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特表2024-522380オルガノイドの極性を偏らせるための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-18
(54)【発明の名称】オルガノイドの極性を偏らせるための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20240611BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20240611BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALN20240611BHJP
【FI】
C12N5/071
C12Q1/6851 Z
C12Q1/686 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577247
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 CA2022050943
(87)【国際公開番号】W WO2022261755
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】63/210,248
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/286,173
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】518393115
【氏名又は名称】ステムセル テクノロジーズ カナダ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】シミニ,サルバトレ
(72)【発明者】
【氏名】ホウ,フアン
(72)【発明者】
【氏名】ストロウリオス,ゲオルギオス
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,タイラー
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QS25
4B065AA91X
4B065AA93X
4B065AC17
4B065BA25
4B065BA30
4B065BB40
4B065CA44
(57)【要約】
本開示は、培地組成物及び/またはオルガノイド培地に添加される補充物、ならびに、頂端-外側オルガノイドを生成する方法に関する。頂端-外側オルガノイドは、その頂端面を外部環境に向け、内側に向けて配置された側底面を示す。頂端-外側オルガノイドは、基礎培地と、Notchシグナル伝達阻害剤及びTGFを介するシグナル伝達阻害剤のうちの1つ以上とを含むオルガノイド培地中に形成され得る。開示された方法に従って、または開示された培地にて形成された頂端-外側オルガノイドは、病原体に対する宿主応答をアッセイするために使用され得る。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養物中に頂端-外側オルガノイドを形成する方法であって、
細胞の集団を、Notchシグナル伝達阻害剤及び/またはTGFを介するシグナル伝達阻害剤を含むオルガノイド培地と接触させることと、
前記オルガノイド培地中、及び添加される細胞外マトリックスまたは細胞外マトリックスタンパク質の不在下で、前記細胞の集団を培養して、頂端-外側オルガノイドを得ることと、を含み、
少なくとも一部の前記頂端-外側オルガノイドの頂端面が、そのコアとは反対側を向いている、前記方法。
【請求項2】
前記細胞の集団が、肺系統細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記肺系統細胞が、気管支上皮細胞または鼻腔上皮細胞である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記肺系統細胞の集団が、ヒトまたはマウスである、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞の集団を凝集させることをさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞の集団を凝集させることが、前記オルガノイド培地中である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞の集団を凝集させることが、1~7日間である、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記凝集が、10個~2000個の細胞をマイクロウェルデバイスに堆積することを含む、請求項5~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞が、単一細胞であるか、または塊状に含まれる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記オルガノイド培地が、血清を含まない、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記オルガノイド培地が、TGFを介するシグナル伝達阻害剤を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記TGFが、TGFベータである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記オルガノイド培地が、細胞骨格を修飾する因子を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記オルガノイド培地が、前記細胞骨格を修飾する因子を含まない、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞骨格を修飾する前記因子が、Rho関連タンパク質キナーゼの阻害剤である、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞集団を培養することは、非接着条件下にある、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記培養することが、5~25日間である、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記オルガノイドの部分の少なくとも25%の細胞が繊毛性である、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記オルガノイドの部分の少なくとも50%の細胞が繊毛性である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記オルガノイドの少なくとも60%の中で、それらの前記頂端面が前記オルガノイド培地と接触している、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記オルガノイドの少なくとも80%の中で、それらの前記頂端面がオルガノイド培地と接触している、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記オルガノイドが、繊毛形成の1つ以上のマーカーを発現する、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記繊毛形成の1つ以上のマーカーが、FOXJ1及び/またはTUBB4Bを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記オルガノイドが、TJP1(すなわち、ZO-1)及びACE2のうちの1つ以上を発現する、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記オルガノイドが、MUC5ACを発現しない、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記オルガノイドが、ウイルスの複製を支援する、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
