IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サイトグラス・ヴィジョン・インコーポレイテッドの特許一覧

特表2024-522399近視の進行を弱めるための眼科用レンズおよびそれを形成するためのレーザベースの方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-19
(54)【発明の名称】近視の進行を弱めるための眼科用レンズおよびそれを形成するためのレーザベースの方法
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/06 20060101AFI20240612BHJP
   G02C 7/10 20060101ALI20240612BHJP
   G02C 7/00 20060101ALI20240612BHJP
   G02B 1/10 20150101ALI20240612BHJP
【FI】
G02C7/06
G02C7/10
G02C7/00
G02B1/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573251
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(85)【翻訳文提出日】2024-01-25
(86)【国際出願番号】 US2022031460
(87)【国際公開番号】W WO2022251713
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】63/194,905
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVASCRIPT
2.PYTHON
3.WINDOWS
(71)【出願人】
【識別番号】519400379
【氏名又は名称】サイトグラス・ヴィジョン・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ホーンズ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ダブリュー・チャルバーグ・ジュニア
【テーマコード(参考)】
2H006
2K009
【Fターム(参考)】
2H006BA01
2H006BA03
2H006BD00
2H006BE02
2K009AA02
2K009AA15
2K009EE05
2K009FF01
(57)【要約】
レンズ材料を含む眼科用レンズの表面に光学要素を形成するための方法は、眼科用レンズの表面にレーザ相互作用層を設けるステップであって、レーザ相互作用層が第1の波長λでの放射の第1の吸収値を有する第1の材料を含み、レンズ材料がλでの放射の第2の吸収値を有し、第2の吸収値が前記第1の吸収値より低い、ステップと、レンズ材料中の各個別区域に光学要素を形成するのに十分なだけ、λでのレーザ放射にレーザ相互作用層の個別区域を露光するステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ材料を含む眼科用レンズの表面に光学要素を形成するための方法であって、
前記眼科用レンズの表面にレーザ相互作用層を設けるステップであって、前記レーザ相互作用層が第1の波長λでの放射の第1の吸収値を有する第1の材料を含み、前記レンズ材料がλでの放射の第2の吸収値を有し、前記第2の吸収値が前記第1の吸収値より低い、ステップと、
前記レンズ材料中の各個別区域に光学要素を形成するのに十分なだけ、λでのレーザ放射に前記レーザ相互作用層の個別区域を露光するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
眼科用レンズであって、
前記眼科用レンズの基本曲率を提供するために形状決定される、対向する曲面を有するレンズ材料であって、前記対向する曲面が第1の面を備える、レンズ材料と、
前記第1の面で、あるパターンに配置される複数の光学要素であって、前記レンズ材料の屈折率と異なる屈折率、および/または、前記第1の面の曲率と異なる表面形状を有する領域に対応する複数の光学要素と、
前記第1の面のレーザ相互作用層であって、第1の波長λでの放射の第1の吸収値を有する第1の材料を備えるレーザ相互作用層と、
を備え、
前記レンズ材料がλでの放射の第2の吸収値を有し、前記第2の吸収値が前記第1の吸収値より低い、眼科用レンズ。
【請求項3】
眼科用レンズであって、
前記眼科用レンズの基本曲率を提供するために形状決定される、対向する曲面を有するレンズ材料であって、前記対向する曲面が第1の面を備える、レンズ材料と、
前記第1の面のレーザ相互作用層であって、第1の波長λでの放射の第1の吸収値を有する第1の材料を備えるレーザ相互作用層と、
を備え、
前記レンズ材料がλでの放射の第2の吸収値を有し、前記第2の吸収値が前記第1の吸収値より低い、眼科用レンズ。
【請求項4】
前記レーザ相互作用層と一緒に前記第1の面上に配設される1つまたは複数の追加層をさらに備え、前記1つまたは複数の追加層が、前記レーザ相互作用層と異なる組成を有する、請求項3に記載の眼科用レンズ。
【請求項5】
前記1つまたは複数の追加層が、ハードコート、UVブロック層、反射防止層、フォトクロミック層、および疎水性層からなるグループから選択される、請求項4に記載の眼科用レンズ。
【請求項6】
前記少なくとも1つの追加層が第1の層を備え、前記レーザ相互作用層が前記第1の層と前記レンズ材料の間に配置される、請求項4に記載の眼科用レンズ。
【請求項7】
前記第1の層が、前記第1の材料の前記吸収値より低い、λでの放射の吸収値を有する材料から構成される、請求項6に記載の眼科用レンズ。
【請求項8】
前記第1の層を構成する前記材料が、前記レンズ材料の前記吸収値より低い吸収値を有する、請求項7に記載の眼科用レンズ。
【請求項9】
λで反射性である(たとえば、λで、直角入射光の50%以上を反射する)反射層をさらに備える、請求項3に記載の眼科用レンズ。
【請求項10】
前記反射層が、少なくとも一部の可視波長で透過性である、請求項9に記載の眼科用レンズ。
【請求項11】
前記反射層が、前記レンズ材料と前記レーザ相互作用層の間に配置される、請求項9に記載の眼科用レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示が参照によって本明細書に組み込まれる、2021年5月28日に出願された「OPHTHALMIC LENSES FOR REDUCING MYOPIA PROGRESSION AND LASER BASED METHODS FOR FORMING THE SAME」という題名の米国特許出願第63/194,905号に対する優先権を主張する。
【0002】
本開示は、近視の進行を弱めるための眼科用レンズおよび、近視の進行を弱めるための光学的特徴を含むために眼科用レンズ(たとえば、単焦点レンズまたは多焦点ストックレンズ)を変化させるための方法に関する。より詳細には、本技術は、レーザ相互作用層、たとえば、他の層またはレンズ材料のバルクと比較してレーザとかなり異なって相互作用する層を使用するレーザ露光を通して、眼科用レンズ中に、(たとえば、散乱中心または小型レンズを形成するため)屈折率が変わった領域を生成するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
目は光学センサであって、外部の発生源からの光が、波長依存性光センサの配列である網膜の表面上にレンズによって合焦される。外部の光線が最適またはほぼ最適に合焦される焦点距離が、目によって観察される外部画像に対応する網膜の表面上の倒立像を生成するように形状を変えることによって、目のレンズは適応することができる。目のレンズは、目からある範囲の距離内にある外部の物体によって放出されるまたは反射される光を最適またはほぼ最適に合焦し、その範囲外の距離にある物体を最適でない状態で合焦する、または物体を合焦し損なう。
【0004】
正常な視力の人では、目の軸方向長さ、または角膜の前部から網膜の窩への距離は、遠くの物体の最適な合焦に近い焦点距離に対応する。正常な視力の人の目は、「調節」と呼ばれるプロセスである目のレンズの形状を変えるために力を印加する毛様体の筋肉に神経の入力を行うことなく、遠くの物体に合焦する。より近い近接した物体は、正常な人によって調節の結果として合焦される。
【0005】
しかし、多くの人は、近視(近眼)などといった、目の長さに関係する障害を患っている。近視の人では、目の軸方向長さは、調節なしで、遠くの物体に合焦するのに必要な軸方向長さよりも長い。結果として、近視の人は、ある距離の近くの物体を明瞭に見ることができるが、その距離からさらに離れた物体はぼける。
【0006】
典型的には、乳児は遠視で生まれ、目の長さは、調節なしで、遠くの物体の最適または最適に近い合焦に必要であるよりも短い。「正視化」と呼ばれる、目の正常な発達の期間に、目の軸方向長さは、目の他の寸法と比較して、調節なしで遠くの物体の最適に近い合焦をもたらす長さまで延びる。理想的には、生物学的プロセスは、目が最終的な成人サイズに成長する際に、目のサイズに対して、最適に近い相対的な目の長さ(たとえば、軸方向長さ)を維持する。しかし、近視の人では、全体的な目のサイズに対する相対的な目の軸方向長さは、発達の期間に、遠くの物体の最適に近い合焦をもたらす長さを超えて増加し続け、ますます顕著な近視となる。
【0007】
近視は、環境要因ならびに遺伝要因によって影響を受けると信じられる。したがって、近視は、環境要因に対処する治療デバイスによって低減することができる。たとえば、近視を含む目の長さに関係する障害を治療するための治療デバイスが、米国特許出願公開第2011/0313058A1号に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0313058A1号
