(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-19
(54)【発明の名称】ワークピースの表面を処理するための、大気プラズマジェットを発生させる装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/34 20060101AFI20240612BHJP
【FI】
H05H1/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023575903
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2022065479
(87)【国際公開番号】W WO2022258654
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】102021115020.5
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500321346
【氏名又は名称】プラズマトリート ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】PLASMATREAT GMBH
【住所又は居所原語表記】Queller Str. 76-80,D-33803 Steinhagen,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン ブスケ
(72)【発明者】
【氏名】マグヌス ブスケ
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084BB14
2G084CC03
2G084CC08
2G084CC23
2G084CC34
2G084GG07
2G084GG18
2G084GG26
(57)【要約】
本発明は、ワークピースの表面を処理するための、大気プラズマジェット(28)を発生させる装置(42、42’、42”、42”’、52)であって、大気プラズマジェット(28)を発生させるように構成されるプラズマノズル(3、53、53’)を備えており、プラズマノズル(3、53、53’)が、プラズマノズル(3)内で発生すべきプラズマジェット(28)を吐出するためのノズル開口部(48、48’、48”、48”’、58、58’)を備えたノズル構成(44)を有し、ノズル構成(44)が回転軸(A、B)の周りで回転可能であり、ノズル開口部(48、48’、48”、48”’、53、53’)が、円い形状とは相違する形状の断面を有する、装置に関する。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースの表面を処理するための、大気プラズマジェット(28)を発生させる装置(42、42’、42”、42”’、52)であって、
- 大気プラズマジェット(28)を発生させるように構成されるプラズマノズル(3、53、53’)を備えており、
- 前記プラズマノズル(3、53、53’)が、前記プラズマノズル(3)内で発生すべきプラズマジェット(28)を吐出するためのノズル開口部(48、48’、48”、48”’、58、58’)を備えたノズル構成(44)を有し、
- 前記ノズル構成(44)が回転軸(A、B)の周りで回転可能である、
装置であって、
- 前記ノズル開口部(48、48’、48”、48”’、58、58’)が、円い形状とは相違する形状の断面を有することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記プラズマノズル(3、53、53’)が、ハウジング軸(A、A’、A”)を備えたハウジング(10)を有し、前記回転軸(A、B)が、前記ハウジング軸(A、A’、A”)と平行に走る又は該ハウジング軸と一致することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ノズル開口部(48、48’、48”、48”’、58、58’)が、前記回転軸(A、B)に関する径方向において先細になっている断面を有する、及び/又は、前記回転軸(A、B)に関する前記径方向の方が、回転軸に対する交差方向におけるよりも大きい延在部を有する断面を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記ノズル開口部(48、48’、48”、48”’、58、58’)が、前記回転軸(A、B)に対して偏心して配置されることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記ノズル開口部(48、48’、48”、48”’、58、58’)が、前記回転軸(A、B)の完全に外側に配置されることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記ノズル開口部(48、48’、48”、48”’、58、58’)の前記断面が矩形又は楕円形であることを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記ノズル開口部(48、48’、48”、48”’、58、58’)の前記断面が液滴形又は台形であることを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記ノズル開口部(48、48’、48”、48”’、58、58’)の前記断面が、多くて50mm
2の、好ましくは多くて30mm
