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特表2024-522386外反母趾を有する人用の整形外科用靴底または中敷きおよび靴
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-19
(54)【発明の名称】外反母趾を有する人用の整形外科用靴底または中敷きおよび靴
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/14 20060101AFI20240612BHJP
   A43B 7/14 20220101ALI20240612BHJP
   A43B 17/00 20060101ALI20240612BHJP
   A61F 5/14 20220101ALI20240612BHJP
【FI】
A43B13/14 B
A43B7/14 Z
A43B17/00 E
A61F5/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560288
(86)(22)【出願日】2022-06-02
(85)【翻訳文提出日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 EP2022065071
(87)【国際公開番号】W WO2022258487
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】102021000015188
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523369293
【氏名又は名称】キルピチニコフ,アレクセイ
(71)【出願人】
【識別番号】523369307
【氏名又は名称】セレギン,ユリー
(71)【出願人】
【識別番号】523369318
【氏名又は名称】ゴルディエイエフ,ビクトル
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キルピチニコフ,アレクセイ
(72)【発明者】
【氏名】セレギン,ユリー
【テーマコード(参考)】
4C098
4F050
【Fターム(参考)】
4C098AA02
4C098BB12
4C098BC08
4C098BD02
4F050BA29
4F050BA39
4F050BA42
4F050BA43
4F050EA07
4F050EA12
4F050EA13
4F050HA75
(57)【要約】
本発明は外反母趾を有する人用の整形外科用靴底(1)または中敷きに関し、当該靴底または中敷きは、歩行又は静止時に少なくとも第1~第5足趾および母趾球を支持し、主要部分(14)と、それに移動可能に接続された可動要素(3)とを備える。可動要素(3)は、第1足趾の下に位置してこれを支持し、主要部分(14)は、少なくとも第2~第5足趾および母趾球の下に位置してこれらを支持し、可動要素(3)は、第1足趾および母趾球の関節の範囲内で水平面内にて軸(4)を中心に回転するように主要部分(14)に移動可能に接続される。主要部分(14)には、第2~第5足趾および/または足の横アーチの下において空洞(7)があり、当該空洞内に、可動要素(3)に接続された、液圧的、機械的、空気圧的、電気的または他の装置が取り付けられ、当該装置は、特に患者の体重によって靴底または中敷き上に引き起こされる圧力の結果として、歩行運動時における主要部分(14)から横方向に離れる水平面での回転運動を引き起こす。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外反母趾を有する人のための整形外科用の靴底(1)または中敷きであって、
当該整形外科用の靴底(1)または中敷きは、歩行時または静止状態で、少なくとも第1~第5足趾および母趾球を、特に第1~第5足趾から踵までの足全体を支持し、
当該整形外科用靴底(1)または中敷きは、主要部分(14)と、それに移動可能に接続された可動要素(3)とを備え、前記可動要素(3)は、第1足趾の下に位置してこれを支持し、前記主要部分(14)は、少なくとも第2~第5足趾および母趾球の下に位置してこれらを支持し、