【特許文献2】米国特許第10571717B2号
【特許文献3】PCT/US2019/015724
【特許文献4】PCT/US2021/033026
【特許文献5】PCT/US2019/063982
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ASTM D1003
【非特許文献2】BS EN ISO 13468
【非特許文献3】http://www.montana.edu/jshaw/documents/18%20EELE582_S15_OTFMTF.pdf
【非特許文献4】https://www.slrlounge.com/diffraction-aperture-and-starburst-effects/
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
眼科用レンズ上に光学要素(たとえば、ドットの形状などでの散乱中心および/または小型レンズ)を形成するための技法が開示される。装着者の近視の進行を弱めるため、レンズ表面にわたって、光学要素をサイズ決定し形状決定し分布させることができる。眼科用レンズは、レーザ放射にさらされると、光学要素の形成を容易にする、レンズの表面に配設されるレーザ相互作用層を含む。たとえば、レーザ相互作用層は、レーザの波長で光を強く吸収する染料または他の感光材料を含むことができる。いくつかの場合には、レーザ相互作用層によって、レーザ相互作用層なしでレーザ光にレンズを直接さらすよりも、経済的、効果的、および/または、より正確にレーザ上に光学要素のパターンを形成することが可能になる。さらに、レーザ相互作用層は、レンズ上の光学要素のパターンの高度なカスタマイズを可能にし、各個人向けにカスタマイズした近視の管理手法に向けて道を開いている。
【0011】
一般的に、第1の態様では、本発明は、レンズ材料を含む眼科用レンズの表面で光学要素を形成するための方法を特徴とする。本方法は、(1)眼科用レンズの表面にレーザ相互作用層を設けるステップであって、レーザ相互作用層が第1の波長λでの放射の第1の吸収値を有する第1の材料を含み、レンズ材料がλでの放射の第2の吸収値を有し、第2の吸収値が第1の吸収値より低い、ステップと、(2)レンズ材料中の各個別区域に光学要素(たとえば、小型レンズ、散乱中心)を形成するのに十分なだけ、λでの放射にレーザ相互作用層の個別区域をさらすステップとを含む。
【0012】
一般的に、別の態様では、本発明は、眼科用レンズの基本曲率を提供するために形状決定される、対向する曲面を有するレンズ材料であって、対向する曲面が第1の面を含む、レンズ材料と、第1の面で、あるパターンに配置される複数の光学要素であって、レンズ材料の屈折率と異なる屈折率、および/または、第1の面の曲率と異なる表面形状を有する領域に対応する光学要素と、第1の面のレーザ相互作用層であって、第1の波長λでの放射の第1の吸収値を有する第1の材料を備えるレーザ相互作用層とを含み、レンズ材料がλでの放射の第2の吸収値を有し、第2の吸収値が第1の吸収値より低い、眼科用レンズを特徴とする。
【0013】
一般的に、さらなる態様では、本発明は、眼科用レンズの基本曲率を提供するために形状決定される、対向する曲面を有するレンズ材料であって、対向する曲面が第1の面を含む、レンズ材料と、第1の面のレーザ相互作用層であって、第1の波長λでの放射の第1の吸収値を有する第1の材料を含むレーザ相互作用層とを含み、レンズ材料がλでの放射の第2の吸収値を有し、第2の吸収値が第1の吸収値より低い、眼科用レンズを特徴とする。
【0014】
これらの態様の実装形態は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。たとえば、眼科用レンズは、レーザ相互作用層と一緒に第1の面上に配設される1つまたは複数の追加層を含むことができ、1つまたは複数の追加層が、レーザ相互作用層と異なる組成を有する。1つまたは複数の追加層は、ハードコート、UVブロック層、反射防止層、フォトクロミック層、および疎水性層からなるグループから選択することができる。追加層は、レーザ相互作用層が第1の層とレンズ材料の間に配置される第1の層を含むことができる。第1の層は、第1の材料の吸収値より低い、λでの放射の吸収値を有する材料から構成することができる。第1の層を備える材料は、レンズ材料の吸収値より低い吸収値を有することができる。
【0015】
眼科用レンズは、λで反射性である反射層を含むことができる(たとえば、λで、直角入射光の50%以上を反射する)。反射層は、少なくとも一部の可視波長で透過性であってよい。反射層は、レンズ材料とレーザ相互作用層の間に配置することができる。
【0016】
利点の中でもとりわけ、本明細書に記載される技法および物品は、眼科用レンズ(たとえば、近視の低減のためのレンズ)の装飾を改善すること、結果として得られるレンズの性能を改善すること、ならびに/または、経年劣化および/もしくは層間剥離のような弾性回復特性を改善することができる。他の利点は、本明細書に記載される、または記載中に含意される。
【0017】
本明細書の主題の1つまたは複数の実施形態の詳細は、添付図面および下の記載中に述べられる。本主題の他の特徴、態様、および利点は、記載、図面、および特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】レンズ表面にレーザ相互作用層が設けられた眼科用レンズの一部の断面図である。
図1B】レーザ露光期間の眼科用レンズの一部の断面図である。
図1C】表面に光学要素が形成されたレーザ露光後の眼科用レンズの一部の断面図である。
図2】表面上にレーザ相互作用層の別の例を有する別の眼科用レンズの一部の断面図である。
図3】表面上にレーザ相互作用層の別の例を有するさらに別の眼科用レンズの一部の断面図である。
図4】光学要素が表面層とバルク材料の界面に形成された、レーザ露光後の別の眼科用レンズの一部の断面図である。
図5】表面上に、レンズのバルク材料中のレーザ相互作用層の別の例を有する、別の眼科用レンズの一部の断面図である。
図6A】1対の眼鏡用にカスタマイズした眼科用レンズを送達するための例示のシステムおよびワークフローを図示する図である。
図6B】光学要素を含む眼科用レンズを作るための例示の方法を示すフローチャートである。
図7】眼科用レンズ上に光学要素を形成するための例示のレーザシステムの概略図である。
図8A】近視を治療するための眼科用レンズを含有する一対の眼鏡を示す図である。
図8B図8Aに示される眼科用レンズ上の光学要素パターンを示す図である。
図9A】透明な開口と光学要素パターンの間に遷移ゾーンを有する光学要素パターンを有するレンズブランクを示す図である。
図9B】透明な開口と光学要素パターンの間に遷移ゾーンを有する光学要素パターンを有するレンズブランクを示す図である。
図9C】均一な間隔からランダムな変位を有する光学要素を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
様々な図中の同様の参照番号および記号は同様の要素を示す。
【0020】
眼科用レンズの表面に散乱中心または小型レンズなどといった光学要素を形成するための技法が開示される。一般的に、光学要素は、互いに対してサイズ決定、形状決定、および配置され、その結果、光学要素は、装着者の近視の進行を弱めるのに十分な光学的効果を提供する。例示の光学要素および構成は、「OPHTHALMIC LENSES FOR TREATING MYOPIA」という題名の、2018年9月27日に出願された米国特許第10571717B2号、「OPHTHALMIC LENSES WITH LIGHT SCATTERING FOR TREATING MYOPIA」という題名の、2019年1月29日に出願されたPCT/US2019/015724、「OPHTHALMIC LENSES, METHODS OF MANUFACTURING THE OPHTHALMIC LENSES, AND METHODS OF DISPENSING EYE CARE PRODUCTS INCLUDING THE SAME」という題名の、2021年5月18日に出願されたPCT/US2021/033026、および「LIGHT SCATTERING LENS FOR TREATING MYOPIA AND EYEGLASSES CONTAINING THE SAME」という題名の、2019年12月2日に出願されたPCT/US2019/063982に記載され、その各々の全内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0021】
一般的に、開示される技法は、眼科用レンズ(たとえば、ストック眼科用レンズ、たとえば、単焦点または累進多焦点)の表面上にレーザ相互作用層を設けるステップ(たとえば、コーティングステップまたは堆積ステップ)と、レンズ表面に(たとえば、レンズ表面上またはレンズ表面に隣接して)光学要素を形成するためレーザ放射に対してレーザ相互作用層を露光するステップとを含む。好適なレーザ放射に露光すると、レーザ相互作用層は、レンズの表面での光学要素の形成を促進する。これは、図1A図1Cに図示される。図1Aを参照すると、コーティング済みレンズ10が、レンズ本体111の表面115上にレーザ相互作用層100を含む。一般的に、表面115は、レンズ本体111の対向する側の対向する面とともに形作られる曲面であって、基本曲率を提供する(たとえば、正もしくは負の球面屈折力および/もしくは円筒、または、平面レンズの場合のゼロ屈折力を提供する)。通常、レンズ10はメニスカスレンズであり、表面115が凸面として描かれる一方で、レーザ相互作用層は、凹のレンズ面にやはり適用することができる。一般的に、レンズ本体111は、たとえば、Trivexまたはポリカーボネートなどの透明な高分子材料といった光学的に透明な材料から形成される。