2の断面積を有することを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記ノズル開口部(48、48’、48”、48”’、58、58’)の方向が、前記回転軸(A、B)に対して0°~45°の範囲内の或る角度で走ることを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記ノズル開口部(48、48’、48”、48”’、58、58’)の前記方向が、前記回転軸(A、B)に対して少なくとも1°の、好ましくは少なくとも5°の或る角度で走ることを特徴とする請求項1~9の何れか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記装置(42、42’、42”、42”’、52)が、前記ノズル構成(44)を前記回転軸(A、B)の周りで回転させるように構成される回転駆動装置(38、54)を有することを特徴とする請求項1~10の何れか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記プラズマノズル(3、53、53’)が、電極(24、10)間に高周波高電圧を印加することにより発生する作動ガス中のアーク状放電によって前記大気プラズマジェット(28)を発生させるように構成されることを特徴とする請求項1~11の何れか一項に記載の装置。
【請求項13】
請求項1~12の何れか一項に記載の装置(42、42’、42”、42”’、52)を用いてワークピースの表面を処理するための方法であって、
- 前記ノズル構成(44)が前記回転軸(A、B)の周りで回転され、
- 前記プラズマノズル(3、53、53’)でもって大気プラズマジェット(28)が発生し、該大気プラズマジェットが前記ノズル開口部(48、48’、48”’、58、58’)から出現し、
- 前記プラズマジェット(28)が前記被処理表面上へと向けられる、
方法。
【請求項14】
前記プラズマノズル(3、53、53’)が前記被処理表面にわたって移動する、及び/又は、前記被処理表面が前記プラズマノズル(3、53、53’)に沿って移動する、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークピースの表面を処理するための、大気プラズマジェットを発生させる装置であって、大気プラズマジェットを発生させるように構成されるプラズマノズルを備えており、プラズマノズルが、プラズマノズル内で発生すべきプラズマジェットを吐出するためのノズル開口部を備えたノズル構成を有し、ノズル構成が回転軸の周りで回転可能である、装置に関する。本発明は、このような装置を用いてワークピースの表面を処理するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書の文脈では、特に、表面エネルギーを変化させることのできる、及び、表面と流体との濡れ性の改良を達成することのできる表面前処理が、プラズマジェットを用いた表面の処理と見なされる。更に、表面コーティングを表面の処理と見なすことができ、そこでは、プラズマジェットに少なくとも1つの前駆物質を付加することにより、プラズマジェット内、及び/又はワークピースの表面上で行われる化学反応によって、化学生成物の少なくとも幾つかが堆積するところの表面コーティングが達成される。更に、表面処理は、表面の洗浄、消毒、又は滅菌を意味することもある。
【0003】
ワークピースの表面を処理するための、大気プラズマジェットを発生させる装置であって、軸の周りで回転するプラズマジェットを備えている装置が、特許文献1から公知である。この装置は、軸Aを有する管状ハウジングと、ハウジングの内側に配置される内部電極とを有し、内部電極は、好ましくは軸Aと平行に走る、又は、特に軸A内に配置される。装置の動作中、内部電極に電圧が印加され、この電圧は放電を生成し、放電は、ハウジングの内側を流れる作動ガスと相互作用することによりプラズマを発生させる。プラズマは作動ガスと一緒に更に搬送される。
【0004】
更に、この装置は、ハウジング内で発生すべきプラズマジェットを吐出するためのノズル開口部を備えたノズル構成を有し、これによって、ノズル構成は、好ましくは、放電路の端部に配置され、接地され、流出ガス及びプラズマジェットを導く。ノズル開口部の方向は、軸Aに対して或る角度で走り、流出するプラズマジェットの中心方向と平行であると仮定することができる。このために、ノズル構成内の通路は、ガス及びプラズマジェットがハウジングの内側から偏向するよう、弓形のやり方で走る。最後に、ノズル構成は軸Aに対して回転可能であり、このノズル構成がハウジング及び内部電極に対して回転可能である、或いは、ノズル構成は回転可能に固定されたやり方でハウジングに接続されるがハウジングは内部電極に対して回転する、のいずれかである。この回転運動のため、ノズル構成は、或いは、ノズル構成及びハウジングは、それぞれ、モータにより駆動される。
【0005】
大気プラズマを用いて表面を処理するためのシステムが特許文献2から公知である。このシステムは、大気プラズマジェットを発生させる2つの装置を含み、これらの2つの装置の各々は、軸A又は軸A’それぞれを有する管状ハウジングと、ハウジング内に配置される内部電極と、ハウジング内で発生すべきプラズマジェットを吐出するためのノズル開口部を有するノズル構成とを有し、2つの装置は、共通の軸Bの周りで互いに回転可能に接続され、軸Bの周りでの装置の回転運動を発生させるための駆動装置が設けられる。
【0006】
上記の両方の装置又はシステムを用いれば、ワークピースの被処理表面に沿って回転プラズマジェットを移動させることにより、比較的広い処理トラックを創成することが可能である。従って、これらの技術は広範に使用される。
【0007】
表面のプラズマ処理の幾つかのトラックが、互いに平行に、かつ部分的に重複することにより、より大きいエリアをプラズマ処理できる場合であっても、装置又はシステムそれぞれの移動方向に対して交差方向での表面上のプラズマ処理の強度には差異がある。この効果を、