前記可動要素(3)は、第1足趾および母趾球の関節の限界の範囲内で、水平面内にて軸(4)を中心に回転するように前記主要部分(14)に移動可能に接続されている、
整形外科用の靴底(1)または中敷きにおいて、
第2~第5足趾および/または足の横アーチの下において、当該靴底(1)または中敷きの前記主要部分(14)に空洞(7)が存在し、
当該空洞(7)内には、液圧的、機械的、空気圧的、電気的またはその他の装置が取り付けられており、当該装置は、前記可動要素(3)に接続されていると共に、とりわけ患者の自重によって当該靴底(1)または中敷き上に引き起こされる圧力によって引き起こされるところの、歩行運動時における前記主要部分(14)から横方向に離れる水平面での回転運動を引き起こす、ことを特徴とする、整形外科用の靴底または中敷き。
【請求項2】
前記回転運動を引き起こす前記装置は、液圧装置であり、当該液圧装置は、ゲルまたは他の流体(9)で満たされた弾性シース(8)の形態をなすと共に、端部にプランジャ(10)を有しており、前記プランジャ(10)は、前記可動要素(3)に接続されると共に、各ステップの開始時に足によって前記シース(8)に加えられる圧力によって周期的に作動される、請求項1に記載の整形外科用の靴底または中敷き。
【請求項3】
前記回転運動を引き起こす前記装置は、空気圧装置であり、当該空気圧装置は、空気または他のガスで満たされた弾性シース(8)の形態をなすと共に、端部にプランジャ(10)を有しており、前記プランジャ(10)は、前記可動要素(3)に接続されると共に、各ステップの開始時に足によって前記シース(8)に加えられる圧力によって周期的に作動される、請求項1に記載の整形外科用の靴底または中敷き。
【請求項4】
前記回転運動を引き起こす前記装置は、板ばね(15)の形態に作られた機械装置であり、この板ばねは、前記主要部分(14)の空洞(7)内に接続された第1の端部(16)と、前記可動要素(3)に接続された第2の端部(16)とを有し、前記板ばね(15)は、各ステップの開始時に足によって板ばね(15)に加えられる圧力によって周期的に作動される、請求項1に記載の整形外科用の靴底または中敷き。
【請求項5】
前記可動要素(3)は、プレート(22)を介して当該靴底(1)または中敷きの前記主要部分(14)に接続され、前記プレート(22)は、前記可動要素(3)が、様々な広がり角度で前記主要部分(14)に対して側方に離れてロックされるのを可能にする、請求項1に記載の整形外科用の靴底または中敷き。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の整形外科用の靴底または中敷きを備える靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外反母趾を有する人用の整形外科用(矯正用)靴底または中敷きに関し、整形外科用靴底または中敷きは、歩行時または静止状態において少なくとも第1~第5足趾および母趾球を、特に第1~第5足趾から踵までの足全体を支持する。本発明はさらに、整形外科用(矯正用)靴底または中敷きを有する靴に関する。
【背景技術】
【0002】
外反母趾(母趾のバニオン)は、第1足趾が外反して、すなわち体の中心から第2~第5足趾の方向に延びる、第1足趾(母趾)の屈曲した位置に与えられる名称である。これが外反母趾と呼ばれる。足の腱を引っ張る方向が変化し、第1足趾の変位を増加させる。同時に、第1中足骨がその頭部とともに内側に逸脱し、典型的なバニオンが生じる。美容上の問題に加えて、外反母趾は、例えば、突出したバニオンが履物上で摩擦されることに起因して、有痛性の圧力ポイント、皮膚刺激、腫脹または炎症を引き起こす可能性がある。結果として生じる損傷には、第2~第5足趾の隣接関節もしくは中足骨の関節症または過負荷が含まれ得る。第1足趾のこの位置異常は、しばしば遺伝的素因に起因し、通常、きつい靴または踵の高い靴を着用することによって悪化する。
【0003】
