYTWL LVEGVYLHHL LVIVGRSEKG HFRCYLLLGW GAPALFVIPW VIVRYLRENT QCWERNEVKA IWWIIRTPIL ITILINFLIF IRILGILVSK LRTRQMRCPD YRLRLARSTL TLVPLLGVHE VVFAPVTEEQ VEGSLRFAKL AFEIFLSSFQ GFLVSVLYCFINKEVQSEIRQ GWRHRRLRLS LQEQRPRPHQ ELAPRAVPLS SACREAAVGN ALPSGMLHVP GDEVLESYC
選択的スプライシングによって産生されるネズミGIPRの230アミノ酸アイソフォーム、NCBI参照配列:AAI20674(配列番号95):
MPLRLLLLLL WLWGLQWAET DSEGQTTTGE LYQRWEHYGQ ECQKMLETTE PPSGLACNGS FDMYACWNYT AANTTARVSC PWYLPWFRQV SAGFVFRQCG SDGQWGSWRD HTQCENPEKN GAFQDQTLIL ERLQIMYTVG YSLSLTTLLL ALLILSLFRR LHCTRNYIHM NLFTSFMLRA AAILTRDQLL PPLGPYTGDQ APTPWNQVLH RLLPGGTKTF PIYFRTFPHH
ヒトGIPR細胞外ドメイン(ECD)配列(配列番号96)の129アミノ酸配列:
MTTSPILQLL LRLSLCGLLL QRAETGSKGQ TAGELYQRWE RYRRECQETL AAAEPPSGLA CNGSFDMYVC WDYAAPNATA RASCPWYLPW HHHVAAGFVL RQCGSDGQWG LWRDHTQCEN PEKNEAF
【0027】
本明細書で使用される場合、「GIPRポリペプチド」及び「GIPRタンパク質」という用語は、互換的に使用され、ヒト又はマウスなどの哺乳動物で発現される天然に存在する野生型ポリペプチドを意味し、天然に存在する対立遺伝子(例えば、ヒトGIPRタンパク質の天然に存在する対立遺伝子型)を含む。本開示の目的のために、「GIPRポリペプチド」という用語は、任意の完全長GIPRポリペプチド、例えば、配列番号91~96を指すために互換的に使用することができる。
【0028】
「GIPRポリペプチド」という用語は、天然に存在するGIPRポリペプチド配列(例えば、配列番号91~96)が修飾されているGIPRポリペプチドも包含する。そのような修飾には、非天然アミノ酸非天然アミノ酸類似体及びアミノ酸模倣物による置換を含む、1つ以上のアミノ酸置換が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
様々な実施形態では、GIPRポリペプチドは、天然に存在するGIPRポリペプチド(例えば、配列番号91~96)と少なくとも約85%同一であるアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、GIPRポリペプチドは、天然に存在するGIPRポリペプチドアミノ酸配列(例えば、配列番号91~96)と少なくとも約90%、又は約95、96、97、98、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む。そのようなGIPRポリペプチドは、好ましくは、GIPに結合する能力などの野生型GIPRポリペプチドの少なくとも1つの活性を有するが、その必要はない。本発明は、そのようなGIPRポリペプチド配列をコードする核酸分子も包含する。
【0030】
抗原結合タンパク質
本発明の一態様は、GIPR結合タンパク質に関する。本明細書で使用される「抗原結合タンパク質」は、GIPRポリペプチド(例えば、上記で提供されるようなヒトGIPRポリペプチド)などの特定の標的抗原に特異的に結合する任意のタンパク質を意味する。抗原結合タンパク質という用語は、少なくとも2つの完全長重鎖及び2つの完全長軽鎖、並びにそれらの誘導体、バリアント、断片、及び突然変異を含むインタクトな抗体を包含する。
【0031】
抗原結合タンパク質の例としては、抗体又は抗体由来のタンパク質が挙げられる。抗原結合タンパク質の例としては、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ミニボディ、ナノボディなどのドメイン抗体、合成抗体(本明細書では「抗体模倣物」と称されることもある)、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体融合物、及びそれぞれ、各々の部分又は断片が挙げられるが、これらに限定されない。場合によっては、抗原結合タンパク質は、完全抗体の免疫学的断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片)である。他の場合では、抗原結合タンパク質は、本発明の抗体からのCDRを使用するscFvである。
【0032】
一般に、GIPR抗原結合タンパク質は、抗原結合タンパク質が非GIPR分子に本質的にバックグラウンド結合を示すときに、その標的抗原GIPRに「特異的に結合する」と言われる。しかしながら、GIPRに特異的に結合する抗原結合タンパク質は、異なる種由来のGIPRポリペプチドと交差反応し得る。典型的には、GIPR抗原結合タンパク質は、解離定数(KD)が、表面プラズモン共鳴技術(例えば、BIACORE、GE-HEALTHCARE Uppsala,Sweden)又は結合平衡除外法(KINETIC EXCLUSION ASSAY)(KINEXA,Sapidyne、Boise,Id.)によって測定されるとき、≦10-7Mである場合に、ヒトGIPRに特異的に結合する。記載の方法を用いて測定したとき、KDが≦5×10-9Mである場合、GIPR抗原結合タンパク質は「高い親和性」でヒトGIPRに特異的に結合し、KDが≦5×10-10である場合、「非常に高い親和性」でヒトGIPRに特異的に結合する。
【0033】
「抗原結合領域」とは、特定の抗原に特異的に結合するタンパク質、又はタンパク質の一部を意味する。例えば、抗原と相互作用し、抗原結合タンパク質に抗原に対するその特異性及び親和性を付与するアミノ酸残基を含む抗原結合タンパク質の部分は、「抗原結合領域」と称される。抗原結合領域は、典型的には、免疫グロブリン、一本鎖免疫グロブリン、又はラクダ科抗体の1つ以上の「相補的結合領域」(「CDR」)を含む。ある特定の抗原結合領域はまた、1つ以上の「フレームワーク」領域を含む。「CDR」は、抗原結合特異性及び親和性に寄与するアミノ酸配列である。「フレームワーク」領域は、CDRの適切な立体配置(conformation)を維持して、抗原結合領域と抗原との間の結合を促進するのを助けることができる。
【0034】
提供される抗原結合タンパク質は、アンタゴニストであり、典型的には、以下の特徴のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又は8つ全てを有する:
【0035】
(a)GIPのGIPRへの結合を防止又は低減する能力であって、そのレベルが、例えば、放射性又は蛍光標識リガンド結合研究などの方法によって、又は本明細書に記載の方法(例えば、cAMPアッセイ若しくは他の機能的アッセイ)によって測定することができる、能力。この減少は、同等の条件下で、配列番号91~96の前処理レベルと比較して、少なくとも10、25、50、100%以上であり得る。
(b)血糖を低下させる能力、
(c)耐糖能を増加させる能力、
(d)インスリン感受性を増加させる能力、
(e)体重を減少させるか、又は体重増加を減少させる能力、
(f)脂肪質量を減少させるか、又は脂肪組織中の炎症を減少させる能力、
(g)空腹時インスリンレベルを低下させる能力、
(h)循環コレステロールレベルを低下させる能力、
(i)循環トリグリセリドレベルを低下させる能力、
(j)肝臓脂肪症を減少させるか、又は肝臓におけるトリグリセリドレベルを減少させる能力、並びに
(k)AST、ALT、及び/又はALPレベルを低下させる能力。
【0036】
一実施形態では、GIPR抗原結合タンパク質は、以下の活性のうちの1つ以上を有する:(a)KDが≦200nMであるか、又は≦150nMであるか、又は≦100nMであるか、又は≦50nMであるか、又は≦10nMであるか、又は≦5nMであるか、又は≦2nMであるか、又は≦1nMであるように、例えば、表面プラズモン共鳴又は結合平衡除外法技術によって測定されるように、ヒトGIPRに結合すること、及び(b)少なくとも3日間のヒト血清中での半減期を有すること。
【0037】
抗体
本明細書に開示される本発明は、モノクローナル抗体又はその抗原結合断片に関与する。抗体は、代謝障害を有する対象を予防的及び治療的に処置することができる。
【0038】
以下の表に列挙されるのは、いくつかの例示的な抗体及びそれらのバリアント、並びにそれらのそれぞれのクローン名、重鎖(HC)、及び軽鎖(LC)のID番号(「DB#」)である。例えば、抗体DB004は、DB004_VHのHC及びDB004_VKのLCを有する。同様に、抗体DB021(クローン名DB004.8)は、それぞれ、そのHC及びLCとしてDB004_VH6及びDB004_VK2を有する。同様に、抗体DB039(クローン名hDB009.14)は、DB009.hVH7及びDB009.hVK4をそのHC及びLCとしてそれぞれ有するヒト化抗体である。
【0039】
上記の例示的な抗体、重鎖、及び軽鎖のLC又はHC CDR1~3の配列を以下に列挙する。
【0040】
いくつかの例示的な抗体の軽鎖(LC)可変領域及び重鎖(HC)可変領域のアミノ酸配列を以下に列挙する。
【0041】
以下に、DB004ヒトIgG4/カッパVH6/VK2バリアントを有する、DB004-VH6/VK2(DB021)の軽鎖(LC)及び重鎖(HC)のアミノ酸配列を列挙する。また、対応する核酸配列も列挙される。
LC:
MSVPTQVLGLLLLWLTDARCAIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISGFLNWYQQKPGKAPKLLIYATSFLESGVPSRFSGSGSATDFSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSYTTPLTFGQGTRLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号74)
ATGAGCGTGCCCACCCAGGTGCTGGGCCTGCTGCTGCTGTGGCTGACCGACGCCAGATGCGCCATCCAGCTGACCCAGAGCCCCAGCAGCCTGAGCGCCAGCGTGGGCGACAGAGTGACCATCACCTGCAGAGCCAGCCAGGGCATCAGCGGCTTCCTGAACTGGTACCAGCAGAAGCCCGGCAAGGCCCCCAAGCTGCTGATCTACGCCACCAGCTTCCTGGAGAGCGGCGTGCCCAGCAGATTCAGCGGCAGCGGCAGCGCCACCGACTTCAGCGGCAGCGGCACCGACTTCACCCTGACCATCAGCAGCCTGCAGCCCGAGGACTTCGCCACCTACTACTGCCAGCAGAGCTACACCACCCCCCTGACCTTCGGCCAGGGCACCAGACTGGAGATCAAGAGAACCGTGGCCGCCCCCAGCGTGTTCATCTTCCCCCCCAGCGACGAGCAGCTGAAATCTGGAACTGCCTCTGTTGTGTGCCTGCTGAATAACTTCTATCCCAGAGAGGCCAAAGTACAGTGGAAGGTGGATAACGCCCTCCAATCGGGTAACTCCCAGGAGAGTGTCACAGAGCAGGACAGCAAGGACAGCACCTACAGCCTCAGCAGCACCCTGACGCTGAGCAAAGCAGACTACGAGAAACACAAAGTCTACGCCTGCGAAGTCACCCATCAGGGCCTGAGTTCGCCCGTCACAAAGAGCTTCAACAGGGGAGAGTGTTGA(配列番号75)
HC:
MEWSWVFLFFLSVTTGVHSQMQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGSFSGYAISWVRQAPGQGLEWMGGVIPIFGIANYAQKFQGRVTITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARTLIVADYYYGLDVWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号76)
ATGGAGTGGAGCTGGGTGTTCCTGTTCTTCCTGAGCGTGACCACCGGCGTGCACAGCCAGATGCAGCTGGTGCAGAGCGGCGCCGAGGTGAAGAAGCCCGGCAGCAGCGTGAAGGTGAGCTGCAAGGCCAGCGGCGGCAGCTTCAGCGGCTACGCCATCAGCTGGGTGAGACAGGCCCCCGGCCAGGGCCTGGAGTGGATGGGCGGCGTGATCCCCATCTTCGGCATCGCCAACTACGCCCAGAAGTTCCAGGGCAGAGTGACCATCACCGCCGACGAGAGCACCAGCACCGCCTACATGGAGCTGAGCAGCCTGAGAAGCGAGGACACCGCCGTGTACTACTGCGCCAGAACCCTGATCGTGGCCGACTACTACTACGGCCTGGACGTGTGGGGCCAGGGCACCACCGTGACCGTGAGCAGCGCCAGCACCAAGGGCCCCAGCGTGTTCCCCCTGGCCCCCTGCAGCAGATCCACCTCCGAGAGCACAGCCGCCCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTCCCCGAACCGGTGACGGTGTCGTGGAACTCAGGCGCCCTGACCAGCGGCGTGCACACCTTCCCGGCTGTCCTACAGTCCTCAGGACTCTACTCCCTCAGCAGCGTGGTGACCGTGCCCTCCAGCAGCTTGGGCACGAAGACCTACACCTGCAACGTAGATCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGAGAGTTGAGTCCAAATATGGTCCCCCATGCCCACCATGCCCAGCACCTGAGGCCGCAGGGGGACCATCAGTCTTCCTGTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACTCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACGTGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCAGGAAGACCCCGAGGTCCAGTTCAACTGGTACGTGGATGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTTCAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAACGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGGCCTCCCGTCCTCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAGCCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCAGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTACCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAGGCTAACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGGAGGGGAATGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACACAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCTGGGTAAATGA(配列番号77)
【0042】
以下に、DB009ヒトIgG4/カッパVH7/VK8バリアントを有する、DB009-VH7/VK8(DB045)の軽鎖(LC)及び重鎖(HC)のアミノ酸配列を列挙する。また、対応する核酸配列も列挙される。
LC:
MAWALLLLTLLTQGTGSWADIVLTQSPATLSLSPGERATLSCSASSSVSYMHWFQQKPGQAPRLWIYSISNLASGIPARFSGSGSGTDYTLTISSLEPEDFAVYYCLQRSTYPYTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号78)
ATGGCTTGGGCTCTGCTGCTGCTGACCCTGCTGACTCAAGGCACAGGCTCTTGGGCTGATATTGTGCTGACCCAGTCTCCTGCCACACTGTCTTTGAGCCCTGGCGAGAGAGCTACCCTGTCCTGCTCTGCCTCCTCCTCCGTGTCTTACATGCACTGGTTCCAGCAGAAGCCCGGCCAGGCTCCTAGACTGTGGATCTACTCCATCTCCAACCTGGCCAGCGGCATCCCTGCCAGATTTTCTGGCTCTGGAAGCGGCACCGACTATACCCTGACCATCAGCTCCCTGGAACCTGAGGACTTCGCCGTGTACTACTGCCTGCAGCGGTCCACCTATCCTTACACCTTTGGCCAGGGCACCAAGCTGGAAATCAAGCGGACAGTGGCCGCTCCTTCCGTGTTCATCTTCCCACCTTCCGACGAGCAGCTGAAGTCTGGCACAGCCTCTGTCGTGTGCCTGCTGAACAACTTCTACCCTCGGGAAGCCAAGGTGCAGTGGAAGGTGGACAATGCCCTGCAGTCCGGCAACTCCCAAGAGTCCGTGACCGAGCAGGACTCCAAGGACTCTACCTACAGCCTGTCCTCCACACTGACCCTGTCCAAGGCCGACTACGAGAAGCACAAGGTGTACGCCTGCGAAGTGACCCATCAGGGCCTGTCTAGCCCTGTGACCAAGTCTTTCAACCGGGGCGAGTGT(配列番号79)
HC:
MAWALLLLTLLTQGTGSWAEVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGFSFTGYNMNWVRQAPGQGLEWIGNIDPYYGVTDYNLKFKGKATITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCASLLLDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号80)
ATGGCTTGGGCTCTGCTGCTGCTGACCCTGCTGACACAAGGCACAGGCTCTTGGGCTGAAGTGCAGCTGGTTCAGTCTGGCGCCGAAGTGAAGAAACCTGGCTCCTCCGTGAAGGTGTCCTGCAAGGCCTCTGGCTTCTCCTTCACCGGCTACAACATGAACTGGGTCCGACAGGCTCCTGGACAGGGACTCGAGTGGATCGGCAACATCGACCCTTACTACGGCGTGACCGACTACAACCTGAAGTTCAAGGGCAAAGCCACCATCACCGCCGACAAGTCTACCTCCACCGCCTACATGGAACTGTCCAGCCTGAGATCTGAGGACACCGCCGTGTACTACTGCGCTTCCCTGCTGCTGGATTATTGGGGCCAGGGCACACTGGTCACCGTGTCCTCTGCTTCTACCAAGGGACCCAGCGTGTTCCCTCTGGCTCCTTGCTCCAGATCTACCTCCGAGTCTACCGCTGCTCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTTCCTGAGCCTGTGACCGTGTCTTGGAACTCTGGCGCTCTGACATCCGGCGTGCACACCTTTCCAGCTGTGCTGCAATCCTCCGGCCTGTACTCTCTGTCCTCCGTCGTGACCGTGCCTTCTAGCTCTCTGGGCACCAAGACCTACACCTGTAATGTGGACCACAAGCCTTCCAACACCAAGGTGGACAAGCGCGTGGAATCTAAGTACGGCCCTCCTTGTCCTCCATGTCCTGCTCCAGAAGCTGCTGGCGGCCCTTCCGTGTTTCTGTTCCCTCCAAAGCCTAAGGACACCCTGATGATCTCTCGGACCCCTGAAGTGACCTGCGTGGTGGTCGATGTGTCCCAAGAGGATCCCGAGGTGCAGTTCAATTGGTACGTGGACGGCGTGGAAGTGCACAACGCCAAGACCAAGCCTAGAGAGGAACAGTTCAACTCCACCTACAGAGTGGTGTCCGTGCTGACAGTGCTGCACCAGGATTGGCTGAACGGCAAAGAGTACAAGTGCAAGGTGTCCAACAAGGGCCTGCCTTCCAGCATCGAAAAGACCATCTCCAAGGCCAAGGGCCAGCCTAGGGAACCCCAGGTTTACACCCTGCCTCCAAGCCAAGAGGAAATGACCAAGAACCAGGTGTCCCTGACCTGCCTCGTGAAGGGCTTCTACCCTTCCGATATCGCCGTGGAATGGGAGAGCAATGGCCAGCCAGAGAACAACTACAAGACAACCCCTCCTGTGCTGGACTCCGACGGCAGCTTCTTCCTGTATTCTCGGCTGACCGTGGACAAGTCCAGATGGCAAGAGGGCAACGTGTTCTCCTGCTCCGTGATGCACGAGGCCCTGCACAATCACTACACCCAGAAGTCTCTGTCCCTGAGTCTGGGCAAGTGA(配列番号81)
【0043】
GLP-1は、本明細書に記載の抗体にコンジュゲートすることができる。以下に、使用されるGLP-1配列のアミノ酸配列、使用される2つのリンカー、及びDB045の可変ドメインにコンジュゲートされたGLP-1の2つの例を列挙する。
【0044】
以下に、DB009ヒトIgG4/カッパVH7/VK8バリアントを有する、GLP1-DB009-VH7/VK8(DB050)の軽鎖(LC)及び重鎖(HC)のアミノ酸配列を列挙し、ここで、GLP1は、HCにコンジュゲートされている。また、対応する核酸配列も列挙される。
LC:
MAWALLLLTLLTQGTGSWADIVLTQSPATLSLSPGERATLSCSASSSVSYMHWFQQKPGQAPRLWIYSISNLASGIPARFSGSGSGTDYTLTISSLEPEDFAVYYCLQRSTYPYTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号78)
ATGGCTTGGGCTCTGCTGCTGCTGACCCTGCTGACTCAAGGCACAGGCTCTTGGGCTGATATTGTGCTGACCCAGTCTCCTGCCACACTGTCTTTGAGCCCTGGCGAGAGAGCTACCCTGTCCTGCTCTGCCTCCTCCTCCGTGTCTTACATGCACTGGTTCCAGCAGAAGCCCGGCCAGGCTCCTAGACTGTGGATCTACTCCATCTCCAACCTGGCCAGCGGCATCCCTGCCAGATTTTCTGGCTCTGGAAGCGGCACCGACTATACCCTGACCATCAGCTCCCTGGAACCTGAGGACTTCGCCGTGTACTACTGCCTGCAGCGGTCCACCTATCCTTACACCTTTGGCCAGGGCACCAAGCTGGAAATCAAGCGGACAGTGGCCGCTCCTTCCGTGTTCATCTTCCCACCTTCCGACGAGCAGCTGAAGTCTGGCACAGCCTCTGTCGTGTGCCTGCTGAACAACTTCTACCCTCGGGAAGCCAAGGTGCAGTGGAAGGTGGACAATGCCCTGCAGTCCGGCAACTCCCAAGAGTCCGTGACCGAGCAGGACTCCAAGGACTCTACCTACAGCCTGTCCTCCACACTGACCCTGTCCAAGGCCGACTACGAGAAGCACAAGGTGTACGCCTGCGAAGTGACCCATCAGGGCCTGTCTAGCCCTGTGACCAAGTCTTTCAACCGGGGCGAGTGT(配列番号79)