図1A、
図1Bを参照して、より詳細に説明する。
【0008】
図1Aは、上記の装置のプラズマジェットの処理トラックを示す。軌道(線)は最大プラズマ強度の衝突点を表す。回転プラズマジェットを、およそ幅dxのストリップにわたって連続的に適用し、表面をプラズマを用いて処理するために、この装置は、y方向に、即ち
図1において上方に移動する。移動方向(y)により、点線のエリアにおける処理トラック(dx)の外方エリアは、プラズマを用いて、処理トラックの中心エリアの場合よりも集中的に処理されるという効果が生じる。
【0009】
このことにより、
図1Bに示す強度分布は、破線で示す処理トラックの外方エリア内に生じる2つの最大値を有する。この中間では、プラズマ処理の強度が著しく低めでしかないため、処理トラックの中央では強度極小値が生じる。
【0010】
この理由から、表面は不満足にしかプラズマ処理されないのであり、通常のストリップにおいてもプラズマ処理が不十分である。このことは、処理トラックの中央エリアにおいてもプラズマ処理の飽和を達成するためには表面に対する装置の移動速度を定期的に落とさねばならないことを意味する。このことにより、装置の使用が限定される。
【0011】
この問題を解決するために、特許文献3は、回転ノズル構成と、ノズル構成を包囲する遮蔽体とを備えた、大気プラズマジェットを発生させる装置であって、遮蔽体が、発生すべきプラズマジェットとワークピースの表面との相互作用の強度に影響を与える、装置を提案する。遮蔽体は、表面処理のための、プラズマジェットのかなり良好な均一性を既に達成することができる。ところが、プラズマジェットと遮蔽体とが接触することにより、プラズマジェットが脆くなることがある。
【0012】
従って、本発明は、ワークピースの表面を処理するための、冒頭で説明した装置及びシステム、ならびに方法を、前述の欠点が少なくとも部分的に除去され、より均一な表面の処理が達成されるような仕方で更に展開するという技術的課題に依拠する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許第1 067 829(B1)号
【特許文献2】欧州特許第0 986 939(B1)号
【特許文献3】国際公開第2017/097694(A1)号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
ワークピースの表面を処理するための、大気プラズマジェットを発生させる装置であって、大気プラズマジェットを発生させるように構成されるプラズマノズルを備えており、プラズマノズルが、プラズマノズル内で発生すべきプラズマジェットを吐出するためのノズル開口部を備えたノズル構成を有し、ノズル構成が回転軸の周りで回転可能である、装置において、この目的は、本発明によれば、ノズル開口部が、円い形状とは相違する形状の断面を有するという点で解決される。好ましくは、プラズマジェットにより表面上に生じる処理トラックの中心における強度が増加するように、ノズル開口部が、円い形状とは相違する形状の断面を有する。
【0015】
回転ノズル構成では、ノズル開口部の断面形状を使用して、処理トラックの強度分布に影響を与えることができ、特に、処理トラックの幅部分にわたって処理強度をより均一にできることが判った。更に、このようにして、プラズマジェットの大幅な弱化なしに均一化を達成できることが判った。
【0016】
プラズマノズルは、大気プラズマジェットを発生させるように構成される。このために、プラズマノズルは、特に、少なくとも2つの電極、例えば、ハウジング内に配置される内部電極と、例えばハウジング自体により形成することのできる対向電極とを有することができる。更に、プラズマノズルは、特に、作動ガスが電極間のエリア内でプラズマノズルを通って流れるように、作動ガスをプラズマノズル内へ導入することのできる作動ガス入口を有することができる。
【0017】
プラズマノズルは、プラズマノズル内で発生すべきプラズマジェットを吐出するためのノズル開口部を備えたノズル構成をも有する。特に、ノズル開口部は、作動ガス入口の反対側にある、ハウジングの端部に配置することができる。
【0018】
ノズル構成は回転軸の周りで回転可能である。例えば、ノズル構成は、プラズマノズルの残りの部分に対して回転可能とすることができる。一方、ノズル構成が、プラズマノズルの別の部分と一緒に又はプラズマノズル全体と一緒に回転可能であるように構成されることも考えられる。このために、ノズル構成は特に、プラズマノズルに又はプラズマノズルの共回転部分に、回転可能に固定されるように構成することができる。
【0019】
例えば、プラズマノズルは、ハウジング軸を備えたハウジングを有することができ、これによって、回転軸は、ハウジング軸と平行に走る又はハウジング軸と一致する。ハウジング軸は例えば、ハウジングの主な延在方向の方向に走ることができる。例えば、ハウジングは管状とすることができ、ハウジング軸は管状ハウジングの延在方向に走る。
【0020】
例えば、2つのプラズマノズルにそれぞれのノズル開口部が設けられ、これらのプラズマノズルが、例えばプラズマノズルのうちの一方のハウジングのハウジング軸と平行に走る共通の回転軸の周りで、特に2つのプラズマノズル間の中央で回転することが考えられる。
【0021】
ノズル開口部は、円い形状とは相違する形状の断面を有する。好ましくは、ノズル開口部は、回転軸に関する径方向において先細になっている断面を有する。このようにして、ノズル開口部の、非対称の断面が達成され、ノズル開口部のこの断面は、一方の径方向では先細になっており、反対の径方向では広がっている。これに加えて又はこの代わりに、ノズル開口部は、好ましくは、回転軸に関する径方向の方が、回転軸に関する交差方向におけるよりも大きい延在部を有する断面を有してもよい。このようにして、ノズル開口部のアスペクト比に関してその非対称の断面が達成される。