特定の段階まで、外反母趾は、非外科的なものとして、例えば足体操または足スプリントの装着によって保存的に治療することができる。外反母趾の治療のための足体操には、第1足趾のあらゆる方向への自由な動きを促進する運動が含まれる。好ましくは、足の運動は、理学療法士によって行われ、理学療法士が患者の第1足趾を広げて元の位置に戻すことからなる。第1足趾のこの広げ運動は、その自然な屈曲(歩行中にも起こる運動)の垂直面で、および第2~第5足趾から横に離れて水平面で同時に行われる。次いで、患者の第1足趾は元の位置に戻される。これは特に外反母趾の症状を軽減するが、変形の矯正は通常、足体操によっては達成されない。同時に、特に第1~第5足趾の領域および必要に応じて母趾関節の領域において十分なクリアランスを有する平坦な靴を日常生活において着用すべきである。さらに、足のアーチを支持するために中敷きを着用して、スプレーフット(扁平足)の進行を止めることができる。さらに、外反母趾の治療のために、トゥスプレッダ、トゥパッド、支持用中敷き、バニオンローラおよび母趾スプリント(装具)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】(国際調査報告を参照)
【発明の概要】
【0005】
上記の先行技術に基づいて、本発明は、外反母趾の治療のための整形外科用(矯正用)靴底または中敷きを提供するという課題に基づいており、本発明は、患者が、外反母趾の治療のための足の運動をいつでも且つ必要に応じて頻繁に行うことを可能にする。
【0006】
本課題は、本発明によれば、外反母趾を有する人用の整形外科用靴底または中敷きによって解決され、当該整形外科用靴底または中敷きは、歩行中または静止状態で、少なくとも第1~第5足趾および母趾球、特に第1~第5足趾から踵までの足全体を支持する。そして、当該整形外科用靴底または中敷きは、主要部分と、それに移動可能に接続された要素とを備え、可動要素は、第1足趾の下に位置して支持し、主要部分は、少なくとも第2~第5足趾および母趾球の下に位置して支持し、可動要素は、第1足趾および足の関節の範囲内で水平面で軸を中心に回転するように主要部分に移動可能に接続されることを特徴とする。
【0007】
本発明による整形外科用靴底または中敷きは、第2~第5足趾ならびに少なくとも足の横アーチ、好ましくはさらに縦アーチおよび踵を支持する役割を果たす主要部分を備える。可動要素は、第1足趾を支持する役割を果たし、(必要に応じて別個の要素として)母趾関節の領域の主要部分に移動可能に取り付けられるか、または堅固に接続される。これにより、可動要素は、主要部分に対して水平面で移動することができ、特に第1足趾および母趾球の関節の範囲内で軸を中心に回転することができる。主要部分に対する可動要素の運動は、適切な手段によって制限される。
【0008】
整形外科用靴底または中敷きの可動要素と主要部分との間の相対運動、特に水平方向の回転運動は、好ましくは、患者の歩行運動中に、特に患者の自重によって整形外科用靴底または中敷きに加えられる圧縮力によって引き起こされる。結果として、本発明による整形外科用靴底または中敷きは、第1足趾および母趾の関節を動かすための足体操で知られる運動を患者が歩くときに周期的に発生させ、その結果、患者は毎日歩くことによって治癒的な足体操を独立して行うことができる。したがって、可動要素は、好ましくは、支持された足の荷重に応じて、特に回転軸が母趾関節の領域に位置する振り子運動の形態で、主要部分に対して水平面で移動する。
【0009】
本発明による整形外科用靴底または中敷きは、外反母趾を有する患者が任意の時点で、特に日常的に治癒的足運動を独立して行うことを可能にし、それによって外反母趾治療のコストを最小限に抑える。実施された歩行運動中の第1足趾の垂直方向および水平方向の同時運動は、第1足趾および母趾の関節を動かす。
【0010】
