(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-20
(54)【発明の名称】アルコール性肝疾患及び移植片対宿主病を治療又は予防するための高度免疫化卵製品
(51)【国際特許分類】
A61K 35/57 20150101AFI20240613BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240613BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240613BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240613BHJP
A23L 33/17 20160101ALI20240613BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20240613BHJP
C07K 14/24 20060101ALN20240613BHJP
C07K 16/12 20060101ALN20240613BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20240613BHJP
【FI】
A61K35/57
A61P1/16 ZNA
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P43/00 121
A23L33/17
A23L33/10
C07K14/24
C07K16/12
C12N15/31
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563268
(86)(22)【出願日】2022-04-15
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 US2022024946
(87)【国際公開番号】W WO2022221616
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523388984
【氏名又は名称】プロディジー バイオテック
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アイアー,スブラマニアン,ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】パテル,サニー
【テーマコード(参考)】
4B018
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B018MD20
4B018MD72
4B018ME14
4B018MF14
4C085AA13
4C085BA11
4C085BB31
4C085CC07
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4C087NA14
4C087ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA17
4H045BA19
4H045CA11
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA83
4H045DA86
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
一態様では、本開示は、それを必要とする対象におけるアルコール性肝疾患又は移植片対宿主病を予防又は治療する方法であって、産卵動物から得られた高度免疫化卵製品の治療有効量を対象に投与し、それによって対象におけるアルコール性肝疾患又は移植片対宿主病を予防又は治療することを含み、高度免疫化卵製品が、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素、及びエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)からなる群から選択される抗原に対する治療有効量の1つ以上の抗体を含む、方法に関する。本開示はまた、エンテロコッカス・フェカリス、単離されたエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素及びエンテロコッカス・フェシウムからなる群から選択される抗原で高度免疫化されている動物によって産生された高度免疫化卵及び卵製品に関する。高度免疫化卵及び卵製品を調製するための方法もまた開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象におけるアルコール性肝疾患を予防又は治療する方法であって、産卵動物から得られた高度免疫化卵製品の治療有効量を対象に投与し、それによって対象におけるアルコール性肝疾患を予防又は治療することを含み、高度免疫化卵製品が、エンテロコッカス・フェカリス及びエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素からなる群から選択される抗原に対する治療有効量の1つ以上の抗体を含む、方法。
【請求項2】
それを必要とする対象における移植片対宿主病を予防又は治療する方法であって、産卵動物から得られた高度免疫化卵製品の治療有効量を対象に投与し、それによって対象における移植片対宿主病を予防又は治療することを含み、高度免疫化卵製品が、エンテロコッカス・フェカリス、エンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素及びエンテロコッカス・フェシウムからなる群から選択される抗原に対する治療有効量の1つ以上の抗体を含む、方法。
【請求項3】
高度免疫化卵製品が、エンテロコッカス・フェカリスに対する治療有効量の1つ以上の抗体、及びエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素に対する治療有効量の1つ以上の抗体を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
エンテロコッカス・フェカリス、単離されたエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素、及びエンテロコッカス・フェシウムからなる群から選択される抗原で産卵動物を高度免疫化することをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
高度免疫化されている産卵動物から高度免疫化卵を収集すること、及び高度免疫化卵から高度免疫化卵製品を調製することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
高度免疫化卵製品が、高度免疫化されていない産卵動物から得られた対照卵製品と比較して、エンテロコッカス・フェカリス、エンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素及びエンテロコッカス・フェシウムからなる群から選択される抗原に特異的なIgY抗体を少なくとも20重量%超含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
高度免疫化卵製品が、1日当たり1~4回対象に投与される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
高度免疫化卵製品が、経口又は静脈内投与される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
高度免疫化卵製品の対象への投与が、高度免疫化卵製品を投与されていない対象と比較して、対象におけるエンテロコッカス・フェカリスのレベルを低下させる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
高度免疫化卵製品の対象への投与が、高度免疫化卵製品を投与されていない対象と比較して、対象における肝損傷を軽減する、請求項1及び3から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
対象がヒトである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
エンテロコッカス・フェカリス、単離されたエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素及びエンテロコッカス・フェシウムからなる群から選択される抗原で高度免疫化されている動物によって産生された高度免疫化卵であって、高度免疫化卵における抗原に対する抗体レベルが、高度免疫化されていない動物由来の卵と比較して増加している、高度免疫化卵。
【請求項13】
動物が、エンテロコッカス・フェカリス及び単離されたエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素で高度免疫化されており、エンテロコッカス・フェカリス及び単離されたエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素に対する抗体のレベルが、高度免疫化されていない動物由来の卵と比較して増加している、請求項12に記載の高度免疫化卵。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の高度免疫化卵から得られた高度免疫化卵製品。
【請求項15】
高度免疫化卵製品が全卵である、請求項14に記載の高度免疫化卵製品。
【請求項16】
高度免疫化卵製品が卵黄である、請求項14に記載の高度免疫化卵製品。
【請求項17】
高度免疫化卵製品が、エンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素に対する精製又は部分精製IgY抗体である、請求項14に記載の高度免疫化卵製品。
【請求項18】
高度免疫化卵製品が、エンテロコッカス・フェカリスに対する精製又は部分精製IgY抗体である、請求項14に記載の高度免疫化卵製品。
【請求項19】
高度免疫化卵製品が、エンテロコッカス・フェカリスに対する精製又は部分精製IgY抗体及びエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素に対する精製又は部分精製IgY抗体からなる、請求項14に記載の高度免疫化卵製品。
【請求項20】
請求項14から19のいずれか一項に記載の高度免疫化卵製品及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項21】
3~10グラムの全卵を含む、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
1~3グラムの卵黄を含む、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項23】
0.05~1グラムの精製又は部分精製IgYを含む、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項24】
経口投与用に製剤化される、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項25】
高度免疫化卵製品が、ナノ粒子又はエマルション中に製剤化される、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
静脈内投与用に製剤化される、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項27】
高度免疫化卵製品を調製する方法であって、i)エンテロコッカス・フェカリス、単離されたエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素及びエンテロコッカス・フェシウムからなる群から選択される抗原で産卵動物を高度免疫化すること、並びにii)動物によって産生された1つ以上の卵から高度免疫化卵製品を調製することを含む、方法。
【請求項28】
抗原が、単離されたエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素及びエンテロコッカス・フェシウムからなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
抗原が、エンテロコッカス・フェカリス及び単離されたエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