【0022】
より均一な表面処理がプラズマジェットを用いて達成されるような仕方で、プラズマジェットが上記のノズル開口部の断面形状の影響を受けることをテストが示した。
【0023】
例えば、ノズル開口部のこのような断面形状を使用することにより、処理トラックの中心エリアにおける処理強度を増加することが可能になった。
図1Cでは、強度プロファイルが、
図1Bとは対照的に、平坦な又はほんの僅かに波形のプラトー形状を有することにより、この効果を図説する。その後、蓄積により重複エリア内がプラトーの強度に到達するような仕方で、隣接する処理トラック同士が表面上へ重複されると、表面はプラズマジェットにより、全体的に、より均等に処理される。この均一化は、特に、プラズマジェットがノズル開口部を出た後に更に偏向することなしに達成され、このことにより、例えば遮蔽体での偏向に起因した、プラズマジェットのエネルギー損失が防止される。
【0024】
ノズル開口部が、回転軸に関する径方向において先細になっている断面を有する場合、好ましくは、断面は、径方向において回転軸に向かって先細になっている。このようにして、ノズル開口部の断面は、外側から内側へ回転軸に向かって小さくなる。断面をこのように設計することにより、驚くべきことに、回転軸に近いエリア内のプラズマ強度を増加することができ、このことによりプラズマ処理が、より均一になることが判った。
【0025】
以下に、この装置の様々な実施形態を説明する。そこでは、個々の実施形態を、所望するように互いに組み合わせることができる。
【0026】
一実施形態において、ノズル開口部は、回転軸に関する径方向延在部を備えた断面を有し、断面の重心は径方向延在部の中心から或る径方向距離を有する。径方向距離は、好ましくは、径方向延在部の少なくとも5%であり、より好ましくは少なくとも10%である。この種類の断面形状により、より均一な表面処理を達成することが可能になる。
【0027】
面積Fであるノズル開口部の断面Qの重心S=(xS、yS)は、例えば、以下の式を用いて断面Qの面積を積分することにより、決定することができる。
【0028】
【0029】
及び
【0030】
【0031】
例えば、回転軸に関する径方向におけるx方向が選択される場合、好ましくは、以下、xS=xM+Dx、が適用され、ここで、xMは、径方向であるx方向におけるノズル開口部の延在部の中心であり、Dxは、ノズル開口部の径方向延在部の好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%である径方向距離である。
【0032】
更なる実施形態において、ノズル開口部は、回転軸に関する径方向の方が、回転軸に関する交差方向におけるよりも、好ましくは少なくとも1.5倍だけ、より好ましくは少なくとも1.8倍だけ、特に好ましくは少なくとも2倍だけ、特に少なくとも3倍だけ大きい断面を有する。このような断面形状によっても、より均一な表面処理を達成することができた。
【0033】
ノズル開口部の十分な断面積を達成するために、ノズル開口部は、好ましくは、回転軸に関する径方向の方が、回転軸に関する交差方向におけるよりも最大25倍だけ、更に好ましくは最大15倍だけ、特に好ましくは最大10倍だけ大きい延在部を有する断面を有する。
【0034】
一実施形態において、ノズル開口部は、回転軸に対して偏心して配置される。このようにして、ノズル構成を回転させる際に、ノズル構成の下にある表面の中心エリアの連続的な露出、従ってその過剰処理又は損傷が防止される。このために、ノズル開口部は、好ましくは、回転軸の完全に外側に配置される。
【0035】
更なる実施形態において、ノズル開口部の断面は矩形又は楕円形である。このような断面形状は生産技術上、製造が容易であり、このことにより装置の製造費用が低減される。ノズル開口部の矩形断面は、特に、長い方の側縁が径方向に略平行に走り、短い方の側縁が径方向に対して略交差方向に走るように位置合わせされる。ノズル開口部の楕円形断面は、特に、大きい方の断面軸が径方向と略平行に走り、小さい方の断面軸が径方向に対して略交差方向に走るような仕方で位置合わせされる。このようにして、プラズマジェットを用いた表面処理の良好な均一化を達成することができる。
【0036】
更なる実施形態において、ノズル開口部の断面は液滴形又は台形である。このような断面形状は、表面のプラズマ処理への非常に良好な均一化効果を有することがテストにおいて示された。特に、ノズル開口部の液滴形又は台形断面の狭い方の端部は、広い方の端部よりも回転軸に近いところに配置される。
【0037】
更なる実施形態において、ノズル開口部の断面は、最大50mm2の、好ましくは最大30mm2の、特に最大20mm2の断面積を有する。このことにより、プラズマジェットの圧力が維持され、プラズマジェットが十分に強度を保って的を絞った処理に向けられることが確実になる。
【0038】
更なる実施形態において、ノズル開口部の方向は、回転軸に対して0~45°の範囲内の或る角度で走る。ノズル開口部の方向というのは、特に、ノズル開口部につながるノズル通路がノズル開口部のエリア内で延びる方向を意味すると理解されたい。ノズル開口部方向の角度を最大で45°に限定することにより、被処理表面の、全体的に、より集中的な処理が達成される。
【0039】
更なる実施形態において、ノズル開口部の方向は、回転軸に対して少なくとも1°の、好ましくは少なくとも5°の或る角度で走る。このようにして、表面の、より大きいエリアを同時に処理できるように、処理トラックを広げることができる。
【0040】