【0022】
一般的に、レーザ相互作用層100の組成および厚さは、好適なレーザ放射へのレーザ相互作用層100の露光の際に、表面115での光学要素の形成を促進するように選択される。これは、図1Bおよび図1Cに図示される。具体的には、図1Bは、それぞれ位置126および123で、レーザ相互作用層の内側で合焦されたレーザビーム119および121への露光期間のレンズ10を示す。レーザ放射は、レーザ相互作用層100によって局所的に吸収され、表面115でレンズ本体111を変化させて、個別光学要素133および131を形成する(図1C参照)。光学要素133および131の幾何形状(すなわち、幅、深さ、および高さ)は、レーザ相互作用層の厚さ、レーザ放射エネルギーおよび露光時間、ならびに、レーザ波長におけるレーザ相互作用層の吸収率などの要因に依存する。いくつかの例では、レーザ相互作用層の厚さは、0.2ミクロンから15ミクロン(たとえば、0.5ミクロン以上、1ミクロン以上、2ミクロン以上、12ミクロン以下など、10ミクロン以下、8ミクロン以下、3ミクロンから5ミクロンなど)の範囲にある。図1Bが位置126および123の同時露光を描く一方で、位置への露光が連続的であってよい。
【0023】
レーザビームのエネルギー密度は、レーザ放射とレーザ相互作用層100の物理的および/または化学的相互作用に影響を及ぼすことになる。たとえば、あるパルスエネルギーでは、レーザ相互作用層100は、それが露光した場所が溶けて、光学要素を形成することができる。一部のパルスエネルギーにおいて、レーザ相互作用層100および/またはレンズ材料を発泡させるまたは気泡を作らせることによって、光学要素を形成することができる。一部のパルスエネルギーでは、レーザとレーザ相互作用層100の間の相互作用によって(たとえば炭化によって)、レンズ材料および/またはレーザ相互作用層100に対する色変化をもたらすことができる。さらに他の例では、レーザ相互作用層100および/またはバルクレンズ材料を、切除によってレンズ表面から除去することができる。
【0024】
他のレーザパラメータが、形成される光学要素の性質にやはり影響を及ぼす場合がある。これらには、レーザ波長、露光時間(たとえば、どのくらい長くレーザ相互作用層100が露光されるのか)、およびパス数(たとえば、レーザ相互作用層100中の区域を複数回露光すること)が含まれ、それらの各々は、レーザ相互作用層100の所望の変化を達成させるため選択することができる。加えて、レーザ光とレーザ相互作用層100の間の相互作用は、レーザ相互作用層100の材料に依存する。たとえば、レーザ相互作用層100の材料は、レーザ光露光に起因する、下にあるレンズ材料の変色を避けるように構成することができる。
【0025】
レーザ相互作用層100の組成は、UV、可視、またはIR放射であってよい、レーザの動作波長で放射を吸収する材料を含む。たとえば、材料は、レーザ放射の波長に対応する特定の波長でだけ吸収を容易にするため、特定のバンドギャップまたは任意の他の好適な物理特性を有するように選択することができる。レーザの動作波長におけるレーザ相互作用層による吸収は、レンズ本体111のバルク材料による吸収より大きくてよい。これは、たとえば、レーザ放射への露光に起因するレンズ本体に生じうる損傷を減らすことによって、光学要素を形成するために、レンズバルク材料の屈折率およびレンズ表面の形状の変化を局所化するのに役に立ち、および/または、吸収を増大させたことに起因するより高い効率での光学要素形成を容易にするのに有利であってよい。たとえば、局所的な熱効果に起因して光学要素が形成される場合、レーザ相互作用層によるレーザ吸収によって、レンズ表面の直接露光と比較して、加熱される表面の、より迅速な加熱および/またはより良好な局在化を実現することができる。結果として、より速い光学要素形成、光学要素形成用に要求されるより低いレーザエネルギー、および/または、光学要素のサイズおよび形状にわたるより広い制御となることができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、レーザ相互作用層を放射にさらすことによって、レンズバルク材料を、透過性からある波長で吸収性となるように変えることができる。たとえば、レンズ材料中またはその表面上に光学要素を形成するために、放射にさらすことによって、レンズ材料および/またはレーザ相互作用層100を焦がすことができる。
【0027】
別の例では、図1Bに見られるように、レーザ相互作用層100が染料を含むことができる。好適な染料材料としては、たとえば、Epolin, LLC(ニュージャージー州、Newark)から市販されるものが挙げられる。染料は、レーザの波長(たとえば、UVまたはIR)で高い吸収性を有するように選択することができるが、他の波長(たとえば、可視波長)で比較的低い吸収性を有することができる。たとえば、レーザ相互作用層は、バルクレンズ材料の2倍以上(たとえば、x3以上、x5以上、x10以上、x20以上)である吸収係数を有することができる。そのようなレーザ相互作用層は、レーザ相互作用層がその上にあってさえ、可視スペクトルにわたって、ほぼ透明で無色なレンズを実現することができる。光学要素に取って代わるため、上部層のレーザ波長での吸収係数は、光学要素を形成するよう設計される材料中より低くなるように選択することができる(たとえば、x1/3以下、x1/5以下、x1/10以下、x1/20以下)。
【0028】
一般的に、様々な異なるレーザを使用し、好適なレーザ相互作用層と対にして、光学要素を形成することができる。いくつかの実施形態では、高いピークパワーを有する超高速レーザ(フェムト秒またはピコ秒レーザ)を使用することができる。たとえば、市販のフェムト秒レーザシステムを使用して、レーザ相互作用層100を照射し、所望の形状およびサイズの光学要素を形成することができる。
【0029】
一般的に、レーザ相互作用層100は、層を形成する材料にとって好適な従来型のコーティング方法または堆積方法を使用して、表面115上に堆積することができる。たとえば、レーザ相互作用層は、熱蒸着、電子ビーム支援蒸着、物理的気相堆積(PVD)、スパッタリング、化学的気相堆積(CVD)、原子層堆積(ALD)、液相コーティング(たとえば、スピンコーティングまたはディップコーティング)、スプレーコーティング、重合、または任意の他の好適な技法を使用して、レンズ表面上に形成することができる。レーザ相互作用層100は、コーティング後に蒸発される溶液から堆積することができる。
【0030】
光学要素の形成後、レーザ相互作用層は、完成したレンズの部分として残ることができ、または(たとえば、好適な溶媒でリンスすることによって)除去することができる。
【0031】
一般的に、たとえばレーザ放射への露光の前後に、他の層をレーザ相互作用層の上に堆積することができる。たとえば、図2を参照して、レンズ12は、レンズ本体111、レンズの表面115上のレーザ相互作用層200、およびレーザ相互作用層200の上部上の別の層210を含む。層210は、たとえば、ハードコートまたは疎水性コーティングであってよい。一般的に、層210は、光学要素の形成に無関係な機能(たとえば、機械的および/または化学的保護)を提供することができる。加えて、いくつかの場合に、層210は、レーザ光の吸収特性に影響を及ぼす場合がある。
【0032】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の層を、レーザ相互作用層とレンズの間のレンズ表面上に堆積することができる。たとえば、図3を参照して、レンズ13は、レーザ相互作用層301とレンズの表面115の間に第1の層311を含む。第2の層321が、レーザ相互作用層301の上部上に形成される。
【0033】
ある種の実施形態では、第1の層311は、動作レーザ波長で放射を反射するように選択される。そのような構成は、レーザ相互作用層301によるレーザ放射の吸収をさらに増大させる働きをすることができる。というのは、さもなくばレンズ本体111の中に送達されるレーザ放射がレーザ相互作用層301の中へ戻るよう反射されるためである。そのような層の例は、レーザ波長で光を反射するように設計される(たとえば、ブラッグ反射器を形成する)誘電体多層スタックである。
【0034】
いくつかの実施形態では、レンズの表面115に最も近い第1の層311は、UVおよび/または青色光ブロック層である。そのような配置構成は、光学要素を形成するためUVまたは青色レーザ放射が使用される場合に有利となることができる。
【0035】
追加層311および321のいずれかまたは両方は、光学要素が形成されるときのレーザ露光に起因する損傷から下にあるレンズ材料を保護する機能を実施することができ、たとえば、レーザ光にさらされるときに層がマイクロクラックまたは任意の他の望ましくない特徴を形成しないように、レーザ光露光に物理的に耐えるように構成することができる。代替または追加で、追加層311および/または321は、たとえば、隣接する層間の接着を向上することおよび/または差異膨張を低減することによって、レーザ露光前、レーザ露光中、またはレーザ露光後の、多層構造の剥離を減らすことができる。
【0036】
別の例では、レーザ相互作用層は、バルク材料にトランスボンディングを介して付着される。トランスボンディングプロセスとしては、例として、接着剤の使用またはフィルムインサート成形が挙げられる。
【0037】
さらに別の例では、レーザ相互作用層は、付加的製造プロセス中でフィルムインサートを使用する技法を含む、3Dプリント技法を介して形成される。