抗原が、エンテロコッカス・フェカリス及び単離されたエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
産卵動物がニワトリである、請求項27から30のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年4月16日に出願された米国仮特許出願第63/175,603号に対する優先権を主張し、その内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願に関連する配列表は、EFS-Webを介して電子形式で提出され、これによってその全体が参照により本明細書に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名前は、131331_00320_Sequence_Listingである。テキストファイルのサイズは1004バイトであり、テキストファイルは2022年4月14日に作成された。
【背景技術】
【0003】
アルコール性肝疾患(ALD)は、脂肪肝、アルコール性肝炎及び肝線維症又は肝硬変を伴う慢性肝炎を含む、アルコール過剰摂取による肝臓の症状を包含する。アルコール性肝疾患の最も重篤な形態はアルコール性肝炎であり、死亡率は1~6か月で20%~40%の範囲であり、75%もの患者が、重度のアルコール性肝炎の診断から90日以内に死亡する。Duan et al., 2019, Nature 575: 505-511を参照のこと。コルチコステロイドによる療法はごくわずかしか効果がない。早期肝移植が唯一の治癒的療法であるが、選択された施設及び限られた患者の群にのみ提供される。上記で引用したDuan et al.を参照のこと。
【0004】
移植片対宿主病(GVHD)は、皮膚、肝臓及び胃腸管に影響を与え、ドナーT細胞がレシピエント組織を異物として認識し、組織の炎症及び損傷を引き起こす場合に発生する。GVHDについての予防及び治療方針は研究の盛んな分野である。Garrett, 2020, New England Journal of Medicine 382(11): 1064-1066を参照のこと。したがって、ALD及びGVHDを治療又は予防する改善された方法の必要性が存在している。
【発明の概要】
【0005】
ある特定の態様では、本開示は、それを必要とする対象におけるアルコール性肝疾患を予防又は治療する方法であって、産卵動物から得られた高度免疫化卵製品の治療有効量を対象に投与し、それによって対象におけるアルコール性肝疾患を予防又は治療することを含み、高度免疫化卵製品が、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)及びエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素からなる群から選択される抗原に対する治療有効量の1つ以上の抗体を含む、方法に関する。
【0006】
ある特定の態様では、本開示は、それを必要とする対象における移植片対宿主病を予防又は治療する方法であって、産卵動物から得られた高度免疫化卵製品の治療有効量を対象に投与し、それによって対象における移植片対宿主病を予防又は治療することを含み、高度免疫化卵製品が、エンテロコッカス・フェカリス、エンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素及びエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)からなる群から選択される抗原に対する治療有効量の1つ以上の抗体を含む、方法に関する。
【0007】
ある特定の実施形態では、高度免疫化卵製品は、エンテロコッカス・フェカリスに対する治療有効量の1つ以上の抗体、及びエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素に対する治療有効量の1つ以上の抗体を含む。ある特定の実施形態では、方法は、エンテロコッカス・フェカリス、単離されたエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素、及びエンテロコッカス・フェシウムからなる群から選択される抗原で産卵動物を高度免疫化することをさらに含む。ある特定の実施形態では、方法は、高度免疫化されている産卵動物から高度免疫化卵を収集すること、及び高度免疫化卵から高度免疫化卵製品を調製することをさらに含む。ある特定の実施形態では、高度免疫化卵製品は、高度免疫化されていない産卵動物から得られた対照卵製品と比較して、エンテロコッカス・フェカリス、エンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素及びエンテロコッカス・フェシウムからなる群から選択される抗原に特異的なIgY抗体を少なくとも20重量%超含む。ある特定の実施形態では、高度免疫化卵製品は、1日当たり1~4回対象に投与される。ある特定の実施形態では、高度免疫化卵製品は、経口又は静脈内投与される。ある特定の実施形態では、高度免疫化卵製品の対象への投与が、高度免疫化卵製品を投与されていない対象と比較して、対象におけるエンテロコッカス・フェカリスのレベルを低下させる。ある特定の実施形態では、高度免疫化卵製品の対象への投与が、高度免疫化卵製品を投与されていない対象と比較して、対象における肝損傷を軽減する。ある特定の実施形態では、対象はヒトである。
【0008】
ある特定の態様では、本開示は、エンテロコッカス・フェカリス、単離されたエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素及びエンテロコッカス・フェシウムからなる群から選択される抗原で高度免疫化されている動物によって産生された高度免疫化卵であって、高度免疫化卵における抗原に対する抗体レベルが、高度免疫化されていない動物由来の卵と比較して増加している、高度免疫化卵に関する。ある特定の実施形態では、動物は、エンテロコッカス・フェカリス及び単離されたエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素で高度免疫化されており、エンテロコッカス・フェカリス及び単離されたエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素に対する抗体のレベルが、高度免疫化されていない動物由来の卵と比較して増加している。
【0009】
ある特定の態様では、本開示は、本明細書に記載される高度免疫化卵から得られた高度免疫化卵製品に関する。ある特定の実施形態では、高度免疫化卵製品は全卵である。ある特定の実施形態では、高度免疫化卵製品は卵黄である。ある特定の実施形態では、高度免疫化卵製品は、エンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素に対する精製又は部分精製IgY抗体である。ある特定の実施形態では、高度免疫化卵製品は、エンテロコッカス・フェカリスに対する精製又は部分精製IgY抗体である。ある特定の実施形態では、高度免疫化卵製品は、エンテロコッカス・フェカリスに対する精製又は部分精製IgY抗体及びエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素に対する精製又は部分精製IgY抗体からなる。
【0010】
ある特定の態様では、本開示は、請求項14から19のいずれか一項に記載の高度免疫化卵製品及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。ある特定の実施形態では、組成物は3~10グラムの全卵を含む。ある特定の実施形態では、組成物は1~3グラムの卵黄を含む。ある特定の実施形態では、組成物は0.05~1グラムの精製又は部分精製IgYを含む。ある特定の実施形態では、医薬組成物は経口投与用に製剤化される。ある特定の実施形態では、高度免疫化卵製品は、ナノ粒子又はエマルション中に製剤化される。ある特定の実施形態では、医薬組成物は静脈内投与用に製剤化される。
【0011】
ある特定の態様では、本開示は、高度免疫化卵製品を調製する方法であって、i)エンテロコッカス・フェカリス、単離されたエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素及びエンテロコッカス・フェシウムからなる群から選択される抗原で産卵動物を高度免疫化すること、並びにii)動物によって産生された1つ以上の卵から高度免疫化卵製品を調製することを含む、方法に関する。ある特定の実施形態では、抗原は、単離されたエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素及びエンテロコッカス・フェシウムからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、抗原は、エンテロコッカス・フェカリス及び単離されたエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、抗原は、エンテロコッカス・フェカリス及び単離されたエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素を含む。ある特定の実施形態では、産卵動物はニワトリである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】アルコール性肝疾患マウスモデルにおける抗エンテロコッカス・フェカリス及び抗細胞溶解素IgY抗体を評価する実験の概略を示す図である。
【
図2】SDS-PAGE電気泳動によって分析された抗エンテロコッカス・フェカリス及び抗細胞溶解素IgY抗体の純度を示す図である。IgYは180KDaの分子量を有し、67KDaの重鎖及び23KDaの軽鎖の2つのサブユニットから構成され、レーン1は分子量ラダーであり、レーン2はIgY標準であり、レーン3及び4はそれぞれ、エンテロコッカス・フェカリス及び細胞溶解素で高度免疫化したニワトリの卵黄からの1μg及び2μgの総可溶性タンパク質である。
【
図3A】エンテロコッカス・フェカリス+細胞溶解素で免疫化したニワトリからのIgYのエンテロコッカス・フェカリス比活性を示す図である。
【
図3B】エンテロコッカス・フェカリス+細胞溶解素で免疫化したニワトリからのIgYの細胞溶解素比活性を示す図である。非免疫化雌鶏からのIgYを対照IgYとして使用した。比活性は抗体の反応性及び力価によって表される。
【
図4】E.フェカリスの増殖に対する抗エンテロコッカス・フェカリス及び抗細胞溶解素IgYの阻害効果を示す図である。未処理及び15mg/mlのIgYで処理した全E.フェカリス細菌を37℃のインキュベーションで24時間インキュベートした。培養物を連続希釈して、10
4倍に希釈し、BHI寒天プレート上にプレーティングした。一晩のインキュベーション後、ImageJ Countを使用してコロニーをカウントした。
【
図5】未処理及び抗エンテロコッカス・フェカリス+抗細胞溶解素IgYで処理したE.フェカリス培養物におけるcfu/mlの定量を示す図である。阻害パーセントを計算した。
【
図6】
図6A~6Eは、慢性+過剰エタノール摂取モデル(chronic-plus-binge ethanol feeding model)に供されたノトバイオートマウスにおける抗エンテロコッカス・フェカリス+抗細胞溶解素IgY投与の効果を示す図である。C57BL/6無菌マウスにアルコール性肝炎を有する細胞溶解素陽性のヒト患者由来の糞便を定着させ、慢性過剰エタノール摂取モデルに供し(群当たりn=5)、流動食中でビヒクル、対照IgY及び抗エンテロコッカス・フェカリス+抗細胞溶解素IgYを与えた。(A)食物摂取量。(B)体重。(C)肝臓重量。(D)アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の血清レベル。(E)肝臓トリグリセリド(TAG、トリアシルグリセロール)含有量。結果は平均値±s.e.mとして表される。P値は、Tukeyの事後検定を用いた一元配置分散分析によって決定された。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001
【