更なる実施形態において、装置は、ノズル構成を回転軸の周りで回転させるように構成される回転駆動装置を有する。このようにして、ノズル構成の回転を、的を絞ったやり方で、好ましくは事前決定可能な回転周波数で、制御することができる。回転周波数は、好ましくは、毎分100~4000回転、より好ましくは毎分1000~3000回転の範囲内にある。回転駆動装置は、ノズル構成を、プラズマノズルの残りの部分に対して回転軸の周りで回転させるように構成することができる。更に、回転駆動装置は、プラズマノズルの一部を又はプラズマノズル全体を、ノズル構成と一緒に回転軸の周りで回転させるように構成することができる。
【0041】
更なる実施形態において、プラズマノズルは、電極間に高周波高電圧を印加することにより発生する作動ガス中のアーク状放電によって大気プラズマジェットを発生させるように構成される。このようにして、容易に集束することのできる、及び表面のプラズマ処理にとっても適切であるプラズマジェットを発生させることができる。特に、このようにして発生するプラズマジェットは比較的低温であるため、表面の損傷を防止することができる。
【0042】
高周波アーク状放電を発生させるための高周波高電圧は、例えば、1~100kVの、好ましくは1~50kVの、より好ましくは1~10kVの範囲内の電圧レベル、及び、1~300kHzの、特に1~100kHzの、好ましくは10~100kHzの、より好ましくは10~50kHzの周波数を有することができる。
【0043】
上で挙げた目的は、上記の装置を用いて又はその実施形態を用いてワークピースの表面を処理するための方法であって、ノズル構成が回転軸の周りで回転され、プラズマノズルでもって大気プラズマジェットが発生し、この大気プラズマジェットがノズル開口部から出現し、プラズマジェットが被処理表面上へと向けられる、方法により更に解決される。
【0044】
好ましくは、プラズマノズルは被処理表面にわたって移動する、及び/又は、被処理表面はプラズマノズルに沿って移動する。このようにして、より大きい表面積を処理することができる。加えて、回転プラズマジェットが、表面にわたって移動しながら結果として重なり合うように移動することにより、処理の均一化が更に改良される。
【0045】
本発明の更なる利点及び特徴が、以下の、幾つかの例示的実施形態の説明から明らかになる。添付の図面を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1A】先行技術における、及び本発明によるプラズマ処理の効果を説明する図を示す。
【
図1B】先行技術における、及び本発明によるプラズマ処理の効果を説明する図を示す。
【
図1C】先行技術における、及び本発明によるプラズマ処理の効果を説明する図を示す。
【
図3A】プラズマジェットを発生させる装置の第1の例示的実施形態を示す。
【
図3B】プラズマジェットを発生させる装置の第1の例示的実施形態を示す。
【
図4】プラズマジェットを発生させる装置の第2の例示的実施形態を示す。
【
図5】プラズマジェットを発生させる装置の第3の例示的実施形態を示す。
【
図6】プラズマジェットを発生させる装置の第4の例示的実施形態を示す。
【
図7A】プラズマジェットを発生させる装置の第5の例示的実施形態を示す。
【
図7B】プラズマジェットを発生させる装置の第5の例示的実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下の、様々な例示的実施形態の説明において、様々な例示的実施形態における構成要素の寸法又は形状が相違し得る場合であっても、対応する構成要素には同じ参照符号を設ける。
【0048】
本明細書において説明する装置の第1の例示的実施形態を検討する前に、まず、本明細書において説明する装置に適したプラズマノズルの基本構造及び動作原理を、
図2に示す先行技術の装置を使用して説明することにする。
【0049】
図2に示す、特許文献1から公知の装置2は、プラズマジェットを発生させるように構成される、管状ハウジング10を備えたプラズマノズル3を有し、ハウジングは、図面に関してその上方のエリアにおいて直径が広がっており、軸受12の助けを借りて、固定された支持管14上に回転可能に装着される。ハウジング10の内側にはノズル通路16の上部が形成され、ノズル通路は、支持管14の開放端から又は作動ガス入口からそれぞれ、プラズマノズル3内をノズル開口部18までつながっている。
【0050】
この支持管14内へ電気絶縁セラミック管20が挿入される。支持管14及びセラミック管20を通して、作動ガス、例えば空気がノズル通路16内へ供給される。セラミック管20内へ挿入される旋回装置22によって、作動ガスは、図面において螺旋状の矢印で象徴化するように、ノズル通路16を通ってノズル開口部18の方向に渦巻状に流れるように旋回する。このことにより、ハウジング10の軸Aに沿って走る渦巻コアがノズル通路16内に創成される。
【0051】
旋回装置22上にピン形の内部電極24が装着され、この内部電極は、ノズル通路16の上部へと同軸に突出し、この内部電極に、高電圧発生器26の助けを借りて高周波高電圧が印加される。高周波高電圧は、1~100kVの、好ましくは1~50kVの、より好ましくは1~10kVの範囲内の電圧強さを、及び、1~300kHzの、特に1~100kHzの、好ましくは10~100kHzの、より好ましくは10~50kHzの周波数を有することができる。高周波高電圧は、高周波AC電圧とすることができるが、パルスDC電圧又は両方の電圧形式を重ね合わせたものとすることもできる。
【0052】
金属ハウジング10は、軸受12及び支持管14を介して接地され、内部電極24とハウジング10との間に放電を発生させることができるように対向電極として働く。
【0053】
ハウジング10内に配置される内部電極24は、好ましくは、軸Aと平行に位置合わせされる。特に、内部電極24は軸A内に配置される。