1種以上の治療剤、または1種以上の病原体に対するオルガノイド応答を評価することをさらに含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
頂端-外側オルガノイドを生成するためのオルガノイド培地であって、前記培地は、基礎培地と、Notchシグナル伝達阻害剤及び/またはTGFを介するシグナル伝達阻害剤とを含む、前記オルガノイド培地。
【請求項29】
前記オルガノイド培地が、血清を含まない、請求項28に記載のオルガノイド培地。
【請求項30】
前記オルガノイド培地が、添加される細胞外マトリックスまたは細胞外マトリックスタンパク質を含まないか、またはそれと接触しない、請求項28または29に記載のオルガノイド培地。
【請求項31】
前記TGFを介するシグナル伝達阻害剤をさらに含む、請求項28~30のいずれか1項に記載のオルガノイド培地。
【請求項32】
前記TGFが、TGFベータである、請求項31に記載のオルガノイド培地。
【請求項33】
前記細胞骨格を修飾する因子をさらに含む、請求項28~32のいずれか1項に記載のオルガノイド培地。
【請求項34】
前記オルガノイド培地が、前記細胞骨格を修飾する因子を含まない、請求項28~32のいずれか1項に記載のオルガノイド培地。
【請求項35】
前記細胞骨格を修飾する前記因子が、Rho関連タンパク質キナーゼの阻害剤である、請求項33または34に記載のオルガノイド培地。
【請求項36】
前記オルガノイド培地が、肺オルガノイド培地である、請求項28~35のいずれか1項に記載のオルガノイド培地。
【請求項37】
頂端-外側オルガノイドを生成するための、請求項28~36のいずれか1項に記載のオルガノイド培地の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本開示は、2021年6月14日に出願された米国仮特許出願第63/210,248号及び2021年12月6日に出願された米国仮特許出願第63/286,173号の利益を主張し、その両方の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、細胞培養用途に関し、より具体的にはオルガノイドを使用する細胞培養用途に関し、さらにより具体的には、オルガノイドの極性が偏り得る細胞培養用途に関する。
【背景技術】
【0003】
細胞を用いた研究、診断及び治療は、しばしば組織及び/または臓器モデルに依存するが、多くの場合、関連する生理学的モデルの存在が欠如している。近年、オルガノイド技術は、発生生物学、疾患、ウイルス感染に対する感受性、毒物学、薬物及び化合物に対する感受性、個別化された医薬等を研究するための関連する生理学的モデルとして有望視されている。
【0004】
オルガノイド、特に上皮のオルガノイドの培養に関する、及び下流アッセイにおいてオルガノイドを使用することに関する課題は、オルガノイドが、頂端面をオルガノイドのコア(及び多くの場合では中心内腔)に向け、一方で側底面を外部環境に向けて形成及び増殖する傾向があることである。しかしながら、直接的な外部環境を介した頂端側へのアクセスは、しばしば有用であり、場合によっては、特定の研究を実施する上で必要である。
【0005】
したがって、いわゆる「頂端-外側」オルガノイドを生成するための改善された培地配合物及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、培地組成物及び/または培地に添加される補充物、ならびにオルガノイドを生成する方法に関し、特に「頂端-外側」オルガノイドが含まれる。本明細書に開示される培地及び方法は、このような「頂端-外側」オルガノイドを高効率で産生する。
【0007】
本開示の広い一態様では、頂端-外側オルガノイドを生成するためのオルガノイド培地が提供され、本培地は、基礎培地、ならびに、Notchシグナル伝達阻害剤、形質転換増殖因子(「TGF」)シグナル伝達阻害剤、及び細胞骨格構造を破壊する薬剤のうちの1つ以上を含む。一実施形態では、オルガノイド培地は、肺オルガノイド培地である。
【0008】
一実施形態では、オルガノイド培地は、血清を含まない。
【0009】
一実施形態では、オルガノイド培地は、添加される細胞外マトリックスまたは細胞外マトリックスタンパク質を含まないか、またはそれと接触しない。一実施形態では、オルガノイドは、添加される細胞外マトリックスまたは細胞外マトリックスタンパク質の存在下では形成されない。一実施形態では、肺系統細胞の集団などの細胞の集団は、添加される細胞外マトリックスまたは細胞外マトリックスタンパク質と接触しない。一実施形態では、i)オルガノイド培地は、添加される細胞外マトリックスまたは細胞外マトリックスタンパク質を含まないか、またはこれらと接触せず、ii)添加される細胞外マトリックスまたは細胞外マトリックスタンパク質の存在下でオルガノイドは形態されず、iii)細胞(例えば、肺系統細胞)は、添加される細胞外マトリックスまたは細胞外マトリックスタンパク質に接触しない。
【0010】
オルガノイド培地がNotchシグナル伝達阻害剤を含む実施形態では、Notchシグナル伝達阻害剤は、ガンマセクレターゼ阻害剤である。
【0011】
オルガノイド培地が、TGFを介するシグナル伝達阻害剤を含む実施形態では、TGFを介するシグナル伝達阻害剤は、TGFベータシグナル伝達阻害剤である。
【0012】
オルガノイド培地が細胞骨格を修飾する因子を含む実施形態では、細胞骨格を修飾する因子は、Rho関連タンパク質キナーゼの阻害剤である。
【0013】
一実施形態では、オルガノイド培地は、細胞骨格を修飾する因子を含まない。一実施形態では、オルガノイド培地は、Rho関連タンパク質キナーゼの阻害剤を含まない。
【0014】
本開示の広い一態様では、培養物中にオルガノイドを形成する方法を提供し、本方法は、肺系統細胞の集団などの細胞の集団をオルガノイド培地と接触させることと、細胞をオルガノイド培地中で培養することと、を含む。一実施形態では、細胞の集団は、添加される細胞外マトリックスまたは細胞外マトリックスタンパク質の非存在下で培養される。
【0015】
一実施形態では、本方法は、オルガノイドを形成することをさらに含み得、オルガノイドの頂端面の少なくとも一部が、オルガノイド培地と接触している。
【0016】
一実施形態では、肺系統細胞の集団は、気管支上皮細胞または鼻腔上皮細胞である。一実施形態では、肺系統細胞の集団は、ヒトまたはマウスである。
【0017】
一実施形態では、本方法は、細胞の集団を凝集することをさらに含む。一実施形態では、細胞の集団を凝集することは、オルガノイド培地中である。一実施形態では、細胞の集団を凝集することは、1~7日間である。一実施形態では、凝集は、10~2000個の細胞をマイクロウェルデバイスに堆積することを含む。一実施形態では、堆積された細胞は、単一の細胞であるか、または塊状に含まれる。