図7】慢性+過剰エタノール摂取モデルに供されたノトバイオートマウスの肝臓に対する抗エンテロコッカス・フェカリス+抗細胞溶解素IgY投与の効果を示す図である。C57BL/6無菌マウスにアルコール性肝炎を有する細胞溶解素陽性の患者由来の糞便を定着させ、慢性過剰エタノール摂取モデルに供し(群当たりn=5)、流動食中でビヒクル、対照IgY又は抗エンテロコッカス・フェカリス+抗細胞溶解素IgYを与えた。ヘマトキシリン及びエオシン染色後の代表的な肝臓切片を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
「高度免疫化」という用語は、免疫応答が上昇し、自然の非曝露状態を超えて維持されるような1つ以上の抗原への反復曝露を意味する。
【0014】
「高度免疫状態」とは、高度免疫化されている産卵動物における免疫応答の上昇を指す。
【0015】
本明細書で使用される場合、「卵」という用語は、全卵(食用、高度免疫化又はその他)を指す。本明細書で使用される場合、「卵製品」という用語は、全卵又は全卵から得られた任意の製品若しくは画分を指す。特定の実施形態では、卵製品は卵黄、例えば卵黄粉末である。別の実施形態では、卵製品は卵白、例えば卵白粉末である。別の実施形態では、卵製品は全卵、例えば全卵粉末(例えば噴霧乾燥された全卵粉末)から得られる。
【0016】
「対照卵」という用語は、高度免疫化状態で維持されていない産卵動物、すなわち高度免疫化されていない動物から得られた卵を指す。「対照卵製品」という用語は、対照卵又は対照卵から得られた卵製品を指す。
【0017】
「高度免疫化卵」という用語は、高度免疫状態に維持された産卵動物、すなわち高度免疫化されている産卵動物から得られた全卵を指す。
【0018】
「高度免疫化卵製品」という用語は、高度免疫化卵又は高度免疫化卵から得られた任意の製品を指す。ある特定の実施形態では、高度免疫化卵製品は濃縮物である。本明細書で使用される場合、「濃縮物」という用語は、濃縮物中の抗体の濃度が高度免疫化卵における抗体の濃度よりも高くなるように、少なくとも部分的に精製されている高度免疫化卵製品を指す。
【0019】
「卵粉末」という用語は、乾燥されている全卵を指す。一部の実施形態では、卵粉末は噴霧乾燥されている。
【0020】
「産卵動物」という用語は、任意の卵生動物を意味し、卵を産む任意の動物、例えば鳥類、魚類及び爬虫類を含む。
【0021】
「鳥類」という用語は、鳥綱の一員である動物を指す。鳥類には、ニワトリ、シチメンチョウ、ガチョウ、アヒル、キジ、ウズラ、ハト及びダチョウが含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
「超常レベル」という用語は、高度免疫化されていない産卵動物の卵に見出されるレベルを超えるレベルを意味する。例えば、特定の抗原に対する抗体の超常レベルは、特定の抗原で高度免疫化されていない産卵動物の卵に見出されるレベルを超える抗体のレベルである。
【0023】
「投与する」という用語は、経口、鼻腔内、非経口(静脈内、筋肉内又は皮下)、直腸、局所又は眼内を含む、対象に物質を提供する任意の方法を意味する。
【0024】
「抗原」という用語は、免疫寛容ではなく、体液性抗体及び/又は細胞媒介性免疫応答を誘導できる物質を指す。この用語は、免疫応答を刺激し、その生成物、例えば抗体と反応する能力を意味する。
【0025】
本明細書で使用される場合、「抗体」は、特異的な標的抗原、例えば、本明細書に開示されるエンテロコッカス・フェカリス抗原、単離されたエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素又はエンテロコッカス・フェシウム抗原に結合する少なくとも1つの相補性決定領域を含むタンパク質である。例えば、抗体は、重(H)鎖可変領域(本明細書ではVHと略記される)及び軽(L)鎖可変領域(本明細書ではVLと略記される)を含むことができる。別の例では、抗体は、2つの重(H)鎖可変領域及び2つの軽(L)鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、抗体はポリクローナル抗体である。本明細書で使用される場合、「ポリクローナル抗体」という用語は、特定の抗原上の異なるエピトープと免疫反応することができる抗体分子の集団を指す。特定の実施形態では、抗体はIgY抗体である。
【0026】
本明細書で使用される場合、「アルコール性肝疾患」、「ALD」、「アルコール関連肝疾患(alcohol-associated liver disease)」及び「アルコール関連肝疾患(alcohol-related liver disease)」という用語は、脂肪肝(脂肪症)、アルコール性肝炎及び肝線維症又は肝硬変を伴う慢性肝炎を含む、アルコール過剰摂取の肝臓の症状を指す。本明細書で使用される場合、「アルコール関連障害」とは、アルコール消費に関連する疾患及び障害を指し、妄想を伴うアルコール誘発性精神病性障害、アルコール乱用、過度の飲酒、大量飲酒、問題飲酒、アルコール中毒、アルコール離脱、アルコール中毒せん妄、アルコール離脱せん妄、アルコール誘発性持続性認知症、アルコール誘発性持続性健忘障害、アルコール依存症、幻覚を伴うアルコール誘発性精神病性障害、アルコール誘発性気分障害、アルコール誘発性又は関連する双極性障害、アルコール誘発性又は関連する心的外傷後ストレス障害、アルコール誘発性不安障害、アルコール誘発性性機能障害、アルコール誘発性睡眠障害及び他に特定されないアルコール関連障害(NOS)が含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
本明細書で使用される場合、「アルコール乱用者」という用語は、アルコール乱用に関するDSM IV基準(すなわち、「再発する有害な結果にもかかわらず反復的な使用」)を満たすが、アルコールに依存していない対象を指す。
【0028】
本明細書で使用される場合、「過度の飲酒者」という用語は、1週間に21杯を超える標準的な酒類を飲む男性及び1週間に14杯を超える標準的な酒類を消費する女性を指す。標準的な酒類の1つは、10オンス(300ml)のビール、4オンス(120ml)のワイン又は1オンス(30ml)の100プルーフの酒に相当する0.5オンス(15ml)の無水アルコールである。これらの個体はアルコールに依存していないが、アルコール乱用に関するDSM IV基準を満たしている又は満たしていなくてもよい。
【0029】
本明細書で使用される場合、「大量飲酒者」という用語は、1週間に14杯を超える標準的な酒類を飲む男性及び1週間に7杯より多い標準的な酒類を消費する女性を指す。これらの個体はアルコールに依存していないが、アルコール乱用に関するDSM IV基準を満たしている又は満たしていなくてもよい。
【0030】
本明細書で使用される場合、「有効量」又は「治療有効量」という用語は、本明細書で使用される場合、対象に投与される場合、障害、例えばアルコール性肝疾患(ALD)又は移植片対宿主病(GVHD)を予防又は治療するのに十分な高度免疫化卵製品の量を指す。有効量は、例えば、治療される対象の年齢、体重及び/又は健康に応じて変化し得る。
【0031】
本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、産生された細胞から精製又は部分的に精製される生物学的化合物(例えば、タンパク質)を指す。例えば、単離されたエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素は、それを産生したエンテロコッカス・フェカリス細胞から精製又は部分的に精製される。一部の実施形態では、単離されたエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素は、組換えエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素、例えば、エンテロコッカス・フェカリス細胞以外の細胞において産生されるエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素である。
【0032】
アルコール性肝疾患(ALD)
アルコールの80%は肝臓を通過して解毒される。アルコールの慢性消費は、炎症促進性サイトカイン(例えば、TNF-アルファ、インターロイキン6及びインターロイキン8)の分泌、酸化的ストレス、脂質過酸化及びアセトアルデヒド毒性をもたらす。これらの要因は、肝細胞の炎症、アポトーシス及び最終的に線維症を引き起こし、アルコール性肝疾患(ALD)に至る。ALDには、脂肪肝(脂肪症)、アルコール性肝炎及び肝線維症又は肝硬変を伴う慢性肝炎が含まれる。
【0033】
脂肪肝又は脂肪症は、肝細胞内の脂肪酸の蓄積である。大量のアルコール消費は、肝臓全体に大きな脂肪球(大小胞性脂肪症)の発生を引き起こす。アルコールはアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)によってアセトアルデヒドに代謝され、次いでアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)によって酢酸にさらに代謝され、これは最終的に二酸化炭素及び水に酸化される。このプロセスによりNADHが生成され、NADH/NAD+比が増加する。より高いNADH濃度は脂肪酸合成を誘導し、一方、低いNADレベルは脂肪酸酸化の減少をもたらす。その後、より高いレベルの脂肪酸は肝細胞にシグナルを送り、それをグリセロールに合成してトリグリセリドを形成する。これらのトリグリセリドが蓄積すると脂肪肝が発生する。
【0034】
アルコール性肝炎は肝細胞の炎症を特徴とし、肝臓を線維化しやすくするようである。炎症性サイトカイン(TNF-アルファ、IL6及びIL8)は、アポトーシス及び壊死を誘導することによる肝損傷の開始及び永続化に不可欠であると考えられる。TNF-αの活性の増加について可能性がある1つの機構は、肝疾患による腸管透過性の増加である。これにより、腸で生成されたエンドトキシンの門脈循環への吸収が促進される。次いで肝臓のクッパー細胞がエンドトキシンを貪食し、TNF-aの放出を刺激する。次いでTNF-aはカスパーゼの活性化を通じてアポトーシス経路を引き起こし、肝細胞死をもたらす。
【0035】
肝硬変は、炎症(腫脹)、線維症(細胞の硬化)及び体内の化学物質の解毒を妨げる損傷した膜を特徴とする重篤な肝疾患の後期段階であり、最終的に瘢痕化及び壊死(細胞死)に至る。アセトアルデヒドは、肝星細胞によるコラーゲン沈着を刺激することにより、アルコール誘発性線維症の原因となり得る。NADPHオキシダーゼ及び/又はシトクロムP-450 2E1に由来する酸化剤の生成及びアセトアルデヒド-タンパク質の付加物の形成は、細胞膜を損傷する。症状には、黄疸(黄化)、肝腫大、並びに損傷した肝臓構造の構造変化による疼痛及び圧痛が含まれる。アルコールの使用を完全に絶たないと、肝硬変は最終的に肝不全に至る。
【0036】
アルコール使用障害による慢性肝疾患は、世界的な疾患及び死亡率の負担の顕著な原因となっている。アルコール関連肝疾患の最も重篤な形態はアルコール性肝炎(AH)であり、死亡率は1~6か月で20%~40%の範囲である。最近、細胞溶解素と呼ばれる毒素を産生するエンテロコッカス・フェカリスを保有しているアルコール性肝炎患者の一部(約30%)では、この疾患がより重篤になることが実証された。E.フェカリスは、アルコールを飲まない人のマイクロバイオームにおいて、その人のマイクロバイオームの約0.1~0.5%の低レベルで存在するが、アルコール性肝疾患(ALD)を有する患者では、その存在量は約5%に大幅に拡大する。マイクロバイオームに細胞溶解素陽性E.フェカリスが豊富に存在するアルコール性肝炎患者の75パーセントは、重度アルコール性肝炎の診断後90日以内に死亡する(Maddrey, et al., 1978, Gastroenterology 75, 193-199)。コルチコステロイドによる標準治療はごくわずかしか効果がない(Thursz, et al., 2015, N. Engl. J. Med. 372, 1619-1628)。早期の肝移植及び禁酒が唯一の有効な治療法であるが、限られた患者群にのみ利用可能である(Mathurin, et al., 2012, Management of alcoholic hepatitis. J. Hepatol. 56, S39-S45)。
【0037】
Duanら(2019, Nature 575:505-511)は、疾患進行を阻止する際に、アルコール性肝炎を有する患者の糞便に存在する細菌を定着させたヒト化マウスにおいて細胞溶解素陽性E.フェカリスを標的とするバクテリオファージの有効性を示した。細胞溶解素陽性E.フェカリスを溶解させるバクテリオファージでの処置により、これらのヒト化マウスにおいて肝臓内の細胞溶解素が減少し、エタノール誘発性肝疾患の進行が阻止されることが実証された。