HC:
MAWALLLLTLLTQGTGSWAHGEGTFTSDVSSYLEEQAAKEFIAWLVKGGGGGGGSGGGGSGGGGSAEVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGFSFTGYNMNWVRQAPGQGLEWIGNIDPYYGVTDYNLKFKGKATITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCASLLLDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号87)
ATGGCTTGGGCTCTGCTGCTGCTGACCCTGCTGACACAAGGCACAGGCTCTTGGGCTCATGGCGAGGGCACCTTTACCTCCGACGTGTCCTCCTACCTGGAAGAACAGGCCGCCAAAGAGTTTATCGCCTGGCTGGTCAAAGGTGGCGGCGGAGGCGGAGGAAGCGGTGGCGGAGGTTCAGGTGGTGGTGGATCTGCTGAAGTGCAGCTGGTTCAGTCTGGCGCCGAAGTGAAGAAACCTGGCTCCTCCGTGAAGGTGTCCTGCAAGGCCTCTGGCTTCTCCTTCACCGGCTACAACATGAACTGGGTCCGACAGGCTCCTGGACAGGGACTCGAGTGGATCGGCAACATCGACCCTTACTACGGCGTGACCGACTACAACCTGAAGTTCAAGGGCAAAGCCACCATCACCGCCGACAAGTCTACCTCCACCGCCTACATGGAACTGTCCAGCCTGAGATCTGAGGACACCGCCGTGTACTACTGCGCTTCCCTGCTGCTGGATTATTGGGGCCAGGGCACACTGGTCACCGTGTCCTCTGCTTCTACCAAGGGACCCAGCGTGTTCCCTCTGGCTCCTTGCTCCAGATCTACCTCCGAGTCTACCGCTGCTCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTTCCTGAGCCTGTGACCGTGTCTTGGAACTCTGGCGCTCTGACATCCGGCGTGCACACCTTTCCAGCTGTGCTGCAATCCTCCGGCCTGTACTCTCTGTCCTCCGTCGTGACCGTGCCTTCTAGCTCTCTGGGCACCAAGACCTACACCTGTAATGTGGACCACAAGCCTTCCAACACCAAGGTGGACAAGCGCGTGGAATCTAAGTACGGCCCTCCTTGTCCTCCATGTCCTGCTCCAGAAGCTGCTGGCGGCCCTTCCGTGTTTCTGTTCCCTCCAAAGCCTAAGGACACCCTGATGATCTCTCGGACCCCTGAAGTGACCTGCGTGGTGGTCGATGTGTCCCAAGAGGATCCCGAGGTGCAGTTCAATTGGTACGTGGACGGCGTGGAAGTGCACAACGCCAAGACCAAGCCTAGAGAGGAACAGTTCAACTCCACCTACAGAGTGGTGTCCGTGCTGACAGTGCTGCACCAGGATTGGCTGAACGGCAAAGAGTACAAGTGCAAGGTGTCCAACAAGGGCCTGCCTTCCAGCATCGAAAAGACCATCTCCAAGGCCAAGGGCCAGCCTAGGGAACCCCAGGTTTACACCCTGCCTCCAAGCCAAGAGGAAATGACCAAGAACCAGGTGTCCCTGACCTGCCTCGTGAAGGGCTTCTACCCTTCCGATATCGCCGTGGAATGGGAGAGCAATGGCCAGCCAGAGAACAACTACAAGACAACCCCTCCTGTGCTGGACTCCGACGGCAGCTTCTTCCTGTATTCTCGGCTGACCGTGGACAAGTCCAGATGGCAAGAGGGCAACGTGTTCTCCTGCTCCGTGATGCACGAGGCCCTGCACAATCACTACACCCAGAAGTCTCTGTCCCTGAGTCTGGGCAAGTGA(配列番号88)
【0045】
以下に、DB009ヒトIgG4/カッパVH7/VK8バリアントを有する、DB009-VH7/GLP1-VK8(DB051)の軽鎖(LC)及び重鎖(HC)のアミノ酸配列であり、ここで、GLP1は、LCにコンジュゲートされている。また、対応する核酸配列も列挙される。
LC:
MAWALLLLTLLTQGTGSWAHGEGTFTSDVSSYLEEQAAKEFIAWLVKGGGGGSGGGGSDIVLTQSPATLSLSPGERATLSCSASSSVSYMHWFQQKPGQAPRLWIYSISNLASGIPARFSGSGSGTDYTLTISSLEPEDFAVYYCLQRSTYPYTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号89)
ATGGCTTGGGCTCTGCTGCTGCTGACCCTGCTGACTCAAGGCACAGGCTCTTGGGCTCATGGCGAGGGCACCTTTACCTCCGACGTGTCCTCCTACCTGGAAGAACAGGCCGCCAAAGAGTTTATCGCCTGGCTGGTCAAAGGTGGCGGCGGAGGATCTGGCGGAGGCGGATCTGATATTGTGCTGACCCAGTCTCCTGCCACACTGTCTTTGAGCCCTGGCGAGAGAGCTACCCTGTCCTGCTCTGCCTCCTCCTCCGTGTCTTACATGCACTGGTTCCAGCAGAAGCCCGGCCAGGCTCCTAGACTGTGGATCTACTCCATCTCCAACCTGGCCAGCGGCATCCCTGCCAGATTTTCTGGCTCTGGAAGCGGCACCGACTATACCCTGACCATCAGCTCCCTGGAACCTGAGGACTTCGCCGTGTACTACTGCCTGCAGCGGTCCACCTATCCTTACACCTTTGGCCAGGGCACCAAGCTGGAAATCAAGCGGACAGTGGCCGCTCCTTCCGTGTTCATCTTCCCACCTTCCGACGAGCAGCTGAAGTCTGGCACAGCCTCTGTCGTGTGCCTGCTGAACAACTTCTACCCTCGGGAAGCCAAGGTGCAGTGGAAGGTGGACAATGCCCTGCAGTCCGGCAACTCCCAAGAGTCCGTGACCGAGCAGGACTCCAAGGACTCTACCTACAGCCTGTCCTCCACACTGACCCTGTCCAAGGCCGACTACGAGAAGCACAAGGTGTACGCCTGCGAAGTGACCCATCAGGGCCTGTCTAGCCCTGTGACCAAGTCTTTCAACCGGGGCGAGTGT(配列番号90)
HC:
MAWALLLLTLLTQGTGSWAEVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGFSFTGYNMNWVRQAPGQGLEWIGNIDPYYGVTDYNLKFKGKATITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCASLLLDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号80)
ATGGCTTGGGCTCTGCTGCTGCTGACCCTGCTGACACAAGGCACAGGCTCTTGGGCTGAAGTGCAGCTGGTTCAGTCTGGCGCCGAAGTGAAGAAACCTGGCTCCTCCGTGAAGGTGTCCTGCAAGGCCTCTGGCTTCTCCTTCACCGGCTACAACATGAACTGGGTCCGACAGGCTCCTGGACAGGGACTCGAGTGGATCGGCAACATCGACCCTTACTACGGCGTGACCGACTACAACCTGAAGTTCAAGGGCAAAGCCACCATCACCGCCGACAAGTCTACCTCCACCGCCTACATGGAACTGTCCAGCCTGAGATCTGAGGACACCGCCGTGTACTACTGCGCTTCCCTGCTGCTGGATTATTGGGGCCAGGGCACACTGGTCACCGTGTCCTCTGCTTCTACCAAGGGACCCAGCGTGTTCCCTCTGGCTCCTTGCTCCAGATCTACCTCCGAGTCTACCGCTGCTCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTTCCTGAGCCTGTGACCGTGTCTTGGAACTCTGGCGCTCTGACATCCGGCGTGCACACCTTTCCAGCTGTGCTGCAATCCTCCGGCCTGTACTCTCTGTCCTCCGTCGTGACCGTGCCTTCTAGCTCTCTGGGCACCAAGACCTACACCTGTAATGTGGACCACAAGCCTTCCAACACCAAGGTGGACAAGCGCGTGGAATCTAAGTACGGCCCTCCTTGTCCTCCATGTCCTGCTCCAGAAGCTGCTGGCGGCCCTTCCGTGTTTCTGTTCCCTCCAAAGCCTAAGGACACCCTGATGATCTCTCGGACCCCTGAAGTGACCTGCGTGGTGGTCGATGTGTCCCAAGAGGATCCCGAGGTGCAGTTCAATTGGTACGTGGACGGCGTGGAAGTGCACAACGCCAAGACCAAGCCTAGAGAGGAACAGTTCAACTCCACCTACAGAGTGGTGTCCGTGCTGACAGTGCTGCACCAGGATTGGCTGAACGGCAAAGAGTACAAGTGCAAGGTGTCCAACAAGGGCCTGCCTTCCAGCATCGAAAAGACCATCTCCAAGGCCAAGGGCCAGCCTAGGGAACCCCAGGTTTACACCCTGCCTCCAAGCCAAGAGGAAATGACCAAGAACCAGGTGTCCCTGACCTGCCTCGTGAAGGGCTTCTACCCTTCCGATATCGCCGTGGAATGGGAGAGCAATGGCCAGCCAGAGAACAACTACAAGACAACCCCTCCTGTGCTGGACTCCGACGGCAGCTTCTTCCTGTATTCTCGGCTGACCGTGGACAAGTCCAGATGGCAAGAGGGCAACGTGTTCTCCTGCTCCGTGATGCACGAGGCCCTGCACAATCACTACACCCAGAAGTCTCTGTCCCTGAGTCTGGGCAAGTGA(配列番号81)
【0046】
断片
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、抗体断片である。抗体断片としては、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、及び一本鎖Fv(scFv)断片、並びに以下に記載される他の断片、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、及び単一ドメイン抗体が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の抗体断片の概説については、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)を参照されたい。scFv断片の概説については、例えば、Pluckthun,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York),pp.269-315(1994)を参照されたい:また、WO93/16185、並びに米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号も参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、インビボ半減期が増加したFab及びF(ab’)2断片の考察については、米国特許第5,869,046号を参照されたい。
【0047】
ダイアボディは、二価又は二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、EP404,097、WO1993/01161、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)、及びHollinger et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)を参照されたい。トリアボディ及びテトラボディもまた、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)を参照されたい。
【0048】
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全部若しくは一部、又は軽鎖可変ドメインの全部若しくは一部を含む抗体断片である。ある特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(DOMANTIS,Inc.、Waltham,Mass.;例えば、米国特許第6,248,516号を参照されたい)。
【0049】
抗体断片は、本明細書に記載されるように、インタクト抗体のタンパク質分解消化、並びに組換え宿主細胞(例えば、E.coli又はファージ)による産生を含むが、これらに限定されない、様々な技法によって作製され得る。
【0050】
キメラ及びヒト化抗体
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、キメラ抗体である。ある特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号、及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984)を参照されたい)。一実施例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、又はサルなどの非ヒト霊長類に由来する可変領域)と、ヒト定常領域と、を含む。別の実施例では、キメラ抗体は、ヒト可変領域と、非ヒト定常領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、又はサルなどの非ヒト霊長類に由来する定常領域)と、を含む。更なる実施例では、キメラ抗体は、クラス又はサブクラスが親抗体のクラス又はサブクラスから変更された「クラススイッチした」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片を含む。
【0051】
ある特定の実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、親非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持しながら、ヒトに対する免疫原性を低減するようにヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、HVR、例えばCDR、(又はその一部)が非ヒト抗体に由来し、FR(又はその一部)がヒト抗体配列に由来する、1つ以上の可変ドメインを含む。ヒト化抗体は、任意選択的に、ヒト定常領域の少なくとも一部分も含む。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体におけるいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性又は親和性を修復又は改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)からの対応する残基で置換される。
【0052】
ヒト化抗体及びそれらの作製方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)で概説されており、例えば、Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);Queen et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:10029-10033(1989);米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、及び同第7,087,409号;Kashmiri et al.,Methods 36:25-34(2005)(特異性決定領域(SDR)グラフト化を記載する);Padlan,Mol.Immunol.28:489-498(1991)(「リサーフェシング」を記載する);Dall’Acqua et al.,Methods 36:43-60(2005)(「FRシャッフリング」を記載する);並びにOsbourn et al.,Methods 36:61-68(2005)及びKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252-260(2000)(FRシャッフリングへの「誘導選択」アプローチを記載する)に更に記載されている。
【0053】
ヒト化に使用され得るヒトフレームワーク領域として、限定されないが、「最良適合」法を使用して選択されたフレームワーク領域(例えば、Sims et al.J.Immunol.151:2296(1993)を参照されたい)、軽鎖又は重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992)、及びPresta et al.J.Immunol.,151:2623(1993)を参照されたい)、ヒト成熟(体細胞変異した)フレームワーク領域又はヒト生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619ー1633(2008)を参照されたい)、並びにスクリーニングFRライブラリーに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678-10684(1997)及びRosok et al.,J.Biol.Chem.271:22611-22618(1996)を参照されたい)。
【0054】
ヒト抗体
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野において既知の様々な技術を使用して、又は本明細書に記載されるか若しくは当該技術分野において既知(van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74(2001)及びLonberg,Curr.Opin.Immunol.20(450):459-2008)におけるような)技術を使用して産生することができる。
【0055】
ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答して、インタクトなヒト抗体又はヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように修飾されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって調製されてもよい。そのような動物は、典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座を置き換える、又は染色体外に存在する、若しくは動物の染色体内にランダムに組み込まれる、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全て又は一部を含有する。そのようなトランスジェニックマウスでは、内因性免疫グロブリン遺伝子座は、一般に不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、Lonberg,Nat.Biotech.23:1117-1125(2005)を参照されたい。また、例えば、ゼノマウス(XENOMOUSE)技術を記載する米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号、HUMAB技術を記載する米国特許第5,770,429号、K-Mマウス技術を記載する米国特許第7,041,870号、並びにVELOCIMOUSE技術を記載する米国特許出願公開第2007/0061900号も参照されたい)。そのような動物によって生成されたインタクトな抗体からのヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによって、更に修飾され得る。
【0056】
ヒト抗体は、ハイブリドーマベースの方法によって作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体を産生するためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株が記載されている。(例えば、KozborJ.Immunol.,133:3001(1984)、Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,51-(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987)、及びBoerner et al.,J.Immunol.,147:86(1991)を参照されたい)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されたヒト抗体は、Li et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)を参照されたい。追加の方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生を記載)及びNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265-268(2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマを記載)に記載されている方法が挙げられる。ヒトハイブリドーマ技術(Trioma技術)はまた、Vollmers and Brandlein,Histology and Histopathology,20(3):927-937(2005)及びVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185-91(2005)にも記載されている。
【0057】
ヒト抗体はまた、ヒト由来ファージディスプレイライブラリーから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによっても生成され得る。そのような可変ドメイン配列は、次いで、所望のヒト定常ドメインと組み合わせてもよい。抗体ライブラリーからヒト抗体を選択するための技術を以下に記載する。
【0058】
本発明の抗体は、所望の活性を有する抗体について組み合わせライブラリーをスクリーニングすることによって単離され得る。例えば、ファージディスプレイライブラリーを生成し、所望の結合特性を有する抗体についてそのようなライブラリーをスクリーニングするための様々な方法が当該技術分野において知られている。そのような方法は、例えば、Hoogenboom et al.,Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,N.J.,2001)で概説されており、例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552-554、Clackson et al.,Nature 352:624-628(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992)、Marks and Bradbury,Methods in Molecular Biology 248:161-175(Lo,ed.,Human Press,Totowa,N.J.,2003)、Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004)、Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004)、Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472(2004)、並びにLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1-2):119-132(2004)に更に記載されている。
【0059】