【0054】
ノズル通路のノズル開口部18は、ハウジング10のねじ穴32内へねじ込まれる金属製のノズル構成30により形成され、ノズル構成内には、ノズル開口部18に向かって先細になっているとともに弓形であり軸Aに関して傾斜している通路34が形成され、この通路は、ノズル開口部18までノズル通路16の下部を形成する。このようにして、ノズル開口部18から出現するプラズマジェット28はハウジングの軸Aと共に或る角度を成し、この角度は、図示する例では約45°である。この角度は、ノズル構成30を変化させることにより適宜変動することができる。
【0055】
従って、ノズル構成30は、高周波アーク放電の放電路の端部に配置され、ハウジング10との金属接点を介して接地される。従って、ノズル構成30は流出ガス及びプラズマジェットを導き、ノズル開口部18の方向は軸Aに対して所定の角度で走る。
【0056】
ノズル構成30は回転可能に固定されたやり方でハウジング10に接続されることから、及び、ハウジング10は支持管14に対して軸受12を介して回転可能に装着されることから、ノズル構成30は軸Aの周りで相対的に回転することができる。従って、この実施形態では、回転軸はハウジング軸Aと一致する。ハウジング10の、拡張された上部にギアホイール36が配置され、このギアホイールは、例えば歯付きベルト又はピニオン37を介して、モータ等の回転駆動装置38に接続される。
【0057】
高周波高電圧によるプラズマノズル3の動作中、高周波電圧に起因して、内部電極24とハウジング10との間にアーク放電が発生する。この高周波アーク放電のアークは、入来する旋回作動ガスにより運搬され、渦巻形ガス流のコア内に導かれるため、アークは、内部電極24の先端から軸Aに沿ってほぼ直線状に走り、ハウジング10の下端の領域内で又は通路34の領域内でそれぞれ、ハウジング壁上へと又はノズル構成30の壁上へと、ようやく径方向に分岐する。このようにしてプラズマジェット28が発生し、このプラズマジェットがノズル開口部18を通って出現する。
【0058】
放電がアークの形態に生じるため、ここでは、放電の現象学的説明として用語「アーク」及び「アーク放電」を使用する。用語「アーク」は、電圧値が略一定であるDC放電の放電の形態として他の場所でも使用されるが、本事例では、アークの形態の高周波放電、即ち高周波アーク放電のことである。
【0059】
動作中、ハウジング10は軸Aの周りを高速で回転するため、プラズマジェット28は、図示しないワークピースの被処理表面にわたって掃引する円錐面を描く。その後、装置2又はプラズマノズル3がワークピースの表面に沿って移動する場合、或いは逆に、ワークピースが装置2又はプラズマノズル3に沿って移動する場合、ワークピースの表面の、比較的均一な処理がストリップ上で達成される。ストリップの幅は、プラズマジェット28によりワークピース表面上で描かれる円錐の直径に対応する。ノズル構成30とワークピースとの間の距離を変動させることにより、前処理エリアの幅に影響を与えることができる。プラズマジェット28が、ワークピース表面に或る角度でぶつかってそれ自体旋回することにより、ワークピース表面上へのプラズマの集中的な効果が生じる。プラズマジェットの旋回方向は、ハウジング10の回転方向と同じ方向又は反対方向とすることができる。
【0060】
回転プラズマジェット28によるプラズマ処理の強度は、ノズル開口部18と表面との距離、及び、被処理表面上へのプラズマジェット28の入射角に依存する。加えて、プラズマ処理の強度は、プラズマノズル3又はノズル構成30それぞれの、ワークピースの表面に対する横断速度に依存する。
【0061】
図3A及び
図3Bは、本明細書において開示する装置の第1の例示的実施形態を示す。
図3Aは、装置42の概略断面図を示す。装置42は
図2の装置2と同様の構造を有するため、対応する構成要素には同じ参照符号を設ける。この点については、装置2の上の説明を参照されたい。
【0062】
装置42は、プラズマノズル3のノズル構成44が異なることにより、装置2と相違する。ノズル構成44は、ノズル構成30のように、ハウジング10のねじ穴32内へねじ込まれる。
【0063】
ノズル構成44は、ノズル開口部48を備えたノズル通路46を有し、動作中は、このノズル開口部からプラズマジェット28が出現する。ノズル通路46は、ノズル開口部18に向かって先細になっており、軸Aに関して傾斜している。このようにして、ノズル開口部18から出現するプラズマジェット28はハウジングの軸Aと共に或る角度を成し、この角度は、図示する例では約30°である。この例示的実施形態において、軸Aは、ハウジング10のハウジング軸と、このハウジング軸と一致する、ノズル構成44がその周りで回転可能である回転軸とを同時に表す。
【0064】
図3Bは、ノズル開口部48を備えたノズル構成44を、下からの図において示す。
図3Bが示すように、ノズル開口部48は、その長辺が径方向Rと平行に走る矩形断面を有し、断面は、軸に関する径方向の方が、軸に対する交差方向におけるよりも、好ましくは少なくとも1.5倍、より好ましくは少なくとも2倍大きい延在部を有する。ノズル構成44が回転される際に、プラズマ処理の強度は、軸Aに関して内方エリア内へより強力にシフトすることができるため、先行技術において生じる、処理トラックの中央における低めの強度(
図1B参照)は補償され、
図1Cに示すように、強度がより均一になることが判った。ノズル開口部が、
図4に示すような矩形形状ではなく、例えば楕円形断面を有することもできる。
【0065】
図4は、装置の更なる例示的実施形態を示す。装置42’は、
図3Aの装置42のような基本構造を有し、ノズル開口部48’が別様に形状されてノズル通路が相応に適合されることのみが、装置42と相違する。