【0038】
移植片対宿主病(GVHD)
GVHDは、固形臓器及び幹細胞の移植の後、例えば骨髄移植により発生する主要な合併症である。提供された組織(移植片)内に残るドナーの免疫系の白血球は、レシピエント(宿主)を異物として認識する。次いで移植された組織内に存在する白血球がレシピエントの体の細胞を攻撃し、GVHDを引き起こす。Hoffmann et al., 2002, J. Exp. Med. 196(3): 389-399を参照のこと。GVHDは急性型及び慢性型で発生し得る。この疾患の急性型は通常、移植後最初の100日以内に観察され、関連する罹患率及び死亡率のために、移植に対する大きな課題となっている。慢性型のGVHDは通常100日後に発生する。中等度から重度の慢性GVHDの症例の出現は、長期生存に悪影響を及ぼす。
【0039】
急性GVHD(aGVHD)は、皮膚、肝臓及び胃腸管に影響を及ぼし、ドナーT細胞がレシピエント組織を異物として認識する場合に発生し、組織の炎症及び損傷を引き起こす。具体的には、aGVHDは、宿主細胞の表面上のMHCクラスI及びII分子並びにそれらによって提示されるペプチドを認識するアロ反応性ドナーT細胞によって開始される。T細胞を含むドナー白血球によるいくつかの標的臓器、例えば腸、肝臓及び皮膚への浸潤は、aGVHDの初期段階における重要なプロセスの1つであると考えられる。炎症促進性サイトカインの分泌及びこれらの部位への追加の炎症性エフェクター細胞の動員をもたらすドナーT細胞の活性化及び増殖により、罹患組織はさらに損傷する。上記で引用したHoffmann et al.を参照のこと。
【0040】
エンテロコッカス・フェカリス及び細胞溶解素並びにALD
腸内微生物叢はマウスにおいてアルコール性肝疾患を促進するが、このプロセスに関与する微生物因子についてはほとんど知られていない。最近、エンテロコッカス・フェカリスによって分泌される2つのサブユニットの外毒素である細胞溶解素が、肝細胞死及び肝損傷の原因として特定された。Duan et al., 2019, Nature 575: 505-511を参照されたく、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。エンテロコッカス・フェカリスは、ヒト及び他の哺乳動物の胃腸管に生息するグラム陽性の非芽胞形成共生細菌である。
【0041】
毒性の強いE.フェカリス株は、クオラムシグナルに応答して細菌及び真核細胞の両方を溶解する細胞溶解素と呼ばれる孔形成外毒素を発現する。非アルコール性の個体又はアルコール使用障害を有する患者と比較して、アルコール性肝炎を有する患者は糞便中のE.フェカリスの数が増加している。細胞溶解素陽性(細胞溶解性)E.フェカリスの存在は、アルコール性肝疾患の重症度及びアルコール性肝炎を有する患者の死亡率と相関した。さらに、細胞溶解性E.フェカリスを標的とするバクテリオファージは、肝臓内の細胞溶解素を減少させ、ヒト化マウスにおけるエタノール誘発性肝疾患を消失させる。上記で引用したDuan et al.を参照のこと。
【0042】
機能的細胞溶解素毒素は、遺伝子cy1LL及びcy1LSによってそれぞれコードされる大きい及び小さいサブユニットのオリゴペプチドからなる。E.フェカリス細胞溶解素成分であるCy1LL及びCy1LSは、A型の孔形成抗生物質として分類され、さらに最近では2成分のクラスII抗生物質として分類されている。抗生物質は複雑な多環式抗菌ペプチドであり、これはグラム陽性菌によってリボソーム的に合成され、脱水セリン及びスレオニン残基とシステインチオールとの間のランチオニン及びメチルランチオニンの架橋の存在を特徴とする。抗生物質は非常に多様な構造及び機能を有するが、それらは全て広範な翻訳後修飾を受け、抗生物質又は形態形成活性のいずれかを有することを特徴とする。細胞溶解素は、他の細菌並びに赤血球及び他の真核細胞を溶解できるという点で、抗生物質の中でも特有であるようである。Van Tyne et al., 2013, Toxins 5(5): 895-911を参照のこと。
【0043】
Cy1LL及びCy1Lsのアミノ酸配列は以下に提供される:
Cy1LL TTPVCAVAATAAASSAACGWVGGGIFTGVTVVVSLKHC(配列番号1)
CylLS TTPACFTIGLGVGALFSAKFC(配列番号2)
【0044】
エンテロコッカス及びGVHD
患者の腸内微生物叢が、GVHD、特に同種造血細胞移植に起因する急性GVHDに対する感受性において役割を果たし得るという証拠が増加している。Garrett, 2020, New England Journal of Medicine 382(11): 1064-1066を参照されたく、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。腸内の一部の腸球菌種(例えばエンテロコッカス・フェカリス及びエンテロコッカス・フェシウム)は、同種造血細胞移植を受けた患者において生命を脅かす血流感染症を頻繁に引き起こす日和見病原体である。研究により、腸球菌、特にE.フェシウムが、同種造血細胞移植を受けている患者のかなりのサブグループの糞便群集で優勢であること、並びにこの腸球菌の優勢が全生存期間の減少及びGVHDによる死亡率の増加と相関していることが示されている。Stein-Thoeringer et al., 2019, Science 366: 1143-9を参照されたく、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。Stein-Thoeringerらは、食事性糖質のラクトースがGVHDのマウスモデルにおいて腸球菌の増殖を誘導すること、並びにラクトースを含まない食事がGVHDにおける腸球菌の増殖及びT細胞により誘導される炎症を軽減することを観察した。
【0045】
高度免疫化卵製品
ある特定の態様では、本開示は、高度免疫化卵製品を調製する方法であって、i)エンテロコッカス・フェカリス、単離されたエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素及びエンテロコッカス・フェシウムからなる群から選択される抗原で産卵動物を高度免疫化すること、並びにii)動物によって産生された1つ以上の卵から高度免疫化卵製品を調製することを含む、方法に関連する。一部の実施形態では、抗原は、エンテロコッカス・フェカリス及び単離されたエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素からなる群から選択される。一部の実施形態では、抗原は、エンテロコッカス・フェカリス及び単離されたエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素を含む。
【0046】
産卵動物は、特定の免疫原に特異的な抗体を血液及び卵中に産生する。例えば、鳥綱の様々な属、例えばニワトリ(ガルス・ドメスティクス(Gallus domesticus))、シチメンチョウ及びアヒルは、鳥類の疾患に関連する抗原に対する抗体を産生する。LeBacq-Verheydenら(Immunology 27:683 (1974))及びLeslie, G.A.ら(J. Med. 130:1337 (1969))は、ニワトリの免疫グロブリンを定量的に分析した。Polson, A.ら(Immunological Communications 9:495-514 (1980))は、いくつかのタンパク質及びタンパク質の天然混合物に対して雌鶏を免疫化し、卵黄中にIgY抗体を検出した。Fertel, R.ら(Biochemical and Biophysical Research Communications 102:1028-1033 (1981))は、プロスタグランジンに対して雌鶏を免疫化し、卵黄中に抗体を検出した。Jenseniusら(Journal of Immunological Methods 46:63-68 (1981))は、免疫診断で使用するための卵黄IgGを単離する方法を提供している。Polson ら(Immunological Communications 9:475-493 (1980))は、様々な植物ウイルスで免疫化された雌鶏の卵黄から単離された抗体を記載している。
【0047】
米国特許第4,748,018号は、哺乳動物の受動免疫化方法を開示しており、その方法は、対応する抗原に対して免疫化された鳥類の卵から得られた精製抗体を非経口投与することを含み、その哺乳動物は卵に対する免疫を獲得している。DCV-Biologicsに譲渡された米国特許第5,772,999号は、高度免疫化卵及び/若しくは乳又はそれらの画分を対象に投与することによって、対象における慢性胃腸障害又は非ステロイド性抗炎症薬誘発性(NSAID誘発性)胃腸損傷を予防、対抗又は軽減する方法を開示している。
【0048】
免疫化卵は、例えば、特異的な抗原又は抗原の混合物で免疫化された鳥類に由来する卵である。高度免疫化卵は、例えば、抗原の定期的なブースター投与によって特異的な免疫化状態にもたらされた鳥類に由来する卵である。高度免疫化卵は、鳥製造業者が投与した抗原の種類に関係なく、上述のように、慢性胃腸障害、NSAID誘発性胃腸損傷の治療(米国特許第5,772,999号を参照のこと)、及び抗炎症組成物の存在による抗炎症効果(米国特許出願公開第US2004/0156857号を参照のこと)を含む、様々な有益な因子を有することが見出されている。
【0049】
高度免疫化卵製品の利点の1つは、対照卵製品又は標準的な免疫化技術を使用してエンテロコッカス・フェシウム、エンテロコッカス・フェカリス又はエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素で免疫化されたニワトリからの卵製品と比較して、エンテロコッカス・フェシウム、エンテロコッカス・フェカリス又はエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素に対するより高く、より一貫したレベルの抗体(例えばIgY抗体)を有することである。一部の実施形態では、高度免疫化卵製品は、標準的な免疫化技術を使用してエンテロコッカス・フェカリス及び/又はエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素で免疫化されたニワトリと比較して、エンテロコッカス・フェカリス及び/又は単離されたエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素に対するより高いレベルのIgY抗体を有する。典型的には、標準的な免疫化は、初回免疫化、その後、30日間隔での1回又は2回のブースター免疫化からなる。一部の実施形態では、高度免疫化は、本明細書に記載されるエンテロコッカス・フェシウム、エンテロコッカス・フェカリス及び/又はエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素による少なくとも4、5、6、7、8、9又は10回の免疫化を含む。一部の実施形態では、高度免疫化は、本明細書に記載されるエンテロコッカス・フェシウム、エンテロコッカス・フェカリス及び/又は単離されたエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素で産卵動物を30日未満、25日未満、20日未満、15日未満、10日未満又は5日未満の間隔で免疫化することを含む。
【0050】
高度免疫化卵製品は任意の産卵動物によって産生され得る。動物は鳥綱の一員又は言い換えれば鳥類であることが好ましい。鳥綱の中では家畜化された家禽が好ましいが、この綱の他の一員、例えば、シチメンチョウ、アヒル及びガチョウが、高度免疫卵製品の適切な供給源である。特定の実施形態では、産卵動物はニワトリである。
【0051】
この特別な高度免疫化状態は、好ましくは、初回免疫を投与し、続いて十分に高い用量の特異的な抗原又は抗原の混合物を用いた定期的なブースターを投与することによって達成される。ブースターの投薬量は、産卵動物の一次免疫を生じさせるのに必要な投薬量の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%であってもよい。これらのパーセンテージのいずれかを使用して、ブースター免疫の投薬量の範囲を定義できる。例えば、一部の実施形態では、ブースターの投薬量は、産卵動物の一次免疫を生じさせるのに必要な投薬量の20%~80%、30%~70%又は50%~100%である。特定の実施形態では、ブースター免疫の投薬量は、一次免疫の投薬量の50%である。高度免疫状態を発生させ、維持するための要件についての知識があれば、動物を高度免疫状態に維持するために、利用する産卵動物の属及び系統に応じて、投与する抗原の量を変えることは当該技術分野の技術の範囲内である。