ある特定のファージディスプレイ方法において、VH及びVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別々にクローニングされ、ファージライブラリー内でランダムに組換えられ、次いで、これは、Winter et al.,Ann.Rev.Immunol.,12:433-455(1994)に記載されるように、抗原結合ファージについてスクリーニングされ得る。ファージは、典型的には、scFv断片又はFab断片のいずれかとして、抗体断片を表示する。免疫化源からのライブラリーは、ハイブリドーマを構築することを必要とすることなく、免疫原に高親和性抗体を提供する。あるいは、ナイーブレパートリーを(例えば、ヒトから)クローニングして、Griffiths et al.EMBO,J,12:725-734(1993)に記載されるように、いかなる免疫化もなしに広範囲の非自己抗原及びまた自己抗原に対する抗体の単一供給源を提供することができる。最後に、Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381-388(1992)に記載されるように、ナイーブライブラリーは、幹細胞からの再配列されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含有するPCRプライマーを使用して、高度に可変なCDR3領域をコードし、インビトロで再配列を達成することによって、合成的に作製され得る。ヒト抗体ファージライブラリーを記載する特許公開としては、例えば、米国特許第5,750,373号、並びに米国特許公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号、及び同第2009/0002360号に記載されている。ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体又は抗体断片は、本明細書ではヒト抗体又はヒト抗体断片とみなされる。
【0060】
変異型
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体のアミノ酸配列変異体が企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入することによって、又はペプチド合成によって調製され得る。そのような修飾としては、例えば、抗体のアミノ酸配列からの残基の欠失、及び/又は抗体のアミノ酸配列内の残基の挿入及び/若しくは置換が挙げられる。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせは、最終構築物が所望の特徴、例えば、抗原結合を有することを条件として、最終構築物に達するように作製され得る。
【0061】
置換、挿入、及び欠失変異型
ある特定の実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体変異型が提供される。置換突然変異誘発の目的の部位としては、HVR及びFRが挙げられる。保存的置換は、本明細書で定義される。アミノ酸置換は、目的の抗体に導入される可能性があり、生成物は、所望の活性、例えば、抗原結合の保持/改善、免疫原性の低下、又はADCC若しくはCDCの改善についてスクリーニングされる。
【0062】
したがって、本発明の抗体は、本明細書に記載されるCDR、重鎖可変領域、又は軽可変領域のうちの1つ以上の保存的修飾を含むことができる。本発明で開示されるペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の保存的修飾又は機能的等価物は、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質のポリペプチド誘導体、例えば、1つ以上の点変異、挿入、欠失、切断(truncations)、融合タンパク質、又はそれらの組み合わせを有するタンパク質を指す。親ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質(本発明で開示されるものなど)に対する活性を実質的に保持する。一般に、保存的修飾又は機能的等価物は、親(例えば、上述のアミノ酸配列のうちの1つ)と少なくとも60%(例えば、60%~100%の任意の数(両端を含む)、例えば、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、及び99%)同一である。したがって、本発明の範囲内には、1つ以上の点変異、挿入、欠失、切断、融合タンパク質、又はそれらの組み合わせを有する重鎖可変領域又は軽可変領域、並びに変異型領域を有する抗体がある。
【0063】
本明細書で使用される場合、2つのアミノ酸配列間の相同性パーセントは、2つの配列間の同一性パーセントに等しい。2つの配列間の同一性パーセントは、ギャップの数、及び2つの配列の最適なアラインメントのために導入される必要がある各ギャップの長さを考慮して、配列によって共有される同一の位置の数(すなわち、相同性%=同一の位置の数/位置の総数×100)の関数である。配列の比較及び2つの配列間の同一性パーセントの決定は、以下の非限定的な実施例に記載されるように、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。
【0064】
2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、PAM120重量残基表、12のギャップ長ペナルティ、及び4のギャップペナルティを使用して、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE.Meyers and W.Miller(Comput.Appl.Biosci.4:11-17(1988))のアルゴリズムを使用して決定することができる。加えて、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、Blossum 62マトリックス又はPAM250マトリックスのいずれか、及び16、14、12、10、8、6、又は4のギャップ重み、並びに1、2、3、4、5、又は6の長さ重みを使用して、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.comで入手可能である)のギャッププログラムに組み込まれているNeedleman及びWunsch(J.Mol.Biol.48:444-453(1970))アルゴリズムを使用して決定することができる。
【0065】
追加的又は代替的に、本発明のタンパク質配列は、例えば、関連する配列を識別するために、公開データベースに対する検索を実行するための「問い合わせ(query)配列」として更に使用することができる。そのような検索は、Altschul,et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-10のXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して行うことができる。BLASTタンパク質検索は、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3で実施して、本発明の抗体分子に相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的のためのギャップアラインメントを得るために、Gapped BLASTをAltschul et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402に記載されているように利用することができる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメータ(例えば、XBLAST及びNBLAST)を使用することができる。(ncbi.nlm.nih.govを参照されたい)。
【0066】
本明細書で使用される場合、「保存的修飾」という用語は、アミノ酸配列を含有する抗体の結合特性に有意に影響を与えないか、又は変化しないアミノ酸修飾を指す。そのような保存的修飾には、アミノ酸置換、付加、及び欠失が含まれる。修飾は、部位特異的変異誘発及びPCR媒介性変異誘発などの当該技術分野において既知の標準的な技法により、本発明の抗体に導入され得る。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられたものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野において定義されている。これらのファミリーには、
塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、
酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、
非荷電の極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、
非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、
ベータ分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び
芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。
【0067】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。
【0068】
例示的な置換変異型は、例えば、Hoogenboom et al.,Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,N.J.,(2001)を参照されたい。アミノ酸配列挿入には、1個の残基から100個以上の残基を含むポリペプチドまでの長さの範囲のアミノ末端融合及び/又はカルボキシル末端融合、並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入変異型としては、抗体の血清半減期を増加させる別のタンパク質(例えば、酵素)又はポリペプチドへの抗体のN末端又はC末端への融合が挙げられる。
【0069】
グリコシル化変異型
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加又は減少させるように改変される。抗体へのグリコシル化部位の付加又は欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が作製又は除去されるようにアミノ酸配列を変更することによって、好都合に達成され得る。
【0070】
例えば、非グリコシル化抗体(すなわち、抗体がグリコシル化を欠く)を作製することができる。グリコシル化は、例えば、抗原に対する抗体の親和性を増加させるように変更することができる。そのような炭水化物修飾は、例えば、抗体配列内の1つ以上のグリコシル化部位を変更することによって達成され得る。例えば、1つ以上の可変領域フレームワークのグリコシル化部位の排除をもたらし、それによってその部位でのグリコシル化を排除する1つ以上のアミノ酸置換を作製することができる。そのような非グリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を増加させ得る。そのようなアプローチは、Coらによる米国特許第5,714,350号及び同第6,350,861号に更に詳細に記載されている。例えば、N297上の定常領域のグリコシル化は、N297残基を別の残基、例えば、N297Aに変異させることによって、及び/又は隣接するアミノ酸、例えば、298を変異させて、N297上のグリコシル化を低減することによって、防止してもよい。
【0071】
追加的又は代替的に、フコシル残基の量が減少した低フコシル化抗体、又はバイセクト(bisecting)GlcNac構造が増加した抗体などの、変更されたタイプのグリコシル化を有する抗体を作製することができる。そのような変化したグリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を増加させることが実証されている。そのような炭水化物修飾は、例えば、改変されたグリコシル化機構を有する宿主細胞において抗体を発現させることによって達成され得る。変更されたグリコシル化機構を有する細胞は、当該技術分野に記載されており、本明細書に記載される組換え抗体を発現し、それによって変更されたグリコシル化を有する抗体を産生する宿主細胞として使用され得る。例えば、HanaiらによるEP1,176,195は、フコシルトランスフェラーゼをコードする機能的に破壊されたFUT8遺伝子を有する細胞株を記載しており、そのような細胞株で発現される抗体が低フコシル化を示すようになっている。PrestaによるWO03/035835は、Asn(297)結合炭水化物にフコースを取り付ける能力が低下し、その宿主細胞で発現される抗体の低フコシル化をもたらす、変異型チャイニーズハムスター卵巣細胞株、Led 3細胞を記載する(Shields,R。L.et al.(2002)J.Biol.Chem.277:26733-26740も参照されたい)。UmanaらによるWO99/54342は、操作された細胞株において発現された抗体が、抗体のADCC活性の増加をもたらす増加したバイセクトGlcNac構造を示すように、糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、ベータ(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するように操作された細胞株を記載している(Umana et al.(1999)Nat.Biotech.17:176-180も参照されたい)。
【0072】
Fc領域変異型
本明細書に記載の抗体の可変領域は、Fc、例えば、IgGl、IgG2、IgG3又はIgG4のFcに連結されてもよく(例えば、共有結合若しくは融合されてもよい)、これらは、任意のアロタイプ又はアイソアロタイプであり得、例えば、IgGlの場合:Glm、Glml(a)、Glm2(x)、Glm3(f)、Glml7(z);IgG2の場合:G2m、G2m23(n);IgG3の場合:G3m、G3m21(gl)、G3m28(g5)、G3mll(b0)、G3m5(bl)、G3ml3(b3)、G3ml4(b4)、G3ml0(b5)、G3ml5(s)、G3ml6(t)、G3m6(c3)、G3m24(c5)、G3m26(u)、G3m27(v);及びKの場合:Km、Kml、Km2、Km3である(例えば、Jefferies et al.(2009)mAbs 1:1を参照されたい)。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の抗体可変領域は、1つ以上の活性化Fc受容体(FcγI、FcγIIa、又はFcγIIIa)に結合するFcに連結され、それによってADCCを刺激し、T細胞枯渇を引き起こし得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の抗体可変領域は、枯渇を引き起こすFcに連結されている。
【0073】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の抗体可変領域は、典型的には、血清半減期、補体固定、Fc受容体結合、及び/又は抗原依存性細胞傷害性などの抗体の1つ以上の機能的特性を変化させるために、1つ以上の修飾を含むFcに連結されてもよい。更に、本明細書に記載の抗体は、化学修飾されてもよく(例えば、1つ以上の化学部分が抗体に結合されてもよい)、又はそのグリコシル化を変更して、抗体の1つ以上の機能的特性を変更してもよい。Fc領域における残基の番号付けは、KabatのEUインデックスのものである。
【0074】
Fc領域は、免疫グロブリン、好ましくはヒト免疫グロブリンの定常領域に由来するドメインを包含し、定常領域の断片、類似体、変異体、変異体、又は誘導体を含む。好適な免疫グロブリンとしては、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4、並びにIgA、IgD、IgE、及びIgMなどの他のクラスが挙げられる。免疫グロブリンの定常領域は、免疫グロブリンC末端領域に相同な天然に存在するポリペプチド又は合成で産生されるポリペプチドとして定義され、CH1ドメイン、ヒンジ、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はCH4ドメインを、別個に又は組み合わせて含むことができる。抗体は、IgGのもの(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4)又はIgA1、IgA2、IgD、IgE、及びIgMなどの他のクラスのものからのFc領域を有することができる。Fcは、クラス又はサブクラスのいずれかの変異体型であり得る。
【0075】
免疫グロブリンの定常領域は、Fc受容体(FcR)結合及び補体結合(complement fixation)の重要な抗体機能に関与する。重鎖定常領域には、IgA、IgG、IgD、IgE、IgMに分類される5つの主要なクラスがあり、それぞれがアイソタイプによって指定される特徴的なエフェクター機能を有する。
【0076】
Ig分子は、細胞受容体の複数のクラスと相互作用する。例えば、IgG分子は、抗体のIgGクラスに特異的な3つのクラスのFcγ受容体(FcγR)、すなわち、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIILと相互作用する。IgGのFcγR受容体への結合のための重要な配列は、CH2及びCH3ドメインに位置することが報告されている。抗体の血清半減期は、その抗体がFcRに結合する能力によって影響を受ける。
【0077】
ある特定の実施形態では、Fc領域は、望ましい構造的特徴及び/又は生物学的活性を提供するために、親Fc配列(例えば、その後、変異型を生成するように修飾される非修飾Fcポリペプチド)に対して修飾された(例えば、アミノ酸置換、欠失、及び/又は挿入によって)変異型Fc領域である。例えば、(a)ADCCが増加若しくは減少し、(b)補体媒介性細胞傷害性(CDC)が増加若しくは減少し、(c)Clqに対する親和性が増加若しくは減少し、及び/又は(d)親Fcと比較してFc受容体に対する親和性が増加若しくは減少したFc変異型を生成するために、Fc領域において修飾を行ってもよい。そのようなFc領域変異型は、一般に、Fc領域内に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む。アミノ酸修飾を組み合わせることが特に望ましいと考えられる。例えば、変異型Fc領域は、例えば、本明細書で特定される特定のFc領域位置のうちの2つ、3つ、4つ、5つなどの置換を含んでもよい。
【0078】
変異体Fc領域はまた、ジスルフィド結合形成に関与するアミノ酸が除去されるか、又は他のアミノ酸と置き換えられる配列改変を含んでもよい。そのような除去は、本明細書に記載される抗体を産生するために使用される宿主細胞内に存在する他のシステイン含有タンパク質との反応を回避し得る。システイン残基が除去されても、一本鎖Fcドメインは、依然として、非共有結合で一緒に保持される二量体Fcドメインを形成することができる。他の実施形態では、Fc領域は、それを選択された宿主細胞とより適合させるように修飾され得る。例えば、典型的な天然Fc領域のN末端付近のPA配列を除去してもよく、これは、プロリンイミノペプチダーゼなどのE.coli内の消化酵素によって認識されてもよい。他の実施形態では、Fcドメイン内の1つ以上のグリコシル化部位を除去してもよい。典型的には、グリコシル化されている残基(例えば、アスパラギン)は、細胞溶解反応を付与してもよい。そのような残基は、非グリコシル化残基(例えば、アラニン)で欠失又は置換され得る。他の実施形態では、補体との相互作用に関与する部位、例えば、Clq結合部位は、Fc領域から除去され得る。例えば、ヒトIgG1のEKK配列を欠失又は置換してもよい。ある特定の実施形態では、Fc受容体への結合に影響を与える部位は除去されてもよく、好ましくは、サルベージ受容体結合部位以外の部位である。他の実施形態では、Fc領域は、ADCC部位を除去するように修飾されてもよい。ADCC部位は、当該技術分野において既知であり、例えば、IgGlにおけるADCC部位に関して、Molec.Immunol.29(5):633-9(1992)を参照されたい。変異型Fcドメインの具体例は、例えば、WO97/34631及びWO96/32478に開示されている。
【0079】
一実施形態では、Fcのヒンジ領域は、ヒンジ領域内のシステイン残基の数が変更されるように、例えば、増加又は減少するように修飾される。このアプローチは、Bodmerらによる米国特許第5,677,425号に更に記載されている。Fcのヒンジ領域におけるシステイン残基の数は、例えば、軽鎖及び重鎖の組み立てを容易にするために、又は抗体の安定性を増加又は減少させるために変更される。一実施形態では、抗体のFcヒンジ領域は、抗体の生物学的半減期を減少させるように変異される。より具体的には、抗体が天然のFc-ヒンジドメインSpA結合と比較して減損したブドウ球菌タンパク質A(SpA)結合を有するように、1つ以上のアミノ酸変異が、Fc-ヒンジ断片のCH2-CH3ドメイン界面領域に導入される。このアプローチは、Wardらによる米国特許第6,165,745号に更に詳細に記載されている。
【0080】
更に他の実施形態では、Fc領域は、抗体のエフェクター機能を変更するために、少なくとも1つのアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置き換えることによって変更される。例えば、アミノ酸残基234、235、236、237、297、318、320、及び322から選択される1つ以上のアミノ酸は、抗体がエフェクターリガンドに対する変更された親和性を有するが、親抗体の抗原結合能力を保持するように、異なるアミノ酸残基で置き換えられ得る。親和性が変更されるエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体又は補体のCI成分であり得る。このアプローチは、Winterらによる米国特許第5,624,821号及び同第5,648,260号に更に詳細に記載されている。
【0081】
別の実施例では、アミノ酸残基329、331、及び322から選択される1つ以上のアミノ酸は、抗体がClq結合を変更し、及び/又はCDCを低減若しくは廃止したように、異なるアミノ酸残基で置き換えられ得る。このアプローチは、Idusogieらによる米国特許第6,194,551号に更に詳細に記載されている。
【0082】
別の実施例では、アミノ酸位置231及び239内の1つ以上のアミノ酸残基が変更され、それによって抗体が補体を固定する能力を変更する。このアプローチは、BodmerらによるPCT公開第94/29351号に更に記載されている。
【0083】
更に別の実施例では、Fc領域は、以下の位置で1つ以上のアミノ酸を修飾することによって、ADCCを増加させる、及び/又はFcγ受容体に対する親和性を増加させるように修飾され得る:234、235、236、238、239、240、241、243、244、245、247、248、249、252、254、255、256、258、262、263、264、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、299、301、303、305、307、309、312、313、315、320、322、324、325、326、327、329、330、331、332、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、433、434、435、436、437、438又は439。例示的な置換としては、236A、239D、239E、268D、267E、268E、268F、324T、332D、及び332Eが挙げられる。例示的な変異型としては、239D/332E、236A/332E、236A/239D/332E、268F/324T、267E/268F、267E/324T、及び267E/268F7324Tが挙げられる。FcγR及び補体相互作用を増強するための他の修飾としては、置換298A、333A、334A、326A、247I、339D、339Q、280H、290S、298D、298V、243L、292P、300L、396L、305I、及び396Lが挙げられるが、これらに限定されない。これら及び他の修正は、Strohl,2009,Current Opinion in Biotechnology 20:685-691において概説されている。
【0084】