図4は、装置42’のノズル開口部48’の断面を、
図3Bに対応する下からの図において示す。
【0066】
図4が示すように、ノズル開口部48’は台形断面を有し、この台形断面の狭い方の端部は、その広い方の端部よりも軸に近いところに配置されるため、ノズル開口部48’の断面は、径方向において軸Aに向かって先細になっている。従って、特に、重心Sは、ノズル開口部48’の径方向延在部E
rの中心x
Mまでの径方向距離D
xを有する。
【0067】
ノズル構成44が回転される際に、プラズマ処理の強度は、ノズル開口部断面が軸Aの方向において先細になっていることでもって、推定するに流れ効果に起因して、このエリア内で増加することができるため、先行技術において生じる処理トラックの中央における低めの強度(
図1B参照)をこのようにしても補償することができ、
図1Cに示すように、強度がより均一になることが判った。ノズル開口部は、
図4に示すような台形ではなく、例えば液滴形断面を有することもできる。
【0068】
図5は、装置の更なる例示的実施形態を示す。装置42”は、
図3Aの装置42のような基本構造を有し、ノズル開口部48”が別様に形状されてノズル通路が相応に適合されることのみが、装置42と相違する。
図5は、装置42”のノズル開口部48”の断面を、
図3Bに対応する下からの図において示す。
【0069】
図5が示すように、ノズル開口部48”は、ノズル開口部48’のような台形断面を有し、この断面も、ノズル開口部48でのように、軸Aに関する径方向Rの方が、軸Aに関する交差方向におけるよりも大きい延在部を有する。このようにして、
図3B及び
図4のノズル開口部断面の効果を互いに組み合わせることができるため、
図1Cに示すように、より一層均一な強度を達成することができる。
【0070】
図6は、装置の更なる例示的実施形態を示す。装置42”’は、
図3Aの装置42のような基本構造を有し、ノズル開口部48”’が別様に形状されてノズル通路が相応に適合されることのみが、装置42と相違する。
図6は、装置42”’のノズル開口部48”’の断面を、
図3Bに対応する下からの図において示す。
【0071】
図6が示すように、ノズル開口部48”’は、径方向において軸Aの方向に先細になっている液滴形断面を有する。加えて、断面は、軸Aに関する径方向Rの方が、軸Aに対する交差方向におけるよりも大きい延在部を有する。このような断面であれば、表面を処理する際に、より均一な強度を達成することができる。
【0072】
図7A、
図7Bは、装置の更なる例示的実施形態を示す。
図7Aは概略側面図を示す。
図7Bは下からの図を示す。装置52は、それぞれの大気プラズマジェット28を発生させるための2つのプラズマノズル53、53’を有する。プラズマノズル53、53’は、回転可能に固定されたやり方で互いに接続され、設けられた駆動装置によって共通の回転軸Bの周りで回転させることができる(矢印54)。回転軸Bは、プラズマノズル53、53’それぞれの管状ハウジング10のハウジング軸A’、A”と平行に走る。従って、この例示的実施形態において、回転軸Bとハウジング軸A’、A”とは一致しない。
【0073】
プラズマノズル53、53’は、
図3A、
図3Bにおけるプラズマノズル3と同様の設計及び動作モードを有する。プラズマノズル53、53’は、ハウジング10が支持管14に対して回転可能でなく、特に軸受12が設けられないという点で、プラズマノズル3と相違する。そうではなく、ハウジング10及び支持管14は、連続的なハウジングとして一体に形成することができる。それ故に、プラズマノズル53、53’には、
図3Aに示すピニオン37及び回転駆動装置38も欠落している。加えて、プラズマノズル53、53’のノズル開口部58、58’は、
図7Aに示すように、ハウジング軸A’、A”又は回転軸Bと略平行に走ることができ、或いはその代わりに、
図3Aと同様に、回転軸Bに対して或る角度で走ることができる。
【0074】
図7Bが示すように、ノズル開口部58、58’は各々、台形断面を有し、この断面のそれぞれの狭い方の端部は、そのそれぞれの広い方の端部よりも回転軸Bに近いところに配置され、ノズル開口部58、58’の断面は、径方向R又は径方向R’において回転軸Bに向かって先細になっている。代わりに、ノズル開口部58、58’は、異なる断面、例えば
図3B又は
図6に示すような断面を有することもできる。
【0075】
プラズマ処理の均一性に関するノズル開口部断面の効果を調査するためにテストを実行した。
【0076】
これらのテストでは、
図2に示す装置2に対応する、円いノズル開口部を備えた既に公知の装置(装置V)、及び、
図6に示す装置42”’に対応する、
図3Aに示すような構造と
図6に示すような液滴形ノズル開口部とを備えた装置(装置E)を使用した。
【0077】
装置Vの円いノズル開口部は、4mmの直径を有した。装置Eの液滴形ノズル開口部は、径方向における10mmの長さ、径方向外方エリアにおいて径方向に対して交差方向である4mmの幅、及び、径方向内方エリアにおいて径方向に対して交差方向である1.5mmの幅を有した。ノズル開口部の方向は、軸Aに対して11°の角度で走った。
【0078】
装置V及び装置Eは各々、作動ガスとしての空気(75l/分)と共に、23kHzの周波数にて約5kVの高周波高電圧で動作した。いずれの場合も、ノズル構成の、軸Aの周りでの回転周波数は毎分約2800回転周波数であった。
【0079】
初期表面エネルギーσ0<30mN/mであるポリエチレンテストカードを装置V及び装置Eを用いて処理し、装置を各々、テストカードの被処理表面にわたって30m/分の前進速度で移動させた。
【0080】
処理後、各処理トラックの中心、及び各処理トラックの縁部にて、テストカードの表面エネルギーを計測した。
【0081】