【0052】
高度免疫状態は、単一の抗原又は抗原の組合せによってもたらされ得る。高度免疫化は、複数の抗原への複数回の曝露又は単一の抗原への複数回の曝露によって達成され得る。
【0053】
高度免疫化のための抗原
一部の実施形態では、高度免疫化のための抗原は、エンテロコッカス・フェシウム、エンテロコッカス・フェカリス及びエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素のうちの1つ以上を含む。一部の実施形態では、産卵動物は、エンテロコッカス・フェカリスのみで高度免疫化され、すなわち、追加の抗原が高度免疫化のために使用されない。一部の実施形態では、産卵動物は、単離されたエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素のみで高度免疫化される。一部の実施形態では、産卵動物は、エンテロコッカス・フェシウムのみで高度免疫化される。
【0054】
一部の実施形態では、エンテロコッカス・フェカリスに対する抗体を含む高度免疫化卵製品は、産卵動物をエンテロコッカス・フェカリスで高度免疫化することによって調製される。一部の実施形態では、エンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素に対する抗体を含む高度免疫化卵製品は、産卵動物をエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素で高度免疫化することによって調製される。一部の実施形態では、エンテロコッカス・フェシウムに対する抗体を含む高度免疫化卵製品は、産卵動物をエンテロコッカス・フェシウムで高度免疫化することによって調製される。
【0055】
本明細書に開示される抗原の任意の組合せを使用して、産卵動物を高度免疫化することができる。例えば、一部の実施形態では、産卵動物は、エンテロコッカス・フェシウム、エンテロコッカス・フェカリス及び単離されたエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素で高度免疫化される。一部の実施形態では、産卵動物は、エンテロコッカス・フェシウム及びエンテロコッカス・フェカリスで高度免疫化される。一部の実施形態では、産卵動物は、エンテロコッカス・フェシウム及び単離されたエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素で高度免疫化される。一部の実施形態では、産卵動物は、エンテロコッカス・フェカリス及び単離されたエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素で高度免疫化される。
【0056】
高度免疫化手順
以下のステップのリストは、産卵動物を高い免疫状態にし、その結果得られる高度免疫卵又は卵製品を鳥類に投与し得るために使用される好ましい手順の一例である:
1.1つ以上の抗原を選択する。
2.一次免疫によって産卵動物において免疫応答を誘発する。
3.高度免疫状態を誘導し、維持するために、適切な投薬量の1つ以上の抗原のブースターワクチンを投与する。
【0057】
ステップ1:このステップで重要な点は、抗原が産卵動物において免疫状態及び高度免疫状態を誘導できなければならないということである。一部の実施形態では、産卵動物はエンテロコッカス・フェカリスで免疫化される。一部の実施形態では、産卵動物はエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素で免疫化される。一部の実施形態では、産卵動物はエンテロコッカス・フェシウムで高度免疫化される。一部の実施形態では、産卵動物は、エンテロコッカス・フェシウム、エンテロコッカス・フェカリス及びエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素のうちの2つ以上で高度免疫化される。
【0058】
ステップ2:エンテロコッカス・フェカリス及びエンテロコッカス・フェシウムに関して、ワクチンは死菌ワクチン又は弱毒化生ワクチンのいずれかであり得る。ワクチンは、免疫応答を誘発する任意の方法によって投与され得る。免疫化は、筋肉内注射を介してワクチンを投与することによって達成されることが好ましい。鳥類に注射するのに好ましい筋肉は胸筋である。投薬量は好ましくは0.05~5ミリグラムの免疫原性ワクチンである。使用され得る他の投与方法には、静脈内注射、腹腔内注射、皮内、肛門坐剤、エアロゾル又は経口投与が含まれる。
【0059】
免疫学の当業者に公知の多くの方法によってワクチンが産卵動物において免疫応答を誘発したかどうかを決定することができる。これらの例には、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、刺激抗原に対する抗体の存在に関する検査及び抗原に応答する宿主からの免疫細胞の能力を評価するために設計された検査が含まれる。免疫応答を誘導するのに必要な抗原の最小投薬量は、使用されるアジュバントの種類及び抗原の配合並びに宿主として使用される産卵動物の種類を含む、使用されるワクチン接種手順による。
【0060】
ステップ3:高度免疫状態は、好ましくは、一定の時間間隔での適切な投薬量の反復ブースター投与によって標的動物において誘導され、維持される。時間間隔は好ましくは6~12か月の期間にわたって2~8週間間隔である。しかしながら、ブースター投与が免疫寛容を引き起こさないことが不可欠である。このようなプロセスは当該技術分野で周知である。高度免疫化卵製品を調製する方法は、例えば、米国特許第6,803,035号に記載されており、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
特定の実施形態では、抗原(例えば、エンテロコッカス・フェシウム、エンテロコッカス・フェカリス及び/又はエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素)がフロイントワクチンに製剤化される。最初のワクチン接種では、産卵動物に各抗原の0.5ml用量を2回投与する。2週間後、各抗原の0.5ml用量を1回、ブースターワクチン接種として産卵動物に投与する。追加のブースターワクチン接種が最初のワクチン接種から4週間後に実施される。ワクチンは乳房組織に投与することができる。
【0062】
他の高度免疫化維持手順又は手順の組合せ、例えば、一次免疫化には筋肉内注射及びブースター注射には静脈内注射を使用することが可能である。さらなる手順には、マイクロカプセル化抗原及び液体抗原の同時投与、又は一次免疫化には筋肉内注射、及びマイクロカプセル化手段による経口投与若しくは非経口投与によるブースター投薬が含まれる。一次及び高度免疫化のいくつかの組合せは当業者に公知である。
【0063】
一部の実施形態では、高度免疫化卵製品は、エンテロコッカス・フェシウムに対する抗体を含む。ある特定の実施形態では、高度免疫化卵製品は、エンテロコッカス・フェカリスに対する抗体を含む。一部の実施形態では、高度免疫化卵製品は、エンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素に対する抗体を含む。エンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素に対する抗体は、毒素に結合して中和することができる。一部の実施形態では、高度免疫化卵製品は、エンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素に対する抗体及びエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素ではない少なくとも1つのさらなるエンテロコッカス・フェカリス抗原に対する抗体を含む。
【0064】
抗体は、IgA、IgM又はIgY抗体であり得る。特定の実施形態では、抗体はIgY抗体である。
【0065】
高度免疫化卵又は高度免疫化卵製品は、特定の抗原で高度免疫化されていない産卵動物から得られた対照卵又は対照卵製品と比較して、本明細書に開示される特定の抗原に特異的な増加したレベルの抗体(例えばIgY抗体)を含有し得る。例えば、一部の実施形態では、高度免疫化卵又は高度免疫化卵製品は、高度免疫化されていない産卵動物から得られた対照卵又は卵製品と比較して、エンテロコッカス・フェカリスに特異的な増加したレベルの抗体を含有する。一部の実施形態では、高度免疫化卵又は高度免疫化卵製品は、高度免疫化されていない産卵動物から得られた対照卵又は卵製品と比較して、エンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素に特異的な増加したレベルの抗体を含有する。一部の実施形態では、高度免疫化卵又は高度免疫化卵製品は、高度免疫化されていない産卵動物から得られた対照卵又は卵製品と比較して、エンテロコッカス・フェシウムに特異的な増加したレベルの抗体を含有する。
【0066】
一部の実施形態では、高度免疫化卵又は卵製品は、特定の抗原で高度免疫化されていない産卵動物から得られた対照卵又は対照卵製品と比較して、重量で少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、100%、200%、300%、400%又は500%以上の、本明細書に開示される特定の抗原(例えば、エンテロコッカス・フェシウム、エンテロコッカス・フェカリス又はエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素)に特異的な抗体(例えばIgY抗体)を含む。例えば、一部の実施形態では、高度免疫化卵又は高度免疫化卵製品は、エンテロコッカス・フェカリスで高度免疫化されていない産卵動物から得られた対照卵又は対照卵製品と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、100%、200%、300%、400%又は500%以上の、エンテロコッカス・フェカリスに特異的な抗体(例えばIgY抗体)を含む。一部の実施形態では、高度免疫化卵又は高度免疫化卵製品は、エンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素で高度免疫化されていない産卵動物から得られた対照卵又は対照卵製品と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、100%、200%、300%、400%又は500%以上の、エンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素に特異的な抗体(例えばIgY抗体)を含む。一部の実施形態では、高度免疫化卵又は高度免疫化卵製品は、エンテロコッカス・フェシウムで高度免疫化されていない産卵動物から得られた対照卵又は対照卵製品と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、100%、200%、300%、400%又は500%以上の、エンテロコッカス・フェシウムに特異的な抗体(例えばIgY抗体)を含む。
【0067】
高度免疫化卵又は卵製品は、高度免疫化されていない産卵動物から得られた対照卵又は卵製品と比較して、増加したレベルの2つ以上の抗体(例えばIgY抗体)を含有することができ、その各々は、本明細書に開示される異なる抗原に特異的である。例えば、一部の実施形態では、高度免疫化卵又は高度免疫化卵製品は、高度免疫化されていない産卵動物から得られた対照卵又は卵製品と比較して、エンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素に特異的な増加したレベルの1つ以上の抗体及びエンテロコッカス・フェカリスに特異的な1つ以上の抗体(例えば、エンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素以外のエンテロコッカス・フェカリス抗原に特異的な1つ以上の抗体)を含有する。一部の実施形態では、高度免疫化卵又は高度免疫化卵製品は、高度免疫化されていない産卵動物から得られた対照卵又は卵製品と比較して、エンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素に特異的な増加したレベルの抗体及びエンテロコッカス・フェシウムに特異的な増加したレベルの抗体を含有する。一部の実施形態では、高度免疫化卵又は高度免疫化卵製品は、高度免疫化されていない産卵動物から得られた対照卵又は卵製品と比較して、エンテロコッカス・フェシウムに特異的な増加したレベルの抗体及びエンテロコッカス・フェカリスに特異的な増加したレベルの抗体を含有する。