本発明によれば、第2~第5足趾および/または足の横アーチの下の靴底または中敷きの主要部分に空洞があり、その中に油圧的(液圧的)、機械的、空気圧的、電気的または他の装置が組み込まれており、これは可動要素に接続され、歩行運動中に、特に患者の自重によって整形外科用靴底または中敷き上に引き起こされる圧縮力によって引き起こされる、主要部分から横方向に離れた水平面での回転運動を引き起こす。主要部分の空洞は、中敷きと靴底との間に形成することもできる。したがって、本発明による整形外科用靴底または中敷きは、一般に、特に患者の歩行運動中に、可動要素と主要部分との間の相対運動を実行するための機械的、油圧的、空気圧的、電気的または他の手段を備える。例えば、これは、横アーチおよび/または第1~第5足趾に患者の自重を負荷し、それによって油圧的、機械的、空気圧的、電気的または他の装置を作動させることによって行われる。
【0011】
本発明の好都合な変形形態では、回転運動を行うための装置は、ゲルまたは他の流体で満たされた弾性シースの形態であり、端部にプランジャを有する油圧装置(液圧装置)であり、プランジャは可動要素に接続され、各ステップの開始時に足によってシースに加えられる圧力によって周期的に作動される。歩行運動中、患者は、ゲルまたは他の液体で満たされたシースに自重によって力を加え、それによってプランジャ、したがってプランジャに接続された可動要素を主要部分に対して移動させる。シースへの圧力が解放されると、プランジャおよび関連する可動要素は元の位置に戻ることができる。
【0012】
本発明の代替の変形形態によれば、回転運動を行うための装置は、空気または他のガスで満たされた弾性シースの形態である空気圧的装置であり、プランジャが端部にあり、プランジャは、可動要素に接続され、各ステップの開始時に足によってシースに加えられる圧力によって周期的に作動される。空気圧的変形形態は、主にプランジャを移動させるために使用される媒体において油圧変形形態とは異なる。
【0013】
本発明のさらなる変形形態によれば、回転運動を行うための装置は、空洞内の第1の端部で主要部分に、第2の端部で可動要素に接続された板ばねの形態の機械的装置であり、板ばねは、各ステップの開始時に足によって板ばねに加えられる圧力によって周期的に作動される。この変形形態は、本発明による整形外科用靴底または中敷きが損傷した場合に逃げる可能性がある液体媒体または気体媒体を必要としないため、製造が特に簡単で安価であり、故障しにくい。
【0014】
本発明による別の変形形態では、可動要素は、プレートによって靴底または中敷きの主要部分に接続され、これにより、可動要素は、様々な広がり角度で靴底の主要部分に対して側方にロックされることが可能になる。一般に、本発明による整形外科用靴底または中敷きは、支持された足への負荷とは無関係に、様々な位置で主要部分に対して可動要素を固定するための手段、特に機械的手段を備える。したがって、第1足趾は、主要部分に支持された第2足趾から一定の距離にある固定可動要素によって固定され、それによって歩行運動(足の屈曲)によって垂直運動が生成され、これはまた、例えば調整可能な位置が異なるために、理学療法士によって定期的に調整され得る矯正的な体操運動を生成する。これは、水平方向および垂直方向の同時の動きが患者にとって痛みすぎる場合に特に有利である。
【0015】
本発明のさらに有利な変形形態によれば、可動要素は、水平回転運動の発生中に常に案内されるように、第1足趾のための固定具を備える。固定具は、例えば、可動要素上の1つまたは複数の隆起部であるか、またはループなどとして形成される。
【0016】
(本発明の)問題は、更に、本発明による整形外科用靴底または中敷きを備える靴によって解決される。好都合なことに、靴は、前部で開いた靴として設計され、これは、主要部分と可動要素との間の相対運動を単純化するためである。
【0017】
好都合な変形形態では、本発明による靴のソールは、可動要素を移動させることができるベースプレートをさらに備える。ベースプレートは、好ましくは、主要部分に接続され、それと一体的に形成される。ベースプレートは、地面と可動要素との間の直接接触を防止し、その結果、可動要素の移動が地面との摩擦によって妨げられない。
【0018】
本発明は、添付の図面に示される実施形態の例を参照して、以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1a】本発明による整形外科用靴底の第1の実施形態を有する靴の様々な図。
図1b】本発明による整形外科用靴底の第1の実施形態を有する靴の様々な図。