【0018】
一実施形態では、オルガノイド培地は、血清を含まない。
【0019】
一実施形態では、オルガノイド培地は、基礎培地を含む。
【0020】
一実施形態では、オルガノイド培地は、添加される細胞外マトリックスまたは細胞外マトリックスタンパク質を含まないか、またはそれと接触しない。一実施形態では、オルガノイドは、添加される細胞外マトリックスまたは細胞外マトリックスタンパク質の存在下では形成されない。一実施形態では、肺系統細胞の集団などの細胞は、添加される細胞外マトリックスまたは細胞外マトリックスタンパク質と接触しない。一実施形態では、i)オルガノイド培地は、添加される細胞外マトリックスまたは細胞外マトリックスタンパク質を含まないか、またはこれらと接触せず、ii)添加される細胞外マトリックスまたは細胞外マトリックスタンパク質の存在下でオルガノイドは形態されず、iii)細胞(例えば、肺系統細胞)は、添加される細胞外マトリックスまたは細胞外マトリックスタンパク質に接触しない。
【0021】
一実施形態では、オルガノイド培地は、Notchシグナル伝達阻害剤、TGFを介するシグナル伝達阻害剤、及び細胞骨格構造を破壊する薬剤のうちの1つ以上を補充した基礎培地を含む。
【0022】
一実施形態では、オルガノイド培地は、Notchシグナル伝達阻害剤を含む。一実施形態において、Notchシグナル伝達阻害剤は、ガンマセクレターゼ阻害剤である。
【0023】
一実施形態では、オルガノイド培地は、TGFを介するシグナル伝達阻害剤を含む。一実施形態では、TGFを介するシグナル伝達阻害剤は、TGFベータシグナル伝達阻害剤である。
【0024】
一実施形態では、オルガノイド培地は、細胞骨格を修飾する因子を含む。一実施形態では、オルガノイド培地は、細胞骨格を修飾する因子を含まない。
【0025】
一実施形態では、細胞骨格を修飾する因子は、Rho関連タンパク質キナーゼの阻害剤である。
【0026】
一実施形態では、オルガノイド培地における肺系統細胞の集団の培養は、非接着条件下にある。一実施形態では、培養は5~25日間である。
【0027】
一実施形態では、オルガノイドの部分の少なくとも25%の細胞が繊毛性である。一実施形態では、オルガノイドの部分の少なくとも50%の細胞が繊毛性である。
【0028】
一実施形態では、オルガノイドの少なくとも60%の中でそれらの頂端面がオルガノイド培地と接触している。一実施形態では、オルガノイドの少なくとも80%の中でそれらの頂端面がオルガノイド培地と接触している。
【0029】
一実施形態では、オルガノイドは、繊毛形成の1つ以上のマーカーを発現する。一実施形態では、繊毛形成の1つ以上のマーカーは、FOXJ1及び/またはTUBB4Bを含む。
【0030】
一実施形態では、オルガノイドは、TJP1(すなわち、ZO-1)及びACE2の1つ以上を発現する。
【0031】
一実施形態では、オルガノイドは、MUC5ACを発現しない。
【0032】
一実施形態では、オルガノイドは、ウイルスの複製を支援する。
【0033】
一実施形態では、方法はさらに、抗ウイルス剤などの1種以上の治療剤に対するオルガノイド応答を評価することを含み得る。一実施形態では、本方法はさらに、ウイルスまたは細菌などの1つ以上の病原体に対するオルガノイド応答を評価することを含み得る。
【0034】
したがって、本明細書に開示される方法及び培地の利点としては、i)頂端-外側オルガノイドを生成する効率に関して、ECM不含有ワークフローは、ECM除去ワークフローよりも優れている場合があること、ii)「頂端-内側」オルガノイドの内腔に蓄積されないため、死細胞、瀕死細胞またはその他の脱落細胞を培養物から効率的に除去することが容易であること、iii)繊毛関連疾患を研究への使用が見込まれる、繊毛運動の迅速なリードアウト、iv)細胞外マトリックス内オルガノイドを形成することにより強いられる空間的な制約を排除すること、及び/または効率的なスケールアップの可能性、ならびにv)ウイルス感染及び感染価の研究、及び/または抗ウイルス薬のスクリーニングが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
本発明の他の特徴、及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、この詳細な説明及び特定の例は、本発明の好ましい実施形態を示してはいるが、例示としてのみ行われるものであって、この詳細な説明によって当業者に明らかになる各種の変更や修正は、本発明の趣旨及び範囲内にあることを理解するべきである。
【0036】
本明細書に記載の種々の実施形態のより良い理解のため、またこれらの種々の実施形態を効果的に実行し得る方法をより明確に示すために、少なくとも1つの例示的実施形態を示す添付図面を参照として提示し、これより、添付図面について説明する。各図面は、本明細書に記載の教示の範囲を限定することを意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本開示の方法または培地を使用して生成された、頂端-外側オルガノイドの初期特徴付けの結果を示している。オルガノイドの運動を、繊毛化オルガノイドを視覚的に評価し、かかる繊毛化オルガノイドの運動にスコアリングすることによって測定した(パネルA)。3つの異なるドナーからのオルガノイドを、継代3から始まる6つの連続した継代にわたる運動性について評価した。3つの異なるドナーから継代3で測定した平均オルガノイド直径の分布を示すヒストグラム(パネルB)。各ドナーについて3つのウェルから750個のオルガノイドを等しくカウントした。異なる出発細胞数からオルガノイドを形成した場合のオルガノイド直径の分布の箱ひげ図である。斜線のない値は、比較的早い時点で取得された測定値に対応し、斜線のある値は、少なくとも更に1週間にわたってオルガノイドが懸濁培養された後に取得された測定値に対応する(パネルC)。中心線は中央値を表し、ひげの境界は最大値及び最小値を表す。75個のオルガノイドを各条件(n=1)について測定した。
図2】様々な条件における頂端-外側気道オルガノイドの形成効率の比較を示す。3つの異なるドナーに対して、ECMを含まないワークフロー(ECM-free Ap-O AO)、またはオルガノイドが最初にMatrigel(商標)ドームで形成され、次いでMatrigelから除去されオルガノイドの反転を試みるワークフロー(ECM Ap-O AO)のいずれかを使用して、頂端-外側オルガノイドを形成する効率を示す棒グラフ。個々の点は技術的複製を表す。データは、5回の独立した実験の平均±SDとして表される。P値は、対応のないスチューデントのt検定(**=p<0.01、***=p<0.001)により計算される。ECM Ap-O AOワークフローで形成し得るオルガノイド間で典型的に観察されるオルガノイド融着の代表的な画像(スケールバー=200μm)。白色の矢印は、融合されているが完全には溶け合っていないオルガノイドを示している(パネルB)。
図3】繊毛化されたオルガノイドの細胞の割合を定量化するグラフを示す。第1のドナー(パネルA)及びB))ならびに第2のドナー(パネルC)及びD)の上皮細胞を、本開示に従って頂端-外側オルガノイドに形成した。パネルA)及びC)では、Notchシグナル伝達阻害剤の濃度は滴定されたが、TGFベータシグナル伝達阻害剤の濃度は、大体一定であった。パネルB)及びD)では、TGFベータシグナル伝達阻害剤の濃度は滴定されたが、Notchシグナル伝達阻害剤の濃度は、大体一定であった。