以下の表1に、表面エネルギー計測σの結果を示す。
【0082】
【0083】
表1の結果が示すように、処理トラックの幅部分にわたる表面エネルギーσの変動は、装置Eを用いて処理したテストカードでの方が、装置Vを用いて処理したテストカードでよりも相当少ない。このことは、
図1Cに示すように、説明したノズル開口部の設計が、表面処理における均一性を達成できるということを示す。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースの表面を処理するための、大気プラズマジェット(28)を発生させる装置(42、42’、42”、42”’、52)であって、
- 大気プラズマジェット(28)を発生させるように構成されるプラズマノズル(3、53、53’)を備えており、
- 前記プラズマノズル(3、53、53’)が、少なくとも2つの電極(24、10)を含み、
- 前記プラズマノズル(3、53、53’)が、前記電極(24、10)間に高周波高電圧を印加することにより発生する作動ガス中のアーク状放電によって前記大気プラズマジェット(28)を発生させるように構成され、
- 前記プラズマノズル(3、53、53’)が、前記プラズマノズル(3)内で発生すべきプラズマジェット(28)を吐出するためのノズル開口部(48、48’、48”、48”’、58、58’)を備えたノズル構成(44)を有し、
- 前記ノズル構成(44)が回転軸(A、B)の周りで回転可能であ
り、
- 前記ノズル開口部(48、48’、48”、48”’、58、58’)が、円い形状とは相違する形状の断面を有する
、
装置であって、
- 前記ノズル開口部(48、48’、48”、48”’、58、58’)が、前記回転軸(A、B)に関する径方向において先細になっている断面を有する、及び/又は、前記回転軸(A、B)に関する前記径方向の方が、回転軸に関する交差方向におけるよりも大きい延在部を有する断面を有すること
を特徴とする装置。
【請求項2】
前記プラズマノズル(3、53、53’)が、ハウジング軸(A、A’、A”)を備えたハウジング(10)を有し、前記回転軸(A、B)が、前記ハウジング軸(A、A’、A”)と平行に走る又は該ハウジング軸と一致することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ノズル開口部(48、48’、48”、48”’、58、58’)が、前記回転軸(A、B)に対して偏心して配置されることを特徴とする請求項1
又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記ノズル開口部(48、48’、48”、48”’、58、58’)が、前記回転軸(A、B)の完全に外側に配置されることを特徴とする請求項1~
3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記ノズル開口部(48、48’、48”、48”’、58、58’)の前記断面が矩形又は楕円形であることを特徴とする請求項1~
4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記ノズル開口部(48、48’、48”、48”’、58、58’)の前記断面が液滴形又は台形であることを特徴とする請求項1~
5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記ノズル開口部(48、48’、48”、48”’、58、58’)の前記断面が、多くて50mm
2の、好ましくは多くて30mm
2の断面積を有することを特徴とする請求項1~
6の何れか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記ノズル開口部(48、48’、48”、48”’、58、58’)の方向が、前記回転軸(A、B)に対して0°~45°の範囲内の或る角度で走ることを特徴とする請求項1~
7の何れか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記ノズル開口部(48、48’、48”、48”’、58、58’)の前記方向が、前記回転軸(A、B)に対して少なくとも1°の、好ましくは少なくとも5°の或る角度で走ることを特徴とする請求項1~
8の何れか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記装置(42、42’、42”、42”’、52)が、前記ノズル構成(44)を前記回転軸(A、B)の周りで回転させるように構成される回転駆動装置(38、54)を有することを特徴とする請求項1~
9の何れか一項に記載の装置。
【請求項11】
請求項1~
10の何れか一項に記載の装置(42、42’、42”、42”’、52)を用いてワークピースの表面を処理するための方法であって、
- 前記ノズル構成(44)が前記回転軸(A、B)の周りで回転され、
- 前記プラズマノズル(3、53、53’)でもって大気プラズマジェット(28)が発生し、該大気プラズマジェットが前記ノズル開口部(48、48’、48”’、58、58’)から出現し、
- 前記プラズマジェット(28)が前記被処理表面上へと向けられる、
方法。
【請求項12】
前記プラズマノズル(3、53、53’)が前記被処理表面にわたって移動する、及び/又は、前記被処理表面が前記プラズマノズル(3、53、53’)に沿って移動する、請求項
11に記載の方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項12】
前記プラズマノズル(3、53、53’)が前記被処理表面にわたって移動する、及び/又は、前記被処理表面が前記プラズマノズル(3、53、53’)に沿って移動する、請求項11に記載の方法。
【国際調査報告】