図1c】本発明による整形外科用靴底の第1の実施形態を有する靴の様々な図。
図1d】本発明による整形外科用靴底の第1の実施形態を有する靴の様々な図。
図2a】本発明による整形外科用靴底の第2の実施形態を有する靴の様々な図。
図2b】本発明による整形外科用靴底の第2の実施形態を有する靴の様々な図。
図2c】本発明による整形外科用靴底の第2の実施形態を有する靴の様々な図。
図2d】本発明による整形外科用靴底の第2の実施形態を有する靴の様々な図。
図2e】本発明による整形外科用靴底の第2の実施形態を有する靴の様々な図。
図3a】本発明による靴底の第3の実施形態を有する靴の様々な図。
図3b】本発明による靴底の第3の実施形態を有する靴の様々な図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1aは、外反母趾の人のための、本発明による整形外科用の靴底(shoe sole)1を備えた右の靴の上面図を示す。図1の第1の実施形態による整形外科用靴底1は、歩行時または静止状態において、第1~第5足趾から踵までの足全体を支持する。図1の靴は、本発明による整形外科用の中敷き(insole)1と、好ましくは弾性材料からなる上側部分(アッパー部)2とを備える。さらに、靴は、以下に記載されるように、第1足趾と第2~第5足趾との間の相対的な動きを可能にするために、好都合なことに前部で開いている。あるいは、靴は、相対運動のための対応する自由空間を有することができる。
【0021】
図1では、靴の着用者の足を破線で示している。
【0022】
図1の靴の整形外科用靴底1は、主要部分14と、それに移動可能に接続された要素3とを備える。可動要素3は、第1足趾の下に位置してこれを支持し、主要部分14は、少なくとも第2~第5足趾および母趾球の下に位置してこれらを支持する。図1の第1の実施形態例によれば、主要部分14は、第2~第5足趾から踵までの領域において足を支持する。
【0023】
可動要素3は、接続部5を介して主要部分14に移動可能に接続されている。可動要素3と主要部分14との間の相対運動は、例えば、使用される材料の弾性によって確実に行われ、丸み6の形態のくぼみによって支持され得る。特に、丸み6は、可動要素3と主要部分14との間の相対運動に起因する伸張プロセスによる亀裂を防止する。可動要素3と主要部分14との間の接続部5は、両方が同じ基本部品から作られるように一体に形成されてもよく、または両方が別々に製造され、続いて接続されるように、続いて製造された接続部5であってもよい。
【0024】
可動要素3と主要部分14との間の接続部5は、可動要素3が第1足趾および母趾球の関節の限界の範囲内で、水平面内で軸4を中心に回転できるように設計されている。回転軸4は、好ましくは第1足趾の関節(母趾関節)の領域に位置する。
【0025】
図1bおよび図1cは、図1aのA-A線およびB-B線に沿った断面図をそれぞれ示す。特に図1bおよび図1cから分かるように、空洞7が、靴底1の主要部分14の前部領域、特に第2~第5足趾の下に位置する。図1の第1の実施形態例によれば、油圧装置(液圧装置)がこの空洞内に取り付けられ、この油圧装置は、可動要素3に接続され、歩行運動中に、特に患者の自重によって整形外科用靴底1上に引き起こされる圧縮力によって引き起こされるところの、主要部分14から横方向に離れる水平面での回転運動を引き起こす。
【0026】
油圧装置(液圧装置)は、例えば、空洞7内に弾性シース8を備える。このシース(sheath)8は、ゲルまたは他の流体9で満たされている。可動要素3の端面に隣接する側において、シース8はプランジャ10を備える。このプランジャ10は、例えば波形管として設計され、管形状は特にねじ山の形態である。この場合、プランジャ10、特に波形管は、弾性シース8より高い強度を有する材料で作られる。プランジャ10の閉端片11は、可動要素3に接続されている。このように形成された油圧装置は、各ステップの開始時に足によって加えられる圧力によって周期的に作動され、特に弾性シース8に圧力が加えられ、プランジャ10に可動要素3を主要部分14に対して移動させ、主要部分14から横方向に離れる水平面での回転運動を引き起こす。