図4】頂端-外側オルガノイドの数、及び繊毛化されたオルガノイドの細胞の割合を定量化するグラフを示す。第1のドナー(パネルA)及びB))ならびに第2のドナー(パネルC)及びD)の上皮細胞を、本開示に従って頂端-外側オルガノイドに形成した。オルガノイド数全体に対すNotchシグナル伝達阻害剤の除去効果を、パネルA)及びC)に示す。頂端-外側オルガノイドのうち繊毛細胞の割合に対するNotchシグナル伝達阻害剤の除去効果を、パネルB)及びD)に示す。
図5】頂端-外側オルガノイドの数、及び繊毛化されたオルガノイドの細胞の割合を定量化するグラフを示す。ドナーの上皮細胞を、本開示に従って頂端-外側オルガノイドに形成した。Notchシグナル伝達阻害剤とTGFベータシグナル伝達阻害剤とを組み合わせることによる、総オルガノイド数(パネルA)及び頂端-外側オルガノイドのうち繊毛細胞の割合(パネルB)に及ぼす効果を示す。
図6】複数のドナー及び複数の継代全体における頂端-外側オルガノイド形成の効率を定量化するグラフを示す。本開示に従った頂端-外側オルガノイドの形成に続き、連続した継代にわたって運動性オルガノイドの数を定量化した(パネルA)。各継代の間に、解離された細胞を繊毛の存在について分析した(パネルB)。各点は、24ウェルプレートの異なるウェルを表している(技術的複製)。n=ドナーあたり2回反復(p5まで)。
図7】異なる条件で形成された頂端-外側オルガノイドの代表的な画像を示す。TGFベータシグナル伝達阻害剤及びY-27632を含有するオルガノイド培地中で培養されたp6の凝集体は、斑状の繊毛化を示す(パネルA)。Notchシグナル伝達阻害剤を含有するオルガノイド培地中で培養されたp6の凝集体は、広範な繊毛化を示す(パネルB)。Notchシグナル伝達阻害剤及びTGFベータシグナル伝達阻害剤を含有するオルガノイド培地中で培養されたp6の凝集体は、広範な繊毛化を示す(パネルC)。
図8】様々なマーカーについて染色された頂端-外側オルガノイドの代表的な画像を示す。頂端-外側オルガノイドは、アセチル化アルファチューブリン(矢印)及びZO-1(矢印ヘッド)については正であるが、MUC5ACについては負である(パネルA)。頂端-外側オルガノイドは、アセチル化されたαチューブリン(矢印)及びACE2(矢印ヘッド)に対して正である(パネルB)。
図9】肺系統細胞の様々なマーカーについてのqRT-PCR実験の結果を示す。本開示に従って形成された頂端-外側オルガノイド(AOAO)の細胞の間の遺伝子発現を、様々な対照、すなわちPneumaCult ALI(STEMCELL Technologies)において気液界面条件(ALI)下で培養したドナー細胞、PneumaCult Airway Organoid Kit(AOK)(STEMCELL Technologies)を使用してオルガノイドに形成したドナー細胞、及びPneumaCult ExPlus(Ex+)(STEMCELL Technologies)で拡大させたドナー細胞と比較した。
図10】複数の継代にわたる頂端-外側オルガノイドの数、及び繊毛化されたオルガノイドの細胞の割合を定量化するグラフを示す。頂端-外側オルガノイドを、本開示に従って4人のドナー(パネルA)及びB)、パネルC)及びD)、パネルE)及びF)、ならびにパネルG)及びH)から、Notchシグナル伝達及びTGFベータシグナル伝達阻害剤を含有するオルガノイド培地(AOAO)、またはTGFベータシグナル伝達阻害剤及びY-27632を含有する対照オルガノイド培地(対照)のいずれかで形成した。2つの培地中の4つのドナーサンプルから形成された頂端-外側オルガノイドの数を、パネルA)、C)、E)及びG)に示す。2つの培地中の4つのドナー試料から形成された頂端-外側オルガノイドの繊毛化細胞の割合を、パネルB)、D)、F)及びH)に示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本開示は、培地組成物及び/または培地に添加される補充物、ならびに「頂端-外側」オルガノイドを生成する方法に関する。本明細書に開示される培地及び方法は、このような「頂端-外側」オルガノイドを高効率で産生する。
【0039】
本開示で使用される場合、「オルガノイド」という用語は、ex vivoで生成され得、対応する組織で観察された組織と類似するより高レベルの構成を示す多細胞構造を指す。種々の組織タイプに対応するオルガノイドは、例えば、STEMCELL Technologiesによって市販されているキット及びプロトコルを使用して形成され得る。本開示は、主に上皮オルガノイドに焦点を当てているが、必ずしも上皮オルガノイドのみに限定されない。(本明細書に開示される培地及び方法に従って)本開示のオルガノイドへと形成され得る上皮組織の例は、近位気道、遠位気道またはその両方に対応するかにかかわらず、肺オルガノイドが挙げられる。
【0040】
本開示で使用される場合、「肺系統細胞」という用語は、鼻腔、気管、または気管支、細気管支、もしくは肺胞を含む、肺組織から単離され得る様々な種類の細胞のうちの1つを指す。「肺系統細胞」という用語はまた、胚性幹細胞または誘導多能性幹細胞を含む、多能性幹細胞(PSC)から分化した様々な種類の細胞のいずれかを指す場合もある。PSCから分化した場合、肺系統細胞は、対応する、または密接に対応する一次(すなわち患者由来)細胞タイプと1つ以上の共通の特徴を共有し得る。本開示の肺系統細胞は、いずれの種に由来するものであってもよいが、好ましくは哺乳動物であり、より好ましくはヒトまたはマウスである。一実施形態において、肺系統細胞は、ヒト肺上皮細胞である。一実施形態において、肺系統細胞は、ヒト気管支上皮細胞である。一実施形態において、肺系統細胞は、基底細胞である。
【0041】
本開示で使用される場合、「オルガノイド培地(medium)」または「オルガノイド培地(media)」という用語は、本開示のオルガノイドを形成するのに適切に補充される基礎培地を含む細胞培養培地を指す。実際、基礎培地は当該技術分野ではよく知られており、塩(複数可)、アミノ酸(複数可)、炭水化物(複数可)、緩衝液(複数可)、微量元素等のうちの1つ以上を含むように日常的に配合されている。市販の基礎培地の例には、DMEM、Adv-DMEM、DMEM/F-12、RPMI、Iscoves、及び上皮細胞の培養のために特に販売されているその他の様々な培地が挙げられる。例えばサイトカイン、成長因子、小分子、血清/アルブミン/血清置換物、脂質等を含む基礎培地の特異的補充は、オルガノイド培地が置かれる用途に依存するであろう。オルガノイドが肺オルガノイドである実施形態において、マイトゲン、線維芽細胞増殖因子、骨形成タンパク質を通じたシグナル伝達の活性化剤及び/または阻害剤、wntを介したシグナル伝達の活性化剤及び/または阻害剤、ビタミンA類似体、前駆体または代謝物/誘導体、ならびに形質転換増殖因子(例えば、形質転換増殖因子ベータ)を介したシグナル伝達の活性化剤及び/または阻害剤のうちの1つ以上を含むことが一般的である。一実施形態では、オルガノイド培地は、基礎培地ならびにnotchシグナル伝達阻害剤及び/またはTGFを介するシグナル伝達阻害剤を含む。
【0042】