【0038】
より一般的に、レーザ相互作用層は、たとえば、アンチスクラッチコーティング(たとえば、多層ハードコートを含むハードコート)、UV保護コーティング、フォトクロミックコーティング、および反射防止(AR)コーティングなどといった1つまたは複数の層とともに、レンズ表面上の多層スタックの部分をなすことができる。レーザ相互作用層は、レンズ表面での光学要素の形成を容易にするため、多層スタック中の任意の好適な位置にあってよい。
【0039】
いくつかの例では、レーザ相互作用層は、レーザ露光による光学要素の形成を容易にすることに加えて追加の機能を働かせることができる。たとえば、スペクトルのUV部分で光を強く吸収することによって、レーザ相互作用層は、UVレーザへの露光による光学要素形成を容易にすることに加えて、UV保護コーティングとして働くことができる。同様に、レーザ相互作用層は、ブルーカットレンズ(たとえば、眼精疲労を引き起こすと知られている、たとえば380~420nmの光の量を減らすレンズ)中で青色光フィルタ層として働くことができる。
【0040】
ある種の例では、レーザ相互作用層は、1つより多い構成要素層から構成される。たとえば、レーザ相互作用層は、レーザ波長で放射を強く吸収するその別の層より下で(すなわち、レンズ表面により近くで)、レーザ波長で光を強く反射する構成要素層を含むことができる。そのような反射器は、レンズ本体に入るレーザ放射の量を減らすこと、および、反射層によって反射される光の2回のパスに起因した吸収層中のレーザ光の量を増やすことといった、2重の目的の役に立つことができる。他の波長では比較的透過性である一方で、特定の波長で光を強く反射するため、多層誘電体スタックを使用することができ、そのようなスタックをこの目的で使用することができる。
【0041】
上記の例が、レンズの表面115の形状を局所的に変化させることによって光学要素を形成することを特徴とする一方で、いくつかの実装形態では、レンズ表面がほぼ変わらないままであり、光学要素は、レンズ表面におけるレンズを形成するバルク材料の光学特性を変化させることによって形成される。たとえば、図4を参照すると、コーティング済みレンズ14は、レンズ本体111と、表面115の形状を変えることなく表面115においてレンズ本体111のバルク材料中の光学要素430および431の形成を容易にするレーザ相互作用層400とを含む。たとえば、レーザ相互作用層は、光学要素を形成するためバルク材料の屈折率が変化する温度にレンズのバルク材料を局所的に加熱することができる。
【0042】
以前の例では、レーザ相互作用層は、レンズ表面上に配設される層またはレンズ表面上に配設される層のスタックの部分である。しかし、他の実施形態が可能である。たとえば、レーザ相互作用層は、レンズ表面でレンズのバルク材料の中に組み込まれる層であってよい。そのような例は図5に図示されており、ここで、レンズ15がレーザ相互作用層500を含み、レーザ相互作用層500は、表面115を通してレンズ本体111のバルク中に材料を注入することによって形成される。いくつかの実施形態では、レーザ相互作用層は、レンズ表面でレンズのバルク材料の中に拡散することができる、動作レーザ波長での放射を吸収するための染料であってよい。
【0043】
いくつかの例が記載されてきており、また他の例が可能である。たとえば、上述では、レンズの片面上のレーザ相互作用層を特徴としている一方で、いくつかの例では、両方のレンズ表面が、たとえばレンズの対向する表面に光学要素を形成するために、レーザ相互作用層を含むことができる。
【0044】
図6Aを参照すると、眼鏡101を調整するための例示システム600は、入力端末110およびレンズ変化システム130と通信するデータ処理装置120を含む。眼鏡101は、眼鏡フレーム170に取り付けられるレンズ150および151を含む。各レンズ150、151は、カスタマイズプロセスの部分として、レンズ変化システム130によってレンズ上に形成される光学要素のパターン155、156を含む。
【0045】
入力端末110は、システム600の動作を容易にするソフトウェアアプリケーションを走らせる、たとえばコンピュータ端末またはモバイルデバイス(タブレットコンピュータまたはモバイルフォンなど)であってよい。データ処理装置120は、レンズ上に形成される光学要素のパターン155についての情報124を取り出すまたは計算する(たとえば1つまたは複数のコンピュータプロセッサを有する)処理モジュール122を含む。たとえば、光学要素は、パターン155に従って配置することができる小型レンズ、散乱中心、および/または、フレネルレンズ要素を含むことができる。いくつかの実施形態では、光学要素は、眼鏡101のユーザにおける近視の進行を弱める。選択する際に、システム600は、レンズ変化システム130にパターン155についての情報125を送信する。
【0046】
システム600は、様々なレンズ140の変化を可能にして光学要素のパターン155を含むように設計される。すなわち、システムは、多数の眼科用レンズ会社から市販されるレンズブランクを変化させるように設計される。これらには、単焦点処方レンズ、多焦点レンズ、および平レンズが含まれる。レンズ140は、一般的に、ガラスまたはプラスチックから形成される。変化させるためのレンズ142は、典型的には、ユーザの必要性(たとえば、Rx)および選好(たとえば、レンズ材料、コーティング)に従って選択される。
【0047】
レンズ変化システム130は、選択されたレンズ142を露光装置134に対して、またはその逆に位置決めするプラットフォーム132を含む。実装に依存して、露光装置134は、レンズの表面上に材料を堆積して光学要素を形成すること、または、レンズ142の表面および/もしくはバルクを変化させる放射にレンズをさらして光学要素を形成することのいずれかを行うことができる。レンズ変化システム130は、レンズ位置合わせモジュール、たとえば、光学的位置合わせモジュールまたは物理的ストップをやはり含み、これがレンズ142を露光装置134に対して位置合わせして、レンズとパターンの間で指定される相対的位置合わせに従ってパターンが形成されるのを確実にする。
【0048】
システム600は、レンズ142と露光装置134の間の相対的な方向を制御し、パターン155に従ってレンズ上の光学要素を形成する。レンズ142上に光学要素152のパターン155を形成した後、一般的に縁部処理(エッジング)と呼ばれるプロセスで、レンズの縁部が整形され(たとえば、研磨され)、眼鏡フレーム170と適合させる。あるいは、レンズ142の光学要素152のパターン155を形成する前に、レンズの縁部が整形されて、眼鏡フレーム170と適合させる。眼鏡フレーム170中に取り付けるために、第2のレンズが同じ方法で変化されて、第2のレンズ151が設けられる。
【0049】
図6Aに略記されるプロセスは、追加ステップを含むことができる。たとえば、パターン155の付着の前または後のいずれかで、一方または両方のレンズ表面に追加コーティングを付着することができる。例としては、UVまたは青色光フィルタ、反射防止コーティング、フォトクロミックコーティングまたは層、偏光子、ミラーコーティング、淡色、およびハードコートが挙げられる。いくつかの場合に、パターン155の付着の前または後のいずれかで、レンズ表面の追加整形が実施され、たとえばユーザに対して多焦点レンズをカスタマイズする。
【0050】
このプロセスは、眼鏡店、物流センタ、光学研究所、または集中製造施設で実行することができる。レンズ変化は、レンズ在庫からのレンズに現地で、既存の眼鏡調整プロトコルと協調して実施することができるため、カスタマイズしたパターンの光学要素などといった、あるパターンの光学要素を含む、高度にカスタマイズした1対の眼鏡のジャストインタイム配送が可能になる。
【0051】
図6Bをやはり参照して、いくつかの実装形態では、アイケアの専門家のオフィスで完全に実施することができる、または、物流センタ、光学研究所、もしくは集中製造施設と提携して実施することができるシーケンス180によって、個人用眼鏡101が実現される。第1のステップ181では、アイケアの専門家は、たとえば、被写体を屈折させることによって、患者の処方を決定する。このステップは、パターンが形成される眼科用レンズの屈折力を決定する。患者は、患者が通常の処方の眼鏡について行うのと同じ方法で、眼鏡フレームをやはり選ぶ。いくつかの実施形態では、眼鏡フレームを小売店から選ぶことができ、レンズ形状は、(i)トレース形状をデータベースから取り出すことができるようにモデル番号を提供すること、(ii)店でフレームトレースプロセスを実施してトレース形状を電子的に提供すること、または、(iii)縁部処理施設がトレース形状を得ることができるように、縁部処理の場所にフレームを発送することによって、縁部処理の場所と連絡することができる。代替実施形態では、眼鏡フレームは、「静的フレームボード」から選択することができ、ここで、1つまたは複数の店内のモデルが、縁部処理施設で在庫中の眼鏡フレームと一致する。
【0052】
アイケアの専門家が、パターンを選択するための追加情報をやはり集めることができる。一般的に、パターンは、患者用レンズ処方(Rx)、患者の瞳サイズ、患者の両眼転導、患者の瞳孔間距離、患者の凝視角、患者の近視進行程度、近視に対する患者の素因(たとえば、遺伝的素因または挙動の影響要因)、眼鏡フレームに取り付けられた際のレンズの最終的形状およびサイズ、他に対して光学要素のパターンが目につく程度、患者の快適度の程度、患者にとってのフレームに対する所与の瞳についての光学中心高、患者の好みまたは選択(たとえば、パターンの外形)、およびアイケアの専門家の好み(たとえば、処置効果の調整量)などといった要因を考慮に入れることができる。