Fcγ受容体への結合を増加させるFc修飾は、Fc領域のアミノ酸位置238、239、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、279、280、283、285、298、289、290、292、293、294、295、296、298、301、303、305、307、312、315、324、327、329、330、335、337、3338、340、360、373、376、379、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438又は439のうちのいずれか1つ以上におけるアミノ酸修飾を含み、ここでは、Fc領域における残基の番号付けは、abatにおけるEUインデックスと同じである(WO00/42072)。
【0085】
Fcに行うことができる他のFc修飾は、FcγR及び/又は補体タンパク質への結合を低減又は除去するためのものであり、それによって、ADCC、ADCP、及びCDCなどのFc媒介性エフェクター機能を低減又は除去する。例示的な修飾としては、234、235、236、237、267、269、325、及び328位の置換、挿入、及び欠失が挙げられるが、これらに限定されず、番号付けは、EUインデックスに従う。例示的な置換としては、234G、235G、236R、237K、267R、269R、325L、及び328Rが挙げられるが、これらに限定されず、番号付けは、EUインデックスに従う。Fc変異型は、236R/328Rを含み得る。FcγR及び補体相互作用を低減するための他の修飾としては、置換297A、234A、235A、237A、318A、228P、236E、268Q、309L、330S、331S、220S、226S、229S、238S、233P、及び234V、並びに変異若しくは酵素的手段によって、又はタンパク質をグリコシル化しない細菌などの生物での産生によって、297位でのグリコシル化を除去することが挙げられる。これら及び他の修正は、Strohl,2009,Current Opinion in Biotechnology 20:685-691において概説されている。
【0086】
任意選択で、Fc領域は、当業者に既知の追加の及び/又は代替の位置に非天然型アミノ酸残基を含んでもよい(例えば、米国特許第5,624,821号、同第6,277,375号、同第6,737,056号、同第6,194,551号、同第7,317,091号、同第8,101,720号;WO00/42072、WO01/58957、WO02/06919、WO04/016750、WO04/029207、WO04/035752、WO04/074455、WO04/099249、WO04/063351、WO05/070963、WO05/040217、WO05/092925及びWO06/020114を参照されたい)。
【0087】
抑制性受容体FcγRIIbに対する親和性を増強するFc変異型も使用され得る。そのような変異型は、例えば、B細胞及び単球を含む、FcγRIIb細胞に関連する免疫調節活性を有するFc融合タンパク質を提供してもよい。一実施形態では、Fc変異型は、1つ以上の活性化受容体と比較して、FcγRIIbに対する選択的に増強された親和性を提供する。FcγRIIbへの結合を変更するための修飾には、EUインデックスに従って、234、235、236、237、239、266、267、268、325、326、327、328、及び332からなる群から選択される位置での1つ以上の修飾が挙げられる。FcγRIIb親和性を向上させるための例示的な置換としては、234D、234E、234F、234W、235D、235F、235R、235Y、236D、236N、237D、237N、239D、239E、266M、267D、267E、268D、268E、327D、327E、328F、328W、328Y、及び332Eが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な置換としては、235Y、236D、239D、266M、267E、268D、268E、328F、328W、及び328Yが挙げられる。FcγRllbへの結合を増強するための他のFc変異型としては、235Y/267E、236D/267E、239D/268D、239D/267E、267E/268D、267E/268E、及び267E/328Fが挙げられる。
【0088】
そのリガンドに対するFc領域の親和性及び結合特性は、平衡法(例えば、ELISA、又は放射免疫測定法)、又は動態(例えば、BIACORE分析)、並びに他の方法、例えば、間接結合アッセイ、競合阻害アッセイ、蛍光共鳴エネルギー伝達(FRET)、ゲル電気泳動及びクロマトグラフィー(例えば、ゲル濾過)が挙げられるが、これらに限定されない当該技術分野において既知の様々なインビトロアッセイ方法(生化学的又は免疫学的ベースのアッセイ)によって決定され得る。これら及び他の方法は、検査されている構成要素のうちの1つ以上の標識を利用してもよく、及び/又は発色、蛍光、発光、又は同位体標識が挙げられるが、これらに限定されない様々な検出方法を用いてもよい。結合親和性及び動態の詳細な説明は、抗体と免疫原の相互作用に焦点を当てている、Paul,W.E.,ed.,Fundamental immunology,4th Ed.,Lippincott-Raven,Philadelphia(1999)で見出すことができる。
【0089】
ある特定の実施形態では、抗体は、その生物学的半減期を増加させるように修飾される。様々なアプローチが可能である。例えば、これは、FcRnに対するFc領域の結合親和性を増加させることによって行われ得る。例えば、米国特許第6,277,375号に記載されるように、以下の残基のうちの1つ以上が変異され得る:252、254、256、433、435、436。具体的な例示的置換としては、以下のうちの1つ以上が挙げられる:T252L、T254S、及び/又はT256F。あるいは、生物学的半減期を増加させるために、抗体は、Prestaらによる米国特許第5,869,046号及び第6,121,022号に記載されているように、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから得られたサルベージ受容体結合エピトープを含有するようにCH1又はCL領域内で変更され得る。FcRnへの結合を増加させる、及び/又は薬物動態特性を改善する他の例示的な変異型には、例えば、259I、308F、428L、428M、434S、434H、434F、434Y、及び434Mを含む、259位、308、428、及び434位の置換が挙げられる。FcRnへのFc結合を増加させる他のバリアントとしては、250E、250Q、428L、428F、250Q/428L(Hinton et al,,2004,J.Biol.Chem.279(8):6213-6216,Hinton et al.2006 Journal of Immunology 176:346-356)、256A、272A、286A、305A、307A、307Q、311A、312A、376A、378Q、380A、382A、434A(Shields et al,Journal of Biological Chemistry,2001,276(9):6591-6604)、252F、252T、252Y、252W、254T、256S、256R、256Q、256E、256D、256T、309P、311S、433R、433S、433I、433P、433Q、434H、434F、434Y、252Y/254T/256E、433K/434F/436H、308T/309P/311S(Dall Acqua et al.Journal of Immunology,2002,169:5171-5180,Dall‘Acqua et al.,2006,Journal of Biological Chemistry 281:23514-23524)が挙げられる。FcRn結合を調節するための他の修飾は、Yeung et al.,2010,J Immunol,182:7663-7671に記載されている。ある特定の実施形態では、特定の生物学的特徴を有するハイブリッドIgGアイソタイプを使用してもよい。例えば、IgGl/IgG3ハイブリッド変異型は、CH2及び/又はCH3領域内のIgG1位置を、2つのアイソタイプが異なる位置でIgG3由来のアミノ酸で置換することによって構築されてもよい。したがって、1つ以上の置換、例えば、274Q、276K、300F、339T、356E、358M、384S、392N、397M、422I、435R、及び436Fを含むハイブリッド変異型IgG抗体を構築してもよい。本明細書に記載される他の実施形態では、IgGl/IgG2ハイブリッド変異型は、CH2及び/又はCH3領域内のIgG2位置を、2つのアイソタイプが異なる位置でIgGlからのアミノ酸で置換することによって構築されてもよい。したがって、ハイブリッド変異型IgG抗体は、1つ以上の置換、例えば、以下のアミノ酸置換のうちの1つ以上を含むCHATによって構築され得る:233E、234L、235L、236G(236位のグリシンの挿入を指す)、及び321h。
【0090】
更に、FcγRl、FcγRII、FcγRIII及びFcRnのヒトIgGl上の結合部位がマッピングされ、改良された結合を有する変異型が記載されている(Shields,R.L.et al.(2001)J.Biol.Chem.276:6591-6604を参照されたい)。256位、290位、298位、333位、334位及び339位の特異的変異は、FcγRIIIへの結合を改善することが示された。加えて、以下の組み合わせ変異型は、FcγRIII結合を改善することが示された:T256A/S298A、S298A/E333A、S298A/K224A及びS298A/E333A/K334A(これらは、増強されたFcγRIIIa結合及びADCC活性を示すことが示されている)(Shields et al.,2001)。FcγRIIIaへの結合が強く増強された他のIgGl変異型が同定されており、これには、FcγRIIIaに対する親和性の最大の増加、FcγRIIb結合の減少、及びカニクイザルにおける強い細胞傷害活性を示したS239D/I332E及びS239D/I332E/A330L変異を有する変異型が含まれる(Lazar et al.,2006)。アレムツズマブ(CD52特異的)、トラスツズマブ(HER2/neu特異的)、リツキシマブ(CD20特異的)、及びセツキシマブ(EGFR特異的)などの抗体への三重変異の導入は、インビトロで大幅に増強されたADCC活性に変換され、S239D/I332E変異型は、サルにおけるB細胞を枯渇させる能力の増強を示した(Lazar et al.,2006)。加えて、B細胞悪性腫瘍及び乳がんのモデルにおいて、ヒトFcγRIIIaを発現するトランスジェニックマウスにおいてFcγRIIIaへの結合の増強及び同時に増強されたADCC活性を示したL235V、F243L、R292P、Y300L及びP396L変異を含有するIgGl変異体が同定されている(Stavenhagen et al.,2007;Nordstrom et al.,2011)。使用され得る他のFc変異体としては、以下が挙げられる:S298A/E333A/L334A、S239D/I332E、S239D/I332E/A330L、L235V/F243L/R292P/Y300L/P396L、M428L/N434S。
【0091】
ある特定の実施形態では、FcγRへの結合が減少したFcが選択される。FcγR結合が減少した例示的なFc、例えばIgGl Fcは、以下の3つのアミノ酸置換を含む:L234A、L235E及びG237A。
【0092】
ある特定の実施形態では、補体固定が減少したFcが選択される。補体固定が減少した例示的なFc、例えば、IgGl Fcは、以下の2つのアミノ酸置換を有する:A330S及びP331S。
【0093】
ある特定の実施形態では、本質的にエフェクター機能を有しない、すなわち、FcγRへの結合が減少し、補体固定が減少したFcが選択される。エフェクターレスである例示的なFc、例えば、IgGl Fcは、以下の5つの変異を含む:L234A、L235E、G237A、A330S、P331S。
【0094】
IgG4定常ドメインを使用する場合、通常、置換S228Pを含むことが好ましく、これは、IgGl内のヒンジ配列を模倣し、それによってIgG4分子を安定化する。
【0095】
抗体誘導体
本明細書に提供される抗体は、当該技術分野で既知であり、容易に入手可能な追加の非タンパク質性部分を含有するように更に修飾され得る。抗体の誘導体化に好適な部分としては、水溶性ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
水溶性ポリマーの非限定的な例としては、PEG、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/マレイン酸無水物コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のため、製造における利点を有し得る。ポリマーは、任意の分子量を有してもよく、分枝状又は非分枝状であってもよい。抗体に結合したポリマーの数は様々であり、2つ以上のポリマーが結合している場合、それらは同じ又は異なる分子であり得る。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又は種類は、改善される抗体の特定の特性若しくは機能、抗体誘導体が定義された条件下で治療に使用されるかどうかなどが挙げられるが、これらに限定されない考慮事項に基づいて決定され得る。
【0097】
別の実施形態において、放射線への曝露によって選択的に加熱され得る抗体と非タンパク質性部分とのコンジュゲートが提供される。一実施形態では、非タンパク質性部分は、カーボンナノチューブである(Kam et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:11600-11605(2005)を参照されたい)。放射線は、任意の波長のものであってもよく、通常の細胞に害を及ぼさないが、非タンパク質性部分を抗体非タンパク質性部分に近接する細胞が死滅する温度まで加熱する波長が含まれるが、これらに限定されない。
【0098】
本明細書に記載される抗体の別の修飾は、ペグ化である。抗体をペグ化して、例えば、抗体の生物学的(例えば、血清)半減期を増加させることができる。抗体をペグ化するために、抗体、又はその断片を、典型的には、1つ以上のPEG基が抗体又は抗体断片に結合する条件下で、PEGの反応性エステル又はアルデヒド誘導体などのPEGと反応させる。好ましくは、ペグ化は、アシル化反応又は反応性PEG分子(又は類似の反応性水溶性ポリマー)とのアルキル化反応を介して実行される。本明細書で使用される場合、「ポリエチレングリコール」という用語は、モノ(CI-CIO)アルコキシ-又はアリールオキシ-ポリエチレングリコール又はポリエチレングリコール-マレイミドなどの他のタンパク質を誘導体化するために使用されているPEGの形態のいずれかを包含することが意図される。ある特定の実施形態では、ペグ化される抗体は、非グリコシル化抗体である。タンパク質をペグ化するための方法は当該技術分野で既知であり、本明細書に記載の抗体に適用することができる。例えば、NishimuraらのEP0154316及びIshikawaらのEP0401384を参照されたい。
【0099】
本発明は、治療剤、ポリマー、検出可能な標識又は酵素にコンジュゲートされた、本明細書に記載のヒトモノクローナル抗体も包含する。一実施形態では、治療剤は、細胞傷害性剤である。一実施形態では、ポリマーは、PEGである。
【0100】
産生の方法
抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号に記載されているように、組換え方法及び組成物を使用して産生され得る。一実施形態では、本明細書に記載の抗体をコードする単離された核酸が提供される。そのような核酸は、VLを含むアミノ酸配列及び/又は抗体のVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖及び/又は重鎖)をコードしてよい。更なる実施形態では、そのような核酸を含む1つ以上のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。更なる実施形態では、そのような核酸を含む宿主細胞が提供される。そのような一実施形態では、宿主細胞は、以下を含む(例えば、それらで形質転換されている):(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、又は(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター、及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクター。一実施形態では、宿主細胞は、真核細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。一実施形態では、抗体の作製方法が提供され、本方法は、抗体の発現に好適な条件下で、上記で提供したように、抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養することと、任意選択的に、抗体を宿主細胞(又は宿主細胞培養培地)から回収することと、を含む。
【0101】
抗体の組換え産生のために、例えば上述のように、抗体をコードする核酸を単離し、宿主細胞における更なるクローニング及び/又は発現のために1つ以上のベクターに挿入する。そのような核酸は、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離され、配列決定され得る。
【0102】
抗体コードベクターのクローニング又は発現に好適な宿主細胞には、本明細書に記載される原核細胞又は真核細胞が含まれる。例えば、抗体は、細菌において、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要でない場合に産生され得る。細菌における抗体断片及びポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号、同第5,789,199号、及び同第5,840,523号を参照されたい。(E.coliにおける抗体断片の発現を記載する、Charlton,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,N.J.,2003),pp.245-254も参照されたい。)発現後、抗体は、可溶性画分中の細菌細胞ペーストから単離されてもよく、更に精製され得る。
【0103】
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母などの真核微生物は、グリコシル化経路が「ヒト化」され、部分的又は完全なヒトグリコシル化パターンを有する抗体が産生される、真菌及び酵母株を含む抗体コードベクターに好適なクローニング又は発現宿主である。Gerngross,Nat.Biotech.22:1409-1414(2004)、及びLi et al.,Nat.Biotech.24:210-215(2006)を参照されたい。
【0104】
グリコシル化抗体の発現に好適な宿主細胞もまた、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)に由来する。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞及び昆虫細胞が挙げられる。特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために、昆虫細胞と併せて使用することができる多数のバキュロウイルス株が特定されている。
【0105】
植物細胞培養物も宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、及び同第6,417,429号(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPLANTIBODIES技術を記載している)を参照されたい。
【0106】
脊椎動物細胞も宿主として使用され得る。例えば、懸濁液中で成長するように適合される哺乳類細胞株が有用であり得る。有用な哺乳類宿主細胞株の他の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7)、ヒト胚性腎臓株(例えば、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977)に記載されているような293又は293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980)に記載されているようなTM4細胞);サル腎臓細胞(CV1);アフリカミドリサル腎臓細胞(VERO-76);ヒト子宮頸がん細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK);バッファローラット肝臓細胞(BRL3A)、ヒト肺細胞(W138);ヒト肝臓細胞(Hep G2);マウス乳腺腫瘍(MMT060562);TRI細胞(例えば、Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982)に記載されているような);MRC5細胞;及びFS4細胞である。他の有用な哺乳類宿主細胞株としては、DHFR-CHO細胞(Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980))を含むCHO細胞;並びにY0、NS0及びSp2/0などの骨髄腫細胞株が挙げられる。抗体産生に好適なある特定の哺乳類宿主細胞株の概説については、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,N.J.),pp.255-268(2003)を参照されたい。
【0107】
遺伝子及び細胞療法
上記に要約されるように、本発明の一態様は、GIPR阻害を含み、その阻害を必要とする対象に、GIPR抗原結合タンパク質を導入することを含む。一実施形態では、抗原結合タンパク質を発現する細胞を対象に導入してもよい。別の実施形態では、GIPR抗原結合タンパク質をコードする核酸又は核酸は、核酸が染色体外に留まるように、又は発現のために対象の染色体DNAに組み込まれ得るように、ベクター内の対象の細胞に導入されてもよい。これらの方法は、そのような治療を必要とする対象に、抗原結合タンパク質を発現するための治療有効量の核酸又はGIPR抗原結合タンパク質をコードする核酸、又はその薬学的に許容される組成物を投与することを提供する。
【0108】
核酸又は核酸は、対象の標的細胞のゲノムを構成する染色体DNAに組み込まれていても、組み込まれていなくてもよい(共有結合していても)。核酸又は核酸は、核酸が染色体外に留まるように細胞に導入されてもよい。そのような状況では、核酸は、染色体外の位置から細胞によって発現される。細胞はまた、外因性核酸が染色体に組み込まれ、それが染色体複製を介して娘細胞によって継承されるように形質転換され得る。核酸は、染色体外維持又は宿主への組み込みのために、適切なベクターに導入され得る。組換え及び染色体外維持の両方のための遺伝子の導入のためのベクターは、当該技術分野で既知であり、任意の好適なベクターを使用し得る。エレクトロポレーション、リン酸カルシウム共沈降及びウイルス形質導入などのDNAを細胞に導入する方法は、当該技術分野で既知であり、方法の選択は、当該技術分野のものの能力内である。
【0109】
本明細書に記載の抗原結合タンパク質をコードする遺伝子は、RNAの形態又はDNAの形態であり得るポリヌクレオチド又は核酸であり得、そのDNAは、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAを含む。DNAは二本鎖であっても一本鎖であってもよく、一本鎖の場合、コード鎖又は非コード(アンチセンス)鎖であってもよい。
【0110】
本発明のポリヌクレオチド又は核酸組成物又は分子は、当業者には容易に理解されるであろうように、RNA、cDNA、ゲノムDNA、合成形態、及びセンス鎖とアンチセンス鎖の両方の混合ポリマーを含むことができ、化学的又は生化学的に修飾されてもよく、又は非天然若しくは誘導体化ヌクレオチド塩基を含有してもよい。そのような修飾としては、例えば、標識、メチル化、天然に存在するヌクレオチドの1つ以上の類似体による置換、非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメートなど)、荷電結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)、ペンダント部分(例えば、ポリペプチド)、インターカレーター(例えば、アクリジン、プソラレンなど)、キレート剤、アルキル化剤、及び修飾結合(例えば、αアノマー核酸など)のヌクレオチド間修飾が挙げられる。また、水素結合及び他の化学相互作用を介して指定された配列に結合する能力においてポリヌクレオチドを模倣する合成分子も含まれる。そのような分子は当該技術分野で既知であり、例えば、分子の骨格内のリン酸結合をペプチド結合が置換するものが挙げられる。