本開示で使用される場合、用語「頂端-外側」とは、オルガノイドを指し、いくつかの実施形態では、上皮性オルガノイドを指し、その際、頂端面は、外部環境(すなわち、細胞培養培地)と直接接触している。頂端-外側オルガノイドの中で、そのようなオルガノイドのいくつかまたはすべてが、内腔を含み得、その場合、その側底側が、内腔と直接接触する。しかしながら、一部の頂端-外側オルガノイドは、内腔を含まなくてもよく、むしろコンパクト/密な立体構造を示してもよく、その場合には、その側底側は、そのような頂端-外側オルガノイドの中央コアに含まれてもよいし、そのよう頂端-外側オルガノイドの中央コアに隣接していてもよい。
【0043】
オルガノイド培地
本開示の一態様では、頂端-外側オルガノイドを生成するためのオルガノイド培地を提供する。好ましい実施形態では、オルガノイド培地は、肺上皮細胞から出発するような、頂端-外側肺オルガノイドを生成するためのものである。したがって、頂端-外側肺オルガノイドを生成するためにオルガノイド培地が使用される場合には、これは肺オルガノイド培地として特徴付けられ得る。
【0044】
オルガノイド培地は、Notchシグナル伝達阻害剤を含み得る。一実施形態では、Notchシグナル伝達阻害剤は、ガンマセクレターゼ阻害剤である。Notchシグナル伝達阻害剤の例には、DBZ、DAPT、化合物E、化合物W、SAHM1及びFLI06が挙げられる。一実施形態では、Notchシグナル伝達阻害剤は、DAPTである。
【0045】
オルガノイド培地中に存在する場合、Notchシグナル伝達阻害剤は、有効濃度で存在するであろうが、細胞毒性の何らかのレベルまたは有意なレベルをもたらさない濃度でも存在する。一実施形態において、Notchシグナル伝達阻害剤の濃度は、約1nM~1mM、約5nM~500μM、約10nM~200μM、約50nM~100μM、約100nM~50μM、または約0.5μM~20μMの範囲である。
【0046】
一実施形態では、オルガノイド培地は、TGFを介するシグナル伝達阻害剤を含む。一実施形態では、TGFは、TGFベータである。一実施形態では、TGFを介するシグナル伝達阻害剤は、内因性タンパク質などの天然阻害剤である。一実施形態では、TGFを介するシグナル伝達阻害剤は、小分子などの合成阻害剤である。TGFを介するシグナル伝達阻害剤の例には、A83-01、A77-01、SB431542、LY364947、及びLDN214117が挙げられる。一実施形態では、TGFを介するシグナル伝達阻害剤は、A83-01である。一実施形態では、TGFを介するシグナル伝達阻害剤は、A77-01である。一実施形態では、TGFを介するシグナル伝達阻害剤は、SB431542である。
【0047】
オルガノイド培地中に含まれる場合、TGFを介するシグナル伝達阻害剤は、有効濃度で存在するであろうが、細胞毒性の有意なレベルをもたらさない濃度でも存在する。一実施形態では、TGFを介するシグナル伝達阻害剤の濃度は、約1nM~1mM、約5nM~500μM、約10nM~200μM、約50nM~100μM、約100nM~50μM、または約0.5μM~20μMの範囲である。
【0048】
一実施形態では、オルガノイド培地は、Notchシグナル伝達阻害剤(例えば、ガンマセクレターゼ阻害剤)及びTGFを介するシグナル伝達阻害剤の一方または両方を含む。一実施形態において、オルガノイド培地は、Notchシグナル伝達阻害剤(例えば、ガンマセクレターゼ阻害剤)またはTGFを介するシグナル伝達阻害剤の一方のみを含む。
【0049】
一実施形態では、オルガノイド培地は、細胞外マトリックスまたは細胞外マトリックスタンパク質を含まない。従って、一実施形態では、オルガノイド培地は、添加される細胞外マトリックスまたは細胞外マトリックスタンパク質を含まない(またはそれを含有しないか、もしくはそれと接触しない)。従って、オルガノイド培地は、頂端-外側オルガノイドを形成するために、Matrigel(商標)または他の任意の細胞外マトリックスを必要としない。
【0050】
一実施形態では、オルガノイド培地は、(培養中の細胞によって自然に産生されない限り)細胞外マトリックスまたは細胞外マトリックスタンパク質を含有しないか、またはそれと接触しない。一実施形態では、オルガノイドは、外因的に添加される細胞外マトリックスまたは細胞外マトリックスタンパク質の存在下では形成されない。一実施形態では、細胞(例えば、肺系統細胞)は、外因的に添加された細胞外マトリックスまたは細胞外マトリックスタンパク質(複数可)と接触しない。一実施形態では、肺系統細胞、凝集した肺系統細胞のいずれも、またはオルガノイドも、外因的に添加された細胞外マトリックスタンパク質と接触しない。
【0051】
一実施形態では、オルガノイド培地は、血清を含まない。血清を含まない培地の幾つかの実施形態では、培地は、アルブミンまたは異なる血清置換物を含み得る。オルガノイド培地がアルブミンを含む場合に、それは血清から、より具体的には動物血清から単離され得る。または、アルブミンは、組換えであり、細菌、真菌、植物または動物細胞系などの細胞系で発現され得る。
【0052】
一実施形態では、オルガノイド培地は、細胞骨格を修飾する因子を含む。一実施形態では、オルガノイド培地は、細胞骨格を修飾する因子を含まない。細胞骨格を修飾する因子(オルガノイド培地に含まれるかまたは特異的に除外される)の例には、Rho関連タンパク質キナーゼ阻害剤、p21活性化キナーゼ(PAK)阻害剤、またはミオシンII阻害剤が挙げられる。Rho関連タンパク質キナーゼ阻害剤の例には、Y-27632、SR3677、チアゾビビン、HA1100塩酸塩、HA1077及びGSK-429286が挙げられる。PAK阻害剤の例は、IPA3である。ミオシンII阻害剤の例は、ブレビスタチンである。好ましい実施形態では、オルガノイド培地は、細胞骨格を修飾する因子を含まない。
【0053】
一実施形態では、オルガノイド培地は、Notchシグナル伝達阻害剤(例えば、ガンマセクレターゼ阻害剤)、TGFを介するシグナル伝達阻害剤、及び細胞骨格構造を修飾/破壊する因子のうちの1つ、1つ以上、2つ以上、またはそれぞれを含む。
【0054】
方法
本開示の一態様では、オルガノイドを生成するための方法が提供され、その一部は頂端-外側オルガノイドである。好ましい実施形態では、方法は、肺上皮細胞から出発するような、頂端-外側肺オルガノイドを生成するためのものである。
【0055】
培養物中でオルガノイド(例えば、頂端-外側オルガノイド)を形成する方法は、細胞の集団(例えば、肺系統細胞)をオルガノイド培地と接触させることを含むであろう。一実施形態では、本開示のオルガノイド培地は、基礎培地ならびにNotchシグナル伝達阻害剤及び/またはTGFを介するシグナル伝達阻害剤の一方または両方を含む。一実施形態では、本開示のオルガノイド培地は、基礎培地ならびにNotchシグナル伝達阻害剤及びTGFを介するシグナル伝達阻害剤の両方を含む。一実施形態では、本開示のオルガノイド培地は、基礎培地及びNotchシグナル伝達阻害剤またはTGFを介するシグナル伝達阻害剤の一方のみを含む。一実施形態において、本開示のオルガノイド培地は、基礎培地及びNotchシグナル伝達阻害剤、両方を含むTGFを介するシグナル伝達阻害剤、ならびに細胞骨格構造を破壊する薬剤のうちの1つ以上を含む。いずれの場合も、本開示の方法で使用されるオルガノイド培地、例えば肺オルガノイド培地は、上記のように配合され得る。
【0056】