【0068】
例えば、一部の実施形態では、高度免疫化卵又は高度免疫化卵製品は、エンテロコッカス・フェカリス又はエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素で高度免疫化されていない産卵動物から得られた対照卵又は対照卵製品と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、100%、200%、300%、400%又は500%以上の、エンテロコッカス・フェカリスに対する抗体、及び少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、100%、200%、300%、400%又は500%以上の、エンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素に対する抗体を含む。一部の実施形態では、高度免疫化卵又は高度免疫化卵製品は、エンテロコッカス・フェカリス又はエンテロコッカス・フェシウムで高度免疫化されていない産卵動物から得られた対照卵又は対照卵製品と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、100%、200%、300%、400%又は500%以上の、エンテロコッカス・フェカリスに対する抗体、及び少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、100%、200%、300%、400%又は500%以上の、エンテロコッカス・フェシウムに対する抗体を含む。一部の実施形態では、高度免疫化卵又は高度免疫化卵製品は、エンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素又はエンテロコッカス・フェシウムで高度免疫化されていない産卵動物から得られた対照卵又は対照卵製品と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、100%、200%、300%、400%又は500%以上の、エンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素に対する抗体、及び少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、100%、200%、300%、400%又は500%以上の、エンテロコッカス・フェシウムに対する抗体を含む。一部の実施形態では、高度免疫化卵又は高度免疫化卵製品は、エンテロコッカス・フェカリス、エンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素又はエンテロコッカス・フェシウムで高度免疫化されていない産卵動物から得られた対照卵又は対照卵製品と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、100%、200%、300%、400%又は500%以上の、エンテロコッカス・フェカリスに対する抗体、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、100%、200%、300%、400%又は500%以上の、エンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素に対する抗体、及び少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、100%、200%、300%、400%又は500%以上の、エンテロコッカス・フェシウムに対する抗体を含む。
【0069】
高度免疫化卵製品及び対照卵製品における抗体力価の比較は、当該技術分野で公知の方法によって決定することができる。例えば、一実施形態では、卵が収集され、抗体力価がELISAによって一定の間隔でモニターされる。抗体力価を決定するために、Pierce(商標)ニワトリIgY精製キット(Thermo Fisher Scientific、Waltham、WA)を使用して卵から全IgYを抽出する。簡潔に述べると、2mLの卵を5倍体積の脱脂試薬と混合し、製造業者の使用説明書に従ってIgYを精製する。噴霧乾燥した卵粉末試料を滅菌PBS中で1mg/mLに再構成し、0.22μmのメンブランフィルターを通して濾過する。単離されたIgY又は卵粉末試料中の特異的抗体力価をELISAによって測定する。平底の96ウェルマイクロタイタープレート(Corning(登録商標)Costar(登録商標)、Corning、NY)を、10μg/mL(100μL/ウェル)で抗原(例えば、エンテロコッカス・フェカリス抗原、単離されたエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素又はエンテロコッカス・フェシウム抗原)でコーティングし、4℃で一晩インキュベートする。プレートを、0.05%のTween 20(Sigma-Aldrich、St. Louis、MO)を含有するPBSで2回洗浄し、1%のウシ血清アルブミン(BSA)を含有する100μL/ウェルのPBSでブロックし、室温で1時間インキュベートする。卵粉末試料から連続希釈した(0.1%のBSAを含むPBS中で)IgY試料を3連のウェル内のプレートに添加し(100μL/ウェル)、一定に振盪しながら室温で2時間インキュベートする。次いでプレートをPBS-Tで洗浄し、ペルオキシダーゼコンジュゲートウサギ抗ニワトリIgY(IgG)抗体(1:500;Sigma)で処理し、30分間インキュベートした後、0.05Mのリン酸-クエン酸緩衝液、pH5.0中の0.01%のテトラメチルベンジジン基質(Sigma)で10分間発色させた。結合した抗体は、マイクロプレートリーダー(Bio-Rad、Hercules、CA)を使用して450nmでの光学密度(0D450)を測定することによって検出される。抗体力価は、上記の光学密度によって測定された検出可能な抗体を依然として含有する卵製品の最大希釈倍数によって表すことができる。例えば、1000の抗体力価は、卵製品の1000倍希釈液が検出可能な抗体を含有するが、より高い希釈液は検出可能な抗体を含有しないことを示す。一部の実施形態では、高度免疫化卵製品中の抗体力価(例えば、エンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素、エンテロコッカス・フェカリス及び/又はエンテロコッカス・フェシウムに対する抗体の力価)は、少なくとも1000、少なくとも2000、少なくとも4000、少なくとも8000、少なくとも16,000、少なくとも32,000、少なくとも64,000、少なくとも100,000、少なくとも128,000、少なくとも250,000、少なくとも500,000、又は少なくとも100万、200万、300万、400万、500万、600万、700万、800万、900万、1000万、1100万、1200万、1300万、1400万、1500万、1600万、1700万、1800万、1900万若しくは2000万である。特定の実施形態では、高度免疫化卵製品中の抗体力価(例えば、エンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素、エンテロコッカス・フェカリス及び/又はエンテロコッカス・フェシウムに対する抗体の力価)は、少なくとも16,000である。さらに特定の実施形態では、高度免疫化卵製品中のエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素に対する抗体の力価及びエンテロコッカス・フェカリスに対する抗体の力価は、少なくとも16,000である。
【0070】
一部の実施形態では、高度免疫化卵又は卵製品は、重量で少なくとも0.0001%、0.0005%、0.001%、0.005%、0.01%、0.05%又は0.1%の、特異的抗原(例えば、エンテロコッカス・フェシウム抗原、エンテロコッカス・フェカリス抗原又はエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素)に対するIgY抗体を含む。典型的には、全ニワトリ卵は、殻を除いて約60グラムの重さであり、卵黄は約20グラムの重さであり、卵白は約40グラムの重さである。一部の実施形態では、3グラムの卵黄は約20~30ミリグラムの全IgYを含有するので、全卵は約150~200mgの全IgYを含有する。一部の実施形態では、高度免疫化卵又は卵製品中の全IgYの少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%又は30%が、高度免疫化に使用される抗原(例えば、エンテロコッカス・フェシウム、エンテロコッカス・フェカリス又は単離されたエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素)のうちの1つに特異的である。
【0071】
組成物及び投与
ある特定の態様では、本開示は、それを必要とする対象におけるアルコール性肝疾患を予防又は治療する方法であって、産卵動物から得られた高度免疫化卵製品の治療有効量を対象に投与し、それによって対象におけるアルコール性肝疾患を予防又は治療することを含み、高度免疫化卵製品が、エンテロコッカス・フェカリス及びエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素からなる群から選択される抗原に対する治療有効量の1つ以上の抗体を含む、方法に関する。一部の実施形態では、高度免疫化卵製品は、エンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素に対する1つ以上の抗体及びエンテロコッカス・フェカリスに対する1つ以上の抗体の治療有効量を含む。一部の実施形態では、エンテロコッカス・フェカリスに対する抗体は、エンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素ではない1つ以上のエンテロコッカス・フェカリス抗原に対する抗体を含む。
【0072】
ある特定の態様では、本開示は、それを必要とする対象における移植片対宿主病を予防又は治療する方法であって、産卵動物から得られた高度免疫化卵製品の治療有効量を対象に投与し、それによって対象における移植片対宿主病を予防又は治療することを含み、高度免疫化卵製品が、エンテロコッカス・フェカリス、エンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素及びエンテロコッカス・フェシウムからなる群から選択される抗原に対する治療有効量の1つ以上の抗体を含む、方法に関する。産卵動物が十分に高度免疫化されると、これらの動物からの卵を収集し、投与可能な形態の高度免疫化卵製品を生産するために処理することが好ましい。高度免疫化卵製品は、全卵、卵黄又は精製IgY画分の脱水、噴霧乾燥又は凍結乾燥によって調製され得る。乾燥高度免疫化卵製品は、薬剤、例えば流動特性を改善するシリコン又はシリコン誘導体と混合することができる。乾燥高度免疫化卵製品は乾燥剤を含んでもよい。高度免疫化卵製品は、周囲温度で保存されてもよいか又は例えば4℃で冷蔵保存されてもよい。
【0073】
一部の実施形態では、対象への高度免疫化卵製品の投与は、例えば、高度免疫化卵製品の投与前の対象におけるエンテロコッカス・フェカリスのレベルと比較して、又は高度免疫化卵製品を投与されていない対象と比較して、対象におけるエンテロコッカス・フェカリスのレベルを低下させる。一部の実施形態では、対象への高度免疫化卵製品の投与は、例えば、高度免疫化卵製品の投与前の肝損傷のレベルと比較して、又は高度免疫化卵製品を投与されていない対象と比較して、対象における肝損傷を軽減する(例えば、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の血清レベルを低下させる)。