【0111】
導入遺伝子のインビボ発現は、気管内、筋肉内又は動脈内への裸のDNA若しくはDNAカチオン性リポソーム複合体の直接注射などの特定の組織に、又はその後の再注入を伴う宿主細胞のエクスビボトランスフェクションに、導入遺伝子を直接注射することによって実行することができる。
【0112】
インビトロ及びインビボの両方で、機能的な新しい遺伝物質を細胞に導入するための複数のアプローチが知られている。これらのアプローチとしては、改変されたレトロウイルスに発現される遺伝子の組み込み、非ウイルスベクターへの組み込み、又はリポソームを介して異種プロモーター-エンハンサーエレメントに連結された導入遺伝子の送達、リガンド仕様に基づく輸送系に結合された導入遺伝子の送達、又は裸のDNA発現ベクターの使用が挙げられる。組織への導入遺伝子の直接注射は、局所発現を産生する。PCT/US90/01515(Felgner et al.)は、医薬又は免疫原性ポリペプチドをコードする遺伝子をインビボで脊椎動物の細胞の内部に送達するための方法を目的としている。ほとんどの遺伝子治療戦略は、レトロウイルス又はDNAウイルスベクターへの導入遺伝子挿入に依存しているが、脂質担体を使用して、宿主の肺細胞をトランスフェクトし得る。
【0113】
上記のポリヌクレオチド又は核酸は、好適な宿主細胞内で複製することによって産生され得る。所望の断片をコードする天然又は合成ポリヌクレオチド断片は、組換えポリヌクレオチド構築物、通常はDNA構築物に組み込むことができ、原核細胞又は真核細胞に導入及び複製することができる。通常、ポリヌクレオチド構築物は、酵母又は細菌などの単細胞宿主での複製に好適であり得るが、培養された哺乳類又は植物又は他の真核生物細胞株への導入(ゲノム内での組み込みの有無にかかわらず)を意図していてもよい。
【0114】
ポリヌクレオチド又は核酸はまた、化学合成によって産生されてもよく、市販のオリゴヌクレオチド自動合成装置上で実施されてもよい。二本鎖断片は、相補鎖を合成し、適切な条件下で鎖を一緒にアニーリングすることによって、又は適切なプライマー配列を有するDNAポリメラーゼを使用して相補鎖を添加することによって、化学合成の一本鎖生成物から得てもよい。
【0115】
原核又は真核宿主への導入のために調製されたポリヌクレオチド又は核酸構築物は、所望のポリペプチドをコードする目的のポリヌクレオチド断片を含む、宿主によって認識される複製系を含み得、好ましくは、ポリペプチドをコードするセグメントに作動可能に連結された転写及び翻訳開始調節配列も含む。発現ベクターは、例えば、複製起点又は自律複製配列(ARS)及び発現制御配列、プロモーター、エンハンサー、及びリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、転写ターミネーター配列、及びmRNA安定化配列などの必要な処理情報部位を含み得る。分泌シグナルはまた、必要に応じて、天然タンパク質からであれ、他のタンパク質からであれ、同じ又は関連する種の分泌されたポリペプチドからであれ、含まれてもよく、これにより、タンパク質に細胞膜を横断させ、及び/又は細胞膜に留まらせ、したがって、その機能的トポロジーを達成するか、又は細胞から分泌される。そのようなベクターは、当該技術分野で周知の標準的な組換え技術によって調製され得る。
【0116】
適切なプロモーター及び他の必要なベクター配列は、宿主内で機能するように選択することができ、適切な場合、免疫グロブリン遺伝子に天然に関連するものを含み得る。多くの有用なベクターは当該技術分野において既知であり、STRATAGENE、NEW ENGLAND BIOLABS、PROMEGA BIOTECHなどのベンダーから入手することができる。trp、lac及びファージプロモーター、tRNAプロモーター、及び糖分解酵素プロモーターなどのプロモーターを、原核宿主に使用してもよい。有用な酵母プロモーターとしては、メタロチオネインのプロモーター領域、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ、又はエノラーゼ若しくはグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼなどの他の糖分解酵素、マルトース及びガラクトース利用に関与する酵素、並びに他のものが挙げられる。適切な非天然哺乳類プロモーターとしては、SV40由来の初期及び後期プロモーター、又はマウスモロニー白血病ウイルス、マウス腫瘍ウイルス、鳥肉腫ウイルス、アデノウイルスII、ウシパピローマウイルス若しくはポリオーマ由来のプロモーターが挙げられ得る。加えて、構築物は、遺伝子の複数のコピーが作製され得るように、増幅可能な遺伝子に結合され得る。
【0117】
一実施形態では、核酸構築物は、RNAポリメラーゼIII、RNAポリメラーゼII、CMVプロモーター及びエンハンサー、SV40プロモーター、HBVプロモーター、HCVプロモーター、HSVプロモーター、HPVプロモーター、EBVプロモーター、HTLVプロモーター、HIVプロモーター、及びcdc25Cプロモーター、サイクリンプロモーター、cdc2プロモーター、bmybプロモーター、DHFRプロモーター、及びE2F-1プロモーターからなる群から選択される少なくとも1つのプロモーターを含むことができる。いくつかの実施形態では、長期発現のためにユビキチンCプロモーターを使用することができる。
【0118】
本発明によれば、代謝障害を治療する方法であって、治療有効量の本発明の抗原結合タンパク質をコードする核酸又はその薬学的に許容される組成物を、そのような治療を必要とする患者に投与することを含む、方法が提供される。方法の態様は、対象に、第1の核酸を単独で、又は抗原結合タンパク質のコード配列を含むベクター中で投与することを含む。核酸を利用する遺伝子治療方法も提供される。本発明の実施形態は、本方法において用途を見出す、例えば、核酸単独の、又はベクター及びキット中の組成物を含む。
【0119】
この方法は、対象(例えば、哺乳動物)に投与されたときに抗原結合タンパク質の発現を増加させ得る。対象へのベクターの投与は、疾患又は状態の1つ以上の症状又はマーカーを改善し得る。
【0120】
任意の好都合なウイルスを、対象に目的のベクターを送達する際に利用することができる。目的のウイルスとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、単純ヘルペスウイルス、及びレンチウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。ウイルス遺伝子治療ベクターは、当該技術分野において周知であり、例えば、Heilbronn & Weger(2010)Handb Exp Pharmacal.197:143-70を参照されたい。目的のベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルス(AdV)、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルス、及びヘルペスウイルスに基づくものなどの組み込み型及び非組み込み型ベクターが挙げられる。
【0121】
いくつかの場合には、AAVなどの非組み込み型ウイルスベクターを利用してもよい。一態様では、非組み込み型ベクターは、任意の恒久的な遺伝子改変を引き起こさない。ベクターは、対象が発達の初期段階から構成的発現の影響を受けることを回避するために、成人組織を標的とし得る。場合によっては、非組み込み型ベクターは、MRCKα及び/又はNKA β1発現細胞の過剰増殖を回避するための安全機構を効果的に組み込む。細胞が急速に増殖し始めると、ベクター(及び結果としてのタンパク質発現)を失う可能性がある。
【0122】
目的の非組み込み型ベクターとしては、腹なし(gutless)アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、インテグラーゼ欠損レンチウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルス、及びヘルペスウイルスなどのアデノウイルス(AdV)に基づくものが挙げられる。ある特定の実施形態では、本発明で使用される非組み込み型ベクターは、天然のアデノ随伴ウイルス粒子と同様の、アデノ随伴ウイルスベースの非組み込み型ベクターである。アデノ随伴ウイルスベースの非組み込み型ベクターの例としては、任意のAAV血清型、すなわち、AAVI、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVIO、AAVII、及びシュードタイプAAVに基づくベクターが挙げられる。目的のベクターには、免疫原性が低く、優れた安全性プロファイルを有する、高効率で広範囲の組織を形質導入することができるベクターが含まれる。いくつかの場合には、ベクターは、有糸分裂後細胞を形質導入し、関連する障害の小動物モデル及び大動物モデルの両方において長期的な遺伝子発現(最大数年)を維持することができる。
【0123】
組成物及び製剤
本発明の抗原結合タンパク質(抗体を含む)は、単独で、又は代謝障害の治療のための追加の薬剤と組み合わせて、治療薬を開発するための優れた方法を表す。
【0124】
GIPR抗原結合タンパク質を含む薬学的組成物も提供され、本明細書に開示される予防及び治療方法のうちのいずれにおいても利用され得る。実施形態では、治療有効量の1つ以上の抗原結合タンパク質、並びに薬学的に許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、防腐剤、及び/又はアジュバントもまた提供される。許容される製剤材料は、用いる投薬量及び濃度でレシピエントに対して非毒性である。
【0125】
ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、例えば、組成物のpH、浸透圧、粘度、透明度、色、等張性、臭気、無菌性、安定性、溶解若しくは放出速度、吸着又は貫通を修正、維持又は保存するための製剤材料を含んでもよい。そのような実施形態では、好適な製剤材料としては、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジンなど);抗菌剤;抗酸化剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム又は亜硫酸水素ナトリウムなど);緩衝剤(ホウ酸塩、重炭酸塩、Tris-HCl、クエン酸塩、リン酸塩又は他の有機酸など);増量剤(マンニトール又はグリシンなど);キレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など);錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、β-シクロデキストリン又はヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなど);充填剤;単糖類;二糖類;及び他の炭水化物(グルコース、マンノース又はデキストリンなど);タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン);着色剤、香料及び希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);低分子量ポリペプチド;塩形成対イオン(ナトリウムなど);防腐剤(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸又は過酸化水素など);溶媒(グリセリン、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールなど);糖アルコール(マンニトール又はソルビトールなど);懸濁剤;界面活性剤又は湿潤剤(プルロニック、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート、例えばポリソルベート20、ポリソルベート、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサパールなど);安定性増強剤(スクロース又はソルビトールなど);張力増強剤(アルカリ金属ハロゲン化物、好ましくは塩化ナトリウム又は塩化カリウム、マンニトールソルビトールなど);送達ビヒクル;希釈剤;賦形剤及び/又は薬学的アジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,18”Edition,(A.R.Genrmo,ed.),1990,Mack Publishing Companyは、薬学的組成物に組み込むことができる好適な薬剤についての追加の詳細及び選択肢を提供している。
【0126】
ある特定の実施形態では、最適な薬学的組成物は、例えば、意図される投与経路、送達形態及び所望の投与量に応じて、当業者によって決定される。例えば、上記のREMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCESを参照されたい。ある特定の実施形態では、そのような組成物は、開示される抗原結合タンパク質の物理的状態、安定性、インビボ放出速度、及びインビボクリアランス速度に影響を及ぼし得る。ある特定の実施形態では、薬学的組成物中の主なビヒクル又は担体は、本質的に水性であっても非水性であってもよい。例えば、好適なビヒクル又は担体は、注射用水又は生理食塩水であってもよい。ある特定の実施形態では、GIPR抗原結合タンパク質組成物は、所望の純度を有する選択された組成物を、凍結乾燥ケーキ又は水溶液の形態で任意の製剤と混合することによって、保管のために調製されてもよい(上記のREMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES)。更に、ある特定の実施形態では、GIPR抗原結合タンパク質は、スクロースなどの適切な賦形剤を使用して凍結乾燥物として製剤化されてもよい。
【0127】
薬学的組成物は、非経口送達のために選択することができる。あるいは、組成物は、吸入用、又は経口などの消化管を介した送達のために選択され得る。そのような薬学的に許容される組成物の調製は、当業者の技術の範囲内である。
【0128】
製剤成分は、好ましくは、投与部位が許容できる濃度で存在する。ある特定の実施形態では、緩衝液は、組成物を生理学的pH又はわずかに低いpH、典型的には約5~約8のpH範囲内で維持するために使用される。
【0129】
非経口投与が企図される場合、治療用組成物は、薬学的に許容されるビヒクル中に所望のヒトGIPR抗原結合タンパク質を含む、発熱物質を含まない非経口的に許容される水溶液の形態で提供され得る。非経口注射に特に好適なビヒクルは、GIPR抗原結合タンパク質が滅菌された等張溶液として製剤化され、適切に保存される滅菌蒸留水である。ある特定の実施形態では、調製物は、注射可能な微小球、生体侵食性粒子、ポリマー化合物(ポリ乳酸又はポリグリコール酸など)、ビーズ又はリポソームなどの薬剤とともに所望の分子の製剤を含むことができ、これらは、デポ注射を介して送達することができる生成物の制御された放出又は持続的な放出を提供し得る。ある特定の実施形態では、循環における持続期間を促進する効果を有するヒアルロン酸を使用してもよい。ある特定の実施形態では、移植可能な薬物送達デバイスを使用して、所望の抗原結合タンパク質を導入してもよい。
【0130】
ある特定の薬学的組成物は、吸入用に製剤化される。いくつかの実施形態では、GIPR抗原結合タンパク質は、乾燥した吸入可能な粉末として製剤化される。特定の実施形態では、GIPR抗原結合タンパク質吸入溶液はまた、エアロゾル送達のための推進剤とともに製剤化してもよい。ある特定の実施形態では、溶液は、噴霧されてもよい。したがって、経肺投与及び製剤の方法は、国際特許出願第PCT/US94/001875号に更に記載され、これは参照により組み込まれ、化学的に修飾されたタンパク質の肺送達を記載する。いくつかの製剤は、経口投与することができる。このように投与されるGIPR抗原結合タンパク質は、錠剤及びカプセルなどの固形剤形の配合に通常使用される担体を含むか又は含まずに製剤化することができる。ある特定の実施形態では、カプセルは、生物学的利用能が最大化され、全身循環前の分解が最小化されるときに、消化管内の点において製剤の活性部分を放出するように設計されてもよい。GIPR抗原結合タンパク質の吸収を促進するために、追加の薬剤を含めることができる。希釈剤、香料、低融点ワックス、植物油、滑沢剤、懸濁剤、錠剤崩壊剤、及び結合剤を用いてもよい。
【0131】
持続送達製剤又は制御送達製剤中のGIPR結合タンパク質を含む製剤を含む、追加の薬学的組成物は、当業者には明白であろう。リポソーム担体、生体浸食性微粒子、又は多孔質ビーズ及びデポ注射などの様々な他の持続送達又は制御送達手段を製剤化するための技法もまた、当業者に既知である。例えば、参照により組み込まれ、薬学的組成物の送達のための多孔質高分子微粒子の制御放出が記載される国際特許出願第PCT/US93/00829号を参照されたい。持続放出製剤は、成形品の形態の半透過性ポリマーマトリックス、例えば、フィルム又はマイクロカプセルを含み得る。持続放出マトリックスは、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリラクチド(それぞれが参照により組み込まれる米国特許第3,773,919号及び欧州特許出願公開第058481号に開示されるように)、L-グルタミン酸及びガンマエチル-L-グルタミン酸のコポリマー(Sidman et al.,1983,Biopolymers 2:547-556)、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)(Langer et al.,1981,J.Biomed.Mater.Res.15:167-277及びLanger,1982,Chem.Tech.12:98-105)、エチレン酢酸ビニル(Langer et al.,1981、上記)、又はポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸(欧州特許公開第133,988号)を含み得る。持続放出組成物はまた、当該技術分野で既知のいくつかの方法のいずれかによって調製することができるリポソームを含んでもよい。例えば、参照により組み込まれる、Eppstein et al.,1985,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.82:3688-3692;欧州特許出願公開第036,676号、同第088,046号及び同第143,949号を参照されたい。
【0132】
インビボ投与に使用される薬学的組成物は、典型的には、無菌製剤として提供される。滅菌は、無菌濾過膜を介した濾過によって達成することができる。組成物が凍結乾燥されるとき、この方法を使用した滅菌は、凍結乾燥及び再構築の前又は後のいずれかで実施されてもよい。非経口投与用の組成物は、凍結乾燥形態又は溶液中で保存することができる。非経口組成物は、一般に、無菌アクセスポート、例えば、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルを有する容器に配置される。
【0133】
ある特定の製剤では、抗原結合タンパク質は、少なくとも10mg/mL、20mg/mL、30mg/mL、40mg/mL、50mg/mL、60mg/mL、70mg/mL、80mg/mL、90mg/mL、100mg/mL、又は150mg/mLの濃度を有する。一実施形態では、薬学的組成物は、抗原結合タンパク質、緩衝液及びポリソルベートを含む。他の実施形態では、薬学的組成物は、抗原結合タンパク質、緩衝液、スクロース、及びポリソルベートを含む。薬学的組成物の例は、50~100mg/mLの抗原結合タンパク質、5~20mMの酢酸ナトリウム、5~10%(w/v)のスクロース、及び0.002~0.008%(w/v)のポリソルベートを含むものである。ある特定の組成物は、例えば、65~75mg/mLの抗原結合タンパク質、9~11mMの酢酸ナトリウム、8~10%(w/v)のスクロース、及び0.005~0.006%(w/v)のポリソルベートを含有する。ある特定のそのような製剤のpHは、4.5~6の範囲である。他の製剤は、5.0~5.5のpH(例えば、5.0、5.2、又は5.4のpH)を有する。
【0134】
薬学的組成物が製剤化されると、それは、溶液、懸濁液、ゲル、乳剤、固体、結晶、又は脱水若しくは凍結乾燥粉末として滅菌バイアルに保管されてもよい。そのような製剤は、すぐに使用できる形態又は投与前に再構成される形態(例えば、凍結乾燥)のいずれかで保存することができる。単回投与単位を製造するためのキットも提供される。ある特定のキットは、乾燥タンパク質を有する第1の容器と、水性製剤を有する第2の容器とを含む。ある特定の実施形態では、1室型及び多室型のプレフィルドシリンジ(例えば、液体シリンジ及びリオシリンジ(lyosyringes))を含むキットが提供される。用いられるGIPR抗原結合タンパク質含有薬学的組成物の治療有効量は、例えば、治療の背景及び目的に依存する。当業者であれば、治療のための適切な用量レベルが、一部には、送達される分子、GIPR抗原結合タンパク質が使用されている適応症、投与経路、及び患者のサイズ(体重、体表面又は臓器サイズ)及び/又は状態(年齢及び全般的な健康状態)に応じて変化することを理解するであろう。ある特定の実施形態では、臨床医は、最適な治療効果を得るために、用量を滴定し、投与経路を修正してもよい。
【0135】
投与頻度は、使用される製剤中の特定のGIPR抗原結合タンパク質の薬物動態パラメータに依存する。典型的には、臨床医は、所望の効果を達成する用量に達するまで組成物を投与する。したがって、組成物は、単回用量として、又は2回以上の用量(同じ量の所望の分子を含有しても含有しなくてもよい)として、又は移植デバイス若しくはカテーテルを介した連続注入として、経時的に投与されてもよい。適切な投与量は、適切な用量反応データの使用によって確認することができる。ある特定の実施形態では、抗原結合タンパク質は、長期間にわたって患者に投与され得る。ある特定の実施形態では、抗原結合タンパク質は、2週間毎、毎月、2ヶ月毎、3ヶ月毎、4ヶ月毎、5ヶ月毎、又は6ヶ月毎に投与される。
【0136】
薬学的組成物の投与経路は、既知の方法と一致しており、例えば、経口で、静脈内、腹腔内、脳内(実質内)、脳室内、筋肉内、眼内、動脈内、門脈内、又は病変内経路による注射によって、持続放出システムによって、又は移植デバイスによってである。ある特定の実施形態では、組成物は、ボーラス注射によって、又は注入によって連続的に、又は移植デバイスによって投与されてもよい。
【0137】
組成物はまた、所望の分子が吸収又は封入された膜、スポンジ又は別の適切な材料の注入を介して局所的に投与されてもよい。移植デバイスが使用されるある特定の実施形態では、デバイスは、任意の好適な組織又は器官に移植されてもよく、所望の分子の送達は、拡散、持続放出型ボーラス、又は連続投与を介してもよい。
【0138】
また、開示されるエクスビボによるGIPR抗原結合タンパク質薬学的組成物を使用することが望ましい場合がある。そのような場合、患者から除去された細胞、組織、又は臓器をGIPR抗原結合タンパク質薬学的組成物に曝露し、その後、細胞、組織、及び/又は臓器を患者に再度移植する。
【0139】
医師は、特定の患者の個々のプロファイルに応じて、適切な治療適応症及び標的脂質レベルを選択することができる。高脂血症の治療指針を与えるための広く認められている1つの基準は、Third Report of the National Cholesterol Education Program(NCEP)Expert Panel on Detection,Evaluation,and Treatment of the High Blood Cholesterol in Adults(Adult Treatment Panel III)Final Report,National Institutes of Health,NIH Publication No.02-5215(2002)であり、その印刷刊行物はその内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0140】