培養物中でオルガノイド(例えば、頂端-外側オルガノイド)を形成する方法は、細胞の集団(例えば、肺系統細胞)をオルガノイド培地中で培養することを含むであろう。一実施形態では、オルガノイド培地中で細胞(例えば、肺系統細胞)の集団を培養することは、添加される細胞外マトリックスまたは細胞外マトリックスタンパク質の不在下で行われる。
【0057】
この方法は、頂端-外側オルガノイドを生成し、頂端-外側オルガノイドの少なくとも一部の頂端面が、そのコア(例えば、内腔)とは反対側を向いているが、いずれにしても、頂端-外側オルガノイドの頂端面は、外部環境と直接接触しているであろう。一実施形態では、形成されたオルガノイドの大部分(すなわち、部分)は、頂端-外側形態/構成を示す。一実施形態では、オルガノイドの少なくとも60%の中で、頂端面がコア(または内腔)とは反対側を向いている。一実施形態では、オルガノイドの少なくとも80%の中で、頂端面がコア(または内腔)とは反対側を向いている。一実施形態では、約90%以上のオルガノイドが、コア(または内腔)とは反対側を向いている頂端面を示す。
【0058】
一実施形態では、頂端-外側オルガノイドの細胞の少なくとも25%が繊毛性である。一実施形態では、頂端-外側オルガノイドの細胞の少なくとも50%が繊毛性である。
【0059】
一実施形態では、本方法は、細胞の集団(例えば、肺系統細胞)を凝集することをさらに含む。一実施形態では、本方法は、接触ステップの前または接触ステップと同時に細胞(例えば、肺系統細胞)の集団を凝集することをさらに含む。
【0060】
細胞は、任意の既知の手段を用いて凝集され得る。細胞は、特定の種類の96ウェルプレートのウェル内に堆積し、沈殿すると凝集体に形成し得ることが様々に報告されているが、このアプローチは、凝集体サイズ及びウェルごとに形成される凝集体の数に関して大きなばらつきを生じる。より良好なアプローチは、ウェルごとに単一の凝集体の形成を保証しかつ大体均一にサイズ決めされた凝集体を得るために、AggreWell(商標)マイクロウェルデバイスを用いることであり得る。
【0061】
一実施形態では、細胞(例えば、肺系統細胞)を凝集させることは、添加される細胞外マトリックスまたは細胞外マトリックスタンパク質(複数可)の不在下で発生する。一実施形態では、凝集する細胞及び凝集した細胞(例えば、肺系統細胞)は、添加される細胞外マトリックスまたは細胞外マトリックスタンパク質(複数可)と接触しないか、または接触することにならない。
【0062】
一実施形態では、細胞(例えば、単離された基底細胞などの肺系統細胞)の集団を凝集させることは、10~2000個の細胞を共通するウェル内で近位にすることを含む。一実施形態では、凝集体を形成する細胞の数は50~150個である。特定の一実施形態では、肺系統細胞の集団を凝集させることは、マイクロウェルデバイスのウェル当たり10~2000個の肺系統細胞を堆積させることを含む。一実施形態では、堆積した細胞は、単一細胞であるか、または塊状に含まれるか、またはその混合物である。興味深いことに、異なる細胞数から最初に形成された凝集体/オルガノイドは、懸濁液で培養されると細胞「脱落」を起こすことがあり、その結果、懸濁培養液において5日以上が経過した後、初期のオルガノイド直径とは無関係に、大体等しい直径に収束する可能性がある。
【0063】
一実施形態では、本開示のオルガノイド培地中に、肺系統細胞の集団を凝集させる。一実施形態では、肺系統細胞の集団は、オルガノイド培地中で1~7日間凝集される。一実施形態では、肺系統細胞の集団は、オルガノイド培地中で4日±2日間凝集される。
【0064】
一実施形態において、細胞の集団(例えば、肺系統細胞)を培養することは、非接着条件下である。一実施形態において、凝集ステップは非接着条件下で、例えば超低接着96ウェルプレートを使用することによって、またはAggreWell(商標)プレートと一緒に提供される付着防止溶液で使用する実験室用器具をコーティングすることによって行われる。一実施形態では、接触させるステップは、非接着条件下で行われる。一実施形態において、接触させるステップ及び培養ステップは、ならびに行う場合は凝集ステップも、非接着条件下である。
【0065】
一実施形態では、オルガノイド培地中、及び添加される細胞外マトリックスまたは細胞外マトリックスタンパク質(複数可)の不在下で細胞(例えば、肺系統細胞)の集団を培養することは、頂端-外側オルガノイドを生成するのに十分な時間にわたる。一実施形態では、培養は、5~25日間である。一実施形態では、培養は、9日±3日間である。一実施形態においては、培養は、15日間である。接触させるステップの前またはその間に肺系統細胞の集団を凝集させる実施形態では、頂端-外側オルガノイドが出現していることが明らかである場合には、培養ステップを短縮することができる。
【0066】
本開示のオルガノイド培地に関して論じたように、そのようなオルガノイド培地は、細胞外マトリックスまたは細胞外マトリックスタンパク質を含まない。一実施形態では、オルガノイド培地は、(培養中の細胞によって自然に産生されない限り)細胞外マトリックスまたは細胞外マトリックスタンパク質を含有しないか、またはそれと接触しない。従って、一実施形態では、オルガノイド培地は、添加される細胞外マトリックスまたは細胞外マトリックスタンパク質を含まない(またはそれを含有しないか、もしくはそれと接触しない)。従って、オルガノイド培地は、頂端-外側オルガノイドを形成するために、Matrigel(商標)または他の任意の細胞外マトリックスを必要としない。
【0067】
同様に、接触させるステップ、培養ステップ及び該当する場合凝集させるステップは、添加される細胞外マトリックスまたは細胞外マトリックスタンパク質の非存在下で実施される。したがって、これらのステップの間に使用される実験室用器具は、細胞外マトリックスまたは細胞外マトリックスタンパク質でコーティングされていない。したがって、Matrigel(商標)、またはその他などのオルガノイド形成に一般的に使用される細胞外マトリックスは、本開示の方法を実施するために必要ではない。
【0068】
肺系統細胞の集団は、PneumaCult(商標)ExまたはPneumaCult(商標)Ex Plus(STEMCELL Technologies)などの市販キットを使用して拡大及び継代することができる。それぞれの継代では、拡大された細胞のいくつかまたはすべてが、頂端-外側オルガノイドを得るために本明細書に開示される方法で使用され得る。拡大された細胞の全てを頂端-外側オルガノイドを生成するために使用しない場合には、残りの細胞を継代させて、頂端-外側オルガノイドの連続的な「世代」の形成を可能にし得る。PneumaCult(商標)ExまたはPneumaCult(商標)Ex Plusにより拡大し継代した肺系統細胞の集団は、5回以上の継代または8回以上の継代に増殖することができる。
【0069】
本開示に従って形成された頂端-外側オルガノイドは、繊毛形成の1つ以上のマーカーを発現し得る。例えば、繊毛形成の1つ以上のマーカーは、FOXJ1及びTUBB4Bを含み得る。
【0070】
本開示に従って形成された頂端-外側オルガノイドは、それらの機能またはアイデンティティに関連する1つ以上のマーカーを発現し得る。例えば、それらの機能またはアイデンティティに関連する1つ以上のマーカーは、TJP1(すなわち、ZO-1)及びACE2を含み得る。
【0071】
本開示に従って形成された頂端-外側オルガノイドは、MUC5AC発現を有さないか、または検出可能なレベル未満でMUC5ACを発現し得る。