【0027】
油圧装置の機械的特性を適合させるために、特に予圧を生成するために、プランジャ10、特に波形管に圧縮ばねを挿入することができる。これにより、可動要素3と主要部分14との間に相対運動を生成するのに必要な圧力を患者の個々のニーズに適合させることができる。
【0028】
第2足趾に面する可動要素3の側に隆起部12を有することが好都合であり、これにより、第1足趾を可動要素3と共に確実に移動させることができる。したがって、主要部分14は、第1足趾に向かう側に隆起部13を有することができ、これにより、第2足趾、ひいては第3~第5足趾を主要部分14に固定する。可動要素3の隆起部12および主要部分14の隆起部13は、図1cに詳細に示されている。隆起部12および/または隆起部13の代わりに、ブラケット、ループなどを使用して、第1足趾を可動要素3上に、または少なくとも第2足趾を主要部分14上に固定することもできる。
【0029】
歩行すると、足の踵が持ち上がり、足のつま先が水平位置になり、人の全体重が弾性シース8を圧迫する。プランジャ10は、可動要素3を側方(サイド)に押し広げる。可動要素3上の隆起部12は、第1足趾が可動要素3と共に移動することを確実にする。したがって、各ステップの間、第1足趾は、2つの平面内での運動を、すなわち、他の第2~第5足趾と共に垂直平面内での運動と、第2~第5足趾から離れる可動要素3と共に水平面内での横方向の拡開/振り子運動とを同時に行う。圧縮力がもはや加えられなくなると、可動要素3および第1足趾はそれらの初期位置に戻る。
【0030】
人が足の先で立ったままである場合、圧力は油圧装置に恒久的に加えられ、可動要素3はそれに応じて、この時間中に第1足趾を第2~第5足趾から離して広げるが、これは外反母趾患者の矯正的な体操運動にも対応する。
【0031】
使用の具体的な方法、可動要素3の相対運動の周波数および振幅は、医師、特に整形外科医によって指定される。
【0032】
図2は、本発明による整形外科用靴底1の第2の実施形態による靴の様々な図を示す。図2の第2実施形態は、可動要素3に接続され、歩行運動中に主要部分14から横方向に離れる水平面での回転運動を引き起こす油圧装置が空洞7内に取り付けられておらず、可動要素3に接続され、歩行運動中に主要部分14から横方向に離れる水平面での回転運動を引き起こす機械的装置がある点で、図1の第1実施形態と異なる。
【0033】
図2の第2実施形態による機械的装置は、(両)端部16を有する板ばね15を備える。板ばね15は、接続要素17を介して靴底1の主要部分14に右端部16で接続されている。板ばね15は、主要部分14と可動要素3との間の接合部において、可動要素3の溝部18に挿入され、軸19によって可動要素3に接続されている。板ばね15は、可動要素3に接続された端部16に軸19用の細長い孔20を有し、それにより、可動部材3の揺動/振り子運動中に生じる軸19のオフセットが補償され得る。この詳細は、特に図2aの線C-CおよびD-Dに沿った断面図をそれぞれ示す図2dおよび図2eに見ることができる。
【0034】
特に図2bの断面図から分かるように(図2bは、図2aの線A-Aに沿った断面図を示す)、板ばね15は、上方に湾曲した領域21を有する。板ばね15の上方に湾曲した領域21は、図2bに示すように、空洞7の上面を下から押す。
【0035】
図1の第1実施形態例に対応して、可動要素3には隆起部12が、主要部分14には隆起部13があり、それらは、可動要素3と主要部分14との間の相対運動中に第1足趾または第2~第5足趾を固定する。
【0036】
図3は、本発明による靴底1の第3の実施形態を有する靴の様々な図を示す。図3aは、外反母趾の人のための、本発明による整形外科用の靴底1を備えた右の靴の上面図を示す。図3の第3実施形態による整形外科用靴底1は、歩行時または静止状態において、第1~第5足趾から踵までの足全体を支持する。図3の靴は、本発明による整形外科用の中敷き(insole)1と、好ましくは弾性材料で作られた上部2とを備える。さらに、靴は、以下に記載されるように、第1足趾と第2~第5足趾との間の距離を柔軟に調整するために、好都合なことに前部で開くように設計されている。あるいは、靴は、調整のための対応する自由空間を有することができる。