【0053】
次のステップ182では、システムは、患者に好適な光学要素のパターンを識別する。この識別は、(たとえば、パターンのデータベース中に記憶された)いくつかの予め確立されたパターンから選択すること、または、パターン生成アルゴリズムに従って新しいパターンを計算することを含むことができる。たとえば、パターンは、ユーザが選択したある種の外形または密度プロファイルを有するようにシステムが計算することができる。
【0054】
変化させることができるパターン用のパラメータとしては、たとえば、光学要素のタイプ(たとえば、小型レンズ、散乱中心、フレネルレンズ)、光学要素のサイズ、それらの密度、およびそれらが占有する区域の形状が挙げられる。さらなるパラメータとしては、任意の透明な開口のサイズ、形状、および位置、ならびに、レンズ上のパターンの位置が挙げられる。これらの各々は、装着者上のパターンの所望の光学的効果(たとえば、周辺視におけるコントラスト低減の量および透明な開口角範囲)、および/または装着される眼鏡を見る人に対するパターンの顕著性に依存して、個別化することができる。
【0055】
一度システムがパターンを確立させると、ステップ183において、パターンについての情報がレンズ変化システムへと送信される。この情報は、レンズ変化システム130によって読み取り可能な形式の、1つまたは複数のデータファイルを含むことができる。たとえば、画像を生成するのに好適な市販ソフトウェア(たとえば、Visio、PowerPoint、またはWordなどのMicrosoft Office製品、Adobe Photoshop、Adobe Illustrator、SolidWorks)を標準的なドライバソフトウェアと一緒に使用して、レンズ変化システム130用の制御信号を生成することができる。たとえば、パターンは、WinLase Professional Job (WLJ)、WinLase Professional Object (WLO)、HPGL Plotter File (PLT)、Windows Enhanced Metafile (EMF)、Windows MetaFile (WMF)、AutoCad (DXF)、AutoCad (DWG)、Adobe Illustrator (AI)、CorelDRAW (CDR)、Excellon2 File (EX2)、Windows Bitmap (BMP)、JPEG Bitmap (JPG)、CompuServe Bitman (GIF)、PaintBrush (PCX)、TruView Job (JOB)、またはTruView Object (MCL)ファイルなどといったファイル形式で指定することができる。そのようなファイルにエンコードされるパターンは、たとえば、AppleScript、JavaScript、Python、C++などといったコンピュータプログラミング言語を使用するコンピュータコードを使用して生成することができる。代替または追加で、特別注文のソフトウェアおよびファイル形式を使用することができる。そのようなパターンは、アイケアの専門家または患者などといった特定のユーザからの入力パラメータを使用して、ソフトウェアによって生成することができる。そのような特別注文のパターンは、24時間以下(たとえば、12時間以下、1時間以下、50分以下、40分以下、30分以下、20分以下、10分以下、たとえば、1分以下、40秒以下、30秒以下、10秒以下、1秒以下)などといった、迅速なジャストインタイム製造を可能にする短時間で生成することができる。
【0056】
次に、ステップ184では、レンズ上の指定された位置にパターンを形成するため、レンズ変化システム130は、レンズをシステムに対して、またはその逆に位置合わせする。これは、レンズをレンズ変化システムに対して物理的に動かすこと、ならびに/または、レンズの場所に適応させるため、パターンを並進させ、回転させ、および/もしくはパターンのサイズをスケーリングするソフトウェア調整を含むことができる。一度位置合わせすると、ステップ185で、光学要素を所望のパターンに形成するため、パターンについての情報に従ってシステムがレンズを変化させる。
【0057】
ステップ186で、レンズ縁部が整形され、整形されたレンズがフレーム中に取り付けられる。
【0058】
一般的に、これらのステップは、他の順序で行うことができる。たとえば、ステップ185で光学要素がレンズ上に形成される前に、ステップ186でレンズを縁部処理および整形することができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、レンズとパターンの両方が径方向に対称的である。言い換えると、レンズとパターンの両方が中心軸の周りで対称性を有する。これは、回転対称性と呼ぶこともできる。たとえば、平レンズまたは球面屈折力だけを有するレンズは、円形の縁部を備えるとき、径方向対称性レンズである。一般的に、円形の縁部を有するレンズは、表面の湾曲が縁部によって画定される円の平面から外に広がる場合であってさえ、円形レンズと呼ばれる。
【0060】
さらに、光学要素は、パターンの幾何学的中心の周りで径方向対称性を有するパターンに配置することができる。そのようなパターンは、一般的に円形の周辺部を有し、ユーザがどちらの径方向で見るかにかかわらず光学的に同じ機能を行う。そのような場合に、光学要素の環状領域内の透明な開口の中心などといった、パターンの幾何学的中心を、レンズの光学中心に位置合わせすることができる。そのような球面レンズでは、光学中心は、レンズの幾何学的中心と一致することが多い。そのような場合には、レンズへのパターンの位置合わせは、たとえば、レンズ測定計を使用して光学中心を測定およびマーキングし、レンズ上でパターンを形成する以前に、マーキングした光学中心とパターンを位置合わせすることによって、達成することができる。
【0061】
しかし、より一般的には、上記の技法は、径方向対称性レンズまたは径方向非対称性レンズ上に、回転非対称性パターンを形成するためにも使用することができる。一般的に、これは、光学要素を形成する前に、レンズと、非対称性を考慮したパターンとの間の相対的位置合わせを達成することを含む。システムは、相対的位置合わせが指定されたようになるように、必要な位置合わせを調整する。いくつかの実施形態では、構造的および/または光学的位置合わせ用の特徴をレンズ上に形成することができ、そのことによって、光学要素を形成する前に、レンズ変化システム内でレンズの位置合わせが可能になる。
【0062】
図7を参照すると、レンズの表面上に光学要素を形成するための例示のレーザシステム700は、レーザ320、レーザビーム減衰器330、合焦光学系340、直角プリズム鏡350、およびステージ370を含む。レーザ320は、レーザビームを鏡350に向け、鏡350は、ビームをレンズ302にステアリングし、レンズ302は、ステージ370によって鏡350に対して位置決めされる。アクチュエータ360(たとえば、圧電アクチュエータ)が鏡350に取り付けられる。レーザシステム300は、レーザ320、ビームチョッパ330、およびアクチュエータ360と通信するコントローラ(たとえば、コンピュータコントローラ)をやはり含む。
【0063】
レーザビーム減衰器330および合焦光学系340は、ビーム経路中に位置決めされる。ビーム減衰器330は、レンズ302に対して露光されるレーザエネルギーを調整および制御(たとえば、パルス出力)できるように、ビームを減衰する。一般的に、1つまたは複数の屈折力のある要素(たとえば、1つまたは複数のレンズ)を含む合焦光学系340は、レンズ表面上のビームによって変化される区域を所望のパターン特徴サイズに整形することができるように、レンズ302の表面上の十分小さいスポットにビームを合焦する。アクチュエータ360は、パルス状ビームをレンズ表面上の異なる目標点にスキャンするようにビームに対して鏡350の向きを変える。コントローラ310は、レーザシステムが予め規定された光学要素パターンをレンズ上に形成するように、レーザ320、ビーム減衰器330、およびアクチュエータ360の動作を調整する。
【0064】
いくつかの実装では、ステージ370がアクチュエータをやはり含む。ステージアクチュエータは、たとえば、ビーム伝播方向に垂直な2つの横方向にレンズを動かす、多軸アクチュエータであってよい。代替または追加で、アクチュエータは、ビーム方向に沿ってステージを動かすことができる。ビーム方向に沿ってステージを動かすのは、レンズ表面の曲率にかかわらず、ビームの合焦位置にレンズ表面の露光部分を維持し、それによって、レンズ表面にわたってほぼ一定のビームサイズおよびレーザエネルギー密度を維持するために使用することができる。ステージアクチュエータは、コントローラ310によって制御することもでき、コントローラ310は、このステージの運動をシステムの他の要素と調整する。いくつかの実施形態では、鏡アクチュエータの代わりにステージアクチュエータが使用される。
【0065】
さらに、いくつかの実装形態では、レンズの光学的または構造的特徴の向きおよび位置は、システム600および700への導入以前に、たとえば、焦点距離計、レンズ測定計、光学的マッパ、特徴検出ソフトウェアを有するCCDカメラ、機械的構造物上で捕らえるための機械的固定具またはトレーサなどを使用して捕捉される。レンズは、次いで、たとえばクランプ、固定具、治具、吸引カップなどを使用した以前の測定に基づいて知られている向きおよび位置で定位置に保持され、向きおよび位置の情報を失うことなく、システム600および700に導入される。この搬送は、たとえば、ロボットアーム、ホルダまたは知られている位置および向きへの手動搬送、固定されたロック位置での回転ターンテーブルなどの使用によって、実現することができる。あるいは、上述の例を含む、レンズの光学的および構造的特徴の向きおよび位置を捕捉するための装置は、たとえば、作動ステージ370、コンベヤ、または回転テーブル中で、システムの他の構成要素と一体化することができる。一般的に、実装形態は、レンズ上の光学要素のパターンの所望の配置を達成するため、機械視覚および様々なシステム構成要素へのレンズの自動位置合わせを含むことができる。