【0072】
本開示に従って形成された頂端-外側オルガノイドは、呼吸器または他のウイルスなどのウイルスの複製を支援することができる。一実施形態では、本方法はさらに、1種以上の治療剤に対するオルガノイド応答を評価することを含み得る。一実施形態では、本方法はさらに、ウイルスまたは細菌などの1つ以上の病原体に対するオルガノイド応答を評価することを含み得る。
【0073】
以下の非限定的実施例は、本開示を例示するものである。
【実施例
【0074】
実施例1:出発細胞の培養及び拡大
初代正常ヒト気管支上皮細胞(hBEC)は、LONZAまたはEPITHELIX SARLなどの市販の細胞であった。本明細書に記載される実験では、すべての細胞を非喫煙、健康なドナーから採取した。任意選択で、hBECは、PneumaCult(商標)EX-PLUS(STEMCELL Technologies,catalogue#05040)中のT25細胞培養組織フラスコの継代1に播種し、製造業者のプロトコルに従って37℃及び5%のCOでインキュベートした。細胞が50~60%の培養密度に達したら、動物成分を含まない(ACF)細胞解離キット(STEMCELL Technologies,catalogue#05426)を使用して解離した。
【0075】
実施例2:実験室用器具の調製
下流アッセイにおいて使用されるプレートを、付着防止すすぎ溶液(STEMCELL Technologies,catalogue#07010)でコーティングした。簡潔にいえば、使用される各ウェルに付着防止すすぎ溶液500μLを加え、プレートを1300gで10分間遠心分離した。次いで付着防止すすぎ溶液を除去し、ウェルを1mLのDMEMで1回洗浄した。ウェルは直接使用するか、または500μLのDMEMを加えた後、37℃で最大1週間貯蔵した。
【0076】
実施例3:凝集体の形成
実施例1に従って細胞を培養し、解離させ、実施例2に従って調製したAggrewell(商標)400プレート(STEMCELL Technologies)に播種した。凝集体は、Aggrewell(商標)400プレートのウェルあたり約1.2×10個の細胞(マイクロウェルあたり100個の細胞)を播種することによって生成した。これらの細胞を、基礎培地及びNotchシグナル伝達阻害剤を含む頂端-外側オルガノイド培地500μL中に播種した。AggreWell(商標)プレートを、細胞をマイクロウェルの底部に沈降させるために、100gで3分間遠心分離した。次に、これらのプレートを37℃及び5%COで24時間~144時間インキュベートした。
【0077】
実施例4:頂端-外側オルガノイドの懸濁培養
凝集体が形成され、実施例3に従って十分に成熟した後に、500μLの新たな頂端-外側気道オルガノイド培地を各ウェルに添加した。次いで、凝集体をP1000ピペットを使用して再懸濁し、各ウェルを24ウェルプレートの2つのウェルに分配した(実施例2に記載されるように調製)。凝集体を、非接着条件下で頂端-外側気道オルガノイド培地中で最大15日間インキュベートした。部分的な培地変更を、2日ごとに実施した。
【0078】
15日目にオルガノイドを、培養環境に面する繊毛を破砕するための代わりとして、懸濁液中でのその運動性について評価した。3つの異なるドナーから形成された頂端-外側オルガノイドの実質的に全てが、多数の連続した継代で評価されたときに運動を示した(図1A)。したがって、頂端-外側オルガノイドを形成するための試験条件は、非常に効率的であるように思われた。15日目のオルガノイドもサイズ(すなわち、平均オルガノイド直径)について評価し、3つのドナーサンプルから形成された頂端-外側オルガノイドは、狭いサイズ分布を示した(図1B)。具体的には、72.6±6.7μm(ドナー1)、77.3±4.7μm(ドナー2)、及び73.6±0.3μm(ドナー3)の平均直径が、異なるオルガノイドの集団で観察された。興味深いことに、1マイクロウェルあたり100個超の細胞(例えば、200個、300個、400個、または500個の細胞/ウェル)が播種された場合であっても、15日目に測定されたこのようなオルガノイドの平均直径は、1マイクロウェルあたり100個の細胞から生成されたオルガノイドの平均直径と実質的に同一であった(図1C)。
【0079】
実施例5:頂端-外側オルガノイドの解離
頂端-外側気道オルガノイド形成の効率を、実施例4に従って形成されたオルガノイド(すなわち、ECM不含有条件)と、ECM条件からの除去によって生成されたオルガノイド(すなわち、ECM除去条件)との間で比較した。簡潔にいえば、ECM除去条件は、PneumaCult(商標)Airway Organoid Kit((STEMCELL Technologies)を使用して、2500個のヒト気管支上皮細胞をMatrigel(商標)ドームに播種し、7日間培養することによりオルガノイドを生成することを含んだ。Matrigelを、シェーカー上4℃で1時間、Gentle Cell Dissociation Reagent(STEMCELL Technologies)中でインキュベートすることにより、7日後に除去した。データは、頂端-外側気道オルガノイドがECM除去条件において、形成しなかったか、または低い効率で形成されたかのいずれかを示し、本明細書に開示されるECM不含有ワークフローにおいて効率が著しく改善されたことを示している(図2A)。さらに、ECM除去条件下では、形成し得る頂端-外側気道オルガノイドの複数が、より大きなオルガノイドに融合する傾向があった(図2B)。全体として、ECM不含有ワークフローは、ECM除去ワークフローと比較して顕著な改善を示す。
【0080】
実施例6:頂端-外側オルガノイドの解離
実施例4に従って形成された頂端-外側気道オルガノイドを15日目に採取し、15mlの管に移し、150gで5分間遠心分離した。上澄液を除去し、オルガノイドをDMEMで1回洗浄した。洗浄したオルガノイドを、ACCUTASE(STEMCELL Technologies)に再懸濁させ、室温で15分間インキュベートし、その後、P1000ピペットで激しくピペット操作することにより、単一細胞に解離させた。単一細胞懸濁液をトリパンブルーで1:1に希釈し、次いで血球計数器に装填し、そこで細胞を手動でカウントした。解離した細胞をカウントする際に、繊毛細胞の数も目視検査により求めることができる。
【0081】
ある実験では、異なる濃度のNotchシグナル伝達の及びTGFベータシグナル伝達の阻害剤を配合した頂端-外側培地中の2つのドナーサンプルから頂端-外側オルガノイドを形成した。頂端-外側オルガノイドを解離し、細胞を繊毛細胞の数について検査した(図3)。第1のドナー(パネルA及びC)では、すべての条件で20%以上の繊毛細胞が得られたが、このドナーでは、DAPT及びA77-01の両方の最高濃度によって繊毛細胞の割合が減少したことが明らかになった。第1のドナーからの結果に基づいて、第2のドナーの細胞において最良の性能条件のみが試験された(パネルB及びD)。より低い濃度のA77-01は、繊毛細胞の出現に有害であると思われた。従って、Notchシグナル伝達阻害剤については2.5μM~10μMの濃度、TGFを介するシグナル伝達阻害剤については0.5μM~1.5μMの濃度が、繊毛細胞の効率的な生成の割合に十分に良好に機能したことが分かった。
【0082】
実施例7:頂端-外側オルガノイドの特徴付け