【0074】
一部の実施形態では、高度免疫化卵製品はカプセル化される。抗体及び他のタンパク質をカプセル化する方法は当該技術分野で公知であり、例えば、米国特許第7,105,158号に記載されている。生分解性で非抗原性である材料をカプセル化材料として使用することができる。カプセル化材料には、アルブミン、PLGA、グロブリン、天然及び合成ポリマー、並びに熱可塑性ポリマーが含まれるが、これらに限定されない。生体適合性及び生体分解可能な任意のポリマーをカプセル化に使用することができる。多くの利用可能な架橋剤、例えばグルタルアルデヒドを使用してカプセル化材料を架橋することができる。さらに、薬学的に送達される材料は、カプセル化された薬物のミクロスフェアを含有することができ、それによってミクロスフェアは異なる濃度の架橋剤が使用され、それによって抗体の長期連続放出が生じる。
【0075】
一部の実施形態では、高度免疫化卵製品は、微粒子又はナノ粒子、例えばカプセル化微粒子又はカプセル化ナノ粒子の形態である。微粒子及びナノ粒子は任意の形状を有することができる。典型的には、微粒子及びナノ粒子は球形である。他の適切な形状には、フレーク、三角形、楕円形、棒状、多角形、針状、管、立方体及び直方体構造が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、微粒子は、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2又は0.1ミクロン未満の直径を有する。これらの値のいずれかを使用して微粒子の直径の範囲を定義できる。例えば、微粒子の直径は、約0.1~約10ミクロン、約0.1~約1ミクロン、又は約0.1~約2ミクロンであってもよい。他の実施形態では、より大きな微粒子又は粒子が使用されてもよい。例えば、微粒子は、10ミクロン~1000ミクロンの範囲の直径を有してもよい。ある特定の実施形態では、ナノ粒子は、1000、900、800、700、600、500、400、300、200、100又は10nm未満の直径を有する。これらの値のいずれかを使用してナノ粒子の直径の範囲を定義できる。例えば、ナノ粒子の直径は、約10~約1000nm、約100~約1000nm、又は約10~約100nmであってもよい。
【0076】
例えば、多層マイクロカプセル化、ホットメルトカプセル化、相分離カプセル化、自発的乳化、溶媒蒸発マイクロカプセル化、溶媒除去マイクロカプセル化及びコアセルベーションを含む、微粒子又はナノ粒子をカプセル化することができるいくつかのプロセスが存在する。これらの方法は当該技術分野で公知である。この方法の詳細な説明は、Mathiowitz et al.,「Microencapsulation」, in Encyclopedia of Controlled Drug Delivery, vol. 2, pp. 495-546, 1999, John Wiley & Sons, Inc.. New York, N.Y.に論じられており、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0077】
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗原(例えば、エンテロコッカス・フェシウム、エンテロコッカス・フェカリス又はエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素)に特異的なIgY抗体は、濃縮形態で対象に投与される。例えば、一部の実施形態では、IgY抗体は、対象への投与前に精製及び濃縮される。卵製品からIgY抗体を精製及び濃縮する方法は当該技術分野で公知であり、例えば、米国特許第5,367,054号に記載されており、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、高度免疫化卵製品は、エンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素に対する精製又は部分精製IgY抗体を含むか又はそれらからなる。一部の実施形態では、高度免疫化卵製品は、エンテロコッカス・フェカリスに対する精製又は部分精製IgY抗体を含むか又はそれらからなる。一部の実施形態では、高度免疫化卵製品は、エンテロコッカス・フェシウムに対する精製又は部分精製IgY抗体を含むか又はそれらからなる。一部の実施形態では、高度免疫化卵製品は、エンテロコッカス・フェカリスに対する精製又は部分精製IgY抗体及びエンテロコッカス・フェカリス細胞溶解素毒素に対する精製又は部分精製IgY抗体を含むか又はそれらからなる。
【0078】
一部の実施形態では、本明細書に記載される高度免疫化卵製品は、既に疾患を発症している対象におけるアルコール性肝疾患を治療するために使用される。例えば、一部の実施形態では、対象は、高度免疫化卵製品の投与時にアルコール性肝疾患を有する。アルコール使用障害のない患者と比較したアルコール性肝疾患(例えばアルコール性肝炎)を有する患者におけるエンテロコッカス種の割合の増加が観察されている。例えば、アルコール性肝炎を有する患者では、アルコール使用障害を有しない対照対象におけるほぼなし(0.023%)と比較して糞便細菌の5.59%がエンテロコッカス種であった。Duan et al., 2019, Nature 575: 505-511を参照のこと。したがって、一部の実施形態では、対象における糞便細菌の少なくとも0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%又は5%が、高度免疫化卵製品の投与時にエンテロコッカス種である。アルコール性肝炎を有する患者からの糞便試料は、定量的PCR(qPCR)で測定した場合、アルコール使用障害のない対照対象からの試料よりも約2,700倍多くのE.フェカリスを有することが示されており、アルコール性肝炎を有する患者の約80%は糞便中のE.フェカリスに対して陽性である。上記で引用したDuan et al.を参照のこと。したがって、一部の実施形態では、対象は、アルコール性肝疾患を有しない対象と比較して糞便試料中に少なくとも100倍、500倍、1000倍、1500倍、2000倍又は2500倍多くのE.フェカリスを有する。
【0079】
一部の実施形態では、本明細書に記載される高度免疫化卵製品は、対象におけるアルコール性肝疾患の発症を予防するために使用される。例えば、一部の実施形態では、対象は、高度免疫化卵製品の投与時にアルコール性肝疾患を有していない。一部の実施形態では、対象は、高度免疫化卵製品の投与時にアルコール性肝疾患以外のアルコール関連障害を有する。一部の実施形態では、対象はアルコール乱用者、過度の飲酒者又は大量飲酒者である。特定の実施形態では、高度免疫化卵製品が投与される対象はヒトである。
【0080】
一部の実施形態では、本明細書に記載される高度免疫化卵製品は、既に疾患を発症している対象におけるGVHDを治療するために使用される。例えば、一部の実施形態では、対象は高度免疫化卵製品の投与時にGVHDを有する。上記で論じたように、GVHDを有する患者におけるエンテロコッカス種(例えばE.フェシウム)の糞便レベルの増加が観察されている。上記で引用したGarrettを参照のこと。したがって、一部の実施形態では、GVHDを有する対象は、高度免疫化卵製品の投与時に健康な対象(例えばGVHDを有しない対象)と比較して、1つ以上のエンテロコッカス種(例えばE.フェカリス又はE.フェシウム)の糞便レベルの増加を示す。一部の実施形態では、GVHDを有する対象は、臓器移植、幹細胞移植、骨髄移植又は同種造血細胞移植を受けている。一部の実施形態では、対象は急性GVHDを有する。一部の実施形態では、対象は慢性GVHDを有する。
【0081】
一部の実施形態では、本明細書に記載される高度免疫化卵製品は、対象におけるGVHDの発症を予防するために使用される。例えば、一部の実施形態では、対象は高度免疫化卵製品の投与時にGVHDを有していない。一部の実施形態では、対象は移植(例えば臓器移植、幹細胞移植、骨髄移植又は同種造血細胞移植)を受けているが、まだGVHDを発症していない。特定の実施形態では、高度免疫化卵製品が投与される対象はヒトである。
【0082】
本発明の高度免疫化卵製品は、対象におけるアルコール性肝疾患又はGVHDを治療又は予防する任意の手段によって対象(例えばヒト)に投与される。特定の実施形態では、投与は経口投与によって行われる。卵及び卵黄は天然の食品成分であり、無毒で安全である。他の実施形態では、高度免疫化卵製品は、注射、例えば、静脈内、皮下又は筋肉内注射によって投与され得る。特定の実施形態では、高度免疫化卵製品は、静脈内注射によって投与される精製又は部分精製IgYである。
【0083】
リン酸緩衝生理食塩水、生理食塩水、エタノール、プロピレングリコールなどを含む、いくつかの公知の医薬担体のいずれも、注射用又はその他の投与可能な製剤の調製に使用することができる。一部の実施形態では、高度免疫化卵製品は飲料水を通じて投与される。
【0084】
特定の実施形態では、高度免疫化卵製品は、1つ以上の追加の化合物、例えば栄養素又はプロバイオティクスを含む組成物として投与される。例えば、一実施形態では、本発明の高度免疫化卵製品は栄養補助食品に組み込まれる。栄養補助食品に組み込まれる本発明の卵を調製する1つの方法は、卵を乾燥させて卵粉末にすることを含む。卵を乾燥させるための様々な方法が知られているが、噴霧乾燥が好ましい方法である。卵を噴霧乾燥するプロセスは当該技術分野で周知である。一部の実施形態では、組成物は高度免疫化卵製品を含む水溶液である。
【0085】
ある特定の実施形態では、全卵は、別個の画分、例えば卵黄及び卵白に分割される。例えば、IgY抗体は卵黄中に見出されることが当該技術分野において一般に知られている。したがって、当業者は、卵黄の分離により、より有効な画分を提供できるか、又は望ましくない成分を除去できること、また、他の投与様式、例えば高度免疫化卵製品の非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、経口又は局所的投与が可能になることを明確に認識するであろう。このようなさらなる分離により、前記卵又はその画分を含むカプセル化製品及び組成物を作製する能力が提供されるであろう。
【0086】
高度免疫化卵製品は、アルコール性肝疾患又はGVHDの治療又は予防において免疫学的に有効な量で対象に投与されることが好ましい。投薬量及び投与期間は対象の特定の状態に依存する。一部の実施形態では、高度免疫化卵製品は、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、60、90、180又は365日間対象に投与される。高度免疫化卵製品は、1日当たり1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回又はそれ以上の回数対象に投与され得る。これらの値のいずれかを使用して、高度免疫化卵製品を1日当たり対象に投与できる回数の範囲を定義できる。例えば、一部の実施形態では、高度免疫化卵製品は、1日当たり1~2回、1日当たり1~3回又は1日当たり1~4回対象に投与される。一部の実施形態では、高度免疫化卵製品は1日当たり少なくとも2回対象に投与される。一部の実施形態では、高度免疫化卵製品は1日当たり少なくとも1回対象に投与される。一部の実施形態では、高度免疫化卵製品は毎日対象に投与される。一部の実施形態では、高度免疫化卵製品は2日に1回対象に投与される。一部の実施形態では、高度免疫化卵製品は3日に1回対象に投与される。一部の実施形態では、高度免疫化卵製品は週に1回対象に投与される。特定の実施形態では、高度免疫化卵製品は、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10日を超える連続日の間、1日に1回対象に投与される。
【0087】