特定の用量の有効性は、バイオマーカー又は特定の生理学的パラメータの向上を参照することによって評価することができる。好適なバイオマーカー及びパラメータの例としては、グルコース、コレステロール、トリグリセリド、肝臓酵素(例えば、ALT及びAST)、脂質プロファイル、肝臓バイオマーカー(例えば、HCY及びhYP)、並びに遊離コレステロール対血漿脂質の比、遊離コレステロール対膜タンパク質の比、ホスファチジルコリン対スフィンゴミエリンの比、又はHDL-Cレベルのうちの1つ以上などの以下の実施例に記載されるものが挙げられる。
【0141】
また、本明細書では、GIPR抗原結合タンパク質及び1つ以上の追加の治療薬を含む組成物、並びにそのような薬剤が、本明細書に開示される予防及び治療方法で使用するために、GIPR抗原結合タンパク質と同時に又は連続して投与される方法も提供される。1つ以上の追加の薬剤は、GIPR抗原結合タンパク質と共製剤化することができ、又はGIPR抗原結合タンパク質と共投与することができる。一般に、治療方法、組成物、及び化合物は、様々な疾患状態の治療において他の治療法と組み合わせて使用することもでき、追加の薬剤は同時に投与される。
【0142】
GLP-1受容体アゴニスト
一態様では、本発明は、代謝障害を有する対象を治療する方法を目的とし、本方法は、対象に、治療有効量のGLP-1受容体アゴニスト、及び治療有効量の、GIPRのアミノ酸配列に少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質に特異的に結合するGIPRアンタゴニストを投与することを含む。
【0143】
「GLP-1受容体アゴニスト」又は「GLP-1アゴニスト」は、GLP-1受容体活性を有する化合物を指す。そのような例示的な化合物としては、エキセンジン、エキセンジン類似体、エキセンジンアゴニスト、GLP-1(7-37)、GLP-1(7-37)類似体、GLP-1(7-37)アゴニストなどが挙げられる。GLP-1受容体アゴニスト化合物は、任意選択でアミド化されてもよい。「GLP-1受容体アゴニスト」及び「GLP-1受容体アゴニスト化合物」という用語は、同じ意味を有する。エキセンジン、エキセンジン類似体、GLP-1(7-37)、GLP-1(7-37)類似体、GLP-1(7-37)アゴニストなどの様々なGLP-1受容体アゴニストは、当該技術分野において既知であり、例えば、US20170275370に記載され、その内容は参照によりその全体が組み込まれる。
【0144】
「エキセンジン」という用語は、アメリカドクトカゲ(Gila monster)の唾液分泌物中に見出される天然に存在する(又は天然に存在するものの合成バージョン)エキセンジンペプチドを含む。特に興味深いエキセンジンは、エキセンジン-3及びエキセンジン-4を含む。本明細書に記載される方法で使用されるエキセンジン、エキセンジン類似体、及びエキセンジンアゴニストは、任意選択でアミド化されてもよく、また、酸形態、薬学的に許容される塩形態、又は分子の任意の他の生理学的に活性な形態であってもよい。
【0145】
一実施形態では、GIPRアンタゴニスト対GLP-1受容体アゴニストのモル比は、約1:1~1:110、1:1~1:100、1:1~1:75、1:1~1:50、1:1~1:25、1:1~1:10、1:1~1:5、及び1:1である。一実施形態では、GIPRアンタゴニスト対GLP-1受容体アゴニストのモル比は、約1:1~1:110、1:1~1:100、1:1~1:75、1:1~1:50、1:1~1:25、1:1~1:10、1:1~1:5である。一実施形態では、GLP-1受容体アゴニストは、約1:1.5~1:150、好ましくは1:2~1:50の治療上有効なモル比でGIPRアンタゴニストと併用される。一実施形態では、GLP-1受容体アゴニスト及びGIPRアンタゴニストは、状態及び/又は疾患を治療するために必要な各化合物単独の用量よりも少なくとも約1.1~1.4、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10倍低い用量で存在する。
【0146】
本明細書に記載のGLP-1受容体アゴニスト化合物を含有する薬学的組成物は、非経口(例えば、皮下、静脈内、筋肉内)、連続注入(例えば、静脈内点滴、静脈内ボーラス、静脈内注入)、局所、鼻腔、又は経口投与などの末梢投与のために提供され得る。好適な薬学的に許容される担体及びその製剤は、標準製剤論文、例えば、MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciences;及びWang et al.,Journal of Parenteral Science and Technology,Technical Report No.10,Supp.42:2S(1988)に記載されている。本明細書に記載されるGLP-1受容体アゴニスト化合物は、注射又は注入用の非経口組成物で提供することができる。それらは、例えば、水、植物油(例えば、ゴマ、ピーナッツ、オリーブ油など)などの不活性油、又は他の薬学的に許容される担体に懸濁され得る。一実施形態では、化合物は、水性担体中、例えば、約3.0~8.0のpH、又は約3.0~5.0の等張緩衝液中に懸濁される。組成物は、従来の滅菌技術によって滅菌されてもよく、又は無菌濾過されてもよい。組成物は、pH緩衝剤などの生理学的条件に近似するために必要に応じて、薬学的に許容される補助物質を含有し得る。
【0147】
有用な緩衝液としては、例えば、酢酸緩衝液が挙げられる。治療有効量の調製物が、皮下注射、経皮注射、又は他の送達方法の後、何時間も又は何日もかけて血流に送達されるように、レポジトリ又は「デポ」遅延放出調製物の形態を使用してもよい。所望の等張性は、塩化ナトリウム又はデキストロース、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコール、ポリオール(マンニトール及びソルビトールなど)、又は他の無機若しくは有機溶質などの他の薬学的に許容される薬剤を使用して達成され得る。静脈内注入の一実施形態では、製剤は、(i)GLP-1受容体アゴニスト化合物と、(2)滅菌水と、任意選択的に(3)塩化ナトリウム、デキストロース、又はそれらの組み合わせと、を含み得る。
【0148】
担体又は賦形剤は、GLP-1受容体アゴニスト化合物の投与を容易にするためにも使用することができる。担体及び賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ラクトース、グルコース、又はスクロースなどの様々な糖類、又はデンプンの種類、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、ポリエチレングリコール、及び生理学的に適合する溶媒が挙げられる。
【0149】
また、GLP-1受容体アゴニスト化合物は、薬学的に許容される塩(例えば、酸付加塩)及び/又はその複合体として製剤化することができる。薬学的に許容される塩は、それらが投与される濃度で非毒性塩である。薬学的に許容される塩としては、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、スルファメート、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩及びキナ酸塩を含有するものなどの酸付加塩が挙げられる。薬学的に許容される塩は、塩酸、硫酸、リン酸、スルファミン酸、酢酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、マロン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、及びキン酸などの酸から得ることができる。そのような塩は、例えば、遊離酸又は塩基形態の生成物を、塩が不溶性である溶媒又は媒体中で適切な塩基又は酸の1つ以上の当量と反応させることによって、又は次いで真空中又は凍結乾燥によって除去される水などの溶媒中で反応させることによって、又は既存の塩のイオンを適切なイオン交換樹脂上の別のイオンと交換することによって調製され得る。
【0150】
GLP-1受容体アゴニスト化合物の例示的な医薬製剤は、米国特許第7,521,423号、米国特許第7,456,254号、US2017/0275370、US2004/0106547、WO2006/068910、WO2006/125763などに記載されており、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0151】
本明細書に記載される方法で使用される本明細書に記載されるGLP-1受容体アゴニスト化合物の治療有効量は、典型的には、約0.01μg~約5mg、約0.1μ~約2.5mg、約1μg~約1mg、約1μg~約50μg、又は約1μg~約25μgである。あるいは、GLP-1受容体アゴニスト化合物の治療有効量は、70kgの患者の体重に基づいて約0.001μg~約100μg、又は70kgの患者の体重に基づいて約0.01μg~約50μgであってもよい。これらの治療有効量は、製剤に応じて、1回/日、2回/日、3回/日、1回/週、2週間に1回、又は1回/月に投与することができる。投与される正確な用量は、例えば、即時放出製剤又は徐放性製剤などの製剤によって決定される。経皮、鼻腔又は経口剤形の場合、投薬量は約5倍から約10倍に増加し得る。
【0152】
ある特定の実施形態では、GLP-1受容体アゴニストは、GIPR抗原結合タンパク質と同時に投与される。一実施形態では、GLP-1受容体アゴニストは、GIPR抗原結合タンパク質の後に投与される。一実施形態では、GLP-1受容体アゴニストは、GIPR抗原結合タンパク質の前に投与される。ある特定の実施形態では、対象又は患者は、GIPR抗原結合タンパク質による更なる処置を受ける前に、すでにGLP-1受容体アゴニストで処置されている。
【0153】
使用及び方法
本明細書に開示される抗原結合タンパク質は、種々の有用性を有する。抗原結合タンパク質は、例えば、特異的結合アッセイ、GIPRの親和性精製、及びGIPR活性の他のアンタゴニストを特定するためのスクリーニングアッセイにおいて有用である。抗原結合タンパク質の他の用途として、例えば、GIPR関連疾患又は状態の診断、及びGIPRの有無を決定するためのスクリーニングアッセイが挙げられる。提供される抗原結合タンパク質がアンタゴニストであることを考えると、GIPR抗原結合タンパク質は、食物摂取量を維持又は増加させ、脂肪質量%を増加させ、除脂肪質量%を増加させ、グルコース耐性を改善し、インスリンレベルを低下させ、コレステロール及びトリグリセリドレベルを低下させる間であっても、体重増加を減少させる治療方法において価値を有する。したがって、抗原結合タンパク質は、糖尿病、例えば、2型糖尿病、肥満、脂質異常症、グルコースレベル上昇又はインスリンレベル上昇の治療及び予防に有用である。
【0154】
治療方法
GIPRに関連する疾患及び/又は状態に対する現在の治療は、最適以下である。GIPR抗原結合タンパク質、特に抗GIPR抗体は、部分的には、それらの高度の特異性、限定されたオフターゲット効果、及び優れた安全性プロファイルのために、これらの疾患又は状態を治療することにおいて有望である。本明細書に記載されるGIPR抗原結合タンパク質、抗体、組成物、及び製剤を使用して、GIPRを阻害し、それによって疾患又は状態を治療することができる。したがって、本明細書に記載されるGIPR結合タンパク質、例えば、抗体を使用して、代謝状態又は障害を治療、診断、又は改善することができる。
【0155】
一態様では、本明細書に記載されるGIPR結合タンパク質、例えば、抗体を使用して、代謝状態又は障害を治療又は改善することができる。一実施形態では、治療される代謝障害は、脂肪性肝疾患である。一実施形態では、治療される代謝障害は、糖尿病、例えば、2型糖尿病である。別の実施形態では、代謝状態又は障害は、肥満症である。他の実施形態では、代謝状態又は障害は、脂質異常症、グルコースレベルの上昇、インスリンレベルの上昇、又は糖尿病性腎症である。例えば、GIPR結合ペプチドを使用して治療又は改善することができる代謝状態又は障害は、ヒト対象が125mg/dL以上、例えば、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200又は200mg/dLを超える空腹時血糖値を有する状態を含む。血糖値は、摂食又は絶食状態で、又は無作為に決定することができる。代謝状態又は障害はまた、対象が代謝状態を発症するリスクが増加している状態を含むことができる。ヒト対象の場合、そのような状態は、100mg/dLの空腹時血糖値を含む。GIPR結合タンパク質を含む薬学的組成物を使用して治療することができる状態は、参照により本明細書に組み込まれる、American Diabetes Association Standards of Medical Care in Diabetes Care-2011,American Diabetes Association,Diabetes Care Vol.34,No.Supplement 1,S11-S61,2010にも見出すことができる。
【0156】
適用例において、脂肪性肝疾患、2型糖尿病、グルコースレベルの上昇、インスリンレベルの上昇、脂質異常、肥満又は糖尿病性腎症などの代謝障害又は状態は、その治療を必要とする患者に、治療有効量のGIPR結合タンパク質を投与することによって治療することができる。投与は、IV注射、腹腔内(IP)注射、皮下注射、筋肉内注射などによって、又は錠剤又は液体形成の形態で経口で、本明細書に記載のように行うことができる。いくつかの状況では、治療有効量又は好ましい用量のGIPR結合タンパク質は、臨床医によって決定することができる。治療有効量のGIPR結合タンパク質は、とりわけ、投与スケジュール、投与される薬剤の単位用量、GIPR結合タンパク質が他の治療薬と組み合わせて投与されるかどうか、レシピエントの免疫状態及び健康に依存する。「治療有効量」という用語は、本明細書で使用される場合、研究者、医師、又は他の臨床医が求める組織系、動物、又はヒトにおける生物学的又は薬学的応答を誘発するGIPR結合タンパク質の量を意味し、これには、治療されている疾患又は障害の症状の緩和又は改善、すなわち、1つ以上の所望の生物学的又は薬学的応答の観察可能なレベルをサポートするGIPR結合タンパク質の量、例えば、血糖、インスリン、トリグリセリド、又はコレステロールレベルの低下、体重の減少、又はグルコース耐性、エネルギー消費、又はインスリン感受性の改善が含まれる。
【0157】
GIPR結合タンパク質の治療有効量もまた、所望の結果によって変化し得ることに留意されたい。したがって、例えば、低レベルの血糖が示される状況では、GIPR結合タンパク質の用量は、比較的低レベルの血糖が望まれる用量よりも対応して高くなる。逆に、より高いレベルの血糖が示される状況では、GIPR結合タンパク質の用量は、比較的高いレベルの血糖が望まれる用量よりも対応して低くなる。様々な実施形態において、対象は、100mg/dL以上の血糖値を有するヒトであり、GIPR結合タンパク質で処置することができる。
【0158】
一実施形態では、本開示の方法は、第1に、対象におけるグルコース、インスリン、コレステロール、脂質などの1つ以上の代謝的に関連する化合物のベースラインレベルを測定することを含む。次いで、GIPR結合タンパク質を含む薬学的組成物を、対象に投与する。所望の期間の後、対象における1つ以上の代謝的に関連する化合物(例えば、血糖、インスリン、コレステロール、脂質)のレベルを再び測定する。次いで、対象における代謝的に関連する化合物の相対変化を決定するために、2つのレベルを比較することができる。その比較の結果に応じて、GIPR結合タンパク質を含む薬学的組成物の別の用量を投与して、1つ以上の代謝関連化合物の所望のレベルを達成することができる。
【0159】
上述のように、GIPR結合タンパク質を含む薬学的組成物は、別の化合物と共投与することができる。GIPR結合タンパク質と共投与される化合物の同一性及び特性は、治療又は改善される状態の性質に依存することになる。GIPR結合タンパク質を含む薬学的組成物と組み合わせて投与することができる化合物の非限定的な例としては、ロシグリシトン、ピオグリシトン、レパグリニド、ナグリチニド、メトホルミン、エキセナチド、スチアグリプチン、プラムリンチド、グリピジド、グリムプリリドアカルボース、及びミグリトールが挙げられる。
【0160】
診断法
本明細書で提供されるGIPR抗原結合タンパク質は、生体試料中のGIPRの検出に有用である。例えば、GIPR抗原結合タンパク質は、診断アッセイ、例えば、血清などの試料中に発現されるGIPRを検出及び/又は定量するための結合アッセイにおいて使用され得る。
【0161】
記載される抗原結合タンパク質は、診断目的で使用して、GIPRに関連する疾患及び/又は状態を検出、診断、又は監視することができる。開示される抗原結合タンパク質は、当業者に既知の古典的免疫組織学的方法(例えば、Tijssen,1993,Practice and Theory of Enzyme Immunoassays,Vol 15(Eds R.H.Burdon and P.H.van Knippenberg,Elsevier,Amsterdam)、Zola,1987,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,pp.147-158(CRC Press,Inc.)、Jalkanen et al.,1985,J.Cell.Biol.101:976-985、Jalkanen et al.,1987,J.Cell Biol.105:3087-3096)を使用して、試料中のGIPRの存在の検出のための手段を提供する。GIPRの検出は、インビボ又はインビトロで行うことができる。
【0162】
本明細書に提供される診断用途には、GIPRの発現を検出するための抗原結合タンパク質の使用が含まれる。GIPRの存在の検出に有用な方法の例としては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)及びラジオイムノアッセイ(RIA)などのイムノアッセイが挙げられる。
【0163】
診断用途の場合、抗原結合タンパク質は、典型的に、検出可能な標識基で標識されることになる。好適な標識基には、以下が含まれるが、これらに限定されない:放射性同位体又は放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、及び131I)、蛍光基(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素基(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光基、ビオチニル基、又は二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)。いくつかの実施形態では、標識基は、潜在的な立体障害を低減するために、様々な長さのスペーサーアームを介して抗原結合タンパク質に結合される。タンパク質を標識するための様々な方法が当該技術分野で既知であり、使用され得る。
【0164】
いくつかの実施形態では、GIPR抗原結合タンパク質は、当該技術分野で既知の技法を使用して単離され、測定される。例えば、Harlow and Lane,1988,Antibodies:A Laboratory Manual,New York:Cold Spring Harbor(ed.1991 and periodic supplements)、John E.Coligan,ed.,1993,Current Protocols In Immunology New York:John Wiley & Sonsを参照されたい。
【0165】
本開示の別の態様は、提供される抗原結合タンパク質とGIPRへの結合のために競合する試験分子の存在を検出するためのものである。そのようなアッセイの1つの例は、試験分子の存在又は不在下で、ある量のGIPRを含有する溶液中の遊離抗原結合タンパク質の量を検出することを伴うであろう。遊離抗原結合タンパク質(すなわち、GIPRに結合しない抗原結合タンパク質)の量の増加は、試験分子が抗原結合タンパク質とGIPR結合のために競合することができることを示す。一実施形態では、抗原結合タンパク質は、標識基で標識される。あるいは、試験分子を標識し、遊離試験分子の量を、抗原結合タンパク質の存在下及び非存在下で監視する。
【0166】
キット
また、開示された方法を実践するためのキットも提供される。そのようなキットは、滅菌容器において提供され得る、本明細書において提供されるペプチド又はタンパク質をコードする核酸、そのような核酸を含むベクター及び細胞、並びにそのような核酸含有化合物を含む薬学的組成物を含むことができる。任意選択で、代謝障害の治療に提供される薬学的組成物を使用する方法に関する説明書もまた含まれ得るか、又は、患者又は医療サービス提供者に利用可能にすることができる。
【0167】
一態様では、キットは、(a)治療有効量のGIPR結合タンパク質を含む薬学的組成物と、(b)薬学的組成物のための1つ以上の容器と、を含む。そのようなキットはまた、その使用のための説明書を含むことができ、説明書は、治療される正確な代謝障害に合わせて調整することができる。説明書は、キットに提供される材料の使用及び性質を説明することができる。ある特定の実施形態では、キットは、脂肪性肝疾患、グルコースレベル上昇、インスリンレベル上昇、肥満、2型糖尿病、脂質異常症又は糖尿病性腎症などの代謝障害を治療するために患者が投与を行うための説明書を含む。
【0168】
説明書は、紙又はプラスチックなどの基板上に印刷され得、パッケージインサートとしてキットに、キット又はその構成要素の容器のラベルに(例えば、包装に関連付けられて)存在し得る。他の実施形態では、説明書は、適切なコンピュータ可読記憶媒体、例えば、CD-ROM、ディスケットなどに存在する電子記憶データファイルとして存在する。更に他の実施形態では、実際の説明書は、キット内に存在しないが、インターネットを介してなどの遠隔ソースから説明書を取得するための手段が提供される。この実施形態の例は、説明書を閲覧することができる及び/又は命令をダウンロードすることができるウェブアドレスを含むキットである。
【0169】
多くの場合、キットの一部又は全ての構成要素は、無菌性を維持するために適切な包装に包装されることが望ましい。キットの構成要素は、単一の、容易に取り扱われるユニットを作るためにキット収容要素に包装することができ、キット収容要素、例えば、箱又は類似の構造は、例えば、キットの構成要素の一部又は全ての無菌性を更に維持するために、気密性のある容器であっても、そうでなくてもよい。
【0170】
定義
用語「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、一本鎖及び二本鎖ヌクレオチドポリマーの両方を含む。ポリヌクレオチドを含むヌクレオチドは、リボヌクレオチド若しくはデオキシリボヌクレオチド、又はいずれかのタイプのヌクレオチドの修飾形態であり得る。修飾には、ブロムリジン及びイノシン誘導体などの塩基修飾2’,3’-ジデオキシリボースなどのリボース修飾、並びにホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレン酸塩、ホスホロジセレン酸塩、ホスホロアニルチオエート、ホスホラニラデート及びホスホロアミデートなどのヌクレオチド間結合修飾が含まれる。
【0171】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、200個以下のヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを意味する。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、10~60塩基の長さである。他の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20~40ヌクレオチド長である。オリゴヌクレオチドは、例えば、変異型遺伝子の構築における使用のために、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。オリゴヌクレオチドは、センスオリゴヌクレオチド又はアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。オリゴヌクレオチドは、検出アッセイのために、放射性標識、蛍光標識、ハプテン又は抗原標識を含む標識を含むことができる。オリゴヌクレオチドは、例えば、PCRプライマー、クローニングプライマー、又はハイブリダイゼーションプローブとして使用されてもよい。
【0172】