実施例4に従って形成された完全に成熟したオルガノイドを、標準的な顕微鏡カメラを使用して撮像した。例えば、オルガノイドは、Leica DMi8またはEVOS M500を使用して撮像され得る。オルガノイドの数を定量化し、運動性オルガノイドの割合(すなわち、繊毛化オルガノイド%)を、目視検査により、及び外側に破砕繊毛を示したオルガノイドを手動でカウントすることにより評価した。
【0083】
2つの異なるドナーからの細胞を、TGFを介するシグナル伝達阻害剤単独か、またはNotchシグナル伝達阻害剤と組み合わせて配合した頂端-外側オルガノイド培地を使用して、頂端-外側オルガノイドに形成した(図4)。Notchシグナル伝達阻害剤(TGFを介するシグナル伝達阻害剤と組み合わせた)の有無は、得られたオルガノイドの数に顕著な影響を与えないように思われたが(図4A及び4C)、Notchシグナル伝達阻害剤の不在は、オルガノイド中の繊毛細胞の割合に有意な影響を与えた(図4B及び4D)。従って、Notchシグナル伝達阻害剤は、頂端-外側オルガノイドの効率的な分化に重要であると考えられる。
【0084】
逆に、TGFを介するシグナル伝達阻害剤の役割について、頂端-外側オルガノイド培地(Notchシグナル伝達阻害剤を含む)に加えるか、またはこれを省くことによって調査した(図5)。TGFを介するシグナル伝達阻害剤を含むことにより、出力されたオルガノイドの数を増加させることができ(図5A)、その不在は、オルガノイド中の繊毛細胞の割合に影響がないかまたは好ましい影響を及ぼすように思われた(図5B)。
【0085】
TGFを介するシグナル伝達阻害剤の含有はオルガノイド出力の増加に重要であると考えられ、Notchシグナル伝達阻害剤の含有はドナー肺系統細胞の分化に重要であると考えられたため、両者とも後続の研究に用いられる頂端-外側オルガノイド培地中に含めた。実施例4に従って4つの異なるドナーの肺系統細胞から頂端-外側オルガノイドを形成した後、顕微鏡下での目視検査により、形成されたオルガノイドのほぼすべてが運動性であることが明らかとなり、オルガノイドの十分な繊度が示される(図6A)。この肺系統細胞を、ドナー及び細胞数に応じて最大8回継代させ、各継代において、高効率で頂端-外側オルガノイドを形成することができた(図6A)。各「継代」からのオルガノイドを解離させ、細胞を繊毛率について評価した(図6B)。細胞はかなりの割合で、繊毛を示した。
【0086】
図7は、継代6のドナー由来の肺系統細胞から生成された頂端-外側オルガノイドの代表的な画像を示す。TGFベータシグナル伝達阻害剤及びY-27632の阻害剤を含む培地中に形成されたオルガノイド間で斑状の繊毛化が観察されたが(図7A)、Notchシグナル伝達阻害剤を単独で含む頂端-外側培地中(図7B)またはTGFを介するシグナル伝達阻害剤と組み合わせて形成された頂端-外側オルガノイドについて広範な繊化が観察された(図7C)。
【0087】
比較のために、TGFベータシグナル伝達及びY-27632(「対照」)の阻害剤を含む培地中の4つの異なるドナーの肺系統細胞から形成されたオルガノイドを、出力オルガノイドの数(図10A、10C、10E、及び10G)及び繊毛細胞の割合(図10B、10D、10F、及び10H)に関して、本開示の頂端-外側オルガノイドと直接比較した。出力オルガノイド数は、対照と頂端-外側件との間では大体同等であったが、繊毛細胞の割合が増加するようにオルガノイドを分化するためには、対照条件よりも頂端-外側条件が優れていたことが明確となった。
【0088】
オルガノイドを、以下の一般化したプロトコルに従って染色した。頂端-外側オルガノイドを4%パラホルムアルデヒド中で固定し、それらを抗原賦活化に供した後に、PBS中で1%のTriton X-100で透過処理した。透過処理されたオルガノイドを、PBS+0.1%Tween-20+0.2%Triton X-100(PBSTT)中の0.1%のBSA/5%のノーマルヤギ血清でブロックした。一次抗体をPBSTT中で希釈し、穏やかに撹拌しながら4日間にわたってチューブ内で室温で細胞と共にインキュベートした。アセチル化α-チューブリン(Sigma,cat#T7451,1:500)、TMPRSS2(Sigma,cat#MABF2158)、ACE2(Abcam,cat#ab15348)、MUC5AC(Abcam,cat#ab212636)を含む特定の気道上皮マーカーを試験した。それぞれの二次抗体を、一次抗体のために使用した。細胞をPBSTTで洗浄し、それぞれの二次抗体を穏やかに撹拌しながら室温のチューブ内で3日間インキュベートした。細胞を4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)で染色する前にPBSTTで再度洗浄し、LEICA SP8で撮像した。代表的な画像を図8に示す。
【0089】
製造元のプロトコルに従ってQiagen Easy RNA mini kit(Qiagen)を使用して、頂端-外側気道オルガノイドから全RNAを単離した。500ngのRNAを、製造業者のプロトコルに従ってDNA分解酵素処理(Invitrogen)し、次にSuperScript III(Invitrogen)を用いてcDNAに逆転写した。TaqMan遺伝子特異的アッセイプライマー及びプローブ(Integrated DNA Technologies)を、TaqMan(商標)Fast Universal PCR Master Mix(2X)(Applied Biosystems)と一緒に使用した。プライマー/プローブセットに関連する情報を、以下の第1表に示す。サンプルを次のように増幅した:95℃で20秒間の変性、続いて95℃で1秒間及び60℃で20秒間を50サイクル。細胞遺伝子のmRNA発現レベルは、ハウスキーピング遺伝子のパネルの間で最小の標準偏差を有することを示したため、TBPの発現レベルで正規化した。
【表1】
【0090】
上に概説したマーカーの発現を、頂端-外側オルガノイド培地中に形成された頂端-外側オルガノイドで評価した。対照として、これらのマーカーの発現は、Airway Organoid Kit(STEMCELL Technologies)を使用して形成された細胞、PneumaCult(商標)ALI(STEMCELL Technologies)を使用して気液界面で増殖させた細胞、及びPneumaCult(商標)Ex Plus(STEMCELL Technologies)を使用して拡大した細胞においても評価した。分析結果を図9に示し、発現をタタ結合タンパク質(TBP)に正規化した。
【0091】
本開示は、現在好ましい実施例であると考えられるものを参照して説明してきたが、本開示は開示する実施例に限定されないことを理解すべきである。それとは反対に、本開示は、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内に含まれる種々の変更及び同等の構成を包括することを目的としている。
【0092】
全ての出版物、特許、及び特許出願は、各個別の出版物、特許、または特許出願が、その全体を参照することにより組み込まれるように明確にかつ個別に示された場合と同一の程度に、それらの全体を参照することにより本明細書に組み込まれる。

図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A)】
図7B)】
図7C)】
図8A)】
図8B)】
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G
図10H
【国際調査報告】