一部の実施形態では、1個~数個未満の範囲の高度免疫全卵(又は1個~数個未満の高度免疫全卵の相当量を含む高度免疫卵製品)の1日量を状態の特定の状況に応じて対象に投与することができる。より有効な画分は、当該技術分野で周知の方法により、数百個の卵から分離及び濃縮することができる。ある特定の実施形態では、対象(例えばヒト)に投与される高度免疫化卵製品の有効量は、1日当たり0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、20 6、7、8、9、10、20、30、40又は50グラムである。例えば、一部の実施形態では、1日当たり0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40又は50グラムの全卵が対象に投与される。一部の実施形態では、1日当たり0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40又は50グラムの卵黄が対象に投与される。一部の実施形態では、1日当たり0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10グラムの乾燥卵黄又は乾燥全卵が対象に投与される。これらの値のいずれかを使用して、哺乳動物に投与される高度免疫化卵製品の有効量の範囲を定義できる。例えば、一部の実施形態では、高度免疫化卵製品の効果量は、1日当たり0.1から10グラムの間、0.5から6グラムの間、又は1から5グラムの間であり。特定の実施形態では、3グラムの卵黄が1日当たり対象(例えばヒト)に投与される。
【0088】
ある特定の実施形態では、組成物は、少なくとも0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%w/wの高度免疫化卵製品を含む。これらの値のいずれかを使用して、組成物中の高度免疫化卵製品の濃度の範囲を定義できる。例えば、一部の実施形態では、組成物は、0.01%から50%の間、0.1%から50%の間、又は1%から50%w/wの間の高度免疫化卵製品を含む。
【0089】
[実施例]
[実施例1]
抗エンテロコッカス・フェカリス及び抗細胞溶解素IgY抗体の調製及び評価
現在の研究を、アルコール性肝炎を有する患者の糞便由来の細菌が定着したヒト化マウスALDモデルに経口投与した場合の、E.フェカリス細胞溶解素毒素及びE.フェカリスに対する標的IgY抗体を含む高度免疫卵の有効性を評価するように設計した。実験の概略図を
図1に提供する。
【0090】
方法
高度免疫卵粉末の調製
エンテロコッカス・フェカリスの2mLの初代培養物をグリセロールストックから開始した。500mLの培養ボトル中に0.2%で初代培養物を接種することにより大規模なバッチの培養を開発し、180rpmで振盪しながら37℃で一晩増殖させた。細菌を、4℃、6000rpmでの遠心分離によりペレット化した。ペレットを氷冷PBSで1回洗浄した。ペレットを再び氷冷PBS中に再懸濁し、ガラス管に移し、最高設定で各サイクル30分間、10サイクルで超音波処理した。得られた溶解物を、4℃、10,000rpmで15分間遠心分離し、上清を収集した。総タンパク質をBCAタンパク質アッセイによって定量した。
【0091】
組換え細胞溶解素の調製
純粋な組換えE.フェカリス細胞溶解素毒素は、Genscript USA、Piscataway、NJによって調製された。
【0092】
高度免疫化プロトコール
E.フェカリス細菌溶解物及びE.フェカリス細胞溶解素毒素の混合物を、PBS中でそれぞれ2mg/mL及び1mg/mlに希釈し、接種材料として使用した。接種材料及びフロイント完全アジュバントの1:1混合物を使用して、別々のニワトリを抗原の各々で免疫化した。免疫化を0、4、7、14及び28日目に実施し、卵を収集した。
【0093】
力価及び中和の評価のための抗体の抽出
IgY抗体を、水希釈法を使用して高度免疫化卵から抽出した。100μLの卵黄を10mlの水で希釈し、十分に混合し、遠心分離して脂質をペレット化し、一方で、抗体及びその他の可溶性卵タンパク質を水相に抽出した。水相を使用して、以下に記載されるようにELISAによる力価測定を評価した。
【0094】
中和アッセイのために、水希釈及びNaCl沈殿法により高度免疫化卵黄からIgYを抽出した。4~5個の卵黄を、0.5MのHClを使用してpH5に酸性化した水で1:10の比で希釈し、一晩凍結させた。希釈卵黄を37℃で解凍し、6000rpmで20分間遠心分離して脂質を分離した。上清を濾過し、pH4で8.8%のNaClと混合し、2時間沈殿させた。IgYを遠心分離により沈殿物から分離し、過剰な塩をPBS中での透析により除去した。総IgYを、NanoDrop(商標)One Microvolume UV-Vis分光光度計(Thermo Scientific)を使用して、A280(280nmでの吸光)値によって定量した。IgYの純度をSDS-PAGEゲルで分析した。
【0095】
ELISAによる抗体特異性及び力価の検出
抗体特異性及び力価をELISAによって測定した。簡潔に述べると、抗E.フェカリス抗体力価を測定するために、96ウェルプレートを炭酸-重炭酸緩衝液(pH9.3)中の1mg/mLのE.フェカリス溶解物でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートをPBSで1回洗浄し、PBS中の1%BSAで37℃にて1時間ブロックした。プレートを、0.05wt%のTween-20(PBST)を含有するPBSで1回洗浄し、37℃にて1時間プレート上で連続希釈した一次抗E.フェカリス抗体で処理した。プレートを洗浄し、ヤギ抗ニワトリHRP二次抗体で処理した。TMB基質を添加してシグナルを発生させ、反応をHClによって停止させた。プレートをプレートリーダーで450nmにて読み取った。抗細胞溶解素抗体力価を測定するために、別の96ウェルプレートを0.5mg/mlの細胞溶解素でコーティングし、抗細胞溶解素抗体を使用して同様の実験を実施した。
【0096】
IgYの中和能力を試験する
エンテロコッカス・フェカリスを、BHIブロス中で1.5のOD600まで一晩培養し、ブロス中で1:50に希釈し、OD600が0.3になるまでインキュベートした。培養物をBHIブロス中でさらに103cfu/mlにさらに希釈し、15mg/mlにて抗体で処理した。37℃で24時間のインキュベーション後、培養物を104倍に連続希釈し、滅菌プレートにプレーティングし、37℃で12時間インキュベートした。cfu/mLを、ImageJ Countの粒子の機能を使用してコロニーの数をカウントすることによって定量した。細菌コロニー形成の阻害パーセントを計算した。
【0097】
結果
高度免疫化ニワトリ卵黄からのIgYを含む総可溶性タンパク質を水希釈及びNaCl法によって抽出した。IgYの純度を還元条件下でSDS-PAGE電気泳動によって分析した。IgYは180KDの分子量を有し、67kDaの重鎖及び23KDの軽鎖の2つのサブユニットから構成される。高度免疫化卵黄から抽出したIgYの電気泳動パターンは、IgY標準のものと類似していた。
図2を参照のこと。
【0098】
標的特異的抗体力価の評価
E.フェカリス及び細胞溶解素抗原に対するIgY抗体の比活性を間接ELISAによって測定した。ELISAの結果は、対照IgYと比較した場合、1:32,000の高い力価で特異的抗原へのIgYの陽性結合を示した。
図3A及び3Bを参照のこと。
【0099】
標的中和及び評価
E.フェカリスに対するIgY抗体の増殖阻害効果を調査した。全細胞のE.フェカリス細菌を15mg/mlのIgYとインキュベートし、24時間のインキュベーション後にcfu分析を実施した。15mg/mlのIgYによる処理は、寒天プレート上のコロニー数の減少によって視覚化されるように、E.フェカリスの増殖を70%超阻害した。
図4を参照のこと。
【0100】
E.フェカリスに対するIgYの増殖阻害効果を定量し、阻害パーセントをプロットした。
図5を参照のこと。15mg/ml濃度での抗E.フェカリス+細胞溶解素IgY抗体によるE.フェカリスの処理により、E.フェカリス増殖の75%の阻害がもたらされ、E.フェカリスに対する中和抗体の生成が成功したことを示す。
図5を参照のこと。
【0101】
[実施例2]
アルコール性肝疾患マウスモデルにおける抗エンテロコッカス・フェカリス及び抗細胞溶解素IgY抗体の経口摂取の効果
方法
前臨床研究用の卵粉末の調製
卵白及び卵黄をホモジネートし、凍結乾燥して卵粉末を作製した。卵粉末を4℃で保存した。凍結乾燥した卵粉末を、実施例1で上述したように抗体活性について分析し、次に以下に記載されるアルコール性肝疾患(ALD)のヒト化モデルで評価した。
【0102】
アルコール性肝炎を有する細胞溶解素陽性のヒト患者からの便試料を無菌マウスにおける糞便移植のために使用した。マウスに、5~6週齢から開始して、100μlの便試料(嫌気条件下で15%のグリセロールを含有する30mlのルリア・ベルターニ(LB)培地に溶解した1gの便)を強制経口投与し、2週間後に繰り返した。2回目の強制経口投与の2週間後、Duan et al., 2019, Nature 575: 505-511に記載されているように、マウスにエタノール又は対照(等カロリー)食を与えた。定期的に、血清ALT、肝臓病変及び他のパラメーター、例えば体重増加、肝臓重量及び飼料摂取についてマウスを評価した。
【0103】
アルコール性肝疾患(ALD)モデル
Duan et al., 2019, Nature 575: 505-511に記載されているように、雄及び雌のC57BL/6無菌マウスを飼育し、1人のアルコール性肝炎を有する細胞溶解素陽性のヒト患者からの便試料を用いた糞便移植を5~6週齢で実施し、2週間後に繰り返した。マウスにLieber-DeCarli食を与え、エタノールからのカロリー摂取量は、1~5日目で0%、6日目から研究期間終了まで36%であった。16日目、早朝にマウスに単回用量のエタノール(5g/kg体重)を強制経口投与し、9時間後に屠殺した。ペアフィード対照マウスには、等カロリーのブドウ糖で置き換えた食餌を与えた。
【0104】
免疫化されていない雌鶏の卵からの対照IgY(15mg/日)又は抗E.フェカリス+抗細胞溶解素IgY(1日当たり1、5又は15mg)を含有する卵粉末を、アルコール投与の開始時に流動食(脂肪、炭水化物、タンパク質及びエタノール/等カロリーのブドウ糖を含有する)に添加した。乾燥卵粉末の重量については以下の表1を参照のこと。食餌は3日ごとに交換した。研究の開始時にマウスを無作為に群に割り当てた。エタノール摂取期間中、どの群でも死亡はなかった。
【0105】
【0106】
生化学分析
アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT;肝損傷についての試験)の血清レベルを、Infinity ALTキット(Thermo Scientific)を使用して測定した。肝臓トリグリセリドレベルを、トリグリセリド液体試薬キット(Pointe Scientific)を使用して測定した。
【0107】
染色手順
ホルマリン固定組織試料をパラフィン(Paraplast plus、McCornick)に包埋し、ヘマトキシリン-エオシン(Surgipath)で染色した。
【0108】
統計分析
結果は平均値±s.e.mとして表される。生物学的複製の数は、各エタノール含有食群においてn=5であった。有意性を、Tukeyの事後検定を用いた一元配置分散分析(ANOVA)を使用して評価した。P値<0.05は統計的に有意であるとみなされた。統計分析を、R統計ソフトウェア、Rバージョン1.3.1093、2020 R Foundation for Statistical Computing及びGraphPad Prism v8.4.3を使用して実施した。
【0109】
結果
エタノール誘発性肝疾患のマウスモデルにおける抗E.フェカリス+抗細胞溶解素IgYの効果を判定するために、無菌C57BL/6マウスにアルコール性肝炎を有する細胞溶解素陽性の患者からの便を定着させ、慢性過剰エタノール摂取モデルに供した。食物摂取量、体重及び肝臓重量は、エタノール摂取群において有意に異ならなかった。
図6A~6Cを参照のこと。抗E.フェカリス+抗細胞溶解素IgY処置マウス群では体重が減少する傾向があり、これは研究開始時の体重の減少に関連している。5mg又は15mgの抗E.フェカリス+抗細胞溶解素IgYを投与したマウスは、慢性エタノール摂取後、対照IgYを投与したマウスと比較して、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の血清レベルの減少によって示されるように有意に少ない肝損傷を示した(
図6Dを参照のこと)。肝臓トリグリセリドでは有意差は見られなかったが、抗E.フェカリス+抗細胞溶解素IgY処置マウスでは、肝臓脂肪症が低下する傾向があった(
図6Eを参照のこと)。組織学的分析により、抗E.フェカリス+抗細胞溶解素IgY処置マウスは、有意に低いエタノール誘発性肝損傷及び肝臓脂肪症を示したことが示された(
図7を参照のこと)。
【配列表】
【国際調査報告】