「単離された核酸分子」という用語は、5’末端から3’末端まで読み取られるデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド塩基の一本鎖又は二本鎖ポリマー(例えば、本明細書に提供されるGIPR核酸配列)、又はその類似体を指し、全核酸が源細胞から単離されたときに核酸が天然に見出されるポリペプチド、ペプチド、脂質、炭水化物、ポリヌクレオチド又は他の材料の少なくとも約50%から分離されている。好ましくは、単離された核酸分子は、ポリペプチド産生又はその治療的、診断的、予防的又は研究的使用におけるその使用を妨げるであろう核酸の自然環境に見出される任意の他の汚染核酸分子又は他の分子を実質的に含まない。
【0173】
「ベクター」という用語は、タンパク質コード情報を宿主細胞に移すために使用される任意の分子又は実体(例えば、核酸、プラスミド、バクテリオファージ又はウイルス)を意味する。いくつかの実施形態では、「ベクター」は、(a)ポリペプチドをコードする核酸配列の発現を促進する;(b)それからのポリペプチドの産生を促進する;(c)それを用いた標的細胞のトランスフェクション/形質転換を促進する;(d)核酸配列の複製を促進する;(e)核酸の安定性を促進する;(f)核酸及び/又は形質転換/形質転換された細胞の検出を促進する;及び/又は(g)それ以外の場合、ポリペプチドをコードする核酸に有利な生物学的及び/又は生理化学的機能を付与する送達ビヒクルを指す。ベクターは、染色体、非染色体、及び合成核酸ベクター(発現制御エレメントの好適なセットを含む核酸配列)を含む任意の好適なベクターであり得る。そのようなベクターの例としては、SV40の誘導体、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミド及びファージDNAの組み合わせに由来するベクター、並びにウイルス核酸(RNA又はDNA)ベクターが挙げられる。
【0174】
用語「発現ベクター」又は「発現構築物」は、宿主細胞の形質転換に好適であり、それに作動可能に連結された1つ以上の異種コード領域の発現を指示及び/又は制御する(宿主細胞と併せて)核酸配列を含むベクターを指す。発現構築物は、転写、翻訳、及びイントロンが存在する場合、それに作用可能に連結されたコード領域のRNAスプライシングに影響を及ぼす配列を含み得るが、これらに限定されない。
【0175】
本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」とは、用語が適用される構成成分が、それらが適切な条件下でそれらの固有の機能を実行することを可能にする関係にあることを意味する。例えば、タンパク質コード配列に「作動可能に連結された」ベクター内のコントロール配列をそれにライゲーションして、タンパク質コード配列の発現が、コントロール配列の転写活性と適合する条件下で達成されるようにする。
【0176】
「宿主細胞」という用語は、核酸配列で形質転換され、それによって目的の遺伝子を発現する細胞を意味する。この用語は、目的の遺伝子が存在する限り、子孫が形態学的に同一であるか、又は元の親細胞と遺伝子構成において同一であるかどうかにかかわらず、親細胞の子孫を含む。
【0177】
用語「ポリペプチド」又は「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書において互換的に使用される。本用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の類似体又は模倣体であるアミノ酸ポリマー、並びに天然アミノ酸ポリマーにも適用される。この用語はまた、例えば、糖タンパク質を形成するための炭水化物残基の付加によって修飾された、又はリン酸化されたアミノ酸ポリマーを包含することができる。ポリペプチド及びタンパク質は、天然に存在する非組換え細胞によって産生され得るか、又は遺伝子操作された又は組換え細胞によって産生され、天然タンパク質のアミノ酸配列を有する分子、又は天然配列の1つ以上のアミノ酸からの欠失、付加、及び/又は置換を有する分子を含む。「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、抗原結合タンパク質の1つ以上のアミノ酸からの欠失、付加、及び/又は置換を有するGIPR抗原結合タンパク質、抗体、又は配列を特異的に包含する。「ポリペプチド断片」という用語は、完全長タンパク質と比較して、アミノ末端欠失、カルボキシル末端欠失、及び/又は内部欠失を有するポリペプチドを指す。そのような断片は、完全長タンパク質と比較して修飾アミノ酸を含有してもよい。ある特定の実施形態において、断片は、約5~500アミノ酸長である。例えば、断片は、少なくとも5、6、8、10、14、20、50、70、100、110、150、200、250、300、350、400、又は450個のアミノ酸長であり得る。有用なポリペプチド断片としては、結合ドメインを含む、抗体の免疫学的に機能する断片が挙げられる。
【0178】
「単離されたポリペプチド」という用語は、ポリペプチドが源細胞から単離されたときに天然に見出されるポリペプチド、ペプチド、脂質、炭水化物、ポリヌクレオチド、又は他の材料の少なくとも約50%から分離されたポリペプチド(例えば、本明細書に提供されるGIPRポリペプチド配列又は本発明の抗原結合タンパク質)を指す。好ましくは、単離されたポリペプチドは、その治療的、診断的、予防的又は研究的使用を妨げるであろう、その自然環境に見出される任意の他の汚染ポリペプチド又は他の汚染物質を実質的に含まない。
【0179】
「コードする」という用語は、1つ以上のアミノ酸をコードするポリヌクレオチド配列を指す。この用語は、開始又は停止コドンを必要としない。
【0180】
ポリペプチド(例えば、抗体などの抗原結合タンパク質)の「バリアント」は、1つ以上のアミノ酸残基が、別のポリペプチド配列と比較して、アミノ酸配列に挿入されるか、アミノ酸残基から欠失されるか、及び/又はアミノ酸配列に置換されるアミノ酸配列を含む。バリアントには、融合タンパク質が含まれる。
【0181】
参照ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の機能的バリアント若しくは等価物は、参照ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質のポリペプチド誘導体、例えば、1つ以上の点変異、挿入、欠失、切断(truncation)、融合タンパク質、又はそれらの組み合わせを有するタンパク質を指す。それは、参照ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質のへの活性を実質的に保持する。一般に、機能的等価物は、参照ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質と少なくとも60%(例えば、60%~100%(両端の値を含む)の任意の数、例えば、60%、70%、80%、85%、90%、95%、及び99%)同一である。
【0182】
ポリペプチドの「誘導体」は、例えば、別の化学部分へのコンジュゲーションを介して、挿入、欠失、又は置換バリアントとは異なるいくつかの方法で化学修飾されたポリペプチド(例えば、抗体などの抗原結合タンパク質)である。
【0183】
本明細書で言及される「抗体」という用語は、全抗体及びその任意の抗原結合断片又は一本鎖を含む。全抗体は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書では、VHと略記する)及び重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、CH1、CH2、及びCH3の3つのドメインから構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書では、VLと略記する)及び軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLから構成される。VH及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる、超可変性の領域に更に細分化され、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域とともに散在させることができる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序で並べられた3つのCDR及び4つのFRからなる:FRl、CDRl、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖可変領域CDR及びFRは、HFRl、HCDRl、HFR2、HCDR2、HFR3、HCDR3、HFR4である。軽鎖可変領域CDR及びFRは、LFRl、LCDRl、LFR2、LCDR2、LFR3、LCDR3、LFR4である。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1の成分(CIq)を含む、免疫グロブリンの宿主組織又は因子への結合を媒介することができる。
【0184】
本明細書で使用される場合、抗体の「抗原結合断片又は部分」(又は単に「抗体断片又は部分」)という用語は、抗原(例えば、GIPR)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって行われ得ることが示されている。抗体の「抗原結合断片又は部分」という用語に包含される結合断片の例としては、(i)Fab断片、VL、VH、CL及びCHIドメインからなる一価断片、(ii)F(ab’)2断片、ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片、(iii)本質的にヒンジ領域の一部を有するFabであるFab’断片(FUNDAMENTAL IMMUNOLOGY(Paul ed.,3rd ed.1993)を参照されたい)、(iv)VH及びCHIドメインからなるFd断片、(v)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(vi)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546)、(vii)単離されたCDR、並びに(viii)ナノボディ、単一可変ドメイン及び2つの定常ドメインを含有する重鎖可変領域が挙げられる。更に、Fv断片の2つのドメイン、VL及びVHは、別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、組換え方法を使用して、VL及びVH領域が対合して一価分子(一本鎖Fv又はscFvとして知られる)を形成する単一のタンパク質鎖として作製することを可能にする合成リンカーによって結合することができる;例えば、Bird et al.(1988)Science 242:423-426;及びHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883を参照されたい)。そのような一本鎖抗体はまた、抗体の「抗原結合断片又は部分」という用語内に包含されることが意図される。これらの抗体断片は、当業者に既知の従来技術を使用して得られ、断片は、インタクト抗体と同じ方法で有用性についてスクリーニングされる。
【0185】
本明細書で使用される場合、「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すことが意図される(例えば、GIPRなどの特定の抗原に特異的に結合する単離された抗体は、特定の抗原以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。単離された抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まないことができる。
【0186】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一分子組成物の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性及び親和性を示す。
【0187】
「ヒト抗体」という用語は、フレームワーク及びCDR領域の両方がヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことが意図される。更に、抗体が定常領域を含有する場合、定常領域は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列にも由来する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム又は部位特異的変異誘発によって、又はインビボでの体細胞変異によって導入される変異)を含むことができる。しかしながら、本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」という用語は、マウスなどの別の哺乳類種の生殖細胞系に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むことを意図しない。
【0188】
「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、フレームワーク及びCDR領域の両方がヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する、単一の結合特異性を示す抗体を指す。一実施形態では、ヒトモノクローナル抗体は、トランスジェニック非ヒト動物、例えば、トランスジェニックマウスから得られたB細胞を含み、ヒト重鎖導入遺伝子と、不死化細胞に融合された軽鎖導入遺伝子とを含むゲノムを有するハイブリドーマによって産生され得る。
【0189】
本明細書で使用される場合、「組換えヒト抗体」という用語は、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子のためのトランスジェニック又はトランス染色体である動物(例えば、マウス)から単離された抗体、又はそこから調製されたハイブリドーマ(以下に更に記載)、(b)ヒト抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から、例えば、トランスフェクトーマから単離された抗体、(c)組換え、組換えヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、及び(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを伴う任意の他の手段によって調製、発現、作製、又は単離された抗体などの、組換え手段によって調製、発現、作製、又は単離された全てのヒト抗体を含む。そのような組換えヒト抗体は、フレームワーク及びCDR領域がヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する。しかしながら、ある特定の実施形態では、そのような組換えヒト抗体は、インビトロ突然変異誘発(又は、ヒトIg配列に対してトランスジェニックな動物が使用される場合、インビボ体細胞突然変異誘発)を受けることができ、したがって、組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系VH及びVL配列に由来し、関連しながらも、ヒト抗体生殖系列レパートリー内にインビボで自然に存在し得ない配列である。
【0190】
「アイソタイプ」という用語は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えば、IgM又はIgG1)を指す。「抗原を認識する抗体」及び「抗原に特異的な抗体」は、本明細書では、「抗原に特異的に結合する抗体」という用語と同義に使用される。
【0191】
「ヒト抗体誘導体」という用語は、ヒト抗体の任意の修飾形態、例えば、抗体と別の薬剤又は抗体とのコンジュゲートを指す。「ヒト化抗体」という用語は、マウスなどの別の哺乳類種の生殖細胞系に由来するCDR配列が、ヒトのフレームワーク配列に移植された抗体を指すことが意図されている。追加のフレームワーク領域修飾は、ヒトフレームワーク配列内で行うことができる。
【0192】
「キメラ抗体」という用語は、可変領域配列が1つの種に由来し、定常領域配列が別の種に由来する抗体、例えば、可変領域配列がマウス抗体に由来し、定常領域配列がヒト抗体に由来する抗体を指すことが意図されている。この用語はまた、その可変領域配列又はCDRが1つの供給源(例えば、IgA1抗体)に由来し、定常領域配列又はFcが異なる供給源(例えば、異なる抗体、例えば、IgG、IgA2、IgD、IgE又はIgM抗体)に由来する抗体を指すことができる。
【0193】
「単鎖抗体」又は「scFv」は、重鎖及び軽鎖可変領域が柔軟なリンカーによって接続されて単一のポリペプチド鎖を形成し、それが抗原結合領域を形成するFv分子である。scFvは、WO88/01649及び米国特許第4,946,778号及び同第5,260,203号において詳細に説明されており、これらの開示は参照により組み込まれる。
【0194】
「ドメイン抗体」又は「一本鎖免疫グロブリン」は、重鎖の可変領域又は軽鎖の可変領域のみを含有する免疫学的に機能する免疫グロブリン断片である。ドメイン抗体の例としては、ナノボディ(商標)が挙げられる。場合によっては、2つ以上のVH領域は、ペプチドリンカーと共有結合して、二価ドメイン抗体を作製する。二価ドメイン抗体の2つのVH領域は、同じ又は異なる抗原を標的とし得る。
【0195】
本明細書で使用される場合、「親和性」という用語は、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合相互作用の合計の強度を指す。別途示されない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(KD)により表すことができる。親和性は、本明細書に記載されるものを含む、当技術分野で既知の一般的な方法によって測定され得る。
【0196】
本明細書で使用される場合、「GIPRに特異的に結合する」タンパク質は、解離定数(KD)が、表面プラズモン共鳴技術(例えば、BIACore、GE-Healthcare Uppsala,Sweden)又は結合平衡除外法(KinExA、Sapidyne、Boise,Id.)によって測定されるとき、≦10-6Mである場合に、ヒトGIPRに結合するタンパク質を指す。好ましくは、タンパク質(例えば、抗体)は、「高親和性」、すなわち、1×10-7M以下、より好ましくは5×10-8M以下、より好ましくは3×10-8M以下、より好ましくは1×10-8M以下、より好ましくは5×10-9M以下、又は更により好ましくは1×10-9M以下のKDでGIPRに結合する。本明細書で使用される場合、「実質的に結合しない」という用語は、タンパク質又は細胞に高い親和性で結合しない、又は結合しないことを意味し、すなわち、1×10-6M以上、より好ましくは1×10-5M以上、より好ましくは1×10-4M以上、より好ましくは1×10-3M以上、更により好ましくは1×10-2M以上のKDでタンパク質又は細胞に結合する。
【0197】
本明細書で使用される場合、「Kassoc」又は「Ka」という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度を指すことが意図され、一方、本明細書で使用される場合、「Kdis」又は「Kd」という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指すことが意図される。本明細書で使用される場合、「KD」という用語は、Kd対Kaの比(すなわち、Kd/Ka)から得られ、モル濃度(M)として表される解離定数を指すことが意図される。抗体のKD値は、当該技術分野において十分に確立された方法を使用して決定することができる。抗体のKDを決定するための好ましい方法は、表面プラズモン共鳴を使用すること、好ましくはBiacore(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを使用することである。
【0198】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」という用語は、パラトープとして知られる抗体分子の可変領域で特異的な抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一の抗原は、2つ以上のエピトープを有し得る。したがって、異なる抗体は、抗原上の異なる領域に結合してもよく、異なる生物学的効果を有してもよい。「エピトープ」という用語はまた、B及び/又はT細胞が応答する抗原上の部位を指す。また、抗体によって結合される抗原の領域も指す。エピトープは、構造的又は機能的として定義され得る。機能的エピトープは、一般に、構造的エピトープのサブセットであり、相互作用の親和性に直接寄与する残基を有する。エピトープはまた、立体構造、すなわち、非線形アミノ酸から構成され得る。ある実施形態では、エピトープは、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基、又はスルホニル基などの分子の化学的に活性な表面基である決定基を含んでもよく、ある実施形態では、特定の三次元構造特性、及び/又は特定の電荷特性を有してもよい。エピトープは、典型的には、固有の空間立体配座において、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15個のアミノ酸を含む。どのエピトープが所与の抗体によって結合されるかを決定する方法(すなわち、エピトープマッピング)は、当該技術分野で周知であり、例えば、免疫ブロッティング及び免疫沈降アッセイを含み、ここで、GIPRタンパク質からの重複又は連続ペプチドが、所与の抗体との反応性について試験される。エピトープの空間コンフォメーションを決定する方法としては、当該技術分野及び本明細書に記載の技術、例えば、X線結晶学及び二次元核磁気共鳴が挙げられる(例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology,Vol.66,G.E.Morris,Ed.(1996)を参照されたい)。
【0199】
「エピトープマッピング」という用語は、抗体-抗原認識のための分子決定因子の同定プロセスを指す。
【0200】
「エピトープに結合する」又は「エピトープを認識する」という用語は、抗体又は抗体断片に関して、抗原内のアミノ酸の連続的又は不連続的なセグメントを指す。当業者は、用語が必ずしも抗体又は抗体断片がエピトープ配列内の全てのアミノ酸に直接接触していることを意味しないことを理解する。
【0201】
「同一のエピトープに結合する」という用語は、2つ以上の抗体に関して、抗体がアミノ酸の同じ、重複する、又は連続的又は不連続的なセグメントを包含するように結合することを意味する。当業者は、「同一のエピトープに結合する」という語句は、抗体が全く同一のアミノ酸に結合又は接触することを必ずしも意味しないことを理解する。抗体が接触する正確なアミノ酸は、異なる場合がある。例えば、第1の抗体は、第2の抗体によって結合されるアミノ酸のセグメントによって完全に包含されるアミノ酸のセグメントに結合することができる。別の実施例では、第1の抗体は、第2の抗体によって結合された1つ以上のセグメントに有意に重複するアミノ酸の1つ以上のセグメントに結合する。本明細書の目的のために、そのような抗体は、「同じエピトープに結合する」とみなされる。
【0202】
「標的への結合に関して他の抗体と競合する」抗体は、他の抗体の標的への結合を(部分的に又は完全に)阻害する抗体を指す。2つの抗体が、標的への結合に関して互いに競合するかどうか、すなわち、一方の抗体が他方の抗体の標的への結合を阻害するかどうか及びどの程度であるかは、既知の競合実験を使用して判定され得る。ある実施形態では、抗体は、別の抗体と標的との結合を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%競合し、阻害する。阻害又は競合のレベルは、どの抗体が「遮断抗体」(すなわち、標的と最初にインキュベートされる寒冷(cold)抗体)であるかに応じて異なってもよい。競合アッセイは、例えば、Ed Harlow and David Lane,Cold Spring Harb Protoc;2006;doi:10.1101/pdb.prot4277又はEd Harlow and David Laneによる「Using Antibodies」,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,USA1999の第11章に記載されるように実施することができる。競合抗体は、同じエピトープ、重複するエピトープ、又は隣接するエピトープに結合する(例えば、立体障害によって証明されるように)。他の競合結合アッセイとしては、固相直接又は間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接又は間接酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(Stahli et al.,Methods in Enzymology 9:242(1983)を参照されたい);固相直接ビオチン-アビジンEIA(Kirkland et al.,J.Immunol.137:3614(1986)を参照されたい);固相直接標識化アッセイ、固相直接標識化サンドイッチアッセイ(Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press(1988));1-125標識を使用する固相直接標識RIA(Morel et al.,Mol.Immunol.25(1):7(1988)を参照されたい);固相直接ビオチン-アビジンEIA(Cheung et al.,Virology 176:546(1990))、及び直接標識化RIA.(Moldenhauer et al.,Scand.J.Immunol.32-77(1990))が挙げられる。