【0037】
図3では、靴の着用者の足を破線で示している。
【0038】
図3の靴の整形外科用靴底1は、主要部分14と、それに移動可能に接続された要素3とを備える。可動要素3は、第1足趾の下に位置して支持し、主要部分14は、少なくとも第2~第5足趾および母趾球の下に位置して支持する。図3の第3の実施形態例によれば、主要部分14は、第2~第5足趾から踵までの領域において足を支持する。
【0039】
可動要素3は、接続部5を介して主要部分14に移動可能に接続されている。可動要素3と主要部分14との間の相対運動は、例えば、使用される材料の弾性によって確実に行われ、丸み6の形態のくぼみによって支持され得る。特に、丸み6は、可動要素3と主要部分14との間の相対運動に起因する伸張プロセスによる亀裂を防止する。可動要素3と主要部分14との間の接続部5は、両方が同じ基本部品から作られるように一体に形成されてもよく、または両方が別々に製造され、続いて接続されるように、続いて製造された接続部5であってもよい。
【0040】
可動要素3と主要部分14との間の接続部5は、可動要素3が第1足趾および母趾球の関節の限界の範囲内で水平面で軸4を中心に回転できるように設計されている。回転軸4は、好ましくは第1足趾の関節(母趾関節)の領域に位置する。
【0041】
図1の第1実施形態および図2の第2実施形態とは対照的に、図3の第3実施形態では、可動要素3は、プレート22を介して靴のソール1の主要部分14に接続され、これ(プレート)により、可動要素3は、例えば図3bに詳細に示すように、様々な広がり角度でソール1の主要部分14に対して側方に(離れて)ロックされることが可能になる。
【0042】
プレート22は、一端で第1のピン23を介して主要部分14に接続されている。第1のピン23は、ソールプレート1の主要部分14の開口部を通ってプレート22の第1の膨出部25に下方から、ロック(例えばねじ止め)される。他端において、可動要素3の領域において、プレート22は、第2のピン27のための第2の膨出部26を有する。ソール1の可動部材3は、第2のピン27のための複数の開口部24を有し、その結果、第2のピン27は、複数の開口部24のうちの1つを通過し、第2の膨出部26内にロックされることができる。これにより、主要部分14と可動要素3との間の距離は、それを介して第2のピン27が第2の膨出部26内でロックされるところの開口部24の選択によって調整される。
【0043】
したがって、第1足趾は、主要部分14に支持される第2足趾から一定の距離に固定された可動要素3によって固定され、それによって歩行運動(足の屈曲)によって垂直運動が生成され、これはまた、例えば調整可能な位置が異なるために理学療法士によって定期的に調整され得る矯正的な体操運動を生成する。これは、水平方向および垂直方向の同時の動きが患者にとって痛みすぎる場合に特に有利である。
【符号の説明】
【0044】
1 靴底(shoe sole)
2 上部
3 可動要素
4 回転軸(第1足趾の関節の限界)
5 固定/接続部可動要素
6 丸み
7 空洞
8 弾性シース
9 流体/液体
10 プランジャ
11 端片(プランジャ)
12 隆起部(可動要素)
13 隆起部(主要部分)
14 主要部分
15 板ばね
16 板ばねの端部
17 締結要素
18 溝部(可動要素)
19 軸
20 長孔(板ばね)
21 曲面板ばね
22 プレート
23 第1のピン
24 開口部
25 第1の膨出部
26 第2の膨出部
27 第2のピン
【0045】
[図中の文字の説明]
図1b中の「Schnitte」は、「断面」との意味
図2b中の「Schnitte」は、「断面」との意味
図2d中の「C-C(VeRGRoBeRT)」は、「C-C(拡大)」との意味
図2e中の「D-D(VeRGRoBeRT)」は、「D-D(拡大)」との意味
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図3a
図3b
【国際調査報告】