【0066】
一般的に、レーザ320は、表面でレンズ材料を変化させるのに十分なエネルギーを有する光を生成することが可能な任意のタイプのレーザであってよい。ガスレーザ、色素レーザ、固体レーザ、および半導体レーザを使用することができる。一般的に、たとえば機械加工用途に好適な多くのレーザ技術を使用することができる。ガスレーザは、ある種のエキシマレーザ(たとえば、308nmでのXeClおよび353nmでのXeF)を含む。使用できる別の種類のガスレーザはある種の赤外線レーザを含み、(9.4μmまたは10.6μmの放出波長を有する)COレーザなどを使用することができる。たとえば、Universal Laser Systems, Inc. (Scottsdale, AZ)によって製造されたCOレーザシステム(たとえば、60W VLS 4.60システム)などといった、市販のレーザシステムを使用することができる。使用することができる固体レーザの例としては、1μmで放出するイッテルビウムドープガラスレーザおよびクロムドープアレキサンドライトレーザ(たとえば、可視波長または近IR波長を放出する)が挙げられる。使用できる半導体レーザの例としては、InGaAsPまたはInGaAsPレーザが挙げられる。
【0067】
パルス持続期間およびパルスエネルギーは、典型的には、所望のサイズの光学要素を提供するために、レンズ表面である量の材料を変化させるように選択される。
【0068】
上記の例のレンズ変化システムがレンズ表面上に光学要素を形成するステップを含む一方で、代替または追加で、光学要素をレンズ材料自体の中に埋め込むことができる。たとえば、レンズ材料およびレーザ露光システムは、露光によって、バルクレンズ材料自体の屈折率に局所的変化をもたらし、レンズの本体中に(たとえば、散乱中心または小型レンズといった)光学要素を形成するように選択することができる。
【0069】
図8Aを参照すると、同時に両目の治療を可能にする近視低減眼鏡800が示される。近視低減眼鏡800は、1対の眼鏡フレーム801、およびフレームに取り付けられる眼科用レンズ810aおよび810bから構成される。一般的に、眼科用レンズは、平レンズ、単焦点レンズ(たとえば、正または負の屈折力を有する)、または多焦点レンズ(たとえば、2重焦点レンズまたは累進多焦点レンズ)であってよい。眼科用レンズ810aおよび810bは、各々が、それぞれコントラスト低減区域830aおよび830bによって囲まれる、透明な開口820aおよび820bをそれぞれ有する。透明な開口820aおよび820bは、装着者の軸上視位置と一致するように位置決めされ、一方で、コントラスト低減区域830aおよび830bは、装着者の周辺視に対応する。やはり図8Bを参照すると、コントラスト低減区域830aおよび830bは、それらの区域を通り装着者の目にいたる光を散乱することによって、装着者の周辺視覚中の物体のコントラストを低下する、光学要素840の配列から構成される。一般的に、光学要素840は、上で記載した技法を使用して実現することができる。
【0070】
透明な開口のサイズおよび形状を変えることができる。一般的に、透明な開口は、装着者の視力を最適に(たとえば、20/15または20/20に)補正することができる視野円錐を装着者にもたらす。いくつかの例では、開口は、約0.2mm(たとえば、約0.3mm以上、約0.4mm以上、約0.5mm以上、約0.6mm以上、約0.7mm以上、約0.8mm以上、約0.9mm以上)~約1.5cm(たとえば、約1.4cm以下、約1.3cm以下、約1.2cm以下、約1.1cm以下、約1cm以下)の範囲に(xy平面内に)最大寸法を有する。ここで、開口は、たとえば図8Aに描かれたように円形であり、この寸法は、円の直径に対応する(すなわち、A=A)が、非円形(たとえば、楕円形、多角形、A≠A)の開口も可能である。いくつかの例では、レンズは、全く透明な開口を有さず、光学要素が視軸の全体にわたって含まれる。いくつかの例では、光学要素の大きさは、たとえば光学要素のサイズおよび形状を変えることによって、開口区域にわたって変化させることができる。また、光学要素の密度を開口区域にわたって変化させることができる。
【0071】
透明な開口は、見る人の視野において、約30度以下(たとえば、約25度以下、約20度以下、約15度以下、約12度以下、約10度以下、約9度以下、約8度以下、約7度以下、約6度以下、約5度以下、約4度以下、約3度以下)の立体角の範囲を定めることができる。水平および垂直の視野平面で、範囲を定められた立体角は、同じであってよく、異なっていてよい。
【0072】
一般的に、コントラスト低減区域830aおよび830b中の光学要素パターンは、様々な設計パラメータに基づいて選択して、ユーザの網膜上に散乱する所望の程度の光をもたらすことができる。一般的に、これらの設計パラメータは、たとえば、光学要素密度、ドットのサイズおよび形状、ならびにドットの屈折率を含み、以下でより詳細に議論される。理想的には、パターンは、中心窩上の高い視力、および網膜の他の部分上の画像コントラストの低減、ならびに、装着者に長時間の連続した装着を可能にさせる十分低い不快感をもたらすように選択される。たとえば、子供が、1日の、全部でなくともほとんどの間、眼鏡を装着するのが快適であることが望ましい場合がある。
【0073】
ユーザの目の中心窩上の画像コントラストの低減は、ユーザの網膜の他の部分上の画像コントラストの低減よりも、目の拡張を制御するのに効果が低いと信じられる。したがって、ドットパターンは、ユーザの中心窩へと散乱される光を減らす(たとえば、最小化する)ために調整することができ、一方、網膜の他の部分の光の比較的多くが散乱される。中心窩上の散乱光の量は、透明な開口820aおよび820bのサイズにそれぞれ影響を受ける場合があるが、光学要素、特に透明な開口に最も近いものの性質によっても影響を受ける場合がある。いくつかの例では、たとえば、透明な開口に最も近い光学要素は、さらに離れたものよりも光の散乱の効果が低いように設計することができる。
【0074】
ある実施形態では、光学要素は、網膜上に均一な光の分布(低いコントラスト)を作るため、狭い角度の散乱を減らし広い角度の散乱を増やして送出する一方で、散乱中心の寸法を通して明瞭度が保たれるように設計することができる。たとえば、光学要素は、著しく広い前方散乱角度(たとえば、2.5度より大きい角度で偏向される、10%より多く、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上など)を生成するように設計することができる。狭い前方散乱角度、すなわち2.5度以内を、比較的低く(たとえば、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下)保つことができる。
【0075】
一般的に、様々な異なる計測法を使用して、眼鏡ベースの近視管理解決策で使用するため光学要素パターンを最適化するために、光学要素パターンの性能を評価することができる。たとえば、光学要素パターンは、たとえば異なる光学要素パターンを有するレンズの物理的な測定に基づいて、経験的に最適化することができる。たとえば、光の散乱は、ヘイズのための国際試験規格(たとえば、ASTM D1003およびBS EN ISO 13468)などといった、ヘイズ測定に基づいて特徴付けることができる。従来型のヘイズ測定器、たとえば、全体としてどれだけ多くの光がレンズを通して透過されるか、分散されずに透過される光の量(たとえば、0.5度以内)、どれだけ多くが2.5度(ヘイズ)より大きい角度で偏向されるか、および透明度(2.5度以内の量)を測定する、(Haze-Gard Plus instrumentなどといった)BYK-Gardnerヘイズ測定器を使用することができる。散乱パターンを経験的に最適化するため光の散乱を特徴付けるために、他の機器も使用することができる。たとえば、約2.5度の環状のリング中の光を測定することにより光の拡散を測定する機器を使用することができる(たとえば、Hornell製の機器)。
【0076】
代替または追加で、光学要素パターンは、レイトレーシングコンピュータモデリングソフトウェア(たとえば、ZemaxまたはCode V)によって最適化することができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、光学要素パターンは、網膜上の光学要素によって提供される光の解像度および分布を表す点像分布関数の最適化に基づいて設計することができる。たとえば、光学要素のサイズ、形状、および間隔は、中心窩の外側の網膜が、網膜のこの領域におけるコントラストを低減(たとえば、最小化)するために散乱光で均質に覆われるように、網膜の照明を均等に広げるように変えることができる。
【0078】
代替または追加で、光学要素パターンは、人間の視覚システムの空間周波数応答と呼ばれる、変調伝達関数の最適化に基づいて設計することができる。たとえば、光学要素のサイズ、形状、および間隔は、空間周波数の範囲の減衰を滑らかにするために変えることができる。光学要素パターンの設計パラメータは、所望に応じて、ある空間周波数を増減するために変えることができる。一般的に、視覚の対象の空間周波数は、細かい側で1度当たり18サイクル、粗い側で1度当たり1.5サイクルである。光学要素パターンは、この範囲内の空間周波数のあるサブセットで信号の増加を可能にするように設計することができる。