【0203】
本明細書で使用される場合、「免疫応答」という用語は、脊椎動物内での外来剤に対する生物学的応答を指し、この応答は、生物をこれらの薬剤及びそれらによって引き起こされる疾患から保護する。免疫応答は、免疫系の細胞(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、樹状細胞若しくは好中球)、並びにこれらの細胞若しくは肝臓(抗体、サイトカイン、及び補体を含む)のいずれかによって産生される可溶性巨大分子の作用によって媒介され、脊椎動物の侵入病原体、病原体に感染した細胞若しくは組織、がん性若しくは他の異常細胞、又は自己免疫若しくは病理学的炎症の場合、正常なヒト細胞若しくは組織の選択的標的化、結合、損傷、破壊、及び/若しくは脊椎動物の体内からの排除をもたらす。免疫反応としては、例えば、T細胞、例えば、エフェクターT細胞若しくはTh細胞、例えば、CD4+若しくはCD8+T細胞の活性化若しくは阻害、又はTreg細胞の阻害が挙げられる。
【0204】
本明細書で使用される場合、「検出可能な標識」という用語は、放射性同位体、蛍光体、化学発光体、発色団、酵素、酵素基質、酵素補助因子、酵素阻害剤、発色団、色素、金属イオン、金属ゾル、リガンド(例えば、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン又はハプテン)、挿入(intercalating)色素などを含むがこれらに限定されない、検出可能な分子を指す。「蛍光体」という用語は、検出可能な範囲で蛍光を示すことができる物質又はその一部を指す。
【0205】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、動物を指す。好ましくは、動物は、哺乳動物、例えば、ヒト又は非ヒト動物である。対象は、例えば、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス、魚、鳥なども指す。好ましい実施形態では、対象はヒトである。
【0206】
本明細書で使用される場合、任意の疾患又は障害の「治療すること」又は「治療」という用語は、一実施形態では、疾患又は障害を緩和すること(すなわち、疾患又はその臨床症状の少なくとも1つの発症を阻止又は低減すること)を指す。別の実施形態では、「治療すること」又は「治療」とは、患者によって識別され得ない少なくとも1つの身体パラメータを改善することを指す。更に別の実施形態では、「治療すること」又は「治療」は、疾患又は障害を、身体的に、(例えば、識別可能な症状の安定化)、生理学的に、(例えば、身体パラメータの安定化)、又は両方のいずれかで調節することを指す。更に別の実施形態では、「治療すること」又は「治療」は、疾患又は障害の発症、発達、又は進行を予防若しくは遅延させることを指す。
【0207】
「有効量」は、一般に、症状の重症度及び/又は頻度を軽減し、症状及び/又は根本的な原因を排除し、症状及び/又は根本的な原因の発生を防止し、及び/又は疾患状態(例えば、脂肪肝、糖尿病、肥満症、脂質異常症、グルコースレベルの上昇、インスリンレベルの上昇、又は糖尿病性腎症)に起因する、又はそれに関連する損傷を改善又は修復するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は治療有効量又は予防有効量である。個々の活性成分に適用する場合、単独で投与され、この用語は、その成分単独を指す。組み合わせに適用される場合、この用語は、組み合わせて投与されるか、連続的に投与されるか、又は同時に投与されるかにかかわらず、治療効果をもたらす活性成分の組み合わせ量を指す。
【0208】
「治療有効量」は、疾患状態若しくは症状、特に、疾患状態に関連する状態若しくは症状を改善するか、又はそうでなければ、疾患状態若しくは疾患に関連する任意の他の望ましくない症状の進行を、いかなる方法でも防止、妨害、遅延若しくは逆転させるのに十分な量である。
【0209】
「予防有効量」は、対象に投与されたときに、意図された予防効果、例えば、疾患状態の発症(又は再発)を予防又は遅延させる、又は疾患状態又は関連する症状の発症(又は再発)の可能性を減少させる、薬学的組成物の量である。完全な治療的又は予防効果は、必ずしも1回の用量の投与によって生じるわけではなく、一連の用量の投与後にのみ生じ得る。したがって、治療有効量又は予防有効量を、1回以上の投与で投与してもよい。
【0210】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体又は賦形剤」という用語は、組成物の活性成分の生物学的活性の有効性を妨げず、それが投与される濃度では宿主に対して過度に毒性がない担体培地又は賦形剤を指す。本発明の文脈において、薬学的に許容される担体又は賦形剤は、好ましくは、局所製剤に好適である。この用語には、溶媒、安定剤、可溶化剤、等張化剤、構造形成剤、懸濁剤、分散剤、キレート剤、乳化剤、消泡剤、軟膏基剤、皮膚軟化剤、皮膚保護剤、ゲル形成剤、増粘剤、pH調整剤、防腐剤、浸透促進剤、錯化剤、潤滑剤、粘滑剤、増粘剤、生体接着性ポリマー、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」,E.W.Martin,18th Ed.,1990,Mack Publishing Co.:Easton,PAを参照されたい)。
【0211】
本明細書で使用されるとき、本発明の文脈において(とりわけ、請求項の文脈において)使用される「a」、「an」、「the」という用語及び同様の用語は、別様に本明細書に示唆されるか、又は文脈に明確に矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を網羅するように解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、単に、その範囲内に収まる各別個の値を個別に参照する簡略表現法としての役割を果たすことが意図される。本明細書に別段の指示がない限り、各個別の値は、本明細書に個別に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈に明確に矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行され得る。本明細書で提供される任意の及び全ての例、又は例示的な言語(例えば、「など(such as)」)の使用は、本発明をより良く示すことを意図しているに過ぎず、他の方法で特許請求される本発明の範囲に限定をもたらさない。本明細書中のいかなる言語も、本発明の実施に不可欠な任意の非請求の要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0212】
本明細書に開示されるように、いくつかの範囲の値が提供される。文脈によって明確に指示されない限り、下限の単位の10分の1までの各介在値もまた、その範囲の上限と下限との間に具体的に開示されることを理解されたい。記載された範囲内の任意の記載された値又は介在値と、その記載された範囲内の任意の他の記載された値又は介在値との間の各々のより小さい範囲は、本発明に包含される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立して、範囲内に含まれるか、又は除外されてもよく、より小さい範囲内にいずれか、どちらも、又は両方の限界が含まれる各範囲も、記載された範囲内の任意の具体的に除外された限界に従うことを条件として、本発明に包含される。記載された範囲が限界のうちの一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界のうちの一方又は両方を除く範囲も本明細書に含まれる。
【0213】
「約」という用語は、所与の値又は範囲の10%以内、好ましくは5%以内、より好ましくは1%以内を指す。あるいは、「約」という用語は、当業者によって考慮される場合、平均の許容できる標準誤差内を指す。
【実施例】
【0214】
実施例1 抗GIPRモノクローナル抗体の生成
抗原生成:ヒトGIPR(1-129、配列番号87)Fc融合タンパク質(Fc-huGIPR ECD)の細胞外ドメインを調製した。この融合タンパク質をコードするDNAを合成し、哺乳動物細胞発現ベクターに挿入した。Fc-huGIPR ECDを発現するプラスミドを、CHO細胞トランスフェクションキット(Zhuhai Kairui Biotech Cat# K70201)を使用して、無血清懸濁培養下でCHO細胞中で一過性トランスフェクトした。細胞をトランスフェクションから7日後に採取し、その後、Fc-huGIPR ECDをプロテインA親和性クロマトグラフィーによって精製した。
【0215】
huGIPRを一過性発現するCHO細胞:CHO細胞を、CHO細胞トランスフェクションキット(Zhuhai Kairui Biotech Cat# K70201)を使用して、懸濁培養中に完全長huGIPRを発現するプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションから24時間後までに、細胞を採取し、細胞凍結培地中で再懸濁した。細胞を細胞凍結バイアルに等分し、液体窒素冷凍庫で凍結した。凍結バイアルを回収し、37℃の水浴中で直ちに解凍した。細胞を、5%ウシ胎児血清を添加した細胞培養培地中で希釈し、1×105細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種し、5%のCO2で37℃にて24時間インキュベートした後、ヒトGIPR特異的抗体を検出する結合アッセイに使用した。モックトランスフェクションを有するCHO細胞を陰性対照として用いた。
【0216】
免疫化:Balb/cマウスを、フロイントアジュバントと混合したFc-huGIPR ECDタンパク質で免疫化した。マウスを毎週又は毎月のいずれかで免疫化した。最初の免疫化後に少なくとも2回の増量を行った後、血清を収集し、ヒトGIPRを一過性に発現するCHO細胞を用いた結合アッセイによって特異的な力価を決定した。
【0217】
ハイブリドーマ融合及び培養:満足な力価を示す動物を同定し、リンパ球は、リンパ節及び脾臓を流入させることから得た。リンパ球を好適な培地中でリンパ組織から解離し、組織から細胞を放出し、好適な培地中に懸濁した。
【0218】
B細胞を骨髄腫細胞株SP2/O-AG1細胞(ATCC CRL1580)と10:1の割合で融合させた。PEGを使用して融合を実施した。融合細胞を穏やかにペレット化し(300×g 10分)、ヒポキサンチン-メトトレキサート-チミジン[HMT]を含有する選択培地に再懸濁させた。得られたコロニーのクローン性を最大化するために、標準的な技法を使用して、細胞を96ウェルプレートに分配させた。培養の数日後、ハイブリドーマ上清を収集し、ヒトGIPRを一過性に発現するCHO細胞を用いた結合アッセイであるスクリーニングアッセイに供した。陽性細胞を更に選択し、標準的なクローニング及びサブクローニング技術に供した。クローン株をインビトロで増殖させ、分析用に分泌されたマウス抗体を得た。
【0219】
全細胞結合アッセイによるGIPR特異的結合抗体の選択:ハイブリドーマ上清を、全細胞結合アッセイによってGIPR特異的抗体についてスクリーニングした。簡潔に言うと、CHO細胞を、完全長huGIPRを発現するプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションから24時間後、細胞を96ウェルプレートにプレートし、24時間インキュベートした。ハイブリドーマ条件培地を各プレートに添加し、37℃で1時間インキュベートした。細胞培養培地で3回洗浄した後、細胞をエタノールで固定し、プレートを一晩乾燥させた。ブロッキングバッファー(0.1%のTWEEN20及び1%のBSAを含むPBS)を200μl/ウェル添加し、37℃で1時間インキュベートした。ブロッキングバッファーを除去した後、検出抗体(ヤギ抗マウスIgG HRPコンジュゲート)を添加し、37℃で1時間インキュベートした。次いで、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)を色検出のために添加した。模擬トランスフェクションを有するCHO細胞をカウンタースクリーンとして使用した。GIPR発現CHO細胞を有する特異的陽性シグナルを有する任意のクローンをサブクローニングのために選択した。結合アッセイにおいて合計87個のクローンが陽性であった。更なるサブクローニング及び再試験により、7つの陽性クローンが同定された。その後、それらを配列決定した。
【0220】
実施例2 選択された抗GIPR抗体のインビトロ活性
得られた抗GIPRモノクローナル抗体を、GeneBLAzer(登録商標)GIPR-CRE-bla HEK 293T細胞ベースアッセイ(INVITROGEN、THERMO FISHER SCIENTIFIC)で試験した。GeneBLAzer(登録商標)GIPR-CRE-bla HEK 293T細胞は、CellSensor(登録商標)CRE-bla HEK 293T細胞株に安定的に組み込まれたヒトGIPRを含み、CellSensor(登録商標)CRE-bla HEK 293Tは、CRE応答要素の制御下でベータ-ラクタマーゼレポーター遺伝子を含む。このアッセイは、哺乳類に最適化されたBLAレポーター遺伝子をFRETを有効にした基質と組み合わせて使用して、ヒトGIPRを発現する細胞において信頼性の高い感度の検出を提供する。このアッセイは、製造業者のプロトコルに従って実施した。その結果を
図1に示す。
【0221】
簡潔に言うと、アッセイの前日に、細胞を5mMのEDTAで分離し、ウェル当たり50,000細胞/100μLの96ウェルプレートに播種した。アゴニストモードについては、ウェル当たり25μLのリガンド(ヒトGIP、最終濃度の5倍)を添加した。アンタゴニストモードにおいて、12.5μLの抗体(又は最終濃度10倍の培地)を各ウェルに添加し、細胞を37℃で30分間培養した。12.5μLのリガンド(ヒトGIP、アッセイ緩衝液で調製した適切な濃度)を各ウェルに添加した。次いで、細胞を37℃で5時間インキュベートした。次いで、CCF4-AMを含有する6×基質混合物のウェル当たり25 μLを細胞に添加し、暗所で室温で2時間インキュベートした。プレートのシグナルを蛍光プレートリーダーで読み取った。スキャン1は、励起フィルター:409/20nm、及びエミッションフィルター:460/40nmを用いてブルーチャネル内の蛍光を測定することであり、スキャン2は、励起フィルター:409/20nm、及びエミッションフィルター:530/30nmを用いてグリーンチャネル内の蛍光を測定することであった。データを、バックグラウンド減算及び比率計算のために、製造業者の推奨に従って分析した。
【0222】
実施例3 選択された抗GIPR抗体のインビトロ活性
研究スキームを
図3に示す。5週齢の雄のC57BL/6Jマウスを購入した。到着後、マウスは単独で収容された。一部は、14週間にわたってALMN食(研究食D09100301、40%脂肪、主にPRIMEX)を摂取し、一部は、年齢適合対照として通常食餌を摂取した。14週間の高脂肪処置後の動物を、同様の体重及び血糖値レベルに基づいて4つのサブグループに更に分けた(群B、C、D、及びE、10匹/群)。詳細な研究デザインについては、以下のように説明する。群Aには、通常食餌下でビヒクル対照を注射し、群Bには、AMLN食下でビヒクル対照を注射し、群Cには、AMLN食下で抗GIPR mAb DB007を注射し、群Dには、AMLN食下でデュラグルチドを注射し、群Eには、AMLN食下でDB007+デュラグルチド組み合わせを注射した。DB007(10mg/kg)、デュラグルチド(1mg/kg)及びビヒクルを、9週間の腹腔内注射を介して毎週2回投与した。動物は、日常的な観察によって異常な行動を含む一般的な状態の変化を1日1回監視し、体重を研究の過程で毎週2回測定した。
【0223】
体重。動物の各群についての体重は、ベースライン時に決定され、研究中は週に2回決定された。
図4に示すように、ALMNダイエット下のビヒクル群の体重は、通常食餌対照群よりも有意に高かった。抗GIPR mAb DB007及びデュラグルチドは、ビヒクル対照群と比較して体重を減少させた。更に、DB007及びデュラグルチドの組み合わせ群は、より劇的に体重を減少させ、体重は通常食餌の群に近い。DB007、デュラグルチド又は組み合わせを投与された各群とビヒクル対照群との間の体重差は全て統計的に有意であり、体重変化は治療期間を通して維持された。
【0224】
肝臓と脂肪の重量。研究終了時に、肝臓及び副睾丸脂肪を切除し、重量を量った。
図5に示すように、ALMN食餌下のビヒクル群の肝臓脂肪重量と副睾丸脂肪重量は、通常食餌対照群の肝臓脂肪重量と副睾丸脂肪重量より有意に高かった。抗GIPR mAb DB007及びデュラグルチドは、ビヒクル対照群と比較して肝臓及び脂肪重量を減少させた。更に、DB007とデュラグルチドとの組み合わせ群は、それら自体の単独よりも多くの肝臓及び脂肪重量を減少させた。
【0225】
グルコース。グルコースレベルは、ベースラインで、及び研究の64日目(4時間絶食)で得られた。
図6に示すように、ALMN食餌下のビヒクル群の空腹時グルコースレベルは、通常食餌対照群よりもやや高い。抗GIPR mAb DB007は、空腹時グルコースレベルを有意には低下させなかった。しかしながら、デュラグルチド及び併用治療は、ビヒクル群よりも有意に空腹時グルコースレベルを低下させた。
【0226】
脂質。総コレステロール、トリグリセリドの決定のために、研究終了時の64日目に血液を採取した。
図7に示すように、ALMN食餌下のビヒクル群の総コレステロールは、通常食餌対照群よりも有意に高い。終了時の採血において、総コレステロール値は治療群で有意に低く、組み合わせ治療は最低レベルに向かう傾向にあった。しかしながら、トリグリセリドの有意な変化は観察されなかった。
【0227】
肝臓酵素。肝臓酵素ALT及びASTの測定のために、研究終了時の64日目に血液を採取した。
図8に示すように、終了時の採血において、ALMN食餌下のビヒクル群のALTレベルは、通常食餌対照群よりも有意に高かった。ALTレベルは、デュラグルチド及びDB007並びにデュラグルチド組み合わせ治療群において有意に低かった。また、ALMN食餌下のビヒクル群のASTレベルも、終了時の採血において、通常食餌対照群より有意に高かった。しかしながら、デュラグルチドのみがASTレベルを有意に低下させた。
【0228】
肝臓脂質プロファイル。肝臓総コレステロール及びトリグリセリドを研究終了時に測定した。
図9に示すように、ALMN食餌下でのビヒクル群の肝臓総コレステロールは、通常食餌対照群よりも有意に高かった。DB007とデュラグルチドは、肝臓の総コレステロール値を軽度に低下させました。ALMN食餌下のビヒクル群の肝臓トリグリセリドも、通常食餌対照群の肝臓トリグリセリドより有意に高かった。DB007とデュラグルチドの両方が肝臓トリグリセリドレベルを有意に低下させ、組み合わせ治療は肝臓トリグリセリドを更に低下させた。
【0229】
肝臓バイオマーカー。メチオニン代謝の中間体として形成されるホモシステイン(HCY)は、硫黄含有アミノ酸である。肝臓は、メチオニン及びHCYの代謝において中心的な役割を果たす。HCY代謝の増加は、肝臓の損傷で起こる可能性がある。ヒドロキシプロリン(HYP)は、プロリン部分のヒドロキシル化後にコラーゲンに存在する最も豊富なアミノ酸の1つである。肝臓組織中のそのレベルは、肝臓線維形成の速度と進行を正しく意味することができる。HYPは、重度の線維症を伴う慢性肝疾患におけるバイオマーカーであり得る。したがって、肝臓HCY及びHYPレベルを研究終了時に測定した。
図10に示すように、ALMN食餌下でのビヒクル群の肝臓HCY及びHYPレベルは、通常食餌対照群よりも有意に高かった。DB007、デュラグルチド及び組み合わせ治療は全て、肝臓HCY及びHYPレベルを正常レベルまで有意に低下させた。
【0230】
肝臓におけるいくつかの遺伝子の発現レベルも、定量的PCRを使用して測定した。アルファ平滑筋アクチン(α-SMA)発現は、線維組織沈着に先行する肝星細胞活性化の信頼できるマーカーである。肝線維症の初期段階を特定し、治療の有効性をモニタリングするのに有用であり得る。形質転換成長因子-β(TGF-β)は、疾患進行の全ての段階に寄与する慢性肝疾患における中心的な調節因子である。その発現は、治療の有効性をモニタリングするのにも有用である。コラーゲン1型アルファ1(Col1a1)遺伝子は、線維症の主要成分であるI型コラーゲンの主要成分であるタンパク質をコードする。CCL2は、炎症組織への単球動員に関与する重要な炎症性ケモカインである。これらの遺伝子は、研究終了時に測定した。
【0231】
図11に示すように、ALMN食餌下のビヒクル群の肝臓α-SMA、Col1a1、及びTGFβ遺伝子発現は、通常食餌対照群の肝臓α-SMA、Col1a1、及びTGFβ遺伝子発現よりも有意に高かったが、ccl2発現は変化しなかった。DB007及びデュラグルチド単独では、α-SMA、Col1a1、及びTGFβの発現を低下させ、組み合わせ療法は更にそれらの発現を低下させた。興味深いことに、組み合わせ療法は、α-SMA及びTGFβの発現を飼料対照のそれに完全に正規化しただけでなく、飼料対照のそれよりも低いCol1a1及びccl2の発現も減少させた。
【0232】
肝臓組織学的分析。研究終了時に、肝臓組織の一部を10%ホルムアルデヒドに固定し、パラフィンに埋め込んだ。パラフィン包埋切片を、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)又はシリウスレッドで染色した。NAFLD活性及び線維化ステージをスコアリングした。
図12に示すように、AMLN食餌は、H&E染色における脂質液滴の増加によって実証されるように、肝臓脂肪症を有意に増加させ、シリウスレッド染色に示すように、線維症をわずかに増加させ、DB007は、肝臓脂肪症及び線維症をわずかに減少させ、デュラグルチド単独では、肝臓脂肪症を有意に減少させ、線維症に大きな影響を与えた。この組み合わせ療法は、肝脂肪症を完全に正常化し通常食餌対照のレベルに達し、肝線維症を軽減した。NAFLD及び線維症スコアを以下に示す。
【0233】
データ分析。データを、GRAPHPAD PRISMプログラム(GRAPHPAD、La Jolla,CA)を使用して分析した。統計解析は、一元配置又は二元配置分散分析(ANOVA)のいずれかを使用して行った。ビヒクル対照群と比較した処置群:*:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001。通常食餌対照群と比較したビヒクル及び治療群:#:p<0.05、##:p<0.01、###:p<0.001。P<0.05を有意とみなした。
【0234】
参考文献
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【0235】
好ましい実施形態の前述の実施例及び説明は、特許請求の範囲によって定義される本発明を限定するものではなく、例示するものとして理解されるべきである。容易に理解されるように、上記の特徴の多数の変形及び組み合わせは、特許請求の範囲に記載される本発明から逸脱することなく利用され得る。そのような変形例は、本発明の範囲から逸脱したものとはみなされず、全てのそのような変形例は、以下の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。本明細書で引用される全ての参照は、その全体が、参照により組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】