【0079】
網膜上にシミュレーションした画像を投影するなどといった他のツールを使用して、光学要素パターンを通して目が見ているものをシミュレーションすることができる。たとえば、視力に直接関係することができる、いくつかのライブラリ画像ファイルが光学シミュレーションソフトウェアで利用可能である。正常な視力(20/20)は、物体空間中の5分の円弧に対応するEなどの5本棒の文字の解像度に対応するために、0.024mmの網膜画像サイズが生成される。網膜上のシミュレーションされた文字Eは、光学要素パターンの存在で画像品質にばらつきを見せる。これは、光学システムにおける変化の前後での網膜画像を比較するとき有用となることができる。
【0080】
上述の計測法を使用して、ドットのサイズおよび/または形状に基づいて光学要素パターンを評価することができ、その両方を所望に応じて変えることができる。たとえば、光学要素は、ほぼ丸、細長(たとえば、楕円)、または不規則形状であってよい。一般的に、光学要素は、可視光を散乱するのに十分大きいが、通常使用期間に装着者によって分解されないように十分小さい寸法(たとえば、図1Bに図示されるような直径)を有するべきである。たとえば、光学要素は、約0.001mm以上(たとえば、約0.005mm以上、約0.01mm以上、約0.015mm以上、約0.02mm以上、約0.025mm以上、約0.03mm以上、約0.035mm以上、約0.04mm以上、約0.045mm以上、約0.05mm以上、約0.055mm以上、約0.06mm以上、約0.07mm以上、約0.08mm以上、約0.09mm以上、約0.1mm)~約1mm以下(たとえば、約0.9mm以下、約0.8mm以下、約0.7mm以下、約0.6mm以下、約0.5mm以下、約0.4mm以下、約0.3mm以下、約0.2mm以下、約0.1mm)の範囲に(xy平面内で測定される)寸法を有することができる。
【0081】
たとえば、光の波長に相当する寸法(たとえば、0.001mm~約0.05mm)を有するより小さい光学要素では、光の散乱は、レイリー散乱またはミー散乱と考えることができることに留意されたい。より大きい光学要素、たとえば、約0.1mm以上では、光の散乱は、幾何学的散乱に起因することができる。
【0082】
一般的に、光学要素の寸法は、各レンズにわたって同じであってよく、または変わってよい。たとえば、寸法は、たとえば透明な開口から測定したときの光学要素の位置の関数として、および/またはレンズの縁部からの距離の関数として増減することができる。いくつかの実施形態では、突起の寸法は、レンズの中心からの距離が増えると単調に変わる(たとえば、単調に増加する、または単調に減少する)。いくつかの場合には、寸法の単調な増加/減少は、レンズの中心からの距離の関数として、光学要素の直径を線形的に変えることを含む。
【0083】
図8Bに示される光学要素は、各方向に均一な量だけ離間した正方格子上に配置される。これは、y方向ではD、x方向ではDによって示される。一般的に、近視の低減のため、見る人の周辺で十分なコントラスト低減を光学要素が集合的にもたらすように、光学要素は間隔をあけられる。典型的には、(隣接ドットは重ならない、または融合しないという条件で)光学要素間隔が小さくなると、コントラスト低減が大きくなる。一般的に、DおよびDは、約0.05mm(たとえば、約0.1mm以上、約0.15mm以上、約0.2mm以上、約0.25mm以上、約0.3mm以上、約0.35mm以上、約0.4mm以上、約0.45mm以上、約0.5mm以上、約0.55mm以上、約0.6mm以上、約0.65mm以上、約0.7mm以上、約0.75mm以上)~約2mm(たとえば、約1.9mm以下、約1.8mm以下、約1.7mm以下、約1.6mm以下、約1.5mm以下、約1.4mm以下、約1.3mm以下、約1.2mm以下、約1.1mm以下、約1mm以下、約0.9mm以下、約0.8mm以下)の範囲にある。例として、光学要素間隔は、0.55mm、0.365mm、または0.240mmであってよい。
【0084】
図8Bに示されるドットがx方向およびy方向に等しい間隔で配置される一方で、より一般的に、各方向に間隔が異なってよい。さらに、光学要素は、正方形でない格子に配列することができる。たとえば、六角形格子を使用することができる。不規則な配列も可能である。たとえば、ランダムまたはセミランダムなドット配置を使用することができる。ランダムなパターンの場合に、与えられる寸法は、x方向およびy方向のドットの平均離隔距離となる。
【0085】
一般的に、光学要素によるレンズのカバレッジは、所望に応じて変えることができる。ここで、カバレッジとは、xy平面上に投影したときの、光学要素に対応する、レンズの全区域の比率のことを呼ぶ。典型的には、光学要素のカバレッジが低いと、光学要素のカバレッジが高いよりも、少ない散乱がもたらされることになる(個々の光学要素が別個であること、すなわち、光学要素がより大きい光学要素を形成するように融合しないことを仮定する)。光学要素カバレッジは、10%以上~約75%に変わることができる。たとえば、光学要素カバレッジは、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%または55%などであってよい。光学要素カバレッジは、たとえば、長期間(たとえば一日中)、装着者が眼鏡を自主的に装着するのに十分快適な周辺視のレベルを提供するため、ユーザの快適レベルに従って選択することができる。
【0086】
図8Bでは、光学要素は円形の占有面積を有すると描かれるが、より一般的に、光学要素は、他の形状を有することができる。たとえば、光学要素は、楕円形の光学要素の場合など、1つの方向(たとえば、x方向またはy方向)に細長くてよい。いくつかの実施形態では、光学要素は形状が不規則である。
【0087】
ドット間のコントラスト低減区域830aおよび830b中のレンズに入射するシーンからの光は、ユーザの網膜上のシーンの画像に寄与するが、一方で、光学要素上に入射するシーンからの光は寄与しないと信じられる。さらに、光学要素に入射する光は、依然として網膜に透過され、そのために、網膜における光の強度を実質的に減少させることなく画像コントラストを低減する効果を有する。したがって、ユーザの周辺視野におけるコントラスト低減の量が、光学要素によってカバーされるコントラスト低減区域の表面区域の比率と相関する(たとえば、ほぼ比例する)ことが信じられる。一般的に、光学要素は、コントラスト低減区域830aおよび830bの(xy平面で測定した)面積の少なくとも10%(たとえば、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、90%以下など、80%以下、70%以下、60%以下、たとえば、10%~20%、10%~30%)を占有する。
【0088】
一般的に、光学要素パターンは、装着者の周辺視の領域中で見る人の視覚を著しく劣化することなく、装着者の周辺視中の物体の画像のコントラストを低減する。ここで、周辺視とは、透明な開口の領域の外側の視野のことを呼ぶ。これらの領域中の画像コントラストは、決定されたようなレンズの透明な開口を使用して見られた画像コントラストに対して、40%以上(たとえば、45%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上)低減することができる。コントラスト低減は、各個別の場合の必要に従って設定することができる。典型的なコントラスト低減は、約50%~55%の範囲であると信じられる。50%未満のコントラスト低減は、非常に軽い場合に使用することができ、一方で、より傾向がある被験者は、55%のコントラスト低減より高い必要がある可能性がある。周辺の視力は、主観的屈折によって判定すると、20/30以上(たとえば、20/25以上、20/20以上)に補正することができるが、一方で、依然として重要なコントラスト低減に達する。
【0089】
ここで、コントラストとは、同じ視野内の2つの物体間の輝度の差のことを呼ぶ。したがって、コントラスト低減とは、この差の変化のことを呼ぶ。
【0090】
コントラストおよびコントラスト低減は様々な方法で測定することができる。いくつかの実施形態では、コントラストは、制御された条件下で、レンズの透明な開口およびドットパターンを通して得られる、白と黒の正方形のチェッカボードなどといった、標準パターンの異なる部分間の明るさの差に基づいて測定することができる。
【0091】
代替または追加で、コントラスト低減は、レンズの光学的伝達関数(OTF)に基づいて決定することができる(たとえば、http://www.montana.edu/jshaw/documents/18%20EELE582_S15_OTFMTF.pdfを参照)。OTFでは、コントラストは、明るい領域と暗い領域が異なる「空間周波数」で正弦波状に変調される刺激の伝達について規定される。これらの刺激は、バーの間の間隔が1つの範囲にわたって変わる、明るいバーと暗いバーを交番させることのように見える。すべての光学系について、コントラストの伝達は、最も高い空間周波数を有する正弦波状に変わる刺激で最も低い。すべての空間周波数について、コントラストの伝達を記述する関係がOTFである。OTFは、点像分布関数のフーリエ変換を行うことによって得ることができる。点像分布関数は、検出器配列上にレンズを通して点光源を画像化し、点からの光がどのようにして検出器にわたって分散されるかを決定することによって得ることができる。
【0092】
相反する測定の場合、OTFは好ましい技法である。
【0093】
いくつかの例では、コントラストは、透明な開口の区域と比較した光学要素によってカバーされたレンズの区域の比率に基づいて推定することができる。この近似では、光学要素に当たるすべての光が全網膜区域にわたって均一に分散されるようになることが仮定され、これによって、画像のより明るい区域で利用可能な光の量が減少し、このことがより暗い区域に光を追加する。したがって、コントラスト低減は、レンズの透明な開口および光学要素パターンを介して行われる光伝達測定に基づいて計算することができる。
【0094】
レンズは、ポリカーボネートから構成することができる。PCに加えて、レンズ自体が、アリルジグリコールカーボネートプラスチック、ウレタンベースモノマ、または他の耐衝撃抵抗性モノマからも作ることができる。代替で、レンズは、1.60より大きい屈折率を有するより高密度の高屈折率プラスチックのうちの1つから作ることができる。いくつかの実施形態では、レンズは、より低い屈折率を有する光学的に透過性の材料から作られる(たとえば、CR39は1.50であり、Trivexは1.53である)。
【0095】
上述したように、一般的に、光学要素パターンのサイズ、間隔、および配置を変えることができる。いくつかの例では、光学要素パターンは、たとえば光学要素のサイズおよび/または間隔の勾配を特徴とする。光学要素パターンは、(たとえば、屈折率の不一致および/または各光学要素の形状における勾配に起因する)光学要素の散乱効果の勾配を特徴とすることができる。段階的光学要素パターンは、パターンの顕著性を減らすことができる。たとえば、レンズの透明部分から散乱部分への段階的遷移によって、急峻な遷移よりも目立ちにくくすることができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、レンズは、光学要素パターンがゾーン毎に変わる異なるゾーンを特徴とすることができる。たとえば、図9Aおよび図9Bを参照すると、レンズ900は、透明な開口910、遷移ゾーン920、および散乱ゾーン930を含む。透明な開口910は半径R910を有し、遷移ゾーン920は、内径R910および外径R920を有する透明な開口を囲む環状領域である。レンズの区域の残りが散乱ゾーン930を形成する。
【0097】
遷移ゾーン920は、散乱ゾーン930中の光学要素パターンよりも少なく入射光を散乱するドットパターンを特徴とし、透明な開口から散乱ゾーンにレンズの散乱特性の遷移をもたらす。そのような遷移は、散乱ゾーンが透明な開口に延びる場合にもたらされる散乱と比較して、中心窩への散乱を減らすという点で有利となる場合がある。さらなる利点は、遷移ゾーンがユーザへの光学要素パターンの可視性を減らし、より快適な装着経験を提供することができるという点である。これは、子供にとっては特に重要となる場合がある。ここで、長い期間そのようなレンズを特徴とする眼鏡を子供が定期的に装着する可能性は、子供の快適レベルに依存する。
【0098】
一般的に、遷移ゾーン920中の光学要素パターンが変化する場合がある。いくつかの例では、遷移ゾーンは、光学要素が同じ形状およびサイズを有し均一に離間される均一な光学要素パターンを特徴とする。代わりに、ある例では、遷移ゾーン中の光学要素パターンは、光学要素密度、間隔、および/またはサイズを変化させることを特徴とすることができる。たとえば、光学要素パターンは、透明な開口に最も近くに最も弱い散乱をもたらして、R910からR920に増加する半径距離で散乱を単調増加させるように選択することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、光学要素密度が、R910からR920に(たとえば、線形的に)単調増加する。例として、光学要素直径は、レンズ軸からの半径距離がR910からR920に増加すると、第1の値(たとえば、0.05mm)から第2の値(たとえば、0.17mm)に線形的に増加することができる。代替または追加で、光学要素間隔は、R910からR920に(たとえば、線形的に)単調減少することができる。
【0099】
典型的には、R910は、約1mm~約3mm(たとえば、1.0mm~1.1mm、1.1mm~1.2mm、1.2mm~1.3mm、1.3mm~1.4mm、1.4mm~1.5mm、1.5mm~1.6mm、1.6mm~1.7mm、1.7mm~1.8mm、1.8mm~1.9mm、1.9mm~2.0mm、2.0mm~2.1mm、2.1mm~2.2mm、2.2mm~2.3mm、2.3mm~2.4mm、2.4mm~2.5mm、2.5mm~2.6mm、2.6mm~2.7mm、2.7mm~2.8mm、2.8mm~2.9mm、2.9mm~3.0mm)の範囲にある。
【0100】
920は、約2mm~約6mm(たとえば、2.0mm~2.2mm、2.2mm~2.4mm、2.4mm~2.6mm、2.6mm~2.8mm、2.8mm~3.0mm、3.0mm~3.2mm、3.2mm~3.4mm、3.4mm~3.6mm、3.6mm~3.8mm、3.8mm~4.0mm、4.0mm~4.2mm、4.2mm~4.4mm、4.4mm~4.6mm、4.6mm~4.8mm、4.8mm~5.0mm、5.0mm~5.2mm、5.2mm~5.4mm、5.4mm~5.6mm、5.6mm~5.8mm、5.8mm~6.0mm)の範囲にあってよい。
【0101】
いくつかの実施形態では、光学要素パターンは、規則的な配列に関してランダムに変位した光学要素を含む。ランダムな変位を導入することによって、星状のまぶしさなどといった、規則的に間隔をあけた散乱中心に関連する光学的効果を減らすことができる。たとえば、写真撮影に関係するような星状の効果を説明する、https://www.slrlounge.com/diffraction-aperture-and-starburst-effects/を参照のこと。したがって、光学要素パターン中にランダムな変位を含むことによって、光学要素が均一に離間された同様の光学要素パターンと比較して、ユーザにより快適な経験を提供することができる。代替または追加で、光学要素パターンのランダム化によって、反射光中に現れる光学的効果(たとえば、回折効果または干渉効果)を減らして、観察者への光学要素パターンの目立ちやすさを減らすことができる。
【0102】
ランダムな変位は図9Cに図示されており、図9Cでは、隣接する格子サイトがx方向に互いに距離D、y方向に互いに距離D離される、配列格子に関して位置決めされる光学要素901a~901eを示す。図示されるように、D=Dであるが、しかしより一般的に、垂直の格子間隔と水平の格子間隔は異なってよい。
【0103】
各光学要素について、δx=A・D・RN[0,1]およびδy=A・D・RN[0,1]であって、AおよびAは、それぞれx方向およびy方向の0と1の間のジッタ振幅であり、同じであってよく、または異なってよい。RN[0,1]は、0と1の間のランダムな数である。
【0104】
光学要素サイズもランダムに変わることができ、このことによって、まぶしさなどといった、均一なサイズの光学要素の配列に関連する光学的効果を減らすことができる。たとえば、図9Cに図示されるように、各光学要素の径方向寸法は、定格の光学要素半径、rから変えることができる。図示したように、光学要素401dが定格の半径rを有する一方で、光学要素401bおよび401eは、それぞれ半径rおよびrを有し、それらは両方ともrより大きく、r≠rである。光学要素半径は、式r=r+Δrに従って設定することができ、ここで、Δr=A・r・RN[0,1]であって、iはi番目の光学要素のことを呼び、Aは、0と1の間の値に設定される光学要素半径ジッタ振幅である。
【0105】
より一般的には、上の例が公称で円形の光学要素の光学要素半径を参照する一方、ジッタは、用途に応じて、他の光学要素サイズパラメータに適用することができる。たとえば、ジッタは、光学要素体積または他の光学要素寸法(たとえば、x寸法、y寸法)に適用することができる。
【0106】
いくつかの実施形態では、光学要素パターンは、光学要素位置がランダムなジッタと、光学要素サイズがランダムなジッタの両方を含むことができる。
【0107】
いくつかの実施形態が記載されてきており、他の実施形態は、以下の特許請求の範囲にある。
【符号の説明】
【0108】
10 レンズ
12 レンズ
13 レンズ
14 レンズ
15 レンズ
100 レーザ相互作用層
101 眼鏡
110 入力端末
111 レンズ本体
115 表面
119 レーザビーム
120 データ処理装置
121 レーザビーム
122 処理モジュール
123 位置
124 情報
125 情報
126 位置
130 レンズ変化システム
131 個別光学要素
132 プラットフォーム
133 個別光学要素
134 露光装置
140 レンズ
142 レンズ
150 レンズ
151 レンズ
152 光学要素
155 パターン
156 パターン
170 眼鏡フレーム
180 シーケンス
200 レーザ相互作用層
210 層
302 レンズ
310 コントローラ
311 第1の層
320 レーザ
330 レーザビーム減衰器、ビームチョッパ
340 合焦光学系
350 直角プリズム鏡
360 アクチュエータ
370 ステージ
400 レーザ相互作用層
401b 光学要素
401d 光学要素
401e 光学要素
430 光学要素
431 光学要素
500 レーザ相互作用層
600 システム
700 レーザシステム
800 近視低減眼鏡
801 1対の眼鏡フレーム
810a 眼科用レンズ
810b 眼科用レンズ
820a 透明な開口
820b 透明な開口
830a コントラスト低減区域
830b コントラスト低減区域
840 光学要素
900 レンズ
901a 光学要素
901b 光学要素
901c 光学要素
901d 光学要素
901e 光学要素
910 透明な開口
920 遷移ゾーン
930 散乱ゾーン
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A-9B】
図9C
【国際調査報告】